説明

腫瘍組織の感受性を検査する方法

【課題】スルホンアミド化合物に対する腫瘍組織の感受性を検査する方法の提供。
【解決手段】スルホンアミド化合物またはその類縁体を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtrans値を測定し、当該投与前後のKtrans値の分布を解析する工程を含む、スルホンアミド化合物に対する前記腫瘍組織の感受性を検査する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスルホンアミド化合物またはその類縁体を作用させたときの腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を評価することによる、当該スルホンアミド化合物またはその類縁体に対する腫瘍細胞の感受性を検査する方法およびスルホンアミド化合物の抗腫瘍効果を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の抗癌剤の臨床治験においては、まず、第一相試験で毒性のプロフィールと最大推奨用量が決められ、次いで第二相試験で腫瘍縮小率を効果判定基準とするresponse rateにより薬剤としての評価がなされてきた。一方、近年の癌生物学の進展に伴い、細胞内情報伝達系や血管新生などを阻害する新しい作用機序を有する薬剤(新規抗癌剤)が、活発な研究開発の途にある。これら新規抗癌剤においては、必ずしも毒性用量に近い最大推奨用量が投与される必要性がない可能性が考えられる。さらに、腫瘍の縮小よりもむしろ腫瘍の増殖抑制に伴うQOL(Quality of Life)の改善や延命を指標にした方が薬剤の効果を適正に判定できるものと推測される。この場合、より論理的かつ具体的に薬剤の効果を確かめるためには、腫瘍の増殖抑制作用に密接に関連する生物学的マーカーの変化を、代理(surrogate)マーカーとして利用することが望まれる。
【0003】
一般的に、抗癌療法において、抗癌剤を投与した際の生体の反応性は、薬剤の標的となる腫瘍細胞の、その薬剤に対する感受性に大きく依存する。この腫瘍細胞の薬剤に対する感受性は、腫瘍細胞毎に大きく異なるものである。このような感受性の差は、その薬剤の標的分子あるいはそれに関連する因子の量的あるいは質的な差異、あるいは薬剤耐性の獲得等に起因する。このような背景を踏まえると、標的となる腫瘍細胞が薬剤に対して感受性を示す際に特異的に引き起こされる腫瘍細胞の変化を測定することができれば、これを代理マーカーとして、早期に薬剤の効果判定、治療法の確立、新たな治療法の選択等が可能となり、非常に有益である。
【0004】
近年、有用な抗腫瘍剤として、スルホンアミド化合物が報告されている(文献1−5)。特に、N−(3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−1,4−ベンゼンジスルホンアミド(以下、「E7070」と称する場合がある)、N−(3−シアノ−4−メチル−1H−インドール−7−イル)−3−シアノベンゼンスルホンアミド(以下、E7820と称する場合がある)、N−[[(4−クロロフェニル)アミノ]カルボニル]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−スルホンアミド(以下、LY186641と称する場合がある)、N−[[(3,4−ジクロロフェニル)アミノ]カルボニル]−2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−スルホンアミド(以下、LY295501と称する場合がある)、N−(2,4−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルスルホンアミド(以下、LY-ASAPと称する場合がある)、N−(2,4−ジクロロベンゾイル)−5−ブロモチオフェン−2−スルホンアミド(以下、LY573636と称する場合がある)、2−スルファニルアミド−5−クロロキノキサリン(以下、CQSと称する場合がある)などは、種々のタイプの腫瘍に活性を示し非常に有用である。
また、前記スルホンアミド化合物は、いずれも同一または類似の作用および効果を示すことが報告されている(文献6−8)。
【0005】
前記の有用な抗腫瘍剤の臨床開発を速やかに進行させて臨床治療法を早期に確立するために、さらには確立された治療法に基づき効率よく治療を進め、患者のQOL向上に貢献するために、抗腫瘍剤の投与時に特異的に使用できる代理マーカーを発見し、応用することが望まれる。
近年、前記スルホンアミド化合物に関する代理マーカーが報告されている(文献8、9)。すなわち、WO02/42493およびWO2006/036025に記載された遺伝子の発現の変化は、前記スルホンアミド化合物の抗腫瘍効果に関する代理マーカーとして有用であることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−165708号公報
【特許文献2】国際公開第00/50395号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第0222475号明細書
【特許文献4】国際公開第02/098848号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/035629号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/030941号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2006/030947号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2006/036025号パンフレット
【特許文献9】国際公開第02/042493号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スルホンアミド化合物による腫瘍の感受性を判定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、DCE-MRI解析によるKtrans値またはSPECT解析による血液環流を指標として、腫瘍組織がスルホンアミド化合物に対して感受性があるか否かを判定し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)すなわち、本発明は、下記式(I)〜(V)から選択されるスルホンアミド化合物、もしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物に対する腫瘍組織の感受性を検査する方法であって、以下の工程:
(a) スルホンアミド化合物を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を測定し、
(b) 前記投与前後における測定値を比較し、
(c) 前記投与後の測定値が投与前の測定値と比較して増加したときは、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断する工程
を含む前記方法である。
【0009】
(2)また、本発明は、下記式(I)〜(V)から選択されるスルホンアミド化合物、もしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物に対する腫瘍組織の感受性を検査する方法であって、以下の工程:
(a) スルホンアミド化合物を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を測定し、
(b) 前記投与前後における測定値を分布解析して低領域、中領域および高領域に分類し、
(c) 以下の(c-1)および(c-2)の判断基準のいずれか一方に該当するときは、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断する工程
を含む前記方法である。
【0010】
(3)本発明に用いられる判断基準およびスルホンアミド化合物は、以下の通りである。
<判断基準>
(c-1) 前記投与後の低領域の割合が投与前の低領域の割合と比較して減少し、または、前記投与後の中領域もしくは高領域の割合が投与前の中領域もしくは高領域の割合と比較して増加したとき
(c-2) 前記投与後の低領域の割合が投与前の低領域の割合と比較して減少し、かつ、前記投与後の中領域もしくは高領域の割合が投与前の中領域もしくは高領域の割合と比較して増加したとき
【0011】
<スルホンアミド化合物>
一般式(I):
【化1】

[式中、
A環は、置換基を有していてもよい、単環式または二環式芳香環を表し、
B環は、置換基を有していてもよい、6員環式不飽和炭化水素またはヘテロ原子として窒素原子を1個含む不飽和6員ヘテロ環を表し、
C環は、置換基を有していてもよい、窒素原子を1または2個含む5員ヘテロ環を表し、
Wは、単結合または−CH=CH−を表し、
Xは、−N(R1)−または酸素原子を表し、
Yは、炭素原子または窒素原子を表し、
Zは、−N(R2)−または窒素原子を表し、
ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して同一または異なって水素原子または低級アルキル基を表す。]
で示される化合物、
一般式(II):
【0012】
【化2】

[式中、Eは、−O−、−N(CH3)−、−CH2−、−CH2CH2−または−CH2O−を表し、
Dは、−CH2−または−O−を表し、
1aは、水素原子またはハロゲン原子を表し、
2aは、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表す。]
で示される化合物、
一般式(III):
【0013】
【化3】

[式中、Jは、−O−または−NH−を表し、
1bは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいC1−C4アルキルチオ基、−CF3、−OCF3、−SCF3、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アジド基、−O(SO2)CH3、−N(CH32、水酸基、フェニル基、置換基を有するフェニル基、ピリジニル基、チエニル基、フリル基、キノリニル基またはトリアゾール基を表し、
2bは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−CF3、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいキノリニル基を表し、
3bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基を表し、
4bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し、R3bおよびR4bの少なくとも一つは、水素原子である)を表し、
5bは、水素原子 、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、−CF3またはニトロ基を表し、
6bは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し、R6bが置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基のとき、R5bは水素原子であり、R7bはハロゲン原子である)を表し、
7bは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基または−CF3(但し、R5bまたはR7bのいずれか一方が、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基であるか、あるいはR7bが、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基である場合には、R5bまたはR6bのいずれか一方が、水素原子である)を表す。]
で示される化合物、
式(IV):
【0014】
【化4】

で示される化合物、および
式(V)
【0015】
【化5】

で示される化合物。
【0016】
(4)本発明において、スルホンアミド化合物としては、例えば、
1)N−(3−シアノ−4−メチル−1H−インドール−7−イル)−3−シアノベンゼンスルホンアミド
2)N−(3−シアノ−4−メチル−1H−インドール−7−イル)−6−クロロ-3-ピリジンスルホンアミド
3)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−4−スルファモイルベンゼンスルホンアミド
4)N−(5−ブロモ−3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
5)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−3−シアノベンゼンスルホンアミド
6)N−(4−ブロモ−1H−インドール−7−イル)−4−シアノベンゼンスルホンアミド
7)N−(4−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
8)N−(3−ブロモ−4−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
9)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−5−シアノ−2−チオフェンスルホンアミド
10)N−(4−ブロモ−3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−2−アミノ−5−ピリミジンスルホンアミド
から選択されるものが挙げられる。
【0017】
また、本発明の別の態様では、スルホンアミド化合物として、
【化6】

【0018】
【化7】

【0019】
【化8】

【0020】
【化9】

【0021】
【化10】

【0022】
【化11】

からなる群から選ばれるものを例示することができる。
【0023】
(5)本発明において、Ktrans値はDCE-MRIで測定されたものであり、また、血液環流値はSPECTまたはPETで測定されたものである。
(6)さらに本発明は、前記式(I)〜(V)から選択されるスルホンアミド化合物、もしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含む癌の治療薬であって、以下の工程:
(a) スルホンアミド化合物を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を測定し、
(b) 前記投与前後における測定値を比較し、
(c) 前記投与後の測定値が投与前の測定値と比較して増加したときは、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断する工程
により、感受性があると判断された被検者に対して投与するための前記治療薬である。
(7)さらに本発明は、前記式(I)〜(V)から選択されるスルホンアミド化合物、もしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含む癌の治療薬であって、以下の工程:
(a) スルホンアミド化合物を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を測定し、
(b) 前記投与前後における測定値を分布解析して低領域、中領域および高領域に分類し、
(c) 前記(c-1)および(c-2)の判断基準のいずれか一方に該当するときは、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断する工程
により、感受性があると判断された被検者に対して投与するための前記治療薬である。
(8)本発明の治療薬において、好ましいスルホンアミド化合物は、前記(4)に記載のスルホンアミド化合物を例示することができる。また、Ktrans値としては、例えばDCE-MRIで測定されたものが挙げられ、血液環流値としては、例えばSPECTまたはPETで測定されたものが挙げられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、スルホンアミド化合物に対する腫瘍の感受性を評価することができる。その結果、癌患者に対し、スルホンアミド化合物の投与が有効か否かを判断した上で投与することができるため、その後スルホンアミド化合物を継続投与すべきか否かを判断することができ、副作用等のリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)におけるE7820の抗腫瘍効果を示す図である。
【図2A】ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)においてダイナミック造影磁気共鳴映像解析を行ったときの腫瘍辺縁部の関心領域におけるE7820のKtransの改善作用を示す図である。
【図2B】ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)においてダイナミック造影磁気共鳴映像解析を行ったときの腫瘍辺縁部の関心領域におけるE7820のKtransの改善作用を示す図である。
【図3A】ヒト大腸癌細胞株HCT116移植マウスモデル(in vivo)においてE7820の抗腫瘍効果ならびに単光子放射型コンピューター断層撮影による腫瘍内Glucarateの取り込みを解析したときの腫瘍内の血液環流に対する改善作用を示す図である。
【図3B】ヒト大腸癌細胞株HCT116移植マウスモデル(in vivo)において単光子放射型コンピューター断層撮影による腫瘍内Glucarateの取り込みを解析したときの腫瘍内の血液環流に対する改善作用の3Dイメージを示す図である。
【図4A】ヒト大腸がん細胞株HCT116移植ラットモデル(in vivo)においてダイナミック造影磁気共鳴映像を用いたKtrans範囲解析を行ったときの解析結果を示す図である。
【図4B】ヒト大腸がん細胞株HCT116移植ラットモデル(in vivo)においてダイナミック造影磁気共鳴映像を用いたKtrans範囲解析を行ったときの解析結果を示す図である。
【図4C】ヒト大腸がん細胞株HCT116移植ラットモデル(in vivo)においてダイナミック造影磁気共鳴映像を用いたKtrans範囲解析を行ったときの解析結果を示す図である。
【図5】ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)においてダイナミック造影磁気共鳴映像法を用いたKtrans範囲解析を行ったときの、E7820による腫瘍内血液環流に対する改善作用を示す図である。
【図6A】ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)においてE7820が腫瘍血管の正常化作用を有することを示す図である。
【図6B】ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)においてE7820が腫瘍血管の正常化作用を有することを示す図である。
【図7A】5株のヒト癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)においてダイナミック造影磁気共鳴映像法を用いたKtrans範囲解析を行ったときの腫瘍内血液環流改善作用を示す図である。
【図7B】5株のヒト癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)においてダイナミック造影磁気共鳴映像法を用いたKtrans範囲解析を行ったときの腫瘍内血液環流改善作用を示す図である。
【図8】HCT116細胞の階層的クラスターリング解析結果を示す図である。
【図9】DNAマイクロアレイにおける相関係数を示す図である。
【図10】階層的クラスターリング解析結果を示す図である。
【図11】DNAマイクロアレイにおける相関係数を示す図である。
【図12】階層的クラスターリング解析結果を示す図である。
【図13】細胞増殖抑制活性を測定するアッセイの結果を示す図である。
【図14】細胞増殖抑制活性を測定するアッセイの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
DCE-MRI(Dynamic Contrast Enhanced Magnetic Resonance Imaging) 解析は、腫瘍分野でも診断に利用されており、VEGF阻害剤などの血管新生阻害剤では血管透過性の阻害作用などを介してKtrans値を下げることが知られている。
癌細胞の皮下移植モデルマウスにおいて、DCE-MRI解析によりKtrans値を測定したところ、腫瘍組織の周辺領域で高く、内部は低い状態が観察された。一方、血管新生阻害剤(E7820)が投与されたマウスにおいて、DCE-MRI解析によりKtrans値を測定すると、投与後に効果がみられない検体では、通常のKtrans値分布が観察されるが、投与後に効果がみられた検体では、腫瘍内部においても高いKtrans値が観察され、低Ktrans値の領域が減り、中・高Ktrans値の領域が増えることが見出された。すなわち、DCE-MRI解析において、血管新生阻害剤の投与前後のKtransの分布を解析することで、Ktransの分布が腫瘍組織に対する血管新生阻害剤の効果判定の代理マーカーとして使用できることを見出した。
【0027】
また、血管新生阻害剤による感受性があるとされる場合のKtrans分布は、腫瘍内部の血液環流の改善を指標に検出することも可能であり、SPECTでの造影剤の腫瘍内濃度測定による血液環流測定でも代用できる可能性が示唆されており、血液環流の改善を指標にE7820などの血管新生阻害剤の効果判定に使用できることを見出した。
本発明により、スルホンアミド化合物に対する腫瘍組織の感受性は、スルホンアミド化合物の投与前に測定された腫瘍組織におけるKtransの測定値と、スルホンアミド化合物の投与後に測定された腫瘍組織におけるKtransの測定値とを比較して、Ktrans値の変化を指標とすることにより、あるいは、癌患者の腫瘍組織にスルホンアミド化合物を投与する前の腫瘍組織内の血液環流と、スルホンアミド化合物を投与した後の腫瘍組織内の血液環流を比較して、血液環流の変化を指標とすることにより、スルホンアミド化合物に対する腫瘍組織の感受性を検査又は診断することが可能となった。ここで「感受性」とは、薬剤の効きやすさを示す指標を意味するものであり、「感受性が高い」というときには、薬物の効果(例えば腫瘍に対しては抗腫瘍効果)が得られやすいことを指す。
【0028】
さらに、DNAマイクロアレイおよび癌細胞株パネルの実験において、E7070、E7820、LY186641、LY295501、LY573636もしくはCQSまたはこれらの組み合わせによる遺伝子変動パターンおよび細胞増殖抑制活性が、高い相関を示すことを見出した。また、細胞増殖抑制活性を測定するアッセイにおいて、E7070に耐性を示す癌細胞株が、E7820、LY186641、LY295501、LY-ASAP、LY573636またはCQSに交叉耐性を示すことを見出した。本発明者は、これらの結果から、E7070、E7820、LY186641、LY295501、LY-ASAP、LY573636もしくはCQSまたはこれらの組み合わせは、同一または類似の作用機序を有し、同一または類似の遺伝子変化および効果をもたらすという知見を得た。
よって、E7820、LY186641、LY295501、LY-ASAP、LY573636もしくはCQSまたはこれらの組み合わせは、E7070と同様の遺伝子発現の変化を引き起こすと考えられ、これらの化合物は、いずれも本発明の方法に適用できると考えられる。
スルホンアミド化合物に対する腫瘍細胞の感受性を検査することは、臨床において、より抗腫瘍効果を期待できる癌患者を選択することができるため、非常に有用である。
【0029】
1.Ktrans
本発明において、Ktrans値は、スルホンアミド化合物を投与された癌患者から、その投与の前後において測定された値を使用する。
「Ktrans」とは、血漿から組織内の血管外領域への、時間ごとの造影剤の量(濃度)の変化を示す数値であり、DCE-MRIによって測定することができる。なお、「Ktrans」は「Ktrans」と表示することもある。
【0030】
腫瘍組織内においては、腫瘍によって血管形成が誘導されるが、この誘導された血管は、正常血管と異なり血管壁を覆う周皮細胞(pericyte)が少ないなど、十分な機能を有していない。また、正常血管においては血管透過性が亢進しておらず造影剤が血管外に漏れないため、正常組織内(つまり血管外)の造影剤の移行も亢進していない。このため、血管の少ない正常組織ではDCE-MRI画像として検出されない。これに対し、血管新生の盛んな腫瘍組織内の異常血管(腫瘍血管)においては血管透過性が亢進しており、造影剤が血管外に漏れ腫瘍組織内へ造影剤は移行することができ、腫瘍組織ではDCE-MRI画像として検出される。一方、腫瘍においては血管が正常ではないため腫瘍内の血液環流の状態は悪く、その結果、腫瘍内圧力は高くなっており造影剤の腫瘍組織内への分布は悪く、実際には、腫瘍内圧力が低く造影剤の腫瘍内組織への移行がよい一部の腫瘍組織のみ(つまり血液環流のある領域のみ)がDCE-MRI画像として検出される。
【0031】
本発明においては、腫瘍組織における検査目的領域(関心領域という)において、このように検出された造影剤の濃度の時間毎の変化をKtransとして定義し、このKtrans値をスルホンアミド化合物の効果判定の指標として使用するものである。
ここで、Ktransは、上記の通り造影剤の濃度の時間毎の変化を意味し、血漿から組織内の血管外領域への、時間ごと(通常は分ごと)の造影剤の量(濃度)の変化を示す数値であると定義することができる。従って、Ktransは以下の式を満たす値として定義することが可能である。
dC/dt = Ktrans (Cp - C/Ve) = Ktrans Cp - KepC
上記式中、Cは組織内における造影剤の濃度 (mmol/L)であり、Cpは血漿中の造影剤の濃度 (mmol/L)である。また、Veは組織内の血管外領域量 (組織量に対する%)である。
Kepは組織から血漿への造影剤の流量比率の数値であり、下記式により表わされる。
Kep = Ktrans / Ve
したがって、上記式のようにKepを用いてKtransを定義することもできる。
【0032】
DCE-MRIにおいて、Ktrans値は造影剤の濃度の時間毎の変化として反映されるため、関心領域における当該濃度変化が高い領域と低い領域に応じて、Ktrans値の分布が生じる。そこで本発明においては、Ktrans値を一定範囲に定め、その範囲内において上記領域が存在する確率をヒストグラムとして算出することができる。そして、Ktrans値の分布をいくつかの領域に分類し、Ktrans値の低い領域を「低領域」、Ktransの高い領域を「高領域」、低領域と高領域の中間の領域を「中領域」と定義する。
【0033】
より詳しくは、測定されたKtrans値のうち、最大のKtrans値を、Ktransを分布換算する際の上限と定めて3つ以上の領域に分け、分けられた領域のうち最低の値のKtrans領域から順に「低領域」、「中領域」、「高領域」と定義したり(図4)、分類された領域のうち最低のKtrans値を「低領域」とし、残りの領域から「中領域」及び「高領域」が等間隔となるように定義することができる。
【0034】
例えば、Ktransの値の分布範囲を0.0〜2.0に設定し、0.4ごとに4つの境界を設け、5つの領域に分割した場合、5つの領域のうち、0.0〜0.4を低領域、0.4〜0.8を中領域、0.8〜1.2を高領域のように定義することができる(図4)。1.2以上を「超高領域」として定義することもできる。分ける領域数は、3以上、好ましくは3以上5以下であるが、3以上であれば特にこだわる必要はなく癌の種類や癌患者毎などにより適宜設定することができる。
Ktransを測定する日または間隔は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。例えば、スルホンアミド化合物を投与してから1日〜20日目、1週目、2週目、4週目のように設定すればよい。
【0035】
2.血液環流
「血液環流」とは、血液が血管内を循環する現象である。上記の通り腫瘍組織内では正常血管が少なく血液環流の効率が悪いため、腫瘍内の圧力は高くなり、血液内の造影剤は血管から漏れ出さず組織内の造影剤の濃度が低くなる。このため、腫瘍組織内では、血液環流の良い領域のみが造影剤の画像として検出される。
【0036】
造影剤の腫瘍内の濃度を測定する工程において、患者にスルホンアミド化合物を投与する前後に陽電子放出核種または放射性物質が標識された造影剤を投与する。標識された造影剤の腫瘍内の濃度は、血液環流のパラメータとして用いられ、PET装置やSPECT装置などの核医学検査装置を用いて検出することができ、スルホンアミド化合物を投与する前後の患者の体内における腫瘍内の血液環流を造影剤の腫瘍内の濃度の変化として測定することができる。
【0037】
なお、PETは、ポジトロンを放出する放射性同位元素で標識された薬剤を被検者に投与し、その分布をPETカメラで断層画像に撮影することによって、臓器の局所機能を画像に描出し、病気等を診断する検査法である。また、SPECTは放射能(ガンマ線)を放出する放射線元素を含む薬剤を静脈注射し、体内に投与した放射性同位体から放出されるガンマ線をガンマカメラにより検出し、検出した薬剤の濃度分布をコンピュータ処理により断層画像または3次元画像にしたものである。PETと同じく、生体の機能を観察することを目的に使われ、脳血管障害、心臓病、癌の早期発見に有効とされる。
【0038】
腫瘍内の濃度変化は、SUV(Standardized Uptake Value)と呼ばれる値を用いて定量的評価を行うことができる。SUV とは,放射性造影剤の集積度を患者の体重と放射線元素の投与量で標準化した半定量的指数である。SUVは一般的に以下の式で算出される。SUV=[測定値(VOIの平均値:Bq/ml)]/[投与量(Bq)/体重(g)]。関心領域として、腫瘍・脳・筋肉などを設定し、関心領域におけるSUV 最大値や平均SUVを算出し,その集積のSUV や臓器毎の標準なSUV,あるいは周辺の正常部位平均SUVと比較しながら,腫瘍内の血液環流を造影剤の量の変化として測定する。
【0039】
SUVを測定する日または間隔は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。例えば、スルホンアミド化合物を投与してから1日〜20日目、1週目、2週目、4週目のように設定すればよい。
【0040】
3.スルホンアミド化合物
本発明において、スルホンアミド化合物は、下記の一般式(I)で示される化合物を含む。
【化12】

【0041】
上記一般式(I)において、
A環は、置換基を有していてもよい、単環式または二環式芳香環を表し、
B環は、置換基を有していてもよい、6員環式不飽和炭化水素またはヘテロ原子として窒素原子を1個含む不飽和6員ヘテロ環を表し、
C環は、置換基を有していてもよい、窒素原子を1または2個含む5員ヘテロ環を表し、
Wは、単結合または−CH=CH−を表し、
Xは、−N(R1)−または酸素原子を表し、
Yは、炭素原子または窒素原子を表し、
Zは、−N(R2)−または窒素原子を表す。
ここで、R1およびR2はそれぞれ独立して同一または異なって水素原子または低級アルキル基を表す。
本明細書において、一般式(I)の化合物にはXが酸素原子のときの化合物も含まれる。この化合物は、スルホンアミド化合物の類縁体として本発明における「スルホンアミド化合物」に含めることとする。
【0042】
上記一般式(I)において、A環の意味する「置換基を有していてもよい、単環式または二環式芳香環」とは、芳香族炭化水素、または窒素原子、酸素原子および硫黄原子のうち少なくとも1個を含む芳香族ヘテロ環であり、当該環上には置換基1〜3個があってもよいものを示す。A環に含まれる主な芳香環を例示すると、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、フラン、チアゾール、オキサゾール、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアゾールなどがあるが、A環に含まれる芳香環はこれらに限定されるものではない。上記芳香環は置換基1〜3個を有していてもよく、置換基が複数個ある場合には、同一または異なっていてもよい。置換基としては、例えば、低級アルキル基または低級シクロアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、シアノ基、低級アルキルチオ基、ハロゲン原子、式−a−b[式中、aは単結合、−(CH2k−、−O−(CH2k−、−S−(CH2k−または−N(R3)−(CH2k−を、kは1〜5の整数を、R3は水素原子または低級アルキル基を、bは−CH2−d(式中、dは低級アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキルチオ基、シアノ基または低級アルコキシ基を意味する)を意味する]で示される基、式−a−e−f[式中、aは前記と同じ意味であり、eは−S(O)−または−S(O)2−を、fは低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されていてもよいアミノ基、低級アルキル基、トリフルオロメチル基、−(CH2m−bまたは−N(R4)−(CH2m−b(式中、bは前記と同じ意味であり、R4は水素原子または低級アルキル基を、mは1〜5の整数を意味する)を意味する]で示される基、式−a−g−h[式中、aは前記と同じ意味であり、gは−C(O)−または−C(S)−を、hは低級アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、水酸基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、−(CH2n−bまたは−N(R5)−(CH2n−b(式中、bは前記と同じ意味であり、R5は水素原子または低級アルキル基を、nは1〜5の整数を意味する)を意味する]で示される基、式−a−N(R6)−g−i[式中、aおよびgは前記と同じ意味であり、R6は水素原子または低級アルキル基を、iは水素原子、低級アルコキシ基またはf(fは前記と同じ意味である)を意味する]で示される基、式−a−N(R7)−e−f(式中、a、eおよびfは前記と同じ意味であり、R7は水素原子または低級アルキル基を意味する)で示される基、または式−(CH2p−j−(CH2q−b(式中、jは酸素原子または硫黄原子を意味し、bは前記と同じ意味であり、pおよびqは同一または異なって1〜5の整数を意味する)で示される基などを挙げることができる。
【0043】
上記置換基例において、アミノ基が2個のアルキル基で置換されている場合には、これらのアルキル基が結合して5または6員環を形成していてもよい。また、A環が水酸基またはメルカプト基を有する含窒素ヘテロ環である場合には、これらの基が共鳴構造をとることにより、オキソ基またはチオキソ基の形になっていてもよい。
【0044】
一般式(I)において、B環の意味する「置換基を有していてもよい、6員環式不飽和炭化水素またはヘテロ原子として窒素原子を1個含む不飽和6員ヘテロ環」は、例えば、不飽和結合の一部が水素化されていてもよい、ベンゼンまたはピリジンであり、当該環上に置換基を1または2個以上有していてもよく、置換基が2個以上ある場合には同一または異なっていてもよいものを示す。
【0045】
C環の意味する「置換基を有していてもよい、窒素原子を1または2個含む5員ヘテロ環」とは、不飽和結合の一部が水素化されていてもよい、ピロール、ピラゾール、イミダゾールであり、当該環上に置換基1または2個を有していてもよく、置換基が2個ある場合には同一または異なっていてもよいものを示す。
【0046】
B環およびC環が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、水酸基、オキソ基、式−C(O)−r(式中、rは水素原子、低級アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基または水酸基を意味する)、低級アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、トリフルオロメチル基などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0047】
上記一般式(I)において、R1およびR2並びにA環、B環およびC環が有していてもよい置換基の定義中の「低級アルキル基」は、炭素数が1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を意味し、例えば、これらに限定されるわけではないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec −ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基(アミル基)、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基などを意味する。これらのうち好ましい基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などを挙げることができ、これらのうち、より好ましい基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基を挙げることができ、最も好ましい基としてはメチル基を挙げることができる。
【0048】
A環が有していてもよい置換基の定義中の「低級シクロアルキル基」は、炭素数3〜8のシクロアルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。また、「低級アルキルチオ基」は、上記の低級アルキル基から誘導されるアルキルチオ基を意味し、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0049】
A環、B環およびC環が有していてもよい置換基の定義中の「低級アルコキシ基」とは、これらに限定されるわけではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基など上記の低級アルキル基から誘導される低級アルコキシ基を意味するが、これらのうち最も好ましい基としてはメトキシ基、エトキシ基を挙げることができる。また、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0050】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、公知の方法で製造でき、例えば、国際公開第95/07276号パンフレット(WO95/07276)および/または特開平7-165708号公報(JP7-165708)に記載された方法によって製造することができる。
【0051】
一般式(I)において、好ましい化合物は下記式XIで示される化合物である。
【化13】

【0052】
上記式XIにおいて、A環はベンゼン、ピリジン、チオフェンまたはピリミジンを表し、
Mは-SO2NH2、シアノ基、ハロゲン原子またはアミノ基を表し、
NはC1-4アルキル基、水素原子またはハロゲン原子を表し、
Lはシアノ基、ハロゲン原子または水素原子を表す。
【0053】
また、一般式(XI)において、好ましい化合物は、
1)N−(3−シアノ−4−メチル−1H−インドール−7−イル)−3−シアノベンゼンスルホンアミド(E7820)
【化14】

【0054】
2)N−(3−シアノ−4−メチル−1H−インドール−7−イル)−6−クロロ-3-ピリジンスルホンアミド
【化15】

【0055】
3)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−4−スルファモイルベンゼンスルホンアミド
【化16】

【0056】
4)N−(5−ブロモ−3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
【化17】

【0057】
5)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−3−シアノベンゼンスルホンアミド
【化18】

【0058】
6)N−(4−ブロモ−1H−インドール−7−イル)−4−シアノベンゼンスルホンアミド
【化19】

【0059】
7)N−(4−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
【化20】

【0060】
8)N−(3−ブロモ−4−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
【化21】

【0061】
9)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−5−シアノ−2−チオフェンスルホンアミド
【化22】

【0062】
10)N−(4−ブロモ−3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−2−アミノ−5−ピリミジンスルホンアミド
【化23】

【0063】
11)N−(3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−1,4−ベンゼンジスルホンアミド(E7070)
【化24】

が挙げられる。
【0064】
これらの化合物は、公知の方法で製造でき、上記の1)〜11)の化合物は、例えば、国際公開第01/56607号パンフレット(WO01/56607)における合成例1〜合成例11に記載された方法によって製造することができる。また、E7820(上記1)の化合物)は、国際公開第00/50395号パンフレット(WO 00/50395)号の記載に基づいて製造することもできる。さらに、上記の11)の化合物は、例えば、国際公開第95/07276号パンフレット(WO95/07276)における実施例19に記載された方法によって製造することができる。
【0065】
なお、E7070は、N−(3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−4−スルファモイルベンゼンスルホンアミドということもできるし、E7820は、3‐シアノ‐N‐(3‐シアノ‐4‐メチル‐1H‐インドール‐7‐イル)ベンゼンスルホンアミドということもできる。
上記の1)〜11)の化合物のうち、特に好ましい化合物は、上記の1)〜10)の化合物であり、より好ましくはE7820である。
【0066】
本発明において、スルホンアミド化合物は、下記の一般式(II)で表される化合物を含む。
【化25】

【0067】
上記一般式(II)において、式中、Eは、−O−、−N(CH3)−、−CH2−、−CH2CH2−または−CH2O−を、Dは、−CH2−または−O−を、R1aは、水素原子またはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)を、R2aは、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基をそれぞれ意味する。
本発明の一般式(II)で表される化合物は、公知の方法により製造でき、例えば、欧州特許出願公開第0222475A1号明細書(EP0222475A1)に記載の方法によって製造することができる。
一般式(II)において、好ましい化合物は、LY186641またはLY295501である。
LY186641とは、N−[[(4−クロロフェニル)アミノ]カルボニル]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−スルホンアミドをいい、その構造式を以下の式(VIII)に示す。
【0068】
【化26】

【0069】
LY186641は、公知の方法で製造でき、例えば、欧州特許出願公開第0222475A1号明細書(EP0222475A1)に記載の方法で製造することができる。
本発明において、LY295501とは、N−[[(3,4−ジクロロフェニル)アミノ]カルボニル]−2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−スルホンアミドをいい、その構造式を以下の式(IX)に示す。
【0070】
【化27】

【0071】
LY295501は、公知の方法で製造でき、例えば、欧州特許出願公開第0222475A1号明細書(EP0222475A1)および/または欧州特許出願公開第0555036A2号明細書(EP0555036A2)に記載の方法で製造することができる。
また、本発明において、スルホンアミド化合物は、下記の一般式(III)で表される化合物を含む。
【0072】
【化28】

【0073】
一般式(III)において、式中、Jは、−O−または−NH−を、R1bは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいC1−C4アルキルチオ基、−CF3、−OCF3、−SCF3、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アジド基、−O(SO2)CH3、−N(CH32、水酸基、フェニル基、置換基を有するフェニル基、ピリジニル基、チエニル基、フリル基、キノリニル基またはトリアゾール基を、R2bは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−CF3、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいキノリニル基を、R3bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基を、R4bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し、R3bおよびR4bの少なくとも一つは、水素原子である)を、R5bは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、−CF3またはニトロ基を、R6bは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し、R6bが置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基のとき、R5bは水素原子であり、R7bはハロゲン原子である)を、R7bは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基または−CF3(但し、R5bまたはR7bのいずれか一方が、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基であるか、あるいはR7bが、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基である場合には、R5bまたはR6bのいずれか一方が、水素原子である)をそれぞれ意味する。
一般式(III)において、「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましい。
一般式(III)において、「C1−C6アルキル基」は、前述の「低級アルキル基」と同じ意味であり、特に限定されるわけではないが、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。
【0074】
一般式(III)において、「C1−C4アルコキシ基」は、前述の「低級アルコキシ基」の中、炭素数が1〜4のアルコキシ基を意味し、特に限定されるわけではないが、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
一般式(III)において、「C1−C4アルキルチオ基」において、アルキル基は特に限定されるわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等を挙げることができる。
一般式(III)において、「C1−C4アルコキシカルボニル基」の例としては、特に限定されるわけではないが、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。
一般式(III)において、導入される置換基としては、特に限定されるわけではないが、例えば、C1−C6アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)、C1−C4アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)またはシリル基などの置換基を挙げることができる。
【0075】
本発明の一般式(III)で表される化合物は、公知の方法により製造でき、例えば、国際公開第02/098848号パンフレット(WO02/098848)に記載の方法によって製造することができる。
一般式(III)において、好ましい化合物はLY-ASAPである。
LY-ASAPとは、N−(2,4−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルスルホンアミドをいい、その構造式を以下の式(X)に示す。
【0076】
【化29】

【0077】
LY-ASAPは、公知の方法で製造でき、例えば、国際公開第02/098848号パンフレット(WO02/098848)に記載の方法で製造することができる。
さらに、本発明において、スルホンアミド化合物には、LY573636を挙げることができる。本発明において、LY573636とは、N−(2,4−ジクロロベンゾイル)−5−ブロモチオフェン−2−スルホンアミドをいい、その構造式を以下の式(IV)に示す。
【0078】
【化30】

【0079】
LY573636は、ナトリウム塩であることが好ましい。
LY573636は、公知の方法で製造でき、例えば、国際公開第02/098848号パンフレット(WO02/098848)に記載の方法と同様にして、市販の5−ブロモチオフェン−2−スルフォニルクロライドと2,4−ジクロロ安息香酸より製造することができる。
また、LY573636は、国際公開第2003/035629号パンフレット(WO2003/035629)における実施例63に記載の方法で製造することができる。
本発明において、スルホンアミド化合物には、CQSを挙げることができる。本発明において、CQSとは、2−スルファニルアミド−5−クロロキノキサリンをいい、その構造式を以下の式(V)に示す。
【0080】
【化31】

【0081】
CQSは、公知の方法で製造でき、例えば、(J. Am. Chem. Soc., 1947, 71, 6-10)の方法で製造することができる。
スルホンアミド化合物は、酸または塩基と薬理学的に許容される塩を形成する場合もある。本発明におけるスルホンアミド化合物は、これらの薬理学的に許容される塩をも包含する。酸との塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩等の無機酸塩や蟻酸、酢酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸との塩を挙げることができる。また、塩基との塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、アルギニン、リジン等の有機塩基との塩(有機アミン塩)、アンモニウム塩を挙げることができる。
【0082】
また、スルホンアミド化合物は、無水物であってもよく、水和物などの溶媒和物を形成していてもよい。溶媒和物は水和物または非水和物のいずれであってもよいが、水和物が好ましい。溶媒は水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール)、ジメチルホルムアミドなどを使用することができる。
【0083】
また、これら化合物の溶媒和物および/または光学異性体が存在する場合には、本発明におけるスルホンアミド化合物は、それらの溶媒和物および/または光学異性体が含まれる。また、本発明におけるスルホンアミド化合物は、生体内で酸化、還元、加水分解、抱合などの代謝を受けるスルホンアミド化合物をも包含する。またさらに、本発明におけるスルホンアミド化合物は、生体内で酸化、還元、加水分解などの代謝を受けてスルホンアミド化合物を生成する化合物をも包含する。
【0084】
本発明において、スルホンアミド化合物は、一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、式(IV)および式(V)からなる群から選択されるいずれかの化合物であり、好ましくはE7070、E7820、LY186641、LY295501、LY-ASAP、LY573636およびCQSからなる群から選択される少なくとも一つの化合物であり、より好ましくはE7070、E7820、LY295501およびLY573636からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であり、特に好ましくはE7820である。
【0085】
4.感受性を検査する方法
(1)測定値の比較
本発明は、前記スルホンアミド化合物、もしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物に対する腫瘍組織の感受性を検査する方法であって、以下の工程を含む。
(a) スルホンアミド化合物を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を測定し、
(b) 前記投与前後における測定値を比較し、
(c) 前記投与後の測定値が投与前の測定値と比較して増加したときは、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断する。
【0086】
Ktransまたは血液環流は、時間ごとの造影剤の量(濃度)の変化または造影剤の量(濃度)を示す数値である。したがって、測定値は、関心領域の中の一部の領域(所定部位という)のある特定の時刻(所定時という)における値として表わされる。また、測定値は、所定部位の時間T1からT2の間における値の積分値、所定時における所定部位の値の積分値(つまり、関心領域全体の所定時における値)、さらには、関心領域全体の時間T1からT2の間における値の積分値として表すこともできる。
【0087】
このようにして得られた値を、「スルホンアミド化合物の投与前の測定値」と「スルホンアミド化合物の投与後の測定値」との差または比として比較することで感受性を判断することができる。例えば、「スルホンアミド化合物の投与後の測定値」から「スルホンアミド化合物の投与前の測定値」を差し引いたときの値が正の値のときは、投与後の測定値が投与前の測定値と比較して増加したことになり、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断することができる。
【0088】
また、「スルホンアミド化合物の投与後の測定値」から「スルホンアミド化合物の投与前の測定値」を除したときの値が1よりも大きいときは、投与後の測定値が投与前の測定値と比較して増加したことになり、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断することができる。
【0089】
(2) 分布解析による検査
本発明の方法は、スルホンアミド化合物、もしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物に対する腫瘍組織の感受性を検査する方法であり、以下の工程を含む。
(a) スルホンアミド化合物を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を測定し、
(b) 前記投与前後における測定値を分布解析して低領域、中領域および高領域に分類し、
(c) 以下の(c-1)および(c-2)の判断基準のいずれか一方に該当するときは、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断する工程。
<判断基準>
(c-1) 前記投与後の低領域の割合が投与前の低領域の割合と比較して減少し、または、前記投与後の中領域もしくは高領域の割合が投与前の中領域もしくは高領域の割合と比較して増加したとき
(c-2) 前記投与後の低領域の割合が投与前の低領域の割合と比較して減少し、かつ、前記投与後の中領域もしくは高領域の割合が投与前の中領域もしくは高領域の割合と比較して増加したとき
【0090】
本発明においては、前記のとおり定義されたKtransまたは血液環流値の低領域、中領域および高領域が存在する確率の変動を解析することにより、この変動を、被検者の腫瘍組織がスルホンアミド化合物に感受性を有するか否かの指標とすることができる。
【0091】
上記変動は、「(1)測定値の比較」の項で記載した内容と同様にして、スルホンアミド化合物の投与前後における確率または数値を差または比として表すことができ、また、変動の変化をグラフ化して、曲線の変動を解析することができる。例えば、各領域と割合との関係を表示したグラフにおいて、測定値の低領域に多くを占めていた曲線が中または高領域側にシフトしたときは、前記投与後の低領域の割合が投与前の低領域の割合と比較して減少したことになるか、あるいは前記投与後の中領域または高領域の割合が投与前の中領域または高領域の割合と比較して減少したことになるため、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断することができる。腫瘍組織がスルホンアミド化合物に対して感受性があるかどうかの判断は、低領域の確率分布のみを指標としてもよく、中領域または高領域の確率分布のみを指標としてもよく、両者を組み合わせてもよい。
【0092】
本発明において、腫瘍細胞がスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断されたときは、スルホンアミド化合物は、当該腫瘍細胞を有する癌患者に対して、より抗腫瘍効果を有すると判断することができる。より抗腫瘍効果を有する場合として、例えば、同様の症状の患者における平均的な抗腫瘍効果よりも高い抗腫瘍効果を期待できる場合、同一の癌種に罹患した他の患者よりも高い抗腫瘍効果を期待できる場合、または他の癌種に罹患した患者よりも高い抗腫瘍効果を期待できる場合などをあげることができる。このように、より抗腫瘍効果を有するか否かを判断することは、臨床において、より抗腫瘍効果を期待できる癌患者を選択することができるため、非常に有用である。
【0093】
5.癌治療薬
本発明において、スルホンアミド化合物は、本発明の方法によって感受性があると判断された患者に投与するために使用することができ、スルホンアミド化合物をそのまま用いてもよく、医薬組成物としてもよい。医薬組成物は、前記スルホンアミド化合物を含有する医薬組成物であれば、特に限定されるものではない。
【0094】
前記医薬組成物としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤等の経口剤、坐剤、軟膏剤、眼軟膏剤、テープ剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等の外用剤および注射剤などを挙げることができる。
【0095】
スルホンアミド化合物の投与量は、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、感受性差、投与方法、投与時期、投与間隔、医薬製剤の性質、調剤、種類、有効成分の種類等によって異なり、特に限定されないが、例えば、通常成人(体重60 Kg)1日あたり10〜6000 mg、好ましくは30〜4000 mg、さらに好ましくは50〜600 mgであり、これを通常1日1〜3回に分けて投与することができる。
【0096】
腫瘍の種類は、例えば、脳腫瘍、頚癌、食道癌、舌癌、肺癌、乳癌、膵癌、胃癌、小腸または十二指腸の癌、大腸癌(結腸癌、直腸癌)、膀胱癌、腎癌、肝癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、胆嚢癌、咽頭癌、肉腫(例えば、骨肉腫、軟骨肉腫、カポジ肉腫、筋肉腫、血管肉腫、線維肉腫など)、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)及び急性リンパ性白血病(ALL)、リンパ腫、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫(MM)など)及びメラノーマなどを挙げることができ、好ましくは大腸癌、肺癌、腎癌および膵癌である。
【0097】
6.検査用キット
本発明は、スルホンアミド化合物に対する腫瘍細胞の感受性を検査する方法および/またはスルホンアミド化合物の抗腫瘍効果を検査する方法において使用するための、造影剤を含む、検査用キットを提供する。本発明のキットは、上記造影剤に加えて、一般の測定において慣用的な成分を含んでいてもよい。また、本発明の検査用キットは、Ktrans値を指標として、スルホンアミド化合物に対する腫瘍組織の感受性を診断する方法および/またはスルホンアミド化合物の抗腫瘍効果を検査する方法に使用することを記載した取扱説明書、添付文書等を含んでいてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0098】
ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)における抗腫瘍効果
ヒト腎癌細胞株Caki-1(ATCCより購入)を5%炭酸ガスインキュベーター内においてRPMI1640(10% FBS含)で培養した。培養後、常法に従いトリプシン−EDTAにより、各細胞を回収した。細胞をRPMI1640で懸濁し、2×107cells/200 μlに懸濁液を調製した。移植24時間前にガンマ線照射(7Gy, コバルト60, INRA, Dijion, France)したヌードラット(チャールズリバー社より購入)に、細胞懸濁液を0.2mLずつ体側皮下に移植した。移植後、腫瘍体積が約500mm3になった時点から、被検物質であるE7820(3.13 mg/kg および 6.25 mg/kg、1日2回、2週間、経口投与)の投与を開始した。なお、E7820は、国際公開第01/56607号パンフレット(WO01/56607)の記載に基づいて製造した。腫瘍長径および短径をデジマチックキャリパで測定し、以下の式で腫瘍体積、比腫瘍体積を算出した。
腫瘍体積(TV)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径2(mm2)/2
その結果を図1に記した。図1に示すように、ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)におけるE7820による抗腫瘍効果を示した。
E7820は、ヒト腎癌細胞株Caki-1のヌードラット皮下移植モデルにおいて、非投与群に対し6.25mg/kg投与群において抗腫瘍効果に有意差がみられ、投与量に応じて抗腫瘍効果に差があることが明らかとなった。
【実施例2】
【0099】
ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)におけるダイナミック造影磁気共鳴映像解析による関心領域のKtransの改善効果
実施例1と同様にしてヒト腎癌細胞株Caki-1をヌードラットに移植した。
移植後、腫瘍体積が約300mm3になった時点から、被検物質E7820(6.25 mg/kg、1日2回、2週間、経口投与)の投与を開始した。磁気共鳴映像解析は投与開始前日および投与開始後2日目、7日目、14日目に行い、T2強調画像、T1強調画像およびダイナミック造影画像を取得し、関心領域のKtransを検討した。
磁気共鳴映像解析の全ての実験は能動遮蔽グラジェントシステム付きPharmaScan-4.7T(BrukerBiospin社, GmbH, Germany)で行い、全ての画像は Para Vision (PV4.0)を用いて取得した。
ラットは装置内の実験台に仰向けに固定し、イソフルラン麻酔下でラットの生理機能を測定しつつ全ての画像の取得を行った。造影はT2強調画像、T1強調画像、ダイナミック造影画像の順に以下の手順に従い行った。
【0100】
まず動物の位置を把握し、磁気共鳴シグナルを最適化するため自動調整による撮像を行い(TE/TR=6/100 マトリックスのサイズ=128x128 視野=80x80 mm 2mm厚で1スライス)、さらに正確な位置を決めるための複数スライスの撮像を行った (TE/TR=6/122 マトリックスのサイズ=128x128 視野=80x80 mm 10スライス 3mm厚で3mm幅);パルスを与える間隔:TR: repetition time、検出するまでの時間:TE: echo time。その後T2強調画像による解剖学的撮像を行った (TE/TR=60/6000 マトリックスのサイズ=256x256 視野=70x50 mm 20スライス 0.8mm厚で0.8mm幅 2回)。
ついで、調整のための規定のT1値を有するGd-DTPA用の標準物体(ファントム)を造影視野に入れ、回転角度10度から90度まで(10度刻みで)9つの撮像を行い、腫瘍のT1強調画像を取得した(TE/TR=3/50 マトリックスのサイズ=108x80 視野=60x50 mm 7スライス 2.0mm厚で2.0mm幅)。
その後、60度角でのダイナミック造影を開始し、開始30秒後にGd-DTPAを静脈投与し、120画像取得後に実験を終了した。造影剤はGd-DTPA (Magnevist, Schering, Germany) を使用し 0.1 mmol/kg の用量で尾静脈より投与した。
【0101】
全ての磁気共鳴画像はImage J [Rasband WS, National Cancer Institutes of Health, http://rsb.info.nih.gov/ij] を用いて解析した。解析のための関心領域(腫瘍部分)は、解剖学的に撮像されたT2強調画像を使用し、マニュアルにて設定した。腫瘍体積は、関心領域のボクセル数をスライス毎に重ね加えていくことで計算した。
ダイナミック造影磁気共鳴映像の解析はサンプルあたり3枚のスライスで行い、関心領域(造影剤の分布領域)はマニュアルにてスライス毎に作成した。造影剤投与前の腫瘍内の平均T1値は調整のために撮像した腫瘍のT1強調画像から計算した。ついで造影剤の関心領域における濃度は以下の計算式に基づいて算出した。

C(t) = 1/r1 (1/T1(t) - 1/T10)
C(t): 時間 t における関心領域の造影剤の濃度 (mmol/L)
r1: 4 L.mmol-1.s-1 [Rohrer M, Investigative Radiology 2005, 40, p715]
T1(t): 時間 t における関心領域における平均T1値
T10: 投与前の関心領域における平均T1値

また、血漿中の造影剤の濃度は以下の計算式に基づいて算出した。

Cp(t) = D ( a1e-m1t + a2e-m2t)
C(t): 時間 t における血漿中の薬剤濃度 (mmol/L)
D: 投与された Gd-DTPA量 (mmol/kg)
a1, a2, -m1, -m2: Gd-DTPAの消失曲線に関連した因子で、造影剤の取り込み曲線が Tofts らが開発した動態モデルと合致した結果を再現するように決定した。Toftsらの動態モデルは、ダイナミック造影磁気共鳴映像法における動態因子を解析されために広く使用されている [Toft PS, J Magn Reson Imaging, 1999, 10, p223; Padhani AR, Br J Radiol. 2003;76 Spec No 1:S60]。これらの方法をもちいることにより、造影剤の血漿中濃度と組織(腫瘍内)濃度の関係は以下の計算式にてあらわされる。

dC/dt = Ktrans (Cp - C/Ve) = Ktrans Cp - KepC
C: 組織内における造影剤の濃度 (mmol/L)
Cp: 血漿中の造影剤の濃度 (mmol/L)
Ktrans: 血漿から組織内の血管外領域への、時間ごと(通常は分ごと)の造影剤の量(度)の変化を示す数値
Ve: 組織内の血管外領域量 (組織量に対する%)
Kep: 組織から血漿への造影剤の流量比率の数値
Kep = Ktrans / Ve

Kep , Ktrans , Ve をそれぞれ腫瘍内の関心領域において算出し、一腫瘍あたり3つのスライスから得られた個々の値の平均値を、その腫瘍における測定値として使用した。関心領域は腫瘍辺縁部にマニュアルで作成し、Ktrans の変化は以下の式で算出した。
Ktransの変化 = 治療前の関心領域のKtrans /治療後の関心領域のKtrans

その結果を図2に記した。
【0102】
E7820は、ヒト腎癌細胞株Caki-1のヌードラット皮下移植モデルにおいて、投与開始後7日目(D7)、14日目(D14)で腫瘍辺縁部の関心領域においてKtransを改善する傾向を示した(図2A)。またE7820は、腫瘍中心部においてもKtransを増加することが示唆された(図2B)。
【実施例3】
【0103】
ヒト大腸癌細胞株HCT116移植マウスモデル(in vivo)における単光子放射型コンピューター断層撮影法を用いた99mTcラベルGlucarate の腫瘍内への取り込み測定によるE7820の腫瘍内の血液環流の改善効果
ヒト大腸癌細胞株HCT-116を5%炭酸ガスインキュベーター内においてRPMI1640(10% FBS含)で培養した。培養後、常法に従いトリプシン−EDTAにより、各細胞を回収した。細胞をRPMI1640で懸濁し、5×106cells/100 μlに懸濁液を調製した。ヌードマウス(タコニック社より購入)に、細胞懸濁液を0.1mLずつ体側皮下に移植した。被検物質であるE7820(100 および 200 mg/kg、1日1回、11日間、経口投与)の投与を開始した。
【0104】
99mTcラベルGlucarateは以下の通り作製した。すなわち12.5mgのGlucarateの入ったバイアルに30mCiの0.3 mlのテクネシウム化ナトリウム溶液を加え99mTcラベルGlucarateを作製し、生理食塩水で最終濃度に調整し使用した。ラベル化効率は調整後の99mTcラベルGlucarateを薄層クロマトグラフィーにて展開したのち放射活性をスキャン(Bioscan社)し、放射活性の90%以上がラベル化されていることを確認し、実験を行った。平均のラベル化効率は97.24±3.02%であった。
【0105】
マウスは、イソフルラン麻酔下においてヒーティングパッドで体温を維持しつつ全ての画像の取得を行った。画像撮影は、約1mCiの99mTcラベルGlucarate溶液を尾静脈より注入し、20分経過後からnanoSPECT/CTTM(Bioscan社, DC, USA)を用いて行った (単光子放射型コンピューター断層撮影; 24分撮像、コンピューター断層撮影; 4分半撮像)。99mTcラベルGlucarateの腫瘍および脳への取り込みに対する定量解析は、三次元で再構築された解剖学的なコンピューター断層撮影画像および単光子放射型コンピューター断層撮影画像を用い関心領域を設定し、関心領域における取り込み量をInVivoScopeTM 画像解析ソフトウェアを用いて解析し、腫瘍内Glucarate濃度(kBq/mm3)もしくは相対的Glucarate取り込み量(腫瘍内の99mTc放射活性量に対する脳内の99mTc放射活性量の比率)として行った。
【0106】
腫瘍の体積は以下の計算式を用い決定した。
腫瘍体積(TV)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径2(mm2)/2
また相対的腫瘍体積は以下の計算式を用い決定した。
相対的腫瘍体積 = 投与前の腫瘍体積(mm3)/ 投与後の腫瘍体積(mm3
その結果を図3に記した。
【0107】
図3Aは、E7820のヒト大腸癌細胞株HCT116移植マウスモデル(in vivo)を用いて腫瘍内の血液環流を測定したときの図であり、腫瘍内の血液環流に対する改善作用を単光子放射型コンピューター断層撮影により調べた結果である。図は、腫瘍内Glucarateの取り込みによる抗腫瘍効果および腫瘍内Glucarate濃度(kBq/mm3)に対する効果を示している。
図3Bは、E7820の腫瘍内Glucarateの取り込みの三次元再構築による単光子放射型コンピューター断層撮影とコンピューター断層撮影画像である。
コントロールと比較して、E7820は7日目および11日目に有意な増殖抑制作用を示し、7日目では用量依存的に腫瘍内Glucarate濃度を増加させる傾向が観察された(200 mg/kg, p=0.056)。
これらの結果は、E7820が腫瘍内血液環流改善作用を示すとともに、そのような作用を、単光子放射型コンピューター断層撮影によって評価できることを示すものである。すなわち、腫瘍内Glucarateの取り込みによりスルホンアミド化合物の腫瘍に対する感受性を、イメージングバイオマーカーによって評価できることを示すものである。
【実施例4】
【0108】
ヒト大腸がん細胞株HCT116移植ラットモデル(in vivo)におけるダイナミック造影磁気共鳴映像を用いたKtrans範囲解析による腫瘍内血液環流(Ktransの分布)の評価
細胞をヒト大腸癌細胞株HCT-116(ATCCより購入)としたこと以外は実施例1と同様にしてヒト大腸癌細胞株HCT-116をヌードラットに移植した。
【0109】
移植後、腫瘍体積が約600mm3になった時点から、磁気共鳴映像解析を開始し、開始後3日目、8日目、14日目および20日目に行い、T2強調画像、T1強調画像およびダイナミック造影画像を取得し、HCT-116腫瘍の増殖に伴う腫瘍内全域での血液環流の変化をKtrans ヒストグラムを用いて解析し、Ktrans範囲解析で定量的に評価した。
磁気共鳴映像解析の全ての実験は、実施例2と同様に行った。
ダイナミック造影磁気共鳴映像の Ktransヒストグラムの作成は以下のように行った。
Ktrans の値を 0.0 から 2.0 まで 0.016 刻みで 125 の領域に分割し、各領域に属するボクセルの数を決定した。1腫瘍あたり3スライスを解析し、領域毎の平均値を一腫瘍の値とした。3腫瘍の平均値を用い、Ktrans の領域をX軸とし、各領域の属するボクセルの数をY軸とし、ヒストグラムを作成した。ダイナミック造影磁気共鳴映像の Ktrans範囲解析は以下のように行った。Ktrans の値を 0.0 から 2.0 まで 0.4 刻みで 5 の範囲に分割し、血液環流の程度の指標とした(0.0 - 0.4; 低血液環流、0.4 - 0.8; 中血液環流、0.8 - 1.2 ; 高血液環流、1.2 - 1.6; 超高血液環流)。各Ktrans範囲に相当するKtransを持つボクセルの数をスライスの関心領域(腫瘍部分)において算出し、各Ktrans範囲に存在するボクセルの比率を関心領域(腫瘍部分)の全ボクセル数に対して測定日ごとに決定した。
その結果を図4に記した。
【0110】
図4Aは、HCT116の増殖に伴う腫瘍内血液環流(Ktransの分布)の経日的な変化の代表画像である。
図4Bは、Ktransヒストグラムを用いた腫瘍内血液環流(Ktransの分布)の定性的な評価を示す図である。
図4Cは、Ktrans範囲解析を用いた腫瘍内血液環流(Ktransの分布)の定量的な評価を示す図である。
HCT-116の増殖に伴い、血液環流は腫瘍辺縁部でのみ観察された(図4A)。Ktransヒストグラムのピークは経日的にKtransが低くなる方向へ変化しており、腫瘍内の血液環流は全体としては減少していることが示された(図4B)。Ktrans範囲解析において、腫瘍の増加に伴い、低いKtransを持つボクセル(Ktrans範囲; 0.0-0.4)の比率が有意に増加し、一方、中程度のKtransを持つボクセル(Ktrans範囲; 0.4-0.8)の比率が有意に減少することが示され、HCT-116モデルでは、腫瘍の増殖に伴い血液環流が低下していることが判明した。また、Ktrans範囲解析により、腫瘍内血液環流の変化を定量的に解析が可能となった(図4C)。
【実施例5】
【0111】
ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)におけるダイナミック造影磁気共鳴映像法を用いたKtrans範囲解析によるE7820の腫瘍内血液環流(Ktransの分布)に対する改善効果
実施例3でKtrans範囲解析により腫瘍内血液環流の変化の定量解析が可能となったため、本実施例では、薬剤投与時でも実施例3と同様の結果が検証できるか検討した。
実施例1と同様にして、ヒト腎癌細胞株Caki-1をヌードラットに移植した。
移植後、腫瘍体積が約1000mm3になった時点から、被検物質E7820(3.13 mg/kg、6.25 mg/kg、1日2回、2週間、経口投与)の投与を開始した。磁気共鳴映像解析は投与開始前日および投与開始後2日目、7日目、13日目、20日目に行い、T2強調画像、T1強調画像およびダイナミック造影画像を取得し、関心領域の腫瘍内血液環流(Ktrans)を検討し、Caki-1腫瘍内全域での血液環流に対するE7820の作用をKtrans ヒストグラムを用いて解析し、Ktrans範囲解析で定量的に評価した。
磁気共鳴映像解析の全ての実験は、実施例2と同様に行った。
ダイナミック造影磁気共鳴映像の Ktransヒストグラムの作成は、Ktransの値を以下のように設定したことを除き、実施例4と同様に行った。
0.0 - 0.4; 低血液環流、0.4 - 0.8; 中血液環流、0.8 - 1.2 ; 高血液環流
その結果を図5に記した。図5は、ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)において、E7820が有意に腫瘍内血液環流(Ktransの分布)に対する改善作用を有することを示しており、血液環流は、ダイナミック造影磁気共鳴映像法を用いたKtrans範囲解析により検査することが可能である。
【0112】
E7820は、ヒト腎癌細胞株Caki-1のヌードラット皮下移植モデルにおいて、投与後2日目から低血液環流の領域(Ktrans範囲; 0.0-0.4)を有意に減少させ、投与後7日目および13日目では有意に低血液環流の領域(Ktrans範囲; 0.0-0.4)を減少させ、高血液環流の領域(Ktrans範囲; 0.8-1.2)を増加させた。これらの作用は投与終了後7日後の20日目では観察されなかった。したがって、Ktransを範囲に分けないで解析する場合に比べ、範囲に分けて解析した方がより定量的に効果を測定することが可能となった。
【実施例6】
【0113】
ヒト腎癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)におけるE7820の腫瘍血管正常化作用
実施例1と同様にして、ヒト腎癌細胞株Caki-1をヌードラットに移植した。
移植後、腫瘍体積が約300mm3になった時点から、被検物質E7820(6.25 mg/kg、1日2回、2週間、経口投与)の投与を開始した。E7820の腫瘍血管正常化に対する評価には二つの方法を用いた。一つはDNAに結合する蛍光染料Hoechst33342(Bis benzimidine)の腫瘍内への拡散に対する作用で、もう一つは腫瘍内血管の周細胞被覆率に対する作用で評価した。
蛍光染料Hoechst33342の腫瘍内への拡散に対する作用では、投与開始後7日目に生理食塩水で 2 mg/ml に調整したHoechst33342 溶液を尾静脈から 20 mg/kg の用量で投与し、投与1分後に腫瘍を取り出した後tissue-TEK OCTコンパウンド (Takara, Torrance, CA, USA) に包埋し、液体窒素を用いて凍結させた腫瘍を用いた。Hoechst33342の拡散は凍結切片(1腫瘍あたり2切片を使用)を使用し、蛍光光源を付属した蛍光顕微鏡下で行い、Hoechst33342の拡散を指標とした腫瘍内血液環流に対するE7820の作用は、Hoechst33342で蛍光標識された細胞表面の面積(μm2)を定量することで評価した。定量はグレイスケール(0 - 16383)で行い、バックグラウンドの傾向領域(0 - 870) を拡散なしとし、それより明るい領域(870 - 16383)を拡散領域とした。
その結果を図6に記した。
【0114】
図6Aは、E7820により改善した蛍光染料Hoechst33342の腫瘍内への拡散の代表的な画像である。
図6Bは、E7820により改善した蛍光染料Hoechst33342の腫瘍内への拡散の定量的な解析結果を示す図である。
E7820は、ヒト腎癌細胞株Caki-1のヌードラット皮下移植モデルにおいて、投与後7日目において蛍光染料Hoechst33342の腫瘍内への拡散を優位に促進した(図6A,B)。これらの結果から、E7820はヒト腎癌細胞株Caki-1内の腫瘍血管を正常化していることが示された。
【実施例7】
【0115】
5株のヒト癌細胞株移植ラットモデル(in vivo)におけるE7820の抗腫瘍効果を予測するイメージングバイオマーカーとしての、ダイナミック造影磁気共鳴映像法を用いたKtrans範囲解析による腫瘍内血液環流(Ktransの分布)の改善作用
細胞をヒト大腸癌細胞株HCT-116、ヒト腎癌細胞株Caki-1、ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231、ヒト大腸癌細胞株Lovo、ヒト小細胞肺癌細胞株H460(ATCCより購入)としたことを除き、実施例1と同様にしてこれらの細胞株をヌードラットに移植した。
【0116】
ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231は腫瘍体積が約600mm3になった時点で一度切除し、約20−30mgの腫瘍片を作成し、ヌードラット体側皮下に再移植した。移植後、腫瘍体積が約300mm3に(Caki-1)、約600mm3(HCT-116)、約500mm3(MDA-MB-231)、約800mm3(LoVo)、約600mm3(H460) なった時点から被検物質E7820(6.25 mg/kg、1日2回、2週間、経口投与)の投与を開始した。
【0117】
腫瘍体積は腫瘍長径および短径をデジタルキャリパで測定し、以下の式で腫瘍体積、比腫瘍体積を算出した。

腫瘍体積(TV)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径2(mm2)/2

抗腫瘍効果は腫瘍体積を用い以下の式で算出した。

抗腫瘍効果(ΔT/C (%))= (E7820投与群の投与後の腫瘍体積 - E7820投与群の投与前の腫瘍体積) X 100 / (コントロール群の投与後の腫瘍体積 - コントロール群の投与前の腫瘍体積)

磁気共鳴映像解析は投与開始前日および投与開始後7日目、14日目に行い、T2強調画像、T1強調画像およびダイナミック造影画像を取得し、関心領域の腫瘍内血液環流(Ktrans)を検討し、Caki-1腫瘍内全域での血液環流に対するE7820の作用をKtrans ヒストグラムを用いて解析し、Ktrans範囲解析で定量的に評価した。
磁気共鳴映像解析の全ての実験は、実施例2と同様に行った。
ダイナミック造影磁気共鳴映像の Ktransヒストグラムの作成は、実施例5と同様に行った。
その結果を図7に記した。
【0118】
図7Aは、検討した5モデルの中3モデルにおけるE7820の優れた抗腫瘍効果を示す図である。
図7Bは、E7820の優れた抗腫瘍効果とKtrans範囲解析によるKtransの分布の改善効果(低血液環流領域の有意な増加および中血液環流領域の有意な低下)が相関することを示した表である。
【0119】
投与後14日目では、コントロールと比較して全てのモデルでE7820は有意な増殖抑制作用を示したが、腫瘍増殖の完全抑制もしくは腫瘍の縮小はMDA-MB-231、Caki-1およびHCT-116の3モデルでのみ観察された(図7A)。また、腫瘍増殖の完全抑制もしくは腫瘍の縮小が観察された3モデルでのみ、Ktrans範囲解析においてE7820は低血液環流領域 (Ktrans範囲; 0.0 - 0.4) の有意な減少、中血液環流領域 (Ktrans範囲; 0.4 - 0.8) もしくは高血液環流領域 (Ktrans範囲; 0.8 - 1.2) の有意な増加を誘導した。これらの結果は、E7820が効果を示す癌と効果を示さない癌とを選択することが可能であり、ダイナミック造影磁気共鳴映像法を用いたKtrans範囲解析で評価されるE7820の腫瘍内血液環流(Ktransの分布)の改善作用が、抗腫瘍効果を予測するイメージングバイオマーカーとして有用であることを示した。
【実施例8】
【0120】
DNAマイクロアレイ解析
1)細胞培養、化合物処理、およびRNAの抽出
化合物により誘導される遺伝子発現変化をDNAマイクロアレイ解析によって調べる目的で、ヒト大腸癌由来細胞株HCT116(American Type Culture Collection, Manassas, VA, U.S.A.)およびヒト白血病由来細胞株MOLT-4(American Type Culture Collection, Manassas, VA, U.S.A.)を、10 %の胎児牛血清、100 units/mlのペニシリン、100 μg/mlのストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地中で培養した。以下、培養および化合物処理は5%CO2、37℃に調整されたインキュベーター内で行われた。10 cm径の細胞培養ディッシュに2.0×106細胞の割合でHCT116細胞およびMOLT-4細胞を蒔き、24時間培養後に以下の化合物処理を行った。
【0121】
HCT116細胞に関しては、E7820 (0.8 μM)、E7070 (0.8 μM)、LY295501 (30 μM)、CQS (8 μM)、adriamycin (0.2 μM)、daunomycin (0.2 μM)、ICRF154 (80 μM)、ICRF159 (80 μM)、kenpaullone (10 μM)、alsterpullone (10 μM)、trichostatin A (0.1 μM)、rapamycin (80 μM)の12化合物を評価した。一方、MOLT-4細胞に関しては、E7070 (0.8 μM)を評価した。ここで、adriamycinおよびdaunomycin は、DNAにインターカレーションする型のDNA topoisomerase II阻害剤、ICRF154およびICRF159は、catalytic typeのDNA topoisomerase II阻害剤、kenpaulloneおよび alsterpulloneは、cyclin-dependent kinases (CDKs)阻害剤、trichostatin Aは、histone deacetylase阻害剤、rapamycinは、mTOR/FRAP阻害剤として、それぞれ公知の化合物である。化合物処理濃度は、各々の化合物のHCT116細胞に対する50%増殖阻害濃度(WST-8を用いた3日間の細胞増殖抑制活性に基づく)を基準にその3〜5倍の濃度として設定し、上記化合物名に続く括弧内に示した設定濃度で24時間処理後に細胞を回収した。また、化合物を加えずに24時間培養した細胞も同様に回収した。
【0122】
回収した細胞からの全RNAの抽出は、TRIZOL試薬(インビトロジェン社製)を用いて添付の操作法に従って行った。
2)DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析
得られたRNAを100μlのdiethylpyrocarbonate(DEPC)処理をした滅菌水に溶解し、さらにRNeasyカラム(QIAGEN)を用いて精製し、SuperScript Choice System(インビトロジェン社製)およびT7-d(T)24プライマーを用いて2本鎖のcDNAを合成した。
【0123】
まず10μgのRNAに5μMのT7-d(T)24プライマー、1x First strand buffer、10 mM DTT、500μMのdNTP mix、および20 units/μlのSuperScript II Reverse Transcriptaseを加え、42℃にて1時間反応させ、1本鎖DNAを合成した。続いて、1x Second strand buffer、200μMのdNTP mix、67 U/ml DNA ligase、270 U/ml DNA polymerase I、および13 U/ml RNase Hを添加して、16℃にて2時間反応させ2本鎖cDNAを合成した。さらに、67 U/ml T4 DNA polymerase Iを添加して、16℃にて5分間反応させた後、10μlの0.5 M EDTAを加え反応を停止した。
【0124】
得られたcDNAをフェノール/クロロホルムにて精製し、RNA Transcript Labeling Kit(Enzo Diagnostics)を用い、添付の操作法に従って、ビオチン化UTPならびにCTPによるラベル化反応を行った。反応生成物をRNeasyカラムにて精製後、200 mM トリス酢酸 pH8.1、150 mM酢酸マグネシウム、50 mM 酢酸カリウム中で94℃にて35分間加熱してcRNAを断片化した。
【0125】
断片化したcRNAを、100 mM MES、1 M sodium salt、20 mM EDTA、0.01% Tween 20中、45℃にて16時間、GeneChip(Affymetrix)Human Focus arrayにハイブリダイズさせた。ハイブリダイズ後、GeneChipはAffymetrix fluidics stationに添付のプロトコールMidi euk2に従い洗浄および染色した。染色にはストレプトアビジン-フィコエリトリンとビオチン化抗ストレプトアビジンヤギ抗体を用いた。染色後のGeneChipをHPアルゴンイオンレーザー共焦点顕微鏡(Hewlett Packard)を用いてスキャンし、蛍光強度を測定した。測定は、488 nmの波長でexcitationを行い、570 nmの波長のemissionで行った。
【0126】
定量的データ解析は全てGeneChip software(Affymetrix)ならびにGene Spring(Silicongenetics)を用いて行った。GeneChip softwareを用いて化合物による遺伝子発現変化を評価する際には、化合物処理群と未処理群の2つの条件間でRNAの定量値が2倍以上解離している場合につき、その遺伝子の発現が有意に「増加」あるいは「減少」したと判断した。Gene Springを用いて、各化合物が誘導する遺伝子発現変化の類似性を評価する際には、Human Focus Arrayに載っている全遺伝子の発現変化をもとに階層的クラスターリング解析を行った。
HCT116細胞の階層的クラスターリング解析の結果を図8に示した。
【0127】
解析の結果、同一の作用機序を有するadriamycinおよびdaunomycin、ICRF154およびICRF159、Kenpaulloneおよびalsterpulloneは、それぞれ類似の遺伝子変化を引き起こした(図8)。よって、同一の作用機序を有する化合物が、互いに類似の遺伝子変化を引き起こすことが確認された。
【0128】
E7070、E7820、LY295501およびCQSは、類似の遺伝子変化を引き起こした(図8)。よって、本解析により、E7070、E7820、LY295501およびCQSは、同一または類似の作用機序を有すると考えられ、同一または類似の遺伝子変化および効果をもたらすことが強く示唆された。
【実施例9】
【0129】
DNAマイクロアレイ解析
本実施例ではHCT116細胞を用いて、E7820 (0.16μM)、E7070 (0.26μM)、LY186641 (59μM)、LY295501 (24μM)、LY573636 (9.6μM)、CQS (4.0μM)、MST16 (100μM)、etoposide (3.6μM)、ethoxzolamide (410μM)、capsaicin (280μM)、trichostatin A (0.16μM)、kenpaullone (7.1μM)の12化合物で処理したときの遺伝子発現変化を調べた。
【0130】
ここで、MST16はcatalytic typeのDNA topoisomerase II阻害剤、etoposideはcleavable complexの形成を誘導するDNA topoisomerase II阻害剤、ethoxzolamideはcarbonic anhydrase阻害剤、capsaicinはtumor-specific plasma membrane NADH oxidase阻害剤、trichostatin Aはhistone deacetylase阻害剤、kenpaulloneはcyclin-dependent kinases (CDKs)阻害剤として、それぞれ公知の化合物である。
【0131】
化合物処理濃度は、各々の化合物のHCT116細胞に対する50%増殖阻害濃度(MTTを用いた3日間の細胞増殖抑制活性に基づく)を基準に、その2倍の濃度を設定した。上記化合物名に続く括弧内に示した設定濃度で24時間処理後に細胞を回収した。また、化合物を加えずに24時間培養した細胞も同様に回収した。
【0132】
本実施例は各サンプルについてduplicateで行い(実験の便宜上、それぞれのサンプルは区別できるようにcontrol-1、control-2、E7820-1、E7820-2の要領で枝番号を付した)、以後の操作は、実施例1と全く同様に行った。そして、GeneChip(Affymetrix)system (Human Focus array)を用いて各化合物の誘導する遺伝子発現変化を解析した。
【0133】
本実施例で得られた26個(control+12化合物の13サンプル×2)の.celファイルに対しRMA法(robust multi-array average法(Biostatistics(2003), 4, 249-264))を適用し、プローブレベルでの正規分布化を行った後、遺伝子レベルでのシグナル強度のログ値を算出した。続いて、各遺伝子の化合物処理群におけるシグナル強度のログ値から化合物未処理群(control-1)におけるシグナル強度のログ値を引き、control-1に対する化合物処理群のシグナル比のログ値を得た。そして、コサイン相関係数を計算し、実験間の相関係数とした(図9)。この相関係数をもとに、UPGMA法(Unweighted Pair Group Method with Arithmetic mean法)により階層的クラスターリング解析した(図10)。control-2についても、同様の計算を行った(図11および図12)。使用したソフトウェアはR 2.0.1(http://www.r-project.org/)、affy package 1.5.8(http://www.bioconductor. org)である。
【0134】
図9〜図12において、「LY1」はLY186641を、「LY2」LY295501を、「LY5」はLY573636を、「CAI」はethoxzolamideを、「Cap」はcapsaicinを、「MST」はMST16を、「Etop」はetoposideを、「TSA」はtrichostatin Aを、「Kenp」はkenpaulloneを示す。図10および図12において、「de hclust (*, "average")」は、統計解析を行う時のコマンドであり、dupulicateの実験データの平均値を用いてRによるクラスターリング分析を行ったことを示す。
【0135】
解析の結果、E7070、E7820、LY186641、LY295501、LY573636およびCQSが、HCT116細胞に対して引き起こす遺伝子変化は非常に高い類似性を示し、他のどの化合物(MST16、etoposide、ethoxzolamide、capsaicin、trichostatin A、kenpaullone)のプロファイルとも異なることが明らかとなった(図9から図12)。よって、本解析により、E7070、E7820、LY186641、LY295501、LY573636およびCQSは、同一または類似の作用機序を有すると考えられ、同一または類似の遺伝子変化および効果をもたらすことが強く示唆された。
【実施例10】
【0136】
癌細胞株パネル実験
36株のヒト癌細胞パネルを用いて、E7820、E7070、CQS、LY186641、LY295501の細胞増殖抑制活性の相関を調べた。用いた癌細胞株は、DLD-1, HCT15, HCT116, HT29, SW480, SW620, WiDr(以上、ヒト大腸癌細胞株)、A427, A549, LX-1, NCI-H460, NCI-H522, PC-9, PC-10(以上、ヒト肺癌細胞株)、GT3TKB, HGC27, MKN1, MKN7, MKN28, MKN74(以上、ヒト胃癌細胞株)、AsPC-1, KP-1, KP-4, MiaPaCaII, PANC-1, SUIT-2(以上、ヒト膵臓癌細胞株)、BSY-1, HBC5, MCF-7, MAD-MB-231, MDA-MB-435, MDA-MB-468(以上、ヒト乳癌細胞株)、CCRF-CEM, HL60, K562, MOLT-4(以上、ヒト白血病細胞株)の36種類であり、全ての細胞は10%の胎児牛血清、100 units/mlのペニシリン、100 μg/mlのストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地を用いて5% CO2条件下37 ℃にて培養した(表1)。
【0137】
【表1】

【0138】
表1は、ヒト癌細胞株パネルにおけるヒト癌細胞株の種類、蒔きこみ細胞数および倍化時間を示す。
【0139】
表1に記載の細胞数で96ウェルマイクロプレート(平底)に蒔き(50 μl/well)、24時間後に3倍希釈系列の化合物を添加した(50 μl/well)。さらに72時間後にWST-8(10 μl/well)を添加し、450 nmの吸光度を測定した。最小二乗法により全36株の癌細胞に対する50 %増殖抑制阻害濃度を求め、そのパターンを各化合物間で比較した。相関の指標としては、Pearson's correlation coefficientsを用いた(Paull, K. D. et al. Display and analysis of patterns of differential activity of drugs against human tumor cell lines: development of mean graph and COMPARE algorithm. J. Natl. Cancer Inst. 1989, 81, 1088-1092; Monks, A. et al. Feasibility of a high-flux anticancer drug screen using a diverse panel of cultured human tumor cell lines. J. Natl. Cancer Inst. 1991, 83, 757-766.)。
【0140】
その結果、E7070、E7820、LY186641、LY295501およびCQSは、各癌細胞株に対する増殖抑制活性において、高い相関係数を示した(表2)。よって、本解析により、E7070、E7820、LY186641、LY295501およびCQSは、同一または類似の作用機序を有すると考えられ、同一または類似の遺伝子変化および効果をもたらすことが強く示唆された。
【0141】
【表2】

【0142】
表2は、ヒト癌細胞株パネルにおける化合物間(E7070、E7820、CQS、LY186641およびLY295501)の相関係数を示す。
【実施例11】
【0143】
E7070耐性株における交差耐性
本実施例では、E7070耐性株を用いて、E7820、LY186641、LY295501、LY-ASAPならびにCQSの細胞増殖抑制活性を評価した。HCT116-C9は、ヒト大腸癌由来HCT116(American Type Culture Collection, Manassas, VA, U.S.A.)から分離した亜株であり、このHCT116-C9をE7070存在下で培養し、E7070濃度を漸次的に上昇させることにより得たE7070耐性亜株がHCT116-C9-C1およびHCT116-C9-C4である(Molecular Cancer Therapeutics, 2002, 1, 275-286)。
【0144】
HCT116-C9、HCT116-C9-C1、HCT116-C9-C4の3細胞株を各々3000 cells/wellで96ウェルマイクロプレート(平底)に蒔き(50 μl/well)、24時間後に3倍希釈系列の化合物を添加した(50 μl/well)。さらに、72時間後にMTT法(Mossmann T., J. Immunol. Methods, 1983, 65, 55-63)により細胞増殖抑制活性を評価した。最小二乗法により各癌細胞に対する50 %増殖抑制阻害濃度を求めた。
【0145】
その結果、E7070の細胞増殖抑制活性は、HCT116-C9(C9)に対してIC50は0.127μMであった。これに対し、HCT116-C9-C1(C9C1)およびHCT116-C9-C4(C9C4)に対する活性はそれぞれIC50 = 31.9μM、26.9μMであり、E7070のC9C1およびC9C4に対する細胞増殖抑制活性が顕著に低下することが確認された(図13)。また、E7820、CQS、LY186641、LY295501、LY-ASAPの細胞増殖抑制活性については、HCT116-C9に対する活性がそれぞれIC50 = 0.080μM、1.73 μM、33.6 μM、10.9μM、1.63μMであったのに対し、HCT116-C9-C1およびHCT116-C9-C4に対する活性は、HCT116-C9-C1について、それぞれIC50 = 51.2μM、634 μM、134μM、111 μM、113 μMであり、HCT116-C9-C4について、それぞれIC50 = 52.8μM、517μM、138 μM、110 μM、90.3 μMであった。したがって、E7820、CQS、LY186641、LY295501、LY-ASAPの細胞増殖抑制活性については、C9に対する活性に比べ、C9C1およびC9C4に対する活性が顕著に低下していた(図13)。よって、E7070、E7820、LY186641、LY295501、LY-ASAPおよびCQSは、同一または類似の作用機序を有すると考えられ、同一または類似の遺伝子変化および効果をもたらすことが強く示唆された。
【実施例12】
【0146】
E7070耐性株における交差耐性
本実施例では、実施例11と全く同様にして、E7070耐性株を用いてLY573636の細胞増殖抑制活性をE7070と同時に評価した。
その結果、E7070の細胞増殖抑制活性は、HCT116-C9に対する活性に比べ(IC50 = 0.127 μM)、HCT116-C9-C1およびHCT116-C9-C4に対する活性(それぞれIC50 = 32.7 μM、28.0 μM)が顕著に低下することが再度確認された(図14)。また、LY573636の細胞増殖抑制活性も、HCT116-C9に対する活性に比べ(IC50 = 5.11 μM)、HCT116-C9-C1およびHCT116-C9-C4に対する活性(それぞれIC50 = 264 μM、240 μM)が顕著に低下していた(図14)。よって、LY573636は、E7070と同一または類似の作用機序を有すると考えられ、同一または類似の遺伝子変化および効果をもたらすことが強く示唆された。
これらの結果(実施例8〜12)から、E7070、E7820、LY186641、LY295501、LY-ASAP、LY573636もしくはCQSまたはこれらの組み合わせが、同一または類似の遺伝子変化ならびに同一または類似の作用および効果をもたらすことが明らかとなった。
【0147】
また、E7820は、実施例1の結果より、抗腫瘍活性を示し、実施例6の結果より血管正常化作用を有することが明らかになっており、また、実施例2〜5および7の結果より、E7820はKtransまたはPETもしくはSPECTによりスルホンアミド化合物の抗腫瘍効果を検査することが分かった。
よって、スルホンアミド化合物、好ましくはE7070、LY186641、LY295501、LY-ASAP、LY573636もしくはCQSまたはこれらの組み合わせの抗腫瘍効果は、KtransまたはPETもしくはSPECTを指標として検査し得ることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明により、スルホンアミド化合物に対する腫瘍の感受性を評価することができる。その結果、癌患者に対し、スルンアミド化合物の投与が有効か否かを判断した上で投与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)〜(V)から選択されるスルホンアミド化合物、もしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物に対する腫瘍組織の感受性を検査する方法であって、以下の工程:
(a) スルホンアミド化合物を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を測定し、
(b) 前記投与前後における測定値を比較し、
(c) 前記投与後の測定値が投与前の測定値と比較して増加したときは、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断する工程
を含む前記方法。
<スルホンアミド化合物>
一般式(I):
【化32】

[式中、
A環は、置換基を有していてもよい、単環式または二環式芳香環を表し、
B環は、置換基を有していてもよい、6員環式不飽和炭化水素またはヘテロ原子として窒素原子を1個含む不飽和6員ヘテロ環を表し、
C環は、置換基を有していてもよい、窒素原子を1または2個含む5員ヘテロ環を表し、
Wは、単結合または−CH=CH−を表し、
Xは、−N(R1)−または酸素原子を表し、
Yは、炭素原子または窒素原子を表し、
Zは、−N(R2)−または窒素原子を表し、
ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して同一または異なって水素原子または低級アルキル基を表す。]
で示される化合物、
一般式(II):
【化33】

[式中、Eは、−O−、−N(CH3)−、−CH2−、−CH2CH2−または−CH2O−を表し、
Dは、−CH2−または−O−を表し、
1aは、水素原子またはハロゲン原子を表し、
2aは、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表す。]
で示される化合物、
一般式(III):
【化34】

[式中、Jは、−O−または−NH−を表し、
1bは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいC1−C4アルキルチオ基、−CF3、−OCF3、−SCF3、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アジド基、−O(SO2)CH3、−N(CH32、水酸基、フェニル基、置換基を有するフェニル基、ピリジニル基、チエニル基、フリル基、キノリニル基またはトリアゾール基を表し、
2bは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−CF3、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいキノリニル基を表し、
3bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基を表し、
4bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し、R3bおよびR4bの少なくとも一つは、水素原子である)を表し、
5bは、水素原子 、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、−CF3またはニトロ基を表し、
6bは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し、R6bが置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基のとき、R5bは水素原子であり、R7bはハロゲン原子である)を表し、
7bは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基または−CF3(但し、R5bまたはR7bのいずれか一方が、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基であるか、あるいはR7bが、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基である場合には、R5bまたはR6bのいずれか一方が、水素原子である)を表す。]
で示される化合物、
式(IV):
【化35】

で示される化合物、および
式(V)
【化36】

で示される化合物。
【請求項2】
下記式(I)〜(V)から選択されるスルホンアミド化合物、もしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物に対する腫瘍組織の感受性を検査する方法であって、以下の工程:
(a) スルホンアミド化合物を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を測定し、
(b) 前記投与前後における測定値を分布解析して低領域、中領域および高領域に分類し、
(c) 以下の(c-1)および(c-2)の判断基準のいずれか一方に該当するときは、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断する工程
を含む前記方法。
<判断基準>
(c-1) 前記投与後の低領域の割合が投与前の低領域の割合と比較して減少し、または、前記投与後の中領域もしくは高領域の割合が投与前の中領域もしくは高領域の割合と比較して増加したとき
(c-2) 前記投与後の低領域の割合が投与前の低領域の割合と比較して減少し、かつ、前記投与後の中領域もしくは高領域の割合が投与前の中領域もしくは高領域の割合と比較して増加したとき
<スルホンアミド化合物>
一般式(I):
【化37】

[式中、
A環は、置換基を有していてもよい、単環式または二環式芳香環を表し、
B環は、置換基を有していてもよい、6員環式不飽和炭化水素またはヘテロ原子として窒素原子を1個含む不飽和6員ヘテロ環を表し、
C環は、置換基を有していてもよい、窒素原子を1または2個含む5員ヘテロ環を表し、
Wは、単結合または−CH=CH−を表し、
Xは、−N(R1)−または酸素原子を表し、
Yは、炭素原子または窒素原子を表し、
Zは、−N(R2)−または窒素原子を表し、
ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して同一または異なって水素原子または低級アルキル基を表す。]
で示される化合物、
一般式(II):
【化38】

[式中、Eは、−O−、−N(CH3)−、−CH2−、−CH2CH2−または−CH2O−を表し、
Dは、−CH2−または−O−を表し、
1aは、水素原子またはハロゲン原子を表し、
2aは、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表す。]
で示される化合物、
一般式(III):
【化39】

[式中、Jは、−O−または−NH−を表し、
1bは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいC1−C4アルキルチオ基、−CF3、−OCF3、−SCF3、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アジド基、−O(SO2)CH3、−N(CH32、水酸基、フェニル基、置換基を有するフェニル基、ピリジニル基、チエニル基、フリル基、キノリニル基またはトリアゾール基を表し、
2bは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−CF3、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいキノリニル基を表し、
3bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基を表し、
4bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し、R3bおよびR4bの少なくとも一つは、水素原子である)を表し、
5bは、水素原子 、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、−CF3またはニトロ基を表し、
6bは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し、R6bが置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基のとき、R5bは水素原子であり、R7bはハロゲン原子である)を表し、
7bは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基または−CF3(但し、R5bまたはR7bのいずれか一方が、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基であるか、あるいはR7bが、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基である場合には、R5bまたはR6bのいずれか一方が、水素原子である)を表す。]
で示される化合物、
式(IV):
【化40】

で示される化合物、および
式(V)
【化41】

で示される化合物。
【請求項3】
スルホンアミド化合物が、
1)N−(3−シアノ−4−メチル−1H−インドール−7−イル)−3−シアノベンゼンスルホンアミド
2)N−(3−シアノ−4−メチル−1H−インドール−7−イル)−6−クロロ-3-ピリジンスルホンアミド
3)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−4−スルファモイルベンゼンスルホンアミド
4)N−(5−ブロモ−3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
5)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−3−シアノベンゼンスルホンアミド
6)N−(4−ブロモ−1H−インドール−7−イル)−4−シアノベンゼンスルホンアミド
7)N−(4−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
8)N−(3−ブロモ−4−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
9)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−5−シアノ−2−チオフェンスルホンアミド
10)N−(4−ブロモ−3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−2−アミノ−5−ピリミジンスルホンアミド
から選択されるものである請求項 1または2に記載の方法。
【請求項4】
スルホンアミド化合物が、
【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

からなる群から選ばれるものである請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
Ktrans値はDCE-MRIで測定されたものである請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
血液環流値はSPECTまたはPETで測定されたものである請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
下記式(I)〜(V)から選択されるスルホンアミド化合物、もしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含む癌の治療薬であって、以下の工程:
(a) スルホンアミド化合物を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を測定し、
(b) 前記投与前後における測定値を比較し、
(c) 前記投与後の測定値が投与前の測定値と比較して増加したときは、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断する工程
により、感受性があると判断された被検者に対して投与するための前記治療薬。
<スルホンアミド化合物>
一般式(I):
【化48】

[式中、
A環は、置換基を有していてもよい、単環式または二環式芳香環を表し、
B環は、置換基を有していてもよい、6員環式不飽和炭化水素またはヘテロ原子として窒素原子 を1個含む不飽和6員ヘテロ環を表し、
C環は、置換基を有していてもよい、窒素原子を1または2個含む5員ヘテロ環を表し、
Wは、単結合または−CH=CH−を表し、
Xは、−N(R1)−または酸素原子を表し、
Yは、炭素原子または窒素原子を表し、
Zは、−N(R2)−または窒素原子を表し、
ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して同一または異なって水素原子または低級アルキル 基を表す。]
で示される化合物、
一般式(II):
【化49】


[式中、Eは、−O−、−N(CH3)−、−CH2−、−CH2CH2−または−CH2O− を表し、
Dは、−CH2−または−O−を表し、
1aは、水素原子またはハロゲン原子を表し、
2aは、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表す。]
で示される化合物、
一般式(III):
【化50】


[式中、Jは、−O−または−NH−を表し、
1bは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、置換基を 有していてもよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいC1−C4アルキルチオ基 、−CF3、−OCF3、−SCF3、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニ ル基、ニトロ基、アジド基、−O(SO2)CH3、−N(CH32、水酸基、フェニル基、置 換基を有するフェニル基、ピリジニル基、チエニル基、フリル基、キノリニル基またはトリアゾー ル基を表し、
2bは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−CF3、置換基を有していてもよいC1−C6 アルキル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニル基、置換基を有していて もよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していて もよいキノリニル基を表し、
3bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基を表し、
4bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し、R3bおよびR 4bの少なくとも一つは、水素原子である)を表し、
5bは、水素原子 、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、−CF 3またはニトロ基を表し、
6bは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し 、R6bが置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基のとき、R5bは水素原子であり、R7bは ハロゲン原子である)を表し、
7bは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基または−CF3(但し 、R5bまたはR7bのいずれか一方が、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基であるか、 あるいはR7bが、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基である場合 には、R5bまたはR6bのいずれか一方が、水素原子である)を表す。]
で示される化合物、
式(IV):
【化51】


で示される化合物、および
式(V)
【化52】


で示される化合物。
【請求項8】
下記式(I)〜(V)から選択されるスルホンアミド化合物、もしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含む癌の治療薬であって、以下の工程:
(a) スルホンアミド化合物を被検者に投与する前および投与した後の被検者の腫瘍組織におけるKtransまたは血液環流を測定し、
(b) 前記投与前後における測定値を分布解析して低領域、中領域および高領域に分類し、
(c) 以下の(c-1)および(c-2)の判断基準のいずれか一方に該当するときは、腫瘍組織はスルホンアミド化合物に対して感受性があると判断する工程
により、感受性があると判断された被検者に対して投与するための前記治療薬。
<判断基準>
(c-1) 前記投与後の低領域の割合が投与前の低領域の割合と比較して減少し、または、前記投与後の中領域もしくは高領域の割合が投与前の中領域もしくは高領域の割合と比較して増加したとき
(c-2) 前記投与後の低領域の割合が投与前の低領域の割合と比較して減少し、かつ、前記投与後の中領域もしくは高領域の割合が投与前の中領域もしくは高領域の割合と比較して増加したとき
<スルホンアミド化合物>
一般式(I):
【化53】

[式中、
A環は、置換基を有していてもよい、単環式または二環式芳香環を表し、
B環は、置換基を有していてもよい、6員環式不飽和炭化水素またはヘテロ原子として窒素原子 を1個含む不飽和6員ヘテロ環を表し、
C環は、置換基を有していてもよい、窒素原子を1または2個含む5員ヘテロ環を表し、
Wは、単結合または−CH=CH−を表し、
Xは、−N(R1)−または酸素原子を表し、
Yは、炭素原子または窒素原子を表し、
Zは、−N(R2)−または窒素原子を表し、
ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して同一または異なって水素原子または低級アルキル 基を表す。]
で示される化合物、
一般式(II):
【化54】


[式中、Eは、−O−、−N(CH3)−、−CH2−、−CH2CH2−または−CH2O− を表し、
Dは、−CH2−または−O−を表し、
1aは、水素原子またはハロゲン原子を表し、
2aは、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表す。]
で示される化合物、
一般式(III):
【化55】


[式中、Jは、−O−または−NH−を表し、
1bは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、置換基を 有していてもよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいC1−C4アルキルチオ基 、−CF3、−OCF3、−SCF3、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニ ル基、ニトロ基、アジド基、−O(SO2)CH3、−N(CH32、水酸基、フェニル基、置 換基を有するフェニル基、ピリジニル基、チエニル基、フリル基、キノリニル基またはトリアゾー ル基を表し、
2bは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−CF3、置換基を有していてもよいC1−C6 アルキル基、置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシカルボニル基、置換基を有していて もよいC1−C4アルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していて もよいキノリニル基を表し、
3bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C4アルコキシ基を表し、
4bは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し、R3bおよびR 4bの少なくとも一つは、水素原子である)を表し、
5bは、水素原子 、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、−CF 3またはニトロ基を表し、
6bは、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基(但し 、R6bが置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基のとき、R5bは水素原子であり、R7bは ハロゲン原子である)を表し、
7bは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基または−CF3(但し 、R5bまたはR7bのいずれか一方が、置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基であるか、 あるいはR7bが、ハロゲン原子または置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基である場合 には、R5bまたはR6bのいずれか一方が、水素原子である)を表す。]
で示される化合物、
式(IV):
【化56】


で示される化合物、および
式(V)
【化57】


で示される化合物。
【請求項9】
スルホンアミド化合物が、
1)N−(3−シアノ−4−メチル−1H−インドール−7−イル)−3−シアノベンゼンスルホンアミド
2)N−(3−シアノ−4−メチル−1H−インドール−7−イル)−6−クロロ-3-ピリジンスルホンアミド
3)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−4−スルファモイルベンゼンスルホンアミド
4)N−(5−ブロモ−3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
5)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−3−シアノベンゼンスルホンアミド
6)N−(4−ブロモ−1H−インドール−7−イル)−4−シアノベンゼンスルホンアミド
7)N−(4−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
8)N−(3−ブロモ−4−クロロ−1H−インドール−7−イル)−6−アミノ−3−ピリジンスルホンアミド
9)N−(3−ブロモ−5−メチル−1H−インドール−7−イル)−5−シアノ−2−チオフェンスルホンアミド
10)N−(4−ブロモ−3−クロロ−1H−インドール−7−イル)−2−アミノ−5−ピリミジンスルホンアミド
から選択されるものである請求項7または8に記載の治療薬。
【請求項10】
スルホンアミド化合物が、
【化58】

【化59】

【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

からなる群から選ばれるものである請求項7または8に記載の治療薬。
【請求項11】
Ktrans値はDCE-MRIで測定されたものである請求項7または8に記載の治療薬。
【請求項12】
血液環流値はSPECTまたはPETで測定されたものである請求項7または8に記載の治療薬。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−136435(P2012−136435A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83275(P2009−83275)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第67回 日本癌学会学術総会記事
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】