腐食影響評価用センサ及び腐食性物質の影響評価装置
【課題】比較的安価であり、且つ比較的簡単に主成分だけでなく副次成分の有無まで判断できる腐食影響評価用センサ及び腐食性物質の影響評価装置を提供する。
【解決手段】腐食影響評価用センサ10は、圧電材料により形成された基板11を有する。この基板11の一方の面上には、第1の電極12a及び第1の端子12dと、第1の電極12aと第1の端子12dとの間を接続する第1の配線12b,12cと、第1の電極12aを覆う第1の絶縁保護膜13と、第1の絶縁保護膜13上に配置された第1の腐食層14とを有する。また、基板11の他方の面上には、第2の電極15a及び第2の端子15dと、第2の電極15aと第2の端子15dとの間を接続する第2の配線15b,15cと、第2の電極15aを覆う第2の絶縁保護膜16と、第2の絶縁保護膜16上に配置された第2の腐食層17とを有する。
【解決手段】腐食影響評価用センサ10は、圧電材料により形成された基板11を有する。この基板11の一方の面上には、第1の電極12a及び第1の端子12dと、第1の電極12aと第1の端子12dとの間を接続する第1の配線12b,12cと、第1の電極12aを覆う第1の絶縁保護膜13と、第1の絶縁保護膜13上に配置された第1の腐食層14とを有する。また、基板11の他方の面上には、第2の電極15a及び第2の端子15dと、第2の電極15aと第2の端子15dとの間を接続する第2の配線15b,15cと、第2の電極15aを覆う第2の絶縁保護膜16と、第2の絶縁保護膜16上に配置された第2の腐食層17とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食影響評価用センサ及びその腐食影響評価用センサを用いた腐食性物質の影響評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
雰囲気中に含まれる腐食性物質、例えば硫化水素、窒素酸化物及び硫黄酸化物等が原因となって宝飾品が腐食したり、電子機器が故障することがある。雰囲気中に含まれる腐食性物質の種類や濃度は、ガスクロマトグラフ質量分析計を使用することにより精度よく評価することができる。
【0003】
その他、雰囲気中に含まれる腐食性物質を評価する方法として、金属膜を付着させた水晶振動子をセンサとして使用する方法が提案されている。このようなセンサは、QCMセンサ(Quarts Crystal Microbalance)と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−99777号公報
【特許文献2】特開2009−206792号公報
【特許文献3】特表平5−508712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
比較的安価であり、且つ比較的簡単に主成分だけでなく副次成分の有無まで判断できる腐食影響評価用センサ及び腐食性物質の影響評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一観点によれば、圧電材料により形成された基板と、前記基板の一方の面上に配置された第1の電極及び第1の端子と、前記基板の前記一方の面上に配置されて前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の配線と、前記基板の前記一方の面側に配置されて前記第1の電極を覆う第1の絶縁保護膜と、前記第1の絶縁保護膜上に配置された第1の腐食層と、前記基板の他方の面上に配置された第2の電極及び第2の端子と、前記基板の前記他方の面上に配置されて前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の配線と、前記基板の前記他方の面側に配置されて前記第2の電極を覆う第2の絶縁保護膜と、前記第2の絶縁保護膜上に配置された第2の腐食層とを有する腐食影響評価用センサが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記一観点に係る腐食影響評価用センサは、比較的安価であり、比較的簡単に主成分だけでなく副次成分の有無まで判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は第1の実施形態に係る腐食影響評価用センサの上面図、図1(b)は同じくその断面図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る腐食影響評価用センサを使用した腐食性物質の影響評価装置の構成を表したブロック図である。
【図3】図3は、硫化水素(H2S)雰囲気中における銀(Ag)及び銅(Cu)の腐食量の経時変化を表した図である。
【図4】図4は、窒素酸化物(NO2)及び硫黄酸化物(SO2)を含む硫化水素(H2S)雰囲気中における銀(Ag)及び銅(Cu)の腐食量の経時変化を表した図である。
【図5】図5は、腐食影響評価用センサを硫化水素(H2S)雰囲気中においたときの発振回路の周波数の経時変化の例を表した図である。
【図6】図6(a)〜(d)は、腐食影響評価用センサの製造方法を工程順に表した断面図である。
【図7】図7(a)は第2の実施形態に係る腐食影響評価用センサの上面図、図7(b)は同じくその断面図である。
【図8】図8は、発振回路の周波数の経時変化の例を表した図(その1)である。
【図9】図9は、発振回路の周波数の経時変化の例を表した図(その2)である。
【図10】図10(a)〜(c)は、その他の実施形態に係る腐食影響評価用センサを例示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0010】
前述したように、ガスクロマトグラフ質量分析計を使用すれば、腐食性ガスの種類や濃度を精度よく評価することができる。しかし、ガスクロマトグラフ質量分析計は高価であり、且つ操作が複雑であるため、分析コストが高くなるという難点がある。
【0011】
従って、例えば比較的広い地域内に設定された多数の測定ポイントの雰囲気中における腐食性物質を分析しようとする場合は、時間とコストの点から、全ての測定ポイントの雰囲気中の腐食性物質をガスクロマトグラフ質量分析計で分析することは適切ではない。
【0012】
このような場合は、予め簡単な方法で各測定ポイントの雰囲気中に含まれる腐食性物質の種類や腐食速度等の情報を取得し、必要に応じてガスクロマトグラフ質量分析計又はその他の装置を使用した詳細な分析を行うことが望まれる。
【0013】
雰囲気中の腐食性物質を簡易的に調べるために、QCMセンサを用いることが考えられる。この種のQCMセンサでは水晶振動子の上に金属膜が形成されており、腐食により金属膜の質量が変化すると水晶振動子の振動周波数が変化することを利用して、腐食の程度を測定することができる。また、同一環境下であっても腐食性物質の種類や金属膜の材質により腐食速度が異なるので、金属膜の材質が異なる複数のQCMセンサを使用することにより、腐食性物質の種類をある程度特定することも可能である。
【0014】
しかし、注目する腐食性物質の種類が多い場合は、必要なQCMセンサの数が多くなり、それらのQCMセンサにそれぞれ個別に発振回路が必要になる。QCMセンサに接続する発振回路には高い精度が要求されるため、比較的高価である。このため、QCMセンサ及び発振回路の数が多くなると、分析コストを低減する効果を十分に得ることができない。また、腐食性物質が1種類で存在する場合と、他の成分とともに存在する場合とでは、腐食速度が大きく異なることが多い。
【0015】
従って、比較的安価であり、且つ比較的簡単に主成分だけでなく副次成分の有無まで判断できる腐食影響評価用センサ及び腐食性物質の影響評価装置が望まれる。
【0016】
(第1の実施形態)
図1(a)は第1の実施形態に係る腐食影響評価用センサの上面図、図1(b)は同じくその断面図である。図1(b)は、図1(a)のI−I線による断面を表している。
【0017】
図1(a),(b)のように、本実施形態に係る腐食影響評価用センサ10は、圧電材料により形成された円盤状の基板11を有する。ここでは、基板11として、直径が8mm、厚さが67μmのATカット水晶振動子を使用するものとする。
【0018】
基板11の上面側には、電極12aと、引出配線12bと、隘路配線12cと、端子12dと、絶縁保護膜13と、腐食層14とが形成されている。電極12aは円形に形成されており、基板11の上面側中央に配置されている。この電極12aは、引出配線12b及び隘路配線12cを介して、基板11の上面端部に配置された端子12dに電気的に接続されている。
【0019】
これらの電極12a、引出配線12b、隘路配線12c及び端子12dは、いずれも厚さが50nmの銀(Ag)膜により形成されている。本実施形態では、電極12aの直径が3.5mm、引出配線12b及び端子12dの幅が0.5mm、隘路配線12cの幅が0.2mmであるとする。以下、引出配線12b、隘路配線12c及び端子12dをまとめて、配線部分ともいう。
【0020】
なお、隘路配線12cは、配線部分のうち単位長さ当たりの電気抵抗が最も高い部分である。本実施形態では隘路配線12cの幅を他の配線部分の幅よりも狭くしているが、隘路配線12cの幅を他の配線部分よりも狭くする替わりに、又は他の配線部分よりも狭くするのと同時に、隘路配線12cの膜厚を薄くしてもよい。
【0021】
絶縁保護膜13は長円形に形成されており、電極12aと、引出配線12bのうち電極12aに近い部分とを覆っている。ここでは、絶縁保護膜13がアルミナ(酸化アルミニウム)により形成されていて、その厚さは100nmであるとする。また、絶縁保護膜13aの短軸方向の長さは4.5mm、長軸方向の長さは5.5mmであり、図1(a)のように引出配線12b側に若干ずれて配置されているものとする。
【0022】
なお、絶縁保護膜13は電極12aの腐食を防止できるものであればよく、絶縁保護膜13の材質はアルミナに限定されるものではない。
【0023】
腐食層14は金属により形成され、絶縁保護膜13の上に配置されている。腐食層14の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態では腐食層14が電極12aと同じ大きさ(直径3.5mm)に形成され、電極12aに重なる位置に配置されているものとする。腐食層14の材質及び層厚は検出対象の腐食性物質に応じて決定すればよい。本実施形態では、腐食層14が銅(Cu)により500nmの厚さに形成されているものとする。
【0024】
一方、基板11の下面側には、電極15aと、引出配線15bと、隘路配線15cと、端子15dと、絶縁保護膜16と、腐食層17とが形成されている。電極15aは、引出配線15b及び隘路配線15cを介して、基板11の下面端部に配置された端子15dに電気的に接続されている。
【0025】
本実施形態では、これらの電極15a、引出配線15b、隘路配線15c及び端子15dも、上側の電極12a、引出配線12b、隘路配線12c及び端子12dと同様に、厚さが50nmの銀膜により形成されているものとする。電極15aの直径は3.5mm、引出配線15b及び端子15dの幅は0.5mm、隘路配線15cの幅は0.2mmである。
【0026】
絶縁保護膜16は、電極15aと、引出配線15bのうち電極15aに近い部分とを覆うように形成されている。絶縁保護膜16も、上側の絶縁保護膜13と同様に、厚さが100nmのアルミナにより長円形に形成されているものとする。但し、図1(a)のように、絶縁保護膜16は、絶縁保護膜13に対し長軸方向にずれて配置されている。これにより、引出配線12b,15bのうち絶縁保護膜13,16で保護されている部分の裏面側(基板面側)を、基板11を透して観察することができる。
【0027】
腐食層17は金属により形成され、絶縁保護膜16の下に配置されている。ここでは、腐食層17も、上側の腐食層14と同様に、厚さが500nmの銅膜により電極15aと同じ大きさに形成されているものとする。
【0028】
図2は、本実施形態に係る腐食影響評価用センサを使用した腐食性物質の影響評価装置の構成を表したブロック図である。
【0029】
この図2のように、腐食性物質の影響評価装置は、腐食影響評価用センサ10と、発振回路21と、周波数カウンタ22と、信号処理回路23とを有する。発振回路21は、腐食影響評価用センサ10の電極12a,15aに電気的に接続され、腐食影響評価用センサ10をその腐食影響評価用センサ10に固有の振動数で振動させる。そして、発振回路21は、腐食影響評価用センサ10の振動数に同期した周波数の高周波信号を周波数カウンタ22に出力する。
【0030】
周波数カウンタ22は、発振回路21から出力された高周波信号の周波数を計測し、その結果を信号処理回路23に出力する。信号処理回路23は、周波数カウンタ22で計測した周波数を随時記録し、その記録を基に腐食性物質の影響評価用データを出力する。
【0031】
以下、本実施形態に係る腐食影響評価用センサ10を使用した腐食性物質の影響評価方法について説明する。
【0032】
本実施形態に係る腐食影響評価用センサ10が腐食性物質を含む雰囲気に晒されると、雰囲気中に露出した金属部分、すなわち腐食層14,17と、隘路配線12c,15cを含む配線部分とが腐食される。
【0033】
腐食層14,17が腐食されると、腐食の程度に応じて腐食影響評価用センサ10の振動数が変化し、それにともなって発振回路21から出力される高周波信号の周波数(以下、単に「発振回路21の周波数」ともいう)も変化する。従って、使用開始時における発振回路21の周波数と現在の発振回路21の周波数とを比較することにより、腐食層14,17の腐食の程度をリアルタイムで判断することができる。
【0034】
一方、絶縁保護膜13,16に覆われていない配線部分(引出配線12b,15bから端子12d,15dまでの間)が腐食されると、配線部分の抵抗が増大する。そして、配線部分の腐食が更に進行すると、配線部分のうち最も断線しやすい部分、すなわち隘路配線12c,15cで断線が発生する。
【0035】
発振回路21は信号の減衰を打ち消す負性抵抗を有するため、配線部分の抵抗がある程度増大しても、発振回路21の周波数は変化しない。しかし、腐食が進行して断線が発生する寸前になると、負性抵抗が配線部分の抵抗の増大を相殺することができなくなり、発振回路21は発振を停止する。発振回路21が発振を停止する直前には、腐食層14,17の腐食による周波数変化とは異なる急激な周波数変化を示す。この急激な周波数変化を検出した場合は、隘路配線12c,15cのいずれか一方が断線したと判定することができる。
【0036】
隘路配線12c,15cの膜厚Tは既知であるため、使用開始から断線までの経過時間tがわかれば、下記(1)式により隘路配線12c,15cの平均腐食速度Vを算出することができる。
【0037】
(平均腐食速度V)=(膜厚T)/(経過時間t)…(1)
図3は、横軸に使用開始時からの経過時間をとり、縦軸に腐食量(腐食深さ)をとって、硫化水素(H2S)雰囲気中における銀(Ag)及び銅(Cu)の腐食量の経時変化を表した図である。また、図4は、横軸に使用開始時からの経過時間をとり、縦軸に腐食量(腐食深さ)をとって、窒素酸化物(NO2)及び硫黄酸化物(SO2)を含む硫化水素(H2S)雰囲気中における銀(Ag)及び銅(Cu)の腐食量の経時変化を表した図である。
【0038】
なお、図3,図4において、硫化水素の濃度は250ppb、窒素酸化物の濃度は130ppb、硫黄酸化物の濃度は150ppbである。また、雰囲気の温度は室温であり、雰囲気中の湿度は50%RHである。
【0039】
図3からわかるように、雰囲気中に腐食性物質として硫化水素のみが存在する場合、銀の腐食速度は銅の腐食速度の1/10以下である。しかし、図4のように、雰囲気中に硫化水素に加えて窒素酸化物と硫黄酸化物とが硫化水素と同程度存在する場合は、銀の腐食速度は銅の腐食速度の1/5以上となる。
【0040】
なお、本実施形態では電極12a,15a及び配線部分を銀により形成し、腐食層14,17を銅により形成しているが、電極12a,15a及び配線部分を銅により形成し、腐食層14,17を銀により形成してもよい。その場合は、電極12a,15a及び配線部分の厚さを500nm、腐食層14,17の厚さを50nmとすることが好ましい。
【0041】
また、図3,図4では図示を省略しているが、雰囲気中の腐食性物質が窒素酸化物のみの場合及び硫黄酸化物のみの場合は、銀及び銅のいずれにおいても腐食量は硫化水素のみの場合に比べて少ない。
【0042】
図5は横軸に使用開始からの経過時間をとり、縦軸に周波数の変化量をとって、腐食影響評価用センサ10を硫化水素(H2S)雰囲気中においたときの発振回路21の周波数の経時変化の例を表した図である。
【0043】
図5のように、腐食層14,17の腐食が進行するのにともなって発振回路21の周波数の変化量は増大する。この周波数の変化は、隘路配線12c,15cが断線するまで続き、隘路配線12c,15cが断線する直前には周波数が著しく変化する。
【0044】
本実施形態では、予め所定濃度(以下、「基準濃度」という)の硫化水素を含む雰囲気中で隘路配線12c,15cが断線するまでの時間を測定しておき、その時間を基準時間t1として信号処理回路23に記憶しておく。また、基準時間t1の直前(周波数の著しい変化が起こる直前)の周波数変化量を測定しておき、この周波数変化量を基準周波数変化量f1として信号処理回路23に記憶しておく。
【0045】
このように予め基準濃度、基準時間t1及び基準周波数変化量f1を記録しておくことにより、雰囲気中に含まれる腐食性物質の影響を評価することが可能になる。例えば、周波数変化量の経時変化を示すグラフの傾きから、雰囲気中に硫化水素が含まれているか否かの判定や、雰囲気中の硫化水素の濃度の推定を行うことができる。
【0046】
また、基準時間t1が経過するよりも前(但し、誤差範囲を除く)に隘路配線12c,15cが断線した場合は、雰囲気中に硫化水素とともに窒素酸化物及び硫黄酸化物等の腐食性物質が含まれていると推定することができる。
【0047】
信号処理回路23は、周波数カウンタ22から出力される信号を随時記録し、周波数の変化量のデータをリアルタイムに出力したり、周波数の変化量の経時変化を示すデータを出力したりする。これらの信号処理回路23から出力されるデータに基づいて、例えば、作業者が雰囲気中の硫化水素の濃度を推定したり、雰囲気中に硫化水素以外の腐食性物質が含まれているか否かを判定したりする。
【0048】
また、隘路配線12c,15cの断線箇所を顕微鏡等により観察する場合に、本実施形態では基板11を透して見える絶縁保護膜13,17に覆われた端子部分の色を基準(色見本)とすることができる。これにより、断線箇所を容易に特定することができる。つまり、断線箇所は腐食により最も色が変化した部分であるので、絶縁保護膜13,17により保護されている端子部分の色と腐食された部分の色とを比較し、色の変化が最も激しい部分を断線箇所として特定できる。
【0049】
図6(a)〜(d)は、腐食影響評価用センサ10の製造方法を工程順に表した断面図である。なお、ここでは、図1も参照して説明する。
【0050】
まず、図6(a)の構造を得るまでの工程を説明する。最初に、基板11として、ATカット水晶振動子を用意する。本実施形態では基板11として、前述したように直径が8mm、厚さが67μmの水晶振動子を使用する。
【0051】
次に、基板11の上にフォトレジスト膜(図示せず)を形成し、露光及び現像処理を実施して所定パターン(電極12a及び配線部分に対応するパターン)の開口部を形成する。その後、スパッタリング法により、基板11の上側全面に銀(Ag)を50nmの厚さに堆積させる。
【0052】
次いで、フォトレジスト膜を、その上に付着した銀とともに剥離する。フォトレジスト膜剥離後に基板11上に残った銀の膜が、電極12a,引出配線12b,隘路配線12c及び端子12dとなる。
【0053】
次に、図6(b)の構造を得るまでの工程を説明する。上記の工程で電極12a,引出配線12b、隘路配線12c及び端子12dを形成した後、基板11の上側全面にフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。そして、このフォトレジスト膜に対し露光及び現像処理を実施して、所定パターン(絶縁保護膜13に対応するパターン)の開口部を形成する。
【0054】
次に、スパッタリング法により、基板11の上側全面にアルミナを100nmの厚さに堆積させる。その後、フォトレジスト膜を、その上に付着したアルミナとともに剥離する。フォトレジスト膜剥離後に基板11上に残ったアルミナの膜が、絶縁保護膜13となる。この絶縁保護膜13により、電極12aと、引出配線12bのうち電極12aに近い部分とが覆われる。
【0055】
次に、図6(c)の構造を得るまでの工程を説明する。上記の工程で絶縁保護膜13を形成した後、基板11の上側全面にフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。そして、このフォトレジスト膜に対し露光及び現像処理を実施して、所定パターン(腐食層14に対応するパターン)の開口部を形成する。
【0056】
次に、スパッタリング法により、基板11の上側全面に銅を500nmの厚さに堆積させる。その後、フォトレジスト膜を、その上に付着した銅とともに剥離する。フォトレジスト膜剥離後に基板11上に残った銅の膜が、腐食層14となる。
【0057】
次いで、図6(a)〜(c)と同様の工程を実施して、図6(d)のように、基板11の下面側に、電極15a、引出配線15b、隘路配線15c、端子15d、絶縁保護膜17及び腐食層17を形成する。このようにして、本実施形態に係る腐食影響評価用センサ10が完成する。
【0058】
(第2の実施形態)
図7(a)は第2の実施形態に係る腐食影響評価用センサの上面図、図7(b)は同じくその断面図である。図7(b)は、図7(a)のII−II線による断面を表している。なお、図7(a),(b)において、図1(a),(b)と同一物には同一符号を付している。
【0059】
本実施形態に係る腐食影響評価用センサ30においても、第1の実施形態と同様に、基板11の上面側には、電極32aと、引出配線32bと、隘路配線32cと、端子32dと、絶縁保護膜13と、腐食層34とが形成されている。また、基板11の下面側には、電極35aと、引出配線35bと、隘路配線35cと、端子35dと、絶縁保護膜16と、腐食層37とが形成されている。
【0060】
基板11の上側の電極32aは円形に形成されており、基板11の上面側中央に配置されている。この電極32aは、引出配線32b及び隘路配線32cを介して、基板11の上面端部に配置された端子32dに電気的に接続されている。
【0061】
本実施形態においては、これらの電極32a、引出配線32b、隘路配線32c及び端子32dが、銅(Cu)により500nmの厚さに形成されているものとする。電極32aの直径は3.5mm、引出配線32b及び端子32dの幅は0.5mm、隘路配線32cの幅は0.2mmである
基板11の下側の電極35aも円形に形成されており、基板11の下面側中央に配置されている。この電極35aは、引出配線35b及び隘路配線35cを介して、基板11の下面端部に配置された端子35dに電気的に接続されている。
【0062】
本実施形態においては、これらの電極35a、引出配線35b、隘路配線35c及び端子35dが、銀(Ag)により50nmの厚さに形成されているものとする。電極32aの直径は3.5mm、引出配線32b及び端子32dの幅は0.5mm、隘路配線32cの幅は0.2mmである。
【0063】
絶縁保護膜13の上には腐食層34が形成されており、絶縁保護膜16の下には腐食層37が形成されている。本実施形態においては、これらの腐食層34,37が、鉄(Fe)により100nmの厚さに形成されているものとする。
【0064】
本実施形態においては、腐食層34,37が鉄により形成されているので、発振回路21(図2参照)から出力される高周波信号の周波数変化により、鉄の腐食程度をリアルタイムに評価することができる。鉄は建築物や各種装置の構造材料として広く使用されており、高湿環境や塩粒子濃度の高い臨海地帯では腐食速度が速くなる。このため、建築物や各種装置の耐用年数を評価するために、環境雰囲気中に含まれる腐食性物質(水分や塩分等)による鉄の腐食速度を調べることは極めて重要である。
【0065】
図8は、横軸に使用開始からの経過時間をとり、縦軸に周波数の変化量をとって、発振回路21の周波数の経時変化の例を表した図である。この図8中にAで示すように周波数変化量の経時変化を示すグラフの傾きが小さい場合(腐食速度が遅い場合)は、鉄を腐食させる腐食性物質(水分や塩分等)の量が少ないということができる。
【0066】
一方、図8中にBで示すように周波数変化量の経時変化を示すグラフの傾きが大きい場合(腐食速度が速い場合)は、鉄を腐食させる腐食性物質(水分や塩分等)が雰囲気中に多く含まれているということができる。
【0067】
また、本実施形態においては、基板11の上側の電極32a及び配線部分を銅により形成し、下側の電極35a及び配線部分を銀により形成している。銅や銀は、硫化水素、窒素酸化物及び硫黄酸化物などが存在すると腐食が進行し、その腐食速度は鉄よりも速い。
【0068】
図9は、横軸に使用開始からの経過時間をとり、縦軸に周波数の変化量をとって、発振回路21の周波数の経時変化の例を表した図である。
【0069】
環境雰囲気中に硫化水素、窒素酸化物又は硫黄酸化物等の腐食性物質が含まれていると、隘路配線32c,35cのいずれかが断線し、図9のように発振回路21から出力される高周波信号の周波数が大きく変化する。
【0070】
この場合、隘路配線32c,35cのどちらが断線したかにより、以下の2通りの状況が考えられる。
【0071】
銅で形成された隘路配線32cが断線した場合は、銅の腐食速度が銀の腐食速度の10倍以上であるということができる。この場合は、環境雰囲気中には硫化水素が存在するが、窒素酸化物及び硫黄酸化物は存在しないか、又は存在していても極めて少ないということができる(図3参照)。
【0072】
一方、銀で形成された隘路配線35cが断線した場合は、銅の腐食速度が銀の腐食速度の5倍以下であるということができる。この場合は、環境雰囲気中に硫化水素が存在し、且つ窒素酸化物及び硫黄酸化物が硫化水素と同程度存在しているということができる(図4参照)。
【0073】
なお、上述の第1及び第2の実施形態では配線部分の材料及び腐食層の材料として、銅、銀及び鉄を例示しているが、配線部分の材料及び腐食層の材料は注目する腐食性物質に応じて選択すればよい。配線部分の材料及び腐食層の材料として、銅、銀及び鉄以外にも、アルミニウム、ニッケル、亜鉛及び鉄ニッケル合金など、種々の金属を使用することができる。
【0074】
(その他の実施形態)
図10(a)〜(c)は、その他の実施形態に係る腐食影響評価用センサを例示した上面図である。なお、これらの図10(a)〜(c)において、図1(a)と同一物には同一符号を付している。
【0075】
図10(a)の腐食影響評価用センサ40aは、隘路配線41c,42cが直線状に形成されており、配線41e,42eを介して基板11の端部に配置された端子41d,42dに接続されている。
【0076】
図10(b)の腐食影響評価用センサ40bは、引出配線12b,15b,隘路配線43c,44c及び端子43d,44dが直線状に配置されている。
【0077】
図10(c)の腐食影響評価用センサ40cは、隘路配線45c,46cが直線状に形成されており、端子45d,46dが基板11の縁に沿って曲線状に形成されている。
【0078】
これらの腐食影響評価用センサ40a,40b,40cにおいても、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0080】
(付記1)圧電材料により形成された基板と、
前記基板の一方の面上に配置された第1の電極及び第1の端子と、
前記基板の前記一方の面上に配置されて前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の配線と、
前記基板の前記一方の面側に配置されて前記第1の電極を覆う第1の絶縁保護膜と、
前記第1の絶縁保護膜上に配置された第1の腐食層と、
前記基板の他方の面上に配置された第2の電極及び第2の端子と、
前記基板の前記他方の面上に配置されて前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の配線と、
前記基板の前記他方の面側に配置されて前記第2の電極を覆う第2の絶縁保護膜と、
前記第2の絶縁保護膜上に配置された第2の腐食層と
を有することを特徴とする腐食影響評価用センサ。
【0081】
(付記2)前記第1の配線及び前記第2の配線の一部に、他の部分よりも単位長さ当たりの電気抵抗が高い隘路配線が設けられていることを特徴とする付記1に記載の腐食影響評価用センサ。
【0082】
(付記3)前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線及び前記第2の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成されていることを特徴とする付記1又は2に記載の腐食影響評価用センサ。
【0083】
(付記4)前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成され、前記第2の配線が前記第1の金属及び前記第2の金属とは異なる第3の金属により形成されていることを特徴とする付記1又は2に記載の腐食影響評価用センサ。
【0084】
(付記5)前記第1の絶縁保護膜は前記第1の配線の一部分を覆い、前記第2の絶縁保護膜は前記第2の配線の一部分を覆い、前記第1の絶縁保護膜で覆われた部分の前記第1の配線の少なくとも一部は前記第2の絶縁保護膜に重ならず、前記第2の絶縁保護膜で覆われた部分の前記第2の配線の少なくとも一部は前記第1の絶縁保護膜に重ならないことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の腐食影響評価用センサ。
【0085】
(付記6)腐食評影響価用センサと、
前記腐食影響評価用センサに接続されて前記腐食影響評価用センサを振動させるとともに、前記腐食影響評価用センサの振動数に応じた周波数の信号を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力される信号をカウントする周波数カウンタとを有し、
前記腐食影響評価用センサは、
圧電材料により形成された基板と、
前記基板の一方の面上に配置された第1の電極及び第1の端子と、
前記基板の前記一方の面上に配置されて前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の配線と、
前記基板の前記一方の面側に配置されて前記第1の電極を覆う第1の絶縁保護膜と、
前記第1の絶縁保護膜上に配置された第1の腐食層と、
前記基板の他方の面上に配置された第2の電極及び第2の端子と、
前記基板の前記他方の面上に配置されて前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の配線と、
前記基板の前記他方の面側に配置されて前記第2の電極を覆う第2の絶縁保護膜と、
前記第2の絶縁保護膜上に配置された第2の腐食層とを有する
ことを特徴とする腐食性物質の影響評価装置。
【0086】
(付記7)前記第1の配線及び前記第2の配線の一部に、他の部分よりも単位長さ当たりの電気抵抗が高い隘路配線が設けられていることを特徴とする付記6に記載の腐食性物質の影響評価装置。
【0087】
(付記8)前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線及び前記第2の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成されていることを特徴とする付記6又は7に記載の腐食性物質の影響評価装置。
【0088】
(付記9)前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成され、前記第2の配線が前記第1の金属及び前記第2の金属とは異なる第3の金属により形成されていることを特徴とする付記6又は7に記載の腐食性物質の影響評価装置。
【符号の説明】
【0089】
10,30,40a,40b,40c…腐食影響評価用センサ、11…基板、12a,15a,32a,35a…電極、12b,15b,32b,35b…引出配線、12c,15c,32c,35c,41c,42c,43c,44c,45c,46c…隘路配線、12d,15d,32d,35d,41d,42d,43d,44d,45d,46d…端子、13,16…絶縁保護膜、14,17,34,37…腐食層、21…発振回路、22…周波数カウンタ、23…信号処理回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食影響評価用センサ及びその腐食影響評価用センサを用いた腐食性物質の影響評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
雰囲気中に含まれる腐食性物質、例えば硫化水素、窒素酸化物及び硫黄酸化物等が原因となって宝飾品が腐食したり、電子機器が故障することがある。雰囲気中に含まれる腐食性物質の種類や濃度は、ガスクロマトグラフ質量分析計を使用することにより精度よく評価することができる。
【0003】
その他、雰囲気中に含まれる腐食性物質を評価する方法として、金属膜を付着させた水晶振動子をセンサとして使用する方法が提案されている。このようなセンサは、QCMセンサ(Quarts Crystal Microbalance)と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−99777号公報
【特許文献2】特開2009−206792号公報
【特許文献3】特表平5−508712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
比較的安価であり、且つ比較的簡単に主成分だけでなく副次成分の有無まで判断できる腐食影響評価用センサ及び腐食性物質の影響評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一観点によれば、圧電材料により形成された基板と、前記基板の一方の面上に配置された第1の電極及び第1の端子と、前記基板の前記一方の面上に配置されて前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の配線と、前記基板の前記一方の面側に配置されて前記第1の電極を覆う第1の絶縁保護膜と、前記第1の絶縁保護膜上に配置された第1の腐食層と、前記基板の他方の面上に配置された第2の電極及び第2の端子と、前記基板の前記他方の面上に配置されて前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の配線と、前記基板の前記他方の面側に配置されて前記第2の電極を覆う第2の絶縁保護膜と、前記第2の絶縁保護膜上に配置された第2の腐食層とを有する腐食影響評価用センサが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記一観点に係る腐食影響評価用センサは、比較的安価であり、比較的簡単に主成分だけでなく副次成分の有無まで判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は第1の実施形態に係る腐食影響評価用センサの上面図、図1(b)は同じくその断面図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る腐食影響評価用センサを使用した腐食性物質の影響評価装置の構成を表したブロック図である。
【図3】図3は、硫化水素(H2S)雰囲気中における銀(Ag)及び銅(Cu)の腐食量の経時変化を表した図である。
【図4】図4は、窒素酸化物(NO2)及び硫黄酸化物(SO2)を含む硫化水素(H2S)雰囲気中における銀(Ag)及び銅(Cu)の腐食量の経時変化を表した図である。
【図5】図5は、腐食影響評価用センサを硫化水素(H2S)雰囲気中においたときの発振回路の周波数の経時変化の例を表した図である。
【図6】図6(a)〜(d)は、腐食影響評価用センサの製造方法を工程順に表した断面図である。
【図7】図7(a)は第2の実施形態に係る腐食影響評価用センサの上面図、図7(b)は同じくその断面図である。
【図8】図8は、発振回路の周波数の経時変化の例を表した図(その1)である。
【図9】図9は、発振回路の周波数の経時変化の例を表した図(その2)である。
【図10】図10(a)〜(c)は、その他の実施形態に係る腐食影響評価用センサを例示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0010】
前述したように、ガスクロマトグラフ質量分析計を使用すれば、腐食性ガスの種類や濃度を精度よく評価することができる。しかし、ガスクロマトグラフ質量分析計は高価であり、且つ操作が複雑であるため、分析コストが高くなるという難点がある。
【0011】
従って、例えば比較的広い地域内に設定された多数の測定ポイントの雰囲気中における腐食性物質を分析しようとする場合は、時間とコストの点から、全ての測定ポイントの雰囲気中の腐食性物質をガスクロマトグラフ質量分析計で分析することは適切ではない。
【0012】
このような場合は、予め簡単な方法で各測定ポイントの雰囲気中に含まれる腐食性物質の種類や腐食速度等の情報を取得し、必要に応じてガスクロマトグラフ質量分析計又はその他の装置を使用した詳細な分析を行うことが望まれる。
【0013】
雰囲気中の腐食性物質を簡易的に調べるために、QCMセンサを用いることが考えられる。この種のQCMセンサでは水晶振動子の上に金属膜が形成されており、腐食により金属膜の質量が変化すると水晶振動子の振動周波数が変化することを利用して、腐食の程度を測定することができる。また、同一環境下であっても腐食性物質の種類や金属膜の材質により腐食速度が異なるので、金属膜の材質が異なる複数のQCMセンサを使用することにより、腐食性物質の種類をある程度特定することも可能である。
【0014】
しかし、注目する腐食性物質の種類が多い場合は、必要なQCMセンサの数が多くなり、それらのQCMセンサにそれぞれ個別に発振回路が必要になる。QCMセンサに接続する発振回路には高い精度が要求されるため、比較的高価である。このため、QCMセンサ及び発振回路の数が多くなると、分析コストを低減する効果を十分に得ることができない。また、腐食性物質が1種類で存在する場合と、他の成分とともに存在する場合とでは、腐食速度が大きく異なることが多い。
【0015】
従って、比較的安価であり、且つ比較的簡単に主成分だけでなく副次成分の有無まで判断できる腐食影響評価用センサ及び腐食性物質の影響評価装置が望まれる。
【0016】
(第1の実施形態)
図1(a)は第1の実施形態に係る腐食影響評価用センサの上面図、図1(b)は同じくその断面図である。図1(b)は、図1(a)のI−I線による断面を表している。
【0017】
図1(a),(b)のように、本実施形態に係る腐食影響評価用センサ10は、圧電材料により形成された円盤状の基板11を有する。ここでは、基板11として、直径が8mm、厚さが67μmのATカット水晶振動子を使用するものとする。
【0018】
基板11の上面側には、電極12aと、引出配線12bと、隘路配線12cと、端子12dと、絶縁保護膜13と、腐食層14とが形成されている。電極12aは円形に形成されており、基板11の上面側中央に配置されている。この電極12aは、引出配線12b及び隘路配線12cを介して、基板11の上面端部に配置された端子12dに電気的に接続されている。
【0019】
これらの電極12a、引出配線12b、隘路配線12c及び端子12dは、いずれも厚さが50nmの銀(Ag)膜により形成されている。本実施形態では、電極12aの直径が3.5mm、引出配線12b及び端子12dの幅が0.5mm、隘路配線12cの幅が0.2mmであるとする。以下、引出配線12b、隘路配線12c及び端子12dをまとめて、配線部分ともいう。
【0020】
なお、隘路配線12cは、配線部分のうち単位長さ当たりの電気抵抗が最も高い部分である。本実施形態では隘路配線12cの幅を他の配線部分の幅よりも狭くしているが、隘路配線12cの幅を他の配線部分よりも狭くする替わりに、又は他の配線部分よりも狭くするのと同時に、隘路配線12cの膜厚を薄くしてもよい。
【0021】
絶縁保護膜13は長円形に形成されており、電極12aと、引出配線12bのうち電極12aに近い部分とを覆っている。ここでは、絶縁保護膜13がアルミナ(酸化アルミニウム)により形成されていて、その厚さは100nmであるとする。また、絶縁保護膜13aの短軸方向の長さは4.5mm、長軸方向の長さは5.5mmであり、図1(a)のように引出配線12b側に若干ずれて配置されているものとする。
【0022】
なお、絶縁保護膜13は電極12aの腐食を防止できるものであればよく、絶縁保護膜13の材質はアルミナに限定されるものではない。
【0023】
腐食層14は金属により形成され、絶縁保護膜13の上に配置されている。腐食層14の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態では腐食層14が電極12aと同じ大きさ(直径3.5mm)に形成され、電極12aに重なる位置に配置されているものとする。腐食層14の材質及び層厚は検出対象の腐食性物質に応じて決定すればよい。本実施形態では、腐食層14が銅(Cu)により500nmの厚さに形成されているものとする。
【0024】
一方、基板11の下面側には、電極15aと、引出配線15bと、隘路配線15cと、端子15dと、絶縁保護膜16と、腐食層17とが形成されている。電極15aは、引出配線15b及び隘路配線15cを介して、基板11の下面端部に配置された端子15dに電気的に接続されている。
【0025】
本実施形態では、これらの電極15a、引出配線15b、隘路配線15c及び端子15dも、上側の電極12a、引出配線12b、隘路配線12c及び端子12dと同様に、厚さが50nmの銀膜により形成されているものとする。電極15aの直径は3.5mm、引出配線15b及び端子15dの幅は0.5mm、隘路配線15cの幅は0.2mmである。
【0026】
絶縁保護膜16は、電極15aと、引出配線15bのうち電極15aに近い部分とを覆うように形成されている。絶縁保護膜16も、上側の絶縁保護膜13と同様に、厚さが100nmのアルミナにより長円形に形成されているものとする。但し、図1(a)のように、絶縁保護膜16は、絶縁保護膜13に対し長軸方向にずれて配置されている。これにより、引出配線12b,15bのうち絶縁保護膜13,16で保護されている部分の裏面側(基板面側)を、基板11を透して観察することができる。
【0027】
腐食層17は金属により形成され、絶縁保護膜16の下に配置されている。ここでは、腐食層17も、上側の腐食層14と同様に、厚さが500nmの銅膜により電極15aと同じ大きさに形成されているものとする。
【0028】
図2は、本実施形態に係る腐食影響評価用センサを使用した腐食性物質の影響評価装置の構成を表したブロック図である。
【0029】
この図2のように、腐食性物質の影響評価装置は、腐食影響評価用センサ10と、発振回路21と、周波数カウンタ22と、信号処理回路23とを有する。発振回路21は、腐食影響評価用センサ10の電極12a,15aに電気的に接続され、腐食影響評価用センサ10をその腐食影響評価用センサ10に固有の振動数で振動させる。そして、発振回路21は、腐食影響評価用センサ10の振動数に同期した周波数の高周波信号を周波数カウンタ22に出力する。
【0030】
周波数カウンタ22は、発振回路21から出力された高周波信号の周波数を計測し、その結果を信号処理回路23に出力する。信号処理回路23は、周波数カウンタ22で計測した周波数を随時記録し、その記録を基に腐食性物質の影響評価用データを出力する。
【0031】
以下、本実施形態に係る腐食影響評価用センサ10を使用した腐食性物質の影響評価方法について説明する。
【0032】
本実施形態に係る腐食影響評価用センサ10が腐食性物質を含む雰囲気に晒されると、雰囲気中に露出した金属部分、すなわち腐食層14,17と、隘路配線12c,15cを含む配線部分とが腐食される。
【0033】
腐食層14,17が腐食されると、腐食の程度に応じて腐食影響評価用センサ10の振動数が変化し、それにともなって発振回路21から出力される高周波信号の周波数(以下、単に「発振回路21の周波数」ともいう)も変化する。従って、使用開始時における発振回路21の周波数と現在の発振回路21の周波数とを比較することにより、腐食層14,17の腐食の程度をリアルタイムで判断することができる。
【0034】
一方、絶縁保護膜13,16に覆われていない配線部分(引出配線12b,15bから端子12d,15dまでの間)が腐食されると、配線部分の抵抗が増大する。そして、配線部分の腐食が更に進行すると、配線部分のうち最も断線しやすい部分、すなわち隘路配線12c,15cで断線が発生する。
【0035】
発振回路21は信号の減衰を打ち消す負性抵抗を有するため、配線部分の抵抗がある程度増大しても、発振回路21の周波数は変化しない。しかし、腐食が進行して断線が発生する寸前になると、負性抵抗が配線部分の抵抗の増大を相殺することができなくなり、発振回路21は発振を停止する。発振回路21が発振を停止する直前には、腐食層14,17の腐食による周波数変化とは異なる急激な周波数変化を示す。この急激な周波数変化を検出した場合は、隘路配線12c,15cのいずれか一方が断線したと判定することができる。
【0036】
隘路配線12c,15cの膜厚Tは既知であるため、使用開始から断線までの経過時間tがわかれば、下記(1)式により隘路配線12c,15cの平均腐食速度Vを算出することができる。
【0037】
(平均腐食速度V)=(膜厚T)/(経過時間t)…(1)
図3は、横軸に使用開始時からの経過時間をとり、縦軸に腐食量(腐食深さ)をとって、硫化水素(H2S)雰囲気中における銀(Ag)及び銅(Cu)の腐食量の経時変化を表した図である。また、図4は、横軸に使用開始時からの経過時間をとり、縦軸に腐食量(腐食深さ)をとって、窒素酸化物(NO2)及び硫黄酸化物(SO2)を含む硫化水素(H2S)雰囲気中における銀(Ag)及び銅(Cu)の腐食量の経時変化を表した図である。
【0038】
なお、図3,図4において、硫化水素の濃度は250ppb、窒素酸化物の濃度は130ppb、硫黄酸化物の濃度は150ppbである。また、雰囲気の温度は室温であり、雰囲気中の湿度は50%RHである。
【0039】
図3からわかるように、雰囲気中に腐食性物質として硫化水素のみが存在する場合、銀の腐食速度は銅の腐食速度の1/10以下である。しかし、図4のように、雰囲気中に硫化水素に加えて窒素酸化物と硫黄酸化物とが硫化水素と同程度存在する場合は、銀の腐食速度は銅の腐食速度の1/5以上となる。
【0040】
なお、本実施形態では電極12a,15a及び配線部分を銀により形成し、腐食層14,17を銅により形成しているが、電極12a,15a及び配線部分を銅により形成し、腐食層14,17を銀により形成してもよい。その場合は、電極12a,15a及び配線部分の厚さを500nm、腐食層14,17の厚さを50nmとすることが好ましい。
【0041】
また、図3,図4では図示を省略しているが、雰囲気中の腐食性物質が窒素酸化物のみの場合及び硫黄酸化物のみの場合は、銀及び銅のいずれにおいても腐食量は硫化水素のみの場合に比べて少ない。
【0042】
図5は横軸に使用開始からの経過時間をとり、縦軸に周波数の変化量をとって、腐食影響評価用センサ10を硫化水素(H2S)雰囲気中においたときの発振回路21の周波数の経時変化の例を表した図である。
【0043】
図5のように、腐食層14,17の腐食が進行するのにともなって発振回路21の周波数の変化量は増大する。この周波数の変化は、隘路配線12c,15cが断線するまで続き、隘路配線12c,15cが断線する直前には周波数が著しく変化する。
【0044】
本実施形態では、予め所定濃度(以下、「基準濃度」という)の硫化水素を含む雰囲気中で隘路配線12c,15cが断線するまでの時間を測定しておき、その時間を基準時間t1として信号処理回路23に記憶しておく。また、基準時間t1の直前(周波数の著しい変化が起こる直前)の周波数変化量を測定しておき、この周波数変化量を基準周波数変化量f1として信号処理回路23に記憶しておく。
【0045】
このように予め基準濃度、基準時間t1及び基準周波数変化量f1を記録しておくことにより、雰囲気中に含まれる腐食性物質の影響を評価することが可能になる。例えば、周波数変化量の経時変化を示すグラフの傾きから、雰囲気中に硫化水素が含まれているか否かの判定や、雰囲気中の硫化水素の濃度の推定を行うことができる。
【0046】
また、基準時間t1が経過するよりも前(但し、誤差範囲を除く)に隘路配線12c,15cが断線した場合は、雰囲気中に硫化水素とともに窒素酸化物及び硫黄酸化物等の腐食性物質が含まれていると推定することができる。
【0047】
信号処理回路23は、周波数カウンタ22から出力される信号を随時記録し、周波数の変化量のデータをリアルタイムに出力したり、周波数の変化量の経時変化を示すデータを出力したりする。これらの信号処理回路23から出力されるデータに基づいて、例えば、作業者が雰囲気中の硫化水素の濃度を推定したり、雰囲気中に硫化水素以外の腐食性物質が含まれているか否かを判定したりする。
【0048】
また、隘路配線12c,15cの断線箇所を顕微鏡等により観察する場合に、本実施形態では基板11を透して見える絶縁保護膜13,17に覆われた端子部分の色を基準(色見本)とすることができる。これにより、断線箇所を容易に特定することができる。つまり、断線箇所は腐食により最も色が変化した部分であるので、絶縁保護膜13,17により保護されている端子部分の色と腐食された部分の色とを比較し、色の変化が最も激しい部分を断線箇所として特定できる。
【0049】
図6(a)〜(d)は、腐食影響評価用センサ10の製造方法を工程順に表した断面図である。なお、ここでは、図1も参照して説明する。
【0050】
まず、図6(a)の構造を得るまでの工程を説明する。最初に、基板11として、ATカット水晶振動子を用意する。本実施形態では基板11として、前述したように直径が8mm、厚さが67μmの水晶振動子を使用する。
【0051】
次に、基板11の上にフォトレジスト膜(図示せず)を形成し、露光及び現像処理を実施して所定パターン(電極12a及び配線部分に対応するパターン)の開口部を形成する。その後、スパッタリング法により、基板11の上側全面に銀(Ag)を50nmの厚さに堆積させる。
【0052】
次いで、フォトレジスト膜を、その上に付着した銀とともに剥離する。フォトレジスト膜剥離後に基板11上に残った銀の膜が、電極12a,引出配線12b,隘路配線12c及び端子12dとなる。
【0053】
次に、図6(b)の構造を得るまでの工程を説明する。上記の工程で電極12a,引出配線12b、隘路配線12c及び端子12dを形成した後、基板11の上側全面にフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。そして、このフォトレジスト膜に対し露光及び現像処理を実施して、所定パターン(絶縁保護膜13に対応するパターン)の開口部を形成する。
【0054】
次に、スパッタリング法により、基板11の上側全面にアルミナを100nmの厚さに堆積させる。その後、フォトレジスト膜を、その上に付着したアルミナとともに剥離する。フォトレジスト膜剥離後に基板11上に残ったアルミナの膜が、絶縁保護膜13となる。この絶縁保護膜13により、電極12aと、引出配線12bのうち電極12aに近い部分とが覆われる。
【0055】
次に、図6(c)の構造を得るまでの工程を説明する。上記の工程で絶縁保護膜13を形成した後、基板11の上側全面にフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。そして、このフォトレジスト膜に対し露光及び現像処理を実施して、所定パターン(腐食層14に対応するパターン)の開口部を形成する。
【0056】
次に、スパッタリング法により、基板11の上側全面に銅を500nmの厚さに堆積させる。その後、フォトレジスト膜を、その上に付着した銅とともに剥離する。フォトレジスト膜剥離後に基板11上に残った銅の膜が、腐食層14となる。
【0057】
次いで、図6(a)〜(c)と同様の工程を実施して、図6(d)のように、基板11の下面側に、電極15a、引出配線15b、隘路配線15c、端子15d、絶縁保護膜17及び腐食層17を形成する。このようにして、本実施形態に係る腐食影響評価用センサ10が完成する。
【0058】
(第2の実施形態)
図7(a)は第2の実施形態に係る腐食影響評価用センサの上面図、図7(b)は同じくその断面図である。図7(b)は、図7(a)のII−II線による断面を表している。なお、図7(a),(b)において、図1(a),(b)と同一物には同一符号を付している。
【0059】
本実施形態に係る腐食影響評価用センサ30においても、第1の実施形態と同様に、基板11の上面側には、電極32aと、引出配線32bと、隘路配線32cと、端子32dと、絶縁保護膜13と、腐食層34とが形成されている。また、基板11の下面側には、電極35aと、引出配線35bと、隘路配線35cと、端子35dと、絶縁保護膜16と、腐食層37とが形成されている。
【0060】
基板11の上側の電極32aは円形に形成されており、基板11の上面側中央に配置されている。この電極32aは、引出配線32b及び隘路配線32cを介して、基板11の上面端部に配置された端子32dに電気的に接続されている。
【0061】
本実施形態においては、これらの電極32a、引出配線32b、隘路配線32c及び端子32dが、銅(Cu)により500nmの厚さに形成されているものとする。電極32aの直径は3.5mm、引出配線32b及び端子32dの幅は0.5mm、隘路配線32cの幅は0.2mmである
基板11の下側の電極35aも円形に形成されており、基板11の下面側中央に配置されている。この電極35aは、引出配線35b及び隘路配線35cを介して、基板11の下面端部に配置された端子35dに電気的に接続されている。
【0062】
本実施形態においては、これらの電極35a、引出配線35b、隘路配線35c及び端子35dが、銀(Ag)により50nmの厚さに形成されているものとする。電極32aの直径は3.5mm、引出配線32b及び端子32dの幅は0.5mm、隘路配線32cの幅は0.2mmである。
【0063】
絶縁保護膜13の上には腐食層34が形成されており、絶縁保護膜16の下には腐食層37が形成されている。本実施形態においては、これらの腐食層34,37が、鉄(Fe)により100nmの厚さに形成されているものとする。
【0064】
本実施形態においては、腐食層34,37が鉄により形成されているので、発振回路21(図2参照)から出力される高周波信号の周波数変化により、鉄の腐食程度をリアルタイムに評価することができる。鉄は建築物や各種装置の構造材料として広く使用されており、高湿環境や塩粒子濃度の高い臨海地帯では腐食速度が速くなる。このため、建築物や各種装置の耐用年数を評価するために、環境雰囲気中に含まれる腐食性物質(水分や塩分等)による鉄の腐食速度を調べることは極めて重要である。
【0065】
図8は、横軸に使用開始からの経過時間をとり、縦軸に周波数の変化量をとって、発振回路21の周波数の経時変化の例を表した図である。この図8中にAで示すように周波数変化量の経時変化を示すグラフの傾きが小さい場合(腐食速度が遅い場合)は、鉄を腐食させる腐食性物質(水分や塩分等)の量が少ないということができる。
【0066】
一方、図8中にBで示すように周波数変化量の経時変化を示すグラフの傾きが大きい場合(腐食速度が速い場合)は、鉄を腐食させる腐食性物質(水分や塩分等)が雰囲気中に多く含まれているということができる。
【0067】
また、本実施形態においては、基板11の上側の電極32a及び配線部分を銅により形成し、下側の電極35a及び配線部分を銀により形成している。銅や銀は、硫化水素、窒素酸化物及び硫黄酸化物などが存在すると腐食が進行し、その腐食速度は鉄よりも速い。
【0068】
図9は、横軸に使用開始からの経過時間をとり、縦軸に周波数の変化量をとって、発振回路21の周波数の経時変化の例を表した図である。
【0069】
環境雰囲気中に硫化水素、窒素酸化物又は硫黄酸化物等の腐食性物質が含まれていると、隘路配線32c,35cのいずれかが断線し、図9のように発振回路21から出力される高周波信号の周波数が大きく変化する。
【0070】
この場合、隘路配線32c,35cのどちらが断線したかにより、以下の2通りの状況が考えられる。
【0071】
銅で形成された隘路配線32cが断線した場合は、銅の腐食速度が銀の腐食速度の10倍以上であるということができる。この場合は、環境雰囲気中には硫化水素が存在するが、窒素酸化物及び硫黄酸化物は存在しないか、又は存在していても極めて少ないということができる(図3参照)。
【0072】
一方、銀で形成された隘路配線35cが断線した場合は、銅の腐食速度が銀の腐食速度の5倍以下であるということができる。この場合は、環境雰囲気中に硫化水素が存在し、且つ窒素酸化物及び硫黄酸化物が硫化水素と同程度存在しているということができる(図4参照)。
【0073】
なお、上述の第1及び第2の実施形態では配線部分の材料及び腐食層の材料として、銅、銀及び鉄を例示しているが、配線部分の材料及び腐食層の材料は注目する腐食性物質に応じて選択すればよい。配線部分の材料及び腐食層の材料として、銅、銀及び鉄以外にも、アルミニウム、ニッケル、亜鉛及び鉄ニッケル合金など、種々の金属を使用することができる。
【0074】
(その他の実施形態)
図10(a)〜(c)は、その他の実施形態に係る腐食影響評価用センサを例示した上面図である。なお、これらの図10(a)〜(c)において、図1(a)と同一物には同一符号を付している。
【0075】
図10(a)の腐食影響評価用センサ40aは、隘路配線41c,42cが直線状に形成されており、配線41e,42eを介して基板11の端部に配置された端子41d,42dに接続されている。
【0076】
図10(b)の腐食影響評価用センサ40bは、引出配線12b,15b,隘路配線43c,44c及び端子43d,44dが直線状に配置されている。
【0077】
図10(c)の腐食影響評価用センサ40cは、隘路配線45c,46cが直線状に形成されており、端子45d,46dが基板11の縁に沿って曲線状に形成されている。
【0078】
これらの腐食影響評価用センサ40a,40b,40cにおいても、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0080】
(付記1)圧電材料により形成された基板と、
前記基板の一方の面上に配置された第1の電極及び第1の端子と、
前記基板の前記一方の面上に配置されて前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の配線と、
前記基板の前記一方の面側に配置されて前記第1の電極を覆う第1の絶縁保護膜と、
前記第1の絶縁保護膜上に配置された第1の腐食層と、
前記基板の他方の面上に配置された第2の電極及び第2の端子と、
前記基板の前記他方の面上に配置されて前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の配線と、
前記基板の前記他方の面側に配置されて前記第2の電極を覆う第2の絶縁保護膜と、
前記第2の絶縁保護膜上に配置された第2の腐食層と
を有することを特徴とする腐食影響評価用センサ。
【0081】
(付記2)前記第1の配線及び前記第2の配線の一部に、他の部分よりも単位長さ当たりの電気抵抗が高い隘路配線が設けられていることを特徴とする付記1に記載の腐食影響評価用センサ。
【0082】
(付記3)前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線及び前記第2の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成されていることを特徴とする付記1又は2に記載の腐食影響評価用センサ。
【0083】
(付記4)前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成され、前記第2の配線が前記第1の金属及び前記第2の金属とは異なる第3の金属により形成されていることを特徴とする付記1又は2に記載の腐食影響評価用センサ。
【0084】
(付記5)前記第1の絶縁保護膜は前記第1の配線の一部分を覆い、前記第2の絶縁保護膜は前記第2の配線の一部分を覆い、前記第1の絶縁保護膜で覆われた部分の前記第1の配線の少なくとも一部は前記第2の絶縁保護膜に重ならず、前記第2の絶縁保護膜で覆われた部分の前記第2の配線の少なくとも一部は前記第1の絶縁保護膜に重ならないことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の腐食影響評価用センサ。
【0085】
(付記6)腐食評影響価用センサと、
前記腐食影響評価用センサに接続されて前記腐食影響評価用センサを振動させるとともに、前記腐食影響評価用センサの振動数に応じた周波数の信号を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力される信号をカウントする周波数カウンタとを有し、
前記腐食影響評価用センサは、
圧電材料により形成された基板と、
前記基板の一方の面上に配置された第1の電極及び第1の端子と、
前記基板の前記一方の面上に配置されて前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の配線と、
前記基板の前記一方の面側に配置されて前記第1の電極を覆う第1の絶縁保護膜と、
前記第1の絶縁保護膜上に配置された第1の腐食層と、
前記基板の他方の面上に配置された第2の電極及び第2の端子と、
前記基板の前記他方の面上に配置されて前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の配線と、
前記基板の前記他方の面側に配置されて前記第2の電極を覆う第2の絶縁保護膜と、
前記第2の絶縁保護膜上に配置された第2の腐食層とを有する
ことを特徴とする腐食性物質の影響評価装置。
【0086】
(付記7)前記第1の配線及び前記第2の配線の一部に、他の部分よりも単位長さ当たりの電気抵抗が高い隘路配線が設けられていることを特徴とする付記6に記載の腐食性物質の影響評価装置。
【0087】
(付記8)前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線及び前記第2の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成されていることを特徴とする付記6又は7に記載の腐食性物質の影響評価装置。
【0088】
(付記9)前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成され、前記第2の配線が前記第1の金属及び前記第2の金属とは異なる第3の金属により形成されていることを特徴とする付記6又は7に記載の腐食性物質の影響評価装置。
【符号の説明】
【0089】
10,30,40a,40b,40c…腐食影響評価用センサ、11…基板、12a,15a,32a,35a…電極、12b,15b,32b,35b…引出配線、12c,15c,32c,35c,41c,42c,43c,44c,45c,46c…隘路配線、12d,15d,32d,35d,41d,42d,43d,44d,45d,46d…端子、13,16…絶縁保護膜、14,17,34,37…腐食層、21…発振回路、22…周波数カウンタ、23…信号処理回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料により形成された基板と、
前記基板の一方の面上に配置された第1の電極及び第1の端子と、
前記基板の前記一方の面上に配置されて前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の配線と、
前記基板の前記一方の面側に配置されて前記第1の電極を覆う第1の絶縁保護膜と、
前記第1の絶縁保護膜上に配置された第1の腐食層と、
前記基板の他方の面上に配置された第2の電極及び第2の端子と、
前記基板の前記他方の面上に配置されて前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の配線と、
前記基板の前記他方の面側に配置されて前記第2の電極を覆う第2の絶縁保護膜と、
前記第2の絶縁保護膜上に配置された第2の腐食層と
を有することを特徴とする腐食影響評価用センサ。
【請求項2】
前記第1の配線及び前記第2の配線の一部に、他の部分よりも単位長さ当たりの電気抵抗が高い隘路配線が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の腐食影響評価用センサ。
【請求項3】
前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線及び前記第2の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の腐食影響評価用センサ。
【請求項4】
前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成され、前記第2の配線が前記第1の金属及び前記第2の金属とは異なる第3の金属により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の腐食影響評価用センサ。
【請求項5】
腐食影響評価用センサと、
前記腐食影響評価用センサに接続されて前記腐食影響評価用センサを振動させるとともに、前記腐食影響評価用センサの振動数に応じた周波数の信号を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力される信号をカウントする周波数カウンタとを有し、
前記腐食影響評価用センサは、
圧電材料により形成された基板と、
前記基板の一方の面上に配置された第1の電極及び第1の端子と、
前記基板の前記一方の面上に配置されて前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の配線と、
前記基板の前記一方の面側に配置されて前記第1の電極を覆う第1の絶縁保護膜と、
前記第1の絶縁保護膜上に配置された第1の腐食層と、
前記基板の他方の面上に配置された第2の電極及び第2の端子と、
前記基板の前記他方の面上に配置されて前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の配線と、
前記基板の前記他方の面側に配置されて前記第2の電極を覆う第2の絶縁保護膜と、
前記第2の絶縁保護膜上に配置された第2の腐食層とを有する
ことを特徴とする腐食性物質の影響評価装置。
【請求項1】
圧電材料により形成された基板と、
前記基板の一方の面上に配置された第1の電極及び第1の端子と、
前記基板の前記一方の面上に配置されて前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の配線と、
前記基板の前記一方の面側に配置されて前記第1の電極を覆う第1の絶縁保護膜と、
前記第1の絶縁保護膜上に配置された第1の腐食層と、
前記基板の他方の面上に配置された第2の電極及び第2の端子と、
前記基板の前記他方の面上に配置されて前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の配線と、
前記基板の前記他方の面側に配置されて前記第2の電極を覆う第2の絶縁保護膜と、
前記第2の絶縁保護膜上に配置された第2の腐食層と
を有することを特徴とする腐食影響評価用センサ。
【請求項2】
前記第1の配線及び前記第2の配線の一部に、他の部分よりも単位長さ当たりの電気抵抗が高い隘路配線が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の腐食影響評価用センサ。
【請求項3】
前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線及び前記第2の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の腐食影響評価用センサ。
【請求項4】
前記第1の腐食層及び前記第2の腐食層がいずれも第1の金属により形成され、前記第1の配線が前記第1の金属とは異なる第2の金属により形成され、前記第2の配線が前記第1の金属及び前記第2の金属とは異なる第3の金属により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の腐食影響評価用センサ。
【請求項5】
腐食影響評価用センサと、
前記腐食影響評価用センサに接続されて前記腐食影響評価用センサを振動させるとともに、前記腐食影響評価用センサの振動数に応じた周波数の信号を出力する発振回路と、
前記発振回路から出力される信号をカウントする周波数カウンタとを有し、
前記腐食影響評価用センサは、
圧電材料により形成された基板と、
前記基板の一方の面上に配置された第1の電極及び第1の端子と、
前記基板の前記一方の面上に配置されて前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の配線と、
前記基板の前記一方の面側に配置されて前記第1の電極を覆う第1の絶縁保護膜と、
前記第1の絶縁保護膜上に配置された第1の腐食層と、
前記基板の他方の面上に配置された第2の電極及び第2の端子と、
前記基板の前記他方の面上に配置されて前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の配線と、
前記基板の前記他方の面側に配置されて前記第2の電極を覆う第2の絶縁保護膜と、
前記第2の絶縁保護膜上に配置された第2の腐食層とを有する
ことを特徴とする腐食性物質の影響評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−237651(P2012−237651A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106797(P2011−106797)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]