説明

腸内有害菌低減剤、それを含む食品または医薬品

【課題】腸内のpH低下、腸内のアンモニア濃度の低減、腸内の腐敗産物濃度の低減、腸内のビフィズス菌産生促進、肌荒れ改善という新たな効果を提供する、腸内有害菌の低減剤を提供する。
【解決手段】サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有する腸内有害菌の低減剤。該腸内有害菌の低減剤は、スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が50μg/ml以上1000μg/ml以下の活性を示すことが好ましい。さらに、カテキン、ポリフェノール類を含む茶抽出物、烏龍茶抽出物を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサラシア属植物の粉末物または抽出物を含有する腸内有害菌や有害物質の低減剤及びその成分を含む食品、医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
サラシア属植物の根や幹はインドやスリランカの伝統医学アーユルヴェーダにおいて天然薬物として利用されてきた。スリランカではサラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)の根皮がリュウマチ、淋病、皮膚病の治療に有効であるとともに、初期糖尿病の治療に用いられると伝承されている。インドではサラシア・オブロンガの根が同様の治療に用いられるほか、サラシア・キネンシス(S. chinensis)も糖尿病の治療に用いるとされている(非特許文献1)。
【0003】
このようにサラシア属植物には糖尿病の予防や初期治療に有効であることが伝承されている。近年ではサラシア属植物に血糖値上昇抑制作用があり、その作用メカニズムがα−グルコシダーゼ活性阻害に基づく糖吸収抑制作用によるものであることが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
また、サラシア属抽出成分に含まれ、α−グルコシダーゼ活性阻害作用を有する化合物(特許文献1〜3)や、α−グルコシダーゼ活性阻害作用を基にした抗糖尿病剤としての応用例が知られていた(特許文献4〜5)。
【0005】
サラシア属植物の粉砕物や抽出エキスの胃腸への効果については、消化器系の運動亢進剤として有効であるという報告(特許文献6)があるが、腸内での有害菌や有害物質についての記述はない。
また、乳酸菌やビフィズス菌と併用することで腸内環境を改善するという報告(特許文献7)がなされているが、本来、腸内環境を改善する作用のある乳酸菌やビフィズス菌の効果との分離がされていないためサラシアの効果が分からない。また、腸内での有害菌や有害物質についても記述がなく、サラシアがどのような効果を持っているのか明らかではなかった。
【非特許文献1】FOOD Style 21、第6巻、第5号、第72〜78頁
【特許文献1】特許第3030008号公報
【特許文献2】特開2004−323420
【特許文献3】特開2000−86653
【特許文献4】特開平9−301882号公報
【特許文献5】特許第3261090号公報
【特許文献6】特許第3771789号公報
【特許文献7】特開2007−31345
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本報告では、腸内有害菌の低減剤を提供する。また、これまでよくわからなかったサラシア属植物の腸内での効能を明らかにし、その有効性を生かした食品または薬剤を提供する。特に、腸内のpH低下、腸内のアンモニア濃度の低減、腸内の腐敗産物濃度の低減、腸内のビフィズス菌産生促進、肌荒れ改善という新たな効果を見出し、これらの改善手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これまで報告されているサラシアの効果の多くは上記のようなものであるが、今回、我々はサラシアを摂取した際の腸への影響や、肌荒れ、体調への影響について鋭意検討し、その結果、サラシアは腸内の有害菌を低減し、アンモニア等の腸内の有害物質を減らし、ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム、Bifidobacterium)等の善玉菌を増やすことを見出した。
本発明は、以下の構成よりなる。
<1>
サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有することを特徴とする腸内有害菌の低減剤。
<2>
スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が50μg/ml以上1000μg/ml以下の活性を示すことを特徴とする、上記<1>に記載の腸内有害菌の低減剤。
<3>
さらにカテキンを1〜50%含有することを特徴とする上記<1>または<2>に記載の腸内有害菌の低減剤。
<4>
さらにリパーゼ活性阻害効果を有するポリフェノール類を2〜80%含有することを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
<5>
低減される腸内有害菌が、エンテロバクター属菌またはクロストリジウム属菌であることを特徴とする上記<4>に記載の腸内有害菌の低減剤。
<6>
腸内のpH低下剤であることを特徴とする、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
<7>
腸内のアンモニア濃度の低減剤であることを特徴とする、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
<8>
腸内の腐敗産物濃度の低減剤であることを特徴とする、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
<9>
腐敗産物がインドールまたはスカトールであることを特徴とする上記<8>に記載の腸内有害菌の低減剤。
<10>
腸内のビフィズス菌産生促進剤であることを特徴とする、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
<11>
肌荒れ改善剤であることを特徴とする、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
<12>
上記<1>〜<4>のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤を含有する飲食品または飲食品材料。
<13>
上記<1>〜<4>のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤を含有する錠剤またはハードカプセル充填型の食品または医薬品。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、腸内有害菌の低減剤、その有効性を生かした食品または薬剤が提供される。特に、腸内のpH低下、腸内のアンモニア濃度の低減、腸内の腐敗産物濃度の低減、腸内のビフィズス菌産生促進、肌荒れ改善という新たな効果を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<サラシア>
本発明の腸内有害菌の低減剤は、サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有する。サラシア属植物としては、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・プリノイデス(Salacia prinoides)、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)等、ニシキギ科サラシア属の植物を用いることができる。特に、コタラヒムブツともよばれるサラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)を好適に利用することができる。
【0010】
本発明においては、好ましくはサラシア属植物の幹、根皮および葉からなる群から選択される少なくとも1種からの抽出物または粉砕物を使用する。
葉は粉砕して細片もしくは粉末として用いることが好ましい。さらにそのまま服用することもできる。
根皮および幹は、粉末として用いることができる。また、エキスの抽出に用いることもできる。ここでいうエキスとはサラシア属植物の抽出物のことをいう。エキス抽出に用いる際はそのまま使用してもよいし、粉砕して細片もしくは粉末としてからエキスを抽出することもできる。
【0011】
本発明において、サラシア属植物の抽出物は、抽出後の濾液のままで、または濃縮もしくは希釈した状態またはその乾燥粉末の形態で、あるいはそれらの混合物のいずれの形態であってもよい。
前記抽出物の乾燥エキス末は、使用時において、そのまま、あるいは適当な溶媒に溶解して使用することができる。前記溶媒は、抽出時に用いることができる溶媒であって、調製後の薬剤または食品中に残留した場合に人体に悪影響を及ぼさないものであればよく、通常、好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90質量%、好ましくは40〜70質量%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
根皮および幹の粉砕粉末及び粉末抽出したエキス末は、日本薬局方記載の乾燥減量試験法にて、乾燥減量10%以下であることが好ましく、乾燥減量8%以下であることがより好ましい。
【0012】
さらにサラシア属植物の抽出物または粉砕物を濃縮、乾燥してペースト状、粉末状として利用することもできる。抽出物を濃縮、乾燥してペースト状、粉末状にする場合には凍結乾燥法、スプレイドライ法などが使用されるが、これに限られるものではない。ペースト状、粉末状としたサラシア属植物の抽出物はそのまま服用することもできるし、水、茶、コーヒー、ジュース、アルコールなど飲用物、ケーキ等の一般的食品等を内容組成物とするものにサラシア属植物の抽出物の乾燥エキス末をその内容組成物の0.01質量%以上添加、混合して食品とすることもできる。また外用目的で使用することもできる。
特に、飲用物は容器詰飲料とする。容器詰飲料の外観は長時間にわたって保存すると色調の変化が大きく、商品としては不適切なものとなる。飲料は徐々に着色が進み、時間が経つにつれて、色調が変化する。
色調の保持のために、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウムのような酸化防止剤を添加することで、より一層の効果を発揮することができる。酸化防止剤の配合量は、内容組成物の0.03〜1.2質量%程度、好ましくは0.04〜1.0質量%程度、より好ましくは0.05〜0.8質量%程度である。
【0013】
<その他含有物>
本発明の腸内有害菌の低減剤は、サラシア属植物の抽出物または粉砕物に加えて、フラボノイドを含有することが好ましい。
フラボノイドは、植物の全器官に存在する色素成分の総称であり、主に果実や野菜に含まれ、特に、緑葉や白色野菜、柑橘類の皮の中に配糖体の形で存在する。
本発明において、フラボノイドとは、植物に広く含まれる色素成分の総称で、特に、野菜や果実に多く含まれるフラバン誘導体を意味する。
【0014】
フラボノイドとしては、フラボノール類、イソフラボン類およびカテキン類が好ましい。フラボノール類は、ポリフェノール類として知られている。
フラボノイドは体内に摂取される物質であるが、一般に吸収しにくい。しかしながら、フラボノイドは少量でも有効であり、強力な抗酸化物質であるため、発ガン物質の活性を抑制したり、血行促進作用や抗血栓作用があることが知られている。
【0015】
本発明において、フラボノイドは茶、ブドウ、タマネギなどの各由来物から得ることができる。ここで、由来物とは、生体の少なくとも一部から抽出されるものを意味する。抽出には、例えば、上記サラシア属植物の抽出物を調製する方法が適用され、抽出物の形態も上記と同様のものが可能であり、例えば、抽出後の濾液のままで、または濃縮もしくは希釈した状態またはその乾燥粉末の形態で、あるいはそれらの混合物のいずれの形態であってもよい。
カテキン類を含む茶抽出物は、ツバキ科の常緑樹である茶の木より作製する。茶の木は、インドやスリランカ、東南アジアで栽培されているアッサミカと中国や日本で栽培されているカメリア・シネンシスのどちらも用いられる。抽出には、通常、好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、抽出溶媒として熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90質量%、好ましくは40〜70質量%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0016】
茶抽出物中には、ポリフェノールやカテキン類などの抗酸化物質を含有する。カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートまたはエピガロカテキンガレートが含まれていることが好ましく、特に、エピガロカテキンガレートを含有することが好ましい。
本発明の本発明の腸内有害菌の低減剤は、該茶抽出物を、0.1〜40質量%含有することが好ましく、0.5〜35質量%含有することが更に好ましく、1.0〜30質量%含有することが特に好ましい。
【0017】
また、フラボノイドのひとつであるフラボノール類には、活性酸素を除去し、動脈硬化の抑制や血流改善等の抗酸化作用を示す。フラボノール類の中でも、ポリフェノールのひとつであるレスベラトロールが抗酸化物質として着目されている。レスベラトロールは、スチルベン骨格から構成されており、ブドウの果皮に多く含まれ、そのため、ブドウから作られる赤ワインにも含有されている。
本発明は、該フラボノール類を成分として含む、ブドウエキスまたはブドウ酒濃縮物を含有することが好ましい。
本発明の腸内有害菌の低減剤は、ブドウ抽出物を、0.1〜30質量%含有することが好ましく、0.1〜10質量%を含有することが更に好ましい。
【0018】
レスベラトロールは、脂肪を燃焼させる働きがあり、血管系の疾患である動脈硬化防止や、抗ガン作用、また、DNAの細胞分裂による短化を防ぎ、カロリー制限をしたのと同様の細胞延命効果があり、生活習慣病予防素材として優れた効果を持つことがわかっている。
【0019】
本発明の腸内有害菌の低減剤におけるレスベラトロールの含有量は、0.0001〜5.00質量%が好ましく、更には、0.001〜2.00質量%が好ましい。
【0020】
また、フラボノール類の中でも、ポリフェノールであるケルセチンが抗酸化物質として着目されている。ケルセチンは、フラバン構造を有しており、タマネギの外皮に多く含まれる。
【0021】
ケルセチンは、ビタミンCの吸収サポート、抗酸化作用、免疫作用等の生理作用が報告されており、さらには、脂肪吸収抑制に有効であることがわかっており、生活習慣病予防素材として優れた効果を持つことがわかっている。
【0022】
本発明の腸内有害菌の低減剤におけるケルセチンの含有量は、0.001〜15質量%が好ましく、更には、0.05〜10質量%が好ましく、更には、0.1〜5.0質量%が好ましい。
【0023】
本発明の腸内有害菌の低減剤は、特にカテキンを1〜50質量%含有することが好ましい。カテキンとしては、緑茶由来のもの等が特に好ましい。
また、本発明の腸内有害菌の低減剤は、リパーゼ活性阻害効果を有するポリフェノール類を2〜80質量%含有することが好ましい。リパーゼ活性阻害効果を有するポリフェノールとしては、烏龍茶由来のもの、ブドウ由来のもの、リンゴ由来のもの、ライチ由来のもの、松樹皮由来のもの、カンカ由来のもの等が特に好ましい。
【0024】
<性能>
・腸内有害菌の低減作用
本発明の腸内有害菌の低減剤は、上記のようにサラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有することで、摂取により腸内有害菌、を低減することができる。
腸内有害菌としては、特に大腸内の有害菌であり、例えばクロストリジウム(Clostridium)属菌、エンテロバクター(Enterobacter)属菌等を挙げることができる。
【0025】
・腸内の腐敗産物
また、本発明の腸内有害菌の低減剤の摂取により、腸内の腐敗産物の低減を行うことができる。腐敗産物としては特にインドールおよびスカトールがあげられる。
・その他の作用
また、本発明の腸内有害菌の低減剤の摂取により、いわゆる善玉菌とされるビフィズス菌(ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属菌)の産生を促進することができる。
また、本発明の腸内有害菌の低減剤の摂取により、腸内pHの適正化、腸内アンモニア濃度の低減、肌荒れ改善等を行うことができる。
【0026】
本発明の腸内有害菌の低減剤は、スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)が50μg/ml以上800μg/ml以下となることが好ましい。阻害活性がこの範囲より小さくなると消化管からのブドウ糖吸収抑制作用が弱くなり、所定の効果はやや弱くなり、大きくなると腹部膨満感やガスの発生がやや強くなる。スクラーゼ50%阻害濃度は80μg/ml以上600μg/ml以下が好ましく、100μg/ml以上450μg/ml以下が更に好ましい。
スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)は以下の方法で測定する。
【0027】
・スクラーゼIC50値の測定
サンプル溶液の準備:チューブに2mgのサンプルを量り取り、水2mLを加えてよく懸濁し、1mg/mL濃度のサンプル溶液を作成する。これをそれぞれ0、50、100、250、500μg/mLとなるように水で希釈する。
基質液の準備:0.2Mマレイン酸バッファー(pH6 .0)にスクロース濃度100mMとなるようにスクロースを溶解し、これを基質液とする。
粗酵素液の準備:10mLの生理食塩水に1gのintestinal acetone powder rat(SIGMA社製)を懸濁した後、遠心分離(3,000rpm,4℃,5min)した。得られた上清を分離し、粗酵素液とする。
前述の各濃度のサンプル溶液500μLに対し、基質液400μLを添加し、水浴中37℃にて5分間予備加温した。ここにそれぞれ、粗酵素液を100μL添加し、37 ℃にて60分間反応させた。反応終了後、95℃にて2分間加温することで酵素を失活させて反応を停止させた。生成したグルコース濃度を市販のキット・ムタロターゼ・グルコースオキシダーゼ法(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業(株))を使用して定量を行う。
ブランクの準備:前述の各濃度のサンプル溶液250μLに対し、基質液200μL、粗酵素液50μLを添加し、直ちに95℃にて2分間加温することで酵素を熱失活させ、ブランクデータとする。
得られた値より検量線を作成し、酵素活性を50%阻害する濃度(IC50値)を求める。
【0028】
<形態>
本発明の腸内有害菌の低減剤は、食品としても医薬品としても用いることができる。また、本発明の腸内有害菌の低減剤は、粉末製剤、錠剤、液剤、カプセル製剤等の各種の形態をとることができる。
本発明ではサラシア属植物の抽出エキス末の経時による変色を改善するため、乾燥剤として炭酸カルシウムまたは二酸化ケイ素を錠剤またはカプセル剤にした際の質量の1%以上の量を含有することが好ましい。
更に食品あるいは食品添加物として利用可能な低吸湿原料、吸湿剤、酸化防止剤等を用いることができる。好ましくは低吸湿性原料としてセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、微結晶セルロース、乳糖、オリゴ糖、糖アルコール、トレハロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが用いられる。吸湿剤としてはケイ酸塩類、炭酸マグネシウム、フェロシアン化物、多糖類などが用いられる。より好ましくは低吸湿性原料として結晶セルロース、微結晶セルロース、乳糖が用いられる。酸化防止剤としては、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウム等が用いられる。
【0029】
本発明の粉末、固形剤または液剤に成型するのに必要な化合物、などを適宜包含していて良い。そのような化合物の例としては、エリスリトール、マルチトール、ヒドロキシプロピルセルロース、カオリン、タルクなどが挙げられる。
本発明において、粉末製剤、錠剤または液剤とするための製剤化、カプセル製剤とするためのカプセル内包物の顆粒化、カプセル化、カプセル素材等は公知手段や公知素材が適用できる。
本発明のカプセル製剤は、硬カプセル、軟カプセル、シームレスカプセルマイクロカプセル、などの形態であってもよく、カプセル皮膜が、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーから選択される少なくとも一種又は二種以上によって構成されていることを特徴とする。豚皮ゼラチン、魚ゼラチンのカプセル被膜が特に好ましい。
これらのカプセル皮膜は周知慣用の方法で製することができる。ここで、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーで構成されているとは、カプセル皮膜全体質量に対して、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、魚ゼラチン又は天然親水性ポリマーの総量が30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であるものを意味する。
また、上記組成物は酸化防止の観点で空気との接触を避けるために包装袋または包装容器に充填することが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を用いて本発明について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
サラシア・レチキュラータとサラシア・オブロンガの根及び幹の部分を粉砕後、熱水抽出工程を経て得られた液をスプレー乾燥し、サラシアエキス末を得た。
このサラシアエキス末を用いて以下の配合をした粉末を作成し、[実験法1]記載の方法でスクラーゼIC50値を測定した。
また、市販の黒烏龍茶(サントリー製)を凍結乾燥して烏龍茶パウダーを作成した。
このパウダーは豚膵リパーゼ活性を有意に阻害することを確認した。
また、緑茶抽出物として、太陽化学製 サンフェノン100s(カテキン55質量%含有)を使用した。
これらを用いて以下の表1に示す配合成分を打錠し、試料1〜12を作成した。
【0032】
【表1】

【0033】
健康な成人5名ずつのグループに、試料1〜12をそれぞれ毎日の食後30分以内に1錠経口摂取してもらい、それを7日間繰り返した。摂取開始前と摂取終了日の翌日の便を採取してすぐに嫌気パックに保存して30時間以内に菌の培養検査による同定及びアンモニア量、pH測定を行った。
腸内フローラの検索は、検体をBS寒天培地(ビフィドバクテリウム属)、NN寒天培地(クロストリジウム属)、DHL寒天培地(エンテロバクター属)を用いて各菌群を計数した。
【0034】
表2に各試料摂取群の平均を示す。菌数とアンモニア量は摂取前の菌数及び量を100とした時の相対値で示した。
【0035】
【表2】

【0036】
本発明の試料摂取により、腸内有害菌であるクロストリジウム(Clostridium)属菌及びエンテロバクター(Enterobacter)属菌が有意に低減し、善玉菌であるビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属菌が増えることがわかった。また、糞便のpHとアンモニア量がどちらも有意に低下し腸内有害菌の棲みにくい環境(通常、中性pH付近が有害菌が繁殖し易い)になっていることが明らかとなった。
【0037】
サラシアの摂取量については、試料4,6より試料5の方が良い結果となった。試料6摂取群の被験者のうち3名が下痢を引き起こしたためと推察される。
更に、サラシアとカテキンを併用した試料9摂取群が最も良好な腸内環境へと変化した。
烏龍茶パウダー単独摂取では腸内有害菌が増える傾向だが、サラシアやカテキンを併用することにより抑えられることがわかった。
【0038】
(実施例2)
実施例1ので得られた試料摂取前後の糞便中に含まれる腐敗産物の測定を島津製作所製GC−9Aにて行った。
表3に各試料摂取群の平均を示す。腐敗産物、インドール、スカトール量は摂取前の量を100とした時の相対値で示した。
更に、摂取前後について被験者にアンケートを行い、肌の状態、疲れやすさについて以下の基準で評点を付けた。
肌の状態 5:良くなった
4:少し良くなった
3:変化なし
2:少し悪くなった
1:悪くなった
疲れやすさ 5:疲れにくくなった
4:少し疲れにくくなった
3:変化なし
2:少し疲れやすくなった。
1:疲れやすくなった。
表3に、得られた評点の平均値を示す。
【0039】
【表3】

【0040】
本発明の試料摂取により腸内の腐敗産物量が有意に低下し、肌の状態や疲れ易さが顕著に改善した。
また、腐敗産物の中でも特にインドール量とスカトール量の低減が見られた。
試料3のリパーゼ阻害物の摂取は腸内の腐敗産物を増やし肌の状態を悪化させたが、試料10〜12に見られるような本発明の構成にすることで良好な状態になることがわかった。
【0041】
(実施例3)
サラシアエキス末を使用した錠剤の作成
【0042】
表4に示す配合により、錠剤を作成しシェラックコーティングを施したサプリメントを作成した。
【0043】
【表4】

【0044】
この配合の錠剤摂取により実施例1及び2で示された効果が得られた。
更に摂取被験者より、おなかまわりがすっきりした、身体が軽くなった、二日酔いしにくくなったなどの報告を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属植物の粉砕物または抽出物を含有することを特徴とする腸内有害菌の低減剤。
【請求項2】
スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が50μg/ml以上1000μg/ml以下の活性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の腸内有害菌の低減剤。
【請求項3】
さらにカテキンを1〜50質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の腸内有害菌の低減剤。
【請求項4】
さらにリパーゼ活性阻害効果を有するポリフェノール類を2〜80%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
【請求項5】
低減される腸内有害菌が、エンテロバクター属菌またはクロストリジウム属菌であることを特徴とする請求項1に記載の腸内有害菌の低減剤。
【請求項6】
腸内のpH低下剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
【請求項7】
腸内のアンモニア濃度の低減剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
【請求項8】
腸内の腐敗産物濃度の低減剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
【請求項9】
腐敗産物がインドールまたはスカトールであることを特徴とする請求項8に記載の腸内有害菌の低減剤。
【請求項10】
腸内のビフィズス菌産生促進剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
【請求項11】
肌荒れ改善剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤を含有する飲食品または飲食品材料。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれかに記載の腸内有害菌の低減剤を含有する錠剤またはハードカプセル充填型の食品または医薬品。

【公開番号】特開2009−137899(P2009−137899A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317132(P2007−317132)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】