説明

腐敗検査装置

【課題】円筒状の密封容器に封入された、特に食品や薬品などの液体状内容物の腐敗の判定を、非破壊で、且つ簡便に行える腐敗検査装置を提供するものである。
【解決手段】液状内容物が封入された円筒状の密封容器の前記液状内容物の腐敗検査装置であって、前記円筒状の密封容器を縦置きに電力により回転させる手段と、その時の電流値を計測する手段と、前記電流値からトルクを計測する手段と、腐敗を判定する手段とを具備したことを特徴とする腐敗検査装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の密封容器内に封入された、主に液体状の内容物の状況を非破壊で計測し、その内容物が腐敗しているか否かの判定をする腐敗検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
包装容器に封入された内容物、特に、食品や薬品などの雑菌等による凝固等の変質を検出する方法として、特許文献1,2が知られている。これらの方法は、X線を用いるため、容器が不透明であっても非破壊で検査できる利点をもつが、X線源そのものが高価であり、また、人体への被爆に対する防護を施す必要があるので簡便な方法とは言いがたい。
【0003】
また、他の方法としては、液状内容物を封入した密封容器に振動を与えて、液体内容物の発する音をマイクロホンで検出してアンプで増幅し、制御器で前記音の強さ、または周波数により前記液体内容物が腐敗しているか否かを判定する方法が提案されている(特許文献3、参照)。しかしながら、上記の振動を与えその音の伝搬による検出方法は、容器の材質の影響が大きく、内容物の振動に起因する信号の割合が小さくなりS/Nが悪くなる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2931838号公報
【特許文献2】特開2001−242100号公報
【特許文献3】特開2000−329753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、円筒状の密封容器に封入された液体状内容物の腐敗の判定を、非破壊で、且つ簡便にできる腐敗検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためものであり、本発明の請求項1に係る発明は、液状内容物が封入された円筒状密封容器の前記液状内容物の腐敗検査装置であって、前記円筒状密封容器を縦置きに電力により回転させる手段と、その時の電流値を計測する手段と、前記電流値からトルクを計測する手段と、腐敗を判定する手段とを具備したことを特徴とする腐敗検査装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、円筒状の密封容器に封入された液体状内容物の腐敗の判定を、非破壊で、且つ簡便にできる腐敗検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る腐敗検査装置のブロック構成図。
【図2】本発明の一実施形態に係る電流値−トルクの模式的相関図。
【図3】本発明の一実施形態に係る電流値−回転時間(回転開始→停止)の模式的相関図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。しかしながら
、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明は、特に、食品や薬品などの液状の内容物が、雑菌等により凝固等の変質を起こして腐敗する状態を検出するものであり、凝固等の変質による液状内容物の挙動変化、すなわち液状内容物の流動特性の変化を、回転による慣性モーメントの差異を利用して検出することにより、前記液状内容物が封入されている筒状密封容器を非破壊で腐敗の判定をする腐敗検査装置である。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る腐敗検査装置のブロック構成図を示す。また、図2は、図1に示す腐敗検査装置を用いて計測した、本発明の一実施形態に係る電流値−トルクの模式的相関図を示す。またさらに、図3は、図1に示す腐敗検査装置を用いて計測した、本発明の一実施形態に係る電流値−回転時間(回転開始→停止)の模式的相関図を示す。
【0012】
本発明の腐敗検査装置は、円筒状密封容器(1)を載せる回転台(2)と、該回転台を回転させるモーター(3)と、該モーター(3)に流れる電流を計測する電流値計測器(4)と、計測された電流値からトルクを算出するトルク計測機器(5)と、得られた電流値やトルクから腐敗を判定する腐敗判定機器(6)から構成されるものである。
【0013】
具体的には、液状内容物が封入された円筒状密封容器(1)を、前記回転台(2)に載せ、モーター(3)により一定時間回転させた後、停止し、その間の時間推移に対する電流値を前記電流値計測器(4)により計測、記録し、また、その電流値に基づきトルク計測機器(5)によりトルクを算出し、予め決めた腐敗の判定基準に基づき比較判断する腐敗判定機器(6)により腐敗判定をする腐敗検査装置である。
【0014】
前記腐敗の判定基準は、先ず、予め、上述の腐敗検査装置を用いて、腐敗検査の対象となる液状内容物の正常物を封入した直後の円筒状密封容器(1)より、電流値とトルクを求め、正常な状態での電流値−トルク相関図を作成する。
【0015】
次に、前記腐敗判定前記液状内容物を意識的に変質の程度を変えてサンプルを作製し、このサンプルそれぞれを封入した前記円筒状密封容器を用いて、上述した方法にて電流値−トルク相関図を作成し、例えば、図2に示す、電流値(I)/トルク(N)の傾き(m)の検量線を作成して、腐敗閾値を決定する。腐敗判定機器(6)はこの電流値(I)/トルク(N)の傾き(m)の検量線、及びそれから得られた腐敗閾値が入力されたものであり、腐敗検査対象物の腐敗を比較判定をするものである。
【0016】
従って、実際の腐敗検査としては、対象となる液状内容物が封入された円筒状密封容器(1)を、前記回転台(2)に載せ、モーター(3)により一定時間回転させた後、停止し、その間の時間推移に対する電流値を前記電流値計測器(4)により計測、記録し、また、その電流値に基づきトルク計測機器(5)によりトルクを算出して、前記腐敗閾値が入力された腐敗の判定基準に基づき、腐敗の判定をするものである。
【0017】
前記腐敗の判定基準を決める方法としては、上述の電流値(I)/トルク(N)の傾き(m)から求める以外に、例えば、図2に示す、前記電流値−トルク相関図から、最大電流値(h)を計測して、予め算出した電流値の腐敗閾値(ISH )との差異から得ることもできる。
【0018】
また、前記腐敗閾値を決める方法としては、図3に示す、本発明の一実施形態に係る電流値−回転時間(回転開始→停止)の模式的相関図から、例えば、回転開始から電流値が定常状態になるまでの、電流値(I)/回転時間(T)の傾き(m’)と、予め算出した
傾き(電流/回転時間)の腐敗閾値(m’SH )との差異から得ることもできる。
【0019】
また更には、回転停止時のトルクの差異からも腐敗の判定をすることができる。本発明は、上述の腐敗の判定方法を用いた腐敗検査装置に限定するものではない。
【0020】
本発明に適用できる円筒状密封容器としては、遮蔽性の高い汎用の金属缶容器、プラスチックと紙の複合容器、アルミ箔と紙の複合容器、プラスチックとアルミ箔と紙との複合容器などであるが、この限りではない。
【0021】
また、本発明の腐敗検査の対象となる液状内容物としては、食品や薬品などであり、均一な液体、分散系の不均一な液体、高粘度液体、低粘度液体などであり、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0022】
1・・・・・液体状内容物を封入した円筒状容器
2・・・・・回転台
3・・・・・モーター
4・・・・・電流値計測器
5・・・・・トルク計測機器
6・・・・・腐敗判定機器
I・・・・・電流値
SH ・・・電流値の腐敗閾値
I’SH ・・電流値の腐敗閾値
N・・・・・トルク
m・・・・・傾き(電流/トルク)
SH ・・・傾き(電流/トルク)の腐敗閾値
m’・・・・傾き(電流/回転時間)
m’SH ・・傾き(電流/回転時間)の腐敗閾値
h・・・・・最大電流値
h’・・・・最大電流値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状内容物が封入された円筒状密封容器の前記液状内容物の腐敗検査装置であって、前記円筒状密封容器を縦置きに電力により回転させる手段と、その時の電流値を計測する手段と、前記電流値からトルクを計測する手段と、腐敗を判定する手段とを具備したことを特徴とする腐敗検査装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−173085(P2012−173085A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34362(P2011−34362)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)