説明

膜デバイス

【課題】 マイクロ化学チップとして用いられる膜デバイスにおいて、基板で厚い分離膜を挟み込もうとするときに、膜厚に起因して、接合ができないか、接合後も膜周辺部に空隙の形成がみられるという問題を解決すること。
【解決手段】 膜デバイスは、少なくとも1枚に凹部が形成された面を有する複数の基材と外部で作成した分離膜とを接合して得られる膜デバイスであって、該分離膜は分離膜の側部および一方の面の一部で、該基材のうちの1枚によって保持され、少なくとも保持された分離膜周辺部で分離膜および基材の接合面側を同一面としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜分離機構を有するマイクロ化学チップに関し、特に外部で作成した膜を2枚以上の基板によって挟み込む方式であって、その接合条件を穏和にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ化学チップは化学、生化学における分析、生産、制御のための種々の単位操作や反応を微細加工されたチップや配管材料を用いて行うものである。とくに分析分野では開発が進んでおり、典型的には10センチから数センチ角程度以下のガラス、シリコン、あるいは樹脂製のチップ表面に溝を刻んで、その溝中に試薬溶液や検体を流して、分離、反応を行って、微量試料の分析を行っている。一つのチップに一つ、あるいは複数の機能部位が形成されることによって、これらの操作や工程を実現している(たとえば特許文献1,2,3,あるいは非特許文献1を参照。)。
【0003】
膜分離技術は重要な単位操作であり、多孔性の薄膜隔壁構造を設けることで、主として対象物の大きさによって透過の有無が決定し、不純物の除去、有用物の濃縮・希釈を行うことができ、またさらに膜構造を触媒担体、あるいは反応液界面とすることで反応の場に用いることができる。すでに種々の用途に合わせて広範囲な分離膜が開発、市販され、その厚みはおおむね数マイクロメートルから1ミリメートルの範囲である。
【0004】
すでにマイクロ化学チップにおいても分離膜の組み込みが行われている。チップの外側に貼り付ける方式(たとえば特許文献4)、樹脂製チップの形成時に組み込む方式(たとえば特許文献5、あるいは非特許文献2)、凹部を加工した後の一方の基板上で膜を形成してもう一方の基板と挟み込む方式(たとえば非特許文献3)、形成後のマイクロ流路中で膜を形成する方式(たとえば特許文献8、非特許文献4、5)、接着剤を利用する方式(たとえば特許文献6、7、8、9)、分離膜を単純に挟み込む方式(たとえば特許文献6、非特許文献6,7)などがある。
【0005】
【特許文献1】特開平2−245655号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平3−226666号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8−233778号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平8−114539号公報 (請求項15)
【特許文献5】特開2000−202916号公報 (請求項13,14)
【特許文献6】特開2000−237552号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2000−237556号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献8】特開2000−262871号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献9】特開2003−334056号公報 (特許請求の範囲)
【非特許文献1】「アナリティカルケミストリー(Analytical Chemistry)」、(アメリカ合衆国)、アメリカ化学会、1997年、第69巻、pp.2626−2630
【非特許文献2】第7回化学とマイクロ・ナノシステム研究会講演要旨集、化学とマイクロ・ナノシステム研究会、2003年、p.66
【非特許文献3】静電気学会講演論文集'00、静電気学会、2000年、pp.123−126
【非特許文献4】「アナリティカルケミストリー(Analytical Chemistry)」、(アメリカ合衆国)、アメリカ化学会、2003年、第75巻、pp.350−354
【非特許文献5】「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)」、(アメリカ合衆国)、アメリカ化学会、2002年、第124巻、pp.5284−5285
【非特許文献6】「アナリティカルケミストリー(Analytical Chemistry)」、(アメリカ合衆国)、アメリカ化学会、1998年、第70巻、pp.3553−3556
【非特許文献7】「アナリティカルケミストリー(Analytical Chemistry)」、(アメリカ合衆国)、アメリカ化学会、2003年、第75巻、pp.2224−2230
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チップ外部で作成した膜は、チップ内部で製膜を行う方式と比較して非常に製膜の自由度が高く、かつ広範囲な技術の蓄積がある。特許文献9にあるように一方の基板の凹部を膜分離の原液側とろ液側に分けるように接着剤を用いて膜を配置することは、微小デバイスにあっては困難な手法であり、生産性を上げることができず好ましくない。2枚の基板で単純に挟み込む方式は、これらの外部作成膜を利用することができる。またさらに、少なくとも一方に微小な凹部を形成した基板を接合するという、マイクロ化学チップの製法として最も一般的な手法に準じており、他の機能部位との集積化には最も適当な方法である。
【0007】
しかしながら、単純に膜を挟み込む方式では、チップの凹部全体を覆うように膜を貼るか、非常に薄い膜と柔らかい基材を組み合わせるしかない。このため、前者では分離膜の膜面方向の漏れを抑えることができず、後者ではマイクロ化学チップで一般的なガラスや樹脂などの堅い材料と一般的な分離膜を組み合わせることができなかった。すなわち第1の課題は、基板で厚い分離膜を挟み込もうとするときに、膜厚に起因して、接合ができないか、接合後も膜周辺部に空隙の形成がみられるという問題を解決することである。
【0008】
第2の課題は、膜に面して形成されるべき空隙が、マイクロ化学チップではしばしば薄い構造であるために起こりやすい膜の変形による空間のつぶれを起こさないようにすることである。変形の要因には接合時のひずみや、分離膜として使用時の圧力差などによる。
【0009】
第3の課題は、膜の両側に空間を形成するために、挟み込む両側の基材に凹部を形成しておくのであるが、この膜の分離効率を保つために要求される凹部の厳密な位置合わせを解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、第1の課題に対しては基板に分離膜の厚さに相当する段差構造を形成することによって分離膜の厚さを吸収し、漏れのない挟み込みを行うことができることを見いだした。
【0011】
さらに、膜の周囲を膜と同じ厚みの別基材で保持することによっても同様の効果が得られることがわかった。
【0012】
またさらに、この膜の両側にある槽の一方を膜の内側(膜面に垂直な方向から見て内側)のみに限定するか、膜の周辺部を強く抑えるか溶剤でつぶすことで、膜の周辺部で起こりがちな漏れによる問題を回避できることがわかった。
【0013】
第2の課題に対し、支持構造体を形成することが有効であることを見出し、折り畳み流路形状をとることで、気泡の滞留を容易に抑制できることを見出した。
【0014】
また、第3の課題に対し、一方を他方より余白を持って十分大きくとるか、折り畳み流路を直交させることによって位置合わせのずれによっても膜面の大きな変化を誘起しない構造とできることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
即ち、本発明は以下のような構成をとる。
(1)少なくとも1枚に凹部が形成された面を有する複数の基材と外部で作成した分離膜とを接合して得られる膜デバイスであって、該分離膜は分離膜の側部および一方の面の一部で、該基材のうちの1枚によって保持され、少なくとも保持された分離膜周辺部で分離膜および基材の接合面側を同一面としたことを特徴とする膜デバイス。
【0016】
(2)少なくとも1枚に凹部が形成された面を有する複数の基材と外部で作成した分離膜とを接合して得られる膜デバイスであって、分離膜を挟み込む基材のうち一方あるいは両方の基材の該分離膜配置位置に、該分離膜の厚さに相当する凹部を設けた後に接合工程を行うことを特徴とする膜デバイス。
【0017】
(3)少なくとも1枚に凹部が形成された面を有する複数の基材と外部で作成した分離膜とを接合して得られる膜デバイスであって、該分離膜が周囲を別部材によって保持されており、少なくとも該分離膜周辺部で該分離膜と該保持部材とが同じ厚みであることを特徴とする膜デバイス。
【0018】
(4)該分離膜を挟み込む2つの基材の少なくとも一方の基材の膜挟み込み面側において、該分離膜配置位置の内側(膜面に垂直な方向から見て内側、文脈上明らかにそうでない場合を除き以下同じ)の一部で該基材と該分離膜が接触しないように凹部が形成されており、該凹部の面方向形状が、分離膜よりも内側のみに形成されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の膜デバイス。
【0019】
(5)該分離膜を挟み込む両方の基材の膜挟み込み面側において、該分離膜配置位置の内側の一部で該基材と該分離膜が接触せず、かつ膜分離の上流側あるいは下流側槽として用いる凹部が形成されており、一方の基材に形成された槽として用いる該凹部の面方向形状が、他方の基材に形成された槽として用いる該凹部よりも、面に垂直な方から見て内側に形成されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の膜デバイス。
【0020】
(6)該分離膜が周辺部で透過性が中央部よりも少ないか、ないことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の膜デバイス。
【0021】
(7)該分離膜を挟み込む2つの基材の少なくとも一方の基材の膜挟み込み面側において、該分離膜配置位置の内側の一部で該基材と該分離膜が接触しないように凹部が形成されており、該凹部の面方向形状が、内側に凸な形状を有するか、内側に島形状を有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の膜デバイス。
【0022】
(8)該凹部の面方向形状が折り畳んだ線形状であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の膜デバイス。
【0023】
(9)該分離膜を挟み込む2つの基材の両方に、該凹部が形成され、該凹部の面方向形状が折り畳んだ線形状を有し、かつ2つの基材に形成された線形状の凹部の線方向が面に垂直な方向から見て交わる方向に形成されていることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の膜デバイス。
【発明の効果】
【0024】
本発明を採用することにより、基板で厚い分離膜を挟み込もうとするときに、膜厚によらず、接合ができ、接合後も膜周辺部に空隙の形成がみられなくなる。特に、接合後に一方の膜面と接合面を同一面とすることで、膜厚による空隙をなくすことができる。
【0025】
基材に分離膜の厚さに相当する凹部を設けることによって膜厚による接合後の空隙をなくすことができる。
【0026】
あるいは分離膜の厚さに相当する部材によって膜を取り囲むようにして挟み込むことでも接合後の空隙をなくすことができる。
【0027】
このように空隙をなくすことができることによって、マイクロ化学チップに適切に膜を組み込むことができるようになり、液漏れを起こさずに適切な加圧、送液、および膜分離ができるようになる。
【0028】
周辺部で透過性が少ないかない膜を採用することで、周辺方向への液漏れをより抑制することができる。
【0029】
また、膜に面して形成されるべき空隙が、マイクロ化学チップではしばしば薄い構造であるが、膜の変形によっても空間をつぶすことなく、また、通液時に気泡の除去が容易になる。
【0030】
一方の槽を膜の内側だけに形成することによって、膜側部に残りがちなギャップの影響を避けることができる。
【0031】
槽の構造は内側に凸な形状か、あるいは内側に島形状を形成することでこれらが膜の支持構造体となり、チップ作製後のひずみや膜分離のための加圧などによっても槽をつぶしてしまわないようにすることができる。
【0032】
またこの構造は、線形状とすることで、混入しがちな気泡を適切に除去しながら、あるいは試薬セグメントの前後の拡散を抑えながら送液することができる。
【0033】
さらに、一方の槽を他方の槽よりも余白を持って内側に形成することで余白分の位置合わせ誤差を吸収することができるようになる。あるいは折り畳んだ線形状を交わるように配置することで、位置合わせ誤差が起こっても膜の有効面積をほとんど変化させないことができる。
【0034】
このように本発明によって、漏れを起こさず、かつ厳密な位置合わせを要求せずにチップの一部のみに外部で作成した種々の膜を導入したマイクロ化学チップを提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明における分離膜(以下、膜)とは、厚みに比べて大きい面を持ち、各種の推進力によりそれを通した物質移動がおこりえる構造体をいう。液体か気体かによらず流体を対象とする。膜の分離モードには一般ろ過、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透、拡散透析、電気透析、ガス分離、蒸気透過、浸透気化など様々なモードが考えられるがこれに限定されるものではない。流体の流れ方向はデッドエンドとクロスフローの両方を対象とするが、これに限定されるものではない。膜の形状は大別して平膜、中空糸膜、カプセル型があるが、本発明では平膜のみを対象とし、中空糸膜およびカプセル型は対象とならない。膜の利用目的は、マイクロ化学チップ内で不要物の除去、有用物の濃縮・捕捉を行うほか、組み込み前に有用物を塗布、あるいは捕捉させた膜を組み込むことでマイクロ化学チップに分離以外を含めた機能付与を行うことが挙げられる。有用物には無機触媒、有機触媒、酵素、細胞、色素、環境試料中の膜不透過成分、体液中の膜不透過成分等が挙げられるが、これに限定されるものではない。このため本発明における膜デバイスは、分離以外の目的に用いることができる。また、このため本発明における膜は、必ずしも組み込み後の、その両側に空間が設けられる必要はない。
【0036】
膜の厚さは任意であるが好ましくは1マイクロメートル以上で、より好ましくは10マイクロメートル以上かつ3ミリメートル以下である。単独で1マイクロメートル以下の厚さの膜は強度が弱く、作成後接合工程へ持ち込むための取り扱いが困難であるからで、10マイクロメートル以下の厚さの膜は、本発明の方式によらずとも良好な挟み込みが実施できる。また3ミリメートル以上の厚さの膜は微小なデバイス化に適さないからである。
【0037】
膜の材料には既存の膜に用いられている種々の材料を用いることができる。セルロース、再生セルロース、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、硝酸セルロース、その他セルロース誘導体、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、その他ポリメタクリル酸誘導体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、これらの共重合体、その他合成樹脂、ガラス、ゼオライト、その他セラミックス、金属類およびこれらの組み合わせがあるがこれに限定されない。また、これらの膜表面を物理的、化学的、生物的に処理した膜、支持体と組み合わせた膜などがある。本発明は外部で作成した膜を、その膜厚によらず穏和に微細構造体に組み込む方法であり、膜厚差をあらかじめ加工する凹部と圧力、熱、化学的な変化により補って漏れを起こさない構造とするものであるからである。
【0038】
本発明における外部で作成した分離膜とは、組み込み後の膜と接触することになる基材と接触させることなく作成された分離膜を指す。たとえば特許文献8、非特許文献3、4、5は分離膜が最終的に組み込まれる基材と接触した状態で作成される。これに対したとえば非特許文献6、7は基材と無関係な場所で作成された後に組み込まれている。膜を外部で作成することは、チップ内部で製膜を行う方式と比較して非常に製膜の自由度が高く、かつ広範囲な技術の蓄積がある。
【0039】
膜の側部とは、膜面と同じ大きさの2枚の板材で膜を挟んだとした場合、側面に露出する膜の部分と、その極近傍を指す。良好に切り出された膜では膜の側面のことであるが、面をなしているかどうかは問題としない。
【0040】
本発明の膜デバイスはマイクロフルイディクス型のマイクロ化学チップである。一般的なマイクロフルイディクス型のマイクロ化学チップは凹部を形成した板状の基材を別基材と接合して作製される。基材はシート状、板状、フィルム状、棒状、管状、塗膜状、円筒状、その他複雑な形状の成形物をとりうるが、これに限定されるものではない。しかし加工性および取り扱いの容易さから、好ましくはシート状、板状、フィルム状である。基材には、ガラス、セラミックス、樹脂、金属、半導体およびこれらの組み合わせが考えられるが、これに限定されるものではない。
【0041】
本発明における面方向の面とは接合面を指す。複雑な接合面を有する組み合わせにあっては、対象となる局所的な接合面を指す。
【0042】
本発明における凹部とは、典型的なマイクロ化学チップに見られる、接合後に流体を導入することになる空間を形成する凹部と、膜を組み込むための凹部との2種類があるが、これ以外の目的に用いられる凹部が形成されていることを妨げるものではない。接合後に流体を導入することになる凹部は、分割できない1つの基材が有する凹部として構成されているか、貫通穴形状を有する基材と別基材とを組み合わせて構成されるものがある。膜からみて一方の側の基材のみに凹部を形成しておき、流体の充填による変形を利用してもう一方の側に槽を形成することもできるが、膜分離機能を用いる場合、好ましくは両方の基材に凹部が形成されている。貫通穴形状を有する基材と別基材の組み合わせとは、たとえば図1に示すスペーサを用いる様態である。図1中、右側の図が分解斜視図であり、2が基材、3がスペーサー、4がスペーサー3内に形成された貫通穴である。基材2とスペーサー3とを積層したものが図1中の左側の図であり、スペーサー3内の貫通穴が基材に設けられる凹部として機能する。
【0043】
凹部、あるいは貫通穴形状を得るには、射出成形、ホットエンボシング、溶剤キャスト法、切削、エッチング、打ち抜き、フォトリソグラフィー、リフトオフ、蒸着、およびこれらの組み合わせなどを手段とできるが、これに限定されるものではない。
【0044】
マイクロ化学チップの典型的な、接合後流体を導入することになる空間を形成する凹部は、好ましくは基材に垂直な方向から見て幅1から500マイクロメートルの線形状と、100平方センチメートル以下の幾何学形状の組み合わせで、深さ1から500マイクロメートルであるが、これに限定されるものではない。典型的に線形状は接合後、管形状となり、流路として用いられ、その他の幾何学形状は特定の機能付与のため空間や別部材導入の空間に用いられる。流路として用いる部分については幅あるいは深さが1マイクロメートルを下回ると流路としての圧力損失が大きくなるため不適当で、深さや幅が500マイクロメートルを上回る場合および、部分的な幾何学形状が100平方センチメートルを上回る場合は、微小デバイスとしての全体のサイズに不適当であるからである。また、凹部形成のための貫通穴形状を有する基材は、少なくとも貫通穴周辺部で厚さが500マイクロメートル以下であることが好ましい。貫通穴を有する基材の厚みが、接合後流体を導入することになる空間の深さ方向寸法を規定することとなるためである。ただし、これらの寸法は接合面で面方向に流す流路以外の空間の寸法を規定するものではない。たとえば典型的な試料導入穴は、500マイクロメートルを上回る板厚に貫通穴が形成される形で形成され、反応槽や電気泳動槽などにあっては幅が10ミリメートルを上回って形成されてもよい。
【0045】
膜を組み込むための凹部は組み込まれる膜よりも面方向に大きく、膜厚に相当する深さを有する。好ましくは膜を組み込むための凹部の内側に、流体のための空間となる凹部が形成される。
【0046】
マイクロ化学チップは複数の基材の接合によって形成される。本発明は2枚以上の基材によって膜を挟む方式を対象としており、マイクロ化学チップ全体の基材枚数は2枚に限定されない。
【0047】
本発明における接合とは、複数の基材を重ね合わせ、必要であれば凹部から流体の漏れを起こさないようにする手法を指す。より具体的には、単純な重ね合わせ、プラズマ処理などによる表面活性化、加熱を伴う方法、圧力を印加する方法、電場を印加する方法、接着剤を用いる方法、溶剤を用いる方法、およびこれらの組み合わせがある。好ましくは、膜の耐熱温度より30℃を上回らない温度で実施する。耐熱温度より30℃以上加熱すると、輻射熱や接合面から伝熱により膜が耐熱温度以上になり膜の機能を失うからである。不可逆に接合するだけでなく、使用時に治具により押さえつける加圧方式によって接合を行うこともできる。
【0048】
本発明における複数の基材とは2つ以上を指す。マイクロ化学チップではすでに2〜10枚程度の積層によるデバイスが報告され、数百から数千枚の組み合わせによるスループット向上が提唱されている。組み込まれる膜との一方の接合面部分で面方向に複数の基材を組み合わせることができるが、構造の簡略化や漏れの抑制の観点からそれぞれ一つの基材で構成されていることが好ましい。このため少なくとも2つの基材が必要である。ただし、組み込まれる膜近傍以外、あるいは膜組み込み面以外で別基材と組み合わせることを妨げるものではない。出願時請求項3にあっては、膜を保持するための別部材が必要であるため、該別部材を含めて数えると、好ましくは3つ以上である。
【0049】
本発明における同一面、相当する厚み、あるいは同じ厚みとは、別途膜に対する加圧試験、および基材の接合試験によってあらかじめ知ることのできる接合後の変形量を加味した面の位置や厚さが、比較対象となる膜と基材、あるいは部材との間で10マイクロメートル以下であることを指す。10マイクロメートル以下の厚さの膜は、本発明の方式によらずとも液密な接合ができるからである。
【0050】
本発明における保持とは、その方向に膜が移動できないように部材が設置されている状態を指す。膜面の一部で基材が膜を保持することとは、該基材が置かれる側の膜の一部に接触するように基材が配置されていることを指し、膜の側部を保持することとは、膜周囲から、膜から遠ざかる方向の同一面に基材を設置することを指す。
【0051】
膜は面方向に性質の均質なものを用いることも、周辺部の透過性が中央部よりも少ないかないものを用いることもできる。周辺部の透過性が中央部よりも少ないかない膜は面方向の液漏れを抑制する効果があるので好ましい。周辺部の透過性が中央部よりも少ないかない膜は異なる種類の膜材を組み合わせたもの、透過性が異なるように製膜されたもの、もともと面方向に均質であった膜が物理的、化学的作用によって透過性を減ずるか失ったもの、およびこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。
【0052】
本発明における基材に形成された槽として用いる凹部とは、接合後に流体を導入することになる空間を形成する凹部のうち、膜を配置する位置にあり、かつ屈曲させるか、あるいは凹部が同一面の他の凹部と比べて幅広か深い部分を指す。たとえば非特許文献6、7では膜分離が同一面の他の凹部と比べで同一の形状である凹部に膜が配置されており、本発明においても同様の流路パターンを用いることができる。しかし、積極的に槽として用いる場合には、膜分離は膜面で起こるため、分離に十分な膜面積を得るために、膜分離の上流側槽、および下流側槽部分の面方向パターンは、そのマイクロ化学チップに特徴的な流路の幅よりも幅広であるか、流路を折り返すことによって広い膜分離領域を形成するように設計することが好ましい。たとえば図2の様態をなす。すなわち、図2は、基材の面に垂直な方向から見た場合の、凹部の形状を示しており、図2中の3つの図(ハッチングを付されたもの)が、それぞれ異なる形状の凹部を示している。図2の左側の図は、線形の流路の端部に大きな円形の凹部が形成されたものであり、この円形の凹部が槽として機能する。すなわち、この例は、槽として機能する凹部が流路の幅よりも幅広である例である。図2の中央及び右側の図は、流路として機能する凹部を、折り畳んだ線形状で構成した例であり、中央の流路形状5は櫛形、右側の流路形状6は単純な折り畳み形状である。
【0053】
本発明における、一方の基材に形成された槽として用いる該凹部の面方向形状が、他方の基材に形成された槽として用いる該凹部よりも、面に垂直な方から見て十分内側に形成されていることとは、面に垂直な方から見て、基材に形成された槽として用いる凹部を覆うことのできる最小の面積の、外側にのみ凸な形状を考えるとき、一方の基材の該凸な形状が、もう一方の基材の該凸な形状に内包されることをいう。換言すれば、基材の表面に垂直な方向から見た場合に、一方の基材の凹部が、他方の基材の凹部の内側にすっぽりと入っていることを意味する。こうすることによって、膜分離の分離に寄与する膜面積は該凸な形状が小さい側の槽として用いる凹部によって規定されることとなる。2つ、あるいはそれ以上の基材の位置合わせを行う上で、2つの凸な形状の差により余白部分が形成され、該余白部分によって位置合わせ誤差を吸収することができる。よって余白部分を形成することとなる大きい側と小さい側の差が好ましくは1マイクロメートルから10ミリメートルである。1マイクロメートルを下回ると位置合わせ誤差を吸収する構造として意味をなさないし、10ミリメートルを超えると微小デバイスとして不適当であるからである。より好ましくは0.5ミリメートル以下である。チップ面積の有効利用という観点からは、本来の膜分離に寄与しない該差部分は少ない方が好ましく、位置合わせ精度は多くの工法において、0.5ミリメートル以下の精度を有するからである。チップ内の他部位との接続のための流路などのように、槽として用いるのではない凹部である構造体部分は、該凸な形状を考える上で、考慮に入れない。膜の有効面積を考慮する上で不要であるし、膜と接触する部分があるにせよ一般に接続流路は狭隘な線形状をとるので、位置合わせ誤差による影響が元来小さいからである。
【0054】
一方、非特許文献6では、分離膜を挟み込む2つの基材の両方に折りたたんだ線形状を形成する手法が示されており、2つの線形状は面に垂直な方向から見て中心線を共有するように設計されている。しかし、逆に、分離膜を挟み込む2つの基材の両方が図3に示すような凹部の面方向形状が折り畳んだ線形状であり、かつその線方向が面に垂直な方向から見て交わるように設計すれば、位置合わせ誤差が生じても膜の分離に有効な部分9は平行に移動するだけであり、その面積は変化しない。すなわち、図3は、基材に形成される線形上の凹部(流路)を示す図であり、図3の左側の図は、一方の基材に設けられる凹部の形状(上板流路パターン7)、右側の図は、他方の基材に設けられる凹部の形状(下板流路パターン8)を示す。「凹部の線方向」は、線形の凹部が形成されている主な方向であり、図3の左側の図の形状では紙面の横(水平)方向、図3の右側の図の形状では紙面の縦(垂直)方向が「凹部の線方向」である。従って、図3に示す例では、線形状の凹部の線方向が面に垂直な方向から見て交わる方向(この場合は特に直交する方向)に形成されている。図3中の9は、基材の表面に垂直な方向から見た場合に、各基材に形成された凹部同士が交差する(重なる)領域を示しており、この部分に設けられる膜が分離膜として機能する。図から明らかなように、基板同士の重ね合わせ位置が少々ずれても、分離膜として有効な領域9(重なり領域)は、平行に移動するだけでその面積は変わらない。
【0055】
本発明における「内側に凸な形状を有する」とは、形状の外周が少なくとも一部で内側に凸な形状を有することを意味する。たとえば図4の様態をなす。すなわち、図4は、基材の表面に垂直な方向から見た、凹部の形状の例を示す図であり、3つの例が記載されている。ハッチングを付している部分が凹部である。中央の6は単純な折り畳んだ線形状の例であり、右側の10はらせん型の例である。図4中、11が「内側に凸な形状」であり、この部分には凹部は形成されていない。その凸部の大きさは、好ましくは膜分離を起こす領域について、内接する円の直径の最大値が、外接円の直径の5割未満の寸法である。この凸部によって膜が槽をつぶすことを抑制するためには領域に対し、十分な大きさの凸部が必要であるが、内側に凸な形状を持たない形状である正三角形においても内接円と外接円の比が5割であるからである。
【0056】
本発明における内側に島形状を有する、とは、凹部の内側の一部が凹部となっておらず、かつ外側と連続していない状態をさす。たとえば図5の様態をなす。すなわち、図5は、基材の表面に垂直な方向から見た、凹部の形状の例を示す図であり、3つの例が記載されている。ハッチングを付している部分が凹部である。図5中、12が凹部の内側に形成される「島形状」であり、この部分は凹部になっていない。このような島形状を設けることにより膜を支持することができ、膜が槽をつぶすことを抑制し、デバイスの耐圧性を高めることに寄与する。
【0057】
しかし、内側に凸な形状や内側での島形状部分では膜分離が行われないため、組み込まれる膜の面積や、チップ中の膜組み込みに必要な面積を有効に利用する観点では、これらの面積は少ないことが好ましい。
【0058】
本発明において折り畳んだ線形状とは、他の流路を形成することとなる線形状パターンと同等の線幅を有し、図2の5、6、図4の6、10に例示するように、単純な折り畳み、らせん、櫛型、あるいはこれらの組み合わせによって、流路幅よりも有意に幅広な領域を線形状によって網羅する形状を指す。好ましくは単純な折り畳み、あるいは櫛型であり、より好ましくは、デッドエンド型にあっては櫛形あるいは櫛形構造に見られる分岐構造をより多重に有する形状、セグメントを形成する試料を用いるフロースルー型にあっては分岐構造のない単純折り畳み型あるいはらせん型である。櫛形は他の形状に比べより圧力損失が小さく、単純折り畳み型およびらせん型は分岐構造がないため試料の流れ方向分散を抑制できるからである。
【0059】
図6は出願時請求項1、あるいはこれに従属する請求項における、接合後に膜が組み込まれたマイクロ化学チップの基材表面に垂直な断面である。上部基材13の接合面と、組み込まれた膜15の下面が同一面を形成していることが特徴である。14は下部基材、16、17は、それぞれ各基材に設けられた、槽として機能する凹部である。この実施のためにはあらかじめ図14に示すようにこれら2つの面を、接合以前に合わせておくことが望ましい。ただしあらかじめ膜に対する加圧試験、および基材の接合試験によって知ることのできる接合後の基材や膜厚の変化量を加味した面の位置のずれはあってもよい。膜を透過する流体は、多くの場合、膜の面方向にも透過するので、膜の側部から液漏れが起こらないように措置することは重要である。本発明における側部の保持は、膜の面方向に壁構造が形成されることを指しており、側部と基材が接触する必要はなく、図7に示す膜と壁構造とのギャップ18があってもよい。
【0060】
しかし、ギャップ18が膜の全周囲に存在する場合、膜の両側の接合面内おける流路となる凹部パターンがいずれも膜の外側からつながっていると、上流と下流が膜を透過せずにギャップを通じて連結されるため、分離膜を挟み込む2つの基材の少なくとも一方の基材の膜挟み込み面側において、該分離膜配置位置の内側の一部で該基材と該分離膜が接触しないように凹部を形成し、該凹部の面方向形状を分離膜よりも内側のみに形成することが好ましい。ただし、接合面以外の面を利用した多層構造の流路によって、膜側部を越えることや、接合面内では連結されていない別の流路パターンを膜の外側に形成することはできる。
【0061】
これら膜面と基材面を合わせることは、基材の微細加工、溶剤などの化学試薬の添加や熱による膜や基材の変形や固溶、および研磨などによって行うことができるがこれに限られるものではない。
【0062】
しかし、好ましくは図8に示すように、膜厚に相当する凹部19をあらかじめ接合前に基材に加工しておくか、図9に示すように膜厚に相当する部材20によって周辺部を保持する。これにより熱変形量や固溶量などによらず、厚い膜であっても漏れを生じないように挟み込むことができるからである。より好ましくは図10に示すように、一方の基材のみに膜を収容する凹部19を加工する。基材の加工がどちらか一方ですむことはコスト低減につながるからである。
【0063】
以下に、実施例を用いて本発明の効果をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0064】
図11は作製した膜デバイスの上板1回目用フォトマスクパターン、図12、13は上板2回目用、および下板用フォトマスクのチップ部分のみのパターンである。これらのマスクのパターン21、22、24を用いて、マイクロ化学チップのPDMSチップ作製法として一般的な方法に従って、PDMSチップを作製した。ただし、上板については1回目の露光工程の後、ポストエクスポージャーベイク工程を行わず再び同じSU−8をスピンコートし、プリベイクの後、2回目用マスクで露光し、ポストエクスポージャーベイクを行ってから現像工程を行った。1回目のスピンコートの回転数については、あらかじめフォトレジストのデータシート、および種々の回転数での事前検討により、約100マイクロメートル厚となる回転数を明らかにしておき実施した。PDMSでパターンを転写した後、上板の内部構造無しパターン9の試料導入口、および排出位置に貫通穴を開けた後、FEPチューブを固定した。ろ過膜(GHポリプロ、膜厚約110μm、ポール社)を上板1回目のパターンの大きさをわずかに下回るように切り取り、挟み込み用の膜とした。作製した上板および下板の接合面を酸素プラズマ処理機(PDC210,ヤマト社)で100W,30秒間処理し、膜を挟み込みながら重ね合わせた。この結果、膜厚に基づく浮き上がりのない接合を行うことができた。また、パターン22によって形成された上流側の槽が、パターン24で形成された下流側の槽よりも、面に垂直な方向から見て十分小さく、容易に内側へ配置することができた。試料排出口をシリンジポンプ(モデル210、KDサイエンティフィック社)に接続し、試料導入口側のFEPチューブを直径2マイクロメートルの蛍光ビーズ(インビトロジェン社)のけん濁液溜めに挿しておき、吸引モードで、膜部分では上板から下板側へ流れるように送液した。一定量の吸引後膜チップを実体蛍光顕微鏡(SZX、オリンパス社)、および倒立型蛍光顕微鏡(IX71、オリンパス社)にて観察したところ、膜の上流側のみに蛍光ビーズが確認でき、良好にろ過を行うことができることを確認した。
【実施例2】
【0065】
上板2回目用のフォトマスクパターンに流路付きパターン23を用いて、実施例1と同様の手法で、膜デバイスを作成したところ、配置の位置合わせ精度を落としても、膜の有効部分の面積が変化しないことを実態顕微鏡観察によって確認した。また、実施例1と同様に膜を良好に組み込むことができた。実施例1と同様の手法でろ過機能を確認したところ、良好にろ過を行うことができた。また、通液方向を逆にしても膜が下流側の槽をつぶすことなく、同様にろ過を行うことができた。
【実施例3】
【0066】
厚さ0.2mmのアクリル製フィルムをスライドガラス大に切り取り、その中央部に11mm角の穴を開けた。このフィルムを、実施例1のプラズマ処理後の下板におき、その穴部分に、10mm角に切り取ったろ過膜(GHポリプロ、膜厚約110μm、ポール社)2枚を重ねて配置した。さらにもう1枚の実施例1の下板を、上板として用いることとし、貫通穴形成、およびプラズマ処理したのちに重ねてデバイスを完成した。実施例1と同様に蛍光ビーズのろ過試験を行ったところ、液漏れを起こすことなく吸引モードでのろ過を行うことができた。
【実施例4】
【0067】
厚さ1mmのアクリル板(旭化成製、デラグラスA)をスライドガラス大に切り取り、その中央部にドリルで貫通穴を開けた。高さ100マイクロメートルの板状突起を有する金型でこの板をホットプレスした。この断面形状模式図を図14に示す。実施例1で用いたろ過膜をプレス成形による段差部分に置き、極少量の塩化メチレンを膜の周辺部のみに塗布したところ、膜は段差部分に接着し、かつほぼ段差のない構造となった。さらに実施例1の下板と組み合わせたところ吸引モードにより、蛍光ビーズけん濁液を上板側から下板側へろ過することができた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】典型的なマイクロ化学チップの凹部の斜視図と、これと等価な形状を形成するスペーサ構造の分解斜視図である。
【図2】基材表面に垂直な方向から見た場合の、槽として用いる凹部の形状の例を示す図である。
【図3】基材表面に垂直な方向から見た場合の、直交する流路の形状の例を示す図である。
【図4】基材表面に垂直な方向から見た場合の、凹部に設けられる、内側に凸な形状の例を示す図である。
【図5】基材表面に垂直な方向から見た場合の、凹部の内側に島形状を有する形状の例を示す図である。
【図6】膜が組み込まれた、接合後のマイクロ化学チップの基材表面に垂直な断面図である。
【図7】接合前に膜を配置した状態のマイクロ化学チップの上板の基材表面に垂直な断面図である。
【図8】膜の厚み分をあらかじめ上板、下板に加工したマイクロ化学チップの基材表面に垂直な断面の分解図である。
【図9】膜と同程度の厚みを有する、膜の側部を保持するための部材で膜が組み込まれたマイクロ化学チップの基材表面に垂直な断面の分解図である。
【図10】膜の厚み分をあらかじめ上板のみに加工したマイクロ化学チップの基材表面に垂直な断面の分解図である。
【図11】作製した膜デバイスの上板1回目用フォトマスクパターンを示す図である。
【図12】作製した膜デバイスの上板2回目用フォトマスクのチップ部分パターンを示す図である。
【図13】作製した膜デバイスの下板用フォトマスクのチップ部分パターンを示す図である。
【図14】作製したアクリル板の断面の分解模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1 典型的なマイクロ化学チップの凹部
2 基材
3 スペーサ
4 スペーサに設けられた貫通穴
5 櫛形の流路形状
6 単純な折り畳んだ線形状の流路
7 上板流路パターン
8 下板流路パターン
9 膜分離に有効な領域
10 らせん型
11 内側に凸な形状
12 内側の島形状
13 上板
14 下板
15 分離膜
16 上板に設けられた凹部
17 下板に設けられた凹部
18 膜側部と基材による膜保持部分とのギャップ
19 膜保持用の凹部
20 膜と同程度の厚みを有する、膜の側部を保持するための部材
21 フォトマスクのうちのチップとして用いられる部分
22 内部構造無しパターン
23 上板用折り畳み線形状パターン
24 下板用折り畳み線形状パターン
25 ドリル穴
26 ホットプレス成形による段差構造
27 アクリル板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚に凹部が形成された面を有する複数の基材と外部で作成した分離膜とを接合して得られる膜デバイスであって、該分離膜は分離膜の側部および一方の面の一部で、該基材のうちの1枚によって保持され、少なくとも保持された分離膜周辺部で分離膜および基材の接合面側を同一面としたことを特徴とする膜デバイス。
【請求項2】
少なくとも1枚に凹部が形成された面を有する複数の基材と外部で作成した分離膜とを接合して得られる膜デバイスであって、分離膜を挟み込む基材のうち一方あるいは両方の基材の該分離膜配置位置に、該分離膜の厚さに相当する凹部を設けた後に接合工程を行うことを特徴とする膜デバイス。
【請求項3】
少なくとも1枚に凹部が形成された面を有する複数の基材と外部で作成した分離膜とを接合して得られる膜デバイスであって、該分離膜が周囲を別部材によって保持されており、少なくとも該分離膜周辺部で該分離膜と該保持部材とが同じ厚みであることを特徴とする膜デバイス。
【請求項4】
該分離膜を挟み込む2つの基材の少なくとも一方の基材の膜挟み込み面側において、該分離膜配置位置の内側の一部で該基材と該分離膜が接触しないように凹部が形成されており、該凹部の面方向形状が、分離膜よりも内側のみに形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の膜デバイス。
【請求項5】
該分離膜を挟み込む両方の基材の膜挟み込み面側において、該分離膜配置位置の内側の一部で該基材と該分離膜が接触せず、かつ膜分離の上流側あるいは下流側槽として用いる凹部が形成されており、一方の基材に形成された槽として用いる該凹部の面方向形状が、他方の基材に形成された槽として用いる該凹部よりも、面に垂直な方から見て内側に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の膜デバイス。
【請求項6】
該分離膜が周辺部で透過性が中央部よりも少ないか、ないことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の膜デバイス。
【請求項7】
該分離膜を挟み込む2つの基材の少なくとも一方の基材の膜挟み込み面側において、該分離膜配置位置の内側の一部で該基材と該分離膜が接触しないように凹部が形成されており、該凹部の面方向形状が、内側に凸な形状を有するか、内側に島形状を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の膜デバイス。
【請求項8】
該凹部の面方向形状が折り畳んだ線形状であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の膜デバイス。
【請求項9】
該分離膜を挟み込む2つの基材の両方に、該凹部が形成され、該凹部の面方向形状が折り畳んだ線形状を有し、かつ2つの基材に形成された線形状の凹部の線方向が面に垂直な方向から見て交わる方向に形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の膜デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−61870(P2006−61870A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249697(P2004−249697)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】