説明

腸内常在菌解析情報を基にした食事支援システム

【課題】腸内常在菌型の改善による健康増進を支援する技術を提供する。
【解決方法】対象者の食生活を把握する過程と、対象者の糞便を解析して腸内常在菌を把握する過程と、予め設定された腸内常在菌と食生活との相関関係、又は該対象者が過去に実施した腸内常在菌と食生活との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌の好ましい腸内常在菌からの偏差を求める過程と、該好ましい腸内常在菌を実現するために必要な食生活を求める過程と、前記必要な食生活と対象者の食生活との偏差を求めて出力する過程とを含むことにより、健康増進のための食事を支援する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内細菌の割合や腸内細菌の分類群(科、属、種)の推定に基づいた腸内常在菌型の判定などに基づいた健康増進のための食事等を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平均寿命の延長ならびに少子化により、人口構造の高齢化が深刻な問題となってきている。また、高齢化に伴った社会保障費の増加も問題となっており、2011年には医療費が32兆円、福祉関連費が18兆円、2025年には医療費が48兆円、福祉関連費が28兆円まで増加することが予測されている。そのため、事前の病気予防、健康増進などによる、社会保障費の削減、特に医療費の削減が重要な課題となっている。
【0003】
医療費の増加に大きな影響を与える要因として、生活習慣病患者の増加が挙げられる。生活習慣病には、成人型糖尿病、肥満、高脂血症、大腸癌、高血圧、肝障害、歯周病などの疾患が含まれる。生活習慣病の多くは、不健全な生活の積み重ねに起因する内臓脂肪型肥満が原因となって引き起こされるものであり、その発症・進行には、食生活、運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が関与するとされている。
【0004】
そこで、生活習慣病の主な要因であるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者・予備群に対する保健指導を徹底するために、特定健診・保健指導が始まり、平成20年4月からは医療保険者(国保・被用者保険)において、40歳以上の被保険者・被扶養者を対象とする、内臓脂肪型肥満に着目した健診及び保健指導の事業実施が義務づけられた。保健指導の内容としては、生活習慣病の発症・進行を抑えることを目的とした、食生活や運動などの生活習慣を改善が挙げられる。中でも、食生活の見直しが重要視されている。
【0005】
食生活の見直しが叫ばれる中、最近では、健康増進を目的とした特定保健用食品の利用が増えてきている。2007年度には、特定保健用食品(トクホ)の年間許可件数は過去最多となり、市場規模も6,798億円まで成長し、その後も増加傾向を示している。特に、特定保健用食品として許可された乳酸菌などの摂取は、整腸作用・腸内環境の改善のみならず、消化器疾患、アレルギーなどの様々な疾病のリスク低減に有効であることが報告されている(非特許文献1及び2)。また、腸内環境、特に腸内常在菌が人の健康維持、疾病予防に大きく関与するということも報告されている(非特許文献3及び4)。
【0006】
腸内常在菌の解析方法として、以前は培養方法による解析が一般的であり、特定保健用食品の登録の際にも重要なデータとして位置づけられている。しかし、培養方法は微生物の取扱いに関する専門性や知識が必要であり、さらに1検体を分析するのに多くの時間と労力が必要であった。そこで、多検体のデータを一度に比較でき、再現性が高く、専門知識の要求度が低く、低コストで簡易に分析する技術としてT−RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism)解析方法が提案された。T−RFLP解析とは、末端蛍光標識したプライマーセットを用いて鋳型DNAを増幅し、制限酵素を用いて消化した後、フラグメント解析を行い、菌種による塩基配列の違いから制限酵素切断部位が異なることを利用し、検出ピークの強度、位置、数により評価・比較する断片多型性解析のことであるが、この解析法により、簡便に腸内細菌の割合や腸内細菌の分類群(科、属、種)を推定することが可能となった(非特許文献5)。
【0007】
T−RFLP解析は、分析時間が短く臨床現場、環境影響評価においても対応できる能力を有すると共に、専門性を必要とせず再現性に優れ、容易に解析することができる。腸内常在菌解析において感度が良く菌種を推定できる方法として、微生物生態学分野やバイオ産業分野での発展に寄与することができる(特許文献1)。
【0008】
【非特許文献1】横倉輝男:乳酸菌の科学と技術、p.322-334, 学会出版センター, 東京, (1996)
【非特許文献2】Kalliomaki M. et al.: The Lancent, 357: 1076-1079.(2001)
【非特許文献3】小谷新太郎ら:日本公衆衛生誌, 8: 871-895 (1996).
【非特許文献4】Mizutani, T and Mitsuoka T: Cancer Lett., 11: 89-95 (1983)
【非特許文献5】坂本光央:腸内細菌学雑誌,18: 155-159, 2004
【特許文献1】特開2003−265199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、健康と、腸内常在菌におけるプロバイオティクス(例えば、Bifidobacterium属:ビフィズス菌、Lactobacillus属:乳酸菌などの微生物)との関係は明らかとなっていない点も多い。また、個々の健康、特に好ましい腸内常在菌型への改善に適した食生活や食材のバランスなどの選択は難しく、判断基準が確立されていないのが現状である。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、上記の関連性を解明し、腸内常在菌の改善による健康増進を支援する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者は、大規模な疫学調査を行い、腸内常在菌と実年齢の平均との比較研究、腸内常在菌の疾患への影響、食事と腸内常在菌の関係について鋭意研究を重ねた。
【0012】
その過程では、数種類のプライマーと制限酵素の組み合わせを用いて、糞便のT−RFLP解析による腸内細菌の割合や、腸内細菌の分類群(科、属、種)の推定を行い、その結果と疫学調査を組み合わせ、腸内常在菌型の判定及び、腸内年齢の判定を行った。そこで得られた結果は、今までの報告にある個々のデータとしての評価と異なり、腸内常在菌型における生活習慣病、メタボリックシンドローム(高血糖・高血圧・高脂血症など)、腸管関連疾患、アレルギー(食物、花粉症など)、便秘などの疾患リスク判定、健康度チェック、機能性食品の評価・効果の判定が可能となることを見出した。また、食生活(食事パターンなど)と腸内常在菌型(腸内常在菌クラスターを含む)との関係を解析した結果、ヨーグルトなど特定の食品だけでなく、日常的な食生活が腸内常在菌型に大きく影響するという事実を見出した。さらに、本発明者は、得られた結果を基に、それぞれの食生活型(食生活クラスターを含む)、疾患型(疾患クラスターを含む)に対する適切な食事を判定し、健康増進のための食事を支援する技術を開発するに至った。
【0013】
課題を解決するために、本発明は、対象者の食生活を把握する過程と、対象者の糞便を解析して腸内常在菌を把握する過程と、予め設定された腸内常在菌と食生活との相関関係、又は該対象者が過去に実施した腸内常在菌と食生活との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌型の好ましい腸内常在菌型からの偏差又は該対象者の腸内常在菌型の過去に実施し得られた腸内常在菌型からの偏差を求める過程と、該好ましい腸内常在菌型又は更に好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活を求める過程と、前記必要な食生活を出力する過程とを含む、食事支援技術を提供する。
【0014】
本発明によれば、腸内常在菌、食生活、疾患情報の判定・分類を基に、腸内年齢の判定、疾患リスク判定、健康度チェックを行うことができ、食生活、疾患クラスターによる機能性食品の評価・効果の判定を行うことができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、食生活型、疾患型による生菌製剤など薬剤や栄養剤の評価・効果の判定を行うことができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、食生活型、疾患型による健康増進、疾患の発症率低下のための食生活の支援を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本実施形態は、対象者の食生活を把握する過程と、対象者の糞便を解析して腸内常在菌を把握する過程と、予め設定された腸内常在菌と食生活との相関関係、又は該対象者が過去に実施した腸内常在菌と食生活との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌型の好ましい腸内常在菌型からの偏差を求める過程と、該好ましい腸内常在菌型又は更に好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活を求める過程と、前記必要な食生活を出力する過程とを含む、食事支援方法である。
【0019】
ここで、食生活型の把握とは、対象者の食事パターン、環境、嗜好等を把握することであるが、食生活の全体像の把握でなくてもよく、特定の食事項目(食品)に着目し、その食事項目の摂取頻度の把握であってもよい。以下の実施例では、各食事項目(例えば、ぱん、肉類、魚、野菜等)の食事回数についてアンケートを行い、その結果を基に食生活型を分類することにより食生活の把握を行っているが、目的に応じて、例えば特定の食事項目の総摂取量や摂取した食物に含まれる栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維)の割合に基づいて食生活型を把握することもできる。
【0020】
また、腸内常在菌型の把握とは、腸内細菌の全体像を反映した腸内細菌クラスターの把握であることが望ましいが、T−RFLPの結果を基にして、数種類、又は、1種類のプライマーと制限酵素の組み合わせによる解析であってもよく、また、ビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスや、クロストリジウム属:Clostridiumや大腸菌群:Enterococcusなどの腐敗菌の割合の把握であってもよい。
【0021】
ここで、好ましい腸内常在菌型とは、対象者にとって望ましいと考えられる腸内常在菌型を意味している。例えば、腸内年齢の低下が必要な対象者にとっては、若年の健常者における平均的な腸内常在菌型である。ある疾患のリスクが高い対象者にとっては、その疾患の発症率が低い腸内常在菌型である。また、対象者にとって過去の腸内常在菌型が望ましい腸内常在菌型である場合もある。対象者にとって過去の腸内常在菌型が望ましい腸内常在菌型である場合、過去の腸内常在菌型よりも更に好ましい腸内常在菌型を好ましい腸内常在菌型とすることもできる。その他にも、高血圧症の改善、血中コレステロールの低下、血中中性脂肪の低下などを目的として、好ましい腸内常在菌型を決定することができる。また、好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活とは、例えば、好ましい腸内常在菌型を有する群において最も多い食生活型や、好ましい腸内常在菌型を有する群における特徴的な食生活型などが挙げられる。例えば、腸内年齢の低下が必要な対象者にとっては、実年齢よりも若年の腸内年齢を有する群における特徴的な食生活型又は平均的な食生活型であり得る。さらに、必要な食生活を出力する過程とは、例えば予め設定された腸内常在菌と食生活との相関関係又は該対象者が過去に実施した腸内常在菌と食生活との相関関係に基づいて、求められた必要な食生活を、対象者又は第三者が認識可能に示す過程を意味しており、出力手段としては特に限られるものではない。
【0022】
ここで、好ましい腸内常在菌型からの偏差とは、対象者の腸内常在菌型と、好ましい腸内常在菌型の平均的な腸内常在菌型との相違を示すものであり、例えば腸内細菌クラスターの違いや、プロバイオティクスと腐敗菌の割合の違いなどにより表し得る。また、該対象者の腸内常在菌型の過去に実施し得られた腸内常在菌型からの偏差とは、対象者の腸内常在菌型と、該対象者の腸内常在菌型の過去に実施し得られた腸内常在菌型との相違を示すものであり、例えば腸内細菌クラスターの違いや、プロバイオティクスと腐敗菌の割合の違いなどにより表し得る。
【0023】
本実施形態は、対象者の食生活を把握する過程と、対象者の糞便を解析して腸内常在菌を把握する過程と、予め設定された腸内常在菌と食生活との相関性、又は該対象者が過去に実施した腸内常在菌と食生活との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌型の好ましい腸内常在菌型からの偏差を求める過程と、該好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活を求める過程と、前記必要な食生活を出力する過程とを含む食事支援方法であって、前記食生活を把握する過程は、食生活クラスタリングを含み、前記腸内常在菌型を把握する過程は、腸内常在菌クラスタリングを含み、前記予め設定された腸内常在菌型と食生活型との相関関係は、前記クラスタリングに基づく食生活クラスターと腸内常在菌クラスターとの相関関係であり、前記好ましい腸内常在菌型は、該対象者の年齢よりも若年の健常者における平均的な腸内常在菌型である食事支援方法である。
【0024】
ここで、クラスタリングとは、データ解析手法の一つであって、与えられたデータを類似度によりいくつかのクラスター(部分集合)に分類し、データの分布の特徴を抽出することをいう。大きく分けると階層型手法と非階層型手法とがあるが、ここでは、その中でも階層型手法のひとつであるウォード(Ward)法を用いてクラスタリングを行っているが、これに限られるものではない。
【0025】
ここで、食生活クラスタリングとは、得られた食生活のデータを類似度により分類し、データの分布の特徴を抽出することを意味する。下記の実施例においては、4つのクラスターに分類しているが、これに限られるものではなく、2、3、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のクラスターに分類することも可能である。
【0026】
ここで、腸内常在菌クラスタリングとは、得られた腸内常在菌のデータを類似度により分類し、データの分布の特徴を抽出することを意味する。下記の実施例においては、5つのクラスターに分類しているが、これに限られるものではなく、2、3、4、6、7、8、9、10又はそれ以上のクラスターに分類することも可能である。
【0027】
本実施形態は、対象者の食生活を把握する過程と、対象者の糞便を解析して腸内常在菌を把握する過程と、予め設定された腸内常在菌と食生活との相関関係、又は該対象者が過去に実施した腸内常在菌と食生活との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌型の好ましい腸内常在菌型からの偏差を求める過程と、該好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活を求める過程と、前記必要な食生活を出力する過程、さらに、対象者の腸内常在菌クラスタリングにおける発症率の高い疾患を把握する過程、及び、予め設定された腸内常在菌型と食生活型との相関関係、又は該対象者が過去に実施した腸内常在菌と食生活との相関関係及び、腸内常在菌型と疾患の発症率との相関関係に基づいて、好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活型を求める過程を含む、食事支援方法であって、前記食生活型を把握する過程は、食生活クラスタリングを含み、前記腸内常在菌型を把握する過程は、腸内常在菌クラスタリングを含み、前記好ましい腸内常在菌型は、前記発症率の高い疾患に関してその発症率が低い腸内常在菌型であり、前記予め設定された腸内常在菌型と食生活型との相関関係は、前記クラスタリングに基づく食生活クラスターと腸内常在菌クラスターとの相関関係であり、前記予め設定された腸内常在菌型と疾患の発症率との相関関係は、前記クラスタリングに基づく疾患クラスターと腸内常在菌クラスターとの相関関係である、食事支援方法である。
【0028】
ここで、腸内常在菌クラスタリングにおける発症率の高い疾患とは、予め設定された腸内常在菌型と疾患の発症率との相関関係に基づいて、対象者が分類された腸内常在菌クラスタリングにおいて発症率が高いと判定された疾患を意味する。腸内常在菌クラスタリングにおける発症率の高い疾患の例として、生活習慣病、メタボリックシンドローム(高血糖・高血圧・高脂血症など)、腸管関連疾患、アレルギー(食物、花粉症など)、便秘などの疾患が想定されるが、腸内常在菌により影響を受け得る疾患であればこれらに限られるものではなく、例えば、大腸ガン、乳ガン、膵ガンなどのガンや、免疫疾患、アルツハイマーやストレス性の疾患なども含まれ得る。
【0029】
ここで、疾患クラスタリングとは、得られた疾患のデータを類似度により分類し、データの分布の特徴を抽出することを意味する。疾患のデータは、例えば健康診断値や生化学検査値(血清血糖値、HbA1cの検査値、尿素窒素値、尿酸値、クレアチニンレベル、総蛋白量、アルブミン量など)であってもよい。下記の実施例においては、代表例として糖尿病について4つのクラスターに分類しているが、これに限られるものではなく、2、3、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のクラスターに分類することも可能である。
【0030】
本実施形態は、対象者の食生活を把握する過程と、対象者の糞便を解析して腸内常在菌を把握する過程と、予め設定された腸内常在菌と食生活との相関関係、又は該対象者が過去に実施した腸内常在菌と食生活との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌型の好ましい腸内常在菌型からの偏差を求める過程と、該好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活を求める過程と、前記必要な食生活を出力する過程とを含む食事支援方法であって、前記腸内常在菌型を把握する過程は、数種類、又は、1種類のプライマーと制限酵素の組み合わせで解析する過程を含む食事支援方法である。
【0031】
ここで、数種類、又は、1種類のプライマーと制限酵素の組み合わせで解析する過程とは、例えばT−RFLP解析において、1、2、3、4、5又はそれ以上の種類のプライマーを制限酵素と組み合わせて腸内常在菌(腸内細菌の割合や、腸内細菌の分類群(科、属、種))を推定する過程である。この過程によれば、腸内常在菌型を判定、分類し、腸内年齢の判定を行うことが可能となり、被験者に対して腸内年齢などの情報を提供することができる。さらに、食生活クラスターの結果を組み合わせることにより、例えば、腸内年齢の若返りに適した食事の情報を提供することができる。
【0032】
また、上記の食事支援方法に関する技術は、食事支援システム、食事支援システム用コンピュータソフトウェア、又は食事支援システムコンピュータソフトウェアを記憶したコンピュータによって読み出し可能な記憶媒体として用いることも可能である。
【0033】
また、本実施形態は、コンピュータに、対象者の食生活型を表す指標と、対象者の糞便の解析に基づく対象者の腸内常在菌型を表す指標の入力を受け、予め設定された腸内常在菌型と食生活型との相関関係、又は該対象者が過去に実施した腸内常在菌と食生活との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌型の好ましい腸内常在菌型からの偏差を求め、該好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活型を求め、前記必要な食生活型を出力させる食事支援システム用コンピュータソフトウェアである。
【0034】
ここで、対象者の食生活型を表す指標とは、対象者の食生活のデータを基に、対象者の食生活を分類した結果を指すものを意味し、例えば食生活型や食生活クラスタリングを、食生活を表す指標として用いることもできる。
【0035】
ここで、対象者の糞便の解析に基づく対象者の腸内常在菌型を表す指標とは、対象者の腸内常在菌のデータを基に、対象者の腸内常在菌を分類した結果を指すものを意味し、例えば腸内常在菌型や腸内常在菌クラスタリングにより腸内常在菌を表す指標として用いることもできる。
【0036】
上述したように、上記のコンピュータソフトウェアは、前記コンピュータソフトウェアを記憶した、コンピュータによって読み出し可能な記憶媒体として利用することもできる。
【0037】
本実施形態の方法によれば、得られた腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)及び疾患型(疾患クラスター)などの情報を利用し、生活習慣病、メタボリックシンドローム(高血糖・高血圧・高脂血症など)、腸管関連疾患、アレルギー(食物、花粉症など)、便秘や糖尿病であれば、血清血糖、HbA1cの検査値、腎機能検査であれば、尿素窒素、尿酸、クレアチニン、総蛋白、アルブミンなどからの疾患リスク判定や健康度チェックに関する情報の提供が可能となる。さらに、予防医学として疾患などに対するリスク低減、健康増進などに関する情報を提供することができる。
【0038】
また、本実施形態の方法によれば、得られた腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)及び腸内年齢の判定結果などの情報を利用し、食生活型(食生活クラスター)、疾患型(疾患クラスター)による機能性食品の評価・効果の判定を行うことが可能となり、機能性食品の評価・効果の判定の結果及び、機能性食品のテラーメイド、新製品開発のための情報を提供することができる。
【0039】
また、本実施形態の方法によれば、得られた腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)及び、腸内年齢の判定結果などの情報を利用し、食生活型(食生活クラスター)、疾患型(疾患クラスター)による生菌製剤などの薬剤や栄養剤の評価・効果の判定を行うことが可能となり、生菌製剤などの薬剤や栄養剤の評価・効果の判定の結果及び、生菌製剤などの薬剤や栄養剤のテラーメイド、新製品開発のための情報を提供することができる。
【0040】
また、本実施形態の方法によれば、得られた腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)及び、腸内年齢の判定結果などの情報を利用し、食生活型(食生活クラスター)、疾患型(疾患クラスター)による健康増進のための食生活の支援を行うことができることが可能となり、健康増進のための食生活の支援サポート及び、栄養学的な情報を提供することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示に過ぎない。
【実施例】
【0042】
以下に実施例に基づいて本発明を説明するが、実施例は本発明の理解の助けのために記載するものであって、本発明が以下に記載する実施例に限定されるものではないことは自明である。
【0043】
まず、代表例として、約800人のT−RFLP解析及び、健康診断の際の生化学検査(臨床化学検査)、体力測定及び、生活習慣などに関するアンケート調査を3年間(計2,400件)にわたり実施した。図1のシステム概要に示すように、収集されたデータは、データベースに格納されている。これらのデータを基に、腸内細菌の割合や腸内細菌の分類群(科、属、種)の推定を数種類、又は、1種類のプライマーと制限酵素の組み合わせより行い、腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)の判定、分類を行い、食生活と腸内常在菌及び、腸内常在菌と年齢や疾患などとの関係を統計的に解析し、腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)、食生活型(食生活クラスター)、検査値に基づく疾患型(疾患クラスター)などを定義し、予め設定されたデータとして用いることにより、腸内年齢判定モデルや疾患リスク判定モデル、健康度チェックモデルや食生活と腸内常在菌関連モデルを構築した。
【0044】
上記解析のために、図2の基礎データベースに示すように、T−RFLP実験の誤差も含め、同一菌群由来と考えられる情報を一つの単位OTUにして取り扱うための手法を開発した。ここで、OTUとはT−RFLP解析における分類単位を意味し、菌の種類に相当するものをいう。これにより、得られた実験結果から自動的にOTUへ変換し、必要な情報を引き出すための統計解析のベースとなる。このデータを基にした統計解析を行い、腸内常在菌クラスタリング、健康診断や健康食品の機能を評価するための腸内常在菌の基礎情報となるデータベースを構築した。
【0045】
さらに、腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)、食生活型(食生活クラスター)、疾患型(疾患クラスター)に特徴的なOTUを抽出し、組み合わせる事で、腸内常在菌を検査し、腸内常在菌からみた健康度向上のためのアドバイスを提案する情報をアウトプットすることができるシステムを開発した。
【0046】
本システムは、T−RFLP解析及び、臨床化学検査、生活習慣に関するアンケート調査の結果を入力する入力手段と、T−RFLP解析の結果を上記モデルに当てはめ、腸内年齢、疾患リスクを判定する判定手段と、図3の健康度判定と健康度改善案の提案に示すように、上記判定によって得られた腸内年齢の若返りや疾患リスク軽減のために、腸内常在菌を改善することを目的とした食生活をはじめとする生活習慣改善を提案する手段と、上記判定結果及び、生活習慣改善案を出力する出力手段を有する、腸内常在菌解析による健康を増進するための食生活支援システムである。腸内年齢に関連する数種類の制限酵素のOTU、推定される菌種を表1に示す。表1は、腸内年齢に関連するOTUおよび推定される菌種を示しており、制限酵素別、性別ごとに分割されている。表中「+」がそのOTUが増加すると年齢も増加し(高齢化)、「−」はOTUが増加すると年齢が減少する(若返り)ことを意味する。例えば、BslIでは、男性の高齢化につながるOTUとして、OTU317(Prevotella), OTU658(Lactobacillalesなど)があげられる。同様のOTUがBslI, AluI, HhaI, MspIの4種の制限酵素について男女別に示されている。
【0047】
表1

【0048】
また、腸内常在菌型(腸内細菌クラスター)を定義するためのOTUを用いて、それらの年代を判別する判別モデル(腸年齢モデル)を作成し、未知の検体のT−RFLP解析結果を判別モデルに当てはめることで、受診者の腸年代を判別することが可能となる。実際に、ある受信者から得られた検体を解析し、腸年齢モデルに当てはめた結果を図4に例示する。この例では、受診者の腸内年齢は30代である確率が高く、他の年代と予測される確率も表示されている。
【0049】
本モデルを使用して、機能性食品の食前食後による腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)、腸内年齢や疾患リスクの経時的な変化を解析することで、例えば、生活習慣改善機能性食品の効果を評価することが可能となる。
【0050】
さらに、本モデルを使用して、生菌製剤などの薬剤や栄養剤の摂取前後による腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)、腸内年齢や疾患リスクの経時的な変化を解析することで、薬剤や栄養剤の効果を評価することが可能となる。
【0051】
本システムは、腸内常在菌を、T−RFLP解析結果を基にOTU化し、腸内常在菌クラスタリングを実行し、いくつかの型への分類を可能とするシステムである。図5に、制限酵素AluIとHhaIの2種類のT−RFLP解析結果を基にした腸内常在菌クラスタリング結果を示す。それぞれの菌種においてDNA量が多いものが濃く表されている。クラスタリングを実行した結果、いくつかの腸内常在菌クラスターに分類することが可能であった。例として、5つの腸内常在菌クラスターに分類する際の区分を○印で示し、OTUごとに上記腸内常在菌クラスター間で分散分析を行った結果を図6に示す。腸内常在菌クラスター間で平均値に有意に差があるOTUを抽出することも可能であった。
【0052】
腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)及び、食生活型(食生活クラスター)は、年代及び、性別における各OTUの平均値を、それぞれその年代及び、性別における標準的腸内常在菌型及び、標準的食生活型と定義することができる。
【0053】
年代ごとによる標準的腸内常在菌型の変動を図7に示す。前記で決定した腸内常在菌クラスターと年代で分割表を作成し、カイ2乗検定を行うことにより、老化とともに増加、又は、減少する腸内細菌型(腸内常在菌クラスター)が判断でき、これにより腸内年齢を推定することが可能となる。また、各年齢を性別で絞ることも可能である。
【0054】
また、食生活型(食生活クラスター)は、食生活に関するアンケート結果を基に、クラスタリングを実行することにより、いくつかの型に分類可能であった。図8に、食生活に関するアンケート結果を基にした食生活クラスタリング結果を示す。それぞれの食事項目において一週間の食事回数が多いものが濃く表されている。クラスタリングを実行した結果、いくつかの食生活型(食生活クラスター)に分類することが可能であった。例として、4つの食生活型(食生活クラスター)に分類した際の区分を○印で示す。
【0055】
食事項目と食生活型(食生活クラスター)でカイ2乗検定を行い、食事と食生活型(食生活クラスター)の変動を図9に示した。横軸に食生活型(食生活クラスター)、縦軸には食事項目の飲食頻度(週何回)に従ってクラスターごとの人数を割合で示す。さらに、有意差のある食事の項目を食生活型(食生活クラスター)で抽出した結果を図10に示す。横軸には食事項目、縦軸には食事項目の頻度が示されている。食生活型(食生活クラスター)分類により、特徴的な食事がとられていることを確認することが可能であった。例えば、牛乳、煮野菜、果物は、クラスター間の差が大きいことから、特徴的な食事であることが確認できる。
【0056】
図11に、OTUごとに上記食生活クラスター間で分散分析を行った結果を示す。食生活クラスター間で平均値に対して有意に差があるOTUを抽出することが可能である。下向き矢印は、特徴的な箇所を示しており、AluI OTU146、AluI OTU206、AluI OTU242、AluI OTU250及び、AluI OTU281が特徴的であることが理解できる。
【0057】
図12に、AluI OTU245の場合の腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)と食生活型(食生活クラスター)及び、年代の関係を各々示す。
【0058】
AluI OTU245は腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)、食生活型(食生活クラスター)で、ともに有意なOTUとして抽出された。AluI OTU245は、腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)では、腸内常在菌クラスター3に特徴的に多く(図12の(a))、腸内常在菌クラスター3は年代が高い人に多く見られた(図7)。同様に、AluI OTU245を年代別の平均を比較すると、年代に比例して有意に増加することが明らかとなった(図12の(c))。これにより、AluI OTU245を減少させることで、腸内年齢を下げ得ることが示された。一方、食生活型(食生活クラスター)でのAluI OTU245の状態をみると、食生活クラスター2、食生活クラスター1で少ないことが明らかとなった(図12の(b))。これらの結果は、腸内年齢を若返らせるためには、AluI OTU245を減少させればよく、AluI OTU245を減少させるためには、食生活を食生活クラスター2、食生活クラスター1へ改善すればよいことを示すものであり、本システムにより、腸内年齢を若返らせるための情報が提供されることが示された。
【0059】
この結果を腸内常在菌の検査に適用する。まず、受診者の腸内常在菌を検査し、腸内年齢の計算、腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)の判定を行う。その結果とデータベースに蓄えられた食生活型(食生活クラスター)とを組み合わせることで、機能食品の評価の他に、腸内年齢を若返らせるための食生活の改善案を提案することが可能となる。
【0060】
それぞれのAluI OTU245に該当する腸内細菌を把握したい場合には、塩基配列データベースと比較することにより推測可能である。例えば、AluI OTU245に該当する腸内細菌は、Lactococcus lactis subsp. Lactisであることが推測可能であった。同様に、他のOTUについても、そのOTUを構成する腸内細菌を推定することが可能である。
【0061】
さらに、疾患型(疾患クラスター)は、検査目的ごとに必要な健康診断値や生化学検査値などによって、疾患クラスタリングを実行することにより、いくつかの型に分類可能であった。例えば、糖尿病であれば、血清血糖、HbA1cの検査値、腎機能検査であれば、尿素窒素、尿酸、クレアチニン、総蛋白、アルブミンの検査値のように、各疾患に対する検査値を組み合わせてクラスタリングを行い、複数の検査の状態が似ている度合いによってその疾患の程度が分類可能となり、対象とする疾患としては、生活習慣病、メタボリックシンドローム(高血糖・高血圧・高脂血症など)、腸管関連疾患、アレルギー(食物、花粉症など)、肝機能、便秘などを対象とすることで、これらの疾患の予防、又は、健康増進に有効な食品、医薬品の開発、評価に利用することができる。
【0062】
例として、糖尿病での解析結果を示す。血清血糖、HbAlcの検査値をもとに糖尿病クラスターを分類すると、検査値の低いクラスター、普通のクラスター、高めのクラスター、高いクラスターの4つのクラスターに分類可能であった(図13)。また、食生活クラスターと糖尿病クラスターのモザイク図を図14に示す。
【0063】
糖尿病クラスターの4つのクラスター間で菌の量に有意差があるOTUを抽出し(図15)、さらに食生活クラスターでも有意差のあるOTUを抽出すると複数の制限酵素での存在が確認された(表2)。例としてAluI OTU238を詳細に調査すると(図16)、糖尿病の検査値が高いクラスターに多いことが分かった。また食生活クラスターを見ると、食生活クラスター1および2でその量が少ないことが分かる。このことから、糖尿病改善のために食生活クラスター1、2に示される食生活改善の提案を、腸内常在菌を通じて行うことができる。
【0064】
以上より、腸内年齢の若返りや、疾患発症率の低下など、それぞれの目的に対応した好ましい腸内常在菌を実現するために必要な食生活を提供することができる食事支援方法が提供されることが示された。
【0065】
表2

【0066】
さらに、この結果を糖尿病改善の薬、サプリなどの開発の際に、その効果の評価の指標として、腸内常在菌を用い、AluI OTU238などの変化を確認することも考えられる。
【0067】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明のシステム概要を示している。
【図2】図2は、本発明の基礎データベースに関連したフローチャートを示している。
【図3】図3は、本発明の健康度判定と健康度改善案の提案に関するフローチャートを示している。
【図4】図4は、受診者の腸年代を判別した結果を示す図である。
【図5】図5は、制限酵素AluIとHhaIの2種類のT−RFLP解析結果を基にした腸内常在菌クラスタリング(腸内常在菌型)結果を示す図である。
【図6】図6は、各腸内常在菌クラスターにおけるそれぞれのOTUの割合とそれぞれの腸内常在菌クラスター間での分散分析を行った結果を示す図である。ここでは、AluIの結果を例示している。
【図7】図7は、年代と腸内常在菌クラスターとのモザイク図である。年代ごとの標準的腸内常在菌型の変動を示している。
【図8】図8は、食生活による食生活クラスタリングの図である。各食事項目の食事回数のアンケート結果を基にした、食生活クラスタリング結果が示されている。
【図9】図9は、食事項目と食生活クラスターとのモザイク図である。食事と食生活型(食生活クラスター)の変動を示している。図9の(a)は、各食生活クラスターにおける、1週間で朝にパンを食べる回数及びその割合を示している。図9の(b)は、各食生活クラスターにおける、1週間でウシ・ブタ(野菜入り)を食べる回数及びその割合を示している。図9の(c)は、各食生活クラスターにおける、1週間で焼き魚又はさしみを食べる回数及びその割合を示している。図9の(d)は、各食生活クラスターにおける、1週間で生野菜を食べる回数及びその割合を示している。
【図10】図10は、食生活クラスターと有意な食事項目を示す図である。縦軸は1週間における各項目の食事回数を示しており、横軸は食事項目を示している。
【図11】図11は、食生活クラスターにおけるそれぞれのOTUの割合と食生活クラスター間で分散分析を行った結果を示す図である。ここでは、AluIの結果を例示している。
【図12】図12は、AluI OTU245と、(a)腸内常在菌型(腸内常在菌クラスター)又は(b)食生活型(食生活クラスター)との関係を示す図である。縦軸に菌の量を割合で示し、横軸に腸内常在菌クラスター又は食生活クラスターを示している。(c)は、AluI OTU245と、(c)年代との関係を示す図である。縦軸に菌の量を割合で示し、横軸に年代を示している。
【図13】図13は、検査値を基にした糖尿病でのクラスタリングを示す図である。
【図14】図14は、糖尿病クラスターと食生活クラスターのモザイク図である。
【図15】図15は、糖尿病でのクラスターにおけるそれぞれのOTUの割合と糖尿病クラスター間で分散分析を行った結果を示す図である。ここでは、AluIの結果を例示している。
【図16】図16は、AluI OTU238と、(a)食生活型(食生活クラスター)との関係を示す図である。縦軸に菌の量を割合で示し、横軸に食生活クラスターを示している。(b)は、AluI OTU238と、(c)糖尿病クラスターとの関係を示す図である。縦軸に菌の量を割合で示し、横軸に糖尿病クラスターを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の食生活を把握する過程と、対象者の糞便を解析して腸内常在菌を把握する過程と、予め設定された腸内常在菌と食生活との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌型の好ましい腸内常在菌型からの偏差を求める過程と、該好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活を求める過程と、前記必要な食生活を出力する過程とを含む食事支援方法。
【請求項2】
前記食生活を把握する過程は、食生活クラスタリングを含み、前記腸内常在菌型を把握する過程は、腸内常在菌クラスタリングを含み、前記予め設定された腸内常在菌型と食生活型との相関関係は、前記クラスタリングに基づく食生活クラスターと腸内常在菌クラスターとの相関関係であり、前記好ましい腸内常在菌型は、該対象者の年齢よりも若年の健常者における平均的な腸内常在菌型である請求項1に記載の食事支援方法。
【請求項3】
さらに、対象者の腸内常在菌クラスタリングにおける発症率の高い疾患を把握する過程、及び、予め設定された腸内常在菌型と食生活型との相関関係及び、腸内常在菌型と疾患の発症率との相関関係に基づいて、好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活型を求める過程を含む、請求項1に記載の食事支援方法であって、前記食生活型を把握する過程は、食生活クラスタリングを含み、前記腸内常在菌型を把握する過程は、腸内常在菌クラスタリングを含み、前記好ましい腸内常在菌型は、前記発症率の高い疾患に関してその発症率が低い腸内常在菌型であり、前記予め設定された腸内常在菌型と食生活型との相関関係は、前記クラスタリングに基づく食生活クラスターと腸内常在菌クラスターとの相関関係であり、前記予め設定された腸内常在菌型と疾患の発症率との相関関係は、前記クラスタリングに基づく疾患クラスターと腸内常在菌クラスターとの相関関係である、食事支援方法。
【請求項4】
前記疾患の発症率との相関関係は、対象者の健康診断値や生化学検査値を把握する過程と、該対象者の検査値から対象とする疾患クラスタリングを含む、請求項3に記載の食事支援方法。
【請求項5】
前記腸内常在菌型を把握する過程は、数種類、又は、1種類のプライマーと制限酵素の組み合わせで解析する過程を含む請求項1ないし4の何れか一項に記載の食事支援方法。
【請求項6】
対象者の食生活を表す指標と、対象者の糞便の解析に基づく対象者の腸内常在菌型を表す指標の入力を受け、予め設定された腸内常在菌型と食生活型との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌型の好ましい腸内常在菌型からの偏差を求め、該好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活型を求め、前記必要な食生活型を出力する食事支援システム。
【請求項7】
対象者の食生活を表す指標と、対象者の糞便の解析に基づく対象者の腸内常在菌型を表す指標の入力を受け、該対象者の過去に実施した結果の腸内常在菌型と食生活型との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌型の過去に実施し得られた腸内常在菌型からの偏差を求め、更に好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活型を求め、前記必要な食生活型を出力する食事支援システム。
【請求項8】
コンピュータに、対象者の食生活型を表す指標と、対象者の糞便の解析に基づく対象者の腸内常在菌型を表す指標の入力を受け、予め設定された腸内常在菌型と食生活型との相関関係に基づいて、該対象者の腸内常在菌型の好ましい腸内常在菌型からの偏差を求め、該好ましい腸内常在菌型を実現するために必要な食生活型を求め、前記必要な食生活型を出力させる食事支援システム用コンピュータソフトウェア。
【請求項9】
前記請求項8に記載のコンピュータソフトウェアを記憶した、コンピュータによって読み出し可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A−B】
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【図9C−D】
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【図10】
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【図11】
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【図12A−B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−165716(P2012−165716A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30791(P2011−30791)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(399081213)インフォコム株式会社 (19)
【出願人】(507416805)株式会社テクノスルガ・ラボ (1)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(504229284)国立大学法人弘前大学 (162)
【Fターム(参考)】