腸疾患の治療
【課題】RNAi技術の直腸内投与による、腸症状の治療のための方法及び組成物の提供。
【解決手段】RNA干渉を媒介し得る、短い干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、antagomir、及び短いヘアピンRNA(shRNA)分子等を、過剰増殖性疾患、特に結腸直腸ガン;自己免疫性及び炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病;大腸炎、特に潰瘍性大腸炎;過敏性腸症候群;腸の感染性疾患、例えば偽膜性大腸炎、アメーバ症、または腸結核等;結腸ポリープ;憩室疾患;便秘症;腸閉塞;吸収不良症候群;直腸疾患;並びに下痢;を含む腸症状の治療のための薬剤の調製に用いる。
【解決手段】RNA干渉を媒介し得る、短い干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、antagomir、及び短いヘアピンRNA(shRNA)分子等を、過剰増殖性疾患、特に結腸直腸ガン;自己免疫性及び炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病;大腸炎、特に潰瘍性大腸炎;過敏性腸症候群;腸の感染性疾患、例えば偽膜性大腸炎、アメーバ症、または腸結核等;結腸ポリープ;憩室疾患;便秘症;腸閉塞;吸収不良症候群;直腸疾患;並びに下痢;を含む腸症状の治療のための薬剤の調製に用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNAi技術の直腸内投与による、腸症状の治療のための方法及び組成物に関する。本発明の組成物は、短い干渉核酸分子(siNA)、及び小さな干渉RNA(siRNA)を含むが、これに制限されない関連化合物を含む。特に、本発明の組成物を、過剰増殖性疾患、特に結腸直腸ガン;自己免疫性及び炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病;大腸炎、特に潰瘍性大腸炎;過敏性腸症候群;腸の感染性疾患、例えば偽膜性大腸炎、アメーバ症、または腸結核等;結腸ポリープ;憩室疾患;便秘症;腸閉塞;吸収不良症候群;直腸疾患;並びに下痢;を含む腸症状の治療に用いることができる。
【0002】
ある実施態様において、タイプ1ヘルパーT(Th1)細胞免疫応答に関わるサイトカイン、インターロイキン-12(IL-12)レベルの増大によって引き起こされる腸症状、例えば自己免疫性疾患及びIBDを、この手法によって治療することができる。IL12-p40サブユニット及び/またはIL12-p35サブユニットを標的とするsiRNA及び関連化合物を含む組成物及び方法を、IL-12の過剰発現にともなう疾患、特にクローン病の治療に提供する。
【背景技術】
【0003】
<遺伝子発現を調整する手段としてのRNAi>
RNAi干渉とは、二本鎖RNA(dsRNA)によって媒介される、配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングの過程を表す。1990年代初期における、植物における当該現象の発見後、Andy FireとCraig Melloは、dsRNAが、線虫において極めて効率的な方法で遺伝子発現を特異的且つ選択的に抑制することを証明した(Fireら, 1998)。第一鎖(センスRNA)の配列は、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の対応する領域のものに一致した。第二鎖(アンチセンスRNA)は、前記mRNAに相補的であった。その結果生じたdsRNAは、相当する一本鎖RNA分子(特に、アンチセンスRNA)よりも、数桁の量でより効率的であることが分かった。
【0004】
酵素DICERがdsRNAと遭遇し、それを小さな干渉RNAまたはsiRNAと呼ばれる断片に切断すると、RNAiの過程が開始する。このタンパク質は、RNase IIIヌクレアーゼファミリーに属する。タンパク質の複合体は、これらのsiRNAを引き寄せ、それらのコードを案内役として使用して、標的RNA等の整合する配列を有する細胞中の任意のRNAを探し出し、破壊する(Bosher & Labouesse, 2000;Akashiら,2001を参照)。
【0005】
遺伝子ノックダウンのためにRNAiを適用することを意図して、哺乳類細胞は、この手法の使用を妨害し得るウイルス感染に対する種々の防御機構を発達させたと解された。実際、ごく微量のウイルスdsRNAの存在が、インターフェロンの応答を誘発し、翻訳の広範囲な非特異的抑制を引き起こし、次いでアポトーシスを誘発する(Williams, 1997;Gil & Esteban, 2000)。
【0006】
2000年に、dsRNAはマウスの卵母細胞及び初期胚において3つの遺伝子を特異的に阻害することが報告された。前記胚が成長し続けるにつれ、翻訳抑制、及び従ってPKR応答は観察されなかった(Wianny & Zernicka-Goetz, 2000)。Ribopharma AG(Kulmbach, Germany)における研究は、急性期反応を誘導せずにヒト細胞中の遺伝子を減衰させるための、短い(20-24塩基対)dsRNAを用いることによる、哺乳類細胞におけるRNAiの機能性を証明した。他の研究グループによって実施された同様の実験は、これらの結果を立証した(Elbashirら, 2001;Caplenら, 2001)。種々の正常及びガンヒト及びマウス細胞株において調べたところ、短いヘアピンRNA(shRNA)は、それらのsiRNA相当物と同じくらい効率的に遺伝子を抑制し得ることが確認された(Paddisonら, 2002)。最近では、別の群の小さなRNA(21-25塩基対)が遺伝子発現の下方制御を媒介していることが示された。これらのRNA、小さな一時的に制御されるRNA(stRNA)は、線虫における成長の間、遺伝子発現のタイミングを制御する(Banerjee & Slack, 200;Grosshans & Slack, 2002の概説を参照)。
【0007】
科学者は、線虫、ショウジョウバエ、トリパノソーマ、及び他の無脊椎動物を含むいくつかの系においてRNAiを使用している。最近、いくつかのグループは、種々の哺乳類細胞株における(特にHeLa細胞における)タンパク質の生合成の特異的抑制を示しており、RNAiがin vitroにおける遺伝子サイレンシングに広く適用可能な方法であることを証明している。これらの結果に基づき、RNAiは、遺伝子機能を実証する(同定する及び特定する)ための十分に認められた手段に急速になっている。短いdsRNAオリゴヌクレオチドを利用するRNAiは、部分的にのみ配列決定されている遺伝子の機能についての理解をもたらすであろう。
【0008】
最近、Kruzfeldtと同僚は、「antagomir」と呼ばれる特別に設計された化合物のクラスが、遺伝子発現を制御するRNAの非コード断片であるマイクロRNA(miRNA)の作用を効果的に抑制し得ることを示している(Krutzfeldtら, 2005)。
【0009】
前述は、RNAiに関係する関連技術についての議論である。当該議論は、後に続く本発明についての理解に対してのみ提供され、記載される研究のいずれかが、当該請求される発明の先行技術であると承認するものではない。
【0010】
<インターロイキン-12及びクローン病>
インターロイキン-12(IL-12)は、IL-12の生物学的活性に必須のジスルフィド結合によって連結された、40kDaのサブユニット(IL12-p40と称される)と35kDaのサブユニット(IL12-p35と称される)とからなる、ヘテロ二量体の70kDaの糖タンパク質(IL12-p70)である。
【0011】
IL-12は、細胞媒介性免疫応答及びタイプ1ヘルパーT(Th1)細胞炎症反応を制御する重要なサイトカインである(Gatelyら, 1998;Trinchieri, 1998)。Th1細胞の発達を強力に促進するIL-12の能力により、それは、自己免疫性疾患及び炎症性腸疾患(IBD)等のTh1細胞媒介性疾患の治療のための理想的な標的となる。
【0012】
ある特定のIBDは、腸組織における抗原提示細胞によるIL-12の、並びに腸のリンパ細胞及びマクロファージによるインターフェロン-γ及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)の産生の増加を特徴とする症状である、クローン病である(Faisら, 1994;Fussら, 1996;Monteleoneら, 1997;Parronchiら, 1997;Plevyら, 1997)。
【0013】
クローン病は、小腸において炎症を引き起こす。前記炎症は、痛みを引き起こし得、腸を頻繁に空にし得、下痢を引き起こす。直腸出血、体重減少、及び発熱も生じるかもしれないが、クローン病の最も一般的な症状は腹痛と下痢である。出血は、深刻且つ永続的であるかもしれず、貧血症を引き起こす。クローン病の子供は、発達の遅れと成長の遅れに苦しむかもしれない。
【0014】
大部分の人は、まず、炎症を制御するのを助ける物質メサラミンを含む薬剤で治療される。スルファサラジンは、これらの薬剤のうち最も一般的に用いられる。それによって利益を得ない、またはそれに耐えられない患者は、アサコール、ジペンタム(Dipentum)、またはペンタサ等の通常5-ASAとして知られる、その他のメサラミン含有薬剤を受けるかもしれない。メサラミン製剤の可能性のある副作用は、吐き気、嘔吐、下痢、及び頭痛を含む。これらの薬剤は、進行中のクローン病に最も効果的であるが、それらは、感染症に対するより高い罹患性を含む深刻な副作用を引き起こす可能性がある。免疫系を抑制する薬剤もまた、クローン病を治療するために用いられる。6-メルカプトプリン及び関連薬剤、アザチオプリンが最も一般的に処方される。免疫抑制剤は、炎症の原因となる免疫反応を遮断することにより作用する。これらの薬剤は、吐き気、嘔吐、及び下痢等の副作用を引き起こすかもしれず、且つ感染症に対して人間の抵抗力を低下させる可能性がある。当該腸の部分を除去する外科手術は、クローン病に役立つかもしれないが、それを治癒することはできない。クローン病に対する現在の治療法の副作用及び有効性の不足のために、研究者はより効果的な治療法を探し続けている。
【0015】
IL-12の作用を阻害することは、自己免疫病及び慢性炎症の多数の実験モデルにおける、疾患の発達及び進行を抑制することが示されている(Caspi, 1998)。これらのモデルは、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、実験的ブドウ膜炎(EAU)、コラーゲン誘発性関節炎(CIA)、自己免疫性腎炎、インシュリン依存型真性糖尿病(IDDM)、及びIBDに対する種々のモデルを含む(Vandenbroeckら, 2004)。これらのモデルにおいて、内在性IL-12の役割は、IL12-p40ノックアウトマウスを用いることによって、または抗IL-12抗体を投与することによって検討されている。
【0016】
特に、抗体を用いてIL-12を標的とすることは、クローン病の動物モデルにおける腸炎に対する有効な治療法である(Mannonら, 2004)。従って、トリニトロベンゼンスルホン酸塩誘発性大腸炎のマウスは、IL-12、インターフェロン-γ、及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)の産生が非常に増加することを特徴とするTh1媒介性消化管炎を有する。マウスにおけるIL-12に対するモノクローナル抗体の投与は、確立した大腸炎の解決策をもたらし得、大腸炎の誘発と同時に提供された場合、炎症を防ぎ得る(Neurathら, 1995)。
【0017】
抗インターロイキン-12は、ヒトCD3ε遺伝子を過剰発現するマウス及びインターロイキン-10を欠失したマウス等のTh1媒介性炎症のモデルにおいて見られる自然発生的大腸炎を予防及び治療することができる(Davidsonら, 1998;Simpsonら, 1998)。
【0018】
初期相2試験からのデータは、IL12-p40に対するモノクローナル抗体を用いた治療が、進行中のクローン病に罹患した患者における臨床反応及び緩和をもたらす可能性があるというある証拠を提供する(Mannonら, 2004)。この治療法は、疾患の部位におけるTh1媒介性の炎症性サイトカインの減少をともなう。
動物モデル及びクローン病の患者における抗IL-12の臨床効果から得られた先の証拠(Mannonら, 2004)は、クローン病に対する将来の治療法の標的としてのIL-12の重要性を強調している。
<siRNAによるIL-12レベルの調節>
IL-12発現を標的とするsiRNAは、T細胞活性を調節する種々の治療的in vitro、ex vivo、及びin vivo方法に用いられ得、それにより、哺乳類被験者における免疫疾患の治療のための治療的手法における使用を有する、修飾樹状細胞(DC)を獲得するためにすでに用いられている(WO 03/104456;Hillら, 2003)。成熟DCにおいてIL-12発現を標的とするsiRNAは、成熟DCによって促進されるナチュラルキラー細胞インターフェロンγ(IFN-γ)におけるIL-12に対する重大な役割を明らかにしている(Borgら, 2004)。さらに、siRNAを含むIL12-p35インヒビターは、驚くべきことに、前脂肪細胞の脂肪細胞への分化及び脂肪細胞におけるトリグリセリドの蓄積を阻害することを示している(WO 03/104495)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】WO 03/104456
【特許文献2】WO 03/104495
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Hill JAら,「Immune modulation by silencing IL-12 production in dendritic cells using small interfering RNA」, J Immunol., 2003 Sep 15; 171 (6): 3303
【非特許文献2】Flynn MAら,「Efficient delivery of small interfering RNA for inhibition of IL-12p40 expression in vivo」, J Inflamm (Lond), 2004 Oct 1; 1 (1): 4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
IL12-p40を標的とするsiRNAは、リポソームカプセル化によってマウスの腹膜腔へ上手く送達され、エンドトキシン投与後の局所性及び全身性炎症応答を調節する(Flynnら, 2004)。しかし、知る限りにおいては、IL-12だけでなく腸症状に関わる任意の他の遺伝子の下方制御のためのsiRNAの直腸内投与について、先行する証拠はない。我々は、腸疾患を治療するためのin vivoにおけるIL-12の下方制御のための技術を開発し、且つ我々はさらに、直腸内投与によって腸へsiRNAを方向づけするための技術を開発している。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、RNAi技術の直腸内投与による、腸症状の治療のための方法及び組成物を提供する。本発明の組成物は、短い干渉核酸分子(siNA)、及びsiRNAを含むがこれに制限されない関連化合物を包含する。特に、本発明の組成物を、過剰増殖性疾患、特に結腸直腸ガン;自己免疫性及び炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病;大腸炎、特に潰瘍性大腸炎;過敏性腸症候群;腸の感染性疾患、例えば偽膜性大腸炎、アメーバ症、または腸結核等;結腸ポリープ;憩室疾患;便秘症;腸閉塞;吸収不良症候群;直腸疾患;並びに下痢;を含む腸症状の治療のための薬剤の調製に用いることができる。本発明は、RNA干渉を媒介し得る、短い干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、antagomir、及び短いヘアピンRNA(shRNA)分子を含むが、これに制限されないsiNAの組成物及び使用方法を包含する。
【0023】
本発明の方法は、腸疾患の治療のための、それを必要とする患者への、有効な量の本発明の1つ以上のsiNAの投与を含む。好ましい実施態様において、本発明の方法は、治療的siNAの直腸内投与を含む。
ある実施態様において、本発明は、サイトカインIL-12のp35またはp40サブユニットのいずれかのmRNA発現を干渉することに向けられ、且つ産生されたタンパク質の量を最終的に調節するsiNAまたは類似の化学的に合成された物質に関する。前記siRNA及び関連化合物を含む組成物及び方法は、IL-12の過剰発現をともなう疾患、例えば自己免疫疾患及び炎症性腸疾患(IBD)等、特にクローン病の治療を意図する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】本発明に含まれるIL12-p35及びp40サブユニットを標的とするsiRNA分子のオリゴヌクレオチド配列。図中の配列番号(SEQ ID)は、センス鎖(5’-> 3’)を表す。典型的に、siRNAはdsRNAとして投与され、従って、センス鎖及びその相補鎖の両方を含む。
【図1B】図1A参照。
【図1C】図1A参照。
【図1D】図1A参照。
【図2】In vitro系におけるIL12-p35サブユニット発現へのsiRNAの効果。siRNA処理により、IL12-p35遺伝子の転写レベルが低下する。RNAは、異なる時間、siRNAで処理されたSW480細胞から調製された。当該サンプルを、特異的プライマーを用いたRT-PCRによって分析した。当該値は、ハウスキーピング遺伝子としての18Sに対して標準化された、種々の転写物の平均発現レベルを示す。
【図3】In vitro系におけるIL12-p40サブユニット発現へのsiRNAの効果。A:ヒト細胞において、siRNA処理によりIL12-p40遺伝子の転写レベルが低下する。RNAは、異なる時間、200nMの処理用量で、配列番号(SEQ ID)67及び配列番号79で処理されたSW480細胞から調製された。当該値は、ハウスキーピング遺伝子としての18Sに対して標準化された、種々の転写物の平均発現レベルを示す。当該値は、コントロール遺伝子発現に対してsiRNA干渉の際に標準化されたmRNAレベルの平均パーセンテージ、及びそれらの中間標準偏差(SEM)を表す。B:マウス細胞において、siRNA処理によりIL12-p40遺伝子の転写レベルが低下する。RNAは、異なる時間、100nMの処理用量で、配列番号86及び配列番号87で処理されたC2C12細胞から調製された。ヒト配列番号67に相同的な配列番号86は、マウスIL12-p40サブユニットを標的とする。マウスIL12-p40サブユニットをさらに標的とする配列番号87は、マウスにおいて最高のスコアを有するsiRNAであり、ヒトにおいて相同的なsiRNA二重鎖を有さない。siNA配列番号86及び配列番号87は、下部に示すように、2個のチミジンヌクレオチド3’突出を有する。当該値は、コントロール遺伝子発現に対して、siRNA干渉の際に18Sと比較した、標準化されたmRNAレベルの平均パーセンテージ、及びそれらの中間標準偏差(SEM)を表す。
【図4】siRNA処理により、小腸におけるGFP遺伝子の転写レベルが低下する。OCT中に回収した組織を、顕微鏡によって分析し、Photoshopプログラムによって測定した。データは、単回siRNA投与処理(マウス2-3)及び繰返し投与処理(マウス4-5)を示す。当該値は、コントロール未処理マウスに関連した、マウスあたりの25の代表的な画像の発現レベルを示す。当該データの標準偏差を表す。
【図5】siRNA処理により、小腸におけるGFP遺伝子の転写レベルが低下する。RNA later中に回収した組織を、RT-PCRによって分析した。データは、単回siRNA投与処理(マウス2-3)及び繰返し投与処理(マウス4-5)を示す。標準偏差を表す。
【図6】siRNA処理により、大腸におけるGFP遺伝子の転写レベルが低下する。OCT中に回収した組織を、顕微鏡によって分析し、Photoshopプログラムによって測定した。データは、単回siRNA投与処理(マウス2-3)及び繰返し投与処理(マウス4-5)を示す。当該値は、コントロール未処理マウスに関連した、マウスあたりの25の代表的な画像の発現レベルを示す。当該データの標準偏差を表す。
【図7】siRNA処理により、大腸におけるGFP遺伝子の転写レベルが低下する。RNA later中に回収した組織を、RT-PCRによって分析した。データは、単回siRNA投与処理(マウス2-3)及び繰返し投与処理(マウス4-5)を示す。標準偏差を表す。
【図8】OCT培地中に回収したサンプルのデータ。
【図9】RNA later中に回収したサンプルのデータ。
【0025】
本発明は、RNAi技術の直腸内投与による、腸症状の治療のための方法及び組成物に関する。本発明の組成物は、腸壁の疾患に関連する標的遺伝子の発現を調節する短い干渉核酸分子(siNA)を含む。
【0026】
本発明の方法は、それを必要とする患者への、有効な量の本発明の1つ以上のsiNAの投与を含む。
【0027】
<siRNAの設計>
例えば、siNAが遺伝子の発現を選択的に低下させるまたは阻害する場合、前記遺伝子は本発明に係るsiNAによって「標的とされる」。厳しい条件下で、siNAが遺伝子転写物にハイブリダイゼーションする場合、siNAは前記遺伝子を標的とする。siNAを、遺伝子を標的とする能力について、in vitroまたはin vivoのいずれかにおいて調べることができる。
【0028】
1999年、Tuschlらは、siRNAのサイレンシング効果を解読し、それらの効率は、二重鎖の長さ、3’突出部の長さ、及びこれらの突出部の配列の関数であることを示した。
【0029】
標的遺伝子内の全くの相同的領域を選択することは、正確なサイレンシングと非常に関係する。標的遺伝子配列の短い断片(例えば、19-40ヌクレオチドの長さ)を、本発明のsiNAの配列として選択する。ある実施態様において、前記siNAはsiRNAである。そのような実施態様において、標的遺伝子配列の短い断片は、前記標的遺伝子mRNAの断片である。好ましい実施態様において、標的遺伝子mRNAから、siRNA分子の候補となる配列断片を選択する基準は:1)天然のmRNA分子の5’または3’末端から少なくとも50-100ヌクレオチドである標的遺伝子mRNA由来の配列;2)30%-70%、最も好ましくは約50%のG/C含有量を有する標的遺伝子mRNA由来の配列;3)繰返し配列(例えば、AAA、CCC、GGG、TTT、AAAA、CCCC、GGGG、TTTT)を含まない標的遺伝子mRNA由来の配列;4)当該mRNA中に接近可能な標的遺伝子mRNA由来の配列;及び5)標的遺伝子に特有である標的遺伝子mRNA由来の配列;を含む。標的遺伝子mRNA由来の配列断片は、前記の特定した基準の1つ以上を満足するものであってよい。
【0030】
実際的には、最適なオリゴヌクレオチドの設計に対して、前記のすべての可変性を考慮する予測プログラムに、関心の遺伝子をヌクレオチド配列として取り込む。このプログラムは、siRNAによる標的とされやすい領域に対して、任意のmRNAヌクレオチド配列を精査する。この分析の結果が、予測siRNAオリゴヌクレオチドのスコアである。最も高いスコアを用いて、典型的に化学合成によって作製される二本鎖RNAオリゴヌクレオチドを設計する(他の長さも可能であるが、典型的には、21bpの長さ)。我々は、当該技術分野において公知のいくつかの化学修飾を調べる予定である。これらの修飾は、前記dsRNAオリゴヌクレオチドの安定性または有効性を増大させることを意図する。
【0031】
候補オリゴヌクレオチドを、さらに、動物からヒトの臨床試験への移行を容易にするために、種間配列についてフィルターにかける。
【0032】
標的領域に完全に相補的なsiRNAに加えて、相同的領域を標的とするために、縮重(degenerate)siNA配列を用いてもよい。WO 2005/045037は、そのような相同的配列を標的とするための、例えば、非標準塩基対(例えば、ミスマッチ及び/またはゆらぎ塩基対)を取り入れることによる、さらなる標的配列を提供し得るsiNA分子の設計を記載している。ミスマッチが特定された場合、非標準塩基対(例えば、ミスマッチ及び/またはゆらぎ塩基対)を用いて、1つより多くの遺伝子配列を標的とするsiNAを作製することができる。非制限的な実施態様において、UU及びCC塩基対等の非標準塩基対を用いて、配列相同性を共有する異なる標的に対する配列を標的とし得るsiNAを作製することができる。例えば、本発明のsiNAを用いることによる利点は、単一のsiNAを、相同的遺伝子間で保存されているヌクレオチド配列に相補的な核酸配列を含むように設計することができることである。この手法では、異なる遺伝子を標的とする1つより多いsiNA分子を用いる代わりに、1つより多い遺伝子の発現を阻害するために単一のsiNAを用いることができる。
【0033】
配列同一性は、当該技術分野において既知の配列比較及び整列アルゴリズム(Gribskov and Devereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991;及びそこに引用される参考文献を参照)によって、並びにヌクレオチド配列間のパーセンテージ差を、例えば、BESTFITソフトウェアプログラムで実施されているようなSmith-Waterアルゴリズムにより省略時パラメーター(default parameter)を用いて計算することによって(例えば、University of Wisconsin Genetic Computing Group)、算出される。90%、95%、または99%より大きい、siNA及び標的遺伝子間の配列同一性が好ましい。あるいは、siNA及び天然RNA分子間の相補性を、ハイブリダイゼーションによって機能的に規定するだけでなく、標的遺伝子の発現を低下させるまたは阻害するその能力によって機能的に規定することができる。遺伝子発現に影響を及ぼすsiNAの能力を、in vivoまたはin vitroのいずれかにおいて、実験的に測定することができる。
【0034】
本発明の好ましいsiNA分子は、二本鎖である。ある実施態様において、二本鎖siNA分子は平滑末端を含む。別の実施態様において、二本鎖siNA分子は突出ヌクレオチド(例えば、1-5ヌクレオチド突出、好ましくは2ヌクレオチド突出)を含む。特定の実施態様において、前記突出ヌクレオチドは3’突出である。他の特定の実施態様において、前記突出ヌクレオチドは5’突出である。任意の種類のヌクレオチドが、前記突出部の一部であってよい。ある実施態様において、前記突出ヌクレオチドはRNAである。別の実施態様において、前記突出ヌクレオチドはDNAである。好ましい実施態様において、前記突出ヌクレオチドはチミジンヌクレオチドである。別の実施態様において、前記突出ヌクレオチドは修飾され、または非古典的ヌクレオチドである。前記突出ヌクレオチドは、非古典的ヌクレオチド間結合(例えば、リン酸ジエステル結合以外)を有してよい。
【0035】
<siNA二重鎖の合成>
siNAを当該技術分野で既知の任意の方法によって合成することができる。好ましくは、RNAは、適切に保護されたリボヌクレオシド・ホスホラミダイト及び従来のDNA/RNA合成機を用いることによって化学的に合成される。さらに、siRNAは、Proligo社(Hamburg, Germany)、Dharmacon Research社(Lafayette, CO, USA)、Glen Research社(Sterling, VA, USA)、ChemGenes社(Ashland, MA, USA)、Cruachem社(Glasgow, UK)、Qiagen社(Germany)、Ambion社(USA)、及びInvitrogen社(Scotland)を含むが、これに制限されない商業的RNAオリゴ合成供給元から得ることができる。あるいは、本発明のsiNA分子を、プロモーターの制御下で、逆相補的siNA配列を含むベクターを用いて細胞にトランスフェクションすることによって、細胞中で発現させることができる。発現させたら、当該技術分野において公知の技術を用いることによって、前記細胞から前記siNAを単離することができる。
【0036】
一本鎖RNA分子と作用する場合、アニーリング工程が必要となる。前記RNAをアニーリングするために、30μLの各RNAオリゴ50μM溶液を、100mM酢酸カリウム、30mM HEPES-KOH(pH 7.4)、2mM酢酸マグネシウム中で結合させることができる。次いで、当該溶液を90℃で1分間インキュベーションし、15秒間遠心分離し、さらに37℃で1時間インキュベーションする。
【0037】
当該siRNAが短いヘアピンRNA(shRNA)である実施態様において、前記siRNA分子の二本鎖は、リンカー領域によって連結させることができる(例えば、ヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカー)。
【0038】
<siNAの化学修飾>
本発明のsiNAは、1つ以上の修飾されたヌクレオチド及び/または非リン酸ジエステル結合を含んでよい。当該技術分野で公知の化学修飾は、前記siNAの安定性、有効性、及び/または細胞への取込み量を増大させ得る。当業者は、RNA分子に組み込まれてよい他の種類の化学修飾を知っているであろう(修飾の種類の概説のために、国際文献WO 03/070744及びWO 2005/045037を参照)。
【0039】
ある実施態様において、修飾を用いて、分解に対する耐久性の改善または取込みの改善を提供することができる。そのような修飾の例としては、ホスホロチオネート・ヌクレオチド間結合、2’-O-メチルリボヌクレオチド(特に、二本鎖siRNAのセンス鎖における)、2’-デオキシ-フルオロリボヌクレオチド、2’-デオキシリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5-C-メチルヌクレオチド、及び転位(inverted)deoxyabasic残基の組込み(一般的に、GB2406568を参照)を含む。
【0040】
別の実施態様において、修飾を用いて、当該siNAの安定性を増強させるまたは標的効率を増大させることができる。修飾は、siRNAの2つの相補鎖間の化学的架橋結合、siRNAの鎖の3’または5’末端の化学修飾、糖修飾、核酸塩基修飾及び/または基幹修飾、2’-フルオロ修飾リボヌクレオチド、並びに2’-デオキシリボヌクレオチド(一般的に、国際文献WO 2004/029212を参照)を含む。
【0041】
別の実施態様において、修飾を用いて、当該標的mRNAにおける及び/または相補的siNA鎖における相補的ヌクレオチドの対するアフィニティーを増加または減少させることができる(一般的に、国際文献WO 2005/044976を参照)。例えば、2-チオ、5-アルキニル、5-メチル、または5-プロピニルピリミジンを非修飾ピリミジンヌクレオチドに置換することができる。さらに、非修飾プリンを、7-デザ(deza)、7-アルキル、または7-アルケニルプリンで置換することができる。
【0042】
別の実施態様において、当該siNAが二本鎖siRNAである場合、3’末端ヌクレオチド突出ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドによって置換される(一般的に、Elbashirら, 2001を参照)。
【0043】
<siRNA二重鎖のin vitroにおける試験>
siRNA干渉の特異性を調べるために、標的遺伝子を発現する細胞培養物を使用した。
【0044】
IL12-p35及びp40サブユニットの場合、当該実験に用いられる細胞は、ヒトSW480細胞及びマウス筋細胞C2C12であった。前記細胞と相当するsiRNA二重鎖とのインキュベーションの後、p35及びp40の発現レベルを分析した。siRNAノックダウンを培養細胞における特異的表現型に関連付けするために、標的タンパク質の減少を立証する、あるいは標的mRNAの低下を少なくとも立証する必要がある。
【0045】
標的遺伝子のmRNAレベルを、リアルタイムPCR(RT-PCR)によって定量化することができる。さらに、当該タンパク質レベルを、当該技術分野において公知の種々の方法、例えば、標的タンパク質の減少を直接モニターすることを可能にする、異なる標的に特異的抗体を用いたウエスタンブロット等で測定することができる。
【0046】
siRNAを、当該技術分野において公知の任意のトランスフェクション技術によって、細胞内に導入する。例えば、リポフェクタミン2000試薬(Invitrogen社)等のカチオン性脂質を用いることによって、siRNA二重鎖の単一トランスフェクションを、その後、トランスフェクションの24、48、及び72時間後にサイレンシング効率のアッセイを実施することができる。
【0047】
典型的なトランスフェクションプロトコールは、以下のように実施される。6ウェルプレートの1ウェルに対し、我々は、siRNAの終濃度として、マウスC2C12細胞には100nM、またはヒトSW480細胞には200nMを用いてトランスフェクションする。リポフェクタミン2000試薬プロトコールに従い、トランスフェクションの前日に、我々は、1ウェルあたり2-4×105個の細胞を、DMEM、10%血清、抗生物質、及びグルタミンを含む3mLの適切な増殖培地中に播種し、通常の増殖条件下で細胞をインキュベーションする(37℃で5% CO2)。トランスフェクションの日に、細胞は30-50%コンフルエンスである必要がある。我々は、250μLのDMEM中に、12.5μLの20μM siRNA二重鎖(100nM終濃度に対応する)または25μLの20μM siRNA二重鎖(200nM終濃度に対応する)を希釈し、混合する。さらに、6μLのリポフェクタミン2000を250μLのDMEM中に希釈し、混合する。室温で5分間インキュベーション後、前記希釈したオリゴマー(siRNA二重鎖)及び前記希釈したリポフェクタミンを合わせ、室温で20分間のインキュベーションの間に複合体を形成させる。その後、我々は、抗生物質の低い2mLの新しい増殖培地を有する細胞上に、前記複合体を滴状で添加し、当該プレートを前後に揺動させることによって穏やかに混合し、当該トランスフェクション複合体の均一な分散を確認する。我々は、それらの通常の増殖条件下で前記細胞をインキュベーションし、翌日、前記複合体を除去し、新しく且つ完全な増殖培地を添加する。遺伝子サイレンシングをモニターするために、トランスフェクション後、24、48、及び72時間に細胞を回収する。
【0048】
トランスフェクションの効率は、細胞の種類だけでなく、継代数、及び細胞のコンフルエンシーに依存するかもしれない。siRNA−リポソーム複合体の形成の時間及び方法(例えば、転倒対ボルテックス)もまた重要である。低いトランスフェクション効率は、成功しないサイレンシングの最頻出の原因である。優れたトランスフェクションは、重大な問題であり、使用されるべきそれぞれの新しい細胞株に対して慎重に検討される必要がある。トランスフェクション効率を、レポーター遺伝子、例えばCMV駆動EGFP発現プラスミド(例えば、Clontech社製)またはB-Gal発現プラスミドをトランスフェクションすることによって調べることができ、次いで、翌日、位相差及び/または蛍光顕微鏡によって評価することができる。
【0049】
標的タンパク質の存在量及び寿命(代謝回転)に依存して、ノックダウン表現型は、1-3日後、またはさらにその後に、明らかになるかもしれない。表現型が観察されない場合、当該タンパク質の減少は、免疫蛍光またはウエスタンブロッティングによって観察されるかもしれない。
【0050】
トランスフェクション後、細胞から抽出した全RNA画分をDNase Iで前処理し、ランダムプライマーを用いた逆転写に使用する。少なくとも1つのエクソン−エクソン連結部を覆う特異的プライマー対を用いたPCR増幅物を、mRNA前駆体(pre-mRNA)の増幅のコントロールとして用いる。標的としないmRNAのRT-PCRもまた、コントロールとして必要とされる。当該mRNAの有効な低下、それにもかかわらず、標的タンパク質の検出できない低下は、細胞内に存在し得る安定なタンパク質の大きな貯蔵を示しているかもしれない。あるいは、RT-PCR増幅を用いて、より正確な方法で、当該mRNAの減少または消失を調べることができる。RT-PCRは、鋳型の最初の量を非常に特異的に、高感度に、且つ再現性よく定量化する。RT-PCRは、ライトサイクラー装置中で、当該反応の間に放出された蛍光を、各PCRサイクルの間の単位複製配列(amplicon)産物の指標としてモニターする。このシグナルは、反応物中のPCR産物の量に直接比例して増加する。各サイクルにおける蛍光放出量を記録することによって、PCR産物の量の最初の有意な増加が標的鋳型の最初の量に対応する対数期の間の、PCR反応をモニターすることが可能である。
【0051】
細胞培養物中で差異的に発現したIL-p35及びp40遺伝子の干渉パターンを検証するために、定量的RT-PCRを実施した。定量的RT-PCRのために、全RNAのうち約500ngを逆転写に使用し、次いで、反応物中の各遺伝子に特異的なプライマーを用いたPCR増幅を行った。当該PCR条件は、95℃で30秒の初期工程に続き、95℃で5秒、62℃で10秒、及び72℃で15秒の40サイクルを行った。18S mRNAの定量化を、データ標準化のためのコントロールとしてのハウスキーピング遺伝子として用いた。選択された内在性/内部コントロールが当該サンプルの中で、全RNAに比例して、より豊富で一定のままである場合、相対的な遺伝子発現の比較は最も良好に機能する。不変の内在性コントロールを実施中の基準値として用いることによって、mRNA標的の定量化を、各反応に添加された全RNA量の差に対して標準化することができる。メーカーのプロトコールに従って、ライトサイクラーで得られた増幅曲線を、in vitroにおいて転写されたβグロビンDNA鋳型を標的とするコントロールキットDNAと組み合わせて分析した。当該増幅されたPCR産物の特異性を評価するために、融解曲線分析を実施した。得られた融解曲線により、プライマー二量体と特異的PCR産物との間の区別が可能になる。
【0052】
<siNAの直腸内投与>
直腸内siNA送達試験を、GFP C57BL/6-TG(ACTB-EGFP)マウスにおいて実施した。このトランスジェニックマウス系統は、「The Jackson Laboratory」からもたらされた。この導入遺伝子に対してホモのマウスは生後最初の2週間以内に死ぬため、トランスジェニックマウスを用いている。「増強した」GFP(EGFP)cDNAを有するトランスジェニックマウス系統は、ニワトリのβアクチン・プロモーターとサイトメガロウイルス・エンハンサーの制御下で、赤血球と毛髪を除いた組織のすべてが励起光の下で緑色に見える。この系統をC57BL/6マウスにおいて作製した。増強した緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードする当該系統cDNAを、ニワトリのβアクチン・プロモーターとサイトメガロウイルス・エンハンサーに隣接させた。ウシのグロビン・ポリアデニル化シグナルもまた、当該コンストラクト中に含まれた。当該PCRプライマー中に含まれるEco RIサイトを用いて、増幅したEGFP cDNAを、ニワトリのβアクチン・プロモーター、サイトメガロウイルス・エンハンサー、βアクチンイントロン、及びウシのグロビン・ポリアデニル化シグナルを含むpCAGGS発現ベクター中に導入した。前記プロモーターとコード配列を有する全挿入部分を、Bam HIとSal Iで切断し、ゲル精製した。
【0053】
マウスにおける直腸内投与に用いられたsiRNA二重鎖は、Dharmacon社から購入した。Dharmacon Research社(Lafayette, CO)は、siSTBLEv2と命名される、治療法としてのin vivo使用のための新世代の修飾siRNAを開発している。Dharmacon社製siSTABLEv2 siRNAは、非修飾siRNAのものと比較して、血清中での増大した安定性を示している。従来のsiRNAは、典型的に、血清を含む環境において数分以内に分解され、in vivoにおけるsiRNAの使用を問題にしている。前記siSTABLEv2修飾は、Dharmacon社のウェブページ(http://www.dharmacon.com/docs/siSTABLE%20v2%20Flier.pdf)に記載されているように、血清中のsiRNA安定性を劇的に引き延ばす。
【0054】
EGFP mRNA発現を下方制御するために用いられたsiRNAは、EGFP mRNA中の以下の配列を標的とした。5’-GGC UAC GUC CAG GAG CGC ACC-3’(配列番号88)。当該siRNA二重鎖のセンス鎖は5’-P GGC UAC GUC CAG CGC ACC-3’(配列番号89)、アンチセンス鎖は5’-P U GCG CUC CUG GAC GUA GCC UU-3’(配列番号90)であった。この配列は、合成される前のコントロールsiRNA緑色蛍光タンパク質二重鎖として、Dharmacon社により配給されている。
【0055】
直腸内送達実験のために、C57BL/6-TG(ACTB-EGFP)マウス(オス、8週齢)を使用した。前記動物は、当該実験プロトコールの前日まで、食料と水に自由に接近できるケージの中で飼育された。直腸内治療的サイレンシングのために、当該処理前の1日間、マウスに餌を与えなかった。当該薬剤を、典型的に、直腸中に少量(120μL)注入することによって投与した。コントロールマウスを、溶媒のみで処理した。すべての場合において、最初の注入の2日後に、動物を頚椎脱臼によって死亡させた。マウスにおけるsiRNAの適用のためのプロトコールは、以下のとおりである。各実験的投与のために、60μLのsiRNA二重鎖を60μLのNaCl(1.8% w/v)と生理学的レベルまでプレミックスした。すべての場合において、最初の注入の2日後に、動物を死亡させた。
【0056】
用いられた実験条件を、下記の表に示す。各条件を2回分析した。マウス2及び3を、250μg(19ナノモル)の当該siRNA対GFPの単回投与で直腸内に処理し、一方、マウス4及び5を、連続した2日間で125μgのsiRNAの2回投与で処理した。
【0057】
表:直腸内siRNA送達のための実験条件についての概要分類。siRNAの投与量を表中に示す。
【表1】
【0058】
当該サンプル組織を、2つの方法で、一方はOCT培地中に、もう一方はRNA later(Ambion社)中に回収し、分析した。OCT塊は、データ処理まで-80℃で保存された。OCT塊を、-20℃で、クライオスタット(Leica CM 1850)によって12μmの切片に切った。回収した切片を、デジタルカメラ(DP70)と接続した蛍光顕微鏡(Olympus BX51)で、488nmのフィルターを用いることによって分析した。感度条件(ISO200)、解像度画像サイズ(2040×1536)、及び暴露時間(1秒)をすべてのサンプルに対して設定し、それらの間の比較をした。緑色蛍光を、GFP発現の指標として、Adobe Photoshopプログラム(バージョン8.0)によって測定した。この方法によって、各分析された組織に対して、25の異なるデータを回収した。RNA later中に単離された組織は、-20℃で保存された。RNA laterをRNA抽出前に除去した。メーカーのプロトコールに従って、RNAをTrizol試薬(Invitrogen社)で単離した。前記のようなRT-PCRによるGFP発現の測定前に、DNase処理を行った。
【0059】
<製薬的製剤及び投与の経路>
本発明は、1つ以上のsiNA分子種の投与を同時に含んでもよい。これらの種を選択し、1つ以上の標的遺伝子を標的とすることができる。
【0060】
ある実施態様において、単一の種類のsiNAを本発明の治療的方法で投与する。別の実施態様において、本発明のsiNAを、本発明の別のsiNA、及び/または腸壁の疾患症状の治療、予防、または処置に有用な1つ以上の他の非siNA治療薬と組み合わせて投与する。用語「組み合わせて」は、治療薬の正確に同時の投与に制限されず、むしろ、本発明のsiNAと他の薬剤を、連続して、当該組合せの利益がそれらを別の方法で投与する場合よりも大きくなるような時間間隔で、患者に投与することを意味する。例えば、各治療薬は、同時に、または時間内の異なる時点において任意の順序で連続的に投与されてよく、ただし、同時に投与されない場合には、それらは、所望の治療効果を提供するような時間内に十分に近づけて投与されるべきである。各治療薬は、任意の適切な形態で、且つ任意の適切な経路で、別々に投与されてよい。
【0061】
本発明のsiNAを、当該技術分野において既知の任意の従来技術によって、製薬組成物中に配合してよい(例えば、Alfonso, G.ら, 1995, The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing, Easton PA, 19th ed.を参照)。本発明の方法における使用のための1つ以上のsiNAを含む製剤は、多数の形態であってよく、各患者に特異的な種々の要因(例えば、疾患の種類及び重篤度、投与されるsiNAの種類、年齢、体重、反応、並びに当該患者の過去の病歴)、製剤中のsiNAの種類、組成物の形態(例えば、液体、半流動体、または固形形態)、治療計画(例えば、当該治療薬を、経時的に、緩徐な注入剤、単一の丸薬として、1日に1回、1日に数回、または数日に1回投与するかどうか)、並びに/あるいは投与の経路(例えば、局所的、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、経皮的、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、または舌下の方法)に依存してよい。
【0062】
本発明のsiNA分子、及びそれらの製剤または組成物を、当該技術分野において一般的に知られるように、直接的にまたは局所的に投与することができる。例えば、siNA分子は、患者への投与のために、リポソームを含有する送達溶媒を含んでよい。キャリア、並びに希釈剤及びそれらの塩は、製薬上許容し得る製剤中に存在してよい。核酸分子を、当該技術分野において既知の、イオン注入法による、または他の溶媒、例えば、生分解性のポリマー、ヒドロゲル、シクロデキストリンポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、及びPLCA微粒子等、生分解性のナノカプセル、並びに生体接着性微粒子中への導入によるリポソーム状のカプセル化を含むが、これに制限されない種々の方法によって、あるいはタンパク質性ベクターによって、細胞へ投与することができる。別の実施態様において、本発明の核酸分子もまた、ポリエチレンイミン及びその誘導体、例えば、ポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-GAL)またはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-トリ-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-トリGAL)誘導体等と、配合または複合体を形成させてよい。
【0063】
本発明のsiNA分子を、膜破壊性物質並びに/あるいはカチオン性脂質またはヘルパー脂質分子と複合体を形成させてよい。
【0064】
本発明に関して用いられてよい送達システムは、例えば、水性及び非水性ゲル、クリーム、多層エマルジョン、マイクロエマルジョン、リポソーム、軟膏、水性及び非水性溶液、ローション、エアロゾル、炭化水素基材、並びにパウダーを含み、且つ賦形剤、例えば、可溶化剤、浸透賦活剤(例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール、及びアミノ酸)、及び親水性ポリマー(例えば、ポリカルボフィル及びポリビニルピロリドン)を含んでもよい。ある実施態様において、製薬上許容し得るキャリアは、リポソームまたは浸透賦活剤である。
【0065】
本発明の製薬的製剤は、投与、例えば、細胞または例えばヒトを含む被験者中への全身的または局所的投与に適した形態をとる。適切な形態は、部分的に、使用法または入る経路、例えば、経口、経皮、または注入による等に依存する。他の要因が当該技術分野において知られており、毒性及び当該組成物がその効果を発揮するのを妨げる形態等の考慮事項を含む。
【0066】
本発明はまた、製薬上許容し得るキャリアまたは希釈剤中に製薬上有効な量の所望の化合物を含む、保管または投与のための組成物を含む。製薬的使用のための許容し得るキャリアまたは希釈剤は、製薬分野において公知である。例えば、保存剤、安定化剤、色素、及び香料が提供されてよい。これらは、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。さらに、抗酸化剤及び懸濁化剤を使用することができる。
【0067】
製薬上有効な用量は、疾患状態の発生を予防、抑制する、または治療する(ある程度の症状を、好ましくは症状のすべてを緩和する)ために必要とされる用量のことである。前記製薬上有効な用量は、疾患の種類、使用される組成物、投与の経路、治療される哺乳類の種類、考察中の特定の哺乳類の身体的特徴、共存する薬剤、並びに医療分野における当業者が認めるであろう他の要因に依存する。
【0068】
本発明の製剤を、従来の無毒性の製薬上許容し得るキャリア、アジュバント、及び/または溶媒を含む用量単位の処方で投与することができる。製剤は、経口使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ剤、舐剤、水性または油性懸濁液、分散性パウダーまたは顆粒、エマルジョン、硬質のまたは軟質のカプセル、あるいはシロップ剤またはエリキシル剤等の形態をとってよい。経口使用を意図した組成物を、製薬組成物の製造の分野に既知の任意の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、1つ以上の、甘味料、香料、着色剤、または保存剤を含んでよく、製薬上洗練され、且つ美味な調剤を提供することができる。錠剤は、錠剤の製造に適した無毒性の製薬上許容し得る賦形剤と混合した活性成分を含んでよい。
【0069】
これらの賦形剤は、例えば:不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム等;顆粒化及び分解剤、例えば、コーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えば、スターチ、ゼラチン、またはアカシア;並びに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルク;であってよい。前記錠剤はコーティングされなくてよく、あるいはそれらは既知の技術によってコーティングされてよい。いくつかの場合において、そのようなコーティングを既知の技術によって調製して、消化管中での分解及び吸収を遅らせることができ、それによって、より長い期間にわたり維持された作用を提供することができる。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリン等の、時間遅延物質を使用することができる。
【0070】
経口使用のための製剤をまた、その中で活性成分が不活性固形希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合される硬質のゼラチンカプセルとして、あるいはその中で活性成分が水または油性溶媒、例えば、ピーナッツ油、パラフィン油、またはオリーブ油と混合される軟質のゼラチンカプセルとして、提供することができる。
【0071】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性物質を含む。そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピル-メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアカシアガムであり、分散または浸潤剤は、天然に生じるリン脂質、例えば、レシチン、または酸化アルキレンと脂肪酸との縮合物、例えば、ポリオキシレンステアレート、または酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、または酸化エチレン及び脂肪酸とヘキシトールに由来する部分的エステルの縮合物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または酸化エチレン及び脂肪酸とヘキシトール無水物に由来する部分的エステルの縮合物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビトールであってよい。前記水性懸濁液はまた、1つ以上の保存剤、例えば、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香料、並びに1つ以上の甘味料、例えば、スクロースまたはサッカリンを含んでよい。
【0072】
油性懸濁液を、植物性油、例えば、ピーナッツ油(arachis oil)、オリーブ油、ゴマ油、またはココナッツ油、あるいは鉱物油、例えば、パラフィン油等の中に活性成分を懸濁することによって、調製することができる。前記油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含んでよい。甘味料及び香料を添加して、美味な経口調剤を提供することができる。これらの組成物を、アスコルビン酸等の抗酸化剤の添加によって保存することができる。
【0073】
水分の添加によって水性懸濁液の調製に適した分散性パウダー及び顆粒は、分散または浸潤剤、懸濁化剤、並びに1つ以上の保存剤と組み合わせて活性成分を提供する。適した分散または浸潤剤、あるいは懸濁化剤は、すでに前記によって例を挙げられている。付加的賦形剤は、例えば、甘味料、香料、及び着色剤もまた存在してよい。
【0074】
本発明の製薬組成物はまた、水中油型のエマルジョンの形態であってよい。当該油性相は、植物性油または鉱物油、あるいはこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、天然に生じるガム、例えば、アカシアガム、トラガカントゴム等、天然に生じるリン脂質、例えば、ダイズ、レシチン、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分的エステル、例えば、モノオレイン酸ソルビトール、及び前記部分的エステルと酸化エチレンとの縮合物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであってよい。前記エマルジョンはまた、甘味料及び香料を含んでよい。
【0075】
シロップ剤及びエリキシル剤を、甘味料、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、グルコース、またはスクロースで配合することができる。そのような調剤はまた、粘滑剤、保存剤、香料、及び着色剤を含んでよい。当該製薬組成物は、無菌的注入が可能な水性または油性の懸濁液の形態であってよい。
【0076】
この懸濁液を、前記の適切な分散または浸潤剤、及び懸濁化剤を用いることによって、既知の技術に従って、調製することができる。
【0077】
無菌的注入が可能な調剤はまた、例えば、1,3-ブタンジオールのような、無毒性の許容し得る希釈剤または溶媒中の無菌的注入が可能な溶液または懸濁液であってよい。使用することができる許容し得る溶剤及び溶媒としては、水、リンガー溶液、及び等張性の塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌的、不揮発性油を、溶媒または懸濁化媒体として慣習的に使用する。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性の不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸等の脂肪酸の、注入可能な調剤における使用法を見つけている。
【0078】
本発明の核酸分子をまた、例えば、当該薬剤の直腸投与のための座薬の形態で投与することもできる。これらの組成物を、当該薬剤を常温で固形であるが、直腸温では液体である適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができ、従って、直腸中で融解し、当該薬剤を放出するであろう。そのような物質は、ココアバター及びポリエチレングリコールを含む。
【0079】
本発明の核酸分子を、滅菌媒体中に非経口的に投与することができる。使用される溶媒及び濃度に依存する薬剤を、前記溶媒中に懸濁または溶解することができる。都合のよいことに、局所麻酔剤等のアジュバント、保存剤、及び緩衝剤を、前記溶媒中に溶解することができる。
【0080】
非ヒト動物への投与のために、前記組成物をまた、当該家畜飼料または飲料水に添加してもよい。当該動物がその餌とともに、治療上適切な量の前記組成物を摂取できるように、当該家畜飼料及び飲料水組成物を配合すると都合がよいかもしれない。また、飼料または飲料水への添加用のプレミックスとして、前記組成物を提供することも都合がよいかもしれない。
【0081】
本発明の核酸分子を、全体的な治療効果を増大させるために、他の製薬化合物と組み合わせて被験者に投与してもよい。徴候を治療するための複数の化合物の使用は、有益な効果を増大させ、一方で副作用の存在を低下させる可能性がある。
【0082】
あるいは、本発明の特定のsiNA分子を、真核生物プロモーターからの細胞内で発現させることができる。前記siNA分子を発現し得る組換えベクターを送達し、標的細胞中で存続させることができる。あるいは、ベクターを使用して、核酸分子の一過性の発現を提供することができる。そのようなベクターを、必要に応じて、繰返し投与することができる。発現すると、当該siNA分子は標的mRNAと相互作用し、RNAi応答を引き起こす。ベクターを発現するsiNA分子の送達は、例えば、静脈内または筋肉内投与によって、被験者から外植された(ex-planted)標的細胞への投与に続き前記被験者内への再導入によって、あるいは所望の標的細胞内への導入を可能にする任意の他の方法によって、全身性であり得る。
【実施例】
【0083】
[結果]
<実施例1:siNAの設計>
IL12-p35(インターロイキン12A、ナチュラルキラー細胞刺激因子1、細胞毒性リンパ細胞成熟因子1、p35)及びp40(インターロイキン12B、ナチュラルキラー細胞刺激因子2、細胞毒性リンパ細胞成熟因子2、p40)サブユニットに対応するGenBank登録番号は、それぞれNM_000882及びNM_002187である。
【0084】
対応するmRNAヌクレオチド配列を、前記の登録商標を有する予測プログラムに取り込み、標的IL12-p35及びp40に向けられたsiNA分子を得た。この分析の結果は、可能性のあるsiNAオリゴヌクレオチドのスコアであり、最も高いスコアを用いて、典型的に化学合成によって作製される二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(典型的に、19bpの長さ)を設計した。
【0085】
好ましい実施態様において、本発明のsiNA組成物は、図1の配列番号1−81のいずれかであり、典型的に、センス鎖及びアンチセンス鎖の二重鎖として投与される。本発明はまた、40ヌクレオチド以下であり、且つ配列番号1−81のいずれかのヌクレオチド配列を含むsiNAを包含する。特定の実施態様において、当該siNAは21-30ヌクレオチド長であり、且つ図1の配列番号1−81のいずれか1つを含む。下記の実験において用いられたすべてのsiNA分子を、2チミジンヌクレオチド3’突出を有するように設計した。
【0086】
<実施例2:IL12-p35用のin vitroアッセイ>
IL12-p35標的遺伝子の阻害を測定するために、図1中に含まれるsiRNAのパネルを細胞培養中で分析した。最高の特性を有するsiRNAを選んで試験し、SW480等の適切な細胞培養に適用した。前記標的遺伝子へのsiRNAの効果を、メーカーのプロトコールに従ったRT-PCRによって分析した。当該遺伝子標的転写物レベルを、ハウスキーピング遺伝子として18Sを用いることによって標準化した。図2は、試験された異なるsiRNAのいくつか、及び前記標的遺伝子の干渉におけるそれらの異なる有効性を含む。これらの結果は、p35を発現するSW480細胞における図1の配列番号8及び配列番号17に相当する。当該値は、コントロール遺伝子発現に対してsiRNA干渉の際に標準化されたmRNAレベルの平均パーセンテージ、及びそれらの中間標準偏差(SEM)を表す。当該siRNA処理後のp35転写物のレベルは、コントロール細胞と比較してSW480細胞において、配列番号8及び配列番号17に対応するsiRNAで非常に低下した。当該遺伝子発現の減少は、siRNAサイレンシングの効率に依存する。実際に、配列番号8のsiRNA処理により、p35遺伝子発現は、コントロールと比較して24時間で56%まで減少した。
【0087】
<実施例3:IL12-p40用のin vitroアッセイ>
IL12-p40標的遺伝子の阻害を測定するために、図1中に含まれるsiRNAのパネルを分析した。前述のように設計した最高の特性を有するsiRNAを、ヒト及びマウス細胞において試験した。p40転写物レベルをRT-PCRで分析し、ハウスキーピング遺伝子として18Sを用いることによって標準化した。これらの結果は、p40を発現するSW480細胞における配列番号67及び配列番号79(図3A)、並びにp40を発現するC2C12細胞における配列番号86及び配列番号87(図3B)に相当する。配列番号86及び配列番号87のsiNA分子は、当該図中に記載されるように、2チミジンヌクレオチド3’突出を有する。
【0088】
SW480細胞において、配列番号67に対応するsiRNAを用いた処理後、p40転写物のレベルは、コントロール細胞と比較して65%まで非常に低下した。C2C12細胞において、配列番号86に対応するsiRNAにより、当該遺伝子発現は、コントロールと比較して48時間で61%まで減少した。配列番号67及び配列番号86は、それぞれヒト及びマウスのIL12-p40遺伝子の相同的領域に対応することに注意することが重要である。
【0089】
図2及び3の実験の概要を、以下の表に示す。
【表2】
【0090】
<実施例4:In vitroアッセイ・小腸の分析>
腸内の適切なsiRNA送達を確認するために、siRNA適用を行った。当該siRNA効果を確認するために、小腸サンプルをOCT培地中に回収し、前述のように分析した。GFP遺伝子転写の下方制御を確認することが目標であるため、siRNA適用後に、蛍光量を測定した。当該実験プロトコールの間、二次的効果は当該動物において観察されなかった。
【0091】
作業の第一のグループ(動物2及び3)を、250μgのsiRNAの単回投与で処理し、48時間後に死亡させた。当該結果は、コントロールマウスと比較して、蛍光の有意な減少を示す。さらに、125μgの2回投与で前記siRNA(250μg)を投与し、最初の注入の48時間後に分析した場合、GFP発現の減少は、単回適用後のものと同様であった。当該結果を図4に示す。各実験条件に対する、データの平均を示す。
【0092】
前記データを立証するために、同時に、小腸サンプルをRNA later中に回収した。mRNAレベルをRT-PCRによって測定した。図5に示すように、これらの結果は、蛍光分析に関して得られた前記のものを立証する。
【0093】
図5に示すように、1または2回の適用で250μgのsiRNAの投与用量は、小腸におけるGFP mRNAのレベルを下方制御するのに足りる、且つ十分であり、直腸内投与による小腸内の当該siRNAの送達を立証した。コントロールと比較した下方制御のレベルは、当該分析をRT-PCRによって行った場合よりも高く、これは、当該技術のより高い感度のためである。
【0094】
<実施例5:In vitroアッセイ・大腸の分析>
さらに、小腸と同じ方法で、大腸を分析した。大腸における当該siRNA効果を確認するために、siRNA適用後に、蛍光の測定によってGFPの下方制御を確認するために、OCT培地中に回収されたサンプルを分析した。当該結果は、コントロールマウスと比較して、蛍光の有意な減少を示す(図6)。さらに、当該用量を125μgの2回適用で投与し、最初の注入の48時間後に分析した場合、当該減少は単回siRNA投与後に得られたものと非常に類似しており、当該処理の有効性を示している。
【0095】
小腸におけるように、大腸サンプルをRNA later中に回収し、mRNAレベルのデータを図7に示す。RT-PCRによって得られたデータは、蛍光分析に関して得られた前記のものを立証する。これらの結果は、腸疾患の治療に対する、治療的siRNA投与への新しい道を開く。
【0096】
OCT培地中及びRNA later中に回収されたサンプルのデータを、それぞれ図8及び図9に要約する。
【0097】
我々はさらに、当該マウスの他の選択された組織において、GFP発現のいくらかの下方制御があるかどうかを検討した。膀胱、腎臓、肺、卵巣、及び肝臓組織において下方制御は観察されず、siRNAの直腸内投与は、腸組織を特異的に標的とするために使用され得ることを示唆している。
【0098】
[参考文献]
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNAi技術の直腸内投与による、腸症状の治療のための方法及び組成物に関する。本発明の組成物は、短い干渉核酸分子(siNA)、及び小さな干渉RNA(siRNA)を含むが、これに制限されない関連化合物を含む。特に、本発明の組成物を、過剰増殖性疾患、特に結腸直腸ガン;自己免疫性及び炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病;大腸炎、特に潰瘍性大腸炎;過敏性腸症候群;腸の感染性疾患、例えば偽膜性大腸炎、アメーバ症、または腸結核等;結腸ポリープ;憩室疾患;便秘症;腸閉塞;吸収不良症候群;直腸疾患;並びに下痢;を含む腸症状の治療に用いることができる。
【0002】
ある実施態様において、タイプ1ヘルパーT(Th1)細胞免疫応答に関わるサイトカイン、インターロイキン-12(IL-12)レベルの増大によって引き起こされる腸症状、例えば自己免疫性疾患及びIBDを、この手法によって治療することができる。IL12-p40サブユニット及び/またはIL12-p35サブユニットを標的とするsiRNA及び関連化合物を含む組成物及び方法を、IL-12の過剰発現にともなう疾患、特にクローン病の治療に提供する。
【背景技術】
【0003】
<遺伝子発現を調整する手段としてのRNAi>
RNAi干渉とは、二本鎖RNA(dsRNA)によって媒介される、配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングの過程を表す。1990年代初期における、植物における当該現象の発見後、Andy FireとCraig Melloは、dsRNAが、線虫において極めて効率的な方法で遺伝子発現を特異的且つ選択的に抑制することを証明した(Fireら, 1998)。第一鎖(センスRNA)の配列は、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の対応する領域のものに一致した。第二鎖(アンチセンスRNA)は、前記mRNAに相補的であった。その結果生じたdsRNAは、相当する一本鎖RNA分子(特に、アンチセンスRNA)よりも、数桁の量でより効率的であることが分かった。
【0004】
酵素DICERがdsRNAと遭遇し、それを小さな干渉RNAまたはsiRNAと呼ばれる断片に切断すると、RNAiの過程が開始する。このタンパク質は、RNase IIIヌクレアーゼファミリーに属する。タンパク質の複合体は、これらのsiRNAを引き寄せ、それらのコードを案内役として使用して、標的RNA等の整合する配列を有する細胞中の任意のRNAを探し出し、破壊する(Bosher & Labouesse, 2000;Akashiら,2001を参照)。
【0005】
遺伝子ノックダウンのためにRNAiを適用することを意図して、哺乳類細胞は、この手法の使用を妨害し得るウイルス感染に対する種々の防御機構を発達させたと解された。実際、ごく微量のウイルスdsRNAの存在が、インターフェロンの応答を誘発し、翻訳の広範囲な非特異的抑制を引き起こし、次いでアポトーシスを誘発する(Williams, 1997;Gil & Esteban, 2000)。
【0006】
2000年に、dsRNAはマウスの卵母細胞及び初期胚において3つの遺伝子を特異的に阻害することが報告された。前記胚が成長し続けるにつれ、翻訳抑制、及び従ってPKR応答は観察されなかった(Wianny & Zernicka-Goetz, 2000)。Ribopharma AG(Kulmbach, Germany)における研究は、急性期反応を誘導せずにヒト細胞中の遺伝子を減衰させるための、短い(20-24塩基対)dsRNAを用いることによる、哺乳類細胞におけるRNAiの機能性を証明した。他の研究グループによって実施された同様の実験は、これらの結果を立証した(Elbashirら, 2001;Caplenら, 2001)。種々の正常及びガンヒト及びマウス細胞株において調べたところ、短いヘアピンRNA(shRNA)は、それらのsiRNA相当物と同じくらい効率的に遺伝子を抑制し得ることが確認された(Paddisonら, 2002)。最近では、別の群の小さなRNA(21-25塩基対)が遺伝子発現の下方制御を媒介していることが示された。これらのRNA、小さな一時的に制御されるRNA(stRNA)は、線虫における成長の間、遺伝子発現のタイミングを制御する(Banerjee & Slack, 200;Grosshans & Slack, 2002の概説を参照)。
【0007】
科学者は、線虫、ショウジョウバエ、トリパノソーマ、及び他の無脊椎動物を含むいくつかの系においてRNAiを使用している。最近、いくつかのグループは、種々の哺乳類細胞株における(特にHeLa細胞における)タンパク質の生合成の特異的抑制を示しており、RNAiがin vitroにおける遺伝子サイレンシングに広く適用可能な方法であることを証明している。これらの結果に基づき、RNAiは、遺伝子機能を実証する(同定する及び特定する)ための十分に認められた手段に急速になっている。短いdsRNAオリゴヌクレオチドを利用するRNAiは、部分的にのみ配列決定されている遺伝子の機能についての理解をもたらすであろう。
【0008】
最近、Kruzfeldtと同僚は、「antagomir」と呼ばれる特別に設計された化合物のクラスが、遺伝子発現を制御するRNAの非コード断片であるマイクロRNA(miRNA)の作用を効果的に抑制し得ることを示している(Krutzfeldtら, 2005)。
【0009】
前述は、RNAiに関係する関連技術についての議論である。当該議論は、後に続く本発明についての理解に対してのみ提供され、記載される研究のいずれかが、当該請求される発明の先行技術であると承認するものではない。
【0010】
<インターロイキン-12及びクローン病>
インターロイキン-12(IL-12)は、IL-12の生物学的活性に必須のジスルフィド結合によって連結された、40kDaのサブユニット(IL12-p40と称される)と35kDaのサブユニット(IL12-p35と称される)とからなる、ヘテロ二量体の70kDaの糖タンパク質(IL12-p70)である。
【0011】
IL-12は、細胞媒介性免疫応答及びタイプ1ヘルパーT(Th1)細胞炎症反応を制御する重要なサイトカインである(Gatelyら, 1998;Trinchieri, 1998)。Th1細胞の発達を強力に促進するIL-12の能力により、それは、自己免疫性疾患及び炎症性腸疾患(IBD)等のTh1細胞媒介性疾患の治療のための理想的な標的となる。
【0012】
ある特定のIBDは、腸組織における抗原提示細胞によるIL-12の、並びに腸のリンパ細胞及びマクロファージによるインターフェロン-γ及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)の産生の増加を特徴とする症状である、クローン病である(Faisら, 1994;Fussら, 1996;Monteleoneら, 1997;Parronchiら, 1997;Plevyら, 1997)。
【0013】
クローン病は、小腸において炎症を引き起こす。前記炎症は、痛みを引き起こし得、腸を頻繁に空にし得、下痢を引き起こす。直腸出血、体重減少、及び発熱も生じるかもしれないが、クローン病の最も一般的な症状は腹痛と下痢である。出血は、深刻且つ永続的であるかもしれず、貧血症を引き起こす。クローン病の子供は、発達の遅れと成長の遅れに苦しむかもしれない。
【0014】
大部分の人は、まず、炎症を制御するのを助ける物質メサラミンを含む薬剤で治療される。スルファサラジンは、これらの薬剤のうち最も一般的に用いられる。それによって利益を得ない、またはそれに耐えられない患者は、アサコール、ジペンタム(Dipentum)、またはペンタサ等の通常5-ASAとして知られる、その他のメサラミン含有薬剤を受けるかもしれない。メサラミン製剤の可能性のある副作用は、吐き気、嘔吐、下痢、及び頭痛を含む。これらの薬剤は、進行中のクローン病に最も効果的であるが、それらは、感染症に対するより高い罹患性を含む深刻な副作用を引き起こす可能性がある。免疫系を抑制する薬剤もまた、クローン病を治療するために用いられる。6-メルカプトプリン及び関連薬剤、アザチオプリンが最も一般的に処方される。免疫抑制剤は、炎症の原因となる免疫反応を遮断することにより作用する。これらの薬剤は、吐き気、嘔吐、及び下痢等の副作用を引き起こすかもしれず、且つ感染症に対して人間の抵抗力を低下させる可能性がある。当該腸の部分を除去する外科手術は、クローン病に役立つかもしれないが、それを治癒することはできない。クローン病に対する現在の治療法の副作用及び有効性の不足のために、研究者はより効果的な治療法を探し続けている。
【0015】
IL-12の作用を阻害することは、自己免疫病及び慢性炎症の多数の実験モデルにおける、疾患の発達及び進行を抑制することが示されている(Caspi, 1998)。これらのモデルは、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、実験的ブドウ膜炎(EAU)、コラーゲン誘発性関節炎(CIA)、自己免疫性腎炎、インシュリン依存型真性糖尿病(IDDM)、及びIBDに対する種々のモデルを含む(Vandenbroeckら, 2004)。これらのモデルにおいて、内在性IL-12の役割は、IL12-p40ノックアウトマウスを用いることによって、または抗IL-12抗体を投与することによって検討されている。
【0016】
特に、抗体を用いてIL-12を標的とすることは、クローン病の動物モデルにおける腸炎に対する有効な治療法である(Mannonら, 2004)。従って、トリニトロベンゼンスルホン酸塩誘発性大腸炎のマウスは、IL-12、インターフェロン-γ、及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)の産生が非常に増加することを特徴とするTh1媒介性消化管炎を有する。マウスにおけるIL-12に対するモノクローナル抗体の投与は、確立した大腸炎の解決策をもたらし得、大腸炎の誘発と同時に提供された場合、炎症を防ぎ得る(Neurathら, 1995)。
【0017】
抗インターロイキン-12は、ヒトCD3ε遺伝子を過剰発現するマウス及びインターロイキン-10を欠失したマウス等のTh1媒介性炎症のモデルにおいて見られる自然発生的大腸炎を予防及び治療することができる(Davidsonら, 1998;Simpsonら, 1998)。
【0018】
初期相2試験からのデータは、IL12-p40に対するモノクローナル抗体を用いた治療が、進行中のクローン病に罹患した患者における臨床反応及び緩和をもたらす可能性があるというある証拠を提供する(Mannonら, 2004)。この治療法は、疾患の部位におけるTh1媒介性の炎症性サイトカインの減少をともなう。
動物モデル及びクローン病の患者における抗IL-12の臨床効果から得られた先の証拠(Mannonら, 2004)は、クローン病に対する将来の治療法の標的としてのIL-12の重要性を強調している。
<siRNAによるIL-12レベルの調節>
IL-12発現を標的とするsiRNAは、T細胞活性を調節する種々の治療的in vitro、ex vivo、及びin vivo方法に用いられ得、それにより、哺乳類被験者における免疫疾患の治療のための治療的手法における使用を有する、修飾樹状細胞(DC)を獲得するためにすでに用いられている(WO 03/104456;Hillら, 2003)。成熟DCにおいてIL-12発現を標的とするsiRNAは、成熟DCによって促進されるナチュラルキラー細胞インターフェロンγ(IFN-γ)におけるIL-12に対する重大な役割を明らかにしている(Borgら, 2004)。さらに、siRNAを含むIL12-p35インヒビターは、驚くべきことに、前脂肪細胞の脂肪細胞への分化及び脂肪細胞におけるトリグリセリドの蓄積を阻害することを示している(WO 03/104495)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】WO 03/104456
【特許文献2】WO 03/104495
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Hill JAら,「Immune modulation by silencing IL-12 production in dendritic cells using small interfering RNA」, J Immunol., 2003 Sep 15; 171 (6): 3303
【非特許文献2】Flynn MAら,「Efficient delivery of small interfering RNA for inhibition of IL-12p40 expression in vivo」, J Inflamm (Lond), 2004 Oct 1; 1 (1): 4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
IL12-p40を標的とするsiRNAは、リポソームカプセル化によってマウスの腹膜腔へ上手く送達され、エンドトキシン投与後の局所性及び全身性炎症応答を調節する(Flynnら, 2004)。しかし、知る限りにおいては、IL-12だけでなく腸症状に関わる任意の他の遺伝子の下方制御のためのsiRNAの直腸内投与について、先行する証拠はない。我々は、腸疾患を治療するためのin vivoにおけるIL-12の下方制御のための技術を開発し、且つ我々はさらに、直腸内投与によって腸へsiRNAを方向づけするための技術を開発している。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、RNAi技術の直腸内投与による、腸症状の治療のための方法及び組成物を提供する。本発明の組成物は、短い干渉核酸分子(siNA)、及びsiRNAを含むがこれに制限されない関連化合物を包含する。特に、本発明の組成物を、過剰増殖性疾患、特に結腸直腸ガン;自己免疫性及び炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病;大腸炎、特に潰瘍性大腸炎;過敏性腸症候群;腸の感染性疾患、例えば偽膜性大腸炎、アメーバ症、または腸結核等;結腸ポリープ;憩室疾患;便秘症;腸閉塞;吸収不良症候群;直腸疾患;並びに下痢;を含む腸症状の治療のための薬剤の調製に用いることができる。本発明は、RNA干渉を媒介し得る、短い干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、antagomir、及び短いヘアピンRNA(shRNA)分子を含むが、これに制限されないsiNAの組成物及び使用方法を包含する。
【0023】
本発明の方法は、腸疾患の治療のための、それを必要とする患者への、有効な量の本発明の1つ以上のsiNAの投与を含む。好ましい実施態様において、本発明の方法は、治療的siNAの直腸内投与を含む。
ある実施態様において、本発明は、サイトカインIL-12のp35またはp40サブユニットのいずれかのmRNA発現を干渉することに向けられ、且つ産生されたタンパク質の量を最終的に調節するsiNAまたは類似の化学的に合成された物質に関する。前記siRNA及び関連化合物を含む組成物及び方法は、IL-12の過剰発現をともなう疾患、例えば自己免疫疾患及び炎症性腸疾患(IBD)等、特にクローン病の治療を意図する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】本発明に含まれるIL12-p35及びp40サブユニットを標的とするsiRNA分子のオリゴヌクレオチド配列。図中の配列番号(SEQ ID)は、センス鎖(5’-> 3’)を表す。典型的に、siRNAはdsRNAとして投与され、従って、センス鎖及びその相補鎖の両方を含む。
【図1B】図1A参照。
【図1C】図1A参照。
【図1D】図1A参照。
【図2】In vitro系におけるIL12-p35サブユニット発現へのsiRNAの効果。siRNA処理により、IL12-p35遺伝子の転写レベルが低下する。RNAは、異なる時間、siRNAで処理されたSW480細胞から調製された。当該サンプルを、特異的プライマーを用いたRT-PCRによって分析した。当該値は、ハウスキーピング遺伝子としての18Sに対して標準化された、種々の転写物の平均発現レベルを示す。
【図3】In vitro系におけるIL12-p40サブユニット発現へのsiRNAの効果。A:ヒト細胞において、siRNA処理によりIL12-p40遺伝子の転写レベルが低下する。RNAは、異なる時間、200nMの処理用量で、配列番号(SEQ ID)67及び配列番号79で処理されたSW480細胞から調製された。当該値は、ハウスキーピング遺伝子としての18Sに対して標準化された、種々の転写物の平均発現レベルを示す。当該値は、コントロール遺伝子発現に対してsiRNA干渉の際に標準化されたmRNAレベルの平均パーセンテージ、及びそれらの中間標準偏差(SEM)を表す。B:マウス細胞において、siRNA処理によりIL12-p40遺伝子の転写レベルが低下する。RNAは、異なる時間、100nMの処理用量で、配列番号86及び配列番号87で処理されたC2C12細胞から調製された。ヒト配列番号67に相同的な配列番号86は、マウスIL12-p40サブユニットを標的とする。マウスIL12-p40サブユニットをさらに標的とする配列番号87は、マウスにおいて最高のスコアを有するsiRNAであり、ヒトにおいて相同的なsiRNA二重鎖を有さない。siNA配列番号86及び配列番号87は、下部に示すように、2個のチミジンヌクレオチド3’突出を有する。当該値は、コントロール遺伝子発現に対して、siRNA干渉の際に18Sと比較した、標準化されたmRNAレベルの平均パーセンテージ、及びそれらの中間標準偏差(SEM)を表す。
【図4】siRNA処理により、小腸におけるGFP遺伝子の転写レベルが低下する。OCT中に回収した組織を、顕微鏡によって分析し、Photoshopプログラムによって測定した。データは、単回siRNA投与処理(マウス2-3)及び繰返し投与処理(マウス4-5)を示す。当該値は、コントロール未処理マウスに関連した、マウスあたりの25の代表的な画像の発現レベルを示す。当該データの標準偏差を表す。
【図5】siRNA処理により、小腸におけるGFP遺伝子の転写レベルが低下する。RNA later中に回収した組織を、RT-PCRによって分析した。データは、単回siRNA投与処理(マウス2-3)及び繰返し投与処理(マウス4-5)を示す。標準偏差を表す。
【図6】siRNA処理により、大腸におけるGFP遺伝子の転写レベルが低下する。OCT中に回収した組織を、顕微鏡によって分析し、Photoshopプログラムによって測定した。データは、単回siRNA投与処理(マウス2-3)及び繰返し投与処理(マウス4-5)を示す。当該値は、コントロール未処理マウスに関連した、マウスあたりの25の代表的な画像の発現レベルを示す。当該データの標準偏差を表す。
【図7】siRNA処理により、大腸におけるGFP遺伝子の転写レベルが低下する。RNA later中に回収した組織を、RT-PCRによって分析した。データは、単回siRNA投与処理(マウス2-3)及び繰返し投与処理(マウス4-5)を示す。標準偏差を表す。
【図8】OCT培地中に回収したサンプルのデータ。
【図9】RNA later中に回収したサンプルのデータ。
【0025】
本発明は、RNAi技術の直腸内投与による、腸症状の治療のための方法及び組成物に関する。本発明の組成物は、腸壁の疾患に関連する標的遺伝子の発現を調節する短い干渉核酸分子(siNA)を含む。
【0026】
本発明の方法は、それを必要とする患者への、有効な量の本発明の1つ以上のsiNAの投与を含む。
【0027】
<siRNAの設計>
例えば、siNAが遺伝子の発現を選択的に低下させるまたは阻害する場合、前記遺伝子は本発明に係るsiNAによって「標的とされる」。厳しい条件下で、siNAが遺伝子転写物にハイブリダイゼーションする場合、siNAは前記遺伝子を標的とする。siNAを、遺伝子を標的とする能力について、in vitroまたはin vivoのいずれかにおいて調べることができる。
【0028】
1999年、Tuschlらは、siRNAのサイレンシング効果を解読し、それらの効率は、二重鎖の長さ、3’突出部の長さ、及びこれらの突出部の配列の関数であることを示した。
【0029】
標的遺伝子内の全くの相同的領域を選択することは、正確なサイレンシングと非常に関係する。標的遺伝子配列の短い断片(例えば、19-40ヌクレオチドの長さ)を、本発明のsiNAの配列として選択する。ある実施態様において、前記siNAはsiRNAである。そのような実施態様において、標的遺伝子配列の短い断片は、前記標的遺伝子mRNAの断片である。好ましい実施態様において、標的遺伝子mRNAから、siRNA分子の候補となる配列断片を選択する基準は:1)天然のmRNA分子の5’または3’末端から少なくとも50-100ヌクレオチドである標的遺伝子mRNA由来の配列;2)30%-70%、最も好ましくは約50%のG/C含有量を有する標的遺伝子mRNA由来の配列;3)繰返し配列(例えば、AAA、CCC、GGG、TTT、AAAA、CCCC、GGGG、TTTT)を含まない標的遺伝子mRNA由来の配列;4)当該mRNA中に接近可能な標的遺伝子mRNA由来の配列;及び5)標的遺伝子に特有である標的遺伝子mRNA由来の配列;を含む。標的遺伝子mRNA由来の配列断片は、前記の特定した基準の1つ以上を満足するものであってよい。
【0030】
実際的には、最適なオリゴヌクレオチドの設計に対して、前記のすべての可変性を考慮する予測プログラムに、関心の遺伝子をヌクレオチド配列として取り込む。このプログラムは、siRNAによる標的とされやすい領域に対して、任意のmRNAヌクレオチド配列を精査する。この分析の結果が、予測siRNAオリゴヌクレオチドのスコアである。最も高いスコアを用いて、典型的に化学合成によって作製される二本鎖RNAオリゴヌクレオチドを設計する(他の長さも可能であるが、典型的には、21bpの長さ)。我々は、当該技術分野において公知のいくつかの化学修飾を調べる予定である。これらの修飾は、前記dsRNAオリゴヌクレオチドの安定性または有効性を増大させることを意図する。
【0031】
候補オリゴヌクレオチドを、さらに、動物からヒトの臨床試験への移行を容易にするために、種間配列についてフィルターにかける。
【0032】
標的領域に完全に相補的なsiRNAに加えて、相同的領域を標的とするために、縮重(degenerate)siNA配列を用いてもよい。WO 2005/045037は、そのような相同的配列を標的とするための、例えば、非標準塩基対(例えば、ミスマッチ及び/またはゆらぎ塩基対)を取り入れることによる、さらなる標的配列を提供し得るsiNA分子の設計を記載している。ミスマッチが特定された場合、非標準塩基対(例えば、ミスマッチ及び/またはゆらぎ塩基対)を用いて、1つより多くの遺伝子配列を標的とするsiNAを作製することができる。非制限的な実施態様において、UU及びCC塩基対等の非標準塩基対を用いて、配列相同性を共有する異なる標的に対する配列を標的とし得るsiNAを作製することができる。例えば、本発明のsiNAを用いることによる利点は、単一のsiNAを、相同的遺伝子間で保存されているヌクレオチド配列に相補的な核酸配列を含むように設計することができることである。この手法では、異なる遺伝子を標的とする1つより多いsiNA分子を用いる代わりに、1つより多い遺伝子の発現を阻害するために単一のsiNAを用いることができる。
【0033】
配列同一性は、当該技術分野において既知の配列比較及び整列アルゴリズム(Gribskov and Devereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991;及びそこに引用される参考文献を参照)によって、並びにヌクレオチド配列間のパーセンテージ差を、例えば、BESTFITソフトウェアプログラムで実施されているようなSmith-Waterアルゴリズムにより省略時パラメーター(default parameter)を用いて計算することによって(例えば、University of Wisconsin Genetic Computing Group)、算出される。90%、95%、または99%より大きい、siNA及び標的遺伝子間の配列同一性が好ましい。あるいは、siNA及び天然RNA分子間の相補性を、ハイブリダイゼーションによって機能的に規定するだけでなく、標的遺伝子の発現を低下させるまたは阻害するその能力によって機能的に規定することができる。遺伝子発現に影響を及ぼすsiNAの能力を、in vivoまたはin vitroのいずれかにおいて、実験的に測定することができる。
【0034】
本発明の好ましいsiNA分子は、二本鎖である。ある実施態様において、二本鎖siNA分子は平滑末端を含む。別の実施態様において、二本鎖siNA分子は突出ヌクレオチド(例えば、1-5ヌクレオチド突出、好ましくは2ヌクレオチド突出)を含む。特定の実施態様において、前記突出ヌクレオチドは3’突出である。他の特定の実施態様において、前記突出ヌクレオチドは5’突出である。任意の種類のヌクレオチドが、前記突出部の一部であってよい。ある実施態様において、前記突出ヌクレオチドはRNAである。別の実施態様において、前記突出ヌクレオチドはDNAである。好ましい実施態様において、前記突出ヌクレオチドはチミジンヌクレオチドである。別の実施態様において、前記突出ヌクレオチドは修飾され、または非古典的ヌクレオチドである。前記突出ヌクレオチドは、非古典的ヌクレオチド間結合(例えば、リン酸ジエステル結合以外)を有してよい。
【0035】
<siNA二重鎖の合成>
siNAを当該技術分野で既知の任意の方法によって合成することができる。好ましくは、RNAは、適切に保護されたリボヌクレオシド・ホスホラミダイト及び従来のDNA/RNA合成機を用いることによって化学的に合成される。さらに、siRNAは、Proligo社(Hamburg, Germany)、Dharmacon Research社(Lafayette, CO, USA)、Glen Research社(Sterling, VA, USA)、ChemGenes社(Ashland, MA, USA)、Cruachem社(Glasgow, UK)、Qiagen社(Germany)、Ambion社(USA)、及びInvitrogen社(Scotland)を含むが、これに制限されない商業的RNAオリゴ合成供給元から得ることができる。あるいは、本発明のsiNA分子を、プロモーターの制御下で、逆相補的siNA配列を含むベクターを用いて細胞にトランスフェクションすることによって、細胞中で発現させることができる。発現させたら、当該技術分野において公知の技術を用いることによって、前記細胞から前記siNAを単離することができる。
【0036】
一本鎖RNA分子と作用する場合、アニーリング工程が必要となる。前記RNAをアニーリングするために、30μLの各RNAオリゴ50μM溶液を、100mM酢酸カリウム、30mM HEPES-KOH(pH 7.4)、2mM酢酸マグネシウム中で結合させることができる。次いで、当該溶液を90℃で1分間インキュベーションし、15秒間遠心分離し、さらに37℃で1時間インキュベーションする。
【0037】
当該siRNAが短いヘアピンRNA(shRNA)である実施態様において、前記siRNA分子の二本鎖は、リンカー領域によって連結させることができる(例えば、ヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカー)。
【0038】
<siNAの化学修飾>
本発明のsiNAは、1つ以上の修飾されたヌクレオチド及び/または非リン酸ジエステル結合を含んでよい。当該技術分野で公知の化学修飾は、前記siNAの安定性、有効性、及び/または細胞への取込み量を増大させ得る。当業者は、RNA分子に組み込まれてよい他の種類の化学修飾を知っているであろう(修飾の種類の概説のために、国際文献WO 03/070744及びWO 2005/045037を参照)。
【0039】
ある実施態様において、修飾を用いて、分解に対する耐久性の改善または取込みの改善を提供することができる。そのような修飾の例としては、ホスホロチオネート・ヌクレオチド間結合、2’-O-メチルリボヌクレオチド(特に、二本鎖siRNAのセンス鎖における)、2’-デオキシ-フルオロリボヌクレオチド、2’-デオキシリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5-C-メチルヌクレオチド、及び転位(inverted)deoxyabasic残基の組込み(一般的に、GB2406568を参照)を含む。
【0040】
別の実施態様において、修飾を用いて、当該siNAの安定性を増強させるまたは標的効率を増大させることができる。修飾は、siRNAの2つの相補鎖間の化学的架橋結合、siRNAの鎖の3’または5’末端の化学修飾、糖修飾、核酸塩基修飾及び/または基幹修飾、2’-フルオロ修飾リボヌクレオチド、並びに2’-デオキシリボヌクレオチド(一般的に、国際文献WO 2004/029212を参照)を含む。
【0041】
別の実施態様において、修飾を用いて、当該標的mRNAにおける及び/または相補的siNA鎖における相補的ヌクレオチドの対するアフィニティーを増加または減少させることができる(一般的に、国際文献WO 2005/044976を参照)。例えば、2-チオ、5-アルキニル、5-メチル、または5-プロピニルピリミジンを非修飾ピリミジンヌクレオチドに置換することができる。さらに、非修飾プリンを、7-デザ(deza)、7-アルキル、または7-アルケニルプリンで置換することができる。
【0042】
別の実施態様において、当該siNAが二本鎖siRNAである場合、3’末端ヌクレオチド突出ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドによって置換される(一般的に、Elbashirら, 2001を参照)。
【0043】
<siRNA二重鎖のin vitroにおける試験>
siRNA干渉の特異性を調べるために、標的遺伝子を発現する細胞培養物を使用した。
【0044】
IL12-p35及びp40サブユニットの場合、当該実験に用いられる細胞は、ヒトSW480細胞及びマウス筋細胞C2C12であった。前記細胞と相当するsiRNA二重鎖とのインキュベーションの後、p35及びp40の発現レベルを分析した。siRNAノックダウンを培養細胞における特異的表現型に関連付けするために、標的タンパク質の減少を立証する、あるいは標的mRNAの低下を少なくとも立証する必要がある。
【0045】
標的遺伝子のmRNAレベルを、リアルタイムPCR(RT-PCR)によって定量化することができる。さらに、当該タンパク質レベルを、当該技術分野において公知の種々の方法、例えば、標的タンパク質の減少を直接モニターすることを可能にする、異なる標的に特異的抗体を用いたウエスタンブロット等で測定することができる。
【0046】
siRNAを、当該技術分野において公知の任意のトランスフェクション技術によって、細胞内に導入する。例えば、リポフェクタミン2000試薬(Invitrogen社)等のカチオン性脂質を用いることによって、siRNA二重鎖の単一トランスフェクションを、その後、トランスフェクションの24、48、及び72時間後にサイレンシング効率のアッセイを実施することができる。
【0047】
典型的なトランスフェクションプロトコールは、以下のように実施される。6ウェルプレートの1ウェルに対し、我々は、siRNAの終濃度として、マウスC2C12細胞には100nM、またはヒトSW480細胞には200nMを用いてトランスフェクションする。リポフェクタミン2000試薬プロトコールに従い、トランスフェクションの前日に、我々は、1ウェルあたり2-4×105個の細胞を、DMEM、10%血清、抗生物質、及びグルタミンを含む3mLの適切な増殖培地中に播種し、通常の増殖条件下で細胞をインキュベーションする(37℃で5% CO2)。トランスフェクションの日に、細胞は30-50%コンフルエンスである必要がある。我々は、250μLのDMEM中に、12.5μLの20μM siRNA二重鎖(100nM終濃度に対応する)または25μLの20μM siRNA二重鎖(200nM終濃度に対応する)を希釈し、混合する。さらに、6μLのリポフェクタミン2000を250μLのDMEM中に希釈し、混合する。室温で5分間インキュベーション後、前記希釈したオリゴマー(siRNA二重鎖)及び前記希釈したリポフェクタミンを合わせ、室温で20分間のインキュベーションの間に複合体を形成させる。その後、我々は、抗生物質の低い2mLの新しい増殖培地を有する細胞上に、前記複合体を滴状で添加し、当該プレートを前後に揺動させることによって穏やかに混合し、当該トランスフェクション複合体の均一な分散を確認する。我々は、それらの通常の増殖条件下で前記細胞をインキュベーションし、翌日、前記複合体を除去し、新しく且つ完全な増殖培地を添加する。遺伝子サイレンシングをモニターするために、トランスフェクション後、24、48、及び72時間に細胞を回収する。
【0048】
トランスフェクションの効率は、細胞の種類だけでなく、継代数、及び細胞のコンフルエンシーに依存するかもしれない。siRNA−リポソーム複合体の形成の時間及び方法(例えば、転倒対ボルテックス)もまた重要である。低いトランスフェクション効率は、成功しないサイレンシングの最頻出の原因である。優れたトランスフェクションは、重大な問題であり、使用されるべきそれぞれの新しい細胞株に対して慎重に検討される必要がある。トランスフェクション効率を、レポーター遺伝子、例えばCMV駆動EGFP発現プラスミド(例えば、Clontech社製)またはB-Gal発現プラスミドをトランスフェクションすることによって調べることができ、次いで、翌日、位相差及び/または蛍光顕微鏡によって評価することができる。
【0049】
標的タンパク質の存在量及び寿命(代謝回転)に依存して、ノックダウン表現型は、1-3日後、またはさらにその後に、明らかになるかもしれない。表現型が観察されない場合、当該タンパク質の減少は、免疫蛍光またはウエスタンブロッティングによって観察されるかもしれない。
【0050】
トランスフェクション後、細胞から抽出した全RNA画分をDNase Iで前処理し、ランダムプライマーを用いた逆転写に使用する。少なくとも1つのエクソン−エクソン連結部を覆う特異的プライマー対を用いたPCR増幅物を、mRNA前駆体(pre-mRNA)の増幅のコントロールとして用いる。標的としないmRNAのRT-PCRもまた、コントロールとして必要とされる。当該mRNAの有効な低下、それにもかかわらず、標的タンパク質の検出できない低下は、細胞内に存在し得る安定なタンパク質の大きな貯蔵を示しているかもしれない。あるいは、RT-PCR増幅を用いて、より正確な方法で、当該mRNAの減少または消失を調べることができる。RT-PCRは、鋳型の最初の量を非常に特異的に、高感度に、且つ再現性よく定量化する。RT-PCRは、ライトサイクラー装置中で、当該反応の間に放出された蛍光を、各PCRサイクルの間の単位複製配列(amplicon)産物の指標としてモニターする。このシグナルは、反応物中のPCR産物の量に直接比例して増加する。各サイクルにおける蛍光放出量を記録することによって、PCR産物の量の最初の有意な増加が標的鋳型の最初の量に対応する対数期の間の、PCR反応をモニターすることが可能である。
【0051】
細胞培養物中で差異的に発現したIL-p35及びp40遺伝子の干渉パターンを検証するために、定量的RT-PCRを実施した。定量的RT-PCRのために、全RNAのうち約500ngを逆転写に使用し、次いで、反応物中の各遺伝子に特異的なプライマーを用いたPCR増幅を行った。当該PCR条件は、95℃で30秒の初期工程に続き、95℃で5秒、62℃で10秒、及び72℃で15秒の40サイクルを行った。18S mRNAの定量化を、データ標準化のためのコントロールとしてのハウスキーピング遺伝子として用いた。選択された内在性/内部コントロールが当該サンプルの中で、全RNAに比例して、より豊富で一定のままである場合、相対的な遺伝子発現の比較は最も良好に機能する。不変の内在性コントロールを実施中の基準値として用いることによって、mRNA標的の定量化を、各反応に添加された全RNA量の差に対して標準化することができる。メーカーのプロトコールに従って、ライトサイクラーで得られた増幅曲線を、in vitroにおいて転写されたβグロビンDNA鋳型を標的とするコントロールキットDNAと組み合わせて分析した。当該増幅されたPCR産物の特異性を評価するために、融解曲線分析を実施した。得られた融解曲線により、プライマー二量体と特異的PCR産物との間の区別が可能になる。
【0052】
<siNAの直腸内投与>
直腸内siNA送達試験を、GFP C57BL/6-TG(ACTB-EGFP)マウスにおいて実施した。このトランスジェニックマウス系統は、「The Jackson Laboratory」からもたらされた。この導入遺伝子に対してホモのマウスは生後最初の2週間以内に死ぬため、トランスジェニックマウスを用いている。「増強した」GFP(EGFP)cDNAを有するトランスジェニックマウス系統は、ニワトリのβアクチン・プロモーターとサイトメガロウイルス・エンハンサーの制御下で、赤血球と毛髪を除いた組織のすべてが励起光の下で緑色に見える。この系統をC57BL/6マウスにおいて作製した。増強した緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードする当該系統cDNAを、ニワトリのβアクチン・プロモーターとサイトメガロウイルス・エンハンサーに隣接させた。ウシのグロビン・ポリアデニル化シグナルもまた、当該コンストラクト中に含まれた。当該PCRプライマー中に含まれるEco RIサイトを用いて、増幅したEGFP cDNAを、ニワトリのβアクチン・プロモーター、サイトメガロウイルス・エンハンサー、βアクチンイントロン、及びウシのグロビン・ポリアデニル化シグナルを含むpCAGGS発現ベクター中に導入した。前記プロモーターとコード配列を有する全挿入部分を、Bam HIとSal Iで切断し、ゲル精製した。
【0053】
マウスにおける直腸内投与に用いられたsiRNA二重鎖は、Dharmacon社から購入した。Dharmacon Research社(Lafayette, CO)は、siSTBLEv2と命名される、治療法としてのin vivo使用のための新世代の修飾siRNAを開発している。Dharmacon社製siSTABLEv2 siRNAは、非修飾siRNAのものと比較して、血清中での増大した安定性を示している。従来のsiRNAは、典型的に、血清を含む環境において数分以内に分解され、in vivoにおけるsiRNAの使用を問題にしている。前記siSTABLEv2修飾は、Dharmacon社のウェブページ(http://www.dharmacon.com/docs/siSTABLE%20v2%20Flier.pdf)に記載されているように、血清中のsiRNA安定性を劇的に引き延ばす。
【0054】
EGFP mRNA発現を下方制御するために用いられたsiRNAは、EGFP mRNA中の以下の配列を標的とした。5’-GGC UAC GUC CAG GAG CGC ACC-3’(配列番号88)。当該siRNA二重鎖のセンス鎖は5’-P GGC UAC GUC CAG CGC ACC-3’(配列番号89)、アンチセンス鎖は5’-P U GCG CUC CUG GAC GUA GCC UU-3’(配列番号90)であった。この配列は、合成される前のコントロールsiRNA緑色蛍光タンパク質二重鎖として、Dharmacon社により配給されている。
【0055】
直腸内送達実験のために、C57BL/6-TG(ACTB-EGFP)マウス(オス、8週齢)を使用した。前記動物は、当該実験プロトコールの前日まで、食料と水に自由に接近できるケージの中で飼育された。直腸内治療的サイレンシングのために、当該処理前の1日間、マウスに餌を与えなかった。当該薬剤を、典型的に、直腸中に少量(120μL)注入することによって投与した。コントロールマウスを、溶媒のみで処理した。すべての場合において、最初の注入の2日後に、動物を頚椎脱臼によって死亡させた。マウスにおけるsiRNAの適用のためのプロトコールは、以下のとおりである。各実験的投与のために、60μLのsiRNA二重鎖を60μLのNaCl(1.8% w/v)と生理学的レベルまでプレミックスした。すべての場合において、最初の注入の2日後に、動物を死亡させた。
【0056】
用いられた実験条件を、下記の表に示す。各条件を2回分析した。マウス2及び3を、250μg(19ナノモル)の当該siRNA対GFPの単回投与で直腸内に処理し、一方、マウス4及び5を、連続した2日間で125μgのsiRNAの2回投与で処理した。
【0057】
表:直腸内siRNA送達のための実験条件についての概要分類。siRNAの投与量を表中に示す。
【表1】
【0058】
当該サンプル組織を、2つの方法で、一方はOCT培地中に、もう一方はRNA later(Ambion社)中に回収し、分析した。OCT塊は、データ処理まで-80℃で保存された。OCT塊を、-20℃で、クライオスタット(Leica CM 1850)によって12μmの切片に切った。回収した切片を、デジタルカメラ(DP70)と接続した蛍光顕微鏡(Olympus BX51)で、488nmのフィルターを用いることによって分析した。感度条件(ISO200)、解像度画像サイズ(2040×1536)、及び暴露時間(1秒)をすべてのサンプルに対して設定し、それらの間の比較をした。緑色蛍光を、GFP発現の指標として、Adobe Photoshopプログラム(バージョン8.0)によって測定した。この方法によって、各分析された組織に対して、25の異なるデータを回収した。RNA later中に単離された組織は、-20℃で保存された。RNA laterをRNA抽出前に除去した。メーカーのプロトコールに従って、RNAをTrizol試薬(Invitrogen社)で単離した。前記のようなRT-PCRによるGFP発現の測定前に、DNase処理を行った。
【0059】
<製薬的製剤及び投与の経路>
本発明は、1つ以上のsiNA分子種の投与を同時に含んでもよい。これらの種を選択し、1つ以上の標的遺伝子を標的とすることができる。
【0060】
ある実施態様において、単一の種類のsiNAを本発明の治療的方法で投与する。別の実施態様において、本発明のsiNAを、本発明の別のsiNA、及び/または腸壁の疾患症状の治療、予防、または処置に有用な1つ以上の他の非siNA治療薬と組み合わせて投与する。用語「組み合わせて」は、治療薬の正確に同時の投与に制限されず、むしろ、本発明のsiNAと他の薬剤を、連続して、当該組合せの利益がそれらを別の方法で投与する場合よりも大きくなるような時間間隔で、患者に投与することを意味する。例えば、各治療薬は、同時に、または時間内の異なる時点において任意の順序で連続的に投与されてよく、ただし、同時に投与されない場合には、それらは、所望の治療効果を提供するような時間内に十分に近づけて投与されるべきである。各治療薬は、任意の適切な形態で、且つ任意の適切な経路で、別々に投与されてよい。
【0061】
本発明のsiNAを、当該技術分野において既知の任意の従来技術によって、製薬組成物中に配合してよい(例えば、Alfonso, G.ら, 1995, The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing, Easton PA, 19th ed.を参照)。本発明の方法における使用のための1つ以上のsiNAを含む製剤は、多数の形態であってよく、各患者に特異的な種々の要因(例えば、疾患の種類及び重篤度、投与されるsiNAの種類、年齢、体重、反応、並びに当該患者の過去の病歴)、製剤中のsiNAの種類、組成物の形態(例えば、液体、半流動体、または固形形態)、治療計画(例えば、当該治療薬を、経時的に、緩徐な注入剤、単一の丸薬として、1日に1回、1日に数回、または数日に1回投与するかどうか)、並びに/あるいは投与の経路(例えば、局所的、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、経皮的、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、または舌下の方法)に依存してよい。
【0062】
本発明のsiNA分子、及びそれらの製剤または組成物を、当該技術分野において一般的に知られるように、直接的にまたは局所的に投与することができる。例えば、siNA分子は、患者への投与のために、リポソームを含有する送達溶媒を含んでよい。キャリア、並びに希釈剤及びそれらの塩は、製薬上許容し得る製剤中に存在してよい。核酸分子を、当該技術分野において既知の、イオン注入法による、または他の溶媒、例えば、生分解性のポリマー、ヒドロゲル、シクロデキストリンポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、及びPLCA微粒子等、生分解性のナノカプセル、並びに生体接着性微粒子中への導入によるリポソーム状のカプセル化を含むが、これに制限されない種々の方法によって、あるいはタンパク質性ベクターによって、細胞へ投与することができる。別の実施態様において、本発明の核酸分子もまた、ポリエチレンイミン及びその誘導体、例えば、ポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-GAL)またはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-トリ-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-トリGAL)誘導体等と、配合または複合体を形成させてよい。
【0063】
本発明のsiNA分子を、膜破壊性物質並びに/あるいはカチオン性脂質またはヘルパー脂質分子と複合体を形成させてよい。
【0064】
本発明に関して用いられてよい送達システムは、例えば、水性及び非水性ゲル、クリーム、多層エマルジョン、マイクロエマルジョン、リポソーム、軟膏、水性及び非水性溶液、ローション、エアロゾル、炭化水素基材、並びにパウダーを含み、且つ賦形剤、例えば、可溶化剤、浸透賦活剤(例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール、及びアミノ酸)、及び親水性ポリマー(例えば、ポリカルボフィル及びポリビニルピロリドン)を含んでもよい。ある実施態様において、製薬上許容し得るキャリアは、リポソームまたは浸透賦活剤である。
【0065】
本発明の製薬的製剤は、投与、例えば、細胞または例えばヒトを含む被験者中への全身的または局所的投与に適した形態をとる。適切な形態は、部分的に、使用法または入る経路、例えば、経口、経皮、または注入による等に依存する。他の要因が当該技術分野において知られており、毒性及び当該組成物がその効果を発揮するのを妨げる形態等の考慮事項を含む。
【0066】
本発明はまた、製薬上許容し得るキャリアまたは希釈剤中に製薬上有効な量の所望の化合物を含む、保管または投与のための組成物を含む。製薬的使用のための許容し得るキャリアまたは希釈剤は、製薬分野において公知である。例えば、保存剤、安定化剤、色素、及び香料が提供されてよい。これらは、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。さらに、抗酸化剤及び懸濁化剤を使用することができる。
【0067】
製薬上有効な用量は、疾患状態の発生を予防、抑制する、または治療する(ある程度の症状を、好ましくは症状のすべてを緩和する)ために必要とされる用量のことである。前記製薬上有効な用量は、疾患の種類、使用される組成物、投与の経路、治療される哺乳類の種類、考察中の特定の哺乳類の身体的特徴、共存する薬剤、並びに医療分野における当業者が認めるであろう他の要因に依存する。
【0068】
本発明の製剤を、従来の無毒性の製薬上許容し得るキャリア、アジュバント、及び/または溶媒を含む用量単位の処方で投与することができる。製剤は、経口使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ剤、舐剤、水性または油性懸濁液、分散性パウダーまたは顆粒、エマルジョン、硬質のまたは軟質のカプセル、あるいはシロップ剤またはエリキシル剤等の形態をとってよい。経口使用を意図した組成物を、製薬組成物の製造の分野に既知の任意の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、1つ以上の、甘味料、香料、着色剤、または保存剤を含んでよく、製薬上洗練され、且つ美味な調剤を提供することができる。錠剤は、錠剤の製造に適した無毒性の製薬上許容し得る賦形剤と混合した活性成分を含んでよい。
【0069】
これらの賦形剤は、例えば:不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム等;顆粒化及び分解剤、例えば、コーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えば、スターチ、ゼラチン、またはアカシア;並びに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルク;であってよい。前記錠剤はコーティングされなくてよく、あるいはそれらは既知の技術によってコーティングされてよい。いくつかの場合において、そのようなコーティングを既知の技術によって調製して、消化管中での分解及び吸収を遅らせることができ、それによって、より長い期間にわたり維持された作用を提供することができる。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリン等の、時間遅延物質を使用することができる。
【0070】
経口使用のための製剤をまた、その中で活性成分が不活性固形希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合される硬質のゼラチンカプセルとして、あるいはその中で活性成分が水または油性溶媒、例えば、ピーナッツ油、パラフィン油、またはオリーブ油と混合される軟質のゼラチンカプセルとして、提供することができる。
【0071】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性物質を含む。そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピル-メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアカシアガムであり、分散または浸潤剤は、天然に生じるリン脂質、例えば、レシチン、または酸化アルキレンと脂肪酸との縮合物、例えば、ポリオキシレンステアレート、または酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、または酸化エチレン及び脂肪酸とヘキシトールに由来する部分的エステルの縮合物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または酸化エチレン及び脂肪酸とヘキシトール無水物に由来する部分的エステルの縮合物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビトールであってよい。前記水性懸濁液はまた、1つ以上の保存剤、例えば、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香料、並びに1つ以上の甘味料、例えば、スクロースまたはサッカリンを含んでよい。
【0072】
油性懸濁液を、植物性油、例えば、ピーナッツ油(arachis oil)、オリーブ油、ゴマ油、またはココナッツ油、あるいは鉱物油、例えば、パラフィン油等の中に活性成分を懸濁することによって、調製することができる。前記油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含んでよい。甘味料及び香料を添加して、美味な経口調剤を提供することができる。これらの組成物を、アスコルビン酸等の抗酸化剤の添加によって保存することができる。
【0073】
水分の添加によって水性懸濁液の調製に適した分散性パウダー及び顆粒は、分散または浸潤剤、懸濁化剤、並びに1つ以上の保存剤と組み合わせて活性成分を提供する。適した分散または浸潤剤、あるいは懸濁化剤は、すでに前記によって例を挙げられている。付加的賦形剤は、例えば、甘味料、香料、及び着色剤もまた存在してよい。
【0074】
本発明の製薬組成物はまた、水中油型のエマルジョンの形態であってよい。当該油性相は、植物性油または鉱物油、あるいはこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、天然に生じるガム、例えば、アカシアガム、トラガカントゴム等、天然に生じるリン脂質、例えば、ダイズ、レシチン、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分的エステル、例えば、モノオレイン酸ソルビトール、及び前記部分的エステルと酸化エチレンとの縮合物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであってよい。前記エマルジョンはまた、甘味料及び香料を含んでよい。
【0075】
シロップ剤及びエリキシル剤を、甘味料、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、グルコース、またはスクロースで配合することができる。そのような調剤はまた、粘滑剤、保存剤、香料、及び着色剤を含んでよい。当該製薬組成物は、無菌的注入が可能な水性または油性の懸濁液の形態であってよい。
【0076】
この懸濁液を、前記の適切な分散または浸潤剤、及び懸濁化剤を用いることによって、既知の技術に従って、調製することができる。
【0077】
無菌的注入が可能な調剤はまた、例えば、1,3-ブタンジオールのような、無毒性の許容し得る希釈剤または溶媒中の無菌的注入が可能な溶液または懸濁液であってよい。使用することができる許容し得る溶剤及び溶媒としては、水、リンガー溶液、及び等張性の塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌的、不揮発性油を、溶媒または懸濁化媒体として慣習的に使用する。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性の不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸等の脂肪酸の、注入可能な調剤における使用法を見つけている。
【0078】
本発明の核酸分子をまた、例えば、当該薬剤の直腸投与のための座薬の形態で投与することもできる。これらの組成物を、当該薬剤を常温で固形であるが、直腸温では液体である適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができ、従って、直腸中で融解し、当該薬剤を放出するであろう。そのような物質は、ココアバター及びポリエチレングリコールを含む。
【0079】
本発明の核酸分子を、滅菌媒体中に非経口的に投与することができる。使用される溶媒及び濃度に依存する薬剤を、前記溶媒中に懸濁または溶解することができる。都合のよいことに、局所麻酔剤等のアジュバント、保存剤、及び緩衝剤を、前記溶媒中に溶解することができる。
【0080】
非ヒト動物への投与のために、前記組成物をまた、当該家畜飼料または飲料水に添加してもよい。当該動物がその餌とともに、治療上適切な量の前記組成物を摂取できるように、当該家畜飼料及び飲料水組成物を配合すると都合がよいかもしれない。また、飼料または飲料水への添加用のプレミックスとして、前記組成物を提供することも都合がよいかもしれない。
【0081】
本発明の核酸分子を、全体的な治療効果を増大させるために、他の製薬化合物と組み合わせて被験者に投与してもよい。徴候を治療するための複数の化合物の使用は、有益な効果を増大させ、一方で副作用の存在を低下させる可能性がある。
【0082】
あるいは、本発明の特定のsiNA分子を、真核生物プロモーターからの細胞内で発現させることができる。前記siNA分子を発現し得る組換えベクターを送達し、標的細胞中で存続させることができる。あるいは、ベクターを使用して、核酸分子の一過性の発現を提供することができる。そのようなベクターを、必要に応じて、繰返し投与することができる。発現すると、当該siNA分子は標的mRNAと相互作用し、RNAi応答を引き起こす。ベクターを発現するsiNA分子の送達は、例えば、静脈内または筋肉内投与によって、被験者から外植された(ex-planted)標的細胞への投与に続き前記被験者内への再導入によって、あるいは所望の標的細胞内への導入を可能にする任意の他の方法によって、全身性であり得る。
【実施例】
【0083】
[結果]
<実施例1:siNAの設計>
IL12-p35(インターロイキン12A、ナチュラルキラー細胞刺激因子1、細胞毒性リンパ細胞成熟因子1、p35)及びp40(インターロイキン12B、ナチュラルキラー細胞刺激因子2、細胞毒性リンパ細胞成熟因子2、p40)サブユニットに対応するGenBank登録番号は、それぞれNM_000882及びNM_002187である。
【0084】
対応するmRNAヌクレオチド配列を、前記の登録商標を有する予測プログラムに取り込み、標的IL12-p35及びp40に向けられたsiNA分子を得た。この分析の結果は、可能性のあるsiNAオリゴヌクレオチドのスコアであり、最も高いスコアを用いて、典型的に化学合成によって作製される二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(典型的に、19bpの長さ)を設計した。
【0085】
好ましい実施態様において、本発明のsiNA組成物は、図1の配列番号1−81のいずれかであり、典型的に、センス鎖及びアンチセンス鎖の二重鎖として投与される。本発明はまた、40ヌクレオチド以下であり、且つ配列番号1−81のいずれかのヌクレオチド配列を含むsiNAを包含する。特定の実施態様において、当該siNAは21-30ヌクレオチド長であり、且つ図1の配列番号1−81のいずれか1つを含む。下記の実験において用いられたすべてのsiNA分子を、2チミジンヌクレオチド3’突出を有するように設計した。
【0086】
<実施例2:IL12-p35用のin vitroアッセイ>
IL12-p35標的遺伝子の阻害を測定するために、図1中に含まれるsiRNAのパネルを細胞培養中で分析した。最高の特性を有するsiRNAを選んで試験し、SW480等の適切な細胞培養に適用した。前記標的遺伝子へのsiRNAの効果を、メーカーのプロトコールに従ったRT-PCRによって分析した。当該遺伝子標的転写物レベルを、ハウスキーピング遺伝子として18Sを用いることによって標準化した。図2は、試験された異なるsiRNAのいくつか、及び前記標的遺伝子の干渉におけるそれらの異なる有効性を含む。これらの結果は、p35を発現するSW480細胞における図1の配列番号8及び配列番号17に相当する。当該値は、コントロール遺伝子発現に対してsiRNA干渉の際に標準化されたmRNAレベルの平均パーセンテージ、及びそれらの中間標準偏差(SEM)を表す。当該siRNA処理後のp35転写物のレベルは、コントロール細胞と比較してSW480細胞において、配列番号8及び配列番号17に対応するsiRNAで非常に低下した。当該遺伝子発現の減少は、siRNAサイレンシングの効率に依存する。実際に、配列番号8のsiRNA処理により、p35遺伝子発現は、コントロールと比較して24時間で56%まで減少した。
【0087】
<実施例3:IL12-p40用のin vitroアッセイ>
IL12-p40標的遺伝子の阻害を測定するために、図1中に含まれるsiRNAのパネルを分析した。前述のように設計した最高の特性を有するsiRNAを、ヒト及びマウス細胞において試験した。p40転写物レベルをRT-PCRで分析し、ハウスキーピング遺伝子として18Sを用いることによって標準化した。これらの結果は、p40を発現するSW480細胞における配列番号67及び配列番号79(図3A)、並びにp40を発現するC2C12細胞における配列番号86及び配列番号87(図3B)に相当する。配列番号86及び配列番号87のsiNA分子は、当該図中に記載されるように、2チミジンヌクレオチド3’突出を有する。
【0088】
SW480細胞において、配列番号67に対応するsiRNAを用いた処理後、p40転写物のレベルは、コントロール細胞と比較して65%まで非常に低下した。C2C12細胞において、配列番号86に対応するsiRNAにより、当該遺伝子発現は、コントロールと比較して48時間で61%まで減少した。配列番号67及び配列番号86は、それぞれヒト及びマウスのIL12-p40遺伝子の相同的領域に対応することに注意することが重要である。
【0089】
図2及び3の実験の概要を、以下の表に示す。
【表2】
【0090】
<実施例4:In vitroアッセイ・小腸の分析>
腸内の適切なsiRNA送達を確認するために、siRNA適用を行った。当該siRNA効果を確認するために、小腸サンプルをOCT培地中に回収し、前述のように分析した。GFP遺伝子転写の下方制御を確認することが目標であるため、siRNA適用後に、蛍光量を測定した。当該実験プロトコールの間、二次的効果は当該動物において観察されなかった。
【0091】
作業の第一のグループ(動物2及び3)を、250μgのsiRNAの単回投与で処理し、48時間後に死亡させた。当該結果は、コントロールマウスと比較して、蛍光の有意な減少を示す。さらに、125μgの2回投与で前記siRNA(250μg)を投与し、最初の注入の48時間後に分析した場合、GFP発現の減少は、単回適用後のものと同様であった。当該結果を図4に示す。各実験条件に対する、データの平均を示す。
【0092】
前記データを立証するために、同時に、小腸サンプルをRNA later中に回収した。mRNAレベルをRT-PCRによって測定した。図5に示すように、これらの結果は、蛍光分析に関して得られた前記のものを立証する。
【0093】
図5に示すように、1または2回の適用で250μgのsiRNAの投与用量は、小腸におけるGFP mRNAのレベルを下方制御するのに足りる、且つ十分であり、直腸内投与による小腸内の当該siRNAの送達を立証した。コントロールと比較した下方制御のレベルは、当該分析をRT-PCRによって行った場合よりも高く、これは、当該技術のより高い感度のためである。
【0094】
<実施例5:In vitroアッセイ・大腸の分析>
さらに、小腸と同じ方法で、大腸を分析した。大腸における当該siRNA効果を確認するために、siRNA適用後に、蛍光の測定によってGFPの下方制御を確認するために、OCT培地中に回収されたサンプルを分析した。当該結果は、コントロールマウスと比較して、蛍光の有意な減少を示す(図6)。さらに、当該用量を125μgの2回適用で投与し、最初の注入の48時間後に分析した場合、当該減少は単回siRNA投与後に得られたものと非常に類似しており、当該処理の有効性を示している。
【0095】
小腸におけるように、大腸サンプルをRNA later中に回収し、mRNAレベルのデータを図7に示す。RT-PCRによって得られたデータは、蛍光分析に関して得られた前記のものを立証する。これらの結果は、腸疾患の治療に対する、治療的siRNA投与への新しい道を開く。
【0096】
OCT培地中及びRNA later中に回収されたサンプルのデータを、それぞれ図8及び図9に要約する。
【0097】
我々はさらに、当該マウスの他の選択された組織において、GFP発現のいくらかの下方制御があるかどうかを検討した。膀胱、腎臓、肺、卵巣、及び肝臓組織において下方制御は観察されず、siRNAの直腸内投与は、腸組織を特異的に標的とするために使用され得ることを示唆している。
【0098】
[参考文献]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸疾患の治療の有効な方法であって、直腸内にRNA干渉を引き起こす化合物を患者へ投与する工程を含む方法。
【請求項2】
前記疾患が小腸の疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患が大腸の疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患が直腸の疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患が、過剰増殖性疾患、特に結腸直腸ガン;自己免疫性及び炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病;大腸炎、特に潰瘍性大腸炎;過敏性腸症候群;腸の感染性疾患、例えば偽膜性大腸炎、アメーバ症、または腸結核等;結腸ポリープ;憩室疾患;便秘症;腸閉塞;吸収不良症候群;直腸疾患;並びに下痢;を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、治療を必要とする患者において、変化したレベルを有する標的遺伝子の発現を調節する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記標的遺伝子発現が樹状細胞以外の細胞において調節される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記標的遺伝子発現が腸管上皮細胞において調節される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物がsiNAである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記siNAがsiRNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記siNAがdsRNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記siNAがshRNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物がmiRNAレベルを調節する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が修飾されたオリゴヌクレオチドを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記siNAが40塩基対以下の長さである、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記siNAが3’突出部を有する、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記3’突出部がジヌクレオチドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ジヌクレオチド突出部がチミジンヌクレオチドから構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
複数の種の化合物を用いる、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の種が同じmRNA種に方向づけされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の種が異なるmRNA種に方向づけされる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、炎症性腸疾患(IBD)に関わる標的遺伝子の発現を調節する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記IBDがクローン病である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記標的遺伝子がインターロイキン12である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物がsiNAである、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記siNAが配列番号1から配列番号85からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記siNAが40塩基対以下の長さであり、且つ配列番号1から配列番号85からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記siNAが前記インターロイキン12の35kDaサブユニット(IL12-p35)に方向づけされ、且つ配列番号1から配列番号33からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記siNAが前記インターロイキン12の40kDaサブユニット(IL12-p40)に方向づけされ、且つ配列番号34から配列番号85からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
腸疾患の治療のための薬剤の調製における、RNA干渉を引き起こす化合物の使用であって、前記化合物を患者に対して直腸内に投与する使用。
【請求項31】
腸疾患の治療のための薬剤の調製における、IL-12を標的とするsiNAの使用。
【請求項32】
前記腸疾患が炎症性腸疾患(IBD)である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記IBDがクローン病である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記siNAが配列番号1から配列番号85からなる群から選択される、請求項31から33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
配列番号1から配列番号85の群から選択されるヌクレオチド配列を含む、インターロイキン12に方向づけされたRNAi化合物。
【請求項36】
前記RNAiがdsRNA、siRNA、またはshRNAである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
配列番号1から配列番号33からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、前記インターロイキン12の35kDaサブユニット(IL12-p35)に方向づけされた、請求項35に記載の化合物。
【請求項38】
配列番号34から配列番号85からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、前記インターロイキン12の40kDaサブユニット(IL12-p40)に方向づけされた、請求項35に記載の化合物。
【請求項39】
請求項35に記載の1つまたは複数のsiNAを含む製薬組成物。
【請求項40】
直腸内投与用に配合された、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
RNA干渉を引き起こす化合物を含み、直腸内投与用に配合された、腸疾患の治療のための製薬組成物。
【請求項42】
ex vivoでの細胞または組織において、IL12-p40及び/またはIL12-p35の発現を阻害する方法であって、請求項35から38のいずれか一項に記載の化合物で前記細胞または組織を処理する工程を含み、それによってIL12-p40及び/またはIL12-p35の発現が阻害される方法。
【請求項43】
患者において、IL12-p40及び/またはIL12-p35の発現を阻害する方法であって、請求項35から38のいずれか一項に記載の化合物で前記患者を処理する工程を含み、それによってIL12-p40及び/またはIL12-p35の発現が阻害される方法。
【請求項44】
IL12-p40及び/またはIL12-p35に関連する疾患または症状の治療のための薬剤の製造における、請求項35から38のいずれか一項に記載の化合物の使用であって、前記薬剤がIL12-p40及び/またはIL12-p35の発現を阻害する使用。
【請求項45】
前記疾患が自己免疫疾患または炎症性腸疾患(IBD)である、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記疾患が多発性硬化症、糖尿病、またはクローン病である、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
RNA干渉のための、腸組織を特異的に標的とする方法であって、直腸内にRNA干渉を引き起こす化合物を患者へ投与する工程を含む方法。
【請求項1】
腸疾患の治療の有効な方法であって、直腸内にRNA干渉を引き起こす化合物を患者へ投与する工程を含む方法。
【請求項2】
前記疾患が小腸の疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患が大腸の疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患が直腸の疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患が、過剰増殖性疾患、特に結腸直腸ガン;自己免疫性及び炎症性腸疾患(IBD)、特にクローン病;大腸炎、特に潰瘍性大腸炎;過敏性腸症候群;腸の感染性疾患、例えば偽膜性大腸炎、アメーバ症、または腸結核等;結腸ポリープ;憩室疾患;便秘症;腸閉塞;吸収不良症候群;直腸疾患;並びに下痢;を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、治療を必要とする患者において、変化したレベルを有する標的遺伝子の発現を調節する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記標的遺伝子発現が樹状細胞以外の細胞において調節される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記標的遺伝子発現が腸管上皮細胞において調節される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物がsiNAである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記siNAがsiRNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記siNAがdsRNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記siNAがshRNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物がmiRNAレベルを調節する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が修飾されたオリゴヌクレオチドを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記siNAが40塩基対以下の長さである、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記siNAが3’突出部を有する、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記3’突出部がジヌクレオチドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ジヌクレオチド突出部がチミジンヌクレオチドから構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
複数の種の化合物を用いる、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の種が同じmRNA種に方向づけされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の種が異なるmRNA種に方向づけされる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、炎症性腸疾患(IBD)に関わる標的遺伝子の発現を調節する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記IBDがクローン病である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記標的遺伝子がインターロイキン12である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物がsiNAである、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記siNAが配列番号1から配列番号85からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記siNAが40塩基対以下の長さであり、且つ配列番号1から配列番号85からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記siNAが前記インターロイキン12の35kDaサブユニット(IL12-p35)に方向づけされ、且つ配列番号1から配列番号33からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記siNAが前記インターロイキン12の40kDaサブユニット(IL12-p40)に方向づけされ、且つ配列番号34から配列番号85からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
腸疾患の治療のための薬剤の調製における、RNA干渉を引き起こす化合物の使用であって、前記化合物を患者に対して直腸内に投与する使用。
【請求項31】
腸疾患の治療のための薬剤の調製における、IL-12を標的とするsiNAの使用。
【請求項32】
前記腸疾患が炎症性腸疾患(IBD)である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記IBDがクローン病である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記siNAが配列番号1から配列番号85からなる群から選択される、請求項31から33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
配列番号1から配列番号85の群から選択されるヌクレオチド配列を含む、インターロイキン12に方向づけされたRNAi化合物。
【請求項36】
前記RNAiがdsRNA、siRNA、またはshRNAである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
配列番号1から配列番号33からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、前記インターロイキン12の35kDaサブユニット(IL12-p35)に方向づけされた、請求項35に記載の化合物。
【請求項38】
配列番号34から配列番号85からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、前記インターロイキン12の40kDaサブユニット(IL12-p40)に方向づけされた、請求項35に記載の化合物。
【請求項39】
請求項35に記載の1つまたは複数のsiNAを含む製薬組成物。
【請求項40】
直腸内投与用に配合された、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
RNA干渉を引き起こす化合物を含み、直腸内投与用に配合された、腸疾患の治療のための製薬組成物。
【請求項42】
ex vivoでの細胞または組織において、IL12-p40及び/またはIL12-p35の発現を阻害する方法であって、請求項35から38のいずれか一項に記載の化合物で前記細胞または組織を処理する工程を含み、それによってIL12-p40及び/またはIL12-p35の発現が阻害される方法。
【請求項43】
患者において、IL12-p40及び/またはIL12-p35の発現を阻害する方法であって、請求項35から38のいずれか一項に記載の化合物で前記患者を処理する工程を含み、それによってIL12-p40及び/またはIL12-p35の発現が阻害される方法。
【請求項44】
IL12-p40及び/またはIL12-p35に関連する疾患または症状の治療のための薬剤の製造における、請求項35から38のいずれか一項に記載の化合物の使用であって、前記薬剤がIL12-p40及び/またはIL12-p35の発現を阻害する使用。
【請求項45】
前記疾患が自己免疫疾患または炎症性腸疾患(IBD)である、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記疾患が多発性硬化症、糖尿病、またはクローン病である、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
RNA干渉のための、腸組織を特異的に標的とする方法であって、直腸内にRNA干渉を引き起こす化合物を患者へ投与する工程を含む方法。
【図8】
【図9】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−255016(P2012−255016A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−181002(P2012−181002)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【分割の表示】特願2008−501427(P2008−501427)の分割
【原出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(507058270)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181002(P2012−181002)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【分割の表示】特願2008−501427(P2008−501427)の分割
【原出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(507058270)
【Fターム(参考)】
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