説明

膜ろ過装置の逆洗方法

【課題】目詰まり物質を十分に剥離することができる逆洗方法を提供する。
【解決手段】膜ろ過ユニットと、膜ろ過ユニットの一次側に逆洗水排出弁を介して接続された逆洗水排出ラインと、逆洗ポンプを介して膜ろ過ユニットの二次側および逆洗水槽を接続する逆洗水供給ラインとを備える膜ろ過装置を逆洗する方法であって、逆洗水排出弁を閉じ、逆洗ポンプを作動させて、ろ過膜にかかる圧力を所定圧力に高める逆洗準備工程と、逆洗準備工程でろ過膜にかかる圧力が所定圧力となった後に、逆洗水排出弁を開いて、膜ろ過ユニットの二次側から一次側へと逆洗水を流す逆洗工程とを含むことを特徴とする、膜ろ過装置の逆洗方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆流洗浄が可能な膜ろ過装置の逆流洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、上水処理システム、下水処理システム、工業用水処理システム、排水処理システム、海水淡水化システムなどの各種水処理システムにおいて被処理水中の汚濁物質を分離除去する方法として、膜ろ過を用いた水処理方法が知られている。
【0003】
ここで、膜ろ過を用いた水処理方法では、ろ過の継続に伴い、被処理水中の汚濁物質等がろ過膜に付着してろ過膜の目詰まり(ファウリング)が生じ、ろ過性能が低下(膜差圧が上昇)するため、定期的にろ過膜を逆流洗浄(以下「逆洗」という。)して目詰まりを解消する必要がある。そのため、従来、膜ろ過装置では、例えば逆洗ポンプ等を用いてろ過膜の二次側(処理水側)から一次側(被処理水側)へと逆洗水を通水することにより、ろ過膜の逆洗を行っていた。
【0004】
しかし、逆洗ポンプを用いてろ過膜の逆洗を行う場合、逆洗ポンプの始動時にはポンプ圧力や逆洗水の流量が速やかに上昇せずに徐々に上昇していくため、ろ過膜に付着した目詰まり物質の初期剥離が遅くなり、且つ、不均一になるという問題があった。
【0005】
そこで、逆洗ポンプを事前に立ち上げておき、逆洗ポンプ起動直後のポンプ変動(逆洗ポンプの流量変動や圧力変動など)が安定した後に、ろ過膜の二次側に逆洗水を供給してろ過膜を逆洗することにより、ろ過膜に付着した目詰まり物質の初期剥離を迅速且つ均一に行うろ過膜の逆洗方法として、ろ過膜と逆洗ポンプとの間に開閉弁(逆洗水入口弁)を設け、逆洗を行う際に、逆洗水入口弁を閉とした状態で逆洗ポンプを起動し、ポンプ圧力が逆洗に有効な所定圧力に到達するために必要な所定時間経過後に、逆洗水入口弁を開いて逆洗を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−245059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来のろ過膜と逆洗ポンプとの間に逆洗水入口弁を設ける方法では、目詰まり物質を十分に剥離することができない場合があった。
【0008】
そのため、従来の逆洗方法では目詰まり物質を十分に剥離することができない原因について本発明者らが検討を行ったところ、ろ過膜を設置した膜ろ過ユニット内には、膜ろ過ユニットに対する配管の接続位置などの影響により、例えば逆洗水供給口付近や逆洗水排出口付近などに逆洗開始時に逆洗水が流れ易い場所が存在していることが、目詰まり物質を十分に剥離することができない原因になっていると推察された。そして、本発明者らが更に検討を重ねたところ、特に、逆洗水入口弁を開いて逆洗を行う際に、圧力が高くて流量の大きい逆洗水をろ過膜に対して一気に接触させた場合には、逆洗開始時に逆洗水が流れ易い場所へ逆洗水が優先的に流れて該逆洗水の流れ易い場所の目詰まり物質が効率的に剥離されることにより、目詰まり物質が剥離した場所に通水抵抗が小さくて逆洗水が流れ易い流路(水道:みずみち)が形成されてしまい、該水道に逆洗水が集中的に流れ続けてしまうため、従来の逆洗方法では目詰まり物質を十分に剥離することができないことが分かった。
【0009】
そこで、本発明者らは、逆洗時に特定の場所のみに水道が形成されるのを抑制して、目詰まり物質を十分に剥離することができる逆洗方法を提供することを目的として、鋭意検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法は、ろ過膜により一次側と二次側とに仕切られ、一次側に供給された被処理水をろ過膜でろ過してろ過水を二次側へ透過させる膜ろ過ユニットと、前記膜ろ過ユニットの一次側に逆洗水排出弁を介して接続された逆洗水排出ラインと、逆洗ポンプを介して前記膜ろ過ユニットの二次側および逆洗水槽を接続する逆洗水供給ラインとを備える膜ろ過装置を逆洗する方法であって、前記逆洗水排出弁を閉じ、前記逆洗ポンプを作動させて、ろ過膜にかかる圧力を所定圧力に高める逆洗準備工程と、前記逆洗準備工程で前記ろ過膜にかかる圧力が前記所定圧力となった後に、前記逆洗水排出弁を開いて、前記膜ろ過ユニットの二次側から一次側に逆洗水を流す逆洗工程とを含むことを特徴とする。このように、逆洗工程において逆洗水を膜ろ過ユニットの二次側から一次側へと通水する前に、逆洗準備工程においてろ過膜に対して所定圧力をかければ、ろ過膜に対して均一にかかった圧力が逆洗開始時に一気に開放され、逆洗開始時に逆洗水が大流束で流れるので、逆洗水が流れ易くて目詰まり物質が剥離し易い場所のみに水道が形成されるのを抑制することができる。従って、目詰まり物質を十分に剥離することができる。
なお、本発明において、「所定圧力」とは、目詰まり物質の迅速且つ均一な初期剥離を実現するために有効な圧力であり、ろ過膜の材質、目詰まりの程度および逆洗の頻度などを考慮して実験的に定めることができる。また、本発明において、「逆洗水」には、薬品を添加した逆洗水も含まれる。
【0011】
ここで、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法は、前記膜ろ過装置が、前記膜ろ過ユニットの二次側および前記逆洗ポンプの間で前記逆洗水供給ラインに締切運転防止弁を介して接続され、且つ、前記逆洗準備工程でろ過膜にかかる圧力を調整する圧力調整手段を有する締切運転防止用ラインを更に備え、前記逆洗準備工程では、前記逆洗水排出弁を閉じ、前記締切運転防止弁を開いた状態で、逆洗水を締切運転防止用ラインに流しつつ、ろ過膜にかかる圧力を所定圧力に高め、前記逆洗工程では、前記逆洗水排出弁を開くと共に前記締切運転防止弁を閉じて、前記膜ろ過ユニットの二次側から一次側に逆洗水を流すことが好ましい。締切運転防止用ラインを設ければ、逆洗ポンプを締切運転することなく逆洗ポンプ起動直後のポンプ変動の問題を解消し、逆洗準備工程においてろ過膜に圧力をかけることができるので、逆洗ポンプにかかる負荷を低減して逆洗ポンプの機械故障の発生を防止することができるからである。また、締切運転防止用ラインに圧力調整手段を設ければ、逆洗ポンプの吐出圧を調整して逆洗準備工程においてろ過膜にかける圧力を調整することができるからである。
【0012】
また、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法は、前記締切運転防止用ラインが、前記逆洗水槽に接続されており、前記逆洗準備工程で、前記ろ過膜に圧力をかけながら前記逆洗水槽中の逆洗水を循環させることが好ましい。逆洗水を循環させれば、大量の逆洗水を使用することなく、ろ過膜にかかる圧力を所定圧力まで高めることができるからである。
【0013】
更に、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法は、前記圧力調整手段が、流量調整弁であることが好ましい。圧力調整手段として流量調整弁を用いれば、逆洗ポンプの流量および吐出圧を容易に調整することができるので、逆洗準備工程においてろ過膜にかける圧力を容易に調整することができるからである。
【0014】
また、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法は、前記ろ過膜がセラミック製のろ過膜であり、前記所定圧力が、300kPa超であることが好ましい。耐圧性に優れるセラミック製のろ過膜を用いれば、ろ過膜に対して300kPa超の圧力をかけることができ、逆洗準備工程においてろ過膜にかける所定圧力を300kPa超とすれば、目詰まり物質をより確実に剥離することができるからである。
【0015】
そして、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法は、前記膜ろ過装置が、薬品を添加した逆洗水を前記膜ろ過ユニットの二次側に供給する薬品添加逆洗手段を更に備え、前記逆洗準備工程より前に、前記薬品添加逆洗手段を用いて膜ろ過装置の薬品添加逆洗を行う薬品添加逆洗工程を含むことが好ましい。薬品添加逆洗を行った場合、目詰まり物質が容易に剥離され易くなって逆洗水を用いた逆洗時に水道が形成され易くなるが、薬品添加逆洗工程後に逆洗準備工程で所定圧力をかけてから逆洗を行えば、水道の形成を抑制することができるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の膜ろ過装置の逆洗方法によれば、逆洗時に目詰まり物質が剥離し易い場所のみに水道が形成されるのを抑制して、目詰まり物質を十分に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る逆洗方法に従い逆洗可能である代表的な膜ろ過装置において、被処理水をろ過している状態を示す説明図である。
【図2】図1に示す膜ろ過装置において、本発明に係る逆洗方法に従い逆洗準備工程を実施している状態を示す説明図である。
【図3】図1に示す膜ろ過装置において、本発明に係る逆洗方法に従い逆洗工程を実施している状態を示す説明図である。
【図4】図1に示す膜ろ過装置において、本発明に係る逆洗方法に従い薬品添加逆洗工程を実施している状態を示す説明図である。
【図5】図1に示す膜ろ過装置に用いたセラミック膜の構造を、セラミック膜の一部を切り欠いて示す説明図である。
【図6】実施例および比較例に係る方法で逆洗を行った場合における、ろ過時間と膜差圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明に係る膜ろ過装置の逆洗方法は、例えば、海水淡水化システム等の各種水処理システム中に用いられている膜ろ過装置の逆洗に用いることができる。
【0019】
<膜ろ過装置>
図1〜4に示す膜ろ過装置100は、本発明に係る逆洗方法で逆洗可能な膜ろ過装置の一例であり、海水等の被処理水を貯留するための被処理水槽1と、被処理水をろ過膜でろ過するための膜ろ過ユニット2と、膜ろ過ユニット2で被処理水をろ過して得たろ過水を貯留するためのろ過水槽3とを備えている。そして、被処理水槽1および膜ろ過ユニット2は被処理水供給ライン4で接続され、膜ろ過ユニット2およびろ過水槽3はろ過水ライン5で接続されている。
【0020】
膜ろ過ユニット2は、セラミック製のろ過膜(図1〜4では図示せず)により一次側と二次側とに仕切られており、膜ろ過ユニット2では、一次側に供給された被処理水がセラミック製のろ過膜(以下「セラミック膜」という。)でろ過され、ろ過水が二次側へ透過する。具体的には、膜ろ過ユニット2は、例えば図5にその一部を切り欠いて示すような、被処理水が流入する蓮根状の孔22を有するモノリス型のセラミック膜21を容器の内部に収納し、孔22の延在方向が設置面に対して略水平となるように横置きしたものである。そして、この膜ろ過ユニット2では、セラミック膜21の孔22に流入した被処理水は、各孔22の表面に位置する分離層でろ過されて外表面23から流出する。即ち、この膜ろ過ユニット2では、セラミック膜21の蓮根状の孔22側が一次側となり、分離層より後側が二次側となる。
【0021】
なお、膜ろ過ユニット2のろ過膜としては、有機膜や無機膜などの既知の精密ろ過膜または限外ろ過膜を用いることもできるが、耐圧性および耐薬品性に優れるセラミック膜を用いることが好ましい。耐圧性および耐薬品性に優れるセラミック膜を用いれば、高い圧力をかけての逆洗や、薬品を用いた逆洗を行うことができるからである。
【0022】
被処理水供給ライン4は、被処理水槽1と膜ろ過ユニット2との間の膜ろ過ユニット2側で分岐して2本になっており、分岐点Aで分岐した2本の被処理水供給ライン4は、膜ろ過ユニット2の一次側に図1〜4では左右方向から接続されている。そして、被処理水槽1と分岐点Aとの間の被処理水供給ライン4には、被処理水槽1中の被処理水を膜ろ過ユニット2へ供給するための運転ポンプ41、被処理水に凝集剤を添加するための凝集剤注入手段42、被処理水と凝集剤とを混合するための混合器43および第1圧力計P1が順次設けられており、分岐した2本の被処理水供給ライン4には、第1被処理水供給弁44と第2被処理水供給弁45とがそれぞれ設けられている。なお、凝集剤注入手段42としては、既知の薬品注入ポンプやホッパー等を用いることができ、混合器43としてはスタティックミキサー等の既知の混合器を用いることができる。
【0023】
ろ過水ライン5は、膜ろ過ユニット2とろ過水槽3との間の膜ろ過ユニット2側で分岐して2本になっており、分岐点Bで分岐した2本のろ過水ライン5は、膜ろ過ユニット2の二次側に接続されている。そして、分岐した2本のろ過水ライン5には、第1膜ろ過ユニット弁51と第2膜ろ過ユニット弁52とがそれぞれ設けられており、分岐点Bとろ過水槽3との間のろ過水ライン5には、第2圧力計P2およびろ過水供給弁53が順次設けられている。
【0024】
また、膜ろ過装置100には、ろ過水ライン5の第2圧力計P2とろ過水供給弁53との間の分岐点Dでろ過水ライン5から分岐してろ過水槽3に接続する逆洗水供給ライン6が設けられている。即ち、この膜ろ過装置100では、例えば図3に逆洗時の逆洗水の流れを示すように、ろ過水ライン5の一部(膜ろ過ユニット2の二次側から分岐点Dまで)が含まれる逆洗水供給ライン6により、膜ろ過ユニット2の二次側とろ過水槽3とが接続されている。そして、逆洗水供給ライン6には、膜ろ過装置100の逆洗時に逆洗水槽として機能するろ過水槽3中のろ過水(逆洗水)を膜ろ過ユニット2の二次側へ供給するための逆洗ポンプ61と、分岐点Dおよび逆洗ポンプ61の間に位置する逆洗水供給弁62とが設けられている。
【0025】
更に、膜ろ過装置100には、逆洗水供給ライン6としても機能するろ過水ライン5の一部にある分岐点Dと、ろ過水供給弁53との間の分岐点Eでろ過水ライン5から分岐してろ過水ライン5のろ過水供給弁53とろ過水槽3との間の接続点Fに接続する締切運転防止用ライン7が設けられている。即ち、この膜ろ過装置100では、ろ過水ライン5の一部(分岐点Dから分岐点Eまで、および、接続点Fからろ過水槽3まで)が含まれる締切運転防止用ライン7が、膜ろ過ユニット2の二次側と逆洗ポンプ61との間で逆洗水供給ライン6に接続されている。そして、締切運転防止用ライン7には、逆洗水を締切運転防止用ライン7に流して循環させ、逆洗ポンプ61の締切運転を回避するための締切運転防止弁71と、締切運転防止用ラインに流れる逆洗水の流量を調節して逆洗ポンプ61の吐出圧を調整可能な、圧力調整手段としての流量調整弁72とが設けられている。
【0026】
また、膜ろ過装置100には、ろ過水ライン5の分岐点Bと分岐点Dとの間の分岐点Cでろ過水ライン5から分岐してろ過水槽3に接続する薬品添加逆洗ライン8が設けられている。即ち、この膜ろ過装置100では、例えば図4に薬品添加逆洗時の薬品添加逆洗水の流れを示すように、ろ過水ライン5の一部(膜ろ過ユニット2の二次側から分岐点Cまで)が含まれる薬品添加逆洗ライン8により、膜ろ過ユニット2の二次側とろ過水槽3とが接続されている。そして、薬品添加逆洗ライン8には、膜ろ過装置100の薬品添加逆洗(CEB)時に逆洗水槽として機能するろ過水槽3中のろ過水(逆洗水)を膜ろ過ユニット2の二次側へ供給するための薬品添加逆洗ポンプ81と、逆洗水に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加するための第1薬品ポンプ82および第1薬品弁83を備える第1薬品添加手段と、逆洗水に硫酸を添加するための第2薬品ポンプ84および第2薬品弁85を備える第2薬品添加手段と、逆洗水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液または硫酸とを混合するための混合器86と、薬品添加逆洗弁87とが設けられており、膜ろ過装置100では、これら薬品添加逆洗ライン8、薬品添加逆洗ポンプ81、第1薬品ポンプ82、第1薬品弁83、第2薬品ポンプ84、第2薬品弁85、混合器86および薬品添加逆洗弁87は、薬品を添加した逆洗水を膜ろ過ユニット2の二次側に供給する薬品添加逆洗手段として機能する。
【0027】
更に、膜ろ過装置100には、2本に分岐した被処理水供給ライン4の第1被処理水供給弁44と膜ろ過ユニット2の一次側との間の分岐点G、および、第2被処理水供給弁45と膜ろ過ユニット2の一次側との間の分岐点Hで被処理水供給ライン4からそれぞれ分岐して、接続点Iで結合し、排水処理設備(図示せず)に接続する逆洗水排出ライン9が設けられている。即ち、この膜ろ過装置100では、例えば図3に逆洗時の逆洗水の流れを示すように、被処理水供給ライン4の一部(分岐点G,Hから膜ろ過ユニット2の一次側まで)が含まれる逆洗水排出ライン9により、膜ろ過ユニット2の一次側と排水処理設備とが接続されている。そして、逆洗水排出ライン9には、接続点Iよりも分岐点G側に第1逆洗水排出弁91が設けられており、接続点Iよりも分岐点H側に第2逆洗水排出弁92が設けられている。
【0028】
<ろ過工程>
そして、上述したような構成を有する膜ろ過装置100では、開いている弁および作動しているポンプを黒塗りにして図1に示すように、例えば、第1被処理水供給弁44、第2被処理水供給弁45、第1膜ろ過ユニット弁51、第2膜ろ過ユニット弁52およびろ過水供給弁53のみを開くと共に、運転ポンプ41および凝集剤注入手段42を作動させることにより、被処理水槽1中の被処理水が被処理水供給ライン4を通って膜ろ過ユニット2のセラミック膜21でろ過される(ろ過工程)。ここで、このろ過工程では、被処理水に対して凝集剤注入手段42で凝集剤を添加し、混合器43で被処理水と凝集剤とを混合しているので、被処理水中に含まれている汚濁物質は、凝集剤により凝集して、セラミック膜21で被処理水から容易に分離除去される。なお、膜ろ過ユニット2で被処理水から汚濁物質を分離除去して得たろ過水は、ろ過水ライン5を通ってろ過水槽3に貯留される。因みに、使用する凝集剤の種類や量、被処理水のろ過流束などのろ過条件は、所望のろ過水水質に応じて適宜変更することができる。
【0029】
ここで、この膜ろ過装置100では、ろ過の継続に伴い、被処理水中に含まれていた汚濁物質などの目詰まり物質がセラミック膜21の孔22の表面に付着する。そのため、ろ過の継続に伴い、セラミック膜21が目詰まりして膜差圧(第1圧力計P1の指示値と第2圧力計P2の指示値との差)が上昇し、膜ろ過ユニット2のろ過性能が低下する。そこで、膜ろ過装置100では、所定時間毎、或いは、膜差圧が所定の値以上になった際に、以下のようにしてセラミック膜21を逆洗し、セラミック膜21に付着した目詰まり物質を除去する。
【0030】
<逆洗準備工程>
まず、逆洗水を膜ろ過ユニット2の二次側から一次側へ流してセラミック膜21を逆洗する前に、逆洗ポンプ61を用いてセラミック膜21に所定の圧力をかける。具体的には、開いている弁および作動しているポンプを黒塗りにして図2に示すように、例えば、第1膜ろ過ユニット弁51、第2膜ろ過ユニット弁52、逆洗水供給弁62、締切運転防止弁71および流量調整弁72のみを開くと共に、逆洗ポンプ61を作動させることにより、逆洗水槽として機能するろ過水槽3中のろ過水(逆洗水)を循環させながら、セラミック膜21に所定の圧力をかける(逆洗準備工程)。ここで、この逆洗準備工程では、逆洗水槽として機能するろ過水槽3から逆洗ポンプ61を用いて送出された逆洗水は、逆洗水供給ライン6の一部および締切運転防止用ライン7を通って循環するが、その際に、膜ろ過ユニット2の二次側に位置する第1膜ろ過ユニット弁51および第2膜ろ過ユニット弁52が開いており、膜ろ過ユニット2の一次側に位置する第1被処理水供給弁44、第2被処理水供給弁45、第1逆洗水排出弁91および第2逆洗水排出弁92が閉じているので、逆洗ポンプ61の吐出圧に略等しい圧力が膜ろ過ユニット2の二次側を介してセラミック膜21にかかることになる。なお、上記一例の逆洗準備工程では、第1膜ろ過ユニット弁51および第2膜ろ過ユニット弁52の双方を開いたが、本発明の逆洗方法の逆洗準備工程では、第1膜ろ過ユニット弁51および第2膜ろ過ユニット弁52の何れか一方のみを開いてセラミック膜21に圧力をかけても良い。
【0031】
ここで、逆洗準備工程においてセラミック膜21にかける圧力は、目詰まり物質の迅速且つ均一な初期剥離を実現するために有効な圧力、例えば、ろ過膜が破損しない範囲で、100kPa以上、好ましくは300kPa超とすることができ、更に好ましくは1000kPa以下、特に好ましくは500kPa以下とすることができる。なお、セラミック膜21にかける圧力は、例えば流量調整弁72の開度を手動または自動で変更し、逆洗ポンプ61の流量および吐出圧を調整することにより調整することができる。そして、膜ろ過装置100では、ろ過膜として耐圧性の高いセラミック膜を用いており、ろ過膜に対して比較的高い圧力をかけることができるので、後に説明する逆洗工程における目詰まり物質の剥離を十分なものとすることができる。
【0032】
<逆洗工程>
そして、逆洗準備工程の後に、ろ過膜に圧力をかけた状態からろ過膜の逆洗を行う。具体的には、開いている弁および作動しているポンプを黒塗りにして図3に示すように、例えば、第1膜ろ過ユニット弁51、第2膜ろ過ユニット弁52および逆洗水供給弁62を開いた状態(逆洗準備工程と同じ状態)のままにし、逆洗ポンプ61を作動させた状態(逆洗準備工程と同じ状態)にしたままで、締切運転防止弁71と、任意に流量調整弁72とを閉じると共に、第1逆洗水排出弁91および第2逆洗水排出弁92を開くことにより、セラミック膜21に対して均一に圧力をかけた状態から、逆洗水を膜ろ過ユニット2の二次側から一次側へ流して、セラミック膜21を例えば5〜30秒間逆洗する(逆洗工程)。ここで、この逆洗工程では、逆洗水槽として機能するろ過水槽3から逆洗ポンプ61を用いて送出された逆洗水が逆洗水供給ライン6を通って膜ろ過ユニット2の二次側へ流れ、セラミック膜21を透過して膜ろ過ユニット2の一次側へと流れた逆洗水は、逆洗水排出ライン9を通って適当な排水処理設備で処理される。なお、セラミック膜21に圧力をかけた状態から逆洗水を一気に流すという観点からは、逆洗水排出ライン9としては径の太い配管を用いることが好ましい。
【0033】
ここで、逆洗準備工程から逆洗工程への移行、即ち、締切運転防止弁71、流量調整弁72、第1逆洗水排出弁91および第2逆洗水排出弁92の開閉の切り替えは、例えば、第2圧力計P2の指示値が所定の圧力値となったタイミング、或いは、逆洗準備工程で逆洗ポンプ61を作動させて逆洗水を循環させ始めてから所定時間経過したタイミングで行うことができる。なお、各弁の開閉の切り替えは、自動または手動の何れで行っても良く、例えば、逆洗ポンプを締切運転する時間を可能な限り短くするという観点からは、制御装置を用いて瞬時に開閉を切り替えることができる。因みに、所定の圧力値は、前述した通り例えば100〜1000kPaとすることができ、所定時間は、ポンプが作動してからポンプの吐出圧が高まり、ポンプ変動が安定するまでに必要な時間、例えば5〜20秒とすることができる。
【0034】
なお、逆洗工程においては、逆洗水の流量や逆洗時間などの逆洗条件は、ろ過膜の目詰まり状態などに応じて適宜変更することができる。また、上記一例の逆洗工程では、第1膜ろ過ユニット弁51、第2膜ろ過ユニット弁52、第1逆洗水排出弁91および第2逆洗水排出弁92を全て開いて逆洗を行ったが、本発明の逆洗方法では、逆洗工程における弁の開き方は上記一例に限定されることは無く、例えば、第1膜ろ過ユニット弁51および第2逆洗水排出弁92を開き、第2膜ろ過ユニット弁52および第1逆洗水排出弁91を閉じて逆洗水を図3では左から右方向へ流通させても良いし、第2膜ろ過ユニット弁52および第1逆洗水排出弁91を開き、第1膜ろ過ユニット弁51および第2逆洗水排出弁92を閉じて逆洗水を図3では右から左方向へ流通させても良い。また、上記一例の逆洗工程では、締切運転防止弁71を閉じれば、流量調整弁72は閉じても閉じなくても良い。
【0035】
そして、このように、逆洗準備工程の後に逆洗工程を行えば、ろ過膜に対して均一にかかった圧力が逆洗開始時に一気に開放され、逆洗開始時に逆洗水が大流束で流れるので、逆洗水が流れ易くて目詰まり物質が剥離し易い場所のみに水道が形成されるのを抑制することができる。従って、目詰まり物質を十分に剥離することができる。また、逆洗準備工程で逆洗水を循環させれば、逆洗ポンプを締切運転する必要が無いと共に、ろ過膜にかかる圧力が所定の圧力に達するまでに大量のろ過水を消費する必要がない。更に、流量調整弁を用いれば、ろ過膜にかかる圧力を簡単に調整できる。なお、このような逆洗準備工程を用いた逆洗方法は、エア溜まりが発生するためにエアーブローを利用したろ過膜の逆洗が困難である場合、具体的にはセラミック膜21を横置きした場合等に特に好適に用いることができる。
【0036】
<薬品添加逆洗工程>
なお、本発明の逆洗方法では、任意に、逆洗準備工程の前に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液や硫酸を添加した逆洗水を用いてセラミック膜21を逆洗し、更に、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム水溶液や硫酸を添加した逆洗水中にセラミック膜21を浸漬しても良い。具体的には、開いている弁および作動しているポンプを黒塗りにして図4に示すように、例えば、第1膜ろ過ユニット弁51、第2膜ろ過ユニット弁52、第1薬品弁83または第2薬品弁85、薬品添加逆洗弁87、第1逆洗水排出弁91並びに第2逆洗水排出弁92のみを開くと共に、薬品添加逆洗ポンプ81と、第1薬品ポンプ82または第2薬品ポンプ84とを作動させることにより、逆洗水槽として機能するろ過水槽3中のろ過水(逆洗水)に次亜塩素酸ナトリウム水溶液または硫酸を添加した(図4では、第1薬品弁83を開き、第1薬品ポンプ82を作動させて次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加した場合を示す)薬品添加逆洗水を用いてセラミック膜21を逆洗し、その後、必要に応じて膜ろ過装置100の全ての弁を閉じると共に全てのポンプを停止させて、膜ろ過ユニット2中に満たされている薬品添加逆洗水中にセラミック膜21を例えば5〜120分浸漬する(薬品添加逆洗工程)。ここで、この薬品添加逆洗工程では、ろ過水槽3から薬品添加逆洗ライン8を通って膜ろ過ユニット2の二次側へ流れ、セラミック膜21を透過して膜ろ過ユニット2の一次側へ流れた薬品添加逆洗水は、逆洗水排出ライン9を通って適当な排水処理設備で処理される。
【0037】
なお、薬品添加逆洗工程においては、逆洗水に添加する薬品の種類や量、薬品添加逆洗水の流量、薬品添加逆洗時間などの薬品添加逆洗条件は、ろ過膜の目詰まり状態などに応じて適宜変更することができる。また、上記一例の薬品添加逆洗工程では、第1膜ろ過ユニット弁51、第2膜ろ過ユニット弁52、第1逆洗水排出弁91および第2逆洗水排出弁92を全て開いて薬品添加逆洗を行ったが、本発明の逆洗方法では、薬品添加逆洗工程における弁の開き方は上記一例に限定されることは無く、例えば、第1膜ろ過ユニット弁51および第2逆洗水排出弁92を開き、第2膜ろ過ユニット弁52および第1逆洗水排出弁91を閉じて薬品添加逆洗水を図4では左から右方向へ流通させても良いし、第2膜ろ過ユニット弁52および第1逆洗水排出弁91を開き、第1膜ろ過ユニット弁51および第2逆洗水排出弁92を閉じて薬品添加逆洗水を図4では右から左方向へ流通させても良い。このように、薬品添加逆洗水を一方向へ向かって流せば、ろ過膜全体を効率的に薬品添加逆洗することができる。更に、本発明の逆洗方法では、まず、第1膜ろ過ユニット弁51および第2逆洗水排出弁92を開き、第2膜ろ過ユニット弁52および第1逆洗水排出弁91を閉じて薬品添加逆洗水を図4では左から右方向へ流通させた後に、第2膜ろ過ユニット弁52および第1逆洗水排出弁91を開き、第1膜ろ過ユニット弁51および第2逆洗水排出弁92を閉じて薬品添加逆洗水を図4では右から左方向へ流通させて、ろ過膜を左右両方向から薬品添加逆洗しても良い。このように、薬品添加逆洗水を左右両方向へ交互に流せば、ろ過膜全体をより効率的に薬品添加逆洗することができる。
【0038】
ここで、膜ろ過装置100では、逆洗水供給ライン6と薬品添加逆洗ライン8とが別ラインとして設けられており、薬品添加逆洗ライン8の方が逆洗水供給ライン6よりも膜ろ過ユニット2側に設けられており、薬品添加逆洗水を流すラインと、逆洗準備工程でろ過水を循環させるラインとが重なっていないので、逆洗準備工程の前に薬品添加逆洗工程を行った場合であっても、逆洗準備工程においてろ過水槽3に循環して戻る逆洗水中に薬品添加逆洗工程で用いた薬品が混入する恐れが殆ど無い。従って、膜ろ過装置100では、ろ過水槽3の後段側に逆浸透膜ろ過装置などが設けられている場合であっても、ろ過水中への薬品の混入によって後段側の処理に悪影響が及ぶ可能性は非常に低い。
【0039】
そして、本発明の逆洗方法では、逆洗工程の前の逆洗準備工程でろ過膜に対して均一に圧力をかけているので、薬品添加逆洗工程の後に逆洗準備工程および逆洗工程を行う場合、即ち薬品添加逆洗により目詰まり物質が剥離し易くなっている状態のろ過膜に対して逆洗を行うような場合であっても、水道が形成されるのを抑制して、目詰まり物質を十分に剥離することができる。
【0040】
ここで、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法は、上述した膜ろ過装置100に限定されることなく、膜ろ過ユニットと、膜ろ過ユニットの一次側に逆洗水排出弁を介して接続された逆洗水排出ラインと、逆洗ポンプを介して膜ろ過ユニットの二次側および逆洗水槽を接続する逆洗水供給ラインとを備える全ての膜ろ過装置に適用することができる。
【0041】
具体的には、上記一例の膜ろ過装置100では、ろ過水ライン5の一部が逆洗水供給ライン6としても機能しているが、本発明に係る逆洗方法に従い逆洗する膜ろ過装置では、ろ過水ラインと逆洗水供給ラインとを完全に別々のラインにしても良い。また、ろ過水槽中のろ過水を逆洗水として用いることなく、別途逆洗水槽を設けても良い。
【0042】
また、上記一例の膜ろ過装置100では、ろ過水ライン5の一部が締切運転防止用ライン7としても機能しているが、本発明に係る逆洗方法に従い逆洗する膜ろ過装置では、ろ過水ラインと締切運転防止用ラインとを完全に別々のラインにしても良い。また、締切運転防止用ラインは、ろ過水槽と接続させることなく、排水処理設備等に接続させても良い。更に、逆洗ポンプとして締切運転可能なポンプを用いる場合には、逆洗準備工程で締切運転防止用ラインに逆洗水を流す必要が無いので、締切運転防止用ライン、締切運転防止弁および流量調整弁を設けなくても良い。
【0043】
更に、上記一例の膜ろ過装置100では、逆洗ポンプ61とは別に薬品添加逆洗ポンプ81を設けているが、本発明に係る逆洗方法に従い逆洗する膜ろ過装置では、逆洗水供給ライン上に第1薬品添加手段および第2薬品添加手段を設けて、逆洗水供給ラインが薬品添加逆洗ラインとしても機能するようにしても良い。
【0044】
また、上記一例の膜ろ過装置100では、被処理水供給ライン4の一部が逆洗水排出ライン9としても機能しているが、本発明に係る逆洗方法に従い逆洗する膜ろ過装置では、被処理水供給ラインと逆洗水排出ラインとを完全に別々のラインにしても良い。
【0045】
また、上記一例の膜ろ過装置100では、分岐点Cと分岐点Dとの間に弁を設けていないが、本発明に係る逆洗方法に従い逆洗する膜ろ過装置では、分岐点Cと分岐点Dとの間に開閉弁を設け、薬品添加逆洗工程において該開閉弁を閉じることにより、薬品添加逆洗工程で用いた薬品が、逆洗準備工程で循環させる逆洗水中に混入し、ろ過水槽3へ混入しないようにしてもよい。
【0046】
更に、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法は、複数の膜ろ過ユニットが配設されているような膜ろ過装置にも用いることができる。
【0047】
また、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法は、上述した一例に限定されることなく、適宜変更を加えることができる。具体的には、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法では、逆洗準備工程および逆洗工程の組合せを複数回繰り返して逆洗を行っても良く、例えば膜ろ過装置100で逆洗準備工程および逆洗工程の組合せを複数回繰り返す場合には、最初の逆洗工程では第1膜ろ過ユニット弁51および第2逆洗水排出弁92を開き、第2膜ろ過ユニット弁52および第1逆洗水排出弁91を閉じて逆洗水を図3では左から右方向へ流通させ、2回目の逆洗工程では第2膜ろ過ユニット弁52および第1逆洗水排出弁91を開き、第1膜ろ過ユニット弁51および第2逆洗水排出弁92を閉じて逆洗水を図3では右から左方向へ流通させることにより、ろ過膜を左右両方向へ向けて交互に逆洗することが好ましい。このように、逆洗水を左右両方向へ向けて交互に流せば、ろ過膜全体をより効率的に逆洗することができるからである。
【0048】
また、上記一例の逆洗準備工程では、締切運転防止用ライン7を設け、逆洗準備工程における逆洗ポンプの締切運転を回避したが、本発明の逆洗方法では、膜ろ過装置に、締切運転防止用ライン7、締切運転防止弁71および流量調整弁72を設けることなく、逆洗準備工程で逆洗ポンプ61を締切運転してセラミック膜21に圧力をかけても良い。
【0049】
更に、上記一例の逆洗準備工程では、流量調整弁72を設け、該流量調整弁72の開度を調整することにより逆洗ポンプ61の吐出圧を調整してセラミック膜21にかかる圧力を調整したが、本発明の逆洗方法の逆洗準備工程では、圧力調整手段としての流量調整弁72を設けることなく、締切運転防止弁71の開度を調整し、または、締切運転防止用ライン7の配管径を途中で変化させ、或いは、ポンプの性能(最大吐出圧)が所定圧力となるポンプを逆洗ポンプ61として用いることにより、セラミック膜21にかかる圧力を調整してもよい。即ち、本発明の逆洗方法では、締切運転防止弁を圧力調整手段として機能させても良いし、配管径を途中で変化させた締切運転防止用ラインを圧力調整手段として機能させても良いし、圧力調整手段を設けなくても良い。
【0050】
また、上記一例の逆洗準備工程では、逆洗水のみを用いてセラミック膜21に圧力をかけたが、本発明の逆洗方法の逆洗準備工程では、薬品を添加した逆洗水を用いてろ過膜に圧力をかけても良い。具体的には、上述した膜ろ過装置100において、逆洗水供給ライン6に薬品添加手段を設けると共に、締切運転防止用ライン7を排水処理設備に接続し、締切運転防止用ライン7を介して薬品添加逆洗水を排水処理設備に流しながらセラミック膜に圧力をかけることにより、或いは、分岐点Cと分岐点Dとの間または分岐点Cと膜ろ過ユニット2の二次側との間に薬品添加逆洗水排出弁を介して接続された薬品添加逆洗水排出ラインを設け、薬品添加逆洗水を薬品添加逆洗水排出ラインに流しながらセラミック膜21に圧力をかけることにより、薬品を添加した逆洗水を用いてセラミック膜21に圧力をかけても良い。なお、薬品添加逆洗水を用いてセラミック膜21に圧力をかける場合には、任意に、最初に少量の薬品添加逆洗水を膜ろ過ユニット2内に供給し、膜ろ過ユニット2内を薬品添加逆洗水で満たしてから、圧力をかけることが好ましい。また、コストを低減する観点からは、薬品添加逆洗水を用いてろ過膜に圧力をかける場合には、薬品添加逆洗水槽を設けて薬品添加逆洗水を循環させながらろ過膜に圧力をかけても良い。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
(実施例)
図1に示す膜ろ過装置100を下記の条件で運転して、被処理水としての海水を継続的にろ過した。なお、運転中は、薬品添加逆洗工程、並びに、逆洗準備工程および逆洗工程の組合せを下記に示す間隔で実施した。また、被処理水としては採取した海水に次亜塩素酸ナトリウムを添加したものを使用し、凝集剤としては塩化鉄を使用し、セラミック膜21としては孔径0.1μmのセラミック膜を使用し、薬品添加逆洗水としてはpH1.8の酸性溶液を使用した。
そして、第1圧力計P1および第2圧力計P2を用いて膜差圧の経時変化を測定した。結果を図6に示す。
<運転条件>
ろ過流束:3.0m/日
逆洗準備工程および逆洗工程の実施間隔:60分に1回
逆洗準備工程の所定圧力:305kPa
薬品添加逆洗工程の実施間隔:
・6時間に1回(運転開始から60時間経過まで)
・12時間に1回(運転開始後60時間から120時間経過まで)
薬品添加逆洗工程におけるろ過膜浸漬時間:5分
【0053】
(比較例)
逆洗準備工程において、第1膜ろ過ユニット弁51および第2膜ろ過ユニット弁52を開かなかった、即ち、逆洗準備工程ではセラミック膜に圧力をかけず、加圧した逆洗水を逆洗工程でセラミック膜に対して一気に接触させた以外は、実施例と同様にして海水を継続的にろ過した。
そして、第1圧力計P1および第2圧力計P2を用いて膜差圧の経時変化を測定した。結果を図6に示す。
【0054】
図6より、比較例では、ろ過の継続に伴い膜差圧が上昇しており、逆洗により目詰まり物質を十分に剥離できていないが、実施例では、ろ過を継続しても膜差圧が殆ど上昇しておらず、逆洗により目詰まり物質を十分に剥離できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の膜ろ過装置の逆洗方法によれば、逆洗時に目詰まり物質が剥離し易い場所のみに水道が形成されるのを抑制して、目詰まり物質を十分に剥離することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 被処理水槽
2 膜ろ過ユニット
3 ろ過水槽
4 被処理水供給ライン
5 ろ過水ライン
6 逆洗水供給ライン
7 締切運転防止用ライン
8 薬品添加逆洗ライン
9 逆洗水排出ライン
21 セラミック膜
22 孔
23 外表面
41 運転ポンプ
42 凝集剤注入手段
43 混合器
44 第1被処理水供給弁
45 第2被処理水供給弁
51 第1膜ろ過ユニット弁
52 第2膜ろ過ユニット弁
53 ろ過水供給弁
61 逆洗ポンプ
62 逆洗水供給弁
71 締切運転防止弁
72 流量調整弁
81 薬品添加逆洗ポンプ
82 第1薬品ポンプ
83 第1薬品弁
84 第2薬品ポンプ
85 第2薬品弁
86 混合器
87 薬品添加逆洗弁
91 第1逆洗水排出弁
92 第2逆洗水排出弁
100 膜ろ過装置
P1 第1圧力計
P2 第2圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過膜により一次側と二次側とに仕切られ、一次側に供給された被処理水をろ過膜でろ過してろ過水を二次側へ透過させる膜ろ過ユニットと、
前記膜ろ過ユニットの一次側に逆洗水排出弁を介して接続された逆洗水排出ラインと、
逆洗ポンプを介して前記膜ろ過ユニットの二次側および逆洗水槽を接続する逆洗水供給ラインと、
を備える膜ろ過装置を逆洗する方法であって、
前記逆洗水排出弁を閉じ、前記逆洗ポンプを作動させて、ろ過膜にかかる圧力を所定圧力に高める逆洗準備工程と、
前記逆洗準備工程で前記ろ過膜にかかる圧力が前記所定圧力となった後に、前記逆洗水排出弁を開いて、前記膜ろ過ユニットの二次側から一次側に逆洗水を流す逆洗工程と、
を含むことを特徴とする、膜ろ過装置の逆洗方法。
【請求項2】
前記膜ろ過装置が、前記膜ろ過ユニットの二次側および前記逆洗ポンプの間で前記逆洗水供給ラインに締切運転防止弁を介して接続され、且つ、前記逆洗準備工程でろ過膜にかかる圧力を調整する圧力調整手段を有する締切運転防止用ラインを更に備え、
前記逆洗準備工程では、前記逆洗水排出弁を閉じ、前記締切運転防止弁を開いた状態で、逆洗水を締切運転防止用ラインに流しつつ、ろ過膜にかかる圧力を所定圧力に高め、
前記逆洗工程では、前記逆洗水排出弁を開くと共に前記締切運転防止弁を閉じて、前記膜ろ過ユニットの二次側から一次側に逆洗水を流すことを特徴とする、請求項1に記載の膜ろ過装置の逆洗方法。
【請求項3】
前記締切運転防止用ラインが、前記逆洗水槽に接続されており、
前記逆洗準備工程で、前記ろ過膜に圧力をかけながら前記逆洗水槽中の逆洗水を循環させることを特徴とする、請求項2に記載の膜ろ過装置の逆洗方法。
【請求項4】
前記圧力調整手段が、流量調整弁であることを特徴とする、請求項2または3に記載の膜ろ過装置の逆洗方法。
【請求項5】
前記ろ過膜がセラミック製のろ過膜であり、
前記所定圧力が、300kPa超であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の膜ろ過装置の逆洗方法。
【請求項6】
前記膜ろ過装置が、薬品を添加した逆洗水を前記膜ろ過ユニットの二次側に供給する薬品添加逆洗手段を更に備え、
前記逆洗準備工程より前に、前記薬品添加逆洗手段を用いて膜ろ過装置の薬品添加逆洗を行う薬品添加逆洗工程を含むことを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の膜ろ過装置の逆洗方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−183320(P2011−183320A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52207(P2010−52207)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】