腸内共生細菌由来細胞外ベシクル、並びにこれを用いた疾病モデル、ワクチン、候補薬物探索方法及び診断方法
【課題】腸内共生細菌由来細胞外ベシクル、並びにこれを用いた疾病モデル、ワクチン、候補薬物探索方法及び診断方法を提供する。
【解決手段】本発明は、腸内共生細菌(gut microbiota or gut flora)に由来する細胞外ベシクルを含む組成物、及びこれを用いた疾病動物モデルに関する。また、本発明は、前記腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いて、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防又は治療することが可能な候補薬物を効率よく探索する方法、及び腸内共生細菌による感染又は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防及び治療することが可能なワクチンに関する。これに加えて、本発明の腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを応用して、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病の原因因子を診断する技術の開発などが可能である。
【解決手段】本発明は、腸内共生細菌(gut microbiota or gut flora)に由来する細胞外ベシクルを含む組成物、及びこれを用いた疾病動物モデルに関する。また、本発明は、前記腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いて、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防又は治療することが可能な候補薬物を効率よく探索する方法、及び腸内共生細菌による感染又は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防及び治療することが可能なワクチンに関する。これに加えて、本発明の腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを応用して、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病の原因因子を診断する技術の開発などが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内共生細菌(gut microbiota or gut flora)に由来する細胞外ベシクルを含む組成物、並びにこれを用いた疾病動物モデル、腸内共生細菌由来ベシクルによる疾病に対する予防及び/又は治療ワクチンなどに関する。
【背景技術】
【0002】
腸内共生細菌は、ヒトを含む動物の消化管(digestive tract)に生息している微生物からなっており、約100兆個の腸内共生細菌がヒトの消化管に生息しているが、その数はヒト細胞の約10倍に該当する。
【0003】
1960年代に、電子顕微鏡を介してグラム陰性細菌が細胞外ベシクル[EV(extracellular vesicles)又はOMV(outer membrane vesicles)]を分泌するという事実が明らかになった。細胞外ベシクルは、球状をし、リン脂質二重層からなっており、20〜200nmの大きさを有する。グラム陰性細菌由来細胞外ベシクルは、LPSだけでなく、様々な外膜タンパク質(outer membrane protein)を持っている(非特許文献1)。重症敗血症で亡くなった患者の血液に髄膜炎球菌由来ベシクルが存在するという報告(非特許文献2)、及び髄膜炎球菌由来細胞外ベシクルが体外で炎症性媒介体を分泌するという報告(非特許文献3及び非特許文献4)があったが、腸内共生細菌に由来する細胞外ベシクルが、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、大腸癌などの粘膜の炎症を特徴とする局所疾患、又は敗血症、動脈硬化症、糖尿病などの全身炎症疾患を引き起こすという研究結果は全くない。
【0004】
最近、老人人口の増加、及び免疫抑制剤や抗癌剤などの使用増加などにより細菌感染に対する防御が弱化して敗血症の有病率が全世界的に増加しつつある。敗血症は、細菌、カビなどの局所感染による合併症によって全身的な炎症反応が誘導される疾患である(非特許文献5)。感染の際に局所的に病原菌から分泌される物質が血管に流入し、或いは血管に流入した病原菌から分泌される物質が血管内炎症細胞を活性化させて全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome)が発生し、これと同時に血管内皮細胞を活性化させて播種性血管内血液凝固(disseminated intravascular coagulation)、血栓(thrombosis)などが発生し、病原菌由来物質が肺などの重要臓器に分布して炎症及びこれによる組織損傷を引き起こし、発病者の30%以上が死に至る(非特許文献6)。
【0005】
全身性炎症反応症候群が病原菌により発生した場合を敗血症と定義するが、半分以上の敗血症患者から血液内病原菌を検出することができない(非特許文献7)。これは敗血症の誘発には細菌が直接血液内に流入することが必須事項ではないことを意味し、細菌などに由来する物質が血液内に流入して敗血症が発生することがある。例えば、グラム陰性細菌に由来する内毒素(endodotoxin)としてのリポ多糖体(lipopolysaccharide、LPS)が血液内に流入して敗血症が発生し、これを基にして敗血症治療剤を開発しようとする研究が広く行われた(非特許文献8)。ところが、LPSを標的とする治療剤の開発は未だ成功した場合がない(非特許文献9)。
【0006】
人体に発生する疾病の診断、予防及び治療技術を開発するためには、人体の疾病を模写する適切な動物モデルを構築することが重要である。敗血症動物モデルを作るために、現在まで次の三つの方法が使用された(非特許文献10)。第一、LPSを実験動物の腹腔内に注射して敗血症モデルを作ることができる。第二、細菌を腹腔内に注射して敗血症モデルを作ることができる。第三、盲腸を結紮/穿刺(cecal ligation and puncture、CLP)して敗血症モデルを作ることができる。ところが、このような敗血症動物モデルは、再現性、実験者間の誤差、又はヒトに発生する敗血症の表現型を上手く示すことができないという欠点がある。よって、敗血症に対する診断、予防及び治療技術を開発するためには、実験者間の誤差が少なく、再現性が高く、ヒトに発生する敗血症の表現型を上手く反映する動物モデルの開発が必要である。
【0007】
炎症性媒介体(特に、IL−6)が血液内に増加することは敗血症の典型的な指標である。細菌によって分泌される炎症性媒介体を測定して細菌性感染に対する治療候補物質の効果を評価した例が知られている(特許文献1の「Functions and uses of human protein phosphatase 1 inhibitor-2」)。ところが、体外で腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを細胞に投与して炎症性媒介体の分泌を調節する候補薬物探索方法、及び共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた敗血症動物モデルの体内に候補薬物を投与して炎症性媒介体の分泌を調節する候補薬物探索方法は知られていない。
【0008】
数十年前より、細菌から分泌される外毒素(exotoxin)タンパク質を応用したワクチンが開発されて使用されている。グラム陽性細菌に対するワクチンは、細胞壁成分(莢膜多糖類(capsular polysaccharide))に対するワクチンが開発されたが、T細胞に関係なく抗体が形成されるという欠点があった。また、これを改善するために、細胞壁成分にタンパク質を接合(conjugation)した形態のワクチンが開発されたが、このような形態のワクチンも特定の細菌の亜型にのみ特異的に作用するという限界があった。グラム陰性細菌に対するワクチンは現在まで臨床で使用した事例がなく、最近、グラム陰性細菌である髄膜炎球菌に対するワクチンとして、細菌に洗剤(detergent)を処理して得た人工ベシクルを用いてワクチンを開発した事例がある(非特許文献11)。特許文献2の「Outer membrane vesicles from Gram negative bacteria and use as a vaccine」は、髄膜炎球菌からベシクルを抽出してワクチンとして使用することを特徴としている。特許文献3の「Method of antigen incorporation into neisseria bacterial outer membrane vesicles and resulting vaccine formulations」は、髄膜炎球菌ベシクルにタンパク質抗原を挿入する方法に関するものであって、前記の方法によってベシクルの免疫刺激特性を維持し、免疫反応の向上をもたらすことにより、髄膜炎球菌感染に対する予防及び治療のためのワクチンとして適用できることを特徴とする。また、髄膜炎球菌ワクチンの製造及び使用に関連して、ワクチンの生産に適した髄膜炎球菌菌株を作る過程に関する特許も出願された(特許文献4及び特許文献5)。また、サルモネラ菌由来ベシクルが宿主の先天免疫及び後天免疫反応を向上させてワクチンとしての効能を検証した研究がある(非特許文献12)。ところが、腸内共生細菌由来の細胞外ベシクルにより発生する疾病及び腸内共生細菌による感染を予防又は治療するために腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いたワクチンは、未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開第2009/030093号パンフレット
【特許文献2】米国特許第7384645号明細書
【特許文献3】米国公開特許第2007/0166333号明細書
【特許文献4】国際特許公開第2007/144316号パンフレット
【特許文献5】国際特許公開第2004/014417号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】E. Y. Lee et al., Proteomics in gram-negative bacterial outer membrane vesicles. Mass. Spectrom. Rev. 2008;27(6):535-555
【非特許文献2】E. Namork and P. Brandtzaeg, Fatal meningococcal septicaemia with "blebbing" meningococcus. Lancet. 2002;360(9347):1741
【非特許文献3】M. R. Mirlashari et al., Outer membrane vesicles from Neisseria meningitidis: effects on cytokine production in human whole blood. Cytokine. 2001;13(2):91-97
【非特許文献4】A. Bjerre et al., Complement activation induced by purified Neisseria meningitidis lipopolysaccharide (LPS), outer membrane vesicles, whole bacteria, and an LPS-free mutant. J. Infect. Dis. 2002;185(2):220-228
【非特許文献5】M. M. Levi et al., 2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definitions Conference. Crit. Care. Med. 2003;31(4):1250-1256
【非特許文献6】E. Lolis and R. Bucala, Therapeutic approaches to innate immunity: severe sepsis and septic shock. Nat. Rev. Drug. Discov.2003;2(8):635-645
【非特許文献7】R. S. Munford, Severe sepsis and septic shock: the role of gram-negative bacteremia. Annu. Rev. Pathol. 2006;1:467-496
【非特許文献8】S. M. Opal, The host response to endotoxin, antilipopolysaccharide strategies, and the management of severe sepsis. Int. J. Med. Microbiol. 2007;297(5):365-377
【非特許文献9】J. Hellman, Bacterial peptidoglycan-associated lipoprotein is released into the bloodstream in gram-negative sepsis and causes inflammation and death in mice. J. Biol. Chem.2002;19;277(16):14274-14280
【非特許文献10】J. A. Buras et al., Animal models of sepsis: setting the stage. Nat. Rev. Drug. Discov.2005;4(10):854-865
【非特許文献11】M. P. Girard et al., A review of vaccine research and development: meningococcal disease. Vaccine. 2006;24(22):4692-4700
【非特許文献12】R. C. Alaniz et al., Membrane vesicles are immunogenic facsimiles of Salmonella typhimurium that potently activate dendritic cells, prime B and T cell responses, and stimulate protective immunity in vivo. J Immunol. 2007;179(11):7692-701
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含む組成物及びこれを用いた疾病動物モデルを提供しようとする。
また、本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防又は治療することが可能な候補薬物を効率よく探索する方法を提供しようとする。
また、本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾患を予防又は治療することが可能なワクチンを提供しようとする。
また、本発明は、腸内共生細菌による感染を予防又は治療することが可能なワクチンを提供しようとする。
また、本発明は、前記ワクチンを用いて腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾患及び/又は腸内共生細菌による感染を予防又は治療する方法を提供しようとする。
また、本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾患の原因因子を診断する方法を提供しようとする。
本発明が解決しようとする技術的課題は上述した課題に制限されず、上述していない別の課題は以降の記載から当業者に明らかに理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含む組成物を提供する。
前記本発明の一具現例によれば、前記腸内共生細菌は、腸内に共生するグラム陰性細菌でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例によれば、前記腸内共生グラム陰性細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、シュードモナス属(Pseudomonas)細菌、バクテロイデス属(Bacteroides)細菌でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、腸内共生細菌培養液から分離したものでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されるもの、及び人工的に分泌されるものを含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、哺乳動物の大便、腸内、胃液、小腸液又は口腔液などから分離したものでありうるが、これに限定されるものではない。
【0013】
本発明の他の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを動物に投与して製造された疾病モデルを提供する。
前記本発明の腸内共生細菌及び細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記動物は、マウスでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の投与は腹腔投与、静脈投与、口腔投与、肛門投与、鼻腔投与、気道投与などを含む。
前記本発明の疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、及び脳疾患などを含む。
前記本発明の他の具現例によれば、前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌、及び膵臓癌などを含む。
【0014】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病予防又は治療に対する候補薬物の探索方法を提供する。
前記本発明の腸内共生細菌、細胞外ベシクル及び疾病は前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記探索方法は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを細胞に処理する段階を含むことができる。前記細胞は炎症細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、幹細胞などを含む。また、前記炎症細胞は単核球、好中球、好酸球、好塩球、単核球が組織から分化した細胞などを含み、前記幹細胞は骨髄組織又は脂肪組織に由来する細胞でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例によれば、前記探索方法は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルと共に候補物質を投与した後、炎症関連媒介体の水準を測定する段階を含むことができる。前記炎症関連媒介体はインターロイキン(Interleukin,IL)−6を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記探索方法は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルと共に候補物質を投与した後、炎症関連シグナル伝達過程を評価する段階を含むことができる。
【0015】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を予防又は治療するために、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含むワクチンを提供する。前記本発明の腸内共生細菌、細胞外ベシクル、疾病などは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細菌に化合物を処理することなどを含み、前記化合物は薬物を含む。
前記本発明の他の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用することができ、前記変形は細胞外ベシクルに化合物を処理することを含み、前記化合物は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記ワクチンは、効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で、薬物を併用投与して使用し或いは免疫補強剤を併用投与して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌による感染を予防又は治療するために腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含むワクチンを提供する。
前記本発明の一具現例によれば、前記腸内共生細菌による感染は腹膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染、骨関節及び中枢神経系感染などでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の腸内共生細菌は前述と同じである。
前記本発明の別の具現例によれば、前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細菌に化合物を処理することなどを含み、前記化合物は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用することができ、前記変形は細胞外ベシクルに化合物を処理することを含み、前記化合物は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記ワクチンは、効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で、薬物を併用投与して使用し或いは免疫補強剤を併用投与して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを致死量未満で哺乳動物に投与する段階を含む、疾病に対する予防又は治療方法を提供する。
前記本発明の腸内共生細菌及び細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、脳疾患などでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌、膵臓癌でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、腹膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染、骨関節及び中枢神経系感染でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記投与は皮下注射、静脈注射、鼻腔投与、舌下投与、気道吸入、経口服用、肛門投与、皮膚投与、粘膜投与などを含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細菌に化合物を処理すること、細胞外ベシクルに化合物を処理することなどを含み、前記化合物は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記投与は、効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で、薬物を併用投与し或いは免疫補強剤を併用投与することができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた探索方法によって選別された物質を含む、疾病予防又は治療のための薬学的組成物を提供する。
前記本発明の一具現例によれば、前記物質はキナーゼ阻害剤(kinase inhibitor)でありうる。前記キナーゼ阻害剤は、ダムナカンタール(Damnacanthal;3-hydroxy-1-methoxy-9,10-dioxoanthracene-2-carbaldehyde)、H−7(5-(2-methylpiperazin-1-yl)sulfonylisoquinoline dihydrochloride)、LY294002(2-morpholin-4-yl-8-phenylchromen-4-one)、GF109203X(3-[1-[3-(dimethylamino)propyl]indol-3-yl]-4-(1H-indol-3-yl)pyrrole-2, 5-dione)、 ML−7(1-(5-iodonaphthalen-1-yl)sulfonyl-1,4-diazepane hydrochloride)、ML−9(1-(5-chloronaphthalen-1-yl)sulfonyl-1,4-diazepane hydrochloride)、ZM449829(1-(2-Naphthalenyl)-2-propen-1-one)、DRB((2S,3S,4R,5R)-2-(5,6-dichlorobenzimidazol-1-yl)-5-(hydroxymethyl)oxolane-3,4-diol)、インジルビン−3’−モノオキシム(Indirubin-3’-monoxime;3-[3-(hydroxyamino)-1H-indol-2-yl]indol-2-one)、ケンパウロン(Kenpaullone;9-bromo-7,12-dihydro-5H-indolo[3,2-d][1]benzazepin-6-one)、BML−259(N-(5-Isopropylthiazol-2-yl)phenylacetamide)、及びアピゲニン(Apigenin;5,7-dihydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)chromen-4-one)などを含む。
前記本発明の他の具現例によれば、前記物質はホスファターゼ阻害剤(phosphatase inhibitor)でありうる。前記ホスファターゼ阻害剤はPD−144795(5-methoxy-3-(1-methylethoxy)benzo(b)thiophene-2-carboxamide-1-oxide)を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記物質はプロドラッグ(prodrug)でありうる。前記プロドラッグはアミトリプチリン(Amitriptyline)、シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、デシプラミン(Desipramine)、ドキセピン(Doxepin)、二塩化フルフェナジン(Fluphenazine dichloride)、ハロペリドール(Haloperidol)、イミプラミン(Imipramine)、マプロチリン(Maprotiline)、オルフェナドリン(Orphenadrine)、テルフェナジン(Terfenadine)、トルフェナム酸(Tolfenamic acid)、塩酸トラゾドン(Trazodone HCl)、トリクロルメチアジド(Trichlormethiazide)、ベラパミル(Verapamil)などを含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、脳疾患でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌、膵臓癌でありうるが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを応用して疾病の原因因子を診断する方法を提供する。
前記本発明の腸内共生細菌は前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病は、敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、脳疾患でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌、膵臓癌でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記応用は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに含まれた遺伝物質の塩基配列を分析することであり、前記遺伝物質は16S rRNAでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記応用は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに含まれたタンパク質を測定し、或いは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに対する免疫反応を測定することでありうるが、これに限定されるものではない。前記免疫反応測定は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに対する抗体を測定することでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記診断は、血液、大便、小便、脳脊髄液、関節液、胸水又は腹水などに由来する試料を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、腸内に共生する大腸菌に由来する細胞外ベシクルが、粘膜の炎症を特徴とする局所疾患だけでなく、血液に吸収されて全身的な炎症反応を特徴とする敗血症などの全身疾患を誘発するという発見により、腸内共生細菌由来細胞ベシクルを用いた疾病モデル、疾病を予防或いは治療する候補薬物探索技術、及び細胞外ベシクルを応用した疾病予防或いは治療用ワクチン技術などを提供する。
【0021】
本発明は、腸内共生細菌に由来する細胞外ベシクルを分離してこれを細胞に投与したときに炎症性媒介体が分泌され、局所的に投与したときに粘膜に炎症が発生し、腹腔に投与したときに細胞外ベシクルが血管に流入し、全身的な炎症反応を特徴とする敗血症と共に血液凝固、肺気腫、高血圧、骨粗しょう症などの疾病が発生するという事実を用いて、疾病動物モデル及び候補薬物を効率よく選別する探索方法を提供することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた探索方法で、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防或いは治療することが可能な薬物を効率よく発掘することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体或いはこれを変形して投与して免疫反応を調節することにより、腸内共生細菌による感染或いは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防或いは治療するワクチンの開発に応用可能である。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを応用して、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病の原因因子を診断する技術の開発が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】マウス大便由来細胞外ベシクルのタンパク質の質量分析を介して体内共生細菌を同定した結果である。
【図2】正常マウスの小腸液から抽出した細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡写真である。
【図3】正常マウスの小腸から抽出した細胞外ベシクル(siEV)をRAW264.7マクロファージ株に濃度依存的に6時間処理した後、細胞培養液における炎症性媒介体IL−6の発現をELISA法で定量したものである。
【図4】DSSによって誘導された炎症性腸炎マウスの小腸から抽出した細胞外ベシクル(DSS_siEV)をRAW264.7マクロファージ株に濃度依存的に6時間処理した後、細胞培養液における炎症性媒介体IL−6の発現をELISA法で定量したものである。
【図5】正常マウスとDSSによって誘導された炎症性腸炎マウスの小腸から抽出した細胞外ベシクル(それぞれsiEV、DSS_siEV)をRAW264.7マイクロファージ株に処理するときにLPSの拮抗体としてのポリミキシンB(polymyxin B、PMB)を細胞外ベシクルに6時間処理した後、細胞培養液における炎症性媒介体IL−6の発現をELISA法で定量したものである。
【図6】抽出したマウス腸内大腸菌の16s rRNA塩基配列を示すものである。
【図7】それぞれ抽出したマウス腸内大腸菌を走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で観察したイメージである。
【図8】それぞれ抽出したマウス腸内大腸菌を透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で観察したイメージである。
【図9】腸内大腸菌に由来する細胞外ベシクルの模様と大きさを透過電子顕微鏡で分析したイメージである。
【図10】腸内大腸菌由来細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡写真10枚に基づいて細胞外ベシクルのサイズ別の分布を示すものである。
【図11】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)と腸内大腸菌から抽出したLPSを多様な濃度で処理してRAW264.7マクロファージに培養し、サイトカイン(TNF−α)の量をELISA法で測定した結果である。
【図12】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)と腸内大腸菌から抽出したLPSを多様な濃度で処理してRAW264.7マクロファージに培養し、サイトカイン(IL−6)の量をELISA法で測定した結果である。
【図13】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)をマウス鼻腔にそれぞれ1、10、100ng投与して気管支肺胞洗浄液内の炎症細胞の細胞数(BAL cells)を測定した結果である。
【図14】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)をマウス鼻腔にそれぞれ1、10、100ng投与して気管支肺胞洗浄液内IL−6の量を測定した結果である。
【図15】C57BL/6(雄、6週)マウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)15、25、50μgをそれぞれ1回腹腔注射した後、12時間ごとにマウスの生存率を示すものである。
【図16】大腸菌由来細胞外ベシクル5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後に採取したマウスの血液の血清から炎症性媒介体としてのTNF−α、IL−6、IL−1β、IL−12、IFN−γ、IL−10、IL−17及びVEGFの濃度をELISA法で測定した結果である。
【図17】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射した後、24時間ごとに呼吸数を測定した結果である。
【図18】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射した後、8時間ごとに3日間体温を測定した結果である。
【図19】大腸菌由来細胞外ベシクル5μgを12時間ずつ3回注射してから8、12、24時間後に白血球数を分析した結果である。
【図20】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射して12時間後に白血球の総数と種類ごとの数を分析した結果である。
【図21】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射した後、24時間ごとに血圧を測定した結果である。
【図22】大腸菌由来細胞外ベシクル5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後にD−dimerの量を測定した結果である。
【図23】大腸菌由来細胞外ベシクル5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後に血小板の数を測定した結果である。
【図24】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)それぞれ0.1、1、5、10、20ng/mLを血管内皮細胞に処理してICAM−1の発現増加を確認した結果である。
【図25】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)1ng/mLを血管内皮細胞に処理して血液凝固因子としての組織因子(tissue factor)の分泌を測定した結果である。
【図26】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)10μgをシアニン−7(cyanin-7、cy7)で染色した後、マウスの腹腔に注射して6時間後、コダックイメージステーション(Kodak image station)で得たマウス全身の蛍光写真である。
【図27】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)それぞれ10μg、20μgをDiOで染色した後、マウスの腹腔に注射してから6時間後に抽出した血液と肺からRBC(red blood cell)溶解バッファ(lysis buffer)を用いて赤血球を除去した後、フローサイトメーター(FACS)を介して、細胞外ベシクルを含む血液細胞と肺組織細胞の比率を分析した結果である。
【図28】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後の、血液の血管から肺組織への透過力(wet-to-dry ratio)程度を示すものである。
【図29】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後に気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数を示す図である。
【図30】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後に肺を摘出し、4%ホルムアルデヒド(formaldehyde)に入れて固定(fixing)させた後、切片を作ってヘマトキシリン−エオシン(hematoxylin-eosin)で染色して光学顕微鏡で観察したイメージである。
【図31】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)それぞれ0.1、1μgを週2回18週間注射した後、血圧を測定したグラフである。
【図32】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)1μgを週2回18週間注射した後、X線技術を介して観察した長骨のイメージである。
【図33】正常マウス(C57BL/6、雄、6週)とIL−6欠乏マウス(C57BL/6、雄、6週)に大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)25μgを腹腔注射し、12時間ごとにマウスの生存率を示すものである。
【図34】正常マウス(C57BL/6、雄、6週)とIL−6欠乏マウス(C57BL/6、雄、6週)に大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後に肺を4%ホルムアルデヒド(formaldehyde)に入れて固定(fixing)させた後、切片を作ってヘマトキシリン−エオシン(hematoxylin-eosin)で染色して光学顕微鏡で観察したイメージである。
【図35】腸内共生細菌由来細胞外ベシクル(EV)を用いて薬物候補物質を発掘する方法に対する模式図である。
【図36】大腸菌由来細胞外ベシクル(100ng/mL)とキナーゼ阻害剤を同時にマウスマクロファージに処理し、培養液に存在するIL−6の量を細胞外ベシクルのみ単独で処理した陽性対照群の測定値に基づいて百分率で示すグラフである。
【図37】キナーゼ阻害剤を単独で処理した場合と2つ以上の組み合わせで処理した場合の大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)によって誘導されるマウスマクロファージIL−6の分泌量を陽性対照群に対する百分率で示すグラフである。
【図38】大腸菌由来細胞外ベシクル(100ng/mL)とホスファターゼ阻害剤(10μM、1;カンタリジン酸(Cantharidic acid)、2;カンタリジン(Cantharidin)、3;エンドサル(Endothall)、4;ベンジルホスホン酸(Benzylphosphonic acid)、5;シュウ酸L−p−プロモテトラミゾール(L-p-Bromotetramisole oxalate)、6;RK−682、7;RWJ−60475、8;RWJ−60475(AM)3、9;塩酸レバミゾール(Levamisole HCl)、10;塩酸テトラミゾール(Tetramisole HCl)、11;シペルメトリン(Cypermethrin)、12;デルタメトリン(Deltamethrin)、13;フェンバレラート(Fenvalerate)、14;チルホスチン8(Tyrphostin 8)、15;CinnGEL、16;CinnGEL 2 Me、17;BN−82002、19;NSC−663284、20;シクロスポリンA(Cyclosporin A)、21;ペンタミジン(Pentamidine)、22;BVT−948、24;BML−268、26;BML−260、27;PD−144795、28;BML−267、29;BML−267 Ester、30;OBA、31;OBA Ester、33;アレンドロネート(Alendronate))を同時にマウスマクロファージに処理し、培養液に存在するIL−6の量を細胞外ベシクルのみ単独で処理した陽性対照群の測定値を基準として百分率で示すグラフである。
【図39】PD−144795を0.1、1、5、10μM濃度で含み、大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を含む培養液をマウスマクロファージに処理してIL−6の分泌を示すグラフである。
【図40】大腸菌由来細胞外ベシクル(100ng/mL)とプロドラッグを同時にマウスマクロファージに処理し、培養液に存在するIL−6の量を細胞外ベシクルのみ単独で処理した陽性対照群の測定値を基準として百分率で示すグラフである。
【図41】プロドラッグを10μM濃度で含み、大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)が含まれた培養液をマウス腹腔由来マクロファージに処理してIL−6の分泌を示すグラフである。
【図42】マウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを腹腔投与して全身性免疫反応を起こしたマウスに、プロドラッグとしてのハロペリドール(haloperidol)とドキセピン(doxepin)をそれぞれ10mg/kgで腹腔投与し、血清内IL−6の分泌を測定した結果である。
【図43】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)1μgを1週間隔で3回腹腔投与する過程でマウス血液内のベシクル特異抗体の量を測定したグラフである。
【図44】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)ワクチンを投与したマウス脾臓細胞に体外で大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIFN−γの量を示すグラフである。
【図45】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)ワクチンを投与したマウス脾臓細胞に体外で大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIL−17の量を示すグラフである。
【図46】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)ワクチンを投与したマウス脾臓細胞に体外で大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIL−4の量を示すグラフである。
【図47】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症に起因するマウスの致死率を示す結果である。
【図48】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチン(EC_EV)の効能を示すグラフである。
【図49】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症モデルにおける大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)の接種有無による血液及び腹腔の大腸菌数(CFU)を示すグラフである。
【図50】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症モデルにおいて大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)の接種有無によって、大腸菌を感染させて6時間後に血清内のIL−6の量を測定した結果である。
【図51】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症モデルにおいて大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)の接種有無によって、大腸菌を感染させて6時間後にマウスから肺を抽出して肺組織を観察したイメージである。
【図52】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を接種したマウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg)を3回腹腔投与してから6時間後にマウス血清におけるIL−6を測定した結果である。
【図53】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を接種したマウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg)を3回腹腔投与してから6時間後に、敗血症に関連した全身性炎症反応の指標としての体温を測定した結果である。
【図54】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を接種したマウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg)を3回腹腔投与してから6時間後に播種性血管内血液凝固の指標としての血液内血小板の減少を観察した結果である。
【図55】様々な濃度の肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(KP_EV)を腹腔に接種したマウスにおける血液内の肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異抗体の量を測定したグラフである。
【図56】様々な濃度の肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(KP_EV)を腹腔に接種したマウスの脾臓から採取したT細胞に肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを体外で処理した後、CD3+CD4+IFN−γ+T細胞の数を示す結果である。
【図57】様々な濃度の肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(KP_EV)を腹腔に接種したマウスの脾臓から採取したT細胞に肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを体外で処理した後、CD3+CD4+IL−17+T細胞を示す結果である。
【図58】肺炎桿菌(KP)の腹腔投与による敗血症に起因するマウス致死率を示す結果である。
【図59】肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(KP_EV)1μgを3回腹腔に接種したマウスにおける肺炎桿菌(KP)感染による敗血症の発生に対する肺炎桿菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察したグラフである。
【図60】大腸菌と肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(それぞれEC_EV、KP_EV)ワクチンを併合腹腔接種したとき、大腸菌由来細胞外ベシクル特異抗体の形成を血液から測定したグラフである。
【図61】大腸菌と肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(それぞれEC_EV、KP_EV)ワクチンを併合腹腔接種したとき、肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異抗体の形成を血液から測定したグラフである。
【図62】C57BL/6マウスの大便から分離した細胞外ベシクルの遺伝物質塩基配列をシークエンシングした結果である。
【図63】BALB/cマウスの大便から分離した細胞外ベシクルの遺伝物質塩基配列をシークエンシングした結果である。
【図64】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)をバクテリア−ユニバーサルプライマー(bacteria-universal primer)によってRT−PCRし、16S rRNAの遺伝子又はそれに由来するRNAトランスクリプト(transcript)があることを示す結果である。
【図65】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)25μgをマウスの腹腔に注射したグループと、PBSを注射したグループから各種臓器及び体液を採取し、大腸菌由来細胞外ベシクルのタンパク質存在有無を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル、並びにこれを用いた疾病モデル、ワクチン、候補薬物探索方法及び診断方法などを提供する。
【0024】
本発明において、「腸内(gut)」とは、哺乳動物消化管(digestive tracts)の内部及び上皮細胞層の表面を含む意味であり、例えば、ヒトを始めとした哺乳動物の消化管、例えば口腔、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門、胆道、胆嚢、膵臓管などの内部及び上皮細胞層の表面でありうるが、これに限定されるものではない。
【0025】
本発明において、「腸内共生細菌(gut microbiota or gut flora)」とは、哺乳動物の消化管の内部又は表面に生息する細菌を意味し、正常状態では疾病を起こさないが、防御能力に劣っている状態又は消化管を逸脱したときに疾病を起こす特徴があり、当業者における公知の腸内共生細菌がこれに含まれ得るが、これに限定されない。
【0026】
本発明において、「腸内共生細菌由来細胞外ベシクル」とは、哺乳動物の腸内共生細菌が腸内で分泌し或いは体内に吸収されて分泌するベシクルを含み、大きさが元来の細胞より小さいことを特徴とするが、これに限定されない。
【0027】
腸内共生細菌は、一般に疾病を起こす病原性細菌として注目を浴びていない。細菌による腸内感染は、主に病原性細菌に汚染した飲食物などを摂取して発生する急性感染性疾患に関心を置いた。最近、胃炎、消化性潰瘍、胃癌などの発生において、胃に共生するヘリコバクター菌が注目を浴びている。また、炎症性腸炎又は大腸癌の発生に関連して、大腸に共生する細菌が注目を浴びている。ところが、未だ前記の胃腸管疾患を引き起こす原因物質として、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルの重要性についてはよく知られていない。
本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが粘膜に炎症を誘導し、特に癌の病因に重要な好中球性炎症を特徴とするTh17免疫反応を誘導するという事実を初めて解明して、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを局所的に投与して前記の局所疾患に対する疾病モデルを開発した。
【0028】
全身的な炎症反応を特徴とする敗血症の病因に関連して、細菌に由来する物質が血管に吸収されて敗血症を引き起こすと知られているが、原因物質の実体については知られていない。本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に流入したとき、血中における炎症性媒介体の分泌による全身的な炎症反応を特徴とする敗血症、血管内血液凝固、肺気腫などの疾病が発生することを初めて解明した。これは敗血症の発生だけでなく、血管内血液凝固による血栓形成を特徴とする急性冠状動脈症候群、脳卒中などの血管疾患、肺気腫、急性呼吸不全症候群などの肺疾患の発生に腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが重要な原因因子であることを意味し、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを全身的に投与して前記の全身疾患に対する疾病モデルを開発した。
【0029】
腸内細菌感染後に関節炎が発生するということはよく知られている事実である。肥満や糖尿などの代謝疾患と腸内細菌との関連性が最近注目を浴びている。本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを低用量で長期間全身的に投与して高血圧や骨粗しょう症などの疾病が発生することを初めて解明した。これは原因因子が不明な慢性疾患の原因物質として腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが重要であり、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いて前記疾病モデルを開発することができる。
【0030】
疾病を予防又は治療する薬物を開発するために、正確な原因物質を把握することは非常に重要である。例えば、原因物質を体外で細胞に投与する過程で候補薬物を処理して効能を検証することができ、前述した動物モデルに候補薬物を投与して効能を検証することができる。本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療する薬物を開発するために、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた候補薬物を選別する探索方法を確立し、これにより薬物を発掘した。すなわち、前記の探索方法によって、80種のキナーゼ阻害剤のうち炎症性媒介体の分泌を抑制する11種の候補薬物、30種のホスファターゼ阻害剤のうち1種の候補薬物、100種のプロドラッグのうち14種の候補薬物を発掘し、前述した疾病動物モデルにおける効能を検証した。これは、本発明で開発した候補薬物探索方法で、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を予防又は治療するための薬物を非常に効果的に発掘することができることを意味する。
【0031】
疾病の原因因子を正確に把握することは、疾病を予防又は治療することが可能なワクチンの開発に必須的である。ウイルス性感染疾患の場合、原因ウイルスを弱毒化した形態で体内に投与することによりウイルスに対する免疫反応を誘導して予防ワクチンを開発して使用しており、現在、ウイルスにより発生する疾患を予防ワクチンで効率よく予防することができるようになった。本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを体内に投与してベシクルに対する免疫反応を誘導することにより、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防することができることを解明した。これは敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、脳疾患などの全身性疾患、及び口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌、膵臓癌などの局所疾患などのように疾病の発生に腸内共生細菌由来細胞外ベシクルと関連性のある疾病に対するワクチンとして、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体を使用し、或いは効能を増加させ或いは副作用を減少させるためにベシクルを変形投与し或いは薬物を併用投与することにより、効率よく前記疾病を予防又は治療することができることを意味する。
【0032】
細菌から分泌される外毒素による疾病を予防するために、外毒素タンパク質を用いた予防ワクチンは、数十年前に開発されて使用されている。ところが、未だ細菌自体に対する効果的なワクチンは開発されていない。細菌自体に対する予防ワクチンの例として、グラム陽性細菌の場合、細胞壁成分を用いたワクチンが開発されたが、T細胞に非依存的に抗体が生成され、細菌の亜型にのみ特異的に作用する抗体のみが生成されて効能に限界がある。T細胞に依存的な抗体の生成のために細胞壁成分にタンパク質を接合した形態のワクチンが開発されたが、このワクチンは価格が高く、細菌の亜型にのみ作用するという欠点がある。細菌由来ベシクルをワクチンとして用いる場合、ベシクルに細菌由来の様々な種類のタンパク質を含有しており、細菌の亜型に特異的な免疫反応を誘導する既存の細菌ワクチンの欠点を克服することができ、細菌に対する抗体形成だけでなく、T細胞反応を誘導する免疫補強剤が共にあって、効率よく免疫反応を誘導することができるという利点がある。本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを投与して細菌タンパク質に対する抗体形成だけでなく、細菌に対する防御に重要なT細胞免疫反応としてのTh1及びTh17免疫反応を効率よく誘導することにより、腸内共生細菌による感染を効率よく予防することができることを解明した。これは腸内共生細菌による腹膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染、骨関節及び中枢神経系感染などに対するワクチンとして、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体を使用し、或いは効能を増加させるか副作用を減少させるためにベシクルを変形投与し或いは薬物を併用投与することにより、効率よく前記感染を予防又は治療することができることを意味する。
【0033】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、脳疾患などの全身疾患、及び胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌などの局所疾患などの原因物質であるという事実は、原因物質が不明な前記疾患の原因を正確に診断することに非常に重要である。本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルの遺伝物質に対する塩基配列を分析し、タンパク質を同定し、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに対する特異抗体が形成されることを解明することにより、前記疾病の原因因子を正確に診断する方法を開発した。
【0034】
本発明では、マウスの大便から細胞外ベシクルを分離してプロテオーム分析を行った。その結果、総295個のタンパク質を同定した。これらの中でも、73個のタンパク質はマウス宿主細胞、77個のタンパク質はグラム陰性細菌、145個のタンパク質はグラム陽性細菌に由来するタンパク質であった。大便から分離した細胞外ベシクルのタンパク質分析によって細胞外ベシクルを分泌する細菌を同定したが、グラム陰性細菌としてバクテロイデス菌(Bacteroides thetaiotaomicron)、大腸菌(Esherichia coli)、肺炎桿菌 (Klebsiella pneumoniae)などがあり、グラム陽性細菌としてはビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、 エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faeacalis)、ユーバクテリウム・レクタレ (Eubacterim rectale)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、プロピオバクテリウム・アクネス(Propiobacterium acnes)、ストレプトコッカス・アガラクチア (Streptococcus agalactiae)などが同定された。
【0035】
炎症性腸炎は、大腸の慢性炎症を特徴とする疾患であって、最近、Th17免疫反応による炎症が注目を浴びている。特に、炎症性腸炎は、大腸癌の危険因子であって、動物実験においてTh17免疫反応によって大腸癌が発生すると知られている。デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sodium sulfate、DSS)を経口投与して炎症性腸炎動物モデルを作る方法が普遍的な方法として知られているが、本発明では、1%DSSを6日間経口投与した後、7日目に小腸液から細胞外ベシクルを分離した。分離した細胞外ベシクルを体外でマウスマクロファージ(RAW 264.7)に処理したとき、正常マウスの小腸液から分離したベシクルはインターロイキン(Interleukin,IL)−6の分泌を誘導しなかったが、疾病状態のマウスの小腸液から分離したベシクルはIL−6の分泌を誘導した。IL−6がTh17免疫反応を誘導する重要な媒介体であることを勘案すると、疾病状態の小腸液から分離した細胞外ベシクルがTh17免疫反応を誘導することができることが分かる。また、疾病状態の小腸液から分離した細胞外ベシクルに、グラム陰性細菌の細胞外膜成分としてのLPSを拮抗するポリミキシンB(polymyxin B)と共に投与したとき、IL−6が分泌されなかったが、これは炎症性腸炎の誘発に腸内共生細菌中のグラム陰性細菌に由来する細胞外ベシクルが重要であることを意味する。
【0036】
マウスの盲腸を結紮/穿刺する手術(cecal ligation and puncture, CLP)によって敗血症動物モデルを作る方法が普遍的である。本発明では、CLPの後、腹腔洗浄を経て、敗血症に関連した腸内共生細菌を腹腔から分離したが、16S rRNA塩基配列によって、分離された細菌が大腸菌と同定され、電子顕微鏡の写真から、大腸菌の表面にサイズ20〜40nmの球状の細胞外ベシクルを分泌することを確認した。
【0037】
本発明では、別途の物理化学的な刺激なしで腸内共生細菌培養液から生理的に分泌される細胞外ベシクルを分離した。例えば、大腸菌を培地で長時間培養した後、上澄液を取って細胞外ベシクルより大きい物質をフィルターを介して濾過させた後、濃縮した溶液を超遠心分離して細胞外ベシクルを分離した。大腸菌由来細胞外ベシクルは、炎症反応を誘導することが可能なLPSと外膜タンパク質(outer membrane protein)を含んでいる。大腸菌培養液に自然的に分泌した細胞外ベシクルは質量対比75%のLPS、大腸菌外膜及び外膜タンパク質からなっていた。
【0038】
自然的に分泌される細胞外ベシクルの分離以外にも、様々な機械的、電気的、化学的な方法で腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを分離することができる。浸透圧を用いた細胞溶解、エレクトロポレーション(electroporation)、超音波分解(sonication)、均質化(homogenization)、洗剤(detergent)処理、冷凍−解凍(freeze-thaw)、押し出し(extrusion)、機械的な分解などの方法で人工的に細胞外ベシクルを製造した後、分離することもできる。以下、本発明では、別途の表記がない細胞外ベシクルは培養細菌が自然的に分泌する細胞外ベシクルをいう。
【0039】
前述の方法で分離した大腸菌由来細胞外ベシクルが炎症性媒介体の分泌を誘導することができるかを評価するために、マウスマクロファージ(RAW 264.7)に細胞外ベシクルを処理した。その結果、細胞外ベシクルの濃度に比例してマクロファージからTNF−αとIL−6などの炎症性媒介体の分泌が増加した。
【0040】
大腸には数多くの共生細菌が生息しており、特定の細菌による病因を評価するために、腸内細菌のない無菌マウス(germ free mouse)を使用する。大腸に比べて気道には共生細菌がなくて、特定の細菌による病因の評価に最適な環境を持っている。本発明では、大腸菌由来細胞外ベシクルが粘膜に局所的に作用して炎症を誘導するかを評価するために、大腸菌由来細胞外ベシクルを気道投与した。その結果、細胞外ベシクルの濃度に比例して気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BAL fluid)内に炎症細胞の数が増加した。また、Th17免疫反応及び癌の発生に関連したIL−6の分泌がベシクルの濃度に比例して増加した。これは、腸内共生グラム陰性細菌由来細胞外ベシクルが粘膜に局所的に作用し、Th17免疫反応を特徴とする炎症を誘導することができることを意味する。
【0041】
大腸菌由来細胞外ベシクルが全身的に吸収されたとき、全身炎症反応が誘導されるかを評価するために、細胞外ベシクルを腹腔内に投与した。その結果、細胞外ベシクルの濃度に比例してマウスの死亡率が増加した。
【0042】
敗血症は、局所的な細菌感染と共に全身的な炎症反応(systemic inflammatory response syndrome、SIRS)を特徴とするが、SIRSは、頻呼吸、低体温又は高体温、心拍数の増加、白血球の減少又は増加の指標から構成されており、これらの指標の2つ以上を充足させると敗血症と定義する。本発明において、大腸菌由来の細胞外ベシクルを致死量未満の用量でマウスの腹腔内に注入したとき、血中に炎症性媒介体としてのTNF−α、IL−6、IL−12、IL−17などが増加し、頻呼吸、低体温、白血球の減少が誘導された。これは大腸菌由来細胞外ベシクルが血管に吸収されて炎症性媒介体を分泌し、これにより敗血症を誘導することが分かる。
【0043】
敗血症が臨床的に重要な理由は死亡率が非常に高いことにあるが、敗血症の経過において重症敗血症(severe sepsis)に発展すると、死亡する可能性が非常に高くなる。本発明では、細胞外ベシクルを腹腔内に注入したとき、重症敗血症の指標である低血圧が誘導された。これは敗血症の経過において重症への移行にも細菌由来細胞外ベシクルが重要な役目をすることを意味する。
【0044】
血管内で血液が凝固(coagulation)すると、血管が詰まり、急死(sudden death)の主原因となる。特に、脳血管と冠状動脈が血液凝固による血栓(thrombosis)で詰まる場合、それぞれ脳卒中(stroke)と急性冠状動脈症候群(acute coronary syndrome)で死亡する場合が頻繁にある。
【0045】
本発明では、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に流入したときに血液凝固を誘導するかを評価するために、大腸菌由来細胞外ベシクルを腹腔に投与した。その結果、細胞外ベシクルを投与した群では血液内に播種性血管内血液凝固(disseminated intravascular coagulation、DIC)の指標としての血小板が減少し、D−dimer量が増加した。これは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に流入して血液凝固を起こし、脳血管と冠状動脈に血液凝固が発生すると、それぞれ脳卒中、急性冠状動脈症候群を起こすおそれがあることを意味する。
【0046】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管内皮細胞に作用してこれを活性化させ、血液凝固を起こすかを評価するために、血管内皮細胞(HUVEC)に腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを処理した。その結果、炎症反応及び冠状動脈疾患を含む各種疾病状況で増加するとよく知られているICAM−1の量が増加し、血液凝固因子としての組織因子(tissue factor)の分泌が増加することが分かった。これは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによって血管内皮細胞が活性化され、血液凝固が発生して血栓(thrombosis)又は塞栓(embolism)により血管が詰まる虚血性血管疾患を誘導することを意味する。
【0047】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に流入したときの別の問題は、前記細胞外ベシクルが様々な臓器に分布する可能性があるということである。実際に、大腸菌由来細胞外ベシクルを腹腔に注入したとき、細胞外ベシクルが全身的に分布することが分かった。特に、肺組織に浸潤することを確認した。肺組織に浸潤した細胞外ベシクルが肺炎症を誘導するかを評価した。その結果、肺炎症の指標であるwet−dry ratioが、細胞外ベシクルを投与した場合に有意に増加し、気管支肺胞洗浄液内の炎症細胞の数も増加した。また、炎症による組織損傷の有無を評価したが、細胞外ベシクルを投与した場合、肺胞の破壊を特徴とする肺気腫が発生した。これは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に吸収されると、肺だけでなく、脳、骨関節、腎臓などの各種臓器に分布して炎症と組織損傷を誘導し、多様な疾病を誘導することができることを意味する。
【0048】
腸内共生細菌は持続的に細胞外ベシクルを分泌し、これは血管に流入して様々な問題を引き起こすおそれがある。本発明では、大腸菌由来細胞外ベシクルを低用量で長期間投与したとき、体内で起こる変化を観察した。その結果、細胞外ベシクルによって高血圧が発生し、骨粗しょう症も発生した。これは、腸内共生細菌由来細胞ベシクルが、現在まで原因因子が不明な慢性炎症疾患の発生に重要な原因因子であることを意味する。
【0049】
IL−6は多様な作用によって炎症疾患及び癌の発生に関与する。IL−6はSTAT3を介してのシグナル伝達によって、癌の発生に関連した細胞増殖(cell proliferation)、血管新生(angiogenesis)、浸潤(invasion)、免疫回避(immune evasion)に関連した遺伝子の発現を誘導し、癌の発生に重要なTh17免疫反応を介しての好中球性炎症によって癌の発生を誘導すると知られている。また、血中IL−6の濃度は動脈硬化症及び肺気腫を含む慢性閉鎖性肺疾患患者において死亡に関連した予後と密接した関連性を持っている。特に、血中で炎症細胞から分泌されるIL−6は、血管内皮細胞に作用して血液凝固関連因子の発現を増加させて血液凝固に関与すると知られている。本発明では、大腸菌由来細胞外ベシクルによる敗血症動物モデルにおいて疾病の病因に対するIL−6の役目を評価するために、大腸菌由来細胞外ベシクルを正常及びIL−6欠乏マウスの腹腔に注入した。その結果、80%以上の正常マウスにおいて大腸菌由来細胞外ベシクルによって死亡したが、IL−6欠乏マウスではベシクル投与によって全て生存した。また、大腸菌由来細胞外ベシクルの腹腔投与による肺気腫の発生も、正常マウスではベシクルによって発生したが、IL−6欠乏マウスでは観察されなかった。これは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによって体内で分泌されるIL−6が細胞外ベシクルによる疾病の病因に非常に重要なバイオマーカーであることを意味する。
【0050】
前記の研究結果に基づいて、本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を予防又は治療するための候補薬物を選別するための探索方法を開発しようとした。このために、原因因子として大腸菌由来細胞外ベシクルを使用し、効能によって、マウスマクロファージ(RAW 264.7)から分泌されるIL−6を評価した。マクロファージに細胞外ベシクルと共に80種のキナーゼ阻害剤[キナーゼ阻害剤ライブラリー、BIOMOL No.2832:PD−98059、U−0126、SB−203580、H−7、H−9、AG−494、AG−825、ラベンダスチンA(Lavendustin A)、RG−14620、チルホスチン23(Tyrphostin 23)、チルホスチン25(Tyrphostin 25)、チルホスチン46(Tyrphostin 46)、チルホスチン47(Tyrphostin 47)、チルホスチン51(Tyrphostin 51)、チルホスチン1(Tyrphostin 1)、チルホスチン9(Tyrphostin 9)、チルホスチンAG1288(Tyrphostin AG 1288)、チルホスチンAG1478(Tyrphostin AG 1478)、チルホスチンAG1295(Tyrphostin AG 1295)、HNMPA、ダムナカンタール(Damnacanthal)、ピセタノール(Piceatannol)、AG−490、AG−126、AG−370、AG−879、LY294002、ウォルトマンニン(Wortmannin)、GF109203X、ヒペリシン(Hypericin)、スフィンゴシン(Sphingosine)、H−89、H−8、HA−1004、HA−1077、HDBA、KN−62、KN−93、ML−7、ML−9、2−アミノプリン(2-Aminopurine)、N9−イソプロピル−オロモウシン(N9-Isopropyl-olomoucine)、オロモウシン(Olomoucine)、イソ−オロモウシン(iso-olomoucine)、ロスコビチン(Roscovitine)、LFM−A13、SB−202190、ZM336372、SU4312、AG−1296、ロットレリン(Rottlerin)、ゲニステイン(Genistein)、ダイアゼイン(Daiazein)、エルブスタチンアナログ(Erbstatin analog)、クエルセチン二水和物(Quercetin dihydrate)、SU1498、ZM449829、DRB(5,6-Dichloro-1-b-D-ribofuranosylbenzimidazole)、HBDDE (2,2',3,3',4,4'-Hexahydroxy-1,1'-biphenyl-6,6'-dimethanol dimethyl ether)、インジルビン(Indirubin)、インジルビン−3’−モノオキシム(Indirubin-3'-monoxime)、Y−27632、ケンパウロン(Kenpaullone)、テレイン酸(Terreic acid)、BML−257、BML−259、アピゲニン(Apigenin)、BML−265(Erlotinib analog)、ラパマイシン(Rapamycin)]、30種のホスファターゼ阻害剤[ホスファターゼ阻害剤ライブラリー、BIOMOL No.2834:カンタリジン酸(Cantharidic acid)、カンダリジン(Cantharidin)、エンドサル(Endothall)、ベンジルホスホン酸(Benzylphosphonic acid)、シュウ酸L−p−ブロモテトラミゾール(L-p-Bromotetramisole oxalate)、RK−682、RWJ−60475、RWJ−60475(AM)3、塩酸レバミゾール(Levamisole HCl)、塩酸テトラミゾール(Tetramisole HCl)、シペルメトリン(Cypermethrin)、デルタメトリン(Deltamethrin)、フェンバレラート(Fenvalerate)、チルホスチン8(Tyrphostin 8)、CinnGEL、CinnGEL 2 Me、BN−82002、シコニン(Shikonin)、NSC−663284、シクロスポリンA(Cyclosporin A)、ペンタミジン(Pentamidine)、BVT−948、B4−ロダニン(B4-Rhodanine)、BML−268、ジオキソフェナントレン(Dioxophenanthrene)、BML−260、PD−144795、BML−267、BML−267 Ester、OBA、OBA Ester、ゴシポール(Gossypol)、アレンドロネート(Alendronate)]、100種のプロドラッグ[プロドラッグ:アセトアミノフェン(acetaminophen)、アセチルシステイン(acetylcysteine)、アロプリノール(allopurinol)、塩酸アルプレノロール(alprenolol HCl)、塩酸アミトリプチリン(amitriptyline HCl)、アトロピン(atropine)、ブレチリウムトシレート(bretylium tosylate)、ブロモフェニラミン(bromopheniramine)、ブデソニド(budesonide)、塩酸ブスピロン(buspirone HCl)、セフロキシム(cefuroxime)、 抱水クロラール(chloral hydrate)、塩酸クロルプロマジン(chlorpromazine HCl)、シメチジン(cimetidine)、塩酸クロミプラミン(clomipramine HCl)、 クロトリマゾール(clotrimazole)、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、塩酸デシプラミン(desipramine HCl)、ジクロフェナク(diclofenac)、ジフルニサル(diflunisal)、ジルチアゼム(diltiazem)、塩酸ジフェンヒドラミン(diphenhydramine HCl)、ジソピラミン(disopyramine)、ジスルフィラム(disulfiram)、D−マンニトール(D-mannitol)、ドキセピン(doxepin)、ドキシサイクリン水和物(doxycycline hydrate)、コハク酸ドキシラミン(doxylamine succinate)、塩化エドロホニウム(edrophonium chloride)、マレイン酸エナラプリル(enalapril maleate)、ファモチジン(famotidine)、フェンブフェン(fenbufen)、フェノフィブラート(fenofibrate)、フェノプロフェンカルシウム塩水和物(fenoprofen calcium salt hydrate)、フルナリジン二塩酸塩(flunarizine dihydrochloride)、フルフェナジン二塩化物(fluphenazine dichloride)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、フロセミド(furosemide)、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)、グリクラジド(gliclazide)、グリピジド(glipizide)、ハロペリドール(haloperidol)、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethiazide)、塩酸ヒドロキシジン(hydroxyzine HCl)、イブプロフェン(ibuprofen)、塩酸イミプラミン(imipramine HCl)、インダパミド(indapamide)、インドール−2カルボン酸(indole-2-carboxylic acid)、 インドメタジン(indomethacin)、イプラトロピウム(ipratropium)、ケトプロフェン(ketoprofen)、ケトロラックトリス塩(ketorolac tris salt)、塩酸マプロチリン(maprotiline HCl)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、メラトニン(melatonin)、メトホルミン(metformin)、塩酸メタピリレン(methapyrilene HCl)、メチマゾール(methimazole)、メトカルバモール(methocarbamol)、塩酸メトクロプラミド(metoclopramide HCl)、メトロニダゾール(metronidazole)、ナブメトン(nabumetone)、ナプロキセン(naproxen)、臭化ネオスチグミン(neostigmine Br)、ナイアシン(niacin)、塩酸ニカルジピン(nicardipine HCl)、ニフェジピン(nifedipine)、ニトロフラントイン (nitrofurantoin)、ニザチジン(nizatidine)、ノルエチンドロン(norethindrone)、ノルトリプチリン(nortriptyline)、塩酸オルフェナドリン(orphenadrine HCl)、オキシプチニン(oxybutynin)、塩酸フェンフォルミン(phenformin HCl)、フェニルブダゾン(phenylbutazone)、フェニトイン(phenytoin)、ピロキシカム(piroxicam)、プレドニゾン(prednisone)、プロベネシド(probenecid)、塩酸プロプラノロール(propranolol HCl)、臭化ピリドスチグミン(pyridostigmine Br)、塩酸ラニチジン(ranitidine HCl)、スピロノラクトン(spironolactone)、スルファメト(sulfameth)、スルピリド( sulpiride)、テノキシカム(tenoxicam)、テルフェナジン(terfenadine)、テオフィリン(theophylline)、塩酸チクロピジン(ticlopidine HCl)、トラザミド(tolazamide)、トラゾリン(tolazoline)、トルブタミド(tolbutamide)、トルフェナム酸(tolfenamic acid)、塩酸トラマドール(tramadol HCl)、トラニルシプロミン(tranylcypromine)、塩酸トラゾドン(trazodone HCl)、トリアムテレン(triamterene)、トリクロルメチアジド(trichlormethiazide)、塩酸トリペレナミン(tripelennamine HCl)、ベラパミル(verapamil)、ワルファリン(warfarin)]を投与した。キナーゼ阻害剤中の11種の候補物質、ホスファターゼ阻害剤中の1種の候補物質、プロドラッグ中の14種の候補物質が細胞外ベシクルによるIL−6の分泌を抑制した。
【0051】
体内におけるIL−6の分泌に対する前記候補薬物の効能を評価した。その結果、腸内大腸菌由来細胞外ベシクルをマウスに5μg腹腔注射して全身性免疫反応を誘導したマウスモデルで前記候補薬物を共に腹腔注射したとき、細胞外ベシクルによって増加する血清内IL−6の量を減少させることを確認した。これは本発明の方法で炎症性疾患治療剤の候補薬物を効率よく選別することができることを示す。
【0052】
細菌感染に対する防御メカニズムとして、T細胞免疫反応とB細胞で生成される抗体反応が重要である。細菌に対する抗体はLPSなどの非タンパク質成分に対する抗体とタンパク質成分に対する抗体に大別され、前者の場合は生成にT細胞の影響を受けないが、後者の場合は生成にT細胞の影響を受ける。T細胞免疫反応はサイトカインの分泌様相によってガンマインターフェロン(IFN−γ)を分泌するTh1、IL−17を分泌するTh17、IL−4/IL−5/IL−13などを分泌するTh2細胞に分類することができ、これらの中でも、細菌に対する防御に重要なものはTh1及びTh17免疫反応であると知られている。細菌に由来する細胞外ベシクルは、細菌が持っている様々なタンパク質だけでなく、免疫反応を亢進させる免疫補強剤を含んでおり、細菌に対するワクチンとして有用でありうる。本発明では、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを投与したとき、細菌に対する免疫反応を誘導することができるかを評価した。このために、大腸菌(EC)及び肺炎桿菌(KP)由来細胞外ベシクルを腹腔に1週間隔で3回注射して免疫反応を評価した。その結果、細胞外ベシクルを投与した場合、それぞれの細菌特異タンパク質に対する抗体が投与回数によって増加し、それぞれの細菌に存在するタンパク質によってT細胞でガンマインターフェロンとIL−17の分泌能が有意に増加した。これは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを投与すると、ベシクルを分泌する細菌タンパク質に対する抗体形成だけでなく、タンパク質特異Th1及びTh17免疫反応を誘導して効率よく細菌感染及び細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療することができることを意味する。
【0053】
実際、ベシクルワクチンを予め投与して免疫反応を誘導することにより、細菌感染及び細胞外ベシクルによる疾病発生に対する予防効果があるかを評価した。このために、腸内共生細菌としての大腸菌と肺炎桿菌を腹腔に注射して敗血症動物モデルを確立した後、前記細菌を腹腔に注入する前に、それぞれ大腸菌と肺炎桿菌由来細胞外ベシクルで免疫反応を誘導した。ベシクルワクチンで免疫反応を誘導した後、大腸菌と肺炎桿菌をそれぞれ腹腔に投与して敗血症による死亡率の発生に対するワクチンの効能を評価した。その結果、それぞれ大腸菌と肺炎桿菌由来ベシクルワクチンを投与した場合、大腸菌と肺炎桿菌の感染による敗血症による死亡率が効率よく抑制された。また、大腸菌由来ベシクルワクチンを投与した場合、大腸菌由来細胞外ベシクルが血管に流入し、血中で分泌されるIL−6の量が著しく減少した。これは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルをワクチンとして免疫反応を誘導する場合、腸内共生細菌感染だけでなく、細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0054】
本発明によって、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによって各種疾病の発生が可能であることを前述した。これは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが、原因因子が不明な疾病の発生に重要な原因因子であることを意味する。疾病の原因因子を診断する方法を提供するために、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに遺伝物質が存在するかを確認した結果、16S rRNAが存在することを確認したとともに、マウス大便由来細胞外ベシクルの場合、大便に生息する代表的な細菌10種のうち大腸菌(Escherichia Coli)と肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の遺伝物質が存在することを確認した。その上、マウスの腹腔に腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを注入した結果、マウスの各種臓器、小便及び血液から細胞外ベシクルタンパク質の存在を確認した。これは採取が容易な小便、大便及び血液などから遺伝物質及び細胞外ベシクルタンパク質の存在有無を確認し、疾病の原因因子を効率よく診断することが可能な方法を提供する。
【0055】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。ところが、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるもので、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0056】
実施例1:正常マウスの大便から分離した細胞外ベシクルのプロテオーム分析
マウス大便由来細胞外ベシクルを分離するために、5週齢の雄C57BL/6マウスから得た大便25gを生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)2Lに入れ、4℃で16時間懸濁(resuspension)した。この懸濁液を4℃で10,000×gで20分間遠心分離した後、上澄液を取って孔径0.45mmのフィルターに通過させた。このようにバクテリアが除去された通過液は、分子量100kDa以下のタンパク質を除去することが可能な膜(membrane)を装着したQuixStand Benchtop Systemを用いて70mLに約30倍濃縮した。濃縮液を再び4℃、10,000×gで20分間遠心分離して上澄液を得た。この上澄液を、0.5mLの2.5Mスクロース溶液(2.5Mスクロース(sucrose)/20mM HEPES/150mM NaCl、pH7.4)と1mLの0.8Mスクロース溶液(0.8Mスクロース(sucrose)/20mM HEPES/150mM NaCl、pH7.4)が入っている超遠心分離チューブ(ultracentrifuge tube)に仕込み、4℃、100,000×gで4時間超遠心分離した後、2.5Mスクロース溶液と0.8Mスクロース溶液との間に位置した細胞外ベシクル含有層を取った。これをPBSで10倍希釈した後、0.15mLの2.5Mスクロース溶液と0.35mLの0.8Mスクロース溶液が入っている超遠心分離チューブに仕込み、4℃、200,000×gで2時間超遠心分離した。2.5Mスクロース溶液と0.8Mスクロース溶液との間に位置した細胞外ベシクル含有層をPBSで10倍希釈した後、4℃、150,000×gで3時間超遠心分離して沈殿させた。沈殿物を2.2mLの50%Optiprep溶液に懸濁し、超遠心分離チューブに入れた後、その上に2mLの40%Optiprep溶液と0.8mLの10%Optiprep溶液を順次入れた。その後、4℃、200,000×gで2時間超遠心分離し、40%Optiprep溶液と10%Optiprep溶液との間に位置した層から細胞外ベシクルを得た。
【0057】
マウス大便由来細胞外ベシクルのプロテオーム分析のために、イン−ソリューション(in-solution)トリプシンタンパク質分解方法を用いた。マウス大便から前記実施例の方法で分離した細胞外ベシクル50mgを分解溶液(7M尿素(urea)、2Mチオ尿素(Thiourea)、100mM NH4HCO3)で溶かした後、10mM DTTを用いて60℃で45分間還元(reduction)させた。その後、サンプルを常温で冷やした後、55mMヨードアセトアミド(iodoacetamide)を入れ、光を遮断した状態で常温にて30分間タンパク質をアルキル化(alkylation)させた。その後、10μgのトリプシンを処理し、超音波分解(sonication)でトリプシンの活性を高めた後、37℃で12時間反応させた。分解されたペプチドは、OFFGEL fractionators system(Agilent)を用いて分離した。まず、24cmのIPG strip(pH3〜10)をIPG加水化(IPG-rehydration)バッファで加水反応させた。分解されたペプチドを2.8mLのオフゲル(off-gel)バッファに溶かし、その150μLを1レーン(lane)にロードした後、50mA 8000V電圧で40時間電気泳動してペプチドをそれぞれの等電点(pI)によって分離した。分離の後に得たサンプルをPepClean C18 spin columnを用いて脱塩(desalting)した。
【0058】
ナノイオン化質量分析(Nano−LC−ESI−MS/MS)を用いて質量分析を行った。イン−ソリューション分解方法で用意したマウス大便由来細胞外ベシクルの分解ペプチドを、サイズ5mmのC18レジン(resin)が充填されたカラム(75mm×12cm)にロードし、次の方法で分離した:3〜40%バッファB70分、血流速度0.3mL/min(バッファAの組成:0.1%ギ酸(formic acid)in H2O、バッファBの組成:0.1%ギ酸(formic acid)inアセトニトリル(acetonitrile))。分離されたペプチドはLTQ−ion−trap質量分析器(Thermo Finnigan)を用いて分析した。イオン化電気スプレイ(electrospray)の電圧は1.9kVとし、35%の規格化衝突エネルギー(normalized collision energy)条件で質量分析(MS/MS)を行った。全てのスペクトルはデータ依存的スキャン(data-dependent scan)で獲得した。LTQの媒介変数(parameter)はフルマススキャン(full MS scan)で5個の最多スペクトル(most abundant spectrum)を断片化(fragmentation)し、動的排除(dynamic exclusion)の繰り返し回数(repeat count)は1回、反復時間(repeat duration)は30秒、動的排除時間(dynamic exclusion duration)は180秒、排除質量幅(exclusion mass width)は1.5Da、動的排除のリストサイズ(list size)は50に設定した。
【0059】
マウスの腸細胞に由来する細胞外ベシクルに存在するタンパク質の分析のために、既存にアミノ酸塩基配列が構築されたマウスのデータベース(Uniprot)を用いると同時に、腸内バクテリアに由来する細胞外ベシクルに存在するタンパク質の分析のために、腸内に多数存在する属(genus)を代表する10種(species)のバクテリアデータベース(Uniprot)を用いた。それぞれのデータベースを用いて合計11回のデータ分析を行った。MASCOTタンパク質分析エンジンversion2.2(http://www.matrixscience.com)を用いて、質量分析から出た全てのスペクトル(MSスペクトル及びMS/MSスペクトル)を分析した。分析に対する検証はペプチドプロフェット/タンパク質プロフェット(peptide prophet/protein prophet)95%/99%以上と信頼度が高いタンパク質を選別した。それぞれのタンパク質で同定されたペプチドが1つのスペクトルは、直接アミノ酸配列を分析(manual validation)して信頼度を高めた。
図1は前述の方法による、マウスの大便に存在する細胞外ベシクルのプロテオーム分析結果であって、合計295個のタンパク質のうち222個がバクテリア由来タンパク質であった。これらのうち、グラム陰性細菌由来タンパク質が77個、グラム陽性バクテリア由来タンパク質が145個同定された。グラム陰性細菌の場合は主にバクテロイデス・シータイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)、大腸菌K−12(Escherichia coli K-12)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)由来タンパク質であり、グラム陽性細菌の場合は主にウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)由来タンパク質であった。
【0060】
実施例2:正常及び疾病状態のマウス小腸液からの細胞外ベシクルによる炎症性媒介体の分泌
正常及びDSSによって誘導された炎症性腸炎マウスの小腸液から細胞外ベシクルを分離するために、マウスを解剖して小腸を摘出した。摘出された小腸からパイエル板(P eyer's patch)と脂質(lipid)を除去した後、小腸を約5cmの長さに切り取り、横に切開して生理食塩水で洗浄して小腸内の不純物を除去した。不純物の除去された小腸は1cm角に切り取り、30mLの生理食塩水に入れてvortexで5秒間5回ボルテックス(vortexing)した。小腸組織及び不純物は遠心分離して除去し、上澄液から超遠心分離によって細胞外ベシクルを分離した。
【0061】
図2は前述の方法で分離された細胞外ベシクルを透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)によって大略の大きさと形状を示す結果であって、約100nmサイズの球状の細胞外ベシクルを確認することができた。
【0062】
図3及び図4は正常及びDSSにより誘導された炎症性腸炎マウスの小腸液から分離した細胞外ベシクルによって炎症性媒介体としてのIL−6の分泌能を評価するために、マウスマクロファージ(RAW 264.7)に様々な濃度の細胞外ベシクルを処理した結果である。その結果、正常マウスから分離された細胞外ベシクルはIL−6を誘導しなかったが、DSSにより誘導された炎症性腸炎マウスの小腸から分離された細胞外ベシクルは濃度依存的にIL−6の発現を誘導することをELISA(enzyme linked immunosorbent assay)法によって確認した。
【0063】
図5はDSSにより誘導された炎症性腸炎マウスから分離された細胞外ベシクルにグラム陰性細菌由来細胞外ベシクルが含まれているかを評価した結果である。その結果、DSSにより誘導された炎症性腸炎マウスから分離された細胞外ベシクルにグラム陰性細菌の細胞外膜の構成成分であるLPSを拮抗するポリミキシンB(polymyxin B)と共に処理したとき、疾病状態の小腸液に存在する細胞外ベシクルによるIL−6の分泌が抑制された。
【0064】
以上の結果は、炎症性腸疾患の発生に、腸に存在するグラム陰性細菌由来細胞外ベシクルが重要に作用することを意味する。
【0065】
実施例3:CLP敗血症動物モデルの腹腔液から分離した腸内共生細菌としての大腸菌に由来する細胞外ベシクルの特性分析
C57BL/6(雄、6週)マウス1匹の盲腸の端部に18ゲージ(gauge)注射針を2回刺してCLP(ceacal ligation puncture)手術を行った。40時間の後、PBS3mLを5mLの注射器を用いてマウスの腹腔に注射し、よく攪拌した後、さらに腹腔から1mLを回収し、その10μLをLB(Luria Bertani)溶液90μLと混ぜた後、10,000倍希釈してLB寒天プレート(Agar plate)に塗抹して37℃のインキュベータ(incubator)で8時間培養した。多数のコロニー(colonoy)の中から1つを選んで、5mLのLB溶液が入っている試験管に仕込み、37℃のインキュベータで8時間培養し、しかる後に、その10μLをLB溶液90μLと混ぜた後、10,000倍希釈してLB寒天プレートに塗抹して37℃のインキュベータで8時間培養した。前述のコロニーピッキング(picking)過程をもう1回同様に行い、一つのコロニーを得て腸内大腸菌を抽出した。
【0066】
図6は抽出した腸内大腸菌の16S rRNAを分析した結果であって、大腸菌C4(E.coli C4)と同定された。これはヒトの大便から観察される共生細菌である。
【0067】
図7及び図8はそれぞれ抽出したマウス腸内大腸菌を走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)と透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で観察した結果であって、その表面外に30nmサイズの細胞外ベシクルを分泌することが分かる。
【0068】
腸内大腸菌を3mLのLB溶液が入っている試験管に37℃で4時間培養した後、その中で10μLずつを、500mLのLB溶液が入っている2Lの三角フラスコ8個に移して37℃で4時間培養した。培養液を12個の容量350mLの高速遠心分離チューブに分け入れた後、4℃、5000×gで15分間連続的に2回行った。4L程度の上澄液を孔径0.45μmのメンブレインフィルター(membrane filter)を1回通過させた後、100kDa以下の分子のみを通過させることが可能なQuixstand systemを用いて300mLの量まで濃縮した。濃縮液を孔径0.22μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、容量50mLの超遠心分離チューブ(ultracentrifuge tube)に分け入れた後、4℃、150,000×gで3時間超遠心分離(ultracentrifugation)を行った。上澄液は捨て、チューブの底部に存在する沈殿物をPBSで溶かして腸内大腸菌由来細胞外ベシクルを抽出した。
【0069】
図9は腸内大腸菌の細胞外ベシクルの模様と大きさを透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で分析した結果である。細胞外ベシクルが脂質二重層からなっており、20〜100nmのサイズを有し、略球状をしていることが分かる。
【0070】
図10は細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡写真10枚に基づいて細胞外ベシクルのサイズ別の分布を示す。サイズ20〜40nmの細胞外ベシクルが全体の半分を占めることが分かる。
【0071】
実施例4:大腸菌由来細胞外ベシクルによるin vitro炎症性媒介体の分泌
1×105個のマウスマクロファージ(RAW 264.7)をそれぞれ24ウェルプレートにシード(seeding)し、24時間後に細胞外ベシクル(0.1、1、10、100、1000ng/mL)又はフェノール(phenol)を用いて腸内大腸菌から抽出したLPS(100、200、500、1000、2000ng/mL)を細胞に処理して37℃のインキュベータで培養した。15時間の後に上澄液を取った後、4℃、500×gで10分間遠心分離し、しかる後に、4℃、3000×gで20分間遠心分離を行った。分離された上澄液に入っているサイトカインの量をELISA法によって測定した。
【0072】
図11及び図12はサイトカインの量を示す結果であって、細胞外ベシクルの量に比例して炎症性媒介体としてのTNF−α(図11参照)、IL−6(図12参照)が増加することが分かる。また、LPSを単独で処理した場合より一層少ない量の細胞外ベシクルによって前記の炎症性媒介体が分泌されることが分かる。これは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが炎症細胞に作用して最も低い濃度でも炎症性媒介体の分泌を誘導することができることを意味する。
【0073】
実施例5:大腸菌由来細胞外ベシクルの局所投与による粘膜炎症及びIL−6の分泌
C57BL/6(雌、6週)マウス実験群と対照群各5匹を用意し、実験群に属したマウスに大腸菌由来細胞外ベシクル1、10、100ngを鼻腔投与した。投与後6時間、12時間に気道粘膜の炎症を測定した。ケタミン(ketamine)とキシラジン(xylazine)を混合した麻酔液をマウス腹腔に投与して麻酔した後、胸部を切開し、気管を露出させてカテーテルを気道に挿入し、結紮させた。PBSを1mLずつ2回注入し、気道を洗浄して気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage、BAL fluid)を得た。気管支肺胞洗浄液を4℃で3000rpmにて10分間遠心分離した後、細胞ペレット(cell pellet)をPBS溶液に溶解させた。前記細胞ペレットを光学顕微鏡で観察して細胞の数を数えた。また、気管支肺胞洗浄液でTh17免疫反応を誘導する炎症性媒介体としてのIL−6をELISA法で測定した。
【0074】
図13は大腸菌由来細胞外ベシクルを鼻腔投与してから6時間、24時間後に気道粘膜の炎症を気管支肺胞洗浄液内の炎症細胞の数で示す図である。大腸菌由来細胞外ベシクルを投与する前に比べて、細胞外ベシクルを投与してから6時間及び24時間後に気管支肺胞洗浄液に炎症細胞の数が顕著に増加した。これは投与した細胞外ベシクルの濃度と関連があった。
【0075】
図14は気管支肺胞洗浄液内IL−6の量をELISA法で測定した図である。大腸菌由来細胞外ベシクルを投与する前に比べて、細胞外ベシクルを投与してから6時間後に気管支肺胞洗浄液内IL−6の量が顕著に増加した。これは投与したベシクルの濃度と関連があった。
【0076】
前記結果より、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが局所的に作用して粘膜に炎症を誘導し、これはTh17免疫反応を特徴とすることが分かる。
【0077】
実施例6:高用量の大腸菌由来細胞外ベシクルの腹腔投与による敗血症
実施例3の方法で分離した細胞外ベシクルをC57BL/6(雄、6週)マウス20匹にそれぞれ15、25、50μgを1回腹腔注射して12時間ごとに死んだマウスの数を確認した。
【0078】
図15は細胞外ベシクルによるマウスの生存曲線を示す。25μg以上の細胞外ベシクル腹腔内投与によって95%のマウスが死亡することが分かる。
【0079】
細胞外ベシクルが敗血症を誘導するかを評価するために、実施例3の方法で分離したマウス腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg)を12時間ごとに3回腹腔に注射した後、敗血症関連指標を分析した。細胞外ベシクルを注射してから6、12、24時間後にマウスの心臓から血液を採取し、4℃、3,500×gで10分間遠心分離した後、上澄液としての血清を取った。
【0080】
図16は血清から敗血症の発生に関連した媒介体の量をELISA法で測定した結果であって、TNF−α、IL−6、IL−1β、IL−12、IFN−γ、IL−10、IL−17などが増加した。
【0081】
また、敗血症の特徴である全身性炎症反応(systemic inflammatory response syndrome、SIRS)を呼吸数、温度、体重、白血球数などの指標によって評価した。
【0082】
図17は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから24時間ごとに呼吸数を測定した結果である。呼吸数はマウスをチャンバー(chamber)に入れ、ネブライザ(nebulizer)を用いて3分間f(frequency of breathing)値によって測定された。その結果、細胞外ベシクルによって、SIRSの指標の一つである呼吸数が増加する現象(頻呼吸)が観察された。
【0083】
図18は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから8時間ごとに3日間体温を測定した結果である。体温は直腸体温計をマウスの肛門に注射して体温計のデジタル画面に出た数値を記録した。その結果、細胞外ベシクルによって、全身性炎症反応の指標である体温が減少する現象(低体温症)が観察された。
【0084】
図19は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから6、12、24時間後に白血球の数を測定した結果である。白血球の数は心臓から血液を採取してEDTA入りのチューブに入れて4℃で保管した後、その10μLの血を90μLの1%塩酸(HCl)に混ぜて25℃で6分間反応させ、その反応液に入っている白血球の数を血球計数器(hematocytometer)によって測定した。その結果、細胞外ベシクルによって、全身性炎症反応の指標である血液内の白血球の数が減少する白血球減少症(leucopenia)が観察された。
【0085】
図20は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから12時間後に総白血球の数とそれぞれの白血球の数を測定した結果である。細胞外ベシクルを注射して12時間後に心臓から血液を採取し、EDTA入りのチューブに入れて4℃で保管した後、血液10μLをスライドに塗抹し、Diff Quick染色を行って光学顕微鏡1000倍視野で300個以上の炎症細胞を観察し、好塩球、リンパ球、好中球、好酸球に分類して各炎症細胞の数を測定した。その結果、総白血球の数が減少し、特にリンパ球の数が減少したが、好中球の数はむしろ増加した。
【0086】
細胞外ベシクルによる重症敗血症が誘導されるかを評価するために、血圧を測定した。
図21は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから24時間ごとに血圧を測定した結果である。マウスをプラットフォーム(platform)にのせた後、尾の血圧をセンサー(sensor)が認識してコンピュータ画面に出力された血圧数値を分析した。その結果、細胞外ベシクルによって血圧が著しく減少することを観察した。
【0087】
前記結果より、大腸菌などの腸内共生細菌に由来する細胞外ベシクルが血管に流入したとき、細胞外ベシクルが敗血症を誘導する重要な原因因子であることが明白である。
【0088】
実施例7:高用量の大腸菌由来細胞外ベシクルの腹腔投与による血液凝固
重症敗血症の状況で観察される血液凝固現象が細胞外ベシクルによって誘導されるかを分析した。播種性血管内血液凝固が発生すると、血小板が減少し、D−dimerの量が増加する。
【0089】
図22は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから6、12、24時間後にD−dimerの量を測定した結果である。細胞外ベシクルを腹腔に注射してから6、12、24時間後に心臓から採血してクエン酸ナトリウム(sodium citrate)入りのチューブに入れて4℃で保管した。血液のD−dimerの量をELISA法によって測定した。その結果、12時間後にD−dimerの量が最も多く増加することを確認した。
【0090】
また、血小板の数を測定するために細胞外ベシクルを腹腔に注射した後、6、12、24時間後に心臓から採血し、EDTAチューブに入れて4℃で保管した。血液を1%シュウ酸アンモニウム(ammonium oxalate)で1/200希釈し、10分間湿潤板に反応させた後、血球計数器(hematocytometer)によって血小板の数を測定した。
【0091】
図23は播種性血管内血液凝固の指標である血小板の減少が細胞外ベシクル投与6時間後から現れることを示す結果である。
【0092】
前記結果は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に吸収されたとき、播種性血管内血液凝固が発生し、これは血液凝固の原因因子として腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが重要であることを意味する。
【0093】
実施例8:大腸菌由来細胞外ベシクルによる血管内皮細胞の活性化及び凝固増進物質(procoagulant molecule)の発現
腸内共生大腸菌由来細胞外ベシクルによる血管内皮細胞の活性化を評価するために、5×105細胞数を有する血管内皮細胞(HUVEC:Human Umbilical Vein Endothelial Cell)を6ウェルプレートにシード(seeding)した後、24時間後に細胞外ベシクル(0.1、1、5、10、20ng/mL)を細胞に処理して37℃のインキュベータで培養した。8時間後に培養液を除去し、PBSで1回洗浄した後、細胞溶解(lysis)溶液を処理して10分間培養(incubation)し、しかる後に4℃、13,000×rpmで10分間遠心分離を行って細胞全体タンパク質を得た。これを5×ローディング染色剤(loading dye、250mM Tris−HCl、10% SDS、0.5%ブロモフェノールブルー(bromophenol blue)、50%グリセロール(glycerol))を最終的に1×となるように仕込み、100℃で10分間処理した。10%ポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel)を用意し、サンプルをロードした。100Vで2時間電気泳動した後、300mAで2時間タンパク質をPVDF(polyvinylidene fluoride)メンブレインでトランスファー(transfer)した。スキムミルク(skim milk)をPBSに3%となるように溶かした後、メンブレインをこの溶液で2時間ブロッキング(blocking)した。ICAM−1とβ−アクチン抗体を4℃で12時間処理した。0.05%Tween20/PBSで3回洗浄した後、それぞれペロキシダーゼ(peroxidase)が付いている二次抗体を室温で1時間処理した。0.05%Tween20/PBSで30分間洗浄した後、ECL(enhanced chemiluminescence、Amersham Co.No.RPN2106)基質(substrate)で確認して細胞外ベシクルを処理した場合、濃度依存的に細胞全体タンパク質の水準でβ−アクチンに比べてICAM−1が増加することを確認した。ICAM−1は、免疫細胞接着タンパク質であって、各種免疫反応の発生及び冠状動脈疾患などの血管内皮細胞の活性化の際に血管内皮細胞で増加して免疫細胞の組織内への浸潤を誘導することがよく知られている。
【0094】
図24より、細胞外ベシクルによって血管内皮細胞が活性化され、ICAM−1が増加することを確認した。
【0095】
腸内共生大腸菌由来細胞外ベシクルによって血液凝固増進物質が誘導されるかを評価するために、5×105細胞数を有する血管内皮細胞(HUVEC、Human Umbilical Vein Endothelial Cell)を6ウェルプレートにシード(seeding)した後、24時間後に細胞外ベシクル(1ng/mL)を細胞に処理して37℃のインキュベータで培養した。12時間後に上澄液を取り、4℃、500×gで10分間遠心分離した後、4℃、3000×gで20分間遠心分離を行った。分離された上澄液に入っている血液凝固増進物質としての組織因子(tissue factor)を測定するために、ELISAプレートに上澄液を100μL仕込んで4℃で12時間コートした後、組織因子(tissue factor)抗体を室温で2時間処理した。0.05%Tween20/PBSで3回洗浄した後、ペロキシダーゼ(peroxidase)が付いている二次抗体を室温で1時間処理した。0.05% Tween 20/PBSで30分間洗浄した後、ECL(enhanced chemiluminescence、Amersham Co.No.RPN2106)基質(substrate)で確認して図25のように細胞外ベシクルを処理した場合、血液凝固増進物質としての組織因子(tissue factor)の分泌が顕著に増加することを確認した。
【0096】
実施例9:高用量の大腸菌由来細胞外ベシクルによる肺炎症及び肺気腫
腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(10μg)をシアニン−7(cyanin-7,cy7)で染色した後、マウスの腹腔に注射した。6時間の後、マウスの全身を分析することが可能なコダックイメージステーション(Kodak image station)を用いて腸内大腸菌由来細胞外ベシクルの位置を確認した。
【0097】
図26はマウス蛍光写真であって、細胞外ベシクルが全身に広がっており、肺にも存在することが分かる。
【0098】
腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(10、20μg)をDiOで染色した後、マウスの腹腔に注射し、6時間後に血液と肺を抽出した。
図27はこの血液と肺からRBC(red blood cell)溶解バッファ(lysis buffer)を用いて赤血球を除去した後、フローサイトメーター(FACS)によって、細胞外ベシクルを含む血液細胞と肺組織細胞の比率を分析した結果である。その結果、蛍光を帯びた細胞の比率が増加した。これは、図26の結果のように細胞外ベシクルが肺を含む全身に広がるにあたり、細胞外ベシクルが細胞に吸収されたボディの周囲に広がることを意味する。
【0099】
肺炎症反応を分析するために、細胞外ベシクル(5μg)を注射してから6、12、24時間後にマウスの肺を摘出して重量を測定した後、65℃のインキュベータで48時間放置し、しかる後に、変化した肺の重量との比率(wet-to-dry ratio)分析によって肺炎症を評価した。
【0100】
図28は肺炎症の指標であるwet−to−dry ratioを示す図であって、細胞外ベシクル腹腔投与の場合、6時間後に肺炎症が発生することを示す。
【0101】
また、細胞外ベシクル(5μg)を注射してから6、12、24時間後にマウスの気管支肺胞洗浄液を取って炎症細胞の数を測定した。ケタミン(ketamine)を含む麻酔液をマウスの腹腔に投与して麻酔した後、胸部を切開し、気管を露出させてカテーテルを気道に挿入し結紮させた。PBSを1mLずつ2回注射し、気道を洗浄して気管支肺胞洗浄液を得た。気管支肺胞洗浄液を4℃、3000rpmで10分間遠心分離した後、沈殿された細胞をPBSに溶かして細胞数を測定した。光学顕微鏡を用いて総炎症細胞数を測定した後、沈殿された細胞をサイトスピン(cytospin)してスライドに塗抹し、Diff Quik染色を行って光学顕微鏡1000倍視野で300個以上の炎症細胞を観察し、マクロファージ、リンパ球、好中球、好酸球に分類して各炎症細胞数を測定した。
【0102】
図29は気管支肺胞洗浄液内の炎症細胞の数を示すグラフであって、細胞外ベシクルによって炎症細胞の数が増加し、特にマクロファージの数が顕著に増加することが分かる。
【0103】
細胞外ベシクル(5μg)を注射してから6、12、24時間後に肺を摘出し、4%ホルムアルデヒド(formaldehyde)に入れて固定(fixing)させた後、切片を作ってヘマトキシリン−エオシン(hematoxylin-eosin)で染色して光学顕微鏡で観察したイメージを図30に示した。細胞外ベシクルによって肺胞が顕著に破壊された所見が観察された。これは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによって肺炎症と共に肺気腫が発生することを意味する。
【0104】
前記結果は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管を介して様々な臓器に分布して炎症と共に組織損傷を誘導する結果であって、原因因子が不明な炎症疾患の原因因子として腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが重要であることを意味する。
【0105】
実施例10:長期間の低用量の大腸菌由来細胞外ベシクルの腹腔投与による高血圧及び骨粗しょう症の誘導
低用量の腸内大腸菌由来細胞外ベシクルに繰り返し露出したときに慢性疾患が誘導されるかを評価するために、細胞外ベシクル(0.1、1μg)を週2回18週間腹腔に注入した。
【0106】
図31は低用量の腸内大腸菌由来細胞外ベシクルに繰り返し露出したときの血圧の変化を示す図であって、細胞外ベシクルによって高血圧が発生することを示す。
【0107】
低用量の腸内大腸菌由来細胞外ベシクルに繰り返し露出したときに骨粗しょう症が発生するかを評価するために、細胞外ベシクル(1μg)を週2回18週間腹腔注入した後、マウスの脚から長骨(long bone)を得た。1日間固定液に固定させ、固定液にあった骨を食塩水で2回洗浄した後、30、50、70、90、100%エタノールに1時間ずつ順次浸して脱水した。脱水過程を経た骨は、プロピレンオキシド(propylene oxide)という置換剤に1時間ずつ2回浸してポリマーとの置換を準備した。置換剤とポリマーの比率を3:1、1:1、1:3に漸次増やしてポリマーとの置換を行った。最後に残っている置換剤はフードで空気中に飛ばした後、ポリマーのみからなる溶液に骨を浸し、しかる後に、65℃のオーブンで1日間重合過程を行った。骨サンプルのX線断層撮影法(x-ray tomography)のイメージは全てポハン加速器7B2ビームライン(7B2 bemline at Pohang Light Source、PLS)の放射光X線顕微鏡(Synchroton radiaton X−ray microscopy)によって獲得した。ポリマー埋め込み(polymer embedding)された骨を放射光X線顕微鏡のサンプルステージにのせた後、180°の回転によって全て1200枚のイメージを得た。サンプルステージとシンチレーター(scintillator)との距離は10cmであって、放射光X線顕微鏡の吸収効果(absorption contrast effect)を主に用いてイメージを得た。得たイメージはOctopusとAmiraプログラムを介して3次元イメージ構築(3D reconstruction)した。1200枚中の代表的な切断面のイメージ(tomographic slice image)の比較を行った。
【0108】
図32は長期間にわたった低用量の細胞外ベシクルの吸収によって骨の連結構成が破れることを特徴とする骨粗しょう症が発生したことを示す。
【0109】
前記結果は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが長期間反復的に血管に吸収されて全身的に分布したときに高血圧、骨粗しょう症などの慢性疾患を誘導するおそれがあることを意味する。
【0110】
実施例11:大腸菌由来細胞外ベシクルによる敗血症及び肺気腫の発生に対するIL−6の役目
実施例3の方法で分離したマウス腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(25μg)をそれぞれ正常マウス(C57BL/6、雄、6週)とIL−6欠乏(ノックアウト、knock out)マウス(C57BL/6、雄、6週)に1回腹腔注射して12時間ごとに死んだマウスの数を確認し、生存率を図33に示した。IL−6欠乏マウスでは、正常マウスとは異なり、25μgの細胞外ベシクルによって死亡が誘導されなかった。
【0111】
細胞外ベシクル(5μg)を12時間3回ずつ注射してから6、12、24時間後に肺を摘出し、実施例9の方法で肺の病理所見を分析した。図34は肺の切片の写真であって、正常マウスとは異なり、IL−6欠乏マウスでは細胞外ベシクルによって肺組織細胞が全く破壊されないことが分かる。
【0112】
前記結果は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる敗血症の発生だけでなく、様々な臓器の炎症疾患への発生にIL−6が重要な媒介体であることを意味する。
【0113】
実施例12:腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療候補薬物in vitroスクリーニングシステムの確立
前記実施例らに基づいて、マウス腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより誘導される炎症性サイトカインが各種疾病に大きく関与することを確認した。これは、炎症性媒介体、特にIL−6の分泌を抑制することが可能な物質を発掘することが腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療候補薬物の選別において重要であることを意味する。
【0114】
図35は腸内共生細胞由来細胞外ベシクルによるIL−6の分泌を抑制する物質を発掘するための模式図であって、実施例3の方法で分離した腸内共生細菌としての大腸菌由来細胞外ベシクル(100ng/mL)を単独で或いは薬物候補物質(10μM)と共に、実施例4のように準備したマウスマクロファージ(RAW 264.7)に処理した後、37℃のインキュベータで15時間培養した。15時間後に上澄液を取り、4℃、500×gで10分間遠心分離した後、4℃、3000×gで20分間遠心分離を行った。分離された上澄液に入っているIL−6の量をELISA法によって測定した。これはin vitroで腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより誘導されるIL−6の分泌を抑制する候補物質をスクリーニングする方法を確立したものである。これにより、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療候補薬物を提供することができる。
【0115】
実施例13:In vitroスクリーニングシステムで発掘したキナーゼ阻害剤のin vitro抗炎症効果
実施例12の方法によってマウスマクロファージ(RAW 264.7)に培養液のみを処理した群(陰性対照群)、腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(0.1μg/mL)のみを培養液に混ぜて処理した群(陽性対照群)、及び80種のキナーゼ阻害剤[キナーゼ阻害剤ライブラリー(kinase inhibitor library)、BIOMOL No.2832: PD−98059、U−0126、SB−203580、H−7、H−9、AG−494、AG−825、ラベンダスチンA(Lavendustin A)、RG−14620、チルホスチン23(Tyrphostin 23)、チルホスチン25(Tyrphostin 25)、チルホスチン46(Tyrphostin 46)、チルホスチン47(Tyrphostin 47)、チルホスチン51(Tyrphostin 51)、チルホスチン1(Tyrphostin 1)、チルホスチン9(Tyrphostin 9)、チルホスチンAG1288(Tyrphostin AG 1288)、チルホスチンAG1478(Tyrphostin AG 1478)、チルホスチンAG1295(Tyrphostin AG 1295)、HNMPA、ダムナカンタール(Damnacanthal)、ピセタノール(Piceatannol)、AG−490、AG−126、AG−370、AG−879、LY294002、ウォルトマンニン(Wortmannin)、GF109203X、ヒペリシン(Hypericin)、スフィンゴシン(Sphingosine)、H−89、H−8、HA−1004、HA−1077、HDBA、KN−62、KN−93、ML−7、ML−9、2−アミノプリン(2-Aminopurine)、N9−イソプロピル−オロモウシン(N9-Isopropyl-olomoucine)、オロモウシン(Olomoucine)、イソ−オロモウシン(iso-olomoucine)、ロスコビチン(Roscovitine)、LFM−A13、SB−202190、ZM336372、SU4312、AG−1296、ロットレリン(Rottlerin)、ゲニステイン(Genistein)、ダイアゼイン(Daiazein)、エルブスタチンアナログ(Erbstatin analog)、クエルセチン二水和物(Quercetin dihydrate)、SU1498、ZM449829、DRB(5,6-Dichloro-1-b-D-ribofuranosylbenzimidazole)、HBDDE (2,2',3,3',4,4'-Hexahydroxy-1,1'-biphenyl-6,6'-dimethanol dimethyl ether)、インジルビン(Indirubin)、インジルビン−3’−モノオキシム(Indirubin-3'-monoxime)、Y−27632、ケンパウロン(Kenpaullone)、テレイン酸(Terreic acid)、BML−257、BML−259、アピゲニン(Apigenin)、BML−265(Erlotinib analog)、ラパマイシン(Rapamycin)]それぞれを10μM濃度で前述と同量の細胞外ベシクルと共に培養液に混ぜて処理した群を用いて実験を行った。処理15時間後に培養液におけるIL−6の量をサンドイッチELISA法で測定した。
【0116】
各キナーゼ阻害剤を処理した場合に測定したIL−6の量を、陽性対照群で測定したIL−6の量と比較した百分率を図36に示した。
その結果、80余種のキナーゼ阻害剤のうち、11種の物質(4; H−7、29;LY294002、31;GF109203X、42;ML−7、43; ML−9、64;ZM449829、66;DRB(5,6-Dichloro-1-b-D-ribofuranosylbenzimidazole)、70;インジルビン−3’−モノオキシム(Indirubin-3'monoxime)、72;ケンパウロン(Kenpaullone)、77;BML−259、78;アピゲニン(Apigenin))がIL−6の量を陽性対照群の50%未満に減少させることを確認することができる。
【0117】
図37は前記キナーゼ阻害剤のうちダムナカンタール(Damnacanthal)、LY294002、GF109203Xを単独又は2種以上の組み合わせで(この際、処理した各ドラッグ(drug)の濃度は10mmを維持する)細胞外ベシクル(100ng/mL)と同時に処理する場合の細胞培養液内のIL−6の量を測定した結果であって、2種以上を同時に処理したときにIL−6分泌抑制効果が顕著に増大することを確認した。
【0118】
実施例14:In vitroスクリーニングシステムで発掘したホスファターゼ阻害剤のin vitro抗炎症効果
図38は実施例13の方法で30種のホスファターゼ阻害剤[phosphatase inhibitor、ホスファターゼ阻害剤ライブラリー(phosphatase inhibitor library) 、BIOMOL No.2834:カンタリジン酸(Cantharidic acid)、カンダリジン(Cantharidin)、エンドサル(Endothall)、ベンジルホスホン酸(Benzylphosphonic acid)、シュウ酸L−p−ブロモテトラミゾール(L-p-Bromotetramisole oxalate)、RK−682、RWJ−60475、RWJ−60475(AM)3、塩酸レバミゾール(Levamisole HCl)、塩酸テトラミゾール(Tetramisole HCl)、シペルメトリン(Cypermethrin)、デルタメトリン(Deltamethrin)、フェンバレラート(Fenvalerate)、チルホスチン8(Tyrphostin 8)、CinnGEL、CinnGEL 2 Me、BN−82002、シコニン(Shikonin)、NSC−663284、シクロスポリンA(Cyclosporin A)、ペンタミジン(Pentamidine)、BVT−948、B4−ロダニン(B4-Rhodanine)、BML−268、ジオキソフェナントレン(Dioxophenanthrene)、BML−260、PD−144795、BML−267、BML−267 Ester、OBA、OBA Ester、ゴシポール(Gossypol)、アレンドロネート(Alendronate)]を処理してIL−6の量を陽性対照群の50%未満に減少させる薬物候補物質を検索してPD−144795を発掘した結果である。
【0119】
図39はPD−144795を0.1、1、5、10μM濃度で含み、腸内大腸菌由来細胞外ベシクルを100ng/mLの濃度で含む培養液を用意し、実施例13の方法と同様にマウス由来マクロファージに処理して濃度依存的にIL−6の分泌が抑制されることを確認した結果である。
【0120】
実施例15:In vitroスクリーニングシステムで発掘したプロドラッグのin vitro抗炎症効果
図40は実施例13の方法で100種のプロドラッグ[プロドラッグ:アセトアミノフェン(acetaminophen)、アセチルシステイン(acetylcysteine)、アロプリノール(allopurinol)、塩酸アルプレノロール(alprenolol HCl)、塩酸アミトリプチリン(amitriptyline HCl)、アトロピン(atropine)、ブレチリウムトシレート(bretylium tosylate)、ブロモフェニラミン(bromopheniramine)、ブデソニド(budesonide)、塩酸ブスピロン(buspirone HCl)、セフロキシム(cefuroxime)、 抱水クロラール(chloral hydrate)、塩酸クロルプロマジン(chlorpromazine HCl)、シメチジン(cimetidine)、塩酸クロミプラミン(clomipramine HCl)、 クロトリマゾール(clotrimazole)、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、塩酸デシプラミン(desipramine HCl)、ジクロフェナク(diclofenac)、ジフルニサル(diflunisal)、ジルチアゼム(diltiazem)、塩酸ジフェンヒドラミン(diphenhydramine HCl)、ジソピラミン(disopyramine)、ジスルフィラム(disulfiram)、D−マンニトール(D-mannitol)、ドキセピン(doxepin)、ドキシサイクリン水和物(doxycycline hydrate)、コハク酸ドキシラミン(doxylamine succinate)、塩化エドロホニウム(edrophonium chloride)、マレイン酸エナラプリル(enalapril maleate)、ファモチジン(famotidine)、フェンブフェン(fenbufen)、フェノフィブラート(fenofibrate)、フェノプロフェンカルシウム塩水和物(fenoprofen calcium salt hydrate)、フルナリジン二塩酸塩(flunarizine dihydrochloride)、フルフェナジン二塩化物(fluphenazine dichloride)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、フロセミド(furosemide)、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)、グリクラジド(gliclazide)、グリピジド(glipizide)、ハロペリドール(haloperidol)、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethiazide)、塩酸ヒドロキシジン(hydroxyzine HCl)、イブプロフェン(ibuprofen)、塩酸イミプラミン(imipramine HCl)、インダパミド(indapamide)、インドール−2カルボン酸(indole-2-carboxylic acid)、 インドメタジン(indomethacin)、イプラトロピウム(ipratropium)、ケトプロフェン(ketoprofen)、ケトロラックトリス塩(ketorolac tris salt)、塩酸マプロチリン(maprotiline HCl)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、メラトニン(melatonin)、メトホルミン(metformin)、塩酸メタピリレン(methapyrilene HCl)、メチマゾール(methimazole)、メトカルバモール(methocarbamol)、塩酸メトクロプラミド(metoclopramide HCl)、メトロニダゾール(metronidazole)、ナブメトン(nabumetone)、ナプロキセン(naproxen)、臭化ネオスチグミン(neostigmine Br)、ナイアシン(niacin)、塩酸ニカルジピン(nicardipine HCl)、ニフェジピン(nifedipine)、ニトロフラントイン (nitrofurantoin)、ニザチジン(nizatidine)、ノルエチンドロン(norethindrone)、ノルトリプチリン(nortriptyline)、塩酸オルフェナドリン(orphenadrine HCl)、オキシプチニン(oxybutynin)、塩酸フェンフォルミン(phenformin HCl)、フェニルブダゾン(phenylbutazone)、フェニトイン(phenytoin)、ピロキシカム(piroxicam)、プレドニゾン(prednisone)、プロベネシド(probenecid)、塩酸プロプラノロール(propranolol HCl)、臭化ピリドスチグミン(pyridostigmine Br)、塩酸ラニチジン(ranitidine HCl)、スピロノラクトン(spironolactone)、スルファメト(sulfameth)、スルピリド( sulpiride)、テノキシカム(tenoxicam)、テルフェナジン(terfenadine)、テオフィリン(theophylline)、塩酸チクロピジン(ticlopidine HCl)、トラザミド(tolazamide)、トラゾリン(tolazoline)、トルブタミド(tolbutamide)、トルフェナム酸(tolfenamic acid)、塩酸トラマドール(tramadol HCl)、トラニルシプロミン(tranylcypromine)、塩酸トラゾドン(trazodone HCl)、トリアムテレン(triamterene)、トリクロルメチアジド(trichlormethiazide)、塩酸トリペレナミン(tripelennamine HCl)、ベラパミル(verapamil)、ワルファリン(warfarin)]を処理してIL−6の量を陽性対照群の80%未満に減少させる候補物質14種(10;アミトリプチリン(Amitriptyline)、39;シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、41;デシプラミン(Desipramine)、54;ドキセピン(Doxepin)、72;二塩化フルフェナジン(Fluphenazine dichloride)、82;ハロペリドール(Haloperidol)、89;イミプラミン(Imipramine)、101;マプロチリン(Maprotiline)、132;オルフェナドリン(Orphenadrine)、165;テルフェナジン(Terfenadine)、173;トルフェナム酸(Tolfenamic acid)、179;ドラゾドン(Trazodone)、187;トリクロルメチアジド(Trichlormethiazide)、188;ベラパミル(Verapamil))を発掘した結果である。
【0121】
図41は前記in vitroスクリーニングシステムによって発掘した14種のプロドラッグをマウス腹腔由来マクロファージにex vivoで処理してIL−6減少効果を示した11種のプロドラッグ(10;アミトリプチリン(Amitriptyline)、39;シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、41;デシプラミン(Desipramine)、54;ドキセピン(Doxepin)、72;二塩化フルフェナジン(Fluphenazine dichloride)、82;ハロペリドール(Haloperidol)、89;イミプラミン(Imipramine)、101;マプロチリン(Maprotiline)、132;オルフェナドリン(Orphenadrine)、165;テルフェナジン(Terfenadine)、173;トルフェナム酸(Tolfenamic acid)、179;塩酸ドラゾドン(Trazodone HCl)を確認した結果である。
【0122】
実施例16:In vitroスクリーニングシステムで発掘したプロドラッグのin vivo抗炎症効果
実施例15で発掘したプロドラッグが体内で抗炎症効果を示すかを評価した。このために、実施例6のように腸内大腸菌由来細胞外ベシクルをC57BL/マウス(雄、6週、グループ当たり4匹)に5μg腹腔注射して敗血症を誘導したマウスモデルから、前記発掘したプロドラッグのうちハロペリドール(Haloperidol)とドキセピン(Doxepin)をそれぞれ10mg/kgの用量で腹腔注射して6時間後に血清を得た。
【0123】
図42は血清でIL−6の量をELISA法によって定量した結果であって、腸内大腸菌由来細胞外ベシクルによる炎症性媒介体としてのIL−6の分泌が、血液内でin vitroスクリーニングシステムによって発掘したハロペリドールとドキセピン投与によって効率よく抑制されることを示す結果である。
【0124】
前記結果より、実施例12で記述した腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いたin vitro薬物スクリーニングシステムが非常に効率的な方法であり、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより誘導される各種疾病を予防又は治療することが可能な薬物を効率よく選別することができることが明白である。
【0125】
実施例17:大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの免疫学的特性
実施例3の方法によって分離した大腸菌由来細胞外ベシクル1mgを1週間隔で3週間3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり10匹)の腹腔に注入した。毎注入6時間、24時間、7日後にマウス血液を得て、血液内に存在する細胞外ベシクル特異的な抗体を測定した。大腸菌由来ベシクル200ngがコートされた黒色の96ウェルプレートに、1% BSA/PBSで1:500希釈されたマウス血清を入れ、常温で2時間培養した後、ペロキシダーゼ(peroxidase)が結合されたマウス抗体を用いて観察した。
【0126】
図43はマウス血液内大腸菌由来細胞外ベシクル特異的な抗体の量を経時的に観察した結果である。細胞外ベシクル特異抗体は1回細胞外ベシクル投与7日後から形成され始め、2番目と3番目の細胞外ベシクル投与後にさらに多くの抗体が形成され、3番目のベシクルワクチン接種完了7日後に最も高い抗体形成程度を示した。
【0127】
前記の方法で3回の大腸菌由来細胞外ベシクル接種が完了してから7日後にマウスから脾臓細胞を分離した。分離された脾臓細胞(2×104)に大腸菌由来細胞外ベシクル100ngを入れて72時間培養した後、脾臓細胞が分泌する免疫反応関連サイトカインとしてのIFN−γ、IL−17、IL−4の量をそれぞれELISA法で測定した。
【0128】
図44はマウス脾臓細胞に大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIFN−γの量を示す結果である。大腸菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループから得た脾臓細胞に比べて、細胞外ベシクルを接種したマウスから得た脾臓細胞からのIFN−γの分泌が増加した。
【0129】
図45はマウス脾臓細胞に大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIL−17の量を示す結果である。大腸菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループから得た脾臓細胞に比べて、細胞外ベシクルを接種したマウスから得た脾臓細胞からのIL−17の分泌が増加した。
【0130】
図46はマウス脾臓細胞に大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIL−4の量を示す結果である。大腸菌由来細胞外ベシクルの接種は脾臓細胞のIL4の分泌には影響がなかった。
【0131】
前記結果より、大腸菌由来細胞外ベシクル接種の際に細菌感染に対する防御メカニズムとしての、B細胞で生成される抗体反応とT細胞免疫反応が誘導されることを確認した。特に、T細胞免疫反応は、細菌感染に対する防御に重要な、IFN−γを分泌するTh1免疫反応とIL−17を分泌するTh17免疫反応が大腸菌由来細胞外ベシクルの接種によって効率よく誘導された。
【0132】
実施例18:大腸菌感染による敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能
大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を評価するために、大腸菌感染による敗血症動物モデルを確立した。大腸菌1×106、1×108、1×1010CFUをC57BL/6(雄、6週、グループ当たり10匹)の腹腔に注入して5日間8時間の間隔でマウスの生存率を観察した。
【0133】
図47は大腸菌感染によるマウスの致死率を示す結果である。すなわち、大腸菌1×1010CFUを注入した場合はマウスが24時間内に死亡し、大腸菌1×106、1×108CFUを注入した場合はマウスの生存には影響がなかった。
【0134】
実施例17の方法によって大腸菌由来細胞外ベシクル0.5、1μgを1週間隔で3週間3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり10匹)の腹腔に注入した。3回の大腸菌由来細胞外ベシクルの接種が完了してから7日後に、大腸菌1×1010CFUを腹腔に注入して5日間8時間の間隔でマウスの生存率を観察した。
【0135】
図48は図47で確立された大腸菌感染による敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察した結果である。5日後、大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されていないマウスの生存率20%に比べて、大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスグループの生存率は80〜100%であった。
【0136】
図48の方法によって、大腸菌由来細胞外ベシクル1μgを1週間隔で3回腹腔接種した後、大腸菌1×1010CFUをマウスの腹腔に注入して6時間後に、腹水と血液内の大腸菌数を測定して図49に示した。また、血清内IL−6の量をELISA法で測定して図50に示し、肺組織のイメージを図51に示した。
【0137】
図49は大腸菌由来細胞外ベシクル接種の際に感染した大腸菌CFUの変化を示す結果である。大腸菌感染の際に、大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されていないマウスから得た血液と腹水に比べて、ベシクルが接種されたマウスの血液及び腹水における大腸菌の数が顕著に減少した。
【0138】
図50は大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスに大腸菌1×108CFUを感染させて6時間後に、血清内に存在するIL−6の量を測定した結果である。大腸菌に感染したマウス血清内炎症性サイトカインIL−6の量が顕著に増加するが、大腸菌由来細胞外ベシクルで予防接種したマウスの血清内IL−6の量は急激に減少した。
【0139】
図51は大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスに大腸菌を感染させて6時間後に、マウスから肺を抽出して肺組織の状態を確認した結果である。大腸菌感染の際に、肺組織細胞が多く破壊される現象が観察されるが、大腸菌由来細胞外ベシクルで予防接種したグループの肺病理組織は正常マウスに類似した形態を示した。
【0140】
前記結果は、腸内共生細菌としての大腸菌に由来する細胞外ベシクルをワクチンとして予め投与したとき、大腸菌による感染及び病理を効率よく予防することができることを意味する。
【0141】
実施例19:大腸菌由来細胞外ベシクルによる敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能
実施例17の方法によって大腸菌由来細胞外ベシクル1μgを1週間隔で3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり5匹)の腹腔に注入した後、実施例6の方法によって確立された大腸菌由来細胞外ベシクルによる敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察した。大腸菌由来細胞外ベシクルの予防接種が完了してから7日後、大腸菌由来細胞外ベシクル5μgを12時間間隔で3回腹腔に注入して敗血症関連指標を分析した。
【0142】
図52〜図54は実施例6で確立された大腸菌由来細胞外ベシクルによる敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察した結果である。
【0143】
図52は大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg、3回)を注入してから6時間後、マウス血液を採取して血清内サイトカインとしてのIFN−γを測定した結果である。大腸菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループに比べて、大腸菌由来細胞外ベシクルを接種したグループの血清内IL−6の量は顕著に減少した。
【0144】
図53は敗血症に関連した全身性炎症反応の中での温度を測定した結果である。大腸菌由来細胞外ベシクル5μgの3回注入で低体温症が誘導されるが、予め大腸菌由来細胞外ベシクル1μgを1週間隔で3回接種すると、正常マウスと同様の体温を維持した。
【0145】
図54は重症敗血症の状況で観察される血小板減少現象を観察した結果である。大腸菌由来細胞外ベシクル5μgの3回注入で血小板の数が減少するが、予め大腸菌由来細胞外ベシクル1μgを1週間隔で3回接種すると、血小板の減少程度が減った。
【0146】
前記結果は、腸内共生細菌としての大腸菌に由来する細胞外ベシクルをワクチンとして予め投与したとき、大腸菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0147】
実施例20:肺炎桿菌由来細胞外ベシクルワクチンの免疫学的特性
実施例3の方法で分離した肺炎桿菌由来細胞外ベシクル100ng、1mgを5日間隔で3回C57BL/6(雄、グループ当たり5匹)の腹腔に注入した。最後接種3日後にマウスの血液を採取し、血液内に存在する肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異的な抗体を確認して図55に示したとともに、脾臓を採取した後、脾臓内T細胞を分離してサイトカインとしてのIFN−γ、IL−17を測定した結果を図56に示した。
【0148】
図55は肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを接種したマウスから採取した血液内に肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異的な抗体が存在することを示す結果である。肺炎桿菌由来細胞外ベシクルの濃度に比例してベシクル特異抗体が形成された。
【0149】
図56は脾臓から採取したT細胞に肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを処理したときのCD3+CD4+IFN−γ+T細胞を示す結果である。肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループに比べて、細胞外ベシクルを接種したグループでCD3+CD4+IFN−γ+T細胞が増加した。
【0150】
図57は脾臓から採取したT細胞に肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを処理したときのCD3+CD4+IL−17+T細胞を示す結果である。肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループに比べて、細胞外ベシクルを接種したグループでCD3+CD4+IL−17+T細胞が増加した。
【0151】
図55〜図57に示すように、肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを接種したとき、細菌感染に対する防御メカニズムとしての、B細胞で生成される抗体反応とT細胞免疫反応が誘導された。特に、T細胞免疫反応の中でも、細菌感染に対する防御に重要な、IFN−γを分泌するTh1免疫反応とIL−17を分泌するTh17免疫反応がベシクルワクチンによって効率よく誘導された。
【0152】
実施例21:肺炎桿菌感染による敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能
肺炎桿菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を評価するために、肺炎桿菌感染による敗血症動物モデルを確立した。肺炎桿菌1×106、1×107、1×108CFUをC57BL/6(雄、6週、グループ当たり5匹)の腹腔に注入して5日間8時間の間隔でマウスの生存率を観察した。
【0153】
図58は肺炎桿菌感染によるマウスの致死率を示す結果である。すなわち、肺炎桿菌1×108CFUを注入した場合はマウスが24時間内に死亡し、大腸菌1×106、1×107CFUを注入した場合はマウスの生存には影響がなかった。
【0154】
肺炎桿菌の感染に対する肺炎桿菌由来細胞外ベシクルの効能を評価するために、細胞外ベシクル1μgを5日間隔で3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり5匹)の腹腔に注入した。3回の肺炎桿菌由来細胞外ベシクルの接種が完了してから3日後、肺炎桿菌1×108CFUを腹腔に注入して5日間8時間の間隔でマウスの生存率を観察した。
【0155】
図59は前記の方法で確立された肺炎桿菌感染による敗血症の発生に対する肺炎桿菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察した結果である。肺炎桿菌感染5日後、肺炎桿菌由来細胞外ベシクルが接種されていないマウスの生存率は40%であったが、これに対し、肺炎桿菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスグループの生存率は100%であった。
【0156】
前記結果は、腸内共生細菌としての肺炎桿菌に由来する細胞外ベシクルをワクチンとして予め投与したとき、肺炎桿菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0157】
実施例22:大腸菌及び肺炎桿菌由来細胞外ベシクルワクチンの併合投与時の免疫学的特性
実施例3の方法によって分離した大腸菌由来細胞外ベシクル、肺炎桿菌由来細胞外ベシクル1mg、大腸菌及び肺炎桿菌由来細胞外ベシクル各1mgを5日間隔で2回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり5匹)の腹腔に注入した。細胞外ベシクル接種3日後に血液を採取した後、細胞外ベシクルがコートされた黒色の96ウェルプレートに、1:500で希釈された血清を入れ、常温で2時間培養した。
【0158】
図60は大腸菌由来細胞外ベシクル特異的な抗体の形成を示す結果である。大腸菌と肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを併合投与したとき、大腸菌由来細胞外ベシクル特異抗体の形成が大腸菌由来細胞外ベシクルの単独投与に比べて増加した。
【0159】
図61は肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異的な抗体の形成を示す結果である。大腸菌と肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを併合投与したとき、 肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異抗体の形成が肺炎桿菌由来細胞外ベシクルの単独投与に比べて増加した。
【0160】
前記結果は、腸内共生細菌としての大腸菌と肺炎桿菌に由来する細胞外ベシクルを混合してワクチンとして予め投与したとき、大腸菌及び肺炎桿菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病だけでなく、大腸菌及び肺炎桿菌による感染を効率よく予防することができることを意味する。
【0161】
実施例23:腸内共生細菌由来細胞外ベシクルの遺伝物質塩基配列の分析
C57BL/6(6週、雄)マウス及びBALB/c(6週、雄)マウスの大便を採取して細胞外ベシクルを分離した後、それぞれ10μgの細胞外ベシクルに全体8μLの体積となるように3次蒸留水を追加した。各ベシクルに2μLのランダムデカマー(random decamer、Ambion、5722G)を添加し、95℃で10分、75℃で10分培養した後、4℃で保管した。ランダムデカマーを処理した各サンプルにAMV逆転写酵素(Promega、M510F)3μL、AMV逆転写酵素バッファ(Progema、M515A)4μL、10mM dNTP 2μL、RNase抑制剤(Promega、N211B)1μLを処理し、10分間25℃で反応させた後、2時間37℃で反応させた。AMV逆転写酵素を処理した各20μLのサンプルのうち1μLを用いて16S rRNA遺伝子をPCRで確認した。PCRのために、サンプル1μLにTaq酵素(NEB、M0273S)0.5μL、Taq酵素バッファ(NEB、B9014S)2μL、10mM dNTP1μL、10pM バクテリアのユニバーサルフォワードプライマー(bacterial universal forward primer)1μL(5’aaggcgacgatccctagctg−3’)、10pM バクテリアのユニバーサルリバースプライマー(bacterial universal reverse primer)1μL(5’ttgagcccggggatttcaca−3’)、3次蒸留水13.5μLを入れて混合した。混合物を95℃で2分反応させた後、95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で45秒間反応させる過程を45回繰り返し行った。最後に72℃で5分間反応させた後、ソルゼント(株)(大田広域市儒城区花岩洞63−10)に依頼してPCR結果物をシークエンシングし、C57BL/6を対象とした図62の結果及びBALB/cを対象とした図63の結果を得た。
【0162】
図62及び図63に示すように、100〜120番目、150〜190番目の核酸部分で多重ピーク(peak)が現れることからみて、様々な細菌に由来する16S rRNAが混ぜられていることが分かる。これにより、多数の細菌に由来する細胞外ベシクルが大便由来細胞外ベシクルに存在することを確認することができる。NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene)から得た細菌の16S rRNA塩基配列と多重ピーク(peak)を考慮したシークエンシング結果を比較したところ、図1の大便に生息する代表的な細菌10種のうち大腸菌(Escherichia coli)と肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の存在可能性が確認された。
【0163】
腸内大腸菌由来細胞外ベシクルに16S rRNA遺伝物質が存在することを確認するために、細胞外ベシクル10μgに対して前述の方法でRT−PCRを行った。陰性対照群(Negative control)は3次蒸留水を使用し、陽性対照群(Positive control)は腸内大腸菌をO.D.値1.0まで培養した後、1μLを使用した。RT−PCR結果物20μLに5X Green GoTaq Flexi Buffer(Promega、M891A)5μLを混ぜた後、その5μLを2%アガロースゲル(agarose gel)にロード(loading)した。100Vで30分ゲルランニング(gel running)し、ゲル(gel)を10分間0.005%EtBr溶液に浸した後、紫外線に露出させた状態で写真を撮った。
【0164】
その結果、図64のように陽性対照群(positive control)と同様のバンド(band)を結果として得、これにより腸内大腸菌由来細胞外ベシクルに16S rRNA遺伝子又はそれに由来するRNAトランスクリプト(transcript)が存在していることが分かる。
【0165】
実施例24:組織及び体液からの腸内共生細菌由来細胞外ベシクルタンパク質の確認
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルをC57BL/6(6週、雄、グループ当たり3匹)マウスに25μg腹腔注射し、6時間後にマウスの臓器及び体液を摘出して細胞外ベシクルタンパク質の存否を細胞外ベシクルに対する抗体を用いてELISA法で確認した。マウスの摘出臓器を液体窒素の存在下に乳鉢で擂った後、RIPA溶液(50mM Tris(pH7.5)、1% NP−40、0.25% Na−デオキシコール酸塩(Na-Deoxycholate)、100mM NaCl、1mM EDTA、プロテアーゼ阻害剤(protease inhibitor))を入れて溶解(lysis)させて4℃で13,000rpmにて10分間遠心分離することによりタンパク質を得た。体液は前記実施例5及び6と同様の方法で得た。
【0166】
図65は腹腔注射した細胞外ベシクルが各種臓器及び腹腔洗浄液(peritoneal fluid、PF)、小便、血液に存在することを示す結果である。これは細胞外ベシクルによる炎症性疾患を、採取が容易な体液、例えば小便及び血液などを用いて診断することができることを示唆する結果である。
【0167】
前述した本発明の説明は例示のためのものである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想又は必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解することができるであろう。よって、上述した実施例は全ての面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明の腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いて、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防或いは治療することが可能な薬物を効率よく発掘することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体或いはこれを変形して投与して免疫反応を調節することにより、腸内共生細菌による感染或いは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防又は治療するワクチンの開発が可能であり、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを応用して、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病の原因因子を診断する技術の開発が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内共生細菌(gut microbiota or gut flora)に由来する細胞外ベシクルを含む組成物、並びにこれを用いた疾病動物モデル、腸内共生細菌由来ベシクルによる疾病に対する予防及び/又は治療ワクチンなどに関する。
【背景技術】
【0002】
腸内共生細菌は、ヒトを含む動物の消化管(digestive tract)に生息している微生物からなっており、約100兆個の腸内共生細菌がヒトの消化管に生息しているが、その数はヒト細胞の約10倍に該当する。
【0003】
1960年代に、電子顕微鏡を介してグラム陰性細菌が細胞外ベシクル[EV(extracellular vesicles)又はOMV(outer membrane vesicles)]を分泌するという事実が明らかになった。細胞外ベシクルは、球状をし、リン脂質二重層からなっており、20〜200nmの大きさを有する。グラム陰性細菌由来細胞外ベシクルは、LPSだけでなく、様々な外膜タンパク質(outer membrane protein)を持っている(非特許文献1)。重症敗血症で亡くなった患者の血液に髄膜炎球菌由来ベシクルが存在するという報告(非特許文献2)、及び髄膜炎球菌由来細胞外ベシクルが体外で炎症性媒介体を分泌するという報告(非特許文献3及び非特許文献4)があったが、腸内共生細菌に由来する細胞外ベシクルが、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、大腸癌などの粘膜の炎症を特徴とする局所疾患、又は敗血症、動脈硬化症、糖尿病などの全身炎症疾患を引き起こすという研究結果は全くない。
【0004】
最近、老人人口の増加、及び免疫抑制剤や抗癌剤などの使用増加などにより細菌感染に対する防御が弱化して敗血症の有病率が全世界的に増加しつつある。敗血症は、細菌、カビなどの局所感染による合併症によって全身的な炎症反応が誘導される疾患である(非特許文献5)。感染の際に局所的に病原菌から分泌される物質が血管に流入し、或いは血管に流入した病原菌から分泌される物質が血管内炎症細胞を活性化させて全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome)が発生し、これと同時に血管内皮細胞を活性化させて播種性血管内血液凝固(disseminated intravascular coagulation)、血栓(thrombosis)などが発生し、病原菌由来物質が肺などの重要臓器に分布して炎症及びこれによる組織損傷を引き起こし、発病者の30%以上が死に至る(非特許文献6)。
【0005】
全身性炎症反応症候群が病原菌により発生した場合を敗血症と定義するが、半分以上の敗血症患者から血液内病原菌を検出することができない(非特許文献7)。これは敗血症の誘発には細菌が直接血液内に流入することが必須事項ではないことを意味し、細菌などに由来する物質が血液内に流入して敗血症が発生することがある。例えば、グラム陰性細菌に由来する内毒素(endodotoxin)としてのリポ多糖体(lipopolysaccharide、LPS)が血液内に流入して敗血症が発生し、これを基にして敗血症治療剤を開発しようとする研究が広く行われた(非特許文献8)。ところが、LPSを標的とする治療剤の開発は未だ成功した場合がない(非特許文献9)。
【0006】
人体に発生する疾病の診断、予防及び治療技術を開発するためには、人体の疾病を模写する適切な動物モデルを構築することが重要である。敗血症動物モデルを作るために、現在まで次の三つの方法が使用された(非特許文献10)。第一、LPSを実験動物の腹腔内に注射して敗血症モデルを作ることができる。第二、細菌を腹腔内に注射して敗血症モデルを作ることができる。第三、盲腸を結紮/穿刺(cecal ligation and puncture、CLP)して敗血症モデルを作ることができる。ところが、このような敗血症動物モデルは、再現性、実験者間の誤差、又はヒトに発生する敗血症の表現型を上手く示すことができないという欠点がある。よって、敗血症に対する診断、予防及び治療技術を開発するためには、実験者間の誤差が少なく、再現性が高く、ヒトに発生する敗血症の表現型を上手く反映する動物モデルの開発が必要である。
【0007】
炎症性媒介体(特に、IL−6)が血液内に増加することは敗血症の典型的な指標である。細菌によって分泌される炎症性媒介体を測定して細菌性感染に対する治療候補物質の効果を評価した例が知られている(特許文献1の「Functions and uses of human protein phosphatase 1 inhibitor-2」)。ところが、体外で腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを細胞に投与して炎症性媒介体の分泌を調節する候補薬物探索方法、及び共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた敗血症動物モデルの体内に候補薬物を投与して炎症性媒介体の分泌を調節する候補薬物探索方法は知られていない。
【0008】
数十年前より、細菌から分泌される外毒素(exotoxin)タンパク質を応用したワクチンが開発されて使用されている。グラム陽性細菌に対するワクチンは、細胞壁成分(莢膜多糖類(capsular polysaccharide))に対するワクチンが開発されたが、T細胞に関係なく抗体が形成されるという欠点があった。また、これを改善するために、細胞壁成分にタンパク質を接合(conjugation)した形態のワクチンが開発されたが、このような形態のワクチンも特定の細菌の亜型にのみ特異的に作用するという限界があった。グラム陰性細菌に対するワクチンは現在まで臨床で使用した事例がなく、最近、グラム陰性細菌である髄膜炎球菌に対するワクチンとして、細菌に洗剤(detergent)を処理して得た人工ベシクルを用いてワクチンを開発した事例がある(非特許文献11)。特許文献2の「Outer membrane vesicles from Gram negative bacteria and use as a vaccine」は、髄膜炎球菌からベシクルを抽出してワクチンとして使用することを特徴としている。特許文献3の「Method of antigen incorporation into neisseria bacterial outer membrane vesicles and resulting vaccine formulations」は、髄膜炎球菌ベシクルにタンパク質抗原を挿入する方法に関するものであって、前記の方法によってベシクルの免疫刺激特性を維持し、免疫反応の向上をもたらすことにより、髄膜炎球菌感染に対する予防及び治療のためのワクチンとして適用できることを特徴とする。また、髄膜炎球菌ワクチンの製造及び使用に関連して、ワクチンの生産に適した髄膜炎球菌菌株を作る過程に関する特許も出願された(特許文献4及び特許文献5)。また、サルモネラ菌由来ベシクルが宿主の先天免疫及び後天免疫反応を向上させてワクチンとしての効能を検証した研究がある(非特許文献12)。ところが、腸内共生細菌由来の細胞外ベシクルにより発生する疾病及び腸内共生細菌による感染を予防又は治療するために腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いたワクチンは、未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開第2009/030093号パンフレット
【特許文献2】米国特許第7384645号明細書
【特許文献3】米国公開特許第2007/0166333号明細書
【特許文献4】国際特許公開第2007/144316号パンフレット
【特許文献5】国際特許公開第2004/014417号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】E. Y. Lee et al., Proteomics in gram-negative bacterial outer membrane vesicles. Mass. Spectrom. Rev. 2008;27(6):535-555
【非特許文献2】E. Namork and P. Brandtzaeg, Fatal meningococcal septicaemia with "blebbing" meningococcus. Lancet. 2002;360(9347):1741
【非特許文献3】M. R. Mirlashari et al., Outer membrane vesicles from Neisseria meningitidis: effects on cytokine production in human whole blood. Cytokine. 2001;13(2):91-97
【非特許文献4】A. Bjerre et al., Complement activation induced by purified Neisseria meningitidis lipopolysaccharide (LPS), outer membrane vesicles, whole bacteria, and an LPS-free mutant. J. Infect. Dis. 2002;185(2):220-228
【非特許文献5】M. M. Levi et al., 2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definitions Conference. Crit. Care. Med. 2003;31(4):1250-1256
【非特許文献6】E. Lolis and R. Bucala, Therapeutic approaches to innate immunity: severe sepsis and septic shock. Nat. Rev. Drug. Discov.2003;2(8):635-645
【非特許文献7】R. S. Munford, Severe sepsis and septic shock: the role of gram-negative bacteremia. Annu. Rev. Pathol. 2006;1:467-496
【非特許文献8】S. M. Opal, The host response to endotoxin, antilipopolysaccharide strategies, and the management of severe sepsis. Int. J. Med. Microbiol. 2007;297(5):365-377
【非特許文献9】J. Hellman, Bacterial peptidoglycan-associated lipoprotein is released into the bloodstream in gram-negative sepsis and causes inflammation and death in mice. J. Biol. Chem.2002;19;277(16):14274-14280
【非特許文献10】J. A. Buras et al., Animal models of sepsis: setting the stage. Nat. Rev. Drug. Discov.2005;4(10):854-865
【非特許文献11】M. P. Girard et al., A review of vaccine research and development: meningococcal disease. Vaccine. 2006;24(22):4692-4700
【非特許文献12】R. C. Alaniz et al., Membrane vesicles are immunogenic facsimiles of Salmonella typhimurium that potently activate dendritic cells, prime B and T cell responses, and stimulate protective immunity in vivo. J Immunol. 2007;179(11):7692-701
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含む組成物及びこれを用いた疾病動物モデルを提供しようとする。
また、本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防又は治療することが可能な候補薬物を効率よく探索する方法を提供しようとする。
また、本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾患を予防又は治療することが可能なワクチンを提供しようとする。
また、本発明は、腸内共生細菌による感染を予防又は治療することが可能なワクチンを提供しようとする。
また、本発明は、前記ワクチンを用いて腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾患及び/又は腸内共生細菌による感染を予防又は治療する方法を提供しようとする。
また、本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾患の原因因子を診断する方法を提供しようとする。
本発明が解決しようとする技術的課題は上述した課題に制限されず、上述していない別の課題は以降の記載から当業者に明らかに理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含む組成物を提供する。
前記本発明の一具現例によれば、前記腸内共生細菌は、腸内に共生するグラム陰性細菌でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例によれば、前記腸内共生グラム陰性細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、シュードモナス属(Pseudomonas)細菌、バクテロイデス属(Bacteroides)細菌でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、腸内共生細菌培養液から分離したものでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されるもの、及び人工的に分泌されるものを含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、哺乳動物の大便、腸内、胃液、小腸液又は口腔液などから分離したものでありうるが、これに限定されるものではない。
【0013】
本発明の他の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを動物に投与して製造された疾病モデルを提供する。
前記本発明の腸内共生細菌及び細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記動物は、マウスでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の投与は腹腔投与、静脈投与、口腔投与、肛門投与、鼻腔投与、気道投与などを含む。
前記本発明の疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、及び脳疾患などを含む。
前記本発明の他の具現例によれば、前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌、及び膵臓癌などを含む。
【0014】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病予防又は治療に対する候補薬物の探索方法を提供する。
前記本発明の腸内共生細菌、細胞外ベシクル及び疾病は前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記探索方法は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを細胞に処理する段階を含むことができる。前記細胞は炎症細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、幹細胞などを含む。また、前記炎症細胞は単核球、好中球、好酸球、好塩球、単核球が組織から分化した細胞などを含み、前記幹細胞は骨髄組織又は脂肪組織に由来する細胞でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の他の具現例によれば、前記探索方法は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルと共に候補物質を投与した後、炎症関連媒介体の水準を測定する段階を含むことができる。前記炎症関連媒介体はインターロイキン(Interleukin,IL)−6を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記探索方法は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルと共に候補物質を投与した後、炎症関連シグナル伝達過程を評価する段階を含むことができる。
【0015】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を予防又は治療するために、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含むワクチンを提供する。前記本発明の腸内共生細菌、細胞外ベシクル、疾病などは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細菌に化合物を処理することなどを含み、前記化合物は薬物を含む。
前記本発明の他の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用することができ、前記変形は細胞外ベシクルに化合物を処理することを含み、前記化合物は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記ワクチンは、効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で、薬物を併用投与して使用し或いは免疫補強剤を併用投与して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌による感染を予防又は治療するために腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含むワクチンを提供する。
前記本発明の一具現例によれば、前記腸内共生細菌による感染は腹膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染、骨関節及び中枢神経系感染などでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の腸内共生細菌は前述と同じである。
前記本発明の別の具現例によれば、前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細菌に化合物を処理することなどを含み、前記化合物は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用することができ、前記変形は細胞外ベシクルに化合物を処理することを含み、前記化合物は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記ワクチンは、効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で、薬物を併用投与して使用し或いは免疫補強剤を併用投与して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを致死量未満で哺乳動物に投与する段階を含む、疾病に対する予防又は治療方法を提供する。
前記本発明の腸内共生細菌及び細胞外ベシクルは前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、脳疾患などでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌、膵臓癌でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、腹膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染、骨関節及び中枢神経系感染でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記投与は皮下注射、静脈注射、鼻腔投与、舌下投与、気道吸入、経口服用、肛門投与、皮膚投与、粘膜投与などを含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用することができる。前記変形は細菌を形質転換すること、細菌に化合物を処理すること、細胞外ベシクルに化合物を処理することなどを含み、前記化合物は薬物を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記投与は、効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で、薬物を併用投与し或いは免疫補強剤を併用投与することができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた探索方法によって選別された物質を含む、疾病予防又は治療のための薬学的組成物を提供する。
前記本発明の一具現例によれば、前記物質はキナーゼ阻害剤(kinase inhibitor)でありうる。前記キナーゼ阻害剤は、ダムナカンタール(Damnacanthal;3-hydroxy-1-methoxy-9,10-dioxoanthracene-2-carbaldehyde)、H−7(5-(2-methylpiperazin-1-yl)sulfonylisoquinoline dihydrochloride)、LY294002(2-morpholin-4-yl-8-phenylchromen-4-one)、GF109203X(3-[1-[3-(dimethylamino)propyl]indol-3-yl]-4-(1H-indol-3-yl)pyrrole-2, 5-dione)、 ML−7(1-(5-iodonaphthalen-1-yl)sulfonyl-1,4-diazepane hydrochloride)、ML−9(1-(5-chloronaphthalen-1-yl)sulfonyl-1,4-diazepane hydrochloride)、ZM449829(1-(2-Naphthalenyl)-2-propen-1-one)、DRB((2S,3S,4R,5R)-2-(5,6-dichlorobenzimidazol-1-yl)-5-(hydroxymethyl)oxolane-3,4-diol)、インジルビン−3’−モノオキシム(Indirubin-3’-monoxime;3-[3-(hydroxyamino)-1H-indol-2-yl]indol-2-one)、ケンパウロン(Kenpaullone;9-bromo-7,12-dihydro-5H-indolo[3,2-d][1]benzazepin-6-one)、BML−259(N-(5-Isopropylthiazol-2-yl)phenylacetamide)、及びアピゲニン(Apigenin;5,7-dihydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)chromen-4-one)などを含む。
前記本発明の他の具現例によれば、前記物質はホスファターゼ阻害剤(phosphatase inhibitor)でありうる。前記ホスファターゼ阻害剤はPD−144795(5-methoxy-3-(1-methylethoxy)benzo(b)thiophene-2-carboxamide-1-oxide)を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記物質はプロドラッグ(prodrug)でありうる。前記プロドラッグはアミトリプチリン(Amitriptyline)、シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、デシプラミン(Desipramine)、ドキセピン(Doxepin)、二塩化フルフェナジン(Fluphenazine dichloride)、ハロペリドール(Haloperidol)、イミプラミン(Imipramine)、マプロチリン(Maprotiline)、オルフェナドリン(Orphenadrine)、テルフェナジン(Terfenadine)、トルフェナム酸(Tolfenamic acid)、塩酸トラゾドン(Trazodone HCl)、トリクロルメチアジド(Trichlormethiazide)、ベラパミル(Verapamil)などを含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病を含む。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、脳疾患でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌、膵臓癌でありうるが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明の別の側面は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを応用して疾病の原因因子を診断する方法を提供する。
前記本発明の腸内共生細菌は前述と同じである。
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病は、敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、脳疾患でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記疾病は、口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌、膵臓癌でありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記応用は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに含まれた遺伝物質の塩基配列を分析することであり、前記遺伝物質は16S rRNAでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記応用は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに含まれたタンパク質を測定し、或いは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに対する免疫反応を測定することでありうるが、これに限定されるものではない。前記免疫反応測定は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに対する抗体を測定することでありうるが、これに限定されるものではない。
前記本発明の別の具現例によれば、前記診断は、血液、大便、小便、脳脊髄液、関節液、胸水又は腹水などに由来する試料を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、腸内に共生する大腸菌に由来する細胞外ベシクルが、粘膜の炎症を特徴とする局所疾患だけでなく、血液に吸収されて全身的な炎症反応を特徴とする敗血症などの全身疾患を誘発するという発見により、腸内共生細菌由来細胞ベシクルを用いた疾病モデル、疾病を予防或いは治療する候補薬物探索技術、及び細胞外ベシクルを応用した疾病予防或いは治療用ワクチン技術などを提供する。
【0021】
本発明は、腸内共生細菌に由来する細胞外ベシクルを分離してこれを細胞に投与したときに炎症性媒介体が分泌され、局所的に投与したときに粘膜に炎症が発生し、腹腔に投与したときに細胞外ベシクルが血管に流入し、全身的な炎症反応を特徴とする敗血症と共に血液凝固、肺気腫、高血圧、骨粗しょう症などの疾病が発生するという事実を用いて、疾病動物モデル及び候補薬物を効率よく選別する探索方法を提供することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた探索方法で、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防或いは治療することが可能な薬物を効率よく発掘することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体或いはこれを変形して投与して免疫反応を調節することにより、腸内共生細菌による感染或いは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防或いは治療するワクチンの開発に応用可能である。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを応用して、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病の原因因子を診断する技術の開発が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】マウス大便由来細胞外ベシクルのタンパク質の質量分析を介して体内共生細菌を同定した結果である。
【図2】正常マウスの小腸液から抽出した細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡写真である。
【図3】正常マウスの小腸から抽出した細胞外ベシクル(siEV)をRAW264.7マクロファージ株に濃度依存的に6時間処理した後、細胞培養液における炎症性媒介体IL−6の発現をELISA法で定量したものである。
【図4】DSSによって誘導された炎症性腸炎マウスの小腸から抽出した細胞外ベシクル(DSS_siEV)をRAW264.7マクロファージ株に濃度依存的に6時間処理した後、細胞培養液における炎症性媒介体IL−6の発現をELISA法で定量したものである。
【図5】正常マウスとDSSによって誘導された炎症性腸炎マウスの小腸から抽出した細胞外ベシクル(それぞれsiEV、DSS_siEV)をRAW264.7マイクロファージ株に処理するときにLPSの拮抗体としてのポリミキシンB(polymyxin B、PMB)を細胞外ベシクルに6時間処理した後、細胞培養液における炎症性媒介体IL−6の発現をELISA法で定量したものである。
【図6】抽出したマウス腸内大腸菌の16s rRNA塩基配列を示すものである。
【図7】それぞれ抽出したマウス腸内大腸菌を走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で観察したイメージである。
【図8】それぞれ抽出したマウス腸内大腸菌を透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で観察したイメージである。
【図9】腸内大腸菌に由来する細胞外ベシクルの模様と大きさを透過電子顕微鏡で分析したイメージである。
【図10】腸内大腸菌由来細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡写真10枚に基づいて細胞外ベシクルのサイズ別の分布を示すものである。
【図11】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)と腸内大腸菌から抽出したLPSを多様な濃度で処理してRAW264.7マクロファージに培養し、サイトカイン(TNF−α)の量をELISA法で測定した結果である。
【図12】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)と腸内大腸菌から抽出したLPSを多様な濃度で処理してRAW264.7マクロファージに培養し、サイトカイン(IL−6)の量をELISA法で測定した結果である。
【図13】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)をマウス鼻腔にそれぞれ1、10、100ng投与して気管支肺胞洗浄液内の炎症細胞の細胞数(BAL cells)を測定した結果である。
【図14】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)をマウス鼻腔にそれぞれ1、10、100ng投与して気管支肺胞洗浄液内IL−6の量を測定した結果である。
【図15】C57BL/6(雄、6週)マウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)15、25、50μgをそれぞれ1回腹腔注射した後、12時間ごとにマウスの生存率を示すものである。
【図16】大腸菌由来細胞外ベシクル5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後に採取したマウスの血液の血清から炎症性媒介体としてのTNF−α、IL−6、IL−1β、IL−12、IFN−γ、IL−10、IL−17及びVEGFの濃度をELISA法で測定した結果である。
【図17】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射した後、24時間ごとに呼吸数を測定した結果である。
【図18】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射した後、8時間ごとに3日間体温を測定した結果である。
【図19】大腸菌由来細胞外ベシクル5μgを12時間ずつ3回注射してから8、12、24時間後に白血球数を分析した結果である。
【図20】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射して12時間後に白血球の総数と種類ごとの数を分析した結果である。
【図21】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射した後、24時間ごとに血圧を測定した結果である。
【図22】大腸菌由来細胞外ベシクル5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後にD−dimerの量を測定した結果である。
【図23】大腸菌由来細胞外ベシクル5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後に血小板の数を測定した結果である。
【図24】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)それぞれ0.1、1、5、10、20ng/mLを血管内皮細胞に処理してICAM−1の発現増加を確認した結果である。
【図25】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)1ng/mLを血管内皮細胞に処理して血液凝固因子としての組織因子(tissue factor)の分泌を測定した結果である。
【図26】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)10μgをシアニン−7(cyanin-7、cy7)で染色した後、マウスの腹腔に注射して6時間後、コダックイメージステーション(Kodak image station)で得たマウス全身の蛍光写真である。
【図27】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)それぞれ10μg、20μgをDiOで染色した後、マウスの腹腔に注射してから6時間後に抽出した血液と肺からRBC(red blood cell)溶解バッファ(lysis buffer)を用いて赤血球を除去した後、フローサイトメーター(FACS)を介して、細胞外ベシクルを含む血液細胞と肺組織細胞の比率を分析した結果である。
【図28】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後の、血液の血管から肺組織への透過力(wet-to-dry ratio)程度を示すものである。
【図29】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後に気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数を示す図である。
【図30】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後に肺を摘出し、4%ホルムアルデヒド(formaldehyde)に入れて固定(fixing)させた後、切片を作ってヘマトキシリン−エオシン(hematoxylin-eosin)で染色して光学顕微鏡で観察したイメージである。
【図31】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)それぞれ0.1、1μgを週2回18週間注射した後、血圧を測定したグラフである。
【図32】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)1μgを週2回18週間注射した後、X線技術を介して観察した長骨のイメージである。
【図33】正常マウス(C57BL/6、雄、6週)とIL−6欠乏マウス(C57BL/6、雄、6週)に大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)25μgを腹腔注射し、12時間ごとにマウスの生存率を示すものである。
【図34】正常マウス(C57BL/6、雄、6週)とIL−6欠乏マウス(C57BL/6、雄、6週)に大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを12時間ずつ3回注射してから6、12、24時間後に肺を4%ホルムアルデヒド(formaldehyde)に入れて固定(fixing)させた後、切片を作ってヘマトキシリン−エオシン(hematoxylin-eosin)で染色して光学顕微鏡で観察したイメージである。
【図35】腸内共生細菌由来細胞外ベシクル(EV)を用いて薬物候補物質を発掘する方法に対する模式図である。
【図36】大腸菌由来細胞外ベシクル(100ng/mL)とキナーゼ阻害剤を同時にマウスマクロファージに処理し、培養液に存在するIL−6の量を細胞外ベシクルのみ単独で処理した陽性対照群の測定値に基づいて百分率で示すグラフである。
【図37】キナーゼ阻害剤を単独で処理した場合と2つ以上の組み合わせで処理した場合の大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)によって誘導されるマウスマクロファージIL−6の分泌量を陽性対照群に対する百分率で示すグラフである。
【図38】大腸菌由来細胞外ベシクル(100ng/mL)とホスファターゼ阻害剤(10μM、1;カンタリジン酸(Cantharidic acid)、2;カンタリジン(Cantharidin)、3;エンドサル(Endothall)、4;ベンジルホスホン酸(Benzylphosphonic acid)、5;シュウ酸L−p−プロモテトラミゾール(L-p-Bromotetramisole oxalate)、6;RK−682、7;RWJ−60475、8;RWJ−60475(AM)3、9;塩酸レバミゾール(Levamisole HCl)、10;塩酸テトラミゾール(Tetramisole HCl)、11;シペルメトリン(Cypermethrin)、12;デルタメトリン(Deltamethrin)、13;フェンバレラート(Fenvalerate)、14;チルホスチン8(Tyrphostin 8)、15;CinnGEL、16;CinnGEL 2 Me、17;BN−82002、19;NSC−663284、20;シクロスポリンA(Cyclosporin A)、21;ペンタミジン(Pentamidine)、22;BVT−948、24;BML−268、26;BML−260、27;PD−144795、28;BML−267、29;BML−267 Ester、30;OBA、31;OBA Ester、33;アレンドロネート(Alendronate))を同時にマウスマクロファージに処理し、培養液に存在するIL−6の量を細胞外ベシクルのみ単独で処理した陽性対照群の測定値を基準として百分率で示すグラフである。
【図39】PD−144795を0.1、1、5、10μM濃度で含み、大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を含む培養液をマウスマクロファージに処理してIL−6の分泌を示すグラフである。
【図40】大腸菌由来細胞外ベシクル(100ng/mL)とプロドラッグを同時にマウスマクロファージに処理し、培養液に存在するIL−6の量を細胞外ベシクルのみ単独で処理した陽性対照群の測定値を基準として百分率で示すグラフである。
【図41】プロドラッグを10μM濃度で含み、大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)が含まれた培養液をマウス腹腔由来マクロファージに処理してIL−6の分泌を示すグラフである。
【図42】マウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)5μgを腹腔投与して全身性免疫反応を起こしたマウスに、プロドラッグとしてのハロペリドール(haloperidol)とドキセピン(doxepin)をそれぞれ10mg/kgで腹腔投与し、血清内IL−6の分泌を測定した結果である。
【図43】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)1μgを1週間隔で3回腹腔投与する過程でマウス血液内のベシクル特異抗体の量を測定したグラフである。
【図44】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)ワクチンを投与したマウス脾臓細胞に体外で大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIFN−γの量を示すグラフである。
【図45】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)ワクチンを投与したマウス脾臓細胞に体外で大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIL−17の量を示すグラフである。
【図46】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)ワクチンを投与したマウス脾臓細胞に体外で大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIL−4の量を示すグラフである。
【図47】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症に起因するマウスの致死率を示す結果である。
【図48】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチン(EC_EV)の効能を示すグラフである。
【図49】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症モデルにおける大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)の接種有無による血液及び腹腔の大腸菌数(CFU)を示すグラフである。
【図50】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症モデルにおいて大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)の接種有無によって、大腸菌を感染させて6時間後に血清内のIL−6の量を測定した結果である。
【図51】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症モデルにおいて大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)の接種有無によって、大腸菌を感染させて6時間後にマウスから肺を抽出して肺組織を観察したイメージである。
【図52】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を接種したマウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg)を3回腹腔投与してから6時間後にマウス血清におけるIL−6を測定した結果である。
【図53】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を接種したマウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg)を3回腹腔投与してから6時間後に、敗血症に関連した全身性炎症反応の指標としての体温を測定した結果である。
【図54】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を接種したマウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg)を3回腹腔投与してから6時間後に播種性血管内血液凝固の指標としての血液内血小板の減少を観察した結果である。
【図55】様々な濃度の肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(KP_EV)を腹腔に接種したマウスにおける血液内の肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異抗体の量を測定したグラフである。
【図56】様々な濃度の肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(KP_EV)を腹腔に接種したマウスの脾臓から採取したT細胞に肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを体外で処理した後、CD3+CD4+IFN−γ+T細胞の数を示す結果である。
【図57】様々な濃度の肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(KP_EV)を腹腔に接種したマウスの脾臓から採取したT細胞に肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを体外で処理した後、CD3+CD4+IL−17+T細胞を示す結果である。
【図58】肺炎桿菌(KP)の腹腔投与による敗血症に起因するマウス致死率を示す結果である。
【図59】肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(KP_EV)1μgを3回腹腔に接種したマウスにおける肺炎桿菌(KP)感染による敗血症の発生に対する肺炎桿菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察したグラフである。
【図60】大腸菌と肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(それぞれEC_EV、KP_EV)ワクチンを併合腹腔接種したとき、大腸菌由来細胞外ベシクル特異抗体の形成を血液から測定したグラフである。
【図61】大腸菌と肺炎桿菌由来細胞外ベシクル(それぞれEC_EV、KP_EV)ワクチンを併合腹腔接種したとき、肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異抗体の形成を血液から測定したグラフである。
【図62】C57BL/6マウスの大便から分離した細胞外ベシクルの遺伝物質塩基配列をシークエンシングした結果である。
【図63】BALB/cマウスの大便から分離した細胞外ベシクルの遺伝物質塩基配列をシークエンシングした結果である。
【図64】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)をバクテリア−ユニバーサルプライマー(bacteria-universal primer)によってRT−PCRし、16S rRNAの遺伝子又はそれに由来するRNAトランスクリプト(transcript)があることを示す結果である。
【図65】腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)25μgをマウスの腹腔に注射したグループと、PBSを注射したグループから各種臓器及び体液を採取し、大腸菌由来細胞外ベシクルのタンパク質存在有無を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル、並びにこれを用いた疾病モデル、ワクチン、候補薬物探索方法及び診断方法などを提供する。
【0024】
本発明において、「腸内(gut)」とは、哺乳動物消化管(digestive tracts)の内部及び上皮細胞層の表面を含む意味であり、例えば、ヒトを始めとした哺乳動物の消化管、例えば口腔、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門、胆道、胆嚢、膵臓管などの内部及び上皮細胞層の表面でありうるが、これに限定されるものではない。
【0025】
本発明において、「腸内共生細菌(gut microbiota or gut flora)」とは、哺乳動物の消化管の内部又は表面に生息する細菌を意味し、正常状態では疾病を起こさないが、防御能力に劣っている状態又は消化管を逸脱したときに疾病を起こす特徴があり、当業者における公知の腸内共生細菌がこれに含まれ得るが、これに限定されない。
【0026】
本発明において、「腸内共生細菌由来細胞外ベシクル」とは、哺乳動物の腸内共生細菌が腸内で分泌し或いは体内に吸収されて分泌するベシクルを含み、大きさが元来の細胞より小さいことを特徴とするが、これに限定されない。
【0027】
腸内共生細菌は、一般に疾病を起こす病原性細菌として注目を浴びていない。細菌による腸内感染は、主に病原性細菌に汚染した飲食物などを摂取して発生する急性感染性疾患に関心を置いた。最近、胃炎、消化性潰瘍、胃癌などの発生において、胃に共生するヘリコバクター菌が注目を浴びている。また、炎症性腸炎又は大腸癌の発生に関連して、大腸に共生する細菌が注目を浴びている。ところが、未だ前記の胃腸管疾患を引き起こす原因物質として、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルの重要性についてはよく知られていない。
本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが粘膜に炎症を誘導し、特に癌の病因に重要な好中球性炎症を特徴とするTh17免疫反応を誘導するという事実を初めて解明して、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを局所的に投与して前記の局所疾患に対する疾病モデルを開発した。
【0028】
全身的な炎症反応を特徴とする敗血症の病因に関連して、細菌に由来する物質が血管に吸収されて敗血症を引き起こすと知られているが、原因物質の実体については知られていない。本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に流入したとき、血中における炎症性媒介体の分泌による全身的な炎症反応を特徴とする敗血症、血管内血液凝固、肺気腫などの疾病が発生することを初めて解明した。これは敗血症の発生だけでなく、血管内血液凝固による血栓形成を特徴とする急性冠状動脈症候群、脳卒中などの血管疾患、肺気腫、急性呼吸不全症候群などの肺疾患の発生に腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが重要な原因因子であることを意味し、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを全身的に投与して前記の全身疾患に対する疾病モデルを開発した。
【0029】
腸内細菌感染後に関節炎が発生するということはよく知られている事実である。肥満や糖尿などの代謝疾患と腸内細菌との関連性が最近注目を浴びている。本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを低用量で長期間全身的に投与して高血圧や骨粗しょう症などの疾病が発生することを初めて解明した。これは原因因子が不明な慢性疾患の原因物質として腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが重要であり、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いて前記疾病モデルを開発することができる。
【0030】
疾病を予防又は治療する薬物を開発するために、正確な原因物質を把握することは非常に重要である。例えば、原因物質を体外で細胞に投与する過程で候補薬物を処理して効能を検証することができ、前述した動物モデルに候補薬物を投与して効能を検証することができる。本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療する薬物を開発するために、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた候補薬物を選別する探索方法を確立し、これにより薬物を発掘した。すなわち、前記の探索方法によって、80種のキナーゼ阻害剤のうち炎症性媒介体の分泌を抑制する11種の候補薬物、30種のホスファターゼ阻害剤のうち1種の候補薬物、100種のプロドラッグのうち14種の候補薬物を発掘し、前述した疾病動物モデルにおける効能を検証した。これは、本発明で開発した候補薬物探索方法で、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を予防又は治療するための薬物を非常に効果的に発掘することができることを意味する。
【0031】
疾病の原因因子を正確に把握することは、疾病を予防又は治療することが可能なワクチンの開発に必須的である。ウイルス性感染疾患の場合、原因ウイルスを弱毒化した形態で体内に投与することによりウイルスに対する免疫反応を誘導して予防ワクチンを開発して使用しており、現在、ウイルスにより発生する疾患を予防ワクチンで効率よく予防することができるようになった。本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを体内に投与してベシクルに対する免疫反応を誘導することにより、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防することができることを解明した。これは敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、脳疾患などの全身性疾患、及び口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌、膵臓癌などの局所疾患などのように疾病の発生に腸内共生細菌由来細胞外ベシクルと関連性のある疾病に対するワクチンとして、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体を使用し、或いは効能を増加させ或いは副作用を減少させるためにベシクルを変形投与し或いは薬物を併用投与することにより、効率よく前記疾病を予防又は治療することができることを意味する。
【0032】
細菌から分泌される外毒素による疾病を予防するために、外毒素タンパク質を用いた予防ワクチンは、数十年前に開発されて使用されている。ところが、未だ細菌自体に対する効果的なワクチンは開発されていない。細菌自体に対する予防ワクチンの例として、グラム陽性細菌の場合、細胞壁成分を用いたワクチンが開発されたが、T細胞に非依存的に抗体が生成され、細菌の亜型にのみ特異的に作用する抗体のみが生成されて効能に限界がある。T細胞に依存的な抗体の生成のために細胞壁成分にタンパク質を接合した形態のワクチンが開発されたが、このワクチンは価格が高く、細菌の亜型にのみ作用するという欠点がある。細菌由来ベシクルをワクチンとして用いる場合、ベシクルに細菌由来の様々な種類のタンパク質を含有しており、細菌の亜型に特異的な免疫反応を誘導する既存の細菌ワクチンの欠点を克服することができ、細菌に対する抗体形成だけでなく、T細胞反応を誘導する免疫補強剤が共にあって、効率よく免疫反応を誘導することができるという利点がある。本発明は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを投与して細菌タンパク質に対する抗体形成だけでなく、細菌に対する防御に重要なT細胞免疫反応としてのTh1及びTh17免疫反応を効率よく誘導することにより、腸内共生細菌による感染を効率よく予防することができることを解明した。これは腸内共生細菌による腹膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染、骨関節及び中枢神経系感染などに対するワクチンとして、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体を使用し、或いは効能を増加させるか副作用を減少させるためにベシクルを変形投与し或いは薬物を併用投与することにより、効率よく前記感染を予防又は治療することができることを意味する。
【0033】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎、脳疾患などの全身疾患、及び胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌などの局所疾患などの原因物質であるという事実は、原因物質が不明な前記疾患の原因を正確に診断することに非常に重要である。本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルの遺伝物質に対する塩基配列を分析し、タンパク質を同定し、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに対する特異抗体が形成されることを解明することにより、前記疾病の原因因子を正確に診断する方法を開発した。
【0034】
本発明では、マウスの大便から細胞外ベシクルを分離してプロテオーム分析を行った。その結果、総295個のタンパク質を同定した。これらの中でも、73個のタンパク質はマウス宿主細胞、77個のタンパク質はグラム陰性細菌、145個のタンパク質はグラム陽性細菌に由来するタンパク質であった。大便から分離した細胞外ベシクルのタンパク質分析によって細胞外ベシクルを分泌する細菌を同定したが、グラム陰性細菌としてバクテロイデス菌(Bacteroides thetaiotaomicron)、大腸菌(Esherichia coli)、肺炎桿菌 (Klebsiella pneumoniae)などがあり、グラム陽性細菌としてはビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、 エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faeacalis)、ユーバクテリウム・レクタレ (Eubacterim rectale)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、プロピオバクテリウム・アクネス(Propiobacterium acnes)、ストレプトコッカス・アガラクチア (Streptococcus agalactiae)などが同定された。
【0035】
炎症性腸炎は、大腸の慢性炎症を特徴とする疾患であって、最近、Th17免疫反応による炎症が注目を浴びている。特に、炎症性腸炎は、大腸癌の危険因子であって、動物実験においてTh17免疫反応によって大腸癌が発生すると知られている。デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sodium sulfate、DSS)を経口投与して炎症性腸炎動物モデルを作る方法が普遍的な方法として知られているが、本発明では、1%DSSを6日間経口投与した後、7日目に小腸液から細胞外ベシクルを分離した。分離した細胞外ベシクルを体外でマウスマクロファージ(RAW 264.7)に処理したとき、正常マウスの小腸液から分離したベシクルはインターロイキン(Interleukin,IL)−6の分泌を誘導しなかったが、疾病状態のマウスの小腸液から分離したベシクルはIL−6の分泌を誘導した。IL−6がTh17免疫反応を誘導する重要な媒介体であることを勘案すると、疾病状態の小腸液から分離した細胞外ベシクルがTh17免疫反応を誘導することができることが分かる。また、疾病状態の小腸液から分離した細胞外ベシクルに、グラム陰性細菌の細胞外膜成分としてのLPSを拮抗するポリミキシンB(polymyxin B)と共に投与したとき、IL−6が分泌されなかったが、これは炎症性腸炎の誘発に腸内共生細菌中のグラム陰性細菌に由来する細胞外ベシクルが重要であることを意味する。
【0036】
マウスの盲腸を結紮/穿刺する手術(cecal ligation and puncture, CLP)によって敗血症動物モデルを作る方法が普遍的である。本発明では、CLPの後、腹腔洗浄を経て、敗血症に関連した腸内共生細菌を腹腔から分離したが、16S rRNA塩基配列によって、分離された細菌が大腸菌と同定され、電子顕微鏡の写真から、大腸菌の表面にサイズ20〜40nmの球状の細胞外ベシクルを分泌することを確認した。
【0037】
本発明では、別途の物理化学的な刺激なしで腸内共生細菌培養液から生理的に分泌される細胞外ベシクルを分離した。例えば、大腸菌を培地で長時間培養した後、上澄液を取って細胞外ベシクルより大きい物質をフィルターを介して濾過させた後、濃縮した溶液を超遠心分離して細胞外ベシクルを分離した。大腸菌由来細胞外ベシクルは、炎症反応を誘導することが可能なLPSと外膜タンパク質(outer membrane protein)を含んでいる。大腸菌培養液に自然的に分泌した細胞外ベシクルは質量対比75%のLPS、大腸菌外膜及び外膜タンパク質からなっていた。
【0038】
自然的に分泌される細胞外ベシクルの分離以外にも、様々な機械的、電気的、化学的な方法で腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを分離することができる。浸透圧を用いた細胞溶解、エレクトロポレーション(electroporation)、超音波分解(sonication)、均質化(homogenization)、洗剤(detergent)処理、冷凍−解凍(freeze-thaw)、押し出し(extrusion)、機械的な分解などの方法で人工的に細胞外ベシクルを製造した後、分離することもできる。以下、本発明では、別途の表記がない細胞外ベシクルは培養細菌が自然的に分泌する細胞外ベシクルをいう。
【0039】
前述の方法で分離した大腸菌由来細胞外ベシクルが炎症性媒介体の分泌を誘導することができるかを評価するために、マウスマクロファージ(RAW 264.7)に細胞外ベシクルを処理した。その結果、細胞外ベシクルの濃度に比例してマクロファージからTNF−αとIL−6などの炎症性媒介体の分泌が増加した。
【0040】
大腸には数多くの共生細菌が生息しており、特定の細菌による病因を評価するために、腸内細菌のない無菌マウス(germ free mouse)を使用する。大腸に比べて気道には共生細菌がなくて、特定の細菌による病因の評価に最適な環境を持っている。本発明では、大腸菌由来細胞外ベシクルが粘膜に局所的に作用して炎症を誘導するかを評価するために、大腸菌由来細胞外ベシクルを気道投与した。その結果、細胞外ベシクルの濃度に比例して気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BAL fluid)内に炎症細胞の数が増加した。また、Th17免疫反応及び癌の発生に関連したIL−6の分泌がベシクルの濃度に比例して増加した。これは、腸内共生グラム陰性細菌由来細胞外ベシクルが粘膜に局所的に作用し、Th17免疫反応を特徴とする炎症を誘導することができることを意味する。
【0041】
大腸菌由来細胞外ベシクルが全身的に吸収されたとき、全身炎症反応が誘導されるかを評価するために、細胞外ベシクルを腹腔内に投与した。その結果、細胞外ベシクルの濃度に比例してマウスの死亡率が増加した。
【0042】
敗血症は、局所的な細菌感染と共に全身的な炎症反応(systemic inflammatory response syndrome、SIRS)を特徴とするが、SIRSは、頻呼吸、低体温又は高体温、心拍数の増加、白血球の減少又は増加の指標から構成されており、これらの指標の2つ以上を充足させると敗血症と定義する。本発明において、大腸菌由来の細胞外ベシクルを致死量未満の用量でマウスの腹腔内に注入したとき、血中に炎症性媒介体としてのTNF−α、IL−6、IL−12、IL−17などが増加し、頻呼吸、低体温、白血球の減少が誘導された。これは大腸菌由来細胞外ベシクルが血管に吸収されて炎症性媒介体を分泌し、これにより敗血症を誘導することが分かる。
【0043】
敗血症が臨床的に重要な理由は死亡率が非常に高いことにあるが、敗血症の経過において重症敗血症(severe sepsis)に発展すると、死亡する可能性が非常に高くなる。本発明では、細胞外ベシクルを腹腔内に注入したとき、重症敗血症の指標である低血圧が誘導された。これは敗血症の経過において重症への移行にも細菌由来細胞外ベシクルが重要な役目をすることを意味する。
【0044】
血管内で血液が凝固(coagulation)すると、血管が詰まり、急死(sudden death)の主原因となる。特に、脳血管と冠状動脈が血液凝固による血栓(thrombosis)で詰まる場合、それぞれ脳卒中(stroke)と急性冠状動脈症候群(acute coronary syndrome)で死亡する場合が頻繁にある。
【0045】
本発明では、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に流入したときに血液凝固を誘導するかを評価するために、大腸菌由来細胞外ベシクルを腹腔に投与した。その結果、細胞外ベシクルを投与した群では血液内に播種性血管内血液凝固(disseminated intravascular coagulation、DIC)の指標としての血小板が減少し、D−dimer量が増加した。これは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に流入して血液凝固を起こし、脳血管と冠状動脈に血液凝固が発生すると、それぞれ脳卒中、急性冠状動脈症候群を起こすおそれがあることを意味する。
【0046】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管内皮細胞に作用してこれを活性化させ、血液凝固を起こすかを評価するために、血管内皮細胞(HUVEC)に腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを処理した。その結果、炎症反応及び冠状動脈疾患を含む各種疾病状況で増加するとよく知られているICAM−1の量が増加し、血液凝固因子としての組織因子(tissue factor)の分泌が増加することが分かった。これは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによって血管内皮細胞が活性化され、血液凝固が発生して血栓(thrombosis)又は塞栓(embolism)により血管が詰まる虚血性血管疾患を誘導することを意味する。
【0047】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に流入したときの別の問題は、前記細胞外ベシクルが様々な臓器に分布する可能性があるということである。実際に、大腸菌由来細胞外ベシクルを腹腔に注入したとき、細胞外ベシクルが全身的に分布することが分かった。特に、肺組織に浸潤することを確認した。肺組織に浸潤した細胞外ベシクルが肺炎症を誘導するかを評価した。その結果、肺炎症の指標であるwet−dry ratioが、細胞外ベシクルを投与した場合に有意に増加し、気管支肺胞洗浄液内の炎症細胞の数も増加した。また、炎症による組織損傷の有無を評価したが、細胞外ベシクルを投与した場合、肺胞の破壊を特徴とする肺気腫が発生した。これは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に吸収されると、肺だけでなく、脳、骨関節、腎臓などの各種臓器に分布して炎症と組織損傷を誘導し、多様な疾病を誘導することができることを意味する。
【0048】
腸内共生細菌は持続的に細胞外ベシクルを分泌し、これは血管に流入して様々な問題を引き起こすおそれがある。本発明では、大腸菌由来細胞外ベシクルを低用量で長期間投与したとき、体内で起こる変化を観察した。その結果、細胞外ベシクルによって高血圧が発生し、骨粗しょう症も発生した。これは、腸内共生細菌由来細胞ベシクルが、現在まで原因因子が不明な慢性炎症疾患の発生に重要な原因因子であることを意味する。
【0049】
IL−6は多様な作用によって炎症疾患及び癌の発生に関与する。IL−6はSTAT3を介してのシグナル伝達によって、癌の発生に関連した細胞増殖(cell proliferation)、血管新生(angiogenesis)、浸潤(invasion)、免疫回避(immune evasion)に関連した遺伝子の発現を誘導し、癌の発生に重要なTh17免疫反応を介しての好中球性炎症によって癌の発生を誘導すると知られている。また、血中IL−6の濃度は動脈硬化症及び肺気腫を含む慢性閉鎖性肺疾患患者において死亡に関連した予後と密接した関連性を持っている。特に、血中で炎症細胞から分泌されるIL−6は、血管内皮細胞に作用して血液凝固関連因子の発現を増加させて血液凝固に関与すると知られている。本発明では、大腸菌由来細胞外ベシクルによる敗血症動物モデルにおいて疾病の病因に対するIL−6の役目を評価するために、大腸菌由来細胞外ベシクルを正常及びIL−6欠乏マウスの腹腔に注入した。その結果、80%以上の正常マウスにおいて大腸菌由来細胞外ベシクルによって死亡したが、IL−6欠乏マウスではベシクル投与によって全て生存した。また、大腸菌由来細胞外ベシクルの腹腔投与による肺気腫の発生も、正常マウスではベシクルによって発生したが、IL−6欠乏マウスでは観察されなかった。これは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによって体内で分泌されるIL−6が細胞外ベシクルによる疾病の病因に非常に重要なバイオマーカーであることを意味する。
【0050】
前記の研究結果に基づいて、本発明者らは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を予防又は治療するための候補薬物を選別するための探索方法を開発しようとした。このために、原因因子として大腸菌由来細胞外ベシクルを使用し、効能によって、マウスマクロファージ(RAW 264.7)から分泌されるIL−6を評価した。マクロファージに細胞外ベシクルと共に80種のキナーゼ阻害剤[キナーゼ阻害剤ライブラリー、BIOMOL No.2832:PD−98059、U−0126、SB−203580、H−7、H−9、AG−494、AG−825、ラベンダスチンA(Lavendustin A)、RG−14620、チルホスチン23(Tyrphostin 23)、チルホスチン25(Tyrphostin 25)、チルホスチン46(Tyrphostin 46)、チルホスチン47(Tyrphostin 47)、チルホスチン51(Tyrphostin 51)、チルホスチン1(Tyrphostin 1)、チルホスチン9(Tyrphostin 9)、チルホスチンAG1288(Tyrphostin AG 1288)、チルホスチンAG1478(Tyrphostin AG 1478)、チルホスチンAG1295(Tyrphostin AG 1295)、HNMPA、ダムナカンタール(Damnacanthal)、ピセタノール(Piceatannol)、AG−490、AG−126、AG−370、AG−879、LY294002、ウォルトマンニン(Wortmannin)、GF109203X、ヒペリシン(Hypericin)、スフィンゴシン(Sphingosine)、H−89、H−8、HA−1004、HA−1077、HDBA、KN−62、KN−93、ML−7、ML−9、2−アミノプリン(2-Aminopurine)、N9−イソプロピル−オロモウシン(N9-Isopropyl-olomoucine)、オロモウシン(Olomoucine)、イソ−オロモウシン(iso-olomoucine)、ロスコビチン(Roscovitine)、LFM−A13、SB−202190、ZM336372、SU4312、AG−1296、ロットレリン(Rottlerin)、ゲニステイン(Genistein)、ダイアゼイン(Daiazein)、エルブスタチンアナログ(Erbstatin analog)、クエルセチン二水和物(Quercetin dihydrate)、SU1498、ZM449829、DRB(5,6-Dichloro-1-b-D-ribofuranosylbenzimidazole)、HBDDE (2,2',3,3',4,4'-Hexahydroxy-1,1'-biphenyl-6,6'-dimethanol dimethyl ether)、インジルビン(Indirubin)、インジルビン−3’−モノオキシム(Indirubin-3'-monoxime)、Y−27632、ケンパウロン(Kenpaullone)、テレイン酸(Terreic acid)、BML−257、BML−259、アピゲニン(Apigenin)、BML−265(Erlotinib analog)、ラパマイシン(Rapamycin)]、30種のホスファターゼ阻害剤[ホスファターゼ阻害剤ライブラリー、BIOMOL No.2834:カンタリジン酸(Cantharidic acid)、カンダリジン(Cantharidin)、エンドサル(Endothall)、ベンジルホスホン酸(Benzylphosphonic acid)、シュウ酸L−p−ブロモテトラミゾール(L-p-Bromotetramisole oxalate)、RK−682、RWJ−60475、RWJ−60475(AM)3、塩酸レバミゾール(Levamisole HCl)、塩酸テトラミゾール(Tetramisole HCl)、シペルメトリン(Cypermethrin)、デルタメトリン(Deltamethrin)、フェンバレラート(Fenvalerate)、チルホスチン8(Tyrphostin 8)、CinnGEL、CinnGEL 2 Me、BN−82002、シコニン(Shikonin)、NSC−663284、シクロスポリンA(Cyclosporin A)、ペンタミジン(Pentamidine)、BVT−948、B4−ロダニン(B4-Rhodanine)、BML−268、ジオキソフェナントレン(Dioxophenanthrene)、BML−260、PD−144795、BML−267、BML−267 Ester、OBA、OBA Ester、ゴシポール(Gossypol)、アレンドロネート(Alendronate)]、100種のプロドラッグ[プロドラッグ:アセトアミノフェン(acetaminophen)、アセチルシステイン(acetylcysteine)、アロプリノール(allopurinol)、塩酸アルプレノロール(alprenolol HCl)、塩酸アミトリプチリン(amitriptyline HCl)、アトロピン(atropine)、ブレチリウムトシレート(bretylium tosylate)、ブロモフェニラミン(bromopheniramine)、ブデソニド(budesonide)、塩酸ブスピロン(buspirone HCl)、セフロキシム(cefuroxime)、 抱水クロラール(chloral hydrate)、塩酸クロルプロマジン(chlorpromazine HCl)、シメチジン(cimetidine)、塩酸クロミプラミン(clomipramine HCl)、 クロトリマゾール(clotrimazole)、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、塩酸デシプラミン(desipramine HCl)、ジクロフェナク(diclofenac)、ジフルニサル(diflunisal)、ジルチアゼム(diltiazem)、塩酸ジフェンヒドラミン(diphenhydramine HCl)、ジソピラミン(disopyramine)、ジスルフィラム(disulfiram)、D−マンニトール(D-mannitol)、ドキセピン(doxepin)、ドキシサイクリン水和物(doxycycline hydrate)、コハク酸ドキシラミン(doxylamine succinate)、塩化エドロホニウム(edrophonium chloride)、マレイン酸エナラプリル(enalapril maleate)、ファモチジン(famotidine)、フェンブフェン(fenbufen)、フェノフィブラート(fenofibrate)、フェノプロフェンカルシウム塩水和物(fenoprofen calcium salt hydrate)、フルナリジン二塩酸塩(flunarizine dihydrochloride)、フルフェナジン二塩化物(fluphenazine dichloride)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、フロセミド(furosemide)、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)、グリクラジド(gliclazide)、グリピジド(glipizide)、ハロペリドール(haloperidol)、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethiazide)、塩酸ヒドロキシジン(hydroxyzine HCl)、イブプロフェン(ibuprofen)、塩酸イミプラミン(imipramine HCl)、インダパミド(indapamide)、インドール−2カルボン酸(indole-2-carboxylic acid)、 インドメタジン(indomethacin)、イプラトロピウム(ipratropium)、ケトプロフェン(ketoprofen)、ケトロラックトリス塩(ketorolac tris salt)、塩酸マプロチリン(maprotiline HCl)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、メラトニン(melatonin)、メトホルミン(metformin)、塩酸メタピリレン(methapyrilene HCl)、メチマゾール(methimazole)、メトカルバモール(methocarbamol)、塩酸メトクロプラミド(metoclopramide HCl)、メトロニダゾール(metronidazole)、ナブメトン(nabumetone)、ナプロキセン(naproxen)、臭化ネオスチグミン(neostigmine Br)、ナイアシン(niacin)、塩酸ニカルジピン(nicardipine HCl)、ニフェジピン(nifedipine)、ニトロフラントイン (nitrofurantoin)、ニザチジン(nizatidine)、ノルエチンドロン(norethindrone)、ノルトリプチリン(nortriptyline)、塩酸オルフェナドリン(orphenadrine HCl)、オキシプチニン(oxybutynin)、塩酸フェンフォルミン(phenformin HCl)、フェニルブダゾン(phenylbutazone)、フェニトイン(phenytoin)、ピロキシカム(piroxicam)、プレドニゾン(prednisone)、プロベネシド(probenecid)、塩酸プロプラノロール(propranolol HCl)、臭化ピリドスチグミン(pyridostigmine Br)、塩酸ラニチジン(ranitidine HCl)、スピロノラクトン(spironolactone)、スルファメト(sulfameth)、スルピリド( sulpiride)、テノキシカム(tenoxicam)、テルフェナジン(terfenadine)、テオフィリン(theophylline)、塩酸チクロピジン(ticlopidine HCl)、トラザミド(tolazamide)、トラゾリン(tolazoline)、トルブタミド(tolbutamide)、トルフェナム酸(tolfenamic acid)、塩酸トラマドール(tramadol HCl)、トラニルシプロミン(tranylcypromine)、塩酸トラゾドン(trazodone HCl)、トリアムテレン(triamterene)、トリクロルメチアジド(trichlormethiazide)、塩酸トリペレナミン(tripelennamine HCl)、ベラパミル(verapamil)、ワルファリン(warfarin)]を投与した。キナーゼ阻害剤中の11種の候補物質、ホスファターゼ阻害剤中の1種の候補物質、プロドラッグ中の14種の候補物質が細胞外ベシクルによるIL−6の分泌を抑制した。
【0051】
体内におけるIL−6の分泌に対する前記候補薬物の効能を評価した。その結果、腸内大腸菌由来細胞外ベシクルをマウスに5μg腹腔注射して全身性免疫反応を誘導したマウスモデルで前記候補薬物を共に腹腔注射したとき、細胞外ベシクルによって増加する血清内IL−6の量を減少させることを確認した。これは本発明の方法で炎症性疾患治療剤の候補薬物を効率よく選別することができることを示す。
【0052】
細菌感染に対する防御メカニズムとして、T細胞免疫反応とB細胞で生成される抗体反応が重要である。細菌に対する抗体はLPSなどの非タンパク質成分に対する抗体とタンパク質成分に対する抗体に大別され、前者の場合は生成にT細胞の影響を受けないが、後者の場合は生成にT細胞の影響を受ける。T細胞免疫反応はサイトカインの分泌様相によってガンマインターフェロン(IFN−γ)を分泌するTh1、IL−17を分泌するTh17、IL−4/IL−5/IL−13などを分泌するTh2細胞に分類することができ、これらの中でも、細菌に対する防御に重要なものはTh1及びTh17免疫反応であると知られている。細菌に由来する細胞外ベシクルは、細菌が持っている様々なタンパク質だけでなく、免疫反応を亢進させる免疫補強剤を含んでおり、細菌に対するワクチンとして有用でありうる。本発明では、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを投与したとき、細菌に対する免疫反応を誘導することができるかを評価した。このために、大腸菌(EC)及び肺炎桿菌(KP)由来細胞外ベシクルを腹腔に1週間隔で3回注射して免疫反応を評価した。その結果、細胞外ベシクルを投与した場合、それぞれの細菌特異タンパク質に対する抗体が投与回数によって増加し、それぞれの細菌に存在するタンパク質によってT細胞でガンマインターフェロンとIL−17の分泌能が有意に増加した。これは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを投与すると、ベシクルを分泌する細菌タンパク質に対する抗体形成だけでなく、タンパク質特異Th1及びTh17免疫反応を誘導して効率よく細菌感染及び細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療することができることを意味する。
【0053】
実際、ベシクルワクチンを予め投与して免疫反応を誘導することにより、細菌感染及び細胞外ベシクルによる疾病発生に対する予防効果があるかを評価した。このために、腸内共生細菌としての大腸菌と肺炎桿菌を腹腔に注射して敗血症動物モデルを確立した後、前記細菌を腹腔に注入する前に、それぞれ大腸菌と肺炎桿菌由来細胞外ベシクルで免疫反応を誘導した。ベシクルワクチンで免疫反応を誘導した後、大腸菌と肺炎桿菌をそれぞれ腹腔に投与して敗血症による死亡率の発生に対するワクチンの効能を評価した。その結果、それぞれ大腸菌と肺炎桿菌由来ベシクルワクチンを投与した場合、大腸菌と肺炎桿菌の感染による敗血症による死亡率が効率よく抑制された。また、大腸菌由来ベシクルワクチンを投与した場合、大腸菌由来細胞外ベシクルが血管に流入し、血中で分泌されるIL−6の量が著しく減少した。これは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルをワクチンとして免疫反応を誘導する場合、腸内共生細菌感染だけでなく、細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0054】
本発明によって、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによって各種疾病の発生が可能であることを前述した。これは、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが、原因因子が不明な疾病の発生に重要な原因因子であることを意味する。疾病の原因因子を診断する方法を提供するために、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに遺伝物質が存在するかを確認した結果、16S rRNAが存在することを確認したとともに、マウス大便由来細胞外ベシクルの場合、大便に生息する代表的な細菌10種のうち大腸菌(Escherichia Coli)と肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の遺伝物質が存在することを確認した。その上、マウスの腹腔に腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを注入した結果、マウスの各種臓器、小便及び血液から細胞外ベシクルタンパク質の存在を確認した。これは採取が容易な小便、大便及び血液などから遺伝物質及び細胞外ベシクルタンパク質の存在有無を確認し、疾病の原因因子を効率よく診断することが可能な方法を提供する。
【0055】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。ところが、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるもので、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0056】
実施例1:正常マウスの大便から分離した細胞外ベシクルのプロテオーム分析
マウス大便由来細胞外ベシクルを分離するために、5週齢の雄C57BL/6マウスから得た大便25gを生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)2Lに入れ、4℃で16時間懸濁(resuspension)した。この懸濁液を4℃で10,000×gで20分間遠心分離した後、上澄液を取って孔径0.45mmのフィルターに通過させた。このようにバクテリアが除去された通過液は、分子量100kDa以下のタンパク質を除去することが可能な膜(membrane)を装着したQuixStand Benchtop Systemを用いて70mLに約30倍濃縮した。濃縮液を再び4℃、10,000×gで20分間遠心分離して上澄液を得た。この上澄液を、0.5mLの2.5Mスクロース溶液(2.5Mスクロース(sucrose)/20mM HEPES/150mM NaCl、pH7.4)と1mLの0.8Mスクロース溶液(0.8Mスクロース(sucrose)/20mM HEPES/150mM NaCl、pH7.4)が入っている超遠心分離チューブ(ultracentrifuge tube)に仕込み、4℃、100,000×gで4時間超遠心分離した後、2.5Mスクロース溶液と0.8Mスクロース溶液との間に位置した細胞外ベシクル含有層を取った。これをPBSで10倍希釈した後、0.15mLの2.5Mスクロース溶液と0.35mLの0.8Mスクロース溶液が入っている超遠心分離チューブに仕込み、4℃、200,000×gで2時間超遠心分離した。2.5Mスクロース溶液と0.8Mスクロース溶液との間に位置した細胞外ベシクル含有層をPBSで10倍希釈した後、4℃、150,000×gで3時間超遠心分離して沈殿させた。沈殿物を2.2mLの50%Optiprep溶液に懸濁し、超遠心分離チューブに入れた後、その上に2mLの40%Optiprep溶液と0.8mLの10%Optiprep溶液を順次入れた。その後、4℃、200,000×gで2時間超遠心分離し、40%Optiprep溶液と10%Optiprep溶液との間に位置した層から細胞外ベシクルを得た。
【0057】
マウス大便由来細胞外ベシクルのプロテオーム分析のために、イン−ソリューション(in-solution)トリプシンタンパク質分解方法を用いた。マウス大便から前記実施例の方法で分離した細胞外ベシクル50mgを分解溶液(7M尿素(urea)、2Mチオ尿素(Thiourea)、100mM NH4HCO3)で溶かした後、10mM DTTを用いて60℃で45分間還元(reduction)させた。その後、サンプルを常温で冷やした後、55mMヨードアセトアミド(iodoacetamide)を入れ、光を遮断した状態で常温にて30分間タンパク質をアルキル化(alkylation)させた。その後、10μgのトリプシンを処理し、超音波分解(sonication)でトリプシンの活性を高めた後、37℃で12時間反応させた。分解されたペプチドは、OFFGEL fractionators system(Agilent)を用いて分離した。まず、24cmのIPG strip(pH3〜10)をIPG加水化(IPG-rehydration)バッファで加水反応させた。分解されたペプチドを2.8mLのオフゲル(off-gel)バッファに溶かし、その150μLを1レーン(lane)にロードした後、50mA 8000V電圧で40時間電気泳動してペプチドをそれぞれの等電点(pI)によって分離した。分離の後に得たサンプルをPepClean C18 spin columnを用いて脱塩(desalting)した。
【0058】
ナノイオン化質量分析(Nano−LC−ESI−MS/MS)を用いて質量分析を行った。イン−ソリューション分解方法で用意したマウス大便由来細胞外ベシクルの分解ペプチドを、サイズ5mmのC18レジン(resin)が充填されたカラム(75mm×12cm)にロードし、次の方法で分離した:3〜40%バッファB70分、血流速度0.3mL/min(バッファAの組成:0.1%ギ酸(formic acid)in H2O、バッファBの組成:0.1%ギ酸(formic acid)inアセトニトリル(acetonitrile))。分離されたペプチドはLTQ−ion−trap質量分析器(Thermo Finnigan)を用いて分析した。イオン化電気スプレイ(electrospray)の電圧は1.9kVとし、35%の規格化衝突エネルギー(normalized collision energy)条件で質量分析(MS/MS)を行った。全てのスペクトルはデータ依存的スキャン(data-dependent scan)で獲得した。LTQの媒介変数(parameter)はフルマススキャン(full MS scan)で5個の最多スペクトル(most abundant spectrum)を断片化(fragmentation)し、動的排除(dynamic exclusion)の繰り返し回数(repeat count)は1回、反復時間(repeat duration)は30秒、動的排除時間(dynamic exclusion duration)は180秒、排除質量幅(exclusion mass width)は1.5Da、動的排除のリストサイズ(list size)は50に設定した。
【0059】
マウスの腸細胞に由来する細胞外ベシクルに存在するタンパク質の分析のために、既存にアミノ酸塩基配列が構築されたマウスのデータベース(Uniprot)を用いると同時に、腸内バクテリアに由来する細胞外ベシクルに存在するタンパク質の分析のために、腸内に多数存在する属(genus)を代表する10種(species)のバクテリアデータベース(Uniprot)を用いた。それぞれのデータベースを用いて合計11回のデータ分析を行った。MASCOTタンパク質分析エンジンversion2.2(http://www.matrixscience.com)を用いて、質量分析から出た全てのスペクトル(MSスペクトル及びMS/MSスペクトル)を分析した。分析に対する検証はペプチドプロフェット/タンパク質プロフェット(peptide prophet/protein prophet)95%/99%以上と信頼度が高いタンパク質を選別した。それぞれのタンパク質で同定されたペプチドが1つのスペクトルは、直接アミノ酸配列を分析(manual validation)して信頼度を高めた。
図1は前述の方法による、マウスの大便に存在する細胞外ベシクルのプロテオーム分析結果であって、合計295個のタンパク質のうち222個がバクテリア由来タンパク質であった。これらのうち、グラム陰性細菌由来タンパク質が77個、グラム陽性バクテリア由来タンパク質が145個同定された。グラム陰性細菌の場合は主にバクテロイデス・シータイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)、大腸菌K−12(Escherichia coli K-12)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)由来タンパク質であり、グラム陽性細菌の場合は主にウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)由来タンパク質であった。
【0060】
実施例2:正常及び疾病状態のマウス小腸液からの細胞外ベシクルによる炎症性媒介体の分泌
正常及びDSSによって誘導された炎症性腸炎マウスの小腸液から細胞外ベシクルを分離するために、マウスを解剖して小腸を摘出した。摘出された小腸からパイエル板(P eyer's patch)と脂質(lipid)を除去した後、小腸を約5cmの長さに切り取り、横に切開して生理食塩水で洗浄して小腸内の不純物を除去した。不純物の除去された小腸は1cm角に切り取り、30mLの生理食塩水に入れてvortexで5秒間5回ボルテックス(vortexing)した。小腸組織及び不純物は遠心分離して除去し、上澄液から超遠心分離によって細胞外ベシクルを分離した。
【0061】
図2は前述の方法で分離された細胞外ベシクルを透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)によって大略の大きさと形状を示す結果であって、約100nmサイズの球状の細胞外ベシクルを確認することができた。
【0062】
図3及び図4は正常及びDSSにより誘導された炎症性腸炎マウスの小腸液から分離した細胞外ベシクルによって炎症性媒介体としてのIL−6の分泌能を評価するために、マウスマクロファージ(RAW 264.7)に様々な濃度の細胞外ベシクルを処理した結果である。その結果、正常マウスから分離された細胞外ベシクルはIL−6を誘導しなかったが、DSSにより誘導された炎症性腸炎マウスの小腸から分離された細胞外ベシクルは濃度依存的にIL−6の発現を誘導することをELISA(enzyme linked immunosorbent assay)法によって確認した。
【0063】
図5はDSSにより誘導された炎症性腸炎マウスから分離された細胞外ベシクルにグラム陰性細菌由来細胞外ベシクルが含まれているかを評価した結果である。その結果、DSSにより誘導された炎症性腸炎マウスから分離された細胞外ベシクルにグラム陰性細菌の細胞外膜の構成成分であるLPSを拮抗するポリミキシンB(polymyxin B)と共に処理したとき、疾病状態の小腸液に存在する細胞外ベシクルによるIL−6の分泌が抑制された。
【0064】
以上の結果は、炎症性腸疾患の発生に、腸に存在するグラム陰性細菌由来細胞外ベシクルが重要に作用することを意味する。
【0065】
実施例3:CLP敗血症動物モデルの腹腔液から分離した腸内共生細菌としての大腸菌に由来する細胞外ベシクルの特性分析
C57BL/6(雄、6週)マウス1匹の盲腸の端部に18ゲージ(gauge)注射針を2回刺してCLP(ceacal ligation puncture)手術を行った。40時間の後、PBS3mLを5mLの注射器を用いてマウスの腹腔に注射し、よく攪拌した後、さらに腹腔から1mLを回収し、その10μLをLB(Luria Bertani)溶液90μLと混ぜた後、10,000倍希釈してLB寒天プレート(Agar plate)に塗抹して37℃のインキュベータ(incubator)で8時間培養した。多数のコロニー(colonoy)の中から1つを選んで、5mLのLB溶液が入っている試験管に仕込み、37℃のインキュベータで8時間培養し、しかる後に、その10μLをLB溶液90μLと混ぜた後、10,000倍希釈してLB寒天プレートに塗抹して37℃のインキュベータで8時間培養した。前述のコロニーピッキング(picking)過程をもう1回同様に行い、一つのコロニーを得て腸内大腸菌を抽出した。
【0066】
図6は抽出した腸内大腸菌の16S rRNAを分析した結果であって、大腸菌C4(E.coli C4)と同定された。これはヒトの大便から観察される共生細菌である。
【0067】
図7及び図8はそれぞれ抽出したマウス腸内大腸菌を走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)と透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で観察した結果であって、その表面外に30nmサイズの細胞外ベシクルを分泌することが分かる。
【0068】
腸内大腸菌を3mLのLB溶液が入っている試験管に37℃で4時間培養した後、その中で10μLずつを、500mLのLB溶液が入っている2Lの三角フラスコ8個に移して37℃で4時間培養した。培養液を12個の容量350mLの高速遠心分離チューブに分け入れた後、4℃、5000×gで15分間連続的に2回行った。4L程度の上澄液を孔径0.45μmのメンブレインフィルター(membrane filter)を1回通過させた後、100kDa以下の分子のみを通過させることが可能なQuixstand systemを用いて300mLの量まで濃縮した。濃縮液を孔径0.22μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、容量50mLの超遠心分離チューブ(ultracentrifuge tube)に分け入れた後、4℃、150,000×gで3時間超遠心分離(ultracentrifugation)を行った。上澄液は捨て、チューブの底部に存在する沈殿物をPBSで溶かして腸内大腸菌由来細胞外ベシクルを抽出した。
【0069】
図9は腸内大腸菌の細胞外ベシクルの模様と大きさを透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で分析した結果である。細胞外ベシクルが脂質二重層からなっており、20〜100nmのサイズを有し、略球状をしていることが分かる。
【0070】
図10は細胞外ベシクルの透過電子顕微鏡写真10枚に基づいて細胞外ベシクルのサイズ別の分布を示す。サイズ20〜40nmの細胞外ベシクルが全体の半分を占めることが分かる。
【0071】
実施例4:大腸菌由来細胞外ベシクルによるin vitro炎症性媒介体の分泌
1×105個のマウスマクロファージ(RAW 264.7)をそれぞれ24ウェルプレートにシード(seeding)し、24時間後に細胞外ベシクル(0.1、1、10、100、1000ng/mL)又はフェノール(phenol)を用いて腸内大腸菌から抽出したLPS(100、200、500、1000、2000ng/mL)を細胞に処理して37℃のインキュベータで培養した。15時間の後に上澄液を取った後、4℃、500×gで10分間遠心分離し、しかる後に、4℃、3000×gで20分間遠心分離を行った。分離された上澄液に入っているサイトカインの量をELISA法によって測定した。
【0072】
図11及び図12はサイトカインの量を示す結果であって、細胞外ベシクルの量に比例して炎症性媒介体としてのTNF−α(図11参照)、IL−6(図12参照)が増加することが分かる。また、LPSを単独で処理した場合より一層少ない量の細胞外ベシクルによって前記の炎症性媒介体が分泌されることが分かる。これは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが炎症細胞に作用して最も低い濃度でも炎症性媒介体の分泌を誘導することができることを意味する。
【0073】
実施例5:大腸菌由来細胞外ベシクルの局所投与による粘膜炎症及びIL−6の分泌
C57BL/6(雌、6週)マウス実験群と対照群各5匹を用意し、実験群に属したマウスに大腸菌由来細胞外ベシクル1、10、100ngを鼻腔投与した。投与後6時間、12時間に気道粘膜の炎症を測定した。ケタミン(ketamine)とキシラジン(xylazine)を混合した麻酔液をマウス腹腔に投与して麻酔した後、胸部を切開し、気管を露出させてカテーテルを気道に挿入し、結紮させた。PBSを1mLずつ2回注入し、気道を洗浄して気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage、BAL fluid)を得た。気管支肺胞洗浄液を4℃で3000rpmにて10分間遠心分離した後、細胞ペレット(cell pellet)をPBS溶液に溶解させた。前記細胞ペレットを光学顕微鏡で観察して細胞の数を数えた。また、気管支肺胞洗浄液でTh17免疫反応を誘導する炎症性媒介体としてのIL−6をELISA法で測定した。
【0074】
図13は大腸菌由来細胞外ベシクルを鼻腔投与してから6時間、24時間後に気道粘膜の炎症を気管支肺胞洗浄液内の炎症細胞の数で示す図である。大腸菌由来細胞外ベシクルを投与する前に比べて、細胞外ベシクルを投与してから6時間及び24時間後に気管支肺胞洗浄液に炎症細胞の数が顕著に増加した。これは投与した細胞外ベシクルの濃度と関連があった。
【0075】
図14は気管支肺胞洗浄液内IL−6の量をELISA法で測定した図である。大腸菌由来細胞外ベシクルを投与する前に比べて、細胞外ベシクルを投与してから6時間後に気管支肺胞洗浄液内IL−6の量が顕著に増加した。これは投与したベシクルの濃度と関連があった。
【0076】
前記結果より、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが局所的に作用して粘膜に炎症を誘導し、これはTh17免疫反応を特徴とすることが分かる。
【0077】
実施例6:高用量の大腸菌由来細胞外ベシクルの腹腔投与による敗血症
実施例3の方法で分離した細胞外ベシクルをC57BL/6(雄、6週)マウス20匹にそれぞれ15、25、50μgを1回腹腔注射して12時間ごとに死んだマウスの数を確認した。
【0078】
図15は細胞外ベシクルによるマウスの生存曲線を示す。25μg以上の細胞外ベシクル腹腔内投与によって95%のマウスが死亡することが分かる。
【0079】
細胞外ベシクルが敗血症を誘導するかを評価するために、実施例3の方法で分離したマウス腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg)を12時間ごとに3回腹腔に注射した後、敗血症関連指標を分析した。細胞外ベシクルを注射してから6、12、24時間後にマウスの心臓から血液を採取し、4℃、3,500×gで10分間遠心分離した後、上澄液としての血清を取った。
【0080】
図16は血清から敗血症の発生に関連した媒介体の量をELISA法で測定した結果であって、TNF−α、IL−6、IL−1β、IL−12、IFN−γ、IL−10、IL−17などが増加した。
【0081】
また、敗血症の特徴である全身性炎症反応(systemic inflammatory response syndrome、SIRS)を呼吸数、温度、体重、白血球数などの指標によって評価した。
【0082】
図17は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから24時間ごとに呼吸数を測定した結果である。呼吸数はマウスをチャンバー(chamber)に入れ、ネブライザ(nebulizer)を用いて3分間f(frequency of breathing)値によって測定された。その結果、細胞外ベシクルによって、SIRSの指標の一つである呼吸数が増加する現象(頻呼吸)が観察された。
【0083】
図18は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから8時間ごとに3日間体温を測定した結果である。体温は直腸体温計をマウスの肛門に注射して体温計のデジタル画面に出た数値を記録した。その結果、細胞外ベシクルによって、全身性炎症反応の指標である体温が減少する現象(低体温症)が観察された。
【0084】
図19は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから6、12、24時間後に白血球の数を測定した結果である。白血球の数は心臓から血液を採取してEDTA入りのチューブに入れて4℃で保管した後、その10μLの血を90μLの1%塩酸(HCl)に混ぜて25℃で6分間反応させ、その反応液に入っている白血球の数を血球計数器(hematocytometer)によって測定した。その結果、細胞外ベシクルによって、全身性炎症反応の指標である血液内の白血球の数が減少する白血球減少症(leucopenia)が観察された。
【0085】
図20は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから12時間後に総白血球の数とそれぞれの白血球の数を測定した結果である。細胞外ベシクルを注射して12時間後に心臓から血液を採取し、EDTA入りのチューブに入れて4℃で保管した後、血液10μLをスライドに塗抹し、Diff Quick染色を行って光学顕微鏡1000倍視野で300個以上の炎症細胞を観察し、好塩球、リンパ球、好中球、好酸球に分類して各炎症細胞の数を測定した。その結果、総白血球の数が減少し、特にリンパ球の数が減少したが、好中球の数はむしろ増加した。
【0086】
細胞外ベシクルによる重症敗血症が誘導されるかを評価するために、血圧を測定した。
図21は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから24時間ごとに血圧を測定した結果である。マウスをプラットフォーム(platform)にのせた後、尾の血圧をセンサー(sensor)が認識してコンピュータ画面に出力された血圧数値を分析した。その結果、細胞外ベシクルによって血圧が著しく減少することを観察した。
【0087】
前記結果より、大腸菌などの腸内共生細菌に由来する細胞外ベシクルが血管に流入したとき、細胞外ベシクルが敗血症を誘導する重要な原因因子であることが明白である。
【0088】
実施例7:高用量の大腸菌由来細胞外ベシクルの腹腔投与による血液凝固
重症敗血症の状況で観察される血液凝固現象が細胞外ベシクルによって誘導されるかを分析した。播種性血管内血液凝固が発生すると、血小板が減少し、D−dimerの量が増加する。
【0089】
図22は細胞外ベシクル(5μg)を注射してから6、12、24時間後にD−dimerの量を測定した結果である。細胞外ベシクルを腹腔に注射してから6、12、24時間後に心臓から採血してクエン酸ナトリウム(sodium citrate)入りのチューブに入れて4℃で保管した。血液のD−dimerの量をELISA法によって測定した。その結果、12時間後にD−dimerの量が最も多く増加することを確認した。
【0090】
また、血小板の数を測定するために細胞外ベシクルを腹腔に注射した後、6、12、24時間後に心臓から採血し、EDTAチューブに入れて4℃で保管した。血液を1%シュウ酸アンモニウム(ammonium oxalate)で1/200希釈し、10分間湿潤板に反応させた後、血球計数器(hematocytometer)によって血小板の数を測定した。
【0091】
図23は播種性血管内血液凝固の指標である血小板の減少が細胞外ベシクル投与6時間後から現れることを示す結果である。
【0092】
前記結果は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管に吸収されたとき、播種性血管内血液凝固が発生し、これは血液凝固の原因因子として腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが重要であることを意味する。
【0093】
実施例8:大腸菌由来細胞外ベシクルによる血管内皮細胞の活性化及び凝固増進物質(procoagulant molecule)の発現
腸内共生大腸菌由来細胞外ベシクルによる血管内皮細胞の活性化を評価するために、5×105細胞数を有する血管内皮細胞(HUVEC:Human Umbilical Vein Endothelial Cell)を6ウェルプレートにシード(seeding)した後、24時間後に細胞外ベシクル(0.1、1、5、10、20ng/mL)を細胞に処理して37℃のインキュベータで培養した。8時間後に培養液を除去し、PBSで1回洗浄した後、細胞溶解(lysis)溶液を処理して10分間培養(incubation)し、しかる後に4℃、13,000×rpmで10分間遠心分離を行って細胞全体タンパク質を得た。これを5×ローディング染色剤(loading dye、250mM Tris−HCl、10% SDS、0.5%ブロモフェノールブルー(bromophenol blue)、50%グリセロール(glycerol))を最終的に1×となるように仕込み、100℃で10分間処理した。10%ポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel)を用意し、サンプルをロードした。100Vで2時間電気泳動した後、300mAで2時間タンパク質をPVDF(polyvinylidene fluoride)メンブレインでトランスファー(transfer)した。スキムミルク(skim milk)をPBSに3%となるように溶かした後、メンブレインをこの溶液で2時間ブロッキング(blocking)した。ICAM−1とβ−アクチン抗体を4℃で12時間処理した。0.05%Tween20/PBSで3回洗浄した後、それぞれペロキシダーゼ(peroxidase)が付いている二次抗体を室温で1時間処理した。0.05%Tween20/PBSで30分間洗浄した後、ECL(enhanced chemiluminescence、Amersham Co.No.RPN2106)基質(substrate)で確認して細胞外ベシクルを処理した場合、濃度依存的に細胞全体タンパク質の水準でβ−アクチンに比べてICAM−1が増加することを確認した。ICAM−1は、免疫細胞接着タンパク質であって、各種免疫反応の発生及び冠状動脈疾患などの血管内皮細胞の活性化の際に血管内皮細胞で増加して免疫細胞の組織内への浸潤を誘導することがよく知られている。
【0094】
図24より、細胞外ベシクルによって血管内皮細胞が活性化され、ICAM−1が増加することを確認した。
【0095】
腸内共生大腸菌由来細胞外ベシクルによって血液凝固増進物質が誘導されるかを評価するために、5×105細胞数を有する血管内皮細胞(HUVEC、Human Umbilical Vein Endothelial Cell)を6ウェルプレートにシード(seeding)した後、24時間後に細胞外ベシクル(1ng/mL)を細胞に処理して37℃のインキュベータで培養した。12時間後に上澄液を取り、4℃、500×gで10分間遠心分離した後、4℃、3000×gで20分間遠心分離を行った。分離された上澄液に入っている血液凝固増進物質としての組織因子(tissue factor)を測定するために、ELISAプレートに上澄液を100μL仕込んで4℃で12時間コートした後、組織因子(tissue factor)抗体を室温で2時間処理した。0.05%Tween20/PBSで3回洗浄した後、ペロキシダーゼ(peroxidase)が付いている二次抗体を室温で1時間処理した。0.05% Tween 20/PBSで30分間洗浄した後、ECL(enhanced chemiluminescence、Amersham Co.No.RPN2106)基質(substrate)で確認して図25のように細胞外ベシクルを処理した場合、血液凝固増進物質としての組織因子(tissue factor)の分泌が顕著に増加することを確認した。
【0096】
実施例9:高用量の大腸菌由来細胞外ベシクルによる肺炎症及び肺気腫
腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(10μg)をシアニン−7(cyanin-7,cy7)で染色した後、マウスの腹腔に注射した。6時間の後、マウスの全身を分析することが可能なコダックイメージステーション(Kodak image station)を用いて腸内大腸菌由来細胞外ベシクルの位置を確認した。
【0097】
図26はマウス蛍光写真であって、細胞外ベシクルが全身に広がっており、肺にも存在することが分かる。
【0098】
腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(10、20μg)をDiOで染色した後、マウスの腹腔に注射し、6時間後に血液と肺を抽出した。
図27はこの血液と肺からRBC(red blood cell)溶解バッファ(lysis buffer)を用いて赤血球を除去した後、フローサイトメーター(FACS)によって、細胞外ベシクルを含む血液細胞と肺組織細胞の比率を分析した結果である。その結果、蛍光を帯びた細胞の比率が増加した。これは、図26の結果のように細胞外ベシクルが肺を含む全身に広がるにあたり、細胞外ベシクルが細胞に吸収されたボディの周囲に広がることを意味する。
【0099】
肺炎症反応を分析するために、細胞外ベシクル(5μg)を注射してから6、12、24時間後にマウスの肺を摘出して重量を測定した後、65℃のインキュベータで48時間放置し、しかる後に、変化した肺の重量との比率(wet-to-dry ratio)分析によって肺炎症を評価した。
【0100】
図28は肺炎症の指標であるwet−to−dry ratioを示す図であって、細胞外ベシクル腹腔投与の場合、6時間後に肺炎症が発生することを示す。
【0101】
また、細胞外ベシクル(5μg)を注射してから6、12、24時間後にマウスの気管支肺胞洗浄液を取って炎症細胞の数を測定した。ケタミン(ketamine)を含む麻酔液をマウスの腹腔に投与して麻酔した後、胸部を切開し、気管を露出させてカテーテルを気道に挿入し結紮させた。PBSを1mLずつ2回注射し、気道を洗浄して気管支肺胞洗浄液を得た。気管支肺胞洗浄液を4℃、3000rpmで10分間遠心分離した後、沈殿された細胞をPBSに溶かして細胞数を測定した。光学顕微鏡を用いて総炎症細胞数を測定した後、沈殿された細胞をサイトスピン(cytospin)してスライドに塗抹し、Diff Quik染色を行って光学顕微鏡1000倍視野で300個以上の炎症細胞を観察し、マクロファージ、リンパ球、好中球、好酸球に分類して各炎症細胞数を測定した。
【0102】
図29は気管支肺胞洗浄液内の炎症細胞の数を示すグラフであって、細胞外ベシクルによって炎症細胞の数が増加し、特にマクロファージの数が顕著に増加することが分かる。
【0103】
細胞外ベシクル(5μg)を注射してから6、12、24時間後に肺を摘出し、4%ホルムアルデヒド(formaldehyde)に入れて固定(fixing)させた後、切片を作ってヘマトキシリン−エオシン(hematoxylin-eosin)で染色して光学顕微鏡で観察したイメージを図30に示した。細胞外ベシクルによって肺胞が顕著に破壊された所見が観察された。これは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによって肺炎症と共に肺気腫が発生することを意味する。
【0104】
前記結果は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが血管を介して様々な臓器に分布して炎症と共に組織損傷を誘導する結果であって、原因因子が不明な炎症疾患の原因因子として腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが重要であることを意味する。
【0105】
実施例10:長期間の低用量の大腸菌由来細胞外ベシクルの腹腔投与による高血圧及び骨粗しょう症の誘導
低用量の腸内大腸菌由来細胞外ベシクルに繰り返し露出したときに慢性疾患が誘導されるかを評価するために、細胞外ベシクル(0.1、1μg)を週2回18週間腹腔に注入した。
【0106】
図31は低用量の腸内大腸菌由来細胞外ベシクルに繰り返し露出したときの血圧の変化を示す図であって、細胞外ベシクルによって高血圧が発生することを示す。
【0107】
低用量の腸内大腸菌由来細胞外ベシクルに繰り返し露出したときに骨粗しょう症が発生するかを評価するために、細胞外ベシクル(1μg)を週2回18週間腹腔注入した後、マウスの脚から長骨(long bone)を得た。1日間固定液に固定させ、固定液にあった骨を食塩水で2回洗浄した後、30、50、70、90、100%エタノールに1時間ずつ順次浸して脱水した。脱水過程を経た骨は、プロピレンオキシド(propylene oxide)という置換剤に1時間ずつ2回浸してポリマーとの置換を準備した。置換剤とポリマーの比率を3:1、1:1、1:3に漸次増やしてポリマーとの置換を行った。最後に残っている置換剤はフードで空気中に飛ばした後、ポリマーのみからなる溶液に骨を浸し、しかる後に、65℃のオーブンで1日間重合過程を行った。骨サンプルのX線断層撮影法(x-ray tomography)のイメージは全てポハン加速器7B2ビームライン(7B2 bemline at Pohang Light Source、PLS)の放射光X線顕微鏡(Synchroton radiaton X−ray microscopy)によって獲得した。ポリマー埋め込み(polymer embedding)された骨を放射光X線顕微鏡のサンプルステージにのせた後、180°の回転によって全て1200枚のイメージを得た。サンプルステージとシンチレーター(scintillator)との距離は10cmであって、放射光X線顕微鏡の吸収効果(absorption contrast effect)を主に用いてイメージを得た。得たイメージはOctopusとAmiraプログラムを介して3次元イメージ構築(3D reconstruction)した。1200枚中の代表的な切断面のイメージ(tomographic slice image)の比較を行った。
【0108】
図32は長期間にわたった低用量の細胞外ベシクルの吸収によって骨の連結構成が破れることを特徴とする骨粗しょう症が発生したことを示す。
【0109】
前記結果は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルが長期間反復的に血管に吸収されて全身的に分布したときに高血圧、骨粗しょう症などの慢性疾患を誘導するおそれがあることを意味する。
【0110】
実施例11:大腸菌由来細胞外ベシクルによる敗血症及び肺気腫の発生に対するIL−6の役目
実施例3の方法で分離したマウス腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(25μg)をそれぞれ正常マウス(C57BL/6、雄、6週)とIL−6欠乏(ノックアウト、knock out)マウス(C57BL/6、雄、6週)に1回腹腔注射して12時間ごとに死んだマウスの数を確認し、生存率を図33に示した。IL−6欠乏マウスでは、正常マウスとは異なり、25μgの細胞外ベシクルによって死亡が誘導されなかった。
【0111】
細胞外ベシクル(5μg)を12時間3回ずつ注射してから6、12、24時間後に肺を摘出し、実施例9の方法で肺の病理所見を分析した。図34は肺の切片の写真であって、正常マウスとは異なり、IL−6欠乏マウスでは細胞外ベシクルによって肺組織細胞が全く破壊されないことが分かる。
【0112】
前記結果は、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる敗血症の発生だけでなく、様々な臓器の炎症疾患への発生にIL−6が重要な媒介体であることを意味する。
【0113】
実施例12:腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療候補薬物in vitroスクリーニングシステムの確立
前記実施例らに基づいて、マウス腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより誘導される炎症性サイトカインが各種疾病に大きく関与することを確認した。これは、炎症性媒介体、特にIL−6の分泌を抑制することが可能な物質を発掘することが腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療候補薬物の選別において重要であることを意味する。
【0114】
図35は腸内共生細胞由来細胞外ベシクルによるIL−6の分泌を抑制する物質を発掘するための模式図であって、実施例3の方法で分離した腸内共生細菌としての大腸菌由来細胞外ベシクル(100ng/mL)を単独で或いは薬物候補物質(10μM)と共に、実施例4のように準備したマウスマクロファージ(RAW 264.7)に処理した後、37℃のインキュベータで15時間培養した。15時間後に上澄液を取り、4℃、500×gで10分間遠心分離した後、4℃、3000×gで20分間遠心分離を行った。分離された上澄液に入っているIL−6の量をELISA法によって測定した。これはin vitroで腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより誘導されるIL−6の分泌を抑制する候補物質をスクリーニングする方法を確立したものである。これにより、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病に対する予防又は治療候補薬物を提供することができる。
【0115】
実施例13:In vitroスクリーニングシステムで発掘したキナーゼ阻害剤のin vitro抗炎症効果
実施例12の方法によってマウスマクロファージ(RAW 264.7)に培養液のみを処理した群(陰性対照群)、腸内大腸菌由来細胞外ベシクル(0.1μg/mL)のみを培養液に混ぜて処理した群(陽性対照群)、及び80種のキナーゼ阻害剤[キナーゼ阻害剤ライブラリー(kinase inhibitor library)、BIOMOL No.2832: PD−98059、U−0126、SB−203580、H−7、H−9、AG−494、AG−825、ラベンダスチンA(Lavendustin A)、RG−14620、チルホスチン23(Tyrphostin 23)、チルホスチン25(Tyrphostin 25)、チルホスチン46(Tyrphostin 46)、チルホスチン47(Tyrphostin 47)、チルホスチン51(Tyrphostin 51)、チルホスチン1(Tyrphostin 1)、チルホスチン9(Tyrphostin 9)、チルホスチンAG1288(Tyrphostin AG 1288)、チルホスチンAG1478(Tyrphostin AG 1478)、チルホスチンAG1295(Tyrphostin AG 1295)、HNMPA、ダムナカンタール(Damnacanthal)、ピセタノール(Piceatannol)、AG−490、AG−126、AG−370、AG−879、LY294002、ウォルトマンニン(Wortmannin)、GF109203X、ヒペリシン(Hypericin)、スフィンゴシン(Sphingosine)、H−89、H−8、HA−1004、HA−1077、HDBA、KN−62、KN−93、ML−7、ML−9、2−アミノプリン(2-Aminopurine)、N9−イソプロピル−オロモウシン(N9-Isopropyl-olomoucine)、オロモウシン(Olomoucine)、イソ−オロモウシン(iso-olomoucine)、ロスコビチン(Roscovitine)、LFM−A13、SB−202190、ZM336372、SU4312、AG−1296、ロットレリン(Rottlerin)、ゲニステイン(Genistein)、ダイアゼイン(Daiazein)、エルブスタチンアナログ(Erbstatin analog)、クエルセチン二水和物(Quercetin dihydrate)、SU1498、ZM449829、DRB(5,6-Dichloro-1-b-D-ribofuranosylbenzimidazole)、HBDDE (2,2',3,3',4,4'-Hexahydroxy-1,1'-biphenyl-6,6'-dimethanol dimethyl ether)、インジルビン(Indirubin)、インジルビン−3’−モノオキシム(Indirubin-3'-monoxime)、Y−27632、ケンパウロン(Kenpaullone)、テレイン酸(Terreic acid)、BML−257、BML−259、アピゲニン(Apigenin)、BML−265(Erlotinib analog)、ラパマイシン(Rapamycin)]それぞれを10μM濃度で前述と同量の細胞外ベシクルと共に培養液に混ぜて処理した群を用いて実験を行った。処理15時間後に培養液におけるIL−6の量をサンドイッチELISA法で測定した。
【0116】
各キナーゼ阻害剤を処理した場合に測定したIL−6の量を、陽性対照群で測定したIL−6の量と比較した百分率を図36に示した。
その結果、80余種のキナーゼ阻害剤のうち、11種の物質(4; H−7、29;LY294002、31;GF109203X、42;ML−7、43; ML−9、64;ZM449829、66;DRB(5,6-Dichloro-1-b-D-ribofuranosylbenzimidazole)、70;インジルビン−3’−モノオキシム(Indirubin-3'monoxime)、72;ケンパウロン(Kenpaullone)、77;BML−259、78;アピゲニン(Apigenin))がIL−6の量を陽性対照群の50%未満に減少させることを確認することができる。
【0117】
図37は前記キナーゼ阻害剤のうちダムナカンタール(Damnacanthal)、LY294002、GF109203Xを単独又は2種以上の組み合わせで(この際、処理した各ドラッグ(drug)の濃度は10mmを維持する)細胞外ベシクル(100ng/mL)と同時に処理する場合の細胞培養液内のIL−6の量を測定した結果であって、2種以上を同時に処理したときにIL−6分泌抑制効果が顕著に増大することを確認した。
【0118】
実施例14:In vitroスクリーニングシステムで発掘したホスファターゼ阻害剤のin vitro抗炎症効果
図38は実施例13の方法で30種のホスファターゼ阻害剤[phosphatase inhibitor、ホスファターゼ阻害剤ライブラリー(phosphatase inhibitor library) 、BIOMOL No.2834:カンタリジン酸(Cantharidic acid)、カンダリジン(Cantharidin)、エンドサル(Endothall)、ベンジルホスホン酸(Benzylphosphonic acid)、シュウ酸L−p−ブロモテトラミゾール(L-p-Bromotetramisole oxalate)、RK−682、RWJ−60475、RWJ−60475(AM)3、塩酸レバミゾール(Levamisole HCl)、塩酸テトラミゾール(Tetramisole HCl)、シペルメトリン(Cypermethrin)、デルタメトリン(Deltamethrin)、フェンバレラート(Fenvalerate)、チルホスチン8(Tyrphostin 8)、CinnGEL、CinnGEL 2 Me、BN−82002、シコニン(Shikonin)、NSC−663284、シクロスポリンA(Cyclosporin A)、ペンタミジン(Pentamidine)、BVT−948、B4−ロダニン(B4-Rhodanine)、BML−268、ジオキソフェナントレン(Dioxophenanthrene)、BML−260、PD−144795、BML−267、BML−267 Ester、OBA、OBA Ester、ゴシポール(Gossypol)、アレンドロネート(Alendronate)]を処理してIL−6の量を陽性対照群の50%未満に減少させる薬物候補物質を検索してPD−144795を発掘した結果である。
【0119】
図39はPD−144795を0.1、1、5、10μM濃度で含み、腸内大腸菌由来細胞外ベシクルを100ng/mLの濃度で含む培養液を用意し、実施例13の方法と同様にマウス由来マクロファージに処理して濃度依存的にIL−6の分泌が抑制されることを確認した結果である。
【0120】
実施例15:In vitroスクリーニングシステムで発掘したプロドラッグのin vitro抗炎症効果
図40は実施例13の方法で100種のプロドラッグ[プロドラッグ:アセトアミノフェン(acetaminophen)、アセチルシステイン(acetylcysteine)、アロプリノール(allopurinol)、塩酸アルプレノロール(alprenolol HCl)、塩酸アミトリプチリン(amitriptyline HCl)、アトロピン(atropine)、ブレチリウムトシレート(bretylium tosylate)、ブロモフェニラミン(bromopheniramine)、ブデソニド(budesonide)、塩酸ブスピロン(buspirone HCl)、セフロキシム(cefuroxime)、 抱水クロラール(chloral hydrate)、塩酸クロルプロマジン(chlorpromazine HCl)、シメチジン(cimetidine)、塩酸クロミプラミン(clomipramine HCl)、 クロトリマゾール(clotrimazole)、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、塩酸デシプラミン(desipramine HCl)、ジクロフェナク(diclofenac)、ジフルニサル(diflunisal)、ジルチアゼム(diltiazem)、塩酸ジフェンヒドラミン(diphenhydramine HCl)、ジソピラミン(disopyramine)、ジスルフィラム(disulfiram)、D−マンニトール(D-mannitol)、ドキセピン(doxepin)、ドキシサイクリン水和物(doxycycline hydrate)、コハク酸ドキシラミン(doxylamine succinate)、塩化エドロホニウム(edrophonium chloride)、マレイン酸エナラプリル(enalapril maleate)、ファモチジン(famotidine)、フェンブフェン(fenbufen)、フェノフィブラート(fenofibrate)、フェノプロフェンカルシウム塩水和物(fenoprofen calcium salt hydrate)、フルナリジン二塩酸塩(flunarizine dihydrochloride)、フルフェナジン二塩化物(fluphenazine dichloride)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、フロセミド(furosemide)、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)、グリクラジド(gliclazide)、グリピジド(glipizide)、ハロペリドール(haloperidol)、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)、ヒドロフルメチアジド(hydroflumethiazide)、塩酸ヒドロキシジン(hydroxyzine HCl)、イブプロフェン(ibuprofen)、塩酸イミプラミン(imipramine HCl)、インダパミド(indapamide)、インドール−2カルボン酸(indole-2-carboxylic acid)、 インドメタジン(indomethacin)、イプラトロピウム(ipratropium)、ケトプロフェン(ketoprofen)、ケトロラックトリス塩(ketorolac tris salt)、塩酸マプロチリン(maprotiline HCl)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、メラトニン(melatonin)、メトホルミン(metformin)、塩酸メタピリレン(methapyrilene HCl)、メチマゾール(methimazole)、メトカルバモール(methocarbamol)、塩酸メトクロプラミド(metoclopramide HCl)、メトロニダゾール(metronidazole)、ナブメトン(nabumetone)、ナプロキセン(naproxen)、臭化ネオスチグミン(neostigmine Br)、ナイアシン(niacin)、塩酸ニカルジピン(nicardipine HCl)、ニフェジピン(nifedipine)、ニトロフラントイン (nitrofurantoin)、ニザチジン(nizatidine)、ノルエチンドロン(norethindrone)、ノルトリプチリン(nortriptyline)、塩酸オルフェナドリン(orphenadrine HCl)、オキシプチニン(oxybutynin)、塩酸フェンフォルミン(phenformin HCl)、フェニルブダゾン(phenylbutazone)、フェニトイン(phenytoin)、ピロキシカム(piroxicam)、プレドニゾン(prednisone)、プロベネシド(probenecid)、塩酸プロプラノロール(propranolol HCl)、臭化ピリドスチグミン(pyridostigmine Br)、塩酸ラニチジン(ranitidine HCl)、スピロノラクトン(spironolactone)、スルファメト(sulfameth)、スルピリド( sulpiride)、テノキシカム(tenoxicam)、テルフェナジン(terfenadine)、テオフィリン(theophylline)、塩酸チクロピジン(ticlopidine HCl)、トラザミド(tolazamide)、トラゾリン(tolazoline)、トルブタミド(tolbutamide)、トルフェナム酸(tolfenamic acid)、塩酸トラマドール(tramadol HCl)、トラニルシプロミン(tranylcypromine)、塩酸トラゾドン(trazodone HCl)、トリアムテレン(triamterene)、トリクロルメチアジド(trichlormethiazide)、塩酸トリペレナミン(tripelennamine HCl)、ベラパミル(verapamil)、ワルファリン(warfarin)]を処理してIL−6の量を陽性対照群の80%未満に減少させる候補物質14種(10;アミトリプチリン(Amitriptyline)、39;シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、41;デシプラミン(Desipramine)、54;ドキセピン(Doxepin)、72;二塩化フルフェナジン(Fluphenazine dichloride)、82;ハロペリドール(Haloperidol)、89;イミプラミン(Imipramine)、101;マプロチリン(Maprotiline)、132;オルフェナドリン(Orphenadrine)、165;テルフェナジン(Terfenadine)、173;トルフェナム酸(Tolfenamic acid)、179;ドラゾドン(Trazodone)、187;トリクロルメチアジド(Trichlormethiazide)、188;ベラパミル(Verapamil))を発掘した結果である。
【0121】
図41は前記in vitroスクリーニングシステムによって発掘した14種のプロドラッグをマウス腹腔由来マクロファージにex vivoで処理してIL−6減少効果を示した11種のプロドラッグ(10;アミトリプチリン(Amitriptyline)、39;シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、41;デシプラミン(Desipramine)、54;ドキセピン(Doxepin)、72;二塩化フルフェナジン(Fluphenazine dichloride)、82;ハロペリドール(Haloperidol)、89;イミプラミン(Imipramine)、101;マプロチリン(Maprotiline)、132;オルフェナドリン(Orphenadrine)、165;テルフェナジン(Terfenadine)、173;トルフェナム酸(Tolfenamic acid)、179;塩酸ドラゾドン(Trazodone HCl)を確認した結果である。
【0122】
実施例16:In vitroスクリーニングシステムで発掘したプロドラッグのin vivo抗炎症効果
実施例15で発掘したプロドラッグが体内で抗炎症効果を示すかを評価した。このために、実施例6のように腸内大腸菌由来細胞外ベシクルをC57BL/マウス(雄、6週、グループ当たり4匹)に5μg腹腔注射して敗血症を誘導したマウスモデルから、前記発掘したプロドラッグのうちハロペリドール(Haloperidol)とドキセピン(Doxepin)をそれぞれ10mg/kgの用量で腹腔注射して6時間後に血清を得た。
【0123】
図42は血清でIL−6の量をELISA法によって定量した結果であって、腸内大腸菌由来細胞外ベシクルによる炎症性媒介体としてのIL−6の分泌が、血液内でin vitroスクリーニングシステムによって発掘したハロペリドールとドキセピン投与によって効率よく抑制されることを示す結果である。
【0124】
前記結果より、実施例12で記述した腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いたin vitro薬物スクリーニングシステムが非常に効率的な方法であり、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより誘導される各種疾病を予防又は治療することが可能な薬物を効率よく選別することができることが明白である。
【0125】
実施例17:大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの免疫学的特性
実施例3の方法によって分離した大腸菌由来細胞外ベシクル1mgを1週間隔で3週間3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり10匹)の腹腔に注入した。毎注入6時間、24時間、7日後にマウス血液を得て、血液内に存在する細胞外ベシクル特異的な抗体を測定した。大腸菌由来ベシクル200ngがコートされた黒色の96ウェルプレートに、1% BSA/PBSで1:500希釈されたマウス血清を入れ、常温で2時間培養した後、ペロキシダーゼ(peroxidase)が結合されたマウス抗体を用いて観察した。
【0126】
図43はマウス血液内大腸菌由来細胞外ベシクル特異的な抗体の量を経時的に観察した結果である。細胞外ベシクル特異抗体は1回細胞外ベシクル投与7日後から形成され始め、2番目と3番目の細胞外ベシクル投与後にさらに多くの抗体が形成され、3番目のベシクルワクチン接種完了7日後に最も高い抗体形成程度を示した。
【0127】
前記の方法で3回の大腸菌由来細胞外ベシクル接種が完了してから7日後にマウスから脾臓細胞を分離した。分離された脾臓細胞(2×104)に大腸菌由来細胞外ベシクル100ngを入れて72時間培養した後、脾臓細胞が分泌する免疫反応関連サイトカインとしてのIFN−γ、IL−17、IL−4の量をそれぞれELISA法で測定した。
【0128】
図44はマウス脾臓細胞に大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIFN−γの量を示す結果である。大腸菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループから得た脾臓細胞に比べて、細胞外ベシクルを接種したマウスから得た脾臓細胞からのIFN−γの分泌が増加した。
【0129】
図45はマウス脾臓細胞に大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIL−17の量を示す結果である。大腸菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループから得た脾臓細胞に比べて、細胞外ベシクルを接種したマウスから得た脾臓細胞からのIL−17の分泌が増加した。
【0130】
図46はマウス脾臓細胞に大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIL−4の量を示す結果である。大腸菌由来細胞外ベシクルの接種は脾臓細胞のIL4の分泌には影響がなかった。
【0131】
前記結果より、大腸菌由来細胞外ベシクル接種の際に細菌感染に対する防御メカニズムとしての、B細胞で生成される抗体反応とT細胞免疫反応が誘導されることを確認した。特に、T細胞免疫反応は、細菌感染に対する防御に重要な、IFN−γを分泌するTh1免疫反応とIL−17を分泌するTh17免疫反応が大腸菌由来細胞外ベシクルの接種によって効率よく誘導された。
【0132】
実施例18:大腸菌感染による敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能
大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を評価するために、大腸菌感染による敗血症動物モデルを確立した。大腸菌1×106、1×108、1×1010CFUをC57BL/6(雄、6週、グループ当たり10匹)の腹腔に注入して5日間8時間の間隔でマウスの生存率を観察した。
【0133】
図47は大腸菌感染によるマウスの致死率を示す結果である。すなわち、大腸菌1×1010CFUを注入した場合はマウスが24時間内に死亡し、大腸菌1×106、1×108CFUを注入した場合はマウスの生存には影響がなかった。
【0134】
実施例17の方法によって大腸菌由来細胞外ベシクル0.5、1μgを1週間隔で3週間3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり10匹)の腹腔に注入した。3回の大腸菌由来細胞外ベシクルの接種が完了してから7日後に、大腸菌1×1010CFUを腹腔に注入して5日間8時間の間隔でマウスの生存率を観察した。
【0135】
図48は図47で確立された大腸菌感染による敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察した結果である。5日後、大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されていないマウスの生存率20%に比べて、大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスグループの生存率は80〜100%であった。
【0136】
図48の方法によって、大腸菌由来細胞外ベシクル1μgを1週間隔で3回腹腔接種した後、大腸菌1×1010CFUをマウスの腹腔に注入して6時間後に、腹水と血液内の大腸菌数を測定して図49に示した。また、血清内IL−6の量をELISA法で測定して図50に示し、肺組織のイメージを図51に示した。
【0137】
図49は大腸菌由来細胞外ベシクル接種の際に感染した大腸菌CFUの変化を示す結果である。大腸菌感染の際に、大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されていないマウスから得た血液と腹水に比べて、ベシクルが接種されたマウスの血液及び腹水における大腸菌の数が顕著に減少した。
【0138】
図50は大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスに大腸菌1×108CFUを感染させて6時間後に、血清内に存在するIL−6の量を測定した結果である。大腸菌に感染したマウス血清内炎症性サイトカインIL−6の量が顕著に増加するが、大腸菌由来細胞外ベシクルで予防接種したマウスの血清内IL−6の量は急激に減少した。
【0139】
図51は大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスに大腸菌を感染させて6時間後に、マウスから肺を抽出して肺組織の状態を確認した結果である。大腸菌感染の際に、肺組織細胞が多く破壊される現象が観察されるが、大腸菌由来細胞外ベシクルで予防接種したグループの肺病理組織は正常マウスに類似した形態を示した。
【0140】
前記結果は、腸内共生細菌としての大腸菌に由来する細胞外ベシクルをワクチンとして予め投与したとき、大腸菌による感染及び病理を効率よく予防することができることを意味する。
【0141】
実施例19:大腸菌由来細胞外ベシクルによる敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能
実施例17の方法によって大腸菌由来細胞外ベシクル1μgを1週間隔で3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり5匹)の腹腔に注入した後、実施例6の方法によって確立された大腸菌由来細胞外ベシクルによる敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察した。大腸菌由来細胞外ベシクルの予防接種が完了してから7日後、大腸菌由来細胞外ベシクル5μgを12時間間隔で3回腹腔に注入して敗血症関連指標を分析した。
【0142】
図52〜図54は実施例6で確立された大腸菌由来細胞外ベシクルによる敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察した結果である。
【0143】
図52は大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスに大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg、3回)を注入してから6時間後、マウス血液を採取して血清内サイトカインとしてのIFN−γを測定した結果である。大腸菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループに比べて、大腸菌由来細胞外ベシクルを接種したグループの血清内IL−6の量は顕著に減少した。
【0144】
図53は敗血症に関連した全身性炎症反応の中での温度を測定した結果である。大腸菌由来細胞外ベシクル5μgの3回注入で低体温症が誘導されるが、予め大腸菌由来細胞外ベシクル1μgを1週間隔で3回接種すると、正常マウスと同様の体温を維持した。
【0145】
図54は重症敗血症の状況で観察される血小板減少現象を観察した結果である。大腸菌由来細胞外ベシクル5μgの3回注入で血小板の数が減少するが、予め大腸菌由来細胞外ベシクル1μgを1週間隔で3回接種すると、血小板の減少程度が減った。
【0146】
前記結果は、腸内共生細菌としての大腸菌に由来する細胞外ベシクルをワクチンとして予め投与したとき、大腸菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0147】
実施例20:肺炎桿菌由来細胞外ベシクルワクチンの免疫学的特性
実施例3の方法で分離した肺炎桿菌由来細胞外ベシクル100ng、1mgを5日間隔で3回C57BL/6(雄、グループ当たり5匹)の腹腔に注入した。最後接種3日後にマウスの血液を採取し、血液内に存在する肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異的な抗体を確認して図55に示したとともに、脾臓を採取した後、脾臓内T細胞を分離してサイトカインとしてのIFN−γ、IL−17を測定した結果を図56に示した。
【0148】
図55は肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを接種したマウスから採取した血液内に肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異的な抗体が存在することを示す結果である。肺炎桿菌由来細胞外ベシクルの濃度に比例してベシクル特異抗体が形成された。
【0149】
図56は脾臓から採取したT細胞に肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを処理したときのCD3+CD4+IFN−γ+T細胞を示す結果である。肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループに比べて、細胞外ベシクルを接種したグループでCD3+CD4+IFN−γ+T細胞が増加した。
【0150】
図57は脾臓から採取したT細胞に肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを処理したときのCD3+CD4+IL−17+T細胞を示す結果である。肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループに比べて、細胞外ベシクルを接種したグループでCD3+CD4+IL−17+T細胞が増加した。
【0151】
図55〜図57に示すように、肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを接種したとき、細菌感染に対する防御メカニズムとしての、B細胞で生成される抗体反応とT細胞免疫反応が誘導された。特に、T細胞免疫反応の中でも、細菌感染に対する防御に重要な、IFN−γを分泌するTh1免疫反応とIL−17を分泌するTh17免疫反応がベシクルワクチンによって効率よく誘導された。
【0152】
実施例21:肺炎桿菌感染による敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能
肺炎桿菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を評価するために、肺炎桿菌感染による敗血症動物モデルを確立した。肺炎桿菌1×106、1×107、1×108CFUをC57BL/6(雄、6週、グループ当たり5匹)の腹腔に注入して5日間8時間の間隔でマウスの生存率を観察した。
【0153】
図58は肺炎桿菌感染によるマウスの致死率を示す結果である。すなわち、肺炎桿菌1×108CFUを注入した場合はマウスが24時間内に死亡し、大腸菌1×106、1×107CFUを注入した場合はマウスの生存には影響がなかった。
【0154】
肺炎桿菌の感染に対する肺炎桿菌由来細胞外ベシクルの効能を評価するために、細胞外ベシクル1μgを5日間隔で3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり5匹)の腹腔に注入した。3回の肺炎桿菌由来細胞外ベシクルの接種が完了してから3日後、肺炎桿菌1×108CFUを腹腔に注入して5日間8時間の間隔でマウスの生存率を観察した。
【0155】
図59は前記の方法で確立された肺炎桿菌感染による敗血症の発生に対する肺炎桿菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察した結果である。肺炎桿菌感染5日後、肺炎桿菌由来細胞外ベシクルが接種されていないマウスの生存率は40%であったが、これに対し、肺炎桿菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスグループの生存率は100%であった。
【0156】
前記結果は、腸内共生細菌としての肺炎桿菌に由来する細胞外ベシクルをワクチンとして予め投与したとき、肺炎桿菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病を効率よく予防することができることを意味する。
【0157】
実施例22:大腸菌及び肺炎桿菌由来細胞外ベシクルワクチンの併合投与時の免疫学的特性
実施例3の方法によって分離した大腸菌由来細胞外ベシクル、肺炎桿菌由来細胞外ベシクル1mg、大腸菌及び肺炎桿菌由来細胞外ベシクル各1mgを5日間隔で2回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり5匹)の腹腔に注入した。細胞外ベシクル接種3日後に血液を採取した後、細胞外ベシクルがコートされた黒色の96ウェルプレートに、1:500で希釈された血清を入れ、常温で2時間培養した。
【0158】
図60は大腸菌由来細胞外ベシクル特異的な抗体の形成を示す結果である。大腸菌と肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを併合投与したとき、大腸菌由来細胞外ベシクル特異抗体の形成が大腸菌由来細胞外ベシクルの単独投与に比べて増加した。
【0159】
図61は肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異的な抗体の形成を示す結果である。大腸菌と肺炎桿菌由来細胞外ベシクルを併合投与したとき、 肺炎桿菌由来細胞外ベシクル特異抗体の形成が肺炎桿菌由来細胞外ベシクルの単独投与に比べて増加した。
【0160】
前記結果は、腸内共生細菌としての大腸菌と肺炎桿菌に由来する細胞外ベシクルを混合してワクチンとして予め投与したとき、大腸菌及び肺炎桿菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病だけでなく、大腸菌及び肺炎桿菌による感染を効率よく予防することができることを意味する。
【0161】
実施例23:腸内共生細菌由来細胞外ベシクルの遺伝物質塩基配列の分析
C57BL/6(6週、雄)マウス及びBALB/c(6週、雄)マウスの大便を採取して細胞外ベシクルを分離した後、それぞれ10μgの細胞外ベシクルに全体8μLの体積となるように3次蒸留水を追加した。各ベシクルに2μLのランダムデカマー(random decamer、Ambion、5722G)を添加し、95℃で10分、75℃で10分培養した後、4℃で保管した。ランダムデカマーを処理した各サンプルにAMV逆転写酵素(Promega、M510F)3μL、AMV逆転写酵素バッファ(Progema、M515A)4μL、10mM dNTP 2μL、RNase抑制剤(Promega、N211B)1μLを処理し、10分間25℃で反応させた後、2時間37℃で反応させた。AMV逆転写酵素を処理した各20μLのサンプルのうち1μLを用いて16S rRNA遺伝子をPCRで確認した。PCRのために、サンプル1μLにTaq酵素(NEB、M0273S)0.5μL、Taq酵素バッファ(NEB、B9014S)2μL、10mM dNTP1μL、10pM バクテリアのユニバーサルフォワードプライマー(bacterial universal forward primer)1μL(5’aaggcgacgatccctagctg−3’)、10pM バクテリアのユニバーサルリバースプライマー(bacterial universal reverse primer)1μL(5’ttgagcccggggatttcaca−3’)、3次蒸留水13.5μLを入れて混合した。混合物を95℃で2分反応させた後、95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で45秒間反応させる過程を45回繰り返し行った。最後に72℃で5分間反応させた後、ソルゼント(株)(大田広域市儒城区花岩洞63−10)に依頼してPCR結果物をシークエンシングし、C57BL/6を対象とした図62の結果及びBALB/cを対象とした図63の結果を得た。
【0162】
図62及び図63に示すように、100〜120番目、150〜190番目の核酸部分で多重ピーク(peak)が現れることからみて、様々な細菌に由来する16S rRNAが混ぜられていることが分かる。これにより、多数の細菌に由来する細胞外ベシクルが大便由来細胞外ベシクルに存在することを確認することができる。NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene)から得た細菌の16S rRNA塩基配列と多重ピーク(peak)を考慮したシークエンシング結果を比較したところ、図1の大便に生息する代表的な細菌10種のうち大腸菌(Escherichia coli)と肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の存在可能性が確認された。
【0163】
腸内大腸菌由来細胞外ベシクルに16S rRNA遺伝物質が存在することを確認するために、細胞外ベシクル10μgに対して前述の方法でRT−PCRを行った。陰性対照群(Negative control)は3次蒸留水を使用し、陽性対照群(Positive control)は腸内大腸菌をO.D.値1.0まで培養した後、1μLを使用した。RT−PCR結果物20μLに5X Green GoTaq Flexi Buffer(Promega、M891A)5μLを混ぜた後、その5μLを2%アガロースゲル(agarose gel)にロード(loading)した。100Vで30分ゲルランニング(gel running)し、ゲル(gel)を10分間0.005%EtBr溶液に浸した後、紫外線に露出させた状態で写真を撮った。
【0164】
その結果、図64のように陽性対照群(positive control)と同様のバンド(band)を結果として得、これにより腸内大腸菌由来細胞外ベシクルに16S rRNA遺伝子又はそれに由来するRNAトランスクリプト(transcript)が存在していることが分かる。
【0165】
実施例24:組織及び体液からの腸内共生細菌由来細胞外ベシクルタンパク質の確認
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルをC57BL/6(6週、雄、グループ当たり3匹)マウスに25μg腹腔注射し、6時間後にマウスの臓器及び体液を摘出して細胞外ベシクルタンパク質の存否を細胞外ベシクルに対する抗体を用いてELISA法で確認した。マウスの摘出臓器を液体窒素の存在下に乳鉢で擂った後、RIPA溶液(50mM Tris(pH7.5)、1% NP−40、0.25% Na−デオキシコール酸塩(Na-Deoxycholate)、100mM NaCl、1mM EDTA、プロテアーゼ阻害剤(protease inhibitor))を入れて溶解(lysis)させて4℃で13,000rpmにて10分間遠心分離することによりタンパク質を得た。体液は前記実施例5及び6と同様の方法で得た。
【0166】
図65は腹腔注射した細胞外ベシクルが各種臓器及び腹腔洗浄液(peritoneal fluid、PF)、小便、血液に存在することを示す結果である。これは細胞外ベシクルによる炎症性疾患を、採取が容易な体液、例えば小便及び血液などを用いて診断することができることを示唆する結果である。
【0167】
前述した本発明の説明は例示のためのものである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想又は必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解することができるであろう。よって、上述した実施例は全ての面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明の腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いて、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾患を予防或いは治療することが可能な薬物を効率よく発掘することができる。また、腸内共生細菌由来細胞外ベシクル自体或いはこれを変形して投与して免疫反応を調節することにより、腸内共生細菌による感染或いは腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病を効率よく予防又は治療するワクチンの開発が可能であり、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを応用して、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生する疾病の原因因子を診断する技術の開発が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含む組成物。
【請求項2】
前記腸内共生細菌がグラム陰性細菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グラム陰性細菌は大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌よりなる群から選ばれる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞外ベシクルは腸内共生細菌培養液から分離したものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞外ベシクルは人工的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の大便から分離したものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の腸内から分離したものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の胃液から分離したものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の小腸液から分離したものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の口腔液から分離したものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを動物に投与して製造された疾病モデル。
【請求項13】
前記腸内共生細菌はグラム陰性細菌である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項14】
前記グラム陰性細菌は大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌よりなる群から選ばれる、請求項13に記載の疾病モデル。
【請求項15】
前記細胞外ベシクルは前記腸内共生細菌培養液から分離したものである、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項16】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、請求項15に記載の疾病モデル。
【請求項17】
前記細胞外ベシクルは人工的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、請求項15に記載の疾病モデル。
【請求項18】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の大便から分離したものである、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項19】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の腸内から分離したものである、 請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項20】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の胃液から分離したものである、 請求項19に記載の疾病モデル。
【請求項21】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の小腸液から分離したものである、 請求項19に記載の疾病モデル。
【請求項22】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の口腔液から分離したものである、 請求項19に記載の疾病モデル。
【請求項23】
前記動物がマウスである、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項24】
前記投与が腹腔投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項25】
前記投与が静脈投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項26】
前記投与が経口投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項27】
前記投与が肛門投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項28】
前記投与が鼻腔投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項29】
前記投与が気道投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項30】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項31】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項32】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病予防又は治療に対する候補薬物の探索方法。
【請求項33】
前記腸内共生細菌はグラム陰性細菌から選ばれる、請求項32に記載の探索方法。
【請求項34】
前記グラム陰性細菌は大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌よりなる群から選ばれる、請求項33に記載の探索方法。
【請求項35】
前記細胞外ベシクルは腸内共生細菌培養液から分離したものである、 請求項32に記載の探索方法。
【請求項36】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、 請求項32に記載の探索方法。
【請求項37】
前記細胞外ベシクルは人工的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、 請求項32に記載の探索方法。
【請求項38】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の大便から分離したものである、 請求項32に記載の探索方法。
【請求項39】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の腸内から分離したものである、 請求項32に記載の探索方法。
【請求項40】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の胃液から分離したものである、 請求項39に記載の探索方法。
【請求項41】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の小腸液から分離したものである、 請求項39に記載の探索方法。
【請求項42】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の口腔液から分離したものである、 請求項39に記載の探索方法。
【請求項43】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項32に記載の探索方法。
【請求項44】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項32に記載の探索方法。
【請求項45】
前記探索方法は前記腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを細胞に処理する段階を含む、請求項32に記載の探索方法。
【請求項46】
前記細胞が炎症細胞である、請求項45に記載の探索方法。
【請求項47】
前記細胞が単核球である、請求項46に記載の探索方法。
【請求項48】
前記細胞が好中球である、請求項46に記載の探索方法。
【請求項49】
前記細胞が好酸球である、請求項46に記載の探索方法。
【請求項50】
前記細胞が好塩球である、請求項46に記載の探索方法。
【請求項51】
前記炎症細胞は単核球が組織から分化した細胞である、請求項46に記載の探索方法。
【請求項52】
前記細胞が上皮細胞である、請求項45に記載の探索方法。
【請求項53】
前記細胞が血管内皮細胞である、請求項45に記載の探索方法。
【請求項54】
前記細胞が幹細胞である、請求項45に記載の探索方法。
【請求項55】
前記幹細胞は骨髄組織に由来する細胞である、請求項54に記載の探索方法。
【請求項56】
前記幹細胞は脂肪組織に由来する細胞である、請求項54に記載の探索方法。
【請求項57】
前記探索方法は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルと共に候補物質を投与した後、炎症関連媒介体の水準を測定する段階を含む、請求項32に記載の探索方法。
【請求項58】
前記炎症関連媒介体がインターロイキン(Interleukin,IL)−6である、請求項57に記載の探索方法。
【請求項59】
前記探索方法は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルと共に候補物質を投与した後、炎症関連シグナル伝達過程を評価する段階を含む、請求項32に記載の探索方法。
【請求項60】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含む、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病予防又は治療用ワクチン。
【請求項61】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項60に記載のワクチン。
【請求項62】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項60に記載のワクチン。
【請求項63】
前記ワクチンはグラム陰性細菌に由来するものである、請求項60に記載のワクチン。
【請求項64】
前記グラム陰性細菌が大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌である、請求項63に記載のワクチン。
【請求項65】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用する、請求項60に記載のワクチン。
【請求項66】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項65に記載のワクチン。
【請求項67】
前記変形は細菌に化合物を処理することである、請求項65に記載のワクチン。
【請求項68】
前記化合物が薬物である、請求項67に記載のワクチン。
【請求項69】
前記変形は細胞外ベシクルに化合物を処理することである、請求項65に記載のワクチン。
【請求項70】
前記化合物が薬物である、請求項69に記載のワクチン。
【請求項71】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用する、請求項60に記載のワクチン。
【請求項72】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与して使用する、請求項60に記載のワクチン。
【請求項73】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含む、腸内共生細菌による感染予防又は治療用ワクチン。
【請求項74】
前記感染は腹膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染、骨関節及び中枢神経系感染よりなる群から選ばれる、請求項73に記載のワクチン。
【請求項75】
前記ワクチンはグラム陰性細菌に由来する、請求項73に記載のワクチン。
【請求項76】
前記グラム陰性細菌が大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌である、請求項75に記載のワクチン。
【請求項77】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用する、請求項73に記載のワクチン。
【請求項78】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項73に記載のワクチン。
【請求項79】
前記変形は細菌に化合物を処理することである、請求項73に記載のワクチン。
【請求項80】
前記化合物が薬物である、請求項73に記載のワクチン。
【請求項81】
前記変形は細胞外ベシクルに化合物を処理することである、請求項73に記載のワクチン。
【請求項82】
前記化合物が薬物である、請求項81に記載のワクチン。
【請求項83】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用する、請求項73に記載のワクチン。
【請求項84】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与して使用する、請求項73に記載のワクチン。
【請求項85】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを致死量未満で哺乳動物に投与する段階を含む、疾病に対する予防又は治療方法。
【請求項86】
前記腸内共生細菌がグラム陰性細菌である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記グラム陰性細菌が大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記細胞外ベシクルは腸内共生細菌培養液から分離したものである、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されるものである、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
前記細胞外ベシクルは人工的に分泌されるものである、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の大便から分離したものである、 請求項85に記載の方法。
【請求項92】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の腸内から分離したものである、 請求項85に記載の方法。
【請求項93】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の胃液から分離したものである、 請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の小腸液から分離したものである、 請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の口腔液から分離したものである、 請求項92に記載の方法。
【請求項96】
前記細胞外ベシクルは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用する、請求項85に記載の方法。
【請求項97】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記変形は細菌に化合物を処理することである、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
前記化合物が薬物である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記変形は細胞外ベシクルに化合物を処理することである、請求項96に記載の方法。
【請求項101】
前記化合物が薬物である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記投与は効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で薬物を併用投与することにより行われる、請求項85に記載の方法。
【請求項103】
前記投与は効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与することにより行われる、請求項85に記載の方法。
【請求項104】
前記疾病は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生或いは悪化する疾病である、請求項85に記載の方法。
【請求項105】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項85に記載の方法。
【請求項106】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項85に記載の方法。
【請求項107】
前記疾病は腹膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染、骨関節及び中枢神経系感染よりなる群から選ばれる、請求項85に記載の方法。
【請求項108】
前記投与が皮下注射である、請求項85に記載の方法。
【請求項109】
前記投与が静脈注射である、請求項85に記載の方法。
【請求項110】
前記投与が鼻腔投与である、請求項85に記載の方法。
【請求項111】
前記投与が舌下投与である、請求項85に記載の方法。
【請求項112】
前記投与が気道吸入である、請求項85に記載の方法。
【請求項113】
前記投与が経口服用である、請求項85に記載の方法。
【請求項114】
前記投与が肛門投与である、請求項85に記載の方法。
【請求項115】
前記投与が皮膚投与である、請求項85に記載の方法。
【請求項116】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた探索方法によって選別された物質を含む、疾病予防又は治療のための薬学的組成物。
【請求項117】
前記物質がキナーゼ阻害剤(kinase inhibitor)である、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項118】
前記キナーゼ阻害剤はダムナカンタール(Damnacanthal;3-hydroxy-1-methoxy-9,10-dioxoanthracene-2-carbaldehyde)、H−7(5-(2-methylpiperazin-1-yl)sulfonylisoquinoline dihydrochloride)、LY294002(2-morpholin-4-yl-8-phenylchromen-4-one)、GF109203X(3-[1-[3-(dimethylamino)propyl]indol-3-yl]-4-(1H-indol-3-yl)pyrrole-2, 5-dione)、 ML−7(1-(5-iodonaphthalen-1-yl)sulfonyl-1,4-diazepane hydrochloride)、ML−9(1-(5-chloronaphthalen-1-yl)sulfonyl-1,4-diazepane hydrochloride)、ZM449829(1-(2-Naphthalenyl)-2-propen-1-one)、 DRB((2S,3S,4R,5R)-2-(5,6-dichlorobenzimidazol-1-yl)-5-(hydroxymethyl)oxolane-3,4-diol)、インジルビン−3’−モノオキシム(Indirubin-3’-monoxime;3-[3-(hydroxyamino)-1H-indol-2-yl]indol-2-one)、 ケンパウロン(Kenpaullone;9-bromo-7,12-dihydro-5H-indolo[3,2-d][1]benzazepin-6-one)、BML−259(N-(5-Isopropylthiazol-2-yl)phenylacetamide)、及びアピゲニン(Apigenin;5,7-dihydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)chromen-4-one)よりなる群から選ばれる、請求項117に記載の薬学的組成物。
【請求項119】
前記物質がホスファターゼ阻害剤(phosphatase inhibitor)である、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項120】
前記ホスファターゼ阻害剤がPD−144795(5-methoxy-3-(1-methylethoxy)benzo(b)thiophene-2-carboxamide-1-oxide)である、請求項119に記載の薬学的組成物。
【請求項121】
前記物質がプロドラッグ(prodrug)である、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項122】
前記プロドラッグはアミトリプチリン(Amitriptyline)、シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、デシプラミン(Desipramine)、ドキセピン(Doxepin)、二塩化フルフェナジン(Fluphenazine dichloride)、ハロペリドール(Haloperidol)、イミプラミン(Imipramine)、マプロチリン(Maprotiline)、オルフェナドリン(Orphenadrine)、テルフェナジン(Terfenadine)、トルフェナム酸(Tolfenamic acid)及び塩酸ドラゾドン(Trazodone HCl)よりなる群から選ばれる、請求項121に記載の薬学的組成物。
【請求項123】
前記疾病は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病である、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項124】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項125】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項126】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを応用して疾病の原因因子を診断する方法。
【請求項127】
前記腸内共生細菌がグラム陰性細菌である、請求項126に記載の診断方法。
【請求項128】
前記グラム陰性細菌が大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌である、請求項126に記載の診断方法。
【請求項129】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項126に記載の診断方法。
【請求項130】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項126に記載の診断方法。
【請求項131】
前記応用は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに含まれた遺伝物質の塩基配列を分析することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項132】
前記遺伝物質が16S rRNAである、請求項131に記載の診断方法。
【請求項133】
前記応用は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに含まれたタンパク質を測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項134】
前記応用は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに対する免疫反応を測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項135】
前記免疫反応の測定は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに対する抗体を測定することにより行われる、請求項134に記載の診断方法。
【請求項136】
前記診断は大便を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項137】
前記診断は血液を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項138】
前記診断は小便を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項139】
前記診断は腹水を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項140】
前記診断は胸水を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項141】
前記診断は関節液を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項142】
前記診断は脳脊髄液を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項1】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含む組成物。
【請求項2】
前記腸内共生細菌がグラム陰性細菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グラム陰性細菌は大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌よりなる群から選ばれる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞外ベシクルは腸内共生細菌培養液から分離したものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞外ベシクルは人工的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の大便から分離したものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の腸内から分離したものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の胃液から分離したものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の小腸液から分離したものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の口腔液から分離したものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを動物に投与して製造された疾病モデル。
【請求項13】
前記腸内共生細菌はグラム陰性細菌である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項14】
前記グラム陰性細菌は大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌よりなる群から選ばれる、請求項13に記載の疾病モデル。
【請求項15】
前記細胞外ベシクルは前記腸内共生細菌培養液から分離したものである、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項16】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、請求項15に記載の疾病モデル。
【請求項17】
前記細胞外ベシクルは人工的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、請求項15に記載の疾病モデル。
【請求項18】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の大便から分離したものである、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項19】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の腸内から分離したものである、 請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項20】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の胃液から分離したものである、 請求項19に記載の疾病モデル。
【請求項21】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の小腸液から分離したものである、 請求項19に記載の疾病モデル。
【請求項22】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の口腔液から分離したものである、 請求項19に記載の疾病モデル。
【請求項23】
前記動物がマウスである、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項24】
前記投与が腹腔投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項25】
前記投与が静脈投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項26】
前記投与が経口投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項27】
前記投与が肛門投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項28】
前記投与が鼻腔投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項29】
前記投与が気道投与である、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項30】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項31】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項12に記載の疾病モデル。
【請求項32】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた疾病予防又は治療に対する候補薬物の探索方法。
【請求項33】
前記腸内共生細菌はグラム陰性細菌から選ばれる、請求項32に記載の探索方法。
【請求項34】
前記グラム陰性細菌は大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌よりなる群から選ばれる、請求項33に記載の探索方法。
【請求項35】
前記細胞外ベシクルは腸内共生細菌培養液から分離したものである、 請求項32に記載の探索方法。
【請求項36】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、 請求項32に記載の探索方法。
【請求項37】
前記細胞外ベシクルは人工的に分泌される細胞外ベシクルを分離したものである、 請求項32に記載の探索方法。
【請求項38】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の大便から分離したものである、 請求項32に記載の探索方法。
【請求項39】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の腸内から分離したものである、 請求項32に記載の探索方法。
【請求項40】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の胃液から分離したものである、 請求項39に記載の探索方法。
【請求項41】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の小腸液から分離したものである、 請求項39に記載の探索方法。
【請求項42】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の口腔液から分離したものである、 請求項39に記載の探索方法。
【請求項43】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項32に記載の探索方法。
【請求項44】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項32に記載の探索方法。
【請求項45】
前記探索方法は前記腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを細胞に処理する段階を含む、請求項32に記載の探索方法。
【請求項46】
前記細胞が炎症細胞である、請求項45に記載の探索方法。
【請求項47】
前記細胞が単核球である、請求項46に記載の探索方法。
【請求項48】
前記細胞が好中球である、請求項46に記載の探索方法。
【請求項49】
前記細胞が好酸球である、請求項46に記載の探索方法。
【請求項50】
前記細胞が好塩球である、請求項46に記載の探索方法。
【請求項51】
前記炎症細胞は単核球が組織から分化した細胞である、請求項46に記載の探索方法。
【請求項52】
前記細胞が上皮細胞である、請求項45に記載の探索方法。
【請求項53】
前記細胞が血管内皮細胞である、請求項45に記載の探索方法。
【請求項54】
前記細胞が幹細胞である、請求項45に記載の探索方法。
【請求項55】
前記幹細胞は骨髄組織に由来する細胞である、請求項54に記載の探索方法。
【請求項56】
前記幹細胞は脂肪組織に由来する細胞である、請求項54に記載の探索方法。
【請求項57】
前記探索方法は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルと共に候補物質を投与した後、炎症関連媒介体の水準を測定する段階を含む、請求項32に記載の探索方法。
【請求項58】
前記炎症関連媒介体がインターロイキン(Interleukin,IL)−6である、請求項57に記載の探索方法。
【請求項59】
前記探索方法は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルと共に候補物質を投与した後、炎症関連シグナル伝達過程を評価する段階を含む、請求項32に記載の探索方法。
【請求項60】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含む、腸内共生細菌由来細胞外ベシクルによる疾病予防又は治療用ワクチン。
【請求項61】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項60に記載のワクチン。
【請求項62】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項60に記載のワクチン。
【請求項63】
前記ワクチンはグラム陰性細菌に由来するものである、請求項60に記載のワクチン。
【請求項64】
前記グラム陰性細菌が大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌である、請求項63に記載のワクチン。
【請求項65】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用する、請求項60に記載のワクチン。
【請求項66】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項65に記載のワクチン。
【請求項67】
前記変形は細菌に化合物を処理することである、請求項65に記載のワクチン。
【請求項68】
前記化合物が薬物である、請求項67に記載のワクチン。
【請求項69】
前記変形は細胞外ベシクルに化合物を処理することである、請求項65に記載のワクチン。
【請求項70】
前記化合物が薬物である、請求項69に記載のワクチン。
【請求項71】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用する、請求項60に記載のワクチン。
【請求項72】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与して使用する、請求項60に記載のワクチン。
【請求項73】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを含む、腸内共生細菌による感染予防又は治療用ワクチン。
【請求項74】
前記感染は腹膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染、骨関節及び中枢神経系感染よりなる群から選ばれる、請求項73に記載のワクチン。
【請求項75】
前記ワクチンはグラム陰性細菌に由来する、請求項73に記載のワクチン。
【請求項76】
前記グラム陰性細菌が大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌である、請求項75に記載のワクチン。
【請求項77】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用する、請求項73に記載のワクチン。
【請求項78】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項73に記載のワクチン。
【請求項79】
前記変形は細菌に化合物を処理することである、請求項73に記載のワクチン。
【請求項80】
前記化合物が薬物である、請求項73に記載のワクチン。
【請求項81】
前記変形は細胞外ベシクルに化合物を処理することである、請求項73に記載のワクチン。
【請求項82】
前記化合物が薬物である、請求項81に記載のワクチン。
【請求項83】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用する、請求項73に記載のワクチン。
【請求項84】
前記ワクチンは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与して使用する、請求項73に記載のワクチン。
【請求項85】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを致死量未満で哺乳動物に投与する段階を含む、疾病に対する予防又は治療方法。
【請求項86】
前記腸内共生細菌がグラム陰性細菌である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記グラム陰性細菌が大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記細胞外ベシクルは腸内共生細菌培養液から分離したものである、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記細胞外ベシクルは自然的に分泌されるものである、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
前記細胞外ベシクルは人工的に分泌されるものである、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の大便から分離したものである、 請求項85に記載の方法。
【請求項92】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の腸内から分離したものである、 請求項85に記載の方法。
【請求項93】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の胃液から分離したものである、 請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の小腸液から分離したものである、 請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記細胞外ベシクルは哺乳動物の口腔液から分離したものである、 請求項92に記載の方法。
【請求項96】
前記細胞外ベシクルは効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で変形して使用する、請求項85に記載の方法。
【請求項97】
前記変形は細菌を形質転換することである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記変形は細菌に化合物を処理することである、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
前記化合物が薬物である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記変形は細胞外ベシクルに化合物を処理することである、請求項96に記載の方法。
【請求項101】
前記化合物が薬物である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記投与は効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で薬物を併用投与することにより行われる、請求項85に記載の方法。
【請求項103】
前記投与は効能を増加させ或いは副作用を減少させる目的で免疫補強剤を併用投与することにより行われる、請求項85に記載の方法。
【請求項104】
前記疾病は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生或いは悪化する疾病である、請求項85に記載の方法。
【請求項105】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項85に記載の方法。
【請求項106】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項85に記載の方法。
【請求項107】
前記疾病は腹膜炎、敗血症、肺炎、尿路感染、骨関節及び中枢神経系感染よりなる群から選ばれる、請求項85に記載の方法。
【請求項108】
前記投与が皮下注射である、請求項85に記載の方法。
【請求項109】
前記投与が静脈注射である、請求項85に記載の方法。
【請求項110】
前記投与が鼻腔投与である、請求項85に記載の方法。
【請求項111】
前記投与が舌下投与である、請求項85に記載の方法。
【請求項112】
前記投与が気道吸入である、請求項85に記載の方法。
【請求項113】
前記投与が経口服用である、請求項85に記載の方法。
【請求項114】
前記投与が肛門投与である、請求項85に記載の方法。
【請求項115】
前記投与が皮膚投与である、請求項85に記載の方法。
【請求項116】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを用いた探索方法によって選別された物質を含む、疾病予防又は治療のための薬学的組成物。
【請求項117】
前記物質がキナーゼ阻害剤(kinase inhibitor)である、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項118】
前記キナーゼ阻害剤はダムナカンタール(Damnacanthal;3-hydroxy-1-methoxy-9,10-dioxoanthracene-2-carbaldehyde)、H−7(5-(2-methylpiperazin-1-yl)sulfonylisoquinoline dihydrochloride)、LY294002(2-morpholin-4-yl-8-phenylchromen-4-one)、GF109203X(3-[1-[3-(dimethylamino)propyl]indol-3-yl]-4-(1H-indol-3-yl)pyrrole-2, 5-dione)、 ML−7(1-(5-iodonaphthalen-1-yl)sulfonyl-1,4-diazepane hydrochloride)、ML−9(1-(5-chloronaphthalen-1-yl)sulfonyl-1,4-diazepane hydrochloride)、ZM449829(1-(2-Naphthalenyl)-2-propen-1-one)、 DRB((2S,3S,4R,5R)-2-(5,6-dichlorobenzimidazol-1-yl)-5-(hydroxymethyl)oxolane-3,4-diol)、インジルビン−3’−モノオキシム(Indirubin-3’-monoxime;3-[3-(hydroxyamino)-1H-indol-2-yl]indol-2-one)、 ケンパウロン(Kenpaullone;9-bromo-7,12-dihydro-5H-indolo[3,2-d][1]benzazepin-6-one)、BML−259(N-(5-Isopropylthiazol-2-yl)phenylacetamide)、及びアピゲニン(Apigenin;5,7-dihydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)chromen-4-one)よりなる群から選ばれる、請求項117に記載の薬学的組成物。
【請求項119】
前記物質がホスファターゼ阻害剤(phosphatase inhibitor)である、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項120】
前記ホスファターゼ阻害剤がPD−144795(5-methoxy-3-(1-methylethoxy)benzo(b)thiophene-2-carboxamide-1-oxide)である、請求項119に記載の薬学的組成物。
【請求項121】
前記物質がプロドラッグ(prodrug)である、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項122】
前記プロドラッグはアミトリプチリン(Amitriptyline)、シクロベンザプリン(Cyclobenzaprine)、デシプラミン(Desipramine)、ドキセピン(Doxepin)、二塩化フルフェナジン(Fluphenazine dichloride)、ハロペリドール(Haloperidol)、イミプラミン(Imipramine)、マプロチリン(Maprotiline)、オルフェナドリン(Orphenadrine)、テルフェナジン(Terfenadine)、トルフェナム酸(Tolfenamic acid)及び塩酸ドラゾドン(Trazodone HCl)よりなる群から選ばれる、請求項121に記載の薬学的組成物。
【請求項123】
前記疾病は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルにより発生又は悪化する疾病である、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項124】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項125】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項116に記載の薬学的組成物。
【請求項126】
腸内共生細菌由来細胞外ベシクルを応用して疾病の原因因子を診断する方法。
【請求項127】
前記腸内共生細菌がグラム陰性細菌である、請求項126に記載の診断方法。
【請求項128】
前記グラム陰性細菌が大腸菌、肺炎桿菌、シュードモナス属細菌及びバクテロイデス属細菌である、請求項126に記載の診断方法。
【請求項129】
前記疾病は敗血症、動脈硬化症、急性冠状動脈症候群、脳卒中、肺気腫、急性呼吸不全症候群、骨粗しょう症、高血圧、肥満、糖尿、関節炎及び脳疾患よりなる群から選ばれる、請求項126に記載の診断方法。
【請求項130】
前記疾病は口腔炎、口腔癌、食道炎、食道癌、胃炎、消化性潰瘍、胃癌、炎症性腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、胆道炎、胆嚢炎、膵臓炎、胆道癌及び膵臓癌よりなる群から選ばれる、請求項126に記載の診断方法。
【請求項131】
前記応用は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに含まれた遺伝物質の塩基配列を分析することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項132】
前記遺伝物質が16S rRNAである、請求項131に記載の診断方法。
【請求項133】
前記応用は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに含まれたタンパク質を測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項134】
前記応用は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに対する免疫反応を測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項135】
前記免疫反応の測定は腸内共生細菌由来細胞外ベシクルに対する抗体を測定することにより行われる、請求項134に記載の診断方法。
【請求項136】
前記診断は大便を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項137】
前記診断は血液を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項138】
前記診断は小便を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項139】
前記診断は腹水を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項140】
前記診断は胸水を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項141】
前記診断は関節液を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【請求項142】
前記診断は脳脊髄液を用いて測定することである、請求項126に記載の診断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【公表番号】特表2013−503857(P2013−503857A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527808(P2012−527808)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004747
【国際公開番号】WO2011/027971
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512002884)イオン メディックス インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004747
【国際公開番号】WO2011/027971
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512002884)イオン メディックス インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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