説明

腐食抑制剤、及び自動車用ブレーキ液

【課題】銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制することの容易な腐食抑制剤、及び自動車用ブレーキ液を提供する。
【解決手段】腐食抑制剤は、リン酸エステル及びチアジアゾールを有効成分として含有する。腐食抑制剤は、非鉱油系基材に混合して用いられる。自動車用ブレーキ液は、グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種の非鉱油系基材を含有する。自動車用ブレーキ液は、更にリン酸エステル及びチアジアゾールを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉱油系基材に混合して用いられる腐食抑制剤、及び、非鉱油系基材を含有する自動車用ブレーキ液に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用ブレーキの作動やエンジンの冷却には、グリコール類等の非鉱油系の基材を含む流体が用いられている。こうした流体には、各種金属の腐食を抑制するための腐食抑制剤が含有されている。腐食抑制剤としては、例えば1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール等のトリアゾールが知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、特定のトリアゾールを併用が、銅及びゴム材の存在下において、銅の腐食の抑制、沈殿物の生成の抑制等に有効であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−536494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、銅及びゴム材の存在下において、銅溶出の抑制効果、及び沈殿物生成の抑制効果を発揮させる点で有効な構成を見出すことでなされたものである。
本発明の目的は、銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制することの容易な腐食抑制剤、及び自動車用ブレーキ液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の腐食抑制剤は、非鉱油系基材に混合して用いられる腐食抑制剤であって、リン酸エステル及びチアジアゾールを含有することを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の腐食抑制剤において、前記非鉱油系基材が、水、アルコール、グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種であることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の腐食抑制剤において、前記リン酸エステルが下記一般式(1):
【0008】
【化1】

(R、R、及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基を示している)に示されることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の腐食抑制剤において、前記非鉱油系基材100質量部に対して前記リン酸エステルが0.001〜1質量部の範囲となるように混合されるとともに、前記非鉱油系基材100質量部に対して前記チアジアゾールが0.001〜10質量部の範囲となるように混合されることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明の自動車用ブレーキ液は、グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種の非鉱油系基材を含有する自動車用ブレーキ液であって、リン酸エステル及びチアジアゾールを含有することを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の自動車用ブレーキ液において、前記グリコールエーテルとしてグリコールエーテルのホウ酸エステルを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制することの容易な腐食抑制剤、及び自動車用ブレーキ液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の腐食抑制剤を具体化した第1の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の腐食抑制剤は、リン酸エステル及びチアジアゾールを含有している。腐食抑制剤は、非鉱油系基材に混合して用いられる。
【0014】
リン酸エステルは、チアジアゾールと併用されることで、銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制する。リン酸エステルは、例えば下記一般式(1)により示される。
【0015】
【化2】

一般式(1)中のR、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基を示している。但し、R、R、及びRのすべてが水素原子の場合を除く。
【0016】
一般式(1)中のR、R、及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であることが好ましい。
【0017】
一般式(1)中のR、R、及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜30のアルキル基、又はフェニル基であることが更に好ましく、R、R、及びRは、互いに同一であって、炭素数1〜30のアルキル基、又はフェニル基であることが最も好ましい。
【0018】
リン酸エステルは、単独種を含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。
チアジアゾールは、リン酸エステルと併用されることで、銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制する。
【0019】
チアジアゾールとしては、例えば下記一般式(2)又は一般式(3)に示される。
【0020】
【化3】

一般式(2)及び一般式(3)中のR及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基、下記一般式(4)、一般式(5)、又は一般式(6)に示される。
【0021】
【化4】

一般式(4)中のR、一般式(5)中のR、一般式(6)中のR、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基を示している。なお、このアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
【0022】
チアジアゾールは、単独種を含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。
腐食抑制剤が混合される非鉱油系基材としては、例えば水、アルコール、グリコールエーテル、ポリエーテルポリオール、及びシリコーンが挙げられる。
【0023】
アルコールとしては、一価アルコール及び多価アルコールが挙げられる。一価アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、及び2−メチル−2−ブタノールが挙げられる。多価アルコールとしては、グリコール及びグリセリンが挙げられる。グリコールとしては、例えばモノエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びジエチレングリコールが挙げられる。
【0024】
グリコールエーテルは、そのホウ酸エステルであってもよい。グリコールエーテルとしは、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルのホウ酸エステル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルのホウ酸エステル等が挙げられる。
【0025】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコール(ポリテトラメチレングリコール)が挙げられる。ポリエーテルポリオールの数平均分子量としては、好ましくは150〜5000の範囲であり、より好ましくは500〜4000の範囲であり、さらに好ましくは1000〜4000の範囲である。
【0026】
シリコーンとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、及び高級脂肪酸含有シリコーンオイルが挙げられる。
【0027】
非鉱油系基材は、単独種から構成してもよいし、複数種を混合した構成であってもよい。
腐食抑制剤は、非鉱油系基材100質量部に対してリン酸エステルが0.001〜1質量部の範囲となるように混合されるとともに、非鉱油系基材100質量部に対してチアジアゾールが0.001〜10質量部の範囲となるように混合されることが好ましい。これにより、リン酸エステル及びチアジアゾールの作用効果を高めることが容易である。
【0028】
腐食抑制剤には、リン酸エステル及びチアジアゾールからなる有効成分以外の添加剤を必要に応じて含有させてもよい。前記有効成分以外の添加剤としては、例えば酸化防止剤、防錆剤、pH調整剤、粘度調整剤、潤滑剤、殺菌剤、消泡剤及び染料が挙げられる。
【0029】
このように構成された腐食抑制剤は、非鉱油系基材に配合されることで、同非鉱油系基材、リン酸エステル及びチアジアゾールを含有する流体が調製される。
ここで、非鉱油系基材を含有する流体は、銅及びゴム材の存在下において、銅が溶出したり、ゴム材に含有される添加剤の影響により沈殿物が生成したりすることがある。こうした銅の溶出及び沈殿物の生成は、リン酸エステル及びチアジアゾールの相乗効果により抑制されるようになる。なお、銅については、銅合金であっても、その銅合金中の銅の溶出が抑制されるようになる。
【0030】
流体の適用箇所としては、特に限定されず、例えば、自動車、産業用車両等の車両、各種電気機器、産業機器、建造物用の防振装置等が挙げられる。流体の用途としては、例えば熱媒体、液圧作動用流体、洗浄液、及び潤滑剤が挙げられる。熱媒体は、例えば自動車用冷却液等の各種産業機器用の熱媒体が挙げられる。液圧作動用流体としては、例えば自動車用ブレーキ液、各種産業機器のシリンダ用の作動液等が挙げられる。洗浄液としては、例えばウインドウォッシャー液、各種製造工程内で用いられる洗浄液が挙げられる。こうした流体の用途に応じて、非鉱油系基材の種類を選択したり、上述した添加剤に限らずに周知の添加剤を添加したりすることができる。
【0031】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態の腐食抑制剤に含有されるリン酸エステル及びチアジアゾールは、銅及びゴム材の存在下において、銅の溶出の抑制、及び沈殿物の生成の抑制について相乗効果を発揮するようになる。このため、銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制することの容易な腐食抑制剤を提供することができる。
【0032】
(2)腐食抑制剤を混合する非鉱油系基材としては、水、アルコール、グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種を選択することができる。こうした水系の基材は、金属腐食性についての対策が特に求められるものであるため、上述した腐食抑制剤の利用価値が高くなる。
【0033】
(3)一般式(1)中のR、R、及びRが、それぞれ独立して炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であるリン酸エステルを用いることで、チアジアゾールとの相乗効果が高まりやすくなる。このため、銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制することが更に容易となる。
【0034】
(4)腐食抑制剤は、非鉱油系基材100質量部に対してリン酸エステルが0.001〜1質量部の範囲となるように混合されるとともに、非鉱油系基材100質量部に対してチアジアゾールが0.001〜10質量部の範囲となるように混合されることが好ましい。これにより、銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制することが更に容易となる。なお、リン酸エステル及びチアジアゾールの混合比は、それら化合物を非鉱油系基材に混合した流体として使用する使用時の混合比を規定するものである。すなわち、非鉱油系基材の一部、リン酸エステル及びチアジアゾールを含有する流体の使用時に、非鉱油系基材を更に混合することで上記の混合比としてもよい。
【0035】
(第2の実施形態)
本発明の自動車用ブレーキ液を具体化した第2の実施形態について第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0036】
自動車用ブレーキ液は、グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種の非鉱油系基材を含有している。自動車用ブレーキ液は、更にリン酸エステル及びチアジアゾールを含有している。グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールとしては、前記第1の実施形態に記載したものを用いることができる。
【0037】
非鉱油系基材としては、銅及びゴム材の存在下において沈殿物の生成を更に抑制するという観点から、グリコールエーテルとしてグリコールエーテルのホウ酸エステルを含むことが好ましい。
【0038】
リン酸エステル及びチアジアゾールは、前記第1の実施形態と同様である。自動車用ブレーキ液中において、リン酸エステルの含有量は、非鉱油系基材100質量部に対して0.001〜1質量部の範囲であるとともに、チアジアゾールの含有量は、非鉱油系基材100質量部に対して0.001〜10質量部の範囲であることが好ましい。これにより、リン酸エステル及びチアジアゾールの作用効果を高めることが容易である。
【0039】
自動車用ブレーキ液には、上記以外の成分として各種添加剤を含有させることもできる。各種添加剤としては、例えば酸化防止剤、pH調整剤、粘度調整剤、潤滑剤、殺菌剤、消泡剤及び染料が挙げられる。
【0040】
なお、酸化防止剤としては、例えば4,4´−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のビスフェノール系化合物、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール系化合物が挙げられる。pH調製剤としては、例えばアミン化合物が挙げられる。アミン化合物としては、例えばトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等のアルカノールアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のアルキルアミン、及び、モルホリン等の環状アミンが挙げられる。
【0041】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(5)自動車用ブレーキ液に含有するリン酸エステル及びチアジアゾールは、銅及びゴム材の存在下において、銅の溶出の抑制、及び沈殿物の生成の抑制について相乗効果を発揮するようになる。このため、銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制することの容易な自動車用ブレーキ液を提供することができる。ここで、自動車用ブレーキ液の使用においては、比較的高温となることに加えて、長期間使用される傾向にある。すなわち、銅の溶出及び沈殿物の生成が促進されやすい条件で使用されることになる。この点、本実施形態の自動車用ブレーキ液は、上述した作用効果を得ることができるため、極めて有効である。
【0042】
(6)自動車用ブレーキ液の非鉱油系基材としては、吸湿に起因する沸点低下を抑制するためにグリコールエーテルのホウ酸エステルを含むことが多い。こうした吸湿条件下においては耐腐食性を高めておくことは重要である。本実施形態におけるリン酸エステル及びチアジアゾールを含有させる構成は、グリコールエーテルのホウ酸エステルを含む自動車用ブレーキ液において、沈殿物の生成を抑制する点で特に有効である。
【0043】
(7)自動車用ブレーキ液では、一般式(1)中のR、R、及びRが、それぞれ独立して炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であるリン酸エステルを用いることで、チアジアゾールとの相乗効果が得られやすくなる。このため、銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制することが更に容易となる。この点、前記第1の実施形態と同様に、一般式(1)中のR、R、及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜30のアルキル基、又はフェニル基であることが更に好ましく、R、R、及びRは、互いに同一であって、炭素数1〜30のアルキル基、又はフェニル基であることが最も好ましい。
【0044】
(8)自動車用ブレーキ液において、リン酸エステルの含有量は、非鉱油系基材100質量部に対して0.001〜1質量部の範囲であるとともに、チアジアゾールの含有量は、非鉱油系基材100質量部に対して0.001〜10質量部の範囲であることが好ましい。これにより、銅及びゴム材の存在下において銅の溶出を抑制するとともに沈殿物の生成を抑制することが更に容易となる。
【0045】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記自動車用ブレーキ液において、前記リン酸エステルが一般式(1)に示されることを特徴とする自動車用ブレーキ液。
【0046】
(ロ)前記自動車用ブレーキ液において、前記非鉱油系基材100質量部に対して前記リン酸エステルが0.001〜1質量部の範囲で含有されるとともに、前記非鉱油系基材100質量部に対して前記チアジアゾールが0.001〜10質量部の範囲で含有される自動車用ブレーキ液。
【0047】
(ハ)前記非鉱油系基材と、リン酸エステル及びチアジアゾールを含有する自動車用冷却液。この構成においては、非鉱油系基材として多価アルコールが好適に用いられる。
(ニ)前記非鉱油系基材として水及びアルコールの少なくとも一種と、リン酸エステル及びチアジアゾールを含有するウインドウォッシャー液。この構成においては、さらに周知の界面活性剤を含有させることが好適である。
【実施例】
【0048】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜7、比較例1〜4)
表1及び表2に示される(A)非鉱油系基油、(B)リン酸エステル、及び(C)チアジアゾールを混合することで、各例の自動車用ブレーキ液を調製した。表1及び表2に示される各成分の配合を示す数値の単位は質量部である。(C)チアジアゾールは、主骨格が前記一般式(2)で示されるものであって、R及びRが前記一般式(5)で示されるとともにR及びRは炭素数1〜10のアルキル基である。なお、各例の自動車用ブレーキ液には、酸化防止剤としての4,4´−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)0.1質量部、及びpH調整剤としてのトリブチルアミン1.2質量部が配合されている。
【0049】
<銅溶出抑制効果>
各例の自動車用ブレーキ液80gを容量200mLのガラス瓶に入れた後、銅片16g及びゴム材(スチレン・ブタジエンゴム)8gを浸漬した。ガラス瓶を密閉した状態で、120℃にて70時間加熱した後に、室温で1時間放冷した。放冷後の自動車用ブレーキ液を撹拌した後、その自動車用ブレーキ液に溶出した銅イオン量を原子吸光分析法により定量した。定量した銅イオン量に基づいて以下の基準で評価した。評価結果を表1及び表2に併記している。
【0050】
評価3:30mg/L以下の銅イオン量
評価2:31mg/L以上、50mg/L以下の銅イオン量
評価1:51mg/L以上の銅イオン量
<沈殿物生成抑制効果>
各例の自動車用ブレーキ液80gを容量200mLのガラス瓶に入れた後、銅片16g及びゴム材(スチレン・ブタジエンゴム)8gを浸漬した。ガラス瓶を密閉した状態で、120℃にて70時間加熱した後に、室温で1時間放冷した。放冷後の自動車用ブレーキ液を撹拌した後、沈殿量を測定した。沈殿量の測定は、JIS K 2233(2006)、“8.6 金属腐食性”に記載の方法に準拠して、遠心分離により沈殿した沈殿量を測定した。その沈殿量に基づいて以下の基準で評価した。評価結果を表1及び表2に併記している。
【0051】
評価3:0.2体積%以下の沈殿量
評価2:0.3体積%以上、0.5体積%以下の沈殿量
評価1:0.6体積%以上の沈殿量
<ゴム膨潤性及び金属腐食性>
各例の自動車用ブレーキ液について、JIS K 2233(2006)に準拠してゴム膨潤性及び金属腐食性の評価を行った。表1及び表2には、JIS K 2233(2006)に規定される品質を満たすものについて“合格”と記載している。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

表1及び表2に示されるように、各実施例の銅溶出抑制効果及び沈殿物生成抑制効果は、各比較例よりも優れることが分かる。また、各実施例では、JIS K 2233(2006)に規定されるゴム膨潤性及び金属腐食性を満たすものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非鉱油系基材に混合して用いられる腐食抑制剤であって、リン酸エステル及びチアジアゾールを含有することを特徴とする腐食抑制剤。
【請求項2】
前記非鉱油系基材が、水、アルコール、グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の腐食抑制剤。
【請求項3】
前記リン酸エステルが下記一般式(1):
【化1】

(R、R、及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基を示している)
に示されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の腐食抑制剤。
【請求項4】
前記非鉱油系基材100質量部に対して前記リン酸エステルが0.001〜1質量部の範囲となるように混合されるとともに、前記非鉱油系基材100質量部に対して前記チアジアゾールが0.001〜10質量部の範囲となるように混合されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項5】
グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種の非鉱油系基材を含有する自動車用ブレーキ液であって、
リン酸エステル及びチアジアゾールを含有することを特徴とする自動車用ブレーキ液。
【請求項6】
前記グリコールエーテルとしてグリコールエーテルのホウ酸エステルを含むことを特徴とする請求項5に記載の自動車用ブレーキ液。

【公開番号】特開2011−252183(P2011−252183A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124701(P2010−124701)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】