説明

腫瘍の造影及び光線力学療法のためのポルフィリン化合物

【課題】診断的ボディスキャン及びその後の標的治療の可能性を提供する二用途機能剤(PET造影及びPDT)を提供すること。
【解決手段】660〜800nmの長波長を吸収するクロリン及びバクテリオクロリンと関連するある種の124I-標識光線感作物質の合成に関する初めての報告を記載する。予備的な研究において、これらの化合物は陽電子放出断層撮影(PET)による腫瘍の検出及び光線力学療法(PDT)による治療の大きな可能性を示す。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
連邦政府により資金援助を受けている研究に関する記述
本発明は、国立保健研究所助成金NIHから資金提供を受けてなされた(1R21 CA10999914-01及びCA55792)。連邦政府は本発明においてある種の権利を有する。
【0002】
背景技術
診断用薬としての放射性金属標識錯体及び生体分子の使用は比較的新しい医薬品化学の領域である。99mTc放射性医薬の研究は、画像診療に関連するので配位化学の研究の始まりであった。それ以来、初期段階の診断のための新規放射性医薬の開発は、依然として機能的な画像化の活発な領域のひとつである。近年、核医学に広く使用されている画像診断療法には、ガンマ線シンチグラフィー及び陽電子放出断層撮影(PET)が含まれる。ガンマ線シンチグラフィーは、ガンマ線を放出する核種を含む放射性医薬及びガンマ線を放出する放射性医薬を注入された患者を画像化しうるガンマカメラまたはSPECT(単一光子放出断層撮影)カメラを必要とする。多くのガンマカメラは100〜250KeVの範囲で設計されているので、ガンマ光子のエネルギーが非常に重要である。この範囲より低いガンマエネルギーを放出して崩壊する放射性核種は過度に散乱を引き起こし、>250KeVのガンマエネルギーは平行にするのが難しく、いずれの場合も画像は十分な品質ではない。PETは、陽電子を放出する放射性核種(β+)で標識づけした放射性医薬及び患者を画像化するためのPETカメラを必要とする。陽電子崩壊の結果、180°離れた2個の511KeVの光子が放出される。PETスキャナーは、反対方向に放出された511KeVの光子を特異的に検出するように設計された同時回路を有する環状配列の検出器を含む。多様な種類の癌治療の追跡には放射性金属物質も使用される。放射性金属をベースとする放射性医薬の設計においては、考慮する重要な因子には、放射性金属の半減期、崩壊様式及び価格及び同位体の入手可能性が含まれる。画像診断においては、放射性核種の半減期が 放射性医薬を合成する所望の化学を実施するのに十分長く、また患者の非標的器官のクリアランスを許容しつつ標的組織における蓄積を許容するのに十分長くなければならない。PET及びガンマシンチグラフィーに使用される放射性金属の半減期の範囲は約10分(62Cu)乃至数日(67Ga)である。望ましい半減期は、放射性医薬を標的組織にとどめるのに必要な時間に依存する。例えば、心臓または脳の灌流を基にした放射性医薬は迅速に標的に達するので短い半減期でよいが、腫瘍標的化合物はしばしば最適な標的のバックグラウンドに対する比が得られる標的に達するのにより長くかかる。
【0003】
放射性医薬の設計は、病気サイト(癌性腫瘍)の特定の生体内標的及び放射能の非標的からのクリアランス並びに関連する放射性核種の物理的放射性崩壊特性間のバランスの最適化を必要とする。選択的な放射性標識薬物の設計においてはいくつかの困難に遭遇する。これらには、効果的な薬物送達、標的サイトにおける放射能の滞留時間の最大化、薬物の生体内異化及び代謝、及び非標的サイトからの放射性標識薬物またはその代謝クリアランスがあるとすればその相対的な割合の最適化に関する問題が含まれる。考慮しなければならない多くのパラメータのために、癌の画像化及び治療のための放射性医薬の開発は、単に非放射性標識標的媒介動物にいずれかの方法で放射性核種を結合させることに伴うだけではない複雑な問題である。したがって、標識化工程に含まれる化学が薬物設計工程の不可欠かつ本質的な部分である。例えば、放射性金属化キレートがある点において生体分子標的実在物に付けられる場合には、キレートの構造及び生理化学的性質が、病気のサイトにおける放射性医薬の高い特異的取り込みと両立しなければならないし、たぶん促進を助けなければならない。最低限でも、この放射性金属キレートは薬物動態学、結合特異性または癌細胞親和性を妨害すべきではない。明らかに、放射性核種の選択、及び分子の放射性標識に使用される化学的戦略は、安全かつ効果的な造影/治療薬の配合には重要な要素である。
最近の数年間は、光線力学療法(PDT)による癌の治療にポルフィリンをベースとする化合物が使用されている。ある種のポルフィリン及び関連するテトラピロール系の濃度は、大部分の通常の組織におけるより悪性腫瘍におけるほうが高く、このことが光線感作物質としてこれらの分子を使用する主要な理由である。ある種のテトラピロールをベースとする化合物は、皮膚、肺、膀胱、頭頸部及び食道を含む幅広い種類の悪性腫瘍において効果的である。PDTの正確な機構は不明である。しかしながら、生体内の動物のデータは、直接の細胞殺害及び腫瘍血管機能の損失の両方が重要な役割を果たすことを示唆する。
光線力学療法(PDT)は、光力学的過程により加えられた局部的な酸化的損傷の生物学的結果を利用する。初期の光力学的過程の開始に必要とされる重要な要素は、光線感作物質、光及び酸素である。表面の目で見える病変、または、例えば気管支または食道癌のような内視鏡により視ることができる病変は容易に治療できるが、悪性の病変の多くは、現代の光線感作物質において一重項酸素の産出を引き起こすのに必要とされる波長の光を到達させるにはあまりに深い。末端ディフューザーにより“キャップされた”光学繊維により深い病変へ治療的光を送達する技術は十分に開発されているけれども、深い病変は当然皮膚表面から目で見えないので、深い腫瘍のPDTははるかに非現実的である。
【0004】
発明の簡単な説明
本発明によれば、深い腫瘍の放射線画像化に関する先行技術の方法に伴う問題を克服する一連の化合物が発見された。特に、これらの化合物は、クロリン、バクテリオクロリン、ポルフィリン、ピロフェオホルビド、プルプリンイミド、またはバクテリオプルプリンイミドの124I-フェニル誘導体である。
更に特に、本発明の好ましい化合物には、下式の化合物、またはその薬学的に許容しうる誘導体が含まれる。
【0005】
【化1】

【0006】
式中、R1及びR2は、各々独立して置換または未置換アルキル、置換または未置換アルケニル、-C(O)Raまたは-COORaまたは-CH(CH3)(ORa)または-CH(CH3)(O(CH2)nXRa)(式中、Raは、水素、置換または未置換アルキル、置換または未置換アルケニル、置換または未置換アルキニル、または置換または未置換シクロアルキルである)であり、R2はCH=CH2、CH(OR20)CH3、C(O)Me、C(=NR20)CH3またはCH(NHR20)CH3でもよく、
式中、Xはアリールまたはヘテロアリール基であり、
nは0乃至6の数であり、
式中、R20はメチル、ブチル、ヘプチル、ドデシルまたは3,5-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジルであり、
R1a及びR2aは、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであるか、または一緒に共有結合を形成し、
R3及びR4は、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであり、
R3a及びR4aは、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであるか、または一緒に共有結合を形成し、
R5は、水素または置換または未置換アルキルであり、
R6及びR6aは、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであるか、または一緒に=Oを形成し、
R7は、共有結合、アルキレン、アザアルキル、またはアザアラルキルまたは=NR20であり(式中、R20は-CH2X-R1または-YR1であり、式中のYはアリールまたはヘテロアリール基である)、
R8及びR8aは、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであるか、または一緒に=Oを形成し、
R9及びR10は、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであり、R9は-CH2CH2COORa(式中、Raはアルキル基である)でもよく、
Ra〜R10の各々は、置換されている場合には、各々独立してQから選択された1個以上の置換基で置換されており、Qは、アルキル、ハロアルキル、擬ハロ、または-COORb(式中、Rbは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルである)、またはORc(式中、Rcは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、またはCONRdRe(式中、Rd及びReは、各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、またはNRfRg(式中、Rf及びRgは、各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、または=NRh(式中、Rhは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)であるか、またはアミノ酸残基であり、
各Qは、独立して未置換であるか、または各々独立してQ1から選択された1個以上の置換基で置換されており、Q1は、アルキル、ハロアルキル、擬ハロ、または-COORb(式中、Rbは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルである)、またはORc(式中、Rcは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、またはCONRdRe(式中、Rd及びReは、各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、またはNRfRg(式中、Rf及びRgは、各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、または=NRh(式中、Rhは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)であるか、またはアミノ酸残基であり、
化合物は124I-フェニル基を含むQを1個以上含むという条件である。
【0007】
これらの化合物は、腫瘍の画像化に関して適する放射線寿命を有する高い腫瘍吸収を提供する。
本発明はまた、PDTにより治療しうる深い腫瘍を造影すると同時にその内に光学繊維を核造影誘導着床させるのにこれらの化合物を使用する方法を含む。
【0008】
発明の詳細な説明
一連のピロフェオホルビドのアルキルエーテル類似物の研究に基づいて、本出願人らは、比較的長い波長を吸収する光線感作物質であるピロフェオホルビド-aの3-(1-ヘキシルオキシ)エチル誘導体1(HPPH)を生み出した。この化合物は腫瘍結合性であり、現在、ロズウェル・パーク・癌学研究所において第I/II相ヒト臨床試験中である。本出願人らは、この化合物のモノ-またはジ-ビスアミノエタンチオール(N2S2配位子)との結合による“ビヒクル”としての使用を研究した。生体内分布実験から得られた結果は、薬物の腫瘍/非腫瘍吸収比が時間及び腫瘍寸法に依存することを示した。時間に伴って、腫瘍からのHPPHをベースとする化合物のクリアランスは、大部分の非腫瘍組織からのそれよりゆっくりであることが見出された。しかしながら、半減期が短い6時間の99mTcは、24時間の造影時間では適合しないことが見出され、もっと長い寿命の同位体なら有用なスキャン剤となること示唆した。改良された腫瘍造影剤を開発する別の方法は、HPPHを非腫瘍に対する腫瘍の比を優位に高く示す化合物で置換する方法であろう。関連する長寿命の放射性核種が合成されれば改良された造影及び治療(PDT)剤が生み出されるであろう。
造影剤及び光線感作物質の両方として効果的に機能する化合物は、腫瘍の診断及び治療の完全に新しい実例を創造する。この化合物の末梢静脈注射後、患者をスキャナーによりスキャンすることができる。このようにして腫瘍サイトの位置が明確になり、患者がスキャンされているままインターベンション核技術者が、病変への光送信繊維の導入器として作用しうる超スリムな針を経皮的に挿入しうる。各繊維の直径は<400μであるから、導入器の針は組織に無視しうるほどの損傷しか与えないであろう。光源を繊維につなぐと、他の器官に有意な損傷を与えることなく病変のPDTが開始されうる。同一分子が造影剤及び治療的媒体であるため、病変は、別々の診断/治療画像による局部限定のあいまいさまたは“位置あわせ間違い”がなく、針/繊維の配置中連続的に造影されうる。この実例は、頭蓋底から骨盤の下盤までのほとんどすべての場所でPDTが低毒性で非常に有効であろう。
【0009】
陽電子放出断層撮影(PET)は、生きている被験者において細胞の機能における生物化学的な過程を画像化及び分析するための陽電子標識分子造影プローブの健康な組織を冒さない使用を許容する技術である。単一光子放出断層撮影(SPECT)と比較すると、断層撮影画像に関して、PETの感度は少なくとも10倍である。陽電子放出核種に最も一般的に使用される短い半減期は、数日の生物学的半減期を有する薬物には適さい。しかしながら、ヨウ素-124は、半減期が4.2日の陽電子放射体であり、数日の生物学的半減期を有するプローブの標識付けに適する。この同位体は、限られた入手可能性及び数種の高エネルギーガンマ線を含む複雑な崩壊スキームのために幅広く使用されてはいなかった。Pentlowらが最初に124Iを用いた定量的造影が可能であることを示した。
有効な2機能性診断/治療剤を開発する本出願人らの試みにおいては、最初にある種のピロフェオホルビド類似物(クロロフィル-aから誘導)-N2S2-99mTc錯体(23)を合成して評価した。生体内分布実験から得られた結果は、半減期が短い6時間の99mTcは、24時間の造影時間(薬物の最大吸収及び治療のための時間)に適合せず、もっと長い寿命の同位体を使用すれば有用なスキャン剤となることが示唆された。したがって、本出願人の目的は、ヨードベンジル官能基を含むある種の腫瘍結合性のポルフィリンをベース(基本骨格)とする光線感作物質に124I陽電子放射体を導入して腫瘍の造影及び光線力学療法におけるその有用性を研究することである。
【0010】
ヨウ素同位体で化合物に標識付けする方法はいくつかある。放射性ではないヨウ素置換基から放射性ヨウ素置換基への変換は可能であるが、得られる生成物の比放射能は低い。一般的には、脂肪族連鎖において置換されたヨウ素は芳香族構造に存在するそれより不安定であることが示された。したがって、本出願人らは一連の芳香族アルキルエーテルを調製し、それらを生体外(RIF細胞)及び生体内有効性(RIF細胞)について評価した。ヨードフェニル基を含む種々の炭素単位を有する一連のアルキルエーテルのうち、予備的な選別において3-デビニル-3-(1'-3”-ヨードベンジルオキシ)エチルピロフェオホルビド-a(スキーム1)が、本出願人らの研究室において開発された光線感作物質であるHPPHと同程度に有効であることが見出され、第II相ヒト臨床試験中である。
本発明の化合物の例は下式の化合物である。





【0011】
【化2】

(式中、Rは-COOH、-CO2R3、-CO-NH-R4、単糖類、二糖類、多糖類、葉酸残基、インテグリン拮抗薬であり、存在する場合には、R1はC1-C12のアルキルであり、R3はC1-C12のアルキルであり、R4はアミノ酸残基を完成させる。)
【実施例】
【0012】
メチル3-デビニル-3-{1'-(3-ヨードベンジルオキシ)エチルピロフェオホルビド-a:図3からわかるように、ピロフェオホルビド-a1は、文献の手順に従うことによりクロロフィル-aから得た。それをHBr/酢酸と反応させ、中間体である不安定なブロモ誘導体を直ちに、窒素雰囲気下室温において45分間3-ヨードベンジルアルコールと反応させた。標準的な処理が終了した後、反応混合物をカラムクロマトグラフィー(アルミナ、Gr. III、ジクロロメタンで溶離)により精製し、所望のヨウ素誘導体2を70%の収率で単離した。UV-vis(CH2Cl2): 662(4.75×104), 536(1.08×104), 505(1.18×104), 410(1.45×104)。1H-NMR(CDCl3; 400MHz): δ9.76, 9.55及び8.56(all s, 1H, meso-H); 7.76(s, 1H, ArH); 7.64(d, J=6.8, 1H, ArH); 7.30(d, J=8.0, 1H, ArH); 7.05(t, J=8.2, 1H, ArH); 6.00(q, J=6.9, 1H, 31-H); 5.20(dd(ABX pattern), J=19.6, 60.0, 2H, 132-CH2); 4.70(d, J=12.0, 1H, OCH2Ar); 4.56(dd, J=3.2, 11.6, 1H, OCH2Ar); 4.48-4.53(m, 1H, 18-H); 4.30-4.33(m, 1H, 17-H); 3.72(q, J=8.0, 2H, 8-CH2CH3); 3.69, 3.61, 3.38及び3.21(all s, all 3H, for 173-CO2CH3及び3×ring CH3); 2.66-2.74, 2.52-2.61及び2.23-2.37(m, 4H, 171及び172-H); 2.18(dd, J=2.8, 6.4, 3H, 32-CH3); 1.83(d, J=8.0, 3H, 18-CH3); 1.72(t, J=7.6, 3H, 8-CH2CH3); 0.41(brs, 1H, NH); -1.71(brs, 1H, NH)。Mass: C41H43N4O4Iに関する計算値: 782。実測値: 805(M++Na)。
【0013】
メチル-3-デビニル-3-{1'-(3-tert-ブチル錫ベンジルオキシエチル)ピロフェオホルビド-a
1H-NMR(CDCl3; 600MHz): δ9.76, 9.54及び8.55(all s, 1H, meso-H); 7.43(m, 2H, ArH); 7.36(m, 2H, ArH); 6.01(q, J=6.7, 1H, 31-H); 5.20(dd(ABX pattern), J=19.1, 87.9, 2H, 132-CH2); 4.78(dd, J=5.4, 11.9, 1H, OCH2Ar); 4.61(dd, J=1.7, 12.0, 1H, OCH2Ar); 4.50(q, J=7.4, 1H, 18-H); 4.32(d, J=8.8, 1H, 17-H); 3.72(q, J=7.8, 2H, 8-CH2CH3); 3.69, 3.61, 3.37及び3.18(all s, all 3H, for 173-CO2CH3及び3×ring CH3); 2.66-2.75, 2.52-2.61及び2.23-2.37(m, 4H, 171及び172-H); 2.16(m, 3H, 32-CH3); 1.83(d, J=7.2, 3H, 18-CH3); 1.72(t, J=7.6, 3H, 8-CH2CH3); 0.45(brs, 1H, NH); 0.19(s, 9H, tert-ブチル錫); -0.59(brs, 1H, NH)。Mass: C45H52N4O4Snに関する計算値: 831。実測値: 854(M++Na)。
【0014】
124I-標識光線感作物質の調製:
1,4-ジオキサン中で2をヘキサメチルジスタナン及びビス-(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライドと反応させることにより得られたトリメチル錫類似物3(50μg)(図3を参照されたい)を100μlの酢酸の10%メタノール溶液中に溶解させた。Na124Iを0.1NのNaOHに添加した。溶液を混合し、IODOGENビーズを添加した。反応混合物を室温において30分間培養させ、反応生成物をHPLCで精製した(図1)。標識付けした生成物を回収した。精製した生成物のHPLCクロマトグラムを図2に示す。
3-ヨードベンジルオキシエチルピロフェオホルビド-a2の生体外光線感作効果を評価するために、RIF腫瘍細胞を10%のウシ胎児血清、ペニシリン及びストレプトマイシンを用いてα-DMEM中で増殖させた。細胞は、5%のCO2、95%の空気及び100%の湿度中に保持した。PDT効果を評価するために、これらの細胞を96穴のプレートに完全媒体中に1×104細胞の密度で置いた。細胞を結合させるために一晩培養させた後、HPPH及び関連する放射線性ではないヨード誘導体2を別々に種々の濃度で添加した。暗闇の中37℃で3時間培養させた後、細胞をPBSで1回洗浄し、光を照射した。光処理の後、細胞を1回洗浄し、完全媒体中に置き、48時間培養させた。次いで10μlのMTTの4mg/ml溶液を穴の各々に添加した。37℃で4時間培養させた後、MTT及び媒体を除去し、100μlのDMSOを添加してホルマジン(formazin)結晶を溶解させた。96穴のプレートを560nmの吸収においてマイクロタイタープレート読み取り機で読んだ。最適細胞殺害は1.0μMの濃度で得られた。結果を、試験した各化合物について、対応する暗(光なしの薬物)対照の生存物%としてプロットした(図4)。各データ点は、3回の実験の平均を表し、誤差の棒は標準偏差である。各実験は、5個の複製の穴を使用した。
【0015】
メチル-3-ヨード-ベンジルオキシ-エチル)ピロフェオホルビド-a:HPPH及び図3に示されるヨード-ベンジルオキシエチル-ピロフェオホルビド-a2の生体外光線感作効果を種々の実験条件で比較し、結果を図4に要約する。示されているように、両方の光線感作物質は0.6μMの薬物濃度では同様な効果を引き起こした。しかしながら、それより低い0.3μMの濃度では、ヨード類似物2のほうがわずかに効果的であることが見出された。
【0016】
生体内光線感作効果:
RIF腫瘍を有するC3Hマウス(5匹のマウス/グループ)において生体内効果を測定した。レーザー光(135J/cm2)を用い、腫瘍に665nmの光(生体内吸収)を30分間暴露させた。腫瘍の再生を毎日測定した(詳しくは、企画の‘方法’部分を参照されたい)。図5から分かるように、3-デビニル-3-(1'-ヨードベンジルオキシ)エチル類似物は、1.0及び1.5μモル/kgの用量において非常に効果的であった。それより低い容量(0.25及び0.50μモル/kg)においては、注射の10及び15日後に腫瘍の再生が観察された。種々の変数及び変数−速度及び時間間隔における処理条件を最適化する更なる研究は現在進行中である。
【0017】
生体内腫瘍造影:
初期の実験において、種々の放射線線量(35、50及び100μCi)のI-124標識光線感作物質2を3組のC3Hマウス(3匹のマウス/グループ、肩にRIF腫瘍を有する)のそれぞれに注射して、24、48及び72時間の時間間隔で小動物PETスキャナーを用いて画像を得た(図6の画像A、B、及びC)。すべての放射線線量において、薬物の注射の48時間後に最良の画像が得られた。しかしながら、予期されるように、他の器官、特に肝臓における化合物の存在が明らかであった。
生物分布研究:
注射の48時間後のPET造影後、1グループのマウス(3匹のマウス/グループ)を犠牲にして、選択した器官/gにおけるI-124 PET剤の生物分布を測定した。結果を表1に要約する。
【0018】
【表1】

【0019】
癌に伴う特定の分子標的の造影は、癌患者のより速い診断及びよりよい処置を許容するであろう。陽電子放出断層写真(PET)は、解剖学的方法と異なり、癌生理学の症状発現前及び臨床の画像化に理想的に適する非常に感度のよい健康な組織を冒さない技術である。非薬理的な用量を注入された放射性標識トレーサを用いることにより、三次元の画像がコンピューターにより再構築されてそのトレーサの濃度及び位置を示す。その他の陽電子放射体と比較して、I-124はその半減期がより長い(4.2日)ために有利である。本発明は、660〜800nmの長波長を吸収するクロリン及びバクテリオクロリンと関連するI-124標識光線感作物質の調製の初めての実例を報告する。本出願人らはまた、腫瘍の検出及び治療のためのこれらの腫瘍結合性化合物の使用を示した。本発明の方法はまた、腫瘍において過度に発現することが知られているある種の受容体を標的にすることにより標的特異性2機能性剤を開発する機会を提供し、これらの研究は現在進行中である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】Maxsil C8カラム上の反応混合物のHPLCクロマトグラムを示す。
【図2】精製した標識化合物のHPLCクロマトグラムを示す。
【図3】本発明の化合物の調製の概略図を示す(スキーム1)。
【図4】RIF腫瘍細胞における種々の薬物濃度及び光線量でのヨード類似物を用いた生体外光線感作を比較する生存%対光線量の図を示す。
【図5】種々の濃度の3-デビニル-3-(1'-ヨードベンジルオキシ)エチル類似物“化合物2”を用い、化合物2の注射の24時間後に30分間レーザー光(665nm、135J/cm2、75mW/cm2)に暴露させたRIF腫瘍を移植したC3Hマウスにおける、400mm3未満の寸法の腫瘍%対生体内光線感作後の時間(単位日)の図を示す。
【図6】124I類似物4(50μCi)を注射したRIF腫瘍を有するマウスの、注射した(A)24時間後、(B)48時間後及び(C)72時間後のPET腫瘍画像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロリン、バクテリオクロリン、ポルフィリン、ピロフェオホルビド、プルプリンイミド、またはバクテリオプルプリンイミドの124I-フェニル誘導体。
【請求項2】
下式の化合物、またはその薬学的に許容しうる誘導体。
【化1】

(式中、
R1及びR2は、各々独立して置換または未置換アルキル、置換または未置換アルケニル、-C(O)Raまたは-COORaまたは-CH(CH3)(ORa)または-CH(CH3)(O(CH2)nXRa)(式中、Raは、水素、置換または未置換アルキル、置換または未置換アルケニル、置換または未置換アルキニル、または置換または未置換シクロアルキルである)であり、R2はCH=CH2、CH(OR20)CH3、C(O)Me、C(=NR20)CH3またはCH(NHR20)CH3でもよく、
式中、Xはアリールまたはヘテロアリール基であり、
nは0乃至6の数であり、
式中、R20はメチル、ブチル、ヘプチル、ドデシルまたは3,5-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジルであり、
R1a及びR2aは、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであるか、または一緒に共有結合を形成し、
R3及びR4は、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであり、
R3a及びR4aは、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであるか、または一緒に共有結合を形成し、
R5は、水素または置換または未置換アルキルであり、
R6及びR6aは、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであるか、または一緒に=Oを形成し、
R7は、共有結合、アルキレン、アザアルキル、またはアザアラルキルまたは=NR20であり(式中、R20は-CH2X-R1または-YR1であり、式中のYはアリールまたはヘテロアリール基である)、
R8及びR8aは、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであるか、または一緒に=Oを形成し、
R9及びR10は、各々独立して水素または置換または未置換アルキルであり、R9は-CH2CH2COORa(式中、Raはアルキル基である)でもよく、
Ra〜R10の各々は、置換されている場合には、各々独立してQから選択された1個以上の置換基で置換されており、Qは、アルキル、ハロアルキル、擬ハロ、または-COORb(式中、Rbは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルである)、またはORc(式中、Rcは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、またはCONRdRe(式中、Rd及びReは、各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、またはNRfRg(式中、Rf及びRgは、各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、または=NRh(式中、Rhは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)であるか、またはアミノ酸残基であり、
各Qは、独立して未置換であるか、または各々独立してQ1から選択された1個以上の置換基で置換されており、Q1は、アルキル、ハロアルキル、擬ハロ、または-COORb(式中、Rbは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルである)、またはORc(式中、Rcは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、またはCONRdRe(式中、Rd及びReは、各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、またはNRfRg(式中、Rf及びRgは、各々独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)、または=NRh(式中、Rhは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはアリールである)であるか、またはアミノ酸残基であり、
化合物は124I-フェニル基を含むQを1個以上含むという条件である。)
【請求項3】
下式からなる群から選択されるテトラピロール化合物。
【化2】

(式中、Rは-COOH、-CO2R3、-CO-NH-R4、単糖類、二糖類、多糖類、葉酸残基、インテグリン拮抗薬であり、存在する場合には、R1はC1-C12のアルキルであり、R3はC1-C12のアルキルであり、R4はアミノ酸残基を完成させる。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−232843(P2006−232843A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−86501(P2006−86501)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(593108772)ヘルス リサーチ インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Health Research,Inc.
【出願人】(506102112)ザ リサーチ ファンデーション オブ ステイト ユニヴァーシティ オブ ニューヨーク (3)
【Fターム(参考)】