説明

腔内装置のための複合糸を含む織物

【課題】
腔内装置のための複合糸を含む織物を提供する。
【解決手段】
インプラント可能な医学的装置のための低収縮性織物は、第1の方向に配列される複合糸の複数の繊維ストランドを含み、前記繊維ストランドは第2の方向に配列される前記複合糸の複数の繊維ストランドで織られる。前記複合糸が第1の材料及び第2の材料を含む。前記繊維ストランドは約10デニールから約20デニールのサイズを持つ。前記第1の材料は、前記第2の材料とは、少なくとも1つの性質が異なり、前記第2の材料は血管内に配置される際に血液と好ましく反応するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年12月30日出願の米国仮特許出願番号61/428,580に基づく優先権を主張するものであり、この内容は参照され本明細書の一部となる。
【0002】
本発明は織物に関する。特に本発明は、異なる特徴を持つ少なくとも2つの異なる材料からなるインプラント可能な医学的装置のための低収縮織物に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は一般的には、医学的装置に関し、特に、損傷した血管、管又は他の生理学的通路及びキャビティの修復のために人又は動物体内にインプラント可能な医学的装置に関する。
【0004】
人及び動物体の生理学的通路及びキャビティは、例えば血管及び管は時として弱くなりまたは破壊されることが起る。弱体化され、又は破壊された通路や管のための1つの共通の外科的介入は、腔内装具を使用して、元の健全な通路や管の機能の幾らか又は全てを提供するか、及び/又は欠陥サイトにわたる既存の通路や管の長さ部分を交換することで残る血管の正常作用を保持することである。腔内装具は一体構造であるか、又は複数の腔内装具モジュールからなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、織物、特に異なる特徴を持つ少なくとも2つの異なる材料からなるインプラント可能な医学的装置のための低収縮織物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの課題において、低収縮性インプラント可能な医学的装置のための織物は複合糸の紡織ストランドを含み、前記複合糸は第1の方向に配列されており、第2の方向に配列された前記複合糸の複数の紡織ストランドと組み合わされている。前記複合糸は、第1の材料及び第2の材料の組み合わせを含む。前記紡織ストランドは、約10デニールから約20デニールのサイズを持つ。前記第1の材料は、前記第2の材料とは少なくとも1つの異なる性質を有し、前記第2の材料は血管内に配置される際に血液と好ましく反応するものである。いくつかの側面で、前記複合糸の紡織ストランドは約50%のサイズで前記第1の材料と、約50%のサイズで前記第2の材料を含む。
【0007】
他の側面においては、インプラント可能な医学的装置に適する織物は、第1の方向に配列された複合糸の複数の紡織ストランドを含み、これは第2の方向に複合糸の複数の紡織ストランドと組み合わされている。前記複合糸は、ポリエチレン繊維と撚り合わされたポリエステル繊維を含み、前記ポリエステル繊維及びポリエチレン繊維はそれぞれ約10デニールから約20デニールのサイズを持つ。前記ポリエステル繊維は前記ポリエチレン繊維とは少なくとも1つの異なる性質を持つ。いくつかの側面で、前記複合糸はロープであり、前記第2の材料の繊維で囲まれた前記第1の材料のポリエチレン繊維の中心コアを持つ。
【0008】
他の側面では、インプラント可能な医学的装置のための織物の製造方法が提供される。前記方法は、第1の方向に配列される複合糸の複数の紡織ストランドを準備し、第2の方向に配列される前記複合糸の複数の紡織ストランドを準備することを含む。
【0009】
前記紡織ストランドは、織物を製造するために一緒に織り込まれる。前記複合糸の紡織ストランドは約10デニールから約20デニールの間のサイズを持つ。前記複合糸は、第1の材料及び第2の材料との組み合わせを持つ。いくつかの側面において、前記織方は平織である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、複合糸を撚り合せロープに形成する1つの実施態様を示す。
【図2】図2は、複合糸を、第1の材料の内側コアと第2の材料の外側表面を持つロープへ形成する他の実施態様を示す。
【図3】図3は、複合糸を持つ織物織方パターンの1つの実施態様を模式的に表す。
【図4】図4は、複合糸を持つ他の織物織方パターンの1つの実施態様を模式的に表す。
【図5】図5は、複合糸を持つさらに他の織物織方パターンの1つの実施態様を模式的に表す
【図6】図6は、複合糸を持つ織物を含む医学的装置の1つの実施態様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に記載されない限り、ここで使用される技術的及び科学的用語は当業者に通常理解される意味を持つ。
【0012】
用語「インプラント可能」とは、医学的装置が、体腔内などの体内の位置に配置されることができる、ことを意味する。
【0013】
ここで使用される用語「ストランド」とは、織物に適する材料の連続ストランドについての一般的用語である。例えば、ストランドには、限定されるものではないが、撚り合わされた繊維、紡ぎ合わされた又は一緒にされた繊維、ヤーン、ロービングヤーン、クレープヤーン、プライヤーン、コードヤーン、スレッド、ストリング、不織フィラメント及び他の構造などが含まれる。
【0014】
用語「結合点」とは、第1の方向における単一ストランドと第2の方向のストランドとの交点を意味する。例えば、第1の方向の1つのストランドは、第2の方向の1又は複数のストランドを「上」を走ることが可能であり1つの結合点を持ち、さらに前記第2の方向で1又は複数のストランドの「下」を走ることがあり得る。
【0015】
用語「浮く」とは、第1の方向の1つのストランドの部分を意味し、これは結合点を持つことなく第2の方向での2以上のストランドの上を走るか、下を走って伸びるものを意味する。例えば、第1の方向の1つのストランドが第2の方向の複数のストランドと1つの結合点を持と、その際前記第2の方向での5つの隣接するストランドの上を浮くこととなり、その後前記第2の方向でのストランドと他の結合点を持つこととなる。

用語「生物適合性」とは、その意図される用途のインビボ環境において実質的に非毒性である材料に使用され、かつ患者の生理学的システムに拒絶されない(即ち非抗原性)材料に使用される。これは生物的剛性紙面に合格した材料の能力により標準化されており、例えば、International Standards Organization (ISO) Standard No. 10993及び/又はthe U.S. Pharmacopeia (USP) 23及び/又はthe U.S. Food and Drug Administration (FDA) blue book memorandum No. G95-1,名称「Use of International Standard ISO-10993, Biological Evaluation of Medical Devices Part-1: Evaluation and Testing」に規定されている。通常はこれらの試験は材料の毒性、感染性、発熱性、刺激性、反応性、溶血活性、発癌性及び/又は免疫原性を測定する。生物適合性構造又は材料は、患者の大部分に導入される際に、重大な、悪影響のある長期間又は増加される生物反応性や応答性を起こさないものであり、かつ、通常外科手術や異物を生体器官内にインプラントする際に伴う穏やかな一過性の炎症からも区別されるものである。
【0016】
用語「装具」とは、身体部分又はその身体部分の機能のために挿入又はインプラントするための全ての装置を意味する。これはまた、生理学的システムへ機能を強化又は追加する装置も意味する。用語装具には例えば、限定されるものではないが、ステント、ステントグラフト、フィルター、バルブ、バルーン、塞栓コイル等が含まれる。
【0017】
用語「内腔」とは、人又は他の動物体の体腔、ダクト及び他の通路やキャビティの内部又は内側などを意味する。体腔又は身体通路は既存の体腔であっても、又は外科介入により生成された体腔であってもよい。本明細書で使用されるように、用語「体腔」又は「身体通路」及び「管」は、広い意味を持つように意図され、人体内の全ての管(例えば自然性又は医原性)又はキャビティを含み、さらに限定されるものではないが、血管、呼吸管、消化管、胆管、腸、食道、心膜腔、胸腔などが挙げられる。従って、用語「体腔装置」又は「体腔装具」とは、全てのかかる体腔や管の内側で置換され又はそれらを通じて移動され得る装置を意味する。
【0018】
本明細書で使用される用語「患者」、「対象物」及び「レシピエント」は全ての動物、特に人を意味する。
【0019】
量を参照するための用語「約」には、記載量に、記載量と均等となる変動を含む。例えば意図される目的又は機能について引かれた量と実質的に異ならない量を意味する。
【0020】
用語「グラフト」又は「グラフト材料」とは、身体部分の部分又は機能を強化、修理又は置換するために、身体部分へ結合されるか又は結合され得る、又はインプラントされる、物、装置又は構造を意味する。それ自身によるグラフト又は他のエレメント、例えば構造的コンポーネントなどと共に、体腔装具を構成する。このグラフトは単一の材料、材料のブレンド、織、ラミネート又は2以上の材料の複合体であり得る。前記グラフトはまた、合成物、例えば限定されるものではないが、ポリマーから構成され得る。前記グラフトは材料の単一層又は複数層から形成され得る。材料の複数層を用いる実施態様では前記層は分離されているか、接着されているか縫合されているかなどである。
【0021】
いくつかの研究は、血管内グラフトについて、輸送システムの容量に寄与する主要コンポーネントは前記グラフト材料であることが示されている。本発明は、異なる特性を持つ少なくとも2つの異なる材料を含む複合糸からなるインプラント可能な医学的装置のための低収縮性織物に関する。前記複合糸を含む前記織物は、低収縮性を持つ装置を製造することを可能とし、好ましくは12Fr以下の低収縮性装置を通じての輸送を可能とするものである。1つの実施態様では、前記織物は、第1の方向及び第2の方向で織られた複合糸の織物繊維含み、前記複合糸は低デニールポリエチレンテレフタレート繊維、通常PETとして知られている繊維と、低デニールのポリエチレン繊維を含む。従って、薄い織物が達成され、これにより、PEの強度及び摩耗耐性とPETの高い生体適合性とを持つ、低収縮性で丈夫かつ生体適合性である血管グラフトを提供するために使用され得る。
【0022】
図1は、体腔装具のための織物で使用されるスレッド繊維ストランドの複合糸100の1つの実施態様を示す。複合糸100は、2以上の材料からなりそれらは天然物、合成物又は製造されたものでよい。いくつかの側面では、複合色100は第1の材料110及び第2の材料114により形成され、前記第1の材料が前記第2の材料とは少なくとも1つの異なる性質を持つ。好ましくは、前記繊維ストランドはポリマーから形成される。例えば、繊維ストランドが形成され得る生体適合性材料には、限定されるものではないが、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル及びポリエチレンが挙げられる。より好ましくは前記繊維ストランドはポリエチレンテレフタレート及び超高分子ポリエチレンを含む。織物に特に適するポリエチレンフタレートの好ましい市販品例は、Dacron(TM)である。織物に特に適する前記超高分子ポリエチレンの市販品例はDyneema(TM)である。
【0023】
図1に示されるように、前記複合糸は、繊維ストランドが撚り合わされ、捻られたロープに形成される、第1の材料112及び第2の材料114を含む。必要な捻り程度は前記複合糸100を形成するために使用される具体的な材料に基づく。1つの側面では、前記第1の材料112は少なくとも1つの特徴を持ち、この特徴は前記第2の特徴とは異なる。前記第1の材料112の繊維ストランド及び前記第2の材料114の繊維ストランドは形成される糸ロープでのサイズに基づき均一に分けられる。前記複合糸は好ましくは、織物について使用される従来の糸と比較して減少された厚さを持つものである。厚さの減少は、より小さいデニールの使用及び/又は前記織方の密度低減により達成され得る。この側面において、前記複合糸の前記第1の材料112の繊維ストランド及び前記第2の材料114の繊維ストランドは、約0.1デニールから約20デニールのサイズの範囲であり、好ましくは約5デニール及び約20デニールの間であり、より好ましくは約5デニールから10デニールの間である。
【0024】
従って前記複合糸100を形成する前記第1の材料112及び第2の材料114は、それぞれの繊維ストランドの和が前記糸の望ましいサイズに等しくなるように選択され得る。いくつかの側面では、前記複合糸110は1Dから20Dの範囲である。前記複合糸100を形成する前記第1の材料112及び前記第2の材料114は望ましくは低デニール織物繊維から形成される。特に、前記第1の材料112及び前記第2の材料114のサイズは5Dから10Dの範囲である。1つの側面では、前記第1の材料112は10Dのデニール値を持つポリエチレン繊維を含み、前記第2の材料114は10Dのデニール値を持つポリエチレンテレフタレート繊維を含む。従って、前記複合糸の全サイズは20Dに等しくなる。ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリエチレン繊維の組み合わせは、前記織物グラフトに、従来のグラフト材料を超える大きな利点を与えるものである。特に、ポリエチレンの引張強度により、より小さいデニール繊維を用いた最終製品においても、従来の織物材料の強度特性を維持することができる。さらに、前記複合織物は、低収縮性血管グラフト材料についてより小さい輸送システムに直径を達成するために必要なグラフト材料厚さの低減を与えることによって、幾何学的利点を提供する。さらに、前記複合織物グラフト材料は、血管グラフトのため、血液接触材料としてのポリエチレンテレフタレートの好ましい生体適合性及びそれによる圧力バリアを利用するものである。
【0025】
図2は体腔装具のための織物に使用される複合糸200の他の実施態様の断面を示す。前記複合糸は、内部の中心コア210を含み、前記コアは第1の材料112の複数の繊維ストランド212を含み及び前記コアは第2の材料214の複数の繊維ストランドにより囲まれており、前記第1の材料212が前記第2の材料214とは異なる少なくとも1つの特徴を持つ。示されるように、前記ロープの中心は前記第1の材料212の3つの繊維ストランドを含み、これは前記第2の材料214の6つの繊維ストランドで囲まれている。他の側面では、前記内部コアの数及び外側を囲む繊維の数は、織物グラフトの必要な特性に応じて変更され得る。例えば、前記第1の材料212はより強い引張強度特性を持ち、繊維ストランド数の全ての変更は複合糸200の引張強度を変更させ得る。さらに、前記第2の材料214の繊維数を変更することは、複合糸200の前記ポリマー内包に影響を与え得る。前記第1の材料212及び前記第2の材料214がそれぞれポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートである側面では、前記複合糸200は、必要な機械的強度の利点を与えると共に有利な生体適合性をも与えるものである。試験により、ポリエチレンテレフタレートは、その高い表面エネルギー/濡れ性により他のポリマーと共に高強度結合を形成することが示されている。従って、前記複合糸200はポリエチレンの引張強度及びポリエチレンテレフタレートのポリマー接着性を持って形成され得る。さらに、他の側面では、1以上の繊維を前記複合糸に含ませることで、追加の望ましい特性をもつ織物を提供することができる。例えば限定されるものではないが、放射線不透過性及び/又は形状記憶などが挙げられる。
【0026】
図3は、第1の方向340に配列される2以上の材料を含む複数の複合糸310であり、第2の方向で2以上の材料を含む複数の複合糸320で織られている、織物300の1つの実施態様を示す。いくつかの側面では、前記複合糸310、320は、第1の材料及び第2の材料を含み、前記第1の材料は少なくとも1つの、前記第2の材料とは異なる特徴を持つ。前記複合糸310、320は例えば平織に織られ、規則的な1対1のストランドの組み合わせとなる。即ち、前記第1の方向330(例えば縦糸方向)に配列された前記複合糸は、第2の方向(例えば横糸方向)に配列された隣接するストランドの上及び下に交互に動くものである。この平織パターンは、最大数の結合点を生じる、従ってしっかりした丈夫な織方である。しかし織られた複合繊維材料は全ての織り方がふくまれ得る。例えば、前記織物には、限定されるものではないが、平織、バスケット織、横畝又はリブ織り、ツイル織(例えば直ツイル織、逆ツイル織、ヘリングボーンツイル織)、サテン織及び二重織(例えば二重幅、環状二重織、逆二重織)などが挙げられる。前記複合織物材料は全ての適切な方法で織られ得る。例えば、前記織物は、テーブル織機、フロア織機、ジャガード織機、カウンタバランス織機、ジャック織機又はアップライト織機などで織られ得る。望ましくは前記織物はフロア織機で織られる。
【0027】
前記織物内の前記複合糸のスペースは線密度又はストランド線密度として表され、前記ストランドのデニール値に依存する。
高い線密度は隣接するストランド間のスペースがより小さいことを示す。前記複合織物の織工程の際に、前記セット値とピック値が一定に維持される。前記セット値は約50及び約300エンド/インチの間であり、前記ピックカウント値が約3と約500ピック/インチの間であり得る。ここで「エンド」とは個々の縦糸を意味し、「ピック」とは個々の横糸を意味する。いくつかの側面で、前記複合織物はバランス織からなり得る(例えば、前記複合織物がインチ当たりの縦糸及びインチあたりも横糸の数が等しい)。他の側面では、前記複合織物はアンバランス織である(例えば、前記複合織物がインチあたり縦糸と横糸の等しくない数を持ち、どちらか一方が他方よりも多い)。例えば、ステントグラフトなどの装具を製造するための複合織物は、150エンド/インチ及び250ピック/インチの平織を含み得る。
【0028】
織工程の際に、横糸方向に織られる繊維ストランドには、縦糸方向に織られる繊維ストランドよりもずっと低い引張強度が作用する。いくつかの側面では、前記第2の材料の好ましい血液接触特性と組み合わせた前記第1の材料の強度及び耐摩耗性との組み合わせは、低収縮性、高強度、高耐摩耗性、高生体適合性のグラフト材料を提供する助けとなる。さらに前記複合糸310、320は、織物300に、織工程中に縦糸に生じる引張負荷を維持する十分な引張強度を持つようにする。
【0029】
図4は、織物400の他の実施態様を示し、第1の方向430に配列される2以上の材料を含み、前記材料は、第2の方向440で2以上の材料を含む複数の複合糸420と織られている。いくつかの実施態様で、前記複合糸410、420は第1の材料及び第2の材料を含み、前記第1の材料は前記第2の材料とは少なくとも特徴が異なるものである。前記織物400は2/2繊維織パターンで織られている。示されるように横糸及び縦糸の結合点は、畝結びとして知られる対角線上に生じるものである。この織パターンは、前記第1又は横糸方向の前記複合糸410の繊維ストランドを、前記第2の又は縦糸方向の前記第2の材料の1以上の繊維ストランドを超えて通過させ、次に2以上の縦糸の下を通過させ、さらにこれらを続けることで作ることができる。行間の「ステップ」又はオフセットで、この特徴的な対角線パターンができる。浮きは、横糸方向430及び縦糸方向440の両方に現れる。
【0030】
図5は、さらなる織物500の実施態様を示し、複合糸510は、第1の方法540に配列された2以上の材料を含み、これは第2の方向540での2以上の材料を含む複数の複合糸520と織られている。いくつかの側面で、前記糸510、520は第1の材料及び第2の材料を含み、前記第1の材料は、前記第2の材料とは少なくとも1つの異なる特性を持つ。前記複合糸510、520は5−ハーネスサテン織で織られている。示されるようにサテン織りは、前記第1又は横糸方向の前記第1の4以上の繊維ストランドが、前記第2又は縦糸方法での前記第2の材料の繊維ストランドの上を浮いていることで特徴付けられる。
【0031】
本発明の織物は、例えば外科的又は管腔内的に、織物を含む全ての形状又は構成の種々のインプラント可能な又は挿入可能な医学的装置の使用に適したものである。医学的装置は、医学的状態を処置するために体内へ一時的又は恒久的に導入される織物を含む全ての装置であり得る。例えば、かかる医学的装置には、限定されるものではないが、血管グラフト、ステントグラフト、バルーンカテーテル、メッシュ、血管インプラント、組織足場、心筋プラグ、バルブ(例えば、静脈弁)、種々のタイプのドレシング、体腔内装具、血管支持又は他の知られた生体適合性装置などを含む。
【0032】
前記医学的装置はバルーン膨張可能であり、又は好ましくは自己膨張性であってよく、また冠状動脈及び末梢動脈(例えば、腎臓、浅大腿、頸動脈など)を含む全ての血管のために構成される二股統合ステントグラフト、尿道統合ステントグラフト、胃腸統合ステントグラフト又は食道統合ステントグラフトなどである。通常の対象物(ここではまた「患者」と参照される)は、脊椎動物対象物であり(即ち脊索亜門)、牛、羊、豚、ヤギ、馬、犬、猫及び人などの哺乳動物が含まれる。
【0033】
図6は、筒状構造610と織物620を持つステントグラフト600の模式図である。織物620は円周ストランド622と長手方向ストランド624を持つ。しかしこのストランドが半径方向及び長軸方向である必要はなく、あらゆる方向であり得る。円周ストランド622及び長手方向ストランド624は全ての適切な織方構造を持ち得る。例えば、図3〜5に示されるようなものである。2次元的織パターンが示されているが、前記複合繊維が第3次元方向へ織られたストランドを有していてもよい。前記ステントグラフトは、種々の金属及び合金からなるステントを含む。1例では、前記ステントはニッケルチタニウム合金(ニチノール「Nitinol」)などの形状記憶材料を含む。さらに前記ステント構造は種々の方法で適切な支持構造を与えるように形成され得る。例えば1以上のステントは、織られたワイヤ構造、レーザー切断カニューレ、独立して相互接続されたリング、又は他のパターンやデザインから作られる。これらのステントは1以上の「Zステント」の形状で構成され、それらは一連の曲げられた部分によって相互に接続される実質的に真直ぐな部分を含む。前記曲げられた部分は鋭く曲げられた部分又は先端部を有する。前記ステントはジグザグ構成で配置され、前記真っ直ぐな部分がお互いに対して角度をなすように設定され曲げ部分で接続される。しかし上記のように、前記ステントは全ての適切な配置をとり得るものでありさらに1以上のステントが提供され得るものである。
【0034】
本明細書を通して、本発明の好ましい又は他の実施態様として種々の指示が与えられた。しかしこれまでの詳細な説明は説明を目的とするものであり、与えられた実施態様のいずれについても限定する目的ではない。全ての均等を含む添付の特許請求の範囲が、本発明の本質及び範囲を定めることを意図するものであることは、理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低収縮性インプラント可能な医学的装置のための織物であり:
第1の方向に配列された複合糸の複数の繊維ストランドであって第2の方向で前記複合糸の複数の繊維ストランドと織られた、複合糸の複数の繊維ストランドを含み;
前記複合糸が第1の材料及び第2の材料を含み、前記繊維ストランドが約10デニール及び約20デニールの間のサイズを持ち、前記第1の材料が、前記第2の材料とは異なる少なくとも1つの特性を持つ、織物。
【請求項2】
請求項1に記載の織物であり、前記第1の方向に配列される前記複合糸の前記繊維ストランドが縦糸を含み、かつ前記第2の方向に配列される前記複合糸の繊維ストランドが横糸を含む、織物。
【請求項3】
請求項1に記載の織物であり、前記複合糸の前記第1の材料及び前記第2の材料がポリマーを含む、織物。
【請求項4】
請求項3に記載の織物であり、前記第1の材料が超高分子量ポリエチレンを含み、前記第2の材料がポリエチレンテレフタレートを含む、織物。
【請求項5】
請求項1に記載の織物であり、前記複合糸が捻られたロープを含む、織物。
【請求項6】
請求項1に記載の織物であり、前記複合糸が、前記第1の材料の繊維の中心コアを含み、前記コアが前記第2の材料の繊維で囲まれる、織物。
【請求項7】
請求項1に記載の織物であり、前記複合糸が20デニールのサイズである、織物。
【請求項8】
請求項7に記載の織物であり、前記複合糸が約50%のサイズの前記第1の材料と約50%のサイズの前記第2の材料とを含む、織物。
【請求項9】
請求項1に記載の織物であり、前記織物が約3及び約500の間のピックカウントを持つ、織物。
【請求項10】
請求項1に記載の織物であり、前記織物が、平織、バスケット織、横畝織、リブ織、ツイル織、レノ織、モックレノ織、サテン織、二重織又はそれらの変法織を含む群から選択される織方を含む、織物。
【請求項11】
請求項10に記載の織物であり、前記織物が平織である、織物。
【請求項12】
請求項1に記載の織物であり、前記第1の方向に配列される前記繊維ストランドが、前記第2の方向に配列される少なくとも2つの繊維ストランドの少なくとも1つで浮きを持つ、織物。
【請求項13】
インプラント可能な医学的装置のために適切な織物であり、
第1の方向に配列される複合糸の複数の繊維ストランドであって、第2の方向の複合糸の複数の繊維ストランドと織られている複数の繊維ストランドを含み;
前記複合糸がポリエステル繊維を含み、ポリエステル繊維と織られており、前記ポリエチレン繊維が約10デニールから約20デニールのサイズを持ち、及び
前記ポリエステル繊維が、前記第2の方向に配列される前記ポリエチレン繊維とは異なる少なくとも1つの性質を持つ、織物。
【請求項14】
請求項13に記載の織物であり、前記複合糸がロープを含み、前記ロープがポリエチレン繊維の中心コアを含み、前記コアがポリエステル繊維で囲まれる、織物。
【請求項15】
請求項13に記載の織物であり、前記複合糸が捻られたロープを含む、織物。
【請求項16】
請求項13に記載の織物であり、前記ポリエステル繊維がポリエチレンテレフタレートである、織物。
【請求項17】
請求項13に記載の織物であり、前記複合糸が20デニールのサイズを持つ、織物。
【請求項18】
請求項17に記載の織物であり、前記複合糸が約50%サイズのポリエステル繊維及び約50%サイズのポリエチレン繊維を含む、織物。
【請求項19】
インプラント可能な医学的装置のための織物の製造方法であり、前記方法は:
第1の方向に配列される複合糸の複数の繊維ストランドを準備し;
第2の方向に配列される前記複合糸の複数の繊維ストランドを準備し;及び
前記繊維ストランドを織物に織るステップを含み、
前記複合糸の前記繊維ストランドが約10デニール及び約20デニールの間のサイズを持ち、及び
前記複合糸が第1の材料及び第2の材料との組み合わせを含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であり、前記第1の方向の前記複合糸の前記繊維ストランドが、前記第2の方向の少なくとも2つの繊維ストランドの少なくとも1つの浮きを持つように織られる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−140743(P2012−140743A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284583(P2011−284583)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】