説明

腐植酸資材およびその製造方法

【課題】粉化の少ない腐植酸資材とその容易な製造方法を提供する。
【解決手段】本発明はワックスおよび/または油脂類で表面処理されてなる粒状の腐植酸資材である。この場合において、ワックスおよび/または油脂類の含有率が0.1〜1.0質量%であること好ましい。また、ワックスおよび/または油脂類の融点が40〜100℃であるもの、特にパラフィンワックスが好ましい。また、本発明は、粒状の腐植酸資材原料を30〜60℃の加熱下で転動しながら、溶融したワックスおよび/または油脂類を噴霧することを特徴とする腐植酸資材の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐植酸資材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腐植酸は植物体の生育に有用な天然由来の高分子有機物であり、例えばリン酸肥料の肥効向上(リン酸の土壌への固定化防止)、根の活力向上、土壌の保肥力向上等の長所がある。このような長所を利用して、腐植酸と苦土分とを混合した腐植酸苦土肥料や、更にはこの腐植酸苦土肥料にりん酸肥料を混合した腐植酸りん肥、腐植酸苦土肥料に石灰質肥料を混合した腐植酸石灰肥料などが市販されている。腐植酸苦土肥料は、例えば亜炭や草炭等の若年炭と硝酸を反応させて腐植酸を生成させ、それを塩基性マグネシウム含有物質で中和することによって製造される(特許文献1)。しかしながら、これらの腐植酸資材は、摩擦や圧力により粉化しやすいものであるため、取扱い時に発塵が多く作業環境を悪化させていた。
【特許文献1】特公昭40−14122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、粉化の少ない腐植酸資材を提供することである。また、本発明の別の目的は、このような特性を有する腐植酸資材を生産性良く製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ワックスおよび/または油脂類で表面処理されてなる粒状の腐植酸資材である。この場合において、ワックスおよび/または油脂類の含有率が0.1〜1.0質量%であること好ましい。また、ワックスおよび/または油脂類の融点が40〜100℃であるもの、特にパラフィンワックスが好ましい。
【0005】
さらに、本発明は、粒状の腐植酸資材原料を30〜60℃の加熱下で転動しながら、溶融したワックスおよび/または油脂類を噴霧することを特徴とする腐植酸資材の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、粉化の少ない腐植酸資材とその容易な製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における粒状の腐植酸資材とは、腐植酸単独または腐植酸とその他資材との混合物を、既知の方法で造粒したものであると定義される。その粒度は0.5mm以上であることが好ましく、特に1〜5mmであることが好ましい。造粒方法としては、例えば転動造粒、押し出し造粒等の常套でよいが、処理の容易さから転動造粒が好ましい。また、造粒に際し、例えば廃糖蜜、リグニンスルホン酸等の結合材および/または例えばリン酸、硫酸等の反応剤などからなるバインダーを、成分保証に差し支えない範囲で用いることができる。腐植酸単独ないしはその他資材が例えば鉱物、土壌等であるときは土壌改良材などとして使用され、その他資材が例えば肥料等であるときは肥料としても使用される。本発明はこのような腐植酸資材をワックスおよび/または油脂類で表面処理したものである。
【0008】
本発明で用いる腐植酸は、泥炭や風化炭等天然に産出されるもの、亜炭の硝酸酸化等により人工的に製造されるもの、および両者の混合物のいずれであってもよい。また、その他の資材についても特に制限はなく、それを例示すれば、例えば石灰、珪石、粘土、天然石等の各種天然無機資材、例えば硫安、石灰窒素、熔成りん肥、珪酸質肥料等の各種肥料、例えばアルミナ粉末、シリカ粉末、ゼオライト粉末等の各種セラミックス粉末、例えば鉄粉末、ミルスケール等の各種金属粉末、更には土壌、堆肥などである。一方、本発明で用いるワックスおよび/または油脂類としては、例えばパラフィンワックス、蜜ろう、カルナバワックス等のワックス、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸、例えば牛脂等の油脂、例えば牛脂硬化油、大豆硬化油、菜種硬化油等の油脂の硬化油などである。これらの中でも融点が40〜100℃であるワックスおよび/または油脂類が好ましく、特にパラフィンワックスが最適である。ワックスおよび/または油脂類の含有率は、0.1〜1.0質量%であることが好ましく、特に0.2〜0.8質量%が好ましい。0.1質量%未満であると粉化抑制の十分な効果はなく、また1.0質量%をこえても粉化抑制効果はそれほど向上しない。表面処理の大きさを全農式粉化率測定法による粉化率で示せば、好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0009】
本発明の腐植酸資材の製造方法は、粒状の腐植酸資材原料を30〜60℃加熱下で転動しながら、溶融したワックスおよび/または油脂類を噴霧するものである。転動装置としては、例えばパン型、ドラム型等、通常のもので十分であるが、本発明は加熱工程を経ること考慮するとドラム型が好ましい。加熱温度が30℃未満ではワックスおよび/または油脂類は腐植酸資材の表面に単に斑点状に付着している状態となり、また60℃をこえると、ワックスおよび/または油脂類が腐植酸資材の奥深い内部にまで浸透し、いずれも粉化抑制効果が小さくなる。特に好ましい加熱温度は35〜50℃である。加熱時間は1〜10分が好ましく、特に2分〜5分が好ましい。
【実施例】
【0010】
実施例1〜6 比較例1〜5
亜炭を硝酸で酸化分解して腐植酸を製造し、この腐植酸80質量部と軽焼マグネシア5質量部および蛇紋岩15質量部を混合後、転動造粒機を用い造粒し、粒度1〜5mmの腐植酸資材(腐植酸苦土肥料)を得た。この腐植酸資材をドラム型転動装置(直径50cm×長さ1m)に投入し、表1に示す温度で5回転/分で転動しながら、ワックスおよび/または油脂類を表1に示す割合で噴霧し5分間転動した。得られた腐植酸資材の粉化率を全農式粉化率測定法に従って測定した。それらの結果を表1に示す。ここで、全農式粉化率の測定法とは、試料100gを35gの磁性ボール3個を入れた磁性ボールミルで75回転/分、15分間回転させた後、目開き1.0mm篩下の質量を測定し、試料に対する百分率を算出する方法である。
【0011】
【表1】

【0012】
実施例7
風化炭(天然腐植酸)95質量部に廃糖蜜5質量部を加え、転動造粒により粒状の腐植酸資材を製造し、それを実施例2と同じ条件で表面処理したところ、粉化率は0.3%であった。
【0013】
実施例8
亜炭を硝酸で酸化分解して製造した腐植酸40質量部、熔成りん肥50質量部、リン酸液10質量部を加え、転動造粒により粒状の腐植酸りん肥を製造し、それを実施例2と同じ条件で表面処理したところ、粉化率は0.2%であった。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の腐植酸資材は、土壌改良材および肥料などとして使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックスおよび/または油脂類で表面処理されてなる粒状の腐植酸資材。
【請求項2】
ワックスおよび/または油脂類の含有率が0.1〜1.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の腐植酸資材。
【請求項3】
ワックスおよび/または油脂類が、融点が40〜100℃のワックスおよび/または油脂類であることを特徴とする請求項1又は2に記載の腐植酸資材。
【請求項4】
ワックスおよび/または油脂類が、パラフィンワックスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の腐植酸資材。
【請求項5】
粒状の腐植酸資材原料を30〜60℃の加熱下で転動しながら、溶融したワックスおよび/または油脂類を噴霧することを特徴とする腐植酸資材の製造方法。

【公開番号】特開2006−273648(P2006−273648A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94066(P2005−94066)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】