説明

腐食防止と摩擦低減被覆物および低温方法

【課題】潤滑用被覆物としては流体フィルムと乾燥フィルムとがあるが、両者はそれぞれ別の長所と短所とを持っている。そのうちの乾燥フィルムは、厳しい自然状態の下で腐食から守るべき全表面を被覆して長期にわたって潤滑できるものにすることが困難である。
【解決手段】この発明は、上述の欠点を解消するために、重合体樹脂と、腐食を保護し、潤滑性を与え、被覆物の凝固点を降下させる硼酸塩含有の添加剤と、動的安定化材とからなる構造被覆物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、摩擦の低減と腐食の防止のための被覆物に関するものである。さらに詳しく述べると、この発明は極限の環境に適した潤滑と腐食保護用の重合体含有被覆物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車輪の潤滑は、技術の領域で公知である。考古学的な証拠によると、紀元前1400年より前に既に車輪の潤滑用に獣油が使用された。潤滑と摩擦係数の研究は、英国でTowerが1885年に鉄道車輌のジャーナル軸受について研究を完成した1880年代の後期に始まった、と考えられている。その時以来、数多くの技術者は、種々の環境の中で摩擦の低減という利点を最もよく発揮させるのに適した潤滑剤と被覆物とを見出そうと努力して来た。
【0003】
潤滑用の被覆物は、広い2つの分野、即ち流体フィルム潤滑と乾燥フィルム潤滑とに分類されるのが普通である。潤滑がもたらされるこれらの各先行技術は、それぞれ固有な幾つかの欠点を持っている。さらに具体的に述べると、流体フィルム潤滑では、移動する表面に加わる荷重が向き合う表面間にある流体によってすべて支持される。フィルム上にかかる圧力は表面の移動によって発生し、その後この移動は次第に狭まる楔形の領域へ潤滑剤を順に分配する。移動する表面の行動は、潤滑剤の流動性または粘性によって異なる。フィルム圧力と動力損失は、潤滑剤の粘度によって異なることは言うまでもなく、移動する表面の構造と潤滑剤とせん断強度とによって異なる。流体力学的またはスクイーズフィルム作用は、或る場合にはオイルまたは水で潤滑された軸受に対して、荷重を適当に支持することができない。これらの場合に、或る先行技術者は、軸受、とくに低速度装置における重荷重を取り扱うのに用いられる軸受に対し、必要な流体力学的またはスクイーズフィルムの特性を与えようとして、移動する表面に潤滑剤をポンプで送ることを試みた。これらの先行技術の方法は極度に高い圧力状態では役に立たないことが判った。これらの場合に、或る技術者は、極度に高い圧力状態にあると考えられる軸受内の状態または同様な状態に対抗するために添加剤の使用を試みた。しかし、当業者ならば認めるように、極圧添加剤は化学作用によって機能を果たすものであるから、これらの添加剤は激しく腐食される金属表面では使用することができない。このことは厳しい環境ではよく遭遇する現象である。他の技術者は、潤滑剤を増加したり、または添加剤によってオイルの粘度を上昇させたり、単位軸受荷重を低下させたり、移動する表面の仕上げを改良したり、極圧添加剤の使用の代わりに代替物として外圧を増大させたりすることを含む、他の解決方法を提案した。しかし、何れにしても固体と固体との接触に関連する乾燥摩擦または乾燥摺動は、殆どすべての流体潤滑系で起こり、例えば機械始動時、途中の不整列、または不適当な間隙、表面の移動方向の反転または潤滑剤の分配における多くの不慮または不測の妨害において起こる。さらに、またグリースまたはオイルのような従来の潤滑剤は、極限の温度、高真空、放射性または汚染環境にある移動表面には使用されない。これらの状況および環境は、通常乾燥フィルム潤滑剤で検討される。
【0004】
乾燥潤滑剤はそれ自体一連の欠点を示す。乾燥潤滑剤は、普通は薄い被覆物としてまたは粒状の材料として付与されて、移動表面の磨耗または摩擦を低減させる。Levyが記載しているように、これらのフィルムまたは粒状材料は、固状または粒状の炭素−黒鉛、鉛バビット、青銅、アルミニウム、ポリエチレンまたはポリテトラフルオロエチレンの固状または粒状の材料からなるか、またはこれらの材料を結合剤中に加えたものであって、その場合、そのフィルムまたは粒子は移動表面の一方または双方に接着される。乾燥潤滑剤フィルムまた粒子の有効性は、固状または粒状の潤滑剤が使用される結合剤だけでなく、荷重、使用中に発生する表面温度、移動表面の速度、硬化、疲労、溶接、再結晶、酸化または加水分解のような使用条件によって、或る程度制御される。当業者が認めるように、その有効性に悪い影響を与える可能性のあるこれらの条件に加えて、乾燥潤滑剤は充分な耐摩擦抵抗性と耐候性を提供できないのが普通であって、そのために何れにしてもその有効性を大きく減少させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のことは、従来の潤滑被覆の方法と材料とに関連する或る種の問題を明確にしている。さらに、上述のことは、流体フィルム潤滑と乾燥フィルム潤滑被覆との両者にとって有効な特徴を与える潤滑被覆に対して、この業界で永年感じられながら解決されなかった必要な事項を際立たせる。また、上に述べたことは、摩擦の低減と腐食保護とを提供する被覆に対して、永年感じられながら解決されなかった必要な事項を際立たせる。さらに、上述のことは、厳しい気候条件および厳しい作業条件を含んだ極限の環境に適した有効な潤滑被覆に対して、永年感じられながら解決されなかった必要な事項を際立たせる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の種々の具体例は、上述の実際問題を解決し、その上に追加の利点を提供している。この発明の或る具体例は、摩擦を低減し腐食を保護する被覆物を提供することによって、上述の種々の欠点を解消している。この発明の他の具体例は、厳しい気候条件と厳しい作業条件とを含んだ極限の環境において、長い寿命を表わす潤滑被覆物を提供することによって、上述の種々の欠点を解決する。この発明のさらに他の具体例は、無毒で生分解性の被覆物、および/または大量の生産と大量使用のために、充分安価な被覆物を与えるような追加の利益を上述の利益に与えている。
【0007】
これらの利益および他の利益は、以下にさらに詳しく説明するようにこの発明によって得られる。理論によって束縛されることは望ましくないが、ここに記載する組成物と方法は、関連する技術の種々の利点を高め、ここに記載する先行組成物と先行方法の1または2以上の制限を実質的に回避する、という相剰効果を提供することができる。
【0008】
この発明の有利な一面によると、少なくとも1つの具体例ではこれまで外界または屋外として記載されてきた作業環境において、腐食保護と潤滑とを与える方法と材料とが提供される。この発明の有利な別の面によると、少なくとも1つの具体例において、人間の快的な領域については極限と見なされる作業環境において、それが温度、突発事項、その他何であろうと関係なく、腐食保護と潤滑とを与える方法と材料とが提供される。この発明のさらに有利な別の面によると、少なくとも1つの具体例において、腐食力の存在下で腐食保護と潤滑とを与える方法と材料とが提供される。
【0009】
この発明の有利なさらに別の面によると、少なくとも1つの具体例において、従来のペンキに近い方法で被覆物を設けるのに適した方法と材料とが提供される。華氏マイナス20度のような凝固点以下の温度で、或る表面に被覆物を設ける場合には、作業者が瞬間的に細かな注意力を集中できない場合を考えると、この発明のこの具体例の有利な面は容易に認められよう。何等かの腐食防止被覆物が有効であるためには、表面が完全に被覆されていることが重要である。従来のペンキに普通な方法でこの発明のこれら具体例の被覆物を作ることができるので、(グリースによく似た方法で付与される)乾燥フィルム潤滑剤の欠点を克服し、表面の完全被覆をなしとげることができる。
【0010】
この発明の1つの特徴によると、重合体樹脂と、硼酸塩を基材とする添加剤と、動的な安定化材とからなる、やさしいまたは厳しい屋外環境の下で腐食の保護と摩擦係数の低減とを同時に与えるための構造被覆物が提供される。この発明の一面によると、上記の重合体樹脂はアクリル、ウレタン、エポキシ、ビニルアクリル、スチレンブタジエン、尿素、ポリ尿素、珪素樹脂およびシリケートを含んだ、耐久性構造被覆物クラスの樹脂から選択された樹脂であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0011】
この発明の別の面によると、上記の硼酸塩を基材とする添加剤は、活性表面の腐食され易い箇所を電気化学的に結合させることによる腐食保護と、摩擦接触が時たま生じる表面へ、局部的な外界湿度を利用して局部的に生成される弱い滑り通路の結晶性材料を創造して再供給することによる潤滑性向上と、開始剤と反応して被覆物付与過程で凝固点を降下させる材料とを同時に与えるための単一の添加剤を含んでいる。
【0012】
この発明のさらに別の面によると、動的安定化材は腐食保護物、潤滑低減物および凝固点降下物を供給するための安定化された材料の平衡を創り出す。
【0013】
この発明の1つの特徴によると、構造被覆物は粒子を分散させるため、被覆物付与のあとで有効成分を重合体樹脂に化学的または機械的に結合させるために表面活性を与えるため、構造樹脂の合着を助けるため、液相粘度の制御を助けるため、および液相におけるpH制御を助けるための有効成分を含んでいる。
【0014】
この発明のもう1つの特徴によると、硼酸塩を基材とする添加剤には、ボリックオキサイド(boric oxide)が出発材料として用いられ、硼酸が腐食性金属の境界面へ移動することによって腐食保護を与え、液相凝固点降下剤としての硼酸エステルを与え、表面へ拡散されたボリックオキサイドが環境湿度と反応することによって摩擦係数を低減させる。
【0015】
好ましい具体例によると、動的安定化材は2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートと、2,2,1−アミノトリメチルプロパノールとの混合物である。この発明の具体例の有利な特徴は、ジオールモノエステルと硼酸との反応が起きて、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールボレートモノイソブチレート(硼酸エステル)を生じるということである。
【0016】
この発明のさらに別の面によると腐食力を受け易い表面を不働態にすると同時に、その表面と滑り、転動または転滑動摩擦のもととなる表面との間の摩擦係数を低減させる方法であって、初めに被覆物を付設し、そのあとで不働態にしようとする特定領域に硼酸を連続的に移行させることにより、表面を不働態にして被覆物の官能操作を行うことからなる方法であって、その場合、移行は設定された化学ポテンシャルの勾配によって推進され、また被覆物はゼロでない湿度の環境に接している作動表面へ硼酸を移行させることによって摩擦係数が低減され、その場合移行は局部的に引き出される化学ポテンシャルの勾配によって行われる、ことを特徴とする方法が提供される。
【0017】
この方法の有利な特徴は、その方法が華氏約120度から華氏約マイナス36度までの温度で始めることができる、ということである。
【0018】
この方法のもう1つの有利な特徴は、噴霧された粒子の衝撃による運動エネルギーを利用して、接着界面化学反応を開始させて反応を行い、この方法を実現できる、ということである。この発明のこの特徴によると、この界面化学反応は腐食力を受け易い表面と硼酸との間で行うことができる。
【0019】
この方法のもう1つの有利な特徴によれば、初めの被覆物付設の間に、硼酸エステルが被覆物を安定化させる。この発明のこの特徴によると、硼酸エステルは、硼酸、硼酸エステル、およびアンヒドロキシ(anhydroxy)基の動的バランスによって、被覆物付設工程の間それ自身が安定化される。
【0020】
この発明のさらに別の一面によると、この発明の或る具体例では被覆物が安全である。この発明のこの一面によると、有限の生態学的終点を持った被覆物が提供され、その終点は被覆物の生分解に必要な時間である。この発明によると、1から5年または3から10年の分解時間を持った被覆物が提供される。また、この発明のこの一面によると、この発明のこれら具体例における被覆物は、塗布された被覆物の1リットルあたり50グラム以下のVOCを出す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下にこの発明をとくに有用な鉄道と他のレール機構における被覆物について説明するが、この発明は多くの分野と用途に応用できるものであることは、当業者にとって容易に明らかなことである。一般に、この発明は、摩擦の低減と腐食の保護とを提供するに適した被覆物が必要とされる仕事であれば、どのような分野においても使用できるものである。さらに、この発明は無毒および/または生分解性潤滑剤、または腐食から保護しまたは大量に用いられる安価な被覆物を必要とする仕事に対しては、どのような分野においても使用することができる。
【0022】
この発明の説明をさらに詳しく述べるために、スチールレールとスチールホイール機構で遭遇する問題を取り上げる。スチールレールとスチールホイールとによる輸送機構は、貨物、旅客および大量輸送機構を含んでいて、ホイール、レールおよび他のレール部品、例えば枕木のような機械部品の広汎な摩耗に苦しんでいる。それらの機械部品の摩耗のもとは、その機構が動かされる間にホイールとレールとの間に発生する摩擦力である、と考えるのが普通である。レールとホイールとの間の摩耗は、レール床機構としての部品間で発生する摩擦と同様に、被覆物の観点から考えるのは妥当でなく、通過する列車の重量に対応する。作動中に発生する摩擦力が、レール機構の劣化の原因となっていることは確かであるが、使用時の部品の状態は余り注意されていない。腐食(点状、糸状および裂け目状の腐食)が表面を台なしにし、凹凸を生じるときには、作動する表面の間の摩擦は劇的に大きくなる。多くの場合、これらの凹凸は潤滑しているフィルムに孔をあけまたはフィルムを破壊し、こうして有利な効果をすべて失わせる。錆の発生(金属の酸化)は電気化学的な現象である。腐食には8つの基本形態/機構があり、その各々は違った方法で電気化学的な電池を作る。裂け目状腐食、一様な腐食および糸状腐食の場合には、露出している金属に酸素の到達するのを防ぐことが、普通、腐食を止めることになる。これは、限られた酸素が接近できるだけの高密度の被覆物を手際よく付設することによって達成することができる。電気腐食、点状腐食、侵食状腐食、疲労腐食、粒子間腐食、脱亜鉛/浸出および浸食腐食の場合には、普通、被覆物は化学的相互作用なしに腐食が連続し/開始するのを防げない。
【0023】
ホイールとレールとの間の相互作用によって発生するストレスは、車輌が一組のレールから他の一組のレールへ移動しなければならない転轍器のところで最も深刻である。さらに、一部の転轍器が閉じて車輌を移動させるための通路が導入されている転轍器のところでは、脱線の危険が最大である。転轍器は大きな腐食力を受け易く、保護されない環境にあるのが普通である。転轍器は頻繁にまたは間歇的に使用されている永い年月の間に、実質的に自然力を受けるので、非常に高度の安全性をもって作動しなければならない。転轍器の失敗は望ましくない大きな結果を招く。グリースやオイルのような潤滑剤を頻繁に補給して時刻表に記入する必要があり、極めて頻繁に使用されるかまたは厳しい天候条件で使用される場合には、潤滑剤は効力を失うこともある。乾燥フィルム潤滑剤は、使用頻度の見地から適当であるのに、当然の腐食から装置を充分に保護しない傾向にある。その理由は、その潤滑剤が働くときに以下に記載するような方法を使用して、充分に表面を被覆するように付設することが困難だからである。さらに、乾燥フィルム潤滑剤は、こすり落としに対する抵抗力がなくて、そのために乾燥フィルム潤滑剤の材料が適当なすべり平面(黒鉛における基礎平面)を与える方向以外の方向に力が加えられると、潤滑剤は容易に取り除かれて効果のないものとなる。そのような力はレール、雪、地面の移動等から生じる天候変化によって起こる。
【0024】
この発明の現時点での好ましい具体例は、腐食力を受け易い表面を不働態にすると同時に、この表面と、滑り、転動、または転滑動摩擦のもとと考えられる表面との間に生じる摩擦係数を低減させる方法である。この方法は、保護を必要とする表面上に被覆物を噴霧し、刷毛塗りし、またはロール塗りするような、従来の塗布方法を使用して、被覆物を付設することを含んでいる。この方法の第1段階は、華氏120度から華氏マイナス36度までの範囲の外気の状態中で行うことができる。この範囲の両極端での被覆物の付設は、硼酸エステルを使用して被覆物を安定化することによって容易となる。その代わり、この硼酸エステルは、硼酸、硼酸エステルおよびアンヒドロキシ基の動的バランスによって、塗布工程の間それ自身安定化される。塗布された表面と生成された被覆物との間の接着は、噴霧された粒子の衝撃の運動エネルギーを利用して、接着の界面化学反応が起こるように開始させることができる。さらにその接着は、噴霧された粒子の衝撃の運動エネルギーを利用して、接着の界面化学反応が腐食力を受け易い塗布表面と硼酸との間で起こるように開始させることができる。被覆物が一旦表面に塗布されると、硼酸は化学ポテンシャルの勾配によって、現在および以前に腐食力を受けていた金属表面へ連続的に移行し、一旦被覆物が完全に生成されると、摩擦が起きている表面上で動的バランスが成立し、従って硼酸が連続的にこの表面へ供給される。乾燥潤滑剤とは違って、摩擦低減のために有効な表面は、ゼロでない湿度の環境に接触していなければならない、ということに注意することが重要である。
【0025】
社会が生態学的調和の重要性を一層よく認めるようになったので、環境に放置して曝される製品は、適当な時間内に生分解することが重要である。これまで述べてきた方法は、付設される材料が、あとの段落に記載するような成分であることに基づいて、1から20年の範囲内で生分解されるように行うことができる。この方法のさらなる妥当性は、最初被覆物付設の期間に、この方法の実施者その他の利害関係者が、できるだけ僅かな揮発性有機成分(VOC)を大気に加えるようにすることが重要である、ということである。このことを念頭におくと、この方法は付設される被覆物1リットルあたりVOCが50グラムより少ないという方法で行われる。
【0026】
また、この出願で請求される被覆物は、その被覆物が耐久性の構造被覆物クラスの樹脂から選ばれた重合体樹脂からなる場合には、外界の良好な環境または極端な環境中で腐食保護と摩擦係数の低減とを同時に与える構造被覆物であり、その樹脂の例は、アクリル、ウレタン、エポキシ、ビニルアクリル、スチレンブタジエン、尿素、ポリ尿素、珪素樹脂およびシリケートであり、表面の活発な腐食箇所を電気化学的に結合させることによる腐食保護と、摩擦接触が時たま起こる表面へ、局部的な外界湿度を利用して局部的に生成される弱い滑り平面の結晶性材料を創造して再供給することによる潤滑性の向上と、さらに開始剤と反応して被覆物付設の間、凝固点を降下させる材料を与える単一の添加剤を含み、また腐食保護物、潤滑低減物および凝固点降下物の供給のために、安定化された材料のバランスを作り出す動的安定化材とを含んでいる。この安定化材は、ボーリックオキサイドが出発材料として使用され、腐食性金属の界面へ硼酸が移行することによって腐食保護をし、液相の凝固点降下剤としての硼酸エステルと、表面へ拡散されるボーリックオキサイドが外界湿度と反応することにより摩擦係数を低減させるときに生成される。この反応はアクリル酸の重合体によって触媒されるような酸性環境中で起こる。これらの硼酸エステルは可塑剤および難燃剤としてよく知られている。硼酸のこの反応は、上述のジオールモノエステルと共存して起こり、上述の硼酸エステルのような2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール硼酸塩モノイソブチレートを生成する。或る種の上記反応促進剤を与えるためには、被覆物が被覆物を生成する間、粒子を分散させるための成分を含むことが有利である。被覆物は、さらに被覆物を付設したあとで重合体樹脂に作動成分を化学的および機械的に結合させるために、表面活性を創り出す添加剤を処方中に与えることができる。また、有用な添加剤は上記の構造樹脂の合体を助ける材料と、液相粘度の制御と液相pHの制御とを助ける材料と含むのが普通である。上に述べた動的安定化材料は、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートと、2,2,1−アミノメチルプロパノールとの混合物である。
【0027】
この発明は、分解または地面から分離されないで、1つの場所から他の場所へ機械的に移動される鉄道レールの一部分を、耐久性の構造被覆物用クラスの樹脂から選ばれた重合体樹脂からなる組成物で有効に被覆するような、鉄道転轍器にとってとくに妥当なものである。そのような樹脂の幾つかの例は、アクリル、ウレタン、エポキシ、ビニルアクリル、スチレンブタジエン、尿素、ポリ尿素、珪素樹脂およびシリケートである。この被覆物は、また表面の活発な腐食箇所を電気化学的に結合させることによる腐食保護と、摩擦接触が時たま起こるすべての作動表面へ、局部的な外界湿度を利用して局部的に生成される弱い滑り平面の結晶性材料を創造して再供給することによって生じる潤滑性の向上と、開始剤と反応して被覆物付設の間、凝固点降下をもたらす材料とを同時に提供するための単一の添加剤を含んでいる。鉄道の転轍器の使用と構成の間は、腐食保護物と、潤滑低減物と、凝固点降下物の供給のために、安定化された材料のバランスを作り出すような動的安定化材が用いられる。
【0028】
鉄道車輌のホイール界面以外の表面を或る組成物で被覆された鉄道転轍器は、市場での適応性が非常に高い。そのような転轍器は、転轍器と被覆物とからなり、被覆物は、耐久性の構造被覆物用クラスの樹脂からなる重合体樹脂であって、その例はアクリル、ウレタン、エポキシ、ビニルアクリル、スチレンブタジエン、尿素、ポリ尿素、珪素樹脂およびシリケートであり、また表面の活発な腐食箇所を電気化学的に結合させることによる腐食保護と、局部的な外界湿度を利用して局部的に生成される弱い滑り平面の結晶性材料を時たま摩擦接触が起きるすべての作動表面へ、創造して再供給することによる潤滑の向上と、被覆物を付設する間に開始剤と反応して凝固点を降下させる材料とを同時に提供するための単一の添加剤と、腐食保護物、潤滑低減物および凝固点降下物を供給するために安定化された材料のバランスを作り出す動的安定化材とを含むものである。
【0029】
この発明は、これまで特定の模範的な具体例について説明してきたが、この発明はこれらの具体例に限定されるものではない。この発明によってそれ以外に包含される代替的な具体例、実施例および変更は、当業者によって容易にできることであり、とくに前述の教示を参考にして容易にできることである。上述の模範的およびそれに代わる具体例は、色々な仕方で互いに結びつけることができる。さらに、図面で具体的に示された色々な部分の寸法、形、大きさおよび数は、図示されたものから調整することができる。
【0030】
さらに、当業者は、この発明の範囲と精神から逸脱することなく、上述の模範的な具体例の改作物と修正物とを色々と作り得ることを認めるであろう。従って、ここに添付するクレームの範囲内で、ここに詳細に記載したのとは別様に、この発明を実施できることは言うまでもない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体樹脂と、
硼酸塩を基材とする添加剤であって、その場合、この添加剤は基質表面の活発な腐食箇所を電気化学的に結合して腐食保護物を生成するに充分な量であって、外界湿度の存在下で処理表面上に潤滑剤生成物を生成するに充分な量であって、且つ禁止剤と反応して凝固点降下物を生成し、被覆物を付設する間被覆物の凝固点を低下させるに充分な量が供給され、且つ
腐食保護物と、潤滑物と、凝固点降下物との供給に対して、安定化された材料のバランスを作るのに充分な量の動的安定化物よりなることを特徴とする、構造被覆物。
【請求項2】
前記重合体樹脂は、アクリル、ウレタン、エポキシ、ビニルアクリル、スチレンブタジエン、尿素、ポリ尿素、珪素樹脂およびシリケートからなる耐久性の構造被覆樹脂のクラスから選ばれる請求項1に記載の被覆物。
【請求項3】
前記硼酸塩を基材とする添加剤は、ボリックオキサイド(boric oxide)であり、前記腐食保護物は腐食性金属界面へ硼酸が移行する結果の産物であり、前記潤滑物は環境の湿度と外界表面へ拡散するボリックオキサイドとの反応の結果生成するものであり、前記凝固点降下物は硼酸エステルを含んでいる、請求項2に記載の被覆物。
【請求項4】
前記動的安定化材は、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートと、2,2,1−アミノメチルプロパノールとの混合物である、請求項3に記載の被覆物。
【請求項5】
硼酸は前記ジオールモノエステルと反応して、前記硼酸エステルとして2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールボレートモノイソブチレートを生成する、請求項4に記載の被覆物。
【請求項6】
さらに粒子を分散させるための有効成分を含み、その有効成分は、前記被覆物付設のあとで、有効成分を前記重合体樹脂に結合させるための表面活性を与え、前記樹脂の合着を助け、液相粘度の制御を助け、液相pHの制御を助ける、請求項1に記載の被覆物。
【請求項7】
腐食力を受け易い表面を不働態にすると同時に、上記表面と滑り、転動し、転滑動する摩擦のもととなるものとの間の摩擦係数を低減させる方法であって、
ボリックオキサイドを重合体樹脂に添加して被覆混合物を作り、
前記被覆物を前記表面に付設し、
不働態にしようとする特定表面に硼酸を連続的に移行させることによって、前記表面を不働態にし、上記移行を設定された化学ポテンシャルの勾配によって推進させ、
ゼロでない湿度の環境と接触している作動表面へ硼酸を移行させることによって摩擦係数を低減させ、上記の移行をまた局部的に引き出される化学ポテンシャルの勾配によって推進させることからなる方法。
【請求項8】
前記被覆物は華氏120度から華氏マイナス36度までの範囲の外界状態で付設される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
噴霧された粒子の衝突の運動エネルギーを利用して、接着性界面化学反応を起こさせる工程をさらに含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記の界面化学反応が、腐食力を受け易い表面と硼酸との間で起こる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記付設工程の間、上記被覆物を硼酸エステルで安定化させる工程をさらに含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
硼酸、硼酸エステル及びアンヒドロキシ基の動的バランスにより、被覆物付設工程中に前記硼酸エステルを安定化させる工程をさらに含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記被覆物を生分解させる工程をさらに含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記生分解工程が、期待される外界状態を基準として約1年から5年かかる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生分解工程が、外界状態を基準として約3から10年かかる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法によって放出されるVOCが、付設された被覆物1リットルあたり50グラムより少ない、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
分解又は地面から分離されることなく1つの位置から他の位置へ機械的に移動され、或る組成物で被覆された鉄道レールの一片であって、
アクリル、ウレタン、エポキシ、ビニルアクリル、スチレンブタジエン、尿素、ポリ尿素、珪素樹脂及びシリケートからなる、耐久性の構造被覆物クラスの樹脂から選ばれた重合体樹脂と、
表面の活発な腐食箇所を電気化学的に結合させることによって腐食保護を与えると同時に、摩擦接触が時たま起こるすべての作動表面へ、局部的な外界湿気を利用して局部的に生成される弱い滑り平面の結晶性材料を創造し再供給することにより、潤滑を向上させ、開始剤と反応させて被覆物付設中に凝固点を降下させる材料を与える単一の添加剤と、
腐食保護物、潤滑低減物および凝固点降下物の供給のために、安定化された材料のバランスを作り出す動的安定化材料とからなる、組成物で被覆された鉄道レールの一片。
【請求項18】
アクリル、ウレタン、エポキシ、ビニルアクリル、スチレンブタジエン、尿素、ポリ尿素、珪素樹脂及びシリケートからなる耐久性の構造被覆物クラスの群から選ばれた重合体樹脂と、
表面の活発な腐食箇所を電気化学的に結合させることによって腐食保護を与え、摩擦接触が時たま起こるすべての作動表面へ、局部的な外界湿気を利用して局部的に生成される弱い滑り平面の結晶性材料を創造し再供給することにより、潤滑を向上させ、開始剤と反応させて被覆物付設中に凝固点を降下させる材料を同時に与える単一の添加剤と、
腐食保護物、潤滑低減物および凝固点降下物の供給のために、安定化された材料のバランスを作り出す動的安定化材料とからなる組成物で、車両ホイール界面以外の表面を被覆された車両転轍器。


【公表番号】特表2009−500516(P2009−500516A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521499(P2008−521499)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/026737
【国際公開番号】WO2007/008802
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(502263477)アドバンスト・ルブリケーション・テクノロジー・インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】