膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法
【課題】生物処理及び膜分離に必要な散気量の低減化を図る膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の膜分離活性汚泥システム10は、被処理水を活性汚泥で生物処理する生物反応槽と、並列配置した複数の平膜の側面をケーシング26で囲った膜モジュール24を浸漬して、複数の平膜の膜間に前記生物反応槽からの前記被処理水の上向流を生じさせながら固液分離する膜分離槽18と、を備え、前記生物反応槽の活性汚泥濃度を少なくとも硝化反応が行える濃度以上とし、前記上向流によって前記膜分離槽18内を流動可能とし、密度が水よりも高い担体40を前記膜分離槽18内のみに添加したことを特徴としている。
【解決手段】本発明の膜分離活性汚泥システム10は、被処理水を活性汚泥で生物処理する生物反応槽と、並列配置した複数の平膜の側面をケーシング26で囲った膜モジュール24を浸漬して、複数の平膜の膜間に前記生物反応槽からの前記被処理水の上向流を生じさせながら固液分離する膜分離槽18と、を備え、前記生物反応槽の活性汚泥濃度を少なくとも硝化反応が行える濃度以上とし、前記上向流によって前記膜分離槽18内を流動可能とし、密度が水よりも高い担体40を前記膜分離槽18内のみに添加したことを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥を用いた生物処理により下水や工業排水などの浄化を行う膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜分離活性汚泥法(MBR:Membrane Bio Reactor)は、下水や工業排水などの被処理水を活性汚泥により浄化して処理水中の活性汚泥を固液分離するときに、膜技術を適用した処理方法である。この処理方法によれば、従来の沈殿池で固液分離を行う際の汚泥の沈降性に配慮することなく、高濃度の活性汚泥で運転することができる。また、槽内の活性汚泥の高濃度化によって、沈殿池を省略して装置全体を小型化することができるほか、有機物酸化や硝化反応等の処理を高速化して、処理時間を大幅に短縮することができる。
【0003】
一般に、膜分離活性汚泥法を用いた処理システムは、無酸素槽と、好気槽と、膜分離槽の3つの処理槽から構成されている。そして、好気槽と膜分離槽ではそれぞれ散気を行っている。
【0004】
好気槽では、槽内の活性汚泥に対して高効率的に酸素供給を行うために、気泡径が比較的細かい微細散気を供給可能な散気手段が備えられている。従って、汚泥濃度が高濃度の場合には、必要な酸素供給量が増加するため、散気量も増加することになる。
【0005】
一方、膜分離槽では、ろ過吸引時に膜面に堆積するゴミなどの固形物を除去して膜の閉塞を抑制する洗浄効果を得たり、処理槽内の被処理水に旋回流を起こして膜表面近傍に水流を与えると共に処理槽内を撹拌したりするために、好気槽の気泡よりも大きな粗大気泡が供給可能な散気手段を用いている。
【0006】
前述のように従来の膜分離活性汚泥法は、固液分離に膜分離を適用することで、汚泥濃度を高濃度化することができ、具体的に、無酸素槽及び好気槽などの生物反応の槽内の活性汚泥濃度を10,000mg/L〜15,000mg/Lに設定して運転管理している。生物反応槽の活性汚泥濃度が高くなると、被処理水の粘性が高くなる。一方、被処理水の流動性に関しては、被処理水の粘性が高くなるほど低下する。この他、被処理水の粘性が高い場合には、酸素移動速度が低下する傾向にある。被処理水の粘性が高いと、膜分離槽では、活性汚泥によるせん断力が上がり、膜面の洗浄効果が得られる。
このような従来の膜分離活性汚泥装置の一例として、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−193102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の膜分離活性汚泥法は、膜分離に膜面洗浄用の散気やろ過ポンプの動力が必要となる。また、特に高濃度化した活性汚泥は粘性が高く、処理槽内の活性汚泥の流動性や活性汚泥への酸素供給のための散気の効率が低くなる。このため、散気手段の過大な動力を費やすことが問題となっていた。
【0009】
そこで、従来の生物反応槽内の活性汚泥濃度である10,000mg/L〜15,000mg/Lよりも濃度を低く設定すれば、生物反応槽における散気量を低減することができると考えられる。確かに、活性汚泥濃度が低くなれば、被処理水の粘性が低くなり、酸素移動速度も高くなる。従って、生物処理に必要な生物反応槽の散気量を低減することができ、生物反応槽における散気コストを低減することができる。
【0010】
しかし、膜分離槽では、活性汚泥濃度が低くなると、被処理水の粘性が低くなるため、活性汚泥によるせん断力が低下することになる。
ここで、膜分離槽に適用可能な平膜ろ過装置は、被処理水で満たされた処理槽内に複数の膜エレメントを浸漬した状態で配列されており、膜エレメントの集合体となる膜モジュールの内部から被処理水を吸引ろ過することにより、ろ過水が得られる。各膜エレメントは、処理槽内に所定の間隔を開けて垂直に設置されて、下方に散気を行うための散気手段が設けられている。
【0011】
図12は膜モジュールの上向流の説明図である。図示のように、複数の膜エレメント200を所定の間隔を開けて並列に配置して側面をケーシング(不図示)で覆った膜モジュール202に対して、膜モジュール202の下方に配置した散気管204から吐出する気泡は、矢印Aのような上昇に伴って中心部へ集中する。これは、ケーシングの壁付近では、壁面摩擦によって流速が減少するためである。そのため、膜モジュール202の側部206では、気泡の上昇に伴って生じるクロスフロー流が生じ難く、クロスフロー流により膜面洗浄効果が低下し、部分的に膜面が閉塞することになる。このとき、前述の活性汚泥によるせん断力が低下すると、膜面の洗浄効果が得られず、膜モジュール202の側部206では膜面の閉塞が促進されることになる。このような膜面の閉塞は、有効膜面積を減少させるため、ろ過圧力の早期上昇を招くことがあった。そのため中央部以外の領域では、膜表面が目詰まりし易くなる。
【0012】
目詰まりし易くなった箇所を解消するためには、散気量を増やす必要がある。しかしながら、膜エレメントの中央部のように目詰まりしていない場所がある一方で、部分的に目詰まりした膜表面領域に対して、洗浄再生するために散気量を増やすことは効率的ではない。また、汚れや目詰まりの進行した箇所のみに集中的に散気を行うことは不可能である。仮に目詰まりの進行した箇所のみに散気量を増やしたとしても、壁付近の側面摩擦の傾向は変わることがないため、中央部と側部との間で流速差が生じるだけであり、放物線状の流速分布が形成され易く目詰まりが促進するおそれがある。
【0013】
従って、このような箇所が生じた場合、汚れの少ない箇所も含めて全膜表面を一斉に散気量を上げて洗浄しているため、散気が非効率化するという問題が生じる虞がある。
【0014】
一方、膜間流路内において、水平幅方向に関して流速分布の中央の偏りを解消する別の手段として、整流板を取り付ける方法がある。しかし、膜エレメント間隔、即ち膜間流路の幅は通常数mmから数十mmであり、このような狭隘な場所に整流板を設けることは困難である。また膜モジュールを多段に積層した場合には、整流板も膜モジュール毎に鉛直方向に他段に配置する必要があり、実用的でない。
【0015】
このように従来の膜分離活性汚泥方法では、膜分離槽内の膜モジュールの洗浄効果を得るために、硝化反応に必要な活性汚泥濃度よりも高めに設定しなければならなかった。従って、生物反応槽では、十分な溶存酸素量を確保するため、散気量を増やさなければならなかった。
【0016】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため、処理コストの低減化を図った膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法を提供することを目的としている。また本発明は、生物処理及び膜分離に必要な散気量の低減化を図った膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の膜分離活性汚泥システムは、被処理水を活性汚泥で生物処理する生物反応槽と、並列配置した複数の平膜の側面をケーシングで囲った膜モジュールを浸漬して、複数の平膜の膜間に前記生物反応槽からの前記被処理水の上向流を生じさせながら固液分離する膜分離槽と、を備え、前記生物反応槽の活性汚泥濃度を少なくとも硝化反応が行える濃度以上とし、前記上向流によって前記膜分離槽内を流動可能とし、密度が水よりも高い担体を前記膜分離槽内のみに添加したことを特徴としている。
【0018】
この場合において、前記活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定しているとよい。
また、前記活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きく設定し、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きく設定しているとよい。
また、前記担体は、多面体であるとよい。
【0019】
前記担体は、前記平膜間の流路幅に対する一辺の長さの比が0.5以上から0.9以下であるとよい。
前記膜分離槽には、前記被処理水を前記生物反応槽に返送する配管と、前記配管の流入口に担体分離スクリーンと、を設けているとよい。
【0020】
本発明の膜分離活性汚泥方法は、生物反応槽で被処理水を少なくとも硝化反応が行える活性汚泥濃度で生物処理して、並列配置した複数の平膜の側面をケーシングで囲った膜モジュールを浸漬した膜分離槽に前記被処理水を導入し複数の平膜の膜間に前記被処理水の上向流を生じさせて、前記上向流による速度差を持たせた担体を前記膜分離槽内のみに添加して、膜間流路で前記担体を分散させながら前記被処理水を固液分離することを特徴としている。
【0021】
この場合において、前記活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定しているとよい。
また、前記活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きく設定し、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きく設定しているとよい。
【発明の効果】
【0022】
上記構成による本発明の膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法によれば、活性汚泥濃度を少なくとも硝化反応を維持することができる濃度に設定しているため、活性汚泥量を減らすと共に、生物反応に必要な散気量を低減することができる。従って、システム全体のコスト低減化を図ることができる。
【0023】
また、前記被処理水に対して前記上向流による速度差を持たせた担体を用いているため、被処理水と気泡からなる気液二相流体から抗力を受けて上向流の流れに随伴して移動し難くなる。
【0024】
具体的に担体は、上向流で前記処理槽内を流動可能とし、密度が水よりも高いため気液二相流体から抗力を受け易くなり、上向流の流れよりも遅い流れで移動する。また、担体は、多面体であるため気液二相流体から抗力を受け易くなり、上向流の流れよりも遅い流れで移動する。
【0025】
このため、膜間流路の水平幅方向に関して、ケーシング周辺に存在する担体が中央部に移動し難くなり、分散した状態で略均一に存在することになる。よって、膜間流路の散気手段がある入口部から上部出口部まで移動する間に、横幅方向に分散しながら上昇移動することが可能となる。
【0026】
このように本発明の担体は、膜間流路を分散しながら移動する整流器として機能することにより、流路中央部に流速の速い箇所が生じる気液二相流速分布を平坦化することができる。よって、膜面に対して速度差に基づくせん断力が生じて、膜面全体を均等に洗浄することができ、従来のように散気量を増加させて目詰まりを防止する必要がなく、通常の散気量で洗浄効果を向上させることができる。
【0027】
また、気泡の周囲に生じる乱れがせん断力を誘導して膜面洗浄に寄与するのと同様に、密度が水よりも高く、多面体の担体の周囲にも、流体の渦や剥離による乱れが生じて、それらの乱れが誘導するせん断力も発生する。そのため、従来の気液二相流の状態よりも、せん断力が発生する箇所が増加することになり、従来の平膜式のろ過装置に比べて膜面洗浄の効果を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の膜分離活性汚泥システムの構成概略を模式的に示した図である。
【図2】活性汚泥濃度と酸素移動効率の関係を示すグラフである。
【図3】平膜ろ過装置の構成概略図である。
【図4】膜間流路幅と膜エレメントの水平方向の長さのパラメータの説明図である。
【図5】混相流体中を上昇移動する担体の説明図である。
【図6】比流速差とサイズ比の関係を示すグラフである。
【図7】膜間流路の上向流の説明図である。
【図8】平膜ろ過装置の変形例の説明図である。
【図9】変形例の平膜ろ過装置の上向流の説明図である。
【図10】散気量と膜面差圧の時間変化率の関係を示すグラフである。
【図11】活性汚泥濃度とFluxの関係を示すグラフである。
【図12】膜モジュールの上向流の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図1は本発明の膜分離活性汚泥システムの構成概略を模式的に示した図である。本実施形態の膜分離活性汚泥システム10は、生物反応槽と、膜分離槽を主な基本構成とし、具体的に流入調整槽12と、無酸素槽14と、好気槽16と、膜分離槽18から構成されている。
【0030】
生物反応槽は、活性汚泥により被処理水を生物反応する処理槽である。本実施形態の生物反応槽は、一例として、無酸素槽14と、好気槽16から構成されている。無酸素槽14には槽内に撹拌手段(不図示)が設置されている。無酸素槽14では、活性汚泥により被処理水中の硝酸が窒素に変わり外部に放出される脱窒反応を行っている。好気槽16には槽内に散気手段16aが設置されている。散気手段16aは、活性汚泥に対して高効率的に酸素供給を行うために、気泡径が比較的細かい微細散気を供給可能に構成している。好気槽16では、活性汚泥により被処理水中のアンモニアが分解されて硝酸となる硝化反応が行われている。なお、好気槽16と無酸素槽14の間には、好気槽16中の被処理水を一部返還する配管16bが設定されている。このような構成により、好気槽16で生じた硝酸を無酸素槽14で処理することができる。また、生物反応槽の前段には、流入調整槽12を設けることができる。流入調整槽12は、原水が導入され、後段の生物反応槽への被処理水の流入量を調整制御する水槽である。
【0031】
次に、本実施形態の活性汚泥濃度について以下説明する。
一般に、好気槽における硝化菌は比較的増殖速度が遅い。このため、好気槽内で硝化菌を保持するためには、好気的汚泥滞留時間(A−SRT)を十分に確保する必要がある。また好気的汚泥滞留時間は、反応槽から系外への活性汚泥の引き抜き量によって調整することができる。この好気的汚泥滞留時間の設定によって、槽内の活性汚泥濃度を決めることができる。
【0032】
ここで、好気的汚泥滞留時間と水温(T)の関係は、一般に次式で表すことができる。
【数1】
【0033】
また好気的汚泥滞留時間と活性汚泥濃度の関係は、一般に次式で表すことができる。
【数2】
ここで、各記号は、X:活性汚泥濃度、Cssin:流入原水の懸濁物質(SS)、ζ:汚泥変換率、τa:好気HRT(水理学的滞留時間)をそれぞれ示している。
【0034】
活性汚泥は成分、水温、装置の運転条件等のパラメータにより変化する。そこで本実施形態では、水温Tをパラメータとして好気的滞留時間を求めた後(数式1)、この好気的滞留時間を満たす活性汚泥濃度を求めている(数式2)。
【0035】
数式1,2より、冬季を想定した前記被処理水の水温T=15°のとき、活性汚泥濃度Xは8000mg/Lよりも大きければよい(X>8000mg/L)。
また、夏季を想定した前記被処理水の水温T=20°のとき、活性汚泥濃度Xは6100mg/Lよりも大きければよい(X>6100mg/L)。
【0036】
また、本実施形態では、従来の生物反応槽の活性汚泥濃度の設定値である10000mg/L〜15000mg/Lよりも低濃度化する観点から、活性汚泥濃度の上限値としては、10000mg/Lよりも小さければ、散気量を低減することができる。
【0037】
従って、本実施形態の生物反応槽で硝化反応を維持できる活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きければよい。
また、前記活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きくし、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きくなるように設定するとよい。
【0038】
次に、活性汚泥濃度と酸素移動効率の関係について説明する。図2は活性汚泥濃度と酸素移動効率の関係を示すグラフである。
生物処理に必要な散気量を設計する際の根拠となる酸素移動効率(EA)は、数式3を用いて算出することができる。
【数3】
ここで、EA:酸素移動効率(%),KLa:総括酸素移動容量係数,C:DO濃度(mg/L),CS:飽和DO濃度(mg/L),GS:送風量(m3/h),ρ:空気密度,OW:空気中の酸素含有量,V:槽容量(m3)である。
【0039】
図2に示すように、活性汚泥濃度が低くなるほど、酸素移動効率が増加している。汚泥濃度8000mg/L付近では,従来運転条件の汚泥濃度10000mg/Lと比較して、EAが1.16倍となり、理論上、散気量を14.1%削減することができる。
【0040】
また、汚泥濃度6100mg/L付近では,従来運転条件の汚泥濃度10000mg/Lと比較して、EAが1.34倍となり、理論上、散気量を25.6%削減することができる。
【0041】
膜分離槽18には、平膜ろ過装置が設置されている。
図3は平膜ろ過装置の構成概略図である。図示のように平膜ろ過装置50は、下水や工業排水などの被処理水を満たした膜分離槽18と、膜ユニット20と、担体40とを主な基本構成としている。
【0042】
膜ユニット20は、膜モジュール24と散気手段30から構成されている。膜モジュール24は、複数の平膜となる膜エレメント22から構成されている。膜エレメント22は、平板状のろ過膜である。複数枚の膜エレメント22は、膜面が互いに平行となるように所定の間隔を開けて並列に配置され、側面をケーシング26で囲った膜モジュール24を形成している。膜モジュール24は、上面及び下面を開口させて、膜エレメント22の膜間を被処理水が垂直方向に通過する流路が形成されている。この膜モジュール24に、後述する散気手段30と、ろ過ポンプ58と、配管28を組み合わせて膜ユニット20が形成される。膜モジュール24は、配管28を介してろ過ポンプ58に接続している。ろ過ポンプ58を駆動させることにより、膜エレメント22の膜表面からろ過されたろ過水(処理水)が配管28を通過して外部に排出される。
【0043】
散気手段30は、膜分離槽18内に気泡を発生させている。散気手段30は、ケーシング26を平面視して囲まれた領域内となる膜モジュール24の下方に取り付けられ、膜モジュール24の膜間流路内に気泡を滞留浮上させている。これにより、被処理水と気泡の気液混相の状態である膜間流路内と、被処理水の単相の状態である処理槽内であって膜モジュール24の外側との間で密度差が生じる。このような膜間流路内では、上向きの流れとなる上向流が発生する。散気手段30は、一例として、並列配置した膜エレメント22に沿って複数の散気管を並列に配置した構成を適用することができる。また散気手段30は、散気孔を散気管の下部に設けて、散気ポンプ(不図示)と接続して散気空気量を任意に調整するように構成している。
【0044】
担体40は、膜分離槽18内の被処理水に添加して、被処理水に対して上向流による速度差を持たせている。
具体的に本実施形態の担体は、上向流で処理槽内を流動可能とし、密度が水よりも高くなるように設定している。担体の密度が水よりも高いと、膜間流路を移動する被処理水中では、担体が被処理水よりも遅い流れで移動する。よって、膜間流路の幅方向に均一に導入された担体は、上向流の流れで中央部に被処理水が移動しようとすると、速度の差が抗力となって、被処理水の中央部の移動を抑える作用をする。このため、担体は、膜間流路の導入時の均一分散を維持した状態で移動することになる。従って、気液二相流速分布を平坦化して膜エレメントの膜面を均等に洗浄することができる。
【0045】
なお、本実施形態の担体の材質としては、膜エレメントの膜面に損傷を与えることがない材質であることが望ましい。このような担体の一例として、含水率の高い高分子ゲル材料、ゴム樹脂等を適用することができる。その他、被処理水中で水を吸収することにより水と密度が近似し、且つ、密度が高くなるような空隙率が高い素材となるウレタンフォームのような多孔性材料を適用することもできる。
【0046】
また本実施形態の担体は、多面体となるように形成している。担体は一例として立方体に形成している。立方形状の担体であれば、容易に加工することができる。このような立方形状の担体は、球形状に比べて約2倍の抵抗係数を備えている。多面体に形成された担体は、膜間流路を移動する被処理水中で、被処理水の流れが角部によって妨げられ易くなり、被処理水よりも遅い流れで移動する。よって、膜間流路の幅方向に均一に導入された担体は、上向流の流れで中央部に被処理水が移動しようとすると、多面体の形状が抗力となって、被処理水の移動を抑える作用をする。このため、担体は、膜間流路の導入時の均一分散を維持した状態で移動することになる。従って、気液二相流速分布を平坦化して膜エレメントの膜面を均等に洗浄することができる。
【0047】
担体の密度に関しては、基本的には水よりも高く、実用上は、2.5g/cm3よりも低いことが望ましい。実用面において、膜間流路の平均流速は、0.1m/sから0.4m/s程度である。仮に3mm角の担体の密度が2.5g/cm3を越える場合、終端沈降速度が0.2m/s以上になり流動状態が悪くなることが予想される。流速の低い領域では、膜間流路を上昇移動せずに、膜分離槽内の底部等のよどみ部に滞留し、本発明の効果を得ることが難しくなる。そのため、担体の密度は1g/cm3よりも高く、2.5g/cm3以下であることが望ましい。
なお、担体40は、膜分離槽18内で被処理水に添加するほか、予め被処理水中に添加させて、膜分離槽18内に導入する構成とすることもできる。
【0048】
また、本発明の担体は、処理槽内の被処理水の数十%となる体積充填率を維持するように設定している。平膜分離装置の運転では、ろ過水の取り出しによって、処理槽内の原水固形物濃度が高くなる。そこで、定期的に固形物汚泥を引き抜くことにより、原水固形物濃度を調整することができる。この引き抜き工程によって処理槽内の担体も引き抜かれることになる。前述の体積充填率を維持するため、固形物汚泥の引き抜きと同時に所定量の担体を添加している。
【0049】
次に、図4〜図7を用いて担体40の形状の条件についてより詳しく説明する。図4は膜間流路幅と膜エレメントの水平方向の長さのパラメータの説明図である。図5は混相流体中を上昇移動する担体の説明図である。
【0050】
図4に示すように、膜エレメント22の水平方向の幅長さをLとし、膜エレメント22間の距離(流路幅)をWとする。一般の平膜ろ過装置は、流路幅Wが幅長さLに対して十分小さく、一例として数mmから十数mmの範囲に設定されている。
【0051】
次に、図5に示すように、水平断面方向の流路幅W×Wの範囲となる直方体に関して、水平方向には担体が一つしか存在せず、垂直方向には複数の担体が分布して存在すると仮定する。
【0052】
そして、このようなW×Wの流路が、幅長さLとなる水平方向に連なって膜間流路が構成されていると想定して、担体の物質収支と運動量収支について以下検討する。
【0053】
まず、担体の直径をdとし、それと同体積球の直径を用いた等価直径deは、数式4で表すことができる。
【数4】
ここで、担体は、前述のように水平断面方向の流路幅W×Wの範囲で一定量(一定添加率)となるように調整されていると仮定している。また、液体についても、当該流路内にて一定流量で流れていると仮定している。さらに、散気手段から生成される気泡についても一定流量で散気されていると仮定している。
【0054】
そうすると、流路内には、これら担体、液体、及び気体の吸い込みや湧き出しが存在しないことから、物質量は保存されていると考えることができる。
そこで、液体と気体の二相流体相について、この混相流体(液相と気相の混合流体をいう。)の流速をuF とし、担体の速度をuPとすると、担体のボイド率(断面積比率)αPを用いて、物質収支の関係式は数式5で表すことができる。
【数5】
なお、Jは、担体と混相流体全体の体積フラックス(等価速度)であり、上記の通り一定流量で与えられるものであるから一定値をとっている。
【0055】
次に、運動量の収支、すなわち担体に係る重力と流体から受ける抗力の釣り合いを考える。担体の体積をVol、断面積をA(等価直径deで与えられる面積で、この径の円面積とする。)、混相流の密度をρL、担体と混相流体の密度差をΔρ、更に、担体の抗力係数をCDで与えると、釣り合いの式は数式6のように表すことができる。
【数6】
なお、本来、重力加速度gはベクトルであり、速度もベクトルであるが、本実施形態では一次元的な上昇運動のみを扱うことから、これらの物理量は鉛直成分のみで示している。
【0056】
また、数式6の右辺の速度の二乗に関する項は、担体の密度が混相流密度より高いことから正の値として表現し、かつ重力加速度gについても絶対値(正の値)として扱うものとする。
【0057】
次に、数式5と数式6を連立させて式を変形することで、担体の速度uPは、数式7のように表すことができる。
【数7】
ここで、担体の抗力係数CDはRe数(レイノルズ数)の関数であるが、混相流体と担体の密度差は小さい。
従って、流速差も小さいのでRe数は大きくなく、Re数に反比例する式で表すことができる。これは層流と仮定できるためである。
【0058】
Re数は数式8で、抗力係数CDは数式9で表すことができる。
【数8】
【数9】
なお、νは、混相流体の動粘性を示し、係数Kは45程度の値で与えられる。
【0059】
次に、数式4、数式5、数式7、数式8及び数式9を用いると、数式10のように表すことができる。
【数10】
【0060】
ここで、担体のボイド率(断面積比率)αPは、その定義から数式11のように表すことができる。
【数11】
このため、数式10は、数式11を用いて数式12のように表すことができる。
【数12】
得られた数式12は、担体と混相流体の速度の差を示すものである。この速度差が大きいほど担体が作用する抗力が高くなり、前述のように渦や剥離等から誘導するせん断力が高くなる。
【0061】
また、前述のように担体は、混相流体に随伴して動きにくくなるので、混相流体が膜間流路の水平幅方向に関して中心部に流速が集中する傾向に対して抵抗する運動をする。このため、本実施形態の担体は、当該幅方向に分散して、混相流体の整流器として作用し、上述の効果を高めることができる。
【0062】
そこで、数式12において、当該流速差が極大化するのは数式12右辺の次式(数式13)が最小化すれば、これらの効果が極大化すると考えることができる。
【数13】
この数式13は比速度差に相当するものである。このサイズ比(担体の等価直径deと流路幅Wの比)に関して、図6のようにグラフ化することができる。図6は比流速差とサイズ比の関係を示すグラフである。同図縦軸は比流速差を示し、横軸はサイズ比(流路幅に対する担体の一辺の長さの比)を示している。
【0063】
ここで、この比流速差は、数式13を微分することで、次のサイズ比において極大化する。
【数14】
図6に示すように、比流速差とサイズ比(担体/流路幅)の関係は下向きに凸な放物線状に表され、数式14に示すようにサイズ比が約0.71のとき、比流速差が最も大きくなる。担体が流体から受ける抗力が最大となる一方で、担体が作用反作用の法則により、流体にもたらす仕事も最大となり、担体近傍での流体の乱れの効果も最大となる。従って渦や乱れの誘導が最大化し、膜面洗浄に必要な流体のせん断力も最大化することができる。
【0064】
次に、膜間流路の幅に対して担体の適切なサイズを与えるサイズ比について検討する。担体の直径サイズが膜間流路の幅の半分よりも小さい場合、膜間に2つ以上の担体が同時に通過することが可能となる。このとき、多面体形状の担体の向きによって、少なくとも2個の担体が架橋して膜間流路内に閉塞して留まってしまう可能性がある。そこで、担体のサイズ比の下限値としては、0.5以上であることが望ましい。このサイズ比0.5のときの比流速差は−0.19である。図6に示すように比流速差とサイズ比の関係は、サイズ比0.71を最下点とする下向きに凸な放物線状に表されており、サイズ比0.5以上0.71の範囲では比流速差が大きくなる。一方、サイズ比0.71を超えて、更に0.9を超える場合、サイズ比が0.5のときの比流速差(−0.19)よりも絶対値が小さくなってしまい、流速差に基づく乱れの効果が得られにくくなる。そこでサイズ比の上限値としては0.9以下であることが望ましい。
【0065】
以上より、サイズ比の範囲は、数式15のように表すことができる。
【数15】
【0066】
なお、担体の直径dについては、数式4に基づいて、数式16の範囲が有効であると考えられる。
【数16】
また、担体の添加は、生物処理用の高効率微細散気の酸素溶解効率を低下させることがある。これは、被処理水中に担体が存在することによって、微細気泡の流路幅が狭まり、微細気泡同士が結合して大型化してしまうからである。
【0067】
従って、本実施形態の好気槽16では、浮遊する汚泥(活性汚泥)のみとし、膜分離槽18にのみ担体40を流動させるように制御している。膜分離槽18から好気槽16へ活性汚泥を返送する配管18aを接続しているが、膜分離槽18の配管入口に担体分離スクリーンとなるストレイナー19を取り付けている。ストレイナー19のメッシュ幅は、担体40の一辺の長さよりも短く設定している。これにより担体40はストレイナー19を通過することができず、被処理水と活性汚泥の一部が膜分離槽18から好気槽16へ返送される。これにより、本実施形態の担体40は、膜分離槽18のみを流動し、好気槽16で流動することがない。
【0068】
なお、汚泥濃度が硝化反応を維持できる程度の濃度であれば、生物処理性能は、活性汚泥のみで処理が可能であり、本実施形態で添加する担体の生物処理能力の有無は問わないものとする。
【0069】
次に、上記構成による膜分離活性汚泥システムを用いた膜分離活性汚泥方法について以下説明する。
原水が流入調整槽12に導入されて、後段の生物反応槽への被処理水の供給量が制御される。生物反応槽を構成する無酸素槽14では、活性汚泥により被処理水の脱窒反応が行われる。また好気槽16では、活性汚泥により被処理水の硝化反応が行われる。本実施形態の生物反応槽の活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定している。
【0070】
また、活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きくし、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きくなるように設定している。
【0071】
このように、本実施形態では、従来の生物反応槽における活性汚泥濃度の設定値である10000mg/L〜15000mg/Lよりも低濃度であって、硝化反応を維持できる濃度に設定しているため、硝化反応に必要とされる微細気泡の散気量を低減することができる。従って、システム全体の低コスト化を図ることができる。
【0072】
ついで、膜分離槽18内に生物処理後の被処理水が導入される。担体は、予め被処理水に添加されて被処理水に導入される。または処理槽内の被処理水に担体を添加するようにしてもよい。
膜分離槽18内では、膜モジュール24の下方に取り付けた散気手段30により散気が行われている。
【0073】
図7は膜間流路の上向流の説明図である。図示のように膜モジュール24の下方から膜間流路に導入された被処理水は、担体と共に散気の上向流によって膜間を上昇する。本実施形態の担体は、上向流で膜分離槽18内を流動可能とし、密度が水よりも高く、また多面体であるため、被処理水と気泡の気液二相流体から抗力を受け易くなり、上向流の流れよりも遅い流れで移動する。このため、膜間流路の水平幅方向に関して、ケーシング周辺に存在する担体が中央部に移動し難くなり、分散した状態で略均一に存在することになる。よって、膜間流路の散気手段がある入口部から上部出口部まで移動する間に、横幅方向に分散しながら上昇移動することが可能となる。
【0074】
担体は、膜間流路を分散しながら移動する整流器として機能することにより、流路中央部に流速の速い箇所が生じる気液二相流速分布を平坦化することができる。よって、膜面に対して速度差に基づくせん断力が生じて、膜面全体を均等に洗浄することができ、通常の散気量で洗浄効果を向上させることができる。
【0075】
また、気泡の周囲に生じる乱れがせん断力を誘導して膜面洗浄に寄与するのと同様に、密度が水よりも高く、多面体の担体の周囲にも、流体の渦や剥離による乱れが生じて、それらの乱れが誘導するせん断力も発生する。そのため、せん断力が発生する箇所が増加することになり、従来の平膜式のろ過装置に比べて膜面洗浄の効果を高くすることができる。
【0076】
膜分離槽18内に浸漬配置された膜ユニット20では、ろ過ポンプ58が可動することにより、固液分離されたろ過水(処理水)が膜エレメント22の膜面を通過して配管を介して外部に排出される。
【0077】
図8は平膜ろ過装置の変形例の説明図である。図9は変形例の平膜ろ過装置の上向流の説明図である。図示のように変形例の平膜ろ過装置500は、複数の膜モジュール24a,24b,24cを処理槽内の上下方向に多段に積層させている。その他の構成は図3に示す装置と同様の構成であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。このような変形例の平膜ろ過装置500であっても、図9に示すように、下段の膜モジュール24cにおいて膜間流路の水平幅方向に略均一化された担体が、そのまま維持された状態で上段の膜モジュール24b,24aに順次供給される。このため、従来、最上段の膜モジュール24aで顕著に生じていた流速分布の差がなくなり、膜モジュール24a,24b,24cの全範囲の膜面を均等に洗浄することができる。
【0078】
図10は散気量と膜面差圧の時間変化率の関係を示すグラフである。同グラフの横軸は散気量(L/min)を示し、縦軸はdTMP/dt(kPa/s)を示している。ここでdTMP/dtは、膜間差圧の時間変化率であり、ろ過ポンプ58の吸引によって膜エレメント22の膜面に作用する差圧の時間変化を表している。dTMP/dtは、低い値ほど散気による洗浄性能が高くなり、膜面に汚泥が付着して塞がれたような状態ではろ過ポンプ58の圧力が作用して高い値となる。なお同グラフは、平膜ろ過装置の通常運転よりも、流速を1.25倍に設定した条件で行ったものである。
【0079】
また、四角プロットは、膜分離槽に膜ユニットを浸漬し、かつ、担体を10%添加して散気量を変化させたときのdTMP/dtをプロットしたものである。菱形プロットは、膜分離槽に膜ユニットを浸漬して散気量を変化させたときのdTMP/dtをプロットしたものである。
【0080】
図示のように、担体の有無に係らず、散気量を減らすとdTMP/dtは増加し、洗浄能力が低下する傾向にある。これは、膜間の上向流が生じにくくなり、膜面に活性汚泥が付着し易くなるためである。
【0081】
一方、担体有りと無しの場合では、担体有りの場合は担体無しの場合と比べてdTMP/dtが低下し、高い洗浄能力がある。また、従来の一般的な平膜ろ過装置の運転条件となる担体無し、且つ散気量が12L/minのdTMP/dt値(0.0055kPa/s)よりも、担体有りの運転条件ではいずれも、dTMP/dtが低下しており、担体を添加することによる高い洗浄効果が得られることが表れている。
【0082】
図11は活性汚泥濃度とFluxの関係を示すグラフである。同グラフの横軸は活性汚泥濃度(mg/L)を示し、縦軸はFlux(透過流速:m/日)を示している。また四角プロットは、膜分離槽に膜ユニットを浸漬し、活性汚泥濃度を変化させたときのFluxをプロットしたものである。菱形プロットは、膜分離槽に膜ユニットを浸漬し、かつ、担体を10%添加、活性汚泥濃度を変化させたときのFluxをプロットしたものである。
【0083】
四角プロットに示す担体を含まない膜分離槽では、活性汚泥濃度が10000mg/L〜11000mg/Lのとき、Flux(m/日)が0.8となり最も高い値を示している。活性汚泥濃度が11000mg/Lを超えるとFlux値は低下する。これは膜表面で活性汚泥が厚密化するためである。一方、活性汚泥濃度を10000mg/Lよりも小さくすると、Flux値が低下する。これは、被処理水の粘度が下がるため、活性汚泥のせん断力が低下して、膜面の洗浄効果が得られなくなるためである。
【0084】
一方、菱形プロットに示す担体と活性汚泥を含む膜分離槽では、担体を添加することにより、担体無しの場合(すなわち、平膜ろ過装置の通常運転となる担体無しで活性汚泥濃度が10000mg/Lから15000mg/LにおけるFlux値0.8m/日)よりも、活性汚泥濃度11000mg/L以下でもFlux値を全体的に高めることができる。従って、生物反応槽における活性汚泥濃度を10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定しても、担体を添加することにより、膜分離槽ではFlux値が高まり、膜面の十分な洗浄効果が得られる。
【0085】
このような本発明の膜分離活性汚泥システムによれば、活性汚泥濃度を少なくとも硝化反応を維持することができる濃度に設定しているため、活性汚泥量を減らすと共に、生物反応に必要な散気量を低減することができる。また、密度が水よりも高い担体を添加することにより、活性汚泥濃度の低下による膜分離槽での洗浄効果を高めることができる。従って、システム全体のコスト低減化を図ることができる。
【符号の説明】
【0086】
10………膜分離活性汚泥システム、12………流入調整槽、14………無酸素槽、16………好気槽、16a………散気手段、16b………配管、18………膜分離槽、18a………配管、19………ストレイナー、20………膜ユニット、22………膜エレメント、24………膜モジュール、26………ケーシング、28………配管、30………散気手段、40………担体、50,500………平膜ろ過装置、200………膜エレメント、202………膜モジュール、204………散気管、206………側部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥を用いた生物処理により下水や工業排水などの浄化を行う膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜分離活性汚泥法(MBR:Membrane Bio Reactor)は、下水や工業排水などの被処理水を活性汚泥により浄化して処理水中の活性汚泥を固液分離するときに、膜技術を適用した処理方法である。この処理方法によれば、従来の沈殿池で固液分離を行う際の汚泥の沈降性に配慮することなく、高濃度の活性汚泥で運転することができる。また、槽内の活性汚泥の高濃度化によって、沈殿池を省略して装置全体を小型化することができるほか、有機物酸化や硝化反応等の処理を高速化して、処理時間を大幅に短縮することができる。
【0003】
一般に、膜分離活性汚泥法を用いた処理システムは、無酸素槽と、好気槽と、膜分離槽の3つの処理槽から構成されている。そして、好気槽と膜分離槽ではそれぞれ散気を行っている。
【0004】
好気槽では、槽内の活性汚泥に対して高効率的に酸素供給を行うために、気泡径が比較的細かい微細散気を供給可能な散気手段が備えられている。従って、汚泥濃度が高濃度の場合には、必要な酸素供給量が増加するため、散気量も増加することになる。
【0005】
一方、膜分離槽では、ろ過吸引時に膜面に堆積するゴミなどの固形物を除去して膜の閉塞を抑制する洗浄効果を得たり、処理槽内の被処理水に旋回流を起こして膜表面近傍に水流を与えると共に処理槽内を撹拌したりするために、好気槽の気泡よりも大きな粗大気泡が供給可能な散気手段を用いている。
【0006】
前述のように従来の膜分離活性汚泥法は、固液分離に膜分離を適用することで、汚泥濃度を高濃度化することができ、具体的に、無酸素槽及び好気槽などの生物反応の槽内の活性汚泥濃度を10,000mg/L〜15,000mg/Lに設定して運転管理している。生物反応槽の活性汚泥濃度が高くなると、被処理水の粘性が高くなる。一方、被処理水の流動性に関しては、被処理水の粘性が高くなるほど低下する。この他、被処理水の粘性が高い場合には、酸素移動速度が低下する傾向にある。被処理水の粘性が高いと、膜分離槽では、活性汚泥によるせん断力が上がり、膜面の洗浄効果が得られる。
このような従来の膜分離活性汚泥装置の一例として、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−193102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の膜分離活性汚泥法は、膜分離に膜面洗浄用の散気やろ過ポンプの動力が必要となる。また、特に高濃度化した活性汚泥は粘性が高く、処理槽内の活性汚泥の流動性や活性汚泥への酸素供給のための散気の効率が低くなる。このため、散気手段の過大な動力を費やすことが問題となっていた。
【0009】
そこで、従来の生物反応槽内の活性汚泥濃度である10,000mg/L〜15,000mg/Lよりも濃度を低く設定すれば、生物反応槽における散気量を低減することができると考えられる。確かに、活性汚泥濃度が低くなれば、被処理水の粘性が低くなり、酸素移動速度も高くなる。従って、生物処理に必要な生物反応槽の散気量を低減することができ、生物反応槽における散気コストを低減することができる。
【0010】
しかし、膜分離槽では、活性汚泥濃度が低くなると、被処理水の粘性が低くなるため、活性汚泥によるせん断力が低下することになる。
ここで、膜分離槽に適用可能な平膜ろ過装置は、被処理水で満たされた処理槽内に複数の膜エレメントを浸漬した状態で配列されており、膜エレメントの集合体となる膜モジュールの内部から被処理水を吸引ろ過することにより、ろ過水が得られる。各膜エレメントは、処理槽内に所定の間隔を開けて垂直に設置されて、下方に散気を行うための散気手段が設けられている。
【0011】
図12は膜モジュールの上向流の説明図である。図示のように、複数の膜エレメント200を所定の間隔を開けて並列に配置して側面をケーシング(不図示)で覆った膜モジュール202に対して、膜モジュール202の下方に配置した散気管204から吐出する気泡は、矢印Aのような上昇に伴って中心部へ集中する。これは、ケーシングの壁付近では、壁面摩擦によって流速が減少するためである。そのため、膜モジュール202の側部206では、気泡の上昇に伴って生じるクロスフロー流が生じ難く、クロスフロー流により膜面洗浄効果が低下し、部分的に膜面が閉塞することになる。このとき、前述の活性汚泥によるせん断力が低下すると、膜面の洗浄効果が得られず、膜モジュール202の側部206では膜面の閉塞が促進されることになる。このような膜面の閉塞は、有効膜面積を減少させるため、ろ過圧力の早期上昇を招くことがあった。そのため中央部以外の領域では、膜表面が目詰まりし易くなる。
【0012】
目詰まりし易くなった箇所を解消するためには、散気量を増やす必要がある。しかしながら、膜エレメントの中央部のように目詰まりしていない場所がある一方で、部分的に目詰まりした膜表面領域に対して、洗浄再生するために散気量を増やすことは効率的ではない。また、汚れや目詰まりの進行した箇所のみに集中的に散気を行うことは不可能である。仮に目詰まりの進行した箇所のみに散気量を増やしたとしても、壁付近の側面摩擦の傾向は変わることがないため、中央部と側部との間で流速差が生じるだけであり、放物線状の流速分布が形成され易く目詰まりが促進するおそれがある。
【0013】
従って、このような箇所が生じた場合、汚れの少ない箇所も含めて全膜表面を一斉に散気量を上げて洗浄しているため、散気が非効率化するという問題が生じる虞がある。
【0014】
一方、膜間流路内において、水平幅方向に関して流速分布の中央の偏りを解消する別の手段として、整流板を取り付ける方法がある。しかし、膜エレメント間隔、即ち膜間流路の幅は通常数mmから数十mmであり、このような狭隘な場所に整流板を設けることは困難である。また膜モジュールを多段に積層した場合には、整流板も膜モジュール毎に鉛直方向に他段に配置する必要があり、実用的でない。
【0015】
このように従来の膜分離活性汚泥方法では、膜分離槽内の膜モジュールの洗浄効果を得るために、硝化反応に必要な活性汚泥濃度よりも高めに設定しなければならなかった。従って、生物反応槽では、十分な溶存酸素量を確保するため、散気量を増やさなければならなかった。
【0016】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため、処理コストの低減化を図った膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法を提供することを目的としている。また本発明は、生物処理及び膜分離に必要な散気量の低減化を図った膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の膜分離活性汚泥システムは、被処理水を活性汚泥で生物処理する生物反応槽と、並列配置した複数の平膜の側面をケーシングで囲った膜モジュールを浸漬して、複数の平膜の膜間に前記生物反応槽からの前記被処理水の上向流を生じさせながら固液分離する膜分離槽と、を備え、前記生物反応槽の活性汚泥濃度を少なくとも硝化反応が行える濃度以上とし、前記上向流によって前記膜分離槽内を流動可能とし、密度が水よりも高い担体を前記膜分離槽内のみに添加したことを特徴としている。
【0018】
この場合において、前記活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定しているとよい。
また、前記活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きく設定し、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きく設定しているとよい。
また、前記担体は、多面体であるとよい。
【0019】
前記担体は、前記平膜間の流路幅に対する一辺の長さの比が0.5以上から0.9以下であるとよい。
前記膜分離槽には、前記被処理水を前記生物反応槽に返送する配管と、前記配管の流入口に担体分離スクリーンと、を設けているとよい。
【0020】
本発明の膜分離活性汚泥方法は、生物反応槽で被処理水を少なくとも硝化反応が行える活性汚泥濃度で生物処理して、並列配置した複数の平膜の側面をケーシングで囲った膜モジュールを浸漬した膜分離槽に前記被処理水を導入し複数の平膜の膜間に前記被処理水の上向流を生じさせて、前記上向流による速度差を持たせた担体を前記膜分離槽内のみに添加して、膜間流路で前記担体を分散させながら前記被処理水を固液分離することを特徴としている。
【0021】
この場合において、前記活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定しているとよい。
また、前記活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きく設定し、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きく設定しているとよい。
【発明の効果】
【0022】
上記構成による本発明の膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法によれば、活性汚泥濃度を少なくとも硝化反応を維持することができる濃度に設定しているため、活性汚泥量を減らすと共に、生物反応に必要な散気量を低減することができる。従って、システム全体のコスト低減化を図ることができる。
【0023】
また、前記被処理水に対して前記上向流による速度差を持たせた担体を用いているため、被処理水と気泡からなる気液二相流体から抗力を受けて上向流の流れに随伴して移動し難くなる。
【0024】
具体的に担体は、上向流で前記処理槽内を流動可能とし、密度が水よりも高いため気液二相流体から抗力を受け易くなり、上向流の流れよりも遅い流れで移動する。また、担体は、多面体であるため気液二相流体から抗力を受け易くなり、上向流の流れよりも遅い流れで移動する。
【0025】
このため、膜間流路の水平幅方向に関して、ケーシング周辺に存在する担体が中央部に移動し難くなり、分散した状態で略均一に存在することになる。よって、膜間流路の散気手段がある入口部から上部出口部まで移動する間に、横幅方向に分散しながら上昇移動することが可能となる。
【0026】
このように本発明の担体は、膜間流路を分散しながら移動する整流器として機能することにより、流路中央部に流速の速い箇所が生じる気液二相流速分布を平坦化することができる。よって、膜面に対して速度差に基づくせん断力が生じて、膜面全体を均等に洗浄することができ、従来のように散気量を増加させて目詰まりを防止する必要がなく、通常の散気量で洗浄効果を向上させることができる。
【0027】
また、気泡の周囲に生じる乱れがせん断力を誘導して膜面洗浄に寄与するのと同様に、密度が水よりも高く、多面体の担体の周囲にも、流体の渦や剥離による乱れが生じて、それらの乱れが誘導するせん断力も発生する。そのため、従来の気液二相流の状態よりも、せん断力が発生する箇所が増加することになり、従来の平膜式のろ過装置に比べて膜面洗浄の効果を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の膜分離活性汚泥システムの構成概略を模式的に示した図である。
【図2】活性汚泥濃度と酸素移動効率の関係を示すグラフである。
【図3】平膜ろ過装置の構成概略図である。
【図4】膜間流路幅と膜エレメントの水平方向の長さのパラメータの説明図である。
【図5】混相流体中を上昇移動する担体の説明図である。
【図6】比流速差とサイズ比の関係を示すグラフである。
【図7】膜間流路の上向流の説明図である。
【図8】平膜ろ過装置の変形例の説明図である。
【図9】変形例の平膜ろ過装置の上向流の説明図である。
【図10】散気量と膜面差圧の時間変化率の関係を示すグラフである。
【図11】活性汚泥濃度とFluxの関係を示すグラフである。
【図12】膜モジュールの上向流の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の膜分離活性汚泥システム及び膜分離活性汚泥方法の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図1は本発明の膜分離活性汚泥システムの構成概略を模式的に示した図である。本実施形態の膜分離活性汚泥システム10は、生物反応槽と、膜分離槽を主な基本構成とし、具体的に流入調整槽12と、無酸素槽14と、好気槽16と、膜分離槽18から構成されている。
【0030】
生物反応槽は、活性汚泥により被処理水を生物反応する処理槽である。本実施形態の生物反応槽は、一例として、無酸素槽14と、好気槽16から構成されている。無酸素槽14には槽内に撹拌手段(不図示)が設置されている。無酸素槽14では、活性汚泥により被処理水中の硝酸が窒素に変わり外部に放出される脱窒反応を行っている。好気槽16には槽内に散気手段16aが設置されている。散気手段16aは、活性汚泥に対して高効率的に酸素供給を行うために、気泡径が比較的細かい微細散気を供給可能に構成している。好気槽16では、活性汚泥により被処理水中のアンモニアが分解されて硝酸となる硝化反応が行われている。なお、好気槽16と無酸素槽14の間には、好気槽16中の被処理水を一部返還する配管16bが設定されている。このような構成により、好気槽16で生じた硝酸を無酸素槽14で処理することができる。また、生物反応槽の前段には、流入調整槽12を設けることができる。流入調整槽12は、原水が導入され、後段の生物反応槽への被処理水の流入量を調整制御する水槽である。
【0031】
次に、本実施形態の活性汚泥濃度について以下説明する。
一般に、好気槽における硝化菌は比較的増殖速度が遅い。このため、好気槽内で硝化菌を保持するためには、好気的汚泥滞留時間(A−SRT)を十分に確保する必要がある。また好気的汚泥滞留時間は、反応槽から系外への活性汚泥の引き抜き量によって調整することができる。この好気的汚泥滞留時間の設定によって、槽内の活性汚泥濃度を決めることができる。
【0032】
ここで、好気的汚泥滞留時間と水温(T)の関係は、一般に次式で表すことができる。
【数1】
【0033】
また好気的汚泥滞留時間と活性汚泥濃度の関係は、一般に次式で表すことができる。
【数2】
ここで、各記号は、X:活性汚泥濃度、Cssin:流入原水の懸濁物質(SS)、ζ:汚泥変換率、τa:好気HRT(水理学的滞留時間)をそれぞれ示している。
【0034】
活性汚泥は成分、水温、装置の運転条件等のパラメータにより変化する。そこで本実施形態では、水温Tをパラメータとして好気的滞留時間を求めた後(数式1)、この好気的滞留時間を満たす活性汚泥濃度を求めている(数式2)。
【0035】
数式1,2より、冬季を想定した前記被処理水の水温T=15°のとき、活性汚泥濃度Xは8000mg/Lよりも大きければよい(X>8000mg/L)。
また、夏季を想定した前記被処理水の水温T=20°のとき、活性汚泥濃度Xは6100mg/Lよりも大きければよい(X>6100mg/L)。
【0036】
また、本実施形態では、従来の生物反応槽の活性汚泥濃度の設定値である10000mg/L〜15000mg/Lよりも低濃度化する観点から、活性汚泥濃度の上限値としては、10000mg/Lよりも小さければ、散気量を低減することができる。
【0037】
従って、本実施形態の生物反応槽で硝化反応を維持できる活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きければよい。
また、前記活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きくし、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きくなるように設定するとよい。
【0038】
次に、活性汚泥濃度と酸素移動効率の関係について説明する。図2は活性汚泥濃度と酸素移動効率の関係を示すグラフである。
生物処理に必要な散気量を設計する際の根拠となる酸素移動効率(EA)は、数式3を用いて算出することができる。
【数3】
ここで、EA:酸素移動効率(%),KLa:総括酸素移動容量係数,C:DO濃度(mg/L),CS:飽和DO濃度(mg/L),GS:送風量(m3/h),ρ:空気密度,OW:空気中の酸素含有量,V:槽容量(m3)である。
【0039】
図2に示すように、活性汚泥濃度が低くなるほど、酸素移動効率が増加している。汚泥濃度8000mg/L付近では,従来運転条件の汚泥濃度10000mg/Lと比較して、EAが1.16倍となり、理論上、散気量を14.1%削減することができる。
【0040】
また、汚泥濃度6100mg/L付近では,従来運転条件の汚泥濃度10000mg/Lと比較して、EAが1.34倍となり、理論上、散気量を25.6%削減することができる。
【0041】
膜分離槽18には、平膜ろ過装置が設置されている。
図3は平膜ろ過装置の構成概略図である。図示のように平膜ろ過装置50は、下水や工業排水などの被処理水を満たした膜分離槽18と、膜ユニット20と、担体40とを主な基本構成としている。
【0042】
膜ユニット20は、膜モジュール24と散気手段30から構成されている。膜モジュール24は、複数の平膜となる膜エレメント22から構成されている。膜エレメント22は、平板状のろ過膜である。複数枚の膜エレメント22は、膜面が互いに平行となるように所定の間隔を開けて並列に配置され、側面をケーシング26で囲った膜モジュール24を形成している。膜モジュール24は、上面及び下面を開口させて、膜エレメント22の膜間を被処理水が垂直方向に通過する流路が形成されている。この膜モジュール24に、後述する散気手段30と、ろ過ポンプ58と、配管28を組み合わせて膜ユニット20が形成される。膜モジュール24は、配管28を介してろ過ポンプ58に接続している。ろ過ポンプ58を駆動させることにより、膜エレメント22の膜表面からろ過されたろ過水(処理水)が配管28を通過して外部に排出される。
【0043】
散気手段30は、膜分離槽18内に気泡を発生させている。散気手段30は、ケーシング26を平面視して囲まれた領域内となる膜モジュール24の下方に取り付けられ、膜モジュール24の膜間流路内に気泡を滞留浮上させている。これにより、被処理水と気泡の気液混相の状態である膜間流路内と、被処理水の単相の状態である処理槽内であって膜モジュール24の外側との間で密度差が生じる。このような膜間流路内では、上向きの流れとなる上向流が発生する。散気手段30は、一例として、並列配置した膜エレメント22に沿って複数の散気管を並列に配置した構成を適用することができる。また散気手段30は、散気孔を散気管の下部に設けて、散気ポンプ(不図示)と接続して散気空気量を任意に調整するように構成している。
【0044】
担体40は、膜分離槽18内の被処理水に添加して、被処理水に対して上向流による速度差を持たせている。
具体的に本実施形態の担体は、上向流で処理槽内を流動可能とし、密度が水よりも高くなるように設定している。担体の密度が水よりも高いと、膜間流路を移動する被処理水中では、担体が被処理水よりも遅い流れで移動する。よって、膜間流路の幅方向に均一に導入された担体は、上向流の流れで中央部に被処理水が移動しようとすると、速度の差が抗力となって、被処理水の中央部の移動を抑える作用をする。このため、担体は、膜間流路の導入時の均一分散を維持した状態で移動することになる。従って、気液二相流速分布を平坦化して膜エレメントの膜面を均等に洗浄することができる。
【0045】
なお、本実施形態の担体の材質としては、膜エレメントの膜面に損傷を与えることがない材質であることが望ましい。このような担体の一例として、含水率の高い高分子ゲル材料、ゴム樹脂等を適用することができる。その他、被処理水中で水を吸収することにより水と密度が近似し、且つ、密度が高くなるような空隙率が高い素材となるウレタンフォームのような多孔性材料を適用することもできる。
【0046】
また本実施形態の担体は、多面体となるように形成している。担体は一例として立方体に形成している。立方形状の担体であれば、容易に加工することができる。このような立方形状の担体は、球形状に比べて約2倍の抵抗係数を備えている。多面体に形成された担体は、膜間流路を移動する被処理水中で、被処理水の流れが角部によって妨げられ易くなり、被処理水よりも遅い流れで移動する。よって、膜間流路の幅方向に均一に導入された担体は、上向流の流れで中央部に被処理水が移動しようとすると、多面体の形状が抗力となって、被処理水の移動を抑える作用をする。このため、担体は、膜間流路の導入時の均一分散を維持した状態で移動することになる。従って、気液二相流速分布を平坦化して膜エレメントの膜面を均等に洗浄することができる。
【0047】
担体の密度に関しては、基本的には水よりも高く、実用上は、2.5g/cm3よりも低いことが望ましい。実用面において、膜間流路の平均流速は、0.1m/sから0.4m/s程度である。仮に3mm角の担体の密度が2.5g/cm3を越える場合、終端沈降速度が0.2m/s以上になり流動状態が悪くなることが予想される。流速の低い領域では、膜間流路を上昇移動せずに、膜分離槽内の底部等のよどみ部に滞留し、本発明の効果を得ることが難しくなる。そのため、担体の密度は1g/cm3よりも高く、2.5g/cm3以下であることが望ましい。
なお、担体40は、膜分離槽18内で被処理水に添加するほか、予め被処理水中に添加させて、膜分離槽18内に導入する構成とすることもできる。
【0048】
また、本発明の担体は、処理槽内の被処理水の数十%となる体積充填率を維持するように設定している。平膜分離装置の運転では、ろ過水の取り出しによって、処理槽内の原水固形物濃度が高くなる。そこで、定期的に固形物汚泥を引き抜くことにより、原水固形物濃度を調整することができる。この引き抜き工程によって処理槽内の担体も引き抜かれることになる。前述の体積充填率を維持するため、固形物汚泥の引き抜きと同時に所定量の担体を添加している。
【0049】
次に、図4〜図7を用いて担体40の形状の条件についてより詳しく説明する。図4は膜間流路幅と膜エレメントの水平方向の長さのパラメータの説明図である。図5は混相流体中を上昇移動する担体の説明図である。
【0050】
図4に示すように、膜エレメント22の水平方向の幅長さをLとし、膜エレメント22間の距離(流路幅)をWとする。一般の平膜ろ過装置は、流路幅Wが幅長さLに対して十分小さく、一例として数mmから十数mmの範囲に設定されている。
【0051】
次に、図5に示すように、水平断面方向の流路幅W×Wの範囲となる直方体に関して、水平方向には担体が一つしか存在せず、垂直方向には複数の担体が分布して存在すると仮定する。
【0052】
そして、このようなW×Wの流路が、幅長さLとなる水平方向に連なって膜間流路が構成されていると想定して、担体の物質収支と運動量収支について以下検討する。
【0053】
まず、担体の直径をdとし、それと同体積球の直径を用いた等価直径deは、数式4で表すことができる。
【数4】
ここで、担体は、前述のように水平断面方向の流路幅W×Wの範囲で一定量(一定添加率)となるように調整されていると仮定している。また、液体についても、当該流路内にて一定流量で流れていると仮定している。さらに、散気手段から生成される気泡についても一定流量で散気されていると仮定している。
【0054】
そうすると、流路内には、これら担体、液体、及び気体の吸い込みや湧き出しが存在しないことから、物質量は保存されていると考えることができる。
そこで、液体と気体の二相流体相について、この混相流体(液相と気相の混合流体をいう。)の流速をuF とし、担体の速度をuPとすると、担体のボイド率(断面積比率)αPを用いて、物質収支の関係式は数式5で表すことができる。
【数5】
なお、Jは、担体と混相流体全体の体積フラックス(等価速度)であり、上記の通り一定流量で与えられるものであるから一定値をとっている。
【0055】
次に、運動量の収支、すなわち担体に係る重力と流体から受ける抗力の釣り合いを考える。担体の体積をVol、断面積をA(等価直径deで与えられる面積で、この径の円面積とする。)、混相流の密度をρL、担体と混相流体の密度差をΔρ、更に、担体の抗力係数をCDで与えると、釣り合いの式は数式6のように表すことができる。
【数6】
なお、本来、重力加速度gはベクトルであり、速度もベクトルであるが、本実施形態では一次元的な上昇運動のみを扱うことから、これらの物理量は鉛直成分のみで示している。
【0056】
また、数式6の右辺の速度の二乗に関する項は、担体の密度が混相流密度より高いことから正の値として表現し、かつ重力加速度gについても絶対値(正の値)として扱うものとする。
【0057】
次に、数式5と数式6を連立させて式を変形することで、担体の速度uPは、数式7のように表すことができる。
【数7】
ここで、担体の抗力係数CDはRe数(レイノルズ数)の関数であるが、混相流体と担体の密度差は小さい。
従って、流速差も小さいのでRe数は大きくなく、Re数に反比例する式で表すことができる。これは層流と仮定できるためである。
【0058】
Re数は数式8で、抗力係数CDは数式9で表すことができる。
【数8】
【数9】
なお、νは、混相流体の動粘性を示し、係数Kは45程度の値で与えられる。
【0059】
次に、数式4、数式5、数式7、数式8及び数式9を用いると、数式10のように表すことができる。
【数10】
【0060】
ここで、担体のボイド率(断面積比率)αPは、その定義から数式11のように表すことができる。
【数11】
このため、数式10は、数式11を用いて数式12のように表すことができる。
【数12】
得られた数式12は、担体と混相流体の速度の差を示すものである。この速度差が大きいほど担体が作用する抗力が高くなり、前述のように渦や剥離等から誘導するせん断力が高くなる。
【0061】
また、前述のように担体は、混相流体に随伴して動きにくくなるので、混相流体が膜間流路の水平幅方向に関して中心部に流速が集中する傾向に対して抵抗する運動をする。このため、本実施形態の担体は、当該幅方向に分散して、混相流体の整流器として作用し、上述の効果を高めることができる。
【0062】
そこで、数式12において、当該流速差が極大化するのは数式12右辺の次式(数式13)が最小化すれば、これらの効果が極大化すると考えることができる。
【数13】
この数式13は比速度差に相当するものである。このサイズ比(担体の等価直径deと流路幅Wの比)に関して、図6のようにグラフ化することができる。図6は比流速差とサイズ比の関係を示すグラフである。同図縦軸は比流速差を示し、横軸はサイズ比(流路幅に対する担体の一辺の長さの比)を示している。
【0063】
ここで、この比流速差は、数式13を微分することで、次のサイズ比において極大化する。
【数14】
図6に示すように、比流速差とサイズ比(担体/流路幅)の関係は下向きに凸な放物線状に表され、数式14に示すようにサイズ比が約0.71のとき、比流速差が最も大きくなる。担体が流体から受ける抗力が最大となる一方で、担体が作用反作用の法則により、流体にもたらす仕事も最大となり、担体近傍での流体の乱れの効果も最大となる。従って渦や乱れの誘導が最大化し、膜面洗浄に必要な流体のせん断力も最大化することができる。
【0064】
次に、膜間流路の幅に対して担体の適切なサイズを与えるサイズ比について検討する。担体の直径サイズが膜間流路の幅の半分よりも小さい場合、膜間に2つ以上の担体が同時に通過することが可能となる。このとき、多面体形状の担体の向きによって、少なくとも2個の担体が架橋して膜間流路内に閉塞して留まってしまう可能性がある。そこで、担体のサイズ比の下限値としては、0.5以上であることが望ましい。このサイズ比0.5のときの比流速差は−0.19である。図6に示すように比流速差とサイズ比の関係は、サイズ比0.71を最下点とする下向きに凸な放物線状に表されており、サイズ比0.5以上0.71の範囲では比流速差が大きくなる。一方、サイズ比0.71を超えて、更に0.9を超える場合、サイズ比が0.5のときの比流速差(−0.19)よりも絶対値が小さくなってしまい、流速差に基づく乱れの効果が得られにくくなる。そこでサイズ比の上限値としては0.9以下であることが望ましい。
【0065】
以上より、サイズ比の範囲は、数式15のように表すことができる。
【数15】
【0066】
なお、担体の直径dについては、数式4に基づいて、数式16の範囲が有効であると考えられる。
【数16】
また、担体の添加は、生物処理用の高効率微細散気の酸素溶解効率を低下させることがある。これは、被処理水中に担体が存在することによって、微細気泡の流路幅が狭まり、微細気泡同士が結合して大型化してしまうからである。
【0067】
従って、本実施形態の好気槽16では、浮遊する汚泥(活性汚泥)のみとし、膜分離槽18にのみ担体40を流動させるように制御している。膜分離槽18から好気槽16へ活性汚泥を返送する配管18aを接続しているが、膜分離槽18の配管入口に担体分離スクリーンとなるストレイナー19を取り付けている。ストレイナー19のメッシュ幅は、担体40の一辺の長さよりも短く設定している。これにより担体40はストレイナー19を通過することができず、被処理水と活性汚泥の一部が膜分離槽18から好気槽16へ返送される。これにより、本実施形態の担体40は、膜分離槽18のみを流動し、好気槽16で流動することがない。
【0068】
なお、汚泥濃度が硝化反応を維持できる程度の濃度であれば、生物処理性能は、活性汚泥のみで処理が可能であり、本実施形態で添加する担体の生物処理能力の有無は問わないものとする。
【0069】
次に、上記構成による膜分離活性汚泥システムを用いた膜分離活性汚泥方法について以下説明する。
原水が流入調整槽12に導入されて、後段の生物反応槽への被処理水の供給量が制御される。生物反応槽を構成する無酸素槽14では、活性汚泥により被処理水の脱窒反応が行われる。また好気槽16では、活性汚泥により被処理水の硝化反応が行われる。本実施形態の生物反応槽の活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定している。
【0070】
また、活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きくし、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きくなるように設定している。
【0071】
このように、本実施形態では、従来の生物反応槽における活性汚泥濃度の設定値である10000mg/L〜15000mg/Lよりも低濃度であって、硝化反応を維持できる濃度に設定しているため、硝化反応に必要とされる微細気泡の散気量を低減することができる。従って、システム全体の低コスト化を図ることができる。
【0072】
ついで、膜分離槽18内に生物処理後の被処理水が導入される。担体は、予め被処理水に添加されて被処理水に導入される。または処理槽内の被処理水に担体を添加するようにしてもよい。
膜分離槽18内では、膜モジュール24の下方に取り付けた散気手段30により散気が行われている。
【0073】
図7は膜間流路の上向流の説明図である。図示のように膜モジュール24の下方から膜間流路に導入された被処理水は、担体と共に散気の上向流によって膜間を上昇する。本実施形態の担体は、上向流で膜分離槽18内を流動可能とし、密度が水よりも高く、また多面体であるため、被処理水と気泡の気液二相流体から抗力を受け易くなり、上向流の流れよりも遅い流れで移動する。このため、膜間流路の水平幅方向に関して、ケーシング周辺に存在する担体が中央部に移動し難くなり、分散した状態で略均一に存在することになる。よって、膜間流路の散気手段がある入口部から上部出口部まで移動する間に、横幅方向に分散しながら上昇移動することが可能となる。
【0074】
担体は、膜間流路を分散しながら移動する整流器として機能することにより、流路中央部に流速の速い箇所が生じる気液二相流速分布を平坦化することができる。よって、膜面に対して速度差に基づくせん断力が生じて、膜面全体を均等に洗浄することができ、通常の散気量で洗浄効果を向上させることができる。
【0075】
また、気泡の周囲に生じる乱れがせん断力を誘導して膜面洗浄に寄与するのと同様に、密度が水よりも高く、多面体の担体の周囲にも、流体の渦や剥離による乱れが生じて、それらの乱れが誘導するせん断力も発生する。そのため、せん断力が発生する箇所が増加することになり、従来の平膜式のろ過装置に比べて膜面洗浄の効果を高くすることができる。
【0076】
膜分離槽18内に浸漬配置された膜ユニット20では、ろ過ポンプ58が可動することにより、固液分離されたろ過水(処理水)が膜エレメント22の膜面を通過して配管を介して外部に排出される。
【0077】
図8は平膜ろ過装置の変形例の説明図である。図9は変形例の平膜ろ過装置の上向流の説明図である。図示のように変形例の平膜ろ過装置500は、複数の膜モジュール24a,24b,24cを処理槽内の上下方向に多段に積層させている。その他の構成は図3に示す装置と同様の構成であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。このような変形例の平膜ろ過装置500であっても、図9に示すように、下段の膜モジュール24cにおいて膜間流路の水平幅方向に略均一化された担体が、そのまま維持された状態で上段の膜モジュール24b,24aに順次供給される。このため、従来、最上段の膜モジュール24aで顕著に生じていた流速分布の差がなくなり、膜モジュール24a,24b,24cの全範囲の膜面を均等に洗浄することができる。
【0078】
図10は散気量と膜面差圧の時間変化率の関係を示すグラフである。同グラフの横軸は散気量(L/min)を示し、縦軸はdTMP/dt(kPa/s)を示している。ここでdTMP/dtは、膜間差圧の時間変化率であり、ろ過ポンプ58の吸引によって膜エレメント22の膜面に作用する差圧の時間変化を表している。dTMP/dtは、低い値ほど散気による洗浄性能が高くなり、膜面に汚泥が付着して塞がれたような状態ではろ過ポンプ58の圧力が作用して高い値となる。なお同グラフは、平膜ろ過装置の通常運転よりも、流速を1.25倍に設定した条件で行ったものである。
【0079】
また、四角プロットは、膜分離槽に膜ユニットを浸漬し、かつ、担体を10%添加して散気量を変化させたときのdTMP/dtをプロットしたものである。菱形プロットは、膜分離槽に膜ユニットを浸漬して散気量を変化させたときのdTMP/dtをプロットしたものである。
【0080】
図示のように、担体の有無に係らず、散気量を減らすとdTMP/dtは増加し、洗浄能力が低下する傾向にある。これは、膜間の上向流が生じにくくなり、膜面に活性汚泥が付着し易くなるためである。
【0081】
一方、担体有りと無しの場合では、担体有りの場合は担体無しの場合と比べてdTMP/dtが低下し、高い洗浄能力がある。また、従来の一般的な平膜ろ過装置の運転条件となる担体無し、且つ散気量が12L/minのdTMP/dt値(0.0055kPa/s)よりも、担体有りの運転条件ではいずれも、dTMP/dtが低下しており、担体を添加することによる高い洗浄効果が得られることが表れている。
【0082】
図11は活性汚泥濃度とFluxの関係を示すグラフである。同グラフの横軸は活性汚泥濃度(mg/L)を示し、縦軸はFlux(透過流速:m/日)を示している。また四角プロットは、膜分離槽に膜ユニットを浸漬し、活性汚泥濃度を変化させたときのFluxをプロットしたものである。菱形プロットは、膜分離槽に膜ユニットを浸漬し、かつ、担体を10%添加、活性汚泥濃度を変化させたときのFluxをプロットしたものである。
【0083】
四角プロットに示す担体を含まない膜分離槽では、活性汚泥濃度が10000mg/L〜11000mg/Lのとき、Flux(m/日)が0.8となり最も高い値を示している。活性汚泥濃度が11000mg/Lを超えるとFlux値は低下する。これは膜表面で活性汚泥が厚密化するためである。一方、活性汚泥濃度を10000mg/Lよりも小さくすると、Flux値が低下する。これは、被処理水の粘度が下がるため、活性汚泥のせん断力が低下して、膜面の洗浄効果が得られなくなるためである。
【0084】
一方、菱形プロットに示す担体と活性汚泥を含む膜分離槽では、担体を添加することにより、担体無しの場合(すなわち、平膜ろ過装置の通常運転となる担体無しで活性汚泥濃度が10000mg/Lから15000mg/LにおけるFlux値0.8m/日)よりも、活性汚泥濃度11000mg/L以下でもFlux値を全体的に高めることができる。従って、生物反応槽における活性汚泥濃度を10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定しても、担体を添加することにより、膜分離槽ではFlux値が高まり、膜面の十分な洗浄効果が得られる。
【0085】
このような本発明の膜分離活性汚泥システムによれば、活性汚泥濃度を少なくとも硝化反応を維持することができる濃度に設定しているため、活性汚泥量を減らすと共に、生物反応に必要な散気量を低減することができる。また、密度が水よりも高い担体を添加することにより、活性汚泥濃度の低下による膜分離槽での洗浄効果を高めることができる。従って、システム全体のコスト低減化を図ることができる。
【符号の説明】
【0086】
10………膜分離活性汚泥システム、12………流入調整槽、14………無酸素槽、16………好気槽、16a………散気手段、16b………配管、18………膜分離槽、18a………配管、19………ストレイナー、20………膜ユニット、22………膜エレメント、24………膜モジュール、26………ケーシング、28………配管、30………散気手段、40………担体、50,500………平膜ろ過装置、200………膜エレメント、202………膜モジュール、204………散気管、206………側部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を活性汚泥で生物処理する生物反応槽と、
並列配置した複数の平膜の側面をケーシングで囲った膜モジュールを浸漬して、複数の平膜の膜間に前記生物反応槽からの前記被処理水の上向流を生じさせながら固液分離する膜分離槽と、を備え、
前記生物反応槽の活性汚泥濃度を少なくとも硝化反応が行える濃度以上とし、
前記上向流によって前記膜分離槽内を流動可能とし、密度が水よりも高い担体を前記膜分離槽内のみに添加したことを特徴とする膜分離活性汚泥システム。
【請求項2】
前記活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定したことを特徴とする請求項1に記載の膜分離活性汚泥システム。
【請求項3】
前記活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きく設定し、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きく設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の膜分離活性汚泥システム。
【請求項4】
前記担体は、多面体であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥システム。
【請求項5】
前記担体は、前記平膜間の流路幅に対する一辺の長さの比が0.5以上から0.9以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の膜分離活性汚泥システム。
【請求項6】
前記膜分離槽には、
前記被処理水を前記生物反応槽に返送する配管と、
前記配管の流入口に担体分離スクリーンと、
を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の膜分離活性汚泥システム。
【請求項7】
生物反応槽で被処理水を少なくとも硝化反応が行える活性汚泥濃度で生物処理して、
並列配置した複数の平膜の側面をケーシングで囲った膜モジュールを浸漬した膜分離槽に前記被処理水を導入し複数の平膜の膜間に前記被処理水の上向流を生じさせて、
前記上向流による速度差を持たせた担体を前記膜分離槽内のみに添加して、
膜間流路で前記担体を分散させながら前記被処理水を固液分離することを特徴とする膜分離活性汚泥方法。
【請求項8】
前記活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定したことを特徴とする請求項7に記載の膜分離活性汚泥方法。
【請求項9】
前記活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きく設定し、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きく設定したことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の膜分離活性汚泥方法。
【請求項1】
被処理水を活性汚泥で生物処理する生物反応槽と、
並列配置した複数の平膜の側面をケーシングで囲った膜モジュールを浸漬して、複数の平膜の膜間に前記生物反応槽からの前記被処理水の上向流を生じさせながら固液分離する膜分離槽と、を備え、
前記生物反応槽の活性汚泥濃度を少なくとも硝化反応が行える濃度以上とし、
前記上向流によって前記膜分離槽内を流動可能とし、密度が水よりも高い担体を前記膜分離槽内のみに添加したことを特徴とする膜分離活性汚泥システム。
【請求項2】
前記活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定したことを特徴とする請求項1に記載の膜分離活性汚泥システム。
【請求項3】
前記活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きく設定し、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きく設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の膜分離活性汚泥システム。
【請求項4】
前記担体は、多面体であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥システム。
【請求項5】
前記担体は、前記平膜間の流路幅に対する一辺の長さの比が0.5以上から0.9以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の膜分離活性汚泥システム。
【請求項6】
前記膜分離槽には、
前記被処理水を前記生物反応槽に返送する配管と、
前記配管の流入口に担体分離スクリーンと、
を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の膜分離活性汚泥システム。
【請求項7】
生物反応槽で被処理水を少なくとも硝化反応が行える活性汚泥濃度で生物処理して、
並列配置した複数の平膜の側面をケーシングで囲った膜モジュールを浸漬した膜分離槽に前記被処理水を導入し複数の平膜の膜間に前記被処理水の上向流を生じさせて、
前記上向流による速度差を持たせた担体を前記膜分離槽内のみに添加して、
膜間流路で前記担体を分散させながら前記被処理水を固液分離することを特徴とする膜分離活性汚泥方法。
【請求項8】
前記活性汚泥濃度は、10000mg/Lよりも小さく、8000mg/Lよりも大きく設定したことを特徴とする請求項7に記載の膜分離活性汚泥方法。
【請求項9】
前記活性汚泥濃度は、前記被処理水の水温が15度のとき、少なくとも8000mg/Lよりも大きく設定し、前記被処理水の水温が20度のとき、少なくとも6100mg/Lよりも大きく設定したことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の膜分離活性汚泥方法。
【図2】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2012−166142(P2012−166142A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29073(P2011−29073)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 省水型・環境調和型水循環プロジェクト 水循環要素技術研究開発 省エネ型膜分離活性汚泥法(MBR)技術の開発委託研究、産業技術強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 省水型・環境調和型水循環プロジェクト 水循環要素技術研究開発 省エネ型膜分離活性汚泥法(MBR)技術の開発委託研究、産業技術強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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