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腐食速度推定装置および方法
説明

腐食速度推定装置および方法

【課題】任意の地点における腐食速度を高い精度で推定する。
【解決手段】関数当てはめ部14Aで、任意の地点における推定腐食速度を算出する解析関数に対して、実測点と第1の観測点との距離に基づき第1の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該実測点における気温、降水量、および結露日数と、当該実測点における海塩粒子量と、当該実測点で計測した実測腐食速度とを適用することにより、パラメータとして実測腐食速度と推定腐食速度との誤差が最も少ない最適パラメータを特定し、腐食速度推定部14Bで、推定点と第2の観測点との距離に基づき第2の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該推定点における気温、降水量、および結露日数と、当該推定点における海塩粒子量とから、最適パラメータを用いた解析関数に基づいて当該推定点における腐食速度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食予測技術に関し、特に金属材料に対する大気腐食の速度を推定する腐食速度推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内外には、さまざまな金属材料が用いられており、特に、屋外環境では大気腐食と呼ばれる材料の劣化問題が浮き彫りになっている。大気腐食の要素には、海岸から飛来する海塩粒子をはじめとして、湿度、風、気温などがある。また、各要素は地形条件により、短期あるいは長期にわたって材料に影響を与えるため、複数の要素を考慮した腐食モデルが必要である。
【0003】
従来、このような腐食速度を推定する技術として、海塩粒子量と腐食量に一定の関係があり、また、海塩粒子量は海岸からの距離で一義的に決まるという仮定に基づいた腐食モデルを用いたものが提案されている(例えば、非特許文献1など参照)。しかしながら、このような腐食モデルでは、腐食速度を正しく推定することが困難であった。また、モデルパラメータが解析する地域ごとに経験的に与えられていたため、任意の地域で適用できる汎用的な方法が求められてきた。
【0004】
また、塩害を解析する技術として、塩害解析モデルが提案されている(例えば、非特許文献2など参照)。このモデルでは、亜鉛や鉄といった金属材料を一定期間、幾つかの沿岸部に設定して自然環境に曝し、海塩粒子量解析や材料表面の減肉解析を施している。同時に、同一期間における気象データとの因果関係を多変量解析することに観点が置かれている。この際、解析モデルにおける解析関数において、因子間の重み係数は経験的に推定されている。特に、重み係数を推定するときに用いられた気象データは、大きくばらついているため、試行錯誤的に決定するには限界があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】木村肇、“外装鋼板における塩害腐食の特徴”、日本金属屋根協会テクニカルレポート、http://www.kinzoku-yane.or.jp/technical/pdf/no224.pdf
【非特許文献2】宮田恵守、竹越良治、高沢壽佳、“海岸における亜鉛の待機腐食速度の推定”、防食技術、38, 540-545, 1989.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力や電気通信の分野において、送電線や通信線を支える構造物に付着した塩分が構造物の腐食に大きな影響を及ぼす。また、海塩粒子量のほか気温、結露、雨量などの気象条件も腐食に大きな影響を及ぼす。このため、海塩粒子量や気象データに関する実測データのない地点に設置された構造物の腐食を把握する上で、腐食速度を正確に推定することは、極めて重要となる。
【0007】
しかしながら、前述した従来技術では、海岸から推定点までの距離をパラメータとして、この距離に基づいて推定点における海塩粒子量や腐食速度が一義的に決定されるという方法が主であり、推定点における気温、結露、雨量など、腐食速度に大きな影響を与える気象データが推定値計算に反映されておらず、気象条件によって大きな測定誤差が発生するという問題点があった。また、気象データを反映させる方法においても、気象データの取り扱いは特定地域におけるデータに基づいた経験的なものであり、任意の地点における腐食速度について精度良く推定できるものではない。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、任意の地点における腐食速度を高い精度で推定できる腐食速度推定技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる腐食速度推定装置装置は、任意の地点に位置する実測点で実測した実測海塩粒子量と、実測点の周辺に位置する複数の第1の観測点における風向および風速からなる気象データと、海塩粒子量の推定を行う推定点の周辺に位置する複数の第2の観測点における風向および風速からなる気象データと、実測点と第1の観測点の位置関係を示す位置データと、推定点と第2の観測点の位置関係を示す位置データとを記憶するデータ蓄積部と、任意の地点における気温、降水量、結露日数、および海塩粒子量から、予め定められたパラメータを用いて、当該地点における推定腐食速度を算出する解析関数に対して、実測点と第1の観測点との距離に基づき第1の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該実測点における気温、降水量、および結露日数と、実測点における海塩粒子量と、当該実測点で計測した実測腐食速度とを適用することにより、パラメータとして実測腐食速度と推定腐食速度との誤差が最も少ない最適パラメータを特定する関数当てはめ部と、推定点と第2の観測点との距離に基づき第2の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該推定点における気温、降水量、および結露日数と、当該推定点における海塩粒子量とから、最適パラメータを用いた解析関数に基づいて当該推定点における腐食速度を算出する腐食速度推定部とを備えている。
【0010】
この際、任意の地点pcの任意の期間mにおける平均気温をTav(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける降水量をPsu(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける結露日数をC(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける海塩粒子量をSav(pc,m)とし、パラメータをa,b,c,d,eとした場合、当該地点における腐食速度R(pc,m)を算出する解析関数として、後述する式(5)を用いてもよい。
【0011】
また、関数当てはめ部で、解析関数に関する最適パラメータを特定する際、ロバスト関数を用いた非線形最小二乗法に基づいて、反復誤差がしきい値未満となるまで、各パラメータの値を変化させて腐食速度を反復計算するとともに、当該反復計算の回数に応じて、当該ロバスト関数内の係数を段階的に変化させるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明にかかる腐食速度推定方法は、任意の地点に位置する実測点で実測した実測海塩粒子量と、実測点の周辺に位置する複数の第1の観測点における風向および風速からなる気象データと、海塩粒子量の推定を行う推定点の周辺に位置する複数の第2の観測点における風向および風速からなる気象データと、実測点と第1の観測点の位置関係を示す位置データと、推定点と第2の観測点の位置関係を示す位置データとを記憶するデータ蓄積ステップと、任意の地点における気温、降水量、結露日数、および海塩粒子量から、予め定められたパラメータを用いて、当該地点における推定腐食速度を算出する解析関数に対して、実測点と第1の観測点との距離に基づき第1の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該実測点における気温、降水量、および結露日数と、実測点における海塩粒子量と、当該実測点で計測した実測腐食速度とを適用することにより、パラメータとして実測腐食速度と推定腐食速度との誤差が最も少ない最適パラメータを特定する関数当てはめステップと、推定点と第2の観測点との距離に基づき第2の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該推定点における気温、降水量、および結露日数と、当該推定点における海塩粒子量とから、最適パラメータを用いた解析関数に基づいて当該推定点における腐食速度を算出する腐食速度推定ステップとを備えている。
【0013】
この際、任意の地点pcの任意の期間mにおける平均気温をTav(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける降水量をPsu(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける結露日数をC(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける海塩粒子量をSav(pc,m)とし、パラメータをa,b,c,d,eとした場合、当該地点における腐食速度R(pc,m)を算出する解析関数として、後述する式(5)を用いてもよい。
【0014】
また、関数当てはめステップに、解析関数に関する最適パラメータを特定する際、ロバスト関数を用いた非線形最小二乗法に基づいて、反復誤差がしきい値未満となるまで、各パラメータの値を変化させて腐食速度を反復計算するとともに、当該反復計算の回数に応じて、当該ロバスト関数内の係数を段階的に変化させるステップを含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、推定点での腐食速度を推定する際、推定点における気温、結露、雨量など、腐食速度に大きな影響を与える気象データが推定値計算に反映されているため、気象条件によって発生する推定誤差を低減することができ、推定点における腐食速度を高い精度で推定することが可能となる。したがって、構造物の腐食状況を、腐食速度の実測データが存在しない地点であっても、正確に推定することができ、構造物の寿命や最適な腐食対策などを、簡便かつ正確に判断することが可能となる。特に、電力や電気通信の分野において、送電線や通信線を支える構造物など、広範囲で僻地に建設された構造物の腐食対策において、極めて高い効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】腐食速度推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】腐食速度推定処理を示すフローチャートである。
【図3】材料の暴露試験における材料の減肉具合を示す説明図である。
【図4】ある計算地点における腐食速度に関する精度の違いに対する評価値を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[腐食速度推定装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかる腐食速度推定装置10について説明する。図1は、腐食速度推定装置の構成を示すブロック図である。
この腐食速度推定装置10は、全体としてサーバ装置などのコンピュータからなり、入力された各種データに基づいて、任意の地点における金属に対する大気腐食の速度を推定する装置である。
【0018】
本実施の形態は、任意の地点における気温、降水量、結露日数、および海塩粒子量から予め定められたパラメータを用いて、当該地点における推定腐食速度を算出する解析関数について、当該解析関数に用いる最適なパラメータを、実測点で実測した実測腐食速度と、当該実測点における気温、降水量、結露日数、および海塩粒子量から特定し、得られた最適パラメータを用いた当該解析関数に基づいて、推定点における気温、降水量、結露日数、および海塩粒子量から、推定点における腐食速度を算出するようにしたものである。
【0019】
この際、実測点における気温、降水量、および結露日数は、当該実測点の周辺に位置する複数の第1の観測点で得られた気温、降水量、および結露日数を、当該第1の観測点までの距離に基づき加重平均して求め、推定点における気温、降水量、および結露日数は、当該推定点の周辺に位置する複数の第2の観測点で得られた気温、降水量、および結露日数を、当該第2の観測点までの距離に基づき加重平均して求めるようにしたものである。なお、実測点および推定点における海塩粒子量は、実測値でもよく、任意の手法で推定した値であってもよい。
【0020】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる腐食速度推定装置10の構成について説明する。
腐食速度推定装置10には、主な機能部として、データ入力部11、データ蓄積部12、表示部13、および演算処理部14が設けられている。
【0021】
データ入力部11は、外部装置(図示せず)との間でデータ通信を行うデータ通信装置や、オペレータのデータ入力操作を検出するキーボートなどの操作入力装置からなり、腐食速度の推定処理に用いる各種処理データを入力して、データ蓄積部12へ保存する機能を有している。主な処理データとしては、任意の地点に位置する実測点で実測した実測海塩粒子量と、実測点の周辺に位置する複数の第1の観測点における風向および風速からなる気象データと、海塩粒子量の推定を行う推定点の周辺に位置する複数の第2の観測点における風向および風速からなる気象データと、実測点と第1の観測点の位置関係を示す位置データと、推定点と第2の観測点の位置関係を示す位置データとがある。
【0022】
データ蓄積部12は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、データ入力部11で入力された各種処理データのほか、演算処理部14での腐食速度の推定に用いる各種データやプログラムを記憶する機能を有している。
表示部13は、LCDなどの画面表示装置からなり、演算処理部14からの指示に応じて、操作メニューや演算結果などの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0023】
演算処理部14は、CPUとその周辺回路を有し、データ蓄積部12からプログラムを読み込んで実行することにより、各種処理部を実現する機能を有している。
演算処理部14で実現される主な処理部として、関数当てはめ部14Aと腐食速度推定部14Bがある。
【0024】
関数当てはめ部14Aは、任意の地点における気温、降水量、結露日数、および海塩粒子量から、予め定められたパラメータを用いて、各方位において海岸から飛来する海塩粒子量を求めて合計することにより、当該地点における推定腐食速度を算出する解析関数に対して、実測点と第1の観測点との距離に基づき第1の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該実測点における気温、降水量、および結露日数と、当該実測点における海塩粒子量と、当該実測点で計測した実測腐食速度とを適用することにより、パラメータとして実測腐食速度と推定腐食速度との誤差が最も少ない最適パラメータを特定する機能を有している。
【0025】
腐食速度推定部14Bは、推定点と第2の観測点との距離に基づき第2の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該推定点における気温、降水量、および結露日数と、当該推定点における海塩粒子量とから、最適パラメータを用いた解析関数に基づいて当該推定点における腐食速度を算出する機能を有している。
【0026】
[腐食速度推定装置の動作]
次に、図2を参照して、本実施の形態にかかる腐食速度推定装置10の動作について説明する。図2は、腐食速度推定処理を示すフローチャートである。
腐食速度推定装置10は、推定点における腐食速度を推定する際、図2の腐食速度推定処理を実行する。
【0027】
まず、データ入力部11は、腐食速度の推定処理に用いる各種処理データ、ここでは、第1および第2の観測点における気温、降水量、および結露日数からなる気象データと、実測点で実測した実測腐食速度と、推定点および実測点における海塩粒子量と、実測点と第1の観測点の位置関係、および推定点と第2の観測点の位置関係を示す位置データとを入力し(ステップ100)、データ蓄積部12へ保存する(ステップ101)。
【0028】
続いて、関数当てはめ部14Aは、気温、降水量、および結露日数や、海塩粒子量を変数とする、腐食速度を求めるための解析関数を用いて、入力した各種処理データから当該解析関数で用いる未知のパラメータの値を特定する(ステップ102)。
この際、関数当てはめ部14Aは、解析関数において、実測点と第1の観測点との距離を用いる。特に、複数の第1の観測点で得られた気象データを考慮する場合は、実測点と第1の観測点との距離に関する加重平均を、気温、降水量、および結露日数に適用する。
【0029】
また、関数当てはめ部14Aは、データ間のばらつきという外れ値に応じるために、統計的な手段であるロバスト推定法に基づいた非線形最小二乗法を用い、収束性を高めるために、ロバスト関数中の係数を段階的に変化させる。
【0030】
この後、腐食速度推定部14Bは、関数当てはめ部14Aで特定された最適パラメータを用いた解析関数に基づいて、推定点における腐食速度を算出して(ステップ103)、1次元的もしくは2次元的に解析された結果を表示部13で表示し(ステップ104)、一連の腐食速度推定処理を終了する。
この際、腐食速度推定部14Bは、解析関数において、推定点と第2の観測点との距離を用いる。特に、複数の第2の観測点で得られた気象データを考慮する場合は、推定点と第2の観測点との距離に関する加重平均を、気温、降水量、および結露日数に適用する。
【0031】
[腐食速度推定処理の詳細]
次に、数式を用いて、本実施の形態にかかる腐食速度推定処理の詳細について説明する。
本実施の形態では、材料を劣化させる要素として、主に大気環境が関係すると仮定している。要素については、海塩粒子(以下、粒子)量、結露、雨量、気温とした。
このうち、粒子量は、沿岸部に近い位置に設置されている材料ほど、その影響を受けやすいと言われており、腐食の進行を加速させる要因の一つとなっている。これについては、前述した非特許文献1における手法などの公知の手法により粒子量を観測・解析した結果を利活用すればよい。
【0032】
また、結露については、平均水蒸気圧h、気温tをパラメータとしたときの、一定しきい値以上になった場合に結露するとされている。即ち、ある地点p、ある日の1日での最低気温tminにおいて、次の式(1)の条件を満たす1ヶ月間の日数を結露日数と呼ぶ。
【数1】

【0033】
雨量については、2つの役割が考えられる。1つは、材料表面に付着した粒子を雨により流すときの量に関するものである。もう1つは、従来の考え方にあるように、腐食を促進させることに関係する量である。これについては濡れた材料表面を乾かす条件の1つである日照時間が関係する。
いずれの観測量についても、統計的な見地から計測期間が1ヶ月間の場合を基本単位とした。
【0034】
次に、本実施の形態にかかる、任意の地点における、気温、降水量、結露日数、および海塩粒子量から、当該地点の腐食速度を推定するための解析関数について、具体的に説明する。ここでは、粒子量を推定する任意の地点を推定点と呼ぶ。また、気象データを観測する観測点については、アメダスと地域観測所を含めている。なお、アメダス、地域観測所以外で気象データが観測され、入手できれば用いるものとする。
【0035】
(A)任意の地点pcと観測点psとの距離ds(pc)
任意の地点pc(推定点または実測点)から観測点psまでの距離をds(pc)とすると、地点pcの緯度la(pc)・経度lo(pc)と観測点の緯度la(ps)・経度lo(ps)との距離はds(pc)は、次の式(2)で与えられる。
【数2】

【0036】
(B)月平均気温Tav(pc,m)
任意の地点pcでの月mにおける月平均気温Tav(pc,m)は、地点pcに近い、例えば3ヶ所の観測点psでの月mにおける月平均気温Tav(ps,m)の加重平均として、次の式(3)で与えられる。
【数3】

ただし、最も近い観測点が、地点pcから緯度0.5′×経度0.5′以内にある場合は、当該観測点の月平均気温Tav(ps,m)を使用する。また、観測点が地点pcと同一地点に存在する場合も、当該観測点の月平均気温Tav(ps,m)を使用する。
【0037】
(C)月降水量Psu(pc,m)
任意の地点pcでの月mにおける月降水量Psu(pc,m)は、地点pcに近い、例えば3ヶ所の観測点psでの月mにおける月降水量Psu(ps,m)の加重平均として、次の式(4)で与えられる。
【数4】

ただし、最も近い観測点が、地点pcから緯度0.5′×経度0.5′以内にある場合は、当該観測点の月降水量Psu(ps,m)を使用する。また、観測点が地点pcと同一地点に存在する場合も、当該観測点の月降水量Psu(ps,m)を使用する。
(D)月結露日数C(pc,m)単位:日
任意の地点pcでの月mにおける月結露日数C(pc,m)は、地点pcに近い、例えば3ヶ所の観測点psでの月mにおける月結露日数C(ps,m)の加重平均として、次の式(5)で与えられる。
【数5】

ただし、最も近い観測点が、地点pcから緯度0.5′×経度0.5′以内にある場合は、当該観測点の月結露日数C(ps,m)を使用する。また、観測点が地点pcと同一地点に存在する場合も、当該観測点の月結露日数C(ps,m)を使用する。
【0038】
(E)腐食速度推定値R(pc,m)単位:μm
腐食速度を推定するための解析関数については、次のように導出した。月単位での腐食速度R(pc,m)については、平均降水量Psu(pc,m)、結露日数C(pc,m)、平均気温Tav(pc,m)、平均粒子量Sav(pc,m)に関係するモデルとした。次に、腐食速度とこの4つのパラメータ間の関係については次のように与えた。まず、平均降水量と平均粒子量が増大した場合は、腐食速度は急速に早まるものと仮定し、指数関数に従うものとした。続いて、結露日数が多いほど、平均降水量が多いほど、腐食速度が増えるものとした。
【0039】
以上より、月mにおける、地点pcでの腐食速度推定値は、各量に対する重みづけa,b,c,d,eとしたときに、次の式(6)に示す解析関数で表すことができる。
【数6】

【0040】
続けて、式(6)における5つのパラメータ、a,b,c,d,eを推定する方法について述べる。その一つの求め方として、実際の腐食速度を解析したときの気象条件に基づくことである。 実際の腐食速度と式(6)により推定された誤差が試行錯誤的に、小さくなるように求めていく方法が取られてきた。しかし、この方法では、パラメータの組み合わせに限界があるため、非常に狭い範囲での当てはめしか評価できない問題があった。
【0041】
そこで、本発明では最小二乗法の考え方に基づいた客観的な方法を適用する。ここで、実際に観測された地点p,時期tにおける腐食速度をr(p,t)とし、式(6)により推定された腐食速度s(p,t)との誤差をεとすると、観測地点数Pの場合、次の式(7)のように定義できる。
【数7】

【0042】
次に、式(7)を最小化するための必要条件として、次の式(8)に示すように、5つのパラメータに関する偏微分がゼロという条件を課すことができる。
【数8】

【0043】
従って、最小二乗法の基本的な数値解法である、擬似逆行列に基づいて5つのパラメータを容易に得ることができる。しかし、最小二乗法におけるパラメータ推定問題に関して、観測誤差が大きい場合には、式(8)の条件だけでは精度が低下することが知られている。そこで、本発明では、式(6)について、ロバスト統計学で用いられている、次の式(9)のようなロバスト関数ρを用いた非線形最小二乗法を適用する。
【数9】

【0044】
ただし、ロバスト関数は、ローレンツ関数の場合、次の式(10)で与えられる。
【数10】

また、式(8)を最小化するための必要条件は、次の式(11)で与えられる。
【数11】

【0045】
式(8)の最小化するような5つのパラメータを求めるためには、最も利便性の高い最急降下法による反復計算を適用すればよい。ただし、初期値として、5つのパラメータについてすべてゼロとする。これら5つのパラメータのすべてについて、反復計算前後のパラメータ値の差、すなわち反復誤差が一定値(例えば、0.001)未満になったときを収束条件として与える。また、収束性を高めるために、ロバスト関数において、反復回数ごとに、ロバスト関数内で用いられる変数σ(分布の裾野の広がり程度を規定するパラメータ)を大きい値(120など)から、小さい値(10など)へ段階的に小さくしていく。
【0046】
上述したような方法により、5つのパラメータを客観的にかつ、効率的に推定することができる。求められた5つのパラメータをa’,b’,c’,d’,e’とすると、任意の推定点pcでの腐食速度は、次の式(12)により推定することができる。
【数12】

【0047】
図3は、材料の暴露試験における材料の減肉具合を示す説明図である。金属材料、特に、亜鉛、鉄を一定期間、大気環境下に曝すと、初期の厚みをもつ材料20がさまざまな要因により、材料21のように減肉する場合がある。その要因については、気象条件や海から飛来する海塩粒子によるものを挙げることができる。一般に、亜鉛に比べて鉄の方が腐食する速度が速い。気象条件について、降水量、結露(日数)、気温が関係する。また、海塩粒子の量の関わりも大きい。
【0048】
図4は、ある計算地点における腐食速度に関する精度の違いに対する評価値を示す説明図である。実際に腐食速度が観測された地点3ヶ所において、腐食速度を求める実験を行った。これについては、従来のように式(5)において、5つのパラメータを試行錯誤的に与えた場合と本発明である式(12)により推定した場合について行った。その結果、実測された腐食速度と推定された腐食速度について、平均誤差は従来法30に比べて本発明による方法31の方が大幅に低くなった。なお、ここで平均誤差とは、各観測地点において、一定期間のデータから求められた平均値に基づいている。
【0049】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、関数当てはめ部14Aで、任意の地点における気温、降水量、結露日数、および海塩粒子量から、予め定められたパラメータを用いて、当該地点における推定腐食速度を算出する解析関数に対して、実測点と第1の観測点との距離に基づき第1の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該実測点における気温、降水量、および結露日数と、当該実測点における海塩粒子量と、当該実測点で計測した実測腐食速度とを適用することにより、パラメータとして実測腐食速度と推定腐食速度との誤差が最も少ない最適パラメータを特定し、腐食速度推定部14Bで、推定点と第2の観測点との距離に基づき第2の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該推定点における気温、降水量、および結露日数と、当該推定点における海塩粒子量とから、最適パラメータを用いた解析関数に基づいて当該推定点における腐食速度を算出するようにしたものである。
【0050】
これにより、推定点での腐食速度を推定する際、推定点における気温、結露、雨量など、腐食速度に大きな影響を与える気象データが推定値計算に反映されているため、気象条件によって発生する推定誤差を低減することができ、推定点における腐食速度を高い精度で推定することが可能となる。したがって、構造物の腐食状況を、腐食速度の実測データが存在しない地点であっても、正確に推定することができ、構造物の寿命や最適な腐食対策などを、簡便かつ正確に判断することが可能となる。特に、電力や電気通信の分野において、送電線や通信線を支える構造物など、広範囲で僻地に建設された構造物の腐食対策において、極めて高い効果が得られる。
【0051】
また、本実施の形態では、関数当てはめ部14Aで、解析関数に関する最適パラメータを特定する際、ロバスト関数を用いた非線形最小二乗法に基づいて、反復誤差がしきい値未満となるまで、各パラメータの値を変化させて腐食速度を反復計算するとともに、当該反復計算の回数に応じて、当該ロバスト関数内の係数を段階的に変化させるようにしたので、腐食速度を推定する際、入力されるデータ間のばらつきという外れ値に対応することができるとともに、収束性を高めることができる。これにより、解析関数で用いるパラメータを、客観的かつ効率的に特定することができるとともに、特定精度を向上させることができる。
【0052】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0053】
10…腐食速度推定装置、11…データ入力部、12…データ蓄積部、13…表示部、14…演算処理部、14A…関数当てはめ部、14B…腐食速度推定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の地点に位置する実測点で実測した実測腐食速度と、前記実測点の周辺に位置する複数の第1の観測点における気温、降水量、結露日数からなる気象データと、腐食速度の推定を行う推定点の周辺に位置する複数の第2の観測点における気温、降水量、および結露日数を含む気象データと、前記推定点および前記実測点における海塩粒子量と、前記実測点と前記第1の観測点の位置関係を示す位置データと、前記推定点と前記第2の観測点の位置関係を示す位置データとを記憶するデータ蓄積部と、
任意の地点における気温、降水量、結露日数、および海塩粒子量から、予め定められたパラメータを用いて、当該地点における推定腐食速度を算出する解析関数に対して、前記実測点と前記第1の観測点との距離に基づき前記第1の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該実測点における気温、降水量、および結露日数と、前記実測点における海塩粒子量と、当該実測点で計測した実測腐食速度とを適用することにより、前記パラメータとして前記実測腐食速度と前記推定腐食速度との誤差が最も少ない最適パラメータを特定する関数当てはめ部と、
前記推定点と前記第2の観測点との距離に基づき前記第2の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該推定点における気温、降水量、および結露日数と、当該推定点における海塩粒子量とから、前記最適パラメータを用いた前記解析関数に基づいて当該推定点における腐食速度を算出する腐食速度推定部と
を備えることを特徴とする腐食速度推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の腐食速度推定装置において、
任意の地点pcの任意の期間mにおける平均気温をTav(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける降水量をPsu(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける結露日数をC(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける海塩粒子量をSav(pc,m)とし、前記パラメータをa,b,c,d,eとした場合、当該地点における腐食速度R(pc,m)を算出する前記解析関数として、次の式
【数1】

を用いることを特徴とする腐食速度推定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の腐食速度推定装置において、
前記関数当てはめ部は、前記解析関数に関する前記最適パラメータを特定する際、ロバスト関数を用いた非線形最小二乗法に基づいて、反復誤差がしきい値未満となるまで、前記各パラメータの値を変化させて前記腐食速度を反復計算するとともに、当該反復計算の回数に応じて、当該ロバスト関数内の係数を段階的に変化させることを特徴とする腐食速度推定装置。
【請求項4】
任意の地点に位置する実測点で実測した実測海塩粒子量と、前記実測点の周辺に位置する複数の第1の観測点における風向および風速からなる気象データと、海塩粒子量の推定を行う推定点の周辺に位置する複数の第2の観測点における風向および風速からなる気象データと、前記実測点と前記第1の観測点の位置関係を示す位置データと、前記推定点と前記第2の観測点の位置関係を示す位置データとを記憶するデータ蓄積ステップと、
任意の地点における気温、降水量、結露日数、および海塩粒子量から、予め定められたパラメータを用いて、当該地点における推定腐食速度を算出する解析関数に対して、前記実測点と前記第1の観測点との距離に基づき前記第1の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該実測点における気温、降水量、および結露日数と、前記実測点における海塩粒子量と、当該実測点で計測した実測腐食速度とを適用することにより、前記パラメータとして前記実測腐食速度と前記推定腐食速度との誤差が最も少ない最適パラメータを特定する関数当てはめステップと、
前記推定点と前記第2の観測点との距離に基づき前記第2の観測点における気温、降水量、および結露日数を加重平均して求めた当該推定点における気温、降水量、および結露日数と、当該推定点における海塩粒子量とから、前記最適パラメータを用いた前記解析関数に基づいて当該推定点における腐食速度を算出する腐食速度推定ステップと
を備えることを特徴とする腐食速度推定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の腐食速度推定方法において、
任意の地点pcの任意の期間mにおける平均気温をTav(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける降水量をPsu(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける結露日数をC(pc,m)とし、当該地点pcの当該期間mにおける海塩粒子量をSav(pc,m)とし、前記パラメータをa,b,c,d,eとした場合、当該地点における腐食速度R(pc,m)を算出する前記解析関数として、次の式
【数2】

を用いることを特徴とする腐食速度推定方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5のいずれか1つに記載の腐食速度推定方法において、
前記関数当てはめステップは、前記解析関数に関する前記最適パラメータを特定する際、ロバスト関数を用いた非線形最小二乗法に基づいて、反復誤差がしきい値未満となるまで、前記各パラメータの値を変化させて前記腐食速度を反復計算するとともに、当該反復計算の回数に応じて、当該ロバスト関数内の係数を段階的に変化させるステップを含むことを特徴とする腐食速度推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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