説明

膜ろ過装置の逆洗方法および膜ろ過装置

【課題】ろ過膜内蔵ケーシングを列設した実機の膜ろ過装置において、逆洗の開始タイミングの遅れを解消し、逆洗時間の短縮および洗浄水、化学成分の節減を可能とする。
【解決手段】ろ過膜内蔵ケーシング3a、3b、3cを複数、並列させているろ過装置の実機において、2次室から接続管51a、51b、51cを通じて共通のヘッダ管5に接続されている。ここで、前記ヘッダ管5を前記ケーシング3より高所に、かつ水平方向に配設するとともに、そのヘッダ管5の末端部分には内部の液体を排出できる、開閉用バルブを備えたドレン管53を設けている。本発明の逆洗方法は、この膜ろ過装置の逆洗に際して、前記のヘッダ管5に化学成分を含む逆洗用洗浄水dを充満させた後、その洗浄水dを各ケーシング3a、3b、3c、に同時に導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜ろ過装置の逆洗方法およびそれに適用する膜ろ過装置に関するものであって、特に、逆洗時間の短縮および洗浄水の節減などの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
膜ろ過装置の逆洗の原理を図3により説明すると、ろ過運転時は、ろ過膜13を内蔵するケーシング1aの1次室11に、原水槽10から送給管14を経て原水aが送り込まれ、ろ過が行われ、残余は返送管15を経て返送原水bとして原水槽10へ返送される循環経路が形成される。この間に、ろ過膜13を通過したろ過水cは2次室12から取水管16を経て外部に取り出される。
【0003】
このろ過操作が進行するに伴い、1次室11側膜面のろ過ケーキが堆積し、ろ過性能が順次低下するので、適当な時期にケーキ層を除去する膜洗浄を行う。この膜洗浄においては、2次室12に洗浄水dを送給し、1次室11に向けてろ過膜13を通過させることにより、前記1次室11側膜面に堆積したろ過ケーキを剥離、除去する逆圧洗浄(以下、逆洗という)が利用されている。この場合の洗浄水には、酸、アルカリ、オゾン、次亜塩素酸塩などの化学成分を添加、利用するのも好ましい。
【0004】
このような、膜ろ過装置の逆洗方法の関して、多くの改良が行われている。例えば、本発明出願人も特許文献1に示すような逆洗方法を提案している。すなわち、膜ろ過装置のろ過水側に洗浄化学成分を含む洗浄水を導入し、この洗浄水を前記膜のケーキ層に接する膜面まで浸透させる浸透ステップ、この段階で洗浄水のろ過膜内の移動を停止させ、この浸透状態を所定時間保持する保持ステップ、この保持ステップ終了後、洗浄化学成分を含まない洗浄水でろ過膜からケーキ層を剥離、除去し逆圧洗浄する逆洗ステップを順次行う逆洗方法であり、洗浄効果を向上させ、かつ洗浄化学成分の使用量を低減することができるものである。(特許文献1を参照のこと)
【0005】
【特許文献1】特開2002−52321号公報:特許請求の範囲、段落0016、図1。
【0006】
このような逆洗方法では、ろ過操作を停止して、取水管16中のろ過水cの流れを洗浄水dの流れに切り替えて行うのであるが、実機の膜ろ過装置の場合は、ろ過膜を内蔵する多数のケーシングを列設させてモジュールが構成されている。例えば、図3にように、ケーシング1a、1b、1c、・・のように列設し、共通の取水管16にそれぞれが接続されている。このように構成されているため、逆洗に際して取水管16の先端から洗浄水dを送給すると、洗浄水dの送給方向からみて、最前位置のケーシング1aから、ケーシング1b、ケーシング1cの順に後方になるに従い、逆洗の開始タイミングが順次遅れることになる。
【0007】
そのため、最後位置のケーシングの逆洗が完了する時期には最前位置のケーシング1aの逆洗は過剰な時間が経過することになるのように、多くのケーシングから構成されるモジュールの場合は、逆洗時間が単体のケーシングの逆洗時間より長時間を要することになり、その結果、洗浄水や含有化学成分も相当分が無駄になるという問題があった。また実機の膜ろ過装置では、このようなモジュールをいくつか列設して組立てられるユニットから構成されるので、前記逆洗の開始タイミングはさらに一層遅れるので無駄も多くなるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、ろ過膜を内蔵する多数のケーシングを並列させてモジュールが構成されている実機の膜ろ過装置の場合において、逆洗の開始タイミングの遅れを解消し、逆洗時間の短縮および洗浄水、化学成分の節減を可能とする膜ろ過装置の逆洗方法およびそれに適用する膜ろ過装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題は、並列させた複数のろ過膜内蔵ケーシングからろ過水を取り出すため各ケーシングそれぞれに接続されたヘッダ管に、逆洗用洗浄水を導入して逆洗する膜ろ過装置の逆洗方法であって、前記ヘッダ管に逆洗用洗浄水を充満させた後、その洗浄水を各ケーシングに同時に導入することを特徴とする第1発明の膜ろ過装置の逆洗方法によって、解決することができる。
【0010】
本発明は、前記ヘッダ管を前記ケーシングより高所に、かつ水平方向に配設した前記膜ろ過装置の逆洗方法であって、逆洗操作に際して、ヘッダ管中の保有水を排出した後、ヘッダ管に逆洗用洗浄水を送給して充満させる前記の膜ろ過装置の逆洗方法として好ましく具体化される。
【0011】
さらに、前記の問題は、第2発明であるところの、並列させた複数のろ過膜内蔵ケーシングと各ケーシングそれぞれに接続されたモジュールヘッダ管とからなるモジュールを複数並列させるとともに、その複数の各モジュールヘッダ管それぞれに接続されたユニットヘッダ管を備えた膜ろ過装置の逆洗方法であって、逆洗操作に際して、前記モジュールヘッダ管と前記ユニットヘッダ管の中の保有水を排出した後、ユニットヘッダ管を通じて各ヘッダ管に逆洗用洗浄水を送給して充満させた後、その洗浄水を各ケーシングに同時に導入することを特徴とする、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法によって解決される。
【0012】
また、前記の問題は、第3発明であるところの、並列させた複数のろ過膜内蔵ケーシングからろ過水を取り出すため各ケーシングそれぞれに接続されたヘッダ管に、洗用洗浄水を導入して逆洗可能とした膜ろ過装置であって、前記ヘッダ管を前記ケーシングより高所に、かつ水平方向に配設するとともに、そのヘッダ管の末端部分にドレン管を設けたことを特徴とする、本発明の膜ろ過装置によって解決される。
この発明では、前記ヘッダ管の末端部分にエア抜き管を設けた形態がより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1発明である膜ろ過装置の逆洗方法は、逆洗に際して、前記した各ケーシングに接続されたヘッダ管に、逆洗用洗浄水を充満させた後、その洗浄水を各ケーシングに同時に導入するので、従来発生していたような、逆洗の開始タイミンの遅れが生じないから、複数のケーシング全体の逆洗時間が最小時間となるという利点が得られ、かつ洗浄水や化学成分も最小量で済むという利点が得られる。
【0014】
また、前記ヘッダ管を前記ケーシングより高所に、かつ水平方向に配設した前記膜ろ過装置を用いた本発明の逆洗方法では、逆洗操作に際して、ヘッダ管中の保有水を排出するときに、ケーシング内に滞留するろ過水を満水状態に維持できるから、逆洗時に空気を巻き込む不都合が生じない。また、逆洗用洗浄水をヘッダ管を一旦空にしてから送給する場合には、各ケーシングに所定の濃度の洗浄水を短時間で充満させることができるから、洗浄時間合計がより短縮できる利点が得られる。
【0015】
本発明の第2発明である膜ろ過装置の逆洗方法は、前記したように並列させた複数のろ過膜内蔵ケーシングからなるモジュールを構成し、それらを複数並列させてなるユニットを構成する実機の膜ろ過装置において、各ケーシングのそれぞれに接続されろ過水をモジュール単位で集約するモジュールヘッダ管と、その複数のモジュールヘッダ管をユニット単位で集約するユニットヘッダ管の中の保有水を排出した後、ユニットヘッダ管を通じて各モジュールヘッダ管に逆洗用洗浄水を送給して充満させ、次いでその洗浄水を各ケーシングに同時に導入するので、前記に同じく、モジュール相互間およびケーシング相互間において逆洗開始のタイミンの遅れがなく、所定濃度の洗浄水を送給できるから、逆洗時間が最小時間で済むうえ、洗浄水、化学成分も最小量で済むという利点が得られる。
【0016】
また、第3発明の膜ろ過装置によれば、複数のろ過膜内蔵ケーシングそれぞれに接続された共通のヘッダ管を前記ケーシングより高所に、かつ水平方向に配設するとともに、そのヘッダ管の末端部分にドレン管を設けたことにより、逆洗に際して、ヘッダ管内に滞留するろ過水をドレン管を通じて排出できるから、洗用洗浄水を円滑に送給して充満させることができる。そして、その段階で加圧すれば、洗浄水を各ケーシングに同時に導入可能となり、逆洗開始タイミンに遅れがなく揃えることができるという本発明の逆洗方法における利点が得られるのである。
【0017】
また、特に、共通のヘッダ管を前記ケーシングより高所に、かつ水平方向に配設しているので、ろ過水をドレン管を通じて排出するときに、ケーシング内の保有水がヘッダ管を通じて漏出することがなく満水状態が維持でき、逆洗操作に障害となる空気を巻き込むという不具合が生じないのは如上の通りである。
【0018】
このように本発明によれば、複数のケーシングからなるモジュールを更に複数並列させたユニットからなる実機の膜ろ過の逆洗において、逆洗時間が最小時間で済むうえ、洗浄水や化学成分も最小量で済むという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した膜ろ過装置の逆洗方法および膜ろ過装置として、価値はきわめて大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法および膜ろ過装置に係る実施形態について、図1〜3を参照しながら説明する。
【0020】
(第1、3発明)
第3発明である膜ろ過装置の概念を示すフローチャート図1を参照して、第1発明の膜ろ過装置の逆洗方法も併せ説明する。
この膜ろ過装置のフローチャートは、図3で説明したものと基本的に類似する。すなわち、原水槽2とろ過膜内蔵ケーシング3の1次室31には原水槽2から原水aを送り込む送給管41が配設され、その1次室31の他端には原水槽2へ返送原水bを送り返す返送管42が配設されている。1次室31に送り込まれた原水aは、ろ過膜33によってろ過され、ろ過水cとなって2次室32内に移動する。残余の原水は返送原水bとして原水槽2へ返送され、循環流路を構成している。
【0021】
2次室32に移動したろ過水bは、取水枝管51を経由してヘッダ管5に送り込まれ、ヘッダ管5の一端に接続された取水管52から外部に取り出せるよう構成されている。
なお、この事例では、原水が循環するようなクロスフローろ過を例として説明しているが、本発明は流路がろ過膜で遮断されるようなデッドエンドろ過の場合にも同様に適用されることはもちろんである。
【0022】
そして、ろ過の進行に伴い、1次室31側膜面にろ過ケーキが堆積した場合に、ろ過操作を中止し、ヘッダ管5を経由し2次室32に洗浄水dを送給し、ろ過膜33を通過させることにより、堆積した前記ろ過ケーキを剥離、除去する逆洗を行う点で、図3の場合と同様である。
【0023】
なお、ヘッダ管とは、一般に、液体など流体を流通する主管を一度に多数の枝配管に分岐するとき、または多数の枝配管を一度に合流させる場合に用いる太い管(パイプ)または胴などをいい、配管ヘッダ、管寄せ、配管分配器ともいう。ボイラ,熱交換器、エンジン等において、ヘッダ管はしばしば用いられる流体分配機構であって、枝配管のサイズに比べてヘッダ管は径サイズを十分大きくとることにより、枝配管に分配される流量を平均化する機能がある。
【0024】
本発明の特徴の第1は、図示のろ過膜内蔵ケーシング3a、3b、3c、のように、それらケーシングを複数、並列させているろ過装置の実機を対象としており、それぞれは、2次室から接続管51a、51b、51cを通じて共通のヘッダ管5に接続されていて、このヘッダ管5によって、ろ過水cを合流させて取り出す、あるいは、逆洗用洗浄水dを各2次室に分配する目的に供されるよう構成されている。なお、この事例では、3個のケーシングを示すが、本発明ではこのケーシング数に限定されるものではない。
【0025】
本発明の特徴の第2には、このこのように構成されたケーシング3とヘッダ管5との関係において、前記ヘッダ管5を前記ケーシング3より高所に、かつ水平方向に配設するとともに、そのヘッダ管5の末端部分には内部の液体を排出できる、開閉用バルブ(図示せず)を備えたドレン管53を設けている。この場合、このヘッダ管5の末端部分に空気を流通させる、開閉用バルブ(図示せず)を備えたエア抜き管54を設けるのが好ましい。
【0026】
本発明の第1発明の逆洗方法は、このような膜ろ過装置によって好ましく実用化することができる。すなわち、第1発明の要点は、膜ろ過装置の逆洗に際して、前記のヘッダ管5に化学成分を含む逆洗用洗浄水dを充満させた後、その洗浄水dを各ケーシング3a、3b、3c、に同時に導入する方法である。
この方法の具体的実施手順として次の逆洗1)、逆洗2)の方法がある。
【0027】
逆洗1):a)逆洗に際して、ろ過運転を停止し、取水管52からに排水を停止する。この場合、各ケーシング内は満水状態を保持する。
b)次いで、取水管52から化学成分を含む逆洗用洗浄水dをヘッダ管5内に送り込むと同時に、末端のドレン管53からヘッダ管5内のろ過水を抜き出して、管内を逆洗用洗浄水dで置換し充満させる。
c)次いで、ヘッダ管内を加圧して、各ケーシングの2次室に洗浄水dを送り込み、ろ過膜を逆方向に通過させて洗浄する。洗浄水dを送り込みの制御は、ヘッダ管内、ケーシング内の圧力を調整して行う。
【0028】
逆洗2):a)上に同じ。
b)次いで、末端のドレン管53からヘッダ管5内のろ過水を抜き出して、ヘッダ管5内を空にする。その後、取水管52から化学成分を含む逆洗用洗浄水dをヘッダ管5内に送り込んで管内を逆洗用洗浄水dで充満させる。この場合、エア抜き管54から空気を抜きながら行う。
c):1)と同じ。
【0029】
逆洗1)、2)では、ヘッダ管から各ケーシングに同時に洗浄水を送り込むことができるという本発明の利点が得られる。なお、逆洗1)ではヘッダ管に洗浄水を送り込むとき、内部に保有されるろ過水と混合され、化学成分の濃度が低下するので、所定の濃度の洗浄水が充満するのはやや時間がかかるという問題があるが、逆洗2)では、ろ過水排出と洗浄水充満とを分離したので、混合による遅延がなくなるので、結果として最短時間で充満できる点が改善されている。
【0030】
以上説明したように、第1発明を具体化することができ、本発明では、逆洗に際して、複数のろ過膜内蔵ケーシング3a、3b、3cのそれぞれに接続されたヘッダ管5に、逆洗用洗浄水dを充満させた後、その洗浄水を各ケーシングに同時に導入するので、従来発生していたような、逆洗の開始タイミンの遅れが生じないから、複数のケーシング全体の逆洗時間が最小時間で済むうえ、洗浄水も最小量で済むという利点が得られる。
【0031】
その作用効果を具体的に例示すると、ろ過膜内蔵ケーシングを10台並列させ、共通のヘッダ管を配設した膜ろ過装置(1モジュール)の逆洗所要時間(ろ過運転の停止〜逆洗終了)を比較すると、従来例(ケーシングに順次、洗浄水を送り込むケース)を100とした場合、上記逆洗1)では92、上記逆洗2)では83であって、大幅な時間削減が可能となった。また、洗浄水に使用量も洗浄時間に比例するので、本発明では洗浄水や化学成分も従来方法に比べ約80%から90%の最小量で済ませることができるのである。
【0032】
さらに、本発明では、前記ヘッダ管5を前記ケーシング3a、3b、3cより高所に、かつ水平方向に配設した前記膜ろ過装置を用いるので、逆洗操作に際して、ヘッダ管5中の保有水を排出に当ってケーシング内に滞留するろ過水を満水状態のままのレベルが維持できるから、逆洗水に空気を巻き込む不都合が生じない。
【0033】
前記ヘッダ管を前記ケーシングより高所に、かつ水平に配設されるのは、この説明で明らかなように、ヘッダ管5中の保有水を排出に当ってケーシング3内に滞留するろ過水が同伴して排水されることなく、満水状態が維持できるようにするためであり、ここでいう高所とは、この目的が達成される最低限の高さでよい。
【0034】
(第2発明)
本発明の実施形態を図2を参照して説明すると、先ず、並列させた複数のろ過膜内蔵ケーシング3Aと各ケーシングそれぞれに接続されたモジュールヘッダ管5Aとからなる単位をモジュールと呼称するとし、このモジュールを複数並列させ、かつ、その複数のモジュールが有するモジュールヘッダ管5A、5Bそれぞれに接続されたユニットヘッダ管6を備えた膜ろ過装置の単位をユニットと呼称するとし、実際の浄水施設などで用いられている実機である、ユニットから構成される膜ろ過装置の逆洗方法である。
【0035】
この場合、逆洗操作に際して、前記モジュールヘッダ管5A、5Bと前記ユニットヘッダ管6の中の保有水を排出した後、取水管62からユニットヘッダ管6を通じて各ヘッダ管5A、5Bに逆洗用洗浄水dを送給して充満させた後、その洗浄水を各ケーシング3A、3Bに同時に導入する。なお、この事例では、2組のモジュールを示すが、本発明ではこのモジュール数に限定されるものではない。
【0036】
また、逆洗用洗浄水dは、先ず、ユニットヘッダ管6に充満させ、次いで各モジュールヘッダ管5A、5Bに充満させるよう、送り込むのがよく、ユニットヘッダ管6に充満させるには、具体的には、1)ろ過水を排出させながら同時に洗浄水を送り込む方法、2)ろ過水を排出させてユニットヘッダ管内をいったん空にしてから洗浄水を送り込む方法がある。以下、モジュールヘッダ管5A、5Bに充満させるには、先に説明した第1発明の場合に説明した逆洗1)、2)の方法が採用される。
【0037】
第2発明である膜ろ過装置の逆洗方法は、前記したように並列させた複数のろ過膜内蔵ケーシング3A、3Bから構成されるモジュールを複数、並列させてなるユニットからなる実機の膜ろ過装置において、逆洗に際して、各ケーシングのそれぞれに接続されろ過水をモジュール単位で集約するモジュールヘッダ管5A、5Bと、その複数のモジュールヘッダ管をユニット単位で集約するユニットヘッダ管6の中の保有水を排出した後、ユニットヘッダ管6を通じて各モジュールヘッダ管5A、5Bに逆洗用洗浄水を送給して充満させ、次いでその洗浄水を各ケーシングに同時に導入するので、第1発明の場合に同じく、逆洗の開始タイミンの遅れがなく、同質の洗浄水を送給できるから、逆洗時間が最小時間で済むうえ、洗浄水も最小量で済むという利点が得られる。
【0038】
その作用効果を具体的に例示すると、ろ過膜内蔵モジュールを3台並列させ、共通のユニットヘッダ管を配設した膜ろ過装置の1ユニットの逆洗所要時間(ろ過運転の停止〜逆洗終了)を比較すると、従来例(ユニットヘッダ管からモジュールヘッダ管を通じて各ケーシングに順次、洗浄水を送り込むケース)を100とした場合、この第2発明の逆洗方法(ろ過水排出と洗浄水充満とを分離した逆洗)では41であって、削減率が約60%に達する大幅な時間削減が可能となった。また、洗浄水に使用量も洗浄時間に比例するので、本発明では洗浄水や化学成分も従来方法に比べ約40%の最小量で済ませられ、さらに、並列モジュール数を増やした場合には一層、効果的であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1、2実施形態を説明するためのフローチャート(概念図)
【図2】本発明の第3実施形態を説明するためのフローチャート(概念図)
【図3】逆洗操作を説明するためのフローチャート(概念図)
【符号の説明】
【0040】
2:原水槽
3:ろ過膜内蔵ケーシング、3a、3b、3c:ろ過膜内蔵ケーシング、31:1次室、32:2次室、33:ろ過膜
41:送給管、42:返送管
5:ヘッダ管、51a、51b、51c:接続管、52:取水枝管、53:ドレン管、54:エア抜き管
a:原水、b:返送原水、c:ろ過水、d:洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列させた複数のろ過膜内蔵ケーシングからろ過水を取り出すため各ケーシングそれぞれに接続されたヘッダ管に、逆洗用洗浄水を導入して逆洗する膜ろ過装置の逆洗方法であって、前記ヘッダ管に逆洗用洗浄水を充満させた後、その洗浄水を各ケーシングに同時に導入することを特徴とする膜ろ過装置の逆洗方法。
【請求項2】
前記ヘッダ管を前記ケーシングより高所に、かつ水平方向に配設した前記膜ろ過装置の逆洗方法であって、逆洗操作に際して、ヘッダ管中の保有水を排出した後、ヘッダ管に逆洗用洗浄水を送給して充満させる請求項1に記載の膜ろ過装置の逆洗方法。
【請求項3】
並列させた複数のろ過膜内蔵ケーシングと各ケーシングそれぞれに接続されたモジュールヘッダ管とからなるモジュールを複数並列させるとともに、その複数の各モジュールヘッダ管それぞれに接続されたユニットヘッダ管を備えた膜ろ過装置の逆洗方法であって、逆洗操作に際して、前記モジュールヘッダ管と前記ユニットヘッダ管の中の保有水を排出した後、ユニットヘッダ管を通じて各ヘッダ管に逆洗用洗浄水を送給して充満させた後、その洗浄水を各ケーシングに同時に導入することを特徴とする膜ろ過装置の逆洗方法。
【請求項4】
並列させた複数のろ過膜内蔵ケーシングからろ過水を取り出すため各ケーシングそれぞれに接続されたヘッダ管に、洗用洗浄水を導入して逆洗可能とした膜ろ過装置であって、前記ヘッダ管を前記ケーシングより高所に、かつ水平方向に配設するとともに、そのヘッダ管の末端部分にドレン管を設けたことを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項5】
前記ヘッダ管の末端部分にエア抜き管を設けた請求項4記載の膜ろ過装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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