説明

腫瘍の新しい診断および治療方法

【課題】腫瘍の診断および治療のための新規な手段の提供。
【解決手段】本発明は、放射性同位体を結合するためにペプチドを使用して、腫瘍を診断および治療する方法に関する。ペプチドはフィブロネクチンのエキストラドメインB (ED−B) の抗原結合部位を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位体を結合するために新規なペプチドを使用する、新しい診断および治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は、新しい血管の形成 (血管形成) なしでは、ある重量より多くを獲得することができず、そして微小血管密度と腫瘍侵襲性との間の相関は多数の腫瘍について報告されてきている (Folkman (1995)、Nature Med. 1、27−31)。その上、血管形成は視力を喪失させる眼の障害の大部分に関係する (Lee他、Surv. Ophtalmol. 43、245−269 (1998);Friedlander, M.他、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93、9764−9768 (1996))。血管形成のマーカーを選択的にターゲッティングできる分子は、腫瘍および血管増殖により特徴づけられる他の疾患、例えば、糖尿病性網膜症および年齢に関係する黄斑変性の診断および治療のための臨床的機会をつくるであろう。
【0003】
血管形成のマーカーは腫瘍の血管に関連して侵略的充実腫瘍の大部分において発現され、したがって静脈内注射された特異的バインダーに容易にアクセス可能であろう (Pasqualini他 (1997)、Nature Biotechnol. 15、542−546;Neri他 (1997)、Nature Biotechnol. 15、1271−1275)。血管新生のターゲテッド閉塞は腫瘍の梗塞およびつぶれを生じさせることができる (O’Reilly他 (1996)、Nature Med. 2、689−692;Huang他 (1997)、Science 275、547−550)。
【0004】
フィブロネクチン分子への選択的スプライシングにより挿入され、マウス、ラットおよびヒトにおいて同一である91アミノ酸の配列である、フィブロネクチンのED−Bドメインは、新血管構造物の回りに特異的に蓄積し (Castellani他 (1994)、Int. J. Cancer 59、612−618) そして分子の関与のターゲットを表すことができるであろう。事実、抗ED−B一本鎖Fv抗体フラグメント (scFv) は腫瘍担持マウスの腫瘍血管の回りに選択的に蓄積すること、および抗体アフィニティーはターゲッティング性能を支配するように思われること (Neri他 (1997)、Nature Biotechnol. 15、1271−1275;WO 97/45544) が最近示された。
【0005】
さらに、サブナノモル解離定数をもつフィブロネクチンのED−Bドメインならびにそれらの放射性標識化誘導体の結合に対して特異的な抗体および抗体フラグメントは、WO 99/58570に記載されている。これらの高いアフィニティーのヒト抗体フラグメントの1つ、すなわち、L19と呼ぶ125I標識化抗体フラグメントの生物分布は、既に腫瘍担持マウスにおいて研究された (Tarli他、Blood、Vol. 94、94、No. 1 (1999)、pp. 192−198)。L19−抗体を含んでなる放射性標識化複合体および血管形成の診断および治療のためのそれらの使用は、WO 01/62800に開示されている。
フィブロネクチンのBイソ型のED−Bドメインに結合する機能化一本鎖Fv抗体フラグメントの組換え体が、ピキア・パストリス (Pichia pastoris) において産生されることは既に記載された (Marty他、Protein Expression and Purification 21、156−164 (2001))。
【0006】
さらに、C末端システイニルペプチドを通して99mTcでscFv抗体フラグメントを放射性標識化することは記載された (George他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、Vol. 92 pp. 8358−8362、1995、およびVerhaar他、J. Nucl. Med.、Vol. 37 (5)、 pp. 868−872、1996)。
しかしながら、改良された薬物速度論的性質を有し、かつ放射性同位体、例えば、テクネチウムまたはレニウムで容易に標識化することができる抗体フラグメントを提供することが臨床的に要求されている。なぜなら、これらのラジオヌクレオチドは放射性薬品に十分に適しているからである。
【発明の概要】
【0007】
発明の目的
したがって、本発明の他の目的は、改良された性質、特にターゲット特異性および/またはin vivo安定性を有し、かつ例えばテクネチウムまたはレニウムの放射性同位体に容易に結合することができる抗体フラグメントを提供することである。
【0008】
発明の要約
本発明は、ペプチドを含んでなり、前記ペプチドが下記の部位および配列を含んでなる化合物を記載する:
aa) 表1に示す相補性決定領域HCDR3および/またはLCDR3、またはHCDR3領域について5アミノ酸までおよびLCDR3領域について6アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型を含んでなるフィブロネクチンのエキストラドメインBの抗原結合部位の配列 (ED−B);前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;
ab) 表1に示す相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3、またはHCDR1領域について3アミノ酸まで、HCDR2領域について8アミノ酸まで、HCDR3領域について5アミノ酸まで、LCDR1領域について6アミノ酸まで、LCDR2領域について4アミノ酸までおよびLCDR3領域について6アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型を含んでなるフィブロネクチンのエキストラドメインBの抗原結合部位の配列 (ED−B);前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;または
【0009】
ac) 配列番号1に従う配列 (L19) または30アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型;前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;および
ba) アミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys (配列番号2)、式中 Xaa1、Xaa2およびXaa3の各々は独立に任意の天然に存在するアミノ酸を表す;または
bb) アミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa4 (配列番号3)、式中Xaa1、Xaa2、Xaa3、およびXaa4の各々は独立に任意の天然に存在するアミノ酸を表す;または
bc) アミノ酸配列 (His)n (配列番号4)、式中nは4〜6の整数である;
ここでaa)、ab) またはac) のC末端は配列番号2、配列番号3または配列番号4の配列の1つのN末端にペプチド結合を介して結合している。
【0010】
化合物は一本鎖抗体フラグメント、特にacFvフラグメントであることが好ましい。さらに、化合物は放射性同位体、例えば、テクネチウムの放射性同位体、例えば、94mTc、99mTc、レニウムの放射性同位体、例えば、186Re、188Re、または他のアイソトープ、例えば、203Pb、67Ga、68Ga、43Sc、44Sc、47Sc、110mIn、111In、97Ru、62Cu、64Cu、67Cu、68Cu、86Y、88Y、90Y、121Sn、161Tb、153Sm、166Ho、105Rh、177Lu、72Asおよび18Fに結合させることが好ましい。
【0011】
本発明は、また、活性剤として前述の化合物と、生理学上許容されるアジュバント、希釈剤および/または担体とを含んでなる医薬組成物を記載する。
また、本発明は、放射性同位体、例えば、テクネチウムまたはレニウムの放射性同位体を結合するための下記の部位および配列を含んでなるペプチドの使用を記載する:
aa) 表1に示す相補性決定領域HCDR3および/またはLCDR3、またはHCDR3領域について5アミノ酸までおよびLCDR3領域について6アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型を含んでなるフィブロネクチンのエキストラドメインBの抗原結合部位の配列 (ED−B);前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;
【0012】
ab) 表1に示す相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3、またはHCDR1領域について3アミノ酸まで、HCDR2領域について8アミノ酸まで、HCDR3領域について5アミノ酸まで、LCDR1領域について6アミノ酸まで、LCDR2領域について4アミノ酸までおよびLCDR3領域について6アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型を含んでなるフィブロネクチンのエキストラドメインBの抗原結合部位の配列 (ED−B);前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;または
ac) 配列番号1に従う配列 (L19) または30アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型;前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;および
【0013】
ba) アミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys (配列番号2)、式中 Xaa1、Xaa2およびXaa3の各々は独立に任意の天然に存在するアミノ酸を表す;または
bb) アミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa4 (配列番号3)、式中Xaa1、Xaa2、Xaa3、およびXaa4の各々は独立に任意の天然に存在するアミノ酸を表す;または
bc) アミノ酸配列 (His)n (配列番号4)、式中nは4〜6の整数である;
ここでaa)、ab) またはac) のC末端は配列番号2、配列番号3または配列番号4の配列の1つのN末端にペプチド結合を介して結合している。
【0014】
抗体フラグメントは下記の配列により規定される (配列番号1):
(VH)
EVQLLESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS
SFSMSWVRQA PGKGLEWVSS ISGSSGTTYY
ADSVKGRFTI SRDNSKNTLY LQMNSLRAED
TAVYYCAKPF PYFDYWGQGT LVTVSS
(リンカー)
GDGSSGGSGG AS
(VL)
EIVLTQSPGT LSLSPGERAT LSCRASQSVS
SSFLAWYQQK PGQAPRLLIY YASSRATGIP
DRFSGSGSGT DFTLTISRLE PEDFAVYYCQ
QTGRIPPTFG QGTKVEIK
【0015】
30アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換は、配列番号1の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸の欠失、挿入および/または置換である。しかしながら、相補性決定領域 (CDR) 内で、特許請求の範囲に記載するペプチド、例えば、配列番号1のペプチド、アミノ酸 (aa) の欠失、挿入および/または置換である変異型は下記表1において規定される最大の変動を超えない (HCDR:重鎖のCDR;LCDR:軽鎖のCDR)。
【0016】
【表1】

【0017】
CDRは下記の文献に従い規定した:E. A. Kabat他、”Sequences of Proteins of Immunological Interest”、U. S. Department of Health and Human Services、National Institutes for Health、マリーランド州ベセスダ、第5版、1991。
配列番号1に従う配列 (L19) または20アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換である配列番号1の変異型を含んでなるペプチドは好ましい。
【0018】
表1に示すCDR配列の変異型、特に欠失、挿入および/または置換であり、かつ配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する配列番号1の変異型を含んでなるペプチドは、BIAcore (WO 99/58570、実施例2および表2参照) で測定して、サブナノモル (すなわち、10-9より小さい) 解離定数KdをもつフィブロネクチンのED−Bドメインに結合するペプチドとして規定される。
【0019】
好ましいアミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys (配列番号2) は、配列Gly−Gly−Gly−Cys (配列番号5) およびGly−Cys−Gly−Cys (配列番号6) である。配列Gly−Gly−Gly−Cys (配列番号5) は最も好ましい。
好ましいアミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa4 (配列番号3) は、配列Gly−Gly−Gly−Cys−Ala (配列番号7) およびGly−Cys−Gly−Cys−Ala (配列番号8) である。配列Gly−Gly−Gly−Cys−Ala (配列番号7) は最も好ましい。
【0020】
アミノ酸配列 (His)n (配列番号4) を含んでなる化合物において、nが6である化合物は好ましい。
テクネチウムまたはレニウムの好ましい放射性同位体は、94mTc、99mTc、186Reおよび188Reである。放射性同位体99mTcは最も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、タンパク質コード領域を含む、L19誘導体の発現のための、発現カセットの構造を示す。
【図2】図2は、F9 (奇形癌腫) 担持ヌードマウスにおけるTc−99m−AP39の腫瘍/血液比 (平均±SD、n=3) を示す。
【図3】図3は、F9 (奇形癌腫) 担持ヌードマウスの平面状シンチグラフィーを示し、物質注射後5時間におけるシンチグラムを示す。
【図4】図4は、F9 (奇形癌腫) 担持ヌードマウスの平面状シンチグラフィーを示し、物質注射後24時間におけるシンチグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一本鎖抗体フラグメントL19 (配列番号1) は、以前に腫瘍担持マウスにおいてこの化合物の生物分布を研究するために、125Iで標識化された (Tarli他、Blood、Vol. 94、No. 1 (1999)、pp. 192−198)。結果は、腫瘍の血管のin vivo選択的ターゲッティングを達成できることを示した。しかしながら、驚くべきことには、一本鎖抗体フラグメントL19をペプチドba)、bb) またはbc) に結合させ、テクネチウムまたはレニウムの放射性同位体で標識化すると、その薬物速度論的性質を実質的に改良できることが見出された。
【0023】
アイソトープ99mTcは、放射化学的性質 (99Mo/99mTc生成物質により容易に入手可能であり、140 KeVの単一のガンマ−フォトンを放射し、高いフォトンフラックスを有し、6時間の半減期で崩壊する) および原価効率を有するので、日常の臨床的SPECTのために選択される放射性標識である。療法的適用のために、化学的に類似するアイソトープ186Reおよび188Reを使用する標識化は特に好ましい (Hsieh、B. T.他、Nucl. Med. Biol. 1999、26 (8)、967−972;973−976、Zamora、P. O.他、Anticancer Res. 1997、17 (3B)、1803−1838)。
【0024】
本発明のペプチドはフィブロネクチンの細胞外ED−Bドメインに対する組換えscFv抗体L19 (配列番号1) の誘導体であり、そして第1図に従い遺伝子工学を介して製造された。下記のペプチドが製造された:
L19 (配列番号1)
L19His:
1 EVQLLESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SFSMSWVRQA PGKGLEWVSS
51 ISGSSGTTYY ADSVKGRFTI SRDNSKNTLY LQMNSLRAED TAVYYCAKPF
101 PYFDYWGQGT LVTVSSGDGS SGGSGGASEI VLTQSPGTLS LSPGERATLS
151 CRASQSVSSS FLAWYQQKPG QAPRLLIYYA SSRATGIPDR FSGSGSGTDF
201 TLTISRLEPE DFAVYYCQQT GRIPPTFGQG TKVEIKAAAL EHHHHHH
(配列番号9)
【0025】
AP38:
1 EVQLLESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SFSMSWVRQA PGKGLEWVSS
51 ISGSSGTTYY ADSVKGRFTI SRDNSKNTLY LQMNSLRAED TAVYYCAKPF
101 PYFDYWGQGT LVTVSSGDGS SGGSGGASEI VLTQSPGTLS LSPGERATLS
151 CRASQSVSSS FLAWYQQKPG QAPRLLIYYA SSRATGIPDR FSGSGSGTDF
201 TLTISRLEPE DFAVYYCQQT GRIPPTFGQG TKVEIKGGGC
(配列番号10)
【0026】
AP39:
1 EVQLLESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SFSMSWVRQA PGKGLEWVSS
51 ISGSSGTTYY ADSVKGRFTI SRDNSKNTLY LQMNSLRAED TAVYYCAKPF
101 PYFDYWGQGT LVTVSSGDGS SGGSGGASEI VLTQSPGTLS LSPGERATLS
151 CRASQSVSSS FLAWYQQKPG QAPRLLIYYA SSRATGIPDR FSGSGSGTDF
201 TLTISRLEPE DFAVYYCQQT GRIPPTFGQG TKVEIKGGGC A
(配列番号11)
【0027】
L19−GlyCysGlyCys:
1 EVQLLESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SFSMSWVRQA PGKGLEWVSS
51 ISGSSGTTYY ADSVKGRFTI SRDNSKNTLY LQMNSLRAED TAVYYCAKPF
101 PYFDYWGQGT LVTVSSGDGS SGGSGGASEI VLTQSPGTLS LSPGERATLS
151 CRASQSVSSS FLAWYQQKPG QAPRLLIYYA SSRATGIPDR FSGSGSGTDF
201 TLTISRLEPE DFAVYYCQQT GRIPPTFGQG TKVEIKGCGC
(配列番号12)
【0028】
L19−GlyCysGlyCysAla:
1 EVQLLESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SFSMSWVRQA PGKGLEWVSS
51 ISGSSGTTYY ADSVKGRFTI SRDNSKNTLY LQMNSLRAED TAVYYCAKPF
101 PYFDYWGQGT LVTVSSGDGS SGGSGGASEI VLTQSPGTLS LSPGERATLS
151 CRASQSVSSS FLAWYQQKPG QAPRLLIYYA SSRATGIPDR FSGSGSGTDF
201 TLTISRLEPE DFAVYYCQQT GRIPPTFGQG TKVEIKGCGC A
(配列番号13)
【0029】
ペプチドの製造を下記の実施例において詳細に説明する (「実験」参照)。
抗体フラグメントL19は最初に大腸菌 (E. coli) 中の発現により製造された (WO 99/58570参照)。しかしながら、scFv抗体フラグメントの大規模生産のために、この発現系は不満足であることが発見された。他の発現系、酵母発現系、特にピキア・パストリス (Pichia pastoris) 発現系が試験された。
【0030】
酵母、例えば、ピキア・パストリス (Pichia pastoris) は一般に高度に生物活性である抗体フラグメント、例えば、フラグメントAP39を発現できるが、生物製剤の経済的製造に必要な、250 mgまでの抗体フラグメント/リットルの培養物の高い収量の発現は構成的発現ベクター (例えば、pGAP) によってのみ達成でき、メタノール誘導可能なベクター (例えば、pPIC9K) により達成できないことを本発明者らは発見した。この構成的発現系の追加の利点は、誘導可能な酵母発現に比較して簡素化された、耐久力の大きい発酵手法である。予期せざることには、抗体フラグメント、例えば、フラグメントAP39のN末端がα−シグナル配列からのKex2切断部位に直接融合されている発現カセット使用するとき、抗体フラグメントの適切なシグナル配列のプロセシングが観測されることを本発明者らは発見した。
【0031】
これらのペプチドは診断および治療の適用、特に侵襲性腫瘍および腫瘍転移の診断および治療に適する。好ましい診断適用はSPECT (Single Photon Emission Computed Tomography) およびPET (Positron Emission Tomography) である。
【0032】
前述のペプチドは前述したように放射性同位体、例えば、テクネチウムおよびレニウムの放射性同位体、好ましくは放射性同位体94mTc、99mTc、186Reおよび188Reの標識化に適する。ペプチドを標識化するために、ペプチドをまず適当な還元剤、例えば、塩化第一錫またはトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン (TCEP)で還元する。生ずる還元されたペプチドはSH基を示し、SH基は99mTc生成物質の溶出物または188Re生成物質の溶出物および塩化第一錫と反応して、本発明の化合物を生成することができる (詳細については、下記の実験実施例参照)。間接的標識化は、キレート化リガンドを前もって結合させ、次いで放射性同位体、例えば、インジウム、イットリウム、ランタニドおよびその他を複合化することによって実施される。
【0033】
キレート化リガンドはエチレンジアミン四酢酸 (EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸 (DTPA)、シクロヘキシル1,2−ジアミン四酢酸 (CDTA)、エチレングリコール−O,O'−ビス (2−アミノエチル)−N,N,N',N'−二酢酸 (HBED)、トリエチレンテトラアミン六酢酸 (TTHA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N',N'''−四酢酸 (DOTA)、1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N',N''−トリ酢酸 (NOTA)、および1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N',N'',N'''−四酢酸 (TETA) からペプチド化合物のアミンまたはチオール基に誘導化することが好ましい。
【0034】
キレート化リガンドは適当なカップリング基、例えば、活性エステル、マレイミド、チオカルバメートまたはα−ハロゲン化アセトアミド部分を有する。キレート化リガンドをアミン基、例えば、リシン残基のε−NH2基に結合するために、ペプチド化合物を前もって還元することは不必要である。放射性標識化されたペプチドは、放射線診断および放射線治療の適用に適する。
【0035】
生ずる放射性標識化ペプチドは、動物実験において予期せざる利点を示す。例えば、標識化ペプチド、例えば、99mTc標識化AP39 (配列番号11) はヌードマウスにおいて腎臓を介して24時間以内に70%またはそれ以上、例えば、80.63%に見出されたが、125Iで標識化されたL19 (配列番号1) について、ヌードマウスにおける排出は腎臓を介して24時間以内にわずかに67.79%に見出された。標識化ペプチド、例えば、99mTc標識化AP39の腫瘍/血液比は5時間後に5:1またはそれ以上、好ましくは8:1またはそれ以上、例えば、10:1であるが、125I標識化L19について、この比はわずかに約3:1である。
【0036】
また、しばしば劣った生物分布特性を示す他の99mTc標識化scFv抗体に比較して、これは予期せざる挙動である。例えば、Verhaar他、J. Nucl. Med.、Vol. 37 (5)、pp. 868−872、1996において、24時間後にわずかに4:1の腫瘍/血液比、24時間後の9%の腎臓蓄積を示す99mTc標識化scFv抗体を報告している。この腎臓蓄積は、本発明において記載するペプチドの値、例えば、99mTc標識化AP39について1.3%に比較して、非常に高い (下記の実施例13参照)。
【0037】
さらに、本発明の標識化ペプチド、例えば、99mTc標識化AP39のin vivo安定性は、125I標識化L19のin vivo安定性に比較して非常に高い。ペプチド、例えば、99mTc標識化AP39の注射後2時間において、血清内の放射能のわずかに10%以下、例えば、3%は代謝物質のためであったが、125I標識化L19の注射後2時間において、血清中の放射能の49%は代謝物質のためであり、これは遊離ヨウ素であることがあることを本発明者らは発見した。また、ペプチド、例えば、99mTc標識化AP39のin vivo安定性は、ターゲットED−Bに対する結合能力が延長して保存されることによって反映される。
【0038】
ペプチド、例えば、99mTc標識化AP39の注射後2時間において、血清内の放射能の50%またはそれ以上、例えば、74%はED−Bに結合することができたが、I−125標識化L19の注射後2時間において、血清中の放射能のわずかに27%がED−Bに結合するできることを本発明者らは発見した。また、本発明の化合物は高い腫瘍蓄積を示している。例えば、Tc−99m−AP39およびIn−111−MX−DTPA−ε−HN (Lys) −AP39は、注射後 (p.i.) 1時間において10.7 (Tc−99m) または12.9 (In−111) %の注射投与量/g (ID/g) の高い腫瘍蓄積を表示した。こうして、腫瘍吸収は他の既知のIn−111またはTc−99m標識化抗体フラグメントに比較して有意に高い (例えば、Kobayashi他、J. Nucl. Med.、Vol. 41 (4)、pp. 755−762、2000; Verhaar他、J. Nucl. Med.、Vol. 37 (5)、pp. 868−872、1996)。
【0039】
化合物は診断および治療の適用に適する。化合物は好ましくは非経口投与、より好ましくは静脈内注射により患者に適用される。ヒトの投与量は放射線診断の適用において0.1〜1 mg/患者の範囲、そして放射線治療の適用において0.1〜100 mg/患者の範囲であることが好ましい。
下記の実施例において、本発明の化合物を製造し、標識化する方法を詳細に説明する。これらの実施例は例示であり、本発明を限定しない。
【実施例】
【0040】
実験
実施例1L19誘導体の製造
フィブロネクチンのスプライス変異型のエキストラドメインB (ED−B) に対する組換え抗体 (scFv L19、短縮名称L19) は出発物質であった。scFv L19は、合成ヒト抗体レパートリーからファージ展示選択により単離された (Neri他、1997、Nature Biotechnol. 15:1271;Pinl他、1998、J. Biol. Chem. 273:21769)。この組換え抗体フラグメントはいわゆる一本鎖抗体フラグメント (scFv) の形態であり、そしてリンカー配列により接続されたVHおよびVL領域から成る (配列番号1参照)。このscFv L19はED Bに対して例外的に高いアフィニティーを有する (Kd:5.4×10-11 M)。
【0041】
種々の誘導体L19は遺伝子操作により製造された (第1図参照)。L19を修飾するために、追加の配列をコードし、発現ベクター中にクローニングされたプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) により、DNAをコードするscFvを増幅した。
【0042】
L19誘導体:
L19: 追加の末端の修飾をもたない。
L19 HisNiキレートクロマトグラフィーおよび放射性同位体の結合のための、C末端のHis6ドメイン (His tag)。
AP38: 治療および診断において使用できる物質 (例えば、放射性同位体) を結合 (Cysを介して) するための C末端のGlyGlyGlyCysドメイン。
AP39: 治療および診断において使用できる物質 (例えば、放射性同位体) を結合 (Cysを介して) するためのC末端のGlyGlyGlyCysAlaドメイン。
L19−GlyCysGlyCys:治療および診断において使用できる物質 (例えば、放射性同位体) を結合 (Cysを介して) するためのC末端のGlyCysGlyCysドメイン。
L19−GlyCysGlyCysAla:治療および診断において使用できる物質 (例えば、放射性同位体) を結合 (Cysを介して) するためのC末端のGlyCysGlyCysAlaドメイン。
【0043】
L19誘導体の組換え生産
記載したL19誘導体を原核生物および真核生物の発現系において生産した。
a) 大腸菌 (E. coli) 中のL19の生産
IPTG誘導可能なプロモーターおよびアンピシリン耐性マーカーを使用して、種々のL19誘導体 (AP38、AP39、L19−GlyCysGlyCys、L19−GlyCysGlyCysAla、L19、L19 His) をコードするDNA配列を原核生物の発現ベクター (pDN5、Pini他、1997、J. Immunol. Methods 206:171、Pini他、1998、J. Biol. Chem. 273:21769;pET、Novagen)中にクローニングした。
【0044】
周辺質中への組換えタンパク質の分泌を可能にするために、このベクターを使用して、scFvのN末端がPel Bシグナル配列に融合されている発現カセットを生産した。この発現ベクターで大腸菌 (E. coli) (TG1、BL21DE3およびHB2151) を形質転換し、次いでアンピシリン選択により、安定なプロデューサー株を確立することができた。scFvを生産するために、これらの株を1%のグルコースの存在下に増殖期 (37℃) において培養してプロモーターを抑制した。IPTGを添加し、30℃において16時間までインキュベートすることによって、培養物中のscFvの発現を誘導した。大腸菌 (E. coli) 株の完全な抽出物から、周辺質画分から、または精製および収量に関して特に効率的であることが証明された、培養上清から、可溶性、抗原結合性scFv物質を単離することができた。震蘯フラスコ中で、そして10リットルまでの培養体積の発酵において、生産を実施した。
【0045】
b) ピキア・パストリス (Pichia pastoris) におけるL19誘導体の生産
L19 His、AP38、AP39、L19−GlyCysGlyCysおよびL19−GlyCysGlyCysAlaをコードするDNA配列をPCRにより増幅し、大腸菌 (E. coli) 中に、そして酵母ピキア・パストリス (Pichia pastoris) 中の生産のために発現ベクターpPIC9KおよびpGAP (Invitrogen) 中にクローニングした。異種遺伝子を発現させるために、pPIC9Kはメタノール誘導可能なプロモーター (AOX1) を含有し、そしてpGAPはGAPDH酵素の構成的プロモーターを含有する。さらに、組換え産物を発現させ、分泌させるために、これらのベクターは、外来遺伝子およびシグナル配列 (酵母α因子からの) の選択/増幅のために、それぞれジェネティシン耐性遺伝子およびゼオシン耐性遺伝子を含有する。
【0046】
使用したAP39発現カセットは、シグナル配列を排除するためにKex2切断部位のみを含有し、天然α因子のプロセシングの他の切断部位を含有しない融合タンパク質 (α因子のシグナル+L19誘導体) をコードする。ピキア・パストリス (Pichia pastoris) 株の中へ線状化ベクターをエレクトロポレートし (例えば、GS115株の中へpPIC9K−AP39、X33株の中へpGAP−AP39)、引き続いてジェネティシンまたはゼオシンを選択することによって、安定なトレンスフェクトされたPPクローンを確立した。
【0047】
これらのクローンを使用して前記L19誘導体を可溶性分泌タンパク質として生産することができた。クローンを30℃においてMBGY培地または基底ミネラル培地中で培養した。pPICに基づくクローンでは、発現期間にプロモーターを誘導するためにメタノールを添加した。組換え産物は正しくプロセシングされた末端および高い抗原結合活性を有した。達成できた収量 (未精製の、生物活性産物/リットルの培養上清) は、培養条件およびプロセスコントロールに依存した:例えば、pPIC9K−AP39/GS115 (震蘯フラスコ 5 mg/l、発酵槽 10〜15 mg/l);pGAP−AP39/X33 (震蘯フラスコ 30〜40 mg/l、発酵槽 100〜250 mg/l)。
【0048】
アフィニティークロマトグラフィー (rProtein A、Streamline PharmaciaまたはED B抗原カラム) を使用し、次いでサイズ排除クロマトグラフィーを使用することによって、ピキア・パストリス (Pichia pastoris) または大腸菌 (E. coli) 培養上清からL19誘導体を精製した。それ以上のプロセシングに使用した、精製されたAP39画分は、ホモダイマー構造 (大部分について共有結合したサブユニットを有する) および高い抗原結合活性を有した。
【0049】
実施例2a還元されたAP38 [還元されたL19−(Gly)3−Cys−OH]の合成
156 μlのPBS (リン酸塩緩衝液)/10%グリセリン中の240 μg (4.29 nmol) のS−S二量体AP38の溶液に、50 μlのTCEP溶液 (14.34 mgのTCEP×HCl/5 mlの水性Na2HPO4、0.1 M、pH=7.4) を添加した。反応混合物を室温において1時間おだやかに震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、SHモノマーAP38を精製した。単離された産物のSDS−PAGE分析により、S−S二量体AP38がSHモノマーAP38に定量的に形質転換されたことが証明された。
収量:79.4 μg/220 μlのPBS (33.1%)。
【0050】
実施例2bTc−99m−AP38 [Tc−99m−L19−(Gly)3−Cys−OH]の合成
2.37 mgのL−酒石酸二ナトリウムをバイアル中に入れ、次いで220 μlのPBS中の79.4 μgの還元されたAP38を添加し、そしてこの溶液を100 μlの水性Na2HPO4緩衝液 (1 M、pH=10.5) で希釈した。50 μlのTc−99m生成物質溶出液 (24時間) および10 μlのSnCl2溶液 (5 mgのSnCl2/1 mlの0.1MのHCl) を添加した。反応混合物を37℃において0.5時間震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、Tc−99m標識化AP38を精製した。
放射化学的収率: 39.7%
放射化学的純度: 92.5% (SDS−PAGE)
比活性: 17.7 MBq/nmol
免疫反応性: 88.7%
【0051】
実施例3a還元されたAP39 [還元されたL19−(Gly)3−Cys−Ala−OH]の合成
135 μlのPBS/10%グリセリン中の240 μg (4.29 nmol) のS−S二量体AP39の溶液に、50 μlのTCEP溶液 (14.34 mgのTCEP×HCl/5 mlの水性Na2HPO4、0.1 M、pH=7.4) を添加した。反応混合物を室温において1時間おだやかに震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、SHモノマーAP39を精製した。単離された産物のSDS−PAGE分析により、S−S二量体AP39がSHモノマーAP39に定量的に形質転換されたことが証明された。
収量:135.9 μg/180 μlのPBS (56.2%)。
【0052】
実施例3bTc−99m−AP39 [Tc−99m−L19−(Gly)3−Cys−Ala−OH]の合成
4.2 mgのL−酒石酸二ナトリウムをバイアル中に入れ、次いで180 μlのPBS中の135.9 μgの還元されたAP39を添加し、そしてこの溶液を100 μlの水性Na2HPO4緩衝液 (1 M、pH=10.5) を添加した。100 μlのTc−99m生成物質溶出液 (24時間) および10 μlのSnCl2溶液 (5 mgのSnCl2/1 mlの0.1MのHCl) を添加した。反応混合物を37℃において0.5時間震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、Tc−99m標識化AP39を精製した。
放射化学的収率: 50.1%
放射化学的純度: 91.5% (SDS−PAGE)
比活性: 21.4 MBq/nmol
免疫反応性: 96.4%
【0053】
実施例4Re−188−AP38 [Re−188−L19−(Gly)3−Cys−OH]の合成
2.37 mgのL−酒石酸二ナトリウムをバイアル中に入れ、次いで310 μlのPBS中の112 μgの還元されたAP38を添加し、そしてこの溶液を100 μlの水性Na2HPO4緩衝液 (1 M、pH=10.5) で希釈した。100 μlのRe−188生成物質溶出液および50 μlのSnCl2溶液 (5 mgのSnCl2/1 mlの0.1MのHCl) を添加した。反応混合物を37℃において1.5時間震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、Re−188標識化AP38を精製した。
放射化学的収率: 28.3%
放射化学的純度: 91.1% (SDS−PAGE)
比活性: 15.3 MBq/nmol
免疫反応性: 89.9%
【0054】
実施例5Re−188−AP39 [Re−188−L19−(Gly)3−Cys−Ala−OH]の合成
2.37 mgのL−酒石酸二ナトリウムをバイアル中に入れ、次いで303 μlのPBS中の112 μgの還元されたAP39を添加し、そしてこの溶液を100 μlの水性Na2HPO4緩衝液 (1 M、pH=10.5) を添加した。100 μlのRe−188生成物質溶出液および50 μlのSnCl2溶液 (5 mgのSnCl2/1 mlの0.1MのHCl) を添加した。反応混合物を37℃において1.5時間震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、Re−188標識化AP39を精製した。
放射化学的収率: 33.5%
放射化学的純度: 92.3% (SDS−PAGE)
比活性: 18.5 MBq/nmol
免疫反応性: 92.5%
【0055】
実施例6a還元されたL19−Gly−Cys−Gly−Cys−OHの合成
160 μlのPBS/10%グリセリン中の240 μg (4.29 nmol) のS−S二量体L19−Gly−Cys−Gly−Cys−OHの溶液に、75 μlのTCEP溶液 (14.34 mgのTCEP×HCl/5 mlの水性Na2HPO4、0.1 M、pH=7.4) を添加した。反応混合物を室温において1時間おだやかに震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、SHモノマーL19−Gly−Cys−Gly−Cys−OHを精製した。単離された産物のSDS−PAGE分析により、S−S二量体L19−Gly−Cys−Gly−Cys−OHがSHモノマーL19−Gly−Cys−Gly−Cys−OHに定量的に形質転換されたことが証明された。
収量:80.4 μg/210 μlのPBS (33.5%)。
【0056】
実施例6bTc−99m−L19−Gly−Cys−Gly−Cys−OHの合成
2.37 mgのL−酒石酸二ナトリウムをバイアル中に入れ、次いで210 μlのPBS中の80.4 μgの還元されたL19−Gly−Cys−Gly−Cys−OHを添加し、そしてこの溶液を100 μlの水性Na2HPO4緩衝液 (1 M、pH=10.5) で希釈した。50 μlのTc−99m生成物質溶出液 (24時間) および10 μlのSnCl2溶液 (5 mgのSnCl2/1 mlの0.1MのHCl) を添加した。反応混合物を37℃において0.5時間震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、Tc−99m標識化L19−Gly−Cys−Gly−Cys−OHを精製した。
放射化学的収率: 37.7%
放射化学的純度: 91.5% (SDS−PAGE)
比活性: 19.7 MBq/nmol
免疫反応性: 89.7%
【0057】
実施例7a還元されたL19−Gly−Cys−Gly−Cys−Ala−OHの合成
155 μlのPBS/10%グリセリン中の240 μg (4.29 nmol) のS−S二量体L19−Gly−Cys−Gly−Cys−Ala−OHの溶液に、75 μlのTCEP溶液 (14.34 mgのTCEP×HCl/5 mlの水性Na2HPO4、0.1 M、pH=7.4) を添加した。反応混合物を室温において1時間おだやかに震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、SHモノマーL19−Gly−Cys−Gly−Cys−Ala−OHを精製した。単離された産物のSDS−PAGE分析により、S−S二量体L19−Gly−Cys−Gly−Cys−Ala−OHがSHモノマーL19−Gly−Cys−Gly−Cys−Ala−OHに定量的に形質転換されたことが証明された。
収量:81.2 μg/215 μlのPBS (33.8%)。
【0058】
実施例7bTc−99m−L19−Gly−Cys−Gly−Cys−Ala−OHの合成
2.37 mgのL−酒石酸二ナトリウムをバイアル中に入れ、次いで215 μlのPBS中の81.2 μgの還元されたL19−Gly−Cys−Gly−Cys−Ala−OHを添加し、そしてこの溶液を100 μlの水性Na2HPO4緩衝液 (1 M、pH=10.5) で希釈した。50 μlのTc−99m生成物質溶出液 (24時間) および10 μlのSnCl2溶液 (5 mgのSnCl2/1 mlの0.1MのHCl) を添加した。反応混合物を37℃において0.5時間震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、Tc−99m標識化L19−Gly−Cys−Gly−Cys−Ala−OHを精製した。
放射化学的収率: 35.6%
放射化学的純度: 93.5% (SDS−PAGE)
比活性: 19.1 MBq/nmol
免疫反応性: 88.7%
【0059】
実施例8aシステイン−SH基に対するEDTA、CDTA、TETA、DTPA、TTHA、HBED、DOTA、NOTA、およびDO3A型キレート化剤の特異的結合のための還元されたAP39の合成
50 μlのTCEP溶液 (14.3 mgのTCEP×HCl/5 mlの水性Na2HPO4、0.1 M、pH=7.4) を、450 μlのPBS中の400 μg (7.1 nmol) のAP39の溶液に添加した。反応混合物を37℃において1時間おだやかに震蘯した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:酢酸ナトリウム緩衝液、0.1 M、pH=5.0) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、還元されたAP39を精製した。単離された産物のSDS−PAGE分析により、AP39が還元されたAP39に完全に形質転換されたことが証明された。
収量:140 μg/200 μlのPBS (35%)。
【0060】
実施例8bMX−DTPA−マレイミド (1,4,7−トリアザ−2−(N−マレイミドエチレンp−アミノ)ベンジル−1,7−ビス(カルボキシメチル)−4−カルボキシメチル6−メチルヘプタン) の合成
512 mg (1 mmol) の{[3−(4−アミノ−フェニル)−2−(ビス−カルボキシメチル−アミノ)−プロピル]−[2−(ビス−カルボキシメチル−アミノ)−プロピル]−アミノ}−酢酸 (Macrocyclics Inc.、米国テキサス州ダラス) および707 mg (7 mmol) のトリエチルアミンを3 mlの乾燥DMF中に溶解した。1 mlの乾燥DMF中の400 mg (1.5 mmol) の3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−ピロール−1−イル)−プロピオン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル (Aldrich) を滴下した。この溶液を50℃において5時間の間攪拌した。30 mlのジエチルエーテルをゆっくり添加した。反応混合物をさらに30分間攪拌した。濾過により、沈殿物を集めた。粗生成物をRP−HPLC (アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸/3:96.9:0.1 → 99.9:0:0.1)。収率:61% (405 mg、0.61 mmol) により精製した。MS−ESI:664=M++1。
【0061】
実施例8cIn−111−MX−DTPA−マレイミド−S(Cys)−AP39−R (R=還元された) の合成
200 μlの酢酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 5) 中の140 μg (5 nmol) のAP39−Rを、50 μlの溶解した1,4,7−トリアザ−2−(N−マレイミドエチレンp−アミノ)ベンジル−1,7−ビス(カルボキシメチル)−4−カルボキシメチル6−メチルヘプタン (500 μlの酢酸ナトリウム緩衝液0.1M、pH 5中の0.25 mgのDTPA−マレイミド) と37℃において3時間反応させた。Slide−A−Lyzer 10,000 MWCO (Pierce Inc.、米国イリノイ州ロックフォード) を使用して、反応混合物を200 mlの酢酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 6) で2×1時間透析した。
【0062】
80 μlの [In−111]InCl3溶液 (HCl、1N、40 MBq、Amersham Inc.) を添加し、反応混合物を37℃に30分間加熱した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、In−111標識化DTPA−マレイミド−S(Cys)−AP39−Rを精製した。
放射化学的収率: 54%
放射化学的純度: 94% (SDS−PAGE)
比活性: 6.2 MBq/nmol
免疫反応性: 86%
【0063】
実施例9In−111−MX−DTPA−ε−HN(Lys)−AP39の合成
111 μlのPBS中の200 μg (3.6 nmol) の非還元AP39を300 μlのホウ酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 8.5) で希釈し、Slide−A−Lyzer 10,000 MWCO (Pierce Inc.、米国イリノイ州ロックフォード) を使用して、200 mlのホウ酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 8.5) で2×1時間透析した。50 μlの1,4,7−トリアザ−2−(p−イソチオシアナト)ベンジル−1,7−ビス(カルボキシメチル)−4−カルボキシメチル−6−メチルヘプタン (MX−DTPA) 溶液 (500 μlのホウ酸ナトリウム緩衝液0.1M、pH 8.5中に溶解した0.33 mgのMX−DTPA) を添加し、反応混合物を37℃に3時間加熱した。Slide−A−Lyzer 10,000 MWCO (Pierce Inc.、米国イリノイ州ロックフォード) を使用して、反応混合物を200 mlの酢酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 6.0) で2×1時間透析した。
【0064】
80 μlの [In−111]InCl3溶液 (HCl、1N、40 MBq、Amersham Inc.) を添加し、反応混合物を37℃に30分間加熱した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、In−111標識化MX−DTPA−ε−NH(Lys)−AP39を精製した。
放射化学的収率: 70%
放射化学的純度: 85% (SDS−PAGE)
比活性: 7.6 MBq/nmol
免疫反応性: 74%
【0065】
実施例10In−111−DOTA−C−ベンジル−p−NCS−ε−HN(Lys)−AP39の合成
114 μlのPBS中の200 μg (3.6 nmol) の非還元AP39を300 μlのホウ酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 8.5) で希釈し、Slide−A−Lyzer 10,000 MWCO (Pierce Inc.、米国イリノイ州ロックフォード) を使用して、200 mlのホウ酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 8.5) で2×1時間透析した。50 μlの1,4,7,10−テトラアザ−2−(p−イソチオシアナト)ベンジルシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(ベンジル−p−SCN−DOTA、Macrocyclics Inc.、米国テキサス州ダラス) 溶液 (5 mlのホウ酸ナトリウム緩衝液0.1M、pH 8.5中に溶解した1.5 mgのベンジル−p−SCN−DOTA) を添加し、反応混合物を37℃に3時間加熱した。Slide−A−Lyzer 10,000 MWCO (Pierce Inc.、米国イリノイ州ロックフォード) を使用して、反応混合物を各回200 mlの酢酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 6.0) で2×1時間および1×17時間 (一夜) 透析した。
【0066】
80 μlの [In−111]InCl3溶液 (HCl、1N、40 MBq、Amersham Inc.) を添加し、反応混合物を37℃に30分間加熱した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、In−111標識化DOTA−C−ベンジル−p−NCS−ε−NH(Lys)−AP39を精製した。
放射化学的収率: 74%
放射化学的純度: 94% (SDS−PAGE)
比活性: 12.3 MBq/nmol
免疫反応性: 73%
【0067】
実施例11Y−88−MX−DTPA−ε−HN(Lys)−AP39の合成
115 μlのPBS中の200 μg (3.6 nmol) の非還元AP39を300 μlのホウ酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 8.5) で希釈し、Slide−A−Lyzer 10,000 MWCO (Pierce Inc.、米国イリノイ州ロックフォード) を使用して、200 mlのホウ酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 8.5) で2×1時間透析した。50 μlのMX−DTPA溶液 (500 μlのホウ酸ナトリウム緩衝液0.1M、pH 8.5中に溶解した0.33 mgのMX−DTPA) を添加し、反応混合物を37℃に3時間加熱した。Slide−A−Lyzer 10,000 MWCO (Pierce Inc.、米国イリノイ州ロックフォード) を使用して、反応混合物を各回200 mlの酢酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 6.0) で2×1時間および1×17時間 (一夜) 透析した。
【0068】
100 μlの [Y−88]YCl3溶液 (HCl、1N、75 MBq、Oak Ridge National Lab.) を添加し、反応混合物を37℃に30分間加熱した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、Y−88標識化MX−DTPA−ε−NH(Lys)−AP39を精製した。
放射化学的収率: 65%
放射化学的純度: 93% (SDS−PAGE)
比活性: 10.2 MBq/nmol
免疫反応性: 72%
【0069】
実施例12Lu−177−DOTA−C−ベンジル−p−NCS−ε−HN(Lys)−AP39の合成
110 μlのPBS中の200 μg (3.6 nmol) の非還元AP39を300 μlのホウ酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 8.5) で希釈し、Slide−A−Lyzer 10,000 MWCO (Pierce Inc.、米国イリノイ州ロックフォード) を使用して、200 mlのホウ酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 8.5) で2×1時間透析した。50 μlのベンジル−p−SCN−DOTA溶液 (5 mlのホウ酸ナトリウム緩衝液0.1M、pH 8.5中に溶解した1.5 mg) を添加し、反応混合物を37℃に3時間加熱した。Slide−A−Lyzer 10,000 MWCO (Pierce Inc.、米国イリノイ州ロックフォード) を使用して、反応混合物を各回200 mlの酢酸ナトリウム緩衝液 (0.1M、pH 6.0) で2×1時間および1×17時間 (一夜) 透析した。
【0070】
200 μlの [Lu−177]LuCl3溶液 (HCl、1N、80 MBq、NRH−Petten、オランダ国) を添加し、反応混合物を37℃に30分間加熱した。NAP−5カラム(Amersham、溶離液:PBS) を使用するゲルクロマトグラフィーにより、Lu−177標識化DOTA−C−ベンジル−p−NCS−ε−NH(Lys)−AP39を精製した。
放射化学的収率: 74%
放射化学的純度: 95% (SDS−PAGE)
比活性: 19 MBq/nmol
免疫反応性: 71%
【0071】
実施例13腫瘍担持ヌードマウスに1回静脈内注射後、ピキア・パストリス (Pichia pastoris) において発現された、Tc−99m−AP39の器官分布および排出
本発明の物質を約74 kBqの投与量でF9 (奇形癌腫) 担持動物(体重約25 g) に静脈内注射した。物質の投与後、種々の時間においてγカウンターを使用して、種々の器官における放射能濃度、および排出物中の放射能を測定した。さらに、種々の時間において腫瘍および血液中の本発明の物質の濃度に基づいて、腫瘍/血液比を見出す。
F9 (奇形癌腫) 担持ヌードマウスにおけるTc−99m−AP39の生物分布 (平均±SD、n=3) を表2に示す:
【0072】
【表2】

【0073】
F9 (奇形癌腫) 担持ヌードマウスにおけるTc−99m−AP39の排出 (平均±SD、n=3) を表3に示す:
【表3】

【0074】
F9 (奇形癌腫) 担持ヌードマウスにおけるTc−99m−AP39の腫瘍/血液比 (平均±SD、n=3) を第2図に示す。
この研究の結果は、充実腫瘍における蓄積について本発明の物質のきわめてすぐれた可能性と同時にきわめてすぐれた排出を示す。
【0075】
実施例14腫瘍担持ヌードマウスに1回静脈内注射後のIn−111−MX−DTPA−ε−HN(Lys)−AP39の器官分布
本発明の物質を約48 kBqの投与量でF9 (奇形癌腫) 担持動物(体重約25 g) に静脈内注射した。物質の注射後、種々の時間においてγカウンターを使用して、種々の器官における放射能濃度、および排出物中の放射能を測定する。
F9 (奇形癌腫) 担持ヌードマウスにおけるIn−111−MX−DTPA−ε−HN(Lys)−AP39の生物分布 (平均±SD、n=3) を表4に示す:
【0076】
【表4】

【0077】
F9 (奇形癌腫) 担持ヌードマウスにおけるIn−111−MX−DTPA−ε−HN(Lys)−AP39の腫瘍/血液比 (平均±SD、n=3) を表5に示す:
【表5】

【0078】
この研究の結果は、充実腫瘍における蓄積について本発明の物質のきわめてすぐれた可能性、ならびにきわめてすぐれた生物分布および腫瘍/血液比を示す。
【0079】
実施例15腫瘍担持ヌードマウスに1回静脈内注射後、ピキア・パストリス (Pichia pastoris) において発現された、Tc−99m−AP39の造影
本発明の物質を約9.25 kBqの投与量でF9 (奇形癌腫) 担持動物(体重約25 g) に静脈内注射した。物質の注射後、種々の時間においてガンマカメラで造影を実施する。
F9 (奇形癌腫) 担持ヌードマウスの平面状シンチグラフィーを第3図および第4図に示す。第3図は物質注射後5時間におけるシンチグラムを示し、そして第4図は物質注射後24時間におけるシンチグラムを示す。
この研究の結果は、充実腫瘍の造影について本発明の物質のきわめてすぐれた可能性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドを含んでなり、前記ペプチドが下記の部位および配列を含んでなる化合物:
aa) 表1に示す相補性決定領域HCDR3および/またはLCDR3、またはHCDR3領域について5アミノ酸までおよびLCDR3領域について6アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型を含んでなるフィブロネクチンのエキストラドメインB (ED−B) の抗原結合部位;前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;
ab) 表1に示す相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3、またはHCDR1領域について3アミノ酸まで、HCDR2領域について8アミノ酸まで、HCDR3領域について5アミノ酸まで、LCDR1領域について6アミノ酸まで、LCDR2領域について4アミノ酸までおよびLCDR3領域について6アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型を含んでなるフィブロネクチンのエキストラドメインB (ED−B) の抗原結合部位;前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;または
ac) 配列番号1に従う配列 (L19) または30アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型;前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;および
ba) アミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys (配列番号2)、式中 Xaa1、Xaa2およびXaa3の各々は独立に任意の天然に存在するアミノ酸を表す;または
bb) アミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa4 (配列番号3)、式中Xaa1、Xaa2、Xaa3、およびXaa4の各々は独立に任意の天然に存在するアミノ酸を表す;または
bc) アミノ酸配列 (His)n (配列番号4)、式中nは4〜6の整数である;
ここでaa)、ab) またはac) のC末端は配列番号2、配列番号3または配列番号4の配列の1つのN末端にペプチド結合を介して結合している。
【請求項2】
アミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys (配列番号2) が配列Gly−Gly−Gly−Cys (配列番号5) またはGly−Cys−Gly−Cys (配列番号6) である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
アミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa4 (配列番号3) が配列Gly−Gly−Gly−Cys−Ala (配列番号7) またはGly−Cys−Gly−Cys−Ala (配列番号8) である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
アミノ酸配列 (His)n (配列番号4) 中のnが6である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
放射性同位体に結合している、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
テクネチウムの放射性同位体、例えば、94mTc、99mTc、レニウムの放射性同位体、例えば、186Re、188Re、または他のアイソトープ、例えば、203Pb、67Ga、68Ga、43Sc、44Sc、47Sc、110mIn、111In、97Ru、62Cu、64Cu、67Cu、68Cu、86Y、88Y、90Y、121Sn、161Tb、153Sm、166Ho、105Rh、177Lu、72Asおよび18Fから選択される放射性同位体に結合している、請求項6に記載の化合物。
【請求項7】
放射性同位体が99mTcまたは186Reである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
ペプチドが還元された形態である、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
活性剤として請求項1〜8のいずれかに記載の化合物と、生理学上許容されるアジュバント、担体および/または希釈剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項10】
マウスにおいて24時間以内に腎臓を介して40%またはそれより多く排出される請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
マウスにおいて投与後5時間に5:1またはそれ以上の腫瘍/血液の比を有する、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
診断適用のための請求項9〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
治療適用のための請求項9〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
放射性同位体を結合するための下記の部位および配列を含んでなるペプチドの使用:
aa) 表1に示す相補性決定領域HCDR3および/またはLCDR3、またはHCDR3領域について5アミノ酸までおよびLCDR3領域について6アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型を含んでなるフィブロネクチンのエキストラドメインB (ED−B) の抗原結合部位;前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;
ab) 表1に示す相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3、またはHCDR1領域について3アミノ酸まで、HCDR2領域について8アミノ酸まで、HCDR3領域について5アミノ酸まで、LCDR1領域について6アミノ酸まで、LCDR2領域について4アミノ酸までおよびLCDR3領域について6 アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型を含んでなるフィブロネクチンのエキストラドメインB (ED−B) の抗原結合部位;前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;または
ac) 配列番号1に従う配列 (L19) または30アミノ酸までの欠失、挿入および/または置換であるその変異型;前記変異型は配列番号1に従うペプチドと同一の機能を有する;および
ba) アミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys (配列番号2)、式中 Xaa1、Xaa2およびXaa3の各々は独立に任意の天然に存在するアミノ酸を表す;または
bb) アミノ酸配列Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa4 (配列番号3)、式中Xaa1、Xaa2、Xaa3、およびXaa4の各々は独立に任意の天然に存在するアミノ酸を表す;または
bc) アミノ酸配列 (His)n (配列番号4)、式中nは4〜6の整数である;
ここでaa)、ab) またはac) のC末端は配列番号2、配列番号3または配列番号4の配列の1つのN末端にペプチド結合を介して結合している。
【請求項15】
放射性同位体がテクネチウムの放射性同位体、例えば、94mTc、99mTc、レニウムの放射性同位体、例えば、186Re、188Re、または他のアイソトープ、例えば、203Pb、67Ga、68Ga、43Sc、44Sc、47Sc、110mIn、111In、97Ru、62Cu、64Cu、67Cu、68Cu、86Y、88Y、90Y、121Sn、161Tb、153Sm、166Ho、105Rh、177Lu、72Asおよび18F体から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
放射性同位体が99mTcまたは186Reである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
ペプチドを真核細胞、特に酵母細胞において発現させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のペプチドを生産する方法。
【請求項18】
真核細胞がピキア・パストリス (Pichia pastoris) 細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ペプチドを構成的に発現させる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドのN末端がα−シグナル配列からのKex2切断部位に直接融合されている、請求項17〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜8のいずれかに記載のペプチドと、必要に応じて生理学上許容されるアジュバントとを含んでなる、放射性薬品の製造用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−209149(P2009−209149A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−129965(P2009−129965)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【分割の表示】特願2003−556447(P2003−556447)の分割
【原出願日】平成15年1月2日(2003.1.2)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】