説明

膀胱洗浄装置

【課題】 カテーテル閉塞のモニタリングを容易に行うことができる膀胱洗浄装置を提供すること。
【解決手段】 本発明は、少なくとも2ルーメンを有して膀胱内に挿入されるカテーテルと、前記カテーテルの第1ルーメンに洗浄液を注入する洗浄液注入装置と、前記第1ルーメンに注入される洗浄液の量を把握する注入量把握装置と、前記カテーテルの第2ルーメンから排出される排液の量を計測する排液量計測装置と、を備える。カテーテル閉塞検知装置は、前記注入量把握装置により把握された洗浄液の量と、前記排液量計測装置により計測された排液の量と、の少なくとも一方に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持続的に膀胱内に洗浄液を注入して膀胱持続洗浄を行う膀胱洗浄装置に関している。
【背景技術】
【0002】
泌尿器科の手術の中で、経尿道的手術は、件数が非常に多く、どの施設においても一般的な手術として定着している。経尿道的手術の後の合併症は、出血による血尿である。血尿の程度が強くなると、出血が凝固して、当該凝血塊で尿閉となったり尿道カテーテルが詰まってしまうことがある。尿道カテーテルが閉塞すると、膀胱は無理に拡張し、患者は強い尿意を感じたり、痛みを感じたりする。更には、そのことによって腹圧がかかることとなり、余計に出血を誘発したり、傷が更に広がって出血が一層ひどくなったりする。この状態は、膀胱タンポナーデと呼ばれ、緊急で医師による膀胱洗浄を行って凝血塊を膀胱内から取り除くという処置が必要である。しかしながら、カテーテルが閉塞しているかどうかの判断は、一般には極めて難しいとされている。
【0003】
膀胱タンポナーデを予防するためには、持続的に膀胱内に洗浄液を注入して膀胱持続洗浄を行うことが有効である。膀胱持続洗浄について、図2を用いて説明する。
【0004】
図2に示すように、経尿道的手術の後、出血の危険性が高い場合には、尿道カテーテルとして3ルーメンの特殊なカテーテルを採用する。通常の尿道カテーテルは2ルーメンで、1つは排出路用のルーメン(排液ルーメン)、1つはカテーテル先端のバルーン拡張用のルーメンである。3ルーメンのカテーテルには、洗浄液注入用のルーメン(注入ルーメン)が更に追加されている。この洗浄液注入用のルーメンから、洗浄液が膀胱内に注入される。洗浄液が持続的に注入され、所定の排液量が保たれることによって、出血が薄められ、凝血によるカテーテルの閉塞を防止することができる。
【0005】
洗浄液の注入には、通常の点滴と同じ点滴装置が用いられる。当該点滴装置は、注入用のルーメンに接続される。洗浄液には、コストと安全性の面から、生理食塩液が用いられる。蒸留水は溶血を引き起こすため、蒸留水を洗浄液として用いると膀胱内での凝血を防ぐのに有効である可能性はある。しかし、蒸留水が血管内など膀胱外に入る危険性があるため、蒸留水を洗浄液として用いることは今のところ一般的でない。
【0006】
洗浄液の注入速度は、一般的には、毎時50mLから500mL程度である。洗浄の目的は、出血を薄めて凝血を防ぐことにあるので、洗浄液の注入速度は出血の程度によって調節されることが好ましい。
【0007】
洗浄液の注入速度は、一般の点滴ポンプを使用することによって調節され得る。しかしながら、一般の点滴ポンプによる注入圧は非常に高いために、洗浄液が常に強制的に注入されてしまって、例えばカテーテル閉塞時に膀胱破裂等を引き起こす危険性がある。そのため、現状では、点滴と同様に、看護婦が手でクレンメを操作して洗浄液の注入速度を調節することが一般的である。従って、看護婦は、洗浄液の注入速度の調節のために、患者のベッドサイドを何度も訪れる必要がある。
【0008】
また、カテーテル閉塞時には注入した洗浄液が急速に膀胱内にたまってしまうため、血尿の程度とカテーテル閉塞の有無とを定期的にチェックする必要がある。血尿の程度は色調によって判断することが可能であるが、カテーテル閉塞の有無は判断が難しいことが多い。
【0009】
カテーテル閉塞が生じた場合、患者は麻酔が覚めていれば尿意を感じ、ひどくなると痛みを感じる。また、下腹部が膨隆してくる。しかし、これらの症状を判別することは難しいことが多い。一方、持続的に洗浄液を注入している場合においては、カテーテル閉塞が生じた場合、注入液が入りにくくなり、また、排液が減少する。そこで、注入に見合った排液がない場合には、カテーテル閉塞を疑うことができる。しかしながら、カテーテル閉塞が生じていない場合でも、洗浄液の注入量と排液量とが一致しないことがある。
【0010】
現在、カテーテル閉塞が疑われる場合には、排液の接続部から洗浄液を注射器で注入し、さらに陰圧をかけるという作業(操作)が行われる。注射器で注入した分の洗浄液がそのまま排液されれば、カテーテル閉塞は無いと判断される。カテーテル閉塞が存在していた場合には、膀胱内に貯留していた分まで一気に排液される。この作業を繰り返すことにより、凝血塊は体外へ排出され得る。
【0011】
しかしながら、この作業は、患者体内への病原体の進入の危険性を高める。また、この作業は、看護婦にとっては非常に手間のかかる作業である。
【0012】
より簡便な方法としては、ミルキングという方法がある。この方法では、牛の乳を搾るように排液チューブを搾って陰圧がかけられる。しかしながら、この方法では、出血の程度がひどい場合に凝血塊の閉塞が解除されず、何の反応も生じない。このため、カテーテル閉塞の有無の判断を誤ってしまう可能性がある。
【0013】
また、患者の体内から排出される尿量は、臨床的に重要なデータである。現状では、排液量から注入量を手計算で減算することによって、尿量が計算されている。この減算作業は、看護婦にとっては手間である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、カテーテル閉塞のモニタリングを容易に行うことができる膀胱洗浄装置を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、尿量のモニタリングを容易に行うことができる膀胱洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、少なくとも2ルーメンを有し、膀胱内に挿入されるカテーテルと、前記カテーテルの第1ルーメンに洗浄液を注入する洗浄液注入装置と、前記第1ルーメンから注入される洗浄液の量を把握する注入量把握装置と、前記カテーテルの第2ルーメンから排出される排液の量を計測する排液量計測装置と、前記注入量把握装置により把握された洗浄液の量と、前記排液量計測装置により計測された排液の量と、の少なくとも一方に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するカテーテル閉塞検知装置と、を備えたことを特徴とする膀胱洗浄装置である。
【0017】
本発明によれば、カテーテルの閉塞が自動的に検知される。従って、カテーテル閉塞のモニタリングを容易に行うことができる。
【0018】
カテーテル閉塞検知装置は、例えば、所定量及び/または所定時間だけ、排液量計測装置により計測された排液の量が注入量把握装置により把握された洗浄液の量よりも少なくなった時、カテーテルの閉塞を検知する。
【0019】
また、好ましくは、膀胱洗浄装置は、前記注入量把握装置により把握された洗浄液の量と、前記排液量計測装置により計測された排液の量と、に基づいて尿量を計測する尿量計測装置を更に備える。
【0020】
この場合、尿量計測が自動的に行われる。従って、尿量のモニタリングを容易に行うことができる。
【0021】
通常、前記カテーテルは、カテーテル先端のバルーン拡張用の第3ルーメンを有している。
【0022】
また、好ましくは、膀胱洗浄装置は、排液中の血液の存在を検知する出血検知装置を更に備える。
【0023】
この場合、出血検知が自動的に行われる。従って、出血のモニタリングを容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明は、少なくとも2ルーメンを有し、膀胱内に挿入されるカテーテルと、前記カテーテルの第1ルーメンに洗浄液を注入する洗浄液注入装置と、前記第1ルーメンに注入される洗浄液の量を把握する注入量把握装置と、前記カテーテルの第2ルーメンから排出される排液の量を計測する排液量計測装置と、前記注入量把握装置により把握された洗浄液の量と、前記排液量計測装置により計測された排液の量と、に基づいて尿量を計測する尿量計測装置と、を備えたことを特徴とする膀胱洗浄装置である。
【0025】
本発明によれば、尿量計測が自動的に行われる。従って、尿量のモニタリングを容易に行うことができる。
【0026】
また、本発明は、少なくとも2ルーメンを有し、膀胱内に挿入されるカテーテルと、前記カテーテルの第1ルーメンに洗浄液を注入する洗浄液注入装置と、前記第1ルーメンに注入される洗浄液の量を把握する注入量把握装置と、前記カテーテルの第2ルーメンから排出される排液の量を計測する排液量計測装置と、前記カテーテルの閉塞を検知するカテーテル閉塞検知装置と、前記カテーテル閉塞検知装置が前記カテーテルの閉塞を検知した場合に、前記洗浄液注入装置の動作を停止させる安全装置と、を備えたことを特徴とする膀胱洗浄装置である。
【0027】
本発明によれば、カテーテルの閉塞が自動的に検知される。従って、カテーテル閉塞のモニタリングを容易に行うことができる。更に、本発明によれば、カテーテルの閉塞が生じた場合に洗浄液注入装置の動作を停止させることにより、膀胱破裂の危険性を顕著に低下させることができる。
【0028】
例えば、前記カテーテル閉塞検知装置は、前記注入量把握装置により把握された洗浄液の量と、前記排液量計測装置により計測された排液の量と、の少なくとも一方に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている。
【0029】
あるいは、前記カテーテル閉塞検知装置は、前記第1ルーメン内の洗浄液の圧力に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている。
【0030】
あるいは、前記カテーテル閉塞検知装置は、前記第2ルーメン内の排液の圧力に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている。
【0031】
あるいは、前記カテーテル閉塞検知装置は、患者の膀胱内圧の変化に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている。
【0032】
あるいは、前記カテーテル閉塞検知装置は、患者の膀胱容量の変化に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている。
【0033】
あるいは、前記カテーテル閉塞検知装置は、患者の体重変化に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている。
【0034】
また、好ましくは、膀胱洗浄装置は、排液中の血液の存在を検知する出血検知装置を更に備える。
【0035】
この場合、出血検知が自動的に行われる。従って、出血のモニタリングを容易に行うことができる。
【0036】
また、この場合、前記出血検知装置の出力に基づいて前記洗浄液注入装置の注入速度を制御する注入速度制御装置が設けられ得る。この場合、出血量に応じた効率的な凝血防止効果を得ることができる。
【0037】
また、好ましくは、膀胱洗浄装置は、前記第2ルーメン内に陰圧を付与する陰圧発生装置、例えば自動ミルキング装置やメラサキューム等、を更に備える。
【0038】
この場合、軽度のカテーテル閉塞時に、当該カテーテル閉塞を解除することができる。これにより、軽度のカテーテル閉塞と医師または看護師の処置が必要な重度のカテーテル閉塞とを分別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1を用いて、本発明の一実施の形態の膀胱洗浄装置について詳しく説明する。
【0040】
図1に示すように、本実施の形態の膀胱洗浄装置100は、3ルーメンを有するカテーテル10を備える。カテーテル10は、患者Aの膀胱Bに挿入される。カテーテル10の3ルーメンは、それぞれ、洗浄液を注入するための第1ルーメン11、洗浄液を排出するための第2ルーメン12、カテーテル先端のバルーン(不図示)を拡張するための第3ルーメン13である。
【0041】
第1ルーメン11には、洗浄液注入装置20によって、洗浄液が注入されるようになっている。洗浄液注入装置20によって第1ルーメン11に注入される洗浄液の量は、注入量把握装置30によって把握されるようになっている。
【0042】
洗浄液注入装置20は、例えば通常の点滴装置である。点滴ポンプが併用されてもよい。但し、通常の点滴ポンプの注入圧は非常に高いため、低い注入圧を実現するような調整ないし仕様変更が必要である。
【0043】
点滴ポンプが用いられない場合、点滴装置による洗浄液の注入圧は、例えば洗浄液ボトル21の配置高さによって決められ得る。あるいは、洗浄液の注入圧は、注入ライン上に圧センサを設けることによって測定され得る。但し、圧センサの出力は洗浄液の注入速度によって影響されるので、圧を逃がす弁構造を注入ライン上に設けるか、洗浄液の注入速度に基づく補正を行う必要がある。点滴ポンプが用いられる場合には、洗浄液の注入圧は、点滴ポンプの駆動モータの負荷等から求めることもできる。
【0044】
また、点滴装置による洗浄液の注入速度は、滴下センサ23によって測定され得る。看護士が従前通りの速度調節器24を用いて手調整(設定)してもよい。
【0045】
また、点滴装置による洗浄液の注入量は、例えば洗浄液ボトル21の重量変化から求められ得る。洗浄液ボトル21の重量は、重量センサ22等によって測定される。
【0046】
注入量把握装置30は、例えば、点滴装置のコンピュータ部(制御部)によって構成され得る。本実施の形態の注入量把握装置30は、洗浄液ボトル21の重量変化から求められる(測定される)洗浄液の注入量の他、洗浄液の注入圧及び洗浄液の注入速度をも把握するようになっている。
【0047】
一方、第2ルーメン12から排出される排液は、排液量計測装置40によって、その量が計測されるようになっている。排液量計測装置40は、排液を収容する収容部41と、収容部41の重量を測定する重量センサ42と、重量センサ42の出力変化から排液量を求める演算部43と、を有している。
【0048】
注入量把握装置30と排液量計測装置40とは、カテーテル閉塞検知装置50に接続されている。カテーテル閉塞検知装置50は、所定量及び/または所定時間だけ、排液量計測装置40により計測された排液の量が注入量把握装置30により把握された洗浄液の量よりも少なくなった時、カテーテル10の閉塞を検知するようになっている。
【0049】
また、注入量把握装置30と排液量計測装置40とは、尿量計測装置60にも接続されている。尿量計測装置60は、排液量計測装置40により計測された排液の量から注入量把握装置30により把握された洗浄液の量を減算して尿量を得るようになっている。
【0050】
更に、本実施の形態の膀胱洗浄装置100は、排液中の血液の存在を検知する出血検知装置70を備えている。具体的には、出血検知装置70としては、出血の濃度に依存する排液の色調を判別する装置や、排液の光線透過率を測定する装置、あるいは、サチレーションモニターと同じ原理のヘモグロビン吸収値測定装置、等が利用され得る。
【0051】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0052】
膀胱持続洗浄のために、カテーテル10が患者Aの膀胱Bに挿入される。洗浄液注入装置20により、カテーテル10の第1ルーメン11に洗浄液が注入される。この時、例えば、洗浄液の注入圧は洗浄液ボトル21の配置高さによって設定され、洗浄液の注入速度は滴下センサ23によって測定され、洗浄液の注入量は洗浄液ボトル21の重量変化から測定される。洗浄液の注入量の測定は、所定時間毎に行われる。当該所定時間(カテーテル閉塞モニタリング間隔)は、洗浄液の注入速度が高い時には、より短い時間として設定されることが好ましい。
【0053】
洗浄液の注入圧、洗浄液の注入速度、及び、洗浄液の注入量は、注入量把握装置30によって前記所定時間毎に自動的に把握される。
【0054】
カテーテル10の第1ルーメン11に注入された洗浄液は、当該第1ルーメン11によって膀胱内へと案内され、膀胱内を洗浄する。そして、排液として第2ルーメン12を通って排出される。
【0055】
第2ルーメン12から排出される排液は、排液量計測装置40の収容部41に収容される。そして重量センサ42の出力変化に基づいて、演算部43が排液量を自動的に求める。
【0056】
カテーテル閉塞検知装置50は、所定量及び/または所定時間だけ、排液量計測装置40により計測された排液の量が注入量把握装置30により把握された洗浄液の量よりも少なくなった時、カテーテル10の閉塞を自動的に判別(検知)する。
【0057】
また、尿量計測装置60は、排液量計測装置40により計測された排液の量から注入量把握装置30により把握された洗浄液の量を減算して尿量を自動的に出力する。
【0058】
更に、出血検知装置70は、排液中の血液の存在を自動的に検知する。
【0059】
以上のように、本実施の形態によれば、カテーテル10の閉塞が自動的に検知されるため、カテーテル閉塞のモニタリングを容易に行うことができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、尿量計測が自動的に行われるため、尿量のモニタリングを容易に行うことができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、出血検知が自動的に行われるため、出血のモニタリングを容易に行うことができる。
【0062】
なお、カテーテル閉塞検知装置50の代わりに、他の種々のタイプのカテーテル閉塞検知装置が用いられ得る。
【0063】
例えば、第1ルーメン11内の洗浄液の圧力に基づいてカテーテル10の閉塞を検知するカテーテル閉塞検知装置が利用され得る。当該カテーテル閉塞検知装置は、例えば、第1ルーメン11内の洗浄液の圧力(注入圧)が所定値以上になった場合に、カテーテル10の閉塞を自動的に判別(検知)する。カテーテル閉塞時には注入圧が増大するという現象を利用する態様である。
【0064】
あるいは、第2ルーメン11内の排液の圧力に基づいてカテーテル10の閉塞を検知するカテーテル閉塞検知装置が利用され得る。当該カテーテル閉塞検知装置は、例えば、第2ルーメン12内の排液の圧力(排液圧)が所定値以下になった場合に、カテーテル10の閉塞を自動的に判別(検知)する。なお、第2ルーメン12内の排液の圧力を測定する場合、第2ルーメン12の収容部41側端部をクランプする必要がある。圧力測定には、種々の圧センサが利用され得る。また、第1ルーメン11内の洗浄液の圧力(注入圧)をも利用して、注入圧と排液圧とを比較することによってカテーテル10の閉塞を自動的に判別(検知)してもよい。
【0065】
あるいは、患者Aの膀胱内圧の変化に基づいてカテーテル10の閉塞を検知するカテーテル閉塞検知装置が利用され得る。当該カテーテル閉塞検知装置は、例えば、患者Aの膀胱内圧が所定値以上になった場合に、カテーテル10の閉塞を自動的に判別(検知)する。カテーテル閉塞時には患者Aの膀胱内圧が増大するという現象を利用する態様である。膀胱内圧の測定は、カテーテル10の先端に圧センサを設けることによって実施され得る。あるいは、圧力測定用のルーメン(第4ルーメン)をカテーテル10に追加する態様も採用され得る。あるいは、膀胱ろう等、全く別の経路から別のカテーテルを挿入して膀胱内圧を測定する態様も採用され得る。
【0066】
あるいは、患者Aの膀胱容量の変化に基づいてカテーテル10の閉塞を検知するカテーテル閉塞検知装置が利用され得る。当該カテーテル閉塞検知装置は、例えば、患者Aの膀胱容量が所定値以上になった場合に、カテーテル10の閉塞を自動的に判別(検知)する。カテーテル閉塞時には患者Aの膀胱容量が増大するという現象を利用する態様である。膀胱容量の測定は、エコーモニタリングによる画像解析などによって実施され得る。
【0067】
あるいは、患者Aの体重の変化に基づいてカテーテル10の閉塞を検知するカテーテル閉塞検知装置が利用され得る。当該カテーテル閉塞検知装置は、例えば、患者Aの体重の増加が所定値以上になった場合に、カテーテル10の閉塞を自動的に判別(検知)する。カテーテル閉塞時には患者Aの体重が増大するという現象を利用する態様である。患者の体重の測定には、種々の公知の重量計が利用され得る。
【0068】
以上の各実施の形態において、カテーテル閉塞検知装置がカテーテルの閉塞を検知した場合に洗浄液注入装置20の動作を停止させる安全装置80が設けられることが好ましい。この場合、膀胱破裂の危険性を顕著に低下させることができる。安全装置80が作動する場合には、同時にアラーム装置85から警報を発することが好ましい。
【0069】
なお、アラーム装置85は、尿量計測装置60により計測される尿量が減少した場合にも警報を発することが好ましい。尿量のモニタリングは全身循環動態を表すため、患者の状態のモニタリングにおいて有効である。
【0070】
また、排液が一定時間止まった場合にも、安全装置80が作動するかアラーム装置85が警報を発することが好ましい。この場合も、カテーテル閉塞の可能性があるからである。
【0071】
また、以上の各実施の形態において、出血検知装置70の出力に基づいて洗浄液注入装置20の注入速度を制御する注入速度制御装置75が設けられることが好ましい。この場合、出血量に応じた効率的な凝血防止効果を得ることができる。
【0072】
また、以上の各実施の形態において、第2ルーメン12内に陰圧を付与するための陰圧発生装置90、具体的には自動ミルキング装置やメラサキューム等、が設けられることが好ましい。この場合、軽度のカテーテル閉塞時に、当該カテーテル閉塞を解除することができる。これにより、軽度のカテーテル閉塞と医師または看護師の処置が必要な重度のカテーテル閉塞とを分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施の形態の膀胱洗浄装置を示す構成概略図。
【図2】従来の膀胱洗浄方法を説明する図。
【符号の説明】
【0074】
100 膀胱洗浄装置
10 カテーテル
11 第1ルーメン(注入用)
12 第2ルーメン(排液用)
13 第3ルーメン(バルーン拡張用)
20 洗浄液注入装置(点滴装置)
30 注入量把握装置(コンピュータ部)
40 排液量計測装置
50 カテーテル閉塞検知装置
60 尿量計測装置
70 出血検知装置
75 注入速度制御装置
80 安全装置
85 アラーム装置
90 陰圧発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2ルーメンを有し、膀胱内に挿入されるカテーテルと、
前記カテーテルの第1ルーメンに洗浄液を注入する洗浄液注入装置と、
前記第1ルーメンに注入される洗浄液の量を把握する注入量把握装置と、
前記カテーテルの第2ルーメンから排出される排液の量を計測する排液量計測装置と、
前記注入量把握装置により把握された洗浄液の量と、前記排液量計測装置により計測された排液の量と、の少なくとも一方に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するカテーテル閉塞検知装置と、
を備えたことを特徴とする膀胱洗浄装置。
【請求項2】
前記注入量把握装置により把握された洗浄液の量と、前記排液量計測装置により計測された排液の量と、に基づいて尿量を計測する尿量計測装置
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の膀胱洗浄装置。
【請求項3】
前記カテーテルは、カテーテル先端のバルーン拡張用の第3ルーメンを有している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の膀胱洗浄装置。
【請求項4】
排液中の血液の存在を検知する出血検知装置
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の膀胱洗浄装置。
【請求項5】
少なくとも2ルーメンを有し、膀胱内に挿入されるカテーテルと、
前記カテーテルの第1ルーメンに洗浄液を注入する洗浄液注入装置と、
前記第1ルーメンに注入される洗浄液の量を把握する注入量把握装置と、
前記カテーテルの第2ルーメンから排出される排液の量を計測する排液量計測装置と、
前記注入量把握装置により把握された洗浄液の量と、前記排液量計測装置により計測された排液の量と、に基づいて尿量を計測する尿量計測装置と、
を備えたことを特徴とする膀胱洗浄装置。
【請求項6】
少なくとも2ルーメンを有し、膀胱内に挿入されるカテーテルと、
前記カテーテルの第1ルーメンに洗浄液を注入する洗浄液注入装置と、
前記第1ルーメンに注入される洗浄液の量を把握する注入量把握装置と、
前記カテーテルの第2ルーメンから排出される排液の量を計測する排液量計測装置と、
前記カテーテルの閉塞を検知するカテーテル閉塞検知装置と、
前記カテーテル閉塞検知装置が前記カテーテルの閉塞を検知した場合に、前記洗浄液注入装置の動作を停止させる安全装置と、
を備えたことを特徴とする膀胱洗浄装置。
【請求項7】
前記カテーテル閉塞検知装置は、前記注入量把握装置により把握された洗浄液の量と、前記排液量計測装置により計測された排液の量と、の少なくとも一方に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている
ことを特徴とする請求項6に記載の膀胱洗浄装置。
【請求項8】
前記カテーテル閉塞検知装置は、前記第1ルーメン内の洗浄液の圧力に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている
ことを特徴とする請求項6または7に記載の膀胱洗浄装置。
【請求項9】
前記カテーテル閉塞検知装置は、前記第2ルーメン内の排液の圧力に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の膀胱洗浄装置。
【請求項10】
前記カテーテル閉塞検知装置は、患者の膀胱内圧の変化に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている
ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の膀胱洗浄装置。
【請求項11】
前記カテーテル閉塞検知装置は、患者の膀胱容量の変化に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている
ことを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の膀胱洗浄装置。
【請求項12】
前記カテーテル閉塞検知装置は、患者の体重変化に基づいて前記カテーテルの閉塞を検知するようになっている
ことを特徴とする請求項6乃至11のいずれかに記載の膀胱洗浄装置。
【請求項13】
排液中の血液の存在を検知する出血検知装置
を更に備えたことを特徴とする請求項6乃至12のいずれかに記載の膀胱洗浄装置。
【請求項14】
前記出血検知装置の出力に基づいて、前記洗浄液注入装置の注入速度を制御する注入速度制御装置
を更に備えたことを特徴とする請求項13に記載の膀胱洗浄装置。
【請求項15】
前記第2ルーメン内に陰圧を付与する陰圧発生装置
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の膀胱洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−314429(P2006−314429A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138188(P2005−138188)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】