腸機能を評定するための方法および装置
本発明は、患者における腸機能を評定するための方法を提供し、この方法は、腸機能の尺度である少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供すること;その患者に経験しているパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させること;ならびにその数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定することを含む。さらに本発明は、患者の腸機能を評定するための装置を提供し、この装置は、患者の腸機能と関係する少なくとも1つのパラメータの数値アナログスケールを提供する表示ユニット;その数値アナログスケールに患者が示す少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を受信する受信ユニット;ならびにその数値アナログスケールに示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を提供するインターフェースユニットを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が経験する腸機能のレベルの評定に関する。
【背景技術】
【0002】
癌、リウマチおよび関節炎などの疾患は、多くの場合、重度の疼痛を随伴する。この疼痛疾患は、通常、その疼痛のそもそもの原因である一次疾患、例えば癌の進行に負の影響を及ぼす。腫瘍患者が感じる疼痛の範囲は、骨膜の疼痛および骨それ自体の疼痛、ならびに内臓痛および軟組織における疼痛を含む。重度の疼痛は、肉体的および感情的我慢のぎりぎりまで患者を追い込み、憂鬱気分、短気、衰弱、関心範囲の限定および社会的活動の減少を招く。従って、結果として患者の生活の質を永続的に向上させることとなる疼痛治療の成功は、その疾患の実際の原因の治療であるので、総合療法の成功にとっても同様に重要である。
【0003】
オピオイド鎮痛薬は、疼痛、特に慢性疼痛の治療において中心的な役割を果たす。オピオイド鎮痛薬群は、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルホン、ニコモルヒネ、ジヒドロコデイン、ジアモルヒネ、パパベレタム、コデイン、エチルモルヒネ、フェニルピペリジンおよびその誘導体、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、チリジン、トラマドールならびにヒドロコドンを含む。オピオイド鎮痛薬の顕著な疼痛寛解作用は、内因性モルヒネ様作用物質(この生理的機能は、疼痛刺激の受容および処理の制御である)の作用の模倣による。
【0004】
オピオイド鎮痛薬は、それらが高い親和性でオピオイド受容体と結合し、疼痛受容の強い抑制を誘導する場合、強力な作動薬であるとみなされる。同様に高い親和性でオピオイド受容体と結合はするが、疼痛受容の低減を生じさせず、その結果、オピオイド作動薬を中和する物質は、拮抗薬と呼ばれる。その結合挙動および誘導活性に依存して、オピオイドは、純粋な作動薬、作動/拮抗混合薬および純粋な拮抗薬と分類することができる。
【0005】
純粋なオピオイド拮抗薬は、例えば、ナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナルブフィン、ナロキソネアジネン、メチルナルトレキソン、ケチルシクラゾシン、ノルビナルトルフィミン、ナルトリンドール、6−β−ナロキソールおよび6−β−ナルトレキソールを含む。さらなるオピオイド作動薬および拮抗薬は、例えば、W. Forth, D. Henschler, W. Rummel, K. Starke : Allgemeine und Spezielle Pharmakologie und Toxikologie, 7th edition, 1996, Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg Berlin Oxford(非特許文献1)に開示されている。
【0006】
鎮痛作用のため、オキシコドン、チリジン、ブプレノルフィンおよびペンタゾシンなどの化合物が、疼痛治療のための薬物の形態で使用されている。鎮痛活性化合物としてオキシコドンを含むOxygesic(登録商標)および鎮痛活性化合物としてチリジンを含むValoron(登録商標)などの薬物が、疼痛治療のために価値があることは証明されている。
【0007】
オピオイドは、疼痛の管理に有効であるが、オピオイドに依存する人や治療以外の理由にオピオイドを誤用する個人による乱用の危険性がある。オピオイドの乱用の可能性に加えて、疼痛治療のための強いオピオイド鎮痛薬の使用は、便秘、呼吸低下、疾患および鎮静などの望ましくない副作用を招くことがある。オピオイド鎮痛薬の嗜癖性および習慣性の可能性ならびにそれらの他の副作用を最小にする試みは、オピオイド鎮痛薬を中和する拮抗薬の投与を含むことがある。こうした拮抗薬は、ナルトレキソンまたはナロキソンから選択することができる。例えば、この治療概念は、体外から投与されたオピオイドを遮断するために指示される市販の静脈内麻薬拮抗薬である、オピオイドチリジンとオピオイド拮抗薬ナロキソンの配合製品 ValoronN(登録商標)において、首尾よく利用されている。
【0008】
WO 03/084520(特許文献1)には、疼痛治療において使用するための、オキシコドンおよびナロキソンを含み、それらの活性化合物が持続的な、一様な、および独立した様式で製剤から放出される保存安定性医薬製剤が記載されている。詳細には、オキシコドンとナロキソンの併用により、効率的な鎮痛活性が達成され、同時に、便秘、呼吸低下および嗜癖性の発現などの一般的な副作用の抑制が達成されるとそこに述べられている。
【0009】
オピオイドでの疼痛治療によって生じる様々なレベルの副作用(例えば便秘)に関して患者を診断および治療する際、医療提供者は、常に困難に直面する。患者が、自分たちが経験している副作用を正確に説明することができないからである。便秘などのオピオイドによる腸機能障害(OBD)症候群を説明する際に使用するための患者用の一様なシステムがないことにより、医療提供者は、同じレベルの便秘について非常に異なる説明を受けることが多い。これらの異なる説明により、効果の無い、不適切な、または過剰な治療が施される場合もある。加えて、患者が彼らの不完全な腸機能を説明する際に使用する一様なシステムがないことで、不正確な診療記録が生じ、臨床試験または保険会社のために治療過程の腸機能を正確に説明することができない。
【0010】
腸機能低下、特に便秘は、麻薬性鎮痛薬を摂取している患者には有意な問題であり得る。使用されることが多い幾つかのパラメータ、例えば便通回数および便の硬さが、便秘によって生じる患者満足度の減損を十分に反映しないことは周知である。患者による判断が、例えば排便の回数より意味があることは、一般に認められている。患者満足度に影響を及ぼし得る主観的要因としては、数ある中でも、固形便、痙攣、排便の困難さ、腸内容物排出の不完全さおよび痛みのある便通が挙げられる。
【0011】
医療提供者は、腸機能、特に麻薬性鎮痛薬での治療を受けている患者の腸機能を正確に評定するための新しい、よりよい方法を常に捜している。
【特許文献1】国際公開第WO 03/084520号パンフレット
【非特許文献1】W. Forth, D. Henschler, W. Rummel, K. Starke : Allgemeine und Spezielle Pharmakologie und Toxikologie, 7th edition, 1996, Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg Berlin Oxford
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の1つの目的は、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)の腸機能を評定することができる、改善された方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)の腸機能を評定することができる、装置を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)が経験しているパラメータを分析することにより、その患者の開示に影響を及ぼし得る定言的な説明を患者に提案することなく、腸機能を評定または診断することができる装置を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)の腸機能を、より正確に評定して、より完全で正確な診療記録を提供することができる装置を提供することである。
【0016】
本発明のなお、さらなる目的は、特に視力障害を有する多数の高齢の疼痛管理患者を考慮して、ヒト集団の視力障害患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)が、より容易におよび正確に使用できる腸機能測定装置を提供することである。
【0017】
本発明によると、この腸機能の尺度であるパラメータを観察することにより、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)の、特に麻薬性鎮痛剤での疼痛治療を受けている患者の腸機能を、正確に評定することができる。とりわけ、本発明は、その人が経験している腸機能のレベルを測定するための方法、およびこの方法での使用に特に適するアナログスケールに関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1つの態様では、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)における腸機能の評定方法を提供し、この方法は、以下の段階を含む:
−少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供する段階(前記パラメータは、腸機能の尺度である);
−その患者に経験したパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させる段階;ならびに
−その数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定する段階。
【0019】
腸機能の尺度であるまたは腸機能と関係があるパラメータは、オピオイドによる腸機能障害(OBD)症候群、例えば便秘を含むことができる。OBDは、疼痛患者の継続治療を制限するオキシコドンなどの強いオピオイドでの鎮痛療法に関連した、多くの場合重度の有害薬物反応である。OBDは、主として便秘を随伴するが、腹部の痙攣、鼓脹および胃食道逆流も随伴する。
【0020】
例えば、腸機能の尺度であるまたは腸機能と関係があるパラメータは、排便の困難さ、不完全な腸内容物排出感および便秘の判断から成る群より選択することができる。
【0021】
好ましくは、前記ヒト集団の患者または構成員に、少なくとも2つのパラメータ、さらに好ましくは少なくとも3つのパラメータのための数値スケールを提供する。患者に1つより多くの数値アナログスケールを提供する場合、好ましくは、その方法は、平均腸機能の決定を含む。この平均腸機能は、各パラメータについての数値アナログスケール値を平均することにより算出することができる。
【0022】
既に上で述べたように、好ましくは、本発明の方法は、麻薬性鎮痛薬、例えば、オキシコドン、さらに好ましくはナロキソンと併用でのオキシコドンでの疼痛治療を受けている患者における腸機能を評定するために用いる。
【0023】
しかし、本発明は、例えば鎮痛薬以外の活性化合物での治療を受けている患者における腸機能を評定するためにも用いることができる。原則として、本発明は、患者における腸機能に対するあらゆる薬物の影響を評定するために用いることができる。同様に、本発明は、病気に罹っているとは考えられない、すなわち患者でない、ヒト集団の構成員における腸機能を評価するために用いることができる。こうした構成員は、薬物の投与を受けていないときであっても腸機能の判定に本発明の方法を適用することができる。
【0024】
前記数値アナログスケールは、好ましくは、0から10、または0から100の範囲にわたる。
【0025】
本発明のさらなる態様では、患者における腸機能の評定に適するアナログスケールおよび装置を提供する。本発明のアナログスケールの好ましい実施形態としては、紙票、円形腸機能メーターおよび電子装置が挙げられる。
【0026】
本発明の具体例としての実施形態によると、患者における腸機能を評定するための装置を提供し、この装置は、患者の腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを提供するための表示ユニット;その数値アナログスケールを用いて患者によって示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を受信するようになっている受信ユニット;ならびに腸機能を評定するために、その数値アナログスケールを用いて示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を提供するようになっているインターフェースユニットを具備する。
【0027】
こうした装置は、数値アナログスケールを使用者(例えば、患者または医師)に、その使用者がそのスケールを(例えば、視覚的に、および/または聴覚的に)感知できるように、表示することができる。こうした表示ユニットは、モニター(例えば、ブラウン管、液晶表示装置またはプラズマ表示装置)であってもよく、またはさらに携帯装置であってもよい。さらに、こうした表示装置は、そのスケールにしるしを付けるストリップまたはシートであってもよい。さらにまた、この装置は、その使用者の入力を受信することができ、この入力を場合によっては前処理する(例えば、それをデジタル形式のような機械読み取り可能な形式に変換する)ことができ、その結果をその後の通信インターフェースでの送信に提供することができる。
【0028】
この装置は、電子装置、例えば、PDA(personal digital assistant:形態情報端末)に類似した携帯装置として実現することができる。さらに、この装置は、携帯電話、ラップトップ型コンピュータなどに組み込むことができる。
【0029】
使用者は、例えば、マウス、トラックボール、キーパッド、タッチパッドによる、または音声認識システムをベースにした、ユーザーインターフェースを介して、その装置にデータを入力することができる。
【0030】
特に、前記インターフェースユニットは、腸機能を評定するために、数値アナログスケールを用いて示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を制御エンティティーに送信するようにすることができる。例えば、病院では、多数の患者の腸機能を評定すること、および対応する情報を集約的に供給すること、すなわち異なる患者位置にある異なる装置から制御コンピュータへとデータを中央に供給することが望まれる場合がある。
【0031】
前記インターフェースユニットから前記制御エンティティーへのデータの送信は、有線通信路によって行うこともでき、または無線通信路によって行うこともできる。有線通信用の装置のインターフェースは、従来のケーブル接続により中央制御コンピュータ(例えば、ワークステーションまたはパーソナルコンピュータ)に接続することができる。無線通信用の装置のインターフェースは、電磁波(例えば、赤外帯域内または無線周波数帯域内の電磁放射線)の交換により中央制御コンピュータと通信することができる。
【0032】
本発明のもう1つの具体例としての実施形態によると、患者における腸機能を評定するコンピュータプログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な媒体を提供し、前記コンピュータプログラムは、処理装置により実行がされると、腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供する方法段階;その患者に経験したパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させる方法段階;ならびにその数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定する方法段階を、制御または実行するようになっている。
【0033】
こうしたコンピュータ読み取り可能な媒体は、CD、フロッピー(登録商標)ディスク、USBメモリースティック、ハードディスク(RAM、ROM、フラッシュメモリー)などであり得る。コンピュータ支援制御システムは、ソフトウェアに基づき腸機能を評定するためのそうしたコンピュータ読み取り可能な媒体を含むことができる。
【0034】
本発明のさらのもう1つの具体例としての実施形態によると、患者における腸機能を評定するプログラム要素を提供し、前記プログラム要素は、処理装置により実行がされると、上述の方法段階を制御または実行するようになっている。
【0035】
こうしたプログラム要素は、コンパイル済みのもしくはコンパイル済みでない形式で提供することができ、またはLANもしくはインターネット等のネットワークにより送信されるトラベリングシグナルでさえあり得る。
【0036】
本発明の患者における腸機能の評定は、コンピュータプログラムにより、すなわちソフトウェアにより、または1つもしくはそれ以上の特殊な最適化電子回路の使用により、すなわちハードウェアで、またはハイブリッド形式で、すなわちソフトウェア構成要素およびハードウェア構成要素により、実現することができる。
【0037】
本発明の方法のために説明する実施形態は、装置、コンピュータ読み取り可能な媒体およびプログラム要素にもあてはまり、逆もまた同じである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明は、腸機能と関係があるパラメータを、これらのパラメータのための数値アナログスケール(NAS)を使用して測定することによって、腸機能をより正確に判定することができるという発見に基づく。こうした方法は、鎮痛薬での治療を受けている患者における腸機能を評定するとき、特に有利である。薬物の鎮痛作用は、通常、数値アナログスケールを使用して評定されるからである。従って、鎮痛薬での治療を受けている患者を用いて、意味のある結果を得るために提供する数値アナログスケールを論じることができる。
【0039】
本発明に従って、腸機能を、腸機能と関係があるパラメータを観察することにより評定する。詳細には、腸機能は、排便の容易さまたは困難さ、不完全な腸内容物排出感、および/または便秘に関する患者の個人的判断から選択されるパラメータに基づき判定することができる。患者の腸機能を評定するために、代替的に、または加えて、観察することができる他のパラメータとしては、数ある中でも、排便回数、便の硬さ、痙攣および痛みのある便通が挙げられる。
【0040】
通常、患者は、最近の数日間または数週間、例えば、最近1、2、3、4、5、6、7、10または14日間に経験したパラメータの量および/または強度を示す。
【0041】
患者が観察パラメータについての彼/彼女の主観的経験を示す数値アナログスケールは、いずれのサイズまたは形態を有してもよく、ならびにそれは、0または任意の他の数から任意の数、例えば、0から10、または0から50、または0から300、または1から10の範囲にわたり得る。
【0042】
1つより多くのパラメータが観察される場合、平均腸機能は、観察されたパラメータ(例えば、排便の容易さまたは困難さ、不完全な腸内容物排出感および便秘の判断についての3つの数値アナログスケール値)の平均である数値の形態で得ることができる。この平均腸機能は、平均腸機能スコア、腸機能指数または(3つのパラメータを観察された場合には)BFI3と呼ばれる。本発明のために、BFIおよびBFI3は、同義で用いる。
【0043】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、好ましくは、麻薬性鎮痛薬での疼痛治療を受けている患者における腸機能を評定するために用いられる。便秘などのOBD症状は、これらの患者にとって有意な問題であるからである。本発明の麻薬性鎮痛薬としては、数ある中でも、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルホン、ニコモルヒネ、ジヒドロコデイン、ジアモルヒネ、パパベレタム、コデイン、エチルモルヒネ、フェニルピペリジンおよびその誘導体、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、チリジン、トラマドールならびにヒドロコドンが挙げられる。
【0044】
しかし、上で指摘したように、本発明の方法は、鎮痛薬以外の薬物の腸機能に対する影響を研究するために使用することができ、ならびにたとえ除外することができなかったとしても薬物を一切摂取していないヒト集団の典型的な構成員における腸機能を評価するためにでさえ使用することができる。
【0045】
疼痛治療中の便秘などのOBD症状の治療は、多くの場合、オピオイド拮抗薬と併用でのオピオイドの投与を含むので、オピオイド拮抗薬の投与との組み合わせで疼痛治療を受けている患者における本発明の方法の使用は、特に好ましい。本発明のそうしたオピオイド拮抗薬としては、数ある中でも、ナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナルブフィン、ナロキソネアジネン、メチルナルトレキソン、ケチルシクラゾシン、ノルビナルトルフィミン、ナルトリンドール、6−β−ナロキソールおよび6−β−ナルトレキソールが挙げられる(Forth W.; Henschler, D.; Rummel W.; Starke, K.: Allgemeine und Spezielle Pharmakologie und Toxikologie, 7. Auflage, 1996, Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg Berlin Oxford も参照)。
【0046】
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、オキシコドン・ナロキソン製剤で治療した患者または健常なヒト被験者における腸機能を、3つの重要なパラメータを使用する数値アナログスケールで測定した。詳細には、腸機能は、次の3つのパラメータを基に判定することができる:
−排便の容易さもしくは困難さ(例えば、患者の評定に従って、最近7日間のもの。この場合、0は、困難さなしに相当し、100は、重度の困難さに相当する);
−不完全な腸内容物排出感(例えば、患者の評定に従って、最近7日間のもの。この場合、0は、不完全な腸内容物排出感がないことに相当し、100は、不完全な腸内容物排出を非常に強く感じることに相当する);
−便秘に関する患者の個人的判断(例えば、最近7日間のもの。この場合、0は、便秘がまったくないことに相当し、100は、非常に重い便秘に相当する)。
【0047】
平均腸機能は、観察されたパラメータ(例えば、排便の容易さもしくは困難さ、不完全な腸内容物排出感ならびに便秘の判断についての3つの数値アナログスケール値)の平均である数値の形で得ることができる。
【0048】
さらに好ましい実施形態において、例えばその患者の指摘に従って最近7日間の、平均腸機能についての要約統計が得られる。
【0049】
詳細には、本発明の腸機能の評定方法は、以下に説明するような本発明のアナログスケールまたは装置を使用して行う。
【0050】
上で述べたものなどの腸機能の指標となるパラメータの値を、患者における定常状態試験に関する実験1において得られたデータに基づいて導出したことは、理解しなければならない。しかし、単回用量投与患者、または健常なヒト被験者などのヒト集団の他の構成員における単回用量および定常状態投与でも匹敵する結果が得られると考えられる。用語「健常なヒト被験者」は、一般には第I相臨床試験に登録される試験集団を記述するために用いる。勿論、本発明の腸機能評定方法は、第I相臨床試験に通常適用されるような組み入れおよび除外基準により定義される、患者でない(すなわち、疾患に罹っていない)および健常なヒト被験者でない、ヒト集団の構成員において用いることができる。
【0051】
排便の容易さまたは困難さなどのパラメータを健常はヒト被験者について測定する場合、それらは、一般に、約16から24人の健常なヒト被験者の試験集団に製剤を投与することによって得られる。規制団体、例えば欧州医薬品審査庁(European Agency for the Evaluation of Medicinal Products)(EMEA)または米国食品医薬品局(the Food and Drug Administration)(FDA)は、通常、例えば20から24人の被験者から得られたデータを受理する。
【0052】
これに関連して用語「健常な」ヒト被験者は、身長、体重および生理学的パラメータ(例えば、血圧)などに関して平均値を有する、通常は白人の典型的な男性または女性を指す。本発明のための健常なヒト被験者は、臨床試験に関する医薬品規制調和国際会議(the International Conference for Harmonization of Clinical Trials)(ICH)の勧告に基づくおよび従う組み入れ基準および除外基準に従って選択する。
【0053】
例えば、組み入れ基準は、18歳以上と45歳以下の間の年齢;19〜29kg/m2の範囲内のBMI;ならびに男性については60〜100kgおよび女性については55〜90kgの体重の範囲内(前記女性は、授乳および妊娠していてはならず、被験薬を摂取する前24時間以内に尿中β−hCG妊娠検査陰性を提供しなければならない);既往歴、身体検査、臨床試験、バイタルサインおよびECGなどに関して有意に異常な所見がないことにより証明される概ね良好な健康状態を含む。
【0054】
除外基準は、被験薬の初回投与の3ヶ月以内のあらゆる治験薬またはプラシーボへの暴露;被験薬の初回投与前30日以内のあらゆる有意な疾患;既往歴、身体検査または検査室分析についての試験前スクリーニングにおいて確認されるあらゆる臨床的に有意な異常;被験薬の初回投与前、21日の間のあらゆる処方箋調剤薬(閉経後の女性についてのHRT、および避妊薬を除く)の使用または7日の間の制酸薬、ビタミン類、生薬および/またはミネラルサプリメントをはじめとする対応薬剤に勝る薬の使用;胃腸薬吸収(例えば、胃内容排出遅延、吸収不良症候群)、分散(例えば、肥満)、代謝または排泄(例えば、肝炎、糸球体腎炎)に干渉することが知られている併発症;治験担当医師の意見で、安全にその試験を完了する被験者の能力を脅かす、病歴または併発症;被験者が薬理治療を必要とした発作障害の病歴;1日に5本より多い現行の喫煙歴;DSM−IV基準に従って、物質またはアルコール乱用の現在または過去の病歴を有する被験者;1日に2本またはそれ以上のアルコール飲料の定期的消費を報告した被験者またはスクリーニング時に0.5%以上の血中アルコールレベルを有する被験者;被験薬の初回投与前3ヶ月の間の500mLより多くの血液もしくは血液製剤の供与または他の大量血液喪失;スクリーニング時に採取した尿の検体でのエタノール、アヘン剤、バルビツール酸塩、アンフェタミン、コカイン代謝物、メタドン、プロポキシフェン、フェンシクリジン、ベンゾジアゼピンおよびカンナビノイドについての試験前スクリーンにおけるあらゆる陽性の結果;オキシコドン、ナロキソンまたは関連化合物に対して感受性であることがわかっていることなどを含む。
【0055】
排便の容易さまたは困難さなどのパラメータを患者から得る場合、その患者群は、10から200人の間の患者を含む。妥当な患者数は、例えば、10、20、30、40、50、75、100、125または150人である。患者は、治療すべき状態の症状に従って選択される。本発明のために、患者は、実施例1の組み入れ基準および除外基準に従って選択することができる。例えば、患者は、18歳以上であり、腫瘍および非腫瘍起源の重度慢性疼痛に罹っており、WHO II、すなわちII鎮痛薬などで不十分な効能および/または忍容性を示す。患者は、現行アルコールまたは薬物乱用、現行の重度心血管および呼吸器疾患、重度の肝臓および腎機能障害の徴候がある場合、薬物動態パラメータの判定について考慮されない。
【0056】
1つの実施形態において、ヒト集団の患者または別の構成員(例えば、健常は被験者)に提供されるパラメータスケールまたは数値アナログスケールは、観察することができるパラメータについての経験なしまたは非常に強い経験を示すものが両末端にある以外、標識またはしるしがまったくない連続線であり得る。そして、その連続線にダッシュを書き込むことにより、患者に経験したパラメータの量および/または強さを示させる。その後、医療提供者または医師は、そのダッシュから経験なしを示す末端までまたは非常に強い経験を示す末端までの距離を測定することができ、その測定値を両末端間の距離で割る。その結果が、腸機能についてのスコアである数値である。1つより多くのパラメータが観察される場合、通常、各パラメータについての数値アナログスケール値を平均することにより、平均腸機能スコアを決定する。3つのパラメータが観察される場合、この平均腸機能スコアは、腸機能指数またはBFI3とも呼ばれる。このスケールにより、Rome II基準を検出することができる。
【0057】
さらなる態様において、図1は、本発明に従って腸機能指数を評定するために使用することができる紙票の一例を図示するものである。詳細には、ヒト集団の患者または別の構成員(例えば、健常なヒト被験者)またはこの患者を担当する医師に、例えば最近の1、3、7または14日間の排便の容易さまたは困難さ;例えば最近1、3、7または14日間の不完全な腸内容物排出感;および再び例えば最近1、3、7または14日間の便秘に関する患者の個人的判断などの腸機能と関係があるパラメータに関する紙票を用いて質問して、質問に答えさせることができる。この実施形態において、質問は、線上の0と100との間にしるしをつけることによって回答され、この場合、0は排便の困難さなしに相当し、100は重度の排便困難に相当し、ならびに/または0は不完全な腸内容物排出感がないことに相当し、100は不完全な腸内容物排出を非常に強く感じることに相当し、ならびに/または0は、便秘がまったくないことに相当し、100は非常に重い便秘に相当する。勿論、このスケールは、0または他のいずれかの数からいずれかの数、例えば、0から10、または0から50、または0から300、または1から10の範囲にわたり得る。例えば、そのしるしから経験なしを示す末端までまたは非常に強い経験を示す末端までの距離を測定し、この測定値を両末端間の距離で割ることにより得ることができる3つの数値を、その後、好ましくは加え、そして3で割って、平均腸機能スコアまたは平均腸機能指数(BFI)またはBFI3を得る。
【0058】
さらなる実施形態において、図2は、本発明の円形BFIメーターの一例を図示するものである。好ましくは、本発明の円形BFIメーターは、上で説明したような腸機能と関係がある1つまたはそれ以上のパラメータに対する患者の評定に関する質問を伴う紙票を含む。さらに、こうした円形BFIメーターは、好ましくは、内円上の数値スケールおよび外円上の数値スケールを含む。これらの数値スケールは、好ましくは、一方のスケール上の値が他方のスケール上の対応する値の倍数になるように互いに相関しており、この場合、その係数は、観察されるパラメータの数に相当する。例えば、3つのパラメータが観察される場合、一方のスケール上の値は、他方のスケール上の対応する値を3で割った、または他方のスケール上の対応する値に3を掛けた値を示す。さらに、本発明のBFIメーターは、内円上の数値スケールの対応する値と外円上の数値スケールの対応する値との相関を容易にするために、針または指針(これは、その円の中央に取り付けられており、その円を回って動かすことができる)を含む。
【0059】
例えば、BFI 3を得るために、例えば、最近7日間の排便の容易さまたは困難さ(この場合、0は排便の困難さなしに相当し、100は重度の困難に相当する);例えば最近7日間の患者の評定に従う不完全な腸内容物排出感(この場合、0は不完全な腸内容物排出を感じないことに相当し、100は不完全な腸内容物排出を非常に強く感じることに相当する);および便秘に関する患者の個人的判断(この場合、0は便秘がまったくないことに相当し、100は非常に重い便秘に相当する)に関する3つの質問を、BFIメーターの円の内部領域に与える。内円(3)上には、時計回りに進む0〜300のスケールを配置する。外円(4)上には、時計回りに進む0〜100のスケールを配置し、このスケールは、内円のスケールのしるしに沿っており、内円の値を3で割った値を示す。計算を容易にするために、針または指針(1)をその円の中央に取り付け、これは、その円を回って動かすことができる。その針の外端には、その内円および外円の数値を囲み込むウインドウ(2)がある。平均腸機能を評定するために、質問1の結果である内円の数字に針を動かすことができる。次に、質問2の結果を、その内円のその点に針を動かすことによって、加えることができる。第三段階において、質問3の結果を、その内円のその結果の点に針を動かすことによって、加える。結果として、平均腸機能スコアを外円上で見ることができる。
【0060】
他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、米国特許第6,258,042号B1およびWO 03/073937 A1に記載されているアナログスケール(これらを、上で説明した装置またはアナログスケールに適応させなければならない)で行うことができる。これらの2つの参考文献の開示は、本明細書に参考として取り入れられている。
【0061】
本発明のさらなる態様において、2つの面を有する携帯パネルのような装置であるアナログスケールを使用することができる。このパネルの一方の面上の患者用の面は、腸機能の尺度であるパラメータのための患者用スケールを有し、このスケールは、そのパラメータの経験なしおよび非常に強い経験から変動してそのパラメータの範囲を描写する。
【0062】
好ましくは、このスケールは、そのパラメータの経験なしまたは非常に強い経験を示すものが両末端にある以外、標識またはしるしがまったくない連続線である。
【0063】
そのパネルの別の面は、そのパラメータのための医療提供者用スケールを有し、このスケールは、0から好ましくは10または100より選択される整数までの番号がつけられた別個の間隔に分けられている。そしてまた、この別個の間隔は、そのパラメータの経験の増加レベルを表し、それは、そのパラメータを特定および治療するために医療提供者および保険会社が使用する用語を用いて記載される。
【0064】
好ましくは、この装置は、そのパネルを包み込み、そのパネルの各面上の両方のスケールを重ね合わせる、そのパネル上にスライド可能に取り付けされた指示器を備えている。この指示器は、各スケールに沿って特定の点を指す指示線を有する。各指示線は、一方の指示線が動かされると、相補的に他方の指示線が動かされるように、互いに接続接続されている。従って、本発明は、人が、自分が経験しているパラメータの量および強度を説明するために使用することができる、2つの相補的スケールを表示し、スライド可能な指示器を有する測定装置に関する。
【0065】
使用する際、医療提供者は、そのパラメータのための患者用スケールを患者に提供し、その患者に、その患者が経験しているまたは経験したパラメータの量および強度を、そのスケールに沿った主観的位置にその指示器を置くことによって示させる。患者は、数値および/または言語疼痛記述子に応じて別個の増分間隔を示す医療提供者用パラメータスケールを見ることはできない。その後、医療提供者は、そのスライド可能な指示器によりその医療提供者用疼痛スケール上に示された数値および/または言葉の疼痛記述子を読み取り、記録する。上で説明したように、このスライド可能な指示器は、患者用パラメータスケール上の患者が示した位置に対する補数である、プロバーダー用疼痛スケール上の位置を指す。
【0066】
1つの実施形態において、BFIについて答えなければならない質問を異なる言いまわしで出して、答えの正確さを確保し、結果の妥当性を増すことができる。
【0067】
以下では、図10を参照して、本発明の具体例としての実施形態に従って患者における腸機能を評定するための電子装置100を説明する。
【0068】
患者における腸機能を評定するための装置100は、3つの数値アナログスケール102、103、104を提供するためのLCD表示装置101を具備し、これらのアナログスケールは、各々、患者の腸機能と関係がある3つのパラメータA、B、Cのうちの対応する1つに割り当てられている。
【0069】
装置100は、0と100の間の数値アナログスケール102、103、104を用いて患者が示した3つのパラメータA、B、Cの各々の量または値を使用者対話モードで受信することができる受信部105をさらに具備する。この受信部105は、使用者(図示なし)がデータ(例えば、患者データ「Patient No.23516」)を入力できる、キーパッド106、トラックボール107およびボタン108を含み、3つのパラメータA、B、Cの各々についての患者関連値をシフト可能バー109により調整することができる。こうした目的のために、使用者は、キーパッド106、トラックボール107およびボタン108により、マウスポインター110を操作することができる。
【0070】
3つのパラメータA、B、Cの平均値を計算するために、処理装置(例えば、CPU)を装置100に含めることができる。この平均値は、LCD表示装置101で表示することができる(この例では、「31」、「52」および「42」の平均として「41」)。さらに、入力値(この例では、「31」、「52」および「40」)および/または計算値(この例では、「41」)を赤外線インターフェース111(すなわち、赤外線を放出し、受け取るユニット)で得ることができる。
【0071】
赤外線インターフェース111は、得たデータを赤外線シグナル112により無線方式で中央制御コンピュータ113に送信するようになっている。
【0072】
例えば、装置100のような多数の装置を病院の異なる患者の部屋に備え付けることができ、すべてのデータを中央コンピュータ113に送ることができる。中央コンピュータ113では、すべてのデータを後処理することができ、および/または明瞭にレイアウトされたかなり大量のデータであっても医師がモニターできるような様式で、すべてのデータを提供することができる。
【0073】
図11は、本発明の方法の具体例としての実施形態を実施するための本発明のデータ処理装置の具体例としての実施形態を図示すものである。図11に図示されているデータ処理装置は、患者の腸機能を表すデータを記憶するための記憶装置152に接続された、中央処理ユニット(CPU)または腸機能評定パラメータ処理装置151を含む。このデータ処理装置151は、多数の入力/出力ネットワークまたは処理装置(例えば、病院に居る多数の患者の中央コンピュータ腸機能データを記憶すること、それらのデータにアクセスすること、またはそれらのデータを後処理することができる、病院内の中央コンピュータ)に接続することができる。このデータ処理装置は、腸機能と関係があるパラメータについての情報または数値アナログスケールを表示するための表示装置154(例えば、コンピュータのモニター)にさらに接続することができる。患者、オペレータまたは医師は、キーボード155および/または図11には図示されていない他の出力装置により、データ処理装置151と対話することができる。さらに、バスシステム153により、中央処理装置151をネットワークの他のコンピュータに接続することもできる。
【0074】
好ましくは、本発明の腸機能を評定するための装置またはアナログスケールは、特に鎮痛薬での治療を受けている患者における便秘の治療の妥当性を評定するために、医師によって使用される。1つの実施形態において、患者が、本発明の腸機能を評定するための装置またはアナログスケールで、高い便秘度または低い腸機能度、例えば高い腸機能スコアを示した場合、医師は、緩下剤などの投与を増加するか、緩下剤などの投与での治療を開始する。患者が低い便秘度または高い腸機能度、例えば低い腸機能スコアを示した場合、緩下剤などの投与は、減少されるか、中止されるか、または開始されない。
【0075】
従って、本発明は、患者における便秘の治療方法をさらに提供し、この方法は、以下の段階:
上で説明したような本発明の腸機能の評定方法を用いて患者における腸機能を評定する段階;
その患者の腸機能に依存して便秘を治療する段階
を含む。
【0076】
さらなる態様において、本発明は、便秘を治療する方法を提供し、この方法は、以下の段階:
上で説明した本発明の腸機能の評定装置を使用して患者における腸機能を評定する段階;
その患者の腸機能に従って便秘を治療する段階
を含む。
【0077】
本発明に関連して、患者の腸機能に依存しての便秘の治療は、患者への少なくとも1つの緩下剤などの投与の開始、増加、減少または中止を含む。
【0078】
好ましい緩下剤は、次のカテゴリーから選択される:
制酸薬、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム;
下痢止め薬、例えば、ポリカルボフィル、車前子親水性粘漿薬;
高アンモニア血症治療薬、例えば、ラクトース;
高脂血症治療薬、例えば、車前子親水性粘漿薬;
水様性胆汁分泌物質(hydrocholeretic)、例えば、デヒドロコール酸;
緩下剤、膨張性薬剤、例えば、麦芽スープエキス、麦芽スープエキスと車前子;メチルセルロース、ポリカルボフィル、車前子、車前子親水性粘漿薬、車前子親水性粘漿薬とカルボキシメチルセルロース;
緩下剤、膨張性薬剤および刺激物、例えば、車前子とセンナ、車前子親水性粘漿薬とセンナ、車前子親水性粘漿薬とセンノシド;
緩下剤、二酸化炭素放出性物質、例えば、重酒石酸カリウムと重炭酸ナトリウム;
緩下剤、高浸透圧物質、例えば、グリセリン、ラクトース、ポリエチレングリコール;
緩下剤、高浸透圧物質および潤滑剤、例えば、水酸化マグネシウムと鉱物油、鉱物油とグリセリン;
緩下剤、高浸透圧物質および刺激物、例えば、水酸化マグネシウムとカスカラサグラダ;
緩下剤、高浸透圧物質、食塩水、例えば、クエン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム;
緩下剤、潤滑剤、例えば、鉱物油
緩下剤、刺激物および軟便剤(軟化剤)、例えば、ビサコジルとドクセート、カサントラノールとドクセート、ダントロンとドクセート、デヒドロコール酸とドクセート、センノシドとドクセート;
緩下剤、刺激物または接触、例えば、ビサコジル、カサントラノール、カスカラサグラダとビサコジル、カスカラサグラダ、カスカラサグラダとアロエ、ヒマシ油、デヒドロコール酸、センナ、センノシド;
緩下剤、軟便剤(軟化剤)、例えば、ドクセート、ポロキサマー188.
【0079】
本発明の非常に有利な実施形態を表示する実施例を下に記載する。本実施例を、本発明の可能な実施形態を限定するものと、解釈すべきでない。
実施形態実施例
【実施例1】
【0080】
疼痛患者におけるナロキソン−オキシコドン比の最適化
本発明の方法および本発明のアナログスケールを欧州で行った第II相臨床試験において利用した。オキシコドン/ナロキソン併用が、オキシコドン単独と比較して、腫瘍および非腫瘍起源の重度の慢性疼痛を有する患者において匹敵する鎮痛と便秘低減ならびに緩下剤の必要性を招くかどうかを調査するために、第II相臨床試験を計画し、実施した。加えて、腸機能改善、鎮痛作用および安全性に関して、いずれのオキシコドンのナロキソンに対する用量比が、さらなる改善に最も有効であり、最も適するかを判定するための分析を行った。
【0081】
1.試験集団、組み入れおよび除外基準
合計で202人の患者を無作為化し、152人の患者がナロキソンとオキシコドンの両方を摂取し、50人の患者がオキシコドンおよびナロキソンプラシーボを摂取することになった。全試験対象(Intent to Trial)(ITT)集団は、196人(97.0%)の患者から成った。治験実施計画書に適合した対象(Per Protocol)(PP)集団は、99人(49%)の患者から成った。
【0082】
試験参加者は、組み入れ基準および除外基準に従って選択した。一般に、18歳以上の年齢で、腫瘍および非腫瘍起源の重度の慢性疼痛に罹っており、オピオイド治療を必要とする男性または女性患者が、この試験に登録した。WHO IIまたはIII鎮痛薬での効能または忍容性が不十分な患者ならびに安定なオキシコドン療法(40〜80mg/日)を受けている患者が、スクリーニングに適した。二重盲検治療期に組み入れた患者は、安定なオキシコドン治療中であり、緩下剤の定期的な摂取が医療上必要であった。
【0083】
以下の組み入れ基準に従って患者を選択した。
【0084】
組み入れ基準
−18歳以上の年齢
−オピオイド治療が必要な腫瘍および非腫瘍起源の重度慢性疼痛を有する
−および/または、WHO IIまたはIII鎮痛薬での効能不十分
−および/または、WHO IIまたはIII鎮痛薬での忍容性不十分
−または、現在、安定なオキシコドン療法(40〜80mg/日)を受けている患者
−自由意志での参加および記入済みインフォームドコンセントの提供が可能であった
−治験実施計画書の要求事項を了解することができ、それらを快諾し、果たすことができた。
【0085】
維持治療期(維持期)およびタイトレーションまたはランインに組み入れることができた患者は、
−安定なオキシコドン治療 40〜80mg/日を受けており、週に5回以下の救急薬物摂取(オキシコドン)
−少なくとも3回の排便/週を有するために緩下剤の定期的摂取が医療上必要である
患者であった。
【0086】
除外基準
−現在、アルコールまたは薬物を乱用している
−現在、重度の心血管および呼吸器疾患(例えば、肺癌および転移)を有する
−現在、重度の肝および腎不全(正常範囲より3倍上のトランスアミナーゼ)ならびに/または肝臓/腎臓癌および/または転移を有する
−麻痺性腸閉塞の病歴を有する
−現在、急性膵炎を有する
−精神病の病歴を有する
−パーキンソン病の病歴を有する
−疾患の関係で早期退職する過程にある
−オキシコドンのほかに別のオピオイド治療を受けている
−被験薬のうちの1つに対して過敏であることがわかっている
−試験に入る30日以内に別の臨床試験に参加した
−女性で妊娠または授乳していた
−妊娠の可能性がある女性であり、適切に避妊していなかった
患者は、この試験から除外しなければならなかった。
【0087】
試験集団の詳細は、図12および13から得ることができる。
【0088】
2.試験治療、用量および投与形態
投与した製剤
投与強度20mg オキシコドン、10mg オキシコドン、10mg ナロキソンおよび5mg ナロキソンの錠剤を、噴霧造粒によって作製した。30mgのオキシコドン投与強度は、1錠の10mg投与強度錠剤と1錠の20mg投与強度錠剤とを使用することにより、投与した。40mgのオキシコドン投与強度は、2錠の20mg投与強度錠剤を使用することによって投与した。
【0089】
塩酸オキシコドンPR錠剤 10mg
塩酸オキシコドンPR錠剤 10mgは、丸い、両凸の、白色フィルムコーティング錠剤であり、一方の面にOC、反対の面に10と記されていた。塩酸オキシコドンPR錠剤 10mgの組成を下に与える:
【表1−1】
【表1−2】
塩酸オキシコドンPR錠剤 10mgの組成
1無水ベース。バッチ量は、アッセイ/含水量に合わせる。
2Eudragit RS 30 Dは、0.25%(E,E)−ヘキサ−2,4−ジエン酸(ソルビン酸)Ph Eur/NFで保存された、精製水Ph Eur中のメタクリル酸アンモニウムコポリマーNF(ポリ[エチルアクリレート−co−メチルメタクリレート−co−(2−トリメチルアンモニオエチル)メタクリレートクロライド](1:2:0.1)NF)の30%分散物から成る
3〜4%残留水分、すなわち1錠剤コア当たり5mgの水分を含む。
4コートの実際の量は、約5mgである。コートをそれらのコア錠剤に塗布して、3〜4%の重量増加および均一な外観を得る。
5加工中に除去される。
【0090】
塩酸オキシコドンPR錠剤 20mg
塩酸オキシコドンPR錠剤 20mgは、丸い、両凸の、ピンク色フィルムコーティング錠剤であり、一方の面にOC、反対の面に20と記されていた。塩酸オキシコドンPR錠剤 20mgの組成を下に与える。
【表1−3】
1無水ベース。バッチ量は、アッセイ/含水量に合わせる。
2Eudragit RS 30 Dは、0.25%(E,E)−ヘキサ−2,4−ジエン酸(ソルビン酸)Ph Eur/NFで保存された、精製水Ph Eur中のメタクリル酸アンモニウムコポリマーNF(ポリ[エチルアクリレート−co−メチルメタクリレート−co−(2−トリメチルアンモニオエチル)メタクリレートクロライド](1:2:0.1)NF)の30%分散物から成る
3〜4%残留水分、すなわち1錠剤コア当たり5mgの水分を含む。
4コートの実際の量は、約5mgである。コートをそれらのコア錠剤に塗布して、3〜4%の重量増加および均一な外観を得る。
5加工中に除去される。
【0091】
ナロキソン錠剤
ナロキソン徐放性錠剤は、遅延剤としてステアリルアルコールおよびエチルセルロースのマトリックスを使用する放出制御錠剤である。これらの錠剤は、1錠当たり10mgの塩酸ナロキソンを含有した。ナロキソン徐放性錠剤の成分および量的組成の完全な明細を下に与える。
【表1−4】
【0092】
盲検用ナロキソンCR錠剤(5mgおよび10mg)をボトルで支給した。この薬物投与計画は、全二重盲検治療期間にわたって不変であり、用量調整は、許されなかった。患者は、毎朝および毎晩、5、10または20mgの経口用ナロキソンを摂取した。
【0093】
非盲検用オキシコドンCR錠剤(10mgおよび20mg)は、PPブリスターで支給した。タイトレーション/ランイン期間中に用量調整を行うことができ、10mg CRオキシコドン錠剤は、全試験を通して救急薬物として利用可能であった。この薬物投与計画は、その全二重盲検治療期間にわたって不変であった。患者は、毎朝および毎晩、20、30または40mgの経口用オキシコドンを摂取した。
【0094】
盲検用ナロキソンプラシーボ錠剤は、視覚的にはナロキソン錠剤 5mgおよび10mgと全く同じであった。用量および投与形式は、ナロキソンCR錠剤についてのとおりであった。
【0095】
試験計画
この臨床試験は、経口放出制御(CR)オキシコドン、経口放出制御(CR)ナロキソンおよび対応するナロキソンプラシーボを用いて、多施設、予測的、対照化、無作為化、二重盲検(プラシーボダミーを用いる)、4群並行試験として、ドイツにおいて行った。
【0096】
全試験期間は、10週以下であり、これは、スクリーニング期間、最低2週間のタイトレーション期間(最大3週間)(または1週間のランイン期間)、4週間の治療期間(オキシコドンおよびナロキソン/ナロキソンプラシーボ)ならびに2週間のフォローアップ期を含んだ。
【0097】
すべての組み入れ/除外基準を満たした、安定して疼痛管理されている患者を、3つのナロキソン治療群のうちの1つまたはナロキソンプラシーボ治療群での二重盲検療法に無作為に割り当てた。
【0098】
この試験は、3つのコア期を有した:無作為化前の期、4週間の二重盲検治療期間(維持期)およびフォローアップ期。無作為化前の期は、スクリーニングおよびタイトレーション/ランインから成るものだった。スクリーニング後、患者は、タイトレーションまたはランイン期間のいずれかに入った。疼痛の前治療が不十分であった患者は、最低2週間のタイトレーション期間に入り、個々にタイトレーションを受け、1日当たり40mg、60mgまたは80mgのオキシコドン用量で安定させた。スクリーニング時に安定したオキシコドンでの前治療(40〜80mg/日の間)を受けており、便秘を随伴した患者は、1週間のランイン期間に入り、事前のタイトレーションなしに維持期に入る資格があった。すべての患者について、タイトレーションまたはランインの間にオキシコドンの用量を調整することができ、治験担当医師は、一日おきの強制的な電話連絡を維持して、疼痛管理を評定し、用量の変更を行った。
【0099】
タイトレーション/ランイン期間の最後に、1日当たり40mg、60mgまたは80mgのオキシコドンである安定な維持用量を摂取しており(週に5回より多くの救急薬物摂取がない)、緩下剤の定期的な摂取が医療上必要であった患者を、3つのナロキソン治療群のうちの1つまたはナロキソンプラシーボ治療群に無作為に割り当てた。各患者は、オキシコドンの彼らの維持用量に加えて、10mg、20mg、40mgまたはナロキソンプラシーボ CR錠剤を毎日摂取した(表1参照)。
【0100】
その治療期間の後、患者は、後続の2週間のフォローアップ期の間のみ、彼らの維持用量のオキシコドンを継続した(1日当たり40mg、60mgまたは80mg オキシコドン)。患者は、日記を継続し、効能および安全性の評定をこの試験の間ずっと行った。
【表1−4】
註:40/10mgと80/20mg(4/1)について、および40/20mgと80/40mg(2/1)について、全く同じ用量比が得られた。
【0101】
202人の被験者を無作為化し、196人がITT集団に入り、166人がこの試験を完結した。臨床試験のためのこの試験計画の概要は図3に表示する。
【0102】
全治療対象(ITT)集団は、被験薬の少なくとも1つの用量を摂取し、少なくとも1回、無作為化後の効能評定を行ったすべての被無作為化患者を含んだ。幾つかの分析については、第4訪問後に中止したITT被験者(ITT/LOCF)についての最終観察を繰り上げた。他の事例では、入手できたデータのみを使用した(ITT 欠如なし)。
【0103】
治験実施計画書に適合した対象(PP)集団は、重要な治験実施計画への違反なく(フォローアップ期を含めて)その試験を完了した、すべての被無作為化患者を含んだ。重要な治験実施計画への違反は、次のように定義した:
−維持期間中に救急薬物として週に50mgより多くのオキシコドンを摂取した、または予定されたオキシコドン投与計画のうちの1つ(1日当たり40mg、60mgまたは80mgのオキシコドン)に従わなかった患者。
−各訪問前の最近7日間に、平均疼痛強度評定が朝4回未満および晩4回未満しか記録されなかった。
−予定された訪問から非常に大きくずれた、すなわち、訪問日が、それぞれの訪問時間帯以外であった。維持期訪問(第4および5訪問)の訪問時間帯からずれだけを重要な治験実施計画への違反とみなした。他の訪問からのずれは、重要でない治験実施計画への違反とみなした。重要な治験実施計画への違反の識別のために、第4および5訪問についての時間帯は、データの盲検的再検後にわずかに増加し、次のように定義した:
−第4訪問(維持期中):
−第3訪問+6から12日
−第5訪問(維持期の最終日):
−第3訪問+25から31日。
【0104】
3.主要効能変動要素
効能評定は、症例報告用紙および患者の日記に記録されたデータを基に決定した。
【0105】
対象となる主要効能変動要素は、次のような疼痛および腸機能であった:
【0106】
a)0〜100 数値アナログスケール(NAS)(0=疼痛なし、および100=想像できる最悪の疼痛)を使用するその患者の1日2回の疼痛強度の評定に基づく、各訪問前の最近7日間の平均疼痛。平均疼痛は、最近7日からの、すべての患者の日記記載事項の日別平均値の平均値として、試験訪問ごとに計算した。
【0107】
b)平均腸機能:各訪問前の最近7日間の腸機能についての、各試験訪問時の、患者の評定。平均腸機能は、3つの0〜100 NASスコア:排便の容易さ(0=容易/困難さなし、100=重度に困難)、不完全な腸内容物排出感(0=まったくない、100=非常に強い)、および便秘の判断(0=まったくない、100=非常に強い)、の平均から計算した。
【0108】
4.鎮痛作用の結果
維持期の最終時の平均疼痛の結果を下に要約する:
【表2】
*第5訪問(維持期の最後)におけるプラシーボに対する差についての95%信頼区画は、モデルにおける因子として治療疼痛強度およびベースライン疼痛強度を用いたANCOVAモデルの使用に基づく。
【0109】
これらの差は小さく、信頼区画は、0〜100の疼痛スケールに対してかなり狭く、活性ナロキソンとナロキソンプラシーボの間の鎮痛作用の差を示してはいなかった。
【0110】
因子としてナロキソンおよびオキシコドン用量ならびに共変数としてベースライン疼痛を用いる二次応答曲面モデルは、維持期の最後の平均疼痛に影響を及ぼす唯一の係数が、ベースライン疼痛測定値であることを示している。ナロキソンの量の変化に伴う平均疼痛の変化の証拠はなかった。しかし、この試験は、オキシコドン/ナロキソンプラシーボに対してオキシコドン/ナロキソンが劣らないことを正式に証明するようには計画されておらず、そうした能力もなかった。
【0111】
5.腸機能効能の結果
試験訪問ごとに、3つのNAS値(排便の容易さ/困難さ、不完全な腸内容物排出感および便秘の判断)の平均から平均腸機能を計算した。オキシコドンとナロキソンの用量比グループ、ナロキソンの絶対用量グループ、および同じオキシコドン/ナロキソン比をもたらすナロキソンの絶対用量グループごとの最近7日間の平均腸機能に関する要約統計を試験訪問ごとに得た。
【0112】
プラシーボに対するナロキソンの絶対用量の差について検査するために、維持期の最後(ナロキソン治療の4週間後)に得られた値についてt検定を行った。加えて、治療群間の平均の差についての両側95%CI(CI、信頼区画)を得た。維持期の最後(ナロキソン治療の4週間後)には応答曲面分析も行った。これらの分析は、ITTおよびPP集団について行った。ITT集団だけには差についてのt検定も行って、第4訪問時(ナロキソン治療の1週間後)に平均腸機能を調査した。
【0113】
加えて、フォローアップ期の最後にはその最近7日間の平均腸機能の要約統計をITT集団においてオキシコドンの絶対用量グループごとに得た。
【0114】
タイトレーション/ランイン期間の効果を評価するために、ベースライン訪問前の最近7日間の平均腸機能と比較する、タイトレーション/ランインの最後の訪問の前の最近7日間の平均腸機能に関する差についての対応のあるt検定を行った。この分析は、タイトレーション期集団において行った。加えて、治療期間の間の平均の差についての両側95%CIを得た。
【0115】
ITTおよびPP集団についての図を得た。維持期の最後の訪問の前の最近7日間の平均腸機能について得られた値(平均±95%CI)をオキシコドン/ナロキソン用量比およびナロキソンの絶対用量に対してプロットした。加えて、維持期の最後に得られた結果についての曲面プロットを得た。
【0116】
腸機能が、オキシコドンとナロキソンの比に依存するのか、またはナロキソンの絶対用量に依存するのかを調査するために、ITT集団についてのさらなる分析および図を得た。ナロキソン用量に対する維持期の最後の週の間の総消費オキシコドン用量について、応答曲面分析を行った。導出されたパラメータ推定値を使って、調査した全用量範囲の曲面プロットを表示した。さらに、10の造粒物を用いて腸機能の等高線プロットを行った。
【0117】
ITT集団における各試験訪問時の平均腸機能についての値を、用量比別、ナロキソンの絶対用量別、および同じオキシコドン/ナロキソン用量比をもたらすナロキソンの絶対用量別に図4から6に提示する。プラシーボに対する各用量のナロキソンの差についての検査を図7にまとめる。
【0118】
モデルパラメータのRSREG推定値に基づき調査した全用量範囲の曲面プロットを図8に表示する。10の造粒物での腸機能の等高線プロットを図9に示す。
【0119】
ITT集団の中で、ナロキソンの用量増加に伴って平均腸機能が改善される傾向が見られた。維持期の終わりの最近7日間、1/1、1.5/1および2/1用量比での平均(±SD)腸機能は最低であった(1/1、1.5/1および2/1用量比について、それぞれ、21.9±22.25、21.8±21.35および26.7±23.98)。さらに、平均腸機能は、ナロキソン量の減少につれて、6/1の用量比については47.8(±23.20)の最大値へと悪化した。第4訪問の前の最近7日についての平均腸機能は、1/1の比での20.7(±19.24)から8/1の比での45.7(±26.86)の範囲にわたった(図4参照)。オキシコドン/ナロキソンプラシーボ用量比での平均腸機能についての値は、両方の訪問時、1/1、1.5/1および2/1の用量比の場合より高かった。
【0120】
ナロキソンの絶対用量別の分析は、維持期の最後に、プラシーボ、10mg、20mgおよび40mgについて、それぞれ、45.4(±22.28)、40.3(±23.09)、31.3(±25.82)および26.1(±25.08)の値を示し(プラシーボに対しての20mgおよび40mg ナロキソンについてp<0.05、差についてt検定)、第4訪問時には43.3(±26.41)、42.1(±25.53)、34.2(±30.04)および27.9(±22.68)の値を示した(プラシーボに対しての40mg ナロキソンについてp=0.004、差についてt検定)(図5および7参照)。
【0121】
同じオキシコドン/ナロキソン用量比をもたらすナロキソンの絶対用量別の分析は、両方の用量比群(4/1および2/1)の中で、高いオキシコドン用量を摂取していた患者ほど、第4および5訪問時に高い平均腸機能を有したことを示した(図6参照)。
【0122】
維持期の最後からフォローアップ期の最後へと、平均腸機能は悪化した。平均腸機能の範囲は、維持期の最後ではこれらの用量比群について21.8(±21.35)から48.2(±21.71)であり、フォローアップ期の最後ではこれらの用量比群について33.2(±20.76)から52.1(±26.79)であった。変化は、40mgナロキソンの群において最大であり、平均腸機能は、維持期の最後で26.1(±25.08)およびフォローアップ期の最後で42.4(±23.19)であった。
【0123】
一般に、PP集団を用いる分析は、平均腸機能に関してITT集団で観察された傾向を反映していた。維持期の終わりの最近7日間、平均(±SD)腸機能は、1/1用量比において最低であり(10.7±15.35)、6/1の用量比についての57.3(±17.38)の最大値へと悪化した。すべてのオキシコドン/プラシーボ用量比についての平均腸機能値が、1/1、1.5/1および2/1比より高かった。第4訪問の前の最近7日については、3/1用量比を除き、同様の値が見られた。維持期の最後に、平均腸機能は、プラシーボ、10mg、20mgおよび40mg ナロキソンについて、42.3(±24.03)、39.4(±23.44)、29.8(±29.29)および29.6(±28.34)であった。PP集団における各治療群の患者の数が少ないことで、平均腸機能についての差に関するt検定のためのPP分析において統計学的に有意なp値が得られなかった。
【0124】
維持期最終時の平均腸機能の結果を下に要約する:
【表3】
*モデルの因子としてナロキソン用量およびベースライン腸機能を用いたANCOVAモデルを使用する、ナロキソンプラシーボに対する比較。
【0125】
上で既に述べたように、ITT集団の中で、ナロキソンの用量増加に伴う平均腸機能の改善が見られ、平均値(±SD)は、維持期の最後にプラシーボ、10mg、20mgおよび40mgについて、それぞれ、45.4(±22.3)、40.3(±23.1)、31.3(±25.8)および26.1(±25.1)であった(プラシーボに対しての20mgおよび40mg ナロキソンについて、p<0.05)。ナロキソンプラシーボとの平均腸機能の差についての95%信頼区画は、10mg ナロキソンで(−2.83、16.69)、20mg ナロキソンで(5.46、24.82)および40mg ナロキソンで (9.54、29.11)であった。これらの結果は、ナロキソンの用量増加に伴う腸機能の漸増的改善を示しており、維持期の最後におけるナロキソンプラシーボに対する20mgおよび40mg用量の差は、統計学的に有意であった。
【0126】
統計学的に有意なナロキソン用量の線形作用での、ナロキソンの用量増加に伴う腸機能の改善は、応答曲面二次分析により確認される。表4は、試験した様々なオキシコドン/ナロキソン比についてのナロキソンプラシーボに対する平均腸機能スコアの推定改善を示しており、これらの推定は、この試験計画において実際に表されたオキシコドン/ナロキソンの併用と二次曲面補間が適切であった一部の併用の両方にあてはまる。
【0127】
これらの推定は、平均腸機能の改善が、一般に、各比率の中で一定であり、オキシコドンおよびナロキソンの可変用量とは無関係であることを示している。唯一の可能性のある例外は、60/30mgの併用および40/20mgの併用よりも低い予測効果が示唆される80/40mgの併用であるが、この所見は、標準誤差の程度を想定して解釈されなければならない。
【表4】
【0128】
個々のオキシコドン/ナロキソン併用についての治療効果の推定値に加えて、特定の比率についての総合的治療効果の推定値を得た。これらの推定値は、様々なオキシコドン/ナロキソン併用からの結果を組み合わせることによって計算した。例えば2:1比の推定値は、ナロキソンプラシーボに対して、40/20mg、60/30mgおよび80/40mgのオキシコドン/ナロキソンの併用の予測結果を平均することによって構成した。ナロキソンプラシーボ群に対する様々なオキシコドン/ナロキソン比についての平均腸機能に関する推定平均差(SE)を下に示す。
【表5】
【0129】
これらの推定値は、腸機能の改善がオキシコドン/ナロキソン比の減少につれて増大することを示しており、2:1での推定改善は、4:1でより約50%高く(p<0.05)、2:1比から1.5:1比までが、最小の改善であった。
【0130】
6.試験の結論
この試験は、放出制御オキシコドンへの放出制御ナロキソンの追加により、より高い2つのナロキソン用量(20mgおよび40mg)で、平均腸機能の統計学的に有意な改善が生じることを実証した。この改善は、オキシコドン/ナロキソン比の低下に伴って増大し、2:1比でプラトーに達するように見え、2:1比での総合的効果は4:1でのものより約50%大きい。このデータは、腸機能の改善が、一般に比の関数であること、すなわち、この改善が、一般に各比の中では一定であり、オキシコドンおよびナロキソンの可変用量とは無関係であることを示している。唯一の例外は、80/40の併用であり、この場合、60/30mgおよび40/20mgの併用より低い予想効果が示唆されるが、この観察は、標準誤差の程度を想定して解釈されなければならない。
【実施例2】
【0131】
BFIの妥当性検査
1.目的
この試験の目的は、(i)腸機能指数(BFI)の心理測定学的特性を評価すること、および(ii)BFIの応答性および臨床的有意性を評価することであった。
【0132】
2.試験方法
実施例1の試験において収集したデータに関する二次分析として、心理測定分析を行った。上で略述したように、患者は、この試験中の各訪問時にBFI形態について回答した(評定のスケジュールについては、図14参照)。データは、精製 SAS−ready データセットとして得た。すべての分析は、SAS version 8.2を使用して完了した。
【0133】
2.1 患者が報告した結果
実施例1において説明したように、この臨床試験では、腸機能指数(BFI)と呼ばれる、0(良好)から100(不良)の数値アナログスケール(NAS)で評価される患者の視点からの便秘の評定に、3つの質問を用いた:
1.患者の評定に従って、最近7日間の排便の容易さ(NAS)(0=容易/困難さなし、100=重度に困難)
2.患者の評定に従って、最近7日間の不完全な腸内容物排出感(NAS)(0=まったくなし、100=非常に強い)
3.最近7日間の便秘に関する患者の個人的判断(NAS)(0=まったくなし;100=非常に強い)
【0134】
これら3つの便秘の質問を平均して、要約スコア(総スコア範囲:0〜100)を得た。加えて、各質問を独立して用いた(項目スコア範囲:0〜100)。3つすべての項目の平均を一次エンドポイントとして用い、個々の項目を二次エンドポイントとして用いた。
【0135】
2.1.2 包括的忍容性
患者および治験担当医師の忍容性の包括的評定を第5訪問時(維持期第4週の最後)に尋ねた。7点リッカート型スケール(非常に良好から非常に不良)を用いて回答された。治験担当医師と患者の忍容性の包括的評定の間の相関を調査した。相関係数は0.87であった。結果として、この妥当性分析では患者の包括的評定に基づく分析だけを提示する。
【0136】
2.1.3 収集した追加データ
ベースライン訪問(第2訪問)で始まる日記の遂行を患者に頼んだ。日記からの関連データを、これらの妥当性分析において用いた:
・排便回数:1日当たりの腸内容物排出数。
・便の硬さ:4点回答スケール(硬い、固形、半固形、下痢)で評価するメジアン評点。
・緩下剤摂取の日数。
・中止の理由:下痢のため中止した被験者をサブセット分析に選択した。
【0137】
2.2 分析
これらの分析のための評価可能集団は、治験薬を摂取し、3つのBFI便秘質問のすべてを完了した、すべての被無作為化被験者であった。第2訪問からの社会人口学的データを用いて、ベースラインでのサンプル特徴を熟考した。第3訪問(タイトレーション/ランインの最後)データは、治療前ベースラインのための分析に用い、第5訪問(二重盲検治療維持期の最後)データは、エンドポイントデータとして用いた。安定性が維持期の最後からフォローアップ期の最後まで最大であると仮定して、第5訪問から第6訪問までを検査−再検査間隔として用いた。施設の影響は評価せず、多重比較のための調整もなかった。
【0138】
2.3 分析計画
(第3訪問の前の週の日記データの有効性によって選択した)第3訪問データを基に、以下の臨床的変数:毎日の疼痛強度、排便回数、便の硬さおよび緩下剤摂取日数についての平均およびメジアンを得た(図15)。中止の理由として「下痢」を示した被験者の数を図16に提示する。
【0139】
項目パフォーマンスの評価を支援するために、第3訪問および第5訪問データ:平均、標準偏差(SD)、範囲、メジアン、床値での%、天井値での%および欠測%を用いた各便秘項目についての記述統計を提供する(図17)。項目パフォーマンスが経時的に変化するかどうかを判定する記述手段として、第3訪問時および第5訪問(エンドポイント)時のこれらの値の各々の間での比較を行った。
【0140】
2.3.1 信頼性
内的整合信頼性は、第2訪問データを用いてクロンバックのα(Cronbach's alpha)に基づき評価した(Hays et al. 1998; Nunnally & Bernstein 1994)(図18)。0.70より上の値は、一般に、良好な内的信頼性の指標とみなす。削除された項目を有するαも、各項目について検査した。項目の排除に基づく総スコア(3項目平均)αの10%より大きい値の上昇は、潜在的内的不整合項目の指標とみなす。項目間の相関も調査して、項目の内的整合性を評価し、0.40またはそれ以下の相関は、低い項目間相関とみなした(Cohen 1988)。
【0141】
再検査間隔として第5訪問から第6訪問を用いて、ナロキソンプラシーボ群に無作為に割り当てた患者のサブグループにおいて、検査−再検査信頼性(test-retest reliability)を調査した。級内相関係数(ICC)、ピアソンの相関、および(変化の統計学的有意性を判定するために、t検定による)スコアの変化を第5訪問と第6訪問の間で計算して、検査−再検査信頼性を評価した(図19)。これらの分析は、第5訪問から第6訪問にかけて便通回数の変化がなかったナロキソンプラシーボ被験者のサブグループに対しても行った。ICCは、相関の強度を定量するが、傾きおよび切片に関する情報を組み込んで、系統的変化を検出するための積率相関の限定に対処する(Deyo et al. 1991)。尺度のより大きな安定性、より高い相関係数およびICCを期待することができる。
【0142】
2.3.2 妥当性
機器の妥当性は、ある機器が、測定しようとする構成概念を測定する程度を指す(Hays et al. 1998; Nunnally & Bernstein 1994)。併存的妥当性は、その機器と他の同様の評価との関係を指す。併存的妥当性を調査するために、3つの便秘に関する質問と総スコアと選択された臨床的特徴(排便回数、便の硬さ、緩下剤摂取日数、および忍容性の包括的評定)の間の関係を、スピアマンの順位相関(Spearman's rank correlation)を用いて分析した(図20)。第5訪問(エンドポイント)データを用いて、エンドポイントで最良に測定された結果(例えば、緩下剤摂取日数)を基に評価することができた。3つの便秘項目の総スコアおよび項目別スコアが、同様の概念を測定する項目またはスケールと実質的に相関している(>0.40)とき、併存的妥当性は、支持される(Cohen 1988)。逆に言えば、異なる概念を測定する項目またはスケールは、より小さな相関(<<0.40)を有するはずである。以下は、併存的妥当性の仮説である:
1.帰無仮説:BFI項目と次の変数:緩下剤摂取(便秘項目データの収集の7日後からのデータ)および忍容性の患者評点、の間に正相関がない。対立仮説:BFI項目と前述の変数の間に統計学的に有意な正相関が存在する(図20)。
2.帰無仮説:BFI項目と排便回数または便の硬さ(便秘項目データの収集の7日前からのデータ)の間に逆相関がない。対立仮説:BFIと排便回数の間の統計学的に有意な負相関(図20)。
3.帰無仮説:その試験において第5訪問に残っている患者と下痢の副作用のために中止した患者との間にBFIスコアの差がない。対立仮説:下痢のために中止する患者は、その試験に残っている患者より低いBIFスコアを有する(図21)。
4.帰無仮説:維持治療期を好み、そしてタイトレーション療法期を好む患者より良好な便秘項目に関するスコアを有する患者との間にはBFIスコアの差がない。対立仮説:タイトレーション療法期を好む患者と比較して、維持療法期を好む患者のほうがBFIスコアが高い(図21)。
【0143】
弁別的妥当性は、機器からのスコアにより、重要な指標、通常は臨床的指標、が本質的に異なる被験者の群を区別することができる程度である。弁別的妥当性を評価するために、分散分析(ANOVA)モデルを用いて、第5訪問(エンドポイント)データに基づく重症度レベルにより便秘項目および総スコアを比較した(図22)。日記データ(試験第5訪問の7日前からの平均)を用いて、便の硬さに基づく3つの重症度レベル(軽度、中等度、重度)に患者を層別化した:軽度=ゆるい、中等度=軟らかいまたは正常、および重度=硬い。帰無仮説は、軽度と分類される患者と重度と分類される患者の差がない。対立仮説は、軽度と分類される患者のBFIスコアが、重度と分類される患者より統計学的に有意に低いという仮説である。
【0144】
2.3.3 応答性および臨床的有意性
効果サイズを用いて、経時的な真の変化に対する応答性を調査した。測定の標準誤差(SEM)を1つの基準として用いて、個々の患者の視点からの特定のBFI得点の差の臨床的有意性を定量し(Wyrwich et al. 1999)、1つの標準偏差の1/2についての調査(Norman et al. 2003)を臨床的有意性を決定するもう1つの手段として用いた。
【0145】
効果サイズは、スコアの変化の定量尺度であり、ならびに健康状態測定のための項目パフォーマンスまたは機器の性能に関するより包括的な見解を提供するための群間比較定量の標準化手段および統計的検定の補足手段となる(Kazis et al. 1989)。効果サイズ1は、治療前(第3訪問)におけるすべての被験者の標準偏差で割った治療前から治療後(第3訪問から第5訪問)の平均差と定義する。Guyattの応答統計量とも呼ばれる効果サイズの第二の推定値、効果サイズ2は、同じ分子を用いるが、安定した患者のみの間のスコア変化の標準偏差に分母を限定する、上記の効果サイズの変形である(平均スコア変化/安定した患者間のスコア変化の標準偏差)(Kazis et al. 1989; Guyatt et al. 1987)。安定な被験者は、第3訪問から第5訪問の便秘項目の判断に関する減少が25%またはそれ以下であった被験者と定義する。効果サイズを治療群別に計算する。これは、重要度の低いスコア変化の大きさと重要度の高いスコア変化の大きさをベンチマーキングする1つの手段である(Kazis et al. 1989)。
【0146】
3.結果
3.1 サンプル
図15は、第3訪問の前の週に基づく週平均として計算された、ベースラインでのサンプルの臨床的特徴に関する情報を含む。毎日の疼痛強度の平均は、38であり、0から81の範囲を有した。1日あたりの平均排便回数は、1であり、0.1から4の範囲を有した。被験者は、週単位の硬さの平均は、1から4のスケールで2.4であったと報告した。被験者は、第3訪問の前の週に平均で1週間に6回、緩下剤を用いた。
【0147】
3.2 項目パフォーマンス
項目パフォーマンスデータを図17に提示する。第3訪問時にBFIデータを入手することができた患者は、202人だった。床値または天井値での応答率は低かった。高い床での率(最良応答)率は、経時的変化を検出する感度を制限する。高い天井での率(最悪応答)は、便秘重症度の測定不良を示し得る。いずれもこのサンプルでは有効でなかった。これらの項目のうち、項目2は、最高の床効果率を示した。これは、このサンプルの中では、不完全な排出の症状が、排便の容易さまたは便秘の総合評点より低い重症度であることを示している。
【0148】
第5訪問時にBFIデータを得ることができた患者は、169人だった。腸の運動性を改善するための治療については、予想どおり、より多くの患者が、治療前より治療後に、このスケールで、便秘の症状を最高可能レベルと評価した。相応じて、平均およびメジアンBIF値は、治療後に予想されるとおり、治療前より治療後のほうが低かった。床での値が報告されたサンプルは27%より少なく、これは、BFI項目についての適切なスコア分布を示している。患者の回答は、0から100の可能値の全範囲にわたった。欠測データがないことは、これらの項目の遂行が、患者にとって難しくなく、紛らわしくなかったことを示唆している。
【0149】
項目間の相関を図18に提示する。項目1および3は、最高の相関、0.86を有した。項目2は、項目1および3と、それぞれ、0.59および0.60相関した。これらの相関の結果は、項目1および3から得られる情報のほうが、項目1または3に関連して項目2から得られる情報より高度に関連していることを示唆している。
【0150】
項目と総スコアの相関は高く、これは、非常に少ない項目での測定で予想される結果である。項目と総スコアの相関の結果は、項目間の相関の結果と一致しており、これは、他の項目と総BFIスコアの相関よりわずかに低い、項目2と総BFIスコアの相関を示している。すべての相関係数は、0.70の許容閾値より十分に上であり、これは、予想通りの強い関連を示している。
【0151】
3.3 信頼性
3.3.1 内的整合信頼性
図18は、すべての項目および総スコアについてのクロンバックのαを提示するものである。内的整合性は、非常に良好であり、αは、0.70を越えている。項目2を削除は、αをわずかに増加させる。これは、項目2と他のBFI項目との関係が、項目1および3と他のBFI項目との関係より小さいことを示唆している。これらの結果は、項目1と項目3の相関と比較して小さい、項目2と他の項目の間の相関の大きさと一致する。項目1の削除は、項目3の削除と同様にαを減少させ、これは、BFIの凝集性に対する項目1および3の値の支持的証拠である。単一の構成概念を測定するときには項目の高い内的整合性を有することが望まれるが、極めて高度に相関している項目は、冗長情報を伝えていることがある。BFIのような極めて短い3項目インベントリーでは、項目の冗長の懸念はない。薬物療法は、便秘に対して好適な影響を有した。それ故、維持期を好む患者のスコアは、他の患者より低い。
【0152】
試験を完了した被験者と下痢のために中止した被験者との比較は、たった1人の中止被検者についてのデータしか得ることができなかったため含めなかった。
【0153】
3.4.2 弁別的妥当性
第5訪問時の便の硬さの質問に対する回答を基に、患者を3つの群に分けた。硬い便を報告した者は、重度と分類し、正常または軟らかいと報告した者は、中等度と分類し、ゆるい便と報告した物は、軽度と分類した(図22)。BFIスコアは、中等度と分類された患者と重度と分類された患者とで異なった。BFIスコアは、軽度と分類された患者と重度と分類された患者とでも異なった。軽度と中等度との差は、統計学的に有意ではなかった。これらの結果は、BFIの弁別的妥当性を支持しており、これは、BFIスコアの大きさが、重症度の判定基準としての便の硬さに基づく便秘の重症度レベルに対応することを示している。
【0154】
3.5 応答性
3.5.1 効果サイズ
効果サイズは、治療前から治療後(第3訪問から第5訪問)の平均差に基づいて計算した。効果サイズ1は、分母として治療前(第3訪問)の時点ですべての被験者の標準偏差を用い、効果サイズ2は、分母として安定した患者間のみでのスコア変化の標準偏差を用いた(Kazis et al. 1989; Guyatt et al. 1987)。安定した患者は、第3訪問から第5訪問の便秘項目の判断に関する減少が25%またはそれ以下であったものと定義する。結果を図23に示す。0.2は小さな変化を表し、0.5は中等度の変化を表し、0.8は大きな変化を表す、コーヘン(Cohen)(1988)の効果のサイズの基準を用いたところ、これらの効果サイズは、予想された大きさのものであった。さらに、これらの効果サイズは、ナロキソン用量により、予想した方向で増大し、最高用量の患者の効果サイズが最も大きかった。効果サイズは、項目2のものが、他の2項目と比較して最も低く、これは、この項目により測定した場合の経時的変化に対する限られた応答性を示唆している。2つの異なる方法を用いて計算した効果サイズは、実質的に同様であり、これは、このサンプルにおいて観察された効果サイズの大きさに有利な支持的証拠である。
【0155】
3.5.2 測定の標準誤差(SEM)
BFIに関する臨床的に有意なスコア変化の範囲を確立する1つの手段として、SEMを計算した(例えば、Norman et al. 2003; Wyrwich et al. 1999)。SEM値を図23に示す。第3訪問時のすべての被験者についてのSEM値が9.01であり、これは、個々の患者の視点からの9点またはそれ以上のスコアの変化が臨床的に有意であり得ることを示唆している。
【0156】
3.5.3 1/2 SD
1/2 SDに近いSEM値は、臨床的重要性の収束的証拠となる。BFI総スコアについての第3訪問SDは、22.6であり(図17参照)、1/2 SDは、11.3である。1/2 SDが臨床的有意性の下限となり得るという示唆からして、これは、11点より低いBFI総スコア差は、臨床的有意性の閾値より下であり得ることを示唆している。SEMによって示唆される9点と1/2 SDにより示唆される11点の間のスコア差についての臨床的有意性を判定するには、さらなる評価が必要である。
【0157】
4.考察
このBFIは、便秘の患者ベースの評点である。ここで報告する分析は、このBFIが、基本的心理測定パフォーマンスの基準を満たすことを示している。項目パフォーマンスデータは、これらの項目が、施行に適しており、このサンプルでは実質的な床および天井効果を生じさせなかったことを示唆している。従って、対象となる状態を測定する、およびその状態の真の変化を検出するこれらの項目の能力は、回答スケールによる制限を受けない。
【0158】
これらのBFIの項目は、予想通り、互いに関係がある。項目1および3は、相関に基づく実質的なオーバーラップを示した。概念的には、この内容は、冗長に関するあらゆる懸念を明瞭に軽減している。項目2の内容は、項目1と3が互いにオーバーラップしているほど多くは項目1および3とオーバーラップしていない。不完全な腸内容物排出は、症状経験に関する排便の容易さとは性質が異なる可能性が高い。便秘に関する判断とのオーバーラップが少ないことは、その判断が、不完全な排出感よりも排便の容易さにより大きく基づくことを示唆している。
【0159】
これらのBIF項目は、内的に整合しており、これは、それらすべてにより同じまたは実質的に関係のある構成概念が測定されることを示唆している。その構成概念と項目2の関係は、項目1および3のものとはわずかに異なり得るが、項目2のパフォーマンスは、BFIへのその組み入れを支持している。項目2の内的整合性の結果は、項目間の相関で判明した結果を支持しており、ならびに排便の容易さが、不完全な排出感に寄与するより大きく便秘に関する総合的判断に寄与することを示唆している。すべての項目の寄与が許容閾値より上であり、しかし、すべての項目が総BFIに有意に寄与している。
【0160】
このBIFは、経時的再現性を示した。相関の大きさは、中等度の範囲内であった。再現性データの解釈は、再検査間隔の間に被験者において発生する何らかの真の変化の可能性を考慮に入れなければならない。具体的には、他の項目と比較して低い項目1の相関係数は、排便の容易さに関する患者の経験が、調査した時点すべてにわたって異なったこと、症状の臨床経過に沿った結論を示唆している。
【0161】
排便回数および便の硬さに関するBFIスコアと関連患者報告の間の関係は、予想した方向性であり、すべての相関係数が、統計学的有意性の基準を満たした。緩下剤を用いた日数は、緩下剤使用後に経験すると予想される患者の症状と一致するBFI項目(例えば、その後の週における、より多い緩下剤使用日数;便秘に伴うより大きな障害)に直接関係していた。
【0162】
忍容性評定の包括的評価は、BFIスコアとの低い関係から低−中等度の関係を示した。便秘症状は、忍容性プロフィールの一部分にすぎないが、これらの結果は、それらがそのプロフィールの実質的な部分であることを強調している。関連して、進行中の維持療法への好意を表した患者は、BFIスコアにより判断すると、タイトレーション期への好意を表した患者より良好な便秘解消を示した。維持期への好意を表す患者は、タイトレーション期中に経験した疼痛制御/副作用プロフィールと比較して、許容できる副作用プロフィールで疼痛制御を達成した患者であるはずである。これらの患者は、他の患者より少ない便秘症状または低い重症度の症状を有すると予想され、そのBFIデータは、この説明を支持している。これにより、便秘の尺度としてのBFIの妥当性が信用に値するものとなった。
【0163】
患者を、便の硬さに基づいて便秘の重症度別グループに分けると、BFIスコアは、再び、予想されたパターンを示し、最も重度の便秘を有する患者は、他の患者より高いBFIスコアを有した。硬さは、排便の容易さ、不完全な排出および便秘に関する判断の代用としては限界があったが、それがBFIの弁別的妥当性を実証するために適当な代用であるという予想には臨床的な意味がある。
【0164】
BFIは、予想された便秘の経時的変化への応答性を示し、調査した効果サイズは、用量応答的に低下した。すなわち、ナロキソン用量が高いほど、患者についての効果サイズが大きかった。ナロキソンプラシーボ群の患者についての効果サイズは、予想どおり、ほぼゼロであった。便秘状態の真の変化が、プラシーボ患者には期待できないからである。
【0165】
SEMは、すべての群の患者についての測定の特徴である。すべての患者についてのSEMは、9.01であった。第3訪問データに基づくあるSDの1/2は、11.3であった。合わせて、これらの結果は、9点より下のスコア変化が、臨床的に有意であるか能性が低いことを示唆している。11.0点およびそれより上のスコアの変化は、個々の患者の視点からの便秘状態の臨床定期に有意な変化に関係し得る。治療群と対照群の間の平均差が、臨床的に有意であると判明した最小の変化より相当小さい場合でさえ、治療が患者に重要な影響を及ぼし得ることには留意しなければならない(例えば、Guyatt et al. 1988)。ここで報告する値は、スコアの解釈の助けるための推定値である。しかし、これら2つの証拠に基づき、11点またはそれより大きいスコア変化は、臨床的に有意である可能性が高い。9点と11点とのスコア差の解釈には、さらなる評価が必要である。このBFIによって、便秘状態の有意な変化を検出することができる。
【0166】
5.総合的結論
BFIは、便秘に関する簡単な患者評点である。ここで報告するデータは、その心理測定学的特性(BFIに基づくあらゆるデータを解釈するための必要情報)を支持している。この試験からのデータに基づき、特定のBFIスコア変化は、便秘に関する臨床的に有意な変化についての閾値を確立するための基礎としてを用いることができる。
【0167】
6.参考文献
【化1】
【0168】
このように本発明の好ましい実施形態を詳細に記載したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多数の明らかな変形が可能であるので、上のパラグラフによって定義した本発明が、上の説明に記載した特定の詳細に限定されないことは、理解されるはずである。
【0169】
本明細書の中で言及したまたは本明細書において参照したあらゆる書類の中で言及されているあらゆる製品についてのあらゆる製造業者の説示、記載、製品仕様書および製品概要説明書を含む本明細書において引用または参照したすべての書類(「本明細書引用書類」)は、本明細書に参考として組み込まれる。本出願におけるあらゆる書類の引用および確認は、そうした文献を本発明に対する先行技術として利用することができることの承認ではない。例として与えた詳細な説明は、記載した特定の実施形態だけに本発明を限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】腸機能を評定するため方法での使用に適する本発明のアナログスケールの1つの実施形態である、腸機能指数(BFI3)を評定するための紙票を示す図である。
【図2】腸機能を評定するための方法での使用に適する本発明のアナログスケールのさらなる実施形態である、円形腸機能指数(BFI3)メーターを示す図である。
【図3】本実施形態の実施例の臨床試験についての試験計画の概略を示す図である。
【図4】本実施形態の実施例に従って、ITT集団における用量比別、ナロキソンの絶対用量別、および同じオキシコドン/ナロキソン用量比をもたらすナロキソンの絶対用量別に各試験訪問時における平均腸機能の値をまとめた表である。
【図5】本実施形態の実施例に従って、ITT集団における用量比別、ナロキソンの絶対用量別、および同じオキシコドン/ナロキソン用量比をもたらすナロキソンの絶対用量別に各試験訪問時における平均腸機能の値をまとめた表である。
【図6】本実施形態の実施例に従って、ITT集団における用量比別、ナロキソンの絶対用量別、および同じオキシコドン/ナロキソン用量比をもたらすナロキソンの絶対用量別に各試験訪問時における平均腸機能の値をまとめた表である。
【図7】本実施形態の実施例に従ってプラシーボに対する各用量のナロキソンについての差に関する検査をまとめた表である。
【図8】本実施形態の実施例のモデルパラメータのRSREG推定値を基に調査した全用量範囲の曲面プロットを示す図である。
【図9】本実施形態の実施例の10の造粒物での腸機能の等高線プロットを示す図である。
【図10】本発明の具体例としての実施形態に従って患者における腸機能を評定するための装置を示す略図である。
【図11】本発明の方法の具体例としての実施形態を実施するための本発明のデータ処理装置の具体例としての実施形態を示す図である。
【図12】試験集団の人口統計明細を示す図である。
【図13】試験集団の人口統計明細を示す図である。
【図14】BFIの評定スケジュールを示す図である。
【図15】試験訪問中の臨床的特徴および治験中止の理由を示す図である。
【図16】試験訪問中の臨床的特徴および治験中止の理由を示す図である。
【図17】第3および第5訪問時の便秘項目分析を示す図である。
【図18】第2訪問時の便秘項目についての項目間の相関および内的整合信頼性を示す図である。
【図19】第5および第6訪問時の便秘項目の再現性を説明する図である。
【図20】便秘項目間の相関の共存的妥当性を示す図である。
【図21】便秘項目間の相関の共存的妥当性を示す図である。
【図22】便秘の重症度についての弁別的妥当性を示す図である。
【図23】便秘項目についての応答性を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が経験する腸機能のレベルの評定に関する。
【背景技術】
【0002】
癌、リウマチおよび関節炎などの疾患は、多くの場合、重度の疼痛を随伴する。この疼痛疾患は、通常、その疼痛のそもそもの原因である一次疾患、例えば癌の進行に負の影響を及ぼす。腫瘍患者が感じる疼痛の範囲は、骨膜の疼痛および骨それ自体の疼痛、ならびに内臓痛および軟組織における疼痛を含む。重度の疼痛は、肉体的および感情的我慢のぎりぎりまで患者を追い込み、憂鬱気分、短気、衰弱、関心範囲の限定および社会的活動の減少を招く。従って、結果として患者の生活の質を永続的に向上させることとなる疼痛治療の成功は、その疾患の実際の原因の治療であるので、総合療法の成功にとっても同様に重要である。
【0003】
オピオイド鎮痛薬は、疼痛、特に慢性疼痛の治療において中心的な役割を果たす。オピオイド鎮痛薬群は、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルホン、ニコモルヒネ、ジヒドロコデイン、ジアモルヒネ、パパベレタム、コデイン、エチルモルヒネ、フェニルピペリジンおよびその誘導体、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、チリジン、トラマドールならびにヒドロコドンを含む。オピオイド鎮痛薬の顕著な疼痛寛解作用は、内因性モルヒネ様作用物質(この生理的機能は、疼痛刺激の受容および処理の制御である)の作用の模倣による。
【0004】
オピオイド鎮痛薬は、それらが高い親和性でオピオイド受容体と結合し、疼痛受容の強い抑制を誘導する場合、強力な作動薬であるとみなされる。同様に高い親和性でオピオイド受容体と結合はするが、疼痛受容の低減を生じさせず、その結果、オピオイド作動薬を中和する物質は、拮抗薬と呼ばれる。その結合挙動および誘導活性に依存して、オピオイドは、純粋な作動薬、作動/拮抗混合薬および純粋な拮抗薬と分類することができる。
【0005】
純粋なオピオイド拮抗薬は、例えば、ナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナルブフィン、ナロキソネアジネン、メチルナルトレキソン、ケチルシクラゾシン、ノルビナルトルフィミン、ナルトリンドール、6−β−ナロキソールおよび6−β−ナルトレキソールを含む。さらなるオピオイド作動薬および拮抗薬は、例えば、W. Forth, D. Henschler, W. Rummel, K. Starke : Allgemeine und Spezielle Pharmakologie und Toxikologie, 7th edition, 1996, Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg Berlin Oxford(非特許文献1)に開示されている。
【0006】
鎮痛作用のため、オキシコドン、チリジン、ブプレノルフィンおよびペンタゾシンなどの化合物が、疼痛治療のための薬物の形態で使用されている。鎮痛活性化合物としてオキシコドンを含むOxygesic(登録商標)および鎮痛活性化合物としてチリジンを含むValoron(登録商標)などの薬物が、疼痛治療のために価値があることは証明されている。
【0007】
オピオイドは、疼痛の管理に有効であるが、オピオイドに依存する人や治療以外の理由にオピオイドを誤用する個人による乱用の危険性がある。オピオイドの乱用の可能性に加えて、疼痛治療のための強いオピオイド鎮痛薬の使用は、便秘、呼吸低下、疾患および鎮静などの望ましくない副作用を招くことがある。オピオイド鎮痛薬の嗜癖性および習慣性の可能性ならびにそれらの他の副作用を最小にする試みは、オピオイド鎮痛薬を中和する拮抗薬の投与を含むことがある。こうした拮抗薬は、ナルトレキソンまたはナロキソンから選択することができる。例えば、この治療概念は、体外から投与されたオピオイドを遮断するために指示される市販の静脈内麻薬拮抗薬である、オピオイドチリジンとオピオイド拮抗薬ナロキソンの配合製品 ValoronN(登録商標)において、首尾よく利用されている。
【0008】
WO 03/084520(特許文献1)には、疼痛治療において使用するための、オキシコドンおよびナロキソンを含み、それらの活性化合物が持続的な、一様な、および独立した様式で製剤から放出される保存安定性医薬製剤が記載されている。詳細には、オキシコドンとナロキソンの併用により、効率的な鎮痛活性が達成され、同時に、便秘、呼吸低下および嗜癖性の発現などの一般的な副作用の抑制が達成されるとそこに述べられている。
【0009】
オピオイドでの疼痛治療によって生じる様々なレベルの副作用(例えば便秘)に関して患者を診断および治療する際、医療提供者は、常に困難に直面する。患者が、自分たちが経験している副作用を正確に説明することができないからである。便秘などのオピオイドによる腸機能障害(OBD)症候群を説明する際に使用するための患者用の一様なシステムがないことにより、医療提供者は、同じレベルの便秘について非常に異なる説明を受けることが多い。これらの異なる説明により、効果の無い、不適切な、または過剰な治療が施される場合もある。加えて、患者が彼らの不完全な腸機能を説明する際に使用する一様なシステムがないことで、不正確な診療記録が生じ、臨床試験または保険会社のために治療過程の腸機能を正確に説明することができない。
【0010】
腸機能低下、特に便秘は、麻薬性鎮痛薬を摂取している患者には有意な問題であり得る。使用されることが多い幾つかのパラメータ、例えば便通回数および便の硬さが、便秘によって生じる患者満足度の減損を十分に反映しないことは周知である。患者による判断が、例えば排便の回数より意味があることは、一般に認められている。患者満足度に影響を及ぼし得る主観的要因としては、数ある中でも、固形便、痙攣、排便の困難さ、腸内容物排出の不完全さおよび痛みのある便通が挙げられる。
【0011】
医療提供者は、腸機能、特に麻薬性鎮痛薬での治療を受けている患者の腸機能を正確に評定するための新しい、よりよい方法を常に捜している。
【特許文献1】国際公開第WO 03/084520号パンフレット
【非特許文献1】W. Forth, D. Henschler, W. Rummel, K. Starke : Allgemeine und Spezielle Pharmakologie und Toxikologie, 7th edition, 1996, Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg Berlin Oxford
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の1つの目的は、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)の腸機能を評定することができる、改善された方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)の腸機能を評定することができる、装置を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)が経験しているパラメータを分析することにより、その患者の開示に影響を及ぼし得る定言的な説明を患者に提案することなく、腸機能を評定または診断することができる装置を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)の腸機能を、より正確に評定して、より完全で正確な診療記録を提供することができる装置を提供することである。
【0016】
本発明のなお、さらなる目的は、特に視力障害を有する多数の高齢の疼痛管理患者を考慮して、ヒト集団の視力障害患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)が、より容易におよび正確に使用できる腸機能測定装置を提供することである。
【0017】
本発明によると、この腸機能の尺度であるパラメータを観察することにより、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)の、特に麻薬性鎮痛剤での疼痛治療を受けている患者の腸機能を、正確に評定することができる。とりわけ、本発明は、その人が経験している腸機能のレベルを測定するための方法、およびこの方法での使用に特に適するアナログスケールに関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1つの態様では、ヒト集団の患者または他の構成員(例えば、健常なヒト被験者)における腸機能の評定方法を提供し、この方法は、以下の段階を含む:
−少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供する段階(前記パラメータは、腸機能の尺度である);
−その患者に経験したパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させる段階;ならびに
−その数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定する段階。
【0019】
腸機能の尺度であるまたは腸機能と関係があるパラメータは、オピオイドによる腸機能障害(OBD)症候群、例えば便秘を含むことができる。OBDは、疼痛患者の継続治療を制限するオキシコドンなどの強いオピオイドでの鎮痛療法に関連した、多くの場合重度の有害薬物反応である。OBDは、主として便秘を随伴するが、腹部の痙攣、鼓脹および胃食道逆流も随伴する。
【0020】
例えば、腸機能の尺度であるまたは腸機能と関係があるパラメータは、排便の困難さ、不完全な腸内容物排出感および便秘の判断から成る群より選択することができる。
【0021】
好ましくは、前記ヒト集団の患者または構成員に、少なくとも2つのパラメータ、さらに好ましくは少なくとも3つのパラメータのための数値スケールを提供する。患者に1つより多くの数値アナログスケールを提供する場合、好ましくは、その方法は、平均腸機能の決定を含む。この平均腸機能は、各パラメータについての数値アナログスケール値を平均することにより算出することができる。
【0022】
既に上で述べたように、好ましくは、本発明の方法は、麻薬性鎮痛薬、例えば、オキシコドン、さらに好ましくはナロキソンと併用でのオキシコドンでの疼痛治療を受けている患者における腸機能を評定するために用いる。
【0023】
しかし、本発明は、例えば鎮痛薬以外の活性化合物での治療を受けている患者における腸機能を評定するためにも用いることができる。原則として、本発明は、患者における腸機能に対するあらゆる薬物の影響を評定するために用いることができる。同様に、本発明は、病気に罹っているとは考えられない、すなわち患者でない、ヒト集団の構成員における腸機能を評価するために用いることができる。こうした構成員は、薬物の投与を受けていないときであっても腸機能の判定に本発明の方法を適用することができる。
【0024】
前記数値アナログスケールは、好ましくは、0から10、または0から100の範囲にわたる。
【0025】
本発明のさらなる態様では、患者における腸機能の評定に適するアナログスケールおよび装置を提供する。本発明のアナログスケールの好ましい実施形態としては、紙票、円形腸機能メーターおよび電子装置が挙げられる。
【0026】
本発明の具体例としての実施形態によると、患者における腸機能を評定するための装置を提供し、この装置は、患者の腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを提供するための表示ユニット;その数値アナログスケールを用いて患者によって示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を受信するようになっている受信ユニット;ならびに腸機能を評定するために、その数値アナログスケールを用いて示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を提供するようになっているインターフェースユニットを具備する。
【0027】
こうした装置は、数値アナログスケールを使用者(例えば、患者または医師)に、その使用者がそのスケールを(例えば、視覚的に、および/または聴覚的に)感知できるように、表示することができる。こうした表示ユニットは、モニター(例えば、ブラウン管、液晶表示装置またはプラズマ表示装置)であってもよく、またはさらに携帯装置であってもよい。さらに、こうした表示装置は、そのスケールにしるしを付けるストリップまたはシートであってもよい。さらにまた、この装置は、その使用者の入力を受信することができ、この入力を場合によっては前処理する(例えば、それをデジタル形式のような機械読み取り可能な形式に変換する)ことができ、その結果をその後の通信インターフェースでの送信に提供することができる。
【0028】
この装置は、電子装置、例えば、PDA(personal digital assistant:形態情報端末)に類似した携帯装置として実現することができる。さらに、この装置は、携帯電話、ラップトップ型コンピュータなどに組み込むことができる。
【0029】
使用者は、例えば、マウス、トラックボール、キーパッド、タッチパッドによる、または音声認識システムをベースにした、ユーザーインターフェースを介して、その装置にデータを入力することができる。
【0030】
特に、前記インターフェースユニットは、腸機能を評定するために、数値アナログスケールを用いて示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を制御エンティティーに送信するようにすることができる。例えば、病院では、多数の患者の腸機能を評定すること、および対応する情報を集約的に供給すること、すなわち異なる患者位置にある異なる装置から制御コンピュータへとデータを中央に供給することが望まれる場合がある。
【0031】
前記インターフェースユニットから前記制御エンティティーへのデータの送信は、有線通信路によって行うこともでき、または無線通信路によって行うこともできる。有線通信用の装置のインターフェースは、従来のケーブル接続により中央制御コンピュータ(例えば、ワークステーションまたはパーソナルコンピュータ)に接続することができる。無線通信用の装置のインターフェースは、電磁波(例えば、赤外帯域内または無線周波数帯域内の電磁放射線)の交換により中央制御コンピュータと通信することができる。
【0032】
本発明のもう1つの具体例としての実施形態によると、患者における腸機能を評定するコンピュータプログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な媒体を提供し、前記コンピュータプログラムは、処理装置により実行がされると、腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供する方法段階;その患者に経験したパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させる方法段階;ならびにその数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定する方法段階を、制御または実行するようになっている。
【0033】
こうしたコンピュータ読み取り可能な媒体は、CD、フロッピー(登録商標)ディスク、USBメモリースティック、ハードディスク(RAM、ROM、フラッシュメモリー)などであり得る。コンピュータ支援制御システムは、ソフトウェアに基づき腸機能を評定するためのそうしたコンピュータ読み取り可能な媒体を含むことができる。
【0034】
本発明のさらのもう1つの具体例としての実施形態によると、患者における腸機能を評定するプログラム要素を提供し、前記プログラム要素は、処理装置により実行がされると、上述の方法段階を制御または実行するようになっている。
【0035】
こうしたプログラム要素は、コンパイル済みのもしくはコンパイル済みでない形式で提供することができ、またはLANもしくはインターネット等のネットワークにより送信されるトラベリングシグナルでさえあり得る。
【0036】
本発明の患者における腸機能の評定は、コンピュータプログラムにより、すなわちソフトウェアにより、または1つもしくはそれ以上の特殊な最適化電子回路の使用により、すなわちハードウェアで、またはハイブリッド形式で、すなわちソフトウェア構成要素およびハードウェア構成要素により、実現することができる。
【0037】
本発明の方法のために説明する実施形態は、装置、コンピュータ読み取り可能な媒体およびプログラム要素にもあてはまり、逆もまた同じである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明は、腸機能と関係があるパラメータを、これらのパラメータのための数値アナログスケール(NAS)を使用して測定することによって、腸機能をより正確に判定することができるという発見に基づく。こうした方法は、鎮痛薬での治療を受けている患者における腸機能を評定するとき、特に有利である。薬物の鎮痛作用は、通常、数値アナログスケールを使用して評定されるからである。従って、鎮痛薬での治療を受けている患者を用いて、意味のある結果を得るために提供する数値アナログスケールを論じることができる。
【0039】
本発明に従って、腸機能を、腸機能と関係があるパラメータを観察することにより評定する。詳細には、腸機能は、排便の容易さまたは困難さ、不完全な腸内容物排出感、および/または便秘に関する患者の個人的判断から選択されるパラメータに基づき判定することができる。患者の腸機能を評定するために、代替的に、または加えて、観察することができる他のパラメータとしては、数ある中でも、排便回数、便の硬さ、痙攣および痛みのある便通が挙げられる。
【0040】
通常、患者は、最近の数日間または数週間、例えば、最近1、2、3、4、5、6、7、10または14日間に経験したパラメータの量および/または強度を示す。
【0041】
患者が観察パラメータについての彼/彼女の主観的経験を示す数値アナログスケールは、いずれのサイズまたは形態を有してもよく、ならびにそれは、0または任意の他の数から任意の数、例えば、0から10、または0から50、または0から300、または1から10の範囲にわたり得る。
【0042】
1つより多くのパラメータが観察される場合、平均腸機能は、観察されたパラメータ(例えば、排便の容易さまたは困難さ、不完全な腸内容物排出感および便秘の判断についての3つの数値アナログスケール値)の平均である数値の形態で得ることができる。この平均腸機能は、平均腸機能スコア、腸機能指数または(3つのパラメータを観察された場合には)BFI3と呼ばれる。本発明のために、BFIおよびBFI3は、同義で用いる。
【0043】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、好ましくは、麻薬性鎮痛薬での疼痛治療を受けている患者における腸機能を評定するために用いられる。便秘などのOBD症状は、これらの患者にとって有意な問題であるからである。本発明の麻薬性鎮痛薬としては、数ある中でも、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルホン、ニコモルヒネ、ジヒドロコデイン、ジアモルヒネ、パパベレタム、コデイン、エチルモルヒネ、フェニルピペリジンおよびその誘導体、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、チリジン、トラマドールならびにヒドロコドンが挙げられる。
【0044】
しかし、上で指摘したように、本発明の方法は、鎮痛薬以外の薬物の腸機能に対する影響を研究するために使用することができ、ならびにたとえ除外することができなかったとしても薬物を一切摂取していないヒト集団の典型的な構成員における腸機能を評価するためにでさえ使用することができる。
【0045】
疼痛治療中の便秘などのOBD症状の治療は、多くの場合、オピオイド拮抗薬と併用でのオピオイドの投与を含むので、オピオイド拮抗薬の投与との組み合わせで疼痛治療を受けている患者における本発明の方法の使用は、特に好ましい。本発明のそうしたオピオイド拮抗薬としては、数ある中でも、ナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナルブフィン、ナロキソネアジネン、メチルナルトレキソン、ケチルシクラゾシン、ノルビナルトルフィミン、ナルトリンドール、6−β−ナロキソールおよび6−β−ナルトレキソールが挙げられる(Forth W.; Henschler, D.; Rummel W.; Starke, K.: Allgemeine und Spezielle Pharmakologie und Toxikologie, 7. Auflage, 1996, Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg Berlin Oxford も参照)。
【0046】
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、オキシコドン・ナロキソン製剤で治療した患者または健常なヒト被験者における腸機能を、3つの重要なパラメータを使用する数値アナログスケールで測定した。詳細には、腸機能は、次の3つのパラメータを基に判定することができる:
−排便の容易さもしくは困難さ(例えば、患者の評定に従って、最近7日間のもの。この場合、0は、困難さなしに相当し、100は、重度の困難さに相当する);
−不完全な腸内容物排出感(例えば、患者の評定に従って、最近7日間のもの。この場合、0は、不完全な腸内容物排出感がないことに相当し、100は、不完全な腸内容物排出を非常に強く感じることに相当する);
−便秘に関する患者の個人的判断(例えば、最近7日間のもの。この場合、0は、便秘がまったくないことに相当し、100は、非常に重い便秘に相当する)。
【0047】
平均腸機能は、観察されたパラメータ(例えば、排便の容易さもしくは困難さ、不完全な腸内容物排出感ならびに便秘の判断についての3つの数値アナログスケール値)の平均である数値の形で得ることができる。
【0048】
さらに好ましい実施形態において、例えばその患者の指摘に従って最近7日間の、平均腸機能についての要約統計が得られる。
【0049】
詳細には、本発明の腸機能の評定方法は、以下に説明するような本発明のアナログスケールまたは装置を使用して行う。
【0050】
上で述べたものなどの腸機能の指標となるパラメータの値を、患者における定常状態試験に関する実験1において得られたデータに基づいて導出したことは、理解しなければならない。しかし、単回用量投与患者、または健常なヒト被験者などのヒト集団の他の構成員における単回用量および定常状態投与でも匹敵する結果が得られると考えられる。用語「健常なヒト被験者」は、一般には第I相臨床試験に登録される試験集団を記述するために用いる。勿論、本発明の腸機能評定方法は、第I相臨床試験に通常適用されるような組み入れおよび除外基準により定義される、患者でない(すなわち、疾患に罹っていない)および健常なヒト被験者でない、ヒト集団の構成員において用いることができる。
【0051】
排便の容易さまたは困難さなどのパラメータを健常はヒト被験者について測定する場合、それらは、一般に、約16から24人の健常なヒト被験者の試験集団に製剤を投与することによって得られる。規制団体、例えば欧州医薬品審査庁(European Agency for the Evaluation of Medicinal Products)(EMEA)または米国食品医薬品局(the Food and Drug Administration)(FDA)は、通常、例えば20から24人の被験者から得られたデータを受理する。
【0052】
これに関連して用語「健常な」ヒト被験者は、身長、体重および生理学的パラメータ(例えば、血圧)などに関して平均値を有する、通常は白人の典型的な男性または女性を指す。本発明のための健常なヒト被験者は、臨床試験に関する医薬品規制調和国際会議(the International Conference for Harmonization of Clinical Trials)(ICH)の勧告に基づくおよび従う組み入れ基準および除外基準に従って選択する。
【0053】
例えば、組み入れ基準は、18歳以上と45歳以下の間の年齢;19〜29kg/m2の範囲内のBMI;ならびに男性については60〜100kgおよび女性については55〜90kgの体重の範囲内(前記女性は、授乳および妊娠していてはならず、被験薬を摂取する前24時間以内に尿中β−hCG妊娠検査陰性を提供しなければならない);既往歴、身体検査、臨床試験、バイタルサインおよびECGなどに関して有意に異常な所見がないことにより証明される概ね良好な健康状態を含む。
【0054】
除外基準は、被験薬の初回投与の3ヶ月以内のあらゆる治験薬またはプラシーボへの暴露;被験薬の初回投与前30日以内のあらゆる有意な疾患;既往歴、身体検査または検査室分析についての試験前スクリーニングにおいて確認されるあらゆる臨床的に有意な異常;被験薬の初回投与前、21日の間のあらゆる処方箋調剤薬(閉経後の女性についてのHRT、および避妊薬を除く)の使用または7日の間の制酸薬、ビタミン類、生薬および/またはミネラルサプリメントをはじめとする対応薬剤に勝る薬の使用;胃腸薬吸収(例えば、胃内容排出遅延、吸収不良症候群)、分散(例えば、肥満)、代謝または排泄(例えば、肝炎、糸球体腎炎)に干渉することが知られている併発症;治験担当医師の意見で、安全にその試験を完了する被験者の能力を脅かす、病歴または併発症;被験者が薬理治療を必要とした発作障害の病歴;1日に5本より多い現行の喫煙歴;DSM−IV基準に従って、物質またはアルコール乱用の現在または過去の病歴を有する被験者;1日に2本またはそれ以上のアルコール飲料の定期的消費を報告した被験者またはスクリーニング時に0.5%以上の血中アルコールレベルを有する被験者;被験薬の初回投与前3ヶ月の間の500mLより多くの血液もしくは血液製剤の供与または他の大量血液喪失;スクリーニング時に採取した尿の検体でのエタノール、アヘン剤、バルビツール酸塩、アンフェタミン、コカイン代謝物、メタドン、プロポキシフェン、フェンシクリジン、ベンゾジアゼピンおよびカンナビノイドについての試験前スクリーンにおけるあらゆる陽性の結果;オキシコドン、ナロキソンまたは関連化合物に対して感受性であることがわかっていることなどを含む。
【0055】
排便の容易さまたは困難さなどのパラメータを患者から得る場合、その患者群は、10から200人の間の患者を含む。妥当な患者数は、例えば、10、20、30、40、50、75、100、125または150人である。患者は、治療すべき状態の症状に従って選択される。本発明のために、患者は、実施例1の組み入れ基準および除外基準に従って選択することができる。例えば、患者は、18歳以上であり、腫瘍および非腫瘍起源の重度慢性疼痛に罹っており、WHO II、すなわちII鎮痛薬などで不十分な効能および/または忍容性を示す。患者は、現行アルコールまたは薬物乱用、現行の重度心血管および呼吸器疾患、重度の肝臓および腎機能障害の徴候がある場合、薬物動態パラメータの判定について考慮されない。
【0056】
1つの実施形態において、ヒト集団の患者または別の構成員(例えば、健常は被験者)に提供されるパラメータスケールまたは数値アナログスケールは、観察することができるパラメータについての経験なしまたは非常に強い経験を示すものが両末端にある以外、標識またはしるしがまったくない連続線であり得る。そして、その連続線にダッシュを書き込むことにより、患者に経験したパラメータの量および/または強さを示させる。その後、医療提供者または医師は、そのダッシュから経験なしを示す末端までまたは非常に強い経験を示す末端までの距離を測定することができ、その測定値を両末端間の距離で割る。その結果が、腸機能についてのスコアである数値である。1つより多くのパラメータが観察される場合、通常、各パラメータについての数値アナログスケール値を平均することにより、平均腸機能スコアを決定する。3つのパラメータが観察される場合、この平均腸機能スコアは、腸機能指数またはBFI3とも呼ばれる。このスケールにより、Rome II基準を検出することができる。
【0057】
さらなる態様において、図1は、本発明に従って腸機能指数を評定するために使用することができる紙票の一例を図示するものである。詳細には、ヒト集団の患者または別の構成員(例えば、健常なヒト被験者)またはこの患者を担当する医師に、例えば最近の1、3、7または14日間の排便の容易さまたは困難さ;例えば最近1、3、7または14日間の不完全な腸内容物排出感;および再び例えば最近1、3、7または14日間の便秘に関する患者の個人的判断などの腸機能と関係があるパラメータに関する紙票を用いて質問して、質問に答えさせることができる。この実施形態において、質問は、線上の0と100との間にしるしをつけることによって回答され、この場合、0は排便の困難さなしに相当し、100は重度の排便困難に相当し、ならびに/または0は不完全な腸内容物排出感がないことに相当し、100は不完全な腸内容物排出を非常に強く感じることに相当し、ならびに/または0は、便秘がまったくないことに相当し、100は非常に重い便秘に相当する。勿論、このスケールは、0または他のいずれかの数からいずれかの数、例えば、0から10、または0から50、または0から300、または1から10の範囲にわたり得る。例えば、そのしるしから経験なしを示す末端までまたは非常に強い経験を示す末端までの距離を測定し、この測定値を両末端間の距離で割ることにより得ることができる3つの数値を、その後、好ましくは加え、そして3で割って、平均腸機能スコアまたは平均腸機能指数(BFI)またはBFI3を得る。
【0058】
さらなる実施形態において、図2は、本発明の円形BFIメーターの一例を図示するものである。好ましくは、本発明の円形BFIメーターは、上で説明したような腸機能と関係がある1つまたはそれ以上のパラメータに対する患者の評定に関する質問を伴う紙票を含む。さらに、こうした円形BFIメーターは、好ましくは、内円上の数値スケールおよび外円上の数値スケールを含む。これらの数値スケールは、好ましくは、一方のスケール上の値が他方のスケール上の対応する値の倍数になるように互いに相関しており、この場合、その係数は、観察されるパラメータの数に相当する。例えば、3つのパラメータが観察される場合、一方のスケール上の値は、他方のスケール上の対応する値を3で割った、または他方のスケール上の対応する値に3を掛けた値を示す。さらに、本発明のBFIメーターは、内円上の数値スケールの対応する値と外円上の数値スケールの対応する値との相関を容易にするために、針または指針(これは、その円の中央に取り付けられており、その円を回って動かすことができる)を含む。
【0059】
例えば、BFI 3を得るために、例えば、最近7日間の排便の容易さまたは困難さ(この場合、0は排便の困難さなしに相当し、100は重度の困難に相当する);例えば最近7日間の患者の評定に従う不完全な腸内容物排出感(この場合、0は不完全な腸内容物排出を感じないことに相当し、100は不完全な腸内容物排出を非常に強く感じることに相当する);および便秘に関する患者の個人的判断(この場合、0は便秘がまったくないことに相当し、100は非常に重い便秘に相当する)に関する3つの質問を、BFIメーターの円の内部領域に与える。内円(3)上には、時計回りに進む0〜300のスケールを配置する。外円(4)上には、時計回りに進む0〜100のスケールを配置し、このスケールは、内円のスケールのしるしに沿っており、内円の値を3で割った値を示す。計算を容易にするために、針または指針(1)をその円の中央に取り付け、これは、その円を回って動かすことができる。その針の外端には、その内円および外円の数値を囲み込むウインドウ(2)がある。平均腸機能を評定するために、質問1の結果である内円の数字に針を動かすことができる。次に、質問2の結果を、その内円のその点に針を動かすことによって、加えることができる。第三段階において、質問3の結果を、その内円のその結果の点に針を動かすことによって、加える。結果として、平均腸機能スコアを外円上で見ることができる。
【0060】
他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、米国特許第6,258,042号B1およびWO 03/073937 A1に記載されているアナログスケール(これらを、上で説明した装置またはアナログスケールに適応させなければならない)で行うことができる。これらの2つの参考文献の開示は、本明細書に参考として取り入れられている。
【0061】
本発明のさらなる態様において、2つの面を有する携帯パネルのような装置であるアナログスケールを使用することができる。このパネルの一方の面上の患者用の面は、腸機能の尺度であるパラメータのための患者用スケールを有し、このスケールは、そのパラメータの経験なしおよび非常に強い経験から変動してそのパラメータの範囲を描写する。
【0062】
好ましくは、このスケールは、そのパラメータの経験なしまたは非常に強い経験を示すものが両末端にある以外、標識またはしるしがまったくない連続線である。
【0063】
そのパネルの別の面は、そのパラメータのための医療提供者用スケールを有し、このスケールは、0から好ましくは10または100より選択される整数までの番号がつけられた別個の間隔に分けられている。そしてまた、この別個の間隔は、そのパラメータの経験の増加レベルを表し、それは、そのパラメータを特定および治療するために医療提供者および保険会社が使用する用語を用いて記載される。
【0064】
好ましくは、この装置は、そのパネルを包み込み、そのパネルの各面上の両方のスケールを重ね合わせる、そのパネル上にスライド可能に取り付けされた指示器を備えている。この指示器は、各スケールに沿って特定の点を指す指示線を有する。各指示線は、一方の指示線が動かされると、相補的に他方の指示線が動かされるように、互いに接続接続されている。従って、本発明は、人が、自分が経験しているパラメータの量および強度を説明するために使用することができる、2つの相補的スケールを表示し、スライド可能な指示器を有する測定装置に関する。
【0065】
使用する際、医療提供者は、そのパラメータのための患者用スケールを患者に提供し、その患者に、その患者が経験しているまたは経験したパラメータの量および強度を、そのスケールに沿った主観的位置にその指示器を置くことによって示させる。患者は、数値および/または言語疼痛記述子に応じて別個の増分間隔を示す医療提供者用パラメータスケールを見ることはできない。その後、医療提供者は、そのスライド可能な指示器によりその医療提供者用疼痛スケール上に示された数値および/または言葉の疼痛記述子を読み取り、記録する。上で説明したように、このスライド可能な指示器は、患者用パラメータスケール上の患者が示した位置に対する補数である、プロバーダー用疼痛スケール上の位置を指す。
【0066】
1つの実施形態において、BFIについて答えなければならない質問を異なる言いまわしで出して、答えの正確さを確保し、結果の妥当性を増すことができる。
【0067】
以下では、図10を参照して、本発明の具体例としての実施形態に従って患者における腸機能を評定するための電子装置100を説明する。
【0068】
患者における腸機能を評定するための装置100は、3つの数値アナログスケール102、103、104を提供するためのLCD表示装置101を具備し、これらのアナログスケールは、各々、患者の腸機能と関係がある3つのパラメータA、B、Cのうちの対応する1つに割り当てられている。
【0069】
装置100は、0と100の間の数値アナログスケール102、103、104を用いて患者が示した3つのパラメータA、B、Cの各々の量または値を使用者対話モードで受信することができる受信部105をさらに具備する。この受信部105は、使用者(図示なし)がデータ(例えば、患者データ「Patient No.23516」)を入力できる、キーパッド106、トラックボール107およびボタン108を含み、3つのパラメータA、B、Cの各々についての患者関連値をシフト可能バー109により調整することができる。こうした目的のために、使用者は、キーパッド106、トラックボール107およびボタン108により、マウスポインター110を操作することができる。
【0070】
3つのパラメータA、B、Cの平均値を計算するために、処理装置(例えば、CPU)を装置100に含めることができる。この平均値は、LCD表示装置101で表示することができる(この例では、「31」、「52」および「42」の平均として「41」)。さらに、入力値(この例では、「31」、「52」および「40」)および/または計算値(この例では、「41」)を赤外線インターフェース111(すなわち、赤外線を放出し、受け取るユニット)で得ることができる。
【0071】
赤外線インターフェース111は、得たデータを赤外線シグナル112により無線方式で中央制御コンピュータ113に送信するようになっている。
【0072】
例えば、装置100のような多数の装置を病院の異なる患者の部屋に備え付けることができ、すべてのデータを中央コンピュータ113に送ることができる。中央コンピュータ113では、すべてのデータを後処理することができ、および/または明瞭にレイアウトされたかなり大量のデータであっても医師がモニターできるような様式で、すべてのデータを提供することができる。
【0073】
図11は、本発明の方法の具体例としての実施形態を実施するための本発明のデータ処理装置の具体例としての実施形態を図示すものである。図11に図示されているデータ処理装置は、患者の腸機能を表すデータを記憶するための記憶装置152に接続された、中央処理ユニット(CPU)または腸機能評定パラメータ処理装置151を含む。このデータ処理装置151は、多数の入力/出力ネットワークまたは処理装置(例えば、病院に居る多数の患者の中央コンピュータ腸機能データを記憶すること、それらのデータにアクセスすること、またはそれらのデータを後処理することができる、病院内の中央コンピュータ)に接続することができる。このデータ処理装置は、腸機能と関係があるパラメータについての情報または数値アナログスケールを表示するための表示装置154(例えば、コンピュータのモニター)にさらに接続することができる。患者、オペレータまたは医師は、キーボード155および/または図11には図示されていない他の出力装置により、データ処理装置151と対話することができる。さらに、バスシステム153により、中央処理装置151をネットワークの他のコンピュータに接続することもできる。
【0074】
好ましくは、本発明の腸機能を評定するための装置またはアナログスケールは、特に鎮痛薬での治療を受けている患者における便秘の治療の妥当性を評定するために、医師によって使用される。1つの実施形態において、患者が、本発明の腸機能を評定するための装置またはアナログスケールで、高い便秘度または低い腸機能度、例えば高い腸機能スコアを示した場合、医師は、緩下剤などの投与を増加するか、緩下剤などの投与での治療を開始する。患者が低い便秘度または高い腸機能度、例えば低い腸機能スコアを示した場合、緩下剤などの投与は、減少されるか、中止されるか、または開始されない。
【0075】
従って、本発明は、患者における便秘の治療方法をさらに提供し、この方法は、以下の段階:
上で説明したような本発明の腸機能の評定方法を用いて患者における腸機能を評定する段階;
その患者の腸機能に依存して便秘を治療する段階
を含む。
【0076】
さらなる態様において、本発明は、便秘を治療する方法を提供し、この方法は、以下の段階:
上で説明した本発明の腸機能の評定装置を使用して患者における腸機能を評定する段階;
その患者の腸機能に従って便秘を治療する段階
を含む。
【0077】
本発明に関連して、患者の腸機能に依存しての便秘の治療は、患者への少なくとも1つの緩下剤などの投与の開始、増加、減少または中止を含む。
【0078】
好ましい緩下剤は、次のカテゴリーから選択される:
制酸薬、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム;
下痢止め薬、例えば、ポリカルボフィル、車前子親水性粘漿薬;
高アンモニア血症治療薬、例えば、ラクトース;
高脂血症治療薬、例えば、車前子親水性粘漿薬;
水様性胆汁分泌物質(hydrocholeretic)、例えば、デヒドロコール酸;
緩下剤、膨張性薬剤、例えば、麦芽スープエキス、麦芽スープエキスと車前子;メチルセルロース、ポリカルボフィル、車前子、車前子親水性粘漿薬、車前子親水性粘漿薬とカルボキシメチルセルロース;
緩下剤、膨張性薬剤および刺激物、例えば、車前子とセンナ、車前子親水性粘漿薬とセンナ、車前子親水性粘漿薬とセンノシド;
緩下剤、二酸化炭素放出性物質、例えば、重酒石酸カリウムと重炭酸ナトリウム;
緩下剤、高浸透圧物質、例えば、グリセリン、ラクトース、ポリエチレングリコール;
緩下剤、高浸透圧物質および潤滑剤、例えば、水酸化マグネシウムと鉱物油、鉱物油とグリセリン;
緩下剤、高浸透圧物質および刺激物、例えば、水酸化マグネシウムとカスカラサグラダ;
緩下剤、高浸透圧物質、食塩水、例えば、クエン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム;
緩下剤、潤滑剤、例えば、鉱物油
緩下剤、刺激物および軟便剤(軟化剤)、例えば、ビサコジルとドクセート、カサントラノールとドクセート、ダントロンとドクセート、デヒドロコール酸とドクセート、センノシドとドクセート;
緩下剤、刺激物または接触、例えば、ビサコジル、カサントラノール、カスカラサグラダとビサコジル、カスカラサグラダ、カスカラサグラダとアロエ、ヒマシ油、デヒドロコール酸、センナ、センノシド;
緩下剤、軟便剤(軟化剤)、例えば、ドクセート、ポロキサマー188.
【0079】
本発明の非常に有利な実施形態を表示する実施例を下に記載する。本実施例を、本発明の可能な実施形態を限定するものと、解釈すべきでない。
実施形態実施例
【実施例1】
【0080】
疼痛患者におけるナロキソン−オキシコドン比の最適化
本発明の方法および本発明のアナログスケールを欧州で行った第II相臨床試験において利用した。オキシコドン/ナロキソン併用が、オキシコドン単独と比較して、腫瘍および非腫瘍起源の重度の慢性疼痛を有する患者において匹敵する鎮痛と便秘低減ならびに緩下剤の必要性を招くかどうかを調査するために、第II相臨床試験を計画し、実施した。加えて、腸機能改善、鎮痛作用および安全性に関して、いずれのオキシコドンのナロキソンに対する用量比が、さらなる改善に最も有効であり、最も適するかを判定するための分析を行った。
【0081】
1.試験集団、組み入れおよび除外基準
合計で202人の患者を無作為化し、152人の患者がナロキソンとオキシコドンの両方を摂取し、50人の患者がオキシコドンおよびナロキソンプラシーボを摂取することになった。全試験対象(Intent to Trial)(ITT)集団は、196人(97.0%)の患者から成った。治験実施計画書に適合した対象(Per Protocol)(PP)集団は、99人(49%)の患者から成った。
【0082】
試験参加者は、組み入れ基準および除外基準に従って選択した。一般に、18歳以上の年齢で、腫瘍および非腫瘍起源の重度の慢性疼痛に罹っており、オピオイド治療を必要とする男性または女性患者が、この試験に登録した。WHO IIまたはIII鎮痛薬での効能または忍容性が不十分な患者ならびに安定なオキシコドン療法(40〜80mg/日)を受けている患者が、スクリーニングに適した。二重盲検治療期に組み入れた患者は、安定なオキシコドン治療中であり、緩下剤の定期的な摂取が医療上必要であった。
【0083】
以下の組み入れ基準に従って患者を選択した。
【0084】
組み入れ基準
−18歳以上の年齢
−オピオイド治療が必要な腫瘍および非腫瘍起源の重度慢性疼痛を有する
−および/または、WHO IIまたはIII鎮痛薬での効能不十分
−および/または、WHO IIまたはIII鎮痛薬での忍容性不十分
−または、現在、安定なオキシコドン療法(40〜80mg/日)を受けている患者
−自由意志での参加および記入済みインフォームドコンセントの提供が可能であった
−治験実施計画書の要求事項を了解することができ、それらを快諾し、果たすことができた。
【0085】
維持治療期(維持期)およびタイトレーションまたはランインに組み入れることができた患者は、
−安定なオキシコドン治療 40〜80mg/日を受けており、週に5回以下の救急薬物摂取(オキシコドン)
−少なくとも3回の排便/週を有するために緩下剤の定期的摂取が医療上必要である
患者であった。
【0086】
除外基準
−現在、アルコールまたは薬物を乱用している
−現在、重度の心血管および呼吸器疾患(例えば、肺癌および転移)を有する
−現在、重度の肝および腎不全(正常範囲より3倍上のトランスアミナーゼ)ならびに/または肝臓/腎臓癌および/または転移を有する
−麻痺性腸閉塞の病歴を有する
−現在、急性膵炎を有する
−精神病の病歴を有する
−パーキンソン病の病歴を有する
−疾患の関係で早期退職する過程にある
−オキシコドンのほかに別のオピオイド治療を受けている
−被験薬のうちの1つに対して過敏であることがわかっている
−試験に入る30日以内に別の臨床試験に参加した
−女性で妊娠または授乳していた
−妊娠の可能性がある女性であり、適切に避妊していなかった
患者は、この試験から除外しなければならなかった。
【0087】
試験集団の詳細は、図12および13から得ることができる。
【0088】
2.試験治療、用量および投与形態
投与した製剤
投与強度20mg オキシコドン、10mg オキシコドン、10mg ナロキソンおよび5mg ナロキソンの錠剤を、噴霧造粒によって作製した。30mgのオキシコドン投与強度は、1錠の10mg投与強度錠剤と1錠の20mg投与強度錠剤とを使用することにより、投与した。40mgのオキシコドン投与強度は、2錠の20mg投与強度錠剤を使用することによって投与した。
【0089】
塩酸オキシコドンPR錠剤 10mg
塩酸オキシコドンPR錠剤 10mgは、丸い、両凸の、白色フィルムコーティング錠剤であり、一方の面にOC、反対の面に10と記されていた。塩酸オキシコドンPR錠剤 10mgの組成を下に与える:
【表1−1】
【表1−2】
塩酸オキシコドンPR錠剤 10mgの組成
1無水ベース。バッチ量は、アッセイ/含水量に合わせる。
2Eudragit RS 30 Dは、0.25%(E,E)−ヘキサ−2,4−ジエン酸(ソルビン酸)Ph Eur/NFで保存された、精製水Ph Eur中のメタクリル酸アンモニウムコポリマーNF(ポリ[エチルアクリレート−co−メチルメタクリレート−co−(2−トリメチルアンモニオエチル)メタクリレートクロライド](1:2:0.1)NF)の30%分散物から成る
3〜4%残留水分、すなわち1錠剤コア当たり5mgの水分を含む。
4コートの実際の量は、約5mgである。コートをそれらのコア錠剤に塗布して、3〜4%の重量増加および均一な外観を得る。
5加工中に除去される。
【0090】
塩酸オキシコドンPR錠剤 20mg
塩酸オキシコドンPR錠剤 20mgは、丸い、両凸の、ピンク色フィルムコーティング錠剤であり、一方の面にOC、反対の面に20と記されていた。塩酸オキシコドンPR錠剤 20mgの組成を下に与える。
【表1−3】
1無水ベース。バッチ量は、アッセイ/含水量に合わせる。
2Eudragit RS 30 Dは、0.25%(E,E)−ヘキサ−2,4−ジエン酸(ソルビン酸)Ph Eur/NFで保存された、精製水Ph Eur中のメタクリル酸アンモニウムコポリマーNF(ポリ[エチルアクリレート−co−メチルメタクリレート−co−(2−トリメチルアンモニオエチル)メタクリレートクロライド](1:2:0.1)NF)の30%分散物から成る
3〜4%残留水分、すなわち1錠剤コア当たり5mgの水分を含む。
4コートの実際の量は、約5mgである。コートをそれらのコア錠剤に塗布して、3〜4%の重量増加および均一な外観を得る。
5加工中に除去される。
【0091】
ナロキソン錠剤
ナロキソン徐放性錠剤は、遅延剤としてステアリルアルコールおよびエチルセルロースのマトリックスを使用する放出制御錠剤である。これらの錠剤は、1錠当たり10mgの塩酸ナロキソンを含有した。ナロキソン徐放性錠剤の成分および量的組成の完全な明細を下に与える。
【表1−4】
【0092】
盲検用ナロキソンCR錠剤(5mgおよび10mg)をボトルで支給した。この薬物投与計画は、全二重盲検治療期間にわたって不変であり、用量調整は、許されなかった。患者は、毎朝および毎晩、5、10または20mgの経口用ナロキソンを摂取した。
【0093】
非盲検用オキシコドンCR錠剤(10mgおよび20mg)は、PPブリスターで支給した。タイトレーション/ランイン期間中に用量調整を行うことができ、10mg CRオキシコドン錠剤は、全試験を通して救急薬物として利用可能であった。この薬物投与計画は、その全二重盲検治療期間にわたって不変であった。患者は、毎朝および毎晩、20、30または40mgの経口用オキシコドンを摂取した。
【0094】
盲検用ナロキソンプラシーボ錠剤は、視覚的にはナロキソン錠剤 5mgおよび10mgと全く同じであった。用量および投与形式は、ナロキソンCR錠剤についてのとおりであった。
【0095】
試験計画
この臨床試験は、経口放出制御(CR)オキシコドン、経口放出制御(CR)ナロキソンおよび対応するナロキソンプラシーボを用いて、多施設、予測的、対照化、無作為化、二重盲検(プラシーボダミーを用いる)、4群並行試験として、ドイツにおいて行った。
【0096】
全試験期間は、10週以下であり、これは、スクリーニング期間、最低2週間のタイトレーション期間(最大3週間)(または1週間のランイン期間)、4週間の治療期間(オキシコドンおよびナロキソン/ナロキソンプラシーボ)ならびに2週間のフォローアップ期を含んだ。
【0097】
すべての組み入れ/除外基準を満たした、安定して疼痛管理されている患者を、3つのナロキソン治療群のうちの1つまたはナロキソンプラシーボ治療群での二重盲検療法に無作為に割り当てた。
【0098】
この試験は、3つのコア期を有した:無作為化前の期、4週間の二重盲検治療期間(維持期)およびフォローアップ期。無作為化前の期は、スクリーニングおよびタイトレーション/ランインから成るものだった。スクリーニング後、患者は、タイトレーションまたはランイン期間のいずれかに入った。疼痛の前治療が不十分であった患者は、最低2週間のタイトレーション期間に入り、個々にタイトレーションを受け、1日当たり40mg、60mgまたは80mgのオキシコドン用量で安定させた。スクリーニング時に安定したオキシコドンでの前治療(40〜80mg/日の間)を受けており、便秘を随伴した患者は、1週間のランイン期間に入り、事前のタイトレーションなしに維持期に入る資格があった。すべての患者について、タイトレーションまたはランインの間にオキシコドンの用量を調整することができ、治験担当医師は、一日おきの強制的な電話連絡を維持して、疼痛管理を評定し、用量の変更を行った。
【0099】
タイトレーション/ランイン期間の最後に、1日当たり40mg、60mgまたは80mgのオキシコドンである安定な維持用量を摂取しており(週に5回より多くの救急薬物摂取がない)、緩下剤の定期的な摂取が医療上必要であった患者を、3つのナロキソン治療群のうちの1つまたはナロキソンプラシーボ治療群に無作為に割り当てた。各患者は、オキシコドンの彼らの維持用量に加えて、10mg、20mg、40mgまたはナロキソンプラシーボ CR錠剤を毎日摂取した(表1参照)。
【0100】
その治療期間の後、患者は、後続の2週間のフォローアップ期の間のみ、彼らの維持用量のオキシコドンを継続した(1日当たり40mg、60mgまたは80mg オキシコドン)。患者は、日記を継続し、効能および安全性の評定をこの試験の間ずっと行った。
【表1−4】
註:40/10mgと80/20mg(4/1)について、および40/20mgと80/40mg(2/1)について、全く同じ用量比が得られた。
【0101】
202人の被験者を無作為化し、196人がITT集団に入り、166人がこの試験を完結した。臨床試験のためのこの試験計画の概要は図3に表示する。
【0102】
全治療対象(ITT)集団は、被験薬の少なくとも1つの用量を摂取し、少なくとも1回、無作為化後の効能評定を行ったすべての被無作為化患者を含んだ。幾つかの分析については、第4訪問後に中止したITT被験者(ITT/LOCF)についての最終観察を繰り上げた。他の事例では、入手できたデータのみを使用した(ITT 欠如なし)。
【0103】
治験実施計画書に適合した対象(PP)集団は、重要な治験実施計画への違反なく(フォローアップ期を含めて)その試験を完了した、すべての被無作為化患者を含んだ。重要な治験実施計画への違反は、次のように定義した:
−維持期間中に救急薬物として週に50mgより多くのオキシコドンを摂取した、または予定されたオキシコドン投与計画のうちの1つ(1日当たり40mg、60mgまたは80mgのオキシコドン)に従わなかった患者。
−各訪問前の最近7日間に、平均疼痛強度評定が朝4回未満および晩4回未満しか記録されなかった。
−予定された訪問から非常に大きくずれた、すなわち、訪問日が、それぞれの訪問時間帯以外であった。維持期訪問(第4および5訪問)の訪問時間帯からずれだけを重要な治験実施計画への違反とみなした。他の訪問からのずれは、重要でない治験実施計画への違反とみなした。重要な治験実施計画への違反の識別のために、第4および5訪問についての時間帯は、データの盲検的再検後にわずかに増加し、次のように定義した:
−第4訪問(維持期中):
−第3訪問+6から12日
−第5訪問(維持期の最終日):
−第3訪問+25から31日。
【0104】
3.主要効能変動要素
効能評定は、症例報告用紙および患者の日記に記録されたデータを基に決定した。
【0105】
対象となる主要効能変動要素は、次のような疼痛および腸機能であった:
【0106】
a)0〜100 数値アナログスケール(NAS)(0=疼痛なし、および100=想像できる最悪の疼痛)を使用するその患者の1日2回の疼痛強度の評定に基づく、各訪問前の最近7日間の平均疼痛。平均疼痛は、最近7日からの、すべての患者の日記記載事項の日別平均値の平均値として、試験訪問ごとに計算した。
【0107】
b)平均腸機能:各訪問前の最近7日間の腸機能についての、各試験訪問時の、患者の評定。平均腸機能は、3つの0〜100 NASスコア:排便の容易さ(0=容易/困難さなし、100=重度に困難)、不完全な腸内容物排出感(0=まったくない、100=非常に強い)、および便秘の判断(0=まったくない、100=非常に強い)、の平均から計算した。
【0108】
4.鎮痛作用の結果
維持期の最終時の平均疼痛の結果を下に要約する:
【表2】
*第5訪問(維持期の最後)におけるプラシーボに対する差についての95%信頼区画は、モデルにおける因子として治療疼痛強度およびベースライン疼痛強度を用いたANCOVAモデルの使用に基づく。
【0109】
これらの差は小さく、信頼区画は、0〜100の疼痛スケールに対してかなり狭く、活性ナロキソンとナロキソンプラシーボの間の鎮痛作用の差を示してはいなかった。
【0110】
因子としてナロキソンおよびオキシコドン用量ならびに共変数としてベースライン疼痛を用いる二次応答曲面モデルは、維持期の最後の平均疼痛に影響を及ぼす唯一の係数が、ベースライン疼痛測定値であることを示している。ナロキソンの量の変化に伴う平均疼痛の変化の証拠はなかった。しかし、この試験は、オキシコドン/ナロキソンプラシーボに対してオキシコドン/ナロキソンが劣らないことを正式に証明するようには計画されておらず、そうした能力もなかった。
【0111】
5.腸機能効能の結果
試験訪問ごとに、3つのNAS値(排便の容易さ/困難さ、不完全な腸内容物排出感および便秘の判断)の平均から平均腸機能を計算した。オキシコドンとナロキソンの用量比グループ、ナロキソンの絶対用量グループ、および同じオキシコドン/ナロキソン比をもたらすナロキソンの絶対用量グループごとの最近7日間の平均腸機能に関する要約統計を試験訪問ごとに得た。
【0112】
プラシーボに対するナロキソンの絶対用量の差について検査するために、維持期の最後(ナロキソン治療の4週間後)に得られた値についてt検定を行った。加えて、治療群間の平均の差についての両側95%CI(CI、信頼区画)を得た。維持期の最後(ナロキソン治療の4週間後)には応答曲面分析も行った。これらの分析は、ITTおよびPP集団について行った。ITT集団だけには差についてのt検定も行って、第4訪問時(ナロキソン治療の1週間後)に平均腸機能を調査した。
【0113】
加えて、フォローアップ期の最後にはその最近7日間の平均腸機能の要約統計をITT集団においてオキシコドンの絶対用量グループごとに得た。
【0114】
タイトレーション/ランイン期間の効果を評価するために、ベースライン訪問前の最近7日間の平均腸機能と比較する、タイトレーション/ランインの最後の訪問の前の最近7日間の平均腸機能に関する差についての対応のあるt検定を行った。この分析は、タイトレーション期集団において行った。加えて、治療期間の間の平均の差についての両側95%CIを得た。
【0115】
ITTおよびPP集団についての図を得た。維持期の最後の訪問の前の最近7日間の平均腸機能について得られた値(平均±95%CI)をオキシコドン/ナロキソン用量比およびナロキソンの絶対用量に対してプロットした。加えて、維持期の最後に得られた結果についての曲面プロットを得た。
【0116】
腸機能が、オキシコドンとナロキソンの比に依存するのか、またはナロキソンの絶対用量に依存するのかを調査するために、ITT集団についてのさらなる分析および図を得た。ナロキソン用量に対する維持期の最後の週の間の総消費オキシコドン用量について、応答曲面分析を行った。導出されたパラメータ推定値を使って、調査した全用量範囲の曲面プロットを表示した。さらに、10の造粒物を用いて腸機能の等高線プロットを行った。
【0117】
ITT集団における各試験訪問時の平均腸機能についての値を、用量比別、ナロキソンの絶対用量別、および同じオキシコドン/ナロキソン用量比をもたらすナロキソンの絶対用量別に図4から6に提示する。プラシーボに対する各用量のナロキソンの差についての検査を図7にまとめる。
【0118】
モデルパラメータのRSREG推定値に基づき調査した全用量範囲の曲面プロットを図8に表示する。10の造粒物での腸機能の等高線プロットを図9に示す。
【0119】
ITT集団の中で、ナロキソンの用量増加に伴って平均腸機能が改善される傾向が見られた。維持期の終わりの最近7日間、1/1、1.5/1および2/1用量比での平均(±SD)腸機能は最低であった(1/1、1.5/1および2/1用量比について、それぞれ、21.9±22.25、21.8±21.35および26.7±23.98)。さらに、平均腸機能は、ナロキソン量の減少につれて、6/1の用量比については47.8(±23.20)の最大値へと悪化した。第4訪問の前の最近7日についての平均腸機能は、1/1の比での20.7(±19.24)から8/1の比での45.7(±26.86)の範囲にわたった(図4参照)。オキシコドン/ナロキソンプラシーボ用量比での平均腸機能についての値は、両方の訪問時、1/1、1.5/1および2/1の用量比の場合より高かった。
【0120】
ナロキソンの絶対用量別の分析は、維持期の最後に、プラシーボ、10mg、20mgおよび40mgについて、それぞれ、45.4(±22.28)、40.3(±23.09)、31.3(±25.82)および26.1(±25.08)の値を示し(プラシーボに対しての20mgおよび40mg ナロキソンについてp<0.05、差についてt検定)、第4訪問時には43.3(±26.41)、42.1(±25.53)、34.2(±30.04)および27.9(±22.68)の値を示した(プラシーボに対しての40mg ナロキソンについてp=0.004、差についてt検定)(図5および7参照)。
【0121】
同じオキシコドン/ナロキソン用量比をもたらすナロキソンの絶対用量別の分析は、両方の用量比群(4/1および2/1)の中で、高いオキシコドン用量を摂取していた患者ほど、第4および5訪問時に高い平均腸機能を有したことを示した(図6参照)。
【0122】
維持期の最後からフォローアップ期の最後へと、平均腸機能は悪化した。平均腸機能の範囲は、維持期の最後ではこれらの用量比群について21.8(±21.35)から48.2(±21.71)であり、フォローアップ期の最後ではこれらの用量比群について33.2(±20.76)から52.1(±26.79)であった。変化は、40mgナロキソンの群において最大であり、平均腸機能は、維持期の最後で26.1(±25.08)およびフォローアップ期の最後で42.4(±23.19)であった。
【0123】
一般に、PP集団を用いる分析は、平均腸機能に関してITT集団で観察された傾向を反映していた。維持期の終わりの最近7日間、平均(±SD)腸機能は、1/1用量比において最低であり(10.7±15.35)、6/1の用量比についての57.3(±17.38)の最大値へと悪化した。すべてのオキシコドン/プラシーボ用量比についての平均腸機能値が、1/1、1.5/1および2/1比より高かった。第4訪問の前の最近7日については、3/1用量比を除き、同様の値が見られた。維持期の最後に、平均腸機能は、プラシーボ、10mg、20mgおよび40mg ナロキソンについて、42.3(±24.03)、39.4(±23.44)、29.8(±29.29)および29.6(±28.34)であった。PP集団における各治療群の患者の数が少ないことで、平均腸機能についての差に関するt検定のためのPP分析において統計学的に有意なp値が得られなかった。
【0124】
維持期最終時の平均腸機能の結果を下に要約する:
【表3】
*モデルの因子としてナロキソン用量およびベースライン腸機能を用いたANCOVAモデルを使用する、ナロキソンプラシーボに対する比較。
【0125】
上で既に述べたように、ITT集団の中で、ナロキソンの用量増加に伴う平均腸機能の改善が見られ、平均値(±SD)は、維持期の最後にプラシーボ、10mg、20mgおよび40mgについて、それぞれ、45.4(±22.3)、40.3(±23.1)、31.3(±25.8)および26.1(±25.1)であった(プラシーボに対しての20mgおよび40mg ナロキソンについて、p<0.05)。ナロキソンプラシーボとの平均腸機能の差についての95%信頼区画は、10mg ナロキソンで(−2.83、16.69)、20mg ナロキソンで(5.46、24.82)および40mg ナロキソンで (9.54、29.11)であった。これらの結果は、ナロキソンの用量増加に伴う腸機能の漸増的改善を示しており、維持期の最後におけるナロキソンプラシーボに対する20mgおよび40mg用量の差は、統計学的に有意であった。
【0126】
統計学的に有意なナロキソン用量の線形作用での、ナロキソンの用量増加に伴う腸機能の改善は、応答曲面二次分析により確認される。表4は、試験した様々なオキシコドン/ナロキソン比についてのナロキソンプラシーボに対する平均腸機能スコアの推定改善を示しており、これらの推定は、この試験計画において実際に表されたオキシコドン/ナロキソンの併用と二次曲面補間が適切であった一部の併用の両方にあてはまる。
【0127】
これらの推定は、平均腸機能の改善が、一般に、各比率の中で一定であり、オキシコドンおよびナロキソンの可変用量とは無関係であることを示している。唯一の可能性のある例外は、60/30mgの併用および40/20mgの併用よりも低い予測効果が示唆される80/40mgの併用であるが、この所見は、標準誤差の程度を想定して解釈されなければならない。
【表4】
【0128】
個々のオキシコドン/ナロキソン併用についての治療効果の推定値に加えて、特定の比率についての総合的治療効果の推定値を得た。これらの推定値は、様々なオキシコドン/ナロキソン併用からの結果を組み合わせることによって計算した。例えば2:1比の推定値は、ナロキソンプラシーボに対して、40/20mg、60/30mgおよび80/40mgのオキシコドン/ナロキソンの併用の予測結果を平均することによって構成した。ナロキソンプラシーボ群に対する様々なオキシコドン/ナロキソン比についての平均腸機能に関する推定平均差(SE)を下に示す。
【表5】
【0129】
これらの推定値は、腸機能の改善がオキシコドン/ナロキソン比の減少につれて増大することを示しており、2:1での推定改善は、4:1でより約50%高く(p<0.05)、2:1比から1.5:1比までが、最小の改善であった。
【0130】
6.試験の結論
この試験は、放出制御オキシコドンへの放出制御ナロキソンの追加により、より高い2つのナロキソン用量(20mgおよび40mg)で、平均腸機能の統計学的に有意な改善が生じることを実証した。この改善は、オキシコドン/ナロキソン比の低下に伴って増大し、2:1比でプラトーに達するように見え、2:1比での総合的効果は4:1でのものより約50%大きい。このデータは、腸機能の改善が、一般に比の関数であること、すなわち、この改善が、一般に各比の中では一定であり、オキシコドンおよびナロキソンの可変用量とは無関係であることを示している。唯一の例外は、80/40の併用であり、この場合、60/30mgおよび40/20mgの併用より低い予想効果が示唆されるが、この観察は、標準誤差の程度を想定して解釈されなければならない。
【実施例2】
【0131】
BFIの妥当性検査
1.目的
この試験の目的は、(i)腸機能指数(BFI)の心理測定学的特性を評価すること、および(ii)BFIの応答性および臨床的有意性を評価することであった。
【0132】
2.試験方法
実施例1の試験において収集したデータに関する二次分析として、心理測定分析を行った。上で略述したように、患者は、この試験中の各訪問時にBFI形態について回答した(評定のスケジュールについては、図14参照)。データは、精製 SAS−ready データセットとして得た。すべての分析は、SAS version 8.2を使用して完了した。
【0133】
2.1 患者が報告した結果
実施例1において説明したように、この臨床試験では、腸機能指数(BFI)と呼ばれる、0(良好)から100(不良)の数値アナログスケール(NAS)で評価される患者の視点からの便秘の評定に、3つの質問を用いた:
1.患者の評定に従って、最近7日間の排便の容易さ(NAS)(0=容易/困難さなし、100=重度に困難)
2.患者の評定に従って、最近7日間の不完全な腸内容物排出感(NAS)(0=まったくなし、100=非常に強い)
3.最近7日間の便秘に関する患者の個人的判断(NAS)(0=まったくなし;100=非常に強い)
【0134】
これら3つの便秘の質問を平均して、要約スコア(総スコア範囲:0〜100)を得た。加えて、各質問を独立して用いた(項目スコア範囲:0〜100)。3つすべての項目の平均を一次エンドポイントとして用い、個々の項目を二次エンドポイントとして用いた。
【0135】
2.1.2 包括的忍容性
患者および治験担当医師の忍容性の包括的評定を第5訪問時(維持期第4週の最後)に尋ねた。7点リッカート型スケール(非常に良好から非常に不良)を用いて回答された。治験担当医師と患者の忍容性の包括的評定の間の相関を調査した。相関係数は0.87であった。結果として、この妥当性分析では患者の包括的評定に基づく分析だけを提示する。
【0136】
2.1.3 収集した追加データ
ベースライン訪問(第2訪問)で始まる日記の遂行を患者に頼んだ。日記からの関連データを、これらの妥当性分析において用いた:
・排便回数:1日当たりの腸内容物排出数。
・便の硬さ:4点回答スケール(硬い、固形、半固形、下痢)で評価するメジアン評点。
・緩下剤摂取の日数。
・中止の理由:下痢のため中止した被験者をサブセット分析に選択した。
【0137】
2.2 分析
これらの分析のための評価可能集団は、治験薬を摂取し、3つのBFI便秘質問のすべてを完了した、すべての被無作為化被験者であった。第2訪問からの社会人口学的データを用いて、ベースラインでのサンプル特徴を熟考した。第3訪問(タイトレーション/ランインの最後)データは、治療前ベースラインのための分析に用い、第5訪問(二重盲検治療維持期の最後)データは、エンドポイントデータとして用いた。安定性が維持期の最後からフォローアップ期の最後まで最大であると仮定して、第5訪問から第6訪問までを検査−再検査間隔として用いた。施設の影響は評価せず、多重比較のための調整もなかった。
【0138】
2.3 分析計画
(第3訪問の前の週の日記データの有効性によって選択した)第3訪問データを基に、以下の臨床的変数:毎日の疼痛強度、排便回数、便の硬さおよび緩下剤摂取日数についての平均およびメジアンを得た(図15)。中止の理由として「下痢」を示した被験者の数を図16に提示する。
【0139】
項目パフォーマンスの評価を支援するために、第3訪問および第5訪問データ:平均、標準偏差(SD)、範囲、メジアン、床値での%、天井値での%および欠測%を用いた各便秘項目についての記述統計を提供する(図17)。項目パフォーマンスが経時的に変化するかどうかを判定する記述手段として、第3訪問時および第5訪問(エンドポイント)時のこれらの値の各々の間での比較を行った。
【0140】
2.3.1 信頼性
内的整合信頼性は、第2訪問データを用いてクロンバックのα(Cronbach's alpha)に基づき評価した(Hays et al. 1998; Nunnally & Bernstein 1994)(図18)。0.70より上の値は、一般に、良好な内的信頼性の指標とみなす。削除された項目を有するαも、各項目について検査した。項目の排除に基づく総スコア(3項目平均)αの10%より大きい値の上昇は、潜在的内的不整合項目の指標とみなす。項目間の相関も調査して、項目の内的整合性を評価し、0.40またはそれ以下の相関は、低い項目間相関とみなした(Cohen 1988)。
【0141】
再検査間隔として第5訪問から第6訪問を用いて、ナロキソンプラシーボ群に無作為に割り当てた患者のサブグループにおいて、検査−再検査信頼性(test-retest reliability)を調査した。級内相関係数(ICC)、ピアソンの相関、および(変化の統計学的有意性を判定するために、t検定による)スコアの変化を第5訪問と第6訪問の間で計算して、検査−再検査信頼性を評価した(図19)。これらの分析は、第5訪問から第6訪問にかけて便通回数の変化がなかったナロキソンプラシーボ被験者のサブグループに対しても行った。ICCは、相関の強度を定量するが、傾きおよび切片に関する情報を組み込んで、系統的変化を検出するための積率相関の限定に対処する(Deyo et al. 1991)。尺度のより大きな安定性、より高い相関係数およびICCを期待することができる。
【0142】
2.3.2 妥当性
機器の妥当性は、ある機器が、測定しようとする構成概念を測定する程度を指す(Hays et al. 1998; Nunnally & Bernstein 1994)。併存的妥当性は、その機器と他の同様の評価との関係を指す。併存的妥当性を調査するために、3つの便秘に関する質問と総スコアと選択された臨床的特徴(排便回数、便の硬さ、緩下剤摂取日数、および忍容性の包括的評定)の間の関係を、スピアマンの順位相関(Spearman's rank correlation)を用いて分析した(図20)。第5訪問(エンドポイント)データを用いて、エンドポイントで最良に測定された結果(例えば、緩下剤摂取日数)を基に評価することができた。3つの便秘項目の総スコアおよび項目別スコアが、同様の概念を測定する項目またはスケールと実質的に相関している(>0.40)とき、併存的妥当性は、支持される(Cohen 1988)。逆に言えば、異なる概念を測定する項目またはスケールは、より小さな相関(<<0.40)を有するはずである。以下は、併存的妥当性の仮説である:
1.帰無仮説:BFI項目と次の変数:緩下剤摂取(便秘項目データの収集の7日後からのデータ)および忍容性の患者評点、の間に正相関がない。対立仮説:BFI項目と前述の変数の間に統計学的に有意な正相関が存在する(図20)。
2.帰無仮説:BFI項目と排便回数または便の硬さ(便秘項目データの収集の7日前からのデータ)の間に逆相関がない。対立仮説:BFIと排便回数の間の統計学的に有意な負相関(図20)。
3.帰無仮説:その試験において第5訪問に残っている患者と下痢の副作用のために中止した患者との間にBFIスコアの差がない。対立仮説:下痢のために中止する患者は、その試験に残っている患者より低いBIFスコアを有する(図21)。
4.帰無仮説:維持治療期を好み、そしてタイトレーション療法期を好む患者より良好な便秘項目に関するスコアを有する患者との間にはBFIスコアの差がない。対立仮説:タイトレーション療法期を好む患者と比較して、維持療法期を好む患者のほうがBFIスコアが高い(図21)。
【0143】
弁別的妥当性は、機器からのスコアにより、重要な指標、通常は臨床的指標、が本質的に異なる被験者の群を区別することができる程度である。弁別的妥当性を評価するために、分散分析(ANOVA)モデルを用いて、第5訪問(エンドポイント)データに基づく重症度レベルにより便秘項目および総スコアを比較した(図22)。日記データ(試験第5訪問の7日前からの平均)を用いて、便の硬さに基づく3つの重症度レベル(軽度、中等度、重度)に患者を層別化した:軽度=ゆるい、中等度=軟らかいまたは正常、および重度=硬い。帰無仮説は、軽度と分類される患者と重度と分類される患者の差がない。対立仮説は、軽度と分類される患者のBFIスコアが、重度と分類される患者より統計学的に有意に低いという仮説である。
【0144】
2.3.3 応答性および臨床的有意性
効果サイズを用いて、経時的な真の変化に対する応答性を調査した。測定の標準誤差(SEM)を1つの基準として用いて、個々の患者の視点からの特定のBFI得点の差の臨床的有意性を定量し(Wyrwich et al. 1999)、1つの標準偏差の1/2についての調査(Norman et al. 2003)を臨床的有意性を決定するもう1つの手段として用いた。
【0145】
効果サイズは、スコアの変化の定量尺度であり、ならびに健康状態測定のための項目パフォーマンスまたは機器の性能に関するより包括的な見解を提供するための群間比較定量の標準化手段および統計的検定の補足手段となる(Kazis et al. 1989)。効果サイズ1は、治療前(第3訪問)におけるすべての被験者の標準偏差で割った治療前から治療後(第3訪問から第5訪問)の平均差と定義する。Guyattの応答統計量とも呼ばれる効果サイズの第二の推定値、効果サイズ2は、同じ分子を用いるが、安定した患者のみの間のスコア変化の標準偏差に分母を限定する、上記の効果サイズの変形である(平均スコア変化/安定した患者間のスコア変化の標準偏差)(Kazis et al. 1989; Guyatt et al. 1987)。安定な被験者は、第3訪問から第5訪問の便秘項目の判断に関する減少が25%またはそれ以下であった被験者と定義する。効果サイズを治療群別に計算する。これは、重要度の低いスコア変化の大きさと重要度の高いスコア変化の大きさをベンチマーキングする1つの手段である(Kazis et al. 1989)。
【0146】
3.結果
3.1 サンプル
図15は、第3訪問の前の週に基づく週平均として計算された、ベースラインでのサンプルの臨床的特徴に関する情報を含む。毎日の疼痛強度の平均は、38であり、0から81の範囲を有した。1日あたりの平均排便回数は、1であり、0.1から4の範囲を有した。被験者は、週単位の硬さの平均は、1から4のスケールで2.4であったと報告した。被験者は、第3訪問の前の週に平均で1週間に6回、緩下剤を用いた。
【0147】
3.2 項目パフォーマンス
項目パフォーマンスデータを図17に提示する。第3訪問時にBFIデータを入手することができた患者は、202人だった。床値または天井値での応答率は低かった。高い床での率(最良応答)率は、経時的変化を検出する感度を制限する。高い天井での率(最悪応答)は、便秘重症度の測定不良を示し得る。いずれもこのサンプルでは有効でなかった。これらの項目のうち、項目2は、最高の床効果率を示した。これは、このサンプルの中では、不完全な排出の症状が、排便の容易さまたは便秘の総合評点より低い重症度であることを示している。
【0148】
第5訪問時にBFIデータを得ることができた患者は、169人だった。腸の運動性を改善するための治療については、予想どおり、より多くの患者が、治療前より治療後に、このスケールで、便秘の症状を最高可能レベルと評価した。相応じて、平均およびメジアンBIF値は、治療後に予想されるとおり、治療前より治療後のほうが低かった。床での値が報告されたサンプルは27%より少なく、これは、BFI項目についての適切なスコア分布を示している。患者の回答は、0から100の可能値の全範囲にわたった。欠測データがないことは、これらの項目の遂行が、患者にとって難しくなく、紛らわしくなかったことを示唆している。
【0149】
項目間の相関を図18に提示する。項目1および3は、最高の相関、0.86を有した。項目2は、項目1および3と、それぞれ、0.59および0.60相関した。これらの相関の結果は、項目1および3から得られる情報のほうが、項目1または3に関連して項目2から得られる情報より高度に関連していることを示唆している。
【0150】
項目と総スコアの相関は高く、これは、非常に少ない項目での測定で予想される結果である。項目と総スコアの相関の結果は、項目間の相関の結果と一致しており、これは、他の項目と総BFIスコアの相関よりわずかに低い、項目2と総BFIスコアの相関を示している。すべての相関係数は、0.70の許容閾値より十分に上であり、これは、予想通りの強い関連を示している。
【0151】
3.3 信頼性
3.3.1 内的整合信頼性
図18は、すべての項目および総スコアについてのクロンバックのαを提示するものである。内的整合性は、非常に良好であり、αは、0.70を越えている。項目2を削除は、αをわずかに増加させる。これは、項目2と他のBFI項目との関係が、項目1および3と他のBFI項目との関係より小さいことを示唆している。これらの結果は、項目1と項目3の相関と比較して小さい、項目2と他の項目の間の相関の大きさと一致する。項目1の削除は、項目3の削除と同様にαを減少させ、これは、BFIの凝集性に対する項目1および3の値の支持的証拠である。単一の構成概念を測定するときには項目の高い内的整合性を有することが望まれるが、極めて高度に相関している項目は、冗長情報を伝えていることがある。BFIのような極めて短い3項目インベントリーでは、項目の冗長の懸念はない。薬物療法は、便秘に対して好適な影響を有した。それ故、維持期を好む患者のスコアは、他の患者より低い。
【0152】
試験を完了した被験者と下痢のために中止した被験者との比較は、たった1人の中止被検者についてのデータしか得ることができなかったため含めなかった。
【0153】
3.4.2 弁別的妥当性
第5訪問時の便の硬さの質問に対する回答を基に、患者を3つの群に分けた。硬い便を報告した者は、重度と分類し、正常または軟らかいと報告した者は、中等度と分類し、ゆるい便と報告した物は、軽度と分類した(図22)。BFIスコアは、中等度と分類された患者と重度と分類された患者とで異なった。BFIスコアは、軽度と分類された患者と重度と分類された患者とでも異なった。軽度と中等度との差は、統計学的に有意ではなかった。これらの結果は、BFIの弁別的妥当性を支持しており、これは、BFIスコアの大きさが、重症度の判定基準としての便の硬さに基づく便秘の重症度レベルに対応することを示している。
【0154】
3.5 応答性
3.5.1 効果サイズ
効果サイズは、治療前から治療後(第3訪問から第5訪問)の平均差に基づいて計算した。効果サイズ1は、分母として治療前(第3訪問)の時点ですべての被験者の標準偏差を用い、効果サイズ2は、分母として安定した患者間のみでのスコア変化の標準偏差を用いた(Kazis et al. 1989; Guyatt et al. 1987)。安定した患者は、第3訪問から第5訪問の便秘項目の判断に関する減少が25%またはそれ以下であったものと定義する。結果を図23に示す。0.2は小さな変化を表し、0.5は中等度の変化を表し、0.8は大きな変化を表す、コーヘン(Cohen)(1988)の効果のサイズの基準を用いたところ、これらの効果サイズは、予想された大きさのものであった。さらに、これらの効果サイズは、ナロキソン用量により、予想した方向で増大し、最高用量の患者の効果サイズが最も大きかった。効果サイズは、項目2のものが、他の2項目と比較して最も低く、これは、この項目により測定した場合の経時的変化に対する限られた応答性を示唆している。2つの異なる方法を用いて計算した効果サイズは、実質的に同様であり、これは、このサンプルにおいて観察された効果サイズの大きさに有利な支持的証拠である。
【0155】
3.5.2 測定の標準誤差(SEM)
BFIに関する臨床的に有意なスコア変化の範囲を確立する1つの手段として、SEMを計算した(例えば、Norman et al. 2003; Wyrwich et al. 1999)。SEM値を図23に示す。第3訪問時のすべての被験者についてのSEM値が9.01であり、これは、個々の患者の視点からの9点またはそれ以上のスコアの変化が臨床的に有意であり得ることを示唆している。
【0156】
3.5.3 1/2 SD
1/2 SDに近いSEM値は、臨床的重要性の収束的証拠となる。BFI総スコアについての第3訪問SDは、22.6であり(図17参照)、1/2 SDは、11.3である。1/2 SDが臨床的有意性の下限となり得るという示唆からして、これは、11点より低いBFI総スコア差は、臨床的有意性の閾値より下であり得ることを示唆している。SEMによって示唆される9点と1/2 SDにより示唆される11点の間のスコア差についての臨床的有意性を判定するには、さらなる評価が必要である。
【0157】
4.考察
このBFIは、便秘の患者ベースの評点である。ここで報告する分析は、このBFIが、基本的心理測定パフォーマンスの基準を満たすことを示している。項目パフォーマンスデータは、これらの項目が、施行に適しており、このサンプルでは実質的な床および天井効果を生じさせなかったことを示唆している。従って、対象となる状態を測定する、およびその状態の真の変化を検出するこれらの項目の能力は、回答スケールによる制限を受けない。
【0158】
これらのBFIの項目は、予想通り、互いに関係がある。項目1および3は、相関に基づく実質的なオーバーラップを示した。概念的には、この内容は、冗長に関するあらゆる懸念を明瞭に軽減している。項目2の内容は、項目1と3が互いにオーバーラップしているほど多くは項目1および3とオーバーラップしていない。不完全な腸内容物排出は、症状経験に関する排便の容易さとは性質が異なる可能性が高い。便秘に関する判断とのオーバーラップが少ないことは、その判断が、不完全な排出感よりも排便の容易さにより大きく基づくことを示唆している。
【0159】
これらのBIF項目は、内的に整合しており、これは、それらすべてにより同じまたは実質的に関係のある構成概念が測定されることを示唆している。その構成概念と項目2の関係は、項目1および3のものとはわずかに異なり得るが、項目2のパフォーマンスは、BFIへのその組み入れを支持している。項目2の内的整合性の結果は、項目間の相関で判明した結果を支持しており、ならびに排便の容易さが、不完全な排出感に寄与するより大きく便秘に関する総合的判断に寄与することを示唆している。すべての項目の寄与が許容閾値より上であり、しかし、すべての項目が総BFIに有意に寄与している。
【0160】
このBIFは、経時的再現性を示した。相関の大きさは、中等度の範囲内であった。再現性データの解釈は、再検査間隔の間に被験者において発生する何らかの真の変化の可能性を考慮に入れなければならない。具体的には、他の項目と比較して低い項目1の相関係数は、排便の容易さに関する患者の経験が、調査した時点すべてにわたって異なったこと、症状の臨床経過に沿った結論を示唆している。
【0161】
排便回数および便の硬さに関するBFIスコアと関連患者報告の間の関係は、予想した方向性であり、すべての相関係数が、統計学的有意性の基準を満たした。緩下剤を用いた日数は、緩下剤使用後に経験すると予想される患者の症状と一致するBFI項目(例えば、その後の週における、より多い緩下剤使用日数;便秘に伴うより大きな障害)に直接関係していた。
【0162】
忍容性評定の包括的評価は、BFIスコアとの低い関係から低−中等度の関係を示した。便秘症状は、忍容性プロフィールの一部分にすぎないが、これらの結果は、それらがそのプロフィールの実質的な部分であることを強調している。関連して、進行中の維持療法への好意を表した患者は、BFIスコアにより判断すると、タイトレーション期への好意を表した患者より良好な便秘解消を示した。維持期への好意を表す患者は、タイトレーション期中に経験した疼痛制御/副作用プロフィールと比較して、許容できる副作用プロフィールで疼痛制御を達成した患者であるはずである。これらの患者は、他の患者より少ない便秘症状または低い重症度の症状を有すると予想され、そのBFIデータは、この説明を支持している。これにより、便秘の尺度としてのBFIの妥当性が信用に値するものとなった。
【0163】
患者を、便の硬さに基づいて便秘の重症度別グループに分けると、BFIスコアは、再び、予想されたパターンを示し、最も重度の便秘を有する患者は、他の患者より高いBFIスコアを有した。硬さは、排便の容易さ、不完全な排出および便秘に関する判断の代用としては限界があったが、それがBFIの弁別的妥当性を実証するために適当な代用であるという予想には臨床的な意味がある。
【0164】
BFIは、予想された便秘の経時的変化への応答性を示し、調査した効果サイズは、用量応答的に低下した。すなわち、ナロキソン用量が高いほど、患者についての効果サイズが大きかった。ナロキソンプラシーボ群の患者についての効果サイズは、予想どおり、ほぼゼロであった。便秘状態の真の変化が、プラシーボ患者には期待できないからである。
【0165】
SEMは、すべての群の患者についての測定の特徴である。すべての患者についてのSEMは、9.01であった。第3訪問データに基づくあるSDの1/2は、11.3であった。合わせて、これらの結果は、9点より下のスコア変化が、臨床的に有意であるか能性が低いことを示唆している。11.0点およびそれより上のスコアの変化は、個々の患者の視点からの便秘状態の臨床定期に有意な変化に関係し得る。治療群と対照群の間の平均差が、臨床的に有意であると判明した最小の変化より相当小さい場合でさえ、治療が患者に重要な影響を及ぼし得ることには留意しなければならない(例えば、Guyatt et al. 1988)。ここで報告する値は、スコアの解釈の助けるための推定値である。しかし、これら2つの証拠に基づき、11点またはそれより大きいスコア変化は、臨床的に有意である可能性が高い。9点と11点とのスコア差の解釈には、さらなる評価が必要である。このBFIによって、便秘状態の有意な変化を検出することができる。
【0166】
5.総合的結論
BFIは、便秘に関する簡単な患者評点である。ここで報告するデータは、その心理測定学的特性(BFIに基づくあらゆるデータを解釈するための必要情報)を支持している。この試験からのデータに基づき、特定のBFIスコア変化は、便秘に関する臨床的に有意な変化についての閾値を確立するための基礎としてを用いることができる。
【0167】
6.参考文献
【化1】
【0168】
このように本発明の好ましい実施形態を詳細に記載したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多数の明らかな変形が可能であるので、上のパラグラフによって定義した本発明が、上の説明に記載した特定の詳細に限定されないことは、理解されるはずである。
【0169】
本明細書の中で言及したまたは本明細書において参照したあらゆる書類の中で言及されているあらゆる製品についてのあらゆる製造業者の説示、記載、製品仕様書および製品概要説明書を含む本明細書において引用または参照したすべての書類(「本明細書引用書類」)は、本明細書に参考として組み込まれる。本出願におけるあらゆる書類の引用および確認は、そうした文献を本発明に対する先行技術として利用することができることの承認ではない。例として与えた詳細な説明は、記載した特定の実施形態だけに本発明を限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】腸機能を評定するため方法での使用に適する本発明のアナログスケールの1つの実施形態である、腸機能指数(BFI3)を評定するための紙票を示す図である。
【図2】腸機能を評定するための方法での使用に適する本発明のアナログスケールのさらなる実施形態である、円形腸機能指数(BFI3)メーターを示す図である。
【図3】本実施形態の実施例の臨床試験についての試験計画の概略を示す図である。
【図4】本実施形態の実施例に従って、ITT集団における用量比別、ナロキソンの絶対用量別、および同じオキシコドン/ナロキソン用量比をもたらすナロキソンの絶対用量別に各試験訪問時における平均腸機能の値をまとめた表である。
【図5】本実施形態の実施例に従って、ITT集団における用量比別、ナロキソンの絶対用量別、および同じオキシコドン/ナロキソン用量比をもたらすナロキソンの絶対用量別に各試験訪問時における平均腸機能の値をまとめた表である。
【図6】本実施形態の実施例に従って、ITT集団における用量比別、ナロキソンの絶対用量別、および同じオキシコドン/ナロキソン用量比をもたらすナロキソンの絶対用量別に各試験訪問時における平均腸機能の値をまとめた表である。
【図7】本実施形態の実施例に従ってプラシーボに対する各用量のナロキソンについての差に関する検査をまとめた表である。
【図8】本実施形態の実施例のモデルパラメータのRSREG推定値を基に調査した全用量範囲の曲面プロットを示す図である。
【図9】本実施形態の実施例の10の造粒物での腸機能の等高線プロットを示す図である。
【図10】本発明の具体例としての実施形態に従って患者における腸機能を評定するための装置を示す略図である。
【図11】本発明の方法の具体例としての実施形態を実施するための本発明のデータ処理装置の具体例としての実施形態を示す図である。
【図12】試験集団の人口統計明細を示す図である。
【図13】試験集団の人口統計明細を示す図である。
【図14】BFIの評定スケジュールを示す図である。
【図15】試験訪問中の臨床的特徴および治験中止の理由を示す図である。
【図16】試験訪問中の臨床的特徴および治験中止の理由を示す図である。
【図17】第3および第5訪問時の便秘項目分析を示す図である。
【図18】第2訪問時の便秘項目についての項目間の相関および内的整合信頼性を示す図である。
【図19】第5および第6訪問時の便秘項目の再現性を説明する図である。
【図20】便秘項目間の相関の共存的妥当性を示す図である。
【図21】便秘項目間の相関の共存的妥当性を示す図である。
【図22】便秘の重症度についての弁別的妥当性を示す図である。
【図23】便秘項目についての応答性を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供すること;
その患者に経験したパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させること;ならびに
その数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定すること
を含む、ヒト集団の患者または別の構成員における腸機能の評定方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのパラメータが、排便の困難さ、不完全な腸内容物排出感および便秘の判断を含むオピオイドによる腸機能障害の症状から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者に少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのパラメータのための数値または視覚的アナログスケールを提供する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各パラメータについての数値アナログスケール値を平均することにより平均腸機能を決定することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、麻薬性鎮痛薬での治療を受けている患者である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記患者が、オキシコドンでの治療を受けている患者である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、ナロキソンと併用でオキシコドンでの治療を受けている患者である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記数値アナログスケールが、0から10または0から100の範囲にわたる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記患者に提供される数値アナログスケールが、観察すべきパラメータについての経験なしまたは非常に強い経験を示すものが両末端にある以外、標識もしるしもない連続線である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、前記連続線にダッシュを書き込むことによって経験したパラメータの量および/または強度を示す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ダッシュから経験なしを示す末端までまたは非常に強い経験を示す末端までの距離を測定し、その距離を両末端間の距離で割って、腸機能についてのスコアである数値を得る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
腸機能指数を評定するために紙票を用い、その紙票が、腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータ、例えば排便の容易さまたは困難さ、不完全な腸内容物排出感および便秘に関する質問を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
腸機能指数を評定するために円形腸機能指数メーターを用いる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記円形BFIメーターが、腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータについての患者の評定に関する質問を有する紙票を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記円形BFIメーターが、内円上の数値スケールおよび外円上の数値スケールを含み、前記数値スケールが、一方のスケール上の値が他方のスケール上の対応する値の倍数になるように互いに相関しており、この場合の因子が、観察されるパラメータの数に相当する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記円形BFIメーターが、その円の中央に取り付けられており、その円を回って動かすことができる針を含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記数値アナログスケールが、2つの面を有する携帯パネル様の装置であり、そのパネルの一方の面が、腸機能と関係があるパラメータのための患者用スケール(これは、そのパラメータの経験なしからそのパラメータの非常に強い経験まで及ぶ、そのパラメータの範囲を描写する)を有し、ならびにそのパネルのもう一方の面が、そのパラメータのための医療提供者用スケール(これは、0から好ましくは5、10、50または100より選択される整数までの番号がつけられた、別個の間隔に分けられている)を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
患者の腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを提供するための表示ユニット;
その数値アナログスケールを用いて患者により示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を受信するようになっている受信ユニット;ならびに
腸機能を評定するために、その数値アナログスケールを用いて示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を提供するようになっているインターフェースユニット
を具備する、患者における腸機能の評定装置。
【請求項19】
電子装置として実現される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記インターフェースユニットが、腸機能を評定するために、数値アナログスケールを用いて示された少なくとも1つのパラメータの量および強度を制御エンティティーに送信するようになっている、請求項18または19に記載の装置。
【請求項21】
前記インターフェースユニットが、腸機能を評定するために、数値アナログスケールを用いて示された少なくとも1つのパラメータの量および強度を有線通信路または無線通信路により制御エンティティーに送信するようになっている、請求項18から20に記載の装置。
【請求項22】
患者における腸機能を評定するコンピュータプログラムであって、処理装置により実行がされると、以下の段階:
腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供する方法段階;
その患者に経験したパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させる方法段階;ならびに
その数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定する方法段階
を制御または実行するようになっているコンピュータプログラムを記憶している、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項23】
処理装置により実行がされると、以下の段階:
腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供する方法段階;
その患者に経験したパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させる方法段階;ならびに
その数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定する方法段階
を制御または実行するようになっている、患者における腸機能を評定するプログラム要素。
【請求項24】
請求項18から21に記載の装置を使用して腸機能を評定する、請求項1から17のうちの一項に記載の患者における腸機能の評定方法。
【請求項25】
請求項1から17または24に記載の方法に従って患者における腸機能を評定する段階;
その患者の腸機能に依存して便秘を治療する段階
を含む、患者における便秘の治療方法。
【請求項26】
請求項18から21に記載の装置を使用して患者における腸機能を評定する段階;
その患者の評定された腸機能に依存して便秘を治療する段階
を含む、便秘の治療方法。
【請求項27】
患者の腸機能に依存して便秘を治療することが、その患者への少なくとも1つの緩下剤などの投与を開始、増加、減少または中止することを含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項1】
腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供すること;
その患者に経験したパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させること;ならびに
その数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定すること
を含む、ヒト集団の患者または別の構成員における腸機能の評定方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのパラメータが、排便の困難さ、不完全な腸内容物排出感および便秘の判断を含むオピオイドによる腸機能障害の症状から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者に少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのパラメータのための数値または視覚的アナログスケールを提供する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各パラメータについての数値アナログスケール値を平均することにより平均腸機能を決定することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、麻薬性鎮痛薬での治療を受けている患者である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記患者が、オキシコドンでの治療を受けている患者である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、ナロキソンと併用でオキシコドンでの治療を受けている患者である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記数値アナログスケールが、0から10または0から100の範囲にわたる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記患者に提供される数値アナログスケールが、観察すべきパラメータについての経験なしまたは非常に強い経験を示すものが両末端にある以外、標識もしるしもない連続線である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、前記連続線にダッシュを書き込むことによって経験したパラメータの量および/または強度を示す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ダッシュから経験なしを示す末端までまたは非常に強い経験を示す末端までの距離を測定し、その距離を両末端間の距離で割って、腸機能についてのスコアである数値を得る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
腸機能指数を評定するために紙票を用い、その紙票が、腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータ、例えば排便の容易さまたは困難さ、不完全な腸内容物排出感および便秘に関する質問を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
腸機能指数を評定するために円形腸機能指数メーターを用いる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記円形BFIメーターが、腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータについての患者の評定に関する質問を有する紙票を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記円形BFIメーターが、内円上の数値スケールおよび外円上の数値スケールを含み、前記数値スケールが、一方のスケール上の値が他方のスケール上の対応する値の倍数になるように互いに相関しており、この場合の因子が、観察されるパラメータの数に相当する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記円形BFIメーターが、その円の中央に取り付けられており、その円を回って動かすことができる針を含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記数値アナログスケールが、2つの面を有する携帯パネル様の装置であり、そのパネルの一方の面が、腸機能と関係があるパラメータのための患者用スケール(これは、そのパラメータの経験なしからそのパラメータの非常に強い経験まで及ぶ、そのパラメータの範囲を描写する)を有し、ならびにそのパネルのもう一方の面が、そのパラメータのための医療提供者用スケール(これは、0から好ましくは5、10、50または100より選択される整数までの番号がつけられた、別個の間隔に分けられている)を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
患者の腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを提供するための表示ユニット;
その数値アナログスケールを用いて患者により示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を受信するようになっている受信ユニット;ならびに
腸機能を評定するために、その数値アナログスケールを用いて示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を提供するようになっているインターフェースユニット
を具備する、患者における腸機能の評定装置。
【請求項19】
電子装置として実現される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記インターフェースユニットが、腸機能を評定するために、数値アナログスケールを用いて示された少なくとも1つのパラメータの量および強度を制御エンティティーに送信するようになっている、請求項18または19に記載の装置。
【請求項21】
前記インターフェースユニットが、腸機能を評定するために、数値アナログスケールを用いて示された少なくとも1つのパラメータの量および強度を有線通信路または無線通信路により制御エンティティーに送信するようになっている、請求項18から20に記載の装置。
【請求項22】
患者における腸機能を評定するコンピュータプログラムであって、処理装置により実行がされると、以下の段階:
腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供する方法段階;
その患者に経験したパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させる方法段階;ならびに
その数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定する方法段階
を制御または実行するようになっているコンピュータプログラムを記憶している、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項23】
処理装置により実行がされると、以下の段階:
腸機能と関係がある少なくとも1つのパラメータのための数値アナログスケールを患者に提供する方法段階;
その患者に経験したパラメータの量および/または強度をその数値アナログスケール上に示させる方法段階;ならびに
その数値アナログスケール上に示された少なくとも1つのパラメータの量および/または強度を観察して、腸機能を評定する方法段階
を制御または実行するようになっている、患者における腸機能を評定するプログラム要素。
【請求項24】
請求項18から21に記載の装置を使用して腸機能を評定する、請求項1から17のうちの一項に記載の患者における腸機能の評定方法。
【請求項25】
請求項1から17または24に記載の方法に従って患者における腸機能を評定する段階;
その患者の腸機能に依存して便秘を治療する段階
を含む、患者における便秘の治療方法。
【請求項26】
請求項18から21に記載の装置を使用して患者における腸機能を評定する段階;
その患者の評定された腸機能に依存して便秘を治療する段階
を含む、便秘の治療方法。
【請求項27】
患者の腸機能に依存して便秘を治療することが、その患者への少なくとも1つの緩下剤などの投与を開始、増加、減少または中止することを含む、請求項25または26に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2008−531649(P2008−531649A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557490(P2007−557490)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060336
【国際公開番号】WO2006/089970
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060336
【国際公開番号】WO2006/089970
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】
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