説明

腱または靭帯の傷害を処置するための血小板由来成長因子組成物および方法

本発明は、腱および靭帯の傷害を治療し、かつ/または損傷した腱および靭帯を修復するための組成物および方法を提供する。本発明は、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む組成物を提供する。本発明の一態様では、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む組成物を提供し、この生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2008年9月9日に出願された米国仮出願第61/191,641号、2009年1月12日に出願された米国仮出願第61/144,088号および2009年1月12日に出願された米国仮出願第61/144,126号(これらの全体は、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、腱または靭帯の傷害、例えば、断裂、切断、引裂、または横切した腱もしくは靭帯、または骨からの腱もしくは靭帯の剥離などを治療するための組成物および方法、特に、血小板由来成長因子(PDGF)と組み合わせて生体適合性マトリックスを含む組成物を投与することによって、腱または靭帯の傷害を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
腱および靭帯は、筋肉と骨または骨と骨をつなぐ強靭な線維であるが、腱および靭帯は、様々な理由で断裂、切断し、または骨から剥離する場合がある。そのような腱または靭帯の傷害は、患部腱/靭帯への直接の外傷、年齢の進行に起因する腱/靭帯の脆弱化、偏心した負荷、繰り返しの運動、酷使および/または応力もしくは活動の増大に起因して、またはこれらの結果として一般に起こり得る。そのような急性傷害は、かなり劇的であり、通常、個体が患部関節を動かすことができないままにする。
【0004】
腱断裂、腱切断、または骨からの剥離の最も一般的な範囲は、(1)膝頭(膝蓋骨)の直上で一緒になって膝蓋腱(patellar tendon)を形成する四頭筋(4つの筋、すなわち、外側広筋、内側広筋、中間広筋、および大腿直筋の群);(2)踵の直上の足の後部(後方)部分に位置するアキレス腱である。アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)と足の踵(踵骨)の接続機構として機能を果たす;(3)肩内に位置し、4つの筋肉(棘上筋(断裂する最も一般的な腱)、棘下筋、小円筋、および肩甲下筋)からなる回旋腱板;(4)肘の屈筋として機能する、腕の二頭筋。二頭筋断裂は、近位(近方)および遠位(遠方)の型に分類される;ならびに(5)短指屈筋および長指屈筋などの手の屈筋腱(flexor tendon)。靭帯断裂、靭帯切断、または骨からの剥離の最も一般的な範囲は、前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、および内側側副靭帯(MCL)である。ほとんどすべての腱および靭帯の傷害について、患部関節または肢のかなりの疼痛(急性または慢性)、動きの低下、および脱力感がある場合がある。腱/靭帯の断裂または剥離について、腱もしくは靭帯をその骨に固定し、または患部腱/靭帯の断裂または切断した端部を再接続するために、手術が最も一般的な治療過程である。他の腱/靭帯傷害について、一般的な治療には、安静、氷冷、NSAID、コルチコステロイド注射、加熱、および超音波が含まれる。しかし、これらの傷害に対する数十年の研究および臨床的配慮の増大にもかかわらず、その臨床転帰は予測不可能なままである。
【0005】
四頭筋に関しては、膝蓋腱の断裂は比較的稀であるが、障害を引き起こす傷害であり、これは、年齢が40歳未満の患者において最も一般にみられる。これは、競技運動活動中に、屈曲した膝が四頭筋群の激しい収縮に逆らうとき起こりやすい。断裂は通常、膝蓋腱への繰り返しの微小外傷から生じる変性腱障害の最終的な段階を表す。
【0006】
アキレス腱に関しては、運動選手および非運動選手がともに、すべての年齢において傷害を発生させるリスクがあり、ほとんどの傷害は、30歳と50歳の間の男性において起こる(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。アキレス腱炎およびアキレス腱症は、仕事により、足首および足に応力がかかる個体、ならびに「週末戦士」、すなわち調整が不十分で、週末のみ、または稀に運動競技に参加する者にも一般的である。
【0007】
回旋腱板傷害の場合では、外科的な器具使用および技法の進歩にもかかわらず、現在の技法は、永続的な修復をもたらすに及ばず、いくつかの研究は、94%もの高い失敗率を挙げている。腱修復の失敗は、損傷した腱の治癒が不十分であり、傷害された腱の骨への再結合が不十分であることに起因する場合がある。
【0008】
靭帯の骨へのしっかりした結合も、多くの靭帯再建手順にとって必須である。前十字靭帯再建などの靭帯置換手順の成功には、骨と腱の生物学的結合を作り出すために、腱グラフトの骨トンネルへの固定、および腱への骨の漸進的な内殖を必要とする。組織学的および生体力学的な研究は、一般に、骨の内殖、腱−骨結合、石灰化、および腱と骨の間のより大きなコラーゲン−線維連続性を実現するのに、腱グラフトを骨に移植した後、6〜12週間を必要とすることを示す。非特許文献4を参照。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Boyden, E.ら、Clin Orthop、(1995年)317巻:150〜158頁
【非特許文献2】Hattrup, S.およびJohnson, K、Foot and Ankle、(1985年)6巻:34〜38頁
【非特許文献3】Jozsa, L.、Acta Orthop Scandinavica、(1989年)60巻:469〜471頁
【非特許文献4】Rodeo S.A.ら、Tendon−Healing in a Bone Tunnel、(1993年)75巻(12号):1795〜1803頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、様々な腱/靭帯傷害の治療、および外科的修復または他の非外科的な治療に関連する治癒応答を改善するための腱/靭帯と骨の結合のための新規組成物および新規方法を提供する必要がある。
【0011】
限定することなく、特許、特許出願、および科学的参考文献を含めた、本明細書に引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明は、腱または靭帯の傷害を治療するための組成物および方法を提供する。
【0013】
本発明の一態様では、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む組成物であって、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出される組成物が提供される。
【0014】
別の態様では、本発明は、個体における、骨を伴わない腱傷害または靭帯傷害を治療するための方法であって、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む有効量の組成物を個体の傷害患部に投与するステップを含み、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出される方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、腱または靭帯の傷害を機械的に安定化させるステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、腱または靭帯の傷害を安定化させるステップは、腱または靭帯の傷害を縫合するステップを含み、縫合された腱または靭帯は、傷害された腱または靭帯の端部が実質的に再接近されるように配置される。いくつかの実施形態では、投与するステップは、シリンジを使用して、有効量の組成物を前記個体の傷害患部に投与するステップを含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、個体において腱を骨に結合または再結合させるための方法であって、腱と骨の界面で、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む有効量の組成物を個体に投与するステップを含み、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出される方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、個体において靭帯を骨に結合または再結合させるための方法であって、靭帯と骨の界面で、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む有効量の組成物を個体に投与するステップを含み、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出される方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、個体における、骨を伴わない腱または靭帯の傷害を治療するためのキットであって、生体適合性マトリックスを含む第1の容器、および血小板由来成長因子(PDGF)溶液を含む第2の容器を備え、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出されるキットを提供する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、個体において腱または靭帯を骨に結合させるためのキットであって、生体適合性マトリックスを含む第1の容器、および血小板由来成長因子(PDGF)溶液を含む第2の容器を備え、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出されるキットを提供する。
【0019】
本明細書に記載される任意の組成物は、本明細書に記載される任意の方法およびキットにおいて使用することができる。以下に記載される様々な実施形態は、当業者に明らかであるように、本発明の任意の態様とともに使用することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、約80%〜約95%、約85%〜約95%、約85%〜約90%、約90%〜約92%、または約92%〜約95%の多孔度を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、孔は、約800μm(um)〜約3,000μm、約13,000μm〜約50,000μm、約2500μm〜約20,000μm、約4500μm〜約20,000μm、約5000μm〜約19,000μm、約6000μm〜約18,000μm、約6000μm〜約15,000μm、または約5000μm〜約16000μmの範囲の平均面積を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、孔は、約100μm〜約200μm、約400μm〜約800μm、約200μm〜約500μm、約200μm〜約600μm、約300μm〜約600μm、または約300μm〜約500μmの範囲の平均周囲長を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、孔は、約1μm〜約1mmの範囲の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、孔は、少なくとも約5μm、少なくとも約10μm、少なくとも約20μm、少なくとも約30μm、少なくとも約40μm、または少なくとも約50μm、約5μm〜約500μm、約10μm〜約500μm、約50μm〜約500μm、約100μm〜約500μm、または約100μm〜約300μmの平均直径を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、孔は、相互接続された孔を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、PDGFの少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約50%〜約95%、約60%〜約95%、約70%〜約95%、約80%〜約95%、約90%〜約95%、約50%〜約85%、約60%〜約85%、約70%〜約85%、または約50%〜約80%が、約24時間以内に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFの少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約50%〜約95%、約60%〜約95%、約70%〜約95%、約80%〜約95%、約90%〜約95%、約50%〜約85%、約60%〜約85%、約70%〜約85%、または約50%〜約80%が、約1時間、約6時間、約8時間、約12時間、または約48時間以内に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFの放出は、インビボで測定される。いくつかの実施形態では、PDGFの放出は、インビトロで測定される。いくつかの実施形態では、PDGFは、周囲の領域中に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFは、傷害された腱または靭帯上に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFは、骨−腱または骨−靭帯結合箇所付近の骨の表面上に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFは、周囲媒質中に放出される。
【0026】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、インビボ投与して約1カ月、約3カ月、約6カ月、または約9カ月以内に再吸収される。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、インビボ投与して約30日、約25日、約21日、約18日、約15日、約10〜14日、または約10日以内に再吸収される。
【0027】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスはコラーゲンを含む。いくつかの実施形態では、コラーゲンはI型コラーゲンを含む。いくつかの実施形態では、コラーゲンは架橋されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、コラーゲンは可溶性である。いくつかの実施形態では、コラーゲンは不溶性である。いくつかの実施形態では、コラーゲンは、可溶性コラーゲンモノマー成分、および不溶性コラーゲンポリマー成分を含む。いくつかの実施形態では、可溶性コラーゲンモノマーと不溶性コラーゲンポリマーの比は、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、または約1:1である。
【0029】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスはグリコサミノグリカンをさらに含む。いくつかの実施形態では、グリコサミノグリカンはコンドロイチン硫酸である。いくつかの実施形態では、グリコサミノグリカンはコンドロイチン硫酸ではない。
【0030】
様々な実施形態では、組成物は、ゲル、粒子、粉末、ペースト、シート、パッド、パッチ、またはスポンジである。いくつかの実施形態では、組成物は流動性である。
【0031】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスはCOLLATAPE(登録商標)である。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスはBIOBLANKET(登録商標)である。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスはBIOBLANKET登録商標)ではない。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスはPDGFを酸化しない。
【0032】
いくつかの実施形態では、PDGFは、PDGFを含む溶液として存在し、溶液中のPDGFの濃度は、約0.1〜約10.0mg/ml、約5mg/ml〜約20mg/ml、約0.1mg/ml〜約2.0mg/ml、約0.1mg/ml〜約0.4mg/ml、または約0.9mg/ml〜約1.5mg/mlである。いくつかの実施形態では、PDGF溶液は、約0.15mg/ml、約0.3mg/ml、約1.0mg/ml、約1.5mg/ml、約2.0mg/ml、または約10.0mg/mlである。
【0033】
例えば、PDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、PDGF−CC、PDGF−DD、およびこれらの混合物および誘導体を含めて、本発明のいくつかの実施形態では、PDGFはPDGFホモ二量体であり、他の実施形態では、PDGFはヘテロ二量体である。いくつかの実施形態では、PDGFはPDGF−BBを含む。他の実施形態では、PDGFは、組換えヒトPDGF−BB(rhPDGF−BB)などの組換えヒト(rh)PDGFを含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、PDGFはPDGF断片である。いくつかの実施形態では、rhPDGF−Bは以下の断片、すなわち、全B鎖のアミノ酸配列1〜31、1〜32、33〜108、33〜109、および/または1〜108を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、細胞は、組成物に曝された後、約3週間、約2週間、約1週間、約7日、約6日、約5、約4、約3、約2、または約1日以内に本発明の組成物に浸潤する。いくつかの実施形態では、細胞は腱細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は骨芽細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は靭帯細胞である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、腱の骨への結合、または靭帯の骨への結合において有用であり、任意の腱または靭帯の結合に適用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、骨への腱/靭帯の結合部位で、腱および/または骨ならびに靭帯および/または骨を強化することによって、骨への腱結合または骨への靭帯結合を増強する。他の型の損傷した、または傷害された腱および/または靭帯、例えば、断裂、離層、および/または任意の他の歪みもしくは変形を示す腱/靭帯なども、本発明の方法によって治療することができる。1つの型の傷害を治療することができ、または2つ以上の型の傷害を同時に治療することができる。いくつかの実施形態では、治療により、腱を治療する。いくつかの実施形態では、治療により、靭帯を治療する。いくつかの実施形態では、腱および/または靭帯組織の特定の治療のために、腱グラフトが使用される。他の実施形態では、腱および/または靭帯組織の特定の治療のために、靭帯グラフトが使用される。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、腱の骨への結合または再結合、および骨を伴わない任意の腱傷害の両方において有用である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、腱の骨への結合または再結合の増強、および骨を伴わない任意の腱傷害の両方において有用である。他の実施形態では、本発明の組成物および方法は、靭帯の骨への結合または再結合、および骨を伴わない任意の靭帯傷害の両方において有用である。他の実施形態では、本発明の組成物および方法は、靭帯の骨への結合または再結合の増強、および骨を伴わない任意の靭帯傷害の両方において有用である。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法によって治療することができる腱として、それだけに限らないが、肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋、大腿直筋、後脛骨筋、大腿四頭筋、上腕二頭筋の腱、ならびにアキレス腱、膝蓋腱、外転筋腱(abductor tendon)および内転筋腱(adductor tendon)、または腰の他の腱、一般的な伸筋腱、一般的な屈筋腱、浅指屈筋腱、指伸筋、ならびに小指伸筋腱、または腕および手の他の腱が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法によって治療することができる腱は、膝蓋腱、前脛骨筋腱(anterior tibialis tendon)、アキレス腱、膝窩腱、半腱様筋腱(semitendinosus tendon)、薄筋腱(gracilis tendon)、外転筋腱、および内転筋腱からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法によって治療することができる腱は、棘上筋腱(supraspinatus tendon)、棘下筋腱(infraspinatus tendon)、肩甲下筋腱(subscapularis tendon)、小円筋腱(tere minor tendon)(回旋腱板複合体(rotator cuff complex))、屈筋腱、大腿直筋腱(rectus femoris tendon)、後脛骨筋腱(tibialis posterior tendon)、および大腿四頭筋腱(quadriceps femoris tendon)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法によって治療することができる腱は、膝蓋腱、前脛骨筋腱、アキレス腱、膝窩腱、半腱様筋腱、薄筋腱、外転筋腱、内転筋腱、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、小円筋腱(回旋腱板複合体)、屈筋腱、大腿直筋腱、後脛骨筋腱、および大腿四頭筋腱からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法によって治療することができる腱は、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、小円筋腱(回旋腱板複合体)、屈筋腱、大腿直筋腱、後脛骨筋腱、および大腿四頭筋腱からなる群より選択されない。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法によって治療することができる靭帯は、前十字靭帯(anterior cruciate ligament)、外側側副靭帯(lateral collateral ligament)、後十字靭帯(posterior cruciate ligament)、内側側副靭帯(medial collateral ligament)、頭側十字靭帯(cranial cruciate ligament)、尾方十字靭帯(caudal cruciate ligament)、輪状甲状靭帯(cricothyroid ligament)、歯周靭帯、毛様体小帯、前仙腸靭帯、後仙腸靭帯、仙結節靭帯、仙棘靭帯、恥骨弓靭帯、上恥骨靭帯、提靭帯、掌側橈骨手根靭帯、背側橈骨手根靭帯、内側側副靭帯(ulnar collateral ligament)、および外側側副靭帯(radial collateral ligament)からなる群より選択される。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法によって治療することができる骨には、それだけに限らないが、例えば、脛骨、大腿骨、および上腕骨が含まれる。
【0041】
いくつかの実施形態では、骨を伴わない腱または靭帯の損傷は、腱または靭帯の断裂、切断(severance)、引裂(tearing)、離層、歪み、または変形である。
【0042】
いくつかの実施形態では、腱の骨への結合は、回旋腱板傷害の治療のためである。いくつかの実施形態では、腱の骨への結合または靭帯の骨への結合は、前十字靭帯再建のためである。
【0043】
いくつかの実施形態では、個体において腱または靭帯の傷害を治療するための方法であって、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む有効量の組成物を前記個体に投与するステップを含み、PDGFは、約0.1mg/ml〜約1.0mg/mlの範囲の濃度であり、生体適合性マトリックスは、約4500μm〜約20000μmの範囲の孔面積サイズおよび約200μm〜約500μmの範囲の孔周囲長サイズを有する孔を含む多孔質構造を形成する方法が提供される。
【0044】
いくつかの実施形態では、個体において腱または靭帯の傷害を治療するための方法であって、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む有効量の組成物を前記個体の傷害患部に投与するステップを含み、PDGFは、約0.1mg/ml〜約1.0mg/mlの範囲の濃度であり、組成物は流動性である方法が提供される。
【0045】
いくつかの実施形態では、個体において腱を骨にまたは靭帯を骨に結合するための方法であって、腱と骨または靭帯と骨の界面で、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む有効量の組成物を前記個体に投与するステップを含み、生体適合性マトリックスは、約85%超の多孔度を有する孔を含む多孔質構造を形成する方法が提供される。
【0046】
いくつかの実施形態では、前十字靭帯再建のために、個体において腱を骨に結合するための方法であって、腱と骨の界面で、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む有効量の組成物を前記個体に投与するステップを含み、生体適合性マトリックスは、約85%超の多孔度を有する孔を含む多孔質構造を形成する方法が提供される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、この方法は、関節鏡下の技法、内視鏡下の技法、腹腔鏡下の技法、または任意の他の適当な最小限に侵襲性の技法を使用して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、24時間にわたって様々なコラーゲンマトリックスから放出される累積rhPDGF−BBを表す図である。
【図2】図2は、24時間にわたって様々なコラーゲンマトリックスから放出されるrhPDGF−BBの百分率を表す図である。
【図3】図3は、様々なコラーゲンマトリックスから放出された後のrhPDGF−BBの生物作用能を表す図である。
【図4】図4は、例示的な、縫合で安定化された横切されたアキレス腱を表す図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態による、安定化された傷害されたアキレス腱への組成物の例示的な投与を表す図である。
【図6A】図6A〜6Bは、A)2つの血腫に冒された試料を含む、およびB)2つの血腫に冒された試料を除く、アキレス腱修復治療の周期的プレコンディショニング(コンディショニング伸長(conditioning elongation)およびピークトゥピーク伸長(peak−to−peak elongation))を示す図である。
【図6B】図6A〜6Bは、A)2つの血腫に冒された試料を含む、およびB)2つの血腫に冒された試料を除く、アキレス腱修復治療の周期的プレコンディショニング(コンディショニング伸長(conditioning elongation)およびピークトゥピーク伸長(peak−to−peak elongation))を示す図である。
【図7A】図7A〜7Bは、アキレス腱修復治療の破損までのランプ(ramp to failure)試験結果(コンストラクト破損時の極限の力およびコンストラクト全体の剛性(global construct stiffness))を示す図である。
【図7B】図7A〜7Bは、アキレス腱修復治療の破損までのランプ(ramp to failure)試験結果(コンストラクト破損時の極限の力およびコンストラクト全体の剛性(global construct stiffness))を示す図である。
【図8】図8は、2つの血腫に冒された試料を含めた、または除いた(それぞれ、左パネルおよび右パネル)、アキレス腱修復治療の修復組織の剛性を示す図である。
【図9】図9A〜9Dは、移植して3週間後の移植されたコラーゲンA(パネルa)、B(パネルb)、C(パネルc)、およびD(パネルd)の組織切片を表す図である。記号:B=骨;C=コラーゲン;矢印は、分解されていないコラーゲンを示す。スケールバー=200μm。
【図10】図10は、長指伸筋腱の剥離、コラーゲンスポンジを用いた長指伸筋腱のラッピング、脛骨トンネルを通すスレッディング、内側皮質への結合を表す図である。図は、Rodeo S.A.ら、Am. J. Sports Med. 27巻:476〜488頁(1999年)から採用されている。
【図11】図11A〜11Cは、脛骨骨幹端を通るトンネルの形成を含む外科手術の側面図を表す図である。図は、Rodeo S.A.ら、J. Bone Joint Surg. Am.、75巻(12号):1795〜1803頁(1993年)から採用されている。
【図12】図12は、組織試料の配向を表す図である。各ブロックは、骨トンネルを通して長手方向に等しく分割され、断面および全長の、長手方向のセクションを切断するのに使用される。
【図13】図13は、試料のマイクロトモグラフィー(マイクロCT)を表す図である。図は、Rodeo S.A.ら、J. Bone Joint Surg. Am.、75巻(12号):1795〜1803頁(1993年)から採用されている。
【図14】図14は、Bench Top関節鏡検査モデルを表す図である。
【図15】図15は、30ng/mlの最終濃度で培地中にrhPDGF−BBを添加した、ヒツジ腱細胞を播種したBIOBLANKET(商標)マトリックス5%(パネルa)、6%(パネルb)、7%(パネルc)、およびCOLLATAPE(登録商標)(パネルd)のSEM画像を示す図である。
【図16】図16は、回旋腱板傷害治療の動的プレコンディショニング結果を示す図である。図16A:0.15mg/mlのrhPDGF−BB群および0.30mg/mlのrhPDGF−BB群は、縫合のみの群および縫合+コラーゲンマトリックス群より有意に大きなコンディショニング伸長を起こした。図16B:いずれの群との間にもピークトゥピーク伸長において著しい差はまったくなかった。
【図17】図17は、回旋腱板傷害治療の破損までのランプ結果を示す図である。図17A:0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BBを用いた修復増強は、縫合のみの群と比べて、それぞれ破損までの荷重(load to failure)において63.7%および63.3%の増大をもたらした。図17B:0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのより低いrhPDGF−BB用量は、より高い1.0mg/mlのPDGF用量より性能が優れており、破損時点の負荷においてそれぞれ120%および119.3%の増大として顕在化した。
【図18】図18は、1)縫合+コラーゲンマトリックス+0.15mg/mlのrhPDGF−BB、または2)縫合+コラーゲンマトリックス+0.3mg/mlのrhPDGF−BBの治療によって分類された病理組織学的スコアのグラフによる表示の図である。平均が示されており、エラーバーは標準偏差を表す。
【図19】図19は、1)縫合のみ;2)縫合+コラーゲンマトリックス酢酸バッファー、または3)縫合+コラーゲンマトリックス+1.0mg/mlのrhPDGF−BBの治療によって分類された病理組織学的スコアのグラフによる表示の図である。平均が示されており、エラーバーは標準偏差を表す。
【図20】図20は、線維軟骨界面(矢印)での腱コラーゲン(囲み)の骨との嵌合の領域を示す図である。A:縫合+コラーゲンマトリックス、20倍。B:縫合+コラーゲンマトリックス+0.3mg/ml(または150μg)のrhPDGF−BB、20倍。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、血小板由来成長因子(PDGF)を含む生体適合性マトリックスは、骨を伴わない腱または靭帯の傷害の治療において、ならびに腱−骨および靭帯−骨組織修復のために使用することができるという知見に部分的に基づく。
【0050】
本発明は、別段の指定のない限り、当業者に周知である分子生物学(組換え技法を含む)、細胞生物学、生化学、核酸化学、および免疫学の従来技法を使用する。本発明はまた、別段の指定のない限り、当業者に周知である手術および他の医学的方法の従来の技法および装置を使用する。別段の定義のない限り、本明細書で使用される技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0051】
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義を適用し、適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語は複数も含み、逆の場合も同様である。以下に示される任意の定義が参照により本明細書に組み込まれている任意の文献と矛盾する場合には、以下に示される定義が支配するものとする。
【0052】
本明細書で使用する場合、別段の指定のない限り、用語「治療」、または「治療すること」は、個体が治療されている病態を軽減し、病態の進行を減速し、治癒を早め、治療応答を改善し、病態を修復し、かつ/あるいはそれだけに限らないが、傷害された腱または靭帯に伴う疼痛の軽減、患部関節の運動範囲の増大、ならびに修復部位での腱もしくは靭帯の腱への、または靭帯もしくは腱/靭帯の骨への強度および結合の増大を含む、1つまたは複数の望ましい臨床効果または治療効果をもたらす、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子を含む有効量の組成物を個体に投与することを指す。
【0053】
「有効量」は、必要な投与量および期間で、所望の治療結果または臨床結果を実現するのに少なくとも有効な量を指す。有効量は、1つまたは複数の投与で提供することができる。
【0054】
本明細書で使用する場合、「骨を伴わない腱傷害または靭帯傷害」の治療は、傷害された骨を伴わない傷害された、もしくは損傷した腱もしくは靭帯、または骨からの腱/靭帯の剥離の治療を指す。そのような腱または靭帯の傷害の例には、それだけに限らないが、腱/靭帯の切断、腱/靭帯の断裂、引裂を示す腱/靭帯、離層、または任意の他の歪みもしくは変形が含まれる。治療されている個体は、腱または靭帯の傷害に加えて骨への傷害、または腱−骨/靭帯−骨の剥離を有する場合があるが、「骨を伴わない腱傷害または靭帯傷害」の治療は、腱および/または靭帯組織の特定の治療を指す。いくつかの実施形態では、個体は、骨を伴わない腱障害または靭帯傷害、ならびに骨を伴う傷害、例えば、腱−骨または靭帯−骨の結合を治療することができることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、骨を伴わない腱傷害または靭帯傷害のみが治療される。
【0055】
「個体」は、ヒト、家畜(domestic animal)および農用動物(farm animal)、ならびに動物園動物、競技用動物、またはペット動物、例えば、チンパンジー、および他の類人猿、ならびにサル種、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどを含めた哺乳動物指す。個体はヒトであることが好ましい。この用語は、特定の年齢または性別を表さない。
【0056】
「生体吸収性」は、生体適合性マトリックスがインビボで再吸収または再構築される能力を指す。再吸収プロセスは、体液、酵素、または細胞の作用による元の物質の分解および排除を伴う。再吸収された物質は、新組織の形成において宿主によって使用される場合があり、またはこれは、別の方法で宿主によって再利用される場合があり、またはこれは排泄される場合がある。
【0057】
コラーゲンマトリックスは、本明細書で参照する場合、例えば、ゲル、ペースト、粒子、粉末、シート、パッチ、パッド、ペースト、またはスポンジの形態での物質を含む。商業的に得られるコラーゲンマトリックスは、ウシの真皮および/またはウシの腱のコラーゲン抽出物から通常製造される。いくつかの実施形態では、ウシの腱の源は、ウシの深指屈筋(アキレス)腱である。いくつかの実施形態では、マトリックスはコラーゲンスラリーから作製され、この場合、スラリー中のコラーゲンの濃度は、マトリックスの各型について異なる。例えば、1つの型のコラーゲンマトリックスは、4.5%のコラーゲン濃度を有するスラリーから作製され、このコラーゲンマトリックスは、「コラーゲン(4.5%)」または「コラーゲンマトリックス(4.5%)」と本明細書で呼ばれ;第2の型のコラーゲンマトリックスは、5%のコラーゲン濃度を有するスラリーから作製され、このコラーゲンマトリックスは、「コラーゲン(5%)」または「コラーゲンマトリックス(5%)」と本明細書で呼ばれ;第3の型のコラーゲンマトリックスは、6%のコラーゲン濃度を有するスラリーから作製され、このコラーゲンマトリックスは、「コラーゲン(6%)」または「コラーゲンマトリックス(6%)」と本明細書で呼ばれ;第4の型のコラーゲンマトリックスは、7%のコラーゲン濃度を有するスラリーから作製され、このコラーゲンマトリックスは、「コラーゲン(7%)」または「コラーゲンマトリックス(7%)」と本明細書で呼ばれる。任意のコラーゲンマトリックスについて、開始スラリー中で使用されるコラーゲンの百分率は、最終的なコラーゲンマトリックス中のコラーゲンの百分率を必ずしも反映しない。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語、「結合すること」または「結合」は、本明細書で使用する場合、腱の骨への、もしくは骨中への、または靭帯の骨へのもしくは骨中への再結合をすること、または再結合を含むことが意図され、グラフト(例えば、腱または靭帯グラフト)を骨に、もしくは骨中に結合することも含む。例えば、非限定例を使用して、前十字靭帯再建を実施する場合、傷害された靭帯を骨から取り出すことができ、腱または靭帯グラフトなどのグラフトを、元の靭帯の代わりに骨に、または骨中に結合することができる。
【0059】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段の指定のない限り、複数の参照を含む。
【0060】
本明細書で「約」のついた値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ記述する)。例えば、「約X」に言及する記述は、に「X」の記述を含む。
【0061】
本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「を含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、および「から本質的になる(consisting essentially of)」を含む(include)ことが理解される。
【0062】
本発明の組成物および方法
個体において、骨を伴わない腱または靭帯の傷害を治療するための組成物および方法が本明細書で記載されている。一般に、治療方法は、腱または靭帯の傷害を有する個体に、生体適合性マトリックスおよびPDGFを含む組成物を投与するステップを含む。具体的には、治療方法は、腱または靭帯の傷害の部位に、コラーゲンマトリックスおよびPDGFを含む組成物を投与するステップを含む。
【0063】
個体において、腱または靭帯を骨に/骨中に結合または再結合させるための組成物および方法も本明細書に記載されている。一般に、結合方法は、腱/靭帯と骨の界面で、生体適合性コラーゲンマトリックスおよびPDGFを含む組成物を投与するステップを含む。
【0064】
生体適合性マトリックス
生体適合性マトリックスは、本発明のいくつかの実施形態によれば、足場マトリックスを含む。足場マトリックスは、本発明のいくつかの実施形態によれば、腱/靭帯および/または骨組織を含めた、新組織成長が起こるためのフレームワークまたは足場を提供する。
【0065】
生体適合性マトリックスは、いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスを含む。用語「コラーゲンマトリックス」は、例えば、コラーゲンゲル、ペースト、粉末、粒子、パッチ、パッド、シート、またはスポンジを指すことができる。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスは、I型、II型、およびIII型コラーゲンを含めた任意の型のコラーゲンを含む。いくつかの実施形態では、コラーゲンは、I型およびII型コラーゲンの混合物などのコラーゲンの混合物を含む。他の実施形態では、コラーゲンは生理的条件下で可溶性である。いくつかの実施形態では、コラーゲンは生理的条件下で不溶性である。いくつかの実施形態では、コラーゲンは可溶性成分および不溶性成分を含む。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスは、可溶性I型ウシコラーゲンなどの線維性コラーゲンを含む。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスは、ウシ真皮組織に由来する線維性および酸可溶性コラーゲンを含む。骨または筋骨格組織中に存在する他の型のコラーゲンも使用することができる。組換え、合成、および天然に存在する形態のコラーゲンを本発明において使用することができる。コラーゲンは、架橋されていても、架橋されていなくてもよい。
【0066】
コラーゲンマトリックスにおいて使用するのに適した線維性コラーゲンは、湿潤引張強度を含めた、縫合に耐え、引裂を伴うことなく縫合を保持するのに十分な機械的特性を実証することができる。線維性コラーゲンマトリックスは、例えば、約0.75ポンド〜約5ポンドの範囲の湿潤引裂強度を有することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスはグリコサミノグリカン(GAG)を含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、コラーゲンおよびグリコサミノグリカン(GAG)、例えば、架橋されたコラーゲンおよびGAGを含む。いくつかの実施形態では、GAGはコンドロイチン硫酸である。いくつかの実施形態では、GAGはコンドロイチン硫酸ではない。他のGAGとして、それだけに限らないが、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン、およびこれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、コラーゲンとGAGの重量/重量比は約90:10である。いくつかの実施形態では、コラーゲンとGAGの重量/重量比は約92:8である。いくつかの実施形態では、コラーゲンとGAGの重量/重量比は約95:5である。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、コンドロイチン硫酸を有する架橋コラーゲンを含む。他の実施形態では、生体適合性マトリックスはGAGを有する架橋コラーゲンを含み、GAGはコンドロイチン硫酸ではない。
【0068】
いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスは、それだけに限らないが、COLLATAPE(登録商標)(Integra LifeSciences Corporation、Plainsboro、NJ);INTEGRA流動性創傷マトリックス(Integra LifeSciences Corporation、Plainsboro、NJ);Cellerate RX、HyCure加水分解コラーゲンおよび加水分解コラーゲン/Ag創傷ゲル(Hymed Group Corporation、Bethlehem、PA);ならびにBIOBLANKET(商標)およびP1076流動性コラーゲン(Kensey Nash Corporation、Exton、PA)を含めた市販供給源から得られる。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスはBIOBLANKET(商標)ではない。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスはCOLLATAPE(登録商標)ではない。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明の生体適合性マトリックスは流動性である。流動性生体適合性マトリックスは、いくつかの実施形態では、シリンジおよび針またはカニューレによって所望の部位に適用することができる。いくつかの実施形態では、流動性生体適合性マトリックスは、所望の部位に経皮的に適用することができる。他の実施形態では、流動性生体適合性マトリックスは、外科的に露出した部位に適用することができる。いくつかの実施形態では、流動性生体適合性マトリックスは、骨トンネル中に挿入するための腱または靭帯グラフトに適用することができる。いくつかの実施形態では、キットなどにおいて、生体適合性マトリックスは、脱水された粉末または粒子として提供され、これらは投与のために調製すると流動性にすることができる。例えば、脱水形態の生体適合性マトリックスは、適当な量の水和バッファーを添加または混合することによって投与のために調製することができる。水和バッファーは、生体適合性マトリックスの一部として投与される適当な量のPDGFを含むことができる。添加されるバッファーの適当量は、例えば、PDGFの所望の濃度、コラーゲンの所望の濃度、GAGの所望の濃度、所望の流動性特性、またはこれらの任意の適当な組合せによって求められる。
【0070】
「流動性」は、カニューレまたは同様の通路を通じて物質を投与するのに必要な力をかけると物質が流れる、物質の物理的特性を指し、それでも物質は、治療される個体における部位に投与された後、実質的に不動のままであり、それによって部位に対して継続した治療をもたらす。流動性物質を投与するための例示的なデバイスはシリンジであり、このシリンジにおいて、プランジャーは、投与される流動性物質を動かす、必要とされる力を提供することができる。適当な例示的なデバイスは、流動性物質のより正確な送達および塗布を可能にする針または他の適当なカニューレをさらに含むことができる。投与用デバイスの内径、組成、構造、長さ、および任意の他の適当な特性を選択し、使用することができる。当業者は、適当な送達デバイスの特定のパラメータの選択は、組成物の流動性特性に基づくことを理解する。例えば、比較的流動性の低い組成物は、比較的に広いカニューレ内径および/またはより短いカニューレを有するデバイスによって送達するのにより適することができる。いくつかの実施形態では、流動性組成物は、21G、25G、または27Gの針によって送達される。いくつかの実施形態では、シリンジおよび/または針による送達により、経皮注射による流動性組成物の送達が可能になる。いくつかの実施形態では、流動性組成物は、非カニューレデバイス、例えば、組成物が所望の位置に送達されることを可能にする、スクープ、スパーテル、ブラシ、または他の同様のデバイスなどによって送達することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、PDGFを酸化しない。
【0072】
生体適合性マトリックスは、いくつかの実施形態によれば、移植に適した形状(例えば、球体、シリンダー、またはブロック)で提供することができる。他の実施形態では、生体適合性マトリックスは鋳造可能または押出し可能である。そのような実施形態では、生体適合性マトリックスは、ペーストまたはパテの形態とすることができる。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、ブロック、球体、もしくはシリンダー、または任意の所望の形状、例えば、鋳型もしくは適用部位によって画定される形状を含めた所定の形状で提供することができる。鋳造可能な生体適合性マトリックスは、骨トンネル中への腱または靭帯グラフトの挿入などの骨の中または骨への腱または靭帯の結合部位を含めた、腱、靭帯、および/または骨の中およびこれらの付近への本発明の組成物の効率的な配置を促進することができる。いくつかの実施形態では、鋳造可能な生体適合性マトリックスは、スパーテルまたは等価なデバイスを用いて骨および/または腱および/または靭帯に適用することができる。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、腱または靭帯グラフトなどの、腱または靭帯の周囲にラップすることによって腱または靭帯に適用することができる。
【0073】
本発明のコラーゲンマトリックスは、ウシの真皮、ウシの腱(例えば、深指屈筋(アキレス)腱)に由来する精製コラーゲン抽出物、または他の適当なコラーゲン源から作製することができる。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスは主にI型コラーゲンである。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスは、以下の濃度のコラーゲン(w/v)、すなわち約4.5%、約5%、約6%、または約7%のいずれか1つを有するコラーゲンスラリーから作製される。いくつかの実施形態では、コラーゲンは可溶性である。可溶性コラーゲンは、その移植後まもなく溶解することができ、それによって生体適合性マトリックス中にマクロ多孔性を導入する。マクロ多孔性は、アクセスを増強することによって細胞(例えば、骨芽細胞、腱細胞)の移植材への伝導率、したがって、移植部位での細胞のリモデリング活性を増大させることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、コラーゲンは、可溶性コラーゲンモノマー成分および不溶性コラーゲンポリマー成分を含む。いくつかの実施形態(embodies)では、可溶性コラーゲンモノマーと不溶性コラーゲンポリマーの比は、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、または約1:1である。
【0075】
いくつかの好適な実施形態では、生体適合性マトリックスは、孔を含む多孔質構造を形成する。いくつかの実施形態では、孔は、約800μm〜約3,000μm、約13,000μm〜約50,000μm、約2500μm〜約20,000μm、約3500μm〜約20,000μm、4500μm〜約20,000μm、約5000μm〜約19,000μm、約6000μm〜約18,000μm、約6000μm〜約15,000μm、または約5000μm〜約16000μmの範囲の平均面積を有する。いくつかの実施形態では、孔は、約100μm〜約200μm、約400μm〜約800μm。約200μm〜約500μm、約200μm〜約600μm、約300μm〜約600μm、または約300μm〜約500μmの範囲の平均周囲長を有する。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、約4500μm〜約20000μmの範囲の平均孔面積サイズ、および約200μm〜約600μmの範囲の平均孔周囲長サイズを有する。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスは、約4500μm〜約20000μmの範囲の平均孔面積サイズ、および約200μm〜約500μmの範囲の平均孔周囲長サイズを有する孔を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、多方向の、かつ/または相互接続された孔を有する多孔質構造を含む。多孔質構造は、いくつかの実施形態によれば、約1μm〜約1mmの範囲、例えば、少なくとも約5μm、少なくとも約10μm、少なくとも約20μm、少なくとも約30μm、少なくとも約40μm、または少なくとも約50μmの直径を有する孔を含むことができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、約100μm〜約1mmの範囲の直径を有するマクロ孔を含む。別の実施形態では、生体適合性マトリックスは、約10μm〜約100μmの範囲の直径を有するメソ孔を含む。さらなる実施形態では、生体適合性マトリックスは、約10μm未満の直径を有するマイクロ孔を含む。本発明の実施形態は、マクロ孔、メソ孔、およびマイクロ孔、またはこれらの任意の組合せを含む生体適合性マトリックスを企図する。
【0078】
他の実施形態では、生体適合性マトリックスは、相互接続されていない孔を有する多孔質構造を含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、相互接続された孔および相互接続されていない孔の混合物を有する多孔質構造を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは多孔質であり、生体適合性マトリックスの質量の約1倍〜約15倍の質量の範囲の量で水を吸収することができる。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスは多孔質であり、コラーゲンマトリックスの質量の約1倍〜約15倍の範囲の量で水を吸収することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスの多孔質構造により、増加した量でPDGFがマトリックスから放出されることが可能になる。いくつかの実施形態では、多孔質構造のコラーゲンマトリックス(5%)は、インビボまたはインビトロで測定した場合、特定の時間内にコラーゲンマトリックス(6%)またはコラーゲンマトリックス(7%)より高い百分率のPDGFを放出する。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスの多孔質構造により、PDGFが、インビボまたはインビトロで投与して約24時間以内にマトリックスから放出されることが可能になる。いくつかの実施形態では、PDGFの少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約50%〜約95%、約60%〜約95%、約70%〜約95%、約80%〜約95%、約90%〜約95%、約50%〜約85%、約60%〜約85%、約70%〜約85%、または約50%〜約80%が、約24時間以内にマトリックスから放出される。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスの多孔質構造により、インビボまたはインビトロで投与して約1時間、約6時間、約8時間、約12時間、または約48時間以内にマトリックスからPDGFが放出されることが可能になる。いくつかの実施形態では、PDGFの少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約50%〜約95%、約60%〜約95%、約70%〜約95%、約80%〜約95%、約90%〜約95%、約50%〜約85%、約60%〜約85%、約70%〜約85%、または約50%〜約80%が、約1時間、約6時間、約8時間、約12時間、または約48時間以内にマトリックスから放出される。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスはCOLLATAPE(登録商標)である。いくつかの実施形態では、コラーゲンマトリックスは、COLLATAPE(登録商標)と類似した多孔質ウシコラーゲンスポンジである。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、COLLATAPE(登録商標)を含み、これにより、コラーゲンマトリックス(5%)、コラーゲンマトリックス(6%)、またはコラーゲンマトリックス(7%)と比較してより高い百分率のPDGFが放出されることが可能になる。
【0081】
いくつかの実施形態では、PDGFは、周囲領域中に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFは傷害された腱または靭帯上に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFは、骨−腱または骨−靭帯結合箇所付近の骨の表面上に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFは、周囲媒質中に放出される。
【0082】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスの多孔質構造により、マトリックスの孔中への細胞の浸潤が可能になる。いくつかの実施形態では、細胞は、組成物に曝された後、約3週間、約2週間、約1週間、約7日、約6日、約5日、約4、約3、約2、または約1日以内に組成物に浸潤する。いくつかの実施形態では、細胞は腱細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は骨芽細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は靭帯細胞である。好適な実施形態では、生体適合性マトリックスは、マトリックスの孔中への細胞の浸潤を可能にする多孔質構造を有するCOLLATAPE(登録商標)を含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、コラーゲンマトリックス(5%)、コラーゲンマトリックス(6%)、またはコラーゲンマトリックス(7%)と比較した場合、より多数の細胞がマトリックスの孔中に浸潤することを可能にする多孔質構造を有するCOLLATAPE(登録商標)を含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、コラーゲンマトリックス(6%)、またはコラーゲンマトリックス(7%)と比較した場合、より多数の細胞がマトリックスの孔中に浸潤することを可能にする多孔質構造を有するコラーゲンマトリックス(5%)を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、少なくとも約85%、約90%、約92%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の多孔度を有する。
【0084】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは生体吸収性である。生体適合性マトリックスは、いくつかの実施形態では、インビボで投与して1年以内に再吸収され得る。他の実施形態では、生体適合性マトリックスは、インビボで投与して1、3、6、または9カ月以内に再吸収され得る。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、インビボで投与して約30日、約25日、約21日、約18日、約15日、約10〜14日、または約10日以内に再吸収される。生体再吸収性(bioresorbability)は、(1)マトリックス物質の性質(すなわち、その化学物質構成、物理的構造、およびサイズ);(2)マトリックスが配置される体内での位置;(3)使用されるマトリックス物質の量;(4)患者の代謝状態(糖尿病/非糖尿病、骨粗鬆症、喫煙者、老齢、ステロイド使用など);(5)治療される傷害の程度および/または型;および(6)他の骨同化、異化、および抗異化因子などのマトリックスに加えた、他の物質の使用に依存する。
【0085】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、少なくとも1つのリン酸カルシウムを含む。他の実施形態では、生体適合性マトリックスは、複数のリン酸カルシウムを含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックス物質として使用するのに適したリン酸カルシウムは、0.5〜2.0の範囲のカルシウムとリン原子の比を有する。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、同種移植片を含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、骨を伴わない腱または靭帯の傷害を治療するのに使用するためのものであり、マトリックスは、リン酸カルシウムまたは同種移植片を含まない。
【0086】
骨足場材料として使用するのに適したリン酸カルシウムとして、それだけに限らないが、非晶質リン酸カルシウム、リン酸一カルシウム一水和物(MCPM)、リン酸一カルシウム無水物(MCPA)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、リン酸二カルシウム無水物(DCPA)、リン酸八カルシウム(OCP)、α−リン酸三カルシウム、β−TCP、ヒドロキシアパタイト(OHAp)、結晶性の低いヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム(TTCP)、十リン酸七カルシウム(heptacalcium decaphosphate)、メタリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム脱水和物、炭酸リン酸カルシウム、およびピロリン酸カルシウムが挙げられる。
【0087】
足場材料および生体適合性結合剤
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、足場マトリックスおよび生体適合性結合剤を含む。生体適合性結合剤は、合わされた物質同士間の粘着を促進するように作用できる物質を含むことができる。生体適合性結合剤は、例えば、生体適合性マトリックスの形成において、骨足場材料の粒子同士間の接着を促進することができる。ある特定の実施形態では、材料が、合わされた物質同士間の粘着を促進するように作用し、腱、靭帯、および骨成長を含めた新規組織成長が起こるためのフレームワークを提供する場合、同じ物質が、足場材料と結合剤の両方として機能することができる。WO2008/005427および米国第11/772,646号(米国公開第2008/00274470号)を参照。
【0088】
生体適合性結合剤は、いくつかの実施形態では、例えば、コラーゲン、エラスチン、多糖、核酸、炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アンヒドリド)、ポリウレタン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アンヒドリド−co−イミド)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(α−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(リン酸エステル)、ポリ乳酸、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−トリメチレンカーボネート)、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリ(d−バレロラクトン)、ポリ(γ−ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミンヒドロクロリド)、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)、ポリ(エチレンイミン)、ポリプロピレンフマレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素線維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)−co−ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、ならびに/またはこれらのコポリマーおよび/もしくは混合物を含むことができる。
【0089】
生体適合性結合剤は、他の実施形態では、アルギン酸、アラビアガム、グアーガム、キサンタン(xantham)ガム、ゼラチン、キチン、キトサン、キトサンアセテート、キトサンラクテート、コンドロイチン硫酸、N,O−カルボキシメチルキトサン、デキストラン(例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、またはデキストラン硫酸ナトリウム)、フィブリン接着剤、レシチン、ホスファチジルコリン誘導体、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース)、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン(例えば、ヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプン)、乳酸、プルロン酸、グリセロリン酸ナトリウム、グリコーゲン、ケラチン、絹、ならびに/またはこれらの誘導体および/もしくは混合物を含むことができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、生体適合性結合剤は水溶性である。水溶性結合剤は、生体適合性マトリックスから、その移植後まもなく溶解することができ、それによって生体適合性マトリックス中にマクロ多孔性を導入する。マクロ多孔性は、アクセスを増強することによって移植材の骨伝導性、したがって、移植部位での細胞(例えば、破骨細胞および骨芽細胞、腱細胞)のリモデリング活性を増大させることができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、生体適合性結合剤は、生体適合性マトリックス中に、マトリックスの約5重量パーセント〜約50重量パーセントの範囲の量で存在することができる。他の実施形態では、生体適合性結合剤は、生体適合性マトリックスの約10重量パーセント〜約40重量パーセントの範囲の量で存在することができる。別の実施形態では、生体適合性結合剤は、生体適合性マトリックスの約15重量パーセント〜約35重量パーセントの範囲の量で存在することができる。さらなる実施形態では、生体適合性結合剤は、生体適合性マトリックスの約20重量パーセントの量で存在することができる。
【0092】
血小板由来成長因子
本発明は、個体における腱または靭帯の傷害を治療するための組成物および方法を提供する。一般に、治療方法は、腱または靭帯の傷害を有する個体に、生体適合性マトリックスおよびPGGFを含む組成物を投与するステップを含む。具体的には、治療方法は、腱または靭帯の傷害の部位に、コラーゲンマトリックスおよびPDGFを含む組成物を投与するステップを含む。
【0093】
生体適合性マトリックスは、本発明の実施形態によれば、足場マトリックスおよびPDGFを含む。PDGFは、傷害部位で血小板から放出される成長因子である。PDGFは、VEGFと相乗作用を示すことによって血管新生を促進し、腱細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、および血管平滑筋細胞を含めた間葉系細胞の走化性および増殖を刺激する。
【0094】
本発明によって提供される組成物および方法は、生体適合性マトリックス、およびPDGFの溶液を含み、溶液は、生体適合性マトリックス中に分散されている。いくつかの実施形態では、PDGFは、約0.01mg/ml〜約10.0mg/ml、約0.05mg/ml〜約5.0mg/ml、約0.1mg/ml〜約1.0mg/ml、または約0.1mg/ml〜約2.0mg/ml、約0.1mg/ml〜約0.4mg/ml、約0.9mg/ml〜約1.5mg/mlの範囲の濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、PDGFは、0.15mg/mlの濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、PDGFは、0.3mg/mlの濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、PDGFは、1.0mg/mlの濃度で溶液中に存在する。他の実施形態では、PDGFは、以下の濃度のうちのいずれか1つの濃度で溶液中に存在する:約0.05mg/ml;約0.1mg/ml;約0.15mg/ml;約0.2mg/ml;約0.25mg/ml;約0.3mg/ml;約0.35mg/ml;約0.4mg/ml;約0.45mg/ml;約0.5mg/ml、約0.55mg/ml、約0.6mg/ml、約0.65mg/ml、約0.7mg/ml;約0.75mg/ml;約0.8mg/ml;約0.85mg/ml;約0.9mg/ml;約0.95mg/ml;約1.0mg/ml;約1.5mg/ml;または約2.0mg/ml。これらの濃度は、単に特定の実施形態の例であり、PDGFの濃度は、上述した濃度範囲のいずれかの範囲内とすることができることが理解されるべきである。
【0095】
様々な量のPDGFを、本発明の組成物中に使用することができる。使用することができるPDGFの量には、それだけに限らないが、以下の範囲の量が含まれる:約1μg〜約50mg、約10μg〜約25mg、約100μg〜約10mg、および約250μg〜約5mg。
【0096】
本発明の実施形態におけるPDGF(または他の成長因子)の濃度は、米国特許第6,221,625号;同第5,747,273号;および同第5,290,708号において記載された酵素結合イムノアッセイ、またはPDGF濃度を求めるための当技術分野で公知の任意の他のアッセイを使用することによって求めることができる。本明細書に提供される場合、PDGFのモル濃度は、PDGF二量体(例えば、PDGF−BB、MW約25kDa)の分子量に基づいて決定される。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態では、PDGFは、PDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、PDGF−CC、PDGF−DD、ならびにこれらの混合物および誘導体を含めたPDGFホモ二量体およびヘテロ二量体を含む。いくつかの実施形態では、PDGFはPDGF−BBを含む。他の実施形態では、PDGFは、rhPDGF−BBなどの組換えヒトPDGFを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、PDGFは天然源から得ることができる。他の実施形態では、PDGFは、組換えDNA技法によって作製することができる。いくつかの実施形態では、PDGFまたはその断片は、固相ペプチド合成などの当業者に公知のペプチド合成技法を使用して作製することができる。
【0099】
天然源から得られる場合、PDGFは、生体液から得ることができる。生体液は、いくつかの実施形態によれば、血液を含めた生体に関連する任意の処理流体または未処理流体を含むことができる。生体液は、血小板濃縮物、アフェレーシス血小板(apheresed platelet)、多血小板血漿、血漿、血清、新鮮な凍結血漿、およびバフィーコートを含めた血液成分も含むことができる。生体液は、血漿から分離され、生理的流体中に再懸濁された血小板を含むことができる。
【0100】
組換えDNA技法によって作製される場合、単一モノマー(例えば、PDGF B鎖またはA鎖)をコードするDNA配列を、発現のために培養された原核生物細胞または真核細胞中に挿入することによって、引き続いてホモ二量体(例えば、PDGF−BBまたはPDGF−AA)を作製することができる。組換え技法によって作製されるホモ二量体PDGFは、いくつかの実施形態において使用することができる。他の実施形態では、PDGFヘテロ二量体は、ヘテロ二量体の両モノマー単位をコードするDNA配列を、培養された原核生物細胞または真核細胞中に挿入し、翻訳されたモノマー単位をヘテロ二量体(例えば、PDGF−AB)を作製するために細胞によって処理させることによって生成することができる。市販の組換えヒトPDGF−BBを、様々な供給源から得ることができる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態では、PDGFはPDGF断片を含む。一実施形態では、rhPDGF−Bは、以下の断片を含む:全B鎖のアミノ酸配列1−31、1−32、33−108、33−109、および/または1−108。PDGFのB鎖の完全なアミノ酸配列(aa1−109)は、米国特許第5,516,896号の図15に提供されている。本発明のrhPDGF組成物は、無傷のrhPDGF−B(aa 1−109)とその断片の組合せを含むことができることが理解されるべきである。米国特許第5,516,896号に開示されているものなどのPDGFの他の断片も使用することができる。いくつかの実施形態によれば、rhPDGF−BBは、少なくとも65%の無傷のrhPDGF−B(aa 1−109)を含む。他の実施形態によれば、rhPDGF−BBは、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%の無傷のrhPDGF−B(aa 1−109)を含む。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態では、PDGFは、高度に精製された形態とすることができる。本明細書で使用する場合、精製PDGFは、本発明の溶液中に組み込まれる前に、約95重量%超のPDGFを有する組成物を含む。溶液は、任意の医薬として許容可能なバッファーまたは希釈剤を使用して調製することができる。他の実施形態では、PDGFは、実質的に精製されていてもよい。本明細書で使用する場合、実質的に精製されたPDGFは、本発明の溶液中に組み込まれる前に、約5重量%〜約95重量%のPDGFを有する組成物を含む。一実施形態では、実質的に精製されたPDGFは、本発明の溶液中に組み込まれる前に、約65重量%〜約95重量%のPDGFを有する組成物を含む。他の実施形態では、実質的に精製されたPDGFは、本発明の溶液中に組み込まれる前に、約70重量%〜約95重量%、約75重量%〜約95重量%、約80重量%〜約95重量%、約85重量%〜約95重量%、または約90重量%〜約95重量%のPDGFを有する組成物を含む。精製PDGFおよび実質的に精製されたPDGFは、足場マトリックス中に組み込むことができる。
【0103】
さらなる実施形態では、PDGFは部分的に精製されていてもよい。本明細書で使用する場合、部分的に精製されたPDGFは、PDGFを作製するのに採取および分離を必要とする多血小板血漿、新鮮な凍結血漿、または任意の他の血液産物の状況においてPDGFを有する組成物を含む。本発明の実施形態は、ホモ二量体およびヘテロ二量体を含めた、本明細書に提供される任意のPDGFアイソフォームを、精製または部分的に精製することができることを企図する。PDGF混合物を含む本発明の組成物は、部分的に精製された割合でPDGFアイソフォームまたはPDGF断片を含むことができる。部分的に精製されたPDGFおよび精製PDGFは、いくつかの実施形態では、米国第11/159,533号(米国公開第20060084602号)に記載されたように調製することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、PDGFを含む溶液は、1つまたは複数のバッファー中にPDGFを可溶化することによって形成される。本発明のPDGF溶液において使用するのに適したバッファーは、それだけに限らないが、炭酸塩、リン酸塩(例えば、リン酸緩衝食塩水)、ヒスチジン、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、酸性バッファー、例えば、酢酸およびHClなど、ならびに有機バッファー、例えば、リシン、トリスバッファー(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、および3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)などを含むことができる。バッファーは、PDGFとの生体適合性、および望ましくないタンパク質修飾を妨害するバッファーの能力に基づいて選択することができる。バッファーは、宿主組織との適合性に基づいてさらに選択することができる。一実施形態では、酢酸ナトリウムバッファーが使用される。バッファーは、様々なモル濃度、例えば、約0.1mM〜約100mM、約1mM〜約50mM、約5mM〜約40mM、約10mM〜約30mM、または約15mM〜約25mM、またはこれらの範囲内の任意のモル濃度で使用することができる。いくつかの実施形態では、酢酸バッファーは、約20mMのモル濃度で使用される。
【0105】
別の実施形態では、PDGFを含む溶液は、水に凍結乾燥PDGFを可溶化することによって形成することができ、可溶化の前に、PDGFは、適切なバッファーから凍結乾燥される。
【0106】
PDGFを含む溶液は、本発明の実施形態によれば、約3.0〜約8.0の範囲のpHを有することができる。一実施形態では、PDGFを含む溶液は、約5.0〜約8.0、より好ましくは約5.5〜約7.0、最も好ましくは約5.5〜約6.5の範囲、またはこれらの範囲内の任意の値のpHを有する。PDGFを含む溶液のpHは、いくつかの実施形態では、PDGFまたは任意の他の所望の生物学的活性剤の安定性および効力の延長と両立し得る。PDGFは、酸性環境において一般により安定である。したがって、いくつか実施形態によれば、本発明は、PDGF溶液の酸性貯蔵製剤(storage formulation)を含む。いくつかの実施形態によれば、PDGF溶液は、好ましくは約3.0〜約7.0、より好ましくは約4.0〜約6.5のpHを有する。しかし、PDGFの生物活性は、中性のpH範囲を有する溶液中で最適化される場合がある。したがって、他の実施形態では、本発明は、PDGF溶液の中性pH製剤を含む。本実施形態によれば、PDGF溶液は、好ましくは約5.0〜約8.0、より好ましくは約5.5〜約7.0、最も好ましくは約5.5〜約6.5のpHを有する。
【0107】
いくつかの実施形態では、PDGF含有溶液のpHを変更することによって、PDGFのマトリックス基質への結合動態を最適化することができる。必要に応じて、物質のpHが隣接する物質と平衡化するにつれて、結合したPDGFは不安定となり得る。PDGFを含む溶液のpHは、いくつかの実施形態では、本明細書に列挙されるバッファーによって制御することができる。様々なタンパク質は、これらが安定である異なるpH範囲を示す。タンパク質の安定性は、タンパク質上の等電点および電荷によって主に反映される。pH範囲は、タンパク質の立体配座構造、ならびにタンパク質の、タンパク質分解、加水分解、酸化、およびタンパク質の構造および/または生物活性に対する修飾をもたらし得る他のプロセスに対する感受性に影響し得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、PDGFを含む溶液は、他の生物学的活性剤などの追加の成分をさらに含むことができる。他の実施形態では、PDGFを含む溶液は、細胞培地、アルブミンなどの他の安定化タンパク質、抗菌剤、プロテアーゼ阻害剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、アプロチニン、E−アミノカプロン酸(EACA)など)、ならびに/または他の成長因子、例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、インスリン様成長因子(IGE)、骨形態形成タンパク質(BMP)など、またはPDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、PDGF−CCおよび/もしくはPDGF−DDの組成物を含めた他のPDGFをさらに含むことができる。
【0109】
生物学的活性剤をさらに含む組成物
本発明の組成物および方法は、いくつかの実施形態によれば、PDGFに加えて、1つまたは複数の生物学的活性剤をさらに含むことができる。PDGFに加えて本発明の組成物中に組み込むことができる生物学的活性剤は、有機分子、無機物質、タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、遺伝子、遺伝子断片、低分子干渉リボ核酸(siRNA)、遺伝子制御配列、核転写因子、およびアンチセンス分子)、核タンパク質、多糖(例えば、ヘパリン)、糖タンパク質、およびリポタンパク質を含むことができる。例えば、抗癌剤、抗生物質、鎮痛薬、抗炎症剤、免疫抑制剤、酵素阻害剤、抗ヒスタミン剤、ホルモン、筋弛緩剤、プロスタグランジン、栄養因子、骨誘導タンパク質、成長因子、およびワクチンを含めた、本発明の組成物中に組み込むことができる生物学的活性化合物の非限定例は、米国第11/159,533号(米国公開第20060084602号)に開示されている。本発明の組成物中に組み込むことができる生物学的活性化合物には、いくつかの実施形態では、骨誘導因子、例えば、インスリン様成長因子、線維芽細胞成長因子、または他のPDGFが含まれる。他の実施形態によれば、本発明の組成物中に組み込むことができる生物学的活性化因子として、好ましくは、骨誘導因子および骨刺激因子(osteostimulatory factor)、例えば、骨形態形成タンパク質(BMP)、BMP模倣剤、カルシトニン、カルシトニン模倣剤、スタチン、スタチン誘導体、線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子、成長分化因子、および/または副甲状腺ホルモンなどが挙げられる。本発明の組成物中に組み込むための追加の因子として、いくつかの実施形態では、プロテアーゼ阻害剤、ならびにビスホスホネートを含めた、骨吸収を減少させる骨粗鬆症治療剤、ならびにNF−kB(RANK)配位子に対する抗体が挙げられる。
【0110】
追加の生物学的活性剤を送達するための標準プロトコールおよびレジメンは、当技術分野で公知である。追加の生物学的活性剤は、損傷した腱および/または腱結合部位に適切な投与量の薬剤を送達することを可能にする量で、本発明の組成物中に導入することができる。ほとんどの場合、投与量は、専門家に公知であり、対象とする特定の薬剤に適用可能な指針を使用して求められる。本発明の組成物に含められる追加の生物学的活性剤の量は、状態の型および程度、特定の患者の全体的な健康状態、生物学的活性剤の処方、放出動態、ならびに生体適合性マトリックスの生体再吸収性などの変数に依存し得る。標準的な臨床試験を使用することによって、任意の特定の追加の生物学的活性剤についての用量および投薬頻度を最適化することができる。
【0111】
いくつかの実施形態による、腱または靭帯を骨に、または骨中に結合するための組成物は、例えば、自己骨髄、自己血小板抽出物、同種移植片、合成骨マトリックス物質、異種移植片、およびこれらの誘導体を含めた1つまたは複数の骨移植物質をさらに含む。
【0112】
治療される腱、靭帯、および骨
本発明の方法によって治療することができる腱には、任意の腱が含まれる。腱の非限定例として、膝蓋腱、前脛骨筋腱、アキレス腱、膝窩腱、半腱様筋腱、薄筋腱、外転筋腱、内転筋腱、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、小円筋腱(回旋腱板複合体)、屈筋腱、大腿直筋腱、後脛骨筋腱、および大腿四頭筋腱が挙げられる。いくつかの実施形態では、腱は、膝蓋腱、前脛骨筋腱、アキレス腱、膝窩腱、半腱様筋腱、薄筋腱、外転筋腱、および内転筋腱からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、腱は、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、小円筋腱(回旋腱板複合体)、屈筋腱、大腿直筋腱、後脛骨筋腱、および大腿四頭筋腱からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、腱は、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、小円筋腱(回旋腱板複合体)、屈筋腱、大腿直筋腱、後脛骨筋腱、および大腿四頭筋腱からなる群より選択されない。
【0113】
本発明の方法によって治療することができる靭帯には、任意の靭帯が含まれる。靭帯の非限定例として、前十字靭帯(anterior cruciate ligament)、外側側副靭帯(lateral collateral ligament)、後十字靭帯(posterior cruciate ligament)、内側側副靭帯(medial collateral ligament)、頭側十字靭帯(cranial cruciate ligament)、尾方十字靭帯(caudal cruciate ligament)、輪状甲状靭帯、歯周靭帯、毛様体小帯、前仙腸靭帯、後仙腸靭帯、仙結節靭帯、仙棘靭帯、恥骨弓靭帯、上恥骨靭帯、提靭帯(例えば、陰茎または乳房)、掌側橈骨手根靭帯、背側橈骨手根靭帯、内側側副靭帯(ulnar collateral ligament)、または外側側副靭帯(radial collateral ligament)が挙げられる。
【0114】
本発明の組成物および方法によって治療することができる骨には、腱または靭帯の結合部位である任意の骨が含まれ、それだけに限らないが、脛骨、大腿骨、および上腕骨が含まれる。
【0115】
骨を伴わない腱または靭帯の傷害を治療するための方法
本発明は、腱または靭帯の傷害を治療するための組成物および方法を提供する。この治療方法は、骨を伴わない傷害された腱または靭帯、例えば、腱/靭帯の切断、腱/靭帯の断裂、引裂を示す腱/靭帯、離層、または任意の他の歪みもしくは変形などの治療を含むことができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、腱または靭帯の傷害を治療するための方法は、傷害された腱または靭帯に本発明の組成物を投与するステップを対象とする。いくつかの実施形態では、傷害された腱または靭帯は、治療のために物理的に安定化することができる。例えば、傷害された腱または靭帯は、改良Mason Allen縫合デザイン、または任意の他の適当な縫合によって縫合することができる。腱または靭帯の損傷端部は、端部の直接の外科的修復または再接続を可能にしない場合があるので、そのような安定化方法は、いくつかの実施形態では好適となり得る。結果として、安定化縫合は、1つまたは複数の傷害された端部に対して遠位に位置される場合がある。
【0117】
安定化縫合の結果として、傷害された腱または靭帯は、腱または靭帯の傷害された端部が、実質的に再接近されるように配置される。いくつかの実施形態では、再接近された端部間に適切なサイズのギャップを残し、それによってギャップ体積中に流動性組成物の導入を可能にし、それによってこのギャップを架橋し、または満たすことができる。いくつかの実施形態では、投与された組成物は、ギャップ内で実質的に不動とすることができる。いくつかの実施形態では、この実質的な不動性は、組成物を含む再接近された端部を囲繞または結合するためのラップまたは他の適当なデバイスによって、傷害およびその中の組成物を囲むことによって補助または提供することができる。
【0118】
本発明の組成物は流動性であってもよい。このようにして、流動性組成物は、傷害された腱または靭帯部位により正確に送達することができる。シリンジ、または他の適当なデバイスを使用することによって、本発明の組成物を投与することができる。シリンジは、組成物のより正確な送達を可能にする針または他の適当なカニューレをさらに含むことができる。シリンジおよび/またはカニューレの構成、例えば、その内径、サイズ、長さなどは、送達される組成物の所望の体積、または組成物の流動性特性に応じて構成することができる。本発明の組成物の別の有利な特徴は、組成物は、送達されると、その送達部位で実質的に不動のままとすることができることである。いくつかの実施形態では、流動性組成物は、21G、25G、または27Gの針を通して送達される。いくつかの実施形態では、シリンジおよび/または針による送達により、経皮注射による流動性組成物の送達が可能になる。いくつかの実施形態では、流動性組成物は、非カニューレデバイス、例えば、組成物が所望の位置に送達されることを可能にする、スクープ、スパーテル、ブラシ、または他の同様のデバイスなどによって送達することができる。
【0119】
本発明の一実施形態における組成物のさらに別の有利な機能は、その流動性特性により、通常アクセスすることが困難となり得る傷害の領域に組成物がアクセスし、この領域を満たすことが可能になるということである。例えば、断裂した腱または靭帯は、傷害された端部で著しくぼろぼろになり、それによって直接の外科的修復を困難にする場合がある。さらに、そのような損傷端部は、多くの小さい、比較的アクセスしにくい領域、例えば、裂け目および他の組織内領域などを含有する場合がある。本発明の流動性組成物は、そのような領域中に流れ、したがってそのような領域を実質的に満たすように投与することができ、傷害のより有効な修復および血管再生を可能にし、および促進する。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態では、この方法は、関節鏡下の技法、内視鏡下の技法、腹腔鏡下の技法、または任意の他の適当な最小限に侵襲性の技法を使用して実施することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、個体における、骨を伴わない腱または靭帯の傷害を治療するための方法は、生体適合性マトリックスおよびPDGFを含む有効量の組成物を個体の傷害患部に投与するステップを含み、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも50%が約24時間以内に放出される。いくつかの実施形態では、個体における、骨を伴わない腱または靭帯の傷害を治療するための方法は、生体適合性マトリックスおよびPDGFを含む有効量の組成物を個体に投与するステップを含み、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも50%が約24時間以内に放出され、PDGFは、PDGFを含む溶液として存在し、この溶液中のPDGFの濃度は、約0.1mg/ml〜約2.0mg/mlである。いくつかの実施形態では、溶液中のPDGFの濃度は約1.0mg/mlである。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、架橋コラーゲンおよびグリコサミノグリカンマトリックスを含む。いくつかの実施形態では、PDGFの少なくとも約60%が約24時間以内に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFの少なくとも約70%が約24時間以内に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFの少なくとも約80%が約24時間以内に放出される。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは少なくとも約85%の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは少なくとも約90%の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは少なくとも約92%の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、組成物は流動性である。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、Integra流動性創傷マトリックスである。いくつかの実施形態では、治療は腱のものである。いくつかの実施形態では、治療は靭帯のものである。
【0122】
本発明は、アキレス腱傷害を治療する方法も提供する。一実施形態では、アキレス腱傷害を治療するための方法は、生体適合性マトリックスおよびPDGFを提供するステップを含み、生体適合性マトリックスは流動性である。
【0123】
本発明は、それだけに限らないが、肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋、大腿直筋、後脛骨筋、大腿四頭筋、上腕二頭筋の腱、ならびにアキレス腱、膝蓋腱、外転筋腱および内転筋腱、または腰の他の腱、一般的な伸筋腱、一般的な屈筋腱、浅指屈筋腱、指伸筋腱および小指伸筋腱、または腕および手の他の腱を含めた、任意の他の適当な腱傷害を治療するための組成物および方法も提供する。
【0124】
本発明は、それだけに限らないが、前十字靭帯(anterior cruciate ligament)、外側側副靭帯(lateral collateral ligament)、後十字靭帯(posterior cruciate ligament)、内側側副靭帯(medial collateral ligament)、頭側十字靭帯(cranial cruciate ligament)、尾方十字靭帯(caudal cruciate ligament)、輪状甲状靭帯、歯周靭帯、毛様体小帯、前仙腸靭帯、後仙腸靭帯、仙結節靭帯、仙棘靭帯、恥骨弓靭帯、上恥骨靭帯、提靭帯(例えば、陰茎または乳房)、掌側橈骨手根靭帯、背側橈骨手根靭帯、内側側副靭帯(ulnar collateral ligament)、または外側側副靭帯(radial collateral ligament)を含めた、任意の他の適当な靭帯傷害を治療するための組成物および方法も提供する。
【0125】
腱と骨または靭帯と骨を結合するための方法
本発明は、骨中に/骨に腱または靭帯を結合または再結合するため、および腱または靭帯の骨への結合を強化するための方法を提供する。結合方法は、腱と骨および靭帯と骨の界面での腱または靭帯の骨との一体化または整復を含むことができる。いくつかの実施形態では、骨に、または骨中に腱または靭帯を結合するための方法は、生体適合性マトリックス中に配置されたPDGF溶液を含む組成物を提供するステップと、腱/靭帯と骨の界面にこの組成物を適用するステップとを含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、結合方法は、生体適合性マトリックス中に配置されたPDGF溶液を含む組成物を提供するステップと、剥離した腱の周囲をラップするステップと、骨に穴をあけられたトンネル中に組成物および腱を挿入するステップと、縫合で腱を骨に結合するステップとを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、結合方法は、生体適合性マトリックス中に配置されたPDGF溶液を含む組成物を提供するステップと、剥離した靭帯の周囲をラップするステップと、骨に穴をあけられたトンネル中に組成物および靭帯を挿入するステップと、縫合で靭帯を骨に結合するステップとを含む
いくつかの実施形態では、結合方法は、生体適合性マトリックスを含む組成物を提供するステップと、剥離した腱の周囲をラップするステップと、骨中に組成物および腱を挿入するステップと、骨に穴をあけられたトンネル中にPDGF溶液を注入するステップと、縫合で腱を骨に結合するステップとを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、結合方法は、生体適合性マトリックスを含む組成物を提供するステップと、剥離した靭帯の周囲をラップするステップと、骨中に組成物および靭帯を挿入するステップと、骨に穴をあけられたトンネル中にPDGF溶液を注入するステップと、縫合で靭帯を骨に結合するステップとを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、PDGF溶液は、コラーゲンマトリックスでラップされた腱のインプラント部位に隣接するトンネル中に注入することができる。いくつかの実施形態では、PDGF溶液は、骨トンネルの内側中に注入することができる。いくつかの実施形態では、PDGF溶液は、骨トンネルの外側中に注入することができる。いくつかの実施形態では、PDGF溶液は、骨トンネル周囲の1箇所に注入することができる。他の実施形態では、PDGF溶液は、骨トンネル周囲の複数箇所に注入することができる。例えば、注入は、トンネル開口部の1/4、1/2、3/4の円周、および全円周で行うことができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、PDGF溶液の濃度は約0.1mg/ml〜約2.0mg/mlである。いくつかの実施形態では、PDGF溶液の濃度は約0.1mg/ml〜約0.5mg/mlである。いくつかの実施形態では、PDGF溶液の濃度は約0.15mg/mlである。他の実施形態では、PDGF溶液の濃度は約0.3mg/mlである。
【0131】
本発明は、前十字靭帯再建のために、個体において腱を骨中に結合するための方法であって、腱と骨の界面で、生体適合性マトリックスおよびPDGFを含む有効量の組成物を前記個体に投与するステップを含む方法も提供される。いくつかの実施形態では、前十字靭帯再建のための方法は、生体適合性マトリックス中に配置されたPDGF溶液を含む組成物を提供するステップと、外側上で大腿挿入部から剥離した長指屈筋腱(long flexor tendon)周囲にラップするステップと、脛骨骨幹端(tibia metaphysic)を通じて斜めに穴をあけたトンネル中に組成物および腱を挿入するステップと、縫合で長指屈筋腱を脛骨の内側皮質に結合させるステップとを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、前十字靭帯再建のための方法は、生体適合性マトリックスを含む組成物を提供するステップと、外側上で大腿挿入部から剥離した長指屈筋腱周囲にラップするステップと、脛骨骨幹端を通じて斜めに穴をあけたトンネル中に組成物および腱を挿入するステップと、骨トンネル中にPDGF溶液を注入するステップと、縫合で長指屈筋腱を脛骨の内側皮質に結合させるステップとを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明は、回旋腱板傷害において腱を骨に結合または再結合させるための方法も提供する。回旋腱板傷害、ならびにオープン修復法、ミニオープン修復法、および全関節鏡下修復法を用いた回旋腱板傷害治療は、WO2008/005427、ならびに米国第11/772,646号(米国公開2008/0027470号)に開示されている。これらの参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。いくつかの実施形態では、回旋腱板傷害を治療するための方法は、生体適合性マトリックス中に配置されたPDGF溶液を含む組成物を提供するステップと、上腕骨頭上の腱再結合の少なくとも1つの部位に組成物を適用するステップとを含む。いくつかの実施形態では、腱再結合の少なくとも1つの部位に組成物を適用するステップは、上腕骨頭上の再結合部位の輪郭に組成物を成形するステップを含むことができる。組成物は、例えば、剥離した腱を受けるための上腕骨頭の表面上に形成されたチャネル中に成形することができる。組成物は、腱の骨中への挿入部位の近傍に適用することによって、結合をさらに強化するができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、回旋腱板引裂を治療するための方法は、上腕骨頭における骨アンカーなどの少なくとも1つのアンカー手段を配置するステップであって、骨アンカーは、PDGF組成物をさらに含むステップと、少なくとも1つの剥離した腱を骨アンカーに結合させるステップとをさらに含む。本発明の実施形態では、腱は、縫合によって骨アンカーに固定することができる。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態では、この方法は、関節鏡下の技法、内視鏡下の技法、腹腔鏡下の技法、または任意の他の適当な最小限に侵襲性の技法を使用して実施することができる。
【0136】
組成物中に使用するのに適したPDGF溶液および生体適合性マトリックスは、本発明の方法の実施形態によれば、先に提供したものと一致する。
【0137】
いくつかの実施形態では、個体において、腱または靭帯を骨に、または骨中に結合するための方法は、生体適合性マトリックスおよびPDGFを含む有効量の組成物を個体の患部に投与するステップを含み、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも50%が約24時間以内に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFは、PDGFを含む溶液として存在し、溶液中のPDGFの濃度は、約0.1mg/ml〜約2.0mg/mlである。いくつかの実施形態では、溶液中のPDGFの濃度は、約0.1〜約0.4mg/mlである。いくつかの実施形態では、溶液中のPDGFの濃度は、約0.15mg/mlである。いくつかの実施形態では、溶液中のPDGFの濃度は、約0.3mg/mlである。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、架橋コラーゲンマトリックスを含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、架橋コラーゲンおよびグリコサミノグリカンマトリックスを含む。いくつかの実施形態では、PDGFの少なくとも約60%が約24時間以内に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFの少なくとも約70%が約24時間以内に放出される。いくつかの実施形態では、PDGFの少なくとも約80%が約24時間以内に放出される。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、少なくとも約85%の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、少なくとも約90%の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、少なくとも約92%の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスはCOLLATAPE(登録商標)である。いくつかの実施形態では、治療は、腱を骨に結合させるものである。いくつかの実施形態では、治療は、靭帯を骨に結合させるものである。
【0138】
縫合
本明細書における本発明の方法で使用され、または本明細書におけるキットに含められる縫合糸は、PDGFを含むことができる。PDGFは、PDGFを含む溶液によって縫合糸中に浸漬し、または縫合糸上にコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、PDGFは、約5.0〜約20.0mg/ml、例えば、約7.5〜約15mg/ml、例えば、約10mg/mlの任意の濃度で溶液中に存在する。
【0139】
本明細書における本発明の方法で使用され、または本明細書におけるキットに含められる縫合糸は、インビボで再吸収性であっても、非再吸収性であってもよい。再吸収プロセスは、体液、酵素、または細胞の作用による元の物質の分解および排除を伴う。再吸収された縫合糸は、新組織の形成において宿主によって使用される場合があり、またはこれは、別の方法で宿主によって再利用される場合があり、またはこれは排泄される場合がある。縫合糸は、合成線維もしくは天然線維、またはこれらの組合せで作製することができる。
【0140】
本発明のキット
別の態様では、本発明は、PDGF溶液を含む第1の容器、および生体適合性マトリックスを含む第2の容器を含むキットを提供する。
【0141】
いくつかの実施形態では、個体において骨を伴わない腱または靭帯の傷害を治療するためのキットであって、生体適合性マトリックスを含む第1の容器およびPDGF溶液を含む第2の容器を投与するステップを含み、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出されるキットが提供される。
【0142】
他の実施形態では、個体において腱または靭帯を骨に結合させるためのキットであって、生体適合性マトリックスを含む第1の容器および血小板由来成長因子(PDGF)溶液を含む第2の容器を投与するステップを含み、生体適合性マトリックスは孔を有し、この生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出されるキットが提供される。
【0143】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは脱水されている。いくつかの実施形態では、溶液は、所定の濃度のPDGFを含む。PDGFの濃度は、いくつかの実施形態では、治療される腱または靭帯の傷害の性質によって予め決定することができる。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、治療される腱または靭帯の傷害の性質によって所定の量を含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、治療される腱/靭帯および骨の性質によって所定の量を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、架橋コラーゲンを含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、可溶性コラーゲンを含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、架橋コラーゲンおよびグリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態では、生体適合性マトリックスは、架橋コラーゲンおよびコンドロイチン硫酸を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、本発明は、PDGF溶液を含む第1の容器、生体適合性マトリックスを含む第2の容器、およびシリンジを含むキットを提供する。シリンジは、いくつかの実施形態では、腱または靭帯を骨に結合する部位などの手術部位で適用するために、生体適合性マトリックス中のPDGF溶液の分散を促進することができる。キットは、使用のための指示書も含有することができる。
【0146】
以下の実施例は、例示的な目的のみで提供されており、いずれの様式においても本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0147】
(実施例1)
様々なコラーゲンマトリックスの構造上の特徴づけ
4つのコラーゲンマトリックスを試験して、微細構造および多孔度の差を求めた。コラーゲンマトリックスは、Kensey Nash Coporationから得た。マトリックスは、主にI型コラーゲンの源であるウシ真皮からの精製コラーゲン抽出物から作製した。マトリックスは、4.5%、5%、6%、および7%(w/v)の様々な濃度のコラーゲンを含むコラーゲンスラリーから作製する。乾燥コラーゲンマトリックス(4.5%、5%、6%、および7%)に液体窒素を流した後、打ち抜いて5mmのディスクにした。ディスクを、3つの異なる配向(頂部が上、底部が上、側部が上)でスタブ上に取り付け、金−パラジウムでコーティングし、走査電子顕微鏡法(SEM)によって調べた。
【0148】
SEM画像により、コラーゲンマトリックス(4.5%)およびコラーゲンマトリックス(5%)の表面上に開放孔が存在することが明らかになった。SEM画像により、コラーゲンマトリックス(6%)およびコラーゲンマトリックス(7%)の表面上の、より小さい孔を有する高密度薄層が明らかになった。コラーゲンマトリックスのそれぞれは、断面の長手方向スライスのSEM画像に基づくと、多孔質であるように思われたが、コラーゲンマトリックス(5%)は、SEMによって評価した場合、最大の全体的多孔度を有するように思われた。コラーゲンマトリックス中の孔は、均一に分布していないように思われ、一部の範囲では孔はまったく存在しない。
【0149】
ImageJソフトウェアを使用してSEM画像を分析して、孔面積サイズおよび周囲長サイズの両方を求めた。ImageJは、国立衛生研究所(rsb.info.nih.gov/ijのワールドワイドウェブ)のWayne Rasbandによって創作された画像解析プログラムである。画像解析のためのプログラムを使用するために、適切なパラメータを選択および設定する必要がある。「分析」メニューから、各SEM画像からのスケールをプログラムに入力することによって、「スケール」パラメータを設定した。次に、測定パラメータについて「面積」および「周囲長」を選択した。各画像から10個の孔をランダムに選択し、測定を行い、面積サイズおよび周囲長サイズについて平均した。各画像についての結果を記録した。表1は、1つの分析からの結果を示す。
【0150】
【表1】

コラーゲンマトリックス(5%)は、最も多孔質な構造を有すると思われ、ImageJソフトウェアによって分析した場合、側部Aおよび側部B両方の画像から、孔面積サイズは最大であった。
【0151】
(実施例2)
様々なコラーゲンマトリックスの累積PDGF放出分析
様々なコラーゲンマトリックスからの累積PDGF放出を分析した。コラーゲンマトリックスは、Kensey Nash Corporationから得た。これは、実施例1で上述したものと同じである。各タイプ、すなわち、5%、6%、および7%のコラーゲンマトリックス(8mmのディスク)を27 1/2Gの針で留め、0.3mg/mlのrhPDGF−BB 80μlで水和し、試料を室温で10分間インキュベートした。コラーゲンディスクを2mlのマイクロチューブ内に入れ、溶出バッファー(2%のウシ胎児血清を含有するMEM)2mlを添加してrhPDGF−BBを放出させた。各測定に三つ組の試料を使用した。対照試料は、rhPDGF−BB 80μlを溶出バッファー2mlに添加して構成した。マイクロチューブを37℃のインキュベーター内の軌道振盪機上で振盪した。10分、1時間、8時間、および24時間で、溶離液を各チューブから取り出し、2〜8℃で貯蔵した。等体積の新鮮な溶出バッファーを各チューブに添加した。各コラーゲンマトリックスの貯蔵した溶離液を、製造者の指示書に従って、DuoSet ELISA(R & D System)キットを使用してrhPDGF−BBについてアッセイした。
【0152】
コラーゲンマトリックス(5%)は、コラーゲンマトリックス(6%)およびコラーゲンマトリックス(7%)と比較して、同様の動態でrhPDGF−BBを放出した(図1)。放出動態は、最初の10分間の初期の急速なrhPDGF−BBのボーラス放出、その後の残りの23時間の試験期間にわたるより遅い定常放出を特徴とした。放出動態は同様であったが、コラーゲンマトリックス(5%)から放出されたPDGFの初期ボーラス量および総量は、コラーゲンマトリックス(6%)またはコラーゲンマトリックス(7%)のいずれよりも大きかった。
【0153】
コラーゲンマトリックスからのrhPDGF−BBの放出率を対照(溶出バッファー単独中のrhPDGF−BB)と比較した。結果は、上述したように、コラーゲンマトリックス(5%)は、コラーゲンマトリックス(6%)またはコラーゲンマトリックス(7%)より速く、大きいPDGFの放出を有することを示した(図2)。この試験結果を表2にも示す。
【0154】
【表2】

(実施例3)
様々なコラーゲンマトリックスからのPDGF放出の生物学的力価試験
様々なコラーゲンマトリックスから放出されるPDGFの生物学的力価を、細胞増殖アッセイで評価した。試料は、実施例2で上述したプロトコールの変法に従って調製した。溶出バッファーを、2%仔ウシ血清含有D−MEMに変更した。1時間の時点で採取した各物質についての二つ組の試料を使用した。rhPDGF−BBの濃度をDuoSet ELISAアッセイによって求め、その結果を参照として使用して、試料を1μg/mlの濃度に希釈使用した。0.3mg/mlのrhPDGF−BBを参照標準として使用し、すべてのプレートに適用した。1μg/mlの開始濃度を使用して、96ウェルマイクロタイタープレート(ブラックウォールおよびクリアボトム)中に各試料を装填し、次いで同じ横列にわたって1.667倍に連続的に希釈した。ブランク対照として使用した、各プレートの最後の縦列を除いて、約10個のNIH 3T3細胞を各ウェルに添加した。48時間培養した後、ブロモデオキシウリジン(BrdU)標識を各プレートに添加した。さらに24時間培養した後、BrdU細胞増殖アッセイを、製造者の指示書に従って行った。
【0155】
NIH 3T3細胞増殖アッセイにおいて測定した各マトリックスから放出されたrhPDGF−BBは、放出されたPDGの生物活性が、分析した3つのマトリックスについて保存されることを実証した(図3)。
【0156】
(実施例4)
コラーゲンマトリックスから放出されるPDGFの安定性試験
コラーゲンマトリックスから放出されるrhPDGFの安定性を試験した。各タイプ(5%、6%、および7%)のコラーゲンマトリックス(8mmのディスク)を27 1/2Gの針で留め、1.0mg/mlのrhPDGF−BB 50μlで水和した。溶出バッファー(20mMの酢酸ナトリウム+0.25Nの塩化ナトリウム)0.4mlで満たしたマイクロチューブ内で、各試料を1時間インキュベートした。次いで放出されたPDGFをサイズ排除HPLCによって分析した。三つ組で測定を行った。コラーゲンマトリックスから放出されたrhPDGF−BBについて著しい特性シフトはまったく見出されず、コラーゲンマトリックスから放出されるPDGFの安定性を実証した。
【0157】
(実施例5)
様々なコラーゲンマトリックスの腱細胞浸潤試験
様々なコラーゲンマトリックス中に浸潤する腱細胞の能力を評価した。コラーゲンマトリックスは、Kensey Nash Corporationから得、本明細書に記載したように、5%、6%、および7%(w/v)のコラーゲン濃度を有するコラーゲンスラリーから作製した。コラーゲンシート(1.5〜2.0mmの厚さ)を打ち抜いて直径8mmのディスクにし、インビトロ細胞遊走試験を行った。
【0158】
一次ヒツジ腱細胞(4細胞継代未満)をヒツジ屈筋腱から単離した。成長培地(10%のウシ胎児血清(FBS)を含有するD−MEM/F−12)中で細胞を培養し、試験を開始する12時間前に、基本培地(2%のFBSを含有するD−MEM/F−12)に切り替えた。
【0159】
基本培地中の腱細胞懸濁液50μl(50,000細胞)を各コラーゲンディスク試料に添加した。培地出現(emersion)を伴うことなく、37℃および5%のCO雰囲気下で1時間インキュベートした後、細胞を播種したディスクを、単独の、またはrhPDGF−BB(30ng/ml)を組み合わせた基本培地2mlで予め満たした24ウェルプレートに移した。12時間静置培養した後、細胞を播種したディスクを含むプレートを、インキュベーター内の軌道振盪機(60rpm)上に配置した。培地交換は、48時間毎に行った。6日目に、各コラーゲンマトリックスおよび処置からの四つ組の試料を採取して組織評価した。
【0160】
一般に、組織評価は、以下の説明と同様であった。6日間培養した後、細胞培地を各ウェルから取り出し、4%のリン酸緩衝ホルマリン(PBF)と置換した。室温(RT)で約30分間、PBF中で試料を固定した。RTで1時間以上の期間真空下に試料を置くことによって、細胞固定を完了した。振盪機プラットフォームおよび真空チャンバーを使用して、次いで試料を、RTで、漸増する一連のエタノール濃度(70%−80%−95%−100%)を通して、約5.5時間の期間にわたって脱水し、RTで2時間の期間にわたって100%のキシレン中で浄化し、2時間以上の期間にわたってパラフィンワックス中で浸潤させた。次いで、各処置群およびマトリックスからの試料を埋め込んだ。埋め込んだ試料を埋め込み鋳型から取り出し、ロータリーミクロトームを用いて「トリム」し、「フェイシングする(face)」ことによって、すべての試料の最外側表面を露出し、次いでフリーザー内に一晩置いた。ロータリーミクロトーム、加温水浴、および予めラベルを付けたガラス顕微鏡スライドを使用して、約100〜150ミクロン離して、3〜4のレベルで、4〜6ミクロンで切片(スライド1枚当たり2切片)を採取した。スライドを乾燥器内で、60℃で一晩乾燥した。最後にスライドを、Hoescht蛍光染色剤を用いて染色し、観察した。
【0161】
結果は、腱細胞は、PDGFを含むコラーゲンマトリックス(5%)中に浸潤した一方で、腱細胞は、コラーゲンマトリックス(6%)およびコラーゲンマトリックス(7%)中に浸潤するように思われなかったことを示した。コラーゲンマトリックス(6%)およびコラーゲンマトリックス(7%)試料については、腱細胞のほとんどが、ディスクの縁部に蓄積した。したがって、コラーゲンマトリックス(5%)のより大きな多孔度により、より多数の細胞がコラーゲンマトリックス中に浸潤することが可能になったと思われた。
【0162】
(実施例6)
コラーゲン/PDGF組成物を用いたアキレス腱傷害の治療
本発明による組成物および方法の効力を評価するために、以下に説明するような例示的試験を使用した。本発明は、コラーゲンマトリックスと混合したrhPDGF−BB溶液を含む組成物およびその使用方法を含む。例えば、コラーゲンマトリックスは、流動性コラーゲンマトリックスであり、架橋ウシ腱コラーゲンおよびグリコサミノグリカン(GAG)マトリックスを含む。流動性組成物は、シリンジまたは適当な手段によって傷害部位に容易に供給される。
【0163】
この例示的な試験において、ヒツジまたは他の適当な試験対象をヒトアキレス腱修復のモデルとして使用した。ヒツジのアキレス腱のサイズはヒトアキレス腱と類似しているために、ヒツジが特に適当である。さらに、ヒツジは、標準的な整形技法および組成物の配置を可能にするのに十分なサイズのものである。この試験で使用したヒツジは、骨格的に成熟しており(年齢[3.5歳以上]および歯の摩耗によって判断した場合)、正常な歩行運動を伴い、少なくとも120ポンドの体重であり、手術時点で順応していた。ヒツジに、標準的な小反芻動物飼料によって給餌し、水を補給した。食物および水は、麻酔などの適切な試験関連のために控えた。
【0164】
この試験は、3つの処置群(n=8/群)を使用し、以下の試験組成物を、急性アキレス腱横切の傷害部位に供給および適用した:(1)バッファー中の流動性コラーゲンマトリックス(2)0.3mg/mL(150μg)のrhPDGF−BBを含むバッファー中の流動性コラーゲンマトリックス、および(3)1.0mg/mL(500μg)のrhPDGF−BBを含むバッファー中の流動性コラーゲンマトリックス。他の適当な処置群、例えば、他の適当な濃度のrhPDGF−BBを含む組成物を使用する処置群なども使用する。
【0165】
例示的な流動性コラーゲンマトリックスは、Integra LifeSciences Corporation、Plainsboro、NJのIntegra(商標)流動性創傷マトリックス(IFWM)である。当技術分野で公知の他の適当なマトリックスも使用することができる。
【0166】
実験の概要
この試験に登録されたヒツジのアキレス腱を横切し、その後即時に修復を行った。ヒツジを3つの例示的な試験群(n=8/群)に分け、以下の組成物を使用した:1)再接近させた腱端部(改良Mason Allen縫合デザインで安定化)に配置した、20mMの酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0+/−0.5)中の流動性コラーゲンマトリックス(対照)、2)再接近させた腱端部(改良Mason Allen縫合で安定化)に配置した、0.3mg/mlのrhPDGF−BBを含有する20mMの酢酸ナトリウムバッファー中の流動性コラーゲンマトリックス、および3)再接近させた腱端部(改良Mason Allen縫合で安定化)に配置した、1.0mg/mlのrhPDGF−BBを含有する20mMの酢酸ナトリウムバッファー中の流動性コラーゲンマトリックス。#1 Ethilonナイロン縫合糸(Ethicon Endo−Surgery, Inc、Cincinnati、OH)などの縫合材料を使用した。模擬アキレス断裂および再結合の生体力学的性能および組織応答を求めた。生体力学的性能および組織応答試験の両方についての動物の処置の割当および数を、表3に略述する。
【0167】
【表3】

試験物質を配置した後、標準的な外科的技法を使用して切開部を閉じ、添え木を脚下部に配置することによって、歩行運動の間のナックリングを防止した。手術後の週の間、異常治癒または創傷裂開について手術部位をモニターした。動物を8週間普通に歩行させ、術後2、4、および8週間に超音波評価を実施した。手術して8週間後に、すべての動物を安楽死させ、近位および遠位の筋腱接合部を含めたアキレス腱を収集し、組織学的および生体力学的評価を行った。正常な未処置の腱について組織学的および生体力学的試験を実施することができるように、対照動物(すなわち、流動性コラーゲン創傷マトリックス単独)の対側後肢から正常な未手術の腱およびその筋腱接合部を収集した。最初の手術部位および対側対照からの皮膚も、組織学的評価のために採取する。
【0168】
外科的プロトコール
手術日に、全身麻酔を誘導するためにジアゼパム(0.22mg/kg)およびケタミン(10mg/kg)からなるIV注射を投与した。カフ付き気管内チューブを配置し、再呼吸系を通じて、100%の酸素(2L/分)中のイソフルオラン(1.5%〜3.0%)を用いて全身麻酔を維持した。呼吸を補助するために動物を人工呼吸器上に配置した。胃管を配置することができた。
【0169】
動物を左側横臥位とし、右脚から羊毛を除去することによって、手術部位を準備するための適切なアクセスを提供した。ポビドン−ヨウ素(Betadine)およびアルコールで交互にスクラブして、無菌手術のために、右足首関節上の皮膚を準備した。次いで、無菌手術のために手術部位をドレープした。脚の外側側面にわたって切開を行い、次いで皮下組織まで深めることによって、踵骨上のその挿入部位で腱を露出した。次いで、腓腹筋腱のより大きい分岐を単離した。踵骨へのアキレス腱挿入部を触診し、滅菌マーカーを用いて挿入部位から2cm、4cm、および6cmにマークを付けた。
【0170】
手術前に、マトリックスおよび適切なバッファー溶液(20mMの酢酸ナトリウムバッファー、pH6.0+/−0.5)+/−rhPDGF−BBは、乾燥コラーゲンおよびバッファー+/−rhPDGF−BBを含有する、供給された、ラベルを付けた滅菌シリンジを使用して、流動性コラーゲン物質(IFWM)3.0ccに、バッファー+/−rhPDGF−BB 6.0ccを添加することによって合わせた(2:1 v/v)。物質は、rhPDGF−BBを含有するシリンジから先端キャップを取り除き、これを、供給された、滅菌ルアーロックコネクタと取り替え、次いでこれに乾燥コラーゲンを含有するシリンジを接続することによって合わせた。コラーゲンマトリックスの水和は、コラーゲンシリンジ中にすべてのバッファー+/−rhPDGF−BBを供給し、混合物が均一であると思われ、すべての物質がシリンジ同士間を前後に容易に動くことができるようになるまで、プランジャーを少なくとも15回押し下げて前後させることにより混合することによって実現した。水和した流動性コラーゲンマトリックスをアリコートして滅菌容器内で体積0.5ccにし、使用するまで4℃で貯蔵した。
【0171】
腱を露出した後、安定化縫合糸(#1 Ethilon)を、改良Mason Allenデザインを使用して配置し、一端が2cmのマーク箇所であり、一端が6cmのマーク箇所であった。Mason Allen縫合糸は張り詰めたままにすることによって腱の長さを維持したが、腱端部の操作のために一端は縛らないままにした。次いで4cmまたは約4cmのマーク箇所で腱を横切し、その後、腱端部を再接近させ、Mason Allen縫合糸の自由端を腱の遠位末端で縛った。横切した腱の写真を定規とともに撮り、踵骨挿入部からの距離の記録をとった。例えば、図4に表した例示的な縫合された、横切した腱を参照。縫合糸の小さい末端を遠位末端に残し、剖検後の同定のために近位端に小さい識別縫合糸(3〜0)を配置した。流動性マトリックスを挿入するために腱横切部周囲に空間を残して、上に被さる軟部組織を閉じた。次いで、水和した流動性コラーゲンマトリックス物質を、以下の様式で腱端部に配置した:斜面側を横切した腱端部に向けて、シリンジから20ゲージの針を通して滅菌アリコート0.5ccを搾り出した。滅菌アリコートの半分(0.25cc)を、横切した腱端部のそれぞれの表面に沿って搾り出した。物質が、ギャップ空間内に均等に分布されることを確実にするように注意を払った。図5に表したような、送達されている本発明の例示的な流動性組成物、例示的な縫合された、横切した腱を参照。
【0172】
上に被さる皮下組織および皮膚を、標準的な外科手術によって閉じた。OrthoGlass製の添え木を脚下部上に形成することによって、歩行運動の間のナックリングを防止した。手術直後に、ヒツジを手術台から移し、嚥下反射が戻るまで観察し、戻った時点でヒツジから抜管した。手術を完了した後、ヒツジを胸骨横臥位で支え、次いで試験の継続時間収容した。ヒツジの添え木および/またはギプス固定を使用することによって、修復した腱のナックリングおよび/または過伸展を低減した。術後の鎮痛を施し、標準的な術後ケア手順に従って動物を管理した。
【0173】
臨床的知見
動物を、屠殺するまで1日2回観察した。第1週の間に、異常治癒および創傷裂開について、手術部位を観察し、写真を得た。手術後の試験期間を通して、一般的な姿勢、食欲、手術した肢の使用(例えば、跛行)、および手術部位の外見について動物を観察した。手術部位で感染症が発症した場合、抗生物質を動物に投与し、観察記録に記録した。当技術分野で公知の方法を使用して、手術して2週間後、4週間後、および8週間後に、手術したアキレス腱および対側の未手術のアキレス腱の両方についての超音波画像をすべての処置部位について得た。インデックス手術(index surgery)の8週間後に、すべての動物を屠殺し、組織を回収した。
【0174】
生体力学的試験
実験概要セクションで上に論じた3つの異なる処置群を使用した誘導アキレス腱断裂および再結合の機械的性能を求めた。
【0175】
材料および方法
試料は、採取した後、食塩水に浸漬したガーゼでラップし、試験するまで−20℃で貯蔵した。高強度ポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用して2インチのPVDパイプに中足をポッティングした。ポッティング調製および生体力学的試験の間、15分間隔で食塩水をスプレーして、試料を湿気のある状態に保持した。材料試験システム負荷フレーム(MTS MiniBionix II、Edan Prairie、MN)にしっかり取り付けられた特注設計試験備品にポッティングした中足を取り付けた。アキレス腱の天然の断面を保存し、軟部組織の滑りを最小限にするために、特注設計のクライオクランプ(cryoclamp)を実装し、ポッティングした中足に対して約135°の角度でコンストラクトに一軸性のけん引力を印加した。これは、腱の生理的力ベクトルを模倣するために行った。試験は、クライオクランプに付けられた熱電対が−22℃、すなわち腱とクランプの間の安定したカップリングを保証するのに十分であると以前に報告された温度を記録したとき開始した。試験前に切断された、組織に埋め込まれた縫合糸物質はまったくなかった。したがって、生体力学的結果は、埋め込まれた縫合糸と修復性組織の合わされた機械的寄与を表す。
【0176】
4つの逆反射マーカーをポッティングしたコンストラクト、すなわち、1つを修復部位に直接隣接する踵骨上に、2つを腱上に、すなわち、1つをアキレス腱−修復組織界面の近位に、および1つをこの界面の遠位に縫合または接着剤接合した。4番目のものは、クライオクランプ上に接着接合した。3つのカメラ(Motion Analysis、Santa Rosa、CA)により、60Hzでマーカーの空間的移動を記録した。このカメラシステムを使用するマーカー変位測定により、修復性組織内の局所的な組織変位/歪みのリアルタイムモニタリングが可能になった。
【0177】
フェーズ1:30サイクルの動的プレコンディショニング
周期的負荷試験を最初に使用することによって、修復した腱をプレコンディショニングした。力制御プロトコールを使用して、10ニュートン(N)の前負荷をコンストラクトに2分間印加した。これにより、すべてのコンストラクトについての初期構成が指定された。次いで、修復したコンストラクトを、定常状態に達するように、60サイクルにわたって0.25Hzで10〜50Nの力制御プロトコールで周期的にプレコンディショニングした。変位対時間曲線の傾きが50サイクルと60サイクルの間で収束することを実証した、本発明者らの実験室における以前の実験に基づいて、60(n=60)サイクルを選択した。対象とするパラメータは、最初と60番目のサイクルの間のピークトゥピーク変位の差として定義されるコンディショニング伸長、および58番目、59番目、および60番目のサイクルの局部的な最小と最大の差の平均として定義されるピークトゥピーク伸長を含んでいた。
【0178】
準静的破損負荷
プレコンディショニングした後、1mm/sの速度での変位制御下で、修復したコンストラクトに破損するまで負荷をかけた。対象とする生体力学的パラメータは、極限破損までの荷重、準静的コンストラクト全体の剛性(負荷−変位曲線の傾きとして定義される)、局所的修復組織剛性、破損時点での伸長、および破損時に吸収されたエネルギーを含んでいた。最後に、破損機構を各試料について記録した。試験の前、破損までのランプ手順の間、コンストラクト破損の後に、デジタル画像および/またはビデオを撮った。
【0179】
統計分析
一元配置ANOVA、その後にTukeyのポストホック多重比較検定を使用することによって、IFWM対照および0.3mg/mLのPDGFおよび1.0mg/mLのPDGF処置群の間の連続的生体力学的パラメータの有意な差を識別した。有意性をp≦0.05に設定し、すべての分析は、SigmaStat 3.1(Systat Software, Inc.、San Jose、CA)を用いて実施した。
【0180】
結果
3つの処置群の間で、大きな視覚的な差はまったく識別されなかった。IFWM+0.3mg/mlのrhPDGF−BB群における6つのうち2つ(33%)のコンストラクトは、修復組織の外側側面上に明白な血腫を示した。この血腫の存在は、修復の生体力学的特性に影響し、異常に低い負荷で、血腫の正確な位置で開始する破損によって証明された。データ分析は、これらの血腫のある2つの試料を含めて(n=6)および含めないで(n=4)実施した。0.3mg/mlのrhPDGF−BB群における血腫のある2つの試料を含めた試験の周期的プレコンディショニング成分からの未処理データを表4に示す。コンディショニング伸長(p=0.636)またはピークトゥピーク伸長(p=0.813)の有意な差は、IFWM、IFWM+0.3mg/mlのrhPDGF−BB、またはIFWM+1.0mg/mlのrhPDGF−BB処置群の間でまったく識別されなかった(図6A)。
【0181】
【表4A】

同様に、コンディショニング伸長(p=0.709)、またはピークトゥピーク伸長(p=0.947)の有意な差は、IFWM、IFWM+0.3mg/mlのrhPDGF−BB、またはIFWM+1.0mg/mlのrhPDGF−BB処置群の間でまったく識別されなかった。図6B。分析から除外された血腫のある試料を含む、試験の周期的プレコンディショニング成分からの未処理データを表4Bに示す。
【0182】
【表4B】

分析に含められた血腫のある2つの試料を含む、生体力学的試験の破損までのランプ成分からの未処理データを、表5Aに示す。外科的に修復したアキレス腱における、任意の準静的パラメータについての有意な差は、IFWM、IFWM+0.3mg/mlのrhPDGF−BB、またはIFWM+1.0mg/mlのrhPDGF−BB処置群の間でまったく識別されなかった(p>0.05、表5、図7A)。有意ではないが、1.0mg/mLのrhPDGF−BBの用量は、IFWM対照および0.3mg/mLのrhPDGF−BB群と比べて、破損に対する極限の力において、平均でそれぞれ57.4%および55.0%の増加をもたらした。破損時に吸収されたエネルギーの有意な差は、3つの処置群(p=0.209:IFWM、6423.33±1811.26Nmm;0.3mg/mLのrhPDGF−BB、7346.00±2989.94Nmm;1.0mg/mLのPDGF、12173.33±2049.62Nmm)の間でまったく識別されなかったが、1.0mg/mLのrhPDGF−BB処置群における破損時に吸収されたエネルギーは、IFWM対照および0.3mg/mLのrhPDGF−BB処置群より、平均でそれぞれ89.5%および65.7%大きかった。
【0183】
【表5A】

分析から除外された血腫のある2つの試料を含む、生体力学的試験の破損までのランプ成分からの未処理データを表5Bに示す。外科的に修復したアキレス腱における、任意の全体的な準静的パラメータについての有意な差は、IFWM、IFWM+0.3mg/mlのrhPDGF−BB、またはIFWM+1.0mg/mlのrhPDGF−BB群の間でまったく識別されなかった(p>0.05、表5B、図7B)。有意ではないが、1.0mg/mlのPDGFの用量は、IFWM対照および0.3mg/mlのPDGF群と比べて、破損に対する極限の力において、平均でそれぞれ57.4%および22.2%の増加をもたらした。破損時に吸収されたエネルギーの有意な差は、3つの処置群(p=0.247:IFWM、6423.33±1811.26Nmm;0.3mg/mlのPDGF、9850.75±4006.36Nmm;1.0mg/mlのPDGF、12173.33±2049.62Nmm)の間でまったく識別されなかったが、1.0mg/mlのPDGF処置群における破損時に吸収されたエネルギーは、IFWM対照および0.3mg/mlのPDGF処置群より、平均でそれぞれ89.5%および23.6%大きかった。
【0184】
【表5B】

血腫のある2つの試料を分析に含めて(表6、図8(左))、1.0mg/mLのrhPDGF−BB処置群(n=6、312.56±20.86N/mm)における修復組織の局所的剛性は、0.3mg/mLの処置群において定量化した局所的剛性(n=6、176.30±31.17N/mm)より、平均で77.3%大きかった。この差は統計的に有意である(p=0.012)。修復組織の局所的剛性の有意な差は、1.0mg/mLのPDGF処置群およびIFWM対照(n=6、215.23±33.23N/mm、p=0.075)の間でまったく識別されなかった。分析から除外した血腫のある2つの試料を含めて(図8(右))、1.0mg/mlのrhPDGF−BB処置群における修復組織の局所的剛性は、0.3mg/mlの処置群において定量化した局所的剛性(n=4、223.72±11.46N/mm)より、平均で39.7%大きかった。この差は統計的に有意ではなかった(p=0.096)。しかし、1.0mg/ml群における修復組織の局所的剛性は、IFWM対照の修復組織の局所的剛性(215.23±33.23N/mm)より有意に大きかった(45.2%、p=0.039)。
【0185】
【表6】

試験した18(n=8)の処置コンストラクトのうちで、n=16(88.9%)が、調製組織と無傷のアキレスの近位界面で破損した。注目すべきことに、IFWM+0.3mg/mLのrhPDGF−BB処置群におけるそのようなコンストラクトの2つは、修復組織の外側側面上に血腫を示し、これは、解剖および後続の生体力学的試験の間に肉眼で見えた。両コンストラクトにおいて、破損は、これらの領域で開始した。残りのn=2(11.1%)の処置コンストラクトは、修復性組織と無傷のアキレスの遠位界面で破損した。n=6の無傷の対側アキレス腱コンストラクトについての破損様式は多様であった。2つの(n=2、33.3%)無傷のコンストラクトは、PMMAポッティング材内の中足骨破損を介して破損した。3つの(n=3、50%)無傷のコンストラクトは、アキレス腱の中央物質(mid−substance)引裂を介して破損し、1つ(n=1、16.7%)は、踵骨裂離を介して破損した。
【0186】
結論
インビボで8週間後、IFWM+1.0mg/mLのrhPDGF−BBで処置した群について観察された生体力学的データは、IFWM対照およびIFWM+0.3mg/mLのrhPDGF−BB処置群と比較して一貫して増加し、より大きい治癒応答を平均で示した。この投薬効果は、0.3mg/mLおよびIFWM単独の処置群と比べて、それぞれ、55%/22.2%(n=6/n=4)および57.4%の極限破損までの荷重の増大として顕在化した。修復(すなわち、局所的な)組織剛性は、0.3mg/mLのrhPDGF−BBおよびIFWM単独の処置群と比べて、平均でそれぞれ、77.3%/39.7%(n=6/n=4)および45.2%増大した。さらに、IFWM+1.0mg/mLのrhPDGF−BB群についてのこの試験で観察された極限の力は、マトリックス(血小板に富む血漿フィブリンマトリックスと合わせたコラーゲンパッチを使用する24週間の修復(Sarrafianら、Trans ORS、33巻:322頁(2008年)より34.9倍高い))、またはタンパク質(CDMP−2で処置された3週間の修復(Virchenko、Arch Orthop Trauma Surg、128巻:1001〜1006頁(2008年)より1.9倍高い))を利用した他の試験と比較して増大した。
【0187】
組織学的試験
組織の回収およびトリミング
安楽死させた後、手術したアキレス腱を回収し、組織の湾曲を防止するために添え木で支え、組織学的処理のために10%の中性緩衝ホルマリン中に入れた。手術したアキレスに加えて、2つの未手術の対側アキレス腱を回収して組織を分析した。24時間固定した後、メスを使用して各アキレス腱を内側と外側の半分に二分した。アキレスの近位端に刻み目を付けることによって、組織学的処理の間を通して配向を保存した。1.0mg/mlのrhPDGF−BB群中の1頭の動物は、試験と無関係の理由(肺炎)のために、治癒の40日(5.8週間)後に安楽死させた。
【0188】
組織学的処理
標準的なパラフィン組織学技法および装置(Shandon Citadel 2000 ProcessorおよびShandon Histocentre 2、Thermo Shandon, Inc、Pittsburgh、PA)を使用して、すべての試料(n=8)をさらに固定、脱水、浄化、浸潤、および包埋した。Shandon Finesseロータリーミクロトーム(Thermo Shandon, Inc、Pittsburgh、PA)でパラフィンブロックをフェイシングし、約10ミクロンの切片を切断した。合計40切片に対して、1試料当たり5枚の切片を切断した。各組織切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)で染色した。Image Pro Imagingシステム(Media Cybernetics、Silver Spring、MD)およびNikon E800顕微鏡(AG Heinze、Lake Forest、CA)を使用して、対象とする領域を含む染色したスライド全体について、高分解能デジタル画像をフィールドバイフィールドで得た。
【0189】
定性的病理組織検査
すべての組織切片について、修復性/治癒組織、天然の腱/修復性組織界面、血管新生、炎症、およびコラーゲン密度/線維配向の質を評価した。切片は、処置に対して盲検化して評価した。Image Pro Plusイメージングシステムを使用して、較正した全体のデジタル画像によって腱の退縮も測定した。
【0190】
結果
腱の退縮
すべての手術した試料を、治癒して8週間後にある程度の腱の退縮を示した。平均で、アキレス腱は、投与なしの群について55.7±16.1mm、0.3mg/mlのrhPDGF−BB用量群について39.8±4.5mm、および1.0mg/mlのrhPDGF−BB用量群について44.4±1.5mm退縮した。
【0191】
病理組織検査
8週間の治癒後に、rhPDGF−BBの用量にかかわらず、すべての試料において流動性コラーゲンは目に見えた。流動性コラーゲンは一般に、修復部位の遠位末端に向かってより多く認められた。少数例において、流動性コラーゲンは、修復部位の中心から修復性組織の背側表面に向けて移動していた。1つの試料において、修復部位の全長にわたって分散した流動性コラーゲンが観察された。軽度の炎症のみが、流動性コラーゲン中およびこの周囲に観察された。炎症は、用量なしの試料と比較して流動性コラーゲン+rhPDGF−BB群(0.3mg/mlおよび1.0mg/mlの用量)においてわずかに増大していると判断された。炎症は一般に、多核異物巨細胞および/または単核炎症(リンパ球、単球および血漿細胞)からなっていた。好中球は一般に観察されなかった。rhPDGF−BBの用量にかかわらず、流動性コラーゲン内に、活性化線維芽細胞による新規コラーゲン産生を伴う線維増殖が観察された。いくつかの線維増殖が流動性コラーゲン内に観察されたが、修復性コラーゲン線維内に不連続があった。天然アキレス腱の近位末端および遠位末端は、修復性組織の新規コラーゲン線維と一般によく一体化されていた。少数例において、遠位の界面は、近位の界面と比較した場合、わずかにより良好な一体化を示した。近位の界面は、軽度の炎症と合わさった、ねじれた天然アキレス腱端部とともに、未成熟コラーゲンを産生する多くの幼若線維芽細胞を含有していた。
【0192】
処置またはrhPDGF−BBの用量にかかわらず、高密度のコラーゲン線維を伴った、活性化線維芽細胞による比較的高い線維増殖およびコラーゲン産生があった。偏光を使用して観察した場合、主要なコラーゲン線維のアライメントは天然アキレスコラーゲン線維方向と一致していた。線維芽細胞密度は、処置同士間で同様であった。一試料において、線維芽細胞の密度は相対的により低く、コラーゲン線維はより未成熟であり、より密度が低く、より配向性が低かった。コラーゲン線維は一般に、天然のアキレス線維方向と平行に整列していたが、コラーゲンまたは線維芽細胞密度について群間で差はまったく観察されなかった。
【0193】
炎症は、すべての処置について、修復部位内に観察され、一般に軽度であった。炎症は、単核の炎症(リンパ球、単球、および血漿細胞)を伴った多核異物巨細胞からなっていた。好中球は、一般に観察されなかった。炎症は、縫合糸物質および流動性コラーゲンの存在に関連しており、まず間違いなく、宿主組織の局在的な損傷によるものであった。豊富な血管新生も、すべての処置について、修復部位内で観察された。炎症の増大は、より豊富な血管新生と関連していた。血管肥大、膨らんだ内皮細胞を伴った反応性血管、および血管壁の肥厚は、すべてのrhPDGF−BBの用量について観察された。用量なしの試料と比較した場合、0.3mg/mlおよび1.0mg/mlの用量で処置した試料において、より肥大性の血管が確認された。これらの血管は通常、背側表面の表層性領域における修復性組織内に位置していた。一試料(手術後40日)において、豊富な血管新生があったが、これらの血管はより小さく、肥大性血管は観察されなかった。ヘマトマトマタスな(hematomatomatous)空間およびフィブリンとともに見出された出血が、2試料において観察された。
【0194】
結論
要約すると、試験した限られた数の試料に基づいて、0.3mg/mlの用量、1.0mg/mlの用量、および対照(用量なし)群の間で、アキレス腱修復において定性的な差はまったくなかった。rhPDGF−BBの存在は、治癒を妨げず、また、組織学的に負の応答を誘発(illicit)しなかった。0.3mg/mlの用量および1.0mg/mlの用量の処置群の間で同様の治癒があった。すべての手術した試料は、ある程度の腱退縮を示した。流動性コラーゲンは、rhPDGF−BB処置または用量にかかわらず、すべての試料において目に見え、一般に修復部位の遠位末端に向けて位置していた。炎症は、一般に軽度であり、単核の炎症(リンパ球、単球、および血漿細胞)を伴った多核異物巨細胞からなっていた(considered of)。炎症は、用量なしの群と比較した場合、rhPDGF−BB(0.3mg/mlおよび1.0mg/mlの用量)で処置した流動性コラーゲン内でわずかに増大したと判断された。修復性組織において、高密度のコラーゲン線維を伴った、実質的な、進行中の線維増殖があり、これは、rhPDGF−BBの処置または用量に無関係であった。修復性コラーゲン線維のアライメントは一般に、天然アキレスコラーゲン線維方向と平行であった。コラーゲンおよび線維芽細胞密度は、処置同士間で同様であった。豊富な血管分布は、すべての試料において観察された。用量なしの群と比較した場合、0.3mg/mlおよび1.0mg/mlの用量を用いた試料において確認される、より肥大性の血管があることが判断された。少数例では、遠位界面は、近位界面と比較した場合、わずかにより良好な一体化を示し、近位界面では、成熟の低いコラーゲンおよび軽度の炎症と合わさった、ねじれた天然アキレス腱端部が存在した。これは、連続的な腱退縮、および縫合糸の滑りによって生じた同時の局部組織損傷の結果である場合がある。
【0195】
(実施例7)
rhPDGF−BBに応答して正常および疾患一次ヒト腱細胞が増殖する
この試験により、rhPDGF−BBが、腱障害を有する患者に由来する一次腱細胞の増殖および/または走化性を直接活性化したかどうかを判定した。そのような知見は、腱障害におけるrhPDGF−BBの治療可能性の概念を指示することができる。
【0196】
患者および方法
患者
アキレス腱障害を有する5人の患者および後脛骨腱(PTT)の腱障害を有する5人の患者を含む、腱障害を有する患者10人がこの試験に関与した。膝の完全関節置換を受けた追加の5人の患者も関わった。
【0197】
腱細胞の一次培養
その他の場合では処分される腱組織は、臨床的適応症のために実施された再建的手術手順の間に、正常な腱および傷害された腱から得た。これらの組織は、アキレス腱またはPTT腱の腱障害(tendinopathic)部分、ならびに長指屈筋(FDL)腱組織、アキレス腱組織、および膝蓋腱組織の健康な(非腱障害)部分を含んでいた。一次腱細胞外植片培養物を、これらの組織から得、継代3〜5で試験した。腱細胞同一性は、特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRアッセイにおいて、腱細胞特異的遺伝子スクレラキス、およびコラーゲンα1(I)、α2(I)、およびα1(III)に関する遺伝子の発現を評価することによって確認した。
【0198】
細胞増殖
腱細胞単層をトリプシン処理し、0.5%の透析ウシ胎児血清を含有するDMEM/F12培地中に再懸濁し、一晩付着させ、次いで滴定濃度のrhPDGF−BBで24時間インキュベートした。市販のアッセイ(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を使用して、細胞中のDNA合成の間のBrdU取り込みに基づいて、細胞増殖速度の変化を評価した。各培養物を、rhPDGF−BBの各用量について三つ組で試験した。
【0199】
細胞遊走
腱細胞単層をトリプシン処理し、0.5%の透析ウシ胎児血清を含有するDMEM/F12培地中に再懸濁し、96ウェルChemoTx(登録商標)使い捨て細胞遊走システム(Neuro Probe、Gaithersburg、MD)の上段のチャンバー内に置いた。下段のチャンバーに、滴定濃度のrhPDGF−BBを入れた。チャンバーを分離している膜を横切って、48時間腱細胞を遊走させた。次いで、96ウェルプレートを遠心沈殿し、3回凍結融解することによって、遊走細胞を溶解した。成育可能な遊走細胞の量を、Promega(Madison、WI)からの市販キットを使用して、細胞質乳酸脱水素酵素(LDH)に基づいて測定した。
【0200】
統計分析
一元配置ANOVAを使用することによって、rhPDGF−BBを用いた刺激が、用量依存的な様式で腱細胞増殖に影響するかどうかを判定した。
【0201】
結果
対照の肺線維芽細胞培養物または対照の一次Tリンパ球培養物ではなく、腱細胞培養物のみがスクレラキシスmRNAを発現した一方で、リンパ球ではなく、腱細胞および線維芽細胞がコラーゲン遺伝子mRNAを発現した。
【0202】
すべての場合において、疾患過程に関与した、または関与していない腱組織に由来する腱細胞は、BrdU取り込みを加速することによってrhPDGF−BB刺激に応答した(p<0.05、一元配置ANOVA)。応答は用量依存的であり、10、50、および150ng/mLのrhPDGF−BBで観察された。すべての細胞培養物がrhPDGF−BB刺激に応答したが、rhPDGF−BB刺激後のBrdU取り込みの規模において患者間で有意なばらつきがあった。BrdUの取り込みは、対照の刺激されていない培養物と比較して、最低2.1±0.2倍から最大10.7±0.5倍まで増大した。5人の患者に由来する腱細胞は、逆説的に応答し、rhPDGF−BBのより高い(50および150ng/mL)濃度より低い(10ng/mL)濃度でBrdU取り込みがより大きく増大した。そのような逆説的応答は、これらの患者の腱障害組織および正常組織の両方に由来する腱細胞において観察された。4人の患者の健康な腱に由来する腱細胞は、患部組織に由来する腱細胞より、rhPDGF−BB刺激に応答して、BrdUを2倍多く取り込んだ。1人の患者において、疾患組織に由来する腱細胞が、非病変部の組織に由来する腱細胞より、rhPDGF−BB刺激に応答して、BrdUを4倍多く取り込んだ。
【0203】
すべての場合において、腱細胞は、50ng/mLおよび150ng/mLでのrhPDGF−BBに対して走化的に応答性であった。走化性実験のために10ng/mLのrhPDGF−BBに腱細胞を曝さなかったが、これは、パイロット実験において応答が低かったためである。やはり、応答は用量依存的であり、50ng/mLのrhPDGF−BBより、150ng/mLに対して走化性が大きかった。しかし、5人の患者に由来する腱細胞は、150ng/mLのrhPDGF−BBより50ng/mLに対して大きい走化性で応答し、遊走細胞数の有意な減少を伴った(p<0.05、両側スチューデントt−検定)。刺激されていない対照と比較して、1.4±0.1〜4.0±0.5倍の増大まで、rhPDGF−BBに対する最大の走化性応答において患者間でばらつきがあった。腱障害組織または健康な腱組織に由来する整合(matching)腱細胞培養物内で、rhPDGF−BBに対する腱細胞走化性の統計的に有意な差(p>0.05)はまったくなかった。
【0204】
結論
これらの実験の結果は、健康な組織および腱障害組織に由来する腱細胞は、増殖速度および走化性速度を増大させることによって、rhPDGF−BBに応答することを示す。重要なことに、一部の患者に由来する腱細胞は、PDGFに対して逆説的な応答を示し、より高い用量は、より低い用量より小さい効果を生じた。同様に重要なことに、疾患の腱に由来する腱細胞は、いくつかの場合では、健康な腱に由来する腱細胞に対して、PDGFに差次的に応答性であり、適切な投薬が臨床状況において最も重要となり得ることを示した。
【0205】
(実施例8)
腱を骨に再結合する治療において適用するための、組換えヒト血小板由来成長因子−BB(rhPDGF−BB)と組み合わせた4つのコラーゲンマトリックスの評価
この試験により、前十字靭帯再建などの腱を骨に結合する治療において適用するための、腱−骨界面でrhPDGF−BBとともに使用することができる4つのコラーゲンマトリックスの物理的特性、生体適合性(インビトロおよびインビボ)および安定性(生分解)を評価した。
【0206】
方法
(i)材料および調製
この試験において、4つのI型コラーゲンマトリックス(パッド)を評価した。3つの線維性コラーゲンマトリックス(A、B、およびC)は、様々なコラーゲン密度(A=4.5%のコラーゲン;B=5%のコラーゲン、C=6%のコラーゲン;Kensey Nash Corporationによって提供された、様々な百分率のコラーゲンスラリーから作製されたBIOBLANKET(商標)コラーゲン)のウシ真皮誘導体であり、4番目の線維性マトリックス(D)は、「高度に多孔質」(90%の多孔度)として特徴づけられるウシ腱誘導体(COLLATAPE(登録商標)、Integra LifeSciences)であった。すべてのコラーゲンシート(1.5〜2.0mmの厚さ)を打ち抜いて直径8mmのディスクにし、物理的特徴づけおよびインビトロ(細胞適合性)評価を行った。インビボ(生体適合性および生分解)評価は、1×1cmのパッドを利用して実施した。rhPDGF−BB:0.3mg/mlの組換えヒト血小板由来成長因子(rhPDGF−BB)も調製した。
【0207】
細胞源は、ヒツジ屈筋腱から単離した一次ヒツジ腱細胞(<4継代)であり、これは、成長培地(10%のウシ胎児血清(FBS)を含有するDMEM/F−12)中で培養し、使用する12時間前に基本培地(2%のFBSを含有するDMEM/F−12)でダウンレギュレートした。
【0208】
(ii)インビトロ細胞適合性試験
基本培地中の腱細胞懸濁液50μl(50,000細胞)を各コラーゲンディスクに添加した。培地出現を伴うことなく、37℃および5%のCO雰囲気で1時間インキュベートした後、細胞を播種したディスクを、単独の、またはrhPDGF−BB(30ng/ml)を組み合わせた基本培地2mlで予め満たした24ウェルプレートに移した。12時間静置培養した後、細胞を播種したディスクを含むプレートを、インキュベーター内の軌道振盪機(60rpm)上に配置した。培地交換は、48時間毎に行った。2、4、および6日目に、各物質および処置からの三つ組の試料をATPアッセイのために利用することによって、コラーゲンマトリックス中/上の生細胞数を求めた。4日目に、各物質および処置からの1つの試料を、走査電子顕微鏡(SEM)評価のために使用した。6日目に、各物質および処置からの四つ組の試料を利用して組織学的評価を行った。
【0209】
(iii)インビボ生体適合性および生分解試験
合計12匹のニュージーランド白ウサギをこの試験に使用した。前方−内側の切開によって、大腿骨を露出した。骨膜を除去した後、大腿骨の腹側表面の中間点を位置づけ、この中間点に対して約0.5〜0.8cm近位および遠位の2つの範囲(1cm×1cm)を、ラウンドバーおよび骨の過熱を防止するための多量の洗浄を使用して皮質除去した。内側および外側縁部上の皮質除去部位の中間点で2つの穴(0.9mm)をあけた。最後に、5〜0絹縫合糸を2つの穴に通し、次いでコラーゲンパッド(0.3mg/mlのrhPDGF−BB 100μlで予め飽和させた)を縛ることによって、大腿骨の表面にパッドを固定した。手術は両方に行い、その結果、各大腿骨は2つのパッドを受け、各動物は4つの異なるコラーゲンパッドをそれぞれ1つ受けた。大腿骨上のパッドの順序は無作為化した。手術して1、2、および3週間後に、4匹の動物を安楽死させ、パッドおよび周囲組織と一緒に大腿骨を10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)中で固定し、メタクリル酸メチル(MMA)中に埋め込み、Goldnerのトリクローム手順で染色した。
【0210】
結果
(i)インビトロ細胞適合性試験
ATPアッセイにより、コラーゲンディスク上/中の細胞増殖は、rhPDGF−BBの存在下で有意に増大し、培養物中で時間とともに増大し、同じ処置状態下で、異なるマトリックスにわたって有意な差は観察されなかったことが明らかになった。マトリックス単独についてのSEM画像により、多孔度において定性的な差が明らかになり、マトリックスDは最大の多孔度を示し、マトリックスA、B、およびCは、漸減するレベルの多孔度を示した。細胞播種後のマトリックスのそれぞれについてのSEM結果は、異なる密度の3つの線維性マトリックスの表面上でより多くの細胞が観察され、「高度に多孔質な」マトリックス(D)の表面上で最少の細胞が観察されたことを示した。細胞を播種したマトリックスのそれぞれの断面からの組織画像は、SEM観察結果をさらに支持し、漸増密度のマトリックスについて、パッドの外表面に沿った細胞分布を示し、マトリックスDは、マトリックス全体にわたって細胞の最大分布を示した。
【0211】
(ii)インビボ生体適合性および生分解試験
組織学的評価により、4つのすべてのコラーゲンパッドは、移植後1週間無傷のままであったことが明らかになった。4つの異なるマトリックスの周囲の組織において、顆粒球および単核細胞の細胞浸潤の増大があった。移植して2週間後に、マトリックスA、B、およびDについて部分的な分解が観察され、明白な細胞浸潤がマトリックスDに伴っていた。移植して3週間後に、マトリックスDは、大部分が分解し、正常な線維芽細胞の中で小さいコラーゲン断片のみが観察された(図9D)。真皮が起源のコラーゲンマトリックス誘導体(A、B、およびC)を受けた部位は分解を示し、これはコラーゲン密度と反比例した。広範な炎症細胞浸潤がこれらのマトリックスについて観察され、これは、3週間の観察期間にわたってより局在的となった(図9A〜9C)。
【0212】
結果は、コラーゲンマトリックスDは、最も多孔質であり、均質の微細なコラーゲン線維ネットワークを有し、細胞結合および遊走にとってより多くアクセス可能な表面積を提供することを示した。個々のマトリックスのインビボ評価は、コラーゲンDは、最短の滞留期間を示し、最も生体適合性である物質であると思われ、移植して3週間後に最小の炎症細胞浸潤を示した一方で、異なる密度のコラーゲンマトリックスは、漸増する炎症細胞浸潤を示し、これは移植して3週間後までに局在化して病巣になったことを示した。
【0213】
(実施例9)
腱−骨または靭帯−骨再結合のヤギモデルにおける、腱のトンネル固定を増強するための、rhPDGF−BBおよびコラーゲンラップの使用
この試験は、骨幹端を貫く(transmetaphyseal)脛骨トンネル中に長指屈筋腱を挿入および固定する前に、ある用量のrhPDGF−BB中に浸漬したコラーゲンスポンジをラップすることの組織学的および生体力学的利点を評価する。前十字靭帯(anterior curciate ligament)を再建するためにグラフトを添える方法は、Rodeoら、J. Bone Joint Surg. Am.、75巻(12号):1795〜1803頁(1993年)に記載された通りであった。rhPDGF−BBと組み合わせたコラーゲンパッドを使用することによって、脛骨挿入部位内での腱または靭帯のより急速で完全な一体化を促進する。
【0214】
(A)物質および方法
(i)種
ヤギは、ヒトと同様に、その骨は、骨形成および再吸収のバランスのとれた組合せであり、正常な骨構造に導くリモデリングを起こすので、適当なモデルである。ラットまたはマウスなどのより小さい動物の骨は、リモデリングを起こさず、したがって腱が骨と再一体化するにつれて起こる生物学的プロセスを表さない。さらに、ヤギなどのより大きい動物の腱は、ヒトの手術において使用される技法および器具を使用して、より容易に操作および再結合することができる。
【0215】
合計24頭の骨格的に成熟したヤギ(メス、混合された遺伝的背景)をこの試験において使用する。これらの動物を3つ処置群に分割する(表7)。群1に、外側側部上の大腿挿入部からの長指屈筋腱の素早い剥離、その後に脛骨骨幹端を通して斜めにあけられた骨トンネルを通るスレッディングを行う。反対側では、ステンレス鋼縫合糸で脛骨の内側皮質に腱を結合させる(図10および11参照)。群1の動物の対側の肢は、群2におけるものを含む。群2に同じ外科手術を行うが、トンネルを通すスレッディングの前に、腱に25×15mmのコラーゲンスポンジ(COLLATAPE(登録商標)、Integra LifeScience Corporation、Plainsboro、NJ)でラップする。脛骨の内側皮質に添えたら、コラーゲンマトリックスを酢酸ナトリウムバッファー(20mM、pH6.0)1.0mLで水和する。各動物内で、これらの処置を受ける肢を無作為化する(表8)。群1および2について合計10頭の動物を使用し、各時点(2週間および4週間)についてn=5をもたらす。生涯(各時点および各処置に使用される動物のコホート)における各回は、生体力学的試験について3つの試料、および組織学について2つの試料を生じる。
【0216】
群3の動物に群2におけるものと同じ外科手術を行うが、コラーゲンスポンジは、1.0mg/mLの組換えヒト血小板由来成長因子BB(PDGF−BB)1.0mLで水和する。この群において、両方の肢にPDGF−BBで処置を施す。群3は、10頭の動物からなる;これは、各時点(2週間および4週間)についてn=10試料(2つの手術した肢/動物)をもたらす。生涯における各回は、生体力学的試験について5つの試料、および組織学について5つの試料を生じる。
【0217】
外科的パイロット試験のためにさらに2頭を使用することによって、物質を外科的に移植する実現可能性を確認する(一方に上記群1および2について記載した処置を施し、他方に上記群3について記載した処置を施す)。これらの動物を、手術後2週間観察することによって、正常な歩行運動に戻ること、および合併症がないことを確認する。この期間の後、パイロット試験からの動物を安楽死させ、組織を収集する。手術および術後の評価期間が、事故を伴うことなく行われる場合、試験の残り(20頭の動物)を計画したように実施する。
【0218】
(ii)試験物品および対照物品
試験物品1は、20mMの酢酸ナトリウムバッファー、pH6.0+/−0.5中の1.0mg/mlのrhPDGF−BBであり、液体形態であり、2℃〜8℃で貯蔵する。試験物品2は、COLLATAPE(登録商標)、Integra LifeSciencesからのコラーゲンであり、固体形態であり、室温で貯蔵する。
【0219】
iii)用量調製
コラーゲンのrhDGF−BBとの混合
試験物品および対照物品を混合する。無菌配合物を物品に使用する。すべての混合は室温で実施する。製剤化した試験物品および対照物品は、調製して最大1時間後までに使用する。
【0220】
コラーゲンパッドを切断して25×15mmにし、腱上にラップし、骨トンネル中に通す。27Gの針を用いて、1.0mg/mLのrhPDGF−BB 1.0mLを、コラーゲンマトリックスの最終的な移植部位に隣接したトンネル中に注入する。トンネルの内側および外側の開口部に、合計で約0.5mLの1.0mg/mLのrhPDGF−BBを投与する。トンネルの内側または外側で行われる注入は、トンネル周囲の複数箇所、すなわちトンネル開口部のおおよそ1/4、1/2、3/4、および全円周で注入することによって行われる。
(iv)試験システム(動物および動物のケア)
30〜40ポンドの、Q熱検査して健康が証明された、骨格的に成熟したメスの家畜ヤギ(混血、n=24)を使用する。予備実験のために動物はまったく使用しなかった。動物は、ヤギ1頭当たり最低10平方フィートの空間を有するラン内に置いた。ケージは、ステンレス鋼で構築し、定期的に清掃する。周囲温度を60〜80°Fの間に維持し、湿度を30〜70%の間に維持する。
【0221】
ヤギに、バケツでおよび自動給水システム(LIX−IT)によって自由に水を与える。乾草は、連続的に1日1回提供する。ヤギに市販で購入したヤギ用固形飼料を与える。試験動物は、投薬の初日の前に少なくとも14日間、指定された小屋に順応させる。この順化期間により、動物が、試験室の設定に慣れることが可能になる。すべての動物に、心拍数、呼吸、および糞便浮遊を含めた理学的検査を施す。獣医によって優れた健康状態にあると判断された動物のみを施設に入れ、試験を認める。アイボメック(1cc/75ポンド)、ならびにペニシリンGおよびベンゾカイン(1cc/10ポンド)を用いて、動物を予防的に処置する。
【0222】
(B)実験デザイン
(i)一般的な説明および外科的方法
1ml/10kgで、IMでヤギカクテル[ケタミン(100mg/ml)10cc+キシラジン(20mg/ml)1cc]を使用して、前投薬の30分以内に麻酔を誘導する。誘導後、頭部IVカテーテルを所定位置に配置する。眼の軟膏を角膜上に穏やかに塗布することによって眼の乾燥を最小限にする。気管内チューブ(5−8 ETT)ならびにルーメンチューブを使用してヤギに挿管する。再呼吸回路を使用して100%の酸素で送達される1.5〜2%のイソフルランを使用することによって麻酔を維持する。必要な場合、一回呼吸量(15mL/kg BW)による人工呼吸器上にヤギを置く。麻酔の間全体にわたって、10ml/kg/時間で加温した乳酸リンガー液をヤギに投与する。
【0223】
ペニシリンGおよびベンゾカイン(1cc/10ポンド BW)を、手術の1時間前、および手術後のEOD(エンドオブデイ(end of day))に、合計3回の投与にわたって投与する。ブプレノルフィン(Buprenex)を、手術後、0.005mg/kg BW IM BID×48時間で投与する。
【0224】
手術部位を、無菌手術(滅菌食塩液と交互に3−クロルヘキシジン[4%]のスクラブ)に対して準備し、ドレープする。無菌的に、外側傍膝蓋(parapatellar)切開によって各膝関節を露出し、長指伸筋腱を外側大腿顆上の挿入部から素早く剥離する(図10)。前脛骨筋の筋膜を切開し、筋肉を横方向に後退させることによって、近位脛骨骨幹端を露出する。
【0225】
脛骨の長軸に対して30度と45度の間の角度で、近位脛骨骨幹端内に直径5.6mmのドリル穴を作る(図11)。すべてのドリル穴あけは、多量の洗浄とともに実施し、脛骨内顆(触診した関節ラインの1cm下)の近位で開始し、脛骨の外側(触診した関節ラインの2cm下)上の遠位で終了する。ドリルであけた穴の深さは、薄い金属の深さゲージを用いて測定し、記録する。25×15mmのコラーゲンスポンジを、重ねることなく腱の周囲にラップし、4−0Vicryl縫合糸で固定し、次いでステンレス鋼ワイヤを用いて骨トンネルに通す。骨の反対側では、2つの小さい穴、および4−0ステンレス鋼の結節縫合を使用することによって腱を内側皮質に固定する。コラーゲンをラップした腱を骨に固定した後、27Gのシリンジ針を使用して、pH6.0の酢酸ナトリウムバッファー1mLを分割量でトンネルの両側に注入することによって、コラーゲンスポンジを水和させる。コラーゲンラップを施していない対照動物の腱は、単に骨トンネルに通し、内側皮質上で固定する。成長因子で処置した腱は、上記のようにコラーゲンスポンジでラップし、骨トンネルに通し、内側皮質上で固定し、次いで1mg/mLのPDGF−BBを含有する酢酸ナトリウム(pH6)バッファー1mLで水和する。
【0226】
軟部組織は、吸収性縫合糸(例えば、4−0 Vicryl)を用いて層状に閉じる。切開部および皮膚を閉じた後、各肢の放射線撮影を実施することによって、トンネルの位置および角度を記録する。理想的には、放射線撮影は、脛骨トンネルの全長を画像化するような向きにする。
【0227】
ヤギを胸骨横臥位にし、移動できるようになったとき、これらを檻に戻す。各ヤギを自由に飲食させる。
【0228】
骨幹端の骨トンネル中に挿入された長指屈筋腱の一部に、ある用量のrhPDGF−BBを添加することにより、生体力学的破損までの荷重の25%の増大、ならびに組織像およびマイクロCTによる一体化および石灰化の改善を示すことが予期される。
【0229】
外科手術を、獣医の存在下で2頭の動物に対して最初に実施することによって、手術および動物ケアのすべての側面を考察する。14日後、すべての動物が事故を伴うことなく回復した場合、次いで実験的なプロトコールを実施する。困難が生じる場合には、研究者らは、獣医スタッフと鋭意取り組むことによって、動物に最適なケアを提供し、試験の成功を保証するのに必要なあらゆる問題を解決する。手術の間、動物に麻酔をし、動物に鎮静剤を投与して血液サンプリング手順を行う。
【0230】
(ii)群の割り当ておよび用量レベル
【0231】
【表7】

【0232】
【表8】

(C)生存中の観察および測定
動物を、試験の間全体にわたって少なくとも毎日観察する。事前選択判定基準が完成したら観察の記録を開始し、試験の終了まで継続する。歩行運動の変化を含む、一般的な外見および挙動についての変化について各動物を観察する。手術の前、および屠殺時に体重を測定する。体重は、動物の健康をモニターするのに必要な場合、追加の時点で測定する。
【0233】
術後1週目の最後に、2週目で屠殺される動物に、10mg/kgのカルセイン(購入先TBD)をIP(腹腔内)注射する。同様に、3週目に、4週目で屠殺される動物に、10mg/kgのカルセイン(購入先TBD)をIP注射する。これらの注射は、組織試料のトンネル中への新規骨形成および成長のスケッチを提供する。
【0234】
(D)臨床病理学的評価
(i)分析のための血清採取
外科手術前に1回、および屠殺前に、すべての動物から血液約5mlを無添加(すなわち、「血餅」)チューブに採取する。血液を遠心分離することによって血清を得、2つのアリコートに分割する。さらなる分析のために、血清を−70℃以下で貯蔵する。
【0235】
(E)解剖学的病理学
適切な試験エンドポイントですべての動物を屠殺する。死亡したことが分かった、または瀕死状態で屠殺された動物に肉眼的剖検を行うことによって、死亡原因を判定する。
【0236】
(i)剖検
USDA動物保護法および実験動物の管理と使用に関する指針(ILAR刊行物、1996年、National Academy Press)に従ってヤギを安楽死させる。1ml/10kg IMで、ヤギカクテル[ケタミン(100mg/ml)10cc+キシラジン(20mg/ml)1cc]を使用してヤギに最初に鎮静剤投与する。次いで、1cc/10ポンドBW IVで、Euthasol(360mg/mlのナトリウムペントバルビタール)を投与する。聴診および反射(まばたき、引っ込めなど)の欠如によって死亡を確認する。
【0237】
(ii)組織の採取および保存
インプラント部位の巨視的観察および写真撮影
安楽死の時点で、移植部位を肉眼で検査し、部位の記述を記録する。デジタル写真撮影を使用して観察結果を記録する。
【0238】
(iii)病理学
後膝関節を外し、ストライカーのこぎりを使用することによって、中央骨幹で脛骨を切断する。臨床評価を実施するのに必要である以上に骨の創傷を露出することなく、周囲の筋肉および皮膚を可能な限りトリムする。各試料に、ヤギの番号ならびにこれが右肢であるか左肢であるかの表示を標識する。組織を中性緩衝ホルマリン(10体積の固定液:1体積の組織)中に入れ、スポンサーに発送する。
【0239】
(F)エンドポイント
(i)組織学および病理組織学
組織の処理を行う。簡単に言えば、組織をメタクリル酸メチル(MMA)に埋設し、切片にし、ヘマトキシリン/エオシン、Safranin O/Fast Green、Von Kossa/MacNealおよび/またはVan Giesonを使用して染色して光学顕微鏡評価を行う。評価するための切片の面は、脛骨のトンネルに対して断面および長手方向としてである。各移植部位に残っている物質の量、トンネル壁に沿った腱の石灰化の程度および新規骨成長の量を評価するために、格付けシステムを考案する。ヘマトキシリン/エオシンで染色した切片に隣接する未染色の切片に対してカルセイン視覚化を実施する。
【0240】
(ii)生体力学
生体力学的試験のために保持した試料を、使用するまで−20℃に凍結させる。トンネルの長軸を、引っ張った腱の方向と合わせるために、脛骨/腱複合体を多軸テーブルに固定する。この方向づけにより、摩擦のいずれの影響も最小限になり、周囲の骨との腱の一体化/石灰化を直接試験することが可能になる。破損までの荷重のピーク測定値を、手作業および術後の放射線撮影によって測定したトンネルの長さに対して正規化する。
【0241】
(a)試験デザイン
この試験により、脛骨トンネル中の模擬指伸筋腱再結合の機械的性能を求める。12頭のボーアヤギをこの試験に利用する。
【0242】
(b)生体力学的試験
試料を食塩水に浸漬したガーゼでラップし、試験するまで−20℃で貯蔵する。高ポリメチルメタクリレートを使用して2インチのPVCパイプに脛骨の遠位部分をポッティングする。ポッティング調製および生体力学的試験の間、15分間隔で食塩水をスプレーして、試料を湿気のある状態に保持する。物質試験システム負荷フレーム(MTS MiniBionix、Edan Prairie、MN;図12)に強固に付けられた特注設計試験備品にポッティングした脛骨を取り付ける。腱の天然断面をつかむように設計された特注設計のクライオクランプをこの試験において使用することによって、コンストラクトに一軸性のけん引力を印加する。任意の残っている外側の縫合糸を横切する。
【0243】
生体力学的および組織学的読みの分析を、共分散技法の分析によって実施する。rhPDGF−BBおよびCOLLATAPE(登録商標)の効果を、動物の体質量および腱の直径を共変量として調査する。
【0244】
読みは、適切な方法によって分析する前に変換することができる。
【0245】
フェーズI:30サイクルの動的プレコンディショニング
周期的な負荷試験を最初に使用することによって、腱修復をプレコンディショニングする。10ニュートン(N)の前負荷を印加し、コンストラクトの力を約40%緩和させる。これにより、すべてのコンストラクトについての初期構成が指定される。次いで、修復したコンストラクトを、定常状態に達するように、30サイクルにわたって0.25Hzで10〜30Nの力制御プロトコールで周期的にプレコンディショニングする。本発明者らの実験室における以前の実験は、変位対時間曲線の傾きは、20サイクルと30サイクルの間で安定となるように思われることを示すので、30(n=30)サイクルを選択する。
【0246】
フェーズ2:準静的破損負荷
プレコンディショニングした後、1mm/sの速度での変位制御下で、修復したコンストラクトに破損するまで負荷をかける。対象とする生体力学的パラメータは、極限破損までの荷重、および準静的剛性(負荷−変位曲線の傾きとして定義される)を含む。最後に、破損機構を各試料について記録する。各試料のデジタル画像を、試験デバイスに装填する際、および破損後に撮って、破損の様式および条件を記録する。
【0247】
(iii)マイクロトモグラフィー(CT)
試料サイズによって決定される最適な分解能で各試料をスキャンする。図13を参照。円柱状欠陥に対する近似断面でスライスを得る。半自動輪郭法を使用することによって、欠陥の本来の境界の周囲長に限定される関心体積(VOI)を選択する。最適化した密度閾値およびノイズフィルターを選択し、すべての試料に均一に適用することによって、軟部組織から骨を分割する。総平均密度、骨の平均密度、およびトンネル内の骨体積/総体積を計算する。
【0248】
(実施例10)
BenchTopモデルによる、BIOBLANKE(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスからのrhPDGF−BB(組換えヒト血小板由来成長因子−BB)の放出特性の評価
この試験の目的は、室温でBenchTopモデルを使用して、様々な密度を有するBIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスからのrhPDGF−BB放出を測定することである。
【0249】
試験物質
【0250】
【表9】

試験デザイン
試験デザインを、すべての試料群(BIOBLANKET(商標)マトリックス、COLLATAPE(登録商標)マトリックス、およびコラーゲンマトリックスを含まない対照群)について5分の初期フラッシング時間を示す表10に列挙する。
【0251】
【表10】

無菌法を使用して、生検パンチを用いて、BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)シートのそれぞれから8mmのディスクを打ち抜く。シリンジ針を使用することによって、27G11/4針で1枚のBIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)ディスクを穏やかに突き刺し、特別に設計されたチャンバー内に取り付けられた1mLのシリンジヘッドを有する針を接続する。PDGF−BB(20mMの酢酸ナトリウムバッファー中1.0mg/mL)50μlを各ディスクにかける。次いで、ディスクを室温で10分間インキュベートする。関節鏡カニューレデバイスへのシリコンチューブの一方の端、および20mlのシリンジへのチューブの他方の端を図14に示すように接続する。溶出バッファー(EME+2%のFBS)20mlをシリンジ中に満たし、Varistalticポンプへのシリコンチューブをアセンブルする。rhPDGF−BBで飽和したコラーゲンパッドを、関節鏡カニューレデバイスの頂部に装填する。200ml/分(予め較正した)の流速を設定する。ポンプの電源を入れ、5分作動させる。対照については、関節鏡カニューレデバイスの頂部からシステムに、1.0mg/mlでrhPDGF−BB 50μlを添加する。フラッシングして5分後に、ポンプを依然として作動させながら、シリコンチューブを20mlのシリンジから外すことによって、50mlの円錐チューブに溶出バッファーを収集する。分析のために試料を2〜4℃で貯蔵する。各試料中で溶出されたrhPDGF−BBの量は、以下のELISAアッセイ手順において説明するように、R & D systemsからのDuoSet ELISAキットを使用して測定する。
【0252】
ELISAアッセイ手順
捕獲試薬は、捕獲試薬原液56μlをDPBS 10mlに添加することによってDPBS中の作業濃度(0.4μg/ml)に希釈し、次いで希釈捕獲試薬100μlを、96ウェルプレートの各ウェルに添加する。プレートをプレートシーラーで密封し、振盪機上で、室温で一晩インキュベートする。吸引および分配マニホールドからの気泡を排出し、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄する。溶出バッファー200μlを各ウェルに添加し、揺り動かしながら室温で2時間(最大4時間)、プレートをブロックする。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄する。
【0253】
ストレプトアビジン(steptavidin)−HRPは、ストレプトアビジン−HRP原液50μlを、試薬希釈剤バッファー10mlに添加することによって、試薬希釈剤バッファー中の作業濃度(200倍希釈)に希釈する。次いでストレプトアビジン−HRP 100μlを各ウェルに添加し、アルミホイルで覆い、軌道振盪機上で、室温で20分間インキュベートする。ストレプトアビジン−HRPをプレートに添加した直後に、次いで必要な体積のSureBlue TMBを、ホイルでラップされた15mlの円錐チューブにアリコートし、ベンチ上に置き、室温まで平衡状態にさせる。各プレートについて別個のチューブを準備する。次いでプレートを洗浄バッファーで3回洗浄する。
【0254】
Sure Blue 100μlを各ウェルに添加し、アルミホイルで覆い、室温で20分間インキュベートする。1NのHCL 50μlを各ウェルに添加することによって、反応を停止する。反応が停止して30分以内に、540nmで設定した補正値を用いて、450nmでの光学密度を読み取る。
【0255】
データの計算
4−パラメータグラフを使用してスタンダードをプロットし、各プレートに対する検量線を使用して、各希釈での各試験試料についてのrhPDGF−BB濃度を計算する。各時点での2つの希釈からの三つ組の試料のそれぞれについての平均値および標準偏差(SD)も計算する。
【0256】
各試料中に存在する総rhPDGF−BBを、rhPDGF−BB濃度に各試料の総体積を乗じることによって求める。各時点での各試料中のrhPDGF−BBの累積量を、以前の時点にその時点でのrhPDGF−BBの量を加算することによって計算する。
【0257】
4つの時点のそれぞれにおいて放出されたrhPDGF−BBの累積量についての平均+/−SDをプロットする。各時点での累積rhPDGF−BB放出量を、同じ時点での対照の平均値で除することによって、各試料中のrhPDGF−BB放出率を計算する。各時点での三つ組の試料のそれぞれについてのrhPDGF−BB放出率の平均値も計算する。4つの時点のそれぞれにおけるrhPDGF−BB放出率についての平均+/−SDをプロットする。
【0258】
統計分析
各時点でのデータの統計的比較を、データ分布に従って適切な方法によって行う。
【0259】
(実施例11)
関節鏡下洗浄のBenchTopモデルを使用した、コラーゲンマトリックスと合わせた組換えヒト血小板由来成長因子−BB(rhPDGF−BB)の放出、安定性、および生物作用能の特徴づけ
この試験は、高流量関節鏡下環境を再現するため、および腱を骨に結合する手順、例えば、前十字靭帯再建手順または回旋腱板傷害治療手順などにおいて適用するために考慮された4つの異なるコラーゲンマトリックスから溶出されるrhPDGF−BBの放出、安定性、および生物作用能を特徴づけるための新規のBench Top関節鏡下モデルを開発するために行った。
【0260】
方法
3つが異なるコラーゲン濃度の経皮由来のコラーゲンマトリックス(Kensey Nash CorporationからのA=4.5%のコラーゲン;B=5%のコラーゲン、C=6%のコラーゲン)であり、1つがアキレス腱由来のマトリックス(コラーゲンD、Integra LifeSciencesからのCOLLATAPE(登録商標))である、4つのI型コラーゲンマトリックスを評価した。すべてのマトリックスを打ち抜いて8mmのディスクにした。コラーゲンマトリックスからのrhPDGF−BB(Novartis)の放出を評価するために、各ディスクを1mg/mlのrhPDGF−BB 50μl(50μg)で水和し、室温で10分間インキュベートし、溶出バッファー(2%のFBSを含有するMEM)20mlで予め満たしたBench Top関節鏡システム中に装填し(図14参照)、200ml/分の流速で5分間流した。同じ量のrhPDGF−BBを、対照としてこのシステムに添加した。マトリックスを洗浄するのに使用した溶出バッファー試料は、DuoSet ELISAアッセイ(R & D Systems)を使用して分析した。逆相およびサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用することによって、コラーゲンマトリックスから放出されたrhPDGF−BBの特性を引き出して、rhPDGF−BBの天然/変性構造の変化/改変を評価した。ブロモデオキシウリジン(BrdU)細胞増殖アッセイ(Promega)を使用して、コラーゲンマトリックスから放出されるrhPDGF−BBの生物作用能を試験した。NIH3T3線維芽細胞を、rhPDGF−BB(0〜0.24μg/ml)を含有する放出物(releasate)中で培養し、次いでBrdUを添加し、細胞を48時間インキュベートした。
【0261】
4つのコラーゲンマトリックスのそれぞれについての対照と比べた平均rhPDGF−BB放出率は、以下の通りであった:コラーゲンA、79%;コラーゲンB、64.6%;コラーゲンC、74.3%;およびコラーゲンD、89.0%。コラーゲンDは、rhPDGF−BBの最大の放出を示し、これは、一元配置分散分析のFisher LSD法を使用して実証されたように、マトリックスBまたはCについて観察されたものより有意に大きかった。逆相HPLCで実証されたように、マトリックスDと組み合わせた後に、rhPDGF−BBに対する明らかな変化はまったく見出されなかったが、軽度のrhPDGF−BBの酸化が、コラーゲンマトリックスA、B、およびCで起こった。しかしこれらの変化は、生物作用能に影響するように思われなかった(BrdUによって評価した場合)。
【0262】
この試験は、Bench Top関節鏡下モデルが、スポーツ医学関節鏡下修復/再生手順において使用することが提案された組換えタンパク質治療剤の送達のためのマトリックスを評価するのに有効なシステムであることを示す。コラーゲンAおよびDは、コラーゲンBおよびCより多くのrhPDGF−BBを放出し、コラーゲンDは、rhPDGF−BBに対していずれの変化ももたらさず、スポーツ医学再生手順において使用するための大きな可能性を示した。さらに、この関節鏡下モデルは、有効性を最大にするのに最適な送達用量を提供するための組換えタンパク質治療デバイスを作ることを可能にする優れたインビトロツールを代表する。
【0263】
(実施例12)
走査電子顕微鏡(SEM)評価による、rhPDGF−BBに応答した様々な密度のBIOBLANKET(商標)マトリックスおよびCOLLATAPE(登録商標)における細胞遊走
この試験により、一次ヒツジ腱細胞を培養することによって、BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックス中への細胞遊走の程度を評価する。この腱細胞は、rhPDGF−BBを用いて、または用いずに処理され、引き続いて走査電子顕微鏡(SEM)技法によって評価される。
【0264】
物質および方法
BIOBLANKET(商標)マトリックスおよびCOLLATAPE(登録商標)中へのヒツジ腱細胞の遊走は、既知量の細胞を含むマトリックスを播種し、次いでこのマトリックスを4日間培養することによって評価した。次いでマトリックスを臨界点乾燥によって処理し、マトリックス中の細胞分布および密度を、走査型電子顕微鏡下で評価した。
【0265】
試験物質は、1)5%、6%、または7%のBIOBLANKET(商標)(ロット番号R436−1、R436−2、R436−3);2)COLLATAPE(登録商標)(ロット番号1072549);3)rhPDGF−BB(0.3mg/ml;ロット番号:BMTI204)、および4)足首関節で切断した新鮮なヒツジの脚を含む。試験デザインを表11に列挙する。
【0266】
【表11】

(i)一次ヒツジ腱細胞の単離および培養
石けん、水、および70%のアルコールを使用して、新鮮なヒツジの脚を、浄化、噴霧、および洗浄した。屈筋腱の表面から約3インチの幅の皮膚を切除した。切開部を70%のアルコールで噴霧し、外科的ドレープで覆った。腱鞘の上を切開することによって、腱を露出した。次いで、腱を遠位側から切断した。腱をできる限り長く引っ張り、近位側を切断した。次いで腱を、氷冷のDPBSで満たされた50mlの円錐チューブに入れた。脚および余分の組織を廃棄した。
【0267】
層流フード作業域内で、滅菌した120mmの細胞培養皿中で、腱組織を刻んで小さい断片にした。次いで刻んだ組織を、新しい50mlの円錐チューブに移した。刻んだ腱組織を、DPBSで2回、およびDMEM/F−12培地で1回洗浄した。次いで腱組織を、DMEM/F−12培地中の500ユニット/mlのプロナーゼプロテアーゼで1時間消化した。プロナーゼプロテアーゼを吸引し、DPBSで2回、および無血清DMEM/F−12培地で1回洗浄した。
【0268】
次いで、無血清DMEM/F−12培地(meidum)中の0.2コラゲナーゼPと150ユニット/mlのDNAse−IIを用いて1時間、腱細胞を遊離した。消化産物を、75μmの細胞ストレーナを通して濾過した。残った組織を50mlの円錐チューブへのストレーナ内に戻し、無血清DMEM/F−12培地中の0.2%のコラゲナーゼPと150ユニット/mlのDNAse−IIを用いて1時間、腱細胞を遊離した。細胞を、1200〜1500RPMで、4℃で5分間遠心分離することによってペレット化した。細胞をDMEM/F12成長培地10ml中に再懸濁し、トリパンブルーおよび血球計数器を使用して細胞計数を実施した。5000〜7500細胞/cmの間の密度で、DMEM/F−12成長培地を含むT75またはT150フラスコ中に細胞を蒔いた。すべての腱組織が消化されるまで、この段落に記載した全プロセスを1時間毎に繰り返した。成長培地は、2日毎に交換し、BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスに細胞を播種する24時間前に基本培地に交換した。
【0269】
(ii)細胞播種およびrhPDGF−BB添加
滅菌技法を使用して、BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスから8mmのディスクを生検パンチを使用して打ち抜いた。各27G1/2針上の1枚のBIOBLANKET(商標)またはCOLLATAPE(登録商標)ディスクを穏やかに突き刺し、開放矩形形状に対して90度の角度で2回曲げることによって、ディスクが滑り落ちる恐れをなくした。BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスディスクが刺さった針を、特別に設計されたチャンバー内の1mlのシリンジヘッドに接続した。腱細胞をトリプシン処理し、2%のFBSおよび10細胞/mlの濃度の抗生物質を含有するDMEM基本培地1ml中に懸濁した(4継代未満)。総量60ng(培地2ml中30ng/ml)のrhPDGF−BBを各ディスクに装填した。BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスディスクに、細胞を播種し、培地を浸漬することなく、インキュベーター内のチャンバー内で1時間インキュベートした。2%のFBSを含有するDMEM培地を調製し、rhPDGF−BB処置群としての合計8ウェルについて、各24ウェル超低付着プレートの8ウェルに2mlを添加した。1時間インキュベートした後、細胞を播種したディスクを装填ボックスから取り出した。止血鉗子を使用して、針先端部をプラスチックの根元から折った。細胞を播種したディスクを、針先端部と一緒に、様々な組成物を含有する培地で予め満たしたウェルに移した。ディスク中に付着した針先は、ディスクを培地中で浮遊させ、その結果、ディスクの両側の細胞は、栄養を均等に供給された。各物質について合計4つの処置を行い、各物質および各処置について三つ組の試料を準備した。37℃および5%のCO雰囲気で、インキュベーター内で12時間静置培養した後、プレートを、インキュベーター内の軌道振盪機上に、細胞を播種したコラーゲンマトリックスとともに置いた。初回のフィーディングと同じ組成物を含有する培地を、48時間毎に交換した。
【0270】
(iii)走査電子顕微鏡プロセス
培養して4日後に、24ウェルプレートからの細胞を播種した各ディスクを、培地の出現を伴ってクライオバイアルに移した。次いでクライオバイアルから培地を取り出し、DPBS中で2回洗浄した。2.5%のグルタルアルデヒド中で2時間試料を固定した。次いで試料をDPBS中で5回洗浄し、2%の四酸化オスミウム中で2時間、後固定した(post−fixed)。試料を脱イオン水中に10分間浸漬し、脱イオン水で5回洗浄することによって過剰の四酸化オスミウムを除去した。試料を上昇系列のエタノール中で脱水し、次いでPolaron臨界点乾燥機内で乾燥させた。試料に金−パラジウムをコーティングし、Hitachi SEMを用いて見た。
【0271】
結果および結論
腱細胞は、様々な濃度のコラーゲンスラリーを有するすべてのBIOBLANKET(商標)マトリックスの表面上で成長したが、COLLATAPE(登録商標)マトリックスの内部で成長した。ほとんどの腱細胞は、様々な濃度のコラーゲンスラリーを有するすべてのBIOBLANKET(商標)マトリックス上で成長しながら丸い形状であったが、COLLATAPE(登録商標)マトリックス上で紡錐体形状であった。図15を参照。
【0272】
(実施例12)
ヒツジモデルにおける、rhPDGF−BBおよびI型ウシコラーゲンマトリックスを使用する回旋腱板修復
この試験の目的は、ヒツジモデルを使用して、回旋腱板を修復するために、棘下筋腱の上腕骨へのより強い再結合を促進することを意図した、rhPDGF−BBを装填したマトリックスの効力を求めることであった。実験デザインを以下のように提供する:1)縫合のみ(n=9);2)縫合+コラーゲンマトリックス+バッファー(n=9);3)縫合+コラーゲンマトリックス+0.15mg/ml(または75μg)のrhPDGF−BB(n=9);4)縫合+コラーゲンマトリックス+0.30mg/ml(または150μg)のrhPDGF−BB(n=9);5)縫合糸+コラーゲンマトリックス+1.0mg/ml(または500μg)のrhPDGF−BB(n=9);および6)iCTL(n=9)無傷のコントララテラル対照。縫合のみ、縫合+コラーゲンマトリックス+バッファー、および3つの用量群からの9頭の動物を生体力学的試験に利用し、それぞれ3頭を組織診断試験に利用した。iCTL群はより小さく、生体力学的試験について6頭であり、組織診断試験について3頭であった。
【0273】
外科手術
骨格的に成熟したヒツジ(3.5歳以上)の棘下筋腱を外科的に露出し、上腕骨頭から素早く剥離した。腱フットプリント(tendon footprint)を剥皮し、出血を誘導するために3つの穿孔を骨に作った。試験物品を、腱と骨の間の挿入(interpositional)移植片として配置した。2本の縫合糸を、Mason−Allen技法を使用して腱に通し、3つの骨トンネルからなる単列修復によって、腱を上腕骨頭に固定した。標準的な手順を使用して手術部位を閉じ、ヒツジを普通に歩き回らせた。手術して12週間後に動物を屠殺した。
【0274】
材料および方法
生体力学的な試験
生体力学的な試験に割り当てた動物からの肩を回収し、上腕骨−棘下筋腱のコンストラクトを無傷にしたまますべての筋系を剥皮した。合計51個の肩を生体力学的に評価した。浄化後、食塩水に浸漬したガーゼで試料をラップし、生体力学的試験まで−20℃で貯蔵した。高強度ポリ−メチル−メタクリレート(PMMA)樹脂を使用して、2インチのPVCパイプに上腕骨をポッティングした。試料は、15分間隔で食塩水を噴霧して、ポッティング調製および生体力学的試験の間、水和した状態を保った。物質試験システム負荷フレーム(MTS MiniBionix、Edan Prairie、MN)にしっかり取り付けた特注設計試験備品にポッティングした上腕骨を取り付けた。棘下筋腱の天然断面を保存し、軟部組織の滑りを最小限にするように設計された特注設計のクライオクランプは、ポッティングした上腕骨に対して約135°の角度でコンストラクトに一軸性のけん引力を印加するためであった。これは、腱の生理的力ベクトルを模倣するために行った。試験は、クライオクランプに付けられた熱電対が−22℃、すなわち腱とクランプの間の安定したカップリングを保証するのに十分であると以前に報告された温度を記録したとき開始した。
【0275】
3つの逆反射マーカーをポッティングしたコンストラクト、すなわち、1つを修復部位に直接隣接する上腕骨上に、1つを修復界面の近位の腱上に、および3番目をクライオクランプ上に縫合または接着剤接合した。3つのカメラ(Motion Analysis、Santa Rosa、CA)により、60Hzでマーカーの空間的な移動を記録した。このカメラシステムを使用するマーカー変位測定により、回旋腱板修復部位にわたる局所的な組織変形のリアルタイムモニタリングが可能になった。
【0276】
フェーズ1:30サイクルの動的プレコンディショニング
周期的負荷試験を最初に使用することによって、回旋腱板修復をプレコンディショニングした。10ニュートン(N)の前負荷を力制御で2分間印加し、その後、修復したコンストラクトを、定常状態に達するように、60サイクルにわたって0.25Hzで10〜50Nの力制御プロトコールで周期的にプレコンディショニングした。変位対時間曲線の傾きが50サイクルと60サイクルの間で、繰り返し可能な定常状態の挙動に到達することを実証した、本発明者らの実験室におけるパイロット実験に基づいて、60(n=60)サイクルを選択した。コンディショニング伸長およびピークトゥピーク伸長を、周期的なプレコンディショニング試験の間に求めた。コンディショニング伸長は、1番目のサイクルのピークと60番目のサイクルのピークの間のy変位における距離として定義した。ピークトゥピーク伸長は、58番目、59番目、および60番目のサイクルの局部的な最小から最大の平均として定義した。
【0277】
フェーズ2:準静的破損負荷
プレコンディショニングした後、1mm/sの速度での変位制御下で、修復したコンストラクトに破損するまで負荷をかけた。対象とする生体力学的パラメータは、極限破損までの荷重、および準静的剛性(負荷−変位曲線の傾きとして定義される)を含んでいた。最後に、破損機構を各試料について記録した。適切な場合、デジタル画像を撮った。
【0278】
統計分析
一元配置ANOVAおよびポストホックFisher’s LSDおよびTukey検定を使用することによって、無傷の対照を除外した処置群同士間の連続的生体力学的パラメータの有意な差を識別した。有意性をp≦0.05に設定し、すべての分析は、SigmaStat 3.1(Systat Software, Inc.、San Jose、CA)を用いて実施した。
【0279】
結果
試験の周期的プレコンディショニング成分からの未処理データを表12に示す。0.15mg/mlのPDGFおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BB群は、縫合のみ、および縫合+コラーゲンマトリックス群より有意に大きいコンディショニング伸長を受けた(Tukey’s:p≦0.024;Fisher LSD:p≦0.003)。図16A。任意の群同士間で、ピークトゥピーク伸長の有意な差はまったくなかった(p=0.111、図16B)。
【0280】
【表12】

生体力学的試験の破損までのランプ成分からの未処理データを表13に示す。0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BBを用いた修復増強は、縫合のみの群と比べてそれぞれ、63.7%および63.3%の破損までの荷重の増大をもたらした(Tukey:p=0.176;Fischer LSD:p=0.029、およびTukey:p=0.181;Fisher LSD:p=0.030、図17A)。さらに、破損時の負荷データは、0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのより低いrhPDGF−BB用量は、より高い1.0mg/mlのPDGF用量より性能が優れていることを示し、破損時の負荷においてそれぞれ120%および119.3%の増大として顕在化した(p=0.023およびp=0.023(Fisher:p=0.003))。コンストラクトの剛性の統計的な差は、群同士間でまったく識別されなかった(p=0.254、図17B)。0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BBの群におけるコンストラクトは、縫合のみの群と比べて破損時に有意に大きい伸長を示した(それぞれ、p≦0.018およびp≦0.024)。Fisher’s LSDは、0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのPDGF群は、縫合+コラーゲンマトリックスバッファー群より有意に多く伸長したことを示した(それぞれ、p=0.015およびp=0.011)。0.15mg/ml、0.30mg/ml、または1.0mg/mlのrhPDGF−BB群の間で、破損時の伸長の差はまったく識別されなかった(p≧0.054)。
【0281】
【表13】

縫合のみ、縫合+コラーゲンマトリックス+バッファー、および縫合+コラーゲンマトリックス+1.0mg/mlのrhPDGF−BB処置群について、あらゆる試料におけるコンストラクト破損は、上腕骨上の挿入部位での中央物質組織破損として顕在化した。これらの3つの群中の腱のいずれ(n=27)においても、上腕骨剥離破損はまったく確認されなかった。対照的に、0.15mg/mlのrhPDGF−BBおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BB処置群における破損モードは混合されており、上腕骨上の挿入部位での中央物質組織破損、またはいくらかの骨の裂離と合わさった中央物質組織破損として顕在化した。具体的には、0.15mg/mlのrhPDGF−BB群における肩の9個のうちの6個(66.7%)が、ある度の骨の裂離を示した一方で、0.30mg/mlのrhPDGF−BB群における肩の9個のうちの5個(55.6%)が、ある程度の骨の裂離を示した。無傷の、対側のコンストラクトの破損は、中央骨幹の(middiaphyseal)上腕骨(humoral)破損(n=5)、または上腕骨上の棘下筋腱挿入部位での骨の裂離(n=1)として顕在化した。
【0282】
結論
0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのrhPDGFを用いた上腕骨棘下筋腱再結合の増強は、縫合のみ、縫合+コラーゲンマトリックス+バッファー、および縫合+コラーゲンマトリックス+1.0mg/mlのrhPDGF−BB群と比べて、ヒツジモデルにおいて3カ月後に機械的機能を改善した。より低い用量のrhPDGF−BBの生体力学的完全性の増強は、縫合のみの群と比べて、破損までの荷重の63%の増大、および1.0mg/mlのrhPDGF−BB群と比べて、破損時の負荷の120%の増大として顕在化した。ここで報告したデータは、回旋腱板増強に対する用量依存的効果を支持し、より低いrhPDGF−BB用量は、成長因子のより高い1.0mg/mlの用量と比べてより大きい治癒応答を誘発する。さらに、0.15mg/mlのrhPDGF−BBおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BB処置群における破損モードは、0.15mg/mlのrhPDGF−BB群における肩の9個のうちの6個(66.7%)がある程度の骨の裂離を示した一方で、0.30mg/mlのrhPDGF−BB群における肩の9個のうちの5個(55.6%)が、ある程度の骨の裂離を示したように、無傷の、未手術の肩において一貫してみられる破損モードと同様であった。この知見は、より低い用量のPDGF(例えば、rhPDGF−BB)は、12週間の治癒期間の過程にわたって、より大きい上腕骨粗面との腱の(tendinacious)一体化を促進し、より低い用量のPDGFは、回旋腱板修復を増強するのにより適していることを示す。
【0283】
(実施例13)
ヒツジモデルにおける、rhPDGF−BBおよびI型ウシコラーゲンマトリックスを使用する回旋腱板修復:組織学的結果
この試験は、ヒツジ回旋腱板挿入部の治癒および再生を促進するための、I型ウシコラーゲンマトリックスと組み合わせた組換えヒト血小板由来成長因子−BB(rhPDGF−BB)の有効性を評価するために設計した。回旋腱板傷害の最適な治癒は、結合の本来の部位(腱「フットプリント」)での腱の骨への再挿入を伴う。腱線維の骨への再挿入がない場合、治癒した部位は、本来の結合より「弱い」と考えられ、潜在的に機能を制限し、再傷害のより大きい確率に導く。回旋腱板修復後の相対的に高い割合の破損が報告されており(例えば、Boileau P.ら、J Bone Joint Surg Am、87巻:1229〜1240頁(2005年);Galatz L. M.ら、J. Bone Joint Surg Am.、86巻:219〜224頁(2004年);Gazielly D. F.、Clin. Orthop Relat Res、304巻:43〜53頁(1994年);Gerber C. J.ら、Bone Joint Surg Am、82巻:505〜515頁(2000年);およびHarryman D. T.ら、J. Bone Joint Surg Am、73巻:982〜989頁(1991年)を参照)、これは、様々な異なる要因から生じると仮定されている(例えば、Goutalier D.ら、Clin Orthop、304巻:78〜83頁(1994年);Gerber C.ら.、J Bone Joint Surg Br、76巻:371〜380頁(1994年);Warner J. P.ら、J Bone Joint Surg Am、74巻:36〜45頁(1992年)を参照)。腱組織の質および腱から骨までの治癒が、回旋腱板修復の失敗の一因となる最も重要な要因の2つとして提案されており、腱から骨までの治癒を増強するための成長因子または細胞の送達が、これらの傷害の治癒を最適化するための方法として示されている(例えば、Gamradt S. C.ら、Tech in Orthop、22巻:26〜33頁(2007年)およびDovacevic D.ら、Clin. Orthop Relat Res、466巻:622〜633頁(2008年)を参照)。PDGF−BBは、十分に特徴づけられた創傷治癒タンパク質であり、これは、骨(骨芽細胞)および腱(腱細胞)細胞を含めた間葉系起源の細胞に関して、走化性(細胞遊走)および分裂促進性(細胞増殖)であることが公知である。さらに、PDGF−BBは、血管内皮成長因子(VEGF)をアップレギュレートし、再生プロセスの成功にとって本質的である血管新生(血管再生)の増大に導くことが示されている。この試験の目的は、生体力学的および組織学的結果の措置を使用して、腱再結合を増強および改善するための、腱修復部位での、I型ウシコラーゲンマトリックスと合わせたrhPDGF−BBの効力を求めることであった。
【0284】
試験デザイン
合計17頭の骨格的に成熟したヒツジを試験の一部として含めた。動物に、外科的な剥離、その後、骨トンネルを通す縫合を使用して、上腕骨のより大きい粗面への右棘下筋腱の即時の再結合を行った。第1のセットの実験では、実験動物(n=3)の腱−骨界面に、20mMの酢酸ナトリウム(酢酸塩)バッファー中、0.15(n=3)または0.3(n=3)mg/mlの濃度を有するrhPDGF−BBと合わせたI型コラーゲン担体を投与した。すべての動物についての生存時間は、12週間であった。処置の割り当てを表14に示す。
【0285】
【表14】

第2のセットの実験では、実験動物(n=3/群)の腱−骨界面に、20mMの酢酸ナトリウム(酢酸塩)バッファー中、1.0mg/mLの濃度を有するrhPDGF−BBと合わせたI型コラーゲン担体(コラーゲンマトリックス)またはコラーゲンマトリックス単独を投与した。表15。
【0286】
【表15】

組織の回収およびトリミング
治癒の12週間後に動物を人道的に安楽死させ、手術した(右)肩を回収し、組織学的な処理のために10%の中性緩衝ホルマリン中に入れた。腱用メスおよび上腕骨用ダイヤモンドブレードソー(Exakt Technologies、Oklahoma City、OK)を使用して、棘下筋腱およびその上腕骨結合部位を通して頭側の半分と尾側の半分に各肩を二分した。トリミングの間に各試料のデジタル画像を撮った。一方の半分(頭側または尾側の面のいずれか)を、脱灰組織診断のために処理し、他方の半分を、未脱灰組織分析のために処理した。
【0287】
脱灰組織学的処理
頭側または尾側の面のいずれかを脱灰組織診断のために処理し、パラフィン中に埋め込んだ。標準的なパラフィン組織学技法および装置(Sakura Tissue TEK V.I.P. Processor、Sakura Finetek USA, Inc.、Torrance、CA、およびShandon Histocentre 2、Thermo Shandon, Inc、Pittsburgh、PA)を使用して、試料を固定、脱灰、脱水、浄化、浸潤、および包埋した。パラフィンブロックを、Shandon Finesseロータリーミクロトーム(Thermo Shandon, Inc、Pittsburgh、PA)でフェイシングし、約8mmの切片を切断した。約250ミクロンの空間的厚さの増分で、各肩から5つの組織切片を得た。Image Pro Imagingシステム(Media Cybernetics、Silver Spring、MD)、Nikon E800顕微鏡(AG Heinze、Lake Forest、CA)、およびSpotデジタルカメラ(Diagnostic Instruments、Sterling Heights、MI)、メモリー機能を拡張したPentium(登録商標) IBM系コンピューター(Dell Computer Corp.、Round Rock、TX)を使用して、全体の対象とする染色したスライドおよび領域について、フィールドバイフィールドで高分解能デジタル画像を得た。
【0288】
半定量的病理組織学的検査
腱退縮の程度(もしあれば)、修復性/治癒組織の評価、腱骨界面、処置に対する組織の応答、血管新生、炎症、コラーゲン方向づけ/線維のアライメント、ならびに挿入部位でのシャーペー線維の嵌合および存在を評価するための格付けスケールに従って、すべての組織切片を格付けした。切片を、処置に対して盲検化して最初に評価し、互いに比較して総合的な治癒に対して評価し、治癒スコアを与えた。各スコアについての判定基準の説明を表16に示す。Image Pro Plusイメージングシステム(Media Cybernetics、Silver Spring、MD)を使用して、較正した全体のデジタル画像によって腱の退縮の程度(もしあれば)も測定した。
【0289】
【表16】

結果
(i)
第1のセットの実験(コラーゲンマトリックス+0.15mg/mlのrhPDGF−BBまたは0.3mg/mlのrhPDGF−BB)では、処置にかかわらず、すべての手術した試料が治癒の12週間後にある程度の腱退縮を示した。平均で、棘下筋腱は、0.15mg/mlのrhPDGF−BB用量群について、骨溝から41.8±3.5mm(平均±標準偏差)、および0.3mg/mlのrhPDGF−BB用量群について、45.2±8.9mm退縮した。
【0290】
第1のセットの実験における処置によって平均した病理組織学的スコアを、表17に示す;これらの結果のグラフによる表示を、図18に示す。縫合は、治癒の12週間後に、6試料のうち4つについて骨トンネル内で無傷であることが観察された。これは、腱退縮に導く破損は、骨−縫合界面ではなく縫合−腱界面で起こったことを示す。
【0291】
全体的に、処置にかかわらず、上腕骨と天然の腱端部の間の修復性組織は、線維性血管性組織(高度に血管新生した線維性組織)からなり、活性な線維増殖および適度に高密度な分極性コラーゲン線維が存在した。線維芽細胞密度の差は、処置同士間でまったく観察されなかった。すべての試料は、元の腱のアライメントと平行な一次コラーゲン線維のアライメントを示し、あまり組織化されていない線維ポケットを伴った。平均のコラーゲン線維配向および線維密度は、処置同士間で同様であった。
【0292】
【表17】

再生中の挿入部位で、骨コラーゲンと直接、または線維軟骨の層を通じて挿入および嵌合している修復性腱組織のコラーゲン性シャーペー線維が、すべての試料について観察された。平均で、嵌合は、完全に剥皮した骨表面の約30〜40%にわたって観察され、この観察結果は、すべての処置群にわたって一貫していた。手術した試料において観察されたシャーペー線維は、無傷の対照よりも未成熟であったが、下にある骨のコラーゲンとの、これらの再生線維の挿入および連続性があった。少数例で、元の天然の腱の結合部位の一部が、手術した肩において観察された。
【0293】
骨表面の以前の破骨細胞性吸収が、ほとんどの試料中で、元の結合部位の剥皮した領域において観察された。これは、破骨細胞がもはや存在していなかった骨の波打った表面(ハウシップ窩)、または表面が新規骨組織によって覆われていた、波打った好塩基球性反転線(reversal line)によって認識された。一般に、以前の再吸収の領域は、反応性の網状骨の層で覆われており、骨芽細胞が存在した。反応性の骨は、シャーペー線維挿入部を有することが多かった。再吸収の程度は、多様であった。これは、処置にかかわらず、全骨表面の約10〜50%にわたって見出され、一般に、新規網状骨によって覆われていた。反応性網状骨および/または線維軟骨の島が、修復性組織内に時折観察された。
【0294】
すべての試料において、軽度の異物炎症が治癒組織内に観察され、主に縫合物質付近に集中していた。少数例で、単核の炎症の小さいポケットが修復性組織内に観察され、おそらく血管新生または局所的に損傷した組織と関連していた。炎症は主に、多核巨細胞を伴う単核であった。好中球は、一般にまったく観察されなかった。処置にかかわらず、豊富な血管新生がすべての試料中の治癒組織において観察された。新規血管生成を示す血管芽細胞増殖もいくつかの試料において観察され、特定の処置と相関していなかった。この増殖は、まず間違いなく、治癒プロセスに関連した進行中の適応変化によるものであった。
【0295】
脂肪浸潤は、回旋腱板腱引裂の1つの結果であることが公知であり、腱退縮の程度と相関することが示されている(Nakagakiら、J. Clin Orth Rel Res(2008年)およびBjorkenheim J. M.ら、Acta Orthop Scand.60巻(4号):461〜3頁(1989年))。脂肪浸潤は、いくつかの試料中で、筋肉に隣接する末梢組織において観察された。これは、1つの試料(0.3mg/mlのrhPDGF−BB用量)中の修復性組織の中心においてのみ観察された。
【0296】
(ii)
第2のセットの実験(縫合、縫合+コラーゲンマトリックス+酢酸バッファー、縫合+コラーゲンマトリックス+rhPDGF−BB、または無傷の対照)では、棘下筋腱は、縫合のみの群について骨溝から28.1±2.8mm、縫合+コラーゲンマトリックス+酢酸バッファー群について、39.0±4.6mm、および縫合+コラーゲンマトリックス+rhPDGF−BB群について40.9±8.3mm退縮した。
【0297】
縫合は、治癒の12週間後に、すべての試料について骨トンネル内で無傷であった。これは、腱退縮に導く破損は、骨−縫合界面ではなく縫合−腱界面で起こったことを示す。処置内および処置同士間の治癒は多様であった。縫合のみの群についての治癒は、最も多様であり、群の最良の治癒から最悪の治癒までの範囲の試料を伴った。縫合+コラーゲンマトリックス+酢酸バッファー試料は、中程度/高度から中程度/低度の治癒までの格付けの範囲であり、縫合+コラーゲンマトリックス+rhPDGF−BBの試料は、中程度/低度から低度の治癒までの範囲であった。処置自体は、染色した組織スライドのいずれにおいても目に見えなかった。群の最良の治癒から最悪の治癒まで並べた、すべての試料についての治癒スコアを、表18に示す。
【0298】
【表18】

処置によって平均した病理組織学的スコアを表19および図19に示す。全体的に、処置にかかわらず、上腕骨と天然の腱端部の間の修復性組織は、線維性血管性組織(高度に血管新生した線維性組織)からなり、活性な線維増殖および分極性コラーゲン線維が存在した。線維芽細胞密度の差は、処置同士間でまったく観察されなかった。いくつかの試料は、一次コラーゲン線維のアライメント(コラーゲンのアライメントは、元の腱のアライメントと平行である)の領域を有し、他の試料は有していなかった;ほとんどの試料は、組織化された、および組織化されていないコラーゲン線維のアライメントの両方の領域を有していた。一般に、コラーゲンのアライメントは、退縮した腱端部付近より、骨の表面付近で良好であった。
【0299】
【表19】

一般に、挿入部での腱のコラーゲン性シャーペー線維、および線維軟骨の層を通じた骨コラーゲンとのこれらの線維の嵌合が観察されたが、非常に小さい領域においてであった;嵌合は通常、全骨結合表面の10%未満にわたって観察された。小さい領域のシャーペー線維挿入は、3つすべての縫合のみ(単独)の試料、縫合+コラーゲンマトリックス+酢酸バッファー試料のうちの2つ、およびすべての縫合+コラーゲンマトリックス+rhPDGF−BB試料において観察された。少数例で、元の天然の腱の結合部位の一部が、手術した肩において観察された。
【0300】
骨表面の破骨細胞性吸収が、ほとんどの試料中で、元の結合部位の剥皮した領域において観察された。これは、破骨細胞がもはや存在しないか、または表面が他の組織によって覆われていた、骨の波打った表面(ハウシップ窩)によって認識された。再吸収は、処置にかかわらず、全骨表面の約10〜20%にわたって起こった。3つのすべての縫合のみの試料、および1つの縫合+コラーゲンマトリックス+酢酸バッファー試料において、反応性網状骨および/または線維軟骨が、修復性組織内および骨の表面で観察された。
【0301】
すべての試料において、軽度の異物炎症が、主に縫合物質付近に集中して、治癒組織内に観察された。少数例で、単核の炎症の小さいポケットが修復性組織内に観察され、おそらく局所的に損傷した組織と関連していた。炎症は主に、多核巨細胞を伴う単核であった。一般に、好中球はまったく観察されなかった。豊富な血管新生が、処置にかかわらず、すべての試料中の治癒組織において観察された。新規血管生成を示す血管芽細胞増殖も、処置にかかわらずいくつかの試料において観察され、おそらく、治癒プロセスにおける進行中の適応変化を表した。
【0302】
結論
rhPDGF−BBを浸漬したコラーゲンマトリックスを用いた上腕骨(humural)棘下筋腱再結合の増強により、縫合−組織界面での破損は防止されなかった。治癒の12週間後に、すべての試料において、腱は、上腕骨から退縮し、修復性線維性血管性組織によって置換された。これは、退縮が、手術後の最初の数週間以内に起こったことを示す。
【0303】
試料は、様々な程度の新規骨形成、炎症、血管分布、および挿入部位での、腱を骨に挿入するシャーペー線維を示した。腱退縮、炎症細胞、血管新生、またはシャーペー線維の評価において、縫合のみ、縫合+コラーゲン、および縫合+コラーゲン+1.0mg/mlのrhPDGF−BB群の中で差はまったく確認されなかった。縫合+コラーゲンマトリックス+0.15mg/mlのrhPDGF−BB、および縫合+コラーゲンマトリックス+0.3mg/mlのrhPDGF−BB群の組織切片は、腱修復の増大、および腱コラーゲンの、線維軟骨界面での骨のコラーゲンとの嵌合を示した。図20Aおよび20B。
【0304】
別段の定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語の意味は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものである。記載した特定の方法、プロトコール、および試薬は変更することができるので、本発明はこれらに限定されないことが理解されるべきである。当業者は、本明細書に記載されたものと同様または等価な任意の方法および物質も、本発明を実践または試験するのに使用することができることも理解するであろう。
【0305】
本明細書に設けられた見出しは、全体として本明細書に参照により有され得る、本発明の様々な態様または実施形態の限定ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における、骨を伴わない腱傷害または靭帯傷害を治療するための方法であって、前記方法は、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む有効量の組成物を前記個体の傷害の患部に投与するステップを含み、前記生体適合性マトリックスは孔を有し、前記生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、前記PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出される、方法。
【請求項2】
前記生体適合性マトリックスが、少なくとも約85%の多孔度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体適合性マトリックスが、少なくとも約90%の多孔度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生体適合性マトリックスが、少なくとも約92%の多孔度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生体適合性マトリックスが、少なくとも約95%の多孔度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記孔が、約2500um〜約20,000umの範囲の平均面積を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記孔が、約200um〜約600umの範囲の平均周囲長を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記孔が、約1μm〜約1mmの範囲の直径を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記孔が、少なくとも約5μmの直径を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記孔が相互接続された孔である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記PDGFの少なくとも約60%が、約24時間以内に放出される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記PDGFの少なくとも約70%が、約24時間以内に放出される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記PDGFの少なくとも約80%が、約24時間以内に放出される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記生体適合性マトリックスが、インビボ投与の約21日以内に再吸収される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記生体適合性マトリックスが、インビボ投与の約18日以内に再吸収される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記生体適合性マトリックスが、インビボ投与の約15日以内に再吸収される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記生体適合性マトリックスがコラーゲンを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記コラーゲンが可溶性である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記コラーゲンが架橋されている、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記生体適合性マトリックスがグリコサミノグリカンをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記グリコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、ゲル、粒子、粉末、シート、パッド、ペースト、パッチ、またはスポンジである、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が流動性である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記生体適合性マトリックスがCOLLATAPE(登録商標)である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記PDGFが、PDGFを含む溶液として存在し、前記溶液中のPDGFの濃度が、約0.1mg/ml〜約2.0mg/mlである、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記溶液中のPDGFの濃度が、約0.1mg/ml〜約0.4mg/mlである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶液中のPDGFの濃度が、約0.9mg/ml〜約1.5mg/mlである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
細胞が、前記組成物に曝された後約4日以内に前記組成物に浸潤する、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記腱傷害を機械的に安定化させるステップをさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記腱または靭帯の傷害を安定化させるステップが、前記腱または靭帯の傷害を縫合するステップを含み、それによって縫合された前記腱または靭帯は、傷害された前記腱または傷害された前記靭帯の端部が実質的に再接近されるように配置される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記投与するステップが、前記個体の前記傷害の患部に前記有効量の前記組成物を、シリンジを使用して投与するステップを含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記腱が、膝蓋腱、前脛骨筋腱、アキレス腱、膝窩腱、半腱様筋腱、薄筋腱、外転筋腱、内転筋腱、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、小円筋腱、屈筋腱、大腿直筋腱、後脛骨筋腱、および大腿四頭筋腱からなる群より選択される、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記靭帯が、前十字靭帯(anterior cruciate ligament)、外側側副靭帯(lateral collateral ligament)、後十字靭帯(posterior cruciate ligament)、内側側副靭帯(medial collateral ligament)、頭側十字靭帯(cranial cruciate ligament)、尾方十字靭帯(caudal cruciate ligament)、輪状甲状靭帯、歯周靭帯、毛様体小帯、前仙腸靭帯、後仙腸靭帯、仙結節靭帯、仙棘靭帯、恥骨弓靭帯、上恥骨靭帯、提靭帯、掌側橈骨手根靭帯、背側橈骨手根靭帯、内側側副靭帯(ulnar collateral ligament)、および外側側副靭帯(radial collateral ligament)からなる群より選択される、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記腱または靭帯の傷害が、腱もしくは靭帯の断裂、切断、引裂、離層、歪み、または変形である、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
個体において腱を骨にまたは靭帯を骨に結合させるための方法であって、前記腱と前記骨の界面または前記靭帯と前記骨の界面で、生体適合性マトリックスおよび血小板由来成長因子(PDGF)を含む有効量の組成物を前記個体に投与するステップを含み、前記生体適合性マトリックスは孔を有し、前記生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、前記PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出される、方法。
【請求項36】
前記生体適合性マトリックスが、少なくとも約85%の多孔度を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記生体適合性マトリックスが、少なくとも約90%の多孔度を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記生体適合性マトリックスが、少なくとも約92%の多孔度を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記生体適合性マトリックスが、少なくとも約95%の多孔度を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記孔が、約2500um〜約20,000umの範囲の平均面積を有する、請求項35から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記孔が、約200um〜約600umの範囲の平均周囲長を有する、請求項35から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記孔が、約1μm〜約1mmの範囲の直径を有する、請求項35から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記孔が、少なくとも約5μmの直径を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記孔が相互接続された孔である、請求項35から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記PDGFの少なくとも約60%が、約24時間以内に放出される、請求項35から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記PDGFの少なくとも約70%が、約24時間以内に放出される、請求項35から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記PDGFの少なくとも約80%が、約24時間以内に放出される、請求項35から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記生体適合性マトリックスが、インビボ投与の約21日以内に再吸収される、請求項35から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記生体適合性マトリックスが、インビボ投与の約18日以内に再吸収される、請求項35から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記生体適合性マトリックスが、インビボ投与の約15日以内に再吸収される、請求項35から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記生体適合性マトリックスがコラーゲンを含む、請求項35から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記コラーゲンが可溶性である、請求項35から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記コラーゲンが架橋されている、請求項35から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記生体適合性マトリックスがグリコサミノグリカンをさらに含む、請求項35から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記グリコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記組成物が、ゲル、粒子、粉末、シート、パッド、ペースト、パッチ、またはスポンジである、請求項35から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記生体適合性マトリックスがCOLLATAPE(登録商標)である、請求項35から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記PDGFが、PDGFを含む溶液として存在し、前記溶液中のPDGFの濃度が、約0.1mg/ml〜約2.0mg/mlである、請求項35から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記溶液中のPDGFの濃度が、約0.1mg/ml〜約0.4mg/mlである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記溶液中のPDGFの濃度が、約0.9mg/ml〜約1.5mg/mlである、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
細胞が、前記組成物に曝された後約4日以内に前記組成物に浸潤する、請求項35から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記腱が、膝蓋腱、前脛骨筋腱、アキレス腱、膝窩腱、半腱様筋腱、薄筋腱、外転筋腱、内転筋腱、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、小円筋腱、屈筋腱、大腿直筋腱、後脛骨筋腱、および大腿四頭筋腱からなる群より選択される、請求項35から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記靭帯が、前十字靭帯(anterior cruciate ligament)、外側側副靭帯(lateral collateral ligament)、後十字靭帯(posterior cruciate ligament)、内側側副靭帯(medial collateral ligament)、頭側十字靭帯(cranial cruciate ligament)、尾方十字靭帯(caudal cruciate ligament)、輪状甲状靭帯、歯周靭帯、毛様体小帯、前仙腸靭帯、後仙腸靭帯、仙結節靭帯、仙棘靭帯、恥骨弓靭帯、上恥骨靭帯、提靭帯、掌側橈骨手根靭帯、背側橈骨手根靭帯、内側側副靭帯(ulnar collateral ligament)、および外側側副靭帯(radial collateral ligament)からなる群より選択される、請求項35から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記結合が、回旋腱板傷害治療のためである、請求項35から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記結合が、前十字靭帯再建のためである、請求項35から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
個体における、骨を伴わない腱または靭帯の傷害を治療するためのキットであって、生体適合性マトリックスを含む第1の容器、および血小板由来成長因子(PDGF)溶液を含む第2の容器を投与するステップを含み、前記生体適合性マトリックスは孔を有し、前記生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、前記PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出される、キット。
【請求項67】
個体において腱または靭帯を骨に結合させるためのキットであって、生体適合性マトリックスを含む第1の容器、および血小板由来成長因子(PDGF)溶液を含む第2の容器を投与するステップを含み、前記生体適合性マトリックスは孔を有し、前記生体適合性マトリックスは、少なくとも約80%の多孔度を有し、前記PDGFの少なくとも約50%が約24時間以内に放出される、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【公表番号】特表2012−502066(P2012−502066A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526309(P2011−526309)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/056418
【国際公開番号】WO2010/030714
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(507124966)バイオミメティック セラピューティクス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】