説明

腫瘍を処置するための医薬的組合せ

(a)抗腫瘍剤、および
(b)式 (I) により表される脂肪酸誘導体を含む、医薬的組み合わせを開示する。
本発明の組合せは、哺乳類対象において腫瘍の処置に有用である。本願は、式 (I) の脂肪酸誘導体を含む組成物、ならびに損傷、特に抗腫瘍剤により誘導された粘膜炎を含む胃腸の損傷を処置するための方法も提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類対象における腫瘍を処置するための、抗腫瘍剤および脂肪酸誘導体の医薬的組み合わせに関する。本発明は、哺乳類対象における腫瘍を処置するための方法にも関する。本発明はさらに、損傷、特に抗腫瘍剤により誘導される口内炎などの粘膜炎をふくむ胃腸の損傷を処置するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
腫瘍性疾患は、深刻な、かつ多くの場合に致命的な症状であると世界中で認識されている。これらの腫瘍性疾患は、該腫瘍性疾患に罹患している患者の処置に有効である治療剤の同定を目的とした世界的な研究努力の対象となっており、また対象であり続けている。
【0003】
腫瘍性疾患を処置するための様々な抗腫瘍剤がある。例えば、5-フルオロウラシル(以後、"5-FU"として示す)は、腫瘍性疾患の処置において薬剤として使用されるピリミジン類似体の構造を有する代謝拮抗物質である。その主要用途は、胃腸癌、例えば、胃癌、結腸癌、直腸癌および膵臓癌である。他の用途は、例えば、肝臓癌、乳癌、子宮癌および卵巣癌である。化学療法剤の5-FUは、主にチミジル酸シンターゼ阻害剤として作用する。チミジル酸シンターゼ阻害剤には、5-FU、カペシタビン、テガフール、カルモフール、フロキシウリジンなどが挙げられる。テガフールは、生体内で活性化された場合に、5-FUを放出することが知られている。5-FUは、生体内での5-FUの長期的存在により、口腔および腸内などの消化器官における損傷を引き起こすという深刻な問題を有することが知られている。5-FU 単独の連続的な静脈内点滴を受容する患者は、それらの損傷を経験することが多い。
【0004】
シスプラチン、シスプラチナム、またはシス-ジアンミンジクロロプラチナム(II)(CDDP)は、精巣腫瘍、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、食道癌、頚部癌、胃癌、骨肉腫、リンパ腫、および胚細胞腫瘍をふくむ様々な癌種を処置するために使用される白金を基にした化学療法剤である。それは、カルボプラチン、ネダプラチンおよびオキサリプラチンをも現在ふくむ抗癌剤の分類の最初のメンバーであった。これらの白金複合体は、インビボで反応し、結合して、アポトーシス(プログラムされた細胞死)を最終的に引き起こすDNAの架橋を引き起こす。
【0005】
一般的に、これらの抗腫瘍剤の重度の副作用は、用量漸増を制限し、より高い治療効果の達成を妨げる。
【0006】
治療効果を改善するために、異なるメカニズムおよび異なる副作用を有する複数の薬剤の数種の組合せが提案される。しかし、癌患者の生存期間をさらに延ばし、癌患者のQOLを改善するような、より強力な薬剤および治療方法が依然として強く望まれている。
【0007】
プロスタグランジンン類(以後、PG(類)と示す)は、ヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含まれており、広範な生理学的活性を示す脂肪酸誘導体、即ち有機カルボン酸分類群のメンバーである。天然に存在するPG類(天然PG類)は、一般的に式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する:
【化1】

【0008】
一方、天然PG類の幾つかの合成類似体は修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和結合の数と位置によって、以下の3つのタイプに分類される。
下付1:13,14−不飽和−15−OH
下付2:5,6−および13,14−ジ不飽和−15−OH
下付3:5,6−、13,14−および17,18−トリ不飽和−15−OH。
【0009】
さらに、PGF類は9位のヒドロキシ基の配置によってαタイプ(ヒドロキシ基がα配置である)およびβタイプ(ヒドロキシ基がβ配置である)に分類される。
【0010】
PG類は、様々な薬理学的および生理学的活性、例えば、血管拡張、炎症の誘導、血小板凝集、子宮筋の刺激、腸筋肉の刺激、抗潰瘍効果などを有することが知られている。
【0011】
幾つかの15−ケト−PG類(すなわち、ヒドロキシ基の代わりに15位にオキソ基を持つ)および13,14−ジヒドロ−15−ケト−PG類(すなわち、13および14位間に単結合を持つ)は、天然PG類の代謝中に酵素の作用によって自然に生成する物質として知られる脂肪酸誘導体である。
【0012】
ウエノらによる米国特許出願公開番号2006/0281818は、特定のプロスタグランジン化合物が胃腸粘膜のバリヤー機能の回復をもたらすTJの立体配座変化に対して有意な効果を有することを記述している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開番号2006/0281818
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
(本発明の開示)
本発明の目的は、抗腫瘍剤により誘導される毒性の副作用を低下することにより、腫瘍に対してより高い治療効果を達成するための方法または医薬を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、抗腫瘍剤により誘導される疾患または症状を処置するための方法または医薬を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、粘膜炎を処置するための方法または医薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、以下を含む医薬的組み合わせに関する:
(a) 医薬的有効量の、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗生物質、植物アルカロイド、分子標的薬、ホルモン、白金複合体、アンチセンス、抗体およびRNAiからなる群から選択される抗腫瘍剤、ならびに
(b) 医薬的有効量の式(I)により示される脂肪酸誘導体:
【化2】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよく;
Aは、-CH3、または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH-、-C≡C-CH2-または-CH2-C≡C-であり;
Zは、
【化3】

または単結合であり、
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはなく;
R1は、非置換、またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよく;そして
Raは、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基によって置換された、飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基である。]。
【発明の効果】
【0018】
抗腫瘍剤および式(I)の脂肪酸誘導体を組み合わせることにより、抗腫瘍剤の効果は増大する、および/または抗腫瘍剤の副作用が良好に抑制される。
【0019】
本発明の別の側面において、医薬的に適切な賦形剤と共に、以下を含む医薬組成物を提供する:
(a) 医薬的有効量の、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗生物質、植物アルカロイド、分子標的薬、ホルモン、白金複合体、アンチセンス、抗体およびRNAiからなる群から選択される抗腫瘍剤、ならびに
(b) 医薬的有効量の式(I)により表される脂肪酸誘導体。
【0020】
本発明によると、2つの成分を含む組成物は、成分(a)および(b)の両方を含む単一用量単位、または成分(a)および(b)を別々に含む別個の用量単位に製剤化してもよい。
【0021】
さらに、本発明は、腫瘍を処置するための、以下の組み合わせを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する:
(a)医薬的有効量の、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗生物質、植物アルカロイド、分子標的薬、ホルモン、白金複合体、アンチセンス、抗体およびRNAiからなる群から選択される抗腫瘍剤、および
(b)医薬的有効量の式(I)により表される脂肪酸誘導体。
【0022】
本発明によると、成分(a)および(b)は、同時に、別個にまたは逐次に投与され得る。
【0023】
さらに、本発明は、哺乳類対象における毒性の副作用、例えば抗腫瘍剤により誘導される粘膜炎をふくむ胃腸の損傷を処置するための、医薬的有効量の式 (I) により表される脂肪酸誘導体を含む組成物を提供するものであって、ここで処置される対象は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗生物質、植物アルカロイド、分子標的薬、ホルモン、白金複合体、アンチセンス、抗体およびRNAiからなる群から選択される抗腫瘍剤を受容している。
【0024】
またさらに、本発明は、医薬的有効量の式 (I) により表される脂肪酸誘導体を含む、哺乳類対象における口内炎などの粘膜炎を処置するための組成物も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の詳細な説明)
(a)抗腫瘍剤
本発明において言及される抗腫瘍剤は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗生物質、植物アルカロイド、分子標的薬、ホルモン、白金複合体、アンチセンス、抗体およびRNAiからなる群から選択される。
【0026】
抗腫瘍剤の例は、アルキル化剤、例えば、シクロホスファミドおよびブスルファン;代謝拮抗物質、例えば、メトトキサレート、6-メルカプトプリン(6-MP)、アザチオプリン、フルオロウラシル(5-FU)、テガフールおよびシトシンアラビノシド(ara-C);抗生物質、例えば、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、アドリアマイシンおよびアクチノマイシンD;植物アルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシドおよびイリノテカン;分子標的治療薬、例えば、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、ゲムツズマブ-オゾガマイシン、べバシズマブおよびセツキシマブ;ホルモン、例えば、プレドニゾロン、ジエチルスチルベストロールおよびタモキシフェン;白金複合体、例えば、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチン;アンチセンス、例えば、bcl-2 アンチセンス、例えばG3139、hsp27 アンチセンス、例えばOGX427、XIAP アンチセンス、例えばAEG35156、PKC-αアンチセンス、例えばLY900003、低酸素誘導因子アンチセンス、例えばEZN-2968;抗体、例えば、CD20 抗体、例えばリツキシマブ、Her2 抗体、例えばトラスツズマブ、VEGF抗体、例えばベバシズマブ、EGFR 抗体、例えばセツキシマブ:RNAi、例えば、RNAi 標的化リボヌクレオチドレダクターゼ、例えばCALAA-01、である。抗腫瘍剤の好ましい例は、5-FU、テガフールおよびシスプラチンを含む。
【0027】
(b)脂肪酸誘導体
本明細書において用いる脂肪酸誘導体の命名は、上記式(A)に示したプロスタン酸の番号付け系に基づく。
【0028】
式(A)は、C-20炭素原子の基本骨格を示すが、本発明は同じ炭素原子数を持つものに限定されない。式(A)において、PG化合物の基本骨格を構成する炭素原子の番号は、カルボン酸から始まり(1と番号付け)、5員環に向かって2〜7をα鎖上の炭素原子に、8〜12を5員環の炭素原子に、13〜20をω鎖上の炭素原子に付している。炭素原子数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消し;α鎖上で炭素原子数が増加する場合、2位にカルボキシ基(C-1)に代わる各置換基を有する置換化合物として化合物を命名する。同様に、ω鎖上で炭素原子数が減少する場合、20位から番号を順次抹消し;ω鎖上で炭素原子数が増加する場合、20位を超える炭素原子は置換基として命名する。化合物の立体配置は、特に断りのない限り、上記式(A)と同じである。
【0029】
一般に、PGD、PGEおよびPGFなる用語はそれぞれ、9位および/または11位にヒドロキシ基を有するPG化合物を表すが、本明細書および特許請求の範囲では、9位および/または11位にヒドロキシ基以外の置換基を有するものも含む。かかる化合物は9-デヒドロキシ-9-置換-PG化合物または11-デヒドロキシ-11-置換-PG化合物と称する。ヒドロキシ基の代わりに水素を有するPG化合物は、単に9-または11-デオキシ-PG化合物と命名する。
【0030】
上述のように、PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいている。しかし、化合物がプロスタグランジンと類似の部分的構造を有する場合には、「PG」の略語を利用することがある。従って、α鎖の炭素原子が2個延長されたPG化合物、すなわち、α鎖の炭素原子数が9であるPG化合物は、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-PG化合物と命名する。同様に、α鎖の炭素原子数が11であるPG化合物は、2-デカルボキシ-2-(4-カルボキシブチル)-PG化合物と命名する。また、ω鎖の炭素原子が2個延長されたPG化合物、すなわち、ω鎖の炭素原子数が10であるPG化合物は、20-エチル-PG化合物と命名する。なお、これらの化合物はIUPAC命名法に基づいて命名することも可能である。
【0031】
類似体(置換誘導体を含む)または誘導体の例は、α鎖末端のカルボキシ基がエステル化されたPG化合物;α鎖が延長された化合物;それらの生理学的に許容される塩;2-3位に二重結合を、または5-6位に三重結合を有する化合物、3、5、6、16、17、18、19および/または20位に置換基を有する化合物;9位および/または11位にヒドロキシ基の代わりに低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物などである。
【0032】
本発明によると、3、17、18および/または19位の好ましい置換基には、1-4炭素原子を有するアルキル、特にメチルおよびエチルなどがある。16位の好ましい置換基には、低級アルキル、例えばメチルおよびエチル、ヒドロキシ、ハロゲン原子、例えば塩素およびフッ素、およびアリールオキシ、例えばトリフルオロメチルフェノキシなどがある。17位の好ましい置換基には、低級アルキル、例えばメチルおよびエチル、ヒドロキシ、ハロゲン原子、例えば塩素およびフッ素、アリールオキシ、例えばトリフルオロメチルフェノキシなどがある。20位の好ましい置換基には、飽和または不飽和の低級アルキル、例えばC1-4アルキル、低級アルコキシ、例えばC1-4アルコキシ、および低級アルコキシアルキル、例えばC1-4アルコキシ-C1-4アルキルなどがある。5位の好ましい置換基には、ハロゲン原子、例えば塩素およびフッ素などがある。6位の好ましい置換基には、カルボニル基を形成するオキソ基などがある。9位および/または11位にヒドロキシ、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有するPG類の立体配置は、α、βまたはそれらの混合であり得る。
【0033】
さらに、上記の類似体または誘導体は、天然のPG類よりもω鎖が短く、そのω鎖末端にアルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、フェノキシまたはフェニル基を有する化合物であってもよい。
【0034】
本発明において用いられる脂肪酸誘導体は式(I)により表される:
【化4】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよく;
Aは、-CH3、または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH-、-C≡C-CH2-または-CH2-C≡C-であり;
Zは、
【化5】

または単結合であり、
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはなく;
R1は、非置換、またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよく;そして
Raは、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基によって置換された、飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基である。]。
【0035】
本発明において用いられる好ましい化合物は式(II)により表される:
【化6】

[式中、LおよびMは水素原子、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、5員環は1以上の二重結合を有してもよく;
Aは、-CH3、または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH-、-C≡C-CH2-または-CH2-C≡C-であり;
Zは、
【化7】

または単結合であり;
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはなく;
X1およびX2は、水素、低級アルキル、またはハロゲンであり;
R1は、非置換、またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよく;
R2は、単結合または低級アルキレンであり;そして
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基である。]。
【0036】
上式において、R1およびRaについての定義における「不飽和」なる用語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間に孤立して、分離してまたは連続して存在する、少なくとも1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を含むことを意図している。通常の命名法に従って、2つの連続した位置の間の不飽和結合は、2つの位置の若い数を表示することによって表され、2つの遠位の間の不飽和結合は、その両方の位置を表示することにより表される。
【0037】
「低〜中級の脂肪族炭化水素」なる用語は、1〜14の炭素原子(側鎖においては、1〜3炭素原子が好ましい)、好ましくは1〜10、特に1〜8の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。
【0038】
「ハロゲン原子」なる用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0039】
「低級」なる用語は、本明細書を通して、特に断りのない限り、1〜6の炭素原子を有する基を含むことを意図する。
【0040】
「低級アルキル」なる用語は、1〜6の炭素原子を含有する、直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0041】
「低級アルキレン」なる用語は、1〜6の炭素原子を含有する、直鎖または分枝鎖の、二価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t-ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
【0042】
「低級アルコキシ」なる用語は、低級アルキル-O-の基を意味し、ここで低級アルキルは上記に定義されるとおりである。
【0043】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」なる用語は、少なくとも1つのヒドロキシ基、例えばヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチルおよび1-メチル-1-ヒドロキシエチルにより置換されている、上記に定義される低級アルキルを意味する。
【0044】
「低級アルカノイルオキシ」なる用語は、式RCO-O-により表される基を意味し、ここでRCO-は、上記に定義される低級アルキル基の酸化により形成されるアシル基、例えばアセチルである。
【0045】
「シクロ(低級)アルキル」なる用語は、上記に定義されるが、3以上の炭素原子を含有する、低級アルキル基の環化により形成される環状基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0046】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」なる用語は、シクロ(低級)アルキル-O-の基を意味し、ここでシクロ(低級)アルキルは上記に定義されるとおりである。
【0047】
「アリール」なる用語は、非置換または置換芳香族炭化水素環(好ましくは単環式の基)、例えば、フェニル、トリル、キシリルを含み得る。置換基の例は、ハロゲン原子およびハロ(低級)アルキルであり、ここでハロゲン原子および低級アルキルは上記に定義される通りである。
【0048】
「アリールオキシ」なる用語は、式ArO-により表される基を意味し、ここでArは上記に定義されるアリールである。
【0049】
「複素環基」なる用語は、所望により置換された炭素原子、および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1種または2種のヘテロ原子を1〜4、好ましくは1〜3個有する、5〜14、好ましくは5〜10員環の、単環式から三環式の、好ましくは単環式の複素環基を含み得る。複素環基の例は、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、2−ピロリニル、ピロリジニル、2−イミダゾリニル、イミダゾリジニル、2−ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、インドリル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、プリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾリニル、ベンゾチアゾリル、フェノチアジニルを含む。この場合、置換基の例は、ハロゲン、およびハロゲン置換低級アルキル基を含み、ここでハロゲン原子および低級アルキル基は上記の通りである。
【0050】
「複素環オキシ基」なる用語は、式HcO-により表される基を意味し、ここでHcは上記に記載の複素環基である。
【0051】
「官能性誘導体」なる用語は、塩(好ましくは医薬的に許容される塩)、エーテル、エステルおよびアミドを含む。
【0052】
適切な「医薬的に許容される塩」は、慣用される非毒性塩、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩等、の無機塩基との塩;または、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等、の有機塩基との塩を含む。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によって、または塩交換によって調製し得る。
【0053】
エーテルの例には、アルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t-ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1-シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;およびオクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中〜高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1-メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;フェニルエーテル、トシルエーテル、t-ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4-ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルなどがある。
【0054】
エステルの例には、脂肪族エステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、1-シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1-メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステル;および、例えばフェニルエステル、トリルエステル、t-ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4-ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;およびベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルなどがある。
【0055】
Aのアミドは、式-CONR'R''で表される基を意味する。ここで、R'およびR''はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキルもしくはアリールスルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニルであり、例えば、メチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリドおよびトルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミドおよびトリルスルホニルアミド等のアルキルもしくはアリールスルホニルアミド等を含む。
【0056】
好ましいLおよびMの例には、水素、ヒドロキシおよびオキソが含まれ、特に、Mがヒドロキシまたは水素であり、Lがオキソである。
【0057】
好ましいAの例は、-COOH、その医薬的に許容される塩、エステルまたはアミドである。
【0058】
好ましいX1およびX2の例は、両方がハロゲン原子、より好ましくはフッ素原子であり、16,16-ジフルオロ型と称される。
【0059】
好ましいR1は、1-10の炭素原子、好ましくは6-10の炭素原子を含有する炭化水素残基である。さらに、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は、所望により酸素、窒素または硫黄により置換される。
【0060】
R1の例には、例えば、以下の基が含まれる:
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-、
-CH2-C≡C-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-、
-CH2-CH=CH-CH2-O-CH2-、
-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-、
-CH2-C≡C-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-、
-CH2-C≡C-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、および
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-CH2-。
【0061】
好ましいRaは、1-10の炭素原子、より好ましくは1-8の炭素原子を含有する炭化水素である。Raは1の炭素原子を有する1または2の側鎖を有し得る。
【0062】
好ましい化合物は、式(I)においてRaがハロゲンにより置換されており、および/またはZがC=Oである化合物、もしくは式(II)においてX1およびX2の1つがハロゲンにより置換されており、および/またはZがC=Oである化合物をふくむ。
【0063】
好ましい実施形態の例は、(-)-7-[(2R,4aR,5R,7aR)-2-(1,1-ジフルオロペンチル)-2-ヒドロキシ-6-オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル]ヘプタン酸、(-)-7-{(2R,4aR,5R,7aR)-2-[(3S)-1,1-ジフルオロ-3-メチルペンチル]-2-ヒドロキシ-6-オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル}ヘプタン酸および(-)-7-[(1R,2R)-2-(4,4-ジフルオロ-3-オキソオクチル)-5-オキソシクロペンチル]ヘプタン酸またはその官能性誘導体である。
【0064】
上記の式(I)および(II)において環およびαおよび/またはω鎖の立体配置は、天然のPG類の立体配置と同じかまたは異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの立体配置を有する化合物および非天然タイプの立体配置の化合物の混合物も含む。
【0065】
本発明において、13および14位の間にジヒドロを有し、15位にケト(=O)を有する脂肪酸誘導体は、11位のヒドロキシと15位のケトの間にヘミアセタールが形成されることにより、ケト-ヘミアセタール平衡の状態にある場合がある。
【0066】
例えば、X1およびX2の両方がハロゲン原子、特にフッ素原子である場合は、その化合物は互変異性体として二環式化合物を含むことが確認されている。
【0067】
かかる上記の互変異性体が存在する場合、両互変異性体の比率は分子の残りの構造または存在する置換基の種類により変動する。場合により、一方の異性体が他方と比較して圧倒的に存在することもある。しかし、本発明は両方の異性体を含むと解されたい。
【0068】
さらに、本発明において用いられる脂肪酸誘導体は、二環式化合物およびその類似体または誘導体を含む。
【0069】
二環式化合物は、式(III)により表される:
【化8】

[式中、Aは、-CH3、または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
X1'およびX2'は、水素、低級アルキル、またはハロゲンであり;
Yは、
【化9】

であり、
ここで、R4'およびR5'は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4'およびR5'が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはなく、
R1は、非置換、またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよく;
R2'は、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基により置換された、飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基であり;
R3'は水素、低級アルキル、シクロ(低級)アルキル、アリールまたは複素環基である。]。
【0070】
さらに、本発明において用いられる化合物は、異性体の存在の有無にかかわらずケト型に基づく式または名称により表し得るが、かかる構造または名称はヘミアセタール型の化合物を除外することを意図するものではないことに留意されたい。
【0071】
本発明においては、いずれかの異性体、例えば、個々の互変異性体、それらの混合物、または光学異性体、それらの混合物、ラセミ混合物、および他の立体異性体を、同じ目的に用いることが可能である。
【0072】
本発明で使用した幾つかの化合物は、米国特許第5,073,569号、第5,166,174、第5,221,763号、第5,212,324号、第5,739,161号および第6,242,485号に開示されている方法により調製され得る(これらの引用文献は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0073】
医薬的に適切な賦形剤
本発明によると、本組み合わせの各々の成分は、医薬組成物を提供するために、一緒または別個にて任意の形態に製剤化されてもよい。よって、医薬的に適切な賦形剤は、望ましい組成物の形態に応じて選択すればよい。本発明によると、「医薬的に適切な賦形剤」は、本発明の活性成分と混合されてその製剤に適する不活性物質を意味する。
【0074】
例えば、本発明の経口投与のための固体組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉末剤、顆粒等を含み得る。かかる固体組成物においては、1またはそれ以上の活性成分は、少なくとも1つの不活性な希釈剤、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(magnesium aluminate metasilicate)等と混合され得る。通常の後処理に従って、組成物は不活性な希釈剤以外の添加物、例えば、ステアリン酸マグネシウムのような滑剤;線維性グルコン酸カルシウムなどの崩壊剤;シクロデキストリン、例えば、α、β−またはγ−シクロデキストリンなどの安定化剤;ジメチル−α−、ジメチル−β−、トリメチル−β−またはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのエーテル化シクロデキストリン;グルコシル−、マルトシル−シクロデキストリンなどの分枝鎖シクロデキストリン;ホルミル化シクロデキストリン、硫黄含有シクロデキストリン;リン脂質等を含み得る。上記シクロデキストリンを使用したとき、シクロデキストリンとの包接化合物が形成され、安定性を増強し得ることもある。あるいは、リン脂質がリポソームを形成するために使用されることもあり、その結果安定性が増強される。
【0075】
錠剤または丸薬は、必要とされれば、糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の、胃または腸で可溶なフィルムで被覆され得る。さらに、それらは、ゼラチンのような吸収可能な物質でカプセルとして形成され得る。好ましくは、組成物は、脂肪酸誘導体および中鎖脂肪酸トリグリセリドの液体内容物を含むソフトゼラチンカプセル中に製剤化される。本発明で使用される中鎖脂肪酸トリグリセリドの例は、側鎖を有し得る6-14の炭素原子を有する、飽和または不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含む。好ましい脂肪酸は、直鎖飽和脂肪酸であり、例えば、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)およびミリスチン酸(C14)である。さらに、2またはそれ以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドが、組み合わされて使用され得る。さらに、適切な賦形剤は、国際公開第01/27099号に開示されている。
【0076】
経口投与のための液体組成物は、医薬的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップ、またはエリキシルならびに一般的に使用される不活性な希釈剤であり得る。このような組成物は、不活性な希釈剤に加えて、アジュバント、例えば滑剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、保存剤、可溶化剤、抗酸化剤等を含み得る。添加物の詳細は、医薬分野のいずれかの一般的な教科書に記載されているものから選択され得る。このような液体組成物は、直接ソフトカプセル内に充填され得る。本発明によると、非経口投与、例えば坐薬、浣腸等のための溶液には、滅菌した、水性または非水性の溶液、懸濁液、乳液、界面活性剤等が含まれる。水性の溶液および懸濁液には、例えば、蒸留水、生理食塩水およびリンゲル液が含まれる。
【0077】
非水性溶液および懸濁液には、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪酸トリグリセリド、および植物油、例えばオリーブオイル、アルコール、例えばエタノール、ポリソルベートなどが含まれる。かかる組成物は、アジュバント、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、抗酸化剤などを含有してもよい。
【0078】
非経口投与のための本発明の注射用組成物の例には、滅菌した水性もしくは非水性溶液、懸濁液および乳液などがある。水性溶液または懸濁液のための希釈剤には、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水およびリンゲル液などがあり得る。
【0079】
溶液および懸濁液のための非水性希釈剤には、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油など)、アルコール(エタノールなど)およびポリソルベートなどがあり得る。組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤などの添加剤をさらに含んでもよい。それらは、例えば細菌保留フィルターを通して濾過することによって、滅菌剤を配合することによって、またはガスもしくは放射性同位体照射滅菌によって滅菌してもよい。注射用組成物は、滅菌粉末組成物として提供し、使用前に注射用の滅菌溶媒に溶解させることもできる。
【0080】
本発明の組成物は、噴霧組成物の形態であってもよく、これは公知の方法に従って製造することができる。
【0081】
本発明の組成物は、経鼻製剤の形態であってもよい。経鼻製剤の例には、1以上の活性成分を含む水性または油性の溶液剤、懸濁剤または乳液剤であってもよい。吸入による活性成分の投与のために、本発明の組成物は、エーロゾルを提供し得る懸濁剤、溶液剤または乳液剤の形態か、または乾燥粉末の吸入に好適な粉末の形態であってもよい。吸入投与のための組成物は、慣用されるプロペラントをさらに含み得る。
【0082】
外用剤の例には、皮膚科学および耳鼻咽喉科学の分野において用いられるあらゆる外用製剤が含まれ、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ローション剤、パッチおよびスプレー剤などがある。
【0083】
本発明の組成物の別の形態は坐剤または腟坐剤であり、これらは通常用いられる基剤、例えば体温で軟化するカカオバターに活性成分を混合することによって調製することができ、吸収性を向上させるために適切な軟化温度を有する非イオン性界面活性剤を用いてもよい。
【0084】
本発明の方法によると、本発明の組成物は、経口または非経口投与(坐剤、浣腸などを含む)によって全身的にまたは局所的に投与することができる。所望の用量を達成するために単一のまたは複数の組成物を投与してもよい。
【0085】
本発明において用いる場合、「組合せ物を投与すること」または「組合せを投与する」なる表現は、双方の成分が単一の物(entity)または投薬形態にて同時に対象に投与されること、または双方の成分が、別個の物として同時にまたは逐次的に特定の時間的制限なしに患者に投与されることを意味し、かかる投与によって治療的に有効なレベルの2成分が体内に、好ましくは同時に提供される。
【0086】
本発明によると、哺乳類対象における腫瘍は、本発明の組合せを投与することにより本発明により処置され得る。哺乳類対象は、ヒト患者を含むいずれの対象であってもよい。組成物は、全身的または局所的に適用され得る。通常、化合物は、経口投与、経鼻投与、吸入投与、静脈内注射(点滴を含む)、皮下注射、直腸内投与、膣内投与、経皮投与により投与されうる、ならびに液体、軟膏、ペーストまたはパッチなどを含む外用剤であってもよい。
【0087】
各成分の用量は、動物の系統、年齢、体重、処置される症状、所望の治療効果、投与経路、処置期間などに応じて変化し得る。該組合せを1日に1-4回全身投与または連続投与することにより、満足のいく効果を得ることができる。該組合せの成分(a)の量は、例えば、テガフールについては約0.1〜約100 mg/kg/日、好ましくは約0.5〜約30 mg/kg/日;5-FUについては0.1〜約100 mg/kg/日、好ましくは約10〜約40 mg/kg/日;シスプラチンについては、0.1〜100 mg/kg/日、好ましくは5〜30 mg/kg/日であってもよい。成分(b)または式 (I) の脂肪酸誘導体の量は、約0.00001-500 mg/kg/日、より好ましくは0.001-1000 μg/kg/日、および特に0.01-100 μg/kg/日であってもよい。式 (I) の脂肪酸誘導体の局所用製剤は、該組成物の全量に基づいて、0.000001-10.0%、より好ましくは0.00001-5.0重量%であってもよい。
【0088】
本発明の組合せは、1日あたり、1回または2-4の分割用量で投与され得る。注射用溶液の形態、例えば静脈内注射のための注射用溶液の場合には、必要であれば、該組成物は、生理食塩水または注射用グルコース溶液を用いて希釈されてもよく、該組成物は、5分または5分以上にわたり成人のヒト対象に徐々に投与される。坐薬形態の場合には、該組成物は、1日に1回または2回、6〜12時間の間隔、直腸に挿入することにより、成人ヒト対象に投与される。
【0089】
また、哺乳類対象において抗腫瘍剤により誘導される損傷は、式 (I) の脂肪酸誘導体を含む組成物を投与することにより処置され得る。この実施形態において、式 (I) の脂肪酸誘導体を含む該組成物は、上記したとおり同じ方法により製造および投与され得る。
【0090】
本明細書において用いられる「処置」または「処置すること」なる用語は、予防、治療、症状の軽減、症状の減退および進行停止などのあらゆる管理手段を含む。
【0091】
本発明の組合せにより処置される腫瘍の型は、頭頸部癌、胃腸癌、例えば食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌(大腸癌)および膵臓癌、肝臓癌、胆嚢/胆管癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、咽頭癌、腎臓癌、卵巣癌などであり得るが、これらに限定するものではない。特に、顕著な効果が胃腸癌に対して期待できる。
【0092】
本発明によると、抗腫瘍剤自体の毒性を顕著に増加させずに、活性成分としての抗腫瘍剤の抗腫瘍効果を、有意に増強し得る。
【0093】
さらに、本発明によれば、脂肪酸誘導体は、毒性の副作用、特に抗腫瘍剤により誘導される胃腸の損傷を低下または予防するために有用である。抗腫瘍剤により誘導される胃腸の損傷とは、粘膜炎、例えば口内炎、腸炎、胃腸の潰瘍、膵炎、肝臓障害および胆管障害であり得る。
【0094】
本発明の医薬組成物は、それらが本発明の目的を損なわない限り、その他の薬理成分をさらに含有していてもよい。
【0095】
本発明のさらなる詳細は、試験例を参照してすすめるが、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0096】
実施例1
5-FU 誘導性の毒性に対する化合物 A の効果
方法
馴化期間の一週間後、本実験を開始した(0日)。化合物 A ((-)-7-{(2R,4aR,5R,7aR)-2-[(3S)-1,1-ジフルオロ-3-メチルペンチル]-2-ヒドロキシ-6-オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル}ヘプタン酸)(3、10、30 μg/kg) またはビヒクルを、0日〜4日の5日間、1日に1回経口投与する(計画1)。
【0097】
別の投薬計画群には、化合物 A (30 μg/kg)を、4日〜6日まで1日に1回経口投与した(計画2)。
【0098】
5-FU (50 mg/kg) を、1日〜4日までの4日間、1日に1回腹腔内投与した。1日、2日、3日、および4日目に、5-FUを、化合物 A またはビヒクルの投与直後に投与した。実験期間中(0-7日)、動物の体重を毎日測定した。7日目に、動物をイソフルランにより麻酔した。回腸を摘出し、10% ホルマリン中に固定した。パラフィン埋法切片を調製し、組織損傷の組織学的評価のためにH&Eにより染色した。該組織損傷を、以下の基準に従って等級分けを行った:
0. 変化なし
1: 僅か
2: 軽度
3: 中程度
4: 重度
【0099】
各化合物の効果を、組織損傷の全スコアを用いて評価した。
【0100】
結果
各処置群の全スコアを、以下の表に示した。化合物 A は、投薬計画に関わらず、10 または30 μg/kgにて全スコアを低下した。これは、化合物 A が、該毒性に対して、特に胃腸毒性、例えば5-FUにより誘導される粘膜炎に効果があるということを示唆する。
【0101】
【表1】

【0102】
実施例2
口内炎に対する化合物 A の効果
方法
雄性のゴールデン・シリアン・ハムスター(5週齢)を使用した。1週間の馴化期間の後、該ハムスターに、5-フルオロウラシル(5-FU)(60 mg/kg)を腹腔内投与した(1日目)。5-FU 投与を、2日目に再度繰り返した。4日目に、ハムスターの頬嚢の粘膜を、麻酔下で、18ゲージの針の先端により表面を引掻くことにより物理的に刺激して、一時的な紅斑を生じさせた。8日および10日目に、同一の引掻く手順を行い、5-FU 投与を行った。24 μg/部位の用量にて化合物 A またはビヒクルを、1〜14日まで頬嚢に局所適用した。この処置期間中、頬嚢の粘膜を顕微鏡で観察し、頬粘膜の病変を、下記の基準に従って評点した(口内炎スコア):
0: 正常な粘膜
1: 紅斑が観察された
2: 重度の紅斑が観察された
3: 1以上の箇所において重度の紅斑および潰瘍の形成が観察された。
潰瘍の累積体積が頬粘膜の〜25%にあたる。偽膜形成は明白であった。
4: 重度の紅斑および潰瘍の形成が観察された。潰瘍の累積体積は、
頬粘膜のおよそ半分であった。粘膜の柔軟性がない。
5: 広範囲の、大きな潰瘍形成。粘膜の柔軟性がない。
頬嚢を口から部分的にしか抽出できない。
【0103】
口内炎の重症度を、処置群あたりの平均スコアを用いて評価した。
【0104】
結果
ビヒクルコントロール群と比較すると、化合物 A は、5-FU処置により悪化した口内炎を改善した。
【表2】

* p<0.05 vs. ビヒクルコントロール群(スチューデントのT検定)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)医薬的有効量の、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗生物質、植物アルカロイド、分子標的薬、ホルモン、白金複合体、アンチセンス、抗体およびRNAiからなる群から選択される抗腫瘍剤、ならびに
(b)医薬的有効量の式(I)により表される脂肪酸誘導体、
を含む、医薬的組み合わせ:
【化1】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよく;
Aは、-CH3、または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH-、-C≡C-CH2-または-CH2-C≡C-であり;
Zは、
【化2】

または単結合であり、
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはなく;
R1は、非置換、またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよく;そして
Raは、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基によって置換された、飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基である。]。
【請求項2】
Raがモノまたはジハロゲンにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
ZがC=Oである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項4】
Bが-CH2-CH2-であり、Raがモノまたはジハロゲンにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項5】
Bが-CH2-CH2-であり、ZがC=Oである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項6】
Bが-CH2-CH2-であり、ZがC=Oであり、Raがモノまたはジハロゲンにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項7】
Bが-CH2-CH2-であり、Raがモノまたはジフルオロにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項8】
ZがC=Oであり、Raがモノまたはジフルオロにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項9】
Bが-CH2-CH2-であり、ZがC=Oであり、Raがモノまたはジフルオロにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項10】
Lがオキソであり、Mが水素またはヒドロキシであり、Nが水素であり、Bが-CH2-CH2-であり、Raがモノまたはジハロゲンにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項11】
Lがオキソであり、Mが水素またはヒドロキシであり、Nが水素であり、ZがC=Oであり、Raがモノまたはジハロゲンにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項12】
Lがオキソであり、Mが水素またはヒドロキシであり、Nが水素であり、Bが-CH2-CH2-であり、ZがC=Oであり、Raがモノまたはジハロゲンにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項13】
Lがオキソであり、Mが水素またはヒドロキシであり、Nが水素であり、Bが-CH2-CH2-であり、R1が二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素であり、Raがモノまたはジフルオロにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項14】
Lがオキソであり、Mが水素またはヒドロキシであり、Nが水素であり、Bが-CH2-CH2-であり、ZがC=Oであり、R1が二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素であり、Raがモノまたはジフルオロにより置換されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項15】
脂肪酸誘導体が、(-)-7-[(2R,4aR,5R,7aR)-2-(1,1-ジフルオロペンチル)-2-ヒドロキシ-6-オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル]ヘプタン酸、(-)-7-{(2R,4aR,5R,7aR)-2-[(3S)-1,1-ジフルオロ-3-メチルペンチル]-2-ヒドロキシ-6-オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル}ヘプタン酸または(-)-7-[(1R,2R)-2-(4,4-ジフルオロ-3-オキソオクチル)-5-オキソシクロペンチル]ヘプタン酸またはその官能性誘導体である、請求項1に記載の組合せ。
【請求項16】
抗腫瘍剤が、5-FUまたはテガフールである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項17】
抗腫瘍剤が、シスプラチンである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項18】
組合せの成分が、同時に、別個にまたは逐次に投与される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項19】
腫瘍の処置のためである、請求項1-18のいずれか一項記載の組合せ。
【請求項20】
請求項1〜19項いずれか一項記載の組合せを、腫瘍の処置において同時に、別個にまたは逐次にそれを使用するための説明書とともに含む、商業的パッケージ。
【請求項21】
哺乳類対象において、抗腫瘍剤により誘導される損傷を処置するための、医薬的有効量の式(I)により表される脂肪酸誘導体を含む医薬組成物:
【化3】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよく;
Aは、-CH3、または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH-、-C≡C-CH2-または-CH2-C≡C-であり;
Zは、
【化4】

または単結合であり、
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはなく;
R1は、非置換、またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよく;そして
Raは、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基によって置換された、飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基である]
ここで、該対象は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗生物質、植物アルカロイド、分子標的薬、ホルモン、白金複合体、アンチセンス、抗体およびRNAiからなる群から選択される抗腫瘍剤を受容している。
【請求項22】
損傷が胃腸の損傷である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
胃腸の損傷が粘膜炎である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
粘膜炎が口内炎である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
哺乳類対象において粘膜炎を処置するための、医薬的有効量の式(I)により表される脂肪酸誘導体を含む医薬組成物:
【化5】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよく;
Aは、-CH3、または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH-、-C≡C-CH2-または-CH2-C≡C-であり;
Zは、
【化6】

または単結合であり、
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはなく;
R1は、非置換、またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよく;そして
Raは、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基によって置換された、飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基である。]。

【公表番号】特表2013−504520(P2013−504520A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514010(P2012−514010)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/JP2010/066619
【国際公開番号】WO2011/034210
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】