膜ろ過予測方法、予測装置、及び膜ろ過予測プログラム
【課題】 被ろ過液を膜によってろ過する際に発生する膜ろ過抵抗、膜ろ過流量、膜間差圧の時間変化を精度良く予測する方法、プログラムを提供する。ろ過運転終期に見られる膜ろ過抵抗の急上昇を抑制する膜間差圧やろ過流量などの運転条件を事前検討により予測し、膜ろ過の運転条件を効率よく決定する。
【解決手段】 被ろ過液を膜ろ過する際に発生する膜ろ過抵抗、膜ろ過流量、膜間差圧の時間変化を予測するために、被ろ過液中の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値などから、分離膜に付着している上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の時間変化を計算し、次いで、膜ろ過抵抗を計算すること、及び/又は、膜ろ過圧力や膜ろ過流量を計算することにより、膜ろ過を予測する。この予測方法を実施するための各手段を有する膜予測プログラムである。
【解決手段】 被ろ過液を膜ろ過する際に発生する膜ろ過抵抗、膜ろ過流量、膜間差圧の時間変化を予測するために、被ろ過液中の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値などから、分離膜に付着している上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の時間変化を計算し、次いで、膜ろ過抵抗を計算すること、及び/又は、膜ろ過圧力や膜ろ過流量を計算することにより、膜ろ過を予測する。この予測方法を実施するための各手段を有する膜予測プログラムである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被ろ過液を膜によってろ過する際に発生する膜ろ過抵抗の時間変化、膜ろ過流量の時間変化、膜間差圧の時間変化を予測する方法、予測装置、及び予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を分離膜によってろ過する方法は、被ろ過液である液体と分離膜を接触させ、被ろ過液側から加圧もしくは透過側を負圧にしてろ過液を得る方法である。このとき、被ろ過液に含まれる非膜透過物質が膜表面に付着し、付着した物質が膜ろ過抵抗増加を引き起こすこととなる。膜ろ過抵抗が大きくなると、一定の膜ろ過圧力を加えることにより膜ろ過を行う場合には、膜ろ過流量が低減し、膜ろ過流量を一定として膜ろ過を行う場合には、膜間差圧が増大する。前者の場合には、計画していた流量が確保できないこととなり、後者の場合には圧力を増加させるためのエネルギーが必要となると同時に分離膜に対する負担が増加する。このような膜ろ過抵抗の増加挙動は、膜ろ過条件によって大きく影響を受け、膜ろ過を継続して行うための重要な因子である。すなわち、膜ろ過抵抗や、膜ろ過流量や、膜間差圧の時間変化を的確に予測することができれば、効率的かつ安定的なろ過を行うための膜ろ過条件を見いだすことが可能となる。
【0003】
また、このような膜ろ過抵抗の増加を抑制する方法として、膜下方部に設置された散気装置によって膜表面を曝気する、ポンプなどを利用して膜表面と水平方向に被ろ過液を流動させる、分離膜を移動または振動させるなど、膜表面を洗浄しながら膜ろ過する方法がある。このような膜ろ過方法において、膜洗浄を十分に行うことによって膜ろ過抵抗の増加を抑制することが可能となるのであるが、このような膜表面の洗浄にはエネルギーを必要とし、必要以上に膜洗浄を行うことは、運転コストを増大させることになる。すなわち、必要十分に膜表面洗浄を行うことが膜ろ過装置の運転適正化にとって重要である。
【0004】
また、ろ過を一時中断して薬液などによる膜面洗浄も行われる場合がある。この場合、運転の一時中断に伴いろ過運転効率が低下し、薬液コストもかかるため、膜洗浄をどのタイミングで行うかが重要である。
そこで、ろ過中の膜ろ過抵抗の時間変化を的確に予測することができれば、定量的な膜ろ過条件を決定することができるため非常に有効である。例えば、膜ろ過抵抗の増加を抑制するために必要な最小限の曝気風量を決定することが可能となる。
【0005】
非特許文献1には膜ろ過抵抗を予測する数式モデルが開示されている。非特許文献1によれば、ろ過膜に付着する細胞外高分子物質量(以下、EPSという)の増減を数式モデルとして表現し、EPSに基づいて膜ろ過抵抗を予測することが提案されている。
【非特許文献1】H. Nagaoka, “MODELING OF BIOFOULING BY EXTRACELLULAR POLYMERS IN A MEMBRANE SEPARATION ACTIVATED SLUDGE SYSTEM", Wat. Sci. Tech. Vol.38, No.4-5, pp497-504,1998.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に基づく膜ろ過抵抗予測では次のような問題点があった。
【0007】
第一には、EPSの測定には専門的な知識と装置、労力、時間が必要であり、実際の膜ろ過運転においてはEPSを容易に測定することができない。このため、EPSを測定して予測を行ったとしてもデータが不足して予測精度が低下したり、データを十分に収集するのに時間がかかったりするため、膜ろ過抵抗を予測してもろ過条件を修正変更するタイミングを逸してしまうことになり易い。
【0008】
第二には、被ろ過液中の固形成分が考慮されていないため、膜ろ過抵抗予測精度が十分ではない点である。被ろ過液中の固形成分は膜に付着すれば膜ろ過抵抗の上昇に寄与し、また膜から剥離しやすいため、膜に付着した上清成分を巻き込んでともに剥離する。従って、被ろ過液中の固形成分の影響を考慮していない非特許文献1の方法では、精度良い予測は困難である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、被ろ過液を膜によってろ過する際に発生する膜ろ過抵抗、膜ろ過流量、膜間差圧の時間変化を精度良く予測する方法、予測装置及び予測プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の膜ろ過装置における膜ろ過予測方法は、以下の構成のいずれかからなる。
(1) 分離膜の被ろ過液側と透過液側の圧力差(以下、膜間差圧という)を駆動力として、被ろ過液を分離膜によってろ過する膜ろ過方法において、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜間差圧の経時的変化を予測する膜ろ過予測方法であって、
膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜ろ過流量(流束)の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いること、
少なくとも下記の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ3とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜間差圧値を求めること、
(計算ステップ1) 任意の時刻において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する、
(計算ステップ2) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を算出する、
(計算ステップ3) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜間差圧値を算出する、
さらに、時刻を更新しながら前記計算ステップを繰り返し行うことによって、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜間差圧の経時的変化を求めること
を特徴とする膜ろ過予測方法。
【0011】
(2) 分離膜の被ろ過液側と透過液側の圧力差(以下、膜間差圧という)を駆動力として、被ろ過液を分離膜によってろ過する膜ろ過方法において、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜ろ過流量(流束)の経時的変化を予測する膜ろ過予測方法であって、
膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜間差圧の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いること、
少なくとも、下記の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ4とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜ろ過流量(流束)を求めること、
(計算ステップ1) 任意の時刻において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する、
(計算ステップ2) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を算出する、
(計算ステップ4) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値膜を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する、
さらに、時刻を更新しながら前記計算ステップを繰り返し行うことによって、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜ろ過流量(流束)の経時的変化を求めること
を特徴とする膜ろ過予測方法。
【0012】
(3) 前記計算ステップ1が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の、所定時間内における変化量に基づく計算ステップであって、
計算ステップ1における計算式が、被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜に付着する速度の項と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度の項とを含み、
前記分離膜に付着する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出され、かつ、
前記分離膜から剥離する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出されること
を特徴とする(1)又は(2)に記載の膜ろ過予測方法。
【0013】
(4) 前記計算ステップ1における計算式が、
膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、
膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことを特徴とする(3)に記載の膜ろ過予測方法。
【0014】
(5) 分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の2次以上の高次関数の項を含むことを特徴とする(3)又は(4)に記載の膜ろ過予測方法。
(6) 分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載の膜ろ過予測方法。
(7) 被ろ過液が、微生物を含む混合液であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の膜ろ過予測方法。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の膜ろ過予測方法に従って演算を行う演算手段、前記演算手段の演算結果を表示する表示手段、入力データおよび演算結果を記録する記録手段を備えてなる膜ろ過予測装置。
【0015】
また、本発明の膜抵抗予測プログラムは、上記目的を達成するため、以下の構成からなる。
(9)分離膜による被ろ過液のろ過を、膜間差圧を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜ろ過流量(流束)値の時間変化を予測するためのコンピュータプログラムであって、
膜間差圧の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗の初期値を入力するデータ入力手段、
前記データ入力手段で入力された膜間差圧の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗初期値を記録しておくデータ記録手段、
前記データ記録手段から任意の時刻ti(ここで、i=0〜nであり、ti+1=ti+Δti、t0=0、nは刻み数を表す自然数。)における膜間差圧値、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値、膜洗浄力値、および、時刻t0の場合には分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値を読み出し、さらに、時刻t0以外の場合には後述の成分量算出値記録手段によって前記データ記録手段に記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を読み出し、予め記録された付着成分量算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する成分量算出手段、
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を記録する成分量算出値記録手段、
次の膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜ろ過流量(流束)算出手段
(膜ろ過抵抗算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分中非膜透過物質量値及び/又は固形成分物質量値に基づいて、予め記録された膜ろ過抵抗予測値算出式を用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値を算出する膜ろ過抵抗算出手段、
(膜ろ過流量(流束)算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜間差圧値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出する膜ろ過流量(流束)算出手段I、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜間差圧値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出する膜ろ過流量(流束)算出手段II、
前記膜ろ過抵抗算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値、及び/又は、前記膜ろ過流量(流束)算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を記録する膜ろ過予測値記録手段、
膜ろ過予測値記録手段によって記録された時間t0〜tnにおける前記膜ろ過抵抗の予測値及び/又は膜ろ過流量(流束)の予測値を時系列値として記録する時系列値記録手段、並びに、
前記時系列値記録手段で記録された膜ろ過抵抗予測値の時系列値及び/又は膜ろ過流量(流束)予測値の時系列値を出力する出力手段、
の機能を備えることを特徴とする膜ろ過予測プログラム。
【0016】
(10) 分離膜による被ろ過液のろ過を、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜間差圧値の時間変化を予測するためのコンピュータプログラムであって、
膜ろ過流量(流束)の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗の初期値を入力するデータ入力手段、
前記データ入力手段で入力された膜ろ過流量(流束)の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗初期値を記録しておくデータ記録手段、
前記データ記録手段から任意の時刻ti(ここで、i=0〜nであり、ti+1=ti+Δti、t0=0、nは刻み数を表す自然数。)における膜ろ過流量(流束)値、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値、膜洗浄力値、および、時刻t0の場合には分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値を読み出し、さらに、時刻t0以外の場合には後述の成分量算出値記録手段によって前記データ記録手段に記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を読み出し、予め記録された付着成分量算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する成分量算出手段、
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を記録する成分量算出値記録手段、
次の膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜間差圧算出手段
(膜ろ過抵抗算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分中非膜透過物質量値及び/又は固形成分物質量値に基づいて、予め記録された膜ろ過抵抗予測値算出式を用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値を算出する膜ろ過抵抗算出手段、
(膜間差圧算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出する膜間差圧算出手段I、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出する膜間差圧算出手段II、
前記膜ろ過抵抗算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値、及び/又は、前記膜間差圧算出手段によって算出された時刻ti+1における膜間差圧の予測値を記録する膜ろ過予測値記録手段、
膜ろ過予測値記録手段によって記録された時間t0〜tnにおける前記膜ろ過抵抗の予測値及び/又は膜間差圧の予測値を時系列値として記録する時系列値記録手段、並びに、
前記時系列値記録手段で記録された膜ろ過抵抗予測値の時系列値及び/又は膜間差圧予測値の時系列値を出力する出力手段、
の機能を備えることを特徴とする膜ろ過予測プログラム。
【0017】
(11) 前記予め記録された付着成分量算出式が、時刻tiにおいて分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の値と、これら付着量が時刻tiから時刻ti+1までに増減変化する変化量とに基づき、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量を求める付着成分量算出式であって、
該付着成分量算出式における時刻tiから時刻ti+1までの変化量が、被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜に付着する速度と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度との差に基づいて計算され、
前記分離膜に付着する速度は、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、時刻tiにおける被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出され、かつ、
前記分離膜から剥離する速度は、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、時刻tiにおいて分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出されること
を特徴とする(9)又は(10)に記載の膜ろ過予測プログラム。
【0018】
(12) 前記付着成分量算出式が、
時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおける被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおいて分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、
時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおける被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおいて分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことを特徴とする(11)に記載の膜ろ過予測プログラム。
【0019】
(13) 分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の2次以上の高次関数の項を含むことを特徴とする(11)又は(12)に記載の膜ろ過予測プログラム。
(14) 分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことを特徴とする(11)〜(13)のいずれかに記載の膜ろ過予測プログラム。
(15) 被ろ過液が、微生物を含む混合液であることを特徴とする(9)〜(14)のいずれかに記載の膜ろ過予測プログラム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下に説明するとおり、被ろ過液を膜によってろ過する際に発生する膜ろ過抵抗の時間変化、あるいは、膜間差圧の時間変化、あるいは、膜ろ過流束の時間変化、あるいは、膜ろ過流量の時間変化を精度良く予測することができる。その結果、例えば、運転終期に見られる膜の目詰まりによる膜ろ過抵抗の急上昇を抑制する膜間差圧やろ過流量などの運転条件を事前検討することで、運転条件を効率よく決定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の膜ろ過予測方法は、分離膜の被ろ過液側と透過液側の圧力差(以下、膜間差圧という)を駆動力として、被ろ過液を分離膜によってろ過する際の膜ろ過を予測する方法に関するものである。
【0022】
ここにおいて、被ろ過液は、懸濁物質を含有する液体であって膜ろ過に供されるものであり、特に限定しない。例えば、微生物を含む液体の場合には、一般的に被ろ過液の中には物質としての微生物と微生物の代謝産物が比較的高濃度で存在するため、被ろ過液を膜ろ過した際の抵抗などの変動を予測することが困難であるが、本発明に従えば、被ろ過液を膜ろ過した際の抵抗などの変動を予測することが可能となり、被ろ過液を膜ろ過する膜ろ過装置における調整手段の運転条件を精度よく決定することが可能となると言う点で効果が大きいので、微生物培養液や活性汚泥などの微生物を含む液体を被ろ過液とする場合に本発明は特に有効である。また、本発明は、懸濁物質の濃度が100mg/L以上の被ろ過液の場合への適用が好ましい。また、膜ろ過方式に関しては、被ろ過液を濃縮しながら膜ろ過を行う全量ろ過方式でも、膜表面において被ろ過液の流れを発生させながら膜ろ過を行うクロスフロー式でも構わない。
【0023】
また、分離膜とは、被ろ過液に圧力を加えて、もしくは透過側から吸引することによって、被ろ過液中に含まれる一定粒子径以上の物質を捕捉する機能を有するものであり、その捕捉粒子径の違いにより、ダイナミックろ過膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがある。本発明で用いられる分離膜としては、好ましくは、ダイナミックろ過膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜である。また、分離膜の形状としては、平膜や中空糸膜などがあるが、形状は特に限定しない。
【0024】
本発明の膜ろ過予測方法では、膜ろ過流量を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続する際の、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜間差圧の経時的変化を予測する。あるいは、膜間差圧を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続する際の、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜ろ過流量(流束)の経時的変化を予測する。
【0025】
ここにおいて、膜間差圧とは、分離膜の被ろ過液側と透過液側との圧力差であり、これを発生させる手段として、例えば、ポンプにより被ろ過液側を加圧させる方法、ポンプにより透過液側から吸引する方法、被ろ過液側と透過液側の水頭差を利用する方法が挙げられる。また、膜間差圧は、分離膜の被ろ過液側における圧力測定値と透過液側における圧力測定値との差として実測することも可能であり、このときには、水理的な流れによって発生する圧力損失を測定もしくは算出し、前記分離膜の被ろ過液側における圧力測定値と透過液側における圧力測定値との差から、圧力損失分を減じて算出することが好ましい。
【0026】
また、膜ろ過流量とは、膜ろ過液の流量のことであり、膜ろ過流束とは、分離膜の単位面積あたりの膜ろ過流量のことをさす。
【0027】
膜ろ過流量を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続する、または、膜間差圧を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続するとは、膜ろ過流量あるいは膜間差圧を予め決められた設定値に制御することであり、膜ろ過流量や膜間差圧が一定値となるように制御する方法の他に、定期的あるいは断続的にろ過を停止する方法や、膜ろ過流量や膜間差圧を連続的あるいは断続的に変化させる方法などのように設定値を経時的に変更する場合も含む。膜ろ過流量を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続する方法としては、分離膜の膜透過液側に吸引ポンプなどを設置して膜ろ過液を取得し、その吸引ポンプを流量インバータで制御する方法などが挙げられる。また、膜間差圧を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続する方法としては、分離膜の被ろ過液側を加圧する方法や、水頭差を利用する方法などによって膜ろ過に必要な圧力を加え、この圧力を制御する方法などが挙げられる。
【0028】
また、膜ろ過抵抗とは、被ろ過液を膜によってろ過する際に発生する抵抗のことであり、一般的に、(1)式によって定義される。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、ΔPは膜間差圧[Pa]、μは膜ろ過液の粘度[Pa・s]、Rは膜ろ過抵抗[1/m]、Jは膜ろ過流束[m/s]である。ここで、μは膜ろ過液の粘度を直接測定してもよいが、膜ろ過液が水、あるいは若干の溶質等を含む水性液の場合には、(2)式に従い、温度から換算してもよい。
【0031】
【数2】
【0032】
ここで、F=0.01257187、B=−0.005806436、C=0.001130911、D=−0.000005723952であり、Tは絶対温度[K]である。すなわち、摂氏温度をσ[℃]とすると、T=σ+273.15として表される。
【0033】
また、予測とは、インプットとなる数値(膜ろ過流量の時系列値や膜間差圧の時系列値など)を用いて、演算や計算を行い、アウトプットとなる数値(膜ろ過抵抗の時間変化など)を出力することである。
【0034】
また、本発明の膜ろ過予測方法では、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際には、膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜ろ過流量(流束)の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用い、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際には、膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜間差圧の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いる。
【0035】
ここにおいて、膜ろ過抵抗の初期値とは、膜ろ過開始時の膜ろ過抵抗値であり、純水を分離膜へ透過させたときの膜ろ過抵抗値や分離膜洗浄後における膜ろ過抵抗値などを実測した値でもよいし、また分離膜の種類に基づく仮想値でもよい。
【0036】
また、被ろ過液の上清成分とは、被ろ過液を遠心分離あるいは重力沈殿したときの上清、あるいは、被ろ過液を膜ろ過装置の分離膜より細孔径の大きい分離膜によりろ過した際のろ過液のことである。また、被ろ過液の固形成分とは、被ろ過液を遠心分離あるいは重力沈殿したときの沈殿物、あるいは、被ろ過液を膜ろ過装置の分離膜より細孔径の大きい分離膜によりろ過した際の非膜透過物質のことである。
【0037】
また、物質量とは、前記上清成分中や固形成分中に含まれる溶解物質や懸濁物質などの物質量のことであり、例えば、全有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)、生物化学的酸素要求量(BOD)、浮遊固形物濃度(MLSS)、乾燥重量、浮遊固形物強熱減量(MLVSS)などによって測定することができる。
【0038】
ここで、上清成分物質量値とは、上清成分中の物質量の値であるが、本発明においては、上清成分中に含有する非膜透過物の物質量値、即ち、上清成分中の物質量値から、被ろ過液や上清成分を分離膜によってろ過した際の膜透過液中に含まれる物質量値を差し引いた物質量値を上清成分物質量値と定義することが好ましい。ここで、測定の容易性・精度・自動化を鑑みた場合、被ろ過液の上清成分物質量は、TOCに基づいて測定された物質量で規定することが好ましく、被ろ過液の固形成分物質量は、TOCあるいはMLSSあるいはMLVSSに基づいて測定された物質量で規定することが好ましい。被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分物質量値は、実測値でも仮想値でもよい。
【0039】
また、本発明の膜ろ過予測方法においては、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いる。ここで、上清成分物質量値あるいは固形成分物質量値を用いることによって、膜ろ過予測に必要な値を迅速かつ容易に得ることができる。また、上清成分物質量値および固形成分物質量値のデータを用いることによって、被ろ過液の固形成分は分離膜に付着すれば膜ろ過抵抗に寄与し、また分離膜から剥離しやすいため、分離膜に付着している上清成分を巻き込んでともに剥離するという効果を精度良く再現することができる。
【0040】
また、膜ろ過流量(流束)の設定値とは、膜ろ過流量あるいは膜ろ過流束の設定値であり、実測値でも仮想値でもよく、一定値でも、連続的あるいは断続的に変化する値としてもよい。また、膜間差圧の設定値とは、膜間差圧の設定値であり、実測値でも仮想値でもよく、一定値でも、連続的あるいは断続的に変化する値としてもよい。
【0041】
また、本発明の膜ろ過予測方法では、膜ろ過流量を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際には、少なくとも後述の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ3とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜間差圧値を求めること、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際には、少なくとも後述の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ4とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜ろ過流量(流束)値を求める。
【0042】
即ち、膜ろ過流量を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際における膜ろ過予測の計算ステップの構成として、下記の3通りがあるということを意味する。
(a)後述の計算ステップ1および計算ステップ2および計算ステップ3
(b)後述の計算ステップ1および計算ステップ2
(c)後述の計算ステップ1および計算ステップ3
【0043】
ここにおいて、(a)の場合(図1参照)には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び膜間差圧値を、(b)の場合には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を、(c)の場合には、任意の時刻における膜間差圧値を、求めることができる。
【0044】
また、同様に、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際における膜ろ過予測の計算ステップの構成として、下記の3通りがあるということを意味する。
(d)後述の計算ステップ1および計算ステップ2および計算ステップ4
(e)後述の計算ステップ1および計算ステップ2
(f)後述の計算ステップ1および計算ステップ4
【0045】
ここにおいて、(d)の場合(図2参照)には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び膜ろ過流量(流束)値を、(e)の場合には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を、(f)の場合には、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を、求めることができる。
【0046】
ここで、計算ステップ1では、任意の時刻において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する。
【0047】
ここにおいて、計算ステップ1は、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の、所定時間内における変化量に基づく計算ステップであって、計算ステップ1における計算式が、被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜に付着する速度の項と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度の項とを含み、前記分離膜に付着する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出され、かつ、前記分離膜から剥離する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出されることが好ましい。これによって、任意の時刻における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の計算を、精度良く予測することができる。
【0048】
また、前記計算ステップ1における計算式が、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことが、さらに好ましい。このことによって、被ろ過液の固形成分は膜に付着すれば膜ろ過抵抗に寄与し、また膜から剥離しやすいため、膜に付着した上清成分を巻き込んでともに剥離するという効果をさらに精度良く再現することができる。
【0049】
また、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の2次以上の高次関数の項を含むことがさらに好ましい。2次未満では、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜表面から剥離する速度が実際より小さくなる場合が多いが、2次以上にすることによって、その剥離の程度を大きくし、より精度良く再現することができる。
【0050】
また、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことがさらに好ましい。ここで、膜洗浄力とは、分離膜表面に付着している物質を剥離させるための応力であり、当該膜洗浄力の値は、膜表面に発生する剪断力の値、膜表面の被ろ過液の流速の値、前記剪断力や前記流速に基づいて算出された値、あるいは、洗浄手段の動力値(洗浄手段の動力値とは、例えば、分離膜の洗浄を分離膜の下部から曝気することによって行うときには、曝気風量や曝気ブロアの出力値などが相当し、分離膜の洗浄を被ろ過液を流動させることによって行うときには、その流動を生じさせるための動力(例えば、液体ポンプによって被ろ過液を流動させる場合には液体ポンプの出力値)などが相当し、分離膜の洗浄を分離膜を移動させることによって行うときには、その移動速度やそのための動力値(例えば、回転ろ過膜の場合には、回転速度やその回転を発生させるためのモーターの出力値)などが相当し、分離膜の洗浄を振動させることによって行うときには、その振動の程度(例えば、周波数)やそのための動力値(例えば、モーターの出力値)などのことである。)などに基づいて算出された値とすることが好ましく、また、膜洗浄力の値を、実際に膜ろ過テストを行った結果から算出・推定してもよい。このことにより、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を決定する要素として、曝気などの分離膜の性能に依存しない要素を加えることができ、これにより膜ろ過装置の運転条件を反映しやすくなる。
【0051】
このような条件を満たす数式として、例えば、次の(3)式および(4)式があり、本発明においては、(3)式および(4)式に従うことを推奨する。しかし、本発明の範囲は(3)式及び(4)式に限定されるものではない。
【0052】
【数3】
【0053】
ただし、(τ−λx・ΔP)≧0、(τ−λp・ΔP)≧0である。
【0054】
ここで、Xは固形成分に含まれる物質量値[gC/m3]、Pは上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量値[gC/m3]、Xmは単位膜面積あたりの分離膜に付着した固形成分に含まれる物質量値[gC/m2]、Pmは単位膜面積あたりの分離膜に付着した上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量値[gC/m2]、tは時間[s]、τは膜洗浄力値[Pa]、γxは固形成分に含まれる物質の剥離係数[1/m/s]、γpは上清成分に含まれる非膜透過性物質の剥離係数[1/m/s]、λxは固形成分に含まれる物質の摩擦係数[1/Pa]、λpは上清成分に含まれる非膜透過性物質の摩擦係数[1/Pa]、ηxは固形成分に含まれる物質の密度の逆数[m3/gC]、ηpは上清成分に含まれる非膜透過性物質の密度の逆数[m3/gC]である。ここで、(3)式の右辺の第1項は、固形成分物質が分離膜に付着する速度、及び、第2項は、固形成分物質が分離膜から剥離する速度を示しており、(4)式の右辺の第1項は、上清成分物質が分離膜に付着する速度、及び、第2項は、上清成分物質が分離膜から剥離する速度を示している。また、(3)式及び(4)式の両辺に膜面積Aを乗ずることによって、(3)式の左辺を分離膜に付着した固形成分に含まれる物質量の変化量、(4)式の左辺を分離膜に付着した上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量の変化量に、右辺の膜ろ過流束Jを膜ろ過流量Qに変換することが可能である。また、後述のように、膜洗浄力値τを、洗浄手段の動力値の関数として表現した場合には、その関数をτに代入することによって、(3)式及び(4)式を膜洗浄力値ではなく洗浄手段の動力値に関する計算式に変換することが可能である。
【0055】
また、前記のように、分離膜に付着している上清成分物質及び/又は固形成分物質の変化量を、前記被ろ過液の上清成分物質及び/又は固形成分物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づく場合、分離膜に付着した被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量に関する微分方程式として表現することができるが、そのとき、この微分方程式を解く積分方法として、Euler法や、Runge−Kutta法や、Runge−Kutta−Gill(RKG)法などがある。
【0056】
また、計算ステップ2では、少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を算出する。
【0057】
ここにおいて、前記計算ステップ2における任意の時刻における膜ろ過抵抗の計算は、例えば、(5)式に従うことにより任意の時刻における膜ろ過抵抗の値を計算できる。
【0058】
【数4】
【0059】
ここで、Rmは膜ろ過抵抗の初期値[1/m]、αxは前記Xmの単位量あたりの膜ろ過抵抗発生量[m/gC]、αpは前記Pmの単位量あたりの膜ろ過抵抗発生量[m/gC]である。
【0060】
また、計算ステップ3では、少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜間差圧値を算出する。
【0061】
ここにおいて、膜ろ過予測が前記(c)(即ち、計算ステップ1および計算ステップ3)で構成される場合、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて任意の時刻における膜間差圧値を算出する。その方法として、例えば、前記(5)式を前記(1)式に代入した数式を用いることなどがある。また、膜ろ過予測が前記(a)(即ち、計算ステップ1および計算ステップ2および計算ステップ3)で構成される場合、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜間差圧値を算出する。その方法として、前記(1)式、または、それに基づいた数式を用いて計算することが好ましい。
【0062】
また、計算ステップ4では、少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する。
【0063】
ここにおいて、膜ろ過予測が前記(f)(即ち、計算ステップ1および計算ステップ4)で構成される場合、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する。その方法として、例えば、前記(5)式を前記(1)式に代入した数式を用いることなどがある。また、膜ろ過予測が前記(d)(即ち、計算ステップ1および計算ステップ2および計算ステップ4)で構成される場合、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する。その方法として、前記(1)式、または、それに基づいた数式を用いて計算することが好ましい。
【0064】
本発明では、時刻を更新しながら前記計算ステップを繰り返し行うことによって、膜ろ過流量を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際の膜ろ過予測を行う場合には、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜間差圧の経時的変化を求め、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際の膜ろ過予測を行う場合には、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜ろ過流量(流束)の経時的変化を求める。
【0065】
また、前記計算ステップ1、前記計算ステップ2、前記計算ステップ3、および、前記計算ステップ4では、予め決められた計算式に従って計算するが、それら計算式の中に各計算ステップの説明において記述された値やデータや物質量以外のパラメータが含まれる場合がある。そのような場合、前記各計算ステップにおける計算を行う上でパラメータの値を決定する必要がある。本発明においては、パラメータの値の決定方法は特に限定しないが、膜ろ過装置の分離膜と同じ素材・形状の分離膜を用いて、被ろ過液あるいは被ろ過液の上清を実際にろ過し、そのときの膜間差圧の値、膜ろ過流束あるいは膜ろ過流量の値、膜ろ過抵抗の値の変化を実測または算出し、その結果に基づいてパラメータを推定または決定することが好ましい。これは、前記のようなパラメータの中には、利用する被ろ過液と分離膜の性質によって決定されるものが多く含まれており、前記のようなパラメータの推定・決定方法に従うことによって、前記予測を精度良く行うことが可能となるためである。
【0066】
次に、本発明の膜ろ過予測プログラムについて説明する。
以下、本発明の膜ろ過予測プログラムの最良の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。
【0067】
図3は本発明の膜ろ過予測プログラムにより実行される処理フローであり、図4は本発明の膜ろ過予測プログラムを実装した膜ろ過予測装置の構成の一例である。この膜ろ過予測装置は、補助記憶装置2、入力装置3および表示装置4が接続されたコンピュータ1で構成されており、このコンピュータのメインメモリ上には、制御プログラムが記憶されている。
【0068】
まず、膜間差圧を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜ろ過流量(流束)値の時間変化を予測する場合には、膜間差圧の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値および膜ろ過抵抗初期値が入力装置3から入力され(データ入力手段:ステップS100)(ここで、前記上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の時系列値の入力において、上清成分物質量の時系列値が入力される場合には、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量の初期値を、固形成分物質量の時系列値が入力される場合には、分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量の初期値を、上清成分物質量及び固形成分物質量の時系列値が入力される場合には、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び固形成分物質量の初期値を、入力する。)、コンピュータ1上のメインメモリに記憶される(データ記録手段:ステップS200)。また、全量ろ過型の膜ろ過を行う場合など、被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分量が時系列的に変化する場合には、別途計算された任意の時刻における被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分量を随時メインメモリに記録することが好ましい。膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜間差圧値の時間変化を予測する場合には、ステップS100で入力される値ならびにステップS200で記憶される値を、膜間差圧の時系列値に替えて膜ろ過流量(流束)の時系列値とすることによって、予測することができる。
【0069】
前記値はキーボードなどの入力装置によりそれぞれ個別に入力されても良いし、予め用意されたデータファイルとして入力されても構わない。ここで、時系列値とはある時刻とその時刻におけるデータとが対になっているデータ集合を意味する。例えば、ti(1≦i≦n、n:データ数)を時刻、tiにおけるデータをdiとして、(t1,d1)、(t2,d2)、・・・・、(tn,dn)と表されるデータの集合であるとする。ここで、ti+1−ti=Δtiとすると、Δtiは必ずしも一定であるとは限らないが、データを適当に外挿または内挿して補完することによりΔtiが一定となるように時系列値を生成することができる。ここで、i=0〜nであり、ti+1=ti+Δti、t0=0、nは刻み数を表す自然数であり、データを適当に外挿または内挿して補完することによりΔtiを一定とする場合、Δti=tn/nである。
【0070】
また、本発明の膜ろ過予測プログラムでは、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際の予測の場合には、少なくとも後述の成分量算出手段と膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜ろ過流量(流束)算出手段とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜ろ過流量(流束)値を求めることを含み、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際には、少なくとも後述の成分量算出手段と膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜間差圧算出手段とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜間差圧値を求めることを含む。
【0071】
即ち、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際における膜ろ過予測プログラムの構成として、下記の3通りを含むということを意味する。
(g)後述の成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段および膜ろ過流量(流束)算出手段
(h)後述の成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段
(i)後述の成分量算出手段および膜ろ過流量(流束)算出手段
【0072】
ここにおいて、(g)の場合(図5参照)には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び膜ろ過流量(流束)値を、(h)の場合には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を、(i)の場合には、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を、出力することができる。
【0073】
また、同様に、膜ろ過流量を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際における膜ろ過予測プログラムの構成として、下記の3通りを含むということを意味する。
(j)後述の成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段および膜間差圧算出手段
(k)後述の成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段
(m)後述の成分量算出手段および膜間差圧算出手段
【0074】
ここにおいて、(j)の場合(図6参照)には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び膜間差圧値を、(k)の場合には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を、(m)の場合には、任意の時刻における膜間差圧値を、求めることができる。
【0075】
次に、ステップS300の成分量算出手段では、補助記憶装置2に予め記録された付着成分量算出式に従って、時刻tiにおけるデータを用いて時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値が算出される。すなわち、メインメモリに記憶されている時系列値から時刻tiにおける膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値、または、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値、膜洗浄力値が読み出され、さらに膜ろ過抵抗初期値、時刻t0の場合には分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、t0以外の場合には時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値が読み出される。これら読み出された時刻tiにおける値を用いて時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値が予め記録された付着成分量算出式に従って算出される。ただし、前記ステップS200において、上清成分物質量の時系列値および分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量の初期値が記録されている場合には、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値を、固形成分物質量の時系列値および分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量の初期値が記録されている場合には、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量値を、上清成分量物質量及び固形成分物質量の時系列値および分離膜に付着している被ろ過液の上清成分量物質量及び固形成分物質量の初期値が記録されている場合には、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分量物質量及び固形成分物質量値を、算出する。これらの演算はメインメモリ中の制御プログラムの指示に従って中央処理装置にて処理される。
【0076】
前記予め記録された付着成分量算出式は、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値と被ろ過液の上清成分量値及び固形成分量値に基づいて決定される被ろ過液上清成分物及び固形成分物が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値に基づいて決定される分離膜に付着している被ろ過液の上清成分量及び固形成分量が分離膜から剥離する速度との差に基づくこと、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値と被ろ過液の上清成分量値に基づいて決定される被ろ過液の上清成分物が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値に基づいて決定される分離膜に付着している被ろ過液の上清成分量が分離膜から剥離する速度との差に基づくこと、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値と被ろ過液の固形成分量値に基づいて決定される被ろ過液の固形成分物が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値に基づいて決定される分離膜に付着している被ろ過液の固形成分量が分離膜から剥離する速度との差に基づくことが好ましい。
【0077】
また、より好ましくは、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことである。
【0078】
また、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことが好ましい。
【0079】
さらには、前記予め記録された付着成分量算出式が、前記(3)式及び/又は(4)式に基づいた数式で表現されることが好ましい。しかし、本発明の範囲は(3)式及び(4)式に限定されるものではない。ここで、前記(3)式および(4)式は、微分方程式で表現されているが、これをEuler法を用いて計算するとすると、例えば、(6)式および(7)式として表現することができる。
【0080】
【数5】
【0081】
ただし、(τ−λx・ΔP)≧0、(τ−λp・ΔP)≧0であり、(8)式の条件を満たす。
【0082】
【数6】
【0083】
ここで、(7)式の右辺の第1項は、固形成分物質が分離膜に付着する速度、及び、第2項は、固形成分物質が分離膜から剥離する速度を示しており、(6)式の右辺の第1項は、上清成分物質が分離膜に付着する速度、及び、第2項は、上清成分物質が分離膜から剥離する速度を示している。したがって、時刻ti+1における分離膜に付着している固形成分物質量を計算する際には、(7)式を、時刻ti+1における分離膜に付着している上清成分物質量を計算する際には、(6)式を、時刻ti+1における分離膜に付着している固形成分物質量及び上清成分物質量を計算する際には、(6)式及び(7)式を、利用する。また、(6)式及び(7)式の両辺に膜面積Aを乗ずることによって、(7)式の左辺を分離膜に付着した固形成分に含まれる物質量の変化量、(6)式の左辺を分離膜に付着した上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量の変化量に、右辺の膜ろ過流束Jを膜ろ過流量Qに変換することが可能である。また、膜洗浄力値τを、洗浄手段の動力値の関数として表現した場合には、その関数をτに代入することによって、(7)式及び(6)式を膜洗浄力値ではなく洗浄手段の動力値に関する計算式に変換することが可能である。
【0084】
また、前記のように、分離膜に付着している上清成分物質及び/又は固形成分物質の変化量を、前記被ろ過液の上清成分物質及び/又は固形成分物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づく場合、分離膜に付着した被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量に関する微分方程式として表現することができるが、そのとき、この微分方程式を解く積分方法として、Euler法や、Runge−Kutta法や、Runge−Kutta−Gill(RKG)法などがある。
【0085】
また、上記式中に現れる記号は表1に示すとおりである。ステップS400では、ステップS300で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量値及び/又は上清成分物質量値がコンピュータ1上のメインメモリに記録される。
【0086】
【表1】
【0087】
また、膜ろ過抵抗算出手段では、中央処理装置がメインメモリ内の制御プログラムの指示に従い、データ記録手段(ステップS200)でメインメモリに記憶された膜ろ過抵抗初期値と、成分量算出手段(ステップS300)で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量値及び/又は上清成分物質量値を用いて、補助記憶装置2に予め記録された膜ろ過抵抗予測値算出式を用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値を算出する。この予め記録された算出式は、分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量値及び/又は上清成分物質量値によって決定される膜ろ過抵抗と膜ろ過抵抗初期値との和として算出されることが好ましく、より好ましくは、前記(5)式に基づくことである。そのために、例えば、下記の(9)式を用いる。
【0088】
【数7】
【0089】
ここで、(9)式中に現れる記号は表1に示すとおりである。
【0090】
また、膜ろ過流量(流束)算出手段では、前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜間差圧値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜間差圧値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出する。
【0091】
ここにおいて、膜ろ過予測プログラムが前記(i)(即ち、成分量算出手段および膜ろ過流量(流束)算出手段)を含む場合、成分量算出手段で求めた時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を算出する。その方法として、例えば、前記(5)式を前記(1)式に代入した数式を用いることなどがある。また、膜ろ過予測が前記(g)(即ち、成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段および膜ろ過流量(流束)算出手段)を含む場合、膜ろ過抵抗算出手段で求めた時刻ti+1における膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する。その方法として、前記(1)式、または、それに基づいた数式を用いて計算することが好ましい。そのために、例えば、(10)式あるいは(11)式を用いる。
【0092】
【数8】
【0093】
ここで、(10)式および(11)式中に現れる記号は表1に示すとおりである。
【0094】
また、膜間差圧算出手段では、前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出する。
【0095】
ここにおいて、膜ろ過予測プログラムが前記(m)(即ち、成分量算出手段および膜間差圧算出手段)を含む場合、成分量算出手段で求めた時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて時刻ti+1における膜間差圧値を算出する。その方法として、例えば、前記(5)式を前記(1)式に代入した数式を用いることなどがある。また、膜ろ過予測が前記(j)(即ち、成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段および膜間差圧算出手段)を含む場合、膜ろ過抵抗算出手段で求めた時刻ti+1における膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜間差圧値を算出する。その方法として、前記(1)式、または、それに基づいた数式を用いて計算することが好ましい。そのために、例えば、(12)式あるいは(13)式を用いる。
【0096】
【数9】
【0097】
ここで、(12)式および(13)式中に現れる記号は表1に示すとおりである。
【0098】
また、膜ろ過予測値記録手段(ステップS600)では、前記膜ろ過抵抗算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値、及び/又は、前記膜ろ過流量(流束)算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値がコンピュータ1上のメインメモリに記録される。
【0099】
膜間差圧を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜ろ過流量(流束)値の時間変化を予測する場合には、成分量算出手段、成分量算出値記録手段、膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜ろ過流量(流束)算出手段、膜ろ過予測値記録手段を、膜ろ過流量を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜間差圧値の時間変化を予測する場合には、成分量算出手段、成分量算出値記録手段、膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜間差圧算出手段、膜ろ過予測値記録手段を、時刻をΔtiずつ更新しながら繰り返すことでメモリ上にΔti毎の予測値の時系列データ(時間t0〜tnに対応する予測値の時系列データ)が生成される。ここで、予測の終了はステップS200でメモリに記憶された時系列データの最終時刻tn、または、事前に設定された時刻でもよい。
【0100】
最後に、出力手段(ステップS700)では、メインメモリ内の制御プログラムの指示に従って予測値の時系列データが表示装置4によって表示される。表示は時刻と予測値が対になった表や、縦軸に予測値、横軸に時刻をとったグラフなどでなされることが好ましい。また、任意の時刻における異なる2種の予測値(例えば、膜ろ過流量値と膜ろ過抵抗値など)を対として、一方を縦軸に他方を横軸として表示してもよい。また、この表やグラフはプリンタなどにより出力されてもよい。
【0101】
上記プログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROMなどに代表される有形の記憶媒体や、有線もしくは無線のネットワークなどの電送経路(自動公衆送信を含む)を通じて流通される。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
まず、被ろ過液として活性汚泥を用い、図7に示した膜ろ過試験装置400を用いて膜ろ過試験を行った。膜ろ過試験装置400は、窒素ガス405によって、純水を収容している純水チャンバー410を、あるいは、攪拌式セル401(ミリポア(株)製Amicon8050)を加圧すること(その圧力は、圧力計411によって測定)、によって、被ろ過液である活性汚泥を膜固定ホルダー406に設置された分離膜402によってろ過する装置である。また、膜ろ過は、マグネティックスターラー403によって被ろ過液中に浸漬されている攪拌子404を回転させることによって、被ろ過液を攪拌することが可能である。また、膜透過液を電子秤408上に載せたビーカー407に受けて、その膜透過液量を電子秤408によって測定し、その測定値をパソコン409に取り込む構造とした。また、バルブ412、バルブ413、バルブ414を開閉することにより、膜ろ過試験装置各部の加圧の有無を調整した。
【0104】
まず、膜ろ過抵抗初期値を測定するために純水を用いた膜ろ過試験を行った。ここにおいて、膜ろ過圧力を20kPa、マグネティックスターラー403による攪拌速度を600rpmとした。また、電子秤408における測定値を2秒間隔でパソコン409に取り込んだ。純水を用いた膜ろ過試験は80mlの膜透過液量が得られるまで行った。
【0105】
次に、活性汚泥を用いた膜ろ過性評価試験を行った。まず、純水チャンバー310を外し、図7の点線のライン415を接続した。攪拌式セル401内に12mlの活性汚泥を投入し、膜ろ過圧力を20kPa、マグネティックスターラー403による攪拌速度を600rpmとして膜ろ過試験を行った。電子秤408における測定値を2秒間隔でパソコン409に取り込み、700秒間の膜ろ過試験を行った。
【0106】
上記、膜ろ過試験を、遠心分離(3500rpm、10分間)によって得られた遠心上清を用いても行った。
【0107】
上記の各膜ろ過試験において、パソコン409内に取り込まれたろ過時間とろ過液量との関係を示したデータを次のように処理した。まず、任意のろ過時間におけるろ過液量の微分係数を用いて、任意のろ過時間における膜ろ過流束を算出した。次に、前記任意のろ過時間における膜ろ過流束から、膜ろ過圧力を用いて、前記(1)式に従い、任意のろ過時間における膜ろ過抵抗を算出した。上記のように算出された結果から、単位膜面積あたりの総ろ過液量と膜ろ過抵抗との関係を作成した。
【0108】
前記純水を用いた膜ろ過試験の結果から作成された単位膜面積あたりの総ろ過液量と膜ろ過抵抗との関係から、ろ過液量が70〜80mLの区間における膜ろ過抵抗の平均値を膜ろ過抵抗初期値とした。
【0109】
ここで、上記のような膜ろ過試験の結果を予測するための膜ろ過予測プログラムを、数値計算ソフトMATLAB(米国 Mathworks社製)を用いて作成した。
【0110】
まず、膜間差圧ΔP[Pa]の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量P[gC/m3]および固形成分量X[gC/m3]の時系列値、および、膜洗浄力の時系列値を予め用意したデータファイルとして入力することとし、膜ろ過抵抗初期値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量および固形成分量の初期値、膜面積値、および、透過水粘度値は、キーボードから直接入力する構造とした。また、入力されたデータおよび値は、メモリに記録される構造とした。
【0111】
また、付着成分量算出式として、前記(3)式および前記(4)式を、膜ろ過抵抗予測値算出式として、前記(5)式を、膜ろ過流量(流束)予測値算出式として、前記(1)式にJ=Q/Aを代入した数式を、予め記録させた。
【0112】
成分量算出手段として、前記メモリに記録された時刻tiにおける膜間差圧値、時刻tiにおける被ろ過液の上清成分量値および固形成分量値、時刻tiにおける膜洗浄力値、および、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量および固形成分量の初期値又はメモリに記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値を読み出し、前記付着成分算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値を算出する構造とした。このとき、積分法として、Runge−Kutta法を用いた。
【0113】
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分物質量値は、メモリに記録される構造とした(成分量算出値記録手段)。
【0114】
膜ろ過抵抗予測値算出手段として、前記メモリに記録された膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と、前記成分量算出手段において算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値とを用いて、膜ろ過抵抗予測値算出式に従って、時刻ti+1における膜ろ過抵抗値を算出する構造とした。ここで、膜ろ過抵抗予測値算出式として、前記(5)式を用いた。
【0115】
膜ろ過流量(流束)予測値算出手段として、前記メモリに記録された時刻ti+1における膜間差圧値と膜面積値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜間差圧値と膜面積値と、前記膜ろ過抵抗予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗値とを用いて、膜ろ過流量(流束)予測値算出式IIに従って、時刻ti+1における膜ろ過流量値を算出する構造とした。ここで、膜ろ過流量(流束)予測値算出式IIとして前記(1)式を用いた。
【0116】
前記膜ろ過抵抗予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗値、および、前記膜ろ過流量(流束)予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜ろ過流量値をメモリに記録する構造とした(膜ろ過予測値記録手段)。
【0117】
また、本膜ろ過試験装置を用いた活性汚泥およびその遠心上清の膜ろ過試験では、ろかの継続に伴い、被ろ過液の容量が減少する。そのため、水、固形成分物質、上清成分物質に関するマテリアルバランスの計算が必要となる。そこで、下記(14)式、(15)式、(16)式に従い、それぞれ、時刻ti+1における被ろ過液容量、時刻ti+1における固形成分物質量、時刻ti+1における上清成分物質量を算出した(マテバラ補正値算出手段)。
【0118】
【数10】
【0119】
ここで、V(t)は、時刻tにおける被ろ過液容量[m3]である。
【0120】
また、前記算出された時刻ti+1における被ろ過液容量、時刻ti+1における固形成分物質量、時刻ti+1における上清成分物質量をメモリ内に記録した。
【0121】
前記成分量算出手段、前記マテバラ補正値算出手段、前記膜ろ過抵抗予測値算出手段、および、前記膜ろ過流量(流束)予測値算出手段を、予め記録された時刻tnとなるまで、ti+1=ti+Δt(ここで、Δt=tn/n)に従って時刻を更新しながら行う構造とした。
【0122】
前記膜ろ過予測値記録手段において記録された時刻t0〜tnにおける膜ろ過抵抗値および膜ろ過流量値を時系列値として、メモリ内に記録した(時系列値記録手段)。また、メモリ内に記録された時刻t0〜tnにおける膜ろ過流量値を用いて、時刻t0〜tnにおける単位膜面積あたりの総ろ過液量値を下記(17)式(時刻tiにおける単位膜面積あたりの総ろ過液量値は、時刻t0〜tiの範囲で膜ろ過流束を積分したもの)を用いて算出し、算出された時刻t0〜tnにおける単位膜面積あたりの総ろ過液量値と膜ろ過抵抗値とを対としたデータをメモリ内に記録した。横軸に時刻、縦軸に膜ろ過流量値もしくは膜ろ過抵抗値として、もしくは、横軸に単位膜面積あたりの総ろ過液量値、縦軸に膜ろ過抵抗値として、グラフ化して出力する構造とした。
【0123】
【数11】
【0124】
ここで、v(t)は、時刻tにおける単位膜面積あたりの総ろ過液量値[m]である。
【0125】
前記膜ろ過予測プログラムを用いて、前記膜ろ過試験の結果を再現するために、まず、活性汚泥のMLSS濃度、遠心分離上清のTOC濃度、膜透過液のTOC濃度を測定した。ここで、固形成分物質量Xを、その示性式がC5H7O2Nであると仮定し、MLSS測定値に60/113を乗じることで算出した。また、上清成分物質量Pを、遠心分離上清のTOC濃度から膜透過液のTOC濃度を減ずることで算出した。その結果、
X=6.84×103 [gC/m3]
P=289 [gC/m3]
であった。
【0126】
まず、遠心上清による膜ろ過試験結果の予測を行った。
ここで、遠心上清は、固形成分を含まないので、時刻ゼロにおける固形成分物質量値をX(0)=0、分離膜に付着している固形成分物質量値をXm(0)=0とした。このことにより、前記膜ろ過予測プログラムを、固形成分を含まずに上清成分のみで構成した形に修正できる。
【0127】
また、時刻ゼロにおける上清成分物質量値P(0)=289、分離膜に付着している上清成分物質量値Pm(0)=0、膜ろ過抵抗初期値Rm=8.5×1010、膜洗浄力値τ=10(一定値)、膜ろ過液の粘度μ=1.0×10−3、膜間差圧値ΔP=20×103を入力した。その他、前記膜ろ過プログラムに必要なパラメータとして抵抗係数αp、剥離係数γp、摩擦係数λpを入力し、膜ろ過予測結果を出力した。そして、実測値と膜ろ過予測結果との差異が最小となるように、抵抗係数αp、剥離係数γp、摩擦係数λpを変化させながら、上記膜ろ過予測を繰り返し行った。その結果、抵抗係数αp=940×1010、剥離係数γp=5.4×102、摩擦係数λp=4.2×10−5となるときに実測値と膜ろ過予測結果が最小となった。このときの膜ろ過予測結果と実測結果を図8に示す。このように、膜ろ過予測結果が実測結果に非常に類似しており、膜ろ過予測が精度良く実現できていることを示している。
【0128】
次に、汚泥による膜ろ過試験結果の予測を行った。
【0129】
時刻ゼロにおける上清成分物質量値P(0)=289、時刻ゼロにおける固形成分物質量値X(0)=6.84×103、分離膜に付着している上清成分物質量値Pm(0)=0、分離膜に付着している固形成分物質量値Xm(0)=0、膜ろ過抵抗初期値Rm=8.5×1010、膜洗浄力値τ=10(一定値)、膜ろ過液の粘度μ=1.0×10−3、膜間差圧値ΔP=20×103を入力した。また、上記で決定されたパラメータとして、抵抗係数αp=940×1010、剥離係数γp=5.4×102、摩擦係数λp=4.2×10−5を入力した。その他、前記膜ろ過プログラムに必要なパラメータとして抵抗係数αx、剥離係数γx、摩擦係数λxを入力し、膜ろ過予測結果を出力した。そして、実測値と膜ろ過予測結果との差異が最小となるように、抵抗係数αx、剥離係数γx、摩擦係数λxを変化させながら、上記膜ろ過予測を繰り返し行った。その結果、抵抗係数αx=20×1010、剥離係数γx=3.3×103、摩擦係数λx=1.1×10−5となるときに実測値と膜ろ過予測結果が最小となった。このときの膜ろ過予測結果と実測結果を図9に示す。このように、膜ろ過予測結果が実測結果に非常に類似しており、膜ろ過予測が精度良く実現できていることを示している。
【0130】
(実施例2)
下記の膜分離装置300における膜ろ過結果の予測を行った。
【0131】
膜分離装置300の構造概略を図10に示す。膜分離装置は、浸漬型の膜分離式活性汚泥装置(MBR)であり、酢酸を主成分とする工場排水を処理する排水処理装置である。酢酸を主成分とする工場排水を、断続的に平均流量2.3m3/dで有効容量2.3m3の被ろ過液収容槽301に投入した。被ろ過液収容槽301には、被ろ過液304として活性汚泥が収容されており、被ろ過液304中に分離膜302を浸漬させ、前記分離膜302の下方部には散気管が設置され、前記散気管には膜表面洗浄手段である曝気ブロア303からエアが供給される構造とした。すなわち、本装置においては、散気管から供給されるエアバブルが膜表面に接触し、また曝気による活性汚泥の流動も同時に発生するために、膜表面の付着成分が膜から剥離する効果が得られることとなる。分離膜302は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)製の平膜型の精密ろ過膜(有効膜面積7.8m2)であり、透過側から吸引することによって膜ろ過液305を得る。
【0132】
前記膜分離装置300において、分離膜302の中の平膜エレメント1枚(有効膜面積1.3m2)を用いて、図11のような膜ろ過試験装置500を設置した。なお、被ろ過液である活性汚泥504は、実施例1と同じ活性汚泥である。
【0133】
膜ろ過試験装置500では、被ろ過液である活性汚泥504を収容した活性汚泥収容槽501内に、分離膜502(有効膜面積1.3m2)を設置し、前記分離膜に、曝気ブロア503から散気管507を通して供給されるエアバルブを接触させることによって、分離膜502の膜表面に汚泥ケークが蓄積するのを抑制しながら(膜洗浄力を膜表面に与えながら)、水頭差ΔHによって発生する膜間差圧を駆動力として膜ろ過を行った。ここで、膜ろ過の停止と開始の切り替えにはバルブ516を用い、また、流量計514によって膜ろ過流量を測定し、前記膜ろ過流量測定値を1秒間隔で記録計515に記録した。ここにおいて、水頭差ΔHを定期的に変化させることにより、また、バルブ516を開閉することにより、分離膜502における膜間差圧を図12のように変化させた。
【0134】
前記膜ろ過試験の結果を予測するために、下記のような膜ろ過予測プログラムを作成した。
この膜ろ過予測プログラムは、実施例1で記載した膜ろ過予測プログラムと下記の点を除いて同じである。
【0135】
前記膜ろ過試験装置では、膜ろ過によって被ろ過液の容量が減少する分、工場排水を投入し、被ろ過液の容量をほぼ一定に保っている。そのため、膜ろ過の過程において、固形成分物質量と上清成分物質量が変化しないと判断し、実施例1に記載の膜ろ過予測プログラムから、前記マテバラ補正値算出手段を削除した。
【0136】
以上のような膜ろ過予測プログラムを用いて、前記膜ろ過試験装置における膜ろ過流量値の変化の予測を行った。
【0137】
実施例1と同じ汚泥および分離膜を用いているので、被ろ過液の上清成分物質量値P=289(一定値)、固形成分物質量値X=6.84×103(一定値)、分離膜に付着している上清成分物質量の初期値Pm(0)=0、分離膜に付着している固形成分物質量の初期値Xm(0)=0、膜ろ過抵抗初期値Rm=8.5×1010、膜ろ過液の粘度μ=1.0×10−3を入力した。また、膜間差圧の時系列値として、図12に記載の膜間差圧変化をデータファイルとして入力した。また、上記で決定されたパラメータとして、抵抗係数αp=940×1010、αx=20×1010、剥離係数γp=5.4×102、γx=3.3×103、摩擦係数λp=4.2×10−5、λx=1.1×10−5を入力した。ただし、膜洗浄力値τに関しては、前記実施例1とは状況が異なるので、前記実施例1とは異なる値を入力し、膜ろ過予測結果を出力した。そして、実測値と膜ろ過流量予測結果との差異が最小となるように、膜洗浄力値τを変化させながら、上記膜ろ過流量予測を繰り返し行った。その結果、τ=16となるときに実測値と膜ろ過流量予測結果が最小となった。このときの膜ろ過流量予測結果と実測結果を図13に示す。このように、膜ろ過流量予測結果が実測結果に非常に類似しており、膜ろ過流量予測が精度良く実現できていることを示している。
【0138】
(実施例3)
前記実施例2に記載の膜分離装置300における膜ろ過結果の予測を行った。
【0139】
まず、入力手段において、膜間差圧ΔP[Pa]、活性汚泥の上清成分量P[gC/m3]および固形成分量X[gC/m3]の時系列データを予め用意したデータファイルとして入力した。このとき入力された膜間差圧の時系列変化は図14に示すようなものである。また初期膜ろ過抵抗Rmは
Rm=8.5×1010[m−1]
としてキーボードから直接入力された。時系列データは2000秒間のデータで2秒おきのデータ集合である。
【0140】
また、本実施例において、上記計算を行うために用いた各諸元値を表2にまとめた。
【0141】
【表2】
【0142】
これら入力された時系列値および膜ろ過抵抗初期値は、データ記録手段においてメモリに記憶された。
【0143】
次に、成分量算出手段において、時刻tiにおける
膜間差圧:ΔP(ti)、
活性汚泥の上清成分物質量:P(ti)、固形成分物質量:X(ti)、
分離膜に付着している上清成分量:Pm(ti)および分離膜に付着している固形成分量:Xm(ti)
から次の時刻ti+1における
活性汚泥の膜付着上清成分量:Pm(ti+1)[gC/m2]および膜付着固形成分量:Xm(ti+1)[gC/m2]
を算出するにはそれぞれ前記(6)式及び(7)式を用いた。ただし、前記(8)式及び下記(18)式の通りである。
【0144】
【数12】
【0145】
上記式中に用いられている記号類を表1に示した。また、ここに示す各種パラメータの値は表2のとおりとした。
【0146】
(6)式の右辺について、第2項はΔtの間に上清成分が分離膜へ付着する量を表している。第3項はΔtの間に上清成分が分離膜から剥離する量を表現している。同様に、(7)式の右辺について、第2項はΔtの間に固形成分が分離膜へ付着する量を表している。第3項はΔtの間に固形成分が分離膜から剥離する量を表現している。(6)式および(7)式に従い、CPUにて時刻ti+1における分離膜に付着している活性汚泥の上清成分物質量Pm(ti+1)および分離膜に付着している活性汚泥の固形成分物質量Xm(ti+1)が演算された。
【0147】
続いて成分量算出値記録手段では、算出された分離膜に付着している活性汚泥の上清成分物質量Pm(ti+1)および分離膜に付着している活性汚泥の固形成分物質量Xm(ti+1)がメモリ上に記憶された。
【0148】
さらに、膜ろ過抵抗算出手段において、メモリ上に記憶された分離膜に付着している活性汚泥の上清成分物質量Pm(ti+1)および分離膜に付着している活性汚泥の固形成分物質量Xm(ti+1)、メモリに記憶された膜ろ過抵抗初期値Rmを用いてCPUにて膜ろ過抵抗R(ti+1)が算出されるが、この算出には前記(9)式を用いた。
【0149】
膜ろ過予測値記録手段では、算出された膜ろ過抵抗R(ti+1)が、メモリ上に記録された。
【0150】
本プログラムでは、上記の成分量算出手段、成分量算出値記録手段、膜ろ過抵抗算出手段、膜ろ過予測値記録手段を時刻tiを更新しながら時系列データ2000秒間分繰り返し計算し、膜ろ過抵抗R(ti)(i=1,2,…,n)が時系列値として得られた。前記得られた膜ろ過抵抗の時系列値は、メモリ内に記録された(時系列値記録手段)。
【0151】
次に、出力手段において、上記で得られた膜ろ過抵抗の時系列データを、横軸を時間、縦軸を膜ろ過抵抗としてグラフ表示された。その結果を図15に示した。
【0152】
一方、実際に図10に示す装置で膜間差圧ΔP[kPa]を図14に示すように間欠的に変化させ、活性汚泥の上清成分物質量P[gC/m3]および固形成分物質量X[gC/m3]がそれぞれ、
P=289 [gC/m3]
X=6.84×103 [gC/m3]
である活性汚泥の膜ろ過抵抗変化を実測した。その結果を本プログラムで予測した膜ろ過抵抗と比較して図16に示した。本プログラムで算出した膜ろ過抵抗予測値が実測値に類似しており、膜ろ過抵抗の予測が精度良く実現できていることを示している。
【0153】
(実施例4)
下記のような膜ろ過予測プログラムを、数値計算ソフトExcelVBA(Visual Basic Applications、Microsoft社製)を用いて作成した。
【0154】
まず、膜ろ過流束の時系列データ、被ろ過液の上清成分量P[gC/m3]および固形成分量X[gC/m3]の時系列データ、および、膜洗浄力の時系列値を予め用意したデータファイルとして入力することとし、膜ろ過抵抗初期値Rm、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量および固形成分量の初期値、膜面積値、および、透過水粘度値は、キーボードから直接入力することとした。また、入力されたデータおよび値は、メモリに記録される構造とした。
【0155】
また、付着成分量算出式として、前記(3)式および前記(4)式を、膜ろ過抵抗予測値算出式として、前記(5)式を、膜ろ過圧力予測値算出式として、前記(1)式にJ=Q/Aを代入した数式を、予め記録させた。
【0156】
成分量算出手段として、前記メモリに記録された時刻tiにおける膜ろ過流束値、時刻tiにおける被ろ過液の上清成分量値および固形成分量値、時刻tiにおける膜洗浄力値、および、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量および固形成分量の初期値又は後述の成分量算出値記録手段によってメモリに記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値を読み出し、前記付着成分算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値を算出する構造とした。このとき、積分法として、Euler法を用いた。
【0157】
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値は、成分量算出値記録手段によってメモリに記録される構造とした。
【0158】
膜ろ過抵抗予測値算出手段として、前記メモリに記録された膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と、前記成分量算出手段において算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値とを用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗値を算出する構造とした。
【0159】
膜間差圧予測値算出手段として、前記メモリに記録された時刻ti+1における膜ろ過流束値と膜面積値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜ろ過流束値と膜面積値と、前記膜ろ過抵抗予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗値とを用いて、時刻ti+1における膜間差圧値を算出する構造とした。
【0160】
前記膜ろ過抵抗予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗値、および、前記膜間差圧予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜間差圧値を膜ろ過予測値記録手段においてメモリに記録する構造とした。
【0161】
前記成分量算出手段、前記膜ろ過抵抗予測値算出手段、および、前記膜間差圧予測値算出手段を、予め記録された時刻tnとなるまで、ti+1=ti+Δt(ここで、Δt=tn/n)に従って時刻を更新しながら行う構造とした。
【0162】
前記膜ろ過予測値記録手段において記録された時刻t0〜tnにおける膜ろ過抵抗値および膜間差圧値を時系列値として、メモリ内に記録し、横軸に時刻、縦軸に膜間差圧値もしくは膜ろ過抵抗値としてグラフ化して出力する構造とした。
【0163】
以上の膜ろ過予測プログラムを用いて、前記膜分離装置300(図10)において、8分間0.8m/d、2分間ろ過停止の間欠運転を行った際の膜間差圧の変化を予測した。同条件で膜ろ過を行ったときの膜間差圧の変化と併せて、図17に示す。なお、膜間差圧の変化を予測するのに必要な数値として、被ろ過液の上清成分物質量値P=289(一定値)、固形成分物質量値X=6.84×103(一定値)、分離膜に付着している上清成分物質量の初期値Pm(0)=0、分離膜に付着している固形成分物質量の初期値Xm(0)=0、膜ろ過抵抗初期値Rm=8.5×1010、膜ろ過液の粘度μ=1.0×10−3、膜間差圧値ΔP=20×103を入力した。また、上記で決定されたパラメータとして、抵抗係数αp=940×1010、αx=20×1010、剥離係数γp=5.4×102、γx=3.3×103、摩擦係数λp=4.2×10−5、λx=1.1×10−5、膜洗浄力τ=16を入力した。図17において、本プログラムで算出した膜間差圧予測値が実測値に類似しており、膜間差圧の予測が精度良く実現できていることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、ろ過装置の膜抵抗予測に限らず、膜目詰まり警報装置やろ過流量予測装置などにも応用することができ、その応用範囲は、これらに限られるものではない。また、本発明の膜ろ過の予測は、水中に懸濁物質等が混在している水性液を被ろ過液とする場合に好適であるが、水以外の液体物質中に懸濁物質等が混在している混合液を被ろ過液とする場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の予測方法のフローチャートの一例である。
【図2】本発明の予測方法のフローチャートの他の一例である。
【図3】本発明の実施形態からなる膜ろ過抵抗予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の膜ろ過予測プログラムのフローチャートの一例である。
【図5】本発明の膜ろ過予測プログラムのフローチャートの他の一例である。
【図6】本発明の膜ろ過予測プログラムのフローチャートの他の一例である。
【図7】本発明の膜ろ過予測方法及びプログラムを適用した膜ろ過試験装置400の概略図である。
【図8】遠心上清を膜ろ過した際の膜ろ過抵抗の予測値と実測値である。
【図9】活性汚泥を膜ろ過した際の膜ろ過抵抗の予測値と実測値である。
【図10】本発明の膜ろ過予測方法及びプログラムを適用した膜分離装置300の概略図である。
【図11】本発明の膜ろ過予測方法及びプログラムを適用した膜ろ過試験装置500の概略図である。
【図12】膜間差圧の時系列データを表す図である。
【図13】本発明の膜ろ過予測プログラムによって得られる膜ろ過流量予測値時系列データを表す図である。
【図14】膜間差圧の時系列データを表す図である。
【図15】本発明の膜ろ過予測プログラムによって得られる膜ろ過抵抗予測値時系列データを表す図である。
【図16】本発明の膜ろ過予測プログラムによって得られる膜ろ過抵抗予測値時系列データと実測値を比較した図である。
【図17】本発明の膜ろ過予測プログラムによって得られる膜間差圧予測値時系列データと実測値を比較した図である。
【符号の説明】
【0166】
1 :コンピュータ
2 :補助記憶装置
3 :入力装置
4 :表示装置
300:膜分離装置
301:被ろ過液収容槽
302:分離膜
303:曝気ブロア
304:被ろ過液
305:膜ろ過液
400:膜ろ過試験装置
401:攪拌式セル
402:分離膜
403:マグネティックスターラー
404:攪拌子
405:窒素ガス
406:膜固定ホルダー
407:ビーカー
408:電子秤
409:パソコン
410:純水チャンバー
411:圧力計
412:バルブ
413:バルブ
414:バルブ
500:膜ろ過試験装置
501:活性汚泥収容槽
502:分離膜
503:曝気ブロア
504:活性汚泥
506:工場排水
507:散気管
514:流量計
515:記録計
516:バルブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、被ろ過液を膜によってろ過する際に発生する膜ろ過抵抗の時間変化、膜ろ過流量の時間変化、膜間差圧の時間変化を予測する方法、予測装置、及び予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を分離膜によってろ過する方法は、被ろ過液である液体と分離膜を接触させ、被ろ過液側から加圧もしくは透過側を負圧にしてろ過液を得る方法である。このとき、被ろ過液に含まれる非膜透過物質が膜表面に付着し、付着した物質が膜ろ過抵抗増加を引き起こすこととなる。膜ろ過抵抗が大きくなると、一定の膜ろ過圧力を加えることにより膜ろ過を行う場合には、膜ろ過流量が低減し、膜ろ過流量を一定として膜ろ過を行う場合には、膜間差圧が増大する。前者の場合には、計画していた流量が確保できないこととなり、後者の場合には圧力を増加させるためのエネルギーが必要となると同時に分離膜に対する負担が増加する。このような膜ろ過抵抗の増加挙動は、膜ろ過条件によって大きく影響を受け、膜ろ過を継続して行うための重要な因子である。すなわち、膜ろ過抵抗や、膜ろ過流量や、膜間差圧の時間変化を的確に予測することができれば、効率的かつ安定的なろ過を行うための膜ろ過条件を見いだすことが可能となる。
【0003】
また、このような膜ろ過抵抗の増加を抑制する方法として、膜下方部に設置された散気装置によって膜表面を曝気する、ポンプなどを利用して膜表面と水平方向に被ろ過液を流動させる、分離膜を移動または振動させるなど、膜表面を洗浄しながら膜ろ過する方法がある。このような膜ろ過方法において、膜洗浄を十分に行うことによって膜ろ過抵抗の増加を抑制することが可能となるのであるが、このような膜表面の洗浄にはエネルギーを必要とし、必要以上に膜洗浄を行うことは、運転コストを増大させることになる。すなわち、必要十分に膜表面洗浄を行うことが膜ろ過装置の運転適正化にとって重要である。
【0004】
また、ろ過を一時中断して薬液などによる膜面洗浄も行われる場合がある。この場合、運転の一時中断に伴いろ過運転効率が低下し、薬液コストもかかるため、膜洗浄をどのタイミングで行うかが重要である。
そこで、ろ過中の膜ろ過抵抗の時間変化を的確に予測することができれば、定量的な膜ろ過条件を決定することができるため非常に有効である。例えば、膜ろ過抵抗の増加を抑制するために必要な最小限の曝気風量を決定することが可能となる。
【0005】
非特許文献1には膜ろ過抵抗を予測する数式モデルが開示されている。非特許文献1によれば、ろ過膜に付着する細胞外高分子物質量(以下、EPSという)の増減を数式モデルとして表現し、EPSに基づいて膜ろ過抵抗を予測することが提案されている。
【非特許文献1】H. Nagaoka, “MODELING OF BIOFOULING BY EXTRACELLULAR POLYMERS IN A MEMBRANE SEPARATION ACTIVATED SLUDGE SYSTEM", Wat. Sci. Tech. Vol.38, No.4-5, pp497-504,1998.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に基づく膜ろ過抵抗予測では次のような問題点があった。
【0007】
第一には、EPSの測定には専門的な知識と装置、労力、時間が必要であり、実際の膜ろ過運転においてはEPSを容易に測定することができない。このため、EPSを測定して予測を行ったとしてもデータが不足して予測精度が低下したり、データを十分に収集するのに時間がかかったりするため、膜ろ過抵抗を予測してもろ過条件を修正変更するタイミングを逸してしまうことになり易い。
【0008】
第二には、被ろ過液中の固形成分が考慮されていないため、膜ろ過抵抗予測精度が十分ではない点である。被ろ過液中の固形成分は膜に付着すれば膜ろ過抵抗の上昇に寄与し、また膜から剥離しやすいため、膜に付着した上清成分を巻き込んでともに剥離する。従って、被ろ過液中の固形成分の影響を考慮していない非特許文献1の方法では、精度良い予測は困難である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、被ろ過液を膜によってろ過する際に発生する膜ろ過抵抗、膜ろ過流量、膜間差圧の時間変化を精度良く予測する方法、予測装置及び予測プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の膜ろ過装置における膜ろ過予測方法は、以下の構成のいずれかからなる。
(1) 分離膜の被ろ過液側と透過液側の圧力差(以下、膜間差圧という)を駆動力として、被ろ過液を分離膜によってろ過する膜ろ過方法において、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜間差圧の経時的変化を予測する膜ろ過予測方法であって、
膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜ろ過流量(流束)の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いること、
少なくとも下記の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ3とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜間差圧値を求めること、
(計算ステップ1) 任意の時刻において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する、
(計算ステップ2) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を算出する、
(計算ステップ3) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜間差圧値を算出する、
さらに、時刻を更新しながら前記計算ステップを繰り返し行うことによって、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜間差圧の経時的変化を求めること
を特徴とする膜ろ過予測方法。
【0011】
(2) 分離膜の被ろ過液側と透過液側の圧力差(以下、膜間差圧という)を駆動力として、被ろ過液を分離膜によってろ過する膜ろ過方法において、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜ろ過流量(流束)の経時的変化を予測する膜ろ過予測方法であって、
膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜間差圧の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いること、
少なくとも、下記の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ4とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜ろ過流量(流束)を求めること、
(計算ステップ1) 任意の時刻において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する、
(計算ステップ2) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を算出する、
(計算ステップ4) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値膜を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する、
さらに、時刻を更新しながら前記計算ステップを繰り返し行うことによって、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜ろ過流量(流束)の経時的変化を求めること
を特徴とする膜ろ過予測方法。
【0012】
(3) 前記計算ステップ1が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の、所定時間内における変化量に基づく計算ステップであって、
計算ステップ1における計算式が、被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜に付着する速度の項と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度の項とを含み、
前記分離膜に付着する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出され、かつ、
前記分離膜から剥離する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出されること
を特徴とする(1)又は(2)に記載の膜ろ過予測方法。
【0013】
(4) 前記計算ステップ1における計算式が、
膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、
膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことを特徴とする(3)に記載の膜ろ過予測方法。
【0014】
(5) 分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の2次以上の高次関数の項を含むことを特徴とする(3)又は(4)に記載の膜ろ過予測方法。
(6) 分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載の膜ろ過予測方法。
(7) 被ろ過液が、微生物を含む混合液であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の膜ろ過予測方法。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の膜ろ過予測方法に従って演算を行う演算手段、前記演算手段の演算結果を表示する表示手段、入力データおよび演算結果を記録する記録手段を備えてなる膜ろ過予測装置。
【0015】
また、本発明の膜抵抗予測プログラムは、上記目的を達成するため、以下の構成からなる。
(9)分離膜による被ろ過液のろ過を、膜間差圧を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜ろ過流量(流束)値の時間変化を予測するためのコンピュータプログラムであって、
膜間差圧の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗の初期値を入力するデータ入力手段、
前記データ入力手段で入力された膜間差圧の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗初期値を記録しておくデータ記録手段、
前記データ記録手段から任意の時刻ti(ここで、i=0〜nであり、ti+1=ti+Δti、t0=0、nは刻み数を表す自然数。)における膜間差圧値、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値、膜洗浄力値、および、時刻t0の場合には分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値を読み出し、さらに、時刻t0以外の場合には後述の成分量算出値記録手段によって前記データ記録手段に記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を読み出し、予め記録された付着成分量算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する成分量算出手段、
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を記録する成分量算出値記録手段、
次の膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜ろ過流量(流束)算出手段
(膜ろ過抵抗算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分中非膜透過物質量値及び/又は固形成分物質量値に基づいて、予め記録された膜ろ過抵抗予測値算出式を用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値を算出する膜ろ過抵抗算出手段、
(膜ろ過流量(流束)算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜間差圧値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出する膜ろ過流量(流束)算出手段I、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜間差圧値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出する膜ろ過流量(流束)算出手段II、
前記膜ろ過抵抗算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値、及び/又は、前記膜ろ過流量(流束)算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を記録する膜ろ過予測値記録手段、
膜ろ過予測値記録手段によって記録された時間t0〜tnにおける前記膜ろ過抵抗の予測値及び/又は膜ろ過流量(流束)の予測値を時系列値として記録する時系列値記録手段、並びに、
前記時系列値記録手段で記録された膜ろ過抵抗予測値の時系列値及び/又は膜ろ過流量(流束)予測値の時系列値を出力する出力手段、
の機能を備えることを特徴とする膜ろ過予測プログラム。
【0016】
(10) 分離膜による被ろ過液のろ過を、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜間差圧値の時間変化を予測するためのコンピュータプログラムであって、
膜ろ過流量(流束)の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗の初期値を入力するデータ入力手段、
前記データ入力手段で入力された膜ろ過流量(流束)の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗初期値を記録しておくデータ記録手段、
前記データ記録手段から任意の時刻ti(ここで、i=0〜nであり、ti+1=ti+Δti、t0=0、nは刻み数を表す自然数。)における膜ろ過流量(流束)値、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値、膜洗浄力値、および、時刻t0の場合には分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値を読み出し、さらに、時刻t0以外の場合には後述の成分量算出値記録手段によって前記データ記録手段に記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を読み出し、予め記録された付着成分量算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する成分量算出手段、
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を記録する成分量算出値記録手段、
次の膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜間差圧算出手段
(膜ろ過抵抗算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分中非膜透過物質量値及び/又は固形成分物質量値に基づいて、予め記録された膜ろ過抵抗予測値算出式を用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値を算出する膜ろ過抵抗算出手段、
(膜間差圧算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出する膜間差圧算出手段I、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出する膜間差圧算出手段II、
前記膜ろ過抵抗算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値、及び/又は、前記膜間差圧算出手段によって算出された時刻ti+1における膜間差圧の予測値を記録する膜ろ過予測値記録手段、
膜ろ過予測値記録手段によって記録された時間t0〜tnにおける前記膜ろ過抵抗の予測値及び/又は膜間差圧の予測値を時系列値として記録する時系列値記録手段、並びに、
前記時系列値記録手段で記録された膜ろ過抵抗予測値の時系列値及び/又は膜間差圧予測値の時系列値を出力する出力手段、
の機能を備えることを特徴とする膜ろ過予測プログラム。
【0017】
(11) 前記予め記録された付着成分量算出式が、時刻tiにおいて分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の値と、これら付着量が時刻tiから時刻ti+1までに増減変化する変化量とに基づき、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量を求める付着成分量算出式であって、
該付着成分量算出式における時刻tiから時刻ti+1までの変化量が、被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜に付着する速度と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度との差に基づいて計算され、
前記分離膜に付着する速度は、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、時刻tiにおける被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出され、かつ、
前記分離膜から剥離する速度は、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、時刻tiにおいて分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出されること
を特徴とする(9)又は(10)に記載の膜ろ過予測プログラム。
【0018】
(12) 前記付着成分量算出式が、
時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおける被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおいて分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、
時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおける被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおいて分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことを特徴とする(11)に記載の膜ろ過予測プログラム。
【0019】
(13) 分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の2次以上の高次関数の項を含むことを特徴とする(11)又は(12)に記載の膜ろ過予測プログラム。
(14) 分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことを特徴とする(11)〜(13)のいずれかに記載の膜ろ過予測プログラム。
(15) 被ろ過液が、微生物を含む混合液であることを特徴とする(9)〜(14)のいずれかに記載の膜ろ過予測プログラム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下に説明するとおり、被ろ過液を膜によってろ過する際に発生する膜ろ過抵抗の時間変化、あるいは、膜間差圧の時間変化、あるいは、膜ろ過流束の時間変化、あるいは、膜ろ過流量の時間変化を精度良く予測することができる。その結果、例えば、運転終期に見られる膜の目詰まりによる膜ろ過抵抗の急上昇を抑制する膜間差圧やろ過流量などの運転条件を事前検討することで、運転条件を効率よく決定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の膜ろ過予測方法は、分離膜の被ろ過液側と透過液側の圧力差(以下、膜間差圧という)を駆動力として、被ろ過液を分離膜によってろ過する際の膜ろ過を予測する方法に関するものである。
【0022】
ここにおいて、被ろ過液は、懸濁物質を含有する液体であって膜ろ過に供されるものであり、特に限定しない。例えば、微生物を含む液体の場合には、一般的に被ろ過液の中には物質としての微生物と微生物の代謝産物が比較的高濃度で存在するため、被ろ過液を膜ろ過した際の抵抗などの変動を予測することが困難であるが、本発明に従えば、被ろ過液を膜ろ過した際の抵抗などの変動を予測することが可能となり、被ろ過液を膜ろ過する膜ろ過装置における調整手段の運転条件を精度よく決定することが可能となると言う点で効果が大きいので、微生物培養液や活性汚泥などの微生物を含む液体を被ろ過液とする場合に本発明は特に有効である。また、本発明は、懸濁物質の濃度が100mg/L以上の被ろ過液の場合への適用が好ましい。また、膜ろ過方式に関しては、被ろ過液を濃縮しながら膜ろ過を行う全量ろ過方式でも、膜表面において被ろ過液の流れを発生させながら膜ろ過を行うクロスフロー式でも構わない。
【0023】
また、分離膜とは、被ろ過液に圧力を加えて、もしくは透過側から吸引することによって、被ろ過液中に含まれる一定粒子径以上の物質を捕捉する機能を有するものであり、その捕捉粒子径の違いにより、ダイナミックろ過膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがある。本発明で用いられる分離膜としては、好ましくは、ダイナミックろ過膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜である。また、分離膜の形状としては、平膜や中空糸膜などがあるが、形状は特に限定しない。
【0024】
本発明の膜ろ過予測方法では、膜ろ過流量を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続する際の、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜間差圧の経時的変化を予測する。あるいは、膜間差圧を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続する際の、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜ろ過流量(流束)の経時的変化を予測する。
【0025】
ここにおいて、膜間差圧とは、分離膜の被ろ過液側と透過液側との圧力差であり、これを発生させる手段として、例えば、ポンプにより被ろ過液側を加圧させる方法、ポンプにより透過液側から吸引する方法、被ろ過液側と透過液側の水頭差を利用する方法が挙げられる。また、膜間差圧は、分離膜の被ろ過液側における圧力測定値と透過液側における圧力測定値との差として実測することも可能であり、このときには、水理的な流れによって発生する圧力損失を測定もしくは算出し、前記分離膜の被ろ過液側における圧力測定値と透過液側における圧力測定値との差から、圧力損失分を減じて算出することが好ましい。
【0026】
また、膜ろ過流量とは、膜ろ過液の流量のことであり、膜ろ過流束とは、分離膜の単位面積あたりの膜ろ過流量のことをさす。
【0027】
膜ろ過流量を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続する、または、膜間差圧を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続するとは、膜ろ過流量あるいは膜間差圧を予め決められた設定値に制御することであり、膜ろ過流量や膜間差圧が一定値となるように制御する方法の他に、定期的あるいは断続的にろ過を停止する方法や、膜ろ過流量や膜間差圧を連続的あるいは断続的に変化させる方法などのように設定値を経時的に変更する場合も含む。膜ろ過流量を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続する方法としては、分離膜の膜透過液側に吸引ポンプなどを設置して膜ろ過液を取得し、その吸引ポンプを流量インバータで制御する方法などが挙げられる。また、膜間差圧を設定値として制御しつつ膜ろ過を継続する方法としては、分離膜の被ろ過液側を加圧する方法や、水頭差を利用する方法などによって膜ろ過に必要な圧力を加え、この圧力を制御する方法などが挙げられる。
【0028】
また、膜ろ過抵抗とは、被ろ過液を膜によってろ過する際に発生する抵抗のことであり、一般的に、(1)式によって定義される。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、ΔPは膜間差圧[Pa]、μは膜ろ過液の粘度[Pa・s]、Rは膜ろ過抵抗[1/m]、Jは膜ろ過流束[m/s]である。ここで、μは膜ろ過液の粘度を直接測定してもよいが、膜ろ過液が水、あるいは若干の溶質等を含む水性液の場合には、(2)式に従い、温度から換算してもよい。
【0031】
【数2】
【0032】
ここで、F=0.01257187、B=−0.005806436、C=0.001130911、D=−0.000005723952であり、Tは絶対温度[K]である。すなわち、摂氏温度をσ[℃]とすると、T=σ+273.15として表される。
【0033】
また、予測とは、インプットとなる数値(膜ろ過流量の時系列値や膜間差圧の時系列値など)を用いて、演算や計算を行い、アウトプットとなる数値(膜ろ過抵抗の時間変化など)を出力することである。
【0034】
また、本発明の膜ろ過予測方法では、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際には、膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜ろ過流量(流束)の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用い、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際には、膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜間差圧の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いる。
【0035】
ここにおいて、膜ろ過抵抗の初期値とは、膜ろ過開始時の膜ろ過抵抗値であり、純水を分離膜へ透過させたときの膜ろ過抵抗値や分離膜洗浄後における膜ろ過抵抗値などを実測した値でもよいし、また分離膜の種類に基づく仮想値でもよい。
【0036】
また、被ろ過液の上清成分とは、被ろ過液を遠心分離あるいは重力沈殿したときの上清、あるいは、被ろ過液を膜ろ過装置の分離膜より細孔径の大きい分離膜によりろ過した際のろ過液のことである。また、被ろ過液の固形成分とは、被ろ過液を遠心分離あるいは重力沈殿したときの沈殿物、あるいは、被ろ過液を膜ろ過装置の分離膜より細孔径の大きい分離膜によりろ過した際の非膜透過物質のことである。
【0037】
また、物質量とは、前記上清成分中や固形成分中に含まれる溶解物質や懸濁物質などの物質量のことであり、例えば、全有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)、生物化学的酸素要求量(BOD)、浮遊固形物濃度(MLSS)、乾燥重量、浮遊固形物強熱減量(MLVSS)などによって測定することができる。
【0038】
ここで、上清成分物質量値とは、上清成分中の物質量の値であるが、本発明においては、上清成分中に含有する非膜透過物の物質量値、即ち、上清成分中の物質量値から、被ろ過液や上清成分を分離膜によってろ過した際の膜透過液中に含まれる物質量値を差し引いた物質量値を上清成分物質量値と定義することが好ましい。ここで、測定の容易性・精度・自動化を鑑みた場合、被ろ過液の上清成分物質量は、TOCに基づいて測定された物質量で規定することが好ましく、被ろ過液の固形成分物質量は、TOCあるいはMLSSあるいはMLVSSに基づいて測定された物質量で規定することが好ましい。被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分物質量値は、実測値でも仮想値でもよい。
【0039】
また、本発明の膜ろ過予測方法においては、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いる。ここで、上清成分物質量値あるいは固形成分物質量値を用いることによって、膜ろ過予測に必要な値を迅速かつ容易に得ることができる。また、上清成分物質量値および固形成分物質量値のデータを用いることによって、被ろ過液の固形成分は分離膜に付着すれば膜ろ過抵抗に寄与し、また分離膜から剥離しやすいため、分離膜に付着している上清成分を巻き込んでともに剥離するという効果を精度良く再現することができる。
【0040】
また、膜ろ過流量(流束)の設定値とは、膜ろ過流量あるいは膜ろ過流束の設定値であり、実測値でも仮想値でもよく、一定値でも、連続的あるいは断続的に変化する値としてもよい。また、膜間差圧の設定値とは、膜間差圧の設定値であり、実測値でも仮想値でもよく、一定値でも、連続的あるいは断続的に変化する値としてもよい。
【0041】
また、本発明の膜ろ過予測方法では、膜ろ過流量を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際には、少なくとも後述の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ3とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜間差圧値を求めること、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際には、少なくとも後述の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ4とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜ろ過流量(流束)値を求める。
【0042】
即ち、膜ろ過流量を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際における膜ろ過予測の計算ステップの構成として、下記の3通りがあるということを意味する。
(a)後述の計算ステップ1および計算ステップ2および計算ステップ3
(b)後述の計算ステップ1および計算ステップ2
(c)後述の計算ステップ1および計算ステップ3
【0043】
ここにおいて、(a)の場合(図1参照)には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び膜間差圧値を、(b)の場合には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を、(c)の場合には、任意の時刻における膜間差圧値を、求めることができる。
【0044】
また、同様に、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際における膜ろ過予測の計算ステップの構成として、下記の3通りがあるということを意味する。
(d)後述の計算ステップ1および計算ステップ2および計算ステップ4
(e)後述の計算ステップ1および計算ステップ2
(f)後述の計算ステップ1および計算ステップ4
【0045】
ここにおいて、(d)の場合(図2参照)には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び膜ろ過流量(流束)値を、(e)の場合には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を、(f)の場合には、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を、求めることができる。
【0046】
ここで、計算ステップ1では、任意の時刻において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する。
【0047】
ここにおいて、計算ステップ1は、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の、所定時間内における変化量に基づく計算ステップであって、計算ステップ1における計算式が、被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜に付着する速度の項と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度の項とを含み、前記分離膜に付着する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出され、かつ、前記分離膜から剥離する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出されることが好ましい。これによって、任意の時刻における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の計算を、精度良く予測することができる。
【0048】
また、前記計算ステップ1における計算式が、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことが、さらに好ましい。このことによって、被ろ過液の固形成分は膜に付着すれば膜ろ過抵抗に寄与し、また膜から剥離しやすいため、膜に付着した上清成分を巻き込んでともに剥離するという効果をさらに精度良く再現することができる。
【0049】
また、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の2次以上の高次関数の項を含むことがさらに好ましい。2次未満では、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜表面から剥離する速度が実際より小さくなる場合が多いが、2次以上にすることによって、その剥離の程度を大きくし、より精度良く再現することができる。
【0050】
また、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことがさらに好ましい。ここで、膜洗浄力とは、分離膜表面に付着している物質を剥離させるための応力であり、当該膜洗浄力の値は、膜表面に発生する剪断力の値、膜表面の被ろ過液の流速の値、前記剪断力や前記流速に基づいて算出された値、あるいは、洗浄手段の動力値(洗浄手段の動力値とは、例えば、分離膜の洗浄を分離膜の下部から曝気することによって行うときには、曝気風量や曝気ブロアの出力値などが相当し、分離膜の洗浄を被ろ過液を流動させることによって行うときには、その流動を生じさせるための動力(例えば、液体ポンプによって被ろ過液を流動させる場合には液体ポンプの出力値)などが相当し、分離膜の洗浄を分離膜を移動させることによって行うときには、その移動速度やそのための動力値(例えば、回転ろ過膜の場合には、回転速度やその回転を発生させるためのモーターの出力値)などが相当し、分離膜の洗浄を振動させることによって行うときには、その振動の程度(例えば、周波数)やそのための動力値(例えば、モーターの出力値)などのことである。)などに基づいて算出された値とすることが好ましく、また、膜洗浄力の値を、実際に膜ろ過テストを行った結果から算出・推定してもよい。このことにより、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を決定する要素として、曝気などの分離膜の性能に依存しない要素を加えることができ、これにより膜ろ過装置の運転条件を反映しやすくなる。
【0051】
このような条件を満たす数式として、例えば、次の(3)式および(4)式があり、本発明においては、(3)式および(4)式に従うことを推奨する。しかし、本発明の範囲は(3)式及び(4)式に限定されるものではない。
【0052】
【数3】
【0053】
ただし、(τ−λx・ΔP)≧0、(τ−λp・ΔP)≧0である。
【0054】
ここで、Xは固形成分に含まれる物質量値[gC/m3]、Pは上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量値[gC/m3]、Xmは単位膜面積あたりの分離膜に付着した固形成分に含まれる物質量値[gC/m2]、Pmは単位膜面積あたりの分離膜に付着した上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量値[gC/m2]、tは時間[s]、τは膜洗浄力値[Pa]、γxは固形成分に含まれる物質の剥離係数[1/m/s]、γpは上清成分に含まれる非膜透過性物質の剥離係数[1/m/s]、λxは固形成分に含まれる物質の摩擦係数[1/Pa]、λpは上清成分に含まれる非膜透過性物質の摩擦係数[1/Pa]、ηxは固形成分に含まれる物質の密度の逆数[m3/gC]、ηpは上清成分に含まれる非膜透過性物質の密度の逆数[m3/gC]である。ここで、(3)式の右辺の第1項は、固形成分物質が分離膜に付着する速度、及び、第2項は、固形成分物質が分離膜から剥離する速度を示しており、(4)式の右辺の第1項は、上清成分物質が分離膜に付着する速度、及び、第2項は、上清成分物質が分離膜から剥離する速度を示している。また、(3)式及び(4)式の両辺に膜面積Aを乗ずることによって、(3)式の左辺を分離膜に付着した固形成分に含まれる物質量の変化量、(4)式の左辺を分離膜に付着した上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量の変化量に、右辺の膜ろ過流束Jを膜ろ過流量Qに変換することが可能である。また、後述のように、膜洗浄力値τを、洗浄手段の動力値の関数として表現した場合には、その関数をτに代入することによって、(3)式及び(4)式を膜洗浄力値ではなく洗浄手段の動力値に関する計算式に変換することが可能である。
【0055】
また、前記のように、分離膜に付着している上清成分物質及び/又は固形成分物質の変化量を、前記被ろ過液の上清成分物質及び/又は固形成分物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づく場合、分離膜に付着した被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量に関する微分方程式として表現することができるが、そのとき、この微分方程式を解く積分方法として、Euler法や、Runge−Kutta法や、Runge−Kutta−Gill(RKG)法などがある。
【0056】
また、計算ステップ2では、少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を算出する。
【0057】
ここにおいて、前記計算ステップ2における任意の時刻における膜ろ過抵抗の計算は、例えば、(5)式に従うことにより任意の時刻における膜ろ過抵抗の値を計算できる。
【0058】
【数4】
【0059】
ここで、Rmは膜ろ過抵抗の初期値[1/m]、αxは前記Xmの単位量あたりの膜ろ過抵抗発生量[m/gC]、αpは前記Pmの単位量あたりの膜ろ過抵抗発生量[m/gC]である。
【0060】
また、計算ステップ3では、少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜間差圧値を算出する。
【0061】
ここにおいて、膜ろ過予測が前記(c)(即ち、計算ステップ1および計算ステップ3)で構成される場合、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて任意の時刻における膜間差圧値を算出する。その方法として、例えば、前記(5)式を前記(1)式に代入した数式を用いることなどがある。また、膜ろ過予測が前記(a)(即ち、計算ステップ1および計算ステップ2および計算ステップ3)で構成される場合、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜間差圧値を算出する。その方法として、前記(1)式、または、それに基づいた数式を用いて計算することが好ましい。
【0062】
また、計算ステップ4では、少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する。
【0063】
ここにおいて、膜ろ過予測が前記(f)(即ち、計算ステップ1および計算ステップ4)で構成される場合、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する。その方法として、例えば、前記(5)式を前記(1)式に代入した数式を用いることなどがある。また、膜ろ過予測が前記(d)(即ち、計算ステップ1および計算ステップ2および計算ステップ4)で構成される場合、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する。その方法として、前記(1)式、または、それに基づいた数式を用いて計算することが好ましい。
【0064】
本発明では、時刻を更新しながら前記計算ステップを繰り返し行うことによって、膜ろ過流量を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際の膜ろ過予測を行う場合には、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜間差圧の経時的変化を求め、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際の膜ろ過予測を行う場合には、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜ろ過流量(流束)の経時的変化を求める。
【0065】
また、前記計算ステップ1、前記計算ステップ2、前記計算ステップ3、および、前記計算ステップ4では、予め決められた計算式に従って計算するが、それら計算式の中に各計算ステップの説明において記述された値やデータや物質量以外のパラメータが含まれる場合がある。そのような場合、前記各計算ステップにおける計算を行う上でパラメータの値を決定する必要がある。本発明においては、パラメータの値の決定方法は特に限定しないが、膜ろ過装置の分離膜と同じ素材・形状の分離膜を用いて、被ろ過液あるいは被ろ過液の上清を実際にろ過し、そのときの膜間差圧の値、膜ろ過流束あるいは膜ろ過流量の値、膜ろ過抵抗の値の変化を実測または算出し、その結果に基づいてパラメータを推定または決定することが好ましい。これは、前記のようなパラメータの中には、利用する被ろ過液と分離膜の性質によって決定されるものが多く含まれており、前記のようなパラメータの推定・決定方法に従うことによって、前記予測を精度良く行うことが可能となるためである。
【0066】
次に、本発明の膜ろ過予測プログラムについて説明する。
以下、本発明の膜ろ過予測プログラムの最良の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。
【0067】
図3は本発明の膜ろ過予測プログラムにより実行される処理フローであり、図4は本発明の膜ろ過予測プログラムを実装した膜ろ過予測装置の構成の一例である。この膜ろ過予測装置は、補助記憶装置2、入力装置3および表示装置4が接続されたコンピュータ1で構成されており、このコンピュータのメインメモリ上には、制御プログラムが記憶されている。
【0068】
まず、膜間差圧を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜ろ過流量(流束)値の時間変化を予測する場合には、膜間差圧の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値および膜ろ過抵抗初期値が入力装置3から入力され(データ入力手段:ステップS100)(ここで、前記上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の時系列値の入力において、上清成分物質量の時系列値が入力される場合には、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量の初期値を、固形成分物質量の時系列値が入力される場合には、分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量の初期値を、上清成分物質量及び固形成分物質量の時系列値が入力される場合には、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び固形成分物質量の初期値を、入力する。)、コンピュータ1上のメインメモリに記憶される(データ記録手段:ステップS200)。また、全量ろ過型の膜ろ過を行う場合など、被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分量が時系列的に変化する場合には、別途計算された任意の時刻における被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分量を随時メインメモリに記録することが好ましい。膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜間差圧値の時間変化を予測する場合には、ステップS100で入力される値ならびにステップS200で記憶される値を、膜間差圧の時系列値に替えて膜ろ過流量(流束)の時系列値とすることによって、予測することができる。
【0069】
前記値はキーボードなどの入力装置によりそれぞれ個別に入力されても良いし、予め用意されたデータファイルとして入力されても構わない。ここで、時系列値とはある時刻とその時刻におけるデータとが対になっているデータ集合を意味する。例えば、ti(1≦i≦n、n:データ数)を時刻、tiにおけるデータをdiとして、(t1,d1)、(t2,d2)、・・・・、(tn,dn)と表されるデータの集合であるとする。ここで、ti+1−ti=Δtiとすると、Δtiは必ずしも一定であるとは限らないが、データを適当に外挿または内挿して補完することによりΔtiが一定となるように時系列値を生成することができる。ここで、i=0〜nであり、ti+1=ti+Δti、t0=0、nは刻み数を表す自然数であり、データを適当に外挿または内挿して補完することによりΔtiを一定とする場合、Δti=tn/nである。
【0070】
また、本発明の膜ろ過予測プログラムでは、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際の予測の場合には、少なくとも後述の成分量算出手段と膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜ろ過流量(流束)算出手段とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜ろ過流量(流束)値を求めることを含み、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際には、少なくとも後述の成分量算出手段と膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜間差圧算出手段とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜間差圧値を求めることを含む。
【0071】
即ち、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際における膜ろ過予測プログラムの構成として、下記の3通りを含むということを意味する。
(g)後述の成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段および膜ろ過流量(流束)算出手段
(h)後述の成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段
(i)後述の成分量算出手段および膜ろ過流量(流束)算出手段
【0072】
ここにおいて、(g)の場合(図5参照)には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び膜ろ過流量(流束)値を、(h)の場合には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を、(i)の場合には、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を、出力することができる。
【0073】
また、同様に、膜ろ過流量を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際における膜ろ過予測プログラムの構成として、下記の3通りを含むということを意味する。
(j)後述の成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段および膜間差圧算出手段
(k)後述の成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段
(m)後述の成分量算出手段および膜間差圧算出手段
【0074】
ここにおいて、(j)の場合(図6参照)には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び膜間差圧値を、(k)の場合には、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を、(m)の場合には、任意の時刻における膜間差圧値を、求めることができる。
【0075】
次に、ステップS300の成分量算出手段では、補助記憶装置2に予め記録された付着成分量算出式に従って、時刻tiにおけるデータを用いて時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値が算出される。すなわち、メインメモリに記憶されている時系列値から時刻tiにおける膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値、または、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値、膜洗浄力値が読み出され、さらに膜ろ過抵抗初期値、時刻t0の場合には分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、t0以外の場合には時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値が読み出される。これら読み出された時刻tiにおける値を用いて時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値が予め記録された付着成分量算出式に従って算出される。ただし、前記ステップS200において、上清成分物質量の時系列値および分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量の初期値が記録されている場合には、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値を、固形成分物質量の時系列値および分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量の初期値が記録されている場合には、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量値を、上清成分量物質量及び固形成分物質量の時系列値および分離膜に付着している被ろ過液の上清成分量物質量及び固形成分物質量の初期値が記録されている場合には、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分量物質量及び固形成分物質量値を、算出する。これらの演算はメインメモリ中の制御プログラムの指示に従って中央処理装置にて処理される。
【0076】
前記予め記録された付着成分量算出式は、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値と被ろ過液の上清成分量値及び固形成分量値に基づいて決定される被ろ過液上清成分物及び固形成分物が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値に基づいて決定される分離膜に付着している被ろ過液の上清成分量及び固形成分量が分離膜から剥離する速度との差に基づくこと、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値と被ろ過液の上清成分量値に基づいて決定される被ろ過液の上清成分物が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値に基づいて決定される分離膜に付着している被ろ過液の上清成分量が分離膜から剥離する速度との差に基づくこと、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値と被ろ過液の固形成分量値に基づいて決定される被ろ過液の固形成分物が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値または膜ろ過流量(流束)値に基づいて決定される分離膜に付着している被ろ過液の固形成分量が分離膜から剥離する速度との差に基づくことが好ましい。
【0077】
また、より好ましくは、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことである。
【0078】
また、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことが好ましい。
【0079】
さらには、前記予め記録された付着成分量算出式が、前記(3)式及び/又は(4)式に基づいた数式で表現されることが好ましい。しかし、本発明の範囲は(3)式及び(4)式に限定されるものではない。ここで、前記(3)式および(4)式は、微分方程式で表現されているが、これをEuler法を用いて計算するとすると、例えば、(6)式および(7)式として表現することができる。
【0080】
【数5】
【0081】
ただし、(τ−λx・ΔP)≧0、(τ−λp・ΔP)≧0であり、(8)式の条件を満たす。
【0082】
【数6】
【0083】
ここで、(7)式の右辺の第1項は、固形成分物質が分離膜に付着する速度、及び、第2項は、固形成分物質が分離膜から剥離する速度を示しており、(6)式の右辺の第1項は、上清成分物質が分離膜に付着する速度、及び、第2項は、上清成分物質が分離膜から剥離する速度を示している。したがって、時刻ti+1における分離膜に付着している固形成分物質量を計算する際には、(7)式を、時刻ti+1における分離膜に付着している上清成分物質量を計算する際には、(6)式を、時刻ti+1における分離膜に付着している固形成分物質量及び上清成分物質量を計算する際には、(6)式及び(7)式を、利用する。また、(6)式及び(7)式の両辺に膜面積Aを乗ずることによって、(7)式の左辺を分離膜に付着した固形成分に含まれる物質量の変化量、(6)式の左辺を分離膜に付着した上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量の変化量に、右辺の膜ろ過流束Jを膜ろ過流量Qに変換することが可能である。また、膜洗浄力値τを、洗浄手段の動力値の関数として表現した場合には、その関数をτに代入することによって、(7)式及び(6)式を膜洗浄力値ではなく洗浄手段の動力値に関する計算式に変換することが可能である。
【0084】
また、前記のように、分離膜に付着している上清成分物質及び/又は固形成分物質の変化量を、前記被ろ過液の上清成分物質及び/又は固形成分物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づく場合、分離膜に付着した被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量に関する微分方程式として表現することができるが、そのとき、この微分方程式を解く積分方法として、Euler法や、Runge−Kutta法や、Runge−Kutta−Gill(RKG)法などがある。
【0085】
また、上記式中に現れる記号は表1に示すとおりである。ステップS400では、ステップS300で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量値及び/又は上清成分物質量値がコンピュータ1上のメインメモリに記録される。
【0086】
【表1】
【0087】
また、膜ろ過抵抗算出手段では、中央処理装置がメインメモリ内の制御プログラムの指示に従い、データ記録手段(ステップS200)でメインメモリに記憶された膜ろ過抵抗初期値と、成分量算出手段(ステップS300)で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量値及び/又は上清成分物質量値を用いて、補助記憶装置2に予め記録された膜ろ過抵抗予測値算出式を用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値を算出する。この予め記録された算出式は、分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量値及び/又は上清成分物質量値によって決定される膜ろ過抵抗と膜ろ過抵抗初期値との和として算出されることが好ましく、より好ましくは、前記(5)式に基づくことである。そのために、例えば、下記の(9)式を用いる。
【0088】
【数7】
【0089】
ここで、(9)式中に現れる記号は表1に示すとおりである。
【0090】
また、膜ろ過流量(流束)算出手段では、前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜間差圧値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜間差圧値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出する。
【0091】
ここにおいて、膜ろ過予測プログラムが前記(i)(即ち、成分量算出手段および膜ろ過流量(流束)算出手段)を含む場合、成分量算出手段で求めた時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を算出する。その方法として、例えば、前記(5)式を前記(1)式に代入した数式を用いることなどがある。また、膜ろ過予測が前記(g)(即ち、成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段および膜ろ過流量(流束)算出手段)を含む場合、膜ろ過抵抗算出手段で求めた時刻ti+1における膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する。その方法として、前記(1)式、または、それに基づいた数式を用いて計算することが好ましい。そのために、例えば、(10)式あるいは(11)式を用いる。
【0092】
【数8】
【0093】
ここで、(10)式および(11)式中に現れる記号は表1に示すとおりである。
【0094】
また、膜間差圧算出手段では、前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出する。
【0095】
ここにおいて、膜ろ過予測プログラムが前記(m)(即ち、成分量算出手段および膜間差圧算出手段)を含む場合、成分量算出手段で求めた時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて時刻ti+1における膜間差圧値を算出する。その方法として、例えば、前記(5)式を前記(1)式に代入した数式を用いることなどがある。また、膜ろ過予測が前記(j)(即ち、成分量算出手段および膜ろ過抵抗算出手段および膜間差圧算出手段)を含む場合、膜ろ過抵抗算出手段で求めた時刻ti+1における膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜間差圧値を算出する。その方法として、前記(1)式、または、それに基づいた数式を用いて計算することが好ましい。そのために、例えば、(12)式あるいは(13)式を用いる。
【0096】
【数9】
【0097】
ここで、(12)式および(13)式中に現れる記号は表1に示すとおりである。
【0098】
また、膜ろ過予測値記録手段(ステップS600)では、前記膜ろ過抵抗算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値、及び/又は、前記膜ろ過流量(流束)算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値がコンピュータ1上のメインメモリに記録される。
【0099】
膜間差圧を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜ろ過流量(流束)値の時間変化を予測する場合には、成分量算出手段、成分量算出値記録手段、膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜ろ過流量(流束)算出手段、膜ろ過予測値記録手段を、膜ろ過流量を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜間差圧値の時間変化を予測する場合には、成分量算出手段、成分量算出値記録手段、膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜間差圧算出手段、膜ろ過予測値記録手段を、時刻をΔtiずつ更新しながら繰り返すことでメモリ上にΔti毎の予測値の時系列データ(時間t0〜tnに対応する予測値の時系列データ)が生成される。ここで、予測の終了はステップS200でメモリに記憶された時系列データの最終時刻tn、または、事前に設定された時刻でもよい。
【0100】
最後に、出力手段(ステップS700)では、メインメモリ内の制御プログラムの指示に従って予測値の時系列データが表示装置4によって表示される。表示は時刻と予測値が対になった表や、縦軸に予測値、横軸に時刻をとったグラフなどでなされることが好ましい。また、任意の時刻における異なる2種の予測値(例えば、膜ろ過流量値と膜ろ過抵抗値など)を対として、一方を縦軸に他方を横軸として表示してもよい。また、この表やグラフはプリンタなどにより出力されてもよい。
【0101】
上記プログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROMなどに代表される有形の記憶媒体や、有線もしくは無線のネットワークなどの電送経路(自動公衆送信を含む)を通じて流通される。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
まず、被ろ過液として活性汚泥を用い、図7に示した膜ろ過試験装置400を用いて膜ろ過試験を行った。膜ろ過試験装置400は、窒素ガス405によって、純水を収容している純水チャンバー410を、あるいは、攪拌式セル401(ミリポア(株)製Amicon8050)を加圧すること(その圧力は、圧力計411によって測定)、によって、被ろ過液である活性汚泥を膜固定ホルダー406に設置された分離膜402によってろ過する装置である。また、膜ろ過は、マグネティックスターラー403によって被ろ過液中に浸漬されている攪拌子404を回転させることによって、被ろ過液を攪拌することが可能である。また、膜透過液を電子秤408上に載せたビーカー407に受けて、その膜透過液量を電子秤408によって測定し、その測定値をパソコン409に取り込む構造とした。また、バルブ412、バルブ413、バルブ414を開閉することにより、膜ろ過試験装置各部の加圧の有無を調整した。
【0104】
まず、膜ろ過抵抗初期値を測定するために純水を用いた膜ろ過試験を行った。ここにおいて、膜ろ過圧力を20kPa、マグネティックスターラー403による攪拌速度を600rpmとした。また、電子秤408における測定値を2秒間隔でパソコン409に取り込んだ。純水を用いた膜ろ過試験は80mlの膜透過液量が得られるまで行った。
【0105】
次に、活性汚泥を用いた膜ろ過性評価試験を行った。まず、純水チャンバー310を外し、図7の点線のライン415を接続した。攪拌式セル401内に12mlの活性汚泥を投入し、膜ろ過圧力を20kPa、マグネティックスターラー403による攪拌速度を600rpmとして膜ろ過試験を行った。電子秤408における測定値を2秒間隔でパソコン409に取り込み、700秒間の膜ろ過試験を行った。
【0106】
上記、膜ろ過試験を、遠心分離(3500rpm、10分間)によって得られた遠心上清を用いても行った。
【0107】
上記の各膜ろ過試験において、パソコン409内に取り込まれたろ過時間とろ過液量との関係を示したデータを次のように処理した。まず、任意のろ過時間におけるろ過液量の微分係数を用いて、任意のろ過時間における膜ろ過流束を算出した。次に、前記任意のろ過時間における膜ろ過流束から、膜ろ過圧力を用いて、前記(1)式に従い、任意のろ過時間における膜ろ過抵抗を算出した。上記のように算出された結果から、単位膜面積あたりの総ろ過液量と膜ろ過抵抗との関係を作成した。
【0108】
前記純水を用いた膜ろ過試験の結果から作成された単位膜面積あたりの総ろ過液量と膜ろ過抵抗との関係から、ろ過液量が70〜80mLの区間における膜ろ過抵抗の平均値を膜ろ過抵抗初期値とした。
【0109】
ここで、上記のような膜ろ過試験の結果を予測するための膜ろ過予測プログラムを、数値計算ソフトMATLAB(米国 Mathworks社製)を用いて作成した。
【0110】
まず、膜間差圧ΔP[Pa]の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量P[gC/m3]および固形成分量X[gC/m3]の時系列値、および、膜洗浄力の時系列値を予め用意したデータファイルとして入力することとし、膜ろ過抵抗初期値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量および固形成分量の初期値、膜面積値、および、透過水粘度値は、キーボードから直接入力する構造とした。また、入力されたデータおよび値は、メモリに記録される構造とした。
【0111】
また、付着成分量算出式として、前記(3)式および前記(4)式を、膜ろ過抵抗予測値算出式として、前記(5)式を、膜ろ過流量(流束)予測値算出式として、前記(1)式にJ=Q/Aを代入した数式を、予め記録させた。
【0112】
成分量算出手段として、前記メモリに記録された時刻tiにおける膜間差圧値、時刻tiにおける被ろ過液の上清成分量値および固形成分量値、時刻tiにおける膜洗浄力値、および、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量および固形成分量の初期値又はメモリに記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値を読み出し、前記付着成分算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値を算出する構造とした。このとき、積分法として、Runge−Kutta法を用いた。
【0113】
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分物質量値は、メモリに記録される構造とした(成分量算出値記録手段)。
【0114】
膜ろ過抵抗予測値算出手段として、前記メモリに記録された膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と、前記成分量算出手段において算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値とを用いて、膜ろ過抵抗予測値算出式に従って、時刻ti+1における膜ろ過抵抗値を算出する構造とした。ここで、膜ろ過抵抗予測値算出式として、前記(5)式を用いた。
【0115】
膜ろ過流量(流束)予測値算出手段として、前記メモリに記録された時刻ti+1における膜間差圧値と膜面積値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜間差圧値と膜面積値と、前記膜ろ過抵抗予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗値とを用いて、膜ろ過流量(流束)予測値算出式IIに従って、時刻ti+1における膜ろ過流量値を算出する構造とした。ここで、膜ろ過流量(流束)予測値算出式IIとして前記(1)式を用いた。
【0116】
前記膜ろ過抵抗予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗値、および、前記膜ろ過流量(流束)予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜ろ過流量値をメモリに記録する構造とした(膜ろ過予測値記録手段)。
【0117】
また、本膜ろ過試験装置を用いた活性汚泥およびその遠心上清の膜ろ過試験では、ろかの継続に伴い、被ろ過液の容量が減少する。そのため、水、固形成分物質、上清成分物質に関するマテリアルバランスの計算が必要となる。そこで、下記(14)式、(15)式、(16)式に従い、それぞれ、時刻ti+1における被ろ過液容量、時刻ti+1における固形成分物質量、時刻ti+1における上清成分物質量を算出した(マテバラ補正値算出手段)。
【0118】
【数10】
【0119】
ここで、V(t)は、時刻tにおける被ろ過液容量[m3]である。
【0120】
また、前記算出された時刻ti+1における被ろ過液容量、時刻ti+1における固形成分物質量、時刻ti+1における上清成分物質量をメモリ内に記録した。
【0121】
前記成分量算出手段、前記マテバラ補正値算出手段、前記膜ろ過抵抗予測値算出手段、および、前記膜ろ過流量(流束)予測値算出手段を、予め記録された時刻tnとなるまで、ti+1=ti+Δt(ここで、Δt=tn/n)に従って時刻を更新しながら行う構造とした。
【0122】
前記膜ろ過予測値記録手段において記録された時刻t0〜tnにおける膜ろ過抵抗値および膜ろ過流量値を時系列値として、メモリ内に記録した(時系列値記録手段)。また、メモリ内に記録された時刻t0〜tnにおける膜ろ過流量値を用いて、時刻t0〜tnにおける単位膜面積あたりの総ろ過液量値を下記(17)式(時刻tiにおける単位膜面積あたりの総ろ過液量値は、時刻t0〜tiの範囲で膜ろ過流束を積分したもの)を用いて算出し、算出された時刻t0〜tnにおける単位膜面積あたりの総ろ過液量値と膜ろ過抵抗値とを対としたデータをメモリ内に記録した。横軸に時刻、縦軸に膜ろ過流量値もしくは膜ろ過抵抗値として、もしくは、横軸に単位膜面積あたりの総ろ過液量値、縦軸に膜ろ過抵抗値として、グラフ化して出力する構造とした。
【0123】
【数11】
【0124】
ここで、v(t)は、時刻tにおける単位膜面積あたりの総ろ過液量値[m]である。
【0125】
前記膜ろ過予測プログラムを用いて、前記膜ろ過試験の結果を再現するために、まず、活性汚泥のMLSS濃度、遠心分離上清のTOC濃度、膜透過液のTOC濃度を測定した。ここで、固形成分物質量Xを、その示性式がC5H7O2Nであると仮定し、MLSS測定値に60/113を乗じることで算出した。また、上清成分物質量Pを、遠心分離上清のTOC濃度から膜透過液のTOC濃度を減ずることで算出した。その結果、
X=6.84×103 [gC/m3]
P=289 [gC/m3]
であった。
【0126】
まず、遠心上清による膜ろ過試験結果の予測を行った。
ここで、遠心上清は、固形成分を含まないので、時刻ゼロにおける固形成分物質量値をX(0)=0、分離膜に付着している固形成分物質量値をXm(0)=0とした。このことにより、前記膜ろ過予測プログラムを、固形成分を含まずに上清成分のみで構成した形に修正できる。
【0127】
また、時刻ゼロにおける上清成分物質量値P(0)=289、分離膜に付着している上清成分物質量値Pm(0)=0、膜ろ過抵抗初期値Rm=8.5×1010、膜洗浄力値τ=10(一定値)、膜ろ過液の粘度μ=1.0×10−3、膜間差圧値ΔP=20×103を入力した。その他、前記膜ろ過プログラムに必要なパラメータとして抵抗係数αp、剥離係数γp、摩擦係数λpを入力し、膜ろ過予測結果を出力した。そして、実測値と膜ろ過予測結果との差異が最小となるように、抵抗係数αp、剥離係数γp、摩擦係数λpを変化させながら、上記膜ろ過予測を繰り返し行った。その結果、抵抗係数αp=940×1010、剥離係数γp=5.4×102、摩擦係数λp=4.2×10−5となるときに実測値と膜ろ過予測結果が最小となった。このときの膜ろ過予測結果と実測結果を図8に示す。このように、膜ろ過予測結果が実測結果に非常に類似しており、膜ろ過予測が精度良く実現できていることを示している。
【0128】
次に、汚泥による膜ろ過試験結果の予測を行った。
【0129】
時刻ゼロにおける上清成分物質量値P(0)=289、時刻ゼロにおける固形成分物質量値X(0)=6.84×103、分離膜に付着している上清成分物質量値Pm(0)=0、分離膜に付着している固形成分物質量値Xm(0)=0、膜ろ過抵抗初期値Rm=8.5×1010、膜洗浄力値τ=10(一定値)、膜ろ過液の粘度μ=1.0×10−3、膜間差圧値ΔP=20×103を入力した。また、上記で決定されたパラメータとして、抵抗係数αp=940×1010、剥離係数γp=5.4×102、摩擦係数λp=4.2×10−5を入力した。その他、前記膜ろ過プログラムに必要なパラメータとして抵抗係数αx、剥離係数γx、摩擦係数λxを入力し、膜ろ過予測結果を出力した。そして、実測値と膜ろ過予測結果との差異が最小となるように、抵抗係数αx、剥離係数γx、摩擦係数λxを変化させながら、上記膜ろ過予測を繰り返し行った。その結果、抵抗係数αx=20×1010、剥離係数γx=3.3×103、摩擦係数λx=1.1×10−5となるときに実測値と膜ろ過予測結果が最小となった。このときの膜ろ過予測結果と実測結果を図9に示す。このように、膜ろ過予測結果が実測結果に非常に類似しており、膜ろ過予測が精度良く実現できていることを示している。
【0130】
(実施例2)
下記の膜分離装置300における膜ろ過結果の予測を行った。
【0131】
膜分離装置300の構造概略を図10に示す。膜分離装置は、浸漬型の膜分離式活性汚泥装置(MBR)であり、酢酸を主成分とする工場排水を処理する排水処理装置である。酢酸を主成分とする工場排水を、断続的に平均流量2.3m3/dで有効容量2.3m3の被ろ過液収容槽301に投入した。被ろ過液収容槽301には、被ろ過液304として活性汚泥が収容されており、被ろ過液304中に分離膜302を浸漬させ、前記分離膜302の下方部には散気管が設置され、前記散気管には膜表面洗浄手段である曝気ブロア303からエアが供給される構造とした。すなわち、本装置においては、散気管から供給されるエアバブルが膜表面に接触し、また曝気による活性汚泥の流動も同時に発生するために、膜表面の付着成分が膜から剥離する効果が得られることとなる。分離膜302は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)製の平膜型の精密ろ過膜(有効膜面積7.8m2)であり、透過側から吸引することによって膜ろ過液305を得る。
【0132】
前記膜分離装置300において、分離膜302の中の平膜エレメント1枚(有効膜面積1.3m2)を用いて、図11のような膜ろ過試験装置500を設置した。なお、被ろ過液である活性汚泥504は、実施例1と同じ活性汚泥である。
【0133】
膜ろ過試験装置500では、被ろ過液である活性汚泥504を収容した活性汚泥収容槽501内に、分離膜502(有効膜面積1.3m2)を設置し、前記分離膜に、曝気ブロア503から散気管507を通して供給されるエアバルブを接触させることによって、分離膜502の膜表面に汚泥ケークが蓄積するのを抑制しながら(膜洗浄力を膜表面に与えながら)、水頭差ΔHによって発生する膜間差圧を駆動力として膜ろ過を行った。ここで、膜ろ過の停止と開始の切り替えにはバルブ516を用い、また、流量計514によって膜ろ過流量を測定し、前記膜ろ過流量測定値を1秒間隔で記録計515に記録した。ここにおいて、水頭差ΔHを定期的に変化させることにより、また、バルブ516を開閉することにより、分離膜502における膜間差圧を図12のように変化させた。
【0134】
前記膜ろ過試験の結果を予測するために、下記のような膜ろ過予測プログラムを作成した。
この膜ろ過予測プログラムは、実施例1で記載した膜ろ過予測プログラムと下記の点を除いて同じである。
【0135】
前記膜ろ過試験装置では、膜ろ過によって被ろ過液の容量が減少する分、工場排水を投入し、被ろ過液の容量をほぼ一定に保っている。そのため、膜ろ過の過程において、固形成分物質量と上清成分物質量が変化しないと判断し、実施例1に記載の膜ろ過予測プログラムから、前記マテバラ補正値算出手段を削除した。
【0136】
以上のような膜ろ過予測プログラムを用いて、前記膜ろ過試験装置における膜ろ過流量値の変化の予測を行った。
【0137】
実施例1と同じ汚泥および分離膜を用いているので、被ろ過液の上清成分物質量値P=289(一定値)、固形成分物質量値X=6.84×103(一定値)、分離膜に付着している上清成分物質量の初期値Pm(0)=0、分離膜に付着している固形成分物質量の初期値Xm(0)=0、膜ろ過抵抗初期値Rm=8.5×1010、膜ろ過液の粘度μ=1.0×10−3を入力した。また、膜間差圧の時系列値として、図12に記載の膜間差圧変化をデータファイルとして入力した。また、上記で決定されたパラメータとして、抵抗係数αp=940×1010、αx=20×1010、剥離係数γp=5.4×102、γx=3.3×103、摩擦係数λp=4.2×10−5、λx=1.1×10−5を入力した。ただし、膜洗浄力値τに関しては、前記実施例1とは状況が異なるので、前記実施例1とは異なる値を入力し、膜ろ過予測結果を出力した。そして、実測値と膜ろ過流量予測結果との差異が最小となるように、膜洗浄力値τを変化させながら、上記膜ろ過流量予測を繰り返し行った。その結果、τ=16となるときに実測値と膜ろ過流量予測結果が最小となった。このときの膜ろ過流量予測結果と実測結果を図13に示す。このように、膜ろ過流量予測結果が実測結果に非常に類似しており、膜ろ過流量予測が精度良く実現できていることを示している。
【0138】
(実施例3)
前記実施例2に記載の膜分離装置300における膜ろ過結果の予測を行った。
【0139】
まず、入力手段において、膜間差圧ΔP[Pa]、活性汚泥の上清成分量P[gC/m3]および固形成分量X[gC/m3]の時系列データを予め用意したデータファイルとして入力した。このとき入力された膜間差圧の時系列変化は図14に示すようなものである。また初期膜ろ過抵抗Rmは
Rm=8.5×1010[m−1]
としてキーボードから直接入力された。時系列データは2000秒間のデータで2秒おきのデータ集合である。
【0140】
また、本実施例において、上記計算を行うために用いた各諸元値を表2にまとめた。
【0141】
【表2】
【0142】
これら入力された時系列値および膜ろ過抵抗初期値は、データ記録手段においてメモリに記憶された。
【0143】
次に、成分量算出手段において、時刻tiにおける
膜間差圧:ΔP(ti)、
活性汚泥の上清成分物質量:P(ti)、固形成分物質量:X(ti)、
分離膜に付着している上清成分量:Pm(ti)および分離膜に付着している固形成分量:Xm(ti)
から次の時刻ti+1における
活性汚泥の膜付着上清成分量:Pm(ti+1)[gC/m2]および膜付着固形成分量:Xm(ti+1)[gC/m2]
を算出するにはそれぞれ前記(6)式及び(7)式を用いた。ただし、前記(8)式及び下記(18)式の通りである。
【0144】
【数12】
【0145】
上記式中に用いられている記号類を表1に示した。また、ここに示す各種パラメータの値は表2のとおりとした。
【0146】
(6)式の右辺について、第2項はΔtの間に上清成分が分離膜へ付着する量を表している。第3項はΔtの間に上清成分が分離膜から剥離する量を表現している。同様に、(7)式の右辺について、第2項はΔtの間に固形成分が分離膜へ付着する量を表している。第3項はΔtの間に固形成分が分離膜から剥離する量を表現している。(6)式および(7)式に従い、CPUにて時刻ti+1における分離膜に付着している活性汚泥の上清成分物質量Pm(ti+1)および分離膜に付着している活性汚泥の固形成分物質量Xm(ti+1)が演算された。
【0147】
続いて成分量算出値記録手段では、算出された分離膜に付着している活性汚泥の上清成分物質量Pm(ti+1)および分離膜に付着している活性汚泥の固形成分物質量Xm(ti+1)がメモリ上に記憶された。
【0148】
さらに、膜ろ過抵抗算出手段において、メモリ上に記憶された分離膜に付着している活性汚泥の上清成分物質量Pm(ti+1)および分離膜に付着している活性汚泥の固形成分物質量Xm(ti+1)、メモリに記憶された膜ろ過抵抗初期値Rmを用いてCPUにて膜ろ過抵抗R(ti+1)が算出されるが、この算出には前記(9)式を用いた。
【0149】
膜ろ過予測値記録手段では、算出された膜ろ過抵抗R(ti+1)が、メモリ上に記録された。
【0150】
本プログラムでは、上記の成分量算出手段、成分量算出値記録手段、膜ろ過抵抗算出手段、膜ろ過予測値記録手段を時刻tiを更新しながら時系列データ2000秒間分繰り返し計算し、膜ろ過抵抗R(ti)(i=1,2,…,n)が時系列値として得られた。前記得られた膜ろ過抵抗の時系列値は、メモリ内に記録された(時系列値記録手段)。
【0151】
次に、出力手段において、上記で得られた膜ろ過抵抗の時系列データを、横軸を時間、縦軸を膜ろ過抵抗としてグラフ表示された。その結果を図15に示した。
【0152】
一方、実際に図10に示す装置で膜間差圧ΔP[kPa]を図14に示すように間欠的に変化させ、活性汚泥の上清成分物質量P[gC/m3]および固形成分物質量X[gC/m3]がそれぞれ、
P=289 [gC/m3]
X=6.84×103 [gC/m3]
である活性汚泥の膜ろ過抵抗変化を実測した。その結果を本プログラムで予測した膜ろ過抵抗と比較して図16に示した。本プログラムで算出した膜ろ過抵抗予測値が実測値に類似しており、膜ろ過抵抗の予測が精度良く実現できていることを示している。
【0153】
(実施例4)
下記のような膜ろ過予測プログラムを、数値計算ソフトExcelVBA(Visual Basic Applications、Microsoft社製)を用いて作成した。
【0154】
まず、膜ろ過流束の時系列データ、被ろ過液の上清成分量P[gC/m3]および固形成分量X[gC/m3]の時系列データ、および、膜洗浄力の時系列値を予め用意したデータファイルとして入力することとし、膜ろ過抵抗初期値Rm、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量および固形成分量の初期値、膜面積値、および、透過水粘度値は、キーボードから直接入力することとした。また、入力されたデータおよび値は、メモリに記録される構造とした。
【0155】
また、付着成分量算出式として、前記(3)式および前記(4)式を、膜ろ過抵抗予測値算出式として、前記(5)式を、膜ろ過圧力予測値算出式として、前記(1)式にJ=Q/Aを代入した数式を、予め記録させた。
【0156】
成分量算出手段として、前記メモリに記録された時刻tiにおける膜ろ過流束値、時刻tiにおける被ろ過液の上清成分量値および固形成分量値、時刻tiにおける膜洗浄力値、および、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量および固形成分量の初期値又は後述の成分量算出値記録手段によってメモリに記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値を読み出し、前記付着成分算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値を算出する構造とした。このとき、積分法として、Euler法を用いた。
【0157】
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値は、成分量算出値記録手段によってメモリに記録される構造とした。
【0158】
膜ろ過抵抗予測値算出手段として、前記メモリに記録された膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と、前記成分量算出手段において算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値および固形成分量値とを用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗値を算出する構造とした。
【0159】
膜間差圧予測値算出手段として、前記メモリに記録された時刻ti+1における膜ろ過流束値と膜面積値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜ろ過流束値と膜面積値と、前記膜ろ過抵抗予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗値とを用いて、時刻ti+1における膜間差圧値を算出する構造とした。
【0160】
前記膜ろ過抵抗予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗値、および、前記膜間差圧予測値算出手段において算出された時刻ti+1における膜間差圧値を膜ろ過予測値記録手段においてメモリに記録する構造とした。
【0161】
前記成分量算出手段、前記膜ろ過抵抗予測値算出手段、および、前記膜間差圧予測値算出手段を、予め記録された時刻tnとなるまで、ti+1=ti+Δt(ここで、Δt=tn/n)に従って時刻を更新しながら行う構造とした。
【0162】
前記膜ろ過予測値記録手段において記録された時刻t0〜tnにおける膜ろ過抵抗値および膜間差圧値を時系列値として、メモリ内に記録し、横軸に時刻、縦軸に膜間差圧値もしくは膜ろ過抵抗値としてグラフ化して出力する構造とした。
【0163】
以上の膜ろ過予測プログラムを用いて、前記膜分離装置300(図10)において、8分間0.8m/d、2分間ろ過停止の間欠運転を行った際の膜間差圧の変化を予測した。同条件で膜ろ過を行ったときの膜間差圧の変化と併せて、図17に示す。なお、膜間差圧の変化を予測するのに必要な数値として、被ろ過液の上清成分物質量値P=289(一定値)、固形成分物質量値X=6.84×103(一定値)、分離膜に付着している上清成分物質量の初期値Pm(0)=0、分離膜に付着している固形成分物質量の初期値Xm(0)=0、膜ろ過抵抗初期値Rm=8.5×1010、膜ろ過液の粘度μ=1.0×10−3、膜間差圧値ΔP=20×103を入力した。また、上記で決定されたパラメータとして、抵抗係数αp=940×1010、αx=20×1010、剥離係数γp=5.4×102、γx=3.3×103、摩擦係数λp=4.2×10−5、λx=1.1×10−5、膜洗浄力τ=16を入力した。図17において、本プログラムで算出した膜間差圧予測値が実測値に類似しており、膜間差圧の予測が精度良く実現できていることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、ろ過装置の膜抵抗予測に限らず、膜目詰まり警報装置やろ過流量予測装置などにも応用することができ、その応用範囲は、これらに限られるものではない。また、本発明の膜ろ過の予測は、水中に懸濁物質等が混在している水性液を被ろ過液とする場合に好適であるが、水以外の液体物質中に懸濁物質等が混在している混合液を被ろ過液とする場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の予測方法のフローチャートの一例である。
【図2】本発明の予測方法のフローチャートの他の一例である。
【図3】本発明の実施形態からなる膜ろ過抵抗予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の膜ろ過予測プログラムのフローチャートの一例である。
【図5】本発明の膜ろ過予測プログラムのフローチャートの他の一例である。
【図6】本発明の膜ろ過予測プログラムのフローチャートの他の一例である。
【図7】本発明の膜ろ過予測方法及びプログラムを適用した膜ろ過試験装置400の概略図である。
【図8】遠心上清を膜ろ過した際の膜ろ過抵抗の予測値と実測値である。
【図9】活性汚泥を膜ろ過した際の膜ろ過抵抗の予測値と実測値である。
【図10】本発明の膜ろ過予測方法及びプログラムを適用した膜分離装置300の概略図である。
【図11】本発明の膜ろ過予測方法及びプログラムを適用した膜ろ過試験装置500の概略図である。
【図12】膜間差圧の時系列データを表す図である。
【図13】本発明の膜ろ過予測プログラムによって得られる膜ろ過流量予測値時系列データを表す図である。
【図14】膜間差圧の時系列データを表す図である。
【図15】本発明の膜ろ過予測プログラムによって得られる膜ろ過抵抗予測値時系列データを表す図である。
【図16】本発明の膜ろ過予測プログラムによって得られる膜ろ過抵抗予測値時系列データと実測値を比較した図である。
【図17】本発明の膜ろ過予測プログラムによって得られる膜間差圧予測値時系列データと実測値を比較した図である。
【符号の説明】
【0166】
1 :コンピュータ
2 :補助記憶装置
3 :入力装置
4 :表示装置
300:膜分離装置
301:被ろ過液収容槽
302:分離膜
303:曝気ブロア
304:被ろ過液
305:膜ろ過液
400:膜ろ過試験装置
401:攪拌式セル
402:分離膜
403:マグネティックスターラー
404:攪拌子
405:窒素ガス
406:膜固定ホルダー
407:ビーカー
408:電子秤
409:パソコン
410:純水チャンバー
411:圧力計
412:バルブ
413:バルブ
414:バルブ
500:膜ろ過試験装置
501:活性汚泥収容槽
502:分離膜
503:曝気ブロア
504:活性汚泥
506:工場排水
507:散気管
514:流量計
515:記録計
516:バルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜の被ろ過液側と透過液側の圧力差(以下、膜間差圧という)を駆動力として、被ろ過液を分離膜によってろ過する膜ろ過方法において、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜間差圧の経時的変化を予測する膜ろ過予測方法であって、
膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜ろ過流量(流束)の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いること、
少なくとも下記の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ3とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜間差圧値を求めること、
(計算ステップ1) 任意の時刻において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する、
(計算ステップ2) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を算出する、
(計算ステップ3) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜間差圧値を算出する、
さらに、時刻を更新しながら前記計算ステップを繰り返し行うことによって、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜間差圧の経時的変化を求めること
を特徴とする膜ろ過予測方法。
【請求項2】
分離膜の被ろ過液側と透過液側の圧力差(以下、膜間差圧という)を駆動力として、被ろ過液を分離膜によってろ過する膜ろ過方法において、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜ろ過流量(流束)の経時的変化を予測する膜ろ過予測方法であって、
膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜間差圧の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いること、
少なくとも、下記の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ4とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜ろ過流量(流束)を求めること、
(計算ステップ1) 任意の時刻において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する、
(計算ステップ2) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を算出する、
(計算ステップ4) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値膜を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する、
さらに、時刻を更新しながら前記計算ステップを繰り返し行うことによって、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜ろ過流量(流束)の経時的変化を求めること
を特徴とする膜ろ過予測方法。
【請求項3】
前記計算ステップ1が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の、所定時間内における変化量に基づく計算ステップであって、
計算ステップ1における計算式が、被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜に付着する速度の項と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度の項とを含み、
前記分離膜に付着する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出され、かつ、
前記分離膜から剥離する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出されること
を特徴とする請求項1又は2に記載の膜ろ過予測方法。
【請求項4】
前記計算ステップ1における計算式が、
膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、
膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことを特徴とする請求項3に記載の膜ろ過予測方法。
【請求項5】
分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の2次以上の高次関数の項を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の膜ろ過予測方法。
【請求項6】
分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の膜ろ過予測方法。
【請求項7】
被ろ過液が、微生物を含む混合液であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の膜ろ過予測方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の膜ろ過予測方法に従って演算を行う演算手段、前記演算手段の演算結果を表示する表示手段、入力データおよび演算結果を記録する記録手段を備えてなる膜ろ過予測装置。
【請求項9】
分離膜による被ろ過液のろ過を、膜間差圧を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜ろ過流量(流束)値の時間変化を予測するためのコンピュータプログラムであって、
膜間差圧の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗の初期値を入力するデータ入力手段、
前記データ入力手段で入力された膜間差圧の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗初期値を記録しておくデータ記録手段、
前記データ記録手段から任意の時刻ti(ここで、i=0〜nであり、ti+1=ti+Δti、t0=0、nは刻み数を表す自然数。)における膜間差圧値、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値、膜洗浄力値、および、時刻t0の場合には分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値を読み出し、さらに、時刻t0以外の場合には後述の成分量算出値記録手段によって前記データ記録手段に記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を読み出し、予め記録された付着成分量算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する成分量算出手段、
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を記録する成分量算出値記録手段、
次の膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜ろ過流量(流束)算出手段
(膜ろ過抵抗算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分中非膜透過物質量値及び/又は固形成分物質量値に基づいて、予め記録された膜ろ過抵抗予測値算出式を用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値を算出する膜ろ過抵抗算出手段、
(膜ろ過流量(流束)算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜間差圧値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出する膜ろ過流量(流束)算出手段I、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜間差圧値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出する膜ろ過流量(流束)算出手段II、
前記膜ろ過抵抗算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値、及び/又は、前記膜ろ過流量(流束)算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を記録する膜ろ過予測値記録手段、
膜ろ過予測値記録手段によって記録された時間t0〜tnにおける前記膜ろ過抵抗の予測値及び/又は膜ろ過流量(流束)の予測値を時系列値として記録する時系列値記録手段、並びに、
前記時系列値記録手段で記録された膜ろ過抵抗予測値の時系列値及び/又は膜ろ過流量(流束)予測値の時系列値を出力する出力手段、
の機能を備えることを特徴とする膜ろ過予測プログラム。
【請求項10】
分離膜による被ろ過液のろ過を、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜間差圧値の時間変化を予測するためのコンピュータプログラムであって、
膜ろ過流量(流束)の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗の初期値を入力するデータ入力手段、
前記データ入力手段で入力された膜ろ過流量(流束)の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗初期値を記録しておくデータ記録手段、
前記データ記録手段から任意の時刻ti(ここで、i=0〜nであり、ti+1=ti+Δti、t0=0、nは刻み数を表す自然数。)における膜ろ過流量(流束)値、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値、膜洗浄力値、および、時刻t0の場合には分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値を読み出し、さらに、時刻t0以外の場合には後述の成分量算出値記録手段によって前記データ記録手段に記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を読み出し、予め記録された付着成分量算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する成分量算出手段、
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を記録する成分量算出値記録手段、
次の膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜間差圧算出手段
(膜ろ過抵抗算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分中非膜透過物質量値及び/又は固形成分物質量値に基づいて、予め記録された膜ろ過抵抗予測値算出式を用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値を算出する膜ろ過抵抗算出手段、
(膜間差圧算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出する膜間差圧算出手段I、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出する膜間差圧算出手段II、
前記膜ろ過抵抗算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値、及び/又は、前記膜間差圧算出手段によって算出された時刻ti+1における膜間差圧の予測値を記録する膜ろ過予測値記録手段、
膜ろ過予測値記録手段によって記録された時間t0〜tnにおける前記膜ろ過抵抗の予測値及び/又は膜間差圧の予測値を時系列値として記録する時系列値記録手段、並びに、
前記時系列値記録手段で記録された膜ろ過抵抗予測値の時系列値及び/又は膜間差圧予測値の時系列値を出力する出力手段、
の機能を備えることを特徴とする膜ろ過予測プログラム。
【請求項11】
前記予め記録された付着成分量算出式が、時刻iにおいて分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の値と、これら付着量が時刻tiから時刻ti+1までに増減変化する変化量とに基づき、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量を求める付着成分量算出式であって、
該付着成分量算出式における時刻tiから時刻ti+1までの変化量が、被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜に付着する速度と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度との差に基づいて計算され、
前記分離膜に付着する速度は、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、時刻tiにおける被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出され、かつ、
前記分離膜から剥離する速度は、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、時刻tiにおいて分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出されること
を特徴とする請求項9又は10に記載の膜ろ過予測プログラム。
【請求項12】
前記付着成分量算出式が、
時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおける被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおいて分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、
時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおける被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおいて分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことを特徴とする請求項11に記載の膜ろ過予測プログラム。
【請求項13】
分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の2次以上の高次関数の項を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の膜ろ過予測プログラム。
【請求項14】
分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の膜ろ過予測プログラム。
【請求項15】
被ろ過液が、微生物を含む混合液であることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の膜ろ過予測プログラム。
【請求項1】
分離膜の被ろ過液側と透過液側の圧力差(以下、膜間差圧という)を駆動力として、被ろ過液を分離膜によってろ過する膜ろ過方法において、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜間差圧の経時的変化を予測する膜ろ過予測方法であって、
膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜ろ過流量(流束)の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いること、
少なくとも下記の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ3とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜間差圧値を求めること、
(計算ステップ1) 任意の時刻において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する、
(計算ステップ2) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を算出する、
(計算ステップ3) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜間差圧値を算出する、
さらに、時刻を更新しながら前記計算ステップを繰り返し行うことによって、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜間差圧の経時的変化を求めること
を特徴とする膜ろ過予測方法。
【請求項2】
分離膜の被ろ過液側と透過液側の圧力差(以下、膜間差圧という)を駆動力として、被ろ過液を分離膜によってろ過する膜ろ過方法において、膜間差圧を設定値に制御しつつ膜ろ過を継続する際、膜ろ過抵抗の経時的変化及び/又は膜ろ過流量(流束)の経時的変化を予測する膜ろ過予測方法であって、
膜ろ過予測計算のための数値として、少なくとも、膜間差圧の設定値、膜ろ過抵抗の初期値、および、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いること、
少なくとも、下記の計算ステップ1と計算ステップ2及び/又は計算ステップ4とを行うことにより、任意の時刻における膜ろ過抵抗値及び/又は膜ろ過流量(流束)を求めること、
(計算ステップ1) 任意の時刻において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する、
(計算ステップ2) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を用いて、任意の時刻における膜ろ過抵抗値を算出する、
(計算ステップ4) 少なくとも、計算ステップ1で求めた分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値膜を用いて、又は、計算ステップ2で求めた膜ろ過抵抗値を用いて、任意の時刻における膜ろ過流量(流束)値を算出する、
さらに、時刻を更新しながら前記計算ステップを繰り返し行うことによって、膜ろ過抵抗の経時的変化、及び/又は、膜ろ過流量(流束)の経時的変化を求めること
を特徴とする膜ろ過予測方法。
【請求項3】
前記計算ステップ1が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の、所定時間内における変化量に基づく計算ステップであって、
計算ステップ1における計算式が、被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜に付着する速度の項と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度の項とを含み、
前記分離膜に付着する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出され、かつ、
前記分離膜から剥離する速度は、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出されること
を特徴とする請求項1又は2に記載の膜ろ過予測方法。
【請求項4】
前記計算ステップ1における計算式が、
膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、
膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、所定時間後の分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことを特徴とする請求項3に記載の膜ろ過予測方法。
【請求項5】
分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の2次以上の高次関数の項を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の膜ろ過予測方法。
【請求項6】
分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の膜ろ過予測方法。
【請求項7】
被ろ過液が、微生物を含む混合液であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の膜ろ過予測方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の膜ろ過予測方法に従って演算を行う演算手段、前記演算手段の演算結果を表示する表示手段、入力データおよび演算結果を記録する記録手段を備えてなる膜ろ過予測装置。
【請求項9】
分離膜による被ろ過液のろ過を、膜間差圧を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜ろ過流量(流束)値の時間変化を予測するためのコンピュータプログラムであって、
膜間差圧の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗の初期値を入力するデータ入力手段、
前記データ入力手段で入力された膜間差圧の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗初期値を記録しておくデータ記録手段、
前記データ記録手段から任意の時刻ti(ここで、i=0〜nであり、ti+1=ti+Δti、t0=0、nは刻み数を表す自然数。)における膜間差圧値、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値、膜洗浄力値、および、時刻t0の場合には分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値を読み出し、さらに、時刻t0以外の場合には後述の成分量算出値記録手段によって前記データ記録手段に記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を読み出し、予め記録された付着成分量算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する成分量算出手段、
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を記録する成分量算出値記録手段、
次の膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜ろ過流量(流束)算出手段
(膜ろ過抵抗算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分中非膜透過物質量値及び/又は固形成分物質量値に基づいて、予め記録された膜ろ過抵抗予測値算出式を用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値を算出する膜ろ過抵抗算出手段、
(膜ろ過流量(流束)算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜間差圧値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出する膜ろ過流量(流束)算出手段I、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜間差圧値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜間差圧値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜ろ過流量(流束)予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を算出する膜ろ過流量(流束)算出手段II、
前記膜ろ過抵抗算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値、及び/又は、前記膜ろ過流量(流束)算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)の予測値を記録する膜ろ過予測値記録手段、
膜ろ過予測値記録手段によって記録された時間t0〜tnにおける前記膜ろ過抵抗の予測値及び/又は膜ろ過流量(流束)の予測値を時系列値として記録する時系列値記録手段、並びに、
前記時系列値記録手段で記録された膜ろ過抵抗予測値の時系列値及び/又は膜ろ過流量(流束)予測値の時系列値を出力する出力手段、
の機能を備えることを特徴とする膜ろ過予測プログラム。
【請求項10】
分離膜による被ろ過液のろ過を、膜ろ過流量(流束)を設定値に制御しつつ継続する際に、経時的に変化する膜ろ過抵抗値の時間変化及び/又は膜間差圧値の時間変化を予測するためのコンピュータプログラムであって、
膜ろ過流量(流束)の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗の初期値を入力するデータ入力手段、
前記データ入力手段で入力された膜ろ過流量(流束)の時系列値、被ろ過液の上清成分物質量の時系列値及び/又は固形成分物質量の時系列値、膜洗浄力の時系列値、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値、および膜ろ過抵抗初期値を記録しておくデータ記録手段、
前記データ記録手段から任意の時刻ti(ここで、i=0〜nであり、ti+1=ti+Δti、t0=0、nは刻み数を表す自然数。)における膜ろ過流量(流束)値、被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値、膜洗浄力値、および、時刻t0の場合には分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の初期値を読み出し、さらに、時刻t0以外の場合には後述の成分量算出値記録手段によって前記データ記録手段に記録された時刻tiにおける分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を読み出し、予め記録された付着成分量算出式を用いて、時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を算出する成分量算出手段、
前記成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値を記録する成分量算出値記録手段、
次の膜ろ過抵抗算出手段及び/又は膜間差圧算出手段
(膜ろ過抵抗算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分中非膜透過物質量値及び/又は固形成分物質量値に基づいて、予め記録された膜ろ過抵抗予測値算出式を用いて、時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値を算出する膜ろ過抵抗算出手段、
(膜間差圧算出手段) 前記データ記録手段から膜ろ過抵抗初期値および時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された膜ろ過抵抗初期値と時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と成分量算出手段で算出された時刻ti+1における分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式Iを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出する膜間差圧算出手段I、又は、前記データ記録手段から時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値を読み出し、読み出された時刻ti+1における膜ろ過流量(流束)値と、前記膜ろ過抵抗算出手段で算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗予測値とに基づいて、予め記録された膜間差圧予測値算出式IIを用いて、時刻ti+1における膜間差圧の予測値を算出する膜間差圧算出手段II、
前記膜ろ過抵抗算出手段によって算出された時刻ti+1における膜ろ過抵抗の予測値、及び/又は、前記膜間差圧算出手段によって算出された時刻ti+1における膜間差圧の予測値を記録する膜ろ過予測値記録手段、
膜ろ過予測値記録手段によって記録された時間t0〜tnにおける前記膜ろ過抵抗の予測値及び/又は膜間差圧の予測値を時系列値として記録する時系列値記録手段、並びに、
前記時系列値記録手段で記録された膜ろ過抵抗予測値の時系列値及び/又は膜間差圧予測値の時系列値を出力する出力手段、
の機能を備えることを特徴とする膜ろ過予測プログラム。
【請求項11】
前記予め記録された付着成分量算出式が、時刻iにおいて分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量の値と、これら付着量が時刻tiから時刻ti+1までに増減変化する変化量とに基づき、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量及び/又は固形成分物質量を求める付着成分量算出式であって、
該付着成分量算出式における時刻tiから時刻ti+1までの変化量が、被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜に付着する速度と、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度との差に基づいて計算され、
前記分離膜に付着する速度は、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、時刻tiにおける被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出され、かつ、
前記分離膜から剥離する速度は、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)値と、時刻tiにおいて分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値とを用いて算出されること
を特徴とする請求項9又は10に記載の膜ろ過予測プログラム。
【請求項12】
前記付着成分量算出式が、
時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおける被ろ過液中の上清成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の上清成分物質が分離膜へ付着する速度と、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおいて分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から上清成分物質が剥離する速度との差に基づいて、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量を計算する計算式を含み、かつ、
時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおける被ろ過液中の固形成分物質量とに基づいて算出される被ろ過液中の固形成分が分離膜へ付着する速度と、時刻tiにおける膜間差圧値若しくは膜ろ過流量(流束)と時刻tiにおいて分離膜に付着している上清成分物質量及び固形成分物質量に基づいて算出される分離膜から固形成分が剥離する速度との差に基づいて、時刻ti+1において分離膜に付着している被ろ過液の固形成分物質量を計算する計算式を含むことを特徴とする請求項11に記載の膜ろ過予測プログラム。
【請求項13】
分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が分離膜から剥離する速度を求める式が、分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物質量値及び/又は固形成分物質量値の2次以上の高次関数の項を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の膜ろ過予測プログラム。
【請求項14】
分離膜に付着している被ろ過液の上清成分物及び/又は固形成分物が膜から剥離する速度を求める式が、膜洗浄力値に基づく項を含むことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の膜ろ過予測プログラム。
【請求項15】
被ろ過液が、微生物を含む混合液であることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の膜ろ過予測プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−14948(P2007−14948A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156931(P2006−156931)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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