説明

腫瘍で差次的に発現する遺伝子産物及びその用途

本発明により、腫瘍関連様式において発現する遺伝子産物およびそれをコードする該核酸を同定した。本発明は、異常発現する腫瘍関連様式で該遺伝子産物を発現する病気の治療および診断に関する。本発明は、腫瘍関連様式で発現するタンパク、ポリペプチド、ペプチドならびにそれらをコードする核酸にも関連する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
学際的アプローチおよび古典的な治療手段を徹底的に使用しても、癌は依然として死の主要原因である。より最近の治療概念では、患者の免疫システムを治療概念全体の中に導入することを目的として、遺伝子組換え腫瘍ワクチンおよび他の特異的な措置、例えば抗体治療が利用されている。そのような療法が成功するための前提条件として、腫瘍特異的なあるいは腫瘍関連的な抗原または抗原決定基を認識するために患者の免疫システムのエフェクター機能を強化することに踏み込む必要がある。腫瘍細胞は、もともとの非悪性細胞とは生物学的に実質的に相違する。これらの相違の原因は、腫瘍進行中に獲得した遺伝子の変異であり、また、その結果、とりわけ、癌細胞中に質的にまたは量的に変異した分子構造が形成される。この種の腫瘍関連構造は、その腫瘍を宿している宿主の特異的な免疫システムによって認識され、腫瘍関連抗原と言う。腫瘍関連抗原の特異的認識には、細胞性メカニズムおよび体液性メカニズム、すなわち二つの機能的に関連した単位が必要である。処理された抗原は、MHC(主要組織適合複合体)クラスIIおよびIの分子上に提示されてそれぞれCD4Tリンパ球およびCD8Tリンパ球によって認識され、他方、処理されていない抗原は、Bリンパ球が産生した循環する抗体分子によって直接に捕縛される。腫瘍関連抗原が臨床治療上で潜在的に重要である理由は、免疫システムが腫瘍性細胞上の抗原を認識すると、細胞障害性エフェクターのメカニズムが起動し、かつヘルパーT細胞が存在する場合には癌細胞が消滅可能となるからである(Pardoll,Nat.Med.4:525-31,1998)。したがって、腫瘍免疫学の中心目標は、これらの構造を分子的に明確にすることである。これらの抗原の分子的性状は、長い間、謎であった。適正なクローニング技術が開発された後に、腫瘍のcDNA発現ライブラリーを体系的にスクリーニングして腫瘍関連抗原を探査するために細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の標的構造体を分析し(van der Bruggenら,Science254:1643-7,1991)、あるいは循環自己抗体(Sahinら,Curr.Opin.Immunol.9:709-16,1997)をプローブとして使用することが初めて可能になった。新鮮な腫瘍組織から作製したcDNA発現ライブラリーは、最終的には遺伝子組換技術によりタンパク質として適切な系で発現された。患者から単離された免疫エフェクター、すなわち、腫瘍特異的溶解パターンを持つCTL細胞株、または循環自己抗体を利用してそれぞれの抗原をクローン化した。
【0002】
近年、抗原の多様性が、これらのアプローチにより種々の新生物形成において明確にされてきた。しかし、先に記述した古典的な方法において抗原同定に利用されるプローブは、普通、すでに癌が進行した患者からの免疫エフェクター(循環自己抗体またはCTLクローン)である。数多くのデータの示唆によると、腫瘍によって、例えばT細胞は寛容化し免疫性を欠如し、特に疾患の進行の間に効果的な免疫認識を招来する筈の特異性が免疫エフェクターのレパートリーから失われる。現在まで忍耐強い研究をしてきたが、既に発見し利用している腫瘍関連抗原の本当の作用については確かな証拠が未だ得られていない。したがって、自動免疫応答を招来するタンパク質を不適切な標的構造体として除外することはできない。
【特許文献1】国際公開第92/04381号公報
【特許文献2】国際公開第9633265号
【特許文献3】国際公開第96/33739号公報
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、癌の診断および治療のための標的構造体を提供することを目的とした。
【0004】
本発明によれば、この目的を請求項の主題事項によって達成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、腫瘍に伴って発現する抗原およびそれをコードする核酸を同定し提供する方法を追及した。この方法の根拠は、特定の遺伝子は器官特異的に、たとえば、大腸、肺または腎臓の組織で専ら発現するが、それぞれの各器官の腫瘍細胞でばかりでなく、他の組織の腫瘍細胞においても転移的な許しがたい様式で再活性化するという事実である。最初に、データを探査して、公知の器官特異的遺伝子全てのできるだけ完全なリストを作り、次いで、それらが異なる腫瘍で異常に活性化するのを評価するために特定のRT PCRによって発現を解析する。データ探査は、腫瘍関連遺伝子を同定する公知の方法である。しかし、従来の方法では、一般に正常組織ライブラリーのトランスクリプトームが腫瘍組織ライブラリーから電子的に欠失される。これはそれ以外の遺伝子が腫瘍特異的なのであろうという仮定による(Schmittら, Nucleics Res. 27:4251-60, 1999; Vasmatzisら, Proc.Natl. Acad. Sci. USA. 95:300-4, 1998; Scheurleら, Cancer Res. 60:4037-43, 2000)。
【0006】
しかし、本発明の考え方の基本は、データ探査を利用して器官特異的遺伝子を電子的に抽出し、次いでこれら遺伝子の腫瘍中での発現を評価することであり、これは非常に成功だったことが判っている。
【0007】
すなわち、一態様において、本発明は、腫瘍中で別異の発現をした組織特異的遺伝子を同定する方法に関する。この方法によって、一般の配列ライブラリー(「インシリコ」)をデータ探査することと、続いて研究室実験(「ウェットベンチ」)の研究成果を評価することとが組合わされる。
【0008】
2つの異なる生命情報科学スクリプトに基づいて組み合わせた本発明方法により、腫瘍遺伝子が新規に同定可能になった。これら遺伝子は、純粋に器官特異的なものとして予め分類されている。これらの遺伝子は腫瘍細胞中で異常に活性化するという知見によれば、機能的な意味合いのある実質的に新しい特質をこれら遺伝子に付与することが可能になる。これらの腫瘍関連遺伝子およびそれによってコードされる遺伝子産物が、免疫抗原性作用とは別個に本発明により同定され提供された。
【0009】
本発明によれば、同定された腫瘍関連抗原は、(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、からなる群から選択される、核酸によってコードされたアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、本発明により同定された腫瘍関連抗原は、SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸によってコードされたアミノ酸配列を有する。さらに好ましい実施形態では、本発明により同定された腫瘍関連抗原は、SEQ ID NO:9〜19、45〜48、60〜66、85、90〜97、100〜102、105、106、111〜116、118、120、123、124、135〜137、139および142〜150からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む。
【0010】
本発明は、本発明により同定された腫瘍関連抗原またはその一部あるいは誘導体、それらをコードする核酸、前記コードする核酸に対する核酸、または本発明により同定された腫瘍関連抗原に対する抗体またはその一部あるいは誘導体を、治療および診断に使用することに関する。これらの抗原、機能的断片、核酸、抗体等は、それぞれ個別に、あるいは2以上を組み合わせて、あるいは実施形態によっては他の腫瘍関連遺伝子および抗原と組み合わせて、診断、治療および進行制御に利用してよい。
【0011】
治療および/または診断に適した疾患は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の1以上が選択的に発現するまたは異常に発現する疾患である。
【0012】
本発明は、また、腫瘍細胞に伴って発現する核酸および遺伝子産物に関する。
【0013】
さらに、本発明は、公知の遺伝子が選択的スプライシングを受けて(スプライス変異体)または別のオープン・リーディング・フレームを使用したために変化した翻訳を受けて生成した核酸およびタンパク質またはペプチドの遺伝子産物に関する。この態様では、本発明は、配列表のSEQ ID NO:3〜5による配列からなる群から選択される核酸配列を含む核酸に関する。さらに、この態様では、本発明は、配列表のSEQ ID NO:10および12〜14による配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはペプチドに関する。本発明によれば、本発明のスプライス変異体は、腫瘍疾患の診断および治療のための標的物質として使用することができる。
【0014】
特に、本発明は、配列表のSEQ ID NO:10によるアミノ酸配列に関し、この配列は本発明によって同定された別のオープン・リーディング・フレームによってコードされており、予め記載したタンパク質配列(SEQ ID NO:9)と異なる点はこのタンパク質のN末端に85個のアミノ酸が追加されていることである。
【0015】
スプライス変異体は、極めて異なるメカニズムによって産生されると推測される。例えば、
− 利用する転写開始部位が変動する。
− 利用するエクソンが追加される。
− 1個あるいは2以上のエクソンのスプライスアウトが完全であったり不完全であったりする。
− 突然変異(新しい供与体/受容体配列の欠失または生成)を介してスプライス調整因子の配列が変化する。
− イントロン配列の除去が不完全である。
【0016】
遺伝子が選択的スプライシングを受けると転写産物の配列が変化する(スプライス変異体)。その変化した配列の領域でスプライス変異体が翻訳されると、元のタンパク質とは構造および機能において明確に異なる別のタンパク質になる。腫瘍関連スプライス変異体により、腫瘍関連転写産物および腫瘍関連タンパク質/抗原が産生すると推測される。これらは、腫瘍細胞を検出するためおよび腫瘍の治療的標的物質用の分子マーカーとして使用可能である。本発明により、たとえば、血液、血清、骨髄、痰、気管支洗浄液、分泌液および生体組織切片において腫瘍細胞を検出するためには、たとえば、核酸を抽出した後にスプライス変異体に特異的なオリゴヌクレオチドでPCR増幅を行えばよい。特に、そのオリゴヌクレオチドとして適切なプライマー対では、その少なくとも1種はスプライス変異体の腫瘍関連領域にストリンジェントな条件下で結合する。本発明によれば、実施例に記載のオリゴヌクレオチド、特に、配列表のSEQ ID NO:34〜36、39、40および107〜110から選択される配列を有するあるいは含むオリゴヌクレオチドはこの目的のために適切である。本発明によれば、配列に依存する検出システムは全て検出に適切である。これらは、PCRとは別に、たとえば、遺伝子チップ/マイクロアレーシステム、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼ保護アッセイ(RDA)などである。全ての検出システムに共通する点は、スプライス変異体に特異的な少なくとも1個の核酸配列と特異的にハイブリッド形成することを検出の基礎とすることである。しかし、腫瘍細胞を本発明により検出するために、スプライス変異体がコードする特異的抗原決定基を認識する抗体を使用してもよい。該抗体を調製するために、前記スプライス変異体に対して特異的なペプチドを免疫化に使用してもよい。この態様では、本発明は、特に、配列表のSEQ ID NO:17〜19、111〜115、120および137から選択される配列を有するまたは含むペプチドおよびこれに対する特異的抗体に関する。
【0017】
また、腫瘍細胞を検出するために、腫瘍特異的に修飾されたグリコシル化変異体を認識する抗体を使用してもよい。そのような抗体の産生のためには、腫瘍細胞と正常細胞との間で異なるグリコシル化をするペプチド領域があれば適切である。この態様では、本発明は、特に、配列表のSEQ ID NO:17〜19、111〜115、120、137および142〜145から選択される配列を有するまたは含むペプチドおよびそれに対する特異的抗体に関する。N結合糖残基が内因的に脱グリコシル化すると、アスパラギンがアスパラギン酸に変換する。本発明によれば、本明細書に記載のタンパク質は配列を腫瘍特異的に変更させ、その結果生物学的および抗体結合的特性を変化させることができる。この態様では、本発明は、特に、配列表のSEQ ID NO:146〜150から選択される配列を有するまたは含むペプチドおよびそれに対する特異的抗体に関する。
【0018】
好ましくは正常細胞で産生した遺伝子産物の変異体とは明らかに相違する抗原決定基を持つアミノ酸は、免疫化にとって特に適する。腫瘍細胞の検出は、患者から単離した試料に抗体を使用して、あるいは静脈内投与した抗体で画像化して行ってもよい。新しいまたは変化した抗原決定基を有するスプライス変異体は、診断的に有用であるばかりか、免疫治療の標的物質として魅力的である。本発明の抗原決定基を利用して、治療上活性なモノクローナル抗体またはTリンパ球を標的としてもよい。受動的免疫治療では、スプライス変異体に特異的な抗原決定基を認識する抗体またはTリンパ球を養子免疫移入する。また、他の抗原の場合と同様に、標準技術(動物の免疫化、遺伝子組換え抗体の単離のためのパンイング方法)を使用して抗体を産生するに当たり、これら抗原決定基を含むポリペプチドを利用する。あるいは、前記抗原決定基を含むオリゴ−またはポリペプチドをコードする核酸を免疫化に利用することも可能である。抗原決定基特異的Tリンパ球のインビトロまたはインビボ生産のための種々の技術は、公知であり、詳細に記載されている(たとえば、Kessler JHら, 2001, Sahinら, 1997)。これらの技術は、同様に、スプライス変異体特異的抗原決定基を含むオリゴ−またはポリペプチドの利用または該オリゴ−またはポリペプチドをコードする核酸の利用に基礎を置く。また、このスプライス変異体特異的抗原決定基を含むオリゴ−あるいはポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする核酸は、能動的免疫治療(ワクチン接種、ワクチン治療)において、医薬的に活性な物質として使用してもよい。
【0019】
また、本発明は、正常組織および腫瘍組織において、性質および2次修飾の程度が異なるタンパク質に関する(たとえば、Durand & Seta, 2000; Clin. Chem. 46: 795-805; Hakomori, 1996; Cancer Res. 56: 5309-18)。
【0020】
タンパク質修飾の分析は、ウェスタンブロット法で行うことができる。特に、一般的に数kDaのグリコシル化体があると、SDS−PAGEで分離可能な標的タンパク質の全質量は高くなる。特異的O−およびN−グリコシド結合を検出するには、タンパク質溶解物をO−またはN−グリコシラーゼ(それぞれ作製者の説明によれば、たとえば、PNGアーゼ、エンドグリコシターゼF、エンドグリコシターゼH、ロッシェ診断剤)と共にインキュベートし、次にSDSを使用して変性させる。その後、ウェスタンブロット法を行う。標的タンパク質のサイズを縮小した場合は、特異的グリコシル化体をグリコシダーゼと共にインキュベートしてから同上の方法で検出することができ、したがって、修飾の腫瘍特異性も分析することができる。腫瘍細胞および正常細胞においてグリコシル化が異なっているタンパク質の領域は、特に興味深い。しかし、グリコシル化におけるこのような相違がこれまでに記述されているのは、数種の細胞表面タンパク質だけである(たとえば、Muc1)。
【0021】
本発明により、腫瘍におけるクローディン−18の種々異なるグリコシル化を検出することが可能であった。消化器癌、膵臓癌、食道腫瘍、前立腺腫瘍および肺腫瘍では、クローディン−18のグリコシル化のレベルが低い。クローディン−18タンパク質の抗原決定基は正常組織ではグリコシル化によりマスクされるが、腫瘍細胞ではグリコシル化が欠如しているので覆われていない。したがって、本発明によれば、それらのドメインに結合するリガンドおよび抗体を選択することが可能である。本発明によるそのようなリガンドおよび抗体は健常細胞上のクローディン−18には結合しない。理由はグリコシル化により抗原決定基が覆われているからである。
【0022】
したがって、腫瘍関連スプライス変異体から誘導したタンパク質抗原決定基に関して前記したように、種々異なるグリコシル化を利用して診断および治療の目的で正常細胞と腫瘍細胞とを識別することができる。
【0023】
一態様において、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原を認識する薬剤を含む医薬組成物に関し、その薬剤は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を示す細胞に選択的であるものが好ましい。特定の実施形態では、前記薬剤は、細胞死の誘導、細胞増殖の低減、細胞膜への損傷またはサイトカイン分泌を起こしてもよく、腫瘍阻害活性であるのが好ましい。一実施形態では、薬剤は、腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリッド形成するアンチセンス核酸である。さらなる実施形態では、薬剤は、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体であり、特に、補体により活性化されまたは毒素が結合した抗体であって、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である。さらなる実施形態では、薬剤が2以上の薬剤を含み、それら薬剤はそれぞれに別異の腫瘍関連抗原を選択的に認識し、ただしそれら抗原の少なくとも1種は本発明により同定される腫瘍関連抗原である。認識には、抗原の活性または発現の抑制を直接伴う必要はない。本発明のこの態様では、抗原を腫瘍に選択的に限定した場合には、この抗原は腫瘍の特定位置にエフェクターを動員するメカニズムのための標識として機能させるのが好ましい。好ましい実施形態では、薬剤は細胞障害性Tリンパ球であり、HLA分子上の抗原を認識して、このように標識した細胞を溶解する。さらなる実施形態では、薬剤は、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体であり、前記細胞に天然または人工のエフェクターを動員する。さらなる実施形態では、薬剤は、ヘルパーTリンパ球であり、前記抗原を特異的に認識する他の細胞のエフェクター機能を強化する。
【0024】
一態様において、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現または活性を抑制する薬剤を含む医薬組成物に関する。好ましい実施形態では、薬剤は、腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリッド形成するアンチセンス核酸である。さらなる実施形態では、薬剤は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である。さらなる実施形態では、薬剤が2以上の薬剤を含み、それら薬剤はそれぞれ別異の腫瘍関連抗原の発現または活性を選択的に抑制し、ただしそれら抗原の少なくとも1種は本発明により同定される腫瘍関連抗原である。
【0025】
さらに、本発明は、投与した時、HLA分子と本発明により同定された腫瘍関連抗原由来のペプチド抗原決定基との複合体の量を選択的に増加する薬剤を含む医薬組成物に関する。一実施形態では、薬剤は、(i)腫瘍関連抗原またはその一部、(ii)前記腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、(iii)前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および(iv)前記腫瘍関連抗原由来のペプチド抗原決定基とMHC分子との単離した複合体からなる群から選択される1以上の成分を含む。一実施形態では、薬剤が2以上の薬剤を含み、それら薬剤はそれぞれ別異の腫瘍関連抗原由来のペプチド抗原決定基とMHC分子との複合体の量を選択的に増加し、ただしそれら抗原の少なくとも1種は本発明により同定される腫瘍関連抗原である。
【0026】
さらに、本発明は、(i)本発明により同定される腫瘍関連抗原またはその一部、(ii)本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその一部、(iii)本発明により同定される腫瘍関連抗原に結合する抗体、またはその一部、(iv)本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリッド形成するアンチセンス核酸、(v)本発明により同定される腫瘍関連抗原を発現する宿主細胞またはその一部、および(vi)本発明により同定される腫瘍関連抗原またはその一部とHLA分子との単離複合体、からなる群から選択される1以上の成分を含む医薬組成物に関する。
【0027】
本発明により同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸が医薬組成物において発現ベクター中に存在し、プロモーターに機能的に結合してもよい。
【0028】
本発明の医薬組成物中に存在する宿主細胞は、腫瘍関連抗原またはその一部を分泌し、それを表面で発現してもよく、あるいは、前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合するHLA分子を追加的に発現してもよい。一実施形態では、宿主細胞は内因性的にHLA分子を発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、遺伝子組換え方法によりHLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその一部を発現する。宿主細胞は、非増殖性が好ましい。好ましい実施形態では、宿主細胞は抗原提示細胞であり、特に樹状細胞、単核細胞またはマクロファージである。
【0029】
本発明の医薬組成物中に存在する抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。さらなる実施形態では、抗体は、キメラまたはヒト化抗体、天然抗体または合成抗体の断片であって、その全てをコンビナトリー技術によって生成してもよい。抗体は、治療または診断的に有益な薬剤と合わさっていてもよい。
【0030】
本発明の医薬組成物中に存在するアンチセンス核酸は、6〜50個、特に、10〜30個、15〜30個および20〜30個の本発明により同定された腫瘍関連抗原をコードする核酸の連続するヌクレオチドを含んでもよい。
【0031】
さらなる実施形態では、本発明の医薬組成物が提供する腫瘍関連抗原は、直接にまたは核酸またはその一部の発現を介して、細胞の表面上のMHC分子に結合し、該結合によって細胞溶解性応答が生起されおよび/またはサイトカイン放出が誘発されるのが好ましい。
【0032】
本発明の医薬組成物は、医薬的に適合性のある担体および/またはアジュバントを含んでもよい。アジュバントは、サポニン、GM−CSF、CpGヌクレオチド、RNA、サイトカインまたはケモカインから選択されてもよい。本発明の医薬組成物は、腫瘍関連抗原の選択的発現または異常発現を特徴とする疾患の治療のために使用されるのが好ましい。好ましい実施形態では、疾患は癌である。
【0033】
さらに、本発明は、1種以上の腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患を治療、診断および/またはモニタリングする方法に関する。実施形態では、治療は、本発明の医薬組成物を投与することを含む。
【0034】
好ましくは、疾患は癌であり、語句「癌」は、白血病、セミノーマ、メラノーマ、奇形腫、グリオーマ、腎臓、副腎、甲状腺、腸、肝臓、大腸、胃、胃腸、リンパ腺、食道、結腸直腸、膵臓、耳、鼻および喉(耳鼻咽喉)、胸、前立腺、子宮、卵巣および肺の癌、およびその転移が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
一態様において、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患を診断する方法に関する。該方法は、患者から単離された生物試料における(i)腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその一部の検出および/または(ii)腫瘍関連抗原またはその一部の検出および/または(iii)腫瘍関連抗原に対する抗体またはその一部の検出および/または(iv)腫瘍関連抗原またはその一部に特異的な細胞障害性リンパ球またはヘルパーTリンパ球の検出、を含む。特定の実施形態では、検出は、(i)生物試料を、腫瘍関連抗原をコードする核酸あるいはその一部、前記腫瘍関連抗原あるいはその一部、抗体、または腫瘍関連抗原またはその一部に特異的な細胞障害性リンパ球あるいはヘルパーTリンパ球に、特異的に結合する薬剤に接触させることと、(ii)薬剤と、核酸あるいはその一部、腫瘍関連抗原あるいはその一部、抗体、または細胞障害性あるいはヘルパーTリンパ球との複合体の形成を検出すること、とを含む。一実施形態では、疾患は、複数の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とし、検出は、前記複数の異なる腫瘍関連抗原をコードする複数の核酸またはそれらの一部の検出、複数の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの一部の検出、前記複数の異なる腫瘍関連抗原に結合する複数の抗体またはそれらの一部の検出、または前記複数の異なる腫瘍関連抗原に特異的な複数の細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出を含む。さらなる実施形態では、患者から単離された生物試料を、対応する正常な生物試料と比較する。
【0036】
さらなる態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする、疾患の後退、進行または発病を決定する方法であって、前記疾患を患うまたは前記疾患であることが疑われる患者からの試料を、(i)腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその一部の量、(ii)腫瘍関連抗原またはその一部の量、(iii)腫瘍関連抗原またはその一部に結合する抗体の量、および(iv)腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との複合体に特異的な細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量からなる群から選択される1以上のパラメーターについて、モニタリングすることを含む。該方法は、第一時点で第一試料において、第二時点で更なる試料においてパラメーター(複数を含む)を測定し、疾患の進行を2つの試料を比較することによって決定することを含むのが好ましい。特定の実施形態では、疾患は、複数の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とし、モニタリングが、(i)前記複数の異なる腫瘍関連抗原をコードする複数の核酸またはそれらの一部の量および/または(ii)前記複数の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの一部の量および/または(iii)前記複数の腫瘍関連抗原またはそれらの一部に結合する複数の抗体の量および/または(iv)前記複数の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの一部とMHC分子との複合体に特異的である複数の細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量をモニタリングすることを含む。
【0037】
本発明によれば、核酸またはその一部の検出、または核酸またはその一部の量のモニタリングは、前記核酸またはその一部と特異的にハイブリッド形成するポリヌクレオチドプローブを使用して行ってもよく、または前記核酸またはその一部の選択的増幅によって行ってもよい。一実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、6〜50個の配列、特に、10〜30個、15〜30個および20〜30個の前記核酸の連続するヌクレオチドを含む。
【0038】
特定の実施形態では、検出すべき腫瘍関連抗原またはその一部は、細胞内にあるいは細胞表面上に存在する。本発明によれば、腫瘍関連抗原またはその一部の検出、または腫瘍関連抗原またはその一部の量のモニタリングは、前記腫瘍関連抗原またはその一部に特異的に結合する抗体を使用して行ってもよい。
【0039】
さらなる実施形態では、検出すべき腫瘍関連抗原またはその一部は、MHC分子、特にHLA分子との複合体の中に存在する。
【0040】
本発明によれば、抗体の検出、または抗体の量のモニタリングは、前記抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドを使用して行ってもよい。
【0041】
本発明によれば、抗原またはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的な、細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の検出、または細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量のモニタリングは、前記抗原またはその一部とMHC分子との間に複合体を提供する細胞を使用して行ってもよい。
【0042】
検出またはモニタリングのために使用されるポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパク質あるいはペプチド、または細胞は、検出可能に標識を付されるのが好ましい。特定の実施形態では、検出可能なマーカーは、放射活性マーカーまたは酵素的マーカーである。リンパ球をさらに検出するために、それらの増殖、サイトカイン生成、およびMHCと腫瘍関連抗原またはそれらの一部との複合体による特異的な刺激によって誘発した細胞障害活性、を検出してもよい。また、Tリンパ球は、遺伝子組換えMHC分子、もしくは1以上の腫瘍関連抗原の特定の免疫抗原性断片を有する2以上のMHC分子の複合体によって検出してもよい。これらの特異的T細胞受容体に接触せしめれば特異的Tリンパ球の同定が可能である。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患の治療、診断、またはモニタリングする方法に関し、該方法は、前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合する抗体であって、治療剤または診断剤と結合している抗体を投与することを含む。抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。さらなる実施形態では、抗体は、キメラあるいはヒト化抗体、または天然抗体の断片である。
【0044】
ある実施形態では、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患を診断するまたはモニタリングする方法を実施するために、それの補助または手段として拡散する腫瘍細胞または腫瘍転移を検出する。拡散する腫瘍細胞は、たとえば、血液、血清、骨髄、痰、気管支吸引液および/または気管支洗浄液中で検出することができる。
【0045】
また、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患を患う患者を治療する方法に関し、該方法は、(i)前記患者から反応性細胞を含む試料を取り出すことと(ii)該試料を、前記腫瘍関連抗原またはその一部に対して、細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の産生を支持する条件下で、前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞と接触させることと、(iii)細胞溶解性T細胞を、腫瘍関連抗原またはその一部を発現する細胞を溶解するのに適した量、患者に導入することとを含む。同様に、本発明は、腫瘍関連抗原に対する細胞溶解性T細胞のT細胞受容体のクローニングに関する。該受容体は、所望の特異性を受理する他のT細胞に移行させてもよく、また(iii)のように患者に導入してもよい。
【0046】
一実施形態では、宿主細胞は、HLA分子を内因的に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、HLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその一部を、組換え遺伝子により発現する。宿主細胞は、非増殖性であるのが好ましい。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単核細胞またはマクロファージである。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患を患う患者を治療する方法に関し、該方法は、(i)本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードし、前記疾患に伴う細胞によって発現する核酸を同定することと、(ii)宿主細胞を前記核酸またはその一部でトランスフェクションすることと、(iii)前記核酸の発現のためにトランスフェクションされた宿主細胞を培養すること(トランスフェクション効率が高い場合、これは必須ではない)と、(iv)宿主細胞またはその抽出物を、疾患に伴う患者の細胞に対する免疫応答を増加させるのに適切な量、患者に導入すること、を含む。該方法には、さらに、腫瘍関連抗原またはその一部を提供するMHC分子の同定、ならびに同定したMHC分子を発現し腫瘍関連抗原またはその一部を提供する宿主細胞の同定が含まれてよい。免疫応答は、B細胞応答またはT細胞応答を含んでもよい。さらに、T細胞応答は、腫瘍関連抗原またはその一部を提供する宿主細胞に特異的な、または前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する患者の細胞に特異的な、細胞溶解性T細胞および/またはヘルパーT細胞の産生を含んでもよい。
【0048】
また、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患を治療する方法に関し、該方法は、(i)腫瘍関連抗原の異常量を発現する患者から細胞を同定することと、(ii)該細胞の試料を単離することと、(iii)該細胞を培養することと、(iv)該細胞を、細胞に対する免疫応答を誘発するのに適切な量、患者に導入することとを含む。
【0049】
本発明で使用される宿主細胞は、非増殖性または非増殖性にされたものが好ましい。腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患は、特に、癌である。
【0050】
さらに、本発明は、
(a)SEQ ID NO:3〜5からなる群から選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸であって、(b)ストリンジェントな条件下で、(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸からなる群から選択される核酸に関する。さらに、本発明は、SEQ ID NO:10、12〜14および146〜150からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含むタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0051】
さらなる態様では、本発明は、本発明の核酸のプロモーター配列に関する。これらの配列は、好ましくは発現ベクター中で別の遺伝子に機能的に結合してもよく、これにより、適正な細胞中での前記遺伝子の選択的発現が確保される。
【0052】
さらなる態様では、本発明は、本発明の核酸を含む、遺伝子組換え核酸分子、特にDNAまたはRNA分子に関する。
【0053】
また、本発明は、本発明の核酸、または本発明の核酸を含む遺伝子組換え核酸分子を含む宿主細胞に関する。
【0054】
また、宿主細胞は、HLA分子をコードする核酸を含んでもよい。一実施形態では、宿主細胞は、HLA分子を内因適に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、HLA分子および/または本発明の核酸またはその一部を、遺伝子組換え的に発現する。宿主細胞は非増殖性であるのが好ましい。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単核細胞またはマクロファージである。
【0055】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明により同定される核酸とハイブリッド形成するオリゴヌクレオチドに関し、これを、遺伝子プローブまたは「アンチセンス」分子として使用してもよい。本発明により同定された核酸またはその一部とハイブリッド形成する核酸分子は、それがオリゴヌクレオチドプライマーまたは適格なプローブの形態であれば、前記本発明により同定した核酸に相同な核酸を見つけるのに使用してもよい。PCR増幅、サザンおよびノーサンハイブリッド形成を、相同な核酸を見つけるために使用してもよい。ハイブリッド形成を行う条件のストリンジェント程度は、低くてもよいが、さらに好ましくは中程度、最も好ましくは高程度である。本発明によれば、語句「ストリンジェントな条件」は、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリッド形成を可能にする条件を言う。
【0056】
さらなる態様では、本発明は、(a)SEQ ID NO:3〜5からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸からなる群から選択される核酸によって、コードされたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに関する。好ましい実施形態では、本発明は、SEQ ID NO:10、12〜14および146〜150からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含むタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに関する。
【0057】
さらなる態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の免疫抗原性断片に関する。該断片は、ヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合するのが好ましい。本発明の断片は、少なくとも6個、特に少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個または少なくとも50個のアミノ酸配列を含むのが好ましい。
【0058】
この態様では、本発明は、特に、SEQ ID NO:17〜19、90〜97、100〜102、105、106、111〜116、120、123、124、135〜137、139および142〜150からなる群から選択される配列、またはその一部あるいは誘導体を有するまたは含むペプチドに関する。
【0059】
さらなる態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原、またはその一部に結合する薬剤に関する。好ましい実施形態では、薬剤は抗体である。さらなる実施形態では、抗体は、キメラあるいはヒト化抗体またはコンビナトリーな技法により生成される抗体であり、または抗体の断片である。さらに、本発明は、(i)本発明により同定される腫瘍関連抗原またはその一部と(ii)本発明により同定された腫瘍関連抗原が結合するMHC分子との複合体には選択的に結合するが、(i)または(ii)の単独には結合しない抗体に関する。本発明の抗体は、モノクローナル抗体でもよい。さらなる実施形態では、抗体は、キメラあるいはヒト化抗体、または天然抗体の断片である。
【0060】
特に、本発明は、SEQ ID NO:17〜19、90〜97、100〜102、105、106、111〜116、120、123、124、135〜137、139および142〜150からなる群から選択される配列、またはその一部あるいは誘導体を有するまたは含むペプチドに特異的に結合する薬剤、特に抗体に関する。
【0061】
クローディン−18に関して、本発明は、また、薬剤、特にクローディン−18の1変異体に特異的に結合する抗体に関する。一実施形態では、薬剤、特に抗体は、変異体クローディン−18A1(SEQ ID NO:118)に特異的に結合する。別の実施形態では、薬剤、特に抗体は、変異体クローディン−18A2(SEQ ID NO:16)に結合する。そのような特異的抗体を得るには、たとえば、実施例4に記載するペプチドを使用して免疫化すればよい。
【0062】
さらに、クローディン−18に関し、本発明は、特定のグリコシル化パターンを有する、クローディン−18A2の形態に特異的に結合する薬剤、特に抗体に関する。一実施形態では、薬剤、特に抗体は、1以上のグリコシル化する筈の部位でグリコシル化していないクローディン−18A2の形態に特異的に結合する。別の実施形態では、薬剤、特に抗体は、1以上のグリコシル化する筈の部位でグリコシル化しているクローディン−18A2の形態に特異的に結合する。好ましくは、そのようなグリコシル化する筈の部位は、クローディン−18A2のアミノ酸位置、37、38、45、116、141、146および205からなる群から選択される1以上の位置に関する。さらに、そのような潜在的グリコシル化は、Nグリコシル化に関するのが好ましい。
【0063】
この点に関し、クローディン−18の変異体または形態に特異的な薬剤、特にクローディン−18の変異体または形態に特異的な抗体とは、その薬剤または抗体がその特異的な変異体または形態に対して、他の変異体や形態に対するよりもより強く結合することを言う。薬剤、特に抗体が第一変異体、形態または第一抗原決定基に結合したときの解離定数(K)が、第二変異体、形態または第二抗原決定基に結合したときの解離定数よりも低い場合には、その薬剤、特に抗体は、第二変異体、形状または第二抗原決定基への結合よりも、第一変異体、形態または第一抗原決定基により強く結合する。薬剤、特に抗体が特異的に結合する変異体、形態または抗原決定基との解離定数(K)は、抗体が特異的に結合しない変異体、形態または抗原決定基との解離定数(K)よりも10倍を超え、好ましくは20倍を超え、より好ましくは50倍を超え、さらにより好ましくは100倍を超え、特に200倍を超え、500倍を超え、または1000倍を超える値で低いのが好ましい。薬剤、特に抗体は、その薬剤、特に抗体が特異的でない変異体、形態または抗原決定基には結合しない、または本質的に結合しないのが好ましい。
【0064】
また、クローディン−18の変異体または形態に特異的に結合する、前記薬剤、特に本明細書に記載の抗体およびその誘導体を本発明の組成物および方法において使用してもよい。
【0065】
さらに、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原、その一部または本発明の抗体に結合する本発明の薬剤と治療剤または診断剤との間の結合体に関する。一実施形態では、その治療剤または診断剤は毒素である。
【0066】
さらなる態様では、本発明は、本発明により同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を検出するためのキットに関し、(i)腫瘍関連抗原をコードかする核酸またはその一部の、(ii)腫瘍関連抗原またはその一部の(iii)腫瘍関連抗原に結合する抗体またはその一部の、および/または(iv)腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的なT細胞の検出のための薬剤を含む。一実施形態では、核酸またはその一部の検出のための薬剤は、前記核酸の選択的増幅用の核酸分子であり、特に、6〜50個、特に10〜30個、15〜30個および20〜30個の核酸の連続するヌクレオチドの配列を含む。
【0067】
本発明により、腫瘍細胞において選択的にまたは異常に発現され、腫瘍関連抗原である遺伝子が説明される。
【0068】
本発明によれば、これらの遺伝子および/またはその遺伝子産物および/またはそれらの誘導体および/または一部は、治療的アプローチのための好ましい標的構造体である。したがって、前記治療的アプローチは、選択的に発現される腫瘍関連遺伝子産物の活性を抑制することを目的にしてもよい。もし、前記異常な個々の選択的発現が、腫瘍病原性において機能的に重要であり、かつその連結反応が、対応細胞の選択的損傷と同時に起こるなら、これは有用である。他の治療的概念は、腫瘍細胞に対して選択的に細胞障害作用の潜在能力を持つエフェクターメカニズムを動員するラベルとしての腫瘍関連抗原を想定する。ここでは、標的物質分子それ自身の機能と、その腫瘍進行におけるその役割とは、全く無関係である。
【0069】
本発明によれば、核酸の「誘導体」は、単一または複数のヌクレオチドの置換、欠失および/または付加が、前記核酸内に存在することを意味する。さらに、語句「誘導体」は、ヌクレオチド塩基上の、糖上のまたはリン酸塩上の核酸の化学的誘導体も含む。語句「誘導体」は、また、天然では発生しないヌクレオチドおよびヌクレオチド類縁体を含有する核酸も含む
【0070】
本発明によれば、核酸としては、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)が好ましい。本発明によれば、核酸は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、遺伝子組換えで生成され化学的に合成された分子を含む。本発明によれば、核酸は、1本鎖または2本鎖で、直鎖または共有結合で閉環した分子として存在してもよい。
【0071】
本発明で記載される核酸は、単離されているのが好ましい。語句「単離された核酸」は、本発明によれば、核酸が、(i)たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、インビトロで増幅された、(ii)クローニングによって、遺伝子組換えで生成された、(iii)開裂とゲル電気泳動分画によって精製された、または(iv)たとえば化学的合成法で合成されたことを意味する。単離された核酸は、遺伝子組換えDNA技術の操作のために入手可能である。
【0072】
2つの配列が、ハイブリッド形成可能で、互いに安定な二重鎖が形成可能である場合、核酸は、他の核酸に「相補的」である。ハイブリッド形成は、ポリヌクレオチド間で特異的ハイブリッド形成可能な条件(ストリンジェントな条件)下で行うのが好ましい。ストリンジェントな条件は、たとえば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J.Sambrookら、編集者、第2編、Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, New York, 1989またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., Editors, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkに記載され、たとえば、ハイブリッド形成緩衝液(3.5×SSC、0.02%Ficoll、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mMのNaHPO (pH7)、0.5%SDS、2mMのEDTA)中、65℃でのハイブリッド形成がある。SSCは、0.15Mの塩化ナトリウム/0.15Mのクエン酸ナトリウム、pH7である。ハイブリッド形成後、DNAが転移した膜を、たとえば室温で2×SSC中、次いで68℃までの温度で0.1〜0.5×SSC/0.1×SDS中で洗浄する。
【0073】
本発明によれば、相補的な核酸は、少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%、ヌクレオチドと同一である。
【0074】
本発明によれば、腫瘍関連抗原をコードする核酸は、単独で、または他の核酸、特に異種の核酸との組み合わせで存在する。好ましい実施形態では、核酸は、前記核酸に関して相同性であっても異種性であってもよい、発現制御配列または調節配列に機能的に結合する。コード配列および調節配列が、互いに共有結合で結合する場合は、コード配列の発現または転写が前記調節配列の制御下あるいは影響下にある状態で、「機能的に」互いに結合する。コード配列を機能タンパク質に翻訳するにあたり、そのコード配列に機能的に結合する調節配列が必要な場合には、その調節配列を誘発すれば、コード配列が転写されるので、コード配列内にフレームシフトが生起し、あるいは前記コード配列が所望のタンパク質またはペプチドに翻訳不可能になることはない。
【0075】
本発明によれば、語句「発現制御配列」または「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよび遺伝子の発現を調整する他の制御要素を含む。本発明特定の実施形態では、発現制御配列は、調整可能である。調節配列の正確な構造は、種または細胞タイプの機能として、異なってもよいが、一般的に、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列などのような、それぞれ転写および翻訳に関わる、5'非転写および5'非翻訳配列を含む。より具体的には、5'非転写調節配列は、機能的に結合した遺伝子の転写の転写制御のためのプロモーター配列を含有するプロモーター領域を含む。また、調節配列は、エンハンサー配列または上流活性化因子配列を含んでもよい。
【0076】
したがって、一方では、本明細書の腫瘍関連抗原は、任意の発現制御配列およびプロモーターと組み合わされてもよい。しかしもう一方では、本発明によれば、ここで記載される腫瘍関連遺伝子産物のプロモーターは、任意の他の遺伝子と組み合わされてもよい。これにより、これらのプロモーターの選択的活性を利用することが可能になる。
【0077】
本発明によれば、核酸は、宿主細胞から前記核酸によってコードされたタンパク質またはポリペプチドの分泌を制御するポリペプチドをコードする、他の核酸との組合わせ中に存在してもよい。本発明によれば、核酸は、コードしたタンパク質またはポリペプチドを宿主細胞の細胞膜上に定着させまたは細胞の特定の細胞器官内に送達するポリペプチドをコードする他の核酸との組み合わせで存在してもよい。同様に、リポーター遺伝子または何かの「タグ」を表現する核酸との組み合わせが可能である。
【0078】
本発明によれば、好ましい実施形態では、遺伝子組換えDNA分子はベクターであり、プロモーターが適正である場合には、核酸、たとえば本発明の腫瘍関連抗原をコードする核酸の発現を制御する。語句「ベクター」は、本明細書ではその最も一般的な意味において使用され、核酸のための何か媒介的な乗り物の意味を含み、これによって該核酸は例えば原核生物および/または真核生物細胞に導入可能となり、適正な場合には、ゲノム中に取り込まれる。この種のベクターは、細胞中で複製および/または発現されるのが好ましい。この媒介的な乗り物は、たとえば、電気穿孔法、微小発射砲撃、リポソーム投与、アグノバクテリウムの活用による転移、DNAまたはRNAウィルスを介する挿入での使用に適用してもよい。ベクターには、プラスミド、ファージミドまたはウィルスゲノムが挙げられる。
【0079】
本発明により同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸は、宿主細胞にトランスフェクションのために使用されてもよい。本明細書における核酸は、遺伝子組換えDNAおよびRNAの両方を意味する。遺伝子組換えRNAは、DNAテンプレートのインビトロ転写によって生成してもよい。さらに、使用の前に、配列を安定化する、キャッピングする、およびポリアデニル化するによって修飾してもよい。
【0080】
本発明によれば、語句「宿主細胞」は、外来の核酸によって変換されるまたはトランスフェクションされる任意の細胞を言う。本発明によれば、語句「宿主細胞」は、原核生物(たとえば、大腸菌)または真核生物細胞(たとえば、樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長類からの細胞のような哺乳動物細胞が特に好ましい。複数の組織タイプから誘導されてもよく、一次細胞および細胞株を含む。具体例として、角質細胞、末梢血白血球、骨髄の幹細胞および胎児の幹細胞を含む。さらなる実施形態では、宿主細胞は抗原提示細胞であり、特に、樹状細胞、単核細胞またはマクロファージである。核酸は、単数のコピーまたは複数のコピーの形で宿主細胞中に存在してもよく、一実施形態では、宿主細胞中で発現する。
【0081】
本発明によれば、語句「発現」は、最も一般的な意味で使用され、RNAまたはRNA、およびタンパク質の産生を含む。また、核酸の部分的な発現も含む。さらに、発現は、一過性にあるいは安定的に行われてもよい。哺乳動物細胞における好ましい発現システムは、G418に抵抗を付与する(したがってトランスフェクション細胞株を選択することが安定的に行うことができる)遺伝子、およびサイトメガロウィルス(CMV)のエンハンサー・プロモーター配列のような、選択性マーカーを含む、pcDNA3.1およびpRc/CMV(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含んでもよい。
【0082】
HLA分子が腫瘍関連抗原またはその一部を提供する本発明の場合、発現ベクターは、前記HLA分子をコードする核酸配列も含んでもよい。HLA分子をコードする核酸配列は、同じ発現ベクター上に、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸として存在してもよく、両核酸は、異なる発現ベクター上に存在してもよい。後者の場合、2つの発現ベクターは、細胞に同時にトランスフェクションされていてもよい。宿主細胞が、腫瘍関連抗原またはその一部もHLA分子も発現しない場合、それらをコードする核酸は、同じ発現ベクター上かまたは異なる発現ベクター上で細胞にトランスフェクションされる。もし細胞がすでにHLA分子を発現している場合は、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸配列だけを細胞にトランスフェクションすることができる。
【0083】
また、本発明は、腫瘍関連抗原をコードする核酸の増幅のためのキットを含む。そのようなキットは、たとえば、腫瘍関連抗原をコードする核酸にハイブリッド形成する、ペアの増幅プライマーを含む。該プライマーは、6〜50個、特に10〜30個、15〜30個、20〜30個の核酸配列の連続するヌクレオチドを含み、プライマー二量体の形成を避けるため、重複していないのが好ましい。プライマーの1つは、腫瘍関連抗原をコードする核酸の1本鎖にハイブリッド形成し、他のプライマーは、腫瘍関連抗原をコードする核酸の増幅を可能にする配列にて相補鎖にハイブリッド形成する。
【0084】
「アンチセンス」分子または「アンチセンス」核酸は、核酸の発現を調整する、特に低減するために使用してもよい。本発明によれば、語句「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」は、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドを言い、生理学的条件で、特定の遺伝子を含むDNA、または前記遺伝子のmRNAとハイブリッド形成し、それによって、前記遺伝子の転写および/または前記mRNAの翻訳を抑制する。本発明によれば、「アンチセンス分子」には、天然のプロモーターとは逆方向を向いている核酸またはその一部を含む構造体が挙げられる。核酸またはその一部のアンチセンス転写産物は、酵素を特定している天然由来のmRNAと二本鎖を形成する可能性があるので、その活性酵素中へのmRNAの蓄積または翻訳が阻害される。他の可能性として、核酸を不活性化するリボザイムの用途がある。本発明で好ましいアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、6〜50個、特に10〜30個、15〜30個、20〜30個の配列の、標的物質核酸の連続するヌクレオチドを有し、好ましくは標的物質核酸またはその一部に対して十分に相補的である。
【0085】
好ましい実施形態では、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、翻訳開始部位、転写開始部位またはプロモーター部位のようなN−末端または5'上流部位で、ハイブリッド形成する。さらなる実施形態では、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、3'非翻訳領域またはmRNAスプライシング部位でハイブリッド形成する。
【0086】
一実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、1つのヌクレオチドの5'末端と他のヌクレオチドの3'末端がリン酸ジエステル結合によって互いに結合しているリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはこれらの組み合わせからなる。
これらのオリゴヌクレオチドは、従来の方法で合成されてもよいし、遺伝子組換え的に生成してもよい。
【0087】
好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、「修飾」オリゴヌクレオチドである。ここでは、たとえば、その安定性または治療効能を高めるために、オリゴヌクレオチドを、その標的物質に結合する能力に悪影響を及ぼさない限り、非常に異なる方法で修飾してもよい。本発明によれば、語句「修飾オリゴヌクレオチド」は、(i)そのヌクレオチドの少なくとも2つが、合成ヌクレオチド間結合(すなわち、リン酸ジエステル結合ではない、ヌクレオチド間結合)によって互いに結合している、および/または(ii)普通核酸中には見出されない化学基が、オリゴヌクレオチドに共役結合で結合しているオリゴヌクレオチドを意味する。好ましい合成ヌクレオチド間結合は、チオリン酸エステル、ホスホン酸アルキルエステル、ホスホロチオエート、リン酸エステル、ホスホンチオ酸アルキルエステル、アミド亜リン酸エステル、カルバミン酸エステル、炭酸エステル、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル、およびペプチドである。
【0088】
語句「修飾オリゴヌクレオチド」は、共有結合で修飾された塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチドも含む。「修飾オリゴヌクレオチド」は、たとえば、3'位で水酸基以外の低分子量有機基と5'位でリン酸エステル基に共有結合で結合する糖残基を持つオリゴヌクレオチドを含む。修飾オリゴヌクレオチドは、たとえば、2'−O−アルキル化リボース残基またはリボースの代わりにアラビノースのような他の糖を含んでもよい。
【0089】
本発明で記載されるタンパク質およびポリペプチドは単離されているのが好ましい。語句「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」は、タンパク質またはポリペプチドが、その自然環境から分離されていることを意味する。単離されたタンパク質またはポリペプチドは、本質的に精製されている状態であってもよい。語句「本質的に精製された」は、タンパク質またはポリペプチドが、本質的に、自然界でまたはインビボで関連のある他の物質を含まないことを意味する。
【0090】
このようなタンパク質およびポリペプチドは、たとえば、抗体生成および免疫学的または診断的アッセイ中で使用され、または治療として使用されてもよい。本発明で記載されるタンパク質およびポリペプチドは、組織または細胞ホモジネートのような生物試料から単離されてもよく、また、様々な原核または真核生物発現システム中で、遺伝子組換えによって発現してもよい。
【0091】
本発明の目的のため、タンパク質あるいはポリペプチド、またはアミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。
【0092】
アミノ酸挿入変異体は、アミノ−および/またはカルボキシ−末端融合および、単一のあるいは複数のアミノ酸、特にアミノ酸配列の挿入も含む。挿入を持つアミノ酸配列変異体の場合、得られた生成物の適正なスクリーニングを含むランダム挿入も可能であるが、1以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列中の特別な部位に挿入されるのも可能である。アミノ酸欠失変異体は、配列からの1以上のアミノ酸の除去を特徴とする。アミノ酸置換変異体は、配列が除去されそこに他の残基が挿入された、少なくとも1の残基を特徴とする。相同なタンパク質またはポリペプチドの間で保存されないアミノ酸配列中の位置に修飾があるのが好ましい。アミノ酸は、疎水性、親水性、電気陰性度、側鎖の容積などの特性が類似する他のアミノ酸によって置換(保存的置換)されるのが好ましい。保存的置換は、たとえば、1個のアミノ酸を、置換すべきアミノ酸として、以下の同じ群に挙げられた他のアミノ酸と交換することを言う。
【0093】
1.小さな脂肪族、非極性あるいは僅かに極性の残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)
2.負電荷残基およびそのアミド類:Asn、Asp、Glu、Gln
3.正電荷残基:His、Arg、Lys
4.大きな脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)
5.大きな芳香族残基:Phe、Tyr、Trp.
【0094】
タンパク質構造における特定の部分のために、3つの残基が、括弧書きで表されている。Glyは、前記鎖のない残基だけであり、したがって、鎖に柔軟性を与える。Proは、鎖を大きく制限する異常な幾何学配置を持つ。ジスルフィド架橋を形成することができる。
【0095】
前記アミノ酸変異体は、たとえば、固相合成(Merrifield, 1964)および類似の方法または遺伝子組換えDNA操作など、公知のペプチド合成技術を活用して、簡単に生成してもよい。配列が知られているまたは部分的に知られているDNAの所定の部位へ置換突然変異を導入する技術は周知であり、たとえば、M13突然変異生成を含む。置換基を有するタンパク質の生成、挿入または欠失のためのDNA配列の操作は、たとえば、Sambrookら(1989)に詳細に説明されている。
【0096】
本発明によれば、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの「誘導体」も、炭水化物、脂質および/またはタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドのような、酵素に伴う任意の分子の、単一または複数の置換、欠失および/または付加を含む。語句「誘導体」は、また、前記タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの機能的化学的等価物質の全てまで拡張される。
【0097】
本発明によれば、腫瘍関連抗原の一部または断片は、誘導されたポリペプチドの機能的特性を有する。そのような機能的特性として、抗体との相互作用、他のポリペプチドまたはタンパク質との相互作用、核酸の選択的結合および酵素活性が含まれる。特定の特性は、HLAとの複合体を形成する能力であり、適正であれば、免疫応答を発生する。この免疫応答は、刺激細胞障害性またはTヘルパー細胞に基づく。本発明の腫瘍関連抗原の一部または断片は、少なくとも6、特に少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個または、少なくとも50個の配列の腫瘍関連抗原のアミノ酸を含むのが好ましい。
【0098】
本発明によれば、腫瘍関連抗原をコードする核酸の一部または断片は、先に記載したように、少なくとも腫瘍関連抗原および/または該腫瘍関連抗原の一部または断片をコードする核酸の一部に関する。
【0099】
腫瘍関連抗原をコードする遺伝子の単離および同定は、1以上の腫瘍関連抗原の発現を特徴とする疾患の診断を可能にする。これらの方法は、腫瘍関連抗原をコードする1以上の核酸を測定することおよび/またはコードされた腫瘍関連抗原および/またはそれから誘導されたペプチドを測定することを含む。核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応または標識付けされたプローブを使用するハイブリッド形成を始めとする、従来の方法で測定してもよい。腫瘍関連抗原またはそれから誘導されたペプチドは、抗原および/またはペプチドの認識に関して患者の抗血清をスクリーニングすることによって測定してもよい。また、それらは、対応腫瘍関連抗原に特異的な患者のT細胞をスクリーニングすることによって測定してもよい。
【0100】
また、本発明によれば、本明細書に記載の腫瘍関連抗原に結合するタンパク質、例えば抗体および前記腫瘍関連抗原の細胞性結合パートナーを単離することが可能でなる。
【0101】
本発明によれば、特定の実施形態は、腫瘍関連抗原から誘導される「ドミナントネガティブ」ポリペプチドを提供することを含む。ドミナントネガティブポリペプチドは、非活性なタンパク質変異体であって、自分が細胞機構と相互作用することにより、活性タンパク質がその細胞機構と相互作用するのを排斥し、あるいは活性タンパク質と競合することによってその活性タンパク質の効果を減少させる。たとえば、ドミナントネガティブ受容体は、リガンドに結合するが、結合の応答としてのシグナルを何もリガンドに対して発生しないので、そのリガンドの生物学的効果が減殺される可能性がある。同様に、ドミナントネガティブで触媒的に不活性なキナーゼは、標的タンパク質と通常通り相互作用するが、この標的タンパク質をリン酸化しないので、細胞シグナルへの応答としてこの標的タンパク質がリン酸化されることは減少する可能性がある。同様に、ドミナントネガティブな転写因子は、遺伝子の制御領域中のプロモーター部位に結合するが、この遺伝子の転写を増大しないので、このプロモーターの結合部位は占拠され転写が増加しないままに正常な転写因子の効果が減殺される可能性がある。
【0102】
細胞内でのドミナントネガティブポリペプチドの発現の結果、活性タンパク質の機能が減少する。当業者がタンパク質のドミナントネガティブ変異体を作製するためには、たとえば、従来の突然変異生成方法および変異体ポリペプチドのドミナントネガティブ効果の評価によればよい。
【0103】
また、本発明は、腫瘍関連抗原に結合するポリペプチドのような物質も含む。そのような結合性物質は、たとえば、腫瘍関連抗原および腫瘍関連抗原とその結合相手との複合体を検出するスクリーニングアッセイにおいて、および該腫瘍関連抗原および腫瘍関連抗原とその結合相手との複合体の精製において、使用してもよい。また、そのような物質は、腫瘍関連抗原の活性を抑制するために、たとえば、その抗原への結合に使用してもよい。
【0104】
したがって、本発明には、腫瘍関連抗原に選択的に結合できる結合性物質、例えば抗体または抗体断片を含む。抗体は、従来の方法で生成されるポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。
【0105】
そのような抗体は、天然のおよび/または変性された状態のタンパク質を認識することができる(Andersonら, J.Immunol. 143: 1899-1904, 1989; Gardsvoll, J.Immunol. Methods 234: 107-116, 2000; Kayyemら, Eur. J. Biochem. 208: 1-8, 1992; Spillerら, J.Immunol. Methods 224: 51-60, 1999)。
【0106】
標的タンパク質に特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は、種々の標準方法によって生成することができる。たとえば、Philip Shepherdによる「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」, Christopher Dean ISBN 0-19-963722-9; Ed Harlow, David Laneによる「Antibodies: A Laboratory Manual, ISBN: 0879693142およびEdward Harlow,David Lane,Ed Harlowによる「Using Antibodies:A Laboratory Manual: Portable Protocol NO」 ISBN 0879695447。これによって、複合体膜タンパク質を天然の形態のままで認識する、親和性抗体および特異的抗体を作成することが可能である(Azorsaら、J.Immunol. Methods 229: 35-48, 1999; Andersonら、J. Immunol. 143: 1899-1904, 1989; Gardsvoll, J.Immunol. Methods 234: 107-116, 2000)。これは、特に、治療上で、しかしまた多くの診断用にも使用される抗体の生成に関与する。この点に関して、免疫化のために、全タンパク質、細胞外の部分的配列、および生理学的に折りたたまれた形態に標的物質を発現する細胞を使用することが可能である。
【0107】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して従来の方法で生成する(技術の詳細は、Philip Shepherd, Christopher Deanによる「Monoclonal Antibodies: A Practical Approach」ISBN 0-19-963722-9; Ed Harlow, David Laneによる「Antibodies: A Laboratory Manual」ISBN: 0879693142; Edward Harlow, David Lane, Ed Harlowによる「Using Antibodies: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO」ISBN: 0879695447を参照のこと)。
【0108】
抗体分子の小部分、パラトープのみが抗体のその抗原決定基への結合に関わることは公知である(Clark, W.R. (1986),「The Experimental Foundations of Modern Immunology」、Wiley & Sons, Inc., New York; Roitt, I. (1991),「Essential Immunology」、第7編、Blackwell Scientific Publications, Oxford参照)。たとえば、pFc'およびFc領域は、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関わらない。pFc'領域が酵素的に除去された抗体、またはpFc'領域なしで生成された抗体(F(ab')断片と言う)は、完全な抗体の両抗原結合部位を持つ。同様に、Fc領域が酵素的に除去された抗体またはFc領域なしで生成された抗体(Fab断片と言う)は、無傷の抗体分子の抗原結合部位を1個持つ。さらに、Fab断片は、抗体の共有結合した軽鎖と、前記抗体の重鎖の部分とからなる(Fdと言う)。Fd断片は、抗体特異性の主要な決定因子であり(単一Fd断片は、抗体の特異性を変えることなく、異なる軽鎖を10個まで伴うことができる。)、単離された時、Fd断片は、抗原決定基に結合する能力を保持する。
【0109】
相補性決定領域(CDR)は、抗体の抗原結合部内に位置し、抗原決定基およびパラトープの3次構造を維持するフレームワーク領域(FRs)と直接相互作用する。重鎖のFd断片もIgG免疫グロブリンの軽鎖もどちらも、4箇所のフレームワーク領域(FR1〜FR4)を含み、どちらの場合も3箇所の相補的決定領域(CDR1〜CDR3)によって分離される。CDR、特に、CDR3領域、更に特に重鎖のCDR3領域は、抗体特異性に対してかなりな程度に応答可能である。
【0110】
哺乳動物抗体のNon−CDR領域は、同一または異なる特異性を持つ抗体の類似の領域によって置換しても、抗原決定基に対する元の抗体の特異性は保持されることが知られている。これにより、非ヒトCDRをヒトFRおよび/またはFc/pFc'領域に共有結合して機能性抗体が生産される「ヒト化」抗体の開発が可能となった。
【0111】
これは所謂「SLAM」技術において利用されており、B細胞を全血から単離し、該細胞をモノクローン化する、次いで、単一なB細胞の上澄液をその抗体特異性に関して分析する。ハイブリドーマ技術とは対照的に、抗体遺伝子の可変領域を、単一細胞PCRを使用して増幅し、適切なベクター中にクローン化する。このようにして、モノクローナル抗体の供給は加速されている(de Wildt et al., J. Immunol. Methods 207: 61-67, 1997)。
【0112】
別の例として、国際公開第92/04381号公報には、マウスFR領域の少なくとも部分がヒト由来のFR領域で置換された、ヒト化マウスRSV抗体の産生および用途が記載されている。抗原結合能力を持つ無傷の抗体の断片を始めとするこの種の抗体は、しばしば、「キメラ」抗体と言われる。
【0113】
また、本発明は、Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖−CDR3領域が、相同性ヒトまたは非ヒト配列、キメラF(ab')−断片抗体で置換されており、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖−CDR3領域が、相同性ヒトまたは非ヒト配列、キメラFab−断片抗体で置換されており、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖−CDR3領域が、相同性ヒトまたは非ヒト配列で置換された、抗体、キメラ抗体のF(ab')、Fab、FvおよびFd断片、およびFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が、相同性ヒトまたは非ヒト配列で置換された、キメラFd−断片抗体を提供する。また、本発明は「一本鎖」抗体も含む。
【0114】
また、本発明は、腫瘍関連抗原に特異的に結合するポリペプチドも含む。この種の物質に結合するポリペプチドは、たとえば、固定化した形態にまたはファージ提示ライブラリーとして溶液中で簡易的に調製したペプチドライブラリーを変性することにより得られる。同様に、1個以上のアミノ酸を持つペプチドのコンビナトリアルなライブラリーを調製することも可能である。ペプトイド(peptoid)および非ペプチド性合成残基のライブラリーを調製してもよい。
【0115】
ファージ提示は、本発明の結合性ペプチドの同定において、特に効果的である。これに関し、たとえば、ファージライブラリーを調製(たとえば、M13、fdまたはλファージを使用して)すれば、これは長さ約4〜約80個のアミノ酸残基の挿入を可能にする。次いで、腫瘍関連抗原に結合する挿入物を担持するファージを選択する。この方法は、腫瘍関連抗原に結合するファージの再選択を複数回繰り返えせばよい。複数回の繰返しによって、特定の配列を持つファージが濃縮される。発現したポリペプチドの配列を同定するために、DNA配列の分析を行えばよい。腫瘍関連抗原に結合する配列の最も小さな直線部が測定される。酵母の「ツーハイブリッド・システム」を、腫瘍関連抗原に結合するポリペプチドを同定するために使用してもよい。本発明に記載される腫瘍関連抗原またはその断片を使用してペプチド・ライブラリー、例えばファージ提示ライブラリーをスクリーニングすれば、腫瘍関連抗原のパートナーに結合するペプチドを同定および選択することができる。そのような分子は、たとえば、スクリーニングアッセイ、精製プロトコル、腫瘍関連抗原の機能への干渉、および当業者に公知の目的のために使用してよい。
【0116】
前記抗体および他の結合分子を使用して、たとえば、腫瘍関連抗原を発現する組織を同定してもよい。また、抗体を特定の診断物質に結合して、腫瘍関連抗原を発現する細胞および組織を表示させてもよい。これら抗体は、また、治療上有益な物質と結合してもよい。診断物質には、硫酸バリウム、ヨーセタム酸、イオパノ酸、イオパノ酸カルシウム、ジアトリゾ酸ナトリウム、ジアトリゾ酸メグルミン、メトリザミド、チロパノ酸ナトリウム、およびフッ素−18および炭素−11のようなポジトロン放射体、ヨウ素−123、テクネチウム−99m、ヨウ素−131およびインジウム−111のようなγ放射体を含む放射性診断剤、フッ素およびガドリニウムのような核磁気共鳴用原子核種が挙げられるが、これらに限定されない。本発明によれば、語句「治療上有益な物質」とは、記載したように、1以上の腫瘍関連抗原を発現する細胞へと選択的に誘導される任意の治療分子を意味し、抗癌剤、放射性ヨウ素で標識付けされた化合物、毒素、細胞増殖抑制または細胞溶解性薬剤などが挙げられる。抗癌剤としては、たとえば、アミノグルテチミド、アザチオプリン、硫酸ブレオマシン、ブスルファン、カルムスチン、クロランブシル、シスプラチン、シクロフォスファミド、シクロスポリン、シタラビジン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビン、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロン− 、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトタン、プロカルバシンHCl、チオグアニン、硫酸ビンブラスチンおよび硫酸ビンクリスチンが挙げられる。他の抗癌剤は、たとえば、GoodmanおよびGilman,「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第8編、1990, McGraw-Hill, Inc.、特に第52章(Antineoplastic Agents (Paul CalabresiおよびBruce A. Chabner)に記載されている。毒素は、ポークウィード抗ウィルスタンパク質、クロレラ毒素、咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリアエクソトキシンまたはシュードモナスエクソトキシンのようなタンパク質でよい。また、毒素残基は、コバルト−60のような高エネルギー放射性核種であってよい。
【0117】
本発明によれば、語句「患者」は、人間、非人類霊長類、または他の動物、特に、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはマウスやラットのようなげっ歯類のような哺乳類、を意味する。特に好ましい実施形態では、患者は人間である。
【0118】
本発明によれば、語句「疾患」は、腫瘍関連抗原を発現したまたは異常発現した、任意の病的症状を言う。本発明によれば、「異常発現」は、発現が変更された、好ましくは、健常な個体の状態と比べて、増加したことを意味する。発現における増加は、少なくとも10%までの、特に少なくとも20%までの、少なくとも50%までのまたは少なくとも100%までの増加を言う。一実施形態では、腫瘍関連抗原が疾患のある個体の組織においてのみ発現し、健常な個体での発現は抑制される。そのような疾患の一例は癌であり、本発明による語句「癌」には、白血病、セミノーマ、メラノーマ、奇形腫、グリオーマ、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、腸癌、肝臓癌、大腸癌、胃癌、胃腸癌、リンパ腺癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、耳、鼻および喉(耳鼻咽喉)癌、胸癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌、およびこれらの転移癌をが挙げられる。
【0119】
本発明によれば、生物試料は、組織試料および/または細胞試料であり、本明細書に記載される種々の方法における用途のために、パンチ生検を含む生体組織切片による、または血液、気管支吸引液、痰、尿、便、その他の体液の採取による従来の方法で得ればよい。
【0120】
本発明によれば、語句「免疫反応性細胞」は、適切な刺激により免疫細胞(たとえば、B細胞、ヘルパーT細胞または細胞溶解性T細胞)に成熟することができる細胞を意味する。反応性細胞には、CD34造血性幹細胞、未熟および成熟T細胞および未熟および成熟B細胞が挙げられる。腫瘍関連抗原を認識する細胞溶解性またはヘルパーT細胞の産生を所望の場合は、細胞溶解性T細胞およびヘルパーT細胞の産生、細胞分化および/または選択に好ましい条件下で、反応性細胞を、腫瘍関連抗原を発現する細胞に接触させる。抗原に曝露された時のT細胞前駆体の細胞溶解性T細胞への細胞分化は、免疫システムのクローン選択に類似している。
【0121】
患者の免疫システムの反応に基づく治療方法もあり、この反応の結果、抗原提示細胞、例えば1以上の腫瘍関連抗原を提供する癌細胞が溶解する。この点に関し、たとえば、腫瘍関連抗原およびMHC分子の複合体に特異的な自己由来の細胞障害性Tリンパ球を、細胞異常のある患者に投与する。このような細胞障害性Tリンパ球のインビトロでの産生は公知である。T細胞分化の方法の1つが、国際公開第9633265号にある。一般的に、細胞、例えば血液細胞を含む試料を患者から採取し、該細胞を、上記複合体を提供しかつ細胞障害性Tリンパ球の増殖を惹起する細胞(たとえば、樹状細胞)と接触させる。標的細胞は、トランスフェクションされた細胞、例えばCOS細胞でよい。これらのトランスフェクションされた細胞は、所望の複合体をその表面に提供し、細胞障害性Tリンパ球と接触すると後者の増殖を刺激する。次いで、クローン増殖した自己由来の細胞障害性Tリンパ球を患者に投与する。
【0122】
抗原特異的細胞障害性Tリンパ球を選択する他の方法では、MHCクラスI分子/ペプチド複合体の蛍光性4量体を使用して、細胞障害性Tリンパ球の特異的クローンを検出する(Altmanら、Science 274: 94-96, 1996; Dunbarら、Curr. Biol. 8:413-416, 1998)。溶解性MHCクラスI分子を、βミクロブロブリンおよび前記クラスI分子に結合するペプチド抗原の存在下で、インビトロで折畳む。MHC/ペプチド複合体を精製し、次いで、ビオチンで標識する。4量体を形成するためにビオチン化ペプチド−MHC複合体と標識したアビジン(たとえば、フェコエリスリン)とを、モル比4:1で混合する。次いで、4量体を細胞障害性Tリンパ球、例えば末梢血やリンパ腺に接触させる。4量体は、ペプチド抗原/MHCクラスI複合体を認識する細胞障害性Tリンパ球に結合する。4量体に結合した細胞を、蛍光で制御する細胞層別法によって選別し、反応性細胞障害性Tリンパ球を単離する。次いで、単離された細胞障害性Tリンパ球をインビトロで増殖すればよい。
【0123】
養子免疫伝達(Greenberg, J. Immunol. 136(5):1917, 1986; Riddelら、Science 257:238, 1992; Lynchら、 Eur. J.Immunol. 21:1403-1410, 1991; Kastら、Cell59: 603-614, 1989)と言われる治療方法では、所望の複合体(たとえば、樹状細胞)を提供する細胞を、治療対象の患者の細胞障害性Tリンパ球と組み合わせると、特異的細胞障害性Tリンパ球が増殖する。次いで、増殖した細胞障害性Tリンパ球を細胞異常のある患者、すなわち特定の異常細胞が特異的複合体を特徴的に提供している患者に投与する。すると細胞障害性Tリンパ球が異常細胞を溶解し、所望の治療効果が達成される。
【0124】
しばしば、患者のT細胞レパートリーのうち、この種の特異的複合体に親和性の低いT細胞のみが増殖していることがある。この理由は、耐性が生じたために親和性の高いT細胞は既に消滅しているからである。これの解決には、T細胞受容体それ自体を伝達することを選択してもよい。これには、所望の複合体を提供する細胞(たとえば、樹状細胞)を健常な個人または他の種(たとえば、マウス)の細胞障害性Tリンパ球と組み合わせる。ただし、そのTリンパ球は、以前に上記特異的複合体と接触したことのないドナー生物から取得する。すると親和性の高い特異的細胞障害性Tリンパ球が増殖する。増殖されたこれら特異的Tリンパ球の高親和性T細胞受容体を、クローン化する。高親和性T細胞受容体を別の種から誘導した場合には、いろいろな程度にそれらをヒト化することができる。次いで、そのようなT細胞受容体を、遺伝子の伝達により、たとえば、レトロウィルスベクターを使用して、所望の患者T細胞にトランスフェクションする。次いで、これらの遺伝子的に変更したTリンパ球を使用して養子免疫伝達を行う。(Stanislawskiら, Nat Immunol. 2:962-70, 2001; Kesselsら、Nat Immunol. 2:957-61, 2001).
【0125】
上記の治療態様は、患者の異常細胞の少なくともいくつかは、腫瘍関連抗原とHLA分子との複合体を提供するという事実から出発している。そのような細胞は、自体既知の方法で同定してもよい。複合体を提供する細胞が同定されたら直ちに、細胞障害性Tリンパ球を含む患者からの試料と組み合わせるのがよい。細胞障害性Tリンパ球が、複合体を提供する細胞を溶解したならば、腫瘍関連抗原が提供されていると推測することができる。
【0126】
養子免疫伝達は、本発明が適用可能な唯一の治療形態ではない。細胞障害性Tリンパ球は、自体既知の方法でインビボ産生してもよい。一つの方法では、複合体を発現する非増殖性細胞の使用である。ここで使用される細胞は、複合体を普通に発現するものであって、たとえば、放射線照射された腫瘍細胞あるいは複合体(すなわち、抗原性ペプチドと提供HLA分子)の提供に必要な1個または両方の遺伝子をトランスフェクションした細胞である。種々の細胞型を使用してよい。さらに、挿入遺伝子の1個または両方を持つベクターを使用することも可能である。ウィルスまたはバクテリアのベクターが特に好ましい。たとえば、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸にプロモーターおよびエンハンサー配列を機能的に結合することによって、前記腫瘍関連抗原またはその断片は特定の組織または細胞型において発現が制御される。核酸は、発現ベクター中に導入してもよい。発現ベクターは、非修飾の染色体外核酸、プラスミドまたはウィルスゲノムであり、これに外来の核酸を挿入してもよい。また、腫瘍関連抗原をコードする核酸をレトロウィルスゲノムに挿入すると、標的物質組織または標的物質細胞のゲノムの中に核酸が集積可能になる。これらの系では、微生物、例えばワクシニアウィルス、ポックスウィルス、ヘルペスシンプレックスウイルス、レトロウィルスまたはアデノウィルスが問題の遺伝子を担持して、宿主細胞に「感染する」。他の好ましい形態は、腫瘍関連抗原を遺伝子組換えRNAの形態で導入することであり、それを細胞中に導入するためには、たとえば、リポソーム運搬または電気穿孔法による。得られた細胞は、問題の複合体を提供し、自己由来の細胞障害性Tリンパ球はこれを認識して次に増殖する。
【0127】
類似の効果を達成可能にするためには、腫瘍関連抗原またはその断片とアジュバントとを組み合わせ、抗原提示細胞への移入をインビボで可能にする。腫瘍関連抗原またはその断片は、タンパク質、DNA(たとえば、ベクター内)またはRNAとして提示してもよい。腫瘍関連抗原は、HLA分子に対するペプチドパートナーにするための処理をするが、抗原断片の方はそのまま提示させてよく、更なる処理をする必要はない。これらがHLA分子に結合できる場合に、後者は特別に可能である。完全抗原が樹状細胞によってインビボで処理される投与形態が好ましい。その理由は、それによってヘルパーT細胞の応答が生じ、これは効果的な免疫応答にとって必要だからである(Ossendorpら、Immunol Lett. 74:75-9, 2000; Ossendorpら、J. Exp. Med. 187:693-702, 1998)。一般に、たとえば皮膚内注射によって患者に腫瘍関連抗原の有効量を投与することが可能である。しかし、リンパ腺へのリンパ腺注射をおこなってもよい(Maloyら、Proc Natl Acad Sci USA 98:3299-303, 2001)。注射は、樹状細胞中への取り込みを容易にする薬剤と組み合わせて行ってもよい。腫瘍関連抗原として好ましいものには、多くの癌患者の異質遺伝子型癌の抗血清またはT細胞と反応するものが挙げられる。しかし、特に重要な抗原は、最初から自発的免疫応答が存在しないものである。これらの抗原に対して免疫応答を誘導し、それによって腫瘍を溶解することは明らかに可能である(Keoghら、J. Immunol. 167:787-96, 2001; Appellaら、Biomed Pept Proteins Nucleic Acids 1:177-84, 1995; Wentworthら、Mol Immunol. 32:603-12, 1995).
【0128】
また、本発明に記載される医薬組成物は、免疫化のためのワクチンとして使用してもよい。本発明によれば、語句「免疫化」または「ワクチン接種」は、抗原に対する免疫応答の増加または活性化を意味する。動物モデルを使用して癌に対する免疫化効果を試験するために、腫瘍関連抗原またはそれをコードする核酸を使用することが可能である。たとえば、ヒト癌細胞をマウスに移入して腫瘍を産生し、腫瘍関連抗原をコードする核酸を1種以上投与すればよい。癌細胞における効果(たとえば腫瘍サイズの減少)は、核酸による免疫化の効果の測定値として測定すればよい。
【0129】
免疫化のための組成物の一部分として、1種以上の腫瘍関連抗原またはその刺激断片を、免疫応答を誘発するためまたは免疫応答を増加させるためのアジュバント1種以上とともに投与される。アジュバントは、抗原虫に配合されるまたは抗原とともに投与される物質であり、免疫応答を強化する。アジュバントによって免疫応答を強化するためには、抗原の貯留部(細胞外またはマクロファージ内に)を用意し、マクロファージを活性化しおよび/または特定のリンパ球を刺激すればよい。アジュバントは公知であり、モノホスポリルリピドA(MPL, SmithKline Beecham)、QS21(SmithKline Beecham)、DQS21(SmithKline Beecham;国際公開第96/33739公報)、QS7、QS17、QS18およびQS−L1(Soら、Mol. Cells 7:178-186, 1997)のようなサポニン、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、ビタミンE、モンタニド、ミュバン、CpGオリゴヌクレオチド(Kreigら、Nature 374:546-9, 1995参照)、および生物学的に分解可能な油、例えばスクアレンおよび/またはトコフェロールから調製した種々の油中水型エマルジョンが挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドは、DQS21/MPLとの混合物として投与するのが好ましい。MPLに対するDQS21の比は、通常、約1:10〜10:1、好ましくは約1:5〜5:1、特に約1:1である。ヒトへの投与のためのワクチン製剤には、普通、DQS21およびMPLが約1μgから約100μgの範囲で含まれている。
【0130】
患者の免疫応答を刺激する他の物質を投与してもよい。たとえば、サイトカインにはリンパ球上での調節特性があるので、ワクチン製剤においてを使用することが可能である。そのようなサイトカインとして、例えば、インターロイキン−12(IL−12)(これは、ワクチンの保護活性を増すことが示されている(Science 268:1432-1434, 1995参照))、GM−CSFおよびIL−18が挙げられる。
【0131】
免疫応答を強化し、そのためワクチン製剤において使用される数多くの化合物が存在する。該化合物には、タンパク質または核酸の形態で提供される同時刺激分子が挙げられる。そのような同時刺激分子の例は、B7−1およびB7−2(それぞれCD80およびCD86)であり、これらは樹状細胞(DC)上で発現し、かつT細胞上に発現したCD28分子と相互作用する。この相互作用によって、抗原/MHC/TCRによって刺激された(シグナル1)T細胞に共刺激(シグナル2)が与えられ、それによって、このT細胞の増殖とエフェクター機能が強化される。また、B7は、T細胞上のCTLA4(CD152)と相互作用し、かつCTLA4およびB7リガンドに関する研究によれば、B7−CTLA4相互作用によって抗腫瘍免疫およびCTL増殖が強化可能である(Zheng, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(11):6284-6289 (1998))。
【0132】
B7は、普通、腫瘍細胞には発現されないので、T細胞にとっては効果のない抗原提示細胞(APC)である。B7の発現が誘発されると、細胞障害性Tリンパ球の増殖およびエフェクター機能が腫瘍細胞によってより効果的に刺激されると思われる。B7/IL−6/IL−12の組み合わせによる共刺激を加えると、IFN−γとTh1−サイトカインのプロフィールがT細胞集団において誘発されるのが露わになり、その結果、T細胞活性がさらに強化される(Gajewskiら、J. Immunol. 154:5637-5648 (1995)).
【0133】
細胞障害性Tリンパ球が完全に活性化しエフェクターが完全に機能するためには、前記ヘルパーT細胞上のCD40リガンドと樹状細胞が発現したCD40分子との間の相互作用を介してTヘルパー細胞が関与することが必要である(Ridgeら、Nature 393:474 (1998)、Bennettら、Nature 393:478 (1998), Schoenbergerら、Nature 393:480 (1998))。同時刺激シグナルのメカニズムは、たぶん、前記樹状細胞(抗原提示細胞)による、B7産生と関連IL−6/IL−12産生の増加に関係している。したがって、CD40−CD40L相互作用が、シグナル1(抗原/MHC−TCR)およびシグナル2(B7−CD28)の相互作用を補足する。
【0134】
樹状細胞を刺激する抗−CD40抗体を使用すれば、普通は炎症応答の対象外にあるまたは未熟な抗原提示細胞(腫瘍細胞)が提示する腫瘍抗原に対する応答が直接に強化されると期待される。これらの状況では、TヘルパーおよびB7 同時刺激シグナルは提供されない。このメカニズムは、抗原パルス樹状細胞に基づく治療と連結して使用することが可能であろう。
【0135】
また、本発明は、核酸、ポリペプチドまたはペプチドの投与を提供する。ポリペプチドおよびペプチドは、自体既知の方法で投与してよい。一実施形態では、核酸がエクスビボな方法、すなわち、患者から細胞を取り出し、腫瘍関連抗原を導入するためにこの細胞に遺伝的改変を加え、改変された細胞を患者に再導入する方法によって投与される。この方法では、一般的に、遺伝子の機能的コピーを患者の細胞にインビトロで導入すること、および遺伝的に改変された細胞を患者に再導入することが含まれる。遺伝子の機能的コピーは調整因子の機能的制御下にあるので、遺伝子は遺伝的に改変した細胞内で発現可能となる。トランスフェクションおよび形質導入の方法は当業者に公知である。また、本発明は、核酸をインビボで投与するために、ベクター、例えばウィルスおよび標的制御リポソームの使用を提供する。
【0136】
好ましい実施形態では、腫瘍関連抗原をコードする核酸を投与するためのウィルスベクターは、アデノウィルス、アデノ関連ウィルス、ワクシニアウィルスおよび弱毒化水痘ウィルスを始めとする水痘ウィルス、Semliki Forestウィルス、レトロウィルス、SindbisウィルスおよびTyウィルス様粒子からなる群から選択される。アデノウィルスおよびレトロウィルスが特に好ましい。レトロウィルスは、普通、複製不全(すなわち、これらは感染性粒子を産生することができない)である。
【0137】
インビトロまたはインビボで核酸を細胞に本発明により導入するために、種々の方法を使用してもよい。この種の方法には、核酸CaPO4沈殿物のトランスフェクション、DEAEに結合した核酸のトランスフェクション、問題の核酸を担持した前記ウィルスでのトランスフェクションまたは感染、リポソーム介在トランスフェクションなどが挙げられる。特定の実施形態では、特定の細胞へ核酸を注入することが好ましい。そのような実施形態では、核酸を細胞(たとえば、レトロウィルスまたはリポソーム)へ投与するために使用される担体は、結合した標的制御分子を有する。たとえば、分子、例えば標的物質細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体、あるいは標的細胞上の受容体のためのリガンドを、核酸担体に編入または付着させる。好ましい抗体には、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体が挙げられる。リポソームを介した核酸の投与を所望の場合は、細胞の飲食作用に関与する表面膜タンパク質に結合するタンパク質をリポソーム製剤中に編入すれば、標的の制御および/または取り込みが可能になる。そのようなタンパク質には、特定の細胞型に特異的なカプシドタンパク質またはその断片、内在化したタンパク質に対する抗体、ある細胞内部位を指向するタンパク質等が挙げられる。
【0138】
本発明の治療組成物は、医薬的に適合性のある製剤で投与してよい。そのような製剤は、普通、医薬的に適合性のある濃度の塩、緩衝物質、担体、アジュバント、CpGおよびサイトカインのような補助的免疫活性物質、および適正な場合、他の治療上活性な化合物を含む。
【0139】
本発明の治療上活性な化合物は、注射または輸液による方法を含む任意の従来の経路で投与してよい。投与は、たとえば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下的、または経皮的投与がある。抗体を肺噴霧の方法で治療的に投与するのが好ましい。好ましくは、アンチセンス核酸をゆっくり静脈内投与する。
【0140】
本発明の組成物を有効量投与する。「有効量」は、所望の反応または所望の効果を、単独であるいは別の用量と合わせて、達成する量を言う。1以上の腫瘍関連抗原の発現を特徴とする特別の疾患または特別の状態を治療する場合は、所望の反応は疾患の進行の抑制に関連する。これには、疾患の進行の減速および、特に、疾患の進行の遮断が挙げられる。疾患または症状の治療における望ましい反応には、発病の遅延または前記疾患または前記症状の発病の阻止が挙げられる。
【0141】
本発明の組成物の有効量は、治療すべき状態、疾患の深刻さ、患者の個人的パラメーター、例えば年齢、生理学的状態、身長体重、治療の継続時間、同時並行の治療のタイプ(もしあれば)、投与の特異的経路、および類似の要因に依存する。
【0142】
本発明の医薬組成物は、無菌であるのが好ましく、有効量の治療活性物質を含み、所望の反応または所望の効果を招来する。
【0143】
本発明の組成物の投与量は、投与のタイプ、患者の状態、所望の投与期間など、種々のパラメーターに依存する。患者における反応が初期用量では不十分な場合、より高い用量(または異なる、より局在化した投与経路により達成される効果的により高い用量)を使用してもよい。
【0144】
一般的には、1ng〜1mg、好ましくは10ng〜100μgの腫瘍関連抗原用量が配合され、治療のために、または免疫応答を作り出しまたは増加させるために投与される。腫瘍関連抗原をコードする核酸(DNAおよびRNA)の投与が望ましい場合は、1ng〜0.1mgの用量を配合し、投与する。
【0145】
本発明の医薬組成物は、一般的に、医薬的に適合性のある量、医薬的に適合性のある組成で投与される。語句「医薬的に適合性のある」は、医薬組成物の活性成分の作用と相互反応しない、毒性のない材料を言う。この種の製剤は、普通には塩、緩衝物質、防腐剤、担体および、適正な場合、他の治療上活性な化合物を含む。医薬において使用される場合、塩は、医薬的に適合性のあるものである。しかし、医薬的に適合性のない塩を、医薬的に適合性のある塩を生成するために使用してもよく、それらも本発明に含まれる。この種の薬理学的におよび医薬的に適合性のある塩は、以下の酸から生成されるものが含まれるが、これらに限定されない。塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。また、医薬的に適合性のある塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩のようなアルカリ金属塩あるいはアルカリ土塁金属塩として生成してもよい。
【0146】
本発明の医薬組成物は、医薬的に適合性のある担体を含んでもよい。本発明によれば、語句「医薬的に適合性のある担体」は、ヒトへの投与に適する、1種以上の適合性のある固体または液体の充填剤、希釈剤、またはカプセル化物質を言う。語句「担体」は、適用を容易にするために活性成分と組み合わせる、天然または合成の有機または無機成分をいう。本発明の医薬組成物の成分は、普通は相互作用を起こさない、実質的に所望の薬理学的効能を与えるものである。
【0147】
本発明の医薬組成物は、適切な緩衝物質、例えば酢酸とその塩、クエン酸とその塩、ホウ酸とその塩、リン酸とその塩を含んでもよい。
【0148】
医薬組成物は、適正な場合は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールのような適切な防腐剤も含んでよい。
【0149】
医薬組成物は、普通、均一な投与形態で提供され、自体既知の方法で生成される。本発明の医薬組成物は、たとえば、カプセル、錠剤、トローチ剤、懸濁液、シロップ、エリキシル剤の形態、または乳剤の形態でもよい。
【0150】
非経口投与に適切な組成物は、普通、活性化合物の無菌の水性または非水性の製剤を含み、服用者の血液に等張であるのが好ましい。適合性のある担体および溶剤の例として、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、普通、無菌の不揮発油を溶液または懸濁液の媒体として使用する。
【0151】
以下、本発明を図面と実施例によって、詳しく説明するが、図面および実施例は、説明の目的のためだけに使用するものであり、限定の意味を持つものではない。この説明および実施例により、本発明に同様に含まれる更なる実施形態は当業者に理解し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0152】
実施例
材料及び方法
インシリコ、 エレクトロニック及びバーチュアルクローニングという用語は、単にデータベースに基づく方法の利用に言及しているのであって、それらは研究室における実験プロセスを模擬するのにも用いられ得る。
【0153】
特に明記されないかぎり、他の全ての用語および表現は、当業者に理解されるように使用される。言及される技法および方法はそれ自体が既知の方法によって行われ、またたとえば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に説明されている。キットや試薬の使用を含むすべての方法はそれらの製造者の情報によって行われる。
【0154】
新規の腫瘍関連遺伝子を決定するためのデータ探索に基づく手段
インシリコの二つの手段、即ちGenBankキーワードサーチ及びcDNAxプロファイラー(cDNAxProfiler)を組み合わせた。NCBI ENTREZ Search及びRetrieval System (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez)を利用し、特定の組織において特異的に発現されると注釈されている候補遺伝子についてGenBankサーチを行った(Wheeler et al., Nucleic Acids Research 28:10-14, 2000)。
【0155】
結腸特異的遺伝子、胃特異的遺伝子、あるいは腎特異的遺伝子といったキーワードについての調査を行い、候補遺伝子(GOI、対象の遺伝子)をデータベースより抽出した。本調査は、生物にはホモサピエンス、分子のタイプにはmRNAという制限を使用することによりこれらのデータベースの全情報の一部に限定された。
【0156】
GOIのリストは、同一配列に対する異なる名称を定めそうした重複性を除去して保管した。
【0157】
キーワードサーチによって得た全ての候補遺伝子は、次いでエレクトロニックノーザン法(electronic Northern (eNorthen) method)によりそれらの組織分布に関し調査した。エレクトロニックノーザン法はEST発現配列タグ(expressed sequence tag)データベースによりGOIの配列を並べ合わせることによるものである(Adams et al., Science 252:1651, 1991) (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)。挿入されたGOIに相同であることが判明した各々のESTの組織起源を決定し、またこのようにして、全てのESTを総和することによりGOIの組織分布の予備的アセスメントが得られる。器官非特異的な正常組織由来ESTに対して相同性を有しないGOIのみについて更なる研究を行った。この評価では、誤って注解されたcDNAライブラリーが一般領域に含まれることをも考慮した(Scheurle et al., Cancer Res. 60:4037-4043, 2000) (www.fau.edu/cmbb/publications/cancergenes6.htm)。
【0158】
使用した二番目のデータ探索法はNCBIキャンサーゲノムアナトミープロジェクト((NCBI Cancer Genome Anatomy Project) (http://cgap.nci.nih.gov/Tissues/xProfiler))のcDNA xプロファイラー(cDNA xProfiler) (Hillier et al., Genome Research 6:807-828, 1996; Pennisi, Science 276:1023-1024, 1997)であった。これによりデータベースに蓄積されているトランスクリプトームがロジカルオペレーターによって相互に関連付けられる。プールAを定義し、これにたとえば結腸から調製した全ての発現ライブラリー、ただし混合ライブラリーを除外、を割り当てた。結腸以外の正常組織から調製したすべてのcDNAライブラリーはプールBに割り当てた。基本的な調製法とは関係なく全てのcDNAライブラリーを利用したが、サイズが1000を超えるライブラリーのみを認めた。プールBは、BUT NOTオペレーターによりデジタル的に差し引かれた。このようにして見つけられたGOIはエレクトロニックノーザン法による調査にも付され、文献調査によって立証された。
【0159】
この組み合わせデータ探索ではおよそ13,000全長の遺伝子は全て一般ドメインに含まれ、これにより潜在的に器官特異的発現をする遺伝子が予測される。
【0160】
他の全ての遺伝子は先ず、特異的RT−PCRにより正常組織において評価した。非器官特異的正常組織において発現することが証明されているGOIは全て偽陽性と見なす必要があるので、更なる研究からは除外した。残ったものは、多様な腫瘍組織群において研究した。下記の抗原は腫瘍細胞において活性化されることが本研究で証明された。
【0161】
RNAの抽出、ポリ−d(T)結合cDNAの調製及び通常RT−PCR分析
イソチオシアン酸グアニジウム(guanidium isothiocyanate)をカオトロピックエージェント(chaotropic agent)として用いて天然の組織材料から総RNAを抽出した(Chomczynski & Sacchi, Anal. Biochem. 162:156-9, 1987)。酸性フェノールによる抽出、イソプロパノールによる沈殿の後、当該RNAを、DEPC処理した水に溶解させた。
【0162】
2〜4μgの総RNAからの第一鎖cDNA合成は、スーパースクリプトII(Superscript II(Invitrogen))によって20μl反応液中で、作製者の情報に従い行った。使用したプライマーは、dT(18)オリゴヌクレオチド(dT(18) oligonucleotide)であった。cDNAの完全性および質は30サイクルPCR(センス CGTGAGCGCTTCGAGATGTTCCG、アンチセンス CCTAACCAGCTGCCCAACTGTAG、ハイブリダイゼーション温度67℃)におけるp−53の増幅によってチェックした。
【0163】
cDNA第一鎖の蓄積は多数の正常組織及び腫瘍体から準備した。発現の調査のため、これらcDNA 0.5μlを反応液30μl中でGOI特異的プライマー(下記参照)及びHotStarTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen)1Uを用いて増幅した。各反応液にはdNTPs,0.3mM、各プライマー0.3μM及び10×反応緩衝液の3μlが含有された。
【0164】
プライマーは、二つの異なるエクソンに位置するように選択し、また、偽陽性結果の根拠となる混入ゲノムDNAによる妨害が排除されていることを確認するために、非逆転写DNAをテンプレートとしてテストした。15分間95℃にてHotStarTaq DNAポリメラーゼを活性化し、35サイクルのPCRが行われた(94℃にて1分、特定のハイブリダイゼーション温度にて1分、72℃にて2分そして最終の伸長を72℃にて6分)。
【0165】
反応液20μlをエチジウムブロミドで染色したアガロースゲル上で分画した。
【0166】
以下のプライマーを、対応する抗体の発現分析のために表示のハイブリダイゼーション温度にて使用した。
GPR35(65℃)
センス:5'−AGGTACATGAGCATCAGCCTG−3'
アンチセンス:5'−GCAGCAGTTGGCATCTGAGAG−3'
GUCY2C(62℃)
センス:5'−GCAATAGACATTGCCAAGATG−3'
アンチセンス:5'−AACGCTGTTGATTCTCCACAG−3'
SCGB3A2(66℃)
センス:5'−CAGCCTTTGTAGTTACTCTGC−3'
アンチセンス:5'−TGTCACACCAAGTGTGATAGC−3'
クローディン18A2(Claudin18A2)(68℃)
センス1:5'−GGTTCGTGGTTTCACTGATTGGGATTGC−3'
アンチセンス1:5'−CGGCTTTGTAGTTGGTTTCTTCTGGTG−3'
センス2:5'−TGTTTTCAACTACCAGGGGC−3'
アンチセンス2:5'−TGTTGGCTTTGGCAGAGTCC−3'
クローディン18A1(Claudin18A1)(64℃)
センス:5'−GAGGCAGAGTTCAGGCTTCACCGA−3'
アンチセンス:5'−TGTTGGCTTTGGCAGAGTCC−3'
SLC13A1(64℃)
センス:5'-CAGATGGTTGTGAGGAGTCTG−3'
アンチセンス:5'−CCAGCTTTAACCATGTCAATG−3'
CLCA1 (62℃)
センス:5'−ACACGAATGGTAGATACAGTG−3'
アンチセンス:5'-ATACTTGTGAGCTGTTCCATG−3'
FLJ21477(68℃)
センス:5'−ACTGTTACCTTGCATGGACTG−3'
アンチセンス:5'−CAATGAGAACACATGGACATG−3'
FLJ20694(64℃)
センス:5'−CCATGAAAGCTCCATGTCTA−3'
アンチセンス:5'−AGAGATGGCACATATTCTGTC
エブナー(Ebner)(70℃)
センス:5'−ATCGGCTGAAGTCAAGCATCG−3'
アンチセンス:5'−TGGTCAGTGAGGACTCAGCTG−3'
Plunc(55℃)
センス:5'−TTTCTCTGCTTGATGCACTTG−3'
アンチセンス:5'−GTGAGCACTGGGAAGCAGCTC−3'
SLC26A9(67℃)
センス:5'−GGCAAATGCTAGAGACGTGA−3'
アンチセンス:5'−AGGTGTCCTTCAGCTGCCAAG−3'
THC1005163(60℃)
センス:5'−GTTAAGTGCTCTCTGGATTTG−3'
LOC134288(64℃)
センス:5'−ATCCTGATTGCTGTGTGCAAG−3'
アンチセンス:5'−CTCTTCTAGCTGGTCAACATC−3'
THC943866(59℃)
センス:5'−CCAGCAACAACTTACGTGGTC−3'
アンチセンス:5'−CCTTTATTCACCCAATCACTC−3'
FLJ21458(62℃)
センス:5'−ATTCATGGTTCCAGCAGGGAC−3'
アンチセンス:5'−GGGAGACAAAGTCACGTACTC−3'
【0167】
ランダムな6量体cDNAの調製及び定量的リアルタイムPCR
リアルタイムPCRにより、いくつかの遺伝子の発現を定量した。PCR生産物はSYBR Greenをインターカレートリポーター染色剤として用いることにより検出した。SYBR Greenの蛍光は溶液中で抑制され、二重鎖DNA断片に結合後のみ活性である。GOI−特異的プライマーを用いた特異的増幅の結果としての、各PCRサイクル後のSYBR Green蛍光の増加を定量に利用した。標的遺伝子の発現は、調査の対象組織において一定の発現をする対照遺伝子の発現に対して絶対的にあるいは相対的に定量される。 −Ctメソッド(PE Biosystems, USA).を用いて所謂ハウスキーピング遺伝子としての18s RNAに対して検体を標準化してから、発現を測定した。反応は2回、測定は3回行われた。QuantiTect SYBR Green PCRキット(Qiagen, Hilden)は製造者の指示に従い使用した。cDNAは、製造者の指示に従い6量体プライマーを使用し、高性能cDNA Archive Kit(PE Biosystems, USA)を用いて合成された。希釈したcDNAの各5μlを使用し、総量25μlにてPCRに付された。センスプライマー300nM、アンチセンスプライマー300nM;初期変性95℃にて15分間;95℃にて30秒間;アニーリング30秒間;72℃にて30秒間;40サイクル。使用されたプライマーの配列は、各実施例に表示されている。
【0168】
クローニング及び配列解析
全長の遺伝子及び断片遺伝子のクローン化は通常の方法で行われた。配列を確実にする為にプルーフリーディングポリメラーゼpfu(Stratagene)を用いて対応抗原を増幅した。PCR完了後、アデノシンをHotStarTaq DNAポリメラーゼによって増幅単位の末端に結合し、その断片を作製者の指示に従いTOPO−TAベクター中にクローン化した。配列決定は市販のサービスにより行われた。配列は通常の予測プログラム及びアルゴリズムによって分析された。
【0169】
ウエスタンブロッティング
細胞培養物(標的遺伝子の内因的発現あるいは標的タンパク質をコードする発現ベクターのトランスフェクション後の標的タンパク質の合成)からの細胞あるいは標的タンパク質を含有すると推定される組織検体を1% SDS溶液中で破砕した。SDSは分解産物中に存在するタンパク質を変性させる。実験混合物の分解産物は予想されるタンパク質サイズによって、電気泳動により8〜15%変性ポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel)(1% SDS含有)上にサイズに従い分画される(SDS−PAGE)。次にタンパク質はセミドライエレクトロブロッティング法(Biorad)によりニトロセルロース膜に転写され(Schleicher & Schuell)、その上で所望のタンパク質が検出される。この目的のために膜は最初にブロッキング(たとえばミルクパウダーによって)され、その後1:20〜1:200(抗体の特異性により)希釈にて特定の抗体と共に60分間インキュベートされる。洗浄処理の後、膜を、一次抗体を認識するマーカー(例えばぺルオキシダーゼあるいはアルカリフォスファターゼのような酵素)に結合した二次抗体と共にインキュベートする。更に洗浄処理後、標的タンパク質を酵素反応により、色または化学光反応によって膜上に可視化する(例えばECL, Amersham Bioscience)。結果は適切なカメラによる写真撮影によって記録される。
【0170】
タンパク質修飾体の分析は通常ウエスタンブロッティングにより行われる。グリコシル化体は通常数kDaのサイズを有するので、標的タンパク質の総質は更に大きくなるが、それはSDS−PAGEにおいて分画され得る。特異的O およびN グリコシド結合体を検出するためには、組織または細胞からのタンパク質分解物をインキュベートしてから、O またはN グリコシダーゼ(それらの作製者各々の指示に従う、たとえばPNガーゼ、エンドグリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼH、Roche Diagnostics)と共にSDSにより変性する。その後に上記のウエスタンブロッティングを行う。したがってもしもグリコシダーゼとのインキュベートの後に標的タンパク質のサイズに減少があるならば特定のグリコシル化を検出することが可能であり、このようにして修飾体の腫瘍特異性を分析することもまた可能である。グリコシル化されたアミノ酸の正確な位置はアルゴリズムおよび予測プログラムを用いて予測され得る。
【0171】
免疫蛍光法
標的タンパク質(そのRNAをRT−PCRにて検出、またはそのタンパク質をウエスタンブロッティングにより検出)を内因的に産生しているか、あるいはプラスミドDNAでトランスフェクションした、確立した細胞株の細胞を免疫蛍光(IF)に使用する。DNAで細胞株をトランスフェクションするための確立された方法は種々ある(たとえば電気穿孔、リポソームによるトランスフェクション、リン酸カルシウムによる沈殿)(たとえば、Lemoine et al. Methods Mol. Biol. 1997; 75: 441-7)。免疫蛍光法において、トランスフェクションされたプラスミドでは、非修飾タンパク質がコードされていてよく、あるいは様々なアミノ酸マーカーが標的タンパク質に結合していてもよい。最も重要なマーカーは、たとえば、蛍光を発する緑色蛍光タンパク質(GFP)のさまざまな蛍光タイプのものおよび高親和性で特異的な抗体が使用可能な6〜12アミノ酸の短いペプチド配列である。標的タンパク質を合成する細胞はパラホルムアルデヒド、サポニンあるいはメタノールで固定される。次いで、細胞が透過性を与えられることが必要ならば洗浄剤(たとえば0.2% Triton X 100)と共にインキュベートすることができる。固定および透過性付与の後、標的タンパク質あるいは結合したマーカーのひとつに対する一次抗体と共にインキュベートされる。洗浄処理の後、混合物は、一次抗体に結合する蛍光マーカー(たとえば、フルオレセイン、Texas Red, Dako)に結合した二次抗体と共にインキュベートされる。このように標識された細胞は、グリセロールの層で被覆され、蛍光顕微鏡を用いて作製者の指示に従って分析される。特異的な蛍光発光は、使用した物質に応じて特異的な発光励起により達成される。通常その分析により標的タンパク質の信頼し得る位置決定が可能である。また、二重染色、すなわち標的タンパク質ばかりでなく位置決定が文献記述されている結合アミノ酸マーカーあるいは他のマーカータンパク質も染色する二重染色によって抗体の特性および標的タンパク質が確認される。GFPおよびその誘導体は特殊なケースであり、直接励起されてそれ自体で蛍光を発するので検出のための抗体を必要としない。
【0172】
免疫組織化学法
免疫組織化学法(IHC)の機能は具体的には(1)腫瘍および正常組織における標的タンパク質量の概算測定の可能、(2)腫瘍および健常組織の何個の細胞が標的タンパク質を合成するかの分析、および/または(3)標的タンパク質が検出され得る組織(腫瘍、健常)中の細胞のタイプの定義、である。
【0173】
個々の抗体に応じて別々のプロトコルを使用する必要がある(たとえば、「Diagnostic Immunohistochemistry David J.による MD Dabbs ISBN: 0443065667」あるいは「Microscopy, Immunohistochemistry, and Antigen Retrieval Methods: For Light and Electron Microscopy ISBN: 0306467704」)。
【0174】
特定の組織検体に対する免疫組織化学法(IHC)の機能は、対応する組織におけるタンパク質の検出である。この方法の目標とするところは、機能的に完全な組織集塊物におけるタンパク質の位置を決定することである。IHCは(1)腫瘍および正常組織における標的タンパク質量を概算測定できる(2)腫瘍および健常組織における何個の細胞が標的タンパク質を合成するかを分析する(3)標的タンパク質が検出され得る組織(腫瘍および健常細胞)における細胞のタイプを定義するために特に役立つ。別法として、標的遺伝子のタンパク質の量はデジタルカメラおよび適切なソフトウェアを用いた組織免疫蛍光法によって定量され得る(たとえば、Tillvision, Till-photonics, Germany)。この技術は頻繁に公表されており、したがって染色および顕微鏡法の詳細はたとえばDavid Jによる"Diagnostic Immunohistochemistry MD Dabbs ISBN: 0443065667あるいは"Microscopy, Immunohistochemistry: For Light and Electron Microscopy" ISBN: 03064677042において見ることができる。有効な結果を得る為には、抗体の特性に基づく異なるプロトコルを使用する必要があることに留意すべきである(一例が下記に示されている)。
【0175】
通常は、組織学的に定義された腫瘍組織および、対照として比較され得る健常組織はIHCにおいて取り上げられる。更には、RT PCR分析において標的遺伝子の存在が知られている細胞株を陽性および陰性のネガティブコントロールとして用いることも可能である。基底値対照は常に含まれなければならない。
【0176】
固定された(たとえば、アルデヒド含有物質、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドによる、あるいはアルコール溶液中での固定)あるいはショック凍結された厚さ1〜10μmの組織片をガラス支持体に置く。パラフィン包埋試料はたとえばキシレンを用い脱パラフィンする。検体はTBS Tで洗浄し、血清中に封入する。次いで一次抗体(1:2 〜 1:2000希釈)とのインキュベートを通常使用されているアフィニティー精製抗体と共に1〜18時間行なう。洗浄処理後、アルカリフォスファターゼ(代替的には、ペルオキシダーゼ)に結合しかつ一次抗体に対する二次抗体と共にインキュベーションを20〜6分間行なう。次いで結合酵素によって変換される呈色基質を用いた呈色反応が行われる(たとえば、Shi et al., J. Histochem. Cytochem. 39: 741-748, 1991; Shin et al., Lab. Invest. 64: 693-702, 1991)。抗体の特異性を呈示するため、免疫原をあらかじめ添加することにより反応を遮断することができる。
【0177】
免疫
(Monoclonal Antibodies: A Practical Approach by Philip Shepherd, Christopher Dean isbn 0 19 963722 9; Antibodies: A Laboratory Manual by Ed Harlow, David Lane ISBN: 0879693142; Using Antibodies: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO. by Edward Harlow, David Lane, Ed Harlow ISBN: 0879695447も参照されたい。).
【0178】
抗体の調製プロセスを下記に簡単に示す。また、詳細は引用された出版物に見出される。
先ず、動物(ウサギなど)を所望の標的タンパク質の一次注射によって免疫する。動物の抗原に対する免疫応答は定められた期間内(前の免疫後から約2〜4週間)の二次あるいは三次免疫によって増強され得る。また、種々の定められた期間後(最初に4週間後、次いで約2週間毎にトータルで5回にのぼるサンプリング)、動物から採血し、そこから免疫血清が得られる。
【0179】
動物は通常4つのよく確立された方法のうちの1つにより免疫されるが、他の方法もまた使用可能である。更には、標的タンパク質に特異的なペプチド、完全なタンパク質あるいは実験的に同定されるかまたは予測プログラムにより同定され得るタンパク質の細胞外の部分的配列で免疫することも可能である。
(1)最初の例においては、KLH(キーホウルリンペットヘモシシアニン)に結合したペプチド(長さ:8〜12 アミノ酸)が標準化されたin vitroによる方法によって合成され、それらのペプチドが免疫に使用される。通常、3回の免疫を5〜1000μg/免疫という濃度で行う。免疫はサービスプロバイダーによるサービスとして行うこともできる。
(2)別法として、組み換えタンパク質を用いて免疫を行うこともできる。この目的のために、クローン化された標的遺伝子のDNAが発現ベクター内にクローン化され、標的タンパク質は特定の作製者の条件(たとえばRoche Diagnostics, Invitrogen, Clontech, Qiagen)からの類推によってたとえば細胞を含まないインビトロにおいて、バクテリア(例えば、E.coli)、酵母(例えばS.pombe)、昆虫の細胞あるいは哺乳類の細胞において合成される。それらの系のうちの1つにおける合成の後、標的タンパク質は精製されるが、精製はこの場合、標準的なクロマトグラフ法によって通常行われる。ここにおいて、精製の助けになるものとしての分子アンカーを有するタンパク質を免疫に使用する事も可能である(たとえばHis tag, Qiagen; FLAG tag, Roche Diagnostics; Gst融合タンパク質)。多くのプロトコルが、たとえば"Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons Ltd., Wiley Interscienceに見出される。
(3)もしも所望のタンパク質を内因的に合成する細胞株が使用可能ならば、この細胞株も特異的抗血清を生産するのに使用することができる。この場合、免疫は各回約1 5×10個の細胞によって1 3回の注射で行われる。
(4)免疫はDNAの注射によっても行うことができる(DNA免疫)。この目的のため、標的配列が強力な真核生物プロモーター(たとえばCMVプロモーター)の支配下に置かれるべく、標的遺伝子は先ず、発現ベクター内にクローン化される。次いで、DNA 5〜100μgを、遺伝子銃を用い、抗原として生物体(たとえばマウス、ウサギ)中の強い血流の毛細管領域に移す。移されたDNAは動物の細胞によって取り込まれ、標的遺伝子が発現し、最終的に動物が標的遺伝子に対し免疫応答を展開する(Jung et al., Mol Cells 12:41-49, 2001; Kasinrerk et al., Hybrid Hybridomics 21:287-293, 2002).
【0180】
ポリクローナル血清または抗体の特性のコントロール
特異性を実証するには細胞培養に基づくアッセイとそれに続くウェスタンブロッティングが最も適切である(たとえばCurrent Protocols in Protein Chemistry", John Wiley & Sons Ltd., Wiley InterScienceにおいて様々なバリエーシンが記述されている)。実証の為に細胞を、標的タンパク質のcDNAであり、強力な真核生物プロモーター(たとえばサイトメガロウイルスプロモーター)の支配下にあるcDNAによってトランスフェクションする。DNAで細胞株をトランスフェクションするため多様な方法(たとえば、電気穿孔法、リポソームよるトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿)が良好に確立されている(たとえばLemoine et al., Methods Mol. Biol. 75:441-7, 1997)。別法として標的遺伝子を内因的に発現する細胞株を使用することも可能である(標的遺伝子特異的RT PCRによる実証)。コントロールとして理想的なケースでは、分析抗体の特異性を次のウェスタンブロットにおいて実証可能にするため、相同遺伝子も実験においてトランスフェクションを行う。
【0181】
続くウエスタンブロットでは標的タンパク質を含有すると推定される細胞培地または組織検体からの細胞を1% SDS溶液に溶解し、それによりタンパク質を変性する。分解産物は8〜15%変性ポリアクリルアミドゲル(1% SDS含有)上で電気泳動(SDS PAGE)によりサイズごとに分画される。タンパク質は次いで複数のブロッティング法(たとえばセミドライエレクトロブロット、Biorad)のうちのひとつにより特定の膜(たとえばニトロセルロース、Schleicher & Schuell)上に転写される。所望のタンパク質はこの膜上で可視化することができる。この目的のため、膜は先ず標的タンパク質を認識する抗体(約1:20〜1:200希釈、その抗体の特異性による)と共に60分間インキュベートされる。洗浄処理の後、マーカー(たとえばぺルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼのような酵素)に結合し一次抗体を認識する二次抗体と共に膜をインキュベートする。こうして標的タンパク質を発色または化学光反応によって膜(たとえばECL、Amersham Bioscience)上に可視化することが可能である。理想的なケースにおいては、標的タンパク質に対し高い特異性を有する抗体は所望のタンパク質のみを認識する筈である。
【0182】
インシリコアプローチ(in silico approach)において同定された標的タンパク質の、膜に対する位置を確証するのに種々の方法が用いられる。上記の抗体を使用する重要でよく確立した方法は免疫蛍光法(IF)である。標的タンパク質(RNAの検出はRT PCR、タンパク質の検出はウエスタンブロット)を合成するかもしくはプラスミドでトランスフェクションされた確立した細胞株の細胞がこのために使用される。DNAによる細胞株のトランスフェクションのためには広汎な種々の方法(電気穿孔法、リポソームによるトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿など)が良好に確立されている(たとえばLemoine et al., Methods Mol. Biol. 75:441-7, 1997)。細胞にトランスフェクションにより導入されたプラスミドは免疫蛍光において修飾されていないタンパク質をコードすることも、あるいは標的タンパク質に種々のアミノ酸マーカーを結合させることもできる。主要なマーカーは、たとえば、種々の異なった蛍光タイプの蛍光性の緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein)(GFP)、親和性の高い特異的抗体が使用可能な6〜12アミノ酸の短いペプチド配列、あるいはそのシステイン特異的蛍光物質を通じて結合可能な短いアミノ酸配列Cys−Cys−X−X−Cys−Cys (Invitrogen)である。標的タンパク質を合成する細胞はたとえば、パラホルムアルデヒドまたはメタノールで固定される。次いで、必要とされるならば、洗浄剤(0.2% Triton X 100など)とのインキュベートにより透過性を付与され得る。次いで細胞は、標的タンパク質または結合されたマーカーの1つに対する一次抗体と共にインキュベートされる。洗浄処理の後、蛍光マーカー(フルオレセイン、Texas Red、Dakoなど)に結合され一次抗体に結合する二次抗体と共に混合物をインキュベートする。このようにして標識された細胞は次いで、グリセロールの層で被覆され、蛍光顕微鏡の助けにより作製者の指示に従って分析された。この場合、取り上げられた物質に応じて特異的な発光励起によって特異的な蛍光発光が得られた。通常その分析により標的タンパク質の信頼し得る位置決定が可能になる。また、二重染色、すなわち標的タンパク質ばかりでなく、位置決定が文献記載されている結合アミノ酸マーカーまたは他のマーカータンパク質も染色する二重染色、によって抗体特性および標的タンパク質が確認される。GFPとその誘導体は特別なケースであって、直接に励起されてそれ自体で蛍光を発する。膜の透過性は洗浄剤の使用によって制御されるので、抗原決定基が細胞の内部に位置するか外部に位置するかは免疫蛍光法により証明することができる。選択されたタンパク質の予測はこのようにして実験的に支持される。これに代わる可能性は、フローサイトメトリーによって細胞外ドメインを検出することである。この目的のために、細胞は作製者の指示に従い非透過条件(たとえばPBS/Na azide/2% FCS/5mM EDTAを用い)の下で固定され、作製者の指示に従いフローサイトメーター中で分析される。この方法においては細胞外抗原決定基のみが、この方法の分析対象である抗体により認識される。免疫蛍光法との相違は、たとえばヨウ化プロピジウムやトリパンブルーの使用により、死んだ細胞と生きている細胞とを識別することが可能でありしたがって偽陽性の結果を排除することができるということである。
【0183】
アフィニティー精製
ポリクローナル血清の精製は、ペプチド抗体全体のケース、または組み換えタンパク質に対する抗体の一部のケースにおいて、契約会社によるサービスとして行われた。
この目的のため、いずれのケースにおいても、適切なペプチドあるいは組み換えタンパク質がマトリックスに共有結合され、後者は結合後ネイティブなバッファー(PBS:塩化ナトリウムリン酸緩衝液で平衡化され、次いで粗血清と共にインキュベートされた。更にPBS洗浄処理の後、抗体をpH 2.7の100mMグリシンで溶出し、その溶出物を直ちにpH 8の2M TRIS中で中和した。このようにして精製された抗体はウエスタンブロッティング法および免疫蛍光法の双方による標的タンパク質の特異的検出のために採用できた。
【0184】
GFPトランスフェクタントの調製
異種間において発現された腫瘍関連抗原の免疫蛍光顕微鏡法のために、抗原の完全なORFがpGFP C1およびpGFP N3ベクター(Clontech)中にクローン化された。スライド上に培養されたCHOおよびNIH3T細胞を、Fugeneトランスフェクション試薬(Roche)を用いて作製者の指示に従い適切なプラスミドコンストラクトによってトランスフェクションし、12〜24時間後、免疫蛍光顕微鏡により分析した。
【0185】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーによる測定は、それ自体既知の方法により行われた(Robinson (editor) Handbook of flow cytometry methods. Wiley-Liss, New York, 1993など)。
【実施例1】
【0186】
実施例1:診断用および治療用の癌標的としてのGPR35の同定
GPR35(SEQ ID NO:1)およびその翻訳産物(SEQ ID NO:9)は推定上のGタンパク共役受容体として説明してきた。その配列はGenbankにおいてアクセッションナンバーNo.AF089087として公表されている。この転写産物は分子量34 kDaを有する309アミノ酸のタンパク質をコードする。GPR35は7個の膜貫通ドメインを有するGタンパク共役受容体のスーパーファミリーに属することが予測されていた(O'Dowd et al., Genomics 47:310-13, 1998)。GPR35の細胞中における推定位置を確証するためにタンパク質をレポーター分子としてのGFPに融合させ、適切なプラスミドのトランスフェクション後、293個の細胞において発現させた。蛍光顕微鏡により位置を分析した。本発明により、GPR35は一体的な膜貫通分子であることが確証された(図17)。ヒトGPR35に関する現在までの調査(就中、Horikawa Y, Oda N, Cox NJ, Li X, Orho-Melander M, Hara M, Hinokio Y, Lindner TH, Mashima H, Schwarz PE, del Bosque-Plata L, Horikawa Y, Oda Y, Yoshiuchi I, Colilla S, Polonsky KS, Wei S, Concannon P, Iwasaki N, Schulze J, Baier LJ, Bogardus C, Groop L, Boerwinkle E, Hanis CL, Bell GI Nat Genet. 2000 Oct; 26(2):163-75を参照)により、GPR35は多くの健常組織において活性化されることが示唆された。その遺伝子の読み枠には一個のエクソンが含まれている。本発明によりGPR35に対する遺伝子特異的プライマー対(SEQ ID NO:20、21)をRT PCR分析において使用したところ、結腸および結腸腫瘍(13/26)においてはcDNAが増幅した。対照的に、他の正常組織においては有意な発現は検出されない。GPR35は単一のエクソンからなるという特殊な事情のため、ゲノムDNA不純物をイントロンに跨るプライマーによって検出することはできない。したがってRNAのゲノムへの混入を阻止するために、RNAは全てRNAアーゼで処理した。GPR35転写産物は、結腸、直腸、精巣および結腸腫瘍においてのみDNAフリーのRNAを用いて本発明により検出された。
【0187】
正常組織におけるGPR35の発現
【表1】

【0188】
正常結腸組織および結腸腫瘍生検におけるGPR35転写産物の選択的かつ高度な発現(図1)は以前には知られていなかったが、このことを本発明により分子診断法、例えばRT PCRに利用すれば血清や骨髄に拡がる腫瘍細胞の検出や他の組織への転移の検出が可能である。特異的プライマー(SEQ ID NO:88および89)による定量的RT PCRによって、GPR35は高度に選択的な結腸特異的分化抗原であり結腸腫瘍および結腸腫瘍の転移部にも含まれることも確証されている。GPR35は、ある結腸腫瘍においては正常な結腸に比べて対数で1桁分上回る過剰発現をしている(図18)。GPR35タンパク質を検出するために、ウサギを免疫して抗体を生産する。これらの抗体を増殖させるために以下のペプチドを使用した。
SEQ ID NO:90 GSSDLTWPPAIKLGC (AA 9−23)
SEQ ID NO:91: DRYVAVRHPLRARGLR (AA 112−127)
SEQ ID NO:92: VAPRAKAHKSQDSLC (C末端)
SEQ ID NO:93 CFRSTRHNFNSMR(細胞外ドメイン 2)
これらの抗体で、たとえばウエスタンブロットにおいて染色し、腫瘍細胞での発現を確認する。GPR35の全4個の細胞外ドメイン(予測される細胞外ドメインの位置は、SEQ ID NO:9 AA 1〜22 (SEQ ID NO:94); AA 81〜94 (SEQ ID NO:95); AA 156〜176 (SEQ ID NO:96); AA 280〜309 (SEQ ID NO:97)の配列中)は全て本発明によりモノクローナル抗体の標的構造体として使用することができる。これらの抗体は腫瘍細胞の細胞表面に特異的に結合し、診断および治療方法の双方に使用されうる。GPR35の過剰発現は、そうした使用に更なる支持を提供する。加うるに、タンパク質をコードする配列は本発明によって腫瘍特異的免疫応答(T細胞およびB細胞を介する免疫応答)を誘発するワクチン(RNA、DNA、ペプチド、タンパク質)として使用することができる。更には、驚くべきことに、一般的に知られている開始コドンの前の5'側に別の開始コドンが存在しN末端が伸張したタンパク質が発現されることが判明した。
【0189】
本発明によれば、以前は普遍的に発現されているものと説明されていたGPR35が、胃腸とりわけ結腸において特異的に、腫瘍に関連して過剰発現されることが判明した。GPR35は、従って、腫瘍の診断および治療のための標的構造として特に適している。ヒト GPR35の現時点までの研究については、たとえば、Horikawa Y, Oda N, Cox NJ, Li X, Orho-Melander M, Hara M, Hinokio Y, Lindner TH, Mashima H, Schwarz PE, del Bosque-Plata L, Horikawa Y, Oda Y, Yoshiuchi I, Colilla S, Polonsky KS, Wei S, Concannon P, Iwasaki N, Schulze J, Baier LJ, Bogardus C, Groop L, Boerwinkle E, Hanis CL, Bell GI Nat Genet. 2000 Oct;26(2):163-75を参照されたく、GPR35が多くの健常組織において発現されていることを示唆している。これに対し本発明による研究では、GPR35は驚くべきことにほとんどの正常組織においては有意に検出されず、それとは対照的に原発および転移性結腸腫瘍において高度に活性化されていることが判った。またさらに、記述されているGPR35配列に加え、別の開始コドンを使用する新規な翻訳変異配列(SEQ ID NO:10)が本発明により発見された。
【0190】
GPR35は、非常に大きなタンパク質ファミリーであるG結合レセプター(GPCR)のグループの一員であり、このファミリーの構造及び機能は大変よく研究されている。GPCRは、医薬活性物質開発のための標的構造体として著しく適している。その理由は、開発に必要な方法(レセプターの発現、精製、リガンドスクリーニング、突然変異誘発、機能的阻害、アゴニスト的およびアンタゴニスト的リガンドなど)がよく開発され詳細に記述されているからである(たとば、G Protein-Coupled Receptors" by Tatsuya Haga, Gabriel Berstein and Gabriel Bernstein ISBN: 0849333849 and in "Identification and Expression of G-Protein Coupled Receptors Receptor Biochemistry and Methodology" by Kevin R. Lynch ASIN: 0471183105. G Protein-Coupled Receptors" by Tatsuya Haga, Gabriel Berstein and Gabriel Bernstein ISBN: 0849333849 and in "Identification and Expression of G-Protein Coupled Receptors Receptor Biochemistry and Methodology" by Kevin R. Lynch ASIN: 0471183105を参照)。GPR35がほとんどの健常組織においては検出されないが細胞表面で腫瘍関連発現をするという本発明の発見によれば、GPR35は、たとえば医薬的に活性なリガンド用の腫瘍関連標的構造体として、特にたとえば医薬物質としての放射性分子と結合させて使用可能になる。GPR35に結合した放射能標識リガンドを使用して、腫瘍を検出するあるいは結腸腫瘍をin vivoで治療することが特別な実施態様として可能である。
【実施例2】
【0191】
実施例2:肝臓腫瘍及び卵巣腫瘍におけるGUCY2Cの同定、および診断用および治療用癌標的としてのGUCY2Cスプライス変異体
タイプI 膜貫通タンパク質であるグアニル酸シクラーゼ(guanylate cyclase)2C(SEQ ID NO:2;翻訳産物:SEQ ID NO:11)は、ナトリウム利尿ペプチドレセプターのファミリーに属する。その配列はGenbankにおいてアクセッションナンバー NM_004963の下、公表されている。ペプチドであるグアニリンおよびウログアニリンあるいは熱安定エンテロトキシン(STa)が結合すると細胞内cGMP濃度が上昇し、その結果、細胞内にシグナル変換プロセスが誘起される。
【0192】
GUCY2Cの発現は、たとえば胃や食道の原発性および転移腺腫瘍など、腸管外領域にも拡がることを最近の研究は示唆している(Park et al., Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 11: 739-44, 2002)。正常及びトランスフェクションされた腸組織の双方に見られるGUCY2のスプライス変異体には、エクソン1における142 bpの欠失が存し、そのためGUCY2C様産物の翻訳が阻害される(Pearlman et al., Dig. Dis. Sci. 45:298-05, 2000)。現在までに記述されているスプライス変異体だけでは翻訳産物は産生しない。
【0193】
本発明の目的は、診断及び治療の双方に利用され得るGUCY2Cの腫瘍関連スプライス変異体を同定することであった。
【0194】
GUCY2C特異的プライマー対(SEQ ID NO:22、23、98、99)を用いてRT PCRを行ったところ、GUCY2C転写産物の発現が正常結腸および胃では顕著であり、肝臓、精巣、卵巣、胸腺、脾臓、脳および肺では弱いことが判った(表2、図19)。結腸および胃における発現は、他のすべての正常組織におけるより少なくとも50倍も高かった。結腸腫瘍及び胃腫瘍においてGUCY2C転写産物の顕著なレベルが検出された(表2)。定量的PCR分析によって特定されたこれらの結果から、正常結腸、回腸及び調査したほとんど全ての結腸腫瘍検体においてGUCY2Cの発現は顕著であることが判った(図2、19B)。いくつかの結腸腫瘍検体においては大量の過剰発現が検出された。また、胃腫瘍の7/10において発現が見られた。また驚くべきことに、以前には記述されていない他の多くの腫瘍、とりわけ、卵巣、乳房、肝臓および前立腺の腫瘍においてその遺伝子が活性化されていることが発見された(図19B、表2)。
【0195】
正常組織および腫瘍組織におけるGUCY2Cの発現
【表2】

【0196】
次のプライマー対が、結腸組織および結腸腫瘍組織中にスプライス変異体を検出するために用いられた。
GUCY2C−118s/GUCY2C−498as (SEQ ID NO:24、29);
GUCY2C−621s/GUCY2C−1140as (SEQ ID NO:25、30);
GUCY2C 1450s/GUCY2C−1790as (SEQ ID NO:26、31);
GUCY2C 1993s/GUCY2C−2366as (SEQ ID NO:27、32);
GUCY2C 2717s/GUCY2C−3200as (SEQ ID NO:28、33);
GUCY2C 118s/GUCY2C−1140as (SEQ ID NO:24、30);
GUCY2C 621s/GUCY2C−1790as (SEQ ID NO:25、31);
GUCY2C 1450s/GUCY2C−2366as (SEQ ID NO:26、32);
GUCY2C 1993s/GUCY2C−3200as (SEQ ID NO:27、33)
【0197】
結腸腫瘍組織におけるスプライス変異体の調査において、以前には知られていなかった型が本発明により同定された。
a)エクソン3(SEQ ID NO:3)の欠失により産生したGUCY2C変異体は、長さがわずか111アミノ酸で、ポジション111のアスパラギンがプロリンに入れ替わっている。
b)エクソン6(SEQ ID NO:4)の欠失により産生した発現産物は、長さが258アミノ酸である。これは、13アミノ酸を含むC末端ネオエピトープを生ずるはずである。
c)ポジション1606−1614のヌクレオチド、およびこれに対応するアミノ酸L(536)、L(537))およびQ(538)が欠失している変異体(SEQ ID NO:5)。
【0198】
エクソン3およびエクソン6(SEQ ID NO:3、4)それぞれにおいて欠失のある本発明のスプライス変異体は特に膜貫通ドメインを持たない翻訳産物(SEQ ID NO:12、13)によって識別される。エクソン6欠失の場合の産物は、13アミノ酸のC末端ネオエピトープであり、以前より知られているタンパク質とは全く相同性がない。従って、このネオエピトープが免疫療法の標的構造体となることは必然である。位置1606〜1614における塩基が欠失した本発明のスプライス変異体(SEQ ID NO:5)及びその翻訳産物(SEQ ID NO:14)も同様にネオエピトープを含む。GUCY2Cタンパク質を検出する為の抗体はウサギを免疫して生産される。以下のペプチドがそれらの抗体を増産させる為に使用される。
SEQ ID NO:100: HNGSYEISVLMMGNS (AA 31−45)
SEQ ID NO:101: NLPTPPTVENQQRLA (AA 1009−1023)
こうした抗体は原則として、診断及び治療目的に使用されうる。
【0199】
特に、GUCY2Cの細胞外ドメイン(SEQ ID NO:11から予想される細胞外ドメインの位置はAA 454〜1073 (SEQ ID NO:102))は、本発明によりモノクローナル抗体の標的構造体として使用されうる。しかしながら、構造の推定はやや曖昧で実験的に証明されていないので、別の膜配向も考えられる。この場合、アミノ酸1 431は細胞の外側になりモノクローナル抗体の標的として適切となるはずである。これらの抗体は腫瘍細胞の細胞表面に特異的に結合し診断方法及び治療方法の双方に使用されうる。GUCY2Cの過剰発現、特に結腸腫瘍におけるそれは、そうした使用に更なるサポートを提供する。タンパク質をコードする配列はまた、本発明によれば、腫瘍特異的免疫応答(T細胞及びB細胞を介した免疫応答)を誘導する為のワクチン(RNA、DNA、ペプチド、タンパク質)として使用され得る。
【0200】
本発明によれば、GUCY2C分子の細胞機能に従い、腫瘍細胞上の酵素の機能を調節する物質、特に小さな分子、を開発することも可能である。その酵素反応の産物、cGMPは、多様な機能を有する既知の細胞シグナル分子である(Tremblay et al. Mol Cell Biochem 230, 31, 2002)。
【実施例3】
【0201】
実施例3:診断及び治療のための癌標的としてのSCGB3A2の同定
SCGB3A2 (SEQ ID NO:6)(翻訳産物:SEQ ID NO:15)はセクレトグロビン(secretoglobin)遺伝子ファミリーに属する。その配列は、アクセッションナンバーNM_054023でGenBankにおいて公表されている。SCGB3A2(UGRP1)は、サイズ17 kDaのホモダイマー分泌タンパク質であり、肺や呼吸孔においてのみ発現する(Niimi et al., Am J Hum Genet 70:718-25, 2002)。プライマー対(SEQ ID NO:37、38)を用いたRT−PCRにより正常肺組織における選択的発現が確認された。たとえば表面活性タンパク質の肺及び気管に特異的な遺伝子は、脱分化の間に悪性腫瘍では高度に抑制され、肺腫瘍においては通常検出されない。驚くべきことに、SCGB3A2は原発性及び転移の肺腫瘍において活性であることが判明した。本発明による調査により、SCGB3A2が肺腫瘍において強力にかつ頻繁に発現されることが見られた(図4)。テストされた他のすべての23の正常組織は、肺及び気管を除いて、発現が見られなかった(図20を参照)。
【0202】
このことは、特異的定量的RT PCR(SEQ ID NO:103、104)(図20)によっても確証され、肺腫瘍の50%以上において少なくとも1桁の対数分上回る過剰発現が見られた。
【0203】
正常肺組織および肺腫瘍生検ではSCGB3A2が選択的かつ高度に発現することを本発明により分子診断法、例えばRT−PCRに利用すれば、血液中や骨髄、唾液、気管支の吸引物あるいは洗浄物に拡がっている腫瘍細胞の検出および他の組織、例えば局所のリンパ節への転移の検出が可能になる。健常肺ではSCGB3A2は、特殊化した細胞により気管支にのみ分泌される。従って健康な人の呼吸器系外の体液にはSCGB3A2タンパク質が検出されるとは期待されない。対照的に、特定の転移腫瘍の細胞からはそれらのタンパク質が直接血流に分泌される。従って、本発明の一態様は、患者の血清あるいは血漿中にSCGB3A2産物を特定の抗体アッセイによって検出することにより肺腫瘍を診断的に発見することに関する。
【0204】
SCGB3A2を検出するための抗体は、ウサギを免疫することにより作製される。以下のペプチドがそれらの抗体の増殖に用いられる:
SEQ ID NO:105: LINKVPLPVDKLAPL
SEQ ID NO:106: SEAVKKLLEALSHLV
【0205】
SCGB3A2特異的反応は、免疫蛍光法により検出され得る(図21)。分泌されるタンパク質について予測されたように、SCGB3A2が細胞中に分布するのは小胞体及び分泌顆粒に基因した(図21A)。その特異性を調べるため、SCGB3A2−GFP融合タンパク質を合成するプラスミドで細胞をトランスフェクションした。タンパク質検出はこの場合、自己蛍光GFP(緑色蛍光タンパク質)によって行われた(図21B)。2つの蛍光ダイヤグラムが重ね合わされれば、その免疫血清はSCGB3A2タンパク質を特異的に認識することを明確に示している.(図21C)。
【0206】
そうした抗体は本発明によれば、たとえば診断及び治療の目的のイムノアッセイの形で使用されうる。
【実施例4】
【0207】
診断用及び治療用癌標的としてのクラウディン−18A1(claudin -18A1)およびクラウディン−18A2(claudin-18A2)スプライス変異体の同定
クラウディン−18遺伝子は4個の疎水領域を有する表面膜分子をコードしている。予測プログラム(TMHMM、 TMPred)および他の多くのこのファミリーメンバーについて記述されているトポロジーによれば、クラウディン−18は4個の膜貫通ドメインと2個の細胞外ドメインEX1およびEX2を持ち、その細胞外位置(コンフォメーション1)は図22に示されている。クラウディン−18とその他このファミリーに属するメンバーにとっての2個の細胞外抗原決定基の間にドメインD3が位置し、これは細胞内に位置すると文献には記述されおり、このことは一般に使用されている予測プログラムによっても予測されている。NおよびC末端は細胞内である。Niimiとその同僚の記述(Mol. Cell. Biol. 21:7380-90, 2001)によれば、マウスおよびヒトのクラウディン 18には2つのスプライス変異体があり、各々肺組織(クラウディン 18A1)及び胃組織(クラウディン 18A2)で選択的に発現される。これらの変異体はN末端が相異する。
【0208】
本発明が調査した事項は、スプライス変異体クラウディン 18A2(SEQ ID NO:7)及びクラウディン 18A1(SEQ ID NO:117)およびそれら各々の翻訳産物(SEQ ID NO:16および118)がどの程度に腫瘍のマーカーあるいは診断用標的構造体として使用可能かであった。二つの変異体を識別することができる定量的PCRを確立するために、A1特異的(SEQ ID NO:109と110)およびA2特異的(SEQ ID NO:107と108)プライマー対を選択した。更に、A2スプライス変異体は2番目のプライマー対についても通常のPCRでテストした(SEQ ID NO:39と40)。A1変異体は健常肺組織においてのみ活性であることが記述されている。しかしながら、本発明によれば驚くべきことにA1は胃粘膜においてもまた活性であることが判明した(図23)。有意な活性化を示す正常組織は胃および肺のみである。他のすべての正常組織はクラウディン A1について陰性である。腫瘍を調査すると、クラウディンA1は驚くべきことに多数の腫瘍組織において高度に活性化されていることが判明した。特に、胃腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍、食道腫瘍(図23)、耳鼻咽喉腫瘍および前立腺腫瘍において強度の発現が見られる。耳鼻咽喉、前立腺および食道の腫瘍におけるクラウディンA1発現レベルは、対応する正常組織におけるレベルよりも100〜10000倍高い。オリゴヌクレオチドを使用してクラウディンA2のスプライス変異体を特異的に調査したので、この転写産物の増幅が可能であった(SEQ ID NO:39と40および107と108)。調査により明確になったのは、A2スプライス変異体は胃粘膜以外の20以上の正常組織のいずれにおいても発現せず、精巣組織でも少量しか発現しないことである(図24)。A1変異体と同様にA2変異体も多くの腫瘍において活性化されていることが発見された(図24)。例えば胃腫瘍、膵臓腫瘍、食道腫瘍および肝臓腫瘍が挙げられる。健康な肺においてはクラウディン18A2の活性化は検出されなかったが、驚くべきことにいくつかの肺腫瘍ではA2スプライス変異体が発現することが判明した。
【0209】
正常組織および腫瘍組織におけるクラウディン 18A2の発現
【表3A】

【0210】
正常組織および腫瘍組織におけるクラウディン 18A1の発現
【表3B】

【0211】
独立した対照調査としての通常のPCRによっても定量的PCRの結果が確認された。これに用いられたオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:39、40)は、A2スプライス変異体の特異的増幅を可能にする。本発明によれば、ほとんどの胃腫瘍およびテストされた膵臓腫瘍の半分がこのスプライス変異体の強度な発現を呈示することが示された(図5)。対照的に、通常のPCRでは他の組織中に発現は検出できなかった。特に肺、肝臓、血液、リンパ節、乳房および腎臓などの重要な正常組織において発現はない(表3)。
【0212】
本発明によればこのように、これらスプライス変異体は、上部消化器系の腫瘍や肺腫瘍、耳鼻咽喉腫瘍、前立腺腫瘍、およびそれらの転移に対する高度に特異的な分子マーカーを代表する。本発明によれば、これらの分子マーカーは腫瘍細胞を検出するために使用されうる。本発明によれば記述したオリゴヌクレオチドにより腫瘍の検出が可能である(SEQ ID NO:39、40、107〜110)。特に適したオリゴヌクレオチドは、そのプライマー対の少なくとも1個が、長さが180塩基対で一方(SEQ ID NO:8)または他方のスプライス変異体(SEQ ID NO:119)に特異的な転写産物断片にストリンジェントな条件下で結合する。
【0213】
これらの遺伝子産物は魅力的な診断用標的構造体である。何故ならば、これらは毒性に関係するほとんどの器官には存在しないのでそれら器官への副作用は考えられない一方、癌タイプの細胞では強く活性化されるのでそれら細胞への強力な結合および結合に対応する細胞損傷効果の招来が期待できるからである。
【0214】
タンパク質レベルでこれらのデータを実証するため、クラウディン特異的抗体および免疫血清を免疫用動物により生成した。二つのスプライス変異体A1およびA2においてN末端細胞外ドメインEX1は配列が異なる(A1についてはSEQ ID NO:111、A2についてはSEQ ID NO:112)。C末端細胞外ドメインEX2は両方の変異体において同一(SEQ ID NO:137)である。現在のところ、クラウディン18の細胞外ドメインに結合する抗体はまだ記述されていない。また、A1およびA2変異体を特異的に識別することのできる抗体もまだ記述されていない。本発明によれば、細胞外に位置し、変異体A1またはA2に特異的あるいは両方の変異体を認識するペプチド抗原決定基およびタンパク質断片が抗体を作製するための免疫に選択された。就中、以下のペプチドが抗体を作製するための免疫に選択された:
SEQ ID NO:17: DQWSTQDLYN (N末端細胞外ドメイン、A2特異的、グリコシル化には関係なく結合)
SEQ ID NO:18: NNPVTAVFNYQ (N末端細胞外ドメイン、A2特異的、主に非グリコシル化型N37に結合)
SEQ ID NO:113: STQDLYNNPVTAVF (N末端細胞外ドメイン、A2−特異的、非グリコシル化型N37にのみ結合)
SEQ ID NO:114: DMWSTQDLYDNP(N末端細胞外ドメイン、A1特異的)
SEQ ID NO:115: CRPYFTILGLPA(N末端細胞外ドメイン、主にA1に特異的)
SEQ ID NO:116 TNFWMSTANMYTG(C末端細胞外ドメイン、A1およびA2の両方を認識)
【0215】
就中、スプライス変異体クラウディン18A1のN末端ドメインを選択的に認識するがA2変異体は認識しない抗体を作製することができた(図28)。両方のスプライス変異体において同一のC末端細胞外ドメイン中に位置する免疫の為の抗原決定基を用いて両方の変異体を認識する抗体を作製することができた(図27)。
【0216】
SEQ ID NO:17による免疫によって作製されたA2特異的抗体に関するデータを例として示す。免疫蛍光法による調査のためには種々の固定条件下特定の抗体が利用され得る。容易に検出可能な量におけるRT−PCR陽性及び陰性の細胞株の比較染色では、対応するタンパク質は就中、胃腫瘍、食道腫瘍および膵臓腫瘍の陽性と分類された細胞株において、対応するタンパク質が特異的に検出され得る(図25)。その内因性タンパク質は、膜に位置していて、比較的大きな集塊を膜上に形成する(図25)。この抗体はヒト組織の免疫組織化学染色に使用された。このタンパク質の選択的組織分布が確認された。多くの異なった一連の正常組織が調査され、肝臓、肺、腎臓及び、結腸について例として示されているようにそれらのほとんどにおいてクラウディン18A2タンパク質は検出されなかった。このタンパク質の活性化は正常胃組織においてのみ見出された(図32)。驚くべきことに、クラウディン18のA2変異体は胃粘膜の分化した細胞中には検出されたが幹細胞中には検出されなかった。分化した胃粘膜細胞は永久再生される。生理学的に、胃の総上皮は胃の幹細胞に絶えず入れ替わられている。このことから、A2変異体は治療用の標的構造体として有用であることが支持される。何故ならば、本発明によって判ったことであるが、他の全ての健康な器官と同様に胃粘膜に不可欠な細胞集団としての胃幹細胞はA2変異体をもたず、従ってその胃幹細胞はA2変異体を特異的に指向する物質によって攻撃されないからである。一連のヒト腫瘍、特に、RT−PCRにおいて既に注意を惹いた胃、食道及び肺の腫瘍においてクラウディン18のA2変異体をこの抗体によって検出した(図33)。本発明によれば、これらの腫瘍は治療的に処理可能である。上記の抗体は更に、ウエスタンブロッティングにおけるタンパク質検出にも使用された。予想されたように、タンパク質は胃でしか検出されず、他の正常組織では、A1変異体のみが活性化されている肺においてさえ検出されない(図29)。患者からの胃腫瘍及び近隣の比較染色から明らかになったことであるが、驚くべきことに、クラウディン18 A2の量はこのタンパク質が検出される全ての胃腫瘍の方が正常胃組織よりも少ない(図30左)。本発明によれば、一連の実験において正常胃組織の分解産物を脱グリコシル剤PNGase Fで処理すると.一本のバンドが同じ位置に現れることが判明した。A2変異体のグリコシル化された型のみが全ての正常胃組織において検出される一方、A2は調査した胃腫瘍の60%以上において、特に脱グリコシル化された形でのみ検出可能である。クラウディン18のA2変異体は正常肺においてはタンパク質レベルでも検出されなかったが、先の定量的RT−PCRにおいてもそうであったように気管支腫瘍においては検出されている。すなわち脱グリコシル化された変異体のみが存在している(図31)。クラウディン18は胃(変異体A2)あるいは肺及び胃(変異体A1)へ高度に選択的な分化抗原である。本発明者のデータの示唆によれば、クラウディン18は明らかにグリコシル化機構が腫瘍に関連した変化を受け、腫瘍では脱グリコシル化した特異な型のA2が産生される。PNGaseF処理の結果から、クラウディン18A2はそのNグリコシル化が腫瘍と正常の組織とでは異なることが判った。
【0217】
抗原決定基がグリコシル化すると、この抗原決定基に対して特異的な抗体は結合を阻止されるので、この場合には該抗体は正常組織ではクラウディン18A22には結合できず、専ら癌細胞中のグリコシル化されていない型に結合する。グリコシル化されていない抗原決定基に選択的に結合する本発明抗体を作製するに当たり、上記のことを考慮して免疫原を選択した。本発明によれば、クラウディン18A2の種々の領域は、腫瘍組織と正常組織とでは種々異なるグリコシル化形態で存在することが同定された。就中、クラウディン18A2のアミノ酸37、38、45、116、141、146、205を含む領域は潜在的なクラウディン18A2のグリコシル化部位として同定された(図22下)。本発明によれば、腫瘍細胞及び正常組織はこれらの位置の1個またはそれ以上におけるグリコシル化において異なる。これらの領域のほとんどは正統なグリコシル化部位を代表するものではないが、しばしばグリコシル化され得るアスパラギン、セリンおよびトレオニンを含有している(図22の予測、下)。クラウディン18の両変異体には正統にグリコシル化される特異な場所がD3ドメインにあり、文献や一般的に使用されている予測アルゴリズムによればそのドメインは細胞内に位置する。
【0218】
しかしながら、クラウディン18と構造的に似ているテトラスパニン(tetraspanine)であるPMP22については、疎水性膜領域2および3は細胞膜全体にわたるものではなく原形質膜中に部分的に介在していることが示された(Taylor et al., J. Neurosc. Res. 62:15-27, 2000)。これにより、PMP22の二つの外部膜貫通ドメインの間の領域全体は細胞外に位置する。そうしたトポロジーの可能性は、クラウディン18A2に関し、仮説として提案され、実証された。結果的に、各々がEX1、EX2またはD3ドメイン(図42、上)のうちの1個にマーカー配列(His またはHA tag)を持つ3つのコンストラクトを調製した。これらで細胞株をトランスフェクションし、これらマーカー配列に対する抗体が、透過処理されていない細胞に結合するかどうかがテストされた。ただしその結合には、タンパク質の対応する領域がトポロジー的に細胞外に位置している必要がある。フローサイトメトリーによって3個のすべての領域が細胞外にあることが確定した(図42、下)ので、クラウディン18A2は2個の膜貫通ドメインと1個の細胞外に位置する大きなドメインを持つコンフォメーションで存在することが確認された(図22、コンフォメーション2)。このコンフォメーションは、治療用抗体への結合部位を更に含有しているので、生化学と治療的に関係する(SEQ ID NO:142、143)。
【0219】
本発明によれば、より好ましくは、クラウディン18A2のグリコシル化された変異体とグリコシル化されていない変異体との識別をする抗体が作製される。これらは、腫瘍細胞に対して特に高い特異性を持つ。これらのコンフォメーションはグリコシル化領域以外でも異なることを考慮して、グリコシル化に特異的な抗体を調製した。
【0220】
より好ましいことに、クラウディン18A2のD3領域由来のタンパク質断片は、限定なく動物を免疫するのに適している。このことは、例として2つの抗体mAB1およびmAB2について示された(図44)。クラウディン18のA1またはA2変異体を発現する細胞株に対するこれらの抗体の結合特性を調査した。細胞表面上でクラウディン18A2は、抗体に利用可能であることが示された。本発明によれば、そうした抗体はA2変異体に対して特異的であり、A1変異体には結合しない(図44)。短い外来配列(mycタグ)はそれぞれ細胞外ドメインEx1およびEx2の領域に導入される。たとえば、mAB1について、抗体の結合特性はそれによって影響を受けず実際の抗原決定基はD3ドメインに位置することが示された。
【0221】
産生した抗体は、診断にも治療にも利用され得る。ここに記述した(ペプチドSEQ ID NO: 17に対する)ような免疫血清は、診断に、たとえばウエスタンブロッティングに利用され得る。本発明によれば、グリコシル化された抗原決定基に結合しない抗体は、これらの領域のうちの少なくとも1個を含有するペプチド(たとえば、ペプチドSEQ ID NO:113(図26)、ペプチド SEQ ID NO:142〜145)で免疫することにより作製され得る。本発明によれば、そうした抗体は腫瘍細胞上の脱グリコシル化された抗原決定基に特異的に結合する。言及した位置のうちの一箇所においてグリコシル化が正常組織に比べ欠如している場合には、その原因は腫瘍細胞における二次的な内因性の脱グリコシル化かもしれない。そうした脱グリコシル化は、個々のアミノ酸のAsn (N) → Asp (D)変換と関連している。そのように修飾された腫瘍関連変異体に対する抗体の作製には、従って、クラウディン18A2由来のペプチドを本発明により使用することができる。そのペプチドでは、クラウディン18A2ペプチドのポジション37、38、45、116、141、146、205のうちの少なくとも1個におけるアミノ酸Asn (N)がAsp (D)によって置換されている(SEQ ID NO:146〜150)。腫瘍に対して高度に選択的であるから、そうした抗体を治療用に採用することが特に可能である。作製された抗体はまた、キメラあるいはヒト化組み換え抗体を作製するのに直接使用され得る。これはまた、ウサギから得た抗体によって直接行うこともできる(それに関してはJ Biol Chem. 2000 May 5;275(18):13668-76 by Rader C, Ritter G, Nathan S, Elia M, Gout I, Jungbluth AA, Cohen LS, Welt S, Old LJ, Barbas CF 3rd. "The rabbit antibody repertoire as a novel source for the generation of therapeutic human antibodies"参照)。
この目的のために免疫した動物からのリンパ球を保存した。アミノ酸1〜47(SEQ ID NO:19および120)はまた、ワクチンおよび抗原特異的Tリンパ球の養子移植などの免疫療法のための特に良質な抗原決定基を提示する。
【実施例5】
【0222】
実施例5:診断及び治療用癌標的としてのSLC13A1の同定
SLC13A1は、硫酸ナトリウム同時輸送体のファミリーに属する。このヒト遺伝子は、この遺伝子のマウスの相同部分とは対照的に腎臓において選択的に発現している(Lee et al., Genomics 70:354-63, 2000)。SLC13A1は595アミノ酸のタンパク質をコードし、13個の推定上の膜貫通ドメインから成る。選択的スプライシングの結果、4個の異なる転写産物(SEQ ID NO:41−44)は、それに対応する翻訳産物となる。SLC13A1が腎臓腫瘍に対するマーカーとして使用されうるか否か調査した。SLC13A1の特異的増幅を可能にするオリゴヌクレオチドがこの目的のために使用された。
【0223】
正常組織および腫瘍組織におけるSLC13A1の発現
【表4】

【0224】
SLC13A1特異的プライマー対(SEQ ID NO:49、50)を用いたRT−PCRにより、腎臓において優れて選択的な発現が確認され、また、本発明により、調査しれた腎腫瘍生検の実質上すべて(7/8)において高い発現を示した(表4、図6)。特定のプライマー(SEQ ID NO:121、122)を用いた定量的RT−PCRもまたこれらのデータを裏付けた(図34)。
以下の正常組織において微弱なシグナルが検出可能であった:結腸、胃、精巣、乳房、肝臓及び脳。しかし、腎腫瘍における発現は他の全ての正常組織におけるよりも少なくとも100倍は高かった。
【0225】
SLC13A1の細胞内における位置を分析するために、このタンパク質をリポーター分子としてのeGFPと融合し、適切なプラスミドでのトランスフェクション後、293個の細胞において異種間発現させた。そして蛍光顕微鏡下、位置を分析した。本発明者のデータでは、SLC13A1は1個の完全な膜貫通分子であることが印象的に確認された(図35)。
【0226】
SLC13A1タンパク質を検出する為の抗体は、ウサギを免疫することにより作製した。
ペプチドSEQ ID NO:123および124がこれらの抗体を増産するのに使用された。そうした抗体は原則として診断及び治療の目的に使用され得る。
【0227】
SLC13A1タンパク質は、13個の膜貫通ドメインと7個の細胞外領域を持つ。特にSLC13A1のこれらの細胞外ドメインは、本発明によれば、モノクローナル抗体の標的構造体として使用され得る。SLC13A1はイオンの輸送においてチャンネルタンパク質として関与している。健康な腎臓におけるSLC13A1の細胞外ドメインの極性は尿路系の方向にある(管腔上)。しかしながら、治療目的で使用される高い分子量のモノクローナル抗体は尿路系に排泄されないので、健康な腎臓においてはSLC13A1への結合は起こらない。対照的に腫瘍細胞においては、SLC13A1は極性を消失するので、このタンパク質は血流を通じて直接抗体の標的となる。腎腫瘍においてSLC13A1は顕著に発現され高い頻度で生起するので、本発明のこのタンパク質は非常に興味深い診断用及び治療用のマーカーとなる。本発明によれば、これには、血清、骨髄、尿中に拡散した腫瘍細胞の検出および他の器官への転移の検出をRT−PCRによって行うことが挙げられる。本発明のSLC13A1の細胞外ドメインを免疫学的診断及びモノクローナル抗体による治療のための標的構造体として使用することもまた可能である。本発明によれば、SLC13A1は更に腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞媒介免疫応答)を誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として採用することができる。本発明によれば、これには、SLC13A1の生物学的活性を調整し、腎腫瘍の治療に採用可能な所謂小化合物の開発も含まれる。
【実施例6】
【0228】
実施例6:診断用及び治療用癌標的としてのCLCA1の同定
CLCA1(SEQ ID NO:51;翻訳産物:SEQ ID NO:60)は、Ca++−活性化 Cl チャンネルのファミリーに属する。その配列は、Genbankにおいてアクセッションナンバー NM_001285のもとに公表されている。CLCA1は、小腸の腺か上皮および杯状細胞においてのみ発現する(Gruber et al., Genomics 54:200-14, 1998)。CLCA1が結腸及び胃の腫瘍に対するマーカーとして使用され得るか否かを調査した。この目的のために、CLCA1の特異的増幅を可能にするオリゴヌクレオチドを使用された。このプライマーセットを用いたRT−PCRにより、結腸における選択的な発現が確認され、また、本発明により調査した結腸腫瘍検体の3/7、胃腫瘍検体の1/3において高度の発現を確認した(図7)その他の正常組織では発現が見られず、あるいはごく弱い発現が見られた。特異的定量的RT−PCR(SEQ ID NO:125、126)によってもこのことは確証され、その場合に分析した正常組織中に発現を検出することができなかった(図36)。この実験において調査した腫瘍検体のうち、結腸腫瘍検体の6/12および胃腫瘍検体の5/10はCLCA1について陽性であった。全般的に、腫瘍中でのその遺伝子の発現は調節不全であるように見受けられた。大変強度の発現のある検体がある一方で他の検体においては、CLCA1は顕著に抑制されていた。
【0229】
このタンパク質は、全部で2個の細胞外領域と共に4個の膜貫通ドメインを有すると予測される。CLCA1のこれらの細胞外ドメインは特に本発明によりモノクローナル抗体の標的構造体として使用され得る。
【0230】
胃及び結腸の腫瘍においてCLCA1は顕著に発現され及び高い頻度で生起することから、本発明によるこのタンパク質は興味深い診断用及び治療用のマーカーとなる。本発明によれば、これには、血清、骨髄、尿中に拡散した腫瘍細胞の検出および他の器官への転移の検出をRT−PCRによって行うことが挙げられる。本発明のCLCA1の細胞外ドメインを免疫学的診断及びモノクローナル抗体による治療のための標的構造体として使用することもまた可能である。本発明によれば、CLCA1は更に腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞媒介免疫応答)を誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として採用され得る。本発明によれば、これにはCLCA1の輸送タンパク質としての生物学的活性を調整し、胃腸腫瘍の治療に採用可能な所謂小化合物の開発が挙げられる。
【実施例7】
【0231】
実施例7:診断用および治療用癌標的としてのFLJ21477の同定
FLJ21477(SEQ ID NO:52)およびその推定上の翻訳産物(SEQ ID NO:61)は、仮説上のタンパク質としてGenbankにおいてアクセッションナンバー NM_025153により公表されている。それは、ATPアーゼ活性および4個の膜貫通ドメインを持つ、完全な1つのタンパク質であり、従って特定の抗体を用いた治療に適している。FLJ21477特異的プライマー(SEQ ID NO:69、70)を用いたRT−PCRにより結腸における選択的な発現が見られ、また更に、調査した結腸腫瘍検体の7/12において種々のレべルの発現が見られた(図8)。その他の正常組織では発現が見られなかった。これは特異的定量的RT−PCRによってもまた確認された(SEQ ID NO:127、128)。FLJ21477特異的発現は、結腸においても(図37A)また結腸腫瘍の11/12においても検出可能であった。結腸腫瘍における発現のほかに胃組織においてもまた発現が検出可能であった。また、定量的RT−PCRの条件下、脳、胸腺および食道での検出可能な発現は、結腸及び胃に比較して明らかにに弱かった(図37A)。次の腫瘍検体においてもまたFLJ21477特異的発現を検出することが可能である:即ち、胃、膵臓、食道及び肝臓。
【0232】
このタンパク質は、全部で2個の細胞外領域と共に4個の膜貫通ドメインを有することが推定されている。これらのFLJ21477細胞外ドメインは特に本発明によりモノクローナル抗体の標的構造体として使用できる。
【0233】
胃及び結腸の腫瘍においてFLJ21477は発現され高い頻度で生起することから、本発明によるこのタンパク質は本発明による価値のある診断用及び治療用のマーカーとなる。本発明によれば、これには、血清、骨髄、尿中に拡散した腫瘍細胞の検出および他の器官への転移の検出をRT−PCRによって行うことが挙げられる。本発明のFLJ21477の細胞外ドメインを免疫学的診断及びモノクローナル抗体による治療のための標的構造体として使用することもまた可能である。本発明によれば、FLJ21477は更に腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞媒介免疫応答)を誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として採用できる。
【実施例8】
【0234】
実施例8:診断用及び治療用癌標的としてのFLJ20694の同定
FLJ20694(SEQ ID NO:53)およびその推定上の翻訳産物(SEQ ID NO:62)は、仮説上のタンパク質としてGenbankにおいてアクセッションナンバー NM_017928により公表されている。このタンパク質は、完全な1つの膜貫通分子(膜貫通ドメインAA 33 54)であり、チオレドキシン(thioredoxin)機能を持つ可能性が高い。FLJ20694特異的プライマー(SEQ ID NO:71、72)を用いたRT−PCRにより結腸における選択的な発現が見られ、また更に、調査した結腸腫瘍検体の5/9において種々のレベルの発現が見られた(図9)。その他の正常組織では発現は見られなかった。このことは、特異的定量的RT−PCR(SEQ ID NO:129、130)によって更に確認された(図38)。FLJ20694の発現は、結腸及び胃を除いて(最初の実験では分析されなかった)他のいかなる正常組織においても検出されなかった。
【0235】
そのタンパク質は、細胞外領域と共に一個の膜貫通ドメインを持つことが推定される。FLJ20694のこれらの細胞外ドメインは特に本発明によればモノクローナル抗体に対する標的構造体として使用することができる。
【0236】
更にまた、本発明によれば、FLJ20694は、腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞媒介免疫応答)を誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として採用することができる。本発明によれば、これにはFLJ20694の生物学的活性を調整し、胃腸腫瘍の治療に採用可能な所謂小化合物の開発が挙げられる。
【実施例9】
【0237】
実施例9:診断用及び治療用癌標的としてのフォンエブナー(von Ebner's)タンパク質(c20orf114)の同定
フォンエブナー(von Ebner's)タンパク質(SEQ ID NO:54)およびその翻訳産物(SEQ ID NO:63)は、上部気道および鼻咽喉腔上皮のPlunc関連タンパク質としてGenbankにおいてアクセッションナンバー AF364078により公表されている。
本発明により、フォンエブナータンパク質をコードするmRNAが肺腫瘍のマーカーとして使用され得るか否かを調査した。この目的のために、エブナータンパク質をコードするcDNAの特異的増幅を可能にするオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:73、74)が使用された。このプライマーセットを用いたRT−PCRにより、肺および調査した肺腫瘍検体の5/10において選択的な発現が見られた(図10)。正常組織のグループ中、胃においても発現があった。その他の正常組織は発現が見られなかった。
【実施例10】
【0238】
実施例10:診断用及び治療用癌標的としてのPluncの同定
Plunc(SEQ ID NO:55)およびその翻訳産物(SEQ ID NO:64)は、Genbankにおいてアクセッションナンバー NM_016583により公表されている。ヒトPluncmRNAは、256個のアミノ酸をコードし、マウスPluncタンパク質と72%の相同性を示す(Bingle and Bingle, Biochem Biophys Acta 1493:363-7, 2000)。
Pluncの発現は、気管、上部気道、鼻咽喉腔上皮および唾液腺に限定されている。
【0239】
本発明により、Pluncが肺腫瘍のマーカーとして使用され得るか否かを調査した。この目的のために、Pluncの特異的増幅を可能にするオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:75、76)が使用された。
【0240】
このプライマーセットを用いたRT−PCRにより、胸腺および肺において、また、調査した肺腫瘍検体の6/10において選択的な発現が見られた(図11)。他の正常組織では発現は見られなかった。
【実施例11】
【0241】
実施例11:診断用及び治療用癌標的としてのSLC26A9の同定
SLC26A9(SEQ ID NO:56)およびその翻訳産物(SEQ ID NO:65)は、Genbankにおいてアクセッションナンバー NM_134325により公表されている。SLC26A9は陰イオン交換体のファミリーに属する。SLC26A9の発現は気管支および肺胞の上皮に限定されている(Lohi et al., J Biol Chem 277:14246-54, 2002)。
【0242】
SLC26A9が肺腫瘍のマーカーとして使用され得るか否か調査した。この目的のために、SLC26A9の特異的増幅を可能にするオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:77、78)が使用された。SLC26A9特異的プライマー(SEQ ID NO:77、78)を用いたRT−PCRにより、肺において、また、調査した肺腫瘍検体のすべて(13/13)において選択的な発現が見られた(図12)。他の正常組織では、胸腺を除き、発現が見られなかった。SEQ ID NO:131および132を用いた定量的RT−PCRの実験において先ずこれらの結果が確認され、また更なる情報を得ることが可能であった。プールされた4 5個の腫瘍組織の中で肺、結腸、膵臓および胃の腫瘍においてSLC26A9特異的RNAの高い発現レベルを検出することができた。SLC26A9は膜貫通陰イオン交換体のファミリーのメンバーである。健康な肺においてはこのタンパク質は、管腔上気道方向に向いているので、血液からのIgG抗体に直接に接することはない。対照的に、腫瘍においてはこのタンパク質は極性を消失している。従って本発明によれば、特定の腫瘍、就中、肺、胃及び膵臓の腫瘍において、治療上の標的としてのSLC26A9にモノクローナル抗体を用いて働きかけることが可能である。肺、胃、膵臓および食道の腫瘍においてSLC26A9は著しく高く発現しおよび高い頻度で生起するので、本発明によるこのタンパク質は優れた診断用及び治療用マーカーとなる。本発明によれば、これには、血清、骨髄、尿中に拡散された腫瘍細胞の検出および他の器官への転移の検出をRT−PCRにより行うことが挙げられる。本発明のSLC26A9の細胞外ドメインを免疫学的診断及びモノクローナル抗体による治療のための標的構造体として使用することもまた可能である。本発明によれば、SLC26A9を更に腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞媒介免疫応答)を誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として採用することも可能である。本発明によれば、これにはSLC26A9の生物学的活性を調整し、肺腫瘍及び胃腸腫瘍の治療に採用可能な所謂小化合物の開発が挙げられる。
【実施例12】
【0243】
実施例12:診断用及び治療用癌標的としてのTHC1005163の同定
THC1005163(SEQ ID NO:57)は、TIGR遺伝子インデックスから得た遺伝子断片である。その遺伝子は、3'領域においてのみ定義され、ORFを欠く。THC1005163特異的プライマー(SEQ ID NO:79)および5'末端において21個の特定塩基の特異的タグを有するオリゴdT18プライマーを用いてRT−PCRを行った。このタグについて、データベースサーチプログラムを用いて、既知の配列との相同性を調査した。最初はこの特異的プライマーは、ゲノムDNA混入を防止したcDNA合成に使用された。このプライマーセットを用いたRT−PCRにより、胃、卵巣、肺において、および肺腫瘍生検の5/9において発現が見られた(図13)。他の正常組織では発現が見られなかった。
【実施例13】
【0244】
実施例13:診断用及び治療用癌標的としてのLOC134288の同定
LOC134288 (SEQ ID NO:58)およびその予測された翻訳産物(SEQ ID NO:66)は、Genbankにおいてアクセッションナンバー XM_059703により公表されている。
【0245】
本発明により、LOC134288が腎腫瘍のマーカーとして使用され得るか否か調査した。この目的のために、LOC134288の特異的増幅を可能にするオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:80、81)を使用した。RT−PCRにより、腎臓において、及び調査した腎腫瘍生検の5/8において選択的な発現が見られた(図14)。
【実施例14】
【0246】
実施例14:診断用及び治療用癌標的としてのTHC943866の同定
THC 943866(SEQ ID NO:59)は、TIGR遺伝子インデックスから得た遺伝子断片である。本発明により、THC943866が腎腫瘍のマーカーとして使用され得るか否か調査した。この目的のために、THC943866の特異的増幅を可能にするオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:82、83)が使用された。
【0247】
THC943866特異的プライマー(SEQ ID NO:82、83)ついてのRT−PCRにより、腎臓において、また調査した腎腫瘍生検の4/8において選択的な発現が見られた(図15)。
【実施例15】
【0248】
実施例15:診断用及び治療用癌標的としてのFLJ21458およびB7h.4の同定
FLJ21458(SEQ ID NO:84)およびB7h.4(SEQ ID NO:138)およびそれらの予測される翻訳産物(SEQ ID NO:85、139)は、1つの遺伝子のスプライス変異体を代表するものであり、Genbankにおいてそれぞれアクセッションナンバー NM_034850およびAY358523により公表されている。配列解析により、それらのタンパク質がブチロフィリン(butyrophillin)のファミリーを代表するメンバーであることが明らかになった。構造解析により、それらが細胞外イムノグロブリンドメインを有するタイプ1膜貫通タンパク質を代表することが明らかになった。FLJ21458またはB7h.4の特異的増幅を可能にするオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:86、87またはSEQ ID NO:140、141)が、発現を調べるために使用された。FLJ21458特異的プライマー(SEQ ID NO:86、87)についてのRT−PCRにより、結腸において、及び調査した結腸腫瘍生検の7/10において選択的な発現が見られた(図16、表5)。特異的プライマー(SEQ ID NO:133、134)を用いた定量的RT−PCRにより、この選択的発現のプロファイルを確認した(図39)。その実験において、胃腸特異的に、結腸、胃、直腸、盲腸及び精巣に、FLJ21458を検出することが更に可能であった。結腸転移検体の7/11もまた定量的PCRにおいて陽性であった。FLJ21458特異的発現は他の腫瘍にも及び、タンパク質特異的発現が胃、膵臓、および肝臓腫瘍において検出可能であった(表5)。B7h.4特異的プライマー(SEQ ID NO:140、141)を用いたRT−PCRにより、肺腫瘍において強度の選択的な発現が見られたが、正常肺組織では発現が見られなかった。このようにこのブチロフィリンのスプライス変異体は両方が腫瘍関連発現を示し、診断用および治療用の癌標的として利用できる。FLJ21458およびB7h.4タンパク質を検出するための抗体は、ウサギを免疫して作製される。両方のタンパク質(FLJ21458およびB7h.4)に含まれているペプチドがこれらの抗体を増産するための抗原決定基として使用された。
SEQ ID NO:135: QWQVFGPDKPVQAL
SEQ ID NO:136: AKWKGPQGQDLSTDS
【0249】
FLJ21458あるいはB7h.4特異的反応は免疫蛍光法にて検出可能であった(図40)。抗体の特異性をチェックするため、FLJ21458−GFP融合タンパク質をコードするプラスミドを用いて293個の細胞をトランスフェクションした。特異性は、一方では特異的な抗体を使用した同時位置決定調査により、他方では自己蛍光法GFPによって確認した。二つの蛍光ダイヤグラムが重ね合わさることから、免疫血清はFLJ21458タンパク質を認識することが判った(図40、上)。B7h.4中の同一抗原決定基によって、これらの抗体は腫瘍中のB7h.4タンパク質への結合およびその検出にも利用することができる。このタンパク質は過剰発現するために、結果的に得られる細胞染色は散漫で、タンパク質の明確な位置付けができなかった。この理由のためにFLJ21458を内因的に発現する胃腫瘍特異的細胞株Snu16を用いてさらに免疫蛍光法の実験を行なった(図40、下)。FLJ21458特異的抗血清および膜タンパク質Eカドヘリンを認識するもう1つの抗体で細胞を染色した。FLJ21458特異的抗体は細胞膜を少なくとも弱く染色し、従ってFLJ21458は細胞膜中に局在することが明らかである。
【0250】
生物情報学的調査の結果、FLJ21458によりコードされているタンパク質は細胞表面分子を代表し、免疫グロブリンの超分子ドメインを有することが判った。この表面分子は発現が選択的であるので、腫瘍細胞を検出する診断法および腫瘍細胞を除去する治療法を開発するための良い標的となる。
【0251】
胃および結腸の腫瘍においてFLJ21458は顕著に発現し高い頻度で生起するので、本発明に係るこのタンパク質は、非常に興味深い診断用及び治療用のマーカーとなる。本発明によれば、これには、血清、骨髄、尿中に拡散した腫瘍細胞の検出および他の器官への転移の検出をRT PCRにより行うことが挙げられる。本発明のFLJ21458の細胞外ドメインを免疫学的診断及びモノクローナル抗体による治療のための標的構造体として使用することもまた可能である。本発明によれば、FLJ21458を更に腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞媒介免疫応答)を誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として採用することができる。本発明によれば、これには、FLJ21458の生物学的活性を調整し、胃腸腫瘍の治療に採用可能な所謂小化合物の開発が挙げられる。
【0252】
正常組織および腫瘍組織におけるFLJ21458又はB7h.4の発現
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0253】
【図1】結腸腫瘍の生検におけるGPR35mRNAの発現DNAのないRNAでRT−PCRを行ったところ、大部分の結腸腫瘍生検ではGPR35の発現が見られる。これに対し、正常組織では検出可能な発現はない。(1―乳房、2―肺、3−リンパ節、4―胸腺、5−結腸、6−15結腸腫瘍、16―ネガティブコントロール)。
【図2】正常及び腫瘍組織におけるGUCY2C mRNA発現の定量的PCR分析GUCY2C特異的プライマー(SEQ ID NO:22−23)でのリアルタイムPCRを行ったところ、正常な回腸、結腸、及び全ての結腸腫瘍生検では選択的なmRNAの発現が見られる。肝臓へ転移の結腸腫瘍からも顕著な量のGUCY2C転写産物が検出された。
【図3】腫瘍特異的GUCY2Cスプライス変異体の同定正常結腸組織及び結腸腫瘍からのPCR産物をクローン化し、双方のグループのクローンを制限酵素解析(EcoR I)により確認し、塩基配列を同定した。
【図4】正常肺及び肺腫瘍における選択的SCG3Aの発現遺伝子に特異的なSCG3A2プライマー(SEQ ID NO:37、38)を用いてRT−PCR解析を行ったところ、正常肺(レーン8、14−15)及び肺腫瘍(レーン16−24)生検でのみcDNAの増幅が見られる(1−15正常組織、1:肝臓、2:末梢血単核球、3:リンパ節、4:胃、5:精巣、6:乳房、7:腎臓、8:肺、9:胸腺、10:卵巣、11:副腎、12:脾臓、14−15:肺、16−24:肺腫瘍、25:ネガティブコントロール)。
【図5】胃および食道、並びに胃腫瘍、膵臓腫瘍におけるクラウディン−18A2.1の発現本発明により、クラウディン−18A2.1特異的プライマー(SEQ ID NO:39〜40)でRT−PCR解析を行ったところ、胃腫瘍の生検の8/10および膵臓腫瘍の生検の3/6において顕著なクラウディン−18A2.1の発現が見られた。胃及び食道の正常組織においても顕著な発現が検出された。これに対し、卵巣及び卵巣腫瘍では発現は検出されなかった。
【図6】腎臓及び腎臓腫瘍におけるSLC13A1の発現SLC13A1特異的プライマー(SEQ ID NO:49〜50)でのRT−PCRを分析すると、腎臓腫瘍検体の7/8において発現が見られた。その他では、正常組織中の転写産物は腎臓のみにおいて検出された。(1−2:正常腎臓組織、3−10:腎腫瘍、11:乳房、12:肺、13:肝臓、14:結腸、15:リンパ節、16:脾臓、17:食道、18:胸腺、19:甲状腺、20:末梢血単核球、21:卵巣、22:精巣、の正常組織)
【図7】結腸正常組織、並びに結腸腫瘍および胃腫瘍におけるCLCA1の発現CLCA1特異的プライマー(SEQ ID NO:67、68)を用いたRT−PCRを行ったところ、結腸で選択的な発現が確認され、また、調査された結腸ガン試料の3/7、および調査した胃腫瘍検体試料の1/3で高い発現が見られた。その他の正常組織では発現は皆無あるいは極めて弱小であった。
【図8】結腸腫瘍組織及び結腸腫瘍におけるFLJ21477の発現FLJ21477特異的プライマー(SEQ ID NO:69、67)を用いたRT−PCRを行ったところ、結腸で選択的な発現が見られ、更に調査した結腸腫瘍検体の7/12において種々のレベルの発現が見られた。その他の正常組織では発現は見られなかった。
【図9】結腸正常組織及び結腸腫瘍におけるFLJ20694の発現FLJ20694特異的プライマー(SEQ ID NO:71、72)を用いたRT−PCRを行ったところ、結腸では選択的な発現が見られ、更に調査した結腸腫瘍検体の5/9で種々のレベルの発現が見られた。その他の正常組織では発現は見られなかった。
【図10】胃および肺の正常組織並びに肺腫瘍におけるフォンエブナー発現フォンエブナー特異的プライマー(SEQ ID NO:73、74)を用いたRT−PCRを行ったところ、胃、肺、および調査した肺腫瘍検体の5/10において選択的な発現が見られた。その他の正常組織では発現は見られなかった。
【図11】胸腺および肺の正常組織並びに肺腫瘍におけるPlunc発現Plunc特異的プライマー(SEQ ID NO:75、76)を用いたRT−PCRを行ったところ、胸腺、肺および調査した肺腫瘍検体の6/10において選択的な発現見られた」。その他の正常組織では発現は見られなかった。
【図12】肺、肺腫瘍および甲状腺におけるSLC26A9発現SLC26A9特異的プライマー(SEQ ID NO:77、78)を用いたRT−PCRを行ったところ、肺および調査した全て(13/13)の肺腫瘍検体において選択的な発現が見られた。その他の正常組織では胸腺を除いて発現は見られなかった。
【図13】胃、卵巣、肺および肺腫瘍におけるTHC1005163発現THC1005163特異的プライマー(SEQ ID NO:79)および非特異的オリゴdTタグプライマーを用いたRT−PCRを行ったところ、胃、卵巣、肺および5/9の肺腫瘍生検では発現が見られた。その他の正常組織では発現は見られなかった。
【図14】腎臓及び腎腫瘍におけるLOC134288発現LOC134288特異的プライマー(SEQ ID NO:80、81)を用いたRT−PCRを行ったところ、腎臓および調査した腎腫瘍生検の5/8では選択的な発現が見られた。
【図15】腎臓および腎腫瘍におけるTHC943866発現THC943866特異的プライマー(SEQ ID NO82、83)を用いたRT−PCRを行ったところ、腎臓および調査した腎臓腫瘍生検の4/8において選択的な発現が見られた。
【図16】結腸および結腸腫瘍におけるFLJ21458発現FLJ21458特異的プライマー(SEQ ID NO:86、87)を用いたRT−PCRを行ったところ、結腸および調査した7/10の結腸腫瘍生検において選択的な発現が見られた。(1 2:結腸、3:肝臓、4:末梢血単核球、5:脾臓、6:前立腺、7:腎臓、8:卵巣、9:皮膚、10:回腸、11:肺、12:精巣の正常組織、13−22:結腸腫瘍、23:ネガティブコントロール)
【図17】GPR35の細胞における位置GPR35−GFP融合タンパク質を発現するプラスミドでトランスフェクション後におけるGPR35の細胞における位置を検出するための免疫蛍光法。矢印は、膜に結合した蛍光GFPの蛍光を示す。
【図18】GPR35の定量的発現A. GPR35特異的プライマー(SEQ ID NO:88、89)を用いて定量的なRT−PCRを行うと、小腸の種々の領域、結腸腫瘍検体、および結腸腫瘍からの転移病巣において選択的発現がみられる。以下の正常組織を分析した:肝臓、肺、リンパ節、胃、脾臓、副腎、腎臓、食道、卵巣、精巣、胸腺、皮膚、乳房、膵臓、リンパ球、活性化リンパ球、前立腺、甲状腺、卵巣、子宮内膜、小脳、脳。B. 結腸およびその転移病巣におけるGPR35の保有率。GPR35は、該腫瘍と転移病巣の両方において事例の90%以上で発現している。
【図19】GUCY2Cの定量的発現GUCY2C特異的プライマー(SEQ ID NO:98、99)を用いて定量的なRT−PCRを行うと、正常な結腸および胃組織において高度かつ選択的な発現(A)が、また結腸腫瘍および胃腫瘍検体においてGUCY2C特異的発現(B)が見られた。GUCY2Cは、結腸腫瘍の11/12、胃腫瘍の7/10において、検出可能である。
【図20】SCGB3A2の定量的発現SCGB3A2特異的プライマー(SEQ ID NO:103、104)を用いて定量的なRT−PCRを行うと、肺検体および肺腫瘍検体において選択的な発現が見られる。肺腫瘍検体の19/20はSCGB3A2陽性であり、SCGB3A2は検体の50%以上において少なくとも10倍は過剰発現している。以下の正常組織を分析した:肝臓、肺、リンパ節、胃、脾臓、副腎、腎臓、食道、卵巣、精巣、胸腺、皮膚、乳房、膵臓、リンパ球、活性化リンパ球、前立腺、胸腺、卵巣、子宮内膜、小脳、脳。
【図21】SCGB3A2特異的抗体を用いた免疫蛍光法COS7細胞を、SCGB3A2−GFP融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクションした。A. SCGB3A2−特異的ウサギ抗血清(SEQ ID NO:105で免疫)を用いてトランスフェクション融合タンパク質を検出。B. GFP蛍光によるトランスフェクション融合タンパク質の検出。C. AおよびBの2つの蛍光の重ね合わせ。2つの蛍光が重ね合わさるところでは黄色を呈し、従ってSCGB3A2抗血清の特異性が証明される。
【図22】クラウディン18コンフォメーションの図解本発明によれば、クラウディン18A2ポリペプチドは細胞上に2つのコンフォメーションで存在し得る。コンフォメーション1では、4個の膜貫通ドメイン(TM)と2個の別々の細胞外に局在するドメインを持つ膜分子として存在している。コンフォメーション2においては、中央の2個の疎水領域が膜貫通ドメインの機能を果たさない。従って、このコンフォメーションにおいては、コンフォメーション1に比べ、細胞外に付加的なペプチド領域が存在している。また、Nグリコシル化部位が付加される結果ポジション116(より太い矢印)でこのコンフォメーションになる。予想されるすべてのグリコシル化領域は図の下の部分に見られる。Ex1:細胞外ドメイン1、Ex2:細胞外ドメイン2、TM:膜貫通ドメイン、H−phob:細胞外疎水領域。
【図23】クラウディン18、変異体A1の定量的発現クラウディン18A1は肺および胃以外の正常組織においては検出されない。クラウディン18A1は多くの腫瘍組織において高度に発現している。特に胃腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍および食道腫瘍においては強度の発現が見られる。
【図24】クラウディン18、変異体A2の定量的発現クラウディン18A2は胃組織以外の正常組織においては検出されない。クラウディン18A2は多くの腫瘍組織において高度に発現している。特に胃腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍および食道腫瘍においては強度の発現が見られる。
【図25】クラウディン18A2特異的抗体(細胞外ドメイン)の使用A:ペプチド(SEQ ID NO:17)で免疫して生産した抗体でクラウディン18A2陽性胃腫瘍細胞(SNU−16、メタノールで固定)を染色。膜染色は、細胞/細胞相互作用領域において特に強く現れる。このタンパク質は病巣の膜領域に凝集している。B、C、D:クラウディン−18A2−GFPでトランスフェクションした293個のT細胞における同時位置分析による抗体の特異性の実証。B:GFP蛍光、C:抗クラウディン18A2、D:重ね合わせ
【図26】クラウディン18A2特異的抗体(細胞外ドメイン)の使用ペプチド(SEQ ID NO:113、N末端に位置する細胞外ドメイン)で免疫して生産した抗体でクラウディン18A2陽性胃腫瘍細胞(SNU−16)を膜染色。対比染色には、Eカドヘリンに対するモノクローナル抗体を使用した。A:クラウディン18A2抗体、B:抗Eカドヘリン対比染色、C:重ね合わせ
【図27】クラウディン18のC末端細胞外ドメインに対する抗体の使用左の図:ペプチド(SEQ ID NO:116、C末端に位置する細胞外ドメイン)で免疫して産生した抗体を用いてクラウディン18A2陽性胃腫瘍細胞(SNU−16)を膜染色。対比染色には、Eカドヘリンに対するモノクローナル抗体を使用した(右の図)。
【図28】クラウディン18A1特異的抗体の使用上:クラウディン18A1特異的ペプチド(SEQ ID NO:115)で免疫して生産した抗体によって胃腫瘍細胞(SNU−16;クラウディン18A2陽性)を染色し弱小または皆無であった。A:抗Eカドヘリン、B:抗クラウディン18A1、C:重ね合わせ。下:クラウディン−18A1−GFPでトランスフェクションした293個のT細胞における同時位置決定法による抗体の特異性の実証。A:GFP蛍光、B:抗クラウディン18A1、C:重ね合わせ。
【図29】クラウディン18A2をウエスタンブロットで検出SEQ ID NO:17を有する抗原決定基に対するクラウディン18A2抗体を用いて種々の健常組織からの分解産物をウエスタンブロッティング。1:胃;2:精巣;3:皮膚;4:乳房;5:肝臓;6:結腸;7:肺;8:腎臓;9:リンパ節、の正常組織。
【図30】胃および胃腫瘍、並びに種々の腫瘍細胞株からの検体をクラウディン18A2でウエスタンブロッティング胃および胃腫瘍(A、B)および腫瘍細胞株(C、D)からの分解産物を、SEQ ID NO:17を有する抗原決定基に対するクラウディン18A2特異的抗体を用いてブロットしテストした。胃腫瘍では、クラウディン18A2のグリコシル化のより少ない形態が見られた。胃分解産物をPNGアーゼ Fで処理すると低グリコシル化形態が形成されるA: 1:胃正常組織#A、 2:胃腫瘍#A、 3:胃正常組織#B、 4:胃腫瘍#BB: 1:胃正常組織 #A、 2:胃正常組織#B、 3:胃正常組織#B + PNGアーゼF、 4:胃腫瘍#C、 5:胃腫瘍#D、 6:胃腫瘍#D + PNGアーゼ FC: 1:胃正常組織、 2:MDA−MB−231、 3:SK−MEL−37、 4:AGS、 5:SNU−1、 6:SNU−16、 7:EFO27、 8:TOV−112D、 9:OVCAR。注)腫瘍細胞株はクラウディン18A2の脱グリコシル化変異体を発現する。D:クラウディン18A2特異的抗体を用いてテストした細胞株を選択するためのウエスタンブロットデータの総括表。
【図31】肺腫瘍におけるクラウディン18の発現図30によれば、肺腫瘍においてグリコシル化の低いクラウディン18A2変異体が検出された。1:胃正常組織、2:胃腫瘍、3−9:肺腫瘍。
【図32】クラウディン18A2特異的抗体を用いて正常組織中のクラウディン18の免疫組織化学分析胃粘膜においては腺の開口部並びに底部の分化した上皮細胞のみが染色されている。クラウディン18A2は、胃の幹細胞においては検出されていない。調査した他のすべての正常組織、例えば腎臓、肺および結腸でも、この遺伝子は発現されていない。
【図33−1】クラウディン18A2特異的ポリクローナル抗血清を用いた免疫組織学の結果A:肺腫瘍組織の特異的染色の例。注)変異体クラウディン18A1を発現している正常肺組織は、クラウディン18A2特異的抗血清によって認識されない。B:食道腫瘍の特異的腫瘍染色の例。注)付近の健康な細胞は染色されていない。C:胃腫瘍上皮の腫瘍特異的染色の例。ここでも付近の健康な細胞は染色されていない。
【図33−2】クラウディン18A2特異的ポリクローナル抗血清を用いた免疫組織学の結果D:クラウディン18A2特異的抗体を用いた免疫組織化学染色データを典型的に示す総括表。AdenoCa:腺癌、SCC:鱗屑状上皮癌、RCC:腎細胞癌。
【図34】SLC13A1の定量的発現SLC13A1特異的プライマー(SEQ ID NO:121、122)を用いて定量的SLC13A1を行うと、正常腎臓組織において高度かつ選択的な発現が見られ(A)、腎臓腫瘍においてSLC13A1特異的発現がみられた(B)。腎腫瘍の5/8においてSLC13A1転写が検出可能である。
【図35】SLC13A1の細胞における位置SLC13A1融合タンパク質を供給するプラスミドでトランスフェクション後、SLC13A1の細胞における位置を実証する免疫蛍光法。SLC13A1融合タンパク質の膜関連蛍光が明瞭に見られる(トランスフェクションした細胞の周囲のリングとして)。
【図36】CLCA1の定量的発現CLCA1特異的プライマー(SEQ ID NO:125、126)を用いて定量的RT−PCRを行うと、正常結腸組織および胃組織において高度かつ選択的な発現が見られ(A)、結腸および胃腫瘍においてCLCA1特異的発現が見られた(B)。CLCA1は、結腸腫瘍の6/12において、胃腫瘍の7/10において検出可能である。
【図37】FLJ21477の定量的発現FLJ21477特異的プライマー(SEQ ID NO:127、128)を用いて定量的RT−PCRを行うと、正常結腸組織および胃組織において、高度かつ選択的な発現が見られ、また胸腺、食道および、脳において弱い発現が見られ(A)、結腸腫瘍検体においてFLJ21477特異的発現が見られた(B)。FLJ21477は、結腸腫瘍の11/12において検出可能である。
【図38】FLJ20694の定量的発現FLJ20694特異的プライマー(SEQ ID NO:129、130)を用いた定量的RT−PCRを行うと、正常結腸組織および胃組織において、高度かつ選択的な発現が見られ(A)、また結腸および胃腫瘍検体においてFLJ20694特異的過剰発現が見られた(B)。FLJ20694は、結腸腫瘍の11/12、胃腫瘍の7/10において検出可能である。
【図39】FLJ21458の定量的発現FLJ21458特異的プライマー(SEQ ID NO:133、134)を用いた定量的RT−PCRを行うと、精巣、胃組織および異なる小腸の領域において選択的な発現が見られた。また、FLJ21458特異的転写産物が結腸腫瘍の20/20、結腸転移病巣の7/11において検出可能であった。以下の正常組織を分析した:肝臓、肺、リンパ節、脾臓、副腎、腎臓、食道、卵巣、精巣、胸腺、皮膚、乳房、膵臓、リンパ球、活性化リンパ球、前立腺、甲状腺、卵巣、子宮内膜、小脳、脳。
【図40】FLJ21458特異的抗体を用いた免疫蛍光法上:293個の細胞をFLJ21458−GFP融合タンパク質をコードするプラスミドによりトランスフェクションした。A:FLJ21458特異的ウサギ抗血清(SEQ ID NO:136により免疫)を用いてトランスフェクション融合タンパク質の検出。B:GFP蛍光によるトランスフェクション融合タンパク質の検出。C:AおよびBの2つの蛍光の重ね合わせ。2つの蛍光が重ね合わせられると黄色が生じ、FLJ21458抗血清の特異性を実証する。下:内因的にFLJ21458を合成するSnu16細胞の分析。A:FLJ21458特異的ウサギ抗血清(SEQ ID NO:136で免疫)を用いたタンパク質検出。B:膜タンパク質Eカドヘリンの検出。C:AおよびBの2つの蛍光の重ね合わせ。2つの蛍光が重ね合わせられると黄色が生じ、FLJ21458の膜における局在を実証する。
【図41−1】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−2】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−3】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−4】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−5】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−6】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−7】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−8】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−9】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−10】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−11】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−12】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−13】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−14】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−15】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−16】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−17】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図41−18】配列本明細書で言及している配列を示す。
【図42】クラウディン18A2の細胞外領域の決定3個のコンストラクトを調製し、マーカー配列(mycまたは HA タグ)を各々ドメインEX1 (=細胞外ドメイン1)、EX2 (=細胞外ドメイン2) または D3 (=ドメイン3) (上)に持たせた。これらを細胞株にトランスフェクションし、これらのマーカー配列に対する抗体が非透過細胞に結合するかどうかをテストした。結合するにはこれらタンパク質のそれぞれの領域が細胞外に局在する必要がある。フローサイトメトリーにより、3個の分子領域は全てが抗体に結合可能であることが実証された(下)。
【図43】クラウディン18A2の膜での位置われわれのデータによれば、クラウディン18A2はコンフォメーション2に存在し、その内部の2個の疎水性領域は細胞膜を完全には透過しない。したがってこの分子のより大きな領域は細胞外にある。グリコシル化領域もまた細胞外に位置し、それらはわれわれのデータによれば胃正常組織ではグリコシル化されるが、腫瘍ではグリコシル化されない。したがって腫瘍に特異的な抗原決定基が出現している。
【図44】クラウディン18の細胞外位置を決定する為のFACS解析図は、完全長のクラウディン18A1、クラウディン18A2でトランスフェクションした非透過細胞、およびクラウディン18A2でトランスフェクションした並びにクラウディン18A2の部分でトランスフェクションしたモック(Mock)のフロ―サイトメトリーによる解析結果を示す。抗体mAB1およびmAB2は、クラウディン18A2(左のカラム)と細胞表面上の細胞外ドメイン2(Ex2、3番目のカラム)を特異的に認識し、他方クラウディン18A1(2番目のカラム)およびネガティブコントロールは陰性であることが示されている。抗体mAB1はmAB2と対照的に、細胞外ドメイン1(Ex1、4番目のカラム)とも特異的に結合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍関連抗原の発現または活性を抑制する薬剤を含む医薬組成物であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する医薬組成物。
【請求項2】
腫瘍阻害活性があり、かつ腫瘍関連抗原を発現するまたは異常発現する細胞に対して選択性のある薬剤からなる医薬組成物であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する医薬組成物。
【請求項3】
薬剤が、細胞死の誘導、細胞増殖の低減、細胞膜の損傷またはサイトカインの分泌を起こす請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬剤が、腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリッド形成するアンチセンス核酸である請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項5】
薬剤が、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項6】
薬剤が、腫瘍関連抗原に選択的に結合する、補体活性化抗体である請求項2記載の医薬組成物。
【請求項7】
投与した時、HLA分子と腫瘍関連抗原またはその一部との間の複合体の量を選択的に増加する薬剤を含む医薬組成物であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)SEQ ID NO:1−8、41−44、51−59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する医薬組成物。
【請求項8】
薬剤が、
(i)腫瘍関連抗原またはその一部、
(ii)腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその一部、
(iii)腫瘍関連抗原を発現する宿主細胞またはその一部、および
(iv)腫瘍関連抗原またはその一部とHLA分子との間の単離複合体、からなる群から選択される1以上の成分を含む請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬剤が2以上の薬剤を含み、それらの薬剤は、それぞれ別々の腫瘍関連抗原の発現または活性をそれぞれ選択的に抑制するか、それぞれ別々の腫瘍関連抗原を発現する細胞にそれぞれ選択性があるか、またはHLA分子とそれぞれ別々の腫瘍関連抗原またはその一部との間の複合体の量を増加し、かつ前記腫瘍関連抗原の少なくとも1種が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する請求項1、2または7記載の医薬組成物。
【請求項10】
(i)腫瘍関連抗原またはその一部、
(ii)腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその一部、
(iii)腫瘍関連抗原に結合する抗体またはその一部、
(iv)腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリッド形成するアンチセンス核酸、
(v)腫瘍関連抗原を発現する宿主細胞またはその一部、および
(vi)腫瘍関連抗原またはその一部とHLA分子との間の単離複合体
からなら群から選択される1種以上の成分を含む医薬組成物であって、
前記腫瘍関連抗原が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する医薬組成物。
【請求項11】
(ii)の該核酸が、発現ベクターである請求項8または10記載の医薬組成物。
【請求項12】
(ii)の該核酸が、プロモーターに機能的に結合している請求項8または10記載の医薬組成物。
【請求項13】
宿主細胞が、腫瘍関連抗原またはその一部を分泌する請求項8または10記載の医薬組成物。
【請求項14】
宿主細胞が、腫瘍関連抗原またはその一部に結合するHLA分子を追加的に発現する請求項8または10記載の医薬組成物。
【請求項15】
宿主細胞が、遺伝子組換え方法でHLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその一部を発現する請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
宿主細胞が、HLA分子を内因的に発現する請求項14記載の医薬組成物。
【請求項17】
宿主細胞が、抗原提示細胞である請求項8、10、14または16記載の医薬組成物。
【請求項18】
抗原提示細胞が、樹状細胞またはマクロファージである請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
宿主細胞が、非増殖性である請求項8、10および13〜18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
抗体が、モノクローナル抗体である請求項5または10記載の医薬組成物。
【請求項21】
抗体が、キメラまたはヒト化抗体である請求項5または10記載の医薬組成物。
【請求項22】
抗体が、天然抗体の断片である請求項5または10記載の医薬組成物。
【請求項23】
抗体が、治療剤または診断剤に結合している請求項5または10記載の医薬組成物。
【請求項24】
アンチセンス核酸が、腫瘍関連抗原をコードする核酸の、6〜50個の近接するヌクレオチド配列を含む請求項4または10記載の医薬組成物。
【請求項25】
腫瘍関連抗原またはその一部が、前記医薬組成物によって提供され、かつ異常量の腫瘍関連抗原またはその一部を発現する細胞の表面上のMHC分子に結合する請求項8および10〜13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項26】
結合が、細胞溶解反応を起こすおよび/またはサイトカイン放出を誘導する請求項25記載の医薬組成物。
【請求項27】
さらに、担体および/またはアジュバントを含む請求項1〜26のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項28】
アジュバントが、サポニン、GM−CSF、CpG、サイトカインまたはケモカインである請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患の治療のために使用してもよい請求項1〜28のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項30】
疾患が、癌である請求項29記載の医薬組成物。
【請求項31】
疾患が、肺腫瘍、胸部腫瘍、前立腺腫瘍、メラノーマ、結腸腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、耳鼻咽喉腫瘍、腎細胞癌または子宮頸癌、大腸癌または乳癌である請求項29記載の医薬組成物。
【請求項32】
腫瘍関連抗原が、SEQ ID NO:9〜19、45〜48、60〜66、85、90〜97、100〜102、105、106、111〜116、118、120、123、124、135〜137、139および142〜150、これらの一部または誘導体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む請求項1〜31のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項33】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患の診断方法であって、
(i)腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその一部の検出および/または
(ii)腫瘍関連抗原またはその一部の検出および/または
(iii)腫瘍関連抗原に対する抗体またはその一部の検出および/または
(iv)患者から単離したた生物試料中の腫瘍関連抗原またはその一部に特異的な細胞障害性リンパ球またはヘルパーTリンパ球の検出を含み、かつ前記腫瘍関連抗原が、
a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する診断方法。
【請求項34】
検出が、
(i)生物試料を、腫瘍関連抗原をコードする核酸あるいはその一部、腫瘍関連抗原あるいはその一部、それの抗体、または細胞障害性リンパ球あるいはヘルパーTリンパ球に特異的に結合する薬剤に接触させることと、
(ii)薬剤と、核酸あるいはその一部、腫瘍関連抗原あるいはその一部、それの抗体、または細胞障害性リンパ球あるいはヘルパーTリンパ球との間の複合体の形成を検出すること、とを含む請求項33記載の方法。
【請求項35】
検出を、対応する正常な生物試料での検出と対比する請求項33または34記載の方法。
【請求項36】
疾患が、2以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とし、
検出が、前記2以上の異なる腫瘍関連抗原をコードする2以上の核酸またはそれらの一部の検出、2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの一部の検出、前記2以上の異なる腫瘍関連抗原に結合する2以上の抗体またはそれらの一部の検出、または前記2以上の異なる腫瘍関連抗原に特異的な2以上の細胞障害性リンパ球またはヘルパーTリンパ球の検出を含む請求項33〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
核酸またはその一部を、前記核酸またはその一部に特異的にハイブリッド形成するポリヌクレオチドプローブを使用して検出する請求項33〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
ポリヌクレオチドプローブが、腫瘍関連抗原をコードする核酸の6〜50の近接するヌクレオチド配列を含む請求項37記載の方法。
【請求項39】
核酸またはその一部を検出するために、前記核酸またはその一部を選択的に増幅する請求項33〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
検出対象の腫瘍関連抗原またはその一部が、MHC分子との複合体中に存する請求項33〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
MHC分子がHLA分子である請求項40記載の方法。
【請求項42】
腫瘍関連抗原またはその一部を、前記腫瘍関連抗原またはその一部に特異的に結合する抗体を使用して検出する33〜36および40〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
抗体を、前記抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドを使用して検出する請求項33〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患の後退、進行または発生を決定する方法であって、前記疾患を患っているまたは前記疾患であることが疑われる患者からの試料を、
(i)腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその一部の量、
(ii)腫瘍関連抗原またはその一部の量、
(iii)腫瘍関連抗原またはその一部に結合する抗体の量、および
(iv)腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的である細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の量からなる群から選択される1以上のパラメーターについて、モニタリングすることを含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する方法。
【請求項45】
第一時点で第一試料の、第二時点で更なる試料のパラメーター(複数を含む)を測定し、疾患の進行を決定するために2つの試料を対比する請求項44記載の方法。
【請求項46】
疾患が、2以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とし、モニタリングが、
(i)前記2以上の異なる腫瘍関連抗原をコードする複数の核酸またはそれらの一部の量、
(ii)前記2以上の腫瘍関連抗原またはそれらの一部の量、
(iii)前記2以上の腫瘍関連抗原またはそれらの一部に結合する2以上の抗体の量、および/または
(iv)前記2以上の腫瘍関連抗原またはそれらの一部とMHC分子との間の複合体に特異的である2以上の細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の量
をモニタリングする請求項44または45記載の方法。
【請求項47】
核酸またはその一部の量を、前記核酸またはその一部に特異的にハイブリッド形成するポリヌクレオチドプローブを使用してモニタリングする請求項44〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
ポリヌクレオチドプローブが、腫瘍関連抗原をコードする核酸の6〜50個の近接するヌクレオチド配列を含む請求項47記載の方法。
【請求項49】
核酸またはその一部の量をモニタリングするために、前記核酸またはその一部を選択的に増幅する請求項44〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
腫瘍関連抗原またはその一部の量をモニタリングするために、前記腫瘍関連抗原またはその一部に特異的に結合する抗体を使用する請求項44〜46に記載の方法。
【請求項51】
抗体の量をモニタリングするために、抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドを使用する請求項44〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の量をモニタリングするために、腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の複合体を提供する細胞を使用する請求項44〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
ポリヌクレオチドプローブ、その抗体、そのタンパク質あるいはペプチド、または細胞を検出可能に標識する請求項37〜38、42〜43、47〜48および50〜52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
検出可能なマーカーが、放射性マーカーまたは酵素性マーカーである請求項53記載の方法。
【請求項55】
試料が、体液および/または身体組織を含む請求項33〜54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患を治療する方法であって、請求項1〜32のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する方法。
【請求項57】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患を、治療し、診断し、モニタリングする方法であって、前記腫瘍関連抗原またはその一部と結合し、治療剤または診断と合わさっている抗体を投与することを含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する方法。
【請求項58】
抗体がモノクローナル抗体である請求項42、50または57記載の方法。
【請求項59】
抗体がキメラまたはヒト化抗体である請求項42、50または57記載の方法。
【請求項60】
抗体が天然抗体の断片である請求項42、50または57記載の方法。
【請求項61】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患の患者を治療する方法であって、
(i)前記患者から反応性細胞を含む試料を取り出すことと、
(ii)前記腫瘍関連抗原またはその一部に対する細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の産生に有利な条件下で、前記試料を前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞と接触させることと、
(iii)腫瘍関連抗原またはその一部を発現する細胞を溶解するのに適した量の細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞を患者に導入すること、を含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する方法。
【請求項62】
宿主細胞が、分子腫瘍関連抗原またはその一部に結合するHLA分子を、遺伝子組換えにより発現する請求項61記載の方法。
【請求項63】
宿主細胞が、腫瘍関連抗原またはその一部に結合するHLA分子を、内因的に発現する請求項62記載の方法。
【請求項64】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患の患者を治療する方法であって、
(i)前記疾患に伴う細胞が発現する核酸を同定することと、
(ii)宿主細胞を前記核酸またはその一部でトランスフェクションすることと、
(iii)前記核酸の発現のためにトランスフェクションした宿主細胞を培養することと、
(iv)疾患に伴う患者の細胞への免疫応答を増加させるのに適切な量の宿主細胞またはその抽出物を患者に導入すること、を含み、ただし前記核酸が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される方法。
【請求項65】
さらに、腫瘍関連抗原またはその一部を提供するMHC分子を同定することを含み、かつ宿主細胞が同定したMHC分子を発現し、腫瘍関連抗原またはその一部を提供する請求項64記載の方法。
【請求項66】
免疫応答が、B細胞応答またはT細胞応答を含む請求項64または65記載の方法。
【請求項67】
免疫応答が、腫瘍関連抗原またはその一部を提供する宿主細胞に特異的な、または腫瘍関連抗原またはその一部を発現する患者の細胞に特異的な、細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の産生を含むT細胞応答である請求項66記載の方法。
【請求項68】
宿主細胞が非増殖性である請求項61〜67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾患の治療方法であって、
(i)腫瘍関連抗原の異常量を発現する細胞を患者から同定することと、
(ii)前記細胞の試料を単離することと、
(iii)前記細胞を培養することと、
(iv)細胞に対する免疫応答を誘発するのに適切な量の前記細胞を患者に導入することを含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされた配列を有する方法。
【請求項70】
疾患が癌である請求項33〜69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
患者における癌の進行を阻止する方法であって、請求項1〜32のいずれかに記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項72】
腫瘍関連抗原が、SEQ ID NO:9〜19、45〜48、60〜66、85、90〜97、100〜102、105、106、111〜116、118、120、123、124、135〜137、139および142〜150からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む請求項33〜71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
(a)SEQ ID NO:3〜5からなる群から選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で、(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸からなる群から選択される核酸。
【請求項74】
SEQ ID NO:10、12〜14および146〜150からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含むタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸。
【請求項75】
請求項73または74に記載の核酸を含む組換えDNAまたはRNA分子。
【請求項76】
ベクターである請求項75記載の組換えDNA分子。
【請求項77】
ベクターが、ウィルスベクターまたはバクテリオファージである請求項76記載の組換えDNA分子。
【請求項78】
さらに、核酸の発現を制御する発現制御配列を含む請求項75〜77のいずれかに記載の組換えDNA分子。
【請求項79】
発現制御配列が、核酸に対して相同性であるまたは異種性である請求項78記載の組換えDNA分子
【請求項80】
請求項73または74に記載の核酸、または請求項75〜79のいずれかに記載の組換えDNA分子を含む宿主細胞。
【請求項81】
さらに、HLA分子をコードする核酸を含む請求項80記載の宿主細胞。
【請求項82】
請求項73記載の核酸によってコードされたタンパク質またはポリペプチド。
【請求項83】
SEQ ID NO:10、12〜14、17〜19、90〜97、100〜102、105、106、111〜116、120、123、124、135〜137および142〜150からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含むタンパク質またはポリペプチド。
【請求項84】
請求項82または83記載のタンパク質またはポリペプチドの免疫抗原性断片。
【請求項85】
ヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合する請求項82または83記載のタンパク質またはポリペプチドの断片。
【請求項86】
タンパク質あるいはポリペプチド、またはこれらの一部に特異的に結合する薬剤であって、前記タンパク質またはポリペプチドが、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸からなる群から選択される核酸によってコードされる薬剤。
【請求項87】
タンパク質またはポリペプチドが、SEQ ID NO:9〜19、45〜48、60〜66、85、90〜97、100〜102、105、106、111〜116、118、120、123、124、135〜137、139および142〜150からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む請求項86記載の薬剤。
【請求項88】
抗体である請求項86または87記載の薬剤。
【請求項89】
抗体が、モノクローナル、キメラあるいはヒト化抗体、または抗体の断片である請求項88記載の薬剤。
【請求項90】
(i)タンパク質またはポリペプチド、またはその一部と、
(ii)前記タンパク質またはポリペプチド、またはその一部が結合するMHC分子
との複合体に選択的に結合する抗体であって、ただし前記抗体は、(i)または(ii)の単独とは結合せず、前記タンパク質またはポリペプチドは、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはこれらの一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸からなる群から選択される核酸によってコードされる抗体。
【請求項91】
タンパク質またはポリペプチドが、SEQ ID NO:9〜19、45〜48、60〜66、85、90〜97、100〜102、105、106、111〜116、118、120、123、124、135〜137、139および142〜150からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含む請求項90記載の抗体。
【請求項92】
モノクローナル、キメラあるいはヒト化抗体、または抗体の断片である請求項90または91記載の抗体。
【請求項93】
請求項86〜89のいずれかに記載の薬剤または請求項90〜92のいずれかに記載の抗体と治療剤または診断剤との間の結合体。
【請求項94】
治療剤または診断剤が毒素である請求項93記載の結合体。
【請求項95】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を検出するためのキットであって、
(i)腫瘍関連抗原をコードかする核酸またはその一部の検出、
(ii)腫瘍関連抗原またはその一部の検出、
(iii)腫瘍関連抗原に結合する抗体またはその一部の検出、および/または
(iv)腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的なT細胞の検出
のための薬剤を含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列、またはこれらの一部あるいは誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリッド形成する核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に対して相補的である核酸からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有するキット。
【請求項96】
腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその一部を検出する薬剤が、前記核酸を選択的に増幅するための核酸分子である請求項95記載のキット。
【請求項97】
核酸を選択的に増幅するための核酸分子が、腫瘍関連抗原をコードする核酸の6〜50の連続するヌクレオチド配列を含む請求項96記載のキット。
【請求項98】
SEQ ID NO:1〜8、41〜44、51〜59、84、117、119および138からなる群から選択される核酸配列由来のプロモーター領域を含む組換えDNA分子。
【請求項99】
抗体が、SEQ ID NO:9〜19、45〜48、60〜66、85、90〜97、100〜102、105、106、111〜116、118、120、123、124、135〜137、139および142〜150からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその一部あるいは誘導体を含むタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドを使用して、免疫化することによって得られる請求項5、10および20〜23のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項42、50、53および57〜60のいずれかに記載の方法。
【請求項100】
抗体の腫瘍関連抗原への選択的結合が、腫瘍関連抗原のグリコシル化の認識に関係する請求項5、10および20〜23のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項42、50、53および57〜60のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
抗体が、特異的にグリコシル化された形態の、好ましくは非グリコシル化形態の腫瘍関連抗原に選択的に結合する請求項5、10および20〜23のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項42、50、53および57〜60のいずれかに記載の方法。

【図41−1】
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【図41−2】
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【図41−3】
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【図41−4】
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【図41−5】
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【図41−6】
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【図41−7】
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【図41−8】
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【図41−9】
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【図41−10】
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【図41−11】
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【図41−12】
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【図41−13】
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【図41−14】
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【図41−15】
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【図41−16】
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【図41−17】
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【図41−18】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33−1】
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【図33−2】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公表番号】特表2008−508861(P2008−508861A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517082(P2007−517082)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005410
【国際公開番号】WO2005/113587
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505186821)ガニュメート・ファーマシューティカルズ・アクチェンゲゼルシャフト (14)
【氏名又は名称原語表記】GANYMED PHARMACEUTICALS AG
【Fターム(参考)】