説明

腎臓モニター

【解決手段】連続的糸球体濾過率(GFR)評価システムは、フォーリーカテーテル、連続的尿クレアチニンセンサー、及び尿排出モニターを備えている。連続的GFR評価システムは、クレアチニンクリアランスを、CrCl=(UCr×Uvol)/(PCr×Imin)として算出する。ここで、UCrは、尿クレアチニンであり、単位はmg/dLである。Uvolは、尿の体積であり、単位はmLである。PCrは、プラズマ(血清)クレアチニンであり、単位はmLである。Iminは、時間であり、単位は分である。フォーリーカテーテルは、膀胱から尿を回収するために使用することができる。尿は、時間Iminに渡ってUvol値を提供する尿排出モニターに送られる。カテーテルに取り付けられているのは、Uvol値を提供するための流動連続的クレアチニンセンサーである。残りのパラメータは、PCrである。血清クレアチニンレベルは、時間的に急激には変化しないので、血液サンプルを、連続的GFRの開始に先立って回収しておき、それによりPCr値を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の請求項は、2007年2月21日提出の米国仮出願第60/890,851号について優先権を主張し、またその内容全体を援用してここに開示があるものとする。
【0002】
尿は“体の密告者”とずっと呼ばれ、しばしば早期の警告を発すると共に体内の進行しつつある状況を全体的に示すということから、重要な生命徴候を表わしていた。尿は、腎臓で生成され、その腎臓は、血液から尿素やクレアチニン等の毒素(タンパク質代謝の老廃物)を濾過するものである。人体は、毒素を除去するために尿を生成しなければならないので、尿の不足は、血液が浄化されておらず、毒素が増加しつつあることを意味している。
【背景技術】
【0003】
腎臓疾患は、急性(傷害又は手術による早い発病)でもあり得るし、慢性(例えば、繰り返しの透析が必要な不全腎臓)でもあり得る。腎臓を通る血液の量が少なくなること(腎臓低かん流)による発生する腎臓疾患(腎臓機能障害)は、患者の死亡率を劇的に増加させる。故に、手術から回復しつつある患者、危篤患者、外傷患者等においては、その多くが緊急ルーム(ER)又は手術室(OR)から出てきて最終的に集中治療室(ICU)に入れられる者であり、又は慢性腎臓疾患の患者であるので、尿の排出を監視する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
看護師が、急性又は慢性腎臓疾患を有している患者、またはその予備軍である患者のために尿の排出を測定するのを補助するために、カテーテル及び自動尿排出監視機器が発展してきた。しかしながら、尿は、腎臓から見ると、文言上も比喩的にも“下流”であり、尿の排出のみでは、腎臓が適切に働いているかを判断することは不十分であった。そこで、腎臓疾患を見つけるために腎臓を監視する必要性が認識されてきた。
【0005】
各腎臓は、糸球体として知られているフィルターを備えている。糸球体は、血液の濾過構成に活動的に含まれている毛細血管である。他のいかなるフィルターと同様、糸球体は、それらの特有な特徴に基づき、物質を分離する。糸球体の効果は、圧力、膜の選択的特性、及びその大きさ又は表面積に依存する。腎臓が最適なときには、濾過効率は高いが、腎臓機能障害により、物質を除去する能力は下がる。特に、腎臓機能障害の間は、糸球体濾過率(GFR)として参照されるパラメータが急速に変化し、腎臓が如何にうまく血液を浄化しているかを示す目安として機能するので、GFR測定によれば、腎臓疾患が早期に発見され、迅速な腎臓固有の治療が可能となる。GFRの通常値は、120±30mls/min/1.73mであり、このとき60から89mls/min/1.73mの範囲のGFR値は、腎臓機能が僅かに低下していることを示しており、60mls/min/1.73m未満のGFR値は、いくらかの腎臓の損傷があるかもしれない、と提示している。
【0006】
しかしながら、GFRは直接的には測定できない。理想的な濾過マーカーの尿からの除去(クリアランス)は、GFRを測定するための最も正確な方法と考えられているが、しかしこれは医療現場において実施化することが厄介であった。例えば、腎臓機能を直接測定する方法として、患者の血流内に同位元素を注入する、という方法がある。これらのマーカー(例えば、51CI−EDIAや99Tc−DIPA)は、糸球体濾過によりほとんど完全に取り除かれ(腎臓による老廃物の濾過と除去)、故に、GFRを算出するのに、血流からのこれらの消失率と発生率を測定することが利用できる。そこで、同位元素が血流に注入された後、血液と尿のサンプルが収集され、実験室での試験が行われて、患者の血液と尿にどれ程の同位元素が存在しているかが判定される。この全処理は、数時間又は数日かかり、その間、腎臓の機能は、かなり変化してしまい、また、ある時点の腎臓機能を示すデータを提供するのみであった。
【0007】
理想濾過マーカーの除去というのは実用的ではないでの、血清クレアチニンのような内生濾過マーカー(体内で生成された物質)の血清レベルが、GFRを評価するのに伝統的に使用されてきた。クレアチニンは、筋肉からの代謝産物である。体内の筋肉は毎日“保守”を行っている。新しい筋肉が生成されると、古い筋肉細胞は破壊され、この代謝産物は、血液内に解放される。血液に解放されたその代謝産物は、腎臓により除去され、尿に排泄される。故に、血流からクレアチニンを除去する腎臓の能力の測定結果を、GFRを評価するのに使用できる。クレアチニンクリアランステストでは、24時間尿サンプルと24時間経って流れた血液サンプルの測定値に通常基づいて、尿内のクレアチニンレベルと血液内のクレアチニンレベルを比較する。
【0008】
クレアチニンクリアランスはGFR値に近いものであるが、基の細管におけるクレアチニンの分泌により、通常、過評価してしまう。24時間に渡るクレアチニンクリアランス(CrCl)は、CrCl(mls/min)=(UV×1000×1000)/P×1440として評価できる。ここで、UVは、24時間の尿内のクレアチニンの量であり、単位はmmol/24hである。Pは、血清クレアチニンであり、単位はmicromols/lである。1440は、24時間の対応する分の量である。一般的に、時間経過クレアチニンクリアランス評価式は、CrCl=(UCr×Uvol)/(PCr×Imin)として表現できる。ここで、UCrは、尿クレアチニンであり、単位はmg/dLである。Uvolは、尿の体積であり、単位はmLである。PCrは、プラズマ(血清)クレアチニンであり、単位はmLである。Iminは、時間であり、単位は分である。
【0009】
クレアチニンクリアランスは、また、評価式を利用して血清クレアチニンからも評価できる。例えば、クレアチニンクリアランスは、Cockroft-Gault式、CrCl=((140−年齢)×(体重)×123×(0.85(女性の場合))/Creatにより評価できる。ここで、Creatは、血清クレアチニンであり、単位はmicromol/lである。いくつかの組織は、腎臓疾病における食事変更(MDRD)の研究の式を使用して血清クレアチニンからGFRを評価することを推奨している。この式は、年齢、性別及び人種と組み合わせた血清クレアチニンを使用しており、GFRをGFR=186×(PCr−1.154×(年齢)−0.203×(0.742(女性の場合))×(1.210(黒人の場合)として評価している。ここで、GFRの単位はml/min/1.73mである。PCrは、血清クレアチニンであり、単位はmg/dlである。年齢は、単位は年である。
【0010】
しかしながら、これらのGFR評価式は、年齢及び体の大きさの極端、酷い栄養失調又は肥満、骨格筋の病気、対麻痺又は四肢麻痺、菜食主義の食事、急変する腎臓機能、腎臓により排泄される重要な毒性を含む薬剤を服用する前、又は妊娠等の場合に、不正確となる。かかる場合、時間経過(例えば、24時間)手続きは、時間を浪費するものであるが、そのような手続きが必要になる可能性がある。
【0011】
上述の各クレアチニンクリアランス算出が行われるときには、GFRを概算するためのクレアチニンクリアランスの算出には、一回の血清クレアチニンの測定が必要であるか、又はいくつかのケースでは、尿のクレアチニンの時間単位の収集が必要であり、これは不便であり、不正確となる可能性があった。重要なことは、いずれの評価方法論においても、GFR概算方法論は、単一の時点でのデータのみしか提供しないということである。
【0012】
しかしながら、限定するものではないがセプシス(感染症)や腎臓組織疾患のような多くの状況のために設定されたICU内の危篤状況の患者を管理するために、GFRの連続的監視がしばしば必要となる。更に、GFR率の知識及び尿の排出量に対するGFRの変化の率は、連続的なGFRの監視でのみ正確に得られるのであるが、それは治療意思決定にしばしば必要であるし、それは腎臓機能又はその機能の欠損を示すための単なる診断テストではない。
【0013】
出願人は、現在の手段と比較して、よりシンプルであり、侵襲性がなく、連続的(リアルタイムデータを提供する)に、腎臓機能を測定し、腎臓疾患を監視することが望ましいと、認識するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上から、ここでは、非侵襲連続的糸球体濾過率(GFR)評価システムを開示する。一実施形態における連続的GFR評価システムは、フォーリー(Foley)カテーテル、連続的尿クレアチニンセンサー、尿排出モニター、及びクレアチニンクリアランス算出回路を備えている。連続的GFR評価システムは、時間、血清クレアチニン、尿排出量、及び尿クレアチニンの関数であるクレアチニンクリアランスを測定する。上記のように、時間経過クレアチニンクリアランス評価式は、CrCl=(UCr×Uvol)/(PCr×Imin)として表現できる。ここで、UCrは、尿クレアチニンであり、単位はmg/dLである。Uvolは、尿の体積であり、単位はmLである。PCrは、プラズマ(血清)クレアチニンであり、単位はmLである。Iminは、時間であり、単位は分である。
【0015】
フォーリーカテーテルは、膀胱から尿を回収するために使用することができる。尿がそのままクレアチニンクリアランス測定システムに配給されてもよく、そのシステムは、尿の全排出量を測定する尿排出モニターを備えているので、前掲のクレアチニンクリアランス式のUvol値を提供している。尿排出モニターは、Uvol値をクレアチニンクリアランス算出回路に供給する。カテーテルに取り付けられているのは、尿クレアチニンの連続的監視のための流動クレアチニンセンサーであり、それにより前掲のクレアチニンクリアランス式のUCr値を、クレアチニンクリアランス算出回路に提供している。
【0016】
連続的光学バイオセンサーがクレアチニンの連続的検出及び測定に使用可能である。光学バイオセンサーは、他の分析物よりも特定の1つの分析物と相互反応する分析物特異性化学薬品を含んでいるセンサーと、光源と、光検出器とを備えている。そのセンサーは、他の分析物よりもとりわけクレアチニンとより相互反応する化学薬品を含んでいる。センサーは、カテーテルの一部を形成しているので、尿が体から排出されると、センサーがその尿の流れに晒され、その1つ以上の特性を変化させるが、それは尿内のクレアチニンの量に依存した予測可能な変化である。その後、光源がその変化したセンサーを照らすと、そのセンサーとの光学的な相互作用が起こる。光検出器がその光相互反応を検出し、その検出された光相互作用を表わす信号を、その光相互作用を解析して尿内のクレアチニンの濃度を判定するためのプロセッサー、ステートマシーン又は他の回路に送る。
【0017】
上記のクレアチニンクリアランス式の残りのパラメータは、血清クレアチニンPCrである。血清クレアチニンレベルは、時間的に急激には変化しないので、血液サンプルを、連続的GFRテストの開始に先立って患者から回収しておき、実験室で分析し、それにより血清クレアチニン値PCrを得るようにすればよい。血清クレアチニン値は、8時間又はそれ以上有効であるのだから、連続的に監視する必要はない、
【0018】
クレアチニンクリアランスの算出のためのパラメータが全て揃うと、クレアチニンクリアランスが算出される。例示のクレアチニンクリアランス算出回路は、連続的クレアチニンセンサーからの尿クレアチニン信号と、尿排出モニターからの尿の全排出量信号とを入力する。尿クレアチニン及び尿全排出量のデジタル信号が、経過時間信号と共にプロセッサーに転送される。クレアチニンクリアランス算出回路は、ユーザーインターフェースを備えており、それによりユーザーは開始時刻を設定でき、それにより全経過時間を決定でき、またそのユーザーインターフェースによりユーザーは実験室で得られた血清クレアチニン値を入力することができる。血清クレアチニン以外の他の全てのパラメータは、連続的に入力されるのであるから、クレアチニンクリアランス算出回路は、クレアチニンクリアランス(及び故にGFR)の評価値を、連続的に算出できる。
【0019】
クレアチニンクリアランス算出回路は、連続的に監視されて算出された各パラメータの1つ以上を印刷し、及び/又は表示し、並びに格納する連続的印刷機器又はグラフィックディスプレイ及びメモリも有するようにし、それにより尿クレアチニンレベル、尿排出量、及びGFRの時間変化と、それらの時間的関係を示すことができるようにしてもよい。
【0020】
これらの又は他の実施形態、方法、特徴、及び利点は、最初に概説される添付図面と併せて、以下の発明のより詳細な説明を参照すると、当業者にはより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、例示の連続的GFR評価システムを示す図である。
【図2a】図2aは、連続的にクレアチニンを検出して測定するために使用され得る例示の連続的光学バイオセンサーを示す図である。
【図2b】図2bは、連続的にクレアチニンを検出して測定するために使用され得る他の例示の連続的光学バイオセンサーを示す図である。
【図3】図3は、例示のクレアチニンクリアランス算出回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきである。図面は、必然的に拡縮されたものではないが、選択された実施形態を描いており、本発明の範囲を限定する意図ではない。詳細な説明は、発明の原理の例を描写するものであり、それを限定するものではない。この説明により、当業者は、発明を創出し利用できるようになるであろうし、この説明は、発明のいくつかの実施形態、適用例、各種態様、択一的形態及び使用を記述しており、また現時点において発明を実施するためのベストモードと考えられるものも含まれている。
【0023】
ここで記述される実施形態は、一般的に、腎臓を監視するための非侵襲連続的GFRモニターに関するものである。ここで記述されるような連続的GFRモニターは、限定するものではないがセプシス(感染症)や腎臓組織疾患のような多くの患者の異なる状況のために使用でき、治療意思決定に必要な情報を提供できるようなものであることに注意すべきである。ここで記述された連続的GFRモニターは、急性及び慢性の双方の腎臓疾患に適用できる。
【0024】
図1は、クレアチニンクリアランスを測定する例示の連続的GFR評価システム100を示しており、なお、他の要素も同様に監視可能である。クレアチニンクリアランスは、時間、血清クレアチニン、尿排出量、及び尿クレアチニンの関数である。上記のように、時間経過クレアチニンクリアランス評価式は、CrCl=(UCr×Uvol)/(PCr×Imin)として表現できる。ここで、UCrは、尿クレアチニンであり、単位はmg/dLである。Uvolは、尿の体積であり、単位はmLである。PCrは、プラズマ(血清)クレアチニンであり、単位はmLである。Iminは、時間であり、単位は分である。
【0025】
GFR評価システム100は、膀胱から尿を回収するためにフォーリーカテーテル102(連続的な尿を排出するために膀胱に挿入されるフレキシブルプラスチック管)のような尿回収機器を利用することができるが、尿を取り除く他の方法も採用できる。尿自体が、クレアチニンクリアランス測定システム104に分配されてもよい。クレアチニンクリアランス測定システム104は、尿の全排出量を測定する尿排出モニター106を備えており、それにより前掲のクレアチニンクリアランス式のUvol値を提供している。尿排出モニター106は、尿用レザバー(貯蔵タンク)108と、尿のレベルを感知して尿の全排出量を、尿の全体積値Uvolを連続的に供給するか、又は尿の全体積値Uvolを周期的間隔で供給することにより、リアルタイムで判定する電子“眼”110とを備えている。どちらの場合もここでの規定は“連続的”監視と考えている。尿排出モニターの例は、米国特許第4,343,316号に記述されており、ここではその全体内容を本願に援用する。商業的に利用できる尿排出モニターとしては、Bard CRITICORE Monitor がある。しかし、連続的に時間と尿排出量が測定できるものであればいかなる他の手段も採用できる。尿排出モニター106は、Uvol値をクレアチニンクリアランス算出回路114に送る。
【0026】
カテーテルに取り付けられているものは、尿クレアチニンを連続的に監視するための流動連続的クレアチニンセンサー112であり、それにより前掲のクレアチニンクリアランス式のUCr値を、尿クレアチニン濃度PCrを連続的に供給するか、又は尿クレアチニン濃度PCrを周期的間隔で供給することにより、クレアチニンクリアランス算出回路114に供給している。どちらの場合もここでの規定は“連続的”監視と考えている。連続的クレアチニンセンサー112は、当該技術分野で知られているクレアチニンセンサーのうちの1つであればよい。クレアチニンセンサーは、クレアチニンと反応する化学的認識構成部と、その反応を検出して測定する変換器構成部とを備えるバイオセンサーである。化学的認識構成部は、生物触媒(つまり酵素)であり、変換器は、電気化学的なもの(例えば電流滴定や電圧滴定)又は光学的なもの(例えば吸光度又は蛍光測定)が可能である。これらの技術を利用して作られたバイオセンサーの例が、A J Killiard and M R Smyth による”Creatinine biosensors: principles and designs”, Trends in Biotechnology, Volume 18, Number 10, October 1, 2000, pp. 433-37(以下、”Killeard”)に記述されており、ここではその全体内容を本願に援用する。
【0027】
一般的に、光学的クレアチニンセンサーが、尿の流れに光を照射する。その後、そのセンサーは、その尿の流れから戻ってきた光を測定し、反射、屈折、及び吸収を見積もる。分光の原理に基づけば、受けた光は、尿の内容物を示していることになる。
【0028】
図2aは、クレアチニンを連続的に検出して測定するために使用され得る連続的光学バイオセンサー200を示している。図2aに示された構成は、単なる例であり、同じ基本原理を採用した他の構成も本発明の範囲内にあるということが特にここでは強調される。図2aの光学バイオセンサー200は、両端にカテーテルが挿入できるスリーブ212である。スリーブ212の壁に一体化されているのは、他の分析物よりも特定の1つの分析物と相互反応する分析物特異性化学薬品を含有するセンサー202と、光源204と、光検出器206である。そのセンサー202は、他の分析物よりもとりわけクレアチニンとより相互反応する化学薬品を含んでいる。センサー202は、カテーテル208の一部を形成しているので、尿210が体から排出されると、センサーがその尿の流れに晒され、その1つ以上の特性を変化させるが、それは尿内のクレアチニンの量に依存した予測可能な変化である。その後、光源204がその変化したセンサー202を照らすと、そのセンサーとの光学的な相互作用が起こる。光検出器206がその光相互反応を検出し、その検出された光相互作用を表わす信号を、その光相互作用を解析して尿内のクレアチニンの濃度を判定するためのプロセッサー、ステートマシーン又は他の回路に送る。光学バイオセンサー200の一般的な原理は、Ganapati R. Mauze et al.(以下、”Mauze”)による米国特許第6,379,969号に概して開示されており、ここではその全体内容を本願に援用する。Mauze は、特にクレアチニンの流動検出及び測定を意図したものではないが、Irvin Kalb(以下、”Kalb”)による米国特許第5,704,353号が、カテーテルと一体化した、流動監視のための光学センサーを開示しており、上記文献の内容は、ここでは本願に援用されるものとする。
【0029】
他の別の光学センサー設計が図2bに例示されている。図2bにおいて、スリーブ212の内部に渡って配設されているのは、他の分析物よりも特定の1つの分析物と相互反応する分析物特異性化学薬品を含有するセンサー202である。センサー202は、スリーブ212内を流れる尿210と最大限に接触するような位置付けとなっている。光源204がセンサー202を照らすと、そのセンサーとの光学的な相互作用が起こる。スリーブ212の反対側に位置付けされている光検出器206がその光相互反応を検出し、その検出された光相互作用を表わす信号を、その光相互作用を解析して尿内のクレアチニンの濃度を判定するためのプロセッサー、ステートマシーン又は他の回路に送る。
【0030】
センサーの他のタイプのものとしては、クラーク(Clark)電極があり、それは、クレアチニン分子との相互反応が起こると変化する化合物で被膜された電極であり、クレアチニンレベルを測定するために使用することができる電圧勾配を提供するものである。クラーク電極クレアチニンセンサーは、Vu Khue Nguyen et al. による”Immunized Enzyme Electrode for Creatinine Determination in Serum”, Analytical Chemistry, Volume 63, pp. 611-14(以下、”Nguyen”)に議論されており、ここではその全体内容を本願に援用する。Nguyenは、血清内のクレアチニンを検出するためのクラーク電極を開示しているものの、その概念は、一般的に、尿にも同様に適用できる。更に他のタイプのセンサーとしては、オプトロードがあり、それは光学式とクラーク電極との組合せである。
【0031】
連続的酵素バイオセンサーもまた、ここに記述された実施形態による連続的なクレアチニンの検出と測定に使用できる。酵素バイオセンサーの原理は、Ansgar Erlenkottor et al. による文献名”Biosensors and flow-through system for the determination of creatinine in hemodialysite”, in the Analytical and Bioanalytical Chemistry Journal, December 15, 2001(以下、”Erlenkottor”)に開示されており、ここではその全体内容を本願に援用する。Erlenkottorのバイオセンサーは、血液透析液に関しての議論であるが、同じ原理が一般的に尿にも適用できる。基本的には、そのセンサーは、白金作業電極、銀/銀塩化物参照電極、及び炭素対向電極を有している。クレアチニナーゼ(CA)、クレアチナーゼ(CI)及びサルコシン酸化酵素(SO)による複合酵素シーケンスが、作業電極に適用され、作業電極と酵素層の間に形成されたナフィオン(Nafion)等の重合体の半透膜により、作業電極から阻害物質を排除する。作業電極が血液透析液(又は尿)に触れると、電流滴定により検出可能な量の過酸化水素が生成される。
【0032】
前掲のクレアチニンクリアランス式の残りのパラメータは、血清クレアチニンPCrである。ここで記述されている実施形態は、血清クレアチニンレベルは、時間経過に対して急激には変化しない、という事実を利用している。故に、血液サンプルを、連続的GFRテストの開始に先立って患者から回収しておき、実験室で分析し、それにより血清クレアチニン値PCrを得るようにすればよい。血清クレアチニン値は、8時間又はそれ以上有効であるのだから、連続的に監視する必要はない、
【0033】
クレアチニンクリアランスの算出のためのパラメータが全て揃うと、クレアチニンクリアランスが算出できる。それらの値は、当業者に理解されるように、プロセッサー、ステートマシーン又は他の回路に供給され、必要であればアナログ対デジタル(A/D)変換器を利用して、クレアチニンクリアランスが算出される。
【0034】
図3は、例示のクレアチニンクリアランス算出回路300を示しており、連続的クレアチニンセンサーからの尿クレアチニン信号304と尿全排出量信号306とがアナログ形式であるならば、それらの信号を受け取るA/D変換器302が含まれる。尿クレアチニン308及び尿全排出量310のデジタル値が、クロック回路316からの経過時間信号314と共にプロセッサー312に転送される。クレアチニンクリアランス算出回路300は、ユーザーインターフェース318を備えており、それによりユーザーは開始時刻320を設定でき、それにより全経過時間を決定でき、またそのユーザーインターフェース318によりユーザーは実験室で得られた血清クレアチニン値322を入力することができる。血清クレアチニン322以外の他の全てのパラメータは、連続的に入力されるのであるから、クレアチニンクリアランス算出回路300は、クレアチニンクリアランス(故にGFR)の評価値を、連続的に算出できる。
【0035】
クレアチニンクリアランス算出回路300は、連続的に監視されて算出された各パラメータの1つ以上を印刷し、及び/又は表示し、並びに格納する連続的印刷機器324又はグラフィックディスプレイ326及びメモリも有し、それにより尿クレアチニンレベル、尿排出量、及びGFRの時間変化と、それらの時間的関係を示すことができるようにしてもよい。その表示又は印刷は、パラメータの連続的なグラフを提供できるし、周期的な間隔での各データでも提供できる。どちらの場合もここでの規定は“連続的”表示又は印刷と考えている。
【0036】
本発明は記述され、また本発明の特定の例が描写されてきた。本発明は、特定の各種態様や例示的図面に関して記述されてきたが、当業者は、本発明がそれらの記述された各種態様や図面に限定されるものではない、ということが認識できるであろう。加えて、上述の方法及びステップは、各事象がある順序で起こることを示しているが、当業者は、それらのステップの順序は変更でき、かかる変更も発明の各種対応ということになる、ということを認識できるであろう。更に、上述のように順番に行えると共に、各ステップは、可能であるならば平行して同時に実行できる。故に、本発明の各種の態様、すなわち、請求項に見られる発明の開示、又はそれと等価なものの精神の範囲内にある限りは、この特許は同様にそれらの各種態様にも掛ってくるものとして意図している。最後に、本明細書において引用した全ての公知文献及び特許出願は、それらの各公知文献や特許出願が、ここに具体的に個々に記載されているが如きにその全体が援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出された尿内のクレアチニン濃度の指標を提供するように構成された連続的クレアチニンセンサーと、
尿の全排出量の指標を提供するように構成された尿排出モニターと、
前記連続的クレアチニンセンサー及び前記尿排出モニターに接続され、前記尿内のクレアチニン濃度の指標、前記尿の全排出量、血清クレアチニンレベル及び経過時間測定値を入力し、連続的糸球体濾過率(GFR)を表わすクレアチニンクリアランス値を算出するクレアチニンクリアランス算出回路と、
を備えることを特徴とする連続的糸球体濾過率(GFR)評価システム。
【請求項2】
前記クレアチニンクリアランス算出回路は、ユーザーが血清クレアチニンレベルを入力できるように構成されたユーザーインターフェースを備えることを特徴とする請求項1に記載の連続的GFR評価システム。
【請求項3】
前記クレアチニンクリアランス算出回路は、前記評価GFR、前記尿の全排出量、及び前記クレアチニン濃度のうちの1つ以上を表示するように構成されたディスプレイ機器を備えることを特徴とする請求項1に記載の連続的GFR評価システム。
【請求項4】
前記尿を排出するためのカテーテルを更に備え、
前記連続的クレアチニンセンサーは、前記カテーテルに接続され、前記カテーテルを通して排出された前記尿内の前記クレアチニン濃度を感知するように構成され、
前記尿排出モニターは、前記カテーテルに接続され、前記カテーテルを通して排出された前記尿を受け取るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の連続的GFR評価システム。
【請求項5】
前記連続的クレアチニンセンサーは、光学センサーであることを特徴とする請求項1に記載の連続的GFR評価システム。
【請求項6】
前記光学センサーは、クレアチニンを受け取るバイオセンサーと、前記バイオセンサーが前記クレアチニンに晒された後に、前記バイオセンサーを通して光を照射する光源と、前記バイオセンサーを通して受け入れた光を検出するための光検出器と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の連続的GFR評価システム。
【請求項7】
前記バイオセンサーは、前記連続的クレアチニンセンサー内に形成され、尿の流れに晒されるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の連続的GFR評価システム。
【請求項8】
前記連続的クレアチニンセンサーは、クラーク電極であることを特徴とする請求項1に記載の連続的GFR評価システム。
【請求項9】
前記連続的クレアチニンセンサーは、酵素センサーであることを特徴とする請求項1に記載の連続的GFR評価システム。
【請求項10】
前記クレアチニンクリアランス算出回路は、前記尿内の前記クレアチニン濃度の指標、前記尿の全排出量、前記血清クレアチニンレベル、及び前記経過時間測定値を入力するように構成されるプロセッサーを備えることを特徴とする請求項1に記載の連続的GFR評価システム。
【請求項11】
排出された尿内のクレアチニン濃度を連続的に判定し、
前記排出された尿の全排出量を連続的に判定し、
前記連続的に判定された尿内のクレアチニン濃度、前記連続的に判定された尿の全排出量、血清クレアチニンレベル及び経過時間測定値に基づき、糸球体濾過率(GFR)を表わすクレアチニンクリアランス値を連続的に算出することを特徴とする糸球体濾過率(GFR)を連続的に評価する方法。
【請求項12】
前記クレアチニンクリアランス値の連続的な算出の開始前に、血液サンプルを採取し、そのサンプルについて血清クレアチニンのテストを行うことにより、前記血清クレアチニンレベルを生成することが更に行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記評価GFR、前記尿の全排出量、及び前記クレアチニン濃度のうちの1つ以上を連続的に表示することが更に行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
カテーテルを使用して前記尿を排出し、
前記カテーテルを通して排出された前記尿内の前記クレアチニン濃度を感知し、
前記カテーテルを通して排出された前記尿の全体量を判定することにより、前記尿の全排出量を判定することが更に行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
連続的光学クレアチニンセンサーを使用して、前記排出された尿内のクレアチニン濃度を連続的に判定することが更に行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
クレアチニン反応バイオセンサーを前記クレアチニンに晒し、前記バイオセンサーを通して光を照射し、前記バイオセンサーを通して受け入れた光を検出することにより、前記排出された尿内の前記クレアチニン濃度を感知することが更に行われることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記排出された尿の流れの中に前記バイオセンサーを置くことが更に行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
クラーク電極を使用して、前記排出された尿内の前記クレアチニン濃度を感知することが更に行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
酵素センサーを使用して、前記排出された尿内の前記クレアチニン濃度を感知することが更に行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
クレアチニンクリアランス式、CrCl=(UCr×Uvol)/(PCr×Imin)であって、UCrは尿クレアチニンであり、単位はmg/dLであり、Uvolは尿の体積であり、単位はmLであり、PCrは血清クレアチニンであり、単位はmLであり、Iminは時間であり、単位は分である式を連続的に算出することを特徴とする糸球体濾過率(GFR)の連続評価値を提供する方法であって、
Cr値は、排出された尿内のクレアチニン濃度を連続的に感知して監視することにより判定され、
vol値は、前記排出された尿の全排出量を連続的に測定することにより判定され、
minは、GFRの前記連続評価値の提供の間中、追跡される経過テスト時間であり、
Cr値は、GFRの前記連続評価値の提供の開始前に、血液サンプルから得られ、GFRの前記連続評価値の提供の間中、一定であると仮定されることを特徴とするGFRの連続評価値を提供する方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−530056(P2010−530056A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550971(P2009−550971)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/054207
【国際公開番号】WO2008/103627
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(591018693)シー・アール・バード・インコーポレーテッド (106)
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【Fターム(参考)】