説明

腫瘍抗原の生物活性を特異的に阻止するモノクローナル抗体

【解決手段】 本発明は、アルファ−葉酸レセプターと特異的に結合する新規モノクローナル抗体に関連するものである。一部の実施形態において、前記抗体は葉酸レセプター−α(FR−α)の生物活性を阻害するものである。前記抗体は、特定の癌、特に卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍などの、アルファ−葉酸レセプター("FR−α")の細胞表面の発現が増加した癌の治療に有益である。前記発明はまた、モノクローナル抗体、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体などの抗体派生物、抗体断片を発現する細胞、及び抗体、派生物、及び断片を使用して癌を検出及び治療する方法に関連するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年2月12日に出願された米国仮出願第60/544,364号に対して優先権を主張しており、その全体の開示は、この参照により本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
本発明は、アルファ−葉酸レセプター("FR−α")と特異的に結合する精製された新規モノクローナル抗体及びその組成物に関連するものである。一部の実施形態において、本発明の抗体は、FR−αの生物活性を阻止する。本発明の抗体及び組成物は、特定の癌、特に卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍など、アルファ−葉酸レセプターの細胞表面の発現が増強した癌の治療に有益である。本発明はまた、モノクローナル抗体、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体などの抗体派生物、抗体断片を発現しているハイブリドーマ細胞、モノクローナル抗体、派生物及び断片を発現している哺乳類細胞、本発明の精製した抗体の組成物、及び本発明の抗体、派生物、断片、及び組成物を使用して癌を検出及び治療する方法に関連するものである。
【背景技術】
【0003】
ヒト細胞膜葉酸結合タンパク質(human membrane folate binding protein)には、α、β、及びγの三つの主要なアイソフォームが存在する。α及びβアイソフォームは、約70%のアミノ酸配列の相同性を有しており、いくつかの葉酸に対するそれらの立体特異性においては劇的に異なる。正常組織は一般的に低量から中程度量のFR−βを発現するが、この両アイソフォームは胎児及び成体組織で発現されている。しかし、FR−αは正常上皮細胞で発現され、多様な癌腫中で頻繁に著しく増加される(Ross et al.(1994)Cancer 73(9):2432−2443;Retting et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3110−3114;Campbell et al.(1991)Cancer Res. 51:5329〜5338;Coney et al.(1991)Cancer Res. 51:6125〜6132;Weitman et al.(1992)Cancer Res. 52:3396−3401;Garin−Chesa et al.(1993)Am.J.Pathol. 142:557−567;Holm et al.(1994)APMIS 102:413−419;Franklin et al.(1994)Int.J.Cancer 8(Suppl.):89〜95;Miotti et al.(1987)Int.J.Cancer 39:297−303;及びVegglan et al.(1989)Tumori 75:510−513)。FR−αは、卵巣癌の90%以上で過剰発現されている(Sudimack and Lee(2000)Adv.Drug Deliv.Rev.41(2):147−62)。FR−αは、一般的にGPIアンカーを介して細胞膜に付着している。GPIアンカーは、オリゴ糖及びイノシトールリン脂質を含む。
【0004】
1987年にMiottiらは、ヒト卵巣癌細胞上の抗原を認識する3つの新しいモノクローナル抗体を報告した(Miotti et al.(1987)Int.J.Cancer39(3):297〜303)。それらのうちの1つは、絨毛癌細胞の表面上の38kDaタンパク質を認識するMOv18と名付けられた。MOv18はマウスIgG1カッパー抗体であり、卵巣癌細胞株のIGROV1の特異的細胞溶解を媒介する。Albertiら((1990)Biochem.Biophys.Res.Commun.171(3):1051−1055)は、MOv18によって認識された抗原はGPI連結性タンパク質であったことを示した。その後、これはヒト葉酸結合タンパク質として同定された(Coney et al.(1991)Cancer Res.51(22):6125−6132)。Tomassettiらは、MOv18はIGROV1細胞中で葉酸結合タンパク質の可溶型及びGPIアンカー型を認識することを示した(Tomassetti et al.(1993)FEBS Lett.317(1〜2):143−146)。その後の研究によって、キメラ化MOv18抗体を作り出すために、マウスMOv18の可変領域とヒトIgG1(カッパー)の定常領域を組み合わした。前記キメラ化抗体は、10〜100倍低い抗体濃度で高水準及びより特異的なIGROV1細胞の溶解を媒介した(Coney et al.(1994)Cancer Res.54(9):2448〜2455)。38kDa抗原は、FR−αの単量体型であるように思われる。
【0005】
米国特許第5,952,484号公報は、38kDaタンパク質(FR−α)と結合するヒト化抗体を記載している。前記抗体はLK26と名付けられた。最初のマウスモノクローナル抗体は欧州特許出願第86104170.5号(欧州特許第0197435号として公開され、米国特許第4,851,332号公報として米国で交付された)にRettingによって記載された。
【0006】
卵巣癌は、婦人科悪性腫瘍の理由から主な死亡原因である。化学療法は推奨された治療法であり、いくつかの成功を享受しているが、5年生存率は未だに40%以下である。
【0007】
癌の抗体治療における困難な問題は、多くの場合、抗体の標的が癌組織と同様に正常組織によっても発現されていることである。従って、癌細胞を死滅させるために使用された抗体は正常細胞にも悪影響を及ぼす。特異な標的若しくは癌組織で選択的に発現する標的を見つけることは、困難であることが多くの癌で証明されている。選択的に発現する標的及びそのような標的の生物活性を阻止する能力の同定は、癌治療に効果的である可能性がある。そのようなものとして、卵巣癌及び他のFR−が関連する癌のための、正常組織との反応性をなくす若しくは最小化する、より効果的な抗体治療が必要とされる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一部の実施形態において、本発明は、FR−αと特異的に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、好ましくはFR−αの生物活性を阻止する。一部の実施形態において、本発明は、抗体産生細胞及びFR−αと特異的に結合する抗体の組成物を提供し、前記細胞及び組成物は、実質的にFR−α結合競合物を含まない。一部の実施形態において、実質的に本発明の抗体を含む抗体を産生する抗体産生細胞が提供される。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、少なくとも約1×10−7M、少なくとも約1×10−8M、少なくとも約1×10−9M、さらに最も好ましくは少なくとも約1×10−10Mの結合親和力でFR−αと結合する。
【0009】
FR−αを過剰発現している腫瘍は、例えば四量体のようなFR−αの多量体型の形成を助ける傾向にあることが発見されている。いかなる特定の理論によっても束縛されることなく、FR−αの多量体型の形成は、腫瘍細胞表面上においてより多量なFR−αが蓄積されるために、質量効果によって促進される。以前は、他の研究者らが、それらの疎水性尾部を介してTriton X−100ミセルに挿入されたFR−αを表したゲルろ過アッセイでにおいて、FR−αのより高分子量の種を発見したのみである(Holm et al.(1997)Biosci.Reports17(4):415−427)。一部の実施形態において、本発明は、FR−αの多量体型と特異的に結合し、単量体型とは結合しない抗体を提供する。
【0010】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、(a)抗体LK26によって結合したエピトープ以外のFR−αのエピトープと結合し、(b)抗体LK26よりも高い親和力でFR−αと結合し、(c)FR−αの多量体型と結合するために抗体LK26と競合し、その結果FR−αの生物活性を阻止し、及び/若しくは、(d)LK26に対して精製される。
【0011】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、ジスルフィド依存エピトープを認識する。
【0012】
本発明の一部の実施形態において、配列ID番号5のアミノ酸配列を含む重鎖を有する抗体と関連する。一部の実施形態において、前記重鎖は配列ID番号6のアミノ酸配列を含む。
【0013】
一部の実施形態において、本発明の抗体は配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。本発明の一部の実施形態において、前記抗体は配列ID番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。
【0014】
本発明はさらに、配列ID番号5若しくは配列ID番号6のアミノ酸配列を含む重鎖及び、配列ID番号2若しくは配列ID番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体を提供する。本発明の抗体は、好ましくは配列ID番号5のアミノ酸配列を含む重鎖及び、配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有し、より好ましくは配列ID番号6のアミノ酸配列を含む重鎖及び、配列ID番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。本発明の一部の実施形態において、前記抗体の重鎖は、配列ID番号7のヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。本発明の一部の実施形態において、前記抗体の軽鎖は、配列ID番号8のヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされている。
【0015】
本発明の抗体は、これに限られるものではないが、ヒト−マウスキメラ抗体を含むキメラ抗体であっても良い。本発明の抗体はまた、ヒト化抗体である可能性がある。本発明はまた、ハイブリドーマ細胞を含む本発明の抗体を発現する細胞、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチド、本発明をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、及び本発明のベクターを含む発現細胞を提供する。
【0016】
本発明はまた、FR−αと特異的に結合する抗体を産生する方法を提供する。一部の実施形態において、前記方法は、本発明の抗体産生細胞を培養する工程を有する。本発明の細胞は昆虫細胞若しくは動物細胞、好ましくは哺乳類細胞であっても良い。
【0017】
本発明はさらに、異型細胞を持つ患者に本発明の抗体を含む組成物を投与することを有するFR−αの発現増加に伴う異型細胞の成長を阻害する方法を提供する。前記抗体は、好ましくはFR−αの生物活性を阻止する。前記方法は、これに限られるものではないが、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍などの、多様な異型症状に使用される。好ましい実施形態において、前記患者はヒトの患者である。一部の実施形態において、前記抗体は、これに限られるものではないが、放射性核種、毒素、化学療法薬などの細胞毒性物質と結合する。一部の実施形態において、前記抗体は、抗葉酸剤と同時に投与される。前記抗葉酸剤及び本発明の抗体は、同時に若しくは一斉に(つまり、一緒に)或いは任意の順序で投与されても良い。
【0018】
本発明はまた、FR−α、好ましくは哺乳類のFR−αと特異的に結合するモノクローナル抗体を使用して、癌細胞の成長を減退させる方法を提供する。本発明の方法は、ヒトを含む哺乳類において、癌細胞の成長及び癌の進行を調節するために使用されても良い。阻害され得る癌細胞は、これに限られるものではないが、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍など、正常ヒト組織対して増加したFR−αの発現を有するすべての癌細胞を含む。
【0019】
また、本発明によって、本発明の抗体の組成物が提供される。好ましい実施形態において、前記組成物は、実質的に純粋である。実質的に純粋な本発明の抗体の組成物は、本発明の抗体の重量に対して、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%、最も好ましくは約100%含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本明細書において参照される、参照研究、特許、特許出願、及びGenBankデータベース配列の登録番号を含む科学文献は、当業者の知識を確立し、この結果、各々が具体的及び個別に参照によって組み込まれるように、それら全てが同程度に参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書において引用された任意の参照と、本明細書の具体的な教示との間においていかなる不一致があっても、後者を支持することで解決されるだろう。同様に、当技術分野で理解された単語若しくは語句の定義とこの明細書で具体的に教示された単語若しくは語句の定義との間においていかなる不一致があっても、後者を支持することで解決されるだろう。
【0021】
当業者に知られている組換えDNA技術の一般的な原理を説明している標準的な参照研究は、Ausubel et al. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York (1998); Sambrook et al. MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2D ED., Cold Spring Harbor LAboratory Press, Plainview, New York (1989); Kaufman et al., Eds., HANDBOOK OF MOLECULAR AND CELLULAR METHODS IN BIOLOGY AND MEDICINE, CRC Press, Boca Raton (1995); McPherson, Ed., DIRECTED MUTAGENESIS: A PRACTICAL APPROACH, IRL Press, Oxford (1991)を含む。
【0022】
本明細書において使用される"エピトープ"という用語は、モノクローナル抗体が特異的に結合する抗原の一部を指す。
【0023】
本明細書において使用される"立体構造エピトープ"という用語は、連続した一連のアミノ酸以外の抗原のアミノ酸の間での空間的な関係によって形成された非連続のエピトープを指す。
【0024】
本明細書において使用される"多量体"という用語は、2若しくはそれ以上の同一或いはほぼ同一の構成単位の集団を指す。ここで使用されたように、"四量体"という用語は、4つの同一或いはほぼ同一の構成単位の集団を指す。
【0025】
本明細書において使用される"単量体"という用語は、他の構成単位と集団を組み立てる、完全なタンパク質の1個の構成単位を指す。
【0026】
本明細書において使用される"in vitroにおける異型細胞の成長の阻害"という用語は、培養液中で少なくとも約5%、好ましくは約10%、より好ましくは約20%、より好ましくは約30%、より好ましくは約40%、より好ましくは約50%、より好ましくは約60%、より好ましくは約70%、より好ましくは約80%、より好ましくは約90%、より好ましくは約95%、より好ましくは約99%、最も好ましくは100%の腫瘍細胞数が減少することを意味する。in vitroでの腫瘍細胞成長の阻害は、GEO細胞ソフトアガーアッセイなど、当技術分野で知られているアッセイによって測定される可能性がある。
【0027】
本明細書において使用される"in vivoでの異型細胞の成長の阻害"という用語は、動物で少なくとも約5%、好ましくは約10%、より好ましくは約20%、より好ましくは約30%、より好ましくは約40%、より好ましくは約50%、より好ましくは約60%、より好ましくは約70%、より好ましくは約80%、より好ましくは約90%、より好ましくは約95%、より好ましくは約99%、最も好ましくは100%の腫瘍細胞数が減少することを意味する。in vivoでの腫瘍細胞成長の調節は、例えば、これに限られるものではないが、固形腫瘍の反応評価基準(the Response Evaluation Criteria in Solid Tumors:RECIST)パラメーター(National Cancer Institute Cancer Therapy Evaluation Programを通してオンラインで利用可能)の使用など、当技術分野で知られるアッセイによって測定される可能性がある。
【0028】
本明細書において使用される"異型細胞"という用語は、これに限られるものではないが、軟寒天(soft agar)中における成長、接触阻害の欠如、無血清での細胞周期休止の失敗、及び免疫不全マウスに注射したときの腫瘍の形成など、異常な成長特性を示す細胞を指す。異型細胞は、これに限られるものではないが、腫瘍、過形成、及び類似のものを含む。
【0029】
"抑制"という用語は、生物が異常な病気に罹る若しくは進展する可能性を減少させることを指す。
【0030】
"治療"という用語は、治療効果を有し、さらに生物の異常な病気を少なくとも部分的に軽減する若しくは排除することを指す。治療は、腫瘍成長の阻害、阻害された腫瘍成長の維持、及び回復の誘導を含む。
【0031】
"治療効果"という用語は、異常な病気の阻害を指す。治療効果は、異常な状態の1若しくはそれ以上の症状をある程度軽減する。異常な症状の治療に関して、治療効果は、次の1若しくはそれ以上を指しても良い。(a)細胞の増殖、成長、及び/若しくは分化の増加若しくは減少、(b)in vivoの腫瘍細胞の成長の阻害(即ち、遅延若しくは停止)、(c)細胞死の促進、(d)変性の阻害、(e)異常な症状に伴う1若しくはそれ以上の症状をある程度軽減すること、及び(f)細胞の集団の作用を増強すること。本明細書において記述されたモノクローナル抗体及びその派生物は、単独で、若しくは本発明の組成物の複合体或いは付加された成分と組み合わせて治療効果を達成する。
【0032】
本明細書において使用される"癌の進行を阻害する"という用語は、未処理癌細胞の末期疾患に向かうことを調節すること関連して、末期の癌に向かう腫瘍性疾患の調節を遅らせる治療活動を指す。
【0033】
本明細書において使用される"FR−αの生物活性を阻止する"とは、葉酸のFR−αへの結合の阻止、細胞による葉酸の吸収を阻止、若しくは葉酸によって引き起こされる細胞のシグナル伝達を阻害する本発明の抗体(若しくはその断片)の能力を指す。
【0034】
本明細書において使用される"約"という用語は、許容範囲内での規定値の近似値を指す。好ましくは、前記範囲は、規定値の+/−5%である。
【0035】
本明細書において使用される"腫瘍性疾患"という用語は、組織の細胞の異常増殖によって特徴付けられた状態を指す。
【0036】
本明細書において使用される"野生型"という用語は、例えば、本発明の抗体の重鎖若しくは軽鎖の天然のコード化核酸配列若しくはアミノ酸配列のような天然配列を指す。本発明の野生型配列の例は、配列ID番号1〜8の配列を含む。
【0037】
本明細書において使用される"FR−α結合競合物"という用語は、本発明の抗体をコードする核酸の異常な転写、及び本発明の抗FR−α抗体の生物学的特性(例えば、抗原結合親和力、FR−αの生物活性を阻止する能力)を有さない本発明の抗体の異常な転写産物を指す。例えば、異常な転写は、欠失、フレームシフト、ナンセンス突然変異、若しくはミスセンス突然変異を含む。異常な転写産物の例は、選択的スプライス変異であっても良い。FR−α結合競合物の例は、配列ID番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖を有する抗体である。
【0038】
【化1】

【0039】
前記FR−α結合競合物の軽鎖は、配列ID番号25の核酸配列を有する核酸によってコードされている。
【0040】
【化2】

【0041】
本明細書において使用される"精製した"という用語は、"実質的に純粋な"形態で存在するために、天然では結び付くであろう他のタンパク質若しくは核酸から十分に分離している状態を意味する。"精製した"とは他の化合物若しくは物質との人工或いは合成混合物、又は、例えば、不完全な精製、安定剤の添加、若しくは例えば免疫原性製剤或いは薬剤的に容認された製剤中の配合剤などによって存在する可能性がある基礎活性を妨害しない不純物の存在を除外することを意味してはいない。"精製した"抗体は、好ましくはFR−α結合競合物が実質的に存在しない抗体を意味する。"実質的に純粋な"という用語は、任意の物質(例えば、核酸、タンパク質など)の重量に対して少なくとも約50〜60%含むことを意味する。より好ましくは、前記製剤は、任意化合物の重量に対して少なくとも約75%を含み、最も好ましくは、任意化合物の重量に対して約90〜95%含むものである。純度は任意物質にふさわしい方法によって測定される(例えば、クロマトグラフ法、アガロース若しくはポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLCアッセイ、及び類似のもの)。
【0042】
本明細書において使用される"FR−α結合競合物が実質的に存在しない"という用語は、FR−α結合競合物の重量に対して約50%以下、より好ましくは約40%以下、より好ましくは約30%以下、より好ましくは約20%以下、より好ましくは約10%以下、より好ましくは約5%以下、より好ましくは約1%以下、より好ましくは約0.5%以下、及び最も好ましくは約0%を有する状態を指す。
【0043】
抗体
本発明の抗体は、葉酸レセプター−アルファ(FR−α)と特異的に結合する。一部の実施形態において、本発明の抗体は、FR−αの単量体型と特異的に結合する。一部の実施形態において、本発明の抗体は、FR−αの多量体型(例えば、四量体型)と特異的に結合し、FR−αの単量体型と結合しない。本発明の好ましい抗体は、FR−αの生物活性を阻止する。好ましい実施形態において、前記抗体は、FR−αを持った細胞上のFR−αの生物活性を阻止する。本発明の抗体は、好ましくはFR−αを持った細胞の抗体依存性細胞毒性(antibody−dependent cellular cytotoxicity:ADCC)を誘導する。FR−αを持った細胞の例は、これに限られるものではないが、卵巣癌、乳癌、脳腫瘍、腎臓癌、大腸癌、子宮体癌細胞を含むものである。
【0044】
好ましい抗体及び本発明の方法の使用に適した抗体は、例えば、完全ヒト抗体、ヒト抗体ホモログ、ヒト化抗体ホモログ、キメラ抗体ホモログ、Fab、Fab’、F(ab’)、及びF(v)抗体断片、1本鎖抗体、及び抗体重鎖或いは軽鎖のモノマー若しくはダイマー、又はその混合物を含む。本発明の抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0045】
本発明の抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(そのサブタイプも同様)型を含む任意のアイソタイプの無傷の免疫グロブリンを含むものであっても良い。前記抗体は、好ましくは無傷のIgG、及びより好ましくはIgG1を含む。前記免疫グロブリンの軽鎖は、カッパー若しくはラムダであっても良い。前記軽鎖は好ましくはカッパーである。
【0046】
本発明の抗体は、例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、F(v)断片、重鎖モノマー若しくはダイマー、軽鎖モノマー若しくはダイマー、1つの重鎖及び1つの軽鎖から成るダイマー、及び類似のものなど、抗原結合特異性を保持している無傷の抗体の部分を含む。従って、抗原結合断片は、上述の抗体由来の完全長二量体若しくは三量体ポリペプチドと同様に、それ自体で有益である。
【0047】
"キメラ抗体"は、免疫グロブリンの軽鎖、重鎖、若しくは両方のヒンジ及び定常領域の全体若しくは一部が、他の動物免疫グロブリンの軽鎖若しくは重鎖からの対応する領域と置換される、組換えDNA技術によって産生された抗体である。この方法において、もとのモノクローナル抗体の抗原結合部位は、他種の抗体の基幹に移植される。欧州特許第EP0239400号に記載されたWinterらのある取り組みは、例えばヒトの重鎖及び軽鎖免疫グロブリンの可変領域ドメインからのCDRsをマウスの可変領域ドメインからのCDRsへと置換するように、ある種の相補性決定領域(CDRs)を他種のものへと置換することを記載している。このように変化した抗体は、続いて、ヒト免疫グロブリンの定常領域と結合し、抗原に得意的である置換されたマウスCDRsを除いてはヒトである抗体を形成する。抗体のCDR領域を移植する方法は、例えば、Riechmann et al.(1988) Nature 332:323−327、及びVerhoeyen et al.(1988) Science 239:1534−1536において見出される。
【0048】
ヒトの治療物質としてのげっ歯類のモノクローナル抗体(MAbs)の直接的な使用によって、げっ歯類由来の抗体を用いて治療したかなりの数の患者において生じるヒト抗げっ歯類抗体("HARA")(例えば、ヒト抗マウス抗体("HAMA"))反応をもたらした(Khazaei, et al.,(1994)Immunother.15:42−52)。少量のマウスアミノ酸配列を含むキメラ抗体は、ヒトで免疫反応を誘発するという問題を回避すると信じられている。
【0049】
HARA反応の問題を回避するために抗体を改良したことによって、"ヒト化抗体"の開発に至った。ヒト化抗体は、抗原結合に要求されないヒト免疫グロブリンの軽鎖若しくは重鎖の少なくとも1つのアミノ酸が、ヒト以外の哺乳類の免疫グロブリンの軽鎖若しくは重鎖からの対応するアミノ酸と置換される、組換えDNA技術によって産生される。例えば、前記免疫グロブリンがマウスのモノクローナル抗体の場合、抗原結合に要求されない少なくとも1つのアミノ酸は、その位置の対応するヒト抗体上に存在するアミノ酸を使用して置換される。いかなる特定の動作理論によっても束縛されることなく、モノクローナル抗体の"ヒト化"によって、異質の免疫グロブリン分子に対するヒト免疫グロブリン反応性を阻害すると考えられている。
【0050】
限定しない例として、相補性決定領域(CDR)移植を実施する方法は、標的抗原(例えば、FR−α)と結合する目的の抗体のマウスの重鎖及び軽鎖の配列を決定すること、CDRのDNA配列を遺伝子操作をすること、及び部位特異的突然変異誘発法によって対応するヒトV領域にそれらのアミノ酸配列を与えることによって実施される可能性がある。好ましいアイソタイプのヒトの定常領域の遺伝子断片が付加され、さらに"ヒト化"重鎖及び軽鎖遺伝子が哺乳類細胞において共発現され、可溶性ヒト化抗体を産生する。標準的な発現細胞は、Chinese Hamster Ovary(CHO)細胞である。キメラ抗体を作り出す適切な方法は、例えば、Jones et al.(1986)Nature 321:522〜525;Riechmann(1988)Nature332:323〜327;Queen et al. (1989)Proc. Acad. Sci. USA 86:10029;及びOrlandi et al. Proc. Acad. Sci. USA 86:3833などにおいて見出される可能性がある。
【0051】
Queen et al.(1989)Proc. Acad. Sci. USA 86:10029−10033及び国際公開第WO90/07861号は、ヒト化抗体の調製を記載している。ヒト及びマウスの可変フレームワーク領域が、最適のタンパク質の配列ホモロジーに選ばれた。マウスの可変領域の三次構造をコンピュータでモデル化し、相同ヒトフレームワークの上に重ねることによって、アミノ酸残基とマウスCDRsとの最適な相互作用を示した。これは、(CDRが移植されたキメラ抗体を作る上で一般的に減少する)抗原に対する改善された結合親和力を有する抗体の進歩をもたらした。ヒト化抗体を作る別の取り組みは、当技術分野で知られており、例えば、Tempest(1991)Biotechnology 9:266−271に記載されている。
【0052】
"1本鎖抗体"は、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖断片が操作されたアミノ酸の全長を介してFv領域と繋がる組換えDNA技術によって形成された抗体を指す。1本鎖抗体を作り出す多様な方法が知られており、米国特許第4,694,778号公報;Bird(1988)Science 242:423〜442;Huston et al.(1988)Proc. Acad. Sci. USA 85:5879〜5883;Ward et al.(1989)Nature 334:54454;Skerra et al.(1988)Science 242:1038〜1041に記載されているものを含む。
【0053】
本発明の抗体は、単独若しくは細胞毒性物質との免疫複合体として使用されても良い。一部の実施形態において、前記薬剤は化学療法薬である。一部の実施形態において、前記物質は、これに限られるものではないが、鉛−212、ビスマス−212、アスタチン−211、ヨウ素−131、スカンジウム−47、レニウム−186、レニウム−188、イットリウム−90、ヨウ素−123、ヨウ素−125、臭素−77、インジウム−111、及びホウ素−10若しくはアクチニドなどの核分裂性核種を含む放射性同位体である。他の実施形態において、前記物質は、これに限られるものではないが、リシン、改変シュードモナスエンテロトキシンA、カリケアマイシン、アドリアマイシン、5−フルオロウラシル、及び類似のものを含む、毒性若しくは細胞毒性の薬物である。そのような物質に対して抗体及び抗体断片を複合させる方法は、文献において知られている。
【0054】
本発明の抗体は、例えば、共有結合が前記抗体のそのエピトープに対する結合の妨げにならないように、前記抗体への任意のタイプの分子の共有結合によって改変された派生物を含む。適切な派生物の例は、これに限られるものではないが、フコシル化抗体及び断片、グリコシル化抗体及び断片、アセチル化抗体及び断片、ペグ化抗体及び断片、リン酸化抗体及び断片、及びアミド化抗体及び断片を含む。本発明の抗体とその派生物は、既知の保護/封鎖基、タンパク質分解的切断、細胞のリガンド若しくは他のタンパク質との結合、及び類似のものによってそれら自体が誘導体化されても良い。本発明の一部の実施形態において、前記抗体の少なくとも1つの重鎖はフコシル化されている。一部の実施形態において、前記フコシル化はN連結性である。いくつかの好ましい実施形態において、前記抗体の少なくとも1つの重鎖はフコシル化されたN連結性オリゴ糖を含む。
【0055】
本発明の抗体は、本発明の抗体の生物学的な特性(例えば、FR−αの生物活性の阻止、結合親和力)を残している1若しくは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、若しくは交換を有する変異体を含む。当業者であれば、1若しくは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、若しくは交換を有する変異体を産生できる。それらの変異体は、とりわけ(a)1若しくはそれ以上のアミノ酸残基が保存若しくは非保存アミノ酸と置換される変異体、(b)1若しくはそれ以上のアミノ酸がポリペプチドに付加される若しくはポリペプチドから取り除かれる変異体、(c)1若しくはそれ以上のアミノ酸が置換基を含む変異体、及び(d)前記ポリペプチドが融合パートナー、タンパク質タグ、若しくは他の化学的部分などの、他のペプチド若しくはポリペプチドと融合し、それは例えば、抗体のためのエピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン部分、及び類似のものなどポリペプチドに対して有益な特性を与える変異体である。本発明の抗体は、1つの種からのアミノ酸残基が保存若しくは非保存部位のどちらかにおいて他種の対応する残基と置換される変異体を含む。他の実施形態において、非保存部位のアミノ酸残基は、保存若しくは非保存残基と置換される。遺伝的(抑制、欠失、突然変異など)、化学的、及び酵素技術を含む、このような変異体を得るための技術は、当業者に知られている。本発明の抗体は抗体断片も含む。"断片"は、好ましくは少なくとも約40、より好ましくは少なくとも約50、より好ましくは少なくとも約60、より好ましくは少なくとも約70、より好ましくは少なくとも約80、より好ましくは少なくとも約90、及びより好ましくは少なくとも約100のアミノ酸の長さであり、さらに例えば、FR−αの生物学的活性及び/若しくはFR−α結合親和力を阻止する能力など、完全長配列の一部の生物活性若しくは免疫学的活性を残しているポリペプチド配列を指す。
【0056】
本発明はまた、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍患者の末梢血単核細胞由来の抗体などの完全ヒト抗体も包含する。そのような細胞は、例えばFR−αに対する完全ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞を形成するために、ミエローマ細胞と融合されても良い。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体は、配列ID番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。
【0058】
【化3】

【0059】
一部の好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。
【0060】
【化4】

【0061】
一部の好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列ID番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。
【0062】
【化5】

【0063】
配列ID番号4のアミノ酸配列を含む重鎖を有する抗体もまた、本発明の範囲内である。
【0064】
【化6】

【0065】
本発明の一部の好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列ID番号5のアミノ酸配列を含む重鎖を有する。
【0066】
【化7】

【0067】
本発明の一部の好ましい実施形態において、前記抗体の重鎖は、配列ID番号6のアミノ酸配列を含む。
【0068】
【化8】

【0069】
本発明の一部の実施形態において、前記抗体は、配列ID番号4、5、若しくは6のアミノ酸配を含む重鎖、及び配列ID番号1、2、若しくは3のアミノ酸配を含む軽鎖を有する。より好ましい実施形態において、前記抗体は、配列ID番号5のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。本発明の一部の実施形態において、前記抗体は、配列ID番号6のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。
【0070】
本発明の抗体は、例えばin vivo毒性研究で実証されているように、好ましくは非毒性である。
【0071】
本発明の抗体及びその派生物は、1×10−2以下の解離定数(K)を含む結合親和力を有する。一部の実施形態において、Kは1×10−3以下である。他の実施形態において、Kは1×10−4以下である。他の実施形態において、Kは1×10−5以下である。さらに他の実施形態において、Kは1×10−6以下である。他の実施形態において、Kは1×10−7以下である。他の実施形態において、Kは1×10−8以下である。他の実施形態において、Kは1×10−9以下である。他の実施形態において、Kは1×10−10以下である。さらに他の実施形態において、Kは1×10−11以下である。他の実施形態において、Kは1×10−12以下である。他の実施形態において、Kは1×10−13以下である。他の実施形態において、Kは1×10−14以下である。さらに他の実施形態において、Kは1×10−15以下である。
【0072】
いかなる特定の理論によっても束縛されることなく、本発明の一部の実施形態の抗体は、前記抗体の両"腕"(Fab断片)が多量体を構成する個々のFR−α分子と結合するときに、前記抗体の増加した結合力のためにFR−αの多量体型の結合において特に有益である。これは抗体の解離(K)の減少、及び実際の親和力の全体的な増加を導く。
【0073】
核酸
本発明はまた、本発明の抗FR−α抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖をコードする核酸を含む。本明細書において使用される"核酸"若しくは"核酸分子"は、1本鎖若しくは2本鎖のどちらかの任意のDNA若しくはRNA分子を指し、さらに1本鎖の場合、直線状若しくは環状のどちらかの形態のその相補配列の分子を指す。核酸分子を議論する場合、特定の核酸分子の配列若しくは構造は、5’から3’方向において配列が提供されるという通常の約束事に従って本明細書において記載される可能性がある。本発明の一部の実施形態において、核酸は"単離"されている。この用語はDNAに適用される場合、その由来生物の自然発生的なゲノムの中で直接的に接触している配列から分離したDNA分子を指す。例えば、"単離された核酸"は、プラスミド若しくはウイルスベクターのようなベクターに挿入された、又は原核の若しくは真核の細胞或いは宿主生物のゲノムDNAの中に組み込まれたDNA分子を含んでも良い。RNAに適用する場合、"単離された核酸"という用語は、上記に定義されるように単離されたDNA分子によってコードされたRNA分子を主に指す。また、前記用語は、その自然状態(即ち細胞若しくは組織中)においては関連する他の核酸から十分に分離されているRNA分子を指す。単離された核酸(DNA若しくはRNAのどちらか)はさらに、生物学的若しくは人工的手法によって直接産生された分子、及びその産生物の間に存在する他の成分から分離した分子を意味するものであっても良い。
【0074】
本発明の核酸は、本発明の核酸に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、及び最も好ましくは少なくとも約98%のホモロジーを有する核酸を含む。特定の配列を参照する場合の"類似パーセント"、"同一パーセント"、及び"ホモロジーパーセント"という用語は、University of Wisconsin GCG software programにおいて記載されているように使用される。本発明の核酸はまた、相補的核酸も含む。一部の例において、前記配列は、整列させた場合には完全に相補的(不一致なく)である。他の例において、前記配列において最大約20%の不一致がある可能性がある。
【0075】
本発明の核酸はまた、本発明の核酸の断片も含む。"断片"は、好ましくは少なくとも約10核酸の長さ、より好ましくは約40核酸、最も好ましくは約100核酸の長さの核酸配列を指す。"断片"はまた、1若しくはそれ以上の欠失、挿入、若しくは置換を含む少なくとも約100の連続ヌクレオチドの伸展を意味する可能性がある。"断片"はまた、遺伝子の暗号配列全体を意味し、5’及び3’非翻訳領域を含むものであっても良い。
【0076】
コードされた抗体の軽鎖は、好ましくは配列ID番号1、2、若しくは3のアミノ酸配列を含む。コードされた抗体の重鎖は、好ましくは配列ID番号4、5、若しくは6のアミノ酸配列を含む。本発明の一部の実施形態において、抗体の重鎖は配列ID番号7のヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。
【0077】
【化9】

【0078】
本発明の一部の実施形態において、抗葉酸レセプター−α抗体の軽鎖は配列ID番号8の核酸配列によってコードされる。
【0079】
【化10】

【0080】
本発明の一部の実施形態において、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖の両方をコードする核酸配列が提供される。例えば、本発明の核酸は、配列ID番号1、2、若しくは3のアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び配列ID4、5、若しくは6のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
【0081】
本発明の核酸はベクターにクローン化され得るものである。"ベクター"は、他のゲノム配列若しくは分子(DNA若しくはRNAのどちらか)が、加えられた配列若しくは分子の複製をもたらすために挿入されるプラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、人工の染色体(BAC、YAC)、若しくはウイルスのようなレプリコンである。"レプリコン"は、例えば、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、人工の染色体(BAC、YAC)、若しくはウイルスなど、任意の遺伝的分子であり、主として自らの制御下で複製する能力を持つ。レプリコンはRNA若しくはDNAのどちらかであっても良く、1本鎖若しくは2本鎖であっても良い。一部の実施形態において、発現ベクターは、構成的に活性なプロモーター部分(これに限られるものではないが、例えばCMV、SV40、伸長因子、若しくはLTR配列など)、若しくは例えばステロイド誘導性pINDベクター(Invitrogen)などの核酸の発現が調節できる誘導性プロモーター配列を含み、前記核酸の発現は制御され得るものである。本発明の発現ベクターはさらに、例えば内部リボソーム侵入部位のような調節配列を含む。前記発現ベクターは、例えばトランスフェクションによって細胞内に導入される。
【0082】
FR−αの抗体産生方法
本発明はまた、FR−αと特異的に結合するモノクローナル抗体の産生方法も提供する。本発明の抗体は、in vivo若しくはin vitroで産生される。FR−αに対する抗体を作り出す1つの計画は、FR−αの免疫動物を含む。一部の実施形態において、動物はFR−αの単量体型若しくは多量体型の免疫を持つ。そのような免疫を持つ動物はタンパク質に対する抗体を産生するものである。標準的な方法は、これに限られるものではないが、ハイブリドーマ技術(Kohier & Milstein,(1975)Nature 256:495〜497参照);トリオーマ(trioma)技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.(1983)Immunol. Today 4:72)、及びヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole,et al. in MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY ,Alan R. Liss, Inc.,1985,pp.77−96参照)を含むモノクローナル抗体の開発で知られている。
【0083】
FR−αは、細胞から、若しくはタンパク質の単離及び精製に対する様々な既存技術を使用した組換えシステムから精製される得るものである。例えば、これらの方法に限られるものではないが、FR−αは、タンパク質をSDS−PAGEゲルで泳動し、前記タンパク質をメンブレン上にブロットすることによって、前記タンパク質の見かけ上の分子量に基づいて単離され得るものである。その後、FR−αと一致する適切な大きさのバンドは、メンブレンから切り取られ、免疫原として動物に直接、若しくは前記メンブレンからのタンパク質の第一抽出或いは溶出によって使用され得るものである。別の例として、前記タンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィー(size−exclusion chromatography)のみによって、若しくは他の単離及び精製方法の組み合わせによって単離され得るものである。
【0084】
本発明はまた、FR−αの多量体型に特異的に結合するモノクローナル抗体の産生方法を提供する。例えば四量体などの多量体のFR−αは、細胞から、若しくはタンパク質の単離及び精製に対する様々な既知技術を使用した組換えシステムから単離され得るものである。例えば、これらの方法に限られるものではないが、多量体のFR−αは、タンパク質をSDS−PAGEゲルで泳動し、前記タンパク質をメンブレン上にブロットすることによって、前記タンパク質の見かけ上の分子量に基づいて単離され得るものである。その後、FR−αと一致する適切な大きさのバンドは、前記メンブレンから切り取られ、免疫原として動物に直接、若しくはメンブレンからのタンパク質の第一抽出或いは溶出によって使用され得るものである。別の例として、前記タンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーのみによって、若しくは他の単離及び精製方法の組み合わせによって単離され得るものである。
【0085】
他の精製方法が、Zola, MONOCLONAL ANTIBODIES: PREPARATION AND USE OF MONOCLONAL ANTIBODIES AND ENGINEERED ANTIBODY DERIVATIVES (BASICS: FROM BACKGROUND TO BENCH) Springer−Verlag Ltd., New York, 2000; BASIC METHODS IN ANTIBODY PRODUCTION AND CHARACTERIZATION, Chapter 11, "Antibody Purification Methods," Howard and Bethell, Eds., CRC Press, 2000; ANTIBODY ENGINEERING (SPRINGER LAB MANUAL.), Kontermann and Dubel, Eds., Springer−Verlag, 2001などの標準的な参照文章で利用できる。
【0086】
in vivoにおける抗体精製に関しては、動物は一般的にFR−α若しくはFR−αの免疫原タンパク質で免疫性を与えられる。この抗原は一般的に免疫原性を促進させるためにアジュバントと組み合わされる。アジュバントは免疫化に使用される種に従って変化する。アジュバントの例は、これらに限られるものではないが、フロイントの完全アジュバント("FCA")、フロイントの不完全アジュバント("FIA")、鉱物性のゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール(pluronic polyol)、多価陰イオン)、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン("KLH")、ジニトロフェノール("DNP")、及びカルメット−ゲラン桿菌("BCG")とコリネバクテリウムパルバム(corynebacterium parvum)のような潜在的に有益なヒトアジュバントを含む。このようなアジュバントもまた当技術分野で周知である。
【0087】
免疫化は、既知手段を使うことで達成される。用法及び抗体化法が、その免疫状態、体重、及び/若しくは計算された表面積など、免疫化された動物の種に依存する。通常、血清は免疫哺乳類からサンプリングされ、例えば下記のように適切なスクリーニングアッセイを使用して抗FR−α抗体の測定が行われる。
【0088】
ヒト化抗体を産生する共通の方法は、MAb(げっ歯類の宿主を免疫化することによって産生される)由来のCDR配列のヒトIg基幹への移植、及びCHO細胞によって分泌される機能的Abを次々に産生する(Shields, R.L., et al.(1995)対立遺伝子ゲン特異的ヒスタミンの放出を阻害する抗IgEモノクローナル抗体(Anti−IgE monoclonal antibodies that inhibit allergen−specific histamine release.) Int Arch. Allergy Immunol. 107:412−413)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞へのキメラ遺伝子のトランスフェクションである。本出願に記載されている方法がまた、Ig遺伝子での遺伝子変化を起こさせること、若しくはげっ歯類の細胞株、植物、酵母及び原核生物などの宿主細胞に導入されたキメラIgに有益である(Frigerio L, et al. (2000) 植物の混合免疫グロブリンの集合、分泌、及び液胞輸送(Assembly, secretion, and vacuolar delivery of a hybrid immunoglobulin in plants.) Plant Physiol. 123:1483−1494)。
【0089】
免疫動物由来の脾細胞は、脾細胞(抗体産生B細胞を含む)をミエローマ株のような不死化細胞株と融合させることによって不死化され得るものである。一般的に、ミエローマ細胞株は脾細胞ドナーと同種由来である。ある実施形態において、不死化細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含む培地("HAT培地")に感受性である。一部の実施形態において、前記ミエローマ細胞は、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)感染に陰性である。好ましい実施形態において、前記ミエローマ細胞は、HAT感受性、EBV陰性、及びIg発現陰性である。いかなる適切なミエローマであっても使用され得る。マウスハイブリドーマはマウスミエローマ細胞株(例えば、P3−NS1/1−Ag4−1, P3−x63−Ag8.653、若しくはSp2/O−Ag14ミエローマ株)を使用して作られ得る。それらのマウスミエローマ株が、ATCCから利用できる。このようなミエローマ細胞は、ドナー脾細胞のポリエチレングリコール("PEG")、好ましくは分子量1500のポリエチレングリコール("PEG1500")と融合される。融合の結果生じたハイブリドーマ細胞は、未融合及び非生産的に融合したミエローマ細胞を死滅させるHAT培地で選抜される。未融合脾細胞が、培地内で短期間に死滅する。一部の実施形態では、前記ミエローマ細胞は、免疫グロブリン遺伝子を発現しない。
【0090】
下記のようなスクリーニングアッセイによって検出された目的の抗体を産生するハイブリドーマは、培養若しくは動物内で抗体を産生するために使用され得るものである。例えば、前記ハイブリドーマ細胞は、前記ハイブリドーマ細胞が前記培地にモノクローナル抗体を分泌するのに十分な条件下及び十分な時間、栄養倍地中で培養され得る。このような技術及び培地は、当技術分野で周知である。また、前記ハイブリドーマ細胞は、非免疫動物の腹膜に注入され得る。前記細胞は腹膜腔で増殖し、前記抗体を分泌し、これが腹水として蓄積する。前記腹水は、モノクローナル抗体の豊富な源として注射器で腹膜腔から回収され得る。
【0091】
ヒト抗体を産生する別の限定しない方法は、米国特許第5,789,650号公報に記述されており、不活性化された状態のそれら自らの内生免疫グロブリン遺伝子を用いて、他種(例えばヒト)の抗体を産生する遺伝子組換え哺乳類を記載している。異種の抗体の遺伝子は、ヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされている。再編成されていない免疫グロブリンをコードしている領域を含む導入遺伝子は、ヒト以外の動物に導入される。結果として生じる遺伝子組換え動物は、遺伝子組換え免疫グロブリン配列の機能上の再編成、及びヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされる多様なアイソタイプの抗体のレパートリーの産生を可能にする能力を持つ。遺伝子組換え動物由来のB細胞は、その後不死化細胞株(例えばミエローマ細胞)との融合を含むいかなる多様な方法によっても免疫化される。
【0092】
FR−αに対する抗体はまた当業者に周知の多様な技術を使用してin vitroにおいて調整され得る。例えば、これらの方法に限られるものではないが、FR−αに対する完全ヒトモノクローナル抗体は、in vitro−primedヒト脾細胞を使用することによって準備され得る(Boerner et al. (1991) J. Immunol. 147:86−95)。
【0093】
また、例えば本発明の抗体は、"レパートリー・クローニング(repertoire cloning)"によって準備され得る(Persson et al. (1991) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 88:2432−2436;及びHuang and Stollar (1991) J. Immunol. Methods 141:227−236)。さらに、米国特許第5,798,230号公報は、エプスタイン・バー・ウイルス核抗原2(EBNA2)を発現するエプスタイン・バー・ウイルスの感染によって不死化されたヒトB抗体産生B細胞由来のヒトモノクローナル抗体の調整についてを記載する。不死化に必要なEBNA2は、その後不活性化され、抗体力価が増大する。
【0094】
他の実施形態において、FR−αに対する抗体は、末梢血単核細胞("PBMCs")のin vitroにおける免疫化によって形成される。これは、例えば文献(Zafiropoulos et al. (1997) J. Immunological Methods 200:181−190)に記載された方法の使用など、当業者に周知のいかなる方法によっても達成され得るものである。
【0095】
本発明の抗体産生細胞の生成方法はまた、宿主細胞の保存されたミスマッチ修復(MMR)工程を巧みに利用することによって、超易変抗体産生細胞を作り上げる方法も提供する。そのような遺伝子のドミナントネガティブな対立遺伝子は、細胞若しくは遺伝子組換え動物に導入された場合、DNA修復の効果を軽減させ、その結果、前記細胞若しくは動物の超易変を提供することによって、自然突然変異の比率を増加させる。これに限られるものではないが、ハイブリドーマ、Igの軽鎖及び重鎖をコードする遺伝子を導入された哺乳類細胞、1本鎖抗体をコードする遺伝子を導入された哺乳類細胞、Ig遺伝子を導入された真核細胞など、抗体産生細胞におけるMMRの阻止は、抗体産生が増進されたクローンを導く細胞、抗体結合の増加などの生化学的特性が増進した遺伝子操作された抗体を含む細胞、実質的に本発明の抗体のみを含む抗体を産生する細胞、及び/若しくはFR−α結合競合物が実質的に存在しない細胞の範囲内で、前記突然変異の比率を増進できる。ミスマッチ校正とも呼ばれるMMRの工程は、細菌から哺乳類細胞に渡って、細胞のタンパク質複合体によって実行される。MMR遺伝子は、そのようなミスマッチ修復複合体の1つのタンパク質をコードする遺伝子である。いかなる特定の作用メカニズムの理論によっても束縛されるものではないが、MMR複合体は、ヌクレオチド塩基の非相補的な対の結果、DNAヘリックスのひずみを検出すると考えられている。新しいDNA鎖の非相補的な塩基は切り取れられ、切り取られた塩基は、古いDNA鎖と相補的な適切な塩基に置き換えられる。この方法において、細胞は、DNA複製の誤りの結果として生じる多くの突然変異を排除する。
【0096】
ドミナントネガティブな対立遺伝子は、同じ細胞中に野生型対立遺伝子が存在しても、MMRの不完全な表現型を引き起こす。MMR遺伝子のドミナントネガティブな対立遺伝子の例は、コドン134に短縮型変異を持つヒト遺伝子hPMS2−134である。前記変異は、134番目のアミノ酸の位置にこの遺伝子の産生物に異常な終結を引き起こし、その結果、N末端133アミノ酸を含む短縮されたポリペプチドをもたらす。そのような突然変異は、DNA複製後の細胞に蓄積する突然変異の比率の増加を引き起こす。ミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブな対立遺伝子の発現は、野生型対立遺伝子が存在しても、ミスマッチ修復活性の欠陥をもたらす。そのような効果を生み出すいずれの対立遺伝子がこの発明において使用され得る。MMR遺伝子のドミナントネガティブな対立遺伝子は、ヒト、動物、酵母、若しくは他の生物の細胞から入手することができる。そのような対立遺伝子は、不完全なMMR活性の細胞をスクリーニングすることによって同定される。癌を有する動物若しくはヒト由来の細胞は、不完全なミスマッチ修復に対してスクリーニングをされ得る。結腸癌患者由来の細胞が特に有益である可能性がある。MMRタンパク質をコードする任意の細胞由来のゲノムDNA、cDNA、若しくはmRNAは、野生型配列由来の変異に対して分析され得る。MMR遺伝子のドミナントネガティブな対立遺伝子は、例えば、hPMS2−134対立遺伝子若しくは他のMMR遺伝子の変異体を産生することによるなど、人工的にも作り出される。部位特異的突然変異誘発の多様な技術が使用され得る。天然又は人工的に関わらず、超易変な細胞若しくは動物を生み出す時の使用に対して、そのような対立遺伝子の適合性は、ドミナントネガティブな対立遺伝子であるか否かを確定するために、1若しくはそれ以上の野生型対立遺伝子が存在下において対立遺伝子によって引き起こされるミスマッチ修復活性を検証することによって評価される。タンパク質若しくは核酸配列のミスマッチ修復の例は、マウスPMS2(配列ID番号9及び10)、ヒトPMS2(配列ID番号11及び12)、ヒトPMS1(配列ID番号13及び14)、ヒトMSH2(配列ID番号15及び16)、ヒトMLH1(配列ID番号17及び18)、及びヒトPMS2−134(配列ID番号19及び20)を含む。
【0097】
ミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブな対立遺伝子が導入された細胞は、超易変となる。これは、そのような細胞若しくは動物の自然突然変異率が、そのような対立遺伝子を持たない細胞若しくは動物と比べて上昇していることを意味する。自然突然変異率の上昇度は、正常な細胞若しくは動物の少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、若しくは1000倍である可能性がある。これに限られるものではないが、メタンスルホン酸塩、ジメチルスルホン酸塩、06−メチルベンザジン(06−methyl benzadine)、MNU、ENU、などの化学的突然変異誘発物質の使用は、MMR不全それのみの割合よりもさらに10から100倍の割合の上昇させるために、MMR不全細胞において使用される。
【0098】
本発明の1つの観点によると、MMRタンパク質のドミナントネガティブ型をコードするポリヌクレオチドが細胞に導入される。好ましくは、前記細胞は抗FR−α抗体を産生する。一部の実施形態において、前記細胞は、配列ID番号4、5、若しくは6のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号1、2、若しくは3のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体を産生する。一部の好ましい実施形態において、前記細胞は、配列ID番号7のヌクレオチド配列、及び/若しくは配列ID番号8のヌクレオチド配列含む核酸を有する。ドミナントネガティブなMMR遺伝子は、例えば、PMS2、PMS1、MLH1、若しくはMSH2などのMMR複合体の一部のタンパク質をコードする、いずれのドミナントネガティブな対立遺伝子になることができる。ドミナントネガティブな対立遺伝子は、自然に生じるか、若しくは研究室において作られ得る。前記ポリヌクレオチドは、ゲノムDNA、cDNA、RNA、若しくは化学合成されたポリヌクレオチドの形である。
【0099】
前記ポリヌクレオチドは、構成的に活性なプロモーター断片(これに限られるものではないが、CMV、SV40、伸長因子、若しくはLTR配列)、若しくはステロイド誘導性pINDベクター(Invitrogen)などのドミナントネガティブなMMR遺伝子の発現が調節される誘導性プロモーター配列を含む発現ベクターに導入される。前記ポリヌクレオチドは、トランスフェクションによって細胞に導入され得る。
【0100】
本発明の他の観点によると、免疫グロブリン(Ig)遺伝子、一組のIg遺伝子、若しくはIg遺伝子の全体或いは一部を含むキメラ遺伝子は、MMR不全細胞宿主に導入され、前記細胞は培養され、新しい表現型及び/若しくは遺伝子型を持つクローンに関してスクリーニングされる。MMR不全細胞は、ヒト、霊長類、哺乳類、げっ歯類、植物、酵母、若しくは原核生物界のものであっても良い。新しい表現型、若しくは遺伝子型を持つ細胞のIgをコードする遺伝子は、それぞれのクローンから単離され、遺伝的に安定な細胞(即ち、正常なMMRを持つ細胞)に導入され、常にIgを産生する細胞を提供する。前記Ig遺伝子を単離する方法は当業者に周知のいかなる方法であってもよい。前記Igをコードする単離されたポリヌクレオチドの導入は、Igをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターのトランスフェクションを含む当業者に周知の方法を使用して行われてもよいが、これに限られるものではない。Ig遺伝子、一組のIg遺伝子、若しくはIg遺伝子の全体或いは一部を含むキメラ遺伝子をMMR不全宿主細胞に導入する代わりの方法として、細胞の超易変を提供するために、ドミナントネガティブなミスマッチ修復遺伝子をコードする遺伝子と同時にそのようなIg遺伝子を遺伝的に安定な細胞に導入しても良い。
【0101】
トランスフェクションは、ポリヌクレオチドを細胞に導入するための任意の工程である。前記トランスフェクションの工程は、例えば遺伝子治療のためのベクターを使用して生きている動物で実行されても良く、或いは、例えば培養中の1若しくはそれ以上の単離された細胞の懸濁液を使用してin vitroで実行しても良い。前記細胞は、例えば、ヒト若しくは他の霊長類、哺乳類若しくは他の脊椎動物、無脊椎動物、及び原生動物、酵母、若しくは細菌などの単細胞生物を含む真核細胞のいかなる型であってもよい。
【0102】
一般的に、トランスフェクションは、細胞の懸濁液、又は単細胞を使用して実行されても良いが、導入細胞が成長し且つ活用され得るように処理した細胞若しくは組織の十分な分画が前記ポリヌクレオチドを組み込んでいるのであれば、他の方法も利用可能である。前記ポリヌクレオチドのタンパク質生成物は、一時的に若しくは安定的に前記細胞内で発現され得るものである。トランスフェクションの技術はよく知られている。ポリヌクレオチド導入に利用可能な技術は、これに限られるものではないが、エレクトロポレーション、形質導入、細胞融合、塩化カルシウムの使用、及び目的の細胞との融合のための脂質と併せたポリヌクレオチドのパッケージングを含む。一旦、細胞にMMR遺伝子が導入されると、前記細胞は培養液中で成長し培養され得る。トランスフェクションが安定している場合、前記遺伝子は多くの細胞世代に一貫したレベルで発現され、細胞株が生じる。
【0103】
望ましい表現型若しくは特徴を同定した後、生物は遺伝的に安定化され得る。ドミナントネガティブな対立遺伝子を発現している細胞は、その後この細胞が遺伝的に安定となり異常に高い割合で突然変異が蓄積することがないように、ドミナントネガティブな対立遺伝子が誘導性の場合は働きを失い細胞などから排除されることにより、"治癒"される。
【0104】
実質的に本発明の抗FR−α抗体のみを産生する細胞、若しくはFR−α結合競合物が実質的に存在しない細胞は、本明細書において記載された抗体特異性を測定する方法に従って、クローニング及び増大させるために選択される。そのような方法の例は、図4に図示されている。
【0105】
本発明の抗体をコードする核酸は、組換え的に発現され得る。本発明の発現細胞は、例えばSpodoptera frugiperda細胞など、既知の任意の昆虫発現細胞株を含む。発現細胞株はまた、例えば、Saccharomyces cerevisiae及びSchizosaccharomyces pombe細胞などの酵母細胞株であっても良い。前記発現細胞はまた、例えば、ハイブリドーマ細胞(例えば、NS0細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ベイビーハムスター腎細胞、ヒト胚腎臓株293、正常イヌ腎細胞株、正常ネコ腎細胞株、サル腎細胞、アフリカミドリザル腎細胞、COS細胞、非発癌性マウス筋芽G8細胞、線維芽細胞株、ミエローマ細胞株、マウスNIH/3T3細胞、LMTK31細胞、マウスセルトリ細胞、ヒト子宮頸癌細胞、バッファローラット肝細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝細胞、マウス乳癌細胞、TRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞などの哺乳類細胞であっても良い。本発明の核酸は、例えば、トランスフェクションによって細胞に導入されても良い。組み換えによって発現された抗体は、前記細胞の成長培地から回収されても良い。
【0106】
本発明の一実施形態において、in vitroにおける免疫化の手順は、PMS1、PMS2、PMS2−134、PMSR2、PMSR3、MLH1、MLH2、MLH3、MLH4、MLH5、MLH6、PMSL9、MSH1、及びMSH2などのミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブな対立遺伝子が、脾細胞の融合の後にハイブリドーマ細胞へ導入されるか、或いは融合前にミエローマ細胞へ導入されるものであるハイブリドーマ細胞の直接的な変化によって補われる。ドミナントネガティブ突然変異を含む細胞は超易変となり、未導入の対照細胞よりも高い割合で突然変異が蓄積する。突然変異細胞の集まりは、例えば、FR−α結合競合物が実質的に存在しないクローン、高アフィニティー抗体を産生するクローン、高力価抗体を産生するクローン、若しくは一定の状況下でとても成長の早い或いは良いクローンに対してスクリーニングされ得る。ミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブな対立遺伝子を使用して超易変細胞を作り出す技術は望ましいものであり、例えば、米国特許第6,808,894号公報に記載されている。また、ミスマッチ修復は、2002年7月18日に公開されたNicolaidesらによる国際公報第WO 02/054856号"ミスマッチ修復の化学的阻害物質(Chemical Inhibitors of Mismatch Repair)"において記載されているミスマッチ修復の化学的阻害物質を使用することによって阻害され得る。ミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブな対立遺伝子、若しくはミスマッチ修復の化学的阻害物質を使用した抗体の増強技術は、クローン化免疫グロブリン遺伝子を発現している哺乳類発現細胞にも適用され得る。ドミナントネガティブな対立遺伝子を発現している細胞は、前記細胞が遺伝的に安定となりその後異常に高い割合で突然変異が蓄積することがないように、ドミナントネガティブな対立遺伝子が誘導性の場合は働きを失い細胞などから排除されることにより、"治癒"される。
【0107】
抗体特異性のスクリーニング
FR−αに特異的に結合する抗体のスクリーニングは、マイクロタイタープレートがFR−αでコーティングされた酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して達成され得る。一部の実施形態において、陽性反応を示すクローン由来のFR−αに結合する抗体はさらに、例えば、他の葉酸レセプターアイソフォームでコーティングされたマイクロタイタープレートを使用して、FR−β及び/若しくはFR−γなどの他の葉酸レセプターアイソフォームに対するELISA法を基にした分析の反応性についてスクリーニングされる。葉酸レセプターの他のアイソフォームと反応する抗体を産生するクローンは除外され、FR−αのみと反応する抗体を産生するクローンは、さらに増大及び発達するために選択され得る。FR−αに対する抗体の反応性の確認は、例えば、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍細胞由来のタンパク質、及び精製されたFR−αと他の葉酸レセプターアイソフォームとをSDS−PAGEゲル上で流し、続いてメンブレンにブロットするウェスタンブロットアッセイを使用して達成され得る。その後前記メンブレンは抗FR−α抗体を用いてプローブされ得る。FR−αにはあり他の葉酸レセプターアイソフォームにはない反応性は、FR−αに対する反応性の特異性を裏付けるものである。
【0108】
一部の実施形態において、抗FR−α抗体の結合親和力が測定される。本発明の抗体は、好ましくは少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、及び最も好ましくは少なくとも約1×10−10MのFR−αに対する結合親和力を有する。本発明の好ましい抗体産生細胞は、実質的に少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、及び最も好ましくは少なくとも約1×10−10MのFR−αに対する結合親和力を有する抗体のみを産生する。本発明の好ましい組成物は、実質的に少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、及び最も好ましくは少なくとも約1×10−10MのFR−αに対する結合親和力を有する抗体のみを含む。
【0109】
一部の実施形態において、陽性反応を示すクローン由来の多量体型のFR−αと結合する抗体はさらに、単量体型のFR−αでコーティングされたマイクロタイタープレートを使用して、単量体型のFR−αに対するELISA法を基にした分析の反応性についてスクリーニングされる。単量体型のFR−αと反応する抗体を産生するクローンは除外され、多量体型のみと反応する抗体を産生するクローンは、さらに増大及び発達するために選択される。多量体型のFR−αに対する抗体の反応性の確認は、例えば、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍細胞由来のタンパク質、及び精製された多量体と単量体のFR−αとを還元性及び非還元性の条件下でSDS−PAGEゲル上に流した後、メンブレンにブロットするウェスタンブロットアッセイを使用して達成され得る。その後前記メンブレンは抗多量体FR−α抗体を用いてプローブされ得る。非還元性条件下で適切な大きさの多量体型のFR−αにはあり(還元性及び非還元性条件下で)38kDaのFR−αにはない反応性は、多量体型のFR−αに対する反応性の特異性を裏付けるものである。
【0110】
本発明の抗体は、好ましくはFR−αを有する細胞において、抗体依存性細胞毒性(ADCC)を誘導する。ADCCアッセイは当業者に周知である。本発明の方法は、許容範囲である抗原結合活性(低ナノモル解離定数(low nanomolar dissociation constant))と産生速度(>10pg/細胞/日)とを有する最適化ヒト化抗FR−α抗体の良好な産生を可能にする。標的としてヒト卵巣癌細胞、及び効果細胞として末梢血単核細胞(PBMCs)を用いたADCCアッセイは、対照IgG/κ抗体によって媒介される溶解がわずか6%であったのに対して、CHO細胞で産生された本発明の200ng/mlの抗体は、標的細胞の32%の溶解を媒介したことを示した(両側T検定=0.0008)。
【0111】
抗FR−α抗体産生細胞
本発明の抗体産生細胞は、例えば、Spodoptera frugiperda細胞など既知の任意の昆虫発現細胞株を含む。前記発現細胞株はまた、例えばSaccharomyces cerevisiae及びSchizosaccharomyces pombe細胞などの酵母細胞株であっても良い。前記発現細胞株はまた、例えば、ハイブリドーマ細胞(例えば、NS0細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ベイビーハムスター腎細胞、ヒト胚腎臓株293、正常イヌ腎細胞株、正常ネコ腎細胞株、サル腎細胞、アフリカミドリザル腎細胞、COS細胞、非発癌性マウス筋芽G8細胞、線維芽細胞株、ミエローマ細胞株、マウスNIH/3T3細胞、LMTK31細胞、マウスセルトリ細胞、ヒト子宮頸癌細胞、バッファローラット肝細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝細胞、マウス乳癌細胞、TRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞などの哺乳類細胞であっても良い。
【0112】
一部の実施形態において、本発明の抗体産生細胞は、FR−αと特異的に結合する抗体を産生する。前記細胞は、好ましくはFR−α結合競合物が実質的に存在しないものである。好ましい実施形態において、前記抗体産生細胞は、FR−α結合競合物を、約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約1重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以下、より好ましくは約0.1重量%以下、及び最も好ましくは約0重量%含む。一部の好ましい実施形態において、前記抗体産生細胞によって産生された抗体は、FR−α結合競合物が実質的に存在しないものである。好ましい実施形態において、前記抗体産生細胞によって産生された抗体は、FR−α結合競合物を、約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約1重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以下、より好ましくは約0.1重量%以下、及び最も好ましくは約0重量%含む。本発明の好ましい抗体産生細胞は、実質的に少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、及び最も好ましくは少なくとも約1×10−10MのFR−αに対する結合親和力を有している抗体のみを産生する。
【0113】
抗体精製
抗体精製の方法は当業者に周知である。本発明の一部の実施形態において、抗体精製方法は、ろ過、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、及び濃縮を含む。前記ろ過の工程は、好ましくは限外ろ過、及びより好ましくは限外ろ過とダイアフィルトレーション(diafiltration)を含む。ろ過は、好ましくは少なくとも約5〜50倍、より好ましくは10〜30倍、及び最も好ましくは14〜27倍で行われる。アフィニティーカラムクロマトグラフィーは、例えば、PROSEPアフィニティークロマトグラフィー(Millipore,Billerica,Massachusetts)を使用して行われても良い。好ましい実施形態において、前記アフィニティークロマトグラフィーの工程は、PROSEP−VAカラムクロマトグラフィーを含む。溶出液は、溶媒洗剤で洗浄されるものであっても良い。陽イオン交換クロマトグラフィーは、例えば、SP−セファロース陽イオン交換クロマトグラフィーを含むものであっても良い。陰イオン交換クロマトグラフィーは、例えば、これに限られるものではないが、Qセファロース高速流陰イオン交換を含むものであっても良い。前記陰イオン交換の工程は好ましくは非結合であり、それによってDNA及びBSAを含む混入物質の除去が可能である。前記抗体産物は、好ましくは例えばPall DV20 Nanofilterを使用してナノサイズでろ過される。前記抗体産物は例えば限外ろ過及びダイアフィルトレーションを用いて濃縮されても良い。前記方法はさらに、凝集体を除去するためにサイズ排除クロマトグラフィーの工程を含むものであっても良い。
【0114】
抗体の薬剤組成物
本発明の他の観点は、本発明の抗FR−α抗体の薬剤組成物を特徴付ける。前記薬剤組成物は、患者の腫瘍細胞の成長を阻害若しくは軽減するために使用され得る。抗体の前記組成物は、好ましくはFR−α結合競合物が実質的に存在しないものである。特定の実施形態において、前記薬剤組成物は、注射若しくは注入による投与用に処方されている。
【0115】
本発明の薬剤組成物はさらに、化学療法若しくは細胞毒性物質を含むものであっても良い。一部の実施形態において、前記抗体は化学療法若しくは細胞毒性物質と接合される。適切な化学療法若しくは細胞毒性物質は、ラジオアイソトープに限られるものではないが、鉛−212、ビスマス−212、アスタチン−211、ヨウ素−131、スカンジウム−47、レニウム−186、レニウム−188、イットリウム−90、ヨウ素−123、ヨウ素−125、臭素−77、インジウム−111、及びホウ素−10若しくはアクチニドなどの核分裂性核種を含む、ラジオアイソトープを含むがこれらに限られるものではない。他の実施形態において前記物質は、これらに限られるものではないが、リシン、改変シュードモナスエンテロトキシンA、カリケアマイシン、アドリアマイシン、5−フルオロウラシル及び類似のものを含む毒性若しくは細胞毒性の物質である。本発明の薬剤組成物は、これらに限られるものではないが、5−フルオロ−2’−デオキシ−ウリジン−5’−モノリン酸塩(FdUMP)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、ZD1843U89、ZD9331、AG337、及びPT523を含む、抗葉酸複合体を含むものであっても良い。
【0116】
本発明の薬剤組成物は、薬剤的に許容可能なキャリアー若しくは媒体と共に処方されて得る。適切な許容可能なキャリアーは、水、PBS、食塩水(リンガー溶液など)、アルコール、油、ゼラチン、及びラクトース、アミロース、若しくはデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリジンを含む。そのような製剤は滅菌されても良く、必要に応じて例えば滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝剤、及び着色剤などの助剤と混合されても良い。本発明における使用に適した薬剤キャリアーは当業者に周知であり、例えば、Pharmaceutical Sciences(17th Ed., Mack Pub. Co., Easton, PA)に記載されている。
【0117】
キット
本発明のさらに別の観点によると、キットは、患者における腫瘍細胞の成長を阻害若しくは軽減するために提供される。in vitro若しくはin vivoにおいて異型細胞の存在を確認するためのキットもまた提供される。
【0118】
本発明のキットは、本発明の抗体若しくは抗体組成物、及び患者において腫瘍細胞の成長を阻害若しくは軽減する方法、或いは例えば生体試料中の異型細胞の存在を確認する方法においてキットを使用するための使用説明書を含む。前記キットは、少なくとも1つの化学療法若しくは細胞毒性試薬を含む。前記キットは抗葉酸化合物を含むものであっても良い。前記キットは少なくとも1つの診断試薬を含むものであっても良い。診断試薬の例は、これらに限られるものではないが、例えば、放射性、蛍光、若しくは色素体の物質(例えば111In−DOTA)など、検出可能な標識である。検出可能な標識は酵素を含むものであっても良い。前記キットは、例えば注射など、抗体或いは抗体組成物を投与するための使用説明書及び/若しくは方法を含む。
【0119】
異型細胞を検出する方法
本発明の方法は、これらに限られるものではないが、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍細胞を含む表面上にFR−αが存在している異型若しくは癌細胞を検出する方法を含む。前記方法は、in vitroの生体試料、若しくはin vivoにおいて行われ得る。本発明による異型細胞を検出する方法は、本発明の抗FR−α抗体を生体サンプルと接触させること、若しくは本発明の抗FR−α抗体を患者へ投与することを含むものであり、前記抗体は、例えばこれらに限られるものではないが、放射性、蛍光、若しくは色素体の物質(例えば111In−DOTA)などの検出可能な標識で標識化され、細胞への前記抗体の結合を確認する。前記検出可能な標識は酵素であっても良い。
【0120】
腫瘍細胞の成長を軽減する方法
本発明の方法は、FR−αの増加した発現と関連した腫瘍性状態を有すると認定されたヒト及び非ヒト動物における使用に適している。本発明の恩恵を受ける非ヒト動物は、ペット、外来種(例えば動物園の動物)、及び家畜を含む。好ましくは、非ヒト動物は哺乳類である。
【0121】
本発明は、正常組織と関連する腫瘍内でのFR−αの増加した発現によって際立てられた異型疾患を有すると認定されたヒト若しくは動物の患者における使用に適しているそのような患者がそのような状態に対する治療を必要としていると認定された時点で、本発明の方法が前記状態の効果治療に適用されても良い。治療され得る腫瘍は、これらに限られるものではないが、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、脳腫瘍、卵管癌、若しくは子宮腫瘍、及び特定の白血病細胞を含む。一部の実施形態において、前記腫瘍はシスプラチン耐性である。
【0122】
抗体及びその派生物の本発明における使用は、カプセル、タブレット、水性懸濁液、溶液、若しくは類似のものなど、任意の許容可能な投薬形態で経口的に投与されても良い。前記抗体及びその派生物はまた、これらに限られるものではないが、皮下注射、静脈注射、筋肉注射、関節注射、滑液注射、胸骨注射、鼻腔内注射、局所注射、髄膜注射、肝内注射、病巣内注射、及び頭蓋内注射、若しくは注入技術を含む非経的な方法で投与され手も良い。一般的に前記抗体は、例えば注射によるなど静脈内若しくは腹腔内である。
【0123】
本発明の抗体及び派生物は、単独で、若しくは例えばリン酸緩衝生理食塩水などのアジュバント、媒体、及び賦形剤を含む薬剤的に許容可能なキャリアーと一緒に投与され得る。
【0124】
本発明の抗体及び派生物はまた、癌治療に使用される1若しくはそれ以上の抗葉酸化合物と一緒に投与される。抗葉酸化合物は、これらに限られるものではないが、5−フルオロ−2’−デオキシ−ウリジン−5’−一リン酸(FdUMP)、5−フルオロウラシル(5−FU)、L−5−ホルミルテトラヒドロ葉酸("ロイコボリン")、N−[5−(N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イル−メチル)−アミノ)−2−テニル]]−L−グルタミン酸("ZD1649";"トムドックス"としても知られる)(Jackman et al.(1991)Cancer Res.51:5579−5586)、N−(4−(2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−3H−ピロロ[2,3−D]ピリミジン−5−イル)−エチル)−ベンゾイル)−L−グルタミン酸("多数標的抗葉酸"(MTA);"LY231514"、"ALIMTA"、及び"ペメトレキセド"としても知られる)(Taylor et al. (1992)J. Med. Chem.35:4450−4454;Shih et al. (1997)Cancer Res.57:1116−1123)、(S)−2−(5)−(((1,2−ジヒドロ−3−メチル−1−オキソベンゾ(f)キナゾリン−9−イル)−メチル)−アミノ)−オキソ−2−イソインドリニル)−グルタル酸("GW1843U89")(Hanlon and Ferone(1996)Cancer Res.56:3301−3306)、(2S)−2−{O−フルオロ−p−[N−(2,7−ジメチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−6−イル−メチル)−N−プロップ(prop)−2−イニル)アミノ]ベンズアミド}−4−(テトラゾル−5−イル)−酪酸("ZD9331")(Jackman et al. (1997)Clin. Cancer Res. 3:911−921)、3,4−ジヒドロ−アミノ−6−メチル−4−オキソ−5−(4−ピリジルチオ)−キナゾリン("AG337";"チミタック(Thymitaq)"としても知られる)(Webber et al.(1996)Cancer Chemother. Pharmacol.37:509−517、Rafi et al.(1998)J. Clin. Oncol.16:1331−1341)、及びNα−(4−アミノ−4−デオキシプテロイル)−Nδ−(ヘミフタロイル−L−オルニチン)("PT523")(Rhee et al.(1994)Mol. Pharmacol.45:783−791、Rowowsky(1999)Curr. Med. Chem.6:329−352)を含む。抗葉酸化合物は、本発明の抗FR−α抗体の前後、若しくは同時に投与される。投与される抗葉酸化合物の量は、現在使用されている用量、若しくは患者にどんな悪影響も生じることなく、減少した腫瘍成長、或いは腫瘍除去を達成することに基づいて、医師によって容易に測定され、増加又は減少され得る。
【0125】
有効量は様々な要因に依存する。体重、治療の目的、最大耐量、用いられた特定の処方、投与経路、及び類似のものなどの多様なパラメーターに従って、任意の患者への用量を調整することは技量を持った医師の権限範囲内である。一般的に、前記抗体若しくはその派生物の用量レベルは、1日あたり約5.88mg/m〜約294.12mg/m(即ち、10から500mgの抗体)が適している。一部の実施形態において、前記抗体若しくはその派生物の前記用量は1日あたり約29.41mg/m〜約176.47mg/m(即ち50〜300mgの抗体)である。他の実施形態において、前記用量は1日あたり約58.82mg/m〜約147.06mg/m(即ち、100〜250mgの抗体)である。さらに他の実施形態において、前記用量は1日で約88.24mg/m〜約117.65mg/m(即ち、150〜200mgの抗体)である。投薬は、ボーラス若しくは注入であっても良い。用量は、1日に1回、若しくは1日に複数回与えられる。さらに用量はある期間に複数回与えられても良い。一部の実施形態において、前記用量は1〜14日間与えられる。一部の実施形態において、前記抗体若しくはその派生物は、腹腔内に約10〜500mgの1回用量として与えられる。他の実施形態において、前記抗体若しくはその派生物は、静脈内に約50〜300mg提供される。さらに他の実施形態において、前記抗体若しくはその派生物は、少なくとも約1μg/mlの血漿中濃度が維持されるように提供される。
【0126】
効果的な治療は様々な方法で見極められ得る。1つの実施形態において効果的な治療は、腫瘍成長の進行遅延によって測定される。他の実施形態において効果的な治療は、腫瘍の縮小(即ち、例えば、National Cancer Institute Cancer Therapy Evaluation Programを通してオンラインで利用可能な、固形腫瘍の反応評価基準(RECIST)を使用して測定された腫瘍の大きさの減少)によって特徴付けられる。他の実施形態において効果的な治療は、腫瘍の転移の阻害によって特徴付けられる。さらに他の実施形態において効果的な治療は、健康が改善した患者の体重増加、体力の回復、痛みの減少、成長、及び自覚症状などの兆候を含む患者の増加した健康によって測定される。
【0127】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されたものであり、それらを限定するものとして解釈されるべきではない。
【0128】
実施例
実施例1 抗FR−α抗体産生細胞の生成
マウス抗体LK26は、絨毛癌細胞株Lu−75(c)に対してもたらされた。LK26は、米国特許第6,124,106号公報の方法に従ってCDR移植によってヒト化し、NS0細胞株で発現するIgG1(IgG1/κサブタイプ)を産出した。前記NS0細胞株にhPMS2−134発現プラスミドを導入した。MMR遺伝子は、哺乳類のポリアデニル化信号が後を続くクローニング部位の上流に伸長因子プロモーターを含む、pEF発現ベクター内にクローニングした。このベクターはまた、このプラスミドを保持する細胞の選択を可能にするNEOr遺伝子を含む。簡単に言えば、細胞に、製造者プロトコール(Life Technologies)に従い、ポリリポソームを使用して、細胞にそれぞれ1μgのベクターを導入した。その後細胞を10日間0.5mg/mlのG418中で選択し、G418耐性細胞を遺伝子発現の分析のために全体的に集めた。pEFコンストラクトは、ポリリンカークローニング部位の5’末端と並列されているエキソン2からEF遺伝子のエキソン1を分割するイントロンを含む。これは、高速な逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)が、スプライシング産物を発現する細胞をスクリーニングすることを可能にしている。細胞を単離し、それらのRNAを以前に報告された(Nicolaides N.C., Kinzler, K.W., and Vogelstein,8.(1995)PMS2の5’領域の分析が、異種転写産物、及び新規オーバーラップ遺伝子を明らかにする(Analysis of the 5’ region of PMS2 reveals heterogeneous transcripts and a novel overlapping gene)Genomics29:329−334)トリゾール方法を使用して抽出した。
【0129】
重鎖RNAは、フォワードプライマー(5’−GATCGGATCCACCATGGGATGGAGCTGTATCATCC−3’(配列ID番号21))、及びリバースプライマー(5’−CTGATCTAGATCATTTCCCGGGAGACAGGGAGAGGCTCTTCTGCGTGTA−3’(配列ID番号22))を使用して逆転写した。軽鎖RNAは、配列ID番号21のフォワードプライマー及びリバースプライマー(5’−CTGATCTAGATTAACACTCTCCCCTGTTGAAGCTCTT−3’(配列ID番号23))を使用して逆転写した。PCR反応は、高品質のHERCULASE DNAポリメラーゼ(STRATAGENE, La Jolla, California)を用いて実行した。PCR産物は、BamHI及びXbaIを用いてダイジェスト(digest)し、真核性発現ベクターpEF4(軽鎖)及びpEF6(重鎖)の同じ制限部位にクローニングした。ベクターpEF4(INVITROGEN)は、真核細胞の安定的な形質転換体の選択に用いるゼオチン耐性遺伝子を持つ5.8kbのベクターである。cDNA挿入物はhEF−イントロン1の下流にクローニングし、その転写は、ヒトEF1アルファプロモーターによって制御される。cDNA挿入物の下流は、転写物の効果的なポリアデニル化を可能にしているBGHポリアデニル化信号である。ベクターpEF6(INVITROGEN)は、pEF4と類似しているが、ゼオチン耐性遺伝子の代わりにブラストサイジン耐性遺伝子を持つ。cDNA挿入物の両鎖の配列を確認した。
【0130】
完全長ヒト化抗FR−α抗体の重鎖及び軽鎖をコードする得られたcDNAは、CHO−K1(ATCC CCL−61)細胞に導入した。製造者試用説明書に従って、FUGENEトランスフェクション試薬(Roche)を使用して、CHO−K1細胞に各プラスミド0.5マイクログラムを導入した。細胞をRPMI1640/10%FBS/2mM L−グルタミン中に保持した。ゼオチン(200マイクログラム/ミリリットル)及びブラストサイジン(5マイクログラム/ミリリットル)を用いて安定した細胞株を選択した。抗体の発現は、抗ヒトIgG ELISAによって確認した。安定に導入された細胞の集団は、制限された希釈によってクローニングした1つの細胞であり、高発現細胞株を選択した。高力価を二次及び三次スクリーニングで確認した。前記細胞株は、無血清培地(CHO−S−SFMIIの後EX−CELL302)に適応させた。抗体産生はELISAによって確認した。前記細胞株はまた、2日目にダイズ加水分解パルスと共に8mM L−グルタミンを加えた無タンパク質培地(CD94111;Irvine Scientific)に適応させた。細胞は液体窒素を使用して保存した。前記細胞は、FACS分析によって測定した場合、選択培地の不在下において少なくとも13代は安定であった。細胞分泌は、ELISAによって測定した場合、少なくとも20代は安定であった。大規模な抗体産生が可能である。例えば、抗体は、15L、70L、及び340Lの大きさのバイオリアクターで産生した。
【0131】
実施例2 抗体産生クローンを同定するスクリーニング方法、及び抗FR−α抗体の特徴付け
この文書の範囲内にある方法の適用は、例えば、これらに限られるものではないが、配列ID番号2、若しくは3のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列ID番号5、若しくは6のアミノ酸配列を含む重鎖とを有する抗体を含む本発明のFR−α抗体など、FR−α結合競合物が実質的に存在しない細胞、若しくは実質的に標的免疫グロブリンのみを産生する細胞を作り出すためのMMR不全免疫グロブリン産生細胞の使用である。図4は、高親和性MAbsを産生するクローンを同定するためのスクリーニング手順の要点を述べている。分析はプレート酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)の使用することによって、高親和性MAbsを産生するクローンをスクリーニングする。1つの免疫グロブリン産生細胞を含む96ウェルプレートは0.5mg/mlのG418を加えた成長培地中で培養し、クローンが発現ベクターを保持することを確保した。プレートをhIgGプレートELISAを使用してスクリーニングし、これによって96ウェルプレートはFR−αでコーティングした。また、前記プレートは、抗FR−α抗体に対する特定の抗体でコーティングした。免疫グロブリン産生細胞がヒトではない場合の別の方法として、前記プレートを抗ヒトIgG1抗体でコーティングした。プレートをカルシウム及びマグネシウムを含まないリン酸緩衝生理食塩溶液(PBS−/−)で3回洗浄し、5%ドライミルクを含む100μlsのPBS−/−中で室温で1時間ブロッキングした。ウェルをすすぎ、それぞれの細胞クローンからの条件培地の1:5の希釈液を含む100μlsのPBS溶液で2時間インキュベートした。プレートをPBS−/−で3回洗浄し、抗ヒトIgG抗体などの二次抗体と結合したヒツジ抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼ(horse radish peroxidase:HRP)の1:3000希釈液を含む50μlsのPBS溶液において1時間室温でインキュベートした。その後プレートをPBS−/−で3回洗浄し、50μlsのTMB−HRP基質(BioRad)において15分間室温でインキュベートし、各クローンによって産生された抗体の量を検出した。50μlsの500mM重炭酸ナトリウムを加えて反応を停止させ、BioRadプレートリーダーを用いてOD415nmで分析した。その後バックグランド細胞(ベクターのみを持つコントロール細胞;ドミナントネガティブなミスマッチ修復対立遺伝子を含まないコントロール細胞)より増した信号を提示するクローンを単離し、3回の実験のELISAデータのさらなる特徴付け及び確認のために、10mlの培地に展開した。ELISAはまた、同じクローンからの条件培地(CM)上で行い、各ウェルの条件培地内の全Ig産物を測定した。増加したELISAの信号を産生し、増加した抗体価を有するクローンは、さらにその後FR−α結合競合物が実質的に存在しない変異体に対して分析した。ELISAによって測定されるより高いOD値を産生するクローンは、さらに、FR−α結合競合物の欠如を確認するためにに遺伝子レベルで分析し、従って強いELISA信号が得られた。簡単に言えば、100,000細胞を集菌し、上述したようにトリアゾールの方法を使用してRNAを抽出した。RNAは、製造者(Life Technology)による提案のようにSuperscript IIを使用して逆転写し、可変軽鎖及び重鎖内に含まれる抗原結合部位をPCR増幅した。
【0132】
変性オリゴヌクレオチドを使用したPCR反応は、94℃30秒、52℃1分、及び72℃1分を35サイクルで実行した。生成物をアガロースゲルで分析した。予想分子量のの生成物をGene Clean(Bio 101)によってゲルから精製し、T−tailedベクターにクローニングし、さらに配列を決定し、可変軽鎖及び重鎖の配列を同定した。その後野生型配列が確定した後、陽性クローンのRT−PCR増幅のために非変性プライマーを作成した。重鎖及び軽鎖の両方を増幅し、ゲル精製し、さらに対応するセンス及びアンチセンスプライマーを使用して配列決定した。RT−PCR生成物の配列によって、PCR誘導性突然変異が原因ではない内生免疫グロブリン遺伝子の代表的な配列データが与えられた。その後クローンからの配列を野生型配列と比較した。
【0133】
本発明の方法によって、配列ID番号5のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗FR−α抗体が得られた。前記抗体のモル吸光係数(ε)は、pH7.2no20mMリン酸カリウム、150mM NaCl中の抗体の7.41mg.ml溶液の280nmの吸収の測定によって43,320と測定された。
【0134】
分子量135kDまでの1つの主要なバンドは、非還元条件下のSDS−PAGEの抗体の分離上で観測された。分子量55kDまで及び分子量25kDまでの2つのバンドは、還元状態で観測された。純度は、コロイドクーマシーブルー染色ゲルの濃度測定分析によって確かめ、還元条件下で約99.5%以上、及び非還元条件下で約99%以上であると分かった。
【0135】
非還元ゲルで分離されるポリペプチドをプローブするために使用した場合、ウェスタンブロット分析によって、前記抗体がFR−αを発現すると知られている細胞株から用意された溶解物の分子量35kDまでの1本のポリペプチドを検出でき、抗原(1205Lu)を発現しない細胞株の溶解物では検出できないことを証明した。前記抗体はまた、N連結性オリゴ糖を取り除くためのPNGase Fを持つ抗原の治療の後でさえ、KB細胞から分泌された可溶性FR−αを検出することができた。
【0136】
本発明の抗体及び精製したFR−αの間の動的及び定常状態の結合定数は、表面プラズモン共鳴分光法によって測定した。オンレート(k)は(2.25±0.02)M−1−1と測定され、オフレート(k)は(5.02±0.08)s−1と測定された。2.23nMの定常状態の解離定数(K)を計算した。
【0137】
実施例3 抗体の多量体型FR−αへの結合
モノクローナル抗体のFR−αの四量体型への結合をウェスタンブロットによって示した。簡単に言えば、SK−Ov−3及びIGROV腫瘍細胞をヌードマウスにおいて増殖して摘出した。腫瘍組織は、Dounce組織ホモジナイザーで2ml15〜20のストロークでRIPAバッファーに溶解した。不溶性物質を遠心分離によって取り除き、上澄みの総タンパク質をBioRadタンパク質アッセイを使用して測定した。異なる実験では、5μg若しくは20μgのタンパク質のいずれかを非還元状況下で4〜12%のBis−Trisゲル(MES)に流した。電気泳動したタンパク質をPVDF膜に移した。前記膜をBlotto(5%milk、0.05%TBS−T)でブロッキングした。LK26ハイブリドーマ細胞からの培地の上澄みの1:100希釈物、及び0.1%NaNの全濃度は、一次抗体としてBlotto阻止溶液に直接加え、前記膜を一晩中インキュベートした。前記膜を0.05%TBS−Tで洗浄し、Blotto阻止溶液中の二次抗体(ホースラディッシュペルオキシダーゼで標識化されたヒツジα−マウスIgG(重鎖及び軽鎖))を加えた。前記膜は、Super Signal West Pico ECL試薬を使用して現像した。結果は図1に示した(レーン1、SK−Ov−3;レーン2、IGROV)。この結果は、FR−αを過剰発現する特定の腫瘍が単量体FR−α以上の多量体FR−αの産生を助けることを示唆する。この発見は、腫瘍組織を破壊するためのFR−αの四量体型を特異的に認識するモノクローナル抗体によって有効利用され、一方で正常細胞(一般的にFR−αの単量体型を発現する)は無傷に残される。
【0138】
実施例4 大腸菌におけるFR−αの発現
FR−αの発現はまた大腸菌において評価した。簡単に言えば、ヒスチジンタグ(pBAD−His−hFR−α)を持つFR−αのコード配列を含むプラスミドを大腸菌細胞に導入した。プラスミドpBAD−His−hFR−αを含む大腸菌の培養液をOD600=1.0まで培養した。その後、アラビノースを終濃度0.2%まで添加し、図2で示される時点において検体を採取した。25mlの4×LDS検体バッファーを65ml培養液に加えることによって大腸菌溶解物を調整した。JAR細胞は、10%FBS、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI1640培地中で増殖した。前記培地を前記細胞から除去し、RIPAバッファーを培養プレートに直接加え、JAR細胞抽出対照に対して前記細胞を溶解するために播種した。検体を4〜12%NuPAGEゲル(MES)上で分離し、PVDF膜に移した。TBST+5%milk中で一晩ブロッキングした後、前記膜をmAb LK26の1:1000希釈物を1時間、その後二次抗体(ホースラディッシュペルオキシダーゼと結合したヒツジα−マウスIg)の1:10000希釈物を1時間プローブした。5分の暴露の後、Pierce Super Signalフェムトを用いて抗体の検出を行った。結果を図2に示す(レーン1、大腸菌+pBAD−His−hFRa、180分誘導;レーン2、大腸菌+pBAD−His−hFRa、90分誘導;レーン3、大腸菌+pBAD−His−hFRa、60分誘導;レーン4、大腸菌+pBAD−His−hFRa、30分誘導;レーン5、大腸菌+pBAD−His−hFRa、15分誘導;レーン6、大腸菌+pBAD−His−hFRa、未誘導;レーン7、JAR細胞抽出)。
【0139】
実施例5 人工のサンプル調合ではない多量体型のFR−α
Holm et al.(1997)Biosci.Reports17(4):415−427に記述されるように、FR−αの多量体がTriton X−100ミセル中の人工的な集合体ではないことを証明するため、腫瘍の抽出物を1×RIPA(1%Triton X−100、0.1%SDS、180mM NaCl、20mMリン酸カリウム、pH=7.2)、若しくは1×PBS(150mM NaCl、20mMリン酸化リム、pH=7.2)のいずれかを用いて希釈した。すべての検体に対して、1ug/ulのストックIGROV抽出物を使用した。希釈後、4×LDS検体バッファーを各検体に加えて1×の終濃度にした。前記検体をMESランニングバッファーで4〜12%Bis−Trisゲル上に添加した。電気泳動の後、前記タンパク質をPVDF膜に移した。移したタンパク質を含む膜をBlotto(5%脱脂乳、1×TBS、0.05%Tween−20)で室温で48時間ブロッキングした。前記膜を一次抗体(1ug/ml LK26抗体)と共にインキュベートした後洗浄することよって現像し、そして二次抗体(Blotto中のHRP結合ヒツジα−マウスIgG)と共にインキュベートした。さらなる洗浄工程の後、前記膜をSignal West Pico ECL試薬を用いて現像し、1分間暴露した。結果を図3に示した(lane1、PBSの1:100希釈;lane2、PBSの1:50希釈;lane3、PBSの1:25希釈;lane4、PBSの1:10希釈;lane5、RIPAの1:100希釈;lane6、RIPAの1:25希釈;lane7、RIPAの1:10希釈;M、分子量マーカー、lane8、RIPAの1:1希釈)。矢印は単量体(1×)及び四量体(4×)を指し示す。未処理物はFR−αの四量体を崩壊させた。この結果は、FR−αを過剰発現する特定の腫瘍が従来は人工のゲルろ過サンプル調合としてのみ示されたFR−αの多量体型を発現することを指し示す。
【0140】
実施例6 ADCC活性のための細胞のスクリーニング
hPMS−134を発現するmAb産生細胞は、ライミング希釈によってサブクローン化し、平底96ウェルプレートに播種した。播種密度は、単一クローン性に近づけるために、プレートにつき40個のシングル細胞コロニーとなるように実験的に決定した。
【0141】
前記クローンは、実験的に決定される日数培養することができ、その後ADCC活性を媒介できる十分量の抗体を産生した。インキュベーションの期間の最後に、各クローン/ウェルからの50μlの条件培地をELISAによる抗体濃度の算定のために使用し、さらに同じクローン/ウェルからの50μlの条件培地をADCCアッセイに利用した。簡単に言うと、例えば、坑卵巣癌mAbは、アッセイの前日に完全成長培地(10%FBS、2mM L−グルタミンを含むRPMI−1640)の平底96ウェルマイクロプレートに30,000細胞/ウェルの密度で播種した標的細胞、SKOV3(1から20代、ATCCから手に入れた)との結合に使用した。次の日、前記完全培地を100μlのCHO−CD無血清培地に置き換え、50μlの抗体を含む条件培地を標的細胞に加えて37℃で20分間インキュベートした。その後、2×10のエフェクター細胞を含む100μlの無血清培地を各ウェルに加え、細胞を37℃、5%COで5〜6時間インキュベートした。プレートを簡単に遠心分離器にかけ、100μlの上澄みを各ウェルから収集してELISAプレート(Nunc)に移した。100μlのLDH基質(Roche)を上澄みに加え、室温で10分間インキュベートした。LDH活性は、溶解標的細胞から放出されたLDH酵素の量に比例する。490μmの光学密度(OD490)を分光光度法により取得し、細胞毒性の割合を公式((サンプルOD490−自然OD490)/(最大OD490−自然OD490)×100%を用いて測定し、ここで‘自然’=エフェクター細胞若しくは抗体が欠如した中での標的細胞の溶解、及び‘最大’=2%Tritonがあるときの標的細胞の溶解、である。100ng/mlの関連抗体(精製したタンパク質A、親抗体)によって誘発した細胞毒性は、ポジティブコントロールとして使用した。非特異性細胞毒性は、100mg/mlの正常ヒトIgG1を使用して観察した。%細胞毒性を各ウェル/クローンごとの抗体の濃度で割ることによって得た割合(即ち、割合=50(%)/100(ng/ml)=0.5)は、リードクローンを選択するための基準として設定した。リードクローンを50ml培養液に展開し、抗体を記述したようにタンパク質Aアフィニティーカラムによってそれらの条件培地から精製した。リードクローンによって産生された抗体のADCC活性は、10〜1000ng/mlの濃度を使用して親抗体と比較した。
【0142】
選択的ADCCアッセイにおいて、ADCCを産生するための抗体の能力は、SKOV−3、IGROV−1、及び標的細胞として1205Lu(ネガティブコントロール)、及び正常献血者からのPBMCsを使用して評価した。抗体は、10マイクログラム/ミリリットルの濃度で試験した。エフェクター細胞として使用した献血者のPBMCsを融解し、培地(10%FCSを加えたIMDM)中に一晩置いた。前記細胞を10細胞/ミリリットルの濃度で培地中に再懸濁した。標的細胞として使用した腫瘍細胞を培養フラスコから分離し、100マイクロリットル中の10個の細胞は、100uCi(3.7MBq)51Cr(Amersham、Buckinghamshire、UK)で37℃2時間標識化した。細胞を5ミリリットルの培地で3回洗浄し、10細胞/ミリリットルの濃度で培地中に再懸濁した。50マイクロリットルの腫瘍細胞をV底96ウェルプレートに播種した。細胞をテスト抗体若しくはコントロール抗体を含む50マイクロリットルの培地中でインキュベートした。37℃30分のインキュベート後、50マイクロリットルのPBMCsは、多様な標的−エフェクター細胞比率(1:0、1:25、1:50、及び1:100)でV底ウェルプレートに播種し、前記プレートをさらに37℃で18時間インキュベートした。上澄み中の51Crの放出は、LKB−ガンマ計測器で測定した。それぞれの測定は3回行った。放出の割合は以下のように定義した。
【0143】
【数1】

【0144】
特異的放出の割合は以下のように定義した。
【0145】
【数2】

【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
【表3】

【0149】
【表4】

【0150】
ヒト卵巣癌細胞を標的細胞として、及び末梢血単核細胞(PBMCs)をエフェクター細胞として使用したADCCアッセイは、抗FR−α抗体が腫瘍細胞株SKOV−3の死滅を媒介することを示した。IGROV−1は非常に急速に凝集し、細胞集塊を形成する傾向にあった。前記細胞株は、PBMCのみによる死滅に感受性であった。コントロール抗体はまた、いくつかの死滅を媒介した。抗体は、IGROV−1の死滅を媒介した。
【0151】
実施例7 抗FR−α抗体を使用した免疫組織化学アッセイ
組織準備。ヒト組織検体は検視解剖若しくは生体検査で得た。試験に用いた組織は、副腎、血液細胞(顆粒球、リンパ球、単球、血小板)、血管(内皮)、骨髄、脳(大脳(皮質)、小脳)、胸(乳腺)、目、胃腸管(結腸(大腸)、食道、小腸、胃)、心臓、腎臓(糸球体、細管)、肝臓、肺、リンパ節、卵巣及び卵管(輸卵管)、膵臓、副甲状腺、末梢神経、下垂体、胎盤、前立腺、唾液腺、皮膚、脊髄、脾臓、横紋(骨格)筋、睾丸、胸腺、甲状腺、扁桃腺、尿管、膀胱、子宮(体(子宮内膜)、頸部)、卵巣癌(癌細胞)、卵巣癌(間質線維芽細胞)を含むものであった。新鮮な未固定の組織検体を鋳型の中に設置し、TISSUE−TEK O.C.T.包埋剤の中のドライアイス上で冷凍した。組織検体を断片化し、アセトンを用いて室温で10分間固定した。組織は、染色まで−70℃以下に保存した。染色の直前に、スライドを10%中性緩衝ホルマリンで固定した。
【0152】
抗体準備。抗体は、1マイクログラム/ミリリットル及び25マイクログラム/ミリリットルである2つの濃度で組織検体に利用した。。
【0153】
一次抗体のないアッセイをアッセイコントロールとして使用した。マウス抗フルオレセインを二次抗体として使用した。ヒツジ抗マウスIgG(GSMIgG)−ペルオキシダーゼポリマーを三次抗体として使用した。3、3’−ジアミノベンジジン(DAB)を基質色原体として使用した。
【0154】
免疫組織化学アッセイ。間接的な免疫ペルオキシダーゼの手順によって行った。アセトン/ホルマリン−固定低温切開片は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS[0.3M NaCl、pH7.2])で2回すすいだ。内生ペルオキシダーゼは、Dako EnVision Kitのペルオキシダーゼ溶液で5分間インキュベートすることによって阻止した後、リン酸緩衝生理食塩水で2回すすいだ。スライドは、非特異的結合を減少するように設計されているタンパク質ブロック(リン酸緩衝生理食塩水、0.5%カゼイン、5%ヒトガンマグロブリン、及び1mg/ml熱凝集HuIgG(5mg/ml溶液で63℃20分間加熱し、室温で冷却することによって準備した))で20分間処理した。前記タンパク質ブロックの後、一次抗体(抗FR−α抗体、ネガティブコントロール抗体(HuIgG1或いはMsIgG1)、若しくはなし)を室温で1時間施した。未結合の二次抗体(マウス抗−フルオレセイン)は30分間施した。スライドは、PBSで2回すすぎ、ペルオキシダーゼで標識化されたヒツジ抗−マウスIgGポリマー(Dako EnVision kit)を用いて30分間処理し、PBSで2回すすぎ、基質色原体(DAB;Dako EnVision)を用いて8分間処理した。スライドは、水ですすぎ、ヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、カバースリップをかけた。
【0155】
結果。抗FR−α抗体は、両方の抗体濃度でポジティブコントロールとして、特異的及び強度にヒト卵巣癌細胞(HT162)を染色した。抗FR−α抗体は、卵巣癌(間質線維芽細胞)と反応しなかった(ネガティブコントロール)。ネガティブコントロール抗体HuIgG1及びMsIgG1は、ポジティブ若しくはネガティブコントロール細胞と特異的に反応しなかった。一次抗体を染色反応から除いた場合、いかなる組織を用いても反応性がないこと観測された。表1参照。
【0156】
【表5】

【0157】
本発明の抗体は、卵巣癌組織の間質線維芽細胞と反応しない(data not shown)。免疫組織化学及び組織分布分析に対する同様な結果は、カニクイザル及びヒトにおいて本発明の抗体を用いて得られた(data not shown)。ポジティブ結合は、カニクイザルの腎臓皮質(尿細管、及び集合管)及び上皮、管状(膜、細胞質/細胞質顆粒)、及びuctules(膜、細胞質)において見られた(データは示していない)。
【0158】
正常ヒト組織において、抗FR−α抗体特異的染色は、尿細管上皮(腎臓)、細気管支上皮(肺);肺細胞(肺);卵管の上皮;及び膵臓の管及び延性上皮において、両方の抗体濃度で観測された。
【0159】
腫瘍性ヒト組織では、抗FR−α抗体特異的染色は、卵巣癌組織、子宮体癌組織、及び腎臓癌組織で観測された。卵巣及び腎臓癌組織の染色は、膜及び細胞質で発生した(データは示していない)。
【0160】
これらの結果は、文献(Weitman,et al.,Cancer Res.,61:3869−3876(2001))において報告されたFR−αの分布と一致する。
【0161】
要約すると、FR−αは、正常細胞において発現が高い割合で制限され、卵巣腫瘍の大部分において高確率に発現する糖タンパク質である。本発明の抗FR−α抗体は、ADCCを誘導することが可能であり、従って、卵巣癌を含む多様な癌の治療のための本発明の抗体の優れた薬剤候補の抗体を作成することができる。
【0162】
実施例8 受容体結合活性
腫瘍抗原に対する非結合治療用モノクローナル抗体の作用の主要な様式の1つは、免疫エフェクター集団の腫瘍細胞への補充を通ずるものである(Clynes R,Takechi Y,Moroi Y,Houghton A,Ravetch JV.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1998 Jan 20;95(2):652−6;Clynes RA,Towers TL,Presta LG,Ravetch JV.Nat.Med.2000 Apr;6(4):443−6)。高親和性抗体は同じ抗原を認識する低親和性対応物と比べて、腫瘍細胞に対してより効果的な免疫エフェクターの補充を示すように、任意の抗体が免疫エフェクター細胞を腫瘍細胞へ補充することができるという能力は、腫瘍細胞表面の同族抗原に対する抗体の親和性によって影響を受けるということが推測される。限られた報告であるが、in vitroにおいて(Alsmadi,0.and Tilley,SA.J.Virol.1998 Jan;72(1):286−293;McCall,AM.,Shahied,L.,Amoroso,AR.,Horak,EM.,Simmons,RH.,Nielson,U.,Adams,GP.,Schier,R.,Marks,JD.,Weiner,LM.J.Immunol.2001 May 15;166(10):6112−7)、及びin vivoにおいて(Velders,MP,van Rhijn,CM.,Oskam,GJ.,Warnaar,SO.and Litvinov,SV.J.Cancer 1998;78(4):476〜483)このような関係の実証が、限られた中で報告されている。そのような相互関係が存在の有無を決定するために、表面プラスモン共鳴分光計によって抗−FR−α抗体のin vitro ADCC活性及びこれらの抗体の親和性を関連抗体に対して比較した。
【0163】
表面プラスモン共鳴分光計は、異なる屈折率の2つの媒体間の境界線にある導電性フィルムにおける電子(表面プラスモン)を有する全反射(TIR)条件下、光子によって生じた電場(エバネセント波)の短範囲(〜150nm)相互作用を利用するものであり、前記媒体の1つは、CM−デキストランと共役したアルカンリンカーでコーティングされた薄い金層(導電性フィルム)である。前記CM−デキストラン表面は、フローセルへ約100〜150nm突出している拡張ハイドロゲルを溶液中で形成し、前記CM−デキストラン層上に存在するカルボキシル基への共有結合固定化によって選択されたリガンドでさらに誘導体化され得る。エバネセント波の前記金層との相互作用を可能にするために必要な角度は、TIRを観察するのに必要な角度に依存し、言い換えると、チップの表面での厚み或いは質量に依存する。従って、この機器は、前記固定化リガンドと相互作用する分析物がフローセルへ注入された場合に観察されるような、チップの表面での質量の変化を長期間観察することを可能にする。分析物の注入がバッファーの注入後の場合、我々は、前記結合(前記分析物の注入の間)及び前記結合の解離段階(バッファー注入の間)の両方を追跡することができる。従って、動的オン−レート(K)及びオフ−レート(K)、及び定常状態平衡定数(K及びK)を推測することができる。
【0164】
可溶性分泌型の抗原は、標的細胞の無血清培養上清から、フェニルセファロース(高サブ)を通じたクロマトグラフィー、次にSセファロースファストフロー(S Sepharose Fast Flow)上のイオン交換によって精製される。簡易には、分泌抗原を含有する培養上清を、更なる塩類が存在しないフェニルセファロース(高サブ)カラムへ添加した。HIC A(20mM Kリン酸塩 pH7.2)における粗洗浄、次にHICバッファーにおける0〜20mM CHAPSのリニアー勾配を用いて結合抗原の溶出によって、非連結タンパク質を除去した。ピーク抗FR−α抗体含有画分を貯蔵し、1Mクエン酸で酸性化(pH5.5)し、次にSセファロース陽イオン交換カラムへ供した。IEXバッファー(20mM Kリン酸塩、pH5.5)で洗浄した後、IEXバッファー中0〜1M NaClのリニアー勾配を用いて結合抗原を溶出した。ピーク画分を貯蔵し、Centricon遠心濃縮装置(Millipore)を用いて濃縮し、PBSに対して透析した。抗原調合液の純度に基づいて、共有結合的に連結した葉酸セファロース樹脂上における更なる親和性クロマトグラフィー工程が必要となる可能性がある(Sadasivan,E.,da Costa,M.,Rothenberg,SP.and Brink,L.Biochim.Biophys.Acta 1987;(925):36〜47)。
【0165】
分析するための抗体は、組換えタンパク質Aセファロース樹脂(RPA−セファロース、Amersham Biosciences)上における親和性クロマトグラフィーによる1回の工程で精製した。組織培養上清を含有する免疫グロブリン(Ig)は、10mg/mlの樹脂に対してIg/ml樹脂値で、RPA−セファロースカラムへ重力を利用して添加した。PBSでの粗洗浄、次に0.1Mグリシン−HCl pH2.6を用いた溶出によって非結合タンパク質を除去した。画分を1M Trisで中和した。ピーク画分を貯蔵し、1000容量のPBSに対して透析した。Ig濃度は、BCAタンパクアッセイ(Pierce Chemical Co.)及びIg−特異的ELISAによって決定した。
【0166】
精製した抗原は、カップリングバッファー(10mM NaOAc pH5.0)中に希釈し、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び1−エチル−3−[ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸(EDC)の混合物を用いたアミノカップリングによって、CM5センサーチップ(Biacore)のフローセル上に固定化し、CM5センサーチップの表面に接着したCM−デキストランハイドロゲルにおけるカルボキシル基を活性化した。活性化された非誘導体化カルボキシル基は、1Mエタノールアミンでクエンチした。クエンチされたCM−デキストラン表面から成る抗原の非存在において活性化された基準フローセルは、全ての測定を規準化するために使用した。未精製mAb−含有培養上清、或いは精製mAb調合液は、動的アッセイに対して30μl/分の流速、定常状態親和性ランキング実験に対して5μl/分の流速で、ランニングバッファーとしてHBS−EP(20mM HEPES−OH、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%サーファクタントP−20、pH7.4)を用いて注入した。Biacore解析におけるその使用の前に、10K MWCO Slide−A−Lyzer透析カセット(Pierce)を用いて、精製されたmAb標品をHBS−EPに対して透析した。組織培養上清を含有する検体のために、BSA及び可溶性CM−デキストランを各最終濃度である1%及び1mg/ml添加した。前記表面の再生は、100μl/分の流速で、50mM NaOHを30秒間注入することによって達成した。データ解析は、Bia Evaluationソフトウェア(Biacore)を用いて行った。動的データは、シンプル1:1(Langmuir)結合モデルに一致した。ランキング実験のため、検体の異なる濃度におけるReq対Cのプロットから得られたK値によって順位を決定した。
【0167】
実施例9 ヒト腫瘍異種移植モデルにおける抗体の評価
SKOV−3腫瘍細胞株は、培養及び腫瘍異種移植片の両細胞においてFR−αを発現することが示されていた。抗体は、マウスのSKOV−3細胞の腫瘍異種移植モデルを用いてin vivoにおいて評価した。パクリタキセルをポジティブコントロールとして使用した。ネガティブコントロールは、非特異的マウスIgGに適合したアイソタイプ、及び溶媒コントロールであった。ネガティブコントロールに対する抗体による腫瘍増殖の阻害は、前記抗体が卵巣癌の治療に有益であることの指標である。前記抗体は、好ましくは少なくとも約58%の腫瘍増殖阻害を示すものである。
【0168】
実施例10 増殖阻害実験
スルホローダミンB(SRB)テスト(Keepersら((1991) Eur. J. Cancer 27:897−900によって修飾されたように、Shekan et al.(1990)J.Nat.Cancer Inst.82:107−112)は、抗葉酸化合物を用いた治療に対する癌細胞の感受性における抗体治療の効果をテストするために使用した。簡潔には(Backus et al.(2000)Int.J.Cancer 87:771〜778に記載されたように)、細胞を96ウェルフラット−ボトムプレート(三つ組)における100μl培養液(テストするために選択されたそれぞれの特定細胞株に対する使用が適しているもの)中で播種した。播種密度は、使用した細胞種に従って変わるが、例えば大腸癌細胞では8,000細胞/ウェル、頭頚部の扁平上皮癌細胞では15,000細胞/ウェルとする。前記細胞は、1〜100μg/mlの抗葉酸受容体抗体の存在下で培養した。24時間後、培養液を含む薬剤100μlを添加し、細胞をさらに72時間培養した。5−フルオロ−2’−デオキシ−ウリジン−5’−1リン酸(FdUMP)、ロイコボリン、ZD1649、MTA、GW1843U89、ZD9331、AG337、及びPT523などの薬剤濃度の範囲は、1×10−5〜1×10−11Mであった。5−FUは、10μMロイコボリンの存在下或いは非存在下で1×10−4〜1×10−10Mの範囲でテストした。薬剤への暴露の72時間後、前記細胞はトリクロロ酢酸(TCA)で固定し、SRBタンパク質色素で染色した。結果は、Petersら((1993)Int.J.Cancer 54:450〜455)によって報告された以下の公式に従って、薬剤暴露期間の最初と最後での光学密度(OD540)における違いに基づいた対照増殖%として示した。
【0169】
【数3】

【0170】
IC50値は、未処理対照細胞の値と比較して細胞増殖の50%減少と対応する薬剤濃度として定義された吸収値に基づいて計算した。
【0171】
実施例11 抗葉酸抗体及び抗葉酸化合物の組み合わせ
併用治療のために、卵巣癌細胞に対する上述したアッセイ及び本発明のモノクローナル抗体を用いて、有効性をin vitroで決定した。当業者であればin vitro有効性アッセイから用量を想定し、患者における有効な範囲を決定することが可能である。さらに、投与として当技術分野で許容されている抗体の用量は様々な葉酸阻害剤として許容され、最少量で最大限の利益を達成するように調節されている用量と適合可能である。当業者であればこれらの用量を調節し、ルーチン実験、特に上で提供された抗体に対する用量のガイダンスによって、及びin vitroにおける効果を決定するために記載されたアッセイによって望ましい効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1は、FR−αの多量体型及び単量体型を示している腫瘍細胞のウェスタンブロットを示したものである。
【図2】図2は、FR−αが発現した大腸菌のウェスタンブロットを示したものである。
【図3】図3は、Triton X−100が存在若しくは欠如溶液に溶けたFR−αのウェスタンブロットを示したものである。
【図4】図4は、本発明の抗体産生細胞を同定するためのスクリーニング方法を例示したものである。
【図5A】図5Aは、配列ID番号3のアミノ酸配列を有する本発明の抗FR−α抗体の軽鎖の配列アライメント及び、配列ID番号24のアミノ酸配列を有する異常翻訳産物の軽鎖を例示したものである。
【図5B】図5Bは、配列ID番号8の配列を有する本発明の抗FR−α抗体の軽鎖の核酸配列の配列アライメント及び、配列ID番号25の配列を有する異常翻訳産物をコードする核酸配列を例示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する精製された抗体。
【請求項2】
請求項1の抗体において、前記抗体は、FR−αの生物活性を阻止するものである。
【請求項3】
請求項1の抗体において、前記抗体は、FR−α産生細胞の抗体依存性細胞傷害を誘導するものである。
【請求項4】
請求項1の抗体において、前記抗体の親和力は、少なくとも約1×10−7Mである。
【請求項5】
請求項1の抗体であって、この抗体は、配列ID番号5のアミノ酸配列を含む重鎖を有するものである。
【請求項6】
請求項1の抗体であって、この抗体は、配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有するものである。
【請求項7】
請求項5の抗体であって、この抗体は、配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有するものである。
【請求項8】
請求項1の抗体において、前記抗体は、細胞毒性物質と結合されるものである。
【請求項9】
請求項1の抗体を発現する細胞。
【請求項10】
葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体を発現する細胞において、前記細胞は、FR−α結合競合物が実質的に存在しないものである細胞。
【請求項11】
葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドであって、前記重鎖は、配列ID番号5のアミノ酸配列を有するものであるポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11のポリヌクレオチドにおいて、このポリヌクレオチドは、配列ID番号7の核酸配列を有するものである。
【請求項13】
葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドにおいて、前記軽鎖は、配列ID番号2のアミノ酸配列を有するものであるポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13のポリヌクレオチドであって、このポリヌクレオチドは、配列ID番号8の核酸配列を有するものである。
【請求項15】
FR−αと特異的に結合する抗体の軽鎖をさらにコードする請求項11のポリヌクレオチドにおいて、前記軽鎖は、配列ID番号2のアミノ酸配列を有するものである。
【請求項16】
請求項15のポリヌクレオチドであって、このポリヌクレオチドは、配列ID番号8の核酸配列を有するものである。
【請求項17】
葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドを有するベクターにおいて、前記重鎖は、配列ID番号5のアミノ酸配列を有するものであるベクター。
【請求項18】
葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを有するベクターにおいて、前記軽鎖は、配列ID番号2のアミノ酸配列を有するものであるベクター。
【請求項19】
葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドにおいて、前記重鎖は配列ID番号5のアミノ酸配列を有するものであるポリヌクレオチドと、葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドにおいて、前記軽鎖は配列ID番号2のアミノ酸配列を有するものであるポリヌクレオチドとを有するベクター。
【請求項20】
請求項15のポリヌクレオチドを有するベクター。
【請求項21】
葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドにおいて、前記重鎖は配列ID番号5のアミノ酸配列を有するものであるポリヌクレオチドと、葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを有する発現細胞において、前記軽鎖は配列ID番号2のアミノ酸配列を有するものであるポリヌクレオチドとを有する発現細胞。
【請求項22】
葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体の重鎖と、葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドとを有する発現細胞において、前記重鎖は配列ID番号5のアミノ酸配列を有するものであり、前記軽鎖は配列ID番号2のアミノ酸配列を有するものである発現細胞。
【請求項23】
請求項17のベクターを有する発現細胞。
【請求項24】
請求項18のベクターを有する発現細胞。
【請求項25】
請求項19のベクターを有する発現細胞。
【請求項26】
請求項20のベクターを有する発現細胞。
【請求項27】
葉酸レセプター−α(FR−α)と特異的に結合する抗体を有する薬剤組成物において、前記組成物は、FR−α結合競合物が実質的に存在しないものである薬剤組成物。
【請求項28】
請求項27の薬剤組成物において、前記抗体は、配列ID番号5のアミノ酸配列を含む重鎖を有するものである。
【請求項29】
請求項27の薬剤組成物において、前記抗体は、配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有するものである。
【請求項30】
請求項27の薬剤組成物において、前記抗体は、配列ID番号5のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有するものである。
【請求項31】
請求項27の薬剤組成物において、前記抗体は、FR−αの生物活性を阻止するものである。
【請求項32】
請求項27の薬剤組成物において、前記抗体のFR−αに対する結合親和力は、少なくとも約1×10−7Mである。
【請求項33】
請求項27の薬剤組成物において、この薬剤組成物はさらに、細胞毒性物質を有するものである。
【請求項34】
請求項33の薬剤組成物において、前記抗体は、前記細胞毒性物質と結合されるものである。
【請求項35】
請求項27の薬剤組成物において、この薬剤組成物はさらに、抗葉酸複合体を有するものである。
【請求項36】
葉酸レセプター−αと特異的に結合する抗体を産生する方法であって、この方法は、請求項23の細胞を培養する工程を有するものである。
【請求項37】
葉酸レセプター−αと特異的に結合する抗体を産生する方法であって、この方法は、請求項24の細胞を培養する工程を有するものである。
【請求項38】
葉酸レセプター−αと特異的に結合する抗体を産生する方法であって、この方法は、請求項25の細胞を培養する工程を有するものである。
【請求項39】
葉酸レセプター−αと特異的に結合する抗体を産生する方法であって、この方法は、請求項26の細胞を培養する工程を有するものである。
【請求項40】
葉酸レセプター−αと特異的に結合する抗体を産生する方法であって、この方法は、請求項9の細胞を培養する工程を有するものである。
【請求項41】
葉酸レセプター−αと特異的に結合する抗体を産生する方法であって、この方法は、請求項10の細胞を培養する工程を有するものである。
【請求項42】
抗体産生細胞を作り出す方法であって、前記方法は、配列ID番号5のアミノ酸配列をコードする核酸配列と、配列ID番号2のアミノ酸配列をコードする核酸配列とを有する細胞のミスマッチ修復を阻害する工程と、葉酸レセプター−アルファ(FR−α)と特異的に結合する抗体を産生する細胞を選択する工程とを有するものであり、前記細胞によって産生された実質的に全ての抗体は、配列ID番号5のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有するものである方法。
【請求項43】
請求項42の方法において、前記ミスマッチ修復を阻害する工程は、ミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブな阻害物質を前記細胞に導入する工程を有するものである。
【請求項44】
請求項42の方法において、前記細胞は、配列ID番号5のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列ID番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖を有する前記抗体を少なくとも約90重量%有する抗体を産生するものである。
【請求項45】
請求項42の方法において、この方法はさらに、前記細胞の遺伝的安定性を回復する工程を有するものである。
【請求項46】
請求項42の方法に従って産生した細胞。
【請求項47】
葉酸レセプター−αと特異的に結合する抗体を産生する方法であって、この方法は、請求項46の細胞を培養する工程を有するものである。
【請求項48】
葉酸レセプター−アルファ(FR−α)と特異的に結合する抗体を発現し、更にFR−α結合競合物が実質的に存在しない細胞を作り出す方法であって、配列ID番号5のアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び配列ID番号2のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む細胞のミスマッチ修復を阻害する工程と、少なくとも約1×10−7Mの結合親和力を有する葉酸レセプターアルファ(FR−α)と特異的に結合する抗体を発現する細胞を選択する工程とを有する方法。
【請求項49】
請求項48の方法において、前記ミスマッチ修復を阻害する工程は、ミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブな阻害物質を前記細胞に導入する工程有するものである。
【請求項50】
請求項48の方法において、この方法はさらに、前記細胞の遺伝的安定性を回復する工程を有するものである。
【請求項51】
請求項48の方法に従って産生した細胞。
【請求項52】
葉酸レセプター−αと特異的に結合する抗体を産生する方法であって、請求項51の細胞を培養する工程を有する方法。
【請求項53】
FR−αの増加した発現と関連する異型細胞の成長を阻害する方法であって、この方法は、請求項27の薬剤組成物をそのような異型細胞を保持する患者に投与する工程を有するものである。
【請求項54】
請求項53の方法において、前記異型細胞は、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍細胞である。
【請求項55】
請求項53の方法において、前記異型細胞は、卵巣癌細胞である。
【請求項56】
請求項53の方法において、前記患者は、ヒトの患者である。
【請求項57】
請求項53の方法において、前記薬剤組成物は、少なくとも1つの細胞毒性物質を含むものである。
【請求項58】
請求項57の方法において、前記細胞毒性物質は、前記薬剤組成物の抗体と結合されるものである。
【請求項59】
請求項53の方法において、この方法はさらに、前記患者に抗葉酸化合物を投与する工程を有するものである。
【請求項60】
その表面に葉酸レセプター−アルファ(FR−α)が存在する異型細胞を検出する方法であって、前記細胞をFR−αと特異的に結合する抗体と接触させる工程と、前記抗体の前記細胞への結合を確定する工程とを有する方法。
【請求項61】
請求項60の方法において、前記抗体は、前記FR−αの生物活性を阻止するものである。
【請求項62】
請求項60の方法において、前記抗体は、配列ID番号5のアミノ酸配列を有する重鎖を有するものである。
【請求項63】
請求項60の方法において、前記抗体は、配列ID番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖を有するものである。
【請求項64】
請求項60の方法において、前記抗体は、配列ID番号5のアミノ酸配列を有する重鎖と配列ID番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖とを有するものである。
【請求項65】
請求項60の方法において、前記細胞に前記抗体を接触させる前記工程は、FR−α結合競合物がない時に生じるものである。
【請求項66】
請求項60の方法において、前記癌細胞は、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍細胞である。
【請求項67】
請求項60の方法において、前記癌細胞は、卵巣癌細胞である。
【請求項68】
請求項60の方法において、前記抗体は、検出可能な標識で標識化されたものである。
【請求項69】
請求項60の方法であって、この方法は、in vitroで前記癌細胞を検出する工程を有するものである。
【請求項70】
請求項60の方法であって、この方法は、in vivoで前記癌細胞を検出する工程を有するものである。
【請求項71】
葉酸レセプター−α(FR−α)の増強された発現と関連する異型細胞の成長を阻害する方法であって、FR−αと特異的に結合する抗体を含む組成物を前記異型細胞を保持した患者に投与する工程を有する方法。
【請求項72】
請求項71の方法において、前記抗体は、FR−α産生細胞上のFR−αの生物活性を阻止するものである。
【請求項73】
請求項71の方法において、前記組成物は、FR−α結合競合物が実質的に存在しないものである。
【請求項74】
請求項71の方法において、前記抗体は、配列ID番号5のアミノ酸配列を含む重鎖を有するものである。
【請求項75】
請求項71の方法において、前記抗体は、配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有するものである。
【請求項76】
請求項71の方法において、前記抗体は、配列ID番号5のアミノ酸配列含む重鎖と、配列ID番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を有するものである。
【請求項77】
請求項71の方法において、前記異型細胞は、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍細胞である。
【請求項78】
請求項71の方法において、前記異型細胞は、卵巣癌細胞である。
【請求項79】
請求項71の方法において、前記患者は、ヒトの患者である。
【請求項80】
請求項71の方法において、前記抗体は、細胞毒性物質と結合するものである。
【請求項81】
請求項71の方法において、前記患者はさらに、少なくとも1つの抗葉酸化合物を投与されるものである。
【請求項82】
癌を有する患者を治療する方法であって、この方法は、前記患者に請求項27の薬剤組成物を投与する工程を有するものである。
【請求項83】
請求項81の方法において、前記癌は、上皮性癌である。
【請求項84】
請求項81の方法において、前記癌は、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、肺癌、子宮体癌、若しくは脳腫瘍細胞である。
【請求項85】
請求項81の方法において、前記癌は、卵巣癌である。
【請求項86】
請求項81の方法において、前記患者は、ヒトの患者である。
【請求項87】
請求項81の方法において、前記薬剤組成物は、少なくとも1つの細胞毒性物質を含むものである。
【請求項88】
請求項87の方法において、前記細胞毒性物質は、前記薬剤組成物の抗体と結合するものである。
【請求項89】
請求項81の方法であって、この方法はさらに、前記患者に抗葉酸複合体を投与する工程を有するものである。
【請求項90】
請求項81の方法において、前記薬剤組成物は、前記抗葉酸複合体を有するものである。
【請求項91】
キットであって、葉酸レセプター−アルファ(FR−α)と特異的に結合し、さらにFR−αの生物活性を阻止する抗体を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2008−500025(P2008−500025A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553229(P2006−553229)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/004240
【国際公開番号】WO2005/080431
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506031948)モルフォテック、インク. (16)
【Fターム(参考)】