説明

膜厚測定装置

【課題】本発明は、被測定物との距離に依存することなく、被測定物の膜厚を高い精度を測定することが可能な膜厚測定装置を提供する。
【解決手段】本発明は、光源10と、第1光路と、第1集光レンズと、分光測定部40と、第2光路と、第2集光レンズと、データ処理部50を備える膜厚測定装置100である。光源は、所定の波長範囲をもつ測定光を照射する。第1光路は、光源10から照射した測定光を被測定物に導く。第1集光レンズは、第1光路から出射する測定光を被測定物に集光する。分光測定部40は、反射率または透過率の波長分布特性を取得する。第2光路は、被測定物で反射された光または被測定物を透過した光を、分光測定部に導く。第2集光レンズは、第2光路の端部に集光する。データ処理部50は、分光測定部40で取得した波長分布特性を解析することで、被測定物の膜厚を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、膜厚測定装置に関し、より特定的には基板上に少なくとも1層の膜を形成した被測定物の膜厚を測定する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路などの低消費電力化や高速化を図るために、SOI(Silicon on Insulator)と称される基板構造が注目されている。このSOI基板は、2つのSi(シリコン)基板の間にSiOなどの絶縁層(BOX層)を配置したものであり、一方のSi層に形成されるPN接合と他方のSi層(基板)との間に生じる寄生ダイオードや浮遊容量などを低減することができる。
【0003】
このようなSOI基板の製造方法としては、シリコンウェハの表面に酸化膜を形成した上で、当該酸化膜を挟むように別のシリコンウェハを張り合わせ、さらに、回路素子が形成される側のシリコンウェハを研磨して所定の厚みとする方法が知られている。
【0004】
このように研磨工程によってシリコンウェハの厚みを制御するためには、膜厚を連続的にモニタする必要がある。このような研磨工程における膜厚の測定装置および測定方法として、特開2009−270939号公報(特許文献1)、特開平05−306910号公報(特許文献2)および特開平05−308096号公報(特許文献3)には、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR:Fourier Transform infrared Spectrometer)を用いる測定装置および測定方法が開示されている。
【0005】
また、特開2003−114107号公報(特許文献4)には、測定光として赤外光を使用する光干渉式の膜厚測定装置が開示されている。
【0006】
さらに、特開2005−19920号公報(特許文献5)には、分散型マルチチャンネル分光器にて測定した反射スペクトルを用いる方法が開示されている。
【0007】
また、特開2002−228420号公報(特許文献6)には、シリコン薄膜の表面へ向かって、0.9μm以上の波長を有した赤外線を照射し、シリコン薄膜の表面による反射光とシリコン薄膜の裏面による反射光との干渉結果に基づいて、シリコン薄膜の膜厚を測定する方法が開示されている。
【0008】
さらに、特開平10−125634号公報(特許文献7)には、赤外線光源からの赤外線を研磨体に透過させて、研磨対象物に照射して、その反射光を検出することで膜厚を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−270939号公報
【特許文献2】特開平05−306910号公報
【特許文献3】特開平05−308096号公報
【特許文献4】特開2003−114107号公報
【特許文献5】特開2005−19920号公報
【特許文献6】特開2002−228420号公報
【特許文献7】特開平10−125634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特開2009−270939号公報(特許文献1)に開示される測定装置は、測定できる光の波長が制限されているので、膜厚の厚い被測定物を測定することができない。また、特許文献1の光学構成は、集光レンズに入射された反射光と、集光レンズの出射側端面によって反射された反射光との間に光路差に起因する光の干渉を利用しているため、被測定物との距離(ワークディスタンス)や焦点深度が制限される。
【0011】
特開平05−306910号公報(特許文献2)および特開平05−308096号公報(特許文献3)に開示される測定方法では、予め基準となるサンプルに対する膜厚の相対値を測定することしかできず、膜厚の絶対値を測定することはできない。
【0012】
また、特開2003−114107号公報(特許文献4)に開示される測定装置では、解析方法および測定データに対する高い精度が要求されるとともに、対象とする被測定物が液晶表示装置用のカラーフィルタである。
【0013】
さらに、特開2005−19920号公報(特許文献5)に開示される測定方法では、たとえば屈折率を波長に依存しない固定値であると仮定して、自己回帰モデルによる周期推定を行っているが、実際の屈折率は波長依存性を有しており、このような波長依存性に起因する誤差を排除することができない。
【0014】
また、特開2002−228420号公報(特許文献6)に開示される測定方法では、測定対象のサンプルに貫通部を形成する必要があり、膜厚を非破壊で連続的に測定することはできない。
【0015】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、被測定物との距離に依存することなく、被測定物の膜厚を高い精度を測定することが可能な膜厚測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明のある局面に従う膜厚測定装置は、膜厚測定装置であって、基板上に少なくとも1層の膜を形成した被測定物に対して所定の波長範囲をもつ測定光を照射する光源と、光源から照射した測定光を被測定物に導く少なくとも1つの第1光路と、第1光路から出射する測定光を被測定物に集光する第1集光レンズと、第1集光レンズで集光した測定光のうち、被測定物で反射された光または被測定物を透過した光に基づいて、反射率または透過率の波長分布特性を取得する分光測定部と、被測定物で反射された光または被測定物を透過した光を、分光測定部に導く少なくとも1つの第2光路と、被測定物で反射された光または被測定物を透過した光を、第2光路の端部に集光する第2集光レンズと、分光測定部で取得した波長分布特性を解析することで、被測定物の膜厚を求めるデータ処理部を備える。
【0017】
好ましくは、第1光路および第2光路は、シングルモードファイバである。
好ましくは、第1光路および第2光路は、被測定物側の光軸方向が互いに平行となるように形成されたY型ファイバで、第1集光レンズおよび第2集光レンズは、1つのレンズで構成された集光光学プローブである。
【0018】
好ましくは、Y型ファイバは、被測定物側において、第2光路の周りに複数の第1光路を配置する構成である。
【0019】
好ましくは、光源は、インコヒーレント光を測定光として照射する。
好ましくは、分光測定部は、赤外帯域の波長範囲において反射率または透過率の波長分布特性を取得することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、被測定物との距離に依存することなく、被測定物の膜厚をより高い精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に従う集光光学プローブと被測定物との距離を説明する概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1に従う集光光学プローブの原理を説明するための概略図である。
【図4】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置が測定対象とする被測定物OBJの断面模式図の一例である。
【図5】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置を用いてSOI基板を測定した場合の測定結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置を用いてSOI基板を測定した別の測定結果を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置を用いてSOI基板を測定したさらに別の測定結果を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定範囲と検出部の検出波長範囲および検出ポイント数との関係を説明するための図である。
【図9】SOI基板についての反射率スペクトルの測定結果を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1に従うデータ処理部の概略のハードウェア構成を示す模式図である。
【図11】本発明の実施の形態1に従う処理パターンに係る膜厚算出処理を実行する制御構造を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態1に従う処理パターンに係る膜厚算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置により得られたパワースペクトルの一例を示すグラフである。
【図14】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置により得られた測定結果の一例を示す表である。
【図15】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置において、集光光学プローブのフォーカス位置を変更することを説明するための概略図である。
【図16】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置において、フォーカス位置を変更させた場合の測定結果の一例を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置において、被測定物の傾きを説明するための概略図である。
【図18】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置において、被測定物の傾きを変化させた場合の測定結果の一例を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置において、ウレタン越し被測定物を測定する一例を示す概略図である。
【図20】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置により、ウレタン越しに測定して得られたパワースペクトルの一例を示すグラフである。
【図21】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置により、水膜およびウレタン越しに測定して得られた測定結果の一例を示す表である。
【図22】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置において、ガラス越し被測定物を測定する一例を示す概略図である。
【図23】本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置において、ASE光源およびSLD光源で測定して得られたパワースペクトルの一例を示すグラフである。
【図24】本発明の実施の形態2に従う集光光学プローブの構成を説明するための概略図である。
【図25】本発明の実施の形態3に従う集光光学プローブの構成を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明を繰返さない。
【0023】
(実施の形態1)
<装置構成>
図1は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100の概略構成図である。
【0024】
本実施の形態1に従う膜厚測定装置100は、代表的に、単層または積層構造の被測定物(サンプル)における各層の膜厚を測定することが可能である。特に、本実施の形態1に従う膜厚測定装置100は、比較的膜厚の厚い層(代表的には、2μm〜2500μm)を含む被測定物の膜厚測定に適している。
【0025】
具体的には、膜厚測定装置100は、分光式の測定装置であって、被測定物に光を照射し、当該被測定物で反射された反射光の波長分布特性(以下「スペクトル」とも称す。)に基づいて、被測定物を構成する各層の膜厚を測定可能である。なお、膜厚測定に限られず、各層における(絶対および相対)反射率の測定や層構造の解析も可能である。なお、反射光のスペクトルに代えて、被測定物を透過した光のスペクトル(透過光のスペクトル)を用いてもよい。
【0026】
本明細書では、被測定物として、基板単体もしくは基板上に少なくとも1層の膜が形成されたものを対象とする場合について例示する。被測定物の具体的な一例としては、Si基板、ガラス基板、サファイア基板などの比較的厚みのある基板単体や、SOI(Silicon on Insulator)基板のような積層構造の基板などである。特に、本実施の形態1に従う膜厚測定装置100は、切削また研磨後のSi基板の膜厚、SOI基板のSi層(活性層)の膜厚、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)工程でのSi基板の膜厚などの測定に適している。また、フィルム製造工程でのPET(Polyethylene terephthalate)やTAC(Triacetylcellulose)の膜厚および基材厚みなどの測定に適している。
【0027】
特に、本実施の形態1に従う膜厚測定装置100は、被測定物の光学特性の測定に用いられる測定光及び被測定物で反射された光をY型シングルモードファイバと集光光学プローブを用いて、光学特性の測定精度の向上と被測定物に対する焦点合わせの容易化とを同時に実現するものである。
【0028】
図1を参照して、膜厚測定装置100は、測定用光源10と、光ファイバ20と、集光光学プローブ30と、分光測定部40と、データ処理部50とを備える。
【0029】
測定用光源10は、被測定物の光学特性の測定に用いられる測定光を生成する光源であり、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光源からなる。なお、測定用光源10は、特定の厚さの膜厚を測定する場合、SLD(super luminescent diode)光源であってもよい。そして、測定用光源10が発生する測定光は、被測定物に対する光学特性の測定範囲(1540nm〜1610nm)の波長を含む。特に、本実施の形態1に従う膜厚測定装置100では、ハロゲン光源が考えられるが、Y型シングルモードファイバの光ファイバ20を用いるためより強力な光量の光源が必要となる。さらに特開2009−270939号公報(特許文献1)に開示してある光学式変位計に用いられているSLD光源を利用することができるが、本測定方法(分光干渉方式)ではSLD光源の持つコヒーレント(可干渉)性が、ファイバの曲げ或いは分光測定部40との接続部分等で、本来測定されるべき分光干渉以外の疑似干渉が確認される場合が多いため、汎用の膜厚(特定の膜厚を測定する場合以外)測定には不向きである。
【0030】
光ファイバ20は、2本のシングルモードファイバを被測定物側の光軸方向が互いに平行となるように形成されたY型ファイバである(Y型シングルモードファイバ)。光ファイバ20に用いているシングルモードファイバは、コア径9μm、有効波長域1460nm〜1620nm(光通信用CLバンド帯)、伝送損失=0.5dB/km以下(波長1550nmにおいて)である。そのため、光ファイバ20は、膜厚測定装置100の分光測定部40の波長範囲と一致し、さらに使用している測定用光源10の波長範囲とも一致する。なお、光ファイバ20は、シングルモードファイバに限定されるものではなく、マルチモードファイバであってもよい。また、複数のシングルモードファイバの束を2束用意して、Y型ファイバを形成してもよい。
【0031】
光ファイバ20からの光を被測定物に直接照射する場合、光ファイバ20の端部から被測定物までの距離WD(ワークディスタンス)を短く(約10mm以下)すれば、膜厚を測定することが可能である。しかし、光ファイバ20の9μmのコア径から出射される光は、光ファイバ20の開口角度により広がり、被測定物に照射される。そのため、被測定物で反射した光を9μmのコア径の光ファイバ20で受光すると、受光することができる光量が非常に少なく、S/N比が悪くなるので、分光測定部40の測定精度が低下する。また、光ファイバ20を受光部に用いる場合、被測定物の表面の粗さや、被測定物の結晶状態などを考慮すると、被測定物に照射する光のスポットはできるだけ小さいほうがよい。
【0032】
集光光学プローブ30は、上記問題を解決するため用いており、被測定物の表面と光ファイバ20の端部との間に集光レンズ31を設けている。集光レンズ31は、光ファイバ20の端部から出射した光を、被測定物の表面で集光させて光のスポットを小さくしている。なお、集光光学プローブ30は、被測定物の膜厚を測定するために、集光レンズ31に入射された被測定物の反射光と、集光レンズ31の出射側端面によって反射された反射光との間に光路差に起因する光の干渉を利用しない構成である。そのため、集光光学プローブ30は、光ファイバ20の端部と集光レンズ31との距離WD2を調整することで、被測定物との距離WD1を変更することが可能となる。
【0033】
図2は、本発明の実施の形態1に従う集光光学プローブ30と被測定物との距離を説明する概略図である。図2(a)は、集光光学プローブ30と被測定物との距離WD1が10mmの場合の概略図で、図2(b)は、集光光学プローブ30と被測定物との距離WD1が150mmの場合の概略図である。そのため、膜厚測定装置100は、集光光学プローブ30を備えることで、集光光学プローブ30と被測定物との距離WD1に依存することなく、被測定物の膜厚をより高い精度で測定することができる。なお、図2に示す集光光学プローブ30と被測定物との距離WD1は例示であり、10mm〜150mmに限定するものではない。
【0034】
また、図3は、本発明の実施の形態1に従う集光光学プローブ30の原理を説明するための概略図である。図3(a)は、集光光学プローブ30を設けずに光ファイバ20から測定光を直接、被測定物に照射する場合を図示してある。光ファイバ20から出射される光は、図3(a)から分かるように、光ファイバ20の開口角度により広がり、被測定物で反射され、さらに広がっている。そのため、図3(a)の場合、被測定物で反射した光の範囲301のうち、光ファイバ20で受光することができる光の範囲302は小さくなる。
【0035】
図3(b)は、集光光学プローブ30を設けて光ファイバ20から測定光を集光して、被測定物に照射する場合を図示してある。光ファイバ20から出射される光は、図3(b)から分かるように、集光レンズ31により広がりを抑えることができる。そのため、図3(b)の場合、被測定物に照射する光の範囲303のうち、光ファイバ20で受光することができる光の範囲304は大きくなる。よって、膜厚測定装置100は、集光光学プローブ30を備えることで、被測定物で反射した光を効率よく受光することができるので、S/N比が改善するので、分光測定部40の測定精度が高くなる。
【0036】
集光光学プローブ30は、被測定物に照射する光の範囲303に対して、光ファイバ20で受光することができる光の範囲304がある程度一致していても、光ファイバ20のコア径が9μmと小さいため集光レンズ31の位置を調整する調整機構32(図1)が必要になる。調整機構32は、被測定物で反射した光が光ファイバ20により入射するように、まずZ軸方向で焦点を決め、次にXY軸方向で集光レンズ31の位置を決める。
【0037】
図3(c)は、調整機構32で調整した集光レンズ31の位置を図示してある。調整機構32は、図3(c)に示すように集光レンズ31をZ軸方向(集光レンズ31a)、XY軸方向(集光レンズ31b)に調整して、被測定物に照射する光の範囲303に対して、光ファイバ20で受光することができる光の範囲304より一致させる。これにより、膜厚測定装置100は、集光光学プローブ30を備えることで、被測定物で反射した光を効率よく受光することができる。
【0038】
なお、被測定物の表面で完全焦点位置となるように集光光学プローブ30で調整できれば、被測定物の理想的な膜厚測定が可能となるが、被測定物の表面の粗さや、被測定物の結晶状態などにより完全焦点位置とならない場合もある。しかし、膜厚測定装置100は、集光光学プローブ30から出射する光のスポットに対して、入射する光のスポットがある程度一致していれば、9μmのコア径の光ファイバ20がピンホールの役割を果たし、被測定物の膜厚測定が可能となる。
【0039】
分光測定部40は、光ファイバ20の9μmのコア径を通過した測定反射光のスペクトルを測定し、その測定結果をデータ処理部50へ出力する。より詳細には、分光測定部40は、回折格子(グレーティング)41と、検出部42と、カットフィルタ43と、シャッタ44とを含む。
【0040】
カットフィルタ43と、シャッタ44と、回折格子41とは、光軸AX1上に配置される。カットフィルタ43は、ピンホールを通過して分光測定部40に入射する測定反射光に含まれる測定範囲外の波長成分を制限するための光学フィルタであり、特に測定範囲外の波長成分を遮断する。シャッタ44は、検出部42をリセットするときなどに、検出部42に入射する光を遮断するために使用される。シャッタ44は、代表的に電磁力によって駆動する機械式のシャッタからなる。
【0041】
回折格子41は、入射する測定反射光を分光した上で、各分光波を検出部42へ導く。具体的には、回折格子41は、反射型の回折格子であり、所定の波長間隔毎の回折波が対応する各方向に反射するように構成される。このような構成を有する回折格子41に測定反射波が入射すると、含まれる各波長成分は対応する方向に反射されて、検出部42の所定の検出領域に入射する。なお、この波長間隔が分光測定部40における波長分解能に相当する。回折格子41は、代表的にフラットフォーカス型球面グレーティングからなる。
【0042】
検出部42は、被測定物の反射率スペクトルを測定するために、回折格子41で分光された測定反射光に含まれる各波長成分の光強度に応じた電気信号を出力する。検出部42は、赤外帯域に感度をもつInGaAsアレイなどからなる。
【0043】
なお、回折格子41よび検出部42は、光学特性の測定波長範囲および測定波長間隔などに応じて適宜設計される。
【0044】
データ処理部50は、検出部42によって取得された反射率スペクトルに対して、各種のデータ処理(代表的には、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理、最大エントロピー法(Maximum Entropy Method;以下、「MEM」とも称す。)処理やノイズ除去処理)を行なうことで、被測定物を構成する各層の膜厚を測定する。さらに、データ処理部50は、被測定物の各層の反射率や層構造の解析も可能である。なお、このような処理の詳細については後述する。そして、データ処理部50は、測定した被測定物の膜厚をはじめとする光学特性を出力する。
【0045】
<反射光の解析的検討>
まず、被測定物に測定光を照射した場合に観測される反射光について、数学的および物理的に検討を行う。
【0046】
図4は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100が測定対象とする被測定物OBJの断面模式図の一例である。
【0047】
図4を参照して、被測定物OBJの代表例としてSOI基板を考える。すなわち、被測定物OBJは、Si層1とベースSi層3(基板層)との間にSiO層2(BOX層)が配置された3層構造を有する。そして、膜厚測定装置100からの照射光は、紙面上側から被測定物OBJに入射するものとする。すなわち、測定光は、最初にSi層1へ入射するものとする。
【0048】
理解を容易にするために、被測定物OBJに入射した測定光がSi層1とSiO層2との界面で反射して生じる反射光について考える。以下の説明では、添え字iを用いて各層を表現する。すなわち、空気や真空などの雰囲気層を添え字「0」、被測定物OBJのSi層1を添え字「1」、SiO層2を添え字「2」とする。また、各層における屈折率を、添え字iを用いて、屈折率nと表す。
【0049】
互いに異なる屈折率nをもつ層の界面では光の反射が生じるため、屈折率の異なるi層とi+1層との間の各境界面でのP偏光成分およびS偏光成分の振幅反射率(Fresnel係数)r(P)i,i+1,r(S)i,i+1は次のように表わすことができる。
【0050】
【数1】

【0051】
ここで、φは、i層における入射角である。この入射角φは、以下のようなSnellの法則によって、最上層の雰囲気層(0層)における入射角から計算できる。
【0052】
sinφ=Nsinφ
光が干渉可能な膜厚をもつ層内では、上式で表される反射率で反射する光が層内を何度も往復する。そのため、隣接する層との界面で直接反射した光と層内を多重反射した後の光との間ではその光路長が異なるため、位相が互いに異なったものとなり、Si層1の表面において光の干渉が生じる。このような、各層内における光の干渉効果を示すために、i層の層内における光の位相角βを導入すると、以下のように表わすことができる。
【0053】
【数2】

【0054】
ここで、dはi層の膜厚を示し、λは入射光の波長を示す。
より単純化するために、被測定物OBJに対して垂直に光が照射される場合、すなわち入射角φ=0とすると、P偏光とS偏光との区別はなくなり、各層間の界面における振幅反射率および薄膜の位相角βは以下のようになる。
【0055】
【数3】

【0056】
さらに、図4に示す3層系の被測定物OBJにおける反射率Rは、以下のようになる。
【0057】
【数4】

【0058】
上式において、位相角βについての周波数変換(フーリエ変換)を考えると、位相因子(Phase Factor)であるcos2βは反射率Rに対して非線形となる。そこで、この位相因子cos2βについて線形性を有する関数への変換を行う。一例として、この反射率Rを以下の式のように変換し、独自の変数である「波数変換反射率」R’を定義する。
【0059】
【数5】

【0060】
この波数変換反射率R’は、位相因子cos2βについての1次式となり、線形性を有することになる。ここで、式中のRは波数変換反射率R’における切片であり、Rは波数変換反射率R’における傾きである。すなわち、この波数変換反射率R’は、各波長における反射率Rの値を周波数変換に係る位相因子cos2βに対して線形化するための関数である。なお、このような位相因子について線形化するための関数としては、1/(1−R)という関数を用いてもよい。
【0061】
したがって、対象とするSi層1内の波数Kは以下のように定義できる。
【0062】
【数6】

【0063】
ここで、Si層1内での波長λの光速度をsとし、真空中の波長λの光速度をcとすると、屈折率n=c/sで表される。また、Si層1内をx方向に進行する光によって生じる電磁波E(x,t)は、波数K,角周波数ω,位相δを用いて、E(x,t)=Eexp[j(ωt−Kx+δ)]と表される。すなわち、Si層1内の電磁波の伝搬特性は波数Kに依存する。これらの関係から、真空中において波長λをもつ光は、層内ではその光速度が低下するため、波長もλからλ/nまで長くなることがわかる。このような波長分散現象を考慮して、波数変換反射率R’を以下のように定義する。
【0064】
【数7】

【0065】
この関係から、波数変換反射率R’を波数Kについて周波数変換(フーリエ変換)すると、膜厚dに相当する周期成分にピークが現れることにより、このピーク位置を特定することで、膜厚dを算出することができる。
【0066】
すなわち、被測定物OBJから測定される反射率スペクトルと各波長における反射率との対応関係を、各波長から算出される波数と上述の関係式に従って算出される波数変換反射率R’との対応関係(波数分布特性)に変換し、この波数Kを含む波数変換反射率R’の関数を波数Kについて周波数変換し、この周波数変換後の特性に現れるピークに基づいて、被測定物OBJを構成するSi層1の膜厚を算出できる。これは、波数分布特性に含まれる各波数成分の振幅値を取得し、このうち振幅値の大きな波数成分に基づいて、Si層1の膜厚を算出することを意味する。なお、後述するように、波数分布特性から振幅値の大きな波数成分を解析する方法としては、FFTなどの離散的なフーリエ変換を用いる方法と、最適化処理(最大エントロピー法(MEM)など)を用いる方法とのいずれかを採用することができる。
【0067】
波数変換反射率R’の定義において、RおよびRは、層内における干渉現象とは無関係な値ではあるが、Si層1の屈折率nを含む各層間の界面における振幅反射率に依存する。そのため、屈折率nが波長分散をもつ場合には、その値は波長(すなわち、波数K)に依存する関数値となり、波数Kに関して一定値とはならない。そこで、フーリエ変換を⊃で表し、R’,R,R,cos2Kを波数Kでフーリエ変換した後の関数であるパワースペクトルをそれぞれP,P,P,Fとすると、以下の式が成立する。
【0068】
【数8】

【0069】
式中のPにおける膜厚に依存する成分は相対的に小さく、かつパワースペクトルFとは独立のピークをもつので、パワースペクトルFに影響を与えない。
【0070】
一方、式中のPは、パワースペクトルFとコンボリューションされることにより、Pにおける膜厚成分がパワースペクトルFの膜厚成分に変調を加えることになる。しかしながら、Pは、層内における干渉現象に無関係であり、隣接する2つの層における屈折率の波長依存性のみに影響を受けるため、波数Kに対するPの膜厚成分はFの膜厚成分に比較して無視できる程度に小さい。たとえば、Rが膜厚qの周期関数であるとし、そのフーリエ変換後のPがコンボリューションによりパワースペクトルFの膜厚dの成分に変調を加えたとすると、スペクトルとして現れるピークは、「d−q」または「d+q」となるが、qの値が非常に小さいのでピーク位置の膜厚dに対する影響は小さい。
【0071】
さらに、フーリエ変換を行う際には、後述するように、測定対象の層の最大膜厚を考慮して、ナイキストのサンプリング定理に従って、波数変換反射率R’に対して適切なサンプル間隔およびサンプル数でサンプリングが行なわれる。このようにサンプリングされた波数変換反射率R’に基づいて算出されたパワースペクトルの膜厚分解能rに対して、Pの膜厚qの膜厚成分はより小さい可能性が高く(q<r)、膜厚dの測定結果にはほとんど影響を与えないといえる。
【0072】
このように、算出された反射率スペクトルを、薄膜における波長分散を考慮した波数についての関数に変換した上で、フーリエ変換を行うことにより、薄膜の膜厚を正確に算出することができる。
【0073】
なお、上述の説明では、反射率スペクトルを用いる場合について例示したが、透過率スペクトルを用いてもよい。この場合には、測定された透過率をT、「波数変換透過率」をT’とすると、以下のような関係式で表される。
【0074】
【数9】

【0075】
透過率スペクトルを用いる場合においても、透過率Tは位相因子cos2βに対して非線形となる。そのため、上述したのと同様の理由から、位相因子cos2βについて線形性を有する波数変換透過率T’を採用する。上式によれば、波数変換透過率T’は、位相因子cos2βについての1次式となり、上述したのと同様の手順に従って、薄膜の膜厚を正確に算出することができる。すなわち、この波数変換透過率T’は、各波長における透過率Tの値を周波数変換に係る位相因子cos2βに対して線形化するための関数である。
【0076】
再度、図4を参照して、SiO層2とベースSi層3との界面で反射して生じる反射光について考える。Si層1の屈折率をn、膜厚をdとし、SiO層2の屈折率をn、膜厚をdとすると、波数変換反射率R’は以下のように表される。
【0077】
【数10】

【0078】
ここで、Si層1の膜厚dおよびSiO層2の膜厚dを分離して算出する場合には、波数K,Kでそれぞれ変換した波数変換反射率R’(K),R’(K)を用いる。具体的には、以下のように表される。
【0079】
【数11】

【0080】
これらの式中において、d’およびd’は正しい膜厚ではないが、波数変換反射率R’(K)の第2項に相当するパワースペクトル中のピークから本来の膜厚dを求めることができ、かつ波数変換反射率R’(K)の第3項に相当するパワースペクトル中のピークから本来の膜厚dを求めることができる。
【0081】
なお、実際には、Si層1およびSiO層2は、その屈折率が近似しており、両者の界面における反射率は、他の界面における反射率に比較して相対的に小さくなることが多い。その結果、波数変換反射率の関数に含まれるRやRに比較して、Rの値が小さくなり、パワースペクトルから、波数変換反射率R’(K)の第3項に相当するピークを識別することが困難である場合も多い。このような場合には、波数変換反射率R’(K)の第4項に相当するパワースペクトルのピーク位置の膜厚(d’+d)と、波数変換反射率R’(K)の第2項に相当するパワースペクトルのピーク位置の膜厚(d’)とを算出した上で、両者の差をとることで、膜厚dを算出することができる。
【0082】
<波長範囲および波長分解能について>
図5は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100を用いてSOI基板を測定した場合の測定結果を示す図である。なお、図5には、測定光として、波長範囲が900〜1600nmであるものを用いた場合(図5(a))、および波長範囲が1340〜1600nmであるものを用いた場合(図5(b))の測定例を示す。なお、測定波長に応じて回折格子41を適切な特性を有するものを選択し、反射光が入射する検出部42(図1)での検出ポイント数(検出チャンネル数)はいずれも同一(たとえば、512チャンネル)であるとした。言い換えれば、波長範囲が狭いほど、検出ポイントあたりの波長間隔(すなわち、波長分解能)は小さくなる。
【0083】
上述の解析的検討によれば、測定される反射率は、波長に対して周期的に変化するはずである。
【0084】
図5(a)に示す測定結果においては、反射率が波長に対して周期的に変化している兆候は見られるものの、膜厚を測定するには十分な精度は得られていない。
【0085】
これに対して、図5(b)に示す測定結果においては、反射率のピークおよびバレイが明りょうに現れており、反射率の変化周期についても測定が可能となっている。図5(c)は、図5(b)に示される測定結果(反射率スペクトル)を上述した波数変換反射率R’の関数に変換した上で、波数Kについて周波数変換した結果を示す。この図5(c)に現れる主ピークに対応する値がSi層1の膜厚として決定できる。
【0086】
さらに、図6および図7には、SOI基板の別の測定結果を示す。
図6は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100を用いてSOI基板を測定した別の測定結果を示す図である。図6には、Si層1の膜厚が10.0μm(設計値)であり、SiO層2の膜厚が0.3μm(設計値)である場合の測定例を示す。また、図6(a)には、可視帯域(330〜1100nm)の波長成分をもつ測定光を用いた場合を示し、図6(b)には、赤外帯域(900〜1600nm)の波長成分をもつ測定光を用いた場合を示す。なお、上述したように、検出部42(図1)での検出ポイント数(検出チャンネル数)はいずれも同一である。
【0087】
図6(a)に示すように、可視帯域の波長成分をもつ測定光を用いた場合には、約860nmより長い波長領域では、反射率が周期的な挙動を示すものの、それより短い可視帯域では、有意な周期的変化を生じていないことがわかる。これに対して、図6(b)に示すように、赤外帯域の波長成分をもつ測定光を用いた場合には、反射率の周期的変化が有意に現れていることがわかる。
【0088】
また、図7は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100を用いてSOI基板を測定したさらに別の測定結果を示す図である。図7には、Si層1の膜厚が80.0μm(設計値)であり、SiO層2の膜厚が0.1μm(設計値)である場合の測定例を示す。また、図7(a)には、赤外帯域(900〜1600nm)の波長成分をもつ測定光を用いた場合を示し、図7(b)には、より狭い赤外帯域(1470〜1600nm)の波長成分をもつ測定光を用いた場合を示す。なお、上述したように、検出部42(図1)での検出ポイント数(検出チャンネル数)はいずれも同一である。
【0089】
図7(a)に示すように、赤外帯域の波長成分をもつ測定光を用いた場合であっても、測定された反射率には有意な周期的変化が現れていないことがわかる。これに対して、図7(b)に示すように、より狭い赤外帯域の波長成分をもつ測定光を用いた場合には、反射率の周期的変化が有意に現れていることがわかる。
【0090】
以上の測定例によれば、比較的厚みのある層の膜厚を高い精度で測定するためには、測定光の波長範囲および波長分解能を適切に設定する必要があるといえる。これは、層内での光干渉現象を利用する測定方法であること、および検出部42による反射光の波長分解能が有限であることに起因するものであり、以下に説明するような手順によって、適切な測定光の波長を設定することが好ましい。
【0091】
以下の検討では、膜厚測定範囲の下限値をdminとし、膜厚測定範囲の上限値をdmaxとする。また、検出部42の波長検出の下限値をλminとし、検出部42の波長検出の上限値をλmaxとする。なお、測定用光源10(図1)が照射する測定光の波長範囲は、検出部42の波長検出範囲を含むものであれば、いずれの範囲であってもよい。さらに、検出部42(図1)での検出ポイント数(検出チャンネル数)をSとする。
【0092】
図8は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定範囲と検出部42の検出波長範囲および検出ポイント数との関係を説明するための図である。
【0093】
(1)膜厚測定範囲の下限値dminと検出波長範囲との関係
上述した膜厚の測定方法によれば、対象の被測定物内で光干渉を生じる波長を見つける必要があるので、検出部42が光干渉を生じ得る波長範囲をもつ必要がある。すなわち、図8(a)に示すように、被測定物に対して測定される反射率波形が検出部42の検出波長範囲において1周期以上変化する必要がある。
【0094】
これは、検出部42の検出波長範囲が下限値λminから上限値λmaxまで変化することで生じる光学的距離が被測定物の膜厚の往復分以上変化する必要があることを意味する。したがって、膜厚測定範囲の下限値dminと測定光の波長範囲との関係としては、以下の条件式(1)を満たす必要がある。
【0095】
【数12】

【0096】
(2)膜厚測定範囲の上限値dmaxと検出ポイント数との関係
図8(b)に示すように、測定光の波長が長くなるほど、被測定物に対して測定される反射率波形の周期は長くなる。図8(c)に示す反射率波形は、図8(b)に示す反射率波形を波数(1/f)の座標に変換したものである。このとき、InGaAsなどの各アレイ素子が波長について等間隔に配置されているとすると、波数に対する各アレイ素子の配置間隔は波数が小さくなるほど広がることがわかる。
【0097】
したがって、波数に対して所定の周期で変化する反射率波形を正確にサンプリングするためには、この各アレイ素子の配置間隔(波長分解能Δλ)がナイキストのサンプリング定理を満たす必要があり、このサンプリング定理が満たされるという条件によって、膜厚測定範囲の上限値dmaxが決定される。
【0098】
検出部42における波長分解能Δλは、検出ポイント数(検出チャンネル数)Sを用いて、Δλ=(λmax−λmin)/Sと表わすことができる。
【0099】
測定光の波長が長くなるほど反射率波形の周期は短くなるので、反射率波形において測定光の上限値λmaxにおいて極値(ピークまたはバレイ)が生じるとした場合に、当該極値と隣接する極値(ピークに隣接するピーク、またはバレイに隣接するバレイ)を生じる波長をλとすると、膜厚測定範囲の上限値dmaxとの間に、以下の条件が満たされる必要がある。
【0100】
【数13】

【0101】
ここで、測定対象の層の膜厚が比較的大きな場合には、nmax≒nとみなすことができるので、上述の条件は、以下のような条件式(2)として表わすことができる。
【0102】
【数14】

【0103】
このとき、波長分解能Δλについては、以下の条件が満たされる必要がある。
【0104】
【数15】

【0105】
上述の波長分解能Δλの関係式に、上限値dmaxの関係式を代入してλの項をなくすと、以下のような条件式(3)として表わすことができる。
【0106】
【数16】

【0107】
以上の検討の結果、被測定物について要求される膜厚測定範囲(下限値dmin〜上限値dmax)が予め定められると、上述の条件式(1)および(2)を満足するように、測定光の波長範囲(下限値λmin〜上限値λmax)および検出ポイント数Sを定める必要がある。
【0108】
<計算例>
図4に示すようなSOI基板のSi層1の膜厚を測定する場合に必要とされる条件について計算した一例を以下に示す。
【0109】
この計算例では、SOI基板のSi層1の上限値dmaxが100μmであるとし、屈折率nが波長に依らず一定値(n=3.5)であるとした。なお、この計算例では、SOI基板のSi層1の下限値dminについては考慮していない。
【0110】
上記の前提となる値を上述のそれぞれの条件式(2)および(3)に代入すると、上限値λmax=1424.0nm、波長分解能Δλ=1.445375nmと算出される。したがって、最大100μmの膜厚をもつ被測定物の膜厚測定を行うために、512チャンネルの検出部42を用いた場合には、約684〜1424nmの波長範囲を含む測定光を用いて、検出部42で当該範囲の反射光を検出(波長分解能Δλ=1.4453125nm)すればよいことがわかる。
【0111】
但し、上記の条件式によって算出される波長分解能Δλは、理論上の最低限のスペックを記述したものであり、実際に測定を行う場合には、算出された波長分解能Δλに比較して精度をより高くすることが好ましい。なお、より好ましくは、数倍程度(たとえば、2〜4倍)にすることがよい。なお、精度を高くすることは、波長分解能Δλの値をより小さく設定することを意味する。
【0112】
すなわち、実際の膜厚測定装置では、被測定物への測定光の入射角の影響や、レンズ集光系を用いたときの開口角の影響などによって、スペクトル精度が劣化する場合がある。このような場合には、パワースペクトル上のピーク高さが小さくなり、膜厚の算出が困難になる。また、有限個のサンプリング値を用いて離散的に周波数変換を行うFFTなどを用いた場合には、エリアシングの影響を受けて、波数変換時などの変換誤差が大きく生じる場合もある。さらに、被測定物の屈折率分散が測定光の波長範囲によっては大きく変化するものもあり、部分的に条件に合致しない可能性もある。
【0113】
<膜厚算出処理の概要>
上述したように、被測定物の膜厚は、反射率スペクトルの周期性に基づいて算出することができる。すなわち、検出された反射率スペクトルを周波数変換してパワースペクトルを求め、このパワースペクトルに現れるピークから膜厚を算出できる。このようなパワースペクトルは、現実的にはFFTなどの離散的なフーリエ変換法によって算出される。しかしながら、FFTでは周期性を十分に反映したパワースペクトルを得られない場合もある。そのため、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100は、パワースペクトルの算出方法として、FFTなどの離散的なフーリエ変換に加えて、最適化処理(MEMなど)を実行可能に構成される。すなわち、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100は、検出された反射率スペクトルに応じて、フーリエ変換および最適化処理を選択的または併合的に実行する。なお、MEMの詳細については、「科学計測のための波形データ処理 計測システムにおけるマイコン/パソコン活用技術」、南茂夫編著、CQ出版社、1992年8月1日第10版発行などに詳しいので、そちらを参照されたい。
【0114】
さらに、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100は、上述したような検出された反射率スペクトルから解析的に膜厚を算出する方法に加えて、測定対象から算出される物理モデルから理論的に算出される反射率スペクトルと実際に検出された反射率スペクトルとの偏差に基づいて、測定対象の光学的特性値を探索的に算出する、いわゆるフィッティングと称される方法も実行可能に構成される。
【0115】
ところで、図4に示すSOI基板のように、第2層であるSiO層2の膜厚に比較して、第1層のSi層1の膜厚が2桁以上大きいような被測定物については、フィッティング法では各層の膜厚を十分な精度で算出できない場合もある。
【0116】
図9は、SOI基板についての反射率スペクトルの測定結果を示す図である。図9には、第1層のSi層1の膜厚が100μmであり、第2層であるSiO層2の膜厚を0.48〜0.52μmの範囲で0.1μm刻み変化させた場合の測定例を示す。図9に示されているように、第2層であるSiO層2の膜厚が変化しても、測定される反射率スペクトルにはあまり大きな変化が生じていないことがわかる。すなわち、このような被測定物から測定される反射率スペクトルでは、第1層のSi層1の影響が主体的であるため、第2層であるSiO層2のパラメータを変化させたとしても、十分にフィッティングできないことを意味する。
【0117】
そこで、本実施の形態に従う膜厚測定装置100は、SOI基板などのように、異なる複数の層を有する被測定物について、各層の膜厚を独立して正確に解析できるように、上述したフーリエ変換、最適化処理、フィッティング法のうちいずれか1つ、もしくは複数を適宜組み合わせて実行する。以下、本実施の形態に従う膜厚測定装置100における膜厚算出処理の詳細について説明する。なお、このような膜厚算出処理は、データ処理部50(図1)によって実行される。
【0118】
<データ処理部の構成>
図10は、本発明の実施の形態1に従うデータ処理部50の概略のハードウェア構成を示す模式図である。
【0119】
図10を参照して、データ処理部50は、代表的にコンピュータによって実現され、オペレーティングシステム(OS:Operating System)を含む各種プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)200と、CPU200でのプログラムの実行に必要なデータを一時的に記憶するメモリ部212と、CPU200で実行されるプログラムを不揮発的に記憶するハードディスク部(HDD:Hard Disk Drive)210とを含む。また、ハードディスク部210には、後述するような処理を実現するためのプログラムが予め記憶されており、このようなプログラムは、フレキシブルディスクドライブ(FDD)216またはCD−ROMドライブ214によって、それぞれフレキシブルディスク216aまたはCD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)214aなどから読み取られる。
【0120】
CPU200は、キーボードやマウスなどからなる入力部208を介してユーザなどからの指示を受取るとともに、プログラムの実行によって測定される測定結果などをディスプレイ部204へ出力する。各部は、バス202を介して互いに接続される。
【0121】
<演算処理構造>
本発明の実施の形態1に従うデータ処理部50は、被測定物の各層のパラメータ(材質、膜厚、膜厚範囲、屈折率、消衰係数など)のうち未知の値の種類や数、および解析精度などに応じて、適切な処理パターンを実行することで被測定物の膜厚を測定することができる。以下の説明では、たとえば、図4に示すSOI基板のように、積層された2層(それぞれ「第1層」および「第2層」とも称す。)の第1層および第2層の屈折率および消衰係数が既知である場合に、積層された2層の膜厚をそれぞれ独立に算出する場合について例示する。なお、以下の説明は例示であり、以下に示す処理パターンに限定されるものではなく、他の処理パターンであってもよい。また、同様の手順によって、積層された2層より多くの積層された膜厚をそれぞれ独立に算出することも可能である。
【0122】
処理パターンの一例
本処理パターンは、第1層および第2層の屈折率および消衰係数が既知である場合に実行可能な膜厚算出処理の一例である。この処理パターンでは、各層の膜厚はいずれもフィッティング法によって決定される。なお、フィッティング法として、代表的に、最小二乗法を用いる場合について例示する。
【0123】
図11は、本発明の実施の形態1に従う処理パターンに係る膜厚算出処理を実行する制御構造を示すブロック図である。図11に示すブロック図は、CPU200がハードディスク部210などの予め格納されたプログラムをメモリ部212などに読み出して実行することで実現される。
【0124】
図11を参照して、データ処理部50(図1)は、バッファ部71と、モデル化部721と、フィッティング部722とをその機能として含む。
【0125】
バッファ部71は、分光測定部40(図1)から出力される実測された反射率スペクトルR(λ)を一時的に格納する。より具体的には、分光測定部40からは所定の波長分解能毎に反射率の値が出力されるので、バッファ部71は、波長とその波長における反射率とを対応付けて格納する。
【0126】
モデル化部721は、被測定物に係るパラメータを受付けて、当該受付けたパラメータに基づいて、被測定物における理論反射率を示すモデル式(関数)を決定し、当該決定した関数に従って、各波長における理論反射率(スペクトル)を算出する。この算出した各波長における理論反射率は、フィッティング部722へ出力される。より具体的には、モデル化部721は、第1層の屈折率nおよび消衰係数kと、第2層の屈折率nおよび消衰係数kとを受付けるとともに、第1層の膜厚dの初期値および第2層の膜厚dの初期値を受付ける。なお、ユーザが各パラメータを入力してもよいが、予め標準的な材質のパラメータをファイルなどとして格納しておき、必要に応じて読出すようにしてもよい。また、必要に応じて、雰囲気層の屈折率nおよび消衰係数kについても入力される。
【0127】
理論反射率を示すモデル式については、上述した3層系の被測定物OBJにおける反射率Rと同様であり、少なくとも各層の膜厚の値を含む関数となる。
【0128】
また、モデル化部721は、後述するフィッティング部722からのパラメータ更新指令に従って、理論反射率を示す関数を更新し、更新後の関数に従って、各波長における理論反射率(スペクトル)を繰返し算出する。より具体的には、モデル化部721は、パラメータとして、第1層の膜厚dおよび第2層の膜厚dを順次更新する。
【0129】
フィッティング部722は、バッファ部71から反射率スペクトルの実測値を読出し、モデル化部721から出力される反射率スペクトルの理論値との間の二乗偏差を各波長について順次算出する。そして、フィッティング部722は、各波長における偏差から残差を算出し、この残差が所定のしきい値以下であるか否かを判断する。すなわち、フィッティング部722は、現時点のパラメータにおいて収束しているか否かを判断する。
【0130】
残差が所定のしきい値以下でなければ、フィッティング部722は、モデル化部721に対してパラメータ更新指令を与え、新たに反射率スペクトルの理論値が出力されるまで待つ。一方、残差が所定のしきい値以下であれば、フィッティング部722は、現時点の第1層の膜厚dおよび第2層の膜厚dを解析値として出力する。
【0131】
図12は、本発明の実施の形態1に従う処理パターンに係る膜厚算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0132】
図12を参照して、まず、ユーザが被測定物(試料)をステージ上に配置する(ステップS100)。続いて、ユーザが測定準備指令を与えると、観察用光源からは観察光の照射が開始される。ユーザは、表示部に表示される観察用カメラで撮影された反射像を参照しながら、可動機構にステージ位置指令を与えて、測定範囲の調整や焦点合わせを行う(ステップS102)。
【0133】
測定範囲の調整や焦点合わせの完了後、ユーザが測定開始指令を与えると、測定用光源10(図1)から測定光の発生が開始される。分光測定部40は、被測定物からの反射光を受光し、当該反射光に基づく反射率スペクトルをデータ処理部50へ出力する(ステップS104)。続いて、データ処理部50のCPU200は、分光測定部40で検出された反射率スペクトルをメモリ部212などに一時的に格納する(ステップS106)。その後、データ処理部50のCPU200が以下に示す膜厚算出処理を実行する。
【0134】
CPU200は、ディスプレイ部204(図10)などに入力画面を表示して、ユーザにパラメータの入力を促す(ステップS108)。ユーザは、表示された入力画面上などから、被測定物の第1層の屈折率nおよび消衰係数kと、被測定物の第2層の屈折率n2および消衰係数k2とを入力するとともに、被測定物に係る第1層の膜厚dおよび第2層の膜厚dの初期値を入力する(ステップS110)。
【0135】
さらに、CPU200は、ユーザ入力されたパラメータに基づいて、反射率スペクトルの理論値を算出する(ステップS112)。続いて、CPU200は、メモリ部212などに格納されている反射率スペクトルの実測値と反射率スペクトルの理論値との間の二乗偏差を各波長について順次算出し、両者の間の残差を算出する(ステップS114)。さらに、CPU200は、算出した残差が所定のしきい値以下であるか否かを判断する(ステップS116)。
【0136】
算出した残差が所定のしきい値以下でない場合(ステップS116においてNOの場合)には、CPU200は、第1層の膜厚dおよび第2層の膜厚dの現在値を変更する(ステップS118)。なお、膜厚dおよびdをどの方向にどの程度変更するかについては、残差の発生度合いに応じて決定される。そして、処理はステップS112に戻る。
【0137】
これに対して、算出した残差が所定のしきい値以下である場合(ステップS116においてYESの場合)には、CPU200は、第1層の膜厚dおよび第2層の膜厚dの現在値を被測定物の各層の膜厚(解析値)として出力する(ステップS120)。そして、処理は終了する。
【0138】
なお、図11に示すブロック図では、屈折率n,nおよび消衰係数k,kとして固定値を入力する構成について例示したが、波長分散を考慮した屈折率および消衰係数を用いてもよい。たとえば、波長分散を考慮した屈折率および消衰係数としては、以下に示すようなCauchyモデルの式を用いてもよい。
【0139】
【数17】

【0140】
このような式を用いる場合には、式中の各係数についても予め初期値または既知の値を入力しておき、これらの係数についてもフィッティング対象とされる。
【0141】
あるいは、以下に示すようなSellmeierモデルの式を用いてもよい。
【0142】
【数18】

【0143】
<膜厚測定例>
次に、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100の膜厚測定の一例を説明する。図13は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100により得られたパワースペクトルの一例を示すグラフである。図13に示すパワースペクトルは、膜厚測定装置100を用いて被測定物のSi層の膜厚を測定した一例であり、被測定物での光のスポット径が約9μm、測定時間5m秒、WD1が5mmで測定を行なって得られた測定結果である。図13(a)は、膜厚が728.4μmのSi層を測定したパワースペクトル、図13(b)は、膜厚が599.5μmのSi層を測定したパワースペクトル、図13(c)は、膜厚が450.0μmのSi層を測定したパワースペクトル、図13(d)は、膜厚が300.8μmのSi層を測定したパワースペクトルである。図13の横軸は膜厚(μm)で、縦軸はスペクトル強度である。図13に示すスペクトルピークの値が、膜厚測定装置100で測定したSi層の値である。
【0144】
図13(a)〜図13(d)に示した膜厚のSi層を、膜厚測定装置100を用いて、それぞれ15回繰返して測定した結果を次に示す。図14は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100により得られた測定結果の一例を示す表である。図14に示す表は、図13(a)〜図13(d)に示した膜厚のSi層に膜厚測定装置100を用いて、それぞれ15回繰返して測定した平均値、拡張不確かさ(標準偏差STD×2.1)、相対拡張不確かさを示している。
【0145】
具体的に、膜厚が728.4μmのSi層(図13(a))に膜厚測定装置100を用いて15回繰返して測定した結果は、平均値が728.12μm、拡張不確かさが0.50μm、相対拡張不確かさが0.07%である。膜厚が599.5μmのSi層(図13(b))に膜厚測定装置100を用いて15回繰返して測定した結果は、平均値が599.65μm、拡張不確かさが0.34μm、相対拡張不確かさが0.06%である。
【0146】
膜厚が450.0μmのSi層(図13(c))に膜厚測定装置100を用いて15回繰返して測定した結果は、平均値が450.32μm、拡張不確かさが0.58μm、相対拡張不確かさが0.13%である。膜厚が300.8μmのSi層(図13(d))を膜厚測定装置100に用いて15回繰返して測定した結果は、平均値が300.17μm、拡張不確かさが0.58μm、相対拡張不確かさが0.19%である。
【0147】
上述の測定結果より、膜厚測定装置100は、Si層の膜厚を再現性よく、高い精度で測定することができていることが分かる。
【0148】
<膜厚測定の安定性>
次に、膜厚測定装置100は、集光光学プローブ30を設けることでより安定して膜厚を測定することができることを説明する。具体的に、フォーカス位置の変化に対する測定の安定性、被測定物の傾きに対する測定の安定性について説明する。
【0149】
図15は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100において、集光光学プローブ30のフォーカス位置の変化を説明するための概略図である。図15に示す集光光学プローブ30は、調整機構32で集光レンズ31をZ軸方向に移動させて、フォーカス位置を約±10mmの範囲で変化させている。なお、膜厚測定装置100は、被測定物をSi層とし、フォーカス位置での光のスポット径を約27μm、測定時間を10m秒、WD1を150mmとして測定を行なう。
【0150】
図16は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100において、フォーカス位置を変化させた場合の測定結果の一例を示す図である。図16に示す測定結果は、膜厚が728.4μm、599.5μm、450.0μm、300.8μmのSi層のそれぞれに対して、フォーカス位置を約±10mmの範囲で変化させて15回繰返して測定した測定結果である。
【0151】
図16(a)は、フォーカス位置による膜厚の差異(μm)を示す測定結果であり、横軸をフォーカス位置(mm)、縦軸を膜厚の差異(μm)としてプロットしたグラフである。膜厚測定装置100は、図16(a)から分かるように、フォーカス位置を約±10mmの範囲で変化しても、膜厚の差異(μm)が約±0.40μm以内となる。
【0152】
図16(b)は、フォーカス位置による膜厚の差異(%)を示す測定結果であり、横軸をフォーカス位置(mm)、縦軸を膜厚の差異(%)としてプロットしたグラフである。膜厚測定装置100は、図16(a)から分かるように、フォーカス位置を約±10mmの範囲で変化しても、膜厚の差異(%)が約±0.10%以内となる。
【0153】
上述のように、膜厚測定装置100は、フォーカス位置を約±10mmの範囲で変化しても、膜厚の差異(μm)を約±0.40μm以内、膜厚の差異(%)を約±0.10%以内で膜厚測定することが可能であることから、フォーカス位置の変化に対して安定して測定することができる。
【0154】
図17は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100において、被測定物の傾きを説明するための概略図である。図17に示す被測定物の傾きは、集光光学プローブ30または/および被測定物を移動させて、被測定物に対して約±2.5度の範囲で変化させる。なお、膜厚測定装置100は、被測定物をSi層とし、フォーカス位置での光のスポット径を約27μm、測定時間を10m秒、WD1を150mmとして測定を行なう。
【0155】
図18は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100において、被測定物の傾きを変化させた場合の測定結果の一例を示す図である。図18に示す測定結果は、膜厚が728.4μm、599.5μm、450.0μm、300.8μmのSi層のそれぞれに対して、被測定物の傾きを約±2.5度の範囲で変化させて15回繰返して測定した測定結果である。
【0156】
図18(a)は、被測定物の傾きによる膜厚の差異(μm)を示す測定結果であり、横軸を被測定物の傾き(度)、縦軸を膜厚の差異(μm)としてプロットしたグラフである。膜厚測定装置100は、図18(a)から分かるように、被測定物の傾きを約±2.5度の範囲で変化しても、膜厚の差異(μm)が約+0.2μm〜約−1.00μmの範囲内となる。特に、被測定物の傾きを約±2.0度の範囲の場合、膜厚の差異(μm)が約+0.2μm〜約−0.6μmの範囲内となる。
【0157】
図18(b)は、フォーカス位置による膜厚の差異(%)を示す測定結果であり、横軸を被測定物の傾き(度)、縦軸を膜厚の差異(%)としてプロットしたグラフである。膜厚測定装置100は、図18(a)から分かるように、被測定物の傾きを約±2.5度の範囲で変化しても、膜厚の差異(%)が約+0.05%〜約−0.35%の範囲内となる。特に、被測定物の傾きを約±2.0度の範囲の場合、膜厚の差異(%)が約+0.05%〜約−0.1%の範囲内となる。
【0158】
上述のように、膜厚測定装置100は、被測定物の傾きを約±2.5度の範囲で変化しても、膜厚の差異(μm)を約+0.2μm〜約−1.00μmの範囲内、膜厚の差異(%)を約+0.05%〜約−0.35%の範囲内で膜厚測定することが可能であることから、被測定物の傾きの変化に対して安定して測定することができる。
【0159】
<ウレタン越しの測定例>
本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100は、集光光学プローブ30を備えているため被測定物の膜に測定光の焦点を絞ることができるので、被測定物の膜上にウレタンなどがあっても、被測定物の膜厚を測定することができる。
【0160】
図19は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100において、ウレタン越し被測定物を測定する一例を示す概略図である。図19に示す集光光学プローブ30は、被測定物から150mmの位置に固定され、水膜191およびウレタン192越しに被測定物に測定光を照射し、反射した光を受光する。
【0161】
図20は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100により、水膜191およびウレタン192越しに測定して得られたパワースペクトルの一例を示すグラフである。図20に示すパワースペクトルは、膜厚測定装置100を用いて水膜191およびウレタン192越しに被測定物のSi層の膜厚を測定した測定結果の一例である。図20(a)は、膜厚が728.4μmのSi層を測定したパワースペクトル、図20(b)は、膜厚が599.5μmのSi層を測定したパワースペクトル、図20(c)は、膜厚が450.0μmのSi層を測定したパワースペクトル、図20(d)は、膜厚が300.8μmのSi層を測定したパワースペクトルである。図20の横軸は膜厚(μm)で、縦軸はスペクトル強度である。図20に示すスペクトルピークの値が、膜厚測定装置100で測定したSi層の値である。なお、600μmの膜厚近傍にあるスペクトルピークは、ウレタン192によるスペクトルピークである。
【0162】
図20(a)〜図20(d)に示した膜厚のSi層を、膜厚測定装置100を用いて、それぞれ15回繰返して測定した結果を次に示す。図21は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100により、水膜191およびウレタン192越しに測定して得られた測定結果の一例を示す表である。図21に示す表は、図20(a)〜図20(d)に示した膜厚のSi層に膜厚測定装置100を用いて、それぞれ15回繰返して測定した平均値、拡張不確かさ(標準偏差STD×2.1)、相対拡張不確かさを示している。
【0163】
具体的に、膜厚が728.4μmのSi層(図20(a))に膜厚測定装置100を用いて15回繰返して測定した結果は、平均値が713.49μm、拡張不確かさが0.23μm、相対拡張不確かさが0.03%である。膜厚が599.5μmのSi層(図20(b))に膜厚測定装置100を用いて15回繰返して測定した結果は、平均値が590.65μm、拡張不確かさが1.03μm、相対拡張不確かさが0.17%である。
【0164】
膜厚が450.0μmのSi層(図20(c))に膜厚測定装置100を用いて15回繰返して測定した結果は、平均値が443.85μm、拡張不確かさが0.10μm、相対拡張不確かさが0.02%である。膜厚が300.8μmのSi層(図20(d))に膜厚測定装置100を用いて15回繰返して測定した結果は、平均値が295.10μm、拡張不確かさが0.03μm、相対拡張不確かさが0.01%である。
【0165】
上述の測定結果より、膜厚測定装置100は、水膜191およびウレタン192越しであっても、Si層の膜厚を再現性(相対拡張不確かさが±0.2%以下)よく、高い精度で測定することができていることが分かる。
【0166】
なお、膜厚測定装置100は、水膜191およびウレタン192越しでのみ被測定物の膜厚を測定することができるのではなく、ガラスやプラスチックなど越しでも被測定物の膜厚を測定することができる。図22は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100において、ガラス越し被測定物を測定する一例を示す概略図である。図22に示す集光光学プローブ30は、被測定物から150mmの位置に固定され、ガラス193越しに被測定物に測定光を照射し、反射した光を受光する。なお、図22に示す被測定物は、表面をプラスチック194で覆ってある。
【0167】
このように、膜厚測定装置100は、ガラス193越しに被測定物の膜厚を測定することが可能であるので、たとえば蒸着チャンバなどの窓の外側から被測定物の膜厚を測定することが可能となる。
【0168】
<光源>
膜厚測定装置100は、光源にインコヒーレント(非可干渉性)光を照射することが可能なASE光源を用いる構成について説明した。しかし、上述したように、膜厚測定装置100は、ASE光源に限定されるものではなく、光源にコヒーレント(可干渉性)光を照射することが可能なSLD光源を用いてもよい。なお、膜厚測定装置100は、分光干渉方式の測定方法を用いているので、SLD光源の持つコヒーレント性が、ファイバの曲げ或いは分光測定部40との接続部分等で、本来測定されるべき分光干渉以外の疑似干渉が確認される場合が多い。
【0169】
図23は、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100において、ASE光源およびSLD光源で測定して得られたパワースペクトルの一例を示すグラフである。図23の横軸は膜厚(μm)で、縦軸はスペクトル強度である。
【0170】
図23(a)は、ASE光源を用いて被測定物のSi層の膜厚を測定したパワースペクトルである。図23(a)に示すスペクトルピークには、膜厚が728.4μmのSi層のスペクトルピーク、膜厚が599.5μmのSi層のスペクトルピーク、膜厚が450.0μmのSi層のスペクトルピーク、膜厚が300.8μmのSi層のスペクトルピークが図示されている。
【0171】
図23(b)は、SLD光源を用いて被測定物のSi層の膜厚を測定したパワースペクトルである。図23(b)に示すスペクトルピークには、膜厚が728.4μmのSi層のスペクトルピーク、膜厚が599.5μmのSi層のスペクトルピーク、膜厚が450.0μmのSi層のスペクトルピーク、膜厚が300.8μmのSi層のスペクトルピークが現れる。さらに、図23(b)に示すスペクトルピークには、膜厚が70μmの近傍に擬似ピークが現れる。この擬似ピークが、SLD光源の持つコヒーレント性により、ファイバの曲げ或いは分光測定部40との接続部分等で、本来測定されるべき分光干渉以外の疑似干渉で生じたスペクトルピークである。
【0172】
そのため、膜厚測定装置100は、擬似ピークによる影響を受けなうようにするためにASE光源を用いることが望ましい。
【0173】
以上のように、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100は、測定用光源10から照射した測定光を被測定物に導く光路の光ファイバ20(第1光路)および被測定物で反射された光を、分光測定部40に導く光路の光ファイバ20(第2光路)が、被測定物側の光軸方向が互いに平行となるように形成されたY型ファイバである。そして、測定用光源10から出射する測定光を被測定物に集光する集光レンズ31、および被測定物で反射された光を、集光する集光レンズ31は、1つのレンズで構成された集光光学プローブ30である。そのため、本発明の実施の形態1に従う膜厚測定装置100は、集光光学プローブ30のサイズを小型にしつつ、被測定物との距離に依存することなく、被測定物の膜厚をより高い精度で測定することができる。
【0174】
(実施の形態2)
図1に示す集光光学プローブ30は、光ファイバ20から出射する測定光を被測定物に集光する集光レンズと、被測定物で反射された光を、光ファイバ20の端部に集光する集光レンズとを1つの集光レンズ31で構成している。
【0175】
しかし、本発明に従う集光光学プローブ30は、当該構成に限定されるものではなく、たとえば、光ファイバ20から出射する測定光を被測定物に集光する集光レンズと、被測定物で反射された光を、光ファイバ20の端部に集光する集光レンズとをそれぞれ別々の集光レンズで構成してもよい。
【0176】
図24は、本発明の実施の形態2に従う集光光学プローブ30の構成を説明するための概略図である。なお、本発明の実施の形態2に従う膜厚測定装置は、光ファイバ20および集光光学プローブ30の構成以外、図1に示す膜厚測定装置100の構成と同じであるため、同じ構成要素については同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0177】
図24(a)は、集光光学プローブ30を設けずに光ファイバ20から測定光を直接、被測定物に照射する場合を図示してある。光ファイバ20から出射される光は、図24(a)から分かるように、光ファイバ20の開口角度により広がり、被測定物で反射され、さらに広がっている。そのため、図24(a)の場合、被測定物で反射した光の範囲301のうち、光ファイバ20で受光することができる光の範囲302は小さくなる。
【0178】
図24(b)は、集光光学プローブ30を設けて光ファイバ20から測定光を集光して、被測定物に照射する場合を図示してある。ここで、光ファイバ20は、Y型ファイバでなく、2本のシングルモードファイバを被測定物側の光軸方向が互いに交差するように配置してある。一方の光ファイバ20から出射される光は、図24(b)から分かるように、集光レンズ31cにより広がりを抑えることができる。集光レンズ31dで集光した光は、被測定物で反射され再び広がることになるが、集光レンズ31dで光ファイバ20の端部に集光する。
【0179】
そのため、図24(b)の場合、被測定物に照射する光の範囲305のうち、光ファイバ20で受光することができる光の範囲306は大きくなる。よって、膜厚測定装置100は、2つの集光レンズ31c,31dを備えることで、被測定物で反射した光を効率よく受光することができるので、S/N比が改善するので、分光測定部40の測定精度が高くなる。
【0180】
また、光ファイバ20は、被測定物で光軸方向が互いに交差するように2本のシングルモードファイバを配置してあるので、集光レンズ31c,31dの調整機構は、Z軸方向(光軸方向)に移動することができればよく、XY軸方向(光軸に対して垂直な方向)に移動することができなくてもよい。さらに、集光レンズ31c,31dの調整機構は、集光レンズ31c,31dのそれぞれを独立して個別に調整できるため、光ファイバ20から出射する測定光と、被測定物で反射された光とをそれぞれ独立して個別に調整できる。
【0181】
ただし、本発明の実施の形態2に従う集光光学プローブ30は、2つの集光レンズ31c,31dを備えるので、図1に示す集光光学プローブ30に比べてサイズが大きくなる。
【0182】
以上のように、本発明の実施の形態2に従う膜厚測定装置100は、光ファイバ20(第1光路:測定用光源10から照射した測定光を被測定物に導く光路)から出射する測定光を被測定物に集光する集光レンズ31cと、被測定物で反射された光を、光ファイバ20(第2光路:被測定物で反射された光を、分光測定部40に導く光路)の端部に集光する集光レンズ31dとを有する。そのため、本発明の実施の形態2に従う膜厚測定装置100は、被測定物との距離に依存することなく、被測定物の膜厚をより高い精度で測定することができる。
【0183】
(実施の形態3)
図1に示す集光光学プローブ30は、被測定物に測定光を出射する光ファイバ20を1本、被測定物で反射された光を受光する光ファイバ20を1本、備える構成である。
【0184】
しかし、本発明に従う集光光学プローブ30は、当該構成に限定されるものではなく、たとえば、被測定物に測定光を出射する光ファイバ20を複数本、被測定物で反射された光を受光する光ファイバ20を1本、備える構成でもよい。
【0185】
図25は、本発明の実施の形態3に従う集光光学プローブ30の構成を説明するための概略図である。なお、本発明の実施の形態3に従う膜厚測定装置は、光ファイバ20および集光光学プローブ30の構成以外、図1に示す膜厚測定装置100の構成と同じであるため、同じ構成要素については同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0186】
図25では、被測定物と対向する集光光学プローブ30の一面を図示してある。図25に示す集光光学プローブ30は、中心に被測定物で反射された光を受光する光ファイバ20aを1本、その周りに、被測定物に測定光を出射する光ファイバ20bを4本、配置してある。
【0187】
光ファイバ20から出射される光は、図3(b)に示したように、集光レンズ31により集光されて被測定物を照射し、被測定物に照射した光は、被測定物で反射して再び集光レンズ31により集光されて光ファイバ20に受光される。そして、膜厚測定装置100は、被測定物に照射する光の範囲303のうち、光ファイバ20で受光することができる光の範囲304が大きくなるように、被測定物の傾きや集光レンズ31の位置を調整していた。
【0188】
しかし、被測定物の傾きや集光レンズ31の位置で調整できる範囲は限られている。そこで、本発明の実施の形態3に従う集光光学プローブ30は、被測定物に測定光を出射する光ファイバ20bを、被測定物で反射された光を受光する光ファイバ20aの周囲に配置して、いずれか1本の光ファイバ20bから出射した測定光が、光ファイバ20aに受光されるようにしてある。
【0189】
つまり、ある1本の光ファイバ20bから出射した測定光が、測定物の傾きや集光レンズ31の位置を調整しても光ファイバ20aにうまく受光することができない場合であっても、別の1本の光ファイバ20bから出射した測定光は、光ファイバ20aにうまく受光することが可能になる。
【0190】
以上のように、本発明の実施の形態3に従う集光光学プローブ30は、光ファイバ20の被測定物側において、光ファイバ20aの周りに複数の光ファイバ20bを配置することで、光源から被測定物に照射した測定光を、効率よく光ファイバ20aで受光することが可能になる。
【0191】
なお、図25に示す集光光学プローブ30は、中心に被測定物で反射された光を受光する光ファイバ20aを1本、その周りに、被測定物に測定光を出射する光ファイバ20bを4本、配置した構成であるが、本発明に従う集光光学プローブ30は、これに限定されるものではない。たとえば、集光光学プローブ30は、中心に被測定物で反射された光を受光する光ファイバ20aを2本、その周りに、被測定物に測定光を出射する光ファイバ20bを8本、配置した構成であってもよい。さらに、集光光学プローブ30は、中心に被測定物に測定光を出射する光ファイバ20bを1本、その周りに、被測定物で反射された光を受光する光ファイバ20aを4本、配置した構成でもよい。
【0192】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0193】
10 測定用光源、20,20a,20b 光ファイバ、30 集光光学プローブ、31,31a〜31d 集光レンズ、32 調整機構、40 分光測定部、41 回折格子、42 検出部、43 カットフィルタ、44 シャッタ、50 データ処理部、71 バッファ部、100 膜厚測定装置、191 水膜、192 ウレタン、193 ガラス、194 プラスチック、202 バス、204 ディスプレイ部、208 入力部、210 ハードディスク部、212 メモリ部、214 ROMドライブ、216a フレキシブルディスク、721 モデル化部、722 フィッティング部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜厚測定装置であって、
基板上に少なくとも1層の膜を形成した被測定物に対して所定の波長範囲をもつ測定光を照射する光源と、
前記光源から照射した前記測定光を前記被測定物に導く少なくとも1つの第1光路と、
前記第1光路から出射する前記測定光を前記被測定物に集光する第1集光レンズと、
前記第1集光レンズで集光した前記測定光のうち、前記被測定物で反射された光または前記被測定物を透過した光に基づいて、反射率または透過率の波長分布特性を取得する分光測定部と、
前記被測定物で反射された光または前記被測定物を透過した光を、前記分光測定部に導く少なくとも1つの第2光路と、
前記被測定物で反射された光または前記被測定物を透過した光を、前記第2光路の端部に集光する第2集光レンズと、
前記分光測定部で取得した前記波長分布特性を解析することで、前記被測定物の膜厚を求めるデータ処理部を備える、膜厚測定装置。
【請求項2】
前記第1光路および前記第2光路は、シングルモードファイバである、請求項1に記載の膜厚測定装置。
【請求項3】
前記第1光路および前記第2光路は、前記被測定物側の光軸方向が互いに平行となるように形成されたY型ファイバで、
前記第1集光レンズおよび前記第2集光レンズは、1つのレンズで構成された集光光学プローブである、請求項1または請求項2に記載の膜厚測定装置。
【請求項4】
前記Y型ファイバは、前記被測定物側において、前記第2光路の周りに複数の前記第1光路を配置する構成である、請求項3に記載の膜厚測定装置。
【請求項5】
前記光源は、インコヒーレント光を前記測定光として照射する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。
【請求項6】
前記分光測定部は、赤外帯域の波長範囲において反射率または透過率の前記波長分布特性を取得することができる、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−32981(P2013−32981A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169368(P2011−169368)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000206967)大塚電子株式会社 (50)
【Fターム(参考)】