説明

膜厚むら検査装置及び方法

【課題】検査に適切な明るさやコントラストの画像を取得し、膜厚むら検査装置及び方法を提供する。
【解決手段】表面に皮膜が形成された基板を一方向に移動させながら、基板に形成された皮膜の膜厚むらを検査する装置及び方法であって、皮膜の厚みを検出する膜厚検出部を備え、光源部は、撮像部側に配置された反射照明部3aと、基板を挟んで撮像部に対向する位置に配置された透過照明部3bを備え、撮像部4は基板との相対角度を調節する撮像部角度調整手段を備え、反射照明部は反射照明部と基板との相対角度を調節する反射照明角度調整手段を備え、透過照明部は透過照明部と基板との相対角度を調節する透過照明角度調整手段を備え、膜厚検出部からの膜厚情報に基づき、反射照明角度調節手段及び透過照明角度調整手段を制御し、反射照明の光量及び透過照明の光量を調節する制御部を備えたことを特徴とする膜厚むら検査装置及び方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルターの製造工程などにおいて、ガラスや透光性の樹脂材などの基板上に形成されたカラー皮膜の厚みむら(いわゆる、膜厚むら)を検査するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フラットパネルディスプレイに用いられるカラーフィルターの製造工程などにおいて、顔料分散の不均一や、成分凝集、成膜時の振動の影響により生じる膜厚むらに起因し、色むらとなる事が知られている。前記膜厚むらが生じたままで製造作業を継続するという不都合の発生を防止するために、カメラと透過照明とを用いて、色むらの有無、程度などを検査することが行われていた。(例えば、許文献1)。
【0003】
さらにカメラと反射照明とを用いて、基板の表面に形成されている層が様々に変化した場合であっても、これに対応して、発生したムラを鮮明に撮像する技術が開示されている(例えば、許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−234470号公報
【特許文献2】特開2007−309718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
種々の色むらは、赤色・青色・緑色などの成膜のいずれかの成膜の一部に膜厚の不均一な部分(つまり、膜厚むら)を含むことで生じる。前記各色の成膜の膜厚むらの検査は、検査対象となる基板と撮像部との角度を変更し、その角度や検査対象に応じて照明の種類や角度や位置を変更して行われるが、検出しにくい膜厚むらの場合、皮膜全体の膜厚(つまり、膜厚のない部分の膜厚。いわゆる代表膜厚)が異なると、膜厚むらのコントラストが十分に得られない場合がある。そのため、成膜されている皮膜の代表膜厚がことなる基板を複数検査する場合、それぞれの基板を同じ撮像条件で検査をしても、確実な検査結果を得ることが難しい場合があった。
【0006】
そこで本発明は、代表膜厚が異なる同一品種の基板について、共通する検査条件に基づき、代表膜厚の違いに応じて検査に適切な明るさやコントラストの画像を取得し、確実な検査結果を得ることができる膜厚むら検査装置及び方法を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
表面に皮膜が形成された基板を保持して移動させる基板移動部と、
前記基板に対して光を照射する光源部と、
前記基板の皮膜が形成された面の少なくとも一部を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像に基づいて前記皮膜の厚みむらを検査する検査部とを含み、
前記基板を一方向に移動させながら、前記基板に形成された皮膜の厚みむらを検査する
膜厚むら検査装置であって、
検査対象品種に応じた検査条件を設定登録する検査条件登録部と、
前記基板に形成された皮膜の代表膜厚を検出する代表膜厚検出部とを備え、
前記光源部は、
前記撮像部側に配置されて前記基板に光を照射する反射照明部と、
前記基板を挟んで前記撮像部に対向する位置に配置されて前記基板に光を照射する透過照明部とを備え、
前記撮像部には、前記撮像部と前記基板との相対角度を調節する撮像角度調整部を備え、
前記反射照明部には、前記反射照明部と前記基板との相対角度を調節する反射照明角度調整部を備え、
前記透過照明部には、前記透過照明部と前記基板との相対角度を調節する透過照明角度調整部を備え、
前記検査条件登録部に登録された検査条件と、前記代表膜厚検出部からの代表膜厚情報に基づいて、
前記撮像部角度調整部と前記反射照明角度調節部と前記透過照明角度調整部とを制御し、
前記反射照明の光量及び前記透過照明の光量を調節することができる制御部を備えた
ことを特徴とする膜厚むら検査装置である。
【0008】
請求項5に記載の発明は、
表面に皮膜が形成された基板を保持して移動させる基板移動ステップと、
前記基板に対して光源部から光を照射して前記基板の皮膜が形成された面の少なくとも一部を撮像する撮像ステップと、
前記撮像部で撮像された画像に基づいて前記皮膜の厚みむらを検査する検査ステップとを含み、
前記基板を一方向に移動させながら、前記基板に形成された皮膜の厚みむらを検査する
膜厚むら検査方法であって、
検査対象品種に応じた検査条件を設定登録する検査条件登録ステップと、
前記基板に形成された皮膜の代表膜厚を検出する代表膜厚検出ステップを有し、
前記光源部は、
前記撮像部側に配置されて前記基板に光を照射する反射照明部と、
前記基板を挟んで前記撮像部に対向する位置に配置されて前記基板に光を照射する透過照明部とが含まれて構成されており、
前記撮像ステップは、
前記検査条件登録部に登録された検査条件と、前記代表膜厚検出ステップで検出された代表膜厚情報に基づいて、
前記撮像部と前記基板との相対角度を調節する撮像部角度調整ステップと、
前記反射照明部と前記基板との相対角度を調節する反射照明角度調整ステップと、
前記透過照明部と前記基板との相対角度を調節する透過照明角度調整ステップと、
前記反射照明又は前記透過照明の光量を調節する光量調節ステップとを有する
ことを特徴とする膜厚むら検査方法である。
【0009】
上記膜厚むら検査装置及び方法を用いるので、
膜厚むらの対象となる皮膜の厚みを測定し、その膜厚に適した観察角度と、照明の位置及び角度と、照明の光量とを設定して、自動で膜厚むら検査を行うことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
同一の前記基板の繰り返し検査回数をカウントする計数部を備え、
前記カウント回数に応じて、前記撮像部の角度又は前記照明の光量を変更する機能を備えたことを特徴とする請求項1に記載の膜厚むら検査装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、
同一の前記基板の繰り返し検査回数をカウントする計数ステップと、
同一の前記基板を少なくとも2回以上検査する繰り返し検査ステップと、
前記カウント回数に応じて、前記撮像部の角度又は前記照明の光量を変更するステップと
を有することを特徴とする請求項5に記載の膜厚むら検査方法である。
【0012】
上記膜厚むら検査装置及び方法を用いれば、
1回目での検査と2回目以降の検査では、観察角度、照明の位置若しくは角度、又は照明の光量を変更して検査を行うことができる。そうすれば、1回目では適切な明るさやコントラストの画像が取得しづらい品種であっても、2回目以降の検査で適切な明るさやコントラストの画像を取得できる。そのため、膜厚むらの検出しにくい品種であっても、入念に膜厚むらの検査を行うことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、
前記検査部は、
前記繰り返し検査したそれぞれの画像を多重合成処理する画像処理部を備え、
前記合成処理した画像を多重合成して得られた多重合成画像に基づいて膜厚のむらを検査する、多重合成画像検査機能を備えたことを特徴とする請求項2に記載の膜厚むら検査装置である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、
前記繰り返し検査ステップにおいて、それぞれの画像を取得する画像取得ステップと、
前記取得されたそれぞれの画像を多重合成処理する多重画像合成処理ステップと、
前記多重合成処理した画像に基づいて、膜厚のむらを検査する多重合成画像検査ステップとをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の膜厚むら検査装置である。
【0015】
上記膜厚むら検査装置及び方法を用いれば、1回目での検査と2回目以降の検査で得られた画像を多重合成処理するので、ある1つの観察条件で得られた画像に対して検査するよりも、ノイズ成分の少ない検査を行うことができる。そのため、1つの撮像条件のみで得られた全面画像に基づいて検査するよりも、微妙なコントラスト画像しか得られないような膜厚むらに対しても、確実な検査を行うことができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、
前記撮像部と前記透過照明とが連結されており、
前記撮像部角度調整部が、前記透過照明角度調整部を兼ねている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の膜厚むら検査装置である。
【0017】
上記膜厚むら検査装置を用いれば、前記撮像部と前記透過照明とを一体で回転させることができるので、前記透過照明の角度を個別に調節する機構を省くことができる。そのため、位置調整機構の数を減らすことができ、装置のコストダウンが計れる。
【発明の効果】
【0018】
検査対象となる皮膜の厚みが変わっても、それに応じて適切な明るさやコントラストの画像を取得し、確実に膜厚むらの検査結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明を具現化する形態の一例を示す平面図である。
【図1B】本発明を具現化する形態の一例を示す側面図である。
【図2】本発明を具現化する形態の一例を示すシステム構成図である。
【図3A】本発明を適用させる皮膜の厚さ毎の照明角度とむら強度の相関図である。
【図3B】本発明を適用させる皮膜の厚さと照明角度との相関図である。
【図4】本発明を具現化する形態の一例を示すフロー図である。
【図5A】本発明を具現化する形態の第2の例を示す平面図である。
【図5B】本発明を具現化する形態の第2の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。
図1Aは、本発明を具現化する形態の一例を示す平面図である。
図1Bは、本発明を具現化する形態の一例を示す側面図である。
各図において直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面を水平面、Z方向を鉛直方向
とする。特にZ方向は矢印の方向を上とし、その逆方向を下と表現する。また、X方向を軸中心とする回転方向をθ方向とする。
【0021】
膜厚むら検査装置1は、基板移動部2と、光源部3と、撮像部4と、検査部と、制御部9とを含んで、構成されている。ここでは、検査対象の基板として、ガラスにカラー皮膜が塗布された基板10を例示して説明する。
【0022】
基板移動部2は、上流側移動部2aと下流側移動部2bとを含んで構成されており、上流移動部2a及び下流移動部2bは、装置フレーム11に取り付けられたコンベアフレーム12と、コンベアフレーム12に取り付けられたコンベアローラ23と、コンベアローラ23を回転駆動させるためのコンベア駆動モータ24とを含んで構成されている。
上流側移動部2aと下流側移動部2bとは、基板10をY方向に移動搬送できるように、基板検査ライン41を挟んで配置されている。そのため、基板移動部2は、載置された基板10をY方向に移動搬送させ、基板検査ライン41を通過させることができる。
【0023】
光源部3は、反射照明部3aと透過照明部3bとを含んで構成されている。
反射照明部3aは、反射照明31と、反射照明角度調整手段32と、反射照明位置調整手段33と、反射照明光量調節ユニット34とを含んで構成されている。反射照明31は、反射照明角度調整手段32に取り付けられており、θ方向に回転させて、基板10との角度を調整することができる。反射照明角度調整手段32は、反射照明位置調整手段33に取り付けられており、反射照明31とともにY方向に移動し、位置が調整できる。反射照明位置調整手段33は支柱39に取り付けられており、支柱39は装置フレーム11に取り付けられている。反射照明31は、X方向に基板10よりも長い発光部を有している。そのため、反射照明部3aは、位置と角度を変更しつつ、検査ライン41に向けて所定の波長領域を含む光を照射できる構造を有している。
【0024】
透過照明部3bは、透過照明35と、透過照明角度調整手段36と、透過照明位置調整手段37と、透過照明光量調節ユニット38とを含んで構成されている。透過照明35は、透過照明角度調整手段36に取り付けられており、θ方向に回転させて、基板10との角度を調整することができる。透過照明角度調整手段36は、透過照明位置調整手段37に取り付けられており、透過照明位置調整手段37は、支柱39に取り付けられている。透過照明35は、X方向に基板10よりも長い発光部を有している。そのため、透過照明部3bは、位置と角度を変更しつつ、検査ライン41に向けて所定の波長領域を含む光を照射できる構造を有している。
【0025】
反射照明31及び透過照明35としては、LED、ハロゲン、白熱電球、蛍光灯その他の発光手段が例示できる。さらに、後述する撮像部4の感度波長や感度特性に合わせた所定の波長を含む光線を放射するもので、その所定の波長が、基板10の表面に形成された皮膜に一部吸収され、一部反射又は一部通過する波長であれば良い。
反射照明31は反射照明光量調節ユニット34に接続されており、透過照明35は透過照明光量調節ユニット38に接続されており、基板10に照射する光の量をそれぞれ調整することができる。
【0026】
撮像部4は、撮像手段44と、撮像部角度調整手段45と、撮像部位置調整手段46と、撮像部角度検出器47とを含んで構成されている。撮像手段44は、撮像部角度調整手段45に取り付けられており、θ方向に回転させて、基板10との角度を調整することができる。撮像部角度調整手段45は、撮像部位置調整手段46に取り付けられており、撮像手段44とともにY方向に移動し、位置が調整できる。撮像部位置調整手段46は支柱42に取り付けられており、支柱42は装置フレーム11に取り付けられている。撮像手段44は、X方向に基板10よりも長い受光部を有している。そのため、撮像手段44は、位置と角度を変更しつつ、検査ライン41に対して所定の波長領域を含む光を受光できる構造を有している。
【0027】
撮像手段44としては、1次元又は2次元のラインセンサが例示でき、この受光部がX方向に長く1列に並んでいるものや、X方向に所定の長さを有するものを複数用い、それらをX方向及びY方向に所定の間隔を設けて複数列を互い違いに(いわゆる千鳥格子のように)配置したものが例示できる。
【0028】
反射照明部3aは、検査ライン41に向けたときの基板10とのなす角度が、撮像部4と基板10とのなす角度と概ね同じになるように、位置と角度を調節されて配置される。
一方、透過照明部3bは、検査ライン41を挟んで撮像部4と対向し、検査ライン41に向けたときの基板10とのなす角度が、撮像部4と基板10とのなす角度と概ね同じになるように、位置と角度を調節されて配置される。このとき、撮像部4が検査ライン41に対して下流側移動部2bに配置されていれば、反射照明部3aと透過照明部3bとは、検査ライン41に対して上流側移動部2aに配置される。
【0029】
そのため、後述で詳細の説明をするが、Y方向に基板10を走行させながら、基板10の全面を反射照明部3a又透過照明部3bから照射する光を用いて観察をすることができる。
【0030】
また上述では、基板の形態としてガラス基板を例示したが、透光性の樹脂材などの基板であっても適用できる。
【0031】
[システム構成]
図2は、本発明を具現化する形態の一例を示すシステム構成図である。図2に示すように、上述した基板移動部2、光源部3、撮像部4の各機器は、制御部9の各機器と接続されている。
【0032】
制御部9には、制御用コンピュータ90と、情報入力手段91と、情報出力手段92と、発報手段93と、情報記録手段94と、機器制御ユニット95と、画像処理部が接続されて含まれている。
【0033】
制御用コンピュータ90としては、マイコン、パソコン、ワークステーションなどの、数値演算ユニットが搭載されたものが例示される。
情報入力手段91としては、キーボードやマウスやスイッチなどが例示される。
情報出力手段92としては、画像表示ディスプレイやランプなどが例示される。
【0034】
発報手段93としては、ブザーやスピーカ、ランプなど、作業者に注意喚起をすることができるものが例示される。
情報記録手段94としては、メモリーカードやデータディスクなどの、半導体記録媒体や磁気記録媒体や光磁気記録媒体などが例示される。
機器制御ユニット95としては、プログラマブルコントローラやモーションコントローラと呼ばれる機器などが例示される。
【0035】
制御用コンピュータ90には、画像処理ユニット96を介して、撮像部4から出力された映像信号が入力される。前記入力画像は、画像処理部として機能する画像処理ユニット96で、膜厚むらの検査に適した画像処理が施される。その後、画像の輝度信号の差や変化度合いなどから、検査部において膜厚むらかどうかの判断を行う検査が行われる。さらに画像処理部では、ライン毎に撮像した画像を時系列に繋ぎ合わせて基板1枚分の全面画像として合成する時系列合成処理をしたり、複数枚の画像を重ね合わせる多重合成処理をしたり、画像のコントラスト調節をしたりすることができる。
【0036】
この膜厚むらの検査部で検査をする際に用いられる画像処理部としては、上述の画像処理ユニット96に限らず、従来周知の画像処理機能を有する機器を採用することができる。例えば、一般にGPU(グラフィックプロセッシングユニット)と呼ばれ、制御用コンピュータ90の外部に設置される形態のものや、制御用コンピュータ90の筐体内に接続される形態のもの、制御用コンピュータ90の画像処理機能を利用したものなどが例示できる。また、上述の制御用コンピュータ90と画像処理ユニット96が、本発明における検査部を構成している。
【0037】
機器制御ユニット95は、膜厚むら検査装置1を構成する各制御機器(図示せず)と接続されており、それらに対して制御用信号を与えることにより、各機器を動作させたり静止させたりすることができるようになっている。
【0038】
[検査に応じた撮像部角度調節]
膜厚むらの検査に際しては、先ず最上面に形成された皮膜の代表膜厚を、膜厚センサ40を用いて測定する。膜厚センサ40は、本発明の代表膜厚検出部に該当し、膜厚センサ40で測定した代表膜厚の情報は、制御部9の機器制御ユニット95に出力される。膜厚センサ40としては、基板の最上面に形成された皮膜の上面と下面との寸法を測定するものが例示できる。例えば、基板表面に対して斜めから光を照射し、上面からの反射光と下面からの反射光とを三角測量法により測定すれば、厚みを算出することができる。膜厚センサ40は、基板上の1ヶ所についてピンポイントで計測する形態のものに限らず、基板上の数カ所や、所定の長さ又は範囲を測定したり、基板移動中の膜厚を連続的に又は断続的に測定したりして、平均値を出力するものが好ましい。そうすることで、基板上に形成された皮膜の代表膜厚の情報として出力できる。
【0039】
検査に先立ち、本発明の検査条件登録部に該当する情報記録手段94に登録しておいた、検査用レシピファイルの設定情報に基づいて、制御用コンピュータ90から機器制御ユニット95に対して各機器の制御パラメータが送信される。前記検査用レシピファイルは、膜厚むら検査する皮膜の種類(例えば、色違い、メーカ違い、品種違いなど)に応じて複数登録され、膜厚と観察角度及び照明の照射角度との最適条件を設定したプロファイル情報や、観察に用いる照明の光量などについての検査条件が登録されている。そのため、機器制御ユニット95では、前記検査用レシピファイルの設定情報と、前記代表膜厚情報に基づいて、検査時の各機器の位置、角度又は光量を調節することができる。
【0040】
前記検査用レシピファイルの設定情報の一部を例示する。
表1には、例えばレシピAとして、赤色皮膜(品種名:R00123)に対する、1回目から3回目までの検査条件が設定されている。このレシピファイルでは、検査回数は3回であること、検査回数に応じて、観察角度及び反射照明の角度を変化させること、照明の明るさは30%のまま一定であること、透過照明は使用しないことが、設定されている。また、検査条件の設定において、基準とする代表膜厚の値と、そのときに設定する照明などの設定角度、代表膜厚と最適角度との関係を示すプロファイル名(45−50_2150−2200)が設定されている。
【0041】
【表1】

【0042】
表2には、例えばレシピBとして、青色皮膜(品種名:B00123)に対する、1回目から3回目までの検査条件が設定されている。このレシピファイルでは、検査回数が2回であること、検査回数に応じて、透過照明の明るさを変化させること、観察角度、反射照明の角度及び透過照明の角度は最適角度でと同じであること、反射照明は使用しないことが、設定されている。また、検査条件の設定において、基準とする代表膜厚の値と、そのときに設定する照明などの設定角度、代表膜厚と最適角度との関係を示すプロファイル名(50−55_2250−2300)が設定されている。
【0043】
【表2】

【0044】
続いて、基準膜厚と最適角度、観察角度、照明の照射角度及び光量との最適条件を設定したプロファイル情報について説明する。
図3Aは、本発明を適用させる皮膜の厚さ毎の照明角度とむら強度の相関図であり、横軸に照明の角度θ、縦軸にむら強度を示している。図3Aでは、それぞれ異なる代表膜厚毎の前記角度と前記むら強度の相関特性が示されている。ある皮膜の品種において、代表膜厚t1〜t5に対して、相関特性を示している。この相関特性は、予め膜厚の異なる基板を用意しておき、膜厚むらの無い部分で代表膜厚測定しておく。そして、得られた相関特性に基づいて、最もむら強度の高い部分を検査に最適な角度として選択する。このとき、予め用意した基板の代表膜厚t1で最もむら強度の高くなる角度をθ1、代表膜厚t2で最もむら強度の高くなる角度をθ2、同様に、代表膜厚t3〜t5で最もむら強度の高くなる角度をθ3〜θ5とする。
【0045】
図3Bは、代表膜厚と照明角度との相関関係を示す相関図であり、横軸に代表膜厚t、縦軸に前述の検査に最適な角度θfを示している。図3Bでは、上記の測定で得られた、代表膜厚t1〜t5で最もむら強度の高くなる角度θ1〜θ5が、検査に最適な角度θfとしてプロットされており、代表膜厚tの変化とともに検査に最適な角度θfが比例的に変化している様子が示されている。この角度θfは、代表膜厚tにより算出する演算式
θf=f(t)
と規定し、本発明に適用させる。
【0046】
例えば、品種Aにおける、最適角度θf=f(t)を規定することで、測定した皮膜の厚さtに対して、測定に用いる最適角度θfが決まる。
具体例を示すと、品種Aにおける代表膜厚t1が2.15μm、t5が2.20μmで、そのときの照明の最適角度θ1が45度、θ5が50度であり、t1〜t5、θ1〜θ5まで、比例して変化している特性を示す結果が得られていたとすると、
測定した代表膜厚tから、照明の最適角度θを算出する式:θf=f(t)は、
(t)=a・t+bと定義して、a,bを算出する。
aは、a=(θ−θ)/(t−t)で算出でき、a=100が求まる。
bは、b=θ−a・tで算出でき、b=−170が求まる。
したがって、θfを算出する式は、θf=f(t)=100t−170で定義できる。
また、検査条件を登録する際に表1に示したように、基準膜厚を2.18μmと定義すれば、この時の最適角度は48度となるので、これらの情報を前記レシピファイルにて表示させて、1回目あるいは2回目以降の検査条件をレシピファイルに設定する様にすれば、レシピファイル毎の検査条件の管理がしやすくなる。
【0047】
他の皮膜に関する演算式は、皮膜の品種毎に規定する。
例えば、品種Bに適用する演算式は、θf=f(t)、品種Cに適用する演算式は、θf=f(t)といった具合にすれば良い。さらに、この演算式は、反射照明、透過照明毎に設定しても良い。例えば、品種Dに対しては、反射照明の角度θfDr=fDf(t)、透過照明の角度θfDt=fDt(t)といった具合にすれば良い。
そして、上述で図3A,Bを用いて説明したように、それぞれの品種において、膜厚毎の特性カーブから、代表膜厚tと最適角度θfの関係式を算出する。
【0048】
本発明を適用する際は、上述の代表膜厚tと最適角度θfの関係式を、プロファイル情報として予め設定しておく。そうすることで、検査条件を設定した基準膜厚に対して、実際に測定された代表膜厚が異なっても、前記プロファイル情報に基づいて最適角度θfを算出でき、期待した検査結果を得ることができる。
【0049】
[検査フロー]
図4は、本発明を具現化する形態の一例を示すフロー図である。図4では、基板10の上に形成されたカラー皮膜の膜厚むらを観察し検査する一連のフローが、ステップ毎に示されている。検査に先立ち、上述の検査用レシピファイルは予め設定しておく。
【0050】
先ず、基板10を膜厚むら検査装置1の上流側移動部2aに載置する(s101)。
次に、膜厚センサ40を用いて、基板10の上に形成されたカラー皮膜の代表膜厚を測定する(s102)。次に、検査用レシピファイルの登録情報と、プロファイル情報とを参照し(s103)、前記代表膜厚情報に基づいて、前記制御パラメータに基づいて各機器の位置、角度又は光量を変更する(s104)。
【0051】
基板10をY方向に搬送移動させ(s105)、膜厚むらの検査を行う(s106)。
このとき、基板10の検査対象となる領域が検査ライン41を通過し、逐次ライン毎の撮像を行いながら、前記ライン内で判別できる膜厚むらの検査が行われる。
【0052】
次に、検査が終了したかどうかを判断(s107)し、検査が終了していないと判断されれば、前記ステップs105へ戻り、上記動作を繰り返す。検査が終了したと判断されていれば、1回目の検査は終了となる。
【0053】
本発明の検査装置では、ステップs106に替えて、基板搬送中に画像を取得した後、ライン毎に撮像した画像を時系列に繋ぎ合わせて基板1枚分の全面画像として合成する時系列合成処理をし、検査対象となる基板1枚分の画像にしてから検査を行っても良い(s108)。そうすることで、ステップs106では判別できなかった、基板移動方向の膜厚むらを判別し、検査をすることができる。観察部及び照明部の角度などは、事前に登録した検査条件と、検査直前に測定した代表膜厚の情報に基づいて、膜厚むらの検査に最適な状態に調節されるので、従来の装置及び方法と比較して、確実に膜厚むらの検出ができるようになっている。
【0054】
また、検査に用いる撮像画像は、ある一つの条件で観察した基板1枚分だけの画像に限定せず、後述の繰り返し検査で取得された観察条件の異なる複数画像を重ね合わせる多重合成処理をし、その結果に基づいて検査を行っても良い(s109)。ステップs108で得られた全面画像に基づいて膜厚むらを強調しようとした場合、本来検査したい膜厚むらの部分だけでなく、撮像の際に含まれるノイズ成分も強調処理されてしまい、膜厚むらを判別しにくい場合もある。しかし、前記複数の画像から多重合成をすれば、ノイズ成分は強調されず、膜厚むら部分のみを強調した状態にして観察することができる。そのため、多重合成した画像に基づく検査は、ある一つの条件で観察した全面画像のコントラストなどを強調処理して膜厚むらを判別しようとする場合に比べて、ノイズ成分を抑えることができるため、膜厚むらの発見が容易となる。
【0055】
次に、検査用レシピファイルで設定された情報に基づいて、2回目以降の検査を繰り返すかどうかを判断し(s110)、繰り返すと判断されれば、繰り返し検査回数をカウントアップさせ、前記ステップs104へ戻る。そして、各機器の位置、角度又は光量を変更し、上述のステップs105〜s107を繰り返す。ステップs110で繰り返さないと判断されば、基板10の移動を停止させ(s111)、下流側移動部3bから基板10を取り出す(s112)。
【0056】
[バリエーション]
図5Aは、本発明を具現化する形態の第2の例を示す平面図である。
図5Bは、本発明を具現化する形態の第2の例を示す側面図である。
この形態は、図1A,Bを用いて示した本発明を具現化する形態の一例に対して、透過照明部3bと撮像部4の構成が相違している。以下、相違点を中心に説明する。
【0057】
膜厚むら検査装置1aでは、透過照明部3bと撮像部4とが、回転フレーム48に取り付けられている。回転フレーム48は、X方向に基板10よりも長い開口部を有する矩形のフレームで構成されており、下部側の梁部には透過照明3bが、上部側の梁部には撮像部4が取り付けられている。透過照明部3bと撮像部4とは対向する位置に、所定の間隔で取り付けられており、検査ライン41に向けて光を照射し、その部位を撮像できるように構成されている。
【0058】
また、回転フレーム48は、検査ライン41の延長上に回転軸を有しており、前記回転軸は装置フレーム11に取り付けられた支柱42で支えられている。回転フレーム48の前記回転軸は、支柱42に取り付けられた撮像部角度調整手段49と接続されており、制御ユニット95の制御信号により回転角度の調節が行われる。前記回転軸には、回転フレーム48の角度を検出する角度検出器が備えられており、前記角度検出器が本発明の撮像部角度検出手段を構成する。本例における撮像部角度検出手段としては、他に、撮像部角度調整手段49の角度検出用エンコーダや、回転して角度が変わった後の回転フレーム48の位置や姿勢を検出するものであっても良い。
【0059】
回転フレーム48は、撮像部角度調整手段45によって角度が変わり、撮像手段44と透過照明35と一体で、基板10とのなす角度が変化する。そのため、撮像部角度調整手段45は、本発明の透過照明角度調整手段としての機能も兼ね備えることができる。そうすれば、撮像手段44と透過照明35とを個別に位置や角度を調整する必要がなくなり、コストダウンが可能となる。また、個別に位置や角度を調整することがないため、撮像手段44と透過照明35のいずれかの位置や角度が微妙にずれてしまうことに起因する、極めて僅かな膜厚むらが発見できなくなるということを防ぐことができる。そのため、皮膜全体の膜厚が僅かに変動した場合でも、回転フレーム48の角度を調節するだけで、再現性の高い膜厚むら検査が実施できる。
【0060】
膜厚むら検査装置1aは、このような構成をしているので、基板10を上流側移動部2aからY方向に搬送移動させ、回転フレーム48の間を通過させ、下流側移動部2bへと搬送移動させることができる。そして、基板10が検査ライン41を通過する際に、膜厚むらの検査をすることができる。
















































【符号の説明】
【0061】
1 膜厚むら検査装置
2 基板移動部
2a 上流側移動部
2b 下流側移動部
3 光源部
3a 反射照明部
3b 透過照明部
4 撮像部
9 制御部
10 基板
10v 移動方向を示す矢印
11 装置フレーム
12 コンベアフレーム
23 コンベアローラ
24 コンベア駆動モータ
31 反射照明
32 反射照明角度調整手段
33 反射照明位置調整手段
34 反射照明光量調節ユニット
35 透過照明
36 透過照明角度調整手段
37 透過照明位置調整手段
38 透過照明光量調節ユニット
39 支柱
40 膜厚センサ
41 検査ライン
42 支柱
43 支柱
44 撮像手段
45 撮像部角度調整手段
46 撮像部位置調整手段
47 撮像部角度検出器
48 回転フレーム
49 撮像部角度調整手段
90 制御用コンピュータ
91 情報入力手段
92 情報出力手段
93 発報手段
94 情報記録手段
95 制御ユニット
96 画像処理ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に皮膜が形成された基板を保持して移動させる基板移動部と、
前記基板に対して光を照射する光源部と、
前記基板の皮膜が形成された面の少なくとも一部を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像に基づいて前記皮膜の厚みむらを検査する検査部とを含み、
前記基板を一方向に移動させながら、前記基板に形成された皮膜の厚みむらを検査する
膜厚むら検査装置であって、
検査対象品種に応じた検査条件を設定登録する検査条件登録部と、
前記基板に形成された皮膜の代表膜厚を検出する代表膜厚検出部とを備え、
前記光源部は、
前記撮像部側に配置されて前記基板に光を照射する反射照明部と、
前記基板を挟んで前記撮像部に対向する位置に配置されて前記基板に光を照射する透過照明部とを備え、
前記撮像部には、前記撮像部と前記基板との相対角度を調節する撮像角度調整部を備え、
前記反射照明部には、前記反射照明部と前記基板との相対角度を調節する反射照明角度調整部を備え、
前記透過照明部には、前記透過照明部と前記基板との相対角度を調節する透過照明角度調整部を備え、
前記検査条件登録部に登録された検査条件と、前記代表膜厚検出部からの代表膜厚情報に基づいて、
前記撮像部角度調整部と前記反射照明角度調節部と前記透過照明角度調整部とを制御し、
前記反射照明の光量及び前記透過照明の光量を調節することができる制御部を備えた
ことを特徴とする膜厚むら検査装置。
【請求項2】
同一の前記基板の繰り返し検査回数をカウントする計数部を備え、
前記カウント回数に応じて、前記撮像部の角度又は前記照明の光量を変更する機能を備えたことを特徴とする請求項1に記載の膜厚むら検査装置。
【請求項3】
前記検査部は、
前記繰り返し検査したそれぞれの画像を多重合成処理する画像処理部を備え、
前記合成処理した画像を多重合成して得られた多重合成画像に基づいて膜厚のむらを検査する、多重合成画像検査機能を備えたことを特徴とする請求項2に記載の膜厚むら検査装置。
【請求項4】
前記撮像部と前記透過照明とが連結されており、
前記撮像部角度調整部が、前記透過照明角度調整部を兼ねている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の膜厚むら検査装置。







【請求項5】
表面に皮膜が形成された基板を保持して移動させる基板移動ステップと、
前記基板に対して光源部から光を照射して前記基板の皮膜が形成された面の少なくとも一部を撮像する撮像ステップと、
前記撮像部で撮像された画像に基づいて前記皮膜の厚みむらを検査する検査ステップとを含み、
前記基板を一方向に移動させながら、前記基板に形成された皮膜の厚みむらを検査する
膜厚むら検査方法であって、
検査対象品種に応じた検査条件を設定登録する検査条件登録ステップと、
前記基板に形成された皮膜の代表膜厚を検出する代表膜厚検出ステップを有し、
前記光源部は、
前記撮像部側に配置されて前記基板に光を照射する反射照明部と、
前記基板を挟んで前記撮像部に対向する位置に配置されて前記基板に光を照射する透過照明部とが含まれて構成されており、
前記撮像ステップは、
前記検査条件登録部に登録された検査条件と、前記代表膜厚検出ステップで検出された代表膜厚情報に基づいて、
前記撮像部と前記基板との相対角度を調節する撮像部角度調整ステップと、
前記反射照明部と前記基板との相対角度を調節する反射照明角度調整ステップと、
前記透過照明部と前記基板との相対角度を調節する透過照明角度調整ステップと、
前記反射照明又は前記透過照明の光量を調節する光量調節ステップとを有する
ことを特徴とする膜厚むら検査方法。
【請求項6】
同一の前記基板の繰り返し検査回数をカウントする計数ステップと、
同一の前記基板を少なくとも2回以上検査する繰り返し検査ステップと、
前記カウント回数に応じて、前記撮像部の角度又は前記照明の光量を変更するステップと
を有することを特徴とする請求項5に記載の膜厚むら検査方法。
【請求項7】
前記繰り返し検査ステップにおいて、それぞれの画像を取得する画像取得ステップと、
前記取得されたそれぞれの画像を多重合成処理する多重画像合成処理ステップと、
前記多重合成処理した画像に基づいて、膜厚のむらを検査する多重合成画像検査ステップとをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の膜厚むら検査装置。

【図1A】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図1B】
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【図5B】
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【公開番号】特開2012−189544(P2012−189544A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55469(P2011−55469)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】