説明

腸管免疫亢進剤及び腸管免疫亢進方法

【課題】有機ゲルマニウム化合物を含有する腸管免疫亢進剤及び該腸管免疫亢進剤による腸管免疫亢進方法を提供する。
【解決手段】腸管免疫亢進剤は、式(1)
[(Ge−CH−CH−COOH)]n(1)で表される有機ゲルマニウム化合物と、乳酸菌及びオリゴ糖を含み、乳酸菌及びオリゴ糖と、有機ゲルマニウム化合物との重量比が、100:1〜5であることを特徴とし、腸管免疫亢進方法は、上記式(1)で表される有機ゲルマニウム化合物と、乳酸菌及びオリゴ糖を含む腸管免疫亢進剤を、有機ゲルマニウム化合物の投与量が、2〜10mg/Kg体重/日となるように継続的に投与することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ゲルマニウム化合物を含有する腸管免疫亢進剤及び該腸管免疫亢進剤による腸管免疫亢進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ゲルマニウム化合物、とりわけ式(1)
[(Ge−CH−CH−COOH)]n (1)
で表される有機ゲルマニウム化合物については、抗腫瘍作用(非特許文献1、2参照)、抗ウイルス作用(非特許文献3参照)、インターフェロン誘導作用NK細胞等の活性化作用のような免疫調整作用(非特許文献4参照)の他、多くの有用な生体防御作用が知られている。しかしながら、有機ゲルマニウム化合物が腸管免疫を亢進することは、知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「癌と化学療法」 Vol.6 No.1 January 25, 1979
【非特許文献2】Tohoku J. exp. Med., 1985, 146, 97-104
【非特許文献3】CHEMOTHERAPY, VOL 34 No. 6, June 1986
【非特許文献4】「癌と化学療法」 第9巻 第11号 別刷
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記のような従来技術の現状を踏まえ、有機ゲルマニウム化合物を含有すると共に十分な効果を発揮する腸管免疫亢進剤、及び、該腸管免疫亢進剤による粘膜免疫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の〔1〕〜〔5〕の態様を提供する。
【0006】
〔1〕 式(1)
[(Ge−CH−CH−COOH)]n (1)
で表される有機ゲルマニウム化合物と、乳酸菌及びオリゴ糖を含み、乳酸菌及びオリゴ糖と、有機ゲルマニウム化合物との重量比が、100:1〜5であることを特徴とする腸管免疫亢進剤。
【0007】
〔2〕 乳酸菌及びオリゴ糖と、有機ゲルマニウム化合物との重量比が、100:1である〔1〕に記載の腸管免疫亢進剤。
【0008】
〔3〕 式(1)
[(Ge−CH−CH−COOH)]n (1)
で表される有機ゲルマニウム化合物と、乳酸菌及びオリゴ糖を含む腸管免疫亢進剤を、有機ゲルマニウム化合物の投与量が、2〜5mg/Kg体重/日となるように継続的に投与することを特徴とする腸管免疫亢進方法。
【0009】
〔4〕 有機ゲルマニウム化合物の投与量が、2mg/Kg体重/日となるように投与する〔3〕に記載の腸管免疫亢進方法。
【0010】
〔5〕 腸管免疫亢進剤として、乳酸菌及びオリゴ糖と、有機ゲルマニウム化合物との重量比が、100:1〜5であるものを使用する〔3〕に記載の腸管免疫亢進方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記式(1)で表される有機ゲルマニウム化合物に加え、腸内環境改善に資する乳酸菌及びオリゴ糖を同時に摂取させることにより、腸管内の免疫が活性化されることを通して、生体防御機能が顕著に増強されるという効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1及び比較例1におけるIgA抗体量の変化を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例2におけるIgA抗体量の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0013】
Cont:対象群
LB/OS:乳酸菌/オリゴ糖添加群
LGE:低濃度有機ゲルマニウム化合物添加群
HGE:高濃度有機ゲルマニウム化合物添加群
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の腸管免疫亢進剤における第1成分である有機ゲルマニウム化合物は、以下の式(1)
[(Ge−CH−CH−COOH)]n (1)
で表されるポリ-トランス-{(2‐カルボキシエチル)-ゲルマニウムセスキオキサン}であり、この有機ゲルマニウム化合物は公知である。尚、上記式(1)は結晶状態での構造に対応するものであり、水溶液中では加水分解されて、式(1’)
(OH)Ge−CH−CH−COOH (1’)
で表される構造をとる。
【0016】
又、式(1’’)
Ge−(CH−CH−COOH)2n3n (1’’)
や、上記従来技術に対応する非特許文献中で使用されている、式(1’’’)
Ge−(CH−CH−COOH) (1’’’)
も同一の化合物を示すものである。
【0017】
又、本発明の腸管免疫亢進剤における第2成分である乳酸菌としては、例えば、L. fermentumやE. fecalisを挙げることができるが、本発明で使用する乳酸菌はこれらに限定されず、腸内環境改善に資するという有効性が確認される乳酸菌であればよい。
【0018】
更に、本発明の腸管免疫亢進剤における第3成分であるオリゴ糖としては、例えば、ラクチトール、乳果オリゴ糖やトレハロースを挙げることができるが、本発明で使用するオリゴ糖はこれらに限定されず、ビフィズス因子となる難消化性オリゴ糖であればよい。
【0019】
本発明の腸管免疫亢進剤では、成分である有機ゲルマニウム化合物、乳酸菌及びオリゴ糖を広範囲の割合で含有することができるが、乳酸菌及びオリゴ糖が腸内環境の完全に資するため、有機ゲルマニウム化合物の含有量を大きく低下させることもでき、例えば乳酸菌及びオリゴ糖と、有機ゲルマニウム化合物との重量比を、100:1〜5、具体的には100:1とすることも可能である。
【0020】
尚、オリゴ糖及び乳酸菌の重量比としては、例えば、100:8〜9という範囲を挙げることができる。
【0021】
本発明の腸管免疫亢進剤には、その効果を失うことがない範囲で、他の成分を添加することもできる。又、適宜の剤形に製剤することも、例えば健康食品の成分として利用することもできる。
【0022】
一方、本発明の腸管免疫亢進方法は、上記のような本発明の腸管免疫亢進剤を継続的に投与するものである。
【0023】
本発明の腸管免疫亢進方法では、本発明の腸管免疫亢進剤の成分である乳酸菌及びオリゴ糖が腸内環境の完全に資するため、有機ゲルマニウム化合物の投与量を大きく低下させることもでき、例えば有機ゲルマニウム化合物の投与量を、2〜10mg/Kg体重/日、具体的には2mg/Kg体重/日とすることも可能である。
【実施例】
【0024】
以下に本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0025】
実施例1及び比較例1
(1)乳酸菌及びオリゴ糖成分の調製
以下の組成による乳酸菌及びオリゴ糖成分(以下、LB/OS成分と略すこともある。)を調製した。
オリゴ糖類(乳果オリゴ糖など) 71重量%
乳酸菌粉末 6重量%
ヨーグルトパウダー 6重量%
その他 17重量%
(プルラン、無水クエン酸等)
【0026】
(2)マウス用飼料の調製
以下のような組成となるように、AIN93G純化飼料に基づきマウス用飼料を調製した。尚、群を示す略号の意味は以下の通りである。
Cont:対象群
LB/OS:乳酸菌/オリゴ糖添加群
LGE:低濃度有機ゲルマニウム化合物添加群
HGE:高濃度有機ゲルマニウム化合物添加群
【0027】
【表1】

【0028】
(3)試験用マウス及び上記飼料の投与
試験用マウスは、5週齢のBALB/cCr雌マウスを採用し、一週間の予備飼育を行い順化した。予備飼育期間中は市販精製飼料D10012Mを与え、予備飼育終了後、マウスをn=6で4群に分けて、試験食を与え本飼育を行った。尚、上記LGE群(低濃度有機ゲルマニウム化合物添加群)における、LB/OS成分に対する有機ゲルマニウム化合物の重量比は約100:1で、これを有機ゲルマニウム化合物の投与量として2mg/Kg体重/日となるようにした。又、上記HGE群(高濃度有機ゲルマニウム化合物添加群)における、LB/OS成分に対する有機ゲルマニウム化合物の重量比は約100:25で、これを有機ゲルマニウム化合物の有機ゲルマニウム化合物の投与量を、これまで免疫賦活作用が確認されてきた有効摂取量である50mg/Kg体重/日となるようにした。
【0029】
(4)結果
糞便中の分泌IgAは、腸管免疫の活性化の指標となると考えられたので、上記各群の飼料の継続摂取による腸管免疫への効果の評価を行うために分泌IgAを分析した。測定結果を図1として示す。縦軸にIgA濃度を、横軸には投与期間を示した。長期投与により、糞便中のIgA濃度は、Cont群<LB/OS群<LGE群の順で上昇する傾向にあり、特にCont群とLGE群の間には有意な差が確認された。又、LGE群と比較し、HGE群は低い値を示す傾向にあり、特に8週目では有意な差が確認された。このことから、長期継続投与への分泌IgA産生には、低濃度の有機ゲルマニウム化合物、乳酸菌及びオリゴ糖の同時摂取が有効であることが示された。
【0030】
尚、図1に示したデータについては、一元配置による分散分析を実施した。異なるアルファベットは、危険率5%において有意差のあったことを示す。
【0031】
実施例2
(1)マウス用飼料の調製
上記表1のLB/OSの組成に基づき、マウス用飼料を調製した。有機ゲルマニウム化合物の摂取量による影響評価のため、0mg/kg群、2mg/kg群、5mg/kg群及び10mg/kg群からなる4群を設定するため、有機ゲルマニウム化合物を0%、0.00012%、0.0003%、0.0006%で添加して各々混合した。
【0032】
(2)試験用マウス及び上記飼料の投与
試験用マウスは、5週齢のBALB/cCr雌マウスを採用し、一週間の予備飼育を行い順化した。予備飼育期間中は市販精製飼料D10012Mを与え、予備飼育終了後、マウスをn=8で4群に分けて、上記のように調製した飼料を与え、8週間の本飼育を行った。
【0033】
(3)結果
実施例1及び比較例1と同様に、糞便中の分泌IgAを分析した。測定結果を図2として示す。糞便中のIgA濃度は、0mg/kg群<10mg/kg群<2mg/kg群<5mg/kg群の順で上昇する傾向にあり、特に0mg/kg群と2mg/kg群の間には有意な差が確認された。いずれの濃度においても、有機ゲルマニウム化合物の低含量で混合した群では、非添加の群よりもIgA分泌量は多くなっており、このことから、乳酸菌及びオリゴ糖との同時投与には、2〜10mg/kgという低容量の有機ゲルマニウム化合物の同時摂取が有効であることが示された。
【0034】
腸管免疫は、疾病の予防的側面と関連しており、上記の通りLGE群で8週目では有意な差が確認されたということは、少ない量の有機ゲルマニウム化合物、及び、乳酸菌とオリゴ糖の継続的投与が、疾病の予防的な効果を示すことを意味し、特に上記有機ゲルマニウム化合物の原料となる金属ゲルマニウムが貴重且つ高価であることを加味すれば、本発明の有用性は明らかである。
【0035】
尚、腸管免疫は、大野ら(実験医学、Vol.24 No.20 2006、42〜51)によれば、胸腺や抹消リンパ節等を中心とする全身免疫系とは異なる免疫系を構築しているとされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
[(Ge−CH−CH−COOH)]n (1)
で表される有機ゲルマニウム化合物と、乳酸菌及びオリゴ糖を含み、乳酸菌及びオリゴ糖と、有機ゲルマニウム化合物との重量比が、100:1〜5であることを特徴とする腸管免疫亢進剤。
【請求項2】
乳酸菌及びオリゴ糖と、有機ゲルマニウム化合物との重量比が、100:1である請求項1に記載の腸管免疫亢進剤。
【請求項3】
式(1)
[(Ge−CH−CH−COOH)]n (1)
で表される有機ゲルマニウム化合物と、乳酸菌及びオリゴ糖を含む腸管免疫亢進剤を、有機ゲルマニウム化合物の投与量が、2〜10mg/Kg体重/日となるように継続的に投与することを特徴とする腸管免疫亢進方法。
【請求項4】
有機ゲルマニウム化合物の投与量が、2mg/Kg体重/日となるように投与する請求項3に記載の腸管免疫亢進方法。
【請求項5】
腸管免疫亢進剤として、乳酸菌及びオリゴ糖と、有機ゲルマニウム化合物との重量比が、100:1〜5であるものを使用する請求項3に記載の腸管免疫亢進方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−207838(P2011−207838A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79002(P2010−79002)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 日本農芸化学会 2010年度(平成22年度)大会 主催者名 社団法人 日本農芸化学会 開催日 平成22年3月28日
【出願人】(391001860)株式会社浅井ゲルマニウム研究所 (4)
【Fターム(参考)】