説明

腐熟度判定方法及び腐熟度判定装置

【課題】
手間があまりかからず短期間で被判定コンポストの腐熟度を判定することができる腐熟度判定方法及び腐熟度判定装置を提供する。
【解決手段】
被判定コンポストについて、その腐熟度を判定するための腐熟度判定方法において、被判定コンポストの所定日間の再コンポスト化を図り、当該再コンポスト化過程の炭酸ガス発生量を測定する測定工程S1と、該測定工程S1で得られた炭酸ガス発生量の時間に対する累積値に対して非線形最適化法を適用して、Q=Ccexp[−α(t−tL)]なる関係式の各パラメータを推定する演算工程S2と、該演算工程S2で得られた関係式と測定工程S1で得られた炭酸ガス発生量の実測値との相関係数を求め、当該相関係数に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定する判定工程S3とを含んだものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被判定コンポストの腐熟度を精度よく判定することができる腐熟度判定方法及び腐熟度判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時において、環境保全意識が著しく向上しており、例えば生ゴミ等の有機質廃棄物を腐熟させ、コンポスト(肥料となり得る堆肥)として再利用する試みが盛んとなっている。有機質廃棄物をコンポスト化させるには、当該有機質廃棄物に所定の微生物を供給し、その微生物に有機質を分解させることが必要とされるのであるが、分解が少ないと腐熟が不十分とされる一方、分解し過ぎると過熟となってしまい、何れの場合も、肥料として使用した場合、植物の育成に障害が生じる。
【0003】
かかる事情により、コンポスト(被判定コンポスト)がほどよく腐熟されているか否かを判定することが必要とされており、従来より、幼植物試験法と呼ばれる腐熟度判定方法が提案されている。かかる幼植物試験法は、被判定コンポストを土壌に混合して実際に植物を植え、その育成状況を数週間観察することにより、当該被判定コンポストの腐熟度を判定するものであった。尚、かかる幼植物試験法の如き先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の幼植物試験法の如き腐熟度判定方法においては、被判定コンポストを肥料として実際に植物を植え、その育成状況に基づき腐熟度を判定するものであったため、以下の如き問題があった。即ち、実際に植物を植えて育成するにあたり、再現性のよい育成方法を採用しなければならず、極めて手間がかかるものであるとともに、育成状況の観察が長期間(上記の如く数週間)必要であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、手間があまりかからず短期間で被判定コンポストの腐熟度を判定することができる腐熟度判定方法及び腐熟度判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、被判定コンポストについて、その腐熟度を判定するための腐熟度判定方法において、前記被判定コンポストの所定日間の再コンポスト化を図り、当該再コンポスト化過程の炭酸ガス発生量を測定する測定工程と、該測定工程で得られた炭酸ガス発生量の時間に対する累積値に対して非線形最適化法を適用して、Q=Ccexp[−α(t−tL)](但し、Qは炭酸ガス発生量、Ccは被判定コンポスト中の易分解性炭素量、αは分解度、tは時間及びtLは微生物活性開始までの遅れ時間とする)なる関係式の各パラメータを推定する演算工程と、該演算工程で得られた関係式と前記測定工程で得られた炭酸ガス発生量の実測値との相関係数を求め、当該相関係数に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定する判定工程とを含んだことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の腐熟度判定方法において、前記測定工程における再コンポスト化の所定日数を3日間とするとともに、演算工程において用いられる関係式の遅れ時間tLを強制的に0として当該関係式のパラメータをCcとαのみとし、非線形最適法を適用し、前記判定工程における相関係数に基づく腐熟度の判定を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の腐熟度判定方法において、前記判定工程は、前記相関係数に加え、前記演算工程で推定されたパラメータに基づいて算出される被判定コンポストの有機物分解率に基づいて被判定コンポストの腐熟度の判定をすることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、被判定コンポストについて、その腐熟度を判定するための腐熟度判定装置において、被判定コンポストを所定条件にて収容し、当該被判定コンポストの3日間の再コンポスト化を図り得る収容手段と、該収容手段による再コンポスト化過程の炭酸ガス発生量を測定する測定手段と、該測定手段で得られた炭酸ガス発生量の時間に対する累積値に対して非線形最適化法を適用して、Q=Ccexp[−αt](但し、Qは炭酸ガス発生量、Ccは被判定コンポスト中の易分解性炭素量、αは分解度、tは時間とする)なる関係式の各パラメータを推定する演算手段と、該演算手段で得られた関係式と前記測定手段で得られた炭酸ガス発生量の実測値との相関係数を求め、当該相関係数に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の腐熟度判定装置において、前記判定手段は、前記相関係数に加え、前記演算工程で推定されたパラメータに基づいて算出される被判定コンポストの有機物分解率に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、Q=Ccexp[−α(t−tL)]なる関係式の各パラメータを推定し、当該関係式と炭酸ガス発生量の実測値との相関係数に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定するので、測定工程における再コンポスト化の期間を著しく低減することができ、手間があまりかからず短期間で被判定コンポストの腐熟度を判定することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、関係式の遅れ時間tLを強制的に0として当該関係式のパラメータをCcとαのみとしているので、例えば3日間とした極めて短期間の再コンポスト化により腐熟度が良好なものと未熟なものとの差を明瞭とすることができ、精度のよい腐熟度の判定を行うことができる。
【0013】
請求項3又は請求項5の発明によれば、判定工程又は判定手段は、相関係数に加え、演算工程で推定されたパラメータに基づいて算出される被判定コンポストの有機物分解率に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定するので、更に精度のよい腐熟度の判定を行うことができる。また、算出された有機物分解率により、被判定コンポストの過熟も容易に判定することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、測定手段における再コンポスト化の期間を著しく低減することができ、手間があまりかからず短期間で被判定コンポストの腐熟度を判定することができるとともに、再コンポスト化の期間が3日間と極めて短いため、装置に撹拌手段等を設ける必要がなくなり、装置構成を簡素化し得るとともに製造コストやメンテナンスコスト等を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る腐熟度判定方法は、腐熟度を判定したいコンポスト(被判定コンポスト)を更にコンポスト化(再コンポスト化)し、その再コンポスト化により発生した炭酸ガス発生量を測定するとともに、該測定値の時間に対する累積値に対して非線形最適化法を適用して、Q=Ccexp[−α(t−tL)]なる関係式の各パラメータを推定し、かかる関係式と再コンポスト化時の炭酸ガス発生量(実測値)とを比較することにより、腐熟の良否を判定するものである。
【0016】
即ち、コンポスト化における炭酸ガスの発生量は、易分解性有機物濃度の1次に比例する、所謂1次反応であることが分かっているため、かかる関係を数式で表すと、上記の如き関係式(Q=Ccexp[−α(t−tL)])(但し、Qは炭酸ガス発生量、Ccは被判定コンポスト中の易分解性炭素量、αは分解度、tは時間及びtLは微生物活性開始までの遅れ時間とする)となる。本発明においては、この関係式を利用することにより腐熟度判定期間を短縮し得ることに着目したのである。
【0017】
上記観点から、本実施形態においては、図1に示すように、測定工程S1と、演算工程S2と、判定工程S3とを経て被判定コンポストの腐熟度を判定するよう構成されている。測定工程S1は、所定量の被判定コンポストに微生物を供給するとともに空気(炭酸ガスを捕捉したもの)を供給することにより、所定期間(例えば10日間或いは3日間)の再コンポスト化を図るとともに、当該再コンポスト化の過程における炭酸ガス発生量(Ci)を測定するための工程である。
【0018】
演算工程S2は、測定工程S1で得られた炭酸ガス発生量の時間に対する累積値に対して非線形最適化法(例えばマルカート法など)を適用して、関係式(Q=Ccexp[−α(t−tL)])の各パラメータを推定する工程である。即ち、再コンポスト化における経過時間毎の累積炭酸ガス発生量(実測値)が測定工程S1にて把握されているので、かかる実測値に非線形最適化法を適用すれば、関係式の未知数である各パラメータ(Cc、α及びtL)が導かれ、Q(累積の炭酸ガス発生量)とt(経過時間)との関係式を得ることができるのである。
【0019】
判定工程S3は、演算工程S2で得られた関係式と測定工程S1で得られた炭酸ガス発生量の実測値との相関係数を求め、当該相関係数に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定する工程である。かかる相関係数による、被判定コンポストの腐熟度の判定について、以下の実証に基づき更に具体的に説明する。
【0020】
コンポスト化処理施設におけるコンポスト化過程のサンプル(K1〜K6)を採取し、測定工程S1にてそれぞれ10日間の再コンポスト化を行った際の炭酸ガス発生量を測定した。尚、サンプルK1〜K6は、コンポスト化処理施設における発酵に実際に供されたもので、発酵開始時点(0日)、発酵開始から(以下同じ)10日、20日、32日、52日、72日経過したものをそれぞれ使用した。
【0021】
サンプルK1〜K6からの炭酸ガス発生量は、上記のように、再コンポスト化の過程における実測値として把握されるので、各サンプルK1〜K6における実測値に対してそれぞれ非線形最適化法を適用して、関係式(Q=Ccexp[−α(t−tL)])の各パラメータを推定した。そして、推定されたパラメータ及びそのパラメータにより求められる推算値としての炭酸ガス発生量と実測値としての炭酸ガス発生量(何れも累積値)との間の相関係数(R)を求めたところ、以下の表1の如き結果となった。
【0022】
【表1】

【0023】
上記表1から、腐熟度が高いものほど相関係数(R)が高く、推算値と実測値とが次第に近づく一方、腐熟度が低く未熟なサンプルにおいては、相関係数(R)が低く、推算値と実測値とが離れていることが分かる。即ち、相関係数(R)に基づいて腐熟度が高いコンポストであるか否かの判定を行うことができるのである。本実施形態の場合、例えば相関係数(R)が0.996以上のもの(サンプルK4〜K6)を、腐熟度が高く肥料として使用可能なものとして判定することができる。
【0024】
ここで、測定工程S1における再コンポスト化の期間を更に短縮した場合、得られる実測値(炭酸ガス発生量の時間に対する累積値)が少なくなるため、例えば3日間の再コンポスト化により腐熟度を判定しようとした場合、予測精度が悪化するものと思われる。特に、この傾向は、有機物分解率が低いサンプル(サンプルK1〜K3など)を対象とした場合、顕著であると考えられる。
【0025】
そこで、コンポスト化が進むとtLが短くなることに着目し、サンプルK1〜K6における関係式のパラメータ推定時に、tL=0とすることにより、パラメータをCcとαの2つに減らし、上記と同様の測定工程S1(但し3日間の再コンポスト化とする)、演算工程S2(但しtLを強制的に0とした関係式を用いる)及び判定工程S3を行った。その結果を以下の表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
上記表2によれば、腐熟度が低いサンプルK1〜K3については、相関係数(R)が0.918〜0.969と低く、推算値と実測値とが著しく相違する一方、腐熟度が高いサンプルK4〜6については、何れも相関係数(R)が0.99以上と高く、推算値と実測値とがよく一致していることが分かる。即ち、遅れ時間(tL)を強制的に0として当該関係式のパラメータをCcとαのみとしているので、3日間とした極めて短期間の再コンポスト化により腐熟度が良好なものと未熟なものとの差を明瞭とすることができ、精度のよい腐熟度の判定を行うことができる。
【0028】
また、本実証試験においては、サンプルK1〜K6について3日間の再コンポスト化における実測値から推定したCcを用いて、以下の式により各サンプルの有機物分解率を算出した。尚、算出された各サンプルの有機物分解率は、上記の表2に記載してある。
【0029】
サンプルKiの分解率(Xprediction)=(Cpotential−CciR)/Cpotential×100 CciR=Cci×A0/Ai (但し、Cpotentialは、コンポストの原料をコンポスト化したときの炭酸ガス発生ポテンシャル量、Cciは、測定工程で実測された被判定コンポストの炭酸ガス発生量、A0、Aiは、それぞれ原料及び被判定コンポスト中の灰分率を示す)
【0030】
即ち、サンプルK1〜K3においては、推定したCcの値が真の値よりも格段に大きく求まるので、有機物分解率は負の値となって意味をなさない値となるとともに、サンプルK4〜K6においては、推定したCcの値が真の値に近づいて求まるため、有機物分解率は正の値の意味のある値となる。従って、かかる有機物分解率によっても、被判定コンポストの腐熟度が高いか否かを判別でき、上記した相関係数(R)に基づいた腐熟度の判定と共に用いれば、フェールセーフとして機能させることができ、更に精度のよい腐熟度の判定を行うことができる。
【0031】
更に、上記の如く、演算工程S2で推定されたパラメータに基づいて被判定コンポストの有機物分解率を算出すれば、当該有機物分解率に基づいて被判定コンポストの過熟をも容易に判定することができる。例えば、有機物分解率が95%以上の場合、その被判定コンポストは過熟な状態であるとすれば、肥料として使用するのに適さない過熟なものを排除することができる。
【0032】
次に、測定工程S1における再コンポスト化を2日間(48時間)とした場合と、4日間(96時間)とした場合とについても、上記と同様の実証試験を行ってみたところ、以下の表3(2日間)及び表4(4日間)の如き結果となった。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
上記表3によれば、測定工程S1において、2日間(48時間)再コンポスト化を行った場合、腐熟度が低いサンプルK1〜K3と、腐熟度が高いサンプルK4〜K6との相関係数(R)の差が大きく、かかる相関係数(R)に基づき腐熟度を判定することが可能かと思われるのであるが、サンプルK6で相関係数(R)が低下しており、判定精度の不安が残る。一方、表4によれば、4日間(96時間)再コンポスト化を行った場合、全体的に予測精度が上がって、サンプルK1〜K6間の相関係数(R)の差が小さくなったため、腐熟度の高いものと低いものとの識別が困難となっている。従って、測定工程S1における再コンポスト化の期間は、3日間がより適正であることが分かる。
【0036】
次に、上記腐熟度判定方法を適用した腐熟度判定装置について説明する。
本腐熟度判定装置は、図2に示すように、収容手段1と、入力手段2と、測定手段3と、演算手段4と、判定手段5と、表示手段6とから主に構成される。収容手段1は、被判定コンポスト(腐熟度の判定を行いたいコンポスト)を所定条件にて収容し、当該被判定コンポストの3日間の再コンポスト化を図り得るものである。
【0037】
入力手段2は、収容手段1に収容されたものの原料の種類、炭酸ガス発生のポテンシャル量及び灰分率など初期値を入力し得るもので、入力された各初期値は演算手段4へ送られるよう構成されている。測定手段3は、収容手段1による再コンポスト化過程の炭酸ガス発生量を測定し、累積の炭酸ガス発生量を測定し得るものである。
【0038】
演算手段4は、測定手段2で得られた炭酸ガス発生量の時間に対する累積値に対して非線形最適化法(例えばマルカート法)を適用して、Q=Ccexp[−αt](但し、Qは炭酸ガス発生量、Ccは被判定コンポスト中の易分解性炭素量、αは分解度、tは時間とする)なる関係式の各パラメータを推定するものである。表示手段6は、判定手段5による判定結果を表示するもので、例えば被判定コンポストの腐熟度が高いか否か(肥料として使用した場合適当か否か)、及び過熟であるか否かを表示するものである。
【0039】
上記構成の腐熟度判定装置によれば、収容手段1における再コンポスト化の期間が3日間と極めて短いため、装置に撹拌手段等を設ける必要がなくなり、装置構成を簡素化し得るとともに製造コストやメンテナンスコスト等を低減することができる。
【0040】
次に、上記腐熟度判定装置における制御方法について、図3のフローチャートに基づいて説明する。
収容手段1に被判定コンポスト、通気性改良材であるおがくず、及び微生物たる種菌を乾燥重量比で10:9:1として混合したものを収容して、入力手段2に初期値を入力(S1)した後、再コンポスト化を行わせるとともに、測定手段3による炭酸ガス発生量の測定を3日間(72時間)行う(S2)。そして、演算手段4にて、S2で得られた炭酸ガス発生量(実測値)の時間に対する累積値に対して非線形最適法を適用し、関係式Q=Ccexp[−αt]の各パラメータを推定する(S3)。
【0041】
その後、判定手段5により、S3で得られた関係式とS2で得られた炭酸ガス発生量の実測値との相関係数を求めた後(S4)、S3で得られたパラメータ(具体的には、判定コンポスト中の易分解性炭素量Cc)から有機物分解率を算出する(S5)。そして、S4で求められた相関係数が0.99より低いか否かが判別され(S6)、低い場合はS7へ進み、表示手段6にて被判定コンポストが未熟であることを表示する。
【0042】
また、S6にて相関係数が0.99より高いと判別した場合は、S8へ進み、S5で算出された有機物分解率が0%より小さい(即ち、負の値)か否かが判別され、0%より小さい場合はS7へ進んで、表示手段6にて被判定コンポストが未熟であることを表示する。即ち、被判定コンポストが未熟の場合、S6及びS8の両者によりS7へ進んで、未熟である旨の表示が行われるようになっている。尚、S8による未熟の判定を行わないようにしてもよい。
【0043】
更に、S8にて有機物分解率が0%より大きい(即ち、正の値)と判別した場合は、S9へ進み、当該有機物分解率が95%より大きいか否かが判別される。そして、95%より大きいと判別されると、S10へ進み、表示手段6にて被判定コンポストが過熟であることを表示する一方、95%より小さいと判別されると、S11へ進み、被判定コンポストの腐熟度が良好である(即ち、完熟である)として、その旨の表示が表示手段6によりなされる。以上で、本被判定コンポスト装置における一連の制御が終了する。
【0044】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば測定工程における再コンポスト化は、相関係数により腐熟度が判別できれば、3日間又は10日間以外の期間行ってもよい。また、再コンポスト化の条件は、本実施形態のものに限定されず、種々の形態としてもよい。更に、測定工程における再コンポスト化の期間を3日間とした場合、関係式の遅れ時間tLをパラメータのままとし、強制的に0としないものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
再コンポスト化時に得られた炭酸ガス発生量の時間に対する累積値に対して非線形最適化法を適用して、Q=Ccexp[−α(t−tL)]なる関係式の各パラメータを推定するとともに、その得られた関係式と再コンポスト化時に得られた炭酸ガス発生量の実測値との相関係数を求め、当該相関係数に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定する腐熟度判定方法及び腐熟度判定装置であれば、他の工程或いは手段を追加したものなどにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る腐熟度判定方法を示すフローチャート
【図2】本発明の実施形態に係る腐熟度判定装置を示すブロック図
【図3】同腐熟度判定装置における制御を示すフローチャート
【符号の説明】
【0047】
1 収容手段
2 入力手段
3 測定手段
4 演算手段
5 判定手段
6 表示手段
S1 測定工程
S2 演算工程
S3 判定工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被判定コンポストについて、その腐熟度を判定するための腐熟度判定方法において、
前記被判定コンポストの所定日間の再コンポスト化を図り、当該再コンポスト化過程の炭酸ガス発生量を測定する測定工程と、
該測定工程で得られた炭酸ガス発生量の時間に対する累積値に対して非線形最適化法を適用して、Q=Ccexp[−α(t−tL)](但し、Qは炭酸ガス発生量、Ccは被判定コンポスト中の易分解性炭素量、αは分解度、tは時間及びtLは微生物活性開始までの遅れ時間とする)なる関係式の各パラメータを推定する演算工程と、
該演算工程で得られた関係式と前記測定工程で得られた炭酸ガス発生量の実測値との相関係数を求め、当該相関係数に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定する判定工程と、
を含んだことを特徴とする腐熟度判定方法。
【請求項2】
前記測定工程における再コンポスト化の所定日数を3日間とするとともに、演算工程において用いられる関係式の遅れ時間tLを強制的に0として当該関係式のパラメータをCcとαのみとし、非線形最適法を適用し、前記判定工程における相関係数に基づく腐熟度の判定を行うことを特徴とする請求項1記載の腐熟度判定方法。
【請求項3】
前記判定工程は、前記相関係数に加え、前記演算工程で推定されたパラメータに基づいて算出される被判定コンポストの有機物分解率に基づいて被判定コンポストの腐熟度の判定をすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の腐熟度判定方法。
【請求項4】
被判定コンポストについて、その腐熟度を判定するための腐熟度判定装置において、
被判定コンポストを所定条件にて収容し、当該被判定コンポストの3日間の再コンポスト化を図り得る収容手段と、
該収容手段による再コンポスト化過程の炭酸ガス発生量を測定する測定手段と、
該測定手段で得られた炭酸ガス発生量の時間に対する累積値に対して非線形最適化法を適用して、Q=Ccexp[−αt](但し、Qは炭酸ガス発生量、Ccは被判定コンポスト中の易分解性炭素量、αは分解度、tは時間とする)なる関係式の各パラメータを推定する演算手段と、
該演算手段で得られた関係式と前記測定手段で得られた炭酸ガス発生量の実測値との相関係数を求め、当該相関係数に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする腐熟度判定装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記相関係数に加え、前記演算工程で推定されたパラメータに基づいて算出される被判定コンポストの有機物分解率に基づいて被判定コンポストの腐熟度を判定することを特徴とする請求項4記載の腐熟度判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−265070(P2006−265070A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88742(P2005−88742)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(802000020)財団法人浜松科学技術研究振興会 (63)
【Fターム(参考)】