説明

腸管出血性大腸菌選択分離培地

【課題】腸管出血性大腸菌の代表的な血清型をそれぞれ鑑別して選択分離できる腸管出血性大腸菌選択分離培地及び腸管出血性大腸菌の血清型の鑑別方法の提供。
【解決手段】β−ガラクトシダーゼの発色性基質、β−グルクロニダーゼの発色性基質、胆汁酸類、並びにソルビトール又はラムノースを含有することを特徴とする腸管出血性大腸菌選択分離培地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸管出血性大腸菌を選択分離するための培地及び腸管出血性大腸菌の血清型の鑑別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腸管出血性大腸菌は、ベロ毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)などの合併症を引き起こす病原大腸菌で、代表的な血清型にはO157、O26、O111などが知られている。腸管出血性大腸菌の感染が疑われる場合や保菌者を検索する場合、一般的にはソルビトールマッコンキー寒天培地(SMAC)や選択剤(セフィキシム及び亜テルル酸カリウム)を添加したCT−SMAC培地などの分離培地で疑わしいコロニーを一次分離した後、抗血清による免疫学的検査などを行って血清型を特定する。
しかしながら、このような検出法では、時間や手間がかかり、また偽陽性を排除できず感度及び特異性が悪いという問題があった。
【0003】
そのため、これまでに腸管出血性大腸菌を分離・検出するための選択分離培地について種々の試みがなされており、例えばα−ガラクトシダーゼ酵素の基質である色原体化合物を含有するO157および/またはO11を示すための培地(特許文献1)、セフィキシム、亜テルル酸カリウム及びアミカシンなどの抗菌剤を添加した大腸菌O157選択発色培地(特許文献2)、セフィキシム、亜テルル酸塩及び抗生物質を含む大腸菌用選択分離培地(特許文献3)などが報告されている。しかし、いずれも大腸菌O157以外の血清型を鑑別することはできない。
一方、大腸菌O26を分離・検出するための選択分離培地として、ラムノース、pH指示薬及び酵素発色基質を含有する大腸菌O26分離用培地が知られているが(特許文献4)、これは大腸菌O26が他の大腸菌と異なるラムノース分解能を有さないことに着目したものであり、O26以外の血清型を鑑別することはできない。
従って、腸管出血性大腸菌の血清型、特に大腸菌O157、O26、O111の3種類の血清型をそれぞれ鑑別し、選択分離できる培地の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2000−508179号公報
【特許文献2】特開2002−281959号公報
【特許文献3】特開2003−235545号公報
【特許文献4】特開2001−8679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の如き従来の問題に鑑みてなされたものであり、腸管出血性大腸菌の代表的な血清型をそれぞれ鑑別して選択分離できる腸管出血性大腸菌選択分離培地及び腸管出血性大腸菌の血清型の鑑別方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、先ず、腸管出血性大腸菌の有する酵素特異性に着目し、鋭意研究したところ、大腸菌O157とO26はその酵素特異性による酵素発色性基質の発色性の違いから容易に鑑別することができるものの、大腸菌O157とO111とでは類似した色調を示すため両者の鑑別が困難であることが判明した。そこで、さらに検討したところ、特定の酵素発色性基質に加えて、大腸菌O157とO111とで分解能が異なる糖と胆汁酸類とを組み合わせれば、糖分解能を有する腸管出血性大腸菌では胆汁酸の沈殿が発生し、この沈殿と酵素発色性基質による色調とが重なることで、糖分解能を有さない腸管出血性大腸菌の酵素発色性基質による色調とは異なる色調となることを見出した。そして、これによってはじめて腸管出血性大腸菌の代表的な血清型であるO157、O26、O111の3種類の血清型をそれぞれ鑑別できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、β−ガラクトシダーゼの発色性基質、β−グルクロニダーゼの発色性基質、胆汁酸類、並びにソルビトール又はラムノースを含有することを特徴とする腸管出血性大腸菌選択分離培地により上記課題を解決したものである。
また、本発明は、上記腸管出血性大腸菌選択分離培地に、被検体を接種して培養した後、当該培地上に形成されるコロニーの色調を観察することを特徴とする腸管出血性大腸菌の選択分離方法により上記課題を解決したものである。
また、本発明は、腸管出血性大腸菌の血清型を鑑別する方法であって、β−ガラクトシダーゼの発色性基質及び/又はβ−グルクロニダーゼの発色性基質が分解されることにより生じる発色と、胆汁酸類から生じる沈殿とが重なることで示されるコロニーの色調を指標とすることを特徴とする鑑別方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一回の分離培養により大腸菌O157、O26、O111の3種類の血清型をそれぞれ鑑別し、選択分離することができる。従って、糞便、食品などからの腸管出血性大腸菌検出において、時間や手間の削減、経費削減への貢献が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いられるβ−ガラクトシダーゼの発色性基質とは、β−ガラクトシダーゼにより分解され色原体化合物を培地中に遊離し発色を生じるものであり、例えば、インドキシル−β−ガラクトシド誘導体などが挙げられる。具体的には、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−β−Gal)、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(Magenta−β−Gal)、6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(サーモン−β−gal)又はこれらの塩などが挙げられる。これらの塩としては、シクロヘキシルアンモニウム塩が好ましい。このうち、鑑別性及び培地への拡散性の点から、Magenta−β−Gal、X−β−Gal、サーモン−β−galが好ましく、特にMagenta−β−Galが好ましい。
【0010】
β−ガラクトシダーゼの発色性基質の培地中の含有量は、鑑別性の点から、0.001〜0.5g/Lが好ましく、さらに0.05〜0.2g/Lが好ましく、特に0.08〜0.15g/Lが好ましい。
【0011】
また、本発明で用いられるβ−グルクロニダーゼの発色性基質とは、β−グルクロニダーゼにより分解され色原体化合物を培地中に遊離し発色を生じるものであり、例えば、インドキシル−β−グルクロニド誘導体などが挙げられる。具体的には、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(X−GLUC)、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド、5−ブロモ−3−インドリル−β−D−グルクロニド、6−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド、3−インドリル−β−D−グルクロニド又はこれらの塩などが挙げられる。これらの塩としては、シクロヘキシルアンモニウム塩が好ましい。このうち、鑑別性及び培地への拡散性の点から、X−GLUC、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニドが好ましく、特にX−GLUCが好ましい。
【0012】
β−グルクロニダーゼの発色性基質の培地中の含有量は、鑑別性の点から、0.001〜0.5g/Lが好ましく、さらに0.05〜0.2g/Lが好ましく、特に0.08〜0.15g/Lが好ましい。
【0013】
本発明において、β−ガラクトシダーゼの発色性基質とβ−グルクロニダーゼの発色性基質は、異なった色調系統のものを組み合わせて用いるのが、鑑別性の点から好ましい。例えば、β−ガラクトシダーゼの発色性基質がMagenta−β−Gal等赤系統の色調を生じさせる場合、β−グルクロニダーゼの発色性基質はX−GLUC等青系統の色調を生じさせるものを、反対にβ−ガラクトシダーゼの発色性基質がX−β−Gal等青系統の色調を生じさせる場合、β−グルクロニダーゼの発色性基質は5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド等赤系統の色調を生じさせるものを用いるのが、それぞれのコロニーの色調が相違し鑑別し易いため好ましい。
【0014】
本発明で用いられる胆汁酸類としては、腸管出血性大腸菌が培地中の糖を分解することで沈殿を生じ、該沈殿と酵素発色性基質による色調とが重なることで、糖分解能を有する腸管出血性大腸菌と糖分解能を有さない腸管出血性大腸菌とを鑑別し得るものであればよく、例えば、牛胆汁末、胆汁エキスなどの胆汁;コール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸などの胆汁酸塩が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。胆汁酸塩の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられ、特にナトリウム塩が好ましい。このうち、腸管出血性大腸菌以外の菌種、例えばグラム陽性菌などの生育を抑制する点、及び鑑別性の点から、胆汁酸塩を用いるのが好ましく、さらにデオキシコール酸塩を用いるのが好ましく、特にデオキシコール酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0015】
本発明において、例えば、デオキシコール酸ナトリウムは、糖分解能を有する腸管出血性大腸菌によって培地中の糖が分解され、培地が酸性となることでNa+が遊離し、不溶性のデオキシコール酸の沈殿を生じる。この沈殿と、β−ガラクトシダーゼの発色性基質及び/又はβ−グルクロニダーゼの発色性基質が分解されることにより生じる発色とが重なり、本来の発色性基質によるコロニーの色調とは異なる色調となる。従って、当該コロニーの色調を指標とすれば、糖分解能を有する腸管出血性大腸菌と、前記発色性基質によるコロニー色調を示す糖分解能を有さない腸管出血性大腸菌とを鑑別することができる。
【0016】
胆汁酸類の培地中の含有量は、腸管出血性大腸菌以外の菌種を抑制する点、及び鑑別性の点から、0.1〜15g/Lが好ましく、さらに0.5〜12g/Lが好ましく、特に0.8〜10g/Lが好ましい。
【0017】
本発明で用いられるソルビトール又はラムノースの培地中の含有量は、鑑別性の点から、3〜25g/Lが好ましく、さらに5〜20g/Lが好ましい。
【0018】
本発明の培地には、大腸菌以外の腸内細菌を抑制し、より偽陽性の排除を目的として、さらに選択剤を配合するのが好ましい。選択剤としては、例えば、セフィキシム、亜テルル酸塩、抗生物質等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0019】
亜テルル酸塩の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
亜テルル酸塩の培地中の含有量は、0.5〜5mg/Lが好ましく、さらに1〜5mg/Lが好ましく、特に2.5〜5mg/Lが好ましい。
【0020】
また、セフィキシムの培地中の含有量は、0.01〜0.19mg/Lが好ましく、特に0.03〜0.10mg/Lが好ましい。
【0021】
抗生物質としては、例えばセフスロジン、セフトリアキソン、セフピラミド、セフォタキシム、セフタジジム、セフピミゾール、セフチゾキシム、セフメノキシムなどのセフェム系;ノボビオシン、バンコマイシン類などのテトラサイクリン系;ピペラシリン、カルベニシリンなどのペニシリン系などが挙げられる。これらの抗生物質は塩の形で用いることもできる。
抗生物質の培地中の含有量は、例えばセフスロジンの場合、培地中に0.5〜100mg/Lが好ましく、さらに0.78〜50mg/Lが好ましく、特に1.56〜25mg/Lが好ましい。また、ノボビオシンの場合、培地中に5〜50mg/Lが好ましく、さらに15〜30mg/Lが好ましく、特に20〜25mg/Lが好ましい。
【0022】
本発明の培地は、さらにペプトン、エキス類、アミノ酸類などを配合してもよい。また、培地には、pH指示薬を添加してもよく、無添加でもよい。
【0023】
本発明の培地は、前記成分を適宜混合し、これに寒天を5〜20g/L程度配合して寒天培地として用いるのが好ましい。
培地のpHは、使用時のpHが6.5〜8.0、特に7.0〜7.6とするのが好ましい。
【0024】
本発明の培地を用いて、被検体中の腸管出血性大腸菌を鑑別し選択分離するには、例えば、当該培地に白金耳等を用いて被検体を接種し、30〜42℃、好ましくは33〜37℃で数時間〜数十時間培養した後、当該培地上に形成されるコロニーの色調を肉眼観察すればよい。ここで被検体としては、例えば、水、飲食品、糞便などの生体試料が挙げられる。
【0025】
かくして、腸管出血性大腸菌、具体的には大腸菌O157、O26、O111の3種類の血清型がそれぞれ異なるコロニー色調で示されるため、各血清型を容易に鑑別でき、選択分離することができる。
【実施例1】
【0026】
以下に実施例をもって本願発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例1〔胆汁酸の影響〕
表1に示す各成分を必要量計り取り、高圧蒸気滅菌後、冷却して腸管出血性大腸菌選択分離培地をそれぞれ作製した。当該培地に、表2に示す供試菌株を接種し、35℃において24時間培養した後、培地上のコロニー色調、発育の有無を肉眼観察により比較した。
観察の結果、コロニー色調の違いがより明瞭で鑑別が容易な場合は「◎」、コロニー色調の違いが明瞭で鑑別可能な場合は「○」、コロニー色調の違いがやや不明瞭であるが鑑別可能な場合は「△」、コロニー色調の違いが不明瞭で鑑別不可能な場合は「×」とした。
結果を表2に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
表2より明らかなように、Magenta−GAL、X−GLUC、胆汁酸類及びソルビトールを含有する培地(試験例1−4)では、大腸菌O157が紫、O26が青色、O111が白みを帯びた紫となり、当該コロニー色調の違いにより3種類の血清型の鑑別が可能であった。
これに対し、胆汁酸類無添加の培地(試験例5)では、大腸菌O157が紫、O26が青となり両者を鑑別できたが、胆汁酸の沈殿が生じないため、O157とO111が共に紫を呈し、鑑別不可能であった。
【0031】
実施例2〔糖の影響〕
表3に示す各成分を必要量計り取り、高圧蒸気滅菌後、冷却して腸管出血性大腸菌選択分離培地をそれぞれ作製した。当該培地に、表4に示す供試菌株を接種し、35℃において24時間培養した後、実施例1と同様に、培地上のコロニー色調、発育の有無を肉眼観察により比較した。結果を表4に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
表4より明らかなように、Magenta−GAL、X−GLUC及び胆汁酸塩に加えてソルビトール又はラムノースを含有する培地(試験例6−7)では、大腸菌O157が紫、O26が青色、O111が白みを帯びた紫となり、当該コロニー色調の違いにより3種類の血清型の鑑別が可能であった。
これに対し、糖類無添加の培地(試験例8)では、大腸菌O157が紫、O26が青となり両者を鑑別できたが、胆汁酸の沈殿が生じないため、O157とO111が共に紫を呈し、鑑別不可能であった。
【0035】
実施例3〔基質の種類と濃度による影響〕
表5に示す各成分を必要量計り取り、高圧蒸気滅菌後、冷却して腸管出血性大腸菌選択分離培地をそれぞれ作製した。当該培地に、表6及び7に示す供試菌株を接種し、35℃において24時間培養した後、実施1と同様にして、培地上のコロニー色調、発育の有無を肉眼観察により比較した。結果を表6及び7に示す。
【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【0038】
【表7】

【0039】
表6より明らかなように、β−ガラクトシダーゼの発色性基質とβ−グルクロニダーゼの発色性基質は、異なった色調系統のものを組み合わせて用いることでコロニー色調の違いがはっきりとし、より3種類の血清型の鑑別が容易であった。また、表7より明らかなように、発色性基質が増えるに従ってコロニー色調が濃くなり、発色性基質の量がそれぞれ0.08〜0.15g/Lの時、特に3種類の血清型の鑑別が容易であった。
【0040】
実施例4〔糖の種類と濃度による影響〕
表8に示す各成分を必要量計り取り、高圧蒸気滅菌後、冷却して腸管出血性大腸菌選択分離培地をそれぞれ作製した。当該培地に、表9及び10に示す供試菌株を接種し、35℃において24時間培養した後、実施例1と同様にして、培地上のコロニー色調、発育の有無を肉眼観察により比較した。結果を表9及び10に示す。
【0041】
【表8】

【0042】
【表9】

【0043】
【表10】

表9及び10より明らかなように、ソルビトール又はラムノースを含有する培地では、培地中の濃度にかかわらずコロニー色調の違いにより3種類の血清型の鑑別が可能であった。これに対し、ソルボースを含有する培地(試験例23)では、O157とO111で白濁が強く鑑別は難しかった。
【0044】
実施例5〔胆汁酸類の濃度による影響〕
表11に示す各成分を必要量計り取り、高圧蒸気滅菌後、冷却して腸管出血性大腸菌選択分離培地をそれぞれ作製した。当該培地に、表12に示す供試菌株を接種し、35℃において24時間培養した後、実施例1と同様にして、培地上のコロニー色調、発育の有無を肉眼観察により比較した。結果を表12に示す。
【0045】
【表11】

【0046】
【表12】

【0047】
表12より明らかなように、培地中の濃度にかかわらずいずれの胆汁酸類も3種類の血清型の鑑別が可能であった。
【0048】
実施例6〔亜テルル酸ナトリウム、セフィキシムの濃度による影響〕
表13、15に示す各成分を必要量計り取り、高圧蒸気滅菌後、冷却して腸管出血性大腸菌選択分離培地をそれぞれ作製した。当該培地に、表14、16に示す供試菌株を接種し、35℃において24時間培養した後、実施例1と同様にして、培地上のコロニー色調、発育の有無を肉眼観察により比較した。結果を表14と16に示す。
【0049】
【表13】

【0050】
【表14】

【0051】
【表15】

【0052】
【表16】

【0053】
表14及び16より明らかなように、培地中の亜テルル酸ナトリウム濃度、セフィキシム濃度にかかわらず、3種類の血清型の鑑別が可能であった。また、表16より明らかなようにセフィキシムの濃度0.03mg/L以上の時、特に3種類の血清型の鑑別が容易であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−ガラクトシダーゼの発色性基質、β−グルクロニダーゼの発色性基質、胆汁酸類、並びにソルビトール又はラムノースを含有することを特徴とする腸管出血性大腸菌選択分離培地。
【請求項2】
β−ガラクトシダーゼの発色性基質が5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド又はこれらの塩であり、β−グルクロニダーゼの発色性基質が、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド又はこれらの塩である請求項1記載の腸管出血性大腸菌選択分離培地。
【請求項3】
胆汁酸類がデオキシコール酸塩である請求項1又は2記載の腸管出血性大腸菌選択分離培地。
【請求項4】
腸管出血性大腸菌が、O157、O26又はO111である請求項1〜3のいずれか1項記載の腸管出血性大腸菌選択分離培地。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の腸管出血性大腸菌選択分離培地に、被検体を接種して培養した後、当該培地上に形成されるコロニーの色調を観察することを特徴とする腸管出血性大腸菌の選択分離方法。
【請求項6】
腸管出血性大腸菌の血清型を鑑別する方法であって、β−ガラクトシダーゼの発色性基質及び/又はβ−グルクロニダーゼの発色性基質が分解されることにより生じる発色と、胆汁酸類から生じる沈殿とが重なることで示されるコロニーの色調を指標とすることを特徴とする鑑別方法。

【公開番号】特開2010−233565(P2010−233565A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48916(P2010−48916)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000226862)日水製薬株式会社 (35)
【Fターム(参考)】