説明

膜ろ過装置およびろ過方法

【課題】設計の膜ろ過流束を確保したまま膜差圧の急激な上昇を抑制することができる膜ろ過装置の提供を課題とする。
【解決手段】圧力を駆動力とする膜モジュール4、膜モジュールの原水側圧力を調整する調圧ろ過ポンプ3、膜モジュールのろ過水側圧力を調整する減圧調圧ポンプ5、膜モジュールの原水側の水質を測定する測定機器11、該測定機器からの信号により前記2つの調圧ポンプの運転を自動制御する手段26を有する膜ろ過装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水、工業用水、河川水、湖沼水、地下水、貯水、下水二次処理水、下水、排水等を処理する圧力を駆動力とする膜ろ過装置およびろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力を駆動力とする液体の膜ろ過には原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過の2つがある。原水側加圧ろ過は膜の原水側を加圧し、ろ過水側を通常大気圧に開放することで膜の原水側とろ過水側に圧力差(膜差圧)を生じさせてろ過する方法である。他方、ろ過水側減圧ろ過は膜の原水側を通常は大気圧に開放し、ろ過水側を減圧することで膜差圧を生じさせてろ過する方法である。
上記のような原水を膜でろ過すると、該原水中の懸濁物質や使用する膜の細孔径以上の大きさの物質が膜で阻止されて濃度分極やケーク層を形成すると同時に、細孔を閉塞させろ過抵抗を増大させる(以下、膜汚染する、と記し、膜汚染の原因となる物質を、膜汚染原因物質、と記す。)ため、一定の膜ろ過流量(膜ろ過流束)の運転を継続するうちに膜差圧が上昇していく。膜差圧が上昇すると薬品洗浄が必要になるが、薬品洗浄の回数はコスト、環境負荷の双方を鑑みて少ないことが好ましい。つまり膜ろ過運転の継続に当たり、膜ろ過流束を長期間一定量に確保したまま、膜差圧の上昇を抑制することが望ましい。
膜差圧の上昇を抑制する手段として、膜間流路内に供給される液を循環ポンプの圧力で循環して膜洗浄すると共に、該液を吸引ポンプを用いてろ過膜を介してろ過水を取り出す膜処理方法(特許文献1)があるが、ろ液を取り出す動力が吸引ポンプの吸引力に依存し、循環ポンプの圧力に実質的に依存しないため、膜汚染により膜差圧上昇が起こった場合、設計のろ過流束を確保できない恐れがある。
【特許文献1】特開平11−300168
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は設計した膜ろ過流束を確保したまま、膜差圧の上昇を抑制し、長時間安定したろ過運転を継続することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は
(1)圧力を駆動力とする膜モジュール、膜モジュールの原水側圧力を調整する調圧ポンプ、膜モジュールのろ過水側圧力を調整する調圧ポンプ、膜モジュールの原水側の水質を測定する測定機器、該測定機器からの信号により前記2つの調圧ポンプの運転を自動制御する手段を有する膜ろ過装置、(2)膜モジュールのろ過水側圧力を調整する調圧ポンプが減圧ポンプ、膜モジュールの原水側の水質を測定する測定機器が濁度計または全有機炭素量測定器である(1)記載の膜ろ過装置、(3)膜モジュールを用いて液体をろ過する方法であって、原水側水質を測定しながら原水側を加圧してろ過を行い、水質の測定値があらかじめ設定した閾値を超えた時点で膜モジュールのろ過水側圧力を減圧し、原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を同時に行うことを特徴とするろ過方法、である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の膜ろ過装置及びろ過方法は、長時間にわたって設計の膜ろ過流束を確保して運転でき、かつ膜汚染原因物質が多い原水に対しても急激な膜差圧の上昇を抑制する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の好ましい実施様態を中心に、詳細を述べる。
本発明の対象として好ましい原水は、上水、工業用水、河川水、湖沼水、地下水、貯水、下水二次処理水、排水、あるいは下水などである。上記のような原水を膜でろ過すると、原水中の膜汚染原因物質によってケーク層の形成および細孔の閉塞によりろ過抵抗を増大させる膜汚染が起こるため、定流量運転を継続するうちに膜差圧が上昇していく。
膜ろ過の方式には原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過がある。
膜汚染原因物質量が多く、濁度およびTOC(全有機炭素量)が高い原水について、膜差圧が大気圧未満になる同等の膜ろ過流束で定量ろ過運転した場合、ろ過水側減圧ろ過と比較して原水側加圧ろ過の方が膜差圧の上昇が早いことを見出した。また、上記のような本発明の対象となる原水では水質に変動が起こることが一般的であり、膜汚染原因物質の量も変動する。原水中の膜汚染原因物質が急激に上昇すると膜汚染が急激に進行することになるが、この際特に原水側加圧ろ過と比較してろ過水側減圧ろ過の方が膜差圧の上昇を抑制できることがわかった。
【0007】
以上のような原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過との差異は、膜汚染原因物質が存在する膜の原水側に実際にかかる圧力の差が原因で生じると考えられる。すなわち、原水側加圧ろ過では原水側に実際にかかる圧力は大気圧と膜差圧の和であり、ろ過水側減圧ろ過では原水側に実際にかかる圧力は大気圧となり、原水側に実際にかかる圧力は膜差圧分だけ原水側加圧ろ過の方が高いことになる。膜汚染原因物質が高圧環境下に置かれることでその圧縮が促進され、膜ろ過抵抗の増大を引き起こすものと考えられる。
しかしながら、膜差圧が大気圧以上になる条件においては、ろ過水側減圧ろ過単独で運転することはできず、設計の膜ろ過流束を確保することができない。膜汚染原因物質が少ない原水の場合、高膜ろ過流束で運転されることが一般的であり、安定運転時の膜差圧が高い値となる。この場合、ろ過水側減圧ろ過単独で運転することはできないため、原水側加圧ろ過、あるいは原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を同時に行うろ過方法により運転することが必要となる。この際、膜の原水側に実際にかかる圧力を低減するため、原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を同時に行うろ過方法を選択し、ろ過水を取り出す駆動力としてろ過水側減圧ろ過の寄与を可能な限り大きくし、膜ろ過流束が不足している分を原水側加圧ろ過によって補うことがより好ましい。
【0008】
原水及びろ過水の加圧手段、減圧手段は特に限定されないが、加圧手段としては加圧ポンプ、調圧ポンプ、高圧気体、水頭差などが、減圧手段としては吸引ポンプ、真空ポンプなどが挙げられる。好ましくは、図1に記載するように膜の原水側に調圧ポンプ、膜のろ過側に減圧ポンプを直列に接続し、調圧ポンプと減圧ポンプを独立してオンオフできるようにすることであるが、加圧、減圧の手段はこの限りではない。
原水側加圧ろ過から原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を同時に行うろ過に切り替えるタイミングは特に限定されないが、原水側加圧ろ過にて定流量運転を継続していて、測定する原水側水質があらかじめ定めた閾値を超えた時点で原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を同時に行うろ過に切り替える方法が挙げられる。
【0009】
運転方法の切り替えの閾値として用いる原水側水質の項目としては、濁度(度)、TOC(mg/L)、CODMn(mg/L)、CODCr(mg/L)、BOD(mg/L)、或いは以下に記す金属濃度、Fe(mg/L)、Mn(mg/L)、Al(mg/L)、Si(mg/L)、Ca(mg/L)、Mg(mg/L)が挙げられ、対応する水質測定機器を設置する。濁度(度)またはTOC(mg/L)を用いることが好ましく、濁度(度)の絶対値とTOC(mg/L)の絶対値との和を用いるのがより好ましい。
閾値として濁度を用いる場合、濁度0.01度〜1000度に閾値を定めることが好ましく、1度〜100度に定めることがより好ましい。閾値としてTOCを用いる場合、TOC0.01mg/L〜1000mg/Lに閾値を定めることが好ましく、1mg/L〜100mg/Lに定めることがより好ましい。閾値として濁度(度)の絶対値とTOC(mg/L)の絶対値との和を用いる場合、絶対値の和が0.01〜1000に閾値を定めることが好ましく、絶対値の和が1〜100に閾値を定めることがより好ましい。
なお、ここに挙げた運転方法切り替えのタイミングに関する記述は一例であり、本発明を限定するものではない。
【0010】
本発明のろ過膜の素材は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン;テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド等のスーパーエンジニアリングプラスチック;酢酸セルロース、エチルセルロース等のセルロース類;ポリアクリロニトリル;ポリビニルアルコールの単独およびこれらの混合物が挙げられる。
【0011】
ろ過膜の形状としては、中空糸状、平膜状、プリーツ状、スパイラル状、チューブラー状など任意の形状を用いることができる。逆洗の効果が高いので中空糸状が特に好ましい。
また本発明に用いる膜モジュールとしては、多数の中空糸分離膜からなる膜束の両端部あるいはどちらか一方の端部が接着固定され、どちらか一方、もしくは両方の端部の中空糸膜端が開口されたものが好適に用いられる。接着固定される端部の断面形状としては、円形の他、三角形、四角形、六角形、楕円形等であってもよい。
また、膜ろ過運転を継続して膜差圧が上昇した場合に逆洗、気体洗浄等の物理洗浄を行う事が好ましい。逆洗とは、膜のろ過水側から原水側にろ過水を透過させることにより、膜の細孔内や原水側に付着した膜汚染原因物質を除去する方法である。気体洗浄とは、空気等の気体を膜の原水側に気泡として導入することで膜を動揺させて、膜の原水側に堆積した膜汚染原因物質を除去する方法である。原水側に実際にかかる圧力が低く、膜汚染原因物質の圧縮が抑制されている場合には、物理洗浄によって膜汚染原因物質を除去しやすくなるものと考えられる。
【実施例】
【0012】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
運転は、(1)ろ過工程、(2)逆洗と気体洗浄を同時に実施する工程、(3)剥離した除去対象物質を排出する工程、で行った。
原水側加圧ろ過では、図1に示すように、原水1は原水タンク2を経て調圧ろ過ポンプ3により膜モジュール4に圧送され、得られたろ過水は逆洗タンクを兼用するろ過水タンク6に貯められる。逆洗時に、ろ過水タンク6中のろ過水は逆洗ポンプ7により膜モジュール4へ送られ逆洗が行われるが、ここで逆洗ポンプ7から膜モジュール4へ至る配管の途中に酸化剤タンク8の酸化剤を、酸化剤送液ポンプ9により逆洗水に添加することができる。また、膜モジュール4に空気を導入する気体洗浄は、コンプレッサー10で圧縮した空気を、膜モジュール4の原水側へ供給して行われる。装置の具体的な操作は以下のように行った。(1)ろ過工程では図2に示すように、バルブA14開、調圧ろ過ポンプ3動、バルブK24開、バルブC16開とし、その他のポンプは停止、その他のバルブは閉とした。(2)逆洗と気体洗浄を同時に実施する工程では図4に示すように、バルブG20開、加圧逆洗ポンプ7動、バルブH21開、バルブD17開、酸化剤送液ポンプ9動、バルブL25開、コンプレッサー10動、バルブI22開、バルブJ23開とし、その他のポンプは停止、その他のバルブは閉とした。(3)剥離した除去対象物質を排出する工程では図5に示すように、バルブA14開、調圧ろ過ポンプ3動、バルブK24開、バルブJ23開とし、その他のポンプは停止、その他のバルブは閉とした。
【0013】
ろ過水側減圧ろ過では、図1に示すように、原水1は原水タンク2を経て調圧ろ過ポンプ3により膜モジュール4に送液され、膜モジュール4のろ過水側に接続された減圧ろ過ポンプ5にて減圧することでろ過水が得られる。ろ過水側減圧ろ過において、調圧ろ過ポンプ3は膜モジュール4に原水を供給できる最低限の加圧をし、ろ過水を得るための駆動力は実質的に減圧ポンプ5のみによって与えられる。或いは図示しないが調圧ろ過ポンプ3をバイパスする配管をもうけてバルブで切り替えても良い。得られたろ過水は逆洗タンクを兼用するろ過水タンク6に貯められる。逆洗時に、ろ過水タンク6中のろ過水は逆洗ポンプ7により膜モジュール4へ送られ逆洗が行われるが、ここで逆洗ポンプ7から膜モジュール4へ至る配管の途中に酸化剤タンク8の酸化剤を酸化剤送液ポンプ9により逆洗水に添加することができる。また、膜モジュール4に空気を導入する気体洗浄は、コンプレッサー10で圧縮した空気を、膜モジュール4の原水側へ供給して行われる。装置の具体的な操作は以下のように行った。(1)ろ過工程では図3に示すように、バルブA14開、調圧ろ過ポンプ3動(但し加圧する圧力は0とした)、バルブK24開、バルブ17D開、バルブ18E開、減圧ろ過ポンプ5動、バルブ19開とし、その他のポンプは停止、その他のバルブは閉とした。(2)逆洗と気体洗浄を同時に実施する工程では図4に示すように、バルブG20開、加圧逆洗ポンプ7動、バルブH21開、バルブD17開、酸化剤送液ポンプ9動、バルブL25開、コンプレッサー10動、バルブI22開、バルブJ23開とし、その他のポンプは停止、その他のバルブは閉とした。(3)剥離した除去対象物質を排出する工程では図5に示すように、バルブA14開、調圧ろ過ポンプ3動、バルブK24開、バルブJ23開とし、その他のポンプは停止、その他のバルブは閉とした。
【0014】
原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を組み合わせたろ過では、図1に示すように原水1は原水タンク2を経て原水供給の役割を兼ねる調圧ろ過ポンプ3により膜モジュール4に圧送され、さらに減圧ろ過ポンプ5にて減圧することで、加圧と減圧の双方を同時に行う方法によりろ過水が得られる。得られたろ過水は逆洗タンクを兼用するろ過水タンク6に貯められる。逆洗時にろ過水タンク6中のろ過水は逆洗ポンプ7により膜モジュール4へ送られ逆洗が行われるが、ここで逆洗ポンプ7から膜モジュール4へ至る配管の途中に酸化剤タンク8の酸化剤を、酸化剤送液ポンプ9により逆洗水に添加することができる。また、膜モジュール4に空気を導入する気体洗浄は、コンプレッサー10で圧縮した空気を、膜モジュール4の原水側に供給して行われる。装置の具体的な操作は以下のように行った。
【0015】
(1)ろ過工程では図3に示すように、バルブA14開、調圧ろ過ポンプ3動、バルブK24開、バルブB15開、バルブ17D開、バルブ18E開、減圧ろ過ポンプ5動、バルブ19開とし、その他のポンプは停止、その他のバルブは閉とした。(2)逆洗と気体洗浄を同時に実施する工程では図4に示すように、バルブG20開、加圧逆洗ポンプ7動、バルブH21開、バルブD17開、酸化剤送液ポンプ9動、バルブL25開、コンプレッサー10動、バルブI22開、バルブJ23開とし、その他のポンプは停止、その他のバルブは閉とした。(3)剥離した除去対象物質を排出する工程では図5に示すように、バルブA14開、調圧ろ過ポンプ3動、バルブK24開、バルブJ23開とし、その他のポンプは停止、その他のバルブは閉とした。
膜モジュール4中の膜は、内径が0.7mmφ、外径が1.2mmφ、平均孔径0.1μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)製中空糸状精密ろ過(MF)膜であり、中空糸の外表面積から出した膜モジュールの有効膜面積が7.4mである。また、本発明の原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を同時に行うろ過方法に使用した膜モジュール4および原水側加圧ろ過方法で使用した膜モジュール4は1m長、84mm径のポリ塩化ビニル(PVC)ケーシングに納めた外圧原水側加圧ろ過式モジュールである。なお、ここに示した運転工程および膜モジュールは本発明の説明のための一例であり、本発明の実施を限定するものではない。
【0016】
[実施例1]
原水として平均濁度1度の河川表流水を用いた。図1に示す装置を用いて行い、ろ過は原水側加圧ろ過で開始した。濁度測定器11からの信号は自動制御装置26に送られ、測定値が5度に達した時点から自動制御装置26により原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を同時に行うろ過方法に自動的に切り替えた。原水側加圧ろ過は膜モジュール4に調圧ろ過ポンプ3を用いて原水1を一定流量(膜ろ過流束2.5m/m/日、1日で膜面積1mあたり2.5mのろ過水が得られる流量)で供給する定流量ろ過とし、全量ろ過方式にて行った。原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を同時に行うろ過方法では、膜モジュール4に調圧ろ過ポンプ3を用いて原水1を一定流量(膜ろ過流束2.5m/m/日、1日で膜面積1mあたり2.5mのろ過水が得られる流量)で供給し、同時に減圧ろ過ポンプ5で減圧する定流量ろ過とし、全量ろ過方式にて行った。原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を同時に行うろ過方法の減圧ろ過ポンプ5の回転数は、ポンプの最大回転数である50ヘルツで運転した。運転条件はろ過を29分、逆洗同時気体洗浄を1分、排出を30秒の繰返しで行った。逆洗は3.0m/m/日で行い、同時に酸化剤送液ポンプ9を用いて酸化剤タンク8中の次亜塩素酸ナトリウムを供給し、逆洗水の残留塩素濃度が3mg/リットルとなるようにした。空気洗浄用の気体はコンプレッサー10により圧縮した空気を用いて行い、空気流量は1.5Nm/hrとして行った。上記運転条件にて原水側加圧ろ過法から連続運転を開始したところ、約1000時間後に濁度が5度を超えて17度に到達した(図7)ため、原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を組み合わせたろ過方法に自動的に切り替えた。膜差圧は最大163kPaまで上昇し、3000時間後は145kPaだった(図6)。3000時間まで所定の膜ろ過流束2.5m/m/日を保持したまま連続運転することができた(図8)。
【0017】
[比較例1]
原水として平均濁度1度の河川表流水を用いた。図1に示す装置を用いて行い、ろ過は原水側加圧ろ過で実施例1と同時に並行して行った。膜モジュール4に調圧ろ過ポンプ3を用いて原水1を一定流量(膜ろ過流束2.5m/m/日、1日で膜面積1mあたり2.5mのろ過水が得られる流量)で供給する定流量ろ過とし、全量ろ過方式にて行った。運転条件はろ過を29分、逆洗同時気体洗浄を1分、排出を30秒の繰返しで行った。逆洗は3.0m/m/日で行い、同時に酸化剤送液ポンプ9を用いて酸化剤タンク8中の次亜塩素酸ナトリウムを供給し、逆洗水の残留塩素濃度が3mg/リットルとなるようにした。気体洗浄用の気体はコンプレッサー10により圧縮した空気を用いて行い、空気流量は1.5Nm/hrとして行った。上記運転条件にて連続運転したところ、約1050時間後に膜差圧が薬品洗浄の必要な200kPaとなったため、装置停止した(図6)。
【0018】
[比較例2]
原水として平均濁度1度の河川表流水を用いた。図1に示す装置を用いて行い、ろ過はろ過水側減圧ろ過で実施例1と同時に並行して行った。膜モジュール4に調圧ろ過ポンプ3を用いて原水1を一定流量(膜ろ過流束2.5m/m/日、1日で膜面積1mあたり2.5mのろ過水が得られる流量)で供給する定流量ろ過とし、全量ろ過方式にて行った。運転条件はろ過を29分、逆洗同時気体洗浄を1分、排出と原水充填を30秒の繰返しで行った。逆洗は3.0m/m/日で行い、同時に酸化剤送液ポンプ9を用いて酸化剤タンク8中の次亜塩素酸ナトリウムを供給し、逆洗水の残留塩素濃度が3mg/リットルとなるようにした。空気洗浄用の気体はコンプレッサー10により圧縮した空気を用いて行い、空気流量は1.5Nm/hrとして行った。上記運転条件にて連続運転したところ、1000時間後に設計膜ろ過流束の2.5m/m/日を下回り、最低で3.02m/m/日となった(図8)。
【産業上の利用可能性】
【0019】
上水、工業用水、河川水、湖沼水、地下水、貯水、下水二次処理水、排水、下水等を原水として膜ろ過に適用する、または有価物の分離、あるいは濃縮のために膜ろ過を適用する分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】原水側加圧ろ過、ろ過水側減圧ろ過、原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を組み合わせたろ過を選択する実施形態例のフロー図を示した説明図である。
【図2】原水側加圧ろ過のろ過工程実施形態例のフロー図を示した説明図である。
【図3】ろ過水側減圧ろ過及び原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を組み合わせたろ過のろ過工程の実施形態例のフロー図を示した説明図である。
【図4】逆洗と気体洗浄を同時に実施する工程の実施形態例のフロー図を示した説明図である。
【図5】剥離した除去対象物質を排出する工程の実施形態例のフロー図を示した説明図である。
【図6】実施例1、比較例1、比較例2における膜差圧変化特性を示した図である。
【図7】実施例1、比較例1、比較例2における濁度変化特性を示した図である。
【図8】実施例1、比較例1、比較例2における膜ろ過流束変化特性を示した図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・原水
2・・・原水タンク
3・・・調圧ろ過ポンプ
4・・・膜モジュール
5・・・減圧ろ過ポンプ
6・・・ろ過水タンク
7・・・加圧逆洗ポンプ
8・・・酸化剤タンク
9・・・酸化剤送液ポンプ
10・・・コンプレッサー
11・・・水質測定器
12・・・膜差圧測定器
13・・・膜ろ過流束測定器
14・・・バルブA
15・・・バルブB
16・・・バルブC
17・・・バルブD
18・・・バルブE
19・・・バルブF
20・・・バルブG
21・・・バルブH
22・・・バルブI
23・・・バルブJ
24・・・バルブK
25・・・バルブL
26・・・自動制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力を駆動力とする膜モジュール、膜モジュールの原水側圧力を調整する調圧ポンプ、膜モジュールのろ過水側圧力を調整する調圧ポンプ、膜モジュールの原水側の水質を測定する測定機器、該測定機器からの信号により前記2つの調圧ポンプの運転を自動制御する手段を有する膜ろ過装置。
【請求項2】
膜モジュールのろ過水側圧力を調整する調圧ポンプが減圧ポンプ、膜モジュールの原水側の水質を測定する測定機器が濁度計または全有機炭素量測定器である請求項1記載の膜ろ過装置。
【請求項3】
膜モジュールを用いて液体をろ過する方法であって、原水側水質を測定しながら原水側を加圧してろ過を行い、水質の測定値があらかじめ設定した閾値を超えた時点で膜モジュールのろ過水側圧力を減圧し、原水側加圧ろ過とろ過水側減圧ろ過を同時に行うことを特徴とするろ過方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−189974(P2009−189974A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34191(P2008−34191)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】