説明

腫瘍の診断と治療を目的とした表面会合抗原の同定

本発明は、腫瘍に関連する発現の結果、および同じものをコード化する核酸である遺伝子産物の同定に関する。本発明は、さらにこれらの遺伝子産物が異常な腫瘍に関連する発現の結果であることを特徴とする疾病の治療および診断に関する。本発明は、さらに腫瘍に関連する表現の結果であるタンパク質、ポリペプチドおよびペプチド、および同じものをコード化する核酸に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来の治療処置のための学際的アプローチや、その全般的利用にもかかわらず、がんは今だ上位死因の一つに数えられている。ごく最近の治療に関する概念は、組換え腫瘍ワクチンや抗体治療などのその他の特定の手段を用いて、患者の免疫系を全般的治療の概念に取り込むことを目指している。このような治療計画を成功させるのに必要不可欠な条件が、エフェクタ機能がインターベンション技術により拡張される、患者の免疫系による腫瘍特異的もしくは腫瘍会合型抗原またはエピトープの認識である。腫瘍細胞は、生物学的には、由来源の非悪性細胞とは、非常に異なっている。このような差異は、腫瘍の発生時に獲得された遺伝子改変に起因し、そして特に、がん細胞における定性的および定量的に改変された分子構造の形成にまた帰結する。腫瘍付着宿主の特異的免疫系によって認識されるこの種の腫瘍会合構造体を、腫瘍会合抗原と称する。
【0002】
腫瘍会合抗原の特異的認識には、機能的に相互に連携した2つのユニットである、細胞機序と体液機序が関与する。CD4とCD8の両Tリンパ球が、MHC(主要組織適合性複合体)クラスIIおよびクラスIそれぞれの分子上に存在する処理抗原を認識し、そのいっぽうで、Bリンパ球が未処理抗原に直接結合する循環抗体分子を産生する。
【0003】
腫瘍会合抗原に関する将来見込まれる臨床治療の重要性は、免疫系によって新生細胞上の抗原が認識されると、細胞毒性エフェクタ機序が始動し、ヘルパーT細胞の存在下で、がん細胞を除去させることが可能となるという事実が根源となっている(Pardoll, Nat. Med. 4:525-31, 1998(非特許文献1))。したがって、腫瘍免疫学の主要目的は、これらの構造体を分子レベルで明確にすることにある。これら抗原の分子レベルの特性は、長い間不可解とされてきた。適切なクローニング技術が開発されて初めて、細胞毒性Tリンパ球(CTL)(van der Bruggen et al., Science 254:1643-7, 1991(非特許文献2))の標的構造体を分析するか、循環自己抗体(Sahin et al., Curr. Opin. Immunol. 9:709-16, 1997(非特許文献3))をプローブとして使用することにより、腫瘍会合抗原に関する、腫瘍のcDNA発現ライブラリを系統的にスクリーニングすることが可能となった。このため、cDNA発現ライブラリは、未使用の腫瘍組織から調製し、好適な系で組換えを行うことによりタンパクとして発現させてきた。患者から単離した免疫エフェクタ、すなわち腫瘍特異的溶解パターンをもつCTLクローンか循環自己抗体が、個々の抗原のクローン産生に利用されてきた。
【0004】
近年、このようなアプローチによって各種新生組織形成で、複数の抗原が明確化されてきた。がん/精巣抗原(CTA)クラスがここでは、最も大きな関心事となっている。CTAとこれらをコードする遺伝子(がん/精巣遺伝子、すなわちCTG)は、それらの特長的発現パターンによって定義されている(Tureci et al., Mol Med Today. 3:342-9, 1997(非特許文献4))。これらは、精巣細胞と生殖細胞を除き、正常な組織には認められないが、多数のヒト悪性腫瘍で、腫瘍の型に特異的ではなく、由来がまったく異なる腫瘍でさまざまな頻度で発現する(Chen & Old, Cancer J. Sci. Am. 5:16-7, 1999(非特許文献5))。CTAに対する抗体は、健常な個体ではなく腫瘍患者に認められる。特に、その組織分布により、このクラスの抗原は免疫療法プロジェクトにとって非常に役立ち、最近の臨床患者研究で試験の対象となっている(Marchand et al., Int. J. Cancer 80:219-30, 1999(非特許文献6); Knuth et al., Cancer Chemother. Pharmacol. 46:p46-51, 2000(非特許文献7))。
【非特許文献1】Pardoll, Nat. Med. 4:525-31, 1998
【非特許文献2】van der Bruggen et al., Science 254:1643-7, 1991
【非特許文献3】Sahin et al., Curr. Opin. Immunol. 9:709-16, 1997
【非特許文献4】Tureci et al., Mol Med Today. 3:342-9, 1997
【非特許文献5】Chen & Old, Cancer J. Sci. Am. 5:16-7, 1999
【非特許文献6】Marchand et al., Int. J. Cancer 80:219-30, 1999
【非特許文献7】Knuth et al., Cancer Chemother. Pharmacol. 46:p46-51, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の方法で抗原の特定に利用されているプローブは、通常すでに進行がんを発症している患者から取得した免疫エフェクタ(循環自己抗体すなわちCTLクローン)である。多数のデータが、腫瘍から、例えばT細胞の寛容化や活動消失化が導かれ、疾患の経過中、特に、効果的免疫認識を行わせうる特異性が免疫エフェクタのレパートリーから消失するということを指摘している。最近の患者研究からはまだ、今までに発見され、利用されている腫瘍会合抗原の実際の作用に関する確たる証拠が提示されていない。したがって、自発免疫反応を誘起させるタンパクは、誤ったターゲット構造体であるという見解を無視することはできない。
【0006】
本発明の目的は、がんの診断と治療のための標的構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項の内容によって達成される。
【0008】
本発明によれば、腫瘍と会合して発現する抗原およびそれらをコードする核酸を特定および提供するための技法が求められていた。この技法は、細胞表面で入手可能な潜在的がん特異的抗原に関する、ヒトタンパクおよび核酸の各データベースの評価結果に基づいている。可能であるなら、全タンパクを分析するための高速大量処理手法とともに、これに必要とされるフィルタ基準の定義は、本発明の中心要素を構成する。はじめに、データ検索により、一つ以上の膜貫通領域の有無が、「遺伝子からmRNAへ、mRNAからパンパクへ」という基本原理に従って、検査される対象となる既知の遺伝子すべてを、可能な限り完全に網羅したリストが生成される。続いて、ホモロジー検索、組織特異的群(とりわけ、腫瘍組織)におけるヒット項目の分類および、mRNAが実際に存在しているかの検査が行われる。最後に、この方法で特定されたタンパクについて、腫瘍における異常活性化の有無が、例えば発現分析やタンパクの化学的処置によって評価される。
【0009】
データ検索は、腫瘍会合遺伝子を特定するための既知の方法である。しかし、従来の技法では、残存遺伝子は腫瘍特異的であるという仮定の下に、通常、正常組織ライブラリのトランスクリプトームは、腫瘍組織ライブラリから電子媒体によって削除されている(Schmitt et al., Nucleic Acids Res. 27:4251-60, 1999; Vasmatzis et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95:300-4, 1998; Scheurle et al., Cancer Res. 60:4037-43, 2000)。
【0010】
しかし、本発明の概念は、細胞表面で入手可能ながん特異的抗原をコードするすべての遺伝子を電子媒体によって抽出し、次いで、該遺伝子に関して、腫瘍中における異所性発現の有無を評価する、データ検索を利用するという原理に基づいている。
【0011】
したがって、本発明は、その1つの態様においては、腫瘍中に分化して発現した遺伝子を特定するための技法に関する。該技法は、("in silico(コンピューター内格納)")公開配列ライブラリのデータ検索を、その後の室内実験(「ウエットベンチ」)研究と組み合わせている。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、各種バイオインフォマチックスクリプトを基盤とした組み合わせ技法により、細胞表面で入手可能ながん特異的抗原をコードする新しい遺伝子を特定することが可能となった。本発明により、これらの腫瘍会合遺伝子および、これら遺伝子によりコードされた遺伝子産物が、免疫原作用とは関係なく特定され、提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明によって特定された腫瘍会合抗原は、(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112およびそれらの一部または誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズさせた核酸、(c)(a)または(b)の核酸に関して変性している核酸、および(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸からなる群から選択された、核酸によってコードされたアミノ酸配列を有する。好適な実施形態では、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110および112からなる群から選択された、核酸によってコードされているアミノ酸配列を有する。さらに好適な実施形態では、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、61〜68、70、72、74、76、81、82、86、88、96〜101、103、105、107、109、111、113およびそれらの一部または誘導体からなる群から選択されたアミノ酸配列を有する。
【0014】
本発明は、一般に、治療および診断のための、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原もしくは、それらの一部または、それらをコードしている核酸または、該コード核酸に対向している核酸または、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原に対向している抗体またはその一部、の使用に関する。ひとつの実施形態において、さらに診断、治療および進行抑制のための他の主要会合遺伝子および抗原との併用による組み合わせにおいて、この使用は、個々の抗原、機能フラグメント、核酸、抗体などに関し、さらには、これら抗原、機能フラグメント、核酸、抗体の2つ以上の組み合わせに関する。
【0015】
本発明に従って特定された、細胞表面上または細胞中に局在しているという特性により、腫瘍会合抗原は、治療および診断に好適な標的もしくは手段して適格である。治療および診断に特に好適であるのが、非膜貫通部、特に抗原の細胞外部に一致するか、またはそれらからなる、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原の一部である。したがって、本発明によれば、抗原の非膜貫通部に一致するか、またはそれらからなる、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原の一部、または本発明に従って特定された抗原をコードしている核酸の一致する部分が、治療もしくは診断にとって好適である。同様に、抗原の非膜貫通部に一致するか、またはそれらからなる、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原の一部に対向している抗体の使用も好適である。
【0016】
治療および/または診断に好適な疾患は、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原の一つ以上が、選択的にまたは異常に発現している疾患である。
【0017】
本発明は、腫瘍細胞と会合して発現し、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原の核酸の変性スプライシング(スプライス変異体)によって、または別のオープンリーディングフレームを利用した変性翻訳によって産生される核酸および遺伝子産物にも関する。本発明によれば、本発明のスプライス変異体を腫瘍性疾患の診断と治療の標的として使用することができる。
【0018】
スプライス変異体を産生させるメカニズムは、例えば
−可変転写開始部位の利用、
−追加エキソンの利用、
−単一、もしくは2つ以上のエキソンからの、完全なまたは不完全なスプライシング、
−突然変異により変性したスプライス調節配列(新しい供与体/受容体配列の欠失または生成)、
−イントロン配列の不完全な除去
などきわめて多岐にわたる。
【0019】
遺伝子の変性スプライシングの結果、変性転写産物配列(スプライス変異体)が生じる。その変性配列の領域内でスプライス変異体が翻訳されると、本来のタンパクとは構造および機能が明らかに異なりうる、変性タンパクが産生される。腫瘍会合スプライス変異体は、腫瘍会合転写産物と、腫瘍会合タンパク/抗原を産生しうる。これらは、腫瘍細胞の検出と腫瘍の治療標的化の目的で、分子マーカとして利用可能である。例えば、血中、血清、骨髄、唾液、気管支洗浄液、分泌液および組織検査における、腫瘍細胞の検出を、例えば、スプライス変異体特異的オリゴヌクレオチドを用いたPCR増幅による核酸抽出後など、本発明に従って実施することができる。本発明によれば、配列依存検出システムはすべて、検出に好適である。PCRは別として、これらには、例えば、遺伝子チップ/マイクロアレイシステム、ノーザンブロット、RNAse保護検査(RDA)などがある。検出システムはすべて、検出法が少なくともひとつのスプライス変異体特異的核酸配列との特異的ハイブリダイゼーションに基づいているという点で共通している。ただし、本発明によれば、腫瘍細胞は、スプライス変異体によってコードされた特異的エピトープを認識する抗体によっても検出可能である。該抗体は、該スプライス変異体に特異的な免疫獲得用ペプチドに使用することで、調製可能となる。免疫獲得には、好ましくは健全な細胞で産生された遺伝子産物の変異体(複数もあり)とはエピトープが明らかに異なるアミノ酸が特に好適である。ここでは抗体による腫瘍細胞の検出は、患者から単離させた標本で行うことも、また抗体を静脈内投与して撮像し、画像で目視により実施することもできる。
【0020】
診断における利用可能性に加え、新しいエピトープまたは変性エピトープを有するスプライス変異体は、免疫療法にとっても魅力的な標的である。本発明のエピトープは、活性モノクローナル抗体またはTリンパ球を治療のための標的とする目的で利用できる。消極的免疫療法では、スプライス変異体特異的エピトープを認識する抗体またはTリンパ球が、この場合、養子免疫的に移入される。他の抗原の場合のように、抗体は、これらのエピトープを含むポリペプチドを利用するとともに、標準的技術(動物の免疫法、組換え抗体を単離させるためのパニング法)を用いることによっても生成されうる。あるいは、該エピトープを含むオリゴペプチドまたはポリペプチドをコードする免疫獲得用核酸に利用することが可能である。エピトープ特異的Tリンパ球をin vitroまたはin vivoで生成するための各種技術が知られており、詳細な記述(例えば、Kessler JH, et al. 2001, Sahin et al., 1997)があるが、同様に、スプライス変異体特異的エピトープまたはオリゴペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を含む、該オリゴペプチドまたはポリペプチドを利用する方法に基づいている。スプライス変異体特異的エピトープを含むオリゴペプチドもしくはポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする核酸もまた、積極的な免疫療法(予防接種、ワクチン療法)における薬学的活性物質として、利用することもできる。
【0021】
さらにひとつの態様では、本発明は、グリコシル化やミリスチン化などの翻訳後修飾タンパク領域にも関する。この種の修飾により、例えば、抗体によって、抗原の分化認識パターンが生じ、疾患に関係があると考えられる各種病態が認識されうる。特に、抗体を使用することによって、抗原のこのような分化は、治療のみならず診断にも利用できる。腫瘍会合細胞変性からは、変性翻訳後修飾が生じうるという、腫瘍細胞に関する報告がある(Durand & Seta. 2000. Clin Chem 46: 795-805; Granovsky et al. 2000. Nat Med 6: 306-312)。特に、グリコシル化パターンは、腫瘍細胞上では、強く変性される。本発明に従うと、これらの特殊なエピトープは、診断に際して、腫瘍細胞を非発癌性細胞から判別可能である。翻訳後に修飾可能なエピトープが正常な非変性細胞でグリコシル化し、腫瘍細胞では糖鎖除去する場合には、本発明の意図する範囲内で、腫瘍特異的治療抗体の発現が可能となる。
【0022】
ひとつの態様では、本発明は、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原を認識し、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原が発現または異常に発現している細胞に対する選択性を有することが好ましい作用物質を有する医薬品組成物に関する。特定の実施形態では、該作用物質は、細胞死の誘発、細胞の成長減退、細胞膜の損傷、またはサイトカインの分泌を生じさせ、さらに腫瘍阻害活性を有することが好ましい。ひとつの実施形態では、作用物質は、腫瘍会合抗原をコードする核酸と選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる実施形態では、作用物質は、腫瘍会合抗原に選択的に結合する抗体、特に、腫瘍会合抗原に選択的に結合する補体活性化抗体である。さらなる実施形態では、作用物質は、少なくともひとつが本発明に従って特定された腫瘍会合抗原であるような、各種腫瘍会合抗原を、それぞれが選択的に認識する2つ以上の作用物質を含んでいる。認識直後に、抗原の活性または発現が阻害される必要はない。本発明のこの態様では、腫瘍に選択的に限定される抗原は、この特異的場所にエフェクタ機構を漸加するためのラベルとしての役割を果たすことが好ましい。好ましい実施形態では、作用物質は、HLA分子上の抗原を認識し、このようにしてラベル標識された細胞を溶解させる細胞毒性Tリンパ球である。さらなる実施形態では、作用物質は、腫瘍会合抗原に選択的に結合し、したがって、該細胞に天然のまたは人工のエフェクタ機構を漸加する抗体である。さらなる実施形態では、作用物質は、該抗原を特異的に認識する他の細胞のエフェクタ機能を向上させる、Tヘルパーリンパ球である。
【0023】
ひとつの態様では、本発明は、本発明に従って特定された腫瘍会合抗原の発現または活性を阻害する作用物質を有する医薬品組成物に関する。好ましい実施形態では、作用物質は、腫瘍会合抗原をコードする核酸と選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる実施形態では、作用物質は、腫瘍会合抗原に選択的に結合する抗体である。さらなる実施形態では、作用物質は、少なくともひとつが本発明に従って特定された腫瘍会合抗原である、各種腫瘍会合抗原の発現または活性を、それぞれが選択的に阻害する2種類以上の作用物質を含んでいる。
【0024】
本発明に従って特定された腫瘍会合抗原の活性は、タンパクまたはペプチドの任意の活性とすることができる。したがって、本発明による治療法および診断法は、この活性を抑止もしくは緩和、またはこの活性を検査することをも目的とすることができる。
【0025】
さらに本発明は、投与したときにHLA分子とペプチドエピトープとの間の複合体の量を本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原から選択的に増加させる作用物質を有する医薬品組成物に関する。1つの実施形態では作用物質は、(i)腫瘍会合抗原またはその一部、(ii)該腫瘍会合抗原をコードする核酸またはその一部、(iii)該腫瘍会合抗原を発現する宿主細胞またはその一部、および(iv)該腫瘍会合抗原から得たペプチドエピトープとMHC分子との間の単離複合体からなる群から選択された一種以上の成分を有している。ひとつの実施形態では、作用物質は、MHC分子と、少なくともそれらのひとつが本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原である、各種腫瘍会合抗原のペプチドエピトープとの間の複合体の量を、それぞれ選択的に増加させる2つ以上の作用物質を有している。
【0026】
さらに本発明は、(i)本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原またはその一部、(ii)本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原またはその一部をコードする核酸、(iii)本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原またはその一部に結合する抗体、(iv)本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、(v)本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原を発現する宿主細胞またはその一部、(vi)本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原またはその一部とHLA分子との間の単離複合体からなる群から選択された一つ以上の成分を有する医薬品組成物に関する。
【0027】
本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原またはその一部をコードする核酸は、発現ベクター内の医薬品組成物に存在しており、機能的にはプロモータと連携している。
【0028】
本発明の医薬品組成物に存在している宿主細胞は腫瘍会合抗原もしくはその一部を分泌し、表面上にこれを発現するかまたは該腫瘍会合抗原もしくは該その一部に結合するHLA分子をさらに発現する可能性がある。1つの実施形態では、宿主細胞はHLA分子を内生的に発現する。別の実施形態では、宿主細胞はHLA分子および/または該腫瘍会合抗原もしくは該その一部を組換え法において発現する。宿主細胞は非増殖性であることが望ましい。好ましい実施形態では、宿主細胞は抗原提示細胞、特に樹状細胞、モノサイトまたはマクロファージである。
【0029】
本発明の医薬品組成物に存在する抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。さらなる実施形態では、抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体、天然抗体のフラグメントまたは合成抗体のフラグメントであるが、それらすべて組合せ技術によって産生しうる。抗体は、治療上または診断上効果を有する作用物質に結合しうる。
【0030】
本発明の医薬品組成物に存在するアンチセンス核酸は、本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原をコードする核酸の連続的ヌクレオチド、6−50、特に10−30、15−30、および20―30からなる配列を有していてもよい。
【0031】
さらなる実施形態では、本発明の医薬品組成物によって提供される腫瘍会合抗原は、直接的にまたは核酸の発現もしくはその一部の発現を介して、好ましくは細胞毒性反応を起こし、サイトカイン放出を誘発させるかまたはそのいずれかを行うことが好ましい結合形態で、細胞表面上のMHC分子に結合する。
【0032】
本発明の医薬品組成物は、薬学的に適合性のある担体および/またはアジュバントを有していてもよい。アジュバントはサポニン、GM−CSF、CpGオリゴヌクレオチド、RNA、サイトカインまたはケモカインから選択できる。本発明の医薬品組成物は、腫瘍会合抗原の選択的発現または異常な発現によって特長づけられる疾患の治療に使用されることが好ましい。好ましい実施形態では、疾患はがんである。
【0033】
さらに本発明は、一種以上の腫瘍会合抗原の発現もしくは異常な発現によって特長づけられる疾患を治療または診断する方法に関する。ひとつの実施形態では、治療には、本発明の医薬品組成物を投与するプロセスが含まれる。
【0034】
ひとつの態様では、本発明は、本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長づけられる疾患を診断する方法に関する。この方法には、(i)腫瘍会合抗原またはその一部をコードする核酸の検出プロセスおよび/あるいは(ii)腫瘍会合抗原またはその一部を検出プロセスおよび/あるいは(iii)腫瘍会合抗原またはその一部に対する抗体の検出プロセスおよび/あるいは(iv)腫瘍会合抗原またはその一部に患者から単離させた生体標本内で特異的であるような細胞毒性リンパ球またはTヘルパーリンパ球の検出プロセスが含まれる。特定の実施形態では、検出プロセスは(i)腫瘍会合抗原またはその一部をコードする核酸、該腫瘍会合抗原または該その一部、抗体または腫瘍会合抗原に特異的な抗体または細胞毒性リンパ球もしくはTヘルパーリンパ球に特異的に結合する作用物質と生体標本と接触させるプロセス、および(ii)作用物質と核酸またはその一部との間の複合体、腫瘍会合抗原またはその一部、抗体または細胞毒性リンパ球もしくはTヘルパーリンパ球、の形成を検出するプロセスを有する。ひとつの実施形態では、疾患は、2つ以上の異なる腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長づけられ、検出は、該2種類以上の腫瘍会合抗原またはその一部をコードする2種類以上の核酸の検出プロセス、2種類以上の腫瘍会合抗原またはその一部の検出プロセス、該2種類以上の腫瘍会合抗原またはそれらの一部に結合している2種類以上の抗体の検出プロセス、または該2種類以上の腫瘍会合抗原に特異的2種類以上の細胞毒性リンパ球もしくはTヘルパーリンパ球の検出各プロセスからなる。さらなる実施形態では、患者から単離させた生体標本を比較可能な正常生体標本と比較する。
【0035】
本発明による診断法では、例えば細胞の遊走行動の実験を通じて転移、それにより悪化した疾患の経過を予測するために、予後マーカとして本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原の使用にも関することができ、それにより特に、より積極的治療法のプランニングが可能となる。
【0036】
さらなる態様では、本発明は、本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原の発現もしくは異常な発現によって特長づけられる疾患の再発、進行または兆候を判定する方法に関するが、この方法には、該疾患にかかっているかまたは該疾患にかかっていることが疑われる患者から採取した標本について、(i)腫瘍会合抗原をコードする核酸またはその一部の量、(ii)腫瘍会合抗原またはその一部の量、(iii)腫瘍会合抗原またはその一部に結合する抗体の量、(iv)腫瘍会合抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的である細胞毒性T細胞またはTヘルパー細胞の量からなる群から選択した、一つ以上のパラメータに関して観察を行うプロセスが含まれている。この方法は、適時の第1点で最初の標本におけるパラメータ(単数および複数)、さらには適時の第2点で別の標本におけるパラメータを判定し、その判定プロセスで疾患の進行状況を2種類の標本を比較することによって判定することを含む。特定の実施形態では、疾患は、2種類以上の腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長づけられ、観察プロセスには、(i)該2種類以上の腫瘍会合抗原またはその一部をコードする2種類以上の核酸の量、および/あるいは(ii)該2種類以上の腫瘍会合抗原またはその一部の量、および/あるいは(iii)該2種類以上の腫瘍会合抗原またはその一部に結合する2種類以上の抗原の量、および/あるいは(iv)該2種類以上の腫瘍会合抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的である2種類以上の細胞毒性T細胞またはTヘルパー細胞の量を観察するプロセスが含まれる。
【0037】
本発明によれば、核酸もしくはその一部の検出または核酸もしくはその一部の量の観察は、該核酸もしくは該その一部に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いて実施するか、または該核酸もしくは該その一部の選択的増幅により実施してもよい。1つの実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、該核酸の連続的ヌクレオチド、6−50、特に10−30、15−30および20−30からなる配列を有している。
【0038】
本発明によれば、腫瘍会合抗原もしくはその一部の検出、または、腫瘍会合抗原もしくはその一部の量の観察は、該腫瘍会合抗原もしくは該その一部に特異的に結合している抗体を用いて実施してもよい。
【0039】
特定の実施形態では、検出する腫瘍会合抗原またはその一部は、MHC分子、特にHLA分子との複合体内に存在している。
【0040】
本発明によれば、抗体の検出または抗体の量の観察は、前記抗体に特異的に結合しているタンパクもしくはペプチドを用いて実施してもよい。
【0041】
本発明によれば、細胞毒性T細胞もしくはTヘルパー細胞の検出または、抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的な細胞毒性T細胞もしくはTヘルパー細胞の量の観察は、該抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体を含んでいる細胞を用いて実施してもよい。
【0042】
検出または観察に使用されるポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパクもしくはペプチドまたは細胞は、検出可能な方法でラベル標識することが好ましい。特定の実施形態では、検出可能なマーカは、放射性マーカまたは酵素マーカである。さらにTリンパ球は、それらの増殖、それらのサイトカイン産生およびMHCと腫瘍会合抗原またはその一部の複合体による特異的刺激によってトリガーされたそれらの細胞活性によって検出してもよい。Tリンパ球は、組換えMHC分子あるいは一種以上の腫瘍会合抗原の特定の免疫原性フラグメントで読み込まれた二種以上のMHC分子の複合体を介して、そして特異的Tリンパ球を特定できる特異的T細胞受容体を接触することによって、検出してもよい。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原の発現もしくは異常な発現によって特長づけられる疾患を治療、診断または観察する方法に関するが、この方法は、該腫瘍会合抗原またはその一部に結合し、治療作用物質または診断作用物質にも結合する抗体を投与するプロセスを含む。抗体は、モノクローナル抗体であってよい。さらなる実施形態では、抗体は、キメラ抗体もしくはヒト化抗体または天然抗体のフラグメントである。
【0044】
本発明は、本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長づけられる疾患を持つ患者を治療するための方法に関するが、この方法は(i)該患者からの免疫反応細胞を有する検体の除去、(ii)該腫瘍会合抗原またはその一部を発現している宿主細胞と該標本の、該腫瘍会合抗原またはその一部に対する細胞溶解性T細胞の産生を促進する種々の条件下での接触、および(iii)腫瘍会合抗原またはその一部を発現する細胞を溶解させるのに好適な量での患者への細胞溶解性T細胞の導入の各プロセスを有している。同様に本発明は、腫瘍会合抗原に対する細胞溶解性T細胞のT細胞受容体のクローニングに関する。該受容体は、所望の特異性をこのように受け入れる他のT細胞に移入し、(iii)の場合のように、患者に導入してもよい。
【0045】
ひとつの実施形態では、宿主細胞は、HLA分子を内生的に発現させる。さらなる実施形態では、宿主細胞は、HLA分子および/または腫瘍会合抗原またはその一部を組換え法により発現させる。宿主細胞は非増殖性であることが好ましい。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞で、特に樹状細胞、モノサイトまたはマクロファージである。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長づけられる疾患を持つ患者を治療するための方法に関するが、この方法には、(i)本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原をコードし、該疾患と関連づけられる細胞によって発現している核酸の特定、(ii)該核酸またはその一部で宿主細胞の組み込み、(iii)該核酸の発現のためトランスフェクトされた宿主細胞の培養(これは高率のトランスフェクションが実現したときには必ずしも必要ではない)、および(iv)疾患と関連のある患者の細胞に対する免疫反応を高めるのに好適な量での宿主細胞またはその抽出物の患者への導入の各プロセスが含まれる。この方法は、特定されたMHC分子を発現し、該腫瘍会合抗原またはその一部を含んでいる宿主細胞で、腫瘍会合抗原またはその一部を含んでいるMHC分子を特定するプロセスをさらに有していてもよい。免疫反応は、B細胞反応またはT細胞反応を有していてもよい。さらに、T細胞反応は、腫瘍会合抗原もしくはその一部を含む宿主細胞に特異的であるか/または該腫瘍会合抗原もしくはその一部を発現する患者の細胞に特異的である細胞溶解性T細胞および/またはTヘルパー細胞の産生プロセスを有する。
【0047】
本発明は、本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長づけられる疾患を治療するための方法に関するが、この方法は、(i)異常な量の腫瘍会合抗原を発現する患者からの細胞の特定、(ii)該細胞の標本の単離、(iii)該細胞の培養、および(iv)細胞に対する免疫反応をトリガーするのに好適な量の該細胞の患者への導入の各プロセスを有する。
【0048】
好ましくは、本発明にしたがって使用する宿主細胞は、非増殖型であるかまたは非増殖型化するものである。腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長づけられる疾患は、特にがんである。
【0049】
さらに本発明は、(a)SEQ ID NO:69、71、73、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、それらの一部またはそれらの誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸に関して変性している核酸、(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸から成る群から選択された核酸に関する。さらに本発明は、SEQ ID NO:61−68、70、72、74、81、82、86、88、96−101、103、105、107、109、111、113、それらの一部もしくはそれらの誘導体からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するタンパクまたはポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0050】
さらなる態様では、本発明は、組換え核酸分子、特に本発明の核酸を有するDNAまたはRNA分子に関する。
【0051】
本発明はさらに、本発明の核酸を含む宿主細胞または本発明の核酸を有する組換え核酸分子に関する。
【0052】
宿主細胞は、HLA分子をコードしている核酸を含んでいてもよい。ひとつの実施形態では、宿主細胞はHLA分子を内生的に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、HLA細胞および/または本発明の核酸もしくはその一部を組み換え法により発現する。宿主細胞は非増殖性であることが好ましい。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、モノサイトまたはマクロファージである。
【0053】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明にしたがって特定された核酸とハイブリダイズし、遺伝子プローブとしてまたは「アンチセンス分子」として使用することのできるオリゴヌクレオチドに関する。本発明にしたがって特定された核酸またはその一部とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーまたは的確な標本の形態における核酸分子は、本発明により特定された該核酸と相同性のある核酸を発見するのに使用してもよい。PCR増幅、サザーンおよびノーザンハイブリダイゼーションを相同性のある核酸の発見に採用してもよい。ハイブリダイゼーションは、あまり厳密でない条件下で行えるが、より好ましくは中程度の厳密さで実施し、最も好ましくは非常にストリンジェントな条件下で実施するのが好ましい。本発明による「ストリンジェントな条件」という用語は、ポリヌクレオチド間における特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件を表す。
【0054】
さらなる態様では、本発明は、(a)SEQ ID NO:69、71、73、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部またはその誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、(b)ストリンジェントな条件下で、(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸に関して変性している核酸、および(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的である核酸からなる群から選択された核酸によってコードされているタンパクまたはポリペプチドに関する。好ましい実施形態では、本発明は、SEQ ID NO:61−68、70、72、74、81、82、86、88、96−101、103、105、107、109、111、113、その一部または誘導体からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するタンパクまたはポリペプチドに関する。
【0055】
さらなる態様では、本発明は、本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原の免疫原フラグメントに関する。該フラグメントは、ヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合することが好ましい。本発明のフラグメントは、少なくとも6個、特には少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個または少なくとも50個のアミノ酸からなる配列を有していることが好ましい。特に、本発明にしたがった免疫原フラグメントは、SEQ ID NO:61−68、81、82および96−101、その一部またはその誘導体からなる群から選択されたアミノ酸配列を有している。
【0056】
さらなる態様では、本発明は、本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原またはその一部に結合する作用物質に関する。好ましい実施形態では、作用物質は抗体である。さらなる実施形態では、抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、または併用技術によって産生された抗体であるかもしくは抗体のフラグメントである。さらに、本発明は、(i)本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原またはその一部と、(ii)本発明にしたがって特定された該腫瘍会合抗原または該その一部が結合するMHC分子との複合体に選択的に結合する抗体に関するが、該抗体は、(i)または(ii)には単独で結合しない。本発明の抗体はモノクローナル抗体であってもよい。さらなる実施形態では、抗体はキメラ抗体もしくはヒト化抗体または天然抗体のフラグメントである。
【0057】
さらに、本発明は、本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原もしくはその一部、または本発明の抗体に結合する、本発明の作用物質と治療用もしくは診断用作用物質との間の接合体に関する。ひとつの実施形態では、治療用作用物質または診断用作用物質はトキシンである。
【0058】
さらなる態様では、本発明は、本発明にしたがって特定された腫瘍会合抗原の発現または異常な発現を検出するためのキットに関するが、上記キットは、(i)腫瘍会合抗原もしくはその一部をコードする核酸、(ii)前記腫瘍会合抗原もしくはその一部、(iii)前記腫瘍会合抗原もしくはその一部に結合する抗体、および/または(iv)前記腫瘍会合抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的なT細胞、の各検出用作用物質を有している。ひとつの実施形態では、核酸もしくはその一部を検出するための作用物質は、特に、配列6−50、特に10―30、15−30および20―30の該核酸の連続的ヌクレオチドを有する、該核酸を選択的に増幅させるための核酸分子である。
【0059】
発明の詳細な説明
本発明に従い、腫瘍細胞中に選択的にまたは異常に発現し、腫瘍会合抗原であるような遺伝子について以下に述べる。
【0060】
本発明によれば、これらの遺伝子またはそれらの誘導体は、治療法にとって好ましい標的構造体である。概念的には、該治療法は、選択的に発現した腫瘍会合遺伝子産物の活性を阻害することを目的としていると考えられる。これは、もし該異常な個々の選択的発現が腫瘍の病原性において重要であり、その連結反応後に、対応する細胞が選択的に損傷を受ける場合には、有用である。他の治療に関する概念として、腫瘍会合抗原は、腫瘍細胞に対し選択的腫瘍損傷能を有するエフェクタ機構を漸加するラベルと考えられている。ここでは、標的分子そのものの機能およびその腫瘍発現における役割は、全体として重要ではない。
【0061】
本発明によれば、核酸の「誘導体」は、ひとつもしくは複数のヌクレオチドの置換、欠失および/または付加が該核酸に存在していることを意味する。さらに、「誘導体」という用語は、ヌクレオチドの塩基上、糖上またはリン酸塩上の核酸の化学的誘導体をも含む。「誘導体」という用語は、天然には発生しないヌクレオチドとヌクレオチド類似体を有する核酸も含む。
【0062】
本発明によれば、核酸は、デオキリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)であることが好ましい。核酸は、本発明によれば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え技術により産生された分子および化学的に合成された分子を有している。本発明によれば、核酸は、単鎖または二重鎖として、さらには線形または共有結合的におよび円形に閉鎖分子として存在しうる。
【0063】
本発明にしたがって記述した核酸は、単離していることが好ましい。「単離核酸」という用語は、本発明に従って、核酸が、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などによってin vitroで増幅されたか、(ii)クローニングによって組換え技術により産生されたか、(iii)例えば開裂およびゲル電気泳動分画により精製されたかまたは(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。単離核酸は組換えDNA技術によって操作するのに利用可能な核酸である。
【0064】
核酸は、2つの配列が相互にハイブリダイズし、安定した二重鎖を形成することができ、そのハイブリダイゼーションがポリヌクレオチド間で(ストリンジェントな条件の下に)特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で実施されていることが好ましい場合には、別の核酸にとって「相補的」であるという。ストリンジェントな条件は、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook et al., Editors, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, New York, 1989 or Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., Editors, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkなどに記載があり、例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液(3.5 x SSC, 0.02% Ficoll, 0.02% ポリビニルピロリドン、 0.02% ウシ血清アルブミン, 2.5 mM NaH2PO4 (pH 7), 0.5% SDS, 2 mM EDTA)でのハイブリダイゼーションを引用する。SSCは、0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウム(pH7)である。ハイブリダイズ後に、DNAが導入された膜を、例えば室温で2×SSCを用いて洗浄してから、68℃までの温度で0.1―0.5×SSC/0.1×SDSで洗浄する。
【0065】
本発明によれば、相補的核酸は、少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%および、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一ヌクレオチドを有している。
【0066】
腫瘍会合抗原をコードしている核酸は、本発明によれば、単独でまたは他の核酸、特には異種核酸との組合せで存在していてもよい。好ましい実施形態では、核酸は、該核酸に関して同種もしくは異種であるような発現制御配列または調節配列と機能的に連携している。コード配列と調節配列は、これらが該コード配列の発現または転写が該調節配列の制御下もしくは影響下で行われるような方法で、相互に共有結合的により連携している場合には、「機能的」にも相互に連携している。コード配列が機能タンパクに翻訳され、調節配列に機能的に該コード配列が連携している場合には、該調節配列の誘導により、コード配列内で、または所望のタンパクもしくはペプチドに転写される能力を持たない該コード配列内で、フレームシフトが発生せずに、該コード配列の転写が行われる。
【0067】
発現制御配列または調節配列という用語は、本発明によれば、遺伝子の発現を調節するプロモーター、エンハンサおよび他の制御要素を含む。本発明の特定の実施形態では、発現制御配列は調節可能である。調節配列の正確な構造は、種または細胞の型の機能に応じて変化していてもよいが、一般には、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などのようにそれぞれ転写および翻訳の開始に関与する5'非転写および5'非翻訳配列を有している。さらに詳細には、5'非転写調節配列は、機能的に連携した遺伝子の転写制御のためのプロモータ配列を含むプロモータ領域を有している。調節配列はエンハンサ配列または上流アクチベータ配列も有していてもよい。
【0068】
このようにいっぽうで、ここに説明されている腫瘍会合抗原は、発現制御配列およびプロモータと組み合わさっていてもよい。しかし他方では、ここに説明した腫瘍会合遺伝子産物のプロモータは、本発明によれば、他のどの遺伝子と組み合わせてもよい。したがって、これらプロモータの選択的活性が利用可能となる。
【0069】
本発明によれば、核酸は、宿主細胞から該核酸によってコードされたタンパクまたはポリヌクレオチドの分泌を制御するポリペプチドをコードする別の核酸との組合せで存在していてもよい。本発明によれば、核酸は、コード化されたタンパクもしくはポリペプチドを宿主細胞の細胞膜に固定させるか、または該細胞の特定の小器官に細分化させるポリペプチドをコードする別の核酸との組合せで存在していてもよい。
【0070】
好ましい実施形態では、組換えDNA分子は、本発明によれば、例えば本発明の腫瘍会合抗原をコードしている核酸などの、核酸の発現を制御する、必要に応じてプロモーターを有するベクターである。「ベクター」という用語は、ここでは、最も一般的な意味で使用されており、該核酸を例えば原核細胞および/または真核細胞に導入し、必要であれば、ゲノムにも統合することができる核酸の介在媒体を有している。この種のベクターは、細胞内に複製および/または発現することが好ましい。介在媒体は、例えば、エレクトロポレーション、マイクロプロジェクタイルでの衝撃、リポソーム投与、アグロバクテリア介在下での導入、またはDNAもしくはRNAウイルス介在による挿入に使用できるように適合してもよい。ベクターは、プラスミド、ファゲミド、バクテリオファージまたはウイルスゲノムを有する。
【0071】
本発明によって特定された腫瘍会合抗原をコードする核酸は、宿主細胞のトランスフェクションに使用してもよい。ここで核酸は、組換えDNAとRNA両方を意味する。組換えRNAは、DNAテンプレートのin vitro転写によって調整してもよい。さらに、利用する前に、配列を安定化、キャッピングおよびポリアデニル化することによって組換えRNAを修飾することができる。本発明によれば、「宿主細胞」という用語は、外生的核酸により形質転換またはトランスフェクト可能なあらゆる細胞に関する。「宿主細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えばE.coli)または真核細胞(例えば樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、酵母細胞および昆虫細胞など)を含む。ただし、ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長類から取得した細胞など、哺乳動物の細胞が特に優先する。細胞は、多数の種類の組織に由来し、一次細胞および細胞株を有していてもよい。特別な例として、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄の幹細胞および胎児幹細胞などが挙げられる。さらなる実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞であり、特に樹状細胞、モノサイトまたはマクロファージである。核酸は、単一の複写または2つ以上の複写の形態で宿主細胞に存在し、さらにひとつの実施形態では、宿主細胞内に発現する。
【0072】
本発明によれば、「発現」という用語は、最も一般的な意味で使用されており、RNAまたはRNAとタンパクの産生を含む。これはさらに、核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は、過渡的にまたは安定的に実施可能である。哺乳動物細胞における好ましい発現系は、G418に対する遺伝子損傷抵抗(および安定的トランスフェクト細胞株を選択可能にする)およびサイトメガロウイルス(CMV)のエンハンサ/プロモータ配列など、選択的マーカを含むpcDNA3.1およびpRc/CMV(Invitrogen, Carlsbad, CA)を有する。
【0073】
HLA分子が、腫瘍会合抗原またはその一部を提示する本発明の事例では、発現ベクターは、該HLA分子をコードする核酸配列も有する。HLA分子をコードする核酸配列は、腫瘍会合抗原またはその一部をコードする核酸と同じ発現ベクター上に存在していてもよいし、あるいは両核酸が、異なる発現ベクター上に存在していてもよい。後者の場合、2つの発現ベクターが細胞内にコトランスフェクトされうる。宿主細胞で、腫瘍会合抗原もしくはその一部またはHLA分子のいずれも発現しない場合には、それらをコードする両核酸が同じ発現ベクターまたは異なる発現ベクター上のいずれかで細胞にトランスフェクトされる。細胞がすでにHLA分子を発現している場合には、腫瘍会合抗原またはその一部をコードしている核酸配列だけしか、細胞にトランスフェクトすることができない。
【0074】
本発明は、さらに、腫瘍会合抗原をコードしている核酸の増幅用キットも対象としている。このようなキットは、例えば、腫瘍会合抗原をコードしている核酸にハイブリダイズする、一組の増幅プライマーを有している。プライマーは、好ましくは、6−50の配列、特に10―30、15−30および20−30の核酸の連続的ヌクレオチドを有しており、プライマーダイマーの形成が回避されるように重複していない。プライマーのひとつは、腫瘍会合抗原をコードしている核酸の一方の鎖とハイブリダイズし、もう一方のプライマーは、腫瘍会合抗原をコードしている核酸の増幅を可能にする配列における相補鎖とハイブリダイズする。
【0075】
「アンチセンス」分子または「アンチセンス」核酸は、核酸発現の調節、特に還元使用することができる。「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」という用語は、本発明によれば、オリゴヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドもしくは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであり、生理的条件下で特定の遺伝子を有するDNAまたは該遺伝子のmRNAにハイブリダイズし、それによって該遺伝子の転写および/または該mRNAの翻訳を阻害するオリゴヌクレオチドを表わす。本発明によれば、「アンチセンス分子」は、その天然プロモータに関して逆方向で核酸またはその一部を含んでいる構造も有している。核酸またはその一部のアンチセンスの転写は、酵素を特異化している自然発生mRNAと二重鎖を形成し、したがって、活性酵素へのmRNAの蓄積または翻訳を抑止することができる。もうひとつ考えられるのが、核酸を不活性化するためのリボザイムの利用である。本発明にしたがった好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは、6−50の配列、特には10−30、15−30および20−30の標的核酸の連続的ヌクレオチドからなる配列を有し、好ましくは標的核酸またはその一部に完全に相補的である。
【0076】
好ましい実施形態では、翻訳開始部位、転写開始部位、もしくはプロモータ部位などの、N末端部位、または5'上流部位とアンチセンスオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする。さらなる実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3'非翻訳領域またはmRNAスプライシング部位とハイブリダイズする。
【0077】
ひとつの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはその複合体から成り、ひとつのヌクレオチドの5'端と別のヌクレオチドの3'端は、ホスホジエステル結合によって互いに結合する。これらのオリゴヌクレオチドは、従来方式で合成してもよいし、または組換え技術により産生してもよい。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、「修飾された」オリゴヌクレオチドである。ここで、例えばその安定性や治療上の効能を高めるために、その標的と結合する能力を損なうことなくオリゴヌクレオチドは、さまざまな方法で修飾可能である。本発明によれば、「修飾オリゴヌクレオチド」という用語は、(i)そのヌクレオチドのうちの少なくとも2個が合成ヌクレオチド間結合によって相互に結合(すなわちホスホジエステル結合ではないヌクレオチド間結合)および/または(ii)通常核酸には認められない化学基がオリゴヌクレオチドに共有結合により結合しているようなオリゴヌクレオチドを意味する。好ましい合成ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホラミデート、カルボメート、カルボネート、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびペプチドである。
【0079】
「修飾オリゴヌクレオチド」という用語には、さらに、共有結合により修飾された塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチドが含まれる。「修飾オリゴヌクレオチド」には、例えば、3'の位置のヒドロキシル基および5'の位置のリン酸基以外の低分子量の有機基にそれぞれ共有結合により結合している糖残基を持つオリゴヌクレオチドが含まれる。修飾ヌクレオチドには、例えば、2'-O-アルキル化リボース残基またはアラビノースなど、リボースではなく別の糖を含んでいてもよい。
【0080】
好ましくは、本発明に従って記述されているタンパクおよびポリヌクレオチドは単離されている。「単離タンパク」または「単離ポリペプチド」という用語は自然の環境から、タンパクやポリペプチドが分離されていることを意味する。単離タンパクまたは単離ポリペプチドは、基本的に精製された状態にしておくことができる。「基本的に精製された」という用語は、タンパクまたはポリペプチドが、天然またはin vivoでそれを会合せしめる他の物質を基本的に持たないことを意味する。
【0081】
このようなタンパクおよびポリペプチドは、例えば、抗体の産生および免疫学的検査、または診断のための検査、あるいは治療薬として使用することができる。本発明に従って記載されているタンパクおよびポリペプチドは、組織や細胞のホモジェネートなどの生体標本から単離させ、さらに多種多様な原核細胞または真核細胞の発現系で組換えにより発現することも可能である。
【0082】
本発明の目的のため、タンパクもしくはポリペプチドまたはアミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を有している。
【0083】
アミノ酸挿入変異体は、アミノ末端融合部および/またはカルボキシ末端融合部を含み、さらに特定のアミノ酸配列内の単一または2個以上のアミノ酸の挿入部も含む。挿入部を有するアミノ酸配列変異体の場合、一つ以上のアミノ酸残基が、アミノ酸配列内の特定部位に挿入されているが、生じた産物の適切なスクリーニングによるランダムインサーションも可能である。アミノ酸欠失変異体は、配列から一つ以上のアミノ酸が除去されることによって特長づけられる。アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも一つの残基が除去され、別の残基がその場に挿入されていることを特長とする。同種タンパクまたはポリペプチド間で保存されないアミノ酸配列内の位置での修飾が優先される。側鎖などの疎水性、親水性、電気陰性度、体積などといった類似した特性を持つ他のアミノ酸との交換が優先する(保存置換)。例えば保存置換は、置換すべきアミノ酸と同じ基における、下記に列挙した別のアミノ酸との交換に関する。
1.小さな脂肪族、非極性もしくは弱極性残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)
2.負荷電残基およびそれらのアミド:Asn、Asp、Glu、Gln
3.正荷電残基:His、Arg、Lys
4.大きな脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)
5.大きな芳香族残基:Phe、Tyr、Trp。
【0084】
タンパク構造における特定の部分のため、括弧で三つの残基をくくって示してある。Glyは、側鎖がない唯一の残基で、側鎖に可塑性を与える。Proは、側鎖を大きく制限する異常な形状を有している。Cysは、ジスルフィド架橋を形成することができる。
【0085】
上記のアミノ酸変異体は、例えば、固相合成(Merrifield, 1964)および類似の方法または組換えDNA操作によってなど、既知のペプチド合成技術を活用してすぐに調整可能である。既知の配列または部分的に既知の配列を有するDNAに規定の部位の置換突然変異を導入するための技術はよく知られており、例えばM13突然変異誘発を有する。置換、挿入または欠失を含むタンパクを調整するためのDNA配列の操作については、例えば、Sambrookら(1989)に詳細な説明がある。
【0086】
本発明によれば、タンパクまたはポリペプチドの「誘導体」は、炭水化物、脂質および/またはタンパクもしくはポリペプチドなどの酵素と会合するいずれかの分子の単一または複数の置換部、欠失部および/または追加部も含む。「誘導体」という用語は、該タンパクまたはポリペプチドの機能的化学的同等物すべてにまで適応可能である。
【0087】
本発明によれば、腫瘍会合抗原の一部またはフラグメントは、由来元のポリペプチドの機能的特性を有している。このような機能的特性には、抗体との相互作用、他のポリペプチドまたはタンパクとの相互作用、核酸の選択的結合および酵素活性などがある。特定の特性として、HLAとの複合体を形成する能力があるが、適切な場合には免疫反応も生じる。この免疫反応は、細胞毒性細胞またはTヘルパー細胞の刺激を利用することができる。本発明の腫瘍会合抗原の一部またはフラグメントは、少なくとも6個の、特には少なくとも8個の、少なくとも10個の、少なくとも12個の、少なくとも15個の、少なくとも20個の、少なくとも30個のもしくは少なくとも50個の腫瘍会合抗原の連続したアミノ酸からなる配列を有することが望ましい。腫瘍会合抗原の一部またはフラグメントは、非透過膜部分、特には抗原の細胞外部分に一致する腫瘍会合抗原の一部であるかまたはそれらで構成されていることが好ましい。
【0088】
本発明によれば、腫瘍会合抗原をコードしている核酸の一部もしくはフラグメントは、少なくとも腫瘍会合抗原および/または上記のように該腫瘍会合抗原の一部もしくはフラグメントをコードしている核酸の一部に関する。好ましくは、腫瘍会合抗原をコードしている核酸の一部もしくはフラグメントは、特に配列リストに示されているような、オープンリーディングフレームに一致する部分である。
【0089】
腫瘍会合抗原をコードしている遺伝子の単離と特定により、一つ以上の腫瘍会合抗原の発現により特長づけられる疾患の診断も可能になる。これらの方法には、腫瘍会合抗原をコードしている一つ以上の核酸の判定および/またはコードされた腫瘍会合抗原の判定および/または、それらに由来するペプチドの判定の各プロセスが含まれる。核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応またはラベル標識したプローブとのハイブリダイゼーションなどによって、従来方式で判定することができる。腫瘍会合抗原またはそれらに由来するペプチドは、抗原および/またはペプチドの認識に関して、患者の抗血清のスクリーニングによって判定できる。これらはまた、対応する腫瘍会合抗原に対する特異性について患者のT細胞をスクリーニングすることによっても判定できる。
【0090】
本発明は、本章に記載の腫瘍会合抗原に結合しているタンパクが、該腫瘍会合抗原の抗体や細胞結合パートナなど、本章に記載されている腫瘍会合抗原の単離を可能にする。
【0091】
本発明によれば、特定の実施形態は腫瘍会合抗原に由来する「ドミナントネガティブ」なポリペプチドの提供に関わるはずである。ドミナントネガティブなポリペプチドは、不活性タンパク変異体であり、細胞装置と相互作用することにより細胞装置とのその相互作用から活性タンパクを置き換えるか、または活性タンパクと競合するそれによって該活性タンパクの効果を低下させる。例えば、リガンドに結合するが、リガンドに対する結合への反応として信号を生成しないドミナントネガティブ受容体は、該リガンドの生体効果を停滞させる。同様に、標的タンパクと通常相互作用するが、該標的タンパクをリン酸化しないようなドミナントネガティブな触媒作用非活性キナーゼは、細胞信号への反応として、該標的タンパクのリン酸化を停滞させる可能性がある。同様に、遺伝子の制御領域におけるプロモータ部位に結合しているが、該遺伝子の転写を増加させないドミナントネガティブ転写要因は、転写を増大させずに、プロモータ結合部位を占有することによって正常な転写要因の影響を低減する可能性がある。
【0092】
細胞内におけるドミナントネガティブポリペプチドの発現の結果として、活性タンパクの機能が低下する。当業者は、例えば、従来の突然変異誘発法や変異体ポリペプチドのドミナントネガティブの影響を評価することによってタンパクのドミナントネガティブ変異体を調整することができる。
【0093】
本発明には、腫瘍会合抗原に結合するポリペプチドなどの物質も含まれる。このような結合物質は、例えば、腫瘍会合抗原とその結合パートナとの複合体の検出を目的としたスクリーニング検定で、および該腫瘍会合抗原とその結合パートナとの複合体の精製で、使用することができる。このような物質は、例えばこのような抗原に結合することによって腫瘍会合抗原の活性を阻害するのに使用することもできる。
【0094】
したがって、本発明には、例えば、腫瘍会合抗原に選択的に結合することができる抗体または抗体フラグメントなどの結合物質が含まれる。抗体には、従来方式で産生されるポリクローナルおよびモノクローナル抗体が含まれる。
【0095】
抗体分子の小さな断片すなわちパラトープだけが、そのエピトープに対する抗体の結合に関与するということが知られている(Clark, W.R. (1986), The Experimental Foundations of Modern Immunology, Wiley & Sons, Inc., New York; Roitt, I. (1991), Essential Immunology, 7th Edition, Blackwell Scientific Publications, Oxford参照)。pFc'およびFc領域は、例えば、相補的カスケードのエフェクタであるが、抗原結合には関与しない。pFc'領域が酵素によって除去される元の抗体、またはF(ab')フラグメントと呼ばれるpFc'領域を伴わずに産生される抗体は、完全な抗体の両抗原結合部位を担持する。同様に、Fc領域が酵素により削除される元の抗体、またはFabフラグメントと呼ばれる該Fc領域なしで産生される抗体は、完全な抗体分子のひとつの抗原結合部位を担持する。さらに、Fabフラグメントは、抗体の共有結合L鎖およびFdと呼ばれる前記抗体のH鎖の一部からなっている。Fdフラグメントは、抗体特異性の主要な決定要因であり、(ひとつのFdフラグメントが、抗体の特異性を変えずに、各種10種類のL鎖までと会合することができる)および単離されたときにエピトープに結合する能力を維持するFdフラグメントである。
【0096】
抗体の抗原結合部分内に局在化しているのがパラトープの三次構造を維持している抗原エピトープおよびフレームワーク領域(FR)と直接相互作用する相補的決定領域(CDR)である。IgG免疫グロブリンのH鎖とL鎖の両方のFdフラグメントは、それぞれ、3個の相補的決定領域(CDR1〜CDR3)で分離される、4個のフレームワーク領域(FR1〜FR4)を含んでいる。CDRおよび特にCDR3領域とさらに特にはH鎖のCDR3領域は、抗体特異性に関してかなりの程度まで関与している。
【0097】
哺乳動物抗体の非CDR領域は、同じ特異性または異なる特異性を持つ抗体の類似した領域によって置き換えられることが知られており、元の抗体のエピトープに対する特異性が保持されている。その結果、非ヒトCDRが、機能的抗体を産生するためにヒトFRおよび/またはFc/pFc'領域に共有結合により結合している「ヒト化」抗体の開発が可能となった。
【0098】
例えば、WO92/04381には、マウスFR領域の少なくとも一部がヒト起源のFR領域と置き換えられているヒト化マウスRSV抗体の産生および使用についての記載がある。抗体結合能を有する完全な抗体のフラグメントを含むこの種の抗体は、多くの場合「キメラ」抗体と呼ばれている。
【0099】
本発明は、抗体のF(ab')、Fab、Fv、およびFdの各フラグメント、Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/またはL鎖CDR3領域が、同種ヒトまたは非ヒト配列と置き換えられているキメラ抗体、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/またはL鎖CDR3領域が同種ヒトまたは非ヒト配列と置き換えられているキメラF(ab')フラグメント抗体、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/またはL鎖CDR3領域が同種ヒトまたは非ヒト配列と置き換えられているキメラFabフラグメント抗体および、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が、同種ヒトまたは非ヒト配列と置き換えられているキメラFdフラグメント抗体も提供する。本発明は、単鎖抗体も含む。
【0100】
好ましくは、本発明にしたがって使用される抗体は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、61−68、70、72、74、76、81、82、86、88、96−101、103、105、107、109、111、113もしくはその一部またはその誘導体による配列の一つと対向し、さらには/あるいはこれらペプチドを使用した免疫化によって取得されうる。
【0101】
本発明は、腫瘍会合抗原に特異的に結合するポリペプチドも含んでいる。この種のポリペプチド結合物質は、例えば、固定形態またはファージ提示ライブラリとして溶液中に簡単に調整することができる変性ペプチドライブラリによって提供される。同様に、ひとつまたは複数のアミノ酸をと組み合わせたペプチドライブラリを調整することも可能である。ペプトイドおよび非ペプチド合成残基のライブラリも調整できる。
【0102】
ファージ提示は、本発明の結合ペプチドを特定する際に特に有効である。例えば、これに関しては(例えばM13、fdまたはラムダファージを使用して)、長さが4個〜約80個のアミノ酸残基からなる挿入部分を提示するファージライブラリが調整される。次に、腫瘍会合抗原に結合する挿入部分を担持するファージを選択する。このプロセスは、腫瘍会合抗原に結合するファージを再度選択する2回以上のサイクルを通じて繰り返される。 このサイクルを繰り返すと、特定の配列を担持するファージを集中化させることができる。DNA配列の分析は、発現したポリペプチドの配列を特定する目的で実施することができる。腫瘍会合抗原に結合する結合する配列の最小の線形部分を判定できる。酵母の「二種ハイブリッド系」もまた腫瘍会合抗原に結合するポリペプチドを特定するのに使用することができる。本発明にしたがって記述されている腫瘍会合抗原またはそのフラグメントは、腫瘍会合抗原のペプチド結合パートナを特定および選択する目的で、ファージ提示ライブラリをはじめとするペプチドライブラリをスクリーニングするのに使用することができる。このような分子は、例えば、スクリーニング検査、精製プロトコル、腫瘍会合抗原の機能との相互作用および当業者に既知のその他の目的で使用することができる。
【0103】
上記の抗体および他の結合分子は、例えば、腫瘍会合抗原を発現している組織を特定するのに使用できる。抗体は、腫瘍会合抗原を発現している細胞および組織を提示するため、特異的診断物質に共役させることもできる。これらは、治療上有効な物質に共役することが可能である。診断物質は、無制限に、硫酸バリウム、ヨーセタム酸、イオパン酸、カルシウムイポデート、ソジウムジアトリゾアート、メグルミンジアトリゾアート、メトリザミド、ソジウムチロパノエートおよびフロリン18およびカーボン11などのポジトロン放射体、イオジン123、テクネチウム99m、イオジン131およびインジウム111などのガンマ放射体を含む放射診断薬、フッ素およびガドリニウムなどの核磁気共鳴の核種を含んでいる。本発明によれば、「治療上有用な物質」という用語は、所望なら、抗がん剤、放射性ヨウ素標識化合物、トキシン、細胞増殖抑制剤または細胞溶解剤などをはじめとする、ひとつまたは複数の腫瘍会合抗原を発現する細胞に選択的に誘導される治療用分子を意味する。抗がん剤には例えば、アミノグルテチミド、アザチオプリン、ブレオマイシンスルフェート、ブスルファン、カルムスティン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロフォスファミド、シクロスポリン、シタラビディン(cytarabidine)、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビン(daunorubin)、ドキソルビシン、タクソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロン 、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトーテン、プロカルバジン、HCl、チオグアニン、ビンブラスチンスルフェートおよびビンクリスチンスルフェートなどが含まれる。例えば、Goodman やGilman "The Pharmacological Basis of Therapeutics", 8th Edition, 1990, McGraw-Hill, Inc., in particular Chapter 52 (Antineoplastic Agents (Paul Calabresi and Bruce A. Chabner)には、別の抗がん剤が記載されている。トキシンは、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク、コレラ毒素、百日咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリアエキソトキシンまたは緑膿菌(Pseudomonas) エキソトキシンなどのタンパクであってよい。トキシン残基は、コバルト60などの高エネルギー放出放射性核種であってもよい。
【0104】
「患者」という用語は、本発明によれば、ヒト、非ヒト霊長類またはその他の動物、特には、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはマウスやラットなどのげっ歯目といった哺乳動物を意味する。特定の好ましい実施形態では、患者はヒトである。
【0105】
本発明によれば、「疾患」という用語は、腫瘍会合抗原が発現しているかまたは異常に発現している病的状態を表す。「異常発現」とは、本発明によれば、発現が変性され、好ましくは発現量が改変され、好ましくは、健常な個体に比べ増加していることを意味する。発現量の増加は、少なくとも10%、特には少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の増加を表す。ひとつの実施形態では、腫瘍会合抗原は、疾患のある個体の組織内でのみ発現するが、その一方で、健常な個体における発現は抑制される。このような疾患のひとつの例ががん、それも特に、セミノーマ、メラノーマ、テラトーマ、グリオーマ、大腸がん、直腸がん、腎がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、卵巣がん、子宮内膜がん、食道がん、血液がん、肝がん、膵がん、皮膚がん、脳腫瘍および肺がん、リンパ腫および神経芽細胞種である。その例として肺腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、大腸腫瘍、腎細胞がん、子宮頸がん、大腸がん、および乳ガンまたは上記がん腫もしくは腫瘍の転移が挙げられる。
【0106】
本発明によれば、生体標本は、組織標本および/または細胞標本であってもよく、さらにパンチ生検をはじめとする組織生検および血液採取、気管支吸引、尿、大便またはその他の体液など本明細書記載の各種方法で使用するための採取など従来の方法で取得することができる。
【0107】
本発明によれば、「免疫反応細胞」という用語は、(B細胞、Tヘルパー細胞または細胞溶解性T細胞など)好適な刺激により、成熟して免疫細胞となることができる細胞を意味する。免疫反応細胞には、CD34造血性肝細胞、未成熟および成熟T細胞および未成熟および成熟B細胞などが含まれる。腫瘍会合抗原を認識する細胞溶解性細胞またはTヘルパー細胞の産生が望ましい場合には、免疫反応細胞を細胞溶解性T細胞およびTヘルパー細胞の産生、分化および/または選択を促進する条件下で腫瘍会合抗原を発現する細胞と接触させる。抗原に暴露させたときに、細胞溶解性T細胞に対するT細胞前駆体の分化は、免疫系のクローン選択と同じである。
【0108】
一部の治療法は、一つまたは複数の腫瘍会合抗原を提示するガン細胞などの抗原提示細胞を結果的に溶解させる、患者の免疫系の反応に基づいている。これに関しては、例えば腫瘍会合抗原とMHC分子の複合体に特異的な自己細胞毒性Tリンパ球を細胞異常の患者に投与する。in vitroにおけるこのような細胞毒性Tリンパ球の産生は、すでに知られている。T細胞を分化させる方法の例が、WO−A−96/33265に記載されている。一般に、血液細胞などの細胞を含む標本を患者から採取し、採取した細胞を、複合体を提示し、細胞毒性Tリンパ球(例えば樹状細胞など)の増殖を生じさせる細胞と接触させる。標的細胞は、COS細胞などのトランスフェクト細胞であってよい。これらのトランスフェクト細胞は、表面に所望の複合体を提示し、細胞毒性Tリンパ球と接触させると、後者の増殖を刺激する。クローンにより拡張された自己細胞毒性Tリンパ球を次に患者に投与する。
【0109】
抗原特異的細胞毒性Tリンパ球を選択する別の方法では、MHCクラスI分子/ペプチド複合体の蛍光発生四量体が細胞毒性Tリンパ球の特異的クローンを検出するのに使用されている(Altman et al., Science 274:94-96, 1996; Dunbar et al., Curr. Biol. 8:413-416, 1998)。可溶性MHCクラスI分子は、in vitroではβマイクログロブリンと該クラスI分子に結合しているペプチド抗原下で折りたたまれている。MHC/ペプチド複合体を精製し、次いでビオチンによってラベル標識する。四量体は、モル比4:1で、ラベル標識したアビジン(フィコエリスリンなど)と共に、ビオチン化ペプチド−MHC複合体を混合することによって形成される。次に四量体を末梢血やリンパ節などの細胞毒性Tリンパ球と接触させる。四量体は、ペプチド抗原/MHCクラスI複合体を認識する細胞毒性Tリンパ球と結合する。四量体に結合している細胞を、反応性細胞毒性Tリンパ球を単離するため蛍光制御細胞分類法によって分類することができる。単離した細胞毒性Tリンパ球を次にin vitroで増殖させてもよい。
【0110】
養子免疫伝達と呼ばれている治療法では(Greenberg, J. Immunol. 136(5):1917, 1986; Riddel et al., Science 257:238, 1992; Lynch et al., Eur. J. Immunol. 21:1403-1410, 1991; Kast et al., Cell 59:603-614, 1989)、所望の複合体(例えば樹状細胞)提示している細胞は、治療する患者の細胞毒性Tリンパ球と組み合わさり、特異的細胞毒性Tリンパ球の増殖が生じる。増殖された細胞毒性Tリンパ球を次いで、特異的複合体を提示している特定の異常細胞によって特長づけられる細胞異常のある患者に投与する。次に細胞毒性Tリンパ球が異常細胞を溶解しこれにより所望の治療効果が達成される。
【0111】
多くの場合、患者のT細胞レパートリーのうち、この種の特異的複合体に低いアフィニティを有するT細胞だけしか増殖できない。というのは高アフィニティを有する細胞は、耐性の発生によって消滅しているからである。ここにおける代替法が、T細胞受容体そのものの転移である。この場合も、所望の複合体(例えば樹状細胞)を提示している細胞を健全な個体の細胞毒性Tリンパ球と組み合わせる。その結果、供与体がまだ特異的複合体と接触していない場合には高アフィニティを有する特異的細胞毒性Tリンパ球の増殖が生じる。これら増殖された特異的Tリンパ球のT細胞の高アフィニティ受容体をクローン化し、所望のように、他の患者のT細胞に、例えばレトロウイルスベクターなどを使用して遺伝子導入を通じて形質導入することができる。次に、これらの遺伝子改変されたTリンパ球を用いて、養子免疫伝達を実施する(Stanislawski et al., Nat Immunol. 2:962-70, 2001; Kessels et al., Nat Immunol. 2:957-61, 2001)。
【0112】
上記の治療態様は、患者の異常細胞の少なくとも一部が腫瘍会合抗原とHLA分子の複合体を提示するという事実に根ざしている。このような細胞は、それ自体よく知られた方法で特定することができる。複合体を提示している細胞が特定されると同時に、これらは細胞毒性Tリンパ球を含む患者から得られた標本と組み合わすことができる。細胞毒性Tリンパ球が複合体を提示している細胞を溶解する場合には、腫瘍会合抗原が提示されていると想定することができる。
【0113】
養子免疫伝達は、本発明にしたがって適応可能な治療の唯一の形態というわけではない。細胞毒性Tリンパ球は、それ自体知られた方法でin vivoで生成することも可能である。ひとつの方法では、複合体を発現している非増殖性細胞が用いられる。ここで使用する細胞は、照射腫瘍細胞などの通常複合体を発現している細胞または複合体(すなわち抗原性ペプチドと提示HLA分子)の提示に必要なひとつの遺伝子または両遺伝子をトランスフェクトした細胞である。さまざまな型の細胞を使用できる。さらに、問題の遺伝子のひとつまたは両方を担持するベクターを使用することも可能である。ウイルス性ベクターおよびバクテリアベクターが特に優先される。例えば、腫瘍会合抗原もしくはその一部をコードする核酸は、該腫瘍会合抗原または特定の組織または細胞型におけるそのフラグメントの発現を制御するプロモータおよびエンハンサ配列に機能的に連携しうる。核酸は、発現ベクターに取り込んでもよい。発現ベクターは、外生的核酸が挿入される先の未修飾染色体外核酸、プラスミドまたはウイルスゲノムでよい。腫瘍会合抗原をコードしている核酸は、レトロウイルスゲノムにも挿入可能であり、したがって標的組織または標的細胞のゲノムに核酸を組み込むことが可能である。これらの系では、ワクチンウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイルスまたはアデノウイルスなどの微生物が問題の遺伝子を担持し、事実上宿主細胞に「感染」する。もうひとつの好ましい形態は、例えば、リポソーム導入またはエレクトロポレーションによって細胞に導入することができる組み換えRNAの形態での腫瘍会合抗原の導入である。生成された細胞は、問題の複合体を提示し、自己細胞毒性Tリンパ球によって認識され、これが次に増殖する。
【0114】
同様の効果が、in vivoにおける抗原提示細胞への取り込みを可能にするため、アジュバントと腫瘍会合抗原またはそのフラグメントとを結合させることによって達成することができる。腫瘍会合抗原またはそのフラグメントは、タンパク、DNA(例えばベクター内で)もしくはRNAとして提示可能である。腫瘍会合抗原が処理され、HLA分子のペプチドパートナを産生する一方で、そのフラグメントはそれ以上処理を行わなくても提示することができる。後者は、特に、これらがHLA分子に結合できる場合には、該当する。完全な抗原が樹状細胞によってin vivoで処理される投与形態が優先される。というのは、これはさらに、効果的免疫反応に必要なTヘルパー細胞反応をも生み出すことができるからである(Ossendorp et al., Immunol Lett. 74:75-9, 2000; Ossendorp et al., J. Exp. Med. 187:693-702, 1998)。一般に、効果的量の腫瘍会合抗原を例えば皮内注射によって患者に投与することができる。ただし、注射は、リンパ節に節内注射によって実施することも可能である(Maloy et al., Proc Natl Acad Sci USA 98:3299-303, 2001)。これはまた、樹状細胞に対する取り込みを促進する試薬との組合せで行ってもよい。好ましい腫瘍会合抗原には、多くのがん患者の異質遺伝子型のがん抗血清またはT細胞と反応する抗原が含まれる。しかしながら、特に問題となるのは、この抗原に対する自然免疫反応が事前に存在していないことである。腫瘍を溶解可能なこれらの免疫反応に対して誘導できることが可能なのは明らかである(Keogh et al., J. Immunol. 167:787-96, 2001; Appella et al., Biomed Pept Proteins Nucleic Acids 1:177-84, 1995; Wentworth et al., Mol Immunol. 32:603-12, 1995)。
【0115】
本発明にしたがって記載されている医薬品組成物はまた、免疫化のためのワクチンとして使用することもできる。本発明によれば、「免疫化」または「ワクチン接種」という用語は、抗原に対する免疫反応の増強または活性化を意味している。腫瘍会合抗原またはそれをコードしている核酸を使用することによってがんに対する免疫効果を試験するための動物モデルを使用することもできる。例えば、ヒトがん細胞をマウスに導入して腫瘍を発生させ、腫瘍会合抗原をコードしている一つまたは複数の核酸を投与することもできる。がん細胞の影響(例えば腫瘍の大きさの縮小)を核酸の免疫化の効果の指標として測定することもできる。
【0116】
免疫化のための組成の一部として、一つ以上の腫瘍会合抗原またはその刺激性フラグメントを、免疫反応を誘発させたりあるいは増大させたりする目的で、一つ以上のアジュバントと一緒に投与する。アジュバントは、抗原に取り込むかまたは後者とともに投与し、免疫反応を増強させる物質である。アジュバントは、抗原リザーバ(細胞外またはマクロファージ内)を提供し、マクロファージを活性化し、さらには特定のリンパ球を刺激することによって免疫反応を増強させることができる。アジュバントは既知であり、無制限な方法でモノホスホリルリピドA(MPL, SmithKline Beecham)、QS21などのサポニン(SmithKline Beecham)、DQS21(SmithKline Beecham; WO 96/33739)、QS7、QS17、QS18およびQS-L1(So et al., Mol. Cells 7:178-186, 1997)、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、ビタミンE、モンタニド、ミョウバン、CpGオリゴヌクレオチド(Krieg ら, Nature 374:546-9, 1995を参照)およびスクアランおよび/またはトコフェロールなどといった生体分解性オイルから調整した各種油中水的エマルジョンを含んでいる。ペプチドをDQS21/MPLと混合して投与することが好ましい。DQS21のMPL 比は、通常約1:10〜10:1で、好ましくは約1:5〜5:1および特には約1:1である。ヒトに対する投与の場合、ワクチン剤形には通常約1μg〜約100μgの範囲のDQS21とMPLが含有されている。
【0117】
患者の免疫反応を刺激する他の物質を投与することもできる。例えば、リンパ球に対する調節特性により、ワクチン接種でサイトカインを用いることも可能である。このようなサイトカインは、例えば、ワクチンの予防活性を増大することが判明しているインターロイキン−12(IL−12)(Science 268:1432-1434, 1995を参照)、GM−CSFおよびIL−18などが含まれる。
【0118】
免疫反応を増強し、したがってワクチン接種に使用することができる化合物は多数存在している。該化合物には、タンパクや核酸の形態で提供される供刺激性分子が含まれる。このような供刺激性分子の例として、樹状細胞(DC)上に発現し、T細胞上に発現しているCD28分子と相互作用するB7−1およびB7−2(それぞれCD80およびCD86)がある。この相互作用は、抗原/MHC/TCRで刺激(信号1)されたT細胞の供刺激(信号2)を提供するので、これによって該T細胞とエフェクタ機能の増殖が増強される。 B7は、T細胞上の CTLA4 (CD152)とも相互作用し、CTLA4およびB7リガンドに関する研究結果からB7−CTLA4間の相互作用が、抗腫瘍免疫性およびCTL増殖を増強できることが明らかとなった(Zheng, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(11):6284-6289 (1998))。
【0119】
B7は通常は、腫瘍細胞上には発現しないので、これらはT細胞の効果的抗原提示細胞(APC)ではない。B7発現の誘発により、腫瘍細胞が細胞毒性Tリンパ球とエフェクタ機能のさらに効果的な増殖を刺激することができる。B7/IL−6/IL−12の組合せによる供刺激が、T細胞集団でIFNガンマおよびTh1サイトカインプロファイルが誘発され、さらにT細胞活性を増強することを明らかにした(Gajewski et al., J. Immunol. 154:5637-5648 (1995))。
【0120】
細胞毒性Tリンパ球および完全エフェクタ機能の完全な活性化には、該Tヘルパー細胞上のCD40リガンドと樹上細胞によって発現したCD40分子間の相互作用を通じたTヘルパー細胞の関与が必要である(Rid et al., Nature 393:474 (1998), Bennett et al., Nature 393:478 (1998), Schonberger et al., Nature 393:480 (1998))。この供刺激信号のメカニズムはおそらく、該樹状細胞(抗原提示細胞)によるB7産生および会合したIL−6/IL−12産生における増加に関係があると思われる。CD40−CD40Lの相互作用はしたがって信号1(抗原/MHC−TCR)と信号2(B7−CD28)の相互作用を補完している。
【0121】
樹状細胞を刺激するための抗CD40抗体の使用は、通常炎症反応の範囲外であるかまたは非専門的な抗原提示細胞(腫瘍細胞)によって提示される腫瘍抗原に対する反応を直接増強させることが期待される。このような状況の下に、TヘルパーおよびB7供刺激信号は提供されていない。このメカニズムは、抗原パルス化樹状細胞に基づいた治療法と関連して、またはTヘルパーエピトープが既知のTRA前駆体で定義されていないような状況下で使用することができる。
【0122】
本発明は、核酸、ポリペプチドまたはペプチドの投与も可能にする。ポリペプチドとペプチドは、それ自体既知の方法で投与することができる。ひとつの実施形態では、核酸はex vivo法によってすなわち患者から細胞を取り出すことによって、前記細胞を遺伝子修飾して腫瘍会合抗原を取り込むことによって、さらには変性した細胞を患者に再度導入することによって、投与されている。これは、概して、in vitroで患者の細胞に遺伝子の機能的複写を導入するプロセスと患者に遺伝的に変性された細胞を再度導入するプロセスとが含まれる。遺伝子の機能的複写は、遺伝的に変性された細胞に遺伝子を発現させる調節要素の機能的な制御下で行われる。トランスフェクション法および形質導入法は、当業者によく知られている。本発明は、ウイルスや標的制御リポソームなどのベクターを用いることによりin vivoで核酸を投与するのを可能にする。
【0123】
好ましい実施形態では、腫瘍会合抗原をコードする核酸を投与するためのウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ会合ウイルス、ワクチンウイルスや弱毒化ポックスウイルスなどを含むポックスウイルス、セムリキフォレストウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルスおよびTyウイルス様分子などから成る群から選択される。アデノウイルスとレトロウイルスが、特に優先される。レトロウイルスは通常、複製欠失型である(すなわちこれらは感染粒子を生成することが不可能である)。
【0124】
in vitroまたはin vivoで細胞内に本発明により核酸を導入するためには各種方法を利用できる。この種の方法には、核酸CaPO沈殿物のトランスフェクション、DEAEと会合した核酸のトランスフェクション、問題の核酸を担持する上記ウイルスのトランスフェクションまたはインフェクション、リポソーム介在トランスフェクションなどが含まれる。特定の実施形態では、特定の細胞への核酸の方向付けが優先する。このような実施形態では、細胞に核酸を投与するのに使用されている担体(例えば、レトロウイルスまたはリポソーム)が結合標的制御分子を備えることができる。例えば、標的細胞上の表面膜タンパクに特異的抗体または標的細胞上の受容体に特異的リガンドなどといった分子を、核酸担体に取り込んだりあるいは吸着させることができる。好ましい実施形態には、好ましい抗体として、腫瘍会合抗原と選択的に結合する抗体があげられる。リポソームを介した核酸の投与が必要な場合、エンドサイトーシスに関連付けられる表面膜タンパクに結合しているタンパクをリポソーム剤形に取り込んで標的制御および/または摂取を可能にすることができる。このようなタンパクには、特定の細胞型に特異的なキャプシドタンパクまたはそのフラグメント、内在化されているタンパクに対する抗体、細胞内部位を所在指定するタンパクなどが含まれる。
【0125】
本発明の医薬品組成物は、薬学に適合する製剤として投与可能である。このような製剤には一般に、薬学的に適合する濃度の塩、緩衝的物質、防腐剤、担体、アジュバント(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)やサイトカインなどの補足免疫増強物質ならびに必要に応じて、その他の治療的活性化合物が含まれる。
【0126】
本発明の治療的活性化合物は、注射や注入など、任意の従来の経路を介して投与することができる。例えば、経口、皮下注射、腹腔内注射、筋肉注射、皮下注射あるいは経皮投与などの投与を実施できる。好ましくは、抗体は、肺吸入エアロゾルによって治療の現場で投与されることが好ましい。アンチセンス核酸は、徐放静脈注射で投与することが好ましい。
【0127】
本発明の組成物は、効果的量で投与される。「効果的量」とは、所望の反応もしくは所望の効果単独または追加投与でその両方を達成できる量を表す。特定の疾患または一つ以上の腫瘍会合抗原の発現によって特長付けられる特定の病態を治療する場合、所望の反応は、疾患の進行の抑制に関連付けられる。これには、疾患の進行を低速化させること、さらには特に、疾患の進行を中断させることが含まれる。疾患の治療または病態の治療における所望の反応も、該疾患または該病態の兆候の遅滞または予防でもあり得る。
【0128】
本発明の組成物の効果的量は、治療する病態、疾患の重篤度、年齢、生理学的条件、身長と体重を含む患者の個々のパラメータ、治療継続期間、併用治療の種類(存在する場合)、治療の特異的投与経路および同様の要因によって異なる。
【0129】
本発明の医薬品組成物は、滅菌されていることが好ましく、所望の反応または効果を生み出すために効果的量の治療上活性のある物質を含むことが好ましい。
【0130】
本発明の組成物の投与量は、投与の方式、患者の病態、所望の投与期間などの各種パラメータにより決まる。患者における反応が初期投与量では不十分な場合、さらに高い投与量(あるいは別のさらに局在化した投与経路によって達成される効果的に高い投与量)を使用できる。
【0131】
一般に、1ng〜1mg、好ましくは10ng〜100μgの腫瘍会合抗原の投与量を剤形化し、治療もしくは免疫反応の誘発や増強のために投与する。腫瘍会合抗原をコードする核酸(DNAおよびRNA)の投与が望ましい場合には、1ng〜0.1mgの投与量を剤形化し、投与する。
【0132】
本発明の医薬品組成物は、一般には、薬学的に適合可能な量および薬学的に適合可能な組成で投与する。「薬学的に適合可能」という用語は、その医薬品組成物の活性成分の作用と相互作用しない非毒性物質を表す。この種の製剤には通常、塩、緩衝物質、防腐剤、担体および必要に応じて、その他の治療上の活性化合物が含まれる。薬剤で使用するときには塩は、薬学的に適合していなくてはならない。ただし、薬学的に適合しない塩は、薬学的に適合する塩の調製に使用することができるので本発明の対象となっている。この種の薬理学的ならびに薬学的に適合する塩には、無制限で、以下の酸から調製される塩が含まれる。すなわち、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、琥珀酸などである。また、薬学的に適合可能な塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩例えばナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩などとして調製可能である。
【0133】
本発明の医薬品組成物は、薬学的に適合可能な担体を含むことができる。本発明によれば、用語「薬学的に適合可能な担体」は、一つ以上の適合可能な、ヒトに投与するのに好適な固体または液体の充填剤、希釈剤または封入物質を表す。「担体」という用語は、適用を促進するために活性成分を結合する、天然もしくは合成の有機または無機成分を表す。本発明の医薬品組成物の成分は、一般には、所望の製剤の効能を実質的に阻害する相互作用は発生しないような成分である。
【0134】
本発明の医薬品組成物は、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸および塩中のリン酸など、好適な緩衝物質を含んでもよい。
【0135】
該医薬品組成物製剤組成は、必要に応じてさらに、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールなどの好適な防腐剤を含んでもよい。
【0136】
該医薬品組成物は通常、均一の投与形態で提供され、それ自体既知の方法で調製可能である。本発明の医薬品組成物は、カプセル、錠剤、トローチ、液体、懸濁液、シロップ、エリキシル剤の形態で、または例えば乳濁液のような形態で剤形可能である。
【0137】
非経口投与に好適な組成物は、一般に、被投与者の血液と等浸透圧であることが好ましい活性化合物の滅菌水性調剤または非水性調剤を含む。適合可能な担体および溶剤の例として、リンガー溶液および生理食塩液があげられる。さらに、一般に、滅菌した不揮発性油が溶液や懸濁液の媒質として使用されている。
【0138】
本発明は、図示することだけを目的として、制限することを意図していない以下の図および例を参照して詳細に説明する。記述内容と例により、本発明に同様に含まれているさらなる実施形態を、当業者は利用することができる。
【0139】
(実施例)
材料と方法
「コンピュータ内(in silico)」および「電子」という用語は、室内実験プロセスをシミュレートするのにも使用可能な、データベースに基づいた方法の利用だけを表している。
【0140】
特に明確に定義していないかぎり、その他の用語および表現はすべて、当業者によって理解されるように使用されている。記載されている技術および方法は、それ自体既知の方法で実施されるが、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載されている。キットや試薬の使用などすべての方法は、製造元の情報に従って実施する。
【0141】
A.腫瘍会合抗原を特定するためのデータ検索ベースの技法
本発明によれば、公開ヒトタンパクおよび核酸データベースを、細胞表面上で入手可能ながん特異的抗原についてスクリーニングを行った。可能な場合すべてのタンパクを分析するためのハイスループット法とともに、それらにとって必要なスクリーニング基準の定義が、本技法の中心的要素をなしていた。
【0142】
妥当性評価したタンパクエントリ(NP)と、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のRefSeq database (Pruitt et al., Trends Genet. Jan; 16(1):44-47, 2000)に蓄積されてきた、対応するmRNA(NM)で開始点は構成されていた。遺伝子 mRNA タンパクという基本的原理に従い、はじめにタンパクを、一つまたは複数の膜貫通領域の存在について検討した。この目的のため、タンパク分析プログラムTMHMMサーバ V.2.0(Krogh et al., Journal of Molecular Biology 305(3):567-580, 2001)を用い、次にその結果をプログラムALOM2(Nakai et al., Genomics 14:897-911, 1992)を用いて再び比較検証した。タンパクの細胞内極在性に影響を与えていたさらなる信号配列の予測を、プログラムPSORT II(Horton et al., Intelligent Systems for Molecular Biology 4:109-115, 1996)およびiPSORT (Bannai et al., Bioinformatics, 18(2):298-305, 2002)を用いて実施した。合計19110のエントリを有するヒトNP画分が、フィルタにかけられた4634のタンパクを提供した。
【0143】
その後、これら4634個のタンパクのそれぞれの対応するmRNAを個々に、BLASTアルゴリズム(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997)の助けを借りてNCBIのESTデータベース (Boguski et al., Nat. Genet. 4(4):332-333, 1993)において、相同性検索した。この検索におけるスクリーニング基準を、e−値<10e−20と最小配列同一性93%に、高い確率でのそれらからのヒットは、個々のmRNAに由来するものに限り、同類転写産物からではないように設定した。ほとんどすべてのmRNAが、一部の例ではヒット数が4000を越えるESTデータベースにおける少なくとも一つのヒットを可能とした。
【0144】
次いで、基本となるcDNAライブラリの組織特異的起源ならびにライブラリの名称を、これら有効なヒットのそれぞれで判定した。それらから生じている組織を可欠器官(グループ3)から必須器官(グループ0)の範囲にわたる4種類の群に分割した。別のグループすなわちグループ4は、がん組織から入手した任意の標本で構成されていた。5つの群に対するヒット数の分布を、群3および4の合計の、群0〜2の合計に対する最適な比に従って分類されている表に記録した。ESTヒット数ががん組織だけから生じているこれらのmRNAは、第一位となり、その次に、群3の可欠な器官の組織内にもさらに発見されうるmRNAが続いていた。この分布の有意性に関するさらなる基準は、ESTを取得し、表の別の欄に記録した独立したcDNAライブラリの数であった。
【0145】
第一のアプローチで判定された転写産物および対応するタンパクは、はじめ仮説による構造であったので、mRNAさらにはその結果タンパクも実際に存在することを実証することを目的としてさらなるスクリーニング基準を用いた。したがって各mRNAを、プログラム「Spidey」(Wheelan et al., Genome Res. 11(11): 1952-1957, 2001)を用いて、予測された遺伝子座と比較した。すくなくともひとつのスプライシングプロセスを含む、すなわちすくなくとも2個のエキソン上に拡散している転写産物のみを詳細な分析に用いた。
【0146】
記載されているフィルタすべてを順次適用して、予測された膜貫通領域とそれに関連するトポロジーによって、細胞外で入手可能と見なすことができる本発明の腫瘍会合抗原を得るに至った。ESTデータ由来の発現プロファイルは、すべての事例で、せいぜい可欠器官にのみしか該当しないようながん特異的発現を示している。
【0147】
B.コンピュータ内分析によって特定された、腫瘍会合抗原を妥当性評価する技法
がん治療さらには診断の問題に免疫治療の目的で標的を利用するため(モノクロナル抗体、ワクチン接種、T細胞受容体介在治療技法による抗体治療; EP B 0 879 282を参照)、診断目的のみならず、がん治療において、本発明に従って特定された標的の妥当性評価が最も重要である。したがって、RNAとタンパク両レベルで、発現分析によって妥当性評価を実施する。
【0148】
1.RNA発現の試験
特定された腫瘍抗原をはじめに、各種組織または組織特異的細胞株から取得したRNAを用いて妥当性評価を行う。腫瘍組織に比べ健常組織の示差発現パターンが、以後の治療目的での用途で決定的に重要であるため、標的遺伝子は、これらの組織標本を活用して特長付けすることが好ましい。
【0149】
RNA全体を、天然組織標本または腫瘍細胞株から分子生物学の標準的方法によって単離させる。該単離は、例えば製造元の指示に従って、RNeasy Maxiキット(Qiagen, Cat. No. 75162)を利用して実施してもよい。この孤立法は、カオトロピック試薬グアニジニウムイソチオシアネートの使用に基づいている。あるいは、酸性フェノールを用いて単離することも可能である(Chomczynski & Sacchi, Anal. Biochem. 162: 156-159, 1987)。グアニジニウムイソチオシアネートを用いて組織の処理を行った後に、RNAを酸性フェノールで抽出し、引き続いてイソプロパノールで沈殿させ、DEPC処理水に取り込む。
【0150】
このようにして単離させた2 4μgのRNAを続いて、例えば、製造元のプロトコルに従ってSuperscriptII (Invitrogen) によりcDNA中に転写させる。cDNA合成は、関連する製造元の標準のプロトコルに従って、ランダムな六量体(例えばRoche Diagnostics)を活用して予備刺激を行う。品質管理を目的として、ゆっくりにしか発現しないp53遺伝子に特異的なプライマーを用いて30サイクル以上でcDNAを増幅させる。以後の反応プロセスでは、p53陽性cDNA標本だけを用いる。
【0151】
各種正常組織および腫瘍組織ならびに腫瘍細胞株から単離させた、cDNAアーカイブに基づいて、PCRまたは定量的PCR(qPCR)により、発現分析を実施することで抗原を詳細に分析する。したがって、0.5μlの上記反応混合物のcDNAを、特定の製造元のプロトコルに従ってDNAポリメラーゼ(例えば1UのHotStarTaq DNA ポリメラーゼ、Qiagen)により増幅する(反応混合液の総体積:25?50μl)。該ポリメラーゼとは別に、増幅混合物は、0.3 mMのdNTP、反応緩衝液(DNAポリメラーゼの製造元により、最終濃度1×)および各事例で、0.3 mM遺伝子特異的順方向プライマーおよび逆方向プライマーを有している。
【0152】
標的遺伝子の特異的プライマーは、可能なかぎり、ゲノム汚染により擬陽性の結果が生じないように、二種類のエキソンに配置されるような方法で選択した。非定量的終点PCRでは、cDNAを通常、15分間95°Cでインキュベートし、DNAを変性させ、ホットスタート酵素を活性化させる。次に、35サイクル以上DNAを増幅させる(95°Cで1分間、プライマー特異的ハイブリダイゼーション温度(約55−65°C)で1分間、72°Cで1分間で単位複製配列を伸長させる)。次に、10μlのPCR混合物をアガロースゲルにアプライし、電場で分画した。エチジウムブロマイドで染色することによってゲル内でDNAが可視状態となり、PCRの結果は、写真によって証明される。
【0153】
従来方式のPCRに対する代案として、標的遺伝子の発現を、定量的リアルタイムPCRによって分析してもよい。この分析には各種分析システムを利用できる一方で、それらのなかで最もよく知られているシステムが、ABI 7900 HT配列検出システム(Applied Biosystems)、iCycler(Biorad)およびLight cycler (Roche Diagnostics)である。上記のように、特異的PCR混合物を、リアルタイム装置の工程に供した。DNA挿入色素(例えばエチディウムブロマイド、CybrGreen)を添加することによって、新しく合成されたDNAを特異的軽度励起によって可視化する(色素製造元の情報に従って)。増幅中の測定ポイントが複数あることにより、プロセス全体を観察し、標的遺伝子の核酸濃度を定量的に判定することが可能である。PCR混合物を、ハウスキーピング遺伝子を測定することによって正規化する(例えば18S RNA、β−actin、GAPDH)。蛍光ラベル標識付きDNAプローブを介した別の技法も同様に、特異的組織標本の標的遺伝子の定量的判定を可能にする(Applied Biosystems提供のTaqManアプリケーションを参照)。
【0154】
2.クローニング
腫瘍抗原のさらなる特長付けに必要とされる完全標的遺伝子を、一般的分子生物学的方法(例えば、"Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons Ltd., Wiley InterScience)に従ってクローン化する。標的遺伝子のクローニングまたはその配列の分析のため、該遺伝子を、校正機能を備えたDNAポリメラーゼ(例えば、pfu, Roche Diagnostics)によってはじめに増幅する。次に単位複製配列を、クローニングベクター中に標準の方法で連結させる。配列分析によって陽性のクローンを特定し、続いて、予測プログラムと既知のアルゴリズムにより特長付けを行う。
【0155】
3.抗体の産生
本発明に従って特定された腫瘍会合抗原は、例えば、抗体を用いて特長付けする。本発明にはさらに、抗体の診断のための使用または治療のための使用が含まれる。抗体は、天然および/または変性された状態のタンパクを認識することができる(Anderson et al., J. Immunol. 143: 1899-1904, 1989; Gardsvoll, J. Immunol. Methods 234: 107-116, 2000; Kayyem et al., Eur. J. Biochem. 208: 1-8, 1992; Spiller et al., J. Immunol. Methods 224: 51 60, 1999)。
【0156】
標的タンパクに特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は、各種標準の方法によって調製可能である。例えば、下記を参照されたい"Monoclonal Antibodies: A Practical Approach" by Phillip Shepherd, Christopher Dean ISBN 0 19 963722 9, "Antibodies: A Laboratory Manual" by Ed Harlow, David Lane ISBN: 0879693142 および "Using Antibodies: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO" by Edward Harlow, David Lane, Ed Harlow ISBN: 0879695447。ここでは、それらの天然形態における複合膜タンパクを認識する擬似および特異的抗体を生成することも可能である(Azorsa et al., J. Immunol. Methods 229: 35-48, 1999; Anderson et al., J. Immunol. 143: 1899-1904, 1989; Gardsvoll, J. Immunol. Methods. 234: 107-116, 2000)。これは、特に、治療に使用するだけでなく、多くの診断の用途にも使用することを目的とした、抗体の調製で重要である。したがって、完全なタンパク配列と細胞外の部分的配列をともに免疫化に使用することができる。
【0157】
ポリクロナル抗体の免疫化と産生
複数の免疫化プロトコルが公開されている。種(例えばウサギ、マウス)を、所望の標的タンパクを最初に注入することにより免疫化する。免疫原に対する動物の免疫反応は、規定の期間内に第二第三の免疫化を実施することによって増強させることができる(前の免疫化後約2−4週間)。該動物から血液を採取し、各種規定の時間間隔後に再度免疫血清を取得する(4週間後に第一回採血、次に2−3週間ごとに5回までの採血)。このようにして採取された免疫血清には、フローサイトメトリー、免疫蛍光法または免疫組織化学法によってウエスタンブロット法で標的タンパクを検出および特長付けする目的で使用可能なポリクローナル抗体が含まれている。
【0158】
動物を通常、存在している別の方法とともに4種類の十分に確立された方法のどれかによって免疫化する。免疫化は、標的タンパクに特異的なペプチドを用いるか、完全タンパクを用いるか、実験であるいは予測プログラムで特定することのできタンパクの細胞外部分配列を用いることによって実施可能である。予測プログラムは、必ずしも完全に機能するとは限らないので、透過膜領域によって相互に分裂している二つの領域を採用することも可能である。この場合、二つの領域の一方が、細胞外領域であるが、これは、後で実験によって実証することができる(以下を参照)。免疫化は、各種商業サービスプロバイダによって提供される。
(1)第一の事例では、ペプチド(長さ:8−12アミノ酸)を、in vitro法によって合成し(おそらくは商業サービスによって実施)、該ペプチドを免疫化に使用する。通常、三回免疫化が実施される(例えば、5−100μg/一回免疫化、の濃度で)。
(2)あるいは、免疫化は組換えタンパクを用いて実施することも可能である。したがって、標的遺伝子のクローン化されたDNAを、発現ベクターにクローン化し、標的タンパクを例えば無細胞in vitroで、バクテリア内(例えば大腸菌(E.coli))、酵母(例えばS. pombe)、昆虫の細胞または哺乳動物の細胞で特定の製造元(例えば Roche Diagnostics, Invitrogen, Clontech, Qiagen)の条件に従って合成する。ウイルス発現システムを使用して標的タンパクを合成することも可能である(例、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス)。前記システムのどれかで合成した後に標的タンパクを、通常はクロマトグラフィー法により精製する。この場合、精製道具として分子アンカーを有する免疫化タンパクに使用することも可能である(例えばHis tag, Qiagen; FLAG tag, Roche Diagnostics; GST融合タンパク)。例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley & Sons Ltd.(Wikey InterScience)には、様々なプロトコルが記載されている。標的タンパクを精製した後には、上記のように免疫化を実施する。
(3)所望のタンパクを内生的に合成する細胞株を入手できる場合には、この細胞株を特異的抗血清の調製に直接用いることができる。この場合、免疫化を、それぞれの事例で約1−5 × 10個の細胞を使用し1−3回の注入により実施する。
(4)免疫化は、DNAの注入によって実施することも可能である(DNA免疫化)。したがって、標的遺伝子をはじめに発現ベクターにクローン化して、標的配列を強力な真核細胞プロモータ(例えば、CMVプロモータ)の制御下に置く。続いて、DNA(例えば、1−10μg/注入)を、生体内で強力な血流のある毛細管領域に遺伝子銃を用いて免疫原として導入する(例えばマウスやラビット)。導入されたDNAを動物細胞によって取り込み、標的遺伝子を発現させ、該動物が最終的に標的タンパクに対する免疫反応を発現する(Jung et al., Mol. Cells 12: 41 49, 2001; Kasinrerk et al., Hybrid Hybridomics 21: 287-293, 2002)。
【0159】
モノクロナル抗体の産生
モノクロナル抗体は、従来、ハイブリドーマ技術を活用して産生されている(技術の詳細については、"Monoclonal Antibodies: A Practical Approach" by Philip Shepherd, Christopher Dean ISBN 0 19 963722 9; "Antibodies: A Laboratory Manual" by Ed Harlow, David Lane ISBN: 0879693142, "Using Antibodies: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO" by Edward Harlow, David Lane, Ed Harlow ISBN: 0879695447を参照)。さらに使用されている新しい方法が「SLAM」技法である。ここでは、B細胞を全血から単離させ、細胞をモノクローナル化する。次いで、単離させたB細胞の上清を、その抗原特異性について分析する。ハイブリドーマ技術とは異なり、次に抗体遺伝子の可変領域を単細胞PCRで増幅させ、好適なベクターにクローン化する。この方法では、モノクローナル抗体の産生が加速化される(de Wildt et al., J. Immunol. Methods 207:61-67, 1997)。
【0160】
4.抗体を用いたタンパク−化学法による標的の妥当性評価
上記のように産生可能な抗体は、標的タンパクに関する重要な多数の記述を行うのに利用できる。詳細には、標的タンパクを妥当性評価するための下記の分析が有効である。
【0161】
抗体の特異性
後続のウエスタンブロット法による細胞培養に基づいた検査が、所望の標的タンパクだけに特異的に抗体が結合するという事実を実証するのに最も適している(例えば、"Current Protocols in Proteinchemistry", John Wiley & Sons Ltd., Wiley InterScienceにさまざまなバリエーションが記述されている)。実証するために、強力な真核細胞プロモータの制御下の(例えば、サイトメガロウイルスプロモータ、CMV)、標的タンパクのcDNAを細胞にトランスフェクトする。DNAで細胞株をトランスフェクトするための十分に確立された方法が多種ある(例えば、エレクトロポレーション、リポゾームベースのトランスフェクション、リン酸カルシウム沈澱)(例えば、Lemoine et al., Methods Mol. Biol. 75: 441-7, 1997)。別の方法として、標的遺伝子を内生的に発現させる細胞株を使用することも可能である(標的遺伝子特異的RT−PCRを介した検出)。コントロールとして、理想的な事例では、同種遺伝子を実験で共トランスフェクトして、分析した抗体の特異性を、下記のウエスタンブロット法で実証することも可能である。
【0162】
後続のウエスタンブロット法では、標的タンパクを含んでいると考えられる細胞培養から得られた細胞または組織標本を1%の強度のSDS溶液に溶解させ、タンパクをこのプロセスで変性させる。溶解物を8−15%の強度の変性ポリアクリルアミドゲル(1%のSDSを含有)(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS−PAGE)で電気泳動によりサイズに従って分画する。次にタンパクを複数のブロット法(例えば、半乾燥エレクトロブロット;Biorad)のどれかひとつによって特異的膜(例えば、ニトロセルロース、Schleicher & Schull)に導入する。この膜上で所望のタンパクを可視化できる。したがって、膜をはじめに、60分間、標的タンパクを認識する抗体でインキュベートする(希釈率約1:20−1:200、該抗体の特異性による)。洗浄プロセス後に、膜を、マーカに共役しており(例えば、ペロキシダーゼまたはアルカリ性フォスファターゼなどの酵素)、第一の抗体を認識する第二の抗体でインキュベートする。すると、色彩反応または化学発光反応で膜上に標的タンパクを可視状態にすることができる(例、ECL, Amersham Bioscience)。標的タンパクに対し高い特異性を備えた抗体が、理想的な場合には、それ自体所望のタンパクのみを認識するはずである。
【0163】
標的タンパクの局在性
コンピュータ内法で特定された、標的タンパクの膜局在性を確認するのにさまざまな方法が使用されている。上記抗体を使用する重要でしかも十分に確立された方法が、免疫蛍光法(IF)である。したがって、標的タンパクを合成する(RT-PCR法によるRNAの検出またはウエスターンブロット法によるタンパクの検出)か、さもなければプラスミドDNAをトランスフェクトした、確立された細胞株の細胞を利用する。DNAを細胞株にトランスフェクトするためのさまざまな方法(例えば、エレクトロポレーション、リポソーム利用トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法)が十分に確立されている(例えば、Lemoine et al., Methods Mol. Biol. 75: 441 7, 1997)。免疫蛍光法でトランスフェクトされたプラスミドは、未修飾タンパクをコードするか、さもなければ標的タンパクに各種アミノ酸マーカを結合させることができる。例えば、主マーカは、各種異なる蛍光形態における蛍光緑蛍光タンパク(GFP)、高アフィニティの特異的抗体を利用できる6−12アミノ酸からなる短いペプチド配列、またはそのシステインを介して、特異的蛍光物質(Invitrogen)に結合しうる短いアミノ酸配列Cys−Cys−X−X−Cys−Cysである。標的プロテインを合成する細胞は、例えば、パラホルムアルデヒドまたはメタノールで固定する。次に、必要に応じて、細胞を洗剤(例えば、0.2% Triton X 100)を使用してインキュベーションにより透過させる。次に細胞を、標的タンパクまたは結合マーカのひとつに対向している第一の抗体を使用してインキュベートする。洗浄プロセス後に、第一の抗体に結合している蛍光マーカ(例えば、 フルオレセイン, Texas Red, Dako)に結合している第二の抗体を使用して、混合液をインキュベートする。次に、このようにしてラベル標識した細胞をグリコロールで被覆し、製造元の情報に従って、蛍光顕微鏡を活用して分析した。この場合、採用した物質に従った特異的励起法により、特異的蛍光発光を実現する。分析により通常、標的タンパク、抗体の質および二重染色において確認されている標的タンパクの信頼性の高い局在化、さらに、標的タンパクに加えて、結合アミノ酸マーカまたは局在性がすでに文献に報告されている染色されている他のマーカの信頼性の高い局在化も可能にする。GFPおよびその誘導体は、直接励起可能で、それ自体が蛍光を発する特殊な事例であることを表している。免疫蛍光法で、洗剤の使用により制御可能な膜透過性により、免疫原エピトープが、細胞の内側と外側のどちらにあるのかを実証することができる。したがって、選択したタンパクの予測は、実験的に裏付けられる。別の可能性としてフローサイトメトリの手段によって細胞外領域を検出する。したがって、細胞を非浸透条件下で(例えば、PBS/Na azide/2% FCS/5 mM EDTAを用いて)固定し、製造元の指示に従って、フローサイトメータで分析する。この方法で分析する抗体によって認識できるのは、細胞外エピトープだけである。免疫蛍光法との相違点は、例えば、ヨウ化プロピジウムまたはTrypanブルーを用いて死細胞と生細胞との間を識別できるので、擬陽性の判定を回避できるという点にある。
【0164】
もうひとつの重要な検出法では、特異的組織標本で、免疫組織化学法(IHC)を用いる。この方法の目的は、機能的に無傷の組織凝集体におけるタンパクの局在性を特定することにある。IHCは、具体的には、(1)腫瘍および正常組織における標的タンパクの量の見積もりを可能にする、(2) 腫瘍組織と健常組織中のいくつの細胞が標的遺伝子を発現しているのかについての分析を行う、さらには(3)標的タンパクが検出可能な組織内の細胞の種類(腫瘍細胞か健常細胞か)を決定するのに役立つ。あるいは、デジタルカメラと好適なソフトウェア(例えば、Tillvision, Till-photonics, Germany)を用いた組織免疫蛍光によって、標的遺伝子のタンパクの量を定量することができる。技術が頻繁に公開されており、染色法と顕微鏡検査の詳細は、例えば、"Diagnostic Immunohistochemistry" by David J., MD Dabbs ISBN: 0443065667 または"Microscopy, Immunohistochemistry, and Antigen Retrieval Methods: For Light and Electron Microscopy" ISBN: 0306467704などに記載されている。ただし、有意な結果を得るためには、抗体の特性のため異なるプロトコルを使用しなくてはならない(以下に例を示す)。
【0165】
通常、IHCでは、組織学的に定義された腫瘍組織と、参照として、比較可能な健常組織が採用される。標的遺伝子の存在がRT−PCR分析によって明らかになる、陽性および陰性のコントロール細胞株として使用することも可能である。バックグランドコントロールは、必ず対象として採用しなくてはならない。
【0166】
厚さ4μmのホルマリン固定(例えば、メタノールを用いる別の固定法も可能である)およびパラフィン包埋組織片をガラスサポート上にアプライし、例えば、キシレンなどでパラフィンを溶解する。標本をTBS Tで洗浄し、血清中でブロックする。次いで、通常使用するアフィニティ精製抗体を用いて、1―18時間、第一の抗体(希釈率:1:2―1:2000)を使用してインキュベーションを行う。洗浄プロセスに続き、アルカリホスファターゼ(代替物質:例えばペルオキシダーゼなど)に共役し、第一の抗体と対向している第二の抗体を使用して、約30−60分間インキュベーションを行う。次いで、該アルカリホスファタ−ゼを用いて呈色反応を行う(例えば、Shi et al., J. Histochem. Cytochem. 39: 741-748, 1991; Shin et al., Lab. Invest. 64: 693-702, 1991などを参照)。抗体の特異性を実証するため、免疫原を事前に添加しておくことにより反応を遮断できる。
【0167】
タンパクの修飾の分析
例えば、N−およびO−グリコシル化やミリスチン化などの二次タンパク修飾は、免疫原エピトープの利用可能性に影響を与えるか完全に抑止さえするので、抗体療法の効能に疑問が呼び起こされている。さらに、二次修飾の型と量が、正常組織と腫瘍組織で異なることがしばしば実証されている(例: Durand & Seta, 2000; Clin. Chem. 46: 795-805; Hakomori, 1996; Cancer Res. 56: 5309-18)。したがって、これらの修飾の分析が、抗体療法を成功させるのに必要不可欠である。潜在的結合部位は、特定のアルゴリズムによって予測可能である。
【0168】
通常、タンパクの修飾の分析は、ウエスタンブロット法によって行われる(上記を参照)。通常、数kDaの大きさをもつグリコシル化により、特に、SDS−PAGEで分画しうる、より大きな全質量の標的タンパクが生じる。特異的O−およびN―グリコシド結合を検出するため、O−またはN−グリコシラーゼを用い、(それぞれの製造元の指示、例えば、PNgase、 endoglycosidase F, endoglycosidase H、Roche Diagnosticsに従って)SDSによって変性させる前に、タンパク溶解物をインキュベートする。次に、上記のようにウエスタンブロット法を行う。したがって、グリコシダーゼを用いたインキュベーション後に、標的タンパクの大きさが縮小していた場合には、特異的グリコシル化を検出し、このようにして修飾の腫瘍特異性の分析も行うことが可能となる。
【0169】
標的遺伝子の機能分析
標的分子の機能は、その治療の有用性にとって最も重要であるため、治療に利用可能な分子の特長づけにおいては、機能分析が重要な要素となる。機能分析は、細胞で、細胞培養実験で、あるいは動物モデルを利用して in vivoでも行うことができる。これには、突然変異によって標的分子の遺伝子のスイッチをオフ(ノックアウト)にするかまたは標的配列を細胞または生体に挿入(ノックイン)するプロセスを伴う。したがって、第一の事例では、分析する対象の遺伝子の機能を欠失させることによって、細胞の環境における機能的修飾を分析することができる(機能の欠失)。第二の事例では、分析対象の遺伝子の付加により生じた修飾を分析できる(機能の獲得)。
【0170】
a.細胞における機能分析
トランスフェクション。機能の獲得を分析するには、標的分子の遺伝子を細胞に転移しなくてはならない。したがって、標的分子の合成を可能にするDNAを細胞にトランスフェクトする。通常、ここでは、標的分子の遺伝子は、強力な真核細胞プロモータ(例えば、サイトメガロウイルスプロモータ;CMVなど)の制御下に置かれる。DNAを細胞株にインフェクトするための多種多様な方法(例えば、エレクトロポレーション、リポソーム使用トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法など)が完全に確立されている(例えば、Lemoine et al., Methods Mol. Biol. 75: 441-7, 1997)。この遺伝子は、ゲノムを取り込まずに過渡的に、または例えばネオマイシンで選択した後にゲノムを取り込んで安定的に合成できる。
【0171】
RNA干渉(siRNA)。細胞における標的分子の機能の完全な欠失を誘発しうる標的遺伝子の発現阻害は、RNA干渉(siRNA)技術によって細胞内で生じさせることができる(Hannon, GJ. 2002. RNA interference. Nature 418: 244 51; Czauderna et al. 2003. Nucl. Acid Res. 31: 670 82)。したがって、標的分子に特異的な、約20−25のヌクレオチドからなる短い二重鎖RNA分子を細胞にトランスフェクトする。次に、酵素介在プロセスによって、標的遺伝子の特異的RNAの変性と、それに伴う標的タンパクの機能の阻害が生じ、結果的に標的遺伝子の機能の分析が可能となる。
【0172】
トランスフェクションまたはsiRNAによって修飾された細胞株は、続いて各種方法で分析できる。もっとも一般的な例を以下に示す。
【0173】
1.増殖
細胞増殖を分析するための数多くの方法が確立されており、さまざまな会社から市販されている(例えば、Roche Diagnostics, Invitrogen; 検査法の詳細については、多数の適用プロトコルを参照)。細胞培養実験における細胞数は、単に数えることによってまたは細胞の代謝活性を測定する比色分析によって判定することができる(例えば、wst 1, Roche Diagnostics)。代謝試験法では、酵素マーカを介して、実験における細胞数を間接的に測定する。細胞増殖は、例えばブロモデオキシウリジン(BrdU)を添加するなど、DNA合成の速度を分析することによって、測定できるが、取り込まれたBrdUは、特異的抗体を介して比色分析によって直接測定できる。
【0174】
2.アポトーシスと細胞毒性
細胞のアポトーシスと細胞毒性を検出するための数多くの検査システムが利用可能である。決定的特長は、不可逆的であり、いずれの場合も細胞死に至るゲノムDNAの特異的酵素依存型フラグメント化である。これらの特異的DNAフラグメントを検出するための方法は、市販されている。さらに、組織部でもDNA単鎖の破断を検出できるTUNEL検定という別の方法も利用可能である。細胞毒性は、主として、細胞の活力状態のマーカとしての役割を果たす変性細胞の浸透性を介して検出される。これには、いっぽうで、細胞培養上清で通常細胞間に認められるマーカの分析を伴う。さらにもう一方では、無傷細胞によって吸収されない色素マーカの吸収性も分析可能である。色素マーカのもっともよく知られた例が、Trypanブルーとヨウ化プロピジウムであるが、一般的な細胞内マーカは、酵素介在下で上清中で検出可能な乳酸デヒドロゲナーゼである。さまざまな提供業者提供の各種検定システムを利用できる(例えば、 Roche Diagnostics, Invitrogen)。
【0175】
3.遊走試験
細胞が遊走できる能力は、特異的遊走試験で、好ましくはBoydenチャンバー(Corning Costar)を利用して分析する(Cinamon G., Alon R. J. Immunol. Methods. 2003 Feb; 273(1-2):53-62; Stockton et al. 2001. Mol. Biol. Cell. 12: 1937-56)。したがって、特定の孔サイズのフィルタ上で細胞を培養する。遊走可能な細胞は、このフィルタを通過して以下の別の培養容器へと遊走することができる。次に、顕微鏡分析によって、標的分子の機能獲得または機能欠失により誘発されたおそらくは変性した遊走行動の判定が可能となる。
【0176】
b.動物モデルにおける機能分析
標的遺伝子の機能の分析を行うための細胞培養実験に代わりうる別の方法として、動物モデルにおける複雑なin vivo実験が挙げられる。細胞を使用した方法に比べ、これらのモデルは生体全体の環境においてのみ検出可能な、欠陥のある発達または疾患を検出することができるという長所がある。いままでヒト疾患に関するモデルは多数利用できる(Abate-Shen & Shen. 2002. Trends in Genetics S1-5; Matsusue et al. 2003. J. Clin. Invest. 111:737-47)。例えば、酵母、線虫またはゼブラフィッシュなどの各種動物モデルが、その後、集中的に特長づけされている。ただし、他の種より好ましいモデルが、例えば、マウス(Mus musculus)、などの動物モデルである。というのは、これらはヒト環境で生体プロセスを再現する最大の可能性を秘めているからである。マウスの場合、いっぽうで、新しい遺伝子をマウスのゲノムに取り込むトランスジェニック法が、近年確立されてきた(gain of function; Jegstrup I. et al. 2003. Lab Anim. 2003 Jan.; 37(1):1 9)。そのいっぽうで、他の系統的アプローチが、マウスのゲノム内で遺伝子のスイッチをオフにするので、所望の遺伝子における機能の欠失が誘発される。(knockout models, loss of function; Zambrowicz BP & Sands AT. 2003. Nat. Rev. Drug Discov. 2003 Jan; 2(1):38-51; Niwa H. 2001. Cell Struct. Funct. 2001 Jun; 26(3):137-48);技術の詳細に関する文献は多数出版されている。
【0177】
マウスモデルを生成したなら、導入遺伝子によってあるいは遺伝子の機能の欠失によって誘発された変性を、全生体の環境で分析できる(Balling R, 2001. Ann. Rev. Genomics Hum. Genet. 2:463-92)。したがって、例えば、行動試験の実施または確定した血液パラメータの生化学的研究が可能となる。組織学的分析、免疫組織化学法または電子顕微鏡法により、細胞レベルで変性を特長付けることができる。遺伝子の特異的発現パターンは、in−situハイブリダイゼーションによって検出可能である(Peters et al. 2003. Hum. Mol. Genet 12:2109-20)。
【実施例1】
【0178】
診断がん標的および治療がん標的としての仮説タンパクFLJ31461の特定
遺伝子予測プログラムを用いて、遺伝子銀行寄託番号NM_152454のもとで登録されているFLJ31461(SEQ ID NO:1)を、染色体15上のまだ機能的に特長づけされていない推定遺伝子(15q25.3)と判定した。遺伝子銀行に蓄積されている配列から二つの有力なオープンリーディングフレームが得られる。第一のリーディングフレームは136個のアミノ酸の長さを持つタンパクをコードする。NP_689667の寄託番号のもとでNCBIのRefSeqのデータバンク内に蓄積されている遺伝子産物(SEQ ID NO:2)はしたがって、約15 kDaの算出分子量を有している。第二のリーディングフレームは、 100個のアミノ酸の長さを持つタンパクをコードする(核酸配列:SEQ ID NO:69;アミノ酸配列:SEQ ID NO:70)。
【0179】
われわれがクローン化した遺伝子FLJ31461の配列分析で、データベースに蓄積されている配列と比較して、コーディング領域におけるヌクレオチドの挿入部位を発見して驚いた。その結果リーディングフレームがシフトする。配列データベース内にすでに蓄積されている配列に由来し得ない完全に新しい2個のオープンリーディングフレームが得られる。これにより、新しいリーディングフレーム(SEQ ID NO:71)が、96個のアミノ酸の長さを持つ新しい仮説タンパク(SEQ ID NO:72)をコードする。SEQ ID NO:73は、133個のアミノ酸の長さを持つ仮説タンパク(SEQ ID NO:74)をコードする。われわれは、データベースで本来蓄積されている内容に誤りがあると想定すべきなので、われわれはSEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:73およびSEQ ID NO:74のさらなる実験に傾注した。
【0180】
本発明にしたがい、FLJ31461特異的定量的RT−PCR(SEQ ID NO:31、32、91、92、93、94でのプライマー)の確定後に、遺伝子特異的転写産物の量を健全な組織とがん標本で調べた(図1)。精巣を除き、FLJ31461はわれわれが調査した正常組織のいずれにも検出されない(図1A)。FLJ31461はしたがって、かなりの高確率で、強力な配偶子特異的遺伝子産物であると言える。驚いたことにわれわれは、腫瘍の分析中に多くの腫瘍型でFLJ31461にスイッチが入る一方で、それらは対応する正常組織では検出限界以下であることを突き止めた(図1A−D)。このことは、われわれが調べた事実上すべての乳房腫瘍に(図1C)、また、一連の肺がんや鼻咽喉がんに適用されるだけでなく、様々な頻度で他の悪性新生物にも該当する(図1D)。
【0181】
FLJ31461はしたがって、診断のみならず治療にも使用することができる、腫瘍組織に対する高度に特異的な分子マーカである。選択的組織分布のために、マーカとしての役割を果たすいわゆるがん/精巣抗原のクラスの代表として、この遺伝子産物は例えば、正常組織に損傷を与えずに腫瘍細胞の正確な標的化を確かなものにできる。がん/精巣遺伝子は、標的治療のための魅力的な標的構造とみなされ、第一相/第二相試験でがん疾患における特異的免疫療法についてすでに実験が行われている(すなわちScanlan MJ, Gure AO, Jungbluth AA, Old LJ, Chen YT. 2002. Immunol. Rev. 2002 Oct; 188: 22-32)。
【0182】
タンパクレベルでこれらのデータを確認するため、特異的抗体または免疫血清を、動物を免疫化することによって生成した。タンパクトポロジーを、SEQ ID NO:72およびSEQ ID NO:74の膜貫通領域をバイオインフォマティクスツール(TMHMM、TMPRED)で分析することによって予測した。SEQ ID NO:72に関するこの方法で、例えば、2つの膜貫通領域を予測した。タンパクのN末端とC末端は細胞外である。
【0183】
本発明にしたがい、免疫化のためペプチドエピトープ、特に両タンパク変異体に特異的である細胞外ペプチドエピトープを選択した。
【0184】
中でも、抗体を産生する目的での免疫化には下記のペプチドを選択した(SEQ ID NO:61、62、96、97)。
【0185】
SEQ ID NO:96を用いた免疫化によって産生された抗体に関するデータを例として示す。特異的抗体を免疫蛍光実験のための各種固定条件下で用いることができる。RT−PCR陽性および陰性細胞株の比較染色では、個々のタンパクは、十分な検出可能な量で、中でも定量的RT−PCRを用いて陽性と判定された乳がん細胞株において特異性を示す(図2)。この事例における内生的タンパクは、膜局在化を呈している。
【0186】
このような抗体は、ヒト組織切片の免疫組織化学的染色に好適である。かなりな範囲までわれわれは転写レベルに認められる組織分布を確認することができた。われわれは、精巣を除き、正常組織における抗体の反応をほとんど認めることができなかった(図3A)一方で、FLJ31461に対する抗体は、各種ヒト腫瘍標本、特に乳房腫瘍と肺腫瘍を染色している(図3B)。細胞の染色では、細胞表面におけるタンパクの局在性を示す膜を際立たせている。驚いたことに、われわれは、特に、腫瘍の転移(図3B)がこのタンパクを特に頻繁に、高い細胞比で発現することを突き止めた。
【0187】
これらのデータは、われわれが観察したこの遺伝子が実際にはタンパクを形成していること、このタンパクがヒト腫瘍に高度に特異的であることおよびこのような腫瘍細胞の表面膜上にこれが存在していることを一方で示している。したがってこのタンパクは治療用抗体に特に利用可能である。同様に、われわれのデータは、このタンパクに対する特異的抗体を産生可能であることを実証している。これらの抗体は、腫瘍細胞にマーカFLJ31461を介して選択的に結合する。
【0188】
本発明にしたがうとこのような抗体を、例えば免疫組織学のための診断に使用することができる。特に、このような抗体は治療に用いることができる。産生された抗体は、キメラ組み換え抗体またはヒト化組み換え抗体の産生に直接利用することもできる。これはまたウサギから取得した抗体で直接実施することも可能である(J Biol Chem. 2000 May 5; 275(18):13668-76 by Rader C, Ritter G, Nathan S, Elia M, Gout I, Jungbluth AA, Cohen LS, Welt S, Old LJ, Barbas CF 3rd "The rabbit antibody repertoire as a novel source for the generation of therapeutic human antibodies"を参照)。これを達成するために、免疫化した動物からリンパ球を採取した。FLJ31461は、ワクチンや抗原特異的Tリンパ球の養子免疫伝達などといった免疫治療処置にとって極めて魅力的な標的でもある。
【実施例2】
【0189】
診断がん標的および治療がん標的としてのDSG4 (デスモグレイン 4)の特定
翻訳産物(デスモグレイン4;SEQ ID NO:76)を有する遺伝子DSG4 (デスモグレイン4;SEQ ID NO:75)はデスモソームカドヘリンファミリーに属する。この遺伝子は16個のエキソンで構成され、染色体18(18q12)上に配置されている。生成されたアミノ酸配列は、1040個のアミノ酸の長さを持つ前駆体タンパクをコードする。処理されたタンパク(49個のアミノ酸によってN末端が切り詰められた)は、991個のアミノ酸の長さを持ち、約108 kDaの分子量を修飾せずに備えている。DSG4は、他のデスモグレインと全く同様に、グリコシル化1型細胞表面タンパクであると想定する必要がある。DSG4は、デスモゾームの成分として検出することが可能であった(Kljuic et al. 2003. Cell 113: 249-260)。デスモゾームは、機械的安定性を持つ上皮組織を提供する、複合細胞間結合部(表皮などのような)である。デスモグレインファミリーの他のメンバーに対する自己抗体は、デスモゾームに結合することによって表皮内で細胞−細胞−コンタクトの欠損に寄与しているようであり、さらに、皮膚疾患の尋常性天疱瘡にも寄与しているようである。DSG4は、ほとんどの健常な組織では発現しないという記載がある。今まで有意な発現が報告されているのは、唾液腺、精巣、前立腺および皮膚だけである(Whittock, Bower 2003. J Invest Derm 120: 523-530)。腫瘍の疾患に対する関連性はいまだ検討がなされていない。
【0190】
本発明にしたがって、DSG4特異的オリゴヌクレオチドを用いて健常な組織と腫瘍で発現を調べた。本発明にしたがって、RT−PCR検査に、複数の DSG4特異的プライマーペアを用いた。これらは、DSG4プライマーペアSEQ ID NO:77、78(エキソン10とエキソン12)、DSG4プライマーペアSEQ ID NO:83、84(エキソン1とエキソン5)、DSG4プライマーペアSEQ ID NO:89、90(エキソン5とエキソン8)およびDSG4プライマーペアSEQ ID NO:95、78(エキソン8とエキソン12)である。
【0191】
全プライマーペアを用いた実験では、ほとんどの正常組織でDSG4が発現しないということを確認した。ただし、プライマーペアによっては、異なる発現パターンが観察された(図4B)。SEQ ID NO:95、78(エキソン8-12)のプライマーペアでは、前立腺と皮膚におけるごくわずかな発現を例外として、正常組織では一切発現は認められなかった。驚いたことに、一連の腫瘍で、このプライマーペアを用いたところDSG4を検出することができた。これらは特に、胃の腫瘍とさらには、口内、鼻および咽喉領域のがんである(図4A)。
【0192】
SEQ ID NO:77、78(エキソン10-12)のプライマーペアの場合、上記のような前立腺や皮膚における正常組織で発現した場合であってもあまり顕著ではなかった。さらに驚いたことに、このプライマーペアの場合、より顕著な発現が腫瘍で認められた(図4A)。一方では、これらの腫瘍は、胃の腫瘍や、口内、鼻および咽喉領域のがんやさらには他の種類のがんなど、第一のプライマーペアを用いた検査では疑わしい病態である(図4B、C)。特に、すべての腸腫瘍で、われわれは有意かつ高い発現を検出したが、われわれは第一のプライマーペアを用いては検出できなかった。各種腫瘍における発現量は、最も高い発現率の細胞毒性関連正常細胞に比べ多様であった(図4B)。
【0193】
これらの検査結果に基づくと、全長転写産物SEQ ID NO:75およびそれらに由来するタンパク(SEQ ID NO:76)は別として、エキソン9の前の領域が欠損しているDSG4の切りつめられた変異体も存在しているようである(図5)。
【0194】
DSG4の遺伝子座の拡張分析の結果、この分子の各種変異体はエキソン9より前が欠失していることを予期せねばならないということが実証された(図5)。これらは、転写産物SEQ ID NO:85、87、108、110および112ならびにそれらの変性タンパク産物SEQ ID NO:86、88、109、111および113である。全長の転写はまた、エキソン10より先の領域で修飾され、変異体転写産物SEQ ID NO:102、104、106およびタンパクSEQ ID NO:103、105、107となる。
【0195】
エキソン9の前で切り詰められた変異体は全長変異体よりも腫瘍選択的でさえあり、全長変異体が発現しない大腸がんなどのその他の種類の腫瘍で認めることができる。膜貫通領域はエキソン12に配置されているので、プライマーSEQ ID NO:77、78によって増幅される領域は細胞外にあり、したがって抗体にとって利用可能となるはずである。この切り詰められた細胞外領域には、DSG4−遺伝子セクションエキソン10、11および12が含まれている。したがって、DSG4のエキソン10、11および12(SEQ ID NO:79)を含む転写産物は、特に、診断用がん標的および治療用がん標的として好適である。これらのDSG4領域は、細胞外にある領域(SEQ ID NO:81)をコードする。したがって、エキソン10、11、12(SEQ ID NO:75、79、80、85、87、106、112)およびそれらがコードするポリペプチド(SEQ ID NO:76、81、82、86、88、107、113)を有するDSG4−ポリヌクレオチドは特に、本発明によるモノクローナル抗体の標的構造体として有用である。
【0196】
したがって、われわれは、全長分子(SEQ ID NO:75)の領域および切り詰められた分子(SEQ ID NO:81)の細胞外領域のそれぞれからエピトープを持つ動物を免疫化した。
【0197】
われわれは、DSG4をトランスフェクトした細胞表面上でDSG4を染色する抗体を生成することができた。その後、特異的抗体は、表面上で免疫蛍光法(図6A)およびフロウサイトメトリ(図6B)を用いてこのタンパクを特異的に検出することができる。
【0198】
提示された腫瘍の指標に関するこの分子の顕著な発現と高度な発生率によりこのタンパクと特にはその切り詰められた変異体が本発明にしたがった極めて興味のある診断および治療用マーカとなる。これはさらに、血清中、骨髄および尿内の播種型腫瘍細胞の検出さらには本発明にしたがったRT―PCRを用いた他の器官における転移の検出も含む。
【0199】
DSG4の細胞外領域、特には細胞膜に近い部分を、本発明にしたがった治療ならびに免疫診断のためのモノクローナル抗体の標的構造体としても利用可能である。
【0200】
さらに、DSG4は、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)の誘発を目的として、ワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として本発明にしたがって用いることができる。本発明にしたがうと、これには、DSG4の生体活性を調節し、腫瘍の治療に用いることができるいわゆる「小型化合物」の発現も含まれる。
【実施例3】
【0201】
診断用がん標的および治療用がん標的としてのDSG3(デスモグレイン3)の特定
遺伝子DSG3(デスモグレイン3;SEQ ID NO:3)およびその翻訳産物(SEQ ID NO:4)は、寄託番号NM_001944(ヌクレオチド配列)またはNP_001935(タンパク配列)のもとでNCBIで公開されているデスモゾームのカドヘリンファミリーに属している。この遺伝子は、15個のエキソンで構成され、染色体18(18q12.1-q12.2)上に配置されている。生成されたアミノ酸配列は、999個のアミノ酸を有し、約130 kDaの仮説サイズを持つタンパクをコードする。DSG3は、グリコシル化1型細胞表面タンパクであり、デスモゾーム内で検出可能である(Silos et al. J. Biol. Chem. 271: 17504-17511, 1996)。デスモゾームは、上皮細胞、(例えば表皮などといった)上皮組織に機械的安定性を与えるため、隣接細胞のケラチンフィラメントを接続している細胞内複合接続部である。デスモソーマルカドヘリンデスモグレインおよびデスモコリンは、カルシウム依存型接着分子である。デスモグレイン3に対する自己免疫と、結果として生じる表皮における細胞-細胞-接触部の欠損は、皮膚疾患の尋常性天疱瘡に関与している(Amagai et al., 1991. Cell 67: 869-877)。これは、動物モデルでも実証されている(Koch et al, 1997. J Cell Biol 5: 1091-1102)。
【0202】
本発明にしたがい、DSG3特異的定量的RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:33、34)の確定後に、遺伝子特異的転写産物の量を、健全な組織とがん標本で検査した(図7;方法:材料と方法を比較; セクションB.1.)。われわれの実験では、正常組織における発現の分化分布が実証された。DSG3転写産物は、正常組織にはほとんど認められなかった。有意な転写産物の量を発現している唯一の正常組織は、気管支、皮膚、胸腺である(図7a)。その他すべての分析の対象とした組織、特に脳、心臓、肝臓、膵臓、PBMC、肺、乳房、卵巣、腎臓、脾臓、大腸、リンパ節、子宮、膀胱および前立腺では、転写度は低くまたは、検出不能である(図7A)。驚いたことに、われわれは、今日まで報告されていない一部の腫瘍型におけるDSG3の有意な発現を実証することができた。
【0203】
腫瘍の定量的RT−PCR分析では、DSG3特異的転写産物がとりわけ鼻咽喉領域(頭頸部がん)の腫瘍において、最も高度な発現性細胞毒性関連組織を超える量で実証されている(図7B)。しかし、気管支(図7C)のがんなどといった他の腫瘍もこのタンパクを発現する。
【0204】
われわれは、DSG3特異的抗体でヒト組織の切片を染色したところ、PCR内で観察された腫瘍特異性を確認することができた(図8)。
【0205】
記述された腫瘍指標におけるこの分子の顕著な発現と高発生率は、このタンパクを、本発明にしたがったきわめて興味深い診断および治療用マーカにしている。これには、本発明にしたがって、血清、骨髄および尿における播種型腫瘍細胞の検出ならびにRT−PCRを用いた他の器官における転移の検出も含まれる。
【0206】
N端末に配置されたI型膜タンパクデスモグレイン3(SEQ ID NO:4、アミノ酸1-611)の細胞外領域は、治療用のみならず免疫診断用にモノクローナル抗体の標的構造として本発明にしたがって使用できる。さらに、本発明にしたがって、DSG3を、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として使用することができる。本発明にしたがいこれには、DSG3の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用することのできる、いわゆる「小型化合物」の発現も含まれる。
【実施例4】
【0207】
診断および治療用がん標的としてのトランスポータSLC6A3(溶質担体ファミリー6)の特定
遺伝子SLC6A3(SEQ ID NO:5)およびその翻訳産物(SEQ ID NO:6)は、ナトリウム神経伝達物質共輸送体ファミリー(SNF−ファミリー)に属しており、寄託番号NM_001044(ヌクレオチド配列)またはNP_001035(タンパク配列)のもとで蓄積されている。この遺伝子は16個のエキソンで構成され、染色体5(5p15.3)上に配置されている。SLC6A3遺伝子は、620個のアミノ酸の長さを持つ糖タンパクをコードする。SLC6A3は、ホモオリゴマーとしてイオントランスポーター複合体の一部に相当する、合計12の膜貫通領域を持つ必須の膜タンパクである(Hastrup et al., 2003. J Biol Chem 278: 45045-48)。
【0208】
本発明にしたがい、SLC6A3特異的定量的RT−PCR(プライムペア SEQ ID NO:35、36)の確定後に、健全な組織とがん標本でSLC6A3特異的転写産物の分布を検査した(図9;方法:材料と方法を比較; セクションB.1.)。ほとんどの正常組織でSLC6A3はごくわずかしかまたはまったく発現せず、SLC6A3の中程度の発現が胸腺、脾臓、卵巣、膵臓さらには腎臓でのみ認められた。約100倍増加したSLC6A3Aの有意な過剰発現が腎がんで検出された(図9A)。定量(図9B)および従来のRT−PCR(図9C)を用いた各種腎臓組織の詳細分析から、SLC6A3が、7/12腎臓細胞がんで発現し、非腫瘍化標本に比べ5/12の標本で過剰発現することが認められた。レベルは有意に低いが検出可能なSLC6A3特異的発現も、他のがんの一部の腫瘍組織で検出された。特に、一部の乳がん、卵巣がん、気管支がんおよび前立腺がんでは、SLC6A3A特異的転写産物が検出された(図9Dおよび9E)。
【0209】
本発明によれば、SLC6A3の様々な細胞外領域をモノクローナル治療抗体の標的構造体として使用可能である。SEQ ID NO:6を基準とした以下の配列領域は、SLC6A3(ソフトウェアTMHMM2を用いた分析に基づく)に対する細胞外領域であるとして予測される: アミノ酸89−97、164−237、288−310、369−397、470−478、545−558。SEQ ID NO:63および64に列挙されているペプチドを、SLC6A3特異的抗体の産生のために使用した。
【実施例5】
【0210】
診断および治療用がん標的としてのGRM8の特定
遺伝子GRM8/GluR8すなわち「メタボトロフィックグルタミン酸受容体8」(SEQ ID NO:7)およびその翻訳産物(SEQ ID NO:8)はグルタミン酸受容体のファミリーに属している。この遺伝子は10個のエキソンから成り、染色体7(7q31.3-q32.1)に配置されている。GRM8遺伝子によってコードされているタンパクは、908個のアミノ酸の長さを持ち、その算出分子量は102 kDaである。予測プログラムは、7個の膜貫通領域を予測している。このタンパクは、GluR4およびGluR7との高い類似性(67%〜70%の類似性)を示している(Scherrer et al., 1996. Genomics 31: 230-233)。
【0211】
Lグルタメートは、中枢神経系における重要な神経伝達物質でイオンチャンネル型のみならず代謝型グルタミン酸受容体も活性化する。GRM8特異的転写産物は今日まで、脳またはグリア細胞内でしか検出されていない。しかし現在まで、もっと多くの数の組織の定量レベルでの転写産物またはタンパクを比較する調査は報告されていなかった(Wu et al., 1998. Brain Res. 53: 88-97)。
【0212】
本発明にしたがい、GRM8特異的定量的RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:37、38)の確定後に、GRM8特異的転写産物の分布を健常な組織とがん標本で調べた(図10;方法:材料と方法を比較; セクションB.1.)。われわれの実験で、各種正常組織内の発現量の特異的分布が実証された。われわれは、脳のみならず、量的には少ないが胃、腸、膀胱、卵巣、肺、および膵臓の組織でも、選択的にGRM8転写産物を特定した。他の正常組織ではほとんど、GRM8の発現量が有意に少なかったか、またはまったく検出されなかった。一部の腫瘍では、まだ報告されていない有意なGRM8の発現を検出することができた。特に、大腸、子宮頸管および腎臓の各細胞のがんは、他の正常組織すべてに比べて、10倍以上もの過剰発現を呈し、さらに、脳組織の発現レベルよりも明らかに上回っている(図10Aおよび10B)。
【0213】
本発明によれば、GRM8の細胞外領域を、治療用モノクローナル抗体の標的構造体として使用することができる。SEQ ID NO:8に関しては、アミノ酸1−582、644−652、717−743および806−819が細胞外に局在化している。
【実施例6】
【0214】
診断および治療用がん標的としてのカドヘリン17(CDH17)の特定
遺伝子CDH17(SEQ ID NO:9)およびその翻訳産物(SEQ ID NO:10)は、カドヘリンファミリーに属している。この遺伝子は18個のエキソンからなり、染色体8(8q22.1)に配置されている。これは、二次修飾をせずに、92.1 kDaの算出分子量を持ち、1個の膜貫通領域を持つ832個のアミノ酸の長さを有する1型膜透過タンパクをコードする。カドへリン17は、Dantzig ら(Science 264: 430-433, 1994)によってプロトン依存ペプチドトランスポータとしてクローン化された。カルシウム依存糖タンパクカドヘリン17には、細胞外領域に7個のカドヘリン領域が含まれている(Gessner et al., Ann N Y Acad Sci.; 915:136-43, 2000)。細胞内領域は、他のカドヘリンとの相同性を示していない。発現に関する実験は、散発的のみ利用可能で、多数の異なる組織の定量的比較転写またはタンパク実験の形態ではできなかった。
【0215】
本発明にしたがい、CDH17特異的定量RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:39、40)の確定後に、CDH17特異的転写産物の分布について健常な組織とさらにはがん標本において調べた(図11;方法:材料と方法を比較; セクションB.1.)。ほとんどの正常組織で、CDH17はまったく検出できない(図11A)。われわれは、胃と腸の組織で選択的に有意な転写量と、膀胱、脾臓、リンパ節、胸腺、前立腺および食道ではるかに少ない発現量を確認した。驚いたことにわれわれは、かつて報告されたことのない顕著なCDH17特異的発現を腫瘍で検出した。腸内腫瘍におけるCDH17に関しては、少なくとも2−10倍の過剰発現が正常組織に比較して測定された。CDH17は、さらに胃と気管支腫瘍で強く発現している(図11Bおよび11C)。
【0216】
報告されている腫瘍指標に関するこの分子の顕著な発現と高い発生率が、このタンパクを、本発明にしたがった極めて興味深い診断および治療マーカとさせている。これには、本発明にしたがって、血清、骨髄および尿における播種型腫瘍細胞の検出のみならず、RT−PCRを用いた他の器官における転移の検出も含まれる。
【0217】
本発明にしたがい、CDH17の細胞外領域を、治療ならびに免疫診断のためのモノクローナル抗体の標的構造体として使用することができる。SEQ ID NO:10に関しては、アミノ酸1−785が、細胞外に局在化している(ソフトウェアTMHMM2を用いて行われた予測)。
【0218】
さらに、CDH17を、本発明にしたがい、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)の誘発のためのワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として使用することができる。これには、本発明にしたがい、CDH17の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用することができるいわゆる「小型化合物」の開発も含まれる。
【実施例7】
【0219】
診断および治療用がん標的としてのABCC4の特定
遺伝子ABCC4(SEQ ID NO: 11)およびその翻訳産物(SEQ ID NO: 12)は、ABCトランスポータ(ATP-結合カセット)をコードする。この遺伝子は31個のエキソンから成り、染色体13(13q31)に配置されている。これは、修飾せずに、約149 kDaの算出分子量を持つ、1325個のアミノ酸の長さを備えたタンパクをコードする。ABCC4は、必須の膜タンパクである。ABCC4のトポロジーはまだ解明されておらず、予測プログラムは12−14膜貫通領域を予測している。ABCトランスポータは、細胞外および細胞内膜を通じて各種分子を輸送する。ABCC4は、多剤耐性タンパクのいわゆるMRPファミリーに属している。ABCC4の特異的機能はまだ解明されていないが、このトランスポータが、多くの腫瘍の化学療法耐性をになうことになる細胞解毒作用で重要な役割を果たすと考えられる。
【0220】
人体の各種器官に対するこの遺伝子産物の組織分布はいまだ調査されていない。本発明にしたがい、ABCC4特異的定量的RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:41、42)の確定後に、特異的転写産物を、健全な組織およびがん標本で調べた(図12;方法:材料と方法の比較; セクションB.1.)。すべての正常組織におけるわれわれの比較実験で、ABCC4の公開された偏在的な発現を確認する。ABCC4は、すべての被験正常組織で検出された。驚いたことに、われわれは、正常組織の発現量を超える転写産産物の過剰発現を多数の腫瘍で観察した。この点で、ABCC4は、例えば腎臓および前立腺ならびに気管支腫瘍におけるすべての分析対象となった正常細胞と比べ2−15倍もの増加した量で発見される(図12)。
【0221】
報告されている腫瘍指標のこの分子の顕著な発現と高い発生率がこのタンパクを本発明にしたがった非常に興味深い診断および治療用マーカにさせている。これには、本発明にしたがった血清、骨髄および尿における播型腫瘍検出ならびに、RT−PCRを利用した他の器官における転移の検出も含まれる。
【0222】
本発明にしたがったABCC4の細胞外領域は、治療だけでなく免疫診断のためのモノクローナル抗体の標的構造体として使用可能である。細胞外領域の正確な配置はいまだ未知である。SEQ ID NO:12に関しては、ソフトウェアTMHMM2がアミノ酸114−132、230−232、347−350、730−768、879−946および999−1325が細胞外であると予測している。
【0223】
さらにABCC4は、本発明にしたがい、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)の誘発のためワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として使用してもよい。これには、本発明にしたがい、ABCC4の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用することができるいわゆる「小型化合物」の開発も含まれる。
【実施例8】
【0224】
診断および治療用がん標的としてのVIL1の特定
遺伝子VIL1すなわちビリン1(SEQ ID NO:13)およびその翻訳産物(SEQ ID NO:14)は染色体2(2q35-q36)上の19個のエキソンから成る遺伝子によってコードされる。この遺伝子は、修飾せずに、約92 kDaの算出分子量を持つ826個のアミノ酸の長さを備えたタンパクをコードする。ビリンは、胃腸および泌尿器生殖器上皮の細胞における微絨毛の構造上の主要成分である。これは、カルシウム調節されたアクチン結合タンパクに相当する。
【0225】
Pringaultら(EMBO J. 5: 3119-3124, 1986)はビリン1をクローン化し、二つの転写産物(2.7 kb and 3.5 kb)の存在を実証することができた。これらの変異体は代替ポリアデニル化信号を最終エキソンで用いることにより発生する。VIL1特異的転写産物は脳、心臓、肺、腸、腎臓および肝臓などの多数の組織ですでに報告されている。ただし、さらに多くの数の組織に関する総括的定量比較転写産物またはタンパクの実験はいまだ実施されていない。これは治療目的でのVIL1の有用性に関する情報を与えてくれるに違いない。
【0226】
本発明にしたがい、VIL1特異的定量的RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:43、44)の確定後に、健常な組織とがん標本における特異的転写産物の分布を調べた(図13;方法:材料と方法の比較、セクションB.1.)。すべての正常組織に関するわれわれの比較実験から、VIL1特異的発現の特異的分布が明らかとなっている。ほとんどすべての正常細胞でVIL1特異的転写産物は、検出されていない(図13A)。特にわれわれの発見は、脳、心臓、乳房、卵巣、リンパ節、気管支、皮膚、胸腺、膀胱および筋肉におけるすでに報告されている発現に対し反証している。われわれは、胃と腸におけるVIL1転写産物を認め、膵臓、肝臓およびPBMCでは低い発現しか認めていない。
【0227】
ただし、驚いたことにわれわれは、有意でしかし報告されていないVIL1特異的過剰発現を腫瘍内で検出した。例えば、大腸および胃のがんでは、すべての分析対象となった正常組織に比べ5―10倍の過剰発現が観察された(図13Aおよび13B)。有意なVIL1特異的発現は、膵臓、胃および肝臓ならびに気管支の各腫瘍でも検出される。
【0228】
報告があった腫瘍指標に関するこの分子の顕著な発現と高い発生率が、本発明にしたがうこのタンパクを極めて興味深い診断および治療用マーカとしている。これには、本発明にしたがった血清、骨髄および尿における播種性腫瘍細胞の検出さらには、RT-PCRを活用した他の器官における転移の検出が含まれる。
【0229】
本発明にしたがい、これを、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)の誘発にワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として使用できる。本発明にしたがい、これには、VIL1の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用することができるいわゆる「小型化合物」の開発が含まれる。
【実施例9】
【0230】
診断および治療用がん標的としてのMGC34032の特定
遺伝子MGC34032(SEQ ID NO:15)の翻訳産物(SEQ ID NO:16)は、現在未知である機能を有する仮説タンパクである。この遺伝子は、28個のエキソンから成り、染色体1(1p31.1)に配置されている。この遺伝子は、約79 kDaの算出分子量を持つ719個のアミノ酸の長さを備えたタンパクをコードする。予測プログラムは一貫して、8個の膜貫通領域を予測している。相同性は知られておらず、MGC34032に関する出版物は存在していない。
【0231】
本発明にしたがい、MGC34032特異的定量的RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:45、46)の確定後に、特異的転写産物の分布を健全な組織およびがん標本で調べた(図14;方法:材料と方法の比較; セクションB.1.)。われわれはすべての被験正常組織でMGC34032転写産物を認めた。ただし、腫瘍に認められる転写産物と正常組織における転写産物の数量の比較結果は、驚いたことに各種腫瘍型がまだ報告されていないが有意なこの遺伝子産物を5〜10倍過剰に発現していることを示していた。これらは特に、気管支、大腸、卵巣、肺および腎臓の各細胞のがんならびに耳−鼻−咽喉がんである(図14A−D)。
【0232】
MGC34032特異的抗体を産生するためにSEQ ID NO:98 および99に列挙されているペプチドを用いた。これらの抗体は、細胞表面でMGC34032を染色できた(図15A)。
【0233】
報告されている腫瘍指標に関するこの分子の顕著な発現と高い発生率が、本発明にしたがったこのタンパクを非常に興味深い診断および治療用マーカとしている。これはまた、血清、骨髄および尿における播種性腫瘍細胞の検出ならびにRT-PCR を活用した他の器官における転移の検出も含まれる。
【0234】
MGC34032の細胞外領域は治療ならびに免疫診断のためのモノクローナル抗体の標的構造体として本発明にしたがって使用することができる。SEQ ID NO:16に関しては、アミノ酸62−240、288−323、395−461および633−646が細胞外に局在化している(TMHMM2ソフトウェアを活用した予測)。
【0235】
さらに、MGC34032は、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)の誘発のためワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として本発明にしたがい使用することができる。これには、本発明にしたがってMGC34032の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用することができるいわゆる「小型化合物」の開発も含まれる。
【実施例10】
【0236】
診断および治療用がん標的としてのセリンプロテアーゼPRSS7(エンテロキナーゼ)の特定
遺伝子PRSS7(SEQ ID NO:17)およびその翻訳産物(SEQ ID NO:18)は、セリンプロテアーゼファミリーに属している。この遺伝子は25個のエキソンからなり、染色体21(21q21)上に配置されている。この遺伝子は、翻訳後にさらに処理される1019個のアミノ酸の長さを持つタンパクをコードする。活性酵素は、タンパク質分解開裂を通じて一般的前駆体分子から誘導される、ジスルフィド架橋によって接続されている2個のペプチド鎖で構成されている。H鎖は784個のアミノ酸で構成されている。235個のアミノ酸で構成されているL鎖は、既知のセリンプロテアーゼと明らかな相同性を示す。予測プログラムは、PRSS7のひとつの膜貫通領域を予測している。PRSS7は、特に、頂端細胞および小腸の腸細胞に形成され、膵臓のタンパク質分解酵素(トリプシン、キモトリプシンおよびカルボキシペプチダーゼなど)の初期活性に資する(Imamura and Kitamoto, Am J Phsyiol Gastrointest Liver Physiol 285: G1235-G1241, 2003)。現在までこのタンパクはヒト腫瘍と会合していない。
【0237】
本発明にしたがい、PRSS7特異的定量的RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:47、48)の確定後に、健全組織とがん標本で特異的転写産物の分布を調べた(図16;方法:材料と方法の比較、セクションB.1.)。ほとんどの分析した組織で、われわれは、PRSS7特異的発現をまったく検出しなかったかまたはごくわずかしか検出できなかった(図16A)。関連する発現が十二指腸でのみ認められた(図16B)。
【0238】
PRSS7は、各種の腫瘍によって発現する。調査の対象とした胃がんの一部で、正常胃組織に比べ顕著な過剰発現が検出された(図16B)。さらに、気管支、肝臓ならびに膵臓のがんが、PRSS7を発現しており、一部遺伝子は対応する正常組織に比べ一部の腫瘍標本において明らかに過剰発現していた(図16Bおよび16C)。
【0239】
報告された腫瘍指標に関するこの分子の顕著な発現と高い発生率が本発明にしたがったこのタンパク質を非常に興味深い診断および治療用マーカとしている。これにはまた、本発明にしたがって血清、骨髄および尿における播種型腫瘍細胞の検出ならびにRT―PCRを活用した他の器官における検出も含まれる。
【0240】
われわれはPRSS7だけでなくPRSS7特異的抗体のあるヒト組織の切片によってトランスフェクトした細胞を染色したところ、膜上に予測されたタンパクトポロジーを確認することができた(図17Aと17B)。
【0241】
PRSS7の細胞外部分は、本発明にしたがい、治療および免疫診断のためのモノクローナル抗体の標的構造体として使用することができる。SEQ ID NO:18に関しては、アミノ酸残基50から始まるアミノ酸が細胞外に局在化している。さらに、本発明にしたがい、PRSS7は、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)の誘発のためのワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として使用できる。これには、本発明にしたがい、PRSS7の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用することができるいわゆる「小型化合物」の開発も含まれる。
【実施例11】
【0242】
診断および治療用がん標的としてのCLCA2の特定
遺伝子CLCA2すなわち「カルシウム活性化クロライドチャネル2」(SEQ ID NO:19)は、クロライドイオントランスポータのファミリーに属する。この遺伝子は14個のエキソンからなり、染色体1(1p31-p22)に配置されている。この遺伝子は、約120 kDaの算出分子量を有する943個のアミノ酸の長さを持つタンパクをコードする。実験により、5つの膜貫通領域の他、大型のN末端局在化細胞外領域も検出された。CLCA2は、イオントランスポーターである(Gruber, 1999. Am J Physiol 276, C1261-C1270)。
【0243】
CLCA2転写産物は、肺、気管および乳腺(Gruber, 1999. Am J Physiol 276, C1261-C1270)ならびに精巣、前立腺および子宮の組織(Agnel, 1999. FEBS Letters 435, 295-301)ですでに報告されている。組織の全集団における比較実験結果はまだ利用可能ではない。
【0244】
本発明にしたがい、CLCA2特異的定量的RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:49、50)の確定後に、人体のほとんどすべての健常な組織と腫瘍標本で特異的転写産物の分布について調べた(図18;方法:材料と方法の比較、セクションB.1.)。われわれは、正常組織でCLCA2の示差発現を突き止めた。ほとんどの分析対象となった組織で、転写は検出できない。気管支、皮膚、膵臓でさらには胸腺、膀胱、大腸および前立腺で有意にわずかに発現を検出できたにすぎなかった。驚いたことに、われわれは、CLCA2のまだ報告されていない有意な発現を一部の種類で腫瘍で突き止めた。特に、鼻−咽喉領域の腫瘍ならびに乳房、食道、卵巣および膵臓がんさらには、気管支がんでも、対応する正常組織に比べ、10〜1000倍のCLCA2特異的発現の増大が認められた(図18)。
【0245】
報告された腫瘍指標に関するこの分子の顕著な発現と高い発生率が、本発明にしたがったこのタンパク質を、非常に興味深い診断および治療用マーカとしている。これには、本発明にしたがい、血清、骨髄および尿における播種型腫瘍細胞の検出ならびに、RT―PCR を活用した他の器官における転移の検出が含まれる。
【0246】
2個の細胞外領域(SEQ ID NO:20に関して;アミノ酸1-235、448-552および925-943)は、本発明にしたがって治療だけでなく免疫診断にもモノクローナル抗体の標的構造体として使用できる。
【0247】
CLCA2特異的ペプチド(SEQ ID NO:100、SEQ ID NO:101)を使用した免疫化によって、細胞表面上にCLCA2を染色する抗体が産生できた。CLCA2をトランスフェクトされた細胞は、細胞膜上にこのタンパクを発現する(図19A)。腫瘍の選択性が特異的抗体を用いた免疫蛍光法で確認された(図19B)。
【0248】
さらに、CLCA2を、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)の誘発のためのワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として本発明にしたがい使用することができる。これには、本発明にしたがい、CLCA2の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用することができるいわゆる「小型化合物」の開発も含まれる。
【実施例12】
【0249】
診断および治療用がん標的としてのTM4SF4(膜透過4スーパーファミリーメンバ4)の特定
遺伝子TM4SF4(SEQ ID NO:21)とその翻訳産物(SEQ ID NO:22)はテトラスパニンファミリーに属している(Hemler,2001.J Cell Biol 155,1103-07)。この遺伝子は5個のエキソンから成り、染色体3(3q25)に配置されている。
【0250】
この遺伝子は、202個のアミノ酸の長さを持ち、算出分子量が約21.5 kDaであるタンパクをコードする。予測プログラムは、一貫してTM4SF4の4個の膜貫通領域を予測している。このタンパクは、第二の細胞外領域の領域内でN−グリコシル化されており細胞膜内に配置されている。N−グリコシル化の度合いは、細胞増殖の調節に影響を与え、これはグリコシル化の増加に伴って阻害されるということが報告されている(Wice & Gordon, 1995. J Biol Chem 270, 21907-18)。テトラスパニンは、インテグリンから成る群のさまざまなメンバーとの複合体を形成する。これらの高分子多複合体は、細胞内で種々の重要な官能基と考えられている。例えばこれらは、細胞-細胞間接着の役割を果たし、細胞内接触、シグナル変換および細胞運動で役割を果たしている(Bereditschevski, 2001. J Cell Sci 114, 4143-51)。
【0251】
TM4SF4転写産物については、肝臓の門脈周囲部と腸の特異的セクションで報告があるが、他の組織での分析は行われておらず、特に腫瘍については行われていない(Wice & Gordon, 1995. J Biol Chem 270, 21907-18)。本発明にしたがい、TM4SF4特異的定量的RT−PCR (プライマーペアSEQ ID NO:51、52)の確定後に、健常組織とがん標本における特異的転写産物の分布について調べた(図20;方法:材料と方法の比較; セクションB.1.)。われわれの調査で、正常組織における発現の示差分布が証明された。TM4SF4特異的転写産物は主として正常肝組織の標本で認められた。いくつかのその他の正常組織では(中でも膵臓)、われわれは(少なくとも10倍)明らかに低い発現を認めた。発現は、脳、心筋、筋骨格系、皮膚、乳房組織、卵巣、PBMC、脾臓、リンパ節および子宮頚官では検出できなかった。公開されている予測とは異なり、このTM4SF4は腫瘍組織で下方制御されており(Wice & Gordon, 1995. J Biol Chem 270, 21907-18)、少なくとも比較対象になりうるTM4SF4特異的発現が各種腫瘍で示された。一部TM4SF4は、腫瘍で過剰発現していた(図20A)。詳細な発現分析で、われわれは、公開されているデータとは逆に、TM4SF4が肝腫瘍では抑制されないということを実証することもできた(図20B)。さらに、この遺伝子は、正常大腸組織に比べ、4/12大腸腫瘍標本で過剰発現していた(図20C)。
【0252】
TM4SF4特異的抗体を産生させるために、SEQ ID NO:65および66にリストアップされているペプチドを使用した。これらの抗体は、推定グリコシル化パターンに相当する各種サイズのTM4SF4タンパクを認識することができた(図21A)。さらに、TM4SF4表面局在性を免疫蛍光法を使用することで確認でき(図21B)、さらにPCRで観察された腫瘍選択性もヒト組織の免疫組織染色によって確認できた(図21C)。
【0253】
要するに、TM4SF4は、発現が、いくつかの選択された正常組織の細胞亜集団に制限されているような膜タンパクとして特長づけることができる。TM4SF4は、特に、肝臓における門脈周囲肝細胞内に検出可能であり、胃腸管の表皮の頂端膜においても特に検出可能である。頂端タンパクの局在性の場合、このタンパクは正常細胞内では抗体に近接できない。というのは、腸の上皮内では、これは内腔に面しているために、血管系に接続されていないためである。しかしながら、腸の腫瘍では、健全な組織では利用できないこれらの分子はそれ以上、無制御の増殖や腫瘍の血管新生によってそれ以上区画されず、したがって治療抗体として利用することができる。
【0254】
したがってTM4SF4の二つの細胞外領域を本発明にしたがいモノクローナル抗体の標的構造体として使用することができる。SEQ ID NO:22に関しては、アミノ酸23−45および110−156が細胞外に配置されている(ソフトウェアTMHMM2を用いて、予測を行った)。SEQ ID NO:65および66を有するペプチドに関しては、ポリクローナル抗体の生成が、すでに成功を収めている (Wice & Gordon, 1995. J Biol Chem 270:21907-18)。腫瘍特異的抗体を開発するための治療方法には、それぞれが翻訳後N−グリコシル化のための保存誘因「NSX/T」を含むペプチドSEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:68が好適であるが、ここで"X"は、プロリン以外の任意のアミノ酸に相当する。
【実施例13】
【0255】
診断および治療用がん標的としてのCLDN19の特定
翻訳産物(SEQ ID NO:24)を有する遺伝子CLDN19すなわちクローディン19(SEQ ID NO:23)は、クローディンファミリーに属する。
【0256】
この遺伝子は、約21.5kDaの算出分子量を有する、224個のアミノ酸長をもつタンパクをコードする。クローディン19に関して、予測プログラムが一貫して、クローディンファミリーに特長的な4つの膜貫通領域を予測している。今までのところ、クローディン19については機能的にそれ以上詳しくは特長づけされていない。クローディンファミリーの他のメンバーに関する機能は報告されている。したがって、クローディンは、細胞−細胞間接着および細胞内接触で重要な役割を果たしている。これらは、大きな分子複合体の一部を構成しているため、細胞―細胞間接触のための膜孔(「密着結合」)を形成している。
【0257】
本発明に従い、CLDN19特異的定量RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:53,54)の確定後に、健常組織とがん標本で特異的転写産物の分布を調べた(図22、方法:材料と方法の比較; セクションB.1)。その結果、驚いたことに、正常組織に発現の示差分布が存在することが判明した。(特に、脳、心筋、筋骨格、肝臓、膵臓、PBMC、肺、乳房組織、卵巣、脾臓、大腸、胃、リンパ節、食道、皮膚および前立腺における)正常組織の大部分で、CLDN19が検出不能である。CLDN19転写産物を検出できたのは、膀胱、胸腺および精巣における正常組織のみであった。腫瘍組織の比較試験の結果、驚いたことに、CLDN19が各種腫瘍によって発現することが実証された。これらは、特に、腎臓、胃、肝臓および乳房のがんであるが、対応する正常組織に比べ、最大で10倍もの過剰発現を呈している。CLDN19は、ヒト腫瘍に関してはいまだ報告がない(図22A−22E)。
【0258】
報告されている腫瘍指標に関するこの分子の顕著な発現と高い発生率が、本発明によるこのタンパクを非常に興味深い診断および治療用マーカとしている。本発明によれば、これには、血清、骨マークおよび尿中における播種型腫瘍細胞の検出、さらにはRT−PCRを活用した他の器官における転移の検出も含まれる。
【0259】
CLDN19の2つの細胞外領域(SEQ ID NO:24に関して、アミノ酸28-76および142-160)を、治療および免疫診断のためのモノクローナル抗体の標的構造体として本発明に従って使用できる。
【0260】
さらに、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)を誘発させるためのワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として本発明に従いCLDN19を使用できる。本発明によれば、これには、CLDN19の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用できるいわゆる「小型化合物」開発を含む。
【実施例14】
【0261】
診断および治療用のがん標的としてのALPPL2の特定
遺伝子ALPPL2すなわち「幹細胞特異的アルカリホスファターゼ」またはGCAP(SEQ ID NO:25)は、アルカリホスファターゼ(AP)のファミリーに属しているタンパク(SEQ ID NO: 26)をコードしている。これは、全体として4個の非常に相同性の高いメンバー(相同性:90-98%)で構成されている。この遺伝子は、2486bp長を有する転写産物をコードしており、11個のエキソンで構成されている。ALPPL2は、それと関係の深いファミリーメンバーであるALPPとALPIの近傍で染色体2(2q37.1)に配置されている。
【0262】
生成されたタンパクは、532個のアミノ酸長と約57.3kDaの算出分子量を有する。ALPPL2がグリコシル化され、GPIアンカーを介してホモダイマーとして原形質膜内に配置されている。この酵素の正確な生理学的機能は、未知である。骨肉種やパジェット病では、アルカリホスファターゼの酵素活性が腫瘍マーカとして使用されている(Millan, 1995. Crit Rev Clin Lab Sci 32, 1-39)。ただし、この判定法は、非特異的であり、実際の基礎分子からとは無関係である。上記3種のホスファターゼ、または現在はおそらく未知であるような他の同等なホスファターゼのどれがこのような活性を生み出しているのかは、明らかではない。
【0263】
ALPPL2は、配偶子腫瘍を診断するための診断マーカとしてのみ、「in situ」で使用されてきた(Roelofs et al., 1999. J Pathol 189, 236-244)。
【0264】
初期の頃の限定された種類の組織一式に関する文献によれば、ALPPL2は、精巣および胸腺の腫瘍、さらには一部の幹細胞腫瘍で発現する(LeDu, 2002. J Biol Chem 277, 49808-49814)。本発明に従い、ALPPL2特異的定量RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:55、56)を確定した後に、健常組織とがん標本におけるこの遺伝子産物の分布を調べ、それに従って、特に、体組織すべても表す組織の総合的多様性を調べた(図23、方法:材料と方法を比較; B.1)。 われわれは、(特に、脳、心筋、筋骨格、肝臓、膵臓、PBMC、乳房組織、卵巣、脾臓、大腸、胃、リンパ節、食道、皮膚および前立腺における)正常組織の大部分で、タンパク質を検出しなかった。われわれは、精巣および肺の正常組織での発現と、胸腺および大腸における極めて低レベルの発現を実証した。ただし、腫瘍の比較研究結果により、驚いたことに、ALPPL2は、各種の腫瘍型によって、特に大腸、胃、膵臓、卵巣および肺におけるがんだけでなく、鼻−咽喉領域のがんで、有意な量発現することが明らかとなった(図23Aおよび23B)。
【0265】
報告されている腫瘍指標に関するこの分子の顕著な発現と高い発生率が、本発明によるこの分子を、非常に興味深い診断および治療用マーカとしている。これには、本発明に従った、血清、骨髄および尿中における播種型腫瘍細胞の検出と、RT−PCRを活用した他の器官における転移の検出が含まれる。
【0266】
ALPPL2タンパク(SEQ ID NO: 26)は全体が、細胞外に配置されているため、本発明によれば、治療だけでなく免疫診断のためのモノクローナル抗体を開発するための標的構造体として使用することができる。
【0267】
さらに、本発明によるALPPL2は、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)を誘発させるためのワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として使用できる。これには、本発明に従って、ALPPL2の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用できるいわゆる「小型化合物」の開発も含まれる。
【実施例15】
【0268】
診断および治療用がん標的としてのGPR64の特定
遺伝子GPR64すなわち「Gタンパク共役受容体64」(SEQ ID NO:27)とその翻訳産物(SEQ ID NO:28)は、7個の膜貫通受容体からなる大きな群に属している。この遺伝子は、3045bp長を有する転写産物をコードし、27個のエキソンで構成されている。GPR64は、染色体(Xp22)上に配置されている。この遺伝子は、算出分子量が約108kDaで、987個のアミノ酸長を有するタンパクをコードする。N末端領域は、強くグリコシル化される細胞外領域に相当する。このタンパクの正確な生理的機能は、未知である。
【0269】
GPR64については、いままでごく少数の正常組織でしか調査されていないが、そのうちの副睾丸の組織でのみ、この遺伝子が発現しているのが明らかとなった(Osterhoff, 1997. DNA Cell Biol 16, 379-389)。本発明に従って、われわれは、GPR64特異的RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:57、58)を確定し、健常組織の全集団におけるこの遺伝子産物の分布を調べた(図24;方法:材料と方法を比較; セクションB.1.)。多くの正常組織で、GPR64がまったく検出できず、一部が低レベルの発現を呈している。驚いたことに、腫瘍におけるこのタンパクの実験結果から、関連する正常組織に比べ、数倍も高い過剰発現が明らかになった。例えば、卵巣がんのほぼ半数で有意な過剰発現が認められた(図24A〜24C)。
【0270】
報告されている腫瘍指標におけるこの分子の顕著な発現と高い発生率が、本発明によるこのタンパクを、興味深い診断および治療マーカとしている。これには、血清、骨髄および尿中の播種型腫瘍細胞の検出だけでなく、RT−PCRを活用した他の器官における転移の検出も含まれる。
【0271】
本発明に従い、GPR64の4個の細胞外領域を、治療だけでなく免疫診断用のモノクローナル抗体の標的構造体として使用できる。SEQ ID NO:28に関しては、アミノ酸1−625、684−695、754−784および854−856が細胞外に配置されている。
【0272】
さらに、GPR64は、本発明に従って、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)を誘発させるためのワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として使用できる。これには、本発明に従い、GPR64の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用できるいわゆる「小型化合物」の開発が含まれる。
【実施例16】
【0273】
診断および治療用がん標的としてのナトリウム/カリウム/塩化物トランスポータSLC12A1(溶質担体ファミリー12)の特定
遺伝子SLC12A1(SEQ ID NO:29)は、翻訳産物(SEQ ID NO:30)をコードし、ナトリウム−カリウム−塩化物−共−トランスポータファミリーに属している。この遺伝子は、26個のエキソンで構成されており、染色体15(15q15-q21.1)上に配置されている。これは、二次修飾を伴わずに算出分子量が約120kDaである、1099個のアミノ酸長を有するタンパクをコードする。SLC12A1は、10個の膜貫通領域を有する必須の膜タンパクである。SLC12A1は、ヘンレ・シュライフェ(Henle-Schleife)における塩化ナトリウムの再吸収に介在し多くの臨床的に関連する利尿剤のターゲットポイントとなっている(Quaggin et al., Mammalian Genome 6: 557-561, 1995)。したがって、この分子は、基本的には、薬剤のための標的構造体として利用できる、つまりこれは、「製剤可能」である。
【0274】
本発明に従って、SLC12A1−特異的定量RT−PCR(プライマーペアSEQ ID NO:59,60)を確定した後に、健常組織とがん標本における特異的転写産物の分布を調べた(図25)。われわれは、正常組織におけるSLC12A1の発現が、文献にも報告されているように、第一に正常な腎組織に限定されていることを確認した。他の正常組織のすべてで、SLC12A1特異的転写産物は、ごくわずかな量でしかまたはまったく検出されない(図25A)。驚いたことに、腫瘍の比較分析の結果、SLC12A1発現しているのが認められた。特に腎臓、乳房、卵巣、前立腺のがんでは(図25A〜25C)、対応する正常組織に比べ、意外にも最高1,000,000倍もの過剰発現が認められた(図25B〜25D)。今まで、SLC12A1が腫瘍疾患に関して報告されたことはなかった。
【0275】
報告されている腫瘍指標の顕著な発現と高い発生率が、本発明に従ったこのタンパクを、非常に興味深い診断および治療用マーカとしている。これには、本発明に従い、結成、骨髄および尿中における播種型腫瘍細胞の検出だけでなく、RT−PCRを活用した他の器官における転移の検出も含まれる。SLC12A1の細胞外領域は、治療および免疫診断のためのモノクローナル抗体の標的構造体として本発明に従って使用することができる。SEQ ID NO:30に関しては、アミノ酸1−181、234−257、319−327、402−415、562−564および 630−1099が、細胞外に配置されている。
【0276】
さらに、SLC12A1は、本発明に従って、腫瘍特異的免疫反応(T細胞およびB細胞介在免疫反応)を誘発させるためのワクチン(RNA、DNA、タンパク、ペプチド)として使用できる。これには、本発明に従い、SLC12A1の生体活性を調節し、腫瘍の治療に使用できるいわゆる「小型化合物」の開発も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0277】
【図1A】(図1)遺伝子FLJ31461のPCR分析結果を表す図である。(図1A)正常組織(左)と各種腫瘍(それぞれ3個〜4個の個体標本からなるプール:右)における、相対的発現量の対数表現(x倍の活性化)により、FLJ31461の定量的発現量の分析結果を表している。ほとんどの腫瘍で、健常組織における発現量と比較した結果、FLJ31461が少なくとも100倍過剰に発現していることが観察される。
【図1B】該当する正常組織(Nx)と、乳房、肺ならびに耳、鼻および咽喉の腫瘍における、FLJ3146の従来方式でのRT−PCR分析のゲル画像(M:DNA長マーカー)。
【図1C】各種正常組織(左)および乳房腫瘍の定量的発現量の分析結果を、相対的発現量の対数表現(x倍の活性化)で表している。ほとんどすべての乳房腫瘍で、健常組織における発現量と比較した結果、FLJ31461が少なくとも100倍過剰に発現していることが観察される。
【図1D】各種分析した腫瘍におけるFLJ31461特異的発現をまとめたものである。分析した腫瘍標本の総数を基準とした、陽性反応を示した腫瘍標本の数を示している。調査の対象となったすべての正常な体細胞組織(組織の型により、各3〜10の組織)が、FLJ31461の発現をまったく示していないいっぽうで、遺伝子は、多くの腫瘍にさまざまな頻度で発現している。
【図2】タンパクの局在性を表す図である。FLJ31461タンパクの細胞局在化を表現している。この図には、乳房腫瘍細胞株MCF7の内生的タンパクの発現が示されている。
【図3A】(図3)免疫組織化学的分析結果を表す図である。(図3A)精巣(陽性膜局在化)、大腸および腎臓(陰性膜局在化)の正常組織を現している。
【図3B】気管支がん、子宮頸がん、さらには概要(左の段)と詳細(右の段)における乳房腫瘍のリンパ節転移部のおけるFLJ31461タンパクの検出を表している。
【図3C】FLJ31461タンパクの免疫組織化学的分析結果をまとめたものである。分析した腫瘍標本の総数を基準とした、陽性反応を示した腫瘍標本の数を示している。調査の対象となったすべての正常な体細胞組織が、FLJ31461の発現をまったく示していないいっぽうで、タンパクは、腫瘍の多くでさまざまな頻度で細胞表面で検出されている。
【図4A】(図4)正常組織および腫瘍におけるDSG4スプライス変異体のPCR分析結果を表している。(図4A)エキソン8―12およびエキソン10―12におけるDSG4特異的オリゴヌクレオチドを用いて正常組織および各種腫瘍で実施したPCRを表している。エキソン10―12の転写の優勢な発現が、大腸腫瘍で認識されるいっぽうで、エキソン8―12の転写は、正常組織で明らかに発現している。Geは脳、Ddは十二指腸、Paは膵臓、Miは脾臓、Teは精巣、Heは心臓、Koは大腸、LNはリンパ節、TMは胸腺、Prは前立腺sは食道、Leは肝臓、PBは活性末梢血単核球(PBMC)、Luは肺、Blは膀胱、Maは胃、Brは乳房、Utは子宮、Ovは卵巣、Niは腎臓、Haは皮膚、Muは筋肉をそれぞれ表している。
【図4B】各種分析した腫瘍におけるDSG4エキソン10―12の特異的発現をまとめた図である。総数を基準とした、陽性反応を示した腫瘍標本の数を示している。調査の対象となったほとんどすべての正常な体細胞組織が、DSG4の発現をまったく示していないいっぽうで、この遺伝子セクションは、腫瘍の多くでさまざまな頻度で検出可能である。
【図4C】正常組織(左)と大腸、胃および耳−鼻−咽喉領域の腫瘍におけるDSG4エキソン10―12の転写セクションの定量的発現量分析の結果を、相対的発現量の対数表現(x倍の活性化)で表している。ほとんどの腫瘍が、健常な組織における発現量と比較した結果、少なくとも50倍のDSG4エキソン10―12の過剰な発現を示していた。
【図5】DSG4遺伝子の推定転写変異体の外観を表している図である。
【図6A】(図6)タンパク局在性を表している図である。(図6A)DSG4トランスフェクト細胞上における、免疫蛍光検査方を用いたDSG4タンパクの細胞局在化を表現したものである。
【図6B】DSG4トランスフェクト細胞のDSG4特異的抗体(左図)によるFACS分析、および模擬トランスフェクト細胞のDSG4特異的抗体(陰性のコントロール、右図)によるFACS分析の結果を表している。特異的表面特異的染色が明らかに可視である。
【図7A】(図7)正常組織および腫瘍におけるDSG3特異的発現のqPCR分析の結果を表している。(図7A)正常組織(左側)および各種腫瘍(各3個〜4個の個体標本からなるプール:右)における、DSG3の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の対数表現(x倍の活性化)で表している。ほとんどの正常組織と比較した、食道腫瘍における顕著な過剰発現が認識できる。
【図7B】個々の正常組織(n=3(子宮頚管);n=9(肺))における発現量と比較した、子宮頚管と肺の各種腫瘍、さらには耳、鼻および咽喉の腫瘍におけるDSG3の定量的発現量分析の結果を、対数表現で表している。
【図7C】各種分析した腫瘍におけるDSG3特異的発現をまとめた図である。分析した腫瘍標本の総数を基準とした、陽性反応を示した腫瘍標本の数を示している。調査の対象となった正常な体細胞組織(組織の型により、各3〜10の組織)はすべて、DSG3の発現をまったく示していないいっぽうで、この遺伝子は、多くの腫瘍でさまざまな頻度で発現している。
【図8】免疫組織化学的分析の結果を表している。この図は、耳、鼻または咽喉の腫瘍における同種DSG3局在化の概観(左)と詳細を表している。
【図9A】(図9)SLC6A3のqPCR分析の結果を表している。(図9A)正常組織(左)および腫瘍標本(各3個〜4個の個体標本からなるプール:右)における、SLC6A3の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の対数表現(x倍の活性化)で表している。
【図9B】正常な腎臓(n=5)における発現量と比較した、各種腎腫瘍におけるSLC6A3の定量的発現量分析の結果を、相対的発現量の対数表現で表している。
【図9C】腎腫瘍組織および各種正常腎組織におけるSLC6A3特異的転写産物に関する従来方式の評価項目endpoint−RT−PCR分析(二重判定)の結果を表している。画像は、SLC6A3特異的フラグメントをゲル電気泳動分解した後のものである。
【図9D】乳房、卵巣、肺および前立腺のがんにおけるSLC6A3の定量的発現量分析の結果を、相対的発現量の対数表現(x倍の活性化)で表している。「組織」Nは、正常組織、「組織」は、腫瘍組織である。
【図9E】二重判定におけるゲル電気泳動で分離した後に、乳房、卵巣、肺および前立腺の腫瘍におけるSLC6A3を従来方式でRT―PCR分析した結果を表している。Mは、DNA長マーカである。
【図10A】(図10)GRM8のqPCR分析結果を表している。(図10A)正常組織(左)および腫瘍組織(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、GRM8の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の線形表現(x倍の活性化)で表している。
【図10B】正常な腎臓および子宮における発現量ならびに耳、鼻および咽喉の各腫瘍、子宮頚管腫瘍およびメラノーマにおける相対的発現量と比較した、腎臓および子宮における各種腫瘍のGRM8の定量的発現量分析の結果を、相対的発現量の対数表現で表している。
【図11A】(図11)CDH17のqPCR分析結果を表している。 (図11A)正常組織(左)および腫瘍組織(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、CDH17の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の線形表現(x倍の活性化)で表している。
【図11B】個々の正常組織における発現量と比較した、大腸および胃の各種腫瘍におけるCDH17の定量的発現量分析の結果を、対数表現で表している。
【図11C】個々の正常組織における発現量と比較した、食道および膵臓の各種腫瘍におけるCDH17の定量的発現量分析の結果を、対数表現で表している。
【図12】ABC−トランスポータABCC4のqPCR分析結果を表している。この図は、正常組織(左)および腫瘍(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、ABCC4の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の線形表現(x倍の活性化)で表している。
【図13A】(図13)Villin1(VIL1)のqPCR分析結果を表している。(図13A)正常組織(左)および腫瘍組織(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、VIL1の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の線形表現(x倍の活性化)で表している。
【図13B】個々の正常組織における発現量と比較した、大腸および胃の各種腫瘍におけるVIL1の定量的発現量分析の結果を、対数表現で表している。
【図14A】(図14)仮想タンパクMGC34032のqPCR分析結果を表している。(図14A)正常組織(左)および各種腫瘍(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、MGC34032の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の線形表現(x倍の活性化)で表している。
【図14B】個々の正常組織における発現量と比較した、食道、前立腺および大腸の各種腫瘍におけるMGC34032の定量的発現量分析の結果を、対数表現で表している。
【図14C】個々の正常組織における発現量と比較した、肺、卵巣および腎臓の各種腫瘍におけるMGC34032の定量的発現量分析の結果を、対数表現で表している。
【図14D】各種分析した腫瘍におけるMGC34032特異的発現をまとめた図である。分析した腫瘍標本の総数を基準とした、陽性反応を示した腫瘍標本の数を示している。調査の対象となった正常な体細胞組織(組織の型により、各3〜10の組織)はすべて、有意に低いMGC34032の発現量を示しているいっぽうで、この遺伝子は、多くの腫瘍でさまざまな頻度で過剰発現している。
【図15】免疫組織化学的分析結果を表している。これらの図は、ヒト精巣組織におけるMGC34032タンパクの細胞局在性を表した、2種類の詳細図である。
【図16A】(図16)エンテロキナーゼ(PRSS7)の発現分析結果を表している。(図16A)正常組織(左)および各種腫瘍組織(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、PRSS7の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の線形表現(x倍の活性化)で表している。
【図16B】個々の正常組織(胃:n=7、食道:n=3)における発現量と比較した、胃および食道の各種腫瘍におけるPRSS7の定量的発現量分析の結果を表している。比較のため、正常十二指腸(n=2)における発現量を、対数表現で測定した。
【図16C】個々の正常組織(それぞれn=4)における発現量と比較した、各種膵臓および肝腫瘍におけるPRSS7の定量的発現量分析の結果を表している。比較のため、正常十二指腸(n=2)における発現量を、対数表現で測定した。
【図17A】(図17)タンパクの局在性を表している。(図17A)PRSS7トランスフェクト細胞におけるPRSS7タンパクの細胞局在性を表現している。
【図17B】PRSS7タンパク検出の概略図(左)と詳細図(右)である。
【図18A】(図18)CLCA2のqPCR分析結果を表している。(図18A)正常組織(左)および各種腫瘍(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、CLCA2の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の対数表現(x倍の活性化)で表している。
【図18B】個々の正常組織における発現量と比較した、肺、乳房、子宮頚管および子宮における各種腫瘍ならびに、耳、鼻および咽喉における腫瘍に関するCLCA2の定量的発現量分析の結果を、対数表現で表している。
【図18C】各種分析した腫瘍におけるCLCA2特異的発現をまとめた図である。分析した腫瘍標本の総数を基準とした、陽性反応を示した腫瘍標本の数を示している。調査の対象となった正常な体細胞組織はすべて、有意に低いCLCA2の発現量を示しているいっぽうで、この遺伝子は、多くの腫瘍でさまざまな頻度で過剰発現している。
【図19A】(図19)タンパク局在性を表している。(図19A)CLCA2トランスフェクト細胞の膜におけるCLCA2タンパクの局在性を表現している。
【図19B】CLCA2タンパクにおける免疫組織化学的分析の結果を表している。
【図20A】(図20)TM4SF4のqPCR分析結果を表している。(図20A)正常組織(左)および各種腫瘍(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、TM4SF4の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の線形表現(x倍の活性化)で表している。
【図20B】肝臓の4種類の正常組織(N0〜N3)と比較した、各種肝腫瘍におけるTM4SF4の定量的発現量分析結果を、線形表現で表している。
【図20C】正常大腸標本(NG:正常組織、6種類の正常組織を検査対象とした)と比較した、12種類の大腸腫瘍におけるTM4SF4の相対的発現量を対数表現で表している。
【図21A】(図21)タンパクの分析結果を表している。(図21A)正常肝組織と肝腫瘍組織におけるTM4SF4特異的抗体を用いた免疫ブロットの像を示している。2つの推定糖鎖付加パラメータを認識できる。
【図21B】TM4SF4トランスフェクト細胞の膜におけるTM4SF4タンパクの局在性の図を示している。
【図21C】免疫組織化学的分析の結果、PCRによって選択的に観察された発現を確認できた。
【図22A】(図22)クローディン19の定量的発現分析の結果を表している。 (図22A)正常組織(左)および各種腫瘍(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、クローディン19の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の対数表現(x倍の活性化)で表している。
【図22B】各種乳房腫瘍と個々の正常乳房組織におけるクローディン19の定量的発現量分析の結果を表している。
【図22C】各種乳房腫瘍標本および正常組織における、クローディン19の分析と、従来方式のRT−PCR。Mは、DNA長マーカである。
【図22D】胃の各種正常組織と胃腫瘍における、クローディン19の従来方式でのRT−PCR分析の結果を表している。
【図22E】肝臓の各種正常組織と肝腫瘍における、クローディン19の従来方式でのRT−PCR分析の結果を表している。Mは、DNA長マーカである。
【図23A】(図23)ALPPL2のqRT−PCR分析である。(図23A)正常組織(左)および腫瘍(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、ALPPL2の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の線形定量(x倍の活性化)で表している。
【図23B】ゲル電気泳動分離後の、大腸と胃における各種腫瘍、さらには個々の正常組織における、ALPPL2の従来方式のRT−PCR分析のゲル画像を表している。Mは、DNA長マーカである。
【図24A】(図24)G−タンパク共役受容体64(GPR64)の定量的RT−PCR分析の結果を表している。(図24A)正常組織(左)および腫瘍(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、GPR64の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の線形表現(x倍の活性化)で表している。
【図24B】卵巣の各種腫瘍および個々の正常卵巣組織におけるGPR64の定量的発現量分析の結果を表している。
【図24C】卵巣の各種腫瘍および正常組織におけるGPR64のRT−PCR分析結果のゲル画像を表している(M:DNA長マーカ)。
【図25A】(図25)SLC12A1の定量的RT−PCR分析結果を表している。(図25A)正常組織(左)および腫瘍(各3個〜4個の個体標本からなるプール、右)における、SLC12A1の定量的発現量分析結果を、相対的発現量の線形表現(x倍の活性化)で表している。
【図25B】正常な腎臓(n=3)における発現量と比較した、12種類の腎腫瘍におけるSLC12A1の定量的発現量分析結果を表している。
【図25C】個々の正常組織(乳房は、n=9、卵巣は、n=8、前立腺は、n=3)における発現量と比較した、乳房、卵巣および前立腺の腫瘍におけるSLC12A1の定量的発現量分析結果を対数表現で表している。
【図25D】腎腫瘍、各種正常腎および各種腫瘍の種類(乳房、前立腺、卵巣)を個々の正常な組織を用いて、SLC12A1の従来方式でRT−PCR分析を行った結果を表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍会合抗原の発現または活性を阻害する作用物質を有する医薬品組成物であって、該腫瘍会合抗原が、
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)もしくは(b)の核酸に関して変性している核酸、および
(d)(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされた配列を有する医薬品組成物。
【請求項2】
腫瘍会合抗原を発現しているかまたは異常に発現している細胞に選択的な腫瘍阻害活性を有する作用物質を含む医薬品組成物であって、該腫瘍会合抗原が、
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112,その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)もしくは(b)の核酸に関して変性している核酸、および
(d)(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされた配列を有する医薬品組成物。
【請求項3】
前記作用物質が細胞死、細胞成長の減退、細胞膜に対する損傷またはサイトカインの分泌を誘導する請求項2記載の医薬品組成物。
【請求項4】
前記作用物質が前記腫瘍会合抗原をコードしている前記核酸と選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸請求項1または2記載の医薬品組成物。
【請求項5】
前記作用物質が前記腫瘍会合抗原に選択的に結合する抗原である請求項1または2記載の医薬品組成物。
【請求項6】
前記作用物質が前記腫瘍会合抗原に選択的に結合する補体活性化抗体である請求項2記載の医薬品組成物。
【請求項7】
投与すると、HLA分子と腫瘍会合抗原またはその一部との間の複合体の量を選択的に増加させる作用物質を含む医薬品組成物であって、前記腫瘍会合抗原が、
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)もしくは(b)の核酸に関して変性している核酸、および
(d)(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされた配列を有する医薬品組成物。
【請求項8】
前記作用物質が、
(i)前記腫瘍会合抗原またはその一部、
(ii)前記腫瘍会合抗原またはその一部をコードする核酸、
(iii)前記腫瘍会合抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および、
(iv)前記腫瘍会合抗原またはその一部とHLA分子との間の単離複合体、
からなる群から選択された一つ以上の成分を有する請求項7記載の医薬品組成物。
【請求項9】
各事例で各種腫瘍会合抗原の発現または活性を選択的に阻害し、各事例で、各種腫瘍会合抗原を発現している細胞に対し選択的であるか、あるいはHLA分子と各種腫瘍会合抗原またはその一部との間の複合体の量を増加させる2つ以上の作用物質を前記作用物質が有し、前記腫瘍会合抗原の少なくともひとつが、
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)もしくは(b)の核酸に関して変性している核酸、および
(d)(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされた配列を有する請求項1、2または7記載の医薬品組成物。
【請求項10】
(i)腫瘍会合抗原またはその一部、
(ii)腫瘍会合抗原またはその一部をコードする核酸、
(iii)腫瘍会合抗原またはその一部に結合する抗体、
(iv)腫瘍会合抗原をコードしている核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)腫瘍会合抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および
(vi)腫瘍会合抗原またはその一部とHLA分子との間の単離複合体であって該腫瘍会合抗原が、
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)もしくは(b)の核酸に関して変性している核酸、および
(d)(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされた配列を有する単離孤立複合体からなる群から選択された一つ以上の成分を有する医薬品組成物。
【請求項11】
(ii)の前記核酸が発現ベクターに存在している請求項8または10記載の医薬品組成物。
【請求項12】
(ii)の前記核酸がプロモータに機能的に連携している請求項8または10記載の医薬品組成物。
【請求項13】
前記宿主細胞が前記腫瘍会合抗原もしくは前記その一部を分泌する請求項8または10記載の医薬品組成物。
【請求項14】
前記宿主細胞が前記腫瘍会合抗原もしくは前記その一部に結合するHLA分子をさらに発現する請求項8または10記載の医薬品組成物。
【請求項15】
前記宿主細胞が、前記HLA分子および/または前記腫瘍会合抗原もしくは前記その一部を組換え工法により発現する請求項14記載の医薬品組成物。
【請求項16】
前記宿主細胞が、前記HLA分子を内生的に発現する請求項14記載の医薬品組成物。
【請求項17】
前記宿主細胞が、抗原提示細胞である請求項8、10、14または16記載の医薬品組成物。
【請求項18】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞またはマクロファージである請求項17記載の医薬品組成物。
【請求項19】
前記宿主細胞が非増殖性である請求項8、10および13〜18のいずれかに記載の医薬品組成物。
【請求項20】
前記抗体がモノクロナル抗体である請求項5または10記載の医薬品組成物。
【請求項21】
前記抗体が、キメラ抗体もしくはヒト化抗体である請求項5または10記載の医薬品組成物。
【請求項22】
前記抗体が、天然抗体のフラグメントである請求項5または10記載の医薬品組成物。
【請求項23】
前記抗体が、治療用作用物質もしくは診断用作用物質に結合する請求項5または10記載の医薬品組成物。
【請求項24】
前記アンチセンス核酸が、前記腫瘍会合抗原をコードする核酸の6〜50の連続的ヌクレオチドからなる配列を有する請求項4または10記載の医薬品組成物。
【請求項25】
該医薬品組成物によって提供される前記腫瘍会合抗原または前記その一部が、異常な量の該腫瘍会合抗原またはその一部を発現する細胞の表面上でMHC分子と結合する請求項8および10−13のいずれかに記載の医薬品組成物。
【請求項26】
前記結合により、細胞溶解性反応が生じる、および/またはサイトカイン放出を誘発する請求項25記載の医薬品組成物。
【請求項27】
製剤上受入れ可能な担体および/またはアジュバントをさらに有する請求項1〜26のいずれかに記載の医薬品組成物。
【請求項28】
前記アジュバントがサポニン、GM−CSF、CpG、サイトカインまたはケモカインである請求項27記載の医薬品組成物。
【請求項29】
腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって疾患の治療に使用可能な、請求項1〜28のいずれかに記載の医薬品組成物。
【請求項30】
前記疾患ががんである請求項29記載の医薬品組成物。
【請求項31】
前記疾患が肺腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、メラノーマ、大腸腫瘍、大腸腫瘍の転移、腎細胞がん、子宮頚がん、大腸がんまたは乳がんである請求項29記載の医薬品組成物。
【請求項32】
前記腫瘍会合抗原が、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、61〜68、70、72、74、76、81、82、86、88、96〜101、103、105、107、109、111、113,その一部または誘導体からなる群から選択されたアミノ酸配列を有する、請求項1〜31のいずれかに記載の医薬品組成物。
【請求項33】
腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長付けられる疾患を診断するための方法であって、
(i)前記腫瘍会合抗原もしくはその一部をコードする核酸の検出、および/あるいは
(ii)前記腫瘍会合抗原もしくはその一部の検出、および/あるいは
(iii)前記腫瘍会合抗原もしくはその一部に対する抗体の検出および/あるいは
(iv)患者から孤立させた生体標本における前記腫瘍会合抗原もしくはその一部に特異的である細胞毒性リンパ球またはTヘルパーリンパ球の検出であって、前記腫瘍会合抗原が、
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)もしくは(b)の核酸に関して変性している核酸、および
(d)(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされた配列を有する、方法。
【請求項34】
前記検出プロセスが、
(i)前記腫瘍会合抗原をコードする核酸もしくはその一部、前記腫瘍会合抗原もしくは前記その一部、前記抗体または細胞毒性リンパ球もしくはTヘルパーリンパ球に特異的に結合する作用物質と生体標本を接触させるプロセスと、
(ii)前記作用物質と前記核酸もしくは前記その一部、前記腫瘍会合抗原もしくは前記その一部、前記抗体または前記細胞毒性リンパ球もしくはTヘルパーリンパ球との間の複合体の形成を検出するプロセスとを有している、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記検出プロセスが、比較可能な正常生体標本における検出と比較される請求項33または34記載の方法。
【請求項36】
前記疾患が二種類以上の腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長付けられ、検出プロセスが、該二種類以上の腫瘍会合抗原もしくはその一部をコードする二つ以上の核酸の検出プロセス、該二種類以上の腫瘍会合抗原もしくはその一部の検出プロセス、該二種類以上の腫瘍会合抗原もしくはその一部に結合している二つ以上の抗体の検出プロセス、または該二種類以上の腫瘍会合抗原に特異的な二種類以上の細胞毒性リンパ球もしくはTヘルパーリンパ球の検出プロセスからなる、請求項33〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記核酸または前記その一部が、該核酸または該その一部に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いて検出される、請求項33〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記腫瘍会合抗原をコードしている前記核酸の6〜50の連続的ヌクレオチドからなる配列を前記ポリヌクレオチドプローブが有している、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記核酸または前記その一部が、該核酸または該その一部を選択的に増幅することによって検出される、請求項33−36のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記検出の対象となる腫瘍会合抗原または前記その一部がMHC分子との複合体内にある、請求項33〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記MHC分子がHLA分子である請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記腫瘍会合抗原または前記その一部が、該腫瘍会合抗原または該その一部に特異的に結合している抗体を使用して検出される、請求項33〜36および40〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記抗体が、該抗体に特異的に結合しているタンパクまたはペプチドを使用して検出される、請求項33−36のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
腫瘍会合抗原の発現もしくは異常な発現によって特長付けられる疾患の再発、進行または兆候を判定するための方法であって、該疾患に罹っている患者または該疾患を罹っていることが疑われる患者から得た標本を監視するプロセスを有しており、
(i)前記腫瘍会合抗原またはその一部をコードする核酸の量、
(ii)前記腫瘍会合抗原またはその一部の量、
(iii)前記腫瘍会合抗原またはその一部に結合する抗体の量、および
(iv)前記腫瘍会合抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的である細胞溶解性またはサイトカイン放出T細胞の量であって、該腫瘍会合抗原は、
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)もしくは(b)の核酸に関して変性している核酸、および
(d)(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされた配列を有することを特長とするその量、からなる群から選択された一つ以上のパラメータに関して判定するための方法。
【請求項45】
適時に、第一のポイントで第一の標本におけるパラメータ(複数もあり)、第二のポイントでさらに別の標本でのパラメータを判定するプロセスを有し、二個の標本間で比較を行うことによって疾患の進行状態を判定する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記疾患が、二種類以上の腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長付けられ、観察プロセスが、
(i)該2種類以上の腫瘍会合抗原またはその一部をコードする2種類以上の複数の核酸の量、
(ii)前記2種類以上の腫瘍会合抗原またはその一部の量、
(iii)該2種類以上の腫瘍会合抗原またはその一部に結合している2つ以上の抗体の量および/または
(iv)該2種類以上の腫瘍会合抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的である、2つ以上の細胞溶解性またはサイトカイン放出T細胞の量
を観察するプロセスからなる、請求項44または45記載の方法。
【請求項47】
前記核酸またはその一部の量が、該核酸または該その一部に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを使用して監察される、請求項44〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記ポリヌクレオチドプローブが、前記腫瘍会合抗原をコードしている前記核酸の6〜50の連続的ヌクレオチド配列を有している、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記核酸またはその一部の前記量が、該核酸またはその一部を選択的に増幅することによって観察される、請求項44〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記腫瘍会合抗原またはその一部の前記量が、該腫瘍会合抗原またはその一部に特異的に結合している抗体を使用して観察される、請求項44〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
抗体の量が、前記抗体に特異的に結合しているタンパクまたはペプチドを使用して観察される、請求項44〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
細胞溶解性またはサイトカイン放出T細胞の量が、前記腫瘍会合抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体を提示している細胞を使用して観察される、請求項44〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記ポリヌクレオチドプローブ、前記抗体、前記タンパクもしくはペプチド、または前記細胞に、検出可能な方法でラベル標識する、請求項37〜38、42〜43、47〜48および50〜52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記検出可能なマーカが放射性マーカまたは酵素マーカである請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記標本が体液および/または体組織を含んでいる請求項33〜54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
請求項1〜32のいずれかに記載の医薬品組成物を投与するプロセスを含み、
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で、前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)もしくは(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)前記(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされている配列を有する腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長付けられる疾患を治療するための方法。
【請求項57】
腫瘍会合抗原の発現もしくは異常な発現によって特長付けられる疾患を治療、診断または観察するための方法であって、
(a)SEQIDNO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で、前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)もしくは(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)前記(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされている配列を有する腫瘍会合抗原もしくはその一部に結合しており、治療用作用物質または診断用作用物質と共役する抗体を投与するプロセスを含む、方法。
【請求項58】
前記抗体がモノクローナル抗体である請求項42、50または57記載の方法。
【請求項59】
前記抗体が、キメラ抗体もしくはヒト化抗体である請求項42、50または57記載の方法。
【請求項60】
前記抗体が、天然抗体のフラグメントである請求項42、50または57記載の方法。
【請求項61】
腫瘍会合抗原が発現または異常に発現していることによって特長付けられる疾患のある患者を治療するための方法であって、
(i)患者から免疫反応細胞を含む標本を切除するプロセスと、
(ii)該腫瘍会合抗原またその一部に対する細胞毒性またはサイトカイン放出T細胞の産生を促進する条件下で、該腫瘍会合抗原もしくはその一部を発現する宿主細胞と該標本を接触させるプロセスと、
(iii)
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部または誘導体からなる群から選択された核酸配列を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で、前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)もしくは(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)前記(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされている配列を有する前記腫瘍会合抗原もしくはその一部を発現している細胞を溶解するのに好適な量で、前記患者に前記細胞溶解性またはサイトカイン放出T細胞を導入するプロセスと、からなる方法。
【請求項62】
前記宿主細胞が、前記腫瘍会合抗原またはその一部に結合しているHLA分子を組替えにより発現している請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記宿主細胞が、前記腫瘍会合抗原またはその一部に結合しているHLA分子を内生的に発現している請求項62記載の方法。
【請求項64】
腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長付けられる疾患のある患者を治療するための方法であって、
(i)該疾患と関連のある細胞によって発現しており
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で、前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)もしくは(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)前記(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸を特定するプロセスと、
(ii)該核酸またはその一部で宿主細胞をトランスフェクトするプロセスと、
(iii)該核酸を発現させるため、トランスフェクトされた宿主細胞を培養するプロセスと、
(iv)前記疾患に関連する前記患者の細胞に対する免疫反応を増大させるのに好適な量で、前記患者に前記宿主細胞またはその抽出物質を導入するプロセスと、
からなる方法。
【請求項65】
前記腫瘍会合抗原またはその一部を提示しているMHC分子を特定するプロセスをさらに含み、前記特定されたMHC分子を発現し前記腫瘍会合抗原またはその一部を提示する前記宿主細胞を使用する、請求項64記載の方法。
【請求項66】
免疫反応に、B細胞反応もしくはT細胞反応が含まれる請求項64または65記載の方法。
【請求項67】
前記免疫反応が、前記腫瘍会合抗原もしくはその一部を提示する宿主細胞に特異的か、または前記腫瘍会合抗原もしくはその一部を発現する前記患者の細胞に特異的である、細胞溶解性またはサイトカイン放出T細胞の産生プロセスを含むT細胞反応である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記宿主細胞が非増殖性である請求項61〜67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
腫瘍会合抗原の発現または異常な発現によって特長付けられる疾患を治療するための方法であって、
(i)異常な量の腫瘍会合抗原を発現している細胞を患者から特定するプロセスと、
(ii)該細胞の標本を単離させるプロセスと、
(iii)該細胞を培養するプロセスと、
(iv)前記細胞を
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくは誘導体からなる群から選択された核酸配列を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で、前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)もしくは(b)の核酸に関して変性した核酸、および
(d)前記(a)、(b)もしくは(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択された核酸にコードされた配列を持つ前記腫瘍会合抗原、への免疫反応をトリガーするために好適な量で、患者に前記細胞を導入するプロセスと、を含む方法。
【請求項70】
前記疾患ががんである請求項33〜69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
請求項1〜32のいずれかに記載の、効果的量の医薬品組成物を投与するプロセスを含む、患者におけるがん発症を抑止する方法。
【請求項72】
前記腫瘍会合抗原が、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、61〜68、70、72、74、76、81、82、86、88、96〜101、103、105、107、109、111、113、その一部またはその誘導体からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む、請求項33〜71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
(a)SEQ ID NO:69、71、73、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部またはその誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で、前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性している核酸、および
(d)前記(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群から選択された核酸。
【請求項74】
SEQ ID NO:61〜68、70、72、74、81、82、86、88、96〜101、103、105、107、109、111、113、その一部もしくはその誘導体からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するタンパクまたはポリペプチドをコードする核酸。
【請求項75】
請求項73、74、85もしくは87に記載の核酸を有する、組替えDNAまたはRNA分子。
【請求項76】
ベクターである、請求項75記載の組替えDNA分子。
【請求項77】
前記ベクターが、ウイルスベクターまたはバクテリオファージである、請求項76記載の組替えDNA分子。
【請求項78】
前記核酸の発現を制御する発現制御配列をさらに有する、請求項75〜77のいずれかに記載の組換えDNA分子。
【請求項79】
前記発現制御配列が、前記核酸と同種または異種である請求項78記載の組換えDNA分子。
【請求項80】
請求項73もしくは74記載の核酸、または請求項75〜79のいずれかに記載の組換えDNA分子を含む宿主細胞。
【請求項81】
HLA分子をコードしている核酸をさらに含む請求項80記載の宿主細胞。
【請求項82】
請求項73記載の核酸によってコードされているタンパクまたはポリペプチド。
【請求項83】
SEQ ID NO:61〜68、70、72、74、81、82、86、88、96〜101、103、105、107、109、111、113、その一部もしくはその誘導体からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むタンパクまたはポリペプチド。
【請求項84】
請求項82もしくは83記載の前記タンパクまたはポリペプチドの免疫原フラグメント。
【請求項85】
ヒトHLA受容体もしくはヒト抗体に結合する、請求項82もしくは83記載の前記タンパクまたはポリペプチドのフラグメント。
【請求項86】
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部またはその誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で、前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸に関して変性している核酸、および
(d)前記(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群から選択された核酸によってコードされているタンパクもしくはポリペプチドまたはその一部に特異的に結合する作用物質。
【請求項87】
前記タンパクまたはポリペプチドが、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、61〜68、70、72、74、76、81、82、86、88、96〜101、103、105、107、109、111、113、その一部またはその誘導体からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むことを特長とする、請求項86記載の作用物質。
【請求項88】
抗体である、請求項86または87記載の作用物質。
【請求項89】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体もしくはヒト化抗体、または抗体のフラグメントである、請求項88記載の作用物質。
【請求項90】
(i)タンパクもしくはポリペプチド、またはその一部、および
(ii)該タンパクもしくはポリペプチド、またはその一部が結合しているMHC分子であり、前記抗体は、(i)または(ii)に単独で結合しておらず、該タンパクもしくはポリペプチドは、
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくはその誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で、前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)もしくは(b)の核酸から変性している核酸、および
(d)前記(a)、(b)もしくは(c)の核酸、
からなる群から選択された核酸によってコードされている、MHC分子、
の複合体に選択的に結合する抗体。
【請求項91】
前記タンパクまたはポリペプチドが、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、61〜68、70、72、74、76、81、82、86、88、96〜101、103、105、107、109、111、113、その一部もしくはその誘導体からなる群から選択されたアミノ酸配列を有する、請求項90記載の抗体。
【請求項92】
モノクローナル抗体、キメラ抗体もしくはヒト化抗体、または抗体のフラグメントである、請求項90または91記載の抗体。
【請求項93】
請求項86〜89のいずれかに記載の作用物質または請求項90〜92のいずれかに記載の抗体と、治療用作用物質または診断用作用物質との間の接合体。
【請求項94】
治療用作用物質または診断用作用物質がトキシンである、請求項93記載の接合体。
【請求項95】
腫瘍会合抗原の発現または異常な発現を検出するためのキットであって、
(i)腫瘍会合抗原またはその一部をコードする核酸、
(ii)前記腫瘍会合抗原またはその一部、
(iii)前記腫瘍会合抗原またはその一部に結合する抗体、および/または
(iv)前記腫瘍会合抗原またはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的なT細胞であり、前記腫瘍会合抗原が、
(a)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、69、71、73、75、79、80、85、87、102、104、106、108、110、112、その一部もしくはその誘導体からなる群から選択された核酸配列を有する核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で、前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)もしくは(b)の核酸に関して変性している核酸、および
(d)前記(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸、
からなる群から選択される核酸によってコードされている配列を有する、T細胞、
を検出するための作用物質を含む、キット。
【請求項96】
前記腫瘍会合抗原またはその一部をコードしている核酸を検出するための作用物質が、該核酸を選択的に増幅させるための核酸分子である、請求項95記載のキット。
【請求項97】
前記核酸を選択的に増幅させるための核酸分子が、前記腫瘍会合抗原をコードする前記核酸の6〜50の連続的ヌクレオチドからなる配列を有している、請求項96記載のキット。

【図5】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図22A】
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【図23A】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図8】
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【図9C】
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【図9E】
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【図15】
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【図17A】
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【図17B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図22E】
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【図23B】
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【図24C】
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【図25D】
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【公表番号】特表2007−537197(P2007−537197A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512091(P2007−512091)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005104
【国際公開番号】WO2005/110338
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(505186821)ガニュメート・ファーマシューティカルズ・アクチェンゲゼルシャフト (14)
【氏名又は名称原語表記】GANYMED PHARMACEUTICALS AG
【Fターム(参考)】