説明

腎臓の疾患、糖尿病性腎症及び脂質代謝異常の治療

本発明は、糖尿病性腎症のような腎症を含む腎臓疾患又は慢性腎臓病を予防又は治療するための方法、化合物及び組成物を開示する。本発明は、通常、1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩、例えば、1,3-プロパンジスルホン酸ナトリウム塩を対象に投与することを含む。また本発明は、腎臓疾患の合併症を予防又は治療するための、方法、化合物及び組成物に関する。更に本発明は、脂質代謝異常を予防及び/又は治療するため、更に具体的には、有害な血清脂質レベル、特に糖尿病患者におけるコレステロール及びトリグリセリドのレベルを低下させるための、方法、化合物及び組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(この出願は、2005年12月22日に提出された米国仮特許出願No.60/753,072の優先権を主張し、その仮出願の内容をここに組み込み入れるものである。)
本発明は、糖尿病性腎症等の腎症を含む腎臓疾患若しくは慢性腎臓病を予防又は治療するための、方法、化合物及び組成物に関する。また本発明は、腎臓疾患の合併症を予防又は治療する、方法、化合物、及び組成物に関する。更に本発明は、脂質代謝異常、腎臓疾患によく見られる合併症、慢性腎臓病、及び腎症を予防及び/又は治療する、方法、化合物及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓疾患は、腎臓の正常な生理機能及び働きにおける変質を伴う。腎臓疾患は広範囲にわたる急性及び慢性の症状や事象の結果であり得る。前記事象には、物理的、化学的又は生物学的な損傷、傷害又は外傷、例えば高血圧、糖尿病、鬱血性心不全、狼瘡、鎌状赤血球貧血、並びに、様々な炎症性及び自己免疫性の疾病、HIV関連腎症等の病気が含まれる。腎臓疾患は、腎機能の低下、高血圧、及び、腎不全、時には透析、ある特定の状況においては腎臓移植を必要とするような、クオリティー オブ ライフ(quality of life)の深刻な低下を引き起こす。
【0003】
また、キンメルスティール−ウイルソン症候群及び結節性糸球体腎炎として知られる糖尿病性腎症は、腎臓の糸球体にある毛細血管の血管障害によって引き起こされる進行性の腎臓病である。それは、長期にわたる真性糖尿病に基づく結節性糸球体硬化症を特徴としており、多くの西欧諸国において、透析の第1の原因である。この症候群は、慢性糖尿病の患者に見られる。この疾病は進行性であり、初期障害から2,3年で死に至り、女性でより頻繁に発症する。糖尿病性腎症は、合衆国における慢性腎不全及び末期の腎臓病の最も一般的な原因である。1型糖尿病及び2型糖尿病の両方を有する患者は危険である。血糖値のコントロールが不十分であると危険性が高くなる。しかしながら、一旦腎症にかかると、血圧のコントロールが不十分である患者において、急速な進行が見られる。
【0004】
糖尿病性腎症は、臨床的に十分に定義されており、蛋白尿、高血圧、浮腫及び腎機能不全によって特徴付けられている。糖尿病性腎症に対する治療法の選択肢は限られている。現在の治療は、以下のように、第1に病気の合併症を改善することを指向している:1)血圧のコントロール(ACE−インヒビター阻害剤又はアンジオテンシン受容体遮断薬(ARBs); 2)血糖値のコントロール; 及び3)リポ蛋白食、エクササイズ、又は他のライフスタイルの変更。しかしながら、現在の治療は、進行性腎機能低下に対して限定的な効果しかなく、患者はいまだに腎置換療法、即ち透析又は腎移植のどちらかに進まざるを得ないので、よりよい薬剤及び治療が強く必要とされている。
【0005】
高脂質血症は、糖尿病性腎症の主要な合併症であり、糖尿病における腎臓疾患を進行させる決定因子である。高脂質血症は糖尿病性腎症の発病因子であり、高脂質血症に対する治療的介入を伴う臨床研究は、少なくとも糖尿病性腎症の進行の遅延におけるこのアプローチの重要性を示唆している(非特許文献1)。従って、血清脂質レベルを調節する、特に、有害な血清脂質レベル、就中糖尿病患者のコレステロール及びトリグリセリドのレベルを低下させるための方法及び化合物の開発が望まれていた。
【非特許文献1】ロサリオ、プラベーカー(2006)、糖尿病現状報告(Current Diabetes Reports)、6:455-462
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、必要としている対象に腎臓疾患の予防及び/又は治療をするための、化合物、方法及び医薬組成物を提供する。
【0007】
更に本発明は、重篤な腎臓疾患の合併症を予防及び/又は治療するための、方法、化合物及び組成物に関する。
【0008】
更に本発明は、脂質代謝異常を予防及び/又は治療するための、方法、化合物及び組成物、特に、腎臓疾患の合併症、血管疾患、循環器疾患、肥満等に伴う脂質の血清濃度を低下させるための、方法、化合物及び組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つは、1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩である効果的な量の化学式(I)で表される化合物を、アミロイドーシスではない対象に投与することからなる、それを必要としているアミロイドーシスではない対象の糖尿病性腎症を予防又は治療する方法に関する:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり;mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【0010】
本発明の他のものは、効果的な量の化学式(I)の化合物を、アミロイドーシスではない対象に投与することからなる、それを必要としているアミロイドーシスではない対象における腎臓疾患の合併症を予防又は治療する方法に関する:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4; mが1のときtは0であり、mが2のときtは1である。
【0011】
本発明の他のものは、効果的な量の化学式(I)の化合物を対象に投与することからなる、それを必要としている前記対象の脂質代謝異常を予防又は治療する方法に関する;
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4; mが1のときtは0であり、mが2のときtは1である。
【0012】
本発明の他のものは、効果的な量の化学式(I)の化合物を対象に投与することからなる、それを必要としている前記対象の血清脂質レベルを低下させる方法に関する;
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり; mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【0013】
本発明の他のものは、効果的な量の化学式(I)の化合物を、アミロイドーシスではない対象に投与することからなる、それを必要としている前記アミロイドーシスではない対象のクレアチニン・クリアランスを増加させる方法に関する;
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり; mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【0014】
本発明の他のものは、効果的な量の化学式(I)の化合物を、アミロイドーシスではない対象に投与することからなる、それを必要としている前記アミロイドーシスではない対象の血清尿酸レベルを低下させる方法に関する:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり; mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【0015】
本発明の他のものは、効果的な量の化学式(I)の化合物を、アミロイドーシスではない対象に投与することからなる、それを必要としている前記アミロイドーシスではない対象の腎機能を改善する方法に関する;
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり; mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【0016】
本発明の他のものは、アミロイドーシスではない対象に1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩を投与することからなる、それを必要としているアミロイドーシスではない対象における糖尿病性腎症を予防又は治療する方法に関する。
【0017】
本発明のある実施態様は、治療上効果的な量の下記化学式の化合物を用いることからなる、方法及び薬剤組成物に関する:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムからなる基から各々独立に選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり;
mが1のときtは0、mが2のときtは1であり、これによって腎症が治療又は予防される。好ましい実施態様では、化学式(I)の化合物は、1,3-プロパンジスルホン酸、又は、例えば二ナトリウム塩等の薬剤的に許容されるその塩である。
【0018】
本発明のある実施態様は、1,2−エタンジスルホン酸、1,2−エタンジオール ビス(ハイドロジェン サルフェート)、1,3−プロパンジオール ビス(ハイドロジェン サルフェート)、2‐スルホメチル−1,4−ブタンジスルホン酸、及び薬剤的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される、治療上効果的な量の化合物を用いることからなる、方法及び薬剤組成物に関する。
【0019】
また本発明は、少なくとも部分的に、対象における糖尿病性腎症を治療する方法に関する。該方法は、例えば、1,3-プロパンジスルホン酸又は二ナトリウム塩等の薬剤的に許容されるその塩である化学式(I)の化合物を、対象に対して治療上効果的な量投与することを含む。
【0020】
また本発明は、このような治療を必要とする患者に、化学式(I) で表される化合物を投与することによって、血液の脂質関連の病気を予防及び/又は治療するための、化合物、方法及び組成物に関する。
【0021】
また本発明は、それを必要としている対象の腎機能を改善する、化合物、方法及び組成物に関する。
【0022】
本発明の他の態様は、少なくとも部分的に、例えば糖尿病性腎症等の腎症を有する対象における、末期の腎不全(ESRF)/透析への進行を予防し又は遅延させる方法に関する。この方法は、例えば1,3-プロパンジスルホン酸、又は二ナトリウム塩等の薬剤的に許容されるその塩等、化学式(I)で表される化合物を対象に治療上効果的な量投与することを含み、これによってESRF/透析への進行を予防し、遅延させる。
【0023】
本発明の他の態様は、少なくとも部分的に、例えば糖尿病性腎症等の腎症を有する対象における、血清クレアチニンが2倍になることを防止し、又はそれに至るまでの時間を遅延させる方法に関する。この方法は、1,3-プロパンジスルホン酸又は二ナトリウム塩等の薬剤的に許容されるその塩等の、化学式(I)
で表される化合物を対象に対して治療上効果的な量投与することを含み、これによって血清クレアチニンが2倍になることを防止し、又はそれに至るまでの時間を遅延させる。
【0024】
更に本発明の他の態様は、少なくとも部分的に、例えば糖尿病性腎症等の腎症を有する対象における、クレアチニン・クリアランスが、少なくとも50%減少することを防止し、又はそれに至る時間を遅延させる方法に関する。この方法は、1,3-プロパンジスルホン酸又は二ナトリウム塩等の薬剤的に許容されるその塩等の、化学式(I)の化合物を対象に治療上効果的な量投与することを含み、これによってクレアチニン・クリアランスが少なくとも50%減少することを防止し、又はそれに至る時間を遅延させる。
【0025】
更に本発明の他の態様は、例えば、糖尿病性腎症等の腎症を有する対象におけるクレアチニン・クリアランス勾配によって測定される腎臓疾患の進行速度を遅くする方法を含む。この方法は、化学式(I)の化合物、例えば、1,3-プロパンジスルホン酸又は二ナトリウム塩等の薬剤的に許容されるその塩等を、対象に治療上効果的な量投与することを含み、これによって腎臓疾患の進行速度を遅くする。
【0026】
本発明の他の態様は、少なくとも部分的に、糖尿病性腎症等の腎症を有する対象における蛋白尿及び/又はアルブミン尿を安定させ、若しくは減少させる方法に関する。この方法は、化学式(I)の化合物、例えば、1,3-プロパンジスルホン酸又は二ナトリウム塩等の薬剤的に許容されるその塩等を、対象に治療上効果的な量投与することを含み、これによって、前記対象の蛋白尿及び/又はアルブミン尿を安定させ、若しくは減少させる。
【0027】
更に本発明の他の態様は、糖尿病性腎症等の腎症を有する対象における腎機能を安定させ、腎臓疾患の進行を遅延させる方法を含む。この方法は、化学式(I)の化合物、例えば、1,3-プロパンジスルホン酸又は二ナトリウム塩等の薬剤的に許容されるその塩等を、前記対象に治療上効果的な量投与することを含み、これによって腎機能を安定させ、腎臓疾患の進行を遅延させる。
【0028】
また本発明は、少なくとも部分的に、治療上効果的な量の化学式(I)の化合物、例えば、1,3-プロパンジスルホン酸又は二ナトリウム塩等の薬剤的に許容されるその塩等からなる、糖尿病性腎症等の腎症を治療するための薬剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明のPDSを用いた治療は、腎臓の完全性及び重量を維持するためにも有用であることが示唆される。心室重量の予備的評価から、処置ラットが若干低心室重量を有すると思われ、PDSを用いた治療が心臓の完全性を維持し、一般的に、心室肥大、過形成、及び/又は心筋症を減少させるために有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のある態様は、必要としている対象における腎臓疾患を予防及び/又は治療するための、方法、化合物及び組成物に関する。「腎臓疾患」、「腎疾患」又は「腎臓病」という用語は、腎臓の正常な生理機能及び働きにおける何らかの変化を意味する。これは、広範囲にわたる急性及び慢性の病気及び事象に起因する。これらは、物理的、化学的又は生理学的損傷、傷害又は外傷、例えば高血圧、糖尿病、鬱血性心不全、狼瘡、鎌状赤血球貧血、並びに、様々な炎症性及び自己免疫性の疾病、HIV関連腎症等の病気を含む。この用語は、腎臓移植、腎症;慢性腎臓病(CKD);糸球体腎炎;多発性嚢胞腎等の遺伝性の病気;腎肥大症(片方又は両方の腎臓の著しい肥大);ネフローゼ症候群;末期の腎疾患(ESRD);急性及び慢性腎不全;間質性疾患;腎炎;硬化症、病気や損傷による炎症等を含む諸原因から引き起こされる組織及び/又は血管の硬結又は硬化;腎線維症及び腎瘢痕;腎関連増殖性障害;及び他の原発性又は続発性腎性疾患等の疾病及び疾患を含むが、これらに限定されるものではない。腎不全後の透析、及び、例えば、腹腔及び血管アクセス線維症などのカテーテル法に関連する線維症もまた含まれる。
【0031】
ある実施態様においては、腎臓疾患又は腎臓病は、「腎症」又は「腎症類」として一般的に定義されている。「腎症」又は「腎症類」という用語は、腎臓線維症、及び/又は、糸球体疾患(例えば、糸球体硬化症、糸球体腎炎等の)、及び/又は、慢性腎機能不全をもたらし、末期の腎疾患及び/又は腎不全を引き起こすことがある、腎臓におけるすべての臨床病理変化を包含する。本発明のある態様は、高血圧性腎症、糖尿病性腎症、及び、鎮痛薬腎症、免疫介在糸球体症(例えば、IgA腎症又はBerger病、ループス腎炎)、虚血性腎症、HIV関連腎症、膜性腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、造影剤誘発性腎症、中毒性腎症、鎮痛剤誘発性腎臓毒性、シスプラチン腎症、移植腎症、及び他の形態の、糸球体の病変又は損傷;糸球体毛細血管の損傷(尿細管線維症)等の、他のタイプの、腎症の予防及び/又は治療のための、組成物及びそれらの使用に関する。ある実施態様においては、「腎症」又は「腎症類」という用語は、具体的には、対象の尿中に蛋白が存在する(即ち、蛋白尿)、及び/又は、腎機能不全がある疾患、疾病に関する。
【0032】
「線維症」という用語は、線維組織の異常な過程、又は、線維性変性(fibroid degeneration)若しくは繊維性変性(fibrous
degeneration)に関する。線維症は様々な損傷又は病気によって生じることがあり、しばしば、様々な臓器の移植に伴う慢性的な移植拒否反応によって生じることがある。線維症は、細胞外基質成分(extracellular
matrix)が異常生成、異常蓄積、又は異常沈着することを含み、コラーゲン、フィブロネクチン等が過剰生成したり沈着増加したりすることを含む。ここで用いられているように、「腎臓線維症」又は「腎線維症」又は「腎臓の線維症」という用語は、腎機能の低下又は障害を引き起こす細胞外基質成分、特にコラーゲンの過剰生成又は異常な沈着に関連する病気や疾患に関する。
【0033】
本発明の好ましい実施態様は、必要としている対象における糖尿病性腎症を予防又は治療するための、方法、化合物及び組成物に関する。糖尿病性腎症は、蛋白尿、高血圧、浮腫及び腎機能不全を特徴とする、臨床的且つ詳細に明らかにされた病変である。糖尿病性腎症の特徴的な諸態様は、糸球体硬化症、血管構造の変化及び尿細管間質疾患を含む。糖尿病性腎症の最初の臨床的証拠は、大抵、ミクロアルブミン尿又はマクロアルブミン尿等の、尿中におけるアルブミン尿の存在である。
【0034】
糖尿病性腎症は、以下のような典型的な特徴を持つ;1)糸球体硬化症、2)主に小細動脈における血管構造の変化、3)尿細管間質疾患。糖尿病性腎症の最も特徴的な態様は、メサンギウムの拡大及び基底膜の肥厚によって検出可能な糸球体の損傷であり、これは、しばしば糸球体全体に広がった瘢痕化のように見える。糖尿病性腎症の、最初の臨床的な証拠は、アルブミン尿又は蛋白尿の存在である。尿中のアルブミン量が300mg/日以下である場合はミクロアルブミン尿、尿中の総蛋白質量が1g/日より多い場合は蛋白尿ということである。本発明における、HIV関連腎症の症状又は合併症の、予防、軽減又は除去は以下の通りである:発症前のHIV関連腎症の予防(例えば、CD4-細胞の減少のような、HIVの、初期の臨床症状の兆候から始める場合)、明らかとなったHIVANの完全除去(例えば、腎機能パラメーターが正常に戻ることにより判断される)、又は、HIVANの現状の重症度を軽減することによる、顕在化した病気の望ましくない症状の軽減。望ましくない症状の軽減は、例えば、治療前の機能と比べて腎機能が改善したかどうかにより判定される。このような改善は、腎不全(透析又は移植を含む)発病の遅延、又は、例えば、蛋白尿増加速度の遅延若しくは血清クレアチニンの増加速度の遅延若しくはクレアチニン・クリアランスやGFRのパラメーターの減少により測定されるような腎機能の低下率の減少、或いは、入院率又は死亡率を含むHIVANによって引き起こされる、少なくとも一つの症状又は合併症の減少から明らかとなる。
【0035】
更に本発明は、腎疾患の合併症の予防及び/又は治療のための、方法、化合物及び組成物に関する。「腎疾患の合併症」の用語は、腎疾患、健康状態、事故、又は、重症度に応じて悪くなる可能性のある腎疾患の経過中に起こる、良くない反応と関連する二次疾患のことをいう。「腎疾患の合併症」は、通常、全身に広がり他の臓器系に影響を及ぼす症状又は病理変化に悩まされる対象において、腎疾患の症状が重くなることと関係がある。ここで用いられているように、「腎疾患の合併症」の用語は、血管疾患(例えば、高血圧、大血管合併症、微小血管合併症等)、循環器疾患(例えば、動脈硬化症、アテローム動脈硬化症、冠動脈疾患、鬱血性心不全、脳卒中、狭心症、虚血性心疾患、心筋梗塞等)、糖尿病性脂質代謝異常、高脂質血症(例えば、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高リポ蛋白血症)、メタボリック症候群、肥満、貧血、浮腫、膵炎、弱い骨、貧弱な栄養状態及び神経障害を包含するが、これに限定されるものではない。
【0036】
更に本発明は、種々の脂質代謝異常の予防及び/又は治療のための、方法、化合物及び組成物に関する。「種々の脂質代謝異常」又は「脂質代謝異常」の用語は、何れかの循環血中の脂質及び/又はリポ蛋白質の、望ましくない高レベル若しくは低レベル、及び/又は、望ましくない割合に直接的又は間接的に関連する、すべての臨床病理学的な状態若しくは疾患を包含し、トリグリセリド、コレステロール、ApoB、LpA、高密度リポ蛋白質(HDL)、高密度リポ蛋白質コレステロール(HDLC)、超低密度リポ蛋白質コレステロール(VLDLC)、低密度リポ蛋白質コレステロール(LDLC)、中密度リポ蛋白質コレステロール、低密度リポ蛋白質
(LDL)、及び遊離脂肪酸のレベル及び/又は割合を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0037】
脂質代謝異常という用語は、リポ蛋白質代謝の疾患を包含し、リポ蛋白質の過剰産生又は欠乏、高脂質血症(例えば、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高リポ蛋白血症等)、糖尿病性脂質代謝異常、及び、血中脂質レベルが発病因子であると考えられている他の疾病並びに疾患も含み、これらの他の疾病並びに疾患には、血管疾患(例えば、高血圧、大血管合併症、微小血管合併症など)、循環器疾患(例えば、動脈硬化症、アテローム動脈硬化症、冠動脈疾患、鬱血性心不全、脳卒中、狭心症、虚血性心疾患、心筋梗塞など)、メタボリック症候群及び肥満が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明の他の態様は、腎症(例えば、糖尿病性腎症)を予防又は治療する方法に関する。一般的にこの方法は、ここで記述されているように、本発明の化合物を、対象に投与することを含む。例えば、一実施態様における化合物は、1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩である。
【0039】
一実施態様における腎症は糖尿病性腎症である。一実施態様においては、本発明の化合物の投与は腎機能の改善をもたらす。一実施態様においては、本発明の化合物の投与はアルブミンの尿中排泄量の低下をもたらす。一実施態様においては、本発明の化合物の投与は、クレアチニン・クリアランス及び/又は尿酸クリアランスの増加をもたらす。
【0040】
一実施態様においては、1,3-プロパンジスルホン酸及び/又は1,3-プロパンジスルホン酸ナトリウム塩が対象に投与される。
【0041】
「対象」の用語は、腎臓疾患又は腎症が起こる可能性のある生体、又は、腎臓疾患若しくは腎症に対して感受性が高い生体を含む。「対象」の用語は、鶏、アヒル、北京ダック、ガチョウ及びそれらの遺伝子組換種のみならず、動物(例えば、哺乳類、例えば、猫、犬、馬、豚、牛、山羊、羊、げっ歯類、例えば、マウス又はラット、ウサギ、リス、クマ、霊長類(例えば、チンパンジー、サル、ゴリラ及びヒト))を含む。好ましい対象は哺乳動物であり、更に好ましい対象はヒトである。
【0042】
ある態様における対象は、糸球体濾過の問題(例えば、糖尿病性腎症)及び/又は腎不全を有する、若しくは、有することに感受性が高い、ヒト患者である。ある態様における対象は、脂質代謝異常を有する、又は、有することに感受性が高いヒト患者であり、脂質代謝異常は、糖尿病性脂質代謝異常、高脂血症、血管及び循環器疾患、メタボリック症候群X及び肥満を含むが、これらに限定されるものではない。
【0043】
ある態様における対象は、例えば、糖尿病、HIV、進行した進行性腎疾患、線維性腎疾患及び/又はここに記載された何れかの疾患/障害のような障害を患っている。ある態様における対象はアミロイドーシスではない。ある態様における対象は、アミロイドA(AA)アミロイドーシスではない。他の態様における対象は、アミロイドーシスである。他の態様における対象は、アミロイドA(AA)アミロイドーシスである。
【0044】
ある態様における腎疾患はアミロイドに関係せず、対象はアミロイドーシス(例えば、AAアミロイドーシス又はIAPP関連アミロイドーシス)であってもなくてもよい。ある態様における腎症は、アミロイドに関係せず、対象はアミロイドーシス(例えば、AAアミロイドーシス又はIAPP関連アミロイドーシス)であってもなくてもよい。ある態様における糖尿病性腎症は、アミロイドに関連せず、対象はアミロイドーシス(例えば、AAアミロイドーシス又はIAPP関連アミロイドーシス)であってもなくてもよい。ある態様における腎臓疾患合併症は、アミロイドに関連せず、対象はアミロイドーシス(例えば、AAアミロイドーシス又はIAPP関連アミロイドーシス)であってもなくてもよい。特定の態様においては、本発明のすべての方法における対象は、アミロイドーシス(例えば、AAアミロイドーシス又はIAPP関連アミロイドーシス)ではない。特定の態様においては、本発明のすべての方法における対象は、AAアミロイドーシスではない。特定の態様においては、本発明のすべての方法における対象は、IAPP関連アミロイドーシスではない。ある態様における対象は、蛋白尿(例えば、ミクロアルブミン尿又はマクロアルブミン尿)を示してもよい。ある態様における対象は、尿、尿酸及びクレアチニンのような毒素を、血液から除去することができなくなる腎臓を有してもよい。ある態様においては、本発明の、方法、化合物又は組成物は、少なくとも0.5、1、2、5、10、15又は20ml/分/1.73m2/年まで、患者のクレアチニン・クリアランスの低下を遅延させるのに効果的である。ある態様においては、本発明の、方法、化合物又は組成物は、少なくとも1、2、5、10、15又は20mg/dLまで、患者の尿酸クリアランスを安定化させるのに効果的である。
【0045】
ある態様における対象は、例えば糖尿病性腎症のような腎症の危険性があるか、又は、腎症と診断される。ヒトにおける正常な糸球体濾過量(GFR)は、通常、約100から約140ml/分である。ある態様における対象は、進行した腎症(即ち、GFRが75ml/分以下)を有するヒト患者である。ある態様における対象は、ESRD(即ちGFRが10ml/分未満)を有するヒト患者である。ある態様においては、本発明の、方法、化合物又は組成物は、少なくとも1、5、10、15、20又は25ml/分以上まで、患者のGFR値を増加させるのに効果的である。
【0046】
ある態様における対象は、腎疾患の危険性があるか、又は、腎疾患と診断される。様々な態様における対象は、腎臓病ステージI、腎臓病ステージII、腎臓病ステージIII、腎臓病ステージIV又は腎臓病ステージVを有するか、それらのステージに進行しているヒト患者である。ある態様においては、本発明の、方法、化合物又は組成物は、患者の腎臓病の安定化又は改善に効果的である(例えば、ステージVからステージIV、ステージIVからステージIII、ステージIIIからステージII、又は、ステージIIからステージI)。
【0047】
ある態様における対象は、蛋白尿の危険性があるか、又は、蛋白尿と診断される。ある態様における対象は、尿中に約300mg/日未満の蛋白を生産するヒト患者である。ある態様における対象は、尿中に約1g/日以上の蛋白を生産するヒト患者である。ある態様における対象は、ミクロアルブミン尿を有するヒト患者である。ある態様における対象は、尿中に200μg/分を超える量のアルブミンが存在するヒト患者である。ある態様においては、本発明の、方法、化合物又は組成物は、少なくとも10、25、50、75、100、150又は200μg/分或いはそれ以上まで、患者のアルブミン尿を低下させるのに効果的である。
【0048】
ある態様における対象は、高血圧若しくは高血圧症の危険性があるか、又は、高血圧若しくは高血圧症と診断される。多くの場合、腎症、特に糖尿病性腎症のような腎臓疾患と高血圧との間には、強い相関関係がある。腎機能の低い個体は、高頻度で高血圧を示す。ある態様における対象は、140mmHg以上の収縮期血圧、及び/又は、90mmHg以上の拡張期血圧を有する高血圧のヒト患者である。ある態様における対象は、120-139mmHg若しくはそれ以上の収縮期血圧、及び/又は、80-89mmHg若しくはそれ以上の拡張期血圧を有する高血圧のヒト患者である。ある態様においては、本発明の方法、化合物又は組成物は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10mmHg或いはそれ以上まで、患者の収縮期及び/又は拡張期血圧を低下させるのに効果的である。
【0049】
ある態様における対象は、高脂血症のヒト患者である。ある態様においては、血中の脂質レベルが過度に高く、正常レベルに戻すために、本発明の組成物を患者に投与する。脂質の正常レベルは、当業者に公知の医学論文で報告されている。例えば、LDL、HDL、遊離したトリグリセリド及び脂質代謝に関連するその他のパラメーターの推奨される血液レベルは、米国心臓協会及び国立心肺血液研究所の全米コレステロール教育プログラムのウェブサイトで見ることができる(各々、http://www.americanheart.org/及びhttp://www.nhlbi.nih.gov/health/public/heart/を参照)。ある実施態様における対象は、100mg/dLより高い血漿LDLコレステロールレベル、及び/又は、40mg/dL以下の血漿HLDコレステロールレベルを有する、高コレステロール血症のヒト患者である。ある態様における対象は、150-199mg/dLの高境界値血漿トリグリセリドレベル、200-499mg/dLの高血漿トリグリセリドレベル、又は、500mg/dL以上の超高血漿トリグリセリドレベルを有する高グリセリド血症(hypertriglycemic)のヒト患者である。これらのレベルは、絶食状態下における測定値である。トリグリセリドの上昇は、多くの場合、腎臓疾患及び腎症、特に糖尿病性腎症との関連性が見られる。ある態様における、本発明の、方法、化合物及び組成物は、少なくとも5、10、15、20、30、40、50、75、100、125、150、175及び200mg/dL或いはそれ以上まで、患者のLDLコレステロールレベル及び/又は血漿トリグリセリドレベルを低下させるのに効果的である。ある態様においては、本発明の、方法、化合物又は組成物は、少なくとも1、2、5、10、15、20、25又は30mg/dL或いはそれ以上まで、患者のHDLコレステロールレベル及び/又は血漿トリグリセリドレベルを増加させるのに有効である。本発明による高コレステロール血漿の継続的な治療の一例では、ヒト血清コレステロールレベルを5.0mmol/l未満にすることが目的とされる。
【0050】
ある実施態様における対象は、太りすぎ又は肥満である。ある態様における対象は、ボディー・マス・インデックス(BMI)が約25-30(グレード1)、又は、BMIが30-40(グレード2)、又は、BMIが40以上(グレード3)の肥満なヒト患者である。ある態様においては、本発明の、方法、化合物又は組成物は、1、2、5、10、15、20、25、30、35及び40或いはそれ以上の値の、患者のボディー・マス・インデックスを下げるのに効果的である。ある態様においては、本発明の、方法、化合物及び組成物は、患者のBMIグレードを改善するのに効果的である(グレード3からグレード2、グレード2からグレード1)。
【0051】
ある態様における対象は、メタボリック症候群(又は症候群X)の危険性があるか、又は、そうであると診断される。ある態様における対象は、3つ以上のこれらの要素があるヒト患者である:高血清トリグリセリド(150mg/dLより多い)、低HDL(男性は40mg/dl以下及び女性は50mg/dl以下)、ウエスト周囲径増加(男性は120cmより大きい及び女性は88cmより大きい)、高血圧、及び、高絶食時血漿グルコース100mg/dl。ある態様においては、本発明の、方法、化合物又は組成物は、症候群Xの上記要素のいずれか一つを減らすのに効果的である。
【0052】
ある態様における対象は、糖尿病の危険性があるか、又は、糖尿病と診断される。ある態様における対象は、2型糖尿病を有するヒト患者であり、ある態様における対象は、1型糖尿病を有するヒト患者である。
【0053】
ある態様においては、薬剤的に許容される賦形剤を更に用いてなる薬剤組成物として、本発明の化合物を対象に投与する。ある態様における方法は、薬剤組成物を経口的に投与することを含む。ある態様における方法は、薬剤組成物を静脈注射して投与することを含む。
【0054】
「効果的な量」又は「治療上効果的な量」の用語は、ここでは同義的に用いられ、例えば、腎症(例えば、糖尿病性腎症)及び/又は関連する合併症に対する患者の治療又は基礎疾患を有する患者の治療等、対象を治療するために有効な化合物の量をいう。治療上効果的な量は、対象が患っている個々の疾患、個々の対象の年齢、体重及びライフスタイルに基づき変化する。更に、治療上効果的な量は、対象の血液パラメーター(例えば、脂質状態)、病状の重症度、臓器の機能、腎機能、又は、基礎疾患若しくは合併症に依存する。
【0055】
例えば、治療上効果的な量の化学式(I)の化合物は、1日約100〜4000mgの間であってもよい。本発明の化合物200mg、400mg、800mg、1200mg又は1800mgを用いて、タブレット、ピル又はカプセルに、本発明の化合物を加工してもよい。ある態様における治療上効果的な量は、400mgBDI、800mgBDI、1200mg、1600mg、2400mg又は3600mgBDIであってもよい。但し、BDIは1日2回を意味する。ある態様における治療上効果的な量は、ヒト患者の血中濃度を、少なくとも1、5、10、25、50、75又は100μg/mlにすることを目的とする。「予防(阻止)する」又は「予防(阻止)」は、ここで使用されているように、少なくとも疾患又は障害にかかる(即ち、まだ疾患の経験がないか、疾患の症状が表れていないが、疾患に罹りやすいか又は曝される可能性のある患者において、発症していない疾患の臨床症状の少なくとも一つを引き起こす)リスク(又は感染しやすい)の見込みの低下を意味する。ある態様における予防的治療の対象候補は、腎疾患、腎疾患合併症、血管疾患若しくは循環器疾患、糖尿病、肥満等のリスクがある患者、そのように診断された患者、前記疾患が進行している患者である。前記患者を識別する生物学的及び生理学的パラメーターはここで提供され、また、これらは医者によく知られている。
【0056】
対象に関して、「治療」又は「治療すること」の用語は、疾患若しくは病気、疾患若しくは病気の症状、疾患若しくは病気の危険性(罹りやすさ)に対する安定化、治療、治癒、緩和、軽減、変化、改善、悪化抑制、寛解、好転又は作用のために、対象に対して本発明の化合物を塗布又は投与(又は、対象の細胞若しくは組織に対して本発明の化合物を塗布又は投与)することを含む。「治療すること」の用語は、損傷、病変若しくは病気の治療又は改善における何れかの成功の兆候をもいい、軽減;寛解;悪化率の低下;疾患の重症度の低下;安定化、症状の減少、又は、損傷、病変若しくは病気を対象が我慢できる状態にすること;変性速度の減速又は減少;変性の最終点をより少ない衰弱とすること;又は、対象の肉体的若しくは精神的な健康を改善すること等の、他覚的若しくは自覚的パラメーターを含む。例えば、腎機能の定量的評価及び腎機能障害のパラメーターは技術的によく知られている。腎機能/腎機能障害の測定のための分析例を以下に記載する。該分析例は、血清クレアチニン、クレアチニン・クリアランス率、24時間尿蛋白分泌物、糸球体濾過率、尿アルブミンクレアチニン比、アルブミン排泄率及び腎生検などの生物学的及び/又は生理学的パラメーターを用いて評価するような、少なくとも腎機能の一つの評価を含む。ある態様における「治療すること」の用語は、避けられない透析又は腎移植前における、対象の推定寿命及び/又は猶予を増大させることも含む。
【0057】
ある態様における本発明は、例えば、糖尿病性腎症などの腎症を治療するための、化学式(I)で表される1以上の化合物を含む薬剤組成物に関する:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3Xである;Xは、各々独立に選択されたカチオン性基である;nは1、2、3又は4である;
mが1のときtは0であり、mが2のときtは1である。「カチオン性基」の用語は、正電荷及び水素原子を有する基を含む。カチオンの例は、SO3-又はOSO3-の薬剤的に許容される塩を含む。カチオン性基の例は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム及びアルミニウム等のアルカリ又はアルカリ土類金属のイオンを含む。更なる態様においては、カチオン性基はH又はNaである。
【0058】
本発明の化合物の例は、以下の表に挙げられた化合物、及び、薬剤的に許容されるそれらの塩を含む。


【0059】
「化合物」という用語は、化学物質を含む。化合物は、固相、液相又は気相であってもよい。化合物の用語は、化学式(I)で表される化合物及び薬剤的に許容されるそれらの塩を含む。本発明の化合物は、それらの化学構造及び/又は化学名によって特定される。化合物が、化学構造及び化学名の両方に言及されており、その化学構造と化学名が矛盾する場合には、化学構造によって化合物が特定される。本発明の化合物はキラル中心を含んでもよいため、立体異性体として存在する場合がある。ここで定義されたように、化合物は天然物から精製されても、商業的供給源から購入されても、又は、公知の技術を用いて化学的に合成してもよい。
【0060】
一般的に、直ぐに入手できるか、及び/又は、通常準備できる出発物質、試薬及び従来の合成手順を用いて、従来の何れかの方法によって、本発明のすべての化合物を調製してもよい。より詳しくは、米国特許第5,643,562に記載された方法によって、1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるそれらの塩を調製してもよい。更に、本発明の化合物は、水和物及び無水物として存在してもよい。化学式(I)で表される化合物の無水物は、化学式(I)の化合物として含まれる。さらなる態様においては、化学式(I)の化合物は一水和物である。ある態様における化学式(I)の化合物は、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、又は、約0.1重量%以下の水を含む。他の態様における本発明の化合物は、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、又は、約6重量%以上の水を含む。
【0061】
更に本発明の化合物は、水和状態等の1以上の多形型を含んでもよい。例えば、一つの型であるフォームIは、本発明の化合物、例えば1,3-プロパンスルホン酸二ナトリウム塩を直接再結晶させることによって調整することができる。その化合物は、エタノール:水(V/V)16:1の溶液から沈殿する。再結晶された生成物は純度の高い白色粉末として回収され、次いで、4mmHgで16時間、65℃で乾燥される。得られた非水和型の含水量は0.2%で、見掛け密度0.64g/mlを有する。さらなる態様においては、化学式(I)の化合物は、含水量が約0.2%である。
【0062】
更に、他の形態であるフォームIIは、フォームIと同様の方法で、市販の1,3-プロパンジスルホン酸の二ナトリウム塩を直接再結晶化することにより調製することができる。その化合物は、エタノール:水(V/V)8:1の溶液から沈殿する。再結晶させた生成物は白色の固形物として回収され、次いで、4mmHgで16時間、20-25℃で乾燥される。得られた一水和型の含水量は約7%W/W、見掛け密度は0.46g/mlである。さらなる態様においては、化学式(I)の化合物は、含水量が約7%である。
【0063】
フォームIは、減圧下で長時間加熱することによって、フォームII多形型から調製することもできる。先ず、フォームII多形型(含水量6.8%)を4mmHgの真空で、16時間65℃で乾燥させる。この初期の乾燥は、先に水和した多形型の含水量を2.3%に減らす。更に24時間65℃で処理すると、前記一水和多形型の含水量が1%に減少する。更に77℃で48時間追加乾燥して初めて、その化合物は完全にフォームIに変換される。
【0064】
本発明の化合物は、1以上の酸性官能基を含むため、薬剤的に許容される塩基と薬剤的に許容される塩を形成することができる。化合物の「薬剤的に許容される塩」は、薬剤的に許容される化合物の塩を意味する。好ましい塩は、ここで定義された親化合物の遊離酸及び塩基の生物学的効果並びに特性を保持若しくは改善する塩であるか、本質的に、分子上の塩基性、酸性若しくは帯電した官能性の利点を有すると共に、生物学的に又はその他の観点から好ましくないものではない化合物の塩である。薬剤的に許容される塩の例は、例えば、ベルゲ他,「薬剤の塩」,J.Pharm.Sci.66,119(1977)に記載されている。このような塩は、親化合物に存在している酸性プロトンが、金属イオンによって置き換えられるか、或いは、有機塩基が配位する場合に形成される塩基付加塩を含む。前記金属イオンとしては、アルカリ金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム)、又は、アルミニウム、亜鉛、鉄などのような他の金属イオンが挙げられ、前記有機塩基としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリアルキルアミン(例えば、C1-C4アルキルを有する)、トロメタミン、N-メチルグルカミン、ピペラジン、クロロプロカイン、プロカイン、コリン、リジン等が挙げられる。
【0065】
薬剤的に許容される塩は、従来の化学的手法によって、酸性部分を含む親物質から合成してもよい。一般に、このような塩は、水又は有機溶媒若しくはこれら2つの混合溶媒中で、化学量論量の適切な塩基とこれらの薬剤の遊離酸を反応させることによって調製される。塩は、最後の単離又は薬剤の精製の間に調製しても、所望の対応する塩基と精製された本発明の化合物の遊離酸を別々に反応させ、形成された塩を単離することにより調製しても良い。
【0066】
記載された化合物の、全ての酸、塩、他のイオン型及び非イオン型が、本発明の化合物として含まれる。例えば、化合物が酸として示されている場合には、化合物の塩形態もまた含まれる。同様に、化合物が塩として示されている場合には、酸の形態もまた含まれる。
【0067】
更なる実施態様における化学式(I)の化合物は、1,3-プロパンジスルホン酸二ナトリウム塩又は1,3-プロパンジスルホン酸ではない。
さらなる態様における本発明の化合物は、それらの全体を本明細書に組み込んだ、WO94/22437、WO96/28187及びWO00/64420に記載された化合物を含む。
【0068】
さらなる態様における組成物又は処方は、実施例1に記載された通りでも、どの実施例に記載された通りでもない。他のさらなる態様においては、少なくとも一つの成分が、実施例1に記載された成分でも、どの実施例に記載された成分でもない。
【0069】
薬剤組成物
本発明の関連態様は、それを(i)腎臓疾患、特に腎症の予防又は治療,(ii)腎臓疾患合併症の予防又は治療,及び/又は,(iii)脂質代謝異常の予防及び/又は治療に使用するための薬剤組成物に関する。
【0070】
本発明の関連態様は、(i)腎臓疾患、特に腎症の予防又は治療,(ii)腎臓疾患合併症の予防又は治療,及び/又は,(iii)脂質代謝異常の予防及び/又は治療に使用するための薬物の製造における、ここに記載されたような化学式(I)の化合物、好ましくは1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩、及び、更に好ましくは1,3-プロパンジスルホン酸ナトリウム塩の使用に関する。ここで用いられるように、「薬剤組成物」及び「薬剤」の用語は同義的に用いられる。
【0071】
ある実施態様における本発明の組成物は、前述したように、効果的な量の化学式(I)で表される化合物、好ましくは、1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩、及び、更に好ましくは、1,3-プロパンジスルホン酸ナトリウム塩からなる。
【0072】
従って、他の態様における本発明は、化学式(I)に記載された、効果的な量の1以上の化合物、及び、薬剤的に許容される賦形剤からなる薬剤組成物、該薬剤組成物を使用する方法及び製造する方法に関する。
【0073】
ここで用いられているように、「薬剤組成物」という用語は、少なくとも一つの化合物、及び、対象に化合物を投与する際に用いられる、薬剤的に許容される少なくとも一つの賦形剤を対象とする。
【0074】
「薬剤的に許容される賦形剤」は、化合物を投与する際の希釈剤、アジュバンド、賦形剤、又はキャリヤーをいう。「薬剤的に許容される」という用語は、薬物、薬剤、非有効成分等を対象とし、この用語は、過度の毒性、不適合性、不安定性、過敏性、アレルギー反応その他のものなしに、適切なベネフィット/リスク比に見合って、ヒト及び下等動物の組織に接触して用いられるのに適する場合に記載される。好ましくは、動物、特にヒトにおける使用に対して、米連邦政府若しくは州政府の監督官庁によって認可された、又は認可可能であるか、若しくは、合衆国薬局方若しくは他の一般的に認められた薬局方に収載されている化合物若しくは組成物を対象とする。
【0075】
ここで用いられるように、「治療上効果的な量」は、病気を治療又は予防するために対象に投与する場合に、病気の治療又は予防を達成するのに十分な化合物の量を意味する。前記したように、「治療上効果的な量」は、化合物、疾患及びその重症度、並びに、治療を必要とする対象の年齢、体重等によって左右される。
【0076】
本発明の化合物は、利用可能な技術及び製法(例えば、引用することによってここに組み込まれる米国特許出願番号US2006/0252829)を用いて、投与前に薬剤組成物に形成されてもよい。例えば、薬剤組成物は、適切な投与(経口、非経口、(静脈注射〔IV〕、筋肉注射〔IM〕、デポ−筋肉注射〔depo-IM〕、皮下〔SC〕、及びデポ皮下〔depo-SC〕)、舌下、鼻腔(吸入)、髄腔内、局所、又は直腸)形態に形成される。薬剤的に許容される適切な賦形剤は、特に制限されることはないが、リン酸緩衝液(PBS)のような、経口、非経口、経鼻、粘膜、経皮、局所,髄腔内、直腸、血管内(IV)、動脈内(IA)、筋肉内(IM)、及び皮下(SC)の投与経路に適切な、あらゆる非免疫原性薬剤キャリヤー又は希釈剤を含む。また本発明は、凍結乾燥され、静脈注射、筋肉注射、又は皮下注射等の、投与のための薬剤的に許容される形態とするために再構成されたこれらの化合物を含む。また投与は、皮内又は経皮でもよい。
【0077】
賦形剤は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、これらの適切な混合物、及び植物オイルを含有する溶剤又は分散媒であってもよい。レシチンのようなコーティングを使用したり、分散の場合は要求される粒径の維持及び界面活性剤を使用したりすることにより、適した流動性を維持することができる。パラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等の様々な抗菌及び抗真菌剤によって、微生物の活動を予防することができる。多くの場合、例えば、糖、塩化ナトリウム、又は、マンニトール若しくはソルビトールのようなポリアルコールなどの等張液を、組成物に含有させることができる。モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチン等の、吸収を遅らせる物質を組成物中に含ませることにより、注射可能組成物の持続的吸収を実現することができる。
【0078】
本発明の化合物は、経口投与されることが好ましい。本発明の剤形には、経口投与に適するものが含まれる。その剤形は、ユニット投与形態でタイミング良く提供されても良く、薬学分野で良く知られている如何なる方法で調製してもよい。これらの剤形や組成物を調製する方法は、本発明の化合物と、薬剤的に許容される賦形剤(例えば、不活性希釈剤又は吸収可能な食品用担体など)及び1以上の任意の補助成分とを結合させる工程を含む。一般的に、本発明の化合物と、液体担体若しくは微粉化された固体担体又はその両方とを、均一で密に結合させることにより調製し、次いで、必要に応じて製品を成型する。このような治療に有用な組成物中の治療薬の量は、即ち適切な投薬量となる。
【0079】
経口投与に適した本発明の剤形は、カプセル(例えば、ハード若しくはソフトシェルゼラチンカプセル)、カプセル(cachet)、錠剤、タブレット、トローチ、粉末、顆粒、ペレット、糖衣錠の形を取り、例えば、コート(例えば、腸溶性コート)若しくは非コート、又は、水性若しくは非水性液体における溶液若しくは懸濁液のような、又は、油中水型若しくは水中油型液体乳剤のような、又は、エリキシル剤若しくはシロップのような、又は、トローチ(ゼラチンやグリセリン、若しくは、サッカロースやアカシア等の不活性基剤を用いる)のような、又は、洗口剤のような形を取り、各々有効成分として本発明の化合物の所定量を含有する。また、本発明の化合物は、ボーラス、舐剤若しくはペースト剤として投与しても、又は、対象の食事に直接入れてもよい。更に、ある実施態様においては、これらのペレットを、(a)即時的又は急速な薬の放出を備えるように(即ちコーティングなし)形成し;(b)例えば、薬の放出を長時間持続させるためにコーティングするように形成し;又は(c)胃腸の耐溶性をより良くするために、腸溶コーティングでコーティングするように形成することができる。
【0080】
本発明の経口投与のための固体投薬形態における有効成分は、クエン酸ナトリウム若しくは第二リン酸カルシウムのような、1以上の薬剤的に許容される担体、又は次の何れかと混合される:澱粉、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール若しくはケイ酸等の賦形剤又は増量剤;例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖若しくはアカシア等の結合剤;グリセロール等の保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ澱粉、タピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤;パラフィン等の溶液遅延剤;第4アンモニウム化合物等の吸収促進剤;例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアレート等の湿潤剤;カオリン及びベントナイト粘土等の吸着剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びこれらの混合物等の潤滑剤;並びに、着色剤。また、カプセル、タブレット及び錠剤の場合には、薬剤組成物は緩衝剤を含有してもよい。また、同様のタイプの固形組成物を、高分子量ポリエチレングリコール等のみならず、ラクトース又は乳糖等のような賦形剤を用いて、ソフト及びハード−充填用ゼラチンカプセル内のフィラーとして使用してもよい。
【0081】
一般に、経口用組成物は、溶液、乳剤、懸濁液等である。このような組成物を調剤するに適した薬剤的に許容される賦形剤は、当技術分野において良く知られている。シロップ、エリキシル剤、乳剤及び懸濁液用担体の典型的な成分は、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ショ糖液、ソルビトール及び水である。懸濁液に対しては、典型的な懸濁剤としてメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トラガカント及びアルギン酸ナトリウム等;典型的な湿潤剤としてはレクチン及びポリソルベート80等があり;典型的な防腐剤としてはメチルパラベン及び安息香酸ナトリウムがある。また、経口用液体組成物は、1以上の上記した甘味料、香味料及び着色料等の成分を含有する。
【0082】
注射に適した薬剤組成物は、滅菌注射溶液又は分散物を即時に調製するための、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散物、及び、滅菌パウダーを含有する。いかなる場合においても、組成物は滅菌されていなければならず、容易に注射可能である範囲で流動性がなければならない。組成物は、製造状態下及び保存状態下において安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物に汚染されないように、保存されなければならない。滅菌注射液は、適切な溶剤中に、上に列挙した単独又は組合せ成分と、必要量の治療薬剤を組み合わせることによって調製することができ、必要に応じて、次いで濾過滅菌する。一般的に分散物は、必要最小限の分散媒及び上に列挙したものの中から要求される他の成分を含む滅菌賦形剤に、治療薬剤を加えることによって調製される。滅菌注射液の調製用滅菌パウダーの場合には、調製の方法は、予め滅菌ろ過された有効成分(即ち治療薬剤)と所望された何れかの付加成分との溶液から、それらの粉末を得る真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0083】
また、エアロゾルとしての投与に適した薬剤剤形は、吸入により供給される。これらの剤形は、本明細書中のいかなる構造であってもよい、所望される化合物の溶液又は懸濁液、若しくは、このような化合物の複数の固形微粒子から構成される。所望された剤形は、小さな容器に入れられ、噴霧される。それらの薬剤又は塩からなる複数の液滴又は固形粒子を形成するために、圧縮空気又は超音波エネルギーにより噴霧を行ってもよい。液滴又は固形粒子は、約0.5〜約5ミクロンの範囲の粒径であるべきである。固形粒子は、微粒子化のような公知の適切な方法で、ここで述べられている構造の固形薬剤又はそれらの塩を処理することによって得られる。固形粒子や液滴のサイズは、例えば、約1〜約2ミクロンである。この観点から、市販の噴霧器でこの目的を達成することができる。
【0084】
エアロゾルとしての投与に適した薬剤は液体の形であってもよく、その剤形は、水を含む担体中の、ここに記載されているどのような構造の水溶性薬剤又はそれらの塩をも含む。噴霧するときに、所望の粒径内の液滴を十分に形成するために、剤形の表面張力を低下させる界面活性剤が存在してもよい。
【0085】
また本発明の組成物は、例えば、対象の表皮又は上皮組織へ組成物を直接塗布若しくは薄く塗布し、又は「パッチ」を介して経皮的に、対象に局所的に投与されても良い。このような組成物としては、例えばローション、クリーム、溶液、ジェル及び固形物が挙げられる。これらの局所用組成物は、効果的な量の本発明の薬剤を、通常少なくとも約0.1%、又は約1%〜約5%からなり得る。局所投与に適切な担体は、通常、持続性のフィルムとして皮膚上の適所に残存し、汗や水中への浸漬によって剥がれにくい。一般的に、担体は本来有機物であり、治療薬をその中に分散又は溶解させることができる。担体は、薬剤的に許容される皮膚軟化剤、乳化剤、増粘剤、溶剤等を含んでもよい。
【0086】
対象薬剤の全身に及ぶ運搬を達成するために有用な他の組成物としては、舌下腺、ほお及び鼻からの投薬剤形が含まれる。このような組成物は通常、ショ糖、ソルビトール及びマンニトール等の1以上の水溶性充填材;及びアカシア、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤からなる。また、上記した流動促進剤、潤滑剤、甘味料、着色料、酸化防止剤、香味料が含有されていてもよい。また本発明の化合物は、非経口、腹腔内、脊髄内又は脳内で投与されてもよい。このような組成物のために、本発明の化合物を、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物並びにオイル中で調整することができる。通常の保存及び使用条件下では、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含んでもよい。
【0087】
経口投与以外の方法で本発明の化合物を投与するためには、その不活性化を防ぐ物質で化合物をコーティングする、又は、その不活性化を防ぐ物質とともに化合物を投与することが有用である。例えば、リポソーム又は希釈剤等の適切な担体中の本発明の化合物を、対象に投与してもよい。薬剤的に許容される希釈剤には、生理食塩水及び水性緩衝溶液が含まれる。リポソームには、従来のリポソームのみならず、水中油中水型CGFエマルジョンもまた含まれる。
【0088】
また、本発明の化合物が所望の位置周辺で放出されるように、又は、所望の作用を延長するために様々な時間で放出されるように、本発明の薬学的組成物を、従来の方法、典型的には、pH又は時間依存性のコーティング剤でコーティングしてもよい。このような投薬剤形は、典型的には、1以上のセルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、ワックス類及びセラックを含むが、これらに限定されるものではない。
【0089】
投薬量
適切な1回分は、通常熟練した内科医、獣医師又は研究者の知識の範囲内である、多くの要因に依存していることは理解できることである。本発明の化合物の1回分の量は、例えば、用いられる特定の薬剤の活性、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食習慣、投薬時間、投与経路、排出率、並びに、あらゆる薬剤の組合せ、該当する場合には、開業医が望む化合物の対象への効果及び化合物の特性(例えば、バイオアベイラビリティー、安定性、有効性、毒性等)を含む様々な要素に依存して変化する。ここに記載された分析方法を含むあらゆる利用可能な分析方法を用いて、このような適切な1回分を測定してもよい。本発明の1以上の化合物をヒトに投与する場合、例えば内科医は、最初は比較的少ない投薬量を処方し、その後適切な反応が得られるまで投薬量を増やす。
【0090】
例えば、化学式(I)の化合物の治療上効果的な量は、1日約100mgから4000mgの間であり得る。本発明の化合物、200mg、400mg、800mg、1200mg、1800mg、又は2400mgを含有するタブレット、錠剤、カプセルに製造してもよい。ある実施態様においては、治療上効果的な量は400mgBID、800mgBID、1200mg、1600mg、2400mg又は3600mgBIDであり得る。BIDは1日に2回を意味する。ある実施態様においては、治療上効果的な量は、少なくとも1、5、10、25、50、75又は100μg/mlに相当する、ヒト患者における血中濃度を得ることを目的としている。
【0091】
典型的な投与量としては、対象又はサンプルの重さのキログラム当りに対する、化合物のミリグラム又はマイクログラム量がある(例えば、キログラム当り約1ミリグラムから約200ミリグラム、キログラム当り約5ミリグラムから約100ミリグラム、キログラム当り約10ミリグラムから約50ミリグラム)。更に典型的な投与量としては、1日当たり、約1から約500mg、約5から約300mg、若しくは、約10から約200mg、1日2回又は3回、若しくは、より少ない量又はより多い量が含まれる。因みに、AAアミロイドーシスの治療用エプロジセート(1,3-プロパンジスルホン酸ナトリウム塩)の典型的な投与量は、患者のクレアチン・クリアランスに基づいて、約400mg、800mg又は1200mgBID(1日につき2回)である。また、引用文献として本明細書に組み込む、公開された米国特許出願番号US2006/0252829を参照。
【0092】
投与を簡略化するため及び投与量を画一化するために、投与ユニット形態で非経口組成物を処方することが、一般的には都合がよい。「ユニット投与形態」の用語は、ヒト対象及び他の哺乳類のための、統一された用量として適切な、物理的に別々のユニットのことをいい、各々の単位は、適切な賦形薬と結合して、望まれる治療効果を出すために計算された、所定の量の活性剤を含有する。ある実施態様における本発明の組成物はユニット投与形態で処方され、各々の投与量は、本発明の化合物を、約100mg〜約2000mg、より好ましくは約200mg〜約1000mg、さらに好ましくは約400mg〜約800mgを含有する。また、引用文献として本明細書に組み込む、公開された米国特許出願番号US2006/0252829を参照。本発明の投与ユニット形態の仕様は、(a)治療薬の特殊性及び達成される特定の治療効果、及び、(b)対象におけるアミロイド沈着の治療のためのこのような治療薬を混合する技術に固有の制限によって直接左右され、様々に決められて良い。
【0093】
治療される対象に対する本発明の化合物及び組成物の投与は、所望の目的を達成するための効果的な投薬量及び時間における既知の手順を用いて実行することができる(例えば、腎症の予防又は治療、一般的な腎機能の改善、及び/又は、血中脂質関連の病気の予防及び/又は治療等)。最適な治療応答を提供するために、投薬計画を調整することができる。例えば、いくつかに分割された投与量を毎日投与しても、又、治療状況の緊急度によって指示されるように、投与量を均等に減じてもよい。
【0094】
一つの実施態様においては、アルブミン尿、蛋白尿、クレアチニン・クリアランス、尿クリアランス等の腎機能パラメーターを改善するように作用し、影響を与え、及び/又は、変更するのに十分な、治療上効果的な投薬量で、本発明の化合物を投与する。他の態様においては、循環血中濃度、及び/又は、トリグリセリド、コレステロール、高密度リポ蛋白質コレステロール(HDLC)、超低密度リポ蛋白質コレステロール(VLDLC)、低密度リポ蛋白質コレステロール(LDLC)、中密度リポ蛋白質コレステロール、低密度リポ蛋白質(LDL)、高密度リポ蛋白質(HDL)及び遊離脂肪酸の比率を改善するように作用し、影響を与え、及び/又は、変更するのに十分な治療上効果的な投薬量で、本発明の化合物を投与する。
【0095】
腎機能パラメーター又は循環血中濃度を改善するように作用し、影響を与え、及び/又は、変更することに言及する場合には、「治療上効果的な」投薬量は、未治療の対象と比較して、例えば、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約75%、又は少なくとも約100%以上の変化(例えば、腎機能低下の遅延、循環有害脂質濃度の低下)に言及する。
【0096】
同時投与
また本発明の治療方法は、少なくとも一つの本発明の化合物、例えば1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩を、腎臓疾患又は合併症、腎症(例えば糖尿病性腎症)、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧及び/又は肥満の予防又は治療のための他の治療上有効な薬剤と共に、同時投与することを含んでもよい。
【0097】
一つの実施態様においては、本発明の化合物は、糖尿病の予防又は治療に現在用いられている、又は、その開発途上にある少なくとも一つの既知の更なる化合物と組み合わせて用いられる。このような既知の化合物の例としては、スルホニルウレア剤(例えば、グリクラジド〔glicazide〕、グリピザイド)、メトホルミン、グリタゾン(例えば、ロシグリタゾン〔rosiglutazone〕、ピオグリタゾン)、食事グルコース解除剤(例えば、レパグリニド、ナテグリニド)及びアルカボース等の代表的な抗糖尿病薬が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
一つの実施態様においては、本発明の化合物は、腎症、又は関連疾患又は合併症等の腎臓疾患の予防又は治療に現在用いられている、又は、その開発途上にある少なくとも一つの既知の更なる化合物と組み合わせて用いられる。このような既知の化合物の例としては、ACE阻害薬剤(例えば、カプトプリル(Capoten〔登録商標〕)、エナラプリル(Innovace〔登録商標〕)、フォシノプリル(Staril〔登録商標〕)、リシノプリル(Zestril〔登録商標〕)、ペリンドプリル(Coversyl〔登録商標〕)、キナプリル(Accupro〔登録商標〕)、トランダナロプリル(Gopten〔登録商標〕)、ロテンシン、モエキシプリル、ラミプリル);RAS遮断薬;アンジオテンシン受容体遮断薬(ARBs)(例えば、オルメサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン、テルミサルタン〔teimisartan〕;蛋白キナーゼC(PKC)阻害剤(例えば、ルボキシスタウリン);AGE依存経路(例えば、アミノグアジニン、ALT-946、ピロドキシアミン(ピロドドリン)、OPB-9245、アラゲブリウム);抗炎症剤(例えば、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、ミコフェノール酸モフェチル、ミゾリビン、ペントキシフィリン)、GAGs(例えば、スロデキシド(米国特許5,496,807));ピリドキシアミン(米国特許7,030,146);エンドセリン拮抗薬(例えば、SPP 301)、COX-2阻害剤、PPAR-γ拮抗薬及びアミホスチン(シスプラチン腎症に用いられる)のような他の化合物、カプトプリル(糖尿病性腎症に用いられる)、シクロホスファミド(突発性膜性腎症に用いられる)、チオ硫酸塩ナトリウム(シスプラチン腎症に用いられる)、トラニラスト等が挙げられる。(ウイリアムズ&タトル(2005)、Advances
in Chronic Kidney Disease、12(2): 212-222; Guinti他(2006)、Minerva Medica、97:241-62)。
【0099】
更に、本発明の方法は、糖尿病及び/又は腎臓疾患合併症に直接的又は間接的に関連する他の病気を治療するための、少なくとも一つの他の治療薬を同時投与することも含み、該腎疾患合併症は、以下のものを含むが、これらに限定されるものではない;脂質代謝異常、高血圧、肥満、腎症、及び/又は網膜症等。本発明の化合物と同時に投与することができる薬剤の更なる例としては、副腎皮質ステロイド;免疫抑制剤;抗生物質;血圧降下剤及び利尿剤(ACE-阻害剤等);胆汁除去樹脂、コレスチラミン、コレスチポール、ニコチン酸等の高脂血症治療薬、及びコレステロールや中性脂肪を減らすために用いられる、更に特定の薬剤及び薬物(例えば、フィブラート類(例えば、Gemfibrozil〔登録商標〕)、及び、Lovastatin〔登録商標〕、Atorvastatin〔登録商標〕、Fluvastatin〔登録商標〕、Lescol〔登録商標〕、Lipitor〔登録商標〕、Mevacor〔登録商標〕、Pravachol〔登録商標〕、Pravastatin〔登録商標〕、Simvastatin〔登録商標〕、Zocor〔登録商標〕、Cerivastatin〔登録商標〕等のHMG-CoA阻害剤);脂質の腸内吸収を阻害する化合物(例えば、ezeteminde);ニコチン酸;及びビタミンDが挙げられる。
【0100】
従って、本発明の更なる態様は、必要とする対象に効果的な量の第一の薬剤及び第二の薬剤を投与することからなる、対象の併用治療処置の方法に関する。ここで、該薬剤は化学式(I)で定義されたとおりであり、第二の薬剤は腎臓疾患、腎症、糖尿病性腎症、糖尿病、高血圧、高脂血症又は肥満の予防又は治療のためのものである。
【0101】
また本発明は、化学式(I)で定義される少なくとも一つの第1の薬剤、及び、腎臓疾患、腎症、糖尿病性腎症、糖尿病、高血圧、高脂血症若しくは肥満の予防又は治療のため、並びに、腎臓疾患、腎症、糖尿病性腎症、糖尿病、高血圧、高脂血症若しくは肥満の併用治療処置若しくは予防用薬剤又は薬剤キットを製造するための化合物から選択された少なくとも一つの、第2の薬剤の使用に関する。
【0102】
ここで用いられるように、フレーズ「併用治療処置」における「併用」の用語は、第2の薬剤の存在下で第1の薬剤を投与することを含む。併用治療処置の方法は、第1、第2、第3の薬剤又は追加の薬剤が同時に投与される方法を含む。また、併用治療処置の方法は、第1の薬剤又は追加の薬剤を、第2の薬剤又は追加の薬剤の存在下で投与する方法を含み、ここで、第2の薬剤又は追加の薬剤は、例えば、予め投与されていてもよい。併用治療処置の方法は、異なる主体によって段階的に行われてもよい。例えば、第1の薬剤(及び/又は追加の薬剤)が第2の薬剤(及び/又は追加の薬剤)の存在下における後の投与である限り、一人の主体が対象に第1の薬剤を投与し、第2の主体が対象に第2の薬剤を投与してもよい。そして投与ステップは、同時、ほとんど同時又は時間を置いた実施であってもよい。主体と対象は同一実体であってもよい(例えば、ヒト)。好ましくは、第1の薬剤は3-プロパンジスルホン酸、又は、例えばジナトリウム塩等の薬剤的に許容されるその塩である。第2の薬剤は、前記化合物リストから選択してもよい。
【0103】
従って、また本発明は、上記疾患若しくは病気(例えば、糖尿病、腎症若しくは糖尿病に直接的又は間接的に関連する合併症)の何れか一つの症状、若しくは合併症を予防、緩和又は除去する方法を提供する。該方法は、本発明の少なくとも一つの化合物からなる第1の薬剤組成物及び1以上の更なる有効成分からなる第2の薬剤組成物を必要とされる対象に投与することからなる。ここですべての有効成分は、治療される疾患若しくは病気の1以上の症状若しくは合併症を、阻害、緩和、又は除去するのに十分な量を投与される。一つの実施態様においては、第1及び第2の薬剤組成物の投与は、少なくとも約2分間時間的に間隔を空ける。
【0104】
キット
本発明の化合物は、容器(例えば、包装、箱、バイアル等)を適宜含むキットの一部として包装されてもよい。キットは、ここに記載された方法に従って商業的に用いられてもよく、本発明の方法の使用に対する説明書を含んでいてもよい。更なるキットの構成要素として、酸、塩基、緩衝剤、無機塩、溶剤、酸化防止剤、防腐剤、又は金属キレート剤を含んでもよい。更なるキットの構成要素は、純粋組成物として、又は、1以上の更なるキットの構成要素を加えた水性又は有機溶液として存在する。いずれか又はすべてのキットの構成要素は、適宜更に緩衝剤を含有する。
【0105】
本発明の化合物は、同時、又は同じ投与経路で患者に投与されても、投与されなくてもよい。従って本発明の方法は、開業医が用いる際に、適切な量の2以上の有効成分を患者に投与することを、単純化することができるキットを含む。
【0106】
本発明の典型的なキットは、本発明の少なくとも一つの化合物、例えば、1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩のユニット投与形態、及び、少なくとも一つの更なる有効成分のユニット投与形態を包含する。本発明の化合物と併せて用いてもよい更なる有効成分の例としては、「同時投与」のセクシヨンにおいてリストアップされた、本発明の化合物と組み合わせて用いることができる何れの化合物も含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
更に本発明のキットは、有効成分を投与するために用いられる器具を包含する。これらの器具の例としては、注射器、点滴バッグ、パッチ、吸入器、浣腸、及び座薬剤投与のための取り出し容器が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
更に本発明のキットは、1以上の有効成分を投与するために用いることができる、薬剤的に許容される賦形剤を包含する。例えば、もし有効成分が非経口投与用に再構成されなければならない固形状で提供される場合、キットは、非経口投与に適した粒状物質のない滅菌溶液を作るために、有効成分を溶解することができる、適当な賦形剤の密封容器を包含しても良い。薬剤的に許容される賦形剤の例としては、これらに限定されるものではないが、注射用水USP;これらに限定されるものではないが、塩化ナトリウム注射、リンガー液注射、ブドウ糖注射、ブドウ糖及び塩化ナトリウム注射、及び乳酸加リンガー液等の水性賦形剤;これらに限定されるものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等の水混和性賦形剤;並びに、これらに限定されるものではないが、コーン油、綿実油、落花生油、ごま油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジル等の非水性賦形剤が含まれる。
【0109】
腎機能と脂質特性の評価
本発明の方法、化合物及び/又は組成物の有効性を評価、判断、及び/又は、確認するために、対象の腎機能について一連の諸測定を決定することができる。
【0110】
腎機能の定量的評価及び腎機能障害のパラメーターは当業者に周知であり、例えばリーヴィ(Am
J Kidney Dis.1993, 22(1): 207-214)に記載されている。腎機能/障害を決定するための分析例としては、:血清クレアチニンレベル;クレアチニン・クリアランス率;シスタチンCクリアランス率、24時間尿クレアチニン・クリアランス、24時間尿蛋白分泌物、糸球体濾過率(GFR)、尿中アルブミンクレアチニン率(ACR);アルブミン排出率(AER);及び腎生検が挙げられる。
【0111】
動物モデルにおける活性について、本発明の化合物をテストしてもよい。II型糖尿病及び肥満の動物モデルの例としては、Ob/Obマウス(肥満、レプチン欠損の一遺伝子モデル)、db/dbマウス(肥満、レプチン欠損の一遺伝子モデル)、ズッカー(fa/fa)ラット(肥満、レプチン欠損の一遺伝子モデル)、後藤―柿崎ラット、KKマウス、NSYマウス、OLETFラット、イスラエルスナネズミ、脂肪食ストレプトゾトシン処理ラット、CBA/Caマウス、糖尿病トリラット、ニュージーランド肥満マウス(リース アンド アルコラド(2005),
Diabet. Med.22, 359-370参照)が挙げられる。
【0112】
自然発症II型糖尿病の公知の動物モデルとしては、:自然発症高血圧/NIH-肥満(SHR/N-cp)ラット(肥満、II型糖尿病及び腎症のモデル)、やせたSHR/N-cpラット及びウイスター-京都/NIH-肥満(WKY/N-cp)ラット(共に糖尿病腎症の病原における高血圧と肥満の役割の評価を可能にする:また、WKY/N-cpラットは肥満で高脂血症であり、それらのグルコース制御はSHR/N-cpラットより幾分悪いが、SHR/N-cpラットは異常グルコース耐性、高血圧があり、ヒト糖尿病腎症に良く似た腎疾患を発症する)、及びLA/N-cpラット(やはり肥満遺伝子をもち、高脂血症を示す)がある(キンメル等(1992),
Acta Diabetologica、29巻(3-4)、142-148参照)。
【0113】
当業者は、ここに記載されている所定の実験、特定の手順に対する多数の同等物、実施態様、請求項及び実施例等を単に用いて確認又は究明することができる。このような同等物は、本発明の範囲内にあり、本願請求項によってカバーされている。本願で引用された全ての引例、登録された特許及び公開された特許出願の内容は、本明細書に組み込まれる。更に本発明は以下の実施例によって例証されるが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0114】
〔実施例〕
以下に記載された実施例は、本発明のある代表的な化合物の典型的な形態を提供する。腎障害及び関連する合併症について本発明の化合物を分析する典型的な方法をも提供する。
【0115】
特に指示がなければ、成分の量、反応条件、濃度、性質を表す数字など、明細書及びクレームで用いられる全ての数字は、全て「約」と変更されるものと理解されるべきである。少なくとも、各々の数値パラメーターは、公表された有効桁数を考慮し、通常の四捨五入をして解釈されるべきである。従って、逆の指示がない限り、本明細書及び請求項に規定される数値パラメーターは、入手しようとした特性に依存して変化しうる近似値である。以下の幅広い範囲の実施例を規定している数値範囲及び数値パラメーターは近似値であるが、以下の実施例で示される数値は可能な限りはっきりと記載する。しかしながらいずれの数値も、実験、測定結果の分析、統計分析などの変動に起因する誤差を本質的に含む。
【実施例1】
【0116】
1,3 プロパンジスルホン酸二ナトリウム塩400mg含有するカプセルの製剤例を下記に示す。
1,3 プロパンジスルホン酸二ナトリウム塩400mg及び賦形剤40mgからなる白色粉末を、#0の白色不透明なハードゼラチンカプセルに充填することによって、1,3
プロパンジスルホン酸二ナトリウム塩400mgのカプセルを製造した。


* MHS-製造業者社内標準

【実施例2】
【0117】
活性剤として1,3-プロパンジスルホン酸を用い、実施例1で記載されたようにして、薬剤組成物を成形した。
【実施例3】
【0118】
活性剤として1,2-エタンジスルホン酸を用い、実施例1で記載されたようにして、薬剤組成物を成形した。
【実施例4】
【0119】
活性剤として1,2-エタンジスルホネートを用い、実施例1で記載されたようにして、薬剤組成物を成形した。
【実施例5】
【0120】
活性剤として1,2-エタンジオール ビス(ハイドロジェン サルフェート)を用い、実施例1で記載されたようにして、薬剤組成物を成形した。
【実施例6】
【0121】
活性剤として1,2-エタンジオール二硫酸二ナトリウム塩を用い、実施例1で記載されたようにして、薬剤組成物を成形した。
【実施例7】
【0122】
活性剤として1,3-プロパンジオール ビス(ハイドロジェン サルフェート)を用いて、実施例1で記載されたようにして、薬剤組成物を成形した。
【実施例8】
【0123】
活性剤として1,3-プロパンジオール二硫酸二ナトリウム塩を用い、実施例1で記載されたようにして、薬剤組成物を成形した。
【実施例9】
【0124】
活性剤として2-スルホメチル‐1,4-ブタンジスルホン酸を用い、実施例1で記載されたようにして、薬剤組成物を成形した。
【実施例10】
【0125】
活性剤として2-スルホメチルブタン-1,4-ジスルホン酸三ナトリウム塩を用い、実施例1で記載されたようにして、薬剤組成物を成形した。
【実施例11】
【0126】
In vivoにおける腎機能の予防研究
ズッカーラット(ZDF)型における腎機能の予防実験のために、化合物1,3 プロパンジスルホン酸二ナトリウム塩(PDS)を選択した。
【0127】
バックグラウンド
糖尿病性腎症(DN)は、慢性腎不全及び末期の腎疾患の最も代表的な原因である。増加する証拠によれば、糖尿病において偏在的にみられる状態である脂質代謝異常は、DNの進行をもたらす主要な独立寄与因子である。
【0128】
DNのための優れた研究モデルは、純系ズッカー糖尿病肥満ラット(ZDF)である。糖尿病誘発性の食事が与えられたZDFラットは、普通の食事を与えた場合よりも早く(例えば14-18週齢)、ヒト成人発症の糖尿病(2型)、並びに、糸球体硬化症及び腎障害を含む関連した合併症に酷似した症状を示す。更に、肥満、軽い高血圧、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、空腹時の高血糖、耐糖能異常及び高インスリン血症はすべて、ZDFラットにおいて特徴となる重要な表現型である。
【0129】
目的
この前臨床試験は、DNに対する予防的治療及びZDFラットモデルにおける関連する病態生理として、1,3-プロパンジスルホン酸二ナトリウム塩(PDS)(エプロジセート ジナトリウム;Eprodisate
Disodium)の役割及び効果を評価する。最初に測定された結果は、クレアチニン・クリアランス悪化の弱化/反転、及び蛋白尿の弱化/反転である。測定された第2の結果は、このモデルにおけるメタボリック状態に対する影響である。
【0130】
方法
6週齢のZDFラット雄32匹(チャールスリバー社,サンコンスタン,カナダ)を無作為に選択して、処置(PDS;1%スクロース飲料溶液中)及び対照(1%スクロース飲料溶液)の2群とし、8週間研究を行った。最初に、第1週の間はPDSを高用量(平均:4270mg/kg/day)で与え、次いで、第2‐5週の間は中低用量(平均:592mg/kg/day)で与え、最終的には、第6-8週の間で若干増加させた(図1)。すべてのラットには、高糖質/高脂肪の糖尿病誘発性の食事(登録商標:Harlan TD95217)を与えた。体重、餌、及び飲料溶液の消費量を毎日測定した。1週間に1度、24時間、メタボリックケージで、各群のラット12匹を飼育した。第1、3、6、7及び8週の間は、ラットが随意、餌と飲料溶液を得る機会が与えられたのに対し、第2、3、4及び5週の間は、飲料溶液が得られるメタボリックケージにラットを配置し、空腹状態に置いた。血清及び/又は尿のPDS、クレアチニン、蛋白質、尿酸、トリグリセリド、グルコース及び電解質レベルを定量するために、各メタボリックケージの期間の最後に、尿排出量を測定し、血液と尿サンプルを採取した。これらの変数を、クレアチニン・クリアランス(Ccr)及び蛋白尿を算出するために使用し、全体的な代謝及び腎臓の健康状態を評価するために使用した。
【0131】
結果
結果を図1〜4に示す。各時点の結果は、平均±SEとして表わす。傾向統計は、p<0.02で統計的に有意であると考え、繰り返し測定ANOVAによって計算した。
研究が進むにつれて増加させたPDSを、処置動物に毎日投与した(図1)。
【0132】
予想通り、動物の体重はその研究を通じて増加し(下痢のため研究の開始時に少量の低下を伴う)、約175gから60日後には約500gになった。処置動物の体重に対する対照動物の体重には有意な差はなかった(データ未表示)。しかしながら、試験期間中に糖尿病性腎症が進展するので、動物の健康は、全体として次第に損なわれるはずである。
【0133】
この研究で、満腹状態における調整されたより高い投与量で、PDSがよく耐えられることが分かった。満腹状態で得られた結果に対しては、8週間の投与後、PDSは、対照動物に対する体重で標準化された、CCrの減少度を有意に低下させ(p=0.012)(図2A及び2B)、対照動物に対する血清トリグリセリドのレベルを減少させた(p=0.0067)(図3A及び3B)。また、第8週で、対照群と比較して明らかな差異を伴う尿酸クリアランスに対して、PDSを用いた治療に改善効果の傾向があった。
【0134】
示されてはいないが、約9週間の治療後に解剖されたラットの腎臓質量の予備的評価は、処置ラットが、対照ラットよりも大きな腎臓質量を有すると思われることを示しており、これは、PDSを用いた治療が、対照と比較して、腎臓の完全性及び重量を維持するためにも有用であることを示唆している。心室重量の予備的評価は、処置ラットが若干低心室重量を有すると思われることを示しており、PDSを用いた治療が心臓の完全性を維持し、一般的に、心室肥大、過形成、及び/又は心筋症を減少させるために有効であることを示唆している。このことは研究において測定されていないが、これらの現象は高血圧の減少に関連しているかもしれない。何れの群の腎臓においても、アミロイド沈着は検出されていない。総合するとこれらの結果は、1,3
プロパンジスルホン酸二ナトリウム塩(PDS)が、腎機能障害の予防に独立に寄与する、CCr/BWの維持、尿酸の血清濃度の減少及び血清トリグリセリドの減少によって証明される、腎機能を保護するということを示唆している。
【実施例12】
【0135】
ヒト患者の治療
糖尿病性神経症の治療を必要とする患者を、1日2回、1,3 プロパンジスルホン酸二ナトリウム塩(PDS)(800mg)を用いて治療した。用量は、患者の腎機能(例えば、GFR、クレアチニン・クリアランス、尿酸クリアランス、アルブミン尿等)により測定される患者の治療に対する応答性に応じて、医師によって調節された(例えば、1200mgに増加又は400mgに低減)。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、糖尿病性腎症等の腎症を有する対象における、末期の腎不全(ESRF)/透析への進行を予防し又は遅延させることができるので、産業上極めて有意義である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、実施例11において、ズッカー糖尿病肥満ラットのオスに60日間投与された、1,3-プロパンジスルホン酸の一日の量を示す線グラフである。
【図2】図2Aは、実施例11における、対照及び処置満腹ズッカー糖尿病肥満ラットのオスに関する、8週間にわたる訂正クレアチニン・クリアランスを示す線グラフである。図2Bは、第8週における、対照及び処置満腹ズッカー糖尿病肥満ラットのオスに関する、訂正クレアチニン・クリアランスを示す棒グラフである。
【図3】図3Aは、実施例11における、対照及び処置満腹ズッカー糖尿病肥満ラットのオスに関する、8週間にわたり測定された血清トリグリセリドを示す線グラフである。図3Bは、対照及び処置満腹ズッカー糖尿病肥満ラットのオスに関する、第8週に測定された血清トリグリセリドを示す棒グラフである。
【図4】図4Aは、実施例11における、対照及び処置満腹ズッカー糖尿病肥満ラットのオスの、8週間の尿酸クリアランスを示す線グラフである。図4Bは、対照及び処置満腹ズッカー糖尿病肥満ラットのオスにおける、第8週の尿酸クリアランスを示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要としている対象における糖尿病性腎症を予防又は治療する薬物を製造するための化合物の使用であって、該薬物が、1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩からなる、効果的な量の化学式(I)の化合物を含有する使用:

Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)

ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり;
mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【請求項2】
前記腎臓疾患が腎症である、請求項1に記載された使用。
【請求項3】
前記腎症が、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、鎮痛薬腎症、IgA−腎症、虚血性腎症、HIV関連腎症、膜性腎症、糸球体硬化症、造影剤誘発性腎症、中毒性腎症、鎮痛剤誘発性腎臓毒性又はシスプラチン腎症である、請求項2に記載された使用。
【請求項4】
前記腎症が糖尿病腎症である、請求項3に記載された使用。
【請求項5】
対象におけるクレアチニン・クリアランス及び/又は尿酸クリアランスが、前記投与の後に改善される、請求項1に記載された使用。
【請求項6】
必要としている対象における腎臓疾患の合併症を予防又は治療する薬物を製造するための化合物の使用であって、該薬物が、効果的な量の化学式(I)で表される化合物を含有する使用:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり;
mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【請求項7】
前記腎臓疾患の合併症が、血管疾患、循環器疾患、高脂血症、糖尿病性脂質代謝異常、メタボリック症候群、肥満、貧血、浮腫又は膵炎である、請求項6に記載された使用。
【請求項8】
前記高脂血症が高コレステロール血症又は高トリグリセリド血症である、請求項7に記載された使用。
【請求項9】
前記血管疾患及び循環器疾患が、高血圧、動脈硬化症、アテローム動脈硬化症、冠動脈疾患及び/又は鬱血性心不全である、請求項7に記載された使用。
【請求項10】
前記循環器疾患の合併症が、大血管合併症、微小血管合併症、冠動脈心疾患、アテローム動脈硬化症、脳卒中、狭心症及び/又は高血圧である、請求項7に記載された使用。
【請求項11】
対象における前記クレアチニン・クリアランス及び/又は尿酸クリアランスが、前記投与の後に改善される、請求項6に記載された使用。
【請求項12】
必要としている対象における脂質代謝異常を予防又は治療する薬物を製造するための化合物の使用であって、該薬物が、効果的な量の化学式(I)で表される化合物を含有する使用:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり; mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【請求項13】
前記脂質代謝異常が高脂血症である、請求項12に記載された使用。
【請求項14】
前記高脂血症が、トリグリセリド、コレステロール、ApoB、LpA、高密度リポ蛋白質コレステロール(HDLC)、超低密度リポ蛋白質コレステロール(VLDLC)、低密度リポ蛋白質コレステロール(LDLC)、中密度リポ蛋白質コレステロール又は遊離脂肪酸である、望ましくない高レベルの循環血中の脂質及び/又はリポ蛋白質と関連する、請求項13に記載された使用。
【請求項15】
前記循環血中の脂質及び/又はリポ蛋白質の何れか1つが対象において減少する、請求項14に記載された使用。
【請求項16】
必要としている対象における血清脂質レベルを減少させる薬物を製造するための化合物の使用であって、該薬物が、効果的な量の、化学式(I)で表される化合物を含有する使用:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり; mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【請求項17】
前記血清脂質がトリグリセリドである、請求項16に記載された使用。
【請求項18】
前記対象が、動脈硬化症、アテローム動脈硬化症、冠動脈疾患、鬱血性心不全、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病性脂質代謝異常、メタボリック症候群及び/又は肥満を患っている、又は、患う危険性がある、請求項16に記載された使用。
【請求項19】
必要としている対象におけるクレアチニン・クリアランスを増加させる薬物を製造するための化合物の使用であって、該薬物が、効果的な量の化学式(I)で表される化合物を含有する使用:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり; mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【請求項20】
必要としている対象における血清尿酸値レベルを減少させる薬物を製造するための化合物の使用であって、該薬物が、効果的な量の化学式(I)で表される化合物を含有する使用:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり; mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【請求項21】
必要としている対象における腎機能を改善する薬物を製造するための化合物の使用であって、該薬物が、効果的な量の化学式(I)で表される化合物を含有する使用:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり; mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【請求項22】
前記方法が、前記対象におけるアルブミン尿、蛋白尿、クレアチニン・クリアランス又は尿クリアランス等の腎機能パラメーターに良い方向の影響を与える、請求項21に記載された方法。
【請求項23】
前記腎機能が、血清クレアチニンレベル、クレアチニン・クリアランス率、シスタチンCクリアランス率、24時間尿クレアチニン・クリアランス、24時間尿蛋白分泌物、糸球体濾過率、尿中アルブミンクレアチニン率、アルブミン排出率又は腎生検を測定する分析を用いて評価する、請求項21に記載された使用。
【請求項24】
前記化合物が、1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩である、前記何れかの請求項に記載された使用。
【請求項25】
前記化合物が、1,3-プロパンジスルホン酸ナトリウム塩である、前記何れかの請求項に記載された使用。
【請求項26】
前記対象がアミロイドーシスでない、前記何れかの請求項に記載された使用。
【請求項27】
前記対象がAA-アミロイドーシスでない、前記何れかの請求項に記載された使用。
【請求項28】
必要としている対象における糖尿病性腎症を予防又は治療する薬物製造のための化合物の使用であって、前記薬物が、効果的な量の1,3-プロパンジスルホン酸又は薬剤的に許容されるその塩を含有する使用。
【請求項29】
必要としている対象における腎臓疾患又は合併症を予防若しくは治療する、又は、腎機能を改善するための化合物の使用であって、該化合物が化学式(I)で表される化合物である使用:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり;mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【請求項30】
必要としている対象における脂質代謝異常を予防又は治療するための化合物の使用であって、該化合物が化学式(I)で表される化合物である使用:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり;mが1のときtは0、mが2のときtは1である。
【請求項31】
必要としている対象における血清脂質レベルを減少させるための化合物の使用であって、該化合物が化学式(I)で表される化合物である使用:
Y-(CH2)n―(CH)t-[CH2Y]m (I)
ここでYは、各々独立に選択されるSO3X又はOSO3X;Xは、各々独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム又はアルミニウムから選択されるカチオン性基;nは1、2、3又は4であり; mが1のときtは0、mが2のときtは1である。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公表番号】特表2010−513219(P2010−513219A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546695(P2008−546695)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/IB2006/004262
【国際公開番号】WO2007/125385
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508188950)ベラス ヘルス (インターナショナル) リミテッド (1)
【Fターム(参考)】