説明

腸疾患における新規な治療上の標的

本発明は、腸疾患(BD)の検出、診断、および治療で用いる新規な配列に関する。本発明は、その発現がBDに関連するBD関連ポリヌクレオチド配列を提供する。BDの検出のための診断用組成物および診断方法を本明細書中に提供する。本発明は、BDポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を提供する。本発明はまた、BDの診断ツールおよび治療組成物ならびにスクリーニング、予防、および治療方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2008年10月18日に出願された、米国仮出願第60/999,234号の利益を主張する。上記出願の全体の内容は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
キシファクサン(Xifaxan)(登録商標)(リファキシミン(rifaximin)、RIFax)は、旅行者下痢の治療薬として2004年にFDAに承認された(非特許文献1)。RIFaxは、細菌RNA合成を阻害するように作用する一般的抗生物質であることが示された。慢性胃腸障害におけるRIFaxの薬効に寄与する機構は十分に理解されていない。
【0003】
したがって、腸疾患(BD)、特に過敏性腸症候群(IBS)に関与するポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列を得ることが当該分野で必要である。診断および/または治療用の化合物および組成物(抗体を含む)の標的としての種々のBDに関連する抗原(BD関連ポリペプチド)を得ることも当該分野で必要である。これらの抗原はまた、創薬(例えば、小分子)ならびに細胞の調節、成長、および分化のさらなる特徴づけにも有用であろう。薬物または薬学的標的として有用であり得るか、機能障害または疾患の予防、改善、または矯正で役割を果たし得る遺伝子および関連タンパク質を同定および特徴づける必要もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Laustsen GおよびWimmett L、2004 drug approval highlights: FDA update. Nurse Pract(2005)30:14−29;quiz 29−31
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
1つの態様では、PXR受容体を1つまたは複数の候補化合物と接触させる工程を含む、プレグナンX受容体(PXR)タンパク質またはそのフラグメントを調整する化合物またはその塩をスクリーニングする方法を本明細書中に示す。
【0006】
1つの実施形態では、候補化合物はリファマイシンアナログを含む。
【0007】
関連する実施形態では、リファマイシンアナログはリファキシミンを含む。
【0008】
1つの実施形態では、調整は、PXRタンパク質またはそのフラグメントのリファマイシンアナログへの結合によって誘導されるシグナル伝達の調整を含む。
【0009】
1つの実施形態では、PXR受容体は、膜に結合し、トランスジェニックマウス中に存在し、アッセイプレート中に存在し、細胞中に存在し、そして/または人工膜中に存在する。
【0010】
1つの実施形態では、PXRタンパク質は、配列アクセッション番号O75469、Q8SQ01、Q9R1A7、O54915、NP_148934、NP_003880、NP_071285、またはそのフラグメントもしくは改変体によって示されるアミノ酸配列あるいは配列アクセッション番号NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133、またはそのフラグメントもしくは改変体によって示される核酸を含む。
【0011】
別の実施形態では、CYP3A11、GSTA1、MRP2、およびOATP2は上方制御された。
【0012】
1つの実施形態では、本方法は、1つまたは複数のリファキシミン、リファマイシンアナログ、または候補化合物での前処理をさらに含むことができる。
【0013】
1つの実施形態では、候補化合物での前処理は、CYP3A基質ミダゾラムの薬物動態に影響を及ぼさない。
【0014】
別の実施形態では、候補化合物での前処理により、1’−ヒドロキシミダゾラムのCmaxが増加し、Tmaxが減少する。
【0015】
1つの実施形態では、CYP3A11は、候補化合物での処理後、コントロールと比較して約1倍〜約4倍増加する。
【0016】
別の実施形態では、候補化合物での処理後にGSTA1 mRNAが上方制御される。
【0017】
別の実施形態では、上方制御は約65%〜約200%の範囲である。
【0018】
1つの実施形態では、候補化合物処置後に腸内MRP2 mRNAが上方制御される。
【0019】
1つの態様では、PXR受容体タンパク質またはその活性フラグメントおよびリファマイシンアナログを含む、PXR受容体またはそのフラグメントを調整する(I)化合物またはその塩をスクリーニングするためのキットを本明細書中に示す。
【0020】
1つの態様では、プレグナンX受容体(PXR)タンパク質またはそのフラグメントを調整する化合物またはその塩、もしくはPXRタンパク質またはそのフラグメントのリファマイシンアナログへの結合によって誘導されるシグナル伝達を調整する化合物またはその塩を含む、PXR関連障害を治療するための医薬を本明細書中に示す。
【0021】
1つの態様では、プレグナンX受容体(PXR)タンパク質またはそのフラグメントを調整する化合物またはその塩を投与する工程を含む、被験体のPXR関連障害を治療、予防、または緩和する方法を本明細書中に示す。
【0022】
1つの実施形態では、プレグナンX受容体(PXR)タンパク質またはそのフラグメントを調整する化合物またはその塩は、リファキシミンではない。
【0023】
1つの実施形態では、調整は、PXRタンパク質またはそのフラグメントのリファマイシンアナログへの結合によって誘導されるシグナル伝達の調整を含む。
【0024】
別の実施形態では、PXR受容体は、膜に結合し、トランスジェニックマウス中に存在し、アッセイプレート中に存在し、細胞中に存在し、そして/または人工膜中に存在する。
【0025】
1つの実施形態では、PXRタンパク質は、配列アクセッション番号O75469、Q8SQ01、Q9R1A7、O54915、NP_148934、NP_003880、NP_071285、またはそのフラグメントもしくは改変体によって示されるアミノ酸配列あるいは配列アクセッション番号NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133、またはそのフラグメントもしくは改変体によって示される核酸を含む。
【0026】
1つの態様では、治療効果を得るのに有効な量でPXRタンパク質アゴニストを含む組成物を本明細書中に示す。
【0027】
1つの態様では、内因性プレグナンX受容体(PXR)遺伝子のホモ接合性破壊を含むトランスジェニックマウスを本明細書中に示す。
【0028】
別の実施形態では、マウスはヒトPXR遺伝子を含む。
【0029】
1つの態様では、本明細書中に記載のトランスジェニックマウスから単離した細胞または組織を本明細書中に示す。
【0030】
1つの態様では、PXR遺伝子またはPXR遺伝子発現産物の活性を調整することができる薬剤を同定する方法であって、推定上の薬剤を本明細書中に記載のトランスジェニックマウスに投与する工程、薬剤を野生型コントロールマウスに投与する工程、およびトランスジェニックマウスの生理学的応答をコントロールマウスの応答と比較する工程であって、トランスジェニックマウスとコントロールマウスとの間の生理学的応答の相違は、薬剤が遺伝子または遺伝子発現産物の活性を調整することができることの指標である、比較する工程を含む、方法を本明細書中に示す。
【0031】
1つの態様では、抗炎症性腸疾患活性を有する薬物候補をスクリーニングする方法であって、配列NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133からなる群から選択される核酸配列によってコードされるPXR遺伝子、またはO75469、Q8SQ01、Q9R1A7、O54915、NP_148934、NP_003880、NP_071285、そのフラグメントもしくは改変体を発現する細胞を提供する工程、細胞を薬物候補と接触させる工程、および組織サンプル中のBDポリヌクレオチドの発現に対する薬物候補の影響をモニタリングする工程を含む、方法を本明細書中に示す。
【0032】
1つの態様では、PXRポリペプチドに結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントを本明細書中に示す。
【0033】
1つの実施形態では、抗体またはそのフラグメントが固体支持体に付着し、抗体がモノクローナル抗体であり、抗体がポリクローナル抗体であり、そして/または抗体またはそのフラグメントが検出可能な標識をさらに含む。
【0034】
本発明は、BDに対する感受性がPXR遺伝子(核内受容体ファミリーのメンバー)の遺伝的変異に強く関連するという所見に一部基づく。PXRは、生体異物および一部の抗生物質の沈着および解毒に関与する遺伝子を調節する核内受容体である。本発明はまた、ヒトPXRのRIFax特異的活性化に一部基づく。PXRは、内因性解毒および生物異物解毒に関与する生体防御機構の不可欠な構成要素である(Kliewerら,2002)。PXRは、広範な生体異物(処方薬、ハーブ系サプリメント、農薬、内分泌攪乱物質、および他の環境汚染物質が含まれる)によって活性化される(CarnahanおよびRedinbo,2005)。PXR活性化により、生体異物(有毒化学物質が含まれる)の代謝および排出に関与する多数の遺伝子が調節される(Kliewer、2003;Rosenfeldら,2003;Sonodaら,2005)。新規な動物モデル(全ヒトPXR遺伝子がPxr−ヌルバックグラウンドに再導入されたPXRヒト化マウス(hPXR))も本明細書中に開示する(Maら,2007)。
【0035】
本発明は、炎症性腸疾患を調整する組成物のスクリーニング方法を提供する。本発明はまた、炎症性腸疾患を調整する組成物のスクリーニング方法を提供する。腸ならびに関連する組織および器官の炎症を阻害する方法も本明細書中に提供する。炎症性腸疾患の治療方法も本明細書中に提供する。
【0036】
本開示は、一般に、トランスジェニック動物ならびに遺伝子機能の特徴づけに関する組成物および方法に関する。
【0037】
1つの態様では、薬物候補のスクリーニング方法は、炎症性腸疾患関連(BD)遺伝子またはそのフラグメントを発現する細胞株を準備する工程を含む。BD遺伝子の一定の実施形態は、BDで異なって発現される遺伝子である。本明細書中の方法で使用されるBD遺伝子の一定の実施形態には、NCBIアクセッション番号:NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133、またはそのフラグメント(これらから生成されたヒトmRNAに対応する)から選択される核酸が含まれるが、これらに限定されない。本方法は、さらに、薬物候補を細胞に添加する工程およびBD遺伝子の発現、結合、挙動に及ぼす薬物候補の影響を決定する工程を含む。
【0038】
1つの実施形態では、薬物候補のスクリーニング方法は、薬物候補の非存在下での発現レベルを薬物候補の存在下での発現レベルと比較する工程を含む。
【0039】
BDPを候補生物活性剤と組み合わせる工程および候補剤のBDPへの結合を決定する工程を含む、BDタンパク質(BDP)に結合することができる生物活性剤のスクリーニング方法も本明細書中に提供する。
【0040】
BDP活性を調整することができる生物活性剤のスクリーニング方法を本明細書中にさらに提供する。1つの実施形態では、該方法は、BDPを候補生物活性剤と組み合わせる工程およびBDPの生物活性に及ぼす候補剤の影響を決定する工程を含む。
【0041】
薬物を被験体に投与する工程および被験体から細胞サンプルを取り出す工程を含む、候補BD薬の影響を評価する方法も提供する。次いで、細胞の発現プロフィールを決定する。この方法は、さらに、被験体の発現プロフィールを健康な個体の発現プロフィールと比較する工程を含む。
【0042】
BDタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号O75469、Q8SQ01、Q9R1A7、O54915、NP_148934、NP_003880、NP_071285で概説された配列からなる群から選択されるタンパク質を含む。本明細書中で使用する場合、BDPタンパク質には、例えば、リガンドによる活性化後のシグナル伝達経路中のタンパク質が含まれる。
【0043】
BDタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号:NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133(これらから生成されたヒトmRNAに対応する)で概説された配列からなる群から選択される核酸によってコードされるタンパク質を含む。
【0044】
さらに、BDタンパク質をコードする核酸セグメント、NCBIアクセッション番号:NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133(これらから生成されたヒトmRNAに対応する)で概説された配列からなる群から選択される核酸を含むバイオチップを本明細書中に提供する。
【0045】
被験体の少なくとも1つのBD遺伝子の配列決定によってBDの傾向を診断または決定する方法も本明細書中に提供する。本発明のさらに別の態様では、被験体における遺伝子コピー数を含むBDの決定方法を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはその相補物もしくはフラグメントは、検出可能な標識をさらに含むか、固体支持体に付着するか、化学合成によって少なくとも一部が調製されるか、アンチセンスフラグメントであるか、一本鎖であるか、二本鎖であるか、またはマイクロアレイを含む。
【0047】
下記のポリヌクレオチド配列または相補物からなる群から選択されるBD配列の読み取り枠内でコードされる単離ポリペプチドを本明細書中に提供する。下記配列からなる群から選択されるポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドを本明細書中に提供する。下記配列からなる群から選択されるポリペプチドによってコードされるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドを本明細書中に提供する。一定の実施形態では、ポリペプチドまたはそのフラグメントを、固体支持体に付着させることができる。1つの実施形態では、かかるポリペプチドに結合する単離抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)またはその抗原結合フラグメントを本明細書中に提供する。単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、固体支持体に付着させることができるか、検出可能な標識をさらに含む。
【0048】
1つの実施形態では、(a)アクセッション番号:NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133のBD配列からなる群から選択される核酸配列によってコードされるBD関連遺伝子、またはアクセッション番号O75469、Q8SQ01、Q9R1A7、O54915、NP_148934、NP_003880、NP_071285のBD配列またはそのフラグメントを発現する細胞を提供する工程、(b)BD細胞由来の組織サンプルを抗BD薬物候補(例えば、候補組成物)と接触させる工程、(c)組織サンプル中でのBDポリヌクレオチドの発現に対する抗BD薬物候補の影響をモニタリングする工程、および任意選択的に、(d)薬物候補の非存在下での発現レベルを薬物候補の存在下での発現レベルと比較する工程を含む、抗BD活性をスクリーニングする方法を本明細書中に提供する。薬物候補は、転写のインヒビター(Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト、成長因子アンタゴニスト、セリン−トレオニンキナーゼアンタゴニスト、チロシンキナーゼアンタゴニスト)であり得る。
【0049】
1つの実施形態では、化合物には、例えば、3,4部位で縮合した複素環を保有するリファマイシン誘導体が含まれる。例示的な組成物には、例えば、南アフリカ特許第68/0903号に開示の化合物(ピロロ[5,4−c]リファマイシンSV誘導体)、独国特許出願公開第2,739,671号および同第2,739,623号に開示の化合物(1位および2位に置換を保有するイミダゾ[5,4−c]リファマイシンSV化合物)が含まれる。チアゾロ[5,4−c]リファマイシンSV(リファマイシンP)誘導体は、独国特許出願公開第2,741,066号で報告されている。他のリファマイシンアナログには、例えば、−Oおよび−Pが含まれる。これらは、当業者に周知であり、例えば、USPN4,341,785号またはUSPN4,200,574号中に他の組成物およびその誘導体と共に見出すことができる。
【0050】
BDタンパク質(BDP)の活性を調整することができる生物活性剤のスクリーニング方法であって、BDPは下記の核酸配列を含む核酸によってコードされ、BDPを候補生物活性剤と組み合わせる工程およびBDPの生物活性に及ぼす候補剤の影響を決定する工程を含む、方法を本明細書中に提供する。該方法によれば、生物活性剤は、BDタンパク質(BDP)の発現に影響を及ぼすことができ、BDタンパク質(BDP)の活性に影響を及ぼすことができる。
【0051】
本発明は、本明細書中に記載のものから選択されるBDタンパク質(BDP)に優先的に結合するモノクローナル抗体を提供し、ここで、この抗体は、任意選択的に治療薬に結合するか、ヒト化されている。被験体中のBD細胞の有無を検出し、かかる抗体を含むキットおよび薬学的組成物も提供する。
【0052】
本開示は、PXR遺伝子が破壊されたトランスジェニック細胞を提供する。本開示のトランスジェニック細胞は、相同組換えを起こすことができる任意の細胞から構成される。好ましくは、本開示の細胞は、幹細胞、より好ましくは胚性幹(ES)細胞、最も好ましくはマウスES細胞である。1つの実施形態によれば、トランスジェニック細胞を、ターゲティング構築物を幹細胞に導入して相同組換え体を産生し、それにより、PXR遺伝子を変異させることによって産生する。別の実施形態では、トランスジェニック細胞は、下記のトランスジェニック動物に由来する。トランスジェニック動物由来の細胞には、組織または器官およびその任意の細胞株または任意の子孫から単離されたかこれらに存在する細胞が含まれる。
【0053】
本開示はまた、幹細胞に導入した場合に相同組換え体を産生するターゲティング構築物およびターゲティング構築物の産生方法を提供する。1つの実施形態では、本開示のターゲティング構築物は、PXR遺伝子に相同な第1および第2のポリヌクレオチド配列を含む。ターゲティング構築物はまた、好ましくは構築物中の2つの異なる相同なポリヌクレオチド配列の間に配置された選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列を含む。ターゲティング構築物はまた、相同組換えを増強することができる他の調節エレメントを含むことができる。
【0054】
本開示は、さらに、非ヒトトランスジェニック動物およびPXR遺伝子の破壊を含むかかる非ヒトトランスジェニック動物の産生方法を提供する。本開示のトランスジェニック動物には、PXR遺伝子変異に関してヘテロ接合性およびホモ接合性のトランスジェニック動物が含まれる。1つの態様では、本開示のトランスジェニック動物は、PXR遺伝子機能を欠く。別の態様では、本開示のトランスジェニック動物は、PXR遺伝子変異の保有に関連する表現型を含む。
【0055】
本開示はまた、トランスジェニック動物の表現型に影響を及ぼすことができる薬剤を同定する方法を提供する。例えば、推定上の薬剤をトランスジェニック動物に投与し、推定上の薬剤に対するトランスジェニック動物の応答を測定し、「正常な」マウスまたは野生型マウスの応答と比較するか、トランスジェニック動物コントロール(薬剤投与なし)と比較する。本開示は、さらに、かかる方法にしたがって同定した薬剤を提供する。本開示はまた、PXR遺伝子の破壊に関連する容態の治療薬として有用な薬剤の同定方法を提供する。
【0056】
本開示は、さらに、PXRの発現または機能に影響を及ぼす薬剤の同定方法を提供する。本方法は、有効量の薬剤をトランスジェニック動物(例えば、マウス)に投与する工程を含む。本方法は、例えば、薬剤に対するトランスジェニック動物の応答を測定する工程、およびトランスジェニック動物の応答をコントロール動物(例えば、野生型動物またはトランスジェニック動物コントロールであり得る)と比較する工程を含む。PXRの発現または機能に影響を及ぼし得る化合物を、細胞ベースのアッセイにおいて細胞に対してスクリーニングして、例えば、かかる化合物を同定することもできる。細胞は、本明細書中に記載のPXRトランスジェニックマウスに由来する細胞であり得る。
【0057】
本開示はまた、PXR遺伝子の核酸配列を含む細胞株を提供する。かかる細胞株は、細胞株中で機能的なプロモーターへの作動可能な連結によってかかる配列を発現することができる可能性がある。1つの実施形態では、PXR遺伝子配列の発現は、誘導性プロモーターの調節下にある。PXR遺伝子を薬剤と接触させる工程および薬剤/PXR遺伝子複合体を検出する工程を含む、PXR遺伝子と相互作用する薬剤の同定方法も提供する。かかる複合体を、例えば、作動可能に連結された検出マーカーの発現の測定によって検出することができる。
【0058】
本開示は、さらに、PXR遺伝子の破壊、より詳細には、PXR遺伝子の発現または機能の破壊に関連する疾患または容態の治療方法を提供する。1つの実施形態では、本開示の方法は、PXR遺伝子の発現または機能の破壊に関連する疾患または容態を治療する工程(PXRの発現または機能に影響を及ぼす治療薬の、それを必要とする被験体への投与を含む)を含む。この実施形態によれば、本方法は、治療有効量の天然、合成、半合成、または組換えのPXR遺伝子、PXR遺伝子産物、またはそのフラグメント、ならびに天然、合成、半合成、または組換えのアナログの投与を含む。
【0059】
本開示は、さらに、遺伝子療法変異PXR遺伝子による検出および置換を含む、破壊された標的遺伝子の発現または機能に関連する疾患または容態の治療方法を提供する。
【0060】
別の実施形態では、PXR遺伝子破壊に関連する表現型(または表現型の変化)を使用して、PXR遺伝子産物を拮抗する薬物の作用および副作用の可能性を予想する。この実施形態では、マウスを使用して、「新薬開発可能な標的」として遺伝子を評価し、例えば、PXR遺伝子産物をターゲティングする薬物の開発が薬学研究において注目に値するかどうかを決定する。
【0061】
他の実施形態を以下に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1A】図1は、RIFおよびRIFaxのLC−MS/MS分析を示す。(A)RIFの構造;(B)RIFaxの構造;(C)RIFおよびRIFaxの典型的なクロマトグラム。RIFおよびRIFaxは、LC−MS/MSによって、RIFについてはm/z 823.5/791.5(1)、RIFaxについてはm/z 786.3/754.5(2)と検出された。
【図1B】図1は、RIFおよびRIFaxのLC−MS/MS分析を示す。(A)RIFの構造;(B)RIFaxの構造;(C)RIFおよびRIFaxの典型的なクロマトグラム。RIFおよびRIFaxは、LC−MS/MSによって、RIFについてはm/z 823.5/791.5(1)、RIFaxについてはm/z 786.3/754.5(2)と検出された。
【図1C】図1は、RIFおよびRIFaxのLC−MS/MS分析を示す。(A)RIFの構造;(B)RIFaxの構造;(C)RIFおよびRIFaxの典型的なクロマトグラム。RIFおよびRIFaxは、LC−MS/MSによって、RIFについてはm/z 823.5/791.5(1)、RIFaxについてはm/z 786.3/754.5(2)と検出された。
【図2−1】図2は、10mg/kg RIFまたはRIFaxの単回投与による処置後のマウスにおけるRIFおよびRIFaxの代謝プロフィールおよび腸管分布を示す。(A)経口処置後の血清RIFおよびRIFaxの濃度−時間プロット。データを、各時点での平均±SD(n=3)として示す。(B、C、D)経口処置後の小腸(S.intestine)、盲腸、および結腸におけるRIFおよびRIFaxの経時変化。小腸(B)、盲腸(C)、および結腸(D)中の内容物を、投与から1.5、3、6、9、12、24、および48時間後に個別に収集した。RIFおよびRIFaxを腸管の内容物から抽出し、LC−MS/MSによって分析した。データを、各時点での平均±SD(n=3)として示す。(E)経口処置後のWT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウス間のRIFax Cmaxの比較。データを平均(n=3)として示す。(F)i.v.、i.p.、およびp.o.処置による血清RIFaxの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。(G)i.p.注射後の血清RIFaxおよびRIFの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。(H)i.v.注射後の血清RIFaxおよびRIFの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。
【図2−2】図2は、10mg/kg RIFまたはRIFaxの単回投与による処置後のマウスにおけるRIFおよびRIFaxの代謝プロフィールおよび腸管分布を示す。(A)経口処置後の血清RIFおよびRIFaxの濃度−時間プロット。データを、各時点での平均±SD(n=3)として示す。(B、C、D)経口処置後の小腸(S.intestine)、盲腸、および結腸におけるRIFおよびRIFaxの経時変化。小腸(B)、盲腸(C)、および結腸(D)中の内容物を、投与から1.5、3、6、9、12、24、および48時間後に個別に収集した。RIFおよびRIFaxを腸管の内容物から抽出し、LC−MS/MSによって分析した。データを、各時点での平均±SD(n=3)として示す。(E)経口処置後のWT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウス間のRIFax Cmaxの比較。データを平均(n=3)として示す。(F)i.v.、i.p.、およびp.o.処置による血清RIFaxの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。(G)i.p.注射後の血清RIFaxおよびRIFの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。(H)i.v.注射後の血清RIFaxおよびRIFの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。
【図2−3】図2は、10mg/kg RIFまたはRIFaxの単回投与による処置後のマウスにおけるRIFおよびRIFaxの代謝プロフィールおよび腸管分布を示す。(A)経口処置後の血清RIFおよびRIFaxの濃度−時間プロット。データを、各時点での平均±SD(n=3)として示す。(B、C、D)経口処置後の小腸(S.intestine)、盲腸、および結腸におけるRIFおよびRIFaxの経時変化。小腸(B)、盲腸(C)、および結腸(D)中の内容物を、投与から1.5、3、6、9、12、24、および48時間後に個別に収集した。RIFおよびRIFaxを腸管の内容物から抽出し、LC−MS/MSによって分析した。データを、各時点での平均±SD(n=3)として示す。(E)経口処置後のWT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウス間のRIFax Cmaxの比較。データを平均(n=3)として示す。(F)i.v.、i.p.、およびp.o.処置による血清RIFaxの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。(G)i.p.注射後の血清RIFaxおよびRIFの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。(H)i.v.注射後の血清RIFaxおよびRIFの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。
【図2−4】図2は、10mg/kg RIFまたはRIFaxの単回投与による処置後のマウスにおけるRIFおよびRIFaxの代謝プロフィールおよび腸管分布を示す。(A)経口処置後の血清RIFおよびRIFaxの濃度−時間プロット。データを、各時点での平均±SD(n=3)として示す。(B、C、D)経口処置後の小腸(S.intestine)、盲腸、および結腸におけるRIFおよびRIFaxの経時変化。小腸(B)、盲腸(C)、および結腸(D)中の内容物を、投与から1.5、3、6、9、12、24、および48時間後に個別に収集した。RIFおよびRIFaxを腸管の内容物から抽出し、LC−MS/MSによって分析した。データを、各時点での平均±SD(n=3)として示す。(E)経口処置後のWT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウス間のRIFax Cmaxの比較。データを平均(n=3)として示す。(F)i.v.、i.p.、およびp.o.処置による血清RIFaxの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。(G)i.p.注射後の血清RIFaxおよびRIFの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。(H)i.v.注射後の血清RIFaxおよびRIFの濃度−時間プロット。データを平均(n=3)として示す。
【図3−1】図3は、WT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウスの小腸(S.intestine)および肝臓におけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFおよびRIFaxの影響を示す。マウスを、25mg/kgのRIFまたはRIFaxで3日間経口処置し、CYP3A11、GSTA1、MRP2、およびOATP2の発現をqPCRによって分析した。比較CT法を使用して値を定量し、サンプルをβアクチンに対して正規化した。データを平均±SD(n=3)として示す。*コントロールと比較してp<0.05。(A)hPXRマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響;(B)WTマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響;(C)Pxr−ヌルマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響;(D)hPXRマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFの影響;(E)hPXRマウスの肝臓におけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFの影響;(F)hPXRマウスの肝臓におけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響。
【図3−2】図3は、WT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウスの小腸(S.intestine)および肝臓におけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFおよびRIFaxの影響を示す。マウスを、25mg/kgのRIFまたはRIFaxで3日間経口処置し、CYP3A11、GSTA1、MRP2、およびOATP2の発現をqPCRによって分析した。比較CT法を使用して値を定量し、サンプルをβアクチンに対して正規化した。データを平均±SD(n=3)として示す。*コントロールと比較してp<0.05。(A)hPXRマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響;(B)WTマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響;(C)Pxr−ヌルマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響;(D)hPXRマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFの影響;(E)hPXRマウスの肝臓におけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFの影響;(F)hPXRマウスの肝臓におけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響。
【図3−3】図3は、WT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウスの小腸(S.intestine)および肝臓におけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFおよびRIFaxの影響を示す。マウスを、25mg/kgのRIFまたはRIFaxで3日間経口処置し、CYP3A11、GSTA1、MRP2、およびOATP2の発現をqPCRによって分析した。比較CT法を使用して値を定量し、サンプルをβアクチンに対して正規化した。データを平均±SD(n=3)として示す。*コントロールと比較してp<0.05。(A)hPXRマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響;(B)WTマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響;(C)Pxr−ヌルマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響;(D)hPXRマウスのS.intestineにおけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFの影響;(E)hPXRマウスの肝臓におけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFの影響;(F)hPXRマウスの肝臓におけるPXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響。
【図4】図4は、種々の生体異物核内受容体のRIFax活性化を決定するための細胞ベースのレポーターアッセイを示す。データを平均±SD(n=3)として示す。*コントロールと比較してp<0.05。(A)ヒトPXR活性化についてのRIFaxの細胞ベースのレポーターアッセイ。10μM RIF;1、10、100μM RIFaxを、培養培地に個別に添加した。ビヒクルとしてDMSOを使用した。PXRの活性化を、24時間後のホタルルシフェラーゼ活性の測定およびその後のタンパク質濃度によるルシフェラーゼ活性の正規化によって決定した。(B)ヒトPXR、CAR、PPARα、PPARγ、およびFXR活性化についてのRIFaxの細胞ベースのレポーターアッセイ。10μM RIFaxを培養培地に添加し、24時間インキュベートした。RIF(10μM)、TCPOBOP(250nM)、Wy−14,643(10μM)、ロシグリタゾン(10μM)、およびGW4064(25μM)を、それぞれヒトPXR、CAR、PPARα、PPARγ、およびFXRのポジティブコントロールとして使用した。ビヒクルとしてDMSOを使用した。標準的なデュアルルシフェラーゼアッセイを使用し、同時トランスフェクトしたコントロールレポーターに対して正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0063】
詳細な説明
リファキシミン(RIFax)(旅行者下痢の治療薬として承認されたリファマイシンアナログ)は、胃腸障害またはBDの治療でも有益である。しかし、慢性胃腸障害に及ぼすリファキシミンの影響に寄与する機構は十分に理解されていない。本発明は、ヒトプレグナンX受容体(PXR)(生体異物および一部の内生的な沈着および解毒に関与する遺伝子を調節する核内受容体)の特異的活性化におけるリファキシミンの役割に一部基づく。本発明はまた、PXRヒト化(hPXR)、Pxr−ヌル、および野生型マウスの作製に一部基づく。
【0064】
上記一般的説明および以下の詳細な説明は例示および説明のみを目的とし、特許請求の範囲に記載の本発明を制限しないものであると理解すべきである。本出願では、他で特記しない限り、単数形の使用には、複数形が含まれる。本出願では、他で示さない限り、「または」は「および/または」を意味する。さらに、用語「including」ならびに「includes」および「included」などの他の形態の使用は本発明を制限しない。同様に、「エレメント」または「成分」などの用語は、他で特記しない限り、1単位を含む要素および成分ならびに1つを超えるサブユニットを含む要素および成分の両方を含む。同様に、用語「portion」の使用は、部分の一部または部分全体を含み得る。
【0065】
本明細書中で使用される項目の表題は、系統立てのみを目的とし、記載の主題を制限するものであると解釈されるべきではない。本出願中に引用された全ての書類または書類の一部(特許、特許出願、論文、書籍、および学術論文が含まれるが、これらに限定されない)は、任意の目的のためにその全体が本明細書中に参考として明確に援用される。
【0066】
用語「有効量」には、所望の結果を達成するのに必要な(例えば、患者または被験体のBDを治療または予防するのに十分な)投薬量および必要な期間で有効な量が含まれる。PXR受容体修飾因子の有効量は、被験体の病状、年齢、および体重、ならびにPXR受容体修飾因子が被験体において所望の応答を誘発する能力などの要因に応じて変化し得る。最適な治療応答が得られるように投薬計画を調整することができる。有効量はまた、治療に有利な作用がPXR受容体修飾因子の任意の有毒作用または有害作用(例えば、副作用)を凌ぐ量である。
【0067】
「回復する」、「回復」、または「改善」などは、例えば、被験体または少なくとも少数の被験体(例えば、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲)で起こる改善と一致する検出可能な改善または検出可能な変化をいう。かかる改善または変化は、リファキシミンで処置していない被験体と比較して、処置した被験体で認められる。ここで、未処置被験体は、同一または類似の疾患、容態、または症状などを有するか、発症している被験体である。疾患、容態、症状、またはアッセイパラメーターの回復を、例えば、被験体の自己評価、臨床家の評価、または適切なアッセイもしくは測定(例えば、被験体における生活の質の評価、疾患または容態の進行遅延、疾患または容態の重症度の軽減、または生体分子、細胞のレベルまたは活性のための適切なアッセイ、またはBDエピソードの検出が含まれる)の実施によって主観的または客観的に決定することができる。回復は、一過性、長期、または永久であり得るか、PXR受容体修飾因子を被験体に投与するか、本明細書または引用文献に記載されているアッセイまたは他の方法で使用する間またはその後の関連時間(例えば、下記の時間枠内、またはPXR受容体修飾因子の投与または使用から約1時間後から被験体がかかる処置を受けてから約28日後、1、3、6、または9ヶ月後またはそれを超えた期間)で変動し得る。
【0068】
例えば、症状または分子のレベルまたは生物学的活性などの「調整」は、例えば、症状または活性などが増加または減少して検出されることをいう。かかる増加または減少を、PXR受容体修飾因子で処置していない被験体と比較して、処置した被験体で認められる。ここで、未処置被験体は、同一または類似の疾患、容態、または症状などを有するか、発症している。かかる増加または減少は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、1000%、またはそれ以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の任意の範囲内であり得る。調整を、例えば、被験体の自己評価、臨床家の評価、または適切なアッセイもしくは測定(例えば、生活の質の評価または分子、細胞のレベルもしくは活性または被験体内の細胞遊走に適切なアッセイが含まれる)の実施によって主観的または客観的に決定することができる。調整は、一過性、長期、または永久であり得るか、PXR受容体修飾因子を被験体に投与するか、本明細書または引用文献に記載されているアッセイまたは他の方法で使用する間またはその後の関連時間(例えば、下記の時間枠内、またはPXR受容体修飾因子の投与または使用から約1時間後から被験体がPXR受容体修飾因子を受けてから約3、6、9ヶ月後またはそれを超えた期間)で変動し得る。
【0069】
用語「調整する」はまた、PXR受容体修飾因子への曝露に応答した細胞活性の増加または減少(例えば、所望の最終結果(例えば、治療のために使用したPXR受容体修飾因子の治療結果が一連の特定の治療で増加または減少し得る)が達成されるような動物細胞の少なくとも亜集団の増殖および/または分化誘導の阻害)をいうことができる。
【0070】
「PXR受容体修飾因子を得る」などの場合の用語「得る」は、PXR受容体修飾因子の購入、合成、または獲得を含むことが意図される。
【0071】
本明細書中で使用する場合、句「非経口投与」および「非経口で投与する」には、例えば、通常、注射による腸内投与および局所投与以外の投与様式が含まれ、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、および胸骨内への注射および注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
化合物の用語「予防有効量」は、被験体への単回または複数回投与の際にBDの予防または治療に有用なPXR受容体修飾因子の量をいう。
【0073】
本明細書中で使用する場合、用語「医薬品組成物」(または薬剤もしくは薬物)は、患者に適切に投与した場合に所望の治療効果を誘導することができる化合物、組成物、薬剤、または薬物をいう。これは、1つを超える成分型を必ずしも必要としない。
【0074】
本明細書中で使用する場合、句「全身投与」、「全身に投与する」、「末梢投与」、および「末梢に投与する」は、被験体の系に入り、それにより、代謝および他の同様の過程(例えば、皮下投与)に供されるようなPXR受容体修飾因子、薬物、または他の材料の投与を意味する。
【0075】
PXR受容体修飾因子の用語「治療有効量」は、被験体への単回投与または複数回投与の際に、細菌の成長および/または侵入の阻害、または被験体における細菌成長に関連するBDエピソードなどの症状の軽減に有効なPXR受容体修飾因子の量をいう。「治療有効量」はまた、被験体におけるBDの重症度の減少に十分な療法(例えば、PXR受容体修飾因子を含む組成物)の量をいう。
【0076】
本明細書中で使用する場合、用語「予防する」、「予防(preventing)」、「予防(prevention)」は、BDエピソードまたはBDのより多くの症状の再発、発病、または発症の予防をいう。予防には、BDエピソードの出現および重症度の防御が含まれる。
【0077】
本明細書中で使用する場合、用語「予防有効量」は、BDエピソードの発症、再発、または発病の予防または別の療法の予防効果の増強または改善に十分な療法(例えば、PXR受容体修飾因子を含む組成物)の量をいう。
【0078】
本明細書中で使用する場合、「被験体」には、本明細書中に記載のPXR修飾因子によって治療可能な腸障害または他の障害を罹患し得る生物またはPXR修飾因子の投与から恩恵を受け得る生物(ヒトおよび非ヒト動物など)が含まれる。好ましいヒト動物には、ヒト被験体が含まれる。本発明の用語「非ヒト動物」には、全ての脊椎動物(例えば、哺乳動物(例えば、げっ歯類(例えば、マウス))および非哺乳動物(非ヒト霊長類(例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類など)))が含まれる。
【0079】
本発明は、BDに関連する多数の配列に関する。
【0080】
被験体へのPXR修飾因子処方物の投与による胃腸障害または腸疾患を罹患しているか感受性を示す被験体の治療方法を本明細書中に記載する。本明細書中に記載のPXR修飾因子処方物の投与により、胃腸障害を有する被験体の治療効率が増加する。本発明の方法を使用して治療することができる例示的な胃腸障害および腸疾患(PXR関連障害またはPXRタンパク質関連障害)には、例えば、過敏性腸症候群、クローン病、旅行者下痢、潰瘍性大腸炎、腸炎、小腸細菌過剰増殖、慢性膵炎、膵機能不全、結腸炎、または肝性脳症が含まれるが、これらに限定されない。特にこの治療から恩恵を受けることができる被験体には、BDであるか、BDに感受性を示し得る被験体が含まれる。例えば、食物に起因する疾患を最近罹患した被験体。1つの実施形態では、腸疾患は肝性脳症を含む。1つの実施形態では、BDは、1つまたは複数の炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、肝性脳症、腸炎、結腸炎、過敏性腸症候群(IBS)、線維筋痛(FM)、慢性疲労症候群(CFS)、鬱病、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、旅行者下痢、小腸細菌過剰増殖、慢性膵炎、または膵機能不全を含む。
【0081】
したがって、本発明は、本明細書中で「BD関連」または「BD」配列と呼ばれるBDに関連する核酸配列およびタンパク質配列を提供する。さらに、BD遺伝子は、他の疾患(加齢または神経変性に関連する疾患などであるが、これらに制限されない)に関与し得る。この文脈中の「関連」は、ヌクレオチド配列またはタンパク質配列が、正常組織と比較して、BD中で異なって発現するか、活性化するか、不活化するか、変化することを意味する。以下に概説するように、BD配列には、BD中で上方制御される(例えば、より高いレベルで発現する)配列および下方制御される(例えば、より低いレベルで発現する)配列が含まれる。BD配列には、変化し(例えば、短縮配列または置換、欠失、もしくは挿入(点変異が含まれる)された配列)、同一の発現プロフィールまたは変化したプロフィールのいずれかを示す配列も含まれる。1つの実施形態では、BD配列はヒトに由来するが、当業者に認識されるように、他の生物由来のBD配列が疾患および薬物評価の動物モデルで有用であり得る。したがって、脊椎動物(哺乳動物(げっ歯類(ラット、マウス、ハムスター、モルモットなど)、霊長類、および家畜(ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマなどが含まれる)が含まれる)が含まれる)由来の他のBD配列を提供する。いくつかの場合、原核生物BD配列が有用であり得る。他の生物由来のBD配列を、以下に概説の技術を使用して得ることができる。
【0082】
BD配列には、核酸配列およびアミノ酸配列の両方が含まれる。1つの実施形態では、BD配列は組換え核酸である。1つの実施形態では、BD配列は核酸である。当業者に認識され、且つ以下により完全に概説されるように、BD配列は、種々の適用(天然に存在する核酸を検出する診断的適用ならびにスクリーニング適用が含まれる)で有用であり、例えば、BD配列に対する核酸プローブを含むバイオチップを生成することができる。広義で、本明細書中での「核酸」、「ポリヌクレオチド」、または「オリゴヌクレオチド」、または等価物の使用は、相互に共有結合した少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、6、8、10、12、20、30、または100個までのヌクレオチドのオリゴマーである。「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、DNA、RNA、PNA、またはホスホジエステルおよび/または任意の交互の結合によって連結したヌクレオチドのポリマーを含むことができる。
【0083】
用語「標識」は、例えば、アッセイサンプル中の標的ポリヌクレオチドの存在を示す検出可能なシグナルを産生することができる組成物をいう。適切な標識には、放射性同位体、ヌクレオチド発色団、酵素、基質、蛍光分子、化学発光部分、磁性粒子、および生物発光部分などが含まれる。そのようなものとして、標識は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段、化学的手段、または任意の他の適切な手段によって検出可能な任意の組成物である。用語「標識」を、検出可能な物理的性質を有する任意の化学基もしくは化学的部分、または化学基もしくは化学的部分に検出可能な物理的性質を示させることができる任意の化合物(基質の検出可能な生成物への変換を触媒する酵素など)をいうために使用する。用語「標識」はまた、特定の物理的性質の発現を阻害する化合物を含む。標識はまた、結合対のメンバー、検出可能な物理的性質を保有する他のメンバーである化合物であり得る。
【0084】
本明細書中で使用する場合、「生物サンプル」は、例えば、被験体から単離した組織または流動物(例えば、血液、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚、呼吸器、腸管および尿生殖路、涙、唾液、乳、細胞(血球が含まれるが、これらに限定されない)、BD、器官が含まれるが、これらに限定されない)のサンプルをいい、インビトロ細胞培養の構成要素のサンプルもいう。
【0085】
本明細書中で使用する場合、用語「生物学的起源」は、例えば、標的ポリヌクレオチドが誘導される供給源をいう。供給源は、上記の任意の形態の「サンプル」(細胞、組織、または流動物が含まれるが、これらに限定されない)に由来し得る。「異なる生物学的起源」は、同一個体の異なる細胞/組織/器官、同一種の異なる個体由来細胞/組織/器官、または異なる種由来の細胞/組織/器官をいうことができる。
【0086】
用語「遺伝子」は、例えば、(a)少なくとも1つの本明細書中に開示のDNA配列を含む遺伝子;(b)本明細書中に開示のDNA配列によってコードされるアミノ酸配列をコードする任意のDNA配列、および/または(c)本明細書中に開示のコード配列の相補物とハイブリッド形成する任意のDNA配列をいう。好ましくは、この用語には、コード領域および非コード領域が含まれ、好ましくは、正常な遺伝子発現に必要な全ての配列(プロモーター、エンハンサー、および他の調節配列が含まれる)が含まれる。
【0087】
「PXR遺伝子」は、例えば、アクセッション番号:NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133またはアクセッション番号O75469、Q8SQ01、Q9R1A7、O54915、NP_148934、NP_003880、NP_071285とGenebankで同定された配列を含む遺伝子をいう。PXR遺伝子の「破棄」は、ゲノムDNAのフラグメントが存在し、内因性相同配列と組み合わせる場合に起こる。これらの配列の破壊または修飾には、DNA配列の挿入、ミスセンス、フレームシフト、欠失、置換(すなわち、交換)、またはその任意の組み合わせが含まれ得る。挿入には、動物、植物、真菌、昆虫、原核生物、またはウイルス起源であり得る全遺伝子の挿入が含まれる。破壊により、例えば、PXR遺伝子のプロモーター、エンハンサー、またはスプライス部位を変化または置換することができ、その産生の部分的もしくは完全な阻害または正常な遺伝子産物の活性の増強によって正常な遺伝子産物を変化させることができる。
【0088】
用語「トランスジェニック細胞」は、例えば、遺伝子ターゲティング法によって完全または部分的に破壊、修飾、変化、または置換されたPXR遺伝子をそのゲノム内に含む細胞をいう。
【0089】
用語「トランスジェニック動物」は、例えば、遺伝子ターゲティング法によって破壊された特異的遺伝子をそのゲノム内に含む動物をいう。トランスジェニック動物には、ヘテロ接合体動物(例えば、1つの欠損対立遺伝子および1つの野生型対立遺伝子)およびホモ接合体動物(例えば、2つの欠損対立遺伝子)の両方が含まれる。
【0090】
本明細書中で使用する場合、用語「選択マーカー」または「ポジティブ選択マーカー」は、例えば、遺伝子を保有する細胞のみが一定の条件下で生存および/または成長することができる産物をコードする遺伝子をいう。例えば、導入されたネオマイシン耐性(Neo)遺伝子を発現する植物細胞および動物細胞は化合物G418に耐性を示す。Neo遺伝子マーカーを保有しない細胞は、G418によって死滅する。他のポジティブ選択マーカーが当業者に公知であろう。
【0091】
「宿主細胞」には、ベクターまたは核酸分子および/またはタンパク質の組み込みのためのレシピエントであり得るか、レシピエントであった対象となる細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には単一宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、天然の、偶然の、または故意の変異によって元の親と必ずしも完全に同一(形態または全DNA相補性において)であるとは限らないであろう。宿主細胞には、本開示の構築物でトランスフェクトした細胞が含まれる。
【0092】
本明細書中で使用する場合、用語「調整する」は、例えば、PXR遺伝子破壊に関連するPXRの機能、発現、活性、あるいは表現型の阻害、減少、増加、または増強をいう。PXR受容体に関して、モジュールには、受容体または分子と受容体との相互作用の結合性の変化、結合、活性化、関連、および/または阻害も含まれる。
【0093】
用語「回復する」は、例えば、容態、疾患、障害、または表現型(PXR遺伝子破壊に関連する異常または症状が含まれる)の減少、軽減、または消失をいう。
【0094】
用語「異常」は、例えば、PXR遺伝子破壊が意図される任意の疾患、障害、容態、または表現型(病的状態が含まれる)をいう。
【0095】
リファマイシンクラスの抗生物質は、例えば、式I:
【0096】
【化1】

(式中、Aは、構造A
【0097】
【化2】

または構造A
【0098】
【化3】

であってよく、−x−は共有結合性の化学結合であるか存在せず、Rは水素またはアセチルであり、
およびRは、独立して、水素、(C1〜4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−およびジ−(C1〜3)アルキルアミノ−(C1〜4)アルキル、(C1〜3)アルコキシ−(C1〜4)アルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシ−(C2〜4)−アルキル、ニトロを示すか、RおよびRは、ピリジン核の2つの連続した炭素原子と共に、1つまたは2つのメチル基またはエチル基で置換されていないか置換されたベンゼン環を形成し、Rは水素原子であるか存在せず、但し、AがAである場合、−x−は存在せず、Rは水素原子であり、さらに、但し、AがAである場合、−x−は共有結合性の化学結合であり、Rは存在しない)の構造を有する化合物である。
【0099】
上記のようにAはAまたはAであり、−x−は共有結合性の化学結合であるか存在せず、Rは水素またはアセチルであり、RおよびRは、独立して、水素、(C1〜4)アルキル、ベンジルオキシ、ヒドロキシ−(C2〜4)アルキル、ジ−(C1〜3)アルキルアミノ−(C1〜4)アルキル、ニトロを示すか、RおよびRは、ピリジン核の2つの連続した炭素原子と共に、ベンゼン環を形成し、Rは水素原子であるか存在せず、但し、AがAである場合、−x−は存在せず、Rは水素原子であり、さらに、但し、AがAである場合、−x−は共有結合性の化学結合であり、Rは存在しない、上記定義の化合物も本明細書中に記載する。
【0100】
上記のようにAはAまたはAであり、−x−は共有結合性の化学結合であるか存在せず、Rはアセチルであり、RおよびRは、独立して、水素、(C1〜4)アルキルを示すか、RおよびRは、ピリジン核の2つの連続した炭素原子と共に、ベンゼン環を形成し、Rは水素原子であるか存在せず、但し、AがAである場合、−x−は存在せず、Rは水素原子であり、さらに、但し、AがAである場合、−x−は共有結合性の化学結合であり、Rは存在しない、上記定義の化合物も本明細書中に記載する。
【0101】
4−デオキシ−4’−メチル−ピリド[1’,2’−1,2]イミダゾ[5,4−c]リファマイシンSVである、上記定義の化合物も本明細書中に記載する。4−デオキシ−ピリド[1’,2’:1,2]イミダゾ[5,4−c]リファマイシンSVである、上記定義の化合物も本明細書中に記載する。
【0102】
Aは上記の通りであり、−x−は共有結合性の化学結合であるか存在せず、Rは水素またはアセチルであり、RおよびRは、独立して、水素、(C1〜4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−およびジ−(C1〜3)アルキルアミノ(C1〜4)アルキル、(C1〜3)アルコキシ−(C1〜4)アルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシ−(C2〜4)−アルキル、ニトロを示すか、RおよびRは、ピリジン核の2つの連続した炭素原子と共に、1つまたは2つのメチル基またはエチル基で置換されていないか置換されたベンゼン環を形成し、Rは水素原子であるか存在せず、但し、AがAである場合、−x−は存在せず、Rは水素原子であり、さらに、但し、AがAである場合、−x−は共有結合性の化学結合であり、Rは存在しない、上記定義の化合物も本明細書中に記載する。
【0103】
リファキシミンは、式II:
【0104】
【化4】

の構造を有する化合物である。
【0105】
BD関連配列
BD配列を、本明細書中に概説のBD配列に対する実質的な核酸および/またはアミノ酸の配列相同性によって最初に同定することができる。かかる相同性は、核酸配列またはアミノ酸配列全体に基づくことができ、一般に、相同性プログラムまたはハイブリッド形成条件のいずれかを使用して以下に概説のように決定する。1つの実施形態では、BD配列は、BD中で上方制御される配列である。すなわち、これらの遺伝子の発現は、正常組織と比較してBD組織でより高い。本明細書中で使用する場合、「上方制御」は、約50%、好ましくは約100%、より好ましくは約150%〜約200%の発現の増加(300%〜1000%の上方制御)を意味する。
【0106】
別の実施形態では、BD配列は、BD中で下方制御される配列である。すなわち、これらの遺伝子の発現は、同一の分化段階の正常組織と比較してBD組織でより低い。本明細書中で使用する場合、「下方制御」は、約50%、好ましくは約100%、より好ましくは約150%〜約200%の発現の減少(300%〜1000%から発現なしまでの下方制御)を意味する。
【0107】
さらに別の実施形態では、BD配列は、同一の分化段階の正常なリンパ組織と比較して配列が変化しているが、同一または変化した発現プロフィールのいずれかを示す配列である。本明細書中で使用する場合、「変化したBD配列」はまた、例えば、短縮されているか、挿入を含むか、点変異を含む配列をいう。
【0108】
1つの実施形態では、BD配列は、膜貫通タンパク質である。膜貫通タンパク質は、細胞のリン脂質二重層に広がる分子である。膜貫通タンパク質は、細胞内ドメイン、細胞外ドメイン、またはその両方を有し得る。かかるタンパク質の細胞内ドメインは、多数の機能(細胞内タンパク質について既に記載の機能が含まれる)を有し得る。タンパク質はまた、細胞内タンパク質、核内タンパク質、分泌タンパク質であり得る。
【0109】
一般に、本明細書中で使用する場合、用語「ポリペプチド」は、例えば、詳述のポリヌクレオチドによってコードされる全長ポリペプチドおよび列挙したポリヌクレオチドによって示される遺伝子によってコードされるポリペプチドの両方、ならびにその一部またはフラグメントをいう。本発明は、天然に存在するタンパク質の改変体を含み、かかる改変体は天然に存在するタンパク質と相同であるか実質的に類似し、天然に存在するタンパク質と同一または異なる種(例えば、ヒト、マウス、または列挙したポリペプチドを天然に発現するいくつかの他の種(通常、哺乳動物種))を起源とし得る。一般に、改変体ポリペプチドは、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、通常には少なくとも約90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、より通常には少なくとも約99%の配列が異なって発現された本明細書中に記載のポリペプチドと同一である配列を有する。
【0110】
改変体も本発明の範囲内に含まれる。ポリペプチドの改変体には、変異体、フラグメント、および融合物が含まれる。変異体は、アミノ酸の置換、付加、または欠失を含むことができる。アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換または非必須アミノ酸を排除するか(グリコシル化部位、リン酸化部位、またはアセチル化部位を変化させるなど)、機能に必要でない1つまたは複数のシステイン残基の置換または欠失による誤折り畳みを最小にするための置換であり得る。保存的アミノ酸置換は、置換アミノ酸の全体的な電荷、疎水性/親水性、および/または立体容積が保存された置換である。タンパク質の特定の領域(例えば、機能ドメインおよび/または(ポリペプチドがタンパク質ファミリーのメンバーである場合)コンセンサス配列に関連する領域)の生物学的活性を保持するか増強されるように改変体をデザインすることができる。
【0111】
改変体はまた、本明細書中に開示のポリペプチドのフラグメント、特に、生物学的に活性なフラグメント、および/または機能ドメインに対応するフラグメントを含む。目的のフラグメントは、典型的には、少なくとも約8アミノ酸(aa)長、10aa長、15aa長、20aa長、25aa長、30aa長、35aa長、40aa長から少なくとも約45aa長、通常少なくとも約50aa長、少なくとも約75aa長、少なくとも約100aa長、少なくとも約125aa長、少なくとも約150aa長、少なくとも約200aa長、少なくとも約300aa長、少なくとも約400aa長であろう。任意の1つの本明細書中に提供するポリヌクレオチド配列またはそのホモログの配列を有するポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと同一であるアミノ酸をフラグメントが有する場合、500aa長以上の長さであり得るが、通常は約1000aa長を超えないであろう。本明細書中に記載のタンパク質改変体は、本発明の範囲内のポリヌクレオチドによってコードされる。遺伝暗号を使用して適切なコドンを選択して、対応する改変体を構築することができる。
【0112】
BDに関連するポリヌクレオチド発現の変化が認められる一方で、これらのポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの発現レベルの変化がBDで役割を果たす可能性が高いかもしれない。
【0113】
以下で概説のようにクローン化および発現されるBDファミリーの他のBDタンパク質および他の生物由来のBDタンパク質も、1つの実施形態でBDタンパク質の定義内に含まれる。したがって、プローブまたは縮重ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列を使用して、ヒトまたは他の生物から他の関連BDタンパク質を見出すことができる。当業者に認識されるように、特に有用なプローブおよび/またはPCRプライマー配列は、BD核酸配列の固有の領域を含む。当該分野で一般的に知られているように、一定のPCRプライマーは約15〜約35ヌクレオチド長であり、約20〜約30が確かであり、必要に応じてイノシンを含むことができる。PCRの反応条件は当該分野で周知である。さらに、本明細書中で概説するように、例えば、さらなる配列の解明、エピトープまたは精製タグの付加、他の融合配列の付加などによって図の核酸によってコードされるものよりも長いBDタンパク質を作製することができる。BDタンパク質を、BD核酸によってコードされると同定することもできる。したがって、BDタンパク質は、本明細書中で概説するように、配列表の配列またはその相補物とハイブリッド形成する核酸によってコードされる。
【0114】
BD配列は、本明細書中に概説のBD配列に対する実質的な核酸および/またはアミノ酸の配列相同性によって最初に同定される。かかる相同性は、核酸配列またはアミノ酸配列全体に基づくことができ、一般に、相同性プログラムまたはハイブリッド形成条件のいずれかを使用して以下に概説のように決定する。
【0115】
本明細書中で使用する場合、本明細書中に記載の1つの核酸に対する核酸配列の全相同性が好ましくは約75%超、約80%超、約85%超、または90%超である場合、核酸は「BD核酸」である。いくつかの実施形態では、相同性は、約93〜95%または98%の高さであろう。1つの実施形態では、配列同一性または配列類似性を決定するために使用される配列は、本明細書中に記載の核酸配列から選択される。別の実施形態では、配列は、本明細書中に記載の核酸配列の天然に存在する対立遺伝子改変体である。別の実施形態では、配列は、本明細書中にさらに記載の配列改変体である。
【0116】
この文脈での相同性は、配列類似性または配列同一性を意味する。相同性を目的とした比較は、配列エラーを含む配列を正確な配列と比較することである。この相同性を、当該分野で公知の標準的技術(Smith & Waterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman、PNAS USA 85:2444(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive,Madison,Wis.中のGAP,BESTFIT,FASTA,およびTFASTA)のコンピュータ化された実行、Devereuxら、Nucl.Acid Res.12:387−395(1984)によって記載されたBest Fit配列プログラム(好ましくはデフォルト値を使用)、または目視が含まれるが、これらに限定されない)を使用して決定するであろう。有用なアルゴリズムの一例はPILEUPである。PILEUPは、プログレッシブペアワイズアラインメントを使用して、関連配列群から複数の配列アラインメントを作製する。これは、アラインメントを作製するために使用したクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることもできる。PILEUPは、簡略化されたFeng & Doolittle、J.Mol.Evol.35:351−360(1987)のプログレッシブアラインメント法を使用する。本方法は、Higgins & Sharp CABIOS 5:151−153(1989)によって記載された方法と類似する。有用なPILEUPパラメーターには、デフォルトギャップウェイト3.00、デフォルトギャップレングスウェイト0.10、および加重エンドギャップが含まれる。有用なアルゴリズムの別の例は、Altschulら、J.Mol.Biol.215,403−410,(1990)およびKarlinら、PNAS USA 90:5873−5787(1993)に記載のBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschulら、Methods in Enzymology,266:460−480(1996);http://blast.wustl.edu/から得られるWU−BLAST−2プログラムである。WU−BLAST−2は、いくつかの検索パラメーターを使用し、そのほとんどがデフォルト値に設定される。調整可能なパラメーターを、以下の値の範囲内に設定する:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11。HSP SおよびHSP S2パラメーターは動的な値であり、特定の配列の組成および目的の配列が検索される特定のデータベースの組成に応じてプログラム自体によって確立されるが、感度を増加させるために値を調整することができる。アミノ酸配列の同一率を、マッチングした同一残基数をアラインメントした領域中の「より長い」配列の総残基数で割ることによって決定する。「より長い」配列は、アラインメントした領域中の最多数の実際の残基を有する配列である(アラインメントスコアを最大にするためにWU−Blast−2によって導入されたギャップは無視する)。したがって、「核酸配列同一率(%)」を、アクセッション番号:NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、またはCS618133の核酸のヌクレオチド残基と同一の候補配列中のヌクレオチド残基の比率と定義する。
【0117】
本発明の別の実施形態では、中〜高ストリンジェンシー条件下で本明細書中に提供したポリヌクレオチド配列またはそのフラグメントもしくは相補配列とハイブリッド形成することができるポリヌクレオチド組成物を提供する。ハイブリッド形成技術は、分子生物学分野で周知である。例示のために、本発明のポリヌクレオチドの他のポリヌクレオチドとのハイブリッド形成試験に適切な中ストリンジェント条件は、5×SSC(「クエン酸ナトリウム−生理食塩水液」;9mM NaCl、0.9mMクエン酸ナトリウム)、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液での予備洗浄、5×SSCにて50〜60℃で一晩のハイブリッド形成、その後の0.1%SDSを含む各2×SSC、0.5×SSC、および0.2SSCでの65℃で20分間の2回の洗浄を含む。当業者は、ハイブリッド形成のストリンジェンシーを、ハイブリッド形成溶液の塩含有量および/またはハイブリッド形成を行う温度の変化などによって容易に操作することができると理解するであろう。例えば、別の実施形態では、適切な高ストリンジェントハイブリッド形成条件は、ハイブリッド形成温度を、例えば、60〜65℃または65〜70℃に上昇させることを除いて、上記の条件を含む。ストリンジェント条件を、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって達成することもできる。
【0118】
さらに、本発明のBD核酸配列は、より長い遺伝子のフラグメントである。例えば、BD核酸配列は核酸セグメントである。あるいは、BD核酸配列は、癌遺伝子位置の指標としての機能を果たすことができる。例えば、BD配列は、癌原遺伝子を活性化するエンハンサーであり得る。この文脈中の「遺伝子」は、コード領域、非コード領域、およびコード領域と非コード領域との混合物を含む。したがって、当業者に認識されるように、本明細書中に提供した配列を使用し、より長い配列または全長配列のいずれかのクローニングのための当該分野で周知の技術を使用して、さらなるBD遺伝子配列を得ることができる。Maniatisら、およびAusubelら,前出(本明細書中で参考として明確に援用される)を参照のこと。一般に、PCR(例えば、動態学的PCR)を使用してこれを行う。
【0119】
BD発現の検出
一旦BD核酸が同定されると、これをクローン化し、必要に応じて、その構成部分を組み換えて全BD核酸を形成することができる。一旦その天然供給源から単離される(例えば、プラスミドまたは他のベクター内に含まれるか、線状核酸セグメントとして切り出される)と、組換えBD核酸を、他のBD核酸(例えば、さらなるコード領域)を同定および単離するためのプローブとしてさらに使用することができる。これを、修飾BD核酸または改変体BD核酸およびタンパク質を作製するための「前駆体」核酸として使用することもできる。1つの実施形態では、一旦BD遺伝子が同定されると、そのヌクレオチド配列を使用して、BD遺伝子に特異的なプローブをデザインする。
【0120】
本発明のBD核酸を、いくつかの方法で使用する。第1の実施形態では、BD核酸とハイブリッド形成可能な核酸プローブを作製し、スクリーニング法および診断法で使用されるか遺伝子療法および/またはアンチセンスへの適用のためにバイオチップに付着させる。あるいは、BDタンパク質のコード領域を含むBD核酸を、BDタンパク質発現、さらに、スクリーニングまたは被験体への投与のいずれかのために発現ベクターに入れ込むことができる。
【0121】
最近のDNAマイクロアレイテクノロジーの発展により、単一の固相支持体上での複数の標的BD核酸分子の大規模アッセイを行うことが可能となっている。米国特許第5,837,832号(Cheeら)および関連特許出願は、サンプル中の特異的核酸配列のハイブリッド形成および検出のためのオリゴヌクレオチドプローブアレイの固定を記載している。目的の組織から単離した目的の標的ポリヌクレオチドを、DNAチップおよび標的ポリヌクレオチドの優先度および個別のプローブ位置でのハイブリッド形成度に基づいて検出した特異的配列とハイブリッド形成する。異なる細胞(しばしば目的の細胞およびコントロール細胞)中の遺伝子の発現プロフィールを比較し、各細胞間の遺伝子発現の任意の差異を同定する場合、アレイの1つの使用例は、差次的遺伝子発現の分析における使用である。かかる情報は、特定の細胞または組織型で発現した遺伝子型の同定および発現プロフィールに基づいたBD容態の診断に有用である。米国特許第6,410,229(Lockhartら)を参照のこと。例えば、ヒト癌における遺伝子発現パターンを分析するためのcDNAマイクロアレイの使用は、DeRisiら(Nature Genetics 14:457−460(1996))によって記載されている。
【0122】
一定の実施形態では、プローブはキメラ分子であり得、例えば、1つを超える塩基または糖のサブユニット型を含むことができ、そして/または結合は同一プライマー内の1つを超える型に由来し得る。プローブは、当該分野で公知のように、その標的配列とのハイブリッド形成を容易にするための部分(例えば、介入物および/または副溝結合剤)を含むことができる。塩基、糖、およびヌクレオシド間骨格の変動、ならびにプローブ上の任意の懸垂基の存在は、配列特異的様式でその標的配列に結合するプローブの能力に適合するであろう。既知および開発中の多数の構造修飾は、これらの結合内で可能である。有利には、本発明のプローブは、シグナルが増幅されるような構造的特徴を有することができ、かかる構造的特徴は、Urdeaら(核酸 Symp.Ser.,24:197−200(1991))または欧州特許第EP−0225,807号に記載の分岐DNAプローブなどの分岐DNAプローブである。さらに、プローブを形成する種々の複素環の塩基、糖、ヌクレオシド、およびヌクレオチドの調製ならびに特定の所定の配列のオリゴヌクレオチドの調製のための合成方法は、十分に開発されており、当該分野で公知である。1つのオリゴヌクレオチド合成方法は、米国特許第5,419,966号の教示を組み込んでいる。
【0123】
1つの実施形態では、BDタンパク質をコードするBD核酸を使用してBDタンパク質を発現するための種々の発現ベクターを作製し、次いで、これを下記のようにスクリーニングアッセイで使用することができる。発現ベクターは、自己複製染色体外ベクターまたは宿主ゲノムに組み込まれるベクターのいずれかであり得る。一般に、これらの発現ベクターには、BDタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結された転写および翻訳調節核酸が含まれる。用語「調節配列」は、例えば、特定の宿主生物中の作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列をいう。原核生物に適切な調節配列には、例えば、プロモーター、任意選択的なオペレーター配列、およびリボゾーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを使用することが公知である。
【0124】
核酸は、別の核酸配列と機能的に関係する場合、「作動可能に連結」される。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結される。プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結される。または、リボゾーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結された」は、連結されたDNA配列が連続的であり、分泌リーダーの場合、連続的且つ読み取り相にあることを意味する。しかし、エンハンサーは連続的である必要はない。種々の宿主細胞のための多数の適切な発現ベクター型および適切な調節配列型は、当該分野で公知である。
【0125】
一般に、転写および翻訳調節配列には、プロモーター配列、リボゾーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終結配列、ならびにエンハンサー配列またはアクチベーター配列が含まれ得るが、これらに限定されない。1つの実施形態では、調節配列には、プロモーターならびに転写開始配列および転写終結配列が含まれる。プロモーター配列は、構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれかをコードする。プロモーターは、天然に存在するプロモーターまたはハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。1つを超えるプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターも当該分野で公知であり、本発明で有用である。
【0126】
さらに、発現ベクターは、さらなるエレメントを含むことができる。例えば、発現ベクターは2つの複製系を有することができ、したがって、2つの生物中(例えば、発現のための哺乳動物細胞中または昆虫細胞中およびクローニングおよび増幅のための原核生物宿主中)に維持することが可能となる。さらに、1つの実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞を選択可能にするための選択マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は当該分野で周知であり、使用される宿主細胞に応じて変化するであろう。
【0127】
本発明のBDタンパク質を、例えば、BDタンパク質の発現を誘導するか引き起こすための適切な条件下で、BDタンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することによって産生することができる。BDタンパク質発現に適切な条件は、選択する発現ベクターおよび宿主細胞に応じて変化し、日常的な実験により当業者によって容易に確認されるであろう。例えば、発現ベクター中の構成性プロモーターの使用は、宿主細胞の成長および増殖の至適化に必要である一方で、誘導性プロモーターの使用は、誘導に適切な成長条件に必要であろう。さらに、いくつかの実施形態では、回収のタイミングが重要である。例えば、昆虫細胞発現で使用されるバキュロウイルス系は、溶解性ウイルスであり、したがって、回収時期の選択は、産物の収量に非常に重要であり得る。
【0128】
BDタンパク質を、当該分野で周知の技術を使用して、融合タンパク質として作製することもできる。
【0129】
1つの実施形態では、本発明のBD核酸、タンパク質、および抗体を標識する。本明細書中の「標識された」は、化合物を直接または間接的に標識し、検出可能なシグナルが得られる少なくとも1つのエレメント(例えば、化合物を検出することができるように付着させた同位体または化合物)を有することができることを意味する。一般に、標識には、同位体標識(放射性同位体標識または重同位体であり得る)、磁気標識、酵素標識、免疫標識(抗体または抗原であり得る)、および有色色素または蛍光色素が含まれる。標識を、BD核酸、タンパク質、および抗体の任意の位置に組み込むことができる。例えば、標識は、検出可能なシグナルを直接または間接的に産生することができなければならない。検出可能な部分は、放射性同位体(H、14C、32P、35S、または125Iなど)、蛍光化合物または化学発光化合物(フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、またはルシフェリンなど)、または酵素(アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、または西洋ワサビペルオキシダーゼなど)であり得る。抗体を標識に抱合するための当該分野で公知の任意の方法(Hunterら、Nature,144:945(1962);Davidら、Biochemistry,13:1014(1974);Painら、J.Immunol.Meth.,40:219(1981);およびNygren,J.Histochem.およびCytochem.,30:407(1982)に記載の方法が含まれる)を使用することができる。他の標識には、特異的結合分子が含まれ得る。特異的結合分子には、対(ビオチンおよびストレプトアビジン、ジゴキシンおよび抗ジゴキシンなど)が含まれる。特異的結合メンバーについて、相補メンバーを、通常、上記で概説するように、公知の手順にしたがって検出される分子で標識するであろう。標識により、検出可能なシグナルを直接または間接的に得ることができる。
【0130】
1つの実施形態では、候補生物活性剤の結合を、競合結合アッセイの使用によって決定する。この実施形態では、競合物は、標的分子(例えば、BDタンパク質)に結合することが公知の結合部分(抗体、ペプチド、結合パートナー、リガンドなど)である。一定の環境下で、生物活性剤と結合部分との間で競合結合が起こり得、結合部分が生物活性剤に取って代わる。
【0131】
BD抗原およびBD抗原に対する抗体
1つの実施形態では、本発明は、BD特異的抗体を提供する。1つの実施形態では、BDタンパク質が、例えば、免疫療法のための抗体を生成するために使用される場合、BDタンパク質は、少なくとも1つのエピトープまたは決定基を全長タンパク質と共有すべきである。本明細書中の「エピトープ」または「決定基」は、MHCの状況下で抗体またはT細胞受容体を生成し、そして/またはこれらと結合するタンパク質の一部を意味する。したがって、ほとんどの場合、より小さなBDタンパク質に対して作製された抗体は、全長タンパク質に結合することができるであろう。1つの実施形態では、エピトープは固有である。すなわち、固有のエピトープに対して生成された抗体は、交差反応性をほとんど示さないか、全く示さない。BDポリヌクレオチド配列によってコードされる任意のポリペプチド配列を分析して、ポリペプチドの一定の領域を決定することができる。高抗原性領域を、例えば、免疫応答の開始過程で抗原認識が生じ得る環境下でポリペプチド表面上に露呈される可能性が高いポリペプチド領域を示す値の選択によるDNASTAR分析によってデータから決定する。例えば、BDポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を、DNASTARコンピュータアルゴリズム(DNASTAR,Inc.,Madison,Wis.;ワールドワイドウェブのdnastar.comで見出される)のデフォルトパラメーターを使用して分析することができる。
【0132】
1つの実施形態では、用語「抗体」には、全抗体または組換えDNAテクノロジーを使用して再度合成された抗体の修飾によって産生された当該分野で公知の抗体フラグメント(Fab、Fab、単鎖抗体(例えば、Fv)、キメラ抗体などが含まれる)が含まれる。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に公知である。ポリクローナル抗体を、例えば、免疫剤および必要に応じたアジュバントの1回または複数回の注射によって哺乳動物中で惹起することができる。あるいは、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体を、KohlerおよびMilstein、Nature,256:495(1975)によって記載の方法などのハイブリドーマ法を使用して調製することができる。1つの実施形態では、BDに対する抗体は、下記のように、BDの生物機能を減少または消失させることができる。すなわち、BD(またはBDを含む細胞)への抗BD抗体(ポリクローナル抗体または好ましくはモノクローナル抗体のいずれか)の添加により、BD活性を減少または消失させることができる。1つの実施形態では、BDタンパク質に対する抗体はヒト化抗体である。「ヒト化」抗体は、非ヒト種由来の免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有し、且つヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づいた分子の免疫グロブリン構造を維持する分子をいう。BDタンパク質に対する特異的抗体(ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれか)を、上記で考察の当該分野で公知の任意の適切な方法によって産生することができる。例えば、マウスまたはヒトモノクローナル抗体を、ハイブリドーマテクノロジーによって産生することができるか、BDタンパク質もしくはその免疫学的に活性なフラグメントまたは抗イディオタイプ抗体もしくはそのフラグメントを動物に投与して、BDタンパク質を認識して結合することができる抗体の産生を誘発することができる。かかる抗体は、任意の抗体クラス(IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgE、または、鳥類の場合、IgYが含まれるが、これらに限定されない)および任意の抗体サブクラスに由来し得る。
【0133】
別の一定の実施形態では、抗体が惹起されるBDタンパク質は膜貫通タンパク質である。理論に拘束されないが、治療のために使用される抗体は、BDタンパク質の細胞外ドメインに結合し、細胞外ドメインの他のタンパク質(循環リガンドまたは細胞結合分子など)への結合を予防する。抗体により、膜貫通BDタンパク質を下方制御することができる。当業者によって認識されるように、抗体は、BDタンパク質の細胞外ドメインへのタンパク質結合の競合性インヒビター、非競合性インヒビター、または不競合性インヒビターであり得る。抗体はまた、BDタンパク質のアンタゴニストである。さらに、抗体は、膜貫通BDタンパク質の活性化を予防する。1つの態様では、抗体がBDタンパク質への他の分子の結合を予防する場合、抗体は細胞成長を予防する。抗体はまた、細胞毒性薬(TNF−α、TNF−β、IL−1、INF−γ、およびIL−2が含まれるが、これらに限定されない)または化学療法薬(5FU、ビンブラスチン、アクチノマイシン D、シスプラチン、およびメトトレキサートなどが含まれる)に対して細胞を感作させることができる。いくつかの例では、抗体は、膜貫通タンパク質と複合体化した場合に血清補体を活性化し、それによって細胞傷害性を媒介するサブタイプに属する。したがって、BDを、膜貫通BDタンパク質に指向する本抗体への投与によって処置することができる。
【0134】
別の一定の実施形態では、抗体を治療部分に抱合する。1つの態様では、治療部分は、BDタンパク質の活性を調整する小分子である。別の態様では、治療部分は、BDタンパク質に会合するか、ごく接近した分子の活性を調整する。治療部分は、BDに関連するプロテアーゼ活性またはタンパク質キナーゼなどの酵素活性を阻害することができる。
【0135】
別の一定の実施形態では、抗体が惹起されるBDタンパク質は細胞内タンパク質である。この場合、抗体を、細胞への侵入を容易にするタンパク質に抱合することができる。1つの場合、抗体はエンドサイトーシスによって細胞に侵入する。別の実施形態では、抗体をコードする核酸を、個体または細胞に投与する。さらに、BDタンパク質を細胞内(例えば、核内)でターゲティングすることができる場合、その抗体は、局在化をターゲティングするシグナル(例えば、核局在化シグナル)を含む。
【0136】
本発明のBD抗体は、BDタンパク質に特異的に結合する。本明細書中の「特異的に結合する」は、抗体が10〜10−6Mの範囲(ある範囲は10−7〜10−9Mである)の結合定数でタンパク質に結合することを意味する。1つの実施形態では、BDタンパク質を、発現後に精製または単離する。BDタンパク質を、どのようなタンパク質成分がサンプル中に存在するかに応じて、当業者に公知の種々の方法で単離または精製することができる。
【0137】
本明細書中に記載の抗体の産生には、例えば、1つまたは複数のエピトープを特異的に認識することができる抗体の産生方法が含まれる。かかる抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAbs)、ヒト化抗体またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されたフラグメント、抗イディオタイプ(抗−Id)抗体、および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれ得るが、これらに限定されない。かかる抗体を、例えば、生物サンプル中のPXR遺伝子の検出で使用することができるか、異常なPXR遺伝子活性の阻害方法として使用することができる。したがって、かかる抗体を、異常なPXR遺伝子タンパク質レベル、またはかかるタンパク質の異常な形態の存在について被験体を試験することができる疾患治療方法の一部として使用することができ、そして/または診断技術の一部として使用することができる。
【0138】
抗体産生のために、種々の宿主動物を、PXR遺伝子、その発現産物、またはその一部を使用した注射によって免疫化することができる。かかる宿主動物には、ほんの数例を挙げれば、ウサギ、マウス、ラット、ヤギ、およびニワトリが含まれ得るが、これらに限定されない。宿主の種に応じて種々のアジュバント(フロインド(完全および不完全)、ミネラルゲル(水酸化アルミニウムなど)、界面活性物質(リゾレシチンなど)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホール−リンペット−ヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なヒトアジュバント(BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびCorynebacterium parvumなど)が含まれ得るが、これらに限定されない)を使用して、免疫学的応答を増加させることができる。
【0139】
ポリクローナル抗体は、抗原(PXR遺伝子産物など)またはその抗原機能性誘導体で免疫化した動物の血清に由来する抗体分子の不均一な集団である。ポリクローナル抗体産生のために、宿主動物(上記の宿主抗体など)を、上記にも記載のアジュバントを補足した遺伝子産物を使用した注射によって免疫化することができる。
【0140】
特定の抗原に対する抗体の均一な集団であるモノクローナル抗体を、連続細胞株の培養によって抗体分子が産生される任意の技術によって得ることができる。これらには、KohlerおよびMilstein、Nature,256:495−7(1975)および米国特許第4,376,110号のハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら、Immunology Today,4:72(1983);Coteら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:2026−30(1983))、およびEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、in Monoclonal Antibodies And BD Therapy、Alan R.Liss,Inc.、New York、pp.77−96(1985))が含まれ得るが、これらに限定されない。かかる抗体は、任意の免疫グロブリンクラス(IgG、IgM、IgE、IgA、IgDが含まれる)および任意のそのサブクラスに由来し得る。この開示のmAbを産生するハイブリドーマを、インビトロまたはインビボで培養することができる。インビボでの高力価のmAbの産生により、現在、一定の産生方法が得られている。
【0141】
さらに、適切な生物学的活性を示すヒト抗体分子由来の遺伝子との適切な抗原特異性を示すマウス抗体由来の遺伝子のスプライシングによる「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.,81:6851−6855(1984);Takedaら、Nature,314:452−54(1985))を使用することができる。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子(マウスmAb由来の可変領域およびヒト免疫グロブリンの定常領域を有する分子など)である。
【0142】
あるいは、単鎖抗体産生について記載の技術(米国特許第4,946,778;Bird、Science 242:423−26(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5879−83(1988);およびWardら、Nature,334:544−46(1989))を、遺伝子−単鎖抗体を産生するように適合させることができる。単鎖抗体を、典型的には、アミノ酸架橋を介したFv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントを連結して単鎖ポリペプチドを得ることによって形成する。
【0143】
特異的エピトープを認識する抗体フラグメントを、公知の技術によって生成することができる。例えば、かかるフラグメントには、抗体分子のペプシン消化によって産生することができるF(ab’)フラグメントおよびF(ab’)フラグメントのジスルフィド架橋の還元によって生成することができるFabフラグメントが含まれ得るが、これらに限定されない。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントを迅速且つ容易に同定するためのFab発現ライブラリーを構築することができる(Huseら、Science,246:1275−81(1989))。
【0144】
BD表現型の検出
一旦発現および精製されると、必要に応じて、BDタンパク質およびBD核酸は、多数の適用で有用である。1つの態様では、BD表現型における異なる細胞状態についての遺伝子の発現レベルを決定する。すなわち、正常組織およびBD組織中の遺伝子の発現レベルを評価して発現プロフィールを得る。特定の細胞状態または発生点の発現プロフィールは、本質的に、状態の「フィンガープリント」である一方で、2つの状態は、同様に発現する任意の特定の遺伝子を有することができ、多数の遺伝子の評価によって細胞の状態に固有の遺伝子発現プロフィールが同時に得られる。異なる状態の細胞の発現プロフィールの比較により、これらの各状態で遺伝子がどちらであるか(遺伝子の上方制御および下方制御の両方が含まれる)に関する情報が得られる。次いで、診断を行うか、例えば、特定の被験体由来の組織が正常組織またはBD組織の遺伝子発現プロフィールを有するかを確認することができる。
【0145】
1つの実施形態では、本明細書中に記載の3つのタンパク質クラスのいずれか(分泌タンパク質、膜貫通タンパク質、または細胞内タンパク質)を、診断アッセイで使用する。BDタンパク質、抗体、核酸、修飾タンパク質、およびBD配列を含む細胞を、診断アッセイで使用する。本遺伝子レベルもしくは対応するポリペプチドレベルについてまたはアッセイ組としてこれを行うことができる。
【0146】
別の一定の方法では、BDタンパク質に対する抗体をインサイチュ画像化技術で使用する。この方法では、細胞を、1つから多数までのBDタンパク質に対する抗体と接触させる。非特異的抗体結合を除去するための洗浄後、抗体の存在を検出する。1つの実施形態では、検出可能な標識を含む二次抗体とのインキュベーションによって抗体を検出する。別の方法では、BDタンパク質に対する一次抗体は検出可能な標識を含む。別の一定の実施形態では、複数の一次抗体はそれぞれ異なる検出可能な標識を含む。この方法を、特に、複数のBDタンパク質の同時スクリーニングで使用する。当業者によって認識されるように、多数の他の組織学的画像化技術は、本発明で有用である。
【0147】
被験体と標準との間の発現フィンガープリントを比較した場合、当業者は診断および予後を得ることができると理解される。診断を示す遺伝子が予後を示す遺伝子と異なり得ることがさらに理解される。
【0148】
候補組成物のスクリーニング
1つの実施形態では、本明細書中に記載の任意のBD配列を、薬物スクリーニングアッセイで使用する。BDタンパク質、抗体、核酸、修飾タンパク質、およびBD配列を含む細胞を、薬物スクリーニングアッセイで使用するか、「遺伝子発現プロフィール」またはポリペプチドの発現プロフィールに及ぼす薬物候補の影響の評価によって使用する。1つの実施形態では、発現プロフィールを、好ましくは、候補剤での処置後に発現プロフィール遺伝子をモニタリング可能な高処理スクリーニング技術と併せて使用する(Zlokarnikら、Science 279,84−8(1998)、Heidら、Genome Res.,6:986−994(1996))。
【0149】
別の実施形態では、BDタンパク質、抗体、核酸、修飾タンパク質、および未変性または修飾BDタンパク質を含む細胞をスクリーニングアッセイで使用する。すなわち、本発明は、BD表現型を調整する組成物の新規なスクリーニング方法を提供する。上記のように、遺伝子発現の修飾因子またはタンパク質活性の修飾因子のスクリーニングによってこれを行うことができる。同様に、本遺伝子またはタンパク質レベルについて、または「遺伝子発現プロフィール」に及ぼす薬物候補の影響の評価によってこれを行うことができる。1つの実施形態では、発現プロフィールを、好ましくは、候補剤での処置後に発現プロフィール遺伝子をモニタリング可能な高処理スクリーニング技術と併せて使用する(Zlokarnik、前出を参照のこと)。
【0150】
本明細書中のBD遺伝子が同定されると、遺伝子発現に及ぼす薬剤の影響を評価するための種々のアッセイを実行することができる。1つの実施形態では、本遺伝子またはタンパク質レベルに対してアッセイを行うことができる。すなわち、特定の遺伝子がBDで異常に調節されると同定されると、遺伝子調節を調整するための候補生物活性剤をスクリーニングすることができる。したがって、「調整」には、遺伝子の発現または活性の増加および減少の両方が含まれる。一定の調整量は、正常組織対BD組織の遺伝子発現の元の変化(少なくとも10%、好ましくは50%、より好ましくは100〜300%、いくつかの実施形態では300〜1000%またはそれを超える変化)に依存するであろう。したがって、遺伝子が正常組織と比較してBDで4倍増加する場合、約1/4に減少させることが望ましい。正常組織と比較してBDで1/10に減少する場合、候補剤で10倍に増加させることなどが望ましい。あるいは、BD配列は変化したが、同一の発現プロフィールまたは変化した発現プロフィールを示す場合、タンパク質を本明細書中に概説のように検出するであろう。
【0151】
当業者に認識されるように、遺伝子レベルまたはタンパク質レベルのいずれかでの評価によってこれを行うことができる。すなわち、遺伝子発現量を、核酸プローブを使用してモニタリングすることができるか、遺伝子発現レベルまたは遺伝子産物自体のレベルの定量を、例えば、BDタンパク質に対する抗体および標準的な免疫アッセイの使用によってモニタリングすることができる。あるいは、タンパク質を使用した結合アッセイおよび生物活性アッセイを以下に概説のように行うことができる。
【0152】
1つの実施形態では、遺伝子発現のモニタリングを行い、多数の遺伝子(例えば、発現プロフィール)を同時にモニタリングするが、複数のタンパク質発現のモニタリングを同様に行うことができる。
【0153】
一般に、1つの実施形態では、分析前に候補生物活性剤を細胞に添加する。さらに、スクリーニングを行って、特定のBD型を調整するか、BDタンパク質を調整するか、BDタンパク質に結合するか、BDタンパク質と抗体との間の結合を干渉する候補生物活性剤を同定する。
【0154】
本明細書中で使用する場合、用語「候補生物活性剤」、「候補剤」、「候補組成物」、または「薬物候補」、または文法上の等価物は、BD表現型、BDタンパク質への結合および/または生物活性の調整、またはBD配列(核酸配列およびタンパク質配列の両方が含まれる)の発現のいずれかを直接または間接的に変化させることができる生物活性剤について試験すべき任意の分子、(例えば、タンパク質、オリゴペプチド、有機小分子または無機小分子、ポリサッカリド、ポリヌクレオチドなど)を説明する。特に一定の実施形態では、候補剤は、例えば、正常な組織フィンガープリントにBD表現型を抑制する。同様に、候補剤は、好ましくは、重篤なBD表現型を抑制する。一般に、複数のアッセイ混合物を、異なる薬剤濃度を使用して並行してアッセイして、種々の濃度に対する異なる応答を得る。典型的には、これらの濃度のうちの1つは、例えば、濃度0または検出レベル未満でのネガティブコントロールとして役立つ。
【0155】
1つの態様では、候補剤は、BDタンパク質の影響を中和するであろう。「中和する」は、タンパク質活性を阻害するか反作用して、細胞に対する影響が実質的になくなることを意味する。
【0156】
候補剤は多数の化学クラスを含むが、典型的には、有機分子または無機分子、好ましくは、100ダルトンを超え、且つ約2,500ダルトン未満の分子量の有機小化合物である。小分子は、例えば、2000D未満、1500D未満、1000D未満、または500D未満であり得る。候補剤は、タンパク質との構造的相互作用(特に、水素結合)に必要な官能基を含み、典型的には、少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を含み、好ましくは少なくとも2つの化学反応性官能基を含む。候補剤は、しばしば、1つまたは複数の上記官能基と置換された環状炭素構造または複素環構造および/または芳香族構造または多環芳香族構造を含む。候補剤はまた、生体分子(ペプチド、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、その構造アナログまたは組み合わせが含まれる)の間で見出される。
【0157】
候補剤は、広範な種々の供給源(合成化合物または天然化合物のライブラリーが含まれる)から得られる。例えば、多数の手段が広範な種々の有機化合物および生体分子の無作為および指向性の合成(無作為化オリゴヌクレオチドの発現が含まれる)に利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが利用可能であるか、容易に産生される。さらに、天然または合成的に産生されたライブラリーおよび化合物を、従来の化学的、物理的、および生化学的手段によって容易に修飾する。公知の薬理学的作用物質を、指向性または無作為な化学修飾(アシル化、アルキル化、エステル化、またはアミド化など)に供して構造アナログを生成することができる。1つの実施形態では、候補生物活性剤はタンパク質である。1つの実施形態では、候補生物活性剤は、天然に存在するタンパク質または天然に存在するタンパク質のフラグメントである。したがって、例えば、タンパク質を含む細胞抽出物またはタンパク質性細胞抽出物の無作為または指向性の消化物を使用することができる。このようにして、本発明の方法におけるスクリーニングのための原核生物または真核生物のタンパク質のライブラリーを作製することができる。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、例えば、細菌、真菌、ウイルス、および哺乳動物のタンパク質でできている。
【0158】
別の実施形態では、候補生物活性剤は、約5〜約30アミノ酸、約5〜約20アミノ酸、または約7〜約15アミノ酸のペプチドである。ペプチドは、上記で概説の天然に存在するタンパク質、ランダムペプチド、または「偏った」ランダムペプチドの消化物であり得る。
【0159】
1つの実施形態では、候補生物活性剤は核酸である。タンパク質について一般に説明されるように、核酸候補生物活性剤は、天然に存在する核酸、ランダム核酸、または「偏った」ランダム核酸であり得る。別の実施形態では、候補生物活性剤は、有機化学部分であり、広範な種々の有機化学部分は文献に記載されている。
【0160】
アッセイの実施中または実施後に、データを分析して、各遺伝子の発現レベルおよび各遺伝子の状態の間の発現レベルの変化を決定し、遺伝子発現プロフィールを形成する。
【0161】
1つの実施形態では、診断および予後への適用に関して、任意の1つの状態で異なって発現された遺伝子または変異遺伝子が同定された場合、スクリーニングを行って、BD遺伝子の発現の変化を個別に試験することができる。すなわち、単一遺伝子の発現調節の調整についてのスクリーニングを行うことができる。したがって、例えば、その有無が2つの状態間で固有の標的遺伝子の場合、標的遺伝子発現の修飾因子についてスクリーニングを行う。1つの実施形態では、候補生物活性剤を標識する。候補生物活性剤、競合物、または両方のいずれかを、存在する場合、結合させるのに十分な期間タンパク質に最初に添加する。最適活性を促進する任意の温度(典型的には、4℃と40℃との間)でインキュベーションを行うことができる。最適活性のためのインキュベーション期間を選択するが、迅速な高処理スクリーニングを容易にするために至適化することもできる。典型的には、0.1時間と1時間との間で十分であろう。過剰な試薬を、一般に、除去するか洗い流す。次いで、第2の化合物を添加し、結合を示すために標識された成分の有無を追跡する。
【0162】
1つの実施形態では、競合物を最初に添加し、その後に候補生物活性剤を添加する。競合物の置換は、候補生物活性剤がBDタンパク質に結合し、したがって、BDタンパク質に結合して潜在的にBDタンパク質の活性を調整することができることを示す。この実施形態では、いずれかの成分を標識することができる。したがって、例えば、競合物を標識する場合、洗浄液中の標識の存在は薬剤との置換を示す。あるいは、候補生物活性剤を標識する場合、支持体上の標識の存在は置換を示す。
【0163】
別の実施形態では、候補生物活性剤を最初に添加してインキュベーションおよび洗浄を行い、その後に競合物を添加する。競合物による結合の非存在は、生物活性剤がBDタンパク質に高親和性で結合することを示し得る。したがって、候補生物活性剤を標識する場合、競合物結合の欠如を伴う支持体上の標識の存在は、候補剤がBDタンパク質に結合することができることを示し得る。
【0164】
1つの実施形態では、本方法は、BDタンパク質の活性を調整することができる生物活性剤を同定するためのディファレンシャルスクリーニングを含む。この実施形態では、本方法は、第1のサンプル中でBDタンパク質を競合物と組み合わせる工程を含む。第2のサンプルは、候補生物活性剤、BDタンパク質、および競合物を含む。両サンプルについての競合物の結合を決定し、2サンプル間の結合の変化(すなわち、差異)は、BDタンパク質に結合し、潜在的にその活性を調整することができる薬剤の存在を示す。すなわち、競合物の結合は、第1のサンプルと比較して第2のサンプルで異なり、薬剤はBDタンパク質に結合することができる。
【0165】
BDタンパク質活性を調整する薬剤のスクリーニングも行うことができる。1つの実施形態では、BDタンパク質活性を調整することができる生物活性剤のスクリーニング方法は、上記のBDタンパク質サンプルに候補生物活性剤を添加する工程、およびBDタンパク質の生物学的活性の変化を決定する工程を含む。「BDタンパク質活性の調整」には、活性の増加、活性の減少、または存在する活性の型もしくは種類の変化が含まれる。したがって、この実施形態では、候補剤は、BDタンパク質に結合し(しかし、これは必ずしも必要ではない)、上記定義のその生物活性または生化学活性を変化させるべきである。本方法は、BDタンパク質の存在、分布、活性、または量の変化についての細胞の上記で一般的に概説されたインビトロスクリーニング法およびインビボスクリーニングの両方を含む。
【0166】
したがって、この実施形態では、本方法は、BDサンプルを候補生物活性剤と組み合わせる工程およびBD活性に及ぼす影響を評価する工程を含む。本明細書中の「BD活性」またはその文法上の等価物は、BDタンパク質の生物活性の1つ(BDにおけるその役割が含まれるが、これに限定されない)を意味する。
【0167】
1つの実施形態では、BDタンパク質活性は増加し、別の実施形態では、BDタンパク質活性は減少する。したがって、いくつかの実施形態では生物活性剤はアンタゴニストであり、他の実施形態では生物活性剤はアゴニストである。
【0168】
適用
1つの実施形態では、BDの阻害方法を提供する。別の実施形態では、BDの回復方法を提供する。さらなる実施形態では、BDを有する細胞または個体の治療方法を提供する。
【0169】
本方法は、BDインヒビターの投与を含む。特定の実施形態では、BDインヒビターは、アンチセンス分子、薬学的組成物、治療薬、小分子、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である。特定の実施形態では、治療薬は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体とカップリングされている。特定の実施形態では、BDインヒビターはPXRアクチベーターである。例えば、リファマイシンアナログ。リファマイシンアナログには、例えば、リファキシミンおよびリファマイシンが含まれる。
【0170】
他の実施形態では、被験体におけるBD細胞の検出または診断方法を提供する。特定の実施形態では、診断薬/検出薬は、本発明のBDPに優先的に結合する小分子である。1つの実施形態では、診断薬/検出薬は、任意選択的に検出可能な薬剤と連結した抗体(例えば、モノクローナル抗体)である。
【0171】
本発明の他の実施形態では、BDの動物モデルの生成で使用される動物モデルおよびトランスジェニック動物を提供する。
【0172】
アンチセンス、リボザイム、および抗体
治療薬として使用することができる他の薬剤には、PXR遺伝子、その発現産物、およびその機能的フラグメントが含まれる。さらに、変異PXR遺伝子活性を減少または阻害する薬剤を使用して、病徴を回復することができる。かかる薬剤には、アンチセンス、リボザイム、および三重らせん分子が含まれる。かかる分子を産生および使用する技術は、当業者に周知である。
【0173】
リボザイムは、RNAの特的切断を触媒することができる酵素的RNA分子である。リボザイムの作用機構は、相補標的RNAとのリボザイム分子の配列特異的ハイブリッド形成およびその後の内ヌクレオチド結合分解性切断を含む。リボザイム分子の組成物は、1つまたは複数のPXR遺伝子mRNAに相補的な配列を含まなければならず、mRNA切断を担う周知の触媒配列を含まなければならない。この配列については、米国特許第5,093,246号(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。そのようなものとして、PXR遺伝子のタンパク質をコードするRNA配列の内ヌクレオチド結合分解性切断を特異的且つ効率的に触媒する操作されたハンマーヘッドモチーフリボザイム分子は本開示の範囲内である。
【0174】
任意の潜在的なRNA標的内の特異的リボザイム切断部位を、以下の配列GUA、GUU、およびGUCを含むリボザイム切断部位についての目的の分子のスキャニングによって最初に同定する。一旦同定されると、切断部位を含むPXR遺伝子領域に対応する15リボヌクレオチドと20リボヌクレオチドとの間の短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列を不適切にし得る予想された構造の特徴(二次構造など)について評価することができる。候補配列の適合性を、リボヌクレアーゼ保護アッセイを使用した相補オリゴヌクレオチドとのハイブリッド形成の容易性を試験することによって評価することもできる。
【0175】
転写阻害のための三重らせん形成で使用すべき核酸分子は、一本鎖であり、且つデオキシリボヌクレオチドから構成されるべきである。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成を、フーグスティーン塩基対合則によって三重らせん形成が促進されるようにデザインしなければならない。これは、一般に、プリンまたはピリミジンのいずれかのかなり大きなストレッチが二重鎖の一方の鎖上に存在する必要がある。ヌクレオチド配列はピリミジンベースであり得る。それにより、得られた三重らせんの、3つの会合鎖を介してTATトリプレットおよびCGCトリプレットが得られるであろう。ピリミジンリッチ分子により、二重鎖の単一鎖のプリンリッチ領域に対して相補的な塩基がその鎖に対して平行方向で得られる。さらに、プリンリッチである(例えば、G残基のストレッチを含む)核酸分子を選択することができる。これらの分子は、GC対が豊富なDNA二重鎖と三重らせんを形成するであろう。ここで、プリン残基の大部分がターゲティングされた二重鎖の単一鎖上に存在し、それにより、三重鎖中の3つの鎖にわたってGGCトリプレットが得られる
あるいは、三重らせん形成をターゲティングすることができる潜在的配列を、いわゆる「スイッチバック」核酸分子の作製によって増加させることができる。スイッチバック分子が最初に二重鎖の一方の鎖と、次いで他方の鎖と塩基対合して、プリンまたはピリミジンのいずれかのかなり大きなストレッチが二重鎖の一方の鎖上に存在する必要性が排除されるように、交互する5’−3’、3’−5’様式でスイッチバック分子を合成する。
【0176】
本明細書中に記載のアンチセンス、リボザイム、および/または三重らせん分子が正常および変異PXR遺伝子の対立遺伝子の両方によって産生されたmRNAの転写(三重らせん)および/または翻訳(アンチセンス、リボザイム)を軽減または阻害することができる可能性がある。実質的に正常なPXR遺伝子活性レベルを維持するために、正常な活性を示すPXR遺伝子のポリペプチドをコードおよび発現する核酸分子を、どのようなアンチセンス、リボザイム、または三重らせん処理が利用されるかに感受性を示す配列も含まない細胞に導入することができる。あるいは、正常なPXR遺伝子のタンパク質を細胞または組織に同時投与して、細胞または組織の必要とされるPXR遺伝子活性レベルを維持することが好ましいかもしれない。
【0177】
本開示のアンチセンスRNAおよびDNA、リボザイム、および三重らせん分子を、DNA分子およびRNA分子の当該分野で公知の任意の合成方法によって調製することができる。これらには、例えば、固相ホスホルアミダイト化学合成などの当該分野で周知のオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドの化学的合成技術が含まれる。あるいは、RNA分子を、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボでの転写によって生成することができる。かかるDNA配列を、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼプロモーターに組み込む広範な種々のベクターに組み込むことができる。あるいは、使用されるプロモーターに応じてアンチセンスRNAを構成性または誘導性に合成するアンチセンスcDNA構築物を、細胞株に安定的に導入することができる。
【0178】
DNA分子に対する種々の周知の修飾を、細胞内での安定性および半減期の増加手段として導入することができる。可能な修飾には、分子の5’末端および/または3’末端へのリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドの隣接配列の付加またはオリゴデオキシリボヌクレオチド骨格内のホスホジエステラーゼ架橋よりもむしろホスホロチオアートまたは2’O−メチルの使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0179】
PXR遺伝子のタンパク質、特に変異遺伝子のタンパク質に特異的であり、且つその活性を干渉する抗体を使用して、変異PXR遺伝子機能を阻害することができる。かかる抗体を、当該分野で公知であり、且つ本明細書中にも記載されている標準的な技術を使用して、タンパク質自体またはタンパク質の一部に対応するペプチドに対して生成することができる。かかる抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、単鎖抗体、キメラ抗体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0180】
PXR遺伝子のタンパク質が細胞内タンパク質であり、且つ全抗体を使用する場合、内在化抗体が確実であり得る。しかし、リポフェクチンリポソームを使用して、PXR遺伝子のエピトープに結合する抗体またはFab領域のフラグメントを細胞に送達させることができる。抗体のフラグメントを使用する場合、標的または拡大された標的タンパク質の結合ドメインに結合する最小の阻害フラグメントが確実である。例えば、PXR遺伝子のタンパク質に結合する抗体の可変領域のドメインに対応するアミノ酸配列を有するペプチドを使用することができる。かかるペプチドを化学合成するか、当該分野で周知の方法を使用した組換えDNAテクノロジーによって産生することができる(例えば、Creighton、Proteins:Structures and Molecular Principles(1984)W.H.Freeman、New York 1983、前出およびSambrookら、1989、前出を参照のこと)。あるいは、細胞内PXR遺伝子のエピトープに結合する単鎖中和抗体も投与することができる。例えば、Marascoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889−93(1993)に記載の技術などの技術の使用による標的細胞集団内で一本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列の発現によって、かかる単鎖抗体を投与することができる。
【0181】
PXR遺伝子のタンパク質をコードするRNA配列を、病徴が回復するようなPXR遺伝子のタンパク質レベルを得るのに十分な濃度で病徴を示す被験体に直接投与することができる。被験体を、遺伝子置換療法によって治療することができる。正常なPXR遺伝子またはPXR遺伝子機能を有する正常なPXR遺伝子のタンパク質の産生を指示する遺伝子の一部の1つまたは複数のコピーを、細胞にDNAを導入する他の粒子(リポソームなど)に加えて、ベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない)を使用して細胞に挿入することができる。さらに、上記の技術などの技術を、ヒト細胞への正常なPXR遺伝子配列の導入のために使用することができる。
【0182】
次いで、細胞、好ましくは、正常なPXR遺伝子を発現する遺伝子配列を含む自己細胞を、病徴回復が可能な被験体の位置に導入または再導入することができる。
【0183】
アンチセンスRNA分子およびDNA分子は、ターゲティングされたmRNAとのハイブリッド形成およびタンパク質翻訳の予防によってmRNAの翻訳を直接遮断するように作用する。アンチセンスDNAに関して、翻訳開始部位(例えば、目的のPXR遺伝子のヌクレオチド配列の−10と+10との間の領域)由来のオリゴデオキシリボヌクレオチドが確実である。
【0184】
1つの実施形態では、BDインヒビターまたはBDアクチベーターは、アンチセンス分子(例えば、PXRアクチベーター)である。本明細書中で使用する場合、アンチセンス分子には、BD分子の標的mRNA(センス)またはDNA(アンチセンス)配列に結合することができる一本鎖核酸配列(RNAまたはDNAのいずれか)を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはセンスオリゴヌクレオチドは、一般に少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14〜30ヌクレオチドのフラグメントを含む。所与のタンパク質をコードするcDNA配列に基づいてアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはセンスオリゴヌクレオチドを誘導する能力は、例えば、SteinおよびCohen、Cancer Res.48:2659,(1988)およびvan der Krolら、BioTechniques 6:958,(1988)に記載されている。
【0185】
アンチセンス分子は、修飾または未修飾のRNA,DNA,または混合ポリマーオリゴヌクレオチドであり得る。これらの分子は、適合配列に特異的に結合してペプチド合成が阻害されることによるか(Wu−Pong、1994年11月、,BioPharm,20−33)、RNアーゼH酵素の立体的遮断または活性化によって機能する。アンチセンス分子はまた、RNAプロセシングまたは核から細胞質への輸送の干渉によってタンパク質合成を変化させることができる(MukhopadhyayおよびRoth、1996、Crit.Rev.in Oncogenesis 7,151−190)。さらに、一本鎖DNAのRNAへの結合により、ヘテロ二重鎖のヌクレアーゼ媒介分解が起こり得る(Wu−Pong、前出)。RNアーゼHの基質として作用することがこれまで示されてきた骨格修飾DNA化学は、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ボロントリフルオリダート、ならびに2’−アラビノおよび2’−フルオロアラビノ含有オリゴヌクレオチドである。
【0186】
RNA干渉は、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)によって媒介される動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシング過程をいう(Fireら、Nature,391,806(1998))。植物における対応する過程を、転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングといい、真菌においてはクエリングともいう。細胞中のdsRNAの存在により、依然として完全に特徴づけられていない機構によってRNAi応答が誘発される。この機構は、リボヌクレアーゼLによってmRNAが非特異的に切断されるタンパク質キナーゼPKRおよび2’,5’−オリゴアデニル酸シンセターゼのdsRNA媒介活性化に起因するインターフェロン応答と異なるようである(Sharp,P.A.、RNA interference−−2001、Genes & Development 15:485−490(2001)に概説)。
【0187】
BD配列と特異的にハイブリッド形成することができる配列を含む単離核酸分子を含む発現系を本明細書中に提供する。1つの実施形態では、核酸分子は、BDタンパク質発現を阻害することができる。短いRNA自体が折り畳まれてBD mRNA配列同一性を有する二本鎖RNAを作製することができ、且つ細胞内のBD遺伝子の転写後遺伝子サイレンシング(すなわち、RNA干渉(RNAi))を誘発することができる短いRNAのベクター指示発現による細胞内のBD発現の阻害方法。別の方法では、BD mRNA配列同一性を有する短い二本鎖RNAを細胞内に送達させて、BD遺伝子の転写後遺伝子サイレンシング(すなわち、RNAi)を誘発する。種々の実施形態では、核酸分子は、少なくとも7量体、少なくとも10量体、または少なくとも20量体である。さらなる実施形態では、配列は固有である。
【0188】
薬学的組成物
本明細書中に提供する薬学的組成物には、活性薬剤として、治療有効量の本明細書中に開示の小分子ポリペプチド、ポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、または抗体が含まれる。「有効量」は、有利または所望の結果(臨床結果が含まれる)を得るのに十分な量である。有効量を、1回または複数回の投与で投与することができる。本発明の目的のために、アデノウイルスベクターの有効量は、病状を緩和、回復、安定化、逆転、進行の遅延または遅くするのに十分な量である。
【0189】
組成物を使用してBDを治療することができる。用語「treatment」、「treating」、および「treat」などを、一般に、所望の薬理学的影響および/または生理学的影響を得ることをいうために本明細書中で使用する。影響は、疾患または症状の完全または部分的な予防の観点から予防であり得、そして/または疾患および/または疾患に寄与する副作用の部分的または完全な安定化または治癒の観点から治療であり得る。本明細書中で使用する場合、「Treatment」は、哺乳動物(特に、ヒト)における疾患の任意の治療を対象として、治療には、(a)疾患または症状を患いやすいが、依然としてこれらを有すると診断されていない被験体の疾患または症状の発症の予防、(b)病徴の阻害(例えば、その発症の停止)、または(c)病徴の軽減(例えば、疾患または症状の後退)が含まれる。
【0190】
本発明の目的のための「被験体」には、ヒトおよび他の動物(特に、哺乳動物)ならびに生物の両方が含まれる。したがって、本方法を、ヒト療法および動物の両方に適用することができる。一定の実施形態では、被験体は哺乳動物であり、ほとんどの一定の実施形態では、被験体はヒトである。
【0191】
本明細書中で使用する場合、用語「治療有効量」は、例えば、所望の疾患または容態を治療する、回復する、または予防するか、検出可能な治療効果または予防効果を示すための治療薬の量をいう。例えば、化学マーカーまたは抗原レベルによって効果を検出することができる。治療効果には、理学的症状の軽減(体温の低下など)も含まれる。被験体の正確な有効量は、被験体のサイズおよび健康状態、容態の性質および範囲、ならびに投与のために選択された治療薬または治療薬の組み合わせに依存するであろう。所与の状況のための有効量を、日常的な実験によって決定し、これは臨床医の判断の範囲内に含まれる。本発明のために、有効用量は、一般に、投与される個体において、約0.01mg/kg〜約5mg/kg、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、約0.05mg/kg〜約10mg/kg、または約0.1mg/kg〜約100mg/kgの本発明の組成物であろう。
【0192】
薬学的組成物はまた、薬学的に許容可能なキャリアを含むことができる。用語「薬学的に許容可能なキャリア」は、例えば、治療薬(抗体またはポリペプチド、遺伝子、および他の治療薬など)投与のためのキャリアをいう。本用語は、例えば、それ自体が組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘導せず、且つ、過度の毒性を示さずに投与することができる任意の薬学的キャリアをいう。適切なキャリアは、巨大でゆっくり代謝する高分子(タンパク質、ポリサッカリド、ポリ酢酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子など)であり得る。かかるキャリアは、当業者に周知である。治療組成物中の薬学的に許容可能なキャリアには、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノールなどの液体が含まれ得る。湿潤剤または乳化剤、およびpH緩衝物質などの補助剤もかかるビヒクル中に存在することができる。典型的には、治療組成物を、注射剤として(溶液または懸濁液のいずれかとして)調製する。注射前に液体ビヒクルの溶液または懸濁液にするのに適切な固体形態として調製することもできる。リポソームは、薬学的に許容可能なキャリアの定義の範囲内に含まれる。薬学的に許容可能な塩も薬学的組成物中に存在することができる(例えば、鉱酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など)および有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩,および安息香酸塩など))。薬学的に許容可能な賦形剤の徹底的な考察は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(1995)Alfonso Gennaro、Lippincott,Williams,& Wilkinsに記載されている。
【0193】
薬学的組成物を、種々の形態(顆粒、錠剤、丸薬、座剤、カプセル、懸濁液、蝋膏、およびローションなど)で調製することができる。経口および局所での使用に適切な製薬等級の有機または無機のキャリアおよび/または希釈剤を使用して、治療活性化合物を含む組成物を作製することができる。当該分野で公知の希釈剤には、水媒体、植物性および動物性の油脂が含まれる。安定剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、または適切なpHを確保するための緩衝液、および皮膚浸透促進剤を助剤として使用することができる。
【0194】
本発明の薬学的組成物は、被験体への投与に適切な形態のBDタンパク質を含む。一定の実施形態では、薬学的組成物は、水溶性形態であり(薬学的に許容可能な塩として存在するなど)、酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれることを意味する。「薬学的に許容可能な酸付加塩」は、例えば、遊離塩基の生物学的有効性を保持し、且つ生物学的またはその他の点で望ましくないわけではなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸などの無機酸、ならびに酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、およびサリチル酸などの有機酸を使用して形成された塩をいう。「薬学的に許容可能な塩基付加塩」には、無機塩基由来の塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、およびアルミニウム塩など)が含まれる。アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩が特に確かである。薬学的に許容可能な無毒の有機塩基由来の塩には、第一級アミン、第二級アミン、および第三級アミン、置換アミン(天然に存在する置換アミンが含まれる)、環状アミン、ならびに塩基性イオン交換樹脂(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンなど)の塩が含まれる。
【0195】
本発明の治療ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを、遺伝子送達ビヒクルを使用して送達させることができる。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルスまたは非ウイルス起源であり得る(一般に、Jolly、BD Gene Therapy(1994)1:51;Kimura、Human Gene Therapy(1994)5:845;Connelly、Human Gene Therapy(1995)1:185;およびKaplitt、Nature Genetics(1994)6:148を参照のこと)。かかるコード配列の発現を、内因性哺乳動物プロモーターまたは異種プロモーターを使用して誘導することができる。コード配列の発現は、構成性または調節性のいずれかであり得る。
【0196】
本発明のBDタンパク質および修飾因子を、上記で考察の種々の方法(経口、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣、直腸、または眼内が含まれるが、これらに限定されない)で投与することができる。いくつかの例では(例えば、創傷および炎症の治療では)、BDタンパク質および修飾因子を、溶液またはスプレーとして直接適用することができる。
【0197】
1つの実施形態では、細胞または生物中でのBD遺伝子活性の調整方法を提供する。1つの実施形態では、本方法は、内因性BDタンパク質の生物学的活性を減少または消失させる抗BD抗体を細胞へ投与する工程を含む。あるいは、本方法は、BDタンパク質をコードする組換え核酸を細胞または生物に投与する工程を含む。当業者に認識されるように、多数の方法でこれを行うことができる。1つの実施形態では、例えば、BDにおいてBD配列が下方制御する場合、BD遺伝子産物の活性を、公知の遺伝子療法技術を使用した細胞中のBD発現量の増加(例えば、内因性BD遺伝子の過剰発現またはBD配列をコードする遺伝子の投与)によって増加させる。1つの実施形態では、遺伝子療法技術には、例えば、PCT/US93/03868号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載の増強された相同組換え(EHR)を使用した外因性遺伝子の組み込みが含まれる。あるいは、例えば、BDでBD配列が上方制御される場合、例えば、BDアンチセンス核酸の投与によって内因性BD遺伝子の活性を減少させる。
【0198】
キットの一部として検出方法を提供することができる。したがって、本発明は、さらに、BD細胞中で異なって発現されるポリヌクレオチド(例えば、目的の、異なって発現された遺伝子によってコードされるmRNAの検出による)および/または生物サンプル中でこれらによってコードされるポリペプチドの存在および/またはレベルを検出するためのキットを提供する。これらのキットの使用手順を、臨床検査室、実験室、医師、または私人によって行うことができる。BD細胞中で異なって発現されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの検出のための本発明のキットは、ポリペプチドに特異的に結合する部分(ポリペプチドまたはそのフラグメントに結合する抗体であり得る)を含むことができる。BD細胞中で異なって発現されるポリヌクレオチドを検出するために使用される本発明のキットは、かかるポリヌクレオチドと特異的にハイブリッド形成する部分を含むことができる。キットは、任意選択的に、手順で有用なさらなる成分(緩衝液、発色試薬、標識、反応表面、検出手段、コントロールサンプル、標準、説明書、および解釈上の情報が含まれるが、これらに限定されない)を提供することができる。したがって、本発明は、NCBIアクセッション番号:NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133、またはそのフラグメントに示す配列を有する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む前立腺BDの検出用キットを提供する。
【0199】
標的変異遺伝子の発現、合成および/または活性を阻害する同定された化合物を、疾患を治療または回復するための治療有効用量で被験体に投与することができる。治療有効用量は、例えば、疾患の症状を回復させるのに十分な化合物の量をいう。
【0200】
かかる化合物の毒性および治療有効性を、例えば、LD50(集団の50%を死滅させる用量)およびED50(集団の50%で治療に有効な用量)を決定するための細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒作用と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比と示すことができる。高い治療指数を示す化合物が確かである。有毒作用を示す化合物を使用することができるが、非感染細胞への潜在的な損害を最小にし、それにより副作用が軽減されるように、かかる化合物を罹患組織部位にターゲティングする送達系をデザインするように注意を払わなければならない。
【0201】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得たデータを、ヒトで使用するための投薬量範囲の処方で使用することができる。かかる化合物の投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどないか全くないED50を含む循環濃度範囲内にある。投薬量は、使用した投薬形態および使用した投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。開示の方法で使用した任意の化合物について、治療有効用量を、細胞培養アッセイから最初に評価することができる。細胞培養物中で決定したところ、IC50(例えば、症状の最大半量阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するための用量を動物モデル中で処方することができる。かかる処方物を使用して、ヒトで有用な用量をより正確に決定することができる。血漿レベルを、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0202】
本開示にしたがって使用するための薬学的組成物を、1つまたは複数の生理学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を使用して従来の様式で処方することができる。したがって、化合物ならびにその生理学的に許容可能な塩および溶媒和物を、吸入またはガス注入(口腔または鼻腔のいずれかによる)または経口、口内、非経口、局所、皮下、腹腔内、静脈内、胸膜内、眼内、動脈内、または直腸への投与による投与のために処方することができる。化合物の活性を増強する他の生成物と共に薬学的組成物を投与することができ、任意選択的に、薬学的組成物は他の治療成分を含むことができることも意図される。
【0203】
経口投与のために、薬学的組成物は、例えば、薬学的に許容可能な賦形剤(結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、またはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグリコール酸デンプンナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)など)を使用して従来の手段によって調製した錠剤またはカプセルの形態をとることができる。錠剤を、当該分野で周知の方法によってコーティングすることができる。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液の形態をとることができるか、使用前に水または他の適切なビヒクルで構成するための乾燥生成物として存在することができる。かかる液体調製物を、薬学的に許容可能な添加物(懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分留植物油);および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾアートまたはソルビン酸)など)を使用して従来の手段によって調製することができる。調製物はまた、必要に応じて、緩衝塩、香味料、着色料、および甘味剤を含むことができる。経口投与のための調製物を、活性化合物が徐放されるように適切に処方することができる。口内投与のために、組成物は、従来の様式で処方した錠剤またはロゼンジの形態をとることができる。
【0204】
吸入による投与のために、本開示にしたがって使用するための化合物を、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガス)を使用した加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレーの形態で都合よく送達させる。加圧エアゾールの場合、投薬単位を、定量を送達するための弁を準備することによって決定することができる。例えば、化合物の粉末混合物および適切な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)を含む吸入器または空気吸入器で用いるゼラチンのカプセルおよびカートリッジを処方することができる。
【0205】
化合物を、注射(例えば、ボーラス注射または連続注入)による非経口投与のために処方することができる。注射用処方物は、例えば、防腐剤が添加されたアンプルまたは分割投与容器中に単位投薬形態で存在することができる。組成物は、懸濁液、溶液、または油性ビヒクルもしくは水性ビヒクルの乳濁液などの形態をとることができ、処方剤(懸濁剤、安定剤、および/または分散剤など)を含むことができる。あるいは、有効成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば、滅菌無発熱物質水)で構成するための粉末形態であり得る。
【0206】
化合物を、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の座剤の基剤を含む座剤または停留浣腸などの直腸組成物中に処方することもできる。経口摂取は、おそらく任意の薬物を摂取するための最も容易な方法である。かかる投与経路は、一般に簡潔且つ簡単であり、しばしば、被験体の観点から最も不便または不快でない投与経路である。しかし、これは、多数の物質(タンパク質および他の生物学的に活性な組成物が含まれる)にとって厳しい環境である胃を介した物質の通過を含む。胃の酸性、加水分解性、およびタンパク質分解性の環境がその後の同化のためにタンパク質性物質をアミノ酸およびオリゴペプチドに消化するのに有効に進化しているので、単純に経口で摂取した場合、広範な種々の生物学的に活性なタンパク質性物質のうちで胃を通過して小腸から体内に取り込まれるものはほんの少しまたは少しもないことは驚くに値しない。結果的に、非経口などの別の方法、しばしば、皮下注射、筋肉内注射、または静脈内注射によって多数のタンパク質性薬剤を摂取しなければならない。
【0207】
薬学的組成物は、薬学活性を安定化するための種々の緩衝液(例えば、Tris、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液)、可溶化剤(例えば、Tween、ポリソルベート)、ヒト血清アルブミンなどのキャリア、防腐剤(チメロゾール、ベンジルアルコール)、およびアスコルビン酸などの抗酸化剤も含むことができる。安定剤は、界面活性剤(tween−20、tween−80、NP−40、またはTriton X−100など)であり得る。EBPを、長期間にわたって被験体への制御送達のための高分子化合物の特定の調製物に組み込むこともできる。薬学的組成物中の成分のより広範囲な調査については、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、編者:A.R.Gennaro、Mack Publishing,Easton,Pa.(1990)に記載されている。
【0208】
前述の処方物に加えて、化合物を、デポー調製物として処方することもできる。かかる長時間作用性処方物を、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物を、適切な高分子または疎水性の材料(例えば、許容可能なオイルの乳濁液として)またはイオン交換樹脂、またはやや溶けにくい誘導体(例えば、やや溶けにくい塩として)を使用して処方することができる。
【0209】
組成物は、必要に応じて、有効成分を含む1つまたは複数の単位投薬形態を含むことができるパックまたはディスペンサーデバイス中に存在することができる。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔(ブリスターパックなど)を含むことができる。パックまたはディスペンサーデバイスに、投与説明書を同封することができる。
【0210】
プレグナンX受容体(PXR)
本発明で有用な細胞には、真核細胞または原核細胞(細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、線虫細胞、植物細胞、および動物細胞が含まれるが、これらに限定されない)が含まれる。適切な動物細胞には、BDK細胞、HeLa細胞、COS細胞、U20S細胞、CHO−KI細胞、および種々の初代哺乳動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0211】
本発明で有用な細胞には、PXR、未知のPXR、修飾PXR、およびその組み合わせを発現する細胞が含まれる。PXRを発現する細胞は、その細胞膜中に機能的受容体としてPXRを含む細胞である。細胞は、PXRを天然に発現することができるか、種々の発現レベルでPXRを発現するように遺伝子操作することができるか、PXRを誘導的に発現するように遺伝子操作することができる。当業者は、遺伝子操作分野で標準的な分子生物学技術によってPXRを発現するように細胞を遺伝子操作することができると容易に理解するであろう。
【0212】
さらに、本発明で有用な細胞は、本明細書中に記載の方法で使用されるPXRを安定的または一過性に発現することができる。米国特許第4,745,051号、同第4,879,236号、同第5,348,886号、同第5,731,182号、同第5,871,986号、同第6,281,009号、および同第6,238,914号に記載の非哺乳動物ウイルス(例えば、バキュロウイルス)を使用した遺伝子発現方法を、本方法で使用することができる。米国特許第4,745,051号、同第4,879,236号、同第5,348,886号、同第5,731,182号、同第5,871,986号、同第6,281,009号、および同第6,238,914号の全ての内容は、その全てが本明細書中で参考として援用される。本発明の方法と共に使用することができる検出方法は、米国特許出願第10/095,620号、米国特許第5,891,646号、および米国特許第6,110,693号(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)にも記載されている。
【0213】
動物モデルおよびトランスジェニック動物
別の実施形態では、BD遺伝子は、BDの動物モデルの生成で使用される。当業者に認識されるように、同定されたBD遺伝子がBD組織で抑制されるか減少される場合、アンチセンスRNAがBD遺伝子に指向される遺伝子療法テクノロジーも遺伝子発現を減少または抑制するであろう。このようにして生成された動物は、生物活性薬物候補のスクリーニングで使用されるBDの動物モデルとして役立つ。同様に、例えば、適切な遺伝子ターゲティングベクターを使用した相同組換えの結果としての遺伝子ノックアウトテクノロジーにより、BDタンパク質が存在しないであろう。必要に応じて、BDタンパク質の組織特異的発現またはノックアウトが必要であり得る。
【0214】
BD中でBDタンパク質が過剰発現する可能性もある。そのようなものとして、BDタンパク質を過剰発現するトランスジェニック動物を生成することができる。所望の発現レベルに応じて、種々の強度のプロモーターを使用して、導入遺伝子を発現することができる。また、取り込まれた導入遺伝子のコピー数を決定し、決定した導入遺伝子の発現レベルを比較することができる。かかる方法によって生成された動物はBDの動物モデルとして使用され、BDを治療するための生物活性分子のスクリーニングでさらに有用である。
【0215】
ターゲティング構築物の生成
本開示のターゲティング構築物を、当該分野で公知の標準的な方法を使用して産生することができる(例えば、Sambrookら、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,N.Y.;編者:E.N.Glover、1985、DNA Cloning:A Practical Approach、第I巻および第II巻;編者:M.J.Gait、1984、Olygonucleotide Synthesis;編者:B.D.HamesおよびS.J.Higgins、1985、Nucleic Acid Hybridization;編者:B.D.HamesおよびS.J.Higgins、1984、Transcription and Translation;編者:R.I.Freshney、1986、Animal Cell Culture;Immobilized Cells and Enzymes、IRL Press、1986;B.Perbal、1984、A Practical Guide To Molecular Cloning;F.M.Ausubelら、1994、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.を参照のこと)。例えば、ターゲティング構築物を、配列を合成するか、天然供給源から単離するか、操作するか、クローン化するか、ライゲーションするか、インビトロ変異誘発、プライマー修復などに供することができる従来の方法にしたがって調製することができる。種々の段階で、連結した配列をクローン化し、制限分析または配列決定などによって分析することができる。
【0216】
当該分野で周知の技術を使用して、ターゲティングDNAを構築することができる。例えば、ターゲティングDNAを、オリゴヌクレオチドの化学合成、二本鎖DNAテンプレートのニック翻訳、配列のポリメラーゼ連鎖反応による増幅(またはリガーゼ連鎖反応による増幅)、目的の配列(例えば、クローン化cDNAまたはゲノムDNA、合成DNA、または任意の上記の組み合わせ由来)を保有する原核生物または標的クローニングベクター(プラスミド、ファージミド、YAC、コスミド、バクテリオファージDNA、他のウイルスDNAまたは複製中間体、またはその精製された制限フラグメント、ならびに所望のヌクレオチド配列を有する一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチドの他の供給源など)の精製によって産生することができる。さらに、相同性の長さを、当該分野で公知の方法を使用して選択することができる。例えば、選択は、所定の内因性標的DNA配列の配列組成および複雑さに基づき得る。
【0217】
本開示の1つの実施形態では、ターゲティング構築物を、2004年11月9日に発行された米国特許第6,815,185号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)に記載の方法を使用してプラスミドゲノムライブラリーから直接調製する。前述の米国特許は、2001年6月19日出願の米国特許出願第09/885,816号に基づき、これは1998年11月17日出願の米国特許出願第09/193,834号(現在放棄)の継続であり、これは1998年5月11日出願の米国特許仮出願第60/084,949号および米国特許仮出願第60/084,194号ならびに1997年11月17日出願の米国特許出願第08/971,310号(米国特許仮出願第60/084,194号に変更)の優先権を主張している。一般に、目的の配列を同定し、例えば、ロングレンジPCRを使用して一工程でプラスミドライブラリーから単離する。この配列の単離後、標的配列を破壊する第2のポリヌクレオチドを、目的の配列をコードする2領域間に容易に挿入することができる。本態様によれば、(1)標的配列に相同な配列の増幅(例えば、ロングレンジPCRを使用)および(2)別のポリヌクレオチド(例えば、選択マーカー)を相同配列に隣接するようにPCR産物に挿入することによる、2つの工程で構築物を生成する。典型的には、ベクターは、プラスミドゲノムライブラリー由来のプラスミドである。意図する構築物は、典型的には、環状プラスミドでもある。
【0218】
別の実施形態では、2001年9月17日に出願され、現在公開されている米国特許出願公開第20030032175号である米国特許出願第09/954,483号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)に記載の調節されたポジティブ選択法にしたがってターゲティング構築物をデザインする。PGKプロモーター中に配置された2つのlacO部位を有するPGK−neo融合遺伝子およびSV40 T抗原由来のNLSをコードする配列に融合されたlacリプレッサーを含むNLS−lacI遺伝子を含むようにターゲティング構築物をデザインする。別の実施形態では、ターゲティング構築物は、1つを超える選択マーカー遺伝子(単純ヘルペスウイルスtk(HSV−tk)遺伝子などのネガティブ選択マーカーが含まれる)を含むことができる。ネガティブ選択マーカーを、プロモーターおよびポリアデニル化シグナルに作動可能に連結することができる(例えば、米国特許第5,464,764号、同第5,487,992号、同第5,627,059号、および同第米国特許第5,631,153号を参照のこと)。
【0219】
一旦適切なターゲティング構築物が調製されると、ターゲティング構築物を、当該分野で公知の任意の方法を使用して適切な宿主細胞に導入することができる。本開示において種々の技術(例えば、前核微量注入、生殖系列へのレトロウイルス媒介遺伝子移入、胚性幹細胞における遺伝子ターゲティング、胚のエレクトロポレーション、精子媒介遺伝子移入、およびリン酸カルシウム/DNA共沈、核へのDNAの微量注入、インタクトな細胞との細菌プロトプラスト融合、トランスフェクション、ポリカチオン(例えば、ポリブレンまたはポリオルニチンなど)が含まれる)を使用することができる(例えば、米国特許第4,873,191号;Van der Puttenら、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 82:6148−6152;Thompsonら、1989、Cell 56:313−321;Lo、1983、Mol Cell.Biol.3:1803−1814;Lavitranoら、1989、Cell,57:717−723を参照のこと)。哺乳動物細胞の種々の形質転換技術は当該分野で公知である(例えば、Gordon、1989、Intl.Rev.Cytol.,115:171−229;Keownら、1989、Methods in Enzymology;Keownら、1990、Methods and Enzymology、第185巻、pp.527−537;Mansourら、1988、Nature,336:348−352を参照のこと)。
【0220】
次いで、選択された細胞を、動物(例えば、マウス)の胚盤胞(または生存可能な動物の作製に適切な他の発生段階(例えば、桑実胚など))に注射して、キメラを形成させる(例えば、Bradley,A.in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach、編者:E.J.Robertson、IRL,Oxford,pp.113−152(1987)を参照のこと)。あるいは、選択されたES細胞を分離マウス胚細胞と凝集させて凝集キメラを形成することができる。次いで、キメラ胚を、適切な偽妊娠雌養育動物に移植し、胚を予定日に出産させることができる。生殖細胞中に相同組換えされたDNAを保有するキメラ子孫を使用して、動物の全細胞が相同組換えしたDNAを含む動物を繁殖させることができる。1つの実施形態では、キメラ子孫マウスを使用して、PXR遺伝子がヘテロ接合性破壊されたマウスを生成する。次いで、ヘテロ接合性トランスジェニックマウスを交配させることができる。典型的には、かかる交配による子孫の1/4のPXR遺伝子がホモ接合性破壊を有することが当該分野で周知である。
【0221】
1つの実施形態では、PXR遺伝子破壊に関連する表現型(または表現型の変化)を、データベースに格納するか、保存する。好ましくは、データベースには、(i)遺伝子型データ(例えば、破壊された遺伝子の同定)および(ii)遺伝子型データに関連する表現型データ(例えば、遺伝子破壊に起因する表現型)が含まれる。データベースは、好ましくは電子データである。
【0222】
本開示は、さらに、条件的トランスジェニック動物またはノックアウト動物(組換え法を使用して産生された動物など)を意図する。バクテリオファージP1 Creリコンビナーゼおよび酵母プラスミド由来のflpリコンビナーゼは、特定の標的部位(creリコンビナーゼについてはloxP部位、flpリコンビナーゼについてはfrt部位)でDNAを切断し、このDNAの第2の切断部位へのライゲーションを触媒する部位特異的DNAリコンビナーゼ酵素の2つの非限定的な例である。多数の適切な代替部位特異的リコンビナーゼが記載されており、その遺伝子を本開示の方法にしたがって使用することができる。かかるリコンビナーゼには、λバクテリオファージのIntリコンビナーゼ(Xisを含むか含まない)(Weisberg,R.ら、in Lambda II,(編者:Hendrix,R.ら),Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor,N.Y.、pp.211−50(1983)(本明細書中で参考として援用される))、TpnIおよびβ−ラクタマーゼトランスポゾン(Mercierら、J Bacteriol.,172:3745−57(1990))、Tn3リゾルバーゼ(FlanaganおよびFennewald、J.Molec.Biol.,206:295−304(1989);Starkら、Cell,58:779−90(1989))、酵母リコンビナーゼ(Matsuzakiら、J Bacteriol.,172:610−18(1990))、B.subtilis SpoIVCリコンビナーゼ(Satoら、J Bacteriol.172:1092−98(1990))、Flpリコンビナーゼ(SchwartzおよびSadowski、J Molec.Biol.,205:647−658(1989);Parsonsら、J Biol.Chem.,265:4527−33(1990);GolicおよびLindquist、Cell,59:499−509(1989);Aminら、J Molec.Biol.,214:55−72(1990))、Hinリコンビナーゼ(Glasgowら、J Biol.Chem.,264:10072−82(1989))、免疫グロブリンリコンビナーゼ(Malynnら、Cell,54:453−460(1988))、およびCinリコンビナーゼ(HaffterおよびBickle、EMBO J,7:3991−3996(1988);Hubnerら、J Molec.Biol.,205:493−500(1989))(全て本明細書中で参考として援用される)が含まれる。かかる系は、Echols(J.Biol.Chem.265:14697−14700(1990))、de Villartay(Nature,335:170−74(1988))、Craig、(Ann.Rev.Genet.,22:77−105(1988))、Poyart−Salmeronら、(EMBO J 8:2425−33(1989))、Hunger−Bertlingら、(Mol Cell.Biochem.,92:107−16(1990))、およびCreggおよびMadden(Mol.Gen.Genet.,219:320−23(1989))(全て本明細書中で参考として援用される)によって考察されている。Creは均一に精製されており、loxP部位とのその反応は広範に特徴づけられている(Abremski & Hess J Mol.Biol.259:1509−14(1984)(本明細書中で参考として援用される))。Creタンパク質の分子量は35,000であり、New England Nuclear/Du Pontから購入することができる。cre遺伝子(Creタンパク質をコードする)はクローン化および発現されている(Abremskiら、Cell 32:1301−11(1983)(本明細書中で参考として援用される))。Creタンパク質は、同一または異なるDNA分子上に存在し得る2つのloxP配列の間の組換えを媒介する(Sternbergら、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.45:297−309(1981))。loxP部位の内部スペーサー配列が非対称であるので、2つのloxp部位は、相互に関連する方向性を示し得る(Hoess & Abremski Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:1026−29(1984))。したがって、同一DNA分子上の2つの部位が順方向に反復した方向である場合、Creは部位間のDNAを切り出すであろう(Abremskiら、Cell 32:1301−11(1983))。しかし、部位が相互に逆である場合、部位間のDNAは組換え後に切り出されないが、単純に反転する。したがって、順方向に2つのloxP部位を有する環状DNA分子が組換えられて、2つの類似の環を産生するのに対して、逆方向に2つのloxP部位を有する環状分子は、loxP部位に隣接するDNA配列が単純に反転する。さらに、リコンビナーゼ作用により、標的が個別のDNA分子上に存在する場合、標的部位に対して遠位の領域の相互交換が起こり得る。
【0223】
1つの実施形態では、精製リコンビナーゼ酵素を、直接微量注入によって細胞に供給する。別の実施形態では、リコンビナーゼを、リコンビナーゼ遺伝子が機能的プロモーターに作動可能に連結された同時トランスフェクションされた構築物またはベクターから発現させる。本実施形態のさらなる態様は、組換えの時期および場所が選択可能な組織特異的または誘導性のリコンビナーゼ構築物の使用である。
【0224】
本明細書中に記載の細胞および動物ベースの系を、疾患モデルとして使用することができる。任意の種の動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ミニブタ、ヤギ、および非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、サル、およびチンパンジー)が含まれるが、これらに限定されない)を使用して、疾患動物モデルを生成することができる。さらに、ヒト由来の細胞を使用することができる。これらの系を、種々の適用で使用することができる。かかるアッセイを、薬剤(病徴を回復させることができる化合物など)を同定するようにデザインされたスクリーニングストラテジーの一部として使用することができる。したがって、動物および細胞ベースのモデルを使用して、疾患の治療に有用であり得る薬物、医薬品、療法、および介入を同定することができる。細胞ベースの系を使用して、病徴を回復するように作用することができる化合物を同定することができる。例えば、かかる細胞系を、曝露した細胞におけるかかる病徴の回復を誘発するのに十分な濃度および十分な時間、病徴を回復する能力を示す疑いのある化合物に曝露することができる。曝露後、細胞を試験して、1つまたは複数の疾患細胞表現型がより正常またはより野生型の非疾患表現型に類似するように変化したかどうかを決定する。
【0225】
さらに、動物ベースの疾患系(本明細書中に記載の疾患系など)を使用して、病徴を回復することができる化合物を同定することができる。かかる動物モデルを、動物に特徴的な疾患または他の表現型の治療に有用であり得る薬物、医薬品、療法、および介入の同定のための試験基質として使用することができる。例えば、動物モデルを、曝露した動物におけるかかる病徴の回復を誘発するのに十分な濃度および十分な時間、病徴を回復する能力を示す疑いのある化合物または薬剤に曝露することができる。曝露に対する動物の応答を、疾患に関連する障害の逆転の評価によってモニタリングすることができる。曝露は、本明細書中に記載のモデル動物の妊娠期間中に母動物を治療し、それにより、疾患または表現型を予防または回復することができる化合物または薬剤に胚または胎児を曝露する工程を含むことができる。新生期、幼若期、および成体期の動物も曝露することができる。
【0226】
より詳細には、開示の動物モデル、詳細にはトランスジェニックマウスを使用して、好ましくはPXR遺伝子破壊に関連する少なくとも1つの表現型に影響を及ぼす能力に基づいて、薬剤(化合物が含まれる)を同定する方法を提供する。1つの実施形態では、本開示は、PXRの発現または機能に影響を及ぼす薬剤を同定する方法を提供する。本方法は、例えば、薬剤に対する動物の生理学的応答を測定する工程およびかかる動物の生理学的応答をコントロール動物と比較する工程を含み、ここで、コントロール動物と比較してPXRが破壊された動物の生理学的応答は薬剤の特異性を示す。「生理学的応答」は、測定することができる動物の任意の生物学的または物理学的なパラメーターである。分子アッセイ(例えば、遺伝子転写、タンパク質産生、および分解率)、物理的パラメーター(例えば、運動生理学試験、種々の呼吸パラメーターの測定、心拍数または血圧の測定、出血時間の測定、aPTT.T、またはTT)、および細胞アッセイ(例えば、細胞表面マーカーの免疫組織化学アッセイ、または細胞の凝集または増殖能力)を使用して、生理学的応答を評価することができる。本開示のトランスジェニック動物および細胞を、PXR破壊に関連する表現型に関連する疾患、障害、または容態のモデルとして使用することができる。
【0227】
本開示は、BDに関する新規な治療の試験および開発のための固有の動物モデルを提供する。BD表現型の分析により、例えば、BDのための提案された薬理学的療法の有効性の試験に有用な動物モデルが開発可能である。
【0228】
スクリーニング方法
本開示を、アゴニスト(例えば、PXRポリペプチドに結合して活性化する薬剤)またはアンタゴニスト(例えば、PXRポリペプチドの活性またはそのリガンドとの相互作用を阻害する)などの薬剤のスクリーニング過程で使用することができる。したがって、本開示のポリペプチドを使用して、例えば、当該分野で公知の細胞、無細胞調製物、化学ライブラリー、および天然生成物の混合物における小分子基質およびリガンドの結合を評価することもできる。受容体を調整することができる薬剤を同定およびスクリーニングするために日常的に使用される任意の方法を、本開示にしたがって使用することができる。
【0229】
1つの実施形態では、スクリーニング方法で同定された組成物は、リファキシミンと比較した以下の5つの特徴に少なくともしたがって分類されるであろう:溶解性、吸収、細菌侵入、RNAポリメラーゼ阻害、および/またはPXR特異性。これらの各特徴は、これらの特徴のうちの1つまたは複数でリファキシミンの性質と異なり得、特徴の任意の組み合わせでも異なり得る。
【0230】
・溶解性:スクリーニングアッセイで同定される例示的分子は、例えば、結腸送達の改善のための溶解性の増加を有し得る。より溶解する分子が望ましい場合、溶解性の増加および改善も全身吸収の増加に有用であろう。
【0231】
・吸収:全身抗菌活性の増加または改善が望ましいかも知れない。スクリーニングアッセイで同定される例示的分子は、例えば、吸収の改善を有し得る。
【0232】
・細菌侵入:抗菌活性が改善され得る細菌侵入の増加または改善が望ましいかも知れない。至適化された抗炎症性分子が細菌侵入の減少を望む場合、これも有用である。
【0233】
・RNA Pol.阻害:抗菌性の増加または改善が望ましいかも知れない。抗菌性を、スクリーニングで選択された化合物のRNA pol活性の増加として測定することができる。至適化された抗炎症性分子のRNAポリメラーゼ阻害活性が減少することが望ましい場合、これも有用であり得る。
【0234】
・PXR特異性:結合、活性化、および/または下流シグナル伝達経路応答によって測定される特異性の増加または改善が望ましいかもしれない。おそらくPXR特異性がより高い化合物をより低いレベルで投与することができるか、より高いPXR効果を誘発するか、改善された抗炎症性を有することができる。
【0235】
本開示から恩恵を受ける当業者は、リファキシミンと比較したスクリーニングアッセイで同定された化合物の5つの特徴を試験するためのアッセイを理解するであろう。一旦スクリーニングアッセイによっていくつかの例示的化合物が同定されると、化合物を相互に比較することもできる。
【0236】
本開示は、PXRの発現または機能を調整する薬剤を同定およびスクリーニングする方法を提供する。より詳細には、PXR遺伝子配列を含み、且つ発現する細胞を使用して、治療薬をスクリーニングすることができる。かかる細胞には、非組換え単球細胞株(U937(ATCC番号CRL−1 593)、THP−1(ATCC番号TIB−202)、およびP388D1(ATCC番号TIB−63)など)、DPX2、内皮細胞(HUVECおよびウシの大動脈内皮細胞(BAEC)など)、ならびにHeLa細胞およびCOS細胞(例えば、COS−7(ATCC番号CRL−1651))などの一般的な哺乳動物細胞株が含まれ得る。さらに、かかる細胞には、組換え細胞株、トランスジェニック細胞株が含まれ得る。例えば、開示のトランスジェニックマウスを使用して、障害の細胞培養モデルとして使用することができる疾患に関与する1つまたは複数の細胞型を含む細胞株を生成することができる。開示の疾患トランスジェニック動物由来の細胞、組織、および初代培養物を使用することができる一方で、連続細胞株の生成が確実である。トランスジェニック動物から連続細胞株を誘導するために使用することができる技術の例については、Smallら、Mol.Cell Biol.,5:642−48(1985)を参照のこと。
【0237】
PXR遺伝子配列を、目的の細胞のゲノムに導入し、目的の細胞のゲノムで過剰発現させることができる。PXR遺伝子配列を過剰発現させるために、PXR遺伝子配列のコード部分を、目的の細胞型で遺伝子発現を駆動することができる調節配列にライゲーションすることができる。かかる調節領域は当業者に周知であり、過度に実験することなく使用することができる。PXR遺伝子配列を、破壊するか過小発現させることもできる。PXR遺伝子が破壊されているか、PXR遺伝子配列を過小発現する細胞を使用して、例えば、破壊または過小発現に寄与する機能の任意の喪失を補う別経路に影響を及ぼすことができる薬剤をスクリーニングすることができる。
【0238】
PXR遺伝子産物に結合することができる化合物を同定するためのインビトロ系をデザインすることができる。かかる化合物には、D型および/またはL型アミノ酸から作製されたペプチド(例えば、ランダムペプチドライブラリー形態(例えば、Lamら、Nature,354:82−4(1991)を参照のこと))、リンペプチド(例えば、ランダムまたは部分的に縮重した定方向リンペプチドライブラリー形態(例えば、Songyangら、Cell,72:767−78(1993)を参照のこと))、抗体、ならびに有機小分子および無機小分子が含まれ得るが、これらに限定されない。同定された化合物は、例えば、PXR遺伝子のタンパク質活性、好ましくは変異PXR遺伝子のタンパク質活性の調整、PXR遺伝子のタンパク質の生物学的機能の同化、または正常なPXR遺伝子の相互作用を破壊するか、かかる相互作用を自ら破壊する化合物のスクリーニングで有用であり得る。
【0239】
例えば、PXR遺伝子のタンパク質に結合する化合物を同定するために使用されるアッセイは、2つの成分が相互作用して結合するのに十分な条件および期間でPXR遺伝子のタンパク質および試験化合物の反応混合物を調製し、それにより、反応混合物中で除去および/または検出することができる複合体を形成する工程を含む。種々の方法でこれらのアッセイを行うことができる。例えば、かかるアッセイを行うための1つの方法は、PXR遺伝子のタンパク質または試験物質を固相上に係留する工程、反応終了時に固相上に係留された標的タンパク質/試験物質複合体を検出する工程を含むであろう。かかる方法の1つの実施形態では、PXR遺伝子のタンパク質を固体表面上に係留し、係留しない試験化合物を直接または間接的に標識することができる。
【0240】
マイクロタイタープレートを都合よく使用することができる。係留した成分を、非共有結合または共有結合によって固定することができる。タンパク質溶液での固体表面のコーティングおよび乾燥によって簡単に非共有結合させることができる。あるいは、固定した抗体、好ましくはタンパク質に特異的なモノクローナル抗体を使用して、タンパク質を固体表面に係留することができる。予め表面を調製し、保存することができる。
【0241】
アッセイを行うために、非固定成分を、固定した成分を含むコーティング表面に添加する。反応完了後、未反応成分を、形成された任意の複合体が固体表面上に固定されたままであるような条件下で(例えば、洗浄によって)除去する。固体表面上に係留した複合体の検出を、多数の方法で行うことができる。事前に固定されなかった成分を予め標識する場合、表面上に固定された標識の検出は、複合体が形成されたことを示す。事前に固定されなかった成分を予め標識しない場合、間接的標識を使用して(例えば、事前に固定されなかった成分に特異的な標識された抗体を使用)、表面上に係留された複合体を検出することができる(次に、標識された抗Ig抗体を使用して抗体を直接標識するか間接的に標識することができる)。
【0242】
あるいは、例えば、溶液中で形成された任意の複合体を係留するためのPXR遺伝子産物または試験化合物に特異的な固定された抗体および係留された複合体を検出するための可能な複合体の他の成分に特異的な標識された抗体を使用して、液相、未反応成分から分離した反応生成物、および検出された複合体中で反応を行うことができる。
【0243】
上記の1つの方法によって特定のPXR遺伝子産物に結合することが示された化合物を、PXR遺伝子のタンパク質由来の生化学的応答を誘発するその能力をさらに試験することができる。発現産物のアゴニスト、アンタゴニスト、および/またはインヒビターを、当該分野で周知のアッセイを使用して同定することができる。
【0244】
種々の方法を使用して、PXR遺伝子に関連する病状を診断することができる。詳細には、試薬を、例えば、PXR遺伝子変異の存在の検出またはPXR遺伝子mRNAの過剰発現または過小発現のいずれかの検出のために使用することができる。
【0245】
以下の実施例は、本開示を例示することのみを意図し、本開示を制限すると決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0246】
材料と方法
化学物質
リファンピシン(RIF)、3−(4−メチルピペラジニルイミノメチル)リファマイシンSV;リファキシミン(RIFax)、4−デオキシ−4’−メチルピリド[1’,2’−1,2]イミダゾ[5,4−c]リファマイシンSV、およびミダゾラム(MDZ)を、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。1’−ヒドロキシミダゾラム(1’−OH−MDZ)を、BD Gentest(Woburn,MA)から購入した。他の全ての化学物質は、市販の最高等級のものであった。
【0247】
動物および処置
PXRヒト化(hPXR)、Pxr−ヌル、および野生型(WT)マウスを、標準的な12時間/12時間明暗サイクルで、水および固形飼料を自由に与えて維持した。Pxr−ヌルおよびhPXRマウスは以前に記載されていた(Staudingerら、2001;Maら、2007)。PXR活性化におけるRIFaxの潜在的役割を調査するために、2〜4月齢の雄hPXR、Pxr−ヌル、およびWTマウスを、25mg/kg/日のRIFaxで3日間経口にて処置した。RIF(特異的ヒトPXRリガンド)を、ポジティブコントロールとして25mg/kg/日(p.o.)で3日間使用した。トウモロコシ油を、RIFおよびRIFax処置のためのビヒクルとして使用した。全マウスを、最後の投与から24時間後にCO窒息によって屠殺した。肝臓および小腸を回収し、さらなる分析のために−80℃で凍結した。
【0248】
RIFaxの薬物動態および腸管中のその分布
薬物動態分析のために、WT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウスを、経口経管栄養によって10mg/kg RIFまたはRIFaxで処置した。トウモロコシ油を、RIFおよびRIFax処置のためのビヒクルとして使用した。血液サンプルを、投与前、投与から0.25、0.5、1.5、3、6、9、12、24、および48時間後にヘパリン化管を使用して眼窩下静脈から収集した。RIFaxおよびRIFの代謝プロフィールを比較するために、10mg/kg RIFaxおよびRIFを、静脈内(i.v.)および腹腔内(i.p.)に投与した。i.p.注射のために、トウモロコシ油をRIFおよびRIFaxの両方のためのビヒクルとして使用し、血液サンプルを、投与前、投与から0.25、0.5、1、2、4、8、24、および48時間後に眼窩下静脈から収集した。i.v.注射のために、30%ポリエチレングリコール(PEG、分子量400)をRIFおよびRIFaxの両方のためのビヒクルとして使用し、血液サンプルを、投与前、投与から0.0833、0.25、0.5、1、2、4、8、24、および48時間後に眼窩下静脈から収集した。血清を、8,000gで10分間の遠心分離によって分離した。50μlの血清を150μlメタノールと混合し、20秒間のボルテックスを2回行い、14,000rpmにて4℃で10分間遠心分離した。次いで、上部有機層を、API2000 SCIEX三連四重極タンデム質量分析計(Applied Biosystems/MDS Sciex,Foster City,CA)を使用したLC−MS/MSによるRIFまたはRIFaxの検出のためのオートサンプラーバイアルに移した。RIFおよびRIFaxの薬物動態パラメーターを、WinNonlin(Pharsight,Mountain View,CA)を使用したノンコンパートメントアプローチによって血清濃度−時間データから評価した。最大血清濃度(Cmax)を、元のデータから得た。血清濃度−時間曲線下面積(AUC0〜48時間)を、台形公式によって計算した。腸管中の分布を検出するために、マウスを、10mg/kg RIFaxまたはRIF(p.o.)で処置した。投与から1.5、3、6、9、12、24、および48時間後、マウスを屠殺し、腸管の異なる区画中の内容物を収集した。腸内容物を秤量し、メタノール(100mg/ml)中でホモジナイズした。ホモジネートを、14,000rpmにて4℃で10分間遠心分離した。次いで、上部有機層を、LC−MS/MSによるRIFまたはRIFaxの検出のためのオートサンプラーバイアルに移した。
【0249】
LC−MS/MSによるRIFaxおよびRIFの分析
RIFaxおよびRIFを、高速液体クロマトグラフィーシステムを使用したLC−MS/MSによって決定した。このシステムは、PerkinElmer Series 200クォータナリーポンプ、真空脱ガス装置、および上記のLC−MS/MSに接続された100μlループを備えたオートサンプラーからなる。RIFaxおよびRIFを、Luna C18(内径50mm×4.6mm)カラム(Phenomenex,Torrance,CA)によって分離した。周囲温度でのカラムの流速は0.25ml/分であり、85%メタノールおよび0.1%ギ酸を含む15%HOを使用した。質量分析計をターボイオンスプレーモードで操作し、陽イオン検出を行った。ターボイオンスプレー温度を300℃に維持し、電圧4.8kVをスプレーニードルに印加した。ターボイオンスプレーおよび霧化ガスとしてNを使用した。マルチ反応モニタリング(MRM)モード(RIFaxについてはm/z 786.3/754.5、RIFについてはm/z 823.5/791.5)を使用して、検出および定量を行った。
【0250】
RIFaxで前処置したhPXRマウスにおけるMDZの薬物動態分析
hPXRマウスを、10mg/kg RIFaxで1日1回、3日間にわたって前処置したか前処置しなかった。トウモロコシ油を、RIFax処置のためのビヒクルとして使用した。最後のRIFax投与から24時間後、マウスに経口経管栄養によって2.5mg/kg MDZを投与した。血液サンプルを、MDZ投与前、5、10、20、30、60、および90分後にヘパリン化管を使用して眼窩下静脈から収集した。血清を、8,000gで10分間の遠心分離によって分離した。MDZおよび1’−OH−MDZの抽出のために、50μlの血清を、150μlのリン酸緩衝化生理食塩水、200μlの酢酸エチル、および200μlのメチルt−ブチルエーテルと混合した。混合物を、3,000rpmにて4℃で5分間遠心分離した。次いで、有機層を、新規な管に移し、Nで乾燥させ、100μlの70%メタノール水溶液および0.1%ギ酸を含む30%HO中で再構成した。MDZおよび1’−OH−MDZを、前述のようにLC−MS/MSによって検出した(Maら、2007)。MDZおよび1’−OH−MDZの薬物動態パラメーターを、WinNonlin(Pharsight,Mountain View,CA)を使用したノンコンパートメントアプローチによって血漿濃度−時間データから評価した。血清濃度−時間曲線下面積(AUC0〜90分)を、台形公式によって計算した。最大血清濃度(Cmax)およびその対応する時間(Tmax)を、元のデータから得た。
【0251】
PXR標的遺伝子のqPCR分析
以下のPXR標的遺伝子を、定量リアルタイムPCR(qPCR)によって分析した:シトクロムP450 3A11(CYP3A11)、グルタチオンS−トランスフェラーゼα1(GSTA1)、多剤耐性タンパク質2(MRP2)、および有機アニオン輸送ポリペプチド2(OATP2)(Guoら、2002;Kastら、2002;Rosenfeldら、2003)。TRIzol試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して、異なる組織からRNAを抽出した。SuperScript II逆転写酵素キット(Invitrogen)を使用して1μgの総RNAから生成したcDNAを使用してqPCRを行った。Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、qPCRのためのプライマーをデザインした。プライマー配列を表1に列挙する。ABI Prism 7900HT配列検出システム(Applied Biosystems,Foster City,CA)においてSYBRグリーンPCRマスターミックス(SuperArray)を使用して、PCR反応を行った。比較CT法を使用して値を定量化し、サンプルをβアクチンに対して正規化した。
【0252】
【表1】

細胞ベースのレポーターアッセイ
組換えヒトPXRを安定的に発現するhepG2細胞株(DPX2)およびルシフェラーゼベクター中でクローン化したPXR応答エレメントを、Puracyp Inc.(Carlsbad,CA)から入手した。細胞株の構築および検証は以前に報告されていた(Yuehら、2005)。業者の説明書にしたがって細胞を播種した。RIFax(1、10、100μM)を培養培地に添加し、ポジティブコントロールとして10μM RIFを使用した。PXRの活性化を、24時間後のホタルルシフェラーゼ活性の測定およびその後のタンパク質濃度によるルシフェラーゼ活性の正規化によって決定した。核内受容体CAR、PPARα、PPARγ、およびFXRの細胞ベースのレポーターアッセイのために、HCT116細胞を24ウェルプレート(5×104細胞/ウェル、10%FBSを含むDMEM中で培養)上にプレートし、Fugeneトランスフェクション試薬(Roche,Indianapolis,IN)を使用して種々の発現ベクターでトランスフェクトした。マウスPPARおよびCARベクターは、以前の報告書に記載されていた(Kliewerら、1992;Swalesら、2005)。マウスFXRベクターは、Dr Christopher J.Sinalから提供を受けた。トランスフェクションの24時間後、細胞を、ビヒクル(DMSO)および10μM RIFaxと24時間インキュベートした。TCPOBOP(250nM)、Wy−14,643(10μM)、ロシグリタゾン(10μM)、およびGW4064(25μM)を、それぞれ、マウスCAR、PPARα、PPARγ、およびFXRのポジティブコントロールとして使用した。標準的なデュアルルシフェラーゼアッセイを使用し、同時トランスフェクトしたコントロールレポーターに対して正規化した(Promega,Madison,WI)。各インビトロアッセイを、少なくとも3回繰り返した。
【0253】
統計分析
全値を平均±SDで示し、両側スチューデントt検定によって分析した。P<0.05を、群間の有意差と見なした。
【0254】
PXRヒト化(hPXR)、Pxr−ヌル、および野生型マウスを、リファキシミンおよびリファンピシン(十分に特徴づけられたヒトPXRリガンド)で経口にて処置した。リファンピシンと比較した場合、リファキシミンは腸管中で高度に濃縮されていた。リファキシミン処置により、hPXRマウスの腸でPXR標的遺伝子が有意に誘導されたが、野生型およびPxr−ヌルマウスでは誘導されなかった。しかし、リファキシミン処置により、野生型、Pxr−ヌル、およびhPXRマウスにおける肝臓PXR標的遺伝子に有意な影響は及ぼさないことが証明された。インビボデータと一致して、細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイにより、ヒトPXRのリファキシミン媒介活性化が明らかとなったが、他の生体異物核内受容体であるCAR、PPARα、PPARγ、およびFXRでは明らかとならなかった。リファキシミンでの前処置は、CYP3A基質ミダゾラムの薬物動態に影響を及ぼさなかったが、1’−ヒドロキシミダゾラムのCmaxが増加し、Tmaxが減少した。まとめると、本研究により、腸特異的ヒトPXRリガンドとしてリファキシミンが同定された。
【0255】
マウスにおける代謝プロフィールおよびRIFaxの腸管分布
LC−MS/MSを使用して、RIFおよびRIFaxの薬物動態を研究した。保持時間は、RIFについては2.21分(m/z 823.5/791.5)(図1C中のピーク1)およびRIFaxについては3.03分(m/z 786.3/754.5)(図1C中のピーク2)であった。検出限界は、RIFについては0.023pmolであり、RIFaxについては0.012pmolであった。RIFまたはRIFaxの単回経口投与後、マウス血液サンプルおよび腸内容物を、処置48時間後までの異なる時点で収集した。薬物動態研究では、血清RIFaxのCmaxは0.04μMであり、これは、RIF(2.75μM)より低い、約1/70であった。血清RIFaxのAUC0〜48時間は、RIFより低い、約1/300であった(図2A)。しかし、腸管分布について、RIFax濃度は、RIFより有意に高かった。小腸では、RIF濃度は、測定した全時点で20μg/g未満であった(図2B)。RIFaxについて、濃度は約160μg/gであり、この濃度が投与後9時間持続した。盲腸(図2C)および結腸(図2D)中のRIFaxの腸管分布は、小腸と類似していた。経口処置後のWT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウス間で、RIFax代謝の有意な相違は見出されなかった。WT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウスにおけるRIFax(p.o.処置)のCmaxを、図2Eに示す。RIFaxは、経口処置による非吸収性リファマイシンとして周知である。i.p.注射により、RIFaxは十分に吸収されず、生物学的利用能は、RIFより有意に低かった(図2F、2G)。i.v.処置後のRIFaxとRIFとの間の代謝プロフィールの相違が、RIFと比較した場合のRIFaxについての超短時間T1/2および超低AUCとして認められた(図2H)。
【0256】
RIFaxによるPXR活性化
PXRは、WTおよびhPXRマウスの十二指腸、空腸、回腸、盲腸、および結腸中で検出されたが、胃内には検出されなかった(Maら、2007)。腸管中のRIFaxの高分布および腸内のPXR発現により、腸PXR標的遺伝子に及ぼすRIFaxの影響をqPCRによって調査した。RIFaxで処置したhPXRマウスの小腸では、CYP3A11、GSTA1、MRP2、およびOATP2は全て上方制御された(図3A)。腸CYP3A11は、ビヒクル処置hPXRマウスと比較して約4倍に増加した一方で、WTマウスで発現が阻害され、Pxr−ヌルマウスで有意な変化は認められなかった(図3Bおよび3C)。腸GSTA1 mRNAは、RIFax処置後に3つ全てのマウス株で上方制御され(WT、Pxr−ヌル、およびhPXRマウスで87%、74%、および172%増加が認められた)、それにより、Gsta1遺伝子は直接のPXR標的ではないかもしれないが、間接的機構によって上昇し得ることが示唆された。いかなる特定の科学的理論に拘束されることも望まないが、GSTA1に及ぼすRIFaxの影響についての1つの可能な説明は、RIFaxの抗菌活性である。RIFaxを、25mg/kgで経口にて3日間処置した。この量は、腸の細菌ホメオスタシスを変化させることができ、且つ間接的にGSTA1発現をもたらし得る。腸内MRP2 mRNAの有意な上方制御がRIFax処置後のhPXRマウスで認められたのに対して、その発現はWTマウスで有意に抑制され、Pxr−ヌルマウスでは変化は認められなかった(図3Bおよび3C)。ヒトおよびラットの肝細胞中のRIFおよびPCNによってそれぞれ活性化されると報告されているMRP2(Kastら、2002)は、肝臓中でRIFによって顕著に誘導されず、腸内でRIFまたはRIFaxによってわずかに誘導された。他の者は、MRP2がPCNなどのマウスPXRリガンドによって有意に誘導されないことを見出した(Maherら、2005)。MRP2がhPXRマウスにおいてRIFによって誘導されないという所見により、ヒトとマウスとの間でのMrp2遺伝子を調節するシスエレメントの種差の可能性が示唆される。腸OATP2 mRNAは、RIFax処置後のhPXRマウスで3.4倍増加したが、WTおよびPxr−ヌルマウスの両方でこのmRNAの有意な誘導は認められなかった(図3Bおよび3C)。予想通り、RIFは腸内で4つのmRNAも誘導したが、誘導範囲は、RIFaxで認めら得た誘導範囲より狭かった(図3D)。対照的に、RIFは、肝臓中でCYP3A11、GSTA1、およびOATP2を有意に誘導した一方で、GSTA1 mRNAのみがRIFax処置hPXRマウスの肝臓中で増加した(図3Eおよび3F)。これらのデータは、RIFaxが腸特異的ヒトPXRリガンドであることを示す。
【0257】
細胞ベースのレポーターアッセイにおけるRIFaxによるヒトPXR活性化
ルシフェラーゼ活性の用量依存性増加は、RIFaxによるhPXR活性化についての細胞ベースのレポーターアッセイで認められた。hPXRレポーター系における1、10、および100μM RIFaxとのインキュベーションにより、DMSOコントロールと比較して、それぞれ2.1倍、6.7倍、および25.2倍増加した(図4A)。100nMのRIFaxではhPXRに有意な影響を及ぼさなかった一方で、10μM RIFaxによってPPARα、PPARγ、CAR、およびFXRの存在下でのルシフェラーゼ活性は有意に変化しなかった(図4B)。
【0258】
RIFaxで前処置したhPXRマウスにおけるMDZの薬物動態
MDZ(2.5mg/kg)の単回経口投与後、hPXRマウスにおけるMDZおよび1’−OH−MDZの血清濃度−時間曲線を決定した。薬物動態パラメーターを、ノンコンパートメント分析によって評価した。RIFaxで前処置したか前処置しなかったhPXRマウスにおけるMDZのCmax、Tmax、およびAUC0〜90分について有意な変化は認められなかった(p>0.05)。hPXRマウスにおけるRIFax前処置は、1’−OH−MDZ(MDZの主な代謝産物)のAUC0〜90分に有意な影響を及ぼさなかった。しかし、1’−OH−MDZのCmax値は、RIFax前処置hPXRマウスで50%高く(p<0.05)、対応するTmaxは、コントロール群より有意に短かった(表2)。これらの結果により、hPXRマウス腸におけるRIFax媒介CYP3A11上方制御がMDZの肝臓外初回通過代謝に寄与することが示唆された。
【0259】
表2 10mg/kg/日のRIFaxで3日間前処置したか前処置しなかったhPXRマウスにおけるMDZの薬物動態。血清MDZおよび1’−OH−MDZをLC−MS/MSによって検出した。MDZおよび1’−OH−MDZについてのAUC0〜90分を、WinNonlin(Pharsight,Mountain View,CA)を使用したノンコンパートメントアプローチによって血漿濃度−時間データから評価した。CmaxおよびTmaxを、元のデータから得た。データを平均±SD(n=3)として示す。*コントロールと比較してp<0.05。
【0260】
【表2】

PXRに及ぼすRIFaxの影響を調査した。hPXR、Pxr−ヌル、およびWTマウス、ならびに細胞ベースのヒトPXRレポーター遺伝子アッセイの使用により、RIFaxを腸特異的ヒトPXRリガンドとして同定した。RIFaxの医薬開発中、RIFaxによるCYP3A4誘導がヒト肝細胞モデルで認められた。RIFaxは、PXR標的遺伝子(CYP3Aが含まれる)を上方制御する腸特異的ヒトPXRリガンドであるという新規な所見を本明細書中に報告する。組換えヒトPXRを安定的に発現するDPX2細胞株では、ルシフェラーゼ活性はビヒクルと比較して2.1倍増加したので、hPXRは1μMを超えるRIFax濃度で有意に活性化された。DPX2細胞株におけるRIFaxによるhPXRの活性化についてのEC50はおよそ20μMと評価された。腸内のRIFax濃度は、RIFax処置後に20μMよりはるかに高い。本研究では、マウスを10mg/kg RIFax(単回投与、p.o.)で処置した場合、腸管内RIFax濃度は150ug/g(約200μM)腸内容物までであった。ヒトでは、RIFax処置(800mgを毎日、p.o.)の3日後、RIFax濃度は約8mg/g(約10,000μM)糞便であった(Jiangら、2000)。これは、腸内のRIFax曝露濃度が非常に高いことを示していた。腸PXR(しかし肝臓受容体ではない)に及ぼすRIFaxの影響は、おそらくその不十分な吸収に関連していた。腸管内でRIFax濃度が高く、血中に少しだけ分布するので、本研究におけるRIFaxの代謝プロフィールは、以前の研究と一致している(Venturini、1983;Cellaiら、1984)。これは、腸内のPXR発現と無関係であり、吸収の欠如がPXR誘導性代謝に起因しないことを示した。ヒトでは、経口投与後のRIFax吸収も無視できる。RIFax(400mg)の単回経口投与後、血漿RIFax濃度は、検出限界(2ng/ml)未満であった。尿中では、非常に少量の不変の分子が検出された。この分子は、投与用量の0.01%未満であった(Descombeら、1994)。したがって、本研究は、臨床での使用中にRIFaxは抗生物質として機能し、腸内でPXRアクチベーターとしても機能することを示す。
【0261】
ヒトPXRリガンドとしてのRIFaxの同定により、薬理学および治療学におけるRIFaxの役割に関する新規な洞察が得られる。PXR(リガンド活性化転写因子の核内受容体ファミリーのメンバー)は、生体異物の解毒に関与する生体防御機構の不可欠な要素である(Kliewerら、2002)。PXR活性化は、生体異物酸化および抱合酵素ならびに身体由来の潜在的に有害な化学物質の代謝および排除に関与する輸送体の発現を調節する。前の研究により、ヒト肝細胞モデルにおけるRIFaxによるCYP3A4誘導が明らかとなった。MDZならびにエチニルエストラジオールおよびノルゲスチメートを含む経口避妊薬を使用した2つの臨床研究(Trapnellら、2007)により、RIFaxはこれらの薬物の薬物動態を変化させず、したがって、RIFaxが腸または肝臓のCYP3A4に有意な影響を及ぼさないことを示すことが証明された。しかし、本明細書中では、腸CYP3A11は、RIFaxで処置されたhPXRマウスで有意に上方制御された。RIFaxで前処置したhPXRにおけるMDZの薬物動態研究では、Cmaxの20%減少が認められ、これは、その主な中間体である1’−OHMDZのCmax増加と一致した。いかなる特定の科学的理論に拘束されることも望まないが、腸CYP3A代謝を介した初回通過効果によってこれを説明することができる。しかし、RIFaxで前処置したhPXRにおいてMDZ AUCの平行減少は認められなかった。AUCは、初回通過による排除に関連するだけでなく、吸収などの他の要因にも関連する。RIFaxで前処置したhPXRマウスでは、いくつかの腸遺伝子(輸送体(流入輸送体OATP2など)が含まれる)が上方制御され、これがMDZ吸収の増加に寄与し得る。マウスにおけるその不十分な生物学的利用能および変動の大きさにより、MDZについての生物学的利用能研究を行わなかった(Granvilら、2003)。PXR活性化の有利な態様は、生体異物の排除に関与する酵素および輸送体(P450s、GST、OATP、MRPなどが含まれる)の上方制御による解毒における役割である(Kliewer、2003;Sainiら、2005;Wagnerら、2005)。PXR標的遺伝子は、生体異物および細菌に対する腸関門機能における成分である(Langmannら、2004)。RIFaxで処置したhPXRマウスの小腸では、いくつかのPXR標的遺伝子(CYP3A11、GSTA1、MRP2、およびOATP2など)が上方制御された。RIFaxは、複数の慢性胃腸障害(肝性脳症、腸ガスおよびガス関連症候群、憩室性疾患、回腸嚢炎、およびBDなど)の治療で有利である(ScarpignatoおよびPelosini、2005)。慢性胃腸障害におけるRIFaxの有利な影響に寄与する機構は、完全に理解されていない。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性BDマウスモデルでは、PCN媒介性PXR活性化がDSS誘導性結腸炎を有意に予防し(Shahら、2007)、これは、BDの治療薬としてのPXRリガンドの潜在的価値を示す。慢性胃腸障害を治療するための医薬におけるRIFax媒介性腸PXR活性化の役割を評価するためのさらなるヒト研究が提案される。
【0262】
前述の発明は理解を明確にするための例証および実施例によって幾らか詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の教示を考慮して、その一定の変更形態および修正形態が可能であることが当業者に容易に理解されるであろう。
【0263】
略語:RIF、リファンピシン;RIFax、リファキシミン;PXR、プレグナンX受容体;CAR、構成性アンドロスタン受容体;PPARα、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アルファ;PPARγ、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ;FXR、ファルネソイドX受容体;WT、野生型マウス;hPXR、PXRヒト化マウス;CYP3A、シトクロムP450 3A;GSTA、グルタチオンS−トランスフェラーゼアルファ;MRP、多剤耐性タンパク質;OATP、有機アニオン輸送ポリペプチド;MDZ、ミダゾラム。
【0264】
参考文献
【0265】
【化5】

【0266】
【化6】

【0267】
【化7】

【0268】
【化8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレグナンX受容体(PXR)タンパク質またはそのフラグメントを調整する化合物またはその塩をスクリーニングする方法であって、該PXR受容体を1つまたは複数の候補化合物と接触させる工程、および該PXR受容体を調整する化合物またはその塩を選択する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記候補化合物がリファマイシンアナログを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調整が、PXRタンパク質またはそのフラグメントのリファマイシンアナログへの結合によって誘導されるシグナル伝達の調整を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PXR受容体が、膜に結合し、トランスジェニックマウス中に存在し、アッセイプレート中に存在し、細胞中に存在し、そして/または人工膜中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PXRタンパク質が、配列アクセッション番号O75469、Q8SQ01、Q9R1A7、O54915、NP_148934、NP_003880もしくはNP_071285、またはそのフラグメントもしくは改変体によって示されるアミノ酸配列、あるいは配列アクセッション番号NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133、またはそのフラグメントもしくは改変体によって示される核酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
CYP3A11、GSTA1、MRP2、およびOATP2が全て上方制御された、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
リファキシミンでの前処置をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
候補化合物での前記PXR受容体タンパク質の前処置をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記候補化合物での前処理が、CYP3A基質ミダゾラムの薬物動態に影響を及ぼさない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記候補化合物での前処理が、1’−ヒドロキシミダゾラムのCmaxを増加させ、Tmaxを減少させる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
CYP3A11が、前記候補化合物での処理後、コントロールと比較して約1倍〜約4倍増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
候補化合物での処理後にGSTA1 mRNAが上方制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記上方制御が約65%〜約200%の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
候補化合物処置後に腸内MRP2 mRNAが上方制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
PXR受容体タンパク質またはその活性フラグメントおよびリファマイシンアナログを含む、PXR受容体またはそのフラグメントを調整する化合物またはその塩をスクリーニングするためのキット。
【請求項16】
プレグナンX受容体(PXR)タンパク質またはそのフラグメントを調整する化合物またはその塩、もしくはPXRタンパク質またはそのフラグメントのリファマイシンアナログへの結合によって誘導されるシグナル伝達を調整する化合物またはその塩を含む、PXR関連障害を治療するための医薬。
【請求項17】
プレグナンX受容体(PXR)タンパク質またはそのフラグメントを調整する化合物またはその塩を投与する工程を含む、被験体のPXR関連障害を治療、予防、または緩和する方法。
【請求項18】
前記調整が、PXRタンパク質またはそのフラグメントのリファマイシンアナログへの結合によって誘導されるシグナル伝達の調整を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記PXR受容体が、膜に結合し、トランスジェニックマウス中に存在し、アッセイプレート中に存在し、細胞中に存在し、そして/または人工膜中に存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記PXRタンパク質が、配列アクセッション番号O75469、Q8SQ01、Q9R1A7、O54915、NP_148934、NP_003880もしくはNP_071285、またはそのフラグメントもしくは改変体によって示されるアミノ酸配列あるいは配列アクセッション番号NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133、またはそのフラグメントもしくは改変体によって示される核酸を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
治療効果を生成するのに有効な量でPXRタンパク質アゴニストを含む、組成物。
【請求項22】
内因性プレグナンX受容体(PXR)遺伝子のホモ接合性破壊を含む、トランスジェニックマウス。
【請求項23】
前記マウスがヒトPXR遺伝子を含む、請求項22に記載のトランスジェニックマウス
【請求項24】
請求項22に記載のトランスジェニックマウスから単離した細胞または組織。
【請求項25】
PXR遺伝子またはPXR遺伝子発現産物の活性を調整することができる薬剤を同定する方法であって、
推定上の薬剤を請求項23に記載のトランスジェニックマウスに投与する工程、
該薬剤を野生型コントロールマウスに投与する工程、および
該トランスジェニックマウスの生理学的応答をコントロールマウスの応答と比較する工程であって、該トランスジェニックマウスと該コントロールマウスとの間の生理学的応答の相違は、該薬剤が該遺伝子または遺伝子発現産物の活性を調整することができることの指標である、工程
を含む、方法。
【請求項26】
腸疾患活性を有する薬物候補をスクリーニングする方法であって、
配列NM_033013、NM_009803、NM_022002、NM_003889、CS618137、CS618135、CS618133からなる群から選択される核酸配列によってコードされるPXR遺伝子、またはO75469、Q8SQ01、Q9R1A7、O54915、NP_148934、NP_003880、NP_071285、そのフラグメントもしくは改変体を発現する細胞を提供する工程、
該細胞を薬物候補と接触させる工程、および
組織サンプル中のBDポリヌクレオチドの発現に対する該薬物候補の影響をモニタリングする工程
を含む、方法。
【請求項27】
PXRポリペプチドに結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項28】
前記抗体またはそのフラグメントが固体支持体に付着し、該抗体がモノクローナル抗体であり、該抗体がポリクローナル抗体であり、そして/または該抗体またはそのフラグメントが検出可能な標識をさらに含む、請求項27に記載の単離抗体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−501672(P2011−501672A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530102(P2010−530102)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/080115
【国際公開番号】WO2009/052255
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(506275586)サリックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (12)
【出願人】(305056858)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (15)
【Fターム(参考)】