説明

腫瘍治療における有効なツールとしての腫瘍血管をターゲティングする新規なワクチン

本発明は、種々の癌処置のための組成物に関する。組成物は、EDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのCドメイン、マジックラウンドアバウト(MR)、またはそのフラグメントの配列を単独で、または1種または数種の異種外来キャリア分子にカップリングした組み合わせで含むワクチンである。ワクチンは、腫瘍血管中および腫瘍血管周囲に優先的に発現する自己タンパク質に対する抗体を産生する。ワクチンを、好ましくは、アジュバントと共に投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫系を刺激して腫瘍血管(tumor vessel)をほとんど排他的にターゲティングする抗体を産生するように考案された、新規な方法に関する。腫瘍血管中および腫瘍血管周囲に優先的に発現する自己タンパク質に対するこれらの抗体により、腫瘍血管が免疫攻撃され、それにより、腫瘍成長が劇的に低下する。本発明は概略としては、哺乳動物で用いるワクチンに関するが、好ましい実施形態はヒト、イヌ、ネコ、またはウマで用いるワクチンに関する。本発明を、一般的且つヒト、ネコ、イヌ、およびウマ用のワクチンなどを参照して記載する。
【背景技術】
【0002】
血管形成、即ち新規な毛細血管の形成は、血管形成を必要とする発生条件および生理学的条件(創傷治癒および月経周期など)において不可欠である。しかし、健康な男性では、血管形成は稀であり、内皮細胞プールの代謝回転時間は数百日である。しかし、長期にわたる過剰な血管形成は、多数の病理学的過程、即ち、関節リウマチ、網膜症、および腫瘍成長に関与している。正常な脈管構造は、天然に存在する血管新生誘発因子と抗血管新生因子との間のバランスによって厳重に制御されている。かかる因子のうちで非常に重要な因子の1つは、血管内皮成長因子(VEGF)であり、この因子は、胚形成中の脈管系の発生に必要であり、成人血管新生の主な制御因子でもある[1]。
【0003】
今日までに、血管形成を負に調節する多数の内因性因子が記載されている[2]。記載の
インヒビターは、今までのところ、主に以下の3つの群に分類されている;血漿タンパク質、基底膜タンパク質、およびセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)。血管形成の内因性インヒビターの例は、トロンボスポンジン(TSP)、基底膜タンパク質、エンドスタチン、コラーゲンXVIIIのフラグメント、アンギオスタチン、プラスミノゲンおよびタムスタチンのフラグメント、コラーゲンIVのフラグメントである。その作用機構は、受容体としてのインテグリンの使用または異なる基質成分への特異的結合のいずれかによる内皮細胞アポトーシスの誘導および/またはインテグリン機能の妨害を含む。遺伝学的証拠が、血管形成の負の制御因子としてのこれらの分子の役割を裏付けている。マウス皮膚内でのTSP−1の過剰発現によって皮膚癌発生が遅延および軽減される一方で、TSP−2を欠くマウスは皮膚脈管形成が増加し、発癌が増強される[3]。さらに、タムスタチンまたはエンドスタチンのいずれかの発現を欠くマウスは、腫瘍成長および脈管形成が促進される[4]。
【0004】
過剰な血管形成によって特徴づけられる疾患を処置するための臨床的ストラテジーとしての抗血管形成は、多くの場合、特に化学療法と組み合わせた場合に魅力的である。脈管形成の減少による腫瘍の枯渇は腫瘍区画をターゲティングせず、故に、遺伝的に不安定であることが公知の腫瘍細胞の特質に依存しない。今日までに、5つの抗血管形成薬(その全てがVEGFまたはVEGFR2のいずれかをターゲティングする)が、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている[1]。臨床的に、最も成功しているのは、今までのところ、2004年の初期に承認されたVEGF−中和抗体ベバシズマブ(アバスチン)である。化学療法と組み合わせて投与した場合、アバスチンは、転移性結腸癌、肺癌、および乳癌患者を延命する。FDAによって承認された第2の抗血管形成薬は、加齢性黄斑変性(AMD)の処置で使用される抗VEGFアプタマーペガプタニブ/マクゲンである。さらに、受容体チロシンキナーゼインヒビターであるスニチニブ(スーテント)およびソラフェニブ(ネクサバール)(VEGFR2(PDGF−受容体β、Flt3、およびc−Kitも同様)をターゲティングする)は、それぞれ、腎臓癌および消化管癌処置について2006年1月および2005年12月に承認された。VEGF誘導性シグナル伝達をターゲティングする第5の薬物は、VEGF−中和抗体フラグメントであるラニビズマブ(ルセンチス)(加齢性黄斑変性(西洋における失明の主因)の処置について2006年6月にFDAで承認)である。
血管形成処置は、腫瘍内の非形質転換細胞をターゲティングするので、一般に化学療法に関連する薬物耐性に関連する問題に悩まされないであろうということが以前に仮定されていた。しかし、この仮説は、完全に正確であると証明されていない。データ蓄積により、疾患が進行するにつれて他の血管形成経路にVEGFが置き換えられ得ることが示されている[5]。したがって、腫瘍学者が現在使用している一連の細胞毒性薬剤に類似する血管形成性の管の異なる機能をターゲティングする臨床用の種々の抗血管形成薬を開発することが重要である。
【0005】
これらの上記方法のいくつかは非常に高額であり、最大の効果を得るために薬物を毎週、
毎日、または時には1日に数回静脈内または筋肉内に注射する必要があり、また、しばしば、非常に限られた癌形態のみに効果を示す。したがって、より容易に投与され、より対費用効果が高く、腫瘍形態の対象範囲がより広い新規な薬物が必要である。
【0006】
ワクチン接種は、多くの疾患型に魅力的なアプローチである。不治であり生命を脅かす容態(ポリオ、ジフテリア、および天然痘など)をほぼ全滅させるために、広範なワクチン接種プログラムが役立っている。癌の処置ストラテジーとしてもワクチン接種を使用する可能性は、暫くの間、中心的研究対象でもあった。しかし、今までのところ、この疾患のための臨床的用途としてのワクチン接種は存在しない。癌処置用ワクチンの開発がより困難である理由がいくつか存在する。第1に、ターゲティングすべき抗原は、非常に多くの場合、自己抗原であり、生理学的条件下でも発現する可能性があるが、低レベルであるか、胚形成中に発現する。したがって、外来のウイルスまたは細菌の抗原に対するワクチン接種と対照的に、抗原に対する免疫系の自己耐性(self-tolerance)を破壊する必要がある。第2に、腫瘍細胞は、免疫系による認識を避けるための機構を発達させ、腫瘍細胞抗原に対するワクチン接種をさらに複雑にしている。第3に、自己抗原に対してワクチン接種する場合、疾患特異的標的を使用することが重要である。
【0007】
本明細書において、本発明者らは、自己抗原(腫瘍血管標的)を相当数のT細胞エピトープを含むのに十分に大きなサイズの非自己抗原にカップリングすることによる、腫瘍ワクチンの有効性を増強するための新規なストラテジーを示す。これにより、ほとんどのMHCバックグラウンドにおけるT細胞による認識およびヒトのような異系交配で使用することができるワクチンが保証される。血管の優先的ターゲティングはまた、腫瘍細胞が処置に耐性を示すようになる可能性を低くする。
【0008】
さらに、抗血管形成ワクチン接種は、薬物の反復投与および長期投与にかわる対費用効果が高い代替法を提供することができる。遺伝性形態の癌を発生するリスクが高い個体のために、抗血管形成ワクチン接種は予防的処置としても役立ち得る。
【0009】
癌ワクチンの開発のために選択された抗原は、成人期において腫瘍脈管構造中に優先的に発現される以下の6つの異なる抗原である:フィブロネクチンのエキストラドメインB(EDB)[6]、フィブロネクチンのエキストラドメインA(EDA)[6]、テネイシン−CのエキストラドメインC[7]、アネキシンA1[8]、エンドシアリン(endosialin)[9、10]、およびマジックラウンドアバウト(magic roundabout)(MR)[11]。EDBは、オルタナティブスプライシングによってフィブロネクチンに挿入された91アミノ酸ドメインである。EDBは胚形成中に発現されるが、正常状態の成人には発現しない。しかし、EDBは、多数の固形腫瘍内に高度に発現する[6]。放射性薬剤または細胞毒性薬剤にカップリングした抗体の投与によるEDBのターゲティングにより、マウス癌モデルおよび第II相臨床試験で非常に有望な結果が得られている(アップデートされた情報については、http://www.philogen.com/を参照のこと)。EDAは、同様にオルタナティブスプライシング(REF)によってフィブロネクチンに挿入された別のエキストラドメインである。このドメインは、一定の腫瘍組織内に発現されるが、一般に成人の他の組織内に発現されないことが認められている[6]。テネイシンCのCドメインは、種々の腫瘍型(例えば、高悪性度星状細胞腫)で過剰発現されるが、ほとんどの正常な成人組織内で検出不可能である[7]。同様に、MRは、活動的な血管形成部位(腫瘍など)で発現するが、胚形成中を除いて正常組織中では発現しない[7]。同様に、エンドシアリンおよびアネキシンA1の両方は、腫瘍組織内に優先的に発現する。
【0010】
先行技術
癌を処置するためのワクチン接種ストラテジーは、医薬品産業および学術研究者の両方にとって非常に活発な研究分野である。しかし、成功は非常に限られている。この不成功についての1つの非常に重要な要因は、ほとんどの臨床試験および前臨床試験を未修飾タンパク質を使用して行ってきたからであった。これが、腫瘍生物学分野内のほとんど全てのグループが活性な腫瘍ワクチンを得ることが不可能であると結論づけている理由である。したがって、いくつかのグループおよび会社が、モノクローナル抗体の使用に着手している。配列が非常に十分に保存されていてマウスまたはラットにおいてヒトタンパク質に対するモノクローナル抗体を作製することはほとんど不可能であり、治療用のEDB結合構造を得るためにファージディスプレイテクノロジーが使用されているということがEDBの状況をさらに困難にしている(http://www.philogen.com/を参照のこと)。しかし、修飾タンパク質を使用した癌ワクチンを研究している会社が少なくとも1つ存在し、その会社はデンマーク国のPharmexaである。この会社は種々の非自己タンパク質由来のいわゆる免疫優性エピトープ(immunodominat epitope)を使用している。これらの短い免疫優性エピトープを、標的分子に挿入している(www.pharmexa.com)。しかし、免疫優性エピトープへの挿入の背景となる概念は、この免疫優性エピトープが特定のMHCクラスIまたはクラスII分子に非常に強固に結合するエピトープであるという点である。これにより、これらのワクチンは高度に変化するパラメーター(MHC分子のペプチド特異性)に依存するようになる。融合タンパク質をより多数のペプチドと共に使用することにより、本発明者らは、単一の免疫優性エピトープに関する問題を克服し、より汎用性の高いワクチンを得ている。全ての以前に試験したワクチンも腫瘍をターゲティングしているが、血管関連抗原はターゲティングしていない。腫瘍抗原は容易に下方制御されることが認められており、それにより、腫瘍がこれらの処置方法を比較的容易に逃れることができる。これは、腫瘍細胞の高い適応性に起因する。しかし、全ての腫瘍が生存および成長するのに血管を必要とし、単独または最大6つの異なる腫瘍特異的脈管標的の組み合わせからなる新規でより強力な治療ワクチンを使用したこの血管をターゲティングするストラテジーは、攻撃的で成長の早い腫瘍でさえもターゲティングする、新規且つより強力な方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Olsson AK, Dimberg A, Kreuger J, Claesson-Welsh L. VEGF receptor signalling-in control of vascular function, Nat Rev Mol Cell Biol 2006;7(5):359-71,
【非特許文献2】Folkman J. Endogenous angiogenesis inhibitors. Apmis 2004;112(7-8):496-507.
【非特許文献3】Hawighorst T, Velasco P, Streit M, Hong YK, Kyriakides TR, Brown LF, et al. Thrombospondin-2 plays a protective role in multistep carcinogenesis: a novel host anti-tumor defense mechanism. Embo J 2001;20(11):2631-40.
【非特許文献4】Sund M. Hamano Y, Sugimoto H, Sudhakar A, Soubasakos M, Yerramalla U, et al, Function of endogenous inhibitors of angiogenesis as endothelium-specific tumor suppressors. Proc Natl Acad Sci USA 2005;102(8):2934-9.
【非特許文献5】Ferrara N, Kerbel RS. Angiogenesis as a therapeutic target, Nature 2005;438(7070):964-74.
【非特許文献6】Scarpino S, Stoppacciaro A, Pellegrini C, Marzullo A, Zardi L, Tartaglia F, et al. Expression of EDA/EDB isoforms of fibronectin in papillary carcinoma of the thyroid. J Pathol 1999;188(2):163-7.
【非特許文献7】Silacci M, Brack SS, Spath N, Buck A, Hillinger S, Arni S, et al. Human monoclonal antibodies to domain C of tenascin-C selectively target solid tumors in vivo. Protein Eng Des Sel 2006;19(10):471-8.
【非特許文献8】Oh P, Li Y, Yu, J, Durr E, Krasinska KM, Carver LA, et al. Subtractive proteomic mapping of the endothelial surface in lung and solid tumors for tissue-specific therapy. Nature 2004;429(6992):629-35.
【非特許文献9】Teicher BA, Newer vascular targets: endosialin (review). Inc J Oncol 2007;30(2):305-12.
【非特許文献10】Rettig WJ, Garin-Chesa P, Healey JH, Su SL, Jaffe EA, Old LJ, Identification of endosialin, a cell surface glycoprotein of vascular endothelial cells in human cancer. Proc Natl Acad Sci USA 1992;89(22):10832-6.
【非特許文献11】Huminiecki L, Gorn M. Suchting S, Poulson R, Bicknell R. Magic roundabout is a new member of the roundabout receptor family that is endothelial specific and expressed at sites of active angiogenesis. Genomics 2002;79(4):547-52.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、腫瘍脈管構造(腫瘍成長の必須の部分)のターゲティングによる種々の癌型を処置するための便利であり、効率的であり、対費用効果の高い方法を提供することである。種々の癌形態の処置のためのフィブロネクチンの細胞外ドメインB(EDB)、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、またはマジックラウンドアバウト(MR)(これらの融合タンパク質の1つずつか2〜6種の組み合わせ)と任意の非自己起源の外来キャリア分子との間の融合タンパク質からなるワクチンでの処置である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、本発明によれば1つのワクチンまたはワクチンの組み合わせによって達成され、このワクチンまたはワクチンの組み合わせは、1つ以上の異種キャリアタンパク質にカップリングしたその元の形態または多量体化形態のワクチン接種すべき種由来のEDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、またはマジックラウンドアバウト(MR)の全アミノ酸配列または5アミノ酸を超える前述のアミノ酸配列のセグメントを有する単一または2〜6種のタンパク質の組み合わせを含み、場合によりアジュバントを含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、ヒトEDBのアミノ酸配列を示す。
【図1B】図1Bは、EDAのアミノ酸配列を示す。
【図1C】図1Cは、テネイシンCのエキストラドメインCのアミノ酸配列を示す。
【図1D】図1Dは、アネキシンA1のアミノ酸配列を示す。
【図1E】図1Eは、エンドシアリンのアミノ酸配列を示す。
【図1F】図1Fは、マジックラウンドアバウト(MR)のアミノ酸配列を示す。
【図2】図2は、ELISAコーティング抗原としての免疫化およびマウス腫瘍モデルにおける概念の証明する研究のために使用したチオレドキシン−EDBおよびGST−EDB構築物ならびに前述の構築物由来の精製タンパク質の略図を示す。
【図3】図3は、ワクチン接種後の腫瘍重量に及ぼす影響を示す。一連のワクチン接種マウスおよびコントロールマウスにおける抗体力価を示す。
【図4】図4は、マウス腫瘍モデルにおけるワクチン接種ストラテジーによる腫瘍サイズに及ぼす顕著な影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
抗EDB、抗EDA、抗アネキシンA1、抗エンドシアリン、抗テネイシンCのエキストラドメインC、または抗マジックラウンドアバウト(MR)抗体を、能動免疫化(いわゆる、ワクチン接種)によって宿主内で産生する。修飾したEDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、またはマジックラウンドアバウト(MR)の宿主への注射により、宿主の免疫系よりEDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、またはマジックラウンドアバウト(MR)自体に対してポリクローナル抗体応答が得られ、それにより、免疫系による攻撃のための腫瘍特異的血管をターゲティングする。宿主の免疫系が修飾自己タンパク質を非自己タンパク質として認識するように、抗原を修飾することが主として重要である。これは、非自己アミノ酸領域を、EDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、またはマジックラウンドアバウト(MR)、または処置すべき種由来のこれら3つの分子のうちのいずれかの選択された領域に共有結合することによって達成することができる。次いで、非自己領域内のペプチドが非耐性T細胞を誘引して活性化し、潜在的な自己反応型B細胞を補助する。
【0016】
これらの自己タンパク質の修飾を行うための異なるストラテジーは少なくとも3つ存在する。1つの方法は、原核生物または真核生物の発現系内で非自己タンパク質と自己のEDB、テネイシンC、またはMRの全体または5アミノ酸を超える選択されたフラグメントとの融合タンパク質を産生することである。次いで、EDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、またはマジックラウンドアバウト(MR)の読み取り枠を、図1中のヒトEDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、またはマジックラウンドアバウト(MR)によって例示されるように、細菌、真菌、または真核生物のベクターに最初にクローン化する。次いで、この融合タンパク質構築物を、所望の融合タンパク質産生のために哺乳動物宿主または原核生物宿主にトランスフェクションする。融合パートナーは、ここでは、10アミノ酸から数百kDまでの任意のサイズの、任意の非自己タンパク質であり得る。しかし、通常は、自己タンパク質とほぼ同じサイズの融合パートナーを使用することが好ましい。
【0017】
あるいは、未修飾のEDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、またはマジックラウンドアバウト(MR)を、哺乳動物または原核生物の宿主または宿主細胞株中で産生し、次いで、化学的カップリングによってキャリアタンパク質に共有結合させることができる。
【0018】
第3の代替法(本発明者らは、あまり魅力的でないと考える)は、EDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、またはマジックラウンドアバウト(MR)配列の選択された領域を合成ペプチドとして産生し、次いで、これらのペプチドを化学的カップリングによって外来キャリア分子に結合させることである。この第3の代替法は、通常、患者への注射後、未変性の適切に折り畳まれたタンパク質に対する結合活性が低い抗体応答が得られ、それにより、臨床的効果がより低い。
【0019】
産生後、ワクチン抗原を精製し、発熱物質の含有量および他の夾雑物質の潜在的含有量について試験する。自己エピトープに対して十分に強力な免疫応答を得るために、ワクチン抗原を、(場合により)アジュバントと混合し、患者に注射する。患者への投与後、ワクチンはワクチン抗原に対して免疫応答を誘導する。ワクチン抗原中の自己エピトープの存在により、このタンパク質は、標的分子(ここでは、EDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、またはマジックラウンドアバウト(MR))に対する抗体応答も誘導し、それにより、免疫系をターゲティングして腫瘍血管を攻撃し、腫瘍の成長を減少させ、腫瘍を完全に除去する可能性がある。
【実施例】
【0020】
本発明の有効性を試験するために、ヒトおよびマウスのフィブロネクチンの91アミノ酸の長い細胞外ドメインB(EDB)とサイズがおよそ10kDの細菌抗原(大腸菌チオレドキシン)との融合タンパク質を、ワクチン抗原として使用して、動物モデルにおける影響を研究した。EDBドメインは非常に高度に保存されており、研究されたほとんど全ての哺乳動物胎盤で同一である。この融合タンパク質は、原核生物宿主中でほとんど均一に産生された(図2)。次いで、チオレドキシン−EDB−融合タンパク質を、アジュバントと共にマウスに注射した。3週間後、マウスにブースター量のワクチンを投与し、処置から5週間後にこれらの動物由来の血清を抗EDB抗体の産生量について試験した。図3から認められるように、全動物が高力価の抗EDB抗体を示したのに対して、全コントロールが負であった。これは、ワクチンが試験動物において相当量の抗EDB抗体の産生を誘導する能力を有することを示す。
【0021】
次いで、これらの抗体のインビボ有効性を、マウス腫瘍モデルで試験した。ワクチン接種および宿主抗体の免疫系の誘発後に産生された抗体は、これらの動物内で腫瘍サイズが有効に減少したことが認められた(図4)。抗EDB抗体はまた、電子顕微鏡試験によって認められるように、腫瘍組織を顕著に変化させた(データ示さず)。抗EDB抗体の腫瘍脈管構造への結合により、免疫細胞が顕著に浸潤し、免疫系がこれらの血管を攻撃することは明らかである。脈管構造に及ぼすこの影響がワクチン接種した動物で認められた腫瘍サイズの顕著な減少の原因である可能性が最も高い。
【0022】
結論として、本発明者らは、癌ワクチンに対するほとんどの以前の研究と対照的に、高力価および生物学的に活性な抗体の両方がワクチンによって誘導され、腫瘍成長に良好な治療効果を有することを示す。
【図1(A)】

【図1(B)】

【図1(C)】

【図1(D)】

【図1(E)】

【図1(F)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア分子および薬学的に許容可能なアジュバントにカップリングされる元の形態または多量体化形態のEDB、EDA、アネキシンA1、エンドシアリン、テネイシンCのエキストラドメインC、マジックラウンドアバウト(MR)、または少なくとも1つのそのフラグメントのアミノ酸配列の単独または組み合わせからなるワクチン。
【請求項2】
元の形態または多量体化形態の少なくとも1つのEDBのフラグメントをキャリア分子にカップリングする、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記EDBがヒト、イヌ、ネコ、またはウマ起源である、請求項1または2に記載のワクチン。
【請求項4】
医学的使用のための、請求項1または2に記載のEDBワクチン。
【請求項5】
医療用ワクチンの産生のための処置すべき種由来のEDBの全体または一部および外来キャリアタンパク質からなる融合タンパク質の使用。
【請求項6】
元の形態または多量体化形態の少なくとも1つのEDAのフラグメントをキャリア分子にカップリングする、請求項1に記載のワクチン。
【請求項7】
前記EDAがヒト、イヌ、ネコ、またはウマ起源である、請求項1または6に記載のワクチン。
【請求項8】
医学的使用のための、請求項1または6に記載のEDAワクチン。
【請求項9】
医療用ワクチンの産生のための処置すべき種由来のEDBの全体または一部および外来キャリアタンパク質からなる融合タンパク質の使用。
【請求項10】
元の形態または多量体化形態の少なくとも1つのアネキシンA1のフラグメントをキャリア分子にカップリングする、請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
前記アネキシンA1がヒト、イヌ、ネコ、またはウマ起源である、請求項1または10に記載のワクチン。
【請求項12】
医学的使用のための、請求項1または10に記載のアネキシンA1ワクチン。
【請求項13】
医療用ワクチンの産生のための処置すべき種由来のアネキシンA1の全体または一部および外来キャリアタンパク質からなる融合タンパク質の使用。
【請求項14】
元の形態または多量体化形態の少なくとも1つのエンドシアリンのフラグメントをキャリア分子にカップリングする、請求項1に記載のワクチン。
【請求項15】
前記エンドシアリンがヒト、イヌ、ネコ、またはウマ起源である、請求項1または14に記載のワクチン。
【請求項16】
医学的使用のための、請求項1または14に記載のエンドシアリンワクチン。
【請求項17】
医療用ワクチンの産生のための処置すべき種由来のエンドシアリンの全体または一部および外来キャリアタンパク質からなる融合タンパク質の使用。
【請求項18】
元の形態または多量体化形態の少なくとも1つのテネイシンCのエキストラドメインCのフラグメントをキャリア分子にカップリングする、請求項1に記載のワクチン。
【請求項19】
前記テネイシンCのエキストラドメインCがヒト、イヌ、ネコ、またはウマ起源である、請求項1または18に記載のワクチン。
【請求項20】
医学的使用のための、請求項1または18に記載のテネイシンCのエキストラドメインCワクチン。
【請求項21】
医療用ワクチンの産生のための処置すべき種由来のテネイシンCのエキストラドメインCの全体または一部および外来キャリアタンパク質からなる融合タンパク質の使用。
【請求項22】
元の形態または多量体化形態の少なくとも1つのマジックラウンドアバウト(MR)のフラグメントをキャリア分子にカップリングする、請求項1に記載のワクチン。
【請求項23】
前記マジックラウンドアバウト(MR)がヒト、イヌ、ネコ、またはウマ起源である、請求項1または22に記載のワクチン。
【請求項24】
医学的使用のための、請求項1または22に記載のマジックラウンドアバウト(MR)ワクチン。
【請求項25】
医療用ワクチンの産生のための処置すべき種由来のマジックラウンドアバウト(MR)の全体または一部および外来キャリアタンパク質からなる融合タンパク質の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−513659(P2013−513659A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544429(P2012−544429)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/SE2010/000300
【国際公開番号】WO2011/075035
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(509138280)セラヴァック ファーマスウティカルズ エイ ビー (2)
【氏名又は名称原語表記】THERAVAC PHARMACEUTICALS AB
【Fターム(参考)】