説明

腫瘍細胞調製物によってinvitroでナチュラルキラー細胞を活性化させるための方法

本発明は、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化腫瘍細胞調製物(ATCP)とin vitroで接触させることによって、NK細胞を活性化する方法を提供する。本発明は、そのような方法によって産生された活性化NK細胞、および癌の治療におけるその使用も提供する。上記癌は、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、リンパ腫、または乳癌であり得る。本発明の方法は、強力な癌治療に被験体が適していない場合に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する方法に関する。詳細には、本発明は、NK抵抗性の癌細胞を溶解させる能力をNK細胞が有するように、NK細胞を活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
いくつかの癌は現在のところ不治である。他のものでは、化学療法は部分的に有効であるのみであり、かなりの割合の患者で治療後に再発が起こる。一部の血液学的悪性腫瘍は、造血幹細胞移植(HSCT)によって治療できるが、HSCTを必要とする患者のうち、適したドナーを有し、かつ必要な年齢であるものは30%未満である。
【0003】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、特定の腫瘍細胞を自発的に溶解できる、末梢血リンパ球の部分集団である。養子腫瘍免疫療法におけるNK細胞の使用が提案されており、腫瘍細胞を溶解させるそれらの能力を増強させるために、NK細胞をin vitroまたはex vivoで刺激することが関心となっている。
【0004】
1980年代における、インターロイキン−2(IL−2)、およびNK細胞活性化でのその役割の発見によって、リンフォカイン活性化されたキラー(LAK)細胞の、腫瘍免疫療法における使用への関心がもたらされた。しかし、これらの試みの結果の大部分は期待はずれのものであった。IL−2と共に自系LAK細胞を患者に投与することの効果を調査した研究では、患者の20%未満しか反応を示さなかった(非特許文献1)。化学療法および自系HCTと共に、癌患者へのIL−2の毎日投与を用いた研究では、IL−2はin vivoで循環しているMK細胞の数を有意に増加させるが、in vitroアッセイによれば、それらの細胞は最大限に細胞障害性になってはいないことが示された(非特許文献2)。
【0005】
NK細胞は、正および負の両方の細胞溶解シグナルによって制御されていることが知られている。過去10年間に、NK細胞の抑制を媒介する多くの分子がクローニングされており、それらのリガンドはほとんど例外なくクラスI MHC分子である。これらの受容体(「KIR」)の一部は、ある種のクラスIアレルによって共有されている決定基に特異的であり、各KIRは、NK細胞の部分集合によって発現される。したがって、NKレパートリーでは、一部のNK細胞が特定のクラスIアレルを認識し、それらによって遮断される。NK細胞は、クラスI多型に関して限定された認識を有し、クラスIアレルはレパートリー中のあらゆるNK細胞を遮断するが、不一致を有する標的細胞がクラスIアレルを発現していない場合、細胞がアロ反応の原因となる場合がある(「自己性喪失(missing−self)」仮説)。したがって、ドナー細胞によって発現されるクラスIアレル群のうち少なくとも1つを欠失している同種異系標的細胞は、ドナーNK細胞の部分集合の表面にある抑制性クラスIリガンドを見出さず、それらの細胞の溶解経路が活性化されるであろう。
【0006】
したがって、NK細胞による「自己」MHC分子の認識の結果生じる生理反応によって自系NK細胞が抑制されるのかもしれないと提案されている。また、腫瘍MHC(すなわちKIRリガンド)とKIRとの不一致の程度が大きいほど、腫瘍を殺す可能性が大きいであろうということも示唆されている(非特許文献3)。自系NK細胞治療が不十分であること(自系腫瘍細胞と、NK細胞の抑制受容体との不一致がないためと考えられている)を鑑みて、同種異系NK細胞注入の使用が代替法として提案されている(Millerら(2005)Blood、印刷中であるが2005年1月4日にオンラインジャーナルで事前出版されている)。
【0007】
Millerら(2005年、同上)は、転移性黒色腫、転移性腎細胞癌、難治性ホジキン病、または予後不良AMLを患っている患者に、IL−2活性化されたハプロアイデンティカルな同種異系NK細胞を投与した。重要なことは、NK細胞がin vivoで存続および増殖できることをそれらの結果が実証していることである。それらの細胞は、19人の予後不良AML患者のうち5人で完全な血液学的寛解を誘導したが、他の腫瘍に対する活性はなかった。寛解に達した群では、KIRリガンド不一致ストラテジーを用いて、患者を、予測された移植を有するもの対、宿主アロ反応性を有するものに層別化した。結果は、KIRリガンド不一致を有する患者の方がはるかに寛解の可能性が高いことを示した。
【0008】
したがって、非特異的に活性化されたNK細胞は、腫瘍の部分集合に対する適用を有する可能性があるが、ドナー細胞は同種異系でなければならず、それらがHLA不一致である場合には、効果的である可能性がはるかに高い。正常造血細胞を標的とする、不一致を有するNK細胞を使用することに伴う不都合は、それらが正常な(例えば宿主)造血細胞を標的とし、拒絶し得ることである(非特許文献4)。
【非特許文献1】Rosenburgら、N.Engl.J.Med.(1987)316巻889〜897頁
【非特許文献2】Millerら、Biol.Blood Marrow Transplant.(1997)3巻34〜44頁
【非特許文献3】Ruggeriら、Science(2002)295巻2097〜2100頁
【非特許文献4】Yuら、Immunity(1996)4巻67〜76頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、「NK抵抗性」の腫瘍に対して有効であるが、正常な造血細胞に害を与えない、癌に対する代替的免疫療法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
現在の定説は、NK細胞はそれらが最終的に溶解させる標的細胞によって刺激され、「NK抵抗性」の腫瘍はこの刺激を提供しないので溶解されないというものである。
【0011】
本発明者らは、現在の考え方とは反対に、「刺激事象」を「溶解事象」から時間的に分離できることを示した。また、本発明者らは、一部の腫瘍細胞またはそれらの膜調製物がNK細胞を刺激でき、それによって次にそれらのNK細胞は刺激されていない同等なNK細胞による溶解に対して抵抗性を有する標的細胞の溶解へと進行できることも示した。
【0012】
第1の態様では、本発明は、NK細胞を活性化腫瘍細胞調製物(ATCP)とin vitroで接触させる工程を含む、NK細胞を活性化する方法を提供する。
【0013】
上記NK細胞は、標的細胞を溶解させるように活性化されている。例えば、上記NK細胞は、以前にはNK細胞による溶解に抵抗性を有した細胞を溶解させることができるように活性化されたものであり得る。したがって、本発明は、多くの「NK抵抗性」悪性疾患の治療に有用なNK細胞を提供する。これらの疾患の多くは現在、不治である(骨髄腫および慢性リンパ性白血病(CLL)など)。
【0014】
「刺激事象」を「溶解事象」から分離できるという事実は、NK細胞をin vitroで刺激できるが、いったん刺激された後にはその細胞は、被験体に導入されるか、もしくは戻された場合、標的細胞に遭遇するまで標的細胞を溶解させる能力を保持するという利点を有する。
【0015】
この形態の活性化は、NK細胞による殺作用に抵抗性があると考えられている複数のタイプの腫瘍を溶解させることができる能力をNK細胞に与える。さらにこれらの活性化NK細胞は、NK細胞と腫瘍細胞との間のHLA一致の程度に関係なく有効である。これによって、自系またはHLA一致の同種異系ドナーNK細胞を用いる可能性が開かれる。自系またはHLA一致の細胞を使用することは、ドナーまたは宿主細胞(例えば宿主正常造血細胞)の拒絶反応をもたらす可能性がより低くなるという利点を有する。
【0016】
さらに、本発明の方法は、IL−2に媒介された活性化に依存しないので、IL−2反応に関連していたin vivoの有害作用を回避する(Millerら(2005)、同上)。
【0017】
本発明の第1の態様では、上記ATCPが完全な腫瘍細胞の調製物であっても、それらを含くものでもよい。これらの細胞は、照射処理されたものでも、固定されたものでもよい。
【0018】
別法では、上記ATCPは、細胞膜調製物でも、それを含くものでもよい。細胞膜の使用は、腫瘍細胞の使用に伴う、多くの安全性に関する心配事を回避するので有利である。
【0019】
上記ATCPは、CTV−1骨髄性白血病細胞および/またはその膜調製物など、NK活性化能を有する腫瘍細胞またはその調製物を含むものでよい。
【0020】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法によって産生された活性化NK細胞を提供する。
【0021】
ドナーNK細胞はハプロアイデンティカルなものでよい。ドナーNK細胞はHLAが一致したものでも、HLAが不一致なものでもよい。
【0022】
本発明の第2の態様の活性化NK細胞は、癌を治療するのに使用できる。
【0023】
したがって、第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様の活性化NK細胞を含む組成物の、癌を治療するための薬物の製造における使用を提供する。
【0024】
このアプローチは、強力な癌治療に被験体が適していない場合に特に適している。
【0025】
上記癌は、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、リンパ腫、または乳癌であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(詳細な説明)
(ナチュラルキラー(NK)細胞)
本発明は、NK細胞を活性化する方法と、そのような方法によって活性化されたNK細胞とに関する。
【0027】
NK細胞は、CD56またはCD16の発現と、T細胞受容体(CD3)の不在とによって定義される、末梢血リンパ球の部分集合である。これらの細胞は、MHCに制限されない様式で、プライミングなしに、形質転換細胞株を認識して殺す。
【0028】
NK細胞は、同種異系または自系幹細胞移植の後、何ヶ月にもわたって末梢血中で支配的なリンパ系細胞に相当し、この期間における病原体に対する免疫で主要な役割を有する(Reittieら(1989)Blood 73巻1351〜1358頁;Lowdellら(1998)Bone Marrow Transplant 21巻679〜686頁)。移植、移植片対宿主疾患、抗白血病活性、および移植後の感染におけるNK細胞の役割については、Lowdell(2003)Transfusion Medicine 13巻399〜404頁に概説されている。
【0029】
ヒトNK細胞は、自然細胞障害および抗体依存性細胞障害(ADCC)を介して、腫瘍細胞およびウイルス感染細胞の溶解を媒介する。
【0030】
ヒトNK細胞は、正および負の細胞溶解シグナルによって制御されている。負(抑制性)のシグナルは、C−レクチンドメイン含有受容体であるCD94/NKG2Aによって、そして一部のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)によって伝達される。抑制性シグナルによるNK溶解の調節は、「自己性喪失」仮説として知られており、この説では、標的細胞の表面に発現されている特定のHLAクラスIアレルがNK細胞上の抑制性受容体の会合を引き起こす。腫瘍細胞および一部のウイルス感染細胞(例えばCMV)の表面でのHLA分子の下方制御は、この抑制を標的閾値下まで低下させ、標的細胞は、NK細胞によって媒介された溶解を受けるようになる。
【0031】
抑制性受容体は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)と呼ばれるIgスーパーファミリーのグループと、レクチンファミリーであるNKG2ファミリーのグループとの2つのグループに分かれる。NKG2ファミリーのレクチンは、細胞表面でCD94と2量体を形成する。KlRは、2ドメインまたは3ドメインの細胞外構造を有し、HLA−A、−B、または−Cに結合する。NKG2/CD94複合体は、HLA−Eの会合を引き起こす。
【0032】
抑制性KIRは、ITIMを含有する最大4つまでの細胞内ドメインを有し、最も詳細に特徴付けられているのは、KIR2DL1、KIR2DL2、およびKIR2DL3である。これらは、HLA−C分子に結合することが知られている。KIR2DL2およびとKIR2DL3は、グループ1のHLA−Cアレルに結合し、一方、KIR2DL1はグループ2のアレルに結合する。ある種の白血病/リンパ腫細胞はグループ1および2両方のHLA−Cアレルを発現し、NK媒介の細胞溶解に抵抗性があることが知られている。
【0033】
正の活性化シグナルに関しては、ADCCは、CD16を介して媒介されると考えられており、CD2、CD38、CD69、NKRP−1、CD40、B7−2、NK−TR、NKp46、NKp30、およびNKp44を含めた、自然細胞障害を引き起こす多数の受容体が同定されている。加えて、短い細胞質内テールを有するいくつかのKIR分子も刺激性である。これらのKIR(KIR2DS1、KIR2DS2、およびKIR2DS4)は、HLA−Cに結合することが知られており、それらの細胞外ドメインは、それらに近縁の抑制性KIRと同一である。活性化性のKIRは、ITIMをもたず、代わりにDAP12と結合してNK細胞の活性化を引き起こす。抑制性KIR対活性化性KIRの発現を制御する機構は未だに知られていない。
【0034】
本発明のNK細胞は、自系のNK細胞でも、同種異系のNK細胞でもよい。
【0035】
「自系」のNK細胞は、その患者に由来する細胞である。「同種異系」のNK細胞は、1箇所または複数の遺伝子座に同一でない遺伝子を有する別の個体に由来する。NK細胞が一卵性双生児に由来する場合、それらを「同系」と呼ぶことができる。
【0036】
ドナーNK細胞は、HLA−KIRが一致したものでも、不一致なものでもよい。本発明者らは、NK細胞と標的腫瘍細胞との間での一致の度合いが重要でないことを示している。
【0037】
(活性化腫瘍細胞調製物(ATCP))
「活性化」という用語は、このセクション中、および本明細書を通して、「刺激性」という用語と同義的に用いられる。
【0038】
本発明者らは、ある種の腫瘍細胞がNK細胞を刺激して、腫瘍細胞を溶解させるそれらの能力を増強する能力を有することを見出した。刺激されたNK細胞は、「NK抵抗性」の腫瘍細胞(すなわち、刺激されていないNK細胞を用いた溶解に抵抗性の腫瘍細胞)を溶解できることが示されている。
【0039】
この様にNK細胞を活性化できる腫瘍細胞には、CTV−1細胞が含まれる。この細胞株は、例えばATCC(American Typed Cell Collection)から購入可能である。
【0040】
他の腫瘍細胞もNK細胞を活性化する能力を有するであろうと予測される。本発明は、腫瘍細胞調製物が活性化腫瘍細胞調製物であるかどうか判定する方法も提供し、この方法は、
(i)上記腫瘍細胞調製物をNK細胞と接触させる工程と、
(ii)工程(i)からのNK細胞を、活性化されていないNK細胞による溶解に対して抵抗性である標的細胞と接触させる工程と、
(iii)工程(i)からのNK細胞によって上記標的細胞が溶解されたかどうか判定する工程と
を有する。
【0041】
したがって、当業者ならば、所与の腫瘍細胞が活性化腫瘍細胞調製物として働く能力を有するかどうか確定すること、およびこの活性を有するものを得るために既知な腫瘍細胞をスクリーニングすることが可能である。
【0042】
本発明者らは、NK細胞をATCP(CTV−1 AML芽球など)と共にプレインキュベーションすることによってNK細胞上でのCD69の急速な上方制御が引き起こされることを示した。本発明者らは、活性化NK細胞によって溶解可能な腫瘍細胞がCD69リガンド(CD69L)を発現しているが、この発現は溶解されない細胞(B細胞など)には存在しないことも(標識されたCD69を用いて)示した。組換え体CD69の存在は、おそらく腫瘍細胞がCD69Lと相互作用するのを遮断するため、活性化NK細胞が腫瘍細胞を溶解させる能力を抑制する。
【0043】
理論に拘泥するものではないが、本発明者らは、刺激されたNK細胞上のCD69が、それらの細胞障害活性の引き金となる支配的な分子であると考えている。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明の方法で使用されるATCPがNK細胞上でのCD69発現の上方制御を引き起こす。
【0045】
CD69リガンドの性質は現在のところ知られていないが、候補腫瘍標的細胞上での発現を標準的な技法によって測定することは可能である。例えば、蛍光色素で標識されたCD69を使用し、フローサイトメトリーまたは共焦点顕微鏡などの技法によってCD69Lの発現を測定することが可能である。
【0046】
したがって、本発明は、腫瘍細胞調製物が活性化腫瘍細胞調製物であるかどうか判定する方法を提供し、この方法は、
(i)上記腫瘍細胞調製物をNK細胞と接触させる工程と、
(ii)上記TCPが、NK細胞上でのCD69の上方制御を引き起こすかどうか判定する工程と
を有する。
【0047】
本発明は、TCPがCD69Lを含むどうか、あるいは発現するかどうか判定する工程を含む、腫瘍細胞調製物が活性化腫瘍細胞調製物であるかどうか判定する方法も提供する。
【0048】
ATCPは、完全な腫瘍細胞の集団からなるものでも、それを含むものでもよい。例えば、上記活性化腫瘍細胞調製物は腫瘍細胞株であり得る。
【0049】
ATCPは、細胞膜調製物からなるものでも、それを含むものでもよい。例えば、細胞膜調製物は、標準的な固定技法(パラホルムアルデヒドを用いるものなど)によって作製できる。固定には、調製物が安定化され、はるかに長い「貯蔵寿命」を有し、そしてその保存がより簡単であるという利点がある。適した細胞膜調製物は、DNAse処理と併せた、凍結融解の繰り返しサイクルによっても作製できる。そのような調製物は、プリオンなどに関連した汚染の可能性を低下させるので、安全性が増大していると考えることができる。
【0050】
刺激因子細胞は、使用する前に標準的な技法による照射を施すことができる。
【0051】
膜調製物は、潜在的な悪性腫瘍細胞を患者に導入する危険性を回避するので、完全な腫瘍細胞を含む調製物を上回る利点を有する。
【0052】
ATCPは、腫瘍細胞から派生しうる実体(タンパク質など)でも、それを含むものでもよい。例えば、ATCPは、組換え体タンパク質を含むものであり得る。上記タンパク質は、CTV−1細胞から得ることができる。
【0053】
ATCPおよびNK細胞調製物は、例えば共培養によって共存下に置くことができる(完全な腫瘍細胞が使用される場合)。「活性化時間」は、細胞調製物の性質と接触条件とによるだろうが、通常12〜24時間、おそらく20時間であろう。
【0054】
(組成物)
本発明は、複数のそのような活性化NK細胞を含む組成物も提供する。
【0055】
上記組成物は、自系および/または同種異系のNK細胞を含むものでも、本質的にはそれらからなるものでもよい。
【0056】
同種異系のNK細胞はHLA不一致でよい。
【0057】
同種異系のNKは、ドナー個体からの末梢血から得ることができる。同種異系末梢血単核細胞は、標準的な技法(例えば従来のアフェレーシス)によって収集できる。移植片宿主相関病および免疫介在性形成不全の可能性を最小限にするために、同種異系細胞からT細胞を除いてもよい。例えば、モノクローナルマウス抗ヒトCD3抗体と結合したマイクロビーズおよび細胞選別装置(Miltenyi Biotec社製CliniMACS(登録商標)細胞選別装置など)を用いて、上記細胞調製物からCD3+ T細胞を除くことができる。
【0058】
しかし、そのような「ネガティブ選択」手順のみで産生されたNK細胞は高純度にはならず、T細胞およびB細胞が混入している可能性がある。
【0059】
混入を低減するために、例えばCD56発現に基づいて、直接的な免疫磁気分離によって、NK細胞調製物を得ることが可能である。T細胞の混入をさらに低減するために、産物からCD3+細胞を除くことができる(例えば、CD3 FITCおよび抗FITCビーズを用いて)。
【0060】
上記NK細胞調製物は、活性化腫瘍細胞調製物による活性化の前に、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%のCD56+細胞を含むものでよい。
【0061】
上記NK細胞調製物は、活性化腫瘍細胞調製物による活性化の前に、15%未満、10%未満、5%未満、または3%未満のCD3+細胞を含むものでよい。
【0062】
上記組成物は、活性化腫瘍細胞調製物のすべてもしくは部分(すなわち活性化腫瘍細胞および/またはその膜調製物)またはその産物を含むものでもよい。
【0063】
ATCPによって媒介された活性化は、NK細胞が受ける唯一の活性化であってもよく、あるいはさらに別の活性化工程があってもよい。上記NK細胞は、IL−2による非特異的な活性化も受けていてもよい(例えば、IL−2で補足された培地中での細胞のインキュベーションによって)。別法として、上記細胞をIL−2の非存在下で活性化してもよいが、IL−2は、ex vivoでの、刺激された細胞の増殖に使用され得る。
【0064】
(薬物)
本発明の組成物は、医療で使用できる。例えば、被験体の癌を治療または予防するのに上記組成物を使用できる。
【0065】
活性化NK細胞を含む組成物は、癌治療用薬物の製品となり得る。
【0066】
上記組成物は、当技術分野で知られている任意の適した方法、例えば静脈注入によって被験体に投与できる。
【0067】
上記組成物は、治療を必要とする被験体を治療するのに使用できる。この手順は、危険性が低く、強力な癌治療を行うのが除外されている癌患者(例えば高齢の患者)に特に適している。この手順は、同種異系幹細胞移植用の適当なドナーがいない患者(例えば、リンパ腫、骨髄腫、またはAMLを有する患者)への代替手段も提供する。
【0068】
上記組成物による治療の前に、例えば、腫瘍を減量するため、および患者を免疫抑制するために、何らかの前治療を患者が受けてもよい。これは、例えば化学療法によって実現できる。
【0069】
診断時に患者から原発性腫瘍細胞を得ること、そしてこれらを生存単細胞懸濁液として凍結保存することが可能である。したがって、本発明による組成物を、患者の芽球に対してin vitroで試験することが可能である。これは、このアプローチの適合性を評価するために治療計画を開始する前に行うことができるであろう。in vitro検査の結果と、治療に対する対応する臨床反応との相関関係も調査できる。
【0070】
(疾患)
上記組成物は、疾患または医学的状態を治療または予防するのに使用できる。
【0071】
上記疾患は癌でもよい。約200の異なったタイプの癌が存在する。癌のタイプのリストが利用可能である(例えば、http://www.acor.org/types.html、またはhttp://www.cancerresearch uk.orgを参照)。
【0072】
一部のより一般的な癌には、白血病(急性および慢性)、膀胱癌、骨の癌(骨肉腫)、腸の癌(結腸直腸癌)、脳腫瘍、乳癌、子宮頚部癌、食道癌、ホジキンリンパ腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、中皮腫、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、前立腺癌、皮膚癌(黒色腫および非黒色腫)、軟部組織癌腫、胃癌、睾丸癌、甲状腺癌、および子宮体癌が含まれる。
【0073】
本発明の組成物は、NK細胞が接近できる癌を治療するのに有用であり得る。
【0074】
より詳細には、上記癌は、白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、およびリンパ腫などの血液学的悪性疾患であり得る。
【0075】
骨髄腫は、不治でありかつ致命的な悪性疾患である。in vitroにおける、骨髄腫プラズマ細胞に対するNK活性が記述されており、自系骨髄腫細胞に対する強化されたNK活性は、サリドマイド誘導体を用いた治療に対する反応と相関していることが示されている。骨髄腫患者は、概ね若く、自系造血性幹細胞移植を行うのに十分によい健康状態にあり、本発明によって提供される手順など、より非侵襲的な手順は容易に行うことができよう。
【0076】
移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は、実体臓器移植の後に起こる、重度でありかつ比較的に一般的な合併症であり、T細胞免疫療法が現在試験中であるが、ほとんど成果がない。本発明の治療に従って活性化されたNK細胞を用いる治療は、このグループの患者で、容易かつ安全であろう。
【0077】
加えて、上記組成物は、乳癌などの固形腫瘍を治療するのにも使用できる。
【0078】
この手順は、「NK抵抗性」の腫瘍を治療するのに特に適している。正常な、ATCPによって刺激されていないNK細胞は、一部のヒト腫瘍を自発的に溶解させることができるが、他の多くの腫瘍はNK抵抗性である。したがって、本明細書で使用される場合、「NK抵抗性」は、正常な、非ATCPによって刺激されていないNK細胞による溶解に抵抗性である腫瘍細胞を指す。
【0079】
上記に説明した通り、NKに媒介された溶解の抑制は標的細胞の表面における特定のMHCクラスI分子(特にHLA−C)の発現によって制御されている。NK細胞の認識に関して、2つの異なった、HLA−Cアレルの群が存在する。一部の腫瘍は両方のタイプのHLA−Cアレルを発現し、それらアレルが、それらの腫瘍を、NKで媒介された溶解に対して抵抗性にしていると考えられている。したがって、「NK抵抗性」の細胞は、両グループのクラスIアレルを発現しているものであり得る。RajiおよびDaudiなど、白血病/リンパ腫由来の一部の細胞株は、両方のタイプHLA−Cアレルを発現し、それによって、それらの細胞株はin vivoにおけるNK抵抗性腫瘍細胞の有用なモデルとなっている。
【0080】
これより実施例を示して本発明をさらに説明する。実施例は、本発明を実施する際に当業者の補助となるように意図されており、いかなる意味においても本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0081】
(実施例1:ある種の腫瘍細胞株と共にNK細胞をプレインキュベーションするとNK抵抗性細胞の溶解の程度が有意に増大する)
正常なドナーNK細胞をCTV−1細胞と共にプレインキュベーションすると、Raji細胞の溶解%が顕著に増大する(p<0.001)(図2A、3A、および4A)。CTV−1細胞は「活性化腫瘍細胞」である。
【0082】
HL−60(図2A、3A、および4A)またはRaji細胞(図3Aおよび4A)とのプレインキュベーションは、NK細胞がRaji細胞を溶解するのを活性化する効果がより弱いか、あるいは全く無かった。HLA−KIR不一致の正常な同種異系PBMCとのプレインキュベーションは、NK活性化を誘導しない(図4A)。これらの実験において、腫瘍細胞は、Daudi細胞株およびRaji細胞株と同様に、正常レベルのMHCクラスI抗原を発現している。Daudi細胞およびRaji細胞は両方とも、クラス1およびクラス2両方のKIRの会合を引き起こすHLA−C分子を発現する。
【0083】
CTV−1とのプレインキュベーションは、Raji、Daudi、JOSK、およびHL−60など、様々な腫瘍細胞株の溶解の程度の増大を引き起こす(図2B)。
【0084】
(実施例2:NK細胞活性化のための必要条件の調査)
CTV−1細胞によるNK活性化への、固定およびブレフェルジンA(BFA)の影響を、複数の正常ドナーを用いて調査する。図3Bに示す通り、腫瘍細胞の固定によって反応が停止されないので、NK活性化の誘導は、腫瘍細胞株との接触を必要とするが、サイトカインの分泌を必要としない。プレインキュベーション中のブレフェルジンAの添加によって活性化された状態の誘導が阻止されるので、NK細胞は、腫瘍細胞の結合に反応するのにタンパク質を合成する必要がある。
【0085】
(実施例3:KIR会合の影響の調査)
刺激フェーズ中におけるKIR会合(KIR ligation)の影響を調査するために、HLA−KIRが一致した刺激性腫瘍細胞株の使用と、不一致な刺激性腫瘍細胞株の使用とを、NK細胞がRaji細胞を溶解することへの刺激に関して比較する。上記刺激性腫瘍細胞株によるNK活性化の閾値はKIR会合の非存在下の方が低いようであるが、上記腫瘍細胞株は、ドナーNK細胞に対してHLA−KIRが一致している必要はない(図6A)。
【0086】
別の実験では、正常なドナーから精製されたNK細胞を、それらのHLA−A、−B、および−C型がCTV−1細胞とKIR−リガンド一致であるか、不一致であるかに基づいて選択する。CTV−1細胞は、HLA−Cタイプ2ホモ接合型であり、HLA−Bw4アレルを発現する。したがって、それらはNK細胞上のKIR2DL1およびKIR3DLIの会合を引き起こす。KIR2DL1を発現するNK細胞、KIR2DL1およびKIR3DL1を発現するNK細胞、ならびにKIR2DL2/3のみを発現する細胞を用いたNK:CTV−1共培養が確立されている。KIR2DL2/3のリガンドは、CTV−1刺激因子細胞には存在しない。したがって、NK活性化工程への、「自己性喪失」の貢献を評価することが可能である。HLA−/KIRが一致しているドナーと、不一致なドナーとの両方からのCTV−1によってAMLANK(AML活性化NK細胞)が生成されており、一致しているドナーからのAMLANKの方が、より大きな不均一性を示すが、特異的な溶解の程度には有意な相違がない(図6B)。溶解の程度は、IL−2での非特異的な活性化によって得られたものと同程度である(図7A)。
【0087】
末梢血NK細胞のKIR表現型は、個体のHLAによって完全に限定されているわけではなく、NK細胞が、自己MHCに適したKIRをもたないことも、さらにはその個体に存在しないHLAアレルに特異的なKlRを発現することさえもよくある。別の実験では、正常なドナーからのNK細胞を、CTV−1と共に終夜、共インキュベーションし、KIRの発現およびCD69の発現に関して表現型判定を行う。CD158bのリガンドはCTV−1には存在しないが、CD158aおよびCD158e1を発現する細胞も、CD158aまたはCD158e1が不在であるけれどもCD158bを発現する同じドナーからのNK細胞と同等なレベルの活性化を示すので、CTV−1によって誘導されるNK活性化がKIR不一致を有するNK細胞に限定されないことは直ちに明らかである(図7c)。CTV−1によって媒介される活性化、およびRajiの溶解におけるKIRの役割をより正確に調査するために、NK細胞を、CTV−1刺激因子細胞のHLAへのそれらのKIR適合性に関して、フローサイトメトリー選別によって表現型判定し、選別する。フロー選別されたNK細胞の部分集合は、直接CTV−1細胞と共にインキュベートするか、あるいはNK細胞から抗KIR抗体を排除してKIR:HLA相互作用を遮断できないようにして終夜インキュベートする。いずれの場合も、CD158aおよびCD158e1を発現するNK細胞は、同じドナーからのCD158a/e1−ve NKと比較して同程度なRaji細胞の溶解を示す(図7d)。
【0088】
(実施例4:原発性白血病細胞の溶解)
CTV−1活性化NK細胞は、HLA−KIRが一致しているAML細胞またはRaji細胞と共にプレインキュベートされたNK細胞と比較した場合、NK抵抗性の腫瘍細胞株を溶解させる能力に加えて、原発性白血病細胞を溶解させる能力が大幅に増大していることも示されている(図4BおよびC)。
【0089】
同種異系ドナーからのAMLANK細胞は、すべてのFAB型の原発性AML細胞を溶解できる(図4C)。これらの細胞は、原発性CLL細胞も、1:1のエフェクター:標的細胞比で、殺作用のレベルは低いながら溶解させる。比較的にNK抵抗性の乳癌細胞株であるMCF−7(実施例5)、ならびに乳癌および卵巣癌の患者からの切除組織から単離された原発性腫瘍細胞(図4D)がAMLANK細胞に対して極めて感受性であることが注意を引いた。
【0090】
2人のHLA同一ドナーおよび彼らそれぞれの白血病を有する同胞群の研究において、HLA不一致の必要条件がないことが確認されている。患者0100のHLA同一同胞群ドナーからのAMLANK細胞は、疾患を呈しているこの患者から採取された凍結保存CML芽球を効果的に溶解させる。この溶解は、1:1のE:T比で明らかであり、E:T比を増大させると強化された。対照的に、同じドナーからのNK細胞は、10:1という最も高いE:T比でさえ、CML芽球を溶解させることができなかった。同じことが、AML M2を発症していた患者0359のHLA同一同胞群ドナーからのAMLANK細胞を用いて観測された。この患者の発症芽球は凍結保存されていた。
【0091】
(実施例5:CaBr細胞株の溶解)
乳癌細胞株MCF−7は、4時間のインキュベーション時間の後、E:T比5:1でのAMLANK溶解に極めて感受性であった(図4C)。
【0092】
(実施例6:正常な造血細胞への影響の調査)
上記2種類の腫瘍細胞株で、ハプロミスマッチ(haplo−mismatched)の正常ドナーNK細胞を刺激しても、KIR一致(自系)またはKIR不一致(ハプロ1またはハプロ2)の正常PBMCに対する溶解反応を開始しない(図5A)。
【0093】
同種異系AMLANK細胞の腫瘍特異性を調査するために、正常なドナーからNK細胞を単離し、終夜、CTV−1細胞で活性化するか、あるいは培地中に維持する。その後、正常な自系PBMCおよび同種異系PBMCの溶解に関して、これらのAMLANK細胞を、一致しているNK細胞と比較する。NK細胞もAMLANK細胞も自系PBMCを溶解せず、また、それらの細胞がHLA−C不一致な正常ドナーからのPBMCを溶解することもない(図5B)。AMLANK細胞による骨髄抑制の可能性を判定するために、5人の正常ドナーからの骨髄を用いて造血性コロニー形成アッセイを確立し、HLA−C不一致ドナーからのAMLANKを、比率を増大させながら添加する。CFU−GM、BFU−E、およびCFU−GEMMは、HLA不一致AMLANKとの共インキュベーションによる影響を受けない(図5C)。
【0094】
(実施例7:AMLANK細胞による溶解の調査)
AMLANK細胞と、同じドナーからの休止NK細胞との比較およびIL−2で刺激されたNK細胞(リンフォカイン活性化キラー細胞−LAK)との比較は、同程度なRajiの溶解を示す(図7A)。
【0095】
高E:T比(10:1)の休止NK細胞と対照的に、AMLANK細胞は、1:1の比率でさえ、検出可能な発症白血病芽球の溶解を行える(図7B)。波線(図7B中)は、AML芽球の特異的溶解の程度を表す。これは、化学療法後のAML患者における継続的な再発に関連しているものとして、本発明者らが以前に報告しているものである(Lowdellら(2002)Br.J.Haematol.117巻821〜7頁)。
【0096】
(実施例8:CD69の重要性の調査)
正常なドナーNK細胞を等しい数の照射されたCTV−1細胞と共インキュベーションすると、NK細胞上のCD69の急速かつ持続的な発現が誘導される(図8A)。精製されたNK細胞を、PKH−26で標識された等しい数の照射されたCTV−1細胞と混合する。指示されている時点でアリコートを取り出し、抗CD56 FITCおよび抗CD69 APCで標識し、洗浄し、フローサイトメトリーによって分析する。前方角光散乱(forward angle light scatter)(FSC)およびPKH−26発現に基づいて、CTV−1細胞を分析から除外し、FSCおよびCD56発現に基づいて、NK細胞を積極的に含める。結果は、10人の正常ドナーからのものを提示し、CD56+ NK画分中のCD69+ve細胞の割合として表す。
【0097】
照射されたCTV−1の存在下または非存在下で正常なドナーNK細胞(n=10)を終夜インキュベートした場合、フローサイトメトリーによる、さまざまな活性化リガンド候補および抑制リガンド候補の発現に関する、一致している対の比較は、CD69発現には有意な増大があるが(p<0.001)、検査された他の刺激性リガンドにはいずれにも増大がない(図8B)ことを示している。CD16の発現は減少する。CD69の上方制御は、ブレフェルジンAの存在下で阻止される(データは示されていない)。
【0098】
E:T比1:1でRaji細胞と共に共インキュベートされたAMLANK細胞は、免疫シナプスにおける共焦点顕微鏡法およびCD69のキャッピングによると、60分のときに接合形成を示す。図9Aは、単一のRaji細胞に接合した、正常ドナーからの単一のAMLANK細胞を示す。接合体は、抗CD69 FITCと、核染色用のDapiとで標識されている。組換体ヒトCD69を記載されている通りに生成し、リフォールディングされたタンパク質の上清をHPLCによって分画する。還元条件下でのウェスタンブロットによって評価した場合、画分F2およびF3が単量体rCD69を含有している。画分4は、かなり高濃度のrCD69を含有しており、これは、DTTの存在下では単量体として、また、非還元条件では単量体および2量体の両方として検出可能である(図9B)。rCD69は、親の細菌株(レーンP)にも、試験された他のすべてのHPLC画分にも存在しない(データは示されていない)。標識されたRaji細胞のフローサイトメトリー分析は、rCD69を含有しているHPLC画分でコーティングされたナノ粒子のみと陽性結合することを示す(図9Cでは影付きのヒストグラム)。この結合は、共焦点顕微鏡法(D)およびフローサイトメトリー(G)で確認される。悪性B細胞株と対照的に、正常B細胞はビーズに結合しない(E)。CD69L発現も、すべての健康なドナー(n=3)からのNK感受性K562細胞(図9H)、正常T細胞(図9I)、正常B細胞(図9J)、および正常NK細胞(図9K)で欠失している。CD69L発現も、Daudi細胞、Jurkat細胞、MCF−7細胞、およびARH77細胞を含めた、T−ANKに媒介された溶解に感受性の他の細胞株で検出された(表1)。
【0099】
【表1】

260μg〜1mgの画分2または4と共にプレインキュベーションされたRaji細胞(ナノ粒子の非存在下)は、rCD69を含有しない画分1とのプレインキュベーションと対照的に、AMLANKによるRaji細胞の溶解を有意に抑制する(F)。
【0100】
要約すると、本発明者らは、活性化NK細胞上に発現されたCD69が、自系AML細胞との免疫シナプスでキャッピングすることを以前に示しており(Lowdellら(2002)、同上)、さらに現在では、AMLANKとRaji細胞との間のシナプスでもこれを確認している(図9A)。
【0101】
理論に拘泥するものではないが、これらの新知見は、CD69リガンド(CD69L)がAMLANK感受性の腫瘍細胞で発現されていることを含意する。CD69Lは現在、未知である。
【0102】
(CD69はT−ANKによる腫瘍限定殺作用に重要である)
T−ANK活性におけるCD69:CD69L相互作用の役割を確定するために、RAJI溶解アッセイ前に、CTV−1で刺激した後、CD69+ T−ANK細胞をCD69−ve細胞から選別する。CD69+ve画分は、未分画のT−ANK細胞の活性の83.7%を媒介し、一方、CD69−ve NK細胞は5.5%を示す(図9M)。CD69がT−ANK誘導で重要な役割を有することは、rCD69の存在下におけるRAJI細胞溶解の抑制によって確認される。RAJI細胞をrCD69と共にプレインキュベーションすると、RAJI細胞の溶解の程度が有意に低下し、ほとんど休止NK細胞による溶解のレベルにまでなる。この効果は、RAJI細胞をBSAまたは熱変性されたrCD69と共にプレインキュベートした場合には観測されない(図9N)。
【0103】
予測された通り、rCD69は、休止NK細胞によるK562の溶解も、T−ANK細胞によるものも阻止しない(図9O)。
【0104】
KIRを会合させる関連のHLAが存在しないときでさえ、AMLANK細胞による溶解に対する抵抗性を正常造血細胞が有することは、これらの腫瘍細胞が、NK溶解の原因となる腫瘍限定のリガンドを発現していることを含意する。ブレフェルジンAの存在下でAMLANK産生が存在しないことは、AMLANKによって媒介される溶解のためのシグナル伝達物質が、刺激性腫瘍細胞との共インキュベーションで新たに合成されることを確認する。既知なNK誘導分子の中で、CD69のみがプレインキュベーション中に上方制御されている。
【0105】
CD69は、多くの造血細胞で活性化の際に発現されるホモ2量体糖タンパク質である。CD69 KOマウスは増強された抗腫瘍活性を示し(Espluguesら(2003)J.Exp.Med.197巻1093〜1106頁)、マウスNK細胞におけるモノクローナル抗体によるCD69の遮断はそれらの細胞の溶解活性を増強する(Espluguesら(2005)105巻4399〜4406頁)ので、マウスでのデータはCD69会合はNK媒介の溶解に対して抑制的であることを含意するが、ヒトNK細胞では、CD69は会合が引き起こされた際に腫瘍細胞の溶解を惹起することが示されている(Demanetら(2004)Blood 103巻3122〜3130頁)。組換え体の2量体ヒトCD69分子を産生させることによって、本発明者らは、腫瘍細胞は、正常な造血細胞には存在しないCD69リガンドを発現することを示した。さらに、CD69Lを用いた遮断実験は、活性化NK細胞上のCD69が、AMLANKの細胞障害性を誘導する主要な誘導分子であることを確認する。これは、AMLANK:Raji細胞接合によって、AMLANK細胞内でのSyk活性化が引き起こされるという証拠によって支持される(データは示されていない)。このSyk活性化は、CD69によって媒介されるシグナル伝達に関連していることが知られている現象である(Pisegnaら(2002)169巻68〜74頁)。
【0106】
(実施例1〜8のための材料および方法)
(細胞株および初代細胞)
すべての細胞株は、ATCC(American Typed Cell Collection)から入手し、10%FCS、100i.u.ペニシリン、および100i.u.ストレプトマイシンが補足されたRPMI 1640(すべてGibco社(英国スコットランド、Paisley)販売)からなる「完全培地」(CM)中で連続浮遊培養で維持する。新規の末梢血単核細胞(PBMC)は、正常な健康なドナーからのヘパリン化静脈血から、不連続密度勾配分離によって単離されたものであり(Lymphoprep社(英国、Nycomed))、瀉血の4時間以内に使用する。
【0107】
(免疫表現型判定)
細胞表面の抗原発現を分析するために、100μlのHBSS中にある10の細胞を、製造会社が推奨する濃度の蛍光色素結合MAbと、室温で15分間インキュベートする。洗浄の後、細胞をフローサイトメトリー(CeliQuestソフトウェアを備えたFACS Calibur、Becton Dickinson社(英国))によって分析する。前方および側方光散乱特性を用いて、生存リンパ球集団を分別した後、各試料から少なくとも10000の細胞を取得する。すべての蛍光色素結合mAbは、BD社(英国、Cowley)またはBeckman Coulter社(英国、High Wycombe)から購入されている。
【0108】
(ヒトNK細胞および標的細胞の精製)
新規のヘパリン化末梢血液試料は、インフォームドコンセントの後に、正常な健康ドナーと、診断において急性白血病を有する患者および慢性白血病を有する患者(表1)と、同種異系幹細胞移植に選択された患者のHLA同一PBSC同胞群ドナー2人とから入手されている。同種異系幹細胞移植に選択された患者は、彼らの疾患発症時に骨髄試料を寄贈した。この骨髄試料からの白血病芽球が複数のアリコート中に凍結保存された。
【0109】
単核細胞(PBMC)は、静脈血から不連続密度勾配分離によって単離され(Lymphoprep社(英国、Nycomed))、HLAクラスI AおよびBアレルに関しては低分解能の技法によって、HLA−Cwに関しては高分解能でタイプ判定されている。CD56+ CD3−細胞は、CD56 Multisortキット(Miltenyi Biotec社(独国))を用いた直接的免疫磁気分離、およびCD3 FITCおよび抗FITCビーズを用いたその後の除去によって、PBMCから精製する。選択されたすべての細胞について、CD56+が>98%、CD3+が<3%であることを確認し、CM中に再懸濁する。
【0110】
【表2】

(NK細胞の腫瘍特異的活性化)
新たに単離されたNK細胞は、CM中に密度10/mlに懸濁し、等しい数の照射(30Gy)された腫瘍細胞と共に37℃/5%COで20時間インキュベートする。刺激因子腫瘍細胞は、詳細に特徴付けている骨髄性白血病細胞株である、U937、HL−60、およびCTV−1に限定される。これらの細胞株は、DTMZ貯蔵所から入手した。細胞障害性アッセイでの標的細胞には、NK抵抗性のRAJI細胞株(DTMZ細胞バンクから入手)、乳癌細胞株MCF−7(ATCCから入手)、およびRoyal Free Hospitalに通院する患者からの原発性白血病細胞が含まれる。各骨髄性白血病細胞株および標的細胞は、上述の通りHLA判定する。
【0111】
(細胞障害性アッセイ)
標的細胞を培養物または冷凍保存物から回収し、HBSS中で洗浄し、その後、1.0mlのPHK−26標識化希釈剤中に、密度4×10/mlに再懸濁する。4μlアリコートのPKH−26を1.0mlの標識化希釈剤中に添加し、その後、細胞懸濁液に室温で2分間、添加する。無希釈のウシ胎仔血清1.0mlを1分間添加して、標識化反応を停止させる。最後に、標識された細胞をCMで2回洗浄し、CM中に10/mlに再懸濁する。RPMI 1640(10%FCS)100μl中にある、PKH−26で標識された50000の標的細胞を400μlのエフェクター細胞に添加し、200g、1分間でペレットにする。
【0112】
細胞障害性は、37℃、4時間の細胞障害性アッセイを用いて、3つ組の試料で測定する。インキュベーション時間の後に、細胞をTo−Pro−3ヨウ化物(Molecular Probes社(米国、Oregon))のPBS溶液(1μM)中に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析する。赤色蛍光に関する電気的ゲート操作の後に、1024チャネル分解能で少なくとも10000の標的細胞を取得し、3つ組の試料から得られたTo−Proヨウ化物陽性細胞の平均比率を測定する。エフェクター細胞の非存在下でインキュベートされた細胞から、バックグランドの標的細胞死を測定する。細胞によって媒介された細胞障害性は、3つの試料から平均された、バックグランド細胞死を超えた殺作用のパーセント、すなわち、
(試験中の細胞溶解%−自発的溶解%)の平均
として報告する。
【0113】
これらの実験では、標的細胞の5%未満で自発的溶解は観測されている。一部の実験では、標識化のストラテジーを逆にし、エフェクター細胞をPKH−26で標識し、細胞溶解の分析をPKH−ve画分に限定する。この反転によって、本発明者らの初期の発見が細胞の標識化による人工産物によるものではないことが確認された。
【0114】
(遮断アッセイ)
上述の通りにT−ANK細胞障害性アッセイを準備する前に、PKHで標識されたRAJIおよびK562標的細胞を、rCD69または対照試薬(10の細胞あたり6μg)と共に4℃で30分間プレインキュベートする。
【0115】
(組換え体2量体ヒトCD69の産生および精製)
XhoIおよびHindIII制限部位ならびに終止コドンを導入するプライマー(CD69 For 5’GCG CCT CGA GCA ATA CAA TTG TCC AGG CCA 3’;CD69 Rev 5’CGC GAA GCT TAT TAT TTG TAA GGT TTG TTA CA 3’)を用いて、CD69の細胞外ドメイン(残基65〜199)をcDNAからポリメラーゼ連鎖反応によって増幅する。標準的な技法を用いて、PCR産物をpET−19bプラスミド(Novagen社)のXhoI−HindIII制限部位にサブクローニングして、pET−19b/69を構築する。pET−19b/69のNdeI部位とXhoI部位との間に、下記のプライマー、すなわち、5’ CAT ATG CAT GCG GGC GGC CTG AAT GAA ATT CTG GAT GGC ATG AAA ATG CTG TAT CAT GAA CTC GAG 3’ および5’ CTC GAG TTC ATG ATA CAG CAT TTT CAT GCC ATC CAG AAT TTC ATT CAG GCC GCC CGC ATG CAT ATG 3’を用いて、大腸菌(E.coli)BirAビオチンタンパク質リガーゼのアミノ酸アクセプター配列をコードするDNA配列を添加する。DNA配列は、ABI Prism 377 DNAシークエンサーを用いて、自動配列決定によって確認する。
【0116】
Hisタグ付きの組換え体ヒトCD69を、BL21(DE3)pLysS(Novagen社)中で37℃で発現させる。100μg/mlアンピシリンおよび34μg/mlクロラムフェニコールを含有する1リットルバッチの2×TY培地中で培養物を成長させる。培養物のOD600が約0.6に達した後で、1mMのイソプロピル−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加して、CD69の発現を誘導する。細胞をさらに4〜5時間増殖させ、その後、4℃、5000gで20分間の遠心分離によって採取する。細胞ペレットは−80℃で保存する。
【0117】
250mlの培養物から得た細胞ペレットを15mlの氷冷再懸濁緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0)中に再懸濁する。細胞を、16ゲージの針に複数回、通過させることによって破砕し、その後、4℃、12000gで15分間、遠心分離する。ペレットを単離緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、2% Trition−X100、2M尿素)で洗浄し、その後、再度、遠心分離する。この過程をもう一度反復する。最後に、ペレットを再懸濁緩衝液で洗浄し、その後−80℃で保存する。
【0118】
精製およびリフォールディングの前に、ペレットを可溶化緩衝液(6Mグアニジン塩酸、20mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、10mMイミダゾール)中に再懸濁し、0.45μmのフィルターに通し、その後、リフォールディング緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、6M尿素、10mMイミダゾール)で事前に平衡化された、5mlのニッケル付きHiTrapキレートカラム(Amersham、GE Life science社(英国))に添加する。100%リフォールディング緩衝液から100%洗浄緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、10mMイミダゾール)にまで希釈する線形勾配を介して、徐々に尿素を除去することによって、タンパク質をリフォールディングさせる。これは、HPLCシステム(Varian Technologies社)を用いて、5ml/分間の緩衝液250mlを用いて行う。リフォールディングの後、タンパク質を溶出緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、500mMイミダゾール)で溶出する。
【0119】
PD10カラム(Amersham、GE Life science社(英国))を用いて、画分を10mM Tris−HCl pH8.0に緩衝液交換し、製造会社の指示に従って、基質10nmolあたり2.5μgのBirA酵素(Avidity Denver社(米国))と共に30℃で終夜インキュベートする余分なビオチンを除去し、タンパク質を、カットオフ分子量10000ダルトンの遠心管(Vivascience社(英国))中の50mlのHBSSで洗浄することによって濃縮し、ELISAによってrCD69含有量を評価する。
【0120】
フローサイトメトリーによってCD69Lの発現をアッセイするために、以前の記載されている通り(Brownら(1988)J.Exp.Med.188巻2083〜2090頁)、4℃、40分間の回転インキュベーションによって、5μgのビオチン化rCD69を、アビジンコーティングされた黄色蛍光ビーズ(Spherotech社)に結合させる。凝集を防止するために、タンパク質ビーズ結合体を短時間、超音波処理し、10の標的細胞と共に、氷上で60分間インキュベートする。結合した細胞をHBSSで洗浄する。同時事象による取得を防止するために、フローサイトメトリーでの取得は最大でも1秒あたり40事象で行う。各実験の陰性対照として、5μgの熱変性されたrCD69の結合を用いる。
【0121】
(実施例9:活性化NK細胞の、予後不良AML患者を治療するための使用)
上記の通り、Millerら(2005)は、HLAのハプロアイデンティカルな健康ドナーからのNK細胞を、シクロホスファミドおよびフルダラビンの化学療法の後で再発したAMLと有する患者に与える方法を最近記述した。これらの患者は、NK細胞の移植、増殖、および存続をin vivoで示した。
【0122】
Millerによって記述された方法を、本発明で使用するために、以下の変化を導入することによって適合させる。すなわち、
(i)本発明による注入および以下に記載する過程の使用前に、同種異系NK細胞を予め活性化し、
(ii)NK細胞は、ハプロアイデンティカルである近縁の正常ドナーから、直接的免疫磁気分離(CliniMACS(登録商標))によって選択されるであろう。
【0123】
Millerの研究で注入されたNK産物は、純粋ではなく(NKは約40%)、T細胞およびB細胞が混入していた。1つの症例ではドナー産物中のB細胞クローンに由来するEBVリンパ腫が原因で患者が死亡した。このB細胞クローンは、注入後のリンパ球減少期間中にin vivoで形質転換した。
【0124】
NK細胞がハプロアイデンティカルである近縁の正常ドナーから、直接的免疫磁気分離(CliniMACS)によって選択される場合、純度95%超のCD56+細胞が得られる。混入NKT細胞の程度は、ドナー依存的であるが、Millerの研究で注入されたT細胞の用量を超える可能性は低い。NKTの混入が大きいという不測の事態では、Millerによって投与されたT細胞の用量を超えないことを確実にするために、注入されるNKの用量を低減することができる。アロ反応性のNK細胞は、MLR中のCD69発現によって同定することができ、そのような細胞を、注入前の培養前後に、KIR発現に関して表現型判定を行う。本発明者らは、移植片対宿主疾患を予測するための皮膚外植体モデルも確立している。このin vitroアッセイは、NK細胞注入の品質保証に用いることができる。
【0125】
白血病芽球は、AML患者からの生存細胞として凍結保存する。したがって、患者のAML芽球に対する溶解活性に関してin vitroでドナーNK産物を試験し、その結果を治療に対する臨床反応と相関させる。
【0126】
患者は以下の判定規準で選択される。
【0127】
すなわち、インフォームドコンセントを与えることができ、かつCR1を超えるHLAハプロアイデンティカルなドナー急性骨髄性白血病細胞を有する成人であること、
HLAが一致している同胞群または無関係のドナーからの同種異系HSCTとして不適格であること、
シクロホスファミドおよびフルダラビンを用いた高用量化学療法に適していることである。
【0128】
患者は、5日間連続した毎日の注入によって60mg/mシクロホスファミドおよび25mg/mフルダラビンを受容した。5日目に、同意のあるドナーに1回のアフェレーシスを行い、2〜3×1010の単核細胞を得る。NK細胞は、抗CD56マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)およびCliniMACS装置を用いて、免疫磁気選択によって単離し、等しい数の照射されたCTV−1骨髄性白血病細胞と共に終夜インキュベートして、腫瘍特異的な刺激を与える。
【0129】
終夜のインキュベーションの後に、遠心分離によって細胞を洗浄し、生存しているNK細胞を計数する。最初の5人の患者用には、用量5×10 NK/kgを調製し、次の5人の患者用には1×10/kgそして、最後の群の5人の患者用には2×10/kgを調製する。ドナーNK細胞のアリコートは、上述の通り、試験用に維持する。6日目に、1回のi.v注入で患者に彼らのドナーNK細胞を投与する。臨床的なGvHDに関して患者をモニターし、細胞特異的なキメラ化検査を最初の7日間は毎日、次の3カ月毎週、その後は12カ月目まで毎月行う。
【0130】
(実施例10:臨床用腫瘍活性化NK細胞(T−aNK)の産生計画)
(i)T−aNKのex vivo産生のためのプロトコル
造血幹細胞ドナーと同じ判定規準で、正常かつ健康な近縁ドナーを選択する。インフォームドコンセントを条件として、JACIE基準に従って感染症マーカーに関してドナーをスクリーニングし、アフェレーシス実施の適合性に関して医学的に評価する。追加に、各ドナーをアフェレーシス姉妹(apheresis sister)によって独立に評価する。
【0131】
同意したドナーに2時間のアフェレーシスを1回行い、25×10の単核細胞をACD抗凝血剤中に採取する。アフェレーシス収集バッグは、ドナー名、ドナー病院番号、ドナーの生年月日、レシピエント名、レシピエント病院番号、アフェレーシスの日時、および産物の容積で標識する。アフェレーシス収集物は、LCTスタッフのメンバーがユニットから収集し、承認されている容器に入れて、直接LCTに輸送する。
【0132】
LCTによって承認された際に、LCT産物データベースにアフェレーシス収集物を登録し、特有の産物番号を割り振る。データベースには、産物バッグ上に記載された詳細のすべてを再録し、さらにレシピエントの生年月日、レシピエントの体重、および、検査への受け入れおよび同意の際に患者に割り振った特有の検査番号を記録する。
【0133】
通常のSOPを用い、密度勾配分離によってアフェレーシス収集物を純粋な単核細胞画分にまで減少させる。単核細胞数およびフローサイトメトリーによるCD56+細胞の列挙を得るために1mlの試料を取り出す。2×10 NK/kg患者体重を得るのに必要な単核細胞画分の容積を250mlの無菌バッグ中に回収し、遠心法によって洗浄し、10%ウシ胎児血清で補足されたRPMI 1640培地(製薬使用用に承認されているバッチ−すべて培地はGibco社(英国、Paisely)の販売)中に5×10/mlに再懸濁する。
【0134】
(ii)CTV−1細胞株からの細胞膜の調製
CTV−1細胞(DSMZ組織バンク(独国、Braunschweig)から直接入手−マスター細胞バンク記録付き)は、Cellular Therapeutics,RFUCMSにおけるPaul O’Gorman研究室(MHRA公認組織バンク0029/00/00/0−03)において、密閉培養系(Lifecellバッグ、Baxter Healthcare社)内のRPMI 1640培地/10%FCS中、密度0.5〜1×10/mlの連続的な指数関数増殖で維持する。生産記録はすべてのバッチに関して保守し、これには、使用されたすべての試薬および使い捨て用品のバッチ番号と、個々の手順を行った全スタッフのイニシャルと、それらの手順の日付とが含まれる。生産過程で使用されたすべての機器の製造番号も記録する。
【0135】
細胞膜を調製するには、閉鎖式手順によって8mlアリコートを10mlの無菌Cryocyteバッグ(Baxter Healthcare社)に移し、−80℃の冷凍庫内に15分間置く。37℃のウォーターバス中で迅速に細胞を解凍し、その後、さらに15分間−80℃の冷凍庫内に戻す。細胞を再度ウォーターバス中で迅速に解凍する。40μlのパルモザイム(1000U/mlストック)を各培養バッグに添加し、その後37℃で30分間インキュベートする。
【0136】
DNAseを除去するために、2500×gで10分間の遠心分離によって洗浄した後に、膜調製物を4mlの無菌食塩水(注入用グレード)中に再懸濁し、121℃で5分間オートクレーブする。21℃まで冷却した後に、バッグを超音波処理水槽中に25秒間置き、オートクレーブ中に形成されている可能性のある凝集体を破砕する。
【0137】
手順の様々な段階における試料を採取することによって細胞膜の形成をモニターし、フローサイトメトリーによって、それらをCTV−1全細胞の前方角光散乱(FSC)および90°光散乱(SSC)と比較する。一例を図10に示す。
【0138】
無菌性に関して、通常のSOPに従って膜調製物のバッチ検査を行い、無菌食塩水(注射用)中に総タンパク質濃度5mg/mlとして、バッチ番号、生産日、および有効期限の日付(製造日から6カ月)と共に、「CTV−1膜調製物−臨床グレード。−40℃より低温で保存すること」と標識された制御装置付き冷凍庫の中に−80℃で保存する。
【0139】
(iii)CTV−1膜調製物を用いたドナーNKの活性化
5×10/mlの選択されたドナー単核細胞を含有するLifecell培養バッグを、最終濃度10ドナーNK細胞あたり5mgの解凍されたCTV−1膜調製物で補足する。最大細胞用量である10 NK/kg患者体重を得るのに十分な数の単核細胞を培養する。細胞培養は、LCT内にある、Hepaフィルター濾過およびモニター付きのインキュベーター内で、37℃/5%COで、最短16時間かつ最長26時間維持する。
【0140】
終夜のインキュベーションの後に、単核細胞を遠心法によって回収し、標識化緩衝液(詳細)中に再懸濁し、臨床グレードの抗CD56マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)と共に21℃で45分間インキュベートする。CD56+ NK細胞は、CiiniMACS(Miltenyi Biotec社)による免疫磁気選択によって単離する。CD56−ve細胞および残留CTV1膜調製物を除去するために何度も洗浄した後にカラムからNK+画分を回収する(細胞濃縮手順v3.02、Miltenyi Biotec社)。CD56+細胞を回収し、RPMI1640中に10/mlで懸濁する。細胞は、通常のSOPに従って、必要な用量の単一アリコートで凍結保存する。冷凍保存の前に、品質保証検査用にアリコートを取り分けておく。
【0141】
(細胞数)
CD56+細胞の純度(75%超)
CD3+/CD56T細胞の混入(10/kg患者体重未満)
嫌気的/好気的細菌培養(製品出荷前には「陰性」)
4時間の細胞障害性アッセイで、NK抵抗性細胞株Rajiに対して検出可能なTaNK活性(同じドナーからの一致しているNK細胞と比較して、>25%のRaji溶解の増大によって判定する)。
【0142】
上記明細書中で参照されたすべての出版物を、参照により本明細書に組み込む。本発明の範囲および趣旨から逸脱していない、記載した本発明の方法およびシステムの様々な改変および変形が当業者には明らかであろう。特定の好ましい実施形態に関して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した通りの本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定するべきでないことを理解するべきである。実際、本発明を実行するための記載の形態の様々な改変形態が当業者には明らかであり、そのような改変形態も、添付されている特許請求項の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1は、標的細胞の溶解を測定するための分析ストラテジーを示す、フローサイトメトリーのドットプロット図である。分析領域1(R1)は、標的細胞(PKH−26−ve)を含むように定められており(A−標的細胞のみ)、上記標的細胞からは、エフェクターNK細胞およびPKH−26で予め標識された刺激因子AML細胞が除去されている(B−エフェクター+刺激因子細胞のみ)。このゲート操作ストラテジーは、混合物(C)中の標的細胞集団およびエフェクター細胞集団を効果的に排除する。混合物(R1)中の標的細胞に関するゲート操作によって、To−Pro−ve生存標的細胞(D)からの、FSClow/To−Pro+「死亡」標的細胞(R2)の列挙(enumeration)を可能にする。
【図2】図2Aは、NK細胞の刺激因子細胞として様々な異なった細胞型を用いた場合における、Raji細胞の溶解%を示すグラフである。図2Bは、CTV−1細胞とのNK細胞のプレインキュベーションが、様々な異なった細胞型の溶解%に与える影響を示す図である。
【図3】図3Aは、NK細胞の刺激因子細胞として様々な異なった細胞型を用いた場合における、Raji細胞の溶解%を示す図である。図3Bは、CTV−1細胞がNK細胞を活性化する能力に、固定およびブレフェルジンA(BFA)処理が与える影響を示す図である。
【図4−1】図4Aは、NK細胞の刺激因子細胞として様々な異なった細胞型を用いた場合における、Raji細胞およびDaudi細胞の溶解%を示す図である。図4Bは、NK細胞の刺激因子細胞として様々な異なった細胞型を用いた場合における、原発性白血病細胞の溶解%を示す図である。
【図4−2】図4Cは、活性化NK細胞による、原発性白血病芽球(AMLおよびCLL)および乳癌細胞株(MCF−7)の溶解%を示すグラフである。図4Dは、同種異系の正常ドナーからのT−aNK細胞による、乳癌または卵巣癌を有する患者からの原発性腫瘍細胞の溶解%を示すグラフである。
【図5−1】図5Aは、刺激されたNK細胞が、KIR一致(自系)またはKIR不一致(ハプロ1またはハプロ2)の正常PBMCに与える影響を示す図である。図5Bは、正常ドナーからの活性化NK細胞による、同じドナー(自系)およびKIR不一致の正常ドナー(同種異系)からの正常PBMCの溶解を示すグラフである。
【図5−2】図5Cは、活性化NK細胞が、正常ドナーBMMCのin vitro造血に与える影響を示す図である。
【図6】図6Aは、HLA−KIR一致の活性化腫瘍細胞株の使用の影響を、HLA−KIR不一致のものと比較する図である。図6Bは、KIR−リガンド一致または不一致のCTV−1細胞のいずれかによって活性化されたNK細胞による、Raji標的の溶解%を示すグラフである。
【図7−1】図7Aは、ATCPによって活性されたNK細胞による溶解と、IL−2で刺激されたNK細胞による溶解とを比較するグラフである。図7Bは、様々なE:T比における白血病芽球の溶解%を示すグラフである。
【図7−2】図7Cおよび7Dは、CTV−1によって誘導されたNK活性化に、KIR不一致が与える影響を示すグラフである。(C)CD56+/CD3− NK細胞を、培地のみで(白抜きの棒グラフ)、照射されたCTV−1細胞と共に(影付きの棒グラフ)、もしくはCTV−1細胞溶解物と共に(黒い棒グラフ)終夜インキュベートし、KIRおよびCD69の発現に関して表現型判定する(棒グラフは平均+/−sdを示す)。(D)3人の正常ドナーからの休止NK細胞を、CD158aおよびCD158e1を同時発現しているものと、両分子とももたないものとの2つの集団にフロー選別する。これらを、CTV−1細胞溶解物で終夜刺激し、RAJI細胞に対するそれらの細胞溶解活性を4時間のアッセイで試験する(棒グラフは平均+/−sdを示す)。
【図8】図8Aは、CTV1活性化NK細胞のCD56+ NK画分中における、CD69+ve細胞の割合を示すグラフである。図8Bは、CTV−1とのインキュベーションが、NK細胞による1パネルのリガンドの発現に与える影響を示す図である。
【図9A】図9Aは、活性化NK細胞とRaji細胞との間の接合形成、および免疫シナプスにおけるCD69のキャッピングを示す共焦点顕微鏡写真である。
【図9B】図9Bは、組換え体ヒトCD69のリフォールディングされたタンパク質上清のHPLC分画を示すゲル写真である。
【図9C】図9Cは、rCD69上清からのHPLC画分でコーティングされたナノ粒子と接触させた後における、標識されたRaji細胞のフローサイトメトリー分析を示すヒストグラムのパネルである。
【図9D】図9Dは、rCD69陽性HPLC画分でコーティングされたナノ粒子との接触させた後における、標識されたRaji細胞の共焦点顕微鏡写真である。
【図9E】図9Eは、rCD69陽性HPLC画分でコーティングされたナノ粒子との接触させた後における、標識された正常B細胞の共焦点顕微鏡写真である。
【図9F】図9Fは、260μg〜1mgのrCD69 HPLC画分と共に(ナノ粒子の非存在下で)プレインキュベーションした後における、Raji細胞の溶解%を示すグラフである。
【図9G】図9Gは、rCD69(影付きのヒストグラム)または変性されたrCD69(白抜きのヒストグラム)でコーティングされたナノ粒子で標識化された後における、Raji細胞のフローサイトメトリー分析を示すグラフである。
【図9H】図9Hは、rCD69(影付きのヒストグラム)または変性されたrCD69(白抜きのヒストグラム)でコーティングされたナノ粒子で標識化された後における、K562細胞のフローサイトメトリー分析を示すグラフである。
【図9I】図9Iは、rCD69(影付きのヒストグラム)または変性されたrCD69(白抜きのヒストグラム)でコーティングされたナノ粒子で標識化された後における、正常T細胞のフローサイトメトリー分析を示すグラフである。
【図9J】図9Jは、rCD69(影付きのヒストグラム)または変性されたrCD69(白抜きのヒストグラム)でコーティングされたナノ粒子で標識化された後における、正常B細胞のフローサイトメトリー分析を示すグラフである。
【図9K】図9Kは、rCD69(影付きのヒストグラム)または変性されたrCD69(白抜きのヒストグラム)でコーティングされたナノ粒子で標識化された後における、正常NK細胞のフローサイトメトリー分析を示すグラフである。
【図9L】図9Lは、様々な細胞株で観測された相対蛍光強度を示すグラフである。
【図9M】図9Mは、2通りの密度のrCD69の存在下における、T−aNKに媒介されたRAJI細胞の溶解を示す図である。
【図9N】図9Nは、rCD69、変性されたrCD69、またはBSAの存在下における、T−aNKに媒介されたRAJI細胞溶解を比較する図である。
【図9O】図9Oは、休止NK細胞またはT−aNK細胞によるK562の溶解に、rCD69が与える影響を示す図である。
【図10】図10は、CTV−1細胞株からの細胞膜形成の例を示す散乱図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する方法であって、前記NK細胞を活性化腫瘍細胞調製物(ATCP)とin vitroで接触させる工程を含む方法。
【請求項2】
前記ATCPが完全な腫瘍細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ATCPが細胞膜調製物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ATCPがCTV−1骨髄性白血病細胞またはその膜調製物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
活性化の間に、前記NK細胞上でのCD69の発現が上方制御される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって産生された活性化NK細胞。
【請求項7】
治療を必要とする被験体を治療するための、請求項6に記載の活性化NK細胞を複数含む組成物。
【請求項8】
前記活性化NK細胞の一部または全てが自系である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記NK細胞の一部または全てが同種異系である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記ドナーNK細胞がHLA不一致である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
癌を治療するための薬物の製造における、請求項7から10のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項12】
請求項7から10のいずれかに記載の組成物を被験体に投与する工程を含む、癌を治療する方法。
【請求項13】
前記被験体が侵襲性の癌治療に適していない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記癌が以下の群、すなわち急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、リンパ腫、または乳癌から選択される、請求項11から13のいずれかに記載の使用または方法。
【請求項15】
腫瘍細胞調製物(TCP)が活性化腫瘍細胞調製物(ATCP)であるかどうか判定する方法であって、以下:
(i)該腫瘍細胞調製物をNK細胞と接触させる工程と、
(ii)工程(i)からのNK細胞を、活性化されていないNK細胞による溶解に対して抵抗性である標的細胞と接触させる工程と、
(iii)工程(i)からのNK細胞によって該標的細胞が溶解されたかどうか判定する工程と
を含む方法。
【請求項16】
腫瘍細胞調製物(TCP)が活性化腫瘍細胞調製物(ATCP)であるかどうか判定する方法であって、以下:
(i)該腫瘍細胞調製物をNK細胞と接触させる工程と、
(ii)該TCPが、該NK細胞上でのCD69の上方制御を引き起こすかどうか判定する工程と
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図9I】
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【図9J】
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【図9K】
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【図9L】
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【図9M】
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【図9N】
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【図9O】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−536487(P2008−536487A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501411(P2008−501411)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000960
【国際公開番号】WO2006/097743
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507299817)ユーシーエル バイオメディカ ピーエルシー (3)
【Fターム(参考)】