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腸管出血性大腸菌検出用培地および検出方法
説明

腸管出血性大腸菌検出用培地および検出方法

【課題】本発明は食中毒菌である腸管出血性大腸菌の分離用培地に関し、検体中の腸管出血性大腸菌を、特殊な熟練や技術を必要とせず、短時間にかつ容易にまた正確に検出できる特定の培地組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、酸化還元色素と検出対象菌が非分解または遅分解の糖を含む腸管出血性大腸菌検出用培地を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸管出血性大腸菌検出用培地および検出方法に関する。
【0002】
なお、本発明では次の略語を使用することがある。
SMAC培地:ソルビットマッコンキー培地
RMAC培地:ラムノースマッコンキー培地
SBMAC培地:ソルボースマッコンキー培地
CTSMAC培地:セフィキシム亜テルル酸ソルビットマッコンキー培地
CTRMAC培地:セフィキシム亜テルル酸ラムノースマッコンキー培地
CTSBMAC培地:セフィキシム亜テルル酸ソルボースマッコンキー培地
CLIG培地:Cellobiose Lactose Indole β-D-Glucuronidase agar
【背景技術】
【0003】
大腸菌は腸内細菌科に属し、グラム陰性、通性嫌気性の無芽胞桿菌であり、菌体表面にある細胞壁抗原構造によって血清型が区別される。腸管出血性大腸菌による食中毒は、本菌に汚染された食肉、牛乳、卵及びこれらの加工食品を摂取すると、菌が腸管内で増殖することによって起こる感染型食中毒で、産生されるベロ毒素が出血性大腸炎を起こし、死に至らしめることもある危険な食中毒である。
【0004】
食品検査において腸管出血性大腸菌(O157もしくはO26又はO111など)の検出は一般的には以下のように行われている。まず、検体をノボビオシン加modifiedEC(ノボビオシン加mEC)培地等増菌用培地により増菌培養を行い、次いでSMAC(RMAC、SBMAC)培地やCTSMAC(CTRMAC、CTSBMAC)培地のような選択分離用培地に接種して分離培養し、培地上の集落を観察する。さらにCTSMAC平板培地上のソルビット(ラムノース、ソルボースなど検出対象菌非分解または遅分解糖)非分解の集落の中からO157(O26、O111、腸管出血性大腸菌)と疑わしき性状の集落を釣菌し、CLIGなどの確認培地に接種し、37℃で18−24時間培養後、抗血清による免疫学的試験を行い、腸管出血性大腸菌の血清型を確認している。また、選択分離培地の中には発色基質を用いて視認性を高めたものもあるが、価格が高価なため未だSMAC(RMAC、SBMAC)培地やCTSMAC(CTRMAC、CTSBMAC)培地のような糖分解を利用して分離する培地が広く使用されている。
【0005】
糞便検査においては糞便検体を選択分離培地に接種して分離培養し、以降は食品検査と同様に確認培地に接種し、抗血清による免疫学試験を行う。
【0006】
このように従来の腸管出血性大腸菌検出法は複雑な工程に加え、糖非分解集落の中から腸管出血性大腸菌と思われる集落を選別し釣菌するため、熟練された技術と3〜5日間の長時間が必要であるという問題があった。また、使用する各種の選択分離培地は多くの腸内細菌が発育し、検出対象の菌と類似の集落を形成する場合もある。それ故、このような選択分離培地から腸管出血性大腸菌を疑う菌株を鑑別するには熟練と経験が必要であり、この時釣菌を行なった集落について確認試験およびその後の血清試験を行うため、検査全体のコストにも関わってくる。通常検査される材料中には食中毒の原因となる腸管出血性大腸菌と同時に通常の大腸菌および類似の集落を形成する菌が混在している場合が多く、そのため多くの集落を釣菌して確認する必要があり、原因菌の特定は困難を極めている。
【0007】
飲食物取扱従事者の中で、特に集団発生源となりやすい寿司屋、弁当屋を含む仕出し屋、そば屋、魚介類販売業、豆腐製造業、集団給食施設調理従事者、水道施設従事者、及び季節旅館を重点業種と指定して、5月−9月の間毎月1回定期的に行う法定検便(保菌者検出事業)が実施されている。さらにそれ以外の業種であっても、またその法定期間以外であっても、年間を通して検便の実施が推奨されている。そのため、膨大な数の検便検査が検査センターや保健所等の施設で実施されている。しかしながら、糞便検体は大量の雑菌を含むため、上述の従来の培地や検出方法では、常在菌の発育のため腸管出血性大腸菌の分離が難しく、その検出には時間と手間、熟練された技術が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−281959
【特許文献2】特開2003−235545
【特許文献3】特許第3026005号
【特許文献4】特許第3145125号
【特許文献5】特許第3711563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、複数の細菌が混在している検体中の腸管出血性大腸菌を、特殊な熟練や技術を必要とせず、短時間にかつ容易にまた正確に検出できる特定の培地組成物および腸管出血性大腸菌の検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
腸管出血性大腸菌の検便検査用の検体は、腸管出血性大腸菌を含む場合であっても腸管出血性大腸菌以外の大腸菌あるいはその他の腸内細菌が大量に存在するため、これらを含む検体の培地から腸管出血性大腸菌を検出することは容易ではなかった。例えば代表的な腸管出血性大腸菌のひとつであるO157は、ソルビットを分解しない細菌であり例えばCTSMAC上では中心部褐色の周辺部が透明または半透明の集落を作る。これに対してソルビットを分解する大部分の大腸菌あるいは腸内細菌の集落は、産生される有機酸の影響でpHが低下することにより、pH指示薬であるニュートラルレッドがピンク色を呈するため、O157の集落と区別される。ただし菌体の密集部付近ではソルビットを分解する大量の大腸菌/腸内細菌が多く存在するとピンク色の着色が弱くなる傾向が見られた。したがって集落の密集付近ではソルビット非分解性または遅分解性であるO157を判別するとき、ピンク色の着色が弱くなったソルビットを分解する大腸菌/腸内細菌が混在するため、判別し難い傾向が見られた。同様に、O26はラムノース非分解性または遅分解性であり、O111はソルボース非分解性または遅分解性であり、pH指示薬であるニュートラルレッドを用いてO157と同様にO26とO111は判別可能であるが、集落が密集する部分ではピンク色の着色が弱くなったソルビットを分解する大腸菌/腸内細菌が混在するため、判別し難い傾向が見られた。
【0011】
本発明者は、検体、特に糞便検体を接種する培地中に選択性を向上させるための糖を加えた腸管出血性大腸菌検出用培地において2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム クロライド(TTC)などのような、酸化還元色素を加えた。これにより、密集部あるいはその周辺でも腸管出血性大腸菌などの糖を非分解の集落と糖を分解する細菌の色彩および/またはコントラストの差異をより際立たせて、集落の密集した部分においてもその判別を容易にすることができることを見出した。さらに好ましくは、亜テルル酸塩や、セフェム系およびペニシリン系の抗生物質を添加することにより、腸管出血性大腸菌への発育選択能力を高めることで本発明を完成した。
【0012】
pH指示薬を使用し糖の分解によるpH低下に基づいた共存細菌の着色と糖を分解しない腸管出血性大腸菌の酸化還元色素による着色、さらに腸管出血性大腸菌以外の糖非分解菌に対する選択抑制力を高めているため、集落の密集部においても容易に鑑別できることが、本発明の最大の特徴である。
【0013】
本発明は、以下の、腸管出血性大腸菌検出用培地および腸管出血性大腸菌の検出方法を提供するものである。
項1. 酸化還元色素および糖を含む腸管出血性大腸菌検出用培地。
項2. 糖が検出対象菌では非分解、または遅分解であることを特徴とする項1に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
項3. 糖がソルビット、ラムノース、ソルボースの中から選択される項1または2に記載された腸管出血性大腸菌検出用培地。
項4. pH指示薬をさらに含む、項1〜3のいずれかに記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
項5. 糖としてラムノースを用いて、その量を調節することにより、腸管出血性大腸菌O157、O26、O111を判別することを可能とした請求項1〜4のいずれかに記載の培地。
項6.ラムノースの量が2〜23gである請求項5に記載の培地。
項7. 亜テルル酸塩および抗生物質からなる群から選ばれる少なくとも1種の選択剤をさらに含む項1〜6のいずれかに記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
項8. 抗生物質がセフェム系抗生物質およびペニシリン系抗生物質からなる群から選択される少なくとも1種である、項7に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
項9. 亜テルル酸塩、セフェム系抗生物質およびペニシリン系抗生物質をさらに含む項7に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
項10. 腸管出血性大腸菌がO157、O26、O111からなる群から選ばれる、項1〜9のいずれかに記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
項11. 酸化還元色素が、赤色、青色、紫色、橙色、黄色、緑色からなる群から選ばれるいずれかの色に発色する、項1〜10のいずれかに記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
項12. pH指示薬の酸性側の色が赤色、青色、黄色、橙色、緑色、紫色からなる群から選ばれるいずれかの色である、項4に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
項13. 糖が検出対象菌では非分解、または遅分解であり、pH指示薬の酸性側の色と腸管出血性大腸菌による酸化還元色素の発色の色とが識別可能な組み合わせである、項1〜12のいずれかに記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
項14. pH指示薬の酸性側発色が黄色、青色または赤色であり、酸化還元色素の発色が紫色、赤色または青色である(ただし、pH指示薬の酸性側発色は異なる色である)、項13に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
項15. pH指示薬と酸化還元色素が以下のいずれかの組み合わせである、項13または14に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地:
(1)pH指示薬がフェノールレッドで、酸化還元色素がテトラゾリウムバイオレット(TTV)、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)またはニトロテトラゾリウムブルー(NTB);
(2)pH指示薬がブロムチモールブルー(BTB)で、酸化還元色素がテトラゾリウムバイオレット(TTV)、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)またはニトロテトラゾリウムブルー(NTB);
(3)pH指示薬がウォーターブルーで、酸化還元色素が2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC);
(4)pH指示薬がニュートラルレッドで酸化還元色素がテトラゾリウムバイオレット(TTV)、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)またはニトロテトラゾリウムブルー(NTB)。
項16. 糞便、食品、あるいは水に由来する検体を検査するための、項1〜15のいずれかに記載された腸管出血性大腸菌検出用培地。
項17. 項1〜16のいずれかに記載の培地で検体を培養し、腸管出血性大腸菌の有無を検出することを特徴とする、検体中の腸管出血性大腸菌の検出方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検便検体などの腸内細菌や腸管出血性大腸菌以外の大腸菌を多量に含む検体から、わずかな量の腸管出血性大腸菌を明確に判別することが可能になった。
【0015】
また、代表的な腸管出血性大腸菌であるO157,O26,O111を1つの培地で判別することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例2の結果を示す。
【図2】実施例3の結果を示す。
【図3】実施例4の結果を示す。
【図4】実施例5の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(I) 腸管出血性大腸菌
本発明で測定対象となる腸管出血性大腸菌としては、腸管出血性を有する大腸菌である限り特に限定されないが、例えばO157,O26,O111,O121,O126,O103,O108,O145などが挙げられる。これらの腸管出血性大腸菌は、糖の利用に関して検出対象とする菌以外の大腸菌や他の共存する細菌と異なるため、このような糖を培地中に加えることにより、腸管出血性大腸菌の有無を判定するのに役立つことができる。
(II)糖
本発明で使用する糖は、検出対象の腸管出血性大腸菌では非分解性ないし遅分解性であって、検体中に腸管出血性大腸菌と共存する他の細菌が分解性である糖であって、このような糖の分解性の差により、糖分解によって産生される酸の量が相違し、例えば酸の産生によるpHの変化に基づき、腸管出血性大腸菌と他の共存細菌を鑑別するのに役立つものである。
【0018】
本明細書において、検出対象菌が糖を分解しないことを『非分解』、また、検出対象菌の糖の分解速度が遅いことを『遅分解』と言うが、非分解とは、検出対象菌を培地に接種、培養し、観察後であっても、当該菌は、永久的に培地中に含まれる糖を分解しない状態を示すものであり、一方、遅分解とは、接種、培養し、当業者で一般的な培養時間(O157のような腸内細菌では18時間から24時間)においては、当該菌によって糖分解が認められずに、その後経時的に分解される状態を示すものである。
【0019】
本発明で使用する検出対象の腸管出血性大腸菌が非分解性ないし遅分解性であって、検体中に腸管出血性大腸菌と共存する他の細菌が分解性である糖としては、ソルビット(ソルビトール)、ラムノース、ソルボース、イノシトール、アドニトール、ラフィノース、ラムノース、サリシンなどが例示される。このような糖と腸管出血性大腸菌の組み合わせは、以下のものが例示される。
【0020】
【表1】

【0021】
O157,O26,O111のような腸管出血性大腸菌を1つの培地で判別するためには、糖としてラムノースを使用するのが好ましく、CT-RMACを基礎とし、酸化還元色素を添加した培地が特に好ましい。
【0022】
(III)酸化還元色素
酸化還元色素は、発色には選択性はなく全ての集落に着色するものである。ただし、pH指示薬などにより既に発色している場合はその影響が小さく、例えばSMACにおいてはソルビットを分解しないO157などの集落に対して強くその効果を表す。これ迄SMACにおいては検出菌以外の集落に対してのみ着色していたことと、集落の密集部分においてはpH指示薬の退色が起こっていたため、検出対象であるO157の集落が判別しづらい事例がしばしば起こっていた。意外なことに、酸化還元色素は、密集部におけるpH指示薬による着色を際立たせ、その退色を防止するため、密集部においても糖分解性共存細菌の集落をより明るくかつ濃い色で着色し、腸管出血性大腸菌などの糖非分解性の集落を濃い暗い色で着色し、両者の集落が大部分重なっていたとしても、わずかな非重複部分において腸管出血性大腸菌などの糖非分解性の集落を識別することができる。本発明において糖とともに酸化還元色素を添加することにより、密集部分に見られるような小さな集落も判別が容易になり、且つpH指示薬との色の違いを明確にすることにより、さらに腸管出血性大腸菌の視認性の向上を図ることができる。
【0023】
従来、酸化還元色素はβガラクトシダーゼ基質との併用で大腸菌全体の着色に使用された例はあるが(例えば特開2002-360296、特開2004-187588)、糖との組み合わせで腸管出血性大腸菌鑑別用培地に使用された例はない。これは、糖と組み合わせた場合、pH指示薬により糖の分解菌を強く着色させることができるため、酸化還元色素の使用は必要ないと考えられていたためと思われる。実際、各集落が十分に分離している場合には、糖とpH指示薬を使用する従来の培地で腸管出血性大腸菌を鑑別可能であるが、他の共存細菌が多量に共存する糞便検体のような検体の場合では、密集した集落部分でのpH指示薬の酸性側の着色が弱くなり、鑑別診断が困難であった。一方、本発明で使用する酸化還元色素を適したpH指示薬と併用することにより、このような集落密集部であってもpH指示薬による糖分解菌の着色に酸化還元色素の着色が上乗せされることでより強くなり、かつ、糖非分解性の腸管出血性大腸菌は糖分解菌とは別の色彩および/またはコントラストの集落を形成することにより、糖分解菌集落と糖非分解菌集落の境界もはっきりして、集落が密集している部分においてもその差を明瞭に示すことができ、これは本発明者にとって驚くべき発見であった。このような糖と酸化還元色素、さらにはpH指示薬の併用により視認性向上の相乗効果を用いた、腸管出血性大腸菌の検出用培地は、従来全く知られていない。また、本発明においては発育する腸管出血性大腸菌以外の糖非分解菌に対して発育抑制効果のあるな抗生物質をさらに添加することで、集落密集部分においても腸管出血性大腸菌の検出を可能とした。
【0024】
本発明の培地には、糖の他に酸化還元色素を使用する。この酸化還元色素は、非選択的に全ての菌で酸化/還元される試薬である。ただし、腸管出血性大腸菌と他の共存する細菌は、糖の分解性が異なるため、培地における集落の着色が異なっており、好ましくは腸管出血性大腸菌の集落は酸化還元色素の非存在下で透明であるか着色が弱く、共存細菌は強く着色している。この状態で腸管出血性大腸菌が酸化還元色素を酸化/還元すると、この色素により腸管出血性大腸菌を含む糖非分解菌の集落が着色される。
【0025】
腸管出血性大腸菌が糖に起因する着色が弱いとは、例えば培地中にpH指示薬が存在し、このpH指示薬は糖が非分解性/遅分解性の腸管出血性大腸菌では培地のpHが低下しないため着色が弱く、一方、糖を分解する共存細菌では糖を速やかに分解して有機酸を生成しpHを低下させるため、強く着色している場合、あるいは、腸管出血性大腸菌が糖を選択的に分解し、共存細菌の多くが当該糖を分解しないか遅く分解する場合、pH指示薬を中性付近で強く着色し、pHが低下したときに透明/無色ないし弱く着色するものを選択すればよい。
【0026】
酸化還元色素としてはメチレンブルー、インジゴスルホン酸、サフラニンT、フェノサフラニン、N−フェニルアントラニル酸、マラカイトグリーン、ローダミンB、ジフェニルアミン、ジフェニルベンジジン、ジフェニルアミンスルホン酸、5,6−ジメチルフェロイン、エリオグラウシンA、5−メチルフェロイン、フェロイン、ニトロフェロイン、テトラゾリウム塩などが挙げられる。好ましくはテトラゾリウム塩であり、具体的には2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムブロマイド、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド、2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムヨード、2,3,5-トリス(p-トリル)テトラゾリウムクロライド、2,3-ビス(3-クロロフェニル)-5-フェニルテトラゾリウムクロライド、2,3−ビス(3−フルオロフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロライド、2,3-ビス(3-メチルフェニル)-5-フェニルテトラゾリウムクロライド、2,3-ビス(4-クロロフェニル)-5-フェニルテトラゾリウムクロライド、2,3-ビス(4-エチルフェニル)-5-フェニルテトラゾリウムクロライド、2,3-ビス(4-フルオロフェニル)-5-フェニルテトラゾリウムクロライド、2,3-ビス(4-メトキシフェニル)-5-(4-シアノフェニル)テトラゾリウムクロライド、2,3-ビス(4-メトキシフェニル)-5-フェニルテトラゾリウムクロライド、2,3-ビス(4-メチルフェニル)-5-(4-シアノフェニル)テトラゾリウムクロライド、2,3-ビス(4-ニトロフェニル)-5-フェニルテトラゾリウムクロライドハイドレート、2,3-ジ(p-トリル)-5-フェニルテトラゾリウムクロライド、2,3-ジフェニル-5-(2-チエニル)テトラゾリウムクロライド、2,3-ジフェニル-5-(4-クロロフェニル)テトラゾリウムクロライド、2,3-ジフェニル-5-(4-メトキシフェニル)テトラゾリウムクロライド、2,3-ジフェニル-5-(4-トリル)テトラゾリウムクロライド、2,3-ジフェニル-5-アミノテトラゾリウムクロライド、2,3-ジフェニル-5-アミノテトラゾリウムクロライド、2,3-ジフェニル-5-カルボキシテトラゾリウムクロライド、2,3-ジフェニル-5-エチルテトラゾリウムクロライド、2,5-ジ(p-トリル)-3-フェニルテトラゾリウムクロライド、2,5-ジフェニル-3-(4-スチリルフェニル)テトラゾリウムクロライド、2-(2-ベンゾチアゾリル)-3,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド、2-(2-ベンゾチアゾリル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-フェニルテトラゾリウムブロマイド、2-(4-ヨードフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-フェニルテトラゾリウムクロライド、2-フェニル-3-(4-ビフェニルイル)-5-メチルテトラゾリウムクロライド、2-フェニル-3-(4-カルボキシフェニル)-5-メチルテトラゾリウムクロライド、3,3'-(3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジフェニレン)ビス(2-フェニル-5-べラトリルテトラゾリウムクロライド)、3-(3-ニトロフェニル)-5-メチル-2-フェニルテトラゾリウムクロライド、3-(4-ニトロフェニル)-5-メチル-2-フェニルテトラゾリウムクロライド、ブルーテトラゾリウム、m-トリルテトラゾリウムレッド、ニトロブルーテトラゾリウム、o-トリルテトラゾリウムレッド、p-トリルテトラゾリウムレッド、テトラニトロブルーテトラゾリウム、テトラゾリウムバイオレット、チオカルバミルニトロブルーテトラゾリウムクロライド、WST-1、WST-8、3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド、アラマーブルー(Alamar Biosciences, USA)、3-(4,5-ジメチル-2-チアゾルイル)-2,5-ジフェニル-2H テトラゾリウムブロマイド(MTT)、2,3-ビス(2-メトキシ-4-ニトロ-5-サルフォフェニル-2H-テトラゾリウム- 5-カルボキシアニライド(XTT)などが挙げられる。
【0027】
例えばpH指示薬としてブロムチモールブルー(BTB)を使用する場合酸性側は黄色に呈色するので、同系色の黄色の色素は避ける。この場合2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム クロライド(TTC)をソルビット含有培地に加えることで、O157を含むソルビットを分解しない菌の集落の赤褐色と、ソルビットを分解する菌の黄色の集落の両方の着色が同時に増強されるため、結果として、密集部分での視認性が大幅に向上し、O157の判別が非常に行いやすくなった。
(IV)pH指示薬
糖の分解に伴う共存細菌の着色は、有機酸の生成に伴うpHの低下に基づくものであり、pH指示薬の影響を大きく受けるものである。本発明の培地は、pH指示薬を含むものが好ましい。
【0028】
pH指示薬としては、ベンゾパープリン4B、2,6-ジニトロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、メチルイエロー、ブロモフェノールブルー、メチルオレンジ、エチルオレンジ、コンゴレッド、アリザリンレッド、ブロモクレゾールグリーン、クロロクレゾールグリーン、2,5-ジニトロフェノール、メチルレッド、ラクモイド、TBPE、リトマス、メチルパープル、アゾリトミン、クロロフェノールレッド、o-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、Andradeの試液、レサズリン、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、ブロモチモールブルー、パラロゾール酸、3',3'',5',5''-テトラヨードフェノールサルフォンフタレイン、ニュートラルレッド、フェノールレッド、アウリン、3-ニトロフェノール、ウォーターブルー(アニリンブルー)、チャイナブルー、シアニン、クレゾールレッド、α-ナフトールフタレイン、クルクミン、メタクレゾールパープル、チモールブルー、p-キシレノールブルー、o-クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、α-ナフトールベンザイン、チモールフタレイン、などが挙げられ、好ましくはコンゴレッド、アリザリンレッド、ブロモクレゾールグリーン、クロロクレゾールグリーン、2,5-ジニトロフェノール、メチルレッド、ラクモイド、TBPE、リトマス、メチルパープル、アゾリトミン、クロロフェノールレッド、o-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、Andradeの試液、レサズリン、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、ブロモチモールブルー、パラロゾール酸、3',3'',5',5''-テトラヨードフェノールサルフォンフタレイン、ニュートラルレッド、フェノールレッド、アウリン、3-ニトロフェノール、ウォーターブルー(アニリンブルー)、チャイナブルー、シアニン、クレゾールレッド、α-ナフトールフタレイン、クルクミン、メタクレゾールパープル、チモールブルー、p-キシレノールブルー、o-クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、α-ナフトールベンザイン、より好ましくはメチルレッド、ラクモイド、TBPE、リトマス、メチルパープル、アゾリトミン、クロロフェノールレッド、o-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、Andradeの試液、レサズリン、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、ブロモチモールブルー、パラロゾール酸、3',3'',5',5''-テトラヨードフェノールサルフォンフタレイン、ニュートラルレッド、フェノールレッド、アウリン、3-ニトロフェノール、ウォーターブルー(アニリンブルー)、チャイナブルー、シアニン、クレゾールレッド、α-ナフトールフタレイン、クルクミン、メタクレゾールパープル、チモールブルー、p-キシレノールブルー、o-クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、α-ナフトールベンザイン、チモールフタレイン、などが挙げられ、好ましくはコンゴレッド、アリザリンレッド、ブロモクレゾールグリーン、クロロクレゾールグリーン、2,5-ジニトロフェノール、メチルレッド、ラクモイド、TBPE、リトマス、メチルパープル、アゾリトミン、クロロフェノールレッド、o-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、Andradeの試液、レサズリン、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、ブロモチモールブルー、パラロゾール酸、3',3'',5',5''-テトラヨードフェノールサルフォンフタレイン、ニュートラルレッド、フェノールレッド、アウリン、3-ニトロフェノール、ウォーターブルー(アニリンブルー)、チャイナブルー、シアニン、クレゾールレッド、α-ナフトールフタレイン、クルクミン、メタクレゾールパープル、チモールブルー、p-キシレノールブルーが挙げられる。
【0029】
例えばBTBは、糖が検出対象菌では非分解、または遅分解である場合に、腸管出血性大腸菌の集落色を青色〜緑色の集落とし、かつ、糖の分解菌の黄色の集落とのコントラストを強くして、腸管出血性大腸菌の判別を容易にすることができる。
【0030】
酸化還元色素とpH指示薬の酸性側発色の色の好ましい組み合わせを以下に記載する。
【0031】
【表2】

【0032】
本発明において、pH指示薬と酸化還元色素の好ましい組み合わせを以下に示す。
【0033】
【表3】

【0034】
(V)その他の成分
本発明の腸管出血性大腸菌検出用培地には、糖の他に、腸管出血性大腸菌以外の検体中の細菌の増殖を抑制する選択剤を好ましく使用できる。このような選択剤としては、亜テルル酸塩(好ましくは亜テルル酸カリウム)、抗生物質、例えばセフィキシムなどのセフェム系抗生物質、ペニシリン系抗菌剤などが挙げられる。これらの少なくとも1種の選択剤を使用することで、O157を含む腸管出血性大腸菌の判別に影響する細菌の増殖を抑制することができる。特に、セフェム系抗生物質とペニシリン系抗菌剤を併用することで、腸管出血性大腸菌(例えばO157)と類似の集落色を示す糖(例えばソルビット)非分解菌のうち、偽陽性として多く捕らえられるMorganellaやProteusおよびProvidenciaの発育を阻止し、偽陽性を抑制することができ、2次試験に供される釣菌数の減少が可能になる。選択剤として亜テルル酸カリウムのような亜テルル酸塩を加えた場合、腸管出血性大腸菌(例えばO157)は褐色の集落を形成する。
【0035】
ペニシリン系抗菌薬としては、ベンジルペニシリン、ベンジルペニシリンベンザチン、フェネチシリン、アスポキシシリン、シクラシリン、レナイイピシリン、スルベニシリン、メチシリン、オキサシリン、ペニシリンN、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンG、クロキサシリン、ジクロキサシリン、テモシリン、ピペラシリン、アゾシリン、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、タランピシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、アバラシリン、スルタミシリン、ピブメシリナムなどが挙げられる。好ましくはアンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、タランピシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、アバラシリン、ピペラシリン、スルタミシリン、アゾシリン、ピブメシリナムなどの広域ペニシリン。さらに好ましくはカルベニシリンが挙げられる。
【0036】
セフェム系抗菌薬としては、セファロチン、セファゾリン、セフテゾール、セファロリジン、セファレキシン、セファトリジンプロピレングリコール、セファドロキシル、セフラジン、セフロキサジン、セファクロル、セファマンドール、セフォチアム、セフォチアムヘキセチル、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セフメタゾール、セフィミノクス、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフメノキシム、セフォペラゾン、セフトリアキソン、セフタジジム、セフピラミド、セフスロジン、セフォジジム、セフピロム、セフォゾプラン、セフェピム、セフォセラス、セフテラムピボキシム、セフェタメトピボキシル、セフィキシム、セフジニル、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン、セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシル、セフペラゾン、セフォテタン、ラタモキセフ、フロモキセフなどが挙げられる。好ましくはセフォタキシム、セフチゾキシム、セフメノキシム、セフォペラゾン、セフトリアキソン、セフタジジム、セフピラミド、セフスロジン、セフォジジム、セフピロム、セフォゾプラン、セフェピム、セフォセラス、セフテラムピボキシム、セフェタメトピボキシル、セフィキシム、セフジニル、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン、セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシル、セフペラゾン、セフォテタン、ラタモキセフ、フロモキセフなどの第3世代セフェム。さらに好ましくはセフォタキシム、セフチゾキシム、セフメノキシム、セフォペラゾン、セフトリアキソン、セフタジジム、セフピラミド、セフスロジン、セフォジジム、セフピロム、セフォゾプラン、セフェピム、セフォセラス、セフテラムピボキシム、セフェタメトピボキシル、セフィキシム、セフジニル、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン、セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシルなどのセファロスポリン系セフェム。最も好ましくはセフィキシムが挙げられる。
【0037】
本明細書において、腸管出血性大腸菌の検出対象の糞便としては、検便検体、特に飲食物取扱従事者の法定検便の検体が挙げられ、食品としては、食中毒が疑われる食品、例えば寿司、弁当、麺類、魚介類、豆腐、給食、肉類などが挙げられ、水としては河川、湖、井戸水、地下水、上水道などが挙げられる。
【0038】
本発明の培地のpHは、使用するpH指示薬の種類にもよるが、通常4〜10程度、好ましくは5〜9程度である。例えば、pH指示薬としてブロムチモールブルー(BTB)を使用した場合の好ましい培地のpHは、6.0〜8.0程度である。
【0039】
本発明で使用される培地1000mLあたりの各成分の量は、以下の通りである:
2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム クロライド(TTC) 0.1〜500mg程度;
ソルビット 1〜50g程度;
ラムノース 1〜50g程度;
ブロモチモールブルー(BTB) 1〜500mg程度;
亜テルル酸カリウム 0.1〜100mg程度;
なお、ソルビットとラムノースは、通常いずれか一方を使用するが、両方を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
TTCの上記使用量の記載を参考にして、他の酸化還元色素の使用量を当業者であれば容易に決定できる。同様に、ソルビット、ラムノース以外の糖、BTB以外のpH指示薬、亜テルル酸カリウム以外の亜テルル酸塩の使用量についても、これらの使用量を参考にして当業者であれば容易に決定できる。
セフィキシム 0.005〜1mg程度;
カルベニシリン 0.01〜100mg程度。
【0041】
セフィキシム、カルベニシリンなどの抗生物質は、偽陽性として多く捕らえられるMorganellaやProteusおよびProvidenciaの発育を阻止し、偽陽性を抑制するために好ましい使用量が上記の範囲である。セフィキシム以外のセフェム系抗生物質、カルベニシリン以外のペニシリン系抗菌剤についても、腸管出血性大腸菌の集落形成は許容するが、MorganellaやProteusおよびProvidenciaの発育を阻止するのに必要な使用量を、上記のセフィキシムとカルベニシリンの使用量を参考にして、当業者であれば容易に決定できる。
【0042】
本発明の培地には上記の成分を含み得る。その他の成分は、大腸菌の検出に通常使用されている培地の成分であれば特に限定されない。このような培地としては、例えばSMAC培地、RMAC培地、SBMAC培地、CT−SMAC培地、CTRMAC培地、CTSBMAC培地などが挙げられる。ソルビット、ラムノース、ソルボースなどの糖はこれらの公知の培地に含まれているので、培地の成分としての糖をそのまま利用することができる。ただし、腸管出血性大腸菌O157、O26、O111を同時に判別する場合には、糖の種類と量を適正に設定する必要がある。本発明において、糖に2〜23g/Lのラムノースを用いることにより、一つの培地に生育したO157、O26、O111の判別を行なうことが可能となった。一方、酸化還元色素についてはこれら公知の培地には含まれていないので、必要な量を添加する。また、pH指示薬は、ニュートラルレッドなどの公知の大腸菌用の培地に含まれているものをそのまま利用してもよく、あらかじめ含まれているpH指示薬に代えてBTBなどの好ましいpH指示薬に変更してもよい。また、セフィキシムと亜テルル酸カリウムは、CT−SMAC培地には含まれているので、これをそのまま利用してもよく、配合量を調整してもよい。例えばSMAC培地を使用した場合には、任意成分としてセフィキシム、亜テルル酸カリウムを上記に例示された量を加えてもよい。さらに、ペニシリン系抗菌剤を組み合わせることで、Morganella、ProteusおよびProvidenciaなどのソルビット非分解菌の増殖を抑制できる量であれば特に限定されず、上記に例示した範囲の濃度で適宜選択することができる。セフィキシム、亜テルル酸塩(亜テルル酸カリウムなど)の選択剤を加えることで、偽陽性の問題となる菌の増殖を抑制できるが、ペニシリン系抗菌剤はセフィキシムと併用することで、偽陽性の抑制に関し相乗効果を有する。
【0043】
また本培地は組成中の寒天量を調節することにより、培地を液状培地、半流動培地、固形培地(平板)とすることができる。つまり寒天濃度が0〜0.04%(0〜0.4g/L)の時は培地は液状培地となり、寒天濃度が0.05〜0.6%(0.5〜6.0g/L)の時は培地は半流動培地となり、寒天濃度が1〜2%(10.0〜20.0g/L)の時は培地は固形培地となる。液状培地はマイクロプレート等を用いた微量液体希釈法に有用であり、半流動培地は穿刺培養に適しているので菌の保存や検体の輸送用培地として有用であり、固形培地(寒天平板)は一般的な細菌培養や平板希釈法に有用である。
【0044】
本発明の腸管出血性大腸菌の検出方法は、糞便検体(検便検体)または糞便検体懸濁液(希釈物)を滅菌プラスチックステイック(採便棒)などを用いて寒天平板培地などの固形培地に塗抹し、35〜37℃程度の温度で、12〜48時間程度、好ましくは16〜24時間程度培養し、腸管出血性大腸菌の集落を目視または機械的に検出することにより、検体中に腸管出血性大腸菌が含まれるか否かを検出することができる。本発明の検出方法は感度(選択性)が非常に高く、偽陽性の割合が従来の培地を用いる方法に比べて少ないので、大量の検便検体を効率よく検査することができる。
【0045】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。なお、下記実施例は単に説明のためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0046】
実施例1
市販のCT-SMAC寒天培地と、以下の成分を含む本発明のソルビトール・マッコンキー培地(本発明培地)について、表4に示す各菌株の増殖をミスラ法に基づき判定した。
本発明培地:特開2002−281959の実施例1の「組成10」で示されるソルビトール・マッコンキー培地において、pH指示薬であるニュートラルレッドをブロムチモールブルーに変更し、かつ、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)、カルベニシリンを明細書で示される範囲の量で含む培地。
【0047】
具体的には、本発明培地(寒天平板培地)と市販のCT-SMAC寒天培地(対照培地)に表4記載の菌種を接種し、37℃で20時間培養し、各菌の発育状態をミスラ法にて調べた。すなわち、血液寒天培地で前培養を行なった集落からMcFarland No.1菌懸濁液を作成し、10倍連続希釈系列にて希釈を行なった。接種は、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6の各希釈菌液10μLを各培地に接種した。
【0048】
【表4】

【0049】
表4に示されるように、本発明の培地は、O157の増殖は市販品であるCT−SMAC培地と同様であるが、偽陽性が問題となるソルビット非分解菌であるMorganella(M. morganii)とProteus(P. vulgaris)、Providencia(P. rettgeri)の増殖を抑制することができる。
実施例2
O157とソルビット分解菌であるK. pneumoniaeの混合溶液を本発明培地と市販のCT−SMACに各々接種し、37℃で24時間培養した。結果を図1に示す。
【0050】
図1に示されるように、本発明培地はO157(赤褐色)とK. pneumoniae(黄色)の区別が明確であり、視認性が向上したことが明らかになった。
実施例3
O26とラムノース分解菌であるK. pneumoniaeの混合溶液を本発明培地に接種し、37℃で24時間培養した。結果を図2に示す。
【0051】
図2に示されるように、本発明培地はO26(赤褐色)とK. pneumoniae(黄色)の区別が明確であり、視認性が向上したことが明らかになった。
【0052】
実施例4
O157,O26、O111の混合溶液を下記の本発明培地と従来の培地(ニュートラルレッド培地)に接種し、37℃で24時間培養した。結果を図3に示す。
【0053】
図3に示されるように、本発明培地はO157(黄褐色) 、O26(赤褐色)、O111(黄色)の区別が明確であり、視認性が向上したことが明らかになった。一方、従来の培地では、O157とO26の区別は困難であることが明らかになった。
本発明培地:特開2002−281959の実施例1の「組成10」で示されるソルビトール・マッコンキー培地において、ソルビトールの代わりにラムノース(9g/L)を使用し、pH指示薬であるニュートラルレッドをブロムチモールブルーに変更し、かつ、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)、カルベニシリンを明細書で示される範囲の量で含む培地。
従来の培地:特開2002−281959の実施例1の「組成10」で示されるソルビトール・マッコンキー培地において、ソルビトールの代わりにラムノース(9g/L)を使用した培地。
実施例5
実施例4の本発明処方において、ラムノース量を2g/L、3g/L、23g/Lに変えて同様の実験を行った。結果を図4に示す。ラムノースが3〜23g/Lの範囲でO157、O26、O111の鑑別が可能であることが明らかになった。ラムノース2g/Lでは3種の腸管出血性大腸菌の鑑別が困難であり、ラムノース3g/L以上の臨界的意義が示された。
実施例6
実施例1の培地において、pH指示薬と酸化還元色素を以下のように変更した培地について、O157とK. pneumoniaeが肉眼で区別可能かについて試験した。結果を以下の表5に示す。なお、表5において、
フェノールレッド:PR
ブロモチモールブルー:BTB
ニュートラルレッド:NR
ウォーターブルー:WB
o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシド:ONPG
を意味する。
【0054】
【表5】

【0055】
上記の結果から、pH指示薬と酸化還元色素を組み合わせた本発明の培地の優れた視認性が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元色素および糖を含む腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項2】
糖が検出対象菌では非分解、または遅分解であることを特徴とする請求項1に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項3】
糖がソルビット、ラムノース、ソルボースの中から選択される請求項1または2に記載された腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項4】
pH指示薬をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項5】
糖としてラムノースを用いて、その量を調節することにより、腸管出血性大腸菌O157、O26、O111を判別することを可能とした請求項1〜4のいずれかに記載の培地。
【請求項6】
ラムノースの量が3〜23gである請求項5に記載の培地。
【請求項7】
亜テルル酸塩および抗生物質からなる群から選ばれる少なくとも1種の選択剤をさらに含む請求項1〜6のいずれかに記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項8】
抗生物質がセフェム系抗生物質およびペニシリン系抗生物質からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項9】
亜テルル酸塩、セフェム系抗生物質およびペニシリン系抗生物質をさらに含む請求項7に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項10】
腸管出血性大腸菌がO157、O26、O111からなる群から選ばれる、請求項1〜9のいずれかに記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項11】
酸化還元色素が、赤色、青色、紫色、橙色、黄色、緑色からなる群から選ばれるいずれかの色に発色する、請求項1〜10のいずれかに記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項12】
pH指示薬の酸性側の色が赤色、青色、黄色、橙色、緑色、紫色からなる群から選ばれるいずれかの色である、請求項4に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項13】
糖が検出対象菌では非分解、または遅分解であり、pH指示薬の酸性側の色と腸管出血性大腸菌による酸化還元色素の発色の色とが識別可能な組み合わせである、請求項1〜12のいずれかに記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項14】
pH指示薬の酸性側発色が黄色、青色または赤色であり、酸化還元色素の発色が紫色、赤色または青色である(ただし、pH指示薬の酸性側発色は異なる色である)、請求項13に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項15】
pH指示薬と酸化還元色素が以下の(1)〜(4)のいずれかの組み合わせである、請求項13または14に記載の腸管出血性大腸菌検出用培地:
(1)pH指示薬がフェノールレッドで、酸化還元色素がテトラゾリウムバイオレット(TTV)、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)またはニトロテトラゾリウムブルー(NTB);
(2)pH指示薬がブロムチモールブルー(BTB)で、酸化還元色素がテトラゾリウムバイオレット(TTV)、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)またはニトロテトラゾリウムブルー(NTB);
(3)pH指示薬がウォーターブルーで、酸化還元色素が2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC);
(4)pH指示薬がニュートラルレッドで酸化還元色素がテトラゾリウムバイオレット(TTV)、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)またはニトロテトラゾリウムブルー(NTB)。
【請求項16】
糞便、食品、あるいは水に由来する検体を検査するための、請求項1〜15のいずれかに記載された腸管出血性大腸菌検出用培地。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の培地で検体を培養し、腸管出血性大腸菌の有無を検出することを特徴とする、検体中の腸管出血性大腸菌の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−75179(P2010−75179A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199576(P2009−199576)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000120456)栄研化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】