腫瘍の治療方法
腫瘍、例えば前立腺腫瘍、乳房腫瘍、非ホジキンリンパ腫などの治療方法は、抗新脈管形成性シクロ−アルギニン−グリシン−アスパラギン酸−含有ペンタペプチド(cRGDペンタペプチド)の少なくとも1用量を患者に投与する工程;放射免疫治療薬(RIT)の抗腫瘍有効量を患者に投与する工程;およびついでcRGDペンタペプチドの少なくとも1つの追加的用量を患者に投与する工程の連続工程を含む。cRGDペンタペプチドは好ましくは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)であり、RITは好ましくは、キレート剤が腫瘍標的分子、例えばモノクローナル抗体に化学結合している放射性核種標識キレート剤−リガンド複合体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍の治療方法に関する。より詳しくは本発明は、放射免疫療法とインテグリン受容体アンタゴニストとの組合わせを用いた腫瘍の治療に関する。
【0002】
(関連出願へのクロス・リファレンス)
この出願は、1999年9月9日に出願された、同時係属中の米国特許出願第09/787,374号の一部継続出願である。
【0003】
(政府の関心についての説明)
本明細書に記載されている研究の一部分は、国立癌研究所(National Cancer Institute)からの助成金番号第PO1−CA−47829号、および米国エネルギー省(Department of Energy)からの助成金番号第DEFG01−00NE22944号および第DEFG03−84ER60233号による援助を受けている。米国政府は、この発明に一定の権利を保持しうる。
【背景技術】
【0004】
新規かつ相乗的な治療の組合わせが、転移性乳癌、前立腺癌、ホジキンリンパ腫、およびその他の癌の治療に望ましい。これらの癌の多くは現在、標準的なマルチモダリティー療法では不治である。乳癌におけるp53突然変異およびbcl−2タンパク質過剰発現の高い発生率は、化学療法および放射線治療法への耐性を増す。全身性腫瘍標的化放射免疫療法(RIT)は、組織を特異的に標的し、かつ広範囲に広がった転移性病巣へ癌特異的細胞傷害性抗体を送達する可能性を有する。しかしながらヒト乳癌異種移植片モデルにおける研究は、単一作用物質としてのRITが、一般的には腫瘍を治癒させないことを証明している。放射線標識された抗体の腫瘍浸透は、均一でないことがあり、腫瘍のすべての部位において治癒を与えるには十分でないことがある。RITとほかの治療モダリティーとの組合わせが現在利用されているが、追加の化学療法または外部放射線治療法は、骨髄毒性のリスクを増す。これは、RITにおける主な用量限定的要因である。
【0005】
抗新脈管形成剤が、腫瘍の治療として提案されてきた。これらの薬剤は、遺伝子的に正常な内皮細胞を標的化する。これらは、正常組織における非常に低い内皮ターンオーバー速度と比較して、腫瘍新脈管形成の間はるかに高い速度で増殖する。抗新脈管形成剤は、ほかの化学療法薬とともに、及び外部放射線治療法と組合わせて用いられた時、治療効果を高めることが証明されている。RGDアミノ酸配列を介していくつかのリガンドを結合するαvβ3インテグリン受容体は、正常な脈管構造中に発現されるが、成長しつつある腫瘍脈管構造上で高度に発現し、これを抗新脈管形成剤に関する潜在的な標的にする。αvβ3インテグリンの高い発現および活性化も、より転移性で侵襲的な乳房腫瘍と相関関係があるとされてきた。モノクローナル抗体(MAb)および環状RGDペンタペプチドによるαvβ3活性の阻害は、内皮アポトーシスを誘発し、新脈管形成を阻害し、内皮単層浸透性を増すことが証明された。αvβ3活性の阻害は、乳癌異種移植片および黒色腫異種移植片における腫瘍成長の減少と関連付けられた。環状RGDペンタペプチドと抗体IL−2融合タンパク質との相乗作用は結果として、黒色腫、結腸癌、および神経芽細胞腫のネズミモデルにおける治療効果の増加を生じた。選択的腫瘍取り込みは、放射線標識された環状RGDペンタペプチドを用いて証明された。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、腫瘍、例えば前立腺腫瘍、乳房腫瘍、リンパ腫などを有する患者の治療方法を提供する。この方法は、組合わされたモダリティーの放射免疫療法(CMRIT)治療方式であって、抗新脈管形成性シクロ−(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)−含有ペンタペプチド(cRGDペンタペプチド)および放射免疫治療薬(RIT)を患者に投与することを含む治療方式である。この方法は、cRGDペンタペプチドの少なくとも1用量を患者に投与する第一工程を含む連続治療方式を含む。この最初のcRGDペンタペプチド治療の後、患者は、RITの抗腫瘍有効量が投与される。RIT治療後、患者は、cRGDペンタペプチドの少なくとも1つの追加的量が投与される。
【0007】
各cRGDペンタペプチド用量の量およびタイミングは好ましくは、患者への最大許容用量、すなわち患者へのcRGDペンタペプチドの毒性が治療的に許容しうる最大レベルであるか、その近くになるように選択される。
【0008】
本発明のCMRIT方法は、同じ投薬量レベルにおいて、単独のRIT、または単独のcRGDペンタペプチドでの治療と比較して有意に大きい抗腫瘍効果を与える。CMRIT方法はまた、同じ投薬量レベルにおいて、単独のRIT、または単独のcRGDペンタペプチドでの治療と比較して、腫瘍細胞および腫瘍内皮細胞のより大きいアポトーシスを与える。
【0009】
1つの側面において、本発明はまた、RITの少なくとも1つの単位用量が入っている第一容器と、cRGDペンタペプチドの全部で少なくとも2つの単位用量が入っている1つ以上の追加容器とを含むキットも提供する。これらの容器は各々、容器の内容物、場合により投与順序、および医薬品および放射性物質に関する政府の規制によって要求されるその他のあらゆる関連情報を説明しているラベルを含んでいる。このキットはまた、本明細書に記載されている方法による腫瘍の治療に関する、容器内容物の使用についての印刷された説明書を含んでいることもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、多くの異なる形態の実施態様が可能である。具体的な実施態様が図面に示され、明細書および特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の開示は、本発明の原理の例示であり、本明細書に例証されている具体的な実施態様に限定されるわけではない。
【0011】
患者における腫瘍の治療のための組合わせモダリティー放射免疫療法(CMRIT)方法は、
(a)抗新脈管形成性シクロ−(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)−含有ペンタペプチド(cRGDペンタペプチド)の少なくとも1用量を患者に投与する工程;
(b)放射免疫治療薬(RIT)の抗腫瘍有効量を患者に投与する工程;および
(c)cRGDペンタペプチドの少なくとも1つの追加的用量を患者に投与する工程
の連続工程を含む。
各cRGDペンタペプチド用量の量およびタイミングは好ましくは、患者への最大許容用量、すなわち患者へのcRGDペンタペプチドの毒性が治療的に許容しうる最大レベルであるか、その近くになるように選択される。最大許容用量は、製薬業で周知の方法によって容易に決定することができる。例えばcRGDペンタペプチドの毒性は、臨床研究から得ることができる。各投薬量の量は好ましくは、約0.05mgから約500mg、より好ましくは約0.1から約100mg、最も好ましくは約0.2から約20mgの範囲にある。毎日の総(aggregate)投薬量は好ましくは、約0.001から約2mg/kg体重、より好ましくは約0.002から約1mg/kg、最も好ましくは約0.002から約0.2mg/kgの範囲にある。しかしながら各々の対象とする患者の具体的な用量は、多くの因子、例えば用いられる具体的なcRGDペンタペプチド化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性、食餌療法、投与時間および経路、および排泄率、薬剤の組合わせ、およびこの療法が適用される同定の障害の重症度に依存する。非経口投与が好ましく、最も好ましくは腹腔内(i.p.)投与である。しかしながら経口、座薬、または局所投与も意図される。追加のcRGDペンタペプチド用量は、所望であればRITの投与後数ヶ月まで続行することができる。
【0012】
cRGDペンタペプチドは、医薬適合性の賦形剤およびキャリヤ、例えば当分野において公知の緩衝剤などとともに配合することができる。適切な賦形剤物質は、経腸(例えば経口または直腸)、非経口(例えば静脈内注射)、または局部(例えば局所、皮膚、眼、または鼻)投与、または吸入スプレーの形態における投与に適し、かつ新規化合物と反応しない有機または無機物質であり、その例は、水または水性等張食塩水、低級アルコール、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、およびほかの脂肪酸グリセリド、ゼラチン、大豆レシチン、炭水化物、例えばラクトースまたはデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、セルロース、および石油ゼリーである。
【0013】
経口使用のためには、プレーン錠剤、被覆錠剤、カプセル、シロップ、ジュース、またはドロップが特に有用である。腸溶コーティングまたはカプセルシェルを有する被覆錠剤およびカプセルが特に有利である。座薬は直腸投与のために用いられ、溶液は非経口投与のため、好ましくは油性溶液または水溶液、同様に懸濁液、エマルジョン、またはインプラントが用いられる。
【0014】
局所使用に適した形態の例は、目薬の形態で用いることができる溶液、および同様に例えば懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏、または圧迫包帯である。吸入スプレーの形態での投与のためには、噴射ガスまたは噴射ガス混合物(例えば二酸化炭素またはフルオロクロロ炭化水素置換物)中に溶解または縣濁された活性成分を含むスプレーを用いることができる。この場合、活性成分は便宜的に微粉形態で用いられ、1つ以上の追加の生理学的適合性溶媒、例えばエタノールの存在も可能である。吸入溶液は、慣例的な吸入器を用いて投与することができる。cRGDペンタペプチドはまた、凍結乾燥することもでき、その結果生じた凍結乾燥物は、例えば注射可能な製剤の製造のために用いることができる。これらの注射は、ボーラスとして、または連続注入(例えば静脈内、筋肉内、皮下、または鞘内)の形態で与えることができる。記載された製剤は、滅菌することができ、および/または助剤、例えば保存料、安定剤、および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝物質、着色料、および/または香味料を含んでいてもよい。所望であれば、cRGDペンタペプチドはまた、1つ以上のほかの活性成分を含んでいてもよく、これには例えば1つ以上のビタミンなどが含まれる。
【0015】
このcRGDペンタペプチドは、それ自体で、または生理的に許容しうるその塩の1つ以上として用いることができる。cRGDペンタペプチドは内部塩へ、または酸を用いて会合酸付加塩に転換することができる。この反応に適した酸は特に、生理的に許容しうる塩を生じる酸である。したがって無機酸を用いることができる。これの例は、硫酸、硝酸、ハロ水素酸(hydrohalic acid)、例えば塩酸または臭化水素酸、リン酸、例えばオルトリン酸、スルファミン酸、およびまた有機酸、特に脂肪族、脂環式、アル脂肪族(araliphatic)、芳香族またはヘテロ環式一塩基性または多塩基性カルボン酸、スルホン酸、または硫酸、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、サリチル酸、2−または3−フェニルプロピオン酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタン−またはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレン−モノ−および−ジスルホン酸、ラウリル硫酸である。
【0016】
あるいはまた、cRGDペンタペプチドの酸形態は、塩基との反応によって、その生理的に許容しうる金属またはアンモニウム塩の1つに転換することができる。この状況において特に適切な塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、およびアンモニウム塩、およびまた置換アンモニウム塩、例えばジメチル−、ジエチル−、またはジイソプロピルアンモニウム塩、モノエタノール−、ジエタノール−、またはトリエタノールアンモニウム塩、シクロヘキシルアンモニウム塩、ジシクロヘキシルアンモニウム塩、ジベンジルエチレンジアンモニウム塩、およびまた例えばN−メチル−D−グルカミンまたはアルギニンまたはリシンとの塩である。
【0017】
好ましくはこのcRGDペンタペプチドは、次のものである:
シクロ−Arg−Gly−Asp−D−Phe−Val(EMD66203)、
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(EMD121974、ドイツ国ダルムシュタットのメルク社(Merck KGaA,Darmstadt,Germany)から入手しうるシレンギチド(Cilengitide))、または
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−1−アミノシクロヘキサンカルボン酸)(EMD270179)であり、これの調製法は、Jonczykらの米国特許第5,866,540号および第6,001,961号に記載されている。これに関連した開示は、参考として本明細書に援用されている。最も好ましくはこのcRGDペンタペプチドは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)である。
【0018】
好ましくはcRGDペンタペプチドの最初の投薬量は、RITの投与の約1時間前までに患者に投与される。好ましくはcRGDペンタペプチドの少なくとも1つの追加的用量は、RITの投与の約2日以内に投与される。好ましい実施態様において、cRGDペンタペプチドの少なくとも約2つの追加的用量は、RIT用量後に患者に投与され、より好ましくはcRGDペンタペプチドの約3つの追加的用量、最も好ましくは少なくとも約4つの追加的用量が投与される。特に好ましい実施態様において、cRGDペンタペプチドの少なくとも約5つの追加的用量が、RIT用量後に連続的に投与される。好ましくはcRGDペンタペプチドの各追加的用量は、用量間に、約2日未満の間隔で投与される。RITの追加的用量の投与は、所望であれば1週間あたり約2用量の割合で数ヶ月間続行することができる。
【0019】
RIT投薬量は好ましくは、特定のRIT剤の放射能レベルに基づく。用いられるRITの量は好ましくは、90Yを放射線源として用いる時に、1用量あたり約20mCiから約200mCiの範囲内の放射能投薬量を与える。しかしながら各々の対象とする患者に対する具体的な用量は、多くの因子、例えば用いられる特定のRIT化合物の放射能、用いられる同定の放射性核種、年齢、体重、一般的な健康状態、性、食餌療法、投与時間および経路、排泄率、薬剤の組合わせ、およびこの療法が適用されている特定の腫瘍のサイズおよび重症度による。例えば転移性前立腺癌または乳癌の治療において、キレート化90Yと複合体化された抗−MUC−1(M170)モノクローナル抗体は一般的に、腫瘍のサイズおよび上記のほかの因子に応じて、約20mCiから約200mCiの範囲内の総投薬量を送達するために、約5mCi/mgの抗体の比活性において投与される。RITの非経口投与が好ましく、より好ましくは静脈内(i.v.)投与である。
【0020】
腫瘍の治療のための放射免疫治療薬は、当分野で周知である。適切なRIT剤は、治療的に有用な放射性核種が付着されたあらゆる標的放射性核種療法を包含し、これらは、腫瘍または腫瘍脈管構造によって付着可能であるか、または捕獲可能である。このような有用なRIT剤は、腫瘍標的化または腫瘍脈管構造標的化リガンドまたは分子を含んでいる。放射性核種は、標的分子またはリガンドに直接付着されてもよく、またはキレート剤によってリガンドに付着されるか、これと会合されてもよい。あるいはまたリガンドは、キレート化または放射性核種捕獲基を含んでいてもよく、患者の腫瘍または腫瘍脈管構造に結合させるために、患者にコールド投与されてもよい。放射性核種のその後の投与の時、結合されたリガンドは、腫瘍部位において放射性核種を捕獲しうる(前標的化放射性核種療法)。標的分子またはリガンドには、抗体、抗体断片、抗体断片の組換え的組合わせ、ペプチド、または腫瘍または腫瘍脈管構造への選択的親和性を有するその他のあらゆるリガンドが含まれる。
【0021】
好ましくはRITは、キレート剤が腫瘍標的化分子に化学的に結合されている、放射性核種で標識されたキレート剤−リガンド複合体である。好ましい腫瘍標的分子には、抗体、例えばモノクローナル抗体、または抗体断片が含まれる。より好ましくは腫瘍標的分子は、抗腫瘍抗体である。あらゆる抗腫瘍抗体を用いることができる。好ましくは、抗腫瘍抗体は、腫瘍脈管構造を標的化する。あるいはまた抗体は、腫瘍抗原、例えばp185HER2、ミルクムチン核タンパク質、TAG−72、ルイスa、癌胎児性抗原(CEA)、9.2.27抗体によって認識された高Mr黒色腫抗原、またはOV−TL3またはMOV18によって認識された卵巣関連抗原を標的化しうる。好ましい抗腫瘍抗体は、抗−MUC−1モノクローナル抗体、例えばカナダ国エドモントンのバイオミラ社(Biomira Inc.,Edmonton,Canada)から入手しうるM170mAb、キメラL6−抗腫瘍モノクローナル抗体(ChL6 MAb)などである。
【0022】
癌放射線治療方法に用いるのに適したあらゆる放射性核種を、本発明のCMRIT方法に用いることができる。適切な放射性核種には、非限定的に131I、177Lu、67Cu、64Cu、196Re、および90Yが含まれる。好ましくはこの放射性核種は、90Yである。
【0023】
適切なRIT剤およびこれらの調製法は、Mearesらの米国特許第5,958,374号に記載されている。これに関連した開示は、参考として本明細書に援用されている。
【0024】
好ましくはこのキレート剤は、ポリアザ大環状基またはポリオキサ大環状基である。より好ましくはこのキレート基は、次のものに由来する:
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,7,10−テトラアザシクロトリデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;または
1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸。
【0025】
より好ましくは、放射性核種標識キレート剤−リガンド複合体は、ChL6mAbまたはM170mAbに化学的結合される。最も好ましくはRITは、90Y−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸−ペプチド−ChL6(以後90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)、またはこれの抗−MUC−1mAb類似体である。
【0026】
放射性核種は好ましくは90Yである。111Inは、腫瘍を画像化するためにRIT中に含めることができる。好ましくは放射性核種標識キレート剤−リガンド複合体は、ChL6 MAbまたはM170mAbに化学的結合される。
【0027】
好ましい実施態様においてキレート剤は、N−置換1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸であり、この場合、N−置換基は、−CH2C(=O)−(Gly)3−L−(p−イソチオシアナト)−Phe−アミド(以後DOTA−ペプチド)であり、放射性核種は90Yである。
【0028】
RITは、cRGDペンタペプチドの配合に関して上に記載されている、液体注射可能な配合物に適した、多様な医薬適合性の賦形剤とともに配合することができる。
【0029】
本発明のCMRIT方法は、多様な癌を治療するために用いることができる。例えば本発明のCMRIT方法は、固形腫瘍を呈する癌、例えば乳癌、結腸癌、肺癌、甲状腺癌、卵巣癌などを治療するために用いることができる。CMRIT方法はまた、非固形腫瘍癌、例えば非ホジキンリンパ腫などを治療するためにも用いることができる。本発明のCMRIT方法は、好ましくは乳癌の治療法として用いられる。
【0030】
本発明のCMRIT方法は、同じ投薬量レベルにおいて、単独のRITおよび単独のcRGDペンタペプチドでの治療の総合計(aggregate total)抗腫瘍効果に比べて、有意に大きい抗腫瘍効果を与える(すなわち相乗効果が見られる)。CMRIT方法はまた、同じ投薬量レベルにおいて、単独のRITおよび単独のcRGDペンタペプチドでの治療に比べて、腫瘍細胞および腫瘍内皮細胞のより大きいアポトーシスも与える。
【0031】
本発明はもう1つの側面において、RITの少なくとも1つの単位用量が入っている第一容器と、cRGDペンタペプチドの全部で少なくとも2つの単位用量が入っている1つ以上の追加的容器とを含むキットを提供する。これらの容器は各々、容器の内容物、場合により投与順序、および医薬品および放射性物質に関する政府の規制によって必要とされるあらゆるその他の関連情報を説明するラベルを含んでいる。このキットはまた、本明細書に記載されている方法による腫瘍の治療に関する、容器内容物の投与についての印刷された説明書を含んでいることもある。
【0032】
これらの容器は、バイアル、アンプル、ボトルなどであってもよい。各容器には好ましくは単一単位用量が入っている。しかしながら多用量容器も用いることができる。これらの指示材料は好ましくはまた、安全および有効性情報も含んでいる。
【0033】
次の非限定例は、本発明をさらに例証するために示される。
【0034】
試薬
キャリヤを含まないイットリウム−90(90Y)(ワシントン州リッチランドのパシフィック・ノースウエスト・ナショナル・ラボラトリー(Pacific Northwest National Laboratory,Richland,WA)またはマサチューセッツ州ボストンのニューイングランド・ニュークリア(New England Nuclear,Boston,MA))を、0.05M HCl中の塩化物塩として購入した。キメラL6(ChL6)、すなわちヒト−マウス抗体キメラ(ワシントン州シアトルのブリストル−マイヤーズ・スクイブ・ファーマシューティカル・リサーチ・インスティテュート(Bristol−Myers Squibb Pharmaceutical Research Institute,Seattle,WA))が、ヒトの乳房、結腸、卵巣、および肺癌上に高度に発現された内在性(integral)膜糖たんぱく質と反応する。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(EMD121974)は、αvβ3およびαvβ5インテグリンに対して選択的なアンタゴニストであり、IC50値は、単離されたαvβ3インテグリンの場合は低いナノモル範囲内にあり、αvβ3発現M21黒色腫細胞の場合は低いマイクロモル範囲内にある。ペプチド合成および特徴決定を、Dechantsreiterら、J.Med.Chem.42:3033−40(1999)によって既に記載されているように実施した。この文献に関連した開示は、参考として本明細書に援用されている。
【0035】
細胞系統
HBT3477、すなわちヒト乳房腺癌細胞系統は、ブリストル−マイヤーズ・スクイブ・ファーマシューティカル・リサーチ・インスティテュート(ワシントン州シアトル)から入手した。HBT3477細胞の70%超が、L6で強力に染色される。HBT3477細胞において、bcl−2が発現され、p53は、エキソン10にナンセンス突然変異を有する突然変異体であり、その結果として、p53タンパク質の部位における欠失を生じる。これは、テトラマー化、および二本鎖DNA切断の検出において機能する。HBT3477細胞は、機能的αvβ5インテグリンを発現するが、αvβ3インテグリンは発現しない。その理由は、ビトロネクチンへの付着は、αvβ5特異的P1F6抗体によってブロックされるが、αvβ3特異的LM609抗体によってブロックされないからである。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)は、約5μMのIC50で、ビトロネクチンへのHBT3477細胞の付着をブロックする。
【0036】
90Y−DOTA−ペプチド−ChL6
ChL6を、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸(DOTA)に複合体化し、DeNardoら、J.Nucl.Med.,36:829−836によって記載されているように、80パーセントまたはそれ以上の効率で90Yで放射標識し、90Y−DOTA−ペプチド−ChL6を調製した。90Y−DOTA−ペプチド−ChL6を、分子篩高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、セルロースアセテート電気泳動法(CAE)、およびHBT3477細胞結合放射免疫反応性アッセイ(RIA)によって、構造および機能的一体性について調べた。HPLCおよびCAEは、90Y−DOTA−ペプチド−ChL6の90%超が、CAEによって測定された場合、4%未満の高分子量種を有するモノマー形態にあることを示した。生きた細胞への免疫反応性結合は、92%超の反応性を示した。すなわち、200、230、または260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6の単一用量としての投与である。
【0037】
マウス
メスの無胸腺Balb/c nu/nuマウス(生後7から10週;メリーランド州フレデリックのハーラン・スプラグ・ドーリー社(Harlan Sprague Dawley,Inc.,Frederick,MD))を、カリフォルニア大学動物取り扱いガイドラインにしたがって維持管理した。対数期において採取されたHBT3477細胞(3.0×106)を、(特に言及されている場合を除いて)療法研究のために腹部の片側に、免疫病理研究のために両側に皮下注射した。RITの注射は、尾静脈からであり、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)は、腹腔内(i.p.)注射によって送達された。「0日目」は、RIT注射の時、またはcRGDペンタペプチドのみのグループの場合は、最初のcRGDペンタペプチド注射として表わされた。免疫病理研究のためには、腫瘍負担が許容限界を超えた時、指示された時点で、または療法研究のためには84日目に、マウスを頚部脱臼によって犠牲にした。
【0038】
対照(非RIT)処理グループ
グループは、処理を受けないマウス(24匹のマウス、それぞれ2個の腫瘍を有する14匹のマウス、および1個の腫瘍を有する10匹のマウス);非標識ChL6抗体(315μg)(各々2個の腫瘍を有する8匹のマウス);および0、2、4、6、8、および10日目に250μgの6用量として投与されたシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(各々1個の腫瘍を有する18匹のマウス)からなっていた。
【0039】
高用量RIT処理グループ
グループは、RITを単一作用物質(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6、(39匹のマウス、各々2個の腫瘍を有する15匹、および1個の腫瘍を有する24匹))として受けているマウス;および250μgの6用量としてのシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)と組合わされたRIT(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)であって、0日目にRITの1時間前に開始し、ついで2、4、6、8、および10日目にさらに5用量を受けているマウス(42匹、すべて各々1個の腫瘍を有する)からなっていた。
【0040】
低用量RIT処理グループ
グループは、RITを単一作用物質(200から230μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6、(28匹のマウス、230μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6を受けた、以前の研究からの各々2個の腫瘍を有する9匹、および各々200μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6で処理された、1個の腫瘍を有する19匹のマウス))として受けているマウス;およびシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の6用量(各々250μg)と組合わされたRIT(200μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)を受けているグループからなっていた。これらの用量は、0日目にRITの1時間前に与えられ、ついで2、4、6、8、および10日目にさらに5用量が与えられた(30匹のマウス、すべて各々1個の腫瘍を有する)。
【0041】
殺腫瘍効果
腫瘍を、1週間あたり3回、3つの直交直径においてキャリパで測定した。腫瘍体積を、半楕円体についての式を用いて計算した(DeNardoら、Clin.Cancer Res.、3:71−79(1997))。当初腫瘍体積は、処理前の日の体積として規定した。完全に退行した腫瘍は、ゼロ体積を有すると考えられた。腫瘍応答を、次のように分類した。治癒(C)、腫瘍は消滅し、調査の終了(84日)まで再成長しなかった;完全退行(CR)、腫瘍は少なくとも7日間消滅したが、後で再成長した;部分退行(PR)、腫瘍体積は、少なくとも7日間50%以上減少したが、その後再成長した;無応答(NR)、腫瘍体積は、50%未満しか減少しなかった。異なる応答を有する2個の腫瘍を有するマウスの場合、腫瘍応答は、両方の腫瘍応答にしたがって記載された。毒性によって30日以前に死んだマウスは、腫瘍応答結果から除外された。
【0042】
毒性
体重および血球数を、注射後12週間、または死ぬまで、1週間あたり2から3回測定した。血液サンプルを、2μL微小毛管ピペットを用いて尾静脈から収集した。1用量グループ中のマウスからのサンプルをプールし、赤血球(RBC)計数のためにリン酸塩−緩衝食塩水(PBS、0.9%食塩水/10mMリン酸ナトリウム、pH7.6)中に1:200希釈するか、血小板計数のために1%(w/v)アンモニウムオキサレート中に1:100希釈するか、または白血球(WBC)計数のために3%(w/v)酢酸中に1:20希釈した。
【0043】
細胞免疫病理学グループ
ほかの記載がなければ、グループは、各々2個の腫瘍を有する2匹のマウスからなっていた。全部で4個の腫瘍について、各時点で分析した。これらのグループは、次のものからなっていた:処理を受けないマウス(4匹のマウス、7個の腫瘍);単一用量として与えられた250μgのシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)、ついでペプチド注射の2時間、6時間、および1から5日後に犠牲にされた;RITのみ(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)、ついで2時間目、6時間目、および1から6日目に犠牲にされた(3匹のマウス、5日目に5個の腫瘍);およびRITの1時間前に与えられ、10日間を通して一日おきに反復された、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(250μg)と組合わされたRIT(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)、ついでRIT後の2時間目、6時間目、および1から6日目に犠牲にされたマウス。腫瘍を除去し、半分に切断し、最適切断温度(O.C.T.)媒質中で凍結し、切片化(sectioning)まで約−70℃で保存した(10−μm切片)。すべての時点を、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ仲介dUTPニック末端標識(TUNEL、Cavrieliら、J.Cell Bio.,119:493−501(1992))分析によって、アポトーシスについて評価し、選択された時点(未処理、1、5、および6日)を、増殖率(Ki67)における差および微小血管密度(CD31)について評価した。
【0044】
総アポトーシスおよび内皮アポトーシスのTUNEL分析
腫瘍を、フィッシャー・スーパープラス(superplus)スライド(ペンシルベニア州ピッツバーグのフィッシャー(Fisher,Pittsburgh,PA))上で、10−μm切片に切断し、1時間空気乾燥し、1%パラホルムアルデヒド中の約10分間の固定に続いて、製造業者の指示にしたがって、アポップタグ・レッド・キット(ApopTag Red kit)(ニューヨーク州パーチェスのインタージェン(Intergen,Purchase,NY)の、標識として用いられたローダミン)でのTUNEL分析まで、約−70℃で凍結した。TUNEL後、これらのスライドを濯ぎ洗いし、内皮細胞を同定するために、1:100希釈におけるCD31に対するラット抗マウスMAb(カリフォルニア州サンディエゴのファーミンゲン(Pharmingen,San Diego,CA))で、4℃において一晩インキュベートした。スライドを濯ぎ洗いし、FITCに連結された抗ラット抗体(1:50希釈)(ファーミンゲン)で1時間インキュベートした。スライドを濯ぎ洗いし、バックグラウンド核染色のために4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、0.2μg/ml)中に短時間浸漬し、再び濯ぎ洗いし、標本にし(mount)、ついで定量まで約4℃で暗室に保存した。
【0045】
総アポトーシスおよび内皮アポトーシスの定量
多重波長の同時観察を可能にするための、UV、FITC、およびローダミンについての励起フィルター、および二重/三重帯域通過フィルターを有するクロマ・ピンクル・フィルターセット(バーモント州ブラットルボロのクロマ(Chroma,Brattleoro,VT))を備えたオリンパス顕微鏡を用いて、各切片の非壊死部位における6つの無作為に選択された×600視野(field)(150,000μm2/視野)を定量した。視野は、DAPI標識を用いて、見える面積全体をカバーするように選択した。これは一般的に、約300から350細胞を含んでいた。総アポトーシスは、各腫瘍について1視野あたりの陽性(プラス)核の平均数によって決定されたが、一方で、内皮アポトーシスは、FITC(CD31)およびローダミン(TUNEL)の両方によって標識された細胞を計数するために、二重帯域通過フィルターで同じ視野を用いて決定された。視野は、腫瘍切片の非壊死性のように見える区域から選択されたが、その理由は、HBT3477異種移植片が典型的には、ヌードマウスにおいて急速に成長し、6日でこれらの体積を二倍にし、その結果として未処理腫瘍の中央壊死が生じるからである。TUNELは、あまり強力にではないが壊死細胞を標識しうるので、この戦略が、完全無作為プロセスに対して選択された。
【0046】
増殖および微小血管密度分析
未処理マウス、およびcRGDペンタペプチド、RIT、およびCMRIT方法で処理され、処理後1、5、および6日目に犠牲にされたマウスからの腫瘍の10−μm切片を、氷冷アセトン中に10分間固定し、PBS中に濯ぎ洗いし、0.6%H2O2とともにメタノール中に短時間インキュベートした(5分)。PBS中の濯ぎ洗い後、切片を、PBS中10%ヤギ血清および1%ウシ血清アルブミンで10分間ブロックした。マウス抗−Ki67MAb(ファーミンゲン、クローンB56)を、ブロック溶液(6.25μg/ml)中に加え(apply)、これらのスライドを、室温で2時間インキュベートし、ついでPBS中で濯ぎ洗いをした。ヤギ抗マウスローダミン標識されるか、またはヤギ抗マウスCy−3−標識された抗体を加え(ペンシルベニア州ウエスト・グローブのジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ社(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.,West Grove,PA)、1:100)、これらのスライドを、室温で1時間インキュベートした。PBS中の濯ぎ洗い後、これらの切片を、ラット抗マウスCD31抗体(ファーミンゲン、1:100)とともに室温で1時間インキュベートし、ついでPBS中で濯ぎ洗いをし、その後1時間、ヤギ抗ラットFITC−標識された抗体(ファーミンゲン、1:50)とともにインキュベートした。PBS中の濯ぎ洗い後、これらのスライドを、DAPI(0.4μg/ml)で対比染色し、カバースリップ下バイオメダ(Biomeda)ゲルマウント(フィッシャー)に取り付けた。Ki67の定量を、増殖の評価のためにオリンパス顕微鏡を用いて×1,000倍率で実施した。1個の腫瘍におけるKi67−陽性細胞/視野の平均総数を、DAPI染色によって無作為に選択された、1腫瘍あたり6視野からの計数によって決定した。微小血管密度は、×400倍率で、1無作為視野あたりのCD31−染色された血管数を計数することによって決定した。隣接クラスターとは別個の、CD31に対して陽性(プラス)のあらゆる内皮細胞または細胞クラスターを、1つの微小血管として計数した。1腫瘍切片あたり6つの無作為に選択された視野を用いて、各腫瘍についての平均を確立した。1つの処理グループについての平均微小血管密度は、4つの腫瘍/グループからの値を平均して決定した。
【0047】
ヌードマウスにおけるHBT3477腫瘍によるβ3およびCD31発現
腫瘍を半分に切断し、O.C.T.媒質(インディアナ州エルクハートのティシュー・テック、マイルズ社(Tissue Tek,Miles,Inc.,Elkhart,IN))中で凍結し、薄片化まで約−70℃で保存した。切片(10−μm)を空気乾燥し、染色するまで約−70℃で凍結した。ついで切片を氷冷アセトン中に10分間固定し、PBS中に濯ぎ洗いし、30分間PBS中10%ヤギ血清中でブロックした。ハムスター抗マウスCD61(β3)MAb(ファーミンゲン)を、10μg/mlで加え、これらのスライドを室温で3時間インキュベートした。PBS中の濯ぎ洗い後、抗ハムスターローダミン連結抗体(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ社)を加え(1:50)、ついで室温で1時間インキュベートした。PBS中の濯ぎ洗い後、ラット抗マウスCD31抗体を加え(1:100、ファーミンゲン)、これらのスライドを室温で1時間インキュベートした。PBSでの濯ぎ洗い後、抗ラットFITC連結抗体(1:50、ファーミンゲン)を加え、これらのスライドを室温で1時間インキュベートし、PBS中に濯ぎ洗いした。これらのスライドを、DAPI(0.2μg/ml)中に浸漬し、カバースリップ下のバイオメダゲルマウント(フィッシャー)で標本にした。β3とCD31との同時発現が、多重波長の同時観察を可能にするための、UV、FITC、およびローダミンについての励起フィルター、および二重/三重帯域通過フィルターを有するクロマ・ピンクル・フィルターセット(バーモント州ブラットルボロのクロマ)を備えたオリンパス顕微鏡を用いて観察された。
【0048】
統計分析
RITおよびCMRIT方法で処理されたマウスについての死亡率データの統計分析を、スタットエグザクト(StatExact)ソフトウエアを用いるフィッシャー・エグザクトテストを利用して、死亡率が異なるかどうかを決定した。療法データの統計分析は、コホラン・マンテル・ヘンスゼル(Cochran Mantel Haenszel)テストを用いて実施し、RITおよびCMRIT方法グループについての結果に対するRIT用量の効果を評価した。RIT対CMRIT方法グループについてのほかのすべての応答との治癒率の比較を、フィッシャー・エグザクトテストによって実施した。最良の腫瘍応答を、統計目的のために2個腫瘍動物に対して用いた。異なる時点における免疫病理グループ間の統計差を、スタットビュー(STATview)ソフトウエアを適切なものとして用いて、分散分析(ANOVA)(フィッシャーPLSD)によって評価した。p<0.05が有意であると考えられた。
【0049】
殺腫瘍効果
未処理マウス、単独のシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)を受けているマウス、およびChL6非標識抗体を受けているマウスにおける大部分の腫瘍は、中断なく成長した。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(一日おきに与えられた全部で6×250μg用量)の腫瘍成長に対する見かけ上の効果は観察されず、その結果として、テストされた18匹のマウスに治癒は生じなかった。2匹の未処理マウスに加えて、非標識ChL6抗体を受けている2匹のマウスは、これらの腫瘍の自然の退行が起こり、非−RITマウスについて8%(4/50)治癒率を生じた(表1、図1)。
【0050】
表1において、カッコ内の数字は、2個の腫瘍を有するマウス(2個腫瘍マウス)からの最良の応答を用いて得られた合計を表わす。例えば2個腫瘍マウスが、治癒した1個の腫瘍と部分退行腫瘍1個とを有するならば、これは、この表の最悪応答分析(カッコなしのエントリー)において部分退行(PR)としてカウントされるであろうが、最良応答分析(カッコの数字)を用いた場合、治癒(C)とカウントされる。RITを受けているマウスは、260μCi(高用量)または200から230μCi(低用量)90Y−DOTA−ペプチド−ChL6単独で、またはシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の6用量と組合わせて(CMRIT方法)処理された。RIT後30日以前に毒性によって死ぬマウスの腫瘍応答は、有効性評価から除外した。単独の高用量RITの結果として、26匹のマウス中4匹の治癒(15%)を生じたが、一方で、単独の低用量RIT結果として、20匹のマウス中5匹の治癒(25%)を生じた。低用量RITでのCMRIT方法の結果として、22匹のマウス中8匹の治癒(36%、p=0.514)を生じたが、一方で、高用量RITでのCMRIT方法の結果として、19匹のマウス中10匹の治癒(53%、p=0.011)を生じた。統計分析は、RITまたはCMRIT方法に対して調節された、RIT用量に基づく治療の結果には差がないことを示した。結果は用量によって変化しなかったので(p>0.8)、RITについての結果を、CMRIT方法についての結果と比較した。これらの結果は、CMRIT方法が結果として、RIT(20%治癒率)よりも有意に大きい治癒(44%治癒率)を生じた(p=0.020)ことを示し、このことは、単独のRITに勝るCMRIT方法の高い有効性と一致する。
【0051】
図1は、CMRIT方法を用いて得られたマウスの乳癌異種移植片における治療の有効性の増加を示している。単一作用物質として、および組合わせ療法(CMRIT方法)として用いられた90Y−DOTA−ペプチド−ChL6およびシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)への腫瘍応答が示されている。結果は、RIT(200から260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)についての組合わせ高用量および低用量結果を示している。グループは、未処理、315μg非標識ChL6で処理されたマウス、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)250μgの6用量で処理されたマウス、単独のRITで処理されたマウス、およびCMRIT方法で処理されたマウス(シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)250μgの6用量および1用量RIT(200および260μCi))であった。応答は、84日が終わった時に評価した。処理の有意に増加した有効性は、RIT処理されたマウスと比較して、CMRIT方法で処理されたマウスにおいて観察された(示されているように、2個腫瘍マウスに対して最悪の結果または最良の結果を用いた。後者の場合、p=0.02である)。
【0052】
【表1】
【0053】
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の毒性
死亡率または毒性の増加は、未処理マウスと比較して、単独のシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(250μg、10日間にわたって6用量)によって誘発されなかった(RITを受けていないすべてのグループ(未処理、非標識ChL6、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val))のうち、毒性によって死んだマウスは無かった)。
【0054】
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)処理されたマウスおよび未処理マウスは、同様な体重変化、RBC、WBC、および血小板レベルを示した。高用量または低用量のどちらかのRITで処理されたマウス、およびRITとシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)との組合わせで処理されたマウスは、RITを受けていないマウスと比較して、減少した体重、RBC、WBC、および血小板数を示したが、RITとシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)との組合わせは、単独のRITで観察された値以上にはこれらの値を低下させなかった(図2AからD)。RITの高用量において、死亡率は、RIT(13/39匹のマウス(33%))およびCMRIT方法(23/42匹のマウス(55%))グループの両方において未処理マウスよりも高かったが、死亡率は、CMRIT方法によって統計的には増加しなかった(フィッシャーエグザクト、p=0.0736)。同様に死亡率は、未処理マウスよりも低用量RITおよびCMRIT方法グループにおいて増加したが、CMRIT方法で処理されたマウスの死亡率(8/30(27%))は、RIT以上には増加しなかった(8/28(29%))(フィッシャーエグザクト、p=1.000)。低用量および高用量死亡率の結果が組合わされる時、CMRIT方法は結果として、RIT以上に増加した死亡率を生じない(フィッシャーエグザクト、p=0.1652)。これらの結果は、単独またはRITと組合わせて投与されたcRGDペンタペプチド、例えばシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)が、毒性を有意に増加させないことを示している。
【0055】
図2は、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)療法も、CMRIT方法も、毒性を増加しないことを示している。単一試験からの、未処理マウス(5匹)、単独のシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(250μgの6用量)で処理されたマウス(13匹)、単独のRIT(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)で処理されたマウス(5匹)、およびCMRIT方法(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6および250μgシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の6用量)で処理されたマウス(13匹)のグループについてのA:RBC、B:血小板、C:WBC、およびD:マウス体重である。示されている結果は、各グループについてプールされた血液サンプル、および示された日における各グループについての平均体重±s.eを表わす。単独またはRITと組合わせたcRGDペンタペプチドは、毒性を増加させなかった。
【0056】
腫瘍および内皮細胞(全細胞)におけるアポトーシス
内皮細胞を同定するために、CD31染色と組合わせたTUNEL方法によって、アポトーシスを評価した(図3)。1腫瘍あたりのTUNEL陽性腫瘍および内皮細胞の数(全細胞)を、細胞が視野全体の面積をカバーするように選択された非壊死組織の6つの無作為視野(×600)から平均した。平均は、350細胞/視野であった。未処理腫瘍は、9±1.0陽性細胞/視野の平均を有した(2.6%)。cRGDペンタペプチド(シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val))の単一用量は、処理の一日後、アポトーシスを有意に増加させた(16.2±1.89、4.6%)が、アポトーシスのこのレベルはその後減少した。未処理腫瘍と比較した場合、単独のRITは結果として、有意に増加したアポトーシス(図4に記載されているように)を生じた。アポトーシス細胞の最大数は、6日目に見られた(21.4±2.9、6.1%)。CMRIT方法後のアポトーシスは、6日目以外すべての時点でその他のすべての処理グループよりも高かった(有意に増加したアポトーシスが見られる。図4)。CMRIT方法後のアポトーシスは、RIT後5日目にピークになった(30.7±2.0細胞/視野、8.8%)。下方のピークは、CMRIT方法後の1日目であった(21.9±2.6、6.3%)。アポトーシスのこれら2つのピークは、発生するアポトーシスの2つの「波」と一致する。しかしながらRIT腫瘍と比較して、CMRIT方法で処理された腫瘍において発生する全細胞アポトーシスにおける差は、付加的(additive)であり、したがってほかのメカニズムも有効性に影響を与えることがあることを示唆している。
【0057】
図3は、CMRIT方法の結果としてアポトーシスの増加を生じることを証明する顕微鏡写真画像である。アポトーシス(アポップタグ・レッドでのTUNEL)およびCD31(FITC)が、処理開始の5日後に評価された(A)未処理、(B)cRGDペンタペプチド処理された(250μg シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の1用量)、(C)RIT(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)、および(D)CMRIT方法(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6および250μgシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の6用量)マウスからの腫瘍の10−μm切片において例証されている。アポトーシス(ローダミン)が、腫瘍細胞および内皮細胞(FITC)において観察され、ここではローダミンおよびFITC染料が共局在している(矢印によって印が付けられているオレンジ色の細胞)。バックグラウンド核染色がDAPIを用いて得られた。切片を、ピンクルフィルターを備えたオリンパス顕微鏡を用いて×600で撮影した。腫瘍および内皮細胞のアポトーシスの増加が、単独のRITで処理されたマウスと比較して、CMRIT方法で処理されたマウスにおいて観察された(ANOVA、p<0.05)。
【0058】
内皮アポトーシス
cRGDペンタペプチドが、脈管内皮細胞にアポトーシスを誘発すると以前に報告されているので、cRGDペンタペプチド処理された(単一用量のシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val))腫瘍における内皮細胞アポトーシスを、未処理腫瘍と比較した。有意に増加したアポトーシスが、未処理腫瘍(0.6±0.1)と比較して、cRGDペンタペプチド処理の1日後(2.5±0.5)および5日後(2.4±0.7)に観察された。しかしながら、cRGDペンタペプチド処理と未処理腫瘍との間のアポトーシスのこれらの差は、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の多(6)用量を用いた場合でさえ、成長または腫瘍体積における差によって反映されなかった。単独のRITもまた結果として、初期の時点において未処理腫瘍と比較して、有意に増加した内皮アポトーシスを生じた(図4)。CMRITは、RIT後の1日目および5日目に、内皮細胞アポトーシスの2つのピークに関連していた。最高レベルは1日目であった(3.9±1.2細胞/視野)(図4)。CMRIT方法で処理された腫瘍における内皮アポトーシスの平均レベルは、3日目および6日目以外、すべての時点でほかのすべてのグループよりも高かった。しかしながら増加した内皮アポトーシスは、CMRIT方法で処理された腫瘍において全細胞アポトーシスに先行するようには見えなかった。ピークは1日目および5日目のどちらにも発生した。
【0059】
図4は、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の結果として、単独のcRGDペンタペプチド、またはCMRIT方法処理後の1日目および5日目に、腫瘍および内皮細胞のアポトーシスの増加を生じることを示すデータのグラフ図面である。A.全細胞(黒い記号)およびB.内皮細胞(EC)(白い記号)におけるアポトーシスは、未処理マウス(■)、cRGDペンタペプチド(250μgシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の1用量)で処理されたマウス(●)、RIT(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)で処理されたマウス(▲)、およびCMRIT方法(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6および250μgシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の6用量)で処理されたマウス(◆)からのHBT3477腫瘍において、TUNELおよびCD31免疫組織化学分析によって評価された。アポトーシスは、1腫瘍あたり6つの無作為視野から×600倍率で定量され、処理平均の決定のために4つの腫瘍が用いられた。全細胞アポトーシスは、塗りつぶされた記号によって示され、内皮アポトーシスは、塗りつぶされていない記号によって示されている。誤差棒(error bar)は、平均の標準誤差を示す。RIT値よりも有意に大きいCMRIT方法の値(ANOVA、p<0.05)は、*によって示され;未処理よりも有意に大きいcRGDペンタペプチドの値(ANOVA、p<0.05)は、&によって示され;未処理よりも有意に大きいRITの値は、$によって示されている。CMRIT方法で処理された腫瘍についての全細胞アポトーシスは、RIT後の2時間目、1日目、および5日目にRIT腫瘍とは有意に異なっていた。内皮アポトーシスは、RIT後の6時間目、2日目、および5日目にRITマウスよりもCMRIT方法で処理されたマウスにおいて、有意に増加していた。X軸は、初期の時点での変化を図解するためにスケールに合せて引かれていない。Y軸の中断は、全細胞アポトーシスと内皮アポトーシスとの間のスケールの変化を示す。
【0060】
全細胞増殖
Ki67−プラス細胞の平均数が、未処理腫瘍および1、5、および6日目における腫瘍について決定された(cRGDペンタペプチド処理された腫瘍は、6日目に決定されなかった)。Ki67抗体は、細胞周期のすべての活性段階において増殖過程にある細胞の核中に存在するタンパク質を認識するが、G0において細胞中に見られるタンパク質を認識しない。これらの結果は、単独のRITまたはcRGDペンタペプチドが、未処理マウスと比較して、5日目に細胞周期において活性な細胞の増殖率を有意に減少させたことを示している(表2)。CMRIT方法も同様に、未処理マウスと比較して増殖を減少させ、その結果、単独のRITと比較して、6日目に有意に減少した増殖を生じた(図5)。
【0061】
図5は、RIT処理に対する、CMRIT方法処理後の腫瘍細胞の減少した増殖を示す腫瘍細胞の顕微鏡写真画像を示している。(A)RITおよび(B)CMRIT方法で処理された腫瘍における増殖細胞が、Ki67マウスMAb、ついで抗マウスローダミン連結抗体によるRITの6日後の腫瘍の10−μm凍結切片上で同定された。微小血管密度計数のために用いられた内皮細胞クラスターは、抗−CD31ラットMAb、ついでFITCに連結した抗−ラット抗体によって同定された。核染色はDAPIであった。増殖は、1腫瘍あたり6無作為視野から×1,000倍率で定量された。処理平均の決定のために4つの腫瘍が用いられた。RITの6日後、RIT処理された腫瘍と比較して、CMRIT方法で処理された腫瘍においてより少ないKi67−陽性細胞が観察された。ただし微小血管数は、この時点では異ならなかった。切片は、ピンクルフィルターを備えたオリンパス顕微鏡を用いて、×600で撮影された。
【0062】
微小血管密度
各腫瘍についての微小血管密度は、未処理マウス、cRGDペンタペプチド処理されたマウス、RITおよびCMRIT方法で処理されたマウスからの各腫瘍の1つの切片からの6つの無作為に選択された視野における非隣接CD31−染色領域の総数を、処理後の決定的時点において平均することによって決定された(表2)。未処理マウスと比較して有意に減少した微小血管密度が、単独のRIT、またはcRGDペンタペプチド(シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val))と組合わされたRITのどちらかを受けているマウスにおいて、RIT処理の6日後に観察された。1日目および5日目中に観察された内皮アポトーシスの(RIT以上の)増加は、微小血管密度における測定可能な差と関連しているようには見えず、全細胞アポトーシスに先行しなかった。これらのデータは、CMRIT方法に関連して増加した内皮アポトーシスが治療結果に寄与しうるが、これに影響を与える唯一のメカニズムではなさそうであることを示している。さらには、6日目までずっと通したデータは、減少した微小血管数が、RITとCMRIT方法との間の治療結果の差を説明することを示していない。
【0063】
【表2】
【0064】
HBT3477腫瘍上のαvβ3の発現
マウスインテグリン(CD61)と反応性がある抗β3抗体での免疫組織化学は、ヌードマウスにおけるHBT3477腫瘍の選択された領域の限定された標識を証明した(図6)。β3−標識部位は、CD31認識抗体によって共標識された、環様脈管構造として現れる区域を含んでいた。このことは、これらの腫瘍に供給を与える血管におけるαvβ3発現と一致する。CD31よりも実質的に少ないβ3の発現が観察された。このことは、CD31によって標識された内皮細胞の小さい割合が新生血管でありさえすれば、予想される。
【0065】
図6は、β3およびCD31がHBT3477乳癌腫瘍細胞上に発現されていることを示す、腫瘍切片の顕微鏡写真画像である。未処理マウスから除去された腫瘍を、免疫組織化学技術を用いて、インテグリンβ3および内皮タンパク質CD31の発現について分析した。マウスβ3へのハムスターMAbを加え、ついで抗ハムスターローダミン連結抗体を加えた。その後ラット抗マウスCD31MAbを加え、ついで抗ラットFITC連結抗体を加えた。ローダミン(β3)とFITC(CD31)との共局在(オレンジ色、矢印によって示されている)は、腫瘍に供給を与える血管におけるαvβ3インテグリン発現と一致する。腫瘍切片を、ピンクルフィルターを備えたオリンパス顕微鏡で、×600で撮影した。
【0066】
これらの結果は、本発明のCMRIT方法が、従来のRIT単一療法に対して増加した毒性を伴なわずに腫瘍治療の有効性を増加したことを証明している。RITの高用量を用いたCMRIT方法は、結果として、単独のRITについての15%治癒、および単独のシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)についての0%治癒と比較して53%治癒を生じたが、一方で、組合わされた用量レベルは、単独のRITについての20%治癒と比較して、44%治癒を生じた。より高い用量レベルにおいてCMRIT方法に関連した死亡の増加があったが、CMRIT方法およびRITについての死亡率は、統計的に異ならなかった。これらの結果は、療法の有意に良好な結果が、単一作用物質を用いた療法と比較して、毒性における統計的増加を伴なうことなく、CMRIT方法に関連しているということを示している。
【0067】
DeNardoらは、250μgのcRGDペンタペプチド(EMD270179)が、RITの1時間前に、50%までのHBT3477腫瘍によるRITの取り込みの増加を与えたことを報告している(Cancer Biother.Radiopharm.15:71−79(2000))。しかしながら110μCiから330μCiの用量における90Y−DOTA−ペプチド−ChL6を用いた、このHBT3477モデルの以前の研究において、260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6以上の注射用量の増加後に、増加した治癒率は生じなかった。これらの結果は、cRGDペンタペプチドのペプチド、例えばシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)に関連したRITの取り込みの増加は、治癒の増加に関連する主な要因ではないことを強く示唆している。
【0068】
CMRIT方法への脈管の寄与を、腫瘍細胞アポトーシスと比較して、内皮アポトーシスおよびその時間経過を評価することによって調査した。cRGDペンタペプチドが内皮アポトーシスを誘発し、その後内皮細胞の損失後に腫瘍細胞アポトーシスを誘発するならば、全細胞アポトーシスの増加の前に発生する内皮アポトーシスの増加が見られると予想される。RITと組合わせたcRGDペンタペプチド(シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val))(例えばCMRIT方法)は、ほとんどすべての時点においてRITの場合に観察されたもの以上の内皮細胞および全細胞アポトーシスレベルの両方を上昇させた。1日目および5日目にレベルが有意に増加した。さらには、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の単一用量は、未処理と比較して、同じ時点で内皮アポトーシスを有意に増加させた。全細胞アポトーシスに先行する内皮アポトーシスの明確なパターンは存在しないが、RITと比較して、CMRIT方法において内皮アポトーシスの持続的な上昇があった。しかしながらこの差の効果は、評価された時点において微小血管密度の差によって直接には反映されなかった。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)が、微小脈管組織の質に影響を与えた可能性がある。このことは、微小血管密度によって反映されなかった。これは、RIT処理された腫瘍と比較して、CMRIT方法において6日目に観察された増殖の減少と一致する。これは、評価された最後の時点であり、この時、微小血管数は、RITおよびCMRIT方法で処理された腫瘍の両方において減少した。
【0069】
CMRIT方法とRITとの間のほかの可能な差は、cRGDペンタペプチド、例えばシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の間接的阻害効果に関連し得た。放射線は、照射の1から4時間以内に、腫瘍血管上のβ3インテグリンの蓄積および活性化を誘発することが証明された。この増加は、照射された腫瘍血管のルーメンにおける血小板の蓄積と関連している。内皮細胞への血小板接着は、αvβ3インテグリンへの抗体でのブロックによって阻害され、血小板は、α−顆粒に含まれている成長因子を介して腫瘍新脈管形成に寄与する可能性がある。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)は、αvβ3に関する5nMと比較して、単離α2bβ3受容体に関する420nMのIC50を有すると報告されている。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)は、このマウスモデルにおいてこの用量で、照射に応答して腫瘍脈管構造における血小板の蓄積を阻害し、したがって腫瘍細胞へのパラクリン相互作用を減少させた可能性がある。さらにはαvβ3インテグリン受容体は、脈管内皮成長因子−2(VEGFR−2)受容体の完全活性化に参加すると報告されている。さらには、cRGDペンタペプチドによる阻害は、内皮細胞へのVEGFR−2受容体の下流効果、例えば隣接腫瘍細胞への成長因子放出の減少を阻害することができ、これは、腫瘍細胞増殖の全体的阻害を導きうる。
【0070】
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)阻害(単一モダリティー)へのHBT3477皮下腫瘍成長の応答性の欠如は、このモデルにおいて腫瘍成長が既存血管を利用するか、または十分な血管成長が、cRGDペンタペプチドの存在下においてでさえ発生することを示している可能性がある。RIT後、血管密度が実質的に減少した時、cRGDペンタペプチド阻害は、腫瘍細胞の減少および照射損傷からの内皮細胞回復につながることがあり、その結果として、治療有効性の増加に関連した、アポトーシスの連鎖的波及(waves)としての腫瘍細胞死の増加を生じる。
【0071】
本発明のCMRIT方法は、組合わせ治療の抗新脈管形成性環状RGDペンタペプチドから結果として生じる腫瘍の治療に対するRITの有効性の増加を与える。本発明のCMRIT方法について観察された治療的相乗作用は、いくつかのメカニズムの組合わせ効果による可能性があり、これは、アポトーシスの増加および細胞増殖の減少につながる。しかしながらCMRIT方法の場合に観察された内皮アポトーシスのより高いレベルは、内皮損失と一致し、これは腫瘍細胞損失に影響を与え、かつ治癒において観察される増加に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図面において、
【図1】単独のRITおよび単独のcRGDペンタペプチドでの処理に対する、本発明のCMRIT方法で処理されたマウスにおける腫瘍治癒率の増加を示す棒グラフである。PRは、部分退行を意味し、CRは完全退行を意味する。
【図2】単独のRITおよび単独のcRGDペンタペプチド処理と比較した、本発明のCMRITで処理されたマウスにおける毒性データのグラフ図面を示す。
【図3】腫瘍細胞の顕微鏡写真画像を示す。これは、本発明のCMRIT方法で処理されたマウスからの腫瘍におけるアポトーシスの増加を示している。
【図4】TUNEL方法によって決定された、本発明のCMRIT方法で処理されたマウスからの腫瘍における(A)全細胞、および(B)内皮細胞(EC)におけるアポトーシスを示すデータのグラフ図面を示す。
【図5】腫瘍細胞の顕微鏡写真画像を示しており、これは、単独のRITおよび単独のcRGDペンタペプチドで処理されたマウスに対する、本発明のCMRIT方法で処理されたマウスからの腫瘍における細胞増殖の減少を示す。
【図6】HBT3477乳房腫瘍細胞の顕微鏡写真画像を示す。これは、細胞上のβ3およびCD31発現を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍の治療方法に関する。より詳しくは本発明は、放射免疫療法とインテグリン受容体アンタゴニストとの組合わせを用いた腫瘍の治療に関する。
【0002】
(関連出願へのクロス・リファレンス)
この出願は、1999年9月9日に出願された、同時係属中の米国特許出願第09/787,374号の一部継続出願である。
【0003】
(政府の関心についての説明)
本明細書に記載されている研究の一部分は、国立癌研究所(National Cancer Institute)からの助成金番号第PO1−CA−47829号、および米国エネルギー省(Department of Energy)からの助成金番号第DEFG01−00NE22944号および第DEFG03−84ER60233号による援助を受けている。米国政府は、この発明に一定の権利を保持しうる。
【背景技術】
【0004】
新規かつ相乗的な治療の組合わせが、転移性乳癌、前立腺癌、ホジキンリンパ腫、およびその他の癌の治療に望ましい。これらの癌の多くは現在、標準的なマルチモダリティー療法では不治である。乳癌におけるp53突然変異およびbcl−2タンパク質過剰発現の高い発生率は、化学療法および放射線治療法への耐性を増す。全身性腫瘍標的化放射免疫療法(RIT)は、組織を特異的に標的し、かつ広範囲に広がった転移性病巣へ癌特異的細胞傷害性抗体を送達する可能性を有する。しかしながらヒト乳癌異種移植片モデルにおける研究は、単一作用物質としてのRITが、一般的には腫瘍を治癒させないことを証明している。放射線標識された抗体の腫瘍浸透は、均一でないことがあり、腫瘍のすべての部位において治癒を与えるには十分でないことがある。RITとほかの治療モダリティーとの組合わせが現在利用されているが、追加の化学療法または外部放射線治療法は、骨髄毒性のリスクを増す。これは、RITにおける主な用量限定的要因である。
【0005】
抗新脈管形成剤が、腫瘍の治療として提案されてきた。これらの薬剤は、遺伝子的に正常な内皮細胞を標的化する。これらは、正常組織における非常に低い内皮ターンオーバー速度と比較して、腫瘍新脈管形成の間はるかに高い速度で増殖する。抗新脈管形成剤は、ほかの化学療法薬とともに、及び外部放射線治療法と組合わせて用いられた時、治療効果を高めることが証明されている。RGDアミノ酸配列を介していくつかのリガンドを結合するαvβ3インテグリン受容体は、正常な脈管構造中に発現されるが、成長しつつある腫瘍脈管構造上で高度に発現し、これを抗新脈管形成剤に関する潜在的な標的にする。αvβ3インテグリンの高い発現および活性化も、より転移性で侵襲的な乳房腫瘍と相関関係があるとされてきた。モノクローナル抗体(MAb)および環状RGDペンタペプチドによるαvβ3活性の阻害は、内皮アポトーシスを誘発し、新脈管形成を阻害し、内皮単層浸透性を増すことが証明された。αvβ3活性の阻害は、乳癌異種移植片および黒色腫異種移植片における腫瘍成長の減少と関連付けられた。環状RGDペンタペプチドと抗体IL−2融合タンパク質との相乗作用は結果として、黒色腫、結腸癌、および神経芽細胞腫のネズミモデルにおける治療効果の増加を生じた。選択的腫瘍取り込みは、放射線標識された環状RGDペンタペプチドを用いて証明された。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、腫瘍、例えば前立腺腫瘍、乳房腫瘍、リンパ腫などを有する患者の治療方法を提供する。この方法は、組合わされたモダリティーの放射免疫療法(CMRIT)治療方式であって、抗新脈管形成性シクロ−(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)−含有ペンタペプチド(cRGDペンタペプチド)および放射免疫治療薬(RIT)を患者に投与することを含む治療方式である。この方法は、cRGDペンタペプチドの少なくとも1用量を患者に投与する第一工程を含む連続治療方式を含む。この最初のcRGDペンタペプチド治療の後、患者は、RITの抗腫瘍有効量が投与される。RIT治療後、患者は、cRGDペンタペプチドの少なくとも1つの追加的量が投与される。
【0007】
各cRGDペンタペプチド用量の量およびタイミングは好ましくは、患者への最大許容用量、すなわち患者へのcRGDペンタペプチドの毒性が治療的に許容しうる最大レベルであるか、その近くになるように選択される。
【0008】
本発明のCMRIT方法は、同じ投薬量レベルにおいて、単独のRIT、または単独のcRGDペンタペプチドでの治療と比較して有意に大きい抗腫瘍効果を与える。CMRIT方法はまた、同じ投薬量レベルにおいて、単独のRIT、または単独のcRGDペンタペプチドでの治療と比較して、腫瘍細胞および腫瘍内皮細胞のより大きいアポトーシスを与える。
【0009】
1つの側面において、本発明はまた、RITの少なくとも1つの単位用量が入っている第一容器と、cRGDペンタペプチドの全部で少なくとも2つの単位用量が入っている1つ以上の追加容器とを含むキットも提供する。これらの容器は各々、容器の内容物、場合により投与順序、および医薬品および放射性物質に関する政府の規制によって要求されるその他のあらゆる関連情報を説明しているラベルを含んでいる。このキットはまた、本明細書に記載されている方法による腫瘍の治療に関する、容器内容物の使用についての印刷された説明書を含んでいることもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、多くの異なる形態の実施態様が可能である。具体的な実施態様が図面に示され、明細書および特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の開示は、本発明の原理の例示であり、本明細書に例証されている具体的な実施態様に限定されるわけではない。
【0011】
患者における腫瘍の治療のための組合わせモダリティー放射免疫療法(CMRIT)方法は、
(a)抗新脈管形成性シクロ−(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)−含有ペンタペプチド(cRGDペンタペプチド)の少なくとも1用量を患者に投与する工程;
(b)放射免疫治療薬(RIT)の抗腫瘍有効量を患者に投与する工程;および
(c)cRGDペンタペプチドの少なくとも1つの追加的用量を患者に投与する工程
の連続工程を含む。
各cRGDペンタペプチド用量の量およびタイミングは好ましくは、患者への最大許容用量、すなわち患者へのcRGDペンタペプチドの毒性が治療的に許容しうる最大レベルであるか、その近くになるように選択される。最大許容用量は、製薬業で周知の方法によって容易に決定することができる。例えばcRGDペンタペプチドの毒性は、臨床研究から得ることができる。各投薬量の量は好ましくは、約0.05mgから約500mg、より好ましくは約0.1から約100mg、最も好ましくは約0.2から約20mgの範囲にある。毎日の総(aggregate)投薬量は好ましくは、約0.001から約2mg/kg体重、より好ましくは約0.002から約1mg/kg、最も好ましくは約0.002から約0.2mg/kgの範囲にある。しかしながら各々の対象とする患者の具体的な用量は、多くの因子、例えば用いられる具体的なcRGDペンタペプチド化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性、食餌療法、投与時間および経路、および排泄率、薬剤の組合わせ、およびこの療法が適用される同定の障害の重症度に依存する。非経口投与が好ましく、最も好ましくは腹腔内(i.p.)投与である。しかしながら経口、座薬、または局所投与も意図される。追加のcRGDペンタペプチド用量は、所望であればRITの投与後数ヶ月まで続行することができる。
【0012】
cRGDペンタペプチドは、医薬適合性の賦形剤およびキャリヤ、例えば当分野において公知の緩衝剤などとともに配合することができる。適切な賦形剤物質は、経腸(例えば経口または直腸)、非経口(例えば静脈内注射)、または局部(例えば局所、皮膚、眼、または鼻)投与、または吸入スプレーの形態における投与に適し、かつ新規化合物と反応しない有機または無機物質であり、その例は、水または水性等張食塩水、低級アルコール、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、およびほかの脂肪酸グリセリド、ゼラチン、大豆レシチン、炭水化物、例えばラクトースまたはデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、セルロース、および石油ゼリーである。
【0013】
経口使用のためには、プレーン錠剤、被覆錠剤、カプセル、シロップ、ジュース、またはドロップが特に有用である。腸溶コーティングまたはカプセルシェルを有する被覆錠剤およびカプセルが特に有利である。座薬は直腸投与のために用いられ、溶液は非経口投与のため、好ましくは油性溶液または水溶液、同様に懸濁液、エマルジョン、またはインプラントが用いられる。
【0014】
局所使用に適した形態の例は、目薬の形態で用いることができる溶液、および同様に例えば懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏、または圧迫包帯である。吸入スプレーの形態での投与のためには、噴射ガスまたは噴射ガス混合物(例えば二酸化炭素またはフルオロクロロ炭化水素置換物)中に溶解または縣濁された活性成分を含むスプレーを用いることができる。この場合、活性成分は便宜的に微粉形態で用いられ、1つ以上の追加の生理学的適合性溶媒、例えばエタノールの存在も可能である。吸入溶液は、慣例的な吸入器を用いて投与することができる。cRGDペンタペプチドはまた、凍結乾燥することもでき、その結果生じた凍結乾燥物は、例えば注射可能な製剤の製造のために用いることができる。これらの注射は、ボーラスとして、または連続注入(例えば静脈内、筋肉内、皮下、または鞘内)の形態で与えることができる。記載された製剤は、滅菌することができ、および/または助剤、例えば保存料、安定剤、および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝物質、着色料、および/または香味料を含んでいてもよい。所望であれば、cRGDペンタペプチドはまた、1つ以上のほかの活性成分を含んでいてもよく、これには例えば1つ以上のビタミンなどが含まれる。
【0015】
このcRGDペンタペプチドは、それ自体で、または生理的に許容しうるその塩の1つ以上として用いることができる。cRGDペンタペプチドは内部塩へ、または酸を用いて会合酸付加塩に転換することができる。この反応に適した酸は特に、生理的に許容しうる塩を生じる酸である。したがって無機酸を用いることができる。これの例は、硫酸、硝酸、ハロ水素酸(hydrohalic acid)、例えば塩酸または臭化水素酸、リン酸、例えばオルトリン酸、スルファミン酸、およびまた有機酸、特に脂肪族、脂環式、アル脂肪族(araliphatic)、芳香族またはヘテロ環式一塩基性または多塩基性カルボン酸、スルホン酸、または硫酸、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、サリチル酸、2−または3−フェニルプロピオン酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタン−またはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレン−モノ−および−ジスルホン酸、ラウリル硫酸である。
【0016】
あるいはまた、cRGDペンタペプチドの酸形態は、塩基との反応によって、その生理的に許容しうる金属またはアンモニウム塩の1つに転換することができる。この状況において特に適切な塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、およびアンモニウム塩、およびまた置換アンモニウム塩、例えばジメチル−、ジエチル−、またはジイソプロピルアンモニウム塩、モノエタノール−、ジエタノール−、またはトリエタノールアンモニウム塩、シクロヘキシルアンモニウム塩、ジシクロヘキシルアンモニウム塩、ジベンジルエチレンジアンモニウム塩、およびまた例えばN−メチル−D−グルカミンまたはアルギニンまたはリシンとの塩である。
【0017】
好ましくはこのcRGDペンタペプチドは、次のものである:
シクロ−Arg−Gly−Asp−D−Phe−Val(EMD66203)、
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(EMD121974、ドイツ国ダルムシュタットのメルク社(Merck KGaA,Darmstadt,Germany)から入手しうるシレンギチド(Cilengitide))、または
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−1−アミノシクロヘキサンカルボン酸)(EMD270179)であり、これの調製法は、Jonczykらの米国特許第5,866,540号および第6,001,961号に記載されている。これに関連した開示は、参考として本明細書に援用されている。最も好ましくはこのcRGDペンタペプチドは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)である。
【0018】
好ましくはcRGDペンタペプチドの最初の投薬量は、RITの投与の約1時間前までに患者に投与される。好ましくはcRGDペンタペプチドの少なくとも1つの追加的用量は、RITの投与の約2日以内に投与される。好ましい実施態様において、cRGDペンタペプチドの少なくとも約2つの追加的用量は、RIT用量後に患者に投与され、より好ましくはcRGDペンタペプチドの約3つの追加的用量、最も好ましくは少なくとも約4つの追加的用量が投与される。特に好ましい実施態様において、cRGDペンタペプチドの少なくとも約5つの追加的用量が、RIT用量後に連続的に投与される。好ましくはcRGDペンタペプチドの各追加的用量は、用量間に、約2日未満の間隔で投与される。RITの追加的用量の投与は、所望であれば1週間あたり約2用量の割合で数ヶ月間続行することができる。
【0019】
RIT投薬量は好ましくは、特定のRIT剤の放射能レベルに基づく。用いられるRITの量は好ましくは、90Yを放射線源として用いる時に、1用量あたり約20mCiから約200mCiの範囲内の放射能投薬量を与える。しかしながら各々の対象とする患者に対する具体的な用量は、多くの因子、例えば用いられる特定のRIT化合物の放射能、用いられる同定の放射性核種、年齢、体重、一般的な健康状態、性、食餌療法、投与時間および経路、排泄率、薬剤の組合わせ、およびこの療法が適用されている特定の腫瘍のサイズおよび重症度による。例えば転移性前立腺癌または乳癌の治療において、キレート化90Yと複合体化された抗−MUC−1(M170)モノクローナル抗体は一般的に、腫瘍のサイズおよび上記のほかの因子に応じて、約20mCiから約200mCiの範囲内の総投薬量を送達するために、約5mCi/mgの抗体の比活性において投与される。RITの非経口投与が好ましく、より好ましくは静脈内(i.v.)投与である。
【0020】
腫瘍の治療のための放射免疫治療薬は、当分野で周知である。適切なRIT剤は、治療的に有用な放射性核種が付着されたあらゆる標的放射性核種療法を包含し、これらは、腫瘍または腫瘍脈管構造によって付着可能であるか、または捕獲可能である。このような有用なRIT剤は、腫瘍標的化または腫瘍脈管構造標的化リガンドまたは分子を含んでいる。放射性核種は、標的分子またはリガンドに直接付着されてもよく、またはキレート剤によってリガンドに付着されるか、これと会合されてもよい。あるいはまたリガンドは、キレート化または放射性核種捕獲基を含んでいてもよく、患者の腫瘍または腫瘍脈管構造に結合させるために、患者にコールド投与されてもよい。放射性核種のその後の投与の時、結合されたリガンドは、腫瘍部位において放射性核種を捕獲しうる(前標的化放射性核種療法)。標的分子またはリガンドには、抗体、抗体断片、抗体断片の組換え的組合わせ、ペプチド、または腫瘍または腫瘍脈管構造への選択的親和性を有するその他のあらゆるリガンドが含まれる。
【0021】
好ましくはRITは、キレート剤が腫瘍標的化分子に化学的に結合されている、放射性核種で標識されたキレート剤−リガンド複合体である。好ましい腫瘍標的分子には、抗体、例えばモノクローナル抗体、または抗体断片が含まれる。より好ましくは腫瘍標的分子は、抗腫瘍抗体である。あらゆる抗腫瘍抗体を用いることができる。好ましくは、抗腫瘍抗体は、腫瘍脈管構造を標的化する。あるいはまた抗体は、腫瘍抗原、例えばp185HER2、ミルクムチン核タンパク質、TAG−72、ルイスa、癌胎児性抗原(CEA)、9.2.27抗体によって認識された高Mr黒色腫抗原、またはOV−TL3またはMOV18によって認識された卵巣関連抗原を標的化しうる。好ましい抗腫瘍抗体は、抗−MUC−1モノクローナル抗体、例えばカナダ国エドモントンのバイオミラ社(Biomira Inc.,Edmonton,Canada)から入手しうるM170mAb、キメラL6−抗腫瘍モノクローナル抗体(ChL6 MAb)などである。
【0022】
癌放射線治療方法に用いるのに適したあらゆる放射性核種を、本発明のCMRIT方法に用いることができる。適切な放射性核種には、非限定的に131I、177Lu、67Cu、64Cu、196Re、および90Yが含まれる。好ましくはこの放射性核種は、90Yである。
【0023】
適切なRIT剤およびこれらの調製法は、Mearesらの米国特許第5,958,374号に記載されている。これに関連した開示は、参考として本明細書に援用されている。
【0024】
好ましくはこのキレート剤は、ポリアザ大環状基またはポリオキサ大環状基である。より好ましくはこのキレート基は、次のものに由来する:
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,7,10−テトラアザシクロトリデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;または
1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸。
【0025】
より好ましくは、放射性核種標識キレート剤−リガンド複合体は、ChL6mAbまたはM170mAbに化学的結合される。最も好ましくはRITは、90Y−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸−ペプチド−ChL6(以後90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)、またはこれの抗−MUC−1mAb類似体である。
【0026】
放射性核種は好ましくは90Yである。111Inは、腫瘍を画像化するためにRIT中に含めることができる。好ましくは放射性核種標識キレート剤−リガンド複合体は、ChL6 MAbまたはM170mAbに化学的結合される。
【0027】
好ましい実施態様においてキレート剤は、N−置換1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸であり、この場合、N−置換基は、−CH2C(=O)−(Gly)3−L−(p−イソチオシアナト)−Phe−アミド(以後DOTA−ペプチド)であり、放射性核種は90Yである。
【0028】
RITは、cRGDペンタペプチドの配合に関して上に記載されている、液体注射可能な配合物に適した、多様な医薬適合性の賦形剤とともに配合することができる。
【0029】
本発明のCMRIT方法は、多様な癌を治療するために用いることができる。例えば本発明のCMRIT方法は、固形腫瘍を呈する癌、例えば乳癌、結腸癌、肺癌、甲状腺癌、卵巣癌などを治療するために用いることができる。CMRIT方法はまた、非固形腫瘍癌、例えば非ホジキンリンパ腫などを治療するためにも用いることができる。本発明のCMRIT方法は、好ましくは乳癌の治療法として用いられる。
【0030】
本発明のCMRIT方法は、同じ投薬量レベルにおいて、単独のRITおよび単独のcRGDペンタペプチドでの治療の総合計(aggregate total)抗腫瘍効果に比べて、有意に大きい抗腫瘍効果を与える(すなわち相乗効果が見られる)。CMRIT方法はまた、同じ投薬量レベルにおいて、単独のRITおよび単独のcRGDペンタペプチドでの治療に比べて、腫瘍細胞および腫瘍内皮細胞のより大きいアポトーシスも与える。
【0031】
本発明はもう1つの側面において、RITの少なくとも1つの単位用量が入っている第一容器と、cRGDペンタペプチドの全部で少なくとも2つの単位用量が入っている1つ以上の追加的容器とを含むキットを提供する。これらの容器は各々、容器の内容物、場合により投与順序、および医薬品および放射性物質に関する政府の規制によって必要とされるあらゆるその他の関連情報を説明するラベルを含んでいる。このキットはまた、本明細書に記載されている方法による腫瘍の治療に関する、容器内容物の投与についての印刷された説明書を含んでいることもある。
【0032】
これらの容器は、バイアル、アンプル、ボトルなどであってもよい。各容器には好ましくは単一単位用量が入っている。しかしながら多用量容器も用いることができる。これらの指示材料は好ましくはまた、安全および有効性情報も含んでいる。
【0033】
次の非限定例は、本発明をさらに例証するために示される。
【0034】
試薬
キャリヤを含まないイットリウム−90(90Y)(ワシントン州リッチランドのパシフィック・ノースウエスト・ナショナル・ラボラトリー(Pacific Northwest National Laboratory,Richland,WA)またはマサチューセッツ州ボストンのニューイングランド・ニュークリア(New England Nuclear,Boston,MA))を、0.05M HCl中の塩化物塩として購入した。キメラL6(ChL6)、すなわちヒト−マウス抗体キメラ(ワシントン州シアトルのブリストル−マイヤーズ・スクイブ・ファーマシューティカル・リサーチ・インスティテュート(Bristol−Myers Squibb Pharmaceutical Research Institute,Seattle,WA))が、ヒトの乳房、結腸、卵巣、および肺癌上に高度に発現された内在性(integral)膜糖たんぱく質と反応する。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(EMD121974)は、αvβ3およびαvβ5インテグリンに対して選択的なアンタゴニストであり、IC50値は、単離されたαvβ3インテグリンの場合は低いナノモル範囲内にあり、αvβ3発現M21黒色腫細胞の場合は低いマイクロモル範囲内にある。ペプチド合成および特徴決定を、Dechantsreiterら、J.Med.Chem.42:3033−40(1999)によって既に記載されているように実施した。この文献に関連した開示は、参考として本明細書に援用されている。
【0035】
細胞系統
HBT3477、すなわちヒト乳房腺癌細胞系統は、ブリストル−マイヤーズ・スクイブ・ファーマシューティカル・リサーチ・インスティテュート(ワシントン州シアトル)から入手した。HBT3477細胞の70%超が、L6で強力に染色される。HBT3477細胞において、bcl−2が発現され、p53は、エキソン10にナンセンス突然変異を有する突然変異体であり、その結果として、p53タンパク質の部位における欠失を生じる。これは、テトラマー化、および二本鎖DNA切断の検出において機能する。HBT3477細胞は、機能的αvβ5インテグリンを発現するが、αvβ3インテグリンは発現しない。その理由は、ビトロネクチンへの付着は、αvβ5特異的P1F6抗体によってブロックされるが、αvβ3特異的LM609抗体によってブロックされないからである。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)は、約5μMのIC50で、ビトロネクチンへのHBT3477細胞の付着をブロックする。
【0036】
90Y−DOTA−ペプチド−ChL6
ChL6を、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸(DOTA)に複合体化し、DeNardoら、J.Nucl.Med.,36:829−836によって記載されているように、80パーセントまたはそれ以上の効率で90Yで放射標識し、90Y−DOTA−ペプチド−ChL6を調製した。90Y−DOTA−ペプチド−ChL6を、分子篩高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、セルロースアセテート電気泳動法(CAE)、およびHBT3477細胞結合放射免疫反応性アッセイ(RIA)によって、構造および機能的一体性について調べた。HPLCおよびCAEは、90Y−DOTA−ペプチド−ChL6の90%超が、CAEによって測定された場合、4%未満の高分子量種を有するモノマー形態にあることを示した。生きた細胞への免疫反応性結合は、92%超の反応性を示した。すなわち、200、230、または260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6の単一用量としての投与である。
【0037】
マウス
メスの無胸腺Balb/c nu/nuマウス(生後7から10週;メリーランド州フレデリックのハーラン・スプラグ・ドーリー社(Harlan Sprague Dawley,Inc.,Frederick,MD))を、カリフォルニア大学動物取り扱いガイドラインにしたがって維持管理した。対数期において採取されたHBT3477細胞(3.0×106)を、(特に言及されている場合を除いて)療法研究のために腹部の片側に、免疫病理研究のために両側に皮下注射した。RITの注射は、尾静脈からであり、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)は、腹腔内(i.p.)注射によって送達された。「0日目」は、RIT注射の時、またはcRGDペンタペプチドのみのグループの場合は、最初のcRGDペンタペプチド注射として表わされた。免疫病理研究のためには、腫瘍負担が許容限界を超えた時、指示された時点で、または療法研究のためには84日目に、マウスを頚部脱臼によって犠牲にした。
【0038】
対照(非RIT)処理グループ
グループは、処理を受けないマウス(24匹のマウス、それぞれ2個の腫瘍を有する14匹のマウス、および1個の腫瘍を有する10匹のマウス);非標識ChL6抗体(315μg)(各々2個の腫瘍を有する8匹のマウス);および0、2、4、6、8、および10日目に250μgの6用量として投与されたシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(各々1個の腫瘍を有する18匹のマウス)からなっていた。
【0039】
高用量RIT処理グループ
グループは、RITを単一作用物質(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6、(39匹のマウス、各々2個の腫瘍を有する15匹、および1個の腫瘍を有する24匹))として受けているマウス;および250μgの6用量としてのシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)と組合わされたRIT(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)であって、0日目にRITの1時間前に開始し、ついで2、4、6、8、および10日目にさらに5用量を受けているマウス(42匹、すべて各々1個の腫瘍を有する)からなっていた。
【0040】
低用量RIT処理グループ
グループは、RITを単一作用物質(200から230μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6、(28匹のマウス、230μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6を受けた、以前の研究からの各々2個の腫瘍を有する9匹、および各々200μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6で処理された、1個の腫瘍を有する19匹のマウス))として受けているマウス;およびシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の6用量(各々250μg)と組合わされたRIT(200μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)を受けているグループからなっていた。これらの用量は、0日目にRITの1時間前に与えられ、ついで2、4、6、8、および10日目にさらに5用量が与えられた(30匹のマウス、すべて各々1個の腫瘍を有する)。
【0041】
殺腫瘍効果
腫瘍を、1週間あたり3回、3つの直交直径においてキャリパで測定した。腫瘍体積を、半楕円体についての式を用いて計算した(DeNardoら、Clin.Cancer Res.、3:71−79(1997))。当初腫瘍体積は、処理前の日の体積として規定した。完全に退行した腫瘍は、ゼロ体積を有すると考えられた。腫瘍応答を、次のように分類した。治癒(C)、腫瘍は消滅し、調査の終了(84日)まで再成長しなかった;完全退行(CR)、腫瘍は少なくとも7日間消滅したが、後で再成長した;部分退行(PR)、腫瘍体積は、少なくとも7日間50%以上減少したが、その後再成長した;無応答(NR)、腫瘍体積は、50%未満しか減少しなかった。異なる応答を有する2個の腫瘍を有するマウスの場合、腫瘍応答は、両方の腫瘍応答にしたがって記載された。毒性によって30日以前に死んだマウスは、腫瘍応答結果から除外された。
【0042】
毒性
体重および血球数を、注射後12週間、または死ぬまで、1週間あたり2から3回測定した。血液サンプルを、2μL微小毛管ピペットを用いて尾静脈から収集した。1用量グループ中のマウスからのサンプルをプールし、赤血球(RBC)計数のためにリン酸塩−緩衝食塩水(PBS、0.9%食塩水/10mMリン酸ナトリウム、pH7.6)中に1:200希釈するか、血小板計数のために1%(w/v)アンモニウムオキサレート中に1:100希釈するか、または白血球(WBC)計数のために3%(w/v)酢酸中に1:20希釈した。
【0043】
細胞免疫病理学グループ
ほかの記載がなければ、グループは、各々2個の腫瘍を有する2匹のマウスからなっていた。全部で4個の腫瘍について、各時点で分析した。これらのグループは、次のものからなっていた:処理を受けないマウス(4匹のマウス、7個の腫瘍);単一用量として与えられた250μgのシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)、ついでペプチド注射の2時間、6時間、および1から5日後に犠牲にされた;RITのみ(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)、ついで2時間目、6時間目、および1から6日目に犠牲にされた(3匹のマウス、5日目に5個の腫瘍);およびRITの1時間前に与えられ、10日間を通して一日おきに反復された、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(250μg)と組合わされたRIT(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)、ついでRIT後の2時間目、6時間目、および1から6日目に犠牲にされたマウス。腫瘍を除去し、半分に切断し、最適切断温度(O.C.T.)媒質中で凍結し、切片化(sectioning)まで約−70℃で保存した(10−μm切片)。すべての時点を、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ仲介dUTPニック末端標識(TUNEL、Cavrieliら、J.Cell Bio.,119:493−501(1992))分析によって、アポトーシスについて評価し、選択された時点(未処理、1、5、および6日)を、増殖率(Ki67)における差および微小血管密度(CD31)について評価した。
【0044】
総アポトーシスおよび内皮アポトーシスのTUNEL分析
腫瘍を、フィッシャー・スーパープラス(superplus)スライド(ペンシルベニア州ピッツバーグのフィッシャー(Fisher,Pittsburgh,PA))上で、10−μm切片に切断し、1時間空気乾燥し、1%パラホルムアルデヒド中の約10分間の固定に続いて、製造業者の指示にしたがって、アポップタグ・レッド・キット(ApopTag Red kit)(ニューヨーク州パーチェスのインタージェン(Intergen,Purchase,NY)の、標識として用いられたローダミン)でのTUNEL分析まで、約−70℃で凍結した。TUNEL後、これらのスライドを濯ぎ洗いし、内皮細胞を同定するために、1:100希釈におけるCD31に対するラット抗マウスMAb(カリフォルニア州サンディエゴのファーミンゲン(Pharmingen,San Diego,CA))で、4℃において一晩インキュベートした。スライドを濯ぎ洗いし、FITCに連結された抗ラット抗体(1:50希釈)(ファーミンゲン)で1時間インキュベートした。スライドを濯ぎ洗いし、バックグラウンド核染色のために4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、0.2μg/ml)中に短時間浸漬し、再び濯ぎ洗いし、標本にし(mount)、ついで定量まで約4℃で暗室に保存した。
【0045】
総アポトーシスおよび内皮アポトーシスの定量
多重波長の同時観察を可能にするための、UV、FITC、およびローダミンについての励起フィルター、および二重/三重帯域通過フィルターを有するクロマ・ピンクル・フィルターセット(バーモント州ブラットルボロのクロマ(Chroma,Brattleoro,VT))を備えたオリンパス顕微鏡を用いて、各切片の非壊死部位における6つの無作為に選択された×600視野(field)(150,000μm2/視野)を定量した。視野は、DAPI標識を用いて、見える面積全体をカバーするように選択した。これは一般的に、約300から350細胞を含んでいた。総アポトーシスは、各腫瘍について1視野あたりの陽性(プラス)核の平均数によって決定されたが、一方で、内皮アポトーシスは、FITC(CD31)およびローダミン(TUNEL)の両方によって標識された細胞を計数するために、二重帯域通過フィルターで同じ視野を用いて決定された。視野は、腫瘍切片の非壊死性のように見える区域から選択されたが、その理由は、HBT3477異種移植片が典型的には、ヌードマウスにおいて急速に成長し、6日でこれらの体積を二倍にし、その結果として未処理腫瘍の中央壊死が生じるからである。TUNELは、あまり強力にではないが壊死細胞を標識しうるので、この戦略が、完全無作為プロセスに対して選択された。
【0046】
増殖および微小血管密度分析
未処理マウス、およびcRGDペンタペプチド、RIT、およびCMRIT方法で処理され、処理後1、5、および6日目に犠牲にされたマウスからの腫瘍の10−μm切片を、氷冷アセトン中に10分間固定し、PBS中に濯ぎ洗いし、0.6%H2O2とともにメタノール中に短時間インキュベートした(5分)。PBS中の濯ぎ洗い後、切片を、PBS中10%ヤギ血清および1%ウシ血清アルブミンで10分間ブロックした。マウス抗−Ki67MAb(ファーミンゲン、クローンB56)を、ブロック溶液(6.25μg/ml)中に加え(apply)、これらのスライドを、室温で2時間インキュベートし、ついでPBS中で濯ぎ洗いをした。ヤギ抗マウスローダミン標識されるか、またはヤギ抗マウスCy−3−標識された抗体を加え(ペンシルベニア州ウエスト・グローブのジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ社(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.,West Grove,PA)、1:100)、これらのスライドを、室温で1時間インキュベートした。PBS中の濯ぎ洗い後、これらの切片を、ラット抗マウスCD31抗体(ファーミンゲン、1:100)とともに室温で1時間インキュベートし、ついでPBS中で濯ぎ洗いをし、その後1時間、ヤギ抗ラットFITC−標識された抗体(ファーミンゲン、1:50)とともにインキュベートした。PBS中の濯ぎ洗い後、これらのスライドを、DAPI(0.4μg/ml)で対比染色し、カバースリップ下バイオメダ(Biomeda)ゲルマウント(フィッシャー)に取り付けた。Ki67の定量を、増殖の評価のためにオリンパス顕微鏡を用いて×1,000倍率で実施した。1個の腫瘍におけるKi67−陽性細胞/視野の平均総数を、DAPI染色によって無作為に選択された、1腫瘍あたり6視野からの計数によって決定した。微小血管密度は、×400倍率で、1無作為視野あたりのCD31−染色された血管数を計数することによって決定した。隣接クラスターとは別個の、CD31に対して陽性(プラス)のあらゆる内皮細胞または細胞クラスターを、1つの微小血管として計数した。1腫瘍切片あたり6つの無作為に選択された視野を用いて、各腫瘍についての平均を確立した。1つの処理グループについての平均微小血管密度は、4つの腫瘍/グループからの値を平均して決定した。
【0047】
ヌードマウスにおけるHBT3477腫瘍によるβ3およびCD31発現
腫瘍を半分に切断し、O.C.T.媒質(インディアナ州エルクハートのティシュー・テック、マイルズ社(Tissue Tek,Miles,Inc.,Elkhart,IN))中で凍結し、薄片化まで約−70℃で保存した。切片(10−μm)を空気乾燥し、染色するまで約−70℃で凍結した。ついで切片を氷冷アセトン中に10分間固定し、PBS中に濯ぎ洗いし、30分間PBS中10%ヤギ血清中でブロックした。ハムスター抗マウスCD61(β3)MAb(ファーミンゲン)を、10μg/mlで加え、これらのスライドを室温で3時間インキュベートした。PBS中の濯ぎ洗い後、抗ハムスターローダミン連結抗体(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ社)を加え(1:50)、ついで室温で1時間インキュベートした。PBS中の濯ぎ洗い後、ラット抗マウスCD31抗体を加え(1:100、ファーミンゲン)、これらのスライドを室温で1時間インキュベートした。PBSでの濯ぎ洗い後、抗ラットFITC連結抗体(1:50、ファーミンゲン)を加え、これらのスライドを室温で1時間インキュベートし、PBS中に濯ぎ洗いした。これらのスライドを、DAPI(0.2μg/ml)中に浸漬し、カバースリップ下のバイオメダゲルマウント(フィッシャー)で標本にした。β3とCD31との同時発現が、多重波長の同時観察を可能にするための、UV、FITC、およびローダミンについての励起フィルター、および二重/三重帯域通過フィルターを有するクロマ・ピンクル・フィルターセット(バーモント州ブラットルボロのクロマ)を備えたオリンパス顕微鏡を用いて観察された。
【0048】
統計分析
RITおよびCMRIT方法で処理されたマウスについての死亡率データの統計分析を、スタットエグザクト(StatExact)ソフトウエアを用いるフィッシャー・エグザクトテストを利用して、死亡率が異なるかどうかを決定した。療法データの統計分析は、コホラン・マンテル・ヘンスゼル(Cochran Mantel Haenszel)テストを用いて実施し、RITおよびCMRIT方法グループについての結果に対するRIT用量の効果を評価した。RIT対CMRIT方法グループについてのほかのすべての応答との治癒率の比較を、フィッシャー・エグザクトテストによって実施した。最良の腫瘍応答を、統計目的のために2個腫瘍動物に対して用いた。異なる時点における免疫病理グループ間の統計差を、スタットビュー(STATview)ソフトウエアを適切なものとして用いて、分散分析(ANOVA)(フィッシャーPLSD)によって評価した。p<0.05が有意であると考えられた。
【0049】
殺腫瘍効果
未処理マウス、単独のシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)を受けているマウス、およびChL6非標識抗体を受けているマウスにおける大部分の腫瘍は、中断なく成長した。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(一日おきに与えられた全部で6×250μg用量)の腫瘍成長に対する見かけ上の効果は観察されず、その結果として、テストされた18匹のマウスに治癒は生じなかった。2匹の未処理マウスに加えて、非標識ChL6抗体を受けている2匹のマウスは、これらの腫瘍の自然の退行が起こり、非−RITマウスについて8%(4/50)治癒率を生じた(表1、図1)。
【0050】
表1において、カッコ内の数字は、2個の腫瘍を有するマウス(2個腫瘍マウス)からの最良の応答を用いて得られた合計を表わす。例えば2個腫瘍マウスが、治癒した1個の腫瘍と部分退行腫瘍1個とを有するならば、これは、この表の最悪応答分析(カッコなしのエントリー)において部分退行(PR)としてカウントされるであろうが、最良応答分析(カッコの数字)を用いた場合、治癒(C)とカウントされる。RITを受けているマウスは、260μCi(高用量)または200から230μCi(低用量)90Y−DOTA−ペプチド−ChL6単独で、またはシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の6用量と組合わせて(CMRIT方法)処理された。RIT後30日以前に毒性によって死ぬマウスの腫瘍応答は、有効性評価から除外した。単独の高用量RITの結果として、26匹のマウス中4匹の治癒(15%)を生じたが、一方で、単独の低用量RIT結果として、20匹のマウス中5匹の治癒(25%)を生じた。低用量RITでのCMRIT方法の結果として、22匹のマウス中8匹の治癒(36%、p=0.514)を生じたが、一方で、高用量RITでのCMRIT方法の結果として、19匹のマウス中10匹の治癒(53%、p=0.011)を生じた。統計分析は、RITまたはCMRIT方法に対して調節された、RIT用量に基づく治療の結果には差がないことを示した。結果は用量によって変化しなかったので(p>0.8)、RITについての結果を、CMRIT方法についての結果と比較した。これらの結果は、CMRIT方法が結果として、RIT(20%治癒率)よりも有意に大きい治癒(44%治癒率)を生じた(p=0.020)ことを示し、このことは、単独のRITに勝るCMRIT方法の高い有効性と一致する。
【0051】
図1は、CMRIT方法を用いて得られたマウスの乳癌異種移植片における治療の有効性の増加を示している。単一作用物質として、および組合わせ療法(CMRIT方法)として用いられた90Y−DOTA−ペプチド−ChL6およびシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)への腫瘍応答が示されている。結果は、RIT(200から260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)についての組合わせ高用量および低用量結果を示している。グループは、未処理、315μg非標識ChL6で処理されたマウス、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)250μgの6用量で処理されたマウス、単独のRITで処理されたマウス、およびCMRIT方法で処理されたマウス(シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)250μgの6用量および1用量RIT(200および260μCi))であった。応答は、84日が終わった時に評価した。処理の有意に増加した有効性は、RIT処理されたマウスと比較して、CMRIT方法で処理されたマウスにおいて観察された(示されているように、2個腫瘍マウスに対して最悪の結果または最良の結果を用いた。後者の場合、p=0.02である)。
【0052】
【表1】
【0053】
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の毒性
死亡率または毒性の増加は、未処理マウスと比較して、単独のシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(250μg、10日間にわたって6用量)によって誘発されなかった(RITを受けていないすべてのグループ(未処理、非標識ChL6、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val))のうち、毒性によって死んだマウスは無かった)。
【0054】
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)処理されたマウスおよび未処理マウスは、同様な体重変化、RBC、WBC、および血小板レベルを示した。高用量または低用量のどちらかのRITで処理されたマウス、およびRITとシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)との組合わせで処理されたマウスは、RITを受けていないマウスと比較して、減少した体重、RBC、WBC、および血小板数を示したが、RITとシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)との組合わせは、単独のRITで観察された値以上にはこれらの値を低下させなかった(図2AからD)。RITの高用量において、死亡率は、RIT(13/39匹のマウス(33%))およびCMRIT方法(23/42匹のマウス(55%))グループの両方において未処理マウスよりも高かったが、死亡率は、CMRIT方法によって統計的には増加しなかった(フィッシャーエグザクト、p=0.0736)。同様に死亡率は、未処理マウスよりも低用量RITおよびCMRIT方法グループにおいて増加したが、CMRIT方法で処理されたマウスの死亡率(8/30(27%))は、RIT以上には増加しなかった(8/28(29%))(フィッシャーエグザクト、p=1.000)。低用量および高用量死亡率の結果が組合わされる時、CMRIT方法は結果として、RIT以上に増加した死亡率を生じない(フィッシャーエグザクト、p=0.1652)。これらの結果は、単独またはRITと組合わせて投与されたcRGDペンタペプチド、例えばシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)が、毒性を有意に増加させないことを示している。
【0055】
図2は、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)療法も、CMRIT方法も、毒性を増加しないことを示している。単一試験からの、未処理マウス(5匹)、単独のシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)(250μgの6用量)で処理されたマウス(13匹)、単独のRIT(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)で処理されたマウス(5匹)、およびCMRIT方法(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6および250μgシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の6用量)で処理されたマウス(13匹)のグループについてのA:RBC、B:血小板、C:WBC、およびD:マウス体重である。示されている結果は、各グループについてプールされた血液サンプル、および示された日における各グループについての平均体重±s.eを表わす。単独またはRITと組合わせたcRGDペンタペプチドは、毒性を増加させなかった。
【0056】
腫瘍および内皮細胞(全細胞)におけるアポトーシス
内皮細胞を同定するために、CD31染色と組合わせたTUNEL方法によって、アポトーシスを評価した(図3)。1腫瘍あたりのTUNEL陽性腫瘍および内皮細胞の数(全細胞)を、細胞が視野全体の面積をカバーするように選択された非壊死組織の6つの無作為視野(×600)から平均した。平均は、350細胞/視野であった。未処理腫瘍は、9±1.0陽性細胞/視野の平均を有した(2.6%)。cRGDペンタペプチド(シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val))の単一用量は、処理の一日後、アポトーシスを有意に増加させた(16.2±1.89、4.6%)が、アポトーシスのこのレベルはその後減少した。未処理腫瘍と比較した場合、単独のRITは結果として、有意に増加したアポトーシス(図4に記載されているように)を生じた。アポトーシス細胞の最大数は、6日目に見られた(21.4±2.9、6.1%)。CMRIT方法後のアポトーシスは、6日目以外すべての時点でその他のすべての処理グループよりも高かった(有意に増加したアポトーシスが見られる。図4)。CMRIT方法後のアポトーシスは、RIT後5日目にピークになった(30.7±2.0細胞/視野、8.8%)。下方のピークは、CMRIT方法後の1日目であった(21.9±2.6、6.3%)。アポトーシスのこれら2つのピークは、発生するアポトーシスの2つの「波」と一致する。しかしながらRIT腫瘍と比較して、CMRIT方法で処理された腫瘍において発生する全細胞アポトーシスにおける差は、付加的(additive)であり、したがってほかのメカニズムも有効性に影響を与えることがあることを示唆している。
【0057】
図3は、CMRIT方法の結果としてアポトーシスの増加を生じることを証明する顕微鏡写真画像である。アポトーシス(アポップタグ・レッドでのTUNEL)およびCD31(FITC)が、処理開始の5日後に評価された(A)未処理、(B)cRGDペンタペプチド処理された(250μg シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の1用量)、(C)RIT(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)、および(D)CMRIT方法(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6および250μgシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の6用量)マウスからの腫瘍の10−μm切片において例証されている。アポトーシス(ローダミン)が、腫瘍細胞および内皮細胞(FITC)において観察され、ここではローダミンおよびFITC染料が共局在している(矢印によって印が付けられているオレンジ色の細胞)。バックグラウンド核染色がDAPIを用いて得られた。切片を、ピンクルフィルターを備えたオリンパス顕微鏡を用いて×600で撮影した。腫瘍および内皮細胞のアポトーシスの増加が、単独のRITで処理されたマウスと比較して、CMRIT方法で処理されたマウスにおいて観察された(ANOVA、p<0.05)。
【0058】
内皮アポトーシス
cRGDペンタペプチドが、脈管内皮細胞にアポトーシスを誘発すると以前に報告されているので、cRGDペンタペプチド処理された(単一用量のシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val))腫瘍における内皮細胞アポトーシスを、未処理腫瘍と比較した。有意に増加したアポトーシスが、未処理腫瘍(0.6±0.1)と比較して、cRGDペンタペプチド処理の1日後(2.5±0.5)および5日後(2.4±0.7)に観察された。しかしながら、cRGDペンタペプチド処理と未処理腫瘍との間のアポトーシスのこれらの差は、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の多(6)用量を用いた場合でさえ、成長または腫瘍体積における差によって反映されなかった。単独のRITもまた結果として、初期の時点において未処理腫瘍と比較して、有意に増加した内皮アポトーシスを生じた(図4)。CMRITは、RIT後の1日目および5日目に、内皮細胞アポトーシスの2つのピークに関連していた。最高レベルは1日目であった(3.9±1.2細胞/視野)(図4)。CMRIT方法で処理された腫瘍における内皮アポトーシスの平均レベルは、3日目および6日目以外、すべての時点でほかのすべてのグループよりも高かった。しかしながら増加した内皮アポトーシスは、CMRIT方法で処理された腫瘍において全細胞アポトーシスに先行するようには見えなかった。ピークは1日目および5日目のどちらにも発生した。
【0059】
図4は、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の結果として、単独のcRGDペンタペプチド、またはCMRIT方法処理後の1日目および5日目に、腫瘍および内皮細胞のアポトーシスの増加を生じることを示すデータのグラフ図面である。A.全細胞(黒い記号)およびB.内皮細胞(EC)(白い記号)におけるアポトーシスは、未処理マウス(■)、cRGDペンタペプチド(250μgシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の1用量)で処理されたマウス(●)、RIT(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6)で処理されたマウス(▲)、およびCMRIT方法(260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6および250μgシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の6用量)で処理されたマウス(◆)からのHBT3477腫瘍において、TUNELおよびCD31免疫組織化学分析によって評価された。アポトーシスは、1腫瘍あたり6つの無作為視野から×600倍率で定量され、処理平均の決定のために4つの腫瘍が用いられた。全細胞アポトーシスは、塗りつぶされた記号によって示され、内皮アポトーシスは、塗りつぶされていない記号によって示されている。誤差棒(error bar)は、平均の標準誤差を示す。RIT値よりも有意に大きいCMRIT方法の値(ANOVA、p<0.05)は、*によって示され;未処理よりも有意に大きいcRGDペンタペプチドの値(ANOVA、p<0.05)は、&によって示され;未処理よりも有意に大きいRITの値は、$によって示されている。CMRIT方法で処理された腫瘍についての全細胞アポトーシスは、RIT後の2時間目、1日目、および5日目にRIT腫瘍とは有意に異なっていた。内皮アポトーシスは、RIT後の6時間目、2日目、および5日目にRITマウスよりもCMRIT方法で処理されたマウスにおいて、有意に増加していた。X軸は、初期の時点での変化を図解するためにスケールに合せて引かれていない。Y軸の中断は、全細胞アポトーシスと内皮アポトーシスとの間のスケールの変化を示す。
【0060】
全細胞増殖
Ki67−プラス細胞の平均数が、未処理腫瘍および1、5、および6日目における腫瘍について決定された(cRGDペンタペプチド処理された腫瘍は、6日目に決定されなかった)。Ki67抗体は、細胞周期のすべての活性段階において増殖過程にある細胞の核中に存在するタンパク質を認識するが、G0において細胞中に見られるタンパク質を認識しない。これらの結果は、単独のRITまたはcRGDペンタペプチドが、未処理マウスと比較して、5日目に細胞周期において活性な細胞の増殖率を有意に減少させたことを示している(表2)。CMRIT方法も同様に、未処理マウスと比較して増殖を減少させ、その結果、単独のRITと比較して、6日目に有意に減少した増殖を生じた(図5)。
【0061】
図5は、RIT処理に対する、CMRIT方法処理後の腫瘍細胞の減少した増殖を示す腫瘍細胞の顕微鏡写真画像を示している。(A)RITおよび(B)CMRIT方法で処理された腫瘍における増殖細胞が、Ki67マウスMAb、ついで抗マウスローダミン連結抗体によるRITの6日後の腫瘍の10−μm凍結切片上で同定された。微小血管密度計数のために用いられた内皮細胞クラスターは、抗−CD31ラットMAb、ついでFITCに連結した抗−ラット抗体によって同定された。核染色はDAPIであった。増殖は、1腫瘍あたり6無作為視野から×1,000倍率で定量された。処理平均の決定のために4つの腫瘍が用いられた。RITの6日後、RIT処理された腫瘍と比較して、CMRIT方法で処理された腫瘍においてより少ないKi67−陽性細胞が観察された。ただし微小血管数は、この時点では異ならなかった。切片は、ピンクルフィルターを備えたオリンパス顕微鏡を用いて、×600で撮影された。
【0062】
微小血管密度
各腫瘍についての微小血管密度は、未処理マウス、cRGDペンタペプチド処理されたマウス、RITおよびCMRIT方法で処理されたマウスからの各腫瘍の1つの切片からの6つの無作為に選択された視野における非隣接CD31−染色領域の総数を、処理後の決定的時点において平均することによって決定された(表2)。未処理マウスと比較して有意に減少した微小血管密度が、単独のRIT、またはcRGDペンタペプチド(シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val))と組合わされたRITのどちらかを受けているマウスにおいて、RIT処理の6日後に観察された。1日目および5日目中に観察された内皮アポトーシスの(RIT以上の)増加は、微小血管密度における測定可能な差と関連しているようには見えず、全細胞アポトーシスに先行しなかった。これらのデータは、CMRIT方法に関連して増加した内皮アポトーシスが治療結果に寄与しうるが、これに影響を与える唯一のメカニズムではなさそうであることを示している。さらには、6日目までずっと通したデータは、減少した微小血管数が、RITとCMRIT方法との間の治療結果の差を説明することを示していない。
【0063】
【表2】
【0064】
HBT3477腫瘍上のαvβ3の発現
マウスインテグリン(CD61)と反応性がある抗β3抗体での免疫組織化学は、ヌードマウスにおけるHBT3477腫瘍の選択された領域の限定された標識を証明した(図6)。β3−標識部位は、CD31認識抗体によって共標識された、環様脈管構造として現れる区域を含んでいた。このことは、これらの腫瘍に供給を与える血管におけるαvβ3発現と一致する。CD31よりも実質的に少ないβ3の発現が観察された。このことは、CD31によって標識された内皮細胞の小さい割合が新生血管でありさえすれば、予想される。
【0065】
図6は、β3およびCD31がHBT3477乳癌腫瘍細胞上に発現されていることを示す、腫瘍切片の顕微鏡写真画像である。未処理マウスから除去された腫瘍を、免疫組織化学技術を用いて、インテグリンβ3および内皮タンパク質CD31の発現について分析した。マウスβ3へのハムスターMAbを加え、ついで抗ハムスターローダミン連結抗体を加えた。その後ラット抗マウスCD31MAbを加え、ついで抗ラットFITC連結抗体を加えた。ローダミン(β3)とFITC(CD31)との共局在(オレンジ色、矢印によって示されている)は、腫瘍に供給を与える血管におけるαvβ3インテグリン発現と一致する。腫瘍切片を、ピンクルフィルターを備えたオリンパス顕微鏡で、×600で撮影した。
【0066】
これらの結果は、本発明のCMRIT方法が、従来のRIT単一療法に対して増加した毒性を伴なわずに腫瘍治療の有効性を増加したことを証明している。RITの高用量を用いたCMRIT方法は、結果として、単独のRITについての15%治癒、および単独のシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)についての0%治癒と比較して53%治癒を生じたが、一方で、組合わされた用量レベルは、単独のRITについての20%治癒と比較して、44%治癒を生じた。より高い用量レベルにおいてCMRIT方法に関連した死亡の増加があったが、CMRIT方法およびRITについての死亡率は、統計的に異ならなかった。これらの結果は、療法の有意に良好な結果が、単一作用物質を用いた療法と比較して、毒性における統計的増加を伴なうことなく、CMRIT方法に関連しているということを示している。
【0067】
DeNardoらは、250μgのcRGDペンタペプチド(EMD270179)が、RITの1時間前に、50%までのHBT3477腫瘍によるRITの取り込みの増加を与えたことを報告している(Cancer Biother.Radiopharm.15:71−79(2000))。しかしながら110μCiから330μCiの用量における90Y−DOTA−ペプチド−ChL6を用いた、このHBT3477モデルの以前の研究において、260μCi90Y−DOTA−ペプチド−ChL6以上の注射用量の増加後に、増加した治癒率は生じなかった。これらの結果は、cRGDペンタペプチドのペプチド、例えばシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)に関連したRITの取り込みの増加は、治癒の増加に関連する主な要因ではないことを強く示唆している。
【0068】
CMRIT方法への脈管の寄与を、腫瘍細胞アポトーシスと比較して、内皮アポトーシスおよびその時間経過を評価することによって調査した。cRGDペンタペプチドが内皮アポトーシスを誘発し、その後内皮細胞の損失後に腫瘍細胞アポトーシスを誘発するならば、全細胞アポトーシスの増加の前に発生する内皮アポトーシスの増加が見られると予想される。RITと組合わせたcRGDペンタペプチド(シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val))(例えばCMRIT方法)は、ほとんどすべての時点においてRITの場合に観察されたもの以上の内皮細胞および全細胞アポトーシスレベルの両方を上昇させた。1日目および5日目にレベルが有意に増加した。さらには、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の単一用量は、未処理と比較して、同じ時点で内皮アポトーシスを有意に増加させた。全細胞アポトーシスに先行する内皮アポトーシスの明確なパターンは存在しないが、RITと比較して、CMRIT方法において内皮アポトーシスの持続的な上昇があった。しかしながらこの差の効果は、評価された時点において微小血管密度の差によって直接には反映されなかった。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)が、微小脈管組織の質に影響を与えた可能性がある。このことは、微小血管密度によって反映されなかった。これは、RIT処理された腫瘍と比較して、CMRIT方法において6日目に観察された増殖の減少と一致する。これは、評価された最後の時点であり、この時、微小血管数は、RITおよびCMRIT方法で処理された腫瘍の両方において減少した。
【0069】
CMRIT方法とRITとの間のほかの可能な差は、cRGDペンタペプチド、例えばシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の間接的阻害効果に関連し得た。放射線は、照射の1から4時間以内に、腫瘍血管上のβ3インテグリンの蓄積および活性化を誘発することが証明された。この増加は、照射された腫瘍血管のルーメンにおける血小板の蓄積と関連している。内皮細胞への血小板接着は、αvβ3インテグリンへの抗体でのブロックによって阻害され、血小板は、α−顆粒に含まれている成長因子を介して腫瘍新脈管形成に寄与する可能性がある。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)は、αvβ3に関する5nMと比較して、単離α2bβ3受容体に関する420nMのIC50を有すると報告されている。シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)は、このマウスモデルにおいてこの用量で、照射に応答して腫瘍脈管構造における血小板の蓄積を阻害し、したがって腫瘍細胞へのパラクリン相互作用を減少させた可能性がある。さらにはαvβ3インテグリン受容体は、脈管内皮成長因子−2(VEGFR−2)受容体の完全活性化に参加すると報告されている。さらには、cRGDペンタペプチドによる阻害は、内皮細胞へのVEGFR−2受容体の下流効果、例えば隣接腫瘍細胞への成長因子放出の減少を阻害することができ、これは、腫瘍細胞増殖の全体的阻害を導きうる。
【0070】
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)阻害(単一モダリティー)へのHBT3477皮下腫瘍成長の応答性の欠如は、このモデルにおいて腫瘍成長が既存血管を利用するか、または十分な血管成長が、cRGDペンタペプチドの存在下においてでさえ発生することを示している可能性がある。RIT後、血管密度が実質的に減少した時、cRGDペンタペプチド阻害は、腫瘍細胞の減少および照射損傷からの内皮細胞回復につながることがあり、その結果として、治療有効性の増加に関連した、アポトーシスの連鎖的波及(waves)としての腫瘍細胞死の増加を生じる。
【0071】
本発明のCMRIT方法は、組合わせ治療の抗新脈管形成性環状RGDペンタペプチドから結果として生じる腫瘍の治療に対するRITの有効性の増加を与える。本発明のCMRIT方法について観察された治療的相乗作用は、いくつかのメカニズムの組合わせ効果による可能性があり、これは、アポトーシスの増加および細胞増殖の減少につながる。しかしながらCMRIT方法の場合に観察された内皮アポトーシスのより高いレベルは、内皮損失と一致し、これは腫瘍細胞損失に影響を与え、かつ治癒において観察される増加に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図面において、
【図1】単独のRITおよび単独のcRGDペンタペプチドでの処理に対する、本発明のCMRIT方法で処理されたマウスにおける腫瘍治癒率の増加を示す棒グラフである。PRは、部分退行を意味し、CRは完全退行を意味する。
【図2】単独のRITおよび単独のcRGDペンタペプチド処理と比較した、本発明のCMRITで処理されたマウスにおける毒性データのグラフ図面を示す。
【図3】腫瘍細胞の顕微鏡写真画像を示す。これは、本発明のCMRIT方法で処理されたマウスからの腫瘍におけるアポトーシスの増加を示している。
【図4】TUNEL方法によって決定された、本発明のCMRIT方法で処理されたマウスからの腫瘍における(A)全細胞、および(B)内皮細胞(EC)におけるアポトーシスを示すデータのグラフ図面を示す。
【図5】腫瘍細胞の顕微鏡写真画像を示しており、これは、単独のRITおよび単独のcRGDペンタペプチドで処理されたマウスに対する、本発明のCMRIT方法で処理されたマウスからの腫瘍における細胞増殖の減少を示す。
【図6】HBT3477乳房腫瘍細胞の顕微鏡写真画像を示す。これは、細胞上のβ3およびCD31発現を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における腫瘍の治療方法であって、次の連続工程:
(a)抗新脈管形成性シクロ−(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)−含有ペンタペプチド(cRGDペンタペプチド)の少なくとも1用量を患者に投与する工程;
(b)放射免疫治療薬(RIT)の抗腫瘍有効量を患者に投与する工程;および
(c)cRGDペンタペプチドの少なくとも1つの追加的用量を患者に投与する工程
を含む方法。
【請求項2】
cRGDペンタペプチドが、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)におけるcRGDペンタペプチドの用量が、RITの投与の約1時間前までに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)において、cRGDペンタペプチドの最初の追加的用量は、RITの投与後約2日以内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において、cRGDペンタペプチドの少なくとも5追加的用量が、連続的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
cRGDペンタペプチドの各追加的用量が、用量間に、約2日未満の間隔で投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
RITは、キレート剤が腫瘍標的化分子に化学的結合している、放射性核種標識キレート剤−リガンド複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
腫瘍標的化分子がモノクローナル抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
モノクローナル抗体が、抗腫瘍モノクローナル抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、抗−MUC−1モノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、キメラL6モノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、M170抗−MUC−1モノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
キレート剤が、ポリアザ大環状基またはポリオキサ大環状基である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記キレート基が、
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,7,10−テトラアザシクロトリデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;および
1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸
からなる群の一員に由来する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
放射性核種が90Yである、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
キレート剤が、N−置換1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸であり、N−置換基が−CH2C(=O)−(Gly)3−L−(p−イソチオシアナト)−Phe−アミドであり、放射性核種が90Yである、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
腫瘍が乳房腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
患者における腫瘍の治療方法であって、次の連続工程:
(a)シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の少なくとも1用量を患者に投与する工程;
(b)放射免疫治療薬(RIT)の抗腫瘍有効量を患者に投与する工程;および
(c)シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の少なくとも1つの追加的用量を患者に投与する工程
を含む方法。
【請求項19】
工程(a)におけるシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)用量が、RITの投与の約1時間前までに投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(c)において、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の最初の追加的用量が、RITの投与後約2日以内に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
工程(c)において、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の少なくとも5追加的用量が、連続的に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の各追加的用量が、各用量間に、約2日未満の間隔で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
RITは、キレート剤が腫瘍標的化分子に化学的結合している、放射性核種標識キレート剤−リガンド複合体である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
腫瘍標的化分子がモノクローナル抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
モノクローナル抗体が、抗腫瘍モノクローナル抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、抗−MUC−1モノクローナル抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、キメラL6モノクローナル抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、M170抗−MUC−1モノクローナル抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
キレート剤が、ポリアザ大環状基またはポリオキサ大環状基である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記キレート剤が、
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,7,10−テトラアザシクロトリデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;および
1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸
からなる群の一員に由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
放射性核種が90Yである、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
キレート剤が、N−置換1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸であり、N−置換基が−CH2C(=O)−(Gly)3−L−(p−イソチオシアナト)−Phe−アミドであり、放射性核種が90Yである、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
腫瘍が乳房腫瘍である、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
RITの少なくとも1つの単位用量が入っている第一容器と、cRGDペンタペプチドの全部で少なくとも2つの単位用量が入っている1つ以上の追加的容器とを含むキット。
【請求項35】
容器が各々、容器の内容物、および医薬品および放射性物質に関する政府の規制によって要求されるその他のあらゆる関連情報を説明するラベルを含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
容器内容物の腫瘍の治療への使用に関する印刷された説明書も更に含んでいる、請求項34に記載のキット。
【請求項1】
患者における腫瘍の治療方法であって、次の連続工程:
(a)抗新脈管形成性シクロ−(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)−含有ペンタペプチド(cRGDペンタペプチド)の少なくとも1用量を患者に投与する工程;
(b)放射免疫治療薬(RIT)の抗腫瘍有効量を患者に投与する工程;および
(c)cRGDペンタペプチドの少なくとも1つの追加的用量を患者に投与する工程
を含む方法。
【請求項2】
cRGDペンタペプチドが、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)におけるcRGDペンタペプチドの用量が、RITの投与の約1時間前までに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)において、cRGDペンタペプチドの最初の追加的用量は、RITの投与後約2日以内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において、cRGDペンタペプチドの少なくとも5追加的用量が、連続的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
cRGDペンタペプチドの各追加的用量が、用量間に、約2日未満の間隔で投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
RITは、キレート剤が腫瘍標的化分子に化学的結合している、放射性核種標識キレート剤−リガンド複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
腫瘍標的化分子がモノクローナル抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
モノクローナル抗体が、抗腫瘍モノクローナル抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、抗−MUC−1モノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、キメラL6モノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、M170抗−MUC−1モノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
キレート剤が、ポリアザ大環状基またはポリオキサ大環状基である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記キレート基が、
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,7,10−テトラアザシクロトリデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;および
1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸
からなる群の一員に由来する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
放射性核種が90Yである、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
キレート剤が、N−置換1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸であり、N−置換基が−CH2C(=O)−(Gly)3−L−(p−イソチオシアナト)−Phe−アミドであり、放射性核種が90Yである、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
腫瘍が乳房腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
患者における腫瘍の治療方法であって、次の連続工程:
(a)シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の少なくとも1用量を患者に投与する工程;
(b)放射免疫治療薬(RIT)の抗腫瘍有効量を患者に投与する工程;および
(c)シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の少なくとも1つの追加的用量を患者に投与する工程
を含む方法。
【請求項19】
工程(a)におけるシクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)用量が、RITの投与の約1時間前までに投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(c)において、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の最初の追加的用量が、RITの投与後約2日以内に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
工程(c)において、シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の少なくとも5追加的用量が、連続的に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
シクロ−(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)の各追加的用量が、各用量間に、約2日未満の間隔で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
RITは、キレート剤が腫瘍標的化分子に化学的結合している、放射性核種標識キレート剤−リガンド複合体である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
腫瘍標的化分子がモノクローナル抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
モノクローナル抗体が、抗腫瘍モノクローナル抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、抗−MUC−1モノクローナル抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、キメラL6モノクローナル抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
抗腫瘍モノクローナル抗体が、M170抗−MUC−1モノクローナル抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
キレート剤が、ポリアザ大環状基またはポリオキサ大環状基である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記キレート剤が、
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,7,10−テトラアザシクロトリデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;
1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸;および
1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸
からなる群の一員に由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
放射性核種が90Yである、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
キレート剤が、N−置換1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラ酢酸であり、N−置換基が−CH2C(=O)−(Gly)3−L−(p−イソチオシアナト)−Phe−アミドであり、放射性核種が90Yである、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
腫瘍が乳房腫瘍である、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
RITの少なくとも1つの単位用量が入っている第一容器と、cRGDペンタペプチドの全部で少なくとも2つの単位用量が入っている1つ以上の追加的容器とを含むキット。
【請求項35】
容器が各々、容器の内容物、および医薬品および放射性物質に関する政府の規制によって要求されるその他のあらゆる関連情報を説明するラベルを含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
容器内容物の腫瘍の治療への使用に関する印刷された説明書も更に含んでいる、請求項34に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2006−508044(P2006−508044A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−524214(P2004−524214)
【出願日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/023845
【国際公開番号】WO2004/010951
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(303022617)ザ・リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・カリフオルニア (4)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/023845
【国際公開番号】WO2004/010951
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(303022617)ザ・リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・カリフオルニア (4)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]