説明

膀胱癌特異的なメチル化マーカー遺伝子を利用した膀胱癌診断用キット及びチップ

【課題】本発明は膀胱癌特異的なマーカー遺伝子を利用した膀胱癌診断用キット及び核酸チップに関し、より具体的には、膀胱癌形質転換細胞においてプロモーター部位またはエクソン部位が特異的にメチル化される膀胱癌特異的マーカー遺伝子のプロモーターメチル化を確認できる膀胱癌診断用キット及び核酸チップに関する。
【解決手段】本発明の診断用キット及び診断用核酸チップを利用すると、膀胱癌を初期形質転換段階において診断でき、早期診断が可能であり、通常的な方法より正確かつ早く膀胱癌を診断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膀胱癌特異的なマーカー遺伝子を利用した膀胱癌診断用キット及び核酸チップに関し、より具体的には膀胱癌形質転換細胞においてプロモーター部位が特異的にメチル化される膀胱癌特異的マーカー遺伝子のプロモーターメチル化を確認できる膀胱癌診断用キット及び核酸チップに関する。
【背景技術】
【0002】
膀胱癌は泌尿器系癌のうち最も多発する癌であり、発生原因の多くは明らかになった。主に喫煙や多様な化学物質(革などの染色塗料、大気汚染物質、人工甘味料、硝酸塩)が体内に吸収された後、尿と共に排出され、膀胱壁を刺激して癌を誘発させると知られている。
【0003】
伝統的な膀胱癌検査としては尿から非正常細胞を探し出す方法を使用しているが、これは正確度が低い。また、カテーテルを膀胱に挿入して疑わしい組織を回収して検査する膀胱鏡検査は侵襲的手法であり比較的正確度が高い。
【0004】
一般に、膀胱癌は、早期診断されると患者の生存率が高くなるが、早期に膀胱癌を診断するのは容易ではないのが実情である。現在使用している膀胱癌診断法は、体の一部を切開する方法を利用しているが、これは膀胱癌を早期に診断するに当り困難がある。
【0005】
膀胱癌は膀胱筋層浸潤の有無により表在性または浸潤性癌に分類し、平均的に診断当時30%ほどの患者が浸潤性膀胱癌に該当する。従って、患者の生存期間を延ばすためには病変範囲が小さい時に早期診断するのが最良の方法であるため、既存の各種膀胱癌診断方法より効率的な診断方法、即ち、膀胱癌の早期診断が可能で、かつ大容量に検体を処理でき、感度及び特異性が高い膀胱癌特異的バイオマーカーの開発が強く求められるのが実情である。
【0006】
そこで、近年DNAメチル化測定を通して癌を診断する方法が提示されているが、DNAメチル化は、主に特定遺伝子のプロモーター部位のCpG島(CpG island)のシトシン(cytosine)から生じ、それによって転写因子の結合が妨げられて特定の遺伝子の発現が遮断されるもので、腫瘍抑制遺伝子のプロモーターCpG島のメチル化を探すのが癌研究に大きな助けになり、これをメチル化特異PCR(methylation specific PCR,以下、「MSP」という)や自動塩基分析等の方法で検査して、癌の診断とスクリーニング等に利用しようとする試みが活発に行われている。
【0007】
プロモーターCpG島のメチル化が発癌を直接誘発するのか、または発癌の2次的な変化を起こすのかについては様々な論議があるが、多くの癌から腫瘍抑制遺伝子(tumor suppressor gene)、DNA修復遺伝子(DNA repair gene)、細胞周期調節遺伝子等が過剰メチル化(hyper-methylation)されており、これらの遺伝子の発現が遮断されていることが確認され、特に癌発生の初期段階において特定遺伝子のプロモーター部位に過剰メチル化が生じることが知られている。
【0008】
従って、腫瘍関連遺伝子のプロモーターメチル化が癌の重要な指標であり、これを癌の診断及び早期診断、発癌危険の予測、癌の予後予測、治療後の追跡調査(follow-up)、抗癌療法に対する反応予測など、多方面において利用することができる。実際、血液や喀痰、唾、大便、尿等から腫瘍関連遺伝子のプロモーターメチル化を調べて、各種癌診療に使用しようとする試みが最近活発に行われている(Esteller, M. et al., Cancer Res., 59: 67, 1999; Sanchez-Cespedez, M. et al., Cancer Res., 60: 892, 2000; Ahlquist, D.A. et al., Gastroenterol., 119: 1219, 2000)。
【0009】
そこで、本発明者らは膀胱癌を効果的に診断できる診断用キットを開発しようと鋭意努力した結果、膀胱癌細胞において特異的にメチル化されるメチル化関連遺伝子のプロモーターをバイオマーカーとして用い、メチル化の程度を測定することによって、膀胱癌を診断できることを確認して本発明の完成に至った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Esteller, M. et al., Cancer Res., 59: 67, 1999
【非特許文献2】Sanchez-Cespedez, M. et al., Cancer Res., 60: 892, 2000
【非特許文献3】Ahlquist, D.A. et al., Gastroenterol., 119: 1219, 2000
【非特許文献4】Fraga et al., 2003, Nucleic Acid Res., 31: 1765-1774
【非特許文献5】Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY., 1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、膀胱癌マーカー遺伝子のメチル化されたプロモーター、またはエクソン部位を含有する膀胱癌診断用キットを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、前記膀胱癌特異的マーカー遺伝子のCpG島を含む断片とハイブリダイゼーションできるプローブを含む膀胱癌診断用核酸チップを提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、臨床サンプル由来遺伝子のプロモーターまたはエクソン部位メチル化の有無を測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は(1)CDX2(NM_001265)−尾側型ホメオボックス転写因子2(caudal type homeobox transcription factor 2);(2)CYP1B1(NM_000104)−シトクロムP450,ファミリー1,サブファミリーB,ポリペプチド1(cytochrome P450, family 1, subfamily B, polypeptide 1);(3)VSX1(NM_199425)−ビジュアルシステムホメオボックス1類似体,CHX10−類似(ゼブラフィッシュ)(visual system homeobox 1 homolog, CHX10-like (zebrafish));(4)HOXA11(NM_005523)−ホメオボックスA11(homeobox A11);(5)T(NM_003181)−T,ブラキュウリー類似体(マウス)(T, brachyury homolog (mouse));(6)TBX5(NM_080717)−T−ボックス5(T-box 5);(7)PENK(NM_006211)−プロエンケファリン(proenkephalin);(8)PAQR9(NM_198504)−プロゲスチン及びアディポネクチン受容体ファミリーメンバーIV(progestin and adipoQ receptor family member IV);(9)LHX2(NM_004789)−Limホメオボックス2(LIM Homeobox 2);及び(10)SIM2(U80456)−シングル−マインディドホモログ2(ショウジョウバエ)(single-minded homolog 2 (Drosophila))からなる群から選択される膀胱癌マーカー遺伝子のメチル化されたプロモーター、またはエクソン部位を含有する膀胱癌診断用キットを提供する。
【0015】
本発明は、また、(1)CDX2(NM_001265)−尾側型ホメオボックス転写因子2(caudal type homeobox transcription factor 2);(2)CYP1B1(NM_000104)−シトクロムP450,ファミリー1,サブファミリーB,ポリペプチド1(cytochrome P450, family 1, subfamily B, polypeptide 1);(3)VSX1(NM_199425)−ビジュアルシステムホメオボックス1類似体,CHX10−類似(ゼブラフィッシュ)(visual system homeobox 1 homolog, CHX10-like (zebrafish));(4)HOXA11(NM_005523)−ホメオボックスA11(homeobox A11);(5)T(NM_003181)−T,ブラキュウリー類似体(マウス)(T, brachyury homolog (mouse));(6)TBX5(NM_080717)−T−ボックス5(T-box 5);(7)PENK(NM_006211)−プロエンケファリン(proenkephalin);(8)PAQR9(NM_198504)−プロゲスチン及びアディポネクチン受容体ファミリーメンバーIV(progestin and adipoQ receptor family member IV);(9)LHX2(NM_004789)−Limホメオボックス2(LIM Homeobox 2);及び(10)SIM2(U80456)−シングル−マインディドホモログ2(ショウジョウバエ)(single-minded homolog 2 (Drosophila))からなる群から選択される膀胱癌マーカー遺伝子のプロモーター、またはエクソン部位CpG島を含む断片とハイブリダイゼーションできるプローブを含む膀胱癌診断用核酸チップを提供する。
【0016】
本発明は、また、CDX2、CYP1B1、VSX1、HOXA11、T、TBX5、PENK、PAQR9、LHX2及びSIM2からなる群から選択される臨床サンプル由来遺伝子のプロモーターまたはエクソンのメチル化を検出する方法を提供する。
本発明の他の特徴及び具現例は次の詳細な説明及び添付された特許請求範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】正常なヒトと膀胱癌患者の尿中の細胞からCpGマイクロアレイ分析による、膀胱癌診断のためメチル化バイオマーカーを発見する過程を示した模式図である。
【図2】膀胱癌細胞株において10個のメチル化バイオマーカーのパイロシーケンスによる定量的なメチル化の程度を示す。
【図3】10個のバイオマーカー遺伝子の臨床試料でのメチル化指数を測定した。10個の遺伝子を利用して、正常、膀胱炎、血尿、及び膀胱癌患者の尿中の細胞におけるメチル化の程度を測定した。
【図4】10個のメチル化バイオマーカーの各々の膀胱癌診断に対する感度(sensitivity)及び特異性(specificity)を受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic,ROC)カーブ分析によって測定した。
【図5】正常なヒト及び膀胱癌患者尿中の細胞でのメチル化陽性頻度を示した。
【図6】ロジスティック回帰分析を利用して、10個のバイオマーカーの中、膀胱癌診断のための最適6個のバイオマカーパネルのメチル化状態プロファイルと膀胱癌診断に対する感度及び特異性を示した。
【図7】メチル化DNA特異的結合蛋白質(MBD)を利用して、膀胱癌メチル化バイオマーカーであるSIM2遺伝子のメチル化の有無を膀胱癌細胞株においてPCR方法により測定した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は一側面において、膀胱癌マーカー遺伝子のメチル化されたプロモーターまたはエクソン部位を含有する膀胱癌診断用キットに関する。
【0019】
本発明は他の側面において、膀胱癌マーカー遺伝子のプロモーターまたはエクソン部位CpG島を含む断片とハイブリダイゼーションできるプローブを含む膀胱癌診断用核酸チップに関する。
【0020】
本発明において、前記プロモーターまたはエクソン部位は少なくとも一つのメチル化されたCpGジヌクレオチドを含有するのを特徴とし、前記プロモーターまたはエクソン部位は配列番号31〜配列番号40で表されるDNA塩基配列のいずれか一つであることを特徴とする。
【0021】
本発明において、前記プローブは望ましくは10bp〜1kbの大きさを有し、膀胱癌マーカー遺伝子のプロモーターまたはエクソン部位CpG島を含む塩基配列とハイブリダイゼーションできるほどの相同性を有するのが望ましく、さらに望ましくは10bp〜100bpの大きさを有し、膀胱癌マーカー遺伝子のプロモーターまたはエクソン部位CpG島を含む塩基配列と厳格な条件でハイブリダイゼーションできるほどの相同性を有することを特徴とする。プローブの大きさが10bp以下であると、非特異的ハイブリタイゼーション化が起き、1kb以上であると、プローブ同士の結合が発生して、ハイブリダイゼーション結果を読み取り難くなる。
【0022】
本発明によるメチル化マーカー遺伝子をスクリーニングする方法は次の工程を含む:(a)形質転換細胞及び非形質転換細胞からゲノムDNAを分離する工程;(b)前記分離したゲノムDNAからメチル化されたDNAに結合する蛋白質と反応させてメチル化されたDNAを分離する工程;及び(c)前記メチル化されたDNAを増幅させた後、CpGマイクロアレイにハイブリダイゼーションした後、正常細胞と癌細胞との間のメチル化の程度の差が最も大きい遺伝子をメチル化マーカー遺伝子として選定する工程。
【0023】
前記メチル化バイオマーカー遺伝子の選別方法で膀胱癌だけでなく、膀胱癌へ進行中の多様な異形症段階(dysplastic stages)において多様にメチル化される遺伝子を探し出すことができ、選別された遺伝子は膀胱癌スクリーニング、危険性評価、予測、病名確認、疾病のステージング、及び治療ターゲットの選定にも使用できる。
【0024】
膀胱癌及び多くの段階における異常からメチル化される遺伝子を確認することは、正確かつ効果的に膀胱癌を早期診断できるようにし、多重遺伝子を使用したメチル化データの確立及び治療のための新しいターゲットが同定できる。さらに、本発明によるメチル化データは他の非メチル化関連バイオマーカー検出方法と連係するとより一層正確な膀胱癌診断システムを確立できる。
【0025】
本発明の前記方法で、検体から得られた一つ以上の核酸バイオマーカーのメチル化工程を決めることによって、多くの段階の膀胱癌進行を診断することができる。膀胱癌の各段階の検体から分離された核酸のメチル化工程を膀胱組織の細胞増殖性異常を持たない検体から得られた一つ以上の核酸のメチル化工程と比較して、検体の膀胱癌の特定段階を確認できる。前記メチル化工程はハイパーメチル化であってもよい。
【0026】
本発明の一例において、核酸は遺伝子の調節部位においてメチル化できる。他の例において、メチル化は遺伝子の調節部位外から始まって、内部に進行されるため、調節部位外でメチル化を検出することにより細胞形質転換に係わる遺伝子を早期診断することができる。
【0027】
他の例において、本発明においては次の例の中一つ以上の核酸のメチル化状態をキットまたは核酸チップを利用して検出することによって、検体に存在する膀胱組織の細胞成長性異常(異形症)を診断することができる:CDX2(NM_001265、尾側型ホメオボックス転写因子2、caudal type homeobox transcription factor 2);CYP1B1(NM_000104、シトクロムP450,ファミリー1,サブファミリーB,ポリペプチド1、cytochrome P450, family 1, subfamily B, polypeptide 1);VSX1(NM_199425、ビジュアルシステムホメオボックス1類似体,CHX10−類似(ゼブラフィッシュ)、visual system homeobox 1 homolog, CHX10-like (zebrafish));HOXA11(NM_005523、ホメオボックスA11、homeobox A11);T(NM_003181、T,ブラキュウリー類似体(マウス)、T, brachyury homolog (mouse));TBX5(NM_080717、T−ボックス5、T-box 5);PENK(NM_006211、プロエンケファリ、proenkephalin);及びPAQR9(NM_198504、プロゲスチン及びアディポネクチン受容体ファミリーメンバーIV、progestin and adipoQ receptor family member IV);LHX2(NM_004789)−Limホメオボックス2(LIM Homeobox 2);SIM2(U80456)−シングル−マインディドホモログ2(ショウジョウバエ)(single-minded homolog 2 (Drosophila));遺伝子及びこれらの組合せ。
【0028】
本発明の診断用キットまたは核酸チップを利用すると検体の膀胱組織の細胞成長性異常指向(異形症進行度)を決められる。前記方法は検体から分離した一つ以上の核酸のメチル化状態を決めることを含み、前記一つ以上の核酸のメチル化工程は、膀胱組織の細胞成長性異常指向(異形症)がない検体から分離した核酸のメチル化工程と比較することを特徴とする。
【0029】
例えば、核酸はCDX2(NM_001265、尾側型ホメオボックス転写因子2、caudal type homeobox transcription factor 2);CYP1B1(NM_000104、シトクロムP450,ファミリー1,サブファミリーB,ポリペプチド1、cytochrome P450, family 1, subfamily B, polypeptide 1);VSX1(NM_199425、ビジュアルシステムホメオボックス1類似体,CHX10−類似(ゼブラフィッシュ)、visual system homeobox 1 homolog, CHX10-like (zebrafish));HOXA11(NM_005523、ホメオボックスA11、homeobox A11);T(NM_003181、T,ブラキュウリー類似体(マウス)、T, brachyury homolog (mouse));TBX5(NM_080717、T−ボックス5、T-box 5);PENK(NM_006211、プロエンケファリン、proenkephalin);及びPAQR9(NM_198504、プロゲスチン及びアディポネクチン受容体ファミリーメンバーIV、progestin and adipoQ receptormember IV);LHX2(NM_004789)−Limホメオボックス2(LIM Homeobox 2);SIM2(U80456)−シングル−マインディドホモログ2(ショウジョウバエ)(single-minded homolog 2 (Drosophila));遺伝子及びこれの組合せを挙げられる。
【0030】
本発明のさらに他の実施の形態においては、前記メチル化遺伝子マーカーを利用して、膀胱癌を形成する可能性がある細胞の早期診断が可能である。癌細胞においてメチル化されると確認された遺伝子が臨床的、または形態学的に正常と見られる細胞でメチル化されると、前記正常と見られる細胞は癌化が進行している。従って、正常と見られる細胞での膀胱癌特異的遺伝子がメチル化を確認することで、膀胱癌を早期診断することができる。
【0031】
本発明のメチル化マーカー遺伝子を利用すると、検体から膀胱組織の細胞成長性異常(異形成進行)を検出することができる。前記方法は検体から分離した一つ以上の核酸を含む試料を一つ以上のメチル化状態を決定できる試薬と接触させるのを含む。前記方法は一つ以上の核酸から一つ以上の部位のメチル化状態を確認することを含み、前記核酸のメチル化状態は膀胱組織の細胞成長性異常(異形性進行)を有しない検体の核酸での同じ部位のメチル化状態と差があることを特徴とする。
【0032】
本発明のさらに他の実施の形態においては、前記キットまたは核酸チップを利用して、マーカー遺伝子のメチル化を調べることによって、形質転換された膀胱癌細胞を確認できる。
【0033】
本発明のさらに他の実施の形態においては、前記キットまたは核酸チップを利用して、マーカー遺伝子のメチル化を調べることによって、膀胱癌を診断することができる。
【0034】
本発明のさらに他の実施の形態においては正常表現型を表すサンプルを利用して、前記キットまたは核酸チップを利用して、マーカー遺伝子のメチル化を調べることによって、膀胱癌に進行される可能性を診断することができる。前記サンプルとしては固体または液体組織、細胞、尿、血清またはプラズマが用いることができる。
【0035】
本発明はさらに他の側面において、臨床サンプル由来遺伝子プロモーターのメチル化を検出する方法に関する。
【0036】
本発明において、前記メチル化測定方法は、PCR、メチル化特異PCR(methylation specific PCR)、リアルタイムメチル化特異PCR(real time methylation specific PCR)、メチル化DNA特異的結合蛋白質を利用したPCR、定量PCR、パイロシーケンス及びバイサルファイトシーケンシングからなる群から選択されることを特徴とし、前記臨床サンプルは、癌の疑いのある患者または診断対象由来の組織、細胞、血液または尿であることが好ましい。
【0037】
本発明において、前記遺伝子のプロモーターメチル化の有無を検出する方法は次の工程を含む:(a)臨床サンプルからサンプルDNAを分離する工程;(b)前記分離したDNAをCDX2、CYP1B1、VSX1、HOXA11、T、TBX5、PENK、PAQR9、LHX2及びSIM2からなる群から選択される遺伝子プロモーターのCpG島を含む断片を増幅できるプライマーを使用して増幅する工程;及び(c)前記(b)工程において増幅された結果の生成有無を基にプロモーターのメチル化の有無を決める工程。
【0038】
本発明のさらに他の実施の形態においては膀胱癌から特異的にメチル化される遺伝子のメチル化頻度を調べ、膀胱癌進行の可能性を有する組織のメチル化頻度を定めることによって、組織の膀胱癌の発生の可能性を評価することができる。
【0039】
本発明において使用した「細胞形質転換」は正常から非正常に、非腫瘍性から腫瘍性に、未分化から分化に、幹細胞から非幹細胞になどのように細胞の特徴がある形態から他の形態に変わることを意味する。さらに、前記形質転換は細胞の形態、表現型、生化学的性質などによって認識される。
【0040】
本発明で癌の「早期診断」は、転移する前に癌の可能性を発見することであり、望ましくは検体組織または細胞において形態学的変化が観察される前に発見するものである。さらに、細胞形質転換の「早期診断」は、細胞が形質転換される形態になる前に初期工程において形質転換が生じる可能性が高いことをいう。
【0041】
本発明において「ハイパーメチル化」はCpG島のメチル化を意味する。
本発明において、「サンプル」または「検体サンプル」は、遂行される分析の種類によって、一人一人、体液、細胞株、組織培養などから得られる全ての生物学的サンプルを含む幅広い範囲におけるサンプルを意味する。ほ乳動物から体液及び組織生検を獲得する方法は通常広く知られている。望ましいソースは膀胱の生検(biopsy)である。
【0042】
メチル化調節バイオマーカーのスクリーニング
本発明においては、細胞または組織が形質転換されたり細胞の形態が異なる形態に変化する際にメチル化されるバイオマーカー遺伝子をスクリーニングした。ここで、「形質転換」細胞は正常形態が非正常形態に、非腫瘍性が腫瘍性に、未分化形態が分化形態に変わるなどの細胞または組織の形態が異なる形態に変化することを意味する。
【0043】
本発明の一実施の形態においては、正常人及び膀胱癌患者の尿から尿中の細胞を分離した後、前記尿中の細胞からゲノムDNAを分離した。ゲノムDNAからメチル化されたDNAだけを獲得するために、前記ゲノムDNAをメチル化されたDNAに結合するMcrBtと反応させた後、McrBt蛋白質に結合するメチル化されたDNAを分離した。前記分離したMcrBt蛋白質に結合するメチル化されたDNAを増幅した後、正常人由来DNAはCy3で、膀胱癌患者由来DNAはCy5で標識した後、ヒトCpGマイクロアレイにハイブリダイゼーションさせ正常人と膀胱癌患者との間のメチル化の程度の差が最も大きい10個の遺伝子をバイオマーカーとして選択した。
【0044】
本発明においては前記10個のバイオマーカーがメチル化されたか否かを追加で確認するために、パイロシーケンスを行った。
【0045】
即ち、膀胱癌細胞株RT−4、J82、HT1197及びHT1376からトータルゲノムDNAを分離して、バイサルファイトで処理した。そして、バイサルファイトで転換されたゲノムDNAを増幅した。以後、前記増幅されたPCR産物は、パイロシーケンス行われメチル化の程度を測定した。その結果、前記10個のバイオマーカー遺伝子が全てメチル化されていたことを確認することができた。
【0046】
膀胱癌に対するバイオマーカー
本発明においては膀胱癌診断のためのバイオマーカーを提供する。
【0047】
膀胱癌に対するバイオマーカー−正常細胞との比較のための癌細胞の用途
本実施の形態において、「正常」細胞は非正常的細胞形態または細胞学的性質の変化を表さない細胞を意味する。「腫瘍」細胞は癌細胞を意味して、「非腫瘍」細胞は病症組織の一部であるが、腫瘍部位ではないと判断される細胞を意味する。
【0048】
本発明は一側面において、膀胱癌と次に記載された10個の遺伝子のプロモーターまたはエクソン部位ハイパーメチル化との間の関連性の発見に基づくものである:CDX2(NM_001265、尾側型ホメオボックス転写因子2、caudal type homeobox transcription factor 2);CYP1B1(NM_000104、シトクロムP450,ファミリー1,サブファミリーB,ポリペプチド1、cytochrome P450, family 1, subfamily B, polypeptide 1);VSX1(NM_199425、ビジュアルシステムホメオボックス1類似体,CHX10−類似(ゼブラフィッシュ)、visual system homeobox 1 homolog, CHX10-like (zebrafish));HOXA11(NM_005523、ホメオボックスA11、homeobox A11);T(NM_003181、T,ブラキュウリー類似体(マウス)、T, brachyury homolog (mouse));TBX5(NM_080717、T−ボックス5、T-box 5);PENK(NM_006211、プロエンケファリン、proenkephalin);及びPAQR9(NM_198504、プロゲスチン及びアディポネクチン受容体ファミリーメンバーIV、progestin and adipoQ receptor family member IV);LHX2(NM_004789)−LIMホメオボックス2(LIM Homeobox 2);SIM2(U80456)−シングル−マインディドホモログ2(ショウジョウバエ)(single-minded homolog 2 (Drosophila));遺伝子。
【0049】
本発明の診断用キット及び核酸チップの他の用途として、検体から分離した一つ以上の核酸のメチル化工程を定めて、検体の膀胱組織の細胞成長性異常を早期診断することができる。前記一つ以上の核酸のメチル化工程は膀胱組織の細胞成長性異常を有しない検体から分離した一つ以上の核酸のメチル化状態と比較することを特徴とする。核酸はCpG島のようなCpG−含有核酸であることが望ましい。
【0050】
本発明の診断用キット及び核酸チップの他の用途として、検体から分離した一つ以上の核酸のメチル化を決めることを含む検体の膀胱組織の細胞成長性異常素養を診断することができる。前記核酸はCDX2(NM_001265、尾側型ホメオボックス転写因子2、caudal type homeobox transcription factor 2);CYP1B1(NM_000104、シトクロムP450,ファミリー1,サブファミリーB,ポリペプチド1、cytochrome P450, family 1, subfamily B, polypeptide 1);VSX1(NM_199425、ビジュアルシステムホメオボックス1類似体,CHX10−類似(ゼブラフィッシュ)、visual system homeobox 1 homolog, CHX10-like (zebrafish));HOXA11(NM_005523、ホメオボックスA11、homeobox A11);T(NM_003181、T,ブラキュウリー類似体(マウス)、T, brachyury homolog (mouse));TBX5(NM_080717、T−ボックス5、T-box 5);PENK(NM_006211、プロエンケファリン、proenkephalin);及びPAQR9(NM_198504、プロゲスチン及びアディポネクチン受容体ファミリーメンバーIV、progestin and adipoQ receptor family IV);LHX2(NM_004789)−Limホメオボックス2(LIM Homeobox 2);SIM2(U80456)−シングル−マインディドホモログ2(ショウジョウバエ)(single-minded homolog 2 (Drosophila));遺伝子及びそれらの組合せをコーディングすることを特徴にし、前記一つ以上の核酸のメチル化工程は膀胱組織の細胞成長性異常に対する素養を有しない検体から分離した一つ以上の核酸のメチル化状態と比較することを特徴とする。
【0051】
前記「素養」は前記細胞成長性異常にかかりやすい性質を意味する。素養を有する検体は、まだ細胞成長性異常を有しないが、細胞成長性異常が存在したり、存在する傾向が増加した検体のことをいう。
【0052】
本発明は他の側面において、検体の核酸を含む試料を試料のメチル化状態を決定できる試薬と接触させて、一つ以上の核酸の一つ以上の部位のメチル化を確認するのを含む検体の膀胱組織の細胞成長性異常を診断する方法を提供する。ここで、一つ以上の核酸の一つ以上の部位のメチル化の状態が、細胞成長性異常を持たない検体の同じ核酸の同じ部位のメチル化の状態と違ったことが指標となる。
【0053】
本発明の方法は検体から分離した一つ以上の核酸の一つ以上の部位のメチル化を決める工程を含む。ここで、「核酸」または「核酸配列」は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドを意味したり、又はこれらのいずれかの断片、単鎖または二重鎖のゲノム起原または合成起原のDNAまたはRNA、センスまたはアンチセンス鎖のゲノム起原または合成起原のDNAまたはRNA、PNA(peptide nucleic acid)または自然起原または合成起原のDNA様またはRNA様物質をいう。核酸がRNAであると、デオキシヌクレオチドA、G、C及びTの代わりに、各々リボヌクレオチドA、G、C及びUに代替されることは当該分野において通常の知識を有する者には明らかである。
【0054】
互いに異なるようにメチル化されたCpG島の存在を検出できる核酸なら、いずれのものも使用できる。前記CpG島は核酸配列においてCpGが豊富な部位である。
【0055】
メチル化(methylation)
本発明における精製されたり精製されない形態のいかなる核酸も使用され、ターゲット部位(例えば、CpG−含有核酸)を含有する核酸配列を含有していたり含有すると疑われるいかなる核酸も使用可能である。差別的にメチル化できる核酸部位がCpG島であり、これは他のジヌクレオチドCpG核酸部位と比較して高いCpG密度を有する核酸配列である。二重(doublet)CpGはG*C塩基対の割合で予測した時、脊椎動物DNAにおいてただ20%程度の確率で現れる。特定部位において、二重CpGの密度はゲノムの他の部位と比較して、10倍も高い。CpG島は平均G*C比が約60%であり、普通のDNAのG*C比は平均40%を示す。CpG島は典型的に約1〜2kbの長さを有し、ヒトゲノムには約45,000個のCpG島が存在する。
【0056】
多様な遺伝子において、CpG島はプロモーターのアップストリーム(upstream)から始まって、ダウンストリームの転写部位まで拡張される。プロモーターにおけるCpG島のメチル化は普通遺伝子の発現を抑制させる。CpG島はさらに遺伝子コーディング部位の3’部位だけでなく、遺伝子コーディング部位の5’部位を囲める。従って、CpG島はプロモーター部位を含む調節部位のコーディング配列アップストリーム、コーディング部位(例えば、エクソン領域)、コーディング部位のダウンストリーム、例えば、インヘンス部位及びイントロンを含む多様な部位において発見される。
【0057】
通常、CpG−含有核酸はDNAである。しかし、本発明の方法は、例えば、DNAまたはDNAとmRNAを含むRNAを含有する試料を適用することができ、ここでDNAまたはRNAは単鎖または二重鎖であり、またはDNA−RNAハイブリッドを含有した試料であることができる。
【0058】
核酸混合物も使用できる。検出される特異的な核酸配列は大きい分子の分画であってもよく、最初から特異配列が全体核酸配列を構成する分離した分子形態で存在してもよい。前記核酸配列は純粋な形態で存在する核酸である必要はなく、核酸はトータルヒトDNAが含まれているように複雑な混合物内の小さい分画であってもよい。試料に含まれた核酸のメチル化の程度を測定するのに使用されたり、メチル化されたCpG島を検出するのに使用される試料に含まれた核酸はSambrookなど(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY., 1989)に記載された多様な方法で抽出される。
【0059】
核酸は情報をコードしたり核酸の転写を調節するDNA部位の調節部位を含むことができる。調節部位は少なくとも一つのプロモーターを含む。「プロモーター」は転写を指示するための必要最小限の配列で、プロモーター依存性遺伝子において細胞タイプ特異的、組織特異的、または外部シグナルや試薬による誘導性を調節することができる。プロモーターは遺伝子の5’または3’部位に位置する。プロモーター部位の全体的または部分的な核酸数は、CpG島部位のメチル化を測定するのに適用される。ターゲット遺伝子プロモーターのメチル化は外周辺から内部へ進行する。従って、細胞転換の初期工程はプロモーター部位の外周辺におけるメチル化を分析することによって検出することができる。
【0060】
検体から分離した核酸は検体の生物学的試料によって得られる。膀胱癌や膀胱癌の進行工程を診断したいのなら、スクラップや生検で膀胱組織から核酸を分離しなければならない。このような試料は当該分野において知られている多様な医学的過程によって得られる。
【0061】
本発明の一様態において、検体から得られたサンプルの核酸のメチル化の程度は膀胱組織の細胞成長性異常がない検体の同一核酸の部分と比較して、測定する。ハイパーメチル化は一つ以上の核酸でメチル化された対立遺伝子が存在することをいう。膀胱組織の細胞成長性異常がない検体は同一核酸を検査した時、メチル化対立遺伝子が現れない。
【0062】
サンプル(sample)
本発明は膀胱癌の早期診断に対し記述しており、膀胱癌特異的遺伝子メチル化を利用している。膀胱癌特異的遺伝子のメチル化は腫瘍部位の付近組織においても起きた。従って、膀胱癌の早期診断方法は液体または固体組織を含む全てのサンプルで膀胱癌特異的遺伝子のメチル化の有無を確認できる。前記サンプルは組織、細胞、尿、血清またはプラズマを含むが、これに限定されない。
【0063】
個別遺伝子及びパネル
本発明は診断または予測マーカーとして各遺伝子を個別的に使ったり、いくつかのマーカー遺伝子を組み合わせて、パネルディスプレイ形態にして使用でき、いくつかのマーカー遺伝子は全体的なパターンまたはメチル化された遺伝子の目録を通して、信頼性及び効率性を向上させることを確認できる。本発明において確認された遺伝子は個別的に、または本実施の形態において言及された遺伝子が組合わされた遺伝子セットとして使用できる。または、遺伝子は共にメチル化された遺伝子の数及びその重要度により順位付けして、重み付けられ、癌に発展する可能性のレベルを選定することができる。このようなアルゴリズムは本発明に属する。
【0064】
メチル化検出方法
メチル化特異PCR(methylation specific PCR)
ゲノムDNAにバイサルファイトで処理された場合、5’−CpG’−3部位のシトシンがメチル化された場合にはそのままシトシンとして残り、非メチル化された場合にはウラシルに変わるようになる。従って、バイサルファイト処理後変換された塩基配列を対象に5’−CpG−3’塩基配列が存在する部位に該当するPCRプライマーを作製した。この時、メチル化されたケースに該当するPCRプライマーと非メチル化されたケースに該当する二つの種類のプライマーを作製した。ゲノムDNAをバイサルファイトに変換させた後、前記二つの種類のプライマーを利用してPCRを行うとメチル化された場合にはメチル化された塩基配列に該当するプライマーを使用したものからPCR産物が作られるようになり、逆に非メチル化である場合には非メチル化に該当するプライマーを利用したものからPCR産物が作られる。メチル化の有無はアガロース・ゲル電気泳動方法で定性的に確認できる。
【0065】
リアルタイムメチル化特異PCR(real time methylation specific PCR)
リアルタイムメチル化特異PCRはメチル化特異PCR方法をリアルタイム測定方法に転換したもので、ゲノムDNAにバイサルファイトで処理した後、メチル化されたケースに該当するPCRプライマーをデザインして、これらプライマーを利用して、リアルタイムPCRを行うものである。この時、増幅された塩基配列と相補的なTanManプローブを利用して検出する方法とSybergreenを利用して検出する方法の二つの方法がある。従って、リアルタイムメチル化特異PCRはメチル化されたDNAだけを選択的に定量分析できる。この時、インビトロ・メチル化DNAサンプルを利用して、標準曲線を作成し、標準化のために塩基配列内に5’−CpG−3’配列がない遺伝子を陰性対照群として共に増幅してメチル化の程度の定量分析を行った。
【0066】
パイロシーケンス
パイロシーケンス法はバイサルファイトシーケンシング法を定量的なリアルタイムシーケンスに変換した方法である。バイサルファイトシーケンシング同様にゲノムDNAをバイサルファイトを処理して、転換させた後、5’−CpG−3’塩基配列がない部位に該当するPCRプライマーを作製した。ゲノムDNAをバイサルファイトで処理した後、前記PCRプライマーで増幅した後、シーケンスプライマーを利用して、リアルタイム塩基配列分析を行った。5’−CpG−3’部位においてシトシンとチミンの量を定量的に分析してメチル化の程度をメチル化指数として示した。
【0067】
メチル化DNA特異的結合蛋白質を利用したPCR、または定量PCR及びDNAチップ
メチル化DNA特異的結合蛋白質を利用したPCRまたはDNAチップ方法はメチル化DNAにだけ特異的に結合する蛋白質をDNAと混ぜると、メチル化DNAにだけ特異的に蛋白質が結合するためメチル化DNAだけを選択的に分離することができる。ゲノムDNAをメチル化DNA特異的結合蛋白質と混ぜた後、メチル化されたDNAだけを選択的に分離した。これら分離したDNAをプロモーター部位に該当するPCRプライマーを利用して増幅した後、アガロース電気泳動でメチル化の有無を測定した。
【0068】
また、定量PCR方法によってもメチル化の有無を測定可能で、メチル化DNA特異的結合蛋白質で分離したメチル化DNAは蛍光染料で標識して、相補的なプローブが集積されたDNAチップにハイブリタイゼーションさせることでメチル化の有無を測定することができる。ここでメチル化DNA特異的結合蛋白質はMcrBtに限られない。
【0069】
差別的メチル化の検出−メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ
差別的メチル化の検出はメチル化されないCpG部位だけを切断するメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと核酸サンプルを接触させて非メチル化された核酸を切断することで遂行できる。
別の反応で、前記サンプルをメチル化及び非メチル化CpG部位を全て切断するメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼのアイソシゾマー(isoschizomer)と接触させて、メチル化された核酸を切断した。
【0070】
特異的プライマーを核酸サンプルに添加し、通常の方法で核酸を増幅させた。メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで処理したサンプルにおいて増幅産物が存在して、メチル化及び非メチル化CpG部位を全て切断するメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼのアイソシゾマーで処理したサンプルにおいて増幅産物が存在しないことは、分析された核酸部位にメチル化が起きたはずである。しかし、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで処理したサンプルにおいて増幅産物が存在しなく、メチル化及び非メチル化CpG部位を全て切断するメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼのアイソシゾマーで処理したサンプルにおいても増幅産物が存在しないということは、分析された核酸部位にメチル化が起きなかったことになる。
【0071】
ここで、「メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ」は認識部位にCGを含み、Cがメチル化しなかった時と比較してCがメチル化した時、変化した活性を有する制限酵素である(例えば、SmaI)。メチレーション敏感性制限エンドヌクレアーゼの非制限的例として、MspI、HpaII、BssHII、BstUI及びNotIが含まれる。前記酵素は単独または組み合わせで使用される。他のメチレーション感受性制限エンドヌクレオチドとしては、例えば、SacII及びEagIが挙げられるがこれに限定されない。
【0072】
メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼのイソシゾマーはメチレーション感受性制限エンドヌクレアーゼと同一認識部位を有する制限エンドヌクレアーゼであるが、メチル化されたCGsと非メチル化されたCGsを全て切断し、例えば、MspIが挙げられる。
【0073】
本発明のプライマーは増幅される遺伝子座の各鎖と「実質的に」相補性を持つように作製されて、前記説明した通り、適当なGまたはCヌクレオチドを含む。これは重合反応を行う条件でプライマーが対応する核酸鎖とハイブリダイゼーションされるに十分な相補性を有することを意味する。本発明のプライマーは増幅過程に使用され、前記増幅過程は、例えば、PCRと同じ、ターゲット遺伝子座が多くの反応工程を経ながら、幾何級数的に増加する酵素連続反応である。典型的には、一つのプライマー(アンチセンスプライマー)は遺伝子座のネガティブ(−)鎖に対し相同性を有し、残り一つのプライマー(センスプライマー)はポジティブ(+)鎖に対し相同性を有する。変成された核酸にプライマーがアニーリングされると、DNAポリメラーゼI(Klenow)及びヌクレオチドのような酵素及び反応物によって、鎖が伸張して、その結果、ターゲット遺伝子座配列を含有する+と−の鎖が新しく合成される。前記新しく合成されたターゲット遺伝子座が鋳型としても使用され、変成、プライマーアニーリング及び鎖伸張のサイクルが繰り返されるとターゲット遺伝子座配列の幾何級数的な合成が進行される。前記連続反応の産物は反応に使用された特異プライマーの末端と対応する末端を有する独立的な二重鎖核酸である。
【0074】
前記増幅反応は当該分野において普遍的に使用されているPCRであることが望ましい。しかし、リアルタイムPCRまたは等温酵素を使用した線形増幅のような代替方法も使用でき、マルチプレックス増幅反応も使用できる。
【0075】
差別的メチル化の検出−バイサルファイトシーケンシング方法
メチル化CpGを含有した核酸を検出する他の方法は核酸を含有した試料を非メチル化シトシンを変形(modifies)させる試薬と接触させる工程及びCpG−特異的オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、試料のCpG−含有核酸を増幅させる工程を含む。ここで、前記オリゴヌクレオチドプライマーは変形されたメチル化及び非メチル化核酸を区別してメチル化核酸を検出することを特徴にする。前記増幅工程は選択的であり、望ましいが必須ではない。前記方法は変形された(例えば、化学的に変形された)メチル化及び非メチル化DNAを区別するPCR反応に依存するものである。前記のような方法は米国特許5,786,146に開示されており、前記特許にはメチル化核酸の検出のためのバイサルファイト(bisulfite)シーケンシングと関連して記載されている。
【0076】
基質
ターゲット核酸部位が増幅されると核酸配列の存在を検出するために、前記核酸増幅産物は固体支持体(基質)に固定された既知の遺伝子プローブとハイブリダイゼーションできる。
【0077】
ここで、「基質」は物質、構造、表面、または材料、非生物学的で、合成されて、無生物、平面、球形、または特異的結合、平らな表面の物質を含む混合物手段であり、ハイブリダイゼーションまたは酵素認識部位または多くの他の認識部位または表面、構造または材料から構成された数多くの他の分子種を越える数多くの他の認識部位を含んでもよい。前記基質は、例えば、半導体、(有機)合成メタル、合成半導体、インシュレーター及びトーパント;金属、合金、元素、化合物及びミネラル;合成され、分解され、エッチングされ、リソグラフされ、プリントされ、マイクロファブリケイトされたスライド、装置、構造及び表面;産業的、ポリマー、プラスチック、メンブレン、シリコン、シリケート、ガラス、金属及びセラミック;木、紙、カードボード、綿、ウール、布、製織及び非製織繊維、材料及びファブリックであるが、これに限定されるのではない。
【0078】
いくつかの形態のメンブレンは当該分野において核酸配列に対し付着力を有すると知られている。このようなメンブレンの特異的でかつ非制限的な例としてニトロセルロースまたはポリビニルクロライド、ジアゾ化された(diazotized)ペーパー及びGENESCREEN(商品名)、ZETAPROBE(商品名)(Biorad)及びNYTRAN(商品名)などの商業的に使用されるメンブレンのように遺伝子発現検出用メンブレンが挙げられる。ビーズ、グラス、ウェハー及び金属基質も含まれる。このような目的物に核酸を付ける方法は当該分野においてよく知られている。これとは異なり、液相においてもスクリーニングを遂行できる。
【0079】
ハイブリダイゼーション条件
核酸ハイブリダイゼーション反応において、厳格な特定水準を達成するために使用される条件はハイブリダイズされる核酸の性質により多様である。例えば、ハイブリダイゼーションされる核酸部位の長さ、相同性程度、ヌクレオチド配列組成(例えば、GC/ATコンテンツ)及び核酸タイプ(例えば、RNA、DNA)などがハイブリダイゼーション条件を選択するのに考慮される。追加的な考慮条件は核酸が、例えば、フィルターなどに固定化されているか否かである。
【0080】
非常に厳格に進行される条件は、例えば次のようになる:室温の2X SSC/0.1%SDS(ハイブリダイゼーション条件);室温の0.2X SSC/0.1%SDS(厳格性が低い条件);42℃での0.2X SSC/0.1%SDS(普通の厳格性を有する条件);68℃で0.1X SSC(高い厳格性を有する条件)。洗浄過程はこれらの中一つの条件を使用して遂行でき、例えば高い厳格性を有する条件、または前記条件を各々使用でき、前記記載された順に各々10〜15分ずつ、前記記載された条件を全部または一部繰り返して遂行できる。しかし前記に記述した通り、最適条件は、含まれた特別なハイブリダイゼーション反応に依存し多様であり、実験を通して決められる。一般に、重要なプローブのハイブリダイゼーションには高い厳格性を有する条件が使用される。
【0081】
標識(Label)
重要なプローブは検出することができるように標識され、例えば放射線同位元素、蛍光化合物、バイオ発光化合物、化学発光化合物、金属キレートまたは酵素で標示される。前記のようなプローブを適当に標示するのは当該分野において広く知られた技術であり、通常の方法を通して遂行できる。
【0082】
キット(Kit)
本発明によると、検体の細胞成長性異常を検出するのに有用なキットを提供している。本発明のキットはサンプルを入れる区切られたキャリア手段、非メチル化シトシンを鋭敏に切断する試薬を含有する1番目の容器、CpG含有核酸を増幅するためのプライマーを含有する2番目の容器及び切断または切断されていない核酸の存在を検出する手段が含まれた3番目の容器を含む一つ以上の容器を含む。本発明により使用されるプライマーは配列番号1〜20に記載された配列、機能的組合せ及びその断片を含む。機能的組合せ、または断片はゲノム上においてメチル化が起きたか否かを検出するプライマーとして使用される。
【0083】
キャリア手段は、瓶、チューブのような一つ以上の容器を含有するのに適し、各容器は本発明の方法に使用される独立的構成要素を含有する。本発明の明細書において、当該分野の通常の知識を有する者は容器中の必要な試薬を容易に分配することができる。例えば、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを含有する容器を一つの容器で構成することができる。一つ以上の容器は重要核酸遺伝子座と相同性を有するプライマーを含むことができる。また、一つ以上の容器はメチル化感受性制限酵素のアイソシゾマーを含むことができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によって、より一層詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されないことは当業界において通常の知識を有する者においては明白であろう。
【0085】
[実施例1]膀胱癌特異的メチル化遺伝子の発見
膀胱癌から特異的にメチル化されたバイオマーカーを選別するために、膀胱癌患者10人及び正常人10人の尿を約20mLを各々4,200×gで10分間遠心分離(韓日科学)して、尿中の細胞を分離した。上層液を捨て、PBS5mLを利用して、細胞沈殿物を2回洗浄した後、前記細胞沈殿物からQIAamp DNA Mini kit(QIAGEN,USA)を使用してゲノムDNAを分離した。前記分離したゲノムDNA500ngを超音波粉砕(Vibra Cell,SONICS)して、約200〜300bpのゲノムDNA切片を作製した。
【0086】
ゲノムDNAからメチル化されたDNAだけを獲得するために、メチル化DNAに結合すると知られているメチル結合ドメイン(Methyl binding domain;MBD)(Fraga et al., 2003, Nucleic Acid Res., 31: 1765-1774)を使用した。即ち、6X HisタグMBD2μgを大腸菌JM110(韓国生命工学研究院生命資源センター,No.2638)ゲノムDNA500ngとプレインキュベーションさせた後、Ni−NTAマグネチックビーズ(Qiagen,USA)に結合させた。これに前記超音波粉砕された正常人及び膀胱癌患者尿中の細胞から分離したゲノムDNA500ngを結合反応溶液(10mM Tris−HCl(pH7.5)、50mM NaCl、1mM EDTA、1mM DTT、3mM MgCl2、0.1%Triton−X100、5%グリセロール、25mg/mL BSA)下で4℃、20分間反応させた後、700m MNaClが含まれた結合反応溶液500mLを利用して、3回洗浄した後、MBDに結合されたメチル化されたDNAをQiaQuick PCR purification kit(QIAGEN,USA)を使用して分離した。
【0087】
以後、前記MBDに結合されたメチル化されたDNAをゲノム増幅キット(Sigma,USA,Cat.No.WGA2)を利用して増幅した後、前記増幅されたゲノムDNA4μgをバイオプライム・トータルジェノミック・ラベリングシステムI(BioPrime Total Genomic Labeling system I)(Invitrogen Corp.,USA)を利用して、正常人由来DNAはCy3、膀胱癌患者由来DNAはCy5で標識した。前記正常人及び膀胱癌患者のDNAを混合した後、244KヒトCpGマイクロアレイ(Agilent,USA)にハイブリダイゼーションさせた(図1)。前記ハイブリダイゼーション後、一連の洗浄過程を経た後、アジレントスキャナー(Agilent scanner)を利用してスキャニングした。マイクロアレイイメージからシグナルの計算はフューチャーイクストラクションプログラム(Feature Extraction program)v.9.5.3.1(Agilent)を利用して、正常人と膀胱癌患者試料との間シグナルの相対的な強度差を計算した。
【0088】
正常においてメチル化されないスポットを選択するために、全体Cy3シグナル値の平均を求めた後、この平均の10%以下のシグナルを有するスポットを正常人の試料からメチル化されないと見なした。その結果、Cy3シグナル値が65以下である41,674個のスポットを求めた。
【0089】
前記スポットの中から再び膀胱癌患者の試料からメチル化されたスポットを求めるために、Cy5シグナル値が130以上のスポットを膀胱癌からメチル化されたスポットと見なした。その結果、Cy5シグナル値が130以上である631個のスポットを求めった。前記スポットからプロモーター部位に該当する227個の遺伝子を膀胱癌特異的メチル化遺伝子として確保した。
【0090】
これから正常人と膀胱癌患者との間にメチル化の程度の相対的な差が最も大きい10個の遺伝子(CDX2、CYP1B1、VSX16、HOXA11、T、TBX5、PENK、PAQR9、LHX2、SIM2)を選択して、MethPrimer(http://itsa.ucsf.edu/~urolab/methprimer/index1.html)を利用して、前記10個の遺伝子のプロモーター部位にCpG島が存在することを確認し、これらを膀胱癌診断のためメチル化バイオマーカーとして確保した。前記10個の遺伝子リストと正常人対応膀胱癌患者尿中の細胞における相対的なメチル化の程度を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
[実施例2]癌細胞株におけるバイオマーカー遺伝子のメチル化測定
前記10個の遺伝子のメチル化状態を、更に確認するために、各々のプロモーターに対してバイサルファイトシーケンシングを行った。
【0093】
バイサルファイト(bisulfite)を利用してメチル化されないシトシンをウラシルに変形するために、膀胱癌細胞株RT−4((韓国細胞株銀行(KCLB)30002)、J82(KCLB30001)、HT1197(KCLB21473)及びHT1376(KCLB21472)からトータルゲノムDNAを分離して、そのゲノムDNA200ngにEZ DNAメチレーション−ゴールドキット(EZ DNA methylation-Gold kit)(Zymo Research,USA)を利用して、バイサルファイトで処理した。DNAをバイサルファイトで処理すると、非メチル化されたシトシンはウラシルに変形され、メチル化されたシトシンは変化なしに残るようになる。前記バイサルファイトで処理されたDNAを滅菌蒸溜水20μLに溶解させてパイロシーケンス(pyrosequencing)を行った。
【0094】
前記10個の遺伝子に対するパイロシーケンスを行うためのPCR及びシーケンスプライマーはPSQアッセイデザイン(PSQ assay design)プログラム(Biotage,USA)を利用して設計した。各遺伝子のメチル化測定のためPCR及びシーケンスプライマーは下記表2及び表3のようになる。
【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
前記バイサルファイトで転換されたゲノムDNA20ngをPCRで増幅した。PCR反応溶液(バイサルファイトで転換されたゲノムDNA20ng、10X PCR buffer(Enzynomics,Korea)5μL、Taq polymerase(Enzynomics,Korea)5units、2.5mM dNTP(Solgent,Korea)4μL、PCRプライマー2μL(10pmole/μL))を95℃で5分間処理した後、95℃で40秒、60℃で45秒、72℃で40秒と合わせて45回実施した後、72℃で5分間反応させた。前記PCR産物の増幅の有無は2.0%アガロース・ゲルを使用した電気泳動で確認した。
【0098】
前記増幅されたPCR産物をPyroGold試薬(Biotage,USA)で処理した後、PSQ96MAシステム(Biotage,USA)を利用してパイロシーケンスを行った。前記パイロシーケンス後、メチル化指数(methylation index)を計算することによってメチル化の程度を測定した。メチル化指数は各CpG部位においてシトシンが結合する平均率を求めて計算した。
【0099】
図2は10個のバイオマーカーの膀胱癌細胞株におけるメチル化の程度を、パイロシーケンス方法を利用して、定量的に示したものである。その結果、前記10個のバイオマーカー遺伝子のすべてが少なくとも1個以上の細胞株において高い水準でメチル化されていることを確認した。表4では前記10個の遺伝子のプロモーターの配列を示したものである。
【0100】
【表4】

【0101】
[実施例3]膀胱癌患者の尿中の細胞におけるバイオマーカー遺伝子のメチル化測定
前記10個の遺伝子を膀胱癌診断用バイオマーカーとして使用できるのか検証するために、正常人20人及び膀胱癌患者19人の尿約20mLを4,200×gで10分間遠心分離(韓日科学)して、細胞を分離した。上層液を捨て、PBS5mLを利用して細胞沈殿物を2回洗浄した。前記洗浄された細胞からQIAamp DNAミニキット(QIAamp DNA Mini kit)(QIAGEN,USA)を使用してゲノムDNAを分離した後、前記分離したゲノムDNA200ngにEZ DNAメチレーション−ゴールドキット(EZ DNA methylation-Gold kit)(Zymo Research,USA)を利用して、バイサルファイトで処理した後、滅菌蒸溜水20μLに湧出してパイロシーケンスに使用した。
【0102】
前記バイサルファイトで転換されたゲノムDNA20ngをPCRで増幅した。PCR反応溶液(バイサルファイトで転換されたゲノムDNA20ng、10X PCR buffer 5μL(Enzynomics,Korea)、Taq polymerase 5units(Enzynomics,Korea)、2.5mM dNTP 4μL(Solgent,Korea)、PCRプライマー2μL(10pmole/μL))を95℃で5分間処理した後、95℃で40秒、60℃で45秒、72℃で40秒と合わせて45回実施した後、72℃で5分間反応させた。前記PCR産物の増幅の有無は2.0%アガロース・ゲルを使用した電気泳動で確認した。
【0103】
前記増幅されたPCR産物をPyroGold試薬(Biotage,USA)で処理した後、PSQ96MAシステム(Biotage,USA)を利用してパイロシーケンスを行った。パイロシーケンス後、メチル化の程度はメチル化指数(methylation index)を計算することによって測定した。メチル化指数は各CpG部位においてシトシンが結合する平均率を求めて計算した。また、正常人と膀胱癌患者の尿中の細胞DNAにおけるメチル化指数を測定した後、膀胱癌患者診断のためメチル化指数カットオフ(cut-off)をROC(receiver operating characteristic)カーブ分析によって決めた。
【0104】
図3は前記10個のバイオマーカー遺伝子の尿中の細胞におけるメチル化を測定した結果である。正常に比べて膀胱癌患者の試料においてメチル化の程度が高く増加することが見られる。一方、膀胱炎患者と血尿患者においてはメチル化の程度が正常対照群と類似するか稀に正常より高い水準を見せる場合もある。図4は膀胱癌診断のためカットオフ値を求めるためのROCカーブ分析結果を示したものである。また、ROCカーブ分析の結果、計算された10個のバイオマーカーに対するメチル化指数カットオフ値を表5に示した。
【0105】
【表5】

【0106】
前記10個のバイオマーカーのメチル化分析は各バイオマーカーの臨床試料におけるメチル化指数を求め、これからROC(receiver operating characteristic)カーブ分析を通して得た膀胱癌を診断するためのメチル化指数が前記カットオフより高い場合をメチル化陽性と判定し、それ以下の場合には陰性と判定した。
【0107】
表6及び図5に示された通り、ROCカーブ分析の結果、得られたカットオフを基準にした場合、正常人の尿中の細胞においては10個のバイオマーカー全部がメチル化陰性を示したが、膀胱癌患者では12.5%〜62.5%のメチル化陽性頻度を示した。また、統計的な分析を行った結果、10種のバイオマーカーの中9個が正常に比べて、膀胱癌において有意に(p<0.01)メチル化陽性を示すことが確認できた。これは前記10個のメチル化バイオマーカー中9個は膀胱癌において統計的に有意に特異的にメチル化されて、膀胱癌の診断に有用性が非常に高いことを示す。
【0108】
【表6】

【0109】
[実施例4]6個のバイオマカーパネル遺伝子の膀胱癌診断の能力評価
前記10個のメチル化バイオマーカーを利用して、膀胱癌を診断するための最適のパネルの組合せをロジスティック回帰(logistic regression)分析を行って、6個の遺伝子のパネルを求めた。図6Aは6個のメチル化バイオマーカー(CYP1B1、HOXA11、SIM2、PENK、LHX2及びTBX5)のメチル化状態を示したものである。実施例3に記述された方法でメチル化陽性及び陰性を判定した場合、これら6個のバイオマーカー遺伝子は正常試料においては全くメチル化されていなく、膀胱癌試料だけにおいて特異的にメチル化陽性を示すことが分かる。特に早期膀胱癌においても高い頻度のメチル化陽性を示すことによって、早期診断に対する有用性が高いことが示された。これら6個の遺伝子をパネルとし、6個の遺伝子中少なくとも1個の遺伝子でもメチル化された場合に膀胱癌として診断する場合、早期膀胱癌に対する感度及び特異性は各々84.0%と100%と非常に優秀であった(図6B)。さらに、進行型膀胱癌診断に対する感度及び特異性は各々85.7%と100%と測定された(図6B)。また、早期及び進行型膀胱癌全体に対する感度及び特異性は84.4%と100%と測定されて、これら6個の遺伝子のメチル化を利用した膀胱癌早期診断の有用性が非常に高いことが示された。
【0110】
[実施例5]メチル化DNA特異的結合蛋白質を利用したバイオマーカー遺伝子のメチル化測定
膀胱癌で特異的にメチル化されるバイオマーカーのメチル化の有無を測定するために、膀胱癌細胞株RT24及びHT1197のゲノムDNA100ngを超音波粉砕(Vibra Cell,SONICS)して、約200〜400bpのゲノムDNA切片を取得した。
【0111】
前記ゲノムDNAからメチル化されたDNAだけを獲得するために、メチル化DNAに結合すると知られているMBDを使った。即ち、6X HisタグMBD2μgを大腸菌JM110(韓国生命工学研究院生命資源センター,No.2638)ゲノムDNA500ngとプレインキュベートさせた後、Ni−NTAマグネチックビーズ(Qiagen,USA)に結合させた。これに前記超音波粉砕されたゲノムDNA100ngを結合反応溶液(10mM Tris−HCl(pH7.5)、50mM NaCl、1mM EDTA、1mM DTT、3mM MgCl2、0.1%Triton−X100、5%グリセロール、25mg/μL BSA)下で4℃、20分間反応させた後、700mM NaClが含まれた結合反応溶液500μLを利用して、3回洗浄した後、MBDに結合されたメチル化されたDNAをQiaQuick PCR purification kit(QIAGEN,USA)を使用して分離した。
【0112】
以後、前記MBDに結合したメチル化されたDNAをSIM2遺伝子のプロモーター部位(−6842〜−6775bp)に相応する配列番号41及び配列番号42のプライマーを利用してPCRを行った。
【0113】
配列番号41:5'-TTC TTA TTC TCA CCA GAC ATC TCA ACA CCC-3'
配列番号42:5'-ATC TCC CAT CCT CCC TCC CAC TCT C-3'
【0114】
PCR条件は94℃で5分、94℃で30秒間処理した後、62℃で30秒、72℃で30秒と合わせて40回実施した後、72℃で5分間反応させた。前記PCR産物の増幅の有無は2%アアガロース・ゲルを使用した電気泳動で確認した。
【0115】
その結果、SIM2遺伝子はRT24細胞株ゲノムDNAだけにおいて168bpに該当する増幅産物が検出されてメチル化されたことが確認されたのに対して、HT1197細胞株においては増幅産物が検出されなくてメチル化されなかったと確認された(図7)。前記結果はパイロシーケンス方法で確認したメチル化の測定結果と一致する結果である。このような結果はMBDを利用してメチル化DNAの検出が可能であることを示す。
【0116】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者には、このような具体的技術は単なる望ましい実施様態に過ぎなく、これによって、本発明の範囲が制限されるのではない点は明白であろう。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれらの等価物によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上、詳細に説明したように、本発明は膀胱癌特異的マーカー遺伝子のCpG島のメチル化を診断できる膀胱癌診断用キット及び診断用核酸チップを提供する効果がある。
【0118】
本発明の診断用キット及び診断用核酸チップを利用すると、膀胱癌を初期形質転換段階において診断できて、早期診断が可能であり、通常の方法より正確かつ早く膀胱癌を診断することができる。
【0119】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者には、このような具体的技術は単なる望ましい実施様態に過ぎなく、これによって、本発明の範囲が制限されるのではない点は明白であろう。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれらの等価物によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)CDX2(NM_001265)−尾側型ホメオボックス転写因子2;
(2)CYP1B1(NM_000104)−シトクロムP450,ファミリー1,サブファミリーB,ポリペプチド1;
(3)VSX1(NM_199425)−ビジュアルシステムホメオボックス1類似体,CHX10−類似(ゼブラフィッシュ);
(4)HOXA11(NM_005523)−ホメオボックスA11;
(5)T(NM_003181)−T,ブラキュウリー類似体(マウス);
(6)TBX5(NM_080717)−T−ボックス5;
(7)PENK(NM_006211)−プロエンケファリン;
(8)PAQR9(NM_198504)−プロゲスチン及びアディポネクチン受容体ファミリーメンバーIV;
(9)LHX2(NM_004789)−Limホメオボックス2;及び
(10)SIM2(U80456)−シングル−マインディドホモログ2(ショウジョウバエ)
からなる群から選択される膀胱癌マーカー遺伝子の、メチル化されたプロモーターまたはエクソン部位を含有する、膀胱癌診断用キット。
【請求項2】
前記プロモーターまたはエクソン部位は少なくとも一つのメチル化されたCpGジヌクレオチドを含有することを特徴とする請求項1に記載の膀胱癌診断用キット。
【請求項3】
前記プロモーターまたはエクソン部位は配列番号31〜配列番号40で表されるDNA塩基配列のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の膀胱癌診断用キット。
【請求項4】
(1)CDX2(NM_001265)−尾側型ホメオボックス転写因子2;
(2)CYP1B1(NM_000104)−シトクロムP450,ファミリー1,サブファミリーB,ポリペプチド1;
(3)VSX1(NM_199425)−ビジュアルシステムホメオボックス1類似体,CHX10−類似(ゼブラフィッシュ);
(4)HOXA11(NM_005523)−ホメオボックスA11;
(5)T(NM_003181)−T、ブラキュウリー類似体(マウス);
(6)TBX5(NM_080717)−T−ボックス5;
(7)PENK(NM_006211)−プロエンケファリン;
(8)PAQR9(NM_198504)−プロゲスチン及びアディポネクチン受容体ファミリーメンバーIV;
(9)LHX2(NM_004789)−Limホメオボックス2;及び
(10)SIM2(U80456)−シングル−マインディドホモログ2(ショウジョウバエ)
からなる群から選択される膀胱癌マーカー遺伝子のプロモーター、またはエクソン部位CpG島を含む断片とハイブリダイゼーションできるプローブを含む、前記膀胱癌診断用核酸チップ。
【請求項5】
前記プロモーターは配列番号31〜配列番号40で表されるDNA塩基配列のいずれか一つであることを特徴とする請求項4に記載の膀胱癌診断用核酸チップ。
【請求項6】
CDX2、CYP1B1、VSX1、HOXA11、T、TBX5、PENK、PAQR9、LHX2及びSIM2からなる群から選択される臨床サンプル由来遺伝子のプロモーターまたはエクソンのメチル化を検出する方法。
【請求項7】
前記メチル化測定方法は、PCR、メチル化特異PCR、リアルタイムメチル化特異PCR、メチル化DNA特異的結合蛋白質を利用したPCR、定量PCR、パイロシーケンス及びバイサルファイトシーケンシングからなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記臨床サンプルは、癌の疑いのある患者または診断対象由来の組織、細胞、血液または尿であることを特徴とする請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−55966(P2013−55966A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−284164(P2012−284164)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2010−535888(P2010−535888)の分割
【原出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(510149367)ゲノミクトリー インコーポレーテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】GENOMICTREE,INC.
【Fターム(参考)】