説明

膜ろ過システムおよびその洗浄方法

【課題】被処理水を膜モジュールへ供給するポンプと、膜モジュールとの双方を効率的に低コストで洗浄することができる膜ろ過システムおよびその洗浄方法を提供する。
【解決手段】内部に配置された精密ろ過膜または限外ろ過膜により一次側領域と二次側領域とに区分された膜モジュールと、原水を貯留する原水貯留部と、原水貯留部の原水を前記一次側領域へ供給する原水ポンプと、原水貯留部と原水ポンプとを接続する原水ポンプラインと、原水ポンプと一次側領域とを接続する原水供給ラインと、一次側領域と原水ポンプラインとを接続する循環ラインと、循環ラインから分岐して排水排出部へと接続される排水ラインと、一次側領域へ供給された原水を精密ろ過膜または限外ろ過膜でろ過して得たろ過水が二次側領域から流出するろ過水ラインと、二次側領域へ洗浄薬品を供給する洗浄薬品供給手段とを備える膜ろ過システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜ろ過システムおよびその洗浄方法に関するものであり、特には、逆浸透膜を使用した海水淡水化装置の前処理装置等に用いられる膜ろ過システムの洗浄に好適に使用し得る洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、膜モジュールに用いられているろ過膜の洗浄方法としては、一部の逆浸透膜(RO膜)およびナノろ過膜(NF膜)を除き、ろ過膜のろ過水側(二次側)から原水側(一次側)に向けて洗浄水を通過させてろ過膜を洗浄するいわゆる逆圧洗浄(以下、「逆洗」という)が用いられている。
【0003】
そして、このような膜モジュールの逆洗方法としては、酸等の洗浄化学成分を含む洗浄水をろ過水側に導入して逆洗を行う方法が知られている。具体的には、前記洗浄水を膜モジュールのろ過水側に導入して逆洗を行うことができる膜ろ過システムとして、ろ過膜により原水側領域とろ過水側領域とに区分された膜ろ過装置と、洗浄化学成分を含む洗浄水を貯留する洗浄水槽と、洗浄水槽から膜ろ過装置のろ過水側領域へ洗浄水を供給するポンプと、膜ろ過装置の原水側領域に設けられた原水側排出口とを備える膜ろ過システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、この膜ろ過システムでは、洗浄水槽から膜ろ過装置のろ過水側領域へ供給された洗浄水がろ過膜を通過して原水側領域へと流入し、原水側排出口より排出されることによりろ過膜の逆洗が行われる。
【0004】
ここで、逆浸透膜を使用した海水淡水化プロセスにおいては、海水に水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を添加して海水のpHを例えば9.5以上にした後、当該pH9.5以上の海水をポンプで膜モジュール(精密ろ過膜または限外ろ過膜)へと供給してろ過するといった前処理が行われることがある。しかし、このような前処理を行うと、海水中に含まれている硬度成分(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)が炭酸塩等の形で析出して膜モジュールやポンプでスケーリングが発生するという問題があった。
【0005】
これに対し、上述した洗浄水槽を備える膜ろ過システムを海水淡水化プロセスの前処理に用いて、酸を含む洗浄水でろ過膜を逆洗(CEB:薬品添加逆洗)することにより膜目詰まり(ファウリング)物質およびスケーリングの発生によるろ過膜の目詰まりを解消する方法が知られている。しかしながら、この方法では膜モジュールから膜目詰まり(ファウリング)物質およびスケーリングを除去することはできるものの、ポンプで発生したスケーリングを除去することはできないため、別途ポンプを酸洗浄する必要があった。即ち、上記従来の膜ろ過システムおよび洗浄方法には、洗浄に使用する薬品量が多くなり、メンテナンス費用が高くなるという点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−52321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、原水(被処理水)を膜モジュールへ供給するポンプと、膜モジュールとの双方を効率的に低コストで洗浄することができる膜ろ過システムおよびその洗浄方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明の第1の膜ろ過システムは、内部に配置された精密ろ過膜または限外ろ過膜により一次側領域と二次側領域とに区分された膜モジュールと、原水を貯留する原水貯留部と、前記原水貯留部の原水を前記一次側領域へ供給する原水ポンプと、前記原水貯留部と前記原水ポンプとを接続する原水ポンプラインと、前記原水ポンプと前記一次側領域とを接続する原水供給ラインと、前記一次側領域と前記原水ポンプラインとを接続する循環ラインと、前記循環ラインから分岐して排水排出部へと接続される排水ラインと、前記一次側領域へ供給された前記原水を前記精密ろ過膜または限外ろ過膜でろ過して得たろ過水が前記二次側領域から流出するろ過水ラインと、前記二次側領域へ洗浄薬品を供給する洗浄薬品供給手段と、前記原水ポンプラインの前記循環ラインとの接続部より前記原水貯留部側に設けられた第1のバルブ、前記原水ポンプラインの前記循環ラインとの接続部より前記原水ポンプ側または前記原水供給ラインに設けられた第2のバルブ、前記循環ラインに設けられた第3のバルブ、前記排水ラインに設けられた第4のバルブ、前記ろ過水ラインに設けられた第5のバルブ並びに前記洗浄薬品供給手段に設けられた第6のバルブとを備えることを特徴とする。このような膜ろ過システムによれば、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第5のバルブを開くと共に、前記第3のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブを閉じることで、原水をデッドエンドろ過することができる。また、前記第6のバルブを開き且つ前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを前記一次側領域と前記排水排出部とが連通するように開くと共に、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第5のバルブを閉じることで、精密ろ過膜または限外ろ過膜を洗浄薬品で逆洗することができる。更に、洗浄薬品を用いた逆洗後に、前記第2のバルブおよび前記第3のバルブを開くと共に、前記第1のバルブ、前記第4のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを閉じることにより、逆洗により一次側領域に溜まった洗浄薬品を用いて原水ポンプと一次側領域とを循環洗浄することができる。従って、この膜ろ過システムによれば、原水ポンプを薬品で洗浄するためのポンプを別途設ける必要が無い。また、逆洗に使用した洗浄薬品を用いて循環洗浄を行うことにより、原水ポンプと膜モジュールとを効率的に低コストで洗浄することができる。更に、循環洗浄時に原水供給ライン等の配管も洗浄することができる。なお、本発明において使用する精密ろ過膜または限外ろ過膜精とは、孔径が10μm以下の精密ろ過膜または限外ろ過膜を指す。また、デッドエンドろ過とは供給水全量をろ過することを指す。
【0009】
また、本発明の第2の膜ろ過システムは、内部に配置された精密ろ過膜または限外ろ過膜により一次側領域と二次側領域とに区分された膜モジュールと、原水を貯留する原水貯留部と、前記原水貯留部の原水を前記一次側領域へ供給する原水ポンプと、前記原水貯留部と前記原水ポンプとを接続する原水ポンプラインと、前記原水ポンプと前記一次側領域とを接続する原水供給ラインと、前記一次側領域と前記原水ポンプラインとを接続する循環ラインと、前記循環ラインから分岐して排水排出部へと接続される排水ラインと、前記一次側領域へ供給された前記原水を前記精密ろ過膜または限外ろ過膜でろ過して得たろ過水が前記二次側領域から流出するろ過水ラインと、前記二次側領域へ洗浄薬品を供給する第1の洗浄薬品供給手段と、前記原水ポンプラインの前記循環ラインとの接続部より前記原水貯留部側に設けられた第1のバルブ、前記原水ポンプラインの前記循環ラインとの接続部より前記原水ポンプ側または前記原水供給ラインに設けられた第2のバルブ、前記循環ラインに設けられた第3のバルブ、前記排水ラインに設けられた第4のバルブ、前記ろ過水ラインに設けられた第5のバルブ並びに前記第1の洗浄薬品供給手段に設けられた第6のバルブと、前記原水ポンプラインの前記循環ラインとの接続部より前記原水ポンプ側へ洗浄薬品を供給する第2の洗浄薬品供給手段と、前記第2の洗浄薬品供給手段に設けられた第7のバルブとを備えることを特徴とする。このような膜ろ過システムによれば、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第5のバルブを開くと共に、前記第3のバルブ、前記第4のバルブ、前記第6のバルブおよび前記第7のバルブを閉じることで、原水をデッドエンドろ過することができる。また、前記第2のバルブおよび前記第7のバルブを開き且つ前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを前記一次側領域と前記排水排出部とが連通するように開くと共に、前記第1のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを閉じることで、洗浄薬品を用いて原水ポンプを洗浄することができる。更に、洗浄薬品を用いた原水ポンプの洗浄後に、前記第2のバルブおよび前記第3のバルブを開くと共に、前記第1のバルブ、前記第4のバルブ、前記第5のバルブ、前記第6のバルブおよび前記第7のバルブを閉じることにより、原水ポンプの洗浄により一次側領域に溜まった洗浄薬品を用いて原水ポンプと一次側領域とを循環洗浄することができる。また、前記第6のバルブを開き且つ前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを前記一次側領域と前記排水排出部とが連通するように開くと共に、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第7のバルブを閉じることで、精密ろ過膜または限外ろ過膜を洗浄薬品で逆洗することができる。従って、この膜ろ過システムによれば、原水ポンプの洗浄に使用した洗浄薬品を用いて循環洗浄を行うことにより、原水ポンプと膜モジュールとを効率的に低コストで洗浄することができる。また、循環洗浄時に原水供給ライン等の配管も洗浄することができる。
【0010】
ここで、上述した膜ろ過システムは、前記精密ろ過膜または限外ろ過膜が、原水が流入する蓮根状の孔を有するモノリス型のセラミック膜であり、前記膜モジュールが、前記セラミック膜を容器の内部に収納したものであることが好ましい。セラミック製の膜は耐酸性に優れ、例えばpH1以下の酸を洗浄薬品として用いて洗浄を行っても劣化しないからである。なお、このセラミック膜においては、蓮根状の孔が一次側領域となり、各孔の表面に位置する分離層より後の部分が二次側領域となる。
【0011】
そして、本発明の第1の膜ろ過システムの洗浄方法は、内部に配置された精密ろ過膜または限外ろ過膜により一次側領域と二次側領域とに区分された膜モジュールと、原水を前記一次側領域へ供給する原水ポンプと、前記一次側領域内の液体を前記原水ポンプの上流側に戻す循環ラインとを備える膜ろ過システムの洗浄方法であって、前記二次側領域から前記一次側領域へ洗浄薬品を流して前記精密ろ過膜または限外ろ過膜を逆洗する逆洗工程と、前記逆洗工程の後に、前記一次側領域に存在している洗浄薬品を前記循環ラインを介して循環させ、前記原水ポンプと前記一次側領域とを洗浄する循環洗浄工程とを含むことを特徴とする。このような洗浄方法によれば、循環洗浄工程において、逆洗工程で使用した洗浄薬品を利用して原水ポンプと膜モジュールとを効率的に低コストで洗浄することができるので、原水ポンプを単独で洗浄する工程を設ける必要が無い。
【0012】
更に、本発明の第2の膜ろ過システムの洗浄方法は、内部に配置された精密ろ過膜または限外ろ過膜により一次側領域と二次側領域とに区分された膜モジュールと、原水を前記一次側領域へ供給する原水ポンプと、前記一次側領域内の液体を前記原水ポンプの上流側に戻す循環ラインとを備える膜ろ過システムの洗浄方法であって、前記原水ポンプの上流側から前記一次側領域へ洗浄薬品を流して当該原水ポンプおよび一次側領域を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程の後に、前記一次側領域に存在している洗浄薬品を前記循環ラインを介して循環させ、前記原水ポンプと前記一次側領域とを洗浄する循環洗浄工程と、前記二次側領域から前記一次側領域へ洗浄薬品を流して前記精密ろ過膜または限外ろ過膜を逆洗する逆洗工程とを含むことを特徴とする。このような洗浄方法によれば、循環洗浄工程において、洗浄工程で使用した洗浄薬品を利用して原水ポンプと膜モジュールとを効率的に低コストで洗浄することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原水を膜モジュールへ供給するポンプと、膜モジュールとの双方を効率的に低コストで洗浄することができる膜ろ過システムを提供することができる。また、原水を膜モジュールへ供給するポンプと、膜モジュールとの双方を効率的に低コストで洗浄することができる膜ろ過システムの洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の膜ろ過システムの第1実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の膜ろ過システムの第2実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
【0016】
図1に、本発明の膜ろ過システムの第1実施形態を示す。この膜ろ過システム10は、逆浸透膜を使用した海水淡水化装置(図示せず)の前処理装置として用いられるものである。そして、この膜ろ過システム10は、被処理水(原水)となる海水が貯留されている原水貯留部としての原水槽11と、原水槽11の後段側に設けられ、内部に配置されたセラミック膜121により一次側(原水側)領域122と二次側(ろ過水側)領域123とに区分された膜モジュール12と、原水を膜モジュール12でろ過して得たろ過水を貯留するろ過水槽13とを備えている。なお、原水槽11中の海水は、pHを例えば9.5に調整されている。また、膜モジュールとしては既知のセラミック膜モジュールなどを用いることができ、例えば、原水が流入する蓮根状の孔を有するモノリス型のセラミック膜(日本碍子製、孔径0.1μm)を金属製あるいはFRP製の容器の内部に収納したもの等を用いることができる。
【0017】
より具体的には、この膜ろ過システム10では、原水槽11と、原水槽11中の原水を膜モジュール12へと供給する原水ポンプ14とが原水ポンプライン15で接続されており、原水ポンプ14と、膜モジュール12の一次側領域122とが原水供給ライン16で接続されている。また、膜モジュール12の一次側領域122と、原水ポンプライン15とは循環ライン17で接続されており、一次側領域122内の水を循環ライン17、原水ポンプライン15、原水ポンプ14および原水供給ライン16を通して循環させることができるようにされている。更に、循環ライン17は途中で二つのラインに分岐しており、原水ポンプライン15と接続していない側のライン(排水ライン18)は、図示しない排水排出部と接続されている。
【0018】
また、この膜ろ過システム10では、膜モジュール12の二次側領域123とろ過水槽13とがろ過水ライン19で接続されており、ろ過水槽13に貯留されたろ過水は、図示しない逆浸透(RO)膜へと供給される。更に、ろ過水槽13とろ過水ライン19とは逆洗ポンプ20を介して逆洗ライン21で接続されており、この逆洗ライン21には酸(例えば塩酸)を注入するための酸注入手段22が接続されている。なお、酸注入手段22は、酸注入ポンプおよび酸注入ラインを備えている。そして、これら、逆洗ポンプ20、逆洗ライン21、酸注入手段22は、本発明の洗浄薬品供給手段に相当する。
【0019】
そして、この膜ろ過システム10には、原水ポンプライン15の循環ライン17との接続部より原水槽11側に第1のバルブ23が、原水供給ライン16に第2のバルブ24が、循環ライン17の、循環ライン17から排水ライン18が分岐する部分と一次側領域122との間に第3のバルブ25が、排水ライン18に第4のバルブ26が、ろ過水ライン19の逆洗ライン21との接続部よりろ過水槽13側に第5のバルブ27が、逆洗ライン21に第6のバルブ28が、酸注入手段22の酸注入ラインに酸注入バルブ29が、それぞれ設けられている。なお、これらのバルブは、手動で、或いは、既知の制御手段を用いて自動で開閉を行うことができる。ここで、原水槽11から原水ポンプライン15の循環ライン17との接続部までの長さは短いほうが好ましい。後に詳細に説明する循環洗浄工程において洗浄される配管の範囲が広くなるからである。
【0020】
このような膜ろ過システム10では、第1のバルブ23、第2のバルブ24および第5のバルブ27を開き、且つ、第3のバルブ25、第4のバルブ26、第6のバルブ28および酸注入バルブ29を閉じた状態で、原水ポンプ14を用いて原水槽11中の原水を膜モジュール12へと供給し、原水のデッドエンドろ過を行うことができる。そして、原水をセラミック膜122でろ過して得たろ過水は、ろ過水ライン19を通ってろ過水槽13で貯留される。
【0021】
そして、この膜ろ過システム10では、継続的な原水のろ過により膜差圧が上昇した場合や、所定のろ過時間が経過した場合には、原水ポンプ14の運転を停止して、ろ過水に酸を添加してなる洗浄薬品でシステム内を洗浄することができる。
【0022】
具体的には、最初に、第3のバルブ25および第4のバルブ26を一次側領域122と排水排出部とが連通するように開けると共に第6のバルブ28および酸注入バルブ29を開き、且つ、第1のバルブ23、第2のバルブ24および第5のバルブ27を閉じて、逆洗ポンプ20および酸注入手段22を用いてろ過水と酸(例えば、塩酸)との混合液(洗浄薬品)を膜モジュール12へ供給し、二次側領域123から一次側領域122へと洗浄薬品を通水してセラミック膜121の逆洗を行う(逆洗工程)。なお、逆洗に使用した洗浄薬品は、一次側領域122から循環ライン17の一部および排水ライン18を通って排水排出部へと排出され、排水として処理される。ここで、洗浄薬品のpHは例えば2以下、好ましくは1.8以下とすることができる。なお、洗浄薬品を含む逆洗排水は既知の中和処理などを実施した後に排水することが望ましい。
【0023】
次に、逆洗ポンプ20および酸注入ポンプを停止すると共に、第3のバルブ25、第4のバルブ26、第6のバルブ28および酸注入バルブ29を閉じ、任意に、一定の時間(例えば30秒〜1時間)セラミック膜を洗浄薬品に浸漬する(浸漬工程)。その後、第2のバルブ24および第3のバルブ25を開き、且つ、第1のバルブ23、第4のバルブ26、第5のバルブ27、第6のバルブ28および酸注入バルブ29を閉状態としたままで、原水ポンプ14を用いて一次側領域122内の洗浄薬品を循環ライン17、原水ポンプライン15、原水ポンプ14および原水供給ライン16を通して循環させる(循環洗浄工程)。これにより、原水ポンプ14、原水供給ライン16、セラミック膜121の膜面、一次側領域122等の膜目詰まり(ファウリング)物質およびスケーリングを洗浄、除去することができる。
【0024】
そして最後に、原水ポンプ14を停止した後、第3のバルブ25を開状態としたままで、第4のバルブ26および第6のバルブ28を開き、且つ、第2のバルブ24を閉じると共に第1のバルブ23、第5のバルブ27および酸注入バルブ29を閉状態としたままで、逆洗ポンプ20でろ過水槽13のろ過水を流す(リンス工程)。これにより、逆洗ライン21、ろ過水ライン19の一部、膜モジュール12および循環ライン17内の洗浄薬品が排水排出部へと排出される(システム内がリンスされる)。
【0025】
なお、上記第1実施形態では第3のバルブが循環ライン17の、循環ライン17から排水ライン18が分岐する部分と一次側領域122との間に設けられていたが、第3のバルブは、循環ライン17から排水ライン18が分岐する部分と原水ライン15との間に設けても良い。この場合、上述した逆洗工程においては第4のバルブが開いていれば第3のバルブの開閉にかかわらず一次側領域122と排水排出部とが連通することとなるので、第3のバルブは開いていても良いし、閉じていても良い。
【0026】
この膜ろ過システム10では、上述のようにして膜目詰まり(ファウリング)物質およびスケーリングを除去し、膜モジュール12のろ過性能を回復させることができる。従って、この膜ろ過システム10によれば、原水ポンプ14を薬品で洗浄するためのポンプを別途設けることなく、セラミック膜121の逆洗に使用した洗浄薬品を用いて循環洗浄により原水ポンプ14と膜モジュール12とを効率的に低コストで洗浄することができる。
【0027】
次に、図2に、本発明の膜ろ過システムの第2実施形態を示す。この膜ろ過システム50は、第2のバルブ24が原水ポンプライン15の循環ライン17との接続部より原水ポンプ14側に設けられている点、第3のバルブ25が循環ライン17の、循環ライン17から排水ライン18が分岐する部分と原水ライン15との間に設けられている点、逆洗ライン21がろ過水ライン19とは接続せずに膜モジュール12の二次側領域123に直接接続している点、および酸(例えば塩酸)を注入するための原水ポンプ用酸注入手段30が原水ラインの循環ライン17との接続部と原水ポンプ14との間に接続されている点で先の第1実施形態の膜ろ過システムと異なっており、他の点では第1実施形態の膜ろ過システムと同一の構成を有している。なお、原水ポンプ用酸注入手段30は、原水ポンプ用酸注入ポンプおよび原水ポンプ用酸注入ラインを備えており、原水ポンプ用酸注入ラインには第7のバルブ31が設けられている。
【0028】
この膜ろ過システム50では、第1のバルブ23、第2のバルブ24および第5のバルブ27を開き、且つ、第3のバルブ25、第4のバルブ26、第6のバルブ28、酸注入バルブ29および第7のバルブ31を閉じた状態で、原水ポンプ14を用いて原水槽11中の原水を膜モジュール12へと供給し、原水のデッドエンドろ過を行うことができる。そして、原水をセラミック膜122でろ過して得たろ過水は、ろ過水ライン19を通ってろ過水槽13で貯留される。
【0029】
そして、この膜ろ過システム50では、継続的な原水のろ過により膜ろ過システム50が、膜目詰まりおよびスケーリングによって安定運転が困難あるいは運転不能となることを抑制するために、以下の手順によりシステム内を洗浄することができる。
【0030】
具体的には、最初に、第4のバルブ26を一次側領域122と排水排出部とが連通するように開くと共に第2のバルブ24を開状態としたままで、第7のバルブ31を開き、且つ、第1のバルブ23、第5のバルブ27を閉じ、第6のバルブ28および酸注入バルブ29を閉状態のままとする。なお、第3のバルブ25は開いていても良いし、閉じていても良い。そして、原水ポンプ14および酸注入手段30を用いて洗浄薬品としての酸(例えば、塩酸)を膜モジュール12の一次側領域122へ供給し、一次側領域122から排水排出部へと洗浄薬品を通水して原水ポンプ14、原水供給ライン16、セラミック膜121の膜面、および一次側領域122の洗浄を行う(洗浄工程)。
【0031】
次に、第2のバルブ24を開状態としたままで、第3のバルブ25が閉状態である場合は開き、且つ、第1のバルブ23、第5のバルブ27および第6のバルブ28を閉状態としたままで、第4のバルブ26および第7のバルブ31を閉じ、原水ポンプ14を用いて一次側領域122内の洗浄薬品を循環ライン17、原水ポンプライン15、原水ポンプ14および原水供給ライン16を通して循環させる(循環洗浄工程)。なお、酸注入バルブ29は開いていても良いし、閉じていても良い。これにより、原水ポンプ14、原水供給ライン16、セラミック膜121の膜面、一次側領域122等のスケーリングおよび膜目詰まり物質などを洗浄、除去することができる。
【0032】
その後、原水ポンプ14を停止し、第4のバルブ26を一次側領域122と排水排出部とが連通するように開くと共に第6のバルブ28および酸注入バルブ29を開き、且つ、第1のバルブ23、第5のバルブ27および第7のバルブ31を閉状態としたままで、第2のバルブ24を閉じ、逆洗ポンプ20および酸注入手段22を用いてろ過水と酸(例えば、塩酸)との混合液(洗浄薬品)を膜モジュール12へ供給し、二次側領域123から一次側領域122へと洗浄薬品を通水してセラミック膜121の逆洗を行う(逆洗工程)。なお、第3のバルブ25は開いていても良いし、閉じていても良い。そして、逆洗に使用した洗浄薬品は、一次側領域122から循環ライン17の一部および排水ライン18を通って排水排出部へと排出され、排水として処理される。ここで、逆洗工程は洗浄工程の前に行っても良い。
【0033】
そして最後に、第4のバルブ26および第6のバルブ28を開状態としたままで、且つ、酸注入バルブ29を閉じ、第1のバルブ23、第2のバルブ24、第5のバルブ27および第7のバルブ31を閉状態としたままで、逆洗ポンプ20でろ過水槽13のろ過水を流す(リンス工程)。なお、第3のバルブ25は開いていても良いし、閉じていても良い。これにより、逆洗ライン21、膜モジュール12および循環ライン17内の洗浄薬品が排水排出部へと排出される(システム内がリンスされる)。
【0034】
この膜ろ過システム50では、上述のようにして膜目詰まり物質およびスケーリングを除去し、膜モジュール12のろ過性能を回復させることができる。従って、この膜ろ過システム50によれば、原水ポンプ14の洗浄に使用した洗浄薬品を用いて、循環洗浄により原水ポンプ14と膜モジュール12とを効率的に低コストで洗浄することができる。
【0035】
なお、上記第2実施形態では第3のバルブが循環ライン17の、循環ライン17から排水ライン18が分岐する部分と原水ライン15との間に設けられていたが、第3のバルブは、循環ライン17から排水ライン18が分岐する部分と一次側領域122との間に設けても良い。この場合、上述した逆洗工程、洗浄工程およびリンス工程においては一次側領域122と排水排出部とを連通するために第3のバルブは開いておかなければならない。
【0036】
なお、本発明の膜ろ過システムは上記実施形態に限定されることなく、適宜変更を加えることができる。具体的には、本発明の膜ろ過システムは海水淡水化プロセス以外のプロセスにも適用することができる。また、洗浄薬品としてはろ過膜の閉塞およびポンプのスケーリングを解消することができるものであれば既知の薬品を使用することができる。また、ろ過方式としては、デッドエンド方式以外に、クロスフロー方式を用いることができる。因みに、クロスフロー方式を使用する場合には、一次側領域から原水貯留部へとろ過されなかった原水を戻す返送ラインを設けると共に、該返送ラインにバルブを設ければよい。なお、上記第1および第2実施形態においては、第3のバルブ25を開き、或いは、第3のバルブ25を逆止弁とすることでクロスフローろ過を行うこともできる。更に、膜モジュールが複数の膜ろ過モジュールからなる膜ろ過ユニットの場合には、圧力損失の大きい、即ちスケーリングが発生している膜ろ過モジュールのみを洗浄するように制御しても良い。
【符号の説明】
【0037】
10 膜ろ過システム
11 原水槽
12 膜モジュール
13 ろ過水槽
14 原水ポンプ
15 原水ポンプライン
16 原水供給ライン
17 循環ライン
18 排水ライン
19 ろ過水ライン
20 逆洗ポンプ
21 逆洗ライン
22 酸注入手段
23 第1のバルブ
24 第2のバルブ
25 第3のバルブ
26 第4のバルブ
27 第5のバルブ
28 第6のバルブ
29 酸注入バルブ
30 原水ポンプ用酸注入手段
31 第7のバルブ
121 セラミック膜
122 一次側領域
123 二次側領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に配置された精密ろ過膜または限外ろ過膜により一次側領域と二次側領域とに区分された膜モジュールと、
原水を貯留する原水貯留部と、
前記原水貯留部の原水を前記一次側領域へ供給する原水ポンプと、
前記原水貯留部と前記原水ポンプとを接続する原水ポンプラインと、
前記原水ポンプと前記一次側領域とを接続する原水供給ラインと、
前記一次側領域と前記原水ポンプラインとを接続する循環ラインと、
前記循環ラインから分岐して排水排出部へと接続される排水ラインと、
前記一次側領域へ供給された前記原水を前記精密ろ過膜または限外ろ過膜でろ過して得たろ過水が前記二次側領域から流出するろ過水ラインと、
前記二次側領域へ洗浄薬品を供給する洗浄薬品供給手段と、
前記原水ポンプラインの前記循環ラインとの接続部より前記原水貯留部側に設けられた第1のバルブ、前記原水ポンプラインの前記循環ラインとの接続部より前記原水ポンプ側または前記原水供給ラインに設けられた第2のバルブ、前記循環ラインに設けられた第3のバルブ、前記排水ラインに設けられた第4のバルブ、前記ろ過水ラインに設けられた第5のバルブ並びに前記洗浄薬品供給手段に設けられた第6のバルブと、
を備える膜ろ過システムであって、
前記原水をデッドエンドろ過する際には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第5のバルブを開くと共に、前記第3のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブを閉じ、
膜ろ過システムを洗浄する際には、前記第6のバルブを開き且つ前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを前記一次側領域と前記排水排出部とが連通するように開くと共に、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第5のバルブを閉じて前記精密ろ過膜または限外ろ過膜を前記洗浄薬品で逆洗可能とし、その後、前記第2のバルブおよび前記第3のバルブを開くと共に、前記第1のバルブ、前記第4のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを閉じて前記原水ポンプと前記一次側領域とを循環洗浄可能とする、膜ろ過システム。
【請求項2】
内部に配置された精密ろ過膜または限外ろ過膜により一次側領域と二次側領域とに区分された膜モジュールと、
原水を貯留する原水貯留部と、
前記原水貯留部の原水を前記一次側領域へ供給する原水ポンプと、
前記原水貯留部と前記原水ポンプとを接続する原水ポンプラインと、
前記原水ポンプと前記一次側領域とを接続する原水供給ラインと、
前記一次側領域と前記原水ポンプラインとを接続する循環ラインと、
前記循環ラインから分岐して排水排出部へと接続される排水ラインと、
前記一次側領域へ供給された前記原水を前記精密ろ過膜または限外ろ過膜でろ過して得たろ過水が前記二次側領域から流出するろ過水ラインと、
前記二次側領域へ洗浄薬品を供給する第1の洗浄薬品供給手段と、
前記原水ポンプラインの前記循環ラインとの接続部より前記原水貯留部側に設けられた第1のバルブ、前記原水ポンプラインの前記循環ラインとの接続部より前記原水ポンプ側または前記原水供給ラインに設けられた第2のバルブ、前記循環ラインに設けられた第3のバルブ、前記排水ラインに設けられた第4のバルブ、前記ろ過水ラインに設けられた第5のバルブ並びに前記第1の洗浄薬品供給手段に設けられた第6のバルブと、
前記原水ポンプラインの前記循環ラインとの接続部より前記原水ポンプ側へ洗浄薬品を供給する第2の洗浄薬品供給手段と、
前記第2の洗浄薬品供給手段に設けられた第7のバルブと、
を備える膜ろ過システムであって、
前記原水をデッドエンドろ過する際には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第5のバルブを開くと共に、前記第3のバルブ、前記第4のバルブ、前記第6のバルブおよび前記第7のバルブを閉じ、
前記原水ポンプを洗浄する際には、前記第2のバルブおよび前記第7のバルブを開き且つ前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを前記一次側領域と前記排水排出部とが連通するように開くと共に、前記第1のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを閉じ、その後、前記第2のバルブおよび前記第3のバルブを開くと共に、前記第1のバルブ、前記第4のバルブ、前記第5のバルブ、前記第6のバルブおよび前記第7のバルブを閉じて前記原水ポンプと前記一次側領域とを循環洗浄可能とし、
前記精密ろ過膜または限外ろ過膜を逆洗する際には、前記第6のバルブを開き且つ前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを前記一次側領域と前記排水排出部とが連通するように開くと共に、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第7のバルブを閉じる、膜ろ過システム。
【請求項3】
前記精密ろ過膜または限外ろ過膜が、原水が流入する蓮根状の孔を有するモノリス型のセラミック膜であり、
前記膜モジュールが、前記セラミック膜を容器の内部に収納したものである、請求項1または請求項2に記載の膜ろ過システム。
【請求項4】
内部に配置された精密ろ過膜または限外ろ過膜により一次側領域と二次側領域とに区分された膜モジュールと、原水を前記一次側領域へ供給する原水ポンプと、前記一次側領域内の液体を前記原水ポンプの上流側に戻す循環ラインとを備える膜ろ過システムの洗浄方法であって、
前記二次側領域から前記一次側領域へ洗浄薬品を流して前記精密ろ過膜または限外ろ過膜を逆洗する逆洗工程と、
前記逆洗工程の後に、前記一次側領域に存在している洗浄薬品を前記循環ラインを介して循環させ、前記原水ポンプと前記一次側領域とを洗浄する循環洗浄工程と、
を含むことを特徴とする、膜ろ過システムの洗浄方法。
【請求項5】
内部に配置された精密ろ過膜または限外ろ過膜により一次側領域と二次側領域とに区分された膜モジュールと、原水を前記一次側領域へ供給する原水ポンプと、前記一次側領域内の液体を前記原水ポンプの上流側に戻す循環ラインとを備える膜ろ過システムの洗浄方法であって、
前記原水ポンプの上流側から前記一次側領域へ洗浄薬品を流して当該原水ポンプおよび一次側領域を洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後に、前記一次側領域に存在している洗浄薬品を前記循環ラインを介して循環させ、前記原水ポンプと前記一次側領域とを洗浄する循環洗浄工程と、
前記二次側領域から前記一次側領域へ洗浄薬品を流して前記精密ろ過膜または限外ろ過膜を逆洗する逆洗工程と、
を含むことを特徴とする、膜ろ過システムの洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−227851(P2010−227851A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79328(P2009−79328)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】