説明

膀胱に潰瘍ができている場合の間質性膀胱炎の鎮痛に有効な健康食品

【課題】膀胱内に潰瘍がある場合でも、尿をする際に痛みが発生しない間質性膀胱炎の鎮痛に有効な健康食品の提供。
【解決手段】メチルスルフォニルメタンを含み、pHが6.5以上8.0以下であることからなり、pHを調整する材料として重炭酸ナトリウム,二酸化ケイ素,炭酸カルシウム,又はステアリン酸カルシウムの少なくともいずれか一種を含むことからなる。また、更にグルコサミンを配合するとメチルスルフォニルメタンとの相性が良く痛みを総合的に和らげる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膀胱に潰瘍ができている場合の間質性膀胱炎の鎮痛に有効な健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
間質性膀胱炎(interstitial cystitis;IC)は、頻尿と膀胱痛を主な症状とする慢性進行性疾患で、アメリカの疫学調査では70万〜100万人の患者数が報告されている。日本でも難治性の頻尿の人の中に間質性膀胱炎が隠れていると、最近注目され始めている。原因は明確ではないものの、膀胱粘膜の透過性の亢進、知覚神経の刺激が膀胱の知覚過敏を引き起こし、次第に膀胱のコンプライアンス(伸びやすさ)が低下することで起こると考えられている。通常の治療になかなか反応しないため、間質性膀胱炎を知らない医師から心因性頻尿として突き放されがちという問題も指摘されている。
【0003】
この間質性膀胱炎の膀胱痛に関しては、これまでにメチルスルフォニルメタン(Methyl Sulfonyl Methane,以下MSMと記載)が治療薬として使用されている。
【0004】
MSMは下記の構造式を持つ有機イオウ化合物であり、慢性疼痛やアレルギー性疾患の制御に有効な天然分子として注目されている(例えば、特許文献1参照。)。

【0005】
MSMは、慢性の関節痛や間質性膀胱炎にともなう激痛の緩和に有効であることが認められており、アメリカでは医薬として需要が高い。このMSMの構造は以前に注目されたジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,以下DMSOと記載)に構造が類似しているので、ほとんど抵抗なく受け入れられている。DMSOが液体であり、刺激もあって利用しにくいのに対して、MSMは安定な結晶であり、利用しやすい点でも歓迎されたと考えられる。
【0006】
また、アメリカにおいてMSMは慢性の関節痛や間質製膀胱炎の激痛の緩和に有効な健康補助食品としても利用されており、注目を浴びている。
【0007】
しかしながら、現在市販されているMSMの健康補助食品を、膀胱内に潰瘍がある患者が間質製膀胱炎の痛みの緩和のために摂取すると、尿をする際に激痛が走る場合があるという問題点があった。
即ち、MSMは間質性膀胱炎そのものの痛みには効果があるが、前記のように膀胱内に潰瘍がある場合、尿をする際にその部分に激痛が走り、MSMを摂取できないという事態が生じており、重症な患者ほどMSMの摂取が難しいという問題点があった。
【特許文献1】特開2005−298412
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、膀胱内に潰瘍がある場合でも、尿をする際に痛みが発生しない間質性膀胱炎の鎮痛に有効な健康食品を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者は鋭意研究した結果、尿をする際に痛みが発生するのは、MSMに賦形剤(例えば乳糖等)等を使用してゼリー状・液体・錠剤等の製品にした際に、その製品が酸性となっていることが原因であることを発見した。
すなわち、このようなMSMを使用すると、患者の尿自体も酸性になってしまい、膀胱内に潰瘍がある場合、その潰瘍の部分が滲みて激痛が走るのである。
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の膀胱に潰瘍ができている場合の間質性膀胱炎の鎮痛に有効な健康食品は、メチルスルフォニルメタンを含み、pHが6.5以上8.0以下であることからなる。また、pHを調整する材料として重炭酸ナトリウム,二酸化ケイ素,炭酸カルシウム,又はステアリン酸カルシウムの少なくともいずれか一種を含むことが好適である。また、グルコサミンを含むことが好適である。また、pHが6.8以上7.5以下であることが最も好適である。
【0011】
すなわち、本発明の間質性膀胱炎の鎮痛に有効な健康食品は、MSMを含み、かつ製品として中性〜弱アルカリ性とするものである。このような構成にすることにより、放尿の際に尿が酸性を示すことがなくなり、尿をしても潰瘍の部分に激痛が走ることがなく、またMSMの摂取により間質性膀胱炎自体の痛みも緩和できるものである。
【0012】
製品を中性〜弱アルカリ性にする必要があるため、製造工程でMSMに加える材料としては、重炭酸ナトリウム,二酸化ケイ素,炭酸カルシウム,ステアリン酸カルシウム等の賦形剤や滑沢剤等が挙げられるが、製品として中性〜弱アルカリ性になれば良く、これに限定されるものではない。
さらに、関節の健康に良いとされるグルコサミンを配合することが、MSMとの相性が良く痛みを総合的に和らげる目的として好適である。
【0013】
pHの値は、6.5以上8.0以下、最も好ましくは6.8以上7.5以下である。6.5未満であると尿が酸性になりやすく、痛みが走るからである。また、アルカリ性については、中性に近い弱アルカリ性が望ましく、8.0以下、最も好ましくは7.5以下であることが適切である。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の以上の構成により、尿が酸性を示すことがなくなり、尿をしても潰瘍の部分に激痛が走ることがなく、またMSMの摂取により間質性膀胱炎自体の痛みも緩和できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明を実施するための最良の形態として、チュアブル錠剤及びフットボール型錠剤の配合例及び製造方法を示す。
【0016】
配合例1 チュアブル錠剤

【0017】
製造方法
原料を秤量して、滑沢剤(ステアリン酸カルシウム)以外の原料を混合機に投入して12分間混合し、その後滑沢剤を加えて3分間混合した。これを16メッシュのふるいで篩過したものを混合末とした。この混合末を2トン程度の圧力で固めて、チュアブルを形成した。製品のpHは6.5であった。
【0018】
配合例2 フットボール型錠剤

【0019】
製造方法
原料を秤量して、滑沢剤(ステアリン酸カルシウム)以外の原料を混合機に投入して12分間混合し、その後滑沢剤を加えて3分間混合した。これを16メッシュのふるいで篩過したものを混合末とした。この混合末を2トン程度の圧力で固めて、フットボール型錠剤を形成した。製品のpHは6.8であった。
【0020】
なお、MSMは、米国カーディナルニュートリション社製の針葉樹由来のものを利用した。経口で摂取するため天然由来のものが望ましいからである。他社製のものは、主として硫化水素とメタノールを原料として製造されている。
【0021】
本発明の健康食品は、上記チュアブル錠剤及びフットボール型錠剤に限定されるものではなく、メチルスルフォニルメタンを含み、pHが6.5以上8.0以下であり本発明の目的を達成する限り、顕粒状・ゼリー状・液状など、様々な形をとることができることは言うまでもない。
【0022】
以下、上記配合例1のチュアブル錠剤の健康食品の実験例を示す。以下の例は全て膀胱に潰瘍ができている患者である。
【0023】
例1 55歳代女性
排尿記録をとったところ1日の排尿回数は16〜18回。1回排尿量は20〜80mlしかなかったことが判明し、間質性膀胱炎を強く疑われ、麻酔下膀胱水圧拡張および麻酔下膀胱鏡をとったところ、間質性膀胱炎と診断され、膀胱に潰瘍ができており顕著な点状出血を認め激痛もあった。、配合例1のチュアブル錠剤の健康食品を1日15粒摂取し、1ヶ月摂取で痛みが改善されてきた。
【0024】
例2 34歳代女性
初診時検査で尿流の低下を認めたため排尿障害である尿道狭窄のような病態を予測し、診断と治療を兼ねて麻酔下膀胱鏡をしたところ著明な点状出血を認め膀胱に潰瘍ができており、間質性膀胱炎と診断された。症状として痛みもあり、配合例1のチュアブル錠剤の健康食品を1日15粒摂取し、1ヶ月摂取で痛みの改善があった。
【0025】
例3 71歳代女性
頻尿や膀胱痛が長く続くため、診断と治療を兼ねて、麻酔下膀胱水圧拡張を施行したところ、膀胱内圧が上昇し、膀胱粘膜には点状出血と亀裂が認められ膀胱に潰瘍ができており、重症の間質性膀胱炎と診断された。症状として膀胱痛、尿道痛があり、配合例1のチュアブル錠剤の健康食品を1日15粒摂取し、1ヶ月摂取で痛みが改善された。
【0026】
例4 16歳代男性
1回排尿量は50mlと少なく、充満時膀胱痛も訴えており、膀胱内圧検査で著明な知覚過敏の状況のため、麻酔下膀胱水圧拡張で間質性膀胱炎と診断され、膀胱に潰瘍ができていた。配合例1のチュアブル錠剤の健康食品を1日15粒摂取し、1ヶ月摂取で痛みの症状が改善された。
【0027】
さらに、本発明の効果について、間質性膀胱炎を有する、膀胱に潰瘍ができている患者17名を対象に実施例1に記載の健康食品を3ヶ月間摂取させ、本発明の効果について実験を行った。具体的には、17人の患者を対象に、間質性膀胱炎症状スコア、間質性膀胱炎問題スコア、尿意切迫感の程度、膀胱部痛、骨盤周囲痛又は尿意切迫時に伴う痛みの程度に関するアンケートを行った。
【0028】
アンケートの内容は、以下の通りである。



【0029】
解析はSPSS(バージョン11.0)プログラムを用い、両側仮説検定でP値≦0.05をもって統計的に有意とした。有効性の評価指標は間質性膀胱炎症状スコア、間質性膀胱炎問題スコア、尿意切迫感の程度と膀胱部痛、骨盤周囲痛又は尿意切迫時に伴う痛みの程度とし、試験食品摂取前後の検査値を用いて、ウイルコクスン符号付順位検定で評価した。
【0030】
間質性膀胱炎症状スコアについて
間質性膀胱炎症状スコアの合計点は、下記の表に示すように試験食品摂取3ヶ月後に有意な低値を示した(p=0.008)

【0031】
間質性膀胱炎問題スコアについて
間質性膀胱炎問題スコアの合計点は、下記の表に示すように試験食品摂取2ヶ月後に低下傾向(p=0.024)、摂取3ヶ月後に有意な低値を(p=0.017)を示した。

【0032】
尿意切迫感の程度について
尿意切迫間の程度について、下記の表に示すように試験食品摂取2ヶ月後と3ヶ月後に有意な低値(p=0.012, 0.010)を示した。

【0033】
膀胱部痛、骨盤周囲痛又は尿意切迫時に伴う痛みの程度について
膀胱部痛、骨盤周囲痛又は尿意切迫時に伴う痛みの程度について、試験食品摂取2ヶ月後に低下傾向(p=0.020)、摂取3ヶ月後に有意な低値(p=0.011)を示した。

【0034】
上記のように、間質性膀胱炎症状スコアについては、MSM-Rを摂取3ヶ月後に有意な低値が認められ、間質性膀胱炎症状の改善が確認された。また、間質性膀胱炎問題スコアについては、MSM-Rを摂取2ヶ月後に低下傾向、摂取3ヶ月後に有意な低値が認められ、間質性膀胱炎問題の改善が確認された。また、尿意切迫感については、MSM-Rを摂取2ヶ月後と3ヶ月後に有意な低値が認められ、尿意切迫感の程度が改善されていることが確認された。また、膀胱部痛、骨盤周囲痛又は尿意切迫時に伴う痛みの程度については、MSM-Rを摂取2ヶ月後に低下傾向、摂取3ヶ月後に有意な低値が認められ、膀胱に潰瘍ができている患者の膀胱部痛などの痛みの程度が改善されていることが確認された。さらに、安全性について、試験期間中、有害事象の発現が全くなかった。
このように本発明は、膀胱内に潰瘍がある場合でも、尿をする際に痛みが発生せず間質性膀胱炎の鎮痛に有効であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルスルフォニルメタンを含み、pHが6.5以上8.0以下であることを特徴とする、膀胱に潰瘍ができている場合の間質性膀胱炎の鎮痛に有効な健康食品。
【請求項2】
pHを調整する材料として重炭酸ナトリウム,二酸化ケイ素,炭酸カルシウム,又はステアリン酸カルシウムの少なくともいずれか一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の膀胱に潰瘍ができている場合の間質性膀胱炎の鎮痛に有効な健康食品。
【請求項3】
グルコサミンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の膀胱に潰瘍ができている場合の間質性膀胱炎の鎮痛に有効な健康食品。
【請求項4】
pHが6.8以上7.5以下であることを特徴とする請求項1又は3のいずれか一項に記載の経口用の膀胱に潰瘍ができている場合の間質性膀胱炎の鎮痛に有効な健康食品。

【公開番号】特開2010−51208(P2010−51208A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218157(P2008−218157)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(507389439)株式会社エビデンスセンター (2)
【Fターム(参考)】