説明

膜延伸装置と温風ヒーター

【課題】膜材の延伸倍率変更への対処を簡便化しつつ、倍率変更の際の品質低下の抑制を図る。
【解決手段】膜延伸装置200は、延伸ローラーユニット210と温風ヒーターユニット100とを備える。延伸ローラーユニット210は、膜材幅方向の両側において膜材を把持し、膜材搬送方向の下流側に向かって末広がりとなるよう傾斜可能とされ、その傾斜角度は可変とされている。温風ヒーターユニット100は、複数の筒状体を進出自在に備え、膜材幅方向の両側の第1スタンド120と第2スタンド130とに両端が係合されている。そして、この温風ヒーターユニット100は、延伸ローラーユニット210がなす傾斜角度に応じて伸縮して、延伸ローラーユニット210にて把持済みの膜材に温風を吹き付けてこれを加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜材を加熱しつつ延伸する膜延伸装置と膜材の加熱等のために温風を吹き出す温風ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
膜延伸装置は、搬送される膜材をその幅方向両側で把持しつつ、その把持箇所を搬送方向から膜幅方向に傾斜させて延伸し、この延伸の際には、膜材をヒーターにて加熱する(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−221542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膜材の延伸倍率は、把持箇所の傾斜の程度に依存するので、傾斜程度を変更することで、所望の延伸倍率とできる。ところが、延伸倍率を高めると、加熱すべき膜材領域が広くなるが、ヒーターの加熱領域は同じままであるので、加熱領域から外れた膜材領域では加熱不足を招き、延伸にムラが発生し延伸後の膜材の品質低下が危惧される。こうした延伸ムラは、加熱領域が異なるヒーターへの交換で解消できるものの、余分な作業負荷が掛かってしまう。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、膜材の延伸倍率変更への対処を簡便化しつつ、倍率変更の際の品質低下の抑制を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決することを目的としてなされたものであり、以下の構成を採用した。
【0007】
[適用1:膜延伸装置]
長尺状の膜材を搬送しつつ幅方向に延伸する膜延伸装置であって、
前記搬送されつつある前記膜材の幅方向端部を搬送方向に沿った把持範囲に亘って把持する把持部を前記膜材の幅方向の両側に備え、該両側の前記把持部を、前記搬送方向の下流側に向かって末広がりとなるよう前記搬送方向から膜幅方向に傾斜可能に保持し、前記把持部の傾斜角度を可変とする延伸ユニットと、
前記把持部にて把持された前記膜を加熱するよう前記延伸ユニットにおける前記両側の把持部の間に配設され、前記把持部がなす傾斜角度に応じて伸縮するヒーターとを備える
ことを要旨とする。
【0008】
上記構成を備える膜延伸装置では、前記延伸ユニットにより前記把持部がなす傾斜角度を広狭調整して延伸倍率を変更する際、把持部のなす傾斜角度に応じてヒーターを伸縮させる。よって、上記構成を備える膜延伸装置によれば、延伸される膜材をその幅方向の延伸範囲に亘ってヒーターにて加熱することができるので、膜材の延伸倍率を変更する際の品質低下を抑制できる。これに加え、ヒーターの交換が不要なことから、膜材の延伸倍率の変更への対処を簡略化できる。
【0009】
上記構成を備える膜延伸装置は、次のような態様とすることができる。例えば、前記ヒーターを膜加熱のために温風を吹き出す温風ヒーターとした上で、この温風ヒーターについては、外径が異なる複数本の筒状体を、最大外径の最大径筒状体の内部に該最大径筒状体以外の前記筒状体が収容された状態と、前記最大径筒状体の内部から該最大径筒状体以外の前記筒状体が前記軸線に沿って進出した状態とを取り得るように備え、前記複数本の筒状体のそれぞれは、供給を受けた温風を吹き出す吹出口を、前記収容の状態では重なり、前記進出の状態では前記軸線に沿って並ぶように備えるものとする。そして、前記最大径筒状体と前記最小径筒状体とを、前記吹出口が前記膜に向くように前記延伸ユニットに係合させ、前記延伸ユニットにより前記把持部がなす傾斜角度に応じて前記収容と前記進出の状態とを起こし、前記複数本の筒状体を伸縮させるものできる。
【0010】
上記態様の膜延伸装置では、その有する温風ヒーターは、最大径筒状体の内部にそれ以外の筒状体を収容した状態で、それぞれの筒状体の吹出口を重ねて、この状態における吹出口からの温風吹き出し範囲を最小の加熱範囲とする。その一方、最大径筒状体の内部からそれ以外の筒状体の全てを軸線に沿って進出させると、この状態では、それぞれの筒状体の吹出口を軸線に沿って並ばせる。そして、このように全ての筒状体を進出させた状態における吹出口からの温風吹き出し範囲を最大の加熱範囲とする。つまり、上記態様の膜延伸装置は、その温風ヒーターを、上記した最小の加熱範囲から最大の加熱範囲まで、筒状体の進出の状況に応じて種々の加熱範囲を取ることができるようにして、この温風ヒーターを把持部がなす傾斜角度に応じて伸縮させる。このため、上記態様の膜延伸装置によれば、膜材の延伸倍率を変更する際に加熱範囲の不足を来さないようにできるので、既述したように、延伸倍率変更の際の品質低下の抑制と、膜材の延伸倍率の変更への対処の簡略化が可能である。
【0011】
また、前記把持部について、これを、外周に環状溝が形成された把持ローラーと、該把持ローラーの前記環状溝に所定回転角度範囲に亘って入り込んで、該所定回転角度範囲において前記膜材の幅方向端部を前記把持ローラーの前記環状溝に押し付けて挟持する無端状の線材と、該線材を前記把持ローラーの回転に伴って送り出す線材送り機構とを備えるものとする。前記延伸ユニットについては、これを、前記吹出口が前記把持ローラーと前記線材とで挟持した前記膜材に向くよう、複数の前記温風ヒーターを前記把持ローラーの外周軌跡に倣って備えた上で、前記線材にて前記膜材の幅方向端部を把持した状態で、前記把持ローラーを前記膜幅方向に傾斜させると共に、前記複数の前記温風ヒーターのそれぞれにおいて、前記複数の筒状体を前記把持ローラーの傾斜角度に応じて伸縮させるものとする。こうすれば、次の利点がある。
【0012】
上記態様の膜延伸装置では、膜材は、把持ローラーの外周に倣って円弧状となった上で、把持ローラーの傾斜により延伸されるので、延伸領域は、膜材の搬送方向と幅方向をxy平面としローラー中心から外周に向かう方向をz軸とする3次元的なものとなる。把持ローラーの外周軌跡に倣って配設された複数の温風ヒーターのそれぞれは、その配設箇所において、複数の筒状体を把持ローラーの傾斜角度に応じて伸縮させる。よって、上記態様の膜延伸装置によれば、3次元的に延伸される膜材と干渉することなく、当該膜材に向けて吹出口から温風を吹き付けて過不足なく加熱できるので、延伸後の膜材の品質低下を抑制できる。
【0013】
また、上記した膜延伸装置の温風ヒーターを、前記複数本の筒状体を、重なり合う筒状体同士で軸線周りの回転角度を維持したまま前記軸線方向に沿って進退可能とする位置決め部を有するものとできる。こうすれば、筒状体の収容状態での吹出口の重なりがずれたり、筒状体の進出状態での吹出口の軸線に沿った並びがずらさないようにできる。このため、温風の吹き付け対象、例えば、膜材をより均一に加熱でき、好ましい。
【0014】
また、前記最大径筒状体または最小外径の最小径筒状体の少なくとも一方は、新たに追加される筒状体に対して前記回転角度を維持したまま前記軸線方向に沿って進退できるよう、前記位置決め部を有するようにできる。こうすれば、筒状体の本数を可変とできるので、加熱範囲を容易に拡大でき、用途の拡大を図ることができる。なお、位置決め部の位置決めを解けば、最大径筒状体または最小径筒状体を取り除くことで筒状体本数を減らすことができるので、加熱範囲の狭小化にも容易に対処でき、用途の拡大を図ることができる。
【0015】
また、前記最大径筒状体または前記最小径筒状体の一方の筒状体の一端側から温風を供給する温風供給源と、前記最大径筒状体または前記最小径筒状体の他方の筒状体の一端側から前記温風を回収して、該回収した温風を前記温風供給源からの温風に環流する環流部とを備えるようにできる。こうすれば、温風の循環利用が可能となるので、温風供給源での加熱効率を向上できるほか、コスト低減に寄与できる。
【0016】
[適用2:ヒーター]
温風を吹き出す温風ヒーターであって、
外径が異なる複数本の筒状体を、最大外径の最大径筒状体の内部に該最大径筒状体以外の前記筒状体が収容された状態と、前記最大径筒状体の内部から該最大径筒状体以外の前記筒状体が前記軸線に沿って進出した状態とを取り得るように備え、
前記複数本の筒状体のそれぞれは、供給を受けた温風を吹き出す吹出口を、前記収容の状態では重なり、前記進出の状態では前記軸線に沿って並ぶように備える
ことを要旨とする。
【0017】
上記構成を備える温風ヒーターは、最大径筒状体の内部にそれ以外の筒状体を収容した状態で、それぞれの筒状体の吹出口を重ねることから、この状態における吹出口からの温風吹き出し範囲を最小の加熱範囲とする。その一方、最大径筒状体の内部からそれ以外の筒状体の全てを軸線に沿って進出させると、この状態では、それぞれの筒状体の吹出口を軸線に沿って並ばせる。そして、このように全ての筒状体を進出させた状態における吹出口からの温風吹き出し範囲を最大の加熱範囲とする。その上で、上記構成の温風ヒーターは、上記した最小の加熱範囲から最大の加熱範囲まで、筒状体の進出の状況に応じて種々の加熱範囲を取ることができる。このため、上記構成の温風ヒーターによれば、この温風ヒーターを膜延伸装置における膜材加熱用に用いた場合には、膜材の延伸倍率を変更する際に加熱範囲の不足を来さないようにできるので、延伸倍率変更の際の品質低下を抑制することが可能となる。また、上記構成の温風ヒーターは、膜材延伸に限らず、加熱範囲を種々変更する用途に、容易に適応できる。
【0018】
そして、上記構成を備える温風ヒーターについては、既述した膜延伸装置がその有する温風ヒーターについて採る上記態様とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例の温風ヒーターユニット100の要部を模式的に示す説明図である。
【図2】図1における2−2線に沿って筒状体102を破断して最大径筒状体101との関係を示す説明図である。
【図3】図2に示す筒状体係合箇所を概略的に示す説明図である。
【図4】複数の温風ヒーターユニット100を有する温風ヒーター装置10の構成を概略的に示す説明図である。
【図5】温風ヒーターユニット100を図4におけるA方向およびB方向から矢視して概略的に示す説明図である。
【図6】温風ヒーターユニット100を図4におけるC方向から矢視して概略的に示す説明図である。
【図7】図6における7−7線に沿って断面視して温風ヒーターユニット100の保持の様子を示す説明図である。
【図8】温風ヒーター装置10の使用形態の一例を概略的に示す説明図である。
【図9】温風ヒーター装置10の他の使用形態の一例を概略的に示す説明図である。
【図10】スタンド平行駆動の場合の図4におけるC方向から矢視して概略的に示す説明図である。
【図11】スタンドスイング駆動の場合の図4におけるC方向から矢視して概略的に示す説明図である。
【図12】温風ヒーター装置10を膜材加熱用に有する膜延伸装置200の概略構成を示す説明である。
【図13】図12におけるB方向からの側面視とC方向からの平面視とを併記する説明図である。
【図14】温風ヒーター装置10と延伸ローラーユニット210とを共に傾斜させた状態を概略的に示す説明である。
【図15】図14におけるB方向からの側面視とC方向からの平面視とを併記する説明図である。
【図16】図12相当図であり3次元的に湾曲した形状のヒーターHを温風ヒーター装置10に代えて用いた膜延伸装置の概略構成を示す説明である。
【図17】ヒーターHを用いた場合の図13相当図であり図16におけるB方向からの側面視とC方向からの平面視とを併記する説明図である。
【図18】ヒーターHを用いた場合の図14相当図であり延伸ローラーユニット210を傾斜させた状態を概略的に示す説明である。
【図19】ヒーターHを用いた場合の図15相当図であり図18におけるB方向からの側面視とC方向からの平面視とを併記する説明図である。
【図20】温風ヒーターユニット100に代用可能な電熱ヒーターユニット300を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は本実施例の温風ヒーターユニット100の要部を模式的に示す説明図である。
【0021】
図示するように、温風ヒーターユニット100は、外径が異なる4本の筒状体を備え、最大外径の筒状体(以下、最大径筒状体101)の内部にこれ以外の筒状体102〜104を収容する。この収容状態で重なり合う二つの筒状体、具体的には、最大径筒状体101と筒状体102、筒状体102と筒状体103、筒状体103と最小外径の筒状体(以下、最小径筒状体104)は、内側の筒状体と外側の筒状体とが筒状体軸線方向に沿って相対的に摺動できるよう、内外径が調整されている。よって、温風ヒーターユニット100は、最大径筒状体101の内部からこれ以外の筒状体102〜104を筒状体軸線に沿ってそれぞれ進出させるので、各筒状体は伸縮自在となる。
【0022】
温風ヒーターユニット100は、最大径筒状体101の一端側を温風入口とし、最小径筒状体104の一端側の温風出口とし、それぞれの筒状体に、二筋の吹出口110を備える。吹出口110は、筒状体軸線に沿った長孔状であることから、最大径筒状体101を始めとするそれぞれの筒状体は、上記の一端側から供給を受けた温風を筒状体軸線に沿って帯状に吹き出す。吹出口110は、後述する位置決め機構により、最大径筒状体101にそれ以外の筒状体が収容された状態においては重なり、最大径筒状体101の内部からそれ以外の筒状体が筒状体軸線に沿って進出した状態においては、筒状体軸線に沿って並ぶようされている。本実施例では、図示するように膜材を温風吹き付け対象とし、膜材は吹出口110の上部に位置することから、吹出口110から帯状に吹き出された温風は、膜材に当たって膜材表面に進み、当該表面をくまなく加熱する。なお、筒状体101〜104において重なり合う筒状体の間には、若干の隙間があり、この隙間から温風は吹き出し得るが、隙間からの温風も加熱に用いることができるので、特段の支障はない。この隙間を簡略的にシールすることもできる。
【0023】
図2は図1における2−2線に沿って筒状体102を破断して最大径筒状体101との関係を示す説明図、図3は図2に示す筒状体係合箇所を概略的に示す説明図である。
【0024】
図示するように、筒状体102は、その外周壁に凹所112を備え、この凹所112は、筒状体軸線方向に延びている。筒状体102の外側に位置してこれを収容する最大径筒状体101は、筒状体端部に係合爪114を備え、当該爪を筒状体102の凹所112に嵌め込んでいる。係合爪114は、最大径筒状体101への筒状体102の収容後に、折り曲げられて、上記したように凹所112に入り込む。この凹所112と係合爪114は、重なり合う筒状体の間において、異なる円周角度範囲で形成されていることから、最大径筒状体101を含む筒状体102〜104は、重なり合う筒状体同士で軸線周りの回転角度を維持したまま軸線方向に沿って進退する。つまり、凹所112と係合爪114とにより、筒状体ごとの位置決め機構が形成され、この位置決めにより、既述した吹出口110の重なりと筒状体軸線に沿った並びは、筒状体の伸縮の都度に再現される。この場合、凹所112は、その端部を筒状体端部より内側に位置するようにされるので、凹所112の筒状体軸線に沿った範囲で、各筒状体は伸縮することになる。なお、最大径筒状体101と筒状体102〜104を、テーパー形状として、伸張を制限するようにすることもできる。
【0025】
温風ヒーターユニット100における筒状体本数は、図1における最大径筒状体101の外側にこれより径の大きな筒状体を追加したり、最小径筒状体104の内側にこれより径の小さな筒状体を追加したり、最大径筒状体101や最小径筒状体104を取り除くと言った筒状体の増減で、可変とされている。つまり、温風ヒーターユニット100における筒状体本数は、加熱対象となる範囲に応じて増加減できる。このため、本実施例の温風ヒーターユニット100によれば、各筒状体が進出して循環管路170を筒状体軸線方向に沿って並べた場合の循環管路170の範囲を広狭させることで、加熱範囲の拡大と狭小化に容易に対処でき、用途の拡大を図ることができる。上記した筒状体増減後において、最大径の或いは最小径の筒状体が新たな最大径筒状体101や最小径筒状体104となる。このような筒状体本数の増減は、現状の最大径筒状体101の外周にも、これと重なる筒状体102と同様に凹所112を予め形成し、新たに追加する筒状体の端部に現状の最大径筒状体101と同様に係合爪114を形成すればよい。最小径筒状体104の側に追加する場合も同様である。また、現状の最大径筒状体101の係合爪114とその内側の筒状体102の凹所112との係合を解けば、現状の最大径筒状体101を取り除くことで、筒状体本数を減ずることもできる。最小径筒状体104についても同様である。
【0026】
次に、温風供給に関連する構成について説明する。図4は複数の温風ヒーターユニット100を有する温風ヒーター装置10の構成を概略的に示す説明図、図5は温風ヒーターユニット100を図4におけるA方向およびB方向から矢視して概略的に示す説明図、図6は温風ヒーターユニット100を図4におけるC方向から矢視して概略的に示す説明図、図7は図6における7−7線に沿って断面視して温風ヒーターユニット100の保持の様子を示す説明図である。
【0027】
図示するように、温風ヒーター装置10は、複数、具体的には7の温風ヒーターユニット100を、向かい合う第1スタンド120と第2スタンド130で保持する。この両スタンドは、その上面をその中央が最も高くてその両側は段差状に低くなるようにしており、各段に温風ヒーターユニット100をその両端で保持する。以下、各段の温風ヒーターユニット100を区別するため、図示するように温風ヒーターユニット100a〜100gと、適宜称する。これらの温風ヒーターユニット100a〜100gは、図5に示すように、各温風ヒーターユニット100が円弧軌跡BSに沿って点在するようにして上記の両スタンドに保持され、吹出口110を上向きとする。よって、本実施例の温風ヒーター装置10では、3次元的に加熱領域を形成できる。
【0028】
温風ヒーター装置10は、ブロアー140と、熱源ヒーター150と、第1スタンド120の温風導入部122とを供給管路160で繋ぐ。これにより、温風ヒーター装置10は、ブロアー140にて送風したエアーを、熱源ヒーター150に導いて温風とした後に、この温風を、温風導入部122から第1スタンド120に導入する。第1スタンド120は、その内部にそれぞれの温風ヒーターユニット100に到る温風経路123を備え、それぞれの温風ヒーターユニット100の最大径筒状体101(図1参照)に温風を分岐供給する。また、第2スタンド130は、その内部にそれぞれの温風ヒーターユニット100の最小径筒状体104(図1参照)から温風回収経路133を備え、第2スタンド130の合流回収部132と熱源ヒーター150を循環管路170で繋ぐ。これにより、温風ヒーター装置10は、それぞれの温風ヒーターユニット100の最小径筒状体104から余剰の温風を回収して、循環管路170を介して熱源ヒーター150からの温風に環流する。
【0029】
それぞれの温風ヒーターユニット100における最大径筒状体101と最小径筒状体104は、図7に示すように、一端が閉塞状とされ、大径側係合具180と小径側係合具190にて、第1スタンド120或いは第2スタンド130に係合保持される。大径側係合具180は、中空の係合シャフト181とトップ留具183とを備え、係合シャフト181の先端を第1スタンド120における温風経路123の開口テーパネジと気密に螺合させる。第1スタンド120から延びた係合シャフト181は、最大径筒状体101を貫通し、シャフト頂上では、トップ留具183にて固定される。これにより、最小径筒状体104は、大径側係合具180により第1スタンド120に係合されると共に、係合シャフト181の軸回りに回動可能となる。小径側係合具190にあっては、その係合対象が最小径筒状体104であるものの、大径側係合具180と同様に、中空の係合シャフト191とトップ留具193を有するので、最小径筒状体104にあっても、係合シャフト191の軸回りに回動可能となる。そして、係合シャフト181と係合シャフト191は、共に側面に開口182と開口192を有するので、既述したように、温風経路123から分岐供給された温風は、開口182を経て最大径筒状体101の内部に流れ込んだ後、各筒状体の吹出口110から吹き出され、その余剰の温風は、開口192を経て温風回収経路133に入り込んで回収される。
【0030】
既述したように、最大径筒状体101を始めとする筒状体102〜104は、伸縮可能であると共に、最大径筒状体101と最小径筒状体104とは、係合シャフト181或いは係合シャフト191の軸回りに回動可能である。温風ヒーター装置10は、第1スタンド120と第2スタンド130を駆動する図示しないスタンド駆動機構を備え、スタンド駆動により次のような使用態様を取り得る。図8は温風ヒーター装置10の使用形態の一例を概略的に示す説明図、図9は温風ヒーター装置10の他の使用形態の一例を概略的に示す説明図である。
【0031】
温風ヒーター装置10は、スタンド駆動機構により、図8に示すように、第1スタンド120と第2スタンド130の両スタンドを平行にしたまま、一方のスタンドをスタンド間隔が開くよう平行駆動する。図10はスタンド平行駆動の場合の図4におけるC方向から矢視して概略的に示す説明図である。図示するように、スタンド平行駆動の場合、それぞれの温風ヒーターユニット100は、最大径筒状体101を始めとする各筒状体を同じようにして伸縮させる。
【0032】
温風ヒーター装置10は、図9に示すように両スタンドを図における紙面奥側を支点にスイング状に駆動(スイング駆動)する。図11はスタンドスイング駆動の場合の図4におけるC方向から矢視して概略的に示す説明図である。図示するように、スタンドスイング駆動では、最大径筒状体101と最小径筒状体104とが既述したように回動するので、紙面奥側の支点側にあたる温風ヒーターユニット100gが最も各筒状体の進出が少なく、温風ヒーターユニット100f→100e→100d→100c→100b→100aの順に筒状体の進出程度が大きくなる。つまり、温風ヒーターユニット100a〜100fは、第1スタンド120と第2スタンド130の傾斜程度に応じて、筒状体を伸縮させる。なお、第1スタンド120と第2スタンド130における筒状体保持のための上面段差は、その側面が上記のようにスタンド傾斜程度に応じて伸縮する温風ヒーターユニット100a〜100fと干渉しないようにされている。また、図9においては、温風ヒーターユニット100e〜100fは、温風ヒーターユニット100dに隠れるため、図には示されていない。
【0033】
以上説明したように、本実施例の温風ヒーターユニット100は、最大径筒状体101の内部にそれ以外の筒状体102〜104を収容し、図1に示すように、各筒状体を伸縮できるようにする。そして、最大径筒状体101にそれ以外の筒状体102〜104を収容した収容状態では、それぞれの筒状体101〜104の吹出口110を重ねて、この際の、吹出口110からの軸線に沿った帯状の温風吹き出し範囲を最小の加熱範囲とする。その一方、最大径筒状体101の内部からそれ以外の筒状体102〜104の全てを軸線に沿って進出させた状態では、それぞれの筒状体101〜104の吹出口110を筒状体軸線に沿って並ばせ、この筒状体進出の状態では、吹出口110からの軸線に沿った帯状の温風吹き出し範囲を最大の加熱範囲とする。その上で、本実施例の温風ヒーターユニット100では、図4と図8に示すように、上記した最小の加熱範囲(図4)から最大の加熱範囲(図8)まで、筒状体101〜104の進出の状況に応じて種々の加熱範囲を取ることができる。このため、本実施例の温風ヒーターユニット100によれば、この温風ヒーターユニット100を含む温風ヒーター装置10を膜延伸装置における膜材加熱用に用いた場合には、膜材の延伸倍率を変更する際に加熱範囲の不足を来さないようにできるので、延伸倍率変更の際の品質低下を抑制することが可能となる。また、温風ヒーター装置10は、膜材延伸に限らず、加熱範囲を種々変更する用途に、容易に適応でき、汎用性を高めることができる。
【0034】
また、本実施例の温風ヒーター装置10では、第1スタンド120と第2スタンド130の両スタンドに対して、それぞれ最大径筒状体101と最小径筒状体104を、図7に示すように、最大径筒状体101と最小径筒状体104とを回動できるように係合保持する。このため、図8に示すようにスタンド平行駆動の他、図9に示すようにスイング駆動をさせて、温風ヒーターユニット100a〜100gのそれぞれにおいて、各ユニットにおける吹出口110が並んだ際の筒状体軸線方向の長さを変えることができる。よって、加熱範囲を図11における紙面下方側に末広がりとなる領域とするような場合であっても、容易に対処できる。
【0035】
また、本実施例の温風ヒーターユニット100では、最大径筒状体101にそれ以外の筒状体102〜104を収容するに当たり、内側の筒状体には軸線方向の凹所112を設け、その外側の筒状体の係合爪114を凹所112に入り込ませるようにした。よって、最大径筒状体101を始めとする筒状体102〜104を、最大径筒状体101の内部から軸線周りの回転ズレを起こすことなく筒状体軸線方向に沿って進退可能とできる。このため、筒状体101〜104の収容状態での吹出口110の重なりがずれたり、筒状体101〜104の進出状態での吹出口110の軸線に沿った並びがずれないようにできる。この結果、本実施例の温風ヒーターユニット100によれば、温風の吹き付け対象、例えば、膜材をより均一に加熱でき、好ましい。
【0036】
また、本実施例の温風ヒーター装置10では、それぞれの温風ヒーターユニット100における最大径筒状体101の一端側から温風を供給した上で、最小径筒状体104の一端側から余剰の温風を回収して(図4、図7参照)、その回収した温風を熱源ヒーター150からの温風に循環管路170を経て環流する。このため、本実施例の温風ヒーター装置10によれば、温風の循環利用が可能となるので、熱源ヒーター150での温風の加熱効率を向上できるほか、コスト低減も図ることができる。
【0037】
上記した本実施例の温風ヒーター装置10において、それぞれの筒状体101〜104に対応した温風経路123に流量調整弁を設け、各筒状体への温風供給量を調整するようにすることもできる。例えば、最大径筒状体101と筒状体102〜104が図4もしくは図10に示すように同じ長さであれば、各筒状体への温風供給量を一律とし、図11や図14に示すように各筒状体でその長さが相違すれば、筒状体長さが長い温風ヒーターユニット100ほど温風供給量が多くなるよう筒状体長さに応じて温風供給量を変えるようにできる。こうすれば、長さの異なる温風ヒーターユニット100ごとの単位長さ当たりの温風供給量、およびこれに基づく温風吹き出し量を均一化できるので、温風の吹き付け対象を、温風ヒーターユニット100ごとに均一化できる。
【0038】
次に、上記した温風ヒーター装置10を組み込んだ膜延伸装置について説明する。図12は温風ヒーター装置10を膜材加熱用に有する膜延伸装置200の概略構成を示す説明、図13は図12におけるB方向からの側面視とC方向からの平面視とを併記する説明図である。
【0039】
図示するように、膜延伸装置200は、既述した温風ヒーター装置10と、延伸ローラーユニット210と、膜材送りローラー220と、巻き取りローラー対222とを備える。膜材送りローラー220は、延伸ローラーユニット210に膜材を搬送する。この膜延伸装置200は、延伸ローラーユニット210の配設領域を膜材の延伸ゾーンとし、その搬送方向下流側を巻き取りローラー対222による巻き取りゾーンとする。巻き取りローラー対222は、延伸ローラーユニット210にて延伸済みの膜材を巻き取る。
【0040】
延伸ローラーユニット210は、把持ローラー212と、三つの線材送りローラー214〜216と、無端状の線材218とテンションローラー219とを備える。把持ローラー212は、その外周に環状溝213を備え、線材218は、線材送りローラー214〜216に掛け渡された上で、線材送りローラー214〜216に亘る把持ローラー212の回転角度範囲で環状溝213に入り込むよう押し付けられつつ、搬送される。そして、この延伸ローラーユニット210は、図示するように温風ヒーター装置10の両側に対向して配設され、温風ヒーター装置10に向けて膜材送りローラー220にて搬送される膜材の幅方向端部を、把持ローラー212の環状溝213に線材218により上記の回転角度範囲に亘って押し付け、これを把持する。
【0041】
膜延伸装置200は、延伸ローラーユニット210を温風ヒーター装置10の第1スタンド120と第2スタンド130に近接配置し、延伸ローラーユニット210を各スタンドに係合して備える。温風ヒーター装置10は、図12に示すようにそれぞれの温風ヒーターユニット100を円弧軌跡BSに倣うように備える。そして、延伸ローラーユニット210が上記したようにスタンド近接された場合、把持ローラー212の外周は、円弧軌跡BSの外側となるようにされる。よって、温風ヒーター装置10は、円弧軌跡BSに倣って配置された温風ヒーターユニット100を把持ローラー212の外周軌跡に倣って備えた上で、吹出口110を把持ローラー212の外周に沿って3次元的に湾曲した膜材に向け、当該膜材に吹出口110から温風を吹き付けて、膜材を加熱する。
【0042】
膜延伸装置200は、温風ヒーター装置10を挟んで向かい合って膜材の幅方向端部を把持済みの延伸ローラーユニット210を、膜材の搬送方向から膜幅方向に傾斜可能に図示しないローラー保持機構にて保持し、延伸ローラーユニット210の傾斜角度を可変とする。図14は温風ヒーター装置10と延伸ローラーユニット210とを共に傾斜させた状態を概略的に示す説明、図15は図14におけるB方向からの側面視とC方向からの平面視とを併記する説明図である。
【0043】
温風ヒーター装置10の第1スタンド120と第2スタンド130の両スタンドは、既述したように延伸ローラーユニット210と係合されていることから、膜延伸装置200は、図示するように、延伸ローラーユニット210と、温風ヒーター装置10の両スタンドとを、連動して膜材の搬送方向下流側に向けて末広がりとなるよう傾斜させる。つまり、膜延伸装置200は、線材218にて膜材の幅方向端部を把持した把持ローラー212を膜幅方向に傾斜させると共に、温風ヒーター装置10における温風ヒーターユニット100のそれぞれにおいて、筒状体101〜104を把持ローラー212の傾斜角度に応じて伸縮させる。
【0044】
ここで、上記した本実施例の膜延伸装置200と対比する膜延伸装置について簡単に説明する。図16は図12相当図であり3次元的に湾曲した形状のヒーターHを温風ヒーター装置10に代えて用いた膜延伸装置の概略構成を示す説明、図17はヒーターHを用いた場合の図13相当図であり図16におけるB方向からの側面視とC方向からの平面視とを併記する説明図、図18はヒーターHを用いた場合の図14相当図であり延伸ローラーユニット210を傾斜させた状態を概略的に示す説明、図19はヒーターHを用いた場合の図15相当図であり図18におけるB方向からの側面視とC方向からの平面視とを併記する説明図である。
【0045】
こ3次元的に湾曲した形状のヒーターHを温風ヒーター装置10に代えて用いた膜延伸装置では、図16〜図17の延伸前においては、特段の支障はない。しかしながら、膜材を把持済みの延伸ローラーユニット210を膜材延伸のために膜材幅方向に傾斜させると、図19の平面視に示すように、図におけるヒーターHの左右端から把持ローラー212までの間は、ヒーターHによる加熱を受けら得れず、膜材の延伸品質の低下を来す。加えて、3次元的に湾曲したヒーターHは、把持ローラー212の傾斜に伴ってヒーター位置を変えることがないので、図19の側面視に示すように、把持ローラー212から巻き取りローラー対222に巻かれつつある膜材と干渉し、膜材の損傷を招く。
【0046】
これに対し、図12〜図15に示した本実施例の膜延伸装置200では、膜材送りローラー220により搬送された膜材を、延伸ローラーユニット210における把持ローラー212の外周に倣って円弧状とした上で、把持ローラー212の傾斜により延伸する(図15参照)。この延伸領域は、膜材の搬送方向と幅方向をxy平面としローラー中心から外周に向かう方向をz軸とする3次元的なものとなるものの、膜延伸装置200は、把持ローラー212の外周軌跡に倣って温風ヒーターユニット100を配設した上で、それぞれの温風ヒーターユニット100を、温風ヒーター装置10における第1スタンド120と第2スタンド130の配設箇所において、複数の筒状体101〜104を把持ローラー212の傾斜角度に応じて伸縮させる。よって、本実施例の膜延伸装置200によれば、3次元的に延伸される膜材と干渉することなく、延伸されつつある膜材の下面に向けてそれぞれの筒状体における吹出口110から温風を吹き付けて過不足なく均一に加熱できるので、延伸後の膜材の品質低下を抑制できる。例えば、均一な加熱を図った上で膜材を延伸できるので、膜材の可塑性の均一化や分子配向の促進等による延伸済み膜材の物性(強度や透過性、伝導性等)の均質化を図ることができる。
【0047】
本実施例の膜延伸装置200による延伸対象となる膜材は、特段の制約を受けることはなく、光学フィルムや、分離膜、包装材、衣料、断熱材、絶縁材等、種々の膜材の延伸を達成できる。この際の、材料についても制約はなく、ポリエチレン、ポリアミド等の種々の樹脂材料の膜材を延伸できる。しかも、本実施例の膜延伸装置200では、把持ローラー212の傾斜程度と当該ローラーと連動した温風ヒーターユニット100の伸縮程度とを、種々設定できることから、様々な延伸倍率の延伸膜材を容易に得ることができる。また、延伸される範囲の膜材を延伸範囲に亘って均等に加熱可能であることから、樹脂製の膜材をその最大限の延伸倍率近くまで、均質に延伸することもできる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、温風ヒーター装置10では、複数の温風ヒーターユニット100を円弧軌跡BSに沿って点在するようにして第1スタンド120と第2スタンド130の両スタンドで保持することで、3次元的な加熱領域を実現できるようにしたが、2次元的は加熱領域とすることもできる。この場合は、図5において、温風ヒーターユニット100a〜100gを一列に並ぶようにすればよい。そして、膜材を平面的に延伸する装置に対して、上記のように温風ヒーターユニット100a〜100gを一列に並ぶようにした温風ヒーター装置10を適用するようにすることもできる。
【0049】
また、本実施例では、それぞれの温風ヒーターユニット100における最大径筒状体101から温風を供給し、最小径筒状体104の側から余剰の温風を回収するようにしたが、最小径筒状体104の側から温風を供給し、最大径筒状体101の側で余剰の温風を回収するようにすることもできる。
【0050】
また、本実施例では、吹出口110を筒状体軸線に沿った長孔状のものとしたが、円形の吹出口を筒状体軸線に沿って複数並べるようにしてもよい。こうしても、供給を受けた温風を前記軸線に沿った帯状に吹き出すことができる。
【0051】
また、本実施例では、膜延伸装置200に膜加熱用に設置するヒーターとして筒状の温風ヒーターユニット100を採用したが、これに限らない。図20は温風ヒーターユニット100に代用可能な電熱ヒーターユニット300を模式的に示す説明図である。この電熱ヒーターユニット300は、第1〜第4の板状体を備え、それぞれの上面に長手方向に沿って電熱線310を埋設し、この電熱線310の発熱を通して上面から加熱対象である膜材に放熱する。第1板状体301と第4板状体304は、他の二つの板状体より長寸とされ、それぞれの板状体は、隣り合う板状体と重なり合った上で長手方向に沿って相対的に摺動できるようにされている。よって、電熱ヒーターユニット300にあっても、既述した温風ヒーターユニット100と同様、第1板状体301からこれ以外の第2板状体302、第3板状体303および第4板状体304を長手方向に沿ってそれぞれ進出させ、各板状体は伸縮自在となる。
【0052】
この電熱ヒーターユニット300は、図示するように各板状体を進出させた場合、端部で重なることになるが、電熱線310の埋設範囲を板状体端部の手前までに控えることで、上記のように最も進出した際に、電熱線310が重ならないようにできる。こうすれば、伸縮した第1板状体301〜第4板状体304にて膜材を加熱する場合、膜材表面をくまなく加熱すると共に、板状体端部においても、電熱線310を重ねないことで、加熱過剰としないようにできる。そして、この電熱ヒーターユニット300は、図4〜図6に示すように、第1スタンド120の各段部に第1板状体301の端部を、第2スタンド130に第4板状体304の端部を回動自在に係合させることで、温風ヒーターユニット100と代用できる。この場合、電熱ヒーターユニット300を代用した温風ヒーター装置10にて図9に示すように第1スタンド120と第2スタンド130とをスイング駆動すると、スイングの支点側ほど進出の程度が少なくなり、隣り合う板状体の重なり範囲が増える。この重なり範囲では、隣り合う板状体のそれぞれの電熱線310が共に通電可能なため、加熱対象(上記の実施例では膜材)への放熱(加熱)が過多となり得る。こうした事態は、次のように構成することで解消できる。
【0053】
第1板状体301〜第4板状体304の各板状体の電熱線310を長手方向に分割した電熱線として、それぞれの電熱線(分割電熱線)を直列に接続する。その上で、直列接続された分割電熱線への通電対象個数を、電熱ヒーターユニット300の伸縮程度に応じて可変設定するようにする。例えば、各板状体が最も進出した電熱ヒーターユニット300では、各板状体において、全ての分割電熱線を通電対象とし、これよりも進出の程度が少ない電熱ヒーターユニット300においては、隣り合う板状体の重なり範囲では一方の板状体の電熱線310にしかに通電しないよう、通電対象の分割電熱線を選別する。こうすれば、上記した加熱過多を抑制して、加熱対象を加熱できる。
【符号の説明】
【0054】
10…温風ヒーター装置
100、100a〜100g…温風ヒーターユニット
101〜104…筒状体
101…最大径筒状体
104…最小径筒状体
110…吹出口
112…凹所
114…係合爪
120…第1スタンド
122…温風導入部
123…温風経路
130…第2スタンド
132…合流回収部
133…温風回収経路
140…ブロアー
150…熱源ヒーター
160…供給管路
170…循環管路
180…大径側係合具
181…係合シャフト
182…開口
183…トップ留具
190…小径側係合具
191…係合シャフト
192…開口
193…トップ留具
200…膜延伸装置
210…延伸ローラーユニット
212…把持ローラー
213…環状溝
214…線材送りローラー
218…線材
219…テンションローラー
220…膜材送りローラー
222…巻き取りローラー対
300…電熱ヒーターユニット
301〜304…第1〜第4板状体
310…電熱線
H…ヒーター
BS…円弧軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の膜材を搬送しつつ幅方向に延伸する膜延伸装置であって、
前記搬送されつつある前記膜材の幅方向端部を搬送方向に沿った把持範囲に亘って把持する把持部を前記膜材の幅方向の両側に備え、該両側の前記把持部を、前記搬送方向の下流側に向かって末広がりとなるよう前記搬送方向から膜幅方向に傾斜可能に保持し、前記把持部の傾斜角度を可変とする延伸ユニットと、
前記把持部にて把持された前記膜を加熱するよう前記延伸ユニットにおける前記両側の把持部の間に配設され、前記把持部がなす傾斜角度に応じて伸縮するヒーターとを備える
膜延伸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の膜延伸装置であって、
前記ヒーターは、
前記膜を加熱する温風を吹き出す温風ヒーターとされ、
外径が異なる複数本の筒状体を、最大外径の最大径筒状体の内部に該最大径筒状体以外の前記筒状体が収容された状態と、前記最大径筒状体の内部から該最大径筒状体以外の前記筒状体が前記軸線に沿って進出した状態とを取り得るように備え、
前記複数本の筒状体のそれぞれは、供給を受けた温風を吹き出す吹出口を、前記収容の状態では重なり、前記進出の状態では前記軸線に沿って並ぶように備え、
前記最大径筒状体と前記最小径筒状体とを、前記吹出口が前記膜に向くように前記延伸ユニットに係合させ、前記延伸ユニットにより前記把持部がなす傾斜角度に応じて前記収容と前記進出の状態とを起こし、前記複数本の筒状体を伸縮させる
膜延伸装置。
【請求項3】
請求項2に記載の膜延伸装置であって、
前記把持部は、
外周に環状溝が形成された把持ローラーと、
該把持ローラーの前記環状溝に所定回転角度範囲に亘って入り込んで、該所定回転角度範囲において前記膜材の幅方向端部を前記把持ローラーの前記環状溝に押し付けて挟持する無端状の線材と、
該線材を前記把持ローラーの回転に伴って送り出す線材送り機構とを備え、
前記延伸ユニットは、
前記吹出口が前記把持ローラーと前記線材とで挟持した前記膜材に向くよう、複数の前記温風ヒーターを前記把持ローラーの外周軌跡に倣って備え、
前記線材にて前記膜材の幅方向端部を把持した状態で、前記把持ローラーを前記膜幅方向に傾斜させると共に、前記複数の前記温風ヒーターのそれぞれにおいて、前記複数の筒状体を前記把持ローラーの傾斜角度に応じて伸縮させる
膜延伸装置。
【請求項4】
前記複数本の筒状体は、重なり合う筒状体同士で軸線周りの回転角度を維持したまま前記軸線方向に沿って進退可能とする位置決め部を有する請求項2または請求項3に記載の膜延伸装置。
【請求項5】
前記最大径筒状体または最小外径の最小径筒状体の少なくとも一方は、新たに追加される筒状体に対して前記回転角度を維持したまま前記軸線方向に沿って進退できるよう、前記位置決め部を有する請求項4に記載の膜延伸装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の膜延伸装置であって、
前記温風ヒーターの前記最大径筒状体または前記最小径筒状体の一方の筒状体の一端側から温風を供給する温風供給源と、
前記最大径筒状体または前記最小径筒状体の他方の筒状体の一端側から前記温風を回収して、該回収した温風を前記温風供給源からの温風に環流する環流部とを備える
膜延伸装置。
【請求項7】
温風を吹き出す温風ヒーターであって、
外径が異なる複数本の筒状体を、最大外径の最大径筒状体の内部に該最大径筒状体以外の前記筒状体が収容された状態と、前記最大径筒状体の内部から該最大径筒状体以外の前記筒状体が前記軸線に沿って進出した状態とを取り得るように備え、
前記複数本の筒状体のそれぞれは、供給を受けた温風を吹き出す吹出口を、前記収容の状態では重なり、前記進出の状態では前記軸線に沿って並ぶように備える
温風ヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−218421(P2012−218421A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90150(P2011−90150)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(508317170)株式会社常盤製作所 (2)
【Fターム(参考)】