説明

腫瘍開始細胞およびその使用方法

単離および濃縮された腫瘍開始細胞集団、その調製方法、およびその使用。
【図6B】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、2009年3月27日に出願の米国仮出願第61/164,272号の優先権が主張されている。
【0002】
本発明は、一般に、癌幹細胞または腫瘍開始細胞とも呼ばれる腫瘍原性が高い細胞、その単離方法、および前記方法で使用するための腫瘍開始細胞マーカーに関する。より詳細には、本発明は、5T4発現が高レベルであり(5T4)、場合によりCD24発現が存在しないまたは低レベルであり(CD24−/低)、CD44発現が存在する(CD44)、腫瘍開始細胞に関する。開示した腫瘍開始細胞集団は、癌治療のための新規薬物および標的の同定、ならびに既存の抗癌薬の有効性の試験に有用である。
【背景技術】
【0003】
自己複製および分化を調節するシグナル伝達経路は、腫瘍内の細胞の不均質性に寄与する。自己複製および分化の様々な状態が、本質的に異なるレベルのin vivo腫瘍原性およびin vitroクローン原性を示す腫瘍部分集団および個々の腫瘍細胞によって明白に示されている。Loboら、Annu.Rev.Cell Dev.Biol.、2007、23:675〜699、Reyaら、Nature、2001、414:105〜111を参照されたい。新しい腫瘍モデルの開発が開始されており、細胞レベルでの腫瘍の不均質性の特徴づけが可能となっている。免疫不全マウスにおける固形腫瘍の移植片は、元の試料の組織学を反映しているが、血清中で培養した細胞系からの異種移植片では再現されない、豊かな構造を示す。規定の無血清培地および/または三次元マトリックス中で癌細胞を培養することで、血清を含む培地中で培養するよりも細胞の生理的特徴が保存される(Leeら、Cancer Cell、2006、9:391〜403)。腫瘍、異種移植片、および細胞系からの細胞の蛍光活性化細胞選別(FACS)により、特定の腫瘍部分集団の分子の特徴づけが容易になっている。
【0004】
多くの腫瘍では、特定の表面マーカーによって定義される細胞は、同じ腫瘍中の他の細胞よりも効率的に腫瘍を形成する。これらの細胞は、多能性腫瘍開始細胞、癌幹細胞、腫瘍開始細胞、および癌開始細胞とも呼ばれる。腫瘍開始細胞は造血系において最初に同定され(BonnetおよびDick、Nat.Med.、1997、3(7):730〜737)、それ以降、脳、乳房、結腸、頭頚部、肺、黒色腫、膵臓、および前立腺の腫瘍を含めた固形腫瘍において同定されている。VisvaderおよびLindeman、Nat.Rev.Cancer、2008、8:755〜768およびその中に引用されている参考文献を参照されたい。特定の腫瘍型では、同じ細胞表面マーカーの組を使用して、腫瘍開始細胞を新鮮な腫瘍試料、異種移植片、および細胞系から単離することができる。たとえば、Al−Hajjら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2003、100:3983〜3988、FilmoreおよびKuperwasser、Breast Cancer Res.、2008、10:R25、Hermannら、Cell Stem Cell、2007、1:313〜323、Matsuiら、Blood、2004、103:2332〜2336を参照されたい。いくつかの腫瘍型における腫瘍開始細胞のマーカーであるCD44は、腫瘍化において直接的な役割を有し、p53によって抑制されることが最近示された(Godarら、Cell、2008、134:62〜73)。
【0005】
腫瘍開始細胞は標準の治療に対して耐性を示す。たとえば、腫瘍開始細胞は化学療法を受けた乳癌患者の試料中で高度に濃縮されており、これにより、処置後の疾患の再発の説明が示唆されている(Yuら、Cell、2007、131:1109〜1123)。同様に、膠芽細胞腫中のCD133腫瘍開始細胞は、より蔓延しているCD133細胞を根絶させた照射に対して耐性があった(Baoら、Cancer Res.、2006、68:6043〜6048)。したがって、治療の状況において、腫瘍開始細胞の排除は、腫瘍の大部分を標的とするために使用するもの以外の標的化機構を必要とする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌における長期的な患者の生存を有意に増加させる処置を開発するためには、腫瘍の再発および転移を担う腫瘍開始細胞がこの疾患の重要な治療標的となる。この要求を満たすために、本発明は、新規および既存の抗癌薬の有効性を試験するために使用できる、腫瘍開始細胞の単離および濃縮された集団を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、単離および濃縮された腫瘍開始細胞集団を提供する。本発明の一態様では、単離された腫瘍開始細胞集団は、少なくとも90%の腫瘍開始細胞を含む腫瘍細胞集団に由来し、腫瘍開始細胞は、(i)同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも2倍高いレベルで5T4を発現し、(ii)腫瘍原性であり、(iii)遊走が可能であり、(iv)自己複製が可能であり、(v)非腫瘍原性細胞を含む腫瘍を生じる。本発明の別の態様では、腫瘍開始細胞および非腫瘍原性細胞を含む腫瘍細胞集団に由来する、濃縮された腫瘍開始細胞集団を提供し、腫瘍開始細胞は、(i)同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも2倍高いレベルで5T4を発現し、(ii)腫瘍原性であり、(iii)遊走が可能であり、(iv)自己複製が可能であり、(v)非腫瘍原性細胞を含む腫瘍を生じ、(vi)腫瘍細胞集団と比較して少なくとも2倍濃縮されている。また、単離または濃縮された腫瘍開始集団は、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも2倍低いレベルでCD24を発現していても、および/またはCD44を発現していてもよい。
【0008】
また、単離および濃縮された腫瘍開始細胞集団を調製する方法も提供する。たとえば、腫瘍開始細胞集団を単離または濃縮する代表的な方法には、(a)細胞の大多数が5T4を低レベルで発現し、細胞の少数が5T4を高レベルで発現する、解離した腫瘍細胞を提供するステップと、(b)解離した腫瘍細胞を、5T4と特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、(c)低レベルよりも少なくとも約2倍高い、高レベルの5T4発現を示す程度まで(b)の薬剤と特異的に結合する細胞を選択するステップとが含まれ、それにより、腫瘍開始細胞集団が単離または濃縮される。場合により、単離または濃縮された、5T4を発現する腫瘍開始細胞集団を調製する方法には、解離した腫瘍細胞を、CD44と特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、CD44の発現を示す程度まで薬剤と特異的に結合する細胞を選択するステップとの、追加のステップが含まれる。場合により、単離または濃縮された、5T4を発現する腫瘍開始細胞集団を調製する方法には、解離した腫瘍細胞を、CD24と特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約5倍低い、低レベルのCD24発現を示す程度まで薬剤と特異的に結合する細胞を選択するステップとも含まれ得る。代替として、腫瘍開始細胞集団は、原発性腫瘍細胞を無血清条件下で培養することによって濃縮することができる。本発明のさらに別の代表的な方法では、5T4を発現する腫瘍開始細胞集団を単離または濃縮することには、解離した腫瘍細胞を、CD24と特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約5倍高い、高レベルのCD24発現を示す程度まで薬剤と特異的に結合する細胞を枯渇させるステップとが含まれ得る。
【0009】
さらに、開示した単離または濃縮された腫瘍開始細胞集団を用いた、抗癌薬または候補抗癌薬の有効性を試験する方法を提供する。たとえば、そのような方法には、(a)単離または濃縮された腫瘍開始細胞集団を提供するステップと、(b)腫瘍開始細胞を抗癌薬または候補抗癌薬と接触させるステップと、(c)腫瘍開始細胞を抗癌薬または候補抗癌薬と接触させた後の、腫瘍開始細胞の腫瘍形成能の変化を観察するステップとが含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】CD24−/低CD44細胞表現型がH460T非小細胞肺癌系(NSCLC)中の腫瘍開始細胞を特徴づけることを示す図である。CD24−/低CD44細胞は「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞は「CD24」と表示する。CD24およびCD44の発現を用いたフローサイトメトリー分析の結果を示す。フローサイトメトリーならびに抗CD24および抗CD44抗体を用いた標識によって、明確に区別できるH460Tの集団が明らかとなった。
【図1B】CD24−/低CD44細胞表現型がH460T非小細胞肺癌系(NSCLC)中の腫瘍開始細胞を特徴づけることを示す図である。CD24−/低CD44細胞は「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞は「CD24」と表示する。CD24−/低CD44細胞またはCD24CD44細胞の皮下移植を受けたマウスを示す。矢印は移植の部位である。
【図1C】CD24−/低CD44細胞表現型がH460T非小細胞肺癌系(NSCLC)中の腫瘍開始細胞を特徴づけることを示す図である。CD24−/低CD44細胞は「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞は「CD24」と表示する。図1Bの観察の定量分析の結果を示す折れ線グラフである。値は、平均腫瘍測定値±SEM(標準誤差)を示す。
【図1D】CD24−/低CD44細胞表現型がH460T非小細胞肺癌系(NSCLC)中の腫瘍開始細胞を特徴づけることを示す図である。CD24−/低CD44細胞は「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞は「CD24」と表示する。H460T細胞中のCD44発現に基づいたCD44の腫瘍化を示す折れ線グラフである。CD24−/低CD44およびCD24−/低CD44細胞を選別し、マウス内に皮下移植した。値は、平均腫瘍測定値±SEMを示す。
【図1E】CD24−/低CD44細胞表現型がH460T非小細胞肺癌系(NSCLC)中の腫瘍開始細胞を特徴づけることを示す図である。CD24−/低CD44細胞は「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞は「CD24」と表示する。選別した集団のスフェロイドの成長を示す折れ線グラフである。FACSで単離したCD24−/低CD44+またはCD24CD44細胞を懸濁液中で5日間培養して、スフェロイドの形成を促進した。直径0.2mmのスフェロイドを24ウェルプレートの個々のウェルに移し、2週間にわたる経時変化を測定した。値は、平均スフェロイド体積±SD(平均の標準偏差)を示す。
【図1F】CD24−/低CD44細胞表現型がH460T非小細胞肺癌系(NSCLC)中の腫瘍開始細胞を特徴づけることを示す図である。CD24−/低CD44細胞は「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞は「CD24」と表示する。mTOR阻害剤CCI−779に対するCD24−/低CD44およびCD24−/低CD44集団の示差的応答を示す折れ線グラフである。
【図1G】CD24−/低CD44細胞表現型がH460T非小細胞肺癌系(NSCLC)中の腫瘍開始細胞を特徴づけることを示す図である。CD24−/低CD44細胞は「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞は「CD24」と表示する。トランスウェル遊走アッセイの結果を示す棒グラフである。CD24−/低CD44細胞は、血清に応答して効率的に遊走した。CD24−/低CD44値は、それぞれの実験についてCD24CD44に対して正規化した平均細胞数(±SD(n=4))を示す。
【図1H】CD24−/低CD44細胞表現型がH460T非小細胞肺癌系(NSCLC)中の腫瘍開始細胞を特徴づけることを示す図である。CD24−/低CD44細胞は「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞は「CD24」と表示する。フィブロネクチンでコーティングしたスライド上にスフェロイドを置いた72時間後の、CD24−/低CD44スフェロイドのフィブロネクチン上の効率的な遊走を示す顕微鏡写真である。
【図2A】H460T中のCD24−/低CD44細胞の多能性を示す図である。CD24−/低CD44細胞を「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞を「CD24」と表示する。3週間の培養後の、CD24−/低CD44細胞およびCD24CD44のフローサイトメトリー分析の結果を示す。CD24およびCD44発現に基づいて明確に区別できる集団が明らかとなる。
【図2B】H460T中のCD24−/低CD44細胞の多能性を示す図である。CD24−/低CD44細胞を「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞を「CD24」と表示する。選別したCD24−/低CD44細胞の代表的な腫瘍中のCD24およびCD44発現のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図2C】H460T中のCD24−/低CD44細胞の多能性を示す図である。CD24−/低CD44細胞を「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞を「CD24」と表示する。単一の選別したCD24−/低CD44またはCD24CD44細胞から確立したクローン系におけるCD24およびCD44発現のフローサイトメトリー分析の結果を示す。移行中のCD24−/低クローン中のCD24細胞の割合は、クローンに応じて10〜70%の範囲であった。それぞれのクローン中のCD24分布は、培養中で何カ月間も安定していた。
【図2D】H460T中のCD24−/低CD44細胞の多能性を示す図である。CD24−/低CD44細胞を「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞を「CD24」と表示する。図2Cに示したクローン系の腫瘍増殖を示す折れ線グラフである。CD24−/低細胞をCD24−/低クローンから選別し、CD24細胞をCD24クローンから選別した。値は、平均腫瘍測定値±SEMを示す。Trは移行中のクローンであり、Stは安定したクローンである。
【図2E】H460T中のCD24−/低CD44細胞の多能性を示す図である。CD24−/低CD44細胞を「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞を「CD24」と表示する。移行中のCD24−/低クローンからFACSで単離したCD24−/低およびCD24細胞の腫瘍増殖を示す折れ線グラフである。値は、平均腫瘍測定値±SEMを示す。
【図3A】CD24発現に基づいて選別したH460T細胞の多能性を示す図である。実験設計の模式図である。選別した細胞を2.5μMのCFSE(Invitrogen、米国カリフォルニア州Carlsbad)で標識し、十分に洗浄し、その後、別の選別した集団と共に親集団の比(1部のCD24−/低CD44対3部のCD24CD44)で播種した。2.5μMのCFSEは、この実験の時間経過にわたってH460T細胞の成長に対してわずかな影響しか与えなかった、または影響を与えなかった。3日後、培養物をCD24について分析し、初期集団をCFSEに基づいて識別することができた。
【図3B】CD24発現に基づいて選別したH460T細胞の多能性を示す図である。個々にまたは組み合わせて培養した、標識したおよび標識していない集団のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図3C】CD24発現に基づいて選別したH460T細胞の多能性を示す図である。図3Bに示す反復実験のヒストグラムを示す。CD24−/低CD44細胞からCD24CD44への移行は、細胞を単独で培養した、またはCD24CD44もしくはCD24−/低CD44細胞と共に同時培養した場合に比較可能であった。CD24CD44細胞を単独で培養した、またはCD24−/低CD44もしくはCD24CD44細胞と共に同時培養した場合に、CD24CD44表現型の安定性が観察された。
【図4A】CD24−/低が培養したHCC2429細胞中の腫瘍開始細胞を同定することを示す図である。CD24発現に基づいたHCC2429のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図4B】CD24−/低が培養したHCC2429細胞中の腫瘍開始細胞を同定することを示す図である。CD24−/低CD44またはCD24CD44HCC2429集団の示差的腫瘍原性を示す折れ線グラフである。値は、平均腫瘍測定値±SEMを示す。
【図4C】CD24−/低が培養したHCC2429細胞中の腫瘍開始細胞を同定することを示す図である。分別の2週間後のCD24−/低CD44またはCD24CD44集団のフローサイトメトリー分析の結果を示す。培養したCD24−/低CD44細胞はCD24CD44へと移行することができるが、CD24CD44はCD24−/低CD44細胞へと移行しない。
【図5】CD24−/低CD44およびCD24CD44細胞から調製したmRNA転写物の3つ組試料とハイブリダイズさせたAffymetrix GENECHIP(登録商標)オリゴヌクレオチドアレイ上のCD24 mRNAレベルを示す棒グラフである。
【図6A】癌胎児性タンパク質5T4(TPBG)がH460T多能性腫瘍開始細胞中で発現されることを示す図である。CD24−/低CD44+およびCD24CD44細胞から調製したmRNA転写物とハイブリダイズさせたAffymetrix GENECHIP(登録商標)オリゴヌクレオチドアレイ上の5T4(TPBG)mRNAレベルを示す棒グラフである。値は、3つ組試料の平均±SDを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも90%の腫瘍開始細胞を含む腫瘍細胞集団に由来する単離された腫瘍開始細胞集団であって、前記腫瘍開始細胞が、(i)同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも2倍高いレベルで5T4を発現し、(ii)腫瘍原性であり、(iii)遊走が可能であり、(iv)自己複製が可能であり、(v)非腫瘍原性細胞を含む腫瘍を生じる、単離された腫瘍開始細胞集団。
【請求項2】
少なくとも95%の腫瘍開始細胞を含む、請求項1に記載の単離された腫瘍開始細胞集団。
【請求項3】
腫瘍開始細胞が、それが由来する腫瘍細胞集団の約50%未満、たとえば、それが由来する腫瘍細胞集団の約33%未満、約25%未満、約15%未満、または約10%未満を構成する、請求項1に記載の単離された腫瘍開始細胞集団。
【請求項4】
腫瘍開始細胞および非腫瘍原性細胞を含む腫瘍細胞集団に由来する濃縮された腫瘍開始細胞集団であって、前記腫瘍開始細胞が、(i)同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも2倍高いレベルで5T4を発現し、(ii)腫瘍原性であり、(iii)遊走が可能であり、(iv)自己複製が可能であり、(v)非腫瘍原性細胞を含む腫瘍を生じ、(vi)前記腫瘍細胞集団と比較して少なくとも2倍濃縮されている、濃縮された腫瘍開始細胞集団。
【請求項5】
腫瘍開始細胞が、前記腫瘍細胞集団と比較して少なくとも5倍、たとえば、前記腫瘍細胞集団と比較して少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍濃縮されている、請求項4に記載の濃縮された腫瘍開始細胞集団。
【請求項6】
同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも5倍高い、たとえば、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも10倍高いレベルで5T4を発現する、請求項1に記載の単離された腫瘍開始細胞集団または請求項4に記載の濃縮された腫瘍開始細胞集団。
【請求項7】
同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも5倍低いレベルでCD24をさらに発現する、および/またはCD44をさらに発現する、請求項1に記載の単離された腫瘍開始細胞集団または請求項4に記載の濃縮された腫瘍開始細胞集団。
【請求項8】
肺腫瘍に由来する、請求項1に記載の単離された腫瘍開始細胞集団または請求項4に記載の濃縮された腫瘍開始細胞集団。
【請求項9】
単離された腫瘍開始細胞集団の約10個以下の細胞の部分集団が、触知可能な腫瘍を形成する能力を有する、請求項1に記載の単離された腫瘍開始細胞集団または請求項4に記載の濃縮された腫瘍開始細胞集団。
【請求項10】
(a)細胞の大多数が5T4を低レベルで発現し、細胞の少数が5T4を高レベルで発現する、解離した腫瘍細胞を提供するステップと、
(b)前記解離した腫瘍細胞を、抗5T4抗体などの5T4と特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、
(c)前記低レベルよりも少なくとも約2倍高い、高レベルの5T4発現を示す程度まで(b)の薬剤と特異的に結合する細胞を選択するステップと
を含み、それにより、腫瘍開始細胞集団が単離または濃縮される、腫瘍開始細胞集団を単離または濃縮する方法。
【請求項11】
前記単離または濃縮された腫瘍開始細胞集団が少なくとも95%の腫瘍開始細胞を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
腫瘍開始細胞集団が、腫瘍開始細胞中で、解離した腫瘍細胞と比較して少なくとも2倍、たとえば、解離した腫瘍細胞と比較して少なくとも5倍または少なくとも10倍濃縮される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
解離した腫瘍細胞が肺癌細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
細胞を選択するステップが、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別、パニング、親和性カラム分離、または磁気選択によって行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
(d)前記解離した腫瘍細胞を、抗CD44抗体などのCD44と特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、
(e)CD44の発現を示す程度まで(d)の薬剤と特異的に結合する細胞を選択するステップと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
(d)前記解離した腫瘍細胞を、抗CD24抗体などのCD24と特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、
(e)同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約5倍低い、低レベルのCD24発現を示す程度まで(d)の薬剤と特異的に結合する細胞を選択するステップと
をさらに含む、請求項10または15に記載の方法。
【請求項17】
(d)前記解離した腫瘍細胞を、抗CD24抗体などのCD24と特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、
(e)同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約5倍高い、高レベルのCD24発現を示す程度まで(d)の薬剤と特異的に結合する細胞を枯渇させるステップと
をさらに含む、請求項10または15に記載の方法。
【請求項18】
(d)前記解離した腫瘍細胞を、腫瘍細胞によって発現される分化マーカーと特異的に結合する1つまたは複数の薬剤と接触させるステップと、
(e)(d)の1つまたは複数の薬剤と特異的に結合する細胞の腫瘍開始細胞集団を枯渇させるステップと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
請求項10から18のいずれか一項に記載の方法に従って単離および調製された、単離または濃縮された腫瘍開始細胞集団。
【請求項20】
(a)請求項1から9または19のいずれか一項に記載の、単離または濃縮された腫瘍開始細胞集団を提供するステップと、
(b)前記腫瘍開始細胞を抗癌薬または候補抗癌薬と接触させるステップと、
(c)前記腫瘍開始細胞を抗癌薬または候補抗癌薬と接触させた後の、腫瘍開始細胞の腫瘍形成能の変化を観察するステップと
を含む、抗癌薬または候補抗癌薬の有効性を試験する方法。

【図6B】癌胎児性タンパク質5T4(TPBG)がH460T多能性腫瘍開始細胞中で発現されることを示す図である。培地中で成長させた、またはビヒクルもしくはオールトランス型レチノイン酸で処理したCD24−/低CD44+およびCD24CD44細胞中の5T4発現を検出するための、免疫ブロット分析の結果を示す。
【図7A】未分化および分化した87426初代培養細胞に関連する遺伝子発現プロファイルを示す図である。成長(左)および気液界面での分化(右)を促進する条件下でのNSCLCの87426初代培養物の顕微鏡写真を示す。スケールバーは200μMである。
【図7B】未分化および分化した87426初代培養細胞に関連する遺伝子発現プロファイルを示す図である。分化中の示した時点での5T4発現を検出するための、免疫ブロット分析の結果を示す。
【図7C】未分化および分化した87426初代培養細胞に関連する遺伝子発現プロファイルを示す図である。成長または分化の条件下で初代培養肺癌細胞から調製したmRNA転写物とハイブリダイズさせたAffymetrix GENECHIP(登録商標)オリゴヌクレオチドアレイ上のmRNAレベルを示す。値は平均±SDを表す。FN1はフィブロネクチンであり、VIMはビメンチンである。
【図7D】未分化および分化した87426初代培養細胞に関連する遺伝子発現プロファイルを示す図である。細胞系培養物(H460T)および初代培養物(87426A1)の腫瘍モデル中の遺伝子発現を比較するための、遺伝子プロファイリング実験の結果を示す。実施例3を参照されたい。H460Tデータ組においてノイズレベルを超える遺伝子の発現の差異を比較した。統計的分析により偽発見率0.0015が得られた。
【図7E】未分化および分化した87426初代培養細胞に関連する遺伝子発現プロファイルを示す図である。分化の0、12、および24日目における87426細胞の無血清初代培養物中のCD24およびCD44のmRNAレベルを示す棒グラフである。培養物を、細胞を気液界面に曝さずに、BEBM成長培地中で維持したか、または50nMのレチノイン酸および1mMのCaClを含有するCnT−23培地中で12および24日間分化させた。
【図7F】未分化および分化した87426初代培養細胞に関連する遺伝子発現プロファイルを示す図である。図7Dに示した実験の2つ組試料中のCD24およびCD44発現の分布を示す。単層培養物としての12日間の分化後、細胞表面のCD24発現のレベルが増加し、24日目まで保持された。CD44発現の細胞表面レベルは12日目までに減少し、24日間の分化によってさらに低下した。
【図7G】未分化および分化した87426初代培養細胞に関連する遺伝子発現プロファイルを示す図である。分化の0、12、および24日目における87426細胞の無血清初代培養物中の血管形成因子のmRNAレベルを示す棒グラフである。mRNAのレベルは、実施例6に記載の遺伝子発現プロファイリングを用いて決定した。
【図8A】NSCLC一次移植異種移植片中の異種5T4発現を示す図である。37622系からの解離した異種移植片(左パネル)、無血清培地中の37622異種移植片から確立した培養細胞(中央パネル、5週間の培養後に示す)、および無血清培養物の移植した細胞の異種移植片(右パネル)中の5T4発現のフローサイトメトリー分析を示す。
【図8B】NSCLC一次移植異種移植片中の異種5T4発現を示す表である。解離した37622または60257異種移植片の5T4または5T4細胞を移植した動物における腫瘍発生率を示す(#1、#2は反復実験を示す)。
【図9A】Sox−2がCD24−/低細胞の分化を誘発することを示す図である。CD24−/低クローンから調製した転写物とハイブリダイズさせたAffymetrix GENECHIP(登録商標)オリゴヌクレオチドアレイのSox−2 mRNAレベルを示す棒グラフである。
【図9B】Sox−2がCD24−/低細胞の分化を誘発することを示す図である。Sox−2−Flag、Sox−11−Flag、空のベクター、またはDNAなしで形質移入した安定したCD24−/低クローン中のSox−2およびSox−11の転写物を検出するための、免疫ブロット分析の結果を示す。細胞を形質移入の24時間後に収集し、抗Flag(上部)または抗β−アクチン抗体を用いた免疫ブロットに供した。
【図9C】Sox−2がCD24−/低細胞の分化を誘発することを示す図である。Sox−2−Flag、Sox−11−Flag、空のベクター、またはDNAなしで形質移入した安定したCD24−/低クローン中の、3週間培養した後のCD24のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図9D】Sox−2がCD24−/低細胞の分化を誘発することを示す図である。それぞれの試料中のCD24細胞のパーセンテージを示す、図9Cに示したデータのヒストグラムを示す。
【図10A】抗5T4−カリチアマイシンのコンジュゲートに対するCD24−/低CD44細胞の感度を示す図である。CD24−/低CD44細胞を「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞を「CD24」と表示する。4日間のMTSアッセイの結果を示す折れ線グラフである。十字線は、遊離カリチアマイシンに対する感度を示す。
【図10B】抗5T4−カリチアマイシンのコンジュゲートに対するCD24−/低CD44細胞の感度を示す図である。CD24−/低CD44細胞を「CD24−/低」と表示し、CD24CD44細胞を「CD24」と表示する。クローン原性アッセイの結果を示す折れ線グラフである。十字線は、遊離カリチアマイシンに対する感度を示す。
【図11】H460T親細胞系よりも高い発現を示したH460Tクローン系24N−26における、5T4および5T4細胞の腫瘍増殖を示す折れ線グラフである。細胞を5T4発現に基づいて選別し、マウスに皮下移植した。値は、平均腫瘍測定値±SEMを示す。
【図12A】抗5T4抗体−カリチアマイシンのコンジュゲートで処理した一次移植異種移植片の腫瘍体積の退縮を示す図である。菱形はビヒクルであり、四角は抗5T4−カリチアマイシンのコンジュゲートであり、丸は抗CD33−カリチアマイシンのコンジュゲートであり、三角形はシスプラチンであり、アスタリスク()はp<0.05である。抗5T4抗体−カリチアマイシンのコンジュゲートで処理した後の、37622異種移植片の腫瘍体積の退縮を示す折れ線グラフである。ステージング後の1、5、および9日目に、動物に抗5T4抗体−カリチアマイシンのコンジュゲートを投与した。値は、平均腫瘍体積±SEMを示す。
【図12B】抗5T4抗体−カリチアマイシンのコンジュゲートで処理した一次移植異種移植片の腫瘍体積の退縮を示す図である。菱形はビヒクルであり、四角は抗5T4−カリチアマイシンのコンジュゲートであり、丸は抗CD33−カリチアマイシンのコンジュゲートであり、三角形はシスプラチンであり、アスタリスク()はp<0.05である。抗5T4抗体−カリチアマイシンのコンジュゲートで処理した後の、60274異種移植片の腫瘍体積の退縮を示す折れ線グラフである。ステージング後の1、5、および9日目に、動物に抗5T4抗体−カリチアマイシンのコンジュゲートを投与した。値は、平均腫瘍体積±SEMを示す。
【図12C】抗5T4抗体−カリチアマイシンのコンジュゲートで処理した一次移植異種移植片の腫瘍体積の退縮を示す図である。菱形はビヒクルであり、四角は抗5T4−カリチアマイシンのコンジュゲートであり、丸は抗CD33−カリチアマイシンのコンジュゲートであり、三角形はシスプラチンであり、アスタリスク()はp<0.05である。抗5T4抗体−カリチアマイシンのコンジュゲートで処理した後の、60274異種移植片の腫瘍体積の退縮を示す折れ線グラフである。ステージング後の1、5、および9日目に、動物に抗5T4抗体−カリチアマイシンのコンジュゲートを投与した。値は、平均腫瘍体積±SEMを示す。
【図13】NSCLC一次移植系37622、60274、および60257の複数の腫瘍(T1、T2、T3)の転写物とハイブリダイズさせたAffymetrix GENECHIP(登録商標)オリゴヌクレオチドアレイ上の5T4(TPBG)mRNAレベルを示す棒グラフである。37622異種移植片はヌードマウスのものであり、60274および60257異種移植片はnod−scidマウスのものであった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、癌胎児性抗原5T4を発現し、場合によりCD44および低レベルのCD24も発現する腫瘍開始細胞の予測的同定の方法を提供する。これらの細胞は、in vitroおよびin vivoで腫瘍原性が高く、自己複製し、遊走が可能であり、分化する能力を有する。また、開示した腫瘍開始細胞集団は、アポトーシス耐性を示し、癌の再発および転移に寄与し得る。また、腫瘍開始細胞集団を単離する方法および集団中で腫瘍開始細胞を濃縮する方法も提供する。さらに、新規腫瘍開始細胞マーカーを提供する。
【0012】
本明細書中に開示する腫瘍開始細胞集団は、腫瘍の増殖、再発、および転移に対する治療剤の効果を研究するために有用である。単離された腫瘍開始細胞は、腫瘍開始細胞を標的とする抗体を作製するために使用できる、ユニークな治療標的を同定するために使用できる。また、単離された腫瘍開始細胞は、in vitro活性に基づいてまたは非腫瘍原性細胞を含めた腫瘍集団の細胞毒性に基づいて選択した薬物が、in vivoでの疾患の根絶および再発の予防に成功する確率を向上させるためのスクリーニングアッセイにも使用することができる。また、患者から単離された腫瘍開始細胞を用いて、疾患の結果および/または既知の治療に対する感度を予想し得る。
【0013】
I.腫瘍開始細胞
腫瘍開始細胞とは、(1)増殖または発達の潜在性が低下した1つまたは複数の種類の子孫を生じることができる細胞(たとえば分化した細胞)、(2)大規模な増殖能力を有する細胞、および(3)自己複製または自己維持が可能な細胞を意味することが、当分野で知られている。たとえばPottenら、Development、1990、110:1001〜1020を参照されたい。したがって、腫瘍開始細胞は、正常な組織の機能中に失われる細胞を常に補充する、成体組織中に見つかる幹細胞(血液、内臓、乳管系、および皮膚の細胞が含まれる)の特性を共有する。
【0014】
幹細胞の分化による成体細胞の再生の最も知られている例は、造血系である。造血幹細胞および前駆細胞などの発達的に未成熟な前駆体が分子シグナルに応答して、様々な血液およびリンパ球の細胞種が徐々に形成される。また、幹細胞は、上皮組織(Slack、Science、2000、287:1431〜1433)および間葉組織(米国特許第5,942,225号)を含めた他の組織中にも見つかる。癌幹細胞は、たとえば、正常な幹細胞中の遺伝子損傷が原因で、または幹細胞および/もしくは分化した細胞の調節不全の増殖によって、これらの細胞種のうちの任意のものから生じ得る。
【0015】
本発明の腫瘍開始細胞は、腫瘍原性幹細胞、すなわち、大規模または無制限に増殖する能力を有し、大多数の癌細胞を生じさせる多能性細胞を含む、任意の癌に由来し得る。確立された腫瘍内では、ほとんどの細胞は大規模に増殖して新しい腫瘍を形成する能力を失っており、腫瘍開始細胞の小さな部分組が増殖し、それにより、腫瘍開始細胞を再生させ、腫瘍形成能を欠く腫瘍細胞を生じさせる。腫瘍開始細胞は非対称的および対称的に分裂し、可変性の増殖速度を示し得る。
【0016】
腫瘍開始細胞とは対照的に、非腫瘍原性腫瘍細胞は、免疫不全宿主内に移植した際に触知可能な腫瘍を形成することができず、同数の分画していない解離した癌細胞を同じ状況下で移植した場合、腫瘍開始細胞は同じ期間で触知可能な腫瘍を形成する。触知可能な腫瘍は、取り扱う、触診する、または感じることができる腫瘍として医学分野の技術者に知られている。また、非腫瘍原性細胞は、腫瘍開始細胞と比較して減少した遊走を示し、腫瘍開始細胞を生じることができず、分化マーカーの発現の増加も示す。
【0017】
腫瘍開始細胞を単離し得る代表的な癌には、肺、卵巣、結腸直腸、および胃の腫瘍などの5T4発現腫瘍を含めた、固形腫瘍によって特徴づけられた癌が含まれる。腫瘍開始細胞を単離し得るさらなる代表的な癌には、聴神経腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、腺癌、腺扁平上皮癌、副腎皮質癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、血管肉腫、星細胞腫、B細胞リンパ腫および白血病、基底細胞癌、類基底癌、胆管癌、胆管癌腫、膀胱癌、膀胱癌腫、脳腫瘍、乳癌、気管支原性癌、巨大病変NHLおよびワルデンストレームマクログロブリン血症、癌肉腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性白血球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、嚢胞腺癌、胚性癌腫、子宮内膜癌、内皮肉腫、上衣腫、上皮肉腫、食道癌、ユーイング肉腫、ユーイング腫瘍、線維肉腫、胆嚢癌、妊娠性栄養芽細胞腫瘍、巨細胞癌、神経膠腫、有毛細胞白血病、血管芽腫、乳児期および小児期の血管腫、造血悪性疾患、急性リンパ芽球性白血病を含めた造血悪性疾患、肝細胞癌、高悪性度免疫芽細胞NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み細胞NHL、ホジキンリンパ腫、それだけには限定されないが低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、中悪性度拡散性NHL、中悪性度/濾胞性NHLを含めた下咽頭癌、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ラブドイド表現型を有する大細胞癌、大細胞肺癌、咽頭癌、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、肺癌腫、リンパ管内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ上皮腫様癌、悪性黒色腫、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、単球性白血病、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄性白血病、粘液肉腫、上咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、乏突起神経膠腫、口腔癌、口咽頭癌、骨原性肉腫、骨肉腫、卵巣癌、上皮性卵巣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、膵癌、膵癌腫、乳頭腺癌、乳頭癌、副甲状腺癌、陰茎癌、松果体腫、下垂体腫瘍、前骨髄急性白血病、前立腺癌、前立腺癌、肺芽細胞腫、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、皮脂腺癌、精上皮腫、皮膚癌、小細胞肺癌、小細胞肺癌腫、小腸癌、小リンパ球性(SL)NHL、軟組織肉腫、扁平細胞癌、扁平細胞肺癌、胃癌、汗腺癌、滑膜腫、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰部癌、ならびにウィルムス腫瘍が含まれる。
【0018】
また、腫瘍開始細胞は、増殖性疾患、すなわち、細胞分裂または増殖の制御の欠如または不良によって特徴づけられた、障害および疾患の多様なクラスに関連する細胞にも由来し得る。増殖性疾患には、強皮症、関節炎、若年性関節炎、痛風性関節炎、および肝硬変を含めた様々な線維性状態などの、結合組織の過成長に関連する障害、ならびに再狭窄、動脈硬化症、および増殖性糖尿病性網膜症などの状態が含まれる。
【0019】
I.A.腫瘍開始細胞マーカー
腫瘍開始細胞は、陽性および陰性の分子マーカーを用いて選択し得る。腫瘍開始細胞陽性マーカー(すなわち、腫瘍開始細胞によって、非腫瘍原性細胞または分化した細胞と比較して上昇したレベルで発現されるマーカー)と結合する試薬は、腫瘍開始細胞の選択に使用することができる。また、腫瘍開始細胞陽性マーカーは、非腫瘍原性癌細胞、すなわち腫瘍開始細胞以外の癌細胞上にも存在していてよいが、そのレベルは低下している。広く発現されるマーカーは、腫瘍開始細胞中で発現レベルの測定可能な変化を示し得る、および/またはさらなる陽性もしくは陰性のマーカーと組み合わせて使用した場合に腫瘍開始細胞の分解能を提供し得る。腫瘍開始細胞陰性マーカー(すなわち、腫瘍開始細胞によって発現されないまたは測定可能に低下したレベルで発現されるマーカー)と結合する試薬は、集団中の腫瘍開始細胞ではない腫瘍細胞の排除に使用することができる。陽性および陰性の分子マーカーを用いた選択では、有用なマーカーには、生細胞が分別および追跡を受け入れるように、細胞表面上に発現されるものが含まれる。
【0020】
免疫ブロットなどの技法を用いて発現レベルを評価する場合、腫瘍開始細胞陽性マーカーは、典型的には、同じ起源の分化した細胞または非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約2倍高い、たとえば、少なくとも約4倍高い、または少なくとも約5倍高い、または少なくとも約8倍高い、または少なくとも約10倍高い、または少なくとも約15倍高い、または少なくとも約20倍高い、または少なくとも約50倍高い、または少なくとも約100倍高いレベルで発現される。フローサイトメトリーを用いて発現レベルを評価する場合、腫瘍開始細胞陽性マーカーは、典型的には、同じ起源の分化した細胞または非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約0.5log高い、たとえば、少なくとも約1log高い、少なくとも約1.5log高い、少なくとも約2log高い、または少なくとも約3log高いレベルで発現される。逆に、免疫ブロットなどの技法を用いて発現レベルを評価する場合、腫瘍開始細胞陰性マーカーは、典型的には、同じ起源の分化した細胞または非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約2倍少ない、たとえば、少なくとも約4倍少ない、または少なくとも約8倍少ない、または少なくとも約10倍少ない、または少なくとも約15倍少ない、または少なくとも約20倍少ない、または少なくとも約50倍少ない、または少なくとも約100倍少ないレベルで発現される。フローサイトメトリーを用いて発現レベルを評価する場合、腫瘍開始細胞陰性マーカーは、典型的には、同じ起源の分化した細胞または非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約0.5log低い、たとえば、少なくとも約1log低い、少なくとも約1.5log低い、少なくとも約2log低い、または少なくとも約3log低いレベルで発現される。
【0021】
本明細書中では、腫瘍開始細胞を肺から予測同定および単離するために単独でまたは組み合わせて使用することができる、5T4、CD44、およびCD24マーカーを開示する。5T4およびCD44の発現は陽性マーカーである一方で、CD24の発現は陰性マーカーである。したがって、本発明の腫瘍開始細胞には、高レベルの5T4を発現する(5T4)、中等度から高レベルのCD44を発現する(CD44)、および/またはCD24をわずかに発現するもしくは発現しない(CD24−/低)ものが含まれる。
【0022】
5T4癌胎児性抗原は、42kDaのグリコシル化されていないコアを含む、72kDaの高度にグリコシル化された膜貫通糖タンパク質である(Holeら、Br.J.Cancer、1988、57:239〜46、Holeら、Int.J.Cancer、1990、45:179〜84、PCT国際公開WO89/07947号、米国特許第5,869,053号)。ヒト5T4は、膀胱、乳房、子宮頚部、子宮内膜、肺、食道、卵巣、膵臓、胃、および精巣の癌を含めた数々の癌種で発現されており、胎盤中のシンシチウム栄養芽層以外では、正常組織には実質的に存在しない(たとえば、Southallら、Br.J.Cancer、1990、61:89〜95(immunohistological distribution of 5T4 antigen in normal and malignant tissues)、Miekeら、Clin.Cancer Res.、1997、3:1923〜1930(low intercellular adhesion molecule 1 and high 5T4 expression on tumor cells correlate with reduced disease−free survival in colorectal carcinoma patients)、Starzynskaら、Br.J.Cancer、1994、69:899〜902(prognostic significance of 5T4 oncofetal antigen expression in colorectal carcinoma)、Starzynskaら、Br.J.Cancer、1992、66:867〜869(expression of 5T4 antigen in colorectal and gastric carcinoma)、Jonesら、Br.J.Cancer、1990、61:96〜100(expression of 5T4 antigen in cervical cancer)、ConnorおよびStern、Int.J.Cancer、1990、46:1029〜1034(loss of MHC class−I expression in cervical carcinomas)、Aliら、Oral Oncology、2001、37:57〜64(pattern of expression of the 5T4 oncofetal antigen on normal,dysplastic and malignant oral mucosa)、PCT国際公開WO89/07947号、米国特許第5,869,053号を参照)。たとえば、5T4の発現を有さないと報告されている組織には、肝臓、皮膚、脾臓、胸腺、中枢神経系(CNS)、副腎、および卵巣が含まれる。局所的または低い5T4の発現を有すると報告されている組織には、肝臓、皮膚、脾臓、リンパ節、扁桃腺、甲状腺、前立腺、および精嚢が含まれる。弱い〜中等度の拡散した5T4の発現が、腎臓、肺、膵臓、咽頭、および胃腸管中で報告されている。高い5T4の発現を有すると報告されている唯一の組織はシンシチウム栄養芽層であり、また、5T4は正常な血清または妊娠した女性の血清にも存在しなかった(すなわち、レベルは<10ng/mlであった)。腫瘍中の5T4の過剰発現は疾患の進行と相関されており、5T4発現の評価が、予後不良を有する患者の同定に有用な手法として示唆されている。たとえば、Mulderら、Clin.Cancer Res.、1997、3:1923〜1930、Naganumaら、Anticancer Res.、200、22:1033〜1038、Starzynskaら、Br.J.Cancer、1994、69:899〜902、Starzynskaら、Eur.J.Gastroenterol.Hepatol.、1998、10:479〜484、Wrigleyら、Int.J.Gynecol.Cancer、1995、5:269〜274を参照されたい。
【0023】
CD44は、細胞の接着性、運動性、マトリックス分解、増殖、および/または細胞生存を変調することによって癌の転移に関与する膜貫通糖タンパク質である。たとえばMarhabaおよびZoller、J.Mol.Histol.、2004、35(3):211〜231を参照されたい。CD24抗原は、陰性マーカーとして使用される分化の細胞表面糖タンパク質マーカーである、すなわち、腫瘍開始細胞はCD24発現をわずかに示すまたは示さない(CD24−/低)。CD44およびCD24−/低を発現する細胞は、単独でまたは組み合わせて、乳房、結腸、頭頚部、および膵臓の腫瘍を含めた多くの腫瘍型中の腫瘍開始細胞を同定するために使用されている。たとえば、Al−Hajjら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2003、100:3983〜3988、Yuら、Cell、2007、131:1109〜1123、Dalerbaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2007、104:10158〜10163、Princeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2007、104:973〜978、およびLiら、Cancer Res.、2007、67:1030〜1037を参照されたい。
【0024】
本明細書中に記載の5T4およびCD44マーカーに加えて、肺癌における他の潜在的な腫瘍開始細胞陽性マーカーには、SLUG、フィブロネクチン(FN1)、およびビメンチン(VIM)(図7Cを参照)、血管内皮成長因子A(VEGF−A)、血管内皮成長因子B(VEGF−B)、血管内皮成長因子C(VEGF−C)、血小板由来成長因子(PDGF)、およびインスリン様成長因子−I(PIGF)(図7Fを参照)、CD133(Eramoら、Cell Death Differ.、2008、15:504〜514を参照)、ならびにCD117(Donnenbergら、J.Control Release、2007、122(3):385〜391)が含まれる。肺癌における代表的なさらなる潜在的な陽性腫瘍開始細胞マーカーには、トランスフォーミング成長因子βIII型受容体(TGFβRIII)、ネトリン受容体UNC5D(Unc5D)、パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質4(PNPLA4)、内向き整流性カリウムチャネル2(KCNJ2)、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)A受容体、ベータ3(GABRB3)、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPYD)、精子関連抗原1(SPAG1)、腸管細胞(MAK様)キナーゼ(ICK)、スタニオカルシン2(STC2)、デフェンシンβ1(Defβ1)、およびFLJ38736が含まれる。実施例5を参照されたい。
【0025】
さらなる陽性腫瘍開始細胞マーカーには、CD133(Baoら、Nature、2006、444:756〜760、O’Brienら、Nature、2007、445:106〜110、Ricci−Vitianiら、Nature、2007、445:111〜115、およびHermannら、Cell Stem Cell、2007、1:313〜323)、ALDH1(Yuら、Cell
2007、131:1109〜1123)、EpCAM(Dalerbaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2007、104:10158〜10163)、上皮に特異的な抗原(ESA、Liら、Cancer Res.、2007、67:1030〜1037)、CD90(Liら、Cancer Res.、2007、67:1030〜1037)、ABCG5(Schattonら、Nature、2008、451:345〜349)、ABCG2(Patrawalaら、Cancer Res.、2005、65(14):6207〜6219、Kondoら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、2004、101(3):781〜786)、VEGF受容体−1(VEGFR−1)、VEGFR−2、VEGFR−3、および血小板由来成長因子(PDGF)(図7FおよびAndersenら、J.Thorac.Oncol.、2009、[印刷前の電子出版]を参照)、ニューロンに特異的なエノラーゼ(NSE)、サイトケラチン19断片(CYFRA)、癌胎児性抗原(CEA)、扁平細胞癌抗原(SCC)、CA125、CA15.3およびTAG−72.3(Molinaら、Tumour Biol.、2008、29(6):371〜380を参照)、VLA−2、Tweak(TNF様アポトーシス弱誘導因子)、EphB2、EphB3、ヒトSca−1(BIG1)、CD34、β1インテグリン(CD29)、CD150、CXCR4、ならびに表1および2に記載の分化した初代培養物に逆相関されている遺伝子組のメンバーが含まれる。実施例3および5を参照されたい。
【0026】
低いまたは陰性の発現に基づいて腫瘍開始細胞の選択に使用し得るマーカーには、分化したまたは非腫瘍原性細胞中で発現される任意の遺伝子が含まれる。数々のそのような分子が当分野で知られている。本明細書中に記載のCD24−/低マーカーに加えて、さらなる肺癌の腫瘍開始細胞陰性マーカーには、MUC1/CD227およびサイトケラチン4(KRT4)が含まれる(図7CおよびKuemmelら、Lung Cancer、2009、63(1):98〜105を参照)。肺癌の腫瘍開始細胞の単離または濃縮に有用なさらなるマーカーには、CEA、SLX、CYFRA、SCC、プロガストリン放出ペプチド(ProGRP)が含まれる。KomagataおよびYondea、Gan To Kagaku Ryoho、2004、31(10):1609〜1613を参照されたい。低いまたは陰性の発現に基づいて腫瘍開始細胞の選択に使用し得るさらなる代表的なマーカーには、表1および2に記載の分化した初代培養物に相関されている遺伝子組のメンバーが含まれる。実施例3および5を参照されたい。
【0027】
また、上述のマーカーは、肺癌以外の癌における腫瘍開始細胞の同定にも使用することができる。
【0028】
結腸もしくは結腸直腸癌または他の癌の場合、腫瘍開始細胞の同定に有用であり得るさらなる陽性マーカーには、プロスタグランジンF2受容体調節タンパク質(PTGFRN)、CD166(または活性白血球接着分子、ALCAM)、CD164、CD82、トランスフォーミング成長因子ベータ受容体1(TGFBR1)、MET、エフリン−B2(EFNB2)、インテグリンアルファ6(ITGA6、CD49f)、奇形癌由来成長因子1(TDGFl)、ヘパリン結合EGF様成長因子(HBEGF)、ABCファミリートランスポーターABCC4、ABCファミリートランスポーターABCD3、腫瘍示差的発現遺伝子2(TDE2)、インテグリンベータ1(ITGB1)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー21(TNFRSF21)、CD81およびCD9(膜貫通−4スーパーファミリーのメンバー(TM4SFまたはテトラスパニン))、KIAA1324、癌胎児性抗原関連細胞接着分子6(CEACAM6)、FZD6およびFZD7(Wnt受容体)、BMPR1A、JAG1、インテグリンアルファV(ITGAV)、NOTCH2、SOX4、HES1、HES6、アトーナル(atonal)ホモログ1(ATOH1)、E−カドヘリン(CDH1)、Eph受容体B2(EPHB2)、v−myb骨髄芽球症ウイルス癌遺伝子ホモログ(MYB)、MYC、SOX9、PCGF1、PCGF4、PCGF5、ALDH1A1、ならびにSTRAPが含まれる。結腸または結腸直腸癌における腫瘍開始細胞の同定に有用なさらなる陰性マーカーは、T細胞因子4(TCF4)である。たとえばPCT国際公開WO07/053648号を参照されたい。
【0029】
本発明の特定の態様では、単離された腫瘍開始細胞集団は、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約2倍高いレベルで5T4を発現する大多数の細胞を含む。また、腫瘍開始細胞は、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約4倍高い、たとえば、少なくとも約5倍高い、または少なくとも約8倍高い、または少なくとも約10倍高い、または少なくとも約15倍高い、または少なくとも約20倍高い、または少なくとも約50倍高い、または少なくとも約100倍高いレベルで5T4を発現する場合もある。また、フローサイトメトリーを用いて5T4発現を評価する場合、腫瘍開始細胞は、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約0.5log高い、たとえば、少なくとも約1log高い、または少なくとも約1.5log高い、または少なくとも約2log高い、または少なくとも約3log高いレベルで5T4を発現する場合もある。
【0030】
本発明の別の態様では、腫瘍開始細胞集団は、同じ起源のCD24非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約2倍低いレベルでCD24を発現するする大多数の細胞を含む。また、腫瘍開始細胞は、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約4倍低い、たとえば、少なくとも約5倍低い、または少なくとも約8倍低い、または少なくとも約10倍低い、または少なくとも約15倍低い、または少なくとも約20倍低い、または少なくとも約50倍低い、または少なくとも約100倍低いレベルでCD24を発現する場合もある。また、フローサイトメトリーを用いてCD24発現を評価する場合、腫瘍開始細胞は、同じ起源のCD24非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約0.5log低い、たとえば、少なくとも約1log低い、または少なくとも約1.5log低い、または少なくとも約2log低い、または少なくとも約3log低いレベルでCD24を発現する場合もある。
【0031】
また、腫瘍開始細胞集団は、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約2倍高いレベルでCD44を発現する大多数の細胞を含むこともできる。また、腫瘍開始細胞は、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約4倍高い、たとえば、少なくとも約5倍高い、または少なくとも約8倍高い、または少なくとも約10倍高い、または少なくとも約15倍高い、または少なくとも約20倍高い、または少なくとも約50倍高い、または少なくとも約100倍高いレベルでCD44を発現する場合もある。また、フローサイトメトリーを用いてCD44発現を評価する場合、腫瘍開始細胞は、同じ起源の非腫瘍原性細胞よりも少なくとも約0.5log高い、たとえば、少なくとも約1log高い、または少なくとも約1.5log高い、または少なくとも約2log高い、または少なくとも約3log高いレベルでCD44を発現する場合もある。
【0032】
単離された腫瘍開始細胞集団は、その天然の環境(固形腫瘍中など)から取り出されており、また、それが天然で共に存在するが、細胞の単離を基づかせたマーカーを欠く他の細胞を少なくとも約75%含まない。たとえば、本明細書中に開示する単離された腫瘍開始細胞集団は、非腫瘍原性細胞を少なくとも約90%、または少なくとも約95%含まない。純度のパーセンテージ、または非腫瘍原性細胞を含まないパーセンテージとして記載した腫瘍開始細胞集団に言及した場合、細胞の幹細胞部分集団および全癌細胞集団は、典型的には生細胞として定量する。
【0033】
濃縮された細胞の集団は、分画していない癌細胞集団中のマーカーを有する細胞数と比較して増加した、分画した腫瘍開始細胞集団中の特定のマーカーを有する細胞数に基づいて定義することができる。また、これは、限界希釈頻度で腫瘍を形成する最小の細胞数としての腫瘍原性機能に基づいても定義し得る。濃縮された腫瘍開始細胞集団は、分画していない腫瘍細胞集団と比較して幹細胞数が約2倍濃縮されている、または約5倍以上濃縮されている、たとえば、約10倍以上濃縮されている、または約25倍以上濃縮されている、または約50倍以上濃縮されている、または約100倍以上濃縮されている場合がある。濃縮は、本明細書中に上述した腫瘍開始細胞の特性のうちの任意の1つ、たとえば、マーカー発現または腫瘍原性のレベルを用いて測定することができる。
【0034】
本発明は、開示した腫瘍開始細胞集団を単離する方法を提供する。たとえば、本方法は、(a)解離した腫瘍細胞を提供するステップと、(b)解離した腫瘍細胞を、5T4と特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、(c)5T4を発現しないまたは5T4を低レベルで発現する細胞よりも少なくとも約5倍高いレベルで(b)の薬剤と特異的に結合する細胞を選択するステップとを含むことができる。また、本方法は、本明細書中に開示するまたは他の様式で当分野において知られている陽性または陰性の腫瘍開始細胞マーカーのうちの任意のものに基づいた、さらなる選択も含むことができる。陰性マーカーを用いた選択を行う場合、たとえば、1つまたは複数の陰性マーカーを発現する細胞を排除する場合、腫瘍開始細胞は、分化した細胞または非腫瘍原性細胞と比較して低下したマーカー発現を示す細胞として同定し得る。5T4、CD24−/低、および/またはCD44腫瘍開始細胞集団を単離または濃縮するための代表的な方法を実施例1〜4に記載する。
【0035】
腫瘍開始細胞は、蛍光色素とコンジュゲートしたマーカー結合試薬ならびに無血清条件を用いた初代培養物を用いたFACSを含めた、当分野で知られている任意の適切な手段によって単離または濃縮することができる。固相に付着させることまたはそれから外すことを含めた、任意の他の適切な方法も本発明の範囲内にある。分離の手順には、抗体でコーティングした磁気ビーズを用いた磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、および固体マトリックス、たとえばプレートまたは他の好都合な支持体に付着した抗体を用いたパニングが含まれ得る。正確な分離を提供する技法には、複数の色チャネル、低角度かつ鈍角の光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネルなどの様々な度合の精巧性を有することができる蛍光活性化細胞選別器が含まれる。死細胞は、死細胞と結合する色素(ヨウ化プロピジウム(PI)または7−AADなど)を用いた選択によって排除し得る。選択された細胞の生存度に対して過度に有害でない任意の技法を用い得る。
【0036】
I.B.腫瘍開始細胞の機能的特性
本明細書中に記載のように、本発明の腫瘍開始細胞は、in vitroおよびin vivoで腫瘍原性であり、クローン原性などの腫瘍原性細胞の特徴を有しており、高度に増殖性の性質を有する。5T4、CD44、および/またはCD24−/低を発現し、コロニー形成および増殖について有意に濃縮されている、肺腫瘍細胞系の部分集団を同定した。実施例1〜4を参照されたい。腫瘍開始細胞を宿主動物内に注射することで、75%を超える場合で、たとえば、80%を超える場合で、または85%を超える、または90%を超える、または95%を超える場合で、または100%の場合で、腫瘍の確立の成功が一貫してもたらされた。
【0037】
本発明の癌幹細胞は、起源の腫瘍と同じ分化状態の腫瘍を生じさせる。たとえば、分化が乏しいおよび中等度である腫瘍から単離された腫瘍開始細胞は、それぞれ分化が乏しいまたは中等度である腫瘍をin vivoで生じさせる。生じる腫瘍の分子プロファイルも、腫瘍開始細胞の以前の選択に関わらず、起源の腫瘍に類似している。したがって、腫瘍開始細胞は、分化するまたは成熟癌集団の大部分を構成する非腫瘍原性細胞を生じさせる能力を示す。
【0038】
本発明の腫瘍開始細胞は、5T4および/またはCD24−/低CD44細胞は有するが、5T4および/またはCD24+/高CD44細胞は有さない、一貫して腫瘍を形成する能力によって実証されるように、自己複製する能力を有する。この特長により、腫瘍開始細胞が、繰り返す細胞分裂の全体にわたって多能性および高い増殖の潜在性を保持することが可能となる。
【0039】
本発明の腫瘍開始細胞は、5T4および/またはCD24−/低CD44細胞の遊走する能力によって実証されるように、遊走する能力を有する。トランスウェルアッセイでは、5T4および/またはCD24−/低CD44細胞は、5T4および/またはCD24+/高CD44細胞よりも効率的に、血清依存性の様式で遊走する。別のアッセイでは、5T4および/またはCD24−/低CD44細胞のスフェロイドはフィブロネクチンでコーティングしたスライドを横切って遊走したが、5T4および/またはCD24+/高CD44細胞のスフェロイドでは、24時間後に細胞の遊走はわずかしか観察されない、または観察されなかった。
【0040】
II.応用
本明細書中に開示する腫瘍開始細胞集団は、腫瘍増殖、再発、および転移に対する治療剤の研究に有用である。癌患者から単離された場合、特定の治療の有効性は、単離された集団のユニークな遺伝子および分子プロファイルに基づいて試験および/または予想することができる。したがって、開示した腫瘍開始細胞集団は、個別化された癌治療を開発する手段を提供する。
【0041】
本発明の一態様では、標的分子および/またはシグナル伝達経路を同定するために腫瘍開始細胞の遺伝子および分子の特長を記載する。したがって、本発明はまた、腫瘍開始細胞(濃縮された集団もしくは単離されたもの)、腫瘍開始細胞から抽出したポリヌクレオチド、または腫瘍開始細胞から抽出したタンパク質が直接または間接的に結合した、固相、たとえば表面を含有する、アレイまたはマイクロアレイも提供する。開示した腫瘍開始細胞集団に対して産生させたモノクローナルおよびポリクローナル抗体を、標準の技法を用いて作製し得る。腫瘍開始細胞の標的分子、および腫瘍開始細胞と特異的に結合する薬剤の同定は、大多数の非腫瘍原性細胞を標的とする現在の戦略を補足し、向上させるであろう。
【0042】
また、腫瘍開始細胞のゲノムDNAのマイクロアレイを一塩基多型(SNP)についてプローブして、細胞が前癌性または腫瘍原性となることを引き起こす遺伝子突然変異の部位を位置決定することもできる。また、腫瘍開始細胞の遺伝子および/または分子プロファイルを患者の予後診断にも使用し得る。たとえば、治療の失敗を予測する癌による死のサインを記載している、Glinskyら、J.Clin.Invest.、2005、115(6):1503〜1521を参照されたい。
【0043】
本発明の別の態様では、抗癌薬または候補抗癌薬の有効性は、単離された腫瘍開始細胞を試験化合物と接触させ、その後、本明細書中に記載した腫瘍開始細胞の特性の変化についてアッセイすることによって、試験することができる。たとえば、治療的組成物を培養中の腫瘍開始細胞に様々な用量で施用することができ、これらの細胞の応答を様々な時間で監視する。これらの細胞の物理的特徴は、細胞を顕微鏡観察によって観察することによって分析することができる。誘発された、または他の様式で変更された、核酸およびタンパク質の発現は、当分野で知られているように、たとえば、核酸のレベルをアッセイするためのハイブリダイゼーション技法およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、免疫組織化学、酵素的アッセイ、受容体結合アッセイ、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、電気泳動分析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた分析、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACs)などを用いて評価することができる。
【0044】
腫瘍開始細胞の腫瘍形成能を阻害または減少させる治療的化合物の能力は、腫瘍開始細胞を試験化合物と接触させ、応答に十分な期間を与え、その後、腫瘍開始細胞の成長をin vitroで評価することによって、試験することができる。あるいは、試験化合物に曝したあと、腫瘍開始細胞を宿主動物内に移植することができる(すなわち、異種移植モデルの準備であり、その後、これを腫瘍増殖、癌細胞のアポトーシス、動物の生存などについて監視する)。さらに別のスクリーニング様式では、試験化合物を異種移植宿主動物(すなわち、腫瘍開始細胞および/または生じた腫瘍を保有する動物)に投与する。アッセイし得るさらなる表現型には、細胞生存度、増殖速度、再生能力、および腫瘍開始細胞もしくは生じた非腫瘍原性癌細胞の細胞周期分布、または治療的結果に関連する任意の他の表現型が含まれる。
【0045】
試験化合物には、既知の薬物および候補薬物、たとえば、ウイルス、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、核酸、抗体、プロドラッグ、小分子(たとえば化学物質)、または、効果が有害、有益、もしくは他の様式であるかに関わらず、腫瘍細胞に対して効果を有し得る任意の他の物質が含まれる。試験化合物には、それだけには限定されないが、2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン、2−エチルヒドラジド、2−ピロリノ−ドキソルビシン、5−FU(5−フルオロウラシル)、6−アザウリジン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、カンプトテシン、サルコジクチン、ABRAXANE(登録商標)、ABT−510(Abbott Labs)、アセグラトン、アセトゲニン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)、AG1478、AG1571(SU5271、Sugen)、アルドホスファミドグリコシド、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アミノプテリン、アムサクリン、アンシタビン、アンドロゲン、アンジオスタチン(EntreMed)、Angizyme(AstraZeneca)、アングイジン、代謝拮抗剤、アラビノシド(「Ara−C」)、アウスラマイシン、アザシチジン、アザセリン、アジリジン、ベンゾドーパ、ベストラブシル、ベバシズマブ、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)Genentech)、ベキサロテン、ビサントレン、ブレオマイシン、BMS−275291(Bristol Myers Squib)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)Millenium Pharm.)、ブリオスタチン、ブスルファン、カクチノマイシン、カリスタチン、カルステロン、カペシタビン、カラビシン、カルボプラチン、カルボコン、カルミノマイシン、カルモフル、カルムスチン、カルジノフィリン、CC−1065、クロラムブシル、クロランブシル、クロルナファジン、クロロゾトシン、コロホスファミド、クロモマイシニス、シスプラチン、Combrestatin(Oxigene)、CPT−11、クリプトフィシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤エクシスリンド、シクロホスファミド、シクロスホスファミド、シタラビン、CYTOXAN(登録商標)、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノマイシン、ダウノルビシン、デフォファミン、デメコルシン、デオキシドキソルビシン、デトルビシン、ジアジコン、ジデオキシウリジン、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、ドセタキセル、ドラスタチン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュオカルマイシン、エダトラキセート、エダトレキサート、エリュテロビン、エルフォルミチン、酢酸エルプチニウム、エネジイン抗生物質、エニルウラシル、エノシタビン、エピルビシン、エピチオスタノール、エルロチニブ(tarceva)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharm.)、エソルビシン、エストラムスチン、エチレンイミン、エトグルシド、エトポシド、エトポシド(VP−16)、フロキシウリジン、フルダラビン、デノプテリンなどの葉酸類似体、フロリン酸などの葉酸補充剤、フォテムスチン、、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)AstraZeneca)、ガシトシン、硝酸ガリウム、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)AstraZeneca)、GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン)、ヒドロキシ尿素、イバンドロネート、イダルビシン、イホスファミド、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)Novartis)、インプロスルファンおよびピポスルファン、イリノテカン、ラパチニブ(GSK572016、レンチナン、レトロゾール(FEMARA(登録商標)Novartis)、ロイコボリン、ロムスチン、ロナファルニブ(SCH66336)、ロニダイニン、ロソキサントロン、マンノムスチン、マルセロマイシン、マリマスタット(British Biotech)、メイタンシンおよびアンサミトシンなどのメイタンシノイド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、メピチオスタン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)、メチラメラミン(methylamelamines)、メツレドーパ、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシンC、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、モピダンモール、モルホリノ−ドキソルビシン、ミコフェノール酸、MYLOTARG(登録商標)(ゲムツズマブオゾガマイシン、Wyeth)、NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン)、Neovastat(Aeterna Zentaris)、ニムスチン、ニトラエリン、ナイトロジェンマスタード、ノガラマイシン、novantrone、novembichin、オリボマイシン、またはビノレルビン、ELOXATIN(登録商標)(オキサリプラチン、Sanofi)、パクリタキセル、パンクラチスタチン、ペメトレキセド二ナトリウム(ALIMTA(登録商標)、ペントスタチン、ペプロマイシン、フェナメット、フェネステリン、ピポブロマン、ピラルビシン、ポドフィリン酸、ポトフィロマイシン、プレドニムスチン、プロカルバジン、プロテアソーム阻害剤、プテロプテリン、PTK787/ZK222584(Novartis)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ラニムヌスチン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラゾキサン、レチノイン酸、レチノイド、リゾキシン、ロドルビシン、ロリジンA、シゾフラン、ソラフェニブ(BAY43 9006、Bayer)、スピロゲルマニウム、スポンジスタチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、SU5416、SU6668(Sugen)、スニチニブ(Pfizer)、SUTENT(登録商標)(SU11248、Pfizer)、T−2毒素、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル、Bristol−Myers Squibb)、TAXOTERE(登録商標)(ドキセタキセル、Rhone−Poulenc Rorer)、テムシロリムス(TORISEL(登録商標)、Wyeth)、テニポシド、テヌアゾン酸、テストラクトン、抗副腎剤、サリドマイド(Celgene)、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、トポテカン、トリアジコン、トリコテセン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、トリロスタン、トリメチロメラミン、トリメトレキセート、トロホスファミド、ツベルシジン、ウベニメックス、ウラシルマスタード、ウレドーパ、ウレタン、ワクチン、VEGF−Trap(Regeneron Pharm)、ベラキュリンA、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、Vitaxin II(MedImmune)およびシレンギチド(Merck KgaA)、Xeloda、ZD6474(ZACTIMA(登録商標)AstraZeneca)、ジノスタチン、ゾルビシン、ならびに上記のうちの任意のものの薬学的に許容できる塩、酸、誘導体および抗体コンジュゲートが含まれる。
【0046】
上述の応用のうちの任意のもの、または他の応用において使用するために、使用が必要になるまで本発明の腫瘍開始細胞を低温保存し得る。たとえば、細胞を、特定の低温保存剤を含有する等張溶液、好ましくは細胞培地中に懸濁させることができる。そのような低温保存剤には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロールなどが含まれる。これらの低温保存剤は、5〜15%、たとえば8〜10%の濃度で使用する。細胞は、−10℃〜−150℃、たとえば−20℃〜−100℃、または−150℃の温度まで徐々に凍結させる。
【実施例】
【0047】
以下の実施例は、本発明の機序を例示するために含めた。以下の実施例の特定の態様は、本発明の実施において良好に機能するように、本発明の共同発明者らによって発見または熟慮された技法および手順に関して記載する。これらの実施例は、共同発明者らの標準的な実験の実施を例示する。本開示および当分野の一般技術レベルに鑑みて、当業者は、以下の実施例は例示的であることのみを意図し、本発明の範囲から逸脱せずに数々の変化、改変、および変更を用い得ることを理解されたい。
【0048】
(実施例1)
非小細胞肺癌細胞系を用いたCD24−/低CD44腫瘍開始細胞の単離
H460細胞は、米国バージニア州ManassasのAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手した。H460細胞系は、肺の大細胞癌を有する患者の胸膜腔内液に由来するものである(Gazdarら、Science、1989、246:491〜494)。HCC2429細胞はJ.Minnaから入手した。Harukiら、J.Med.Genet.、2005、42(7):558〜64を参照されたい。H460T細胞を用いたすべての実験は37〜51の継代数の細胞で行い、これは、これらの細胞がより低い継代数の細胞よりも頑強な表現型を有することが観察されたためである。最初にATCCから入手した低い継代数のH460と識別するために、より高い継代数の細胞はH460Tと呼ぶ。すべての細胞は、37℃で、5.0%の二酸化炭素(CO)を用いてインキュベーションした。H460T細胞は、RPMI−1640(GIBCO(登録商標)、Invitrogen、米国カリフォルニア州Carlsbadから入手可能)中で培養した。Mooreら、JAMA、1967、199:519〜524を参照されたい。10%のウシ胎児血清(FBS、GIBCO(登録商標)、Invitrogen、米国カリフォルニア州Carlsbadから入手可能)、2mMのさらなるグルタミン、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.1%の炭酸水素ナトリウム、0.45%のさらなるグルコース、および10mMの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)。HCC2429細胞を、RPMI−1640、10%のFBS、2mMのさらなるグルタミン、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン中で培養した。H460Tの核型分析および短いタンデム反復(STR)の分析によりそれがH460起源であることが確認されたが、Y染色体がH460T細胞中には存在せず、ほとんどのH460細胞中に存在していた。
【0049】
フローサイトメトリー分析には、細胞を、GIBCO(登録商標)TRYPLE(商標)を用いて収集し、3%の熱不活性化仔ウシ血清(HICS)を含み、カルシウムおよびマグネシウムを含まないハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で洗浄し、100μg/mlのDNase、5mMのMgClおよび50μg/mlのヒト免疫グロブリン(IgG)と共にインキュベーションし、抗体またはアイソタイプ対照と共にインキュベーションし、洗浄し、3%のHICS、25μg/mlのDNase、1mMのMgCl、および25mMのHEPESを含むHBSS中に再懸濁させた。異種移植片をペースト様の稠度まで刻み、コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ(Stem Cell Technologies、カナダ、ブリティッシュコロンビア州Vancouver)中で1時間、頻繁に混合しながら37℃の水浴中でインキュベーションし、40ミクロンのフィルターを通して濾過した。細胞懸濁液を、どちらも製造者の指示に従って、赤血球溶解緩衝液(Roche Diagnostics Corporation、米国インディアナ州Indianapolis、)、続いてACCU−PREP(登録商標)(Axis、ノルウェー、Oslo)で処理した。抗ヒトCD24(#555428)およびCD44(#559942)モノクローナル抗体はBD Biosciences(San Jose、米国カリフォルニア州)から入手した。抗5T4抗体クローンH8(HoleおよびStern、Br.J.Cancer、1988、57(3):239〜46)はOxford Biomedica、英国Oxfordから入手した。
【0050】
H460T NSCLC細胞系を抗CD24および抗CD44抗体で標識することで、長期的な培養にわたって安定した分布を有する明確に区別できる集団が明らかとなった(図1A)。これらの集団を蛍光活性化細胞選別によって分離し、免疫不全nu/nuマウスに皮下移植した場合、CD24−/低CD44細胞は迅速に大きな腫瘍を形成した一方で、CD24CD44細胞はゆっくりと小さな腫瘍を形成した(p<0.001、図1B〜1C)。また、CD24−/低CD44細胞は第3の集団、CD24−/低CD44よりも大きな腫瘍を形成した(p<0.02、図1D)。これらの研究は、CD24−/低およびCD44がH460T中で腫瘍形成能を濃縮させることを実証している。
【0051】
CD24−/低CD44細胞は、いくつかのさらなるアッセイにおいてCD24CD44細胞と表現型が明確に異なる。第1に、CD24−/低CD44細胞は、三次元培養においてスフェロイドとしてCD24CD44細胞よりも迅速に成長した(p<0.001、図1E)。二次元培養では集団間で増殖速度、細胞周期プロファイル、または細胞の大きさの差は検出されなかった。
【0052】
第2に、集団は、進行した腎細胞癌の処置に最近認可されたラパマイシン類似体であるmTOR阻害剤CCI−779に対して示差的応答を示した(Faivreら、Nat.Rev.Drug Discov.、2006、5:671〜688)。CD24−/低CD44細胞は、CD24CD44細胞よりもCCI−779に対して5〜10倍高い耐性を有していた(図1F)。対照的に、集団はカンプトテシン、5−フルオロウラシル、および電離放射線に対して同等に応答し、これは、CCI−779に対する示差的応答が特異的であったことを示す。
【0053】
第3に、トランスウェル遊走アッセイおよびスフェロイド成長アッセイを用いて示したように、CD24−/低CD44細胞はCD24CD44細胞よりも効率的に遊走した。トランスウェル遊走アッセイを行うために、終夜、成長培地中で培養した細胞を選別し、その後、24時間血清飢餓させた。500,000個の細胞/ウェルを、8.0ミクロン孔の24mm直径のトランスウェル中の無血清培地に播種した。血清を含むまたは含まない培地を外チャンバに加え、細胞を16〜18時間インキュベーションした。細胞を最初にホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色した。外チャンバまで遊走した細胞を顕微鏡下で計数できるように、細胞を、湿ったおよび乾いた綿棒(Q−tip)で内チャンバから注意深く擦り取った。8〜10個のフィールド/ウェルを計数した。このアッセイを用いて、CD24−/低CD44細胞は、血清依存性の様式でCD24CD44細胞よりも2.5倍効率的に遊走した(n=4、図1G)。スフェロイド成長アッセイを行うために、5mlの培地中の100,000個の選別した細胞を、5mlの組織培養グレードの寒天(0.7%)で事前にコーティングした60mmのポリスチレン細胞培養皿上に、培地中で播種した。皿を5日間、37℃でインキュベーションした。直径0.2mmを有するスフェロイドを選択し、フィブロネクチンでコーティングしたスライド(BD Biosciences)上に置いた。CD24−/低CD44スフェロイドでは、フィブロネクチンでコーティングしたスライドを横切る細胞の遊走が、24時間および続く時点で明らかであったが、CD24CD44スフェロイドでは、細胞の遊走はわずかしか観察されなかったまたは観察されなかった(図1H)。この実験の3日間の期間にわたってスフェロイドの成長速度に差異はなかった。
【0054】
H460Tの腫瘍開始集団も幹細胞様特徴を保有していたかどうかを決定するために、選別した細胞を培養物中で維持し、フローサイトメトリーによって定期的に監視した。CD24−/低CD44細胞は、選別の早くも3日後には明らかなCD24CD44細胞の有意な集団を常に生じた(図2A)。対照的に、CD24CD44細胞は、選別の2カ月後の最終時点までCD24CD44に保たれた(図2A)。これらの結果は腫瘍開始細胞の多能性の表現型を示した。観察された移行が親系の状況で起こるかどうかを決定するために、標識したおよび標識していない集団を同時培養した。CD24CD44細胞と共に同時培養した場合は、CD24−/低CD44細胞も多能性であり(図3A〜3C)、これは、多能性の表現型が親H460Tの培養物中に存在することを示唆している。また、多能性はin vivoでも観察され、CD24−/低CD44細胞から成長させた異種移植片は、典型的には約50%のCD24細胞を含有していた(図2B)。
【0055】
多能性を単一の細胞レベルで追跡できることを確認するために、クローン分析を行った。単一のCD24−/低CD44またはCD24CD44細胞のコロニーをクローン系へと拡大した。ほとんど(23/31個)のCD24−/低CD44由来のクローン系は>10%のCD24細胞を含有していたが(「移行中のクローン」)、一部(8/31個)は<1%のCD24細胞を含有していた(「安定したクローン」)。すべて(6/6個)のCD24CD44由来のクローン系は100%のCD24細胞を含有していた(図2C)。選別した親系の上記結果と一致して、すべての試験したCD24−/低CD44クローン系の選別したCD24−/低CD44細胞は腫瘍原性が高かった一方で、すべての試験したCD24CD44クローン系の選別したCD24CD44細胞は小さな腫瘍を形成したまたは腫瘍を形成しなかった(図2D)。
【0056】
CD24CD44細胞がCD24−/低CD44細胞と比較して低下した腫瘍形成能を示すかどうかを試験するために、移行中のCD24−/低CD44クローン系をCD24−/低CD44およびCD24CD44細胞へと選別し、選別した細胞を動物内に移植した。3つのクローン系において、CD24−/低CD44細胞はCD24CD44細胞よりも大きな腫瘍を形成した(クローン24N−4ではp<0.005、クローン24N−10ではp=0.01、クローン24N−25ではp<0.05、図2E)。3つの他のクローン系では有意な差異は観察されなかった。したがって、H460TのCD24−/低CD44細胞は、より低い腫瘍原性の、機能的に明確に区別できるCD24CD44細胞を生じさせることができる。これらの結果は、H460T中の多能性腫瘍開始細胞の存在を実証している。
【0057】
他のNSCLC細胞系を、CD24およびCD44に関して不均質性について評価した。HCC2429系(Dangら、J.Natl.Cancer Inst.、2000、92、1355〜1357)は、2つの明確に区別できるCD24集団、CD24−/低およびCD24を含有していた(図4A)。FACSで単離したCD24−/低細胞はCD24細胞よりも有意に大きな腫瘍を形成した(p<0.05、図4B)。さらに、CD24−/低細胞は培養物中でCD24細胞を生じさせた一方で、CD24細胞はCD24のままであった(図4C)。
【0058】
(実施例2)
非小細胞肺癌細胞系における5T4腫瘍開始細胞の同定
CD24−/低CD44とCD24CD44細胞との間の表現型の差異の根底にあるであろう遺伝子を同定するために、遺伝子発現プロファイルをFACSで単離した集団の3つ組試料から作成した。予想どおり、CD24のmRNAレベルはCD24CD44細胞で常に高く、CD24−/低CD44細胞で低かった(図5)。5T4(TPBGとしても知られる)のレベルは、CD24CD44細胞と比較してCD24−/低CD44細胞で4.5倍高かった(図6A)。
【0059】
成長および分化の条件下での5T4の発現を決定するために、細胞をいくつかの時点で収集し、タンパク質抽出物を免疫ブロット分析に供した。細胞をPBSで洗浄し、25mMのトリス緩衝生理食塩水、pH7.4(TBS)中の0.5%v/vのNP40で溶解した。タンパク質の推定の後(MICROBCA(商標)タンパク質アッセイキット、Pierce、米国イリノイ州Rockford)、溶解物を非還元Laemmli試料緩衝液(Biorad、米国カリフォルニア州Hercules)と混合し、10μgの試料を、非還元の4〜20%のポリアクリルアミド勾配ゲル(NOVEX(登録商標)、Invitrogen、米国カリフォルニア州Carlsbadから入手可能)のそれぞれのウェルに載せた。試料を2〜3時間、125ボルトで流し、Novex(登録商標)電気泳動移行システムによってPVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜に移した。膜を、終夜、1%のヤギ血清を含むトリス緩衝生理食塩水Tween−20(TBST)中の5%の乳で遮断し、TBST中の5%の乳中に1μg/mlの抗5T4抗体H8でプローブし、洗浄し、1:5,000の希釈率のHRPコンジュゲートヤギ抗muIgGでプローブした。ECL検出システムを使用した(Amersham、米国マサチューセッツ州Burlington)。抗5T4抗体を用いた免疫ブロット分析により、CD24−/低CD44細胞中では5T4タンパク質の発現が示されたが、CD24CD44細胞では示されなかった(図6B)。
【0060】
抗5T4および抗CD24抗体を用いた親H460Tの免疫蛍光により、5T4およびCD24の染色は排他的であり、CD24−/低CD44細胞のほぼすべても5T4を発現していたことが実証された。5T4は実施例1に記載したCD24−/低CD44クローン系のすべてで発現されていた。
【0061】
腫瘍細胞系における5T4発現をさらに評価するために、選別した細胞をオールトランス型レチノイン酸で処理して分化を誘発させ、その後、免疫ブロット分析に供した。選別した細胞はFACSによって得られ、それぞれの免疫表現型の2.3×10個の細胞を、6ウェルの皿に、完全な成長培地中で播種した。24時間後、培地を除去し、細胞をPBSで2回洗浄し、0.5%のFBS成長培地を再度与えた。培地を24時間後に除去し、ビヒクル対照または10μMのオールトランス型レチノイン酸(Sigma、米国ミズーリ州St.Louis)と添加した0.5%のFBS成長培地で置き換えた。細胞を72時間培養し、PBSで洗浄し、抗5T4ウエスタンブロット分析のために1×Laemmli緩衝液(Bio−Rad、米国カリフォルニア州Hercules)中で直接溶解した。5T4発現は処理したCD24−/低CD44細胞中で劇的に低下しており(図6B)、これは、5T4が、癌細胞において未分化状態に関連していることを示している。
【0062】
(実施例3)
非小細胞肺癌の初代培養物における腫瘍開始細胞の分化モデル
初代無血清培養物を新しく切除したNSCLC試料から確立した。細胞を、自己複製を促進する条件下で培養したか、または、レチノイン酸の存在下で気液界面に曝すことによって分化を誘発させた。気液界面は肺細胞の生理的環境であるとみなされ、胎児の肺発生の研究に使用されている(Vaughanら、Differentiation、2006、74:141〜148)。このモデルを用いて分化を誘発するために、培養物を以下のように調製および処理した。Millicellの1μMのPETハンギング細胞培養挿入物(Millipore、米国マサチューセッツ州Billerica)を6ウェルの皿の内部に入れた。膜をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で事前に湿らせ、87426A1腫瘍組織から得た2.5×10個の初代細胞をそれぞれの挿入物上に播種し、BEBM培地で満たした。1〜2日後、培地を上部および下部のチャンバから除去し、PBSですすぎ、50nMのレチノイン酸および1mMのCaClを含有するCnT−23培地(Millipore、米国マサチューセッツ州Billerica)を下部のチャンバに加え戻し、上部チャンバ中の細胞は空気に曝されたままにした。持ち上げられた培養物は、2日毎に新鮮な培地を加えたか、または示した時点でRNA単離用には緩衝液RLT(QIAGEN、米国カリフォルニア州Valencia)中で、もしくは抗5T4ウエスタンブロット分析用にはTBS(トリス緩衝生理食塩水)/0.5%NP40(タージトール型NP−40、Sigma−Aldrich、米国ミズーリ州St.Louis)中で収集した。遺伝子発現プロファイリングには、同型成長の試料を一緒に分析し、限られた試料のため、8、16、および24日目の分化試料をプールして一緒に分析した。生細胞のイメージングにより、単層培養物が、気液界面および50nMのレチノイン酸に18日間曝された後に3D重層の上皮を効率的に形成したことが明らかとなった(図7A)。
【0063】
成長および分化の条件下での5T4の発現を決定するために、細胞をいくつかの時点で収集し、実施例2に記載のようにタンパク質抽出物を免疫ブロット分析に供した。5T4のレベルは成長条件下で高く、分化の際に急速かつ劇的に減少した(図7B)。
【0064】
この分化モデルの包括的な見解を得るために、実験を繰り返し、遺伝子発現プロファイルを成長および分化の条件下で細胞から作成した。実施例5および6を参照されたい。上記結果と一致して、分化中に5T4発現は減少し、CD24発現は増加した(図7C)。また、成長および分化における初代培養物の遺伝子発現プロファイルを、H460T CD24−/低CD44およびCD24CD44集団のそれとも比較した(実施例5を参照)。初代培養物の分化中により高いレベルで発現された遺伝子の顕著な画分は、CD24CD44細胞中でもより高いレベルで発現された(FDR=0.0015)。H460Tおよび87426のデータ組の統計的な比較には、分化した87426培養物中でアップレギュレートされていた上位250個の遺伝子をH460T集団中で比較した。図7Dは、H460Tデータ組においてノイズレベルを超える遺伝子の発現の差異を示す。統計的分析により偽発見率0.0015が得られた。この分析は、これらの非常に異なる実験系がNSCLCにおける分化階層の生理的モデルであることを示す。マイクロアレイのデータはフローサイトメトリーによって確認された(図7E〜7F)。
【0065】
また、発現プロファイルにより、上皮−間葉の移行および血管形成に関与する遺伝子の著しいパターンも明らかとなった。上皮−間葉の移行のマーカーであるビメンチン、フィブロネクチン、Slug、およびTwistは、分化状態と比較して成長条件下において高レベルで発現されていた(図7C)。対照的に、上皮マーカーであるムチンおよびいくつかのサイトケラチンは、成長条件と比較して分化中に高レベルで発現されていた(図7C)。血管形成因子VEGF−A、−B、−C、PDGF−Aおよび−C、ならびにPIGFは、分化と比較して成長条件下で有意により高いレベルで発現されていた(図7G)。
【0066】
発現データのバイアスのないメタ分析により、分化中に有意な発現変化を有するいくつかの遺伝子サインが明らかとなった(表1)。未分化の細胞中でより高い発現を有する遺伝子組には、臨床的予後不良、幹細胞、発癌性シグナル伝達、および発達シグナル伝達のサインが含まれていた。分化した細胞中でより高い発現を有する遺伝子組には、より良好な臨床的予後、分化した腫瘍、および分化した細胞のサインが含まれていた。この分析で使用したBroad Instituteの分子サイン(Molecular Signatures)データベースの情報を表2に示し、これには表1で同定した遺伝子組のそれぞれについての遺伝子(メンバー)のリストが含まれる。表1中のすべてのNTkは偽発見率(FDR)≦0.01である。NTk>0は分化した初代培養物との直接の対応を示す。NTk<0は分化した初代培養物との逆の対応を示す。
【0067】
【表1−1】
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【0271】
【表2−203】
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【0272】
総合すると、前述の結果は初代NSCLC培養物における分化階層を定義しており、レチノイン酸の分化が腫瘍原性プロファイルを部分的に逆転させることができることを示している。
【0273】
(実施例4)
非小細胞肺癌の細胞異種移植片における腫瘍開始細胞の同定
初代異種移植系は、Charles River、米国マサチューセッツ州Wilmingtonから入手した雌の無胸腺症のnu/nu(ヌード)およびNOD−SCIDマウス(18〜23g)を用いて調製した。選別した細胞の腫瘍形成能を評価するために、細胞を、50%のMatrigel(BD Biosciences)中で、肩甲骨の間に皮下移植した。典型的には、H460TおよびHCC2429では、1匹のヌードマウスあたり100個の選別した細胞を移植した。37622系では、1匹のヌードマウスあたり2500個の細胞を移植した。60257系では、1匹のnod−scidマウスあたり5000個の細胞を移植した。腫瘍は、少なくとも週に1度測定し、腫瘍体積=0.5×(腫瘍の幅)×(腫瘍の長さ)とした。それぞれの移植系は、生じた異種移植片の断片を新しい動物内に外移植することによって増殖させ、したがって、主にin vivoで維持した。それぞれの系で、異種移植片の組織学は元の腫瘍のそれに似ていた。実験を低継代数の異種移植片で行って繰り返すことができるように、試料を低温保存した。
【0274】
初代移植片の免疫組織化学的分析を、標準の技法を用いて行い、5T4の異種発現が明らかとなった。いくつかの複数の移植系において、最も高い5T4発現は腫瘍−間質の界面で観察された。37622細胞を用いて調製した異種移植片では、上皮−間葉の分化の移行のマーカーであるビメンチンについて同様の染色パターンが観察された。ビメンチンは、60274細胞を用いて調製した異種移植片では検出されなかった。
【0275】
また、異種移植片中での異種5T4発現は、フローサイトメトリーによっても観察された。解離した37622移植片は明確に区別できる5T4を示し、生きたヒト細胞で5T4集団が明らかであった(図8A)。無血清培養物を37622異種移植片から確立した際、すべての細胞が高い5T4を発現し(図8A)、これは幹細胞の成長を促進する培養条件と一致していた。これらの細胞を動物内に再移植した場合、生じた腫瘍は5T4発現について異種であった(図8A)。
【0276】
H460Tの場合ように5T4発現がより高い腫瘍原性と関連していたかどうかを決定するために、一次移植異種移植片を解離し、FACSで単離した細胞を動物内に移植した。37622および60257移植系において、5T4細胞は5T4細胞よりも腫瘍原性が高かった(図8B)。
【0277】
(実施例5)
腫瘍開始細胞のさらなるバイオマーカー
細胞を培養細胞系から収集し(実施例1および2に記載)、溶解緩衝液(QIAGEN、米国カリフォルニア州Valencia)に再懸濁させ、QIAGEN RNEASY(登録商標)カラムを用いて、製造者の指示に従って、全RNAを精製した。異種移植腫瘍には(実施例4に記載)、腫瘍試料を最初に3mlの氷冷した4Mのグアニジニウム/10%の酢酸ナトリウム緩衝液(RNAGENTS(登録商標)、Promega、米国ウィスコンシン州Madison)中の超音波処理によって破壊し、フェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール(50:48:2)で2×抽出し、同体積のイソプロパノールを用いてRNAを水相から沈殿させた。続いて、沈殿物を溶解緩衝液(QIAGEN)に再懸濁させ、QIAGEN RNEASY(登録商標)カラムを用いて、製造者の指示に従って、全RNAを精製した。
【0278】
SUPERSCRIPT(登録商標)キット(Gibco BRL、米国メリーランド州Gaithersburg)を用いて、本質的にByrneら、F.e.a.Ausubel編、Current Protocols in Molecular Biology、2000、New York:John Wiley and Sons,Inc.に記載されているように、10μgの全RNAからcDNAを合成した。第1の鎖の合成は、リボソームRNAからの誤プライミングを防止するために50℃で実施し、続くin vitroのアンチセンスRNA(cRNA)の増幅およびビオチン標識にポリ−Tプライマーを含有するT7 RNAポリメラーゼプロモーター(T7T24)を利用した。cDNAは、GENECHIP(登録商標)試料クリーンアップモジュール(Affymetrix、米国カリフォルニア州Santa Clara)を用いて、製造者の指示に従って精製した。合成のためのin vitroのT7ポリメラーゼに駆動される転写反応およびアンチセンスcRNAのビオチン標識には、GENECHIP(登録商標)発現3’−増幅試薬キット(Affymetrix、米国カリフォルニア州Santa Clara)を製造者の指示に従って利用した。合成されたcRNAはQIAGEN RNEASY(登録商標)カラムを用いて精製した。
【0279】
それぞれの試料について、10μgのビオチン標識したcRNAを断片化し、製造者によって推奨される緩衝液および条件を用いて、ヒトゲノムU133+2GENECHIP(登録商標)オリゴヌクレオチドアレイ(Affymetrix、米国カリフォルニア州Santa Clara)とハイブリダイズさせた。GENECHIP(登録商標)オリゴヌクレオチドアレイを洗浄し、ストレプトアビジンR−フィコエリスリン(Molecular Probes、米国オレゴン州Eugene)を用いて、GENECHIP(登録商標)Fluidics Station450を使用して染色し、Affymetrix GENECHIP(登録商標)Scanner3000(Affymetrix、米国カリフォルニア州Santa Clara)を用いて、製造者の指示に従って走査した。蛍光データを収集し、マイクロアレイスイート5.0(MAS5)ソフトウェアを用いて遺伝子特異的なシグナル強度に変換し、ここで、遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドを含有する完全一致と単一のミスマッチのプローブ組との間の平均の蛍光の差異を用いてmRNAシグナル強度を決定する。分析には、同型試料の平均mRNAシグナル強度を実験群のそれぞれについて決定した。遺伝子を最初にフィルタリングして、すべての試料がMAS5ソフトウェアによって存在しない(Absent)と示されたプローブを除去した。続いて、平均シグナル強度の値を実験群間で比較して、典型的には2倍を超える平均の倍数の変化を有する遺伝子を同定した。
【0280】
以下の遺伝子を含めたいくつかの遺伝子が腫瘍開始細胞中で示差的に発現されており、これらはCD24−/低CD44腫瘍開始細胞中で上昇した発現を示していた:TGFβRIII、Unc5D、PNPLA4、KCNJ2、GABRB3、DPYD、SPAG1、ICK、STC2、DEFβ1、および予想された遺伝子FLJ38736。
【0281】
また、成長および分化における初代培養物の遺伝子発現プロファイル(実施例3を参照)を、H460T CD24−/低CD44およびCD24CD44集団のそれとも比較した。初代培養物の分化中により高いレベルで発現された遺伝子の顕著な画分は、CD24CD44細胞中でもより高いレベルで発現されていた(FDR=0.0015)。H460Tおよび87426のデータ組の統計的な比較には、分化した87426培養物中でアップレギュレートされていた上位250個の遺伝子をH460T集団中で比較した。図7Dは、H460Tデータ組においてノイズレベルを超える遺伝子の発現の差異を示す。統計的分析により偽発見率0.0015が得られた。この分析は、これらの非常に異なる実験系がNSCLCにおける分化階層の生理的モデルであることを示す。マイクロアレイのデータはフローサイトメトリーによって確認された(図7E〜7F)。したがって、陽性選択、低レベルの発現、または分化した細胞の枯渇のいずれかによって腫瘍開始細胞を濃縮または単離するためのさらなるマーカーには、表1および2に記載のものが含まれる(実施例3を参照)。
【0282】
(実施例6)
Sox2は肺癌の腫瘍開始細胞の分化を調節する
CD24へと移行したクローンを安定化したクローン(>99%のCD24−/低)と比較するために、遺伝子発現プロファイリングをCD24−/低CD44クローンのパネルで行った。CD24−/低CD44細胞をそれぞれのクローンから選別し、実施例5に記載のようにRNAをマイクロアレイ分析用に抽出した。
【0283】
安定したCD24−/低CD44クローンおよび移行中のCD24−/低CD44クローンの遺伝子発現プロファイルは全体的に類似であったが、一部の遺伝子のmRNAレベルは移行効率と相関していた。たとえば、Sox2のmRNAレベルは安定したクローン中よりも移行中のクローン中で高かった(図9A)。Sox2は幹細胞における多能性および自己複製に必要な転写因子であり(Avilionら、Genes Dev.、2003、17:126〜140、Boyerら、Cell、2005、122:947〜956)、分化した細胞中の多能性の誘発に寄与する可能性がある(TakahashiおよびYamanaka、Cell、2006、126:663〜676)。親H460T細胞では、Sox2はCD24−/低CD44腫瘍開始細胞中では発現されたが、CD24CD44細胞中では発現されなかった。
【0284】
Sox2がCD24−/低からCD24の発現への移行を調節できるかどうかを試験するために、外因性Sox2を安定したCD24−/低CD44クローン内に導入した。GeneCopoeia(米国メリーランド州Germantown)製の発現ベクターEX−T2547−M46(Sox−2)およびEX−M0425−M46(Sox−11)を、Amaxa nucleofector溶液V、プログラムT−020(2μgのDNA/10個の細胞)を用いてH460Tクローン内に導入した。安定したクローンを、Sox2−Flag、Sox11−Flag、空のベクター、またはDNAなしを用いて形質移入した。形質移入の48時間後、G418を400μg/mlまで加えた。細胞をG418中で6日間インキュベーションし、続いてG418なしでインキュベートした。免疫ブロット分析を実施例2に記載のように実施し、これにより、示した導入遺伝子の発現が確認された(図9B)。G418中での6日間の選択およびさらに2週間の培養後、3つの安定したCD24−/低CD44クローンのすべてが、Sox2−Flagを用いて形質移入した後にCD24CD44細胞の大きな画分を示したが、Sox11−Flagまたは空のベクターを用いた場合はそうではなかった(図9C〜9D)。これらのデータにより、Sox2がCD24−/低からCD24への移行を駆動するために十分であることが示され、多能性腫瘍開始細胞の分化における役割が示された。
【0285】
(実施例7)
抗5T4抗体/薬物のコンジュゲートを用いた腫瘍細胞の成長の阻害
CD24−/低CD44集団は、細胞生存度アッセイおよびコロニー成長アッセイにおいてCD24CD44集団よりも抗5T4抗体−薬物のコンジュゲートに対する感受性が高かった。それぞれのアッセイについて、抗体−カリチアマイシンAcBut連結(AcBut−AcBut−[4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸])のコンジュゲートを記載のように調製した(Hamannら、Bioconjug.Chem.、2002、13:47〜58)。選別した細胞に対する抗5T4 huH8抗体−薬物のコンジュゲートまたは抗CD22抗体−薬物のコンジュゲートの効果を、細胞生存度の指示薬((3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5(3−カルボキシメトキシフェノール−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)(Promega、米国ウィスコンシン州Madison)を用いて評価して、薬物処理に曝した後の生存した細胞の数を決定した。細胞はアッセイ開始の18時間前に選別した。細胞を96ウェルのマイクロタイタープレートに10,000個の細胞/ウェルの密度で播種し、様々な濃度の薬物に曝した。96時間の薬物への曝露を生存した生細胞数を決定した後、それぞれの処理のIC50は、用量応答曲線から誘導したロジスティック退縮パラメータに基づいて計算した。IC50値はロジスティック非直線退縮によって計算し、50%の細胞生存度の低下を引き起こすそれぞれの処置群のカリチアマイシンジメチルヒドラジド(CalichDMH)の濃度として報告する。CD24−/低CD44細胞は、抗5T4−カリチアマイシンのコンジュゲートに対して10倍を超える感度を有していた(図10A)。抗CD22−カリチアマイシンのコンジュゲートまたはカリチアマイシン単独で処理した場合に、2つの集団間の差異は観察されなかった(図10A)。
【0286】
コロニー形成アッセイを行うために、細胞を24ウェルプレートに5,000個の細胞/ウェルの密度で播種した。播種の24時間後、細胞を様々な濃度(0.000097、0.000390、0.00156、0.00625、0.025、0.1、0.4ngのカリチアマイシン相当/ml)の抗5T4 H8−AcButのコンジュゲート、抗CD22 AcButのコンジュゲート、またはカリチアマイシン単独に曝した。薬物に曝した72時間後、細胞をトリプシン処理し、計数し、200個の細胞を6ウェルプレートに播種した。8日後、コロニーを固定し、メチレンブルーで染色した。ステレオスコープを用いてコロニー数/ウェルを計数した。CD24−/低CD44細胞はコンジュゲートに対して10倍を超える感度を有していた(図10B)。抗CD22−カリチアマイシンのコンジュゲートまたはカリチアマイシン単独で処理した場合に、2つの集団間の差異は観察されなかった(図10B)。
【0287】
5T4発現が腫瘍形成能と直接関連していたかどうかを試験するために、H460T細胞を5T4および5T4の発現に基づいて選別し、マウス内に皮下移植した。5T4細胞の腫瘍は5T4細胞の腫瘍よりも大きかった(p<0.03、図11)。この実験ではH460Tクローン系24N−26を使用し、これは、親系と比較してより高い5T4発現のレベルならびに増加した5T4および5T4発現の分解能を示す。
【0288】
(実施例8)
抗5T4抗体/薬物のコンジュゲートを用いた腫瘍の退縮
ヌード(37622用)またはnod−scid(60274用)マウスに、低継代数の初代移植片の断片を肩甲骨の間に皮下注射した。腫瘍が0.2〜0.5gの質量に達した際、治療を投与する前に様々な処置群間で腫瘍質量が均質であることを確実にするために、腫瘍をステージングした。抗5T4 huH8抗体および抗CD33 p67.6抗体を、記載のようにアミドリンカーを介してカリチアマイシンとコンジュゲートさせた(Hamannら、Bioconug.Chem.、2002、13:40〜46)。「アミド」リンカーは、カリチアマイシンの、抗体−薬物のコンジュゲートを内部移行させる細胞への放出を制限する(Hamannら、Bioconug.Chem.、2002、13:40〜46)。抗体−薬物のコンジュゲートまたはビヒクルを、無菌生理食塩水(0.2ml/マウス)中で、1日目にそれぞれ腹腔内投与し、同じ処置を4日間の間隔で2回繰り返した(Q4D×3)。カリチアマイシンコンジュゲートは、160μg/kgのCalichDMHの用量で投与した。腫瘍は少なくとも週に1度測定し、その質量は体積=0.5×(腫瘍の幅)(腫瘍の長さ)とした。それぞれの処置群の平均腫瘍体積(±SEM)を計算し、片側t検定を用いた統計的有意性のためにビヒクルで処置した群と比較し、t検定の誤差項はすべての処置群にわたるプールした分散に基づく。それぞれの処置群の腫瘍値は、処置開始の120日後まで、または腫瘍を保有するマウスが死亡するまでもしくは腫瘍が体重の15%まで成長するまで(この時点で、これらのマウスは施設の規制に従って安楽死させた)記録した。抗CD33コンジュゲートは、これらの異種移植片がCD33を発現しないため、対照として役割を果たした。
【0289】
抗5T4−カリチアマイシンのコンジュゲートを用いた処置により、37622異種移植片が完全に根絶され、研究の終わりである最後の投薬の120日後まで、再成長は観察されなかった(図12A)。ビヒクルまたは抗CD33−カリチアマイシンのコンジュゲートで処置した異種移植片は大きな腫瘍へと成長した。同様に、60274異種移植片を抗5T4−カリチアマイシンのコンジュゲートで処置することで、腫瘍が有意に退縮した(図12B)。対照的に、60274腫瘍を最大の耐容用量のシスプラチンで処置することで、腫瘍の大きさが一過的に低下し、腫瘍は投薬レジメンの完了後に急速に再成長した(図12C)。60274細胞は、37622細胞と比較して5T4をより低いレベルで発現した(図13)。これらの結果は、異種5T4発現を有するNSCLC初代移植片の成長阻害に対する抗5T4抗体−カリチアマイシンのコンジュゲートの特異的な効果を実証している。
【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−521769(P2012−521769A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502309(P2012−502309)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028926
【国際公開番号】WO2010/111659
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】