説明

腫瘍壊死因子α関連状態のRNAi媒介性の阻害

【課題】ドライアイおよび炎症のための更なる薬剤および治療方法、およびそのための代替療法を提供する。
【解決手段】腫瘍壊死因子α(TNFα)細胞表面レセプターであるTNFレセプター1(TNFR1)mRNA発現をサイレンシングするか、またはTNFα変換酵素(TACE/ADAM17)mRNA発現をサイレンシングすることによってTNFαを阻害するためのRNA干渉が提供される。このようなTNFα標的をサイレンシングすることは、特に、眼の状態であるドライアイ、アレルギー性結膜炎または眼の炎症など、または、皮膚炎、鼻炎または喘息など、のTNFα関連状態を有するか、またはTNFα関連状態を発症する危険性がある患者を治療するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2006年5月19日に出願された、表題RNAi−MEDIATED INHIBITION OF TUMOR NECROSIS FACTOR α−RELATED CONDITIONSの同時係属中の米国仮特許出願第60/801,788号(この本文は、本明細書に参考として具体的に援用される)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、腫瘍壊死因子α(TNFα)細胞表面レセプターであるTNFレセプター1(TNFR1)mRNAまたはTNFα変換酵素(TACE/ADAM17)mRNAをサイレンシングすることにより、TNFαをサイレンシングするための干渉RNA組成物の分野に関する。このようなTNFα標的をサイレンシングすることは、TNFα関連状態またはこのような状態を発現する危険性がある患者の治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
炎症は、一般には、ステロイド薬および/または非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)を含む標準的な抗炎症レジメンにより治療される。アレルギー性結膜炎、眼の炎症、皮膚炎、鼻炎および喘息は、歴史的には、経口もしくは鼻内ステロイド薬に加えて、またはその代わりに、経口、鼻内もしくは局所抗ヒスタミン薬のレジメンにより治療されてきた。全身治療には、典型的には、必要な治療部位に到達するのに有効な濃度を与えるために、より高い濃度の薬剤化合物を投与することが必要である。抗ヒスタミン化合物は、中枢神経系の活性を有することが知られており、眠気および粘膜の乾燥は、抗ヒスタミン薬の使用による一般的な副作用である。ステロイド薬およびNSAIDSは、眼圧上昇、白内障、緑内障または角膜融解などの潜在的な副作用を有する。
【0004】
乾性結膜炎または乾性角結膜炎としても知られているドライアイは、眼球前方の涙液膜の破損を伴い、結果として眼の露出した外側表面の脱水症を引き起こす一般的な眼科疾患である。今日まで、ドライアイは、人工涙液の局所投与により治療されてきた。これら涙液の中には、ムチン欠失患者のムチン層に一時的に取って代わるか、またはそれを補う粘液模倣(mucomimetic)物質を含有するものがある。メチルプレドニゾロンの使用が、ドライアイの増悪を治療するための短期間の「パルス」治療において提案されている。提案された「パルス」療法は、眼圧上昇および白内障形成などの炎症状態に対する伝統的なステロイド療法に付随する合併症を回避するのに必要とされる。
【0005】
サイトカインTNFαは、ドライアイおよびブドウ膜炎の抗炎症療法のための標的である。涙腺炎症により誘発されたドライアイのウサギモデルにおいて、眼球表面のTNFαレベルを特異的に調節することにより、角膜染色の阻害および涙液層破壊時間の回復が達成された。ドライアイ療法は、TNFα合成(RDP58)を阻害することによって、またはモノクローナル抗体(REMICADE(登録商標))または可溶性レセプター(ENBREL(登録商標))を使用してTNFαを特異的に中和することによって行われた。これらTNFαに対する治療の各々は、局所用の眼用抗炎症性ステロイド薬を用いて得られた有効性レベルをもたらした。
【0006】
特許文献1(2005年10月13日公開、McSwiggenら)は、RNA干渉によるTNFおよびTNFレセプター遺伝子発現の阻害に関する。しかしながら、この公報は、本明細書に記載されるようなRNA干渉のための特定の標的配列についてはいずれも教示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0227935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、ドライアイおよび炎症のための更なる薬剤および治療方法に対する当技術分野における希求に対処し、かつ、そのための代替療法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、ステロイド薬またはNSAIDSに関連する副作用を起こさずに、TNFα関連状態を極めて強力かつ有効に治療する、予防するまたはそれに介入することに関する。1つの態様では、本発明の方法は、TACE mRNAまたはTNFR1 mRNAの発現をサイレンシングする干渉RNAを投与し、これによってそれぞれ、TNFαに対する前駆体のタンパク質分解処理に干渉するか、または、その細胞表面レセプターに対するTNFαの結合に干渉し、それにより、TNFαの活性を減衰させ、アポトーシスおよび炎症に関連する事象のカスケードを防止することにより、TNFα関連状態を有するか、またはTNFα関連状態を発症する危険性がある被験体を治療することを含む。
【0010】
TNFα関連状態としては、ドライアイなどの状態およびTNFα関連炎症状態が挙げられる。TNFαに関連する炎症状態としては、眼の炎症、アレルギー性結膜炎、皮膚炎、鼻炎および喘息などの状態が挙げられ、かつ、直接的または間接的にTNFαに関連する炎症状態を引き起こすTNFαの活性に起因する細胞変化が挙げられる。TNFα関連状態としては、特に、ドライアイ、アレルギー性結膜炎および眼の炎症などのTNFαに関連する眼の状態が挙げられる。本明細書で提供される干渉RNAは、非特異的薬剤による望ましくない副作用を回避しつつ、TNFα標的であるTACE mRNAまたはTNFR1 mRNAのサイレンシングを提供する。
【0011】
被験体のTACE mRNAの発現を減衰させる方法が、本発明の実施形態である。この方法は、19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、前記被験体に投与することを含み、前記干渉RNAは、配列番号3、配列番号14〜配列番号58および配列番号155〜配列番号201のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目より13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性を有するか、または少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13の連続するヌクレオチドの領域を含む。これにより、前記TACE mRNAの発現が減衰される。
【0012】
TNFα関連状態を、その治療が必要な被験体において治療する方法が、本発明の実施形態である。この方法は、19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、前記被験体に投与することを含み、前記干渉RNAは、配列番号3、配列番号14〜配列番号58および配列番号155〜配列番号201のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目より13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性を有するか、または少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13の連続するヌクレオチドの領域を含む。これにより、前記TNFα関連状態が治療される。
【0013】
本発明の更に別の実施形態において、被験体のTACE mRNAまたはTNFR1 mRNAの発現を減衰させることによって前記被験体のTNFαの活性を減衰させる方法は、19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、前記被験体に投与することを含み、前記干渉RNAは、センスヌクレオチド鎖と、アンチセンスヌクレオチド鎖と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域とを含み、ここで、前記アンチセンス鎖は、生理学的条件下で、配列番号1に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【0014】
【化8】

を含む部分にハイブリダイズするか、または、前記アンチセンス鎖は、生理学的条件下で、配列番号2に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【0015】
【化9】

から始まる部分にハイブリダイズする。TACE mRNAの発現は、アンチセンス鎖が先に引用したような配列番号1に対応するmRNAの一部分にハイブリダイズするような実施形態において減衰される。TNFR1 mRNAの発現は、アンチセンス鎖が先に引用した配列番号2に対応するmRNAの一部分にハイブリダイズする実施形態において減衰される。
【0016】
TNFα関連状態を、その治療が必要な被験体において治療するための方法が本発明の実施形態であり、この方法は、19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、前記被験体に投与することを含み、前記干渉RNAは、センスヌクレオチド鎖と、アンチセンスヌクレオチド鎖と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域とを含み、前記アンチセンス鎖は、生理学的条件下で、配列番号1に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【0017】
【化10】

を含む部分にハイブリダイズする。これにより、前記TNFα関連状態が治療される。
【0018】
TNFαに関連する眼の状態を、その治療が必要な被験体において治療するための方法が本発明の実施形態であり、この方法は、19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、前記被験体に投与することを含み、前記干渉RNAは、センスヌクレオチド鎖と、アンチセンスヌクレオチド鎖と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域とを含み、前記アンチセンス鎖は、生理学的条件下で、配列番号2に対応する、ヌクレオチド
【0019】
【化11】

を含むmRNAの部分にハイブリダイズする。これにより、前記TNFα関連状態が治療される。
【0020】
更なる実施形態では、19〜49ヌクレオチドの長さを有する第二の干渉RNAを被験体に投与することもできる。第二の干渉RNAは、センスヌクレオチド鎖と、アンチセンスヌクレオチド鎖と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な相補性の領域とを含み、前記第二の干渉RNAのアンチセンス鎖は、生理学的条件下で、配列番号1に対応するmRNAの、先に引用したヌクレオチドを含む一部分にハイブリダイズするか、または、このアンチセンス鎖は、生理学的条件下で、配列番号2に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【0021】
【化12】

から始まる部分にハイブリダイズする。
【0022】
第一の干渉RNAが配列番号1を標的とするとき、第二の干渉RNAは、配列番号1または配列番号2のいずれかを標的としてもよく、逆に、第一の干渉RNAが配列番号2を標的とするとき、第二の干渉RNAは、配列番号1または配列番号2のいずれかを標的としてもよい。更なる実施形態では、第三、第四またはそれ以上の干渉RNAを投与してもよい。
【0023】
本発明の更なる実施形態は、TNFα関連状態を、その治療が必要な被験体において治療するための方法であって、この方法は、RNA干渉によりTACE遺伝子の発現を下方制御する二本鎖siRNA分子を含む組成物を、前記被験体に投与することを含み、前記siRNA分子の各鎖は、独立して、約19〜約27ヌクレオチドの長さであり、前記siRNA分子の一方の鎖が、前記TACE遺伝子に対応するmRNAと実質的な相補性を有するヌクレオチド配列を含み、これにより、前記siRNA分子はRNA干渉による前記mRNAの切断を誘導する。
【0024】
本発明の更なる実施形態は、TNFαに関連する眼の状態を、その治療が必要な対象者において治療するための方法であり、この方法は、RNA干渉によりTNFR1遺伝子の発現を下方制御する二本鎖siRNA分子を含む組成物を、前記被験体に投与することを含み、前記siRNA分子の各鎖は、独立して、約19〜約27ヌクレオチドの長さであり、前記siRNA分子の一方の鎖が、前記TNFR1遺伝子に対応するmRNAと実質的な相補性を有するヌクレオチド配列を含み、これにより、前記siRNA分子はRNA干渉による前記mRNAの切断を誘導する。
【0025】
被験体のTACE mRNAの発現を減衰させるための方法であって、有効量の一本鎖干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を前記被験体に投与することを含む方法が、更なる実施形態である。この一本鎖干渉RNAは、19〜49ヌクレオチドの長さを有し、かつ、生理学的条件下で、配列番号1に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【0026】
【化13】

を含む部分にハイブリダイズし、前記干渉RNAは、配列番号1に対応するmRNAの前記ハイブリダイズ部分と少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域を有する。これにより、前記TACE mRNAの発現が減衰される。
【0027】
本発明は、19〜49ヌクレオチドの長さを有し、かつ、配列番号3、配列番号14〜配列番号58および配列番号155〜配列番号201のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列またはその相補配列(complement)を含む干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、更なる実施形態として包含する。
【0028】
本発明は、配列番号59〜配列番号69、配列番号71〜配列番号92および配列番号94〜配列番号154のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列またはその相補配列から本質的になる干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、更なる実施形態として包含する。
【0029】
TNFαの活性を減衰させ、これにより、本明細書中に記載されるようなTNFα関連状態を治療する方法として、TACE mRNAまたはTNFR1 mRNAの発現を減衰させる薬剤を調製する際に、本明細書に記載される実施形態のいずれかを使用することも、本発明の実施形態である。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体のTACE mRNAの発現を減衰させるための薬剤を製造するための化合物の使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、該被験体に投与することを含み、
該干渉RNAが、配列番号3、配列番号14〜配列番号58および配列番号155〜配列番号201のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目より13ヌクレオチドに対して、少なくとも80%の配列相補性を有するか、または少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13、14、15、16、17または18の連続するヌクレオチドの領域を含み、
これにより、該TACE mRNAの発現が減衰される、使用。
(項目2)
上記干渉RNAが、shRNA、miRNAまたはsiRNAのうちの1つである、項目1に記載の使用。
(項目3)
上記組成物が、エアロゾル、頬、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所または経皮経路により投与される、項目1に記載の使用。
(項目4)
上記干渉RNAが、該干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのインビボ発現により投与される、項目1に記載の使用。
(項目5)
TNFα関連状態を、その治療が必要な被験体において治療するための薬剤を製造するための化合物の使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、該被験体に投与することを含み、
該干渉RNAが、配列番号3、配列番号14〜配列番号58および配列番号155〜配列番号201のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目より13ヌクレオチドに対して、少なくとも80%の配列相補性を有するか、または少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13、14、15、16、17または18の連続するヌクレオチドの領域を含み、
これにより、該TNFα関連状態が治療される、使用。
(項目6)
上記干渉RNAが、shRNA、miRNAまたはsiRNAのうちの1つである、項目5に記載の使用。
(項目7)
上記組成物が、エアロゾル、頬、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所または経皮経路により投与される、項目5に記載の使用。
(項目8)
上記干渉RNAが、該干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのインビボ発現により投与される、項目5に記載の使用。
(項目9)
上記被験体がヒトであり、該ヒトがドライアイを有するか、またはドライアイを発症する危険性がある、項目5に記載の使用。
(項目10)
上記被験体がヒトであり、該ヒトがTNFαに関連する炎症状態を有するか、またはTNFαに関連する炎症状態を発症する危険性がある、項目5に記載の使用。
(項目11)
被験体のTACE mRNAの発現を減衰させるための薬剤を製造するための化合物の使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、該被験体に投与することを含み、
該干渉RNAが、センスヌクレオチド鎖と、アンチセンスヌクレオチド鎖と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域とを含み、
該アンチセンス鎖が、生理学的条件下で、配列番号1に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【化1】


を含む部分にハイブリダイズし、
これにより、該TACE mRNAの発現が減衰される、使用。
(項目12)
被験体のTNFR1 mRNAの発現を減衰させるための薬剤を製造するための化合物の使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、該被験体に投与することを含み、
該干渉RNAが、センスヌクレオチド鎖と、アンチセンスヌクレオチド鎖と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域とを含み、
該アンチセンス鎖が、生理学的条件下で、配列番号2に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【化2】


から始まる部分にハイブリダイズし、
これにより、該TNFR1 mRNAの発現が減衰される、使用。
(項目13)
上記被験体がヒトであり、該ヒトがドライアイを有するか、またはドライアイを発症する危険性がある、項目12に記載の使用。
(項目14)
上記被験体がヒトであり、該ヒトがTNFα関連状態を有するか、またはTNFα関連状態を発症する危険性がある、項目12に記載の使用。
(項目15)
上記センスヌクレオチド鎖および上記アンチセンスヌクレオチド鎖が、ループ状のヌクレオチド鎖によって接続されている、項目12に記載の使用。
(項目16)
上記組成物が、エアロゾル、頬、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所または経皮経路により投与される、項目12に記載の使用。
(項目17)
上記干渉RNAが、該干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのインビボ発現により投与される、項目12に記載の使用。
(項目18)
TNFα関連状態を、その治療が必要な被験体において治療するための薬剤を製造するための化合物の使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、該被験体に投与することを含み、
該干渉RNAが、センスヌクレオチド鎖と、アンチセンスヌクレオチド鎖と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域とを含み、
該アンチセンス鎖が、生理学的条件下で、配列番号1に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【化3】


を含む部分にハイブリダイズし、
これにより、該TNFα関連状態が治療される、使用。
(項目19)
TNFαに関連する眼の状態を、その治療が必要な被験体において治療するための薬剤を製造するための化合物の使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、該被験体の眼に投与することを含み、
該干渉RNAが、センスヌクレオチド鎖と、アンチセンスヌクレオチド鎖と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域とを含み、
該アンチセンス鎖が、生理学的条件下で、配列番号2に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【化4】


を含む部分にハイブリダイズし、
これにより、該TNFαに関連する眼の状態が治療される、使用。
(項目20)
上記被験体がヒトであり、該ヒトがドライアイを有するか、またはドライアイを発症する危険性がある、項目19に記載の使用。
(項目21)
上記被験体がヒトであり、該ヒトがアレルギー性結膜炎または眼の炎症を有するか、またはアレルギー性結膜炎または眼の炎症を発症する危険性がある、項目19に記載の使用。
(項目22)
19〜49ヌクレオチドの長さを有し、かつ、センスヌクレオチド鎖と、アンチセンスヌクレオチド鎖と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な相補性の領域とを含む第二の干渉RNAを上記被験体に投与することを更に含み、
該第二の干渉RNAのアンチセンス鎖が、生理学的条件下で、配列番号2に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【化5】


を含む部分にハイブリダイズする、項目18に記載の使用。
(項目23)
19〜49ヌクレオチドの長さを有し、かつ、センスヌクレオチド鎖と、アンチセンスヌクレオチド鎖と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な相補性の領域とを含む第二の干渉RNAを上記被験体の眼に投与することを更に含み、
該第二の干渉RNAのアンチセンス鎖が、生理学的条件下で、配列番号1に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【化6】


を含む部分にハイブリダイズする、項目19に記載の使用。
(項目24)
上記センスヌクレオチド鎖および上記アンチセンスヌクレオチド鎖が、ループ状のヌクレオチド鎖によって接続されている、項目18に記載の使用。
(項目25)
上記組成物が、エアロゾル、頬、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所または経皮経路により投与される、項目18に記載の使用。
(項目26)
上記干渉RNAが、該干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのインビボ発現により投与される、項目18に記載の使用。
(項目27)
上記センスヌクレオチド鎖および上記アンチセンスヌクレオチド鎖が、ループ状のヌクレオチド鎖によって接続されている、項目19に記載の使用。
(項目28)
上記組成物が、エアロゾル、頬、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所または経皮経路により投与される、項目19に記載の使用。
(項目29)
上記干渉RNAが、該干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのインビボ発現により投与される、項目19に記載の使用。
(項目30)
TNFα関連状態を、その治療が必要な被験体において治療するための薬剤を製造するための化合物の使用であって、
RNA干渉によりTACE遺伝子の発現を下方制御する二本鎖siRNA分子を含む組成物を、該被験体に投与することを含み、
該siRNA分子の各鎖が、独立して、約19〜約27ヌクレオチドの長さであり、
該siRNA分子の一方の鎖が、該TACE遺伝子に対応するmRNAと実質的な相補性を有するヌクレオチド配列を含み、該siRNA分子がRNA干渉による該mRNAの切断を誘導する、使用。
(項目31)
TNFαに関連する眼の状態を、その治療が必要な被験体において治療するための薬剤を製造するための化合物の使用であって、
RNA干渉によりTNFR1遺伝子の発現を下方制御する二本鎖siRNA分子を含む組成物を、該被験体に投与することを含み、
該siRNA分子の各鎖が、独立して、約19〜約27ヌクレオチドの長さであり、
該siRNA分子の一方の鎖が、該TNFR1遺伝子に対応するmRNAと実質的な相補性を有するヌクレオチド配列を含み、該siRNA分子がRNA干渉による該mRNAの切断を誘導する、使用。
(項目32)
被験体のTACE mRNAの発現を減衰させるための薬剤を製造するための化合物の使用であって、
19〜49ヌクレオチドの長さを有する有効量の一本鎖干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物を、該被験体に投与することを含み、
該一本鎖干渉RNAが、生理学的条件下で、配列番号1に対応するmRNAの、ヌクレオチド
【化7】


を含む部分にハイブリダイズし、
該干渉RNAが、配列番号1に対応するmRNAの該ハイブリダイズ部分と少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域を有し、
これにより、該TACE mRNAの発現が減衰される、使用。
(項目33)
上記被験体がヒトであり、かつ、該被験体がTNFαに関連する眼の状態を有する、項目31に記載の使用。
(項目34)
上記組成物が、エアロゾル、頬、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所または経皮経路により投与される、項目31に記載の使用。
(項目35)
上記干渉RNAが、該干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのインビボ発現により投与される、項目31に記載の使用。
(項目36)
上記干渉RNAが、miRNAまたはsiRNAである、項目31に記載の使用。
(項目37)
上記siRNA分子の各鎖が、独立して、約19ヌクレオチド〜約25ヌクレオチドの長さである、項目29に記載の使用。
(項目38)
上記siRNA分子の各鎖が、独立して、約19ヌクレオチド〜約21ヌクレオチドの長さである、項目29に記載の使用。
(項目39)
19〜49ヌクレオチドの長さを有し、かつ、配列番号3、配列番号14〜配列番号58および配列番号155〜配列番号201のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列またはその相補配列(complement)を含む干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む、組成物。
(項目40)
配列番号59〜配列番号69、配列番号71〜配列番号92および配列番号94〜配列番号154のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列またはその相補配列から本質的になる干渉RNAと、医薬的に許容可能な担体とを含む、組成物。
(項目41)
上記干渉RNAが、shRNA、siRNAまたはmiRNAのうちの1つである、項目39に記載の組成物。
(項目42)
上記干渉RNAが、shRNA、siRNAまたはmiRNAのうちの1つである、項目40に記載の組成物。
【0030】
本発明の上述の利点や目的および他の利点や目的を得るために、添付図面において例証されるその特定実施形態を参照して、上で簡単に述べた本発明をより具体的に説明する。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示すものであり、故に、本発明の範囲を制限するものと考えるべきではないという理解のもと、添付図面を用いることにより、本発明を更に具体的かつ詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で引用される参考文献は、これらの文献が本明細書に記載される事項を補足する例示的手順または他の詳細事項を提供する限りにおいて、参照により本明細書に組み込まれている。
【0032】
当業者は、本明細書の開示に照らし、本発明の精神および範囲を逸脱することなく本明細書に開示される実施形態の明らかな変更を行うことができることを理解するであろう。本明細書に開示される実施形態は全て、本明細書の開示に照らして、過度の実験を行うことなく創出および実行することができる。本発明の全範囲は、本明細書の開示およびその同等な実施形態において明示される。本明細書は、本発明に与えられる保護範囲全体を不当に狭めるものと解釈すべきではない。
【0033】
本明細書に示される詳細事項は、一例として、本発明の好ましい実施形態を例証するためだけのものであり、最も有用であると考えられているものを提供し、かつ本発明の多様
な実施形態の原理および概念的態様についての説明を容易に理解させるために提示されている。この点で、本発明の根本的な理解のために必要であるよりも詳細に本発明の構造を細部まで示そうとする試みはなされておらず、本説明を、図面および/または実施例と共に読めば、如何にして本発明の幾つかの形態を実施し得るかが、当業者にとって明らかとなる。
【0034】
以下の定義および説明は、下記の実施例において明瞭かつ明確に変更されていない限り、または、意味の適用によっていずれかの構成が無意味にもしくは本質的に無意味になる場合を除き、下記の(future)文章構成において統制されることを意味し、かつ意図する。用語の構成が無意味にもしくは本質的に無意味である場合には、Webster’s Dictionary第3版の定義を採用するものとする。
【0035】
本明細書中で使用するとき、全ての百分率は、特記しない限り、重量による百分率である。
【0036】
本明細書で使用するとき、特記しない限り、「a」および「an」という用語は、「1つの」、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。
【0037】
「ドライアイ」という用語は、乾性結膜炎または乾性角結膜炎としても知られており、眼球前方の涙液膜の破損を伴い、結果として眼の露出した外側表面の脱水症を引き起こす一般的な眼科疾患である。
【0038】
本明細書で使用するとき、「眼の炎症」という用語には、例えば、虹彩炎、ブドウ膜炎、上強膜炎、強膜炎、角膜炎、眼内炎、眼瞼炎、および医原性炎症状態が含まれる。
【0039】
本明細書で使用するとき、「アレルギー性結膜炎」という用語は、瞼の裏側を覆い、かつ、強膜の露出面を覆う敏感な膜である結膜の炎症を指す。「アレルギー性結膜炎」という用語には、例えば、アトピー性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎、枯草熱結膜炎、通年性アレルギー性結膜炎、および春季カタルが含まれる。
【0040】
本明細書で使用するとき、「皮膚炎」という用語は、皮膚の炎症を指し、例えば、アレルギー性接触皮膚炎、じんま疹、皮脂欠乏性皮膚炎(下肢の乾皮症)、アトピー性皮膚炎、刺激性接触皮膚炎やウルシオール誘発性接触皮膚炎などの接触皮膚炎、湿疹、沈下性皮膚炎(gravitational dermatitis)、貨幣状皮膚炎、外耳炎、口囲皮膚炎および脂漏性皮膚炎を含む。
【0041】
本明細書で使用するとき、「鼻炎」という用語は、鼻の粘膜の炎症を指し、例えば、アレルギー性鼻炎、アトピー性鼻炎、刺激性鼻炎、好酸球性非アレルギー性鼻炎(eosinophilic non−allergic rhinitis)、薬物性鼻炎および好中球性副鼻腔炎(neutrophilic rhinosinusitis)を含む。
【0042】
本明細書で使用するとき、「喘息」という用語は、鼻および口から肺へ空気を輸送する気管狭窄を結果として引き起こす気道の炎症を指し、例えば、アレルギー性喘息、アトピー性喘息、アトピー性IgE媒介型気管支喘息(atopic bronchial IgE−mediated asthma)、気管支喘息、細気管支炎(bronchiolytis)、気腫性喘息(emphysematous asthma)、本態性喘息(essential asthma)、運動誘発性喘息、環境要因により引き起こされる外因性喘息、初期喘息、病態生理学的障害により引き起こされる内因性喘息、非アレルギー性喘息、非アトピー性喘息および喘鳴幼児症候群(wheezy infant syndrome)を含む。
【0043】
「(配列識別子)のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目より13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性を有するか、または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13の連続するヌクレオチドの領域」という句は、1つのヌクレオチド置換を許容する。2つのヌクレオチド置換(すなわち、11/13=85%同一性/相補性)は、このような句には含まれない。
【0044】
「パーセント(%)同一性」という用語は、第一の核酸分子内の連続するヌクレオチドが、第二の核酸分子内の同じ長さを有する連続するヌクレオチドの組におけるのと同一である割合を表す。「パーセント(%)相補性」という用語は、第一の核酸分子内の連続するヌクレオチドが、第二の核酸分子内の連続するヌクレオチドの組とワトソン−クリック型塩基対を形成し得る割合を表す。
【0045】
本明細書で使用するとき、「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的またはほぼ相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸同士が相互作用してハイブリッドと呼ばれる水素結合型複合体を形成するプロセスを意味し、言及している。ハイブリダイゼーション反応は、敏感かつ選択的である。インビトロでは、ハイブリダイゼーションの特異性(すなわち、ストリンジェンシー)は、例えば、プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション溶液中の塩またはホルムアミドの濃度およびハイブリダイゼーション温度により制御され、このような手順は当技術分野においてよく知られている。特に、ストリンジェンシーは、塩の濃度を低減するか、ホルムアミドの濃度を増加するか、またはハイブリダイゼーション温度を上昇させることによって増大される。
【0046】
例えば、高ストリンジェンシー条件は、約50%ホルムアミドで37℃〜42℃にて生じ得る。低ストリンジェンシー条件は、約35%〜25%ホルムアミドで30℃〜35℃にて生じ得る。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー条件の例は、Sambrook, J.、1989年、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.に提供されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の更なる例としては、400mM NaCl、40mM PIPES(pH6.4)、1mM EDTA、50℃または70℃で12〜16時間、その後洗浄するか、または1×SSC中70℃または1×SSC中50℃にて50%ホルムアミドでハイブリダイズし、その後、0.3×SSC中70℃で洗浄するか、または4×SSC中70℃または4×SSC中50℃にて50%ホルムアミドでハイブリダイズし、その後、1×SSC中67℃で洗浄することが挙げられる。ハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの溶融温度(T)よりも約5℃〜10℃低く、Tは、19〜49塩基対の長さを有するハイブリッドについては以下の計算式を用いて決定される:T℃=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)(式中、Nはハイブリッドの塩基数であり、[Na+]はハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である)。
【0047】
本明細書中で引用される核酸配列は、特記しない限り、5’→3’方向で書かれている。本明細書で使用するとき、「核酸」という用語は、DNAもしくはRNA、またはDNA(アデニン「A」、シトシン「C」、グアニン「G」、チミン「T」)もしくはRNA(アデニン「A」、シトシン「C」、グアニン「G」、ウラシル「U」)中にプリンまたはピリミジン塩基が存在するその修飾型を指す。「T」塩基がRNA中には本来生じないとしても、本明細書中に提供される干渉RNAは、特に3’末端に「T」塩基を含んでいてもよい。「核酸」は、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語を包含し、一本鎖分子または二本鎖分子を言及している可能性がある。二本鎖分子は、AおよびT塩基、CおよびG塩基、ならびにAおよびU塩基間のワトソン−クリック塩基対合により形成される。二本鎖分子の鎖は、互いに部分的な、実質的なまたは完全な相補性を有していてもよく、デュプレックスハイブリッドを形成し、その結合強度は、塩基配列の相補性の性質および程度に依存する。
【0048】
mRNA配列は、対応するDNA配列の配列から容易に推定される。例えば、配列番号1は、TACEのmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列である。mRNA配列は、「T」塩基が「U」塩基に置換されたDNAセンス鎖配列と同一である。故に、TACEのmRNA配列は配列番号1から分かり、TNFR1のmRNAは配列番号2から分かる。
【0049】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)を使用して遺伝子発現をサイレンシングするプロセスである。理論に拘束されることを望まないが、RNAiは、RNアーゼIII様酵素であるダイサーを用いて、より長いdsRNAを切断して小さい干渉RNA(siRNA)にすることから始まる。siRNAは、通常、約19〜28ヌクレオチド、または20〜25ヌクレオチド、または21〜22ヌクレオチドの長さを有し、かつ、2ヌクレオチド分の3’オーバーハング、5’リン酸および3’ヒドロキシル末端を含有することが多いdsRNAである。siRNAの一方の鎖は、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)として知られているリボ核タンパク質複合体に取り込まれる。RISCはこのsiRNA鎖を使用して、取り込まれたsiRNA鎖に対して少なくとも部分的に相補的であるmRNA分子を同定し、次いで、これら標的mRNAを切断するか、またはそれらの翻訳を阻害する。故に、RISCに取り込まれるsiRNA鎖は、ガイド鎖またはアンチセンス鎖として知られている。パッセンジャー鎖またはセンス鎖として知られている他方のsiRNA鎖は、siRNAから排除され、標的mRNAに対して少なくとも部分的に相同性である。当業者は、原則として、siRNAのいずれかの鎖がRISCに取り込まれ、ガイド鎖として機能し得ることを認識するであろう。しかしながら、siRNA設計(例えば、所望のガイド鎖の5’末端におけるsiRNAデュプレックス安定性を低下させた)は、所望のガイド鎖のRISCへの取り込みを好み得る。
【0050】
ガイド鎖に対して少なくとも部分的に相補的である配列を有するmRNAのRISC媒介型切断によって、そのmRNAおよびこのmRNAにコードされる対応タンパク質の定常状態レベルが低下する。あるいは、RISCはまた、標的mRNAを切断することなく、翻訳抑制により、対応するタンパク質の発現を低下させることができる。他のRNA分子およびRNA様分子もRISCと相互作用し、遺伝子発現をサイレンシングすることができる。RISCと相互作用し得る他のRNA分子の例としては、短いヘアピンRNA(shRNA)、一本鎖siRNA、マイクロRNA(miRNA)および27merのダイサー−基質デュプレックスが挙げられる。本明細書で使用するとき、「siRNA」という用語は、特記しない限り、二本鎖干渉RNAを指す。RISCと相互作用し得るRNA様分子の例としては、1つまたは複数の化学的に修飾されたヌクレオチド、1つまたは複数のデオキシリボヌクレオチド、および/または1つまたは複数の非ホスホジエステル結合を含有するRNA分子が挙げられる。本明細書での検討のために、RISCと相互作用し、かつ遺伝子発現のRISC媒介型変化に関与し得る全てのRNAまたはRNA様分子は、「干渉RNA」と呼ばれる。SiRNA、shRNA、miRNAおよび27merのダイサー−基質デュプレックスは、故に、「干渉RNA」のサブセットである。
【0051】
本発明の実施形態の干渉RNAは、標的mRNAを切断するための触媒として作用するようであり、すなわち、干渉RNAは、半化学量論的な量の標的mRNAの阻害を行うことができる。アンチセンス療法と比較すると、このような切断条件下で治療効果を付与するのに必要とされる干渉RNAは著しく少ない。
【0052】
本発明は、TNFα細胞表面レセプターであるTNFレセプター1(TNFR1)またはTNFα変換酵素(TACE/ADAM17、本明細書中では「TACE」と称される)の発現を阻害するための、干渉RNAの使用に関し、その阻害により、腫瘍壊死因子α(TNFα)活性が低減される。TNFαがその細胞表面レセプターであるTNFレセプター1(TNFR1)に結合すると、アポトーシスおよび炎症などの様々な細胞応答に影響を及ぼすシグナリングカスケードが活性化される。TNFαそれ自体は、最初から、不活性な膜結合前駆体として発現されている。活性型のTNFαが細胞表面から放出されるには、「ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ」(ADAM)ファミリーのメンバーであるTNFα変換酵素(TACE/ADAM17)により前駆体のタンパク質分解処理を行うことが必要である。
【0053】
本発明によれば、TNFR1 mRNA、TACE mRNA、またはTNFR1およびTACE mRNAの両方、の発現を阻害すると、TNFαの作用が効果的に低下する。更に、外因的に提供されるか、または内因的に発現される、本明細書中に記載されるような干渉RNAは、TNFR1 mRNAまたはTACE mRNAをサイレンシングする上で特に効果的である。
【0054】
腫瘍壊死因子α変換酵素mRNA(TACE/ADAM17):GenBankデータベースは、「配列表」に配列番号1として与えられているアクセッション番号NM_003183としてのTACEのDNA配列を記載している。配列番号1は、TACEをコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列(「U」塩基の代わりに「T」塩基を含まない)を示す。TACEのコード配列は、ヌクレオチド184〜2658から得られる。
【0055】
先に引用されたTACE mRNA配列の等価物は、代替的なスプライシング型、対立遺伝子型、アイソザイムまたはそれらの同種物(cognate)である。同種物は、配列番号1に相同性である別の哺乳類種から得られた腫瘍壊死因子α変換酵素mRNA(すなわち、オルソログ)である。
【0056】
腫瘍壊死因子レセプター1 mRNA(TNFR1):GenBankデータベースは、「配列表」に配列番号2として与えられているアクセッション番号NM_001065としてのTNFR1のDNA配列を記載している。配列番号2は、TNFR1をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列(「U」塩基の代わりに「T」塩基を含まない)を記載している。TNFR1のコード配列は、ヌクレオチド282〜1649から得られる。
【0057】
先に引用されたTNFR1 mRNA配列の等価物は、代替的なスプライシング型、対立遺伝子型、アイソザイムまたはそれらの同種物である。同種物は、配列番号2に相同性である別の哺乳類種から得られた腫瘍壊死因子レセプター1 mRNA(すなわち、オルソログ)である。
【0058】
mRNA発現の減衰:本明細書で使用するとき、「mRNAの発現を減衰させる」という句は、mRNA切断によるか、または翻訳の直接阻害により、標的mRNAのタンパク質への翻訳を低減させるような量の干渉RNA(例えば、siRNA)を投与するか、または発現することを意味する。標的mRNAまたは対応するタンパク質の発現の低下は、一般的には「ノックダウン」と呼ばれ、非標的対照RNA(例えば、非標的対照siRNA)の投与または発現の後に存在するレベルに対して報告される。50%〜100%(これらの数値を含む)の量の発現ノックダウンは、本明細書中の実施形態により考慮されている。しかしながら、このようなノックダウンレベルを達成することは、本発明のためには必要ではない。一実施形態において、TACE mRNAまたはTNFR1 mRNAを標的とする単一の干渉RNAが投与される。他の実施形態において、TACE mRNAまたはTNFR1 mRNAを標的とする2つ以上の干渉RNAが投与される。更なる実施形態において、TACE mRNAおよびTNFR1 mRNAの各々を標的とする干渉RNAは、組み合わせて、または重複効果を発揮するような時間間隔で投与される。
【0059】
ノックダウンは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)増幅を用いてmRNAレベルを測定することにより、またはウェスタンブロットもしくは酵素免疫検定法(ELISA)によりタンパク質レベルを測定することにより一般的に評価される。タンパク質レベルを分析することにより、両mRNAの切断ならびに翻訳阻害の評価が行われる。ノックダウンを測定するための更なる技術としては、RNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、放射線免疫測定法および蛍光活性化細胞解析が挙げられる。
【0060】
TACEまたはTNFR1の阻害はまた、以下に記載されるようなTACEまたはTNFR1用干渉RNAをトランスフェクトした後に、例えばヒトの角膜上皮細胞における標的mRNAレベルまたは標的タンパク質レベルを評価することによってインビトロで測定してもよい。
【0061】
TACE mRNA発現またはTNFR1 mRNA発現の阻害に起因するTNFα活性の阻害もまた、ドライアイ、アレルギー性結膜炎、眼の炎症、皮膚炎、鼻炎または喘息に関連する症状の改善などのTNFα関連状態の症状の改善を観察することによって、ヒトまたは哺乳類において推測される。ドライアイの症状、浮腫、かゆみ、炎症または環境的困難に対する耐性のいずれかなどの改善は、TNFα活性の阻害を示している。
【0062】
干渉RNA:本発明の一実施形態において、干渉RNA(例えば、siRNA)はセンス鎖とアンチセンス鎖とを有し、これらセンス鎖およびアンチセンス鎖は、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域を含む。本発明の更なる実施形態において、干渉RNA(例えば、siRNA)はセンス鎖とアンチセンス鎖とを有し、このアンチセンス鎖は、TACE mRNAまたはTNFR1 mRNAの標的配列に対して、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域を含み、このセンス鎖は、TACE mRNAまたはTNFR1 mRNAそれぞれの標的配列に対して、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する同一性の領域を含む。本発明の更なる実施形態において、干渉RNAは、mRNA内の対応する標的配列の3’末端から2番目より13、14、15、16、17または18ヌクレオチドのそれぞれに対して、配列相補性の割合を有するか、または配列同一性の割合を有する、少なくとも13、14、15、16、17または18の連続するヌクレオチドの領域を含む。
【0063】
干渉RNAの各鎖の長さは19〜49ヌクレオチドを含み、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48または49ヌクレオチドの長さを含んでいてもよい。
【0064】
siRNAのアンチセンス鎖は、このアンチセンス鎖にRISCに取り込まれ、これによりRISCが、切断または翻訳抑制のためのアンチセンスsiRNA鎖に対して少なくとも部分的な相補性を有する標的mRNAを同定することができるという点で、siRNAの活性誘導剤である。
【0065】
本発明の実施形態において、標的mRNA配列内の干渉RNA標的配列(例えば、siRNA標的配列)は、利用可能な設計ツールを用いて選択される。次いで、TACEまたはTNFR1標的配列に対応する干渉RNAは、標的mRNAを発現する細胞のトランスフェクションを行い、その後、上述のようなノックダウンの評価を行うことによって試験される。
【0066】
siRNAの標的配列を選択するための技術は、Tuschl, T.ら、「The siRNA User Guide」、(2004年5月6日改訂、ロックフェラー大学のウェブサイトから入手)により;Technical Bulletin #506、「siRNA Design Guidelines」、Ambion Inc. (Ambion社のウェブサイト)により;および、他のウェブから得た設計ツール(例えば、the Invitrogen、Dharmacon、Integrated DNA
Technologies、GenscriptまたはProligo社のウェブサイト)により提供されている。初期の検索パラメータとしては、35%〜55%のG/Cコンテンツおよび19〜27ヌクレオチドのsiRNA長が挙げられる。標的配列は、コード領域またはmRNAの5’または3’非翻訳領域に位置していてもよい。
【0067】
TACE mRNAの19ヌクレオチド長のDNA標的配列の実施形態は、配列番号1のヌクレオチド297〜315
【0068】
【化14】

に存在している。21ヌクレオチドの鎖と、2ヌクレオチド分の3’オーバーハングとを有する、配列番号3の対応するmRNA配列を標的とするための本発明のsiRNAは、
【0069】
【化15】

である。各「N」残基は、任意のヌクレオチド(A、C、G、U、T)または修飾ヌクレオチドであり得る。3’末端は、1、2、3、4、5および6を含めた1〜6の数の「N」残基を有し得る。各鎖上の「N」残基は、同じ残基(例えば、UU、AA、CC、GGまたはTT)であり得るか、または異なる残基(例えば、AC、AG、AU、CA、CG、CU、GA、GC、GU、UA、UCまたはUG)であり得る。3’オーバーハングは、同じであり得るか、または異なり得る。一実施形態において、両方の鎖は、3’UUオーバーハングを有する。
【0070】
各鎖上に21ヌクレオチドの鎖と、3’UUオーバーハングとを有する、配列番号3の対応するmRNA配列を標的とするための本発明のsiRNAは、
【0071】
【化16】

である。
【0072】
干渉RNAはまた、ヌクレオチドの5’オーバーハングを有していてもよく、または、平滑末端を有していてもよい。19ヌクレオチドの鎖と、平滑末端とを有する、配列番号3の対応するmRNA配列を標的とするための本発明のsiRNAは、
【0073】
【化17】

である。
【0074】
二本鎖干渉RNA(例えば、siRNA)の鎖は、接続されてヘアピンまたはステム−ループ構造(例えば、shRNA)を形成してもよい。配列番号3の対応するmRNA配列を標的とし、かつ、19bpの二本鎖ステム領域と、3’UUオーバーハングとを有する本発明のshRNAは、
【0075】
【化18】

である。Nは、ヌクレオチドA、T、C、G、Uまたは当業者に知られている修飾型である。ループ内のヌクレオチドNの数は、3〜23、または5〜15、または7〜13、または4〜9、または9〜11(これらの数を含む)の数であるか、またはヌクレオチドNの数は9である。ループ内のヌクレオチドの中には、ループ内の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与し得るものもある。ループ形成に使用できるオリゴヌクレオチド配列の例としては、5’−UUCAAGAGA−3’(Brummelkamp, T.R.ら(2002年)、Science 296:550)および5’−UUUGUGUAG−3’(Castanotto, D.ら(2002年)、RNA 8:1454)が挙げられる。結果として生じた一本鎖オリゴヌクレオチドが、RNAi機構と相互作用することができる二本鎖領域を含むステム−ループまたはヘアピン構造を形成することが、当業者により認識されるであろう。
【0076】
先に同定されたsiRNA標的配列は、3’末端側で伸長して、27merのダイサー−基質デュプレックスの設計を促進することができる。TACE DNA配列(配列番号1)において同定された19ヌクレオチドのDNA標的配列(配列番号3)を6ヌクレオチド分伸長させると、配列番号1のヌクレオチド297〜321に存在する25ヌクレオチドのDNA標的配列:
【0077】
【化19】

が生じる。配列番号11の対応するmRNA配列を標的とするための本発明の27merのダイサー−基質デュプレックスは
【0078】
【化20】

である。センス鎖の3’末端側の2つのヌクレオチド(すなわち、配列番号12のCUヌクレオチド)は、処理を向上させるためにデオキシヌクレオチドであってもよい。本明細書に提供されるもののような19〜21ヌクレオチド標的配列から27merのダイサー−基質デュプレックスを設計することは、Integrated DNA Technologies (IDT)社のウェブサイトおよびKim, D.−H.ら、(2005年2月)Nature Biotechnology 23:2、222〜226頁により更に検討されている。
【0079】
干渉RNAが化学的合成により産生されるとき、一方または両方の鎖(存在する場合)の5’末端側にあるヌクレオチドの5’位でのリン酸化は、結合されたRISC複合体のsiRNA有効性および特異性を向上することができるが、このリン酸化は細胞内で生じ得るので必要ではない。
【0080】
表1は、本発明のsiRNAが上述のように設計される配列番号1のTACE DNA標的配列の例を列挙している。TACEは、先に述べたように、腫瘍壊死因子α変換酵素をコードする。
【0081】
表1 siRNAのTACE標的配列
【0082】
【表1−1】

【0083】
【表1−2】

【0084】
【表1−3】

【0085】
【表1−4】

表2は、本発明のsiRNAが上述のように設計される配列番号2のTNFR1 DNA標的配列の例を列挙している。TNFR1は、先に述べたように、腫瘍壊死因子αレセプター1をコードする。
【0086】
表2 siRNAのTNFR1標的配列
【0087】
【表2−1】

【0088】
【表2−2】

【0089】
【表2−3】

【0090】
【表2−4】

先の例において引用したように、当業者は、表1または表2に提供された標的配列情報を利用して、配列番号1または配列番号2における配列位置を参照し、配列番号1または配列番号2それぞれに対して相補的またはほぼ相補的であるヌクレオチドを付加するか、または欠失させることにより、表中に記載された配列よりも長さが短いまたは長い干渉RNAを設計することができる。
【0091】
siRNAおよび干渉RNAの他の形態により誘導された標的RNA切断反応は、非常に配列特異的である。一般に、標的mRNAの一部分と配列が同一であるセンスヌクレオチド鎖と、標的mRNAの一部分に対して正確に相補的であるアンチセンスヌクレオチド鎖とを含有するsiRNAは、本明細書中に引用されるmRNA阻害のためのsiRNA実施形態である。しかしながら、アンチセンスsiRNA鎖と標的mRNAとの、またはアンチセンスsiRNA鎖とセンスsiRNA鎖との100%配列相補性は、本発明を実施する上では必要ない。故に、例えば、本発明は、遺伝的変異、系統多型(strain
polymorphism)または進化的分岐に起因して期待され得る配列変動を許容する。
【0092】
本発明の一実施形態において、siRNAのアンチセンス鎖は、標的mRNAに対して、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性を有する。本明細書で使用するとき、「ほぼ完全な」は、siRNAのアンチセンス鎖が、標的mRNAの少なくとも一部分に対して「実質的に相補的であり」、かつ、siRNAのセンス鎖が標的mRNAの少なくとも一部分に対して「実質的に同一である」ことを意味する。当業者によって知られているように、「同一性」は、配列同士のヌクレオチドの順序および同一性をマッチさせることによって決定されるような、ヌクレオチド配列間の配列関連性の度合いである。一実施形態において、標的mRNA配列に対して、80%および80%から最大100%までの相補性、例えば、85%、90%または95%の相補性を有するsiRNAのアンチセンス鎖は、ほぼ完全な相補性を有していると考えられ、本発明で使用してもよい。「完全な」連続する相補性は、隣接する塩基対の標準的なワトソン−クリック塩基対合である。「少なくともほぼ完全な」連続する相補性は、本明細書で使用するときには「完全な」相補性を包含する。同一性または相補性を決定するためのコンピューター手法は、ヌクレオチド配列のマッチング度合いが最大であるものを識別するように設計される(例えば、BLASTN(Altschul, S.F.ら(1990年)、J. Mol. Biol. 215、403〜410頁))。
【0093】
標的mRNA(センス鎖)とsiRNAの一方の鎖(センス鎖)との関係は、同一の関係である。siRNAのセンス鎖は、存在する場合にはパッセンジャー鎖とも呼ばれる。標的mRNA(センス鎖)とsiRNAの他方の鎖(アンチセンス鎖)との関係は、相補的な関係である。siRNAのアンチセンス鎖は、ガイド鎖とも呼ばれる。
【0094】
5’→3’方向に書かれた核酸配列中の末端から2番目の塩基は、最後の塩基の隣、すなわち、3’塩基の隣に位置する塩基である。5’→3’方向に書かれた核酸配列中の末端から2番目より13塩基は、ある配列の3’塩基の隣から数えて13塩基であり、3’塩基は含まない。同様に、5’→3’方向に書かれた核酸配列中の末端から2番目より14、15、16、17または18塩基は、ある配列の3’塩基の隣から数えてそれぞれ14、15、16、17または18塩基であり、3’塩基は含まない。
【0095】
本発明の実施形態において、連続するヌクレオチドの領域は、各配列識別子により識別された配列に対応するmRNAの3’末端から2番目より13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13の連続するヌクレオチドの領域である。
【0096】
本発明の一実施形態において、連続するヌクレオチドの領域は、各配列識別子により識別された配列に対応するmRNAの3’末端から2番目より14ヌクレオチドに対して、少なくとも85%の配列相補性または少なくとも85%の配列同一性を有する少なくとも14の連続するヌクレオチドの領域である。このような句には、2つのヌクレオチド置換(すなわち、12/14=86%同一性/相補性)が含まれる。
【0097】
本発明の更なる実施形態において、連続するヌクレオチドの領域は、各配列識別子の配列に対応するmRNAの3’末端から2番目より14ヌクレオチドに対して、少なくとも80%の配列相補性または少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも15、16、17または18の連続するヌクレオチドの領域である。このような句には、3つのヌクレオチド置換が含まれる。
【0098】
配列番号1または配列番号2に対応するmRNAにおける標的配列は、mRNAの5’または3’非翻訳領域ならびにmRNAのコード領域に位置していてもよい。
【0099】
二本鎖干渉RNAの鎖の一方または両方は、1〜6ヌクレオチド分の3’オーバーハングを有していてもよく、これらヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはそれらの混合物であってもよい。オーバーハングのヌクレオチドは、塩基対合しない。本発明の一実施形態において、干渉RNAは、TTまたはUUの3’オーバーハングを含む。本発明の別の実施形態において、干渉RNAは、少なくとも1つの平滑末端を含む。末端は通常、5’リン酸基または3’ヒドロキシル基を有する。他の実施形態において、アンチセンス鎖は5’リン酸基を有し、センス鎖は5’ヒドロキシル基を有する。更に別の実施形態において、末端は、更に、他の分子または官能基の共有結合的付加(covalent addition)により修飾されている。
【0100】
二本鎖siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、上述のような2つの一本鎖の二重鎖形成であってもよく、または、相補的領域が塩基対合され、ヘアピンループによって共有結合されて一本鎖を形成する場合には単一分子であってもよい。ヘアピンが、ダイサーと呼ばれるタンパク質によって細胞内で切断され、2つの個々の塩基対合RNA分子の干渉RNAを形成すると考えられている。
【0101】
干渉RNAは、1つまたは複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換または修飾によって天然のRNAとは異なっていてもよい。非ヌクレオチド材料は、5’末端、3’末端で、または内部で干渉RNAに結合されていてもよい。このような修飾は通常、干渉RNAのヌクレオチド耐性を増大させる、細胞取り込みを向上させる、細胞ターゲッティングを向上させる、干渉RNAのトレーシングを支援する、安定性を更に向上させる、または、インターフェロン経路を活性化させる潜在性を低減するべく設計される。例えば、干渉RNAは、オーバーハングの末端にプリンヌクレオチドを含んでいてもよい。ピロリジンリンカーによるsiRNA分子のセンス鎖の3’末端へのコレステロールの共役結合(conjugation)などによってもsiRNAの安定性が得られる。
【0102】
更なる修飾としては、3’末端ビオチン分子、細胞浸透特性を有することが知られているペプチド、ナノ粒子、ペプチド模倣薬、蛍光染料またはデンドリマーなどが挙げられる。
【0103】
本発明の実施形態において、ヌクレオチドは、それらの塩基部分上、それらの糖部分上または分子および官能基(function)のリン酸部分上で修飾されていてもよい。修飾としては、アルキル、アルコキシ、アミノ、デアザ(deaza)、ハロ、ヒドロキシル、チオール基、またはそれらの組合せなどによる置換が挙げられる。ヌクレオチドは、リボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドで置換するか、または2’アミノ基、2’O−メチル基、2’メトキシエチル基または2’−O、4’−Cメチレン架橋などによって置換された2’OH基などの糖修飾を有するなど、安定性がより高い類似体で置換されてもよい。ヌクレオチドのプリンまたはピリミジン類似体の例としては、キサンチン、ヒポキサンチン、アザプリン、メチルチオアデニン、7−デアザ−アデノシンならびにO−およびN−修飾ヌクレオチドが挙げられる。ヌクレオチドのリン酸基は、このリン酸基の1つまたは複数の酸素を窒素または硫黄(ホスホロチオエート)で置換することによって修飾されてもよい。修飾は、例えば、機能を向上させる、安定性または浸透性を向上させる、または局在化もしくはターゲッティングを誘導するのに有用である。
【0104】
配列番号1または配列番号2の一部分に対して相補的ではないアンチセンス干渉RNA鎖の領域が1つまたは複数あってもよい。非相補的領域は、1つの相補的領域の3’末端、5’末端もしくはその両末端に、または2つの相補的領域の間にあってもよい。
【0105】
干渉RNAを、化学的合成により、インビトロ転写により、またはダイサーもしくは同様の活性を有する別の適切なヌクレアーゼにより長い二本鎖RNAを切断することにより外因的に生成してもよい。従来のDNA/RNAシンセサイザーを用いて保護されたリボヌクレオチドホスホアミダイド(phosphoramidites)から産生される化学的に合成された干渉RNAは、Ambion Inc.(Austin、TX)、Invitrogen(Carlsbad、CA)またはDharmacon(Lafayette、CO)などの商業的な供給業者から入手してもよい。干渉RNAは、溶媒または樹脂による抽出、沈殿、電気泳動、クロマトグラフィーまたはそれらの組合せなどによって精製される。あるいは、干渉RNAは、サンプル処理による損失を避けるために、あったとしてもごく僅かだけ精製して使用してもよい。
【0106】
干渉RNAはまた、プラスミドもしくはウイルス発現ベクターから、または最小の発現カセット、例えば、1つまたは複数のプロモーターと、干渉RNAのための適切な1つまたは複数の鋳型とを含むPCR生成フラグメントから内因的に発現され得る。市販のshRNA用プラスミド系発現ベクターの例としては、pSilencerシリーズ(Ambion、Austin、TX)およびpCpG−siRNA(InvivoGen、San Diego、CA)のメンバーが挙げられる。干渉RNA発現用ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス(HIV、FIVおよびEIAV)およびヘルペスウイルスを含む様々なウイルス由来のものでもよい。市販のshRNA発現用ウイルスベクターの例としては、pSilencer adeno(Ambion、Austin、TX)およびpLenti6/BLOCK−iT(商標)−DEST(Invitrogen、Carlsbad、CA)が挙げられる。ウイルスベクター、ベクターから干渉RNAを発現するための方法およびウイルスベクターを送達する方法の選択は、当業者の技能の範囲内である。PCR生成shRNA発現カセットを生成するためのキットの例としては、Silencer Express(Ambion、Austin、TX)およびsiXpress(Mirus、Madison、WI)が挙げられる。第一の干渉RNAは、当該第一の干渉RNAを発現することができる第一の発現ベクターからのインビボ発現を経て投与されてもよく、第二の干渉RNAは、当該第二の干渉RNAを発現することができる第二の発現ベクターからのインビボ発現を経て投与されてもよく、または、両方の干渉RNAは、当該両方の干渉RNAを発現することができる単一の発現ベクターからのインビボ発現を経て投与されてもよい。
【0107】
干渉RNAは、pol IIIプロモーター(U6またはH1プロモーター)またはpol IIプロモーター(サイトメガロウイルスプロモーター)を含む、当業者に既知の様々な真核生物プロモーターから発現されてもよい。当業者は、これらプロモーターも干渉RNAの誘導発現を可能とするように構成され得ることを認識するであろう。
【0108】
生理学的条件下でのハイブリダイゼーション:本発明の幾つかの実施形態において、干渉RNAのアンチセンス鎖は、RISC複合体の一部としてmRNAとインビボでハイブリダイズする。
【0109】
例えば、高ストリンジェンシー条件は、約50%ホルムアミドで37℃〜42℃にて生じ得る。低ストリンジェンシー条件は、約35%〜25%ホルムアミドで30℃〜35℃にて生じ得る。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー条件の例は、Sambrook, J.、1989年、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.に提供されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の更なる例としては、400mM NaCl、40mM PIPES(pH6.4)、1mM EDTA、50℃または70℃で12〜16時間、その後洗浄するか、または1×SSC中70℃または1×SSC中50℃にて50%ホルムアミドでハイブリダイズし、その後、0.3×SSC中70℃で洗浄するか、または4×SSC中70℃または4×SSC中50℃にて50%ホルムアミドでハイブリダイズし、その後、1×SSC中67℃で洗浄することが挙げられる。ハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの溶融温度(T)よりも約5℃〜10℃低く、Tは、19〜49の塩基対の長さを有するハイブリッドについては以下の計算式を用いて決定される:T℃=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)(式中、Nはハイブリッドの塩基数であり、[Na+]はハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である)。
【0110】
上述のインビトロハイブリダイゼーションアッセイは、候補siRNAと標的との結合が特異的であるかどうかを予測する方法になる。しかしながら、RISC複合体との関連では、標的の特異的切断はまた、高ストリンジェンシーでのインビトロハイブリダイゼーションを示さないアンチセンス鎖でも生じ得る。
【0111】
一本鎖干渉RNA:先に引用したように、干渉RNAは、最終的には一本鎖として機能する。一本鎖(ss)干渉RNAは、二本鎖RNAよりも効率はよくないが、mRNAサイレンシングを行うことが見出されている。故に、本発明の実施形態はまた、生理学的条件下で、配列番号1または配列番号2の一部分にハイブリダイズし、かつ、配列番号1または配列番号2それぞれのハイブリダイゼーション部分と、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続する相補性の領域を有するss干渉RNAの投与を提供する。表1または表2のss干渉RNAは、先に引用したds干渉RNAの場合と同様に、19〜49ヌクレオチドの長さを有する。ss干渉RNAは、5’リン酸を有するか、または、5’位がインサイチュまたはインビボでリン酸化されている。「5’リン酸化」という用語は、例えば、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5’末端に、糖(例えば、リボース、デオキシリボースまたはこれらの類似体)のC5ヒドロキシルへのエステル結合を介してリン酸基が付着しているポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを指す。
【0112】
ss干渉RNAは、ds干渉RNAの場合と同様に、化学的にもしくはインビトロ転写により合成されるか、または、ベクターまたは発現カセットから内因的に発現される。5’リン酸基は、キナーゼを介して付加されてもよく、または、5’リン酸は、RNAのヌクレアーゼ切断の結果であってもよい。送達は、ds干渉RNAと同様である。一実施形態において、保護された末端と、ヌクレアーゼ耐性修飾とを有するss干渉RNAは、サイレンシングのために投与される。ss干渉RNAは、保存用に乾燥されるか、または水溶液中に溶解されてもよい。この溶液は、アニーリングを阻害するため、または安定化のために、緩衝液または塩を含有していてもよい。
【0113】
ヘアピン干渉RNA:ヘアピン干渉RNAは、ステム−ループまたはヘアピン構造(例えば、shRNA)をなす干渉RNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含む単一分子(単一オリゴヌクレオチド鎖)である。例えば、shRNAは、センス干渉RNA鎖をコードするDNAオリゴヌクレオチドが、短いスペーサーにより逆相補的アンチセンス干渉RNA鎖をコードするDNAオリゴヌクレオチドに結合しているDNAベクターから発現され得る。選択された発現ベクターに必要とされる場合、3’末端のTおよびヌクレオチド形成制限部位が付加されてもよい。結果として生じたRNA転写物は、折り畳まれてステム−ループ構造を形成する。
【0114】
投与態様:干渉RNAは、エアロゾル、頬、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、鼻、眼、経口、耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所または経皮投与などを介して送達されてもよい。
【0115】
投与は、眼周囲、結膜、テノン嚢下(subtenon)、眼房内(intracameral)、硝子体内、眼内、網膜下、角膜下、眼球後、小菅内または脈絡膜上投与などの眼組織投与により;注射により;カテーテル、または他の配置装置(例えば、網膜ペレット、眼内挿入物、座薬、または、多孔性、無孔性もしくはゼラチン状材料を含む移植片)を用いて眼へ直接適用することにより;局所用点眼薬または軟膏により;または、盲嚢内の、または強膜に近接するか(経強膜的)もしくは眼内に埋め込まれた徐放装置により、眼に直接行ってもよい。眼房内注入(intracameral injection)は、角膜を通って前房内に入り、これにより薬剤が小柱網に到達し得る。小菅内注入は、シュレム管から排液させる静脈の採取チャネル内またはシュレム管内に行われてもよい。
【0116】
投与は、例えば、局所用点耳薬または軟膏、耳内の、または耳に近接して埋め込まれた徐放装置により、直接耳に行ってもよい。局部投与(local administration)としては、耳筋肉内、中耳腔および蝸牛内注入投与経路が挙げられる。更に、中耳/内耳または近隣構造の窓膜に対して、干渉RNAを染み込ませたゲルフォームまたは同様の吸収性および接着性製品を配置することによって、薬剤を内耳に投与することができる。
【0117】
例えば、エアロゾル化調製物を介して、および、吸入器または噴霧器などによる吸入によって肺への直接投与を行ってもよい。
【0118】
更なる投与態様としては、錠剤、ピルおよびカプセルが挙げられ、これらはいずれも当業者が処方することができる。
【0119】
被験体:TNFα関連状態の治療を必要としているか、またはTNFα関連状態を発症する危険性がある被験体は、TNFαに関連する炎症状態を有するもしくはドライアイであるか、またはTNFαに関連する炎症状態もしくはドライアイを発症する危険性があるヒトまたは他の哺乳類である。TNFαに関連する炎症状態としては、例えば、本明細書中で引用するようなTNFαの望ましくない活性または不適切な活性に付随するアレルギー性結膜炎、眼の炎症、皮膚炎、鼻炎または喘息が挙げられる。
【0120】
TNFα関連状態に関連する眼の構造としては、眼、網膜、脈絡膜、水晶体、角膜、小柱網、虹彩、視神経、視神経乳頭、強膜、眼房、硝子体腔、毛様体または眼球後区などが挙げられる。
【0121】
このような疾患に関連する耳構造としては、内耳、中耳、外耳、鼓室もしくは鼓膜、蝸牛または耳管などが挙げられる。
【0122】
このような疾患に関連する肺構造としては、鼻、口、咽頭、喉頭、気管支、気管、気管分岐部(左右主気管支の開口部を分ける稜線)および肺、特に下肺、例えば細気管支および肺胞などが挙げられる。
【0123】
被験体はまた、耳細胞、肺細胞、眼細胞、細胞培養物、器官もしくはエクスビボ器官、または組織であってもよい。
【0124】
処方および用量:医薬処方物は、水、緩衝液、生理食塩水、グリシン、ヒアルロン酸、マンニトールなどの生理学的に許容可能な担体媒体と混合された最大99重量%の本発明の干渉RNAまたはその塩を含む。
【0125】
本発明の干渉RNAは、溶液、懸濁液または乳液として投与される。以下は、本発明によって具現化された可能な処方物の例である。
【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

一般に、本発明の実施形態の干渉RNAの有効量は、結果として、100pM〜1000nM、または1nM〜400nM、または5nM〜約100nM、または約10nMの標的細胞表面での細胞外濃度をもたらす。この局所濃度を達成するのに必要な用量は、送達方法、送達部位、送達部位と標的細胞または組織との間の細胞層の数、送達が局所的であるか全身性であるか、などの要因数に応じて変わる。送達部位での濃度は、標的細胞または組織表面での濃度よりかなり高くてもよい。局所用組成物は、1日に1〜4回、標的器官の表面に送達されるか、または熟練の臨床医の常套判断に従って、毎日、毎週、2週間毎、毎月またはそれ以上などの長期間の送達スケジュールで送達される。処方物のpHは約pH4〜9、またはpH4.5〜7.4である。
【0128】
TACE mRNAまたはTNFR1 mRNAに対するsiRNAによる患者の治療は、作用期間を増加させ、これにより投薬の頻度を低下させ、かつ患者のコンプライアンスを高めることにより、小分子治療よりも有利であると期待される。
【0129】
処方物の有効量は、例えば、被験体の年齢、人種および性別、TNFα関連状態の重篤度、標的遺伝子転写物/タンパク質代謝回転速度、干渉RNAの効力および干渉RNAの安定性などの要因に左右され得る。一実施形態において、干渉RNAは、標的器官に対して局所的に送達され、治療用量でTACE mRNAまたはTNFR1 mRNA含有組織に到達し、これによりTNFα関連プロセスが改善される。
【0130】
許容可能な担体:許容可能な担体は、多くてもごく僅かか、全く眼の刺激を引き起こさず、必要であれば好適な保存を付与し、かつ、均一な用量で本発明の1つまたは複数の干渉RNAを送達する担体を指す。本発明の実施形態の干渉RNAを投与するための許容可能な担体としては、陽イオン性で脂質ベースのトランスフェクション試薬であるTransIT(登録商標)−TKO(Mirus Corporation、Madison、WI)、LIPOFECTIN(登録商標)、リポフェクタミン、OLIGOFECTAMINE(商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)またはDHARMAFECT(商標)(Dharmacon、Lafayette、CO);ポリエチレンイミンなどのポリカチオン;Tat、ポリアルギニンまたはPenetratin(Antpペプチド)などの陽イオン性ペプチド;またはリポソームが挙げられる。リポソームは、標準の小胞形成脂質およびステロール、例えばコレステロールなどから形成され、内皮細胞表面抗原などに対する結合親和性を有するモノクローナル抗体などのターゲッティング部分を含み得る。更に、リポソームはPEG化リポソームであり得る。
【0131】
干渉RNAは、溶液として、懸濁液として、または、生体内分解性もしくは非生体内分解性送達装置を使用して送達されてもよい。干渉RNAを、単独で、または規定の共有結合複合体(covalent conjugate)の成分として送達することができる。干渉RNAはまた、陽イオン性脂質、陽イオン性ペプチドまたは陽イオン性ポリマーと共に複合体を形成する;核酸結合特性を有するタンパク質、融合タンパク質またはタンパク質ドメイン(例えば、プロタミン)と共に複合体を形成する;またはナノ粒子内に封入され得る。組織特異的または細胞特異的送達は、抗体または抗体フラグメントなどの適切なターゲッティング部分を包含させることによって達成することができる。
【0132】
眼、鼻または肺送達のために、干渉RNAを、眼科的に、光学的に、または肺が許容可能な防腐剤、共溶媒、界面活性剤、粘度増強剤、浸透促進剤、緩衝液、塩化ナトリウム、または水と併用して、水性殺菌懸濁液または溶液を形成してもよい。生理学的に許容可能な等張水性緩衝液中に干渉RNAを溶解させることによって、溶液処方物を調製してもよい。更に、溶液としては、阻害剤の溶解を支援する許容可能な界面活性剤が挙げられる。ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの増粘剤(viscosity building agents)を本発明の組成物に添加して化合物の保持力を向上させてもよい。
【0133】
滅菌軟膏処方物を調製するために、干渉RNAを、鉱油、液状ラノリンまたは白色ワセリンなどの適切な賦形剤中で防腐剤と併用する。滅菌ゲル処方物は、当技術分野で知られている方法に従って、例えばCARBOPOL(登録商標)−940(BF Goodrich、Charlotte、NC)などの組合せから調製した親水性塩基中に干渉RNAを懸濁することによって調製してもよい。VISCOAT(登録商標)(Alcon Laboratories, Inc.、Fort Worth、TX)を、例えば眼内注射のために使用してもよい。本発明の他の組成物は、干渉RNAが目的の器官または組織にあまり浸透していない場合、CremephorおよびTWEEN(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Sigma Aldrich、St.
Louis、MO))などの浸透促進剤を含有していてもよい。
【0134】
キット:本発明の実施形態は、本明細書において引用されるようなmRNAの、細胞内における発現を減衰させるための試薬を包含するキットを提供する。キットは、siRNAまたはshRNA発現ベクターを含有する。siRNAおよび非ウイルス性shRNA発現ベクターの場合、キットはまた、トランスフェクション試薬または他の好適な送達賦形剤を含有していてもよい。ウイルス性shRNA発現ベクターの場合、キットは、ウイルスベクターおよび/またはウイルスベクター産生のために必要な成分(例えば、パッケージング細胞系、ならびに、ウイルスベクター鋳型と、パッケージング用の付加的なヘルパーベクターとを含むベクター)を含有していてもよい。キットはまた、陽性および陰性対照siRNAまたはshRNA発現ベクター(例えば、非ターゲッティング対照siRNAまたは非関連mRNAを標的とするsiRNA)を含有していてもよい。キットはまた、意図する標的遺伝子(例えば、ウェスタンブロット用の対応するタンパク質に対する標的mRNAおよび/または抗体を検出するための定量PCR用プライマーおよびプローブ)のノックダウンを評価するための試薬を含有していてもよい。あるいは、キットは、siRNA配列またはshRNA配列と、siRNAをインビトロ転写により生成するため、またはshRNA発現ベクターを構築するために必要な説明書および材料とを含んでもよい。
【0135】
キット形態の医薬的な組合せが更に提供され、これには、容器手段を厳重に閉じ込めて受容するように構成された搬送容器手段と、干渉RNA組成物および許容可能な担体を含む第一容器手段とが包装されて組み合わされたものが含まれる。当業者には直ちに明らかであるように、このようなキットは、更に、所望であれば、1つまたは複数の多様な従来の医薬キット構成要素、例えば、1つまたは複数の医薬的に許容可能な担体を有する容器、追加の容器などを含むことができる。投与すべき成分の量を示す、挿入物またはラベルとしての印刷された説明書、投与のためのガイドラインおよび/または成分を混合するためのガイドラインもまた、キットに含めることができる。
【0136】
TACEまたはTNFR1用干渉RNAが、ヒトの角膜上皮細胞などにおける外因性TACEまたはTNFR1発現レベルをノックダウンさせる能力は、下記のようにインビトロで評価される。形質転換されたヒトの角膜上皮細胞、例えばCEPI−17細胞系(Offordら(1999年)Invest Ophthalmol Vis Sci. 40、1091〜1101頁)を、トランスフェクションの24時間前に、KGMケラチノサイト培地(Cambrex、East Rutherford、NJ)において平板培養する。トランスフェクションは、DharmaFECT(商標)1(Dharmacon、Lafayette、CO)を使用して、製造業者の指示に従い、0.1nM〜100nMの範囲のTACEまたはTNFR1用干渉RNA濃度で行われる。非ターゲッティング対照干渉RNAおよびラミンA/C干渉RNA(Dharmacon)を対照として使用する。TAQMAN(登録商標)順方向プライマーおよび逆方向プライマーならびに標的部位を包含するプローブセット(Applied Biosystems、Foster City、CA)などを使用して、トランスフェクションから24時間後にqPCRによって標的mRNAレベルを評価する。トランスフェクションからおよそ72時間後(実際の時間はタンパク質の代謝回転速度に応じる)に、ウェスタンブロットなどによって標的タンパク質レベルを評価してもよい。培養細胞からRNAおよび/またはタンパク質を単離するための標準的な技術は、当業者によく知られている。非特異的なオフターゲット効果の可能性を低減するために、所望の標的遺伝子発現ノックダウンレベルを生じる可能な限りの最低濃度のTACEまたはTNFR1干渉RNAを使用する。
【0137】
当業者は、本明細書の開示に照らし、本発明の精神および範囲を逸脱することなく本明細書に開示される実施形態の明らかな変更を行うことができることを理解するであろう。本明細書に開示される実施形態は全て、本明細書の開示に照らして、過度の実験を行うことなく創出および実行することができる。本発明の全範囲は、本明細書の開示およびその同等な実施形態において明示される。本明細書は、本発明に与えられる保護範囲全体を不当に狭めるものと解釈すべきではない。
【0138】
本発明の特定実施形態を示し、説明してきたが、当業者であれば、多数の変形および代替実施形態に想到するであろう。したがって、本発明は添付した特許請求の範囲に関してのみ制限されるものと意図される。
【0139】
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定形態で実施されてもよい。記載された実施形態は、あらゆる点において、例示としてのみであり、制限的なものとして考えるべきではない。故に、本発明の範囲は、上記説明によってではなく、添付した特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲と同等な意味および範囲内で行う特許請求の範囲に対する変更はいずれもその範囲内に包含されるものとする。更に、本明細書に記載された公開文献、特許および出願はいずれも、その全体が提示されているかのごとく、参照として本明細書に組み込まれている。
【実施例】
【0140】
(実施例1)
GTM−3細胞においてTNFR1を特異的にサイレンシングするための干渉RNA
本研究は、TNFR1干渉RNAが、培養したGTM−3細胞における外因性TNFR1タンパク質発現のレベルをノックダウンさせる能力を試験するものである。
【0141】
GTM−3細胞(Pang, I.H.ら、1994年、Curr. Eye Res. 13、51〜63頁)のトランスフェクションを、標準のインビトロ濃度(0.1〜10nM)のTNFR1 siRNA、siCONTROL 無RISC siRNA#1またはsiCONTROL 非ターゲッティングsiRNA#2(NTC2)およびDHARMAFECT(登録商標)#1トランスフェクション試薬(Dharmacon、Lafayette、CO)を用いて遂行した。全てのsiRNAを、1×siRNA緩衝液、20mM KClの水溶液、6mM HEPES(pH7.5)、0.2mM MgClに溶解させた。対照サンプルは、siRNAの容量の代わりに、等量の1×siRNA緩衝液(−siRNA)を使用した緩衝液対照を含んでいた。抗TNFR1抗体(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)を用いたウェスタンブロットを行い、TNFR1タンパク質発現を評価した。TNFR1 siRNAは、以下の標的に対して特異的な二本鎖干渉RNAである:siTNFR1#1は、配列番号96が得られる配列
【0142】
【化21】

を標的とし;siTNFR1#2は、配列番号97が得られる配列
【0143】
【化22】

を標的とし;siTNFR1#3は、配列番号98が得られる配列
【0144】
【化23】

を標的とし;siTNFR1#4は、配列番号99が得られる配列
【0145】
【化24】

を標的とする。図1のデータが示すように、siTNFR1#1、siTNFR1#2およびsiTNFR1#3siRNAは、対照のsiRNAと比較して、10nMおよび1nM濃度でTNFR1タンパク質発現を著しく低下させたが、0.1nMでの有効性は低下した。siTNFR1#2およびsiTNFR1#3siRNAは、特に効果的であった。siTNFR1#4siRNAもまた、期待したような、TNFR1タンパク質発現が濃度依存的に低下したことを示していた。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、TNFR1 siRNA番号1、2、3および4ならびにRISCを含まない対照siRNAを各10nM、1nMおよび0.1nM;非ターゲッティング対照siRNA(NTC2)を10nM;および緩衝液対照(−siRNA)をトランスフェクトしたGTM−3細胞のTNFR1ウェスタンブロットを示す図である。矢印は、55kDa TNFR1および42kDaアクチンバンドの位置を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2013−49728(P2013−49728A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−270348(P2012−270348)
【出願日】平成24年12月11日(2012.12.11)
【分割の表示】特願2009−511237(P2009−511237)の分割
【原出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】