説明

膜塗布装置および膜塗布方法

【課題】 塗布された膜に水分や酸素などの原子・分子レベルの汚染がない膜塗布装置を提供すること。
【解決手段】 被塗布基板を内部に導入して、この基板に膜塗布を行うための塗布容器50,116と、塗布液を保持する塗布液容器20と、前記塗布液容器20から塗布液を前記塗布容器50,116に輸送する液輸送系30とを含む膜塗布装置110において、塗布された膜内における酸素及び水分の内の少なくとも一方の含有を抑制する手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に膜を塗布する装置およびその方法に関し、特に半導体装置やフラットパネルディスプレイ等の電子装置の製造において半導体基板やガラス基板等に感光性樹脂等の有機物被膜を塗布したり、磁気ディスクや光学ディスクなどの精密基板に記録用膜、保護膜、その他の有機被膜などの膜を塗布するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶ディスプレイ、磁気ディスク等の製造において、回路パターンを形成するために露光技術が用いられている。
【0003】
この露光技術を実施するために、リソグラフィシステムが用いられている(特許文献1、参照)。リソグラフィシステムは、基板、例えば、ウェハにレジストを塗布するレジストコータ、所望形状にパターニングする露光装置、及び、現像装置を備えている。レジストパターンが形成されたウェハは、エッチング装置、例えば、リアクティブイオンエッチング(RIE)装置に挿入されてエッチングされる。
【0004】
ここで、露光工程に必須であるレジスト材料(感光性樹脂)を精密基板に均一に、且つ、可能な限り薄く塗布することは、基板に微細素子を形成する場合のみならず、半導体をはじめとしたデバイス製造を高品質で高い歩留で実現するために不可欠で重要な事項である。したがって、従来から露光工程においてレジスト材料の塗布を精密基板に均一に、かつ可能な限り薄くするため、レジストコータ、即ち、コーティング装置の改良が行なわれてきた。
【0005】
また、半導体等、各種デバイスの高集積化、高精密化にともない、問題となる汚染因子も一層厳しくなってきており、重金属汚染はもとより、環境からのパーティクル汚染、製造装置からの汚染も問題となり、これらを改善することが必要となっている。
【0006】
具体的に、従来の膜塗布装置の問題点について、例えば、レジストコータを例にとって説明する(特許文献2、参照)。特許文献2に示されたレジストコータには、ノズルにレジストを供給するレジストラインを備えている。レジストラインは、フォトレジストを収容するレジストタンク(塗布液容器)と、レジストタンクからレジストを汲み上げるレジスト・ポンプと、レジスト・ポンプから汲み出されたフォトレジストを濾過するフィルタと、開閉弁と、レジストの温度を調整するレジスト温調器とを順次に備え、レジスト供給管を介してノズルに接続されている。
【0007】
ウェハ面にレジスト膜を塗布する際には、レジストタンクからレジストをレジスト・ポンプにより吸い上げて、フィルタ、フォトレジスト温調器を経てノズルから吐出させ、スピンモータにより回転されるスピンチャックに吸着したウェハ上へ滴下する。次いで、スピンチャックの回転による遠心力によりレジストをウェハの外方に流動させて、ウェハ上にレジスト膜を塗布する。レジスト膜の塗布中、レジスト膜をウェハ全面にわたり均一な膜厚でかつウェハ毎のばらつきをなくすために、レジスト温調器を動作させてレジストの温度を調整し、カップ温調器及びモーターフランジ温調器を動作させ、ウェハを所定の温度に維持するようにしている。
【0008】
また、レジストタンクから、実際にレジストと塗布する塗布容器のノズルまで、レジストを輸送する配管としてテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)チューブ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブが用いられている。実際のレジストコータの一例を上げると、レジストラインを形成するレジストタンクからノズルまでの間に、4mのPFAチューブと1mのPTFEチューブが使用されており、レジストはこれらのチューブを必ず通過する。
【0009】
【特許文献1】特開平10−261572号公報
【特許文献2】特開平11−276972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者等の研究によれば、レジストタンクに保管されるレジストには、大気飽和まで空気成分、水分が混入しているため、配管内でレジストに起因する気泡の発生が避けられないと言う事実が判明した。
【0011】
また、レジストを輸送する配管として、PFAチューブ、PTFEチューブを使用した場合、これらのチューブは酸素等のガス透過性を有しているため、ノズルからウェハ等の基板上へ吐出されるレジストに、これらチューブを透過した酸素等のガスが混入することも分かった。更に、ノズルから基板上への吐出時に、塗布容器内の雰囲気中に含まれる水分・酸素がレジストに混入することも見出された。
【0012】
レジストに水分が混入すると、露光工程後のエッチング工程であるリアクティブイオンエッチング(RIE)において、チャンバー内に水分プラズマを発生させたり、この水分を介在してごみが発生し、内部からウェハ等に付着し、歩留まりの悪化を招くという欠点がある。また、レジスト中に含まれる水分や酸素などが放出されてレジスト材料にダメージを与えてしまうため、選択比の向上が妨げられ、レジスト材料の塗布を可能な限り薄くすることが困難になってしまうと言う問題もある。
【0013】
更に、レジスト等の塗布液に水分や酸素が含まれていると激しい経時変化を起こすので、塗布液の管理が困難であり、均一な塗布が困難になると言う問題も見出された。
【0014】
しかしながら、従来、膜塗布装置等の装置では、レジストとその供給ラインから水分や酸素の混入が問題視されることはなく、この結果、レジストとその供給ラインにおける水分、酸素の混入を抑制することについて、何等、考慮されていなかった。
【0015】
そこで、本発明の技術的課題は、塗布された膜に水分や酸素などの原子・分子レベルの汚染がない膜塗布方法と、そのための膜塗布装置と、それを用いた電子装置や、データ記録用ディスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、被塗布基板を内部に導入して該基板に膜塗布を行うための塗布容器と、塗布液を保持する塗布液容器と、前記塗布液容器から塗布液を前記塗布容器に輸送する液輸送系とを含む膜塗布装置において、塗布された膜内における酸素及び水分の内の少なくとも一方の含有を抑制する手段を有することを特徴とする膜塗布装置が得られる。
【0017】
本発明によれば、前記膜塗布装置において、前記抑制手段は脱気装置を含み、前記脱気装置は前記塗布液容器に前記塗布液が供給される供給口前段及び前記液輸送系の少なくとも一方に設置されることを特徴とする膜塗布装置が得られる。
【0018】
本発明によれば、前記膜塗布装置において、前記脱気装置は前記液輸送系中のポンプの前段に設置されることを特徴とする膜塗布装置が得られる。
【0019】
本発明によれば、前記いずれかの膜塗布装置において、前記抑制手段は、酸素透過係数が5×10(個・cm/cmsecPa)以下である樹脂配管を含み、前記樹脂配管を前記液輸送系において用いることを特徴とする膜塗布装置が得られる。
【0020】
本発明によれば、前記いずれかの膜塗布装置において、前記抑制手段は二重樹脂配管を含み、前記二重樹脂配管の内管と外管との間の空間に不活性ガスまたは気体状有機溶媒を含むガスを存在せしめ、前記二重樹脂配管を前記液輸送系において用いることを特徴とする膜塗布装置が得られる。
【0021】
本発明によれば、前記いずれか一項の膜塗布装置において、前記抑制手段は、前記塗布容器内部雰囲気に酸素または水分が混入するのを防止するように雰囲気制御するためのガス供給手段とガス排気手段とを具備することを特徴とする膜塗布装置が得られる。
【0022】
本発明によれば、前記膜塗布装置において、前記ガスは不活性ガスおよび水素の内の少なくとも一方であることを特徴とする膜塗布装置が得られる。
【0023】
本発明によれば、前記いずれか一つの膜塗布装置において、前記抑制手段は、前記塗布された膜内における酸素および水分(HO)の少なくとも一方の濃度を10ppm以下とすることを特徴とする膜塗布装置が得られる。
【0024】
本発明によれば、前記膜塗布装置において、前記抑制手段は、前記塗布された膜内における酸素および水分(HO)の少なくとも一方の濃度を1ppm以下とすることを特徴とする膜塗布装置が得られる。
【0025】
本発明によれば、前記いずれかの膜塗布装置を用いて膜塗布を行うことを特徴とする膜塗布方法が得られる。
【0026】
本発明によれば、前記膜塗布方法を用いて感光性樹脂膜を基板に塗布する工程を含むことを特徴とする電子装置の製造方法が得られる。
【0027】
本発明によれば、前記膜塗布方法を用いて記録用膜または保護膜をディスク基板に塗布する工程を含むことを特徴とするデータ記録用ディスクの製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、酸素及び水分の内の少なくとも一方の含有を抑制する手段を設けることによって塗布された膜、例えば、レジスト膜に酸素や水分の含有が抑制されているので、エッチング工程時に水分や酸素などの放出がなく、レジスト材料がダメージを受けない。更に、レジスト材料がダメージを受けないことと、構造材壁面からの水分放出がないこととあわせると選択比が従来の10倍以上に向上し、レジスト材料の塗布を薄くして露光の解像度を高めることが可能となる。
【0029】
また、本発明によれば、前記抑制手段によって、塗布液に酸素や水分の含有が抑制されているので、液の経時変化がなく、液の管理や均一な塗布が容易になるという効果もある。
【0030】
さらに、本発明によれば、輸送系へ送り出される塗布液が脱気されるので、輸送配管における気泡の発生がなくなり、気泡のキャビテーションによる汚染の発生、塗布液分子の分解・解離が抑えられ、また塗布時の塗布液の吐出の不安定・不均一・脈動を抑えることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施形態について図面を参照しながら、説明する。
【0032】
図1は、本発明の膜塗布装置の一例としてのレジストコーティング装置(以下、単にコータと呼ぶ)の全体構成を示す図である。本発明の実施形態に係るコータは、概略構成が従来のものと類似しているが、感光性樹脂を含むレジスト液やレジスト液供給系及びリンス液供給系などの液供給系や、装置内部に、塗布膜内に酸素や水分の混入を抑制する手段を備えている点で従来のコータとは異なっている。
【0033】
即ち、図1を参照すると、コータ110は、真空吸着又は静電吸着によりウェハを吸着保持しつつ回転するスピンチャック112、スピンチャック112を回転させるスピンモータ114、及び、スピンチャック112を覆うコータカップ116を備えている。また、フォトレジスト膜を塗布したウェハ5のエッジ(周縁部)の上面をリンス液でリンスする表面エッジリンスノズル120、及びウェハの下面をリンスする裏面リンスノズル122を有する。
【0034】
リンス液には、通常、シンナーが使用される。表面エッジリンスノズル120によるリンスは、ウェハ周辺部のフォトレジストを洗浄、除去するために行われ、裏面リンスノズル22によるリンスは、ウェハ裏面に付着したフォトレジストを洗浄、除去するために行われる。
【0035】
ウェハ5上に成膜されたフォトレジスト以外の過剰なフォトレジスト及びリンス廃液は、コータカップ116の底部から廃液管124により排出される。
【0036】
リンス液供給装置132は、リンス液として使用されるシンナーを収容したキャニスター缶146と、窒素ガスを送入してシンナーを圧送するためにキャニスター缶146に取り付けられた窒素ガス送入口148とを備え、キャニスター缶146に窒素ガスを送入し、リンス液供給管149、次いでそれぞれ開閉弁150、152を有するリンス液供給管154、156を介してリンス液を圧送することにより、キャニスター缶146から表面エッジリンスノズル120及び裏面リンスノズル122にリンス液を供給する。
【0037】
更に、コータ110は、スピンチャック112を含むコータカップ116を収容し、それらの温度を調整して、ウェハ付近の温度や湿度を制御するチャンバーを構成するカップ温調器50、またスピンモータ114から伝熱される熱による影響を防ぐために、スピンモータ114のフランジにモーターフランジ温調器159を備えている。ここで、本発明において、塗布容器とは、コータカップ116及びカップ温調器50を含むものとする。
【0038】
リンス液供給管149に設けられたリンス液供給管温調器162と、カップ温調器50とをリンクさせてリンス液供給管温調器162の設定温度を調整することにより、コータカップ116の温度とリンス液の温度が同じになるように、リンス液の温度を制御するリンス液温度制御装置164とを備えている。
【0039】
更に、コータ110は、コータカップ116の上部開口からフォトレジストを噴出するノズル11、ノズル11にフォトレジストを供給するレジストライン30とを備えている。
【0040】
コータ110を使ってフォトレジスト膜をウェハ5上に塗布する際には、フォトレジスト膜を塗布し、塗布した後、リンス液供給管温調器162により温調されたリンス液を表面エッジリンスノズル120及び裏面リンスノズル122からウェハの表面エッジ及び裏面に向け吐出させ、洗浄する。
【0041】
コータ110では、リンス液温度制御装置164から制御信号を送ってカップ温調器158とリンス液供給管温調器162をリンクさせつつ、リンス液供給管温調器162の設定温度を調整することにより、コータカップ116の温度とリンス液の温度が同じになるように、リンス液の温度を制御する。尚、ウェハ塗布作業を中断した後で、再開する際には、塗布作業開始の直前に、リンス液配管温調節器162から下流のリンス液を、ダミーディスペンス(空出し)にて予め追い出しておき、その後、ウェハ5にリンス処理を施す。
【0042】
更に、本発明の実施形態に係るレジスト塗布装置(コータ)110は、塗布された薄膜レジスト中に、酸素、水分を侵入させない抑制手段を備えているコータとしたものである点で特徴付けられる。この抑制手段は、あらゆる方面からのレジスト塗布膜中への水分や酸素の混入を抑制するものである。
【0043】
具体的には、雰囲気中からの水分や酸素の混入を防止するために、N雰囲気中で均一塗布するように、コータ110が構成されている。そのために、コータカップ116内に窒素ガスNを供給するガス供給手段としてのガスノズル51を備え、また、ウエハ5よりも下方には、ガス排気手段としての図示しない排気ポンプに接続されたガス排気管52を備えている。
【0044】
さらに、本発明の実施形態に係るコータ110は、液輸送系の一つであるレジストライン30によっても特徴付けられる。
【0045】
まず、本発明の実施形態に係るレジストライン30について説明する。
【0046】
ここで、レジストは、レジストに光が当たったり、水分、酸素が混入すると、激しい経時変化を起こす。そのために、光遮断、酸素水分遮断を行っている。そこで、本発明においては、酸素、水分の少なくとも一方の混入を防ぐための手段をレジストライン30にも設けている。この手段を以下の説明においては、単に抑制手段と呼ぶ。
【0047】
また、有機溶剤に溶けているレジスト中に酸素、窒素といったガス成分が飽和溶解度まで溶解していると、レジスト圧送中に気泡も発生し、場合によっては気泡のキャビテーションでレジスト分子が分解解離する。
【0048】
そこで、レジスト圧送中に気泡を作らせないことがまず重要となる。このため、大気飽和までレジスト中に溶解している窒素、酸素成分の脱気する手段を抑制手段として設ける。また、原料としてのレジストに大気成分の混入も無くすための抑制手段を設けることもできる(製造工程中から大気成分遮断工程が望ましいが、最後に残す有機溶剤の脱気でもよい)。
【0049】
更に、レジストタンク21からウェハ5の表面塗布までのレジストライン30からの大気(窒素、酸素)の混入を無くす抑制手段を設けても良い。
【0050】
具体的に説明すると、レジストライン30に連結される原料タンク21、22、23、及びシンナー供給系は、Al入りオーステナイト系ステンレス(表面Al)系で構成されている。金属板製造工程において、Yゾルゲルコートされた原料タンクの表面のYは1000℃熱処理されている。最低でも、大気成分除去後のレジストラインは、次のように、内面Al,Y処理された金属系材料で構成する。これらは、レジストタンク21、原料レジスト補給システム、原料レジスト袖給タンク、及びレジスト供給チューブ系などに用いられる。
【0051】
また、レジストライン30にプラスチックチューブを用いた場合、当該プラスチックチューブとして、ガス透過が少ないPFA/ナイロン積層3層チューブを使用する。PFA/ナイロン積層3層チューブも、大気から酸素、水分がレジスト内に混入するのを抑制するために役立つ。このような3層チューブを使用しても、レジストの流れが止まるときに、外部が大気だと大量の酸素、窒素がレジスト中に侵入する。それを、抑制するために、レジスト供給チューブも2重にして、(外側はPFA/ナイロン3層チューブか、ソフト化PVDFチューブ)、その間に有機溶剤の気体をゆっくり流す(使う有機溶剤の室温での蒸気圧に内部を減圧する。ただしこの場合、有機溶剤の室温での蒸気圧を測定する必要が有る)。
【0052】
なお、レジストコータ110の内部においては、大気圧のN雰囲気であるから、PFA/ナイロン3層チューブだけでよい。
【0053】
このような構成をそれぞれ用いたで抑制手段によって、塗布されたレジスト膜内における酸素及び水分(HO)の内の少なくとも一方の含有を10ppm以下、好ましくは1ppm以上に抑制することができる。
【0054】
図2は、本発明の実施例によるレジストライン30構成の概略図、図3はレジストコータの要部を示す図である。
【0055】
図2を参照すると、液輸送系としてのレジストライン30は、それぞれ抑制手段として特有の構造を備えている。
【0056】
具体的に説明すると、図2に示されたレジストライン30は、レジスト吐出装置10と、塗布液容器としてのレジスト供給容器20と、それらを結ぶ配管25とで構成されている。配管25には、レジスト供給容器20側からレジスト噴出装置10に向かって順に、ドレイン弁31、流量調整弁32、フィルタ33、流量調整バルブ34が配置されている。
【0057】
レジスト吐出装置10は、3重構造のレジスト温度調整配管12とノズル11とを備えている。3重構造のレジスト温度調整配管12には、23℃の温度調整用冷却水を流入するポリ塩化ビニル(PVC)系のチューブからなる温調冷却水流入配管13および23℃の温度調整用冷却水を排出するPFAチューブからなる温調冷却水流出配管14がそれぞれ設けられている。
【0058】
レジスト供給容器20は、図1及び2に示すように、ステンレス製のレジストタンク21と、レジストタンク21の上部開口を封じる蓋23と、レジストタンク21内に配置された遮光ガラス瓶からなるレジスト瓶22とを備えている。レジストタンク21は、Al入りオーステナイト系ステンレス(表面Al)系で構成されている。なお、原料タンク(図示せず)のYは1000℃で熱処理することが好ましい。
【0059】
レジストタンク21には、抑制手段をなす装置として、レジスト容器20内部に窒素を供給する窒素供給配管26と、レジスト瓶22からレジストを供給するためにタンク外部に引き出された供給配管25aとを備えている。
【0060】
レジスト供給配管25aは、酸素の透過を防止する二重構造であり、内側は、外径1/4インチ、内径4.8mmφの長さ略1mのPFA製で、外側はPFA/ナイロン3層チューブか、ソフト化フッ化ビニリデン(PVDF)チューブである。この2層構造中には、有機溶剤の気体をゆっくり流す。但し、図示の例においては、有機溶剤の室温での蒸気圧に内部を減圧する。ただしこの場合、有機溶剤の室温での蒸気圧を測定する必要が有る。
【0061】
レジスト供給配管25aの他端は、水分を除去するためのドレイン配管31aが設けられたドレイン弁31aに接続されている。ドレイン弁31aはPTFE製である。ドレイン弁31と流量調整弁32とは、配管25bによって接続されている。
【0062】
レジスト供給配管25bは、レジスト供給配管25aと同様に、酸素を透過しない二重構造であり、内側は、外径1/4インチ、内径4.8mmφの長さ略1mのPFA製で、外側はPFA/ナイロン3層チューブか、ソフト化PVDFチューブである。この2層構造中には、上記同様、有機溶剤の気体がゆっくり流されている。
【0063】
レジストポンプ32はPFAおよびPTFAによって構成されている。フィルタ33と流量調整バルブ34とは配管25dにとよって接続されている。フィルタ33はPTFE製である。
【0064】
レジスト供給配管25cおよび25dは、レジスト供給配管25a,25bと同様に、二重構造であり、内側は、外径1/4インチ、内径4.8mmφの長さ略1mのPFA製で、外側はPFA/ナイロン3層チューブか、ソフト化PVDFチューブである。この2層構造中には、上記同様、有機溶剤の気体がゆっくり流されている。
【0065】
流量調整バルブ34とレジスト温調器12とは配管25eによって接続されている。流量調整バルブ34は、PTFEダイヤフラムからなる。
【0066】
レジスト供給配管25eも、レジスト供給配管25a,25bと同様である。
【0067】
以上のいずれのレジスト供給配管25(25a,25b,25c,25d,25e)においても、酸素透過係数が5×10(個/cmsecPa)以下であり、抑制手段を構成している。なお、配管の容積は79.4cmである。
【0068】
レジストライン30の下流のレジスト温調器12の先端に、図1に示すように、レジストを吐出するためのノズル11が設けられている。
【0069】
ここで、レジスト温調器12は外径4mm、内径3mm、長さ0.5mのPTFE製のチューブと、その外側に形成されたポリ塩化ビニル(PVC)系の温調冷却水供給用のチューブ13と、その外側に形成されたPFA製の温調冷却水排出用のチューブ14からなり、PTFEチューブと、温調冷却水供給用のチューブ13との間に温調冷却水が流される。
【0070】
図3を参照すると、レジストコータ110の要部は、内部にチャンバーを形成するカップ温調器50と、カップ温調器50内に設置されたウェハ5にレジストを吹き付けるようにノズル11が設けられたレジスト吐出装置10と、カップ温調器50内に不活性ガスであるNガスを供給するガス供給手段をなすガス供給配管(ガスノズル)51と、チャンバー内のガスを排気するガス排気手段をなすガス排気配管52とを備えている。
【0071】
カップ温調器50は、Al入りオーステナイト系ステンレス製であるか又は高純度Al/Mg/Zn製であり、表面に陽極酸化によってAlが形成され、さらに、Yで表面処理されていても良い。
【0072】
レジスト吐出装置10は図2の例においては、酸素の混入を防止するための抑制手段として、ポンプの前段に脱気膜33が設けられている。また、レジスト吐出装置10のレジスト供給配管25は、図2の例と同様に、低透過ガス係数を有する材料を使用している。
【0073】
レジスト塗布膜中への酸素および水分の混入を抑制する手段として、ガス供給手段をなすガス供給配管51及びガス排気手段をなすガス排気配管52は、それぞれPFA/ナイロン3層チューブからなり、これらガス供給配管51及びガス排気配管52によるNガス供給によって、チャンバー内の雰囲気が大気圧に保たれるとともに雰囲気中の酸素及び水分の濃度を低減させ、雰囲気からレジスト塗布膜への酸素や水分の混入を抑制している。
【0074】
これによって、レジスト塗布時の脈動がなく、レジスト材料への不純物混入がなく、露光工程後のRIEでのレジストのエッチングを抑制することができ、レジスト材料の薄膜化が可能となる。この薄膜化によって、さらなるパターンの微細化が可能であるとともに、連続プロセスが可能となる。
【0075】
以上説明した本発明の実施形態の特徴を纏めると、以下の通りである。
【0076】
本発明による膜塗布装置は、被塗布基板を内部に導入してこの基板に膜塗布を行うための塗布容器と、塗布液を保持する塗布液容器と、前記塗布液容器から前記塗布液を前記塗布容器に輸送する液輸送系とを含む構成を基本構成とし、さらに、膜形成される塗布膜、例えば、フォトレジスト内に酸素及び水分の内の少なくとも一方の含有を抑制する手段を設けたものである。
【0077】
この抑制手段としては、窒素を通じることで、塗布液中の脱気を行う脱気装置を含み、この脱気装置は前記塗布液容器に前記塗布液が供給される供給口前段または前記液輸送系中に設置されても良い。さらに、この脱気装置は前記液輸送系中のポンプの前段に設置されることがより好ましい。
【0078】
また、前記抑制手段として、前記液輸送系において用いる樹脂配管として、酸素透過係数が5×10[個・cm/cmsecPa]以下であるものを用いても良い。
【0079】
また、前記抑制手段として、二重樹脂配管を含み、この二重樹脂配管の内管と外管との間の空間に不活性ガスまたは気体状有機溶媒を含むガスを存在せしめ、酸素の透過を防止するとともに、前記二重樹脂配管を前記液輸送系において用いても良い。
【0080】
また、前記抑制手段として、前記塗布容器の内部雰囲気に酸素または水分が混入するのを防止するように雰囲気制御するためのガス供給手段とガス排気手段とを具備する構成でもよく、このガスは不活性ガスおよび水素の少なくとも一であることがより好ましい。
【0081】
また、このような抑制手段は、前記塗布された膜内における酸素および水分(HO)の少なくとも一方の濃度を10ppm以下とするものが好ましく、1ppm以下とするものがより好ましい。
【0082】
また、本発明の膜塗布方法は、前記した抑制手段を備えた膜塗布装置を用いて膜塗布を行う方法である。
【0083】
また、本発明の電子装置の製造方法では、この膜塗布方法を用いて感光性樹脂膜を基板に塗布する工程を含むものである。
【0084】
一方、本発明のデータ記録用ディスクの製造方法では、この膜塗布方法を用いて、塗布膜として、記録用膜または保護膜をディスク基板に塗布する工程を含むものである。
【0085】
なお、上記実施例においては、塗布液としてレジストを使用する場合について説明したが、塗布液はポリイミド、あるいは、層間絶縁膜を形成するSOGまたはSOD材料であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上の説明の通り、本発明の膜塗布装置は、半導体ウェハへのレジスト塗布等の超精密機器、部品の製造に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明のレジストコータの全体構成の一例を示す図である。
【図2】本発明のレジストコータのレジストライン構成を示す図である。
【図3】レジストコータの要部を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
5 ウェハ
10 レジスト吐出装置
11 ノズル
12 3重構造のレジスト温調器
13 温調冷却水流入配管
14 温調冷却水流出配管
20 レジスト供給容器
21 レジストタンク
22 レジスト瓶
23 蓋
25(25a,25b,25c,25d,25e) レジスト供給配管
26 窒素供給配管
31 ドレイン弁
31a ドレイン配管
32 ポンプ
33 フィルタ(脱気膜)
34 流量調整バルブ
50 カップ温調器(チャンバー)
51 ガス供給配管(ノズル)
52 ガス排気配管
110 コータ
112 スピンチャック
114 スピンモータ
116 コータカップ
120 エッジリンスノズル
122 裏面リンスノズル
124 廃液管
146 キャニスター缶
148 窒素ガス注入口
149 リンス液供給管
150,152 開閉弁
154,156 リンス液供給管
159 モーターフランジ温調器
162 リンス液供給管温調器
164 リンス液温度制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布基板を内部に導入して該基板に膜塗布を行うための塗布容器と、塗布液を保持する塗布液容器と、前記塗布液容器から塗布液を前記塗布容器に輸送する液輸送系とを含む膜塗布装置において、塗布された膜内における酸素及び水分の内の少なくとも一方の含有を抑制する手段を有することを特徴とする膜塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の膜塗布装置において、前記抑制手段は脱気装置を含み、前記脱気装置は前記塗布液容器に前記塗布液が供給される供給口前段及び前記液輸送系の少なくとも一方に設置されることを特徴とする膜塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の膜塗布装置において、前記脱気装置は前記液輸送系中のポンプの前段に設置されることを特徴とする膜塗布装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の膜塗布装置において、前記抑制手段は、酸素透過係数が5×10(個・cm/cmsecPa)以下である樹脂配管を含み、前記樹脂配管を前記液輸送系において用いることを特徴とする膜塗布装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の膜塗布装置において、前記抑制手段は二重樹脂配管を含み、前記二重樹脂配管の内管と外管との間の空間に不活性ガスまたは気体状有機溶媒を含むガスを存在せしめ、前記二重樹脂配管を前記液輸送系において用いることを特徴とする膜塗布装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の内のいずれか一項に記載の膜塗布装置において、前記抑制手段は、前記塗布容器内部雰囲気に酸素または水分が混入するのを防止するように雰囲気制御するためのガス供給手段とガス排気手段とを具備することを特徴とする膜塗布装置。
【請求項7】
請求項6に記載の膜塗布装置において、前記ガスは不活性ガスおよび水素の内の少なくとも一方であることを特徴とする膜塗布装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の内のいずれか一項に記載の膜塗布装置において、前記抑制手段は、前記塗布された膜内における酸素および水分(HO)の少なくとも一方の濃度を10ppm以下とすることを特徴とする膜塗布装置。
【請求項9】
請求項8に記載の膜塗布装置において、前記抑制手段は、前記塗布された膜内における酸素および水分(HO)の少なくとも一方の濃度を1ppm以下とすることを特徴とする膜塗布装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の内のいずれか一項に記載の膜塗布装置を用いて膜塗布を行うことを特徴とする膜塗布方法。
【請求項11】
請求項10に記載の膜塗布方法を用いて感光性樹脂膜を基板に塗布する工程を含むことを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の膜塗布方法を用いて記録用膜または保護膜をディスク基板に塗布する工程を含むことを特徴とするデータ記録用ディスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−85263(P2008−85263A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266569(P2006−266569)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(301059499)リアライズ・アドバンストテクノロジ株式会社 (13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】