説明

腫瘍特異的DNA配列の特異的増幅

本発明は、癌の検出および診断のための方法を提供する。本発明は、癌の検出のために、患者から得られた低メチル化腫瘍DNA配列を選択的に増幅する方法を提供する。本方法は、高比率の正常な宿主DNAを含有するDNA混合物からの腫瘍特異的配列の選択的増幅を可能とするように、特異的メチル化を利用する。本発明はまた、メチル化の評価のための、増幅された腫瘍DNA配列を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の検出および診断のための方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
癌スクリーニングのための既存の方法は、費用がかかり、かつほとんど効果が無く、結果として、ほとんどの癌は、末期および治療の可能性の乏しい段階で検出される。これは、特に卵巣癌に当てはまる。したがって、癌のスクリーニングのための新しい方法の必要性が広く認識されている。多数の近年の刊行物では、癌患者の体液における循環核酸(CNA)の存在が文書化されており、癌の検出、追跡、および予後診断を行うためにCNAを使用するための種々の戦略が考慮されている((Fleischhacker and Schmidt 2007)にて総説)。最も単純な手法は、癌患者と対照との間のCNAの総量を比較することである。かかる研究では、概して、癌患者が癌を有しない対照よりもより多くのCNAを有することが見出されているが、腫瘍サイズ、病期もしくは腫瘍型と、総CNA濃度との間の十分な相関を示すことは不可能であった。単純な定量化は、慢性炎症および慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の多くの他の疾患が、CNAのレベルの増加に関連するという事実により、さらに複雑である。
【0003】
CNAの使用に対するより有望な手法は、癌特異的配列の変化の検出である。K−RASおよび/またはP53における後天性の変異は、膵臓、結腸直腸、肺および卵巣癌患者のCNAで確認されている(Fleischhacker and Schmidt 2007)。数人の著者は、癌スクリーニングのための方法として、既知の癌変異の検出を使用する可能性を考慮している。1つのこのような研究において、該著者らは、大腸内視鏡検査を受けた患者のCNAにおけるK−RAS変異のスクリーニングが、誰が結腸の悪性腫瘍を有しているかを予測する上で有用であったことを見出した(Kopreski, Benko et al. 2000)。他の研究は、矛盾する結果を出しており、着実に癌を検出する変異は1つも無いことを明らかにしている(Yakubovskaya, Spiegelman et al. 1995、Trombino, Neri et al. 2005)。
【0004】
考慮されている別の手段は、マイクロサテライト不安定性の分析であり、これは、特定の既知の変異を標的とすることなく、癌関連の配列変化を見出すための手段を提供する。いくつかの研究は、マイクロサテライトの変化が、乳癌および肺癌の早期にも循環DNAに存在することを示している(Chen, Bonnefoi et al. 1999、Sozzi, Musso et al. 1999、Sozzi, Conte et al. 2001)。
【0005】
DNA配列におけるエピジェネティックな変化は、CNA検体からの癌DNAの特異的増幅のための第3の手段を提供する。したがって、40をはるかに上回る刊行物が、種々の癌患者の血液および体液のCNAにおけるメチル化の癌関連の変化を検出する取り組みを報告している(Fleischhacker and Schmidt 2007)。かかる研究のほぼすべてにおいて、癌において頻繁に高メチル化される、1つもしくは複数のCpGアイランドに関して、メチル化特異的PCRの使用を通じて真偽が問われており(Herman, Graff et al. 1996)、ほとんどの研究が、ある程度の成功を報告した。どのCpGsが分析されたかに応じて、所与の型の癌を有する一部の患者において、癌関連の変化を検出することがほぼ常に可能であった。一般に、特定の座位の変化したメチル化が癌患者のCNAに頻繁に存在するが、頑強な試験の基準となる望みがある具体的な座位は無いことを、この研究から結論付けることができる。癌のエピジェネティックの検討において、CNAにおけるメチル化の大規模な分析が、1つのみもしくはいくつかの座位を検査する課題を解決するであろうことを示唆し、メチル化分析のマイクロアレイに基づく方法が、癌検出に対する大きな有望性を保持すると結論付けている(Laird 2005)。CNAにおける癌関連のメチル化の変化の大規模な検出を達成するために、メチル化に特異的なDNA増幅のための方法、ならびにメチル化差異の検出のためのマイクロアレイ技術が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Fleischhacker, M. and B. Schmidt (2007). "Circulating nucleic acids (CNAs) and cancer-A survey." Biochim Biophys Acta 1775(1): 181-232
【非特許文献2】Kopreski, M. S., F. A. Benko, et al. (2000). "Somatic mutation screening: identification of individuals harboring K-ras mutations with the use of plasma DNA." J Natl Cancer Inst 92(11): 918-23
【非特許文献3】Yakubovskaya, M. S., V. Spiegelman, et al. (1995). "High frequency of K-ras mutations in normal appearing lung tissues and sputum of patients with lung cancer." Int J Cancer 63(6): 810-4
【非特許文献4】Chen, X., H. Bonnefoi, et al. (1999). "Detecting tumor-related alterations in plasma or serum DNA of patients diagnosed with breast cancer." Clin Cancer Res 5(9): 2297-303
【非特許文献5】Herman, J. G., J. R. Graff, et al. (1996). "Methylation-specific PCR: a novel PCR assay for methylation status of CpG islands." Proc Natl Acad Sci U S A 93(18): 9821-6
【非特許文献6】Laird, P. W. (2005). "Cancer epigenetics." Hum Mol Genet 14 Spec No 1: R65-76Lisitsyn, N. A., F. S. Leach, et al. (1994). "Detection of genetic loss in tumors by representational difference analysis." Cold Spring Harb Symp Quant Biol 59: 585-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
腫瘍DNAは、種々の異なる種類の癌(卵巣癌を含む)を有する患者の細胞を含まない血漿から日常的に回収され得るので、これは、悪性腫瘍の存在を評価するのに魅力的な手段を提供する。しかしながら、癌検出のための循環DNAの使用は、2つの主要な課題によって阻止されている。第1に、循環DNA(すなわち「CNA」)は常に、相当量の正常な宿主DNAが混入している。したがって、腫瘍DNAを特異的に増幅する方法は、概して、癌特異的変異またはメチル化の変化等の、腫瘍と正常なDNAとの間のゲノム差異の予備知識に依存する。この制約は、増幅され得る座位の数を大幅に制限する。第2に、腫瘍は多様性に富むので、1つのみもしくはいくつかの腫瘍特異的ゲノム変化の検出は、癌検出の着実な方法を提供する可能性が低い。本発明は、正常な宿主DNAと混合する際、低メチル化腫瘍DNAの一般的だが極めて選択的な差動増幅、およびより多くの数(>10)の座位のメチル化の同時評価を可能にすることによって、これらの2つの課題に対する解決策を提供する。したがって、本発明は、循環DNAのメチル化の高スループット分析によって、癌スクリーニングに対する新規手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、癌、特に卵巣癌の診断的評価および予後診断のための方法に関する。本発明は、患者の血清もしくは血漿からの低メチル化DNAの選択的増幅に対する方法を提供し、該DNAをメチル化に敏感な酵素で消化するステップと、消化されたDNAをリンカーにライゲーションするステップと、消化されたDNAをリンカー媒介PCR増幅に供して、PCR産物を得るステップと、該PCR産物を精製するステップと、該精製されたPCR産物を増幅するステップと、を含む。一実施形態において、該精製されたPCR産物の増幅は、該増幅されたPCR産物を環状化し、該閉鎖環状分子を等温ローリングサークル増幅に供して、低メチル化DNAを選択的に増幅して、DNA試料からメチル化に敏感な代表的DNA試料を生成することによって達成される。
【0009】
一実施形態において、本発明は、患者の血清もしくは血漿からの低メチル化DNAの選択的増幅のための方法を提供し、DNAをメチル化に敏感な酵素で消化するステップと、消化された該DNAをリンカーにライゲーションするするステップと、消化された該DNAをリンカー媒介PCR増幅に供して、PCR産物を得るステップと、リンカーおよびプライマDNAを該増幅産物から除去するステップと、増幅されたPCR産物を環状化するステップと、該DNAを、該リンカーが加えられた部位で該DNAを消化する第2の制限酵素によって消化するステップと、消化された該DNAからリンカーを除去するステップと、消化された該DNAを自己ライゲーションさせて、閉鎖環状分子を形成するステップと、該環状化分子をエクソヌクレアーゼ消化に供して、いかなる非環状化DNAをも単一ヌクレオチドに低減するステップと、該閉鎖環状分子を等温ローリングサークル増幅に供して、低メチル化DNAを選択的に増幅して、DNA試料からメチル化に敏感な代表的DNA試料を精製するステップと、を含む。
【0010】
次いで、上の方法によって調製されたDNAは、特注のオリゴヌクレオチドマイクロアレイにハイブリダイズさせることができる。一実施形態において、該アレイ上の該オリゴヌクレオチドは、メチル化に敏感な酵素を使用した第1の消化ステップ中に理論上形成される可能性があるDNA制限断片もしくはその一部のうちの1つに対応する。各アレイアドレスの信号の強度は、該アドレスに対応する、プローブ(標識されたDNA)の量に依存する。したがって、信号強度が高いアレイアドレスは、メチル化の度合いが比較的より低い。正常な対照からのマイクロアレイデータと、癌を有するものとの比較により、癌の典型的なメチル化プロファイルが導出される。癌の状態が不明な対象から得られた試料からのメチル化/マイクロアレイ結果を、正常なデータ本体と比較する。正常なデータからの偏差は、癌を示す。
【0011】
本発明の具体的な実施形態において、対象試料に由来する腫瘍DNAの選択的増幅のための方法を提供する。本発明の方法は、(i)対象試料から単離されたDNAを、メチル化特異的酵素で消化するステップと、(ii)リンカーを、消化された該DNAの末端にライゲーションするステップと、(iii)消化された該DNAをリンカー媒介PCR増幅に供するステップと、(iv)該PCR産物を精製するステップと、(v)精製された該PCR産物を、リンカー内に部分的もしくは完全に含有される制限部位を認識する制限酵素で消化するステップと、(vi)精製された該PCR産物を環状化するステップと、(vii)ステップ(vi)からの該産物を等温ローリングサークル増幅に供して、腫瘍DNAを選択的に増幅して、腫瘍DNAからメチル化に敏感な表示を生成するステップと、を含む。さらなる実施形態において、該リンカー媒介PCRに使用される該PCRプライマは、該PCR産物の後の精製に有用な部分に接合される。一実施形態において、該PCRプライマは、ビオチンに接合される。さらなる実施形態において、該PCR産物は、該部分を支持体に結合させることによって精製される。一実施形態において、該リンカー媒介PCRプライマはビオチン化され、結果として得られたPCR産物は、支持体(例えば、アガロース、またはセファロース、または電磁ビーズ)に連結するビオチン結合タンパク質(例えば、アビジンまたはストレプトアビジン)を使用して、精製される。一実施形態において、該PCR産物は、該リンカーを該メチル化に敏感な酵素で消化したDNAにライゲーションすることによって形成された制限部位を認識する制限酵素で切断することによって、該支持体から解放される。一実施形態において、該リンカーはMluIで切断される。
【0012】
本発明の別の具体的な実施形態において、患者試料に由来する腫瘍DNAの選択的増幅のための方法を提供する。本発明の方法は、(i)患者試料から単離されたDNAを、メチル化特異的酵素で消化するステップと、(ii)リンカーを、消化されたDNAの末端にライゲーションするステップと、(iii)消化された該DNAをリンカー媒介PCR増幅に供して、増幅されたPCR産物を得るステップと、(iv)該増幅された該PCR産物を、リンカーが加えられた部位で該DNAを切断する制限酵素で消化するステップと、(v)切断された該リンカーを、該PCR産物から除去するステップと、(vi)該PCR産物を環状化するステップと、(vii)該環状化PCR産物をエクソヌクレアーゼ消化に供して、残存する線状DNA分子を消化するステップと、(viii)ステップ(vii)からの該産物を等温ローリングサークル増幅に供して、腫瘍DNAを選択的に増幅して、腫瘍DNAからメチル化に敏感な代表的腫瘍DNAを生成するステップと、を含む。
【0013】
本発明は、腫瘍特異的低メチル化DNA領域を同定するための方法をさらに提供し、(i)上述の方法を使用して、腫瘍DNAおよび正常なDNAからメチル化に敏感な代表的なDNAを個別に調製するステップと、(ii)該腫瘍DNAおよび該対照DNAを標識して、標識された腫瘍DNAプローブおよび標識された正常なDNAプローブを生成するステップと、(iii)標識された該DNAプローブをオリゴヌクレオチドのアレイにハイブリダイズするステップであって、該オリゴヌクレオチドのアレイが、所与のメチル化に敏感な酵素に対して、予測された制限断片もしくはその一部に対応する、ステップと、(iv)正常なプローブおよび腫瘍由来のプローブの相対強度を互いに比較して、腫瘍DNAプローブの差分量を検出するオリゴヌクレオチドを同定するステップと、(v)ステップ(iv)からのハイブリダイズされた該オリゴヌクレオチドを、腫瘍特異的低メチル化領域に対応するものとして同定するステップと、を含む。一実施形態において、2つの代表的DNAプローブは、異なる標識(例えば、異なる蛍光色素)で標識され、同一のアレイにハイブリダイズされる。別の実施形態において、標識された該プローブは、個別のマイクロアレイにハイブリダイズされる。
【0014】
本発明は、患者の癌を検出するための方法をさらに提供する。該方法は、上に説明する方法を使用して、患者由来の試料からメチル化に敏感な代表的DNA試料を調製し、その後、該DNAを標識して、標識された腫瘍DNAプローブを生成するステップを含む。標識された該DNAプローブは、オリゴヌクレオチドアレイにハイブリダイズされ、該オリゴヌクレオチドのアレイは、メチル化特異的酵素に対して、予測された制限断片もしくはその一部に対応する。かかるハイブリダイゼーションは、該腫瘍DNAのメチル化プロファイルの生成につながり、該プロファイルは、複数の座位のメチル化状態を含む。次いで、患者試料のメチル化プロファイルを、同一の技術によって生成された正常な対照からのメチル化プロファイルと比較して、患者試料からのメチル化プロファイルが腫瘍の存在を示しているかどうかを判定する。本発明の実施形態において、該腫瘍DNAプローブおよび該正常なDNAプローブは、2つの異なる標識で標識され、標識されたプローブのハイブリダイゼーションは、1つのアレイに対して行われる。
【0015】
本発明の実施形態において、本発明の方法に使用される患者のDNA試料は、血漿もしくは血清に由来する。本発明のさらに別の実施形態において、該メチル化特異的酵素は、HpyCh4−IV、またはClaI、またはAclI、またはBstBIである。一実施形態において、該メチル化特異的酵素は、HpyCh4−IVである。本発明の別の実施形態において、該リンカー媒介PCR増幅は、約5から約15サイクル実施される。本発明の別の実施形態において、該リンカー媒介PCR増幅は、約10サイクル実施される。本発明の実施形態において、Bal−31によるエクソヌクレアーゼ消化は、環状化ステップの後に実施される。
【0016】
本発明の一実施形態は、本発明の方法を実施するのに必要な試薬を含有するキットを、説明書とともに、提供する。一実施形態において、該キットは、腫瘍DNAにおいて低メチル化領域を検出および同定するための試薬および説明書を含む。別の実施形態において、該キットは、本発明の方法によって、腫瘍の存在について患者をスクリーニングするための試薬および説明書を提供する。一実施形態において、該キットは、該メチル化に敏感な酵素と、該リンカーDNAと、該リンカー媒介PCRのためのPCRプライマと、該リンカーを該PCR産物から除去するための該制限酵素と、腫瘍関連の低メチル化領域の検出のための該マイクロアレイと、該プロセスを実施するための説明書と、を含む。
【0017】
一実施形態は、低メチル化領域の検出のためのマイクロアレイを提供し、該マイクロアレイは、(a)ゲノムを、問題のメチル化に敏感な制限酵素に対して2つの部位によって結合されるセグメントに分け(HpyCh4−IVではACGT)、500塩基対長未満とすることと、(b)マイクロアレイ上の代表的オリゴヌクレオチドに好適な配列を見出すことを目的として、これらの断片の配列を分析するためのアルゴリズムを利用すること、によって選択されたオリゴヌクレオチドを含む。例えば、適切なオリゴヌクレオチドは、以下の特性のうちの1つもしくは複数の特性を有する:(i)約40ヌクレオチド超の固有の配列、もしくは約60ヌクレオチド超の固有の配列、(ii)約40%から約60%のGC、および(iii)著しい反復もしくは単純配列(例えば、一続きの約15の単一塩基)を含有すべきではない。一実施形態において、該マイクロアレイは、腫瘍に関連する低メチル化DNAの検出に有用なこれらのオリゴヌクレオチドのサブセットを含む。一実施形態において、オリゴヌクレオチドのこのサブセットは、(i)上述の方法を使用して、腫瘍および正常なDNAからメチル化に敏感な代表的DNAを個別に調製するステップと、(ii)該腫瘍DNAおよび該対照DNAを標識して、標識された腫瘍DNAプローブおよび標識された正常なDNAプローブを生成するステップと、(iii)標識されたDNAプローブをオリゴヌクレオチドのアレイにハイブリダイズするステップであって、該オリゴヌクレオチドのアレイが、所与のメチル化に敏感な酵素に対して、予測された制限断片もしくはその一部に対応する、ステップと、(iv)該正常なプローブおよび腫瘍由来のプローブの相対強度を互いに比較して、腫瘍DNAプローブの差分量を検出するオリゴヌクレオチドを同定するステップと、(v)ステップ(iv)からのハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドを、腫瘍特異的低メチル化領域に対応するものとして同定するステップと、(vi)複数の患者からの同定された腫瘍特異的低メチル化領域を比較して、患者の腫瘍を検出する上で有用なオリゴヌクレオチドのサブセットを判定するステップと、によって同定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】卵巣癌を有する患者からの血漿DNAと、正常な対照とのメチル化マイクロアレイ比較。112のセグメントを含有する染色体21の約120kbの領域を示す。正の強度比は、癌試料からのより相対的な信号を示し、負の比は、正常な試料からの相対的な信号の増加を示す。高コントラスト信号の非常に境界が明瞭なクラスタは顕著であり、内在する2つの試料間の差異をほぼ確実に反映する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、癌の検出のために、患者に由来する低メチル化腫瘍DNA配列を選択的に増幅する方法を提供する。本方法は、特異的メチル化を利用して、高比率の正常な宿主DNAを含有するDNA混合物からの腫瘍特異的配列の選択的増幅を可能にする。本発明はまた、メチル化の評価のために、増幅された腫瘍DNA配列を使用する方法も提供する。
【0020】
[腫瘍および非腫瘍DNAのメチル化における差異]
前述のように、本発明は、腫瘍と対照DNAとの間のメチル化の差異に依存する。対照DNAは、正常な(癌を含まない)個人からのものであることを理解する。DNAメチル化は、遺伝子発現を変化させることによって細胞機能に影響を及ぼす後成的事象であり、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)によって触媒される、CpGジヌクレオチド中のシトシンの5位炭素への、メチル基の共有結合的付加を指す。
【0021】
本発明の方法は、腫瘍DNAと非腫瘍DNAとの間のメチル化差異を利用して、患者に由来するDNA試料からの低メチル化腫瘍DNAの選択的増幅を提供する。先に記載したとおり、概して、該方法は、DNAを患者から単離するステップと、単離された該DNAをリンカー媒介PCRに供するステップと、増幅された該PCR産物の環状化ステップと、エクソヌクレアーゼ消化ステップと、最後の等温ローリングサークル増幅ステップと、を含む。本方法は、腫瘍DNAと非腫瘍患者DNAとの間のメチル化差異に基づき、該腫瘍DNAのメチル化に敏感な代表的腫瘍DNA、すなわち、腫瘍DNAの増幅された再現を生成する。
【0022】
本明細書に説明する方法は、患者からの細胞または細胞物質に由来するDNA試料に適用することができる。所望の細胞または物質の回収または単離のための当該技術分野で既知のいかなる方法も使用することができる。一実施形態において、循環核酸(CNA)は、患者の血清または血漿に由来する。
【0023】
[リンカー媒介PCR]
概して、リンカー媒介PCRは、DNAを制限酵素で消化し、二本鎖リンカーを消化された末端にライゲーションすることから開始する。次いで、PCRを該リンカーに対応するプライマを用いて実施し、最大約1.5kbの断片が増幅される(Saunders, Glover et al. 1989、Lisitsyn, Leach et al. 1994を参照されたい)。本技術を使用して、単一細胞からのDNAを増幅し、その後、増幅された産物を使用することによって、異数性を検出して、比較ハイブリダイゼーションを実施することは可能である(Klein, Schmidt−Kittler et al. 1999)。別の研究では、増幅された代表的DNAを使用して、単一ゲノムコピー数の変動を、それらをBACマイクロアレイへのハイブリダイゼーションプローブとして使用することによって、検出した(Guillaud−Bataille, Valent et al. 2004)。
【0024】
本方法において、制限酵素の消化の頻度が、結果として得られる増幅された産物の複雑性を決定する。切断頻度の低い酵素を選択することによって、増幅された代表的産物の複雑性は、開始ゲノムDNAの画分まで低減することができ、後のハイブリダイゼーションステップの実施をはるかに容易にする。本技術は、2つの複雑なゲノム源間の比較ハイブリダイゼーションの実施を望む状況において、特に有用である。顕著な例は、ヒトにおける高度のゲノムコピー数変動を明らかにする上で役立つ「ROMA」(リプレゼンテーショナルオリゴヌクレオチドマイクロアレイ分析)と呼ばれる技術である。(Lucito, Healy et al. 2003、Sebat, Lakshmi et al. 2004、Jobanputra, Sebat et al. 2005) Lucito, R., et al., Genome Res. 13:2291−305 (2003)、Sebat, J., et al., Science 305:525−8 (2004)、Jobanputra, V., et al., Genet Med 7:111−8 (2005)。
【0025】
したがって、本発明のリンカー媒介PCRステップにおいて、DNAの試料を得、CpGメチル化に敏感な酵素で消化して、消化された末端を有する消化されたDNAを形成する。一実施形態において、該DNA試料は混合され、宿主および腫瘍DNAを含む。
リンカーライゲーションの前に、CpGメチル化に敏感な制限酵素を使用して、DNAを切断することによって、非メチル化部位によって結合される断片の増幅が有利となる。1つが他方よりもより低度にメチル化されている、2つの異なる源からのDNAの混合物が存在する状況では、メチル化に敏感な酵素の消化、その後のリンカーライゲーションおよび増幅により、特異的にメチル化された部位によって画定される断片の選択的増幅を可能にする。この考えは、正常な組織と癌組織との間のメチル化差異を精査するために、「代表相違点分析」と併用されている。(Ushijima, Morimura et al. 1997、Kaneda, Takai et al. 2003を参照されたい)。メチル化に敏感な酵素は当該技術分野で既知であり、HpyCh4−IV、ClaI、AclI、およびBstBIが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
混合試料から得られたDNAを、前述のようにメチル化特異的酵素で消化した後、次いで、該DNAを、リンカーにライゲーションする。一実施形態において、該リンカーは、組み込まれた制限部位または制限部位の一部を有し、これは、後に、精製されたPCR産物の増幅に必要な適合する付着末端を提供するように使用され、例えば、付着末端は、ローリングサークル増幅のための環状化ステップにおいて使用され得る。消化後に付着末端を生成する制限酵素部位が好ましい。例えば、MluIが付着末端を提供する。
【0027】
該リンカーをライゲーションした後、結果として得られたDNAを、リンカー内の部位に結合するプライマを使用して増幅する。次いで、PCR増幅を行う。サイクルの数は変更してもよい。一実施形態において、サイクルの数は、サイズに基づいて選択された代表的な消化された断片をもたらす。本発明の一実施形態において、約5から約15サイクルの増幅が行われる。一実施形態において、約8から約14サイクルの増幅が行われる。一実施形態において、約10サイクルの増幅が行われる。一実施形態において、1つもしくは複数のPCRプライマが、後の精製ステップにおいて有用な部分と接合される。一実施形態において、該部分はビオチンである。
【0028】
[リンカー媒介PCR産物の精製]
リンカー媒介PCRのために使用されるプライマは、PCR産物の精製に有用な部分を組み込み得る。一実施形態において、該PCRプライマはビオチン化され、該PCR産物は、支持体に連結したビオチン結合タンパク質を使用して単離される。ビオチン結合タンパク質としては、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、およびニュートラアビジンが挙げられる。一実施形態において、該ビオチン結合タンパク質は、ストレプトアビジンである。一実施形態において、該支持体は、アガロース、またはセパロース、または電磁ビーズである。一実施形態において、リンカー媒介PCRのための該PCRプライマは、ビオチン化され、結果として得られたPCR産物は、電磁ビーズに連結したストレプトアビジンを使用して精製される。次いで、該支持体に結合されていない他の成分を、洗浄することができる。次いで、増幅されたPCR産物は、該リンカー内に部分的または完全に含有される制限部位を認識する制限エンドヌクレアーゼを使用して、該支持体から解放される。一実施形態において、該制限酵素はMluIである。
【0029】
DNAがHpyCh4−IVで切断され、後に5位末端に配列CGCGTを含むリンカーにライゲーションされる際、MluIに対する制限部位が形成されるように、MluIに対する認識配列(ACGCGT)は、メチル化に敏感な制限酵素であるHpyCh4−IVに対する認識配列(ACGT)と重複する。リンカー媒介PCRおよびPCR産物の、ビオチン等の部分を介した支持体への結合の後、MluIを使用してPCR産物を該リンカーおよび支持体から解放する際、非特異的増幅産物は、MluI認識配列全部を含有しているわけではないので、概ね該リンカーおよび支持体に結合されたままである。したがって、該特異的リンカー媒介PCR産物は、該支持体に結合されたままである該非特異的増幅産物から精製することができる。
【0030】
別の本発明の実施形態において、増幅サイクルを行った後、次いで、増幅された産物を、リンカーを切断する酵素で消化する。例えば、該リンカーがMluI部位を導入する場合、該産物はMluI酵素消化に供される。該リンカーを切断するための消化の後、低分子量DNA(リンカーおよびプライマDNA)を除去する。アガロースゲル精製またはカラム精製等の、低分子量DNAを除去するためのいかなる好適な方法も使用することができる。重ねて、前述の適切なリンカー配列をともなう、HpyCh4−IVおよびMluIの併用によって、非特異的増幅産物がリンカーから解放されず、したがって、後の増幅ステップに利用可能とはならないことが確実となる。
【0031】
[精製されたPCR産物の増幅]
リンカー媒介PCR産物をリンカーから切断および精製すると、次いで、精製された該DNAを希釈する。次いで、このDNAをT4 DNAリガーゼで終夜処理して、初期の酵素消化によって形成された付着末端をライゲーションさせることによって環状化させる。非常に希薄な溶液(例えば、1X ライゲーション緩衝液中0.5ml)中で消化およびライゲーションすることによって、適合する付着末端を有する分子の分子内の自己ライゲーション(環状化)が極めて有利となる。(PCR増幅中に)複数回融解され、部分的に再アニールされている元の開始DNAは、非常に非効率的に消化および環状化される。さらに、適切な末端を欠く、非特異的に増幅された産物はまた、共有結合的閉環を形成する可能性が極めて低い。
【0032】
次いで、該ライゲーションが、等温ローリングサークル増幅の鋳型として使用される。等温ローリングサークル増幅は当該技術分野で既知であり、概して、エクソヌクレアーゼ耐性ランダムプライマおよび優れた処理能力を有するDNAポリメラーゼを使用した環状DNAの1サイクル増幅である。いかなる等温ローリングサークル増幅手順を使用してもよい。一般的に知られるキットは、Amershamより入手可能であり、製造業者の推奨に従って使用する。該ローリングサークル増幅は、複数のコピーの環状鋳型からなる連結構造の形成をもたらす。
【0033】
一実施形態において、精製された該PCR産物を該リンカーから解放した後、該産物は、追加のライゲーション媒介のPCRステップを使用してさらに増幅される。
【0034】
[エクソヌクレアーゼ消化]
該環状化DNAが沈殿し(当該技術分野で一般的に既知の方法を使用して)、水等の好適な緩衝液に再懸濁した後、該ライゲーション混合物を処理して、一本鎖および二本鎖DNAの末端を攻撃するエクソヌクレアーゼ(例えば、ヌクレアーゼBal−31)で広範に消化することによって、非特異的PCR産物を除去することができる。ライゲーションによって形成された環状分子は、消化に耐性があるが、広範な消化によって、いかなる線状分子も単一のヌクレオチドに減少させる。したがって、この消化を使用して、開始ゲノムDNA、ならびに非特異的に増幅された産物を排除する。代替として、Bal−31等の単一エクソヌクレアーゼの代わりに、エクソヌクレアーゼの混合物を使用することが可能である。例えば、ある酵素は一本鎖DNAを攻撃し(マング・ビーンエクソヌクレアーゼ)、別の酵素は二本鎖DNAを攻撃し(ラムダエクソヌクレアーゼ)、どちらの酵素も、エンドヌクレアーゼ活性を有さず、どちらもニックにおいて二本鎖DNAを切断しない。広範な消化という用語は、制限しないように十分な量の酵素を使用し、制限しないように消化のための時間が十分に長いことを意味する。例えば、一実施形態において、2単位のBal−31ヌクレアーゼを消化混合物において使用し、45分間継続させる。この単位は、線状DNAの400の塩基を、40ng/μlの溶液中で10分間で消化するのに必要とされる酵素の量として機能的に定義される。
【0035】
[アレイ設計]
本発明は、ゲノムの腫瘍特異的低メチル化領域の同定のための、オリゴヌクレオチドマイクロアレイの使用をさらに提供する。具体的な実施形態において、該方法は、(i)上に説明する方法を使用して、患者および正常な対照からの細胞を含まない血漿DNAからメチル化に敏感な代表的DNAを個別に調製するステップと、(ii)該腫瘍DNAおよび該対照DNAを標識して、標識された腫瘍DNAプローブおよび標識された正常なDNAプローブを生成するステップと、(iii)標識された該DNAプローブを、オリゴヌクレオチドのアレイにハイブリダイズステップであって、該オリゴヌクレオチドのアレイが、所与のメチル化に敏感な酵素に対して、予測された制限断片もしくはその一部に対応する、ステップと、(iv)正常なプローブおよび腫瘍由来のプローブの相対強度を互いに比較して、腫瘍DNAプローブの差分量を検出するオリゴヌクレオチドを同定するステップと、(v)ステップ(iv)からのハイブリダイズされた該オリゴヌクレオチドを、腫瘍特異的低メチル化領域に対応するものとして同定するするステップと、を含む。
【0036】
本発明は、マイクロアレイの使用を介して、患者の癌を検出するための方法をさらに提供する。該方法は、上述の方法を使用して、患者の試料および正常な対照の試料に由来するDNAの選択的増幅、その後、増幅されたDNAを標識して、標識されたDNAプローブを生成するステップを含み、患者由来のプローブおよび正常な対照由来のプローブが、異なる標識(例えば、異なる蛍光色素)を有する。標識されたDNAプローブは、オリゴヌクレオチドアレイにハイブリダイズされ、該オリゴヌクレオチドのアレイは、メチル化特異的酵素に対する、予測された制限断片に対応する。該アレイデータを分析して、ハイブリダイズされたプローブからの相対信号強度を解明し、正常な対照に対して、どのセグメントが、癌患者から優先的に増幅されるかを判定する。かかる分析は、該腫瘍DNAのメチル化プロファイルの生成につながり、該プロファイルは、複数の座位のメチル化状態を含む。次いで、該患者試料のメチル化プロファイルを、同一の技術によって生成された正常な対照からのメチル化プロファイルと比較して、該患者試料からのメチル化プロファイルが、腫瘍の存在を示すかどうかを判定する。一実施形態において、該患者プローブおよび該対照プローブは、2つの個別のアレイにハイブリダイズされる。
【0037】
本発明の実施において使用されるアレイは、当業者に公知の方法を使用して生成され得る。本発明の一実施形態において、該アレイは、選択的増幅ステップで利用されるメチル化に敏感な酵素による、ゲノムDNAの酵素消化を介して生成される核酸断片を含有する。別の実施形態において、該アレイ上の該オリゴヌクレオチドは、メチル化に敏感な制限酵素によって生成される可能性がある核酸断片のすべてもしくはサブセット、またはその一部(すなわち、DNAが完全に非メチル化された場合に生成される可能性がある断片)に対応する。一実施形態において、該マイクロアレイ上の該オリゴヌクレオチドは、当該技術分野で既知のいかなる様態でも製造され得、例えば、原位置で合成(マイクロアレイスライド上で)、またはマイクロアレイスライド上に配置される。
【0038】
初期の研究は、メチル化の差異が、ゲノムの遺伝子に富む部分で顕著により見られることを示している。したがって、メチル化の差異が見出される可能性を最大限にするために、遺伝子含有量が高いゲノムの領域を標的とするアレイ設計を本発明の実施に使用することができる。
【0039】
例えば、本発明の非限定的な実施形態において、各染色体は、1つのテロメアから開始し、もう一つのテロメアへ延在する、10bpの瓶に分割され得る。次いで、これらの約3000配列瓶の各々における既知の遺伝子もしくは予測された遺伝子のエクソンによって占有される全配列の割合(%)を、UCSCブラウザからの情報を使用して測定し、すべての瓶を、この統計にしたがってランク付けする。次いで、最高のエクソン含有量を有するそれらの瓶を、アレイへの包含のために選択する。10bpの遺伝子に富むセグメントは各々、アレイへの包含のためのサイズ基準を満たす約2000のHpyCh4−IV断片を含有し、また約120,000のかかる断片は、標準的な385000アレイに包含することができるため、該アレイは、約60のかかる配列瓶、または約2%のゲノムDNAに対応する約60×10の塩基を包含する。
【0040】
着実なハイブリダイゼーションデータを提供するために、各ゲノムHpyCh4−IV断片を、これらの断片とハイブリダイズする異なるオリゴヌクレオチドによって、アレイ上に代表することができる。可能な場合、通常、各ゲノム断片に対して、約3つの異なるオリゴヌクレオチドをアレイ上に含めることが有益である。ゲノムマイクロアレイに包含するための一連の基準を満たす、すべての可能な「ロングマー」オリゴヌクレオチドに関して、完全なヒトゲノム配列をスクリーンするために、商業的に利用可能なサービスが利用可能である。好適なセグメントは独特であり、一続きの単純配列を含まず、適切な予測された融解温度を有する。商業的に利用可能なサービスは、上に定義される200,000の断片の同程度のもので提供され得、該断片のうちのどれが、それらの先に確立された好適なオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも3つを含有するかを判定する。現在のアレイは、385000個のオリゴヌクレオチドの空間を有し(例えば、NimbleGenアレイ)、各HypCh4−IV断片は、3つのオリゴヌクレオチドによって表されるため、1つのアレイは、約125000個の断片を包含するのに十分である。バックグラウンドハイブリダイゼーションを判定する目的上、一連の4000のランダム配列オリゴヌクレオチドが各アレイに含まれる。
【0041】
[アレイハイブリダイゼーション]
アレイハイブリダイゼーションは、商業的サービスによって、それらの標準プロトコルに従って、行われ得る。本発明の一実施形態において、ハイブリダイゼーションは、1つの蛍光色素で標識された「試験」DNA、および第2の蛍光色素で標識された「対照」DNAを用いて、2つの色「比較」として実施される。全く同一の実験条件を「試験」および「対照」試料の両方に適用するので、本手法は、人為的結果および均一性の課題を最小限にする。前述のように、各ハイブリダイゼーションのための対照は、異なる正常な患者である。該データは、比較ハイブリダイゼーションによって生成されるので、データ分析は、本態様の実験設計に制限されないことを理解されたい。各アレイアドレスに関する正規化された強度は、すべてのハイブリダイゼーションにわたり比較することができ、例えば、いかなる正常な個体においても、閾値信号を上回る可能性が低い一組のアレイアドレスを確立することを可能にする。
【0042】
該マイクロアレイ検出は、当該技術分野において既知のいかなる方法によっても実施することができる。DNA試料(すなわち、メチル化に敏感な代表的DNA試料)は、蛍光標識、発光標識、金粒子標識、および電気化学標識を含むが、これらに限定されない、マイクロアレイ上での検出に有用な標識で標識することができる。
【0043】
[データ分析]
マイクロアレイへの比較ハイブリダイゼーションは、遺伝子発現をプロファイルするため、ならびにゲノムコピー数の変動を確認するために広範に使用されており、この種のマイクロアレイデータに関するデータ分析の方法が十分に存在する。本発明において、該データを使用して、癌に特異的な特異的メチル化のゲノム分布を評価し、マイクロアレイデータセット間の相対信号強度における全体的な差異を評価をすることができる。
【0044】
ゲノムコピー数の変化を評価するための既存の生物情報学の方法は、例えば、データ分析のために使用することができ、「閾値化」(Vissers, de Vries et al. 2003)、隠れマルコフモデル(Sebat, Lakshmi et al. 2004)、ゲノム位置を使用した階層的クラスタリング(Wang, Kim et al. 2005)、および最近では、最大事後すなわち「MAP」として知られる技術(Daruwala, Rudra et al. 2004)が含まれる。これらの方法は、メチル化差異ではなく、コピー数変動の検出のために開発されているが、全般の課題は類似しており、該方法は、我々のアレイが生成するデータの型に容易に適合可能である。
【0045】
一旦個々のデータセットが、差分信号の信頼性のあるクラスタの存在について分析されると、癌を正常なものと区別することを目的としたデータセット間の比較を実施することができる。いくつかの公開された研究では、具体的に、マイクロアレイ/メチル化データに関連したこの型の比較を扱っている。例えば、ガラススライドに固定された8000のCpG島座位からなる、小規模なマイクロアレイアッセイを含む研究において、階層的クラスタリングは、2つの異なる群の卵巣腫瘍を同定することができ、これは、臨床パラメータに相関した(Wei, Chen et al. 2002)。その後の刊行物(Wei, Balch et al. 2006)において、報告された同一の群により、マイクロアレイの有意性分析(SAM)(Tusher, Tibshirani et al. 2001)、およびマイクロアレイの予測分析(PAM)(Tibshirani, Hastie et al. 2002)、ならびに腫瘍メチル化におけるマイクロアレイデータを解釈するための他の生物情報の技術を使用して、この分析を拡張させた。一般に、当業者に公知の、異なるマイクロアレイデータセット間の類似性を評価するための種々の方法が存在する。
【0046】
本明細書に言及されるすべての参考文献は、それらの全体として組み込む。
【実施例】
【0047】
[実施例1.腫瘍関連の低メチル化領域の同定]
卵巣腫瘍を有する患者からのCNAのメチル化プロファイルが、正常な対照からのものと異なるかどうかを試験するために、凍結された血清試料を、疑われる卵巣癌に対する試験開腹の前に、血液を採取した女性から得た。同様の試料を、癌を有しない女性から得た。DNAを、標準的な方法によって、1mlの細胞を含まない血清から調製し、結果として得られた試料全部を、前述のようにメチル化に敏感な増幅に供した。1つのこのような試料対を、先にトロホブラストメチル化の分析に使用されたアレイへのハイブリダイゼーションのために、NimbleGenに提出した。
【0048】
該データは、両方の増幅(癌および正常)が、約5%のアレイアドレスから測定可能な信号(バックグラウンドよりも>3sd上回ると定義)をもたらしたことを示した。加えて、これらの事例の約70%において、信号のlog比は、1.5未満であり、そのセグメントが両方の癌ならびに正常なものから増幅したとしても、差動増幅はほとんどない、もしくは全くないことを示す。このデータは、マイクロアレイから信号を得るために、血清DNAを増幅すること、および増幅された代表的血清DNAを使用することの両方において、成功を示す。非特異的増幅は、散在した、もしくはランダムに配置されたハイブリダイゼーション信号をもたらすことが予測されるが、これは観察されないことに留意されたい。さらに、差動増幅の領域は、明瞭にクラスタに生じる。図1は、癌検体からの高コントラスト信号のクラスタを含有する染色体21上の小領域からのデータを示す。少なくとも40の隣接するセグメントが、差動的に増幅され、log比は5と高く、32倍の差動増幅を示すことに留意されたい。これは、実験の人為的結果によるものである可能性は極めて低く、したがって、元の試料間の真のメチル化差異の検出を表す可能性が最も高い。これは、log2比が信号強度>2である、約50のクラスタ(>3つの隣接するセグメント)のうちの1つである。
【0049】
以下の実施例に説明される実験は、可能な本発明の実施形態を表すことを意図する。材料および量は、本発明の範囲を制限しないことを理解されたい。
【0050】
[実施例2.比較パネルの開発]
本発明の方法を使用した検出および診断を容易にするために、正常な個体数および特定の癌患者の個体数を比較して、特定の型の癌に関連するメチル化プロファイルを開発することができる。本発明の方法を使用して、かかるメチル化プロファイルを作成することができる。
【0051】
DNAを、標準的な方法を使用して、既知の癌患者および正常な対照の血清もしくは血漿から単離する(Johnson, K.L., et al., Clin. Chem. 50:516−21(2004))。簡潔に述べると、10mlの患者の血液を、2回遠心分離して、細胞を除去する。結果として得られた血漿を、DNA結合膜に通過させる。該DNAを該膜から除去し、結果として得られたDNAをHpyCh4−IVで消化する。
【0052】
DNAリンカーを、消化された該DNAにアニールおよびライゲーションする。該リンカーは、HpyCh4−IVで消化されたDNAにライゲーションする際、MluI制限部位を形成するように設計される。該リンカー媒介PCRを、ビオチン化プライマを利用して、10サイクルのPCRで、Guillaud−Bataille, M., et al. Nucleic Acids Res. 32e112 (2004)に説明されるとおりに実施する。
【0053】
該PCRの後、ストレプトアビジンで被覆した電磁ビーズを利用して、該産物を精製する。該PCR産物をビーズに結合し、洗浄した後、これらをMluIで消化して、リンカー配列(およびビーズ)を増幅されたDNAから除去する。分子内ライゲーションを促進するように該DNAを希釈し、T4 DNAリガーゼで処理することによって、増幅された該DNAを環状化する。
【0054】
次いで、ライゲーション産物を、商業的なキット(例えば、Amersham)を使用して、製造業者の説明書に従い、等温ローリングサークル増幅のための鋳型として使用する。
【0055】
次いで、上の方法によって調製されたDNAを標識し、特注のオリゴヌクレオチドマイクロアレイにハイブリダイズさせることができる。アレイ上の各オリゴヌクレオチドは、メチル化に敏感な酵素を使用した第1の消化ステップ中に理論上形成される可能性があるDNA制限断片のうちの1つに対応する。ハイブリダイゼーションは、1つの蛍光色素(例えば、Cy3)によって標識された「試験」DNA、および第2の蛍光色素(例えば、Cy5)で標識された「対照」DNAを用いて、2つの色「比較」として実施される。各ハイブリダイゼーションの対照は、異なる正常な患者である。
【0056】
各アレイアドレスにおける信号の強度は、該アドレスに対応するプローブの量に依存する。したがって、信号強度が高いアレイアドレスは、比較的低度にメチル化される。正常な対照と腫瘍のマイクロアレイデータの比較により、腫瘍型の典型的なメチル化プロファイルが経験的に導出される。既知の癌患者と非癌患者との比較によって確認されたメチル化の差異を使用して、基準を開発し、その基準はその基準を前向きに適用することによって確認される。本方法は、卵巣腫瘍、肺腫瘍、前立腺腫瘍、および乳房腫瘍を含むがこれらに限定されない、種々の腫瘍に対するメチル化プロファイルを開発するために使用することができる。
【0057】
[実施例3.低メチル化腫瘍関連DNAの検出のためのマイクロアレイの作製]
ゲノムは、問題のメチル化に敏感な制限酵素に対して2つの部位によって結合されるセグメントに分けられ(HpyCh4−IVではACGT)、500塩基対長未満となる。これは、血清もしくは血漿DNA試料から増幅される可能性のあるDNAセグメントのリストを提供する。マイクロアレイ上での表示に対し、好適な配列を見出すことを目的として、これらの断片の配列の分析するために、アルゴリズムを使用する。例えば、適切なオリゴヌクレオチドは、以下の特性のうちの1つもしくは複数を有する:(i)約40ヌクレオチド超の固有の配列、もしくは約60ヌクレオチド超の固有の配列、(ii)約40%から約60%のGC、および(iii)著しい反復もしくは単純配列(例えば、一続きの約15の単一塩基)を含有すべきではない。該アレイは、このように選択されたオリゴヌクレオチドを含有し、該アレイ上の各オリゴヌクレオチドは本発明の方法によって増幅され得る1つのゲノムセグメントを表す。かかるアレイは、腫瘍関連の低メチル化領域の検出、腫瘍のメチル化プロファイルの開発、および本発明の方法を使用した腫瘍のスクリーニングに有用である。
【0058】
一旦上のマイクロアレイを使用して、低メチル化されているDNAの腫瘍関連領域を同定すると、全種類の腫瘍、または1つもしくは複数の特定の種類の腫瘍のいずれかにおいて、典型的に、全種類の腫瘍もしくは1つもしくは複数の種類の腫瘍に関連するそれらのDNA領域のみを検出するように設計されたオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイが、実施例4の方法を使用して、それらの座位における腫瘍関連のメチル化差異の検出のために生成され得る。
【0059】
[実施例4.本発明を使用して癌を診断する方法]
DNAを、標準的な方法を使用して患者の血清もしくは血漿から単離する(Johnson, K.L., et al., Clin. Chem. 50:516−21(2004))。簡潔に述べると、10mlの患者の血液を2回遠心分離して、細胞を除去する。結果として得られた血漿を、DNA結合膜に通過させる。該DNAを膜から除去し、結果として得られたDNAをHpyCh4−IVで消化する。
【0060】
DNAリンカーを、消化されたDNAにアニールおよびライゲーションする。該リンカーは、HpyCh4−IVで消化されたDNAにライゲーションする際、MluI制限部位を形成するように設計される。該リンカー媒介PCRを、ビオチン化プライマを利用して、10サイクルのPCRで、Guillaud−Bataille, M., et al. Nucleic Acids Res. 32e112 (2004)によって説明されるとおりに実施する。
【0061】
該PCRの後、ストレプトアビジンで被覆した電磁ビーズを利用して該産物を精製する。該PCR産物をビーズに結合させ、洗浄した後、これらをMluIで消化して、該リンカー配列(およびビーズ)を増幅された該DNAから除去する。分子内ライゲーションを促進するように該DNAを希釈し、T4 DNAリガーゼで処理することによって、増幅されたDNAを環状化する。
【0062】
ライゲーションの後、次いで、これらは、商業的なキット(例えば、Amersham)を使用して、製造業者の説明書に従い、等温ローリングサークル増幅のための鋳型として使用される。
【0063】
次いで、上の方法によって調製されたDNAを標識し、特注のオリゴヌクレオチドマイクロアレイにハイブリダイズさせることができる。ハイブリダイゼーションを、1つの蛍光色素で標識された患者DNA、および第2の蛍光色素で標識された対照DNAを用いて、2つの色「比較」として実施する。該アレイ上の各オリゴヌクレオチドは、メチル化に敏感な酵素を使用した第1の消化ステップ中に理論上形成される可能性があるDNA制限断片のうちの1つに対応する。各アレイアドレスにおける信号の強度は、該アドレスに対応するプローブの量に依存する。したがって、信号強度が高いアレイアドレスは、比較的に低度にメチル化される。癌の状態が不明な患者から得られた試料からのメチル化/マイクロアレイ結果を、実施例2から導出された正常なデータおよび癌データ本体と比較する。正常なデータからの偏差は、癌を示す。マイクロアレイデータを比較するための方法は、当該技術分野で既知である。
【0064】
陽性結果が出た後、患者は、例えば、MRIといった、癌診断を確認するための適切なスクリーンによってスクリーニングすることができる。
【0065】
これらの方法は、卵巣腫瘍、肺腫瘍、前立腺腫瘍、および乳房腫瘍を含むがこれらに限定されない、種々の腫瘍型の検出に適用可能である。さらに、本方法は、一般的なスクリーニング試験として使用することができる。
【0066】
[参考文献]



【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者試料からのメチル化に敏感な代表的な低メチル化腫瘍DNAを作製するための方法であって、
a)患者試料からDNAを単離するステップと、
b)前記DNAをメチル化特異的酵素で消化するステップと、
c)前記消化されたDNAをリンカーにライゲーションするステップと、
d)前記ライゲーションされたDNAをリンカー媒介PCR増幅に供して、PCR産物を得るステップと、
e)前記PCR産物を環状化するステップと、
f)前記環状化されたPCR産物を増幅して、前記患者DNAからメチル化に敏感な代表的な低メチル化腫瘍DNAを生成するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記患者試料が、血漿または血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メチル化特異的酵素が、HpyCh4−IV、またはClaI、またはAclI、またはBstBIである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メチル化特異的酵素が、HpyCh4−IVである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リンカー媒介PCR増幅が、約5から約15サイクル行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リンカー媒介PCR増幅が、約10サイクル行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(d)の前記PCR産物が、沈殿によって精製される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記PCR増幅が、ビオチン化PCRプライマを用いて行われ、前記PCR産物は、支持体に連結されたビオチン結合タンパク質を利用して精製される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ビオチン結合タンパク質が、ストレプトアビジンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記支持体が、アガロース、セファロース、および電磁ビーズからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記PCR産物が、リンカー配列に部分的または完全に含有される認識部位を有する制限酵素を使用して、前記支持体から切断される、請求項8に方法。
【請求項12】
前記環状化PCR産物が、ローリングサークル増幅によって増幅される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記腫瘍が、卵巣腫瘍、または肺腫瘍、または前立腺腫瘍、または乳房腫瘍からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記腫瘍が、卵巣腫瘍である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
患者試料からのメチル化に敏感な代表的な低メチル化腫瘍DNAの作製するための方法であって、
a)患者試料からDNAを単離するステップと、
b)前記DNAをHpyCh4−IVで消化するステップと、
c)前記消化されたDNAへのリンカーのライゲーションによってMluI認識部位が形成されるように、前記消化されたDNAを前記リンカーにライゲーションするステップと、
d)前記消化されたDNAをビオチン化プライマを用いたリンカー媒介PCR増幅に供して、PCR産物を得るステップと、
e)支持体に連結されたビオチン結合タンパク質を使用して、前記増幅されたPCR産物を精製するステップと、
f)前記PCR産物をMluIで消化するステップと、
g)前記消化されたDNAを環状化するステップと、
h)ローリングサークル増幅を実施して、前記患者DNAからメチル化に敏感な代表的な低メチル化腫瘍DNAを生成するステップと、を含む方法。
【請求項16】
前記腫瘍が、卵巣腫瘍、または肺腫瘍、または前立腺腫瘍、または乳房腫瘍からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記腫瘍が、卵巣腫瘍である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
腫瘍特異的低メチル化DNA領域を同定するための方法であって、
a)請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法を使用して、腫瘍および正常なDNAからメチル化に敏感な代表的なDNAを別々に調製するステップと、
b)前記腫瘍DNAおよび対照DNAを標識して、標識された腫瘍DNAプローブおよび標識された対照DNAプローブを生成するステップと、
c)前記標識されたDNAプローブを、オリゴヌクレオチドのアレイにハイブリダイズするステップであって、前記オリゴヌクレオチドのアレイは、所与のメチル化に敏感な酵素に対して、予測された制限断片、またはその一部に対応する、ステップと、
d)前記正常なプローブおよび腫瘍由来のプローブからの信号の相対強度を互いに比較して、腫瘍DNAプローブの差分量を検出するオリゴヌクレオチドを同定するステップと、
e)ステップdからの前記ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドを、腫瘍特異的低メチル化領域に対応するとして同定するステップと、を含む方法。
【請求項19】
前記腫瘍DNAプローブおよび前記正常なDNAプローブが、2つの異なる標識で標識され、前記標識されたプローブのハイブリダイズが、1つのアレイに行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記DNA試料が、血漿または血清からのものである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
患者の腫瘍の存在を検出するための方法であって、
a)請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法を使用して、患者DNAのメチル化に敏感な代表的DNAを調製するステップと、
b)ステップa)の前記メチル化に敏感な代表的DNAにおける増幅されたDNAの量を、同一の方法によって作製された正常なDNAの前記メチル化に敏感な代表的DNAにおけるDNAの量と比較するステップと、
c)正常なDNAからの前記メチル化に敏感な代表的DNAに対して、ステップa)の前記メチル化に敏感な代表的DNAにおける増幅されたDNAの量の増加を、腫瘍の存在を示すものとして同定するステップと、を含む方法。
【請求項22】
前記患者DNAの代表的DNAおよび前記正常なDNAの代表的DNAが、標識され、1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドマイクロアレイにハイブリダイズされる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍が、卵巣腫瘍、または肺腫瘍、または前立腺腫瘍、または乳房腫瘍からなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記腫瘍が、卵巣腫瘍である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
腫瘍DNAおよび正常なDNAを混合した試料において、低メチル化腫瘍DNAを検出するためのマイクロアレイを作製する方法であって、
a)請求項18に記載の腫瘍特異的低メチル化DNA領域を同定するステップと、
b)腫瘍特異的低メチル化DNA領域と、前記腫瘍特異的低メチル化DNA領域にハイブリダイズする少なくとも1つのオリゴヌクレオチドとを選択するステップと、
c)前記選択されたオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイを調製するステップと、を含む方法。
【請求項26】
前記腫瘍特異的低メチル化DNA領域が、複数の腫瘍試料において低メチル化されるものとして選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記複数の腫瘍試料は、同一型の腫瘍を有する患者からの試料である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記複数の腫瘍試料は、異なる腫瘍型を有する患者からの試料である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記腫瘍特異的低メチル化DNA領域にハイブリダイズする、2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドが、ステップ(b)で選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
複数の腫瘍特異的低メチル化DNA領域が、ステップ(b)で選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記マイクロアレイが、腫瘍DNAの低メチル化されていないDNA領域にハイブリダイズする、1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドの対照をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記オリゴヌクレオチドが、卵巣腫瘍、または前立腺腫瘍、または乳房腫瘍、または肺腫瘍、またはこれらの腫瘍型の任意の組み合わせからなる群より選択される腫瘍において、低メチル化されている座位を検出するように選択される、請求項25に記載のマイクロアレイを作製する方法。
【請求項33】
前記オリゴヌクレオチドが、卵巣腫瘍の低メチル化されている座位を検出するように選択される、請求項25に記載のマイクロアレイを作製する方法。
【請求項34】
請求項25から33のいずれか1項に記載の方法によって作製されるマイクロアレイ。
【請求項35】
腫瘍DNAと正常なDNAとの間のメチル化差異を検出するためのマイクロアレイを作製する方法であって、
a)患者試料からDNAを単離するステップであって、前記患者は、腫瘍を有すると診断されている、ステップと、
b)前記DNAをメチル化特異的酵素で消化するステップと、
c)前記消化されたDNAをリンカーとライゲーションさせるステップと、
d)前記消化されたDNAをリンカー媒介PCR増幅に供して、増幅されたPCR産物を得るステップと、
e)リンカーおよびプライマDNAを前記増幅産物から除去するステップと、
f)前記増幅されたPCR産物を環状化するステップと、
g)ステップfからの前記産物を、等温ローリングサークル増幅に供して、腫瘍DNAを選択的に増幅し、腫瘍DNAからメチル化に敏感な代表的腫瘍DNAを生成するステップと、
h)前記腫瘍DNAを標識して、標識された腫瘍DNAプローブを生成するステップと、
i)前記標識されたDNAプローブをオリゴヌクレオチドアレイにハイブリダイズするステップであって、前記オリゴヌクレオチドのアレイが、前記メチル化特異的酵素に対して予測された制限断片に対応する、ステップと、
j)前記腫瘍DNAのメチル化プロファイルを生成するステップであって、前記プロファイルは、複数の座位のメチル化状態を含む、ステップと、
k)複数の正常な試料および患者試料の前記メチル化プロファイルを比較して、腫瘍DNAの低メチル化されている座位を同定するステップと、
l)腫瘍DNAの低メチル化されている座位を検出するように設計されたオリゴヌクレオチドを含む、マイクロアレイを生成するステップと、を含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−530760(P2010−530760A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513480(P2010−513480)
【出願日】平成20年6月22日(2008.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/067822
【国際公開番号】WO2009/002891
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(306018457)ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク (25)
【Fターム(参考)】