説明

膀胱癌の膀胱内療法のための方法および組成物

膀胱癌の治療方法であって、(a)膀胱癌抗原と結合する少なくとも1つのターゲッティングアームと、1以上の治療薬に結合されたキャリヤーと結合する少なくとも1つの捕捉アームとを含んでなる多重特異性抗体を、尿道を介して投与し、該多重特異性抗体を膀胱癌の部位に局在させて、遊離の多重特異性抗体を患者から実質的にクリアリングさせ、かつ、(b)1以上の治療薬に結合された治療上有効な量のキャリヤーを投与することによる、方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
膀胱癌は、比較的よく見られる癌であり、特に、男性に多く見られ、その発生率は徐々に増加している。表在癌は、一般に、内視鏡切除によって処置されるが、ほとんど全ての患者は膀胱内で新しい腫瘍を発達させ、その多くがより高い病期に達している。長期間かけてのさらなる治療としては、さらなる切除、照射、および化学療法薬およびカルメット・ゲラン菌(bacillus Calmette-Guerin)を使用する方法をはじめとする種々の膀胱内治療が挙げられる。全ての治療法には副作用がある。最終的には、疾患が広がり、膀胱切除(全膀胱と多様な周囲組織の除去)を余儀なくさせる場合がある。膀胱癌は早期に診断されることが多いため、膀胱内投与による特定の治療の影響を受けやすく、それが奏功することが多い。残念なことに、治癒的であるものはなく、事実上、有意義な時間の症候の緩解をもたらす治療は少ない。さらに、膀胱癌がこの器官を超えて広がれば、ほとんど全ての患者はこの転移性疾患に屈する。膀胱癌が膀胱内にとどまる場合でさえ、表面の上皮を超えて筋層に深く浸潤し、その後に患者の腸管から集尿袋(urinary pouch)を作製する必要があり、患者に多大な困難をもたらし、患者の生活の質に大きな影響を与える膀胱全摘出でしか治癒の可能性はない。
【0002】
モノクローナル抗体(mAb)を用いた放射免疫治療(RAIT)は、種々の癌の特異的標的化治療の非常に将来有望な様式であり、癌治療への標準的な放射線治療法および化学療法アプローチに比べて実質的に向上した治療成績が見込める。しかしながら、この治療は放射性標識したmAbを癌患者に注入する場合、放射性免疫複合体が腫瘍標的組織で最大となり、背景組織および循環からクリアリングされる時間を制限する必要があるという欠点がある。無傷の放射性標識免疫グロブリンIgGに対してはかなり長く、放射性標識IgGフラグメントおよびサブ−Fab’フラグメントに対しては幾分短いこの時間の間、患者は非疾患標的照射(non-disease-targeted radiation)に曝される。主として、mAb局在化段階の間受けるこの非標的照射は、放射能毒性に直接変わる。このことから、投与できる放射性標識mAbの全量が制限され、 ほとんどの固形腫瘍(癌腫)が造血系新生物と比べて比較的放射線抵抗性であるために50〜80Gyの範囲の腫瘍線量を必要とする最適なRAITを実現するための投与量の増加が抑えられる。
【0003】
この問題を克服するため、放射性核種の送達を、一般にプレターゲッティングと呼ばれる方法での最初のターゲッティング工程から切り離した。この系では、局在部分、通常、腫瘍抗原と結合する少なくとも1つのアームと、低分子量ハプテンと結合する少なくとも1つの別のアームを有する多重特異性抗体(msAb)(例:二重特異性抗体(bsAb))を患者に施与し、腫瘍組織にて最大とし、その一方で、正常組織からクリアリングされる。しばらくして、低分子量ハプテンを放射性標識した形態で施与する。後者のものは腫瘍にプレターゲッティングした多重特異性抗体に局在するが、それ以外は急速に循環および正常組織からクリアリングされる。ほぼ投与直後に多重特異性抗体を介して放射性種を腫瘍標的に局在させ得ることで治療可能比を劇的にプラスにシフトする一方で、結合しなかった放射活性が腎臓および尿を介して排出される。放射活性の増加分は腫瘍標的に向けられ、正常組織はそれを逃れ、その結果、全毒性が低下する。
【0004】
膀胱内RAITは、これまで、膀胱癌の治療に向けて提案され、研究されてきた。Murray et al., J Nucl Med 2001; 42: 726-732, 2001; Hughes, et al., J. Clin. Oncol., 18: 363-370, 2000、および Syrigos, et al., Acta Oncol., 38: 379-382, 1999を参照。従来のRAITと同様に、放射性核種とモノクローナル抗体の複合体を使用して、尿道を介して直接膀胱に送達させる。他の主要な内臓(例えば、骨髄、肝臓、脾臓および肺)には放射性免疫複合体への曝露がないことから、毒性の大幅な低下が予想される。そのため、膀胱癌を表示させるための放射性核種とモノクローナル抗体との直接複合体の使用には、他の癌を対象とする標準的なRAITに対して大きな可能性ある利点がある。しかしながら、このアプローチへのこれまでの試みでは(上記参照)、放射性標識された抗体の腫瘍での高い取込みは短時間でしか達成されず、24時間までに消失する(Hughes 2000)。さらに、Murray 2001では、使用された放射性免疫複合体が不安定であることが判明し、抗腫瘍活性の証拠がないことが報告された。このように、放射活性の膀胱癌への局在化は膀胱内投与によって達成され得たが、現在までに抗腫瘍活性の証拠が得られておらず、観察された標的化は、表在性膀胱癌、および放射性核種から放出された放射線を用いて成功した治療には不適当である期間に限定されていた。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの態様は、治療を必要とする患者において膀胱癌を治療する方法であって、
(a)膀胱癌抗原と結合する少なくとも1つのターゲッティングアームと、1以上の治療薬に結合されたキャリヤーと結合する少なくとも1つの捕捉アームとを含んでなる、多重特異性抗体の治療上有効な量を、尿道を介して投与し、該多重特異性抗体を膀胱癌の部位に局在させて、遊離の多重特異性抗体を患者から実質的にクリアリングさせ、かつ
(b)1以上の治療薬に結合された治療上有効な量のキャリヤーを投与する
ことを含んでなる、方法である。
【0006】
本発明のもう1つの態様は、治療を必要とする患者において膀胱癌を治療する方法であって、
(i)治療薬に結合したキャリヤーを含んでなる複合体、および
(ii)膀胱癌抗原と結合するターゲッティングアームと、治療薬のキャリヤーと結合する捕捉アームとを含んでなる多重特異性抗体
を患者に投与することを含んでなる、方法である。
【0007】
本発明のさらにもう1つの態様は、治療を必要とする患者において膀胱癌を治療する方法であって、
(a)膀胱癌抗原と結合する少なくとも1つのターゲッティングアームと、1治療薬のキャリヤーと結合する少なくとも1つの捕捉アームとを含んでなる、多重特異性抗体の治療上有効な量を投与し、該多重特異性抗体を膀胱癌の部位に局在させて、非ターゲッティング多重特異性抗体を患者から実質的にクリアリングさせ、かつ
(b)治療上有効な量の該治療薬を投与する
ことを含んでなる方法である。
【発明の具体的説明】
【0008】
全てのRAITプロトコールに関して存在し、上記の膀胱内RAITに関してなお残り、本発明が対象とする大きな問題は、依然として取り組まれていない。この問題は、以下で詳細に記述するように、多重特異性抗体技術、ターゲッティング試薬および治療用試薬の膀胱内投与アプローチ、第二の治療用キャリヤーの任意的な全身送達、および有用なRAIT核種に対するキャリヤーの賢明な選択を新規に組み合わせることによって取り組まれている。本発明により送達させる治療薬としては、限定されるものではないが、放射性核種が挙げられる。
【0009】
この大きな問題は、施与した投与量に対するmAbの腫瘍の絶対的取込みが、ほとんどの場合、臨床条件で非常に低いこと(組織1g当たり0.01〜0.00001%注入量であることが多い)および腫瘍における放射活性の滞留時間が必要な放射線量を実現するには十分でないことが多いことである。そのため、注入した放射性標識msAbのごく一部だけが標的組織に実際に比較的短期間局在するが、かなり大きく過剰なものが正常組織全体に分布し、毒性をもたらす。局在化はそれによって抗体をそれらの標的組織と結合させるプロセスであり、一般に、1〜10時間内に起こる。膀胱内RAITを採用することで、同等の腫瘍の取込みが得られる上に全身毒性を回避することができ、それゆえ、治療可能比を所望の方向にシフトする。しかしながら、その腫瘍の絶対的取込みは、依然として非常に低いままであり、ターゲッティング抗体によってターゲッティングすることができる抗原部位の数によって制限された範囲に抑えられる。また、腫瘍の膀胱内RAITによって送達された放射能への曝露時間は24時間内であり、そのため、癌の有効放射には不十分であることが分かっている(Hughes 2000)。上記のように(Murray 2001)、膀胱癌治療に向けた膀胱内RAITのこのアプローチを試みて、安定な放射性複合体を使用し得た者はおらず、その結果、腫瘍に適切かつ特異的に照射することはできなかった。よって、これらの問題を解決するためには他の方法が必要とされる。これらの問題に加えて、全ての抗体分子が放射性核種分子と関連するというわけではないことからの欠乏もある。これは放射能ペイロードを保有していないmAb分子が利用可能な抗原性部位の大部分を標的化することを意味する。内在化および/または再循環がない場合、10に1つのmAb分子が放射性核種原子を保有するならば、10に1つの抗原部位だけが放射性核種により標的化され得る。実際の問題として、10に1つの放射性核種保有mAb分子が、事実上、非常に有益なmAb対放射性核種比であり、その比が100に1つか、またはそれよりも低くてよいことも多い。例えば、治療用放射性核種レニウム−188で、タンパク質1mg当たり1mCiにて標識したmAbのサンプルを考えた場合、およそ200に1つのmAb分子が放射性Re−188原子と実際に結合する。より多くの放射性核種が、それらの腫瘍の限られた数の抗原部位を不所望に遮断することなく、それを必要とする抗原部位に向けられ、より長時間の膀胱癌細胞の放射線治療薬への曝露を達成するるならば、膀胱内RAITの改善があることは明らかであろう。
【0010】
プレターゲッティングを利用することにより、ターゲッティングmAbが放射能ペイロードを保有する必要性がなくなる。化学または放射線分解事象に関連した厳しい状況の負担が重いか、またはそれを受ける状態にある場合には、mAbは、それらの抗原性標的との結合能が容易に低下するデリケートな生体分子であるために、多重特異性抗体(msAb)を使用することで、直接複合体を用いる膀胱内RAITで明らかな送達受容能力の実際問題を克服するまれな機会が与えられる。認識ハプテンが多重特異性抗体と結合すると複合体が形成される。
【0011】
mAbターゲッティング工程を放射性核種ターゲッティング工程と分ける場合、ターゲッティングベクターとしてmsAbを使用することにより、放射性核種結合部分の設計がかなり自由なものとなる。これらの態様については以下で詳細に記述する。さらに、放射性核種結合部分が血液系を通じてよりも尿道を介して膀胱に直接貯留される特に好ましい態様は、血液および組織での放射性核種複合体の安定性、全身薬物動態、および非ターゲッティング組織での不所望の代謝に対して存在するいくつかの制約を取り除いている。放射性核種がキレートと結合すると複合体が形成される。さらに、msAbを腫瘍に局在させた後に放射性核種保有部分を投与すると、腫瘍のより長時間の照射がもたらされる(好適な放射性核種および放出する放射線の路程が選択される場合にはより深部の腫瘍を含む)。膀胱外での腫瘍播種が疑われるか、またはこのような拡散の予防が望まれる場合には、所望により、次いで、第二の放射性核種結合部分を全身に施与してもよい。
【0012】
優れたRAITは、次の方法を用いて行われる:msAbを、好ましくは、膀胱癌患者の尿道を通じて投与し、腫瘍組織に局在させ、短時間に最大とする。結合しなかったmsAbの排出後に、放射性標識された部分を静脈内および/または膀胱内施与し、短時間、プレターゲッティングmsAbと結合させる。過剰の放射性標識部分を排出させ、腫瘍と結合した放射活性だけを残し、それが崩壊する。このプロセスを、腫瘍に送達する照射線量を高めるために繰り返すことができる。別の態様では、msAbを放射性標識された認識部分と前もって混合し、膀胱内注入する。結合しなかったmsAbの排出後、残留する放射活性が腫瘍貯留物の部位にて崩壊する。これらのアプローチでは、電離放射線を選択的に癌細胞に24時間を超える時間(48時間を超える場合もある)送達する。これは、一つには、使用する放射性免疫複合体が他の正常組織よりも腫瘍に多くの放射活性を送達するよう十分に安定であることが理由である。
【0013】
さらに、本発明のいかなる態様も以下のことをさらに含んでなることができる: 1以上の治療剤に結合された該キャリヤーを投与する前に膀胱に局在した多重特異性抗体の量を決定すること。また、膀胱に局在した多重特異性抗体の量が排泄物から回収される多重特異性抗体の量を定量することにより決定される本発明のいかなる方法も実施することができる。膀胱に局在した多重特異性抗体の量が患者をイメージングすることにより決定され、該多重特異性抗体がトレーサー核種をさらに含んでなる本発明のいかなる方法も実施することができる。トレーサー核種は、F−18、Ga−67、Ga−68、Tc−99m、In−111、I−123およびI−131、またはガドリニウムからなる群から選択され得る。
【0014】
特異的ターゲッティング
具体的に、標的化薬剤が身体の中枢循環系および異化系を通過することなくターゲッティング可能な、膀胱癌における処置可能な腫瘍部位が存在することが、患者の膀胱に投与されるmsAbの相当量(ほとんど全てである場合もある)を腫瘍組織に局在させ得ることを意味する。よって、全身的msAbアプローチに見られる特異的な標的の少量取込み/非標的の多量分布(特異的な標的組織対非標的組織における注入量の残留、0.01−0.0001%ID/g)は不適切とされる。種々の標準的な方法を使用した患者の経験的試験を利用して、膀胱に局在する疾患の範囲を決定し、それにより、施与するターゲッティング抗体の好適な量を決定することができる。生検またはイメージングによるなどの当技術分野では公知の方法を使用した膀胱に局在した抗体の量の決定を利用することができる。これが標準的な全身的RAITである場合には、患者は、実際には10〜1000ごとに1つのmAb分子が破壊性崩壊し得る放射性核種原子を保有する核種−msAb複合体を受ける。
【0015】
本発明では、上記のターゲッティング工程を膀胱癌で発現された腫瘍抗原と反応する1つのアームを有するmsAbを用いて実施する。一度、過剰なmsAbを実質的にクリアリングさせたら、多数の利用可能な抗原腫瘍部位は投与したmsAbで飽和され、そこにmsAbによって認識される放射性標識されたハプテンを施与する。投与した抗体の約90%以上が患者の体内から出れば、抗体は実質的にクリアリングされたと考えられる。放射性標識ハプテンの投与量は、前もって膀胱に局在したmsAbの量から決定することができる。そして、後者は放射性標識ハプテンの投与に先立ち、投与したmsAbの量と排出段階で回収された量から容易に決定することができる。1つの好ましい態様では、膀胱に滞留するmsAbの量は、少量のトレーサー放射性核種で放射性標識したmsAbを使用し、所望により、放射性標識ハプテンの投与の前に患者をイメージングすることにより決定することができる。当然のことながら、疾患ターゲッティングmAbからの放射性核種のデカップリング行為によって、直接mAb放射性標識の最大達成可能比放射能によるターゲッティングに課された制限も外される。言い換えれば、放射性標識ハプテンを、核種対認識ハプテン比 1:1にて調製することができれば、腫瘍組織の各msAbが1つの放射性核種原子を局在させることができる。本発明の前混合方法およびプレターゲッティング方法の両方を使用することにより、およそ等モル比の抗体と活性剤を送達することができる。およそ等モル比は、約1:1〜約1:10、1:10までのあらゆる比、例えば、1:2、1:3などであることができる。モル比が1:10未満である場合、それらはより好ましくは、1:6未満、より好ましくは、1:3未満である。さらに、1を超える放射性核種原子を各認識ハプテンと結合させる場合には、局在するmsAb当たりに局在する放射性核種の量がこの1:1比を超えることもある。後者は1または2認識ユニットしか有していない部分に放射性核種を多重置換することにより容易に達成することができる。
【0016】
msAbは、抗原腫瘍組織および放射性標識認識ハプテンの両方に対して十分な親和性を有していることが好ましい。一般に、各標的特異性は長期にわたりその認識部分と結合することができる(一般に、K 10−7M以上を示す)べきである。しかしながら、この適応に関しては、少し低いKもまた有効であり、大きな親和性を有するターゲッティングAbほど組織とあまり結合しない傾向にあることが周知であることから、特定の状況(例えば、組織のより深部まで浸透させる必要がある場合)下では、好ましい場合さえあり得る。これに関して、当然のことながら、msAbフラグメントおよびサブフラグメントは本質的にIgGサイズのものなどの大きな分子よりも高い組織浸透性を有するため、それらもまた本発明の実施において特に有用である。標準的な全身投与によるRAITおよびmsAb RAITでは、サイズのより小さなターゲッティングベクターを投与するほど、必然的に、より急速な血液クリアランス特性が生じ、標的組織の取込みがより少なくなり、標的の絶対的取込みを、放射性標識IgGまたはIgG×IgGに基づくmsAbで達成可能なすでに低い絶対レベルからさらに低下させることは周知である。本発明のmsAbは膀胱内施与されるため、血液クリアランス特性は重要でなく、フラグメントおよびサブフラグメントがより有用なものとされる。
【0017】
多重特異性抗体
msAbとしては、抗体フラグメント、サブフラグメントおよびその組合せが挙げられる。抗体フラグメントは、抗体の抗原結合部分、例えば、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fabなどである。抗体フラグメントは無傷の抗体により認識される抗原と同じ抗原と結合する。例えば、抗CD22モノクローナル抗体フラグメントはCD22のエピトープと結合する。また、本発明のmsAbとしては、限定されるものではないが、IgG×IgG、IgG×F(ab’)、IgG×Fab’、IgG×scFv、IgG×sFv、F(ab’)×F(ab’)、Fab’×F(ab’)、Fab’×Fab’、Fab’×scFv、Fab’×sFv、(sFv×sFv)、sFv×sFv、およびscFv×scFv二重特異性モノクローナル抗体(bismAb)も挙げられる。また、scFv×IgG×scFvおよびFab’×IgG×Fab’、scFv×F(ab’)×scFvおよびFab’×F(ab’)×Fab’などの種も含まれる。最も好ましくは、IgGの部位特異的付着部位または一方または両方のモノクローナル抗体(mAb)のF(ab’)、例えば、操作した炭水化物または操作したまたは解放された遊離チオール基を利用することができる。これらのmAbは二量体であることから、それらは別の2モルのmAbと結合することができる。例えば、癌胎児性抗原(CEA)に対するmAb、操作された軽鎖炭水化物を有する抗CEA F(ab’)を酸化し、ヒドラジド−マレイミド架橋剤を使用して、各軽鎖に少なくとも1つのペンダントマレイミド基を有する抗CEA F(ab’)誘導体へと変換することができる。この種は、少なくとも抗キレート−Fab’×抗CEA−F(ab’)−抗キレートFab’複合体が生成するように、抗キレートFab’−SHと1:2モル比にて結合させる。得られたmsAbは標的組織および高分子複合体に対して二価である。それらの最も小さい状態で、msAbは各特異性に対して向けられたペプチド分子認識ユニットを用いて構築され、二重特異性抗体(diabodies)、三重特異性抗体(triabodies)、四重特異性抗体(tetrabodies)、五重特異性抗体(quintabodies)などが挙げられる。さらに、本開示において「msAb」とは、多重特異性抗体および多重特異性抗体フラグメントを包含するものと理解される。
【0018】
また、「抗体フラグメント」とは、特異的な抗原と結合して複合体を形成することにより抗体のように作用する合成タンパク質または遺伝子操作タンパク質も含む。例えば、抗体フラグメントとしては、単離されたフラグメント、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメント、軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結されている組換え一本鎖ポリペプチド分子(「sFvタンパク質」)、および超可変領域を模倣するアミノ酸残基または関連ペプチドからなる最小認識ユニットが挙げられる。
【0019】
本発明のmsAbは、本質的にモノクローナルであってもポリクローナルであってもよいが、好ましくは、モノクローナルである。さらに、msAbのターゲッティングアームおよび捕捉アームは、本質的にモノクローナルであってもポリクローナルであってもよい。好ましくは、ターゲッティングアームまたは捕捉アームのいずれかがモノクローナルである。最も好ましくは、ターゲッティングアームおよび捕捉アームのいずれもがモノクローナルである。
【0020】
本発明のmsAbは、標識を保有するように操作してもよい。msAbが保有し得る標識の例としては、限定されるものではないが、ビオチン−ストレプトアビジン複合体および放射性同位元素などの標識リガンドが挙げられる。局在化およびクリアランスの追跡を容易にするために、本発明のmsAbを放射性標識することが有利である。
【0021】
本発明のいずれの態様でも、多重特異性抗体は1以上の抗体フラグメントまたはサブフラグメントを含み得る。多重特異性抗体は、IgG×Fab’、IgG×sFv、F(ab’)×Fab’、Fab’×Fab’、Fab’×sFv、(sFv×sFv)、sFv×sFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、および、五重特異性抗体からなる群から選択することができる。多重特異性抗体はまた、1を超えるターゲッティングアームを有することができる。1を超えるターゲッティングアームはF(ab’)×Fab’であってよい。
【0022】
また、本発明において有用なmsAbは、F(ab’)×Fab’フラグメントなどの1を超えるターゲッティングアームを有するmsAbを包含するとも考えられる。従って、1つのアームを認識ハプテンにターゲッティングし、2つのアームを腫瘍関連抗原に向けることができ、またはその逆も可能である。さらに、F(ab’)×Fab’フラグメントのF(ab’)部分(Fab’部分が放射性標識ハプテンに向けられると仮定すると)は、同一抗原の2つの異なるエピトープ(例えば、CEA)または2つの異なる抗原(例えば、CEAおよびMUC1)に対して向けることができる。よって、それ自体は、1つのFab’またはsFvアームが1つの腫瘍抗原に対して向けられ、1つが標的組織の別の腫瘍抗原に対して向けられるというターゲッティング能力の点から見て多重特異性であり得る。さらに、このF(ab’)または(sFv×sFv)亜種の1つのターゲッティングアームは腫瘍抗原に対して向けることができるが、別のターゲッティングアームは別のタイプの抗原、例えば、膀胱腫瘍に存在する血管抗原エピトープに対して向けられる。
【0023】
全開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、2001年7月25日出願の米国出願番号09/911,610、1995年6月22日出願の同09/337,756、および2001年4月3日出願の同09/823,746で記載されている二重特異性融合タンパク質もまた、本発明で有用である。他の抗体ならびに本発明で有用な組成物および方法としては、1つのIgG成分と2つのscFv成分を含む変異型二重特異性抗体(ここで、IgGのFc−ヒンジフラグメントはCH2−CH3ドメインインターフェース領域に1以上のアミノ酸突然変異を含む)、変異体融合bsAb、hMN14IgG(I253A)−(734scFv)、および引用することにより明確に本明細書の一部とされる、2002年3月1日出願の米国仮出願番号60/361,037で開示されている対象物が挙げられる。
【0024】
標的抗原
本発明の下で有用な標的抗原は、正常な膀胱組織よりも膀胱腫瘍組織により広い範囲で存在するか、または正常な膀胱組織と比べて膀胱腫瘍内の脈管組織により広い範囲で存在するいかなるエピトープも包含する。典型的な 上皮細胞抗原が、癌胎児性抗原(CEA)、CD44、MUC−1、上皮細胞糖タンパク質(EGP)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、ヒト乳汁脂肪グロブリン抗原(HMFG1およびHMFG2)、および腫瘍壊死物質(例えば、ヒストン)である。また、特に膀胱癌と関連した抗原としては、MUC−2、MUC−3、MUC−4;Le−y、TAG−72、IL−6、およびVEGFが挙げられる。これらの受容体(またはリガンド)に加えて、対応するリガンド(または受容体)、もしくはリガンド−受容体複合体は、抗体の有効な標的としての役割も果たし得る。例えば、VEGF受容体の他、VEGFまたはVEGFR:VEGF複合体も抗体の有効な標的であり得る。これらの抗原中の多くのものに対する抗体については、科学文献(Goldenberg, J Nucl Med 2002; 43: 693-713)で記述されている。さらなる抗体としては、全開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、Epstein et al.による特許(米国特許第6,071,491号、第6,017,514号、第5,019,368号および第5,882,626号)で記載されているように、癌遺伝子産物、および腫瘍壊死物質に対する抗体が挙げられる。また、癌遺伝子のマーカーもしくは産物に対する抗体、またはVEGFなどの血管新生因子に対する抗体も有用である。VEGF抗体については、Thorpe et al., 米国特許第6,342,221号、同第5,965,132号および同第6,004,554号で記述されており、これらは全開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる。本発明のいずれの態様においても、膀胱癌抗原は、癌胎児性抗原(CEA)、CD44、MUC−1、上皮細胞糖タンパク質(EGP)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR))、腫瘍壊死物質、およびヒト乳汁脂肪グロブリン抗原(HMFG1およびHMFG2)からなる群から選択され得る。
【0025】
治療薬
本発明のいずれの態様においても、治療薬としては、放射性核種が挙げられる。典型的な放射性核種としては、Sc−47、Ga−67、Y−90、Ag−111、In−111、Sm−153、Tb−166、Lu−177、Bi−213、Ac−225、Cu−64、Cu−67、Pd−109、Ag−111、Re−186、Re−188、Pt−197、Bi−212、Bi−213、Pb−212またはRa−223が挙げられる。
【0026】
他の治療薬としては、毒素または化学療法薬、特に、癌治療において有用であるものが挙げられる。毒素としては、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、またはシュードモナス内毒素が挙げられる。
【0027】
本開示の目的では、化学療法薬としては、あらゆる公知の化学療法薬が挙げられる。公知の化学療法薬としては、少なくとも、タキサン、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン;葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、ビンカ・アルカロイド、抗生物質、酵素、白金配位錯体、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質からの抑制剤、またはアンタゴニストが挙げられる。さらに具体的には、化学療法薬は、ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン、またはアンドロゲンであってよい。なおさらに具体的には、化学療法薬は、アザリビン、ブレオマイシン、ブリオスタチン−1、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、CPT−11、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、ジエチルスチルベストロール、ドキソルビシン、エチニルエストラジオール、エトポシド、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、ゲムシタビン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ヒドロキシ尿素、L−アスパラギナーゼ、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、酢酸メドロプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、酪酸フェニル、プレドニゾン、プロカルバジン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキサン、タキソール、プロピオン酸テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビンブラスチン、またはビンクリスチン、およびBCGであってよい。
【0028】
化学療法薬は、個々の薬物の構造、ならびにそれを結合するペプチドまたはポリマーの構造に基づいて選択される標準的な化学修飾を利用して、1以上のハプテンとの複合体とすることができる。このような標準的な方法は、当業者ならば容易に入手することができる有機合成に関する標準的な書籍(例えば、R. C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, NY, 1989、またはJ. March, Advanced Organic Chemistry, Wiley-Interscience, NY, 1985を参照)から容易に得ることができる。一例を挙げれば、標準的な化学療法薬、ドキソルビシンの構造が実例となる。例えば、アントラサイクリン類似体ドキソルビシンは、その13位に遊離のケト基、そのグリカンの環に遊離のアミノ基および側鎖C−14にアルキルヒドロキシル基を有する。これらのうちのいずれを用いてもドキソルビシンをハプテン保有部分の主鎖に結合させ得る。さらに具体的には、グリカンの遊離のアミノ基は、アミドを形成するハプテンのカルボキシル部分、例えば、複数のアスパルチル残基またはグルタミル残基を有するカルボキシル含有ポリマーと結合する可能性がある。ケトンは、ヒドラゾン結合を形成する遊離のヒドラジニル部分も含有するハプテン−ペプチド、例えば、N末端ヒドラジンを有するテトラペプチドと結合する可能性がある。ヒドロキシル基は、エステル結合を形成するカルボキシル含有ハプテン−ペプチド、例えば、グルタミル残基またはアスパルチル残基を有する短いペプチドと結合する可能性がある。さらに、ドキソルビシンのこれらの基のいずれもを、Pierce Chemical Company (Chicago, IL)から入手可能なものなどの標準的な架橋剤を使用して活性化することができる。例えば、ヒドラジンおよびマレイミドを含むヘテロ二官能性架橋剤をドキソルビシンの13−ケト基と反応させて、(ヒドラゾン結合した)マレイミド基を保有する中間体ドキソルビシン−リンカー付加生成物を形成することができる。周知のように、マレイミド基は容易な条件下、中性pHにて遊離のチオール基と反応するため、ドキソルビシン−リンカー−マレイミド付加生成物を、チオール含有ハプテン、ハプテン、ペプチドまたはハプテン−ポリマーと反応させて、好適な複合体を生成させることができる。薬物と標的化薬剤を連結するためのこの戦略および類似の戦略については、当技術分野では周知である(例えば、Willner et al. Bioconjug. Chem., 4: 521-527, 1993)。
【0029】
抗体の調製
二次認識ハプテンに対する抗体を、免疫プライミングの後に目的のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンを作製するという標準的な方法を使用して調製することができる。このようにして、種々の特異的抗体が作製され、大量生産されるが、これらのものとしては、金属−キレート複合体インジウム−ジエチレントリアミン五酢酸(In−DTPA)、およびイットリウム−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−四酢酸(Y−DOTA)に対する抗体、ならびにヒスタミン−スクシニル−グリシン(HSG)、ビオチンおよびフルオレセインなどの他の多様な種に対する抗体が挙げられる。本発明は、その範囲に、高分子などの大きな構造体のエピトープと結合することができる多重特異性抗体をはじめとする二次認識ハプテンに対する抗体も包含する。腫瘍ターゲッティングmAbおよび二次認識mAbの特異性および親和性を標準的なファージディスプレイ法を使用して前もって選択することができ、これにより、所望の特性のヒトmsAbを得ることができる。特異的な抗体は、親和性ならびに結合および解離速度を高めるために当技術分野で公知の技術により熟慮された親和性であり得る。
【0030】
本発明のMsAbは、化学結合を使用する周知の方法、体細胞法、または好適な宿主生物でタンパク質を産生させる分子生物学に基づく発現系により製造される。msAbの起源または生産様式は本発明の中心ではないと考えられる。よって、本明細書においてmsAbとは、多価多重特異性ターゲッティング抗体またはフラグメント/サブフラグメントを包含するものであり、具体的には、二価×二価および三価×一価および三価×二価種、多重特異性ミニ抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、五重特異性抗体、およびscFv×scFvタンデムが挙げられる。
【0031】
好ましい態様では、腫瘍組織で取り込まれた量を容易に定量するために、ターゲッティングmsAbを放射性標識することができる。これは簡単な減算により行うことができるし、または、いずれにしても、結合していない放射性標識msAbを除去した後に、周知の画像化技術を使用して行ってもよい。放射性核種認識ハプテン複合体の投与の前に、透過性放射性核種を使用して、コンピュータ断層(CT)もしくは単光子放出コンピュータ断層(SPECT)、または陽電子放射断層(PET)撮影を実施することができる。いずれにしても、この定量の目的は、特定の患者に好適である放射性標識認識ハプテンの量をより適切に判定することである。本態様下で画像化するのに有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、F−18、Ga−67、Ga−68、Tc−99m、In−111、1−123またはI−131が挙げられる。
【0032】
本発明の認識ハプテンは、プレターゲッティングmsAbの少なくとも1つのアームによって認識される少なくとも1つのエピトープを有することだけが必要である。これは二価ハプテンの結合が極めて重要となる標準的なmsAb RAITプロトコールとは全く違っている。膀胱内アプローチにおいては、膀胱内容物には多くの血清成分が存在しないので、msAb認識ハプテン複合体の競合的分解は実質的に低い。さらに、膀胱癌の場合には、代謝的クリアランスプロセスも考慮することができる。msAb RAIT治療を全身的に行う場合、本質的に、認識には二価である必要があることが分かっている。それが一価であると、腫瘍標的において長時間保持されるのに十分、プレターゲッティングmsAbと結合しない。それが三価以上であると、血清中で高分子量複合体が形成することによって、放射性標識認識ハプテンの、主として患者の肝臓および脾臓への早期クリアランスが起こるという危険性があり、腫瘍の取込みが不十分となり、非特異的な放射能毒性が生ずる。そのため、本発明は、不十分な保持および早期クリアランスという二重の問題との関係は最小限に、あるいは無関係に、msAbに対して一価から上のあらゆる価数の認識ハプテンを包含する。
【0033】
先ほど述べた問題を理由に、msAbプレターゲッティングRAITで用いる認識ハプテンの設計には大幅な自由を適用することができる。単純な形では、一価結合が本発明の範囲内で有用であることから、認識ハプテンおよび放射性核種の複合体を使用することができる。この例は、DTPAまたはDOTAを伴う金属イオンキレート、ビオチン−キレート複合体で使用する抗ビオチンmAb、およびHSG−キレート複合体で使用する抗HSG mAbとの反応性を有するアームを有するmsAbである。これらの例では、金属は放射性のものであり、キレート剤によって強力に結合する。低分子量キレート剤の金属複合体が、金属が適切に精製され、キレート剤が適切に選択されるならば、金属対キレートおよそ1:1比にて作製できることが知られている。本発明で有用な放射性金属としては、粒子放射、例えば、αおよびβ放射体、ならびに/または低エネルギーγ線放射(オージェ放射体)により崩壊するものが挙げられる。それらとしては、網羅するものではないが、Sc−47、Ga−67、Y−90、Ag−111、In−111、Sm−153、Tb−166、Lu−177、Bi−213およびAc−225内のものが挙げられる。放射性標識では、これらの金属のうちいずれかのものを最初に過剰のキレート剤により複合体化し、その後、余剰キレート剤を金属キレートから除去することも留意すべきである。この分離は、金属カチオンとの結合後にキレート剤の複数の負電荷を中和することから、通常、イオン交換手順に基づく。このような精製を実施する方法については、科学文献で記載されている。
【0034】
チオールまたはチオール−アミノ含有リガンドと結合する別の放射性金属も本発明の範囲内で使用できる。これらの放射性金属としては、限定されるものではないが、Cu−64、Cu−67、Pd−109、Ag−111、Re−186、Re−188、Pt−197、Bi−212、Bi−213およびPb−212が挙げられる。
【0035】
ハプテン
非金属治療用放射性核種を保有するハプテンも本方法に使用することができる。例えば、認識ユニット、ε−HSG−リシル−チロシンおよびHSG−チロシンをI−125またはI−131放射性核種で放射性標識することができ、放射性標識した認識ユニットをmsAbプレターゲッティング後に使用することができる。治療用α粒子放出核種が望まれる場合には、放射性アスタチンを使用して同様の薬剤を調製することができる。細胞内プロセシング後に細胞内に保持される非代謝形態の放射性ヨウ素を生成する新しい放射性ヨウ素化剤が設計されている。種々のこのような薬剤が科学文献で記載されており、それらを使用して認識ハプテンの残留放射性ハロゲンサブユニットとの複合体を形成させることができる。認識ハプテンと実際に放射性核種を保有する部分との複合体の形成には標準的な有機化学技術および方法を使用する。好適ないずれの化学結合も使用することができ、それらとしては、限定されるものではないが、アミド結合を形成するカルボキシルとアミノ、チオエーテル結合を形成するチオールとハロカーボン、イミン結合を形成し、所望により、第二級アミノ結合に還元可能であるアミノとアルデヒドなどが挙げられる。必要に応じて、短いリンカー(例えば、カルボキシル含有核種キャリヤー(例えば、金属−DTPA)およびカルボキシル含有認識ユニット(例えば、ヒスタミン−スクシニル−グリシン)の連結に使用されるジアミン)を使用することができる。これらの一般的原理は本発明での使用に向けて作製され得る全ての複合体に適用可能であると考えられる。
【0036】
全身msAb治療に使用される二価認識ハプテンはこの膀胱内アプローチでも有用である。基本的には、好適ないずれの化学結合によって2つの認識ハプテンを互いに結合させてもよい。例えば、2つの認識ハプテンは、下記に例示したような短い直鎖または環状ペプチドにより連結される:
【化1】

【0037】
これらの例では、DOTAまたはDTPAユニットは、上記の、同じ治療上有用な放射性金属の放射性核種で放射性標識することができる(酸素−窒素リガンドが好ましい)。同様に、キレートTscg−Cys−(チオセミカルバゾニルグリオキシル−システイン−)は、治療用放射性金属(チオール−窒素リガンドが好ましい)で放射性標識されるよう設計されている。ペプチドがI−125またはI−131により容易にヨウ素化され得るように、チロシル残基をすでに組み込んでそれらを設計することができる。放射性核種を受け入れ得る1を超えるキャリヤー部位を有するペプチドは、例えば、放射性ヨウ素および放射性金属で二重標識することができる。ペプチドがD−アミノ酸を含有し、N末端がアシル化され、C末端がアミド化されているように、それらを、酵素に耐性であるように選択することができる。上記の種は、必要に応じて、抗DTPA、抗DOTAまたは抗HSG二次認識アームを有するmsAbとともに使用することができる。同じ認識ユニットは、本質的に、ペプチドではない鋳型と容易に結合することもできる。例えば、単純なジアミンは、DTPAまたはDOTA部分で二重置換することができる。同様に、適切に置換されたジアミノ糖鋳型をDOTAまたはDTPAで二重置換することもできる。
【0038】
また、2を超える認識ユニットを本発明の実施において使用することもできる。最も好ましくは、認識ユニットが放射治療薬、例えば、イットリウム−90−DOTAキレート複合体の不可欠な部分でもある場合にこのように実施される。このような複合体は高分子キャリヤーへと多重置換することができる。イットリウム−90−DOTAなどの薬剤を保有し、本発明で使用される高分子キャリヤーは、非特異的組織の取込み、ならびに大量の放射性核種の肝臓および腎臓などの組織への代謝クリアランスについての懸念がずっと少なくてすむことから、好ましくは、膀胱内投与される。好ましい態様では、高分子タイプ[HSG]−高分子主鎖−[DOTA−イットリウム−90](この場合、HSGが認識ハプテンを含む)が生成されるように、認識ユニットと放射性核種キャリヤーとが分離される。好ましくは、m=1、一方、n=10〜100。いずれにしても、認識ハプテンの置換レベルは、高分子ユニット当たり1〜2に維持され、一方、DOTAの置換レベルは高分子ユニット当たり最大である。全身的な薬物動態学的問題が除かれたこのタイプの複合体には、Y−90を容易に過負荷することができる。腫瘍との結合および認識はHSG含有msAbを介するため、治療崩壊では腫瘍をプレターゲッティングする全てのmsAbが少なくとも1つのイットリウム−90原子を送達することが確実になり得る。
【0039】
本発明のいずれの態様も、キャリヤー分子が構造[HSG]−ポリマー主鎖−[DOTA−治療薬](ここで、HSGは認識ハプテンを含んでなり、m≧1かつn≧1である)のポリマーであり得る。(Mは1または2であってよく、nは1〜約100であり得る。)請求項1の方法はキャリヤー分子が生体適合性ポリマーであり得る。キャリヤー分子はポリアミノ酸またはポリペプチド(ここで、アミノ酸酸はD型、L型、または双方である)であり得る。キャリヤー分子はポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリ(Lys−Glu)コポリマー、ポリ(Lys−Asp)コポリマー、ポリ(Lys−Ala−Glu−Tyr)(KAEY;5:6:2:1)コポリマーまたは2〜50の残渣長のポリペプチドからなる群から選択されるポリアミノ酸またはポリペプチドであり得る。キャリヤー分子はポリ(エチレン)グリコール(PEG)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HMPA)コポリマー、ポリ(スチレン−コ−マレイン酸/無水物(SMA)、ポリ(ジビニルエーテルマレイン酸無水物)(DIVEMA)、ポリエチレンイミン、エトキシル化ポリエチレンイミン、デンドリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)ε−[ヒスタミニル−スクシニル−グリシル]−リジンアミド、およびp−ブロモアセタミド−ベンジル−DTPAに結合されたアポ−メタロチオネインからなる群から選択される。キャリヤー分子は、それに対して二次認識抗体が惹起され得る免疫剤であり得る。
【0040】
本発明に有用な複合体および二機能性リガンドとしては、その開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第5,612,016号に開示されているものを含む。また、米国特許第6,126,916号に開示されている結合リガンドおよび2001年4月4日出願の米国出願09/823,746に開示されているキレート剤も本発明において有用である。
【0041】
ポリマーキャリヤー
本発明の典型的なポリマーキャリヤーはポリアミノ酸(ポリペプチド)であり、例えば、ポリリジン、ポリグルタミン酸(E;1文字表記)およびアスパラギン酸(D)(そのD−アミノ酸類似体を含む)である。互いに所望の比率のビルディングブロックを有するコポリマーが選択される場合には、ポリ(Lys−Glu){ポリ[KE]}などのコポリマーが特に有利である。これらの比率は、ポリ[KE]またはポリ[KD]の場合、1:10〜10:1であることが有利と考えられる。ポリ(Lys−Ala−Glu−Tyr)(KAEY;5:6:2:1)などのアミノ酸ビルディングブロックに基づくより複雑なコポリマーもまた使用し得る。ポリマーの有効な分子量は、一般に、1,000〜100,000ダルトンの範囲内である。アミノ酸ビルディングブロックは、認識ハプテンと治療薬のキャリヤーとして作用するそれらの能力に関してだけでなく、個々の構成ブロックがポリマー複合体全体を構成することができる物理的および生物学的特性に関して選択される。例えば、好ましいポリマー複合体は多重置換されても十分な溶解性を保持するものである。ポリペプチドにおいては、これは多数の荷電残基が存在していることを意味する場合が多い。正味の正電荷を有する薬剤が非特異的に細胞および組織と結合することが時に起こり得るため、もう1つの好ましい特性は生理学的pHにて正味の負電荷を保有する最終的なポリマー複合体にある。ポリペプチドの場合、アスパラギン酸およびグルタミン酸などの圧倒的多数の酸性残基が最も簡単にこの基準を満たす。第3の好ましい特性は、ポリマー主鎖が膀胱組織に存在する酵素に対して安定であることである。この優先傾向のため、ポリペプチドはD−アミノ酸を含み得、アシル化N末端がアシル化され、C末端がアミド化される。好ましい分子量範囲に関しては、5,000〜25,000間のベースポリマー重量が特に好ましい。
【0042】
本発明の範囲内では、完全に定義された分子量のより低分子のポリマーキャリヤーもまた好ましい。これらは固相ペプチド合成技術により化学的に定義された実体として合成することができ、容易に2〜50の残基鎖長のポリペプチドを作製することができる。このタイプの試薬の第2の利点は、厳密な構造定義以外に、鎖の特定位置に1つまたは所望の数の化学結合手を置く能力である。これらは後に認識ハプテンと治療用放射性核種との、各部分選択された濃度にての結合に使用することができる。
【0043】
ポリペプチド以外のポリマーを本発明の範囲内で使用することができる。ポリ(エチレン)グリコール[PEG]は、多重特異性抗体プロドラッグアプローチに望ましいin vivo特性を有しており、ポリマーの末端に異なる化学的機能性を有する種々の形態で得ることができる。ほとんどのPEG誘導体はポリマー鎖の一末端にたった2つの機能的反応性部位しか有していないが、分枝鎖単位もまた構成されている。認識ハプテンと治療用放射性核種の運搬に使用することができる他の合成ポリマーとしては、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HMPA)コポリマー、ポリ(スチレン−コ−マレイン酸/無水物(SMA)、ポリ(ジビニルエーテルマレイン酸無水物)(DIVEMA)、ポリエチレンイミン、エトキシル化ポリエチレンイミン、スターバーストデンドリマーおよびポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)が挙げられる。一例として、複数の無水物単位からなるDIVEMAポリマーを限られた量のアミノ−ベンジル−DTPAと反応させて、ポリマー主鎖で所望の置換比率のDTPAキレートを作製する。次いで、残存する無水物基を水性条件下で開裂して遊離のカルボン酸基を得る。限定数の遊離のカルボン酸基を、標準的な水溶性ペプチドカップリング剤(例えば、EDAC)を用いて活性化し、遊離のアミノ基を保有する認識部分と結合させる。抗体が化合物のHSG部分に対してすでに惹起されていることから、後者の例はε−[ヒスタミニル−スクシニル−グリシル]−リジンアミド(HSGK−NH2)である。遊離のα−リジン残基は、後に認識ハプテンのポリマー主鎖との結合点となる。最終的に、場合によっては、使用するポリマーが天然ポリマーであってよい。この例が7つの遊離チオール基を有する低MWタンパク質であるアポ−メタロチオネインの使用である。このタンパク質をp−ブロモアセタミド−ベンジル−DTPAと結合させて、チオエーテル結合によりDTPA単位を連結することができる。その結果、タンパク質は限定数の、HSGなどの認識ハプテンを保有するよう改変されたεリシル残基を有することができる。
【0044】
ポリマー主鎖自体は、免疫剤として使用することができ、それに対して二次認識mAbを惹起し得る。ポリマーは免疫原性を高めるために巨大分子と結合させることができ、その複合体が免疫原として使用され、抗体発現についてのスクリーニングが標準的な方法を使用して行われる。ポリマー主鎖に対する抗体の生産には、「ユニバーサル」認識mAbが得られるという利点があり得る。したがって、DTPA、HSGまたはDOTAなどの異なる認識ユニットを使用する場合のように、二次抗体認識は特定の薬物には拘束されず、同じmsAbが同じポリマー主鎖に結合された種々の放射性治療薬に対して使用され得る。2つの異なるポリマー−放射性核種複合体が組み合わせて使用されるならばこの態様は有用であると思われる(併用化学療法を平行させる状況において異なるエネルギーの核種数種類を使用することが有利となる)。本発明において有用なさらなるポリマーについては、全開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、2001年7月31日出願の米国仮出願番号60/308,605で記載されている。
【0045】
投与
患者への投与に関し、msAbプレターゲッティング工程を膀胱内に施すことが好ましい。放射性標識認識ハプテンを膀胱内または全身に、好ましくは、静脈内に、または両経路を組み合わせて施与することができる。放射性標識認識ハプテンを施与する最適な時期は、msAbの膀胱および膀胱壁などの周囲組織からの完全またはほぼ完全なクリアランス後である。しかしながら、もう1つの態様では、両方の薬剤を同時に膀胱内施与することができる。この方法では、患者への投与に先立ち、msAbと放射性標識認識ハプテンが前もって混合される。このアプローチの利点は、該投与の前に、各msAbが放射性標識認識ハプテンと結合することが保証されることである。最後に、当然のことながら、膀胱の内容物排出を促進するために、一般に施与されるまたは実施される他の薬剤または手順を上記の薬剤のクリアランスを速めるためにも実施してもよい。本発明により投与されるいかなる組成物も尿道を介する投与であり得る。
【0046】
本発明のいずれの態様においても、多重特異性抗体および複合体は投与前に混合され得る。多重特異性抗体および複合体は実質的にキャリヤーを含まない形態で調製され得る。抗体および複合体を、およそ等モル比で混合することができる。また、さらなる態様は、結合しなかった組成物を、患者から実質的にクリアリングさせることである。多重特異性抗体の投与は患者の膀胱の尿道を介するものであり得る。多重特異性抗体は排泄によって患者の尿道からクリアリングさせ得る。多重特異性抗体はカテーテルからクリアリングされ得る。治療薬は静脈投与され得るか、または患者の膀胱の尿道を介して投与され得るか、あるいは両方法により投与され得る。治療薬は患者の膀胱の尿道を介して投与され得る。治療薬は種々の間隔で患者の膀胱の尿道を介して投与され得る。投与の前に、治療薬キャリヤーと治療薬の複合体を実質的にキャリヤーを含まない形態で調製し得る。多重特異性抗体または治療薬または両者が尿道を介して投与され得る。治療薬が該キャリヤーに実質的に等モル比で結合され得る。
【0047】
本発明はまた、膀胱に局在した多重特異性抗体の量を決定することも含み得る。これは、膀胱に局在した多重特異性抗体の量が排泄物から回収される多重特異性抗体の量を定量することにより決定されることである。また、これは、膀胱に局在した多重特異性抗体の量が患者をイメージングすることにより決定され、該多重特異性抗体がトレーサー核種をさらに含んでなることでもある。
【実施例】
【0048】
以下の実施例では、多重特異性抗体(msAb)複合体の一種である二重特異性抗体(bsAb)について言及する。また実施例では、放射性核種の送達に用いられるものとして二価ハプテンを挙げる。これらの実施例は単に例示のために示すものであり、本発明の範囲は本明細書に記載されている広範な種の試薬の二重特異性または二価変異体だけに限定されるものではない。
【0049】
例1:二重特異性抗体の調製
a)相補性決定領域をグラフトしたモノクローナル抗体hMN−14(ヒト化;抗癌胎児性抗原[CEA]および679と呼ばれる抗ハプテン抗体(ネズミ;抗ヒスタミニル−グリシル−スクシンイミジル−(HSG−)部分)を個々に、酢酸バッファー中200μg/mLのペプシン(pH3.7)で1時間インキュベートすることにより消化してF(ab’)フラグメントとする。各場合において、サイズ排除およびイオン交換クロマトグラフィーにより、このF(ab’)フラグメントを試薬および副生成物から精製し、実質的に純粋な100,000kDフラグメントの生成物を得る。
【0050】
b)上記ペプシン消化から得られたF(ab’)フラグメントを個々に、0.1Mリン酸緩衝0.9%塩化ナトリウム(PBS)バッファー(pH7.5)中、37℃にて1時間、10mMの新しく調製したL−システインとともにインキュベートする。還元されたFab’−SHフラグメントを個々に、酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)で平衡化したG−50−80 SEPHADEX(商標)を含むスピンカラム上での遠心分離により精製する。生成物であるFab’フラグメント抗体は、架橋反応まで4℃で維持する。
【0051】
c)上記b)から得られた679−Fab’−SHフラグメントを、活性化反応物中のジメチルスルホキシドの最終濃度が15%となるようにジメチルスルホキシドに溶解した20倍過剰のチオール架橋剤オルト−フェニルジマレイミド(OPD)と4℃で30分間反応させる。生成物679−Fab’−S−リンカー−マレイミドを、酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)で平衡化したG−50−80SEPHADEX(商標)を含むスピンカラム上での遠心分離により精製する。679−F(ab’)−S−リンカー−マレイミドを1モル当量のhMN−14−Fab’−SHと混合し、4℃で30分間反応させる。目的生成物であるhMN−14−Fab’−リンカー−Fab’−679[Fab’×Fab’二重特異性抗体]が、TSK−3000(Tosohaas, Montgomeryville, PA)上の分取サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより低分子量の夾雑物および未反応のFab’種を除去すれば純粋な形で得られる。
【0052】
例2:イットリウム−90放射性標識二価ハプテンの調製
図1に示されるIMP241(DOTA−Phe−Lys(HSG)−D−Tyr−Lys(HSG)−NHと呼ばれるモノ−DOTA、ジ−HSG二価ハプテンペプチドを、〜6nmolのペプチドおよび〜1mCiの乾燥Y−90クロリドを用い、Y−90で放射性標識する。6μlの0.25M酢酸アンモニウム(pH5.4)、次いで2.7μL(5.94nmol)を0.25M酢酸アンモニウム(pH5.4)中、2.2mMのIMP−241溶液へ加える。この溶液をアルミニウムブロックヒーターを用い、55℃で30〜40分間加熱した後、10mM DTPA(終濃度)でクエンチし、同じ温度でさらに10分間加熱し、冷却する。
【化2】

【0053】
この溶液を40μlの水で希釈し、4.5μLの0.1Mトリエチルアミン水溶液と混合し、最終のpHを〜7.5まで引き上げる。酢酸イットリウム−90の代わりに酢酸In−111で同様の標識を行う。
【0054】
例3:キャリヤーフリーイットリウム−90放射性標識二価ハプテンの調製
上記の例2で得られたY−90−IMP 241を、下記のように、重力流を用いたDowex AG1−X2陰イオン交換樹脂にて、非Y−90含有IMP 241から精製する。この放射性標識溶液を、二方向ストップコックを取り付けた(流れを止める)1mlシリンジ中、0.5mlの樹脂ベッド上に乗せる。1分後、この溶液を樹脂ベッドのちょうど最上部付近まで濾過する。樹脂が接触するまで何分か流れを止めた後、10×0.125mlの水画分を続ける。適用した放射活性の大部分は画分4〜11に回収される。このアプローチを用いれば、最終生成物において非Y−90含有ペプチドのレベルに100倍の減少が達成され、その結果、ペプチド1mmol当たり27,888ci Y−90の比活性が得られる。Y−90自体の比活性は〜500ci/mg(45,000ci/mmol)であることから、ペプチド各1mmolに0.6mmolのY−90が会合ていること、すなわち、Y−90放射性核種1分子につきペプチド2分子未満に相当する。所望により、二回目にAG1−X2樹脂を通すと、ペプチド:イットリウム−90比は1:1に接近するまで低下する。次に、Y−90−IMP 241をそのまま注射するか、あるいは注射または注入用にさらに希釈する。
【0055】
例4:レニウム−188放射性標識二価ハプテンの調製
a)次に続くレニウム−188標識のために下記のように好適な二価ペプチドを調製する:図2に示されるペプチドIMP 192[Ac−Lys(DTPA)−Tyr−Lys(DTPA)−Lys(Tscg−Cys)−NH]がレニウム−188標識に用いられる。調製としては、90mL部のグルコヘプトン酸溶液につき540mg(514μL)の氷酢酸を加えることで、グルコヘプトン酸ナトリウム中800mM(17.85g,198mg/mL)および100mM酢酸ナトリウム溶液90mLを調製する。次に、バッファー90mLにつき、抗酸化剤として180mgのアスコルビン酸を加える。この混合物30mLに、1mg(6.3×10−7モル)のIMP−192ペプチド、次いで6倍モル過剰の塩化インジウム(1.6mLの2.3×10−3モルのインジウム原液)を加える。このペプチドのターゲッティングに用いる二重特異性抗体はインジウム−DTPA複合体を認識するので、インジウムを加えて2つのDTPA認識部分に結合させる。次に、この溶液に90mgの塩化スズ二水和物を加え、この混合物を0.22ミクロンフィルターで迅速に濾過し、この混合物0.3mLを2mL凍結乾燥バイアルに分注する。これらのバイアルおよび内容(各50μgのIMP 192ペプチドを含む)をドライアイス浴を用いて凍結させ、真空下で凍結乾燥する。
【化3】

【0056】
b)タングステン−188/レニウム−188放射性核種ジェネレーターから好ましくは直接採取した濃縮Re−188溶出液(1mL,50mCi)を、1mLのシールドシリンジを用い、パート4a)のIMP−192の凍結乾燥バイアルの1つに加える。このバイアルを軽く振盪して内容物を溶かし、バイアルを90℃で1時間加熱する。冷却後、HPLCおよびITLC(即時薄層クロマトグラフィー放射分析)では90%を超えるRe−188がIMP 192に、以下に示される還元型レニウム−TscCG複合体としてこれに結合して組み込まれていることを示す。
【0057】
例5:キャリヤーフリーレニウム−188放射性標識二価ハプテンの調製
上記4b)から得られたRe−188−IMP 192を、5mM EDTAを含む2mLの脱気200mMリン酸緩衝生理食塩水(pH8.5)で1:1希釈する。希釈したRe−188−IMP192を、5mM EDTAを含む脱気200mMリン酸緩衝生理食塩水(pH8.5)で予め平衡化したSULFOLINK(商標)カップリングゲルカラム(Pierce Chemical Co., Rockford, IL)上部に加える。Re−188−IMP 192をこのカラムのゲルに流し、30分間、ゲルと接触させておく。その後、Re−188−IMP 192を含むバッファーをカラムから排出し、このカラムを、5mM EDTAを含むさらに2mLの脱気200mMリン酸緩衝生理食塩水(pH8.5)で洗浄する。次に、Re−188−IMP 192をそのまま注射するか、あるいは注射または注入用にさらに希釈する。
【0058】
例6:アクチニウム−225放射性標識二価ハプテンの調製
上記で示したIMP 241(DOTA−Phe−Lys(HSG)−D−Tyr−Lys(HSG)−NH[図1]と呼ばれるモノ−DOTA、ジ−HSG二価ハプテンペプチドを、〜6nmolのペプチドおよび〜1mCiの乾燥Ac−225を用い、Ac−225で放射性標識する。好適な塩の例としてはAcClがある。0.25M酢酸アンモニウム(pH5.4)中、IMP−241の2.2mM溶液に、6μLの0.25M酢酸アンモニウム(pH5.4)、次いで2.7μL(5.94nmol)を加える。この溶液をアルミニウムブロックヒーターを用い、60℃で1時間加熱した後、10mM DTPA(終濃度)でクエンチし、同じ温度でさらに10分間加熱し、冷却する。この溶液を40μLの水で希釈し、4.5μLの0.1Mトリエチルアミン水溶液で最終pHを〜7.5まで引き上げる。
【0059】
例7:キャリヤーフリーアクチニウム−225放射性標識二価ハプテンの調製
上記例6で得られたAc−225−IMP 241を、上記例3)に記載のものと同様の手順を用い、重量流を用いるDowex AG 1−X2陰イオン交換樹脂にて、非アクチニウム−225含有IMP 241から精製する。このアプローチを用いれば、最終生成物において非アクチニウム225含有ペプチドのレベルに100倍の減少が達成され、その結果、ペプチド:アクチニウム−255比は3:1未満となる。所望により、二回目にAG 1−X2樹脂を通すと、ペプチド:イットリウム−90比は1:1に接近するまで低下する。次に、Ac−225−IMP 241をそのまま注射するか、あるいは注射または注入用にさらに希釈する。
【0060】
例8:高比活性放射性標識ポリマーの調製
a)2mLのホウ酸ナトリウムバッファー(pH8.5)中、ポリ(L−リジン)10mg(約5×10−8モル;平均分子量約200,000と推定))攪拌溶液を、約100倍モル過剰(〜1.8mg)のジエチレントリアミン五酢酸ジアンヒドリド(DTPAA;Sigma Chem. Co., St Louis, MO)で処理する。さらに15分間攪拌した後、2Nの臭化水素酸の滴下を用いてpHを4に調整する。室温でさらに1時間後、混合物を分子量カットオフ10,000ダルトンの膜中で水に対して透析して副生成物を除去する(なお、3〜16時間の5回の透析の間で、4回透析物液を交換する)。この生成物の溶液を凍結乾燥により蒸発乾燥させて標題の化合物を回収し、次にこれをアミノ基置換レベルに関して標準的なTNBS(トリニトロベンゼンスルホン酸)アッセイにより分析する。生成物をさらに、In−11/非放射性インジウム標準液を過剰量で加えたサンプルを正確に秤量したものを放射性標識し、標識混合物中の非結合インジウムに対するインジウム取り込み量を求めることにより、DTPAキレート含量に関して分析する。
【0061】
b)上記8a)で調製したDTPA−ポリ−(L−リジン)を、1:5の比のY−90:利用可能なDTPA残基を用い(これらはインジウム結合アッセイから求める)、Y−90で放射性標識する。標識は、0.25M酢酸アンモニウムバッファー(pH5.4)中、室温で15分間行う。次にこの標識混合物を1当量のインジウムクロリドで処理し、室温でさらに15分間放置する。Y−90(インジウム−DTPA)−ポリ−(L−リジン)はサイズ排除クロマトグラフィーにより精製して過剰量のインジウム金属を除去してもよいし、あるいはさらなる精製を行わずに用いてもよい。このY−90−(インジウム−DTPA)−ポリ−(L−リジン)はそのまま注射するか、あるいは注射または注入用にさらに希釈する。
【0062】
例9:β放出放射性核種を用いたプレミックス二重特異性抗体媒介放射免疫治療による膀胱癌患者の治療
表在性の膀胱癌を有する68歳の男性患者を、例1の二重特異性抗体hMN−14×679−F(ab’)[抗CEA×抗HSG]と例3のキャリアーフリーY−9−IMP 241二価ハプテンの1:1モル混合物で処置した。予め混合物した放射免疫治療薬を局所麻酔下で挿入した尿道カテーテルを介して膀胱へ導入した。注射に先立ち、膀胱を完全に排出させ、0.9%NaCl70mL中、70mLの複合体(20mgの二重特異性抗体と二価ハプテンに結合された10mCiのY−90を含む)を点滴し、90分間、腫瘍組織と結合させて局在させた。次に、結合しなかった放射性標識二重特異性抗体混合物を、50mLの0.9%NaClを用いて膀胱を洗浄することで、膀胱から尿道を経て排泄させ、投与した放射活性のうち実質的に腫瘍細胞に結合したものだけが留まるようにした。72時間後、患者を手術室に移し、顕微鏡的に正常な尿路系上皮と膀胱腫瘍の生検を採取した。尿路系上皮は下層にある筋層から分離し、腫瘍および正常組織の放射活性の測定が可能なβシンチレーションカウンターにてアッセイした後、これらの調製物を組織病理学的評価のためにホルマリン中で固定した。腫瘍:正常組織の放射活性に関しては計数値6:1比が認められ、組織学的標本は、比較的無傷な正常尿路系上皮に対し、腫瘍部位では著しい崩壊および壊死領域を示し、選択的な腫瘍溶解の誘導が示唆された。その後3ヶ月にわたる患者の膀胱鏡検査では、明確な癌部位がおよそ50%を超えて減少および吸収されたことを示した。患者には最初の処置後6ヶ月でこの処置を繰り返し、さらに約30%の疾病改善を示した。最初の処置から1年の時点で膀胱鏡検査を行ったところ、数個の小さな、明らかな癌病巣が存在することが分かったが、これらは観察期間中、大きくなったようには見えず、患者は膀胱の不快感を感じたり、または尿に血液の痕跡があったりする徴候も最小となったものと思われた。
【0063】
例10:β放出放射性核種を用いたプレターゲッティング二重特異性抗体媒介放射免疫治療による膀胱癌患者の治療
再発性膀胱癌を有する別の患者を、抗hMN−14×抗インジウム−DTPA二重特異性抗体からなる二重特異性抗体で、前記例と同様に薬剤を尿道から膀胱へ直接導入することにより処置した。その後2時間の間、定期的に患者に排尿させ、抗原に結合しなかった二重特異性抗体を器官からクリアリングした。特異的ターゲッティングとクリアランスを見込んだ2時間後、上記例5のRe−188−IMP 192を40mCiの用量で患者に静脈注入した。Re−188放射性標識ペプチドは腎臓を経て膀胱から迅速にクリアリングし、そこに保持されているプレターゲッティング二重特異性抗体と結合するが、一方、捕捉されていない余分なRe−188IMP 192は患者から排泄される。患者はこの手順を十分許容し、6週間後、膀胱鏡検査とともに生検を採取したところ、癌部位の大きさおよび数の減少の形跡が見られ、採取した生検では選択的腫瘍細胞壊死が確認された。
【0064】
例11:α放出放射性核種を用いたプレターゲッティング二重特異性抗体媒介放射免疫治療による膀胱癌患者の治療
浸潤性膀胱癌を示す患者を、抗EGFR×抗HSG二重特異性抗体からなる二重特異性抗体で、例9で示すように薬剤を尿道から膀胱へ直接導入することにより処置した。6時間、二重特異性抗体を局在させ、尿としてクリアリングさせた後、上記例6のAc−225−IMP 241組成物もまた尿道から膀胱へ導入した。1時間内に、予め導入された抗HSG抗体アームの総ての利用可能な部位は導入されたAc−225−IMP 241を捕捉した。残留Ac−225−IMP 241は、クリアランス過程を加速するための液体を付加的に投与することで尿道から排泄された。
【0065】
例12:α放出放射性核種を用いたプレターゲッティング二重特異性抗体媒介放射免疫治療による膀胱癌患者の治療
浸潤性膀胱癌を示す患者を、抗hMN−14×抗HSGE二重特異性抗体からなる二重特異性抗体で、薬剤を尿道から膀胱へ直接導入することにより処置した。6時間、二重特異性抗体を局在させ、尿としてクリアリングさせた後、上記例7のAc−225−IMP 241組成物もまた尿道から膀胱へ導入した。1時間内に、予め導入された抗HSG抗体アームの総ての利用可能な部位は導入されたAc−225−IMP 241を捕捉した。残留Ac−225−IMP 241は、クリアランス過程を加速するための0.9%NaCl50mLを投与することで尿道から排泄された。
【0066】
例13:放射免疫検出による局在の定量後のプレターゲッティング二重特異性抗体媒介放射免疫治療による膀胱癌患者の治療
再発性膀胱癌を有する患者を、抗MUC−1×抗インジウム−DTPAアームを有するI−131放射性ヨウ素化二重特異性抗体で、薬剤を尿道から膀胱へ直接導入することにより処置した。その後2時間の間、定期的に患者に排尿させ、抗原に結合しなかった二重特異性抗体を器官からクリアリングした。特異的ターゲッティングとクリアランスを見込んだ2時間後、平板または単光子放出コンピュータ断層(SPECT)技術を用いた放射免疫検出により患者をイメージングし、罹患膀胱組織に保持されるI−131の範囲およびを投与量に対して見られた数値比から割り出した。次に上記例4のRe−188−IMP 192を、事前の定量的放射免疫イメージングの結果から予め算出した投与量で、尿道から患者に投与した。わずかに余分なRe−188IMP 192を通常の経路で患者からクリアリングさせた。スキャンの結果、48時間の時点でのイメージングで、既知の病巣がある膀胱の領域に近似して放射性同位元素が特異的に局在することを示し、このスキャンから、腫瘍:非腫瘍比が4:1〜8:1の範囲にあることが割り出された。
【0067】
本発明の組成物および方法を好ましい態様について記載してきたが、本発明の概念、精神および範囲を逸脱せずに、本明細書に記載の組成物、および方法の工程または工程の順序に変更をなし得ることは明らかである。もっと具体的には、化学的および生理学的の両面で関連のある特定の薬剤は、同じまたは類似の結果が達成される限り、本明細書に記載の薬剤の代わりとすることができるのは明らかである。このような類似の置換および改変は総て、付属の特許請求の範囲で定義される本発明の精神、範囲および概念の範囲内にあると考えられる。本願に挙げられた総ての参照文献は総てのテキスト、例示および図面を含め、引用することにより本明細書の一部とされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者において膀胱癌を治療する方法であって、
(a)膀胱癌抗原と結合する少なくとも1つのターゲッティングアームと、1以上の治療薬に結合されたキャリヤーと結合する少なくとも1つの捕捉アームとを含んでなる、多重特異性抗体の治療上有効な量を、尿道を介して投与し、該多重特異性抗体を膀胱癌の部位に局在させて、遊離の多重特異性抗体を患者から実質的にクリアリングさせ、かつ
(b)1以上の治療薬に結合された治療上有効な量のキャリヤーを投与する
ことを含んでなる、方法。
【請求項2】
投与が尿道を介する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1以上の治療剤に結合された該キャリヤーを投与する前に、膀胱に局在した多重特異性抗体の量を決定することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
膀胱に局在した多重特異性抗体の量を、排泄物から回収される多重特異性抗体の量を定量することにより決定する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
膀胱に局在した多重特異性抗体の量を、患者をイメージングすることにより決定し、かつ、多重特異性抗体がトレーサー核種をさらに含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
多重特異性抗体が1以上の抗体フラグメントまたはサブフラグメントを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
多重特異性抗体が、IgG×Fab’、IgG×sFv、F(ab’)×Fab’、Fab’×Fab’、Fab’×sFv、(sFv×sFv)、sFv×sFv、二重特異性抗体(diabodies)、三重特異性抗体(triabodies)、四重特異性抗体(tetrabodies)、および、五重特異性抗体(quintabodies)からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
多重特異性抗体が1を超えるターゲッティングアームを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該1を超えるターゲッティングアームがF(ab’)×Fab’である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
膀胱癌抗原が、癌胎児性抗原(CEA)、CD44、MUC−1、MUC−2、MUC−3、MUC−4;Le−y、TAG−72、IL−6、上皮細胞糖タンパク質(EGP)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、腫瘍壊死物質、およびヒト乳汁脂肪グロブリン抗原(HMFG1およびHMFG2)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
トレーサー核種が、F−18、Ga−67、Ga−68、Tc−99m、In−111、I−123およびI−131、またはガドリニウムからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
治療薬が、Sc−47、Ga−67、Y−90、Ag−111、In−111、Sm−153、Tb−166、Lu−177、Bi−213、Ac−225、Cu−64、Cu−67、Pd−109、Ag−111、Re−186、Re−188、Pt−197、Bi−212、Bi−213、Pb−212またはRa−223からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
キャリヤー分子が、構造[HSG]−ポリマー主鎖−[DOTA−治療薬](ここで、HSGは認識ハプテンを含んでなり、m≧1かつn≧1である)のポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
m=1または2である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
nが1〜約100である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
キャリヤー分子が生体適合性ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
キャリヤー分子がポリアミノ酸またはポリペプチドであり、ここでアミノ酸は、D型、L型、または双方である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
キャリヤー分子が、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリ(Lys−Glu)コポリマー、ポリ(Lys−Asp)コポリマー、ポリ(Lys−Ala−Glu−Tyr)(KAEY;5:6:2:1)コポリマーまたは2〜50の残渣長のポリペプチドからなる群から選択されるポリアミノ酸またはポリペプチドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
キャリヤー分子が、ポリ(エチレン)グリコール(PEG)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HMPA)コポリマー、ポリ(スチレン−コ−マレイン酸/無水物(SMA)、ポリ(ジビニルエーテルマレイン酸無水物)(DIVEMA)、ポリエチレンイミン、エトキシル化ポリエチレンイミン、デンドリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)ε−[ヒスタミニル−スクシニル−グリシル]−リジンアミド、および、p−ブロモアセタミド−ベンジル−DTPAに結合されたアポ−メタロチオネインからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
キャリヤー分子が、それに対して二次認識抗体が惹起され得る免疫剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
治療を必要とする患者において膀胱癌を治療する方法であって、
(i)治療薬に結合したキャリヤーを含んでなる、複合体、および
(ii)膀胱癌抗原と結合するターゲッティングアームと、治療薬のキャリヤーと結合する捕捉アームとを含んでなる、多重特異性抗体
を患者に投与することを含んでなる、方法。
【請求項22】
多重特異性抗体および複合体が、投与前に混合される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
多重特異性抗体および複合体が、実質的にキャリヤーを含まない形態で調製される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抗体および複合体を、およそ等モル比で混合する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
結合しなかった組成物を、患者から実質的にクリアリングさせることをさらに含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
多重特異性抗体の投与が患者の膀胱の尿道を介する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
多重特異性抗体を、排泄によって患者の尿道からクリアリングさせる、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
多重特異性抗体が、カテーテルからクリアリングされる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
治療薬が、静脈投与されるか、または患者の膀胱の尿道を介して投与されるか、あるいは両方法により投与される、請求項1または21に記載の方法。
【請求項30】
治療薬が患者の膀胱の尿道を介して投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
治療薬が種々の間隔で患者の膀胱の尿道を介して投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
治療を必要とする患者において膀胱癌を治療する方法であって、
(a)膀胱癌抗原と結合する少なくとも1つのターゲッティングアームと、治療薬のキャリヤーと結合する少なくとも1つの捕捉アームとを含んでなる、多重特異性抗体の治療上有効な量を投与し、該多重特異性抗体を膀胱癌の部位に局在させて、非ターゲッティング多重特異性抗体を患者から実質的にクリアリングさせ、かつ
(b)治療上有効な量の該治療薬を投与する
ことを含んでなる、方法。
【請求項33】
(a)の前に、治療薬キャリヤーと治療薬の複合体を実質的にキャリヤーを含まない形態で調製することをさらに含んでなる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
多重特異性抗体または治療薬または両者が、尿道を介して投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
治療薬が該キャリヤーに実質的に等モル比で結合される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
(b)の前に、膀胱に局在した多重特異性抗体の量を決定することをさらに含んでなる、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
膀胱に局在した多重特異性抗体の量を、排泄物から回収される多重特異性抗体の量を定量することにより決定する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
膀胱に局在した多重特異性抗体の量を、患者をイメージングすることにより決定し、かつ、多重特異性抗体がトレーサー核種をさらに含んでなる、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
多重特異性抗体が1以上のフラグメントまたはサブフラグメントである、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
多重特異性抗体が、IgG×Fab’、IgG×sFv、F(ab’)×Fab’、Fab’×Fab’、Fab’×sFv、(sFv×sFv)、sFv×sFv、二重特異性抗体(diabodies)、三重特異性抗体(triabodies)、四重特異性抗体(tetrabodies)、および、五重特異性抗体(quintabodies)からなる群から選択されるフラグメントまたはサブフラグメントである、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
多重特異性抗体が1を超えるターゲッティングアームを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
該1を超えるターゲッティングアームがF(ab’)×Fab’である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
該膀胱癌抗原が、癌胎児性抗原(CEA)、CD44、MUC−1、MUC−2、MUC−3、MUC−4;Le−y、TAG−72、IL−6、上皮細胞糖タンパク質(EGP)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、腫瘍壊死物質、およびヒト乳汁脂肪グロブリン抗原(HMFG1およびHMFG2)からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
トレーサー核種が、F−18、Ga−67、Ga−68、Tc−99m、In−111、I−123およびI−131、またはガドリニウムからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
治療薬が、Sc−47、Ga−67、Y−90、Ag−111、In−111、Sm−153、Tb−166、Lu−177、Bi−213、Ac−225、Cu−64、Cu−67、Pd−109、Ag−111、Re−186、Re−188、Pt−197、Bi−212、Bi−213、Pb−212またはRa−223からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
キャリヤー分子が、構造[HSG]−ポリマー主鎖−[DOTA−治療薬](ここで、HSGは認識ハプテンを含んでなり、m≧1かつn≧1である)のポリマーである、請求項32に記載の方法。
【請求項47】
m=1または2である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
nが1〜約100である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
キャリヤー分子が生体適合性ポリマーである、請求項32に記載の方法。
【請求項50】
キャリヤー分子がポリアミノ酸またはポリペプチドであり、ここでアミノ酸はD型、L型、または双方である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
キャリヤー分子が、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリ(Lys−Glu)コポリマー、ポリ(Lys−Asp)コポリマー、ポリ(Lys−Ala−Glu−Tyr)(KAEY;5:6:2:1)コポリマーまたは2〜50の残渣長のポリペプチドからなる群から選択されるポリアミノ酸またはポリペプチドである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
キャリヤー分子が、ポリ(エチレン)グリコール(PEG)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HMPA)コポリマー、ポリ(スチレン−コ−マレイン酸/無水物(SMA)、ポリ(ジビニルエーテルマレイン酸無水物)(DIVEMA)、ポリエチレンイミン、エトキシル化ポリエチレンイミン、デンドリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)ε−[ヒスタミニル−スクシニル−グリシル]−リジンアミド、および、p−ブロモアセタミド−ベンジル−DTPAに結合されたアポ−メタロチオネインからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
キャリヤー分子が、それに対して二次認識抗体が惹起され得る免疫剤である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
治療薬が、毒素、化学療法薬、または1以上のハプテンに結合された化学療法薬である、請求項1、21または32に記載の方法。
【請求項55】
薬剤として用いるための、膀胱癌抗原と結合する少なくとも1つのターゲッティングアームと、1以上の治療薬に結合されたキャリヤーと結合する少なくとも1つの捕捉アームとを含んでなる、多重特異性抗体の治療上有効な量を含んでなる、組成物。
【請求項56】
膀胱癌の治療に向けた薬剤の製造において用いるための、膀胱癌抗原と結合する少なくとも1つのターゲッティングアームと、1以上の治療薬に結合されたキャリヤーと結合する少なくとも1つの捕捉アームとを含んでなる、多重特異性抗体の治療上有効な量を含んでなる組成物の使用。

【公表番号】特表2006−501157(P2006−501157A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−508850(P2004−508850)
【出願日】平成15年6月2日(2003.6.2)
【国際出願番号】PCT/GB2003/002387
【国際公開番号】WO2003/101496
【国際公開日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】