説明

膜式防水装置

【課題】水害発生時に、遮水膜体を簡易堤防として設置する場合に、簡易堤防におけるシール性能を、より向上させると共に、シール性能が、より長期にわたり良好に維持されるようにして、水害の拡大防止がより確実に達成できるようにする。
【解決手段】膜式防水装置は、水平方向に並ぶよう配置される二つの領域2,3間に沿って、所定間隔で地面4上に立設される複数本の支柱5と、二つの領域2,3を仕切るようこれら二つの領域2,3間に沿って水平方向に延びる遮水膜体13と、遮水膜体13を各支柱5に連結する連結具14,15とを備える。遮水膜体13が、二つの領域2,3のうちの一方の領域2から他方の領域3への水16の流動を防止する。遮水膜体13が一方の領域2からの水16により水圧を与えられたとき、水圧により遮水膜体13の下端部が、他方の領域3の地面4側に形成された縦壁19に圧接するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常はコンパクトに収納されるが、洪水などの水害発生時には、簡易堤防として設置できるようにした膜式防水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記膜式防水装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、膜式防水装置は、水平方向に並ぶよう配置される二つの領域間に沿って、所定間隔で地面上に立設される複数本の支柱と、上記二つの領域を仕切るようこれら二つの領域間に沿って水平方向に延びる遮水膜体と、この遮水膜体を上記各支柱に連結する連結具とを備えている。そして、上記遮水膜体が、上記二つの領域のうちの一方の領域から他方の領域への水の流動を防止することとされている。
【0003】
そして、通常は、上記遮水膜体は折り畳んだり、ロール状に巻き付けたりすることにより、コンパクトな形状とされて収容される。一方、上記一方の領域側から他方の領域側に向かって予期しない水が自由に流動しようとする洪水などの水害発生時には、上記遮水膜体を上記各支柱に連結させて上記二つの領域間に張設する。すると、上記遮水膜体は簡易堤防として設置されることとなって、上記一方の領域から他方の領域に向かっての水の流動が上記遮水膜体により防止される。
【0004】
よって、通常は、上記遮水膜体の収納により、川や街の景観が上記遮水膜体によって阻害されることが防止され、その一方、水害時には、上記遮水膜体が簡易堤防として設置されることにより、水害の拡大が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−1992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の技術では、地面上に簡易堤防として設置された遮水膜体の下端縁部と地面との間には水膨潤性部材が介設され、これにより、上記簡易堤防におけるシール性能の向上が図られている。
【0007】
しかし、上記水膨潤性部材は、上記地面や支柱に直接支持されるものではなく、このため、上記一方の領域から他方の領域に向かって流動しようとする水の水圧により、短期で変形したり流失したりするおそれがある。そして、仮に、このようなことが生じた場合には、上記シール性能が阻害されることから、水害の拡大防止を、より確実にする上で、上記従来の技術には改善の余地が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、水害発生時に、遮水膜体を簡易堤防として設置する場合に、この簡易堤防におけるシール性能を、より向上させると共に、このシール性能が、より長期にわたり良好に維持されるようにして、水害の拡大防止がより確実に達成できるようにすることである。
【0009】
請求項1の発明は、水平方向に並ぶよう配置される二つの領域2,3間に沿って、所定間隔で地面4上に立設される複数本の支柱5と、上記二つの領域2,3を仕切るようこれら二つの領域2,3間に沿って水平方向に延びる遮水膜体13と、この遮水膜体13を上記各支柱5に連結する連結具14,15とを備え、上記遮水膜体13が、上記二つの領域2,3のうちの一方の領域2から他方の領域3への水16の流動を防止するようにした膜式防水装置において、
上記遮水膜体13が上記一方の領域2からの水16により水圧を与えられたとき、この水圧により上記遮水膜体13の下端部が、上記他方の領域3の地面4側に形成された縦壁19に圧接するようにしたことを特徴とする膜式防水装置である。
【0010】
請求項2の発明は、上記二つの領域2,3の互いの遷移部の地面4に、上記一方の領域2の地面4の高さよりも上記他方の領域3の地面4の高さが一段高くなる段差部20が形成され、この段差部20により上記縦壁19が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の膜式防水装置である。
【0011】
請求項3の発明は、上記遮水膜体13を上記各支柱5よりも上記他方の領域3側に配置し、上記遮水膜体13の下端部の長手方向の各部分が上記水圧により全体的に上記縦壁19に圧接するようにしたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の膜式防水装置である。
【0012】
請求項4の発明は、上記連結具14,15が、上下方向に長く延びて上記支柱5に取り付けられ、その長手方向に沿って断面蟻溝形状の係止溝25が形成された連結部材24と、上記遮水膜体13から上記連結部材24に向かって突出する可撓性の被連結部材26と、この被連結部材26の突出端部に形成され、上記係止溝25にその長手方向の一端部から嵌入されて係止される被係止部27とを備えたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の膜式防水装置である。
【0013】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明による効果は、次の如くである。
【0015】
請求項1の発明は、水平方向に並ぶよう配置される二つの領域間に沿って、所定間隔で地面上に立設される複数本の支柱と、上記二つの領域を仕切るようこれら二つの領域間に沿って水平方向に延びる遮水膜体と、この遮水膜体を上記各支柱に連結する連結具とを備え、上記遮水膜体が、上記二つの領域のうちの一方の領域から他方の領域への水の流動を防止するようにした膜式防水装置において、
上記遮水膜体が上記一方の領域からの水により水圧を与えられたとき、この水圧により上記遮水膜体の下端部が、上記他方の領域の地面側に形成された縦壁に圧接するようにしている。
【0016】
このため、水害発生時に、遮水膜体が上記一方の領域からの水により水圧が与えられたときには、この水圧により上記遮水膜体の下端部は上記縦壁に圧接して地面と遮水膜体の下端部との間のシール性能が向上させられる。しかも、水害時の水量が多くて、その水圧が大きい程、上記縦壁への遮水膜体の下端部の圧接力が大きくなることから、上記シール性能が、より向上させられる。
【0017】
また、前記したように、縦壁は地面側に形成されていて大きい強度の確保が可能であることから、上記縦壁が上記水圧によって短期で変形したり流失したりすることは、より確実に防止され、このため、上記シール性能は、より長期にわたり良好に維持される。
【0018】
よって、水害発生時に、遮水膜体を上記各支柱に連結して簡易堤防として設置した場合に、この簡易堤防におけるシール性能が、より向上すると共に、このシール性能が、より長期にわたり良好に維持されて、水害の拡大防止がより確実に達成できる。
【0019】
請求項2の発明は、上記二つの領域の互いの遷移部の地面に、上記一方の領域の地面の高さよりも上記他方の領域の地面の高さが一段高くなる段差部が形成され、この段差部により上記縦壁形成されている。
【0020】
このため、上記段差部は、上記地面に直接形成されることから、より大きい強度の確保が可能となる。よって、上記地面と遮水膜体の下端部との間のシール性能は、更に長期にわたり良好に維持されることから、水害の拡大防止が更に確実に達成できる。
【0021】
請求項3の発明は、上記遮水膜体を上記各支柱よりも上記他方の領域側に配置し、上記遮水膜体の下端部の長手方向の各部分が上記水圧により全体的に上記縦壁に圧接するようにしている。
【0022】
このため、上記地面と遮水膜体の下端部との間のシール性能が、更に向上することから、水害の拡大防止が更に確実に達成できる。
【0023】
請求項4の発明は、上記連結具が、上下方向に長く延びて上記支柱に取り付けられ、その長手方向に沿って断面蟻溝形状の係止溝が形成された連結部材と、上記遮水膜体から上記連結部材に向かって突出する可撓性の被連結部材と、この被連結部材の突出端部に形成され、上記係止溝にその長手方向の一端部から嵌入されて係止される被係止部とを備えている。
【0024】
このため、上記各支柱への遮水膜体の連結は、上記係止溝への被係止部の嵌入という簡単な作業によって容易かつ迅速に達成できる。よって、水害発生時に、遮水膜体を各支柱に連結して簡易堤防として設置する場合に、この設置作業が容易かつ迅速にできて、水害発生時の対処として極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1を示し、膜式防水装置の部分斜視図である。
【図2】実施例1を示し、膜式防水装置の側面図である。
【図3】実施例1を示し、図2の部分拡大部分破断断面図である。
【図4】実施例1を示し、図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】実施例2を示し、図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の膜式防水装置に関し、水害発生時に、遮水膜体を簡易堤防として設置する場合に、この簡易堤防におけるシール性能を、より向上させると共に、このシール性能が、より長期にわたり良好に維持されるようにして、水害の拡大防止がより確実に達成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0027】
即ち、膜式防水装置は、水平方向に並ぶよう配置される二つの領域間に沿って、所定間隔で地面上に立設される複数本の支柱と、上記二つの領域を仕切るようこれら二つの領域間に沿って水平方向に延びる遮水膜体と、この遮水膜体を上記各支柱に連結する連結具とを備える。上記遮水膜体は、上記二つの領域のうちの一方の領域から他方の領域への水の流動を防止する。上記遮水膜体が上記一方の領域からの水により水圧を与えられたとき、この水圧により上記遮水膜体の下端部が、上記他方の領域の地面側に形成された縦壁に圧接するようにしている。
【実施例1】
【0028】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例1を添付の図1〜4に従って説明する。
【0029】
図1において、図中符号1は膜式防水装置である、この膜式防水装置1は、洪水などの水害発生時に、簡易堤防として設置可能なものである。
【0030】
上記膜式防水装置1は、水平方向に並ぶよう設置される二つの領域2,3間に沿って、所定間隔で地面4上に立設される複数本の支柱5を備えている。具体的には、地面4はコンクリート製で、各支柱5は、上記二つの領域2,3間における地面4上に締結具8により固着されるベース板9と、上下方向に延び、その下端部が上記ベース板9に溶接により固着される型鋼製の支柱本体10とを備えている。
【0031】
また、上記膜式防水装置1は、上記二つの領域2,3を仕切るようこれら二つの領域2,3間に沿って水平方向に延びる遮水膜体13と、この遮水膜体13を上記各支柱5に着脱可能に連結する連結具14,15とを備えている。上記遮水膜体13は、上記二つの領域2,3のうちの一方の領域2から他方の領域3への水16の流動を防止するものである。
【0032】
上記遮水膜体13は上記水平方向に長い帯形状をなして、上記各支柱5に跨るよう延びている。上記遮水膜体13は上記各支柱5よりも上記他方の領域3側に配置されている。上記各支柱5の長さと、上記遮水膜体13の幅寸法(高さ寸法)はそれぞれ1m程度である。また、上記遮水膜体13は、汎用のテント等に用いられるものであって、繊維織物の両面を合成樹脂コーティングしたものである。この樹脂は、熱溶着による接合が可能な熱可塑性樹脂のポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン(PU)などとされる。
【0033】
上記他方の領域3側から上記遮水膜体13の下端部に対面する縦壁19が地面4側に形成されている。具体的には、上記二つの領域2,3の互いの遷移部の地面4に、上記一方の領域2の地面4の高さよりも上記他方の領域3の地面4の高さが一段高く(例えば、10〜40cm程度)なる段差部20が形成されており、この段差部20により上記縦壁19が形成されている。この縦壁19は鉛直方向に平坦に延びている。
【0034】
上記遮水膜体13が、上記一方の領域2からの水16により水圧を与えられたとき、図1〜4中一点鎖線で示すように、この水圧により、隣り合う支柱5,5間の各遮水膜体13の部分はそれぞれ上記他方の領域3側に向かって撓むと共に、上記遮水膜体13の下端部は、その長手方向の各部分が全体的に上記縦壁19に面接触するよう圧接させられて、密着させられる。
【0035】
図1〜4において、前記連結具14,15のうちの一方の連結具14は、上記遮水膜体13の長手方向(水平方向)の中途部を上記支柱5に連結させるものである。上記連結具14は、上下方向に長く延びて上記支柱5の上記遮水膜体13側の面に締結具23により取り付けられる連結部材24を備えている。この連結部材24には、その長手方向(上下方向)に沿って断面が蟻溝形状の係止溝25が形成され、この係止溝25は上記遮水膜体13に向かって開口している。
【0036】
また、上記連結具14は、上記遮水膜体13の長手方向の中途部から上記連結部材24に向かって突出する可撓性の被連結部材26と、この被連結部材26の突出端縁部に形成され、上記係止溝25にその長手方向の一端部(上端部)から嵌入されて係止される被係止部27とを備えている。
【0037】
上記被連結部材26は、上記遮水膜体13と同材質で、上記遮水膜体13の幅方向に沿ってその全幅にわたり延びる帯状膜材30を有している。この帯状膜材30は、その幅方向の中途部が屈曲されて二枚重ね構造とされ、かつ、上記帯状膜材30の各端縁部が互いに背反方向に屈曲されて上記遮水膜体13に熱溶着により固着されている。また、上記帯状膜材30の幅方向の中途部における屈曲部の内部にロープ31が挿入され、上記帯状膜材30の屈曲部とロープ31とにより上記被係止部27が形成されている。
【0038】
図4において、前記連結具14,15のうちの他方の連結具15は、上記遮水膜体13の長手方向(水平方向)の端縁部を上記支柱5に連結させるものである。上記他方の連結具15は、上記一方の連結具14とほぼ同構成であるが、この一方の連結具14の被連結部材26は、上記遮水膜体13の長手方向の端縁部に一体的に形成されている。
【0039】
図2,3において、上記遮水膜体13の下端縁部が折り返され、この折り返し部の内部にロープ33が挿入されて上記遮水膜体13の下端縁部が補強されている。また、上記遮水膜体13の下端部を上記地面4における縦壁19の下部側に連結する他の連結具34が設けられている。この他の連結具34は、上記縦壁19の下部に突設されるアンカーボルトで構成され、上記他の連結具34の突出端が、上記遮水膜体13の下端部に形成された連結孔35に嵌入されている。
【0040】
図1〜4において、上記二つの領域2,3間に沿って水平に延び、不図示の取付具により上記各支柱5に取り付けられるワイヤー製の索条体37が上下で複数本設けられる。上記各索条体37は、上記遮水膜体13よりも上記一方の領域2に配置され、この一方の領域2からの水16に流されてきた流木などが上記遮水膜体13に衝突することを防止する。
【0041】
そして、通常は、上記遮水膜体13は折り畳んだり、ロール状に巻き付けたりすることにより、コンパクトな形状とされて収容される。一方、川など一方の領域2側から道路上など他方の領域3側に向かって予期しない水16が自由に流動しようとする洪水などの水害発生時には、上記遮水膜体13を上記各支柱5に連結させて上記二つの領域2,3間に張設する。すると、上記遮水膜体13は簡易堤防として設置されることとなって、上記一方の領域2から他方の領域3に向かっての水16の流動が上記遮水膜体13により防止される。
【0042】
よって、通常は、上記遮水膜体13の収納により、川や街の景観が上記遮水膜体13によって阻害されることが防止され、その一方、水害時には、上記遮水膜体13が簡易堤防として設置されることにより、水害の拡大が防止される。
【0043】
ここで、前記したように、遮水膜体13が一方の領域2からの水16により水圧を与えられたとき、この水圧により上記遮水膜体13の下端部が、上記他方の領域3の地面4側に形成された縦壁19に圧接するようにしている。
【0044】
このため、水害発生時に、遮水膜体13が上記一方の領域2からの水16により水圧が与えられたときには、この水圧により上記遮水膜体13の下端部は上記縦壁19に圧接して地面4と遮水膜体13の下端部との間のシール性能が向上させられる。しかも、水害時の水量が多くて、その上記水圧が大きい程、上記縦壁19への遮水膜体13の下端部の圧接力が大きくなることから、上記シール性能が、より向上させられる。
【0045】
また、前記したように、縦壁19は地面4側に形成されていて大きい強度の確保が可能であることから、上記縦壁19が上記水圧によって短期で変形したり流失したりすることは、より確実に防止され、このため、上記シール性能は、より長期にわたり良好に維持される。
【0046】
よって、水害発生時に、遮水膜体13を上記各支柱5に連結して簡易堤防として設置した場合に、この簡易堤防におけるシール性能が、より向上すると共に、このシール性能が、より長期にわたり良好に維持されて、水害の拡大防止がより確実に達成できる。
【0047】
また、前記したように、二つの領域2,3の互いの遷移部の地面4に、一方の領域2の地面4の高さよりも他方の領域3の地面4の高さが一段高くなる段差部20が形成され、この段差部20により縦壁19が形成されている。
【0048】
このため、上記段差部20は、上記地面4に直接形成されることから、より大きい強度の確保が可能となる。よって、上記地面4と遮水膜体13の下端部との間のシール性能は、更に長期にわたり良好に維持されることから、水害の拡大防止が更に確実に達成できる。
【0049】
また、前記したように、遮水膜体13を各支柱5よりも他方の領域3側に配置し、上記遮水膜体13の下端部の長手方向の各部分が上記水圧により全体的に縦壁19に圧接するようにしている。
【0050】
このため、上記地面4と遮水膜体13の下端部との間のシール性能が、更に向上することから、水害の拡大防止が更に確実に達成できる。
【0051】
また、前記したように、連結具14,15が、上下方向に長く延びて支柱5に取り付けられ、その長手方向に沿って断面蟻溝形状の係止溝25が形成された連結部材24と、遮水膜体13から上記連結部材24に向かって突出する可撓性の被連結部材26と、この被連結部材26の突出端部に形成され、上記係止溝25にその長手方向の一端部から嵌入されて係止される被係止部27とを備えている。
【0052】
このため、上記各支柱5への遮水膜体13の連結は、上記係止溝25への被係止部27の嵌入という簡単な作業によって容易かつ迅速に達成できる。よって、水害発生時に、遮水膜体13を各支柱5に連結して簡易堤防として設置する場合に、この設置作業が容易かつ迅速にできて、水害発生時の対処として極めて有益である。
【0053】
なお、上記遮水膜体13に水圧がかかった際の上記被連結部材26の水平方向の長さは、少なくとも上記連結具14の先端部から縦壁19までの距離以上にすることが好ましく、このようにすれば、上記縦壁19に対する遮水膜体13の下端部の良好な密着性を確保することが可能となる。
【0054】
また、前記したように、遮水膜体13の下端部を地面4側に連結する他の連結具34を設けている。
【0055】
このため、上記縦壁19に対する遮水膜体13の下端部の接触状態は上記他の連結具34によって、より確実に維持される。よって、上記地面4と遮水膜体13の下端部との間のシール性能が、更に長期にわたり良好に維持される。
【0056】
なお、以上は図示の例によるが、上記支柱5は杭打ちすることにより地面4上に立設させたものであってもよい。また、地面4に所定ピッチで複数の孔を設けておき、水害時に、上記各孔に支柱5を挿入、抜出し可能に挿入して、これら各支柱5を立設可能にしてもよい。また、上記遮水膜体13は上記各支柱5よりも上記一方の領域2側に配置してもよく、この場合、上記各支柱5は、上記段差部20において地面4の高さが一段高い他方の領域3の地面4上に立設させてもよい。
【0057】
また、上記縦壁19はコンクリートブロックや板金材などにより別途に形成して、地面4に直接固着してもよく、上記支柱5に固着させることにより地面4側(地面4に間接的)に固着させてもよい。また、上記縦壁19の表面は鉛直線に対し少し傾斜していてもよく、円弧形状であってもよい。また、縦壁19の表面に凹凸部を形成したり、断面波形状やギザギザ形状にしてもよい。また、上記縦壁19は、道路の側部に形成される側溝の内壁面を利用してもよく、地下鉄や地下街の入口周りの地面4上に形成される登り段差部20や階段の縦壁を利用してもよい。
【0058】
また、上記連結具14,15の被連結部材26は、上記遮水膜体13の長手方向の一部分を二枚重ねとなるよう屈曲させることにより形成してもよい。また、上記他の連結具34、索条体37、およびロープ33は設けなくてもよい。この場合、遮水膜体13の高さ方向の全長に対し遮水膜体13が縦壁19に接する部分の長さの比率を20%以上とすることが好ましく、このようにすれば、水害時の水圧で上記遮水膜体13が撓んだとしても、この遮水膜体13の下部と縦壁19との間の水密性は、より確実に保持可能とされる。
【0059】
以下の図5は、実施例2を示している。この実施例2は、前記実施例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【実施例2】
【0060】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例2を添付の図5に従って説明する。
【0061】
図5において、上記他の連結具34は、上記段差部20において地面4の高さが低い一方の領域2の地面4に形成される嵌合溝39と、この嵌合溝39の上記一方の領域2側の開口縁部に枢支具40により上下に回動可能に枢支されて上記嵌合溝39に嵌脱可能に嵌入される回動体41とを備えている。
【0062】
通常は、上記回動体41に対し上記遮水膜体13の下端縁部が係止された係止状態で、上記回動体41は上記嵌合溝39内に嵌入されている(図5中実線)。
【0063】
前記水害発生時には、上記遮水膜体13の上部が一方の領域2側からの水16により水圧を与えられて上記他方の領域3側に向かって撓むこととなる。すると、上記遮水膜体13の上部の撓みにより、この遮水膜体13の下端部が上方に引き上げられ、これと共に上記回動体41が上方回動させられる。すると、この回動体41の上方回動の途中で、図5中一点鎖線で示すように、上記遮水膜体13の下端部が、上記嵌合溝39の内面のうち、上記他方の領域3側の縦壁と上記回動体41との間に挟み付けられる。そして、このように遮水膜体13の下端部が挟み付けられることにより、上記遮水膜体13の下端部が上記地面4側に圧接されるようになっている。
【0064】
なお、上記嵌合溝39内に流入した水16の水圧で、上記嵌合溝39の内面のうち、上記他方の領域3側の縦壁19に上記遮水膜体13の下端部が圧接する場合には、上記段差部20は設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 膜式防水装置
2 領域
3 領域
4 地面
5 支柱
13 遮水膜体
14 連結具
15 連結具
16 水
19 縦壁
20 段差部
23 締結具
24 連結部材
25 係止溝
26 被連結部材
27 被係止部
34 他の連結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に並ぶよう配置される二つの領域間に沿って、所定間隔で地面上に立設される複数本の支柱と、上記二つの領域を仕切るようこれら二つの領域間に沿って水平方向に延びる遮水膜体と、この遮水膜体を上記各支柱に連結する連結具とを備え、上記遮水膜体が、上記二つの領域のうちの一方の領域から他方の領域への水の流動を防止するようにした膜式防水装置において、
上記遮水膜体が上記一方の領域からの水により水圧を与えられたとき、この水圧により上記遮水膜体の下端部が、上記他方の領域の地面側に形成された縦壁に圧接するようにしたことを特徴とする膜式防水装置。
【請求項2】
上記二つの領域の互いの遷移部の地面に、上記一方の領域の地面の高さよりも上記他方の領域の地面の高さが一段高くなる段差部が形成され、この段差部により上記縦壁が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の膜式防水装置。
【請求項3】
上記遮水膜体を上記各支柱よりも上記他方の領域側に配置し、上記遮水膜体の下端部の長手方向の各部分が上記水圧により全体的に上記縦壁に圧接するようにしたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の膜式防水装置。
【請求項4】
上記連結具が、上下方向に長く延びて上記支柱に取り付けられ、その長手方向に沿って断面蟻溝形状の係止溝が形成された連結部材と、上記遮水膜体から上記連結部材に向かって突出する可撓性の被連結部材と、この被連結部材の突出端部に形成され、上記係止溝にその長手方向の一端部から嵌入されて係止される被係止部とを備えたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の膜式防水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−229559(P2012−229559A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98555(P2011−98555)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】