説明

腎細胞癌に対するインターフェロン治療反応性識別マーカー

【課題】腎細胞癌に対するIFN治療反応性識別マーカーおよびその検出手段を提供する。
【解決手段】腎細胞癌患者検体からヒト遺伝子のゲノムDNA配列もしくはその相補鎖を調製し、当該ゲノムDNAもしくはその相補鎖のDNA配列を解析して、ヒト遺伝子の遺伝子多型を決定し、該多型を指標として腎細胞癌に対するIFN治療による腫瘍の縮小効果を判定する方法。対象とするヒト遺伝子がSTAT3遺伝子、SSI3遺伝子、IL-4R遺伝子、IRF2遺伝子、ICSBP遺伝子、PTGS1遺伝子、PTGS2遺伝子およびTAP2遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子のゲノムDNA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト遺伝子多型を指標(マーカー)として、インターフェロン投与による腎細胞癌の腫瘍縮小(治療効果)を判定する方法、該方法に利用するオリゴヌクレオチドおよび検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
腎細胞癌は、現在行われている化学療法剤、免疫療法剤等を用いる薬物療法、放射線療法、手術による療法などのいずれの治療方法によっても奏効率の低い難治性疾患である。また、腎細胞癌が発見された時には既に癌の遠隔転移が認められる症例が約30%もあるとされている。上記治療方法の中でも、手術を除く薬物療法、特にインターフェロン(IFN)を用いる免疫療法は、最も優れたものとされるが、その効果は、IFN-α単独投与で15%前後、IFN-γ単独で10-15%の奏効率を示すに留まる。各種抗癌剤との併用でもIFN-α単独投与の効果を上回るものはない。現在行われているIFNを用いる免疫療法は、主に、IFN-αを単独で用いるか或いはIFN-γと併用する長期維持療法である。
【0003】
一方、ゲノム科学の進歩により、薬物動態の解明、および薬物の反応性に関与する酵素、蛋白質等の遺伝子多型の解明が急速になされている。ヒトゲノム解析において、一塩基多型(Single nucleotide polymorphisms: SNPs)が、最も頻度の高い遺伝子多型マーカーとして注目されつつある。該SNPsは、ありふれた疾患、薬剤応答などに関連するヒトゲノムの解析に有用であることが既に知られている(非特許文献1, 2および3参照)。また、複数のSNPsを用いたハプロタイプ解析が、疾患感受性を解析する上で有用であることも知られている(非特許文献4参照)。
【0004】
近年、個々の患者について、所謂オーダーメイドの治療法を確立するために、該患者の特定の遺伝子多型と薬剤感受性/薬剤応答性との関連を明らかにする研究が提案されている。
【0005】
IFNを用いる療法の有効性を予測する方法に関しては、ヒトC型肝炎ウイルス(HCV)感染者のゲノム上のMxA-8/MxA123、MBL-221/MBL-CLDcodon54 SNPsの多型と、IFN-αの治療有効者(治療効果の認められた患者)および無効者(治療効果の認められない患者)との関連を解析して、該HCV感染者におけるIFNの治療効果の程度を予測・評価する方法が知られている(特許文献1)。また、C型肝炎患者について、IFN-α受容体2型遺伝子のプロモーター領域および-134位にあるSNPを遺伝子多型マーカーとしてIFN治療の有効性を予測する方法も知られている(特許文献2)。この文献は、対象疾患としてB型肝炎、C型肝炎、膠芽腫、髄芽腫、星細胞腫、皮膚悪性黒色腫等の肝炎、腎癌、多発性骨髄腫、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄性白血病、亜急性硬化性全脳炎、ウイルス性脳炎、免疫抑制患者の全身性帯状疱疹及び水痘、上咽頭未分化癌、聴力低下を伴うウイルス性内耳感染症、ヘルペス性角膜炎、偏平コンジローマ、尖圭コンジローマ、アデノウイルス及びヘルペスウイルス感染による結膜炎、性器ヘルペス、口唇ヘルペス、子宮頸癌、癌性胸水症、角化棘細胞腫、基底細胞癌およびδ型慢性活動性肝炎からなる群より選択される疾患を開示している。
【0006】
更に、C型肝炎に対するIFN-α治療効果の有効性判定のために、IRF-1遺伝子のプロモーター領域の196位におけるグアニン(G)からアデニン(A)への置換を測定する方法も知られている(特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、腎細胞癌に対するIFNの治療効果の有効性と、特定のSNPとの関連を具体的に検討した報告は未だない。
【0008】
なお、IFN-α治療の有効者と無効者に関しては、数百の遺伝子発現プロファイルが既に報告されている(非特許文献4および特許文献4参照)。該プロファイルは、DNAチップ(高密度オリゴヌクレオチド、マイクロアレイ)、ディフアレンシャル・ディスプレイ、ディファレンシャルcDNAアレイ、SAGE(serial analysis of gene expression)、発現配列タグ・データ塩基比較(expressed sequence tag data base comparison)等の技術を利用して作成されたものであり、大腸癌、乳がん、卵巣癌、多発性硬化症、白血病の他、腎細胞癌(renal cell carcinomas)が分析対象とされている。また非特許文献4には、IRF2遺伝子、STAT1、STAT2、STAT4、STAT5、STAT6遺伝子などがリストされているが、本発明に用いる特定遺伝子のSNPsについての開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-88382号
【特許文献2】特開2003-339380号
【特許文献3】特開2001-136973号
【特許文献4】特表2004-507253号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Brookes, A. J., "The essence of SNPs", Gene, USA, (1999), 234, 177-186
【非特許文献2】Cargill, M, et al., "Characterization of single-nucleotide polymorphisms in coding regions of human genes", Nature Genet., USA, (1999), 22, 231-238
【非特許文献3】Evans, W. E., & Relling, M. V., "Pharmacogenomics: translating functional genomics into rational therapeutics", Science, USA, (1999), 286, 487-491
【非特許文献4】Schlaak, J.F., et. al., "Cell-type and Donor-specific Transcriptional Responses to Interferon-α"J. Biol. Chem., (2002) 277, 51, 49428-49437
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、腎細胞癌に対するIFN投与による治療効果(腫瘍縮小効果)を判定する手段を提供することをその主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために、まず遺伝子多型解析候補遺伝子として、IFN関連遺伝子、IFN-γシグナル伝達系に関与すると報告された遺伝子およびIFN添加/投与により遺伝子発現変動を示した報告のある遺伝子を含めた33種の遺伝子を任意に選択した。これらの候補遺伝子について、公共の多型データベースからその遺伝子上のSNPsを検索し、463の候補SNPsを選択した。次いで、これらの選択したSNPsについて、IFN-α投与によって腎細胞癌の腫瘍縮小効果が認められたIFN有効群(治療効果の認められた患者)および認められないIFN無効群(治療効果の認められない患者)の2群の患者由来ゲノムDNAを検体として用いて、それらSNPsの現れる頻度の差を求めた。その結果、上記2群間で統計学的に有意な差を示すSNPsが以下の8種の各遺伝子上に存在することを確認した。
【0013】
(1) STAT3遺伝子(Signal transducer and activator of transcription 3:STAT3 (GenBank Accession No. NT_010755)) (以下、「STAT3遺伝子」という)、
(2) SSI3遺伝子(Suppressor of cytokine signaling 3:SSI3 (GenBank Accession No. NT_010641) (以下、「SSI3遺伝子」という))、
(3) IL-4R遺伝子(Interleukin 4 receptor (GenBank Accession No. NT_010393) (以下、「IL-4R遺伝子」という)) 、
(4) IRF2遺伝子(Interferon regulatory factor 2: IRF2) (GenBank Accession No. NT_022792) (以下、「IRF2遺伝子」という))、
(5) ICSBP遺伝子 (Interferon consensus sequence-binding protein 1: ICSBP1) (GenBank Accession No. NT_019609) (以下、「ICSBP1遺伝子」という))、
(6) PTGS1遺伝子(Prostaglandin-endoperoxide synthase 1: PTGS1) (GenBank Accession No. NT_008470) (以下、「PTGS1遺伝子」という))、
(7) PTGS2遺伝子(Prostaglandin-endoperoxide synthase 2: PTGS2) (GenBank Accession No. NT_004487) (以下、「PTGS2遺伝子」という))、および
(8) TAP2遺伝子(Transporter,ATP-binding cassette, Major histocompatibility complex,2:TAP2) (GenBank Accession No. NT_007592) (以下、「TAP2遺伝子」という))。
【0014】
本発明者らは、更に上記各遺伝子上に存在するSNPsと腎細胞癌に対するIFN治療効果との関連について検討を重ねた。その結果、IFN-αの投与による腎細胞癌の腫瘍縮小効果と強く関連する16のSNPsを確認し、これらのSNPsが、IFN治療後の腫瘍縮小を判定するマーカーとして使用できることを見出した。即ち、これらのSNPsの検出によって、IFN投与による腎細胞癌の腫瘍縮小効果(治療効果)を予測すること (予測診断)が可能であることを見出した。本発明はかかる知見を基礎とし、更に研究を重ねた結果完成されたものである。
【0015】
本発明は、下記項1-11に記載の腎細胞癌患者に対するIFN治療後の腫瘍縮小効果を判定する方法を提供する。
【0016】
項1. 以下の(i)〜(iv)の工程を含む、腎細胞癌患者に対するIFN治療による腫瘍縮小を判定する方法;
(i) 腎細胞癌患者に由来する遺伝子サンプル(遺伝子ゲノムDNAサンプル)を得る工程、
(ii) 上記(i)で得られる遺伝子サンプルについて、STAT3遺伝子、SSI3遺伝子、IL-4R遺伝子、IRF2遺伝子、ICSBP遺伝子、PTGS1遺伝子、PTGS2遺伝子およびTAP2遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子のゲノムDNAもしくはその相補鎖を調製する工程、
(iii) 当該ゲノムDNAもしくはその相補鎖のDNA配列を解析して、遺伝子多型を決定する工程、および
(iv) 上記(iii)で決定された少なくとも1つの遺伝子多型をマーカーとして、腎細胞癌患者に対するIFN治療による腫瘍縮小を判定する工程。
【0017】
項2. 遺伝子多型が、STAT3遺伝子、IL-4R遺伝子、IRF2遺伝子およびTAP2遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子における多型である項1に記載の、腎細胞癌患者に対するIFN治療による腫瘍縮小を判定する方法。
【0018】
項3. 遺伝子多型が、下記(a)〜(p)からなる群から選ばれる少なくとも一つである項1に記載の腎細胞癌患者に対するIFN治療による腫瘍縮小を判定する方法:
(a) リファレンスSNP ID番号:rs1905341であるSTAT3遺伝子の4243095番目における遺伝子型がC/TまたはT/Tである遺伝子多型(STAT3-2)、
(b) リファレンスSNP ID番号:rs4796793であるSTAT3遺伝子の4264926番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型(STAT3-3)、
(c) リファレンスSNP ID番号:rs2293152であるSTAT3遺伝子の4204027番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型(STAT3-17)、
(d) リファレンスSNP ID番号:rs2293153であるSTAT3(KCNH4)遺伝子の4050541番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型(STAT3-18)、
(e) リファレンスSNP ID番号:rs2280148であるSSI3遺伝子の10246541番目における遺伝子型がA/Cである遺伝子多型(SSI3-1)、
(f) リファレンスSNP ID番号:rs1805011であるIL-4R遺伝子の18686025番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型(IL-4R-22)、
(g) リファレンスSNP ID番号:rs2797507であるIRF2遺伝子の17736877番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型(IRF2-67)、
(h) リファレンスSNP ID番号:rs796988であるIRF2遺伝子の17744613番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型(IRF2-82)、
(i) リファレンスSNP ID番号:rs2292982であるICSBP遺伝子の390141番目における遺伝子型がA/AまたはA/Cである遺伝子多型(ICSBP-38)、
(j) リファレンスSNP ID番号:rs1213264であるPTGS1遺伝子の26793813番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型(PTGS1-3)、
(k) リファレンスSNP ID番号:rs1213265であるPTGS1遺伝子の26794182番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型(PTGS1-4)、
(l) リファレンスSNP ID番号:rs1213266であるPTGS1遺伝子の26794619番目における遺伝子型がA/Gである遺伝子多型(PTGS1-5)、
(m) リファレンスSNP ID番号:rs2745557であるPTGS2遺伝子の15697329番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型(PTGS2-12)、
(n) リファレンスSNP ID番号:rs2071466であるTAP2遺伝子の23602539番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型(TAP2-5)、
(o) リファレンスSNP ID番号:rs2234898であるIL-4R遺伝子の18686068番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型(IL-4R-14)、および
(p) リファレンスSNP ID番号:rs1801275であるIL-4R遺伝子の18686553番目における遺伝子型がT/Tである遺伝子多型(IL-4R-29)。
【0019】
項4. 遺伝子多型が、項3の(a)、(f)、(h) 、(n) 、(o)および(p)のいずれかである項3に記載の腎細胞癌患者に対するIFN治療による腫瘍縮小を判定する方法。
【0020】
項5. IFNが天然型IFN-α、遺伝子組換え型IFN-αおよび遺伝子組換え型IFN-γからなる群から選ばれるいずれかである項1-4のいずれかに記載の腎細胞癌患者に対するインターフェロン治療による腫瘍縮小を判定する方法。
【0021】
項6. 遺伝子多型の決定が、ヌクレオチド直接塩基配列決定法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)-ドットブロット分析、一塩基プライマー伸長法、PCR-単鎖高次構造多型(SSCP)分析、PCR-制限酵素断片長多型(RFLP)分析、インベーダー法、定量的リアルタイムPCR検出法および質量分析計を用いた遺伝子多型検出法(mass array)からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により行われる項1〜5のいずれかに記載の方法。
【0022】
項7. 遺伝子多型の決定が、インベーダー法またはヌクレオチド直接配列決定法により行われる項6に記載の方法。
【0023】
項8. 遺伝子多型の決定が、PCR-RFLP分析により行われる項6に記載の方法。
【0024】
項9. PCR-RFLP分析が、制限酵素MspIを用いてヒトSTAT3遺伝子のrs2293152のイントロンの4204027番目のGからCへの変異を検出するものである項8に記載の方法。
【0025】
項10. 遺伝子多型の決定が、下記(a)-(p)からなる群から選ばれる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを遺伝子多型検出用プローブまたはプライマーとして用いて行われる項6に記載の方法;
(a) リファレンスSNP ID番号:rs1905341であるSTAT3遺伝子の4243095番目における遺伝子型がC/TまたはT/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(b) リファレンスSNP ID番号:rs4796793であるSTAT3遺伝子の4264926番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(c) リファレンスSNP ID番号:rs2293152であるSTAT3遺伝子の4204027番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(d) リファレンスSNP ID番号:rs2293153であるSTAT3(KCNH4)遺伝子の4050541番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(e) リファレンスSNP ID番号:rs2280148であるSSI3遺伝子の10246541番目における遺伝子型がA/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(f) リファレンスSNP ID番号:rs1805011であるIL-4R遺伝子の18686025番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(g) リファレンスSNP ID番号:rs2797507であるIRF2遺伝子の17736877番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(h) リファレンスSNP ID番号:rs796988であるIRF2遺伝子の17744613番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(i) リファレンスSNP ID番号:rs2292982であるICSBP遺伝子の390141番目における遺伝子型がA/AまたはA/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(j) リファレンスSNP ID番号:rs1213264であるPTGS1遺伝子の26793813番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(k) リファレンスSNP ID番号:rs1213265であるPTGS1遺伝子の26794182番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(l) リファレンスSNP ID番号:rs1213266であるPTGS1遺伝子の26794619番目における遺伝子型がA/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(m) リファレンスSNP ID番号:rs2745557であるPTGS2遺伝子の15697329番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(n) リファレンスSNP ID番号:rs2071466であるTAP2遺伝子の23602539番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(o) リファレンスSNP ID番号:rs2234898であるIL-4R遺伝子の18686068番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、および
(p) リファレンスSNP ID番号:rs1801275であるIL-4R遺伝子の18686553番目における遺伝子型がT/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド。
【0026】
項11. 遺伝子多型検出用プライマー対が、下記(a)-(p)に記載のものである項6に記載の方法;
(a) 配列番号:1および17で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(b) 配列番号:2および18で示される各配列のオリゴヌクレオチドド対、
(c) 配列番号:3および19で示される各配列のオリゴヌクレオチドド対、
(d) 配列番号:4および20で示される各配列のオリゴヌクレオチドド対、
(e) 配列番号:5および21で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(f) 配列番号:6および22で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(g) 配列番号:7および23で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(h) 配列番号:8および24で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(i) 配列番号:9および25で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(j) 配列番号:10および26で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(k) 配列番号:11および27で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(l) 配列番号:12および28で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(m) 配列番号:13および29で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(n) 配列番号:14および30で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(o) 配列番号:15および31で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、および
(p) 配列番号:16および32で示される各配列のオリゴヌクレオチド対。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、腎細胞癌に対するIFN投与による治療反応性識別マーカーを検出する方法、特に腎細胞癌患者検体中の特定のヒト遺伝子多型または遺伝子型を検出して、該患者に対するIFNの治療効果(腫瘍縮小効果)を判定する方法、そのためのキット、それらに利用する遺伝子多型、遺伝子型、遺伝子型検出用プローブおよびプライマーを提供する。これらは患者個々のオーダーメイド医療における投与薬剤の選択順位の選定に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書におけるアミノ酸、ペプチド、塩基配列、核酸などの略号による表示は、IUPAC-IUBの規定〔IUPAC-IUB communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(特許庁編)および当該分野における慣用記号に従うものとする。
【0029】
本明細書において、「遺伝子多型」または「多型」とは、1つの遺伝子座を占める複数種の対立遺伝子群またはこのような対立遺伝子群に属する個々の対立遺伝子をいうものとする。またこの多型の内、1塩基のみが異なるものを特に一塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)ともいう。この一塩基多型を本明細書においては「SNP」と略称する。
【0030】
ハプロタイプとは、連続した遺伝子領域または遺伝子群中の複数箇所の遺伝子多型部位における対立遺伝子の種類と数とによって表される上記遺伝子多型(SNPs)のタイプを示す。
【0031】
本明細書において遺伝子型とは、特定の遺伝子多型部位における遺伝子座の対立遺伝子の状態を示す。例えばSTAT3遺伝子の4243095番目のSNP (STAT3-2)についての遺伝子型は、C/Tヘテロ接合またはT/Tホモ接合であると表わす。これは「STAT3-2がC/TまたはT/T」のように表す。該遺伝子型STAT3-2がC/TまたはT/Tである患者の場合、腎細胞癌に対するIFN治療の効果(腫瘍縮小効果)が認められる可能性が高い(PR(partial response, 有効)またはCR(complete response, 著効))と予測される。従って、STAT3-2のC/TまたはT/Tは、腎細胞癌に対するIFN治療反応性識別マーカーとして使用し得る。
【0032】
尚、本明細書中に示されるヒト遺伝子のゲノム配列は、NCBI (National Center for Biotechnology Information)の核酸配列データバンクにGenBankアクセッション番号(例:NT_010641)にて掲載されている核酸配列に従うものとする。本発明においてヒト遺伝子多型として示されるSNPに関する位置情報および核酸の変異に関する情報は、同様にNCBIのSNPデータバンクに、リファレンスSNP ID番号(例:rs1213265)にて掲載されている(リファレンスSNP(refSNP)クラスター・レポート(Reference SNP(refSNP) Cluster Report)参照、インターネットサーチエンジン(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP)にて検索することができる)。本明細書においてもこのリファレンスSNP ID番号にて表示するものとする。
【0033】
GenBankより入手した上記した遺伝子配列情報、mRNAの配列情報、SNPに関する位置情報、核酸の変異に関する情報などの概略を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1中、各遺伝子の項の記載は、本発明者らが見出したSNPsが存在する遺伝子の名称に続けて本発明者が任意に付したSNP番号を付して表示するものである。表中、「rs#」は、リファレンスSNP のアクセッション番号を、「核酸」は、核酸の変異(A/GはAがGに変異したSNPであることを示す)を、「Contig accession」はゲノムコンティグ配列のアクセッション番号を、「Contig position」はゲノム配列における核酸変異の位置を示す位置番号を、「mRNA」は、mRNAの配列番号のアクセッション番号を、「mRNAの方向」は遺伝子多型配列があるmRNAの方向を示す。また、「蛋白質」は、蛋白質配列のアクセッション番号を、「存在位置」は、遺伝子多型が存在する部位の位置情報を、「dbSNP allele」は対応する二本鎖の対立遺伝子の核酸情報を、「アミノ酸残基」は変異[置換]したアミノ酸残基を、「コドンの位置」は核酸によってコードされるアミノ酸に対するコドンの順位位置情報を、「アミノ酸配列情報」はアミノ酸配列の位置情報を、「備考」は遺伝子の別名情報をそれぞれ示す。
【0036】
表1に示されるように、本発明の方法に用いられる特定ヒト遺伝子多型によるアミノ酸の変異(置換)は、IL-4Rに関連した遺伝子多型のみに認められ、他の遺伝子の遺伝子多型におけるアミノ酸変異(置換)は生じない。
【0037】
本明細書において「遺伝子」なる語は、2本鎖DNAのみならず、それを構成する各1本鎖DNA(センス鎖およびアンチセンス鎖)を包含する。即ち、本発明遺伝子(DNA)は、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(センス鎖)、該センス鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNAおよびそれらの断片を含む。また上記遺伝子(DNA)は、調節領域、コード領域、エクソンおよびイントロンを含むことができる。ポリヌクレオチドは、RNAおよびDNAを包含する。DNAは、cDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAを含む。ポリペプチドは、その断片、同族体、誘導体および変異体を含む。更に変異体は、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、改変(欠失、置換、付加および挿入)のなされた変異体およびコードするポリペプチドの機能を実質的に変更しないポリヌクレオチド配列を意味する。尚、アミノ酸配列における改変は、天然において例えば突然変異、翻訳後の修飾などにより生じることもあり、天然由来の遺伝子を利用して人為的にこれを行うこともできる。
【0038】
本発明は、ヒト遺伝子(IFN関連遺伝子、IFN-γシグナル伝達系に関与することが報告された遺伝子およびIFN添加/投与により遺伝子の発現変動を示すことが報告された遺伝子)の特定位置における遺伝子型を含む遺伝子多型、殊にSNPもしくはSNPsが、腎細胞癌患者に対するIFN治療による腫瘍の縮小効果と強く相関しており、該遺伝子多型(特定位置における遺伝子型)を検出することによって、腎細胞癌患者に対するIFN治療効果が判定できるという事実の発見に基づいて完成されている。換言すれば、本発明は、特定のヒト遺伝子多型、特に特定のSNPsが、腎細胞癌に対するIFN治療効果の判定マーカーとして使用できることを見出し完成されている。本発明方法によれば、腎細胞癌患者由来の検体の特定のSNPsを検出することによって、該腎細胞癌患者に対するIFN治療効果を予測することが可能である。
【0039】
本発明方法は、腎細胞癌患者由来検体の特定ヒト遺伝子の多型、即ち、STAT3-2、STAT3-3、STAT3-17、STAT3-18、SSI3-1、IL-4R-14、IL-4R-22、L-4R-29、IRF2-67、IRF2-82、ICSBP-38、PTGS1-3、PTGS1-4、PTGS1-5、PTGS2-12およびTAP2-5の遺伝子多型(遺伝子型)を検出することを必須の要件とする。
【0040】
本発明方法によって検出(解析)すべきSNPs、即ち、腎細胞癌患者に対するIFN治療による腫瘍縮小効果と相関する遺伝子的多型(または遺伝子型)は、より具体的には下記(a)〜(p)に記載のものである。なお、これら各多型の存在する遺伝子上の位置は、前記表1に示す通りである。
【0041】
(a) リファレンスSNP ID番号:rs1905341であるSTAT3遺伝子の4243095番目における遺伝子型がC/TまたはT/Tである遺伝子多型(STAT3-2)、
(b) リファレンスSNP ID番号:rs4796793であるSTAT3遺伝子の4264926番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型(STAT3-3)、
(c) リファレンスSNP ID番号:rs2293152であるSTAT3遺伝子の4204027番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型(STAT3-17)、
(d) リファレンスSNP ID番号:rs2293153であるSTAT3 (KCNH4)遺伝子の4050541番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型(STAT3-18)、
(e) リファレンスSNP ID番号:rs2280148であるSSI3遺伝子の10246541番目における遺伝子型がA/Cである遺伝子多型(SSI3-1)、
(f) リファレンスSNP ID番号:rs1805011であるIL-4R遺伝子の18686025番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型(IL-4R-22)、
(g) リファレンスSNP ID番号:rs2797507であるIRF2遺伝子の17736877番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型(IRF2-67)、
(h) リファレンスSNP ID番号:rs796988であるIRF2遺伝子の17744613番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型(IRF2-82)、
(i) リファレンスSNP ID番号:rs2292982であるICSBP遺伝子の390141番目における遺伝子型がA/AまたはA/Cである遺伝子多型(ICSBP-38)、
(j) リファレンスSNP ID番号:rs1213264であるPTGS1遺伝子の26793813番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型(PTGS1-3)、
(k) リファレンスSNP ID番号:rs1213265であるPTGS1遺伝子の26794182番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型(PTGS1-4)、
(l) リファレンスSNP ID番号:rs1213266であるPTGS1遺伝子の26794619番目における遺伝子型がA/Gである遺伝子多型(PTGS1-5)、
(m) リファレンスSNP ID番号:rs2745557であるPTGS2遺伝子の15697329番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型(PTGS2-12)、
(n) リファレンスSNP ID番号:rs2071466であるTAP2遺伝子の23602539番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型(TAP2-5)、
(o) リファレンスSNP ID番号:rs2234898であるIL-4R遺伝子の18686068番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型(IL-4R-14)、および
(p) リファレンスSNP ID番号:rs1801275であるIL-4R遺伝子の18686553番目における遺伝子型がT/Tである遺伝子多型(IL-4R-29)。
【0042】
本発明によれば、特定ヒト遺伝子の遺伝子多型(SNPsおよびハプロタイプ)および遺伝子型を検出することによって、腎細胞癌に対する腫瘍縮小効果(IFNによる腫瘍縮小効果)の把握、その機能の解明、腎細胞癌治療の予測診断等に有用な情報乃至手段を与えることができる。また、本発明によれば、腎細胞癌患者に対する治療方針を決定するための根拠となる情報、特に腎細胞癌患者個々に合わせたオーダーメイド医療のための治療方針としてIFN投与を行うか否かを決定するための重要な情報を提供することができる。
【0043】
本発明において、腎細胞癌患者に対するIFN治療に用いられるIFNには、例えば天然型IFN-α、遺伝子組換え型IFN-α、遺伝子組換え型IFN-γ等が含まれる。これらのIFNは、単独で用いられる場合は勿論のこと、他の腎細胞癌治療のための免疫療法剤、化学療法剤などと併用される場合も、本発明方法の対象とすることができる。
【0044】
遺伝子多型を有するヒト遺伝子(SNPs)の調製
【0045】
以下、本発明方法につき詳述すれば、本発明方法においては、まず検体として腎細胞癌患者に由来する遺伝子サンプルを調製する(i工程)。該遺伝子サンプルは、特定の遺伝子多型(SNPs)、具体的には先に(a)〜(p)として記載した遺伝子多型を含む。該サンプルとしては、腎細胞癌患者より常法に従って抽出されたcDNAまたはゲノムDNAを利用することができる。このサンプルは、上記遺伝子多型を含むDNAの相補鎖であってもよい。
【0046】
サンプルとするcDNAまたはゲノムDNAの起源としては、各種細胞、組織、これらに由来する培養細胞などを例示できる。具体的には、血液、唾液、リンパ液、気道粘液、尿、精液などの体液を例示することができる。尚、検体としての上記起源材料は、IFN投与前(特に既に他の薬剤を投与している症例に追加して薬剤を投与する前も含む)の患者由来のDNAまたはゲノムDNAであるのが好ましい。これら起源材料からのRNAの分離、mRNAの分離および精製、cDNAの取得、そのクローニングなどは、いずれも常法に従って実施することができる。
【0047】
本発明方法では、次に、上記遺伝子サンプルから特定ヒト遺伝子のゲノム配列もしくはその相補鎖(例えば前記(a)〜(p)の遺伝子多型を有する遺伝子もしくはその相補鎖(SNPs))を調製する(ii工程)。
【0048】
この調製は、本明細書に開示された前記(a)〜(p)のSNPsを含む遺伝子の具体的配列情報を参考にして、一般的遺伝子工学的手法〔Molecular Cloning 2d Ed, Cold Spring Harbor Lab. Press (1989);続生化学実験講座「遺伝子研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)など参照〕により容易に行い得る。具体的には、(a)〜(p)の遺伝子多型を有する腎細胞癌患者より抽出されたcDNAまたはゲノムDNAから、(a)〜(p)の特定遺伝子型を含む適当なプローブ、制限酵素などを利用して、常法〔例えばProc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 78, 6613 (1981); Science, 222, 778 (1983)など参照〕に従って実施できる。より詳しくは、目的のSNPsのDNA配列に選択的に結合し得る遺伝子型部分を含むプローブを作成し、これを用いて一塩基プライマー伸長法、インベーダー法、定量的リアルタイムPCR法などを実施すればよい。
【0049】
スクリーニング用プライマーとしては、所望遺伝子の塩基配列情報に基づいて設定したフォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを用いることができる。これらは常法に従い、例えば自動合成装置を用いて合成することができる。該スクリーニング用プローブは、通常、標識したプローブであるが、直接的または間接的に標識したリガンドと特異的に結合できるものであれば、非標識のものであってもよい。プローブおよびリガンドの標識剤および標識法は、既にこの種技術分野でよく知られている。その例としては、例えばニック・トランスレーション、ランダム・プライミングム、キナーゼ処理などの方法によって取り込ませることができる放射性標識剤、ビオチン、蛍光性色素、化学発光剤、ルシフェラーゼなどの酵素、抗体などを例示できる。
【0050】
抽出した遺伝子あるいはmRNAは、遺伝子増幅法によって増幅させることができる。この増幅によれば、本発明検出方法における検出をより容易に且つ精度の高いものとすることができる。遺伝子増幅法の例としては、PCR法 (Saiki, R. K., Bugawan, T. L., et al., Nature, 324, 163-166 (1986))、NASBA法 (Comptom, J., Nature, 650, 91-92 (1991))、TMA法 (Kacian, D. L., and Fultz, T. J., 米国特許第5,399,491号 (1995))、SDA法 (Walker, G. T., Little, M. C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 89, 392-396 (1992))などが挙げられる。
【0051】
尚、PCR法などで増幅させた遺伝子断片の単離精製は、常法、例えばゲル電気泳動法などによるかまたはカラムを用いて実施することができる。その確認は、例えばマススペクトル法またはゲル電気泳動法によることができる。これらの方法により増幅させた遺伝子は、その増幅物の特性に応じて、本発明に係る(a)〜(p)の遺伝子多型(SNPs)の検出(遺伝子多型の決定)に供される。
【0052】
遺伝子多型の検出
【0053】
本発明方法では、上記検体中の特定遺伝子領域のDNA配列を決定、解析して、その多型(SNPs)を検出(多型を決定)する(iii工程)。この検出は、具体的には下記(1)-(8)に示す各方法に従って実施することができる。
【0054】
(1) ヌクレオチド直接塩基配列決定法
【0055】
この種遺伝子の塩基配列の決定に慣用されている、例えばダイデオキシ法(Sanger, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 74, 5463-5467 (1977))、マキサム-ギルバート法〔Methods in Enzymology, 65, 499 (1980)〕などのヌクレオチド直接塩基配列決定法に従い、特定遺伝子のDNA配列を決定することによって、遺伝子多型を検出できる。このヌクレオチド直接塩基配列決定法とPCR法などのDNA増幅法とを組み合わせた方法も、遺伝子多型の検出に有効である。特に、少量のDNA試料を用いて簡便かつ容易にしかも感度および精度の高い検出が可能である観点からは、PCR法もしくはそれに準じたDNA増幅法を組み合わせた方法の実施が好ましい。
【0056】
この好ましい方法は、基本的には、例えばPCR法で増幅させた遺伝子断片またはその精製物をダイデオキシ法、マキサム-ギルバート法などに従って直接塩基配列をシーケンスすることにより実施できる。また、簡便には市販のシークエンスキットなどを用いてヌクレオチド配列を決定することにより実施できる。かくして、特定ヒト遺伝子の前述した部位におけるSNPの存在の有無を検出できる。
【0057】
上記方法および以下に示す各方法において、PCR法で増幅させるDNA断片は、前述した変異の存在が想定される特定部位の少なくとも1つを含む限り特に限定されるものではない。通常、約50から数千塩基の長さ、好ましくは50から数百塩基の長さを有するものであるのがよい。
【0058】
(2) 対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド-ドットブロット法
【0059】
特定遺伝子の多型検出の別法としては、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)-ドットブロット法 (Conner, B. J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 80, 278-282 (1983))に従う方法を挙げることができる。該方法は、例えば目的とするSNPを挟むように設計したフォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを利用して、PCR増幅した遺伝子断片に対する対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド・プローブにハイブリダイズするDNA断片を、ドット・ブロット分析することにより実施できる。かくして、該断片中にSNPが存在するか否かを決定することができる。
【0060】
(3) 一塩基プライマー伸長法
【0061】
特定遺伝子の多型の検出は、また、スナップショット法、ピロシーケンス法、特開平2000-279197号公報に開示の点変異検出法のような、一塩基伸長法によっても実施することができる。これらの方法では、目的の遺伝子多型(SNP)の直前の塩基または数塩基前の塩基に対応するように設定したプローブ、即ち、その3'末端を検出目的である変異の1塩基上流または近傍に設定したプローブを、DNA検体にアニーリングさせる。各方法は市販のSNPs検出用キットおよび該キットに添付のソフトウェアを利用して実施することができる。
【0062】
例えばスナップショット法は、ABI PRISM SNaPshot ddNTP Primer Extension Kit (ABI社製)を用いて実施できる。SNPsは、反応後に生成した蛍光フラグメントを、ABI PRISM310/377/3100/3700DNA Analyzer (いずれもABI社製)とGeneScanソフトウェアを用いて検出・解析できる。
【0063】
ピロシーケンス法は、例えば、以下のごとくして実施できる。即ち、血液サンプルなどから常法によりゲノムDNAを単離し、ビオチン標識したプライマーを用いて変異を含む数十から数百塩基をPCR増幅させ、マグネットビーズを用いて一本鎖DNAを精製し、この精製DNAを検体とする。該検体に、所望の遺伝子多型の数塩基上流からシーケンスするように設定したプライマーをアニーリングさせ、次いでソフトウェアに入力された遺伝子多型付近のシーケンスに従って1種類ずつdNTPを添加、反応させる。DNAポリメラーゼが塩基伸長するとピロリン酸(PPi)を生成するので、該PPiをスルフリラーゼ(Sulfurylase)によりATPに変換し、これを基質としてルシフェラーゼを反応させて生じる発光を発光検出器、CCDカメラなどを用いて検出する。かくして、添加したdNTPに応じて得られる発光のピークを解析することによって、所望の遺伝子のタイピングが可能となる。該方法を用いれば、96サンプルを15分ほどでタイピングすることができる。
【0064】
上記方法において試薬および装置としては、通常のものを用いることができる。例えば、試薬としては、DNAポリメラーゼ、ATP-スルフリラーゼ、ルシフェラーゼおよびアピラーゼ(apyrase)の4種の酵素混合液、ルシフェリンおよびAPS(アデノシン5'硫酸リン酸)からなる基質液、dATP(デオキシアデノシン・3リン酸)、dCTP、dGTPおよびdTTPからなるdNTPを構成要素とする市販のSNP Reagent Kits (Pyrosequencing AB社製)などを用いることができる。また装置としては、例えば自動DNA配列分析のためのPSQ96システム (Pyrosequencing AB社製)およびその使用のためのSNPソフトウェア (Pyrosequencing AB社製)を用いることができる。
【0065】
また、ピロシーケンス法は、例えば米国特許第6,159,693号明細書の記載に従って、核酸を単離し、PCR法によって増幅させ、増幅したPCR産物を精製後、READITTM System (プロメガ・コーポレーション社製)を用い、これにピロリン酸を反応させ、得られデータを分析することによっても実施できる。このデータ分析には、例えば市販のREADIT技術 (Promega Corporation製)を利用したExcel分析を採用できる。
【0066】
(4) PCR-単鎖高次構造多型(SSCP)分析法
【0067】
本発明方法における遺伝子多型の検出には、更に、PCR-SSCP法(Orita, M., Iwahara, H., et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 86, 2776-2770 (1989))を採用することもできる。この方法は、PCR増幅産物(一本鎖DNA)を非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、その移動度の差異により一塩基変異の有無を識別するものである。
【0068】
(5) PCR-制限酵素断片長多型(RFLP)分析法
【0069】
本発明の特定遺伝子のSNPsまたはハプロタイプの検出にあたり、検出目的とする多型を含む核酸配列が制限酵素認識部位をも含んでいる場合には、該検出は、制限酵素断片長多型分析法(RFLP法: Botstein, D. R., et al., Am. J. Hum. Gen., 32, 314-331 (1980))によって行うことができる。
【0070】
RFLP法は、より具体的には、例えば前記(a)〜(p)に記載の遺伝子多型の特定位置における遺伝子型に応じて、以下のようにして実施できる。例えば、前記(c)の遺伝子の特定の位置における遺伝子型を例にとると、STAT3遺伝子のゲノム配列の4204027番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型[STAT3-17]を検出するために、遺伝子型の箇所を含めてその前後の配列を認識し得る制限酵素を用いて実施される。かかるRFLP法に用いられる酵素は、目的とする遺伝子型の箇所の前後配列を認識し得る各種公知の制限酵素であればよい。その具体例としては、例えばMspIが例示できる。
【0071】
該RFLP法は、より好適にはPCR-RFLP法、即ち予めPCR法またはその変法などによって検体DNAを増幅・調製後、多量に調製され且つ濃縮された検体DNAについて実施する方法によることができる。かくして、特異的切断サイトの存在の有無として、所望の遺伝子多型の存在の有無を検出することができる。
【0072】
この方法に従う遺伝子多型の検出は、まず、ヒト検体からゲノムDNAを抽出し、該遺伝子の遺伝子多型部位を含む領域のDNA断片をPCR法などにより増幅させて多量に且つ濃縮された遺伝子サンプルを得る。次いで、増幅DNA検体を特定の制限酵素を用いて消化し、DNAの切断様式(切断の有無、切断フラグメントの塩基長など)を常法に従って確認する。
【0073】
(6) インベーダー法
【0074】
本発明特定遺伝子のSNPsの検出は、インベーダー(Invader)法によっても実施することができる。インベーダー法の実施には、以下の文献が参照できる。
・Lyamichev, V., et al., Nat. Bioltechnol., 17 (3) 292-296 (1999)および
・国際特許公開WO9823774号(特表2001-526526号)。
【0075】
該方法は、ゲノムDNAのSNPsを分析するために予め標的DNAを増幅する必要がない方法であって、以下のごとくして実施される。
【0076】
目的とする特定遺伝子の、例えば(a), (b), (d)〜(p)に記載の各遺伝子の、SNPsが存在するかどうかを検出するために、先ずゲノムDNAを単離した後、15から50塩基長からなる5'フラップと検出したい核酸(本発明ではSNP)を5'フラップの3'端に配し、目的の遺伝子型の核酸以外は標的ゲノムDNAに相補するように合成された30から数百塩基のオリゴヌクレオチドからなる第一の標的プローブと、検出したい核酸に相補的な核酸を3'端に配する以外は、標的ゲノムDNAに相補するように合成された15から数十塩基長のオリゴヌクレオチドからなるインベーダー・オリゴヌクレオチド・プローブとを、例えば自動合成機により合成する。これらのプローブに、単離したゲノムDNAおよび第一のプローブの5'フラップを切断する酵素(フラップエンドヌクレアーゼ)を同時に加えて適当な反応液中で反応させる。
【0077】
もし検体中のゲノムDNAが所望の遺伝子多型(SNP)を有している場合は、遺伝子型の核酸を3'端に有する5'フラップを遊離する第一の反応が終了する。もし、検体中のゲノムDNAが遺伝子型の核酸配列を有していない場合は、前記酵素による切断は生じない。
【0078】
酵素で切断された第一のプローブから遊離した5'フラップは、標的として蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)プローブに相補的に結合し、5'フラップの3'端がFRETプローブ内に侵入(invasion)する。同様に、前記酵素による反応が起こり、クエンチングされていた蛍光色素が遊離する。
【0079】
次いで第二の反応に用いられる各FRETプローブは、検出される標的にもかかわらず、同一の配列を含んでいて、以下の本質的に2つのエレメントからなるように構築される。
(1)第一の反応から割裂した産物に相補する3'領域、および
(2)一本鎖プローブを模倣するために複式を形成し、そして標的が共にハイブリダイズして、それらがレポーター蛍光色素とクエンチャー蛍光色素を含んでいる自家相補的領域。
【0080】
前記レポーター蛍光色素は、該レポーター蛍光色素が前記クエンチャー蛍光色素と同一のプローブに結合されている場合には、蛍光共鳴エネルギー転移によりその蛍光強度が抑制され、前記クエンチャー蛍光色素と同一のプローブに結合されていない状態では、蛍光強度は抑制されない。従って、切断された第一のプローブからの遊離した5'フラップが、FRETプローブにハイブリダイズしたとき、それは第二の反応においてインベーダー・オリゴヌクレオチドとして作用し、特異的酵素によって認識された侵入複合物を産生する。かくして、FRETプローブの上記特異的酵素による切断が、二つの蛍光色素を分離し、検出可能な蛍光シグナルを産生する。該シグナルを標準蛍光マイクロタイタープレート読み取り機器で読み取ることによって、所望のSNPsの遺伝子多型を検出することができる。第一と第二の反応の組み合わせにより、シグナルを1から1×106倍まで増幅することができる。より具体的には、蛍光色素の異なる2種類のフレットプローブを用いることによって、SNPの遺伝子多型を検出(タイピング)することができる。
【0081】
(7) 定量的リアルタイムPCR検出法
【0082】
本発明にかかる特定遺伝子の遺伝子多型の検出は、定量的リアルタイムPCR検出法(TaqMan法)によっても、簡便に実施することができる。
【0083】
該方法は、以下のごとくして実施できる。即ち、まず、目的とするSNPの遺伝子多型を検出するために、その多型(核酸部位)を含む適当な領域のDNA断片を検出するための、15〜39塩基からなるフォワード側プライマーおよびリバース側プライマーを作製する。但し、フォワード側プライマーおよびリバース側プライマーには目的とする核酸部位(一塩基の遺伝子型)は含まないように作製する。次いで、15〜50塩基からなる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであってレポーター蛍光色素とクエンチャー蛍光色素とが結合されたプローブを作成する。但し、該プローブの塩基配列としては、フォワード側プライマーがハイブリダイズする領域と該プローブがハイブリダイズする領域とが互いに重複しない組み合わせを選ぶものとする。該プローブは、目的とする一塩基の遺伝子型の有無を検出するための対立遺伝子特異的配列に相補的な配列を有するように作製する。該プローブを用いて、検体中の測定すべき特定遺伝子、例えば前記(a)〜(p) に記載の遺伝子の所望のDNA断片をPCRによって増幅させて、反応液からの蛍光をリアルタイムに測定する。かくして、SNPを検出することができる。より具体的には、蛍光色素の異なる2種類のプローブを用いることによって、SNPの検出(タイピング)を行うことができる。
【0084】
上記インベーダーアッセイやTaqMan法に用いられるレポーター蛍光色素としては、FAM(6-カルボキシ-フルオレッセイン)のようなフルオレッセイン系蛍光色素が好ましく、クエンチャー蛍光色素としては、TAMRA(6-カルボキシ-テトラメチル-ローダミン)のようなローダミン系蛍光色素が好ましい。これらの蛍光色素は公知であり、市販のリアルタイム検出PCR用キットに含まれているのでそれらを用いることができる。レポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素の結合位置は特に限定されないが、通常、プローブのオリゴヌクレオチド部の一端(好ましくは5'末端)にレポーター蛍光色素が、他端にクエンチャー蛍光色素が結合される。なお、オリゴヌクレオチドに蛍光色素を結合する方法は公知であり、例えばNoble et al., (1984), Nuc. Acids Res., 12: 3387-3403およびIyer et al., (1990), J. Am. Chem. Soc., 112: 1253-1254に記載されている。
【0085】
TaqMan法自体は公知であり、そのための装置およびキットも市販されているので、本発明ではこのような市販の装置およびキットを用いることもできる。これらの装置およびキットを利用して本発明方法を実施する場合は、例えば特許第2,825,976号に記載の方法に従うか、PEバイオシステムズ社製のABI PRISM 7700配列決定システム・ユーザーマニュアルに従えばよい。
【0086】
(8) 質量分析計を用いた遺伝子多型検出法(mass array)
【0087】
Mass array法は、多型によって生じる質量の差を検出する方法である。具体的には、検出したい多型を含む領域をPCRにて増幅した後、SNP位置直前に伸長用プライマーをハイブリダイズさせ、ddNTP/dNTP混合物を含む反応液、例えばddATP、dCTP、dGTPおよびdTTPを含む反応液を用いて伸長反応を行うことで、SNPに応じて3'末端の異なる断片が生成される。この生成産物を精製し、MALDI-TOF質量分析計などによって分析することで、質量数と遺伝子型との対応を解析することができる(Pusch, W., Wurmbach, JH., Thiele, H., Kostrzewa, M., MALDI-TOF mass spectrometry-based SNP genotyping, Pharmacogenomics, 3(4): 537-48 (2002))。該方法は、例えばSequenom Mass ARRAYハイスループットSNP解析システムを用いて簡便に実施することができる。
【0088】
(9) その他の検出法
【0089】
本発明の方法に用いられる遺伝子のSNPsの検出は、従来よりDNAについてその塩基配列の決定法として、また遺伝子多型または遺伝子変異の検出法として知られている各種の方法によっても実施することができる。それらの例を以下に挙げる。
【0090】
(9-1) 配列特異的オリゴヌクレオチドを用いるPCR-SSO法;
各遺伝子多型(SNPs)に対するプローブを担体に固相化し、これに検体(遺伝子増幅産物)をハイブリダイズさせ、ミスマッチの有無によるハイブリダゼーションの効率の差を判定するもの。
【0091】
(9-2) 点変異を検出するPCR-SSP法;
点変異に対応する塩基を3'末端に設定した遺伝子増幅用配列特異的プライマーを用いて、プライマーの3'末端が相補的であるか否かによってPCRによる増幅効率に著しい差が生じることを利用したもの。
【0092】
(9-3) PCR-DGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)法;
遺伝子多型DNA断片と野生型DNA断片とを混合してハイブリッド結合させた後、尿素、ホルムアミドなどの変性剤の濃度が徐々に高くなっているポリアクリルアミドゲル中で電気泳動すると、ミスマッチのないホモ2本鎖に比べて、より低い濃度の変性剤の位置で1本鎖に解離する。この1本鎖DNAは、2本鎖DNAに比べて泳動速度が速いため、移動度の差を比較することで1塩基の遺伝子多型の違いを検出することができる。
【0093】
(9-4) PCR-DGGE/GCクランプ法(Shefield, V. C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 86, 232-236 (1989));
上記PCR-DGGE法に加えて、GC含量の高い領域を遺伝子多型核酸の検出対象であるDNA断片に繋げることにより複数の塩基置換、欠失、付加および挿入がある場合の検出の欠点を補った方法である。該方法は特に遺伝子多型検出の対象DNA断片にGCクランプを付加する工程を必要とする。
【0094】
(9-5) RNase保護アッセイ法(Finkelstein, J., et al., Genomics, 7, 167-172 (1990))。
【0095】
(9-6) in situ RT-PCR (Nucl. Acids Res., 21, 3159-3166 (1993))。
【0096】
(9-7) in situ ハイブリダイゼーション。
【0097】
(9-8) サザンブロッティング (Sambrook, J., et al., Molecular Cloning a Laboratory Manual., Cold Spring Harbor Laboratory Press: NY. (1989))。
【0098】
(9-9)ドットハイブリダイゼーション法(Southern, E. M., J. Mol. Biol., 98: 503-517 (1975)など参照)。
【0099】
(9-10) 蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH: Takahashi, E., et al., Hum. Genet., 86, 1416 (1990))。
【0100】
(9-11) 競合的ゲノミック・ハイブリダイゼーション (Comparative Genomic Hybridization: CGH: Kallioneimi, A., et al., Science, 258, 818-821 (1992))、(Spectral karyotyping: SKY: Rowley, J. D., et al., Blood, 93, 2038-2042 (1999))。
【0101】
(9-12) 酵母人工染色体(YAC)ベクターのクローンをプローブとする方法(Lengauer, C., et al., Cancer Res., 52, 2590-2596 (1992))。
【0102】
かくして、本発明の方法に用いるヒト遺伝子の多型(SNPs)およびハロタイプを検出することができる。
【0103】
本発明に従う腎細胞癌患者に対するIFN投与による治療の有効性を予測する方法は、上記に従って検出されたヒト遺伝子多型を指標(マーカー)として、該遺伝子多型の存在が確認される検体の場合には、該検体はIFN投与による治療の有効性が高いと予測する(iv工程)。
【0104】
このようにIFN投与による治療効果の予測性が高いと判定された患者は、腎細胞癌に対する薬剤を選択する際に、IFN治療の効果の予測性が高いために、薬剤選択の優先順位が上がり、患者にとって不必要な薬剤の投与の機会が減り、結果として薬剤投与による副作用の出現を減らすことに繋がるといえる。
【0105】
特に、本発明の方法に従って検出されるヒト遺伝子の遺伝子多型あるいは遺伝子型は、腎細胞癌に対するIFN治療の効果(腫瘍縮小効果)との関連性が高く、従ってその検出結果に基づいて、個々の腎細胞癌患者に対するオーダーメイドの療法、即ち、個々の患者にとって最も有効性の高い薬剤を適切に選択した療法の実施が可能となる。
【0106】
オリゴヌクレオチド
【0107】
本発明は、本発明判定(検出)方法に用いる遺伝子多型検出用プローブまたはプライマーとしてのオリゴヌクレオチドをも提供する。該オリゴヌクレオチドは、特定のヒト遺伝子多型或いは遺伝子型部分を含む配列を特異的に増幅できるものである限り特に制限はない。該オリゴヌクレオチドは各特定の遺伝子多型または遺伝子型の配列情報に基いて常法に従って適宜合成、構築することができる。
【0108】
その合成は、より具体的には通常のホスホルアミダイト法、リン酸トリエステル法などの化学合成法によることもでき、また市販されている自動オリゴヌクレオチド合成装置、例えば(Pharmacia LKB Gene Assembler Plus: ファルマシア社製)などを使用して実施することもできる。二本鎖断片は、化学合成した一本鎖生成物とその相補鎖を合成し、両者を適当な条件下でアニーリングさせるか、または適当なプライマー配列とDNAポリメラーゼとを用いて、上記一本鎖生成物に相補鎖を付加させることによって、得ることができる。
【0109】
前記プローブまたはプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドの好適なものとしては、特定遺伝子の遺伝子多型配列を含むように設定されたDNA断片に対応する部分オリゴヌクレオチドであって、少なくとも10個、通常10〜35個程度の連続した塩基を有するものを例示することができる。プライマー対としては、遺伝子のDNA配列におけるSNPを挟むように設計、合成されたそれぞれ2つのオリゴヌクレオチド配列を挙げることができる。プローブとして用いられるオリゴヌクレオチドは、遺伝子多型配列を含むDNA断片それ自体を用いることができる。
【0110】
前記プローブとして用いられるオリゴヌクレオチドの好適なものとしては、下記(a)〜(p)に示されるオリゴヌクレオチドを挙げることができる。好ましいプローブは、これらのオリゴヌクレオチドのうちで、特定遺伝子多型部分を含む少なくとも15個の連続する配列を有するものである。
【0111】
(a) リファレンスSNP ID番号:rs1905341であるSTAT3遺伝子の4243095番目における遺伝子型がC/TまたはT/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(b) リファレンスSNP ID番号:rs4796793であるSTAT3遺伝子の4264926番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(c) リファレンスSNP ID番号:rs2293152であるSTAT3遺伝子の4204027番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(d) リファレンスSNP ID番号:rs2293153であるSTST3遺伝子の4050541番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(e) リファレンスSNP ID番号:rs2280148であるSSI3遺伝子の10246541番目における遺伝子型がA/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(f) リファレンスSNP ID番号:rs1805011であるIL-4R遺伝子の18686025番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(g) リファレンスSNP ID番号:rs2797507であるIRF2遺伝子の17736877番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(h) リファレンスSNP ID番号:rs796988であるIRF2遺伝子の17744613番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(i) リファレンスSNP ID番号:rs2292982であるICSBP遺伝子の390141番目における遺伝子型がA/AまたはA/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(j) リファレンスSNP ID番号:rs1213264であるPTGS1遺伝子の26793813番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(k) リファレンスSNP ID番号:rs1213265であるPTGS1遺伝子の26794182番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(l) リファレンスSNP ID番号:rs1213266であるPTGS1遺伝子の26794619番目における遺伝子型がA/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(m) リファレンスSNP ID番号:rs2745557であるPTGS2遺伝子の15697329番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(n) リファレンスSNP ID番号:rs2071466であるTAP2遺伝子の23602539番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(o) リファレンスSNP ID番号:rs2234898であるIL-4R遺伝子の18686068番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、および
(p) リファレンスSNP ID番号:rs1801275であるIL-4R遺伝子の18686553番目における遺伝子型がT/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド。
【0112】
前記プライマー対として用いられる本発明オリゴヌクレオチドの具体例としては、上記各遺伝子に対してそれぞれ、後記実施例に示される配列番号1-16で示されるフォワード・プライマーおよび配列番号17-32で示されるリバース・プライマーとしてのオリゴヌクレオチドを挙げることができる。
【0113】
検出用キット
【0114】
本発明検出(判定)方法は、検体中の特定ヒト遺伝子の遺伝子多型または遺伝子型の検出のための試薬キットを利用することによって、より簡便に実施することができる。本発明はかかる検出用キットをも提供する。
【0115】
本発明キットの一つの例は、上記特定ヒト遺伝子のいずれかの遺伝子多型または遺伝子型のDNA断片である塩基配列もしくはその相補的塩基配列の一部または全てにハイブリダイズするDNA断片を少なくとも必須構成成分として含むか、あるいは上記特定遺伝子多型部位または遺伝子型部位の1塩基前または数塩基前の配列からなる塩基配列にハイブリダイズするDNA断片を少なくとも必須構成成分として含む。本発明キットの他の一例は、上記特定遺伝子多型部位または遺伝子型部位を含む数個の核酸配列を認識する制限酵素、例えばMspIを必須構成成分として含む。
【0116】
本発明キットにおける他の成分としては、標識剤、PCR法に必須な試薬(例えば、TaqDNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸、DNA増幅用プライマーなど)を例示することができる。標識剤としては、放射性同位元素、発光物質、蛍光物質などの化学修飾物質などが挙げられ、DNA断片自身が予め該標識剤でコンジュゲートされていてもよい。更に当該キットには、測定の実施の便益のために適当な反応希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄剤、反応停止液などが含まれていてもよい。
【0117】
本発明者の見出した特定遺伝子の遺伝子多型或いは遺伝子型は、腎細胞癌に対するIFN治療の効果(腫瘍縮小効果)との関連性が高いために、本発明方法によれば、個々の腎細胞癌患者に対するオーダーメイド医療において、患者にとってより有効性の高い薬剤を適切に選択することが可能となる。本発明は、かかる特定のヒト遺伝子多型或いは遺伝子型を、腎細胞癌に対するIFN治療の効果と関連するマーカーとして検出する方法、即ち、腎細胞癌患者から得られた検体中の特定の遺伝子多型または遺伝子型を、腎細胞癌に対するIFNの治療反応性識別マーカーとして検出する方法、並びに該方法に用いる診断剤および診断用キットを提供するものである。
実施例
【0118】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げるが本発明はこれに限定されない。
【実施例1】
【0119】
(1) 解析対象検体
【0120】
本試験におけるの解析対象は、共同研究施設において被験者同意を得た後、連結不可能匿名化された血液検体より抽出したゲノムDNA検体および共同研究施設において既にゲノムDNA抽出が行われた検体である。被験者同意のない検体、匿名化されていない検体は対象外とした。また、被験者情報(患者背景等)は、試験依頼者および共同研究者である大塚製薬株式会社Theranostics Research Center(以下「TRC」という)には一切通知されていない。
【0121】
本試験での登録検体数は86検体で、このうち血液検体由来のものは76検体、既にDNAとして調製されていた検体は10検体であった。これらは、大塚製薬社内倫理委員会より承認を受けた応用開発グループの研究計画「腎細胞癌におけるインターフェロンアルファ(IFN-α)治療効果予測因子探索を目的としたインターフェロン関連遺伝子群のSNPs解析(倫理委員会受付番号:010724-1)」に基づき収集した検体である。
【0122】
この計画は「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成13年3月文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)」に準拠して行われた。
【0123】
収集された血液検体は共同研究施設において連結不可能匿名化処理後、冷凍状態でTRCへ搬送された。TRCにおいて、それら血液検体からゲノムDNAを抽出し解析用試料とした。
【0124】
また、既にゲノムDNAを抽出済の検体においても、共同研究施設において連結不可能匿名化処理後、冷蔵状態にてTRCに送付されたものを使用した。
【0125】
本研究で使用する全てのゲノムDNA試料は、実験期間中、TRC実験施設内の専用の保存庫(冷蔵、4℃)にて厳重に管理・保管した。
【0126】
(2) 解析対象遺伝子
【0127】
本試験において解析対象とした遺伝子は、以下の遺伝子群である。
【0128】
(2a) IFN-αレセプターおよびシグナル伝達系
【0129】
IFNAR1(α鎖)(interferon alpha receptor 1)、IFNAR2(βL鎖)(interferon beta receptor 2)、JAK1(Janus kinase 1, a protein of tyrosine kinase)、Tyk2、STAT1(signal transducer and activator of transcription 1, 91kDa)、STAT2(signal transducer and activator of transcription 2, 113kDa)、STAT3(signal transducer and activator of transcription 3, acute-phase response factor)、p48(ISGF3γ, interferon-stimulated transcription factor 3, gamma, 48kDa)、SOCS-1(suppressor of cytokine signaling 1/SSI-1)(別名:JAB、CIS-1、SSI-1)、SOCS-2(suippressor of cytokine signaling 2/STATI2)(別名:CIS-2、SSI-2、STATI2)、SOCS-3(suppressor of cytokine signaling 3/SSI-3)(別名:CIS-3, SSI-3)、Shp-2(別名:PTPN11:protein tyrosine phosphatase, non-receptor type 11(Noonan syndrome 1))。
【0130】
(2b) Th1/Th2系
STAT4(signal transducer and activator of transcription 4)、IL-2(interleukin 2)、IFN-γ(interferon gamma)、TNF-α(tumor necrosis factor alpha)、TNF-β(tumor necrosis factor beta)(LTA; lymphotoxin alpha, TNF superfamily, member 1)、IL-4(interleukin 4)、IL-4 Receptor-α、IL-4 Receptor-β、IL-5(interleukin 5, colony-stimulating factor, eosinophil)、IL-6(interleukin 6, interferon bate 2)、IL-10(interleukin 10)、IL-13(interleukine 13)。
【0131】
(2c) その他のIFN-αによって発現に変化が認められる報告のある遺伝子
PKR(PRKR, protein kinase, interferon-inducible double stranded RNA dependent)、IRF1(IFN-regulatory factor 1)、IRF2(IFN-regulatory factor 2)、ICSBP(IFN consensus sequence binding protein)、Cox-1(PTGS1; prostaglandin-endoperoxide synthase 1, prostaglandin G/H synthase and cyclooxygenase)、Cox-2(PTGS2; prostaglandin-endoperoxide synthase 2, prostaglandin G/H synthase and cyclooxygenase)、MxA(Mx-1; myovirus (influenza virus) resistance 1, interferon-inducible protein p78 (mouse))
【0132】
(2d) その他の遺伝子
TAP1(transporter 1, ATP-binding cassette, sub-family B (MDR/TAP))、TAP-2(transporter 2, ATP-binding cassette, sub-family B (MDR/TAP))、LMP7(PSMβ8; proteasome (prosome, macropain) subunit, beta type, 8 (large multifunctional protease 7)、CTLA-4(cytptoxic T-lymphocyte-associated protein 4)、GSTT1(glutathione S-transferase theta 1)、VHL、HIF-1α、HLF、VEGF(vascular endothelial growth factor)。
【0133】
(3) 解析対象SNPs
本試験において解析対象としたSNPsは、上記遺伝子群のうちで、試験開始時点でNCBIのSNPsのデータベースdbSNPsに登録されているものを、大塚製薬株式会社Bioinformatics室(以下「BI室」という)にて解析対象遺伝子の登録配列と比較した結果、その周辺部にマップされたものである。BI室での検索結果においてSNPsがマップされなかった遺伝子は解析対象から除いた。最終的に解析対象SNPs数は1167SNPsであった。
【0134】
(4) 実験手順
【0135】
(4a) ゲノムDNAの抽出
【0136】
ゲノムDNA抽出には全血からのゲノム抽出用キット(PUREGENETM、Gentra)を用いた。抽出手順はPUREGENETMに添付の標準プロトコールに準じた。抽出したゲノムDNAはキット添付の溶解液に溶解後、吸光度を測定して全抽出量を算出した。
【0137】
(4b) PCR(インベーダアッセイ用)
【0138】
解析対象のSNPsを含むゲノム領域をPCRにより増幅した。DNAポリメラーゼはEx TaqTM(TaKaRa)、反応バッファは添付の10×Ex Taq Bufferを用いた。
【0139】
反応は、以下の条件で行った。
【0140】
テンプレート量(ゲノムDNA):1〜10ng、
プライマー濃度:0.1〜0.2μM、
総反応液量:15μL、
PCRサイクル:(1)95℃×2分、(2)95℃×30秒、(3)50〜64℃×30秒、(4)72℃×1分30秒、(5) (2)〜(4)×50サイクル、(6) 15℃×永続。
【0141】
PCR産物は、以下のインベーダーアッセイの反応用鋳型として使用した。
【0142】
上記反応に用いたフォワードプライマーの核酸配列は、配列番号:1〜配列番号:16に示され、またリバースプライマーの核酸配列は、配列番号:17〜配列番号:32に示される。これらの各プライマーと特定ヒト遺伝子ゲノムおよびその有するSNPsとの関連を下記表2に示す。
【0143】
【表2】

【0144】
(5) インベーダーアッセイ
【0145】
SNPs領域を増幅したPCR産物を蒸留水にて10〜1000倍に希釈し、この希釈PCR産物を変性して一本鎖DNAとするために95℃で5分間加熱後、氷上で急冷した。これを反応用鋳型として用いてインベーダーアッセイ用試薬と混合して反応液を調製した。反応液組成は、添付のプロトコールの384-WELL REACTION FORMATに従った。
【0146】
反応液を63℃で30〜60分間インキュベートして酵素を反応させた。反応後、蛍光マルチプレートリーダー・サファイア(TECAN)で励起光485±6nm、蛍光530±6nm(FAM dye)および励起光560±6nm、蛍光620±6nm(Redmond Red dye)の2つの波長(赤色と緑色の2色)の蛍光強度を測定した。
【0147】
以上の希釈を除くタイピング作業は、Biomek FX/SAMI(Beckman Coulter)を基本としたSNPs自動タイピングシステムで行った。
【0148】
得られた蛍光強度の測定結果を、BARCODE LAB SYSTEM(BLABSTM、三井情報開発株式会社)version1.0(自動判定補正あり)に取り込ませたのち、自動判定によって各SNPsの遺伝子型を決定した。判定結果は、研究員が再度、スキャッタープロットから確認した。
【0149】
(6) PCR-RFLP
【0150】
インベーダーアッセイによってタイピングできないSNPsは、PCR-RFLP法にてタイピングを行った。本法は各SNPs領域を認識する制限酵素によって消化されるか否かでSNPsのタイピングを行うものである。SNPs領域に適当な制限酵素の認識部位がないような場合はSNPs近傍に増幅用プライマーを設定し、そのプライマーの配列を人為的に変化させることで制限酵素部位を作成した。
【0151】
本法においては、制限酵素NspIをSNPs STAT3-17の検出のために用いた。
【0152】
PCRはボーゲルシュタインバッファーを用いて行った。それ以外の条件は以下のとおりである。
【0153】
テンプレート量(ゲノムDNA):5 ng、
プライマー濃度:0.1〜0.2μM、
総反応液量:15μL、
PCRサイクル:(i)95℃×2分、(ii)95℃×30秒、(iii)50〜60℃×30秒、(iv)72℃×1分、(v) (ii)〜(iv)ステップ×35〜45サイクル、(vi) 15℃×永続。
【0154】
PCR産物は、制限酵素処理後、4%アガロースを用いて電気泳動して消化産物フラグメント長を解析し、タイピングを行った。
【0155】
(7) 遺伝子型判定法
【0156】
遺伝子型は、前記(5)に示すインベーダーアッセイ反応の結果検出される2色の蛍光強度により判定した。かくして、インベーダーアッセイにより33遺伝子に存在している463個のSNPsについて、対象患者における遺伝子型を決定した。また、13の遺伝子に存在している26個のSNPsについて前記(6)に示すPCR-RFLP法を用いて、同様に遺伝子型を決定した。
【0157】
(8) 結果1(CR+PR群とPD群の識別に有効なSNPsの探索研究)
【0158】
集積された86症例の中には、効果判定のない症例が3例、転移巣のない症例が8例、効果判定が不変であった症例(NC群、No Change群)24例(うち1例は転移巣のない症例)が含まれており、これら34症例を除いて、解析の対象とする症例数を52例とした。これらはCR群(Complete response群)、PR群(Partial response群)およびPD群(progressive Disease群)である。尚、これらの治療効果の判定は腎癌取扱規約1999年4月、第3版に従うものである。この規約については、例えば日本癌学会固形がん化学療法効果判定基準(L. Lpn. Soc. Cancer Ther., 21(5): 929-924, June, 1986)を参照されたい。
【0159】
これら症例の識別因子となり得るか否かを検討すべき全463個のSNPsについて、単一SNPsでの識別能力を統計的判別解析法で調べ、ピアソンのカイ2乗検定において有意水準p>0.1となったSNPsを識別能力が低いと推定して解析対象因子から除外した。
【0160】
かくして、463個の中から445個のSNPsを除外して、18個のSNPsを候補として残した。更に、多変量解析の特性上、相互関連の強い変数が複数ある場合には、その中の一つの変数の識別能力だけを調べればよいので、ロジスティック回帰分析を行う前に、相互関連の強いSNPsの組み合わせを、CramerのV統計量を用いて探索(文献名: L.D.Fisher and G.V.Belle, Biostatistics, A Methodology for the Health Sciences, 278pages, 1993, John Wiley & Sons,Inc,New York)して、解析するSNPs数を18個から16個に絞った。
【0161】
前記解析によって最終的に残されたSNPsについて、腫瘍縮小に関与する背景因子の影響を調整した上での判別能力を、Stepwiseロジスティック回帰モデル(文献名: L.D.Fisher and G.V.Belle, Biostatistics A Methodology for the Health Sciences, 638-647pages, 1993, John Wiley & Sons,Inc,New York)を適用することにより推定した。
【0162】
調整に用いた背景因子は、腫瘍縮小に関与する可能性のある性別、年齢、組織学的所見(cell-type、異型度、pT、pM、初発/再発、肺転移、肝転移、脳転移、骨転移、リンパ節転移)である。尚、有意水準は0.05とした。
【0163】
その結果を表3および表4に示す。
【0164】
【表3】



【0165】
【表4】

【0166】
次に、ロジスティック回帰分析によって、判断に有効とされた背景因子は、肺転移の有無だけであったので、この肺転移有無をモデルに強制入力して、13個のSNPsにStepwiseロジスティック回帰分析を適用した。その結果を表5に示す。
【0167】
【表5】

【0168】
表5中、「Effect」は試験したSNPsを示す。DFは、自由度(Degree of Freedom)を示す。
【0169】
Wald Chi-Squareは、ワルドのカイ2乗統計量を、Score Chi-Squareは、スコアーのカイ2乗(χ2)統計量をそれぞれ示す。Pr>ChiSqは、ワルドのカイ2乗検定又はスコアーのカイ2乗検定のP値を示す。
【0170】
表5に示されるように、Step 0は、肺転移有無の影響を調整した上での、SNPsの判別能力を示す。P値が0.05より小さいSNPsは肺転移有無の影響を調整した上でなお判別に有効なことを示す。
【0171】
その結果、判別に有効とされたSNPsは、STAT3-2、IL-4R-29、IL-4R-22、IRF2-82、TAP2-5が見出された。この6つのうち最大の判別能力を示したIL-4R-29がロジスティック回帰分析用のモデルに組み込まれた(肺転移の補正)。
【0172】
また、表5のStep 1におけるP値は、肺転移有無とIL-4R-29とを組み合わせたときの残りの各SNPsの判別能力を示す。ここでP値が0.05より小さいSNPsは、IL-4R-29と独立な判別情報を持つことが示唆される。それらを列挙するとSTAT3-2、IRF2-82およびTAP2-5である。中でもIL-4R-29とTAP2-5との組み合わせが、肺転移有無の影響を調整した上で、最も判別能力が高いことが示唆された。このStepでIL-4R-29と組み合わせることにより新たに有意となったSNPsはなかった。
【0173】
表5の結果をまとめると、原発巣および転移巣の腫瘍縮小を期待できる腎細胞癌患者の識別マーカーであることを示唆するSNPsは、最有力のIL-4R-29の他に、Step 0で有意となったSTAT3-2、IRF2-82、IL-4R-22およびTAP2-5であった。
【0174】
このステージ分類がモデルに組み込まれることにより、患者背景因子の不均一さのためにもたらされる統計学的な検出力低下を防ぎ、且つ2群間の患者背景因子の偏りの補正を行い、有意差があることを立証できた。
【実施例2】
【0175】
CR+PR群とNC+PD群の識別に有効なSNPsの探索研究
【0176】
実施例1に記載の患者サンプルを用いて、解析対象にNC群をPD群に加えた症例にて、腎細胞癌に対するIFNの治療効果と関連する特定の遺伝子多型解析を行った。
【0177】
このNC群における腫瘍の大きさが変化しない理由としては、IFNが効いていないか、効いてはいるが腫瘍が大きくなりすぎて見かけ上変化しないことが考えられる。どちらの場合を採用するかによってIFNの有効性の判断に影響があるが、この例では腫瘍の大きさが変化しないことから無効群と判断し、この判断から、上記のようにPD群にNC群を加えて、遺伝子多型の解析を実施した。
【0178】
集積された86症例の中には、効果判定のない症例が3例、転移巣のない症例が8例が含まれており、これら11症例を除くと、解析の対象となる症例数は75例となった。
【0179】
実施例1と同様の方法で、463個のSNPsを単一SNPsでの識別能力を統計的判別解析法で調べ、能力が低いと推定されるSNPsを解析対象因子から除外した。その結果、このスクリーニングにより463個の中から441個のSNPsが除外され、23個のSNPsが候補として残った。
【0180】
さらにロジスティック回帰分析を行う前に相互関連の強いSNPsの組み合わせをCramerのV統計量を用いて探索し、解析するSNPs数を23個からさらに17個に絞った。
【0181】
最終的に残された17個のSNPsについて、腫瘍縮小に関与する背景因子の影響を調整した上での判別能力を、Stepwiseロジスティック回帰モデルを適用することにより推定した。
【0182】
背景因子は、上記実施例1において腫瘍縮小に関与する可能性のあることが判明した肺転移のみとした。尚、有意水準は0.05とした。
【0183】
有意水準p≦0.1の23個のSNPsについての解析結果を、表6及び表7に、単一SNPsでの識別能力として示す。
【0184】
【表6】



【0185】
【表7】

【0186】
23個のSNPs相互間の関連の度合いを示すCramer Vの値を求めた結果から、STAT3-2、STAT3-21、STAT3-25、STAT3-52の識別能力は近似的に同程度と見なせることが結果となった。また同様に、STAT3-18、STAT3-31の識別能力は同じであり、IL-4R-14、IL-4R-18、IL-4R-26の識別能力も同じと見なせることが結果となった。従って、各グループからの代表としてSTAT3-2、STAT3-18およびIL-4R-14を多変量解析に用いることにした。この結果、最終的に解析対象となったSNPsは17個であった。
【0187】
肺転移有無が判明している75症例からSNPs解析データの一部が欠測している2症例を除く、残りの73症例を最終的な解析対象とした。
【0188】
肺転移有無をモデルに強制入力して、17個のSNPsにStepwiseロジスティック回帰分析を適用した結果を、前記表5と同様にして下記表8に示す。
【0189】
【表8】

【0190】
表8のStep 0は肺転移有無の影響を調整したうえでのSNPsの判別能力を示す。P値が0.05より小さいSNPsは肺転移有無の影響を調整した上でなお判別に有効なことを示す。判別に有効とされたSNPsを列挙すると、STAT3-2、STAT3-17、SSI3-1、IL-4R-22、PTGS1-4、PTGS1-5である。この6つのうち最大の判別能力を示したSTAT3-2がモデルに組み込まれた。
【0191】
Step 1におけるP値は、肺転移有無とSTAT3-2とを組み合わせたときの残りの各SNPsの判別能力を示す。ここでP値が0.05より小さいSNPsはSTAT3-2と独立な判別情報を持つことが示唆される。それらを列挙するとSSI3-1、IL-4R-22、ICSBP-38、PTGS1-3、PTGS1-4、PTGS1-5、PTGS2-12、TAP2-5である。中でもSTAT3-2とPTGS1-4との組み合わせが、肺転移有無の影響を調整した上で、最も判別能力が高いことが示唆された。STAT3-2と組み合わせて初めて有効性が示唆されたSNPsは、ICSBP-38、PTGS1-3、PTGS2-12、TAP2-5であった。
【0192】
Step 2は、肺転移有無とSTAT3-2、PTGS1-4とを組み合わせたときの残りの各SNPsの判別能力を示す。STAT3-2およびPTGS1-4と独立な情報を持ち、これらと組み合わせて有効と示唆される変数は、IL-4R-22、IRF2-67、ICSBP-38であった。IRF2-67はこの段階において初めて判別において有効なSNPであることが示唆された。
【0193】
表8の結果をまとめると、原発巣および転移巣の腫瘍縮小を期待できる腎細胞癌患者の識別マーカーであることを示唆するSNPsは、最有力のSTAT3-2の他に、Step 0で有意となったSTAT3-17、SSI3-1、IL-4R-22、PTGS1-4、PTGS1-5 と、Step 1で新たに有意となったICSBP-38、PTGS1-3、PTGS2-12、TAP2-5、さらにStep 2で新たに有意となったIRF2-67である。
【0194】
実施例1および2の解析結果から、腎細胞癌に対するIFNの治療効果(腫瘍縮小効果)と関連のある遺伝子多型として、CR+PR群とPD群の比較においては、STAT3-2、IL-4R-29、IL-4R-14、IL-4R-22、IRF2-82、TAP2-5が、CR+PR群とNC+PD群の比較においては、TAP2-5、STAT3-17、SSI3-1、IL-4R-22、PTGS1-4、PTGS1-5 ICSBP-38、PTGS1-3、PTGS2-12、TAP2-5およびIRF2-67が見出された。
【0195】
CR+PR群とPD群の比較においては、STAT3-2が最大の判別能力を示し、CR+PR群とNC+PD群の比較においては、IL-4R-29が最大の判別能力を示した。
【0196】
なお、別実験においてSTAT3-3についてSTAT3-18と同等に連鎖していることが確認できた。
【0197】
かくして、上記結果から腎細胞癌のIFN治療効果(腫瘍縮小効果)との関連ある遺伝子多型として、腎細胞癌患者からの検体中のゲノム配列若しくはその相補鎖を調整し、そしてゲノム配列もしくはその相補鎖のDNA配列を決定して、STAT3-2、STAT3-3、STAT3-17、STAT3-18、SSI3-1、IL-4R-22 、IRF2-67、IRF2-82、ICSBP-38、PTGS1-3、PTGS1-4、PTGS1-5、PTGS2-12、TAP2-5、IL-4R-14、IL-4R-29、およびIRF2-67から群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の遺伝子多型または遺伝子型の存在を指標として、腎細胞癌患者に対するインターフェロン療法の有効性を予測する方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明は、腎細胞癌のIFN治療効果(腫瘍縮小効果)との関連ある遺伝子多型の存在を検出することによって、該多型の存在を指標として腎細胞癌に対するIFN治療反応性識別マーカーとして有用に利用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0199】
配列番号:1-32は、プライマー配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)〜(iv)の工程を含む、腎細胞癌患者に対するインターフェロン治療による腫瘍縮小を判定する方法;
(i) 腎細胞癌患者に由来する遺伝子サンプルを得る工程、
(ii) 上記(i)で得られる遺伝子サンプルについて、STAT3遺伝子、SSI3遺伝子、IL-4R遺伝子、IRF2遺伝子、ICSBP遺伝子、PTGS1遺伝子、PTGS2遺伝子およびTAP2遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子のゲノムDNAもしくはその相補鎖を調製する工程、
(iii) 当該ゲノムDNAもしくはその相補鎖のDNA配列を解析して、遺伝子多型を決定する工程、
(iv) 上記(iii)で決定された少なくとも1つの遺伝子多型をマーカーとして、腎細胞癌患者に対するインターフェロン治療による腫瘍縮小を判定する工程。
【請求項2】
遺伝子多型が、STAT3遺伝子、IL-4R遺伝子、IRF2遺伝子およびTAP2遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子における多型である請求項1に記載の、腎細胞癌患者に対するインターフェロン治療による腫瘍縮小を判定する方法。
【請求項3】
遺伝子多型が、下記(a)〜(p)からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の腎細胞癌患者に対するインターフェロン治療による腫瘍縮小を判定する方法:
(a) リファレンスSNP ID番号:rs1905341であるSTAT3遺伝子の4243095番目における遺伝子型がC/TまたはT/Tである遺伝子多型(STAT3-2)、
(b) リファレンスSNP ID番号:rs4796793であるSTAT3遺伝子の4264926番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型(STAT3-3)、
(c) リファレンスSNP ID番号:rs2293152であるSTAT3遺伝子の4204027番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型(STAT3-17)、
(d) リファレンスSNP ID番号:rs2293153であるSTAT3(KCNH4)遺伝子の4050541番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型(STAT3-18)、
(e) リファレンスSNP ID番号:rs2280148であるSSI3遺伝子の10246541番目における遺伝子型がA/Cである遺伝子多型(SSI3-1)、
(f) リファレンスSNP ID番号:rs1805011であるIL-4R(MUC245)遺伝子の18686025番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型(IL-4R-22)、
(g) リファレンスSNP ID番号:rs2797507であるIRF2遺伝子の17736877番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型(IRF2-67)、
(h) リファレンスSNP ID番号:rs796988であるIRF2遺伝子の17744613番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型(IRF2-82)、
(i) リファレンスSNP ID番号:rs2292982であるICSBP遺伝子の390141番目における遺伝子型がA/AまたはA/Cである遺伝子多型(ICSBP-38)、
(j) リファレンスSNP ID番号:rs1213264であるPTGS1遺伝子の26793813番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型(PTGS1-3)、
(k) リファレンスSNP ID番号:rs1213265であるPTGS1遺伝子の26794182番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型(PTGS1-4)、
(l) リファレンスSNP ID番号:rs1213266であるPTGS1遺伝子の26794619番目における遺伝子型がA/Gである遺伝子多型(PTGS1-5)、
(m) リファレンスSNP ID番号:rs2745557であるPTGS2遺伝子の15697329番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型(PTGS2-12)、
(n) リファレンスSNP ID番号:rs2071466であるTAP2遺伝子の23602539番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型(TAP2-5)、
(o) リファレンスSNP ID番号:rs2234898であるIL-4R遺伝子の18686068番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型(IL-4R-14)、および
(p) リファレンスSNP ID番号:rs1801275であるIL-4R遺伝子の18686553番目における遺伝子型がT/Tである遺伝子多型(IL-4R-29)。
【請求項4】
遺伝子多型が、請求項3の(a)、(f)、(h)、(n)、(o)および(p)のいずれかである請求項3に記載の腎細胞癌患者に対するインターフェロン治療による腫瘍縮小を判定する方法。
【請求項5】
インターフェロンが天然型インターフェロンアルファ、遺伝子組換え型インターフェロンアルファおよび遺伝子組換え型インターフェロンガンマからなる群から選ばれるいずれかである請求項1に記載の腎細胞癌患者に対するインターフェロン治療による腫瘍縮小を判定する方法。
【請求項6】
遺伝子多型の決定が、ヌクレオチド直接塩基配列決定法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)-ドットブロット分析、一塩基プライマー伸長法、PCR-単鎖高次構造多型(SSCP)分析、PCR-制限酵素断片長多型(RFLP)分析、インベーダー法、定量的リアルタイムPCR検出法および質量分析計を用いた遺伝子多型検出法(mass array)からなる群から選ばれる少なくとも1つの方法により行われる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
遺伝子多型の決定が、インベーダー法またはヌクレオチド直接配列決定法により行われる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
遺伝子多型の決定が、PCR-RFLP分析により行われる請求項6に記載の方法。
【請求項9】
PCR-RFLP分析が、制限酵素MspIを用いてヒトSTAT3遺伝子のrs2293152のイントロンの4204027番目のGからCへの変異を検出するものである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
遺伝子多型の決定が、下記(a)-(p)からなる群から選ばれる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを用いて行われる請求項6に記載の方法;
(a) リファレンスSNP ID番号:rs1905341であるSTAT3遺伝子の4243095番目における遺伝子型がC/TまたはT/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(b) リファレンスSNP ID番号:rs4796793であるSTAT3遺伝子の4264926番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(c) リファレンスSNP ID番号:rs2293152であるSTAT3遺伝子の4204027番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(d) リファレンスSNP ID番号:rs2293153であるSTAT3(KCNH4)遺伝子の4050541番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(e) リファレンスSNP ID番号:rs2280148であるSSI3遺伝子の10246541番目における遺伝子型がA/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(f) リファレンスSNP ID番号:rs1805011であるIL-4R遺伝子の18686025番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(g) リファレンスSNP ID番号:rs2797507であるIRF2遺伝子の17736877番目における遺伝子型がA/Aである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(h) リファレンスSNP ID番号:rs796988であるIRF2遺伝子の17744613番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(i) リファレンスSNP ID番号:rs2292982であるICSBP遺伝子の390141番目における遺伝子型がA/AまたはA/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(j) リファレンスSNP ID番号:rs1213264であるPTGS1遺伝子の26793813番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(k) リファレンスSNP ID番号:rs1213265であるPTGS1遺伝子の26794182番目における遺伝子型がC/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(l) リファレンスSNP ID番号:rs1213266であるPTGS1遺伝子の26794619番目における遺伝子型がA/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(m) リファレンスSNP ID番号:rs2745557であるPTGS2遺伝子の15697329番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(n) リファレンスSNP ID番号:rs2071466であるTAP2遺伝子の23602539番目における遺伝子型がG/Gである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、
(o) リファレンスSNP ID番号:rs2234898であるIL-4R遺伝子の18686068番目における遺伝子型がC/Cである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド、および
(p) リファレンスSNP ID番号:rs1801275であるIL-4R遺伝子の18686553番目における遺伝子型がT/Tである遺伝子多型部位を含む少なくとも10の連続する配列のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
遺伝子多型検出用プライマー対が、下記(a)-(p)に記載のものである請求項6に記載の方法;
(a) 配列番号:1および17で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(b) 配列番号:2および18で示される各配列のオリゴヌクレオチドド対、
(c) 配列番号:3および19で示される各配列のオリゴヌクレオチドド対、
(d) 配列番号:4および20で示される各配列のオリゴヌクレオチドド対、
(e) 配列番号:5および21で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(f) 配列番号:6および22で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(g) 配列番号:7および23で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(h) 配列番号:8および24で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(i) 配列番号:9および25で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(j) 配列番号:10および26で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(k) 配列番号:11および27で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(l) 配列番号:12および28で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(m) 配列番号:13および29で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(n) 配列番号:14および30で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、
(o) 配列番号:15および31で示される各配列のオリゴヌクレオチド対、および
(p) 配列番号:16および32で示される各配列のオリゴヌクレオチド対。

【公開番号】特開2011−217753(P2011−217753A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120642(P2011−120642)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2006−543126(P2006−543126)の分割
【原出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】